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1951/03/04 第13回国会 参議院 参議院会議録情報 第013回国会 外務委員会 第8号
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1951/03/04 第13回国会 参議院

参議院会議録情報 第013回国会 外務委員会 第8号

#1
第013回国会 外務委員会 第8号
昭和二十七年三月四日(火曜日)
   午前十一時二十八分開会
  ―――――――――――――
  委員の異動
二月二十九日委員徳川頼貞君辞任につ
き、その補欠として小滝彬君を議長に
おいて指名した。
  ―――――――――――――
 出席者は左の通り。
   委員長     有馬 英二君
   理事
           野田 俊作君
           吉川末次郎君
   委員
           小滝  彬君
           杉原 荒太君
           團  伊能君
           平林 太一君
           伊達源一郎君
           中山 福藏君
           岡田 宗司君
           加藤シヅエ君
           大隈 信幸君
           兼岩 傳一君
  国務大臣
   国 務 大 臣 岡崎 勝男君
  政府委員
   外務政務次官  石原幹市郎君
  事務局側
   常務委員会專門
   員      久保田貫一郎君
  ―――――――――――――
  本日の会議に付した事件
○国際情勢等に関する調査の件
 (行政協定に関する件)
 (モスコーにおける国際経済会議出
 席に関する件)
  ―――――――――――――
#2
○委員長(有馬英二君) それでは只今から外務委員会を開会いたします。前回に引続きまして行政協定の件を議題といたします。順次御発言を願います。
#3
○吉川末次郎君 行政協定につきましては、この委員会におきましても、又本会議におきましても、政府当局者と議員との間にいろいろ質疑が取交わされたのでありますが、今日までの質疑応答に基きまして、なお私たちの疑問といたしますところが十分に了解されておりませんので、この機会に岡崎国務相に更にお尋ねいたしたいと思うのでありますが、政府の今日までの御答弁によりますると、私は專ら行政協定の憲法上における條約という言葉の意義に関連しての点についてお尋ねいたしたいのでありますが、憲法七十三條に規定されているところの條約ではない。従つてそれは国会の承認を要せざるものであるというところの解釈を終始今日まで吉田首相も又岡崎国務相もとられ、御答弁をしておられるのでありますが、併し我々のほうにおきましては、その政府の答弁を今日まで承認いたしておらないわけであります。で、それにつきましては法律的な立場からの見解が、私の判断を以ていたしまするというと、質問者の側においても大体そういう政府と政治的に異る見解をとつて質問をいたしておりまするけれども、まだ十分でないような感がいたしておるわけであります。それで先ずお尋ねいたしたいことは、政府は七十三條の規定の條約という言葉を英語の言葉で言えば、考えられる言葉としてトリーテイという言葉があると思うのでありますが、トリーテイという言葉に限定しておられるように私には考えられるのであります。併し現在この外務委員会に付議されておりまするところの麻薬の取締に関する外国との取極、従つてその内容において日本国民の権利義務を拘束するところの国際的な取極というものを、政府は我々に賛成を求める態度において国会に承認を求めていらつしやるのでありますが、あの麻薬に関する国際間の取極の文書を見ましても、それは條約と訳されているところのトリーテイというものもあれば、中にはアグリーメントという言葉を訳された協定という言葉もあり、又その外にプロトコールなんとか書いた議定書と訳されております。そういう言葉も議定書という言葉で訳しまして、プロトコールという言葉を訳して、そしてすべて我々に承認を求めていられるのであります。それからいたしまするというと、憲法第七十三條に掲げられておりまするところの條約というものは、米国の法律に規定いたしておりまするところのトリーテイでなくして、もつと広汎なるところのものと解釈すべきものであると我々には考えられる。又現に今参議院の外務委員会に対して、その態度において麻薬に関するところの諸般のアグリーメント及びプロトコールの承認を求めていられるのであります。その麻薬に関するところの協定及び議定書の承認を我々に求められているところの態度と、安保條約第三條規定の日米両国間に締結されるところの行政協定の国会の承認を要しないというところの政府の見解とは、現実的に今直前の我々の現象としても矛盾撞着していると考えられるのでありますが、それについての御答弁を願いたいと思うのであります。なお附け加えて申しまするが、私の多少取調べました範囲内におきましては、日本の国際法学者或いは横田喜三郎氏といい、或いは京都大学の田畑茂二郎氏といい、或いは大沢竜という人の国際法についての書物を調べましても、すべて條約というものはそうしたトリーテイ或いはアグリーメント、プロトコール、そのほか国際連合憲章のような憲章と訳されておりまするチヤーター、或いは協約と訳されておりまするところのコンヴエンシヨン、そういうものはすべてこれを含んでおるところのものである、このように解釈している人が大体において代表的な日本の国際公法学者の共通している見解であると我々は了解いたすのであります。先ずそれについての岡崎国務相の御答弁を得まして、又更に附に落ちない点を続けて御質問いたしたいと考えます。
#4
○国務大臣(岡崎勝男君) 政府は憲法の規定にある條約は英語で言えばトリーテイに限るということは申したことはないと私は信じております。これは国際法学者を待つまでもなく、もう常識的に英語で申せば今おつしやつたようにトリーテイもあれば、コソヴエンシヨンもある、チヤーターもある、プロトコールもある、いろいろのものがあると思います。それを日本では、いわゆるいろいろのものがあるものを代表して、と言つては語弊があるかも知れませんが、條約という名前で憲法では現わしておる。英語、フランス語いろいろありましようが、細かく分ければ、その中にはいろいろのものがあると思います。で、我々の、それじやなぜ今これを今度の行政協定は国会に付議しないのかというお話は、今あなたがおつしやつた通りでありまして、通例、例えば平和條約を御覧になりますと、連合国と日本国、まあこれは必ずしもどこでもそうなつているとは言いませんが、連合国と日本国との間の條約というふうにこの平和條約はできておるのです。つまり国と国との間の條約、これに対して安全保障條約第三條では、合衆国の軍隊の配備を規律する條件は両政府間、政府間という字を特に使つております。そうしてそのあとで「行政協定で決定する。」、そしてその行政協定というものはどういうものであるかということも、これも大体国際慣行で認められておるものであります。従つてこの條約三條によれば、両国政府が何でもかんでも勝手にきめていいというのではなくして、きめる内容は、配備を規律する條件であり、そしてその範囲は行政協定でできるもの、こういうふうにして安保三條で国会が認めた、こう我々は考えておるのであります。
#5
○吉川末次郎君 あなたは本会議におきましても、今のような御答弁をせられたと思うのでありますが、そこで更に私たちが腑に落ちないこととしてお尋ねいたしたいことは、国と国との間の取極でなくして、特に安保條約第三條には両国政府間のと、政府間、政府という言葉が使つてあるということを盾に取つていらつしやるわけなんでありますが、時間がありません、忙しい体でありますから、今日その原文を十分に調べて参りませんでしたけれども、原文というのは英語の文章でありますが、恐らくはその政府という言葉はガヴアメントという言葉が使われておるのかと思うのであります。で、日本語で申しましても、政府というのは即ち国を代表しているところの唯一の執行機関であるナシヨナル・ガヴアメントである。それは決して東京ミニスタル・ガヴアメントでも或いはシテイ・ガヴアメントでもないのでありまして、ナシヨナル・ガヴアメントであります。即ち日本国の政府なんであります。その日本国の政府を、という意味において政府のという言葉が使われておりまするならば、それは取りもなおさず日本国家を代表するところの国と国との間の取極でなければならんと思います。それが先ず第一。それから第二にガヴアメントという言葉が今は私は多分使われていると思うのでありますが、ガヴアメントという言葉が使われているといたしますならば、政治学の大体のセオリーといたしましても、ガヴアメントという言葉には又これを日本語で訳するならば、国という言葉はまあいろんな訳し方があると思うのでありますが、英語で申しますならば、或いはネーシヨンという訳し方もありましようし、或いはカントリーという訳し方もありましようし、或いはシビル・ソサイモテイというような訳し方もありましようし、コモンウエルスというような訳し方もありましようし、いろいろあると思いますが、そういういろいろ国という日本語を、今外国語の中で英語だけを引用して申しましても、ガヴアメントというところの訳し方もあるのであります。これは日本語の政治学の本にも、日本の政治学者も書いておるのであります。そういう意味からいたしましても、安保條約第三條に政府という言葉が使つてあるから、これは何も国会の承認を要しないというようなあなたの立論の基礎は、私たちは承認することはできません。政府は即ち国そのものである、国を代表しておるものであるという立場において、甚だあなたの御答弁が私たちは奇怪に思うのでありますが、もう一度それについての自信のある御答弁をお願いしたいと思います。
#6
○国務大臣(岡崎勝男君) 例えば安全保障條約第一條によりますと、これは英語でおつしやいましたが、英語で読みますと、ジヤパン・グランツ・アンド・ザ・ユーナイテツド・ステーツ・オブ・アメリカ・アクセブツといつて、日本が許興し、合衆国はこれを受けるというふうに、ジヤパンとユーナイテツド・ステーツ・オブ・アメリカという言葉で第一條は規定されております。第二條はやはりジヤパン・ウイル・ノツト・グラント、こういうようなジヤパンという字を書いております。第三條に行きますと、ビトウイーン・ザ・トウ・ガヴアメンツと、こうなつておりまして、その使い方は裁然と区別をいたしております。なお御記憶と思いますが、安全保障條約の国会の審議に当りましては、この点もかなり問題になつたようでありまして、国会では、こういうふうにして政府間で協定を結ばせるということは一種の白紙委任状ではないかという議論もあつたように私は記憶しておりまして、その時からすでに政府間で協定を結ぶということは前提條件になつて議論されたと記憶いたしております。
#7
○吉川末次郎君 ジヤパン或いはユーナイテツド・ステーツ・オブ・アメリカという言葉が使つてあつて、第三條にはガヴアメンツという言葉が使つてあると言われますが、そのガヴアメントというのはナシヨナル・ガヴアメントであつて、ガヴアメント・オブ・ザ・ユーナイテツド・ステーツ・オブ・アメリカ、或いはガヴアメント・オブ・ジヤパンという意味においてのガヴアメントであると私は解釈しなければならんと思います。又実質的に言いましても、このような重大なる国民の権利義務を拘束するところの、法的拘束力を持つた両国間の取極というものが、国会の協賛を得ないで随意に政府当局の間で、いわゆる秘密外交によつて勝手に国会の協賛を得ないでどんどんと取り運んで行くことができまするならば、今後どのようなことが起つて来るか、我々非常に不安であります。殊に今度の新憲法におきまして、国会が外交に対するところの條約の締結権を持つということは、新憲法の非常な大きな一つの特色であると考えられるのでありますが、そういう民主主義的な外交の取極というものの根本精神を覆すものであり、又国会の持つている最高の政治機関としての権力を全く無視したところの見解であるということを言わなければならんと思うのでありますが、なお国会が最高の、国権の最高の機関であるという建前からいたしましても、こうした重大な内容を持つたところの国際的な取極というものが、断じて国会の承認を得ずして私はできる途は法理的に解釈し得ないと思うのであります。もう一度岡崎さんの御答弁を得たいと思います。
#8
○国務大臣(岡崎勝男君) 只今二つの点を申されましたが、第一点の政府というのは、日本国を代表した政府であろうと、これは当然であります。若し日本国を代表した政府でなければ、あなたのおつしやるような議論は必要なくなるのであります。約定でありまするから、日本とアメリカの約定という意味であなたは議論されておるのですから、これは日本国を代表する政府であるということは当然であります。そこで第二の点として、そんなことをしたら政府は何でも国会の承認を得ずして勝手に行政取極でできるじやないか、こういうお話でありますが、我々はそうは決して言つておりません。安全保障條約の第三條で、両政府間の行政協定で決定することができるということを書いてあるから、この際は両政府間でできるのである、書いてなければできない、こういう意味です。
#9
○吉川末次郎君 それが今日まで大分参衆両院で論議せられたことかと思いまするし、なお岡崎国務相の答弁は絶対にこれを承認することができないということの意思表示をこの機会にしておきたいと思うのでありますが、それとなおまだもう少し質問したいことがあるのでありますが、ちよつと……それではこれで私のを打切りまして、又あとで御質問いたします。ただ御答弁については全幅的に承認し得ないということだけもう一度改めて申しておきます。
#10
○岡田宗司君 岡崎国務大臣にお伺いいたします。北大西洋條約当事国間の軍隊の地位に関する協定でございますが、これはやはり軍隊の地位についてのいろいろな問題を含むこと、丁度この間結ばれた行政協定と同じようでございます。ところがこれには批准條項がちやんと附いておる。つまりこういうような点から見まして、今度の行政協定が、日本の場合につきましては全然批准條項が附いておらんということは、やはり日米安全保障條約を締結する際に、日本政府が向うさんの御意見で以てそんなものは批准に付さなくてもいいんだ、こういうことで批准に付さないということになつたのかどうか。なぜ批准をしなくてもいいということに両国間できまつたか、そのいきさつをお伺いしたいのであります。
#11
○国務大臣(岡崎勝男君) これは両国間で批准に付さなくていいんだということをきめたわけではないのでありまして、安全保障條約の第三條の結果、日本側としては少くとも批准を要さないと、こう決定したわけであります。北大西洋條約につきましては、この軍の地位に関する協定を結ぶことについてのいわゆる安全保障條約第三條のような委任の條項が條約にないから、恐らく批准を必要とすることになつたんではないかと、これはまあよその国のことですからよくわかりませんが、本の條約にないことは確かであります、つまり行政協定で決定するというようなことが……。そこで我々がさつきも申した通り、これは丁度この安全保障條約第三條がなければ又話は別になるかも知れんけれども、第三條があるから、アメリカも日本も行政協定を締結することが政府間でできると、こういうふうになつたわけでございます。
#12
○岡田宗司君 どらも岡崎さんは答弁をごまかしていらつしやる。私は安全保障條約の第三條に、行政協定を規定するに当つて、その批准を要しないでそういうものを作るということをこの三條に入れるに至つたいきさつがどうであつたかということをお伺いしている。それにはお答えならんのですが、その点をもつとはつきり、どうして第三條に行政協定でこれを取極めると、そして日本側はそれを国会に諮らない、行政協定でよろしいということを第三條に取り入れたのか、その点をお伺いしたい。
#13
○国務大臣(岡崎勝男君) これはその当時総理大臣からもお話、御説明があつたと思いますが、この内容、つまり何と言いますか、この只今の行政協定のような内容、つまり軍の配備をきめるにとどまるものであれば、通例の言葉で言えば実施細目と言いますか、そういう種類のものであるから、国会が承認するならば両国政府間できめるのが適当ではないか、こういうことになるわけであります。又その際特に総理はまだこの交渉の、この行政協定の話が至つておらない時でありますが、あらかじめ、併しながら両国政府で行政協定をきめても、予算を必要とし、又は直接国民の権利義務に関係のあるものについては、予算案なり、法律案なりを国会に提出して、その承認を、求めなければ実施ができないのであるということの話もいたされましたが、その結果国会にもそういう趣旨のことを言明されたと記憶しております。
#14
○岡田宗司君 この行政協定は、今あなたのお話だというと、まあ細目協定のようなものだと、こういうふうにおつしやつておる。そこで私どもはあの條約を審議する場合に、一体この行政協定の内容になるものはどういうものか、大体のことをお聞かせ願いたい。少くともどういう問題が含まれるかということをお伺いしたのです。なぜなら私どもは当時行政協定の内容に盛られるものが單に事務的のものでなくて、日本の国民の権利義務に非常に大きな関係を持つものである。或いは基本的人権を制限するものである、主権に対する制限をするものである、そういうものが含まれると考えましたので、その点についてお伺いしたところが、それについては何にもお触れにならない。そうしておいてできたものは、こういうものだ、若し当時事務的なことであつて、そして批准を要さないものであるということが大体おわかりになつておつたら、当時我々に示すはずであつた。それもしないで、行政協定は事務的取極だ、こう言つておいて、でき上つたものは、国民の権利義務等に非常に大きな関係のあるものである。こういうことになつて来ると、政府のやつたことは非常に手落ちがあつたと、こう私どもは考えざるを得ない。要するに白紙委任状を取つておいて、そうして何でも勝手にきめてしまつたと、こう言われても仕方がないと思うのであります。先ほど吉川委員の答弁に対するあなたのお答えから見ても、政府はあのときに議会が安保條約を承認したのだから、従つてそれに基いてやつたものである、こういうお答えから見ると、白紙委任状をもらつてやつたのだからそれでいいだろう、こういう御答弁と変りないように思うのです。その点についての岡崎国務相の御見解を承わりたい。
#15
○国務大臣(岡崎勝男君) 只今申しましたように、例えば国民の権利義務に関係のあるもの、これは当然立法措置を要するものでありますから、国会の審議にかけるわけであります。そして国会の決定があつて、初めてそれに関係する規定は実施されることになつておるのは、行政協定の二十七條二項に規定してある通りでありまするから、政府は白紙委任状をもらつて、国民の権利義務に関連のあることまで勝手にきめられるというような解釈はとつておりません。
#16
○岡田宗司君 只今の岡崎国務相のお話を聞いておりますと、とんでもない矛盾である。この行政協定から生ずる国民の権利義務に関係のあるものは、これは法律にして国会にかける。その基になつておる行政協定のほうは、国会で審議して承認してもらう必要がない。こんな馬鹿げたことはない。若しこの行政協定に基いて、そういう国民の権利義務を制限し、予算に関係があり、国会の承認を得なければならんような法律や予算が出るとするならば、その基をきめておる行政協定自体を、国会の審議にかけ承認を求めることは当り前じやありませんか。その根本を捨てて、枝葉末節の、これから生ずるところのことだけを国会の承認を必要とする。それでよろしいのだという態度が私は非常な誤りを犯しておる、国会を無視しておる、国民をないがしろにしておると思う。そして政府は、何でも勝手に外交上のことはできるのだ、こういう昔の考え方をそのまま続けておられるように思うのです。甚だ私にとつては、腑に落ちない話でありますが、一体なぜですね、その行政協定に基いた法律なり、予算なりは国会の審議に付するが、その基になつておる行政協定は国会の審議に付さないか、その点をもう一遍明確なる御答弁を願いたい。
#17
○国務大臣(岡崎勝男君) これは先ほど吉川委員にお話した通りでありまして、安全保障條約第三條において、国会で行政協定を両国政府間で決定することについて認められたのでありまするから、それで行政協定を作る。但し国民の権利義務等に関係のあるものは、立法措置をする、こういうことにいたしております。
#18
○岡田宗司君 そういたしますと、元へもう一つ遡つて、この安全保障條約の第三條に行政協定のことをきめるに至りました、その第三條で行政協定のことをきめるに至つたその場合の、その両国間の交渉の経過をお示し願わなければ納得できない、それを一つお願いいたします。
#19
○国務大臣(岡崎勝男君) これも先ほど申した通り、一国の軍隊が他国に駐屯するという例は今回に限つたことでないので、過去においてもしばしばあり、現在においてもあるのであります。従つてその軍隊の配備と申しますか、軍隊が外国に駐屯することから生ずる種々の規定等は、およそ国際法及び国際慣行として認められており実施されておるのであります。ただその慣行が国によつて、原則は違わないにしても、やり方が差異がある場合があるわけでありまして、従つて原則的にはもう国際慣行で認められておる範囲というわけでありまして、ただその或る国ともう一つの国が、その原則の適用について違う場合にどつちをとるかという問題はあると思います。そういう種類のものでありまするから、一国の軍隊を他国に駐屯せしむるということがきまりますれば、それに従つてその軍隊の配備を定める條件というものはおのずから定められるものでありまするから、もうその根本の安全保障條約が承認されれば、それに軍の配備をきめるものは両国政府間できめることにして、若しそれが国会の承認を得れば差支えないではないかということになつたわけであります。そこで我々のほうからは特に予算若しくは立法関係のものは国会の承認を別にとるということの了解の下に行政協定を両国政府間できめるということにして條約案を提出したわけであります。
#20
○岡田宗司君 私がお聞きしていることは全部お答えにならんと同然であります。そこで私はまあその点は他の委員が又お伺いまする、観点を改めてお伺いするだろうと思うからこの程度にしておきまして、アメリカ側で大統領の権限のうちにあるエクゼキユーテイヴ・アグリーメント、このアメリカ側から見たエクゼキユーテイヴ・アグリーメントというもの、これについてお伺いしたい。大統領の権限としてこれは一体どういうものであるか。それからこれとアメリカの国会との関係です。このエクゼキユーテイヴ・アグリーメントは国民の権利義務に対してどういう関係を持つものか、先ずそういうことについて、とにかくアメリカとの間にエクゼキユーテイヴ・アグリーメントをお結びになつたのだから、あなたのほうでもその点は十分研究しておられる、日本で言うエクゼキユーテイヴ・アグリーメントと向うのエクゼキユーテイヴ・アグリーメントとの関係を私は知りたいので、先ずアメリカ側の言うエクゼキユーテイヴ・アグリーメントの意義を明らかにして頂きたい。
#21
○国務大臣(岡崎勝男君) アメリカ側の、今おつしやつたエクゼキユーテイヴ・アグリーメントという種類に入るものにはいろいろのものがあるようであります。我々もアメリカのことを非常に正確にここで述べるだけの知識もありませんが、私の考えでは大体それが七つくらいに分類されるのではないかと思います。一つは、大統領が陸海空軍の統帥権を持つておりますので、その統帥権に基いて軍事上の取極をすることが認められておると思います。これはいわゆる休職協定とか、捕虜交換規約とかこういうものがそれに含まれると思います。第二は、国会で、大統領限りで締結する権限を持つておると認められること、これもできると思います。これは非常に種類が多いのですが、例えば有名な互恵通商協定などというものもそうでありましようし、著作権及び商標保護に関する協定、郵便條約とかいろいろのものがあると思ういます。第三は将来の交渉の基礎となるべき取極、例えばニカラグアの湖を通じて両方大西洋と太平洋の間に運河を建設する交渉をした場合、アメリカとコスタリカ、ニカラグアの間にその議定書を作つております。それから第四番目としては、いわゆる暫定取極といいますか、モーダス・ヴイヴエンダイに関するものであつて永久的な解決ができるまでの間、国際間の紛争を一時的に協定するということで、大統領限りで協定を締結することを認められておると思います。これは例えばアラスカとカナダの間の境界に関する交換公文などがこの例に引かれると思います。それから第五には、米国民の賠償要求に関する協定、これは米国民が外国で受けた損害について、外国政府に対して賠償を要求する場合、その解釈に関する協定は米国に義務を課せるものでないから、大統領限りで締結することができる、こういうふうに言われておるようであります。それから第六は條約の規定に基いて締結する協定、これは上院の同意を得て締結した條約に含まれる規定に基いて條約適用のために締結する協定は、條約のうちに上院の同意を要する旨の規定があるものを除いては、大統領限りで締結し得る。こうされておるようであります。まあこれが今回の行政協定に当るのじやないかと、こう考えております。この六種類が主なるものでありますが、その他にも政治的性質を生ずる協定で、大統領限りで締結されたものもあるのでありまして、これも有名な一九〇一年の北清事変に関する議定書或いは一九一七年の石井・ランシング協定、こういうようなものもあるようであります。以上が大体大統領の権限でできるエクゼキユーテイヴ・アグリーメントの種類であろうと思つております。
#22
○岡田宗司君 只今の岡崎さんのお話で、大統領のエクゼキユーテイヴ・アグリーメントに関する七つの場合を挙げられたが、今岡崎さんのお話ですと、今度の場合は第六に当るものであろうと言われておる。そうして又恐らくそうであろうと思われるのでありますが、この第六に当る場合におきまして、若し本来でありますならば、当然この條約が批准を見て、アメリカにおいても批准を見て、事実上効力が発生してから行わるべきものと私どもは考えております。然るにこの行政協定はアメリカ側においてこの條約の効力を発生をしないうちに、審議の過程においてこれが取極められておるというようなことになつておるのであります。勿論形式的には行政協定が成立しなくても、行政協定の成立如何とアメリカの国会における條約の承認とは関係はないことでありましよう。併し事実上の問題としては、これを明らかにすることをアメリカの国会においては望んでおつてそうしてその條約の承認前にこれが結ばれたと、こういうことになつておると思うのですが、私はこの大統領のエクゼキユーテイ・ヴアグリーメントの場合にこういう問題があるのじやないか、つまりアメリカ側におきましては今度の行政協定において何らアメリカ側の主権の侵害もない。或いはアメリカ人にして外国におります者が、他の一般的な場合以下にその権利義務を制限されるものもない。従つて国会としてはそれが明らかになる点が若しあれば議論をするけれども、それがない以上は大統領の権限に任す、こういうことで行政協定は大統領の権限に任されたのではないか、大統領の権限で行われるのではないかと思うのだが、日本の場合と非常に違う。日本の場合においては国民のほうがどうしても権利義務を制限される、主権にも関係のある問題であります。向うさんの側においてはさつぱり、主権の問題には関係もないし、それから権利義務のほうの関係から言つても、アメリカ人にして他の外国に出ておる者以上にいろいろ制限されたりなんかする問題がない。これなら向うさんで何も国会の承認を要する必要もないのだろうと思うのですが、こちら側ではそういうわけには行かない。一体そういうようなことをお考えになつて第三條に行政取極を入れたのかどうか。どうもアメリカ側でこれは行政取極でやる、だからお前さんのほうも政府限りで行政協定をやれと、こういうことで行政協定になつたのかどうか。そういうところをお伺いしたい。
#23
○国務大臣(岡崎勝男君) 必ずしもそういうことではないのでありますが、根本的にはこれは私ども甚だ残念だと思いますが、普通の両国間のこういう種類の協定か條約であれば、日本が危険な場合にはアメリカが援助する、アメリカが危険の場合には日本が援助する、こういうのが本当の意味の協定、相互援助條約だと思います。そういうふうになりますれば又日本におけると同じような恰好で、万一日本の軍隊がアメリカに行つた場合には、これと同じような協定に基いて日本の軍隊の特権が認められるというふうになつて、全く相互酌になるのだと考えますが、遺憾ながら我々のほうは只今自衛権のみあり、これを有効に行使する手段がないので、特にアメリカの軍隊に日本の安全を保障してもらう。我々のほうからはアメリカの安全を保障する義務もないと同時に、又能力もないわけであります。従つておつしやるように何となく片務的になりますのは、要するにこちらのものが向うに行つて助けるという規定がないからであります。若しそういう規定がありさえすれば、こちらのものが向うに行つたときにはこの協定と同じようなものがアメリカで適用されることになるのでありますが、そういうところに純然たる双務協定にはなり得ない点はありまするけれども、併しながら同時に先ほど申したように、軍隊が他国に駐屯する場合の特権については、又その條件、その他の條件については国際慣行で殆んど自明の理のように行われておるのでありまするから、その範囲のものをきめるのであつて、特殊な新らしい思想に基く新らしいものを作るというのではないのであります。従つて我々は安保條約三條が国会で承認されたときには、これに基いて行政協定を作ることができると、こういうふうに解釈しております。
#24
○岡田宗司君 只今岡崎国務相は、安全保障條約自体が片務的で、そして遺憾ながら不平等のような形になつておるということをお認めになつた。そういたしますとですね、この行政協定もそれに基く結果である。そして一面において、アメリカの国民に対しましては何ら権利義務を大きく制限するようなものはない。日本の国民に対してのみ国家の主権なり或いは国民の権利義務なりというものが制限される。その根本はですね、片務的な條約が結ばれたのだ、こういうことをお認めになつたものと解釈してよろしいですか。
#25
○国務大臣(岡崎勝男君) 私の申すのは、つまり相互援助條約ではないということを申上げておるのであつて、行政協定自身の中にアメリカが権利のみあつて義務は全然ないんだということは決して言つておりません。現に、これは一例でありますが、例えば協定の中の第二十五條を御覧になりますと、「日本国に合衆国軍隊を維持することに伴うすべての経費は、2に規定するところにより日本国が負担すべきものを除く外、この協定の存続期間中、日本国に負担をかけないで合衆国が負担することが合意される」というようなこともありまして、これは一例に過ぎませんが、要するに合衆国側でも義務を負う規定は数項あるのであります。決して権利のみを取つておるんじやないということであります。
#26
○岡田宗司君 成るほど今言われましたようにですね、若干の、若干じやない自国の軍隊を置くのでありますから経費を負担するのは当然のことでありましよう。例えば占領中におきましても、アメリカ軍はですね、全部のアメリカ軍を賄う経費を日本に負担さしておらない。恐らく他の国におきましても今日そうだろうと思う。そういたしますとですね、その点だけを見てアメリカ側も義務を負担したということを言われておるようですけれども、その点だけ見てもですね、私は、アメリカが特に協定によつて義務を課せられたものと、そう解釈することはできない。やはり全協定を眺める感じは片務的なものである。而も内容が片務的なものであるばかりではない、行政協定を取扱う取扱方についても片務的なものである。つまりアメリカ側は普通以上に権利義務を制限されない。そこで、日本側だけはそれを大きくそうされるという点でも勿論片務的であると同時に、向うさんのほうはですね、行政協定できめるんだからおまえのほうも行政協定できめよというようなことで、これが行政協定になつたのだとすれば、このやり方も又片務的である。そしてその基をきめておる安全保障條約自体も片務的である、こういうふうなことでですね、全体として片務的であるということが私どもには認められるわけです。まあ、そういうような見地から、私はこの行政協定は平等の立場に立つものでない。而も片務的に日本側の、日本国民のほうの権利義務が制限されておる、こういうことから考えましてですね、当然政府はその條約並びにそれに基く行政協定の内容の重要性に基いて、やはり国会の審議に付すべきであつたのではないが、こう考えるのですが、まあ見解の相違で飽くまでもそうでないと頑張られるならば、これは他の委員の諸君から又別の角度から論じて頂く以外にないと思いますが、私はそう考えて、このくらいで今私のお伺いすることはここでやめておきます。
#27
○国務大臣(岡崎勝男君) 今岡田委員は頻りに片務酌片務的ということを言われましたが、私の申す意味を少し誤解されておるかも知れませんから、ちよつと簡單に申上げたいと思うのですが、私は日本が危険な場合にアメリカが応援するという規定ではあるが、アメリカが危い時に日本が応援するという規定がないという点だけを指摘したのでありますが、協定の内容について片務的であるということは、これは岡田委員のお言葉とも考えられないのであります。何となれば、先ほども申した通り一国の軍隊が他国に駐屯する例はたくさんある。その場合に若しこの行政協定と著しく違うような協定で、而も駐屯されるほうの国に権利がもつと大きくあるというような事例がありますれば、これは別でありますが、この協定は国際慣行によつたものでありまして、どこの国でもこの程度のものは認めておる、こういう点において私は決して片務的というような言葉を使うべきものでないと思つております。アメリカの軍隊はイギリスにも駐屯しておるのであります。そのイギリスにおけるアメリカの軍隊の配備を規定する條件というものは、原則的に言えばこの協定と何ら違つておらぬと私は信じております。
#28
○吉川末次郎君 先ほど質問しました時に、私失念しましてあとから御質問したいと申上げたのですが、今岡田君が御質問になりましたこととの関連性があるわけなんですが、さつきアメリカにおける行政協定、即ちエクゼキユーテイヴ・アグリーメントということについてのいろいろなお調べになつた点をお聞かせ願つたのですが、我々は非常に疑惑を持ちますことは、アメリカの例であつて、アメリカでは大統領の持つているところの権限に基いてセネートの三分の二の賛成によるラテイフイケーシヨンというものをば、面倒な手続を避けたいという立場から、国際間に米国がその当事国として他国との間にこういう手続によるところの、先ほど私が申上げた意味においての條約をば結ぶ例が非常に多いということがアメリカの本にも随分書かれておるわけでありますが、それで、それはアメリカ人にはさつき申しましたような意味において、トリーテイとエクゼキユーテイヴ・アグリーメントというものは、議会のラテイフイケーシヨンを得るという関係において異るという点から、恐らくダレス氏などがあなたらと交渉せられた時に、そういう手続、形式をとられたのであると思うのですが、併しそのアメリカにおけるところの行政協定と国会との関係というものをそのまま日本へ当てはめて、米国ではこれで行けるんだからお前のほうもこれでやつたらいいじやないかというような、多分そういうような話があつてせられたのじやないかと思われるのでありますが、これは岡田君も多少今この問題に触れて御質問があつたのですが、そういう点につても一つ御答弁願いたいと思うのでありますが、疑惑に思います点は、それはアメリカの一つの政治的慣例、或いは外交條約締結の慣例であるが、日本では然らばそういう慣例は米国と同様に今日までせられたことがあるのかどうかということを、一つまあ我々はあなたがたのようた專門家でありませんから、專門家でない我々にそういう慣例が日本にあるかどうかということを一つこの機会に解う明して頂きたいと思うのです。
#29
○国務大臣(岡崎勝男君) 先ほど、今のお話しの中の、アメリカでできるから日本でもやつたらよかろう、こういう意味の話は全然ありませんでした。要するにアメリカでも條約の批准を上院に求める、その條約の中に第三條で行政協定を作り得るということを書いて上院の批准を求める、日本側も同様にしたわけであります。アメリカはこの條約できめられておりますから、やはり行政協定でできるというわけで、條約の批准を特に避けるためとは考えておらんと思います。それからこういう政府間の協定を結ぶことにつきましては、過去においても二、三の例は日本でもあるのでありまして、性質は違うかも知れませんけれども、例えば郵便に関する條約、或いは捕鯨に関する條約、これらの実施につきましては両国政府間できめた例はしばしばあるのであります。
#30
○吉川末次郎君 それをもう少し詳しくお話を願いたいと思うのですが、殊に前の憲法と今の憲法と違います。新憲法下においてそういう例があるかどうか。又あなたが今お挙げになつたところの郵便に関するところの條約、或いはもう一つ何でありましたか、そういう條約の例をもう少し詳しく今度の行政協定と対比して、どの点にまで国民の権利義務或いは主権を拘束するような條項があつたかというようなことを、少し対照してお話を一つ願いたいと思います。
#31
○国務大臣(岡崎勝男君) これは事柄が違いますからして、例えば万国郵便條約に基いて、この実際の郵便の交換、料金の支拂その他の実施條件を作るのでありますから、先ほど申したように性質は違う。併しながら形式から言えば、やはり條約ができまして、その條約に基いて両国政府間で実施の取極を作るという形においては同様のものと考えております。細かいことは更に資料を一つ整えて御覧に入れてもよろしうございます。
#32
○吉川末次郎君 今郵便條約或いはその外のことについての細目のことを行政協定の形においてきめたという例をお話になりましたが、そういうこの施行規則とも見るべきものですね、それは今度の行政協定の内容をなすものとは、重要性において非常に相違があると思うのです。これは新憲法が制定せられた時の速記録の中にも、施行規則とも言うべきものを除きまして、本当の意思表示の本体を構成いたしまするものは、すべて、これは国際條約であつて、第七十三條、即ちその時の速記録によりますと第六十九條ということになつておりますが、いわゆる憲法上の條約として考えなければならん言葉があるのでありますが、そういうものと対比するということは非常に腑に落ちないことだと思うのであります。これはまあ更に資料等の御提出を願つて、その際に又御質問いたしたいと思います。それから先ほどの御答弁中に、こういうことは国際慣例であるということを非常にお話になつたのでありますが、国際慣行として、勿論一国の兵隊が他国に派兵された場合においての区域であるとか、或いは施設の利用であるとかいうようなことは、今のようなことできめられるかも知れませんが、今例えばイギリスの例をお引きになりましたが、イギリス或いはその他の所でも結構でありますが、従属的な、属国的な実質的関係にある所は除きまして、完全なる主権を保持しているところの、立派な国際間の独立国に他国の兵隊が派兵しました時に、今いう協定を結んでありましようか、軍事に関する……。併しながらその場合において、国会との関係はどうなつたか、どうであつたかというような点を一つお話して頂きたいと思うのであります。
#33
○国務大臣(岡崎勝男君) それは正確に調べてあとでお答えしたいと思いますが、たしかイギリスの場合は、両政府間に交換公文を取り交わしまして、それで裁判管轄権等の問題を定めたと記憶しております。
#34
○吉川末次郎君 今のような簡單な御答弁だけでは我々甚だ腑に落ちないので、勿論詳細な的確な資料を出して頂けると思いますが、その当事者であつた日本の政府の代表として、その衝に当られたあなたが、そうしたこの事例についても今すぐに非常な自信を持つて的確なる材料を我々に供して頂けないようなことでは、非常に我々心もとないような感じがするんです。如何にも先ほど岡田君や私たちが質問いたしましたような、アメリカのほうの代表者から、これは米国ではこういう政治慣例によつているのだから、同じようにやれというようにサジエストされたか、或いは押付けられたかしてですね、そうして日本の政治組織、日本の憲法の條約に関する規定とアメリカとは全然違うのにもかからわず、同様の政治的慣例を日本に襲用することを強いられておしになつたものであるというような感じを、只今の極めておぼつかないところの御答弁からも我々そういう印象を非常に受けるんですが、如何でしようか。
#35
○国務大臣(岡崎勝男君) さようなことは決してありません。
#36
○吉川末次郎君 それだけじやどうもはつきりしないんだ。もう少し会得させるような説得力を以て説いてもらいたいですがね。アメリカではそれはエクゼヰユーテイヴ・アグリーメントというものは非常に広汎なことに関して、そのセネートのラテイフイケーシヨンを避けるためにやることができるということは、それはアメリカにおいては事実でしよう。又アメリカの政治学の書物を見てもそういう例は非常に書いてある、同時にそういうことは国会の権能を損ずるところの、デモクラシーに反した秘密外交であるということも又米国の政界や政治学者の間においても非常に批判がある問題なんです。百五十年来行われておるところのアメリカの慣習であるということも我々知つておりまするが、米国ではそうでしよう。併し日本ではそうあるべきではないんじやないか。又他国においても、例えばイギリスその他の国における事例と、国会との関係においてどうなつたかということの事例を、もう少しあなたが打てば響くように我々に説得力を以て答弁して頂けるような知識と資料を常に準備していないで、そうしてやはりアメリカ側から、アメリカの慣例によつて日本も同様にやれというように押付けられたような印象を、どうもあなたの御答弁から私は拂拭することができない。ただ結論からだけそんなことはありませんと言われたところで、そんなことはありませんということを、我々まだあなたの御答弁だけではどうも非常に不満足であつて、そういうような気持にはなれないのですが、如何でしよう。もう一度御答弁願いたい。
#37
○国務大臣(岡崎勝男君) 私が参議院の外務委員会で申すことを信用されなきやどうもいたし方がないのですが、実際そういうことはないからそういうことはないと申上げたのです。なお一国の軍隊が他国に駐屯するという場合の、駐屯するかしないかというときにおいては、その約定をする場合に国会の承認を求めるのは、これは通例と思いますけれども、その條件をきめることについてはこういう條約の規定があつて、特に行政協定でいいということになつておらない場合でも、国会の承認を得ずにきめた例はあると私は考えております。いわんや、この場合は国会の承認を得た條約の中に書いてあるのでありますから、無論差支えない、こう我々は考えております。
  ―――――――――――――
#38
○委員長(有馬英二君) ちよつと申上げますが、大体十二時半で終りたいと思つております。非常に重要な問題で、もつと時間を要すると思いますから、次回にゆつくりと又御質疑を願いまして、又先ほど来岡崎国務大臣から資料を提出してもいいという御審弁がありましたから、又然るべき資料の御提出を願いまして……。それではこの問題は今日はこれで打切りまして、最後に兼岩委員から発言を求めておりますから、簡單に一つお願いたします。
#39
○兼岩傳一君 私は委員長の言われたことにこの委員会としての全体的には賛成でありますが、なおこのあとで議事進行について発言を求めたいと思いますが、岡崎国務相の時間の都合がございますので、特にお許しを得て旅券について簡單にお尋ねしたいと思います。
 モスクワ経済会議或いは大山先生のスターリン賞の問題についての渡航、それから新聞記者の渡航、これはまあそれほど私がお尋ねしなくても当然簡單な問題と思いますから、これは除外してもよろしいのですが、又大山先生の問題及びこのモスクワ経済会議に対して旅券の申請をいたしておられるのは新聞では非常に少数のように伝えられておりますが、事実はそうではなくて、私がちよつと正確に知つておるだけでも、新聞で問題になつておられます帆足氏、宜越氏のほかに平野氏もあり、又大阪市大の名和教授、平岡助教授、それから農林中金の理事をしておられます前の農林次官の小平氏、それから全購連の専務理事の小川氏或いは全購連の理事の吉田氏、多数のかた、その他に財界のかたのほうの準備も進んでおるようでありますが、一体それらに対して、新聞を見ますと政府が非常に閣議を開いてこれを拒絶すると言つて見たり、又或る新聞によりますると、それは許可するのだというように今日の新聞には出ておるようですが、政府は一体どういう考えなんですか。岡崎国務相にお尋ねします。
#40
○国務大臣(岡崎勝男君) 政府の考えはこの前申した通りでありまして、気持を聞かれれば賛成はできないということでありますが、旅券その他の問題については法律関係もありましようし、実際問題もありましようから、只今種々調査中であります。
#41
○兼岩傳一君 この前と言つても、僕はそういうことを、その気持や何かを聞かしてもらつても、ここは立法の機関であつて、国民の権利義務について明確な立法をし、且つこれの運用を監視する場所で、明らかに憲法二十二條で我々国民には何人も国外旅行の自由を許されておる、原則として。そしてそれの具体化としてはこの法律によつてこれこれこれこれの、これの條件に違反しない限りは自由であるという、もう一段具体化し、これを国会に諮つて法律として出しておる。私はそういう立場において、而ももう出発が非常に、モスクワまで行くのには相当な期間がかかるのです。それでそういう準備の都合もあり、この旅券法から言つて問題がないということは事務当局が明確に言つておる。だから調査するだの、研究をするのだと、あなたは嘘を言いますが、嘘を言うけれども、あなた自身が嘘であるということを、あなた自身が証明しているように、これは法律的の問題でなくて、何か法律を弱めるために政治的と称してあなたがたが閣議で相談するとかいろいろ智恵を絞つておられるようだが、そういうことは非常に憲法二十二條から言つても、旅券法から言つても、これは非常に不当な圧迫で、本当の民主主義的な国政の運用でないと考えるから、私はこの機会に明快にして頂きたい。研究は御自由です、いつまで研究されても。併しこれは出発の日も追つておるし、それから準備もしなければならん等々から、私はやはりこの辺で差支えないのだということを明確に岡崎国務相の口から聞きたいのです。
#42
○国務大臣(岡崎勝男君) 私はこの委員会で嘘を言つているなぞということを言われる御質問に対して、御答弁することはできません。それを取消して頂けば御答弁いたします。
#43
○兼岩傳一君 明らかに嘘ではありませんか。法律の條項については、事務当局でさえもこれについて疑義がないということを認めておるのです。他の同僚諸君もこれはよく御調査になれば、法律論としては明快なんだ。だからあなたは今僕に法律的の問題は調査中だというから、あなたは政治的な意味から、この法律的に明々白々な、法律的な解釈をどうして曲げようかということで、政治的にあなたがたが閣議でやつている。それははつきりしているじやありませんか。それは明らかに嘘じやありませんか。本当ですか。あなたが答弁された法律解釈のために準備が要つて、まだ答弁できないと、これは嘘ではありませんか。法律解釈ではなくて、法律解釈問題であなたは……憲法二十二條とこの旅券法の十九條は一分間かからない、どちらが正しいかという法律解釈については。それを一分間どころか十日延し、二十日延し、非常に閣議その他でやつているのは、法律解釈でなくて、これをどうして妨害しようかという政治的な意図でやつておられるとしか考えられない。だからその点を私は質しておるのは、あなたは法律解釈云々という答弁をするから、それは嘘だ、こう言つているのですよ。だから法律解釈をあなたから聞こう。これはあとで問題にしてもいいんですよ。これは法律解釈でやつているのでない。政治的解釈が法律解釈を邪な解釈に導こうというのなら飽くまで討論しますが、私はそのことでなくて、何故かような明白な、憲法から言つても、旅券法のことから言つても明白なこと、そして日本の実業、日本の産業に対してプラスになればこそマイナスにならない。そして何ら共産主義の宣伝のこと、そういうことに関係してない。全世界が、大部分の国々が、アメリカでも実業家が参加するような性格のものに対して、あなたは法律解釈を理由にするから嘘であると言つたのだ。法律解釈は何が残つておりますか、嘘ではありませんか。答弁を求めます。法律解釈上を理由にして答弁を延期されることは嘘です、明らかに。答弁を求めます、委員長。法律解釈を理由にして延ばすことは明らかに嘘である。これに対して嘘であるというなら答弁しないと言いがかつておりますが、明らかに嘘であります。本当であるということを立証しなさい。法律解釈の上でどういうところが残つておりますか、憲法上、旅券法上。
#44
○委員長(有馬英二君) 兼岩君に申上げますが、国務大臣から御答弁がありませんから……。
#45
○兼岩傳一君 議事の進行においての委員の権威において、どちらが嘘を言つているか明確にして下さい。彼は嘘であると言つて答弁をしないのですよ。私はあなたの言うことこそが嘘であることを証明しました。だから反証を挙げて下さい。
#46
○委員長(有馬英二君) 大体時間も大分過ぎましたから……。
#47
○兼岩傳一君 それは明快にして下さい。
#48
○岡田宗司君 只今兼岩君に対しての御答弁がないようですが、私は改めてお伺いしたいのですが、一体その旅券法の上からの疑義という点をもう一度はつきりどういう点にあるかお伺いしたい。そして又それが一体いつ頃までに明らかにされるのか、その疑義のある点並びにそれについてどういうところでそれが明らかにされ、それからいつまでに明らかにされるか、その点を岡崎国務大臣からお伺いしたい思といます。
#49
○国務大臣(岡崎勝男君) この法律の問題というのは、この前もたしか外務委員会で……衆議院の外務委員会で……ちよつと記憶違いかも知れませんが、佐藤法制意見長官が説明したことがあります。つまり法律の解釈というものは、法律だけではなくして、事実とかみ合せて初めて正確な解釈が出て来るのだ、こういうことを法制意見長官が言われたことを私はそばで聞いておりました。政府の考えとしては、法律の解釈と事実の認定と双方が必要と思つております。従いまして事実の認定をも加えて、法律の解釈が果してどういうふうにされるべきものであるかということを今研究中であります。
#50
○岡田宗司君 その法律の解釈と事実の認定、その事実の認定について政府はどういうふうにお考えになり、それと法律との関係をどういうふうに第二段にお考えになり、更にどういう機関でその法律解釈を確定されるか、その点についてお伺いしたいと思います。
#51
○国務大臣(岡崎勝男君) ちよつと初めのほうがはつきりしませんが、もう一遍……。
#52
○岡田宗司君 今法律の解釈と事実の認定という問題をおつしやられましたが、先ずその事実の認定という点について政府の御見解を伺い、それからその事実の認定と法律の解釈との関係について更にお伺いし、そうしてその法律の解釈が如何なる手続で如何なる方法で決定されるか、それがいつ頃までに決定されるか、それをお伺いしたいと思います。
#53
○国務大臣(岡崎勝男君) 事実の認定は外務省でいたします。外務省で種々の資料を集めまして、それによつて結論を出そうといたしております。これと法律の解釈との関係におきましては、外務省において法務府と協議をいたしまして、法律の條文の解釈及びこれを事実に当てはめた場合の問題と二つになりますが、條文の解釈については、政府としては法務府の意見が最高と考えておりますから、法務府の意見に従いまするが、それに事実の認定を加えて実際の解釈をするのは外務省の責任でいたします。
#54
○岡田宗司君 それはいつ頃までになされるのですか、今どういうふうに進行中なのか、それをお伺いしたいと思います。
#55
○国務大臣(岡崎勝男君) ちよつと速記を……。
#56
○委員長(有馬英二君) 速記をとめて。
   〔速記中止〕
#57
○委員長(有馬英二君) 速記を起して。
#58
○国務大臣(岡崎勝男君) 我々のほうは只今申したようにいろいろの資料を、それから調査の材料等も收集しておる最中でありますが、今のところは先般外務政務次官からも申された考え方に変りはないのでありますが、これは先ほど申したように法律上の問題ではなくて見解であります。
#59
○兼岩傳一君 私は委員長を通して岡崎国務大臣にどういう法律の……政治的な意味で法律的な解釈を停滞させ、歪めておられると言うことに対して非常に不服らしい。不服ならそれでよろしいです。僕が間違つていたら次の委員会にでも取消して結構ですから、一つ次の委員会に何法の第何條によつて、どういう事実を、そうしてそれをいつまでに解決を付けようとしておられるか。明らかに旅行妨害の目的でそういう言辞を弄しているのではないということを証明するために一つ資料を御提出願いたい。どういう法律の第何條の、どういう事実、どういう事実の認定とどういう法律の解釈、それをどういう機関でされるかということを、今の岡田委員からの質問もありましたが、私の嘘であるという発言、私の発言の嘘だということを一つはつきりさせるために、公式の委員会ですから、この際明日でも明後日でも、一両日の委員会でその資料を明確に御提出願いたい。如何でしよう、委員長、お引受け願えますか。
#60
○国務大臣(岡崎勝男君) もう先ほど申しましたが、私はこの委員会で嘘を言つているなどということを言われて取消されないうちに御返事をするわけに参りません。この委員会で嘘を言うなんていうことはとんでもない話であります。併しながら岡田君の御質問もありますから、必要なことは後刻又この次の会に申上げることは、或いは資料を出すとかいうことは別に異議はありません。
#61
○委員長(有馬英二君) ちよつと申上げますが、資料の提出ということになるというと議決を要する……(岡田君「そういうことは聞いたことはない」と述ぶ)参議院規則の第百八十一條、「委員会が審査又は調査のため、内閣、官公署その他に対し報告又は記録の提出を求めようとする場合は、議長を経て、これを求めなければならない。」……。
#62
○岡田宗司君 求めればいいので議決ということはないですよ。だからあなたを通じて求めます。
#63
○委員長(有馬英二君) 委員会が求めるのですから、委員会で一つ承認を経るということにしましよう。それでは只今兼岩委員からの御提言に対しまして御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#64
○委員長(有馬英二君) それではそういうことにして政府に要求することにいたします。
#65
○平林太一君 法律の問題について只今質疑応答がありましたが、この際岡崎君にお尋ねいたしたいと思いますが、今対象になつておりまする相手国、それは現在講和條約を締結いたしていない国である。従つて我がほうといたしましては、この相手国に対しましては、ソ連があるわけですが、何らの権限、権利というものは我がほうに存在していないと、(「インドだつてそうだ」と呼ぶ者あり)それからそういう事態の下に、然らばこちらの法律がやはりその国に適用をされるという関係、これは向う側との間に何らの効力の問題はないのでありますが、その国に対して例えば旅券、只今問題になつておる旅券が法律の適用を云々ということに対しましては、政府はどのようにこれに対する取扱方のお考えをなされるか、つまり法律の、我がほうにその法律があつて、而もそれがいわゆる相互の国際間の交渉その他の問題が平等に行われておるときにおいてのみ行われる主張であると思いますが、どういう御解釈でございますか。
#66
○国務大臣(岡崎勝男君) 今おつしやつたような点もやはり政府の重要なる考慮の一つであります。只今それをも含めて種々研究中でございます。
#67
○平林太一君 私のこの際申述べたいと思いますことは、やはり今御答弁になりました事柄は極めて重大だ一思います。でありますから、この旅券の問題に対しましては十分愼重な態度を以て、要は我が国の将来の方向に誤りのない処置をとられるということを要望して置きます。
#68
○岡田宗司君 ちよつと平林さんの御発言に関連して、只今の平林さんの御発言ですというと、ソ連は講和條約に調印していない国である。それでいろいろ面倒なことがあるというふうにお考えになつて言われておるようであります。法律論にそれが成り立つかどうか私は知りませんが、そういうことも言つておる。ところがインドだつて今度の條約に調印していない。ビルマだつて調印していない。私のほうの党の勝間田清一君はこの間インドにもビルマにも行つて来たが、これは未調印国です。そういたしますと、ソ連に行く場合にそういう点をどういうふうに考えておられるか。問題はそうなるというと未調印国だから法律上行けないという問題ではなくて、結局政治的な取扱の問題になつて行くのです。私はそれだけのことを申上げて置くのです。別に御答弁を要求してはいないのです。
#69
○委員長(有馬英二君) それでは本日はこれを以て散会いたします。
   午後零時五十九分散会
ソース: 国立国会図書館
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