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1947/11/06 第1回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第001回国会 本会議 第55号
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1947/11/06 第1回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第001回国会 本会議 第55号

#1
第001回国会 本会議 第55号
昭和二十二年十一月六日(木曜日)
    午後二時四十七分開議
    ━━━━━━━━━━━━━
 議事日程 第五十四号
  昭和二十二年十一月六日(木曜日)
    午後二時開議
 第一 昭和二十二年度一般会計予算補正(第六号)
    ―――――――――――――
  一 國務大臣の演説に対する質疑(前会の続)
    ━━━━━━━━━━━━━
#2
○副議長(田中萬逸君) これより会議を開きます。
     ―――――・―――――
 第一 昭和二十二年度一般会計予算補正(第六号)
#3
○副議長(田中萬逸君) 日程第一、昭和二十二年度一般会計予算補正(第六号)を議題といたします。委員長の報告を求めます。予算委員会理事川島金次君。
  ―――――――――
 昭和二十二年度一般会計予算補正(第六号)に関する報告書
 [都合により第六十一号の末尾に掲載]
  ―――――――――
   〔川島金次君登壇〕
#4
○川島金次君 去る十一月五日本委員会に付託されました昭和二十二年度一般会計予算補正(第六号)の内容及びその審議の経過を御報告いたします。
 この予算は、國家公務員法の施行に伴う臨時人事委員会の設置に要する経費百八十一万六千円の追加に関するものであります。臨時人事委員会の経費としては、昭和二十二年十一月以降本会計年度末までの五箇月間において、國家公務員法施行準備の事務を処理するために、百六十二万八千円が計上されております。しかしながら行政調査部においては、公務員制度改革の調査研究及び立案事務等を臨時人事委員会に移管するに伴つて、既定予算のうち二十万円が不用となりましたので、これを修正減額いたしております。從いまして、これを差引いた行政部費の純増加額は百四十二万八千円となる次第であります。
 次に、内閣所管の行政共通費といたしまして、臨時人事委員会の新規増加人員に伴う給與特別措置費の追加額十八万八千円が計上されておるのであります。結局、この予算補正第六号の歳出純追加額は百六十一万六千円となるわけであります。なお、この経費の財源といたしましては、前年度剩余金をもつてこれに充てております。
 この予算六号につきましては、十一月五日、本委員会において政府側より、おおむね以上のごとき内容の説明がありましたが、これに対する質疑應答がありませんで、全員一致可決された次第であります。
 これをもちまして、昭和二十二年度一般会計予算補正(第六号)に関する委員会の報告といたす次第であります。
#5
○副議長(田中萬逸君) 採決いたします。本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長の報告の通り決するに賛成の諸君の起立を求めます。
   〔賛成者起立〕
#6
○副議長(田中萬逸君) 起立多数。よつて本案は委員長報告の通り可決いたしました。(拍手)
     ―――――・―――――
 一 國務大臣の演説に対する質疑
                (前会の続)
#7
○副議長(田中萬逸君) 昨日の西村榮一君の質疑に対し、内閣総理大臣及び大藏大臣より答弁のため発言を求められております。これを許します。内閣総理大臣片山哲君。
   〔國務大臣片山哲君登壇〕
#8
○國務大臣(片山哲君) 西村榮一君の申されました、この危機を突破するために政治力を集結しなければならない、これを強化しなければならないという御意見には、同感であります。政府もこの点に非常に留意いたしまして、最大の努力を拂おうと考えておるのであります。
 私は、國民大衆の生活を向上し、その職業、生活の安定をはかりたいということを念願いたしておるのであります。これを実現するためには、現下わが國の経済情勢、産業の状態、財政の問題等をにらみ合わして考えてみますときに、敗戰のために、まことに今日の経済の状態、産業の状態が憂うべき状態に押し出されておるのであります。何とかしてこの恐るべき危局を救わなければならない、インフレを防止するために全力を傾倒しなければ國民生活の向上をはかることができない、かように考えるのであります。今日ほど國民生活と國家経済と緊密なる有機的関係におかれているときはないと思うのであります。どうしても産業の発展をはからなければならない。経済の隆盛と財政の健全とにらみ合わせまして、各種の対策を立てていかなければならないと考えまして、インフレ防止のために全力を傾倒いたすことを中心として財政計画を立てておるのであります。これがために財政緊急対策を立てまして、その実現に邁進いたしておるのであります。政府は、このために陣頭に立つて、國民大衆の向うところを、実をもつて現実的にこれを指示いたしたいと考えておるのであります。
 しかし、何分にもこの経済緊急対策を実現いたすのにつきましては、八千万の國民大衆の生活問題、産業問題、事業関係等に影響いたすことでありますから、速急にこれを実現することは非常に困難を覚えるのであります。食糧問題の例をとつてみましてもおわかりでありましようが、食糧問題を解決するためには、食糧の増産をはかつていかなければならない。供出問題、配給機構の円満なる進行を企図いたさなければならないのであります。また戰爭のために破壞されておりますところのわが國の産業を建直そうと考えておる問題を取上げて見ましても、戰前と比較いたしまして、生産力が三分の一に落ちておる。こういう状態を一日も早く建直さなければならないというところに重点をおきまして努力いたしておるのであります。なかなか性急にこれを考えましても、その実現に非常な心配をいたしておるのでありますが、全力を盡しまして生産の増強に邁進しようと考えておるのであります。
 つきましては、國民の協力を心からなる理解によつてお願いしなければならないと思つております。國民の理解ある努力、國民の心からなる協力、私はこの意味において國民の耐乏生活を願つておりますわけでありまして、耐乏は一にむだを排除し、消費を節約いたしまして、國家再建のために、産業の発展のために努力してもらいたいという意思に出でておるにほかならないのであります。こういうわけで、政府は國民に轉嫁いたしまして、あるいは勤労大衆の犠牲によつてインフレを防止しようとは考えておりません。政府の責任において、政府が陣頭に立つて努力いたしておるのでありまするが、この努力について國民の理解ある協力を求めたいということを念願いたしております。
 つきましては、政府はさらに來年度の予算編成にあたりましても、この追加予算を編成するにあたりましても、それら一連の関係につながつておりますところの重要なる國家産業再建の問題を愼重に考慮いたしまして、最善の努力をいたしておる次第であります。どうか指導的立場に立たれますところの諸君の十分なる御支援を賜わりたいと存じておる次第であります。以上をもつてお答えに代えたいと存じます。(拍手)
#9
○副議長(田中萬逸君) 大藏大臣栗栖赳夫君。
   〔國務大臣栗栖赳夫君登壇〕
#10
○國務大臣(栗栖赳夫君) 國民経済の健全化の必要ということ、健全財政には健全なる國民経済の上に立つことの必要なこと、收支の均衡のとれた、物の裏づけのある予算でなければならぬこと、なおまた地方財政を整える必要のあること等につきましては、まつたく西村議員のお説の通りであります。今次予算の編成にあたりましても、極力資材との見合いに努めまして、これが実施の円滑を期している次第でございます。さらに支出の適正を期し、公課徴達の資源を確保いたし得るよう法的措置をも講じ、また強力なる総合施設を実施することによりまして生産面の好轉をはかり、他面貿易を促進いたしまして重要物資の輸入を懇請する等物資の供給力を増強いたし、今次予算の実行を完全になし遂げ得るように格段の注意と努力を傾倒いたしたいと思うものであります。
 次に、やみ所得の捕捉の点についてお尋ねがございました。これについてお答えいたします。現内閣も流通秩序の確立に努力しておるのでございます。当時と同樣、現実にはやみが大部分でございます。このやみ所得を押えることの非常にむずかしいということは、お説の通りでございます。しかし、これに対していかなる対策を立てておるかというお尋ねでございましたので、これについてお答えをいたしたいと思います。いわゆるやみ所得に対しまして徹底した課税をするという議論は、これらの所得者の実相、実額を把握することが著しく困難であり、かつ政務署の調査が不十分なために、國民の租税負担が適正を欠くというようなことに相なるおそれがあるのであります。政府はこの点に深く鑑みまして、國民の租税負担の適正、公平をはかりながら租税收入を確保するために、これらやみによる新円所得層の課税の充実、徴收徹底に重点をおきまして、税務機構の擴充強化、税務管理の優遇、税務運営の刷新をはかり、その調査体制を整備いたしまして、なお新円滯留の状況等、都市商工業者、やみブローカー等の調査を徹底いたします反面、大口または惡質の脱税者の摘発に努めまして、処罰の強化を行うとともに、第三者通報制をも活用いたし、実際の所得を捕捉することに努め、やみ所得者等が課税を免れることのないように一段の努力をいたしたいと考える次第でございます。
 さらに、勤労所得者の生活維持についてのお尋ねがあつたのでございます。これについてお答えしたいと思います。千八百円ベースについて、七、八、九月の赤字は何人も認めておるところであつて、至急これが補填に関して考えてはどうか、こういうお尋ねでありますが、勤労者の生活はまことにお氣の毒にたえない点もあるのであります。これをいかに安定維持するか、また赤字補填を行うかという問題につきましては、政府といたしましても目下非常に苦慮いたしておる次第であります。すでに説明をいたしました通り、財政上の負担は非常に重いのでございます。かつ新財源はまつたく乏しい点もございます点などを考え合わせなければならぬと思う次第でございます。
 次には、復興金融金庫あるいは貿易資金等まで税で賄うのはむりではないか、國民健全経済確立のためには、相当産業資金の放出の要がある、これらは公債に財源を求めていいではないか、こういうお尋ねであつたように思うのであります。なお、既発行の公債はインフレによつて実質上相当滅價しておる、なお公債発行の余地があると思う、外債発行についてもお尋ねがあつたと思うのであります。これについてお答えいたしたいと思います。復金に対する政府出資等につきましては、お説の通り公債によりましてこれを賄うことは財政法でも認めたところであり、確かに一方法と考える次第でありますが、すでに昨日申し上げましたように、今回は特に現下の諸事情に鑑みまして、公債によらないで一般收入によりまして、そしてこの公債によつてこれを賄うということを避けたのでありまして、これはやはり均衡のある予算を立てるという趣意からした次第でございます。
 なお、健全財政を確立して、そうして國際信用を高め、近い將來講和條約締結後において連合國に懇請して公債発行というようなことももちろん考えなければならぬことでありまして、それについても、いろいろ万全の準備もいたしたいと考えるのであります。なお、日本内地の公債発行につきましても、いろいろな問題が考えられるのでありますが、しかし根本の問題といたしましては、二十三年度以降の問題にこれを讓りたいと思うのであります。小手先の問題で公債を発行するというようなことでなしに、ひとつ健全財政をまずしつかりと建て直し、そうして日本の國民経済の健全化ということを十分なした上で公債発行というような堂々とした方法をとつて、そうして政府出資その他の方をもこれで賄うというような態度をも考えたいと思う次第であります。
 なお、非戰災者に対する特別税のことでお尋ねがあつたと思うのでありますが、戰災者と非戰災者との間における経済的な懸隔は、最近においては相当著しいものがあるのでありまして、これに対してある程度の負担の均衡をはかれということは、議論としても相当の論拠のあるものでもあるのであります。殊に戰時補償特別税によつて戰災者の保險金を打切つたというような点をも考えますと、その間の犠牲の不均衡を是正するということと、それとともに、また財政上の緊急に應ずるというような点からいいましても、今回非戰災者特別税を創設して、戰災を免れた家屋及び動産について一回限りの課税をするということのやむない手段をとつたのでありまして、御了承を願いたいと思う次第であります。
 なお、非戰災者特別税の課税標準につきまして、理論的にはいろいろ方法も考えられるのでありますが、何分にも終戰後二箇年を経過しおるのでありまして、終戰後の状況その他にも相当の変化をしておる今日、技術的に終戰後に遡つて課税するということも困難でございますので、やむなく賃貸價格を課税標準といたしたようなわけでございます。
 なおお説のごとく、経済再建に要する特別公債の強制割当等の方法も確かに一つの考うべき方法であると思うのでございますが、今回は現下の特殊事情、健全財政の確立ということを期しておりますような関係で、こういうような方法をとらないで、一回限りの非戰災者特別税の創設をいたしたような次第でございます。
 なおいま一つ、勤労者の生活安定についてのお尋ねがあつたのであります。勤労者の生活安定につきましては、先ほども一言触れましたけれども、まことに國民の大部分を占めるところでありまして、重大なる問題であり、また國家とし、政府といたしましても、十分愼重に考慮しなければならぬ問題であるのでありますが、この予算の面におきましても、また日本再建という建前からして健全財政をとるという面においても、やむにやまれぬ必要もあるのでございまして、双方からにらみ合わして、今回提出いたしましたような予算案を編み上げたような次第でございまして、その辺は惡しからず御了承願いたいと思う次第でございます。
#11
○西村榮一君 簡單ですから、議席から発言をお許し願います。
#12
○副議長(田中萬逸君) よろしゆうございます。
#13
○西村榮一君 ただいまの御答弁の中で、公定價格で予算が実行できなかつたときには、その予算の実行を繰延べされるかどうか、その他について御答弁漏れがあるのでありまするが、大藏大臣は病床からむりして立つておられて、大分お苦しそうな御答弁でありますから、私はそれらは同僚の議員に譲りまして、ただ政府並びに議長に一言警告を発したいことは、昨日の私の予算質問の際に、大臣は商工大臣を除く以外はすべて退席せられた事実であります。これは政党のいかんを問わず、少くとも予算の提案ということは、政府並びに各政党の政策を盛るところの重大なる案件であるのでありまして、これに対して閣僚が一人も出席しておらぬということは、しかも小なりといえども政党代表が登壇しているのにかかわらず閣僚が出席しておらぬということは何ごとであるか、私は憤懣にたえないのであります。(「ヒヤヒヤ」拍手)大藏大臣は辛抱強く、私の演説を約八分までお聽きになつたそうでありますが、この方は病氣をして、苦痛を耐えてこの席に出てきておるのであります。しかるに何ぞ、他の経済閣僚の一人も予算の審議に対して出席しておらぬということは、まことにもつて議院を侮辱するものであると思うのであります。(拍手)
 ここにおいて議長にお願いいたしたいことは、本日もかくのごとき次第でございますから、何とぞ政府並びに政党が自己の政策を明らかにするところの予算案の審議に対しましては、こぞつて各閣僚の出席あらんことを、議長を通じて政府に警告する次第であります。(拍手)
#14
○副議長(田中萬逸君) 了承いたしました。議長の意見も同樣であります。各大臣の出席を促しております。
 なお、この際一言いたします。和田國務大臣はやむを得ない用務のために外出しておられます。用務を終り次第出席するとのことであります。(「総理はどうした」と呼ぶ者あり)総理は間もなく出席いたします。
 これより大藏大臣の財政演説に対する質疑を継続いたします。荒木萬壽夫君。
   〔荒木萬壽夫君登壇〕
#15
○荒木萬壽夫君 今回の追加補正予算は、平和会議を控えて今後のわが國民経済の動向を察知せしむるものでありまして、その成行きは廣く内外注視の的であつたのであります。殊に多大の期待をもたれた貿易の再開、クレジツトの設定も、未だインフレ抑制の効果をあげるには至らず、一方日銀券の発行高はすでに一千六百億円を超え、年末には二千億円を突破すること必至の勢いでありまして、從つてまた現内閣が堅持せんとする千八百円の賃金水準も、未だ流通秩序の確立と生産増強の裏づけを見ないために、ようやく怪しくなつてきているのであります。かかるとき、いわゆる健全財政の建前が維持できるかできないかは、國をあげての関心を誘う重大問題であつたのであります。さいわいにして政府当局の御努力により、当初傳えられたがごとき巨額な赤字公債の発行もなく、石橋財政の赤字さえも解消して、九百億円台に收め得たことは、いろいろの批判はあるにしても、成功であつたと申さなければならないのでありまして、その間における当局の苦心と努力に対しましては、國民諸君とともに繰返しその労をねぎらいたいのであります。(拍手)
 しかしながら、当局のわが國力の実相に即して、その内容と影響とをしさいに檢討して率直に申しまするならば、なお種々の点において國民経済の前途に危惧の念を覚ゆるのでありまして、必ずしも無條件には賛成いたしかねるのであります。以下、私は根本的な問題の二、三について政府の所見をお伺いいたしたいと存ずる次第でございます。
 第一にお尋ねいたしますことは、今後における財政の見透しいかんということであります。昭和二十一年度の一般会計当初予算は五百七十一億円であつたものが、前後三回にわたつて追加予算の計上をみた結果、当初予算の倍額以上の千百九十億円とふくれ上つたのであります。さようなことでは、國会の予算審議権も何もあつたものではない。年間を通じまして一貫した見透しのもとに國民経済に及ぼす影響を把握するなど、思いもよらぬことだと存ずるのであります。もちろん、敗戰によつて打ちのめされたわが財政と経済と産業のあわただしき混乱の中にあつては、三回に及ぶ予算追加もまたやむなきところであつたと考えます。しかしながら、さればというて、かかる状態が漫然と繰返されることは、もちろん許さるべきではありません。政府当局の財政経済再建に対する懸命の努力と、將來に対する見透しに立つてのやむなき要求のみが、國民の納得をかち得るものと存ずるのであります。その意味におきましては、このたびの追加予算提出の時期がはなはだしく遷延したことは遺憾に思うものでありますが、物價・賃金の改訂、災害の続発等に鑑みまして、当局の絶大なる努力とともに、私は一應これを諒とする次第であります。
 ただ今後に対する政府の見透しはどうでありましようか。私の見るところでは、例の問題の公共事業費出資金等を初め、実質的には財政上の義務費とも称すべき経費がやむなく圧縮されていることや、予算單價の現実離れしておることや、租税收入その他の過大見積りのきらいあること等よりいたしまして、今年度内さらに予算の追加を必至と考えるのでありますが、政府当局におかれましては、今後さらに追加予算の提出を予定されておるかどうか。もし予定されておるとすれば、およそいかなる趣旨と内容のものであるか、一應の見透しを承つておきたいと存ずるのであります。
 第二は、歳入につきまして、なかんずく所得税についてお伺いする予定であつたのでありますが、昨日の同僚議員の質問といささか重複のきらいもございますので、省略さしていただきます。
 第三に、私は財政と金融との関係についてお尋ねいたしたいと存じます。財政と金融との関係は今日どうなつておるか。特に注目すべき点は、通例財政の面においては收支の均衡ということが計画としては非常にやかましく言われておるにもかかわらず、いよいよとなりますと、本來ならば財政の面において処理さるべき問題が、ややもすれば最も安易なる金融にその逃げ場を求めておるということであります。この点につきましては大藏大臣も御心配になつて、今後は極力この弊をなくするように努力したいと言われております。しかして、このたびの追加予算の編成においても、この点について相当の苦心が拂われておることも事実であります。たとえば、復興金融金庫に対する政府の拂込み、貿易資金特別会計に対する繰入れ等において、それぞれ四十億円、五十五億円という相当な経費を盛られておるようであります。しかしながら、さらにしさいにこれを檢討いたしますときに、まだまだこの関係には重大なる問題が潜んでおると思われるのであります。
 まずその一つは、復興金融金庫の資金の問題であります。復興金融金庫は、先般國会の協賛を経まして、その資本金を二百五十億円から五百五十億円に増資いたしましたが、この増加額の三百億円も、おそらく本年末には使いきつて、來年の一月早々にはさらに増資の必要に迫られることは、熾烈なる資金の需要からみて必至のようであります。そういたしますれば、この面から、この年末までに二百五十億ないし三百億円、さらに來年の三月末までにこれと同程度の通貨膨脹を來すことに相なると思われるのであります。と申しますのは、復興金融金庫の資金はほとんどいわゆる復金債によつて賄われるのであるが、過去の実績によれば、市中においてはさつぱり消化されず、その九割近くが日本銀行引受けとなつているような状況であります。大藏大臣は復金債の市中消化に努力すると言われましたので、大いにその成果に期待するものではありますが、約一箇年の過去の実績は、その至難なることを雄弁に立証しているのであります。問題は、何ゆえに復金債の金利を上げ得ないのか、上げ得ない事情が眞にあるならば、何ゆえに市中金融機関にその協力を求め得ないのかにあると思われますが、この点について、もつと具体的に率直に御説明を煩わしたいと存ずる次第であります。
 その二は、各種特別会計の赤字補填の問題であります。このたびの追加予算においては、政府の絶大なる努力によりまして、貿易資金、鉄道、通信の各特別会計に対し、一般会計より相当の所要資金を繰入れるという計画に相なつておるのであります。これによつて現在の物價水準を極力維持し、健全財政を固守せんとする政府の決意は、むしろ壮とするものがあるのであります。しかしながら、特別会計に対する繰入れは、一方において百億円もの租税滯納があつたり、あるいは歳入が時期的に大きくずれてまいりますときには、これらの特別会計は一時的に日銀の借入れに依存せざるを得ないのではないか、しかも、この一時的便法であるべき借入れがいきおい永続的となつて、結局最も安易なる日銀依存に逆戻りをするのではないかということをおそれるのであります。今日のような変動期におきましては、当初において予期し得なかつた事情が起り、計画の変更を來すこともやむを得ないとは存じますが、最初から承知の前で無理な計画を立て、いわゆる健全財政の美名に執着して、表面はつじつまを合わせ、実施は別だというがごときことがあつては、遺憾千万と言わざるを得ないのであります。戰爭中の物動計画というものが、いかに希望的な数字を羅列し、またいかに事態を誤り導いたか。できないものをできるとして、足もとから崩れていつたのが、われわれの苦々しき過去の惡夢であつたことを思い起すのであります。今度の追加予算の数字はかくのごとき空々しきものではないと信じたいのではありますが、この点についての大藏大臣の御所信のほどを承りたいと存ずるのであります。(拍手)
 その他本來財政資金によつて賄わるべかりしものが、予算の関係とか、現に金がないとかのために、とどのつまり金融に依存している例は相当に多いのでありますが、一々これを御披露するの煩を避けまして、この種の事例が今日では生産業界頭痛の種となつて、企業としては背に腹はかえられず、租税滯納に一時の逃げ場を求めんとする傾向さえほの見ゆるほど政府の威信失墜の徴候が認められるということを指摘したいのであります。すなわち、最近における企業の資金難はきわめて深刻でありまして、おまけに石炭不足、電力飢饉による操業難も加わりまして、企業の未拂金額はますます大きくなつていきつつあります。しかも、この中で重要部分を占めるものが実は税金でありまして、その正確なる数字は持ち合わしてはおりませんが、今後資金が逼迫すれば、この種の滯納は、個人はもちろん重要企業においてますます増大していくことは当然であります。從いまして、單純に税金の取立てを強行するならば、なかんずく大企業に対し、それに見合うところの金融措置を講じてやらない限り、納税に支障を來し、健全財政の歳入面にひびがはいるおそれがありはしないか、一考を煩わしたいのであります。
 これを要しまするに、從來ややもすれば、予算は國会において審議されるが、金融は國民や國会に対し間接的である結果、この間の事情があいまいのままに放置さるるきらいがあつたのであります。政府はこのたびの画期的な追加予算を提出したこの際、財政と金融との関係を明確にし、名実ともに健全財政堅持のための眞劍なる対策を講ずる必要があると考える次第であります。大藏大臣のもつとつつこんだ御意見を伺いたいと存ずるものであります。(拍手)
 第四に、私はさらに進んでもつと根本的な國家資金計画と物資需給計画との関係につきましてお伺いいたしたいと存じます。資金計画は物資需給計画と相並んで、政府計画の重要なる一環であります。しかるに、物資の計画は戰爭中の経驗もあり、少くとも計画としては相当進んではいますが、資金計画、特にその中の産業資金計画はどの程度の計画性をもつて立案せられているか、はなはだ疑問に存ずる次第であります。資金は物と異なり、その本質上捕捉しがたきものであり、自己資金のごとき特にしかりでありますし、加うるに、先ほど申し述べたごとく、財政と金融との関連が明白でない意味もありますので、これを計画化することの困難であることは十分承知いたすのでありますが、経済の再建をさしあたり統制によつて行わざるを得ない今日の実情から考えまするときには、資金計画は物資の計画と十分の関連をもたせて、総合的に策定せらるべきは当然であると思われまするのに、その計画と実施とがはなはだしく遊離した実情にあることは、いかに混乱している時期だからといつても、許さるべきことではないと言うよりも、そのゆえにこそ、乏しき資金と資材とを活用するために嚴密なる調整を必要とするのであります。
 けだし、資金が生産を阻害しているということは産業界の常識であります。割当てられた資材すら買えないという現象が方々に見受けられるのは、資材の割当が誤つておるのか、あるいは資金の流し方が不都合なのか、結局、物資の調整方式と資金の調整方式との間に重大なる間隙があることが、今日の財政経済運営上の一つの大きな欠陷であると考えます。
 政府は先般、当面の金融対策を発表されました。これは、物價改訂に伴い当面産業資金の需要が増大するから、一時日銀の追加信用によつて、市中の銀行を通じて金融の流通をはかるというのがその骨子のようでありますが、実はこれは作文のみであつて、ほとんど実行に移されていないようであります。と申しますのは、最近種々の事情から市中銀行の手許資金が從前よりよほど改善されてきたにもかかわらず、経済力集中排除法その他の金融不安のためもありましようが、これとは逆比例して、各産業は資金難にあえぎ、金融機関にお百度を踏んでいるという実情であります。しかして市中銀行の貸出増加高は、許容されている限度、すなわち預金増加高の五〇%にも達せず、むしろ日銀預金あるいは日銀に対する借金の返済に充てられているという珍現象を呈しているのであります。
 復興金融金庫の設立は、かかる変態期における生産と金融とのギヤツプを埋めるためのものでありましようけれども、この活用には、資金の関係から一定の限度があります。從つて今日においては、復興金融金庫をも含めて全体の資金の流れと資材の流れとを適当に調整し、この難局の打開に叡智を集中する必要を痛感する次第であります。もし、これを今日のままに放置しますならば、誠実に生産に從事する者はいよいよ苦境に追ひこめられ、やみやきわ物的な取引を追つかける者のみが栄えて、國民経済に重大なる惡影響を與えることは明らかであります。私は、中華民國において行われると言う屯積の現象が日本において次第に拡がりつつあることを直感するものでありますが、政府がこの際やみ経済に徹底的なるメスを振わず、資材の面においてかりにも機械的な総花式の資材割当に堕したり、隠匿物資を放置したり、資金面においていわゆるやみ金融や情実金融を放任するといたしましたならば、わが國の経済も第一次欧州大戰直後におけるイタリーの破局経済に近づいていくのではないかと、衷心憂慮にたえない次第であります。
 そこで私は、資金計画は資材計画との関連においていかに樹立せられているか、しかして、生産を中心とする資材の割当と雇用を中心とする金融の方式とを今後いかにして結びつけんとせられるか、この点に関し、資金と資材を総合する立場にあられる経済安定本部の和田長官に御意見を伺いたいと存ずるのであります。
 第五に、私は資金、資材の調整の問題よりさらに進んで、企業の合理化及び行政整理の問題について政府の根本方針を伺いたいのであります。と申しまするのは、先ほど來るる申し述べました財政と金融の健全性の問題を徹底的に追究してまいりますならば、どうしても企業の合理化及び行政整理を含めての日本経済の合理化という問題にぶつからざるを得ないからであります。(拍手)
 敗戰國の常とはいえ、今日の滔々たるインフレのもとにおきまして、一方的にいわば無限に増大せんとする資金の需要に対しまして、インフレを抑圧せんがためには、大藏大臣も仰せのごとく、資金蓄積の限度にこれを抑えねばならぬと同時に、他方において、必要なる生産資金と財政資金とは極力これが調達を期せねばならぬといたしますならば、まず資金需要の実相を把握して、眞にやむを得ないもの以外は断乎としてこれを抑える必要があると同時に、貿易の再開を契機として國際競爭場裡に有利な地歩を確保するためにも、はたまた積極的に外資の導入をはかる上にも、企業の合理化を中心とする日本経済自体の合理化を勇敢に押し進めるほか打開の途はないと信ずるのであります。(拍手)
 第一次欧州大戰後のドイツにおいて、例のシヤハトが金融の引締めによつて成功したことは周知の事実でありますが、政府におかれても、今日までのところ、あたかもシヤハトの故智にならつてこれを実行せんとするもののごとくであります。しかし日本の現状は、当時のドイツの場合と実は根本的に事情を異にするものがあるのであります。自由競爭のもとにおいては、單純なる金融の引締めが奏効するであろうが、今日のわが國は、好むと好まざるとにかかわらず、嚴重なる統制経済の世の中であります。統制経済のもとにおいては、單純なかかる方法によらんか、正しからざる企業整理―すなわち誠実なるもの、優秀なるものが亡び、実力なきものが、顔や情実や不正によつて生き残るおそれが多分にあるのであります。しかも、この正邪を見わけることは、しかく容易ではないのであります。
 また前大戰後における復興問題は、戰爭の性質からして、さほどの問題ではなかつたけれども、今度の大戰においては、戰爭の惨禍は、欧州もアジアもともに疲弊その極に達しているといつても過言ではないのであります。從つて、一方において企業の合理化も行いつつ、他方において産業の建設復興を積極的に行わねばならぬという二重の困難があるのであります。これは前の大戰と今次の戰爭とが根本的に異なる点でありまして、言語に絶する難事ではあるが、同時にどうしても突破せねばならぬ関門であります。
 聞くところによれば、わが國の戰後の生産雇用は、本年七月現在で千七万人をもつて戰前の約四〇%の生産を維持するに止まつているとのことであります。もちろん、これは生産條件の惡化にもその原因はありましようが、一方官公署たると民間企業たるとを問わず、生産技能の低下、職場規律の頽廃、擬制雇用の累加等の事実があることを否定できないのであります。また諸般の事情によるとはいえ、賃金形態も度を超えたる生活給本位となつて、技術と能力の差による能率給がほとんど顧みられないために、生産意欲が極度に低下していることも顕著なる現象であります。かくして、働く者の生存権を確保しつつ当面せる経済危局を救い、貿易再開を通じて前途の光明を見出さんがための根本対策は、まずもつて擬制雇用の強力なる配置轉換ないし行政整理によつて單位企業の健全性をとりもどし、職場規律振作のために、あまねく能率給與制を採用することをもつて始まらねばならないと断定するものであります。
 もちろん、かかる対策を強力に実施するためには、その大前提として、周到なる失業対策の確立と責任ある配置轉換の具体案が明示されねばならぬことは言うまでもありません。私は、今日の実情は、いうところの資本が労働を搾取しているとか、労働が資本を搾取しているとかではなくして、資本や労働が國民経済を搾取しているのだと断ずるものであります。從つて、企業合理化と行政整理とは、今や一單位企業の利潤追求や、労働者側の單に食わせろというごとき立場ではなく、國民経済の確立という全國民的立場から眞劍に討究し、速やかに断行さるべき案件であると信ずるものであります。(拍手)この点に関し、片山総理大臣の率直なる御見解を伺いたいと存じます。
 私は、以上数項目にわたりまして、各所管大臣及び総理大臣の御所見を質したのでありますが、最後に、片山総理大臣に対しましてもう一言申し述べたいのであります。先ほど申しました通り、わが國民経済の合理化は今や必至の問題ではありますが、これは実は日本の人口問題及び日本人の生活水準の問題と密接に関連する事柄であります。何ゆえかと申し上げますならば、わが國民経済を活かすためには完全雇用が必要であつて、完全雇用が成立しないとするならば、これはとりも直さず人口の問題であります。八千万人をこの國土において食わし得るかどうかの問題であります。おそらく來るべき講和会議においては、この人口問題及び生活水準の問題が、一部で考えられているような領土問題以上の問題として討議されることと思います。片山総理におかれては、かかる見地に立つてのこの問題に関し、いかなるお考えを持つておられるか、しかしてさらにもう一つ、今日の耐乏生活にどの位耐えたならば、いかなる過程を経て輝かしき將來がわれわれの前に開かれてくるかということにつきまして、どういう見透しをもつておらるるか、併せて伺いたいと存ずるのであります。
 國民は、この見透しだにあれば、おそらく喜んで必要の耐乏生活を甘受するでありましよう。しかし、この見透しなくして漫然と耐乏生活を國民に強いんとするならば、國民のポテンシャル・エナージーにはおのずから限度があるのでありますから、遂には絶望のふちに沈淪することと相なるかもはかり知れないのであります。かつて東條大將は、單なる希望的な必勝の信念によつて國民を指導し、國民を今日の悲惨なる窮境に追いこんだのでありますが、もし、言わるるところの耐乏生活に小くとも一應の見透しがない限り、それは東條大將の必勝の信念と何ら選ぶところなしと言わざるを得ないのであります。(拍手)あえて、片山総理大臣の政治家としての信念のほどを伺いたいと存ずるゆえんであります。(拍手)
   〔國務大臣栗栖赳夫君登壇〕
#16
○國務大臣(栗栖赳夫君) 荒木議員の御質問にお答えいたしたいと存ずるのであります。今後の財政の見透しいかん、さらに追加予算を出す必要はないか、こういう点をまずお答えいたしたいと存ずるのであります。
 今回提出いたしました第七号及び提出いたします第八号の補正予算で、第一回國会で審議を受けることを予定しております補正予算上のおもなものは大体盡されておるのでありますが、なお内務省の解体、公務廳の設置、石灰國管その他雑多の事項につきましては、さらに補正予算を提出して國会の決議を受けねばならないと思うのであります。しかしながら、大きな追加予算といたしましては、政府といたしまして今回をもつて最後の止めといたしたいと極力努力いたす次第であります。この追加予算によりまして健全財政を維持し、そうして確立し、さらに健全金融をも維持確立いたしまして、この財政及び金融の面から通貨の増発を抑止することによりまして、大量なる資金が市場に流出することを抑えることができますならば――これは政府と國民のまつたく一体的な忍苦の努力によらざるを得ないわけでありますけれども、これによつてできますならば、この予算はこれが大きな予算としては止めと、こう解するのでありまして、小口のものはなお若干のものがありましようけれども、これは別口のものだとお考えを願いたいと思うのであります。しかし、これが成就するかどうかということは國民と政府の一体的な努力の結果によるわけでありまして、この努力を欠くならば、滔々としてインフレは進行し、破局になることは間違いないのでありますので、政府といたしましては國民に対して努力と忍苦ということを強く要望し、協力を期待いたす次第であります。
 なお、今次の予算は一應健全財政主義を貫いておるけれども、金融の面に抜けて大きなインフレにはならぬか、こういうお尋ねであります。今回の補正予算の編成にあたりましては、健全財政、健全金融ということを目途として編成いたしたのでありまして、財政面の赤字が金融面で糊塗されて処理するというようなことは極力避けることに力を盡したわけであります。特別会計における鉄道会計の五十億、通信会計の二十五億、預金部への繰入れ十億、貿易資金への繰入れ等も、まつたくこれがためであります。
 なお、地方の財政が乱れることによりまして、これが金融面に轉嫁されるおそれもございますので、すでに昨日申し上げましたように、政府といたしましては地方財政の整備ということにも能う限りの努力をし、分與税だけに止まらず、新しい財源の開発、さらにやむを得ない公債発行につきましては、その市場消化あるいは預金部資金の引受けというようなところまで裏づけをしてこれを善導し、根本的には機構その他についても考えてみたいと思う次第であります。
 なお、復興金融金庫に対する出資についてであります。これはこの補正予算において四十億を計上いたしたのでありますが、これが金融の面に轉嫁されるということは極力避くべきでございますので、かようにいたした次第でございます。ただ復興金融金庫につきましては、今日までその債券の消化が市場で思わしくないのでありまして、それがために、大部分は日銀引受けというようなイージ・ゴーイングな方法に隠れてしまいまして、結局は通貨増発を誘致してまいつたのであります。これでは非常に困るわけでありまして、すでに昨日申し上げましたように、この次からは金融機関の共同引受制度というものを確立いたしたいと思います。これにつきましては、先月の中ごろに地方銀行及び市中銀行の会合に出まして、さらにそれを勧誘し、資金総價額の一定率を公債資金、復興金融の債券の引受資金という方に割り振るように勧奬し、大体の話をまとめたような次第であります。なお、これにつきましては金融機関の採算ということも考えなければなりませんので、その点についても、なおいろいろ協議をいたしているような次第でございます。これが成功いたしますれば、市場消化ということを主といたしまして、日銀資金の流出ということは防ぎ得ると思うのであります。これを防ぎ得ないということになりますならば、財政資金が金融に隠れる、金融に轉嫁される、こういうことになるわけでありますので、極力それは避けたいと努めている次第であります。
 なお、予算面の実行につきましても財政收支の計画化をはかりまして、極力金融面に不当の圧迫を及ぼさないように措置をいたしますとともに、貯蓄運動を強力に推進いたしまして資金の蓄積をはかり、正常な財政需要に應じ得るように努力いたしているような次第であります。この藏券の発行というようなことも、日本の財政としましては、收入が下期に多くはいりまして上期は少ないというような関係もあるのであります。これはだんだんためていきたいとも思つておりますけれども、上期におきましては藏券の発行ということに隠れるような欠点があるのでありますが、これも努めてこういうような方法を避けていきたいと考える次第であります。
 なお、特別会計につきまして赤字をなくする。それがために鉄道に対して五十億、逓信に対して二十五億、こういうものを繰入れる趣意でありますが、これは大体損益勘定の部類でありまして、今後十二月から生ずる赤字じりを埋め合わすものであります。これはきわめて臨時例外的のものでありまして、これによつていたしませんと、料金を引上げることになり、物價の面に重要な影響を與えることになります。さりとて、このままにしておきますと、金融の面に日銀資金を放出するという結果になりまして、資金放出の惡結果を及ぼすことになるのでありますので、かような点で、一時ごく例外的なこの措置をとつた次第であります。しかしながら、特別会計の独立採算制という建前はあくまで貫くべきでありまして、そこで二十三年度からは、こういう事業につきましては、経営の合理化、経営改善ということをいたしまして、繰入れました資金も分割して一般会計に返戻してもらいまして、独立採算制の趣意を貫くようにいたしたいと思うのであります。
 貿易資金の点でございますが、これにつきましては輸出と輸入との関係でありまして、これは内地におけるしりが赤になつている、外國におけるしりも赤になつているのであります。内地のしりと外國のしりとがリンクをいたしておらぬのであります。内地だけの関係についてみますと、これは價格調整あるいはその他のために赤が積つているのであります。これも、その中で物資の相当残つたものもありますし、残らぬものにつきましては、この際國庫で一般收入から補填することにいたしまして、金融の面で一時を糊塗して通貨を永久的に出し放しにしておくというようなことをためた次第であります。
 なお、一般金融の問題でありますが、貯蓄の増強その他によつて、市中銀行にも相当の資金が蓄積されたのであります。しかし、企業再建整備、経済力の集中排除等のために市中銀行が貸出を躊躇しておる、それがために必要なる資金の貸出ができない、そうして、その資金はわくをたな上げにして日銀に一時返済をしておる、それがために資金の市場における流通高が非常に滅つて窮屈だ、こういうお話でありますが、それはまつたく御説の通りであります。しかし、これにつきましては何とかこの弊をため、殊に年末をも控えておりますし、また生産緊要事業については十分生産をもあげていかなければこの危機は突破ができないという点もございますので、十分その点をも留意いたしまして、そうして市中銀行に貸出を――再建整備あるいは経済力の集中排除等のために貸出をしぶつておるものについては、復興金融金庫の保証とか、あるいは内情をよく話して、日本銀行その他の勧奬によつて貸出を進めていく、あるいはどうしてもいかぬものについては、この復興金融金庫の直接貸出をする、こういうような方途をとるように措置をいたしておるのであります。なお、市中銀行が直接貸出に困るものにつきましては、先ほども申し上げましたように、復興金融債券を市中銀行がもちまして、そうして復興金融金庫はその債券の手取金をもつてこれに貸すというような間接的な貸出をも勧奬をいたすようにいたしておるのであります。そうしてこの点の隘路は、年末をも控え、緊要産業への重点的な資金融通もきわめて必要でございますので、その点の措置をも十分はかりたいと考えておる次第であります。
 なお、資金計画と物動計画については安本長官にお尋ねがありましたので、私はお答えしないことにいたします。ただ資金計画と資金の融通の関係についてはお答えをいたしておきたいと思うのであります。資金計画は、大体のわくがこれによつてきまるのでありまして、そのわくがきまりますと、今度は金融機関はその融資準則によりまして、蓄積されました預金資金というものの中の一定割合のうちからこの融資をいたすのであります。その融資は、融資準則の優先の順位によつていたしておるのであります。貿易向けの中小工業その他については、必要に應じては順位というよりも貿易というものを考えて、中小工業の特質からこれを先にする場合もあります。一般銀行融資準則の順位の表によつていたすわけであります。それから物との見合いは、その融資をいたします場合に、資金調整委員会にかけていたしておるのであります。そこでその物との見合いをいたしておるわけであります。この資金調整委員会は古くから続いておるのであります。しかし、昨今に至りましては、いま少し構成その他について民主的な考え方、要素を入れ、委員等も考えたいと目下考究をいたしておるような次第であります。
   〔國務大臣片山哲君登壇〕
#17
○國務大臣(片山哲君) 荒木君の御質問中、席をはずしましてまことに失礼いたしました。御質問の要旨は行政整理の問題であつたと承りますので、その点についてお答えいたしたいと思います。
 行政整理は、行政機構の改革と相まち、かつ人員の整理をも含めまして相当大きな問題でありまするから、政府におきましては愼重檢討いたしております。機構も改革しなければならない、人員も整理しなければならないと考えております。しかし、どういう機構の改革と相まつて人員の整理をするかということは、相当影響もありまするし、また能率増進という方面からも考えていかなければならない問題でありますから、目下関係閣僚において具体的に眞劍にこの問題を整理いたしておる次第であります。目標は、いかに能率を増進するか、いかに財政面におけるところの人員の負担費を整理するか、これらの問題を具体的に考慮いたしておりまするので、近くお話申し上げる機会に達すると存じております。
 第二は、耐乏生活にも限度があるではないか、こういう問題であると承知いたしております。もちろん、無制限に耐乏を國民に求めておるわけではありません。現在のこの危機を突破するために、國民全体が耐乏して乘り切らなくてはならない、こういう趣旨で國民に求めておるのでありまして、大体の目途といたしましては、講和会議が成立いたしまして、わが國が独立國家として國際社会に加入できるような状態になり、貿易も順調に進み得るという状態ができまするならば、よほどわが國の経済関係もよくなつてくると思うのであります。但し、いろいろ賠償問題等の負担がありまして、樂観は許されません。なお耐乏を続けなければならないこととなるのでありまするけれども、しかし、國民全体が今日の耐乏によつてインフレを克服いたしまして、経済を順調に、産業を隆盛に増産に邁進することとにらみ合わして考えていかなければならないのであります。そういう訳合でありますから、まず目途といたしましては、講和会議にわれわれは希望をもつて、光明をもつて進んでおるような次第でありますから、今日における耐乏は、ぜひとも國民全体の強力なる推進としてお願いいたさなければならないと存じておる次第であります。(拍手)
#18
○副議長(田中萬逸君) 和田國務大臣の答弁は、後刻にこれを求めることといたします。青木孝義君。
   〔青木孝義君登壇〕
#19
○青木孝義君 私は、自由党を代表いたしまして、政府の提出にかかる昭和二十二年度一般会計の補正予算案に対しまして質疑をいたしたいと思います。
 まず最初に内閣総理大臣に質問をいたします。現内閣における経済対策の全面的な失敗に対する総理大臣の責任を追究いたしたいのであります。政府は組閣直後、緊急政策八大要綱を作成いたしまして、政策の具体的方途として、從來の内閣のごとき政治作文たることを避けて、現実面に即してこれをまとめ上げる、必ず実現できるもののみを取上げる、日本の再建は第一に生産増強を中心としてインフレの惡循環を断たねばならない、またさらに生産の再開あるいは輸出力の培養のためには、労働者自身の生産意欲の高揚と生産力の増大が根幹であるといたしまして、特に労働対策を重要視し、全勤労者の生活安定を期する旨をうたいましたことは、周知の通りであります。
 しかし、現実はどうであるか。緊急政策の何一つとして実現いたしたものがあるか。組閣以來すでに六箇月、この期間は、重大な危機の関頭に立つ日本國民にとつて決して短いものではないのであります。國民は政府の緊急対策の実施に対してすでに十分な時をかし得たはずでありますし、われわれ國民としては大きな期待をもつて過してまいつたのであります。しかるに、政府のなし得た唯一のことは、日本経済を一層破滅的な危機へ追いこんだにすぎないということであります。(拍手)実行内閣としての看板を掲げた政府の面目、はたしていずこにありや。
 財政は未曾有の膨脹を示して、行政整理、企業の整備という根本的な問題は、労働攻勢におびえて後方に押しやられ、生産の依然たる停滯とインフレの一段の高進、食糧の遅欠配と流通秩序確立の空文化は、嚴然たる事実であることを御承知願いたい。現内閣が從來の政府の政策を揶揄した政治作文という言葉は、今日現内閣にすつかり御返上申し上げたいと思います。(拍手)
 殊に、実情に即せざる賃金・物價の机上プラン的改訂は、資金統制の強化と相まつて、その所期いたします資本蓄積的効果を收めないのみか、生産を萎縮せしめ、一般物價の驚くべき高騰に伴うインフレとやみの飛躍的高進、勤労者生活の一層の窮迫化をもたらしたにすぎないのであつて、國民生活の安定はまさに空文化し、大衆の期待はまつたく裏切られました。勤労者の挺身による生産の強力な増進のごときは、もはや痴人のざれごと以外の何ものでもない。最近の労働爭議の頻発をごらんなさい。さらにまた、近く廣汎な労働爭議展開の兆歴然たるもののありますことは、否定のできない事実であろうかと存じます。かくて、現内閣の存在の意義はまつたく失われたものといつても過言ではございません。(拍手)総理大臣はこれをいかに考えておられるか。かかる政策の全面的失敗に対して、一片政治的良心がおありになるならば、この責任を十分に明らかにせらるべきだと考えます。(拍手)
 次に、大藏大臣に対して質疑をいたします。今回大藏大臣は、非常な御努力をもつて追加予算の作成になみなみならぬ苦心をいたされたことは、心から敬意を表します。しかし、これが閣議決定に三箇月半という長い期間を要した。その間國民に多大の不安を與えたことは、何といたしましても政府の大きな失態ありまするし、私は残念ながら大藏大臣の政治的手腕を疑わざるを得ないのであります。(拍手)
 追加予算は、なるほど計数の上から健全性を得ておるということができましよう。すなわち、二十二年度当初予算における赤字公債の四十八億円が、今回の追加予算における四十九億円の歳入増加によつて完全に解消せられた。その上にまた、國鉄ならびに通信事業の赤字が一般会計によつて補填されて解消されることになるから、わが財政は高い水準においてではあるが、一應健全性を回復し得たこととなるのであります。しかし、これは單なる数字の操作である。從つて、見せかけの、いわば名目的健全財政であるにすぎないのであります。実質的な赤字は他に轉嫁されておりますし、またその中には、第二次追加予算を必要とする危險性を多分にはらんでおりますることは疑いません。
 たとえば、復興金融金庫への出資金は四十億円である。本年度の復金の所要資金がこれだけで十分であるとは、たれも考えていない。しかりとすれば、この不足分はいわば財政の赤字を金融機関に轉嫁するわけであります。今日の金融情勢では、復金債券を市場で消化することは困難でありますから、結局は日銀引受けによつて資金の調達をはからざるを得ないのであります。これでは、赤字公債を発行して日銀引受けとするのと何ら選ぶところがございません。また地方分與税分與金は八十二億弱と押えられておる。この無理をした予算は地方財政の負担となつて、結局何らかの形において調達されなければならないし、これが地方債の発行によりて賄われるということになれば、結局通貨の増発とならざるを得ない。かように國家財政の赤字を金融機関や地方財政に轉嫁しての健全財政は、まことに笑止のさたであります。
 さらに、本追加予算の各項目を通覧いたしまして、そこに少からさる無理がある。從つて、第二次追加予算を必要とするの危險性が明瞭に看取せられるのであります。殊に今後の物價高騰――安本計算によりますれば、今次の追加予算の影響によつて、本年末までに四六%の上昇をみる予想とのことであります。かかる場合、第二次追加予算は必至である。今回の追加予算の物價に対する影響、これは大藏大臣はいかにお考えになり、いかにこれを処理せらるるのであるかわかりませんが、おそらく物價に影響がないという御判断は、大藏大臣のみに通用する見解であろうかと存じます。(拍手)
 一体、今次の追加予算を必要とした理由の大部分は、言うまでもなく物價騰貴であります。新規事業によると見られるものは、終戰処理費の約半額、公共事業費のある部分、貿易資金、復金出資その他災害救助費、農地改革費等、概算三百億円内外にすぎないのでありまして、残額六百余億円というものは、ほかならぬ物價騰貴によるものであることは当然であります。二十二年度当初予算は、石橋前藏相によつて、昨年の十月、十一月の物價を基準として、かなりの含みをもつて作成されたるものであります。それより八箇月の歳月を経過いたしまして、多額の追加予算を必要といたしまする今日から見て、この年度末までに安本計算の率で物價が騰貴するといたしますれば、第二の追加予算の計上は避けられない状態にあることは、おそらく大藏大臣もお考えになつておられると存じます。
 また災害復旧費にいたしましても、たとい物價が同一水準を維持し得たと假定いたしましても、本追加予算に計上されただけで済むと考えるのは、あまりに甘い考え方であると思う。(拍手)また貿易資金五十五億にしても、さらに賠償撤去費も、これで足りるとは考えられないし、さらに巨額の終戰処理費――この算定の基礎は物資及び賃金とも、もちろんマル公であると考えまするが、流通秩序の破壞された現状においては、実際経済の基盤はやみであります。この事実を考慮いたしまするならば、今次追加予算に計上された額のわく内で所定の事業を完遂することの不可能でありますることは、自明の理であると存じます。殊にインフレの進展下、物價の一層の上昇が確実に予見されるとき、思い半ばに過ぐるものがあると存じます。
 加うるに、千八百円ベースの維持は、安本の独善的な机上計算と政府の希望にもかかわりませず、現実の事態はこれを許さない。すでに十一月三日附の毎日紙は、政府が越冬期を前にして、労組側の動きを緩和するため、何らかの一時金を別途に考慮することになろうと報じております。また同日附読賣紙は、米窪労働大臣が大阪駅における記者團との会見において、全官公の要求に対して五十億円ほどの支出をしようという意志表示をしたことを報道いたしております。大藏大臣は、これらの事実を何とお考えであるか。これでもなお栗栖財政の健全性を確信しておられるとすれば、驚くのほかはございません。
 二十二年度一般会計の租税收入は、本予算、追加予算を合わせて総額千三百二十四億円である。しかし、これに対する收税状況は、九月までに二百六十三億円、全体の二〇%、全体の二割にすぎません。本予算に計上された税收の三八%にすぎません。かかる收税の不振は、二つのことを物語つておると思う。一は、現在の徴税陣と機構とをもつてしては、本年度内に租税の完全な收入はほとんど不可能であるということ、從つて、そのずれだけは結局において通貨の増発となり、インフレを高進せしめる原因となるということであります。他の一つは、國民の担税能力がすでに限界点に近づいておるということである。
 夕バコ益金を含めて本年度の全租税額は約千八百億円、國民所得を大藏省査定に從つて八千四百九十億円といたしますれば、その二割二分弱に当ります。わが國の有業人口、すなわち業務をもつている人口数を三千万人と仮定いたしますれば、有業人口一人当り実に約六千円という高額な租税であります。しかも、やみ経済の横行下においては、國民個々の担税能力を的確にキヤツチすることはできない。從つて、補足しやすい國民層に本当に租税の重圧が加重されることになつており、この層の担税能力はまさに限界点をさえ超えようといたしておるのであります。上半期の所得申告者がわずかに三〇%しかなかつたということは、かかる事態の反映であり、またそれは政府に対する不信任の消極的な表示にほかならないと考えます。(拍手)
 かかる情勢下において、大藏大臣は、なお未收一千億円に余る租税を、残された下半期において完收し得る御確信があるかどうか、この点であります。さらにまた、政府の上からの極端なる資金統制と、通貨の増加速度を追い越す物價騰貴との圧力によつて、極度に逼迫している金融事情は納税の困難を加重せしめているが、かかる事情のもとにおきまして、徴税に対する政府の所信をさらに伺いたいのであります。歳出、歳入の單なる数字の上での均衡を整えることは、決してそれほどの難事ではございません。それは普通の能力を備えたものには、だれにでもできる仕事であります。問題は、実質的な均衡を確立するということにあると信じます。
 さらに、金融策について先ほど同僚議員からの質問に対するお答えにおきまして、私の抵触する部分ももちろんあつたのでありますが、しかし日銀の民間貸出を見まするのに、本年四月までは毎月増加をたどつたのであるが、五月からは一轉して月々減少し、十月十日現在におきましては、四月末の貸出高五百五十九億に比較いたしますれば三百八十三億円と、すなわち百七十六億円の減少である。この減少率は実に三一%である。しかるに、この間通貨は三〇%の増加をみておる。物價はマル公約二倍半、やみは三一%の騰貴であります。企業は金融の梗塞と諸式の値上りの挾撃を受けまして、生産は停滯し、八月は七月に比べて約九%の滅産を見るに至つたのであります。殊に、この生産減退は消費物資に強く現われ、統計局の調査によりますれば、東京都の消費者價格は、五、六、七、八の四箇月間に七〇%の騰貴である。この結果、都民の生活は著しく困難となつた。これは、片山内閣の政治モツトーである生産増強、國民生活の安定、まさにこのモツトーと逆行するものであることを御承知願いたい。
 しかも同じ期間に、政府の資金需要による通貨の増発は六百一億に達した。國庫收入を使い果して、これだけの赤字が出たのであります。政府は五月初めより十月十日までに、自己の必要を充たすためにはこれだけの赤字通貨を発行し、インフレを刺戟せるにかかわらず、民間貸出に対しましては百七十六億円の引締めを強行し、生産を停滯せしめている事実をごらんになつていただきたい。
 健全金融も結構であります。また、そうなくてはならない。しかし、当局の彈力性のない、硬直したものの考え方では、健全金融だけはできても、肝腎の生産の増強は望めないのみか、インフレを助長し、國民生活の一層の窮迫化を招來するに至ることは必至であります。かかる矛盾せる金融政策は、ただちに改むべきであると考えるが、大藏大臣の所見いかん。
 なお、大藏大臣の國家財政に対する基本的な考え方並びに税政の改革、徴税機構の整備刷新に対する御見解を伺いたい。現段階におけるわが國民経済的循環が國家財政を枢軸としており、國家財政が経済の廣範な領域に決定的意義をもつていることは多言を要しません。從つて、財政は單純な收支の均衡という財政技術的観点からのみ取扱わるべきものでなくて、國民経済全体の再生産循環の維持発展の見地から問題とされなくてはならない。(拍手)しかるに、栗栖大藏大臣の財政に対する基本的考え方は、前者を重要視するのあまり、後者をそれの犠牲に供して顧みなかつたかの観がある。もちろん大藏大臣は、財政收支の均衡確保はインフレの激化防止という全経済的観点に立つと言われるかもしれません。しかし、それは財政の形式的、名目的均衡ということからではなくして、実質的均衡の確立という観点から初めて言い得られるところであります。財政收支の單なる名目的均衡がわれわれにとつて問題であるのではない。われわれにとつて問題なのは、國民経済の再生産循環の順当な発展ということであります。(拍手)これがためには、むしろ財政の一時的な若干の形式的均衡の破綻は、それほど問題とするに足りません。生産の再開によりて裏打ちされず、また財政膨脹の大きな根因である行政の整理、企業の合理化問題をいたずらに労働攻勢を恐れてそのままに放置された上での財政收支の均衡は、まつたく無意味である。國民の眼を欺く姑息な方途であるにすぎないのであります。この点に関する大藏大臣の所見を承りたい。
 次に、税制の刷新について御質問申し上げます。政府は税收入を安易に確保するため、捕捉の容易な、かつ收税効率の高い間接税に重点を置かんとしているようであります。これは言うまでもなく大衆課税であり、國民の生活苦を一層加重するものであつて、財政の均衡を國民大衆の犠牲によつて確立せんと意図するものにほかなりません。この点、政府は愼重に考慮すべきであると思うが、今後もなお間接税偏向の方針をとつていかれるお考えであるかどうか、この点についても御答弁を願いたい。
 最後に徴税機構の問題について―年間の脱税ないし未收税は相当巨額に上るものと思うが、これを補足するために、政府は先ほど御説明があつたような種々的確な対策の準備がおありになるようであります。しかし税務官吏は、現に定員八万名のところ、目下は四万五千名にすぎないといわれております。また税の査定が一税務官吏の手心いかんにかかつており、そこにいまわしい饗應であるとか、あるいは收賄の余地を與えることになつておる。かかる徴税機構の不備欠陷に対して、政府はなんらの対策もうち建てていないように見えます。はなはだ遺憾のきわみでありますが、この点、大藏大臣はいかに考えておられるか、御所見を承りたい。
 和田安本長官がお見えになりませんが、私の言うだけのことは一應申し上げます。次に、和田安本長官に質問をしたい。まず、安本経済施策の全面的失敗に対する長官の政治的責任であります。(拍手)経済の危局突破のために経済緊急対策が明らかにせられてから、國民の眼は希望と強い念願とをもつて、その具体化の方向に注がれてまいりました。しかし、飢餓前夜をさまよつておる國民の渇望と期待に対して與てられたものは何でありましようか。賃金・物價の不自然にして拙劣な机上ブラン的改訂に基く異常な人爲的價格の奔騰と、食糧の依然たる遅欠配、官僚的配給操作の不円滑、これらによる國民大衆の生活苦の一段の加重以外の何ものでもなかつたことを、われわれは経驗いたしたのであります。(拍手)
 緊急対策最大の眼目である生産の増強は、組閣以來すでに半箇年を経過した今日、なお依然たる低迷状態を脱せず、八月は七月より九%の低下をさえ示しており、殊に最も基本的な基礎資材たる石炭のごときは、実情に即せざる物價改訂によつて第二次製品價格奔騰のはね返りを受け、價格関係が再度アンバランスとなり、全体として減産の兆歴然たるものがありますることは、皆さんの御承知の通りであります。(拍手)しかも他方におきましては、公定價格がやみ價格を上まわつておる製品も決して少い数ではございません。
 社会党首班内閣の成立に対して國民の待望したものは、インフレの終熄と、これによる國民生活の安定でありました。去る四月の総選挙において、國民は生活の安定をその投票にかけたのであります。しかるに、インフレは終熄するどころか、かえつて安本の物價改訂を旋囘点といたしまして高進の速度を一層早め、破局への一途をたどつており、緊急対策の一大眼目たる流通秩序の確立はもはや空文化し、國民生活は日に窮地に追い込まれつつあります。
 かつて安本長官は、九月までの忍耐を國民に要求した。そして苦しい家計も九月上旬ともなればかなりよくなるであろうし、十一月になれば家計は黒字に轉換すると言明されました。しかるに、現実の事態は和田長官の國民に対する言明をまつたく裏切つた。國民に対するかくのごとき食言に対しては、和田長官は明らかにその責任を負うべきであり、かつそれを具体的な方法によつて國民に示すべきである。これに対する所見を伺いたいのでありますが、現在お見えになりませんから、でき得るならば総理大臣にひとつ答弁を願いたい。
 毎日新聞の報ずるところによりますれば、去る七月二十三日の毎日記者との会見において、和田長官は七、八、九月の当面の食糧危機のくぐり抜けに成功することが安定への第一歩であり、この食糧危機をもちこたえれば、新價格体系も何とか崩れずに済むと述べられておる。しかし、私をして言わしむるならば、かかる考え方こそ官僚的である。和田長官御自身はどうであるかわからないが、國民は食わなければ生きていけないのであります。食うためには、どんなことでもする。たけのこ生活くらいは朝飯前であります。從つて、安本長官の考えられた七、八、九月と國民が生き抜くということは、頭の中で観念的にむりにでつち上げた新價格体系が崩れずに済むということではなくて、逆説的に言えば、崩れることによつて國民は生き抜き得るのであります。(拍手)されば、國民が今日までさいわいに生き抜いて來たということは、新價格体系がすでに無意味となつたということ、また同時に新價格体系のもとで國民が片山総理の要求する耐乏生活の限界点にすでに達した事実を証明するものにほかなりません。(拍手)
 和田長官のかかる官僚的な、観念的なものの考え方によつて、なおこの先進んで片山内閣の一切の経済施策が押し進められるものといたしますれば、國民生活は遠からずして破壊し盡されるのである。和田長官にとつては、國民生活そのものよりも、人間心理が大きな作用をもつ。経済の実際から遊離した、机の上で自分たちが勝手につくり上げた子供でもある新價格体系の方が、はるかに大事であるとお考えのようであります。(拍手)
 次に千八百円ベースの問題について伺いたい。和田長官は、民間企業の賃金水準をも官公吏の千八百円ベースまで引下げなければならないと言明されておるようであります。事実、このようなことができるものであるかどうか。今日すでに新聞紙に報道されておるごとく、これが維持されないところの事実が数々と説明されておることを御承知と存じます。責任のある御答弁を願わなければならぬのは、和田長官のかような言明に反して、西尾官房長官及び米窪労働相は、千八百円べースの維持が不可能であると、これが再考を言明されておるようであります。この点について西尾長官、米窪労働相の所見を伺いたいのでありますが、今日はお見えになつておりませんから、これまた総理大臣の御答弁を願いたいと思う。またかかる対立する見解を総理大臣はいかなる線で調整されようとするか、御答弁を煩わしたい。
 千八百円ベースで労働者が食えないことは、すでにわかり切つた事実である。長官といえども否定できないと思う。失礼ではあるが、もし長官の生計費がこのべースで賄われておるとすれば、私はこの点に関する私の質問を撤回いたします。しかし、和田長官及びその家族の方も同じ人間である以上、このべースでその生計を賄い得られるものではないと私は確信する。もちろん、すべての國民が満ち足りて食うということは、諸條件のまつたく変化した敗戰日本経済のとうてい負担し切れぬところであろう。ここに耐乏生活の要求される根拠もまたあるのでありましよう。
 しかし、たとえばこのベースが形式的に維持されておるものとしても、これではどうしても食えないということが嚴然たる事実である以上は、この維持が不可能であるということも経済法則的必然である。けだし、これを強いて維持するとするならば、生産者そのものの基底である労働力の再生産は不可能となり、從つて、社会全体の再生産は破壞されてしまうのである。このことはわかり切つた自明の理であります。千八百円ベースが維持できないとすれば、これが改訂をするより仕方がない。しかし、これは和田長官の政治的責任の問題である。
 和田長官が新物價体系を作成し、千八百円ベースを設定されたのは、これを堅持する自信と確信とをもたれてのことと思います。しかして、これを堅持することによつて日本経済再建の足がかりをつくり上げられる意図であつたと考えられます。同時にまた新物價体系に対する千八百円ベースによつて、労働者の生活も少くとも最低線において保障されるという確信の下に、かかる重大なる施策を断行せられたものと確信をいたします。しかるに、かかる確信がすでに事実によつて覆えされたことは、今や明らかな事実であります。
 しかも和田長官は、基準賃金に関する民主党代議士の小川君の質問に対しまして、次のように答えられております。誤つて解することをおそれまして、速記録によつて申し上げます。「私はこの四百円の黒字が出ると言いますることは、これは一面におきまして、やはり生産を殖やし、やみを撲滅し、また通貨面からくるインフレーションを阻止して、あらゆる努力をすることによつて、労働者の生活が努力次第で樂になるということを申し上げたのでありまして、日本の生産そのものが今のような程度に止まつておりまする限り、どういう議論を繰返してみましても、國民の生活は楽にならないのでありまして」云々、和田長官はかくのごとく述べておられまするが、これは自分の作成した政策に対する実に驚くべき無責任と確信の欠如とを露呈するものであることは疑いません。
 生産の増強といい、流通秩序の擁立といい、單に國民を引きつける政治的標語として用いたにすぎない。そこには、これが実現に対する何らの確信もなく、また單なる推量と希望的見解を土台として、昨年の労働者の家計の赤字や物價の推移を独断的に、しかもドグマに今年もまた同じであるという、まことに心もとない架空の状態を仮定して勝手につくり上げた新價格体系と千八百円賃金ベースを押しつけようとすることは、政治家としてまことに驚くべき無鉄砲な態度と言わなければならない。(拍手)
 しかも、その施策の失敗の責任を暗に國民の不協力な態度に轉嫁しようとするにおいては、何人も許し能わざるところであります。私が和田長官の政治的責任を追究するゆえんは、まさにここにあるのであります。千八百円べースはすでに実質的に破綻を示しており、しかも、これを強行的に維持しようとすることは再生産の基底を破壊するものであるとともに、その前に捨身の全面的な労働攻勢を覚悟しなければならないであろう。かくては、さらでだに脆弱な日本経済は破滅を免れない。もちろん、千八百円べースを改訂してみても、インフレがますます進行すれば、遅かれ早かれその新しいベースも維持できなくなることは言うまでもございません。從つて、インフレの根源を断ち切らなければ、千八百円べースの改訂も無意味なものとなる。
 しかるに、現内閣はインフレの根源の芟除について何らの有効な対策も打つてこなかつた。現在もそれに対する何らの準備をもち合わせないかのごとくであります。組閣当初すでに行政整理を問題とし、その緊急対策八項目の中に企業の整備、合理化をうたつておるものの、組閣以來六箇月を経た今日、なおその準備さえもなされていない。二十二年度追加予算編成以後の新事態に対應する必要に迫られて、ようやくここに企業及び行政の整理を問題として取上げるに至つたのである。これをだらだら、なしくずし的に行うようでは、その実効は期待できない。すべからく、その開始の時期及び程度、完了の時期をも明らかにされたい。
 最後に、傳えるところによりますれば、從來の経済政策の破綻から、追加予算に伴う財政インフレ激化への懸念に対処して、政府の一部に政策の轉換が意図されておるとのことであるが、もししかりとすれば、その轉換の方向を明らかにしていただきたい。もし、現内閣の從來の方針と態度からして、官僚統制の一層の強化にすぎないものならば、われわれは断固として反対する。
 強度の軍事的、官僚的統制によつて、國民の自主的な企業家精神、自主的な労働意欲が圧殺し去られたことは、すでに戰爭中の経済統制においてわれわれの体驗済みのことであります。また現内閣による新物價体系から流通秩序の確立、資金調整への一連の官僚統制の強化によつて、インフレは激化し、國民の生活は一段の窮乏状態に追いこまれ、さらに一般企業も、公定價格の大幅引上げに伴う事業資金の急増と資金統制の強化に狹撃せられて、異常な金詰りに直面し、産業活動の萎縮、沈滯はようやく著しいものがあります。しかもなお政府は、追加予算に伴う新事態への対処に藉口し、千八百円ベースの維持、企業の整備に名をかりて、その実は、この機会に企業の全面的管理にも行かんとする意向をもつておるのではないか。この点に関する和田長官並びに商工大臣の責任ある御答弁を願いたいと思います。
#20
○副議長(田中萬逸君) 青木君、時間が参りました。
#21
○青木孝義君(続) 私はなお爾余の質問がありますが、時間が参りましたので、この程度でやめます。しかし、今まで御質問いたしました諸点につきましては、明快に御答弁を願いたい。
   〔國務大臣片山哲君登壇〕
#22
○國務大臣(片山哲君) 青木君は、なかなかきついお言葉をもつて財政問題に対する所見を申し述べられましたが、財政通でありまする青木君は、わが國の経済状態、産業状態、國民生活、これに対應して処理しなければならない各種の問題については、十分通暁せられておると思うのであります。第一にわれわれは、敗戰國の財政をいかに建て直すかという点をまず考えていかなければならないと思うのであります。今日は通常の時ではないのであります。非常時である。これを第一番にお考え願わなければならないのであります。第二には、物資が非常に不足しておるということであります。生産が上つていないということであります。食糧も不足しておるということであります。この不足せる物資の間で國民の生活と産業の発展をはかつていくということについては、なみたいていのことではいけないのであります。よほどの努力を必要とするのであります。自由放任の状態では、特権階級に品物が独占せられるのであります。(拍手)國民大衆の自由は奪われてしまうのであります。政府はここにおいて、國民全般の生活を安定せしむるために、不自由さを忍ばさしむる方法を講じなければ、とうてい公平なる政策はできないのであります。
 政府が内閣を引受けました当時におきましては、マル公の値段とやみ値とがあまりに相違いたしておるのであります。相違いたしておりまする結果、やみは横行するのであります。やみの横行を撲滅するためには産業を発展せしめ、マル公で仕事が十分行われていくためには、マル公の改訂をやらなければ、とうていインフレの防止はできないということを感じたのであります。つきましては、新物價体系の確立をはかつて、これを基準といたしまして賃金のベースをつくり、やみを撲滅し、國民の協力を求めて、産業の発展に全勢力を傾倒しなければ、この危機を救うことができないという論点に私どもは立つておるのであります。この意味から、政府の立てておりまする物價体系は、やみを撲滅し、かつ産業を発展し、インフレを防止する上において最も必要なる現下の対策であると考えておる次第でございます。(拍手)
 つきましては、これはなかなか努力を要することであります。そう簡單にでき上るものではないのであります。國民全体の協力を求めているというゆえんはそれでありまして、政府は國民に轉嫁して、なすべきことをなさないというのでは決してありません。政府は陣頭に立ちまして、全力を傾倒いたして努力するために、八大緊急政策の実施に邁進いたしておるのでありまして、この新物價体系をなお堅持いたしたいと考えております。いくらかの調整はいたしまするけれども、根本策といたしましては、新物價体系を堅持する政策を続けていかないことには、インフレの防止はできないと考えておる次第であります。(拍手)
 閣内において、これに対して異論があつたとか、あるいはこれから出ておりますところの千八百円のベースを壊すという意見があつたというようなお説がありましたが、決してそういうような意見の対立はありません。諸君がお聞きになりました、また青木君があげられましたところの閣僚間における説明は、そういう意見の対立ではなくして、千八百円で食つていかれないという人々に対しましては何らかの方法で生活のできる対策を講じよう、こういう方法であります。決してベースを壞そうという意見ではありませんから、対立のないことを御了承願いたいと存ずるのであります。從いまして、今この問題に関して政策の轉換をやる意思はないかというような御質問でありましたが、インフレの防止のために信じておりまするところのこの政策を轉換する意思はないということをお答えいたす次第であります。(拍手)
   〔國務大臣栗栖赳夫君登壇〕
#23
○國務大臣(栗栖赳夫君) 青木博士の御質問に対してお答えいたします。追加予算がたいへん延び延びになりまして、提出が遅れましたことについては、はなはだ相済まぬ次第でありまして、惡しからず御了承願いたいと思うのであります。
 今回の追加予算が單に名目的の数字のつじつまを合わした追加予算であるということについては、私は断じてさようでないということをここで申し上げたいのであります。まず、一般会計より七十五億の特別会計えの繰入れを、ごく臨時、例外的にいたしたのでありますが、これは、もしこの繰入れをいたさないということになりますと、しかも物價その他の面に影響を與えないでおくということになりますと、日銀その他より借入れをして、今日までのごとくこれを賄わなければならないのであります。さようにいたしますというと、通貨は増発いたすわけであります。
 なおまた復金債の発行についてでありますが、今日までは日銀の引受けによつてこれをいたしておつたのであります。しかしながら、これは先ほどもすでに答弁いたしましたように、日銀の引受けによつてこれをするということは、日銀の資金を市場へ放出する結果になりまして、インフレーションを助成することに相なるものであります。そこで、それは金融機関の共同引受けによる市場消化、こういう新しい形によつて今後はやつていくという原則に立ちたい、かように申し、次からはこの方針をとりたいと思つておるのであります。これは実質的にも通貨の増発を避ける。こういう趣意であると申してよかろうと思うのであります。
 それから、なお災害復旧その他についての追加予算でありますが、これにつきましても、マル公によりまして極力この増発を避ける、そうして資金の支出の面を補うところの收入は、この普通收入をもつてこれをいたす、こういう原則を堅持いたすことによりまして、実質的にも健全財政を貫きたいと、かように考えたのであります。
 ところで、そういうことをいたしますと、しからば、青木博士から指摘されたように徴税ができるか、こういう問題に相なるのでありますが、これは今日までの徴税の不成績もありますけれども、これはぜひ貫徹してみたいと、かように思う次第であります。すでに昨日も申し上げましたし、今日までもしばしば申し上げましたように、税務機構の質と量の強化、税務官吏の優遇その他によりまして、また廣く國民運動としてもこれを展開いたしまして、この税の徴收を貫きたいと思うのであります。これは政府と國民が一体となつてこれをいたすことによつてのみ、これが達せられるのであります。これをいたさないと、この日本の経済危機は貫き得ないのであります。そういう意味において、それを貫きたいと思う次第であります。
 それから第二の追加予算を編成する必要があると思うがいかんということでありますが、これは先ほどすでに申し上げた通りであります。
 それから地方財政をいかにするかということでありますが、今日まで中央及び地方の財政を健全化するということは、このインフレーションの克服にはぜひ必要であることは青木博士の説の通りでありますが、これにつきましては、極力冗費を省き、そしてそれと同時に税源を新たに設けて收支を合わす、それから地方債の発行につきましては、單に発行だけの計画でなしに、十分資金計画を立て、さらにそれは預金部その他でも斡旋をして、裏づけある発行をさすことによりまして、長期の資金計画を立てさす、こういうことによつて、さらにまたその地方の財政制度の根本にも檢討を加えまして、そうしてこの制度の改善をはかり、地方財政の健全化をいたしたい、かように考える次第であります。
 それから金融政策についてのお尋ねでありますが、日銀の貸出しを制限しておる、そうして日銀の貸出しが激減し、市場の金融が非常に引締つておる、こういうお尋ねであります。これは先ほど荒木議員からの質問に答えた通りでありまして、現状においてそういう事情が相当程度あるのでありますが、これは日銀が資金の貸出しを引締める、こういう趣旨よりも、むしろ先ほども申しましたように、企業再建整備、経済力の集中排除その他によりまして、企業自体が見透しのつかぬ点があるのであります。そこで市中銀行が、市中の金融機関が貸出しを見送つている、そういう関係で、それだけの資金を、わくを残して日銀に一時返済をする、こういうような傾向において、非常に日銀のしりが、貸尻がしぼんできている、こういうような現象があるのであります。これについては、まず貸出しについてさような心配のある場合におきましては、先ほども申し上げましたように、復金の保証とか、あるいは日銀の勧奨によりまして共同融資をするとか、あるいは復金債を市中銀行がもちまして、その代理によつて復金が直接貸出しをするとか、こういうようにして金融の疏通をはかりたいと思うのであります。なお重要産業につきましては、この市中銀行でできるものと、できざるものは復興金融金庫を通じて十分の貸出しをいたしたいと思つております。なお貿易金融及び中小金融その他の金融についての疏通は十分はかりたい、かように考えておる次第であります。
 それから財政上のしりが金融へまわつて、そうして金融の資金を逼迫させておるのではないかというようなお尋ねもあつたのであります。これは従來まではさような傾向もあつたこともあるのであります。今後はこういうような点は極力改善を加えまして、そうして徴税については、しばしば申し上げましたように極力強力な手段を用いてこれを徴收し、一時的に金融に隠れるということは避けたい、そうしてそれがために通貨増発をするとか、あるいは市中の必要な資金を奪い取るというようなことは避けたい、かように考えておる次第であります。
 それから租税改革の問題について考えがあるか、こういう問題でありますが、これは従來の租税制度、殊に所得税の制度につきましては、分類所得税制度があつたのでありますが、前内閣におきまして、これは予算申告の制度に変つたのであります。インフレの進行の途上では適当なる改正であつたのでありますが、申告制度ということが國民に徹底しないために、なお十分な成果をあげておらぬのであります。この点におきましては、十分國民に徹底するような方法をとりたいと思うのであります。そのほか根本の改革につきましては、いろいろ研究もいたしておりまするけれども、今ただちにこれを行うというような域には到達いたしておりません。
 徴税方針については、すでに申し上げました通りでありますので、重ねて申し上げないことにいたしたいと思つております。
 なお、政府としてはこのインフレーションの克服のためには、企業再建整備、こういうことを強力に推進し、さらに行政機構の改革とその整理をも推進して、一体的にそれをやつて、財政の面、経済の面を整理する、建直すという必要はないかというお話であります。それはお説の通りでありますが、この企業再建整備につきましては、ただいま手続を進めつつあるのでございます。なお、この経済力集中排除については御審議をお願いしておるような次第でありまして、これのきまり方によつては、早急に実施もいたし、速やかに企業の再建整備をもいたしたい、かように考えておる次第であります。
 行政機構の改革ということは、これはいろいろな点において根本的な問題もございますし、こういうものとにらみ合わして、やはり行政整理ということも相当の必要な程度において行われることと思うのであります。それは今年度でなしに、次年度の予算その他から現われてくる、また現わしたいと思つておるのであります。
 なお、この租税制度において間接税を偏重しておるが、直接税をもつと重視はできぬか、こういうお話でございますが、実はこの追加予算では、間接税と直接税とは、直接税が七で間接税が三でありまして、従來通りの比率であります。そうして特に間接税を重視するということはいたしておりません。間接税が大衆課税に流れるということはやむを得ない、必要を越えておる、この点は十分愼しみたいと思つて努力をいたしておるような次第であります。
 大体大藏大臣として答弁いたしますことは、以上の通りであります。(拍手)
    ―――――――――――――
#24
○安平鹿一君 大藏大臣の演説に対する残余の質疑は延期し、明七日定刻より本会議を開き、これを継続することとし、本日はこれにて散会せられんことを望みます。
#25
○副議長(田中萬逸君) 安平君の動議に御異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#26
○副議長(田中萬逸君) 御異議なしと認めます。よつて動議のごとく決しました。
 議事日程は公報をもつて通知いたします。本日はこれにて散会いたします。
    午後五時五分散会
ソース: 国立国会図書館
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