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1951/02/14 第13回国会 参議院 参議院会議録情報 第013回国会 外務委員会 第3号
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1951/02/14 第13回国会 参議院

参議院会議録情報 第013回国会 外務委員会 第3号

#1
第013回国会 外務委員会 第3号
昭和二十七年二月十四日(木曜日)
   午後一時十九分開会
  ―――――――――――――
 出席者は左の通り。
   委員長     有馬 英二君
   理事
           徳川 頼貞君
   委員
           杉原 荒太君
           團  伊能君
           平林 太一君
           伊達源一郎君
           中山 福藏君
           加藤シヅエ君
           大隈 信幸君
           兼岩 傳一君
  国務大臣
   国 務 大 臣 岡崎 勝男君
  政府委員
   外務政務次官  石原幹市郎君
   外務省欧米局長 土屋  隼君
   水産庁長官   塩見友之助君
  事務局側
   常任委員会専門
   員       坂西 志保君
   常任委員会専門
   員      久保田貫一郎君
  ―――――――――――――
  本日の会議に付した事件
○国際情勢等に関する調査の件
 (漁業問題に関する件)
  ―――――――――――――
#2
○委員長(有馬英二君) それでは只今から外務委員会を開会いたします。
 国際情勢等に関する調査の件を議題にいたします。本日は漁業問題について特に先般仮調印されたと伝えられておりますところの日米加漁業條約問題並びにいわゆる李承晩ラインの問題を議題といたします。国務大臣が御出席でありますから、この際全般的な御説明を国務大臣から伺いたいと思います。国務大臣(岡崎勝男君) 日米加三国の漁業條約のほうは、これはまだ條約案という段階でありまして、この草案に基いて、講和條約が効力発生をいたしましたならば、三国間で條約を締結するように勧告をしよう、こういうことで案を作つたのであります。従つてまだ條約の案は、委員、代表者の間では決定しておりますが、政府間できまつたということではないので、いわば草案の程度であります。この草案の内容の主なる点は、日本としてはこの條約を結んだ場合に一定の海域において「さけ」だとか、「にしん」だとかハリバツトだとか、そういうものの漁獲を自発的に制限する、ほかの国も制限するのでありますが、三国間で制限をする。従つて日本でも制限をする、こういうことになります。又その区域内で漁業に従事する日本の漁船の條約違反等の問題についてはアメリカ、カナダの監視船の監視を受ける、こういうような点が日本側として義務を受ける点であります。その半面例の、よく言われまする公海漁業の自由、平等の原則、これははつきり堅持することを記録に留めてありますし、又沿岸国で優先的に漁業をするという思想は撤回されております。その他細かい点ではいろいろありますが、主なる日本側の主張の点はその二点であります。つまり一定の義務を受ける代りに一定の日本側の主張も認めてもらつた、こういう状況になつております。
 それから日韓の間の漁業の点は、例の李承晩ラインの宣言というのがありまして、これは甚だ意外でありまして、公海漁業の自由の原則、或いは今申した沿岸国が優先しないという原則、この日米加三国間で話合いができておるような原則を考えずに行われたような李承晩大統領の宣言でありますが、我々としては甚だこれは意外でありますが、何か誤解もあるのではないかと思つております。で、極く最近に開かれる日本と韓国の間のいろいろの問題についての話合いのうちで、これも取上げて双方の意見を明確にし先方の真意を確かめるつもりでおります。
#3
○委員長(有馬英二君) これにつきまして御質疑がございましようか。
#4
○中山福藏君 只今の御説明に関連しましてお尋ねするのですが、先月の十九日であつたと思うのですが、李承晩大統領がああいう宣言を一方的になしたのでありますが、その際に、日本という国は国際法の先例を知らない、十九世紀的な頭脳を持つておるというような、誠に日本を侮辱したような言葉を前置きにして、そうして而も、その先例というものはメキシコ、チリー、アルゼンチンであるというようなことを尤もらしく新聞によつて報道せられておるようであります。一体メキシコ、チリーというようなところにそういうふうな先例があるのかどうか。外務省のほうではそれはすでに調査済みでございましようか。一つその点を承わつておきたいと思います。
#5
○国務大臣(岡崎勝男君) メキシコとかその他、韓国の挙げました国々がそういう主張をしたことはあるのであります。併しながらその主張は認められなかつたと了解しております。
#6
○中山福藏君 それにつきまして大体政府の方針というのは日米加三国の漁業協定に基準をおくということでお進めになるのであるか。私個人の考えとしては台湾、フイリピン、或いは韓国というようなところに津島団長とか、或いは河田さんですか、それから松本さんを派遣されて個々に交渉を行うということでありますが、これは時機としては余り感心したものじやないというような、いわゆる外交上の取扱としては少しそういうことを個々別々におやりになるということは早過ぎるのじやないかというような気がするのでありますが、時機を得ているという思召の下にそういう交渉が進められておるのでございましようか。私は少し早過ぎるのじやないかと思うのですが、如何なものでございましようか。
#7
○国務大臣(岡崎勝男君) これはそれぞれ理由のあることでありまして、私どもは別に早過ぎるとは考えておりません。性質はおのおの違いますが、韓国の場合は東京で行うのでありますが、たしか明日から始めるようであります。これはいろいろな問題があまして、韓国人の国籍の問題、居留の問題、或いは日本及び韓国の間の帰属のはつきりしない船舶であるとか、今言つた漁業の問題であるとか、いろいろあるわけでありまして、本日はその漁業が議題でありますから、漁業の点で韓国との間にどういうことを我々は考えているかということを申上げますと、大体公海における漁業の自由ということはこれは我々としては当然主張するところであります。それから或る公海であつてもお互いに相談して漁族の保護をする必要上措置をとる場合、つまり漁獲の制限等をする場合には日本だけが義務を負うのでなくして、協定したお互いの国が義務を負うという平等の立場であるならば、漁族保護の必要上一定の制限はこれはやつてもよろしい。併しながら不必要なことをやる必要はない。要するに言葉で言うと、何か英語で言うと変ですが、適切な表現が私今わかりませんから英語で申しますと、コンサベーション、プレザベーシヨンという言葉があります。要するに或る漁場について或る国の漁業がまだ発達していないから、発達するまでここのところをとつておくのだという考え方は賛成できないのであります。お互いに魚族を保護するために、お互いにやるならこれはまあ将来のこともあり、当然であると思いますが、或る海域に日本のほうは船がたくさんいる、自分のほうはないから、自分のほうをできるだけの所までこれをとつて置くのだという考え方は感心できないと思つているようなわけであります。
#8
○杉原荒太君 日米加條約草案の先ほどの御説明の中で、大体わかつておるように思うのですけれども、今日の審議の性質はこれは別にこの條約草案それ自体をここで審議する、いわゆる事前の承認を求める、そういうふうな意味のものじやない、そうじやなくて、改めてそれは又適当な時期に事前乃至事後に承認を求める手続を別にとる、そういう性質のものですか。
#9
○国務大臣(岡崎勝男君) この日米加漁業條約の草案には批准の條項が入つております。従つて三国政府で、これでよろしいということになつて調印すれば、効力発生前に国会に提出してその承認を求めるということになるはずであります。
#10
○杉原荒太君 先ほどの御説明で、まだ政府としても決定の案ではないというお話であります。代表者間だけで作つたものだと言つておるのでありまして、事実上これは政府のほうではなお署名する前において変更の余地ありというふうに認めておるものかどうかその辺のところを……。
#11
○国務大臣(岡崎勝男君) これはまあ欲を言えば限りがないけれども、大体草案の趣旨は、三国間で平等の立場においてお互い協定した問題についてお互いが公平に義務を負い、権利を持つという趣旨になつておりますから、まあ非常に細かい技術的なことは多少どうか知りませんけれども、原則的には政府としてはこれでよろしいじやないか、こう考えておりますが、何分にも初めて結ぶこういう種類の條約でありますから、まだ期間のある間は慎重に考えてみたい、こう思つております。
#12
○委員長(有馬英二君) 私からお伺いいたしますが、あの仮條約と申しますか、あれは只今御説明になりましたように、「さけ」「ます」それから「にしん」等に限られておるのでありますが、あれは特に漁区について大変やかましいことが書いてあるようでありますが、今後あれが正式に認められるようになつた暁のことを只今から考えてみるというと、遠洋漁業に日本から出る場合においてどういうような状態で日本に何と申しますか、有利に展開すると申しますか、その辺のお見込はどうでありましようか。
#13
○国務大臣(岡崎勝男君) これは将来のことになりますから、今から余り大胆に予測もできないと思いますが、将来マッカーサー・ラインの徹底等のようなことがありますれば、この三国の協定で原則的に認められておりまする何と申しますか、沿岸国優先という思想はなくなつておりますから、この趣旨で将来この方面のみならずほかとの間にも漁業條約が締結されるということになりますれば、いろいろの隣接水域と言いますか、各国の隣接している水域から我々が排除されるという危險が少くとも非常になくなつて来る、こう思います。従つて将来この原則がほかの国にも認められれば大変に出漁については有利な状態がもたらされる、こう考えております。
#14
○委員長(有馬英二君) この條約の中には海獣に関することが余り調われていないのでありますが、その点はどういう工合に見られましたか。例えば「あざらし」「あしか」というように、従来樺太方面で特に日本の漁業権と申しますか、捕獲権があつたはずであります。そういう点についてはどういうことになつておりますか。
#15
○国務大臣(岡崎勝男君) これは一つ水産庁長官から御答弁を……。
#16
○政府委員(塩見友之助君) 「らつこ」や「おつとせい」につきましては、アメリカのほうで、カナダ及びソ連邦も中に含めまして、それで北太平洋における「らつこ」「おつとせい」の資源の調査をやろうというふうな話合いになつて来ておりまして、今のところ日本とカナダと合衆国、この三国で調査をすることになつて話合いが進められておりまして、それによつて将来は「らつこ」「おつとせい」等を獲るというふうな形にまで進んで行くというふうな取り進め方をやつておるわけでございまして、それまでの期間は「らつご」「おつとせい」については日本のほうの海上漁獲はやらないというふうなことになつております。それからなお先ほどの日米加協定が結ばれたときに、日本の遠洋漁業上どういう影響があるかというふうな点につきましては、岡崎国務大臣からの基本的なお答えの通りでございますけれども、具体的に申上げれば、ブリストル湾の蟹工船というようなものと、西経百七十五度以西の海域における鮭鱒漁業というふうなものは、これは具体的に企業の対象となり得るようなまあ状態にあると思つておりまするし、業界においてもそれによつて非常に活発な動きを見せている、こういう状態にあります。
#17
○委員長(有馬英二君) 実際において遠洋漁業がいつ頃から日本では着手できるような見通しにありますか。
#18
○政府委員(塩見友之助君) それは一つは平和回復によつてマッカーサー・ラインが撤廃されるであろうというふうなことがございますので、まあマツカーサー・ラインの撤廃が前提になりますので、それが一つの拘束になるわけでございます。出漁の関係、漁業だけの関係から申上げますれば、「かに」については四月下旬頃から、それから「さけ」「ます」については五月頃から、六、七月という時期になるのでございますけれども、これは一に平和回復の時期にかかつておるわけでございます。
#19
○委員長(有馬英二君) 只今の御説明で大体わかりましたが、御承知のように只今も御説明にありました遠洋漁業がほんの短かい間で、六、七月、もう八月頃になると切上げて帰つて来るようなことでありますから、若し條約ができまして、そうしてマッカーサー・ラインが廃止になる、効力がなくなるというようなことがありましても、着手するのが非常に遅ければ殆んど今年はそれに従事することができないわけでありますから、その点についてはもうすでに業者が今から出漁に着手しておるように私どもは推測するのでありますが、そういう点について水産庁で十分御研究の点を一つお話を願いたい。
#20
○政府委員(塩見友之助君) 業界のほうで、その問題に対して非常に関心の深いのは、日米加協定の下交渉をやつておる最中に、まあ大体そういうふうな頭で考えながら進んでおつたためもございますけれども、大体の目通しとしては、日本の平和回復は出漁に間に合うような時期にできるのではないかというふうな前提で考えておるわけでありまして、これは飽くまで一応の仮定の上に立つておるわけであつて、それが遅れますればその準備というものは、準備をしたものにとつては非常にマイナスになるわけでございます。その出漁の具体的なやり方につきましては、これは一つは「かに」のような底に棲んでおる生物でありまして、底棲性の生物でありまして、これは非常にとり易いという状態にありますのと、一つは「さけ」「ます」のように河の上へ上つて来る、遡河魚類と申しまして、これも又非常に河口乃至その河の中でとれば非常にとり易い、両方ともが濫獲をし易いような魚種でありますので、その二つを平和回復後マツカーサー・ラインが撤廃されて、それで初めて日本の漁業者が出る場合には、まあ吉田総理とダレス大使の間で二回ほど取交わされましたところの書簡に基きましても、又その基本精神によつて紬ばれましたところの日米加協定の下草案というふうなものを考えましても、そういう点からいつて十分自粛して資源の保存、保護というふうな点については欠けるところのないような態勢で進まなければならない、こういうふうに考えておりまして、現在水産庁のほうでは業界に対して出漁のし方に村して中で話合いを進めるように、自粛する線でできるだけ資源保護というふうな点、国際漁場に進出する第一歩として将来大きく開かれるだろうと思われ国際漁場にプラスの影響を与えるような操業方法をとる、こういう前提で相談をし合つてもらつているという状態にありまして、我々のほうの考え方としましては、「かに」につきましては過去に十年ほどの経験があるわけでございまして、その操業の実績から大体技術的に検討しまして、工船としましては、大体一隻というふうなのが適当である、こう考えてその線で相談し合つてもらうほうがいいと、こういうふうに慫慂しておりますのと、それから「さけ」「ます」につきましては、これは或る程度の試験操業の成績はございまするが、これは北洋の一般の漁場と比べますと、試験成績というものが非常に落ちておりまして、殊に「紅さけ」なんかが割合に比率が少いという状態にございまして、企業的にどこまで採算的に操業できるかというような点については疑問がありますわけでありますけれども、これは業界のほうとしてもここ数年間、又戰時中から引続いて長い間、漁業については、その資材の問題、そのあとは漁区の問題というふうな点できつい制限を受けておりましたために、我慢に我慢をしてこれから出られるというふうな状態なものでございますから、企業的には相当危險性はあるとしても、とにかく折角与えられた漁場というふうなものを開発して、企業的にも成立つように持つて行きたいという意欲が非常に旺盛でありまして、それでまあ主にそういうふうな意味で試験的なまあ操業というふうな性質が非常に濃いわけでございます。そういうふうな形態で主体はともかく試験的な操業というふうな気持で進むようにということを慫慂しておりまして、それにつきまして、大体魚をとる、流し網で以て大体魚をとるわけでございますけれども、その魚を獲る漁船の隻数というふうなものは、大体堅く考えて五十隻以内というふうな堅実な線で進めたらよかろう。その魚を獲る船と、それを塩にしたり、或いは冷凍したりする母船というふなものとの関係は、これは経済的な点も考えて、母船のほうを何隻ぐらいにしたらいいかというふうな点は、私どもは多くとも三隻以内、それは勿論トン数は小さいもので、非常に大きなものはそういう数は無理だろうと思いますけれども、それぐらいの数で、而も母船といそういう魚を獲る船との間は連絡を緊密にして、出発から帰るときまで船隊行動をとる。それから常時母船とそういう魚を獲るところの独航船との間では、無電その他の連絡を強化して、それで先ず問題のない海面だけにおいて操業してもらうという態勢をきちつととつてもらう。こういう條件の下に関係業界の間で話合つてもらうというふうなことで進めておる状態であります。
#21
○兼岩傳一君 私は漁業問題について三つお尋ねしたいのです。第一は日米加漁業協定、第二には韓国との漁業関係、大臣も述べられました韓国との関係、第三は東支那海及び北洋漁業の中国、ソヴイエトとの関係についての外交方針、この三つをお尋ねしたいのですが、さてこの前の賠償の問題は時間の制限で不十分なんでしたが、ちよつと賠償問題を一つだけ前の残つておるものを聞くことは、委員長お許し得られますか。
#22
○委員長(有馬英二君) 大臣に質問ですか。
#23
○兼岩傳一君 大臣にです。つまりこの前私十五分頂きましたので、そのために非常に私不十分な点が一つ残つておるのですがよろしいですか。
#24
○委員長(有馬英二君) よろしいです。
#25
○兼岩傳一君 賠償問題は私が非常に短かい時間であるために不十分な展開を……、不十分な條件で大臣に質疑したのでありますが、併し実際は一昨日の私と大臣との討論のごとく、果してフイリピンとの交渉はものにならない……、それで滞在費は二週間の予定で行つたけれども、もう一週延ばされ、その旅費はどうするかということが新聞に出ておるのですが、誠に哀れと言うも愚かなる状態になつておるのですが、今後果してそれは大臣のお得意の平和條約十四條に載つておる根本的な欠陥から発生しておるので、必ずしも所管の大臣を私は責めるという考えはないのでありますが、その点フイリピンが一昨日と全く違つた状況が昨日あたりの新聞に出ておるのですが、果してフイリピンとの関係は円滑にまとまるのかどうか、どういう方針でまとめられるのか。先ほど他の委員からもありましたが、一体今平和條約が末だ発効しないような状態のときにああいうことが必要であつたのか、そういうふうな点、新らしい情勢に基いて補足して頂きたいと思います。
#26
○国務大臣(岡崎勝男君) 元来、この前も申した通り、賠償問題というのはなかなか大きな問題であり、各国に跨つた問題でありまするから、短時間で解決するとは我々も考えていませんし、相手国も考えていないだろうと思います。今回の津島全権のフイリピンにおけるいろいろな話合いは相互の理解を深める上において非常に役に立つと思つております。なおお互いの間の感情というものは何ら惡くなつたという点は認められません。従つて非常に、効果があつたと考えております。
 なおこの際、フイリピンと話合いをするのはどうかというような御意見でありましたが、我々のほうは誠意を以てできるだけ早くこういう問題の交渉に、仮に予備交渉であつても応ずる意向でありまするから、先方が希望すれば、いつでもこれに応ずるという建前をとつているのであります。
#27
○兼岩傳一君 今後フイリピンとの……最も重大な賠償の一であるフイリピンとの関係はどういうふうなお見通しなり、御方針をお持ちでしようか。
#28
○国務大臣(岡崎勝男君) 原則的には平和條約第十四條に基いてこれを具体化する話合いを進めるつもりでおります。
#29
○兼岩傳一君 それじや今後の情勢の発展によつて、我々は政府に質し、且つこれに対して批判を加えて行くわけでありますが、私はこういう形で今後お進めになつても成果を得ることが非常に困難であろうということを申上げて、今後の情勢の発展に対して、果して岡崎大臣の答弁が現実性を持つか、私の非常な悲観的な批判が正しいかは、これは私は日本国民と我々とが、共に現寅の推移によつてこれを見て行くのでありますから、今日はその点についての質問はこの程度にいたしておきますが、併し国民の費用を使つてですね、行つて、非常に理解を深めたとか何とか言われましたが、具体的には何らの成果なしに引揚げて来るということについて、私はもう相当責任を感じてもいいのではないか、あなたのお得意の十四條によつては極めて問題の解決が困難であろう、これは無駄な努力であるというふうに考えられますが、これはこれ以上あなたとあれしてもしようがないから、漁業問題に移りましよう。
 漁業問題の、この日米加の漁業協定は、草案であるとおつしやいましたが、私がこれから逐次質問して行くのに、その草案というものは本当に頼りにならない草案という意味か、大体双方が了解して、やがて双方が了解してそれぞれの国の国会に出て参ります場合には、大体これに準拠するものと了解して、質疑をいたしていいですか、その点を明らかにして頂きたいと思います。
#30
○国務大臣(岡崎勝男君) 大体この趣旨で成るものと我々は期待しておりまするし、我々はそれを希望もしております。
#31
○兼岩傳一君 そこでこれは草案とはいいながら、これは非常に実現性のあるものということ、それからこの日米加の北太平洋の漁業協定がやがて南太平洋にも及び、インドネシア、韓国、台湾、フイリピン等々の関係にも及んで行くということは、これは平和條約第九條によつて明らかである。従つてこれは日本の重要な漁業産業にとつて、水産業にとつてのモデル・ケースであるという意味で、これは非常に重要であると思いますので、私はこの際厳格に政府の態度なり方針を質しておく必要があると考えます。この日米加漁業協定について私は二点お伺いしたいのでありますが、先ず第一の点は、公海漁業の自由の原則ということを、私が條約委員会のときにも尋ねましたところ、農林大臣初め……じきにやめられました農林大臣ですが、非常に得意そうに言つておられまして、現在政府でもそういう言葉を使われろようでありますが、今回の草案を見ますると、公海漁業の自由の原則が認められたと称しておられますが、「さけ」「ます」「にしん」ハリバツトというような主要な魚族については、アメリカが独占するということを承認したということの結果に私は終つておつて、何が残るか、「かに」だけが残つておる、カナダのブリストル湾とアラスカの西海岸に残つておる、而もそれは採算上問題があるというように聞いておりますが、この点については大臣の答弁の前に、私は塩見長官から「さけ」「ます」「にしん」ハリバットこそが水産においては最も重要な主要魚族であると私は考える。それがアメリカに独占されて、日本は体のいい閉め出しを喰つて「かに」だけが残されておる。これを先ずあなたは專門家として、大臣の答弁の前に明確にして頂きたい。私の質問が正しいかどうか、草案に基いて責任のある答弁を聞いてから大臣に質しましよう。
#32
○政府委員(塩見友之助君) 先ほどの説明で申し足りなかつたこともあるかと思いまするが、この條約の前に、ダレス大使宛の書簡で、一九四〇年即ち昭和十五年でございます、そのときが、日本が過去における漁業において最も国際的に広い海面で操業していた時代でございまするけれども、その当時に操業しておらなかつた漁場については、相手国のほうで国際的な資源の関係からして十分な規制措置をとつておるというところには無理に入らない、自主的に制限をするというふうなことになつております。併しながらそれだからといつて、国際漁場における公海自由の原則というふうな、そういう原則を放棄するというわけではないということ、まあこういうことになつておりまして、その線によつて日米加協定は進められております。それで寅際から申上げますと、ハリバツトであるとか、「さけうます」であるとか、或いは「にしん」であるとかいうのは、過去において日本の漁業者が採算的にやつた、試験的にやつたということはないわけであります。あの漁場では、それで、先ほども申上げましたように、ハリバツトのような底棲性の生物、「さけ」「ます」のような遡河魚類、「にしん」のように岸近くに寄つて産卵する魚族につきましては、濫獲の危險性が非常に多いわけでございまして、そういうふうな点について、アメリカ、カナダ両国の漁業者の間でも、お互に調整し合わなければならないというのが、長年の両国間の話合いでございまして、それで両国間において、その漁場については、十分規制をする措置をとつておられるわけであります。そういうふうなものについてまで、過去において経験もない漁場について出なくてもいいであろうというのが、現在水産関係の、漁業者全体の現在の国際情勢全体を考慮しての意見でございまして、政府のほうに聴いても、そこまで要求はしなくてもいいというふうな考え方で、それで日米加協定というものは締結されておるわけでございまして、我々としましては勿論、水産業界全体の意見もさようでございまするけれども、日米加協定の基本線で以て今後国際協定を結ぶと思われる諸国と協定して、何ら日本の漁業の発展に危惧はない、こういうふうに存じておる次第であります。
#33
○兼岩傳一君 「さけ」「ます」「にしん」ハリバツトについては、これから日本の発展する可能性が保障されておりますか、草案で。若し保障されておるとすればどういう條項で保障されておるのですか。私は保障されていないじやないかということで聞いておるわけであります。
#34
○政府委員(塩見友之助君) 保障されておりません。過去においても操業した実績もないわけであります。
#35
○兼岩傳一君 保障されていない、明らかですね……。従いまして公海自由の原則と言われますけれども、最も採算上重要な四魚族について保障されていない。「かに」だけが残されておる。これは政府のお手柄だとはどうしても考えられない。そこで私は第二の問題になつて来るのですが、この点について岡崎大臣の見込みを聞いてみましても……、念のために聞いておきましよう。如何ですか、あなたはこういう公海漁業自由の御自慢、この前條約特別委員会の時から大威張りで自慢しておられましたけれども、この四つの主要な魚族について、今後日本が進出する点が保障されていないということについて、何らか責任を感じられますか。それともそれに対して何らか御意見でもありますか。
#36
○政府委員(塩見友之助君) ちよつと私の説明が足りなかつたかと思いますので、なお補足をいたしますると、公海自由の原則というふうなものは、昔から歴史的に国際慣行として確立されておるわけでございまするけれども、併しそれはその後動力、機械というふうなものが非常に漁業のほうに利用されるようになりましてから、漁獲の能率というふうなものが非常に上つて来ているわけでございまして、そのために資源が枯渇するというふうな危險があちらこちらに起つておるわけでございます。あのノース・シーにおけると同じような魚種についても起つておりまするし、それから南氷洋における鯨についても起つておりまするし、その他日本の国内につきましても、それは「さけ」「ます」のような魚類とか、或いは先ほどから申上げましたところの底棲性の生物である各種の魚族について濫獲という状態が起つて、それでそういうふうな関係からして各国とも或る程度の規制を国内的にもやらざるを得ないと、こういう状態になつております。領海外におきましても……。それから過去において昭和十二年でございましたか、やはり日本の内地と朝鮮と台湾、そういうような支那海における底魚の漁場につきましても、やはり日本の内部的な措置ではございますけれども、これは青島とか上海とかというところから出漁して来るような漁業でございますけれども、トロール、底曳の漁業につきまして内部的にこういう国際的の漁場について隻数の制限をやるとか、或いは禁漁区等というものを産卵場を中心として設定するとか、そういうような形で以て事実上には、国際的に見てそういう国際的な措置或いは国内的な措置によつて、国際漁場における操業というものはお互いに自粛し合つてやつて行くという形で国際漁場の調整というものが行われているわけでありまして、まあ漁獲法等がますます発達して参りまするし、そういうふうな形でお互いに自粛し合つて行かなければ、その魚族というふうなものは枯渇して来るという危險が明瞭に看取されるような状態になつておりまするので、どうしても今後の国際漁業の協定におきましては或る程度お互いにそういう点で忍び合い、資源を濫獲しないというふうな形で、そういうふうな点で資源が満限になつているということが明瞭であり、又資源を保存するために関係国のほうで十分自粛した措置をとつておるというふうなものについては、まあ大体過去における実績等を考えまして、それでその漁業の調整をやつて行くというような形は、今後どうしてもとらなければならない一つの国際的な協定の基本の方向ではないか。野放しの公海自由の原則というものがあつて、それで各国が出て、漁場に勝手に幾らでも隻数を殖やせるというような形で、それで進出るできるというような、そういうふうな国際的な慣行で、国際漁場というものを利用して行くというふうな形態になるのは望ましくない。こういうふうな状態に現実はあると思います。その適例としましては南氷洋の捕鯨というようなものはこれはトン数を制限しておる。これには世界各国も異議なく皆加わつておる、こういう形もございます。そういうものは南氷洋の捕鯨だけに限らず、それが明瞭になつた資源については、当然各国共そういう気持で進んで行かなければならないのじやないか、その点について日米加漁業協定というようなものは資源が満限になつておるという科学的な証明がある。而もその資源に対して十分な規制措置を関係国がとつておるという條件附で、それで公海の自由というものがそういう範囲において制限されるという建前をとつたものでありまして、そういうのは、現在の漁業の発展の状態と、国際的なそういう問題に対する関心の高さというふうな点から見て、私は日本の漁業の将来の発展というような点から見て、遺憾な点はないものと存じております。
#37
○兼岩傳一君 発展の可能性があるのですか、ないのですか、それだけでよろしいのです。つまりこの四つの主要魚族について草案によつて発展の可能性がないと我々は見ておる。実質上禁止されておるものと見ておる。あなたはそういう一般論にこの問題を持つて行かないで、南氷洋の問題について……、今私の質問しておるのは、この具体的な問題に対して可能性がないような草案じやないか、こういうことを言つておるのです。その点だけでよいのです。あるのですか、可能性が……。
#38
○政府委員(塩見友之助君) 條約の草案場によれば、それは條約が有効である限りは可能性はありません。
#39
○兼岩傳一君 そうでしよう。それだから総理大臣は公海自由の原則と言つて大自慢しておられたけれども、つい三、四カ月前にやはり閉め出されておるじやないか。我々が指摘したようにこれに対して外交上成功したとは言えないじやないか、非常な失敗じやないか、而もインドネシア、韓国、フィリピン等がモデル・ケースになつて行けば、この日米加漁業協定によつて築き上げられたものは非常に重大な意味を将来の水産国日本に及ぼして来るのじやないか、これに対して国務大臣は自信を持つておるのか、この日米加漁業協定を成功であると考えておるかどうか。
 それから第二は、今後それらがモデル・ケースに発展して行つた場合にそれは日本の漁業を打開して行く可能性があるか、この二点について大臣の御意見を承わりたい。
#40
○国務大臣(岡崎勝男君) 今縷々水産庁長官から申しましたように、魚族の保護ということが今非常に大事なときでありまして、こういう協定はその時機において我々は非常に成功したものだと考えております。又こういう趣旨の協定がほかの国ともできれば非常に結構だと思つております。
#41
○兼岩傳一君 大臣は、いつの間にか水産の権威者になられたと見えて、今非常に保存が大事だと、こう言われましたが、いつでも保存は大事です。科学的に漁業をやつて行くということは塩見長官を待つまでもなく、それは基本的な生産の原則ですが、こういうモデル・ケースを作つても、今後非常に覚束なく感ずるので、その点の警告の意味でお尋ねしたのであります。
 第二は、更に重要な点をお尋ねしたい。それは一般新聞紙上では取扱われていないのですが、我々が聞くところによりますと、この日米加漁業協定には日本の漁業にとつて非常に憂慮すべき條項が隠れておるということを言われておる。即ち北太平洋で日米加以外の国と日本が今後漁業協定を結んで行く、これは平和條約第九條によつてやつて行かなければならんことでありますが、その場合に本当に日本が、自主的に日本の、日本人のための水産という立場から、それらの日米加以外の国と有利な條件で締結して行くということには、どうも十分な事由がないのじやないかと、こういうふうに言われておりますが、大臣如何でございますか。これは草案で表面に出ております。絶対に、草案以外には無條件で日本は独自に他の国と漁業協定を結んで行けるのですか、その点明確な御答弁を願います。
#42
○国務大臣(岡崎勝男君) 何も隠れたものはありません。ただ我々はこの草案が結構なものだと思つておりますから、できるだけこの草案の趣旨に副つてほかの国と條約を結びたい、こう考えておるのであります。
#43
○兼岩傳一君 それは政府として当然でありましようが、私のお尋ねしておるのは、表面に出ておる條文以外に、今後日本政府が独自の立場からして行くことはいけないので、一定の制限を受ける、そのモデル・ケースとして、この基準によれという程度の制約を受けることは、今暗々裡のうちに大臣が承認しておられますが、それ以上具体的に秘密的な申合せがあるということを私は憂慮しておるのです。それで具体的に言えば、今後日本が次の韓国なり台湾、フィリピン或いはソヴイエト等々の国と漁業協定をやろうとして、相手国が有利な條件を出して来ても、そんな有利な條件を受けちやならん、このモデル・ケースと従わなければならんと、そういう制限を受け、且つそれを具体的に押付ける意味で、例えば日米加合同委員会といつたような、アメリカ、カナダ、日本という形の、そういう合同委員会の審査をパスしなければ、粗手国からどういう有利な條件が出て来ても、そういう有利な條件で漁業協定を結んではいけないという秘密の申合せがあるということを我々は非常に心配しておるのです。そういう点はないということをこの際はつきりとあなたは明言できますか。
#44
○国務大臣(岡崎勝男君) 明言できます。
#45
○兼岩傳一君 それで結構です。一つそれを嘘でないように、吉田総理の再軍備のように、順にこの衣の下から鎧を出さないように……、議事録の速記に、ないということをこの際大臣が明言したということで、今日のところはこの問題はこのままにして、次の韓国との漁業問題についてお伺いいたしますが、李承晩大統領が先ほど何を考えてか、あのような声明をした云々と言つておりますが、我々の調査によりますと、韓国の領土に接する領海は無論、これに接する一定水域区分は韓国のものである、これは日本の船が薫りに入つてはいかんということを言つておられますが、この問題をどういうふうにして解決して行かれる考えでありましよう。或いはこれはまさか相手方も気が狂つているのじやあるまいし、これはやはり相当の理由と狙いがあつて、このことを私はああいう機会に声明しているのじやないかと考えるのですが、この点我々が納得できるような、他の同僚議員からも質問がありましたが、これが納得できるように……どうしてあの時期にこういう声明をしたと想像されるか、或いはこれを今後どういうふうにして打開して行くか、大臣から外交方針を一つ承わりたい。
#46
○国務大臣(岡崎勝男君) 私も向う側の真意はわからないのであります。これから確かめようと思つております。
#47
○兼岩傳一君 打開の方針は。
#48
○国務大臣(岡崎勝男君) 我々は、公海漁業の自由の原則によつて話合いを進めて行くつもりであります。
#49
○兼岩傳一君 そうすると、この第三の私の質問になるのですが、この不法拿捕の問題、つまりこれから韓国であれ、その他の国々に、或いは中国であれ、ソヴィエトであれ、やつて行かれると必ずそれが問題になつて行くのであるし、すでにこの委員会でも問題になつたのだし、これについて大臣が触れておられる、例えば海上保安庁は着着強化するのだというようなことを言つておられるのだが、この質問を進めます前に、政令三百六号の廃止、つまりこのマッカーサー・ラインを撤廃するという政令三百六号の廃止を、衆議院では昨日か一昨日か、それを可決して参議院へもこれが廻つて来ると考えておりますが、この点は如何ですか。マッカーサー・ライン撤廃は架空の問題のように大臣は説明をしておられますが、マッカーサー・ラインの撤廃はすでは現実にもう立法措置がとられ、すでに衆議院は昨日ですか、一昨日ですか、通過しておるように私は聞いておるので、もう不日この委員会にも付議されて来るのじやないかと考えておりますが、それは極めて現実的にもうすでに実行に移つている問題なのか、それとも将来の架空の問題なんですか。
#50
○国務大臣(岡崎勝男君) これは速かに法律案を通したいと思つております。
#51
○兼岩傳一君 そうでしよう。従つて公海自由の原則ということは、日本国の大臣あたりが、国会で勝手に美辞麗句として濫されるのは御自由だが、事態はそれ以上重大なものを含んでおる。つまり不法拿捕でないか、どういう拿捕であるか、今後日本の漁業が果してこの南太平洋と北太平洋の一部分でやれるか、日本の漁業の七〇%、八〇%までが依存していた北洋漁業なり、東支那海の中国、ソヴイエトとの漁業関係を解決しないでは、日本の水産業というものは成り立たない。日本の人たちは蛋白の十分な摂取ができないというような重要な問題になるわけですが、マツカーサー・ライン撤廃後のことは、撤廃をすでに国会で提示しておられる政府としては、マッカーサー・ライン撤廃即ち政令三百六号廃止に伴う当然の外交方針は、私は確立されておればこそ出して来られたと思うんだが、マツカーサー・ライン撤廃後の外交方針を具体的に一つ御説明願いたいと思います。どういう考え、どういうふうにして今申上げたこの資本主義諸国及び中国、ソヴイエト社会主義諸国等々との漁業問題は、どういう外交方針を持つてこれから問題を日本のために解決されて行くか、これが一つ御説明願いたいのであります。
#52
○国務大臣(岡崎勝男君) 事は漁業の問題でありまして、実際的な措置でありますから、この際外交方針というようなものは、これに伴うことはないのであります。ただ我々は善隣友好の方針によつてお互いに各国と相談して、魚族の保護をやりながら漁業を発展させたい、こう考えております。
#53
○兼岩傳一君 この問題は、委員長、どうせ法律案が出まして、そのときに徹底的に論議してもいいと思うので、今日は極く簡單に質すことでとめたいと思います。それでいいですか、委員長、どうせこの問題は法律案が出て来ますれば、そのときに徹底的に論議されますね。
#54
○委員長(有馬英二君) そうです。
#55
○兼岩傳一君 それを委員長が承認して下さるならば、今日は比較的抽象的な、原則的なことをもう一、二質しておきたいと思いますが、この不法拿捕の問題、これは一歩を誤まると由々しき戦争の原因になつて来るんです。日本の漁業問題どころではなくて、これは戦争の原因になるし、台湾の問題がからんで来て非常に重要な問題になつて来るんですが、三百六号の撤廃に対して、政府の国務大臣は、ああいう不誠意なる答弁をしておる。これは事漁業なんだというけれども、漁業問題で不法拿捕の問題が展開して行けば、日本と中国との間に重大な国交関係が発生して来る、又沿海州方面で同様のことが行われれば、日本とソヴイエトとの間に重大なる武力の衝突が起きて来る。日本とアメリカが安保契約を結んでおると戦争の空気が潜んでおる。私はそういう重大なる問題をしらじらしく大臣が一つの漁業の問題だといい、一方において不法拿捕の問題を盛んに宣伝しておられる、こういう態度と睨み合せると、今回のマッカーサー・ライン撤廃というものは、平和に対する恐るべき阻害行為を政府自身がよその国の指導によつてしておられるというふうに考えねばならんということであり、その根本的な点だけ私は質しておきたいと思うのであります。それで大臣にお尋ねしておきたいことは、今日は原則論だけでいいんです。それはですね、三百六号のマツカーサー・ラインというものを、こういう形で中国、ソヴイエトを入れない、全面的な講和でない、資本主義国家だけの一方的な形において撤廃するという事柄は、あなたは外交官として国際法規の関係から見てまあいいと思つておるから出されたんでしようが、その点は如何でしようか。重大なる国際紛争の原因になりはせんのですか。
#56
○国務大臣(岡崎勝男君) ソヴイエト等が講和條約に参加されないのですから、どうもその点は止むを得ません。
#57
○平林太一君 議事進行について。委員長が先ほどから申されておつたように承知いたしますが、同一委員の質疑に対する連続の時間に対しましては、議事の進行上各委員ともそれぞれ質疑の用意もいたしているのでありますから、大体その時間に対する制限を、ということは甚だ何ですが、併し議事進行におきまして、その点も十分考慮せられて連続する同一委員の質疑に対しましては、適当なる調整をせられて、全員の質疑の進行に便宜を与えられるように願いたいということを要望いたしておきます。
#58
○兼岩傳一君 議事進行について。今平林君から極めて適切な御意見が出ました。僕はあとで結構ですから、ここで答弁だけ頂いて、なおこれはあとで展開する権利を保留し、且つ三百六号の撤廃が具体的に出て来たときに、この問題を徹底的に論議してもいいのですから、私はほかの委員の時間を奪つてもやろうという考えは全然ございませんから、平林委員から言われたように十分展開して頂きまして、私は最後で結構ですから、今の平林委員初め皆で大いに質疑を出して頂いて結構でございますから、委員長、さように取計らわれて結構でございます。ただ私はこれは重大な国際的紛争の禍根を持つという憂慮を感ずるが、それに対して外交的な方針として、何らのそれに対する心配も持つておらないかどうか。若しあるとすればその打開はどういう方法で打開して行かれるかということだけをお聞きしておきます。
#59
○国務大臣(岡崎勝男君) これは方針というべきものでありません。現実の事態に直面したときに善処する考えであります。
#60
○平林太一君 日米加漁業條約に対しまして私の見解を述べて、なお岡崎君から御答弁を承わります。その前に申上げたいことは、この委員会は極めて落着いた気持で質疑を展開いたしたいという私の気持もございますので、従いまして起立せずにこのままで私いたしますので、政府側におきましても、そのままで一つお答えを頂きますように、あらかじめ申上げておきたいと思います。この日米加三国の漁業條約の問題につきましては、先般非常な注目のうちにこれが行われたのでありますが、私はその結果を承知いたしまして、非常に今日の我が国の現状に即しまして考慮いたしますときに、非常に成功であつたということを私といたしましては、この際強くこれを申上げたいと思うのであります。特に米国が、我がほうの考えておりましたよりも邊かに大きな襟度と寛容を以ちまして、この條約の締結に当つて内外表裏とも非常に心を砕かれたということを、その草案を見まして了承いたすものであります。もとより細かな問題につきましては、それぞれ我がほうといたしましても考えさせられる点もあり、又論議の対象となるべきものも多々あることも見逃し得ないのであります。併しながらおよそ條約なるものは、その條約を結びますところの精神、大綱基本というものがそこに善意を以て確立いたしておりますれば、爾余の問題に対しましてはいずれ計数、簿記の問題でありますから、その場合々々におきまして我がほうとしましては適当なる措置を、相手国にそれぞれ話合いの上で取決めて行くべきものと思うのであります。今回の日米加三国漁業條約につきましてはまさにその感が深いのであります。従いまして当局におきましては、この條約発効後におきまして当面して参りますそれぞれの場合におきまして、米国のこういう真意を深く了承しまして、いわゆる信を置きまして、先方の真意を我がほうはこれを信じ、そうして我がほうの真意を先方にも十分に納得了解せしめるという方法をとりまして、これの取進めをいたして行くことが極めて妥当と考えます。従いまして今後加入いたして参ります條約にいたしましても、これら関係のある国に対しましても、実にその真意を当局は深く体得せられまして、そうして今回の日米加漁業條約なるものは、米国が大いに努力しましたそういうものの考え方、気持を、十分に善意に解釈いたしまして、取進めて行くように考えられたいと思います。曽つて我が国が日英同盟を結んだ、そのことを回顧するのでありますが、当時我が国が英国と同盟をいたしておりました当時の記録を今日調べて見ましても、主なる対外問題に対しましては、殊に東洋に関係のある問題に対しましては常に英国当局に事前に話合いをし、或いは英国自体に関係のないことまでも一応英国との間に十分な話合いをいたしまして、そうして誤りのない、日英同盟を基本とした国際的な諸般の取極めをいたしておる。而も当時これが非常に成功をいたして明治、大正以来の隆盛なる国運の発展をいたしたということを考えざるを得ません。従いまして今後もやはり我が国の外交の基調というものは、よく行違いのない方向に取進めて行くようにということを私は深く希望せざるを得ないのであります。でありますから、この條約に対しましては、そのような私の見解をこの際明らかにいたして置きたいと思います。
 その次に申上げたいと思いますことは只今フィリピンには津島君が使節として参つておりますが、今後も引続いてビルマ、インドネシア、或いは台湾、韓国、或いは中共へ参ることでありましようが、この際一つ御考慮を願いたいことは、東京におきまして日米加の漁業條約が大変成功して行つたという意味におきましても、事務当局におきましては、十分この実情を先方に認識せしめる、承知せしめるということに怠りのないように願いたい。東京におきまして日米加漁業條約が行われたのでありますから、私はこの米加の両国が、如何に我がほうの実情をよく知悉したかということも、これは非常に大きな影響を持つておることと思います。一度国を離れまして、フィリピンの土地に参り、或いはインドネシアに参るというような場合には、非常にその点にさなきだに何か疑心暗鬼を持つておりまする相互の間において、事実として知ることができないという点に非常に行違いの生ずることを憂えざるを得ないのであります。でありますから今後できるだけこの会合が東京において催されるような方法を御講じになることが極めて妥当と思います。いわんや賠償の問題に対しましては、我がほうが支払うので……、先方は無を以て我がほうにそれぞれのことを要求するのでありますから、できるだけ一つこれに東京においでを願いまして、そうして使節が、百聞は一見にしかず、我がほうの在来の事情をよく目に見ながら、そしてそれを取調べて行くという方法を一つお図りを願いたいと思います。それから送りまする使節でありまするが、最近の様子を見ますると、何かこの戦争中追放になつておつた人物が最近解除になりました。これが何か取つて置きの人物であつた、秘蔵の存在であるというような錯覚を我々をして起さしめまして、これを非常に利用しておる。これはよほど一つ考慮を払つて頂きたいと思います。由来私をして言わせますれば、戦争によつて追放になつた人物というものは、もとよりその千差万別は否みがたいのでありますが、その持つておりまする性格といたしましては、我を滅して国事に赴くという気魄に欠如したる人物であつた。その人物の、勿論人としての優劣はおのずからこれは別個であります。そういう人がたまたまこの追放解除によつて、あたかもこの過去のことは毫末も反省しない。追放になつたことが甚だけしからんというようなことを宣言をいたしまして、そして横行闊歩する、それを易々として国の重要なる国事にこれが利用されて行くということになりますると、非常に我が国が漸く民主的に相成つて来た国家の方向というものが逆転するというような不吉な考えをさえ、私は禁じ得ないのであります。今回フィリピンには津島君が参りまして、第一のこれは小手調べであつたのでありましよう。私は成功して帰ることを念じてやまないのでありますが、今日の状況では必ずしも成功とは言い得ないものがあります。一を以て万事を知るべきであります。今後のこの国際外交に対しまする、いわゆる対外交渉に対しまする、殊に海外に派遣しますところの人物に対しましては、この点を十分に考慮せられまして、誤まりのないことを期したいと思います。又春秋の筆法を以ていたしますれば、実は追放解除になつたような人々を、解除になつたからと称しまして、国際的な大きな檜舞台にどしどし出して行くということは、ややこれは国際的、対外的に見ましても、我が国が今日の場合謙虚を欠くものがあるのではないかと思わざるを得ません。
#61
○委員長(有馬英二君) 発言中でありますが、余り一般論にお入りにならないように……。きまつておりますから……。
#62
○平林太一君 大綱を申上げて……私は技術的のことは……国会議員はやはり大綱を申上げることが極めて大切でありますから、時間が参つたのでありますれば、これはいたし方ありませんが、時間がない場合には……、併し御注意がありますから、直ちに議事進行上取りやめたいと思います。取りやめたいと思いますが、私はそういう考えを持つております。でありますからこれに対しまして岡崎さんから、両條約の問題、只今申上げましたことに対しましての私の所見を申述べたのでありまするが、この際お考えを承わりたいと思います。
#63
○国務大臣(岡崎勝男君) 今平林君から縷々御説がありまして、殊に日米加三国の漁業條約に対して深い御理解を持つてのお話であります。御趣旨はとくと拝承いたしました。いろいろの点についての御意見は、今後できるだけ考慮に入れまして、善処したいと考えております。
#64
○平林太一君 了承いたしました。
#65
○杉原荒太君 岡崎大臣がおられる間に、一言念のために私お尋ねしたいと思います。先ほど塩見長官の御説明を聞いておりまして、いろいろ内容に即してのことだつたのですが、聞きようによつては、公海自由の原則がこの原則がこの條約によつて制限されるというふうに、どうかすると聞えるようなお話があつたように思うのですが、この点は今後の問題としての非常に大事な点です。念のためにそこを明らかにしておいて頂きたいと思うのですが、もともと公海自由の原則というものは、或る特定国の一方的意思によつては、特定国の一方的管轄の下では航海をさせないということが主たる内容であります。その公海を関係国の自由意思の下に航海するということは、ちつとも公海の自由の原則と矛盾するものじやない。而も今度の條約というものは、公海自由の尊重の原則の上に立つているのであつて、これを制限するものではない。私はそう解釈するのでありますが、その点は今後非常に大事な問題と思いますから、塩見長官から簡單でいいですから御説明相成ると共に、岡崎大臣からもその点をはつきり一つして頂きたいと思います。
#66
○国務大臣(岡崎勝男君) これは三国間の條約案の前文には、こういうことが書いてあります。日本国、カナダ及びアメリカ合衆国の政府は、主権国として国際法及び国際慣習の原則に基く公海の漁業資源を開発する各自の権利に照して行動し云々、それで我々はこの文句は公海における漁業の自由の権利をいずれの国もお互いに認め合つた、こう考えております。なお今度の漁業協定の具体的の措置として、一定の水域において一定の制限措置をとる、こういうことは今お話の通り、三国間が自由意思によつてお互いに協定したことでありますから、公海自由の原則とは何ら抵触しないものである、我々はこう考えております。
#67
○政府委員(塩見友之助君) 只今岡崎国務大臣からの御答弁の通り私のほうも考えております。
#68
○大隈信幸君 私は岡崎大臣に簡單なことですから、お帰りになる前に伺つておきたい。民間施設を行政協定によつて米国駐留軍が再接収するという問題について、今日朝日新聞にもすでにその問題が出て、外務省側の見解として、外務省は総司令部に対して、講和條約発効までは接収は行わないこと、それから講和発効後米軍の使用する施設は成るべく国有財産を利用すること、民間財産を使用する場合には政府を通じて行うことを申入れたというふうに、朝日新聞は報道しておるわけでありますが、これについて岡崎国務大臣はどういうふうに考えておられるか、その点をはつきり御説明を頂きたい。
#69
○国務大臣(岡崎勝男君) これは私は新聞の何か誤解じやないかと思つております。というのは、実際上そういうことが事実上としても、講和條約発効までは接収がないというようなことは、事実上あるかも知れませんけれども、観念上から考えますると、占領継続中に占領軍の必要とする施設が新たにあれば、これを要請することが当り前でありまするし、要らなくなれば返す、現在は返すほうを主にやつておりますが、観念的に言えば、要る場合には、必要な施設は要請するのが当り前の話であります。でありますから、講和條約発効までそういう接収はしないという申入れをしたというのは、私は聞いておりません。何か誤解じやないかと思います。ただいろいろ施設の問題等は、これから話をするのでありますが、大体の傾向としては、主として将来の問題としては、国有財産等が対象になる、それから私有のものであるならば、いわゆるコントラクチユアル・レンツと言いますか、お互いの協定によつて、合意によつて使用料を支払つて使う、こういうことが原則になると考えております。これは独立後の話でありまして、現在は形は、事実上そういうことがあるかも知れませんが、現在は法律的に言えばちよつと違つた形になつてプロキユアメント・デマンドと言いますか、そういう形に今はなつているようなわけであります。
#70
○大隈信幸君 新聞にも例として載つておりますが、東京都内、十條の旧陸軍第一造兵廠の一部云々という問題なんですが、これは私は聞くところによりますと、現在新宿の伊勢丹に入つている部隊が、伊勢丹を日本に返すためにここの部分は再接収するというふうに聞いております。その問題はこれは吉田さんが、講和発効の暁にはこういう東京のようなところの中心部から、できるだけいわゆる駐留軍にどいてもらう、都心外にどいてもらうという方針でおられるということはたびたび御声明があつたわけですが、その一つのあれとして伊勢丹からその軍隊がどいて、十條の陸軍第一造兵廠に移る。それから又陸軍第一造兵廠の一部には現在の日本の民間の会社がたくさんいろいろな施設を利用しているという問題なんです。それを聞くところによりますと、二月の十五日に明渡せという命令が来た。これはいわゆる占領下におけるところの接収とは大分違うと思うのです。時期的には占領下に接収されるのでありましようけれども、事実としては講和條約なり、或いは日米安全保障條約の関係から接収が行われるというわけでございますから、非常に案態が違つて来ると思うのです。若しそういうふうな場合に、一体じや政府は補償をどうするか、その接収された工場等に対する補償はどういうふうにされるか、そういう点についての御説明を頂きたいと思います。
#71
○国務大臣(岡崎勝男君) これは都心からどけとか何とかいうことが原則となつているのではない、事実上そうなるかも知れませんが、要するに日本の経済の発展にできるだけインターフイアしないようにして施設等を使うという方針でありますから、都心のうちにあつたほうが経済に余計な害があると思えば、外へ出て行こうとするだろうと思います。そこで補償の問題等が当然出て来ます。これはいろいろケースがあり、事情が違うことがあると思いますから、今は特別調達庁で取扱つておりまして、それぞれ適当と言えるかどうかわかりませんが、従来の方針がありまして、これに基いて善処する、こういうことになります。
#72
○大隈信幸君 もう少し伺いたいのですが、そうすると日本の経済にインターフイアしないようにするというふうに考えられるのですが、そういう場合まだ講和発効以前においてこういうことは絶対起り得ないということを言われるのか、それとも起り得る場合も当然政府と相談があつて行われるか、一方的に米軍が接収するかどうか、その点はどうなんでしよう。
#73
○国務大臣(岡崎勝男君) これは原則的には政府も相談しておりますが、具体的の問題になると、向う側の必要度がどの程度であるかということは我々にはつきりわからないことが随分ある従つてこれをどけとか、あれをどけとかいう話は、行政協定のあとの施設の問題で出て来ますけれども、今のところは原則的には成るべく経済に阻害しないようなふうにやつてもらいたいという話し合いをして、それに基いて総司令部で以て各種の措置を行なつている、こういうことです。尤も特別調達庁等には先方の係官がここはどのくらい邪魔になるかとか、これはどのくらい差支えないかとかいうような事実上の問合せは無論あるわけです。
#74
○大隈信幸君 いずれ特調の長官等にも来て頂いて、もう少し伺いたいと思いますが、今日はこれでやめます。
#75
○平林太一君 ちよつと議事進行についてこの際申上げておきたいと思います。委員長が委員長席において議事を進行するということは、この委員会の性格からいたしまして、私は委員長の地位は極めて尊厳であり、又非常に謙虚であり、崇高なものでなければならないわけでありますから、従いまして本会議の議場におきまして、議長が若し発言をいたす場合には、副議長に代つて議席に帰つて、自分の所信を述べて、議長は厳然としてこの議長席をひたすら守るということでなければならない。委員長は先頃のこの委員会及び本日の委員会から見まして、委員長から発言されて、当局と質疑応答をされている様子は、誠に立派な光景でありますが、一面から見まして何か委員長が自問自答されているような雰囲気がこの委員会の何を横溢している。私は委員長の尊厳を更に高からしめたいという考えを以て申上げるのであります。でありますから若し委員長から御発言をなさいます必要がある場合は、よろしく委員席にお帰りになりまして理事等に代行せしめておやりになるようになさることが、極めて妥当であると考えるのであります。これは非常に今後の外務委員会の持ちます使命として、そのもたらす雰囲気というものを飽くまで厳粛なものにいたしたいということを思いまして、さように思うのでありますが、これは私の希望として申上げるのでありますから、委員長はこれを取捨されることは御自由であると思いますが、さようなことをこの際希望として申上げます。
#76
○委員長(有馬英二君) 御注意誠に有難うございました。
#77
○兼岩傳一君 大臣のいるうちに、ちよつと一つ議事追行をかねて……。
#78
○委員長(有馬英二君) 大臣はちよつと予算委員会に出られるそうでありますから……。平林委員に申上げますけれども、一々委員長席から立ちまして、そうして議席について質問をするということは誠に煩に堪えない。又時間上も困ることが多いだろうと存じます。又委員長席から質疑を行うということは、別に間違つていることと私は思つておりません。これからもしばしばそういう工合になると思いますから、どうぞその点は御了承を願いたい。
#79
○平林太一君 私の希望といたしましては、委員長はそういうことを明瞭に言われておりますけれども、若しそれ委員長が発言されるという場合には、自党の委員に代弁せしめる、代つて問わしめろという方法もあるのでありますから、委員長はやはり本会議場におきまして、若しそれ議長が議長席において質疑応答をしているという光景だつたらどうなるかということは、極めてはつきり考えられるのであります。これもひたすら委員長としての有馬君をして、私は委員長として正鵠なる委員長たらしめんとする熱意によつて申上げるのでありますから、御了承願いたいと思います。
#80
○團伊能君 本日の委員会の議題以外に離れるかも知れませんが、幸い外務政務次官もいられますので、少し議題を離れますが、五分ばかり質問をお許し願いたいと思います。政務次官にちよつとお伺いいたしますが、最近に南方水域三十度線に限定されておりました日本の水域が、二十九度線まで延びまして、そうして従来の鹿児島県十島村と申しておりました十の島からできております群島でありますが、その三つはすでに三十度線以北にありまして日本の領土になつておりましたが、新たに七島がこれに加わりまして、我が国に帰属いたしましたことは非常に御同慶に堪えない次第であります。ここにつきまして一、二外務省としておとりになるべき問題を離れるかも知れませんが、事外交にも相当深い関係がございますので、外務省の御所見を承わり、又御努力を期待するものであります。その一つはこの七島の住民でありますが、三千余人の極めて少数の人口ではございますが、先日頃までは、極く最近までは琉球の司令部が、昨年十二月五日でございましたか、もはや日本に帰属したものだから関係ないといつて二十九度線で交通を切つてしまい、日本から参ろうといたしまするとその一度上の三十度線でこちらの司令部は切る、殊に太平洋極東海軍が切つてしまつていて、それでこの間の交通がどちらからもできない状態に、暫らく……二カ月以上と存じますが、ございましたのです。この際に私は外務省に申上げて、一日も早くこの住民に対して、何らかの連絡をとるようにお願いいたしました筋もございますが、この住民は、御存じのような極めて小さい島でございますので、食糧の生産は全住民を養うのに、米の生産が約三割くらいしかできない所でございますために、食糧の危機を来たし、殊に昨年来の台風の損害もひどく、極めて困難な状態にございました。それで何とかしてこの交通を打開するようにということをお願いしてはおりましたが、幸いにして最近におきまして三十度線以南に航行が許されるようになりまして、この問題は一応解消いたしましたことは甚だ喜びといたすところでございます。現在これらの住民については、政府が御派遣になりました調査員を通してすでに御存じと存じます。私も現地調査をいたしたわけではございませんが、これらの住民が日本に帰属いたしましたものの、多くは土地の状態からいたしましても非常に貧しい島でございまして、宝島には多少砂糖黍を生産いたすことができますけれども、他の島は非常な寒村であります。三千余人のうち殆んど我が国の生活保護法の適用さるべき住民が三分の二以上でございます。的確に申すと三千円以上の收入ある者は非常に少く、大部分は日本の生活保護法が適用されるといたしますると、それが適用される人たちであります。そういう貧困な状態にございます。且つ又琉球司令部においては、勿論この民生の安定のために相当施設をいたし、給与をいたすということになつておりましたのだそうでございますけれども、朝鮮事変の勃発その他で、これらの住民に十分な民生の保護をすることがなく、今日まで数年間殆んど放置されてあつて、困難いたしていたところでございます。こういう状態で実際は道路も殆んど破壊されておりますし、又学校のごときは今日僅かに屋根と柱があつて、壁も窓もない、ただ雨をよけるだけの下で教育を受けております。教員の数も非常に少い。一人か二人の教員で児童を教育いたしております。教科書のようなのも非常に欠乏いたしております。その上この辺は日本の教科書を使うことは許されておりましたが、教科書の補給も非常に少いために、一冊をみんなで読むというような状態でございます。なお且つこの七島全島一人の医者もおりませんし、一人の助産婦もございません。全然無医村でございます。こういう点から、相当急に日本の国民となつたにつきまして保護を要求いたしておりますが、この点につきましては地方自治庁の問題でございまして、これは外務省の問題ではないとお考えになるかも知れませんけれども、実はこれらの住民に対して我が同胞となつたということに対し、特にこれらを厚く迎えるということは、一方御承知のように非常に微妙である南方諸島の民族との関係におきまして、私は非常に重要なことであると存じます。只今鹿児島県といたしましては、千二百万円ばかりの特別交付金というようなものを要求いたしておりますが、これはもとより新領土が加わつたのでございますから、これらに対する調査その他の交付金は当然と思いますが、そればかりではなく、これらの土地の学校の修理、道路の復旧、或いは民生安定のために、そう大した予算でもありません、恐らく一億か一億五千万円あれば、これら僅かの住民でありますから、医師を送り、学校を修築し、殊に薬もございませんし、食糧も欠乏しておりますが、これらに対して至急に何か方法を外務省が先に立つて一つお考え頂くことができないかということをお願いいたす次第であります。
 なおその土地の問題といたしまして、具体的な外交問題となつておりまする問題もございます。その中には曾つてこちらで取扱いました請願にあつたと存じますが、金十丸という船が終戦当時鹿児島湾の中に碇泊しておりまして、これが琉球とこれらの島を縫つて参ります航路に使用されていた船でございます。この接収を早く返して頂いて、これらの島との連絡の船として使いたいという請願がございますが、勿論この辺は非常に台風の多い地域でございまして、普通の船舶では非常に危險でございまして、その金十丸はこの地方を航海するために船の幅を広く造つてございます。こういう船もできるだけ早く接収解除をして頂いて、日本に返して頂き、これらの諸島との連絡に当らせて頂くことを御斡旋願いたいと考える次第であります。これらは極めて一地方的な問題とは存じますけれども、この今日切実な思いをして祖国を思つておる琉球或いは奄美大島の島民等の上から考えましても、三千余人の人口ではありますが、これらの住民を我が同胞として温かく抱くという気持の上に、政府の政策が出ますことは相当大きな影響を与えると存じますので、この辺に対する御政策に何らかの進展をお願いする次第でありますが、次官の御意見を一つお伺いしたい。
#81
○政府委員(石原幹市郎君) 只今誠に適切御尤もな御話をいろいろ承わつたのでありますが、御案内のように昨年の暮から今年の初めにかけて参りました調査団も、外務省が中心となりまして向うに参つたわけであります。現在内地に編入されました関係上、その所管は地方自治庁にはなつておりますが、外務省といたしましても従来の関係もありますので、非常な重大な関心を持ちまして、これらの斡旋に努めておるわけであります。現在も外務省の係官は他の省の係官と共に現地にも参つておりまして、いろいろと斡旋いたしておりまして、これ又今後日本に帰属すべきあとの島々の問題等の関連もございますので、十分気をつけてやつておるつもりでございます。
 それから更に平衡交付金の問題であるとか、或いはその他民生安定の各般の施策につきましては、こちらにおきましても十分関係各省と連絡をとりまして万遺憾なき施策をいたしたいと、かように考えております。
#82
○中山福藏君 若し何でしたら、事務次官は来ておられますか……来ておられませなければ、一つ政務次官からお答え願いたいと思います。この日米加三国の漁業協定のいわゆる草案、これが将来非常な惡い議論の余地を与える点はですね、国際慣習という文字をここに使われておることだと私は考える。これがいわゆる李承晩ラインというものが主張される一つの重点になつておつたと思う。こういう言葉を條約の上にお使いになると、これは主観、客観から国際慣習とはどんなものかということで、どんな議論でもできる。水掛論の余地を与えていると思う。インドネシアとか濠洲とか或いはフイリピンとかに漁業協定を結ぶときに、これが基本的な標的を示すものだというようなお言葉がある今日において、こういうふうな議論に弾力性を持たせる言葉を條約のうちに挿入しておくということは、日本が将来こういう條約を締結するときには不利益だと思われるのですが、そういう点を何とか御考慮になるお考えはございませんか。
#83
○政府委員(石原幹市郎君) これはやや專門的な問題になりますので、本日、当時交渉に当りました欧米局長から説明させたいと思います。
#84
○政府委員(土屋隼君) 只今の御質問によりますと、国際慣習がいろいろ分れているので、国際慣習という字を使うこと自体が将来に禍いを残さないかという御質問のように伺いましたが、私どもがここで話合いまして国際慣習と使いましたのは、国際社会の大多数の国が国際慣習と認めて、いわば実質上の国際法として認めている原則というふうにこの字句を解釈いたして、その結果この前文にこういつた文句を使うことについての同意を得たわけであります。従つて一国若しくは国際社会の少数の国が成る一つの新らしい国際法上の慣習若しくは原則を主張いたしたといたしまして、これが仮に慣習になつたといたしましても、国際社会の大部分の国が容認しない限りにおいて、私どもがここに申しております国際慣習とは言いにくいと思うのです。従つて将来東南アジアその他との交渉に当つて、いわゆる国際慣習とここに使いました文字で将来非常に不利になるとは思いません。日本側に非常に不利になるというよりは、現在の国際慣習より非常に離れたものになるということは考えられる。若し現在の国際慣習が大多数の国々から認められて、縛られるならば、日本がこれに縛られることは当然であるというふうに考えて使つたわけであります。
#85
○中山福藏君 大体国際法という法律が、国内法なんかとは非常に基本的な性格を異にしておる。従つて国際慣習としては概念的には何人も今お答えになつたような観念を持ち得るんです。従いまして只今顕著なる事実として現われております李承晩ラインの主張というものは全くこれから来ておる。これは先ほど私が大臣にお尋ねしたペルーだとかメキシコ、アルゼンチンにこういう例があるというのはこれなんです。大体国際法というものは国際慣習の集約した、これが成文化した一つの法律に過ぎないのでありまして、この国際法という言葉を現わす以上は、国際慣習というものは全く李承晩の言うごとくに伸び行くものです。これは時々刻々と、時と所によつて違つて来る。そういうものを條約のうちに挿入しておるということは、これは如何にも日米加三国の條約の草案ができたから、そういうふうな、どうしてもこれを貫徹して行かなければならないというお考えでそういう御議論があるでしようけれども、私は今日断言しておいてもいいと思う。将来漁業協定で問題が起り得るとすれば必ずここで起つて来る、俺のほうは国際慣習とは認めないと言えば水掛論なんです。その裏書する国の力によつてこれはどうにでもなることなんです。ですからこういうふうな将来に禍いを残すような文句は、今日まではいざ知らず、これからの日本の外交の発足ということにつきましては、十分なる一つの関心を持つて、私は虚心坦懷に削除するほうがいいと思うのです。どうですか、一つそういう点は大きく将来を洞察して、大体政治は将来の洞察にあるのです。政治家の優劣というものはその洞察力の如何によつてその値打が定まると私は考えるのです。洞察のないところに政治はあり得ない、だから外交でも同じことだと思うのです。だからそういうふうな禍いを残すような文句は十分、一つお考えを願いたいと思いますが、重ねて政府の御所見を私は承わつておきたい。
#86
○政府委員(土屋隼君) 只今お話にございましたように、国際慣習とうい言葉自体が、やや何と申しましようか、こういうふうに常識的に国際関係において使われますということから、将来この條約に書きました国際慣習という字が、日本側にとりましても非常に不利な点になるので抜いたらどうか、而もこれは大所高所から考えてみたらどうかという御質問のようでございまするので、今後この條約が三国間において調印を見ますので、その際日本側としては十分にその点は考えてもいい点だと考えます。ただ私どもが実際上、この條約案にこの文章を盛り込みましたときの考え方から申しますると、勿論私どもは将来のことを考えなかつたわけではないのでありまして、将来国際慣習法として世界の大国の大部分が認める国際慣習は、当然これは守るべきですし又日本側としてもこれを認めるべきであるという考え方から、仮に現在少数の国々で、これは李承晩ライン或いはメキシコの主張というものが出ておりましたが、これはいわば国際慣習上における一つの新らしい形ではございますが、まだ国際社会から認められたものでないことは勿論でございます。そこで私どもはこの国際慣習として認められた原則を認めて行くということ自体が、そういつた新らしいものが確立されて行くまでの間は、一切これは国際法上の慣習でないという考え方から、この国際慣習という字をここに使つたわけであります。そういう意味で、私どもは今後暫くいろいろな新らしい各国の主張というものが国際間の調整を見て、これが大国間の国際慣習として認められるまでは、我々としてはそれを認めるわけには行かない。例えば李承晩ライン、これは本件とは直接の関係はないのでありますが、ああいう主張を各国がするということは、或る程度今後予期することができるかも知れません。これはやはり国際社会が是認し、承認しない場合においては、日本としては国際慣習としては認めない。これはアメリカ、カナダも同じ気持だと思います。御存じのように、アメリカとカナダにおいては領海の点において両者の意見が正面衝突しておりますが、カナダは領海を六海里と主張しておるわけでありますが、アメリまは現在三海里で満足したわけです。この点も将来の国際法に残された問題ですが、現段階におきましては、慣習としてカナダの主張が正しいという段階まで達していない、従つて我々は常識として領海は三海里であるという従来の慣習を認めておる、この趣旨を実はここに盛つたわけであります。併しお話のようにこういう問題は、こういう字句を使うことが、果して将来を見ましてこの條約が適当であるかどうか、これは又調印後議会にも御審議を得ることでございますから、その際十分に御検討を頂きたいと思います。
#87
○中山福藏君 私は最後にお願いしておきたいのですが、これは慣習は伸びて行くもので、先ほど申しました成長するものでありますから、そういう成長するものを……臨時にできた法律という着物を成長した大人に着せるような愚なことは是非ともやめて頂きたいということを、特に私はこの際お願いして、私の質問を終ります。
#88
○兼岩傳一君 委員長と相談申上げたいのですが、この行政協定が岡崎国務相とラスク特使との間にどんどん進められておる、今日の新聞……私は毎日新聞を見ておるのですが、日米間の防衛協定が締結され、或いは行政協定了解事項が設けられる、つまり平時における駐留軍の配備の條件のみならず、戦争が起きた場合の問題が論議されておるようですが、この委員会としてそういうような問題を近くお聞きになる必要があるように思うのですが、これは理事会の問題として討議されても結構ですが、如何でしようか。
#89
○委員長(有馬英二君) お答えいたします。尤もな御質問だと思いますが、いずれ近いうちに御相談いたします。ほかにそれでは本日の議題につきまして御質問はございませんか。
#90
○平林太一君 次回までで結構でありますが、外務省の職員録を資料の一部として配付できるようにお取計らい願いたい。その際課長以上、局長、課長を最低基準にいたしましてできるだけ一つ経歴を職員録に附帯いたしまして取りそろえて、次回までに我々の手許に届きますように、委員長においてお計らいを願いたいと思います。極めて大切な事柄であると思います。
#91
○委員長(有馬英二君) 聞き洩らしましたが、経歴をそろえる……。
#92
○平林太一君 課長以上、局長、次官、大臣は当然ですが、今日までの経歴、当然わかりますから、やはり我々はこの場所におきましてああいう人を知るということは極めて必要でありますから、その手配をお願いしたいと思います。
#93
○委員長(有馬英二君) 早速そういうふうに手配いたします。
 それでは本日はこれで散会いたします。
   午後三時十三分散会
ソース: 国立国会図書館
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