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1951/02/13 第13回国会 参議院 参議院会議録情報 第013回国会 法務委員会 第4号
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1951/02/13 第13回国会 参議院

参議院会議録情報 第013回国会 法務委員会 第4号

#1
第013回国会 法務委員会 第4号
昭和二十七年二月十三日(水曜日)
   午後二時二分開会
  ―――――――――――――
 出席者は左の通り。
   委員長     小野 義夫君
   理事
           宮城タマヨ君
           伊藤  修君
   委員
           小滝  彬君
           長谷山行毅君
           岡部  常君
           一松 定吉君
           羽仁 五郎君
  政府委員
   法制意見長官  佐藤 達夫君
   法務府法制意見
   第四局長    野木 新一君
  事務局側
   常任委員会専門
   員       長谷川 宏君
   常任委員会専門
   員       西村 高兄君
  説明員
   法務府検務局刑
   事課長     神谷 尚男君
  ―――――――――――――
  本日の会議に付した事件
○小委員の選任の件
○ポツダム宣言の受諾に伴い発する命
 令に関する件に基く法務府関係諸命
 令の措置に関する法律案(内閣送
 付)
  ―――――――――――――
#2
○委員長(小野義夫君) 只今より委員会を開きます。
 先ず小委員の選定についてお諮りいたします。先般新たに法務委員になられました吉田法晴君より小委員に加わわりたい旨の申出がございました。つきましては吉田君を新刑事訴訟法の運用に関する小委員及び戦争犯罪人に対する法的措置に関する小委員に指名いたしたいと思いますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#3
○委員長(小野義夫君) 御異議がないものと認めます。さよう決定いたします。
  ―――――――――――――
#4
○委員長(小野義夫君) 次にポツダム宣言の受諾に伴い発する命令に関する件の廃止に関する法律案、ポツダム宣言の受諾に伴い発する命令に関する件に基く法務府関係諸命令の措置に関する法律案、国の利害に関係のある訴訟についての法務総裁の権限等に関する法律の一部を改正する法律案、以上三案は前会におきまして便宜一括議題に供しますことにいたしましたのでありますが、その中でポツダム宣言の受諾に伴い発する命令に関する件に基く法務府関係諸命令の措置に関する法律案、第一条の将来存続すべき命令について、政府の詳細なる説明を願います。
#5
○政府委員(野木新一君) それではポツダム宣言受諾に伴い発する命令に関する件に基く法務府関係諸命令のうち、将来存続すべき命令、即ち法律案第一条に掲げてあります四つの勅令及び政令につきまして、その内容を御説明申上げます。
 先ずこの番号の順序に従いまして最初に政治犯人等の資格回復に関する件から始めます。なお、これら存続の諸命令につきましては、お手許にその内容の全文を掲げましたガリ版ずりの印刷物を差上げてございますが、それを御覧になりつつお聞き取りを願いたいと思います。
 この政治犯人等の資格回復に関する勅令でございますが、これは昭和二十年十二月十九日付の連合国最高司令官の覚書即ち釈放せられた政治犯人に対する選挙権回復に関する覚書、これを実施するために同年勅令第七百三十一号、衆議院議員選挙人名簿の特例に関する件という勅令と同時に制定せられたものであります。連合国最高司令官は、御承知のように昭和二十年十月四日付で政治的、民主的及び宗教的自由に関する制限の撤廃に関する覚書を発しまして、いわゆる政治犯人の釈放及び治安維持法以下の法令の廃止を指令いたしたわけでありますが、この十二月十九日付の選挙権回復に関する覚書もそれと相関連するものであります。実はこれら釈放された政治犯人につきましては、大部分昭和二十年十月十七日の恩赦によりまして赦免或いは復権していたのでありまするが、なお綿密に吟味いたしてみますと、或いは一所為数法の関係、牽連犯の関係等で、これら釈放せられた政治犯人或いはこれに準ずるもの、即ち例えば治安維持法違反者でありますがすでに当時までに刑が満了して出てしまつておつたもの、そういうようなものを全部考えてみますと若干復権洩れがあるように考えられましたので、指令の趣旨の万全を期するためにこの政治犯人の資格回復に関する勅令を制定いたしたわけであります。こういうような事情でありまして、この政令によつて資格を回復したという人数は、一般に想像されておるよりも遥かに少くて、せいぜい数十名くらい程度であると当時推算せられたわけであります。殆んど大部分は恩赦によつてすでに赦免復権されておつたわけであります。この勅令をなぜ将来存続せしめる必要があるかといいますと、この勅令は第一項に見えておりますように、「別表一二掲グル罪ヲ犯シ本令施行前刑ニ処セラレタル者ハ人ノ資格ニ関スル法令ノ適用ニ付テハ、将来ニ向テ其ノ刑ノ言渡ヲ受ケザリシモノト看做ス」というように「看做ス」ということになつておりますので、やはりこの勅令自体を存続せしめないと「看做ス」ということがなくなつてしまいはせんか。そう見られますのでこの勅令を将来に向つて存続せしめいささかも疑義を生じないようにいたした次第であります。
 なおこの勅令の内容のあらましを御説明いたしますと、この別表一といいますのは、このうちの第三号の「刑法第百五条ノ四ノ罪」ですがそれを除いて、それ以外は大体先ほど申上げました大赦令の大赦に当る罪名に含まれているわけであります。即ち別表の一乃至三の刑法犯と申しますのは、不敬罪とか、外患罪、安寧秩序に対する罪であり、この「戦時刑事特別法第七条ノ四」と申しますのは、戦時において国政変乱を目的として著しく治安を害する事項を宣伝した罪であります。その他陸海軍刑法とここに書いてありますのは、いわゆる利敵の罪とか造言飛語の罪、政治に関し建議する罪等であり、その他に掲げております治安維持法、国防保安法、軍機保護法、軍用資源秘密保護法、要塞地帯法等のいわゆる思想防諜法規、新聞紙法、言論出版、集会結社等臨時取締法不穏文書臨時取締法等、いわゆる言論出版法規、大体そういつたものでありまして、これは当時総司令部側と連絡いたしまして、向うの意図しているところはこの程度にすべきであるというのでこの程度を含めてあるわけであります。いわゆる学説上の政治犯人というよりも、やや内容は広くなつております。このうち先ほど申上げましたように、刑法百五条の四の罪、即ち戦時、天災、事変に際し、暴利を得る目的で、金融界の撹乱、重要物資の生産、又は配給の阻害、その他の方法で国民経済の運行を著しく阻害する虞れある行為をした罪という罪だけは、大赦令に載つておりませんが、そのほかは全部大赦令に掲げてある罪と同じ罪であります。そういう別表一に掲げてある罪については原則として将来に向つては人の資格に関する法令については刑の言渡しを受けなかつたものとみなすといたしまして、例えば弁護士となるにつきましては、「禁こ以上の刑に処せられた者」は弁護士になることができないという資格の制限がありますが、その場合については刑の言渡を受けないものととみなして欠格条項にかからないようにいたしておるわけであります。但しその但書が付いておりまして但書の一号、二号に当るような場合には、例外といたしまして、資格に関する法令について刑の言渡を受けなかつたものとみなさないことといたしたわけであります。この第一号の場合、即ち「別表一二掲グル罪に該ル行為ガ同時ニ別表二二掲グル罪名ニ触ルルトキ又ハ別表二二掲グル罪ニ該ル行為ノ手段若ハ結果タルトキ」こういうような場合には、刑の言渡を受けないとみなされないわけであります。別表二に掲げてある罪はどういう罪かといいますと、重要な刑事犯罪及び統制犯罪を拾つてあるわけであります。即ち別表二の一は、これはいわゆる刑法第二編の各本条の罪でそのうち別表一に掲げた以外のものを全部拾つてあるわけであります。その他二号以下は、いわゆる刑事犯的なものの重要なのをずつと拾つてあるわけであります。それから別表十乃至十三は重要統制法規違反を拾つてあるわけであります。このように刑法犯、それから特別法犯のうち、特に暴力的なもの及び統制法違反のうち重要なもの、こういうものを拾いまして、こういう罪と別表一に掲げられてある罪とがいわゆる一所為数法とか牽連犯とかいつた関係になつておるような場合には、本文の刑の言渡を受けざりしものとみなすというところから除外しておるわけであります。これは大赦令のほうも大体同じ考え方になつております。次に二号のほうは、別表一に掲ぐる罪と別表二に掲ぐる罪との併合罪について、併合して一個の刑に処せられたときというのでありますが、これは例えば治安維持法と殺人罪というものの併合罪におきまして、そうして一個の罪に処せられておる場合には、例えば治安維持法は大赦になつても殺人罪は大赦になつておらないわけであります。こういうような場合には純然たるいわゆる政治犯というよりも殺人というような暴力的なものがついておりまして、これは司令部のほうの意図からいいましてもそういうものまでも含む意思はないということでありまして、私どももそういう重い暴力的な犯罪までもこの資格回復の範囲に入れるのは不当と存じまして、二号のそういうような除外例を置いたわけであります。この二号の但書は「但シ別表二二掲グル罪ニ付既ニ大赦アリタル場合ヲ除ク」というのは、別表二に例えば総動員法違反の罪があるわけであります。総動員法違反と治安維持法違反の併合罪を考えますと、総動員法違反の罪も大赦になつております、治安維持法違反の罪も大赦になつておりますので、こういう場合には二号から更に除いて、更にそういうものは刑の言渡を受けなかつたものとみなすという原則にかえることにいたしたわけであります。
 次に第二項でありますが、ややわかりにくい規定でありますが、これは別表一に掲ぐる罪と別表一及び別表二に掲げざる罪、即ち若し第三表とでもいうべきものがありますれば、第三表に掲げた罪ともいうべきもの、即ち例えば普通の取締法違反というような、そういう法規違反であります。例えば治安維持法と普通の何が狩猟法違反とかいつた普通の取締法規違反、そういうものとが併合罪になつておりまして、併合して一個の刑に処せられたような場合におきましては、別表一に掲げる罪につきまして、特に大赦があつたときは、即ち今挙げました例で申しますと、治安維持法違反と狩猟法違反とが併合罪であるような場合には、治安維持法違反について大赦がありますので、狩猟法違反についても前項の規定を準用するということで、狩猟法違反についてもその刑の言渡を受けなかつたものとみなすと、そういう関係にいたしまして、狩猟法違反の罪につきましても治安維持法の罪とひつくるめて刑の言渡を受けなかつたものとみなし、指令の趣旨に副うことにしたわけでございます。この第二項の点は大赦令と建て方が違うわけでありまして、大赦令ではこういう場合には狩猟法違反がついておりますので、狩猟法違反のほうで大赦になりませんので、依然として資格が回復しないという場合があり得たのでありますが、政治犯人等の資格回復に関する勅令によりましてそういうような比較的軽微な罪、つまり別表第二に掲げたような重大な刑事犯罪、及び統制犯罪に当らない、それ以外の罪は比較的軽微なものとみなしまして、いわゆる政治犯人でそういうものを同時に犯している場合には、その軽微なほうの罪の故に資格の回復をさせないということにしないで、一緒にひつくるめて復権と同様な資格回復の効果を与えてやろうということにいたしたわけであります。
 次に第三項の規定は第一項の将来に向つてという文字と相照応するわけでありますが、念のためこういう規定を置きましてこの資格回復の効果は既往には遡らない、将来に向つてのみであるということを明らかにいたしたものであります。
 次に第一条第二号の、婦女に売淫をさせた者等の処罰に関する勅令でございますが、これは昭和二十一年一月二十一日付の最高司令官の覚書、日本における公娼廃止に関する件に基きまして制定されたものであります。この指令の内容は大体次の二点でありますが、その一点は日本における公娼の存続はデモクラシーの思想に違背して、且つ全国民間における個人の自由発達に相反するものであるということ、その二点は日本政府は直ちに国内における公娼の存在を直接乃至間接に認め、若しくは許容せる一切の法律命令その他の法規を廃棄し且つ無効ならしめ、且つ該法令の趣旨の下に如何なる婦人をも直接乃至間接に売淫業務に契約し、若しくは拘束せる一切の契約並びに合意を無効ならしむべしというような趣旨になつておるわけであります。この指令の関係で第二号の勅令は出たわけでありますが、この勅令は第一条におきまして、婦女にその自由意思に反して売淫を張制することを禁止し、第二条で婦女に売淫させることを内容とする契約をすることを禁止するということをいたしておるわけでありますが、これは両々相待ちまして、身心に拘束を受けて売淫させられたり、又売淫せざるを得ないような地位に置かれることから婦女を保護しようとするものであります。これを将来存続せしめるべきもと考えましたのは、婦女を自由意思によらない醜業から保護すべき法規といたしましてはこの勅令は最小限度のものでありまして、これは同時に新憲法の人権尊重の精神にも通じ、又我が国が国際社会に伍して民主的な国家として行くためには、この程度の法規は必要欠くべからざるものと考えますので今後存続すべきものといたしたわけであります。
 この内容をなお御説明を申上げますと第一条の「暴行又は脅迫によらないで婦女を困惑させて売淫をさせた者」というわけでありますが、暴行脅迫という手段を用いた場合には刑法に触れるわけでありますが、その程度に達しない者でも婦女に自由な意思や判断を拘束するような強制方法を用いて売淫させる行為がございますので、そういう刑法には触れない場合をここで拾つて規定したわけであります。例えば貸金の弁済を強く督促して支払えない場合、売淫による利益で弁済せよというように要求して売淫させるというようなものなどはこれに入るのではないかと存じておるわけであります。次に第二条の「婦女に売淫させることを内容とする契約をした者は、」と申しますのは、婦女を売春婦に拘束することを内容に含む契約の趣旨でありまして、言い換えますと売淫させようとする酌婦の抱主等とその婦女又は婦女に事実上支配力を存ずる者との間に締結される契約がこれに当るわけであります。従いまして、売春の相手方となろうとする者と婦女又は婦女の抱主等の間に締結される契約は、通常これに含まれないわけであります。
 次に第三の沖縄関係事務整理に伴う戸籍、恩給等の特別措置に関する政令でございますが、「北緯二十九度以南の南西諸島、小笠原諸島、硫黄列島及び南鳥島」には、現在、我が国の行政権が及ばないことになつておるのでありまして、これらの「地域に本籍を有する者の戸籍及び寄留事務で、本籍地の市町村長の管掌すべき」事務は、どこか我が国の政府機関に管掌させる必要があるわけであります。本令の第一条は、このような「事務を法務府令で定める法務局に勤務する法務府事務官で、法務総裁の指定する者が、管掌する。」ことを定めまして、当該事務のために「法務局の支局又は出張所」を設けることを認めたものであります。第二条は恩給関係でございますが、恩給法第十六条の規定によりますと、都道府県から俸給を受ける文官、公立学校の教育職員及び最終俸給を都道府県から受けた警察職員等に給すべき恩給は、都道府県の負担とされておるわけでありますが、沖縄県に係る負担につきましては、同法の特例を定めまして、国庫において負担をすることが適当でありますので、その旨を規定したものであります。又恩給法十二条の規定によりますと只今申上げたものにかかる恩給を受くる権利は沖縄県知事が裁定することになつていますが、同法の特例を設けて総理府恩給局が裁定する必要があるのでこの旨を規定いたした次第であります。この政令は、只今申上げました地域が講和条約後もなお当分の間我が国の行政権が及ばないということになりますので、引続きこういう措置を講じておく必要がありますので存続せしめることにいたしたいと思うのであります。
 次に第四の会社等臨時措置法を廃止する政令附則第五条第七条及び第九条を存続せしめる関係でございますが、元来会社等臨時措置法は戦時中における会社その他の法人に関する法律の特例を定めたものでありまして、これも昭和二十三年十一月の制限会社に対する規制に関する件」という覚書の第三項でその廃止を指令され、その指令実施のためにこの政令が制定されたわけであります。この政令は会社等臨時措置法及び会社等臨時措置法施行令を全面的に廃止したものでありますが、ただその附則で若干の規定につきましては特定の時期、又は場合を限つて法令廃止後もなお効力を有せしめることといたしまして混乱を防いでおるわけであります。今回その附則で現に効力を存続せしめられている規定のうち、なお先ほど申上げました五条、七条、九条の三カ条を将来もなお効力を存続せしめる必要がありますので、その手当といたしまして本案第一条第四号にこれを掲げた次第であります。
 以下存続すべき規定の内容を申上げますと、この政令附則第五条は昭和二十四年十二月三十一日までになされた社債の登記につきまして、その総額の償還があつたことの登記があるまで旧法第五条及び第八条、並びにこれに関連する施行令の規定の効力を存続せしめるものでありまするが、旧法第五条を申しますのは、特定の会社につき社債の登記を簡略化したものであり、旧法第八条と申しますのは、会社以外の法人につき債券の登記を簡略化したものでありまして、旧法の有効期間内になされたこれらの登記は非常に厖大な数に上り、旧法廃止後これらの登記をやり直すには多大の手数と費用を要し、無駄であり、而もその必要もないところでありますので、これらの登記にはその総額の償還の登記あるまで旧法を適用するものとしてその効力を存続せしめたのでありますが、今日におきましてもその登記についてまだ総額の償還の登記がされてないものが相当数存在するのであります。そこで附則第五条をなお将来存続させる必要があると認めたわけであります。
 次に附則第七条は、これは特に説明するまでもなく廃止政令施行前にした行為に対する罰則適用については、旧法の第九条の規定の効力を存続せしめる趣旨のものであります。
 最後に附則第九条は、旧社債等登録法第三条第一項第二号の規定に基きまして、登録した社債について旧社債等登録法の規定を適用しようとするものでありますが、旧社債等登録法第三条第一項第二号は、社債発行会社又は社債募集の受諾会社が債券を発行しないで社債登録の請求ができるものとするのでありまして、若しこの規定が効力を失つたならば、社債発行会社は社債の登録を抹消いたしまして、債券を発行しなければならないわけでありまして、莫大な費用と手数を要することになるのであります。そこでこれらの社債の償還のあるまでは旧法の効力を存続させるのが相当であるわけでありますが、今日も只今申上げました登録社債は多数存在しますので、今後もこの規定の効力を存続させるのが相当だと考えるわけであります。
 大体以上をもちまして本案第一条に掲げました四つの命令の内容及び存続理由の御説明を終ります。
#6
○委員長(小野義夫君) 次にこの三案、他の二つの法案を含む三案につきまして質疑のあるかたは順次御発言を願います。
#7
○伊藤修君 先ず佐藤さんに一つ、第二の、婦女に売淫をさせた者等の処罰に関する勅令の第一条の、困惑させたという、この困惑させたという意義を伺いたい。
#8
○政府委員(佐藤達夫君) 先ほどちよつと野木政府委員から触れたのでありますが、要するに暴行脅迫というところまで至らない段階のものについても、これをとめる必要があろうということから、これに準ずる形のものを困惑という言葉で表現したのであります。実は立案の当時のことを今思出すんでありますが、この困惑という字には誠に困りまして、困惑したわけでございますが、結局よいちえが出ないでこういう言葉を使つたのであります。よい言葉であるとは必ずしも思いませんけれども、趣旨は今申しましたような趣旨で、これでまあ理解できると私どもは思つております。先ほど野木君が例を挙げましたが、貸金というようなものに引つからめて、非常に困らせて本来の自由の意思を拘束するというような場合を考えたものでございます。
#9
○伊藤修君 そうすると、貸金をしておれば困惑の中に入るんですか。貸金をしておつて今少し動的な状態に入らなければならんのですか。例えば貸金の請求をするというところまで行かなければならんのか。貸金という事実だけあれば困惑といううちに入るのか。
#10
○政府委員(佐藤達夫君) 貸金をしただけでは困惑に入りませんので、貸金を一つの言いがかりとしてこれを至急返してくれ、然らずんばこういうふうにやつてくれ、というふうに貸金にからめて困らせてこれをやらすというふうに考えております。
#11
○伊藤修君 そういたしますと、貸主が黙つておれば本法の適用を受けないということになるというように了解しますが、併し実際問題といたしましては、婦女が多額の借金をしよえばその精神的の束縛というものは免れないと思います。日本の過去におけるところの公娼制度の弊害はそこにあると思うのでございますが、又日本人の人柄から見ましても、日本婦女の生活状態、考え方、その程度では常に借金というものに非常な重大な責任を負うという慣わしがあるのです。必ずしも廓主なり雇主なりがその請求をしなくても婦女自体はその借金に対するところの拘束を受けることの心理的な圧迫というものは甚だしいものであります。いわゆる廓の習いとして借金に対しましては生命を以て償うという考え方が廓の習いである、これは日本文学の上からいつても過去のいろいろな表現によつてもいつも示されていることなんです。そういうことも含まないということであつては本法の趣旨は骨抜きですよ。これを以て今後におけるところの日本に、いわゆる世界に対して公娼なしということが言切れるかどうか、それはいわゆる表面をつくろつて、実質に公娼制度を存続せしめるということとひとしいものであると思う。私はさような考え方でこの勅令を存続せしめるということは余りにも無責任ではないかと思います。
#12
○政府委員(佐藤達夫君) おつしやるところは誠に御尤もだと思います。私もその通りに考えます。ただ法律の条文或いはこういうポツダム命令として規正を加えるという立場から申しますと、例えば今の貸金の場合に例をとりましても、貸金そのものが自由意思でどうしても金に困つて自由な意思に基いて金の貸借が行われる、その段階ではやはり貸借で縛るということはできませんし、それから先にプラス何かがどうしてもくつ付かなければなりません。そういたしますと、そのプラス何かというものをここで切るということが技術的にはむずかしいということにまあなるわけであります。それからもつと飛躍いたしまして、只今お示しのように、およそ公娼制度といわれるようなこういうもの自身を根本的にやめるという問題が大乗段から出て参ると思います。これは極めて大きな問題であつて、御承知の通り各府県或いは市町村の自治体で只今いわゆる売淫条例と申しますか風俗関係の条例を作つておりますが、そういうふうに各自治体で自主的の立法に任して行くべきか、或いは国の法律でもつて統一的にこれをやつて行かねばなるまいか、という又大きなそこに方針の問題がございまして、我々としてはまだそこの決断がついておらない次第であります。
#13
○伊藤修君 そうすると結局前借制度ということは認めるということになるのですか。従来は司令部の何か命令か何かでもつて前借制度は禁止しておるように聞いておつたのですが、従つてそれに基いて従来の日本の公娼を全部解放したというふうに見ておるのですか。その法的根拠はどこにあるのですか。
#14
○政府委員(佐藤達夫君) 前借制度そのものは禁止になつておらないように了解いたしております。
#15
○伊藤修君 併し従来の総司令部の扱い方といたしましては、又現に日本に存在するところの全国二十五万の公娼制度の下に生活を営んでおる者の考え方といたしましては、いわゆる前借制度というものは禁止されておるものだと、かように考えておるのですが、そういう規定を本法中にまかなわんで、従来の総司令部の考え方及び世界の連合国の人々の考え方というものを満足せしむるものかどうか。
#16
○政府委員(佐藤達夫君) お答えがちよつと不十分でございましたが、前借制度と一言に申しましても、今のポツダム勅令の第二条で「売淫させることを内容とする契約」ということに伴うものがたくさんございます。私の言葉が足りませんでしたが、その契約に当るものは勿論この第二条によつて禁止をされておるというふうに申上げるべきであつたと思います。
#17
○伊藤修君 そういたしますれば、先どの御説明のように、第二条によつて、前借の契約がある、そうして事実上売淫行為が本人の自由意思に基くのだ、こうは言うけれども実際そういう上屋においてそういう取引がなされるということになりますれば その目的はやはり第一条の目的である、従つていわゆる貸金は困惑せしめるというものの中に含めるという解釈をとらない以上は納得できないのです。そのことは総司令部の命令の趣旨にも私は反すると思うのです。そういう御解釈ならば本法中にそれを明らかに前借制度の否定を明記すべきものじやないでしようか。
#18
○政府委員(佐藤達夫君) なかなかむずかしい問題であろうと思います。私どもからお答えをいたしますならば、先に申しました通りに、この二条で売淫を内容とする契約というものを押えておりますからして、それに伴う前借関係等もこれで大部分は禁止制限ができ得るかと考えております。それに更にプラスいたしまして、第一条の関係で暴行或いは困惑関係等を押えておりますからして、一通りの手当にはこれはなつておるというように言えると思います。
#19
○伊藤修君 第一条の説明が政府の今後におけるところの見解だということになりますれば、従来終戦後今月までとつて来たところの日本のいわゆる事実上存するところの集娼制度、公娼とは申しませんけれども、集娼制度の中において現に前借ということはみずから否定しておるのです。前借は犯罪であるというふうにも考えておるのです。にもかかわらず第一条においてこれを賄わないというお考え方だと、そこに大きな問題が生ずると思うのです。それは第二条は賄うのだという断定が下されるならそれはよろしいのです。第一条で賄わない、第二条においてはそういう目的があつた場合だけはということになると、そうすれば婦女は上屋の階下において営むところの喫茶室において喫茶をさせるだけだ、それから以降の両者間の取引行為については何らその契約に含まれていない、それは自由意思に従つて貸借とは切離して考えるべきだという、そういう機械的な御解釈若しくは取扱をなさつたならば、事実上従来の売淫制度に、公娼制度に復元するという形になつて来るのです。恐るべき結果を生じて来ると思うのです。この点に対する見解をはつきりしておきたいと思います。
#20
○政府委員(佐藤達夫君) 説明の順序が機械的になりまして一条を先に申上げましたために大変申訳ないことになりましたが、お尋ねの趣旨はやはり第二条が重点になつておると思います。先ほど申しましたように、この全部が全部今お示しのような事例がこれに入るかどうか、それは一概に断定はできませんけれども、少くとも売淫をさせるということが内容になつておる契約というものであれば、前借の伴う場合、これは大部分であろうと思います。それは第二条によつてここで制限をされておる、こういうふうに申上げたいと存じます。
#21
○伊藤修君 今御説明を伺つておりますと、結局法律家若しくは達識の人でないとその解釈は出て来ないのです。さような状態において今後の日本の集娼制度が事実上存在するのですが、それを全体を賄い、婦女の身体の自由というものを保護しようということの目的は私は達せられないと思うのです。本法については非常な不備であるのですから、これを根本的に改廃するという御意思はないのですか。
#22
○政府委員(佐藤達夫君) この関係においては深く掘り下げまして、いろいろな観点からもつと完璧なるものを作るべきではないかという考えを我々は持つております。従いまして何もこの形のもので永久にこれを続けて行こうという趣旨ではございませんので、更に検討を加えまして単独の立法の形にして周到なる用意の下に必要なる規定を設けたいとそういう心組には全然変りないのであります。その心組でおる次第でございます。
#23
○伊藤修君 然らばいわゆる廃止すべき法律命令のほうへ、これを含めてその廃止すべきのうちに三段階に分れております、即ち新らしく立法する、或いは改正する、というその三つの部類のうちにいわゆる重大なる改正をするという部分に含めて、この御提案の法律の中から削つていわゆる将来六カ月なりのうちに新らしく構想を練つて御提案になるという部類に入れて本法の中にはこれを削除すべきではないでしようか。今のあなたの御説明ならば当然そうすべきが本当じやないでしようか。
#24
○政府委員(佐藤達夫君) 売春関係の取締の法制化につきましては、御承知の通りに我々として一案をこしらえて、たしか提案申上げたようなことも過去においてございました。そういうことはやりましたけれども、やはりこれはいろいろな点で複雑な問題を含んでおるということで、その後更に研究を続けつつ今日に至つておるわけでありますが、我々としては先ほど触れましたように完璧なものを作りたいという望みは依然として捨てておりません。従いましてこれはこれとして存続さして頂いて、直ちにこれからこれの改正についての措置を進めて行つて、これとその完成の曉においてすり変えるということが一つの一番間違いのない方法であろうというふうに考えておるのでございます。
#25
○伊藤修君 提案理由中にはつきり私が先ほど申しましたごとく、いわゆる改正を要するものはこの際改正を要する部類に取扱つて本法には提案しなかつたということも言つておるのです。あなたの今の御説明を伺つておりますれば当然改正するのだ、これでは満足しないのだとおつしやつている以上は、その部類に入れて本法では外しておいて至急速かに成案を得て御提出になるべきはずじやないかと思うのですが、すでにある案は出して本院の審議もあつたのでありますから用意は相当できておることと存じます。現在あなたの御説明を伺つてもこれでは満足できないのだとおつしやつている以上は、速かにそこは虚心坦懐本法から外しておいてそうして新らしくまとまつたものをお出しになる、こういう手続をお取りになるべきが提案理由の説明趣旨からいつてもまさに取るべき手段ではないでしようか。
#26
○政府委員(佐藤達夫君) 前の企てが首尾よく成功しておりますれば何も今こんな問題はないのでありますけれども、いろいろな経験を我々持つております関係上、それらの経験をも総合いたしまして間違いのないものを作りたいというのでありまして、今この際ということも一つの方法でございますけれども、暫く時間をお与え願いたいというのも一つの又方法じやないかというふうに考えて、十分研究いたしますということを申上げたいと存じます。
#27
○伊藤修君 くどいようですけれども、この際すぐ出せと申しておるのではないのです。本法は外しておいても六カ月以内は効力を持つておるのですから、その六カ月以内に成案を得てこれをお出しになれば差支えないのです。本法で満足するのだ、これでもつて日本におけるところのいわゆる売春制度に対する基本法として模範的なものであるというお考え方ならよろしいのですが、そうじやない。御提案者の御意思自身もこれでは満足できるものではない、それによつては婦女の身体の自由を保護することには全きを得ないのだという御説明ならば、してみますれば当然これは改廃されることが予期され、又改廃する御意思であるということになりますれば、六カ月以内という有効期間がありまするからその間に御提案になれば差支えないのですから、本法においてはこれを外して廃止すべき法律のほうへ外しおくか或いは本法に謳わずにおけばいいと思うのです。当然六カ月のうちに自然消滅されるのですから、特に廃止されるというあれをせずに、本法中に掲げずにおけば六カ月の効力を生ずるのです。その間に成案を得てなされば差支えないと思うのです。すでに基本的なお考えというものは御研究が積んでいらつしやるはずですから、新らしい時勢に対する方法と、社会事情をもいろいろなものの観点を加味して御提案になれば差支えないのですから、およそ法律を作る場合におきましてはただ一時の場ふさぎということは私は避くべきじやないかと思う。而も占領治下と独立国家との切替えでありますから、何も占領治下においてアメリカさんの考え方をそのまま我々が受継がなくちやならんという理窟はない。六カ月をなお存続せしめるところの法的根拠を持たしておるのですから、基本法のほうで、一般法のほうで持たしておるのですから、その間に十分我々は考えられるのです。又本国会中に仮に御提出になるといたしますれば、少くとも本国会は会期が延長されることは予想される。会期が延長されぬとしてもまだ今後八十日ほどあるわけですから、してみますればその間に十分御提案ができることと思います。そういう御処置をとらず、ただ占領治下において行われた法律で以て、まあ少し便利だという程度のものはそのまま残しておくという安逸を貪るということは法制局にいらつしやる御努力家の佐藤さんに似合わないと思うのです。だからこれはもうちよつと手をおつけになりますればできることなんだから、かような笑われるような法律は存続せしめるべきものじやないです。やるならばもつとしつかりした法律を作るべきだ。各地方町村に区々たる条例に任して実際上の効果もなく徒らにその業界におけるところの混乱を生ぜしめておるというようなあり方も好ましくないと思うのです。法律をおよそ出す以上はその法律が実際において社会生活に役立つものでなくちやならん。死文であつてはならないのです。守られないような法律ならば作る必要ないのです。だから私はそういう観点に立つて法律を作るならば守らるべき法律でなくちやいかん。それによつてその目的が達成されなくちやならん。又少くともか弱い婦女子がそれによつて保護を受ける建前をとらにやいかんです。今あなたと私と議論して法律解釈を研究しなくちやならんようなむずかしいあいまい模糊たる法律で以て、これを今後の独立国家として世界に誇るところの人権擁護が全きを得ているという誇りにならんと思うのです。これは御承知の通り降伏条件の中にも示唆されておるところの重要事項であるのです。そういう観点に立つてもまさにこの法律に対してはこの際確立する必要があると思うのです。ただ終戦の当時のどさくさまぎれにできたこの法律をあなた自身が立案せられるに困惑という、表現に困惑したとおつしやるような次第じやこういう法律をそのまま存続せしめるということは当を得たものじやないと思うのです。これは私はあなたに強い要求をいたしまして本国会中、若しくは六カ月の有効期間中に新らしい法律を提出すること、そうして本法からこれを外すこと、これを私は重ねてお伺いしておきたいと思います。
#28
○政府委員(佐藤達夫君) 伊藤先生のおつしやるところと私の望んでおりますところと完全にこれは一致しておると思います。ただその態度と申しますか、気持と申しますか、違うところは私のほうが実は伊藤先生よりも憶病なんで、私の考え方から申しますと、今の百八十日とおつしやいますけれども、これは結局百八十日その他大勢のこみにそれが入つて行くということになります。こういうふうにはつきりとこの名前を挙げましてここではつきり存続するという手当をしておきますれば、とにかく安心感はこれは我々の立場からして大変な違いだと思います。こういう安心感を先ず得ておいて、これは大事なポツダム勅令でありますからして、万一にもそれがのたれ死するようなことがあつてはならないというような意味から、安心感を得ておきまして、その基礎の上に立派なものを考えて行きたいというのが私どもの気持でございまして、結果においては完全に先生のおつしやるところと同じであろうと思います。従つてその御趣旨によつて努力いたしたいと思います。
#29
○伊藤修君 私はそうあろうと思うのです。佐藤さんほどのお方がそういう卑屈な態度をおとりになるということは、やはり役人だから一応提出してこれに対して固持されるというふうに私は了察しておきます。併しそれは一歩、国民のために而も独立国家として世界に我々は基本人権に対してこれほどの保障を与えておる、世界の吉原と言われる悪名を払拭するところの確固たる信念を独立国家として表現しておるのだという態度に私は出でて頂きたいと思う。何も手続の故、或いは議会のいろいろな思惑ということを考えずに、虚心坦懐、是なりと信ずるところを私はこの際あなたに断固として行なつて頂きたいと思うのです。ただ徒らに提案されたものを政府委員としてこれを維持するという御答弁でなく、真実我々と協力してやるという一つのお考えの下に、私も考え、あなたもそういうふうにお考えになつていらつしやる以上は、この際私は踏切つて頂きたい。そういたしませんと、この問題は結局あなたのようなことをおつしやつていらつしやると、二年たつても三年たつても将来永久に日本の吉原というものは存在する。日本は独立国家となつてもなお且つ封建的な一部がここに存在しているじやないか。殊に人身の保護に関して欠くるところあり、いわゆる一等国としての仲間入りができない、この点から非難攻撃を受けることは勿論であります。私はこの際勇躍して一歩踏切つて頂きたいと思うのです。重ねて一つあなたの御決意を伺いたい。
#30
○政府委員(佐藤達夫君) 先ほど申しましたところに付け加えるところはございませんが、まあちよつと触れましたように、前に売春取締法というようなものを立案してそれが思つた通りに順調に行かなかつたという、何と申しますか若干悲しい経験を持つておりますために、我々としてはどうしてもこれに安心感を得ておきたいというのが本当のところの気持でございます。
#31
○宮城タマヨ君 今もちよつと仰せになりましたが、第二国会で審議未了になつておりました売春等処罰法案が、今おつしやるようにその後ずつとそのままになつておつてそこに隘路があるようでございますが、その大きい点はどういうことでございましようか。
#32
○説明員(神谷尚男君) 第二回国会に提案されました売春等処罰法案によりますと、これは或る意味においては相当徹底した売春取締の法案でございまして、一つには売春行為そのもの、即ち婦女が自由意思によりまして売春する行為そのものも取締る、それからなおそれにからみまして客引、置屋の提供、そういつたもの、更には進みましていわゆる娼家の経営といつたものまでも取締るという相当理想的な案でございました。併し国会におきましていろいろな観点で反対を受けまして結局審議未了ということで終つたわけでございます。その法案がありますならば、これはまあ国としても強い意思を以て売春そのもの及び売春をさせる一切の行為を取締るという強い意思がはつきりするわけでございまして、取締当局としても強い態度であらゆるものに対して向つて行けるということになろうかと思います。併しこの勅令九号におきましても或る程度のことはできないことはないのでありますが、併し十分なものとまではまだ行かないように考えられます。ただこの問題につきましては、それぞれの人でいろいろな考えがございますところでございまして、まあ何としても一番大きな違いと申しますならば、結局いろいろな形で行われております、一見合法的なものにつきまして現在いろいろ証拠上の関係とかいうようなことで勅令九号の発動がむずかしい面がございますが、そういう面が完全にやられるかどうかということに違いがあるかと、かように考えられます。
#33
○宮城タマヨ君 続いて政府のこの問題に対します根本方針が私はどこにございますか、もう一ぺん重ねて伺いたいのでございますが、この勅令第九号は他人に売淫をさせたものを罰することになつておるのでございますが、売淫をした者それ自体を罰することにはなつておりませんでございます。そうすると、非常にこのままでございますと片手落ちの結果になりはしないかと思つておりますが、同時に売淫自体というものは社会悪ではないというように認められてもやむを得んと思いますが、その点は如何でございましようか。
#34
○説明員(神谷尚男君) 売淫そのものが社会悪ではないというようには考えておらないわけでございます。売淫というものはやはり社会悪であるということには違いない。むしろ社会のいわゆる必要悪とも言われるものではないかと思われるのでありますが、ただ戦後の売淫行為の増加ということになりますといろいろ複雑な社会問題の所産であるというようにも考えられまして、これに対処しますためには刑罰制裁の威嚇だけでは不十分である、そういう考え方、刑罰万能の考え方であるということも考えられるわけでございます。殊にこの前法案を提出されました際に特に議論が出されましたのはその点でございまして、やはり種々の社会施策なり社会政策なりが相伴わなければ、売春そのものを処罰するというのは少し早過ぎはしないかという点を種々指摘せられたわけでございます。そういつた観点からいたしまして、更に社会施設、社会政策というものが一段と徹底をみまして初めてやはりこれに対して処罰をもつて臨むべき問題じやないか、かように考えて参つておるわけでございます。従いまして売淫そのものを取上げましてこれを処罰しないということは考えておらないのでありまして、更にそのほかの社会政策の実施と相待ちましてかような処罰法案の立案ということについて適当な時期を見ておるというのが我々の考え方でございます。
#35
○宮城タマヨ君 今集娼窟に落ちております婦人で子供を連れております母親が非常に多いと私ども見ておりますのでございますが、そういう意味を今の御答弁で含めておつしやつていることなんでございましようか。つまりそういうものに対する更生施設を先ずして、というようなところにも隘路があるという御答弁でございましようか。
#36
○説明員(神谷尚男君) その点も我々の考慮の中には含まつておるつもりでございます。
#37
○宮城タマヨ君 実際に九号を数年間執行なさいました結果から申しますと、これだけによつて売淫行為というものを相当に抑圧しておるとお思いでございましようか。如何でございましよう。この効果は如何でしよう。
#38
○説明員(神谷尚男君) この勅令で最も効果を持つておりますと思われます点は、これによりまして公娼の制度の復活ということを阻止しておるという点であろうと思います。若しこれがなくなつた場合には恐らく又公娼制度というものが公々然と乗出して来るのじやないか、その点に対する抑圧の手段としては相当ものをいつておるものと我々は確信いたしております。
#39
○宮城タマヨ君 実際において、今例えば東京の吉原にしましても名古屋の中村遊廓にしましても、京都の島原にいたしましても、形は公娼制度はなしと言いますけれども、実際の公娼は以前にも増して盛んになつているということについて法務府の観点は如何でございましよう。
#40
○説明員(神谷尚男君) 各地におきましていろいろな形で公娼制度類似の形で行われておるようにも見られるのでありますが、併しこの勅令によりましてそれら業者のかたがたが自粛されておるという点は十分認められるのじやないかと思います。若しこれがなくなりますならば恐らく昔の形のような業者が強い態度に出るというようなことが復活してくるのじやないかと思われるわけでございます。
#41
○伊藤修君 今の説明員の説明はいわゆる国会の反対に会つたとおつしやつた。これはお取消を願いたいと思います。衆議院は恐らくこれは賛成して参議院に送つて来たことと思いますが、或いは衆議院においても審議未了であつたか知れませんが、いわゆる国会が反対したという意味じやない。あの法案は先ほど御説明のありましたごとく、趣旨において非常に徹底したものであるということは我々十分認める。併し当時の日本国の財政の見地からいたしまして、然らばあの法律を適用した結果生ずるところのあの業界の変動です。即ち業に携わるところの二十五、六万の人の受入態勢は国家は考えておるかどうか、これに対して厚生省におきましては何らの考を持つていない。又今日の財政状態においてできたいというわけです。又あの業界をあの法律の適用によつて若し制約するということになりますれば、いわゆる街のストリートガール、いわゆるパンパンが氾濫いたしまして、性病予防の見地からいたしまして国内の国民の保健という面において政府はそれに対するところの対策を持つておるかどうか、これに対しても何ち持つていない。そういうような観点からいたしまして、これらの携わる者も法律適用の結果どう処置すべきかということを国会は由来研究して参つたのであります。そういう意味においてあの法律案は審議未了になつた。政府が当時詳細にその点に対する確信を持つて御答弁しますれば、我々は恐らく法案を通すことにやぶさかでない、そういう意味において申上げたのです。ですからこの点お取消を願いたいと思います。
#42
○説明員(神谷尚男君) 私の申しましたことについて或いは言い過ぎがあつたかと存じます。その点は取消しいたしたいと思いますが、ただあの衆議院でも審議未了になつた点はその通りでございます。ちよつとその点に附け加えて申上げますならば、まあ成るほど今伊藤先生からおつしやられたようなことにつきまして、我々も又その後やはり反省いたしまして、各省との間にもこの点につきましてはその後も十分連絡しながらいろいろ研究して参つておるわけであります。ただまあ先ほど仰せになりました国家財政といつたような観点からいたしますならば、厚生省のほうでもまだ本当に十分な手は尽せない現状にありまして、尤も多少は、幾分かは施策は改善されておるように見受けられるのでありますが、まあ現在におきましても十分なことに至つていないのじやないかというふうに見られるわけであります、ただまあもう一言申上げますならば。その点だけは取消します。
#43
○宮城タマヨ君 この私がさつき政府の根本的方針を伺いたいと思つてお答えが十分でなかつたのでございますけれども、厚生対策におきましてはやはり厚生省の関係がありましようし、又これは法律でただ縛るということだけではなくて教育の面もありましようし、いろいろな面から申しますと文部省関係、厚生省関係、労働省関係といつたような私非常に複雑な問題が含まれておると思うのでございます。そういう各省との連絡、打合せというものについてはこの面に関しておできになつたんでございましようか。如何でしよう。
#44
○説明員(神谷尚男君) この売春対策というものにつきましては十分な連絡機関が設けられておるというところまで至つてないかと思います。ただ厚生省の社会局、児童局あたりが相当これに活発な動きを最近見せております。我々もそれに参加いたしましていろいろと意見を述べておるということはございます。
 それからなおちよつと問題は違いますかもわかりませんが、これも非常にこの問題と深い関連を持ちます人身売買といつたような問題についても最近は我々のほうで考慮をし検討を進めておるのでありますが、その点につきましては内閣に設けられております中央少年対策委員会のほうで、各省を集めまして協議連絡を遂げております。私の承知いたしておりますところでは、明日の次官会議におきまして各省の施策を統合いたしまして次官会議の決定というものが行われるように聞いておりますが、そういう面につきましては各省の間の連絡は相当進められておるということが申上げられるのじやないかと思います。
#45
○宮城タマヨ君 その売春婦の実態調査というものは、まあ集娼窟の問題にしましても散娼のものにつきましても実態調査は法務府でできておりましようか。
#46
○説明員(神谷尚男君) 実はまあそういう実態調査というものになりますと、ひとり当局が直接乗出してやるということはなかなかむずかしい問題でございまして、いろいろと社会のほかのかたがたにお伺いしている点はございますが、我々が直接乗り出してやつておるというようなことはやつておりません。
#47
○宮城タマヨ君 その警察のほうで調査いたしましたものの統計なんかは集まつておりませんでございますか。その報告をお集めになつたようなものはございませんでしようか。
#48
○説明員(神谷尚男君) まあ警察のほうで調べたものにつきましては、材料あたりは我々のほうでときどき受けております。但し今日は持合せておりませんでございます。
#49
○宮城タマヨ君 この条例を設けて取締をしております県はどのくらいございますのですか。
#50
○説明員(神谷尚男君) 全国で三十七の都道府県又は市町村があるのでございます。
#51
○宮城タマヨ君 その条例のございます所とまだ条例を作つておりませんところの、この売春婦の状態についてどういうふうに違つておりますでしようか。
#52
○説明員(神谷尚男君) 条例のございます所でもこの条例にもいろいろな立て方がございます。売春そのものを処罰するといつた、又はそれに関連しまして客引きとかその他の行為を処罰するという所と、それから売春そのものは処罰せず、ただ街頭で客引をしたり又は売春目的で道路上をうろついて勧誘したり、そういつたことだけを処罰するのもございますが、まあこの条例の主たる狙いはいわゆる散娼でございまして、条例がありまするならばそういつた意味の散娼の取締というものにつきまして十分なる効果を挙げ得るということになつて参るかと思います。
#53
○宮城タマヨ君 今まで散娼の取締はたいてい日本の警察でなくてGHQのほうでやつておりますものじやございませんですか、MPのほうが主体ではございませんでしようか。
#54
○説明員(神谷尚男君) 日本の警察でも相当最近では力を入れてやつておるように聞いております。
#55
○宮城タマヨ君 私ども参議院で二年余に亘りまして実態調査をいたしました。集娼窟の実態調査なんかいたしました結果から見ますと、成るほど公娼は廃止されておりますけれども実際のことはもう全く昔の公娼制度と同じで、利益の分配というものも何ら違つておりませんようでございますが、こういうことにつきまして非常に取締の手がぬるいように思つておりますが、意識的に手加減をしておるというようなことはございませんでしようか。大目に見ておけというような意味合ではないかと思いますが如何でしようか。
#56
○説明員(神谷尚男君) 昔のいわゆる公娼と、現在の存在しておるそれに類似するものとは同じようなものかどうかという点でございますが、この点は我々の聞いておりますところではやはり相当違いがあるように聞いております。昔の関係ではやはり何と申しましても、いわゆるかごの鳥といつたような環境に置かれて外出も非常に不自由である、殊にその当時は内務省の娼妓取締規則というようなものがございまして、公然と取締規則に服しておつたような関係でございます。現在ではそういうことでなくて、むしろ、例えば私これは伝聞でございまして果して本当かどうかわかりませんが、東京の吉原などにおきましても平均三、四カ月ぐらいしかおらない、むしろ前借などもふみ倒してよそへ行くというような者が多いというように聞いておるわけでございます。そういつた意味で昔ならばそういつたことがなかなかむづかしかつたのが、今日ではむしろそういうことを平気で行うといつたような状況で、大分違いがあるじやないかと思われるのでございます。
#57
○宮城タマヨ君 その実態につきましては、私ども参議院におきまして十分年を重ねて調査いたしておりますので、先ほどから話に出ました前借関係、それから利益の分配というようなことについても、もう二年前のことになりますから極く最近のことはわかりませんけれども、十分調査しているつもりでございますが、今お話になることなんかとは大分違つておると思います。私の質問はこれで打切りますけれども、法務府の方へ集まつておる資料がございましたら、委員長、出して頂きたい。
#58
○委員長(小野義夫君) 何か警察なり取締の方面から現われた資料があるならば一つ。
#59
○説明員(神谷尚男君) 各地の売春取締条例あたりを集めたものもございますので、なおそれに適当な資料を集めまして、後日成るべく早く差上げたいと考えております。
#60
○委員長(小野義夫君) それではこの問題は次の会に質問を続行することにして、本日はこれで散会いたします。
   午後三時二十七分散会
ソース: 国立国会図書館
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