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1951/07/25 第13回国会 参議院 参議院会議録情報 第013回国会 地方行政委員会 第69号
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1951/07/25 第13回国会 参議院

参議院会議録情報 第013回国会 地方行政委員会 第69号

#1
第013回国会 地方行政委員会 第69号
昭和二十七年七月二十五日(金曜日)
   午前十一時四十九分開会
  ―――――――――――――
 出席者は左の通り。
   委員長     西郷吉之助君
   理事
           岩沢 忠恭君
           中田 吉雄君
           岩木 哲夫君
   委員
           石村 幸作君
           高橋進太郎君
           宮田 重文君
           溝淵 春次君
           岡本 愛祐君
           館  哲二君
           若木 勝藏君
           原  虎一君
           吉川末次郎君
           岩男 仁藏君
  委員外議員
           伊藤  修君
  国務大臣
   法 務 総 裁 木村篤太郎君
  政府委員
   国家地方警察本
   部長官     斎藤  昇君
  事務局側
   常任委員会専門
   員       福永与一郎君
   常任委員会専門
   員       武井 群嗣君
  ―――――――――――――
  本日の会議に付した事件
○警察法の一部を改正する法律案(内
 閣提出、衆議院送付)
  ―――――――――――――
#2
○委員長(西郷吉之助君) 只今より委員会を開会いたします。
 本日は、警察法の一部を改正する法律案につきまして質疑を続行いたします。先般法務委員会との連合の際に、質疑されなかつた伊藤修君に御質疑をお願いいたします。
#3
○委員外議員(伊藤修君) 私は二、三点質問を申上げたいと思いますが、その前提といたしまして、今日の日本の警察制度のあり方についてお伺いいたしたいと思います。勿論この基本的な問題につきましては、当委員会の所管に属することでありますから、深くこれを追及するという意思は勿論持つておりません。ただ私がのちに質問を申上げようとする点について、基本的な政府のお考え方を伺つて置かなければならんので、その便宜上お伺いする次第であります。
 第一にお伺いしたいことは、現在の日本の警察機構を一体どう持つて行くか、この点であります。即ち自治体警察というものを基幹にいたしまして、日本の警察機構というものを打ち立てて行くのか、或いは国家警察というものを基幹にいたしまして、これを補充的に自治体警察を設けて行くというのか、乃至は国家警察一本として行こうとするのか、或いは二つの名称を持つているといえども、これを一つの主管の下に統率して、その全活動を容易ならしめようとして行くのか、この根本的な政府の考え方というものをお伺いして置きたいと思います。
 法務総裁が常々仰せになるごとく、日本の今日の治安状態というものは、誠に寒心に耐えないものがある。これを今日においてこそ取締について確立しなくては、すべての日本の国策というものは画餅に帰するということは申すまでもなことであると思います。従つて今日の警察制度のあり方というものは、この点において国家全体を左右すると言つても過言でない重大問題であろうと思うのです。して見ますれば、法務総裁は、この際この基本的問題に対してどういうお考え方を持つていうつしやるか、又どういうふうにこれを実行して行こうというお考えであるか、この点を先ず明確にして頂きたいと思うのです。
#4
○国務大臣(木村篤太郎君) 警察機構のあり方でありまするが、御承知の通り、現在の警察機構は、自治体警察と国警と二本建になつていることは申すまでもないことと思います。従来の実積に鑑みまして、いろいろよい面もあるし、悪い面もあるのであります。今後これをどういう形に持つて行くかということについては、よほど慎重に検討せんけりやならんと私は考えておりまするが、併し只今の段階におきましては、国警を主とするとか、或いは自治体警察を主とするとかいうようなことでなく、やはり二本建で以てお互いに調整連絡を十分に保つて、警察の機能を発揮させたいと、こう考えております。いろいろ批判されるのでありまするが、これを国警一本の形にすれはいいじやないか、警察能力はこれによつて十分に発揮できるのじやないかという議論も世上に現われておるのであります。併しこれを直ちに国警一本り形にするというようなことは、私は今考えるべきじやないと考えております。自治体警察をできる限りやはり強力なものにして、国警と互いに手を携えて、そうして日本の治安の確保に当らせたいと、こう考えております。
#5
○委員外議員(伊藤修君) 第二にお伺いいたしたいことは、申すまでもなく、日本の警察国家としてのあり方については、強く世界各国から批判を受けまして、このたびの敗戦の結果、我我はこの警察機構の改革を余儀なくさせられる状態に置かれたのです。勿論このあり方に対しましては、新憲法下においては正しい一つのあり方であろうと考える。と申上げることは、私が今更ここで贅言を費すまでもなく、警察組織の民主化、警察の地方分権化、警察の運営に対するところの民主化、こうした三大原則というものが基幹をなして、今日の警察制度というものは打ち立てられておると考えられるのです。すべての警察制度、いわゆる国内全体の警察制度をそうした理想的なあり方になすべきはずであつたのが、当時のいろいろな政治的その他の事情におきまして、国民の欲する面におきましてはこれを設置し、然らざる面においては、国家警察を以て補うというような二本建てになつておるのです。今直ちにこの二本建の可否を私はここで論じようと申すものではない。少くともそうしたあり方が今日の基幹になつておる以上は、この根本的な考え方というものは打砕いてはならんと思うのです。勿論政府の考え方が、将来こうした大改革をするという御方針であればともかくといたしまして、只今のお説のごとくといたしますれば、今日まで打ち立てられたところの警察制度の基本的考え方というものは、如何なる改正を行う場合におきましても、常にこれを乱してはならんと思うのです。この点に対しましては如何ですか。
#6
○国務大臣(木村篤太郎君) 警察の民主化、これはもとより我々は堅持して行かなくてはならんと考えております。そこで前にも申上げました通り、この自治体警察と国警と二本建で以て、そうして十分に警察の機能を発揮さしたいと考え、又私はできるものと考えております。ただ御承知の通り、アメリカの警察機構を踏襲したと申しましようか、或いはこれを摸倣したと申しましようか、大体において、今の警察制度というものはアメリカ式になつておるのであるのであります。アメリカにおきましては、もうすでに各州におきましては、強固な組織ができておつて、治安が確立されておるのであります。又全国的に見ても、これは十分に治安が維持されておる。そうして各州において、各州ことに自治体警察を持ち、その上に国家警察として御承知の通りにFBI組織ができて、これが活躍されておるので、誠に十分な組織と言えることと思いますが、何分にも日本においては、アメリカのごとく国内の治安というものが十分に確保されていないのであります。申すまでもなく、現段階におきましては、相当憂慮すべき状態にありますので、これを十分に治安を確保するということにつきましては、なかなか困難なことであるのでありまして、是非とも我々は国警と地警が互いに相携えまして、そうして十分なる機能を発揮させて行きたいと考えておる次第であります。
#7
○委員外議員(伊藤修君) 私は、アメリカにおけるところの治安確保の程度と、日本の警察制度によるところの治安確保の程度というものを相比較した場合において、日本の警察官諸君の活動努力というものに対するところの結果を相比較いたしますれば、決して劣そものじやないと思うのです。ただたまたま今日の日本の国内事情において、或る種の団体、或いは今日外国人と称せられるところの朝鮮人団体、これらの特殊の事情によるところの変態的な治安撹乱状態がかもし出されておるというところに、早急に治安対策を確立しなくちやならんという特殊な事情が存在するわけです。一般論といたしましては、あえて私は、アメリカの警察制度に日本の警察制度の機能が効果、実力という点においては決して劣るものではないと思うのです。然るに法務総裁が今日お考えになることは、そうした特殊な治安状態を処理しようというお考えの下に、一つの機構改革を企図される、これは考えの道程としては是認できるのです。併しその結果、先ほど前提にお伺いいたしましたところの日本の今日の警察の民主化というものを毀損して行くと、打砕いて行く、少くともこれに対しまして何らかの変革を来たすがごとき感を与えるということは、私は日本の警察制度の今後のあり方として、重大な問題ではなかろうかと思うのです。他の人の言を籍りて言いますれば、これを橋頭堡にして、全警察制度の変革を来たすものであるという極論をなさる人もあります。法務総裁はさような悪意を以てお考えになつておるとは考えませんが、むしろ私はそういうような非難を受けるということは、警察制度の根本というものを第二義的にされまして、当面に接するところの治安確保ということに捉われ過ぎて、警察精神、警察の根本組織というものに対する考え方を私はゆるがせにしている結果ではないかと思うのです。この改正案の全体を通覧いたしますと、そうした思想が如実に窺い知れるのです。これを誠に遺憾としまして、この点に対するところのお考え方を伺つておきたいのです。
#8
○国務大臣(木村篤太郎君) 我々は、どこまでも警察の集中化ということは慣しまなければならんと存ずるのであります。根本理念としましては、しばしば申上げました通り、自治体警察と国警と二本建で、その調整連絡をうまくとつて行くべきだ、この思想は変りません。ただ御承知の通り、現今の治安状態から見まして、どうすれば最もよくこの二つの組織を、機能を発揮せしめ得るかということについて、我々は十分に考慮を払わなければならん、こう考えております。そうして差当り今度のこの警察法一部改正に当りまして、その間の十分なる調整をうまく取つて行きたい、こういう次第でありまして、決して根本的に今の私の考え方を変更するものでも何でもないと、こう信ずるものであります。
#9
○委員外議員(伊藤修君) 私は、賢明なる法務総裁としては、そういうあり方が正しいと思うのです。又そうあるべきと信じておりました。併し不幸にいたしまして、法案から窺われるところの思想、考え方というものは、只今の法務総裁のお考え方を逸脱しておる、かように考えるのです。何となれば、この法案から窺い知れるものは、汲み取れるものは、中央集権化ということが端的に我々はこれから汲み取れるのです。これを私たちは危惧するものです。先ほど前提にお伺いしましたごとく、日本の折角警察国家としての汚名を拭い去つて、少くとも権力集中主義を排し、政府機関がこれを掌握いたしまして、あらゆる面において利用活用して、今日の日本の不幸な結果に陥れしめた、そういうことを再び繰返したくないという考え方から、この警察機構を改革された。端的に申しますれば、過去におけるところの日本の警察制度というものは、世界に冠たるものでした。その犯罪捜査その他においては……。併し不幸にして、そうしたよい面もあつたけれども、他面においてはそれが政治的、或いはその他の国策、そういうものに利用されました結果、汚名をこうむつて、今日の改革に至つたわけです。然るに今度の改正というものが、再びそうした考え方の下に警察制度を持つて行こうということがこの改正案から窺われる。先ほど法務総裁に折角お考え方を申述べて頂いたのですけれども、この改正はそうでなく、その考え方を私は逸脱していると思うのです。この点に対して、総体的な考え方として一つ伺つておきたいと思います。
#10
○国務大臣(木村篤太郎君) 伊藤さんからお述べになられた通り、日本の警察の機能というものは、私も実は世界に冠たるものであると考えております。警察官の努力というものは、実に涙ぐましいものであるのであります。ただただ仰せのごとく、従来ややともすると、この警察というものは政治的に利用された。これは極めて歎かわしいことである。この点からいたしまして、現在の警察法は、さようなことのないようにという十分な考慮の上にでき上つたものと考えておるのであります。従いまして今度の警察法一部改正におきましても、十分この点を考慮しておるのであります。決して警察力集中だとか、或いはこれを政治的に利用するようなことはないのでありまして、(「自治体警察はそうだ」と呼ぶ者あり)ただただこの日本の治安の確保の上から見まして、最小限度必要な、一種の総理大臣に指示権を与えるということに過ぎないのであります。決して今御疑問のような、これを政治的に利用するとかいうようなことは断じてないと考えておるのであります。
#11
○委員外議員(伊藤修君) 基本的な考え方といたしましては、私の考えておるところと、法務総裁の考えておるところと帰一すると思うのです。ところが現実に出されましたところの法案におきましては、これから指摘いたしますごとく、そうした憂いが十分認められると思うのです。若しそうであるといたしますれば、法務総裁としては、今の基本的な考え方に沿うべく、原案に対しまして考慮せられる用意があるかどうか、前提的にお伺いしておきたいと思います。
#12
○国務大臣(木村篤太郎君) 私は、今度提案いたしました警察法一部改正の原案におきましては、今伊藤委員が指摘されましたような懸念は毛頭もないと確信しておる次第であります。
#13
○委員外議員(伊藤修君) では法案につきまして先ず第一にお伺いしたいのは、第十一条に対する改正であります。この改正によりますれば、「国家地方警察本部は、前項に規定する事務の外、第六十一条の二の規定による指示に関する事務を処理する。」と、こうあるのでありますが、これは私がここで申すまでもなく、この六十一条の二の事務処理の機関として新らしく認められたところのこの機関が、既存の国家地方警察の公安委員会に属するところの機構であることは申すまでもない。で、この機構は、本法によりまして、総理大臣から諮問を受けますれば、この機構は公安委員会を補佐いたしまして、国家地方警察の意見を総理に述べる立場にあるのです。然るに今度改正によりまして、この機構は総理大臣を補佐いたしまして、諮問をする機関ともなる。法務総裁も法曹家として、その間におけるところの法理的な解釈は、私がここで説明申上げるまでもなく御承知のことと存じますが、およそ一個の機関で、述べるほうと、聞くほうと、指示するほうと、相反するところの機関を、同一の事項を同一の機関で取扱うということは考えられないのです。例えば一つの事務処理の場合におきましても、双方代理を禁止することは御承知の通りです。微々たる私法上の取引関係においてすら、双方代理を禁止することは厳として存在する。若しこれに違反しますれば、刑罰の制裁を受ける。いわんやかような重大な国家事務を処理する場合におきまして、意見を述べるほうと、諮問するほうと、両者が同一の機関においてなされるということになりますれば、全く無意義なものであろうと思います。これ自体を一つ取上げましても、前提的に先ほどお伺いいたしました、即ち全警察制度をこの公安委員会に従来属するところの事務部局において掌握いたしまして、その下に一切の活動が促されるという結果を招来することは当然である。先ずこの基本的な考え方の矛盾というものに対して、如何に御説明があるのか、この点をお伺いしておきたいと思います。
#14
○政府委員(斎藤昇君) 御意見の通り、意見を聞く総理大臣の補佐機関と同時に、それに対して意見を述べる機関の事務部局が同一でありますことは、只今おつしやいまするように、一見誠におかしいような感じをいたすのでありますが、この点は、別個に総理の補佐機関を設けますことによる煩らわしさを避けるという意味も多分にありまするが、先ほど法務総裁からお述べになりましたように、これが総理大臣と国家公安委員会が常時連絡をとりつつ、円満に事務を処理するということを前提にいたしますることが前提になつておりまするのと、いま一つは、国家公安委員会の事務部局といたしまして、常時国家公安委員会の監督を受けている機関でありまして、この間に、総理大臣と国家公安委員会の間に意見の齟齬を来さないというためにも、むしろこのほうがよろしいと考えているのでありまして、別に相反する二つの機関というようには考えないほうがよかろうというのが我々の考え方であります。法務総裁もお述べになりましたように、本法案の提案の一番の趣旨は、内閣が警察の最終責任をとり得るということを目途にいたしているのでありまするから、従いまして総理大臣が国家公安委員会に意見を聞かれる。そうしてこういうように政府にとつて、国家全体にとつて重要な警察の或る種の事件を政府が責任のとり得るような形に置くというのが趣旨でありまするから、実際面におきましては、国家公安委員会、そうして総理との間にいつも相反する意見があるということを前提に我々は考えておらないのであります。
#15
○委員外議員(伊藤修君) それでは第一に、今のあなたの御説明のいわゆる便宜である、煩らわしさを排するのだという、そういう軽々しい考え方の下にこうした基本的な問題をお考えになることは、それ自体が誤りだと思うのです。それは、国家警察のみずからの分野において、みずからの仕事の容易になし得るという便宜論から来ているわけです。他を顧みない、セクショナリズム的な考え方の一つの現われだと思うのです。私は、こうした大きな問題を、そんな易々たる理由によつてお考えをなされることは、非常な誤りじやないかと思うのです。勿論それは理由にならんと思うのです。
 それから第二のお考え方、即ち意見は異ならない、又異なることを避けるんだ。このお考え方は私はよくないと思うのです。それは独善ですよ。独善に通ずることですよ。独裁に通ずることですよ。およそ各機関の責任者の衆智を集めて、以て総理大臣が正しいという意見を指示して、これを全警察に流すという場合が一番いいと思うのです。又そうあるべきことが今日の民主主義的な警察運営の基本的考え方じやないでしようか。それで私は前提に伺つているのです。然るにあなたの今のお考え方を以ていたしますれば、国家警察即総理大臣の考え方です。若しそれを極端に推し進めれば、検事と判事を同一にして、昔のお奉行様にしたほうが容易に事は片附くということです。意見が相反しなければ結構だ。何を好んで国家の意思が一面においては原告方となり、一面においては裁判官となつつて、そうして事物を処理するという煩わしさを何のためにとるのですか。そういうことは少くとも独裁、独善、全体主義に相通ずる、今日においては到底容認できないことで、常識的にも申すまでもないことです。然るに今のようなお考えを以ていたしますれば、あらゆる国家機関というものは、一人の手に握ることが一番容易です。今日、基本的に今お伺いいたしましたごとく、国家警察と自治体警察と二つの上に立つて、国家は治安を維持しようという責任の途を開くというならば、おのずから他の考え方があるはずです。両者を平等の上に置いて、その上に立つというならば、これも一つの考え方ですから、この是非は別問題として、そういう機構に持つて行くならば、そういう機構のあり方を正しいはつきりしたものになすべきである。二つの警察機構が存在する、その一つのほうにかたよつて、その責任者が即総理大臣、上に立つて命令指示をする、責任者の意思であるということになりますれば、他の機関はこれに隷属することは言うを待たないですよ。六十一条の二の解釈の結果、運用の結果は、当然そうした結論に陥ることは、解釈上私はあなたもお認めになると思うのです。その考え方自体が、私が前提にお伺いしました考え方とはおよそ相離るること甚だしいと言わなくちやならんです。だから私は、基本的に法務総裁の考え方をお伺いしたのです。だからあなたの考え方自体は、法務総裁の先ほどの前提的にお伺いした考え方とは相矛盾するものがある。離るるものがある。殊に一つの機関で、繰返すようでありますけれども、両者の立場をとるなんということは、かような不合理なことは、又政治を不明朗になさしむることはあり得ないです。国民は納得いたしません、さようなことで。これはお考えが、余りに御自分の部局でお作りになつたから、こういうことにお考えになつたでしようけれども、若し他の機関によつて公正にこの立法をなさつた場合においては、さようなことは容易に考えられないことです。立法論としてもこれは非常に邪道です。如何ですか。
#16
○政府委員(斎藤昇君) 先ほどお答えいたしました点は更に繰返しませんが、更にお考えを頂きたいと存じまするのは、この六十一条の二の規定によりまする指示は、六十二条に、国家非幣事態の場合の警察の一元的統合の規定があるのでございまするが、かような非常事態に立入る前の状態、又は非常事態に立入らせないための措置ということが主でありまして、通常の状態における場合を考えているのではないのであります。従いまして国家非常事態の際におきましては、この国家地方警察本部が総理の指示によりまして、全警察を統轄する組織になつている。その直前、或いはそれにならせないための措置ということは、これは非常事態の際のいろいろな計画、事前の計画、非常事態におけるときの運営というものと、その以前とがやはり一体でなければならないという、そういう点から考えましても、ここに他の部局が設けられますということ、非常事態宣言がありましたときに、総理大臣の補佐機関が全く変つてしまうということは、事務の運行上も面白くない、かように考えるのであります。
#17
○委員外議員(伊藤修君) 私は六十一条の二の具体的運営の内容については後に質問します。今その説明を以て基本を変えるわけには行かないのです。私の質問に対する御答弁にはならないです。私の質問いたしているのは、基本的なお打ち立て方、組立て方といたしましては邪道である、間違つているということを申上げ、およそ法理観念に相反するところの組立て方だ、こう言うのです。国家非常事態の場合におきまして、第一線の有識堪能の士を帷幄に置いて、総体的な指導、命令、行動を開始しようとする場合においては、むしろそうした人を帷幄に置いて、これを司るところの、たとえ僅かな人員にいたしましても、別個な事務局、或いはこれを処理するところの職責のあるところの機関を設けて、この下に総理大臣は君臨して、この新らしい六十一条の二の場合、或いは現行法の六十二条の場合、もつと広く考えますならば、刑事訴訟法の百九十三条の場合、そういう場合をも含めた、およそすべての広範囲の治安確保の目的を達する場合におけるところの機関としてこれを設けて、その下に国家地方警察も自治体警察も検察庁も一丸となつて、日本全国民のために、日本国家のために治安の確保を図る。こうした根本的な考え方を打出して来なくちやならんと思うのです。そうでなくして、かような十一条のこの改正のごときを以ていたしますれば、目前のことに汲々といたしまして、根本の考え方というものは、非常に立法論としても大きな誤りをここに犯して、而もその結果はどうかと言いますれば、事実上総理大臣、そうしてそれに直結する者が国家地方警察長官、その下に全国の五百になんなんとするところの自治体警察というものが包含されて活動するということになつて来るのです。治安という一つの面から考えますれば、或いはそれも一つのあり方だと言うことができるでありましよう。併しこれが他の面に利用されるということを我々に考えなければならん。過去における日本の歴史というものはすべてそれなんだ。連合国から強い非難を受けたのもそれであるのであります。今日の法務総裁の場合において、それがなし得るとは考えられない。併しそうした制度がありますれば、後に来るところの政治家、後に来るところの権力者、こうした者がその法律を利用いたしますれば、これを政治の面に利用することは容易になし得るのです。又選挙に対する弾圧も容易になし得る。あらゆる面において、国家の意思をほしいままに権力の下に引きずり去つて行くという、こういうあり方が十分可能であるということを指摘したいのであります。而もその弊害は、我々身を以て今日まで体験して来たのであります。それを何を好んで再びこの法律の下に繰返そうとするか。私は、あなたの考え方が、余りにもあなたの立場と国家地方警察という、こういう一元化というのをこの法律の上にもり立てようという、そういうお考え方が意識的か、或いは無意識的か、少くともこの法律の上に現われているということは、遺憾に堪えないのであります。これは虚心坦懐、政党政派を超越して、十分我々は考えなくちやならないと思うのであります。重ねてその点に対する国警の御見解を伺つておきましよう。
#18
○政府委員(斎藤昇君) 国家非常事態のこの警察法の規定は、只今の伊藤委員のお話によりますると、戒厳令の規定のようにおとりになつておられるのじやないかと考えるのでありまするが、この警察法における国家非常事態宣言及びその場合の警察の運営は、必ずしも戒厳令のような内容を全然持つていないのであります。ただ普通の状態における警察のあり方において、即ち各地方の府県或いは市町村の公安委員会の管理の下において処理するのでは十分でないというような事態に、非常事態宣言を発しまして、そうして警察を一元的に統制をしてやるという規定なのであります。勿論かような際には、只今お述べになりましたような他の事態におきましても、相当な事柄がありましようから、いろいろなそういつた事態に処するためのいろいろな機関なり、或いはスタツフというものが他にできるでありましようが、警察といたしましては、警察法によりまして、六十三条に明記をしてあります通り運営をせられるのであります。従いまして基本的にどの機関で扱わせるのがいいかということをきめて、然るのちに如何なる仕事をさせるかということをきめるべきだとおつしやいましたが、私はむしろ、何をするのか、総理の指示は一体何であるか、どういう場合にどういう指示をするということが、警察に対する内閣の責任を全うするゆえんなのだ、この点から私は考えるべきだと思うのであります。こういうような事柄をさせるならば、どの機関が最も適当であるか、かように考えて行くべきであろうと考えるのであります。従いまして六十一条の二によりまして、如何なる場合にどういう事柄を指示をするということが必要であるかということを先ず考えて、その後に然らばどういう機関が一番望ましいか、能率的であり、又経済的であるかということを、考えるべきだと考えるのであります。
 なおこの法案の立案と申しまするか、成文化をいたしましたり、或いは説明をいたしましたりいたしまするのは、我々政府委員でありまするから、我々がいたしておりますが、この法案の骨子は、我々国家地方警察本部において作つたものでも、或いは提議をいたしたものでもございません。政府の主要なかたがたがいろいろと御研究になつて骨子をおきめになり、我々はその命を受けてやつておるのであります。我田引水的にこの法案を作つたということにつきましては、全く当らないということを私は申上げたいと存じます。
#19
○委員外議員(伊藤修君) それは最後の問題につきましては、成案化するいわゆる法律技術屋というものは別でありましよう。併しその基本的な考え方を打ち出したのは、あなたたちであることは申すまでもないのです。又あなたたちに諮問せずして、別個に端的に法律を作る筈がないと思う。その是非は別問題としましても、少くともあなたたちの考え方が、この法案の全部をなしておるといつても過言じやないと思うのであります。だから私はそれを指摘している。ただ技術的に、この法律を作つたというのは技術屋に相違ないのでしよう。その問題は次にいたしまして、前の問題にかえりまして、十一条に対するところの是非を論ずるのには、仕事の内容において定むべきだというお説である。然らば六十一条の二の内容をお伺いしましよう。いわゆる六十一条の三と六十二条の相違を伺いましよう。そうして六十一条の二の内容について、如何なる範囲までこれが及ぶかをお伺いしておきましよう。
#20
○政府委員(斎藤昇君) 六十二条以下の非常事態宣言の発せられまするのは、警察が通常な形、即ち先ほど申しましたように、こういつた都道府県公安委員会或いは市町村公安委員会のそれぞれの責任の下において警察を運営するということでは賄えないというような事態に、非常事態宣言が発せられまして、総理の下にその区域内の警察が一体となつて行動をするのでありまするが、この場合には、都道府県公安委員会或いは市町村公安委員会というものは、責任をその限りにおいて解除をされるのであります。併しながらさような事態はよほどの際でありませんと、なかなかこういう異例な行い方はいたすべきではない、かように考えるのであります。従いまして非常事態宣言を発して、都道府県、市町村の公安委員会の権限を一時眠らせてしまうという、そういうやり方をしないで、それぞれの公安委員会の責任において事務を処理させるのではあるけれども、併し一部地方に大きな災害があつた。或いは擾乱がある。又その虞れがある。そういうような場合、或いは国の立場から考えて、誠に容易ならん犯罪が行われる。その虞れがあるというような際に必要な指示を、政府の責任において、こういうように処理をせられたいということをやはり言う必要が現実にあると、かように考えまして、さような際に必要なる指示を発する。かように立案をいたしておるのであります。即ち特に六十一条の二におきましては、特に必要があると認めるときには、公安維持上特に必要があると、さように総理大臣が認められました際に、その当該の事件の処理につきまして方針を示され、或いは事前に、かような場合にはこういうように処理をしたがよかろうという指示をいたすというのが建前になつておるのであります。如何なる指示であるかと申しますると、例えば大災害がある。或いは地方に先ほど挙げましたような非常事態が起つた、或いは起る虞れがあるというときには、やはり事前に総理大臣に報告を行う。或いはそういう際の警備の計画を事前にきめておく。重要な項目につきましてはこういうように警備の計画をきめて参りたいという指示もあり得ると考えるのであります。或いは又小さな自治体警察におきまして、国家的に見て非常に重要な犯罪が起つたというような際には、その公安委員会に対して他の警察の応援をとつて、そして捜査を進めるようにという指示を出す必要がある場合も生じ得るかと思います。大体さような程度に考えておるのであります。殊にこの指示のなされまする相手は、都道府県及び市町村の公安委員会でありまして、その公安委員会は、総理の指示に従わなければならない政治的の責任を負うと、かように考えます。併し総理大臣の指揮監督下にあり、又任命権を持つたその監督下にある機関ではありません。従いまして先ほど来から御心配になつておられまするようなこの指示を利用いたしまして、そして政治的に濫用を図るというような、そういう指示は、この機構から考えましても、事実なし得ないということに相成ると考えるのであります。
 なお先ほどの御質問に対しても、私お答えをするのを一つ落しましたが、むしろ伊藤委員が御心配になられますように、この指示によつて、警察権が政治的に濫用されるということはどこまでも避ける必要があるわけであります。さような意味から申しましても、私は国家公安委員会の常時管理監督下にある機関が総理大臣のスタツフになるというほうが、むしろ総理の任命された別個の機関というよりはよろしいのではないか。その点につきましては、私はさように考えるのでございます。
#21
○委員外議員(伊藤修君) 私のお尋ねをしておる点について明確を欠くのです。私のお尋ねをしておることは、逐条説明を再びここでお伺いしようとは思わないのです。私のお伺いするのは、六十一条の二と六十二条以下の国家非常事態との事物の差異です。何を目的としておるのか、今御説明をお伺いしておれば、六十一条の二の場合の事物と、六十二条以下の国家非常事態の場合におけるところの事物との差異が明確でないのです。何のために六十一粂の二を置かなくちやならんか。国家非常事態の場合と異なつた必要性、即ち対象です。どこにそれの狙いがあるのか、その区別をはつきりして預言たい、こう申上げておるのであります。
#22
○政府委員(斎藤昇君) 事物の相違とおつしやいますのは、私わかりかねるのでありますが、先ほど申しますように、例えば福井で大農災が起つた。あのときに非常事態宣言をしようかどうかという話もあつたのでありますが、併し非常事態宣言をすれば、福井の公安委員会或いぱその隣接の公安委員会、府県の公安委員会は責任を解除されて、そうして大臣、国家警察本部長官、管区本部長官の線で警察が一元的に統制される。その間の治安の維持は、一切公安委員会を抜きにした機関で維持をせられるということに相成るのであります。福井の震災がありまして、そしてその周辺が非常に騒然として、それぞれの公安委員会が独立して責任を持つということでは、とても間尺に合わんということになれば、非常事態宣言を出さなければなりませんが、それほどの状態ではないという際には、もう少しあの際の治安の状況が悪いというような場合には、そこの警備の計画はこういうようにして欲しい。或いはどこからどの程度を応援をやつて、又どこの警察をどの程度あそこへ応援にやつて、そうして公安委員会の管理の下で、通常の、非常事態宣言でない、ほうぼうの公安委員会の管理下において、公安委員会の責任においてその治安の維持を図る。併しながらその治安の維持をするやり方につきまして、先ほど申しましたように、警備の計画をこうして欲しいとか、或いは応援はこういうようにして欲しいとかいうことを場合によつたら言う必要があるというのが六十一条の二であります。従いまして事態の相違、それから六十二条以下の場合には、あらゆる警察責任が内閣総理大臣になりまするから、大きいと小さいとを取混ぜて、一切の責任が総理大臣ということになりまするから、従つて総理大臣の指揮監督は、一切の警察の業務に及ぶわけであります。六十一条の二の場合にはそうではありませんで、公安維持十特に必要な事項についてだけ指示をするというわけであります。それが限定をせられるわけであります。事物は変りがないと申上げたらよろしいのでありましようか、そういう意味におきましては。ただその運営のされ方、それから指示をする範囲、され方が非常に違うことだと思います。指示をする範囲は、特に必要な事項に限つてだけするという点が相違であります。
#23
○委員外議員(伊藤修君) そういたしますと、結局国家非常事態宣言の場合においては、治安維持上その規模人なるものであるということが先ず一つ考えられる。それからいま一つは、事項を特定するということが考えられる。そういう点において相違があるのだ、その他においてはその大小というだけであつて、その認定によつて非常事態宣言をするか、或いはそれに至らない程度であるという認定の下に第六十一宋の二を発動するというためにこういうものを設けた、こういうようなふうに伺つてよろしいのですか。
#24
○政府委員(斎藤昇君) その通りでございます。
#25
○委員外議員(伊藤修君) そういたしますと、その大小の認定ですね。これは御承知の通り、六十二条以下の非常事態宣言の場合におきましては、その及ぼすところが、先ほど御説明にありましたごとく、国家公安委員会その他の機関を一切停止せしめて、総理大臣の責任においてこれが運営されるということになります結果、国民に及ぼすところの影響は重大であり、基本人権を制約することも又大であることは当然想像される。従つて国民の代表たるところの国会の承認を得る。若し承認を得られない場合においては、これを廃止しなくちやならんというように、厳格な、国の最高機関たるところの国会の監視の下にこれが遂行されるということをお伺いすることは申すまでもない。然るに第六十一条の二の場合におきましては、あなたたちの、そう申しては失礼ですけれども、認定によつて、そうした非常事態宣言の場合において、国民了承の下にこれが行われるという事態であるかもわからないのにもかかわらず、六十一条の二の場合を適用いたしまして、国の最高機関の監視を免れるという結果をも想像されるじやないでしようか。してみますれば、この点から考えましても、先ほど申しました十一条の機構というものが、あなたの考えと、総理大臣の考えというものが一つの機関の下に行われた結果として、すべて、具体的に言えば、あなたの考えにかかつてしまうという結果を招来するではないでしようか。周智を集めて、例えば検事総長、或いはあなたとか、自治体警察の首長であるとか、その他関係の人、法務総裁、そういうような練達堪能の士の意見を総合いたしまして、これは成るほど国家非常事態宣言をすべきである。これは六十一条の二によつて処理すべきものであるという限界というものが、一人の考え方によつて行われる。或いはそうした有識な人の考え方を総合して、総理大臣の過ちなき指揮命令というものが発せられる、こういうことが期待されんじやないですか。この点から考えましても、私は先の十一条の改正というものは不合理である。運営の面から言つても不合理であるということが言えると思います。だからその先ず認定について、そういうような虞れが十分あり得ると思いますが、この点についてはどうですか。
#26
○政府委員(斎藤昇君) 先ほども申上げますように、六十二条はそれぞれの公安委員会を眠らせてしまう。そうして一切止めてしまうというあれでありますから、その場合には議会の承認を得るというわけでございまするが、六十一条の三の場合には、そうではなくして、公安委員会の責任の下に、総理から指示があつたといえども、責任の下においてやるわけでありますから、その点は私は非常に違うと思うのであります。その点、非常事態の宣言をするかしないかということは、これは総理の判断であろうと思います。その際には、いろいろなかたがたの意見も聞かれるでありましようが、法律といたしましては、国家公安委員会の勧告によつて総理が宣言をされるということになつているのであ争ます。国家公安委員会が、六十一条の二の個別的な極く一部の指示というようなことでは間に合わないというようなことになれば、公安委員会が総理大臣に対して、非常事態宣言を免せられたいという勧告をされるのであります。国家公安委員会がその措置をとりまするまでは、六十一条の二の規定によつて部分的な指示が行われると、かように解するのであります。この指示は非常に重大なことのように考えられまするが、これは警察の技術的な面というのが大部分であるのであります。非常事態の際に対処する技術的な指揮の部分的な一部を総理が指示されるということになるのでありまして、これは私は六十二条に比べますると、非常に軽い指示であります。非常に軽い指示であるといつたように考えられます。従いましてこれにつきましては、国会の同意でありまするとか、或いは非常事態の宣言の際におきましての判断のための他の機関というものを持つておりませんで、国家公安委員会の勧告、法律といたしましてはそれだけを書いているのであります。総理が六十一条の二によつて指示されまするときには、国家公安委員会に意見を聞かれるわけでありまするから、この点において丁度これは釣合いが取れているというように考えます。
#27
○委員外議員(伊藤修君) この今の技術的の面、内容の面については、次に御質問するのです。私のお尋ねしているのは、国家公安委員会が勧告いたしまして、非常事態宣言が行われるという段階にあるという具体的事実があつても、六十一条の二によつて、或いは相応する場合だと認定されますれば、その勧告に従わないことができると思います。そうでしよう。六十一条の二の今度のこの新らしい改正案に基くところの取扱いをされることができ得ると思います。その判断権は十分お持ちになると思うのです。そうじやないですか。なるかならんかだけです。
#28
○政府委員(斎藤昇君) それは国家公安委員会の判断でありまするから、勿論事務スタツフは国警本部ということになつておりますが、私は、六十一条の二を使いたいために、非常事態宣言を無理にしないというようなことは事実上考えられないと思います。私は、非常事態宣言を発して、そうして全警察を総括統合するということはできるだけ避けて、通常の警察運営の状態において処理するのが、治安維持上から考えましても賢明な維持方策だと、かように考えているのであります。
#29
○委員外議員(伊藤修君) 私の質問にお答えにならんでは困るのです。くどくどと、時間がないからそう御説明願わなくても、あるかないかだけでいいのです。およそとにかく非常事態宣言の事態があると考えて、公安委員会が総理大臣に勧告いたしましてもですよ。先ほど御説明にありましたごとく、福井の場合におきましてもそういう希望はあつたけれども、それを施行しなかつたとおつしやるくらいであつて、いわんや本法の六十一条の二の場合を以て十分事足りるのだと思えば、そんか勧告があつても、この条章に基いて特別な事項についてのみ指示をすることができるのじやないかと、こういうのです。
#30
○政府委員(斎藤昇君) 国家公安委員会の非常事態の勧告があつた際に、総理大臣が必ずそれに従われるか従われないか、それは総理の識見でありますから、わからないと思いますが、私は六十一条の二で片付くのじやないかということで、若し片付けられるならば、そのほうが賢明であろうと、かように考えます。先ほどの福井の震災は、そういう意見も他にあつたけれども、我々も、国家公安委員会も、内閣のほうもそういうどぎついやり方をやらないで、できるだけ通常の運営の方法でやるというようにというので、あのときはそういう線でやりましたが、もう少しあのときに治安の情勢が悪くなれば、どぎついものをどうしても持ち出さなければならなかつたかも知れないということを申上げるのであります。
#31
○委員外議員(伊藤修君) 私の聞いているのは、選択権があるのかどうかということを聞いているのですよ。一つの事案に対しまして、いいですか、非常事態を宣言しようか、この六十一条の二の程度でやろうか、どちらを適用するかということは、総理大臣が意見を聞き、勧告によつて任意に定められるところの法律構成ではないかと、こう聞いているのです。具体的に総理大臣がやるかやらんか、これは具体的の問題であつて、私は法律論として聞いているのです。
#32
○政府委員(斎藤昇君) 法律論といたしましては、任意、随意であります。勧告に縛られることは私はないと思います。
#33
○委員外議員(伊藤修君) 従つてですよ。従つて先の非常事態の宣言の場合にはおいては、各種の重要な国民監視の下に置かしめるという制度、機構というものを作り上げております。然るに総理大臣の考え方によつて、勿論良識あるところの堪能の士の意見を参酌しておやりになるでありましようけれども、たまたま誤つて、若しくは意識的に、政治的にこれを利用するとするならば、十分、そうした事態にもかかわらず、この法律の運用でなし得るのじやないか。その結果、国会はこれに対して、何らか他の方法によつて、憲法六十二条の国政調査権の発動によつて監督することはできるでしよう。示唆することもできるでしよう。又政治的にこれを糾明することもできるでしよう。併し国会がそれに対して、非常事態宣言の場合のごとき厳格な処置に出ることはできないのではないか。即ち国会の重要な監視の目をこれによつて先ず免れるではないか。こういう点が一点。それからいま一つは、その認定の意思を決定する重要な要素をなすものは、即ち国家公安委員会に隷属するところの事務部局であるのであります。長官若しくはその幕僚諸氏のお考え方が全部をなすのではないか。而もその人は、宣言をしようというような措置を講じようという総理大臣の重要な補佐役であるということになりますれば、結局はあなたの意思、若しくは国家地方警察の長官の意思一つによつてすべてが決するということになるのではないかと、こう言うのです。だから一人によつて二重の人格を兼ね備えるということは基本的に不合理だと、この運営の面からも言い得るのじやないかと、こう申上げるのですけれども、この二点をお伺いします。
#34
○政府委員(斎藤昇君) 国家公安委員会も極めて識見の高いかたがたでありまするから、事務部局の意見通りには左右をされるという心配はないように、かように考えます。むしろ事務部局が、六十一条の二と六十二条と違うということによりましては、事務部局の対立によりまして、一方は非常事態宣言だと言い、一方はそうでないということになりまして、その間に却つてまずい結果が起ると私は考えます。
#35
○委員外議員(伊藤修君) これは議論しておりますと尽きませんから、時間的に御迷惑をかけますから、今の御答弁では不満足であります。又機構の点についての大体を御指摘してあるのですから、これに対しましては、後に一つ御検討を煩わしたいと思うのであります。
 次に、この六十一条の二の場合において、この内容ですが、これは公安維持上という表現が用いられ、六十二条以下の場合においては、治安維持上という表現が用いられておるとすると、六十一条の二の場合においては、行政管理……、勿論運営管理も共に含まれると思いますが、それが含まれるのかどうか。又含まれるといたしますれば、この表現についての際、これはどういうふうに解釈するのか、御説明して頂きたい。
#36
○政府委員(斎藤昇君) 行政管理と運営管理を六十一条の二において含むかどうかというのでありまするが、これは都道府県公安委員会に対して、及び市町村公安委員会に対して指示をするわけでありまするから、都道府県公安委員会は行政管理の責任を持つておらない。いわゆる予算或いは人事の権限を持つておりません。従いましてここには、そういつた人事権というようなものは総理が指示を現実においてできないという解釈をとらざるを得ない。立法の趣旨もさようであります。それから非常事態の際におきましてはこれはやはり一元的に統轄はされまするけれども、人事権、いわゆる警察官の任免ということは、この際にはやはりできない。その面においては、現実に警察官、それを統轄はできまするけれども、これを任免するということは、非常事態の際においてもできない、かように考えます。
#37
○委員外議員(伊藤修君) そういたしますと、六十一条の二の場合は、運営管理と行政管理と、この二を含むということはないのですか。
#38
○政府委員(斎藤昇君) 運営管理だけであります。
#39
○委員外議員(伊藤修君) 行政管理は含まない……。
#40
○政府委員(斎藤昇君) 含みません。
#41
○委員外議員(伊藤修君) それから公安維持上、こういうふうな表現と、六十一条の二の場合……、六十二条以下の場合の治安維持上、この表現の相違は……。
#42
○政府委員(斎藤昇君) これは誠に申訳ないのでありまするが六十二条に治安維持と書き、こちらに公安維持、この点は、実はさように事を分けて違うことを考えて立法をいたしたのではないのでありまして、こういうふうに違つた言葉が出ておりますることは、実に申訳ないと思うのでありまするが、実際といたしましては、私は変らないと考えております。
#43
○委員外議員(伊藤修君) 法律をお作りになるときは用語の統一ということが非常に大切であります。御承知の通り、法律用語というものが一字一句、てにをはが変つても重大な意味をそこにもたらすことは御承知の通りです。それからおよそ法律を立法される場合においては、用語の統一ということについては十分留意をして頂きたいと思う。今の御説明によりますれば、全然その内容は相違しない。従つてこれは同一な表現を用いているという御意思のところはよくわかりますが、これは受取るほうの国民といたしましては、治安維持という一つの狭い考え方で見るのであります。本来広かるべき非常事態宣言という場合において、狭い意味を持つ観念としては、本来狭かるべき六十一条の二の場合においては、広い公安という言葉を用いている。法の企図するところの目的というものとおよそ相反したところの用語例が用いられている。これはよくないと思う。こういう点は、大いにあなたたちの考え方が誤解される虞れがある。この点は、統一用語ということを重ねてはつきり法務総裁からでもおつしやつて頂きたい。あとの指示になると思います。
#44
○国務大臣(木村篤太郎君) 公安維持上必要というのと、治安維持上必要という意味は、差別はないのであります。決して差別的に使つた意味じやございません。
#45
○委員外議員(伊藤修君) 若し修正されるようなことがあるといたしますれば又修正されるべきものと存じますが、そういう場合においては、この用語例は統一されたいと思うのであります。
 次にお伺いいたしたいことは、六十一条の二の場合は、運営管理のみを含むというお考えのようでありますが、その場合においては、即ち警察法の第二条に列記されたところのものは総て含むと解釈してよろしうございますか。その中に、特段にこれを除去する、除外するものだという御意思はあるのですか。その点をお伺いしたい。即ち「この法律において運営管理とは、左に掲げる事項に係るものをいう。」とあるのです。これがことごとく入るかどうか、そういう考え方であるかどうかということを伺いたい。
#46
○政府委員(斎藤昇君) どれが入る、入らんということは非常にむつかしいのでありますが、これらの中に特に必要であるという事項のみを指示すべきだと考えまするので、例えば生命及び財産の保護、これに対する一切のことと言うよりは、生命財産の保護上特に必要なものだと言うように解釈をいたしたいと思います。それは、特に必要である場合という点から考えられるのでありまして、犯罪の捜査、被疑者の逮捕ということもありまするが、普通の現行犯或いは準現行犯というような言葉につきましても、その逮捕をする態勢でありまするとか、或いは捜査をする態勢、例えば他の自治体警察から応援を受けるというような指示は場合によつては必要かと考えます。捜査内容自身は、只今のところ恐らくここで指示をされるというような場合はなかろう。技術的に考えまして、そういうことはなかろうと私は考えます。
#47
○委員外議員(伊藤修君) どうも重要な職責にあなたいらつしやるのですが、只今の御答弁によつて、六十一条の二の場合は、運営管理のみを指しているのだとおつしやつておるにもかかわらず、その内容の点についてお尋ねしますと、はつきりしないのですね。二条の場合は入るのか、入らないのか、明確でない。基本的に入るというのなら、私はこれに対するところの特例を、特にこの法文にあるすべての「公安維持上必要な事項について」という、その必要な事項を指示することができるのじやないでしようか。私はこの表現、法文の立て方から考えれば、そういう解釈ができる。念のために私は伺つておるのであります。
#48
○政府委員(斎藤昇君) この項目の範囲につきましては、しようとすればできると思います。
#49
○委員外議員(伊藤修君) これはできると解釈せざるを得ないのですよ。この場合、好んでも好まなくても……。そういたしますと、ここに問題になるのは犯罪の捜査である。第四号に、被疑者の逮捕及び犯罪の挫査ということについて、特に私は法務委員会としてもお伺いしておかなくちやならんと思う。その他の場合、一々お尋ねすることは、当委員会の職責の範囲外に属することですから、それには触れたくないと思います。今の日本の捜査機能というものの打ち立て方として、新らしい制度において、警察において独自の捜査権を持たせる。検察機能において艘査権を持つておる。これは上下の差別があるわけではない。対等のものにおいて、基本的な考え方においては私も是認します。然るにこの検察庁に対する捜査の機能に対しては、検事総長が指揮命令する。又法務総裁は指揮監督する、総長を通じて、検察庁法第十四条ですか、こういう打ち立て方になつておる。これによつて日本の治安維持及び公安の維持ということについての全機能が打ち立てられているのです。他面においては、警察制度の上において捜査権というものが打ち立てられている。これはとりも直さず公安委員会及び国警長官を通じて国家警察、自治体警察は、そこの隊長がこれを命令する。公安委員会及び隊長によつて運営されて行く。然るにこのたびの改正によりますと、今度はこの捜査の範囲について、指示についてもですよ。総理大臣が今度は六十一条の二を通じて指示をするということになる。一体日本の治安維持に対するところの基本的な問題として、捜査に対するところの権限というものが分散されて、責任者が両頭を戴くというあり方が果して是なるかどうか、これを法務総裁に対して一つお伺いしておきたい。
#50
○国務大臣(木村篤太郎君) 申すまでもなく、警察と検察との関係は、刑訴法上において厳として規定されておるのであります。刑訴法に準拠して双方相関連性は持つておるわけであります。この間、六十一条の二によりまして、ちつともその原則は変らないのであります。今国警長官が、運営管理についての警察法第二条第二項の規定を言われましたが、これも全くその意味は、検察と警察との関係、いわゆる刑事訴訟法においての原則は破られるものではないのである、我々こう解釈しておるのであります。従いまして先刻国警長官から説明いたしました通り、一般的のこの警察の連絡調整というようなことについての指示は、無論今できませんが、捜査内容に関して総理大臣が指示するというようなことはあり得ない、こう考えております。
#51
○委員外議員(伊藤修君) あり得ないということは実際上の問題ですね。法理上の問題として、この六十一条の二の立て方からいたしますれば、あり得るんですね。可能であるのです。法務総裁が知らない間に、総理大臣が勝手に指示する。その下に国警長官が活動される。法務総裁は法務総裁としての考え方は検察庁を通じてこれが行われ、末端の調整ということについては、即ち検察庁法第六条においてすべておよそ日本国内におけるところの捜査機能は、刑事訴訟法によつてこれを行わざるを得ない、こういう原則が打ち立てられておる。この原則の下にすべての捜査機関というりものは規律される。併し指示は別個の指示ができる。又第一線の諸氏は、この指示に対しまして相矛盾することがあり得た場合においては、これをどうするか。おのずから考え方の相違によつて、事物の認識の相違によつて、指示というものが異なることがあり得ることは想像に難くないのです。私は、国家の治安というものに対する全責任を政府が負われるというのなら、少くとも法務総裁一本にその責任を負うべき筋合のものである。あえて総理大臣はその法務総裁の首長として責任を負えばいい。総理大臣が直接みずから指揮監督して行くということは、むしろ私は法務総裁をないがしろにするところの立て方だろうと思う。そういう感情論は別問題として、少くとも私はそう規律せしめるというあり方のほうが正しいと思います。そういたしませんと、法理的に相矛盾した指示命令が、想像に難くない、あり得ると思うのです。この点においては、私は、この法案の立て方というのは非常によくないと思いますが、如何ですか。
#52
○政府委員(斎藤昇君) 法律上の我々の解釈を申上げておきたいと思いますが、警察法は、私は刑事訴訟法の特別法であるとは考えておりません。従つて警察は普通の一般法であります。そうして警察と検察との関係は、刑事訴訟法で定めると明記をいたしておりまするから、従つてこの警察法に基く指示は、刑事訴訟法に背反することができない、かように考えます。従つて刑事訴訟法に基きまして、検事の指示というものに反する若し指示が総理大臣にあつたといたしましても、これは私は無効であると申しますか、或いは検事の指示が優先すると申しますか、そういう指示は法律上は出せない。何となれば、こちらは一般法である。警察と検察の関係は刑事訴訟法できめる、かようにいたしておりますから、従つて刑事訴訟法に反するような指示は法律上出せない、かように解釈をいたしております。
#53
○委員外議員(伊藤修君) あなたみたいに、そういう良識のある人ばかりおればいいですが、実際第一線の諸氏が、相矛盾した指示が出た場合において、果してどういうようにこれをこなして行くでしよう。法律においてそういう余地を残すということは、およそ立法する場合において注意すべき事項ではないかと思います。少くとも、本法を仮に是認されるものとするならば、そういう疑義の余地をなくするごとく手当をしておくべきではないでしようか。例えば、私は別に今考えておるわけじやございませんが、この場合において、警察法の第二条ですか、その第二項の四号の捜査の場合においては云々という但書を設けるか何かしないと、その間におけるところの捜査で対する規律というものが打ち立てられないと思うのです。勿論今お説のごとく、およそ捜査に関しては、刑事訴訟法が憲法附属法規として重要法律であるのですから、これに悖ることのできないことは当然です。併し命令がたまたま二つ出た場合において困るのじやないですか。この法律においてそういう手当をなさる必要をお認めになりませんですか。
#54
○国務大臣(木村篤太郎君) この指示は総理大臣がするのであります。国家の最高行政責任者たる総理大臣がやる。而も国家公安委員会の意見を徴するということでありますから、普通の事務当局がさような指示をする場合と全然趣きを異にしております。従いましてさような刑事訴訟法に反するような命令は出すべきでないということは明瞭であると我々は考えております。
#55
○委員外議員(伊藤修君) だから今法務総裁がお答えになりました、公安委員会の意見を徴しとあるから、さようなことはあり得ないということをおつしやる。でありますから、十一条の二の問題を先ほど前提に指摘してあるのです。その意見を徴する、公安委員会の意見をまとめる機関は何かと申しますれば、事務部局であるのです。その事務部局が即総理大臣の補佐役たる事務部局である。意見を徴するということは、みずからの意見をそのまま徴するまでもなく、徴しなくても、その意見が即意見になつてしまう。法律の形は非常にきれいにできておる。意見を徴しとあり、別個の人格者、勿論別個の人格者であるけれども、たまたまこれを運営するものが一つの人格者であれば、およそ無意味なことです、意見を徴するということは。でありますから、結局は独善になつてしまつて、法律の予想しない、禁ずる面まで運営される虞れが十分あるということを前提に申上げておるわけであります。だからこれに対して、この原案についていま少し考慮なさるべき必要があるのじやないかと思うのです。
#56
○国務大臣(木村篤太郎君) 一応伊藤委員のような考え方もあるわけでありまするが、国家公安委員は相当有識であつて、而も警察の方面についての識見を持つておられるかたであります。必ずしも事務当局の意見をそのまま鵜呑みにされるわけはなかろうと考えております。十分にそれらの事情を慎重に考慮した上において初めて事務当局と打合せの上、総理大臣の命を受けて指示される、こう私は考えております。
#57
○委員長(西郷吉之助君) ちよつと伊藤さんに申上げますが、本会議の採決で出席を求められておりまするが……。
#58
○委員外議員(伊藤修君) もうあと少しですが……。
#59
○委員長(西郷吉之助君) それでは二時二十分まで休憩いたします。
   午後一時十九分休憩
   ―――――・―――――
   午後三時零分開会
#60
○委員長(西郷吉之助君) それでは只今より午前に引続きまして、警察法の改正案に対する質疑を続行いたします。
#61
○吉川末次郎君 議事進行について……。今審議中の警察法の一部改正する法律案につきましては、自治体警察の連合会からも、我々の手許に請願的な文書が提起されておりますことは、委員長も御承知のことだろうと思うのであります。これは自治体警察、特に東京都の二十三の特別区の警察に至大の関連性を持つていることでもありますので、適当の時期におきまして自治体警察連合団体の代表者、それは田中警視総監になるのじやないかと思いますが……。私ちよつといい間違いましたが、適当の時期に田中警視総監を参考人として招致して警視総監、警視庁側の意見を一応聴取いたしたいと思いますので、そのように御処置願いたいと思います。
#62
○委員長(西郷吉之助君) 承知いたしました。この間のは吉川さん、あれは全国の自治体公安委員会もあるのでしよう。
#63
○吉川末次郎君 それも必要があつたら、併せて一つ御招致を願いたいと思います。
#64
○委員外面員(伊藤修君) 午前中の質疑中におきまして、本法の改正案中の公安維持と治安維持との法文の表現は、字句は異なるのでありますけれども、その内容は同一であるというような御答弁がありました。それに基いてその後の質疑を続行しておつたのでふりますが、どうも御答弁をなお研究してみますというと、どうも御答弁はそのまま納得行かないものがある。と申上げるのは、この警察法の第一条を見ますと、「警察は、国民の生命、身体及び財産の保護に任じ、犯罪の捜査、被疑者の逮捕及び」とあつて、その下に、「公安の維持に当ることを以てその責務とする。」とこうあるのですね。この表現から考えましても、いわゆる公安の維持及び前段の犯罪の捜査、被疑者の逮捕ということ、即ち治安の維持というのはこの法律自体においても区別しておるのではないか。即ち治安維持の内容と、公安維持の内容は異なるのじやないか、こう私は考えるのですが、先ほどの御答弁で、それでよろしいかどうか、重ねて伺つておきたい。
#65
○政府委員(斎藤昇君) 第一条からそういう御疑問の起るという御意見は、誠に御尤もだと思います。そういう意味におきまして、私は六十一条の二の公安維持というのは、六十二条の治安の維持と同じ意味であるのに、公安という言葉を使つたのは少し軽率であつたと申上げましたが、この然らば第一条の公安の維持と同じ解釈かということになりますると、国民の生命、身体、財産の保護というような事柄についても全然指示ができない、或いは被疑者の逮捕についても……、その点は差置きますが、一番大事な生命、身体、財産の保護について指示ができないということになりますと、これは余りに狭過ぎると思います。第一条の「公安」は私は、「その他公安の維持」と、このように解釈すべきであろうと思つておるのであります。ただ先ほど犯罪の捜査の点について、若干言い足りない点がありまするから申添えまするが、一応運営管理ですから同じという解釈のようでありまするが、公安委員会は、この市町村の公安委員会にいたしましても、都道府県の公安委員会にいたしましても、個々の犯罪の捜査の内容については指示をしない、警察官に対して指示をしないという建前をとつておるのであります。従いまして総理大臣の指示は、公安委員会に対する指示でありますから、公安委員会が個々の犯罪の捜査内容について指示をしないという建前を現在とつておりまする以上、総理大臣も犯罪の捜査の内容に亙つてまで指示はいたさない建前でございます。
#66
○委員外議員(伊藤修君) いや、私のお尋ねするのは、先ほどの、午前中の答弁によつて、公安の維持と治安の維持とは同一内容を持つものだとお述べになつたから、それが違うのじやないかと、こう言うのです。その今の補足的ないろいろな御説明は抜きにして、簡単にそれをお答え願いたいのです。
#67
○政府委員(斎藤昇君) その点は違わないと考えております。実はこの用語は、関係大臣その他のところで一応指示がありまして、そこで法制意見長官ともどういう言葉を使おうかと、実際に治安の維持という言葉を初め使つたのでありますが、どうも治安の維持というのは、治安維持法に通じるような感じを与えて面白うないから、公安の維持と直そうやということできまつてしまいまして、ほかの前後の関係を検討しなかつたという、我々粗略がありましたので、意思はそういう意思であるということをさつきから申上げているのであります。
#68
○委員外議員(伊藤修君) いや、斎藤国警長官のこのお考え方は、六十一条と六十二条の場合において違いはないつもりの用語例だ、こういう意味じやないですか。が、私のお尋ねするのは、その場合において、あなたの御説明はそういう意思の下に、この文字が使用されたというならば又別ですけれども、本来この二つの用語というものは区別さるべきものじやないか。というのは、警察法の第一条においてそれがはつきり謳われているのじやないか。即も公安維持の中に治安維持は入つていないのだ。先ほどあなたの御説明は、この公安維持だけにするというと、生命、身体云々ということが抜けるというような御解釈のようですが、これはそういうやり方をすべきものうやないでしようか。第一条は、「任じ」というところから受けて公安の維持に当ることをその責務とする、こういうふうにして差交えないと思うのですが、又そういう趣旨で立法されているということも考えるのです。だから本来の法律概念としては、公安維持と治安維持とは違うのだ。併し六十一条の二の場合に、今度用いられた公安維持は、六十二条の治安維持の考え方で書いたのだというなら、これは別問題です。
#69
○政府委員(斎藤昇君) 六十一条の公安の維持は治安維持という考え方で書いたのであります。で、公安の維持治安の維持との言葉の関係で、言葉自身から申しますると、最初伊藤率員が御指摘されましたように、治安維持のほうは国家的とか、国家的な治中という意味のほうが強くなりまして、公安よりもその限度が狭くなる。公安というとこれは国の見地からの治安いうことのほかに、もつと広い社会的な意味も入つて来るので、公安のほうが広い意味であります。で、我々といたしましては、六十二条にあるごとくに、国の見地から考えた公安の維持を狭く解釈した、かように考えております。
#70
○委員外議員(伊藤修君) その考え方によれば、結局公安の維持の中には、治安維持が入るという考え方になりますね。そうなるのでしよう。併し第一条から見れば、そういうことは言えません、はつきり区別しているんですから。ですからそういう不用意な用語例をお用いになつて、法文の解釈上、後においてこれを以て規範とすれば、全職員若しくは国民が迷惑をしますよ。或る個所においてはそれを二様に使い、二つの持ち味を持たせる。或る個所においては全然区別して持ち味を持たせる。而も第一条からはつきり区別しているから、たまたま六十一条の二において、その公安維持と治安維持とが同一の内容を持つているんだ、若しくは公安維持の中に治安維持が含まれるのだという解釈をここでたまたまとろうということは、それは無理です。これははつきりどちらかに片付けべき問題だと思います。これはよく御研究になつて頂きたいと思います。
#71
○政府委員(斎藤昇君) 私は、先ほど申しましたように、第一条は「及び」となつておりまするが、併し公安の維持と申しまする場合には、生命、身体、財産の保護というのも公安の維持というふうに私は入り得るものだと、かように解釈をいたします。公安委員会と申します場合の公安委員会という言葉も、やはり第一条の全体の責任を持つという意味でありまして、ここでいう第一条の国民の生命、身体、財産、犯罪の捜査、被疑者の逮捕ということを除いた公安委員会というような意味には解釈できないと思いますので、ここの条文においてもそう解釈をする次第であります。
#72
○委員外議員(伊藤修君) 先ほどの御答弁とちよつと違つて来るのですけれども、それはあなた独自の解釈であつて、法文を素直に御解釈になれば、そういう解釈は出て来ないのです。第一条の場合には、繰返えすようですが、それははつきり公安維持、治安維持とは区別しているんです。而もその内容においては、先ほどあなたが御説明になつたように、区別される対象の幅はあります。併しおのずからその前段の生命、身体、財産、の保護ということはこれにかかつて来るのです。いずれも個々の目的のために治安を維持し、個個の目的のために幅の広い公安を維持する、こういう書き方になつているんです。従つて法の企図するところのものは、公安維持と治安維持とはおのずからそれが違うということは十分窺い知ることができるのです。そう解釈すべきことが法文の解釈として当然だと思います。そういう原則に基いて、今度の改正案の六十一条の二と六十二条とを対比した場合において、用語例というものははつきりわきまえて書いてないという節があるのです。結局六十一条の二の場合は、治安維持を含まないという解釈が出て来るのです。本来幅の広い非常宣言の場合においては、狭い治安維持ということに解釈され、それ自体に至らざる今度の改正案の場合においては、それより幅の広い公安維持ということが企図されるという反対な目的のために、これが創設されるということになつて来るのです。まあその反対の場合が非常にあるというならこれは又別問題ですが。それから今度もたらされるところの結果において、重大なる影響を持つて来るというのは、六十一条の二の場合においては、公安の維持という中には、おのずから治安維持が入つて来ないということになりますと、逮捕とかいうことがおのずから除外される、捜査ということから除外されるという結果、あなたたちのお考えになつている目的は達せられないことになつて来ます。だからこれは、あなたがたの治安を維持しようという考え方が納得できるのですが、率直にこれは御研究になつて、再考なすつたほうがいいのではないでしようか。
#73
○吉川末次郎君 今のに関連して、大体この警察法は、マツカーサー書簡、好ましくないことでありますが、事実上GHQのデイレクテイブのようなものによつて作られたと思うのですが、従つてこの向うのデイレクテイブや、マツカーサー・レターに、それについてどういう言葉が使われておつたかということを、直ちに法律の解釈にそれがあてはまるわけではありませんが、参考資料にすべきもので、飽くまでも法律解釈は日本の文字によつて解釈していると思いますが、まあパブリツク・セーフテイという言葉を公安という意味において釈しているのだろうと思うのですが、それは両方ともパブリツク・セーフテイというような英語になつておつたかどうかということについて御答弁願いたいと思います。
#74
○政府委員(斎藤昇君) マツカサー書簡ではございませんが、警察法の英文は、今そのことをおつしやつたと思いますが、英文は、第一条の公安の維持はパブリツク・セーフテイと書いてあります。それから六十二条の治安の維持はメインテーニング・ピースアンド・オーダー。
#75
○吉川末次郎君 治安は……。
#76
○政府委員(斎藤昇君) はあ。
#77
○吉川末次郎君 違いますね。
#78
○政府委員(斎藤昇君) 違います。
#79
○吉川末次郎君 もう一度更に関連して伺いますが、今の斎藤長官の御答弁によると、英語では、伊藤君が言つておられますように、それは原語が違うわけであります。原語と言うと語弊がありますが、英語は違うと思います。その英訳ですが、その英訳はどこの英訳なんですか、はつきりしておく必要があると思うのでお伺いしますが、それは例えば自治体警察という言葉の翻訳を向うのオリジナルなデイレクテイプ或いはレターにおいては、今日も本会議で引用したのでありますが、ミユニシパル・ポリス、略してMPという言葉を使つているのです。都市警察と訳すべきにかかわらず、自治体警察と訳されたのですが、そうすると今度は国警本部から出されているところの警察の英訳によりまするというと、オリジナルなミユニシパル・ポリスという言葉を使わないで、何でしたか、オートノマス・ポリスですか、全然違う言葉を使つておられますが、その関係どうですか。
#80
○政府委員(斎藤昇君) 原文ではオートノマス・ポリスとありまして、ミユーニシハルではありません。
#81
○吉川末次郎君 そうですか。今の問題は他に触れますから、これ以上言いませんが、斎藤長官の御答弁は、それについていろいろ資料を要求してみたときには必ずしも回答しておりませんか、そんなことは伊藤君の質問をほかに外らす虞れがありますからこのままとめておきますが、斎藤君の答弁はそのまま承服していないということだけ言つておきます。とにかく今の私の質問について、伊藤君が言つておられるように、英語では、第一条の公安の維持ということと治安の維持ということとは違う言葉になつていることは、斎藤長官の答弁によつて明白になつたとまあ思われる。
#82
○委員外議員(伊藤修君) それは、今の吉川氏の沿革論的な解釈ということも法文解釈の一助であることは当然のことです。それによつても、法文の趣旨解釈については、重大な影響をもたらすでしよう。併しこの用語例から言つても、又法文の立て方から言つても、文理解釈から言つても、私の希望は当然だと思います。従つて斎藤長官のおつしやられることは、私は根拠のないものだと思うのです。従つて今ここで以て結論的な御解釈を得ようという考えは持つておりません。少くともこれは法務府において十分研究されて、御答弁があつて然るべきだと思うのですが、それとも今の解釈で以て押し通すというお考え方ですか。それをはつきりして頂きたい。
#83
○政府委員(斎藤昇君) 更に研究をいたした上、御答弁をいたします。
#84
○委員外議員(伊藤修君) この点は、重大な基本的な解釈問題になつて参りますから、それが改正案に対するところの基本理念を打ち立てることになりますから、爾後の質問もその下においてなされなくては意味をなさないと思うのです。今時間の関係もありますから、これは、どうか一つ至急に御答弁を伺つておきたいと思うのです。
 なおもう一つ、午前中に御答弁になつた、いわゆる指示に矛盾があつた場合においては、総理大臣の指示、それは無効だという御答弁があつたのですが、この点も私は、あなたの衆議院の御答弁を拝見しますと違つておると思うのです。又行政法上総理大臣がなしたところの指示が無効、当然無効という結論が見出せるかどうか、法律解釈上それはどうですか。
#85
○政府委員(斎藤昇君) 無効と申しましたのは、或いは言い過ぎであるかも知れませんが、とにかく刑事訴訟法の定めるところによるとあるわけでありまするから、刑事訴訟法と背反をした指示は出せないということを強調いたした次第であります。
#86
○委員外議員(伊藤修君) 出せないいうことは具体的事実ですが、ただ法理上、出した場合にどうなるか。こういうのです。あなたは事実をおつしやつておるのですが、理論的には出し得ることになるのですが、出した場合にはどうなるか。これは当然立法者として考究しておかなければならん。又そういうことは、立案者としては予見して立法されなければならないのではないですか。
#87
○政府委員(斎藤昇君) 出した場合には、法律に、刑事訴訟法の定めるところによるというわけでありまするから、そのほうが優先すると私は思います。
#88
○委員外議員(伊藤修君) それでは、今朝の当然無効だということは取消になるわけですね。
#89
○政府委員(斎藤昇君) 優先をいたしまするから自然無効になると、かように考えていたのですが、これは法律上の用語として不適当であるならば、優先をするというにとどめ、当然無効ということは取消します。
#90
○委員外議員(伊藤修君) そうして余り議論をしておると、きりがないですからやめますが、無効になるという言い方はちよつと間違つておる。だから優先するという程度にとどめておこうとおつしやるのですから、趣旨はよくわかる。そういう解釈はあり得ないと思います。次にそういう結果生ずるところのこの刑訴の百九十三条等に基くところの一般指示権、それから総理大臣の出すところのこの六十一条の二の指示権、この関係はどうなりますか。
#91
○政府委員(斎藤昇君) 百九十三条の指示は、刑事訴訟法でありまするから、それに背反する指示はいたせないと、先ほど御答弁いたした通りであります。のみならず、捜査の内容につきましては、公安委員会も個々の内容には指示をしないという建前をとつておりまするから、公安委員会に対する指示でありまするから、総理大臣もさような指示はしないという建前をとつておるということを申上げた次第であります。
#92
○委員外議員(伊藤修君) これは私は、今朝ほどのいわゆる運営管理をも含む、而も治安維持と公安維持とが同一内容をこの場合においては持つておるのだという前提の下にお尋ねしたわけです。だから六十一条の二の場合においては、運営管理の内容として捜査もなし得る、捜査に対するところの指示もなし得るという観点に立つてお尋ねしたわけです。それが誤つているかどうかということは、あなたのほうのさつきの答弁によつて又決せられる問題であろうと考えます。その観点に立つてお尋ねするわけです。そういたしますと、結局検事総長の一般指示があつた場合においては、総理大臣の指示というものは、先ほどの当然無効という言葉はお取消になつたが、少くとも効力を生じないのだ、又もう一歩進めて考えますれば、これを遵法しなくても、その官吏はそれによつて職務規範に違反しないのだ、だから懲戒処分その他を受けることはあり得ない、そういうことになりますね。
#93
○政府委員(斎藤昇君) 検事の指示に従いません場合には、警察官は罷免の訴追をされることになつておりまするから、この公安委員会に対する総理の指示には何ら罰則、制裁はついておりません。而もこれは公安委員会に対する指示でありまして、検察官吏、検事のなしまするごとく、警察官に対する指示ではございません。
#94
○委員外議員(伊藤修君) だから検事が司法警察官に対するところの懲戒その他の請求権を持つておることは当然でありまするけれども、いわゆる一般指示権の場合ですね。検事の一般指示権の場合において、これも私は競合することがあり得ると思うのです。即ち六十一条の二の場合の指示権が運営管理まで含む。従つて当然二条の二項の四号の捜査の権限に対する指示をも含むということになりますね。それと刑訴百九十三条第一項の一般指示権とが競合することになる。例えば、或る一つの経済事犯、若しくは会社の法人税に対するところの一般的指示をなす場合において、それも総理大臣の指示権と又相違する。又治安維持に対しまして、法律の運用について検事総長が一つの指示を与える。総理大臣がこれに対するところの又異なつた指示を与えるということがあり得ると思うのですが、そういう場合どう処置なさるおつもりですか。
#95
○政府委員(斎藤昇君) 私が先ほど申しまするように、犯罪の捜査内容について指示はしない建前であると申上げましたからその点は起らないであろうと思いまするが、或いは捜査内容でなくつて、先ほどから申します通り、若しあるといたしました場合におきましても、たびたび申しておりまるように、刑事訴訟法の指示に背反はできないわけでありまするから、さような指示はいたせない。殊に国家公安委員会と検事総長は絶えず密接なる連絡をとるべしということが警察法にも書いてあるわけでありまするから、さような際にも検事総長と密接な連絡を当然持つ。犯罪の捜査内容について指示があると仮定いたしましても、この規定で密接な連絡をとるということで、さようなことはない。法律解釈といたしましても、先ほど申しましたようにそういう指示は出せないというのでありまするから、私はさようなことは起らんであろうと思います。
#96
○委員外議員(伊藤修君) それから密接な連絡をとるということは、法律の理想であります。又法文にもそれは明らかにしてあります。又そうあるべきが当然のことと思うのです。併し運用するのは人であります。又その人の企図するところのものが奈辺にあるかによつては、その運用の方法が違うのです。従つて指示の内容がたまたま齟齬することがあり得ると思う。現にこのたびの破防法の取扱いに対しましても、やはり一般的指示ということが行われておる。これは百九十三条において、私は当然なされ得るものと考えております。この場合において、現に国家公安委員会においては、これに対するところの指示に対して、少くとも反対の意見をお持ちになつていうつしやるという場合も現実に起つて来るのじやないでしようか。かくては法務総裁が、いわゆる治安維持の目的を達し、国家の治安に対して政府が政治責任をとるというときにおいても、相互に矛盾した関係ができて来る。又矛盾した方向に進まざるを得ないという始末になつて国家の企図するところの治安維持がその目的を達成できないとう不合理な結果を招来するのじやないでしようか。この点に対して如何ですか。
#97
○政府委員(斎藤昇君) 法務総裁、検事総長の警察に対する一般指示それから総理大臣の公安委員に対する指示、それが違つた場合ということをおつしやいますが、警察を担当せられる大臣が、現在は法務総裁になつて一人であります。たとえ変りましても、総理大臣のところで調整をされると思いますので、先ほど申しまするように、それよりは、法務総裁或いは検事総長の刑事訴訟法に基く指示は、検察と警察の関係を定めるのは刑訴であるということになつております以上、それに相反するようなことは、私は、強いて法律を無視してやる場合があつたらどうするかというお尋ねだと思いますが、私は、法律を無視してやつた場合にどうなるかというお尋ねにつきましては、これ以上お答えするわけには参らないと思います。
#98
○委員外議員(伊藤修君) 失敬なことを言うではないか。法律を無視して……いやしくも我々は法律を無視してやる場合は想定しておりませんよ。この法律の建前、解釈上、当然そういうことがあり得るということを言つておるのですよ。合法的にはやり得るということを言つておるのです。法律を無視した行動は、総理大臣であろうが、国会議員であろうが、法務総裁であろうが、すべてそれに対する遵法的な立場に立つ者はあり得ない。そういう非合法的なことを私はお尋ねしているわけでない。それは共産党に対する答弁ならばそれでよろしい。少くとも私に対して、そういう仮定の下にあなたが御答弁になつておることは納得が行かないのですな。そうじやないですか、あなた。検事総長の破防法に対する取扱に対して、国民は挙げて反対しておるではありませんか。その矛盾をどうするか。現在あれに対するところの、国家警察に対するところの態度はいいと考えていらつしやるのですか、基本的にも、先ほどからの御答弁を伺つておれば、少くとも検事総長の一般的指示権において肯定されるべき筋合いではありませんか。私は、現在そのような、破防法の運用というような重大な、いわゆる法務総裁は生命を賭けてもこれを支持して国家治安を守ろうというような重大法案の施行に当つて、その緒戦からすでに問題を起しておるじやないですか。故に私は遠廻しに柔らかくお尋ねしておるのです。それをあなたが率直に、私にそういうふうにおつしやるならば、私ははつきりその点を伺つておきましよう。
#99
○政府委員(斎藤昇君) 私は法務総裁と総理大臣と所見が違うということになりましても、仮にそういう場合があるとしましても、必ずや調整されるということを言つておるのであります。只今例に引かれました問題につきましても、必ず円満に法務総裁の下で調整されると私は信じております。只今そういう相談をいたしておりますので、私は検事総長の指示には一切従わないという考えは毛頭持つておりません。
#100
○委員外議員(伊藤修君) 勿論賢明なる法務総裁であらせられるから、それに対するところの調整は速かに行われる、そうして法の企図するところの目的を達成し、国家治安を確保されるということは期待してやまないのです。又そうであるべく、又必ずそうなされるものと私は信じて疑わない。併し問題はこの問題に限りません。今後幾多の治安上において、公安維持の土において問題を生じ得ると思う。一つの拙査権が単一に発動する場合はよろしい。今日の法行体制のごとく、捜査権が検察庁にあり、警察にあると、こういう場合において、屋上屋を重ねるがごとき、こうしたいろいろな改正が行われると、指示が二途にも三遂にも出て来る。それをどこで調整するか。それは、あなたの今朝ほどの御答弁のように、当然無効だと言つて片付けてしまえば問題はないが、およそ行政的命令というものが当然無効だということはあり得ない。その地位、その権力、その法制の上に立つて行政的命令がなされるのですから、当然無効ということはおよそあり得ない。一応その命令というものは、形式的において有効として存在する。その場合において下級官吏、第一線の官吏というものが、いずれの指示に従うべきかということは非常な問題です。それを事細かにやりますれば、肝腎な容疑者は逃げてしまう。治安の確保なんということは到底期すべくもありません。それを憂うるのです。折角法務総裁が努力なさつても、第一線のそういうかたがそういうことで摩擦を起しておつたのでは何にもならん。だから基本的に言えば、先ほどからの御答弁の全趣旨を総合しますれば、百九十三条のいわゆる検察官の指示といいますか、検事総長の一般的指示権というものが優先して、少くとも捜査については、この六十一条の運用の場合においても、その下にすべてが帰一されると、その基本的原則は結局検察庁法第六条の規定に基いておよそ捜査に関するものは、刑事訴訟法の下においてすべて帰一されると、こういう行きかたにあるべきだという基本原則を御承認なさるといたしますれば、今度のような問題は起り得ないと思うのです。各自が独立して捜査権を持つておるのだ。だから検察庁の下に警察があるのじやない。その指示の下に立つて命令を受けるということは好ましくない、こういうあり方は、私はよくないと思うのです。あなたたちが一つの指示命令をなさる。又検察庁のほうが指示命令をなさる。この検察庁の出す場合は、少くとも刑事訴訟法のこの原則に基いて出すのだから、これが優先してこれにすべてのものが帰一されるのだ、命令に服従するのではない、帰一されるのだという考え方の下に運営されるならば、それは法の目的は達成されるのだ。そうじやなくて、二つが有効に存在して、二つがどこまでも並行的に進むものであるというお考え方であつて、それをどつかで調整するというならば、法文の上に調整しておかなければならん。これは法案自体に要請されるのですから、それを六十一条の二の場合において、私は当然予見ざれる事項であるから、この改正においては、そうした大きな支障をもたらす根拠を与えることになるというのです。極端な例を以ていたしますれば、総理大臣は非常事態宣言に至らざる前において、例えば思想犯に対してはこうである。選挙違反に対してはこうである。或いは公安取締については、集会結社はこうしなくちやならんという一つの指示を出される。併し検察の捜査の面から考えた場合において、この事態を収拾するのには、福島ならば福島だけで手を着けてはいけない、総合的に手を着けなくちやならん、一つ所に手を着けたならば、却つて全体的の事案というものを剔抉することができない。こういう全体的に考えた捜査方針というものがあるから、これは法文にあるところのいわゆる公安を維持するために当然必要な一般的指示事項である。これは、そういう観点の下になされたところの検事総長の指示というものは、まさにあなたの先ほどからの全説明の趣旨を総合いたしましても、当然そこに帰一さるべき筋合いのものであると思う。だからと言つて、その指示の下位に立つのだ、命令服従の立場に立つのだという趣旨ではなくして、職責は飽くまで捜査という面において対等の地位において、その職務は執行されるのだ、併し法律の解釈としてそういうふうに帰一されて行くならば納得が行くのです。そうではなくして、両者おのおの行つて、そうして最後にどこかで帰一するんだ、調節するんだ、法務総裁が善処するんだ、その時々において協議するのだというあり方であれば、この本法の改正の場合において、その点をはつきりさして置くべき筋合だと思うのです。如何ですか。
#101
○政府委員(斎藤昇君) 大体において私はその意見は認められないと思うのであります。法務総裁、検事総長、検事正の警察法或いは刑事訴訟法に基いた指示、これは犯罪捜査上誰もが指示に従つてやるべきものである。従つてそこに指示があつた以上は、それに、帰一するということが当然と考えられる。この場合に、総理大臣が犯罪捜査内容について指示をするということを前提としておられますが、私は、捜査の内容につきましては、公安委員会自身も捜査内容については指示をしないという建前をとつておるわけでありますから、総理大臣は、公安委員会に対する指示でありますから、捜査の内容についてどういう捜査方針を立て、どういうことをやるという、そういう指示は建前上ないと申上げておるのであります。従つていろいろ仮定の下におけるお尋ねでありますが、私は、この法律に関する限りにおきましては、そういう問題は起きないと思うのであります。
#102
○委員外議員(伊藤修君) 私は、何も仮定の上ではなく、現実の上に立つてお尋ねしておるのです。又具体的に事犯の内容の捜査の指示をできないことは法文の解釈上当然のことで、そんなことは言うを待たないんです。百九十三条の二項の場合は、協力を求める、第三項の場合は、検察官の掌中に入れてこれを運用するというあり方ですから、この場合においては、当然その原則として具体的事犯の捜査内容にタツチすることになる。指示することになります。少くとも百九十三条第一項の場合においては一般的の指示である。従つて破防法の取扱いについてはこうすべきだ、こうしろということは一般的指示の内容であります。又この六十一条の二の場合においても、又その程度の概念において指示がなされるべきだ、それがひいて以て具体的個々の事案に対して、その一般的指示の範疇において制約されることはあり得るのです。併しそれは指示の反射効力で、指示がよつて以てもたらすところの効果です。だからと言つて、その指示自体が直接犯罪の内容の指示に亙るものであるという解釈は余りに行過ぎであります。そういう意味において、このたびの問題が起されておるということは、私は好ましくないと思うのです。そういう結果的の問題をも考えて、重大な問題に対するところの一般的指示を拒否するがごとき態度にあるということは、私は今日の憲法の重要な附属法規であるところの刑事訴訟法の大原則を無視するものであると言わなければならん。あなたの先ほどからの御答弁は、それに帰一するとおつしやつている以上は、それに従うべきが当然であろうと思うのです。或いは破防法の濫用、今後起り得べきところの、そういう想像されるところの重要犯罪、治安関係に対する問題について、今後幾多の指示があり得ると私も想像されるんです。その場合において、今回のような問題を招来することは、国家治安保持のため好ましくないと思うのです。法務総裁の御意見を伺いたいと思います。
#103
○国務大臣(木村篤太郎君) 誠に適切な御意見と存じます。ただ実際問題といたしまして、検事総長と国家公安委員会とは、これは御承知の通り密接に終始連絡をとつて行かなければなりませんが、そうして本件の場合における総理大臣の指示は、国家公安委員の意見を徴してやるわけでありますから、その間の調節は十分にやつて行けるかと考えておりまして、従いまして今お説のような、刑事訴訟法を無視しておるというような指示というものが、これは事実上ないと、こう確信をしております。その間の調節は十分やつて行けると私は思つております。
#104
○委員外議員(伊藤修君) 最後に、私は事実上そういうことはないことを望むものでありますけれども、法文の解釈上、又建前上そういうことがなし得るということは、法律の不備であります。凡そ法律はあらゆる場合を想定して、すべてこれを規定することが法律の生命である。事実上或いは泥棒するものがない、人を殺すものがあり得ない、だからそういう法律を作らんでもいいのだという御議論と同じことにたる。我々は人を殺すことを好まな。あり得ないという場合においても、若し誤つて人を殺すような不心得の人間ができた場合においては、これを死刑若しくは無期、三年以上の懲役に処す、こういうふうに規定しておるこが法律の理想である。よつて以てすべての我々の行為の規範というものを示している。況んやこうした国家の権力に基くところの行政規定というものに対しましては、当然これに対しまするところの規律、規範というものを明確にする必要が私はあると思うんです。国民はそれに立つて生活をするんですから。それが如何ようにも運用される、こういうありかたは好ましくないと思います。又殊にこの法律の持つところの、只今御答弁中にもありましたごとく、公安委員会に諮問いたしまして、聞いて意見を求めてやるのだから、万々そういうことはあり得ないという仰せでありますけれども、今朝からも申上げましたごとく、この公安委員会が即総理大臣の懐刀だ、総理大臣の意思をかりる人だ、意思をきめる人と聞く人と一緒だということは、その点において、この運用というものがすでに根本的に成り立たないと私は思うのです。これはですね。法務総裁が内閣の法律の最高顧問としての地位を保たれる以上は、十分私は、この点は御研究を煩わしたいと思います。又地方制度の委員会諸氏においても、この点は根本的にお考え下さいましてお互いに政党政派を超越して、十分御研究を煩わしたいと思います。あえて私は、本法案に対して反対とかどうとかいうことを申上げるのではなく、法律的にこれをべついたしまして、今朝ほどから指摘いたしましたような点において相当疑義がある。この疑義は、少くともこの法律を改正される場合において、解決しておいて頂きたい。その解決の方法は、皆さまのお考えによつて、どういうふうに御解決なさろうと、これは当委員会におけるところのお考えによることは当然でありましようから、どういうふうに解決しろと、私はここでおこがましく指示するわけではありません。少くとも、今朝ほど指摘いたしましたごとく、疑義は十分考えられる。況んや殊に公安維持や、いわゆる治安維持との基本的なこの解釈というものが、この法律の解釈の根本をなすものであるから、これを先ず明確にしておいて頂いて、その上に立つて、この法案の審議を一つ煩わして、どうか万全を期して頂きたいことを委員諸氏にお願いをしまして、私の質問を終りたいと思います。
#105
○委員長(西郷吉之助君) それでは、本日は警察法はこの程度にいたしまして、公職選挙法の修正案について協議をいたしたいと思います。
#106
○吉川末次郎君 議事の進行に関連してでありますが、過般或いは委員長との私的会談であつたかも知れませんが、或いは公式の委員会で申上げたのか、私はその点はつきり記憶をしておらないのでありますが、ともかくも委員長に対して、目下公職選挙法の改正につきましては、非常に新聞紙上等政治問題化して、当事者からもいろいろ本法に対して働きかけもありますので、知事その他の公務員の立候補制限に関する問題であります。その問題については、憲法との関係がいろいろ論議の対象になつておりまするので、憲法専攻の専門家を数名参考人として至急この委員会に呼んで、意見を我々が聞く機会を作つて頂きたいということが第一点、それから第二点は、そうした今の問題につきまして、法律上同様の事例を規定いたしておるところのものがほかにあるかどうか。あるならば、それを一資料として提出してもらいたい。例えば裁判官がその任地において、弁護士を開業するのについては、何年かのやはりそれについての制約があるというようなことも、私はよく、非常に忙がしいものでありますから、調べてありませんが、そういうことも多少了知いたしておる次第でありますから……。一例を挙げますならば、今のような裁判官の弁護士の開業に関するところの法律上の制限等の問題と同様なる事例がほかにありますならば、それをすべて抜出して、そうして我々の資料として提出して頂きたいということを曾つて委員長にもお願い申上げた次第でありますから、右の二つのことを、我々の審議上必要であると思いますので、至急そのようにお取運びが願いたいということであります。
#107
○委員長(西郷吉之助君) 承知いたしました。
 ちよつと休憩いたします。
   午後三時五十二分休憩
   ―――――・―――――
   午後四時二十四分開会
#108
○委員長(西郷吉之助君) では委員会を再会いたします。本日はこの程度で散会いたします。
   午後四時二十五分散会
ソース: 国立国会図書館
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