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1951/03/31 第13回国会 参議院 参議院会議録情報 第013回国会 法務委員会 第17号
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1951/03/31 第13回国会 参議院

参議院会議録情報 第013回国会 法務委員会 第17号

#1
第013回国会 法務委員会 第17号
昭和二十七年三月三十一日(月曜日)
   午後一時五十四分開会
  ―――――――――――――
  委員の異動
本日委員鈴木安孝君辞任につき、その
補欠として白波瀬米吉君を議長におい
て指名した。
  ―――――――――――――
 出席者は左の通り。
   委員長     小野 義夫君
   理事
           宮城タマヨ君
           伊藤  修君
   委員
           左藤 義詮君
           白波瀬米吉君
           長谷山行毅君
           岡部  常君
           齋  武雄君
           一松 定吉君
           羽仁 五郎君
  国務大臣
   法 務 総 裁 木村篤太郎君
  政府委員
   国家地方警察本
   部長官     斎藤  昇君
   法務政務次官  龍野喜一郎君
   法務府法制意見
   第一局長    高辻 正己君
   法務府法制意見
   第二局長    林  修三君
   刑 政 長 官 清原 邦一君
   法務府検務局長 岡原 昌男君
   法務府矯正保護
   局長      古橋浦四郎君
  事務局側
   常任委員会専門
   員       長谷川 宏君
   常任委員会専門
   員       西村 高兄君
  ―――――――――――――
  本日の会議に付した事件
○ポツダム宣言の受諾に伴い発する命
 令に関する件の廃止に関する法律案
 (内閣提出、衆議院送付)
  ―――――――――――――
#2
○理事(宮城タマヨ君) それでは只今より委員会を開きます。
 ポツダム宣言の受諾に伴い発する命令に関する件の廃止に関する法律案を議題に供します。御質疑のおありのかたは御発言を願います。
#3
○伊藤修君 今日は佐藤さんが病気で出て見えんようで残念ですが、先ず第一にお伺いいたしたいことは、このポツダム宣言に基いて緊急勅令が発せられた基本的観念は私が今ここで申上げるまでもなく、いわゆる日本管理、並びに日本の政治管理若しくは日本の経済管理、こうした基本的原則に基いてこれを遂行するに必要欠くべからざるものとして、終戦後今日に至るまで幾多の勅令が発せられているのであります。かような基本的な必要上発せられたものであつて、今日講和條約が成立いたし、近く独立国家として発足するに当りましては、もはやこの管理という考え方は全然日本国民の頭上から払拭されるべき筋合のものであると思うのです。又国民感情の上から申しましても、講和が成立し、独立国家となつたと、国民にその喜びを共にしようと言つても、依然として管理下に置かれておつた国民の服従すべき命令をそのまま存続せしめるということは、国民感情の上から言つても好ましからざる事態であろうと思うのです。その命令の存続すべきものとして挙げられている十九件の法律として残さるべきものは、或いは今後におけるところの日本の制度の上において必要なものかも存じません。併しながら少くともいわゆるポツダム宣言に基く勅令云々というような名目の下にそういうものがいつまでも法律として残るというあり方では、国民は真に独立したものという考え方を抱かないと思う。依然として占領下の延長に過ぎないのではないかという国民感情の点から言つてもこれは大きな問題を残すのではないかと思う。殊にアメリカは日本に対しましてあらゆる面において日本の力を得たいとかように考えているならば、なお更かようなものは残すべきものではない。若しどうしても必要であるとするならば、僅か十九件であるのですから、単行法としてこれを書き改めて、独立した法案として審議を求むべき筋合のものではないかと思うのですが、手間暇そうかかるものじやないと思うのです。にもかかわらず、今日この法律の内容として各委員会に継続しているものは、いずれもポ勅関係の何々省関係法案として出されておつて、その中にいわゆる存続として承認を求めていられるようなあり方は、私は政府の考えとして余りに便宜主義ではないか。その便宜主義が大抵今後におけるところの大きな禍いを残すのではないかと思うのですが、その点に関する政府の御所見をお伺いしておきたいと思うのです。
#4
○政府委員(林修三君) では私から一応お答えいたします。
 いわゆるポツダム緊急勅令に基きまして出ておりますポツダム命令が出ました当時において、連合国最高司令官の要求に基いてこれが制定せられましたものであることは勿論問題のないところでございます。これを平和條約の発効後にどう処理いたしますかにつきましては、そこにいろいろ考え方はあることと存じますけれども、やはりこの相当多数のポツダム命令が出ておりますけれども、この中には、これはいずれもこの命令が制定せられました後におきましては、日本の国内法としての効力を以て現在動いておるのでございまして、これを平和條約が発効いたしますときに、勿論内容から申しまして、この際相当改正をいたすべきものもございますし、又廃止したほうが適当なものもあるわけであります。その中の若干のものにつきましては、只今まで国内法として動いておりましたものもそのままなお今後においても国内法として動かして行くべきものである、こう考えるものもあるわけでございます。これにつきましては、これをこの際国会におきまして、これを法律としての効力を有するものとして議決を頂けますれば、それによつて平和條約の発効後も法律としての効力を持つて行く、こういうことに法律的に申せばなるものと考えまして、かような取扱をいたしておりますわけでございます。
#5
○伊藤修君 あなたは私の質問の趣旨がおわかりにならんと思いますね。取扱の経過を聞いているのじやないのです。基本理念を聞いているのです。若しお答えできなければ法務総裁の出席を求めます。
#6
○政府委員(龍野喜一郎君) 只今伊藤さんからの御質問は、根本理念として我々もことごとく同感の点でございます。従いましてこの法律案の提案理由の中にも、先ず第一に原則としてこれを廃止すると、ポ宣言に基く諸命令は廃止するという建前の下に出発いたしておるのでございます。併しながら先ほども政府委員から説明いたしました通りに、その諸命令の中にはすでに国内法として適当なものが、そのままこれを施行しましても適当であると思われるものも相当あるわけでありまして、それをこの際改めて法律案としてかけ直して提出するのが理論的にも順当ではありまするけれども、この際一応同じ内容のものを法律としての性格を付与してもらうというだけの手続で進ませようということも一つの方法ではないか、便宜的な方法ではないかというふうに我々は考えて提出したような次第でございます。でありまするから、ポツダム宣言に基く諸命令といえども、その内容において更に重大なる検討を加えなければならんようなもの、例えば団体等規正令のごときは、これは改めて法案として提案するというような考えを持つておるのでございます。法律の間に差等をつけるということは、これはいけないことであるかも知れませんが、まあ簡易なものでポツダム命令のそのままこれを施行すべきものであるというものについてのみ、法律としての性格を付与してもらえるという手続に任したのでありますが、無論根本的の考え方においては伊藤さんのおつしやる通り我々もことごとく同感であります。
#7
○伊藤修君 政務次官のお答えは、私に同意をしていらしつやる。私の意見に同意をしているのですが、併しながら、いわゆる便宜主義をとられまして、そのままポツダム宣言に基く云々という名称を冠して存続せしめるということは、私は単なる法文の形式ではないのです。それが国民に対しまして大きな禍いを残すのではないか、いつまでも日本が占領治下に置かれておるがごとき感を存続するというこのあり方は、この際私は政府としても努めて避けるべきではないか、それが多数の法律で以て相当の努力をしなかつたならばできないというならともかくとして、僅か十九件、残るものは十九件しかないのです。この十九件を書き改めるというくらいの僅かの煩を避けて、さような大きな禍根を残すということは私は避くべきではないかと思う。この点に対して政府はそれでも構わないのだというお考えでありますかどうかということを伺つておる。御同意という点はその点が御同意であるのかどうか。
#8
○政府委員(龍野喜一郎君) ものの考え方について同意をいたしたわけでございますが、成るほど御承知の通り大小にもかかわらず、ものの考え方を貫いて行くということは当り前のことでございましようが、併しながら先ほど申しました通り改めて法律としていろいろな点より検討しなければならんような重要法案につきましては、提案理由の中にも説明してあります通り別途措置を講ずる、併しながらそれをそのまま今日法律に引直すということが適当であるというものにつきましては、そういう根本的な考えは持ちながらも、別に法律案としてかけ直さなくてもいいのじやないかというような、これは一つの便宜的な考え方か知れませんが、又便宜的な考え方のために国民に非常な影響を与えるということも、私必ずしも反対するわけではありませんが、併しながらこの問題につきましては、まあ二十数件というお話でございますが、併しながらこれらの、例えばこの数字を申上げますると、そのまま存続するものは十九件、これは先ほど申しました通り法律の性質上軽重の区別はつけられませんか知りませんが、比較的法律技術的から申しましても、そのままの形において承認を求めても差支えないじやないかというような程度のもの、次に検討いたし、改めて国会の審議に付議することを適当と認むるものは二十一件ということになつております。この数字を見ましても政府といたしましてはできるだけそういうような考え、つまりこの際多少の問題あるものは法律案として出したいというような考え方を貫いておるわけであります。なお甚だ申上げかねるのでありますが、本日法制意見長官が病気のため欠席いたしておりまする関係上、法律論として私お答えすることのできないのを甚だ残念に思いますが、御了承願いたいと思います。
#9
○伊藤修君 それから、政府のお考え方も私と大体同意見であるようでありますので、従つてこの二十一件はなお存続するの必要ありとして、而もそれは独立単行法として書き改められて別個に提案されておるのであります。十九件もですよ、内容を仮に改廃しなくともそのまま十九件も存続せしめるという御趣旨であるならば、これもひとしく表題を書き改めまして単行法律として出されるというあり方が正しいのではないか、いわゆる少くとも我々が六カ年のこの苦しい占領治下から脱却したのだ、新らしく新日本の国民として発足するのだ、という気分を与える意味においても、日本の法律として存続せしめることのほうがいいじやないか、あえてポツダム宣言云々という法律題名を存続せしめる必要がどこにあるかというのです。表題を書き改めるだけじやないか、二十一件については内容を書き改めております。十九件については、内容はそのままで是なりとお考えならばそのままで結構ですから、表題だけを単行法として書き改めてなぜお出しにならなかつたかということです。その点について、それが国民に至大の影響を、精神的影響を将来残すというこのマイナスの面を考えたならば、そのくらいの労は惜しまずに、書き改めてお出しになるべきじやないか、内容を書き改めんにしても、その点について重ねて御説明をお願いいたします。
#10
○政府委員(林修三君) このポツダム命令の措置法でそのまま存続せしめておりますのが今おつしやる通り十九件、そのほかに極く一部分の改正をいたしまして、それをやはり存続させることにいたしておりますのが二十一件入つておるのであります。合計約四十件のものが、約二十件のポツダム命令措置法の中で、そのまま或いは一部改正の上で存続させることにいたしておるのであります。今そのまま存続のものにつきましては少くとも題名だけでも書き改めたほうがいいのじやないかというお話でありましたが、これをそのまま存続いたすことにつきましても、いわゆる題名の中にはポツダム宣言云々という言葉は入つておりません。例えば銃砲刀剣類等所持取締令、こういうような題名になつておるのでありまして、少なくとも題名から見まして、題名の中に連合国最高司令官云云という言葉が入つておりますのはすべてこの際改めておりますし、又内容からも例えば第一條に、連合国最高司令官の要求に基いて云々というようなもの、こういうものにつきましては、全部この際そういう字句は削除いたしまして、そういう形で今後国内法として、純粋の国内法といたしまして、占領が終りましたあとでも、効力を存続して行く上において、国民感情の上から見ても、そう不都合のないような形にして一応立法技術的にはやつておるつもりでございます。そのまま存続の十九件につきましては、大体そういうことをせずしても、表面上から規定の、そういう命令が制定されました由来は、勿論ポツダム宣言の五百四十二号に基いておりますけれども、規定の体裁から申しますれば、そういうような関係は今表面上残つておらないものがここに上つておるわけでありまして、規定の表面上にそういうものが出ておりますものにつきましては、全部この際一部改正の手続をとつております。さよう御了承願いたいと思います。
#11
○伊藤修君 それはあなたのお説は、例えば勅令九号の売春行為云々というだけを見ればそういうことになるかもわかりません。併しその法律が法律として効力を有するのは、例えば法務府関係で申しますればポツダム宣言の受諾に伴い発する命令に関する件に基く法務府関係諸命令の措置に関する法律案、こういうものは必ず出て来る、よつて以て勅令九号は法律としてその内容となる、こういう形になるわけですから、我が法制史の上においても、六法の上においても、そういうものは常に現われて来ることは当然です。いわゆるポツダム宣言というものは御承知の通り、日本管理に対するところの條件です、日本がそれに基いて降伏した規定、規律です。それに基いて発せられた諸命令を、管理を脱却した日本国民がそういう名称の下になおあらゆる行為、秩序をそれによつて覊絆されるというあり方は国民感情の上において私はよろしくないとこう思うのです。こういう形をせずして単行法として独立してお出しになれば、売春行為禁止法とでもして法律第何号としてお出しになれるはずなんです。何故それをなさらなかつたということです。
#12
○政府委員(林修三君) 例えば勅令九号を例に取りますれば、これは法務府関係の諸命令の改廃に関する法律によりまして、この法律が成立いたしました暁においては、それによつて法律の効力を有することに相成ります。従いまして、勅令九号は勅令九号として別に一々今度の法務府関係の諸命令の措置に関する法律を引かなくても法律としての効力を持つ、従いまして六法全書等にもその名前は冠しないで済むのじやないかと、これは技術的には私は考えております。過去におきましても多少、勿論例は違いますのでございますが、旧憲法時代或いは旧憲法制定前から続いております法令も今もあるわけでございまして、或いは太政官布告、太政官達というような形式で制定せられました法令も現在なお法律としての効力を持つておるものもございますが、勿論事柄の性質は違いますけれども、そういうわけでございまして、今回の法務府関係の諸命令の法律案が成立いたしまして、それによつて法律としての効力を与えられれば、それは今度は独立した形で、すでに法律として今後勿論改正等につきましては法律によることを要します、法令編纂の技術から申しましても別にポツダム宣言云々ということは出さずに済むのではなかろうかと、かように考えておるわけでございます。それから確かにこの十九件、或いはそのほかの二十一件も合せまして四十件のものにつきまして、一々の単行法を出せばよいではないかというお話でございました。勿論これはお説御尤もと存ずるわけでございますが、やはり平和條約の発効を間近に控えまして、急速にこれを一々のものにつきまして、そのままの形でやります際において、一々の立法化につきましてもいろいろそこに緩急のこともありましたものですから、一応こういう形式で国会の御審議を経て、それによつて法律となれば、内容さえ平和條約発効後のものとして適当なものであればいいのではなかろうかとかように考えて、かような措置を政府としてはとつたわけでございます。
#13
○伊藤修君 そうできないとおつしやいますけれども、今問題になつているこの法律の中で、なお百八十日の効力を有するのですから、その間において現命令というものは効力を失わないのだから十分賄い得ると思う。殊に十九件については何も内容を改める必要がないから、そのまま存続せしむるという御趣旨ですから、してみますれば、単行法としてお出しになるのは何らの手間暇もかからないはずです。二十一件についてはすでに単行法としてお出しになつておるのです。僅かなかような十九件ばかりものを而も内容も書き改めずにお出しになつておるから、それでよろしいとして、してみますれば、今お説のような怱々の折柄で以てできないということは私は理由にならないと思う。なお検討を要するのだ、書き改めなければならんのだというならば、これは相当日にちも要するでしよう。十九件についてはそのままお出しになつておるのです。私は二十一件を問題にしておるのじやない、十九件のほうを問題にしておるのです。又太政官布告とか或いはその他の過去におけるところの日本の法律のなお生きておる部分もあります。併しそれは日本国民が作つたその時代にふさわしいところの諸命令であるし、諸法律である、今度の場合はそうでないのです。我々が曾つて経験したことのない国外の勢力によつて作らしめられた法律である、そういう感情が国民に残るということを私は憂えるのです。同じものでも日本のものとしてお出しになることが一番ふさわしいのではないかというのです。
#14
○政府委員(林修三君) 先ほどから私が申上げました太政官布告云々の点につきましてはおつしやる通りでございまして、事情が勿論違うことは先ほども申上げたところでございまして、ただ過去の違う立法形式によつてできたものがなお効力を存しておるものもあるということをここに例に申上げただけでございまして、その制定の理由とか由来とか違いますことはおつしやる通りであります。それでこの十九件のほかに先ほどちよつと御説明申上げましたが、二十一件のものにつきましても実は単行法としては出しておるわけでありませんので、個々のポツダム命令の措置法の中で一部改正の上、存続させる、こういうことにしておるわけでございます。この二十一件につきましては、この際連合国最高司令官云々というような字句があります関係上、平和條約の発効後にそのままの字句のまま存続させることは不適当である、かように考えまして、極く一部の技術的改正を施した上存続させたい、かようなことで各ポツダム命令の措置の関係法律案の中に盛込んでございます。それと、先ほどおつしやいますところの十九件、これを合せました四十件のもののうち約二十件の個々のポツダム命令の措置法の中で、一応この際平和條約の発効に備えまして、一応この際そういう法律としての効力を与えよう、こういう措置をいたしておるわけでありまして、でこの十九件のほうにつきましては、勿論只今のところ我々といたしましては内容についてはそのままで平和條約発効後も差支えないと考えまして、一応手を、内容には手を触れなかつたわけでありますが、勿論この平和條約発効後におきまして、いろいろな事情ができまして、この内容について改廃をいたす必要ができるかもわかりません、この際は勿論この一部改正をいたしますか、或いは別に単行法を作るということも別に考えられて然るべきだと思いますのでございますが、只今のところは、一応平和條約発効後に備えましてこの四十件のものにつきましては、この際大体そのままの形で極く不適当の部分の、一部を除きまして、そのままで差支えない、かように考えまして、個々の四十件の法律案は相当大量のものでございますので、さような措置をいたしたわけでございます。
#15
○伊藤修君 私の申上げることがまだ徹底しないようですが、然らばこの措置によつて残されて行く法律はそのまま永久に在続する考え方であるか、少くとも近いうちにいわゆる国内法として改めて法律案として改廃してお出しになるつもりですか、どうですか、この点。
   〔理事宮城タマヨ君退席、委員長着席〕
#16
○政府委員(林修三君) 勿論この十九件の中の命令の中には、法律案の命令の中には相当今後事態によりまして、相当検討しなければならないものもございましようと存じます。特にこの前もこの委員会で問題になりましたけれども、勅令九号のごときにつきましてはいろいろ御意見もございます。法務府の中でも相当検討を加えておるようでございます。そういうものにつきまして今後検討の上又新らしい法律の形で国会の御審議を経るということもあろうかと存じます。
#17
○伊藤修君 私は今基本観念については政府の御説明では納得できないのです。お考え方は私の考え方を是認されていらつしやると思います。その行われるところにおいて、結局その反する態度であるのですから、これは私は日本国民の今後におけるあり方について非常に至大な関係があつて、単なる形式論の問題ではないと思うので、強くこの点は私の主張を政府に申上げておく次第です。
#18
○羽仁五郎君 関連して……。議事進行についてですが、私も今の伊藤委員から御質問のその点について、形式的に今議題になつておる法律案の憲法上の根拠、憲法のどこに我々はこういう法律案を審議することを義務付けられておるのか、それを伺いたい。
 それから第二には、実質的にポツダム宣言の受諾に伴つて出された命令は、日本の国会は審議したことがない。日本の国会の審議したことのないものが元になつて、そうしてこの法律案が出て来るということについて、その責任を我々は負うということはできないと思う。この二つの点について政府の所見を伺いたいのですが、併し法務総裁が御出席になれないとなると、政府よりそういう意味の御答弁を頂くことはできないと思うのですが、法務総裁は御出席にならないのでしようか、如何でしようか。
#19
○政府委員(龍野喜一郎君) 法務総裁は、今日は出席の予定であつたのでありますが、非常に差迫つた要件のためにどうしても出られないという話でございますが、場合によりましたら、今からでも連絡をしてよろしうございます。
#20
○羽仁五郎君 私重大な問題だから法務総裁の出席を求めて質疑をしたいと存じます。
#21
○伊藤修君 今の問題は法務総裁が出られましてから私もなお重ねて御質問をいたしますから留保しておきます。
 次にお伺いしたいのは、このポツ勅に基くところの、いわゆる緊急命令は、一体本質は法律ですか、何ですか、その点を先ず政府の御所信を伺いたいと思います。
#22
○政府委員(林修三君) 緊急命令で出しましたのですか、個々のポツダム命令があれですか、元の緊急勅令ですか。
#23
○伊藤修君 緊急勅令、その他の命令。
#24
○政府委員(林修三君) 元のこのポツダム宣言の受諾に伴い発する命令に関する件と申す昭和二十年の、いわゆる勅令五百四十二号、これは当時の大日本帝国憲法の下におきまして、憲法第八條に基く緊急勅令として制定せられましたものでございます。当時におきまして緊急勅令として制定せられました、それがその後の帝国議会におきまして、帝国議会の承認を経ましてそのまま法律としての効力を持つておるもの、かように私ども考えております。現在においても法律としての効力を持つておる国内法としては、法律としての効力を持つておるものと考えます。この五百四十二号に基きまして約七年間に相当多数の、いわゆるポツダム命令と申すものが、これが出ております、これはいわゆる委任命令の性質を持つておるが、只今のところでは委任命令の性質を持つておるものと、かように考えておるわけであります。
#25
○伊藤修君 委任命令の性質を持つておるものは、その本質は命令でありますか、法律でありますか。
#26
○政府委員(林修三君) 形式的に申せば命令でございます。ただ実質的にはこの法律の委任に基く命令ですから、法律事項についても規定し得るわけであります。実質的に法律事項も規定いたしております。
#27
○伊藤修君 そうすると、それは全部が法律であるとは言えないのですか、或いは命令もあるのですか、本質論について。
#28
○政府委員(林修三君) 今度のポツダム命令の措置に関する法律案で、法律の個々のポツダム命令について、個々の……法律として効力を有するようにいたしたいというので、かような内容の法律案を御提出申上げておるわけであります。現在におきましては、緊急勅令五百四十二号という法律としての効力を持つておる緊急勅令に基きまして出ております委任命令でございます。
#29
○伊藤修君 そういたしますと、この第二項に百八十日に限り法律としての効力を有するものとするというのはどういう意味なんですか。
#30
○政府委員(林修三君) これはポツダム……、緊急勅令は平和條約の発効と共に廃止いたします。さように相成りますと、一応この委任の根拠をなしております法律そのものが廃止されることになる。委任命令が、親の法律が廃止されたあとに、当然に従来と同じ効力を持つかどうかということについては学説の別れるところでございまして、いわゆる俗に申しまして、親は死んでも子は当然には死なないという説があるのであります。親が死ねば当然子も死ぬという説もあるわけであります。そういう点もはつきり立法的に解決いたします意味において、さような緊急勅令は廃止されましても、それに基きまして出ております子供は、個々のポツダム命令は、百八十日間は別な措置がされない限り法律としての効力を持つておる、かような考えを持つておるのであります。
#31
○伊藤修君 私はあなたのお説の趣旨はわかる。ただここに表現として、法律としての効力を有すると言つておるのですから、その委任命令が法律とここで断定していいのかどうか、この法律によつて法律的性格を与えるのか、過去においての命令が法律であるのか、そこをお伺いしておる。
#32
○政府委員(林修三君) この法案の第二項によりまして形式的にも法律としての効力を持たせよう、かような考えであります。只今までのところでは勿論実質的には法律事項を規定いたしておりますけれども、それは委任命令として規定をいたしておるわけであります。第二項によりまして立法的に法律として効力を有する、形式的にも法律としての効力を有するのだ、こういうような考えでございます。
#33
○伊藤修君 そうすると、一体このポツ勅は仮にこの法律ができなかつたらどうなるのですか。それは実質的な法律として残るのですか、どうなるのですか。
#34
○政府委員(林修三君) 形式的にこの第一項に書いておりますポツダム緊急勅令を形式的に廃止いたさなかつた場合にどうなるかという問題が第一番にあると思います。これにつきましては、ポツダム緊急勅令五百四十二号と申しますのは、内容から申しますと、連合軍最高司令官の要求を実施するため云云という内容になつております。従いまして形式的な廃止がなくても平和條約の発効後におきまして新らしく発動する余地はこれはないものに相成ります。形式的にこの法律が仮に残つておりましても、実質的にもう発動の余地のないものに相成ると思います。ところがこの緊急勅令五百四十二号に基きまして過去において出ましたポツダム命令につきましてはそこに問題が残ると存ずるわけでございます。一応の今まで政府のほうで御説明いたしておりました考え方に基きますれば、個々のポツダム命令は、占領中におきまして法律としての効力を持つておりました緊急勅令五百四十二号に基きまして有効に而も適法に成立したものでございますので、形式的に廃止をされない限りは当然に効力を失わない、こういう説が多いように考えられておつたのであります。一面におきまして、併しこの個々のポツダム命令は、占領中の特殊の形態に基いて出されたものであるから、占領の終止と共に当然その効力を失うものである、こういう考え方も勿論あり得るわけであります。そういうふうに両方の考え方が現在あると存じます。それで政府のほうといたしましては、大体において最初に申上げましたように当然には効力を失わない、やはり有効に成立し、有効に制定せられたポツダム命令は形式的な廃止がなされない限り当然には効力を失わない、こういう考え方に大体基いておるわけであります。今申しましたように、大体平和條約の発効と共に当然に効力がなくなるのだ、こういう考え方、学説もあり得るわけであります。そういう点がやはりそこで法律の解釈上疑問の余地は残ると存ずるわけであります。そういう意味におきまして政府といたしましては立法的な解決を図つておるわけでございます。
#35
○伊藤修君 政府の考え方のごとく当然にその効力を失わないというその法的根拠を一つ御説明願いたい。
#36
○政府委員(林修三君) 政府といたして考えておりますのは、このポツダム緊急勅令五百四十二号は、制定の当初におきましても日本の憲法に基きましてできました緊急勅令でありまして、その緊急勅令が帝国議会の承認を得まして法律としての国内法としての効力を持つておる、かように考えておるわけでございまして、この国内法としての効力を持つておりますその緊急勅令に基きまして、又国内法として有効な且つ適法な形式によつて制定せられました諸命令は、占領継続と否とにかかわらず、適法な国内法としての効力を持つ。勿論内容によりまして平和條約の発効後不適当となりますものもございましようし、或いはもう占領管理という重みがなくなつたときにおいて、新らしい目で見れば憲法との関係がどうなるかということもございましよう、そういうような実質的批判は別でございます、形式的に申せば当然には有効に適法に制定せられましたこの国内法としてのポツダム命令は当然には効力を失わない、かように考えておるわけであります。
#37
○政府委員(龍野喜一郎君) 只今の問題につきまして、法律論は別といたしまして政府といたしましては疑いのないように、つまり法律解釈論としてそのまま存続するのだという説もあるし、いや当然に廃止になるという説もある。従つて事務当局としてはまあ存続するという説をとつているかも知れませんが、政府側といたしましてはその問題の解決した上で、はつきり解決した上でこの法律案を出したのではございませんで、それはそれとして疑いを残しては困るから廃止するものは廃止する、存続するものは存続するということをはつきりいたして、そうして個々の案件について御承認を得るというような建前をとつております。法律問題として伊藤さんの疑問も無論あると思いますが、実際問題としても議論の余地のないように措置をするという建前をとつて、その旨を衆議院の法務委員会において法務総裁も明確にいたした点でございますから念のため申上げておきます。
#38
○伊藤修君 そうすると仮にこれは出ないということになるとどうなんですか。その法律が出ない場合において、いわゆる各ポツ勅に基く命令というものはどうなるか、又もう一つの問題は、各ポツ勅に基く命令は他の委員会においていわゆるすでに可決されておるものはどうなんですか。
#39
○政府委員(林修三君) 後からおつしやいました点から先にお答えいたしますが、すでに各委員会において可決せられました、又すでに参議院の本会議も通過いたしまして、すでに法律として公布せられましたものも六件ばかりございます。これは勿論この六件の法律につきまして盛られました各ポツダム命令の効力を、この法律によつて法律的に解決いたしましたものと考えられまして、これは一応元の法律案の成立如何にかかわらず、やはりここで法律としての効力を与えられたものと、かように見るほかないと存じます。それで次に第一の若しこのポツダム命令の親の法律案が成立いたしませんでした場合を考えますと、結局そこに先ほど申しましたような疑問の点は、解釈上の疑問の点は残ると思います。政府といたしましては大体先ほど申したような法律的な理論構成によりまして、当然には効力を失わない、実質的にそこで憲法違反とか何とかいう問題が、実質的に、内容的にあるものにつきましては別でございますけれども、当然には形式的効力を、又内容としての効力も失わない、かように考えているわけでございます。ただそれにつきましては、先ほど申しましたように、勿論反対的な解釈をとつている方もあるわけでございます。そういう疑問の点は残るだろうと思います。
#40
○伊藤修君 それに対しまして、なお先ほど羽仁委員も申されましたが、私も法務総裁にお伺いしたいし、なお佐藤法制意見長官に御質問したいと思いますので、この程度にして、明日午前に質疑を継続いたしたいと思います。
#41
○委員長(小野義夫君) 他に御質問はありませんか。
#42
○長谷山行毅君 法務総裁は今日お出になれないのですか。
#43
○委員長(小野義夫君) 今交渉中でありますから、じや暫らく休憩しますか。
#44
○羽仁五郎君 休憩前にちよつと一言政務次官に、政務次官は伊藤委員の質問に対する御説明の中で、勅令五百四十二号が平和條約発効に伴つて有効に存続するか、有効に存続しないかということについての問題はそのままにして、それで明らかにするために廃止せられるという御説明がございましたが、その御説明でよろしうございますか。
#45
○政府委員(龍野喜一郎君) 法務総裁が衆議院の法務委員会において答弁した内容を御紹介いたしたのでありますが、そのときに総裁は本問題については二つの議論がある、政府当局においては存続説を主帳している、自分も私見としては必ずしもそれには反対でない、併しながら二つの問題があるということは自分も認識しているが、この問題を単刀直入に解決しようとしてもできない問題であるけれども、実際問題としては、一つ一つの案件について疑いを一つも残さないようにするために、一つ一つの案件についてこれを廃止し、これを存続するのだということにいたして、その間実際問題としての問題がないようにするために、こういうふうにしているのだということを説明いたしておりましたのを御紹介申上げただけであります。
#46
○羽仁五郎君 若しそうであるとすると、我々はこの今議題となつている法律案の第一條を審議することはできないと思うのです。有効に存続しないものを廃止するということは、ないものを廃止するということで事実不可能なんです。ですからこれは是非政府のほうで見解を統一せられて、我々に討議の基礎を与えられませんと、政府はいずれの見解をとるのだかわからない、それでは我々もそれに対してどう討議をしていいかわからない、国会の審議を不可能ならしめる態度で、実に奇々怪々これより甚だしいものはない。でありますから衆議院ではそういうことで御承知になつたか知りませんが、恐らく参議院の法務委員会では、それでは審議は先に進行できないのじやないか。政府がいずれの見解をおとりになるか、そうして我々はその政府の見解に対して或いは質疑し、或いは討論し、その結果に待たなければならないので、有効に存続するのだか、有効に存続しないのだかわからない、それを廃止するというようなことでは私は委員会の討議というものはできないことになりはしないかと思うので、その点もう一遍伺つておきたい。
#47
○政府委員(龍野喜一郎君) 私の言葉が不足であつたかも知れませんが、政府としては法務総裁も事務当局が主張するがごとく存続するという説を自分も持つておる、併しながら学説としてはそういう説も、反対説もあるので政府としてはこういう見解であるけれども、疑問に思う人もあるから、この際疑問の余地のないようにしたいというのが、先の本法案をかくのごとく措置したゆえんであるといつておつて、政府当局は何ら定見がないという意味ではないので、その点は法務総裁がおいでになりましたら念のため御質問になつたらいいと思います。私はさように拝聴しておるのでお答えいたしたのであります。
#48
○羽仁五郎君 それは今のようなお答えが、それが困るというのです。つまりこの学説は二つあるけれども、疑いのないように廃止するのだということですと、その学説の二つの討議の機会を政府がみずから封鎖されるのがよくない。政府は有効に存続するとお考えになつておるならば有効に存続しないという討議を国会で行われることを拒まれるべきではない。有効だか、無効だかその論議は別として、明らかにするために廃止するのだということは困るのです。こういう国会における審議をあらかじめ掣肘されるような態度をおとりになるということが納得できないのです。だからいずれ法務総裁に伺いますけれども、成るべく審議を促進する意味で、どうか政務次官からその点について、私の申上げることはもう大体おわかりだと思うので、どちらかわからないけれども、それについては議論はしないという態度をおとりになるのでは国会の討議を掣肘することになりはしないかと思うので、その点十分はつきり法務総裁に、政府のはつきりした見解、従つて国会において自由なる討議をお求めになる態度というものを示して頂きたいと思う。
#49
○委員長(小野義夫君) では暫らく休憩いたします。
   午後二時四十五分休憩
   ―――――・―――――
   午後三時十七分開会
#50
○委員長(小野義夫君) それでは只今より委員会を開きます。
 引続きまして法案について法務総裁に対する質疑を行います。
#51
○羽仁五郎君 ポツダム宣言の受諾に伴い発する命令に関する件の廃止に関する法律案、この提案理由について伺つておるのでありますが、法務総裁の責任のあるお答えを頂戴しないと、審議が進行しない慮れが生じましたので、御出席を願つたのでありますが、この政府はポツダム宣言の受諾に伴い発する命令に関する件、昭和二十年勅令第五百四十二号、これを廃止するという法律案を提出されておるのですが、この勅令第五百四十二号というものは有効であると、講和條約発効後も有効であるとお考えになればこそ廃止せられるというのであろうと思うのです。そこでその有効だという論拠をお教え願いたいというふうに思います。
#52
○国務大臣(木村篤太郎君) 只今お述べになりましたポツダム宣言の受諾に伴い発する命令、これが有効であるという前提の下にこれを廃止するのじやないかと、こういう御質問のようであります。この命令が講和條約発効後においてもなお存続するものであるかどうかということにつきましては、議論のある点であります。両説あります。生きておるという議論もありますし、これは当然死ぬものであるという議論もあるのであります。元来ポツダム宣言の受諾に伴い発する命令は、仮に生きておるものといたしましても、これは講和條約発効後と同時に、これが発動する余地がなくなるのであります。いわゆる形骸だけ残るのであります。従いましてです、いずれの説によるものとせよ、これを明らかに廃止するということを意味することが極めて妥当だとこう考えておる次第であります。従いまして、今度の審議を願います法律によつてこれを全然廃止するということを明らかにして、その疑いを解くためにした次第であります。
#53
○羽仁五郎君 この問題は申すまでもなく非常に原則的な問題に関係しておりまして、講和條約、政府の言うごとく講和條約によつて果して占領が終結するのか、それとも政府に反対する立場、必ずしも反対党ばかりでなく、有力な見解として国内にも又国際的にも表明されておりますように、占領の継続である、何ら占領の終結じやないという見解も国際的にかなり有力な面からも表現されておりますが、その問題と関連いたしますので、特に政府の所見を明確に伺つておかなければならないと思うのでありますが、只今の法務総裁の御説明なり、或いはこの法律案の提出の政府の態度というものは、只今の申上げましたような問題をあいまいのうちに糊塗されようとする慮れがあることを私非常に心配するのであります。この第一項で廃止するというふうにおつしやつていますので、国民なり、或いは議員の中にも少なからんかたは占領は終結するのだというようにお考えになる、そういう油断を与えられようとしておるのでは、まさかあるまいと思う。併しそうでなくして、それが占領は終結するので、本質的にポツダム宣言の受諾に伴い発する命令に関する件というものは有効には存続しないのであるということが、私は唯一の正しい解釈である、そうすればこれは有効には存続しないものでありますから、それを廃止するということはできない。ところが廃止するというふうに言われるので、国会議員なり、或いは衆議院なり、或いは国民なりは、廃止されるのだからいいというふうに思うと、実はそれは有効であるから廃止するのだということになると思うのであります。そうすれば、そこに残る解釈は、ポツダム宣言の受諾に伴い発する命令に関する件というものは独立後も有効なんだという解釈がそこに確立されることになります。すれば我々の最も恐れている占領の継続という解釈がいよいよ有力なものになる、そういう見解をとる人々に、我々はここで又新たに一つの論拠を与えることになる。且つ又それは日本国憲法によつて我々が新たに出発するところの国会が最高且つ唯一の立法機関である、それによつて民主主義への信頼というものを維持して行くという我々の唯一の希望を損うことも多大である。そこで先ほど政府側からの御説明を伺いますと、これが有効であるか、無効であるかということについては学説が二つある。それは暫らくおいて、後日に疑いを存ぜしめないために廃止するのだという御説明でありますが、その御説明では、今後さまざまの非常に紛糾した問題が起るのでありまして、有効であるという考え方、だから廃止するのだということでなければ、無効なものを廃止するということはできない。従つてこれは国民なり或いは場合によつては最高裁判所などにおいて、国会はこれをどういう意味で通したのかというときに、無効である、有効であるということが明らかでなくして、それを廃止したということでは、事実これは何人にも納得することができない、或いは後日に嘲りを残すということにもなると思うので、政府はこれを有効であるというふうにお考えになつておるのだろうと思うのです。有効であると思えばこそ廃止する。然らばそれが有効であるということを我々を通じまして国民が納得するような論拠を明らかにして頂かなければならないと思いますので、重ねてその点を教えて頂きたいと思うのであります。
#54
○国務大臣(木村篤太郎君) 先ず羽仁委員に対してまして、講和條約発効後日本は真に占領治下を脱するのであるかどうかということでありますが、これは完全に私は占領治下を脱し得るものであろうと、こう考えております。そこで今のポツダム宣言の受諾に伴い発する命令に関する件でありますが、これは只今も申上げましたように、講和條約発効と同時にこの命令は発動する機会はなくなるのであります。完全にこれはもう発動しないことになる。そこでそれならば廃止するということを重ねてここで明示しなくてもいいじやないかという御議論でありますが、これは従来もそういう例があるのであります。死んだものをやめるということをやつた例はしばしばあります。決してその点については矛盾撞着を来たさないのであります。そこで今後将来発効後においてはこの命令は発動する余地はないのであるということを、ここに明示するためにそれを廃止する、こういうことにして明らかにした次第であります。
#55
○羽仁五郎君 そういたしますと、政府はポツダム宣言の受諾に伴い発する命令に関する件、即ち昭和二十年勅令第五百四十二号は平和條約発効と同時に有効に存続するものではない、無効になるのだという見解の上にお立ちになるわけですか。
#56
○国務大臣(木村篤太郎君) その点につきましては、今申上げましたように発動する機会はすつかりなくなつたのであります。併しこの法律自体は形骸だけは存しておる。形骸だけは……。そこで発動しないような形骸を残しておけばよろしくないというので、これは廃止する、こういうことに我々は考えております。
#57
○羽仁五郎君 余り哲学的な御答弁でちよつと了解することができないのでありますが、これは実際問題として困ることが起るのじやないかと思うので、発動する機会はなくなるが形骸が存するというのは、もう少しわかるように御説明を頂かんと……、これはポツダム宣言の受諾に伴い発する命令に関する件は講和條約発効後も有効に存続するのか存続しないのか、従つて廃止しなければそれは有効に存続するのか、或いは有効に存続しないもの、即ちないものを廃止するのかという点が、これは第一にどうしてももう少しはつきりするように御説明を願つておかなければならんように思うのですが、如何でございますか。
#58
○政府委員(高辻正己君) 只今の御質問につきまして法務総裁から御説明があつたわけでございますが、なおその何と言いますか、もう少し別の角度から話をするようにというようなことでもあろうかと存じますので、一応私どもの見解を申上げます。五百四十二号は申上げるまでもなく連合国最高司令官の要求を実施するために必要のあるとき特定の命令を発することができるという内容を持つた緊急勅令であつたわけでございます。従つてその五百四十二号の内容から言いまして、占領が終止いたしまして我が国が独立をした後におきましては、連合国最高司令官の発する命令というものがなくなることは当然でございますので、もはやそういう意味において五百四十二号を発動する余地はなくなるわけでございます。併しながらただそれが緊急勅令として制定され、国会の承認を受けて法律としての同一の効力を有するものとなつておる、その形式的効力は依然として残つておるのであります。これについて廃止の措置をとろうというのが今回御提案になつておりますこの一項の問題でございます。これは実は法務総裁からもお話がありましたように、今回初めてのことではございませんので、こういう取扱は実は前にもあるのでございます。いろいろございますけれども、例えば御承知でございましようが、日本国憲法施行の際現に効力を有する命令の規定の効力に関する法律というのが憲法施行の当時ございまして、その場合に従前の法令を改廃したことがございます。そのうちには当然新憲法と同時に効力を失つておると思われるような法令につきましても廃止の措置をとつたのでございます。今日の措置もこれと基本においては変るところはないのでございます。
#59
○羽仁五郎君 いよいよ納得しにくくなつてしまつたのですが、従前において例があるというのは、日本はこのポツダム宣言の受諾に伴う以前に外国に無條件降伏したことがあるのですか。
#60
○政府委員(高辻正己君) 私が今申上げますのは、法形式の面から見た立法上の取扱の問題を申上げたのでありまして、五百四十二号が内在的に持つておりまするところのその意味内容を申したわけではございません。まさに緊急勅令として国会の承認を受け、法律と同一の効力を持つておるその五百四十二号の立法形式の面からお話を申上げたわけでありまして、内容の点について触れたわけではございません。若し誤解の点がありましたら、その点を御了解願います。
#61
○羽仁五郎君 私は内容的に申上げておるので、それで最初に時間を費やすことを恐れながら申述べたのでありますが、この問題は、要するに占領は終結するのか、継続するのか、政府はどちらの印象を国民に与えんと欲せられるか、又国会はそのいずれを選ぶかという重大な問題に関係をしているのであります。本日法務総裁が御出席になります前に、或いは政務次官或いは政府委員と伊藤委員等の間に質疑応答があつたのですが、私も同じ点について論じておるのであつて、政府が事務上の便宜というものを重く見るのか、それともこの際日本は独立するのである、国民に空前の決意を促されるのであるか、そのいずれであるかということによつて決するのだと思います。いろいろな技術的な御説明は一切伺う必要はないと思います。その点について政府はどつちの態度をおとりになるか、事務上の便宜を重しとお考えになるのか、それとも……それならば現在提出されておるような法律案というものが妥当だとお考えになることも無理はないと思うのですが、併し事務上の煩雑というふうなことは忍んでも、この際占領は完全に終結し、そして日本は独立し、国民は新たに出発するのだという態度を示されるのであるならば、潔よくこうした態度を改められて、ポツダム宣言の受諾に伴い発する命令に関する件は自動的に消滅する、従つてその間に発せらせた命令であつて、新たに新憲法の命ずる根本精神に従つて法律として必要なものがあるならば、政府は潔よくそれを新らしい法律案として国会の審議を十分に受けられ、そしてその法律が法としての権威を十全に発揮せられるように努力すべきではないでありましようか。そのいずれを政府はおとりになるのか、法務総裁の所見を伺つておきたいと思います。
#62
○国務大臣(木村篤太郎君) お答えいたします。先刻申上げました通り講和條約発効と同時に占領が終結するということは申すまでもないことであります。ただこの件につきましては、成るほど五百四十二号は私が申しました通り講和條約発効後これを発動する余地はないのでありますが、もうすでにこの緊急勅令によつて委任された命令というものは残つておるのであります、子供として残つておるのであります。これは生きておるのであります。親が、形骸が残つて、そうして発動する余地はなくなつても、もうすでにこれに基いて発せられた命令というものが依然として日本の国内法として存続しておるのであります。この点について我々は考えなければならんかと考えております。従いましてこれは技術的な点でありますが、そのものが、子が生きておるものとしての処置を考えなければならんということから御審議を願いたい、こう考えるわけであります。
#63
○羽仁五郎君 具体的に申上げますと、恐らく今法務総裁のおつしやつたような、その後の政令として生きておるもの、その中の最も問題になるのは例えば警察予備隊令であると思う。それでこの警察予備隊令というものは、言うまでもなく国会の審議を経たものではありません。そうして又警察予備隊令について政府が発表せられた見解を、国民は決してこれが国会における適法なる審議を経て発表せられた見解であるとは受取つてはおりません。ところが御承知のように、警察予備隊というものは新らしい意味における日本の防衛力として今日は考えられておる。で、この防衛という問題について私は法務総裁も恐らく御同感だろうと思うのでありますが、日本に最悪の防衛機構というようなものが発生することは飽くまで避けなければならない。我々としては最善の防衛力というものが発生することを唯一の目的としなければならない。ところが只今申上げたような関係で警察予備隊令というものが最悪の状況の下に発せられておる。従つて今日警察予備隊というものに対する国民の支持というものは、明朗なものではないということは、政府も認識しておられるだろうと思うのです。で、防衛力というような極めて重大な、そうしてデリケートな関係を含むものが、国民の明朗な支持を受けて発展して行くか、それともそういうようなものが、あいまいなものがあつて、それがそのまま大きくなつて行くということについては重大な問題があると思うのであります。近来国会において討議されておりまする戦力等に関する思想も、その出発において、国会において民主主義的な討議の結果出発せられたものであるならば、今日のような苦境に政府が立たれることもないと思う。これをこのまま今後もやつて行かれるということが如何に最悪の防衛機構が成立してしまう慮れがあるかということは、法務総裁も私はひそかに御心配になつておることではないかと思うのであります。第一歩がすべてを決定するのであるということは今更申上げるまでもないのであります。私はそうした内容的な、而も今申上げるように、日本が過去において非常な過ちをおかし、そうしてその過ちが日本国民を欺いて、そうして最大の不幸に陥れたような、そういう力関係というものがなお不幸にして一掃されておるという確信を一般に与えていない今日、新らしい民主主義的な防衛力を建設されるという重大な使命を持つておられる政府、こういう問題とも関連をして、決して単に親は死んでおるけれども、子は生きておるというような譬え話で解決せられる問題ではない。理想的に、最も理想的に日本が未だ曾つて民族の上に経験したことのない敗戦と、そうして占領、それから出発して、いわばしばしば繰返されましたように、全く新らしい民主主義的な出発をするのでありますから、その点において第一に、原則的に占領の終結、完全なる独立、第二には、適法に日本国憲法の命ずるところに従つて国会において適法なる審議を受けていないものをそのまま存置するというような態度をおとりになることなく、第三には、飽くまで国会の審議を鄭重に考えて、民主主義に対する国民の信頼を高めて行くという意味において、このポツダム宣言の受諾に伴い発する命令に関する件はすべて消滅したものとして新らしい立法を以て国会に諮られる意思はないのか。若しないとするならば、今の申上げた三点につきまして政府はどういう態度をおとりになるのか、占領は終結したのだ、独立したのだという御判断は私もよく了承するのでありますけれども、併しそれが事実の上において現わされない限りは、国民の間に不幸な臆測が残ることを恐れますので、重ねて以上三点について法務総裁の所見を伺わして頂きたいと思うのであります。
#64
○国務大臣(木村篤太郎君) 先ず警察予備隊令の問題でありまするが、この警察予備隊令につきましては、一部改正いたしまして、いずれ法律案として御審議を願うことになるだろうと考えております。そこでこの勅令五百四十二号に関する問題でありますが、先ほど申上げました通り、これは緊急勅令としてすでに国会の御承認を得ておるのでありますから、これに基く命令もすべて私の法律的な見解といたしましては、国内法として十分にその効力を有するということは、当然のことであります、その法律を処置するということが、今日提案されて御審議願つておりまする法律の精神であるのでありまして、殊にすでにこの命令というものは、大体国民の間に周知されておるのでありまするから、これを又一々法律の成文を掲げまして御審議願いまするように、この法律案のあるものは存続させ、あるものは廃止させ、その存続させるものの一部改正を要するものはそれを明示しておるのでありまするから、私は妥当な趣旨であろうと、こう考える次第であります。
#65
○羽仁五郎君 法務総裁は、まさか法律的に差支えないことなら何でもやつていいんだというお考えじやないと思います。政府はときどきそういうような態度をおとりになつているのじやないかというふうな慮れあることがありますけれども、併しまさか法務総裁は原則的にはそういうお気持じやないだろうと思う。私の伺つているのは、法律的に差支えあるかないかという問題も含みますけれども、先ほど申上げましたように、これを以て政府は国民が占領は終結し、独立が開始されるのだというふうに思うかどうか。それからこれを以て政府は国民が警察予備隊令ばかりじやありません、その他のさまざまの、或いはそのまま存続し、或いは改正をして存続しようとするものでありますが、それについてその第一歩から国会は憲法の命ずる審議を尽したというように感ずることができる、こういうふうにお考えになりましようか、如何でしようか。
#66
○国務大臣(木村篤太郎君) それは人おのおのの見解の異なることは承知いたしておりまするが、私はこれで以て立派に日本国は講和條約発効と同時に独立国になるものと国民は考えておる、こう考えております。
#67
○羽仁五郎君 御承知のように、勅令第五百四十二号が緊急勅令として事後承諾を国会において求められましたときの状況もこれは言うまでもなく、占領軍最高司令官の意思というものが第一にそこで有力に作用しておつたのでありまして、従いまして国会においてこれを日本国憲法の命ずるところに従つて十分なる審議を尽したという事実はないと思うのであります。若しあるということであるならば、その事実をお示し願いたいと思う。それから警察予備隊令につきましても、警察予備隊令につき国会はいつ審議をしたことがあるのか、その点もお答えを願いたいと思います。
#68
○国務大臣(木村篤太郎君) この緊急勅令として国会の御審議を得たことは、まさに動かすべからざる事実であります。何と言つても事実は私は抹殺できないと考えます。警察予備隊令は、この緊急勅令で委任されたところの命令であるのでありまするから、私は法律的に言つて、この命令は国内法の効力を有するものと信じている次第でございます。
#69
○羽仁五郎君 私の申上げるのは、実際に国民に与える印象の上から緊急勅令第五百四十二号というものは占領軍の司令官の意思というものが最大の力を持つておつて、その下において国会がこれを日本国憲法の命じておるような自由の討議というものを以て討議したのではなく、これを可決したということではないか。法務総裁はあとのほうの事実だけをお認めになりましたが、前のほうの事実、即ち占領軍最高司令官の権力によつてこうした命令が成立したものであるという事実をもお消しになることはできないと思うのですが、それを今消すかどうかということが問題であるので、私はなお今後この問題を具体的に政府の所見を質さなければならないと思うのでありますが、一応只今私の質問を終るに当つて申上げておきたいのは、この問題にからんで行くとか、或いはどうとかというような二義的な意味で私が申上げているのではないのであつて、我々が今、我我国民の経験したことのない占領というものを終つて、そうして独立して行く、この独立の前途に幸福と平和、この二つのみを私は念願する意味から、政府のおとりになる態度に疑念があつてはならないと思うので伺つておるのでありますが、政府はそういう点で十分のお考えをお持ちになつておるということをお示し頂いたとは考えられないことは非常に残念に思います。
#70
○伊藤修君 えらく遅くなりまして御迷惑ですが、私は大体先ほど政府委員のかたに質問申上げたのですが、重ねて繰返したくはありません。ただ今法務総裁の御答弁中に今議題になつている法律案の第一の点、いわゆる勅令五百四十二号についての御説明はよくわかつたのですが、併し第二の点ですね、いわゆるこの五百四十二号に基いて発せられたところの諸命令はなお生きておる、いわゆる効力を存続しておるのだ、こういう見解で本法を提出したのである、こういう御説明である。そういたしますと、この第二項に書いてある表現の形式はちよつとおかしいのじやないか。当然生きているものなら、百八十日の間に限り法律としてその効力を有するということは、どうもおかしいことになる。生きておる法律に対して何のために百八十日間その効力を有するということを改めて書かなくてはならぬか。又百八十日間を過ぎた後のその命令の効力は如何、いわゆる廃止もせずして、その間だけ効力を有する、こういう表現の仕方が納得できない。百八十日これは効力を存する、その後廃止するという形ですか、その点について御説明を願いたいのですが……。
#71
○政府委員(林修三君) 私からお答えいたしますが、この第二項は先ほども申上げました通りに個々の緊急勅令に基きますポツダム命令につきまして、これが更に講和発効後も効力を持つておる、或いは当然に死んでしまうものか、これにつきましても学説上議論のございますところは先ほど申上げた通りであります。政府といたしましては、第一項のポツダム緊急勅令につきましても、先ほど法務総裁がお答えいたしました通りの見解を持つているところでありますが、こういう見解からいたしますれば、大体何らの措置をいたさなければ、個々のポツダム命令もいわゆる委任命令としての効力をなお存続し続けるのではないかという考え方が有力になるわけでございます。併しこの個々のポツダム命令につきましては、この際親の法律を廃止します関係もございますし、それから内容から申しましても個々の、別個の法律案によりまして個々的に法律として存続させる、或いは改正の上存続させるとか廃止するとか、こういう措置をとる関係から申しまして、個々の残りました命令を将来に向つて存続させる必要もないわけでございまして、そういう関係から考えまして一応多少の時間的余裕を見まして百八十日間に限り効力を持たせよう、そこで、特に第二項の書き方についてのお尋ねでございましたが、法律としての効力を有せしめる、こういう意味を以ちまして、緊急勅令が廃止されましてもあとの個々の命令を法律としての効力を有させる、而もそれは百八十日間に限る、こういうことに重点を置きまして特にこういう表現をとつたのでございます。
#72
○伊藤修君 今の御説明はこの條文の説明に過ぎないのですが、私の聞いているのはその本質を聞いているのですよ。法務総裁は只今諸命令はなお生きておるのだと仰せられる。生きている以上は、別に廃止の手続をとらん以上はそのまま法律として、若しくは法律的内容を持つた命令として効力を存続することになるのではないでしようか。それを特に百八十日間に限り法律としての効力を有すると謳う必要はないじやないか。若し百八十日だけを生かしておいてその後は廃止したいというならやはり第一項と同じように廃止する、若しくはその他の表現を用うべきではないでしようか。生きているという前提なんです。あなたの言う問題があるという前提ではない。生きておるという前提に立てばそういうふうにならざるを得ないのじやないか。
#73
○政府委員(林修三君) この点につきまして意見として二説あるということは先ほども申上げた通りでありまして、生きておる、当然には効力を失わないという考え方と、当然にも効力を失うという考え方があるわけでございます。当然には効力を失わないといたしますれば今仰せられました通りに、一応黙つておけばそのまま委任命令としての効力を持つ。この場合につきましても親の法律が死んだ場合に子供が当然になお効力を持つかどうか、これにつきましてもなおいろいろ説があると思います。そういう点も俗に申しまして、親が死んでも子は死なないという考え方で参りますれば今おつしやつた通りのことになるかと存じます。併しこれにつきましては、個々の別の法律によりまして全部、少くともこの法律施行後の百八十日以内にはすべて個個のポツダム命令につきましては措置をとると、こういう考えに基きまして、万一その間にこの措置がとられないものがありますればもうそれはそのときに、立法政策的に考えましてそのときに法律としての効力を失わせてもいいという考えの下に、こういう表現をとつているわけであります。
#74
○伊藤修君 あなたのお考えは、問題がある、両説があるという前提に立つているのですが、だから先ほどから法務総裁おいでになる前からもその点をお尋ねしているのです。一体命令が、親の緊急勅令が死んでもこの命令は法律的内容を持つておる以上これを効力があるものだという前提の上に立つてのこの本法の提案になつておるのか、死んだという前提に立つてしておるのか、それともあなたの仰せられるように或いはお説を承わつておると注意的規定のようにも考えられる。その点をはつきりしておかんと将来国民がこれで覊束されるのですから、問題になつて来ると思うのです。百八十日経つて、或いは問題が解消するかも知れません。その間に問題が起つたらどうするか。我々はこの法律によつて当然覊束されるのか、はつきりわからない。だから本法が生きておるのかどうか、はつきり承わつておきたい。法務総裁はそういう御説明であつたのですから……。
#75
○国務大臣(木村篤太郎君) これはこの法律施行の日から起算して百八十日間に限り法律としての効力を有するもの、これだけの間効力を持たせる。この逆が、これ以後というものはこの効力を持たせないのだ。これはもう死んだものとするのであります。それまでは生かしておく。こういう趣旨に解しております。
#76
○伊藤修君 只今法務総裁の御説明になつたことは、これを読めば当然その通りの解釈であつて、よくわかるのです。私のお伺いしているのは、この命令がなお親の命令に関係なく生きておるという先ほどの解釈的御説明であつたのです。して見ますれば、本法がなくとも当然法律的効果というものは持続するはずでございます。それを特に百八十日だけ持続するという言い方はどうだ、こういうのです。言わなくても当然のことではないでしようか。それから後は効力を失わせるというところに狙いがあるとするならば、法律的効果は当然あるけれども、それから後は廃止するのだ、百八十日を以て廃止するという言い方のほうが正しいのではないでしようか。これで見るというと、そういうふうな、生きておるのか、死んでおるのかはつきり基本的な観念が打出されていないのです。法務総裁の御説のように生きておるというならば、そこに矛盾があるのではないか、こういうことです。
#77
○国務大臣(木村篤太郎君) これは生きておるというのは私の見解を申上げたのでありまして、そこで初め申上げたように、それについてはやはり両説がある。そこで私の生きておるという見解にいたしましても、この書き方であれば百八十日過ぎれば殺してしまうのだ、生きておるのも殺してしまうのだ、こういうことでありまして、又逆にそれが生きておる、或いは死ぬということの両説があるから、それでこれを書けばその疑いも消滅するであろう、こういうことであります。いずれにいたしましても百八十日だけは生かしておこう、あとは死なそうということであります。
#78
○伊藤修君 そうすると法務総裁の御見解もやはり先ほどお述べになつたことは、法務総裁個人の御見解であつて、やはり両説というものに立脚しているという御議論になつて来るのです。そういうことになるのですね。
#79
○国務大臣(木村篤太郎君) それは疑いがありまするから明白にしておくという趣旨であります。
#80
○伊藤修君 そうするとその後における効力を失うということになると、その法律はいわゆるその命令は廃止になるという意味ですか、命令はそのまま存続するという意味ですか、いわゆる形骸だけ残すという意味なんですか、或いはその廃止の手続をするまでは効力を失つた、形だけの緊急勅令に基く命令というものが残るのですか。
#81
○政府委員(林修三君) これは大体の私どもの予想といたしましては百八十日間経つまでに、すべてのポツダム命令につきまして改正存続或いは廃止の措置がとられるべきものと考えております。ただその場合におきまして百八十日経ちましてもなおここで何らの措置がとられない、従つてその百八十日経過したあとで効力を失うというものが或いは出て参るかもわかりません。この場合におきましては、従来の例により、その形骸は存するわけでございますから、その形骸を失わせる措置は、そのときにおきましてそういうものが残ればとるほうが妥当ではなかろうかと考えております。
#82
○伊藤修君 ちよつともう一回……。
#83
○政府委員(林修三君) 百八十日経ちますまでにすべてのポツダム命令につきまして、大体何らかの措置がとられるものと私どもは予想いたしております。併し万一百八十日経ちましても別個の法律によりまして廃止、或いは存続という措置がとられないものも或いは出て参るかもわかりませんが、そういう場合におきましては当然この法律の規定によりまして百八十日経ちますと効力がなくなるわけであります。やはり形式的にそういうポツダム政令がそういう形骸を存続すると思いますが、その際は別個の法律を以ちましてこれを形式的にも廃止すべき措置をとるべきものと考えております。
#84
○伊藤修君 そうすると結局は効力を失うということによつてはその命令の形骸は残る、それの廃止手続はおとりになる、こういうことになるのですね。私は先ほど法務総裁がおいでになる前に政府委員のほうにお尋ねしたんですけれども、御承知の通りこのポツダム宣言に基いて我々がいわゆる日本管理及び日本の政治管理及び日本の経済管理と、こういう特殊な事情の下において六年間の間過して参つたんです。その管理の方法といたしましてこの五百四十二号という一つの基本命令が出されざるを得なくなつた、そういうような非常の場合におけるところのこうした措置、而も占領政策遂行の基本的の憲法とも称すべき法律である、従つて講和條約が成立いたしますれば当然私は基本的に、言うを待たず効力を失うことは当然のことと思います。法務総裁の御説によりましても形骸は残る、成るほど形骸は残ると思います。本質的に、実質的においては当然効力を失うのです。従つて基本法律が効力を失いますれば基本法律に基いてかような非常事態を賄うために発せられたところの諸命令というものは本質的には私は効力を失うことが当然だと思うのです。それが生きてなお存続するというあり方は、これは一般の法理観念では或いはそういう説も出るかもわかりません、併し特殊の日本のこの占領下に置かれて而もその緊急勅令が出されたという基本的な理念というものはポツダム宣言の降伏條件を遂行するために、いわゆる日本管理のために出されたものである、その基本法律に基いて出された命令といえども……して見ますれば本質的にはすべてが一応効力を失うということは私は本来の考え方でなくちやならんと思うのです。又そう解釈すべきが当然ではないかと思うんです。それにもかかわらずなお親法律が効力を失い、子法律のみがその効力を存続するという考え方にはどうしても納得できないと思います。いま一つは、私は法務総裁も先ほど申されました、羽仁委員からも申されておるごとく、少くとも我々は講和という大きな喜ぶべき事実の下に新らしい日本の発足の第一歩を我々は踏出さなければならん、その場合において占領下においてなされたところのいろいろな管理のために発せられたところの法律命令というものをなお存続するというあり方は好ましからざるところのあり方だと思うのです。国民はいつまでも占領治下に置かれておるがごとき印象を植付けられることは当然のことであります。これは僅か十九件であり、片一方は改正を要する法律が二十一件である、合せて四十件の法律でありますから、これを単独法規としてお出しになるのはともかくとして、いわゆるポツ勅に関するところの措置としてお取扱いになることはいわゆる便宜論に堕して国民に与えるところの思想的影響というもののこの大きなマイナスの面を忘れたところの取扱い方だと思うんです。願わくは私はこうしたあり方というものはこの際払拭いたしまして、国民は講和発効と共に過去の絆が一切除去された新らしい日本の国民の総意に基いて国民の希望するところ、国民の考えるところの、是なるところと信ずるところの法律を改めて出すべきである。その内容はたまたま過去に出されたところのポツ勅と同一の内容を持つておつてもそれはよろしい、それは国民の欲するところによつて立法せられたんだ、こういう形に持つて行くべきではないでしようか。勿論継続を希望せられておるところのこの十九件及び改正の二十一件というものについては我々としてもそのまま存続することを可と信ずるものも多々あります。それは結構だと思います。併しそれはいわゆる総司令部の命令に基いて作られた法律をそのまま受けて立つということよりは、日本国民が改めてそういうものを作つたという形をおとりになつたほうが、真に日本国民がその法律の下に服従して生活を営なむことができると思うのです、而も自負心を抱いて独立国民としての襟度を示して行くと思うのです。そういうあり方をなぜ賢明なる法務総裁はおとりにならなかつたか。と、まあ非常に思うのです。その点に関する法務総裁の御見解をお伺いいたします。
#85
○国務大臣(木村篤太郎君) 伊藤委員の今の仰せになりましたことは誠に私は同感であります。併しながら今伊藤委員も仰せになりましたように、この命令について存続すべきものは大体我我は検討してその必要ありと認めたのであります。そこで手続の問題でありまするが、これを同じ形に法文をしまして御審議を又願いますよりか、前のままといたしましてこれは法律として存続するという形のほうが現段階においては妥当と考えたのであります。その手続につきましての問題は今一方から考えますると伊藤委員の仰せのことは私は至極御尤もだと思うのであります。ただこの時局甚だ切迫しております際におきましてかような手続をとつたことについて御了承をお願いいたしたい、こう考えております。
#86
○伊藤修君 時間も長くなりますから簡単に最後に伺つておきたいと思いますが、法務総裁のお心持については我我の考え方に御同意でありますが、私はこうした形は一日も早く除去して頂きたい、それで残すべき法律で我々の国民生活において必要欠くべからざるものは、これは当然存続せられなければなりません。ただその存続という言葉でなくて、改めて我々の国民の了承を得て、即ち国会の了承を得て立法するという形をとつて頂ければそのままでもよろしいと思うのです。そういうようにして行くことのほうが国民として占領治下から脱却したという強い印象を得られると思うのです。又そうして行くことのほうが今後日本と連合国との間の形においても非常にいい感じを持つのじやないか。そうでなくしていつまでも日本を占領治下に置いておくがごとき印象を残して行くというあり方は、将来における国際感情の上においても日本国民が満足してこれに協力して行くというあり方にはなつて行かないと思う。少くとも共産主義のかたがたにはこういうこともとつて以て反対の理由に強く掲げられることは必然です、そうすれば余りよく知らないところの国民はやはり占領治下に賄われた法律を今の政府、今の国家は受継いでその下に法的生活を営んでおるのだ、占領の継続じやないかと、こういうふうに指摘されれば、そうじやないと言つて国民に答弁できません、そうかも知れんと思つてますます悪感情を持つて行くということが将来において日本に好ましからざる結果を意外の点から生むのじやないかと懸念する余まり法務総裁に便宜上しては今のおとりになつた方法は便宜論としては一番至上の方法でしよう、単なる便宜論で以てそうした国民思想に及ぼすところの影響ということを考えたならば、便宜論では過ごされない問題じやないかと、こう思うのです。でありますから、若しその点が法務総裁において御同意ならば、速かにこれに対しましては近いうちにおいて処理なさることを私はこの際強く要望する次第であります。
#87
○国務大臣(木村篤太郎君) 伊藤委員の今の御議論については私は満腹の敬意を表します。併し私はこの際もうすでに時間的にも甚だ切迫いたしておりまするので、この際各位の御了承を願いまして是非ともこの法案を一つ御可決あらんことを切にお願いする次第であります。
#88
○羽仁五郎君 さつき伺いました点でなお伺い漏らした点がありますので、三点について法務総裁の所見をこの際明らかにしておきたいと思うのでありますが、法務総裁は新日本憲法が我々に命じておるところの主権在民という趣旨を今後ますます発揮せられるという御意思であろうと思うのでありますが、こういうことを伺うことは甚だ私としても本意でないのでありますけれども、この只今議題になつております法律案の関係から、やはりこの際明らかにしておいて頂きたい。それから第二点は、ポツダム宣言受諾に伴い発する命令に関する件に関しては、御承知のように、占領軍最高司令官の意思というものに対しては批判が許されなかつたのだということは法務総裁もお認めになると思います。我々は当時、遺憾ながら占領軍最高司令官の発表せられた意思というものを批判をすることは禁止されておつた、できなかつたのであります。従つてこれに基いて発せられた命令というものは、批判を許されない態度の下にそうした命令が出ているのである。併し今後はそうしたことは独立後は許さるべきものでない。これも改めて御見解を伺う必要がないのでありますが、強いてそれを伺つておかなければならないというのは、現在政府の御提案になつたこの法律案というものが、そういう点において我々の認識を、国民の認識を誤るのじやないかと思うからであります。そして第三に伺つておきたいのは、いわゆる団体等規正令というものについては、本委員会におきましても前法務総裁に向つて、決して団体等規正令をそのまま継続するような印象を国民に与えることは許さるべきでない。当時世論は批判して、日本政府が新らしい占領軍最高司令官のような地位に立つつもりであろうかということまで切言しておつた。それはそうした印象を与えることが今後に如何に恐るべきかということを指摘したものだと思う。幸いにして政府がそれらの点を反省されて、団体等規正令をそのまま法律にするという態度を一擲されて、全く新たに構想を立てられ、そうして国会の審議を求められるという態度をおとりになるのじやないかと思うのでありますが、併しこれは根本的にこのポツダム宣言の受諾に伴い発する命令に関する件、それから発生しておるあらゆる命令において、同じ態度をとられることが望ましかつたのではないかと思うのでありますが、以上三点について法務総裁からはつきりしたお考えを伺つておきたいと思うのであります。
#89
○国務大臣(木村篤太郎君) 主権在民の原則は、これは新憲法において炳乎として明らかであります。これは議論の余地はなかろうかと考えております。今後講和條約発効後におきましては、真に独立国として我々国民の意思に基いてすべて法律命令が作成されるようになると私は信じて疑いません。又そうでなくてはなりません。何国の干渉もこれは絶対に入れ得る余地はなかろうかと私はこう考えております。団体等規正令に関する法案につきましては近日中に成案を得まして、いずれ十分な御審議をお願いいたしたいと思います。併しその根本趣旨は決して憲法に許されておりまする基本的人権を侵すようなことのないように細心の注意をいたしまして、ただただ御承知の通り暴力的破壊的活動を事とする団体を規正して行こうという趣旨であることは、いずれ御審議の上において明らかになることと考えております。
#90
○羽仁五郎君 私は団体等規正令について伺つたのではないので、第一の主権在民の原則というものを今後飽くまで擁護し、その発展を期せられるという御所見には私敬意を表しますが、第二の点、即ちポツダム宣言の受諾に伴い発する命令に関する件については、占領軍最高司今官の発表せられた意思というものに対しては批判が許されなかつたのであるということは、この際法務総裁としてお認め頂いておかなければならないと思うのであります。その例として例えば団体等規正令というものもそうでおる、これは団体等規正令に限りません、この勅令第五百四十二号に伴つて発しておる命令はことごとくそうであつて、批判を許さないという、そうした占領軍最高司令官の立場に基いて発せられたものである、従つて例えば団体等規正令がそのまま存続するという態度をおとりになることは好ましいとお考えにならなかつたように、全体においてもそういう点は好ましくない、従つて今後そういう点についての誤解が発生しないように努力するという御趣旨であろうと思います。この占領軍最高司令官の発表せられた意思というものは批判を許さなかつたものであるということをはつきり認識しておきませんと、今後不幸にしてまだ古い時代の官僚主義の残つておる日本の政治界においては、ややもすればそうした批判を許さないというような官僚主義的な態度を以て主権在民の大原則を有名無実ならしめる虞れがあるので、特にこの点を伺つておきたい。
#91
○国務大臣(木村篤太郎君) 連合軍最高司令官の命令は、これはお説の通り絶対にこれに背くことができない状態になつていることは事実であります。
#92
○委員長(小野義夫君) なお本問題について御質問ありませんか。……そういたしますれば一応質疑はこれで終了したるものと認めて御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#93
○委員長(小野義夫君) 御異議ないと認めまして本日はこれにて散会いたします。
   午後四時十八分散会
ソース: 国立国会図書館
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