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1951/03/24 第13回国会 参議院 参議院会議録情報 第013回国会 外務委員会 第14号
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1951/03/24 第13回国会 参議院

参議院会議録情報 第013回国会 外務委員会 第14号

#1
第013回国会 外務委員会 第14号
昭和二十七年三月二十四日(月曜日)
   午後一時三十九分開会
  ―――――――――――――
  委員の異動
三月二十日委員金子洋文君辞任につ
き、その補欠として佐多忠隆君を議長
において指名した。
  ―――――――――――――
 出席者は左の通り。
   委員長     有馬 英二君
   理事
           徳川 頼貞君
           吉川末次郎君
   委員
           團  伊能君
           伊達源一郎君
           中山 福藏君
           大隈 信幸君
           兼岩 傳一君
  委員外議員
           金子 洋文君
  政府委員
   外務政務次官  石原幹市郎君
   外務事務官
   (外務大臣官房
   審議室勤務)  三宅喜二郎君
  事務局側
   常任委員会専門
   員       坂西 志保君
   常任委員会専門
   員      久保田貫一郎君
  参考人
   一橋大学教授  田上 穰治君
  ―――――――――――――
  本日の会議に付した事件
○国際情勢等に関する調査の件
 (行政協定に関する件)
  ―――――――――――――
#2
○委員長(有馬英二君) それでは只今から外務委員会を開会いたします。
 本日はかねて申上げました通り、行政協定と日本国憲法第七十三条との関係につきまして、一橋大学教授田上穰治君から参考意見を承わることといたします。田上君を御紹介申上げます。
#3
○吉川末次郎君 議事進行について……田上先生のお話を伺いますに先立ちまして、一言議事進行について希望を申述べて、委員長の御善処方を要求いたしたいと思うのであります。先般来のこの問題に関する参考人の六名のかたの参考意見を承わつたのでありますが、憲法の専攻家はお一人だけでありましたが、参考人の御意見は本日は憲法だけの問題で、あのときは国際法及び外交研究家としての行政協定の内容に関するいろいろな御意見も拝聴いたしたのでありますが、行政協定のことをお話下さいますときに、多くアメリカの行政協定、即ちエグゼクテイヴ・アグリーメント、アドミニストラテイヴ・アグリーメントのいろいろな米国政治上の、或いは外交上の事例をいろいろと述べられまして、そのために三十分の与えられておりましたところの時間の大部分をそうしたことの叙述に終つた参考人のかたもおいでになつたかと思われるのであります。大体今日まで参議院でこの問題を審議して参りました過程におきまして、アメリカの行政協定の事例につきましては、政府からも資料も出しておりまするし、大体において参議院の議員の知識として相当普遍化しておるのではないかと思われるのであります。それでそういうことは関連性のある面において勿論お述べを願わなければなりませんが、我々が今参考人のかたから、特に憲法の專門家である田上さん等から聞きたいと思つておりまする主眼点は、七十三条に規定の条約と、行政協定の政府が国会の承認を要せざるものと考えております見解との相剋につきまして主としてお述べを願いたいと思つておるわけでありますから、その点を参考人のかたがたは十分お含み置きを下さいまして、専ら我々が問題といたしておりまする点についての御意見を十分に拝聴いたせるようにして頂きたいと思います。そのように委員長において議事の進行を御処置下さいますことを希望いたします。
#4
○委員長(有馬英二君) 只今の吉川委員の御意見は御尤もであると存じます。多分田上教授には十分御承知の上で御意見をお述べになることと存じます。さよう御承知置きを願いたいと思います。
 それでは田上教授お願いいたします。
#5
○参考人(田上穰治君) 簡単に與えられました問題につきましてもうすでに御研究済みのことと考えまするが、御命令によりまして私の思つておりまするところを申上げたいと思います。
 第一に、行政協定の内容が、憲法上の条約、或いはそうでなくても国会の承認を受けなければならないものかどうかという点でございます。私も余りよく読んだわけではありませんけれども、通常問題になつておりまする十八条の刑事裁判権の点を考えますると、これは安全保障条約の第三条では、駐留軍の配備の条件について細目的な規定を行政協定において定めるというふうにとれるのであります。ところが広い意味におきましては駐留軍というものがある以上、その軍に属する構成員或いは家族、そういつた人たちの犯罪につきまして、一体日本の裁判所で裁判権があるかどうか、これは当然に考えなければならない問題であります。でありまするから、まあ広く考えると、安全保障条約の第三条、配備の条件という中に含まれるようにも見えるのであります。けれどもこの点裁判権或いは裁判管轄と申しますか、この問題は司法権にとりまして重大なことであつて、本来は、でありまするから法律、少くとも立法的な措置を国内におきましてはとらなければならない。この点におきまして最近の外国の憲法の例を見ましても、必ずしもあらゆる条約について国会の承認を必要としないというふうな規定、憲法におきましても法律上と定めなければいけないような、或いはそういう問題につきましてはやはり国会に出すのが当然ではないかというふうに思うのでありまして、言い換えますると、安全保障条約のほうでもう少し具体的に、いわゆる属人主義のような規定、或いはそうでなくて現在の大西洋憲章の関係諸国について予想されております協定のような、どちらでもよろしいのでありまするが、そういつたことについてもう少し具体的な規定が安全保障条約の中にあればよろしいと思うのでありまするが、そういう点を一括して行政協定の形式で定めておるというところは、普通言われます包括的な委任と申しますか、普通の委任の範囲を越えておるように私も考えるのであります。
 それからもう一つの、これもよく引合いに出されます行政協定の二十四条でありますが、非常事態に当つて日米共同措置のための協議をしなければいけないという規定でありますが、これも考えようによると、安全保障条約の第一条で、駐留軍の出動する場合がすでに規定せられておる、これに関連があるわけでありますが、併し条約のほうではアメリカ軍、駐留軍が出動する場合の規定でありましてこれに対して我が国の側の義務については明確にされていない、勿論どういう形で我が国が駐留軍に協力するかということは、これは国民各個人の権利義務には或いは直接の関係がないとも言えるのであります。併しながら国家の義務、国の義務という形においてはかなり重大なものであつて、私はやはりこの点も本来は条約の形で明確にし、言い換えますると、あらかじめ国会の承認といいますか、そういう形が必要であつたのではないか、こういうふうに思うのであります。
 細かい点は略しまして、これは蛇足を加えますと、一九四六年の、つまり新らしいフランスの憲法、或いは多く十九世紀のヨーロツパの憲法にございますが、これらの国では条約必ずしも国会の同意を必要としない。けれども通商航海条約でありますとか、その他国の財政にまあ負担をかけるような、負担となるようなそういう條約、或いは個人の権利義務に関する、直接影響するようなそういう条約、これらが大体においてフランス或いはドイツの諸国の憲法にございますが、これは国会に諮つて、事前のあらかじめ同意が必要である。で、これらの憲法を見ますというと、そういつたような条約はこれは特に法律或いは予算、そういうものに影響があるのであつて、本来国民に対する関係では、国会が法律を作り、或いは予算に費用を計上する、そういうところに影響があるのだから、従つて国際関係の規定ではあるけれども、条約を締結するに当つては前以て国会の承認が必要であるというふうに考えられるのであります。で、新憲法は条約の中で国会の承認を要する場合と要しない場合という区別はしておりませんけれども、併しおのずからそこに場合が分れて来ると思うのでありまして、殊に行政協定のような表面は細的な規定、執行の細目といいますか、そういう性質を持つ場合には或る範囲においては細かいところまで国会の承認を受ける必要はない、丁度法律に対する政令とか、或いはその他の命令の関係で同じことが言えると思うのであります。併しながら特に国民の権利義務に直接影響のある、或いは国家の義務、そういうふうな部分につきましては、これは重大な内容を持つのであるから、条約の形におきまして国会の承認が必要であるという、まあ議論が立つと思うのであります。私は蛇足でありますが、実際申しまして、今日の行政協定の内容につきましては、或る程度結果は止むを得ない、行政協定が若し、殊に今の十八条でありまするとか、或いは二十四条その他の規定を、それならばどういうふうに変えたらよいかという問題になりますると、格別腹案は何もないのでありまして大体まあ現状においてはどうもあの程度の内容で止むを得ないではないか、これは勿論法律論ではございませんが、そういうふうに思うのであります。併しながら今申上げておりますのは手続の点でありまして、結論が同じようなところに仮に到達するとしても、やはりそういつた本来、司法権にとつてその限界をきめるという重大な問題、或いは国家の義務、大袈裟に申しますると国の運命に関する、そういう重大な国の義務につきましては、やはり国会の承認を受けるということが憲法上は正しいように考えるのであります。で、これが私の申上げたいと思いまする第一点でありますが、もう一つ実は考えておりますることは、当面の問題としてそれならばこの行政協定というものを条約というふうに解釈をする、或いは条約にこれを切替えて、そして国会の承認を受けるということになつたら一体どうなるのか。で、現実にはもうすでにこの条約と区別された行政協定といたしましてこの日米両国間の政府においてそういう解釈で進んで来ておるのでありまして、これを急にその解釈を変更いたしまして、条約の形式、或いは形式は行政協定のままであるといたしましても、とにかく国会の審議に付する、国会の承認を受けるというそういう手続をとる、その場合に結果はどういうことになるか、殊に国会が若しそういう場合に承認を与えなかつたということに将来、これからなつた場合、仮になつたといたしまして、その場合にこの行政協定が効力を失う、少くともその部分的に反対されたところは一応、勿論不承認ということがそういう可分のものであるかどうか、これも議論がございましようが、少くともそういつた不承認の場合には、行政協定の効力が失われるかどうかという点につきまして、ちよつと附加えて申上げたいのでありますが、これは実は旧憲法以来この問題につきましては相当な議論があるのであります。併し旧憲法の話は時間の関係上省略いたしまして、この新憲法七十三条で、事前に、若しくは時宜によつては事後に、国会の承認を受けなければならない。この事前にというのだけがはつきりしているのでありますが、時宜によつては事後に国会の承認を受ける、この点が頗るあいまいなのであります。外国の憲法と比較いたしましても、どうもその適当な参考になるべきものがない。で、これは事後にという言葉、事前でなくても、これを非常に何というか、広く解釈いたしますと、必ずしも事前でなくていいのである、事後に承認を求めても差支えない、こうなるとすでにまあ協定なり条約が、条約といたしましてもそれが効力を生じた後に国会にこの事後の承認を求める、そこで否決されるということも考えられる。若し機械的に事後の場合にはすべて国会は承認しなければいけない、曾つて旧憲法で同様な議論がありましたが、承認する義務があるというふうなことになると、これは全く無意味でありまして、承認を受けなければいけないということは、ときとして国会は否決、不承認の議決もできるわけであります、その場合に、すでに一旦効力を生じた行政協定が、そのときに効力を失うかどうか。これはまあ今日の問題といたしましては少し先走つた、そんなことを考える必要はないかもわかりませんが、法理論といたしましては説が分れておるのでありまして、いわば解除条件である、事後の不承認はこの法定の解除条件で、法律できまつている、憲法の規定できまつている解除条件なんであるから、そのときに一旦発生した効力が消滅すると、こういう見方。これは一つの立場でありますが、反対の見方は事前の承認、これは条約の成立要件である、承認が得られなければ政府は有効な条約を結ぶことができない、けれども一旦効力を生じた後に事後に不承認となつた場合は、これはもはやその効力は影響がないのであつて、結論は政府の政治的な責任の問題が残るだけである。言い換えますると、まあ極端に言えば不信任の議決、不信任の決議、これとまあほぼ同じように考えられるのであつて、併しながら外国との関係、旨い換えますると条約の効力、これは影響されないのである。こういう議論が一方で考えられるのであります。実は私の意見はあとのほうをとつておるのでありますが、併し学説は分れておりまするから、これは必ずしも私の意見がそういう有力であるというのではなくつて、むしろ通説は現在のところでは、或いは反対の見方、事後の不承認が一種の法定解除条件であるという見方のほうが数において多いかとも思うのであります。併し必ずしもこれは私の特別な議論ではなくつて、同じような見解はほかにもあるのであります。これは条約というものが飽くまでも事前の国会の承認を要すると憲法に書いてあれば、それは効力或いは成立要件でありまして、承認、明示の承認、議決があるまでは効力を生じない。けれども新憲法はこの点非常にぼかしてありまして、事後でもよろしい。勿論それは自由に政府が理由なくして事前の国会の承認を略して、そして気儘に事後の承認という手続をとつてもよろしいというのではないと思いまするが、併しとにかくその事前の承認がなくつても、一応条約は有効に締結されるということになつて参りますと、一旦締結されて効力を生じた条約を日本の国会が承知しないから、あれは一つ取りやめに願いたい、或いは当然にあれは条約は流れてしまう、こういう議論になりますと、例えば個人同士の約束で一旦お互いの信用の上に約束をした、それが家に帰ると、どうも家族のものが反対であるから、それであの約束は一つ取りやめに願いたい、こういう話になると少しおかしいのでありまして、殊に新憲法は九十八条のほうでも条約を特に尊重しなくてはいけないという規定がございまするし、勿論これにつきましてはとにかく国会が事後においても承認しなければいけないということは憲法に書いてある、決して日本の国内の申合せというだけでなくて、世界に、公に発表してある、だからアメリカその他の外国においても十分その点は承知の上であつて、だから事前の承認がない、事後の承認を求めたところが、国会ではこれに不幸にして反対があつて否決されたということになりますと、それは相手の国も計算に入れておるはずであるから、当然効力を失うという議論も出て来るわけであります。併しこの点、相手国は日本の憲法を十分に研究をし、そして又その憲法に基く国会の動き、動向を十分に考えた後それを計算に入れた上で条約を締結する。だから若し日本の国会の情勢によつては予想外に否決されるかも知れない、そうすれば又国際関係が変つて来る、そういうところまで考慮した上で締結する義務があるかどうか、日本の政府でありません、相手の国でありますが。そういう意味で私どもは反対の意見を持つのであります。勿論条約を締結するときに、或いは行政協定を締結するときに、これは追つて国会に出し、国会の承認を受ける、それが若し承認が得られなければ効力を失う、そういうことを条約の中で明示した場合は、これはその通り不承認によりまして効力を失うわけでありますが、そうでない限り憲法の解釈といたしまして、事後の承認が効力を存続せしめる要件であると見る解釈には、私はむしろ反対の考えなのであります。さればと言つて、併し効力に関係がないといたしましても、だから行政協定は国会の承認を必要としない、或いは現在においてはもはや国会に提出することは無駄である、こういう議論にはならないのでありまして、私どもはやはりこういう重大な問題は国会に正式に提出すべきものというふうに考えるのであります。
 なお、時間をとりましたが、或いは横道になるかもわかりませんが、憲法違反であるかどうか、条約の取扱をしないことが憲法違反かどうかという問題のほかに、行政協定の内容が、例えば戦力に関係する、そういうふうな点で内容的に見て条約であるとしても憲法違反かどうか。この問題はどうも私に課せられました問題から少し外れると思いまするから省略いたしますが、まあこういう問題につきまして、最後に誰が最高の解釈権を持つか。つまり政府が行政協定につきまして、これは条約にあらず、従つて国会の承認を受ける必要はない、こういう解釈。或いは国会のほうで若し反対の解釈をとる、そういうふうなときに、いずれの解釈が権威を持つか。これは一つの見方は、これにつきまして裁判所で或る争いが起きた場合、見解の相違に対しては、食い違いに対しましては、最高裁判所が終審として決定する権能を持つている、こういう議論もあるようであります。私は併し、これも少し本論から外れるかと思いますが、憲法八十一条の違憲立法についての審査権、勿論この中には私は条約を入れて差支えない、法律、命令、処分、規則とかいうふうなものが合憲であるか違憲であるか、これを最高裁判所が決定するとありますが、条約はその中にはつきりとは書いてないけれども、条約がこの中に含まれるという意見に従うのであります。けれどもこの点反対の学説は、憲法よりもむしろ条約のほうが優先する、憲法以上の力を持つのであつて、だから条約が違憲として効力を失うようなことはない、むしろ条約によつて憲法が変更されることを認める。そういう学説も相当に有力なのでありまして、これはもうやはりいろいろな機会にお聞きになつていると思いますが、学界のほうではすでにこの問題を取上げたことがあるのでありますが、まあ数から申しまして、出席者の数から申しましてやや我々のような、憲法が条約以上のものであるという見方のほうが多かつたようでありますが、併しかなり有力な学者が反対に条約優位説をとつているのでありまして、そうなれば実は今の問題は全然変つて来るのであります。私どもは理論上は若し条約が憲法違反ならば、その条約は本来効力を失うはずであるという見方をとるのであります。併しながらこの点も少し紛らわしいのでありますが、裁判所が必ずしも徹底的に条約の内容を審査して、そうして例えば行政協定の十八条が憲法違反であるかどうかというふうなことを審査し決定するのではない。これは御承知のように具体的な事件に関連して初めて審理することができるのでありまして、司法権はこれは抽象的な一般的な問題、憲法違反であるかどうかという問題を取上げることはできないという解釈なのであります。そういう点につきましては、或いは反対の御意見もあるかと思いまするが、若し御質問がありましたならばお答え申上げます。簡単に、まとまりませんけれども、二、三の点を申上げまして一応私のお話を打切りたいと思います。
#6
○吉川末次郎君 田上先生のお話を拝聴いたしまして、実は今参議院において問題になつておりまする本当の中核的の問題からは多少遊離したような感を、お話し下さつたように私はそういう感じがいたすのであります。非常に失礼でありますが……それで第一に田上先生のお話を承わつて、これは私見であります。ほかに御意見はいろいろ違うと思いますが、フランクに申しますというと、基本的な問題で実は田上先生は間違つていらつしやるのではないか。その間違つた基礎からいろいろな間違つた、我々が大して今中核的な問題としていないことをお話になつたのではないかと思われるのであります。即ちそれは我々が今問題にいたしておりますことは、行政協定が日本憲法第七十三条規定の条約であるかどうかということも一つの問題でありますが、これは今日では私だけでなしにもうすでに殆んど全部のものが、国会及び政府を通じましてこれは憲法第七十三条の条約であるというところの結論に到達いたしておるのでありますが、それに、我々が到達いたしておりまする憲法第七十三条のこれは条約であるということに対するまだ明確なる認識を、まあ失礼でありますが、お持ちになつておらん。で、そこから、実は参議院ではそういう結論がすでに大体明確化しておるのでありますが、そのほかの社会、例えば一般国民、或いは一部のジヤーナリズムというようなもののこれに対する見解は法理的に明確化しておらんのであると実は考えておるのであります。ちよつと申上げますというと、これは私がこの委員会でも申したことでありますが、これは横田喜三郎氏や大沢章氏のテキスト・ブツクにも書いてあるのでありますが、普通日本語で言うところの条約というものは、これは大変講釈みたいなことになつて恐縮でお許し願いたいと思いますが、広義の意味の条約と狭義の意味においての条約とがある。狭義の意味の条約は即ち英語でトリーテイと言われるところのものであるけれども、憲法上の条約と言つておるものは単に狭義の意味においての条約、即ちトリーテイだけを意味しておるのではないので、行政協定のようなアグリーメントも、或いは国際連合憲章、チヤーターと言われるようなものも、或いは議定書、プロトコールと言われるようなものも、或いは宣言、デクラレーシヨンと言われるようなものも、或いは取極、アレンジメントと言われるものも、協約、即ちコンベンシヨンと言われるようなものもすべて国家間の文書によるところの法的拘束力のある合意というものはすべて条約である、広議におけるところの条約であつて、そうして日本憲法七十三条規定の国会の承認を事前及び事後において要すると規定しておるところのこの条約なるものは狭義の条約、即ちトリーテイではなくて、広義の、すべての、今申しましたような一切のものを包括したものであるということなんであります。これは今申しましたように横田さんや大沢さん等のテキスト・ブツクにも書いてあるということを我々の法制局のほうでも資料を提供しておりますし、又これは事実においても明確化されておるのでありまして、政府は初めこれが条約なりや否やということについては積極的な明確な態度をそれに示さなかつたのでありますが、だんだんと国会におけるところの審議の進捗に伴つて岡崎国務大臣及びその他の政府委員もその点は、これは条約であります、憲法七十三条規定の条約でありますということをこの委員会でも、或いはその他の委員会においても申しておるのであります。これは憲法的な理論といたしましては実はサンフランシスコで議定されましたところの講和条約及び安保条約に国会が承認を与えましたときに、あれと同時にやはり別個にこの広義におけるところの条約といたしましてあの議定書及び宣言というものはやはり国会の承認を積極的に政府は求めるの措置をとつたのであります。又最近の本参議院におきまして、衆議院もそうだと思いまするが、麻薬に関するところの条約及び協定、議定書というものをそれぞれ単一の、独立の、内容ではありません、形式上における独立の憲法第七十三条の条約であるという見解に基きまして承認を先ずこの委員会に求めまして、我々承認を与えて、数日前の参議院の本会議において承認されたのでありますから、このことは実は非常に先行要件として明確な御認識を持つて頂く必要があり、又これはこのことを論ずるところの一般の人が第一に何よりもかによりも明確にして頂かなければならないことなんであります。これを一つ……。私たちはこのように考え、又現実にこれがそう処置されておるのでありますが、その点について私は非常に失礼でありまするけれども、田上教授の御見解は間違つておるということをまあ露骨に申上げますが、お答え願えれば結構であると思います。なお条約であるということになるのでありまするから、従つてこれが憲法第七十三条によりまして国会の承認を当然得なければならないものであるということになつて来るのでありますが、政府がその措置をとつておらんということを我々は違憲であると言つておるのはその立場から言つておるのであります。ただ政府は安保条約第三条によつて、「アメリカ合衆国の軍隊の日本国内及びその附近における配備を規律する条件は、両政府間の行政協定で決定する。」とあるので、すでにこの安保条約第三条によつて包括的に委任を受けたものであるという見解をとつておるのでありますが、これはアメリカのエグゼクテイヴ・アグリーメントはアメリカの憲法によつてそういう見解がとられてもいいのでありますが、先に先行要件として申上げましたごとく行政協定が憲法上の条約である、即ち広義における国際法上の条約であるということが動かすべからざる事実でありますならば、そういう包括的な委任を与えたかどうかということは、これは私たちは実は委任していないという見解をとつておるのでありまして、その論拠は今引用いたしましたところの安保条約第三条には単に行政協定で決定するということが規定されておるだけでありまして、この規律する条件を包括的に委任するということは何も規定されておらん。だからして先生の御見解は間違つておる。まあそれについてはいろいろ申上げたいことがありますが、お手許に差上げました書類にもありますから御覧を願いたいと思うのでありますが、大体において一切のこれに関する議論の先行要件として最も重要な基本的な観念であるところの憲法第七十三条の、行政協定は日本国憲法上の条約であるということであります。この点が明白にいたしておりませんことから、失礼でありますが、例えば今私の隣りに坐つていらつしやる伊達さんの御所属になつておるところの緑風会が、これに対して国会の承認を要しないということを多数で決議せられたということが会報になつて載つておりまするけれども、読んで見ますると、やはりその点が非常に明確になつていない、一〇〇%明確になつていないために、これは安保条約の一部の条約であるというような解釈をしていらつしやる間違いも、や
 はりその点が一〇〇%明確になつていないというためでありまして、これは非常に重要なことだと思いますので、私は明らかに田上さんの御見解が間違つておる。これはひとり憲法学者として田上さんばかりではないのでありまして、先般参考人としておいでになつたところの、法政大学の中村さんにしても、只今申上げました、麻薬に関する協定を、憲法七十三条の条約として、政府が積極的に国会の承認を求める挙に出ておるという事例を御承知なかつたので、非常に結論は、大体我我と同じだつたのでありますけれども、非常に廻りくどいところの論理の展開において最後にそこにお着きになつた。それから、もう一つ、我々がこの前の会合において、関西の憲法学界の古老といたしまして、前の京都大学の佐々木惣一さんを呼びましたけれども、おいでにならなかつたのでありますが、ところが佐々木さんと仕事を一緒にいたしておりますところの人が参りまして、その者が個人的に話しておつたことでございますが、実は来られるところの前の晩に、関西の公法学会の学者が集まつたときに、参議院からこういう招請が来たということが問題になつたところが、佐々木さんもやはり旧憲法の学者でいらつしやるからかと思うのでありますが、どうも行政協定が条約ということについては、僕は論証する自信がないから、身体が悪い点を相待つて、明日は参議院に行くことはやめだということを言つておられたということでありますか、これはこういう憲法の專門家でも、田上さん、或いは中村教授、佐々木博士のような人も、こうした極めてヴアーグな、はつきりしない観念で臨まれては、これは我々が問題にしておる点から非常にそれた、時代遅れというと非常に失礼でありますが、旧憲法的なアナクロニズムと言いますか、とにかくぴつたり来ない御意見なんでありまして、非常にその点は失礼ながら不安に感ずるのでありますが、その点について、一つ田上さんの御見解を承わりいと思います。
#7
○團伊能君 只今参考人の御説明を承わる前に吉川さんの御発言がございましたので私も少し、吉川さんのお話につきまして伺つておりまして、大体において非常に参考になる点がございますが、ちよつと私が聞きそこなつたのかと思いますので、なお吉川さんからちよつと御説明も承わりたいと思いますが、只今参議院の意見は大体条約であるということに決定していると伺いましたが、それは政府も説明しておりますところで、これがその内容といたしまして、当然条約として扱わるべきものであるけれども、安全保障条約第三条において、すでに包括的な承認を得ているものであるから、ここに改めて再び国会の承認を得る必要はないという政府の説明でございます。私は吉川さんのお話が、今全部、七十三条の条約、即ち承認を得べきものであるということに、全部が若しも決定しているというような工合のお話でありましたら、必ずしもそうではなく、只今緑風会のお話もございましたが、その点がつまり問題でございますが、それが若しも安保条約第三条がなければ当然これは国会の承認を受くべき条約であると我々も考えますが、その点をちよつと御注意申上げておきます。
#8
○吉川末次郎君 じや、ちよつと私も申上げておきたいと思いますが、憲法第七十三条の条約、即ち広義におけるところの条約の一つであるということにつきましては、只今の御発言でも御肯定になつているのだろうと思います。それともう一つのことは、安保条約三条によつて、包括的委任を受けたものであるから、政府は国会の承認をすでに得ておるのであるから、改めて得る必要はないという見解をとつておりますることは御承知の通りでありますが、それにつきましては、我々は包括的な委任を与えておらんということを考えておるのでありまして、安保条約第三条には、先ほど申しました通り、行政協定で決定するということを単に規定しているのでありまして、政府が強弁いたしまするように、これを規律する条件を包括的に委任するということはどこにもないのであります。又、第二の我々の理由といたしましては、安保条約に承認を与えた当時におきましては、まだ行政協定の具体的な内容というものは、その当時において決して明示されてはおらなかつたのでありますから、国会は行政協定を承認しようといたしましても、相手方がわからないのでありまするから、することができないのであるという、我々は見解をとつております。そういう意味におきまして、政府の言つておりまするところの、安保条約によつて委任されたものであるということは短かい法文の文理解釈の上から言いましても、又全体を通じましての論理解釈の上から言いましても誤つているところの見解であつて、我々は委任したものではないという見解をとつております。
#9
○参考人(田上穰治君) 只今御質問なり、御教示にあずかつたのでありますが、私の言葉が或いは不十分であつたかと思うのでありますが、憲法のほうでは、すでに私の意見というより、むしろ学界において公に取上げられたこともございまするし、一通り憲法の書物、他の学者の書物につきましても勉強しておるのでありまして、併し只今の御質問というか、吉川さんの御意見に対しまして、私必ずしも反対という意味ではないのであります。ただ行政協定が条約であるかどうかという問題でございますが、憲法七十三条で条約という場合は、これは言葉の上で条約とあるか、或いは協定とあるか、その他或いはそれに類似する憲章とかいつたような言葉だけで私ども勿論きめておるわけではないのでありまして、行政協定の協定という字が使つてあるから条約でない、従いまして、若しこれを条約だとするならば、名前を変えなければいけない、そうでなければ七十三条の条約にならないという意味に申上げたのではないのであります。これは、反対に、先ほどもちよつと不十分な申上げ方をしたのでありますが、行政協定の私どもは内容によつて条約という結論も出るし、或いはその内容の取上げ方によりましては、単なる協定というとおかしうございますが、要するに国会の承認を要しないものという議論も出て来るのではないか、言い換えますると、今御指摘がありましたように、まさに安全保障条約との関係なのでありまして、これが曾つての国家総動員法とこれに基く勅令の関係のような、いわゆる包括的委任というか、授権と申しますか、白紙委任と申しますか、そういうふうな形であれば、これは独立な、まさに行政協定も条約であつて、安全保障条約の承認の議決の中には包含されないという結論が出ることは明確なのであります。今の御意見は、私ども何つておりますると、立法に当りまして、法律できまつておるとか、政令できまつておるから法律であるとかないとかいうような、そういう名義ではなくて、政令とかその他のものを、これも実質においては若しそれが人民の権利義務に関する新らしい規定、或いは法規である、法規というのは学問上は実質的意義における法律なのでありまして、名義は、つまり形式の意味においては法律でなくても、実質においては法律の場合がある、それは理論上は特に他の法律から委任せられない限りは独立な法律として国会の議決を要する。同じことが安全保障条約と行政協定の関係でも言えると思うのでありまして、名前は協定でありましても、併しその実質が独立な法規に当るものであればそれは形式はまさに条約でない。これまでの政府の取扱方においてはこの形式的な意味においては条約でないけれども、併し実質的な意味において内容の点で条約に当るものであれば、それは憲法七十三条に条約としましてこの国会の承認を要すると、こういう点、これは私の意見というよりむしろ今日学界、憲法学者の間では非常に常識的な議論なのであります。政令とあるから、だからこれは国会にかける必要がないというのではなくて、政令でもそれが今日のポツダム政令のように多く基本的人権を取締るようなものは、これは指令のない場合には当然これは法律として国会の議決を要するのでありまして、憲法でこの条約とあるのは、これは外務当局或いは政府が条約という名前を使うかどうか、それとは一応別個に私は切離して考えておるのであります。その点は、でありまするから只今の御質問に対する反対の意見というのではなくて、私の恐らく申上げ方が不徹底というか、不明瞭であつた、言葉の足りなかつた罪であると思いまするが、その点はお詫びいたしましてそういうふうにおとり願いたいのであります。そしてその場合にこれも時間をとつて恐縮でありますが、今の御質問にもありましたように、法律と政令の関係で申しますると、執行命令か、或いは委任命令か、或いは単純な権利義務に関係のない行政命令と学者が三つに分けて、そういう行政命令ならば初めからこれは法律でない、だから国会に出す必要はない、執行命令ならば果して執行せらるべき法律、法律の規定する権利義務、それについてその範囲内で細目の規定をしておるかどうか、その範囲を越えておるならば形は、取扱は執行命令と申しまするか、執行の規定であつても、それは独立な法律として国会の議決が必要である、委任命令ならばその委任の範囲があらかじめ明確になつておるかどうか、そうでなければ先ほど申上げました国家総動員法と勅令の関係のように、これは単純な委任ではなくて、むしろ立法権を国家から政府に委譲したものである、だからそれは憲法違反だ、こういう議論、これが憲法学者の普通の見方なのであります。従いまして問題は初めに帰りますと安全保障条約第三条、先ほど申上げました配備の条件、そういう形、それについての細目の規定、学者の申しまする執行命令と申しまするか、そういう形、その程度であればこれは国家間の協定でありましても憲法七十三条の条約として特にこの承認を受ける必要はない、それは憲法で言う条約ではない、憲法で条約と申しまするのは、国家間における独立な新らしい権利義務の規定、国の、国家としての権利なり義務、併せてこれに関連のある国民、人民の権利義務にも及ぶと思うのでありますが、そういうものを新たにきめるべきであつて、すでに他の条約できまつておるその内容をただ具体的に詳細に規定するというだけであつて、新らしいものが附加えられなければ、それは単純な執行命令でありまして、条約ではない、こういう解釈なのであります。それも以上のことはよく御存じのわけでありまするから、私の本日申上げる実は必要がないと思うのでありますが、結局具体的な問題といたしましてこの問題の行政協定が特に、例えば先ほど申上げました十八条とか二十四条、その他の規定が安全保障条約の執行或いは細目的な規定にとどまるのか、内容的に申上げましてそれには含まれない、それとは独立の新らしい日本の国家の非常事態における協力の義務でありまするとか、或いは我が裁判所の裁判権の限界をきめる、そういう条約であればそれは内容的に独立な条約、これは名称は行政協定でありましても、この実質において条約であり、そういう場合には憲法七十三条でいう条約の取扱をすべきである。これが先ほどからお話を申上げました意見なのであります。そうしてこれに対するもつとはつきりと私の具体的な意見を言えというお話でございますると、これも繰返しになりますけれども、十八条の規定、この刑事裁判権などにつきましては、或る意味においてはこの前の安全保障条約の第三条にある配備の条件という中に含まれる、こういう見方もとれるのであつて、駐留軍というものが現実にあるとすれば、それに関連する事件の裁判をどこでやるかという問題は当然に起つて来ることであつて、だから配備の条件というのをできるだけ広く考えますると入る、その中に含まれるという議論も立つようであるけれども、併し私どもの普通の解釈ではそこまでは明示されないのであつて、安全保障条約の中には明示されていないのであつて、だから関連はありますけれども、その点で行政協定は新らしい日本の国家、これの裁判権についての規定を設けている。そうだとすればこれは内容的に見まして、名称はとにかくとして一種の条約であり、国会の承認が必要である。又二十四条、それだけではないと思いますが二十四条などはこれは、アメリカ駐留軍の出動するというその限度は安全保障条約第一条にも示されておることであります。何も新らしい規定ではないのでありますが、併しこれに対しまして協力する、協議に応ずべき日本の側の、日本の国家の態度と申しまするか、或いは義務、そういう点は安全保障条約に明示されていない。勿論行政協定でもそれが明確には示されていないのでありますが、併し結果としては当然に含まれるので、そういう点はだから法律論といたしましては、これも少し逃げ口上でありまするが、行政協定の二十四条あたりは含みのある規定でありますから、直接それが日本の政府のどういう義務を規定したか、その点で或いはこれは将来の更に協定なり或いはその他の特別な措置を要する、そういう議論もできるかと思うのであります。併しながら政治的に考えると、これはやはり国民全体にとつて重大な問題であるから、従つて国会に諮るということが適当である。これはだからそうなりますると、憲法違反という議論には少し外れて来るのでありますが、私はやはり政治的に国会の意向を徴するという必要があるのではないか、少くとも一例でありますが前のほうの十八条の規定のごときは、これはやはり内容的に見まして一種の条約に当るものとして国会の承認が必要ではないか、こう思うのであります。それから先は少し不必要なことを申上げたかもわかりませんが、併し説が分れておりまするので、そういつた場合に国会に提出して、事後の承認を受けるということが憲法上どういう意味を持つか、甚だこれは不徹底な結論のようにおとりになるかもわかりませんが、私どもはそういうふうに考えるのであります。つまり政治的な責任の問題である、万一不承認となつてもそれは政治的な政府の問題であつて、すでに効力を生じておる条約なり、協定……、その効力には直接影響がない、こういう解釈なのであります。同じことを繰返しましたが、言葉の不徹底な点をお詫び申上げまして、もう一度御考慮を煩わしたいと思います。
#10
○委員長(有馬英二君) ほかに御質問ございませんか。
#11
○團伊能君 只今参考人の御意見で一点だけちよつと伺いたいのでありますが、国会の承認を得るという問題についてお話がありましたが、この行政協定自身を国会の承認を或る意味の考え方におきましては得るほうがいいというお考えに承わりますが、それではその行政協定が更に執行に移りましたる場合、各項の実施に当りましては、国内法を一々作つて行かなければなりませんで、現に国民の負担に関する予算は今の予算委員会で別個に国会の審議にかかつております。そういう個々の国内法を制定いたしますのとは別にこの協定自身を国会の承認を得なければならんという御意見でございましようか、ちよつとそこのところはつきりいたしませんですが……。
#12
○参考人(田上穰治君) これも少し私が事実についての甚だ認識が足りないので、或いは誤つておるかもわかりませんが、協定の性質が若し今もお話の予算でありまするとか、或いは細目について特別な法律を作らんければいけない、そういう立法なり、予算の措置、これを協定が条件としておる、いわば申上げますと停止條件にしておるということであれば、それは新らしい、直接この協定が国家或いは政府を拘束するものではなくつて、国会の承認がそういつた法律の制定なり、予算において反対されますると、当然に協定はその限度において効力を失うというか、或いは麻痺してしまう、そういうことが合法的に言えるものであれば、これは又議論が変つて来ると思うのであります。予算の問題は暫らくおきまして、先ほど申上げました十八条の裁判権につきましては、私は勿論裁判所法、或いは訴訟法、そういつた立法的な措置がとられると思いますけれども、併し行政協定、そうして根本の安全保障条約、そういつたものからこれは国家が義務付けられておるこの行政協定の規定の効力によりましてあの十八条の規定に反するような、そういう立法、或いは少くとも十八条の規定を実行するための法律、これはその趣旨に反するような修正はできない。むしろそういつた法律が制定されなくても、直接行政協定によつて裁判権というものがすでに現実的に制限を受ける、こういう解釈なのであります。勿論細目の点で或いは特別な法律を要する部分があるかと思うのでありますが、一般的に申上げまして、条約なり、協定はそれが有効に成立した以上は、単に外国との関係だけではなくて、同時に国内の法律関係についても直接効力を生ずるのであつて、これも一部に反対の学説がございますが、私どもは条約とか、協定は、国際法上の法規というだけではなくて、同時にそれが国内法として効力を持つ、でありますから、裁判権などにつきましては、私は行政協定がすでに現実の法規として日本の司法権を拘束する、特別な法律を制定しなくてもすでに拘束するものである、そういう意味におきましてその部分はやはり条約と見るのがよいのではないか、こういう考えなのであります。
#13
○團伊能君 只今の御説明でよくわかりました。勿論国内法規を作るものもあり、作らないものもありますが、それではその行政協定それ自身もやはり全体として国会の承認を得べきであるという御議論もよくわかりました。
 その次に伺いたいのは、安全保障条約の第三条におきまして、軍の配備を規律するということを両国間の政府の行政協定できめることは、すでに本文のみならず九月七日アチソン・吉田書簡におきましても内容といたしましてはその軍の配備を規律するということを両国政府がきめるということは、すでに両書簡に声明をいたされてあります。然るにこの安全保障条約をすでに一度、それは行政協定がその範囲外に出るかどうかは別といたしまして、安全保障条約は国会の承認を経て批准いたしております。更にここに行政協定を、若しもその一部というのを、それを再び承認するということになりますと、一つの条約を二回承認いたすようなことにもなりますので、このこと自身がどういう関係になつて参りますか、その点の御意見を伺います。
#14
○参考人(田上穰治君) 行政協定の今の御意見、私大体それと同じ考えでございますが、ただ行政協定が安全保障条約の執行的な細目の規定と見られる部分はこれは今の御意見の通りであると思うのであります。協定につきまして、それを内容的に分割するということは、本来むずかしいと思いますけれども、併し特に疑義のあるというか、安全保障条約の内容的に包含されないような部分については理論上は、やはり同じ条約を二度議決するのではなくて、その部分についてはやはり特別な議決が必要ではないか。けれども現実の問題といたしまして、行政協定そのものではなくて、そのうちの第何条の第何条についてこれを条約として承認を受けるということは手続、形式の上においては甚だ恰好がつかないと思いますけれども、理論上は私はそういうふうに執行規定として本来の条約に包含される部分は憲法で言う独立な条約ではない。けれども、包含されない部分は条約として承認を要するのではないか。併し現実の問題といたしましては、すでに効力を生じた後は、その承認を受けるということによつて効力を左右するものではない。併し最後の点はまだ国会に反対の見方もかなりあるのでありますから、その点も併せてお考え願いたいと思います。
#15
○委員長(有馬英二君) ほかに御質疑はございませんか。別に御発言もないようでありますから参考人から御意見を承わることはこれを以て終ります。
 委員長から参考人に申上げます。田上教授には非常にお忙しいところわざわざ国会のために時間をお割き下さいまして、本問題行政協定と日本国憲法との関係につきまして広汎なる御意見を承わりましたことを有難く御礼申上げます。
 それでは外務委員会は、本日はこれを以て散会いたします。
   午後二時五十一分散会
ソース: 国立国会図書館
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