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1951/06/18 第13回国会 参議院 参議院会議録情報 第013回国会 地方行政委員会 第55号
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1951/06/18 第13回国会 参議院

参議院会議録情報 第013回国会 地方行政委員会 第55号

#1
第013回国会 地方行政委員会 第55号
昭和二十七年六月十八日(水曜日)
   午前十一時二十六分開会
  ―――――――――――――
  委員の異動
本日委員岩木哲夫君及び岩男仁藏君辞
任につき、その補欠として深川榮左エ
門君及び石川清一君を議長において指
名した。
  ―――――――――――――
 出席者は左の通り。
   委員長     西郷吉之助君
   理事
           堀  末治君
           中田 吉雄君
   委員
           岩沢 忠恭君
           石村 幸作君
           高橋進太郎君
           宮田 重文君
           岡本 愛祐君
           館  哲二君
           原  虎一君
           吉川末次郎君
           林屋亀次郎君
           石川 清一君
          深川榮左エ門君
  国務大臣
   国 務 大 臣 岡野 清豪君
  政府委員
   地方自治政務次
   官       藤野 繁雄君
   地方自治庁次長 鈴木 俊一君
   地方自治官庁行
   政課長     長野 士郎君
  事務局側
   常任委員会専門
   員       福永与一郎君
   常任委員会専門
   員       武井 群嗣君
  ―――――――――――――
  本日の会議に付した事件
○地方自治法の一部を改正する法律
 案(内閣提出、衆議院送付)
  ―――――――――――――
#2
○委員長(西郷吉之助君) 只今より委員会を開会いたします。
 本日は昨日に引続きまして地方自治法の一部改正案につきまして質疑を続行いたします。
#3
○中田吉雄君 議事の進行についてお伺いいたしますが、東京新聞の六月十五日附で自由党の増田幹事長と西郷委員長との打合せの結果、地方自治法は継続審議でもよろしいというような申入れがあつたように出ておる、本国会に必ずしもり通過を要しないというような記事が、大新聞である東京新聞に掲載されているのですが、そういうことがあつたのですか。
#4
○委員長(西郷吉之助君) いや私も只今の件は家に帰りましてあの晩見ましたら出ておりましたので、私も意外に思つたのですが、あのときは丁度委員会の部屋に増田さんが見えまして、どういう工合ですかということを聞かれた。それで具体的なことは何も私は話さなかつたのですが、御承知のように委員室に入つて来られたのです。それでそれを見たので、きつと推測記事であろうと私は思いますが、恐らく政府としても全然そういう考えはなかつた、岡野さんなんかの意見をお聞きになつてもわかる通りに、今やつております自治法には最も重点を置いて推進しておられるのですから、私もあの話を非常に意外に思いましたが、ここに来られたのを見て推測して書いたのだろうと思います。具体的な話は何らそこでございませんでした。そういう経過でございます
#5
○中田吉雄君 岡野大臣にお尋ねいたしますが、そういう相談があつたんですか、増田幹事長なんかといずれどういう法案をどうしても通すとかいうようなことがいろいろあると思いますが、重要議案が山積しておるので、党のほうがそういう意見ならそういうふうに捌いてもいいのですか。
#6
○国務大臣(岡野清豪君) お答えします。これはそういうことは私は毛頭考えたことはござません。と申しますことは、地方の行政簡素化をするのについていろいろたくさんの案がございましたのですが、まあ最小限度この自治法の改正法案というものは地方の行政簡素化の一翼を担つておるわけです。これは党とじましても、内閣としましても、特にこれは個人的なことを申上げては恐縮でございますけれども、総理もやはり非常な熱意を以てこれを一つ是非御審議を願つてくれ、こういうことでやつておりまして、私の真意といたしましては、これは是非通して頂きたい、こういう考えで臨んでおるわけであります、それから党と話しましても、何らそういうことに触れていません。これははつきり申上げます。
#7
○中田吉雄君 それでは御趣旨もよくわかりましたから、その線に沿つてやることにいたしますが、次に私本日正式に聞きましたところによると、参議院が修正いたしました地方税につきまして、衆議院の予算委員長の塚田氏がかなり異論を持つておられまして、参議院の修正案が否決されて両院協議会に持込まれる公算が必ずしもないではないかと思うのですが、二院制度の建前からいたしまして、双方が独自な立場をとるべきでありまして、容喙すべきではないと固く信じていますが、併し事前にも十分お打合せいたしまして、衆議院の御意向も尊重してああいうふうに練り上げられたと思うのですが、そういうことと絡み合つて、西郷委員長とされて本国会に付議されている他の諸議案との関連で一つ適当な捌きを私は希望したいのです。どんなものでしようか。それにつきまして……。
#8
○委員長(西郷吉之助君) 私も昨日中田委員の御発言がございましたし、そのときにもお答えいたしましたが、私も同感に思つておりまするので、あれは十分向うと打合せた上でやりましたので、約束は私も固く守つてもらいたいということを始終申上げておりまして、昨日も御意見がございましたから、一私自身も又岡野国務大臣を通しても厳重にこちらの意向を伝えまして今後といえとも、この委員会に重要な法案がたくさんかかつております。そういうふうなことから考えましても、誤解を解くためにも、衆議院は約束通り参議院の共同修正案を呑んでもらいたい、そういうふうな考えにいささかも変りはございませんので、今後とも委員長といたしましても呑んでもらうことに努力したいと私は考えております。
#9
○国務大臣(岡野清豪君) 委員長のお言葉に補足して申上げます。あの案がこの委員会でパスしましてから、毎日朝晩のように西郷委員長から今の御言葉のようなことを私に仰せ付けになつております。私も又微力ながらその点において党並びに衆議院の各方面に対してこれを西郷委員長のお言葉の通りに実現したい、こういうことに毎日努力しておる次第でございますから御了承願います。
#10
○中田吉雄君 たびたびで恐縮ですが、会期を再再延長するような一班の責任は、やはり大政党である自由党も当然こんなことになると思わざるを得んと思うのです。私は先ず参議院に山積しておる法案をできるだけ速かに審議して結末をつけると同様に、先ず衆議院て圧倒的な多数を持つ自由党が一つ率先垂範して、いずれにしても結末をつけて、そうして我々の態度の決定に一つ資して頂くように重ねての御善処をお願いいたす次第でございます。
#11
○委員長(西郷吉之助君) 私は全く同感でありまするから、私もこれについては更にお聞きしたいと思います。
#12
○岡本愛祐君 関連して質問いたしたい。ちよつと速記をとめて頂きたい。
#13
○委員長(西郷吉之助君) ちよつと速記をとめて下さい。
   〔速記中止〕
#14
○委員長(西郷吉之助君) それでは速記を始めて。
#15
○岡本愛祐君 私は二百八十一条について岡野国務大臣にお尋ねをいたしたいと思うのであります。この前一応鈴木政府委員から二百八十一条、二百八十二条の改正について承わりました。即ち東京都の特別区の問題であります。そのときに質疑応答したことを今速記録がまだ出ませんから、それがこうだつたんだというふうにここに断言しながら、言質をとつて進めて行くわけには行きません。
 で更めて私は岡野国務大臣にお尋ねをいたすのでありますが、それは第一点は、特別区は自治法の第一条並びに二百八十一条に言います地方公共団体、その中には特別区が入れてあるのでありますが、その特別区が憲法九十三条第二項に言うところの地方公共団体であるのかないのか、現在の地方自治法並びに憲法九十三条によりまして特別区というものが憲法九十三条に言う地方公共団体であると考えておられるのか、考えておられないのか、それをお尋ねいたしたい。
#16
○国務大臣(岡野清豪君) お答え申上げます。
 私はこの東京都におけるところの特別区というものは憲法九十三条の地方公共団体というものには入つていない。こう解釈しております。
#17
○岡本愛祐君 それはどういう根拠によつてそういうふうにお考えになつておるのですか。
#18
○国務大臣(岡野清豪君) それは特別区というものは御承知の通りにいわゆる特別区でございまして、成るほど自治法におきましても市に関する規定を適用しておりまするけれども、もともとこの特別区ができましたときのいきさつから申しまして、同時に元東京市である、一体をなしておるところの一部分であるところのものである、こういうような実際上の情勢から申しましても、これは完全なるいわゆる憲法に言うところの自治体を以て遇するには市政運営上私は面白くないと思いまして、そうしてその特別区というものは、やはりできました当初から、成るほど市の条例、市に関する規定を或る程度できるだけこれを適用して行くという自治体には考えでおつたのでございますけれども、併しこれを完全なる憲法の九十三条に言うところの地方公共団体とは認めていなかつた。と申しますことは、それあるがために若しこれを憲法九十三条の地方公共団体であると考えますならば、その後にできましたところの警察法とか道路法とか何とかいうようなものは、皆これは完全なる市であるならば、只今の特別区に適用せられているような法律が適用せらるべき筋合のものじやない。その意味におきましても立法制度の上から行きましても、法の運用から行きましても、只今までのところは特別区は憲法九十三条に言う地方公共団体じやない、こういうような実体を備えておるわけでございます。
#19
○岡本愛祐君 それではなおお尋ねいたしますが、地方自治法が新憲法に基いて作り上げられた、そのときの特別区というものは、やはり今岡野国務大臣が御答弁になりましたような性質であるとして規定されておるのであるか、この立法の趣旨についてどういうふうにお考えになつておりますか。
#20
○国務大臣(岡野清豪君) 恐らく立法趣旨といたしましては、特別区というものを完全なる市というようなものに作り上げたいというふうな考えで、これは私の想像でございますが、自治法が組み上げられたものと思いますけれども、併しながらその自治法の中におきましても、やはりこれは完全なる市と同じような立場に置けないようなかずかずの条文も入つておりますし、それからその後の立法措置といたしましても、特別区というものは完全なる市と同じような状態にはほかの諸法律はなつておりません。でございますから特別区ができました当時から、その後におきます経過といたしまして、これは完全なる憲法に言う地方公共団体である待遇はいたしておりません。
#21
○岡本愛祐君 それでは私は地方制度資料によりまして、これは、旧内務省におきまして昭和二十二年の十月に発行したものであります。それに根拠を置きましてこの立法の趣旨は岡野国務大臣のお考えになつている通りでないのだということを証明したいと思います。この特別区というものは現在の地方自治法の上において、憲法九十三条に言う地方公共団体として立派に取扱われておる、そういうことを証明いたしたいと思うのであります。
 先ず第一に地方自治法案が第九十二帝国議会に上程になりました、政府から提出をしました、その時の内務大臣、当時の責任者の植原悦二郎君が提案理由の説明をいたしております。その中でこういうことを申しております。先ず「本法案制定の基本方針に付て説明致します、先づ第一に、地方公共団体の自主性及び自律性を強化したのであります、即ち新たに特別市の制度を設け、所謂二重監督の弊を芟除し、大都市の自主的且積極的な活動を助長促進致しますと共に、東京都の区に対しては、原則として市と同様の権能を認めることとする等、第一次改正の精神を更に拡充強化し、地方公共団体の自主性の原則を更に貫徹することに努めたのであります、」こういうことを申しております。
 そうして進みまして、「東京都に付きましては、区は之を特別区として、原則として市と同一の権能を認め、之と共に東京都は、基礎的地方公共団体でなく、」と、こう言つております。「道府県と同様に市区町村」、この市区の区は特別区であります。「市区町村を包括する復合的地方公共団体としたのであります、」こう申しております。
 それから当時の地方局長は、只今の警察予備隊の総隊総監の林敬三君であります。それから行政課長はここにおられる鈴木俊一君であります。政府委員としてその当時も出ておるのであります。貴族院におきますその質疑応答におきまして、鈴木政府委員はこういうふうに答弁をいたしております。少し長いが大事な問題ですからお聞きを願いたいと思います。「第一条で矢張り「地方公共団体」と云ふ言葉を使つて居りますが、是は憲法の「地方自治」の章に、矢張り「地方公共団体」と云ふ言葉を使つて居りますので、それを承けて、都道府県、市町村其の他の所謂地方公共団体を総て「地方公共団体」と云ふ言葉で申すことに致して居ります]、この間を省略いたします。「「特別区」は東京都の現在の区であります、之を特に「特別区」と申しまして、大体市と同じやうな権能を認めることに致して居ります、」。
 それから又次の第二回の委員会における鈴木俊一君の答弁であります。「次に特別区でございますが、是は東京都の区と従来申しました区であります、特別区の制度は、従来財産、営造物に関する法人区として、市制第六条の法人区として認められましたものを、左様な特定の市に関する法人区でなく、一般的の市と同格の地方公共団体と云ふことに致したのであります、即ち都を基礎的な地方公共団体でなく、区市町村の上に立ちます包括的の地方公共団体に致しましたのと相伴ひまして、此の区と云ふものは市と同格の地方公共団体に致したのであります」、ここに至つてこれは明白であります。
 それからなお進みまして、やはり鈴木俊一君の答弁、「都道府県市町村の全部に適用されますものを、それを普通地方公共団体と申し、特別市、特別区、或は財産区と云ふやうなもの迄含めて申します場合は、之を単に地方公共団体と申し、所謂特別地方公共団体としては特別市、特別区と云ふものを、又地方公共団体の組合と云ふものを特に規定致したのであります、憲法で地方公共団体と云ふ言葉を使用して居りますので、地方公共団体と云ふ言葉を使用致したのであります、」これは前にも出ました。「唯東京都に付きましては、従来新しいあれから申しますと、精々特別地方公共団体的のものの性格が、従来の儘で申しますとあつたのでございますが、之を止して一般の都道府県と同じやうに致しまして、唯都内の特別区だけが一般の市町村と稍々性格が違ふと云ふので特別区と致しました、都としては矢張り他の府県と同様に市町村は包括する団体になつて居るのであります。」、少しこうあいまいですが、それから宮沢俊義さんとのやり取りがありまして、こんな特別地方公共団体とか普通地方公共団体に分けるのはおかしいじやないかというような議論がなされております。それからそのとき、あとでやはり鈴木政府委員が、「従来の大都市の中の区の制度は、東京都に於ては法人であり、京都、大阪も法人でございましたが、京都、大阪に付きましては法律上法人と云ふことになつて居りましたけれども、実際は今日何等の財産も持つて居りませぬ、学校其の他も、皆区のものではないことになつて居ります、一切の財産が全く無い、法律上の以外のものに付きましても無いと云ふ状況でありまして、五大都市の区は従ひまして、横浜、神戸、名古屋の行政区と共に全く実質上は行政区と云ふ実情になつて居るのであります、」。つまり京都、大阪も法人ではあつたが、実際は横浜、神戸、名古屋の行政区と同様である。「処が東京都の区に付きましては、是は財産営造物に関して、法律的にも実質上にも、矢張り法人区の実を備へて居るのであります、」、「都の区だけは、事実他の市におけると同様な実情にございますので、そこで特に特別区と致しまして、本来なら市と同じやうに規定して宜いと思うのでありますが」云々とこう言つております。
 いろいろありますが、それから内務大臣の答弁資料というものが附いております。つまりいろいろの質問を予定しまして内務大臣が答弁をする、その材料であります。そこで明白にこのことが解説がついておるのでありまして、間として予定をしておりますのは、都を道府県と同性格のものにしようとする理由如何、そういう設問をしまして、答に、東京都のごとき厖大な人口を擁し、且つ相当広大な面積を占めている地方公共団体が基礎的地方公共団体であるということは如何にも無理であり、都内の市町村と都の関係は一般の市町村と道府県との関係と実質上何ら異なるところがないのにかかわらず、かくのごとくその取扱を顛倒しておるのは極めて不合理であつて、理論には忠実であるが、実際に即しないものと言わなければならない。今回東京都の区を統合してこれに市と同様の権能を認め、都は必要において条例でその調節を図ることができるものとすれば、あえて三十五区の区域を総合して区の存する区域に人格の存するがごとき法制を維持する必要はなく、区を一般の市町村と同様に都の基礎的地方公共団体たらしめ、都は市区町村を包括する地方公共団体として何ら支障を見ないという考え方であります。これは非常に明白であります。
 それから問といたしまして、特別区と市との権能上の差異如何ということの答えとしまして、その答えのうちに、特別区の権能は原則として市と全く同様である。それから問を設けまして、都の区を市と同様に取扱うことは行過ぎではないか。答えが、一般の市に比較して何ら遜色なきに至つたのであつて、これに市と同一の権能を与えることは何ら支障なきのみならず、住民自治の本旨に合致するものと考える。
 それから最後に、都を道府県と同一性格の団体とすることは都の実体に反するではないか、むしろ特別市と同一に取扱うべきではないかという問に答えといたしまして、都と都内の市町村との関係と一般道府県とその区域内の市町村との関係とは実質上何ら異なるところがなく、都を以て基礎的地方公共団体とすることのほうが却つて実際に即しないと考えられる、都は基礎的な地方公共団体でない。而して東京都の区は統合によりこれに市と同等の権能を賦与するに値いすると認められるに至つたので、原則として市に関する規定を適用することとし、特に必要な事項は条例で調整する途を開いたので、東京都と区との関係も又これを一般の道府県と市町村の関係と同様にして支障がなくなるに至つたから、今回都を一般の道府県と同一の性格に変更したわけである。こういうふうに申しておるのであります。
 以上引用するように、この地方自治法ができまして今に至るまでこの二百八十一条と二百八十二条とも変更修正がないのでありますが、従つて区の性質は自治法の制定当時と変つていないと私は思うのであります。警察法とか組織法とか言われますが、それは殆んど同時にできた法でありまして、これも各区が連合して警察を設け、又消防署を設けようというのであつて、この前ここで質疑応答しましたように、今こういうものがあるから特別区の性質が変つたのだという御議論には私は承服はできません。
 そこで現在の特別区は、地方自治法の制定のこういう資料から見まして、疑いもなく憲法九十三条の地方公共団体であると、そう規定をされておるわけであります。そうすればこの九十三条の第二項の地方公共団体の長は「その地方公共団体の住民が、直接これを選挙する。」という規定は当然働いて来なくちやならない。そこで政府側から言いますれば、これは私が緑風会でも岡野国務大臣に申上げましたように、この二百八十一条、二百八十一条の二というようなことで特別区の性質を変えるにあらざれば区長の公選、直接選挙制をやめるわけには行かないのだ、そうしなければ憲法違反になるのだ。二百八十一条が果してそういう意味であるかどうかというと、そういう意味ではない、特別区の性質は前から変つておるので……こういう御答弁であります。それでは我々は納得ができない。政府側の御提案に憲法違反でないとする根拠がありとすれば、唯一の途は今度の地方自治法の改正によりまして特別区の性質を憲法上の地方公共団体の地位から落しまして、そうでなくするということでなければジヤステイフアイできない。ただそれだけの大改正をここでやつておるそういう御自覚がない。それが如何にも政府として何らかお考えが足らないのか、又そういうようなことを言い出すと非常な紛糾を増す虞れがあるから、ともかくこれを通しておこうというような安易なお考えから出たのか知りませんが、ともかく私はそう考えるのであります。これに対するお答えを願います。
#22
○国務大臣(岡野清豪君) 縷々立法当時の速記録をお出しになつて御説明がありましたが、それにつきましては立法者は、特別区というものは憲法に言う完全なる地方公共団体であると、こういうことを御立証になつたわけです。
 これを一応私自身考えますが、これに対しては一つ申上げたいことは、法律というものはどんな法律でも、立法趣旨はその条文を解釈する場合において一応参考のためにどういう意味でこれは書かれたのであるかということの参考にはいたしますけれども、併しその法律というものができ上つた以上は、その文理解釈によつて当然第一に字句で優先的に解釈されるべきものと考えます。只今仰せのように、仮にあなたのお説の通りに特別区というものは立法の趣旨からいつて完全なる自治体である、即ち憲法に言う地方公共団体であると、こう御認定になるというならば、先ほどからもたびたび申上げておりますように自治法の附則の四条とかそれから地方税法の七百三十六条とか、警察法の五十一条とか、消防組織法の十六条とか、社会福祉事業法の別表とか、保健所法の第一条とか、予防接種法の第五条とか二十四条とか、児童福祉法の七十一条とか、漁港法の三十一条とかいうものは、これは自治法ができたときに同時にできたと仰せになつたが、同時ではございません、やはり時期を変えて出ておるのです。同時に出たものもございます。併しながら同時にできたならば、立法者はそういう考えを持つておりながら、同時にそれが憲法による完全なる地方公共団体でないという取扱をしておるのです。ですからここで区長任命制だけがこの際出て来て違憲論をおつしやるならば、その当時あなたがおつしやつたように立法者は完全な自治体であるという断定を下しておきながら、同時に完全なる自治体でないという待遇を法律上にはしておる。そのときに違憲論が出なければならないし、立法者に対して文句を言わなければならない。今までこれだけのことが出ておつて今まで問題にならずに、完全なる自治体でなくなつておつた特別区というものに対して区長任命制ということが出たときに違憲論が戦わされるということは、甚だ以て心外千万でございます。私自身からいたしましては、とにかく若しお説のようならこれを一貫して全部違憲とおつしやるならまだ筋が通ります。併し今まで完全なる自治体ということにお認めになつておりながら、両国会ともこういう法律をどんどんお通しになつておるということなら、その当時違憲論が出たはずです。行政というものは生成発展して行くべきものであつて、たとえ立法当時にはそういう趣旨であつても、実情に合わなければ方向を変えて行くというのが、これが即ち法の進展並びに社会の進展でございます。でございますから社会の進展する実情に合わしてやつておればこそ、あなたの仰せになるところの反対、即ち違憲であるべき筋合いのこういう法律がだんだんと何ら違憲論が出ずに、実情に即して出ておるのですから、今回の区長任命制というものもやはり違憲でなく、この前例のごとき法律の制定並びに改正と同じようなものだと私は解釈しておるのであります。
#23
○岡本愛祐君 岡野国務大臣の御議論には二つの欠点があります。一つはこの二百八十一条の条文を読んで下さい。第二項「特別区は、その公共事務及び法律若しくは政令又は都の条例により特別区に属するもの並びに従来法令又は都の条例により都の区に属するものの外、その区域内におけるその他の行政事務で国の事務に属しないものを処理する。」、こういうふうにこれは制定当時から書いてある。それにこういうふうに提案理由の説明にありますように、又政府委員が答弁しておりますように憲法上の地方公共団体として取扱う趣旨なんです。つまり今までのは基礎的の公共団体である……基礎的の公共団体でないということだけでありまして、それが完全の自治体、完全自治体というものは果してあるかどうか、市町村であつて国の枠にはまつておるのですから、完全自治体と言えるか言えないか、それは大いに疑問です。程度の問題です。だから完全自治体という言葉は使つておりません。府県のごときは完全自治体であるか、これは非常な疑いを持つべきである。だからそういうことじやないのでありまして、つまり特別区はもとより二百八十一条によつて「都の区は、」とこうあるのですから、都の枠にはまつている区なんです。それにもかかわらず市町村と同じように……権能は違います、すでに第二項において権能は普通の市町村ですから狭いし、そう予定してある、それにかかわらず憲法第九十三条の地方公共団体である、こういうふうに認めておるのであります。
 それからもう一つは、法律というものは固定したものじやない、フレキシブルのものである。これは私も肯定します。併しこれは言うと又激怒なさるだろうと思いますが、こういう憲法の解釈問題、そういうものを時の政府の解釈によつて、而もこの民主憲法、民主制度、民主政治、そういうものの基本であるべき公選制というような重大事につきまして、そのときどきに従つて公選でなければいかん、而もそれを二度もやつて来ておるのです。それを何ら特別区の性質を変える法律上の措置をやらないでそうして公選を奪う、又公選が要らないのだと解釈するということは、これは大変なことだ。それこそ憲法擁護の旗印を挙げなければならん問題だと私は思うのであります。だからこの二点についてしつかり御答弁願いたい。
#24
○中田吉雄君 それに関連して岡野大臣の、この世の中の進むに従つて拡張解釈をして可なりという意見は、岡野大臣は地方自治法の担当大臣であります国務大臣として極めてこれは重大な問題である。大体自由党は全体として岡野さんのような解釈をやつているのです。例えば憲法の第九条にいたしましても、これは明らかに「前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。」というようなことを正しく解釈するのは、この憲法が制定された当時の立法精神に鑑みてやらねばならんのに、バズーカ砲を持つたり戦車を持つたり、アメリカから武器貸与法で六十隻の軍艦をもらつても、そういうような解釈で違憲でないという立場をとり、そういう考えをとるなら、破防法にいたしましても、これは生成発展の過程においてやるというようなことで、立法措置、憲法改正その他の措置をとらずにやるということは、私は極めてこれは破防法の審議にも影響するし、地方自治の担当大臣でなしに、国務大臣として……、吉田内閣は大体憲法の第九条並びに破防法などでもそういう拡張解釈をやつて、生成発展のこの流転する世の中で、基本的な改正を国会に諮らずに拡張解釈によつてやつて行かれるのか、一つお伺いしておきたいと思う。これは破防法の審議にも非常に重要なんです。
#25
○国務大臣(岡野清豪君) 私の言葉は非常に結論ばかり申上げまして甚だ誤解を起したので恐縮ですが、解釈を私は変えたのではないのです。と申しますことは、憲法第九十二条に地方公共団体の組織、運営は法律によつて定めると書いてあります。そうして地方自治の本旨に従つてやれと書いてある。それで私自身は解釈を変えたのではなくて、一体我々といたしましては、法律によつてとにかく組織、運営を変え得るということを委任されています以上は、法律によつて生成発展して行くところの自治行政というものに合うような法律に直して行くことは、これは当然な仕事であります。でございますからこの解釈を変えたわけじやなくて、我々は最も特別区に適応し東京都に適応したような行政をして行くのには、どういうような組織並びに運営をして行つたら一番その時に合つたいい行政ができるか、而もそれは憲法では法律によつてこれを定めればいいということになつているから改正案を出したのであります。何ら解釈は変つておりません。
#26
○岡本愛祐君 先ほど読みましたところでも、自治の本旨に従つてこの特別区というものは憲法の地方公共団体にするのだと言つておるのです。ここに一般の市に比較して何ら遜色なきに至つたのであつて、これに市と同一の権能を与えることは何ら支障なきのみならず、住民自治の本旨に合致するものであります、こう言つておるのであります。だから知らん間に又自治の本旨によつて今度特別区でなくするのだというようなことを勝手に立法措置によらないで解釈でやられることは非常に困る。だから私は言つておりますように、率直にこの二百八十一条並びに二百八十一条の二によつて特別区の性質を変えるのだ、こういうことでなければ駄目です。如何に言われても、それでない限りは私は憲法違反だと思う。又憲法違反と言うと怒られますけれども、実際そうなるのです。つまり現在の地方自治法の建前では、特別区というものは憲法九十三条に言う地方公共団体である。これは一点の疑いもない。だがそれはいろいろ弊害が起る。又そういうふうに育成して行こうと思つたがなかなかできない。だからこの二百八十一条並びに二百八十一条の二によつて憲法上の地方公共団体でなくするのだ、こういうふうに御説明にならない限りは私は納得できないのです。
#27
○国務大臣(岡野清豪君) それはほかの条項を一々御覧になればおわかりの通りに、本当にあなたの御説を採用するとすれば、とにかく性質を変えたというような今度の改正案になると思います。
#28
○岡本愛祐君 私は私の説を採用してくれとは言つておりません。私の説でなくて、法理論として、私どもの学んだ法理論が間違つておれば仕方がありません。併しそうならざるを得ないのであります、殊に重要な憲法の解釈などというものをそう勝手に今までやつて来たということと正反対に解釈するということはできないのです。それは法律措置によるのでなければできない、解釈だけではできないのです。
#29
○国務大臣(岡野清豪君) それでは一つこの改正案によりまして性格を変えたということを詳しく御説明申上げます……。
#30
○岡本愛祐君 議事の進行について皆さんにお諮りするのですが、お聞きの通り特別区に関する限りは岡野国務大臣の提案理由の根本から違つておるのです。だからこの政府委員の答弁でなくて、お帰りになつて閣議をお聞きになつて、そうして今までの説明ではいかないらしいと……だから法制意見局長官でも呼ばれて、私の言つたことが間違つておるか、岡野国務大臣の今までの御説明が間違つておるか、それが解決してからでなければこの委員会を続行することは、この特別区の問題については反対であります。
#31
○中田吉雄君 大賛成です。(笑声)
#32
○委員長(西郷吉之助君) それでは時間も過ぎておりますから、午前中はこれにて休憩いたします。
   午後零時十六分休憩
   ―――――・―――――
   午後三時三十八分開会
#33
○委員長(西郷吉之助君) それでは只今から午前の休憩に引き続いて再開いたしますが、地方自治法の改正案に対する質疑を続行いたします。
#34
○国務大臣(岡野清豪君) 先刻の岡本委員に対する私の答弁において不十分な箇所があり、そのために誤解を生じましたことは誠に遺憾に存ずる次第であります。
 地方自治法制定の際は特別区は憲法上の地方公共団体として発足したものでありますが、その後の特別区の制定に鑑みまして、都道府県市町村とはその性格が異つておりますので、今回改正を加えまして、憲法上の本来の地方公共団体ならざるものとして立案いたしたのであります。従いまして区長の公選制度を廃止いたしましても憲法違反の問題は起らないと存じます。
 以上の見解は法制意見長官とも打合せをした政府の統一的解釈として申上げる次第であります。
#35
○岡本愛祐君 只今岡野国務大臣から改めて政府の統一的意見として、特別区に関してこのたびの地方自治法の改正によつて特別区に性格の変更を加えた、そして従来は憲法上の地方公共団体であつたものをこの改正によつて然らざるものとした、こういう御意味と了承いたしました。この区長の公選を廃止まして間接の選挙にいたしますか、又は知事の任命するということを憲法違反でなくするためには、只今改めて御説明のあつた途しかないのでございまして、その点ならば私は理論としては憲法違反でない、そういうつもりでこの二百八十一条、二百八十一条の二を以て、今までは憲法上の地方公共団体であつた特別区がこの改正によつてそうでないものにした、こういう意味ならばわかるのであります。そこで問題は発展いたしまして、果して政府原案の「都に区を置き、これを特別区という。」というような二百八十一条第一項の書き方を変えられたこと、それから第二項によりまして「特別区は、左に掲げる公共事務及び行政事務で、」云々というふうに書かれて、そうしてその取扱うべき公共事務及び行政事務を列挙せられたこと、これによつて今国務大臣のお話のような特別区に重大な性格の変更を来たし得るものであるかどうか、この点が問題になるのであります。いわんや衆議院で修正をいたしまして、二百八十一条の第一項は元通り、現行通りとする、即ち「都の区は、これを特別区という。」という表現は従来通りとする。第二項はこの改正案がそのまま活きているのであります。そういうふうなことによつて果して今言われたような特別区の性質を非常に変える、特別区の性質を根底から変えて行くということになるかどうかという点をお尋ねいたしたいのであります。
 なお附加えますが、第二項の行政区の公共事務及び行政事務の列挙主義、この一号々々につきましてこの間質問いたしました。で第一号は、これは現状のままだという御説明が鈴木政府委員よりあつたのであります。それから第二号はこれは現状より広くしたのだという御答弁がありました。第三号はこれは現状のままだ、第四号はこれは拡大したのだ、第五号はやや広くした、第六号もやや広くした、第七号はこれは現在より広い、こういうふうに御説明になつているのであります。要するに特別区が憲法上の地方公共団体である現状において取扱つている所掌事務よりも、この列挙せられたところは広いのであるという結論に来ると思います。なお私はそのときにお尋ねしたことを思い出すのでありますが、この列挙によつて現状で所掌しているものを奪つた点はないかという質問をしておきました。奪つた点はないというお答えでありました。そういたしますと列挙しようがしまいが、現在の事務以上のことをやはり特別区は取扱うのでありますから、その性質が今お答えのような大変革をしたとは見られないのであります。そうすると一に政府原案の「都の区は」とあるのを「都に区を置き」と改めたことにあるように思うのでありますが、そういたしますと先ほど言いましたように、衆議院の修正によりまして元に戻るということになりますと、今言われた重大な特別区の性格の変更というものはどうしてこの改正法律案によつてでき上るのか、その点を伺いたいと思います。
#36
○政府委員(鈴木俊一君) この二百八十一条の第二項につきましては、只今御指摘のあつた通りでございますが、第四項を御覧頂きますと、「特別区の存する区域においては、法律又はこれに基く政令の規定により市が処理しなければならない事務は、都がこれを処理する。」かようになつているのであります。この点は現行法におきましては、古い東京都政の規定を引張つているのでございますが、市に関する仕事は都がやる、又市に関する仕事は地方自治法の附則の十七条におきまして特別区に適用するということから特別区もやる。要するに市に関する仕事が都も特別区も同じような立場でやれるように現行法上は相成つているのであります。それを今回この二百八十一条の第四項におきましては、区に身近な仕事、主として区内に関しまする利害関係のあるものは第二項に列挙主義で列挙したのでございますが、それ以外のものは都がこれを処理するというふうにいたしたわけでございまして、この点は原則が従来都と区が対等でありましたものが、都がより広くなる、こういうような建前に変更いたしたわけであります。この点が第一点の性格の変つたという問題でございます。
 それから二百八十一条の二でございますが、二の第五項でございますが、「都の機関して処理する事務については、特別区の区長又は委員会若しくは委員は、都知事又は都の委員会若しくは委員の指揮監督を受ける。」かようにいたしております。この点は、都の事務を特別区に委任いたしました場合においては、これはやはり特別区の事務になりますので、従来の考え方といたしましては、これは都知事が指揮監督する、都の委員会が指揮監督するという関係にはないわけであります。自治体と自治体との間の一般原則でございますので、そういうことは現行法上ないわけでございますが、この点を特に明らかにいたしまして、特別区の区域における都の行政の一体的処理が可能でありますように、かような指揮監督に関する規定をいたした次第であります。
 それから更にこの二百八十二条でございますが、この点は現在「都は、条例で特別区について必要な規定を設けることができる。」かようになつておりますのを「特別区の事務について特別区相互の間の調整上」というふうにいたしておりまするが、これも現行法と余り特に変つたと申上げるほどのことはございませんが、若干調整をいたしているわけでございます。第二項に加えました点は、これは特に性格の変更というほどの問題ではないと思うのであります。これは要するに、更に細かい点を申上げますと、二百八十一条の二の第三項におきまして「都知事は、その権限に属する事務の中で主として特別区の区域内に関するものについては、都の規則により、これを特別区の区長に委任して管理し及び執行させるものとする。」こういうことを入れておりますが、これは特別区の機関である特別区の区長に対して主として区内に関するものを委任するという原則でありまして、やはりこれは性格の変更というほどの問題ではないのでありますが、併し一体的な関係をここでも明らかにしているわけであります。
 今お尋ねのございました性格の変更に関する点と申しますならば、実質的な点といたしましては二百八十一条の第四項及び二百八十一条の二の第五項、これが実は中心でございまして、かような実質的な性格の変更に関連をいたしまして、今御指摘のございましたような二百八十一条の第一項の「都に区を置き、これを特別区という。」というような表現の変更、或いは適用を準用に直すというような問題も併せて規定をいたしたわけでございますが、根本は今申上げました二百八十一条の四項と二百八十一条の二の五項に性格変更の中心をおいているわけでございます。
#37
○岡本愛祐君 だんだん御説明がありましたが、二百八十一条の四項、これが主たる根拠になつているようであります。私は二百八十一条の二のほうの第五項は、これは第一項の結果やはりそういうふうになるのであつて、これは理由にならんと思うのです。まあ主として二百八十一条の四項にある。これは併しこれだけの規定でそういう重大な性格の変更ができるかどうか、私はまだ多大な疑いを持つております。即ちこの二百八十一条の四項によつて特別地方公共団体の中の特別区が財産区又は組合というものと同じような性格のものに、弱い公共団体にするのだということにまだ納得の行かない点があります。
 もう一つお尋ねしますが、私は地方自治法によつて地方の自治の本旨に基いてこの特別区を市町村と同様な基礎的な地方公共団体にするつもりが十分に立法の意思の中に含まれている。それをなぜ今までそういうふうに成長せしめなかつたか、地方自治法で企図しているごとき本当の基礎的地方公共団体にこれを成長せしめなかつたか。それは都の責任であり、政府の責任であり、国会もその一つの責任を負わなければならない点があると思うのですか、その点はどうですか。
#38
○政府委員(鈴木俊一君) 御指摘のごとく地方自治法の制定当時の考え方とその後できました各種の立法との間におきましては、実際問題といたしまして乖離があるわけでございまして、その後の立法はしばしば従来申上げました通り特別区に属する区域を一つの市とみなすと同じような考え方で処理している法例が非常に多いわけでございまして、これは御指摘のように政府が立案いたしたものもあるわけでございますし、併しそれも国会において御可決になつているわけでございまして、さような意味では関係をいたしたものに責任があると言えば責任があるということでございましようが、併しながらさようなふうな発展の仕方をして来たということは、やはり特別区が大都市社会を構成いたしております一部分であるわけでございまして、さような大都市社会を構成している分子という性格から、一般の独立いたしました市と同じような姿で現行地方自治法において取扱つておりましても、それをどうも実際問題として貫いて行くことができない。それを強いて形式的に普通の市と同じように扱うということになりますと、いよいよ大都市行政の一元的な運営ができなくなるという実際上の必要から、さような立法的な措置或いは政府の行政措置が行われて来たと思うのでございまして、今回の改正案におきましてはさような実際の成長の過程、推移に鑑みまして、それらの各種の特別法と地方自治法との間の乖離、遊離している状態を実際の実情に即した姿にして行きたい、それこそが大都市における地方自治の本旨というものにむしろ合致するのではないかというふうに考えてかような立案をいたした次第でございます。
#39
○岡本愛祐君 只今の御答弁は我々は大いに疑問とするのでありまして、例を引いて、余り適切な例ではありませんが、満州において中共政府とソヴエイト政府が条約を結んで、そうして旅順、大連を一九五二年の末までソヴィエトに使用せしめるということになつている。それが今後どうなるかわかりませんが、とにかくまだまだ延びそうな形勢にある。それで実力でそれを延ばしておいて、そうしてどうもそう約束したけれども、満州というところは中共よりもむしろソヴィエトが使つているほうがいいからというので、それが又正式な条約に直されて行くというのと同じようなことになりはしないか。つまり早く中共に返して、そうして中共の円満な領土権というものをやらなければならないのであります。それをやらないでおいて、実力でそれを占拠しておいて、そうしてどうも返すことが満州の状態から鑑みて不可能であるから又手を延ばして行くというのと同じやり方である。私はこれは主として東京都のやり方が悪かつた。法律の命ずるところに従つて早く自治権を区に拡充せしめなければならなかつた。この間も政府委員から御答弁がありましたが、都の職員というものを区に置くことができることになつておりますけれども、それをいつまでも続けて、殆んど区の職員はない現状のままでおいておいたというようなことがあつたのであります。又その他におきましても早く区にやらせる事務をやらないで都がまとめておつた。そうして口を開けど一体性を欠くからそういうことはしないのだということでありますと、法律の企図しているところと大変違つて来る。その現状を取上げて、今度法律で特別区の憲法上の地方公共団体である地位を奪つてしまおう、こういうことですから甚だ私は不可解に思うのであります。殊にこういうふうなあいまいな態勢によつてそういう地位を奪うということはどうであろうかというようなことが第二問。
 そうして更に近く地方制度調査会というものをお置きになつて、そうして超党派的に各党からの委員を出されて、そうして地方制度のあり方について検討なさる、やかましかつた特別区の問題もそれで片付くでございましよう。実はそこへ特別区の問題も送り込んでそうして超党派的にそれを検討する。現在地方自治法が持たしておつたところの特別区を基礎的公共団体とするその方向が正しいか、或いは行政区にしてしまつたほうがいいのか、そういう点も検討して行くべきだと思うのであります。現に神戸委員会、即ち地方行政調査委員会議におきましても区の問題についてはよう触れなかつた、大体よう触れなかつたのであります。だから今こういうふうな訳のわからんと言つては失礼でありますが、二百八十一条の第四項の改正規定というようなもので、そういう特別区の性格を大変更するということは非常に適当じやないのじやないかというふうに思うのであります。私はむしろそういう意図があるならば、地方公共団体でなくしてしまえばいい、財産区、それから組合、それから特別区、これは地方公共団体でなくするのだ、併し準地方公共団体として、そうして大体何々何々の規定はこれに準用する、こういうふうに堂々と書かれるべきであつたと私は思うのであります。この点について政府委員の意見を聞きます。
#40
○政府委員(鈴木俊一君) 第一点の特別区のその後の成長の過程において取扱い方が不適当な点があるという御指摘でございます。先ほど申上げましたのは、主として現行法上の制度についてさような発展の仕方をして来ていないということを中心に申上げたのでございますが、御指摘のように現在都におきまして更に特別区の事務の移譲というようなものを、法律によらずして行い得るものもあるではないか、或いは御指摘のような職員の問題などについても若干調整が可能ではないかというような行政措置、都の内部における行政措置の問題は、これは御指摘のように更に適切な措置がとれたものもあつたのではないかと思うのであります。その点をつかまえまして、政府としてはさような行政措置がうまく行つてないからその現状を立法化しようというのではなくて、やはり現在の法律上の特別区に関する制度全体を通観いたしまして、基本法である地方自治法におきまして特別区の地位もかようなふうに変更するのが適当であろうということで立案いたしたのであります。
 第二点の地方制度調査会にこの問題をかけたらどうかというようなことでございますが、これも政府といたしましては地方制度調査会を設置いたし、これにおきまして地方制度全体の根本的な問題を検討して頂きたいという考えを持つておりますけれども、今回政府といたしましては、中央の行政機構の改革に即応し或いは関連をいたしまして、地方行政の簡素化を行う、その一番いわば中心になるものとして地方自治法の改正を企図した次第でございまして、政府といたしましては行政簡素化というような見地からかような問題の一環として考えているわけでございまして、地方制度調査会に持込まないで、この段階においてこれを解決するということにいたしたいと考えた次第でございます。
 それから一つの特別区につきましての将来の基本的な方向についての御議論、御見解でございますが、これを行政区のごとき姿のものにすることがどうかという点でございますが、私どもといたしましては、純理論的に問題を考えまするならば、行政区にすることも一つの行き方だと考えておりますけれども、併しながら東京の場合を特に考えますれば、この区の発展、過去の沿革、歴史というものは、常に京都、大阪の区と異りまして、実質的な法人区として少くとも財産、営造物の主体であつたわけでございまして、さような点からこれを行政区にして区議会を廃止するということは、理論的には可能のようでございますけれども、実際の問題といたしましてはやはり円滑なる都政の運用が困難になるのではないかというふうに考えているわけでございまして、さような見地からこのような特別区の長の選任につきまして都区一体の一つの方式を立案いたした次第でございまして、これによつて現在よりも更に実際に即した運営が行われるだろうというふうに考えているわけであります。
#41
○岡本愛祐君 二十三区と都との間の争い、つまり二十三区の自治権の拡充の要望をめぐつての都区の争いというものは数年来あつたのであります。そこで一昨年都区調整協議会というものが作られまして、私どももその委員になつて、中立委員になつて、その調停に尽力したのであります。勿論そのときにおきまして地方自治法にきめられている特別区の性質を変えようというようなことは都側も意図していなかつたのであります。即ち都側におきましても憲法上の地方公共団体で区があるという前提の下にこの協議が進められたのであります。そうして先ほども触れましたが、区が基礎的な地方公共団体であるにもかかわらず、職員は都が握つてしまつている。そうして都の職員を区に配属をしているに過ぎない。このようなことではいけない、速に都側は職員を移しなさい。区の職員に移しなさい、それは承知しましたというので、知事初め署名捺印までしているのであります。ところがそれが一向に守られてない。又事務の相当大きなものを都から区に移すように調整したのであります。これは両方とも承諾して、そうして捺印をしております。まあそのほうは総司令部なんかのいろいろな関係がありましてその通りに行かなかつた部分もありまして、これは都側が悪かつたとも言えません。それから税も市民税を特別区民税の名の下にその徴収に任した。そういうふうにしまして都区調整協議会の調整は、一面から言うとそういうような都側の意気込がそれほどでもなかつたのでうまく行かなかつた点もあります。又区側といたしましても受入態勢ができなかつた点もあつてそれほどうまく行かなかつた。とにかく従来の特別区が持つておつたものよりか多くの事務を特別区に与える、多くの権限を特別区に与える、そうして自治権を拡充して来た。それを都側も認めておつたのであります。ところが突如としてこの法律によつてそういうような成長の仕方を阻もうとすることが私にはどうしても納得できない。これか一つであります。
 それからこの改正、即ち特別区を憲法上の地方公共団体から引下げて、憲法上の地方公共団体たらしめないようにする、その目的は、行政の簡素化だというお話であります。これはとんでもないことだと思うのです。つまり地方自治法によりまして区を市町村と同じくした目的は、自治の本旨に基いて、憲法に言う自治の本旨に基いて行われたのであります。民主主義というものは、自治というものは手数がかかります。民主政治は手数がかかり、暇がかかり、金がかかるのであります。これは承知の前なんであります。それは前にも言いましたが、行政簡素化ということが民主政治、民主主義に反してはいけないのであつて、飽くまで民主主義を成長せしめるために行政簡素化をしなければいかん。だから思い切つて行政簡素化をするならば、民主主義も何もかかわらないでするならば、それは官僚独善が一番いい簡素化になります。併しそれは民主政治の原則に反する。だから区の、特別区のあり方というものも単なる行政簡素化の目的ではいけない、区が地方自治法に言われておるような、規定されておるような線において自治権を拡充してやらなければいけない。この行政簡素化の目的のためにやつたのだということは甚だ私は不可解に思うのであります。それから……、その二つにしておきます。
#42
○政府委員(鈴木俊一君) 特別区と都の間の事務なり権能の調整につきまして都区の調整協議会を設けて、そこでいろいろ検討をして来た方向と違うではないか、かような性格を変更するということは考えていなかつたのだと、こういう点でございますが、特別区につきましては、いわゆる特別市の問題と異りまして、やはり元の育ちは同じ東京市といいますか、さような一つの地域社会の中のいわば構成の問題でございまして、古くからの沿革によつて東京市として発展して参りましたその区域を如何に処理するかという問題であるわけでございまして、これはやはり多年相互の間に問題があつたわけでございまして、この点について神戸委員会におきましては、特別区に対して事務の配分を明確にする、それによつて都区の間の調整を行うという一つの方向を示しておりまするが、政府といたしましては、その事務の配分による特別区の権能の調整、地位の変更ということを考えたのでございますが、更に実際の運営の実情から考えまして、特別区において区長の処理いたしまする仕事の非常に多くの部分が都なり、或いは都が国から委任を受けて処理しております事務を更に委任を受けて処理しておるというのが非常に圧倒的に多いわけでございまして、さような特別区の事務処理の実情等から考えて、やはりこれは都と特別区との間において、行政の執行機関の面においてはいま少し一体的な形における選任が行われていいのではないかということで、事務の配分のほかに更に選任の点についてもかような案を考えたわけであります。これがやはり第二の問題に移りますが、ひいては政府が今回全体の行政機構改革の方針にいたしておりまする行政簡素化という面におきましても裨益するところが少くないと考えたわけでありましで、ただ先ほど行政簡素化という一つの命題でこれを考えたのだというふうに取れまするように申上げた点は、言葉が至りませんで不適当でございましたが、要するに終戦後のこの地方自治制度につきましては、各種の点においていわゆる合理的な制度にするという面におきまして更に再検討を要する点が少くないと思うのであります。さような問題がやはり一つであるわけでございまして、簡素化というのは、合理化と申しますか、御指摘のごとく民主王主義の基本原則には触れない限度において行政の能率化なり合理化なりを図る、かような考え方でありまして、かような区長の選任方法を変更いたしましても、これはむしろそれが大都市自治の本旨に合致するのであるというふうに考えておるわけでございまして、これによつて民主主義の基本に触れる改正であるというふうには考えていないのであります。
#43
○岡本愛祐君 次に、そういたしますと、区長の公選をやめる、区長の公選をやめて任命制にするためにこの特別区の性格を変えちまつたと、こういう逆なように見えるのでありますが、この任命制がいいか、或いは衆議院の、間接選挙といいますか、「選任」とこうありますけれども、間接選挙の意味でしよう、そのほうがいいか、どちらがいいと思うのですか。
#44
○政府委員(鈴木俊一君) 政府の原案は、都知事が特別区の議会の同意を得て選ぶということでありましたが、衆議院の修正はそれを逆転いたしまして、特別区の議会が知事の同意を得て選ぶ、かようにいたしたわけであります。この点は形式から申しますると全く逆転をいたしたように感ぜられますが、政府といたしましては、特別区の性格が、都との間に切つても切れない密接な、有機的な一体的な関係があるという事実からいたしまして、特別区の区長の選任が、特別区と都との両方の意思の合致するところに基いて選任されるということに相成りまするならば、都の行政の一体的処理という見地から申しますると、やはり数歩の前進であると考えるのであります。政府案におきましてはその点を、都知事が候補者を出しまして議会の同意を得るというのでございましたが、修正案におきましては、特別区の議会が候補者を出して知事の同意を得る、こういうことでございまして、候補者を出す地位が変りましたけれども、少くとも選任せられるべき区長については両方の意思が合致することは明らかであるわけでございまして、かような修正によりましても、政府案において当初意図いたしておりましたところは実現し得るのではないかというふうに考えておるわけでございます。
#45
○岡本愛祐君 衆議院の修正案によりますと、特別区の議会が都知事の同意を得て区長を選任する、こういうふうになつたのであります。一種のシティ・マネージャー・システムを都知事の同意を得てやるのだという、そういうふうにとれる。ところが日本の憲法では、都道府県及び市町村についてはいわゆるマネージャー・システムということを禁じておる。それを特別区についてだけは許そう、つまり憲法の地方公共団体にしないが、併しそれに近いものとしてやつて行こう、こういうふうにとれると思うのであります。そこで私どもはそういうようなマネージャー・システムというようなものは、民主化がよほどでき上つてからでないといかんと思う。一般の住民、日本の民主化の程度で果してうまく行くかどうか、言葉が悪いですが、区議会議員の寵児であるというような人がなつて、寵児と言えば言葉はいいですが、そう父みたいな人がなつて、いわゆる腐敗堕落を招きはしないかという心配が今の民主化の程度では十分あると思う。まあ知事の同意を得なければならんから、それは知事が防止するであろうというふうに考えられない点もありませんが、今の民主化の程度ではそれはなかなかむづかしいと思う。そうすると私は衆議院の修正案というものは非常に悪い修正になつてしまう、そういうふうに考えますが、それをどうして防止し得られるか、それを承わつておきたいと思います。
#46
○政府委員(鈴木俊一君) 御論旨につきましては大いに同感の意を表したい点があるのでございます。ただいわゆる間接選挙だけになりまして、議会が区長を選挙するということになります場合と、かような都知事の同意を得て議会が選任するというような修正案との比較において検討いたしますれば、御心配になりますような点は、知事の同意ということによつて或る程度防ぐことができ、さような悪い方向に進みますものについての若干のチエツクになり保障になるのではないかというふうに考えられるのであります。従いまして単純な間接選挙制度に比較いたしまするならば、このほうがやはりよろしいのではないかというふうに考えるのであります。政府案におきましても、知事の単独任命ではなくて、必ず特別区の議会の同意を得るわけでございますから、やはり御心配になりまするようなことが全然懸念がないとは言えないわけでございますが、併しながらこの政府原案によりましても修正案におきましても、別個の都全体の立場からの考え方が加わるわけでございますので、それによつて弊害の調整ができる、是正ができるというふうに考えられるのでございます。
#47
○岡本愛祐君 もう一つお尋ねしておきますが、この間も指摘しましたように衆議院の改正案によりますと、特別市の区長は公選である、現在の法制に基くのでありますから特別市の区長は公選である建前であります。然るに特別区の区長のほうは公選でなくて、こういうような議会の選任制度にするということは、地方自治法が日本の地方自治の基本法であるに鑑みて一貫性を欠くと思う。彼比権衡を失すると思うのです。その点についてどういうふうにお考えになりますか。
#48
○政府委員(鈴木俊一君) 衆議院の修正によりまして、特別市の行政区長の公選を廃止いたしました政府原案が現行法通りに修正を受けたわけでございまして、これと今回修正されました特別区の区長の選任の方式とは御指摘のように確かに矛盾をいたすと思うのであります。併しながら衆議院の修正が将来永久の措置といたしまして、特別市の行政区長というものの公選をどうしても維持すべきである、かような見地から修正が行われましたものでございまするならば全く御指摘のごとく矛盾し、一貫をしないことになるのでございますが、修正の御趣旨がさようなことではなく、特別市の問題につきましては一応現行法のままにしておきまして、近く設置される地方制度調査会において検討をした上で処理するという建前から、今回は特別市については行政区の選挙管理委員会の問題も含めまして一切触れない建前にしておく、こういう考え方に出でた修正であるように拝承しておるのであります。そういうことでございますると、形式的には御指摘のごとく確かに矛盾をいたす点があるのでありますが、将来の改正まで一応暫定的な考え方で現行法のままにしておくということでございますので、政府といたしましてはこれに同意いたしたような次第でございます。
#49
○岡本愛祐君 その御答弁によると、特別市の問題は地方制度調査会で検討するからそのままにしておく、特別区だけを急いだのはどういう理由ですか。私はそれも地方制度調査会でやればよいと考えておるのです。
#50
○政府委員(鈴木俊一君) 特別区の問題は特別市の問題と異なりまして、いわば一つの団体の中の内部的な権能の調整の問題であると思うのであります。特別市の場合には現在府、県、市と全然別個の立場にありますが、二つの地方団体を如何に合一するかというような問題でございまするが、特別区の問題につきましては、先ほど申上げましたように東京の都ということで考えますれば、旧東京市の区域の中における問題であるわけでございまして、さような意味では一つの地方団体の中における内部的な構成をどうするかという問題であるわけであります。さような意味で、政府といたしましては特別区の問題については、この際これを解決しておきたいというふうに考えた次第でございます。
#51
○岡本愛祐君 私はその御答弁では納得ができないのであります。特別市の問題もあの通り府県側と市側と非常な争いをし、運動をし合つた当面の問題であります。又特別区のほうもその通りでありまして、これは片一方は地方制度調査会でやる、片一方は今すぐやるのだということは、どうしても平仄がとれない、又もう一つには、一時的にもこの基本法というものはちぐはぐがあつちやいけないのであります。一時的にもここに統一のあるものになつていなければ基本法というものはいけないのでありまして、何もこういうことをするならば、政府の原案通り特別市の区長はやはり公選によらないで市長の任命制にするのだというふうに当然すべきであると、こういうように考えるのであります。要するに、私は政府が正面切つて特別区の性質を変えるのだというふうに、多少は国務大臣の提案理由の説明にも触れておられます。触れておられますけれども、これを正直に主張されないで、何かこう我々に暗い陰を与えたということを非常に遺憾とすると共に、とにかく特別市と列んで特別区の問題は非常な大問題なのでありますから、これを地方制度調査会に送り込んで、そうして超党派的に再検討すべきであると、こういうふうに思うのであります。じや私はこのくらいにしておきまして……。
#52
○中田吉雄君 只今の岡本委員の質問に関連して。特別市の区長は公選制であつて、それをどうするかということはやがてできますであろう地方制度調査会に譲りながら、これは譲らなんだ、譲らずに間接選挙に持つて行かれたというのは私は次のようなことが立法上の過程にあつたのではないか。消息通が伝えていますので、その真偽について岡野国務大臣にお尋ねいたしたいと思うのです。
 この区長の間接選挙或いは任命制というようなことについては、良心的な事務当局は非常に消極的であつた、ところが岡野国務大臣は高等学校で安井知事と同窓であつて、その切なる懇請によつてこれだけ持つて来た、これが実際このようになつた一つの経緯であるということを消息通は伝えておるわけでありますが、一体そういうことがあつたのですか、お伺いいたしたいと思います。
#53
○国務大臣(岡野清豪君) その点につきましては私は初めてそういうことを伺うのですから……。一応私の考えを申上げたいと思いますが、もともと地方自治法の改正というものに対しては非常に大きな構想を持つて我々としては臨んでおつたわけでございまして、それにはもう少し大きな制度の改正までも考えておつた次第でございます。併しながらいろいろ考えて見まするというと、一気にそこまで行けない。殊にこの法案が出まするときにはまだ関係方面もおつて、そうしてそのOKを取らなければならんというような情勢にありまして、切りきざみまして、この最終案が出たわけであります。そうして私は成るほど、安井君とは同窓ではございません。ただ私が古いときに兵庫県に日本銀行の支店長をしておりましたときに、安井君が当時県の何か官僚であつたらしい、そのときに知つておる次第でございまして、その後は県人会なんかがございますから、名前はよく知つておりますけれども、安井君とそう懇意に話をしたことはないわけであります。それから今度の自治法が出ますにつきましても、これがいよいよ成案ができまして議会に提出した後に、安井君から私のところへ、これは都として非常に望んでおることなんだから、どうか一ついい案ができましたらよろしくお願いしますというようなことを、総理官邸へ出て来て、そして私に挨拶をした。でございますから、この法案ができるまでの間に私は安井君と何らそういうような話をしたこともございませんし、又これに関して安井君の希望を入れて案を練るというようなことはしたことはございません。殊に私は公人として出所進退を明らかにしておりますから、そういう誤解がありますならば、一つあなたの口から御弁明を願いたいと存じます。
#54
○中田吉雄君 私は岡野大臣のために弁明はしませんが、わかりました。
 次にお尋ねいたしますが、只今岡野大臣は非常な大きな構想を持つて、情熱を傾けて地方制度の大改革をやりたい、併し占領下でもあるしなかなか思うようにならんので、なしくずしに小刻みにやつた、そういたしますと区長の直接選挙という一角は崩れたのですが、これはやがて都道府県の知事へまで発展する一つの敷石ではないか、その点を一つ。そういう大きな全体の計画を抱いておられまして、氷山の一角としてちよつぴり顔を出しておるようなことになつておるのではないか、我々はそういうふうになる虞れが非常にあるのではないかということを懸念することが、この憲法違反の容疑の問題と共に非常に心配するわけです。その点についてお伺いいたしたい。
#55
○国務大臣(岡野清豪君) 私といたしましては、地方制度そのものを根本的に再検討しなければならんと申しますことは、御承知の通りに私過去二カ年間地方財政を担当しておるのでございますが、併し御承知の通りに平衡交付金という制度がありまして、而も平衡交付金につきましては地方財政委員会という、政府にして政府にあらず、又独立機関にして又何か政府と関係があると、こういうような機関が全権を握つてそうしてやつておる。その間に立ちましてなかなか物事がしにくい、又責任がとりにくい、こういうようなことがございますものですから平衡交付金法並びに地方税法と国税との調整というような意味において大きな構想を持つていたわけです。今大きな構想を持つておる。それなら知事の公選を考えて、その氷山の一角として区長任命制が出ておるのじやないか、こういう御疑念でございましようけれども、それは毛頭ないことでございまして、無論私の構想の中には今の府県というもののあり方、市町村というもののあり方、これを概括的に再検討してみたいという考えは持つておりますけれども、知事の公選を廃止するとかということは毛頭考えておりませんし、同時にその先触れであつてこの区長の任命制をしたということは、これは私として毛頭そういう考えを持つてしていなかつた、そういう考えではないということをはつきり申上げます。
#56
○中田吉雄君 私は岡野大臣が二年余に亘りまして、派手ではない、地方自治のために努力されておる点では蔭ながら深く敬意を表しておるものであります。併し私は新聞に伝えられておるところと、只今岡野大臣の言われたのと非常に違つておるわけなんで、そこで改めてお尋ねいたしますが、四月二十四日附の朝日新聞には、岡野国務大臣は四月二十一日に大磯の私邸に吉田総理を訪ね、次の総選挙終了後に府県制度改革を行うことについて了解を得た。近く自治庁は具体案の検討を始めることになつたが、岡野国務大臣が吉田総理から了解を得たことは、地方自治体は市町村のみを単位として、それを自治行政の中心として、府県は政府の機関として、やはり知事を任命制に持つて行くということが、四月二十四日の朝日新聞にはつきり出ておる。これは私はたくさん新聞記事を切り抜いておりますが、単にこれだけではなしにたくさんの新聞にはつきり出ておるわけであります。これは一体どうなんでありましようか、事情によつては吉田総理と岡野国務大臣とを同時においで願つて、一つはつきり対決してもらつておかんとこれは非常に大きな問題なんです。私たちはあとでも御質問いたしたいと思いますが、新情勢に伴つていろいろな改革をやるということがありまして、新情勢をどう理解されるかということをお尋ねいたしたいと思うのですが、私はやはりこういう計画は必ずしも巷間の流説や誤つた新聞報道ではないのじやないかというふうに考えて深く憂慮するのですが、四月二十一日に大磯に参られまして、そういうことを吉田総理と了解を得られたというふうになつておるが、この事の真相をお伺いしたい。
#57
○国務大臣(岡野清豪君) これは御承知の通りに先ほども申上げましたように区長の任命制と関連のないことは事実、現にこの法案と申しますものはすでに三月中旬頃に成案を得ておる次第でございます。そうしてこれを提案しましたのが、たしか四月の二十二、三日頃と思つております。この法案というのは、その吉田総理との話合いというものは、この法律がもうすつかりでき上つてしまつた後のことであるから、関連がないということだけは御了承願いたい。と同時に吉田総理に四月二十百に会いましたのは、いろいろ所管事項につきまして報告やら意見の交換なんかをしなければなりませんものですから行つたわけでございますが、併しそのうちに雑談としまして、地方制度というものは実は被占領下にできたので、そうしてなかなか立派な制度ではあるが、併し私の経験するところによれば、地方自治に対するいろいろな法律というものがばらばらにできておる、総合的にできていない、又時期を異にして出ておる、そういう意味におきましてどうも自分自身が過去二カ年間取扱つて来たところによれば、これはやはりもう少し総合調整をした自治行政並びに財政制度に直して行かなければならんと、こういうことの話合いをしておりますとき、たまたま府県というものが一体日本には少したくさんあり過ぎるのじやないかと、こういうような吉田総理の話があつたわけです。と申しますことは、まあアメリカの一州の中へ放り込んでもすぽんと入つてしまつて、まだアメリカの州に余分が出て来るというほどの地域の狭い国である。ですからそういうようなところにたくさんの府県があつて、そうして殊にちよつと自動車で十分か十五分行けばもうすぐ行政区が違つてそして取扱いが違う、こういうようなことでは、この交通の発達し、同時に経済情勢の非常に密接な関係ができている時代においてはどうもうまく地方行政が行かないのじやないか、こういうような話から府県を合併してみたらどうか、こういうような話も出たり、合併するならば、もともと道州制というようなことの議論が世間にあつた、それなら一つ道州制というものはどんなものだろうかということで、いろいろ府県というものが少くとも数が多過ぎるから地方の住民が非常に困つているのじやないか、これは検討すべきことじやないかということで、結局府県制度のあり方というものを何とか考えてみようじやないかと、それなら一つ地方制度調査会というものがありますから、それに対して適当に一つ諮問して、そしてこれを研究してみましよう、こういうことで話は済んでおるわけでして、何ら深い大きな構想を持つてそういうことを考えたのじやなくして、雑談でやつたのでございます。そこで私が大磯へ行つたから何か話があつただろうとか、ないだろうとかいうことで、新聞記者と会見しましたときにそういうようなことがあつたことをお話しましたら、これは新聞記者が非常に頭がいいものですから、中田さんの頭のいいと同じように……(笑声)いろいろ想像してとにかく書いたものだと思われます。併しこれを取消すほどのことでもないと思いましてそのままにしておりますけれども、少くとも地方制度調査会というものができました以上は、私は先ほど申上げましたように、どうも私の考えといたしましては明治二十二年頃にできた市町村、都道府県の区域というものが、幾度地方制度の改正がありましても、市制とか町村制とか何とかいうものにつきましても従前の区域による、従前の区域によるということになつております。まあ駕籠とは申しませんが、人力車の時代、即ち人力車を標準としたくらいな経済情勢であつた日本においてできたところの地方公共団体の区域というものが、飛行機でとにかくここから福岡まで何時間かかかれば行けるというように発達した今日の文明の情勢に応じては、市町村並びに都道府県の区域というものは再検討を要するものじやないかということは私信念として持つております。でございますから、根本的にこれは地方制度調査会にかけてそして研究しなければならん、こういうことが結局総理と私との間の話合いの結果でございます。
#58
○中田吉雄君 そういたしますと、はつきりとは申されなんだのですが、改めて確認しておきたいと思いますが、それは岡野大臣が吉田総理から了解を得られた点は、地方自治体は市町村のみとし、これを地方行政の中心とする。第二番目には、都道府県庁は国の出先機関としてその長は政府が任命するものとする。三番目は、全国を八つのブロック程度に分け、各ブロックごとに国の総合行政機関を置き、これまでの各省の出先機関はこれを統合するというようなことが話合いとしてついて、そういう基本的な立場から地方制度調査会に諮問されようということに了解がついたというふうに理解していいですか。
#59
○国務大臣(岡野清豪君) それについては先ほど申上げました程度の話合いか総理とはしておりません。そこで新聞記者が集まりまして、私に対していろいろの質問をいたしました。そのときに、それじやお前は総理と意見が一致したのならどういうふうにして行くのだということでいろいろ質問しました。でございますから、それは総理との話合いでは何らそういうことはしていない、それじやどういうふうに考えられるか、こういうことを新聞記者あたりが質問しますから、その点につきましては、考え方としては幾らでもある、道州制を作ることも一つの方法だろうし、それから府県を二つ三つ合せて、そうして四十六県を十四、五県にするという考え方もあろう、若しくは府県というものを全く国の出先機関にして、そうして市町村というものに重点をおいて、そうしてやつて行くのも一つの考え方であろう、併しそんなことは挙げて地方制度調査会に検討を任す意味である。それだから我々としては、考え方としてはあなたがたの御質問の通りにいろいろあるだろうと思うけれども、何ら決定した意見ではない。ただ考え方を聞かれれば、考え方としては、十分自治庁において検討し、成案を得たものを地方制度調査会にかけるのだと、こう話したことがそういうように伝えられておるわけであります。
#60
○中田吉雄君 そうしますと、やつぱり地方制度調査会で審議をするのですが、成案を作る方向としてはやはりそういう方向なんですか。
#61
○国務大臣(岡野清豪君) 方向としてはそこまで行つておりません。考え方が幾らでも考えられるということを二つ三つ挙げたことを、これが岡野の根本的な観念であろうということで書いたものであろうと私は想像いたしております。
#62
○中田吉雄君 それではその問題は打切りまして、鈴木次長にお尋ねいたしますが、長い間地方制度の問題に携わつておられて、この新らしい自治法の底に流れている基本的な理念、そういうものを古い府県制、市町村制、そういうものと比べてどこがその基本的な線であつて、そしてそれはどういう点で守られねばならんか、どういう点で新らしい情勢にマッチせねばならんか、とにかく古い地方制度の欠点を根本的に除去するという意味で私はこれが作られていると思うのですが、そういう観念を以ていろいろこの尺度で照らして改正法案を見ることが必要だと思うのですが、とにかくこの新自治法の底を流れている基本的な立法精神と言いますか、そういうものをどういうふうにして理解されているか、お伺いしたい。
#63
○政府委員(鈴木俊一君) 大変むずかしいお尋ねでございまするが、地方自治法の基本的な考え方、これはまあ憲法にありまする言葉で申せば、地方自治の本旨に合致する制度であることがまあ基本であると思うのでありまするが、ただ先ほど大臣からもお話がございましたように、終戦後の地方自治制度というものは一つの非常に明確な方針に基いて立案せられたと申しまするよりも、古い思想と新らしい憲法に基きまする考え方との妥協と言いますか、さような面が相当に残つておるのであります。でその改正のときのいろいろの事情から、今日それが集積いたしまして現行法のような地方自治法になつておりまするけれども、数回の大改正を経て今日のような形になつておるのであります。勿論根本の考え方には住民自治の本旨ということでありまするから、住民自治というのが基本でありまするけれども、その住民自治の表現の方法として、自治組織上如何ようにこれを具体化するかということはやはりいろいろな行き方があろうと思うのであります。地方自治法におきましてはいわゆる従来全然認められておりませんでした直接民主主義と申しますか、さような考え方からの各種のいわゆる直接請求の方式が認められて来ているという点がやつぱり一番大きな従来の方式に対する大変革であろうと思います。要するに上からの自治というよりも下からの自治ということに変つたという点が一番基本であろうと思います。併しながら同じ日本の国の中にありまするところの地方公共団体であり、国法を基礎に成立している地方公共団体であるわけでありまして、中央の政府と地方公共団体とが全く相対立した、一つが他を動かすことができないというような、さような意味の、何と言いますか、絶対相対立の姿において地方自治というものがあるということは、これはもう国家の施政の根本から申して適当でないと思うのであります。ところが従来の、従来と言いますか、現在の地方自治法の中におきましては、或る面では非常に強く……、地方自治と申しまするよりも、現在の地方自治に関する全体の制度を通じてでございますが、或る面では非常に中央の政府の力が強く出ているかと思うと、他の面では非常に中央と地方との関係を隔絶した姿に置いている。地方自治法と他の各種の特別法との関連において見ますると、いずれかと申しますると、さような中央、地方の関係が隔絶するような姿になつている面が相当に多いのであります。これに反してそれぞれの特別法におきましては、非常に強く中央の大臣の指揮監督権或いは許可、認可といつたような、いわゆる権力的な関与の方式が非常に強くとられているのであります。これらはやはり全体を通じて従来のような指揮監督、権力的な関係の方式でなくて、やはりあらゆる地方団体が共同的な立場に立つて相互に全体の行政の水準を引上げて行くような形において協力し合わなければならんと思うのであります。そういう新らしい関係に立つた中央と地方との関係というものは、隔絶した姿ではなくて、もつと密接な関係になつて然るべきだと思うのであります。まあさような形において今回の地方自治法は、国と地方団体とのあり方について若干の改正を加えているものであります。
#64
○中田吉雄君 只今古い自治制度との大きな差の一つとして、上からの自治よりか下からの自治ということを言われたのですが、これは極めて基本的なまあいろいろな改革がなされおりますが、やはり古い自治制度の基本的なものは、やはり強力な中央集権を基調としました官僚的な拘束と言いますか、統制をやつて行くということと、自治性が非常に稀薄であつたというようなことが、まあいろいろな現象形体を捉えて見て、要約しますとそういうふうな点に、中央集権から地方分権に、まあ自治制の強化というようなことが新らしく自治法を流れている基本的な立場だと思うのですが、私は今回改正されつつある、政府が計画されましたものは、全くこういうものをなし崩しに古い自治制度に持つて行くような、これは非常に、我々がこの国会を三、四回やつてしまえば、殆んどなし崩し的に古い自治制度に復活する虞れが極めて多いと思うわけであります。例えば衆議院のほうで修正はされましたが、定例会を通常会に改めて年一回にする、議員の定数を少くして、議長を任命し、副知事、助役の任命を任意制にするというような、いろいろな出ております個々のものをずつと集大成してみますると、そうして総理大臣のいろいろな権限の強化というようなものを見ますると、やはりこれらを全体的に集約しますると、曾つての中央集権的な官僚的な拘束の古い制度を復活し、非常に自治政治を弱めて行くのではないか、これは我々が非常に多くの犠牲を払つて戦後から得たところの自治法であるわけであります。私はそういう点で地方制度調査会等で根本的に研究して、一遍にこう諮られますといいわけでありますが、なし崩しにやられると、いつとはなしにやられて、もう五、六回国会を過ぎてみると、殆んど往年のものに変らないというようなことになつて行くという憂いが非常に大ではないかというふうに考えまして憂慮するわけでありますが、あとでも御質問いたしますが、自治庁の設置法案等を見ましても、殆んど占い制度に、旧内務省のような形に一歩々々近寄つて行くというふうに考えるわけでありますが、そういうことはないものでしようか。
#65
○政府委員(鈴木俊一君) この中央集権に対しまして地方分権という考え方でございますが、これは先ほど上からの自治、下からの自治というようなことで申したこととまあ同じ内容の表現であると思いますが、中央集権というものは、中央集権であるが故に一概にいけない、或いは地方分権というものは地方分権であるが故に一概によろしい、こういうような簡単な建て方では私どもは考えられないと思うのであります。従来の権力的な関与方式、即ち旧地方制度時代におきましては、権力的な中央集権の建前であつたのでございまして、これが終戦後の諸改革によつて徹底的な一つの地方分権の方式に切り替つた。これはやはりそういうふうに切り替つたことの意味は十分あつたと思うのでございますが、併しいやしくも一つの国家として、或いは福祉国家、文化国家として全体の文化水準を引上げて行く、生活の水準を引上げて行くという国家でありまする以上は、これはやはり地方公共団体に任されておりまする各種の行政事務の水準というものも、その地方団体だけの責任でなく、国全体の責任としてこれを引上げて行く、こういう建て方に持つて行かなければいかんと思うのであります。言い換えれば国と地方公共団体とが一緒になつて全体の行政水準を、地方自治の水準を引上げて行く、こういうことであつていいと思うのであります。それをただ権力的な指揮監督とか、取消とか、許可、認可とかいつたような、そういう方式で中央地方の関与を行いますることは、これは特殊な問題については止むを得ないといたしましても、一般的にはこれを強く排除すべきものであろうと思いまするが、併し中央政府といたしましては、地方の行政についての各種の報告、情報の収集というようなことによつて、一つの新らしい行政運営の考え方、処理の仕方というものの探求をいたし、それを又更に地方に流して行きまして、そうして一カ所において考えられた非常にいい方式をできるだけ広く拡げて行き、そうして全体の水準を高めて行くというような意味の、何と申しますか、非権力的な中央集権、まあ知識的な中央集権、こういうような方式にこれからの国家といたしましてはどうしてもこれを考えて行かなければならんのじやないかというふうに考えるのでありまして、さような意味のいわゆる共同的な一つの中央地方の相通ずる姿というものは、これは神戸勧告の中にもその考え方というものは明らかに現われている。今回の改正案は更に地方制度調査会にかけてやつたらどうかというようなお話でございましたけれども、これはやはり地方行政調査委員会議が、あの専門家の人達が集まられまして、二年間に亘つて研究をした結論を大体取入れて立案をしておるわけでございまして、これを更に地方制度調査会にかけるという必要は私どもはないと考えておるわけであります。
#66
○中田吉雄君 地方分権を強く主張いたします私といたしましても、社会の進化につれて法律、行政に、或る意味の中央統制というような必要も認め、中央集権と地方分権との適度な調和ということの必要も認め、鈴木次長が今申されたように知的な集権はやつても、権力的な分散をやるというミルの立場というようなことも理解するわけでありますが、併しこの中にいろいろ計画されているものはやはり知的な中央集権ではなしに権力的な中央集権のようなことにやはりずつと、私は一つ々々まあ明日でも時間が与えられますなら、私はそういうふうな知的な中央集権でなしに、権力的な中央集権になりつつあるということを随所に事例を挙げて指摘できるような改正があるわけであります。この点は我々としてはやはり地方分権と中央集権との調整の際には深く留意しなくてはならんと思うわけであります。大臣の提案理由の説明におきましても、我が国の民主主義はまだ漸くその基礎が確立したばかりで、地方自治のよつて立つ基盤も未だ甚だ脆弱であることは率直に認めざるを得ないというような点からいたしましても、私は若干の能率上の問題はあつてな、地方住民がこの地方制度に習熟するまでは、やはりトレーニングの意味においても、私は現在改正されている立場は、未だ習熟しない現在の段階においては多くの危険性を含んでいるものじやないかというふうに考えるわけであります。
 その次に岡野国務大臣にお伺いいたしますが、これは自治庁設置法案に関連するのですが、地方財政委員会を議決機関から諮問機関にするということが、私はこれも一つの大きな権力的な統制の、そして政党政治が必要以上にこの地方自治体に入つて、正常な地方政治のルールを破壊するものじやないかということを非常に心配し、時の政府に附かんと平衡交付金がもらえんのだというようなことによつて、脆弱な地方自治体の批判精神を緩めて行くような心配が非常にあるではないか。これは権力的な統制の一つである。そして政党政治の弊害を必要以上に地方公共団体に持込んで混乱させるものではないかというふうに考えるわけでありますが、そういう虞れはないものでしようか。
#67
○国務大臣(岡野清豪君) お答え申上げます。私は平衡交付金の制度もやはりこの次には相当に改正をするような方向に持つて行きたいと考えております。が併し只今の場合におきましても、平衡交付金が悪意によつて自由自在に分けられるというような制度には実はなつておりませんで、厳格なる基準と又規則によりまして、そして公平に分けられるようなこれは法の精神ができておりますし、又法文もできておる次第でございます。
 それからもう一つ私が考えなければならんことは、私は平衡交付金というものの制度によりますというと、地方の財政需要額というものとそれから財政収入というものがとにかく出まして、その差引によりまして、足りないところを国家財政のほうから地方に穴埋めをしてこれを使つてもらう、こういうことになりますが、併し私自身の信念から申しますというと、平衡交付金の財源はどこから持つて来るかと申しますれば、やはりこれは天から降つたり地から湧くものじやなくて、国民諸君の、まあ悪口をよく言われれば血税であるとか苛斂誅求であるとか言つて、税の非常に高いとか安いとか専ら問題になつています。本当に国民が苦しい思いをして納税されておるそのお金というものを、取るのは政府の責任で取つております。併しながらこれが地方財政委員会というものに、即ち政府の責任がとれないものに任しておくということは私はどうかと考える。と申しますことは、成るほど規則によつてそういうふうに地方に分けられるものではございますけれども、これに対しては慎重なる態度を持つて、責任を持つて納税者が国家に納めた金が最も有効に使われておるということをどこまでも責任をとつて分配すると、こういうような制度になるべきものだと私は考えております。そういう意味におきまして、只今のごとく財政委員会が政府から独立したものであると、その財政委員会が誤ちはなかろうと思いますけれども、又非常な詳しい規則によつて公平には分けておるだろうと思いますけれども、それを第三者に任して置くということは、徴税をする責任を持つておるところの政府が片手落ちのような感じがしまして、その意味にお、きましては、根本論といたしまして、税を徴収するところの責任を持つ政府が又納税者に責任を持つて、そして公平妥当、而も最も有効に使われるようにすべきものだと、こう考えておる次第でございます。そういう意味におきまして私は財政委員会というものはやはり政府が責任を持つてこれを取扱うへきものである。同時に公平、即ち先ほども仰せになりましたような政党の弊、即ち或る一つの政党が自分自身の私利私慾のために国政を紊るというようなことがないために、特に自治庁には財政審議会というものを置きまして、その審議会の委員は、地方公共団体が推薦しますところの委員に過半数を占めさせまして、そうして公平妥当なる意見を自治庁長官にこれを与えると、こういうことにしてございますから、その意味によつてもチエツクすることもできます。又同時に我々といたしまして国政を担当いたしております以上は、たとえそれが自由自在にできるといたしましても、これは道義的観念から行きましても、又政治責任から行きましても、無闇やたらに勝手な不公正な政治をするということはできないはずだと、若しそういうことをすれば、その人個人は十分世間から指弾されますし、又内閣一体といたしまして、責任を国会なり国民に対してとらなければならないような責任政治をとつておる今日の行政機構といたしましては、財政委員会はむしろ自治庁の中に入れたほうがいいと思います。
 それからもう一つ申上げたいことは、この財政委員会の只今のあり方といたしまするのは、丁度財政委員会が政府から独立しておつて、そしてその自分自身の意見を強行するために内閣並びに内閣を通じて国会に意見をぶつつけて、そして国会に裁断をさせると、即ち二重に行くという方向になつておりますが、これは今後は政党政治の立場から行きまして、内閣というものは大体において多数党がこれを組織すると、そうして多数党というものは結局又国会の意思であります。多数党の意思を代表するのが内閣であり、又その内閣を出しておるところの政党は多数党であるから、その多数党の意思というものは国会の意思である。国会は多数党を以て結成されるという意味でございますから、まあ私自身といたしましてはいろいろの方面から考えまして、この財政委員会というものは自治庁に入れたほうが平衡交付金をたくさん予算の中から取るというのに工合がいい。と申しますことは、内閣から独立の立場を以て勧告権だけを持つてやりますけれども、勧告しても内閣はその国会に多数を持つておりますものですから、それとは喧嘩になりません。でございますから今の財政委員会の武器としまして、国会に裁断させるというようなことは、実際は理論的にはいいかも知れませんが、実効が上つていないことは今まで御承知の通りでございますが、私自身は若し今後自治庁設置法ができますように、私自身が仮に自治庁長官といたしますならば、今迄のように財政委員会の言うことを尊重して、そうして閣議にこれを持込んで予算の決定をするというよりは、自分自身の責任において閣内において発言をすることのほうが、よほど強力に平衡交付金を確保する意味において役に立つだろう、こういうようなことから、いろいろの点から財政委員会というものを財政審議会に変えて、そして自治庁内部に設置するという方向に来たわけでございます。
#68
○中田吉雄君 いろいろこれに関連しても御質問したいと思いますが、もう遅いようですから明日いたします。
#69
○委員長(西郷吉之助君) 本日はこの程度にいたしまするが、明日は午前十時から質疑を続行いたしまして、終了次第採決をして参りたい、かように考えております。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後五時十二分散会
ソース: 国立国会図書館
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