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1951/06/10 第13回国会 参議院 参議院会議録情報 第013回国会 外務委員会 第39号
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1951/06/10 第13回国会 参議院

参議院会議録情報 第013回国会 外務委員会 第39号

#1
第013回国会 外務委員会 第39号
昭和二十七年六月十日(火曜日)
   午後一時四十九分開会
  ―――――――――――――
 出席者は左の通り。
   委員長     有馬 英二君
   理事
           徳川 頼貞君
           曾祢  益君
   委員
           杉原 荒太君
           團  伊能君
           平林 太一君
           伊達源一郎君
           金子 洋文君
           大隈 信幸君
           兼岩 傳一君
  国務大臣
   外 務 大 臣 岡崎 勝男君
  政府委員
   外務政務次官  石原幹市郎君
   外務参事官
   (外務大臣官房
   審議室勤務)  三宅喜二郎君
   外務省アジア局
   長       倭島 英二君
   統計委員会常任
   委員      美濃部亮吉君
   海上保安庁海事
   検査部長    松平 直一君
  事務局側
   常任委員会専門
   員       坂西 志保君
   常任委員会専門
   員      久保田貫一郎君
  ―――――――――――――
  本日の会議に付した事件
○国際連合の特権及び免除に関する国
 際連合と日本国との間の協定の締結
 について承認を求めるの件(内閣提
 出、衆議院送付)
○千九百二十八年十二月十四日にジユ
 ネーヴで署名された経済統計に関す
 る国際条約、議定書及び附属書並び
 に千九百二十八年十二月十四日ジユ
 ネーヴで署名された経済統計に関す
 る国際条約を改正する議定書及び附
 属書の締結について承認を求めるの
 件(内閣提出、衆議院送付)
○国際情勢等に関する調査の件
 (海外抑留者に関する件)
○中華民国との平和条約の締結につい
 て承認を求めるの件(内閣提出、衆
 議院送付)
  ―――――――――――――
#2
○委員長(有馬英二君) それではこれから外務委員会を開会いたします。先ず、国際連合の特権及び免除に関する国際連合と日本国との間の協定の締結について承認を求めるの件を議題といたします。
 質疑に入ります。順次御質問を願います。なければ討論に入りたいと思うのでありますが余り……。
#3
○團伊能君 一つだけ。この前いろいろこれは御質問になりましたので重ねてお尋ねいたす必要もないかと思いますが、国際連合加盟国の代表者というのは、この特権を受けることになつておりますが、ここに併せて伺つておきたいのは、加盟国の代表者と国際連合軍の代表者との関係はどういうことになりますでしようか。
#4
○政府委員(石原幹市郎君) これは国連のいわゆる機関の代表者といいまするか、関係者の特権及び免除に関することを取りきめるものでありまして、軍の関係者のものはこれとは全然別なものであります。
#5
○團伊能君 国連軍の関係は、サンフランシスコで調印されましたアチソン吉田交換公文の中に国連軍に関する文字がございますのは御承知の通りでございますが、只今におきましては国連軍は一般の国連憲章にある場合以外に、日本国としては特別な取りきめというものはまだ行われていないのでありますか。
#6
○政府委員(石原幹市郎君) 正確に国連軍ということはどうかと思いまするが、国連関係のあの朝鮮でいろいろやつておりまする国連軍に対していろいろの便宜或いはその他日本が協力をするという建前の根拠は、御案内のごとく吉田・アチソン交換公文によつて出ておるわけであります。それに基きまして只今国連代表者と国連軍の代表者と日本との間においていろいろの取りきめが行われつつあるのでありまするが、未だ御案内のごとく最終的の決定を見ておりません。
 そこで現在の段階におきましては一般国際法によりましてこれを処理して行く。それからその他国際法等でも取りきめられないような問題に当りました場合には、その問題によつて具体的に処理をして行こうとこういう形になつておるのでありまして、やがて両者の間に協定が取結ばれまして詳細なることがきめられて参ると考えます。
#7
○團伊能君 そういたしますと、ここにあります国際連合の特権及び免除に関する国際連合と日本国との間の協定案の、この只今上程いたされておりまする案には、国連軍関係は除いて国連事務所関係と了解してよろしうございますか。
#8
○政府委員(石原幹市郎君) さようでございます。
#9
○團伊能君 有難うございました。
#10
○委員長(有馬英二君) ほかに御発言はございませんか。御発言がなければ質疑は尽きたものと認めて御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#11
○委員長(有馬英二君) 御異議ないものと認めます。
 それではこれより討論に入ります。御意見のおありのかたはそれぞれ賛否を明らかにしてお述べを願います。御発言はございませんか。……御発言がなければ討論は終局したものと認めて御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#12
○委員長(有馬英二君) 御異議ないものと認めます。
 それではこれより採決に入ります。国際連合の特権及び免除に関する国際連合と日本国との間の協定の締結について承認を求めるの件に御承認のかたの挙手を願います。
   〔賛成者挙手〕
#13
○委員長(有馬英二君) 全会一致と認めます。よつて本件は承認をすべきものと決定いたしました。
 それでは本会議における委員長の口頭報告の内容は、本院規則第百四条によつてあらかじめ多数意見者の承認を経なければならないことになつておりますが、これは委員長において本案の内容、本委員会における質疑応答の要旨及び表決の結果を報告することに御承認を願うことに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#14
○委員長(有馬英二君) 御異議ないものと認めます。
 それから本院規則第七十二条によりまして、委員長が議院に提出する報告書には多数意見者の署名を附することになつておりますから、本案を承認されたかたは順次御署名を願います。
  多数意見者署名
    金子 洋文  徳川 頼貞
    平林 太一  團  伊能
    大隈 信幸  曾祢  益
    伊達源一郎
  ―――――――――――――
#15
○委員長(有馬英二君) 次に、千九百二十八年十二月十四日にジユネーヴで署名された経済統計に関する国際条約、議定書、及び附属書並びに千九百二十八年十二月十四日にジユネーヴで署名された経済統計に関する国際条約を改正する議定書及び附属書の締結について承認を求めるの件を議題といたします。
 質疑に入ります。御質疑はございませんか。御質疑がなければ質疑は尽きたものと認めて御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#16
○委員長(有馬英二君) 御異議ないものと認めます。
 それではこれから討論に入ります。御意見のおありのかたは賛否を明らかにしてお述べを願います。御発言はございませんか。御発言がなければ、討論は終局をしたものと認めて御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#17
○委員長(有馬英二君) 御異議ないものと認めます。
 それではこれより採決に入ります。千九百二十八年十二月十四日にジユネーヴで署名された経済統計に関する国際宋約、議定書及び附属書並びに千九百二十八年十二月十四日にジユネーヴで署名された経済統計に関する国際条約を改正する議定書及び附属書の締結について承認を求めるの件を御承認のかたの挙手を願います。
   〔賛成者挙手〕
#18
○委員長(有馬英二君) 全会一致と認めます。よつて本件は承認すべきものと決定いたしました。
 なお本会議における委員長の口頭報告の内容は、本院規則第百四条によつて、あらかじめ多数意見者の承認を経なければならないことになつておりますが、これは委員長において本案の内容、本委員会における質疑応答の要旨及び表決の結果を報告することに御承認願うことに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#19
○委員長(有馬英二君) 御異議ないと認めます。
 それから本院規則第七十二条によりまして、委員長が議院に提出する報告書には多数意見者の署名を附することになつておりますから、本案を可とされたかたは順次御署名を願います。
  多数意見者署名
   金子 洋文  徳川 頼貞
   平林 太一  團  伊能
   大隈 信幸  曾祢  益
   伊達源一郎
#20
○委員長(有馬英二君) 署名洩れはございませんか。署名洩れなしと認めます。
 それでは休憩いたします。
   午後二時六分休憩
   ―――――・―――――
   午後三時六分開会
#21
○委員長(有馬英二君) それでは外務委員会を再開いたします。
#22
○平林太一君 日程に入るに先立ちまして、委員長からお許しを得まして外務大臣に重要と考えられまする当面の問題について質したいと思うのであります。ソ連に抑留せられておりまする抑留邦人の現況でありますが、これに対しましては、昨年の七月外務省から引揚白書を発表されておるのでありますが、その白書の数字によりますると、ソ連、中共地区、北鮮からの未帰還者の数は少くとも三十四万五千を数える、かように言われております。三十二万三千九百七十二名の名簿は今日用意があるというのでありますから、これは相当この数字に対しましては我我は信をおくものでありますが、そこでその内訳につきましては、シベリアその他ソ連領に約六万、南樺太、千島に約九千人、北鮮に三万人余、満州及び関東州に約二十四万人ということに相成つておるのであります。それから昨日高良とみ君が北京から電報をいたして来たものとして新聞その他に報道せられておりまするものにつきましては、現在、ソ連には十八万数千の抑留者が抑留されておる。而もその数は信ずべき筋からということを附言してありますから、我々はこの点に対しまして非常な注目を以て今日これを心配いたすのでありますが、この十八万二千ということに対しまする外務省が昨年発表いたしました三十四万、殊に名簿におきまして三十二万二千九百七十、この中からいわゆる死亡者その他の行方不明者が差引されて現在生存者が十八万数千であるということに考えられるのでありまするが、先ず第一に、この数字に対しまして、又これに基礎を置きましての外務大臣のお考えをこの際伺つておきたいと思います。
#23
○国務大臣(岡崎勝男君) 高良さんが一体どういうところからどういうふうにしてこういう情報の内容を得られたのか無論わかりませんので、我々にははつきりしたことは言えないのであります。併し、ソ連側が例えば対日理事会であるとか、或いはタスの通信であるとか、あらゆる方法で従来主張しておられたのは、すでに俘虜等は送還してしまつて、残る者は戦犯関係の人々等が二千四、五百名である、こういうことを言つて、もうそのほかには一人もいないんだということをくりかえしくりかえし発表しておるのであります。御承知のように、日本共産党の議員諸君も本会議の席上、或いは委員会の席上同じような主張を繰返しておるのであります。今度突然として十八万何がしという人を送還するという高良氏の話だといつて伝えられておりますが、一体今までのソ連の権威ある報道として言われておつたものと甚だしく矛盾するわけであります。矛盾するわけでありますが、我々日本側から言えばたしかにこれはまだそれだけじやない、死亡しておる人も随分あると思うけれども、とにかく説明のされてないのが何十万とあるんだという主張から言えば、十八万にしてもとにかく或る数が出たということは我々の主張に幾分でも近付いたということにもなるわけでありますから結構だと思いますが、まだその真偽等は無論わかりません。それから我々のほうでかなり詳細に調べて今お話のような数字ではもうこれは亡くなつた人であると思われるのが二十三万ばかりあるのでありまして、そうすると差引すると、生きていると思われる人とそれから生きているか生きていないかわらないという人を併せますると約十万ばかりになると思うのであります。その中でどの程度亡くなつておられるかわかりませんけれども数字は、我々のほうでかなり正確に調べたものはそういうことにならざるを得ないのであります。従つて、この数字自身もどうも私にはわからない、送還するというのであれば、恐らく生きている人を送還するという意味だと思いますが、そんなに生きている人があるとはちよつと我々の数字から言つても判断できないし、いわんや過去においてソ連側のタス通信等、或いは対日理事会のソ連代表の発表によれば、これは全く矛盾した報道になるのであります。私のところでは今のところただそういう矛盾があるということを指摘し得るにとどまつてあつて、この報道が本当であるかうそであるか、或いはどういう種類の報道であるかということについては残念ながら御説明をすることができないのであります。
#24
○平林太一君 これは只今外務大臣の御答弁を伺つておるのでありますが、実は私の気持といたしましては、高良君から発表された十八万という数字を実は信じたいのであります。信じたいということは、それはそれだけ生存者がある、今大臣の御説明になりました通り、十万名内外、そのうちからなお且つ多数の人が死亡しておるであろうというようなお見通しのお話でありますが、私の願いといたしましては是非十八万生存しておつてほしいということ、従つてそういうことをなるべく信じたいという気持で、これはことさら今後の処置ついていろいろ政府のお力をいたされたいということを願つておるのでありますが、これは一昨月と私記憶いたしますが、当時発表せられました情報の中に捕虜のことがあるのでありますが、ソ連にある日本人収容所と監獄の数は約七百個所に達している。シベリアの最東北部チコト半島東端からシベリア全地域、ウラルを越えてモスコー附近、ウクライナに至るまで殆んど全地域に亙つてばらまかれている、七百個所の監獄乃至収容所が。これらの人々がソ連のそれぞれの産業その他事業に今服役しているというのでありますから、こういうのを見ましても誠にぼう大な数字に達するのでありますから、或いはこの十八万という人が生存しているのではないかということをも昨日来私は考えておるのでありますが、それで、これに対しましては、そういういい見通しを持ちまして考えられることでありますが、このまま今までのようにこれらの人々が、数字が一応そういうふうに尋ねられて来たのでありますが、放置しておつてよいものかどうか。ソ連との関係において、それもできないんだということ、実は最近抑留同胞の問題につきましては、やや行詰つたような感じを全国民に与えているのでありますが、すでに昨日来このようにこれが取上げられて参りましたこの際は、政府といたしましては鋭意これに対しまする力をいたすように願わなければ相成らないと思います。従いまして、これは坐視しておつては一歩も出ることができないのでありまするから、ソ連に対しまして、いわゆる私はこの際岡崎外交の一つ、これが外交でありまして、又私はこういうことが外務大臣の一番大きなお仕事に考えられて然るべきと思うのでありまするから、何かこれに対して取りあえず十八万人というものを仮想的でもよろしい、こういうものを対象にして、そうして対ソ外交というものに対しまして、この際何かお考えになられる必要があるのではないか。丁度いいこれは対象であります。又事一人の生存といえどもこれは国民の持つておりまする感情というものは容易ならざる事柄でありますので、この際そういう面におきまして、何らかソ連に対しまする抑留同胞を帰還せしむるということに対しましての一つの打つ手或いは経論というようなものが、早く私はこの際おありにならなければならないと思うのでありますが、この点を伺いたいと思うのであります。卒直に申しますれば、この際何らかソ連に対しまして、いわゆる米国との間は話合をいたしますれば、日米の間はどんなことでも話合ができるのでありますから、先ず第一に米国と十分な話合をいたしまして、そうして引揚、これらの人々を帰すということに対しましては、何らかソ連に或る若干程度の利益を与えてもよいのではないか、十八万の人には替え れない。併しそれも単独にということではない。十分に米国と話合をいたしまして、又いたせば米国は私は話がわかるのではないかと思います。こういう問題に対しましては。ですからそういうことに対しまして、大臣はどのように今後のことをこの処置に対してお与えになられるかということを一つ伺つておきたいと思います。
#25
○国務大臣(岡崎勝男君) 先ずお断りしておきますが、こういう問題についてはアメリカと話をする、イギリスと話をする、これは我々民主々義を以て立とうとする国にとつては友好国の間に十分話合をするのは当り前のことでありますが、話合をしなきやできないということじやないのであります。我我の思う正しいと考えることならば話合をしなくてもできるのであります。そこで、ソ連とは外交関係は無論今ありませんけれども、事抑留者の引揚に関しては我々としてもこれを主張する権利があると考えております。ポツダム宣言等から見まして当然速かに帰還を要求する十分の根拠があると考えておりますので、この問題に関する限りは外交関係がないからといつて何ら遠慮することはないのであります。方法はいろいろあると思います。願わくば高良氏の報道がでたらめでないことを希望するのであります。確実であるとすれば、これはあらゆる方法で引揚を促進することは当然のことであります。で、政府としても無論そのいろいろの方法を考えておりますが、今までのソ連の主張、これはここにおられる兼岩君もしばしばこの委員会でも強く主張されたところでありまりすが、これと十八万何がしという生存者があるということは全く矛盾する報道でありますので、私は果してこれが真実であるかどうかやや疑問も持つておるのであります。いろいろの方法でこれは又調査する途もあると考えております。要するに、我々は外交関係がないからといつてただ何もせずにいるというわけではないのでありますが、おつしやるように何かの利益を考えてこれと引換えにという必要はないと私は思つております。当然なすべきことを、若し十八万という数が本当にあるならば当然これは帰還させるべき人々であります。従来もソ連政府は多くの人を日本に帰還さしておるのでありますから、同様の人があれば帰還させることは異存のあるべきはずはないと考えております。十分に若しこれが本当であるとすれば堂々と要求しその実現を図る途はあると私は考えております。
#26
○平林太一君 只今大臣からこの問題に対して十分の今後坂進め方をいたしたいというお話がありまして私非常に心強く相感じた次第でありますが、どうか若しその十八万ということのみにこだわることなくして、いずれにいたしましても最小限度の人々は生存をいたしておるということは十分にこれは見通しがついておるのでありますから、一つこの際新たなる引揚促進、抑留者の送還、又我が方に送還せしむることにいたしたい。かような観点に立ち、又新たなるいわゆる対ソ施策というものをお立てになりまして、十分に一つこれに対しまする力をいたされることをこの際深く大臣に要望いたしておきたいと思います。以上であります。
#27
○兼岩傳一君 今高良書簡がちよつと問題になつておるようですが、私は新聞で見ました瞬間に、非常に悪質な謀略放送であるというふうな感じが私はしたのでありますが、外務大臣があえてこれを疑わしいといいつつも、或程度これについて長い言葉を使つて論評しておられるのは、疑いつつも或る程度の信憑性があると考えられるかどうか。一体あの通信は出処、私注意して新聞を見ましたけれども、その通信の発せられた主体、経路等々が明らかにされていないのでありますが、そういう点は明らかになつておるのでしようか。
#28
○国務大臣(岡崎勝男君) 我々も新聞等で見ただけであります。我々は併しこの報道自身には今申す通り疑いを持たざるを得ないと思いますけれども、我々の主張は兼岩君も御承知のようにまだたくさんソ連領等に残つておるという考えでありますから、それに幾分でも近付いたという点では結構だと思つて、これが本当であることを希望しておるわけであります。
#29
○兼岩傳一君 一つの通信を基礎にして、それが責任のある一国の外務大臣としてその通信について価値判断をいたしまして、その通信が日本のあなたがたの政府の持つておられる外交政策にとつてプラスであるという発言をする前に、そういう放送がどれだけの信憑性を持つておるかということを少し慎重に見極めてから発表されても私は遅くないんじやないか。そうしないとおぼれる者がわらをもつかむように、そういう信憑性の証明され得ないところの情報に基いて意見を私は展開させて行くということは、責任ある一国の外務大臣として非常に危険な態度でないか。これは決して国際関係に、一部の或る人たちには喜ばれようとも、これはやはり世界的な世界外交の角度から見て、私はこれはプラスにならんと考えるのですが、なお大臣がそういう態度を今後持つて行かれるのならば、私はやはり次の機会までに、次の外務委員会までにあの通信の出処、それからそれの持つている信種性について私は御報告願つて、その上でこれに対する価値判断と評価はそのあとに譲つても私は決して遅くないと考えるのですが、僕の読んだ瞬間の感じ、それからよく熟読してみた感じから言えば、あれは悪質なる反ソ謀略放送だというふうに考えざるを得ないのです、私の感じでは。これについてもう少し信頼し得る、これの記事について、この通信の出処その他についてこの次までに大臣は部下を督励されて、御報告を願えないかと思うが如何でしようか。
#30
○国務大臣(岡崎勝男君) 私はそんな通信などについて別に責任を持つことでもないし、別に外務省がその通信を発表したこともないのですから何も関係はありません。これは国民の皆さんが判断するでありましよう。ただ一言附加えて言えば、これはただ通信でなくして、高良さんから例えば引揚関係の人たちなりに直接電報が来たようでありますが、私はその情報に基いて議論をしておるのじやなくして、我々の主張は前からソ連領等に、中共をまぜてでありますが人がおるタスの言つているのは間違いであるという主張をしておるのであります。それに幾分でも近付いている主張があれば甚だ結構である。例えばあなたがたがよくアメリカの或いは方々の人の論評でこういう自分の議論を裏書きするというようなことを始終引用されてありますが、まあそれと同じような意味であります。
#31
○兼岩傳一君 僕らはものを引用するときには、その引用する態度には一貫した科学的な態度を持つておつて、これはタス通信の通信、これはテレグラム通信である、これはUPである、これはAPであると明確にその出処を明らかにして、或る程度それに対するところの評価を心のうちに持ちつつも、出処を明確にして、私どもは政府に対して質疑し又意見の展開をしているのでありますが、今あなたはこの高良書簡については、書簡そのものを何ら確認することなく、極めて誰が考えてみても健全な常識を以てすれば、そういう書簡が高良君から出そうもないような時、所、方法を以て行われておるということは、私はこれは悪質な謀略放送であるというふうに感ぜざるを得ない。だからあなたがそれを引用して、それに基いてプラスである、マイナスであるということを言われるためには或る程度もう少し慎重な態度で、あなたが一介の新聞人か評論家ならいいですよ、併し、あなたはやはり責任のある日本国の外務大臣だつたら、そうしてこういう委員会の公式の席上でするならば、少くとも私はさような批評的な言辞を弄する前提としては、私はやはりこの通信を調査して、その信憑について報告される義務がある。私それを要求したいと思うのです。そして又外務省が云々といわれるけれども、天下の国民の税金で、外務省がさような自分に関係の深い事柄についてこういう耳よりな情報がある以上は、それはやはり部下を督励しその出処そのほかの信憑性を調べて委員会で報告される義務があるし、我々はそれを求める権利があると考える。だから私はそういう意味で直ちに調査されて、次の委員会にそれの調査の結果その手紙をここへ提示できるかどうか、提示できなければどういう経路で来たものか、その信憑性についての私は報告を求めたいと思う。その上の議論にしましよう。
#32
○国務大臣(岡崎勝男君) 私は今の手紙といわれたが手紙なんぞ見たこともないので、聞くところによると、松岡駒吉君のところと上島善一君のところへ電報が来たという話であります。併し新聞にはずつとたくさん出ている。何もこういう新聞に出ておることをつかまえて議論して悪いという理由はちつともないと思います。別に私はそれらの出処を確かめる義務はないと思いますからお約束はできません。
#33
○兼岩傳一君 要求します、僕は。そんなことくらいできんですか、外務省の事務局は大臣がそれに対して……
#34
○国務大臣(岡崎勝男君) 要求してもお断りいたします。
#35
○兼岩傳一君 どういうわけでそれを拒絶されますか。
#36
○国務大臣(岡崎勝男君) 別段理由がないと思いますから拒絶します。
#37
○伊達源一郎君 私は日華条約について大臣に一、二点お尋ねしたいと思います。
#38
○兼岩傳一君 完結してからにして下さい。僕の今のは完結していない。大臣は知らんと言われたが、そういうことを発言される以上は、これは対して価値判断をされる以上は、その前提として、さような重大な国際的な問題については慎重なる態度が、私、責任ある外務大臣としては必要であろうと思う。併しすでに或る程度の価値判断をしておられる以上は、その前提となる高良書簡なるものの信憑性について全部それは明らかにしろとは言わぬが、外務省としてそれぞれの部局を持つておられるのだから、それに命じて、それの経路、それから要すればその実物、電報の信憑性その他について調べて、その信憑性について報告が願いたいという、私が国会議員として当然の要求に対して外務大臣が理由なくしてそれを断わつておられるけれども、私は委員会の権威のために、そういう態度は委員長としてそれを承認されるということは、この委員会の私は非常に自殺的な行為だと思うのですが。そうするとあれですか、今後とも大きな外交上の問題で政党政派の立場の差異はあつても、或る大きな問題についてそのことが論議になつたときに、その信憑性について政府に対して要求をして政府は勝手に拒絶するのですか。そういう委員会の運営でいいのですか。
#39
○国務大臣(岡崎勝男君) 兼岩君は事ソ連の引揚に関するとえらい興奮されますが、私は価値判断も何もしておるのじやない。只今御質問があつたから、その報道は私は疑わしいと思つておる。思つておるが従来の外務省の主張に一歩近付いたような報道だから、本当なら大変結構な話であるということを言つておるだけで、ちつともそれが本当であるとかうそであるとかいうことを言つているのじやない。従つて価値判断も何もしているのじやない。従つて別にそれに対して責任を負うことはない、こう申しておるのです。
#40
○委員長(有馬英二君) 只今の兼岩君の御要求、御発言に対して外務大臣としての御答弁は至極私は明確なる答弁だと思います。
#41
○兼岩傳一君 要求しますよ。
#42
○委員長(有馬英二君) これ以上にあなたが御発言をなさり御要求をなさつても結局大なる収獲はないと私思いますから、これでお打切りを願います。
#43
○兼岩傳一君 いや調査の報告を求めるのですよ、私は。収獲があるかないかは僕が判断することです。
#44
○委員長(有馬英二君) 判断しても一向差支えないわけですから、委員長の一名においてこれをお打切りを願いたつい。
#45
○兼岩傳一君 そうすると、あなたは国会法で保障されている議員の国政に関する審議の資料の要求を故なくして拒絶している政府の側に立たれるわけですか。その見解を……。然らば僕はあとでそういうことをされるのならばよろしい、ここはそれで終りますけれども、国会法その他に準拠して、政府並びに委員長の態度が間違つておるということを私は次の委員会において明らかにするであろうということを申上げてじやそういうふうにもあなた進むなら、今日のところはお進みなさい。
  ―――――――――――――
#46
○委員長(有馬英二君) それではこれから中華民国との平和条約の締結について承認を求めるの件を議題といたします。御質疑を願います。
#47
○杉原荒太君 この日華条約に対する質問は随分多岐に亙ると思うのですが、議事の進行の上から見て、先ず大体大まかに総括的の質問と逐条的に分けてやつて頂いたほうが便利だろうと思うのです。
#48
○委員長(有馬英二君) あなたがおいでになりませんときに懇談をいたしたのです、これからあとの議院の日程につきまして。今日から日華条約に入りまして、なお金子委員からの御要求がありまして総理大臣に出席を求めております。日華条約或いは目印条約等について総括的な質問をしたいというようなお話でありましたから、これはそういう工合に取計らうことをお答えをいたしまして、明後日ですか、金曜日に総理大臣に御出席を求めたい。
#49
○杉原荒太君 総理大臣だけじやなく、外務大臣対にする質問の場合もそのほうが便利じやないですか、議事の進行の上から見て。あえて私は固執しませんがその辺のところを考慮して進めてもらいたいと思うのです。
#50
○委員長(有馬英二君) ですから日華条約の質問をこれから質疑に入つて、総括的にも或いは逐条的にもあなたのお考えによつてどういう工合に進めますかそれは一向差支えないと思います。そういたしませんと今日丁度外務大臣も出席されておりますから、前から希望があるので……。
#51
○杉原荒太君 それは言うまでもない、わかり切つたことだと思うので、適当にそれじややつて下さい、どうぞ。
#52
○金子洋文君 只今のお話に関連しているのですが、やはり委員会の運営としては総括質問をして、それが終えてから逐条審議に入つたほうがうまく行くと思うのですがな。
#53
○委員長(有馬英二君) ですから日華条約について総括質問をするというお考えでしよう。
#54
○金子洋文君 そうです。
#55
○委員長(有馬英二君) 結構です。
#56
○伊達源一郎君 日華条約について大臣に質問いたしますが、この条約は平等の立場において相互的に作られたものと思います。然るにこの会議の調印式が終つたあとでの両方からのあいさつの演説を見てみますと、日本は非常に有難がつて寛大なる御精神によつて非常に感謝しますという言葉を繰返し述べておりますが、中華民国のほうはそういうことを一つも言つていない。全く勝者が敗者に対する態度のように思われるがこれには何かわけがあるのでありますか。偶然そういうことになつたのでありますか。或いはこれでいいのであるか。
#57
○国務大臣(岡崎勝男君) このあいさつは全権が先方におりましたときに、全権に任して、全権の判断でやられたものであります。私もあとで知つたのであります。まあこういうあいさつというものは成るべく相手の国に対して敬意を払うのは普通でありますから、別に特に問題になるほどのあついさつでもないと私は考えております。で、平等であるかどうかということにつきましては、御承知のように、この条約交渉の経過等から御覧になりますれば、しばしば非常に困難な段階に立至つた。それが新聞でもいろいろ報道されて、日本側が頑張つておるものだから、うまく行かぬといようなことも始終言われておつたのでありますが、要するに、全く勝者、敗者というような立場を双方に捨てまして全く平等の立場に立つて議論を進めて来たのであります。まああいさつはいろいろ御批判もありましようけれども、条約の実質の交渉につきましてはもう全然平等であるということは私がここで確言できると思うのです。さよう御承知を願います。
#58
○伊達源一郎君 もう一つお尋ねしたいのは、領土の問題でありますが、吉田書簡にも、この条約にも、中華民国は、今政治を行なつておる台湾・澎湖島、これを国際連合寺の関係から正統なものと考えて、そこと条約を結ぶというような意味に書いてありますが、サンフランシスコ条約でも台湾・膨張島は日本から放棄されたということで、あとのことは、帰属のことは何も書いてないのでありますが、事実上蒋政権の領土となつており、それを大体承認した形でこの条約はできておるのでありますが、日本のこの条約が最初に台湾を中華民国のものと承認したのであるか、国際連合その他によつて大体そういう形がつけらつれたのであるか、この帰属のことについてここでどういうふうにきめたのであるか、その点を承知したいと思います。
#59
○国務大臣(岡崎勝男君) この帰属の問題はまだ法律的にはきまつておらないのであります。日本側から今御指摘のようにその権利、権原等を放棄するということになつております。併しながら一方において日本が受諾しましたポツダム宣言の中にも、カイロ宣言の条項は遵守せらるべしという事項がありまして、カイロ宣言では台湾・澎湖島は中国に帰属するということになつております。それをポツダム宣言を受諾しました日本としては当然認めることであります。従つて法律的にはまだ決定されていませんが、若し連合国が天下に発表しましたカイロ宣言をひつくり返さないものであり、又それを日本政府は受諾したものであるとすれば、中国に属するということはこれは事実上認めらるべきことだと思います。併し法律的な手続はまだ済んでおらない。そこでその点にいろいろ問題がありますが、元来こういう何と申しますか普通ならば一つの領土の上に一つの政府があるのが当り前のことであります。ところが、今は全く相反した考えを持つておる二つの政府があつて争つておるような状況でありますから、非常に変態的であります。そこでその変態的の中で実質的にとにかく或る地域と友交関係を結ぼうというと、やはり条約が少し普通のものから見ると変態的にならざるを得ない。この点は御疑念のあるのは私は当然だと思いますが、そういうような事情でちよつと妙な表現になつておるのであります。
#60
○伊達源一郎君 私は各条目についての質問ですから、総括質問が済んだあとで……、これで終ります。
#61
○曾祢益君 只今伊達委員の御質問に対して、外務大臣はカイロ宣言の中には台湾の帰属は中国に帰属するように言つておられましたが、あれは中国と書いてありましたか、リパブリツク・オブ・チヤイナと書いてありましたか。
#62
○国務大臣(岡崎勝男君) ちよつと今調べてみますが、私の記憶ではチヤイナと書いてあつたと思います。
#63
○曾祢益君 その点はあとでお調べ願いたいと思うのですが、この条約全体を見ておりますると、この条約の中に中国という字句があるし、又中華民国という字句があるのでありますが、そこでこの条約の中にある中華民国というものは一体どういう国であるのか。私の質問は別に変な意味で申上げているのじやないので、おわかりのように中国との関連において特に御質問したいのですが、一体中華民国という国があるようでございまするが、その国の然らばその領域はどういう領域であるか、又その住民はどういうものであるか、これらの点を中国との比較において私たちはどうもよくその条約がわからないのでその点を明らかにして頂きたいと思います。
#64
○国務大臣(岡崎勝男君) 先ほどのを訂正いたしますが、やはりカイロ宣言はリパブリツク・オブ・チヤイナと書いてあるのでございます。
 そこで中国と中華民国とでありますが、これは条約で直接に違つた字を使つておりますのは、中国というのはサン・フランシスコ条約に中国と使つてありますので、サン・フランシスコ条約の関連において使つた場合にはこれは中国といたしてあります。そして中華民国とは現在におきましては、只今条約の相手方になつておる中華民国政府、それの直接関連のある事項の地域について中華民国、こういうふうに使つております。
#65
○曾祢益君 どうも只今の御説明ではまだよくわからないのですが、成るほどこの条約第四条並びに第五条には、日本国と中国との間に締結されたすべての条約等は無効になつたということ、及び中国における特殊の権利及び利益を放棄すると、このうち第四条のほうに直接該当するサン・フランシスコ条約の条項は私はなかつたと思うのですが、第五条はサン・フランシスコ条約でも中国となつております。なお又サン・フランシスコ条約二十一条もやはり中国に対しての特別な規定が書いてありまして、そのときもチヤイナ即ち中国になつておるのであります。これは只今の外務大臣の御説明のように、ただ単にサン・フランシスコ条約で中国と言つている所は、本日華条約においても中国としてあるというようなただ単なる形式論で説明し得ないもつと深い実質があると思うのです。即ちサン・フランシスコ条約のこれらの字句を使つております所は、もとよりこの前倭島局長の説明にもありましたように、例えば中国における特権放棄といつた場合に、日本と中国が結んだという場合の中国は清国も含むという意味で中華民国と用いなかつたという意味もございましようが、併しやはりその基本はサン・フランシスコ条約においては中国という一つの一体としての国を考えて、その基本的なものを書いたから中国と言つているのである。従つてこの中国というものとこの日華条約の締結の相手である中華民国とは、今どういう言葉をお使いになつたかわかりませんが、直接関係している領域の中国を中華民国というのであるとすれば、この条約は中国という国との基本的な関係は全然別にして、中華民国という国家がその中国の一部にできておるんだという建前でお結びになつておるかどうか。果して然りとするならば中国という一つの国の中に中華民国という国ともう一つ如何なる国があるとお考えであるかどうか。この点を明らかにする必要があるのではないかと思うのであります。
 なお又この点は決して私だけの見方ではなくて、むしろこの条約の源であるところの吉田総理のダレス氏に対する書簡の中の精神は、やはり確かにこの中国というものはいわゆるチヤイナ全体を国として認めたときに中国と言つておる。そうして中華民国国民政府との間にはまあそういう言葉は使つておりませんが、修好条約を作つて行こう、将来の中国全体との関係には触れない程度で作つて行こう、かような趣旨で書いてあつたと思うのであります。又同様にこの政府から出された提案理由を拝見いたしましても例えば初めのほうに、政府は究極において日本の隣邦である中国との間の全面的な政治的平和及び通商関係を樹立することが望ましいと考えて来たのであると、この点は中国全体を示しておることは明らかであります。その少しあとのほうに、同条約の規定によつて我が国が権利を放棄した台湾及び澎湖諸島との関係におきましても、これを現に支配する中華民国との間の平和関係が回復されるに至らず、云々、それからそのあとのほうに、この条約の締結は、我が国と中華民国との間の戦争状態を終了し、ここにはつきり、只今外務大臣の言われたような単なる形式論でなく、中国に対する条約と中華民国に対する条約或いは関係というむの、これをはつきり分けておられると思うのですが、外相はどういうお考えでお作りになつておるかどうか、もう少し実質に触れた御説明をほしいと思います。
#66
○国務大臣(岡崎勝男君) 中国と言いますのは、これは正式な言葉でないのは御承知の通りでありまして、今言われたように、場合によつたら清国も中国と言つたし、又只今条約の相手がたになつております中華民国政府も前には中華民国国民政府……今のとはちよつと形の違う当時でもやはり俗称中国と言つておつたわけであります。で、私どももいわゆる中国、つまりまあ中華民国政府、非常にややこしいのですが、本土を含む全部の概念的な中国の民衆とは非常に昔から密接な関係があるのでありますが、従つて早くそういう条約も作りたいと思つておりますが、現実には中華民国政府の支配している地域というのは、現在はいわゆる中国の全体でないということは認めざるを得ない。そこで中華民国政府が只今支配しておる地域は限定されていることは止むを得ないことでありますが、今度はその中華民国政府側の主張を聞きますれば、これはもう当然いわゆる中国全部を代表する政府である、領土権も全部に持つておるのだという主張をしておる。併し現実の事態は領土権があるかないかは別として、古配が及んでおる地域が全部でないことは当然でありますので、その間の調整を図つて行く。従つて実質的には只今中華民国政府が支配している地域に関する事項は中華民国という名称でこれを中国と区別しておるということは、これは言わざるを得ないことであります。併し相手方の立場もいろいろありましようからして、先方の主張は主唱としてそのまま我々は聞いておく、ただ現実の事態がこうであるからというので適用範囲というものを特に設けた。従つてまあ極く通俗的に言いますれば中国全般に関する事項に触れた場合には中国、それから全般でなくして現在中華民国政府が支配している地域に関する事項については、中華民国という特に区別した名前を付けてこの条約の中で表現しておるというふうに御了承願いたい。
#67
○曾祢益君 中華民国という場合には、そうすると外務大臣のお考えでは、中華民国の国民政府が現に支配しておる国家だ、その領域は現に中華民国が支配しておる国家を言うのであるか。従つてそういうものは地理的の中国の領域の極く一部であるそういうことになりますかどうか。
 それから今一つは、中国ということが地理的の名称であることはこれは事実でありまするが、併し単なる地理的の名称で、例えばアジア或いはヨーロツパというものでないこともこれは事実であつて、やはり歴史的にそれが清国の場合もあろうし、それから中華民国共和国の場合もあるだろうし、或いは中華民国の国民政府の場合もあろうし、最近又事実上の主人が変つたようであります。これは国家そのものの変貌でなくして、勿論その場合において領土の一部の変更がありましても、国家というものは継続しておる。政府が作つた、こういうものではない。ただ単に中国というものはアリスチード・ブリアンの言うごとく、中国というただ地理的の名称でなく、これは政治論で、如何に当時の中華民国政府が満州等に権限がないかということを例証で言つたのでありましようが、何人といえども中国なるものがただ単なる地理的名称だけであつて国家ではないという建前はとれないと思うのであります。若しそうであるとするならば、やはり政府は中国という国と、その中の一部を中華民国と分けてそうして考えておられるとしか思えない。若しそうであるならば、中国というものの中に中華民国という国を別に認めて、然らば現にその中華民国の権限の及ぶ地域を中華民国の領域であるとするならば、権限の及ばない広汎な中国は何という国だとお考えになつておるか、これを伺いたい。
#68
○外務大臣(岡崎勝男君) これはこういうふうに御理解願いたいと思います。つまり端的に言いますれば、今中共の政府と中華民国の政府と二つあるわけであります。中共の政府はいわゆる中国全部の領域を主張し、中華民国の政府も中国本土全部を含んだ中国全部を代表する政府である、従つて領域も全部であると主張しておる。それを第三国がどちらだというふうに内政に干渉するような形をとるべきではないのでありまして、主張は主張としておいて、つまり二つの政府が存在しておつて、国民と領土という一定したものがある。そこで両方の政府がオーバー・ラツプして、領土なり国民なりに対する主権を主張しておる。併しそれは我々のほうでは将来どちらかに片付くものと考えて、今はその問題に触れずして、こういう主張があるでありましようけれども、現実に適応した範囲というものを作つて、これも現在支配しておる地域のみならず、将来仮に支配する地域が延びても、現実に支配しておる国に対してこの条約は適応する、こういうことでありまして、大きな中国という一つの存在のうちから別の国家があるのだという観念でなくして、二つの政府は一応存在しておる、それがおのおのクレームが重つておる。その政府と条約を結んだ場合、この条約に関する限りは只今のところ適応範囲というものはこれだけである、こういうふうにして現実の調和を図る、こういうわけであります。
#69
○曾祢益君 外務大臣の言われるうよに、現に中国には二つの政権があり、その政権のいずれも実力的には全中国の領域を支配しておらないことも事実である。又同時に二つの国家に分れておらないで、お互いが政権の全中国の支配権を主張しておる。これはその客観的事実、これが認識については、私は何人といえども意見の相違はないと思います。だからそうなればこの条約を作るに当つて政府としては飽くまで、吉田書簡の少くとも前段にあつた精神は私は正しいと思うが、中国と全体との問題には触れないところの国民政府との関係を調整する条約にするか、それならば一つの理窟が立つ。或いは逆に現在のこの国民政府は現状では成るほど台湾及びその附近の島嶼を持つておる政権のようであるけれども、その彼の主張を認めてこれを中国の政府である、中国全体の政府であるという建前に立つてそうして平和条約を桔ぶというのも一つの行き方だ。ところが政府のおやりになつたところは両方に跨つて、実に観念の混同を来たしておるのではないか。或る場合にはそり中華民国の国民政府をしてあたかも中国の全部を領有する政府、或いは中華民国が事実上中国そのものである、かかる待遇をし、或いは将来の領域が拡つた場合にこれを認めて行こうといつたようなところを示しておる。他方においては現実に、当面にこの条約が適用する領域というものはいわゆる中華民国政府という一つのいわば局地的な政権の現に支配しておる所に限る。かような二兎を追つて一兎を得ざる、これは一兎を得ておるとお考えかも知れませんが、少くとも建前から言つて、一体何を目的としておるのか、わけがわからないことになつておるのではないか、政府の御意図はそうではなかつたといたしましても、できたものを見れば、これははつきりとした観念の混同になつておるのではないかと思うのですが、従つて若し政府が中華民国の領域というような言葉を用いずに、ただ中華民国というようなことではなくして、中華民国国民政府との間のいわゆる修好的な関係を規定する条約でありますから、政府と政府との条約であるとして行くならばこれは意味はわかる。併しそうでなくて一方においてそう言いながら、他方においては中華民国という一つの国をはつきり中国の中に認めてしまつておる。而もその領域たるや非常に変なものであつて、恐らくこれは空前であり絶無であらんことを我が国にあつては希望するのでありますが、空前絶後と言つてもいいくらいの誠に妙ちくりんな条約になると思うのでありまするが、これは私の意見として、外務大臣は先ほどお答えはなかつたけれども、然らばこの条約によつて中華民国という国は中国の中に別に認めたのではない、こういうことがはつきり断定できるかどうか、この点をもう一遍伺いたいのであります。
#70
○国務大臣(岡崎勝男君) これは今曾祢君の言われたようにどつちか一方にすれば非常に割切つたことになるので、これはできるかどうかわかりませんが、単純なことで済むと思います。ところが現実の事態は、例えばアメリカ政府は国民政府を中国の代表政府と認めておるのであります。又国連でもそういうふうになつておる。他方イギリス政府やインド政府は中華民国政府を承認せずして、承認しておつたかも知れませんが、これを取消して中共政府を承認しておる。従つて世界の見る目もおのずから違うのであります。それからもう一つむずかしいことは、過去において今の中華民国政府がいわゆる中国全土を支配しておりまして名実共に中国の代表政府であつた。それがだんだん変化して来まして、今でも権利は主張しておりますが、事実支配している地域は小さなものになつておる。こういう現実の事態も見て、そしてこれに適応するような条約を作ろうとしましたので、非常に苦心もあり、時間も従つてかかつたわけでございますが、政府としてはそれを全然観念を混同してこの条約を作つたのじやなくして、その二つの相異なる観念は無論十分承知しておりまして、それと現実の事態をどういうふうに調整させるかということに苦心をして、結局こういう条約になつたのでありますが、その意味はやはり何といいますか、成るべく条約というものが実際の事実とかけ離れたものにしたくないという気持であります。
 そこで御質問の点は、何と申しますか、今申したように中国というものが一つあつて、その中で別の国家を認めたということには私は考えておりませんで、やはり中華民国政府側の主張はこれは十分知つておるのであつて、これは全体の中国に対する主張を持つておるのです。そこでそれはそれとして、ただこの条約の適用については支配しておる地域に限る、こういうことで、主張の有無、正否、主張が正しいとか正しくないとかいうようなことを特に問う必要もないと考えたのであります。で実際この条約を御覧になれば、中国関係のこともありまするけれども、殆んど大部分は今の中華民国政府の支配しておる地域に関係するものであります。一部中国全般に関係する点は、只今の中華民国政府の主張にも鑑みまして、又過去の中華民国の行なつた行為によりまして、例えば戦犯等は中華民国政府が中国全域を領有しておるときに裁判を行なつて判決をしたものであります。中央政府がやつたものではないのであります。そういうような関係で、この中華民国政府が何らかの形で関係のあることにだけは、中共関係にも戦犯の関係で触れておりますけれども、それ以外は努めて現実の事態を処理するにとどめたという関係になつております。
#71
○曾祢益君 御苦心のほどはわかるのでありますけれども、果して現実の事態に即する程度にとどまつておるかというと、案はそれ以上に逸脱してしまつておるのがこの条約であると私は見ざるを得ない。中華民国政府との間の戦争に関する一種のセトルメントをやるということだけを真に目的としたならば、かような中華民国と日本との間の戦争関係を終了する平和条約であるというような恰好も当然に避けるべきであつたと思うのであります。又今大臣の挙げられた例を揚げ足を取るわけじやありませんけれども、中華民国国民政府がやつた行為についてこれを了承し、或いはその部分だけを何らか条約の中に入れて行くという場合にも、やはりその政府を対象として、政府という名を使つて、中華民国という名前等を避ける方法も、やろうと思えば私はあつたと思うのであります。従つて少くともこの条約においては吉田、ダレス書簡で考えられておつた程度以上のものを、まあ俗に言えば抱え込んでおる結果になつておるのではないか。如何にも私は、吉田、ダレス書簡そのものがいいと言つているのではなくして、先ほど申上げましたような一等初めに、その書簡にある中国との全面的な政治的平和及び通商関係を樹立するという基本方針、少くともこれに害を与えない範囲において、現実的には中国の極く一部に対する支配力しか持つていない政権との間にも、現にその政権を中国の全体の主人であつたという過去の事実に立脚して、或いはその他の政治的の理由から、いわゆる自由民主国家群の一部で、依然としてこれを正統政府と認めている国もあるのでありますし、日本としてもこれらの政権との関係を調整すること自体には何ら反対がないから、その意味でもう少し吉田書簡の、私たちが見て精神と思われるところを活かした、すつきりとしたものが作られることを期待しておつたのでありますが、併しどう考えましても、只今の外務大臣の御答弁のように、この条約が決してこの中国全体と日本との関係に累を及ぼさない程度に、国民政府という地方政権との問の一種のセトルメントだけに限つておるということは、これは一々細目に亙つて例を挙げるまでもなくもはや明らかではないかと思うのであります。
 そこで次にこの中華民国国民政府という一つの政権と、それから中華人民共和国と称する一つの政権があるわけでありまするが、この条約の建前からいつて、中華民国国民政府だけとの条約ではなくて、国民政府という政府を持つておるところの中華民国という圏との条約になつてしまうかと思うのでありますが、その点は暫らくおいて、その中共政府というものが、然らばこの条約の建前に立つて見たならば、国民政府に対する関係は一体どうなるか。これは反抗政権である、これを一体交戦団体と認めるか、それとも先ほど御質問申上げているのにお答えがないのでありますが、中共というものは、中華人民共和国という国が本土にあるところの一つの国だというふうに見ておられるのかどうか、この点を今度は中共というものを主体として考えた場合にどういうふうに一体これを見られるか、この点を伺いたいと思うのであります。
#72
○国務大臣(岡崎勝男君) これはやはり中華民国政府と同様に範囲等は違いますが、法律的に見ますと中華民国政府がいわゆる中国全土に対して各種の主張を持つておると同様に、中共政府も中国全土に対して、これは台湾、澎湖島も含めてその主張を持つておるわけであります。従つて中共政府も中国の領土の上に立つ二つの相争う政権の一つである、こう私は考えております。
#73
○曾祢益君 外務大臣は、飽くまでこの条約において中華民国という国を作つたような恰好になつておるのでありますが、それは政府であるというふうに言つておられるのでありますが、これは水掛論になりますから追求いたしませんが、の場合に然らば日本と中共政府との関係は、この条約から見て一体どういうことになるか、この点を伺いたいと思います。
#74
○国務大臣(岡崎勝男君) これは先ず御承知のように、吉田書簡に書いてありますように、いろいろここに理由は挙げておりますが、結論としては、日本政府が中国共産政権と条約を締結する意図を持つていないということになる、これが政府の態度であります。今例えば何と言いますか、戦時国際法等にいわゆる交戦団体等のことを考えておるかということもあると思いますが、交戦団体等を認めるということは、やはり一つの政権との間に通商関係とかその他の居留民の保護とかいろいろの必要があつて、何と申しますか、正統の政府として認めるには至らないけれども、実際上国或いはそこに政権が確立しているという事実を認めて、これとの間に或る程度の交渉をいたそうという考えから来ておるのが主だろうと思いますが、ところが現に日本政府の立場は、今いろいろ理由を挙げたようなことで以て共産政府と条約を締結するという考えを持つてない、要するに共産政府とおつきあいは困難である、こういう建前をとつておりますから、現在のところ交戦団体等の承認も無論考えておりませんということになります。
#75
○曾祢益君 政府のいわゆる政治論と言いますか、外交政策としては、これは吉田、ダレス書簡の最後に書いてあるように、いろいろの理由を挙げておりますが、結局中華人民共和国の政府とは少くとも二国間の条約を締結する意図はない、これも随分私は乱暴な議論であつて、少くとも期限を付けないで永久に言い放しのような形になつている。この政策には必ずしも賛成できないのでありまするが、まあそういう外交方針をとつてあるらしいことは承知しているのですが、私が伺つているのは、政府は中共政府と条約を作らないという方針をとつておられるが、併し同時に政府としては国民政府のほうを然らば正統政府として認める意図であるのかどうか、この点をはつきりもう一遍お答え願いたいと思います。
#76
○国務大臣(岡崎勝男君) これはまあ非常に国際法上の議論になつて恐縮でありますが、私は或る政府を正統政府と認めるか、或いは事実上の政府と認めるかということは国際法的にはあり得ないことだと考えております。ただ承認の方法がフォーマル・リコグニシヨンと言いますか、デイフアクト・リコグニシヨンと言いますか、この方法は違うと思いますが、その承認の方式については、内容に立至つてデイフアクトの政府であるとか正統の政府であるというような承認の仕方はないものと考えております。これはずつと前に幣原外務大臣のときに、段祺瑞政府に対して英国政府がこれをデイフアクト・ガバーメントとして認めようじやないかという提案がありましたときに、日本政府としてはいろいろ国際法等も研究いたしまして、たしか非常に細かい研究の結果が、結論的には今申したように正統政府或いは事実上の政府としての承認の仕方は国際法上にはないという結論に達したと思います。従つて私どもは只今のところそういうふうには考えておりませんので、中華民国政府が中国を代表する国家であるという主張を先方はいたしておるのであります。それに対して日本は中華民国政府と条約を結んでおる、ただ現実の事態が必ずしも全部の中国領土を支配しておらないから、適用範囲において或る程度の制限を設けておる。併し先方の建前から言えば、恐らくこれは中国を代表した政府として日本政府として条約を結んだのである、こういう建前をとられるだろうと思います。日本政府のほうではそれに対してそのところは深く問わずして、適用範囲において明らかにいたしておく、こういうことに御了解願いたいと思います。
#77
○曾祢益君 私は外務大臣ほど先例や国際法議論は詳しくないのですから、ちよつとその段祺瑞の承認の場合の例について関連して太刀打ちはできませんが、併しこれは事実上の承認は、交戦団体の承認というようなことは国際法上例のあることで、必ずしも当時の日本の外務省の見解だけが国際法上にアクセプト、受諾された国際法論或いは法理論だけとは思わないのでありますが、それは別といたしまして、少くとも政府はこのたびの条約を作るに当つて、先方は中国全体の正統政府であるということを主張しておる。この事実を、いやしくも国家の厳かなる条約を作る場合に、先方はその気でもかまわない、こつちはこつちで適用地域を制限しておるからそれで実害はないのだと、併しさようないやしくも両国政府間における厳かなる条約において最も基本的な点が意思が合致していないといつたような条約を一体日本政府は、過去ではどうか知りませんけれども、そういつた例があるのか、仮にそういう例があつたとすれば甚だこれは不幸なことであつて、そういうことをやるべきではない。はつきり日本としては、先ほどの議論に返りますけれども、二つのうち一つの態度しかあり得ない。一つの態度は、中華民国国民政府の主張をそのまま認めてこれを事実上の承認或いは正統政府の承認、さような細目はどうでもよろしいけれども、まあどつちかと言えば正統政府としてはつきり承認するような条約を作るか、そうでなければ、向うが如何なる主張を持つておろうが、日本としては飽くまでその主張には従えないというのでありまして、併し現実において台湾を支配するところの政権との間の政治的な関係、なかんずく平和的な通常な外交関係の樹立に必要な程度だけの一つの平和的解決というものをやつて行く、どつちかにきめるべきであつて、今おつしやつたような向うから言えば全中国に対する支配権を主張しておるけれども、ただ単に事実は事実として認める、併し適用地域は絞つてあるからいいというふうな、完全に主張する点についての見解の一致のないようなものをいやしくも国際条約としてお作りになるということは私は甚だおかしなことである。条約というものの厳かな性質からいつてさようなことは極めて不真面目であり危険であると思わざるを得ない。それにもかかわらず、やはり私の伺いたい点は、然らば中国国民政府の主張は主張として、この条約によつて日本政府が全然そういう主張を認めておらない、こういうことを政府がこの条約の締結の当事者としてはつきり断言できるかどうか、その点をもう一遍明確にお示しを願いたいのであります。
#78
○国務大臣(岡崎勝男君) まあこういう事態はめつたにないことでありますから、非常に御疑念があるのもこれは止むを得んと思いますが、例えばこのエジプトでも問題が起つておりますのは、エジプト国王がスーダンの国王であるかどうかということにおいて、或る国に対してはスーダン国王という名称でやつておるにもかかわらず、その国々はこれは政治上の意味は含まないという了解の下にそれを受入れておる。然るにイギリスは未だにそれに対して反対をいたしておる。併しそれは現実の事態としては、その問題はその第三国であるエジプトと条約を結ぼうという国の直接関係したことじやないのであつて、イギリスとエジプトとの間で解決すべき問題である。従つてそこがあいまいでありてもこれは止むを得ない、解決ができてないのだから……、従つて政治的に将来どうするかは別問題としてスーダン国王と書いてあつても政治的の意味は含まないの一である。将来変れば変れるという了解の下にそのエジプトと第三国との関係、条約関係なりに入るという実例が現にあるのでありまして、これもやはり結局は両国間、両政府間で、或いは両国民の中で解決さるべき問題が未だに解決しておらないものですから、日本としてはこれを如何ともいたし方がない。そこで割切れないような事態になつてしまつておるのであります。が日本政府の目から見れば、やはりこの中華民国政府というものがありまして、法律的には只今のところは承認してお互いに平常関係に入つたというのは中華民国政府でありますから、その点は間違いないのでありますが、同時に今申したような適用範囲がありますものですから非常にごたごたしておる。そこでこの条約の中に、例えば今おつしやつたようなこの条約の中に、これがその中華民国政府でありまして、中国全般を支配しておるのだと明らかにするか、或いはこれは台湾なり膨湖島なりだけの上に立つた特別の国家であるということを明らかにしておりますれば、曾祢君のおつしやつたような問題が起りますけれども、この条約の中ではそういう点は触れておらないのであつて、従つて特にそういうむずかしい問題を提起しなくても、この条約は条約として成立し得ると私は考えております。現にこの一条からずつとありまするけれども、第四条、第五条を除きますと、あとは何も問題が、問題がないというのじやありませんが、中華民国政府との間で十分に取極のできるものでありまして、第四条、五条は過去の条約がなくなつたということと、それから特権等を放棄するということでありまして、これはいずれ将来如何なる形に中国が結末が付きましても、これは当然のことになると思います。従つてその他の点ではすべて中華民国政府が只今支配しておりまする地域に関連して成立し得る問題だけでありますので、まあ私は差支えないと考えておるのであります。
#79
○曾祢益君 エジプトとスーダンの問題を一応の例に引かれたようですが、これはどうも適当でないのじやないかと思うのですが、日本政府は、エジプトは平和条約に調印しておりますが、あれは批准しましたか……、それはあとでいいです、それをお調べ願いたいと思うのですが、まだ批准していないのじやないかと思いまするが、日本政府はそうすると例えばこの問題についてもエジプトの現政府がスーダン国王ということを一方的に言つておる場合にそれを認めて行くのですか。そういうことを認める認めまいとかは別に第三者同士の話合いの結果であつて、日本に直接影響のないというふうにお考えになるのですか、私はそういうことはないと思うのですが、あとで伺いたいのですが、やはり政府が中共を相手とせずという建前をとつておられまするので、従つて中国本土との大きな問題はこの条約によつて何ら解決しておらない、その事態を生んでいることはこれは事実であります。そういう点をどうお考えになるかの点についても、ただ単に中共を相手とせずという一定の外交方針だけでは私は済まない問題があると思うのですが、これは決してもとより中共と国民政府との相互の関係を日本が加わつてどうしようという問題でないことは確かでありまして、日本から見れば第三者と第二者同士の話合いの問題でございまするから、これに直接関与しようということを申上げておるのではありませんけれども、併しその一方の主張を認めてしまうのか、それともそれを懸案に、ペンデイングにしておくのか、これは日本の中国全体に対する根本政策の問題に関連するものですから、決してエジプトとスーダンとの間の問題は英国とエジプトだけに任して差支えないのだというような問題とは性質が違うのじやないか、かように考えるのですが、それにもかかわらず政府としてはそういつたような呑気なことで差支えないのですか。
#80
○国務大臣(岡崎勝男君) 私は別にこれと全然同じだと言つてエジプトの例を引いたのじやないのです。ただ今現に世界の或る国々はそういう未解決の問題を解決しなければ条約を結ばないと言つていないで、とにかくエジプト国王との間に条約を結んでおつても、その適用範囲についてはあいまいなところが起つているということは、これは止むを得ない事態なんで、どういうふうに適用されるかということは、実際見てみなければわからないという意味で申したのであります。
 で中国との間の関係はこの吉田書簡にもあります通り、中国民衆というものを対象にしますと、早く全体の中国民衆との間に永久的な関係を作りたいということは日本政府の希望であつて、それとこの現実の中華民国政府が支配している地域なり支配している国民なりの又違うことは止むを得ないので、ですからしてこの条約の中で中国全般の問題を解決して行くということでは無論ないのであります。それらの問題はこれはペンデイングにならざるを得ない点がたくさんあるわけであります。
#81
○曾祢益君 これはちよつと派生的な問題ですが、やはり私は重要だと思うので伺いたいのですが、先頃から二度ばかりこの吉田書簡の御説明的なお言葉の中に、吉田書簡にはそう書いてない、日本の隣邦である中国との間に全面的な平和及び通商を樹立する、このことは中国民衆との間にというような私は解釈であるようでありまするが、それは非常におかしな解釈ではないか、ここに書いてある中国という場合には、現にどちらの政権であるという問題は避けて、いわば将来の中国が統一された形における中国との間に、相手方とする民衆との間にいわゆる政治的平和、通商関係を回復するなんということはあり得ない、やはりそれは政府という形において結付けてあることは間違いない。ただ外務大臣が特にそういうお言葉をお使いになるのは、この書簡の末項にあるように、政府としては中共政府というものはもう完全に頭から除外しておるので、民衆というような、アメリカの政府や一部の人たちが言うような中国の民衆を相手にするというようなことを言つておられるのですが、これは少くとも我々が外務委員会において条約を審議する言葉としては非常におかしいと思う。政府が本当に中国の民衆というような空漠たるものとの政治的平和、通商関係を樹立することをお考えになるのであるか。私はそれは非常におかしな考え方ではないかと思うのですが、私の見方が間違つておるかどうか。この場合には、政府は飽くまで如何なる状況においても中国と言つている場合には、現在の中共政権的なものは全然問題にしておらない、未来永劫にそういうものは問題にしない、民衆だけを相手にしておやりになるお考えであるかどうかを伺いたい。
#82
○国務大臣(岡崎勝男君) これは曾祢君にも似合わない、人の言葉尻をつかまえたような言葉であつて、私は中国の民衆と条約を結ぶというようなことは、そんなことは何も常識的に考えられないことであります。ただ私の言うのは、今中国の大部分を支配しているのは現在の中共政権である。ところがただ早く平和関係に入りたいというのは、中共政権は今のところ日本に対して非常にいろいろなことをやつておるので、この政権とは話合いが困難である。あるが、而もその下にある中国民衆とは長い間の特別の絆があるので、早く、結びたいというのはこの中国民衆を対象にして考えているという意味です。
#83
○曾祢益君 どうもその点はわかつたようなわからないような……まあわからないと言つたほうがいいのじやないかと思いますが、私の言わんとするところは、言葉尻をつかまえる意味じやないのですが、吉田書簡の唯一の意味がここだと思うのですが、やはり将来の問題については本格的に統一政権との間に完全な政治的及び通商、経済的関係を結ぶんだ、これを基準とし、そうして暫定的には台湾政権との間にいわゆる修好条約を作る。それからアメリカとの関係において、余計なことを言つていると思うのですが、中共政権との間には条約を結べない……これはやはり第一が基本原則であるべきであつて、第三の言い過ぎたことがここにまで累を及ぼして、将来未来永劫にです、仮に国際情勢も変り、中共が国連からの侵略者の制裁の、まああれが追放解除ができたような場合を考えて、それでも共産政権だから飽くまで未来永劫に相手にしないというほど愚劣な書簡ではないように私は思つて伺つたわけなんです。まあその点に関して、将来のことだからわからないならわからないでもいいと思うのですが、中国というものはやはり中国の統一政権、それが内容が何であるかは別であると思う。どの政権であるということは別だと思うのです。こういうふうに理解することが私は正しいのじやないかという意味で外務大臣の御答弁を求めるという意味です。
#84
○国務大臣(岡崎勝男君) それはその通りです。
#85
○曾祢益君 その点はわかりました。
 そこで、どうもやはり重要な点について十分なるお答えがないのですが……。それから総括論でありますが、多少内容にも関連するので、その点はお許し願いたいと思います。外務大臣がまあしきりにこのできたものを弁解されるのは、これは誠に御尤もであるのですが、中国の民衆との関係を培養して、この中国本土との関係は何とかやつて行かなけりやならないと同時に、その政権とは条約を結ばない。一方この議題になつております条約はそういう問題には触れない。そこで非常に大きなまあブランクが出て来るわけなんですが、併しこの条約全体が然らば中国本土或いは中共政権に全然無関係であるかと言えば、もとよりそういうものでないことは明らかであつて、先ほどお答えがはつきりなかつたのですが、何と申しましても吉田書簡と相待つて、この条約が台湾にある一つの政権に対して、その将来中国全体の主人となる……この条約に使つている言葉にもつと忠実に言えば、その支配権が拡大された場合に、その拡大された支配権に従つて日本はそれを認めて行く。即ち台湾政権が中国を支配した場合に、この条約によつて日本は台湾政権のみが中国全体の主人となることを予想して、そのときには中国全体の政府として認めるということの予約にこれがなつておることは疑いない。現状においては適用範囲は支配する範囲に限る。併しこれは自動的に伸縮自在であると言つては、アンドとオアの問題はもつと詳細な議論を必要とするが、縮のほうは別として、中国全体に仮に拡がつた場合には、これはこの条約の効果によつて、国民政府のみが中国の全体の主人であることの予約になつておるという点はないのか、これはあると思うのです。それでも中国全体の問題についてはこれは触れないのか。現に台湾政権の現状における程度の必要なことだけを規定しておるということが言えるかどうか、この点とそれにやはり関連するのですが、議定書だと思うのだが、とにかくこの条約の議定書その他の附属文書の中で賠償問題を取扱つておりますが、中華民国国民政府が役務賠償を放棄したということは、これは中国の二つの政府の間の争いの問題は別として、日本が受益者としてこのことを受取ることはいいといたしましても、その殆んど代償的に、日本としては国民政府のほうにその利益を与えてしまつている点はないのか。つまり日本の在外資産だけが、役務賠償を自発的に中華民国が放棄したので、サンフランシスコ条約十四条に基いて同国、即ち中華民国、言い換えるならば国民政府に与えらるべき、「及ぼさるべき」というのは与えらるべきと読んでもいいと思うのですが、「唯一の残りの利益は、同条約第十四条の(a)の2に規定された日本国財産である」、このことは直接に中国全体の主人から見るならば、これは日本政府がいわば譲るべからざるもの、辛く見れば譲るべからざるものをこの国民政府なるもののために譲つておる、こういつたような効果を現にこの条約においては起しておるのではないか、これでもなお且つ政府としては全く現在の台湾政府との間の修正関係を樹立する必要の限度においてこの条約を作つたと言えるかどうか、その点を明確にお答え願いたいと思います。
#86
○国務大臣(岡崎勝男君) これは日本の海外財産、在外資産でありますが、これはすでに条約では確認されておりますが、現実の事態としては、国民政府は曾つて中国にある日本の財産は全部接収しておつたと了解します。そしてこれがその後他の政府へ移つた場合もありましようけれども、日本としてはそれがどちらの政府のクレイムであるかということは、これは両政府間できめらるべき問題でありましようけれども、前に在外資産を放棄するということはサンフランシスコ条約できまつておるわけですから、これを放棄したということについては、これは併し中華民国政府がクレイムされる場合もありましようけれども、同時にここで適用範囲のことがありまするから、この適用範囲によつてこの問題も御了解願いたいと思います。
#87
○曾祢益君 それは少くともこれは細目になつて余りよくありませんが、根本に触れるからあえてお許しを得てやつておるのですが、それはどうも外務大臣おかしいでしよう。はつきりと同意された議事録ですか、これによつて日本国代表が言わなくてもいいようなことを言つておるのですね。役務賠償を自発的に放棄したので、サンフランシスコ条約の第十四条(a)の2に規定された在外資産だけが、これはもうすでに放棄しておることは国会の承認を経ているので問題はないのでありますし、これだけが中国に及ぼさるべき利益である、こうお書きになつておるならば誰も問題にしない。だけれどもこの同国というのは中華民国ですよ。あなたのおつしやつておる中華民国、即ち国民政府のためにこれを放棄しておるのだということを日本代表のほうからわざわざ言つおるのはどういうわけか。これはまあ非常に細かいことのようだけれども、こういう点がやつぱりあるのですよ。そうすれば決してこの条約全体としてあなたの言つておられる方針が貫かれておらない。まあ俗に言えば一本譲るべからざるものをやつておる。実害のないということは現実に問題がありましよう。現に中華民国国民政府が実権を持つておつた時代に処分してしまつておる。併し多くの不動産のごときは処分できるものではありません。そういうものは残つておるのでございましよう。それが現に又確かにこの放棄すべき財産というのは台湾、膨湖島のごとき分離すべき地域のものでないということだけは外務大臣とくと御承知の通り、即ち中国本土における財産を調べてみれば、その実権を握つておるものは中華民国国民政府でなくこれは中共政府にきまつておるのです。そういうものが現に握つておるのに、いやお前はやらない、あれは国民政府にやつてしまうというような、同意したような議事録をお作りになつておるのはどういうわけですか。
#88
○国務大臣(岡崎勝男君) それは御承知のように、中華民国政府が支配権を争つておる地域は台湾、膨湖島でなくして、それ以外にあるのであります。現に海南島でも支配権を争つておる。或いは金門島とか、舟山列島とか、その他大陸の一部にあるかも知れません。支配力が確立しているかどうかは別として、少くとも争つていることは事実です。そこで適用範囲の問題になつて来るのですが、将来支配力が及ぶ場合にはその支配力の範囲内にある在外資産は国民政府に、中華民国政府に帰するというのでありまして、ここにも中華民国政府に在外資産は全部与えたと別に書いてあるのでなくして、中華民国政府に及ぼさるべき唯一の残りの利益はということになつて、そして適用範囲ではつきりしてある、こういう意味です。
#89
○曾祢益君 ここでこうあるけれども、例の最後の何でも使える切札としての適用範囲というやつで絞つておるがらまあ実害がない、こういうお考えでありますか。
#90
○国務大臣(岡崎勝男君) 実害があるとかないとかいう問題ではないと思いますが、勿論適用範囲がはつきりと、支配権が拡大されたならばその範囲内の在外資産は中華民国政府に帰するのはこれは当然だ、只今は争つておられる程度かと思いますけれども、その点ははつきりしないかも知れません。
#91
○曾祢益君 これは細目ですが、ここにこう書いてあるけれども、やはり適用範囲のほうのあれがあるから、これによつて全中国本土にある在外資産を国民政府に渡したということにはならない、こう解釈していいですか。
#92
○国務大臣(岡崎勝男君) これは私からはつきりこういう点を御答弁するのと甚だデリケートでありますが、ここにあるように「同国に及ぼさるべきは」と書いてあります。従つて適用範囲と実際の状況の結果によつて、及ぼさるべき利益のある場合も無論あります。併しこれはすべて適用範囲と関連があると思うのであります。御了解願いたいと思います。
#93
○曾祢益君 その点はもう少し私も研究しまして、そうして外務省にももう少し条約について御研究を願いたいと思います。今日はいずれにしても細目論は申上げない予定でありましたから、その点についてなお又細目論についての御質問を申上げる機会を与えて頂きたいと思いまして、今日は時間もありませんから、この程度で一応打切ります。
#94
○委員長(有馬英二君) それでは本日はこれを以て散会いたします。
   午前四時五十八分散会
ソース: 国立国会図書館
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