くにさくロゴ
1951/02/14 第13回国会 参議院 参議院会議録情報 第013回国会 法務委員会 第5号
姉妹サイト
 
1951/02/14 第13回国会 参議院

参議院会議録情報 第013回国会 法務委員会 第5号

#1
第013回国会 法務委員会 第5号
昭和二十七年二月十四日(木曜日)
   午前十一時二十六分開会
  ―――――――――――――
 出席者は左の通り。
   委員長     小野 義夫君
   理事
           宮城タマヨ君
           伊藤  修君
   委員
           小滝  彬君
           長谷山行毅君
           岡部  常君
           一松 定吉君
           羽仁 五郎君
  政府委員
   法務府検務局長 岡原 昌男君
  事務局側
   常任委員会専門
   員       長谷川 宏君
   常任委員会専門
   員       西村 高兄君
  説明員
   法務府検務局刑
   事課長     神谷 尚男君
   厚生省公衆衛生
   局防疫課長   館林 宜夫君
   労働省婦人少年
   局婦人課長   田中壽美子君
  ―――――――――――――
  本日の会議に付した事件
○ポツダム宣言の受諾に伴い発する命
 令に関する件の廃止に関する法律案
 (内閣提出、衆議院送付)
○ポツダム宣言の受諾に伴い発する命
 令に関する件に基く、法務府関係諸
 命令の措置に関する法律案(内閣送
 付)
○国の利害に関係のある訴訟について
 の法務総裁の権限等に関する法律の
 一部を改正する法律案(内閣提出)
  ―――――――――――――
#2
○委員長(小野義夫君) 只今より委員会を開きます。
 本日は昨日に引続きポツダム宣言の受諾に伴い発する命令に関する件の廃止に関する法律案、ポツダム宣言の受諾に伴い発する命令に関する件に基く法務府関係諸命令の措置に関する法律案、国の利害に関係のある訴訟についての法務総裁の権限等に関する法律の一部を改正する法律案、以上三案を便宜一括して質疑に入ります。御質疑のおありのかたは御発言を願います。なお念のために申上げますが、本日は法務府関係のかたがたのほかに厚生省より公衆衛生局防疫課長、労働省より婦人少年局婦人課長、職業安定局雇用安定課長の各係官が出席されております。
#3
○伊藤修君 昨日は私はこの法律案の扱い方についての政府の考え方をお伺いいたしたに過ぎないのですが、本日は次の段階において大体論について先ずお伺いしたいと思います。昨日説明員の御説明にもありましたのですが、本法は本法があることによつていわゆる公娼制度の復活を阻止しているのだ、その意味において本法の効果は至大なものであるというような趣旨の御答弁があつたのですが、これは国内の実態に目を蔽い、耳を蔽うて、ただ形式的に本法の効果を称揚されるに過ぎないのです。事実政府の関係のかたがたでも恐らく御承知のことと思う、全国におけるところのいわゆる公娼制度の残存物であるところの私娼窟の存在することは顕著なる事実であります。そこに婦女子が操をひさいで金に換えて、いわゆる苦界に身を沈めておるという生活状態の存在することは明らかなことだ。それが公娼制度と言うか言わないかということは、法的に認めているか認めていないかということです。事案は旧に増すところの公娼制度がそのまま存在すると言つても過言ではないのです。この状態をこの法律は許すのかどうか。先ずその点をお伺いしておきたいと思います。
#4
○政府委員(岡原昌男君) 只今御質問の点でございますけれども、確かにいわゆる従前の公娼制度に似たような事実が存在することも聞いております。但し、かような一つの法的な制約があるということは、同時に又この制度を法的に認容したものではないということの一つの主張にはなると思うのでございます。およそこの法律といいますものは、厳格な道徳規範のみにとどまるものと、更にもう一段階加えまして、どうしてもこれが強行されなければならんものと、まあいろいろ段階があると存じますけれども、本件につきましては、いろいろな社会的な制約その他もありまして、これを現在の段階においてことごとく一から十まで検挙処罰するということも、或いはいろいろな意味から不可能になるのではないかということも勿論考えておりますけれども、同時に又かような法的規範が全然なくなるといつたような場合において、いわゆる公娼制度といつたような形のものが非常に急激に、而も広汎に拡がる、そうして又それが延いては国際的な日本の信用を害する虞れを招来するというふうなことも文事実だろうと考えまして、少くとも現在の段階におきましては、かような一つの制約を法律の形において設けて置くということが絶対必要であろうというふうな見解に基いたものでございます。
#5
○伊藤修君 要するに今のお言葉によりますと、なくてもがなというような法律である。法律を出す以上はその法律の実効を収め得るものでなくてはならんと思うのですが、今の御説明によりますれば、法律あることによつて対外国に対するところの信用を、それによつてカバーしようと、国内的においてはそれによつて一応の規範を立てて置こう、併し実際において実行することは至難だと、又実行をしないのだと、いろいろな社会的の制約その他の事情において実行をし得ないのだというならば、法律としての価値は失われてしまう。これは道徳的規範です。それなら道徳規範として改めて書き直すべきである。法律としては廃止すべきである。併し今日の日本の社会事情から申しましても、又世界に対するところの信用回復の点から申しましても、法律たることを要することはもう必然の結果なんです。然らば法律を出す以上は、それが実効を伴うところの法律を出すべきである。それに服しても服しないでもいいのだというふうな感覚を与えるような法律を出して国家は事足れりとするゆえんのものではないと思う。この点に対するお考えをいま少しお伺いしたい。
#6
○政府委員(岡原昌男君) 或いは只今申上げましたことが、やや何と申しますか、簡単に過ぎましたために誤解を招いた向きがあるかと思いますけれども、要するにこの公娼制度なるものは、現在の段階におきましては、我が国としては到底これが復活ということは考え得ざるものと私は考えております。そこでこれを如何なる形において法的に制約して行くか、規律して行くかということになりますると、これはいろぞれな形がありまして、現に各市町村長等におきまして各種の條例を出しております。而してその條例が又それぞれ各地方においての特殊事情を加味しながらも、或る程度の実効を挙げているということは、今日お配りいたしましたその資料の中にもある通りでございまして、一つの條例があるからそれでいいというのではなくて、それに対する違反に対しましては、やはり罰則を以て臨むべきものは臨まなければいかんということも事実でございます。さような関係で、この資料の中の各頁所々に統計を組入れてございますけれども、相当数現に違反行為が処罰されております。更にこれを勅令第九号の全国的な統計によりますると、ちよつと数字を申上げますと、昭和二十二年から昭和二十六年、これは九月末までの統計でございまするけれども、六千三百二十七件の受理がございました。このうち相当数の起訴、合計約一千四百件ほどの起訴を見ているような次第でございます。さような次第でございまして、単に勅令九号というものが道徳的規範にとどまつて、旗印に掲げているだけでちつとも実効がないというものではないのでありまして、やはり事の軽重、事案の大小に応じましてかような罰則を以て望んでいるということも事実でございます。さような意味におきまして法律を引続き存続させるということは大いに意味があろうかと存じます。
#7
○伊藤修君 今の統計は全国ですが、全国のうちで、各県別はわかりませんですか。
#8
○政府委員(岡原昌男君) なお詳細な統計の内訳等につきましては、後ほど更に作りましてお配りする予定でございます。
#9
○伊藤修君 恐らく私はその表を頂かない前に推測的に申上げてもそれは片寄つた起訴率であろうと思う。進駐軍において取扱が強硬の場所、或いは例えば別府の場合のごときそういうようなところにおいて起訴率が多く片寄つて、進駐軍の存在しないところ、若しくは東京附近においては少いことと思う。従来これらに対するところの起訴の取扱は日本の検察庁若しくは警察がやつたのではなくして、却つて進駐軍のMPあたりが取扱つておつた事実が顕著なんですから、それによつて止むを得ずそれを受理して処理しておつたというような程度が実態ではないかと思うのです。だからそれによつて本法の云々という御説明の裏書にはならん。
 次に私はお伺いしておきたいことは、今御答弁のようにこれをどうしても存続させなくちやならんというならば昨日も佐藤さんにお伺いしたごとく、私は本法を書き改めてもつと強硬な法規に直すべきじやないか、こう考えるのです。
#10
○政府委員(岡原昌男君) 御質問誠に御尤もの点がございます。私どもといたしましても、現在の勅令第九号が果して完全なる形であるかどうかということにつきましては前からいろいろ研究を重ねて参りました。そうして前々国会でございましたか、一案をお目にかけたのでございますけれども、そのままになつたような次第でございます。そこで今度の国会に臨むにつきましても、やはり同様な見地から更に再検討いたしまして、いろいろと関係諸方面、これはあちら側ではなくて国内的な諸方面でございますが、に交渉いたしましたのでございますけれども、なかなか完全なる成案を得るに至らず、つい今度お目にかけるような単に勅令九号の存続というふうな形で行こうかというふうなことになつたのでございます。併しながらこの点は私どもとしても従来研究を重ねたつもりでございますし、一案も或る程度のものは考えておりますけれども、一つここでざつくばらんに私の心配を申上げることが許されるならば、実はこの勅令九号を全面的に廃止して今後公娼制度を復活せよという声が相当強いのも事実でございます。そうしてその強い声が国会の方面に或程度反映いたしておりまして、若しもこの勅令九号をこの存続の整理の中に入れておかなければ、国会の情勢如何によりまして或いは第九号が死んだままになつてしまうのじやないかというふうな相当の心配がございましたので、そこで取りあえずこれを私どもとしては必ずしも満足な形とは思いませんけれども、今のままに生かしておきまして、なお引続き完全なる姿のほうに持つて行きたい、さような見地からここに掲げた次第でございます。
#11
○伊藤修君 今の言葉聞き捨てならん言葉ですが、国会の突気がそうあるかどうかということはどこからお調べになつたか知りませんが、少くとも国会がそういうような取扱をするという御懸念の故に、こういうような不備な法律で先ず一時を糊塗して抑えておこうというお考えのようであります。ますます以て国会の不信を政府が公明されたと言わなければならないと思うのであります。私はむしろ政府のほうがこういう生ぬるい法律で今日以後を糊塗して行こう、業者はこれに隠れていわゆる黙認の形式で今日の営業形態をそのまま継続することが一番妥当であるというような考え方を以て、むしろこの法律形態の下に従来の営業を継続して行こうというような考え方を持つておることが、業者の間において伝えられておるのです。現に業者はそれを公然として述べておるような次第であります。いわゆる今日のあなたがたというものは、こうした不徹底な法律の下に業者の黙認営業というものを助長しておると言わなければならん。彼らはそれを奇貨として堂々として従来の公娼制度をそのまま存続しておる、それに対してあなたたちが検察の手を差延べることは不可能な状態じやないですか、この法律を以てしては……。でありますから彼らは日夜業者の繁栄をそれによつて助長しておるというような形をとつておるのです。むしろ国会じやなくして政府のそうした態度が業者の今日の安逸を貧ぼらしておるというような形になつておるじやないでしようか。
#12
○政府委員(岡原昌男君) 取締の実際の面につきましては、御承知の通り事法務府に関する限りにおきましては検務局におきまして、各検察庁に対しまして、かような取締の点について具体的な指示を特にいたしておりませんけれども、この各市町村の自治警その他におきましてはいろいろなこの種の実際の違反事件について、取締の態度が違うということも先ほど御指摘の通りであろうと私も考えております。それでこれを全国的に如何に統一した方針の下に強硬に取締をするかということは、現在一つの私どもといたしましても問題とは考えておりますけれども、この法律が通過いたしまして、勅令第九号がそのままの形で生きるということになりましても、それと取締の実際の面とは別でございますので、皆様の御意思のあるところも十分尊重いたしまして、この種の諸般の取締については又別個に十分に方針を立てたいと存ずるのでございます。
#13
○伊藤修君 それは只今の御説は牽強附会の御答弁であつて現にそれは取締ができないのです。いわゆる進駐軍において禁制しておるところの前借制度のごときも、現に公々然と行われているじやありませんか。吉原なら吉原の婦女子一人として前借のない人があるか、大阪の飛田の婦人に聞いたところが前借のないものは一人もないのです。全国にこれらの稼業に服するところの婦人で前借を持たない婦人は一人もない。それが公然として行われているじやないですか。昨日の佐藤さんの御答弁によれば、本法の第二條によつてこれを取締るという御説でございますけれども、彼らはむしろこの二條によつて取締られておるのではなくして、進駐軍の意向に恐れてそれを自粛という形は何によつて行われておるかと申しますれば、彼らは従業婦組合というものを作つて従業婦組合がこれを貸す、融通するという形をとつておるのであります。然らばその従業婦組合というものが自主的に存在して運営しているかと言えば、彼ら自身はその会計のどうなつているかも知らない。挙げてこれは経営者組合のほうに任しておるのであります。経営者組合の事務員がこれを掌つている。実態は経済者組合のほうが握つておつて、従業婦組合のほうはその形骸を掌つているに過ぎない。名前を貸しておるに過ぎない。それによつて前借制度を免かれている、又は呉服屋その他の商人にこれを借財せしめ、それを経営者が保証している。こういう形で前借を遂行している。長崎の丸山のごときは、銀行がこれにタツチしまして銀行がこれを貸して、そうして日々の稼業の上り高によつて目掛で以て弁済する。銀行が一従業婦に貸すというようなことはあり得ないのです。これは取りも直さず経営者組合が連帯して銀行に保証している、これを見返りにして銀行の名を以て従業婦に前借せしめている。こういうような脱法行為を以て前借制度というものが、今日なお且つ行われているじやありませんか。この前借の下に、その絆の下に心ならずもこのような稼業に服して身を削つているというのが実態じやありませんか。それがどうして本法によつて取締つているか、それらに対して目を蔽い耳を蔽うて今日いるのじやないですか。ただ徒らに取締つているのは、パンパンガールを路上において掴まえて、そうして挙つた者がこの公安條例に挙つて来たこの数字なんであります。先ほどお示しの数字のごときは、いわゆる集娼から挙つたものではないことは断言して憚からない。それでもなお且つ本法の効果があると言われるのですか。
#14
○政府委員(岡原昌男君) 只今御指摘の点は誠に御尤ものことでございます。ただ私どもといたしましては、前借それ自体は特にどういうことはございませんが、たださような売春を内容とする契約をするということに違反を認めている次第でございます。でございますからこの第二條の違反の点につきまして実際にどのように行われているか、前借のことは別でございますが、その統計は大体只今わかりました約二千二百ほどの報告のありまするうち大半、千七百九十五という数が第二條違反として報告されているのでございまして、従いましてむしろ第一條違反よりも第二條違反のほうが実際には動いておるというふうなことを御承知願いたいのでございます。
#15
○伊藤修君 前借のことはともかくと言つて、非常に軽く扱われるのですが、一体日本の公娼制度いわゆる女郎屋、女郎というものが諸外国の非難の的となつているということは、その前借によつて心身の拘束を受けて、それに基いて売淫行為を余儀なくされるというところに人道上の問題がとり上げられている。それが重点じやないですか。前借あるがために、それがために婦女子は精神的の拘束を受けてかような業務に服するのです。これが外人の場合とか或いは日本の新らしい考え方の教育を受けたような人なり、そういう債務は債務だ、それに対するところの身の提供ということは別だというふうにはつきり考えるかもわかりません。併し従来の日本婦人というものはさような強い観念も、整理された頭も持つていないのです。いわゆる債務というものに対して非常な大きな枷をきているのです。吉原に対したところが、或いは芸者稼業をしておる者にしたところが、借金ということに対しましては身を以て償つておるのです。これは日本婦人の通例見るところの常識なんです。そのくらいのことはおわかりにならんことはないじやないですか。さような状態にあるのでありますから、その債務の存在するその絆を我我は取締らなくちやならんと思うのですよ。そういうものをなした者を取締るというのにはこの法律では不備なのです。従つてそれによつて婦女子の心身の自由を我々は解放するということの結果をもたらさないことになり、延いてはポツダム宣言の受諾に伴う降伏條件に我々は悖るということになるのです。その観点に対してこの法律では不備だと、こう申上げるのです。
#16
○政府委員(岡原昌男君) 日本の婦女子が前借の絆に縛られまして、売淫を余儀なくされるということは事実であろうと思います。ただ終戦後その点の一般の考え方が必ずしも終戦前の籠の鳥式の考え方から脱却しないということではないのでありまして、若干その点に対する婦女子の認識が改まりまして、いいことか悪いことか知りませんけれども、借りるものは借りる、逃げるときは勝手に逃げるというような事例も又多々あるように聞いております。それはともかくとしまして、さような前借を楯にいたしまして、婦女子がかような稼ぎを余儀なくされるということも大変困つた事実でございまして、御指摘の通りさような点をなくするためにこの勅令ができたのもその通りでございます。ただ先ほどもちよつと触れました通り、法律的にはこの前借それ自体は罰則にはかからないのでございまして、私前借そのものは何でもないと申上げたのじやなくて、罰則を以てこれを処罰できないというふうな意味で申上げたのでございます。たださようなことに関連いたしまして、この売春という契約があつた場合に第二條の違反が成立する。又若しもさような前借がお前にあるのだからどうしてもいやでも応でも客をとれというようなことで困らして客をとらせるということになりますると、第一條違反という問題も出て来るのでございます。従いまして御指摘のようないろいろな点はございますけれども、法律的には只今の勅令九号で相当賄えるかとかように存じておる次第でございます。
#17
○伊藤修君 それは机上の空論ですよ。前借と売淫行為とを切離してお考えになるということは全くそれは机上の空論ですよ。いやしくも妓楼、いわゆる女郎屋を経営するものが婦人に対して前借を許す場合において、何の目的を以て前借するのですか、社会事業をやつておるわけじやありませんよ。婦人を自分の家に置いて飯を食わせて、いい着物を着せて、火鉢の前に坐らせて、化粧をさせておく馬鹿がどこにあるのです。それ自体、そういう婦人を抱えること、そこに抱えると申しますか、抱えること自体がすでに売淫をせしめることを目的とするということは、当然それ自体の行為によつてもうその目的は推定されるのです。これはあなただつてそのくらいのことは常識でわかることじやないですか。女郎屋の主人が婦人を抱える場合に親切にして自分の家に養つておるというそんな奇特な女郎屋の主人がどこにありますか。それに金を貸すということ自体が売淫をせしめる、こう推定してもあながち誤りじやないですよ、法律はむしろそこの点まで補足して私は差支えないと思う。そうすることによつて初めて日本の婦人の解放ということの目的も達成するのです。現在のような形におきましては、あなたのような解釈をとつておりますが、金を貸したことは別だと、するかしないかは勝手だとこう言う。若し金を貸すことだけが目的で金融業が女郎屋の分業であるということならば金融の看板を掲げさせるべきであるのです。もつと徹底した考え方を持つてこれは取締るべきものじやないですか。あなたのようにただ現状に固執して、現状を弁解しようというようなそういう生ぬるいお考えがあるから、今日の日本の業者が依然としてかような法律があり、進駐軍が進出して強く指摘しておるにもかかわらず、羽を伸ばして昂然としてこの違反行為を行なつておるんです。かようなことを許すならば日本は観光国で観光収入を以て国家財政を賄うという基本的な対策を立て賭博も許すべきである。公開して胴元もやるべきである。そこまで徹底するならいざ知らずこの問題だけは弁解これ努めてそういうお考えを披瀝されることは私は意を得ないと思います。率直に政府としては取締るんだ、併しまだ用意ができていないというのなら私は納得しますよ。これで是なりというお考え方では頗る私は納得できないと思います。重ねてお答えを伺つてなお質問を続けます。
#18
○政府委員(岡原昌男君) 私只今申上げましたのは法律の議論でございまして、現在の勅令第九号でその点が取締ができないのではないかという御趣旨に受取りましたので、それは現在の法律を以て、勅令を以て取締らせる、従いましてこれを存続させるということになりますと、法律の効力においてこれを行使し得るとかような考えを申上げたつもりでございます。ただそれから先の取締の面につきましては、これも申上げました通り、いろいろとこの社会情勢の複雑な面があるやに考えられますので、さような意味合いからいたしまして、現在の一般の婦女子の困つた実情、これをまあ社会政策に取上げて行くかという問題にも関連いたしまして、さような問題が或る程度見通しがつきますれば、かような法律は実は峻厳に働かして行くべきものである、かようなことも信じておるのでございます。各国の立法なども深く研究して見たのでございますが、相当各国におきましてもいろいろなこの種事犯の取締の類型をたくさんの形において掲げておりまして、さような点も深く検討いたしたのでございますけれども、現在の我が国の社会情勢におきましては、勅令九号程度が先ず精一ぱいではなかろうか、ただ御指摘のこの取締の点について、もう少し取締りしやすいような法律を作つたらどうだというふうな御注文、御意見は御尤もでございますので、その点はいずれ又私どもといたしましては、お考えも拝借いたし、是非完全なるものを作りたい、かように存じておる次第でございます。
#19
○伊藤修君 これは諸般の事情によつてこれは直ちにそういう強い方向には出られないということは、我々この前の法案の提示を受けた場合においてそういうことは調査してよく承知しておるんです。その後すでに三カ年も経過しておるんです。この間の吉田さんの御答弁によりますれば、二千億ぐらいのものが何だというようなお言い方をしていらつしやる。少くともそういうような二千億程度の予備隊に使う費用、保安費に使う費用が何だ、端金だというようなお説があるならば、この業に携わるところの二十五万ですか、これらの人々の身柄を釈放するという費用に充てがつても事足りるのじやないでしようか。国家財政の上から言つても容易に賄えるところの私は数字だと思うんです。決して二千億も要らない、これを救済するのには……。すでにそれから三年もたつておるんです。政府がこの点に対してこれらの婦人を真に解放する受入態勢を整えておるかどうか、この点を厚生省にお伺いしたいのです。
#20
○委員長(小野義夫君) 厚生省のかたは今出ておりませんから、ちよつと保留しておいて頂きましようか……。
#21
○伊藤修君 それでは法務府で今諸般の事情によつてできないとおつしやつたから、できない事情をお伺いしましよう。
#22
○政府委員(岡原昌男君) さような問題になりますると、問題の女性が如何なる経路でさようなことをしなければならなくなつたのか、かような個々の事情を糾明しなければならんと存じます。私どものほうで乏しいながら得ました資料によりますると、例えば農山村等の経済事情のよくない家庭から相当多数出ておりまするし、又戦争未亡人或いは戦争の犠牲者といつたようなものからも相当多数出ておるように報告が参つておりますが、又中には職を求めに漫然と都会に出て参りまして、その際つい引つかかつてさようなことをやるようになつたという原因もあるようでございます。その原因のいずれにいたしまするとも、それぞれ深い社会的な根ざしがあるのでございまして、それらのものをこの際私どもとして全然眼をつぶつて、そうしてこの法律或いは勅令を強行するということはいろいろな意味でできない、と言うと言過ぎかも知れませんが、情において忍びないという面が出て来る場合のあることはお察しの通りでございます。そこでさような諸般の原因につきましては、それぞれの対策が立てられるだろうと思いまするので、それらの事態の改善を待つて、かような規定というものは強硬に押して行かなければならん、かように存じておる次第でございます。なおさような点につきましては恐らくそれぞれの主管省において統計をお持ちであろうと思いますけれども、私どものほうにも若干の資料はございますので、又若し御希望でありますれば写しまして差上げてもよいと考えております。
#23
○伊藤修君 私は今の御答弁は余りに無責任であると思います。政府がいやしくもこの前の法案を提出いたしましてから鋭意これに対して努力するというお考え方も伺つておるんです。にもかかわらずなお且つ今日に至つても今の戦争未亡人であるとか、或いは農村の貧困な婦女子とか、或いは都会の虚栄に誘惑されてさ迷い出でた婦女子がこれの道に落込むといつたような、こういうような人々に対して国家はよろしくそれ相当な施策を行うべきではないでしようか、受入態勢を整えるべきではないでしようか、それをもなさずして今日なお且つ表面を糊塗した法律を作つて、世界にこれで事足れりとして誇示するのに利用するというようなお考え方は、余りに安易に過ぎると思うんです。もつと根本的にそれならば政府はその点を考え直して、そのほうの施策を整えてまだ今日かような状態託できないんだからこうだというのならば、これ又一つの納得の理由になります。併し私の寡聞にしてか、そういう政府が施策をとつているように聞いていないのです。漫然三年の目にちを過ごして今日この法律を提出するに至らしめておるんです。御承知の道り日本の憲法は憲法の十一條から四十條に至るまで基本人権の保障について鋭意條文を重ねておるのじやないでしようか。世界に類例のないような基本人権の保障の憲法と言われておるんです。その憲法の下に服する我々の国民生活がさような状態であつていいんでしようか。国家はそれ自体義務を果していないということになる。先ず以てこの面に対して国家の施策の重点を置いて一人残らずかようなか弱い婦女子を救済するという方途に努力せられるのが当然のことである。それをもなさずして今日かような不徹底な法律を出して糊塗しようという考え方は我々は納得できない。その施策をする用意があるのかどうか。
#24
○政府委員(岡原昌男君) 前回の法案の御審議を願いました際に、さような社会情勢の点につきまして御注意を受けましたにつきまして、その後実は法務府直接といたしましては、その件について特に大きな力をいたす、力をいたすというと何ですが、目に見えて強行するという職責にはございませんので、間接ながらその点の事態の改善につきまして、関係省と連絡はとつて参つたのでございます。事態が必ずしも全然よくなつたというふうなことでないにいたしましても、順次改善しつつあるということも事実であろうと存じます。この点につきましては私所管外でありますので、単に間接の報告でありまするから、いずれ然るべき関係庁からこの点の御説明をいたすことにいたせばよろしいかと存じます。
#25
○伊藤修君 それはまあ他の所管から又詳細お伺いすることにいたしますが、併し何らかの施策が講じられておるかのごとき口吻を漏らされましたが、我々は寡聞にして過去においてそういうことを聞かされていない。どういう点がなされておるか、依然としてか弱い婦女子の泣き叫ぶ声があなたがたの耳に入らないのが私は非常に遺憾に思います。元来この法律の目途とするところのものはもう一つ他に目的があるはずなんです。国民の保健の面から考えましても、今日街に汎濫するところのあのストリート・ガール、これが国民保健の上に及ぼす影響というものは重大なものです。我々の調査によりますと、大体三〇%乃至七五%の保菌率を持つておるのです。殆んど大半とも称すべき保菌率を持つたこのパンパンガールが、前途有為な青年の心身を蝕んで行き、伝播して行くという、延いては全日本の青年の壮健な体を皆病体に陥れしむるというような結果をもたらすことになる。これは由々しい問題じやないかと思うのですが、我々もはやそういう必要期を過ぎた者は別といたしまして、青年が性を求めることは、これは到底黙視することはできないのです。人類から性を除くということは不可能である。自然の本能の趣くところに基いて性を求めて止まない青年に対しまして、その充てがう対象物がかような保菌率を持つた者をしてなさしめたならば、我々が、如何に国家が口をすくして、或いは費用を投じましても、一面にこうした病菌の温存物体を黙認しておくという形であつたならば、国民の保健の行政というものは根底から覆えされるのです。その意味から申しましても、私はこの法律の厳重な規定を要求するものであるのであります。その長に対する御見解を、その専門家の人もおいでになるようですから、どちらからでもよろしいから御意見を伺いたいと思います。
#26
○委員長(小野義夫君) 厚生省公衆衛生局防疫課長館林君の御説明を願います。
#27
○説明員(館林宜夫君) 只今もお話のありましたごとく、終戦後従前の公娼制度と異なりまして、無数の街娼が出て参りました。而もその地域は特定地域に限らず、いわゆる盛場その他の場所において客を求め、従いまして青年がこれらの女性にかかり合う機会を多からしめるという点におきまして、性病の蔓延にこれが影響していると私どもも想像いたしている次第であります。いま一つの面から申しますれば、これらの対象は、現行の性病予防法の建前からいたしましても、なかなか性病予防の対策を立てにくい対象でございますので、この二点からいたしまして、性病蔓延に対する影響は多大なものがあろうかと思うております。
#28
○伊藤修君 只今あると言つて涼しい顔をしていられては困る。只今あるのをどうするかということを聞くのですが……。
#29
○説明員(館林宜夫君) 性病予防は純粹に公衆衛生対策のみの見地からいたしまして、なかなかむずかしい対策でございまして、純理論的から申しますれば、国民がことごとく性病予防の知識に目覚めて、自覚によつてその蔓延を防止するということが望ましいのでございまするが、これは私どもといたしましても、できるだけ努力いたしておりますが、早急にはその十分な知識の普及を望みがたいのでございます。又一面疾病に罹りました者に対しましては、たやすい治療、受けやすい治療の施設を普及する、又治療費も安くする、或いは免除するというような治療の面の、多少消極的ではございまするが、罹りました際に早急に治療するというような対策も、重点の一つと考えておりまして、現在これらの施設を漸次増加して参りまして、本年におきましても、又来年におきましても、全国で百カ所、これらの診療施設を増加するという対策を立てております。併しながら私どものほうで調査いたしましたところによりますと、男子の性病の感染源は、いわゆろ業態者たる女子からでありまして、大体昭和二十五年の調査でございまするが七一、七%程度はこれらの業態者から感染したものでありますので、やはり重点的には業態者の性病をなくすということが、重要な対策であることは申すまでもないわけであります。これが戦前におきましては、公娼制度でございましたので、自衛検診その他の対策が比較的とりやすかつたわけでございますが、只今におきましては、散娼が非常に多くなりまして、散娼に対しまして、これに性病予防の手を差し延べるということは、非常に困難な事情でございます。只今はこれらの散娼が検挙せられました際に、その調査に基いて性病予防法に基く強制健康診断の命令を出すというような、非常な生ぬるい対策をとつているわけでありまして、これらの婦女子に対して直接手を差し延べるということは、なかなかできがたい。又一面余り強い手を差し延べますと、人道問題にも反するような措置になつて参りますので、現在におきましては、これらの街娼に対しましては、他の一般民衆と同じく思想の普及を図り、診療施設の拡充を図るというような、対象の一つの部分に過ぎないというような、誠に私どもとしては残念に思つている次第であります。
#30
○伊藤修君 今の御説明を伺つておりますと、結局病気になつた者を治すということについて鋭意御努力になるのは、これは結構なことでありますが、或いは病気になつた者を治すということも必要でありますが、それのみを以て万全ではないと思う。悪いことをした者を刑務所に入れて改過遷善せしめるというだけでは駄目である。悪いことをしなくなるような施設を施し、教育を施し、社会状態をそういうふうに引直して行くところに我々の仕事がある、又政府の仕事もあると思います。抜本的なことを先ず我々は考えなければならんと思います。それからおよそそういうような結果をもたらす性病予防法を施行いたしまして、この運用によつて国民保健の完きを得ようという目的を達成するならば、その根源を突きとめて、この点において押えをしなかつたならば、いつまでたつても何ともならない。日本の治水工事と同じようなものです。いつまでたつても、壊れたところを求めてつくろつて、水の量とか、そういうものを全然考えずに、治山の方面も余り手を入れずして、堤防の直し方ばかりやつておつたのでは、河の氾濫というものは、いつまでたつてもぶり返すようなものであります。それと同様にこの場合におきましても、それほど切実に治療方面に御努力をなさるならば、その根源を突きとめて、それを先ず我々は押えるというところに努力しなければならないと思う。だからあなたのほうのお考え方としても、その辺を重点的にお考えになつたほうがいいのじやないか、そういう御意思があるのか、ないのか。考えて見ますれば、結局そういう婦女子を作るということ、作るのは、その婦女子の第一に求めて止まない前借です、金です、金を貸すことを禁止する、娼婦を提供することを禁止する、これによつて先ず根本を押えることが必要ではないでしようか。そうすることによつてその点は大部分は私は阻止できる。これは昔の徳川時代におけるところの莚一枚持つて、いわゆる夜鷹というような商売をやることになりますが、現在では適応しない。野天でやろうという人間は、恐らく文化人には向かないと思う。社会事情の要求から取除かれて行くのです。して見ますれば、そういう面において我々は先ず拔本塞源的な方法を講ずることを考えなければならんと思う。して見ますれば、どうしてもこの種の法律は強硬に私は国家が意思表示すべきである。だから厚生省としてもそういう面に思いをいたして頂かなければならんのですが、そういう御意思があるのかどうか。
#31
○説明員(館林宜夫君) 誠にお説の通り性病予防の根源たる業態婦人に対しまして、十分な対策を立て、その弊害を除去することができますれば、性病予防の目的を十分達し得られる方向に向けることができると思うのでございまするが、この問題はなかなかむずかしい問題でございまして、もとより基本法律によつて、国の方針を明らかにし、国民がその方向に努力することはもとより必要でございますが、非常にこの問題は複雑な問題でございまして、先ほどお説のございますように、法律がございましてもなかなかその法の目的を達し得ない現状でございますので、あらゆる面から検討いたしまして、やはりその時代に即応した法律形態をとつて行くよりほか止むを得ないかと思つております。
#32
○伊藤修君 そういう生ぬるいことを言つて、それで性病予防法が運用できるのですか。国家が徒らに費用ばかり使つて病院を建てても、一面どんどん病菌を伝播する製造工場があつて、受入態勢ができるのですか。日本国中の性病罹病者を国家が収容し切れるならいいですが、全国民が全部性病予防法の適用を受けなければならんような状態に陥つてしまうことは、極めて明らかです。先ず一面において、こうやつてそういう性病を作る根源を我々は潰滅する方途に出でなかつたならば、性病予防取締法の目的は達成できない。現在の情勢においてはこの程度で止むを得ないんじやないか、諸般の事情、諸般の事情というのは先ほどから言うところのその婦女子の生活状態を如何にして見るかということだけのことです。それも僅かなものではないですか。業者のほうは持てる者で放つて置いても構わないんです。婦女子だけなんですが、集娼のほうで五万人、散娼においても約十万人、その程度のものは国家が何らかの考えを持つてするなら容易に解決する問題じやないですか。だからその覚悟を以てそうして一面においてはこの法律を強化して行くならば、十分目的は達成するのです。何も諸般の事情といつたところが業者の思惑も婦人の思惑も考えることはいいが、国家が是なりと信ずる方向に進んで行くべきじやないかと思うのです。現状に我々は囚われず、現状を打開しようとする、そうすることが日本の国民の最も仕合せな道であろうと思うのです。殊に婦女子の人身を保護する目的を達成することは、諸外国に対しては日本の名誉を回復することになるんじやないか、こう申上げるのです。些々たることに今日囚われずして、今日こそ我々は独立国家として声を踏み出し世界生活に入らんとするこの場合においてこそ踏み切るべきだと思うのです。そのくらいのあなたたちも確信を持つて進まれんことを私は望んで止まないんです。重ねてその点に対する御意思を伺いたいんです。
#33
○説明員(館林宜夫君) 只今のお話にございましたような方向に向つて私どもとしても大いに努力いたし、できるだけ早くさような境地に達したいと存じておる次第でございますが、なかなか、大きな旗印を掲げましても、種々の社会的問題がこれに伴いまして、その定めた旗印通りに参らんのが常でございますが、殊にこの性病予防の面におきましては、最もその点が理想通りに参りにくいいろいろの関係のある対策面でございますので、私どもとしましてもできるだけ早くさような方向に努力いたしますが、漸進的にこれを考えて参りたいと思つております。
#34
○伊藤修君 あなたたちの意見を聞いていると、結局生ぬるい、煮え切らない話ばかりなんで、これ以上あなたたちの話を聞いても仕方がない、もつと責任ある人のお話を聞きたいと思います。
 もう一つだけ、私は婦人の御関係の方が来ていらつしやりますが、一体この現行法を以て日本婦人の人身売買、若しくは身体の自由というものが保護されているかどうか。この法律をもつと強化することによつてその目的は達成されるんじやないでしようか。その点に対して御意見を伺いたいと思います。
#35
○説明員(田中壽美子君) 私ども婦人の地位の向上或いは婦人の解放を実質的にするという観点から申しますと、現行の勅令九号は非常に不満足だと存じております。その点は先ほどから先生がお衝きになつていらつしやいます。根本的な原因がたくさんあり、根本的な総合的な対策が立てられなければ、非常に憂うべき状態であると常々思つている次第であります。で、勅令九号によりますと、売春をさせる第三者が罰せられるだけでございまして、売春行為そのものについてはこれを禁止しているものではございませんので、私どもは理想的に婦人の人権を守る意味におきまして売春行為をする人、それからその相手方となる人、更にこれをさせる業者、三者ともこれを罰するような法律を望ましいと存じております。で、昭和二十三年の第二国会には、法務府から売春等処罰法案が提案されたのでございますがその際にその法案におきましては、売春する人もその相手方も業者も罰せられるべきであるというような法案でございましたが、これは審議未了に終つたものでございますが、その際私ども婦人少年局では、婦人少年問題審議会というものがございますが、労伝大臣に対する諮問機関でございますが、この審議会からこの売春処罰法案をもつと徹底的にして頂きたいという意味の建議を出して、法務総裁に対して差上げているのでございまして、もつと徹底的であることを望んでいるのでございます。併しながら今回の勅令九号が法文化されるかされないかというような問題の際には、これがうやむやに葬むられることがあつてはならないと思いますので、どうしてもこれを生かして頂くということは第一段階として是非やはり必要だと存じております。その上に更に私は先ほどから申しましたように、根本的に売春に対する処罰の総合的な法案を作つて頂くように、これは法務委員会のかたがたの御努力をお願いいたしたいと存じますし、それから更に先ほどから厚生省その他個々別々のいろいろの面からこの問題を取扱つていらつしやいますかたがたは、それぞれ御自分の機能に応じた御仕事しかできないのでございますので、これを強力に総合的にこういつた問題をなくして婦人が解放されますための措置を講じて頂きたい。それは民間の者も政府の者も一緒になつて努力するように私どもは是非やつて行きたいと思つております。その点では国会のかたがたの御援助を切にお願いしたいと思つております。
#36
○伊藤修君 私は婦人のかたですらこういう強硬な御意見を持つていらつしやる、いわんや男子の皆さんが卑屈な態度で以て追従していることは意を得ないですよ。もつと積極的に本法を改正する、これでは不十分だと国会がみずからの手によつて強化されることに対しては異議ないという御発言を私は期待して止まないです。私は今日の御出席の政府のかたがたにその点に対するところの御考慮を煩わしておきたいと思うのです。ただ原案を支持するごとに汲々となされているということは私は全く甚だ失礼でありますけれども一時を糊塗するに過ぎない。その日稼ぎの仕事なんです。我々はもつと目を広く理想を高く掲げまして、将来のよき日本を作るためにはやはり敢然として立たれることを私は望んで止まないです。御婦人のかたですら堂々として今そういうような御希望を述べられているのです。皆様においてもどうかその点についてももう少し御反省を願つて、本案を固持されるごとなく本案の内容をよりよくするために皆さん自身が努力を払われることを切に希望して止まないです。私はこの法案に対しまして、なおより以上質問申上げたいのですが、あと宮城さんがいらつしやるので他日に譲ります。
#37
○宮城タマヨ君 これはむしろ法務総裁に聞きたい問題なんでございますが、昨日私の出席いたしました中で、第二国会で審議未了になりましたこの売春等処罰法案が、今日までうやむやになつております一番の隘路は、やはり昨日もちよつと話が出ました、その厚生省関係、文部省関係、労働省関係、勿論法務府関係のかたたちの協力によらなければどうしても本当のものはできないというところに、今までのこのうやむやがあるんじやないかということを質しましたところが、政府の説明員からそれは青少年問題対策協議会のほうでやつているんだという御答弁がございましたが、私の調べました範囲ではそういうことは現われておりませんが、もう一遍説明願いたいと思います。
#38
○説明員(神谷尚男君) 昨日申上げましたのは、この売春法に直接関係する問題ではないが、ということで、人身売買の点についてその青少年府策委員会で取上げられ、且つ本日の次官会議で一応各省のまとまつた意見がきまるということを申上げたのでございます。売春の関係につきましては青少年対策委員会ではまだそれ自体としては取上げておりません。そのめぐる問題としまして人身売買の問題が今取上げられておるということを申上げたのでございます。
#39
○宮城タマヨ君 それでは青少年問題対策協議会のほうでは、別にこのことは問題になつておりませんのでございますね。
#40
○説明員(神谷尚男君) 青少年問題対策協議会のほうにおきましては、いわゆる青少年の教化改善、そういつたことを目途としていろいろやつておりまして、現にこの人身売買といつた観点から昨年来いろいろ問題がございましたのでそれを取上げておるわけでございます。ただ売春婦というものにつきましては、それを直接の問題としては取上げておりませんが、いろいろな角度からそういうものを取上げつつあるということになろうかと思います。
#41
○宮城タマヨ君 この勅令の九号をこのまま立法いたしますことは、無いよりもましだという論もございますけれども、私ども心配いたしますことは、先ほどから伊藤委員がおつしやつておりますように、これが出ましたらこれでもう政府のほうも一段落というような考えで、そのまんまになつて参りましたとき、非常に私どもは一方的な、男女不平等な取扱をされておりますこの立法がいつまでも生きておるということは、非常に私は国家の恥だと思つております。そこでこれは関係各省が一つ協議会でもお持ちになり、研究会でもお持ちになつて、そうして国家的の対策をなさるという意思が一体法務府にございましようか、ございませんでしようか。むしろこれは法務総裁に伺つたほうがいいかと思いますけれども、どなたでも御答弁願いたいと思います。
#42
○政府委員(岡原昌男君) 今回の勅令九号をポツダム政令のうちで存続として出したゆえんのものは冒頭御説明申上げました通り、或いは言葉が悪ければ何ですが、一時糊塗に違いないのであります。この勅令が若しも死んだままで何にも働かなくなるというようなことになりますと、これは一大事でございますので、私どもといたしましては当面の措置といたしましてこれを生かしておきまして、なお引続き根本的な対策に移る。というよりは相当現在までに先ほども申した通り資料も集まり、研究もいたし、案も或る程度のものができておりますが、これはまだ国会の御審議を仰ぐ程度に固める程度に至つておりませんので、取りあえずの措置といたしまして勅令九号を存続の方向に持つて行く、かようなことで御了承願いたいのでございます。従いまして今後私どもの作業といたしましては、引続きこの方向を強化するというふうに持つて行きたいと存じております。
#43
○宮城タマヨ君 その問題は法務総裁に伺うことにいたしまして、この勅令九号の二條でございますが、この條文の内容について私は大変わからないことがあるのでございます。この「売淫をさせることを内容とする契約をした者は、」というのでございますが、これによりますと、どうしても住込みとか或いは継続的のもののみ意味しているというふうに私は解釈したいのでございますが、この点は如何でございましようね。
#44
○政府委員(岡原昌男君) 大体お話のようなのがこの第二條の狙いでございますが、なお婦女子とそれから抱主の間の契約のほかに、又それに類似する体形のものもあろうかと存じますので、広く「婦女に売淫をさせることを内容とする契約」、さような包括的な文言になつている次第でございます。大体御質問の通りにさような継続的な業務につかせると、こういうのがこの條文の主たる目的でございます。
#45
○宮城タマヨ君 今本当に実情として私どもが問題にもし、困つておりますことは、一夜の間貸しをしております者を取締つて欲しい。こういうものはどういうところで、どこで取締るのでございますか。
#46
○政府委員(岡原昌男君) さような行為の形体は、大体において別途お配りいたしました売春取締関係の條例において取締つているものでございます。なおさような例は現在まで私どもの手許に集まりました資料によりますると二十八カ所あるようでございますます。
#47
○宮城タマヨ君 二十八カ所……何がでございますか。
#48
○政府委員(岡原昌男君) つまり場所の提供でございます。場所の提供を処罰するという條例を規定したものが二十八カ所でございます。
#49
○宮城タマヨ君 この條例を、実際これを生かして活用された例がございますか。
#50
○政府委員(岡原昌男君) 只今手許にはその数字は統計としては出ておりません。参つておりませんけれども、各地においてその種の事犯を漸次取締りつつあるというふうに伺つております。
#51
○宮城タマヨ君 誠に法務府として、ただそれを伺つております程度でございますと、私も心細く感ずるわけなんでございますが、実はこの間国立の文教地区指定地問題で、文部委員会と法務委員会との合同委員会を開きましたときにも、業者が参りまして堂々とこういうことを言つております。婦女子から、殊に若い十八、九というような娘を下宿させておりまして、一軒に数人下宿させておりまして、そうして三千円乃至五千円の間代を取つている。そうしてそれが一体何をしているのですかと言うと、さあどんなことをしておりますか……と言つてもううまく逃れている。これは私は全体においての実請であろうと思つております。一体こういう業者をいつまで政府は生かしておけばいいのですか。この意味におきましても私は今度の勅令の九号を、まあ一時的の措置としてということもございますけれども、それを一時的としておきますといつまでもこの下に隠れて……私は法務府の無責任を暴露することになるのじやないか、政府の無責任だけでなくて、私ども国会におります者の、殊に婦人議員としての責任を非常に痛感するものでございます。この売春に関しまするところの調査を本委員会で年を重ねていたしましたことは昨日も申しました通りでございますが、この調査の一環としまして昭和二十四年の十二月に集まりましたもの、これは全県でございませんようで二十三県から集まつているのでございます。そうしてこの集まりましたところの売春婦の数は、集娼が七千四百名、散娼が二千百五十五名、つまり九千五百五十五名について、これは全国のものでございませんで、甚だ統計としたら不備なものでございますが、併しこれだけのものにつきましての調査ではつきりいたしておりますことは、生活難が七八%、生活に困つたために転落しておりますものが七八%、それから好奇心、自暴自棄といつたようなものが一五%ということも出ております。それから家庭を持つたことのあるものは丁度七〇%、九千五百五十五人のうちの七〇%、それから最も憂えなければならない点は、子供がございますものが二五%。そうしてこの稼いでおります年限でございますが、これは集娼だけについて見たものでございます、一カ年以下というものが四五%で、一年以上というものが五五%になつております。そうしてその一年以下の四五%を又よく調べて見ますというと、一年稼いで、一年以内稼いで出たけれども、どうしても娑婆に出て見ましても生活ができないので、もう一度舞い戻つて稼業をやつたという数字が一七%に上つております。それからこの売春が禁止されたらやめ得るという回答をいたしておりますものが僅か二八%、どうしても生活難のためにやめられないというものが大五%になつております。これによつて見ましても、どうしても、ただ強い罰則を持ちました法律によつてだけこの問題を解決することはできない。従つて私どもはこの社会保障制度の確立というようなことも、今切実に願つている問題なのでございますが……まだお見えになりませんか、厚生省の局長はまだですか……これにつきましては、厚生省関係のかたにお伺いしようと思いましたが、まだ局長が見えないそうでございますから、その問題については私はやめておきましよう。私ども聞いておりますが、集娼、散娼を集めまして、二十四年に厚生省のほうから出ましたものには、これは推定数でございましようが、二十万ということが言われ、そうしてその性病の蔓延いたしておりますパーセンテージについては、その当時三〇%ということが厚生省のほうから発表されたものを見ておりましたのでございますが、私が今日において非常に雑駁に申しますというと、その当時二十万と言われた集娼、散娼の数が、恐らく十万も殖え、或いは倍にも殖えておるのではないか。そうしてその人たちが流しておりますところのその害毒は、性病は、これはもう津々浦々にまで、農村までも行き届いておるほど大変な拡がりようでございますし、又この忌わしい生活状態が教育に及ぼす点を考えましたときに由々しい問題ではないか。今、私ども、殊に母の立場におりますものは、平和を守り、再び戦争になつては困る、そうして子供を戦争から守りたいという非常な希望を持つておりますと同時に、又それにも劣らないほど、子供をこういう面から守りたいということが母の願いでございます。そこで私はこの際政府の本当に責任ある答弁を伺いたい。それは前から申しますように、ここで以て少しでも完全に近いものをこの六カ年の間に準備して頂いて、私どもも大いに努力いたしますが、何とかしたいという答弁が頂きたいのでございますけれども、如何でございましようか。
#52
○政府委員(岡原昌男君) 只今お話しの六カ月と申しますのは恐らくポツダム政令の廃止の親法の関係の百八十日のことだと存じます。この期間内にさような新しい強い法律が完全な姿で出るということは私どもといたしましても当然努力しなければならないことでありまして、現に私どもといたしましては、六カ月と言わず、成るべく早くこのような全般的な問題を完全に解決したいというようなことで準備はいたしておりますけれども、何分にもいろいろと事情もございまして、若しもこの六カ月が徒過した場合にはという懸念がございますので、ただその一点で実は取りあえずの措置といたしまして、かように万全の策をとつたということで御了承願いたいのでございます。
#53
○宮城タマヨ君 そのいろいろな事情とおつしやるその点を私どもに率直に打ち明けて頂いて、何とか最低六カ月のうちに出したいという希望を持つておりますが、それは速記を取ることができないというその御事情でございましたら、懇談でも何でもよろしうございますから、私どもの念願いたしますところは、もつと強いものを作つてこの際出して頂かなければこれは大変な問題になるだろうということを心配いたしております。
#54
○政府委員(岡原昌男君) ちよつと速記を恐れ入りすが……。
#55
○委員長(小野義夫君) ちよつと速記をめて。
   〔速記中止〕
#56
○委員長(小野義夫君) 速記をつけて。羽仁君。
#57
○羽仁五郎君 この勅令第九号の問題について、資料を委員会の御承認を得て委員長から政府に要求して頂きたいのですが、その一つは、この日本タイムスで相当長く問題になつた横浜の桜木町の駅前で、この横浜の市の警察でしようけれども、それが婦人に対して人権蹂躪のひどい扱いをしたということが、あれの投書欄で非常に問題になつたことがありますが、あの経過と、それから結末とはどういうふうになつているのか、それを資料を拝見したいと思うのです。それで、これは先ほど婦人少年局の政府委員のかたからの御意見の中にもあつたようですが、非常に我々が恐れるのは、直接にいわゆる売淫する女性というものの取締が警察によつて非常に人権蹂躪的なものが多い。そうして又法で禁じようとしておるほうが、むしろそういうこととは関係のない、全然無辜の、関係のない若い女性たちに対してそういう條例なり、或いは法律なりの取締りというものが加わることは皆さん御承知の通りです。ですからそういう点も十分考えて見ないと、警察がそういう売春行為を取締るということに関連して、駅頭で良家の子女を逮捕する、或いは監禁するというふうなことをしばしばやつているようですし、そういうような問題について我々が成る程度の観念を得るような資料を政府関係から要求して頂きたいと思うのであります。それが一つ。それから次は、これは数日前ですか、サン写真新聞に朝霞の町の写真が出ている、政府はどうか知らないが、我々はああいうものを見て実に赤面の至りというか、慙愧の至りというか、国会議員なんかやめたほうがいいくらいに思う。あれは政府はどういうことをやつていられるのか。それについての資料も頂戴したいと思います。これは資料のお願いです。
 それから第二に、やはり至急政府のほうに責任ある答弁を頂きたいと思うのは、この売春行為についてのかなり大きな問題としては、外国軍が日本に駐在するということにあると思う。だからこれは安全保障條約というものを我々は承認したということからも来るわけですが、なかんずく現在進行している行政取極というものについて、厚生省なり、労働省なり、法務府なりはこういう問題についてちやんとした方針を持つて交渉に参加しておられるのかどうか、その責任ある答弁を聞きたいと思う。そういう問題については全然触れていないという、あとになつて当時触れていなかつたという御答弁を伺うと我々としては非常に責任上困るので、現在岡崎国務相が主としてやつておられるようですが、それに対して厚生省なり、労働省なり、法務府なりとしては……これは重要な問題だと思う。そういう問題についてどの程度のことをその交渉の過程において努力しておられるのか。私は最大限の努力をして頂いておるものと信ずるのでありますけれども、併しどの程度の努力をしておるのか、それを行政取極の中でこの問題を取上げているのか取上げていないのか、取上げているとすればどういう形で取上げているのか、そしてどういう効果を期待しているか、これをこの次にでも最近の機会に是非伺いたいというふうに思うのです。
#58
○政府委員(岡原昌男君) 承知いたしました。
#59
○伊藤修君 今の羽仁さんの資料要求のそれに附加えまして、人身売買に関する資料を全部頂きたいと思います。その一つだけです。
#60
○委員長(小野義夫君) それでよろしうございますか……。
 今日は散会いたします。
   午後一時三分散会
ソース: 国立国会図書館
姉妹サイト