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1951/03/26 第13回国会 参議院 参議院会議録情報 第013回国会 法務委員会 第14号
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1951/03/26 第13回国会 参議院

参議院会議録情報 第013回国会 法務委員会 第14号

#1
第013回国会 法務委員会 第14号
昭和二十七年三月二十六日(水曜日)
   午前十時五十三分開会
  ―――――――――――――
 出席者は左の通り。
   委員長     小野 義夫君
   理事
           伊藤  修君
   委員
           加藤 武徳君
           長谷山行毅君
           岡部  常君
           齋  武雄君
           一松 定吉君
           羽仁 五郎君
  国務大臣
   法 務 総 裁 木村篤太郎君
  政府委員
   法制意見長官  佐藤 達夫君
   刑 政 長 官 清原 邦一君
   中央更生保護委
   員会事務局長  斎藤 三郎君
  事務局側
   常任委員会専門
   員       長谷川 宏君
   常任委員会専門
   員       西村 高兄君
  ―――――――――――――
  本日の会議に付した事件
○検察及び裁判の運営等に関する調査
 の件
 (戦争犯罪人の処遇等に関する件)
 (平和条約発効に伴う恩赦に関する
 件)
 (プレス・コードに関する件)
  ―――――――――――――
#2
○委員長(小野義夫君) それでは只今より委員会を開きます。
 法務総裁が出席されておりますから、総裁に対する質疑をこの際お願いいたします
#3
○岡部常君 いわゆる戦争犯罪者に対する件に関しまして、前大橋法務総裁には若干お尋ねをいたしたのでありますが、その際は少し時期が早かつたためでありますか、大部分は考慮中というようなお話で、明確なるお答えを得るに至らなかつたのであります。然るに大分時が経ちましたし、すでに講和発効も目睫の間に迫つておるように感じまするので、この際更にお尋ねをしてお答えを得たいと思うのであります。先ずお伺いいたしたいことは、いわゆる戦争犯罪者なるものが普通の犯罪者とは特段に違うものであるということ、各委員からもそれぞれお尋ねがありまして、又前総裁におかれても、それは勿論普通の犯罪者とは違うと、これは特別な考えを以て見なければならないと、又従つてその処遇等についても特段なる留意を払うべきものであるということを重ねてお答えになつておるのであります。これは私らとしても当然のこととして承わつておつたのでありますが、勿論現総裁においても同じお考えであろうと思いますが、先ず念のためにお伺いいたしておきたいのであります。
#4
○国務大臣(木村篤太郎君) お答えいたします。いわゆる戦争犯罪者は、日本の法規の下に罰せられたものではないのであります。従つて日本の法規違反の行為を行なつたというわけではなしに、いわゆる極東軍事裁判或いは戦争裁判法廷において課せられた一つの犯罪者なのであります。これらの人は普通の内地の犯罪者とはいささか、というよりがむしろ大いにその性質を異にした人たちであります。特別に考えるべきことは当然であろうと思います。
#5
○岡部常君 重ねて法務総裁の御明答を頂きまして安心するものであります。この点に関しましては国民ひとしく関心を持つておることでありますし、殊に本人は勿論、関係者、家族等において深き関心を持つており、我々から考えるとむしろ心配し過ぎるのではないかと思われるまでに心痛をいたしておるのでありまして、恐らくこれはいろいろな方法を以て陳情などが参つておることと思います。さて、それが今回いよいよ講和発効によりまて現実に日本の手によつて扱われることになるのでありますが、いわゆる戦争犯罪人の拘禁ということは、従前においてその実例があるかどうかということでありますが、我々の調べまするところによりますと、前大戦の後に、ヴエルサイユ条約におきまして、その二百二十七条並びに二百二十八条にそれらに関する法条がありまするのでありますが、それらに関しましては実効を発したことを知りません、というよりは、ドイツの抗議によりまして実際に行われておらないように考えるのであります。この点から考えますると、今回のサンフランシスコの条約第十一条による拘禁も、何らか同じような手によつて少くともその処遇の緩和をするというような途はないかという考えが、起るのでありますが、それらに対する政府のお考えなり努力なりは果して万全を得ているかどうか、そういう点を私は伺つておきたいのであります。若し又できまするならば、講和発効の前において連合国の手によりまして恩赦とか、減刑とか、大赦とかというような方法がとられるのではないか。それこそ最もよき感情融和の途であり、これこそダレス氏の言われたところの和解と信頼の精神に最もかなうものではないかと考えるのでありますが、この点に対して、政府は如何なるお考えを持ち、如何なる手を打たれているかを承知いたしたいのであります。
#6
○国務大臣(木村篤太郎君) 只今岡部委員の仰せになりましたように、これらのいわゆる犯罪者につきましては、平和条約第十一条によりまして、その刑の執行を日本国でやることになつたのりごありますが、これらの人の処遇の問題については我々も実は大いに苦慮しているのであります。一日も早くこれらの人たちを釈放できるようにということを考えております。併しながら、遺憾ながらこれは我がほうだけでやることができませんので、平和条約十一条に記載されてありまするように、連合国の当事者国の個々の了解も得なくちやならんということになつておりますので、なかなか事は簡単に取り運ばないのでありまするが、我々当局といたしましては、できるだけこの人たちの釈放ということについて実は手を打つているのであります。併しながらいろいろの事情がありまして思うように参つておりません。併しながら最近におきまして、更に十分な手を打つて、一日も早くこの人たちを釈放できるようにと苦慮している次第であります。殊に近く講和条約も発効いたしまするので、これらの喜びをこの人たちにも分ちたいという考えの下に、種々な手を打つているということだけは、ここで申上げることができるわけであります。但しその手を如何にして打つているかということはこれは明言することを憚る次第であります。
#7
○政府委員(清原邦一君) 現在戦犯者に対する仮出所は岡部委員御承知の通り、総司令部の仮出所委員会、パロール・ボードにおいて決定いたしているのでありますが、これは従来一カ月二十名乃至三十名の程度しか仮出所になつておらなかつたところ、昨年十一月頃より、同委員会の御努力によりまして、急激に増加いたしております。即ち昨年十一月以降に一カ月六十名乃至つ八十名を超える仮出所者が出ております。換言いたしますると、昨年十一月より本年三月三十七日までにすでに、出所予定の分をも含めて三百八十名が仮出所を許されたことになります。なお講和条約発効前の期間におきましても、一層同委員会において御努力になつてこの仮出所者が増加するものと私どもは期待いたしております。
#8
○岡部常君 只今総裁なり政府当局から御苦心のほどを承わりまして、私ども大いに信頼する次第でありますが、どうぞこの上とも最大の御努力を払われることを希望してやまないものであります。次に講和発効を機会にして恩赦の制度が考えられておるということでありますが、その恩赦といわゆるこの戦犯者との関係はどういうふうになつておりますか。普通一般の恩赦の恩沢をその方面に及ぼすお考えがあるか、或いは如何なる程度に施行せられるか、その点を承わつておきたいと思います。
#9
○国務大臣(木村篤太郎君) この戦犯者に対する問題と恩赦の問題とは別個に取扱わなければならんと考えております。申すまでもなく恩赦は日本国の犯罪者に関する問題でありまして、いわゆる戦犯者に関する問題ではないのであります。併しながら内地における犯罪者に対する恩赦、これが講和発効と同時に行われるのでありまするから、先般も申上げました通り、この喜びを戦犯者らにも及ぼしたいという考えを持つております。それについて、果して我々の思う通りの効果を得られるかどうかということは、只今のところ疑問でありまするが、でき得る限りその効果を得るように努力しつつある次第であります。
#10
○岡部常君 只今の恩赦を直ちに戦犯者に及ぼすということは困難であるかつも知れませんが、講和発行後において、何らかの機会をつかまえて、均霑をするというようなこともお考えの中にありましようかどうですか、伺つておきたいと思います。
#11
○国務大臣(木村篤太郎君) これは全く先方側との交渉如何による問題と考えております。従つて我々はその交渉において成果を挙げるべく努力いたしたいと考えております。
#12
○岡部常君 その点につきましてしも、政府の深甚な御努力を期待する次第であります。次に講和発効後におきまして、いわゆる戦犯有を処遇する上につきまして、仮釈放制度のことでありますが、承わるところによりますと、巣鴨に拘禁せられておる人の中に、日本の刑法にはありませんところの長期刑、無期よりももつとひどいように思われる。長期刑の人が相当数あるように聞いておりますが、例えば七十年の刑期、三十年というような刑期の人もいるようでありますが、これらの人に対する仮釈放の条件は一体どいうふうにせられるつもわでありますか。日本刑法との均衡を失するようなことがないようになつておるか、その点を承わつておきたいのであります。例えば有期刑は三分の一経過ということが条件でありますが、現行の刑法におきまして、無期でさえ十年の期間を似て仮釈放の有効の条件としておるのでありますが、七十年、三十年というような長期刑に対して、果してどういうふうにその間の均衡をとられるおつもりでありますか、その点を承わつておきたいのであります。
#13
○政府委員(斎藤三郎君) 現在一番長い人は、両方二つ合せまして、七十五年というのがあります。かような問題につきましては現在準備いたしておりまする法律案で、通常の場合は刑期三分の一、但し四十五年以上或いは無期の場合は十五年を経過すれば仮釈放を受ける資格を持つ、こういうふうにいたしてございます。なおこの期間につきましても、発効後日本側の勧告によつて刑期の減刑ということもできますので、さようなことも十分力をいたしたいと、かように存じております。
#14
○岡部常君 無期でさえ十年の経過によつて仮釈放ができるのでありますが、たとえ三十年と長い期間でありましても、無期とは根本的に違うものであります。その間に十五年と十年という差ができるということは、すでに不思議なように考えられるのであります。この間何かグツドタイム・システムそうゆうふうなもので刑期というものが逓減せられるというようなことで、調和をする途がありますかどうか、その点をどうか。
#15
○政府委員(斎藤三郎君) 三分の一という期間につきましては、善行特典を考慮に入れてやるようには相成つておりませんです。但し全体としては善行特典によつて、十年以上の人につきましては一月を経過するごとに十日刑期の満了日が繰上つて完了する、こういうふうに相成つております。
#16
○岡部常君 次に仮釈放審査のことに関してお伺いいたします。これはやはり同様、従前の仮釈放審査規定を準用せられるものと考えますが、その点は如何ですか。
#17
○政府委員(斎藤三郎君) 大体今日まで七百人の仮出所者がございまするが、その成績は極めて良好でございまして一件も事故らしい事故はございません。さような関係で勿論諸般の事情を十分考慮いたしまするが、さような、出しても問題のないというような従来の例も十分考慮いたしまして審査に当ることに相成ることと存じます。現在のパロール・ボードをやつておられるのは、やはり家庭の関係とかという点も十分考慮しておられます。さような点についても十分調査をいたしたい。又講和発効と同時に現在総司令部でやつておられるパロール・ボードの権限が日本側に移ります。それから調査をするということでは、その間一月、二月の間隙を生ずる虞れがございますので、できるだけ事前に調査もいたし、ギヤツプのないようにして、その仮出所の制度を続けて行きたいと、かように考えております。
#18
○岡部常君 それらの事前の調査は勿論身上関係とか、保護関係とか、その審査規定にありまするところによつておられることと信じまするが、犯罪関係のほうはどういうふうにお考えでしようか。人によりましては、犯罪関係については、講和条約十一条を受諾した結果として、犯罪関係の審査まではできないというような危惧を持つておる向もあるように聞いております。併しながら私どもの見るところによりますと、各国の裁判の状況など、その国国によつて著しく状況が違います。殊にその違うのが悪いほうに随分違つておるような例も少くないように思うのであります。この点に関して如何でありましようか。非常な均衡を失しておるというのが実情のように考えられるのであります。この点についてはどんなお考えがありましようか。
#19
○政府委員(斎藤三郎君) 平和条約第十一条で戦争犯罪法廷の判決を受諾した、こういうことになつておりますので、その犯罪がどうである、こうであるということは、正式には言えないと存じまるが、いろいろなことを聞いております。伺つております。そういう点、如何なる事情でその罪に問われたかというような事情は十分考慮して、仮出所或いは赦免、減刑等の勧告についてもその点を十分考慮されることと存じております。
#20
○岡部常君 そういう御考慮のあることは大変私も心強く感ずるのであります。何と申しましても、その犯罪の実情或いはそれに対する検察或いは裁判のやり方というものは、これは一見記録を見ないとわからない点も多々あることと存じますが、この点につきまして、その記録の借覧或いは写しをとる。そういうふうなことについて十分御考慮を払つておるかどうか。その点につきましては、すでに他の委員からも前総裁にお伺いして、その当時は何ら確答を得られておらないのです。併し荏苒としておるわけには参りません。その点をはつきりさしておきたいと思うのでありますが、何らか政府で手をお打ちになりますか。もうすでにお打になつておりますれば結構でありますが、その点如何になつておりますか。
#21
○政府委員(斎藤三郎君) 勧告いたしますについて、如何なる事情で戦争犯罪に問われておるかということを調べることは当然必要でありますので、そういつた記録なり、判決なりを取寄せるということについては、いろいろ交渉いたしておりまして判決それ自体は全部引継ぎを受けることに相成つております。記録につきましては、まだそこまで参つておりませんが、又実際ないのもあるやに聞いております。ただ復員局あたりでもいろいろ調査をいたしております。そういつたもの、いろいろな方法で、如何なる事情で戦争犯罪に問われたかということを十分考慮しまして、最も適正な勧告をいたすように努力いたしたい、かように存じております。
#22
○岡部常君 次に仮釈放者の保護期間につきまして、今回出ます法案を今日頂いたのでありますが、まだ拝見をするいとまがありませんが、これは普通の釈放者とよほど趣きが違うように考えられるのでありますが、例えばその一つとして、保護監督の期間については何か特別の緩和の策を講じておられますか。或いは普通通りにやられるつもりでありますか。その点を承わつておきたいと思います。私の希望としては短縮されたいというふうに考えておりますが、その点に関するお考えを承わりたい。
#23
○政府委員(斎藤三郎君) 仮出所者の保護監督に服する期間というつのはこの仮出所制度自体からいたしまして、残刑期全部ということになると存じております。但しこの法律によりまして仮出所中の成績良好なものにつきましては、十分に減刑の勧告をいたしまして、その反射的な効果として保護監督の期間が短縮される、そういうふうに努力いたしたい、かように存じております。
#24
○岡部常君 その減刑の勧告というものは釈放後にも新たなる勧告をいたすのでありますか、或いは執行中の善行を継続して更に勧告するのでありますか。
#25
○政府委員(斎藤三郎君) 国内の恩赦法におきましても、減刑の効力は仮出獄中の人に対しても及びますと同様に、減刑ということは戦争犯罪を犯した刑期を減ずる、或いは刑の種類を軽くする、こういうことになると思いますので、仮出所中の人についても減刑の勧告ということは可能であると、かように存じております。
#26
○岡部常君 それはその監督方法はやはり普通の釈放者と同じ監督方法によるものと承知をいたしてよろしうございますか。
#27
○政府委員(斎藤三郎君) 戦犯者の仮出所中の保護監督というものは、国内法の保護監察そのものではございませんが、この規定を準用いたしまして、事案に即応するような保護監督をいたしたいと、かように存じております。無論保護監察それ自体も、人に応じて監督者が月に数回連絡をとる場合もございまするし、或いは一回の連絡でいいということもございまするし、又保護監督そのものが必ずしも指導面に重点をおくというよりも、むしろ保護に重点をおくという場合もございまするし、この事案に即応した御面倒を見て上げる、こういうふうにいたしたい。そうして規定といたしましては、犯罪者予防更生法の必要条文を準用する、こういうような考えでございます。
#28
○岡部常君 その点につきましては、自由裁量の余地がより広くなつたと解釈してよろしうございますか。
#29
○政府委員(斎藤三郎君) 制度自体が、事情に応じてこの保護監察、保護監督そのものが伸縮自在である、かように存じております。従来は……現在総司令部でパロールされた人々の保護監督を総司令部の命令によつていたしておりますが、その間私どもは一度も不平を聞いたこともなく、それぞれそのときの保護司さんが非常に熱心に御面倒を見ておる、こういうふうになつておりますので、さような方法でやつて行きたい、かように存じております。
#30
○岡部常君 次にこれは総裁にお伺いいたしたいのでありますが、いわゆる戦犯者並びに戦犯者を拘禁する設備の呼称につきまして、前総裁に承わつたのでありますが、研究中であるとか、或いは国民感情を考慮するというようなお答えがあつたのでありますが、この点に関して政府の御成案がどんなふうになりましたか承わりたいのであります。重要な犯罪者というような、戦争犯罪人というような名前がいつまでも持続せらるべきものであるかどうか、甚だ私は疑うのであります。又その設備といたしましても勿論普通の刑務所に拘禁するというようなこともどんなものであるか。殊に聞くところによりますれば、巣鴨刑務所というような呼称も考えられておるということでありますが、行刑のことに多少関心を持つておりまする者ならば、巣鴨刑務所というものは甚だどうも芳ばしくない響きがあるのであります。むしろ刑務所の中でも、最も悪い刑務所、というと語弊があるかも知れませんが、いやな刑務所という感じがあるのであります。その巣鴨刑務所というものがすでに数十年前になくなつておるのでありますが、それを更に回想せしむるような巣鴨刑務所というようなことになるのは、まあ世間としても、勿論中に入つておる者は最も強く感じましようし、又その家族の人などその呼称によりまして一層不愉快な感じを私は懐くものと忖度するのであります。国民感情を考慮するというようなお考えとはむしろ真反対の方向に行つておるように考えるのでありますが、その点に関するお考え如何でありますか。私はむしろ自分の考えを申しますれば、巣鴨収容所とか或いはそれもできなければ、巣鴨プリンズとでもしまして、外国語の蔭に隠れて、まあカモフラージユするというようなこともいいのじやないかというような工合に考えておるのでありますが、大臣のお考えは如何でありましようか。
#31
○国務大臣(木村篤太郎君) 私としては、初めてそういう御意見を承わつたのであります。十分それらの点について考慮いたしたいと考えております。ただ巣鴨で今収容しておるのは、やはり刑の執行として収容しておるのであります。それらの関係をいろいろ考慮しなければなりませんので、お説は一応の御意見として承わつて考慮いたしたいと思つております。
#32
○岡部常君 この点に関しましては、前総裁に私ははつきり申上げて置いたのでありまして、その点が伝つておらないと、私甚だ遺憾に感ずるのでありますが、将来その点については御考慮を煩わしたいのであります。これはやはり前総裁にも申上げて置きましたが、若し名称が我々の望むように変らないのならば、せめて通称を何とか考慮になつて、そういうふうな呼び習わしをお作りになつてはどうであろうか。恐らく世間では何かいい代名詞を作つてくれるかも知れませんが、くれるだろうと思いますが、それを待つまでもなく官のほうで、そういう御考慮をお払いになつて下さいということを私は申述べて置いたのであります。新総裁におかれても、その点を御考慮願いたいと思うのであります。それにつきまして、私はちよつと承わつて置きたいことは、講和条約発効後におきましても、いわゆる戦犯なるものが拘禁せられた慣行があるかどうか。前総裁はそれは国際慣行に従うのだ、国際慣行が如何にもあるかのようにお答えになつたのであります。私はまあそれから後に調べたのでありますが、そういう慣行は一向にないようであります。これは私らの調べの疎漏かも知れませんが、若しありましたのなら、その点をお教えを願いたいのであります。恐らくこれはないんじやないか、ないものとすればこれは日本がまさにこれからそういう慣行を作るという重大なる私は時期に際会しておるのだと思います。従いましてこの扱いが、又こんなものが慣行になつては困るのでありますが、将来のためによほどうまいことをやつておかないと、正しいことをやつておかないと将来の物笑いを作るのじやないか、まさに国家の責務は私は大なるものがあると思うのであります。その点に対する総裁のお考えを承わりたいと思います。
#33
○国務大臣(木村篤太郎君) 私の知る範囲におきましては、第一次欧洲大戦後、国際裁判的のようなものがあつたように聞いておるのであります。併しながらこういう大量に国際裁判にかかつたことは今次大戦が初めてだつたと私は考えております。従つてこれらの裁判によつて言渡された人たちの処遇については、我々十分の考慮を払わねばならんと、こう考えておる次第であります。私はこれらの人が一日も早く釈放されるように努力いたしたいと、これは考えております。
#34
○岡部常君 その点につきまして、冒頭に私はヴエルサイユ条約の二百二十七条、八条を挙げまして、条文はあつたけれども実行に移らなかつたということを申上げておいたのでありますが、それはそのほかには例がないと思いますから、日本としては、よほどこれは考えて立派な例を作つて行かなければならんと思うのでありまして、この点は世界の人心にも訴えて、正しきを踏んで行かなければならないと考えるのであります。それから次に私が伺いたいことは、中の処遇につきましても、前総裁は国際慣行を尊重するのだということを言つておられました。その国際慣行というのが現在巣鴨において行われておることを指すならば、それも一種の慣行でありましよう。それは外国の手によつて行われておることでありまして、その国においてそれらの犠牲者を処遇するという慣行は恐らくないのだろうと思います。それはともかくといたしまして、差当り具体的な問題といたしましては、現状維持はどうなつておる、現状を維持されるものであるか、現状維持の御希望があつたように思います。又私どもも実際の処遇を見まして、あれよりも処遇を落すというようなことがあれば、中の人々の感情は勿論、家族の人々、延いては世間がどういうふうに思うか、やはりこれは現状維持をして行くよりほかはないのじやないかというふうに考えたのでありますが、その現状維持の希望はどういうふうになりましようか、達成せられますかどうですか、いささか疑問でありますから承わつておきたいと思います。
#35
○国務大臣(木村篤太郎君) 現状維持についてはいろいろ困難な事情があつたのであります。予算関係その他から考えて、なかなか容易ならんことでありました。併しながらいろいろ折衝の結果、大体において現状の維持はできることと考えております。
#36
○岡部常君 その点に関しまして、事務当局のほうから少し詳細なことを承わつておきますのが将来の法案審議の上によろしいかと思いますが、丁度ついででございますから、簡単で結構です。
#37
○政府委員(清原邦一君) 只今の総裁の御答弁を補足して申上げます。戦犯者は他の刑法犯の被告人或いは受刑者とは著しく趣きを異にしております。殊に御指摘の通り国際的に見ましても殆んどその例を見ないのでありまするから、これが処遇につきましては、種々検討いたしまして、結局結論におきましては現在巣鴨プリズンにおいて行われている処遇が最もいいのではないか、ほぼこの線に副つて進んで行きたいと思つております。具体的に申上げますると、他の一般刑務所の収容者と比較しまして、著しく広範囲の自治の制度を認める、或いは食糧の点につきましても、一般収容者に比べて相当高額の予算を準備しようとしております。なお学科教育或いは職業教育等につきましても格段に意を払いまして、数年間或いはそれ以上長く実社会と遠ざかつておつたこれらの人が出所後直ちに実生活に即応する生活を営み得るよう極力努力をいたしたい、かように考えております。
#38
○岡部常君 次にいわゆる戦争犯罪者ではなく、軍法会議によつて処断された普通の受刑者が講和発効後如何に処遇せられますか、その点を承わつておきたいのであります。
#39
○政府委員(佐藤達夫君) 実はこの戦犯者以外の今お話しの受刑者の関係につきましては、平和条約の十一条に触れておらないということでございます。従いまして、平和条約とは全然別個の事柄である。而してそれをどう措置するかということにつきましては、結局そういう人たちで平和条約発効の際に目下処刑中の者として残るのは二百人前後ではあるまいかと一応考えるわけでありますが、それらの人につきまして、只今我々の考えておりますのは、特にその処刑をしなければならんと我が方で考えますものにつきましては、こちらで国内法に照らして新たに起訴して行く、そうして裁判所で審理をして頂くという方向で処理したらどうかという考えでおるわけでございます。
#40
○岡部常君 その点につきまして、先ほど挙げました家族からの要請書というものがたくさん我々のほうに参つておりますが、その点に関する危惧を述べておるのでありますが、この点に関しましては、政府としてはよほど深甚なる御留意をなすつて善処せられるように私は希望してやみません。これは私希望として述べておるのであります。それからこれも前総裁にお伺いをしてまだお答えを得られなかつたのでありますが、巣鴨のお世話をするところの担当の官吏についてはどういう人間を充てるか、又その人間についても更に特別なる修養を積ませる必要があるかどうか。いわゆる研修制度というようなことも伺い、又それに触れて人材を得なければそれに適するような人材を他から求めるようなお考えがあるかどうか、この点を伺つておいたのでありますが、今はそういうことも考えておらんというようなお答えを得ておるのでありますが、もう時もたつておりまするので、大臣のお考えを承わつておきたいとい思ます。
#41
○国務大臣(木村篤太郎君) これら戦犯者に対するいわゆる監督の責任にある刑務官については、特別の考慮を払う必要があろうと考えております。殊に相当の教養のある者をしてこれに当らしめるということが極めて適当じやなかろうか、最近その一部の人について不適任と申すことはできませんが、必ずしも適任でないというような噂を聞きましたので、人事の異動も行なつて十分それらの人の感情を柔らげるような処置をとつて行きたいと考えております。
#42
○岡部常君 そのお考えを承わりまして安堵いたしましたが、それらの人々に対する待遇というものもおのずから異つてよろしいのではないかと思いまするが、残に日本で管理するようになりましても、恐らく渉外関係というようなものは、これは相当残るのではないかと思います。つきましては、その待遇、具体的に言えば俸給であるとか、或いは服装の点であるとか、或いは居住の官舎のようなものであるとか、そういうふうなことについても十分御考慮を払われておることと考えられるのでありますが、その点を念のために伺つておきたいと思います。
#43
○国務大臣(木村篤太郎君) 特別にそれらの人に対して俸給を上げるというようなことは、今の法制上できかねるのであります。併し住居の関係とか、そういうようなことで適当な人を得られないということは誠によくないことでありまするから、住居の点なんかについて十分考慮して適材者をその任に充てたいと、こう考えております。
#44
○伊藤修君 では私から極く簡単に……。今の岡部さんの中にも少しありましたが、今度の恩赦の問題に、或いは多少関連しておりますが、基本的にお伺いしておきたいことは、この占領期間中においてたくさんな覚書、いわゆるメモランダムが発せられておるのですが、これは一応全部その効力が失われるものと考えるのですがこれはどうですか。
#45
○政府委員(佐藤達夫君) それは効力を失うというふうに考えております。
#46
○伊藤修君 そういたしますとですね、先ず、たくさんお伺いしたいのですけれども、本日はこの一点だけとにかく伺つておきたいことは、現在憲法において、いわゆる言論の自由という点、これに関しましていわゆる新聞紙法というものが廃止されておる、新聞紙法を廃止する場合において、これに対して何かの処置をとるのかという私は質問をしておいたのですが、これに対しては何らか考えるというふうなお答えがあつて、その後二、三年経過しておるんですが、国内法規としてはそういう手当がないのでありますが、幸いにしていわゆるプレス・コードがメモランダムとして出ておる。現在新聞紙関係はこのプレス・コードによつて規律されておりまして、今日の秩序が保たれておるのでありますが、今のも答えによりますと、結局これをも全面的に廃止させるということになりますれば、それこそこの点に対するところの何らの手当もなくなつてしまうが、果してそれで以てよいかどうか、その冊に対してどういうお考えを持つていりつしやるか、この点をお伺いしておきたいと思います。
#47
○国務大臣(木村篤太郎君) その手当については、これは非常に影響するところが大きいのでありまするが、只今美は慎重にこの点について研究中であります。まだ成案を得ていないのであります。
#48
○伊藤修君 勿論早々の場合であつて、お答えの御趣旨はよく了とするのでありますが、近き日、即ち来月の中旬を期して独立国家となつた場合においては、その瞬間においていわゆるこれは無秩序の状態に置かれるということは好ましくないと思います。大新聞まともかくといたしましてですね、地方新聞は最近においていわゆる言論の自由に名をかりて基本的人権を侵害することが多くあるんですね。いわゆる暴力団と一律にこれらに対しましては従来の慣習を以て我々としては今日まで対処して来た。又大新聞においても行き過ぎもあり得ることもなきにしもあらずです。従つて、少くともプレス・コードに掲げられておるようなことだけでも早急に手当しておく必要があるのではないか、これに対するところの重ねてお考えを伺つておきたいと思いますが、それとも或る期間、空間の期間を置いても構わないというお考え方か、それまでには何とか手当をするという考え方か、又手当をするならばどういう形式を以てお手当なさる方法を講ずるか、その点をお伺いしておきたいと思います。
#49
○国務大臣(木村篤太郎君) お説の通り尤もな御意見と考えます。この講和条約発効後、直ちにやるということはどうもできかねるのであります。幸いこの御審議を願つておりまするポツダム宣言の受諾に伴い発する、命令に関する件の廃止に関する法律案、これによりますると「勅令第五百四十二号に基く命令は、別に法律で廃止又は存続に関する措置がなされない場合においては、この法律施行の日から起算して百八十日に限り、法律としての効力を有するものとする。」と、これで手当が大部分はできるのでありますが、全面的にこの法律に基いて手当はいたしかねるのであります。そこで政府といたしましては早急にそれらの点について遺憾なきを期したいと思つておりまするが、先刻申上げました通り、これは言論に関する、事重大な問題でありまするので、あらゆる方面の御意見も承わつて処置いたしたいと、こう考えておる次第であります。
#50
○伊藤修君 ポ勅に関するところの基本法律及び関係各省におけるところの特別のポ勅に関する法律の有効無効についての手当はなされておるが、不幸にしてこの中にいわゆるプレス・コードについてはこれが賄われておらないように私は考える。勿論このプレス・コードに違反した場合において政令、元の三百十一号、その後ならば三百二十五号によつて処罰する規定によるのは同じことでしよう、同じかもわかりませんが、よく私調べておりませんが、けれども基本たるところのいわゆる覚書のほうはなくなつてしまうといたしますれば、結局有名無実になりまして、この点に対しては何らの法的措置が講じられていない、いわゆる斬捨御免、無秩序の状態に一時解放されるということは、国民生活の上において至大な関係を有すると思う。これは私は御研究というよりは法制意見長官の曠職のそしりは免れないと思います。もう少し早くなすべきではないかと思います。早急に政府のお考え方をまとめて頂いて、事重大でありますから十分慎重の上一つ御提案を、いずれともお手当を願いたいと、かように考えます。それはどうですか、早急にやつて頂けますか。
#51
○政府委員(佐藤達夫君) 曠職のそしりというお叱りを受けましたけれども、これは申すまでもなく言論の自由ということは、よほどこれは慎重に考えなければならんと存じますので、我々の態度も又慎重になつているということで御了解願えると思います。
#52
○伊藤修君 私のお尋ねするのは至急に一つ出されるかどうかということです。
#53
○国務大臣(木村篤太郎君) これは先刻申上げました通り非常に重大な影響がありますので、慎重に考えて行きたいと、こう考えております。
#54
○伊藤修君 慎重に考えられることは結構です。併し近く選挙もあり得ると考えられるのです。そういう場合におきまして、国民としても非常に迷惑することでありますし、又日常生活の上においては非常に迷惑があり得ると思うのです。これは私は決して御慎重を欠いていいという意味ではなくして、御慎重は御慎重にして頂いても、早くして頂かないとやはり国民はそれだけの間基本人権の毀損を受けることになりますから、どうかその点は十分御注意願つておきたいと思うのです。次にもう一点お伺いしておきたいことは、今度の講和条約に伴いまして国民的ないわゆる喜びの日を迎えるに際し、大幅な恩赦が行われるということは、先に法務総裁の御言明においても了承している。私はこの際いわゆる占領治下において多数のメモランダムが発せられているし、そのメモランダムに基いて三百十一号或いは三百二十五号によつて処罰された日本国民は多数ある。これらはいずれも占領治下においてこそ違法行為となつたものである。いわゆる講和発効後におきましては、その社会秩序の上において決して好ましからざることであるとは断定しがたいものがある。中には独立後においてもその行為が反社会性のものであるものもあり得るでしようが、そういうものは特段別といたしまして、然らざる者は、大多数このメモランダム・ケースによつて処罰せられた日本国民に対しましては、この際講和の喜びの恩典を与うべく最善の御努力を期待してやまない。この点に対するところの法務総裁の御意見を伺つておきたい。
#55
○国務大臣(木村篤太郎君) 只今の御意見は至極御尤もだと考えております。大体そういう線に沿うて処置いたしたいと考えます。
#56
○羽仁五郎君 最初にさつき岡部委員の御質問になつた中に含まれている問題で、小さい技術的な問題なんですが、若しお答え願えれば伺つておきたいと思うのですが、我々が巣鴨を見に参りましたときに、あそこの所長といろいろお話をした際に、現在あそこには暖房が通つておりますが、ほかのものは大抵このままにして置く、併し暖房は取払つて持つて行く、それは非常にお気の毒だけれどもそういうようなふうに大体なつているということを所長は特に我々に言われましたが、その言われました言葉の裏には、我々の側で何か努力すればその暖房をそのまま置いて行かれるということもできるのじやないかというような含みもあるのじやないかというふうに私は聞いたのでありますが、その点についてはその後、これは一つの例でありますけれども、どんなふうになつているか伺えれば有難いと思います。
#57
○政府委員(佐藤達夫君) 現在巣鴨プリズンにある施設或いは資材中、如何なる部分を連合国側が撤去するかという問題につきましては目下折衝中でございます。まだ確定いたしておりません。御趣旨のほどは十分考慮に入れて善処いたしたいと思います。
#58
○羽仁五郎君 これは先日我々が小菅を見ましたときにも、所長はお留守でしたが、総務部長とおつしやるのでしようか、そのかたの御意見でも、小菅などにもやはり蒸気暖房というものを設けたい、設けることが行刑上の目的から言つても必要じやないか、それには大した費用を要するのでもないというふうに、自分たちで計算して見てボイラーと鉄管だけでその目的が果せるのじやないかという意見を述べておりましたけれども、その点をも併せて今後御努力願いたいと思うのです。それから次に法務総裁に御意見伺つておきたいのですが、先ほど岡部委員、又只今伊藤委員からこの平和条約第十一条による刑の執行及び赦免に関する問題に直接関係しないのでありますが、間接にこれと並行して占領期間中に占領政策違反とか、或いは覚書とか書簡とか、そういうものに基いて発せられた政令などの違反の疑いを受け、又はそ、れによつて有罪を宣告されて刑に服しているかたがたの、殊にその家族のかたたちから、我々法務委員それぞれに対して非常に多くの請願、陳情がなされておりまして、それらを我々が見ておりますと、中には頗る気の毒な、全くこれは不当じやないかと思われるものもある。その他の、原則的に申しましても、占領下であるからそういうことが止むなく行われたのだが、すでに占領下でないという状態になれば、おのずから考え方を変えなければならないという点があるのじやないか。このことについては岡部委員も伊藤委員も、希望をお述べになつておつたのにとどまるのでありますが、私としてはこの際法務総裁に原則的に御意見を伺つておきたい。その第一は、昨日でしたか、昨日本会議で法務総裁もお聞き下さつたと思うのでありますが、我々の会派の議員であられる松原一彦議員が、講和発効後、而も日本が待望久しい独立ということを得るのですけれども、併しその際に、外国軍の駐留という誠に異常な状況の下に独立が行われ、日本国民としては未だ曾つて外国の駐留下に生活した経験というものはない。且つ又講和によつて待望久しくやつと独立するのである。この独立ということに対する非常な大きな希望、その半面今まで国民として経験したことのない外国軍の駐留下に置かれるということから来る感情上、又生活上のさまざまな問題というものについて、政治家は決してこれは簡単な問題だというふうには考えることを許されないだろうという点を、昨日松原議員も縷縷として述べられたのです。恐らくその点については、法務総裁も御同感でおいでになつておると思うのでありますが、この只今の問題につきましても、政令三百二十五号とか、それらの問題にしても、原則的に我々はできるだけ、できるだけというよりも、絶対に講和発効後の状態が占領の継続であるという印象を与えるということは飽くまで避けるべきだというふうに考えますが、法務総裁はその点についてどうお考えになつておいでになりますか。これが第一点。止むを得ない米軍の駐留に伴つて生じて来る面だけでも十分に、本質的には占領の継続たるかの感を与える面が多いのでありますから、それ以外の面においては、米軍の駐留に直接必要なこと以外の点においては、特に日本国政府として、どうか占領の継続というような事実及びそれに伴う印象というものはできるだけこれを排除するというお考え、又そういう御努力をして頂けますかどうか。それを伺つておきたいのであります。繰返して申上げて恐縮でありますが、昨日松原議員も申されましたように、万一これが逆に作用いたしますと、到底我々はコントロールし、責任を以て解決することができないような状態が醸成される、又そういう情勢を煽動するために、それらの事実又はそれらの感情を利用するような政治勢力というものも、不幸にして決してないことはないと思うのです。右からもそうでありましようし、左からもそうでありましよう。で、法務総裁も練達なかたでありますからよく御承知のように、排外感情、誤まれるナシヨナリズムというものほど恐ろしいものはない。これが又フアシズムになる。而もヴエルサイユ条約というものが、ドイツ国民にとつて排外感情の第一の原因となり、それがフアシズムになり、ヒツトラーでも何でもいい、とにかく第一次欧洲大戦の戦勝国の圧力というものをはねのけてもらいたい、それには誰でもかまわない、我々の自由と権利を放棄してもいいというような絶望的な境地にまで追い込まれて行く、そういう点を考えますと日本の将来にそういうことが決してあつてはならないと思いますので、特にこの点について法務総裁から高邁な識見を伺つておきたいと思います。
#59
○国務大臣(木村篤太郎君) 申すまでもなく講和条約発効と同時に、日本は完全な独立国になるのであります。日本国民も本当に将来発効と同時に独立国家の国民として対処して行かなくちやならんことは申すまでもないのであります。駐留軍はいわゆる日本の平和と安全のために対等の条約の下に結ばれた平和条約によつて駐留するのでありまして、占領の継続では決してありません。そこで日本国民は駐留軍が日本に駐留したからと言つて、これは占領軍の継続であるというような意思は毛頭持つべきものでないと思う、これははつきり区別すべきものであると私は思います。従つて、恩赦の問題に帰るのでありますが、この際我々は十分喜びを分つて、新らしい日本国民として発足して行くことを希望するのであります。
#60
○委員長(小野義夫君) あとまだ一松君の質問がありますから、成るべく簡単に……。
#61
○羽仁五郎君 第一の点についてはなお重ねて私の申上げた点を慎重にお考えを下さいますようお願いいたしまして、第二の点に移りたいと思いますが、これもすでに岡部委員、伊藤委員から御発言のあつた点なのでありますが、只今の点と関連いたしまして、独立による再興の喜びというものをあらゆる方面に分けて行く、あらゆる面にそれを及ぼして行くというお考えは非常に希望を抱くのでありますが、その際に万一、これは我々はただ杞憂であれば大変喜ばしいと思うのでありますが、講和発効前後に、例えば行政協定などの締結前後においてもそういう印象が多少与えられたのでありますが、どうかしますと占領期間中の方法を独立してからも暫らくそういう状態に置いておこう、例えば大変問題になりました治外法権に類するような措置というようなものも一年くらい、或いはその前後において北大西洋条約に基く行政協定ができるならばそれによつてもいい、併しながら今直ちに占領軍が今まで持つていたような特権というものを失つてやつて行けるかどうかについて占領軍は或いは自信がないというお考えもあつたかに、そう臆測されるような事実がありますが、その関係からこの間の赦免、なかんずく占領下という特殊な事情の下に罪の嫌疑を受け、又は罪の責任を負うている人々に対して占領が終つたことについて、それに対する赦免を行われる場合に、或いは私として非常に恐れるのでありますが、占領軍からの意向で、例えば政令三百二十五号違反というようなものは、そのままその効力を持つて行くべきだというお考えが出るかも知れないということを私は多大に恐れるのであります。併しこれはさつき第一点で申しましたような意味で、この際全く日本国民が新らしく出発するためには上領期間中にあつた意見の相違、又は政治上の争いというようなものも、或る意味において全くこれを清算して、そして新たに真実の独立を目指して国民の努力を傾けて行くという状態を発生しない場合には、第一点において申上げましたように、実に厭うべき、恐るべき悪影響、逆影響というものがあると思いますので、それらの点についても日本政府として、たとえ占領軍が現在そういう考えを持つておられましても、それに対して日本側の態度を十分御主張下さり、又啓蒙せしめてそのほうが今後平和に、そして喜ばしく行くベストな方法なんだということを啓蒙される御努力をお願いしたいと思いますが、如何でございましようか。
#62
○国務大臣(木村篤太郎君) 御意見の趣旨よく承わりまして善処いたしたいと考えます。
#63
○羽仁五郎君 第三の点でございますが、只今伊藤委員から御発言がございましたプレス・コードの問題については、伊藤委員のおつしやるのはいわゆる暴力団の行動と並行するような意味のものだろうと思うのであります。これはいわゆるライベルと言うか、或いは脅迫、名誉毀損というような点であろうと思う。これらは刑法によつても措置できることであります。問題になりますプレス・コードということが現在国民に非常に悪い印象を与えておる。これはすでに法務総裁も、意見長官もよく御承知のように、昨年の九月頃前法務総裁が新聞にかなり大胆な、或いは見ようによつては非常に無責任な発表をせられた。前法務総裁は私の詰問に対して、新聞社に取材の自由を認めることは民主主義だと言つて極言しておられましたが、併し当時の発表せられたいわゆる団体等規正法案というようなものは社会に非常に衝撃を与えた。政府は果して民主主義の原則を確信しているかどうか。これは九月四日に新聞大会において決議がなされ、いやしくも新聞の自由を侵そうとするような政府の態度に対しては飽くまで闘うという決意を示された。又弁護士連合会においてもこの点については決議をなされておられる。それから当時プレス・コードを日本は法律化するのではないかということが外国の新聞まで伝えられた。ワシントンの特電によると、昨年の九月十八日ニユーヨーク・タイムスの百年祭の特集号の世界の十大ニユースのトツプ記事に、第一頁として、日本の法務総裁は十月の臨時国会に治安関係法令の提出を準備している。そのうちに新聞取締法案も含まれておると語つたというニユースが大々的に報じてある。これは日本が仮にも新聞記事を侵すようなプレス・コードをそのまま引継ぐということでありまして、日本国内の問題のみならず、国際的な問題にもなる。これは或いは現在の占領軍当局はそういう点についてお考えが違うかも知れません。併し我々としては決してこの軍事的見地を政治的見地の上に優越せしめてはならない。今後特にそうであるので、たとい軍事的にそういう必要があろうと、それより一層高い政治的見地から、いわゆるプレス・コードをそのまま引継いで行くというのは重大な問題がある。伊藤委員の御主張になるような点は、その方面において十分のお手当をお願いして、この世論、昨年の九月四日の新聞の大会の決議の趣旨、又弁護士連合会の御決議の趣旨、又只今読み上げましたニユーヨーク・タイスのような国際的な反響、それから昨年の九月の前法務総裁の談話に関連して朝日の天声人語に「マ元帥が進駐して最初にやつたことは、言論取締法規の全廃だつた。責任ある自由な新聞こそが、民主化の土台であり、侵略戦争をしない国民に育てることだと言つた。プレス・コードは占領軍に反感を起させる記事をなくするためのもので、占領下ではいたし方なかつた。それがそのまま引継がれて新聞紙法や出版法になるようでは、講和による独立も甚だ有難味が薄れるわけだ。法務総裁の談話が刺激的な大見出しで掲載された新聞を見ると、正直な話、こりやうつかり物も言えないぞ、下手なことをしやべつたり書いたりすると危いぞという不安を背筋に感じた者も少くあるまい。吉田内閣絶対支持や自由党礼賛の人なら、いざ知らず、いささか批判的な立場をとる人なら、唇に冷い秋風の予感で三猿主義の早支度をする人もあろう。時局問題の世論調査には「わからない」という人が二、三割を占めるのが現状である。」、こう書いてあります。更に東京における補欠選挙において棄権したものが五割以上もある。選挙権を行使しない人が五割以上に上ることは実にフアシズムの危険を思わせるのであります。而もなぜ選挙権を行使しないかと言えば、選挙権を行使しても無益である、憲法の保障している我々の権利というものはさまざまな関係から制限されている、実際上はどんな選挙をしても同じであるという感じであろうと思います。この民主主義に対する確信を失わさせるということほど恐ろしいことはないので、この点についても、これは先ほど法務総裁も意見長官も飽くまでも慎重を期するというお答えでありましたので、私としてはそれで満足をしておるものでありますが、特に只今申上げたような点をも併せ考慮せられまして、飽くまで慎重を期せられたいとお願いをいたしますが、如何でございましようか
#64
○国務大臣(木村篤太郎君) 我々といたしましては、思想の自由、言論の自由を抑制しようというような考えは毛頭抱いておりません。この方向に進んで行きたいと思つております。ただ伊藤委員の仰せになつたのは、この言論、出版の自由を悪用して、非常に暴力的、或いは破壊的の言動をするものがある、この取締を如何にするか、こういう御意見だつたと拝聴いたします。それらの点につきましては、この言論の自由と、思想の自由と、これを犯さない範囲において十分に取締つて行くということは当然なことと考えられます。それらのことを十分慎重考慮いたしまして、何分の処置をいたしたいと思つております。
#65
○羽仁五郎君 もう一つだけ簡単に……、今の法務総裁のお言葉の中に破壊的、暴力的という言葉がありましたが、これは勿論政治的な意味でおつしやつているのではないと思います。いわゆる刑法上において考えられているような意味でおつしやつているのであつて、政治的に広汎な解釈を許すような意味ではないと存じますが、心配になりますので……。
#66
○国務大臣(木村篤太郎君) 勿論お説の通りであります。
#67
○一松定吉君 平和条約の第十一条によりますと、つまり刑の執行を受けた者に対する赦免、減刑、仮出獄、それから刑の宣告を受けた者に対する赦免、減刑、仮出獄というようなものは、前者については「一又は二以上の政府の決定及び日本国の勧告に基く場合」、後者については、「極東国際軍事裁判所が刑を宣告した者については、この権限は、裁判所に代表者を出した政府の過半数の決定及び日本国の勧告に基く場合」、この一において赦免、減刑、仮出獄のできることはこの明文上明らかであります。そういうようなもう事実関係が現われたのですかどうですか、一又は二以上の政府の決定があつたとか、或いは代表を出した政府の過半数の決定があつたとか、それはどうなんですか。これがなかつたらこれは一向効力を生じない、その点をお伺いしたいと思います。
#68
○国務大臣(木村篤太郎君) これは条約が発効をしていませんから、条約発効後にその手当をするわけであります。
#69
○一松定吉君 そうすると今こういうような法案を出しておるということは、これはどういう意味で法案を出すのですか。
#70
○国務大臣(木村篤太郎君) それは発効の日から効力を発生するようにあらかじめ手当をしておかないと……。
#71
○一松定吉君 その手当のために予備的にやつておる、こういうのですね。
#72
○国務大臣(木村篤太郎君) そうです。
#73
○一松定吉君 そこに「日本国の勧告に基く」とありますね。その勧告というのは日本国がどこに向つてやるのか。この一又は二以上の政府がその勧告に応じない場合はどうなんですか。
#74
○政府委員(斎藤三郎君) これは日本国が関係国に対して勧告をして、その勧告と関係国の政府の決定が合致した場合に初めて赦免、減刑、仮出獄ということができるものであると思います。
#75
○一松定吉君 そうしますと、一又は二以上の政府の決定のある場合、赦免、減刑、仮出獄、それから日本国の勧告に基いて三又は二以上の政府が決定をしたとき、こういうふうな場合と二つあるのですね。
#76
○政府委員(斎藤三郎君) 一又は二以上の政府の決定及び日本国の勧告に基く場合の外、行使することができない。かように考えております。
#77
○一松定吉君 一又は二以上の政府の決定があつたときには、日本の勧告がなくてもいいのでしようか。
#78
○政府委員(斎藤三郎君) さようではなくして、決定と勧告と両方が合致しておる場合、その場合のほかは行使することができない、こういうように考えております。
#79
○一松定吉君 そうすると何ですか、
 一又は二以上の政府の決定でやりたい、これを赦免、減刑、仮出獄させたいと思つても、日本政府が勧告しなかつたらできない、又日本国が勧告しても、一又は二以上の政府がその勧告について決定しなかつたらできない、常に両々俟相俟つて二つの意思が合致せんことにはできない、こういうことになるのですか。
#80
○政府委員(斎藤三郎君) その通りでございます。
        1
#81
○伊藤修君 ちよつと議事進行上……、ポツダム宣言の受諾に伴い発する命令に関する件の廃止に関する法律案、この法律につきましては、御承知の通りこの親法律に伴うて子の法律が多々ある。これが各委員会に分離して提案されておる状態でありますが、この委員会におけるところのこれらの関係命令の廃止若しくは存続の法律に関して、今日審議状態がどうなつておるか、及びその見通しがどうであるかについて、委員長は専門員をして一応各委員会を調査せしめて頂きたい。それを御報告願いたいと思います。
 それからもう一つは、この親法律に含まれておるところのいわゆるポ勅の五百四十二号に基く命令、これが百五十くらいあると思いますが、一体この法案を審議するに際しまして、その各種命令のうちでどれとどれが廃止されるのか、どれとどれが存続するのか、少くとも表題だけでも参考資料として当委員会に表にして御提出願いたい。そういたしませんと、我々はこの親法律を審議いたしますのに対して盲判を押すことになりますから、一応概念だけでも知る必要があると思うのです。この二点を次の機会に御提出を願います。
#82
○委員長(小野義夫君) 今の伊藤委員の御提案の委員長に関する分は、早速調査の上次の委員会までに報告をいたします。政府に対する要望は、やはり次の委員会までに御提出をお願い申上げます。
#83
○一松定吉君 それでは正式に私から要求しておきますが、恩赦に関する政府のお考えについて、確定しなければ発表できないということは、確定案の発表は勿論そうであるし、又我々もこういうようにきまつたから、まだ大赦令の出ない前に漏らせというのではないが、つまり憲法の六十二条の国政に関する調査をするという権限が国会にあることは御承知の通りです。でありまするから、今度実施せらるるところの大赦の内容について、こういうような考えを持つておるんだということは、これは法務総裁として私は国会の要求があれば当然御報告あつて然るべきものと思いまするから、そういう意味において、適当な時期をお選び下さつて法務総裁からその御報告をお願いしたい、こういう考えを持つておりまするが、それに対する法務総裁の御意見を承わつておきたい。
#84
○国務大臣(木村篤太郎君) お説御尤もであります。その構想の輪郭を私は御説明申上げたいと思います。
#85
○一松定吉君 それで結構ですから、適当な時期に一つ具体的に御説明賜わりたい。
#86
○委員長(小野義夫君) それでは本日はこれで散会してよろしうございますか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#87
○委員長(小野義夫君) 御異議ないと認めますから、散会いたします。
   午後零時二十五分散会
ソース: 国立国会図書館
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