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1951/03/12 第13回国会 参議院 参議院会議録情報 第013回国会 議院運営委員会 第25号
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1951/03/12 第13回国会 参議院

参議院会議録情報 第013回国会 議院運営委員会 第25号

#1
第013回国会 議院運営委員会 第25号
昭和二十七年三月十二日(水曜日)
   午前十時三十七分開議
  ―――――――――――――
 出席者は左の通り。
   委員長     川村 松助君
   理事
           加藤 武徳君
           木村 守江君
           赤木 正雄君
   委員
           石川 榮一君
           草葉 隆圓君
           團  伊能君
           寺尾  豊君
           松平 勇雄君
           加賀  操君
           小宮山常吉君
           高橋 道男君
           菊川 孝夫君
           相馬 助治君
           中村 正雄君
           山下 義信君
           三好  始君
           矢嶋 三義君
           堀  眞琴君
  委員外議員
           須藤 五郎君
  ―――――――――――――
   副議長     三木 治朗君
  ―――――――――――――
  事務局側
   事 務 総 長 近藤 英明君
   参     事
   (事務次長)  芥川  治君
   参     事
   (記録部長)  小野寺五一君
   参     事
   (議事部長)  河野 義克君
   参     事
   (委員部長)  宮坂 完孝君
  法制局側
   法 制 局 長 奧野 健一君
   参     事
   (第二部長)  岸田  實君
  ―――――――――――――
  本日の会議に付した事件
○委員の辞任及び補欠選任の件
○日米間安全保障條約第三條の規定に
 基く行政協定に関する件
  ―――――――――――――
#2
○委員長(川村松助君) 会議を開きます。
 常任委員の辞任及び補欠に関する件。
#3
○参事(河野義克君) 日本社会党第四控室から通商産業委員の小林孝平君、農林委員の清澤俊英君がそれぞれ辞任されて、通商産業委員に清澤俊英君、農林委員に小林孝平君を補欠として指名せられたいという申出がございました。参議院自由党から、予算委員石村幸作君が辞任されて補欠に石坂豊一君を指名せられたいという申出がございました。
#4
○委員長(川村松助君) 只今議事部長から御報告いたしましたように、常任委員の辞任及び補欠に関する件につきまして承認することに御異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#5
○委員長(川村松助君) 御異議がなければさよう決定いたします。
  ―――――――――――――
#6
○委員長(川村松助君) 行政協定に関する件。
#7
○中村正雄君 岡崎さんがお見えになつておりますので、三月六日の保利官房長官の答弁と、翌日の岡崎国務大臣の答弁と出遅つている点につきましてお取消しになる点があつたら先に取消して頂きたいと思います。
#8
○国務大臣(岡崎勝男君) 三月六日の議事録はここに持つております。で、いろいろ筋を引いて調べて見ましたが、若し保利官房長官の言われたことがはつきりしないとか、何といいますか、正確に保利官房長官が自分の考えを伝えていないと思われるふしがあれば改めることは何ら躊躇しないと言つております。が、私の見るところではいろいろ長い速記でありますが、中村君のおつしやつたほうには、條約でないから憲法七十三條の適用がないのだという考え方と、七十三條の條約ではあるけれども、安保條約で包括委任を受けているから国会の承認は要らないのだという二つの答弁の中で、保利官房長官は條約でないから要らないというふうに政府は統一して解釈しておるとおつしやつておるのですが、その点をもう一遍確認したいということと、條約でないから要らないということであれば、安保條約三條を援用する答弁はおかしいと思う、こういうふうに言つておられる。ところが保利長官の説明は終始一貫しまして行政協定は七十三條のいわゆる條約だという解釈は政府はとつておりませんという意味のことと、もう一つは安全保障條約第三條による国家間の取極である、そしてなお行政協定は国家間の合意でないと政府は考えておりませんと、でありますから保利長官の言うことは行政協定は国家間の合意であるということを申しております。それからこれは安全保障條約の三條によつて取極めたものであるということが一つ、そして更に七十三條の條約だという解釈ではないということが一つ。問題はこの七十三條に言う條約でないというのは、この七十三條のほうに重きを置くか、條約という点に重きを置くかということになるのですが、條約でないと保利官房長官が言つたんじやなくて、七十三條で国会の承認を得べき條約ではない、こういう趣旨で、七十三條という点に重きを置いたのであります。そこで條約でないということは官房長官は言つてないで、国家間の合意であるから国家間の合意というものが、いろいろの形のものがありましようが、これを全部ひつくるめて広義の條約と言えば当然これは條約であります。そしてそれは官房長官は否定しておらないのでありまして、ただ承認を要する條約ではないという点を七十三條の條約でないと、こういうふうに表現しておつたのであります。そこで若し議運のお考えで、それでは明確でないというようなら、その点はもつとはつきりしても何ら差支えないと思いますが、趣旨はそういうことであります。
#9
○中村正雄君 今岡崎さんが保利官房長官の大体の速記を御覧になつて要約して趣旨は一貫しておると、こういうふうにおつしやつておりますが、速記録を見ましてもそうでありますし、当日のこの運営委員会におきましても、保利さんの言うことが私の質問に対する見解、小笠原君なり或いは堀君に対する答弁等においていろいろ食い違いがあつたので、一番しまいにどうも趣旨が一貫しておらない、従つて一応帰つて政府のほうで意見を統一してもう一度やつてもらいたいと、こういうふうになつてその日は打切つていることは記録にも載つている通りなんです。従つて今岡崎さんがいろいろ保利官房長官の答弁は何ら矛盾はない、要点は一貫もておるとこう言われておりますが、速記をお持ちであれは速記を一応援用したいと思いますが、速記の三頁の下から二段目、私の「七十三條に言う條約ではないと、こういうふうに政府は考えておるわけですか。」という質問に対しまして、政府委員保利茂君は「そう考えております。」とはつきり言つております。その次に私が「そうしますると、それが政府の解釈であるとしますれば、衆議院の予算委員会なり、その他におきまして、これはまあ政府の代表と思われまする大橋国務大臣が、行政協定は憲法七十三條に言うところの條約であるということを再三再四繰返して答弁いたしておるのと食い違つておりますが、その点どうですか。」こういう質問に対しまして政府委員保利茂君は「行政協定は七十三條の條約だという解釈は政府はとつておりませんから、そういう発言はあつたと私は思いません。」ということが速記にはつきり載つておりますが、この点どうですか。
#10
○国務大臣(岡崎勝男君) その点は当時の大橋法務総裁の速記等を調べて見ました。そうしますると、大橋法務総裁のはここではどこを御引用になつたか知りませんが、しばしばいろいろの機会でこの問題を取上げているのであります。その大体一貫した趣旨は、広義の條約である、こういう点が一つであります。そこで七十三條の條約を広義の條約とすれば、その七十三條の條約に入るのである。つまり條約というものに入るのである、但し更に法務総裁は附加えまして、この安保條約の三條があるから、従つて政府は国会の承認を求めずしてこの行政協定は締結できるものと考えておる。だからして安保條約がなければ、国会の承認を得べき條約であろうけれども、安保條約があるから国会の承認を得ないで締結できるものである、いわゆる広義の條約である、こういう趣旨でこの條約のほうに重きを置いて説明をしておるのです。そこで今度官房長官のほうは七十三條の條約というのは国会の承認を得べき條約である、こういう解釈から七十三條の條約では、右にいう條約でない。併し国家間の合意であることは当然であるけれども承認を得ない国家間の合意である。こういう意味からこの七十三條のほうに重きを置いてあるのと、それから條約のほうに重きを置いたのとは、おのずからそのニユアンスといいますか、それが違つて来たと思いますが、大橋総裁の当時の説明は広義の條約であるということを何個所かで以つて申しております。でありますから、趣旨とするところは私は同じだと思いますが、強調したところが七十三條のほうに結局重きを置いたか、條約という言葉に重きを置いたかによつて言い方が違つたのだろうと思います。
#11
○中村正雄君 私のお尋ねしておるのは、大橋国務大臣の答弁がどうこうということはここで問題になつているわけじやないので、この速記によりますと、大橋法務総裁はそう言つておるが、今の政府の考えはどうかと言つたときの保利君の答弁が問題になつておる。それが下から二段目に今読み上げました「行政協定は七十三條の條約だという解釈は政府はとつておりませんから、そういう発言はあつたとは私は思いません。」こういうことがはつきり速記に載つておるわけです。この点はいろいろ内心の意思がどうあろうとも、はつきりと政府の代表としてこういう答弁があつだとすれば岡崎国務大臣の答弁とは違つておる、私はこの点をお尋ねしておるわけです。従つてこの下から二段目の最後の保利君の答弁については、これは取消しをなさる意思があるかないか、この点をお聞きしておるのです。
#12
○国務大臣(岡崎勝男君) これは先ほど申しました通り意味が正確に現われていないとすれば、直すことは何ら躊躇いたしません。
#13
○中村正雄君 もう一つ四頁の一番下でありますが、私が「いろいろ見解があるから僕は政府に聞いておるわけなんで、政府はこれを條約なりとお考えになつておるか、條約でないとお考えになつておるか、この点を聞いておるわけなんです。」という問いに、政府委員保利茂君は「いわゆる第七十三條に言う條約そのものではないと考えております。」と同じことを言つております。従つて今官房長官は七十三條の「條約」という点に重点を置くか、国会の承認という点に重点を置くか、重点の置き方が違うから云々という御答弁がありましたが、日本の憲法には、條約ということは認証のところにもありますけれども七十三條にしかないわけで、広義も狭義もありません。勿論條約の字句の解釈なり或いは国際法上の解釈があると思いますが、憲法上言つておるのは、七十三條の三号の條約の締結ということを言つておるわけでありまして、これに対しまする国会の承認云々は但書でありまして、條約の内容を決定するわけではないわけです。従つて條約につきまして広義とか狭義とか、或いは條約という字に重点を置くとか、国会の承認に重点を置く、とかいうことは、これは政府の答弁者の内心の意思は別でありますけれども、憲法の上から言つて、大して重要な問題でないと思います。従つて岡崎さんは條約という点に重点を置いて答弁する。保利さんは国会の承認という点に重点を置いて答弁するということは、現在の国会の承認を要するかどうか、條約であるかどうかという点については、これは大して理由もないことだと思うのです。従つて今申しました通り、私ははつきりと二つの点を指摘して、政府はどちらをとるのか、こう聞いているのです。條約でないから国会の承認は要らないのか。或いは條約であるけれども、安保條約によつて委任をされているから、国会の承認は要らないのか、二つの解釈しかないと思う。いずれをとるかということになれば、岡崎さんは、後段のほうの、條約ではあるけれども、安保條約で国会の承認を得ているから要らない、こういう解釈をおとりになる。保利官房長官は、條約でないから、こういうことをはつきりと言つているわけです。そこに食い違いがあるから、いずれが正しいかということを速記を基礎にしてお願いしたい、こう言つているわけです。従つて今岡崎さんのお考えではこの前の当運営委員会でおつしやいましたように、行政協定は七十三條による條約であるけれども、すでに安保條約で承認を得ているから、重ねて国会の承認は要らない。承認の範囲内において政府が結んでいるのだ、こういうような答弁が政府の統一した答弁とすれば、今言つたように当然取消すべき必要があるんじやないかと考えます。
#14
○国務大臣(岡崎勝男君) それでありまするから、私は保利官房長官の言われていることは、国会の承認を要するか、要しないかということが、議論の焦点になつておつて、そのために保利官房長官はここに呼ばれて説明を求められたのでありまして、従つて保利官房長官から言えば、この協定が承認を要するものであるかどうか、即ち七十三條で国会の事前若しくは事後の承認を要するものであるかどうかということに頭を置いて答弁されたので、誤解があつたかも知れませんけれども、今の中村君の引用された議事録の三頁の最後のところに、政府委員保利茂君が「行政協定は国家間の合意でないと政府は考えておりません。」こういうふうにはつきり言つているのでありまして、国家間の合意であれば、それは條約の一種であることは当然でありまして、従つてそのあとのいろいろの説明のところは、例えば今引用されたのも、保利君は四頁の最後の段の真ん中で以て「いわゆる第七十三條に言う條約そのものではない」というようないろいろの言い方をして、七十三條というのは承認を得るものである。その承認を得る條約そのものではないのだというふうに言われているということは、この速記から見て私はわかると思います。わかると思いまするが、明確でないとお考えならば、いつでもこれは訂正いたします。
#15
○中村正雄君 一応速記録の訂正なり、保利君の答弁のあいまいの点の訂正ということにつきましては、一応岡崎国務大臣も了解なさるのであれば、私はその点につきまする質問はその辺にとどめまして、次に一応進んで行きたいと思いますが、一つ政府の見解を聞きたい点は、政府は條約を締結して、條約が効力を発生したならば、條約そのものが国内的な法律としての効力を直ちにお持ちになるものという解釈をおとりになつておるか、それとも條約にはきめられたけれども、国内法としての効力としては、国内法によりまするそれぞれの法制定の手続をしなければいけないというお考えか、どちらのお考えをおとりになつておるか、お聞きしたい。
#16
○国務大臣(岡崎勝男君) それはあとのほうの見解をとつております。
#17
○中村正雄君 政府のほうは、條約は成立しても、條約が国内法として効力を持つためにはそれぞれの国内立法をしなければいけない、こういう解釈をおとりになつていらつしやいますか。
#18
○国務大臣(岡崎勝男君) その通りであります。
#19
○中村正雄君 そういたしますると、これは直接これには関係ありませんが、講和條約等につきまして、いろいろな債権放棄等の関係がありますが、そういうものにつきましても、すべて別個の法制定の手続をおとりになる意思であるわけですか。
#20
○国務大臣(岡崎勝男君) 国内法で必要とされるものは、法制定の手続をとるつもりでおります。
#21
○中村正雄君 そうしますと、安保條約の第三條、行政協定の基礎になつておりまする安保條約の第三條でありますが、最後の、両政府間の行政協定で決定する、こういうことが、行政協定については国会の承認は要らないという根拠になつておると御説明になつておるわけであります。ところが七十三條に、日本の條約ということは一つだけ謳つておりまして、その條約は国会の承認を要する。国会の承認を要しない條約ということは、今の日本国憲法では規定されておりませんし、又その制定当時においては、恐らく予定もされていなかつたと思う。ところが安保條納は、日本とアメリカ合衆国との間の條約でありまして、アメリカ合衆国におきましては、條約というものは上院の三分の二の承認が要るが、行政協定は承認が要らない、こういうことになつておるので、行政協定というものを、一応アメリカでは、憲法上あるないにかかわらず一応の慣例として認められておるということは、私も承知いたしております。そこでそういう意味で、行政協定というものは、アメリカから見れば、一つの憲法上の制度として考えるわけでありますし、又日本国の憲法におきましても、條約の締結は、これは内閣に権限があるわけであります。従つて私は第三條、日本国の憲法の立場から見て、言い換えれば、日本側から見ましたならば、両政府間の行政協定で決定するということは、両国間の別個の條約で決定するというふうに解釈できると思いますが、そういうようにしても同じだと思いますが、政府はどういうふうにお考えですか。
#22
○国務大臣(岡崎勝男君) 只今アメリカのお話が出ましたから、先ずその点から申上げますと、アメリカ合衆国におきまして、行政協定といいますか、行政協定というのはちよつと狭義になりますが、大統領が国会の承認を得ないで締結できる條約、或いは国家間の合意、こういうようにお考えになりますと、これにはいろいろの種類のものがありまして、上院の承認がむずかしいから便宜的に大統領に認める、そういう権限を認めたというものばかりではないのであります。一例を挙げますれば、法律で大統領に委任する場合もあります。それから條約の中で、大統領にその條約に基く協定を作る権限を委任する場合もあります。それから勿論政治上の理由といいますか、憲法上の理由といいますか、上院の承認を得るのに困難であるからということで、特に大統領に認めた種類のものもありますが、いろいろの種類がありますが、單に上院の同意を得るのは困難だからという理由だけで、行政協定といいますか、大統領限りの條約を作り得るというふうにしておるのではないと私は了解しております。つまりその中には、一部はそういうものもありますが、従つて同様のことは、行政協定とは言つてはおりませんが、よその国、フランスだとか、イタリアだとか、スウエーデンその他の国々におきましても行われておるのであります。要するに條約と申すものは、一国では無論できませんから、やはりこれは條約に熱くいろいろの法律行為とか、国内の手統とかいうものも、広く見れば、国際慣行が間接には働いて、各国でもそういうものを作つておると考えております、そこでアメリカではできるが、日本ではできないであろうという、これは法律の議論としてはそういう議論も成り立つかも知れませんけれども、いずれの国におきましても、條約において委任と言つては語弊があるかも知れませんが、政府間で協定を作ることを認めておりますれば、そうしてその協定を作ることのその内容が何といいますか、いわゆる白紙委任、何でも作つていいのじやなくて、その條約に基く一定の範囲のきまつた、きまつたと言つてはあれですが、一定の範囲の、條約が予想しておるような種類のものをその範囲内で作ることを認めた場合には、これはいずれの国でもそういうものはできるというのが当然であろうと考えております。
#23
○中村正雄君 私のお尋ねしておるのは、両政府間の行政協定で決定するという意味は、アメリカの国から見た場合の解釈と日本の憲法から見た場合の解釈と同じだというふうにただ岡崎国務大臣はお考えになつているのですか。
#24
○国務大臣(岡崎勝男君) その通りであります。その一つの例を挙げますと、今回の行政協定は、アメリカ合衆国におきましても国会の承認を得ずしてできるもの、こうなつております。それは安保條約三條から来るのでありますが、ところがこの今回の行政協定と実質的には殆んど変らない北大西洋條約に基く軍隊の地位に関する協定、これは国会の批准を要すべきものとされております。で、アメリカ合衆国の説明によれば、北大西洋條約に基く軍隊の地位に関する協定については安保條約のような、親になる安保條約三條のような規定がないから国会の批准を要する。併し安保條約の三條があるからこつちのほうは要しない、こういう説明をしておりますから、私は日本と同じものだと考えております。
#25
○中村正雄君 そうしますると、行政協定という一つの條約の類型と申しますか、そういうものは日本の憲法にも当然あるものだとこういうふうに岡崎さんはお考えになつているわけですか。
#26
○国務大臣(岡崎勝男君) 行政協定という名前はちよつとどうかと思いますが、国会の承認を得た條約の中で認められているものは政府間でできる、こう考えております。
#27
○中村正雄君 政府間でできるという意味でありますが、政府間でできるということと、それから国家間でできるということとはどこが違うわけですか。
#28
○国務大臣(岡崎勝男君) これは国と国との間の合意という意味においては違いがありません。ただ政府間でできるというのは、先ほどアメリカの例を引きましたように、大統領限りでできるとか、及び政府限りでできるとか、つまり国会の承認を要さないでできる、こういう意味でございます。
#29
○中村正雄君 それは国内におきます手続だけであつて、日本の憲法もやはり條約の締結権は政府に持たしてある。従つて日本の政府とアメリカの政府と條約を締結するというのは何も行政協定のみに限るものではないのであります。従つて締結権者が政府でありましようとも、その効力はその国に及ぶわけでありますから、従つてアメリカの場合は大統領の権限というものがいろいろありまして、特に軍隊に関するものは大統領の権限になつているわけでありますから、そういうことが言えるかも知れませんが、日本の憲法におきましては、国会の承認ということは別にして、政府間の行政協定でやるという、その政府間でできるということになれば、一般の條約とはそこに違つた権能のものが出て来なくちやいけないと思います。従つて言い換えますと、行政協定でできる範囲というものはどういうふうにお考えですか。
#30
○国務大臣(岡崎勝男君) これは先ほど申したように、政府は国会の承認を得ずして何でも行政協定という名前で外国との間に協定を結び得るというのではなくして、行政協定であろうと、ほかのものであろうと、国会の承認を得るのが原則であつて、ただ條約中に行政協定を結び得るという條項がありまして、その條項が国会の承認を得たから結べるのだという意味であります。
#31
○中村正雄君 この第三條からですね、政府にこのアメリカ合衆国の軍隊の日本国内及びその附近に配備を規律する條件というものを確認するということが私にはまだはつきりわからないわけなんです。先ほどちよつと申上げましたように、両政府間の行政協定ということと、両国間の別個の條約によるということとどういうふうに遅うかということについてまだ答弁がないわけです。
#32
○国務大臣(岡崎勝男君) ちよつと御質問の趣旨がわかりませんが、私の見るところでは、即ち両政府間の行政協定によると書いてありますが、両政府間で結べる、つまり効力発生し得る條約の趣旨ですが、行政協定を結び得る。それから普通の條約であれば仮にそれが行政協定という名前でありましても、そういう條項がなければ内閣はこれを締結することは認められているけれども、事前又は事後に国会にその承認を求めるべきものである、こう解釈しております。
#33
○中村正雄君 今の御答弁はそれでよろしうございますが、今までの政府の答弁を聞いてみますと、両政府間で国会の承認なしに結べる。それは国民の権利義務に関係があるとないとにかかわらず、第三條に規定されておるから結べるのだという、こういうような解釈の仕方と、これは安保條約を施行するについての行政権の範囲内であるから政府限りで結べるという解釈と、二ついろいろ今まで委員会で出ておるのですが、従つて今の岡崎さんの答弁によりますと、これは第三條によつて委任を受けておるのだから、国民の権利義務に関係があろうとなかろうと、その委任された一定のいわゆる配備を規律する條件に含まれておれば、行政権の範囲内のものであろうと行政権の範囲外のものであろうと、結べるとこうお考えですか。
#34
○国務大臣(岡崎勝男君) その通りであります。
#35
○中村正雄君 そうしますと、又大橋国務大臣その他の前国会の特別委員会の速記を引用するようでありますけれども、それによりますと、行政権の範囲内ということをたびたび発言されておりますし、それと今の答弁では政府の解釈が変つて来ておりますが……。
#36
○国務大臣(岡崎勝男君) 変つて来ておりません。つまり立法事項を要することでも、両国政府間で約束をいたすことができるという意味であります。それはその当時も言つでおりますように、立法事項を必要とするものは無論立法の手続をとらなければいけないわけであります。締結そのものはできる、こういう意味であります。
#37
○中村正雄君 立法手続を要するものは立法しなくちやいけないというのは、これは第三條によつて委任されております條約でありましようと、一般の條約でありましようと同じことだと思います。それを先ほど岡崎さんから、政府の解釈としては、條約は当然国内法的の効力を持たないから、国内法的の効力を持つには別個の立法措置をとらなければいけないということがはつきり政府の方針だということをおつしやつておるならば、政府の行政権の範囲を逸脱するものをきめた場合は、これは別の立法手続をするとおつしやつておりますが、これは行政協定であろうと、国会の承認を要しまする一般の條約であろうと、この点は同じだろうと思う。従つて前の委員会或いはその他におきましても、行政権の範囲内と施行細則だということを盛んに強調されておりまして、但しその中に立法措置を要するものについては、これは国会の承認を得なければならない。従つて国会において承認を得られなければ、その分に関する限りは行政協定の効力を発生しないということをたびたびおつしやつておると思います。この点に今おつしやつた点と食い違いがあると思いますが如何ですか。
#38
○国務大臣(岡崎勝男君) 私は初めから申しておる通りに、行政協定といえども広義の條約でありますから、一般の條約と行政協定というものは何等違うところはないのであります。従つて一般の條約についても立法事項を要するものはやはり国会の立法手続を経なければできないと同様に、行政協定についても立法事項を要することは同様の手続を経なければできないわけであります。ですから行政協定というものは、ほかの一般の條約と違うという御解釈ならばともかくも、同じものであるという御解釈ならば、その間に私の言うように、いずれも立法事項は国会の承認を受ける手続を必要とするという点については変りはないと思う。
#39
○中村正雄君 行政協定の内容が発表されました現在と、発表されない締結中の時における内閣の答弁とに食い違いができておると思う。これは政治情勢に相当左右されておるかも知れませんが、臨時国会におきましては、この件に関しましては、どこまでも安保條約の施行細則であるということを盛んに強調されておつた。ところがこれができてみると、施行細則ではない。国民の権利義務に関するものが相当多くなつたという点で、今岡崎さんは行政協定も一般と同じものであるということを盛んに主張されておりますけれども、前の国会の特別委員会におきまする法務総裁その他の答弁は、どこまでも施行細則であるということを重点に置かれまして、但しその次に、若しも権利義務に関係するものがあるならば、別個の立法手続をとるというふうに答弁されておつたと思うのです。一応速記をお調べ願わんと即答はできないかも知れませんが、その点に相当私は食い違いがあるという点をお尋ねしておるわけです。
#40
○国務大臣(岡崎勝男君) これは、私の今申したのは、形式的に條約というものの性質を述べておるのでありまして、さて具体的に、じやこの安保條約の三條に言う行政協定は何かという具体的の説明になりますれば、やはり同じことで、実施の細目を作つておるもの、そうして実施の細目ではありまするけれども、立法事項を必要とするものも当然あると思うのであります。実施の細目は、立法事項は全然必要がないものであるという解釈は、政府はとつておらないのであります。
#41
○中村正雄君 実施の細目についての立法措置を政府はとらないということを言つておるということを、私申上げておるわけじやないのです。その行政協定ができるまでには、どこまでも、これは安保條約の施行細則であると、行政権の範囲内のものであるということを、盛んに強調されておつたように、速記には各大臣の答弁が載つておると思います。ところが今の岡崎さんの答弁によると、この行政協定も、一般の條約も同じものであつて、ただ国会の承認が要るか要らないかが違うだけで、従つて行政協定の内容は、行政権の範囲内のものだけじやなくして、これは国民の権利義務に関係するものも含む、その場合は、これは一般の條約と同じように、国内法で同じ効力を持つためには、立法措置をするということを言つておる。その点に食い違いがあるということを申上げておるのです。
#42
○国務大臣(岡崎勝男君) 私は食い違いはないと思います。というのは、当時でも立法を必要とするものは、立法措置をとると言つておりまして、従つて、両政府だけで、立法措置を必要としない協定を結ぶんだということは言つておらないと思います。当時でも、やはり立法措置ということ、或いは予算措置ということは、言つておるのであります。
#43
○中村正雄君 一応時間が相当経ちますから、私の質問は一応この程度で打切ります。
#44
○菊川孝夫君 私は行政協定につきまして、この安保條約の三條に「両政府間の行政協定で決定する」というやつは、岡崎さんの説明では、両政府の権限によつて行政協定を締結するということを、この條約承認の際に承認を得てある。こういう御説明でありました。私はこの「両政府間の行政協定で決定する」というのは、これはアメリカ政府と日本政府が行政協定を結ばなければならんのであつて、例えば一国の軍隊が武力を以て他国に駐屯するというときには、往々にしてこの軍司令官が武力を背景として、武力のない国に対して或る協定を強制するような場合もあり得るわけです。過去においてもあつたし、今後においてもあり得るわけであります。そういうことを排除するという意味が相当含まれていると思う。又地方の自治体に向つて一司令官が、愛知県なら愛知県、或いは福岡県なら福岡県において、県知事に対して、特別の協定を強要するというようなことも、これは軍隊が往々にして犯す過ちでありますし、そういうことは一切いけないんだ。すべてこれは両政府間の協定によつてきめるんだと、こういう意味も多く私は第三條には含まれておると、こう解釈するのでありますが、その点について政府はどうお考えですか。
#45
○国務大臣(岡崎勝男君) これはそのとき、場合によつて、そういう場合も起るかも知れません。併しながらアメリカという特殊の一つの国、特定の国にとりましては、軍司令官が、その他国の地方官なり或いは他国の政府に対して協定を結ぶ権能は与えられておらないし、又過去において一遍も与えられたことはないと思います。従つてそういう場合は、今度の交渉におきましては想定されていないと思います。国の組織或いは国の憲法その他によつて統帥権とか何とかいう特別のものがある場合はどうか知りませんけれども、米国のような場合は、軍司令官が協定を結ぶということは認められておらないと思います。
#46
○菊川孝夫君 これは非常措置として、臨機の措置ということはこれはとらなければならん。軍司令官は当然とらなければならんと思うのであります。例えば朝鮮の戦線が、今のような状態ならば、まずまずないとしましても、これの推移如何によりましては直ちに共産軍の飛行機の日本基地爆撃ということも起り得るだろうと思います。その場合に、当然夜は燈火管制或いは避難を、非常措置として現地においてやらなければならん場合もあるでしようし、そういうようなことも日本国民に対して軍司令官がするということもあらかじめ両政府間において行政協定できめておくのだ、当然その国民に対しての軍司令官の命令権ということはあり得ることになると思いますが、そういう時になつてから日本政府なり或いは自治体の長官に対しましてそういう協定を強要するようなことはないのだと。こういう意味も私は相当含まれておるのを両政府間の行政協定できめるというのであつて、これをあながち政府がきめていいものであると、国会の承認を必要としないものであるというふうに解釈するのは、余りにも私はアメリカの憲法の建前とそれからアメリカの大統領の権限と、総理大臣の権限というものに大きな違いがあるのに、日本の憲法とアメリカの憲法と違うところもお考えにならずに、アメリカ通りに、まあ憲法そのものも相当違つておる点を考えずに、この点だけを同じように考えて行こうとするところに、私は無理があると思うのですが、その点どうお考えですか。
#47
○国務大臣(岡崎勝男君) 私の了解するところでは、アメリカの軍司令官はアメリカの軍隊の安全を保持するための臨機の措置をとることは義務付けられておると思います。併しながらアメリカの軍隊以外のものに対する何と申しますか、例えば日本政府との間に取極めをしたりするようなことは、その権限の範囲外と解釈しております。従つて日本がそういう今おつしやつたような場合が、これはあるかないか別として、そういう危急な場合があつたとしても、軍司令官限りでやれることは、アメリカの軍隊の所属員の安全を保護するという点に限られると思います。それ以外のことはアメリカ政府及び日本政府の間に話合いをしなければできないことと思います。なお先ほど中村君の御質問に答えましたように、これはアメリカ側としても日本政府と同様の立場でありまして、アメリカ側は行政協定はいつでも勝手に結べるんだという建前はとつておりません。というのは、先ほど申したように、北大西洋條約に基く軍の地位を規律する協定につきましては、親である委任されておる條約がないからという理由で、国会の承認を求めつつあるのであります。
#48
○菊川孝夫君 次にそれではこの行政協定の締結は、政府は條約であるということを岡崎さんも認められました。従つて憲法七十三條の、「内閣は、他の一般行政事務の外、左の事務を行う。」というのに、一、二、三、四と六号までありますが、そのうちの二の「外交関係を処理すること。」と、こういう條項で以てやられたものであるか、それとも三の「條約を締結すること。但し、事前に、時宜によつては事後に、国会の承認を経ることを必要とする。この事前に国会の承認を、もうすでにこの安保條約承認の際に経てあるものであると、こういう解釈から第三條の「條約を締結すること。」で、事前に国会の承認を経るというのは、すでに、経てあるものであると、こういう解釈で締結されたものであるか、どちらなのか。
#49
○国務大臣(岡崎勝男君) そのあとのほうでありまして、国会の承認を経ておる、こういう意味であります。
#50
○矢嶋三義君 岡崎国務大臣にお伺いいたしたいのは、先ず第一番にこの行政協定が條約であるとかないとかいう、そういう政府の認識の統一というものはいつやられたのでありますか。
#51
○国務大臣(岡崎勝男君) 政府の認識の統一はもうずつと前からできております。
#52
○矢嶋三義君 それであつたならば、私は非常に意外であります。本日の中村委員からの質疑に対して、やれ広義の條約とか狭義とか、或いは條約に重きをおいたとか承認に重きをおいたとか、なかなか言葉というものは便利でうまいことを言われておりますが、先般保利官房長官は、私は注意を促しておきたいのでありますが、本委員会で中村委員の質問に対して、最初は條約であるかないかという点については自信を持つていなかつた。それは答弁の当時の空気からはつきりとこちらは把握できた問題であります。なかなか質問に対して時間をおいて、すぐ口を割らない。そうしてだんだんと追い込められて行つて、終りのほうで七十三條で、いわゆる七十三條で言われるところの條約ではないというようなふうに逃げて行つて、それを今日岡崎国務相がうまく繕つているわけで、そういう経過をこの五体に感じている私といたしましては、一体これに対する政府の認識の統一はいつやつたかという質問が起らざるを得ないのであります。この点は先ほど一応岡崎国務相は訂正するにやぶさかではないという発言をされたわけでございますが、私は十分の御反省を要望しておきたいと思います。
 で次にお伺いいたしたい点は、まあ私は專門でないからあえてお伺いするわけでございますが、この七十三條の條約でないとか、或いは承認を要しない條約と言われるのでございますが、そういう七十三條でいうところの條約でないと、それ以外の條約というとどういうものがあるのでございますか。
#53
○国務大臣(岡崎勝男君) 初めの御質問につきましては保利官房長官の言われたことにつきましても、先ほど速記録を読上げましたように、第三頁の一番最後のところには、保利長官は「行政協定は国家間の合意でないと政府は考えておりません。」ということをはつきり申しております。そこで七十三條にいう條約というのは、国会の承認を事前、事後に得べきもの、こういうわけであります。そこで條約ではあるけれども、もう事前に承認は得ているから改めて承認を得る必要はないという意味で保利長官は言つておるのであります。そこで第二の御質問につきましては……。
#54
○矢嶋三義君 ちよつとその質問の前に、私の聞き方がまずかつたのかも知れませんが、率直にお伺いしますが、承認を要しない條約というものは、憲法のどこに基礎があるのか、第何條のどこに基礎があるかはつきりしない。
#55
○国務大臣(岡崎勝男君) これは憲法にはどこにもありません。ありませんが、過去においても現在においても一種の條約であつて、国会の承認を得ないものは実はあるのであります。併しこれは非常に軽いものでありますから、一度も問題になつたこともありませんが、例えば万国郵便條約に基く両郵政庁間の……、郵政庁というのは役所ですが、郵政庁の間の郵便交換に関する取極めというようなものは、実施細目として認められておるものがあるのであります。現在にもあるのであります。これはまあ極く軽い意味の、本当の何といいますか、技術的なものでありますが、併しこれもやはり一種の広義の條約ではあるのであります。併しそれは別としましても、この締結をしたときに、国会の承認を得る、この前後に得るという問題とあらかじめ認められて締結することを承認されておるものと区別すれば、條約の申には必ずその品物ができたときに国会の承認を、前あとは別として必ず得なければならんというものと、その物はできなくても、あらかじめこういうものは作つてもよろしいということになつて作られるものとあると思います。それを政府はひつくるめて広義の條約とこう称しておるのであります。
#56
○矢嶋三義君 只今のは、まあこれは国務大臣みずから言われるように軽い意味の、それこそ文字通りの実施細目であつて、この場合とは私は本質的に違うと思うのです。だからそれはまあ先例としての理由に私はならないと思います。
 そこで次に質問を続けますが、国務大臣はアメリカにおいても行政協定は、そう大統領の権限で勝手にできるものではない、こういうような発言がございましたが、まあこれはアメリカの大統領の権限で国会の承認を両院の承認を要しないという條件で結ばれたかも知れませんがまあそれを一歩譲りましても、安保條約の第三條に基いての行政協定だからと、こう一歩譲つてアメリカが態度をとつたとしましても、日本の場合とかなりこれは違うと思うのです。と申しますのは、行政協定の締結に当つては、先般この席上で国務大臣は、ラスクさんは安保條約の承認と行政協定の締結との間には全く関係ないということを言明されておると、こういうことを言われましたけれども、現実にアメリカ上院の審議の状況というものは、安保條約第三條で謳つてあるところの行政協定というものは如何なるものであるかということに細心の注意を払つて、條約審議に当つて、関連性を持たせておる。ところが政府は我が国において安保條約の第三條でもう承認を受けておるから、白紙委任をされておるのだから承認を要しないのだ、こういうことを、これを唯一の拠点として論陣を張られておるわけでございますが、我が国の安保條約を承認する当時というものは、第三條の行政協定というものは全く白紙であつた。一切のことはわかつていなかつた。それで果して発表されたこの行政協定というものは、承認を要しなくてもいいものかどうかということは了解ができないわけであります。更にお伺いいたしたいのは、それについて先ほど岡崎国務相が言われましたが、前々から国内法規に関するところの立法とか或いは予算に関係する面について国会の承認を要するということを申しておりますけれども、これは国内法規に関連があるとか或いは予算に関係するものは、これは国会にかけて承認を要するのは当り前のことであつて、それと行政協定の承認を要しないということとは、私はおのずからこれは別個の問題だと考えるのであります。それらに対する国務相の見解を承わりたい。
#57
○国務大臣(岡崎勝男君) これは前にも繰返したと同じことでありますが、先ほど国会の承認を得る立法手続なり予算手続なりということを申したのは、国会の承認を得る條約、得べき條約、つまり普通のいわゆる條約につきましても、政府は締結して仮に国会の承認を取付けても、やはり必要な立法措置等は改めて国会に提出しなければならないということは、行政協定と同じであるという意味で申上げたのであります。それが当然のことと言われれば当然のことと思いますが、要するに先ほどの説明は一般の條約と行政協定というものは特に変わりはないのだ、で安保三條がなければ、この協定締結の前、若しくは場合によつては事後ということになりますが、国会の承認を得べきものであろうけれども、安保三條があるから受けないで、政府限りでやつて効力を発生するのだ、こういう説明をいたしておるのであります。
#58
○矢嶋三義君 重ねてお伺いしますが、この第三條の「アメリカ合衆国の軍隊の日本国内及びその附近における配備を規律する條件」云々というのが安保條約を審議する当時の第三條でございますが、これに基いて締結されたところの行政協定に国民の権利義務に関連する至大な影響性を持つものが入つて来ておるということを考えると、これは第三條で包括委任されたと言えるのでしようか。
#59
○国務大臣(岡崎勝男君) 国民の権利義務に関係があるものにつきましては立法措置を求めるのであります。
#60
○三好始君 それではちよつと方向を変えてお伺いいたします。岡崎国務相は外交が專門でございますが、いやしくも国家間の合意を文書によつて交換する、そういう條約が締結される場合は、先ずその條約というものを、我が国においては憲法第七十三條の三号でございますが、それで承認をして、そうして国内法規とか或いは予算に関連あるものは、その條約を承認したという前提から必然的にそういう法規に手を着けて行くというのが好ましい形であつて、いやしくも両国の代表が合意によつて條約を結んでおきながら、その個々の法規を国内法規に照らして国会にかけて、そうして承認されなかつた分は効力を失うのだというような両国間の條約の結び方というものは、ちよつと私は異例な、好ましくない形ではないかと思いますが、これは、岡崎国務相は外交畑の権威でございますが、どういうふうにお考えになつていらつしやるでしようか。
#61
○国務大臣(岡崎勝男君) これは日本の場合も、無論日本の場合を考えなければ言えませんが、條約というものは外国との間のことでありますから、自然外国と日本との関係になつて参ります。そこで、外国の例を例えば申上げますと、先ほど中村君の御質問に答えましたように、例えば、フランスにおきましては、條約というものの種類を非常に限定いたしまして、特に名前を挙げて、これこれの種類の條約は国会の承認を得べきものといたしております。それ以外のものは国会の承認を得ないで作ることにいたしております。そうしますと、政府間で條約は締結できまするけれども、それを実施するためには国内の立法を必要とするのであります。その国内立法ができない場合には、やはり非常に困ることにはなるわけであります。そこで、そういうことはフランスのみならず、例としてはたくさんあります。大部分の国はそうなつております。従つて、今度の場合も、それは好ましくないことでありますが、私は効力を失うとは申しておらないので、行政協定は効力を発生するのでありまするが、立法措置ができない場合には、その当該事項だけは実施ができない、国内において実施ができない、こう説明しておるのであります。
#62
○三好始君 仮に政府の見解のごとく、行政協定は安保條約第三條によつて委任せられたもので、当然に国会の承認を要せずして政府だけで締結し、効力を認められるものであると……、私は見解が違うのでありますが、仮にそういう立場をとつた場合、安保條約で委任せられた項目の範囲内のものであれば、その内容は如何なるものになつてもいいという見解でありますか、その点を先ず承わりたいのであります。
#63
○国務大臣(岡崎勝男君) 今度の特殊の安全保障條約を例にとつてお話になるならば、安全保障條約の三條の軍の配備を規律する條件、この軍の配備を規律する條件というのは、たびたび申上げますが、日本では初めてでありますが、世界各国の中においては、いろいろあるのであります。現在有効なものも四つか五つありまするし、従つて、軍の配備を規律する條件というものは、その條件の主義が、例えば裁判権については、属地主義とか、属人主義だとかいうことはありまするけれども、いずれにしても裁判上の特権を認めるという原則についてはわかつておるのであります。その他の点においても、原則的にはもうわかつておることばかりであります。従つて、その範囲で締結すべきことは当然と思つております。
#64
○三好始君 只今の答弁は、委任せられた項目の内容については無制限なものではなくして、国際法上一定の原則の範囲内で締結せらるべきことを予想して委任ぜられておる、こういう意味に解釈していいですか。
#65
○国務大臣(岡崎勝男君) その通りでありまして、その当時大橋法務総裁等の速記録を御覧になりますと、これは決していわゆる白紙委任状ではないのだという説明をたびたびいたしております。
#66
○三好始君 そういたしますというと、具体的に行政協定の内容に現われておる問題で、私には果してそれは国際法の原則として認められておるかどうかについて疑わしいものがありますので、それをお伺いいたしたいのであります。例えば、これは本会議でも私が質問した内容の一つなんでありますが、一国の軍隊が他国の領土内にあるときは、国際法上その軍隊は当然に治外法権を認められている。政府は治外法権という言葉を使うことを非常に嫌つておるようでありますが、国際法上はつきりと、他国にある軍隊は治外法権を認めるということを言つて来ておるのであります。ところが、その軍隊の治外法権なるものは、軍隊の営舎を離れ、又公務にあらずしてなした行為については及ばない。そういうものについては、滞在せしめておる国は、その国の法規を行使して差支えないというのが国際法規の原則であります。ところが、行政協定に現われた駐留軍の治外法権はそれを越えております。又軍人或いは軍属に限つてそういう治外法権は認められておりますけれども、その家族にまで治外法権が及ぶということは、やはりこれ又国際法の原則にはどんなに探しても見つからないことであります。行政協定は、そういう意味から申しまするというと、確立せられた国際法の原則を越えておることは明瞭であります。従つて、これは安保條約第三條を承認する場合に、国会としては予想しなかつた問題としてこういう内容を包含してある。行政協定を締結する限り、当然に国会の承認を要する、私はこう考えるのでありますが、これについてはつきりしたお答えを頂きたいのであります。
#67
○国務大臣(岡崎勝男君) これは協定の内容になりまするから、ここで論議をするのはどうかと思いまするが、御質問でありまするからお答えします。公務以外又は施設区域以外において軍の裁判権が及ばないというのが国際法に規定があることだとおつしやいますけれども、私の見る国際法は必ずしもそうなつておりません。現に実例として、国際慣行に重きを置かなければ国際法というのは論じられませんが、国際慣行としては、英本国とアメリカとの間の協定によりますと、英本国において、アメリカ軍の所属員に対する、公務、非正公務たると、施設内施設外たるとを問わず全国的にアメリカ合衆国の裁判権が及ぶということは、一九四一年以来規定されて現に実施されております。又アメリカの軍隊の所属員に対する裁判管轄権で、家族が含むか含まないかという問題につきましても、これも国際法には家族を含むとか含まないとかいうことは書いてないのが通例であります。そうして実際の慣行によりますと、例えばアメリカの軍ということを具体的に申しますと、アメリカ軍の構成員とか所属員とかいう名前になつておりまして、そうして例えば今申した英米間の裁判管轄権に関する約束におきましては、アメリカ軍隊の軍法に服せしめられておる者は、英国の裁判権から免除されることになつております。そこでアメリカの軍隊の軍法に服せられておるものはどういうものかというと、アメリカの法律上は米軍に随伴して外国にある家族は軍法に服する。従つて米軍の家族は英国の裁判権から免除されておる、これは念のため確めました国務省の回答でありまして、英国側でもこれを認めておるわけであります。従つて家族を軍の構成員と認めないんだということは、国際慣行から言いましても違うと考えます。又家族という字は場合は違うでありましようが、英埃協定の中にはこれは家族という字は明記されてあります。家族は構成員外だということは国際慣行上から言うと違うのではないかと考えます。
#68
○三好始君 私は非常に奇怪な感に打たれるのでありますが、英米間の協定にこういうことがあるからということで、それで国際慣行が確立しておるというような説明の仕方だと思うのでありますが、非常に不思議に堪えないのであります。私は国際法の慣例というものはそういうものではないと思うのでありまして、個々の或る一つの具体的な協定の中にどういう規定があつても、それがいわゆる国際慣習法として成立しておるものとかけ離れておる場合には、こういう国際慣行があるから差支えないのだという説明は随分こじつけだと思います。そういう点で私は国際法の原則とか、国際慣行という形で問題にしたいのは、英米間の協定ではありません。それがいわゆる国際法として確立しておるかどうか、こういう形で私は問題にしたいのであります。安保條約第三條は決してどこかに例があればどんな不利な協定になつてもそれは仕方がない、こういう意味を含めて委任したものではないと思うのであります。仮に、国会の承認を要しない委任だという見解をとつておるその立場を仮に認めたとしても、私はそういうことまで考えて国会が安保條約を承認したとは考えられないのであります。その岡崎国務大臣の言われる国際慣行についての考え方について根本的に違つた気持を持つておるのでありますが、どこか一国についてでも例があれば、それは慣行として当然に行政協定についても適用できるんだと考えておるのですか。
#69
○国務大臣(岡崎勝男君) 国際法、私の習いました国際法では(笑声)国際法は原則を示しております。例えば一国に駐留する軍隊に対しては裁判上の特権を認めるとか、或いは課税上の特権を認める、これが国際法であります。そうしてその特権の内容が如何というのは国際慣行によつて定まるものである。その国際慣行は例えばフイリピンとアメリカ、アメリカとイギリスの間では慣行の差はあります。従つて慣行には一定したものがなくて特権は如何なる特権で、あるかということについての慣行がいろいろあるのであります。併しながら一国でありましてもそれが非常に重要な国であつて、そうして対等の関係に立つ国の認めておるところは、国際法の慣行としては当然認められるところであります。現に自衛力、自衛権の発動のごときは、国際法の原則ではありますけれども、国際法の慣行としてはよく使われますアメリカとカナダの間の自衛に対するアメリカの自衛権の発動力ということが原則になつて、国際法もそれを引用してこういう例があるからというので規定しておるのでありまして、国際法は元来国際慣行が積重なつたそれの共通点を法として作り、そうして慣行は、それの共通しない部面もあるのは慣行であります。そうして今度の場合におきましてもこれは利害得失の問題でございますから、運営委員会の問題ではないかも知れませんが、我々英本国とアメリカの間の協定というものは、決して不平等国間の協定ではないと思いますので、これを先例としてとつたわけであります。
#70
○三好始君 私は内容に亘りますからこれ以上立入つて議論することはやめますが、岡崎さんの勉強せられた国際法は或いは明治時代の国際法で、私が勉強したのは昭和に入つてからの国際法で、その間に見解の相違があるかと思うのでありますが、これは内容に亘りますから議運で論議することはやめておきます。
#71
○堀眞琴君 大分政府の見解もはつきりして来たと思いますけれども、なお私一、二の点についてお伺いいたしたいのでありますが、これはこの前の質問の続きになると思いますが、岡崎国務大臣は国際慣行というものが大体あるのだ。従つてその国際慣行に従つて日本も今度の行政協定を結んだのだということであります。今の三好君に対する回答からもそのように大体窺われるのであります。確かに国際慣行を尊重しなければならんということはこれも当然であり、そうしてそれが積重ねられた共通の部分が国際法になるのだというようなことも、これも当然なことでありまするが、私はその点を問題にしているわけではない、私の問題にしたいのは、そういう従来の国際慣行と、それからいわゆる行政協定として結ばれたものとの内容の問題に関して、内容の細かい点については私は触れません、内容が可成り開きがある。中村君からも指摘されたと思いますが、相当開きがあると思うのであります。結局そうするというと行政協定は、新らしい国際慣行を作つたという考え方にもなるのではないかと思いますが、その点につきまして政府の側ではどのように考えられるか。
#72
○国務大臣(岡崎勝男君) これは予算委員会でも御説明しましたが、例えば刑事裁判権の問題につきましては、私どもは北大西洋條約に基く軍隊の地位に関する協定の中の刑事裁判権の條項をそのままとり入れたいと考えて話をいたしたのであります。ところが先方におきましては行政協定をやはり日本側の主張と同じように、條約に認められた軍の配備を規律する條件というのであつて、それは国際法なり国際慣行なりに基かざれば、権限の逸脱になる。そこで北大西洋條約に関する協定は、未だアメリカにおいて効力を発生していないから、そこで新らしい形式を採用することは困難であるので、現に英米間に行われておる慣行を基準として作らざるを得ない。そうして北大西洋條約に基く協定が効力を発生したら、それに乗換えることは何ら異存はない。こういうような趣旨で今の協定文になつたのでありますが、要するに国際慣行を逸脱しない範囲で取極めたものであります。
#73
○堀眞琴君 英米の協定を基礎にして結ばれた。併し英米の協定は私も知つております。四一年に結ばれてイギリスでは立法措置に関する部分については、特に裁判に関する部分については、交換公文を基礎にしまして法律案を提出いたしております。それらの事情は知つております。併し岡崎さんも認められるように、英米間の協定は戦争の初期に結ばれた。一九四一年であります。丁度太平洋戦争の始まる年の春であります。ヨーロツパの戦争では大体もう三九年から始つてフランスもあのような状態になつていたときであります。そういう場合に結ばれたものであつて、イギリスとしては相当対等国の立場において結んだものだとは言えないと思うのです。そういう特殊な事情の下に置かれたイギリスと、それから武器貸与法がその年の春アメリカにおいて通過いたしまして、そうしてヨーロツパに対してどんどん武器が貸与されておつた。そういうような優越的な地位にあつたアメリカとの間の私は協定だと思うのです。ところが日本の行政協定は政府の説明によるというと、いよいよ独立国として対等の立場に立つことになる、その前提の上に立つて行政協定が結ばれている、こういうお話である。従つて両者の置かれている国際的な立場というものは全く違うんだと私は思うのですが、その点に関しては政府はどのように考えられているか。
#74
○国務大臣(岡崎勝男君) イギリスは成るほど一九四一年に結びまして、四二年に改訂いたしまして現在に及んでおります。併し現在まで続けておるということは、もう戦争は随分前に終つたんでありますが、現在まで続けておるということは、これは特殊の意味があると思います。併しそれは別としまして、国際法なり国際慣行なりで、英米間の協定よりも、もつと駐留国に対して有利な協定があるからこれに従えとおつしやるなら考えても見ましようが、その例をお示し願いたい。
#75
○堀眞琴君 私は率直に申しますと、北大西洋條約の昨年の六月の協定ですね、あの趣旨にむしろ則つて、若し協定を結ぶとするならば政府としては結ぶべきではなかつたかということを考えます。
 それからこれはもう一つ今度は安保條約第三條に関連しての問題でありますが、先ほどのお話では、安保條約第三條によつてすでに承認済みである。従つて国会の承認を必要としないんだと、こういうお話でありますが、これには大体二つの問題があると思うのです。一つは政府が行政権の範囲においてこれを結んだ、第三條の委任に基いてこれを結んだと、こう言われますが、そうしまするというと、政府がそして又しばしば言われるように、立法措置を必要とするものについてはそういう手続をとるんだ、こういうお話であります。これは当然だと思うのでありますが、そうしまするというと、この立法措置をとることにつきまして先ず第一に国会の審議権に対して何らかの拘束をそこで以て与えるのではないかという問題が起つて来ると思います。それからもう一つは、若し国会がその立法措置に関しましてこれを承認しなかつた場合には、政府は国際的だ信義といいますか、或いは信頼感というものをどういう工合にして調整するか、政府の立場というものが相当苦境に追い込まれて来るだろうと思いますが、その二つの問題が起つて来ると思うのですが、その点に関しましては政府はどのように考えられておるか。
#76
○国務大臣(岡崎勝男君) 政府としましては、これは御意見が違うかも知れませんが、国会の認められたる行政協定を結んでよろしいんだという承認の下に結んでおるんですから、これに必要な法律案等は当然国会で十分御審議を頂けるものと信じております。併しながら国会は国会として独自の見解あ持つておられるんでありますから、政府の提出する法律案について意見を異にしても、これはもう止むを得ないのでありまして、その意味では政府として国会に対して何か影響を及ぼすようなことはやろうとしてもできない。国会が聞かれるわけはないんですから、国会は国会として独自の立場で立法たり予算の案について審議されることと思います。それからそれがうまく行かないときは、政府の立場は非常に困るだろうという御同情のお言葉で甚だ有難いのでありますが、これはアメリカと同じ事情であります。やはりこの協定を結びましても、法律を要するなり何なりしなければならん場合が出て来るということで、この二十七條の二項に、「この協定の各当事者は」、日本ばかりではない、アメリカも必要とするものについてはその措置を求めるということになつておるのであります。でその当時の話合いから言つてもそういう必要な立法なり予算なりの措置がとれない場合は、それに関する條項は実施ができないんだということは、お互いに了承しておりまするから、そのときはそのときで適当な善処する措置をとらざるを得ない。政府は特にそれによつて非常に困るということは、まあ困ることは困りますが、国際信義上困るというようなことはないのであります。それは国会の状況も先方はよく承知しておりまするから、その点は了解済みと考えております。
#77
○堀眞琴君 第一の問題ですが、国会は独立に十分審議することができるんだ、政府がこれに対して何らかの圧迫を加えようと思つてもできないんだというお話でありますが、確かに形式的にはその通りだと思うんです。併しながらすでにこういう條約乃至行政協定も結んでしまつたのだからして、これに対して反対をすることはどうかと思うというような意見が割合に国会を支配する場合があると思います。そうしますと十分自主的にこれを審議しようとしてもなかなかできないという結果に階つて来ると思います。その点について私は国会の審議権は必ずしも十分に自主的にやれなくなるんだという心配を持つております。
 それから第二の問題、アメリカの例をお引きになつたが、アメリカの場合はおつしやつたように私もこの間の本会議の質問演説の中ではその点を若干触れて置いた。おつしやる通り政治的考慮からも行政協定の締結権を大統領は慣行として持つておる。併しこの慣行もこの世紀に入つてからできた慣行であります。それから法律的な点では、あなたのおつしやつたように法律で委任している場合、或いは行政権の本来の権限として認められたものというような三つか四つの場合があると思います。そういう場合があります。併しながらアメリカではその行政協定を結ぶ場合に、国民の権利義務に重大な影響を及ぼすものについては例外なしに国会の承認を求めることをやつておりますし、それから又行政協定を結ぶに際しては、そういうことをお互いに話合いできめておるわけであります。ところが今度の行政協定において、日本はアメリカの例を大体とられて、その線において行政協定を結ばれた。先ほど中村君或いは菊川君がお話になつたと思いますが、日本の政治の仕組みなり、日本の憲法なりは、アメリカのそれとは全く違つて、向うは完全な三権分立です。日本は三権分立とは言いながら内閣制度を採つておる。全く政治機構、政治の仕組みというものは違つておると思います。その違つておる政治機構なり、政治仕組みを十分御承知の上でアメリカの例をこちらに持つて来て、そうして行政協定はだからして行政権の範囲でできる、或いは必要なものだけについては立法措置を講ずるんだということをお話になるのは私は的はずれだと思います。行政協定については條約だということを認められたのでありますから、やはりすなおにこれを国会の承認を求められて、殊に主権に対して重大な制限を与えたり、或いは国民の権利義務について重大な関係を持つものでありますから、当然そういう措置をとられるのがフエヤーな態度でないかというふうに考えらおるんですが、如何ですか。
#78
○国務大臣(岡崎勝男君) これは先ほどから中村君その他にお答えした通りでありまして、我々は安保條約第三條のなかりせば、国会の承認を経べきものであろうと思いますが、安保第三條で認められておりまするから国会の承認を経ずして効力を発生するものであると、こう考えております。
#79
○委員外議員(須藤五郎君) 先ほどからいろいろ論議されておるようでありますが、私はこういうふうに考えます。この行政協定は非常に細則だ細則だというようなことを言われておりますが、そうなかなか軽く見るべき性質のものでないので、非常に重要な問題をたくさん含んでおると思います。第一に、国民の権利と国家の主権にかかわる重大な條項がこの中に含まれておるということで、当然これは條約として国会の審議にかくべき性質のものではないかと思うのです。その根拠としまして第一にこの行政協定の二十四條は戦争か平和かということを決定する條項があるということと、それからその二十四條の中に日本区域という言葉が使われてありますが、この内容が非常に不明確であるという点、それから又敵対行為では、敵対行為の急迫した脅威とかいうような言葉が使われておりますが、これも非常に内容が不明確だ、こういう点に関しまして、やはり国会の審議を通して国民にも納得の行く結論を得なければならないものだと私たちは考えるのですが、そういう点岡崎さんどういう工合にお考えですか。
#80
○国務大臣(岡崎勝男君) これは行政協定が国家の主権をどうするとかいう問題だからとおつしやいますが、これはその親になる安全保障條約が、アメリカ側の軍隊を日本に置くという協定でありまして、これがつまり当然として一国の軍隊が他国にある場合には特権を有するのでありますから、特権の範囲は慣行で違う点があつても、裁判管轄権その他について特権を有するのでありますから、国家の主権云々と言えば、この安全保障條約が国家の主権を制限するとか何とかいう問題になつて来るのであります。それで行政協定はその内容を定めたものであります。ですから問題は安全保障條約にあるのであります。又日本区域ということはあいまいだとおつしやいますが、これは正確な言葉ではありません。日本領土というのではありません。併しながら、こういう場合には日本区域というのは、日本のそれじや領土なり何なりにもうそこまで来なければ何もできないのかというとそうじやなくて、日本の方面にやつて来れば、日本の領土に入る前でもやはりこれを防がなければならない必要が起りますので、日本区域という文字を使つているわけでありますが、これも安全保障條約の第四條のところに日本区域という字が出ております。それは特別委員会で安全保障條約を審議される場合にしばしば御説明したところであります。
#81
○委員外議員(須藤五郎君) すべてを安全保障條約の責任に帰するような言動ですが、私たちは最初からこういう危險な問題が起つて来るということを考えて安全保障條約にも反対していたわけです。恐らく安全保障條約に賛成なすつたかたでも、そういう内容があとから出て来るということがはつきり考えられたならば、恐らく安全保障條約にも賛成しなかつたと思います。今の改進党のかたもそういう御意見であつたと思いますが、そこにいわゆるインチキ性があるので、実に卑劣極まる方法をとつて安全保障條約をとにかくいいかげんな状態で通して、そうしてあとからこういうものを出して来てこれはいけないと言えば、安全保障條約で認められたのだから仕方がないというような態度、これは実に国民を欺瞞した態度だと私たちは思うわけです。ですからそういうことはそういうことで、最初からこういうことは来るのだということにおいて、安全保障條約を結んだならばとにかく、そうでないのですから、やはりあとからこういうことが出て来れば、こういうことに対しては国会が審議することは当然だと私たちは考えるのです。
#82
○国務大臣(岡崎勝男君) 一国の軍隊が他国に駐屯する場合の国際法の規定及び国際慣行というものは、しばしば申上げております通り幾多の例があるのでありまして、そうして安全保障條約でアメリカの軍隊を国内に駐屯ぜしめることを規定いたしますれば、その国際法及び国際慣行に従つてその特権を認むべきことは当然であります。若し須藤君がそれを御承知なかつたとすれば、それは甚だ不思議なことでありまして……。
#83
○委員外議員(須藤五郎君) 慣行が日本の都合の惡い慣行ならば、その慣行に従わなくちやならないことはない。我々は我々に有利な條約を結ぶべきであると思う。慣行だ慣行だと言つて慣行によつて日本の不利なことでも何でも慣行に従つて結ぶという馬鹿げたことはないと思う。
 それからこの日本区域というのですが、これを非常に漠然たる言葉で説明しておつたが、それでは朝鮮でも日本の区域に入るのですかどうか。
#84
○国務大臣(岡崎勝男君) 朝鮮は朝鮮でありまして、日本の区域ではありません。
#85
○委員外議員(須藤五郎君) それでは日本区域というのはどういうことを言つておるのですか。日本のほうに向つて来れば日本の領土以外でも日本の区域……。
#86
○国務大臣(岡崎勝男君) これは安全保障條約に基いて使つた字でありまして、安全保障條約の御審議のときにしばしば御説明しております。それを改めて議運で御説明をする必要はないと思います。
#87
○委員外議員(須藤五郎君) 不明確な言葉を使つてありますから、だからそういうことを……。もう一度改めて行政協定が国会の審議にかけらるべきであるというのが私の意見であります。
#88
○相馬助治君 先に防衛力について吉田首相が、それから行政協定について木村法務総裁が失言しましたが、私は失言だと思わないで、失言の部分が真実だとこう思つておるのです。それで岡崎国務相としての立場上、同じ質問に対して一生懸命縷々述べているので、その労苦は多としますが、私はどうしても次の二点だけを甚だ愚問のようだが聞いて置きたい。それはアメリカでは大統領が上院の承認なしに或る種の協定を締結し得る慣習が発達しておりますが、日本ではそうではないことはもう明らかであります。そこで今般の行政協定については、手続その他についてもアメリカ側からちよつとむずかしいことになるのですが、積極的な示唆に類するものがあつたのですかどうか。ラスク氏との話合いで発表されない面で、そういう一つの話合いが事実行われたものであるかどうか。これは答えが殆ど限定されるようなことで、聞くほうとしては愚問であることは私は承知の上で、あえて明確な答弁を期待してお尋ねをして置く。
 それからもう一つの点は、平和條約が結ばれた直後に、結ばれた安保條約であるから、ああいうふうに親規定だけを大ざつぱにきめて、国民の基本的な権利をも侵害するような、拘束するような内容を含む行政協定というものに待たざるを得なかつたと、こういう事情は一応はわかるのですが、今後もこの種のことが起きて来た場合に、一体政府としてはこれを前例として今後この種の行政協定を結ぶことに相成るのではないか。こう存ずるのですが、これについての見解、以上二点を念のためにお尋ねして置きます。
#89
○国務大臣(岡崎勝男君) 初めの御質問につきましては、行政協定の話合いにおいてはそのようなことは全然ありません。又アメリカ側は先ほど申しましたように、何でも大統領の権限で一定の範囲のものは結べるというのではなくして、現実のこの行政協定でも安全保障條約の三條がなければ、アメリカ側の解釈でも、これは結べないというのであります。安全保障條約の三條があるから結べる。その例は先ほど申したように北大西洋條約に基く軍の地位に関する協定は上院の批准を求めてあるのであります。
 そこで二番目の、御質問は……。
#90
○相馬助治君 第二番目は、今度の行政協定というものは、特殊の事情で止むを得ないというふうに見ているのか、即ちこういう形で行政協定を結ばざるを得なかつたことを外務関係を担当しているあなたとしては遺憾としているかどうかということを、今後こういう問題が起きたときにはこれを前例としてやられるつもりか、こういうことです。
#91
○国務大臣(岡崎勝男君) 私は決して残念だともなんとも思つておりません。(笑声)というのは、国際法なり国際慣行なりに基いて基準ができているのであります。それを作るのだから、特に国会で承認を得れば政府間で作つてよろしいということの範囲が、大体基準ができておりますから、これは国会で認められたものとこう考えております。今後の問題は国会でこういうものを政府間で作つてよろしいという承認があればそれはいろいろなものを作りましよう。国会で承認がなければできません。
#92
○堀眞琴君 委員長、議事進行についてちよつと……。本会議の報告の中で岡崎さんは日米とも友好互譲の精神を以てこれを結んだ……、そのことに関しては、議事録を見ればはつきりしているのだというお話があつた、行政協定の性格やその他に関しまして……。
#93
○委員長(川村松助君) それは議事進行のほかじやありませんか。ほかにも発言があるのに議事進行とおつしやるのであなたに発言を許したのですが……。
#94
○堀眞琴君 質問じやないんです、私のは。行政協定の性格なり、それからラスク氏とのいろいろの交渉の経過を我々は知るために議事録を資料として配付して頂きたいということをお願いしたいのです。それと同時に英文の若し原文がありましたら同時に配付して頂きたいということをお願いします。
#95
○国務大臣(岡崎勝男君) 議事録は目下我がほうでも日本語の議事録があります。これは御要求があれば配付いたします。
#96
○堀眞琴君 日本文の議事録で結構です。それから行政協定に関しては英文の原文が若しありましたら、それも一緒に配付して頂きたいと思います。
#97
○国務大臣(岡崎勝男君) 英文のほうは私のほうにはありませんが、先方から取寄せて印刷すれば英文のもできるわけであります。これは決して秘密でも何でもありまんから……。ただ費用の点で英文は印刷しておらないだけであります。これはたくさん差上げられませんが、印刷の範囲内では差上げられます。日本文のほうはこれは差上げることはできると思います。
#98
○菊川孝夫君 議事進行について……、当委員会におきましてこの行政協定の問題を審議しますのは、この間の岡崎報告に対して我々はそれで聞き放しでいいか、それとも参議院としてこれをどう取扱うかということをきめなければならない。僕らははつきりと国会の承認を求めなければならんという見解をとつておりますが、そうでない人もある。併し何らかの結論を出さなければなりません。それが政府の今まで行政協定に対する答弁が割合はつきり明確を欠いている点もあるし、食い違いを来たしている点があるから、政府の見解を質そうというので今日まで質問を続けましたところ、一応見解の相違はありますが、政府の考え方というものは一応わかつたと思います。従いましてこれをどう処置するかということは、次回の運営委員会において諮るとして、この辺で一応の質問を折切つて、又どうしても国務大臣の出席を求めて質さなければならん必要が起きた場合は質問するということにして、この次の議運におきましては、これをどう扱うかということをぼつぼつ審議することにして、一応ここで質問を打切ることにいたしたいと思います。次の段階に入ることを提案いたします。
#99
○委員長(川村松助君) 只今の菊川君の発言に御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#100
○委員長(川村松助君) それでは菊田君発言のように決定いたしました。本日はこれで散会いたします。
   午後零時十七分散会
ソース: 国立国会図書館
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