くにさくロゴ
1951/07/05 第13回国会 参議院 参議院会議録情報 第013回国会 本会議 第63号
姉妹サイト
 
1951/07/05 第13回国会 参議院

参議院会議録情報 第013回国会 本会議 第63号

#1
第013回国会 本会議 第63号
昭和二十七年七月五日(土曜日)
   午前十一時十九分開議
    ━━━━━━━━━━━━━
 議事日程 第六十四号
  昭和二十七年七月五日
   午前十時開議
 第一 法廷等の秩序維持に関する法律案(衆議院提出)(委員長報告)
 第二 昭和二十三年六月三十日以前に給與事由の生じた恩給の特別措置に関する法律案(衆議院提出)(委員長報告)
 第三 農林漁業組合再建整備法の一部を改正する法律案(衆議院提出)(委員長報告)
 第四 日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障條約に基き駐留する合衆国軍隊に水面を使用させるための漁船の操業制限等に関する法律案(内閣提出、衆議院送付)(委員長報告)
 第五 昭和二十六年産米穀の超過供出等についての奨励金に対する所得税の臨時特例に関する法律案(衆議院提出)(委員長報告)
 第六 製塩施設法案(内閣提出、衆議院送付)(委員長報告)
 第七 航空法案(内閣提出、衆議院送付)(委員長報告)
 第八 日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障條約に基く行政協定の実施に伴う航空法の特例に関する法律案(内閣提出、衆議院送付)(委員長報告)
 第九 農地法案(内閣提出、衆議院送付)(委員長報告)
 第一〇 農地法施行法案(内閣提出、衆議院送付)(委員長報告)
 第一一 輸出取引法案(内閣提出、衆議院送付)(委員長報告)
 第一二 航空機製造法案(内閣提出、衆議院送付)(委員長報告)
 第一三 特定中小企業の安定に関する臨時措置法案(衆議院提出)(委員長報告)
 第一四 電源開発促進法案(衆議院提出)(委員長報告)
 第一五 中華民国との平和条約の締結について承認を求めるの件(衆議院送付)(委員長報告)
 第一六 北太平洋の公海漁業に関する国際條約及び北太平洋の公海漁業に関する国際條約附属議定書の締結について承認を求めるの件(衆議院送付)(委員長報告)
 第一七 インドとの平和条約の締結について承認を求めるの件(衆議院送付)(委員長報告)
    ━━━━━━━━━━━━━
#2
○議長(佐藤尚武君) 諸般の報告は朗読を省略いたします。
     ─────・─────
#3
○議長(佐藤尚武君) これより本日の会議を開きます。
 この際、日程の順序を変更して、日程第十五、中華民国との平和条約の締結について承認を求めるの件
 日程第十七、インドとの平和条約の締結について承認を求めるの件、(いずれも衆議院送付)
 以上二件を一括して議題とすることに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#4
○議長(佐藤尚武君) 御異議ないと認めます。先ず委員長の報告を求めます。外務委員長有馬英二君。
   〔有馬英二君登壇、拍手〕
#5
○有馬英二君 只今議題となりました中華民国との平和條約の締結について承認を求めるの件につき、外務委員会における審議の経過と結果を御報告いたします。
 政府の説明によりますると、昭和二十六年十二月二十四日の、いわゆる吉田・ダレス書簡に示されておる通り、政府は窮極において日本の隣邦である中国との間に、全面的な政治的平和と通商関係の樹立を望んでおるのでありますが、一方中国は、カイロ宣言及び我が国が受諾したポツダム宣言の当事国であるにかかわらず、過日発効のサンフランシスコ平和條約の当事国となるに至らず、これがために同條約の規定によつて、我が国が権利を放棄した台湾及び澎湖島の関係においても、これを現に支配する中華民国との間に平和関係が回復されず、双方の間に種々の不都合が生じておるので、中華民国政府と戦時状態を終結し、正常関係を再開するため、本條約を締結したと言うのであります。
 この條約を締結するに当つて、政府は次のごとき方針を以て臨んだとのことであります。即ち一、吉田・ダレス書簡の趣旨を堅持したこと、二、サンフランシスコ平和條約の原則に基いて二国間の條約を結ぶこと、三、平等の立場で交渉し、サンフランシスコ條約で片務的であつたものを是正するに努めたこと。これに対し、中国側は国民政府は全中国の領域を代表する正統政府であること、サンフランシスコ條約の連合国と同等の待遇を受けること等を條件としたため、双方の考えを併せ盛つた線で妥結したのであるが、戦犯及び役務、賠償の問題が放棄されておることは、我が国に有利である等の説明がありました。本條約は、前文、本文十四カ條及び末文並びに議定書及び交換公文書からなり、更に同意された議事録を交換いたしております。
 簡單に條約の内容を申上げますと、本文においては、戰争状態の終了、旧領土に関する権利、権原及び請求権の放棄、台湾及び日本におけるそれぞれ相手方の財産関係の処理、不平等條約の廃棄、中国における特殊権益の放棄、国連憲章の確認、通商、民間航空及び漁業に関する條約、協定の締結、中華民国国民の定義、戰争の結果として生じた問題の処理、本條約に関する紛争の解決等を内容といたしております。議定書においては、受益規定適用土の解釈、通商暫定措置を定め、公換公文においては、條約の適用範囲、民間航空、拿捕船に関する取扱いを確認し、合意された議事録においては、適用範囲の字句の解釈、協力政権の財産、在華日本外交機関の財産及び賠償についての合意を文書にしたものであります。
 外務委員会は、五月十六日以来予備審査を含めて前後七回開会し、毎回外務大臣の出席を求め、六月二十六日には特に総理大臣の出席をも求めて本件を審議いたしたのであります。質疑の詳細は速記録に譲り、その主なるものを御報告いたします。
 先ず伊達、杉原、曾祢、金子、團、平林、兼岩の各委員より、「この條約によつて台湾の帰属が決定されることになるのか。この條約の相手たる中華民国政府とは中国全体の政府か。又は台湾の地方政権を指すものであるか。條約第一條の戦争状態の終結とは、全中国との関係を規定したものか。若しそうであるならば、効力の適用範囲を定めたこととの関係があいまいである。又この條約はいわゆる吉田・ダレス書簡の趣旨から逸脱しているものではないか。政府は国民政府を中国の正統政府と認めたものか。この條約によつて今後全中国との関係が阻害されることになるのではないか。中共政府に対する今後の方針如何。中共貿易に対する政府の考え方如何。條約第四條は、一九四一年十二月九日以前の両国間の條約等を無効としておるが、この規定は、琉球将来の帰属に差し障りとならないか」等の質問に対し、外務大臣より、「台湾の帰属は、日本としてはカイロ宣言をも内容としたポツダム宣言を受諾しているので、台湾、膨湖島は中国に引渡されるものと了解する。但し法律手続上は未決定である。第一條の解釈は、法律的に見て国としての中華民国と日本との戦争状態の終結を規定したもので、地方政権とのものではない、中国とは広い意味の領域を指すが、そこには現在国民政府と中共というそれぞれ全土の領有を主張する相争う二つの政府があり、その一方と條約を結んだわけである。現実は中華民国政府が、いわゆる中国全体を支配しないので、非支配地域には、実際の効力は発生しないので、この條約には適用範囲があるのである。中共とは現在のところ交渉するつもりはない。中共政府は中ソ同盟條約によつて日本を敵国としており、又我が国の憲法制度を破壊するごとき悪質の挙に出ているので、現在のところこれと親善関係に入ることは不可能である。中共貿易は共産陣営の戦力増強に利用される虞れがあり、国連協力の立場から緩和する意思はない。ただ自由国家群の足並みを揃えることは必要なので、扱い方、にでこぼこがあれば調整はする。琉球は古くから我が国の領土として認められ、歴史的にもその帰属について問題とならなかつた。今後信託統治が解けた場合に、中国がその領有を主張するがごときことはないと信ずる」等の答弁でありました。六月二十六日の総理大臣に対する質問においては、平林、曾祢、岡田の各委員より、この條約によつて生ずる中共との関係、吉田・ダレス書簡の趣旨がこの條約に生かされているかどうか、中共貿易に対する政府の方針等が質され、総理大臣からは、前述の外務大臣の説明とほぼ同様の答弁があつたのであります。なお、條約の相手方たる中華民国政府は、中国全体の代表政府であるかどうかの問題は、何度も論議が交わされた点でありまして、政府の答弁は必ずしも明確ではないような印象を受けたのでありますが、この質疑応答の詳細は速記録により御承知願いたいと存じます。
 委員会は六月三十七日質疑を終り、二十八日討論において、社会党第二控室曾祢委員より反対、社会党第四控室金子委員より反対、自由党團委員より賛成、緑風会伊達委員より賛成、共産党兼岩委員より反対の意見がそれぞれ党を代表して表明されました。次いで採決を行いましたところ、多数を以て本件は承認すべきものと決定いたした次第であります。
 以上御報告申上げます。
 次に、インドとの平和條約の締結について承認を求めるの件につき、外務委員会における審議の経過と結果を御報告いたします。
 政府の提案理由によりますると、インドは御承知のようにサンフランシスコ平和條約には参加いたしませんでしたが、本年四月二十八日インド政府は目印間戦争状態終結の告示を発し、又同日付の両国間の交換公文によつて両国間の外交、領事関係が開かれたことになり、更に戦争に伴う諸問題を解決し、且つ両国の友好関係樹立のために平和條約締結の交渉が進められ、六月九日、調印を了したのが水爆約であります。
 本條約の特徴とも言うべきものは、政府の説明によれば次の諸点であります。第一、他国との平和條約と異なり、戦争状態は四月二十八日を以て終了しておりますので、戦争状態の終了を前提として本條約が締結されていること。二、サンフランシスコ條約の枠内で締結されましたが、賠償の放棄、在印日本資産の返還、戰争中の請求権の相互放棄等は、同條約に比して遙かに友好的なものであるとのことでありました。
 次に、この條約の内容を簡單に説明いたしますと、前文、本文十一カ條及び末文並びに一つの交換公文からなり、前文には両国間の戰争状態の終了、両国は国連憲章の原則に基いて共通の福祉と、国際平和に協力することを述べ、本文十一カ條には関税、輸出入制限等について、相互に最悪国待遇及び内国民待遇を與える等の通商規定、漁業協定の網結、在印度日本資産の返還、在日印度財産の返還と補償、印度による賠償及び戦争中の請求権の放棄、日本の裁判所が行なつた裁判の再審査、戰前の金銭債務に関する規定、日本が戦争に関連して有する請求権の放棄、條約の解釈についての紛議の解決等の規定を内容としております。交換公文は、條約第三條(b)の但書の最恵国待遇の規定に関する除外例のほかに、インドは更に将来コンモンウエルス連邦諸国及び接壌国に特権を與える権利を留保したものであります。尤もインドが同様の特恵を右以外の第三国に與にる場合には日本にも同じく與えることが了解されております。
 外務委員会は本件に関し、三回に亘り審議を行いました。質疑においては、曾祢、杉原、岡田委員等より、「條約第二條の、インドが隣接国に與えている特恵の内容、将来他の国との通商協定を結ぶ際、かかる規定は先例とされ、我が国に不利ではないか。原則として特定国との特恵の関係は反対すべきではないか」等の質問があり、外務大臣は、「インドが現在特恵を與えている隣接国は、ネパールとパキスタンで、ビルマに対してはガツトの承認を要求中であるが、特恵の内容はガツトが承認している範囲内のものである。今後の交渉においては、交換公文中の均霑の趣旨と平和條約第十二條(b)の例外規定を方針とするつもりであり、この條約第二條の規定も実害はないと思う」等の答弁でありました。
 委員会は六月二十七日質疑を終り、二十八日討論を経て採決を行いましたところ、多数を以て本件は承認すべきものと決定いたした次第であります。
 以上御報告申上げます。(拍手)
#6
○議長(佐藤尚武君) 中華民国との平和條約の締結について承認を求めるの件に対し、討論の通告がございます。順次発言を許します。金子洋文君。
   〔金子洋文君登壇、拍手〕
#7
○金子洋文君 私は日本社会党第四控室を代表いたしまして、本條約案に反対の意を表明する者であります。
 中国との平和條約が話題に上つたのは昨年のことでありますが、六月上旬ダレス特使が渡英いたしまして、次のような米英共同のコミユニケを発表いたしました。日本は二つの中国政権のうち、その欲する政権を選んでこれを調印することが許されるというのであります。これに対して吉田首相は、中国の選択は連合国が決定するだろうと巧みに体をかわして答えておるのであります。この応酬に対して各国からいろいろ批判があつたのでありますが、そのうち最も賢明な見解は、次のように述べておるのであります。日本は米国の勧告に従つて国民政府と講和條約を結ぶであろうが、英国が中共政権を承認しておる関係もあるのだから、いずれにせよ講和條約の時期を朝鮮の平和が回復した後に選ぶに違いない。そうなると日本は経済的な理由から中共政権を選ぶであろうし、又朝鮮事変が片付くとアメリカの考え方も変ることもあり得る。この見解は今日の險悪なる事態から考えて見ましても、頗る示唆に富んだ賢明な見解だと思います。然るに日米折衝の結果は吉田首相の書簡となつて、台湾に亡命中の国民政府と本條約を結ぶことになつたのでありますが、このことはサンフランシスコで結んだ二つの屈辱的な條約の当然の帰結でありまして、吉田外交の完全な敗北であると言わねばなりません。(拍手)
 この平和條約は、国民政府とそれを強要した米国にとつては、それぞれ利益があるでありましようが、日本にとつては利益よりも大きな禍いをもたらす條約であることを、先ず第一に指摘したいと存じます。中国における内戦は、中共が朝鮮動乱に介入しておるために内戰と動乱は不可分の関係にあることは言うまでもありません。従いまして国民政府にとつては、朝鮮動乱が早急に解決するよりも、長期に亘ることが望ましいのでありまして、それだけ中共の台湾攻略も長引いて、台湾の統治にとつて有利となるからであります。
 そもそも蒋介石政権が中国において中共に敗れ去つた根本の原因は、世界情勢の把握と分析を誤まつて、五年内には第三次世界大戦は必至と考え、軍事的諸政策を強行して、中共とは反対に民生の安定を怠つて来た結果であります。従いまして国民政府の運命は、かかつて第三次世界大戦にある。それ以外に救われる途はないとさえ批判されているのであります。かようにおのれの運命を賭けるにひとしい国民政府の立場と、世界の平和を願望し、朝鮮動乱の早急の平和的解決を望んでいる日本の立場とは、きびしく対立しているのでありまして、朝鮮動乱が未だ解決を見ない現状において、日華條約を結ぶということは、中共を徒らに刺激して、動乱の解決を一層困難に導くものと言わねばなりません。政府は輸出貿易管理令を強行して、物資を中共へ送らないことが、朝鮮動乱を早期に解決する途だと強弁いたしておりますが、それとこれとの間には、雲泥の差がある二とは何人も承認せざるを得ないと思います。我々が最も恐れることが、この條約を結ぶことによつていよいよ中ソとの離反を深めることであります。その結果、国連軍によつて水豊発電所の爆撃や、更に事態が発展して、満州の基地を爆撃するような不幸な事態が生じますならば、全国に外国軍隊の軍事基地を持つ日本全土が、いつ報復爆撃を受けるかも測り知れないことであります。そうなりますと、民生の安定をおろそかにして、再軍備と反動立法に憂き身をやつしている吉田政権のやり方では、国内の暴動さえも誘発する虞れがあり、最悪の場合は、第三次世界大戰に突入する危險さえもこの條約は内包しておると申さねばなりません。(拍手)
 国連はその規定に従つて、これまで中国の内戰には關與しない立場をとつて来ておりますが、六月十七日の外務委員会における岡崎国務大臣の言明にもありますように、現在アメリカでは国民政府を承認して、いろいろ援助を與えているし、第七艦隊を派遣して軍事的支援を與えています。昨年の六月一日に開かれたアメリカ上院の軍事外交の合同委員会において、アチソン国務長官は次のような重大な発言をいたしておるのであります。台湾が戰略的価値を持つていることは、すでに意見の一致を見ている。従つてアメリカは台湾を占領したり、利用するようなことはしないが、米国に敵意を持つ国には台湾は渡さないというのであります。即ち中共には台湾を渡さないというのでありますが、一方に中国に二つの政権があることを認めておきながら、中共に台湾を渡さないということは、カイロ協定やポツダム宣言を破棄して中国の内戰に關與するものであり、国連の規約をみずから蹂躪するものと言わねばなりません。(拍手)従いまして、米国へ敵意を持つ中共へ台湾を渡さないと言うのであるから、現在の内職がアメリカの介入によつて、いつ新たなる交戰状態に飛躍しないとも限りません。そうなりますと、現在日本に駐留するアメリカ軍隊は、日米安全保障條約の第一條が示すように、極東における国際の平和と安全の維持に寄與するために動員されることは必定と言わねばなりません。従いまして、アメリカ軍隊の軍事基地である日本全土は戰火を浴びることも必定であります。このことは一見この平和條約と関係がないように思われますが、そういう危險な状態を前にして、徒らに中共を刺激するかような條約を結ぶことは、好んで禍いを招くにひとしいものであり、国民を欺瞞して、政府が着々用意しつつある日本の軍隊がアメリカ軍の傭兵として中国の内職に動員されることも火を見るごとく明らかであります。(拍手)
 次に申上げたいことは、現在台湾に亡命している国民政府は、果して中国を代表する政権であるか否かの問題であります。カイロ協定及びポツダム宣言発表当時の国民政府は、確かに中国を代表した政権であることは疑いありませんが、中共に敗れて台湾に落ち延びた現在の亡命政権が、中国を代表するものか否かについては、さまざまの疑点があるのであります。吉田書簡は、国民政府が国際連合において、中国を代表して議席を持ち、発言権や投票権を持つていることと、若干の領域に対して施政の権能を行使していて、国際連合加盟国の大部分と外交関係を維持していることを挙げて、国民政府をその代表として認めております。この理由の根抵をなすところの施政の権能を行使している若干の領域とは、言うまでもなく台湾であります。台湾が果して中国と言えるかどうかは甚だ疑問であります。カイロ協定やポツダム宣言によつて、やがては中国の領土に加えられることには相違はありませんが、現在は中国の領土ではなく、強いて言うと、台湾人の台湾であると申さねばなりません。御承知のように、一七八三年中国によつて侵冠、占有されない前の台湾は独立国でありましたし、日本へ帰属したこともあるのであります。そういう事情も手伝つて、現在七百万内外の島民は、台湾は日本の領土でもなければ中国の領土でもない。台湾人は、日本人でもなければ中国人でもない台湾人である。こういう考え方から、二月十八日を独立記念日として、独立運動を続けている現状にあるのであります。従いまして、国連に議席を持ち、発言権や投票権はあるにしても、もはや国民政府は領土の無い亡命政権であり、幻の政権にひとしい実態にあるのであります。(拍手)この幻の政権は領土を持たないばかりか、国民さえも持つていないのであります。六十万内外の軍隊と百二、三十万の亡命者を抱えておりますが、七百万の島民は何らかかわるところがないのであります。ところで国民政府の実態は、蒋介石一門の軍閥と宋子文一家の財閥との結合による独裁政権であり、非民主的な政権であることは世界周知の事実であります。(拍手)而して台湾亡命後の施政の実情はどうかと申すと、無策無方針、亡命者のボスどもと貧官と汚吏が結託して、人民の膏血を絞ることに狂奔專念する有様であります。そのため昭和二十二年二月十八日には暴動が起りまして、三万五千人の死亡者を出しているのであります。それ以来島民は、この日を独立記念日として強力な独立運動を続けております。今日台湾では、犬去り豚来たるという言葉が全島に流布しております。犬は日本であり、豚は国民政府を指しているのでありますが、犬はうるさいが保身の役に立つ。それに反して豚は何でも貧ぼり食つて自分だけ太るが役に立なない。こういう意味であります。かように国民政府の実態、施政の実情、島民の動向等から考えましても、国民政府が中国を代表する政権と言えるかどうか甚だ疑わしいのであります。
 この平和條約を貿易の面、特に物品を売買する市場を中心として考えて見ますと、グレート・チヤイナと手を結ぶことを拒んでベビー・チヤイナを抱きかかえる様相を髣髴させるのであります。吉田首相は一月二十八日の本会議において、中共との貿易は余り期待できない。戰前の例を見ても五%か、六%ではないかと申されました。昭和九年から十一年までの平均をとつて見ますと、首相の申す通り五%か、六%となつています。併し総理大臣は、戰前において満州や関東州が中国の領土でなかつたことを忘れておられるようであります。両州を加えたところの戰前の貿易は、輸出のほうでは二二%四であり、輸入のほうでは一三%二となつておりまして、日本の経済の再建と自立にとつて重みのある数字であると申さねばなりません。勿論戰前と戰後ではいろいろ事情が違うのでありますから、かような数量を直ちに求めることは困難でありますが、バトル法が実施される前の昭和二十五年度でさえ、年間の輸出入は五千八百万ドルとなつているのであります。一方台湾の貿易はどうかというと、二十六年度において輸出は四千七百万ドル、輸入において五千百万ドルとなつております。この二つの数字を比較すると、中共の貿易を過大に評価することはできませんが、一方は島民七百万を加えて一千万人にも満たないベビー・チヤイナであるに反し、他方は四億八千万人という巨大な人口を持つておる大国であることを見逃すことはできません。而も中共の復興と発展は目覚しく、この巨大な人口の購買力は、非常に速度の早い躍進振りを示しておりまして、一昨年と昨年の僅か一年の間に五三%の購買力の上昇を見ており、二年前と比べると一四一%の上昇を見ているのであります。従いまして貿易量の躍進振りも目覚しいものでありまして、一九四九年の輸出入合計は四億九千万ドルでありましたが、経済封鎖を受けた一九五一年の総額は十五億ドルの、三倍強となつているのであります。この数学から見ましても、中共に対する経済封鎖が如何に無力であり、愚劣であるかがわかるのでありまして、輸出貿易管理令の強行によつて朝鮮動乱の早期解決を望むなどという政府の考え方が、巨象を撫でる盲人の愚かさと少しも変りないと申さねばなりません。(拍手)勿論私は一口に平和攻勢と言われる中共の政治的意図を無視するものではございません。(「それはおかしいぞ」と呼ぶ者あり)それに対しては、こちらも政治的考慮を以て対処すればよいのであつて、商売は商売として別に考えて一向差支えないものと思います。中共から粘結炭や鉄鉱や大豆を買つたところで、石炭や大豆の中に赤い思想が入つて来るものではございません。反対に日本から織物や機械類を売つたところで、織物や機械類の中に日本のミリタリズムがひそんでいると考える愚か者は一人もいないと思います。然るに岡崎外務大臣の発言や外務当局が発表している白書等を聞き且つ見て感じられることは、一粒の大豆の中にも、赤い思想が充満しておるような頑くなな表情を呈しておるのであります。このことは白でなければ黒、黒でなければ白とする日本人の観念的な性癖も手伝つておるでありましようが、それよりも霞ヶ関の媚態外交から発散する恐怖と猜疑のなす業でありまして、(拍手)ソ連に対する恐怖を餌として防共の三国同盟を結んで、遂に日本を今日の悲運に導いた同じ愚策を現在の吉田外交は繰り返しておるのであります。(「古いのだよ」と呼ぶ者あり、拍手)今日各界を通じて澎湃として起つておる中共貿易に対する要望は、限られた人々の念願や中共の平和攻勢によるものではございません。米国の軍備拡張の緩慢状態、ポンド地域における輸出向けの抑制措置、英連邦諸国を初めとする各国の輸入制限、鉄鋼、繊維等の世界的飽和状態、過剰生産が続いて、世界貿易の縮小傾向が表面化して来たこと等による内外の必要から迫られておるのであります。而して中共貿易の打開と振興は、東南アジアの貿易と友好にも密接な繋がりを持つことは言うまでもございません。最近東南アジアから帰つて来た友人の話によると、欧米の機械類は職を奪うが、日本の機械は反対に職を與えると言つておるそうであります。失業者の多い東南アジアにおきましては、進んだ欧米の機械よりも、遅れた日本の機械類のほうが適合しておるというのであります。そういう事情からビルマ政府では、日本の業者と契約をしまして機械類を注文したそうでありますが、一週間ごとに値段が高くなつて来るので、遂に契約を破棄したと言われております。業者に言わせると、アメリカから高い値段の粘結炭や原鉱を買つておるから、そうならざるを得ないというのであります。この一つの例から見ましても、中共貿易の打開と振興は、東南アジアの貿易にも利益をもたらすことになるのであつて、まさに一石二鳥、これなくして日本経済の自立はあり得ないのであります。然るに今日国民政府と平和條約を結んで、徒らに中共を刺激して、貿易の途を更に隘路に導くことは、経済の面から考えても大人気ない愚策と申さねばなりません。日本のミリタリズムは、積年に亘つてアジア諸国に惨害を與えて来たのでありますが、サンフランシスコの講和会議に出席したアジアの諸国の表情は、一、二の国を除いて、日本に対する怨恨を忘れて愛情を以て迎え、中にはアジアにおいては日本だけが強力であり、自由であつたと尊敬と信頼の言葉を以て挨拶した国さえあるのであります。これら日本と條約を結んだアジアの国々は、ソ連の主張や要請には賛成しなかつたのでありますが、武力を以て世界の平和を守ろうとするアメリカの世界政策にも賛同いたしてはおりません。インドと同じく、ソ連にもつかないが、アメリカにもつかないという第三の中立的立場を堅持しておるのであります。そうして利用できるものは利用する、こういう考えさえ持つておる国があるようであります。而してアジアに山積する諸問題、植民地の解放、資源の開発、貧困の克服等のもろもろの問題をインド、日本、中国の大国が中心となつて団結し、アジアみずからの力によつて解決しようとする心がまえを強めておることは、今日においては一層明確となりつつあるのであります。日本に対するこのような尊敬と信頼は、第二次世界大戰後二十カ国の植民地のうち、十二の国が独立を得たことにもよるのでありまして、これらアジアの信頼と協力なくして、日本の再建と発展がないことを我々は深く留意しなければならないと思います。
 然るに朝鮮動乱が未だ平和的解決を見ない今日、アメリカの強制によつて国民政府と平和條約を結ぶということは、アジア諸国の信頼を失つて、アジアの孤児となる途を好んで選ぶものと申さねばなりません。ソ連駐在のアメリカ大使ジヨージ・ケナン氏は、国民政府を批判して次のように言つておりますが、復読玩味すべき名評だと思います。「この政権を支えようと努めることほど馬鹿気た宿命的な誤りはない。」、従つてこの平和條約は同様に馬鹿気た宿命的な誤りを日本が犯すものと断言して憚かりません。
 以上をもちまして私の反対討論を終ります。(拍手)
#8
○議長(佐藤尚武君) 團伊能君。
   〔團伊能君登壇、拍手〕
#9
○團伊能君 私は自由党を代表して、只今上程されました日華條約承認の件につきまして賛成いたします。
 講和独立後の日本といたしまして国交を断絶していた国々に対しまして平和を回復し、再び友好関係を結んで行くことは、今日我が国、外交の当面している、最も重要な問題であることは、今更餐言を要しないと存じます。併しながら、昨年サンフランシスコの講和会議におきまして、ダレス提案に賛成して調印した国々も、その国々の持つ特殊な事情、又その調印條項の実施細目については、相当異論があり、すでに両国間におきましては、條約締結の意思が一致しておりましても、まだ條約の実現に至つていない国のあることは皆様御承知の通りであります。これらの條約は、いずれも批准事項であるために、各国国会の承認を得るという手続を要しますので、殊にこの点におきまして、その締結がまだ今日見られない国もあるのであります。殊に東洋諸国の間におきましては、複雑な国際事情の現実において許さないものが多く、我が国が熱望する善隣友好も容易ならざる努力を要する仕事であります。このときに当りまして、日華條約を安結いたしましたことは、両国国民間の喜ぶべきことであるのみならず、我が国にとりましても極めて有利なことだと考えられます。今日の中華民国政府は、曾つての中華民国のそれといささかそのあり方を異にしておることは皆様御承知の通りでありますが、併しなおその台湾、澎湖島その他の範囲におきまして行政権を実施しておる国家として存在しておるのでありまして、そのことは疑うことはできないのであります。この條約は、委員会の審議中にも、しばしば本條約と中国本土との関係につきまして論ぜられました。中国において政権が分立していた事実は古今を通じて極めて多く、日本が初めて大陸と交渉を持ちました極めて古い用明、推古の時代におきましても、支那大陸は南北朝に分れており、日本はその南梁、齊等の国を通じて交易を始めたのであります。これ以来日本は朝鮮と同様に、支那大陸の協調し得る国とその交通を保つて来たことは我が国の伝統的な方針でありました。
 今日台湾にあります中華民国政府は、明末に明の南方植民地が独立いたして、ビルマにありましたいわゆる緬甸政府とは形が異なつております。これはむしろ十二世紀、北支那を金が侵しましたとき、宋が南方の杭州に移つたときの形と等しく、政府がその所を変えたのであります。たまたまそのとき杭州を訪ねましたマルコ・ポーロはその記載の中に、行在所のある政権、これをそのまま言葉をとつて、アンザイ・ガヴアーメントと言つておりますが、その形は、今日の中華民国の形がこれに相当するものであると思います。(「違います本質的に」と呼ぶ者あり)従つて中華民国政府が本来持つていた国際間の條約の権利義務は、依然そこに存在するのであります。故に中国に関するものもこの條約によつて取上げられなければならない点があるのであります。
 その第一は、この條約第一條にあります戰争状態終止の問題であります。中華民国は一九四一年十二月九日に日本に対して宣戰を布告しましたが、今日なおその状態は、そのまま続けられておるのであります。この戰争状態の終止の取極をなすことは、極めて妥当なことであり、又列国もこれを迎えておるところであります。中華民国が日本と結んだ各種條約、協定の上の権利義務、又中華民国が、当時清国から受継いだ諸條約に関しましても、これはこの條約の中に取入れられるのが当然であり、義和団事件の最終議定書或いは日清戰争の下関條約における諸條約の破棄がこの條約の中に取上げられていることは、何ら不自然はないと考えられます。併しながら現実の状態に生きまして、中華民国の行政権は特殊な事情といたしまして、地域的と限定されておりまして、不幸にしてその行政権の及ばない地域が存在するのでをあります。この点につきましては、そこに行政権の及んだ場合にこの條約は有効となることを規定しているのであります。吉田・ダレス書簡におきまして吉田首相は、将来中華民国国民政府の支配下に現にあり、又今後入るべき地域に、この條約は適用されることを認めるという意思を発表しているのであります。併し又一方におきまして、中華民国は現実的にその行政を実施している領域、即ち台湾、澎湖列島、西沙群島等の地域及び海域を持つておるのでありまして、この領域内においては完全に政府の行政権が実行されておりますから、本條約はその範囲において責任を以て実行が期されているのであります。
 この原則は 一見極めて不合理であり、又矛盾あるかのごとく思われますが、併し掘り下げて見れば、この現実の状態におきまして極めて合理的又実際的なものだと私は考えます。この條約の成立と共に、日本が中華民国と講和をすることによつて、中国大陸における統治権の回復を暗に支持しているかのごとく曲解している方面もあります。殊に中共政府方面の意見によりましても、本條約は日本が蒋政権と協力して、大陸干渉に出ずる手段であるかのごとく言われている点もありますが、これは吉田・ダレス書簡自身も注意深く言い現わしておりますように、この條約は飽くまで二国間にあつて作られたものでありまして、何らそれ以外の国に対する意図を含んでおるものではないのであります。そしてこの條約の締結によりまして、中国大陸の住民とのもに日本が不和を招くがごとき何らの内容も含んでいないのであります。勿論日本は、我らがひとしく望んでいるように、将来中国全部と平和を回復しようとする希望は持つておりますことは、吉田・ダレス書簡におきまして、吉田首相が明らかにされたところを以ても知ることができるのであります。併しながら不幸にして日本と中国との間は、その最後を戰争という不幸な事実によつて互いに別れてしまい、又戰後におきましては中国大陸におきまする政権のあり方が、両国民をなおも引離しているのであります。併し日本が一時的な戰争を超えて長い歴史的関係を持ち、殆んど永久と思われる時間におきまして、経済的、文化的に深い交渉を持つて来た中国国民と、一日も早く友情の復活を望むや切なるものがあるのであります。ただ今日悲しむべき戰後日本の経済的貧困からして、最近において、中国に対する関心を單に中共貿易という利益の点においてのみ考えている人を多く見受けるのでありますが、中国国民と日本人との関係は、そんな唯物的関係において測るべきものではないのであります。東洋の同胞として両者のみが理解し合い得る心の問題を共通にしているのであります。この中国民の中におきまして、幸いに国際連合憲章の理想を守り、共に人類の自由と平和を信ずる中華民国を見出し、進んでこれが提案を受けまして平和條約を結び得ましたことは、我々の甚だ喜びとするところであります。我ら善隣の意図が漸くここに実現された次第であります。中国は我が国に対する役務賠償その他の一切を捨て、我が国は清国以来いろいろな国際感情のもつれがありました條約の一切を捨て、白紙に返つて平和を達成しましたことは、日華の間に新らしき希望ある発足を予言するものであります。
 更に両国間の通商、交通、航空、漁業等、この條約に規定してあります協定が次第に決定されるにおきまして、我が国の経済、貿易の土にも大きな寄與をすることは明らかであります。曾つて対米輸出に次いで大きな額を持つておりました我が国の植民地に対する移出額を考えますときにも、この台湾及びその他島嶼との自由な経済的協力を完成するときには、貿易額におきましても非常に大きなものを期待し得るのであります。台湾は、御承知のごとくキヤムベルのオランダ台湾統治史によりましても知るごとく、支那の辺外の境でありました。日本の漁民が逆殺されたとき、日本が清国政府に抗議をしました明治初年において、清国政府はこれを化外の地、教化の外にある地と呼んでおりました。明治二十八年四月の下関條約によりまして日本がこれを讓り受けて以来、日本人は半世紀に亘つて多大の犠牲を拂つてこの僚属の地を耕し、未開の森林を開き、又蛮族を教化して、世界の文化に寄與して来たことは皆さん御承知の通りであります。今この條約によつて日華両国の間に平和的友好を取戻し、日本人の豊富な技術と経験とを再びこの島の上において日華協力に使い得るならば又喜びとするところであります。この意味におきましても私はこの條約の締結に賛成するものであります。
 最後に今日中共政権の下にありまして国連の制裁を受けつつある中国民が、一日も早く我々と同じ理想の下に来たつて自由社会に復帰し、東洋の平和の中軸をなす日本人と中国人との友好関係を再現する日を期待しつつ、この賛成演説を終ります。(拍手)
#10
○議長(佐藤尚武君) 曾祢益君。
   〔曾祢益君登壇、拍手〕
#11
○曾祢益君 私は日本社会党第二控室を代表いたしまして只今議題となりました中華民国との平和條約の締結について承認を求めるの件に対しまして、反対の意向を表明するものであります。
 我が国はサンフランシスコ平和條約によつて独立を回復し、自由平等の立場において再び国際社会の平和的な一員となることができたのであります。
   〔議長退席、副議長着席〕
日本と歴史的、地理的及び文化的に密接な関係のある中国との国交調整につきましては、中国内部の特殊な事情のために遂にサンフランシスコ会議には、中国を代表する政府の参加を見るに至らず、従つて未解決のまま残されたのであります。併しながらサンフランシスコ條約第二十六條の規定によりまして、日本は自主的な立場から、同條約と実質的に同一の條件を以ちまして、中国との平和條約を締結するの自由を獲得いたしたのであります。換言いたしますれば、中国政府の選択ば外国の制肘を受けることなく、專ら日本の自主的判断に委ねられたのであります。
 ところが現在中国には二つの政権が対峙いたしておりまして、列国の中にも北平政権を承認したものがあります。又依然といたしまして国民政府を承認したままのものもあるという状態でございます。しかのみならず、中共政権は朝鮮動乱に介入いたしまして国際連合の決議によつて侵略者と認定されており、又一方、台湾の争奪や、台湾から中国本土に対する逆上陸の問題等をめぐりまして、朝鮮における戰火が一層拡大する危險を孕んでおることは御承知の通りであります。従いまして我が対策政策は、中国問題こそは宿命的に日本の外交の軸心であるという長期的な観点と、これが処理如何は、直ちに日本の安全に重大な影響を與えるという現実的な観点とを、総合調整しつつ、最も慎重に定めなければならないことは言を待たないところであります。
 然るに政府の施策及び態度を見まするに、すでに昨年十二月二十四日吉田総理のダレス氏宛書簡によりまして宗された通り、遺憾ながら何ら一貫した方針と確固たる自主性を持つておらないのが実情でございます。(「その通り」と呼ぶ者あり)即ちこの書簡におきまして、吉田総理は、「窮極において日本の隣邦である中国との間に、全面的な政治的平和及び通商関係を樹立する」希望を表明しておきながら、国民政府との間にサンフランシスコ條約の原則に従つて「正常な関係を再開する條約を締結する用意がある」と述べ、他方「中国の共産政権と二国間條約を締結する意図を有しない」と断言、而もこの断言たるや、何ら時期的その他の條件を付さない断定をしておるのであります。これ明らかに矛盾であります。矛盾でありまして且つ無原則的なる妥協であります。即ち若し真に中国との全面的な政治的、経済的な解決を重点といたしますならば、事態の不確定なる現状においては、この基本的目標の達成を妨げる慮れのある一切の外交措置はとるべきではありません。(「その通り」と呼ぶ者あり)もとより台湾政権との間にも戦争状態の終結或いは平和的通商関係の発展に努むべきでございましよう。それは併し、飽くまで根本原則である中国全般との国交調整を害しない範囲にとどむべきであつて、国民政府を中国の正統政府として承認するようなことは断然避けなければなりません。(拍手)我々は国民政府が、曾つて中国の全体の主人公であつた場合に、特に終戦に際して我が俘虜、抑留者等に対して示してくれた友好的態度を忘れるものではございません。が、同時に暴力に倒れるに至つた内部事情、即ち民心を喪失する原因となつた腐敗、非民主的独裁、かようなことが蔓延していた事実も承知しておるのであります。
 一方中共政権も又聴力と独裁とによつて政権を獲得し且つその持続を図つておることや、マルクス・レーニン・スターリン主義を信奉しまして、ソ連との間に我が国を仮装敵国扱いする軍事同盟を締結しておる事実、(拍手)殊に前述のように、現在国連から侵略者の烙印を押されておる事実、これらを直視しないわけには参らないのであります。(「その通り」と呼ぶ者あり)従つて国連による世界の平和と安全の維持に賛成し、これに協力する我が国といたしましては、朝鮮動乱に対する中共の介入が継続する限り、中共を積極的に支援するような政治的な條約を中共との間に締結することは不可であることも又当然至極であります。但し、吉田書簡のように期限も條件も付せずに、ひたすら共産政権なるが故に條約を締結せずというような態度をとるべきではなくて、将来、特に朝鮮動乱の解決を契機とする中国との全面的な国交調整の場合の余地を残しておくことが適当であることは言うまでもないところであります。
 然らば何故に吉田書簡に示された吉田内閣の対華外交が、以上のように矛盾に満ちたものになつたか。これにつきましては、この書簡を発出し且つ公表いたしました動機に照してみれば、極めて明瞭であります。即ちそれはアメリカの共和党の圧力の下に、サンフランシスコ條約のアメリカ上院の批准を獲得するための取引として用いられたからであります。(「その通り」と呼ぶ者あり)換言すれば、日本が中共との條約を結ばないことを明言するばかりではなく、更に一歩進んで国民政府と條約を結ぶことを予約しない限り、到底アメリカの上院は対日平和條約を承認しないという圧力に屈したのであります。(拍手)この事はすでにイギリスがはつきりと指摘しておるところでありまして、断じて我々の一方的臆測や独断ではございません。
 以上のような背景の下に締結されたのがこの中華民国との平和條約でございます。従つてこの條約が矛盾に満ちておることは当然であります。だが併しこの條約は、吉田書簡の示した矛盾を一層拡大しておるのであります。政府においてはでき得る限り、吉田書簡の程度の矛盾で収めたいと努力されたようでありまするが、相手方の立場と主張もありまして、漸次これに引ずられて行つてしまいまして、そうして政府が一貫した方針を持たずに交渉に臨んだために、かような結果になつたことは当然であろうと思います。すでに述べました通り、吉田書簡の意図は中国との全面的な国交調整を念頭におきつつ、差当り国民政府との間に正常な関係を再開する條約を締結するのだと言つており、それは日本国と中国との間の條約とは言わずに、両政府間の條約だと断わつております。即ちこの趣旨は、通俗的な表現を以てするならば、これは平和條約ではない。即ち修好條約である。又国民政府の資格については限定承認であつて正統政府の承認ではなかつたはずであります。
 然るにこの政府の煮え切らない態度は当然に国民政府の激しい反対に遭遇いたしまして、台湾における交渉は難澁を極めたのであります。而も政府は一方におきましては、講和條約発効までに国民政府との間の條約を調印しなければ、アメリカに対して面目がないという時間的制約に追つかけられたために、遂には譲るべからざるものまで譲つて、そうして妥結された條約そのものは、中華民国という国と日本国という国との間の平和條約という嚴粛な形となり、従つてその内容も又、両政府間の修好條約とはおよそかけ離れたようなものになつてしまつたのであります。殊に第一條におきまして「日本国と中華民国との間の戰争状態は、この條約が効力を生ずる日に終了する」という規定が設けられたのであります。いやしくも一国と一国との間の戦争状態の終了を確約いたしまする以上、その法律的効果が限定的たり得ないことは一点の疑いもないところであります。而してこの一例を以ていたしましても、我が方が、国民政府を中国の主人として認めたと言つて法律的に何ら差支えないのであります。中華民国と中国という国が果して同一であるのかないのかというような穿鑿は暫くおきまして、でき上つてしまつた日華條約は少くとも形式的に見て又法律的に見て、吉田書簡にいわゆる「中国との間の全画的な政治的平和及び通商関係を樹立する」ところの、全面的な且つ終極的な日華基本條約に該当するものであることは明らかであります。
 それならば政府はよろしく、この條約を以て中国との間の全面的な国交調整をなすのだという原則を貫き通し、従つて国民政府を完全な正統政府として承認したという責任をとるべきであります。(「ところがそれはとれんのだ」と呼ぶ者あり)然るにここに小細工を施しておりますのは、所属交換公文第一号によつて「木條約の條項が、中華民国に関しては、中華民国政府の支配下に現にあり、又は今後入るべきすべての領域に適用がある」という了解事項を規定したのであります。即ち政府は折角中国との間の全面的な国交調整の條約らしきものを作つておきながら、附属文書の形でこの適用制限の條項を設けることによつて「いや、国民政府を限定承認するのだ」と言い張ろうというのであります。外務委員会におきまする審議を通じ、我々委員の質問に対する政府の答弁が、外務大臣の答弁を含めて各人区々別々であり、その乱脈を極めましたことは、先ほど委員長の簡重なる報告においてすら極めて明らかにされた通りであります。(拍手)
 結局におきまして六月二十六日、吉田総理が私の質問に対しまして「国民政府を全面的に承認したものではない」と言明したことが、政府の最終的な意見のようでありまするが、この吉田総理の言は、何ら法律的の裏付けのない一方的断定であることは申すまでもございません。(拍手)従つて吉田書簡の趣旨が、多くの矛盾を包蔵しつつも、少くとも中国全般との国交調整を妨げない程度の台湾政権との修好にとどめるにあるということを信じ、又は信じようとして、政府の施策を是認し、若しくはこれに対し一応の静観の態度をとつて来た我が国の多くの人たちは、今やこの條約によつて完全にその期待が裏切られたことを理解し、俄然政府攻撃に転じましたことは六月二十一日、朝日、毎日二新聞社の社説が、最も端的に証明しているところであります。
 更に本條約は條約論的に見るならば、矛盾撞着も甚だしきものであつて、誠に古今稀に見る悪條約であります。相手方は、中国全体の主人であると言うのに対しまして、我が方は、これを條約本文において認めるがごとき形をとりながら、附属書においてこの建前を覆すというような細工を施すに至つては、およそ厳粛なる国家と国家との間の意思の合致を基本條件とするところの條約又は国際法の尊厳を冒涜するも甚だしいと言わなければなりません。(拍手)
 次にこれを外交的観点から見るならば、このような不徹底な態度で以てしたならば、果して台湾政権自体の好意すら繋ぎ得るやも疑問であります。本條約それ自体がみずから友好関係を誓う相手方に対して殆んど侮辱的とすら考えられるのであります。而も日本の外交の基調である対華政策乃至は今後の外交の進路の全般的な見地から見て、條約によつて得るところは果してあるでありましようか、遺憾ながら重大な疑いなきを得ないのであります。役務賠償の放棄等の国民政府の好意は好意として、我々は一層大きな観点から考えて手を打たなければならない段階に達しておると信じます。即ちいつまでもアメリカ追随の態度に終始するばかりでなく、みずから進んでアメリカとイギリス、更に西欧とインド、ビルマ、インドネシア等の自由アジアとの間の対壁政策の調整を図り、場合によつてはとかく近視眼的なアメリカの対華方針を是正せしめ、以て自由世界全体の結束とアジアの恒久平和とに寄與するような、真に自主的な外交を展開すべき時期は到来しておると信ずるものであります。
 最後に、本條約の中国本土に対する当面の影響について考えなければなりません、我々はすでに初めにおいて述べました通り、中央の国際的立場や日本の安全の見地から、中共との現状における政治的接近に対しましては、極めて警戒的でありまして、我が国の安全保障を無視し、ひたすら経済自立の美名に隠れたような対中共貿易拡大論等に対しては、にわかに賛成するものではありません。併し本條約はそれによつて中国本土との関係を何ら左右する力を持つておらないばかりではなく、却つて中国との全面的な政治的、経済的関係の樹立に害がある慮れ大なることは、我々信じて疑わないところであります。これを要するに我が国の独立回復後の外交の第一歩とも言うべき本條約の審議に当つて、国民の輿論を代表し、不偏不党の公正な判断を下すべき本院におかれましては、何とぞ本條約を断固否決して、その国民に対する責務を全うされんことを切に希望いたしまして、私の反対討論を終ります。(拍手)
#12
○副議長(三木治朗君) 堀眞琴君。
   〔堀眞琴君登壇、拍手〕
#13
○堀眞琴君 私は労農党を代表いたしまして、この日華平和條約の承認に関しまして反対をいたすものであります。
 先ず、第一の反対の理由は、この條約は中国の現実を無視した條約であり、中国人民との平和條約ではないということであります。中華民国国民政府は、蒋介石のいわゆる政権として呼ばれておるものでありまするが、果してこれは中国の政権でありましようか。すでに金子君或いは只今の曾祢君の意見によりまして、中国の政権ではないということが論ぜられておるのでありまするが、一番大事なことは、中国四億数千万の人口が支持しておるところの政権こそが中国の政権でなければならんということであります。若しそうするならば、一九四九年の秋成立いたしましたところの中国人民共和国こそが中国であり、そうしてその政権こそが真に中国を代表するものと申さなければなりません。
 次に、果して国民政府は正当の政権であろうか。国連に代表者を送つておるという理由によつて、これを以て中国の正当なる政権と見ることができるであろうか。成るほど国連に代表者を送つておることは事実であります。併しながら国民政府を承認いたしておりまするところの国はどのくらいあるかと申しますると、十八カ国であります。これに対しまして、人民共和国の政権でありまするところのいわゆる中共政権を承認いたしておりまするのは二十六カ国に上つておるのであります。この点から見ましても、むしろ四億数千万の人口によつて支持されておるところの、いわゆる中共政権が中国の正当の政権だと申さなければなりません。自由党の團君は、中華民国の国民政府と戦争をやつたのである。これと平和條約を結ぶことは当然であるという意見を述べられておりました。確かに日本は国民政府を敵として戰つたのであります。併しながらその国民政府が正当の中国の政権として今日認められないとするならば、そのものと平和條約を結ぶということは国際的に認められるでありましようか。
 次に、国民政府はいわゆる亡命政権という言葉で呼ばれております。亡命政権の例は、第一次大戦の場合にも、又今次大戦の場合にも、その例があります。例えばベルギーではレオポルド三世がナチス側に降伏し、政府側はロンドンに亡命いたしまして、亡命政権を名乗つたのであります。又オランダにおいても同様、ウイルヘルミナ女王がその政府と共にロンドンに亡命いたしました。連合国はこれとの間に国際的の取極をやつております。併しながら亡命政権として国際法上認められるためには、すでに第一次大戦当時に連合国によつて承認されたように、その亡命政権が、その本国において人民の多数の者によつて支持されておるということが條件になつております。今日果して蒋介石政権が中国の多数の人民の支持を受けておるでありましようか。全く否と言わざるを得ないのであります。ただ僅かに台湾、澎湖島その他の島嶼を強力によつて、即ち軍隊と警察力によつて、これを支配しておるに過ぎません。而もその蒋介石政権が台湾の島民の支持すら得ておらんのであります。このような政権と平和條約を結ぶことが果してできるでありましようか。だからこの條約は、中国人民の支持する政権との平和條約ではありません。中国人民との平和関係は回復しておらんのであります。そればかりか、却つてこの條約によつて中国人民との関係を阻隔せしめるものだと申さなければなりません。もともと中国のいずれの政権を選ぶかにつきましては、昨年の六月米英間に妥協が成立いたしておるのであります。即ちその政権の選択は、日本に任されるということであります。従つて日本としては愼重に中国の現状について考慮をめぐらし、これを選択すべきにもかかわらず、昨年の十二月二十四日の吉田首相のダレス顧問宛の書簡によりまして、国民政府との平和條約を締結する旨を約束したのであります。この約束こそは、吉田首相の東亜の現実、特に中国の事情に対するところの見通しの不的確さを示すものだと申さなければなりません。
 第二に、私が反対いたしまするのは、この條約は台湾、澎湖島にさえ適用されないところの條約であるということであります。サンフランシスコ條約の第二條(b)におきまして、日本は台湾、澎湖島に対するすべての権利、権原及び請求権を放棄いたしたのであります。併しながら、その後これらの放棄されたところの島嶼が、いずれに帰属するかについては、その後明瞭になつておりません。この條約によりましても、蒋政権を代表者とするところのいわゆる国民政府、中華民国なる国家の領土に帰属したものとは、未だ確認されておらんのであります。即ち二の條約の第二條によりますると、日本はサンフランシスコ條約第二條に基き、台湾、澎湖島等に対する政府の権利、権原及び請求権を放棄する旨が規定されておるのであります。どこにも蒋政権の中華民国に帰属するとは規定されておらんのであります。成るほど先ほど申しましたように、蒋政権は軍隊と警察力とを以て、事実上これらの地域において支配権を持つておるかも知れません。併しながら、それだけのことに過ぎないのであります。若しそうだと下るならば、国民政府は、いわゆる中華民国の領土への帰属を認定されないこの地域に適用されるところの條約を、他の国と締結する権利はないはずであります。そうとするならば、それは国際法の無視であり、人民の意思を無視したものである。その條約は無効と言うのほかはないのであります。
   〔副議長退席、議長着席〕
これを要するに、それは中国との條約でもなければ、台湾、澎湖島との條約でもなく、強いて言うならば、蒋介石を取まくところの一団の人々、曾つての軍閥と全くその揆を一にする一地域の敗残政権との條約であると申さなければなりません。従つて、このような條約を国と国との條約と同一視しまして、国会の承認を求めるがごときは、沙汰の限りと言わなければなりません。(「その通り」と呼ぶ者あり)吉田首相、岡崎外相が、このような條約でも、なお国際條約であると考えるならば、不見識も甚だしいものと言うべきであります。
 第三に、我々が反対するのは、この條約はアメリカの戦略的要請に基く條約であるという点からであります。(拍手)吉田首相のダレス宛書簡につきましては、アメリカにも各種の批判があります。例えばニユーヨーク・ヘラルド・トリビユーンのごときは、ダレス顧問の筋書に基いたものとの批評を下しております。イギリスの批判は更に嚴しいものがあります。UP電報に上りまするというと、イギリス並びに革連邦諸国は、吉田書簡はアメリカ政府の圧迫を反映したものであり、昨年六月イギリス政府に與えたアメリカ政府の保障を裏切つたものであるとなしております。そうして、これらの批判の大半というものは、アメリカがその極東における戦略的地位の確保のため日本を強要して、この條約を締結させたのだという点にあるのであります。今日の国際関係から見まして、そういう方面にアメリカが向いておることは事実であり、北はアリユーシヤン、日本列島を経まして、沖繩、台湾、フイリピンに至るところの軍事的な防衛基地を確保しようとしておることは、アメリカ軍当局の極東におけるところの本旨であるということは間違いがありません。而もこの戦略的地位の確保は、すでに昨年の九月サンフランシスコ條約の締結と同時に、その実現の段階に入つたのであります。この今回の條約は、更に一段の進展と見るべきものと思うのであります。
 更に注目しなければならないのは、アメリカの対華、対蒋政権の関係であります。終戦までは、アメリカは対日戰の遂行のために蒋介石政権を助けて参りました。四十六年マーシヤル特使の派遣によりまして、国共の提携を策したこともすでに御承知の通りであります。然るに、その後蒋介石政権の没落と共に、対華白書を発表いたしまして、これに対するところの援助の打切りを声明いたし、そればかりか、蒋介石政権をして負官汚吏の政権であると誹誘いたしておるのであります。ところが、朝鮮事変の勃発と共に第七艦隊を台湾水域に派遣いたしまして以来、再び多額の軍事的な援助を與えて、今日これを支持しておるのであります。これらの事情を見まするならば、この條約は、アメリカの戦略的要請に基くところの條約であるということは明らかだと申さなければなりません。
 最後に、我々が反対するのは、この條約の結果、日本はアジアにおいてますます孤立化せざるを得ないという点であります。サンフランシスコ條約に当りまして、イギリスやフランスの輿論が、この條約の結果は日本をアジアにおいて孤立化せしめるところの危險があるということを指摘したことは、私がこの壇上から述べたところであります。日華條約の成立と共に、日本のアジアにおけるところの孤立化は、一層顕著になつており、イギリス、フランスの輿論は勿論であります。殊にアジアにその地位を占めるところの国々の中には、これに対する反対の輿論が極めて大となつておるのであります。例えばインドのタイムズ・オブ・インテイアてあります。日華條約は四億数千万の中国人民との有好関係を犠牲にしたとまで述べております。中国は言うまでもなく歴史的にも、地理的にも、又経済的にも、文化的にも、日本とは最も緊密な関係になければなりません。殊に経済的に申しまするならば、先ほど金子君が指摘しておりましたように、日本の自立経済を確立するためには、中国との提携なしにはできないのであります。戦前の日支貿易を見まするというと、昭和六、七年頃で大体日本の対支輸出は全体の二割強、台湾を入れるというと二割五、六分に上るのであります。又日本の対支輸入は、大体全体の一割五、六分であります。台湾を入れまするというと二割二、三分に上るのであります。これは戰前の数字でありまするが、併しながら今日中国は、新らしい社会主義建設の時代に入つております。善隣友好の関係を求めようとしておるばかりではなく、経済的には日本との提携を常に強く要望して参つておるのであります。このような中国との関係を、一昨年の禁輸以来杜絶せられたということは、日本の経済の回復には誠に残念なことと申さなければなりません。然るに岡崎外相は、バトル法に基いて一層禁輸を強化しなければならんというようなことを申しておるのであります。勿論中国との曾つての半植民地的な貿易は、今日認めることができません。これは單に中国の側からだけ申すのではありません。アジアの一国として、中国と手を結んで行かなければならない我々の立場から申しまして、曾つての帝国主義的な收奪、植民地的な貿易政策を中国に再び復活しようなどと考えることは、とんでもない間違いなのであります。この間イギリスの商社が中国から引揚げたということが新聞に出ております。これは当然なことであります。百数十年に亘つて中国に対して、植民地的な搾取と帝国主義的な收奪をほしいままにして来たイギリスの貿易政策が、新興中国の貿易政策と正面衝突するということは当然だからであります。この意味におきまして我々は、日本の自主経済のためにも中国との提携が絶対に必要である。而も東南アジアヘの日本の経済的な進出も、この中国との提携なしには実現し得ないということを考えなければならんのであります。
 以上の四つの理由から、我々はこの條約の承認に対しまして反対をいたすものであります。(拍手)
#14
○議長(佐藤尚武君) 兼岩傳一君。
   〔兼岩傳一君登壇、拍手〕
#15
○兼岩傳一君 私は日本共産党を代表しまして、提案されておりますこの日華條約が、戦争への道であることを指摘せんとするものであります。
 我が国の財閥及びこれに操られる軍閥が、中国侵略の第一歩を踏み出しましたのは、遠く明治二十七年、一八九四年以来であります。そうして日露戦争を通り、日本の平和を求める国民をだまして、中国への武力干渉が続けられて参つたこと、及びそれが満州事変を経由いたしまして中国事変、そして無謀な太平洋戦争に発展して、幾百万の中国兵士を殺し、幾千万の中国の平和な労働者、市民、農民を殺し、痛めつけたということは、我々が深く恥じるところであります。而もこの侵略戦争のために、国民も又尊い血を流し、国土は荒廃し、都市も農村も破壊されたのであります。アメリカがすでに勝敗がきまつておりましたのにもかかわらず、人道に反する残酷な原子爆彈を日本に投じましたのは、これによつてソヴイエト及び中国その他の人民、国家に対して、大きな威圧を加えようとする目的であつたことは、誰知らぬ者もない事実なのであります。かくして勝利をいたしましたアメリカ帝国主義は、過去の数々のアジア人民に加えました行為を反省し、アジア侵略政策の失敗を反省し、平和を心から望むところの日本に生れ替らせるのではなくて、軍服を背広に換えて、平和主義者の装いをしておりました反動的な侵略主義者、又今度の太平洋戦争は、戦争が悪いのではなくして、負けたのが悪いのだというところの復讐主義者を育成いたしまして、これを支持して今日に参つておるのであります。
 曾つて第一次大戦で敗北いたしましたドイツに、同じジヨン・フオスター・ダレスがドルの援助を差伸べまして、反ソ反共のブルドツグを育成し、ヒツトラー政権を打立てました。そしてそれが実に惨めなる敗北を遂げましたのを反省しないで、アジアにおいて今日再びその手法を施しつつあること、これ又天下の周知の事実であります。日本の対中国武力侵略計画の新らしい第一歩は、去る十二月、サンフランシスコ條約、日米安保條約によつて踏み出されました。それが更に発展いたしましたのが十二月二十四日のダレス宛の吉田書簡であり、それによつて締結されたのが、只今上程中の日華條約であります。即ち政府は、中国人民の血て染まつた岡村寧次以下八十八名の第一級戰犯を釈放しました。これは日本の支配階級が、戦争犯罪を償う気持が一片だにないことを全世界に示したものであります。そうして国会においては、戦争犯罪人と戦争犠牲者を混同するかのごときで決議その他が行われておる。これも又その一翼であります。日本が明治二十七年、一八九四年以来追及して参りました中国への武力による侵略計画を、今やアメリカ政府に励まされて続けることを決意した。これが日華條約であります。この日華條約の意義は、曾つて近衛総理が蒔政権を相手にしないと声明し、傀儡注政権を以て正統政府であると強要いたしました、あの中国への大陸侵略の第一歩、この近衛、東條の道の戦後の新らしい歩みであるということは明瞭であります。このようにして吉田政府は、アメリカ政府に励まされ、おどされ、アジア侵略の下請をする決意を持つて、これによつて反動的支配をアジア及び日本の人民の上に再建しようとしております。このように戦争と侵略の本質を持つものが日華條約であり、それは曾つての悲惨なる運命を日本に持ち来たらしましたところの日独伊防共協定のアメリカ植民地版であるところの反共太平洋同盟、反荒アジア統一軍へ日本を駆り立てるための第二歩であると、これが日華條約の内容であります。
 今ここで国連憲章を引用するまでもなく、あらゆる民族は、その民族自身のことを自分で決定するところの民族自決の権利を持つておるのであります。これを犯すものは侵略者であります。中国のことは中国人民自身が決定する権利を持つております。中国四億七千五百万の人民は明かに中華人民共和国中央人民政府を支持しております。そこでは先ほどの曾祢君の半世紀ほど遅れました理解とはおよそ正反対に、労働者、農民のみならず、中小企業者は勿論、大資本家の代表者も参加しております。それのみではありません。国内の大資本家のみならず、一千万の東南アジアの華僑切つての大親分、マレーの陳嘉基がこの政府の協商会議に参加しておるということを以てしてもわかるのであります。即ち中国、中華民国共和国は、四億七千五百万の中から、アメリカの売国奴財閥の極く少数を除くあらゆる全国民の各層、冬階級の代表者を以て建設された極めて安定した政府であり、輝かしい発展を遂げておることは、これは特別の色眼鏡を掛けない人ならば、イデオロギーの如何にかかわらず、これを承認せざるを得ないところの歴史的事実であつて、(拍手)それを吉田政府、岡崎外務大臣が、好むか好まないかのごときことは問題にならないところであります。
 それでは一体政府が、只今上程しておられまする日華條約の相手国であるところの中華民国というものが、現在この世の中にあるかどうか。これは外務委員会に出られなかつたかたには、非常に唐突な質問のように感ぜられますが、私が外相並びに政務次官にことごとく問い質しましたところ、領土はないのであります。台湾及び澎湖島があるではないかというふうな常識論が感じられますけれども、台湾及び澎湖島は、カイロ宣言とポツダム宣言によつてこれは中国の所属であるということは明確になり、これは吉田総理も岡崎外相もこれを認められておるが、これは平和條約第二條によつて放棄したものである。従つてこの台湾と澎湖島の帰属は、今のところ未定になつており、従つて蒋介石政権は、この全く国際協定から見て中国に明確に所属し、日本の放棄したところの、この不明なる、不安定なる状況の上にいるのでありまして、明確なる領土はあり得ない、これは大臣自身が、政務次官自身が、私の答弁に対して承認しておられるところである。
 第二に人民がない。国民がない。この條約の第十條に何々を含むものとみなすなぞというあいまい模糊たる表現を使つておりまするが、人民が八百万であるのか七百万であるのか、四億七千五百万に拡大されるのか、一つも政府は説明できないのであります。即ち国民が不明であり、不安定であり、量的に規定できないし、質的に規定ができない、即ち中華民国には国民がないのであります。
 又第三に、中華民国と呼ぶためにはなくてはならん独立した政権、国民によつて支持された政権がないということであります。政府はこれは対して国連の認めておるのは中華人民共和国ではなくて蒋介石中華民国である。これが政府の唯一の頼りであります。併しその国の政権が独立しておるかいないかということは、国連でおきめを願うことでなくて、中国人民が決定すべきことであります。(拍手、「そうだ」と呼ぶ者あり)ところが、中国の人民は、蒋介石政権を、先ほど金子君が言われましたような「犬張り豚来る」、豚の程度、つまり豚はやがて殺して食つたらうまかろうという程度に台湾の人民は考えておる。いわんや四億七千五百万の中国人民は、この解放を決意しておりこそすれ、このような政権を認めていないのであります。
 然らばどうして中華民国の政府が現在存在し得るか。それはアメリカに飼われている下僕であるということであります。アメリカの差向けております第七艦隊と蒋政権の使います軍事費の六六%、三分の二の資金、武器購入費その他によつて支えられておりますところの、独立した政権でなくて、完全にアメリカに従属した、植民地としての政権なのであります。ここに私は去る五月五日、中華人民共和国の外務大臣周恩来氏の公式声明を持つて来ております。この公式声明は、この日本のサンフランシスコ條約が効果を発効いたしまして以来、初めて正式に発表したものであり、これは北京の新華社の去る六日の発表によつて全世界に伝えられておるものでありまするが、その中で「日台條約は中国への侵略の準備である」という意味を、こういうふうに申しております。極く簡單であるから、私は読んでみます。「アメリカ政府は吉田政府に対して台湾の国民党反動と平和條約を結ぶよう命令した、平和條約によつてこの二人の下僕を縁組させる狙いは、中華人民共和国を軍事的に脅威しようとする途方もない考えから来ている。アメリカと單独講和條約を結んだ吉田政府は、今や最後の良心をも外国に売り拂つて、すべての中国人民から一蹴された蒋介石の馬丁になつた。」こういうのが、まだずつとありますが、周恩来外務大臣の公式声明であります。二の「蒋介石の馬丁になつた」という文句は、これは衆議院で我が党の林代議士が使つたところ、内容そのものを攻撃するところの能力と決意を持たない衆議院の自由党の諸君は、こういう字句の末をあげつらつて、懲罰に追い込んでおることも又各位の御承知の通りであります。この周恩来外相の公式声明が指示しておりますように、今や蒋介石政権は生ける屍であります。生ける屍を保つに汲々としておるのであります。この蒋政権に対する評価については、周恩来外相の公式声明であると言うだけで、もう聞きたくないかたがたのために、私はここで三人の証人に登場して頂く必要があると思う。
 第一はアチソン長官であります。アチソンはどう言つているか。これは恐らく安井君も、アチソンのこの伝達書に盛られましたこの声明に対して私は傾聽されることだろうと思う。或いは国務省の中国白書の伝達書でアチソンはこう言つている。「中国の過去と現在における状態の現実的評価から導き出される結論は、米国に許される唯一の道は、自分自身の軍隊と自分自身の人民の信用を失つてしまつている一政府のためにする全面的な干渉が残つているということだけである」。こう言つて、これは一九四九年、数年前の発表でありますが、かような全面的干渉は、なすべきでないということを彼は述べなあとで、更に彼はこういうことを続けて言つている。「多くの観察者によれば、国民政府と国民党は腐敗し、地位と勢力との奪い合い、そうして米国に頼つて戦争に勝ち、みずからの国内的な地位を保つことのみを希つていたらしい。」こういうことを言つております。つまりアチソン国務長官は、公式な中国白書の伝達書を通して、蒋政権が全く中国人民から見捨てられて、腐敗堕落したものであるということを確認しております。又マーシヤル元帥はどうか。これも恐らく安井君は、余り野次らないで聞いて下さるところの発言と存じますが、マーシヤル元帥はその翌々年、一九五一年、昨年上院で、「国民党軍崩壊の本当の原因はどこにあるか。それは主として軍隊が人民から支持されなくなつたからだ」と述べております。一度アメリカ政府すら、蒋政権は歴史の舞台から消え去つたことを認め、これを維持することは内政干渉であり、アメリカ国民はこれを非としなければならないと言つております。第三に、一九五〇年一月五日のトルーマン大統領の証言も御紹介申上げましよう。トルーマン大統領は、従つて、台湾には介入しないという声明をいたしております。これが一九五〇年一月五日であります。
 ところが国連の名をかたつておりますところの干渉軍が、朝鮮への武力侵入を開始すると、これらのアチソン、マーシヤル、トルーマンの一連の発表は弊履のごとくに捨てられまして、アジアに対する武力干渉が開始され、或いは第七艦隊が台湾水域に派遣されました。アメリカは現在中国義勇軍に関してあれこれと言つておりますが、この朝鮮における敗け戰を何とか押返そうとして今や細菌戦、更に今や進んで鴨緑江上流の発電所の爆撃という、歴史に恥ずべき暴挙に出ておることは各位の承知しておられるところであります。退くに退けず、進むに進まれないところのこのアメリカのジレンマ。これが、我が日本政府は外務委員会並びに本会議ではどう出ているでありましようか。
 政府の、條約を審議中の委員会における動揺振りはどうであつたか。吉田総理はかねてから、これは隣邦友好の関係で、全中国と関係することでないと明言しておつた。ところが委員会で曾祢君その他からの質問に対して、條約局長が、いや、全中国との條約であります。そうして岡崎外務大臣は、そうであるという身振りで、これで答えた。そうかと思うと、それから数日たつと、吉田総理みずから出て来て、これはやはり隣邦友好の関係であつて決して全中国のものでないという、而も曾祢君が暴露しておられるように、條約そのものはやはり全中国との関係がひそかに忍び込んでおる。この動揺、この裏切り、ごまかし、これはどこから来ておるか。アメリカが朝鮮戦争において抜きさしならないところの状態に追い込まれ、そうして進むに進めず、退くに退けないで、本国においてはストライキ、全国民の戰争反対、朝鮮から手を引けという声及び軍備拡張、原子爆弾の威嚇がきかなくなつて来たこと等と、あらゆる悪條件の下に、今や大統領選挙を迎えておるこのトルーマン政府自身の動揺狼狽が、その━━であるところの吉田総理、岡崎外務大臣、條約局長に参りまして、動揺極まりない態度と欺瞞に満ちた條約を作つておる原因は、まさにここにあるのであります。(「時間だ」と呼ぶ者あり)雑誌「中国人民」は、この日華條約、つまり台湾国との條約こそ、瀕死の床にあるところの病人、これは吉田内閣のことです、瀕死の人や息を引取りそうな吉田内閣と、悪臭を放つた死骸、これは蒋政権のことです、悪臭を放つた蒋政権が、御主人、これはアメリカ帝国主義者であります、御主人の命によつて契約を結ぼうとしておると、雑誌「中国人民」は指摘しております。その通りであります。我々は、日本の売国政府及びその強固な支持者自由党以外のすべての国民は、輝やかしい発展を遂げ、躍進に次ぐ躍進をしておる四億七千五百万の新中国との新らしい友好関係に入るということを決意いたしております。我々は断じてアメリカの賭けごとに使われるようなアジア統一軍、李承晩と吉田茂と蒋介石とキリノ、この━━━━━━の結成しようとするアジア統一軍の布石に断然反対であります。恐らく遠くない近いうちに、人民解放軍が台湾を解放することでしよう。これが正しい本当の中国の統一であります。それは吉田政府への脅威であり、岡崎外務大臣が顔色を変えるような出来事でありましよう。併し断じて八千四百万日本人民への脅威でもなければ、アジア十億の人民に対する脅威でもありません。
#16
○議長(佐藤尚武君) 兼岩君、時間が来ております。
#17
○兼岩傳一君(続) アメリカの中国武力干渉を排除することこそ、日本の独立、(「止めろ」と呼ぶ者あり)日本国民の自由、アジア平和の真の基礎であります。すでに聰明にして決意を持つた高良君、宮腰君及び帆足君が、非常な勇気を以て中華人民共和国に渡られまして、彼の地の経済関係の閣僚、関係者と会われ、中日経済の提携の途上の重要な一歩を踏み出されておるのです。(「議長、注意」と呼ぶ者あり)日米反動勢力の妨害が如何に頼りがないものか、やがて近い将来に物笑いになるであろうということは極めて明瞭であります。
#18
○議長(佐藤尚武君) 只今の兼岩君の発言中に不穏当の箇所があると認めます。発言者において取消しを希望いたします。
#19
○兼岩傳一君 何ですか。
#20
○議長(佐藤尚武君) 繰り返します。只今の兼岩君の発言中、不穏当の箇所があると認めます。よつて発言者において取消すことを希望いたします。
#21
○兼岩傳一君 それはですね。あなた、僕にそういうことを聞かれて、答えられますか。どういう字句が、如何なる意味において不穏当だということを言わないで、その中に、私は約二十分演説いたしましたから、数千の字句を出しております。それに対して不穏当な見解があるというならば、それらを明確に、その箇所と意味を明確にされなければ答えようがないじやありませんか。
#22
○議長(佐藤尚武君) では議長は、取消しを命じます。(「わからないじやないか」と呼ぶ者あり)
 これにて討論の通告者の発言は、全部終了いたしました。中華民国との平和條約の締結について承認を求めるの件に対する討論は終局したものと認めます。
 これより中華民国との平和條約の締結について承認を求めるの件の採決をいたします。本件を問題に供します。表決は記名投票を以て行います。委員長報告の通り承認することに賛成の諸君は白色票を、反対の諸君は青色票を御登壇の上、御投票を願います。氏名点呼を行います。議場の閉鎖を命じます。
   〔議場閉鎖〕
   〔参事氏名を点呼〕
   〔投票執行〕
#23
○議長(佐藤尚武君) 投票漏れはございませんか。……投票漏れないと認めます。これより開票いたします。投票を参事に計算いたさせます。議場の開鎖を命じます。
   〔議場開鎖〕
   〔参事投票を計算〕
#24
○議長(佐藤尚武君) 役票の結果を報告いたします。
 投票総数百四十二票、
 白色票百四票、
 青色票三十八票、
 よつて中華民国との平和條約の締結について承認を求めるの件は承認することに決しました。(拍手)
     ―――――・―――――
   〔参照〕
 賛成者(白色票)氏名   百四名
   藤野 繁雄君  波多野林一君
   野田 俊作君  徳川 宗敬君
   伊達源一郎君  館  哲二君
   竹下 豐次君  高橋 道男君
   高瀬荘太郎君  高木 正夫君
   杉山 昌作君  新谷寅三郎君
   島村 軍次君  河井 彌八君
   加藤 正人君  片柳 眞吉君
   柏木 庫治君  加賀  操君
   小野  哲君  岡部  常君
   伊藤 保平君  赤澤 與仁君
   結城 安次君  山川 良一君
   森 八三一君  上原 正吉君
   岡田 信次君  中川 幸平君
   九鬼紋十郎君  大矢半次郎君
   郡  祐一君  楠瀬 常猪君
   加藤 武徳君  城  義臣君
   植竹 春彦君  山本 米治君
   山縣 勝見君  木村 守江君
   西山 龜七君  一松 政二君
   深水 六郎君  草葉 隆圓君
   徳川 頼貞君  大島 定吉君
   黒田 英雄君  中川 以良君
   川村 松助君  寺尾  豊君
   溝口 三郎君  三浦 辰雄君
   前田  穰君  堀越 儀郎君
   小野 義夫君  小串 清一君
   野田 卯一君  重宗 雄三君
  大野木秀次郎君  入交 太藏君
   西川甚五郎君  平井 太郎君
   杉原 荒太君  田方  進君
   松本  昇君  秋山俊一郎君
   鈴木 直人君  石村 幸作君
   長谷山行毅君  高橋進太郎君
   石原幹市郎君  堀  末治君
   鈴木 恭一君  愛知 揆一君
   安井  謙君  平林 太一君
   長島 銀藏君  平沼彌太郎君
   竹中 七郎君  溝淵 春次君
   團  伊能君  瀧井治三郎君
  前之園喜一郎君  駒井 藤平君
   林屋亀次郎君  北村 一男君
   中山 壽彦君  白波瀬米吉君
   岩沢 忠恭君  栗栖 赳夫君
   大屋 晋三君  泉山 三六君
   黒川 武雄君  横尾  龍君
   境野 清雄君  大隈 信幸君
   木内キヤウ君  稻垣平太郎君
   小滝  彬君  有馬 英二君
   石川 清一君  松浦 定義君
   山崎  恒君  櫻内 辰郎君
   岡村文四郎君  東   隆君
    ―――――――――――――
 反対者(青色票)氏名  三十八名
   門田 定藏君  千葉  信君
   三輪 貞治君  三橋八次郎君
   若木 勝藏君  中田 吉雄君
   栗山 良夫君  内村 清次君
   森崎  隆君  吉田 法晴君
   和田 博雄君  菊川 孝夫君
   木下 源吾君  金子 洋文君
   岩間 正男君  兼岩 傳一君
   江田 三郎君  木村禧八郎君
   堀  眞琴君  鈴木 清一君
   大野 幸一君  上條 愛一君
   田中  一君  羽仁 五郎君
   矢嶋 三義君  永井純一郎君
   吉川末次郎君  島   清君
   小林 亦治君  松永 義雄君
   赤松 常子君  伊藤  修君
   波多野 鼎君  原  虎一君
   曾祢  益君  下條 恭兵君
   松浦 清一君  片岡 文重君
     ―――――・―――――
#25
○議長(佐藤尚武君) これにて午後二時三十分まで休憩いたします。
   午後一時三十四分休憩
     ―――――・―――――
   午後二時五十一分開議
#26
○議長(佐藤尚武君) 休憩前に引続き、これより会議を開きます。
 インドとの平和條約の締結について承認を求めるの件に対し討論の通告がございます。順次発言を許します。兼岩傳一君。
   〔兼岩傳一君登壇、拍手〕
#27
○兼岩傳一君 私は日本共産党を代表しまして、只今上程されております日印條約に反対の意を表明するものであります。
 インド政府が、昨年の九月四日開催されましたサンフランシスコ会議に参加しなかつたその理由として、八月二十三日、インド政府からアメリカ合衆国政府宛の書簡の中に書かれておりました点は、次の三つの点であります。
 第一は、この條約では、日本は領域に完全な主権を回復することができないのではないか。即ち琉球諸島と小笠原群島の日本への帰属が保障されていないではないか。第二に、アメリカの占領軍が日本に引続き駐屯し得るようになつているが、このような條約の規定は、いやしくも日本が主権国家となつたときに、防衛上の権利として行使さるベきものであつて、これではアメリカ占領軍の支配が継続され、その占領軍支配の下においての防衛取極めは、実力による行使ではないか。これが第二点。第三点といたしまして、台湾は中国へ返還さるべきものである。千島諸島及び南樺太はソヴイエトに帰属させるべきである。これはカイロ宣言、ヤルタ協定その他の国際的諸條約を遵守することであつて、当然果さなければならないのではないか。この三つの條件を八月二十二日附インド政府から合衆国政府宛に書簡として送つているのであります。
 当時このインド政府の態度は、我々日本人民として極めて敬意を表すべきものとして非常な賞讃を與えられ、我々はその後の成り行きを深甚な注意を以て見守つたものであります。即ちインドのこの書簡の三つの條件は、国際的な條約は尊重しなければならない。日本の民主化、非軍事化は尊重されなければならない。アメリカ占領軍は撤退しなければならない。そうして日本の完全な独立を望むものであるとするところのこの政府の正しい要求は、これこそインド勤労人民の要求が、ネール政府を通してサンフランシスコ会議への不参加という形で実現したのであります。ところが今回ネール政府は、このインド人民の希望を無視いたしまして、目印條約を結んだのであります。ここでなぜ私があえて、ネール政府はインド人民の要求を無視して今回の目印條約を締結したということをあえて言うでしようか。なぜならば、この條約の締結はサンフランシスコ條約を基礎とし、サンフランシスコ條約を合理化し、サンフランシスコ條約を正当化してしまうことを含んでいるからであります。
 ここに私が持つて来ておりますのは、衆議院において労農党の黒田君の質問に対する岡崎国務大臣の答弁であります。岡崎国務大臣は衆議院の外務委員会において、この問題に対して明確に次のように答えております。「インドの考え方の基調であり、同時に日本の考え方の基調は、互恵平等という精神である。この互恵平等という精神で、今回の必要な範囲を考えてこの條約を結んだものである。従つてこれはサンフランシスコ條約と根本的に変つたということは言われないものであり、この條約に現われたものは、サンフランシスコ條約を欣然として受諾した日本政府の考え方と、インド政府の考え方の合致した点がこの條約になつたものである」と岡崎外務大臣は衆議院の外務委員会において明確に、これがサンフランシスコ條約と根本的に変つていないという点、及びサンフランシスコ條約を欣然として受諾した日本政府の考え方と、サンフランシスコ條約をボイコツトしたところのインド政府との考え方が合致したということを、ここで明確に説明いたしております。
 なおもう一つその内容を追究して然らばサンフランシスコ條約二十六條、この二十六條とどういう関連があるかという黒田委員の質疑に対しまして、岡崎国務大臣はこう答弁をいたしております。「この二十六條のサンフランシスコ條約の規定と今回の日印條約とは何ら矛盾しないのであつて、日本は如何なる條約を結ぼうとも、相手国にサンフランシスコ條約以上の利益を與えなければいいのであり、又與えた場合には、よその国にこれを均霑せしめればいいのである。若しサンフランシスコ條約よりもより以上の利益を……日本がインドからこの條約において獲得を享有いたしておりますが、そのことは二十六條に何ら違反しない。」こういう答弁をいたしております。即ちサンフランシスコ條約において、あの当時調印しなかつた他の国々が今後調印ずる場合を規定しておりますサンフランシスコ條約三十六條から見ましても、岡崎国務大臣が説明するように、これはサンフランシスコ條約二十六條に完全に合致し、これつばかりの、寸毫の矛盾もないということを衆議院の外務委員会で説明しておられます。即ちこれによつて、私が先ほど結論いたしましたように、今回の條約の締結は、まさにサンフランシスコ條約に参加しなくて全世界の勤労者の注目と賞讃を浴びたインド政府が、曾つての声明は全く事実上不発彈で、口先だけのことであつたということを、ここで指摘する明瞭な証拠になるべきものであります。明らかにインド政府の今回の行動は、曾つてのサンフランシスコ條約不参加の時分の態度をここで百八十度転回し、サンフランシスコ條約を合理化し正当化する途を明らかに踏み出したことを証明するものであります。(「インドへ行つてやれ」と呼ぶ者あり)併しながらネール政府は、然らば反動的な條件に満ち満ちしておるかと申しますと、必ずしもそうではないのであります。例えば現に、曾祢議員が、先ほど中華人民共和国の状態は、独裁と飢餓と経済的な破綻にあるような意味のことを申されましたけれども、インド政府は曾祢議員よりは遥かに進歩した頭を以て、現に中華人民共和国こそ中国の正統政府であると承認しております。又アジア、アラブの民族運動についても、アメリカ、イギリス等の帝国主義政策と明らかな一線を画して、国連で活動をしておる点を無視することはできないのであります。
 ところが同時に、ネール政府は、このような一方において進歩的な宣言をし、進歩的な言動をいたしており、且つ常に中立的な、独立的な第三の、アメリカ帝国主義もいけない、ソビエト社会主義もいけない、第三の道があるというような、戰争と平和について第三の道があるというような政策をとつて全世界にさような形を示しておられますけれども、今一枚剥いで見れば、これは明らかに欺瞞的であります。その事実を指摘いたしましよう。即ち国連においてネール政府は、朝鮮でのアメリカの侵略に対して制裁するという問題につきまして、明らかに帝国主義アメリカ、帝国主義イギリスの側に立つております。ネール政府は、朝鮮で人民を殺しておる、或いは細菌戰をやつておる、或いは水力発電を爆撃するというような無謀な行為に対して、野戰病院を派遣して、これは自分の人道主義であるという意思を表明しておられる。又政府は、朝鮮の都市における無制限爆撃を非難していないのであります。それどころか、ネール政府は、ヴェトナム人民を相手とし戰争を行なつているフランス帝国主義の軍隊に対して、輸送手段を提供しておるのであります。即ち政府は、まだこのほかにマライにおけるイギリス帝国主義の侵略行動を援助しておる等々、明らかに政府は、一方における進歩的な形の裏において、現実的にかくのごとき戰争の側に立つて、これを援助しておるのであります。一体このネール政府の矛盾に満ちたこの行動はどこから出て来ておるか、いやしくもインドとの條約を結ぶのに、インドの政治情勢の分析さえできないような脳味噌でこの條約の賛否を投ずることができましようか。
 ネール政権とは諸君御承知の通り、非常に日本の吉田政府に似たところの一面を持つておるのであります。一五四七年八月十五日、インドがイギリス帝国の自治領になつて、自由を獲得したという宣言をいたしましたが、事実はどうでしようか。イギリスが相変らずインドの経済を支配しております。インドの海空軍はイギリス人の指揮の下に置かれておるのであります。インド陸軍は、イギリスの顧問が支配いたしております。その武器はイギリスの物を使つておるのであります。これはまさにアメリカ駐留軍の下で、いわゆる独立と称しておる日本の吉田政府と瓜二つの性格を持つておると指摘して、どこにこれを否定する根拠があるでありましようか。表面は独立、併し実際は日本と同じ植民地なのであります。物価は、戦前の五倍から六倍に跳ね上つております。食糧、衣料は不足しております。昨年のビハール州の飢饉では、四千万の州民の半分以上が餓死の一歩寸前に追込まれたのでありますが、ネール政権はこの非人間的な生活條件と(「簡單々々」と呼ぶ者あり)闘おうとするところのインド人民に対して、梶棒、発砲、催涙ガスで彈圧し、数百人の共産党員及び同調者を銃殺し、二万五千名以上の共産党員を投獄しております。これはあたかも吉田政府がメーデーにおいて、人民広場において、人民を虐殺したのと、これ瓜二つであり、自由党の木村委員が最も耳に痛い事柄なのであります。(「インド條約とどういう関係があるのか」と呼ぶ者あり)インド人民は、殊にインドの労働者階級は、帝国主義者とネール政権のこの結託に断固として反対をして、民主主義と独立をかちとつた中国人民の道を歩もうとしているのであります。インド人民は、殊にアメリカの朝鮮人民に対する武力干渉に対しては、非常な怒りを以つて朝鮮人民の英雄的な独立と平和の戰いを支持しているのであります。だからこそインドの人民は、(「時間々々」と呼ぶ者あり)昨年のサンフランシスコの條約のときに、アメリカの利益のためのこのサンフランシスコ條約に反対し、アメリカ軍隊の即時撤退のスローガンの下に、日本の人民広場における闘いと同様にこれを支持した。さればこそネールは、劈頭に私が申上げましたような三つの條件を指摘して、サンフランシスコ会議に臨まなかつた、これはネール政権そのものの性格から出るのでなくて、この人民大衆の支持を無視しては、自分の政権が維持できないので、イギリスの植民地の傀儡政権ではありながらも、ここにかような行動に出ざるを得なかつたのであります。
 この米英両国は、併しながらこのネールの、人民の要求を反映した態度を苦々しく考え、昨年のサンフランシスコ会議にインドの不参加以来、これに対して反撃の手に出て参つたのであります。即ち一方では恫喝、一方では買収、これはどこかの国の、どこかの問題にも見られるところでございますが、この恫喝と買収の反撃によりまして、徐々にネール政府の外交政策を変換させて参りました。特に指摘しなければならないのは、昨年の九月のインドの飢饉に対して、アメリカは四十万トンの小麦をインドに送るはずでありましたが、インドがサンフランスコ会議に参加しなかつたために、それでは四十万トンは減そうというので、僅か四万トンに減らして、四十万トンの小麦しか送らないという形で反撃を加えたのであります。而もアメリカの国会はこの援助の審議に当つて、ネールのさような中立政策を放棄させなければならないというので、例えばアメリカの下院議員のボリス氏は、アメリカのあり余つた食糧と引換えに、インドはアメリカの原爆製造に必要なウラニウムを提供させたらいいじやないか。若しそうでなければ食糧は四万トン與えることさえ多過ぎる。そういう所論を下院においていたしておられる。又、これは買收の手であります。最近日本と印度との條約の締結を前にいたしまして、ボールス、アメリカ大使は、インドに対して十億ドルの借款計画を本国に要請すると発表しております。これは明らかに甘い買収の反撃でありまして、このアメリカの懐柔と恫喝に屈して、そうして昨年サンフランシスコにおいて不参加の堂々たる態度を示したこのネール政府が、これを裏切つて今回日印平和條約を締結いたしましたのが、昨年以来只今に至る国際情勢の大要なのであります。
 ポツダム宣言に基いた全面的講和だけが、日本を完全に独立と平和に導くものでちり、日本をアジア平和及びアジアを繁栄させるべき工業国として、同時に日本が繁栄するところの唯一の途であるということを我が党は確信するものであります。この全面講和と日本の独立、非軍事化、民主化及びアジア十億の民と提携するという、この全面講和の途を離れては、日本の平和と自由と繁栄の途はないことが、我が党の最も強固に主張し、如何なる党とも妥協しないで、最後までこの主張を貫こうとしておる根拠なのであります。アメリカ軍の事実上の占領による植民地化と軍事基地化に反対する日本共産党は、以上述べました理由によつて、この日印條約がサンフランシスコ條約を実質上認め、全面講和でなくて、單独講和、アジアの平和でなくてアジアの戰争へ、日本の独立と自由でなくて、日本の植民地化とフアツシヨ化を促進するところの一つの段階を劃するものであるということを指摘して、反対の意思を表明するものであります。(拍手)
#28
○議長(佐藤尚武君) 平林太一君。
   〔平林太一君登壇、拍手)
#29
○平林太一君 外務委員長報告に相成りましたインドとの平和條約の締結について承認を求めるの件に関し、ここに自由党を代表し、賛成の討論、意見を述べるものであります。
 賛成の基本的理由たるべき本條約の特質とするところは、過ぐる六月三日、先にインド側の最終草案に対し、我が外務省と在京インド大使館との間に通常の外交経路による交渉が行われた。その結果両国当事者間に、極めて円満、急速裡に意見の一致を見るに至り、従いまして講和会議を開催する等の必要がなくなり、越えて六月九日、両国全権たる、即ち日本国駐在インド全権大使、K・K・チエトウール、日本国外務大臣岡崎勝男、両者の間に調印が行われるに至つた次第であります。
 木平和條約の内容については、つとに両国相互の間に、国際連合憲章の原則に基いて、共通の福祉及び国際平和と安全の維持のため、友好的に協力することを盟約したことによるのであります。いわゆる第四條において、在インド日本資産の返還規定せることであります。即ちインドが戰争の開始のときインドにあつた日本財産を、現状のままで、又はその資産が清算済みの場合はその売得金の形で返還することを規定した事実であります。これを思うに、サン・フランシスコにおける対日平和條約における第十四條において、この種の日本の財産は連合国が処分し得ることになつておることに比較して、誠に感慨深きものがあるのであります。
 更に、條約第六條において、賠償その他の放棄を規定せることであります。即ち戰争遂行中に、日本及び日本国民がとつた行動から生ずるインド及びインド国民のすべての請求権並びにインドが日本占領によつて生ずる請求権を放棄したことであります。このことは、昨秋の対日平和條約第十六條においては、むしろ重複的、二重に賠償を請求規定せるやに比較いたしまして、まさに雲泥の差ありと申すべきであります。若しそれ、戰勝国が戰敗国に対し、即ち戦いに敗れ一時抵抗力を失つた相手国の弱身につけ込み、奪うべからざる領土を奪い、領土を将棋の駒の如く動かして国際間の具に供し、取立ててならない賠償を取立て、禍根を千載に残して世界の平和を阻害し、加えてならない主権の制限を加え、主権を剥奪する行為等は、とりも直さず国際連合憲竜を無視し、国際連合憲章に違背せる行為なりと言おざるを得ません。(「その通り」と呼ぶ者あり)寛容を実行し、且つ善良なる隣人として互いに生活し、国際の平和及び安全を維持せんとする国連憲章の目的及び原則は、昭々として明かなるものであります。私はあえてここにこの鉄則に忠実ならんことを、国連加盟各国に求めてやまざるものであります。現に生々しき事実として今なお残る戰犯者の釈放のために、抑留者の早期送還のために、速かにして当然の措置に出でられるようこれら関係各国に要請するものであります。これを求め、これを希うの理由は、それによつてこそ国連の規定する世界永遠の平和がもたらせられるからであります。
 思いここに至るとき、今我々の目の前に出されたる日印條約、本條約に示されたるインド政府の態度は、まさに国連憲章の誠実なる履行者、実行者として更に国連加盟国家として率先みずから立つて本憲章の大精神を世界に訴え、更に範を内外に示したるものと言うべきであります。かく私は礼讃顯彰して止まざるところであります。私はこの機会にアジアにおける偉大なる国家としてのネール首相の率いるインド国の発言が、将来とも世界の政治外交場裡に磐石の重きをなし、以て世界恒久の平和のためにその先駆者たらんことを祈つて止みません。曾つて曠世の英雄ナポレオンが晩年セント・ヘレナの孤島において、戰犯死刑囚として死の最期に述懐せる言葉に、「シーザー、アレキサンダー及び自分は、今日まで武力を以て、権力を以て、広大なる帝国を建設したのである。さりながらこれらの帝国は今や跡形もなく消滅したのであるが、ひとり釈尊のみは、キリストのみは、永遠無窮に亘つて変らざる愛の王国を築いたのである」と述べておるのであります。それにつけても思うは、インドは古く仏教の発祥地であり、聖釈尊に対する信仰は、釈尊滅後ここに三千有余年、今なお我が国民の精神生活の中に溌剌として不滅の生命を続けておるのであります。本條約はこの観点からいたしても、両国民の固き結合の誓いと相成るべきことを固く信じて疑おざるところであります。(拍手)
 政府はこの際、木條約締結の経緯に深く鑑みるところあり、今後他のアジア諸国との條約締結の促進を図り、すべからく親善と友好に数歩を進められ、速かなる国交の回復に努めらるるよう祈つて止みません。かくていわゆる人種、歴史、宗教、伝統、感情を同じうするアジア諸国家の宥和と結合による民族的生存とその発展が、広く世界平和に貢献するの経編、意図に邁進せんことを要請して止まざるものであります。
 最後に私はここに重ねて目印両国の永遠の平和、永遠の恒久友好関係が樹立せられ、いやが上にも全人類の平和と福祉に寄與せんがために、本日速やかに本條約が全会一致を以て承認せられんことを深く期待し祈念して止まざるものであります。
 以上賛成討論といたします。(拍手)
#30
○議長(佐藤尚武君) 岡田宗司君。
   〔岡田宗司君登壇、拍手〕
#31
○岡田宗司君 私は日本社会党第四控室を代表いたしまして、インドとの平和條約の承認に賛成するものであります。(拍手)
 昨年九月サンフランシスコにおきまして対日中和会議が開かれましたとき、インドはアメリカの招請を断りましてこの会議に出席しなかつたのであります。そうして本年四月二十八日に対日平和條約の効力が発生いたしますと同時に、日本に対しまして戰争終結宣言を発し、その後極めて短時日のうちに、この條約を日本との間に成立せしめたのであります。インドが会議に参加するのを断つたときに、吉田首相やここにおられますところの岡崎当時の国務大臣らは、インドのこの態度に対しまして遺憾の意を表しておりました。インドがこの会議に参加しなかつたのは、併しながら次の理由に基くものであります。
 第一は、アメリカが琉球諸島及び小笠原諸島をアメリカの信託統治にしたことに対する反対であります。第二は、対日平和條約と同時に締結された日米安全保障條約によりまして、講和後もアメリカ軍が引続き日本に駐屯することであります。第三は、台湾、千島列島及び南樺太等の帰属を條約上に明示していないという理由からであります。これらの理由は思うにアメリカが琉球、小笠原、日本をアメリカの軍事基地といたしまして、アジアに対してアメリカが軍事的に支配することに対する反対であり、又領土の帰属を未決定のままにおくことは、将来アジアに紛争を生ずる禍根を残しておくということに対する警戒からであつたと思われるのであります。更にこれを掘り下げて考えて見まするならば、米ソ両勢力の協調による世界平和の維持並びに帝国主義的支配に対する反対、アジア諸国との協力という、インドの基本的外交政策から生じたものにほかならないのであります。かような立場からインドはサンフランシスコにおいてアメリカの主導によつて結ばれた対日明和條約に参加せず、別に日本との平和條約を結ぶに至つたのでありまして、このことはアメリカが、日本をアメリカの対ソ封じ込め政策遂行のための軍事基地とすること、日本に軍隊を駐屯すること等、日本を戦略的に利用し、日本をアメリカの軍事的従属国たらしめることに反対したものにはかならないのであります。(拍手)而してインドのこの態度は日本の将来に対する警告でもあつたのでありますが、古田政府がかかる意味からなされたインドのサンフランシスコ会議不参加に対しまして遺憾の意を表しましたことは、誠に認識不足も甚だしきものであり、政治的痴呆症と言わなければならんものであります。(拍手)
 本條約におきましてインドは日本を戰敗国扱いにいたしません。形式的にも実質的にも、全く対等の立場において友好と寛容とが全体を通じて貫かれておるのであります。即ち領土につきしましては勿論のこと、日本に対する賠償請求権を放棄し、戰争中インドが抑えたインド国内の日本国又は日本人の財産、権利、利益を現状において返還し又は回復することを約しておるのであります。これは和解と信頼の條約だとか、歴史上こんな寛大な條約はないとかいう鳴り物入り宣伝で、実際は日米安全保障條約により日本を軍事基地化し、日本国民を再武装化してアメリカの戰略目的に使うことを日本に約せしめ、その代りに名前だけの講和、名前だけの独立を日本に與えたサンフランシスコの対日條約とは、その本質を全く異にしておるものなのであります。併し私はこの條約が百パーセント満足なものであると、こう申すのではございません。本條約第二條に附されました第二の但書「前記のいかなる規定も、千九百四十七年八月十五日前から存在し、又はインドが隣接国に與えている特恵又は利益には適用しないものとする。」、こういう点並びに交換公文に問題があるのであります。インドは独立した後におきましても、いわゆるコンモンウエルスの内にとどまつておるという実情からいたしまして、又隣接国であるパキスタン、ネパール、チベット、ビルマ等との特殊的な関係からいたしまして、コソモンウエルス諸国、隣接国に対しまして、特別の待遇を與えたという事情は理解されるのでございますが、これが條約に明記され、日本がこれを條約に定められた事項として承認するということに問題があるのであります。これは互惠平等の原則を讓歩したことであり、将来に悪例を残すものであります。併し、全体といたしまして、本條約は友好と平等の立場が貫かれておるのであります。又インドが日本に対しまして深い理解と同情とを持つていることが認められるのであります。本條約の成立によりまして、アジアにおける最も有力な国の一つであるインドと日本の友好関係が一層促進され、両国にとつて大なる利益がもたらされるでありましよう。そうして両国の緊密な協力によるアジアの平和と世界の平和の促進への第一歩がこれによりまして踏み出されると思うのであります。かような理由からいたしまして、私は本條約の承認に賛成いたすものであります。以上。(拍手)
#32
○議長(佐藤尚武君) 石川清一君。
   〔石川清一君登壇、拍手〕
#33
○石川清一君 私は改進党を代表いたしまして、只今上程されました日本国とインドとの平和條約の締結に対しまして承認を與えることに賛成の意を表明いたしたいと存じます。
 インドは独自の立場と信念を以ちましてサンフランシスコの平和会議に参加いたさなかつたのであります。又日華條約を締結する際にも内心快からず、不満の意思のあつたことが伝えられたようでありました。我々は今独立を迎えましたに当り、あらゆる国との間に感情と経済的対立の起ることに少からぬ心配をいたしておるのであります。今回締結いたしました日印條約については、それらの杞憂が少しもなく、むしろ積極的に表明されましたあのインドの友情と理解の態度は、我々をして真にアジアの一員であることをはつきりと知らしめてくれたのであります。その友愛と和解の上に立つこの條約は、我々にとつて誠に感銘深いものがあることを確信いたす次第であります。インドが高い理想を、無抵抗の抵抗という平和と民主主義の一体の中に掲げまして、とにもかくにも世界第三勢力の結果に叡智と情熱を傾けつつあることを、我々はこれを高く評価し、その情勢を十分知りまして、この点については学ばなければならんと存ずるのであります。西欧諸国の圧制の中にあつて苦悶の歴史を綴りつつありましたアジア諸国が、民族的自覚の上に立つて独立のために闘いつつあることは、明治初期における我々の立場に似通うものを感じ、胸に思い当る幾つもの物もあるのであります。而してこれらの圧力を撥ね返して対等の地位まで政治、経済、文化を引上げ、その勢力を挽回して、真に平等の下に世界平和を確立しようとする理念と行動が現われておるのでありまして、特にインドには、この点尊敬の念を禁じ得ないのでございます。
 我々が日米安全保障條約を結んだことに対しましても、幾つかの有力な意見を持つておられたようでございます。一方的であり不平等である安全保障條約並びに行政協定等に、インドは必ず快からずと存じておるのでございまして、又日華條約にしましても、アメリカの圧力とその無理押しによつて締結されたことにつきましては、これを案じての反対の表明は新たな途を我々に與えておるのではないかと想像さえいたされます。而してそれだけに我々の杞憂を通り越しまして、只今申しましたようにアジア民族の永遠の解放という意欲の上に立つて、今日まで取られて参りました行為に対して同情と激励を寄せられたのでありまして、従つてサンフランシスコの会議には参加列席いたしませんでしたけれども、今回上程されております條約案の調印までには、我々の予想以上の速度と熱意を示されたのでありました。のみならずインドは四月二十八日條約発効の日には、早くも戰争状態終結の宣言をして、永遠の平和と友情を我々に披瀝してくれたのであります。このことは、日印條約第一條にはつきり盛られてあるのでございます。我々は一貫したインドの理想と友情とを考えますとき、立場は若干違うとは言え、アジアの一員としてインドとの間に平和の回復いたしましたことは、世界平和への真に有力な一歩が踏み出され、全面講和への糸口を見出すことができるでありましよう。この條約によりまして一応戰争終結の事務的手続は終ることと存じますが、更には貿易、海運、航空その他通商の道を新たに切り開いて、インドの友好と信頼に応えなければならんと存ずるのでございます。特に賠償請求権の放棄、或いはインドにおける日本資産の返還、紛争の解決等は、高き理想、温かき道義によつて貫かれたものでありまして、我々が期待想像した以上に寛大な講和であることは、国民と共に深い感銘の意を表するものでございます。この際我々はインドのこの態度と行動が、インドの受けておりました長き圧制をみずからの力を以て撥ね返した独立の熱情の結果として、敗戰の苦悶の中にあつた我々に真に温かき友情を與えてくれたことを、更に深く肝に銘じなければならんと存ずるのでございます。かくして行くうちにインドと我が国との間に貿易が調整され、資源開発への協力が與えられ、年ごとに輸出入は活溌化して、アジアの経済の安定がやがて国際政情の安定を支配することを祈念して止まない次第であります。
 我々は第三勢力としてのインドの立場が理解され、その勢力を拡大されるに従つて、米ソの対立を緩和し、困難な引揚問題の解決に一臂の力を與えられることに大きな期待を持つておるものでございます。日を経るに従つてアジアの自覚はその大陸と根強い民族性によつて、向米一辺倒になり切つておる現政府に反省と深慮を生じ、この條約の意義と力が生れることを信ずると共に、我々も又アジアの大国インドにこたえる道義の並々ならんものあることを平和のために覚悟しなければならんと存ずるのであります。今本條約の締結によつてすでに開始されようとする経済関係が正しきルートに乗り活動し始めれば、官民を挙げて今後インドの理想と友情に副うべきものでありましよう。政府はよろしくインドの厚き協力得て、アジア諸国との急速な国交の回復調整に当つて、アジアの将来の方向を察知し、愼重にして勇敢なる態度をとるべきことを要望いたしまして、本條約に賛成の意を表明いたします。(拍手)
#34
○議長(佐藤尚武君) これにて討論の通告者の発言は全部終了いたしました。討論は終局したものと認めます。
 これよりインドとの平和條約の締結について承認を求めるの件の採決をいたします。本件を問題に供します。表決は記名投票を以て行います。委員長報告の通り承認することに賛成の諸君は白色票を、反対の諸君は青色票を御登壇の上、御投票を願います。氏名点呼を行います。議場の閉鎖を命じます。
   〔議場閉鎖〕
   〔参事氏名を点呼〕
   〔投票執行〕
#35
○議長(佐藤尚武君) 投票漏れはございませんか。……投票漏れないと認めます。これより開票いたします。投票を参事に計算させます。議場の開鎖を命じます。
   〔議場開銀〕
   〔参事投票を計算〕
#36
○議長(佐藤尚武君) 投票の結果を報告いたします。
 投票総数百十票、
 白色票百八票、
 青色票二票、
 よつてインドとの平和條約の締結について承認を求めるの件は承認することに決しました。(拍手)
     ―――――・―――――
   〔参照〕
 賛成者(白色票)氏名   百八名
   藤野 繁雄君  波多野林一君
   野田 俊作君  徳川 宗敬君
   伊達源一郎君  館  哲二君
   竹下 豐次君  高橋龍太郎君
   高瀬荘太郎君  島村 軍次君
   西郷吉之助君  河井 彌八君
   加藤 正人君  柏木 庫治君
   加賀  操君  小野  哲君
   岡部  常君  石黒 忠篤君
   赤澤 與仁君  結城 安次君
   山川 良一君  上原 正吉君
   岡田 信次君  中川 幸平君
   九鬼紋十郎君  大矢半次郎君
   郡  祐一君  加藤 武徳君
   城  義臣君  植竹 春彦君
   山本 米治君  山縣 勝見君
   木村 守江君  西山 龜七君
   深水 六郎君  草葉 隆圓君
   徳川 頼貞君  左藤 義詮君
   大島 定吉君  黒田 英雄君
   中川 以良君  寺尾  豊君
   溝口 三郎君  前田  穰君
   堀越 儀郎君  小野 義夫君
   野田 卯一君  入交 太藏君
   西川甚五郎君  宮本 邦彦君
   杉原 荒太君  松本  昇君
   秋山俊一郎君  鈴木 直人君
   石村 幸作君  長谷山行毅君
   高橋進太郎君  石原幹市郎君
   堀  末治君  鈴木 恭一君
   愛知 揆一君  平林 太一君
   長島 銀藏君  平沼彌太郎君
   溝淵 春次君  團  伊能君
   瀧井治三郎君  北村 一男君
   中山 壽彦君  白波瀬米吉君
   岩沢 忠恭君  西田 隆男君
   大屋 晋三君  横尾  龍君
   大隈 信幸君  木内キヤウ君
   谷口弥三郎君  成瀬 幡治君
   門田 定藏君  三輪 貞治君
   三橋八次郎君  若木 勝藏君
   有馬 英二君  内村 清次君
   紅露 みつ君  石川 清一君
   松原 一彦君  森崎  隆君
   吉田 法晴君  和田 博雄君
   山崎  恒君  岡田 宗司君
   堀木 鎌三君  岡村文四郎君
   木下 源吾君  金子 洋文君
   大野 幸一君  東   隆君
   矢嶋 三義君  島   清君
  池田七郎兵衞君  赤松 常子君
   伊藤  修君  三木 治朗君
   波多野 鼎君  曾祢  益君
   下條 恭兵君  片岡 文重君
    ―――――――――――――
 反対者(青色票)氏名    二名
   岩間 正男君  兼岩 傳一君
     ―――――・―――――
#37
○議長(佐藤尚武君) 参事に報告させます。
   〔参事報告〕
    ―――――――――――――
本日議員伊達源一郎君外二十五名から委員会審査省略の要求書を附して左の議案を提出した。
  アジア諸国との友好促進に関する
  決議案
     ―――――・―――――
#38
○議長(佐藤尚武君) この際、日程に追加して、アジア諸国との友好促進に関する決議案(伊達源一郎君外二十五名発議)委員会審査省略要求事件)を議題とすることに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#39
○議長(佐藤尚武君) 御異議ないと認めます。本決議案につきましては、伊達源一郎君外二十五名より、委員会審査省略の要求書が提出されております。発議者要求の通り、委員会審査を省略し、直ちに本決議案の審議に入ることに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#40
○議長(佐藤尚武君) 御異議ないと認めます。よつてこれより発議者に対し、趣旨説明の発言を許します。柏木庫治君。
   〔柏木庫治君登壇、拍手〕
#41
○柏木庫治君 只今議題となりましたアジア諸国との友好促進に関する決議案に、発議者を代表いたしまして趣旨説明をいたします。
  さきにサンフランシスコ会議においてパキスタン、セイロン等の自由アジア諸国は、対日講和に関して寛大公正な態度を示して、わが国に対し積極的に親善友好の手を差しのべてくれた。
  又かねてアジアの自主的な立場を強く主張するインドは、サンフランシスコ條約に比べて、一層公平で平等な平和條約を我が国との間に結ぶことによつて、日本に対し友好の至情を披瀝してくれた。
  よつて参議院は、この際次の通り決議する。
 一、本院は以上のような自由アジア諸国のわが国に対する友好的な態度に対し、国民に代つて深く謝意を表するとともに、これら諸国を始めとし、自由アジアのすべての国との友好親善関係を強化する意思を表明する。
 二、政府は宜しくこれを契機として、インドネシア、フイリピンの平和條約批准を促すとともに、ビルマとの講和問題のすみやかなる解決を図り、また韓国との友好関係の確立に努力すべきである。
 三、政府はさきにサンフランシスコ條約の発効に際する国会決議の趣旨を体して、領土問題の公正な解決に向つて適切な措置を講ずべきである。
 この際一言加えて申述べたい。今は私どもにとつていろいろ反省と思い出の種となりました極東国際軍事裁判において、インド代表パール判事の正義に立脚した意見は、日本国民の心に永久に消えざる灯し火となり、光明を與えたのであります。パール判事の意見書こそは正を正とし、非を非とし、正々堂々天地を貫く真理の上に、国と国、人と人とのあり方を指示し、壊れることのない永遠の平和建設そのものであります。判事は裁判の進行中、一度帰国されました。政府と十分に打合せられたたことと信じます。インド民族の精神とその進路は、ネール首相によつて表現されております。このたびのインドの平和條約も、崇高なるインド精神の明白なる現われとして、ネール首相を初めインド国民に私どもは盡せない感謝と感激を捧げるものであります。パール判事の意見書、このたびのインドとの平和條約、まさに世紀の大文字であり、人間の良心の最も偉大なる産物でありまして、燦として万世に輝くものと信じます。これがアジアの心であり、世界の心であらねばならんと思います。この心を基調として進むところに、人類の幸福と発展が、人類の行手に拡がるのでありましよう。本決議案の目的とするアジア友好の実現も、このようなインド精神を基調として初めて達成されることを確信して、本決議案の趣旨説明に当り、特にこれを附言する次第であります。(拍手)
#42
○議長(佐藤尚武君) 本決議案に対し討論の通告がございます。順次発言を許します。岩間正男君。
   〔岩間正男君登壇、拍手〕
#43
○岩間正男君 日本共産党を代表しまして本決議案には残念ながら反対せざるを得ないのであります。(「どうしてだ」と呼ぶ者あり)この趣意を見ますと、如何にも「アジア諸国との友好促進に関する決議」、こういうようなことになつて、看板は誠に立派なことになつておるのであります。併しながら本当にアジア諸国との友好を促進するならば、あらゆる各国に向つてその努力がなされなければならないのが、日本のこれは当然ポツダム宣言後歴史的に與えられておるところの使命だと思うのであります。この使命に立つて飽くまでも民族の自主権を確立し、平和と独立を本当に確立するというような態度で日本の政治が進められておりますならば、外交関係におきましてもあらゆる国に対してそのような努力がなされなければならないのであります。然るに本決議案は「アジア諸国との友好促進」などということを謳つておりながら、アジアにおける最も中核を成す而も四億七千五百万のアジア人口の過半を有するところの中華人民共和国を除外して、このような形で、一体果して真にこれがアジアの友好を謳おうとしても、これは單なる欺瞞に過ぎないということを私ははつきり指摘せざるを得ないのであります。この点が私の反対点の第一点になるのであります。
 このような形で進められておるのでありますが、この決議案によりますというと、パキスタン、インド、セイロン、インドネシア、フィリピン、更に台湾、日本、こういうふうにアジアの地図を西のほうから東のほうに辿つて参りますというと、そうしてこういう国々との友好促進ということを謳われておるのでありますが、而もこれが中国やベトナムのような人民解放がすでに完成し、着々と社会主義革命、或いは社会主義体制の人民の国を建設しておる国を除外しておる中で、このような態勢を友好によつて強化する、いわゆる自由諸国の態勢を強化するという形、こういう態勢を強化するという方向は何であるかというと、これは見ようによつては明らかに中央封じ込め態勢を強化するという形になるのであります。こういう点におきまして、これは実は表面に謳われたところの、掲げられた羊頭とは反対に、その意図するところは、或いは意図されないかたもあるかも知れないのでありますが、この決議のもたらすものは、これは明らかにそのような態勢の強化、自由諸国の友好促進というような形で以て、実は中共封じ込めの態勢が、ここに当然次の課題に上つているところの非常に強い印象を受けざるを得ないのであります。こういう形では却つてこれは世界の対立、アジアの対立を深めるということに役立ちこそすれ、決して友好促進の道を歩むものではない。こういう点におきまして、我々はこの決議案に対する反対の第二点とするわけであります。
 而も又、私はお聞きしたいことは、これらの国の中を見ますというと、インド、ビルマ、インドネシア、セイロン、ベトナム等を見ますというと、これはアジアにおきまして中華人民共和国をはつきり承認している国々であります。こういうような中華人民共和国を承認しているところの国々を切り離して、そうして自由諸国というような一つの新らしい、いや古い、こういう系列によりまして、ここに態勢を友好関係によつて強化しよう。こういうことをするとしましても、中共をすでに承認した国々から見るときには、これは明らかな矛盾がそこにあるのでありまして、これらの矛盾と我々が現在とろうとするこの決議案との線をどのように調和するかということが、私は非常に大きな問題だと思う。こういう問題を解決することなしに、我々が單に漠然とした形で以て何か表面看板を掲げまして、こういうようなことを謳つたとしましても、その意図するところを我々ははつきり考えざるを得ないのであります。こういう点で、我々はこれを第三点の反対点とするわけであります。
 更に第四点としましては、現在我々は一体何を見ているのか、どのような世界を見ているのか。新らしい世界を見ているのか。古い世界を見ているのか。新らしい世界において大きく起つている態勢に対して、実は非常に恐怖と驚愕を感じて、これを防止するような方向に全力を盡している古い態勢において、このような友好ということが考えられているのじやないか。新らしい態勢とは何か。言うまでもなくアジアの解放と民族の平和、自由を求めるところの最近の大きな立ち上りであります。百年も長い間西欧の諸国に掠奪され、人民が長い長い鎖の下に縛られて来たところのアジアにおきましては、言うまでもなく中華人民共和国の輝かしい人民政権の確立、このような大きな原動力を中心としまして、最近ベトナムにおきましても、ビルマにおきましても、パキスタンにおきましても、又インドネシアにおきましても、今までの古い売国的政権の下から、真に人類の大きな団結の力によつて盛り上げ、このような一つのかさぶたを排除して、新らしい態勢が盛り上つておることは、今日アジアの態勢を我々がつぶさに見るならば、誰しも気がつくところだろうと思うのであります。こういうようなアジアの民族解放の大きな原動力を今日学ぶことなしに、逆にすでにアジアにおきましては終ろうとしている態勢に対しまして、丁度日本がこれから始まろうとしてそうして強大国アメリカの軍事基地として、更に植民地的な態勢としてがんじがらめにされようとしておるところの日本におきましては、これらのむしろアジアの今日解放と闘つておるところの国と本当に手を握つて、我々の現在置かれておるところの奴隷的な状態を真に解放しようとする闘いこそが新らしい我々は道であると考える。然るにこれを妨害する立場に我々が廻つて、そうして友好促進などという仮面の下に、このような態勢、封じ込め態勢をとられておるということは明らかなこれは時代錯誤と私は言わざるを得ないのでございます。
 こういう点から考えまして、この決議案は名目として謳われておるところは、成るほど美文調で非常にきれい事に見えるのでありますけれどもその底を割つてみますと、以上挙げました少くとも四点、少くともこの決議案を只今拝見しまして私の頭に浮んで来たこの四点の理由、こういうふうな理由から言いましても、当然我々はこれに対して賛成することはできない。従つて日本共産党は、このような友好決議案に反対し、若し真のアジアの友好決議案を我々がここで上程するならば、当然これはあらゆる国々と、もつと飽くまで平和を求め自由と独立のために全アジアが立ち上る。こういうような能勢において、これを可能ならしめ、その歴史的な前進をするための我々はその一つの力となる。そういう方向においてこれを取上げられる。これが当然の任務だと思います。これは歴史の命ずるところであると考えます。
 こういう点から、私はこの決議案には反対し、そうして我々のもつと強力なるアジア友好の態勢を確立されんことを切望して、私の反対討論とするものであります。(拍手)
#44
○議長(佐藤尚武君) 島清君。
   〔鳥清君登壇、拍手〕
#45
○島清君 私は社会党第二控室を代表いたしまして、只今議題となりましたアジア諸国との友好促進に関する決議案に対しまして、賛意を表するものでございます。それに先だちまして、私は我が党のこういう問題に対する態度をあらかじめ鮮明にいたしまして、それから私の賛成の理由の二、三点を挙げて参りたいと思うのであります。
 我が党は平和條約を承認するに当りましては、領土の問題に関しましては、南樺太、千島、小笠原、沖繩等、元来の日本領土は完全に日本の主権の下に置かるべきことを強く主張して参つたのであります。これと併せまして、更に賠償の問題については、その総額も期限も無制限ないわゆる役務賠償に対しましては強く、又日本の経済再建を妨げるものであるという見地に立ちまして、それに対しましては、反対をして参つておるのであります。従つて領土の問題につきましては、後刻これは私の賛成の理由の点で申上げたいと存ずるのでございまするが、こういう問題について、後刻私は政府に対しまして、その主権回復に向いまして努力を強調するつもりでございまするが、先ず先刻インドとの平和條約に私たちが承認を與えましたこの成立に対しましては、我が国の一部のかたがたから、サンフランシスコ平和條約に調印することは、我が国がアジアの孤兒になることであると、こういうような意味の強い宣伝がなされたのでございまするが、この宣伝は本日の日印平和條約に私たちが承認を與えることによりまして、この寛大なるところの日印條約の性格からいたしまして、アジアの孤兒となるという宣伝が誤まりであるということが反駁されて、そのことが実証されたものと私は信ずるものでございます。(拍手)
 我が党は今回のインドの示してくれました公正な態度に対しまして感謝すると共に、我が党はインドのみならず、サンフランシスコ平和條約調印の際に、セイロン、パキスタン等の自由なアジア諸国の示した好意に対しましても、又感謝しなければならないと常に考えておるものでございます。(拍手、「中共はどうするのです」と呼ぶ者あり)日本は独立したのでございますからして、よろしく政府は只今まで続けておられまするところの向米一辺倒の外交政策によることなくして、自主的外交を展開しなければならないと存じます。(「自主とは何ぞや」と呼ぶ者あり)その第一歩といたしまして、アジア諸国で未だ平和條約のできていないビルマ、インドネシや等との平和條約の締結と、併せて懸案中のフィリピン等その他の国との国交調整に対しても、政府は極力その実現に努力しなければならないと強く要望をしないわけには参らんのであります。
 先般、平和條約の発効に際する本院の決議に従つて、領土問題の公正な解決に政府は努めなければならないのにもかかわらず、私たちが見るところによりますると、その努力を怠つておるように見えるのであります。領土問題の回復に関しまして先ず住民側から強く意向を要望してあるところは、旧鹿兒島県の大島郡であり、旧沖繩県、即ち二十九度線以南の諸住民でございまするが、只今二十九度以南の住民によつて、日本から切り離されておりまするところの琉球政権というものが立てられておるのでありまするが、この琉球の住民は、原爆基地でございまするところの飛行場のそばと、大砲のそばで、日本復帰を議会の名において決議をしておるのであります。更にそれと附随いたしまして、公海の自由、為替による送金の自由、こういうような制約に対しましても、祖国日本政府に対しまして強く要望しておるのであります。(「それが平和條約の正体じやないですか、なぜ白を入れたか」と呼ぶ者あり)こういう住民の期待に対しまして、よろしく政府は領土問題の解決、もろもろの問題の解決に努力をしなければならないことを強くこの際要望したいと思うのでございます。(「少しおかしい」と呼ぶ者あり)只今兼岩君から彌次が飛んで参りましたので、この際、岩間君の反対がございましたので、共産党即ち国際共産党に通ずる彼らの考え方を反駁しておくことが、あながち無意味でなかろうかと存じますので、(「謹聽謹聽」「やれやれ」と呼ぶ者あり)岩間君が本決議案に対しまして反対をされた四点につきまして、これから反駁をして参りたいと思います。
 岩間君が反対をされました。反対をされる理由として挙げられました主なる第一点は、すべてのアジアの国と国交調整を考えずして、これだけの国とだけ調整を考えることは反対であると、こういう理由でございましたが、(「封じ込み政策だ」と呼ぶ者あり)それは二点であります。併し中共はソ連と一緒になりまして、我が国を仮想敵国とする有名なるところの中ソ軍事同盟の我々は仮想敵国になつておる。勿論私たちは、我が国は当然にアジアの諸国と親善友好の態度をとらなければなりませんが、併しながらそのことについては我々から設けざるところの鉄のカーテンなり竹のカーテンを張り廻らしておりますのは、これは我々の側ではなくして、向う側にあるということをお忘れになつての議論のように拜聽いたしましたので、(拍手)私はこの決議案に対しまする反対の理由には相成らんかと存じます。更に中共を封じ込めるところの作戰である。政策であるということをお述べになりましたが、私は岩間参議院議員は日本の参議院議員であると思つておりましたが、(拍手)如何にも中共の参議院議員が御説明になるようなことをおつしやつておられる。(「万国の労働者よ団結せよ」と呼ぶ者あり)それはマルクスが言つたのでありまして、私たちは必ずしもマルキストではないのでございますからして、マルクスの言うことにあなたがたみたように、これを金科玉條として以つ拳々服膺しなければならない義務はちつともない。(「その通り」と呼ぶ者あり、笑声)従つて、私たちは先ず全人類のための友好親善を期待しまするけれども、取りあえず我々がなし得ること、我々がこれをなし得ることを期待することは、丁度梯子段を登つて行くようなものであると、いう形において現実の政治を理解いたしまするならば、このこと自体を理解し得ないかたの頭は、暑さの、陽気の関係でどうかしておるのではないかと思います。従いまして、第二の点もこれはちよつと理由にならんかと思いまするが、それに中共政府をパキスタン等は承認しておるのである。この承認しておるところの国とのいわゆるこの決議案との調和線は不明確であると、こういうことでございまするが、パキスタンが中共を承認しておることは、これは事実でございまするが、併し中共を承認しておる国と我々が友好親善な関係に入つていけないということは、毫も私は理窟にならないと考えておりまするし、それに中共を承認しておる国はイギリスも、その通りであります。従いまして、我々は何も中共を承認しておるところのイギリスと国交調整を結ぶことも、これは必ずしも無理じやない。必ずしも行き過ぎじやないと私たちは考えまするので、でき得るだけの、なし得るだけのことの即ち親善友好の政策を推進することは、我々は当然な義務であり、更にそういうことを政府に要請することが我々の責任であり、我々の義務であるとすら考えておりまするので、そういう意味におきまして、本決議案に賛成の意を表する次第でございます。(拍手)
#46
○議長(佐藤尚武君) これにて討論の通告者の発言は全部終了いたしました。討論は終局したものと認めます。
 これより本決議案の採決をいたします。本決議案に賛成の諸君の起立を求めます。
   〔賛成者起立〕
#47
○議長(佐藤尚武君) 過半数と認めすす。よつて本決議案は可決せられました。
 只今の決議に対し、外務大臣から即言を求められました。岡崎外務大臣。
   〔国務大臣岡崎勝男君登壇、拍手〕
#48
○国務大臣(岡崎勝男君) 本日ここに日印平和條約及び日華平和條約の承約が行われましたことは、我が国とアジア諸国との平和関係の確立に大いなる意義を有するものと認められます。これによりましてアジアの自由なるすべての国との友好親善関係を促進する契機になるものと信じております。
 政府といたしましては、只今の決議の御趣旨を体しまして、この上ともその方針を持続し、各国との親善関係増進に努力をいたす覚悟であります。(拍手)
     ―――――・―――――
#49
○議長(佐藤尚武君) この際、日程の順序を変更して、日程第十六、北太平洋の公海漁業に関する国際條約及び北太平洋の公海漁業に関する国際條約附属議定書の締結について承認を求めるの件(衆議院送付)を議題とすることに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#50
○議長(佐藤尚武君) 御異議ないと認めます。先ず委員長の報告を求めます。外務委員長有馬英二君。
   〔有馬英二君登壇、拍手〕
#51
○有馬英二君 只今議題となりました北太平洋の公海漁業に関する国際條約及び北太平洋の公海漁業に関する国際條約附属議定書の締結について承認を求めるの件につきまして、外務委員会の審議の経過と結果を御報告申上げます。
 政府側の説明によりますと、我が国は昨年署名された日本国との平和條約第九條で、「公海における漁猟の規制又は制限並びに漁業の保存及び発展を規定する二国間及び多数国間の協定を締結するために、希望する連合国とすみやかに交渉を開始する」ことを約束いたしました。この趣旨に基いて日本国政府の主催の下に日本国、カナダ及びアメリカ合衆国との間の三国漁業会議が、昨年十一月から十二月まで東京で開催され、この会議において北太平洋の公海漁業に関する国際條約案及び北太平洋の公海漁業に関する国際條約案附属議定書案が採択され且つ勧告されました。日本国、カナダ及びアメリカ合衆国の政府は、これらの條約案及び附属議定書案について軽微な字句の修正を行なつた上、これらの案により條約及び附属議定書を締結することに意見が一致しましたので、本年五月九日に東京で、各自の全権委員がこの條約及び附属議定書に署名いたしました。
 本件は日本国、カナダ及びアメリカ合衆国の三国の共通の関心事である北太平洋の漁業資源の最大の持続的生産性を確保するため、三国の間で有効且つ適切な措置を講ずることを目的とし、我が国にとつても適当なものと認められるので、ここにこの條約及び附属議定書の締結について承認を與えられたいというのであります。
 本委員会は、本件が五月十七日に付託されて以来、六月四日、十二日、十七日、十八日、二十七日、二十八日の六日間に亘り愼重審議いたしたのであります。六月十二日、外務、水産連合委員会を開催いたしましたが、席上千田、秋山、曾祢、木下、團、杉原、金子委員から質疑がなされました。その詳細は議事録に護りまして、最も論議せられた点を簡単に御説明いたします。
 先ず、「日本では漁民の数は米、加と比較にならぬぐらい多く、これら漁民の操業制限は大問題なのであるが、さけにおけるがごとき、西経百七十五度の子午線を境として、その水域ではその漁獲を抑止するというがごとき措置をとつたことは、海洋の自由を制限することになり、将来韓国、中国、フィリピン等との関係においてこれがモデル・ケースとなる慮れがあり、影響するところが甚大であると考えるがどうかとの質問に対して、岡崎外務大臣は、「漁業の自由と公海の自由とは別であつて、條約は特別の魚種の保存と漁業の持続的生産性を維持し、漁業の安定を目的としているのである。濫獲から保護するために国際的に、又は国内的処置としては魚種保存抑制は世界各国がお互にやるべきであつて、そのモデル・ケースとなつても、公海自由の原則を破るものとはならない。今後関係諸国と交渉する場合にも、公海自由の原則を強く主張するつもりである。李ラインのごとき、海上にただ一線を画するのみで、魚種保存に関係のないものであるから、理由のないものである」旨の答弁がありました。
 次に、「この條約は二国間において締結されたが、他の諸国間と今後締結するであろう漁業協定に與える影響は重大なものがあると考えるが、何故に対日平和條約の発効に先んじて会議を招集したか。且つその内容を見ると、米加両国の漁業資源を保護するために、日本の公海漁業を抑制する結果となり、日本に何らの利益がないのに、急いで締結するに至つたのは非常に無理があつたのではないか」との質問に対して、岡崎外務大臣は、「講和発効後直ちに公海漁業ができるようにするために準備を急いだのであつて、ダレス・吉田書簡の漁業保存に関する日本国の自発的宣言に見られるごとく、三国とも平等の立場を前提として、公正な取極を作成することを交渉したのである。條約がなければ、我が国が如何なる場所でも濫護するがごとき印象を與え、国際的な立場を悪くする。又抑止措置は無理のないという我がほうの資料もあり、むしろ條約のない場合には更に困難な事情も起り得るものと考えられる」旨の答弁がありました。
 次いで外務委員会においては杉原、有馬、兼岩、曾祢、金子、團委員等から質疑がございましたが、これらの詳細は議事録に讓りまして、二、三例示するにとどめたいと思います。
 一、「特定魚族捕獲の自主的抑止の五年間の据置は何故か」との問に対しては、「米加は詳細な調査の結果を持つているためで、新たにこの調査を始めるとなると数年かかることになるので、差当り五年据置いたのである」との答弁がありました。二、「禁止区域において我が国の実績は如何」との質問に対しては、「さけについては実績はなく、かに、たら、まぐろについては従来実績があり、将来も取れる」との答弁でありました。三、「日本だけ抑止措置をとり、他は保護措置に廻つているのは何故か」との問に対しては、「べーリング海ではカナダと日本が抑止措置をとる。日本が抑止措置をとる区域においては従来日本の実績がなかつた」との答弁がありました。四、「第一條第二項は、領海三浬説以外の項に領海を認めたようになり、不必要且つ不利である」との質問に対しては、外務大臣は、「この條約は漁業のことをきめるのであつて、領海のことをきめるのではない。この項目は、将来他国との交渉において我が国に不利をもたらすことはない」と答弁いたしました。
 次いで討論に入り、有馬、曾祢、岡田、兼岩の各委員より、それぞれ反対討論があり、杉原、柏木、両委員からは賛成の意見が述べられました。採決に入りましたところ、多数を以て本件は承認すべきものと決定いたした次第であります。
 以上御報告申上げます。(拍手)
#52
○議長(佐藤尚武君) 本件に対し討論の通告がございます。順次発言を許します。岡田宗司書。
   〔岡田宗司君登壇、拍手〕
#53
○岡田宗司君 私は日本社会党第四控室を代表しまして、北太平洋の公海漁業に関する国際條約の承認に反対するものであります。
 反対の理由の第一は、昨年九月にサンフランシスコ会議で調印された対日平和條約の第九條に基きまして、アメリカが主導して、昨年秋東京において米、加、日の国際会議が開かれ、いろいろと折衝いたしました結果、三国間に仮條約の調印が行われましたが、本條約は本年四月二十八日、サンフランシスコ平和條約の効力が発生しましたので、改めて本條約として調印されたのにほかならないのであります。アメリカは、戰争前から日本の漁業の北太平洋進出を何とかして抑えようとしておりました。そのために戦前におきましてもいろいろとトラブルがあつたのでありますが、アメリカは日本が敗戰いたしましたのを機会に、日本の漁業の北太平洋進出を抑えようといたしたのであります。占領中は勿論これを完全に抑えることができましたが、平和條約の効力発生しました後に、日本の漁業が又もとのようにアラスカ方面まで進出することになれば、アメリカの利益に反するというので、サンフランシスコ條約の第九條に漁業協定に関する條文を挿入させたのであります。それに基きまして、大急ぎで平和條約の効力の発生しないうちにアメリカの欲する漁業條約を作り上げて、平和條約の効力が発生しても、日本の漁業が一定の海領より東へは進出しないように、日本を拘束しようとしたのがこの條約なのであります。外務当局者の説によりますと、「占領中にこの国際條約について交渉が行われたのでありますが、日本は何ら外国から干渉を受けなかつた。全く平等の立場で交渉をしたものである」と言つているのでありますが、これは全く我々をめくら同然に扱い、愚弄するものであります。アメリカは平和條約の効力が発生して、日本が独立国となると事面倒であるというのでまだ占領中に押しつけて来たものでありまして、このこと自体、押しつけられたものであることを明白に物語つているのであります。この條約は上べの形はどうでありましようと、成立の過程から見まして、明らかによそから押しつけられたものであつて、不平等なものであります。
 第二の反対の理由は次のごとくであります。「この條約に署名した日本国、カナダ及びアメリカ合衆国の政府は、主権国として、国際法及び国際慣習の原則に基く公海の漁業資源を開発する各自の権利に照らして行動し、北太平洋の漁業資源の最大の持続的生産性を確保することが人類の共通の利益及び締約国の利益に最もよく役立つこと並びに各締約国がこの資源の保存を促進する義務を自由且つ平等の立場において負うべきことを信じ、これらの考慮にかんがみて、(1)締約国にとつて共同の利害関係がある漁業の最大の持続的生産性を確保するために必要とされる保存措置の確定に必要な科学的研究を推進し、及び調整するため、並びに締約国にその保存措置を勧告するため、この條約の三締約国を代表する国際委員会を設置すること並びに(2)各締約国が前記の保存措置に関する勧告を実施し、並びに自国の国民及び漁船に対して所要の抑制を設けることがきわめて望ましいことを認め、よつて、次のとおり協定する。」という前文があるのでありますが、これを見ますというと、如何にも日米加三国が平等の立場に立ち、三国並びに人類の共通の利益を実現するようなことが記されておりますが、これは全く我々を欺くものでありまして、羊頭を掲げて狗肉を売るものと言わなければならんのであります。この條約の本体は、本條約の不可分の一部をなすと定められておる附属書にあります、即ち日本だけがおひよう、にしん、さけについて漁獲を自発的に抑止することに同意せしめられておるのであります。而してアメリカ、カナダ沿岸のおひよう、にしん漁は附けたりで、これによつて実は日本がさけを取りに北太平洋に進出することを抑えつけてしまつたのであります。魚の濫獲をやつて、魚族を根絶やしにすることは決して許さるべきことでないことは勿論であり、又他国の領水内に入つて漁をすることも許さるべきことではないが、太平洋のどまん中に、人為的に一本線を引きまして、お前のほうの船はここから一歩も出てはいけない。出たら人を逮捕する。船を拿捕するというに至りましては、無茶も甚だしいのであります。これによつて公海における漁業の自由の原則は全く蹂躪され、日本のみが非常に不利益な義務を負わされたのであります。たとえ條約上の形は平等にあるにいたしましても、日本の漁業の北太平洋進出を露骨に抑え、公海における自由の原則をふみにじつているこの條約の実質的な内容に対しましては、我々は断じて承認することができないのであります。
 第三に、この條約が承認されるならば、将来日本にとつて誠に不利益なこの條約がモデル・ケースとされるであろうという点であります。即ち今後日本は、ソ連、韓国、中国、フィリピン、インドネシア、オーストラリア等々の太平洋にある多くの国々と漁業條約を結ばなければならないことになるでありましよう。その際にこの日米加條約のまねをして、とんでもない遠い所に線を引かれ、それから先に日本の漁船は出てはいけないということになつたならばどうなるでありましようか。日本の食糧、特に蛋白資源の供給、日本の貿易にとりまして重大な障害が生れて来るのでありまして、かようにいたしまして日本の自立経済というものはいよいよ不可能になつて来る慮れが多分にあるのであります。政府はアメリカに対して唯々諾々としてこういうものを認めている。他国から同じようなものを持込まれまして、どうしてこれを頑強に拒むことができるでありましようか。思えば慄然たるものがある。かかる見地からいたしましても、この條約を承認するわけには参らないのであります。
 先に本件が衆議院で審議されましたときに、衆議院の水産委員会はこの條約を屈辱的なものだといたしまして自由党の委員諸君をも含めまして満場一致反対の意を表明しております。又この條約につきましては自由党内で岡崎外相、廣川農相らが、さんざん吊し上げられているという話を私ども聞いているのであります。漸く政府が外務委員会を口説きまして承認さしたのでありますが、自由党の諸君といえども、これを平等の立場に立つた結構な條約だと認めている者はありますまい。こんな上べばかりきれいごとでありますが、内容に至つては全く屈辱的な條約を、大して争うこともなく締結した岡崎外務大臣、根本、廣川農林大臣の日本の漁業並びに経済の将来に対する責任は誠に重大であります。責任を重んずる政治家でありますれば、かかる條約を平気で議会に承認をしてくれなどとは言われないはずなのであります。(拍手)
 私どもは以上の理由によりましてこの條約の承認に反対するものであります。(拍手)
#54
○議長(佐藤尚武君) 曾祢益君。
   〔曾祢益君登壇、拍手〕
#55
○曾祢益君 私は日本社会党第二控室を代表いたしまして、北太平洋の公海漁業に関する国際條約に対しまして反対の意向を表明するものであります。
 日本は平和條約第九條におきまして「公海における漁猟の規制又は制限並びに漁業の保存及び発展を規定する二国間及び多数国間の協定を締結するために、希望する連合国とすみやかに交渉を開始する」ことを約束しております。我が国の漁業は、国民食糧の自給、輸出の拡大による経済自立の達成又完全雇用による民生の安定の必要上、極めて重要であることは言を待たないところでありますと共に、日本漁業の発展の成否が多く公海における漁業の自由に依存することも又当然であるのでございます。従いまして問題の核心は、如何にして過去においてとかく濫獲呼ばわりをされた我が国の漁業に対する外国の非難を避け、人類の共通の資源である公海における魚族の保存発展に対しては誠意を以て協力しつつ、而も我が国にとつて死活的重要な公海における漁業の発展を期するかにあるのでございます。而して今回の日米加三国漁業條約は、この問題の解決を方向付けるものでありましてその影響は極めて大であります。委員会におきまして愼重審議の結果、私としては次のような結論に到達したのであります。
 第一にこの條約は、形式的には、平等の主権国間に締結された、かの北大西洋漁業のための国際條約に倣つたものであり、一応平等互恵の建前と、公海における主権国の漁業の自由が謳われております。更にこの條約の交渉前に特に危惧されておりましたように、一国がその領海に近接する公海の一部に保護区域を設定し、その区域内においては外国の漁猟を一切許さないというような方式は採用していないのであります。これに代うるに、締約国の代からなる委員会を設け、科学的調査に基いて満限に達したことが認められ、且つ保存措置が講ぜられている特定の魚種についてのみ、各締約国間に平等な保存措置が講ぜられることを定めております。又共同の保存措置を講ずるために、締約国の或るものが漁猟の自発的抑止を行う場合におきましても、過去の実績を持つている国は、この抑制措置を講ずる必要がないことになつております。従つて本條約の以上の諸点は、決して我が国の米加両国に対する不当な譲歩ということではなく、又今後他の国との漁業交渉に当つて、我がほうにとつて不利な先例とは言えないと存ぜられるのであります。
 第二に、併しながら、本條約は以上の長所にもかかわらず、次に申上げまするような重大な欠点を持つております。その一つは、第一條第二項におきまして「この條約のいかなる規定も、領水の範囲又は沿岸の国の漁業管轄権に関する締約国の主張に不利な影響を與える(主張を害する)ものとみなしてはならない。」と規定している点であります。政府の説明によりますれば、この規定によりまして領海三海里に関する我が国の主張や、沿岸国の公海に対する保護区域的な主張は認めないという、同じく我が国の主張も生きているのだというのであります。併しこの規定は同時に領海の範囲に関する日本とは異なつた外国の主張、例えば十二海里の主張もございます。いや広汎な保護区域、例えば李承晩ラインのような、このような外国の主張も、同時に何ら妨げないことを規定しておるのでございます。欠点の第二は、本條約第三條(a)但書及び第五條第二項におきまして、日本は、附属書に明記する魚種については、折角設立することになりました委員会の調査勧告を待つことなく、当然に自然的抑制の必要を認めてしまつております。且つ向う五ヵ年間据置を約しておるのであります。これでは折角この條約を作り、委員会を設けて科学的調査の結果、関係国が納得した上で共同の保存措置を講じようとするこの本條約の建前が、実際におきましては崩れてしまうのでありまして、おひよう、にしん、さけ等についての日本の漁業が、この自発的抑の結果、実質的にどれほど不利をこうむるかは暫らくおきましても、先ず建前の問題といたしまして、一見公平に仕組まれた條約も、実際は日本のみが自発的抑制という義務を一方的に負担するということを、ただ巧妙にカムフラージュするものにほかならないのであります。欠点の第三は、附属書記載の魚種について、漁猟を抑制する措置といたしまして、結局公海の一部に漁猟禁止区域を設定したことであります。成るほどこの禁止区域は特定の魚種について、各個にきめられたものでありまして、マッカーサー・ライン或いは李承晩ラインのように、公海の広い部分に一般的立入禁止区域を設けたものとは性質が違うという弁解も一応はあるでございましよう。又、おひよう、にしん等については、日本漁業の実績もなく、禁止区域も公海上一定のラインを引いたようなものでないとの弁明も可能かも知れません。併し附属書2のさけにつきましては、おおむね西経百七十五度を境とするべーリング海の東半分を禁止区域としているのでありまして、而もこの線が決してアメリカ系のさけと、アジア系のさけとの科学的な分岐線でないことは、附属議定書が、それ自身がはつきりと認めているところであります。
 以上のような欠点ある本條約は、これを総合判断いたしまするに、平和條約第九條に基く、公正な漁業の保存及び発展のための協定と認めるわけには参らないのであります。このことは本條約の由来をたずねて見れば一層明らかなことでありまして、一九五一年二月七日のダレス氏宛吉田書簡において、政府はあらかじめ本條約の実体であるところの日本側の自発的抑止をすでに約束しているのでございます。いわば平和條約とのバーター取引的に、当時すでにこの條約の実体をアメリカに與えてしまつたものでありまして、本條約は單にその体裁をつくろつたのに過ぎないのであります。而もこの條約は、講和條約の効力発生前に実質的に協定されていたものであつて、その点からいたしましても、基本的に平等な関係において作られておらないことは言をまたないところであります。我々は冒頭に申述べました通り、平和條約第九條の原則には何ら反対でなく、又一部漁業ボスの尻馬に乗つて、徒らに過去の濫獲の夢を追うものではございません。併しこのような政府の一辺倒的態度を是認し得ないと共に、このような日本側の譲歩を求めつつ、而もまぐろ或いは冷凍まぐろについて、幸いにアメリカの上院が否決したようでありまするが、かくのごとく執拗に幾度も関税引上げを試みようとするアメリカの一部輿論に対しても強く抗議するものであります。
 一方この條約の結果、漁業に関する我が国と韓国、中国、フィリピン、オーストラリア、ニュージーランド、その他東南アジア諸国との交渉に累を及ぼす虞れあることはすでに現実化しているのでありまして、先に申した通り、第一條の沿岸国の漁業管轄権の主張の点と、附属書の禁止区域の設定、なかんずくベーリング海のラインの設定は、日韓協定の交渉に当つての韓国側のあの不当な李承晩ラインの主張、宣言、これの導因となつておることは、よもや政府も否定できないところであると信ずるのであります。従つて、若し本條約が、我が国会の承認によつて効力を発生することとなるならば、漁業に関する我が国と他の関係国との交渉も必ずや難関に逢着するでもろうことは疑いのないところであります。
 以上の理由に基きまして、私は本條約に承認を與えることに反対するものでありまするが、この際本院が公正な国民の輿論を反映するために、本條約を否決せられんことを切望いたしまして、私の反対討論を終りたいと存じます。(「異議なし」と呼ぶ者あり、拍手)
#56
○議長(佐藤尚武君) 石川清一君。
   〔石川清一君登壇、拍手〕
#57
○石川清一君 私は改進党を代表いたしまして、只今議題となりました北太平洋の公海漁業に関する国際條約並びに同條約附属議定書の締結に対し、反対の意を表明するものであります。
 公海漁業資源の開発、保存、存置上の科学的研究、それに関連する国家間の協定のために、米国、カナダ、日本の間に北太平洋漁業国際委員会を殺害することは異議のないところでございます。併し本條約の各條項を検討いたしまするとき、果してこれが自由且つ平等な立場においてなされているかどうか。窮極において我が国に利益のある條約かどうかにつきましては、少なからぬ疑問のあるところでございます。
 先ず第一に、趣旨は誠に結構でありますが、結論的に言つて、アメリカ十国、カナダ及びアテスカ沿岸はもとより、それに接続する広範囲に亘る公海において、少くとも五ヵ年の間、日本はおひよう、にしん、さけなど、この條約で定められました魚は獲りませんという一札をお預けするようなものでございます。水産資源の保存が必要ならば、特別の委員会を以て捕獲禁止等の諸規定を定めるべきものでございます。この條約の中に、特に五ヵ年の間は、当該魚種が自発的抑制のための條件を引続き備えているかどうかについての決定又は勧告はしないと明記してあることは、日本が漁業を差控えているその間に、或る国に将来動かすことのできない実績を與えることになり、平等互恵の條約とは言えないのございます。
 第二は、第一條に「この條約の如何なる規定も、領水の範囲又は沿岸の国の漁業管轄権に関する締約国の主張に不利な影響を與えるものとみなしてはならない。」と明記してあることであります。これは国際的に認められている沿海三海里の原則を破り、領水の範囲に関して、或る国の不当な主張を容認せしめる結果ともなりましよう。公海自由の原則を侵害する虞れのあるのはこの点でございます。
 第三は、第四條において、漁業操業の歴史的交錯その他を挙げまして、アラスカ湾水域以南のアメリカ及びカナダ各太平洋岸の地先沖合を指摘して米、カナダの自由な操業を許し、そこが公海であるにかかわらず、日本が除外されていることであります。又日本はべーリング海を除く北太平洋東部特定水域のさけ、にしん、並びにアラスカ、カナダ西海岸一帶のハリバット漁業を自発的にやらないことにすることとなつておることでございます。これは確かに国際間、漁業自由の原則に背き、屈従的な態度と言うべきでありましよう。これらの地域に対し、アメリカ、カナダは保存に多大の努力をして来たと言いますが、我が国においても官民協力して増殖を図り、北海道では並々ならぬ苦心をいたしておるのでありまして、アメリカやカナダ保護の魚類が日本でとれると同様、日本で増殖いたしました魚類がアメリカ沿岸にもとれることは当然考えられることでございます。この実態は漁業国際委員会等でも研究調査を待つべきでありまして、その上で日本船の出漁の如何を決定されるべきと考えられるのでございます。
 第四は、一九四九年締結されました北大西洋漁業国際條約との比較でございます。これはアメリカ、カナダ及び欧州数ヵ国が加盟いたしておるのでありますが、明確に国際平等の海洋の自由の原則をこれは認めておるのでございます。水産資源保護のため平等に締約国に適用される操業の制限でありまして、決して今回の漁業條約のごとく海洋の自由を特定国に制限するようなことはないのでございます。
 第五は、本條約が今後他国との外交交渉に悪影響を及ぼすことを懸念するものでございます。それはさけ漁獲の暫定的区画線、即ち先ほど論議されました西経百七十五度線の問題であります。公海にかような区劃線を定めまして、日本船出漁禁止を約束することは、今後フィリピン、韓国その他日本近海の国々が同様な線を設けて主張し、日本人漁業に圧迫を加える可態性のあることでございます。独立の機会に前後して、いろいろな書簡が取交わされておるようでございますが、これらの実現には強力な外交が必要でございまして、秘密、独善、弱腰の外交の中から決して生れるものではございません。特に韓国の海洋主権についての声明書は、これを單なる外交辞令とのみ見ることはできないと存じます。日本海洋漁業の歴史性の中には、日本民族の発展が秘められているばかりではなく、我が国漁業は国民食糧源確保の立場から重要でございます。米国、カナダのごとく領土広く、食糧豊富な国の一企業としての漁業とは国民全体に対する重要度が根本的に異なつておるのでございます。我々は四つの島に閉じ込められて八千四百万人目の喘ぎつつある苦しい立場を、素直にアメリカ、カナダその他の国々に訴えて、十分なる理解を求めなければなりません。我が国の食糧を脅かし、更には公海自由の原則までみずから捨てて、今後外交上の悪例となるごとき條約を何故に吉田内閣は占領下という悪條件の下で締結しなければならなかつたのでしようか。秘密、独善、軟弱外交に、疑いと不信を抱くのは單に自由党の與党の一部ばかりではなく、国民全部と言つてよいと存じます。又衆議院においては與党の中から聞くに堪えない非難が起つている事実を見ても、如何に無力外交に終始しているかということを証明いたしております。すでに指摘申しました通りの矛盾、不合理を内包するこの條約は、我が国漁業に利益を與えないことは明らかでございます。独立の言葉にのみ幻惑されまして、御説御尤もの腰抜け外交の結果はかくのごときでございます。我が国遠洋漁業の将来を考え、我が国外交の強力推進のためにも、本條約に賛意を表し兼ねるのでありまして、よろしく政府は反省すべきであると思います。
 これにて我が党の反対の表明を終ります。(拍手)
#58
○議長(佐藤尚武君) 鈴木清一君。
   〔鈴木清一君登壇、拍手〕
#59
○鈴木清一君 私は只今議題になつておりまする漁業條約承認の件につきまして、労農党を代表いたしまして反対の意を表明するものであります。
 理由の第一は、政府はこの條約を締結することによりまして、我が国の国民に対しまして、多大の損害を與えたという点を先ず指摘したいのであります。今回の漁業條約は、もともとサンフランシスコ條約に基くものでありまするが、この最悪なサンフランシスコの條約には、漁区制限を内容とする條約を締結しなければならないというような義務は課せられてはおらなかつたのであります。然るに今回締結されました漁業條約は、我が国の公海における漁業の制限を、漁区の制限という形においてはつきり定めてあるのであります。従つて交渉の過程において、米国或いはカナダに対しまして幾分の主張はいたしたかも知れませんけれども、結果といたしまして、明らかに実質上は公海における漁業の権利を放棄したことであるということを言い得るのであります。従つて国際法上何ら義務のないことをあえてしてまで、我が国民に損害を與えるということになつた点について、少くとも国民と共に、この條約を結んだ現政府に対しましては、反対すべきであると思うのであります。
 第二の点につきましては、この條約は一利害国が国際的原則であるところの公海自由の大原則を蹂躪しておる点であります。この條約締結の結果、日本漁船の立入禁止区域が拡大されてしまう。本来自由であるべき海域を、米国、アメリカの利益のために閉ざされたる海に変更せざるを得なくなつたという漁業界の不運であります。アメリカ一国の野心のために、国際的に嚴として存するところの公海自由の原則が、この條約によつてはつきり破られたということであります。公海といういずれの国にも属することのない海域が、ただ保存海域の名の下に、或る種の魚類の漁獲を他の利益国に対して一方的に制限せんとするものであり、これを承知の上で甘んじて受けて締結したこの條約こそ、真に屈辱條約と言わなければならないと思うのであります。その意味におきまして反対の第二点とするわけであります。
 第三に、この條約の締結により、今後日本の漁業発展に多大の障害が起きて来るということの可能性が多分にあるということであります。例えば一九四五年にトルーマンは、大洋漁業政策に関する宣言を発表しております。それを本といたしまして、その後アメリカのみでなく太平洋諸国が同様な態度をとつている。その挙句が、遂に韓国政府をしていわゆる李承晩ラインなるものを叫ばせるようになつたということであり、誠にばかげたものの設定まで発展させてしまつたということであります。このような事実は、戰前我が国の漁業発展の場所でありました南太平洋諸海域のフィリピン、オーストラリア等の国々にも、将来このような條件、條約を迫られることが想像できるのでありまして、そのとき一体、日本は何と言うて我が国の主張をすることができるかということを考えますときに、この意味におきまして、今後日本が各国と結ぶであろう海域諸條約に、如何に不利であるかということを考えまするとき、この條約の締結に当りました軟弱外交に対しまして、私どもは断固反対せざるを得ないのであります。
 次に、この條約が発効するならば、我が漁業界は最大の危機を招くであろうということであります。例えば日本は一体どこで魚をとつたらいいのかという結論が生れて来る、御承知のごことく日本漁業において特にさけ、ます、かに等の漁業は世界でも実に一、二位を争つておつた日本最大の平和産業であることは周知のことでありましよう。その最大の漁場である北太平洋海域から締出されまして、而も今後は南太平洋諸海域からも締出されたら、一体どこに行くのかということであります。アメリカでは北太平洋の漁場から日本を締出すことによつて日本を止むを得ず南太平洋や東支那海等におけるところの、曾つての侵略漁業に我が国を追込まんとしておるのでありましよう。若し日本がそのような立場に追込まれたといたしたならば、世界の平和を愛好する諸国は、又再び日本を侵略漁業の名において攻撃して来るということを考えなければならないのであります。改めて、国際的な平和産業の一員としての立場をはつきりすべきためにも、この條約をここで直ちに否決して破棄しなければならんということを私は皆さんに訴えるわけであります。
 日本の平和の中に大きな比重を持つ日本の水産業は、重大な危機に見舞われております。そればかりではなくして、アメリカはまぐろの輸入関税を一二・五%から四五%まで大幅に引上げることによりまして、日本のまぐろ輸出をすら危機に追込んでおるではありませんか。又我が国内ではこの関税引上によりまして、一万の漁船が休み、三万の漁夫がすでに失業せんとしておる実体もよく認識しなければならないのであります。
 次に、この條約締結は独立国として最悪の條件の下に結ばれておつたということであります。御承知のようにこの條約は一九五一年二月、吉田・ダレス往復書簡で、すでにきまつておつたものだと言われるのであります。平和條約の一つの條件にすらなつておつたということであります。そもそも平和條約の発効する以前に、即ち一九五一年十二月、すでに仮調印をされておつた事実があるとさえ言われておるのであります。これは未だ占領下であるというアメリカ側の全く最良の條件であり、日本側の最悪の條件の場において、アメリカ側の圧力において国民反対の声すら抑えながらに仮調印がされておつた状態だと言えるのであります。何が故に、独立後の日本のために結ぶものなれば、完全に平和條約発効後、而も主権の回復された後に対等な地位においてお互いに結ばなかつたのか、独立したこの二国間の條約として仮に発効後に條約を結んだといたしましても、すでにこの基礎を作つておつたときに、その圧力を避け得ずして作られたものを、発効後にただ発表したといつても何ら私は弁解の余地のないものであろうと思うのであります。このような悪條件と紐付の條約である限りにおきましては、和解と信頼の講和と言われておる平和條約の安保條約に続く、最も具体的な我が国にとつては最悪な條約であるということを言わなければならないと思うのであります。さればこそこの條約が、衆議院の水産委員会にかけられましたときに、いろいろ同党の中の人たちに異論がありまして、この点につきまして盛んに論議を交わされたと聞いております。その中にも、一体これほどのアメリカの我がままを承知の上で、吉田内閣は我がまま勝手を黙つて條約を結んだというこの屈辱外交に対しまして、私は少くとも参議院の人たち、参議院の諸氏は、嚴正中立の立場からも、又真に條約を審議する立場からも、こぞつて反対されるであろうということを期待いたしまして、私の反対の討論に代える次第であります。
#60
○議長(佐藤尚武君) 兼岩傳一君。
   〔兼岩傳一君登壇〕
#61
○兼岩傳一君 條約について三度目の討論をするのでありますから、せめて三度に一度は賛成したいのでありますが、遺憾ながら又日本共産党はこれに反対しなければならんのであります。
 この條約は、事実上北太平洋の漁場から閉め出される。従いまして社会党、緑風会、第一クラブその他が反対するだけでなくて、経営者の立場をとつておられる改進党は勿論、自由党の内部においても、大きな異論を捲き起したということは、これは非常に注目すべき問題であります。(「そうだ」と呼ぶ者あり)現に衆議院の外務、水産連合委員会で、自由党の委員がこの條約に対して、これは茶坊主政治が露骨に現われておるではないかと攻撃をしておられます。又外務大臣岡崎君に対して腰抜けと非難しておられるのであります。併し私はこれは決して吉田総理や外務大臣を特別にどうと言うのではありませんが、これは少し私は無理な非難ではないか、これは少し無理だと私は思うのであります。(「ヒヤヒヤ」と呼ぶ者あり)なお、茶坊主政治で麻雀が上手であるということが大臣になる一つの條件だとまで取沙汰されておりますが、併し私は岡崎君の茶坊主的な條約締結を責める前に、吉田内閣そのものがアメリカの茶坊主であるということをなぜ自由党の諸君は自覚されないか、私はこれが言いたいのであります。吉田総理大臣の忠実なる外務大臣の岡崎君が……(「何を言つておるのか」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し)どこが悪いのだ。文句があつたら出て来てやればいい。僕のあとで……。
 私は岡崎君が忠実な外務大臣として昨年の二月四日、吉田・ダレス書簡の形、即ち戦前の漁区を嚴守し、講和直後、東部太平洋とべーリング海のさけ、ハリバツト、いわし、まぐろ漁場には出漁しないという一札をすでに外務大臣が入れておる以上、忠実な外務大臣としてこの線に沿つて條約を締結することは当然なことではないか。これを若し茶坊主と責める者あらば、それは酷である、私はそう思うのであります。又腰抜けという批評は、これは私は褒め過ぎであると思う。なぜならば、腰抜けというのは自分の足で立つておる人に対して非難を與えられるものだ。アメリカ一辺倒のこの政府の外交政策に対して腰抜けと批評することは、あたかも独立をしておるかのごとき錯覚を国民に與えるのであります。私はこの非難に対しても反対せざるを得ないのであります。
 そこで私は最も建設的な結論に進んで行きたいのであります。最も建設的な反対討論の結論を結びたいのであります。この悲惨なる日本の漁業界の状態をどうして打開するかという問題であります。私は数日前関東、東北十一県の漁業家を以て結成しておりまする北洋漁業組合の代表者のかたが、私の個人的な友だちでありますけれども、瓢然として来られて、誠に困つたことだと、こういうふうに歎いておられる。(「自由党の人だよ」と呼ぶ者あり)そうして数日前の商業新聞によりますと、とても今のアツツ、キスカ島のさけ、ますだとか、南洋、それからインド、インドネシア、仏印など、こんなものは話にならん。これは大洋、日水、日魯だけについて言つて見ても、たかだか五千万貫程度のもので、本当に大きな收獲がとれるのはカムチャツカ、それから上海の揚子江の河口、それから南朝鮮の済州島の北方、それから北覇鮮の沖、これが大体この五千万貫程度の十倍、敬億貫の漁場である。これが解決しなければ、これらの大経営者としても問題にならないということを言つておられます。それからいわんや中小漁業、先ほど申しました東北、関東の北洋漁業を始め北海道の漁業家及び中国、四国、九州の漁業家の中小経営者も、全くこれによつてのみ打開されるということは明確であります。更に零細な沿岸漁民におきましても、延いては日本の労働者漁民全体にとつても、日本漁業の恥ずべきこの漁業問題、漁業の国辱的な條約を如何にして打破して行くか。そうしてどうして日本漁業の悩みを打開して行くか、私はこの点が一番重要であると考えます。
 アメリカの意図しております今回の條約は、魚をとるという経済的観点だけから見ても屈辱的であり不当なものでありますが、更に政治的に見るならば、自分のほうは沖合の約六百浬から制限しておいて、そうして日本の遠洋漁業の経営者諸君よ、沿海州に向つて行け、カムチャツカに向つて行け、そこには幾らでもいるじやないかと言つておる。事実、話を聞いてみますと、あの北海道の問題のありますところの千島の島々は、ソヴイエトの水産五ヵ年計画の手が廻りかねて魚がうようよしておりまして、うつかり近寄りますと魚のために漁船が沈沒をするのが事実だそうでございます。併しこれをとらまえに行けばとつつかまる。(「誰がつかまえるのか」と呼ぶ者あり)而もアメリカは、よろしい。それではいい話がある。一つ古ぼけた巡洋艦を貸してやるから、武力的に行つたらいいじやないか。日本漁業の途は、アメリカの意図する條約の向う方向は、まさにそれであります。これが果して日本漁業家にとつて採算のとれる途でありましようか。
 ところが今一つの途があります。それはやはり今この商業新聞で読み上げましたように、カムチャッカ、揚子江の河口、済州島の北方、北朝鮮の沖、これらの真に世界的な漁場を開拓することであります。そういたしますと、或いは保守党のかたは、おれたちはすでにサンフランシスコ條約に対して白票を投じているから、全面講和がなければこういう解決はないのじやないかというふうに、私は恐らく思い詰めておられると思うのであります。それはまあ非常に潔癖な、さすがに保守党のかたがたは潔癖なお考えで結構だと思います。併しこの事実には、この逆のやりかたも又僕はあると思うのであります。この漁業問題を解決することによつて、私は講和問題を、このいびつな戰争への講和條約を、全面的な平和への條約に解決する途があるのではないか。私は賢明な議員諸君に、これ以上のことを申上げる必要はないのでありますから、これを以て討論を終りたいと思う次第であります。(拍手)
#62
○議長(佐藤尚武君) これにて討論の通告者の発言は全部終了いたしました。討論は終局したものと認めます。
 これより本件の採決をいたします。本件を問題に供します。委員長報告の通り承認することに賛成の諸君の起立を求めます。
   〔賛成者起立〕
#63
○議長(佐藤尚武君) 過半数と認めます。よつて本件は承認することに決しました。(拍手)
     ―――――・―――――
#64
○議長(佐藤尚武君) この際、お諮りいたします。鬼丸義齊君から、病気のため会期中、請暇の申出がございました。これを許可することに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#65
○議長(佐藤尚武君) 御異議ないと認めます。よつて許可することに決しました。
 本日はこれにて延会いたします。次会の議事日程は決定次第公報を以て御通知いたします。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後五時二十四分散会
     ―――――・―――――
○本日の会議に付した事件
 一、日程第十五 中華民国との平和条約の締結について承認を求めるの件
 一、日程第十七 インドとの平和条約の締結について承認を求めるの件
 一、アジア諸国との友好促進に関する決議案
 一、日程第十六 北太平洋の公海漁業に関する国際條約及び北太平洋の公海漁業に関する国際條約附属議定書の締結について承認を求めるの件
 一、議員の請暇
ソース: 国立国会図書館
姉妹サイト