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1951/03/19 第13回国会 参議院 参議院会議録情報 第013回国会 決算委員会 第15号
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1951/03/19 第13回国会 参議院

参議院会議録情報 第013回国会 決算委員会 第15号

#1
第013回国会 決算委員会 第15号
昭和二十七年三月十九日(水曜日)
   午前十時四十四分開会
  ―――――――――――――
  委員の異動
三月十四日委員石川清一君及び郡祐一
君辞任につき、その補欠として三好始
君及び木村守江君を議長において指名
した。
本日委員木村守江君辞任につき、その
補欠として郡祐一君を議長において指
名した。
  ―――――――――――――
 出席者は左の通り。
   委員長     岩男 仁藏君
   理事
           高橋進太郎君
           長谷山行毅君
           溝淵 春次君
           飯島連次郎君
           小酒井義男君
   委員
           大矢半次郎君
           郡  祐一君
           瀧井治三郎君
           西山 龜七君
           常岡 一郎君
           森 八三一君
           森崎  隆君
           カニエ邦彦君
           小林 亦治君
           田中  一君
           菊田 七平君
  事務局側
   常任委員会專門
   員       森 莊三郎君
   常任委員会專門
   員       波江野 繁君
  証人
   東京地方検察庁
   検事正     馬場 義続君
  ―――――――――――――
  本日の会議に付した事件
○特別会計、政府関係機関及び終戰処
 理費の経理並びに国有財産の処理に
 関する調査の件
 (昭和二十三年度会計検査院決算検
 査報告批難事項第三百九十七号足利
 工業株式会社に対する二重煙突代金
 支拂及びこれに関連する事項)
 (右件に関し証人の証言あり)
○小委員の補欠選任の件
  ―――――――――――――
#2
○委員長(岩男仁藏君) 只今より決算委員会を開会いたします。
 本日は昭和二十三年度一般会計歳入歳出決算、昭和二十三年度特別会計歳入歳出決算、そのうち昭和二十三年度決算会計検査院検査報告批難事項第三百九十七号、足利工業株式会社(契約当時は足利板金工業組合)に対する二重煙突代金支拂及びこれに関連する事項について東京地方検察庁検事正からの報告に関する件を議題に供します。
 本日出頭の証人は東京地方検察庁検事正馬場義続君であります。証人に対する御注意は先に申上げましたので今回は省略いたします。馬場証人は先に御出頭になりまして宣誓をせられましたが、念のため本日も宣誓を求めます。総員御起立を願います。馬場証人から宣誓書を朗読して下さい。
   〔総員起立、証人は次のように宜誓を行なつた〕
    宣 誓 書
 良心に従つて真実を述べ、何事もかくさず、又、何事もつけ加えないことを誓います。
        証人 馬場 義続
#3
○委員長(岩男仁藏君) 御着席を願います。宣誓書に御署名、御捺印をお願いいたします。
 馬場証人に対し御質疑のあるかたはこれより御発言を願います。
#4
○カニエ邦彦君 証人に二、三お伺いをしたいのですが、昭和二十七年一月二十三日付当決算委員会宛にお出しになりました二重煙突事件に関するところの報告の回答書でありますが、この回答書について検察庁としては絶対的な自信を、確信をお持ちであるかどうか、私はかようなことをお尋ねするのは、これはやはり検察庁といえども人のすることでありますから、そこには多少の手落ちもあり得る場合がなきにしもあらずであると、こういう観点からして、これは決定的に確信を持つて、そうしてどこからこれを検討されても、どの事実からこれを指摘されても搖がすことのでき得ないところの完全無欠な、而も権威あるものとしてお出しになつておる、そういう確信の下に出されたかどうか、従つてかような御確信があるのかどうか、この点について伺いたいと思います。
#5
○証人(馬場義続君) 私ども本委員会から捜査の要請を受けまして、相当長期間に亘つてあらゆる観点から捜査をいたしました結果がこの決定になりましたのであります。ただ只今カニエ委員からもおつしやいましたように、人間のやることで、これがもう客観的にこれ以外に間違つた点は全然ないかと言われると、これは私どもとしては、私のでき得る限り捜査をした結果こうであると申上げることが相当であろうと思つております。
#6
○カニエ邦彦君 勿論検察庁の御調査になつた点においてはこうであるという御答弁でございますので、それ以上はその点についてはお伺いをいたしませんが、当決算委員会から検察庁に申上げた結論とはよほど内容的にも変つておるのでありますが、それはさておいて、この決算委員会が開かれる前に相当以前から本事件は世間にも流布され、或いは新聞にも或いは雑誌にも書かれておつて、そうして会計検査院の批難事項にも上つて来ておると、そういうことからしてこの委員会がどうも検査院の報告しておるような内容のものより、もつと複雑なるものがあるのではなかろうか、というのは本事件は簡單に四千万円……その後二千万円余になりましたが、二重煙突の代金が過拂いになつておる、誤拂いになつておると、こういうのが検査院から国会に対しての報告であるのであります。ところが私たちとじては二重煙突というものが四千万円或いは二千万円という大きな当時の金であります。今の金じやないのです。当時の金でありますから、これが間違つて支拂われるというようなことは当然あり得べきはずがないと、貨車に積みますれば、あの貨車を何両連ねて行かねばならないかという大量な品物であるがために、これが純金であるとか或いはダイヤモンドであるとかいう品物でなく、二重煙突でありますから、だからそういうものが間違うというようなことはない。だからこれは何かその中には不正な、いわゆる破廉恥的な刑事事件が伏在しておるのではなかろうかという観点に立つてそうして調べることに相成つたのであります。ところが悲しいことには、国会は検察権を持つておりません。従つてそう深くこれを調べるわけにも参りませんので、相当長い間ここで参議院は議員各位の熱心な調査によつて調べ上げて行つた結果、どうしてもこれはやはり刑事事件が伏在しておるとしか解されないという結論に至つて、検察庁のほうに御足労願つた次第であります。ところが私はそれ以前に国会が非常にほかの法律案もたくさんあるのにかかわらず、かような問題を長日月を要して、そうして調べねばならないということよりは、むしろ検察庁のほうがお調べになつたほうが早くて、そうして徹底するのではなかろうかと、こういうような意味からして、検察庁が何故国会が調べておつてもなお且つ又調べないと、そうして国会がいよいよ結論を出して検察庁のほうに調べて見てもらいたいという要請をするまでなおこの本件に対しては捜査をせなんだということ、この点について私は遺憾に思うと同時に不可解に未だに堪えないのです。而も本件を開始する前に、国会がいよいよ調べようとする前に当つて、そうして検察庁長官をこの席に呼びまして、どうもおかしいと思いますと、私たちは。だからこれを調査をなぜせなんだかということを聞きましたところが、これは刑事事件とも思いませんし、又何らこれに対しては捜査する必要がないと思つておりますというようなことを白々しく述べられたので、いたしかたなく国会がこれを調査したと、こういう次第であります。
 従つて非常に長くなりましたが、私は未だにそういつた疑念が解けない。それを率直に一つ検事正としてそういうことは全然知らなんだというのか、或いはこれはそんな、事いやしくも一国の法務総裁たる大橋氏が関與されておることでもあるから、そういう不正は全然ないという頭で、そういう御確信の下に調査をせられなんだのか、又或いは一つの権力の前にこれはこういうものを手を着けたのでは、これは非常にうるさくなるということで、先ずそういうものには触れないがいいというようなことで手を着けなんだのか。その点について一つざつくばらんにお答えを願いたい、こう思うのです。
#7
○証人(馬場義続君) その点は前日もお尋ねを受けたと思いますが、検察庁長官がこの席でどういうことを申したか、私は存じておりませんから、それについて私が意見を申上げる筋合いではないと思いますが、本件が国会で問題になつておつたにもかかわらず、なぜ検事は捜査に着手をしなかつたかという点でありますが、理想から申しますならば、検察庁といたしましては日日の新聞記事その他よく検討しまして、いやしくも犯罪の伏在しておるという疑いがありまするならば、直ちにこれに手当をすることが望ましいのでありますが、今日の検察庁の実情を申上げますと、到底そういう余裕がないのが……ないということを申上げるほかないのであります。これは甚だ残念なことではございますが、丁度御説明申上げるよい機会と思いますから、表を持つて参りましたから、これに基いて検察庁の実情を申上げたいと思いますが、委員長配付してよろしうございますか……。
 検事が捜査を開始します場合は最も多いのが警察送致の事件であります。それから告訴、告発に基く事件、そのほかに先ほど御指摘になりましたような新聞記事でありますとかその他の点から検事が自ら認知して捜査を開始する場合と三つの場合があるのでありますが、大体これまでの実例から申しましても、検事が捜査を開始しますのは、告訴告発に基く場合と警察送致の場合、で理想から申しまするならば、先ほども申上げましたようにあらゆる点に検事が気を配つて捜査をして行くのが筋でありますが、この表で御覧になりましてもわかりますように、終戰後非常に犯罪が増加いたしたにもかかわりませず、検察官の手当ができていないのであります。その表で申上げますと、昭和十年には東京地方裁判所検事局、東京地方検察庁、両者の受理人員が九万六千四百十一人に対して検事が五十九名であります。ところが昭和十四年には犯罪は六万四千百四十八人でありましたに対しまして、検事は七十三人、昭和十八年には六万六千五十九人に対しまして百二十人というような漸次検事の数は増しておるのです。ところが終戰の年に行政整理がありまして、検事の数は七十八名、これは東京地方検察庁の定員でございます。七十八名が検事、終戰の翌年の事、件の受理人員は、まあ取締官もいささか虚脱状態に陷つたと申しますか、いろいろな都合で事件は非常に多かつたと思います。犯罪は多かつたと思いますが、検挙された事件は五万三百二十一人であります。ところが二十二年以降はそこにありますように十万、二十三年は十九万、二十四年は二十七万、二十五年は同じく二十七万、昨年は三十四万というふうに非常な犯罪事件の受理が殖えておりますにかかわりませず、検事の増員はなかなか遅々として進みませんで、二十一年が七十八人、二十二年が九十人、二十三年が九十一人、二十四年が九十一人、昨年に至つて定員が百人に増されておるのであります。ところが定員は殖えましたが、なかなか検事の志望者が思うようになくて、その括弧内が実在人員であります。即ち只今東京地方検察庁で働いております検事八十八名、私を加えて八十八人という状況でございます。それからその横に副検事、副検事制度が二十二年度に設けられまして、そこに示してあるような数字が出ておりますが、これは何しろ急な制度でまだまだ教養が十分にできませずに、法律の所期しておるような機能を発揮するに至つていないのであります。そういうわけで今日検察庁の負担量というものは非常に殖えでおりまして、十分私どもが希望しておるように活動ができない状態にあるのであります。そこで先ほども申しましたように、何人かの検事をよけておきまして、日々の新聞記事なり或いは雑誌記事その他を十分検討しまして、犯罪が伏在しておるという疑いがあれば直ちにその捜査に着手するということにいたしたいのでありますが、それができないのであります。それともう一つは、前回も申したと思つておりますが、会計検査院との申合せで、会計検査に関連しで犯罪がある場合には、こちらに通知をするという取極めがありましたものですから、犯罪があれば当然こちらに通報があるものだというまあ期待もありまして、国会で論議されておりましたけれども、捜査を着手するということに至つていなかつたのであります。これは別に大橋総裁がその渦中に入つておるというふうに思われているから捜査をしないというような趣旨では勿論ないので、單に事務上のことで、その点は誤解のないようにお願いいたしたいと思うのであります。單にこの二重煙突事件のみならず、そのほかの事件でも新聞紙上に現われて実際捜査に着手するまでには相当の期間経過しておるのが実例であります。
#8
○カニエ邦彦君 只今の証人の申されました、非常にこの事件数が多い、いわゆる事務量が増加になつておるにかかわらず人員が少い、而もこの人員の定員が二十六年度において百人であるが、併し実員は八十八名で、十二人はいわゆる空白のままになつておる。こういうことが行われておるから非常に手が廻りかねるというお話でありますが、これはもう私は非常にお気の毒である。これはそういう工合になるのは、私は当然だろうと思うのです。併しこれは本委員会の問題でなく、行政機構の問題で、内閣委員等のまあ問題であろうと思いますが、政府の一般的な考え方が、これはただ單に検察庁のみならず、とにかくこの不正に対していわゆる匡して行くというところの機関については、殆んどもうそういうような極端な減員をして行く、それに対しては少しも政府が施策の上に留意をしていないということは、これはもう私は明らかな事実であると思う。あとからも御説明は申上げますが、とにかくそういう苦難な事情におありになるということはわかりますが、併しながらその中でも然らばどれを重点にやるか、手は足りないが、併し国家に対する影響力の強いものから先ずそれはやらねばならないのじやないかということは、私は当然であろうと思います。従つて本件のごとき国民の大きな疑惑を持ち、且つ又これの結果というものが大きく国政の上にまで影響して乗るということになり得れば、お忙しくともやはりこれは十二分に注意されておやりになることがむしろ適当ではなかろうか、かように思います。
 併しこれはまあただ私の意見でありまして、証人に次に伺いたい点は、今言つたような観点からして、若しもこの報告書で言われておるように、政治資金の問題にいたしましても、これは時効になつておるから起訴の要件にはならないというような結論で結んでおりますが、併しこれたりとも早晩、早くお調べになつておれば当然時効にならずしてひつかかつておるということになるのですから、事実これは実際問題として、二年も三年も放つちらかしておけばどんな事件でもこれは時効になつてしまうので、当然これは未然にその事件が世間で噂されたときにこれを捜査しておられれば、当然これは問題になつておるのじやなかろうか。それから大橋氏の行動については、これは横領にならないという結論に持つて行かれておる。まあ結論に持つて行かれておるという言葉は言い過ぎかも知れませんが、まあ結果はそうなつておる。ところが実際は山下という人間が大橋氏の傀儡になつておるのであつて、本当は大橋氏の意思で、なければ、どうにもこの金は使うことも動かすこともできないという嚴然たる事実。ただこの使いをして、お前これをあつちに持つて行け、あちらに運んで行けということを命じて行なつたのが山下であつて、そういう観点からしてこれは山下を横領罪で云々ということよりは、やはりこれは当の責任者が負うべき筋合のものではなかろうか。この点について、これは深くここであなたをお責めして議論をしてもいたし方がございませんが、とにかくそういうものである。それからこの報告書の内容を、私は過日これを担当されました渡辺検事と話合いをし又質疑をしたのでありますが、殆んど全部に亘つて質疑はし盡されていないのであります。そこでこれを一々質疑をして行きますと、勢いこの報告書なるものに疑義があり、そうしてこれが事実に反するものがここへ出て来る。仮にそういうようなことが出て参りました場合においては、一体検察庁としては国民に対して責任があるとお思いになるか、責任がないとお思いになるか、その点をお答え願いたいと思います。
#9
○証人(馬場義続君) 只今お尋ねの点でございますが、私どもは先ほど申しましたように、これまで私どもの力でできる限りの捜査をいたしました結果がかような結論になつておるわけでございます。で、すべて申上げるまでもなく、犯罪の捜査は証拠を集めなければ私どもは何も物が言えない立場で、どうもこの事件はこういう筋のものであると、こう思いましても、それに伴う証拠がなければ何も申すことができない職責にあるのであります。そこで或いはカニエ委員あたりの御調査の結果と違つておる点がありますかも知れませんけれども、それは私どもとしては捜査をいたしまして、証拠を收集し、これを検討した結果かような結論になつた。で私どもの職務の執行が非常にまずいために結論を間違つておるということになりましたならば、然るべき方法で私どもが責めらるべきであろうと思います。私の今日の心境では、私どもででき得る限りの手を盡して調べた結果がこうである、こう申上げるほかないのでございます。
#10
○カニエ邦彦君 勿論力を盡してお調べになつておると私は思いますが、併しながら捜査をすべきところであつたにかかわらず、その点の追及が漏れておつた。そのために非常に本件に重大なる手落ちができておつたというようなことがあり得た場合、それから今申上げているのはこれは確たる人的或いは物的証拠がここに出て来た場合、従つてこれらの人的物的、動かすことのでき得ない証拠によつて、これはこの調書以外に、さやはりこれは横領になるという結論が出た場合においては、一体その責任が検察庁としてはあるのかないのか、若しかあり得るとするならば、その責任は誰がその責任を受けるということになるのか。私はそこまで勿論この委員会が責任を御追及申上げるということを言うのではありませんが、とにかくそういうような事態になればその責任はあり得るかどうか。あり得るとすれば誰が一体今の制度においてその責任をとるということになるのか、この点についてお答えを願いたい。
#11
○証人(馬場義続君) この捜査に対する直接の責任者は私でございます。だから私の部下が誠心誠意捜査をしておると私は確信しております。ただ私の部下のやつた捜査が故意に調ぶべきものを調べないと、こういうような事実がありとしますならば、これは当然私が監督上責任を負わなければならんと思いますが、さようなことは私は断じてないと確信しております。
#12
○カニエ邦彦君 前回にも馬場検事正によく私お願いをしておいたのでありますが、あなたのほうのその制度の上から言うと、検査院から、そういう刑事事件が発生しておるものがありとするならば、それは検査院のほうからわしのほうに言つて来ることになつておる、だからそこで私のほうはこれを調査し調べるということだから、言つて来ないからそれでいいと、こう思つておつたというようなまあお答えであつたのでありますが、事実はですよ、事実は検査院はなかなかそういうことはやれない、やれないというよりはよほどの場合でなければそういうことはせない、こういうような状態である。と申しますのはこの前も言つたように検査院の年々に検査をいたしまして、私たちの決算委員会に報告して参りまするところの批難というものは、これは全体の検査をいたしまするところの大体におきまして三分の一しか検査をしていないのであります。而もその三分の一の検査能力しか検査院にはないということなんです。この点においてはあなたが今私たちに貴重なこの資料を下さいまして、そうして私たち今これを拜見したのでありますが、これと全く同じような状態にあるわけなんです。そういうような事態にあつて、そうしてなかなか国のいわゆる歳入歳出について十二分に見て行くことができない、併しながらそういう現状の下において年々これが検査がなされておる。そこでその検査の結果、その三分の一の能力ではあるが、併しながら検査の結果我々年々ここに報告されて参りまするものは、二十一年度の報告は百七十五件でありました。それから二十二年度になりますと約倍に上昇して三百八十六件になつております。二十三年度になりますと六百二十三件と、これまた倍になつて来ております。二十四年度の批難というものは七百五十件というこれまた厖大な数字になつて来ております。そこで今はこの二重煙突は二十三年度の六百二十三件のうちの一件としてやつておるのでありますが、二十四年度現在は七百五十件を今漸く審議に入つておる最中であります。それにもかかわらず今度は二十五年があとを追いまして、これは審議にも何にも入つておりませんが、私たちの手許へ来たのを見ますと、実に恐ろしい。殊にこの七百五十件というやつが一千百六件、一千件を突破したような状態へ来ておるのであります。政府が年々非常に国費の濫費というものが少くなり、そうして不正が少くなつて来ておるように思いますと、こういうことを言つておるんです。ところが皮肉なことには、事実として現われて来るところの検査はこうやつて増加を示して来ておる。それでその内容を見まするなれば、これは二十四年度の七百五十件や何かは、この批難された金額においては実に八百十九億七千七百万円ですよ、八百十九億円という厖大な批難金額がなされておるんです。これをこんな調子でやりますと、今私が申上げましたように、本当に検査院がもつと検査能力を充実して、そうして三分の一でない、全部をこれを調査をいたしますなれば、一体何千億円になり得るか、実に恐ろしいことになつて、二十三年度、二十四年度におきましても、それが二十五年度になつて一千件を突破して来るというような状態である。こういう状態でありますなれば、如何に我々決算委員会が懸命の努力をして、これの改善にその力をいたそうといたしましてもなかなか追つかない。而もこれらの中には相当巨額なるところの不正支出というものが行われ、そうして公務員の不正がこれが非常な数に激増しておる。恐らくは私は会計検査院の、あなたに今申上げておるその数字というよりも、あなたのほうでこしらえられておるところのいわゆる公務員のこの不正の数字を見られても、年々恐らくは増加をしておるのではなかろうかと思う。こういうような状態で日本の国のいわゆる官吏という者は殆んどもう腐れ切つておる。そこへこの腐れ切つた中から……この何千億円というところのこの血税から使われておるところの不正支出の中には、ただ官吏のいわゆるそういつた不正ばかりでなく、政党の選挙資金をもこの中からやはり相当額出ておるということ、これが私は問題であると思う。非常にことが、金額は少いようでありますが、一国の法務総裁であり一国の国務大臣である大橋氏がこういうようなところに関連をして、而もその中の金をどうあろうともそういうことに使われておるということが、これがこのままに、検察のいわゆる取調べになつて、そうして何ら犯罪にもならなければ、恐らくうまく逃れられたというような印象を国民に與えたとするなれば、これこそ私はこの腐れ切つたところの政界、腐れ切つたところの官吏道というものを誰が一体粛正をして行くか、どうやつてこれが立直つて行くか、こういうことを憂うるのであります。そこで私は非常にしつこいようでありますが、非常に大橋さん個人に対してはともかくとして、こういうことを早く直さねば国が亡びてしまう。全く中国におけるところのあの蒋介石政権が倒れたところのあの状態と全く同じような状態である。これを直して頂きたい。我々国会も、これは熱意ある人々の手によつて努力をされておりますが、併しながらより一層検察の大権をお握りになつておるところのあなたがこれに最も留意をされて、そうして極力これらの点を是正をされなければならない。特に小物を十人血祭りに挙げるよりは、上に立つ者を一人注意を與えたほうが国民に対する、否、全日本の公務員に対するところの粛正の影響力というものは非常に強くなる。こういう私は考えを以て特にこの問題については飽くまでも正しくいわゆる調べてもらいたいと、こういう考えであつたのでありますから、先ほど検事正から資料をお出しになつておられる点を見て、非常に検察陣のかたがたがこれは努力をなさつておるということはわかりますが、なお一層我々もこの検察の拡充強化ということに対してはそれぞれの委員会のかたがたにも一つ実情を御説明をし、又そちらからも願つて、これを拡充強化して、なお現在の亡び行かんとするところの国の腐敗堕落というものをやはり一掃して頂かなければならないと思うのであります。この点について検事正は今後如何なるお考えを、本件を通じてお考えを持つておられるか、又如何なる御確信があるか、その点についてお述べを願いたいと、こう思うのです。
#13
○証人(馬場義続君) 先ほどのお言葉の中に、会計検査院から言つて来ないからまあいいやというふうに考えて手を着けなかつたのではないか、こういうような、言葉は少し違つたかも知れませんが、そういうような意味のお言葉がありましたが、決して私どもはないからいいやという、その投げやりの気持でおつたわけでは毛頭ございません。ただ先ほど申上げましたように、毎日警察から送致して来、或いは直接告訴、告発して来る、捜査にこれ日も足らんというのが実情で、残念ながら新聞紙或いはその他の記事に基いて捜査をするという余裕はなかつた、甚だ残念であるが余裕がなかつたというふうに御了解を願いたいと思うのであります。
 それから只今カニエ委員から会計検査院の会計検査に関連して、国費が非常に濫費されてある疑いがあるというお話がありました。これを私本件に関連しまして会計検査院からあの批難事項を借りて来て読みまして、実は私も認識が足りないくらいに実は驚いたのであります。そこで丁度この事件の捜査に当るときでありますから、特調関係を先ず捜査をしようというわけで、本件を捜査しますと同時にあの批難事項もいろいろ検討をして参つたのであります。第一に本件で問題になりますのは、あの四千何百万円の支拂につきまして二千何百万円という過拂がある。而もその中には物品税のかからないものについて物品税を取つておる。これなんかは私どもの常識から考えても実に言語道断であるというふうに考えて、特にその点については愼重な捜査をいたしたのであります。これにつきまして本委員会の要請書の中には、明らかに名前は指摘していないのでありますが、只今カニエ委員から御指摘ありましたように、大橋、当時の顧問も関與しておられるのではないかというようなお疑いをお持ちのようでありましたから、さようなことがあつては由々しいことであると考えて、特に愼重に捜査をいたしたのでありますが、その詐欺の点については全然大橋総裁はその詐欺の共犯と認めるべき証拠はなかつたということがはつきりいたしましたので、前回ここで御報告を申上げました通りであります。併しながら如何にもこの特調側の事務の取扱いが疎漏のように思われましたので、何らかその間に非違があるのではないかという観点から、この四千万円の使途については、恐らく渡辺検事から御報告申上げたかと思いますが、相当詳細な取調べをしたのであります。渡辺君は私が昨年の五月に捜査を命じまして報告するまで專心これにかかつておつたのでありますが、そうして詳細に調べた結果、その四千万円の使途については大体明らかになつて、私どもの捜査の上においては金銭的に不正があるという証拠は発見することができなかつたのであります。でこれでもおわかり願えると思いますが、一つの事件につきましては、私どもの役所では相当こういう事件の捜査には練達である渡辺検事がかれこれ七、八カ月かかつておるというのが実情なのであります。そこで非常にたくさんな事件を右から左に取調べをして粛正しろというふうに申されましても、これを直ちに大いにやりますと申上げましても、これは口頭禪に終るので、まあ勿論やる決心は十分ありますからどうか一つ……。或いは法務委員会で申上げるのが相当かと思いますけれども、検察庁の物的、人的の施設をもう少し拡充して頂きたいということを特にこの機会にお願いしておきたいと思います。若しそれができますならば、私どもは何物も恐れずやるだけの自信と覚悟を持つておるということを私は申上げたいと思います。
#14
○小林亦治君 私から二、三結論的な部分だけを伺いたいと思いますが、昭和二十六年の四月三日附の本委員会からの検察庁に対する要望ですね、あれは検事正は如何ようにお考えになつておられますか。つまりただ單純なる捜査の要望と御覧になつたのか、やはりこの彈劾、つまり訴追を要望するところの意思表示、つまり告発であるとおとりになつたのか、その点を先ずお伺いしたいと思います。
#15
○証人(馬場義続君) この要望書には、告発するものではございませんがと断つてあります。そこで告発と私が申上げるのは如何かと思いますが、告発に近いものであろうというふうに私は考えております。
#16
○小林亦治君 そうしますと、この関係は検事正はどのようにお考えでありますか。つまり告発でありまするならば、検察庁の不起訴処分に対して更に審査会にかけ得るのでありますが、それから又起訴処分の結果に対して告発でないということになると、再審査を要求するところの権利というものはないということに帰着するのですが、その点如何ですか。
#17
○証人(馬場義続君) これは告発でないといたしましても、検察審査会は職権で審査を開始するという制度もありますし、又検事の処分に対して不服がある場合は現行の裁判所法上に抗告という條文があるのでありますが、恐らくこれは嚴密な意味の告発でなくても、本委員会がこの調べは不十分である、もう一遍捜査をしてくれということを高等検察庁に申出られるならば、当然高等検察庁は再審査をするだろうと思います。
#18
○小林亦治君 この場合なんですが、再審査の方法によらずして、従来検察庁がお調べになつた同じ角度であつても、証拠資料その他のものでなお新たなる、なお有力なるこれこれがあるというので、それを集めて更にこの告発をした場合に、東京検察庁としては捜査をお進めになるかどうか。
#19
○証人(馬場義続君) 更に告発があれば勿論これは捜査をしなければならんのであります。
#20
○小林亦治君 その場合如何でしようか、従来の担当検事でなく、新たな担当検事を以てお調べになるか、或いはやはり渡辺検事が本件に対しては縁故があるから、渡辺調べよということになりますのか、(笑声)どういうふうなもんでしようか。
#21
○証人(馬場義続君) 同じ事件について更に告発されるという場合に新たな証拠、つまりより有力な証拠を掲げずに、ただ告発をされるということになれば、結局これまでの捜査の結果に基いて結論を下すということになるだろうと思います。併し私どもが力及ばずして、非常に重要な証拠を見落しておつた、こういうような場合には、勿論捜査をすることについて私どもはちつとも拘束を受けておりませんし、やらなければならんと思います。但しそれをどの程度やるかということは、今ここで何するというわけには行かんだろうと思います。ただ併し普通の事例で申ましすならば、事情のわかつておる検事に調べさせるほうが便利ですから、そうなるほうが多かろう、かように考えます。
#22
○小林亦治君 一般犯罪に対してなんですが、一般世間の人が、特定の人の犯罪がかつた行いというものに対して非常に非難をするのであります。ところが私ども法律家から見ると、やはり犯罪の構成要件を充たしておらない。憎いやつだがどうも犯罪にならんという場合が非常に多いのであります。そこで本件は、私ども專門家から見ましても、どうもこの大橋氏に対するところの疑惑というものはだんだんと深まる一方なんであります。あらゆる角度から調べても、当初考えたほどのものじやないという、いわば消極的に判断するということになつては参らないのであります。そこで先ほどもカニエ君からも申されましたように、一般世間の本件、二重煙突事件に関しての世評というものは相当高いものがあるのであります。それとこの大橋氏を調べた結果、これは偽証の点は告発が基礎條件になつておるのでありますから、これは問題ないとしまして、横領の点、税法違反の点、政治資金規正法、こういう点についてはいずれも相当な疑いを法的にも私は持つておるのであります。お調べの結果が、横領に対しては証拠がない、足らない、少くとも足らない、それから税法についてはこれは基礎要件を欠いておる。作為、不作為の関係でこれは問題にならない。それから政治資金規正法は、これは時効になつた、こういうことなんでありまするが、どうも委員会からあなたがたのほうに対して出されたところの要望から考えますると、犯罪に明かになるという者はまあ五、六名指定したわけなのであります。ところが洗い浚いお調べになつた結果、高橋、田中とか、それらのいわば小物の者を真つ先に引つくくつて、およそ九分九厘通りの捜査が終つた頃に、大物の大橋に対して十項目に亘るところの書面による回答書をお求めになつた。これは捜査を担当するものの技術の上から或いはそういう場合もあるかも知れませんが、この方法がどうも国民の疑惑を更に深め、検察庁何をしているといつたような疑いを更に高めたのじやないかと思うのですが、私ども專門家から考えても、経験から割出しても、これ又異例なことなのであります。大橋は非常に仕合せであつたと考えるのであります。これこれのお前に疑いがあるから、これこれにお前が回答をしてみろ、こういうことになりまするというと、これは悪意に解釈すればですよ、あなたに対してはこれこれの疑惑がかかつているのだが弁明せよ、こういうことになりますので、そのような丁重な取扱をせられる被疑者というものは、それでなお且つ引つかかるというのは、よくよくの馬鹿かよくよくのとんま者でなければ引つかかるものでない。これこれの網がかかつているからお前逃げろと言つたも同じような感じを抱くのであります。最後にその回答が検察庁の主任検事に参つた後に、検事がそれを見て更に最後的な喚問となつたのでありまするが、誠に大橋に対しては親切であり寛大であり、そこに偏頗な取調ではないかという疑いを私どもは持つわけなのであります。どうしてそのような、而も真つ先に、或いは真つ先でなくとも起訴せられた被疑者と相併行して取調べなければならないと思う筋合いのものを、殊更他の小物を起訴してしまつた後に、十項目に亘るところの書面による回答書を求め、その回答書を検討した結果、ほんの形式的な最後的な喚問を主任検事がするなどということは、およそこれは法務総裁でもなければ、ずぶの素人にはそのような待遇を受け得ないはずなんです。ここで甚だ失礼でありまするが、大橋氏は時の法務総裁であり、検事正並びに主任検事という者はその下僚であるがためにそのようなことになつたのではないかと、こういう疑いを專門家である私としても未だに持つているのであります。その点について一つ御釈明を願いたいと思うのであります。本件の検察の結果に対しては私どもは非常な不満を持つておりまするが、その足らざるところを以て検察庁を彈劾するとか攻撃するという考えは毛頭ないのであります。ただ本問題というものは、どうやら泰山鳴動といつたような結果になつておりますので、このままでは何としても済まされない。もの一遍行けるところまで行かなければならん。決算委員会が取上げない場合には私どもの所属する政党、或いは政党を第二といたしまして、担当した我々数名の同志的な名によつてこれを糺明しなければならんと考えておりますので、その将来のために伺つておるのであります。検察庁を彈劾するとか、或いは同じ穴の狸とは決して思つてないのですから、率直に一つお考えをお述べになられ、又率直に御釈明なられ得るところは釈明して頂きたい、こう考えるのであります。
#23
○証人(馬場義続君) 只今小林委員の御質問の中に、大物であるとか小物であるとかいう言葉がありましたのですけれども、私どもは捜査から申しますと、冒頭に申したように、何と言いましても証拠を中心に仕事をして行かなければならないのであります。政治的に考えると大橋法務総裁が非常に大物で、この事件の中心人物であるというふうにお考えになられるかも知れませんが、私どもはこの事件の捜査に当りまして、やはり何としましても中心人物はあの詐欺で起訴した田中、高橋が刑事事件としては中心であると思わなければならないので、あれから着手をいたしたので、決して中心人物である、大橋氏が中心人物であつて、それがたまたま法務総裁であるために捜査をあと廻しにしたというような事情では断じてありませんから、この点は誤解のないようにお願いをいたしたいと思います。
 それから大橋総裁をじかに調べないで質問書を出すのは、まるで証拠湮滅を教えているようなものではないかという御疑念のようでありますが、これは一面御尤もな点であります。成るほど全然また事件が表面化していないときに、お前はこれこれの疑惑を受けているがといつて質問書を出すようなことがありますならば、これはまさに只今小林委員から御指摘の通りであると思いますが、告訴事件でありますとか告発事件でありますというような事件は、大体もう争点がわかり切つておる事例が多いのであります。この被疑者に対しまして直接調べないで質問書を出すという例は、告訴事件、告発事件では相当私どもとしてはやつておる例なのであります。本件におきましてももう私ども相当長期間調べておりますし、国会でも問題になつておりますし、争点がどこにあるかということは大橋氏自身も当然御承知のところでありますし、先ず第一に質問書を出してどういう答弁があるか、それに基いて調べをしようというのが私どもの考えであつたのであります。
 御疑念を避けるために二、三実例を申上げたいと思いますが、委員長、人の名前を出しますと、済んでいる事件をもう一遍新聞に出すことは気の毒でありますから速記をやめて頂くわけに参りませんか。
#24
○委員長(岩男仁藏君) 速記をとめて下さい。
   〔速記中止〕
#25
○委員長(岩男仁藏君) 速記を始めて。
#26
○小林亦治君 もう一点だけですがそれは前回の渡辺検事が証人としておいでになつたときも念のため伺つたのでありますが、殊に検事正であられまする証人に対しましては、一層お聞きしなければならない事柄なんであります。御案内の通り検事は一国の法律の代表者である。殊にこの犯罪という面におきましての公益を代表する唯一の機関が検事であります。そこで時の国務大臣であり而も綱紀粛正の要を握らなければならないところの要職にある法務総裁が、国務大臣になつてからもなお且つ本件のような問題に取巻かれてそのあと始末をしなければならんというような立場に立つておるといたしましたならば、これは政治的に、証人は政治家ではありませんから、その点に関するところのはつきりしたお答えを頂くわけには参らんと思うのでありますが、公益の代表として、かかる者がかかる不徳にして、而も故意でなければ禍いせられたものであると思うのでありますが、かかる人物が一国の国務大臣となつており、法務総裁として而も国会において数回となく彈劾的な質問或いは中間報告ということをされながら、恬として言い遁れに狂奔し、何ら恥なき態度を以て現職におられるということは、これは如何なものでしようか。政治道義上はこれは勿論なんですが、公益の代表者であられるところの検事正の目からお考えになつてこれはどのような価値判断をせらるべき存在であるかということをお差支えなくばお伺いしたいのであります。検事が論告する場合に法律論のみならず、社会に及ぼす影響、学問の深い検事であるならば、或いは哲学の領域にまで相互つて被疑事、被告人に対するところの弁明を求められることが本職であるのでありますから、一向お差支えないように思いますので、是非一つ御所見をお伺いしたいと思います。
#27
○証人(馬場義続君) 検事の仕事は犯罪を捜査しまして、犯罪の成否を明らかにすることだけで、それ以上に亘つて検事が意見を申上げることは、これは甚だ僭越であると思いますから差控えます。
#28
○小林亦治君 お言葉尻を捉えるわけでは決してないのでありますが、私はそうじやないと思うのでありまして、求刑をせられる場合の検事の意見というものは、これは広汎に亘るので、そういう意見は起訴せられて、刑事公判廷以外では述べられないとおつしやるならば格別なのであります。法律の以外に亘り得ないということはこれはあり得ないはずなんです。それを堂々と亘り得る者はただひとり検事あるのみだと私は考えますので、折角の御意見ながら了承しかねるのであります。
#29
○証人(馬場義続君) 犯罪が成立しまして起訴をし、これに対して求刑をする場合には勿論これは事実なり情状について意見を述べます。それから犯罪が成立して起訴するかしないかというような場合には諸般の状況を勿論考えなければならんと思いますが、本件の場合は犯罪の嫌疑が全然ないか、或いはもう時効にかかつておる、或いは嫌疑が不十分として、犯罪が成立するという見解を私どもがとり得ない事件でありまして、当然意見を申上げることはできないと思います。
#30
○小林亦治君 これは議論をしてもしようがないのであります。聞くほうも実は辛いのであります。私も司法官の経験がありますので非常識なことは聞かないつもりであります。そこで一旦仮拂金の残額については裁判上の和解がなされて、民事上は一応きりがついて、まあ軽い場合であるならば犯罪性が薄くなるにもかかわらず、重要視して再燃させて、起訴すべきは起訴せられた点は、私どもは検察当局を大いに多とするのであります。ただくどいようでありますが、一点残つたのがこの大橋氏に対する問題だけなのであります。繰返してお聞きしまするが、更に新たなる材料を添えて、更にこの人的或いは物的、直接或いは間接的なものを添えて正式な告発をした場合に、一度やつた事件だからというので下積みにされるようなことなく、直ちに主任検事を御決定になつて捜査を進めてもらえますか。
#31
○証人(馬場義続君) 先ほども申上げましたように、告発があれば検事は捜査をする義務がありますから勿論捜査をいたします。ただ同じ事件に何遍も告訴なり告発された場合に、新らしい証拠がない場合、検察庁といたしましては結局同じ結論になるという点は一つ御了解願いたい。ですから更に若し告発されたというのならば、新たにこれまで検事が捜査が足りなかつた点、或いは検事が発見しなかつた証拠を添えて告発されれば、勿論私どもはこれは職責上捜査をしなければならん、かように考えます。
#32
○小林亦治君 わかりました。その証拠の範囲が……これは証拠を集めるのは我々が本職でなくて、あなたがたが本職なのでありますから、犯罪があるということをあなたがたのほうへ申出をすれば、証拠を集められるのは当然なので、お集めになつた結果が先ほどの報告になつて結論が出て参つたのですが、明確な範囲のわかつた証拠でなくとも、これを追究すればかような証拠が出るはずであるという方向を示したものが二、三あれば、これは新たなる証拠を収集する端緒になることと思うのでありますが、その程度の場合は、証拠でないというのでやはり蹴られるのか、ああ成る程そういう点もあつたのかというので、その部面に向つて新たなる証拠の收集をなさるのか、やはり一概に証拠といいましても、明確な証拠もあれば、間接証拠を引張り出し得るところの端緒といつたような漠然たる場合もありますので、そういう誰が見ても動かない証拠といつたようなものは、我々としてはこれはなかなか出し得ないと思うのであります。その証拠の程度なのですね。更に又私どものほうから告発した場合に、有力な証拠がなかつたから手を著けんというようなことになされたのでは困りますので、まあ念のためにその証拠の程度を伺つておきたいと思う。
#33
○証人(馬場義続君) 大分話が具体的になつておりますので、実際を伺わないとはつきりしたお答えは申上げかねますけれども、勿論証拠を集めるのは私どもの仕事で、これこれの証拠で犯罪の認定ができるんじやないかという新たな証拠を全部調べて持つて来て下さいということを申上げる気は勿論ございません。勿論私どもも未熟な検事でありますから、見落しもあるでしようが、或いは在野側から御覧になれば検事の気の付かないこともあるかも知れません。そういうことをここを調べたらどうかといつて来られた場合に、成る程と勿論これを捜査することについて決して躊躇するものではございません。
#34
○小林亦治君 新たなる証拠はカニエ委員の手許にもなお二、三あるほか、それらの新たな資料がなくとも、従来の決算委員会のこの会議録をずつと見ただけで、これは時効の点は格別といたしまして、私どもの指摘した犯罪は全部成立するのであります。解釈の問題なのであります。ただその解釈の結果、検察当局はどうも全部大橋氏に対して有利なような結論になつてしまつたので、そういう法的な解釈もあろうが、世界の通読はこれであり、日本の曾つての判例はこれであり、現在の学説はこうであり、成立するじやないかといつたようなものが先ず前提になるのであります。そのほかに新たな証拠があつたならば、解釈の相違だからといつてのけられたのでは浮かばれないので、ちよつと申上げたのであります。
#35
○溝淵春次君 議事進行についてちよつと発言の前に……。小林先輩の御意見でありますが、先ほどからお聞きいたしておりますと、仮定の意見で、決算委員会といたしまして、委員会の本来の立場から申上げれば、馬場証人からお聞きすべき要点は、この二重煙突の事件に関して今まで調べられた検察当局の経緯とその牽連する事項についてでありまして、今後どのような……、証拠があつた場合に、若しその告訴、告発等の場合に、検察庁としてどうするかというようなことを決算委員会において意見を馬場証人にお聞きするということは、決算委員会の本来の職責を逸脱しておると思われるのであります。私どもはさような問答はこの席上においては必要ないと思う。議事進行に関して申上げます。
#36
○小林亦治君 溝淵委員の御意見はよくわかりますが、実は私の質問はこれで終ります。ところがただ仮定の上に立つというのではなくて、今一々指摘し得るものがありますけれども、それが適当でないから、むしろ愼んで、立場を若干申上げただけで、あなたに彈劾されてもかまわんと思うなら(笑声)、まだまだ言うことがありますけれども、どうか御懸念のないように……。
#37
○証人(馬場義続君) ちよつと私からお答えしておくほうがいいと思いますから……。先ほどの小林委員の質問の点でありますが、証拠の判断について異論があるというようなお考えの場合は、むしろ先ほど申しました一審検事の裁定に不服があるという場合でございますから、高等検察庁に抗告をする、嚴密な抗告ということができなければ、再審査を高等検察庁に要求せられるという形をとられたほうが私は穏当だろう、こう考えております。
#38
○長谷山行毅君 本件につきましては、渡辺検事が七、八カ月も專門にこれに従事されて捜査し、且つ検事正その他の上司とも十分打合せ協議した結果、検事局としての結論が出たものであり、又検事正名義で本年の一月二十三日に決算委員長宛にいたされましたこの回答書でありますが、これは現在におきましても検事正としてこの捜査が十分であり、且つこの検事局としての結論的な措置が妥当適切であると信じておられるのかどうか、念のために一言お伺いしたいと思います。
#39
○証人(馬場義続君) これは冒頭にカニエ委員の御質問に対してお答え申上げました通りで、私どもとしては相当長時間、長時日をかけましてでき得る限りの捜査をして得た結論で、私どもの集めた証拠ではこういう結論が出たということをお答え申上げます。
#40
○長谷山行毅君 本件の事実の中心は、四千万円の仮拂の問題で、四千万円支拂つてそのうち二千万円の過佛があつた。それで四千万円の使途が中心になると思うのでありますが、なお捜査もそれを中心として、それから発展していろいろ事件を捜査するということは誠に捜査としての適当な措置であると思いますので、今まで渡辺検事からもその捜査の経過、順序等を伺いましたが、私どもはそれで十分納得できるのであります。先ほど大物、小物というような言葉でいろいろ御意見も各委員から出されたのでありまするが、刑事事件の捜査におきまして、当初からその人の地位によつて大物、小物というふうな見解を以て調べることはむしろ偏見だと思いますので、そうした点につきましても十分私どもは本件の捜査に信頼を置くのでありますが、先般来渡辺検事が当委員会で三回に亘つて証人として証言され、その間において各委員からいろいろの法の解釈の点、或いは証拠の收集の点等についても渡辺検事と多少異なつた立場からいろいろ問答されておつたのでありまするが、その後渡辺検事が当委員会の証人喚問後に検事正に対して何か新らしい証拠でも発見し、又自分のその捜査上でこの点について十分でなかつたのではないかというふうなこと等につきまして検事正にお話になつたようなことがあるかどうか、その点をお伺いしたいと思います。
#41
○証人(馬場義続君) ちよつと質問の御趣旨がよくわかりませんが、渡辺君の捜査が足りなかつた点があつたということを私に言つたかということですか。
#42
○長谷山行毅君 そうです。
#43
○証人(馬場義続君) そういうことは聞いておりません。
#44
○小酒井義男君 検事正にお尋ねしておきたいのですが、この書類による質問書で回答を求めるということが前にも例があつたとおつしやつているのですが、こういう形式をとる場合には、主任検事の判断でそうした方法をとることができるのか、そうでなしに、やはり検事正等と協議の上でそうした方法をとることになつておるかどうかということをお聞きしたいと思います。
#45
○証人(馬場義続君) 一般の事件では主任検事の判断でたくさんやつております。ただこの事件はこういう注目された事件、私も当然相談にあずかつてよかろうと承認してやつたものであります。
#46
○小酒井義男君 これは将来もあることだと思うのですが、こうした事件について事実を調査する上に書類による回答というようなことでやるのが果して適当かどうかということに対して、検事正としてはどういうふうにお考えですか。
#47
○証人(馬場義続君) これは事件の性質によります。場合によつてはそうしたほうがいい場合があります。これは事件の性質によると申上げるのが適当かと思います。
#48
○カニエ邦彦君 只今自由党の長谷山議員から如何にも検察庁のお出しになつたこの報告書が、これが適切妥当な性格なものであるというふうに聞えるようなお話であつたのでありますが、私はそうでない、これはどうも事実に反する箇所が……全部ではありませんが、そういう箇所もあり得る。又捜査の足らなかつた点も、見落しの点もあるということで、それで再度審議をやつておるのであります。従つて渡辺検事がこれを主としておやりになつておつて、馬場検事正はその責任の地位におられるので、直接本件を細かくお取調べになつていないから、そこで私はあなたに証言を願うことを実は今していないわけなんですけれども、そこで然らば渡辺検事に対してのこれの詳細の質問が終つておるかというと、これも終らずに中途で留保しておるような次第であります。そこで新らしいところの証拠或いは疑惑というものはあり得るのでありますが、併しそれが私の考えと、又專門家であられるあなたのほうのお考えとが一致するかしないかは、これはまだわかりません。併しながらこの報告雷の通りではない、少くともその通りでないということだけは明確になり得るという考えを持つておることを併せてここではつきりと一つ申上げておきます。
 なお渡辺検事と私との調査についての質疑が終つたあとにおいて、本問題をどうするかということが恐らく決定されるのじやなかろうかと思つております。だから今日のあなたに対する証言は、そう細かい具体的なことは先ず質疑をいたしたいと私は決して思つておりません。併しながらこの前にも幾たびか申上げましたように、決算委員会としてはただ一人その大橋氏にこれだけの手数をとられてやつておるということは、必ずしも好ましくないのでありまして、非常に国費の濫費が多くなつて来る。そうして年々何十億、それが何百億、それが何千億円という巨大ないわゆる批難が現われて来るということを、これを非常に懸念をいたしまして、若しかこれらのものが検察庁の御努力なり、或いは又決算委員会の努力等によつて、そうして国民の租税を以て賄われておるところのこの財源が、たとえ一千億円でも二千億円でもこれが節減されるといたしましたならば、国民に対して報いるところが実に大きいものである。従つてこの年々出て参りますこれらの不正事件というものをなくし、そうして收入の確保を十分にし、支出の節約を図り、又経費を効率的に使用し、そうして物件を経済的に使うというようなことが本当になされておるということになりますれば、検察のいわゆる人員にしても、警察官の待遇の改善にいたしましても、これは優にできる、こういう結果になるのでありますから、今後ともいろいろ犯罪はございましようけれども、特に国民の血税が、これが不正に使われておるというような点については、一般個人の会社の金を横領したとか或いは詐欺とかという場合と非常に私は本質的に違うと思うので、十二分の御留意を願いたいということ、従つて今後検察庁としては、これら国民の血税に対するところの犯罪についてどういうようなお考えがあるか、さようなことについて見解を承わつておきたいと思うのです。
#49
○証人(馬場義続君) 只今カニエ委員のお説誠に御尤もで、私も全くその点は同感で、できるだけの力を注いでさような犯罪の検挙取締に資して行きたいと考えております。
#50
○委員長(岩男仁藏君) 速記をやめて。
   〔速記中止〕
#51
○委員長(岩男仁藏君) それでは速記を始めて。馬場東京地方検察庁検事正に対する証言については別に御質問もないようでありますから、この程度で終了したものとして御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#52
○委員長(岩男仁藏君) 御異議ないものと認めまして、馬場証人に対する証言を求める件はこれで打切ります。
  ―――――――――――――
#53
○委員長(岩男仁藏君) 次にちよつとお諮りいたします。決算審査に関する小委員の補欠選定に関する件を議題にいたします。
 去る三月十四日郡祐一君が委員を辞任されましたので、小委員が欠員になつております。この際委員長においてその補欠を指名することに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#54
○委員長(岩男仁藏君) 御異議ないと認めます。よつて委員長は決算審査に関する小委員に郡祐一君を指名いたします。
 本日はこれで散会いたします。
   午後零時十二分散会
ソース: 国立国会図書館
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