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1951/06/26 第13回国会 参議院 参議院会議録情報 第013回国会 外務委員会 第43号
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1951/06/26 第13回国会 参議院

参議院会議録情報 第013回国会 外務委員会 第43号

#1
第013回国会 外務委員会 第43号
昭和二十七年六月二十六日(木曜日)
   午後二時十分開会
  ―――――――――――――
  委員の異動
六月二十日委員川上嘉市君辞任につき
その補欠として柏木庫治君を議長にお
いて指名した。
  ―――――――――――――
 出席者は左の通り。
   委員長     有馬 英二君
   理事
           徳川 頼貞君
           野田 俊作君
           曾祢  益君
   委員
           杉原 荒太君
           團  伊能君
           平林 太一君
           柏木 庫治君
           伊達源一郎君
           岡田 宗司君
           大隈 信幸君
           大山 郁夫君
  国務大臣
   内閣総理大臣  吉田  茂君
   外 務 大 臣 岡崎 勝男君
  政府委員
   外務政務次官  石原幹市郎君
   外務参事官
   (外務大臣官房
   審議室勤務)  三宅喜二郎君
   外務省アジア局
   長       倭島 英二君
   外務省欧米局長 土屋  隼君
   外務省条約局長 下田 武三君
   水産庁長官   塩見友之助君
  事務局側
   常任委員会専門
   員       坂西 志保君
   常任委員会専門
   員      久保田貫一郎君
  ―――――――――――――
  本日の会議に付した事件
○中華民国との平和条約の締結につい
 て承認を求めるの件(内閣提出、知
 議院送付)
○北太平洋の公海漁業に関する国際条
 約及び北太平洋の公海漁業に関する
 国際条約附属議定書の締結について
 承認を求めるの件(内閣提出、衆議
 院送付)
○インドとの平和条約の締結について
 承認を求めるの件(内閣提出、衆議
 院送付)
○国際情勢等に関する調査の件
 (最近における国際情勢に関する
 件)
  ―――――――――――――
#2
○委員長(有馬英二君) それでは外務委員会を開会いたします。
 岡崎外務大臣が御出席でありまするから、本日は総理が御出席になるまで、インドとの平和条約締結の問題と、それから中華民国との平和条約、なおそのほかに北太平洋の公海漁業の条約の問題、この三つの問題が日程として挙げてあるのでありますが、なおこのインドのほかにあります二つの条約につきましても、一括いたしまして御質疑がございましたらば、外務大臣に対して御質疑を願いたいと存じます。
#3
○杉原荒太君 日華条約についてお尋ねしたいと思うのです。この間までにこの条約の根本性格等に関する問題をお尋ねしたのですが、今日は個々の具体的の問題について二、三お尋ねしたいと思います。
 第一は、台湾、澎湖島にある日本側の財産、殊に私有財産の処理の問題についてであります。この条約によりますと、それらの問題の処理は日本政府と国民政府との間の特別取極による、こういうふうになつておるわけであります。これは何もここで初めてきめられたことじやなく、サンフランシスコ条約でもこういうふうになつておるわけでありまするけれども、いよいよ国民政府との間にこういうことが更に取極められたので、この問題がサンフランシスコ条約よりも更に具体処理に接近して来たわけでありまするからお尋ねするわけですが、先ず第一には、こういう財産の処理を両国政府間の特別取極によるという、そのいわゆる特別取極というのはどういう性質のものであるか、つまり条約によるというのか、憲法にいうところの条約によるという意味なのか、そうでないのかという点が第一点であります。先ずその点からお伺いします。
#4
○国務大臣(岡崎勝男君) これは無論具体的に話してみませんと、どういう形式によるかという問題も具体的にはきまらないわけであります。考え方としては、これは条約という名前がつくか、協定という名前がつくか、その他の名前がつくかは別としまして、広義の条約であると、こう考えております。
#5
○杉原荒太君 それでは、つまり例の行政協定の場合非常に問題になつたのですが、こういうふうに書いてあるからといつて、何もそのいわゆる特別取極に委任してあるというふうにはならない、こういうふうに理解していいわけですか。
#6
○国務大臣(岡崎勝男君) そう我々も思つております。
#7
○杉原荒太君 それからもう少しこの問題の処理の内容についてですが、殊に私の問題にしてお尋ねする点は、日本側の持つている私有財産の処理というのは、言うまでもなく憲法との関係において、非常に軽々しく取扱い得ない性質のものであるが故に、これの特別協定の内容のきめ方、又このきめる場合の法的手続というのはこれは非常にむずかしいだろうと思うのですが、これは例えば私有財産権を実質的には取上げてしまうとか、つまり私有財産の消滅を来たすようなこともその処理の中に含まれ得ると予想しておられるかどうか。
#8
○国務大臣(岡崎勝男君) これは一々具体的に当つてみないと、方針だけでもきまらないと思います。事実は個人の例えば不動産のごときは、殆んど大部分が処分済みであると了解しております。つまり接収して買却したりしてある。そこで我々の考えとしては、これは朝鮮の場合も同じでありますが、何でもかんでも元あつた私有財産はこつちで取上げてしまうという主張でもないのです。要するに相手の国が経済的に立ち行くことが先ず第一に必要なことであります。その間に私有財産の尊重の原則は認めて、これを如何に調整して行くかというところに交渉の中心があると考えるのであります。原則としては、私有財産尊重という建前で行きますが、それをどういうふうに処理するかということについては、個々の問題にもよりましようけれども、いろいろの考えで、それを又基礎にして経済的な協力というようなことも行われる場合もありましようし、実際問題をできるだけ頭に入れて、両国の経済がうまく立ち行くようにやつて行きたいという考えであります。
#9
○杉原荒太君 只今のお話よくわかりますが、それに関連して私がここで特に問題にしてお伺いする点は、その私有財産、例えば台湾にある日本人の工場というもの、これの処理について、日本の政府とそれからその財産の所有権者との関係のことで、これがなかなか、仮にその所有権を否定するといいますか、それが消滅してしまうという結果になるような措置を政府で国民政府との関場係においてとろうとしても、それがいろいろ憲法上の関係その他で、そう簡単に法律的に措置がとれないのじやないか、若しとるとすれば、それがための立法措置乃至それと同じ効力を持つ法的措置を必要とするものじやないかと思うのですが、その辺のところをお伺いしたい。
#10
○国務大臣(岡崎勝男君) 私も漠然としてはそういうふうに思います。併しこれは戦争に伴う止むを得ざることでありますが、例えば戦災の保険なども一律に切下げてしまつたこともありますが、又例の新らしい紙幣との交換のときに、第二封鎖とかいろいろな問題も出て来たわけです。又軍人に対する恩給等、いろいろ無理な処置もあると思います。これはいろいろな法律措置等も講じてやつておるのであります。そこでこの問題は、単に台湾だけの問題でなくして、中国本土その他各地にある日本国民の在外財産も大体はそのようなことになると思いますが、それを如何に処理するかということは、将来の財政的な立場も考え、実際問題としては方法がありましようが、それを規定するものはやはり法律によらざるを得ないのじやないか、こう考えております。
#11
○杉原荒太君 今のでよくわかりますが、殊に台湾などはほかの交戦国の領域だつた所とは遣うので、その点において又特別の性格があるのですから、余計今のような考慮を慎重にする必要があるだろうと思います。
 それからその次にお尋ねしたいのは、戦犯に関する日華条約の規定と、それからサンフランシスコ条約の戦犯に関する規定との関係なんですが、今度の日華条約のほうから行きますというと、戦犯に関することは、もう中国側ではこれは問わないということになるわけですが、一方サンフランシスコ条約のほうに、中国だけが中国の裁判で以てきめた戦犯の関係は、これは今度の条約ではつきりしておりますけれども、一方この極東裁判所できめた、そうしてサンフランシスコ条約によるというと、この極東裁判所に代表を送つておつた国の過半数の同意を得なくちやならん、この過半数を得なくちやならないということになつておるわけですが、その関係から見るというと、やはり中国もその過半数の国の中に加わることになるかどうか、その適用まで、今度のこの日華条約のほうで適用を排除されるかどうか、その点をお伺いしたいと思います。
#12
○国務大臣(岡崎勝男君) これは条約の文面から言いましても、又平和条約の関係から言いましても、この極東軍事裁判で判決をされたものにつきましては、今度の条約では何ら規定をいたしておりません。従つてその問題は別と我々は考えております。従つて市ケ谷で裁判を受けた人等は平和条約の規定により処理せられる、ただその場合に、過半数の中で旧中国国民、中華民国政府の意向はどういうふうだということになれば、すでに自国の裁判したものについても釈放を承知しておるのでありまするから、市ケ谷のほうの問題についても特に異論はないかも知れません。これは実際問題であります。
#13
○杉原荒太君 それは非常に結構で、私の解釈もそうなるし、実際もそうなつたほうがいいと思うのですが、それならよくわかります。
 それからその次に、何条でしたか、この条約に特別の規定のあるもののほか、この戦争の結果生じたいろいろの問題は、サンフランシスコ条約の相当規定によつて処理するというふうに書いてあるが、そのいわゆる相当規定というのは、具体的に言えばサンフランシスコの第何条、第何条というのをここに一つそれを列挙してもらいたいと思います。
#14
○国務大臣(岡崎勝男君) これはいろいろの問題があろうかと思いまするが、例えば差当り適用を予想されると思われるものは……。
#15
○杉原荒太君 私の聞きたい点は、例えばじやなく、例えばならもうわかつていますから、どれ、どれ、どれで、これ以外は適用がないということを知りたいのです。
#16
○国務大臣(岡崎勝男君) これは併しそうはつきりいたしておれば、むしろはつきりそう書いたのであります。併し例えば賠償とか引揚とかいう問題もありまするが、その他にもあるかも知らんと考えられますので、将来そういう場合があつたときはそれも考慮に入れますから、はつきりこれとこれとこれというふうには行かないかも知れません。が第六条、第十四条等はこれに無論該当し得る、こう考えております。
#17
○杉原荒太君 それでは私、具体的にどういうものが現実問題として上つて来るかということは、これは個々に当つて見なければわからんことですが、法律問題としてかくかくの問題はこういう規定の適用があるということは、これは法律問題として言えることだろうと思うのですが、そういう趣旨でそれじや私が少しお尋ねしますが、このサンフランシスコ条約の十五条は適用がありますか。
#18
○国務大臣(岡崎勝男君) 十五条は適用のあり得るものと思います。
#19
○杉原荒太君 十六条、十七条、それから十九条……。
#20
○国務大臣(岡崎勝男君) これは私は十六条はないと考えております。
#21
○杉原荒太君 ない……。
#22
○国務大臣(岡崎勝男君) それから十七条、十九条はあり得ると考えております。
#23
○杉原荒太君 あり得る、この今度の条約によると、債権債務に関するサンフランシスコ条約の規定は適用がないとなつておるのですが、これはどういう理由でそういうふうになつたか、又適用がないというと、その結果は一体どうなつたか。
#24
○国務大臣(岡崎勝男君) これは現に、何と言いますか、台湾に居住するものと日本人との間のものは、この条約で言いますと第三条、この日本と中華民国の条約の第三条で処理されます。
 それからその他の地域におりまする中国人につきましても、日本としては、戦争中に中国人は敵国人という扱いをいたしておらなかつたのであります。戦争による影響というものは、日本人と中国人との間の債権債務の関係にはないと考えております。従つて十八条の適用は実際上必要としない、こう考えております。
#25
○杉原荒太君 この中でちよつと私わからなかつたところがあるのですが、戦前の債権債務の関係は戦争によつて影響ないという点はわかりまするが、その債権債務そのものが存在しないというふうなあれがわからなかつたのですが、そのある場合にはどうするかという問題をお聞きしている。
#26
○国務大臣(岡崎勝男君) 存在しないというのではなくして、債権債務については、台湾との関係はこの第三条で処理される、その他のものは影響がないから、十八条を特に適用することがない、そう考えます。
#27
○杉原荒太君 それだから結果から言えば適用せん、これの適用はないといつた場合でも、適用した結果どうなるかというと、これは前の債権債務というのは履行しなくちやならんということなんでしよう。そういうことでしよう。そうするとそれはむしろ当然の法理を確認しておるわけですね。それだからこれは適用がないと言つてみても、その結果を言えば、やはりこれは履行はされなくちやならんということを認めたことになるでしよう。それまでのことでしよう。つまり戦争によつて影響はない。つまり戦争によつてそれが消滅するとか、或いは消滅事項などの関係にも及ぶかも知れんが、併しそれは一般の法理でむしろ行くべきであつて、併しその結果はこれを適用した場合でも、併しそういうふうになるのだから結果は同じことになるのでしよう。
#28
○国務大臣(岡崎勝男君) その通りです。特に十八条を適用する事例がない、必要がない、こういう意味であります。従つて普通の観念で行く、従つて債権債務は無論ある。
#29
○杉原荒太君 消滅してしまうとか、そういう乱暴たことになるのじやないですね。
#30
○国務大臣(岡崎勝男君) そういうことじやない。
#31
○杉原荒太君 れからもう一つ最後にお尋ねしたいのですが、何条でしたか、最恵国待遇を規定してある中で、ちよつとわかりにくい、非常にむずかしい規定があるのですが、議定書の中に、「海運、航海及び輸入貨物に関する最恵国待遇並びに自然人及び法人並びにその利益に関する最恵国待遇」の原則をきめておいて、そうしてその次に、今度はそれを制限するような条項があつて、その最恵国待遇を与える結果が実質的に内国民待遇を与えるようになる場合に云々という規定があるが、これは非常に難解の規定であるが、これは一体どういう必要があつて、どういう趣旨の、どういう理由の下にこういうものを置いてあるのか、それからその理由とするところが、趣旨とするところがこういう書き方によつて、これが一体目的を達成しておるかどうか、非常に疑問に思うのだが……。
#32
○国務大臣(岡崎勝男君) これは私もなかなかわかりにくい規定でして、要するにその中華民国政府の法律と、日本の法律とが違うのですから、同じように最恵国待遇といつて、日本のほう、だけが実際上内国民待遇になつてしまう場合を顧慮したわけです。こういう規定を設けた詳細は、交渉の当事者の倭島局長からお答え願いたいと思います。
#33
○政府委員(倭島英二君) こういう場合は或いは具体的に出て来るかどうか、ちよつとまだ具体的にこの件ということを挙げにくいのでありますが、ただ中華民国と我が国との関係におきまして、双方が最恵国待遇を与えるということになります際に、それが結局中国が我が国で最恵国待遇を得る結果、ほかの国へ内国民待遇を……、つまりこの条約の建前は内国民待遇を書いておりません。最恵国待遇一本で行つております。併しながら最恵国待遇を中華民国は享受するということであります際に、最恵国待遇と内国民待遇とをほかの国の関係から日本で得る。それでその最恵国待遇の関係から中華民国が日本で内国民待遇と同一の事を受ける、日本も最恵国待遇を中国でエンジヨイしておるという関係で、結果においては内国民待遇を日本で得るという、つまり最恵国待遇を持つておるという結果、中国においても日本においても相互に内国民待遇を得るというような事態が生ずる際に、その際に、このどつちか多くなつてどつちが少くなるというようなときには、双方に不利な状態を生じますので、それでこれを結局申しますと、その少い範囲のところでお互いに我慢しようという規定で、これは念のために置かれたわけであります。これは例えばこういう件についてどういうことが現に起つておるという事例はまだ実はないのでありますが、そういう場合が起り得るかも知らない。将来最恵国待遇と内国民待遇とを日本が他の諸国と通商条約で設ける、又中華民国も他の諸国と設けるということになります結果、こういうことが生じ得るということが考えられましたので、最恵国待遇、まあこういうような規定を念のために置いたわけであります。
#34
○杉原荒太君 まあ最恵国待遇と内国民待遇を内容から比較すると、必ずしもまあ内国民待遇のほうが更に手厚いことになるとばかりときまつていないわけですな。却つて外国待遇のほうが内国待遇のほうよりもいい場合だつて現実にある。日本だつて現実に私はあるだろうと思う。今のようなことだつたらどうですかね。先ず日本としてはなんでしよう。成るべく、たとえ内国民待遇のほうが最恵国待遇より内容においていいという場合には、そういうことを広く認めないというほうがいいでしよう、日本の大原則としては……。
#35
○政府委員(倭島英二君) この日華関係につきましては、特にこの通商関係の問題では暫定的に一年間にしようと、ここに最後にきめておりますように、これは一年間の効力にしようと、そして今の御意見のように、ものによつては内国民待遇と最恵国待遇とによつていろんな場合を生ずるかも知れませんけれども、大体多くの場合、内国民待遇というのは国内のものだけにしておきたい。そいつを併し差支えないなら外国人にそれを及ぼしていいというようなまあ感じの関係でございます。それで内国民待遇の問題を規定するのは余ほどやはり慎重に考慮したいというのが中国側の希望でもございましたし、我が国においても、内国民待遇というものを考える際には、まあ慎重に研究をしたい、いずれ本格的な条約を結ぶ際には、内国民待遇と最恵国待遇と双方を考えたいという希望でございますけれども、差当り一年間の暫定と申しますか、差当りの取極めとしては、最恵国という関係だけを取極めておけばいいのじやないのかというのがこの合意の主なる理由でございます。それでそれじや内国民待遇は一応落してしまう、但しその一年間にいたしましても、最恵国待遇を認める結果何か起るかも知れない、内国民待遇の関係が起るかも知らん、そこで一つ念のために書いておこうじやないか、それは結構だろうということで、こういう合意になつたのでございまして、書き方その他少し難解の点はございますけれども、先ほど申上げましたように、念のためにこういうものを置いたという事情でございます。
#36
○杉原荒太君 今の御説明でわかりましたがね。併し日本としては、この最恵国待遇主義に対しては、余りいろいろの制限をくつ付けない行き方のほうが、ここでちよつとぐらい何かあつたつて、最恵国待遇に何ら内容の紐付きでないような最恵国待遇をとつて行くのが日本の通商政策上非常にいいと思いますので、こういう付けても付けんでもいいようなものを付けているからお尋ねしたわけです。
#37
○政府委員(倭島英二君) 御趣旨はよくわかりました。
#38
○杉原荒太君 ついでに細かい点を、字句をお尋ねしますが、中華民国大統領となつておる、私は、これはなぜ総統としないで大統領ということにしたか。それともう一つ、これはミスプリントじやないかと思うくらいに、どこでしたか、今の最恵国待遇を制限しているところに、金融活動の次に、「一方の当事国がその国民にもつぱら留保する活動」とありますが、これは「もつぱら」というのは国民の上にくつつくのを、これは何かミスプリントじやないかと思つているのですが、もつぱらその国民に留保するという意味じやないのですか。「その国民にもつぱら」というのでは、日本語の意味をなさんと思うのです。
#39
○国務大臣(岡崎勝男君) 只今の第一の御質問は、これは変な字のように私も思いますけれども、どうも専門家の間で、総統というのを訳すのはほかにどうも方法がないということで、総統という字をそのまま持つて来てもよかつたのじやないかと思いますが、総統というのは又何だか日本語でないというようなことで訳したわけであります。余りうまくできていないのは事実です。この点は文章の問題で、私にもどうもよくわかりませんが、十分研究してみます。
#40
○杉原荒太君 極く小さな点を二、三日華条約の条文について伺いたいのですが、第十条の規定ですが、この前、他の委員からの御質問があつて、第十条の規定が、その趣旨は台湾、澎湖島の住民、即ち日本の国籍を失うこれらの人々を、便宜的に第十条によつて中国の国籍あるものとみなすと、これがまあ第十条の趣旨だという御説明だつたと思うのです。それはわかるのですが、ただこれらのものをも中国に国籍を有するものの中に含むという書き方がしてあるので、従つて中華民国の国民というものは、これらの、ここに掲げてある地域以外の国民は当然に中華民国の国民である、こういう建前から出発しておることになるわけですね。そうすると、第十条の解釈から言えば、やはり中華民国の国民というものは、簡単に言うならば、中国大陸の中国人もこの規定の解釈からは当然に中華民国国民である、こういうことになると思うのですが、そういう解釈でよろしいかどうか、それを伺いたい。
#41
○国務大臣(岡崎勝男君) それは非常に御説明はむずかしいのですが、終戦当時には、これはもう間違いなく中華民国国民政府がありまして、中華民国というものは要するに日本の対象になつた国であります。それからその後やはりこの中華民国というのは、現在の中華民国政府というものも中華民国でありますが、要するに日本に関する限りは、いわゆる中国の戦争前、戦争後もやはりこの中華民国という国名となつておるのでありまして、ほかの国名にはまだ日本に関する限りはなつておらないのであります。従つて非常にこれは書き方が妙であります。例えば中国の国籍を有するものというふうになつておりますが、中華民国の、何と言いますか、ここに言う中華民国の国民というのは要するに中国の国民、こうならざるを得ないと思います。
#42
○曾祢益君 ここをまあ私は特に中国と中華民国との異同について大分御質問したのですが、今日はそれを繰返すつもりもないのですが、ここの中国の国籍というのは、英語で飜文的な意味があるので、チヤイニーズ・ナシヨナリテイと書いてあるのでここはまあいいと思うのです。その点を私は今申上げておるというよりも、実際的な問題は、この十条の解釈は、要するに中国本土人も中華民国人と取扱つておるのかどうか、台湾や何かをここで便宜的に、中華民国の国籍があり、その国籍を管理しておるのが、国籍を管理もおかしいですが、事実上の管理をしておるのは国民政府だと、こういうことになつておるのですね。そこであなたが今おつしやつたような中国本土の国民も中華民国人であり、いわんや中国人であるには違いないのです。だから中国人であるのはわかつておるけれども、この条約上中華民国人であるのかどうか。それから引続いてそうなれば、例えば中華民国国民政府が発給した国籍証書を中国本土の国民に対して日本が認める建前になつておるかどうか、そこがはつきり知りたいわけです。
#43
○国務大臣(岡崎勝男君) これはこういうふうに申したらいいと思うのですが、中華民国の国民というのは、この文章で非常にこんがらかりますが、中国の国民、その大きな中国の国民の中に台湾、澎湖島の住民等がやはり入るのだ、こういうふうに御解釈願いたい。
#44
○曾祢益君 それは当然十条の趣旨がそうなのであるから、この条約上の一つのいわば擬制として台湾人、澎湖島人、その子孫が中国人である、こうみなして行こうじやないかという合意がこの十条ですから、従つて中国人であるのみならず、中華民国人であり、それを管理する当局は中華民国国民政府である、ここまでは私は明らかだと思う。それはいいのですが、そうでなくて、然らばこの書き方から言えば、あなたの言う中国人或いは中華民国人という台湾にいない人達は一体どちらに入るのか。どちらに入るのかということは、中華民国の国籍を有するものであり、私が今具体的に御質問したように、然らば国民政府が発給する国籍証書を日本政府が認めることまで伴う規定であるかどうか、台湾、澎湖島以外の本土人の取扱いがこの十条からどうなつて来るかということの御説明が少しもない、あなたのほうからは……。
#45
○国務大臣(岡崎勝男君) これは条約とは別なんでありまして、条約自体はもうここにいろいろ書いてありますが、要するに台湾、澎湖島関係の人間の国籍とみなすというだけの合意であり、そこで今度それと関連して、中国本土の国民、これをどう取扱うかというのはむしろこの条約でなくして、例えば出入国管理令とか、ああいう一連の法律によるのでありますが、そのほうでは従来中国人を中国人として登録されたり、或いは国籍証書を持つておつたり、いろいろいたしております。それをそのまま認めて行こう、こういう方針なのであります。ですから、例えば今度新らしく日本におるこういう人々が中華民国政府の発給する証書をとらなければならんということは、暫定的であるのか、どのくらいかかるかわかりませんが、少くとも当分の間はそういう必要はない、今まで通りの書類で中国人たる国籍を認めて行こう、こういう方針であります。
#46
○曾祢益君 十条の書き方からいうと、非常に私は今の御答弁では無理だと思うのです。中華民国の国民にはこれこれを含むものとする、こうなつておるのであつて、台湾、澎湖島の住民は中華民国の国籍を有するものとみなすと、こう書いてあれば何らの疑義が出ないのです。なぜこんなことを書いたかというところに問題があるのです。併し政府がそういうふうに限定的に御解釈になるというならば、それはそれでよろしいですが、そうすると中華民国政府のほうは、当然に中国全体の国民に対して管轄権を持つておるという主張を持つているでしよう。又それが故にこういつたような書き方を向うは希望したんだと思うのですが、その向うの主張や何かはどうであつても、日本政府の取扱としては、従来外国人登録令等によつてやつていたように……、要するに本土出身の中国人にはこの国民政府、台湾政権発給の国籍証書を強要しない、又そういう態度は、この十条の規定にかかわらず、蒋介石政府においても合意であると、こういうように解釈してよろしうございますか。
#47
○国務大臣(岡崎勝男君) 中華民国政府は、いつも言う通り、中国全体に対しての支配権を持つておると主張をいたしておるのであります。それに対して従つてこの適用範囲という必要があるので、この条項もやはり適用範囲の規定が適用されるわけです。従つて書き方は、これは中華民国政府の希望もありまして、こういうふうになつておるのでありますが、そして又中華民国政府としては、日本におる中国人に対しては支配権を持つということを希望いたすと考えておるのでありますが、実際上の取扱は先ほど申した通りであります。
#48
○曾祢益君 そういたしまするというと、規定はこうなつているが、中華民国政府は勿論主張は持つておるけれども、附属交換公文第一号によつてその主張を現実に日本に、何といいますか、日本に対して通す、日本側はその主張を容れるという点は、やはり現実に支配する領域が現状の通りであればそういう問題は余り起らない。これが国民政府がどんどん中国本土内で領域を拡げて行けば、それに従つて今後そういう主張を日本も認めなければならなくなるかも知れない。その認める義務は適用除外の附属交換公文によつて抑えてあると、こういうことになるわけですか。
#49
○国務大臣(岡崎勝男君) まあ簡単に言えばそういうことになりますが、要するにその規定は日本の国籍を失つた人々に対してどういう待遇をするかということを主眼としておつて、大きなそういう問題までここで規定したわけではないので、従つてこの十条の目的は、要するに今まで日本人であつたもので、今度国籍を失つたものはどういう取扱をするか、それにまあ限定されているわけです。
#50
○團伊能君 曾祢さんの今の質問に連関して伺つておきたいと思いますが、只今の外務大臣の御説明はよくわかりましたが、実際問題として入国管理令のお話に触れましたが、これから将来の日本にいる中国人というものの国籍と申しますか、或いは日本にいる中国人を管理する本国政府との間のそういうものの取扱いについて、少し加えて御説明を願いたいと思います。
#51
○国務大臣(岡崎勝男君) これは国籍等に関しましては、永住権を認めるとか、或いは滞在の権利を認めるとか、或いは帰化とか、いろいろ問題がありますが、これについては、従来その人が持つておるペーパーといいますか、国籍なり何なりを証明する書類があります。それをそのまま認めて行くという方針であります。
#52
○團伊能君 そういたしますと、従来の台湾人が、この場合に台湾の中華民国の国民になるということはわかつておりますが、今度は従来中国人として日本で取扱つていた大陸の人で、大陸におるものの帰属する本国政府と称するものとの関係はどうなりますか。
#53
○国務大臣(岡崎勝男君) これは本人の考えによるわけです。若し中華民国政府の保護を受けたいと思えば、中華民国政府のほうへ登録するでありましようし、そうでなければ、その外にあるところであれば、まだ外交関係が成立しておりませんから、そういう特殊の保護を受けることができないという関係になつております。併しながら一般に外国人として、日本に正当に登録しておるものは、これは法律によつて適当の保護は受け得るわけです。それ以外の、領事館の保護とか何とかいうことになりますと、今ない場合がある。但し先ほどちよつとはつきり申しませんでしたが、例外は多少あるかも知れませんが、日本におりまする大陸関係の中国人は、従来中国ミツシヨンは終戦当時は全部の大陸を支配しておりましたので、恐らく殆んど洩れなく一応はこの中国ミツシヨンに当時登録したと我々了解しておるのであります。
#54
○團伊能君 そうすると、この条約によりましてだんだん起つて来ることは、国内におりまする中国人の利害関係の問題でございますが、現にそういう事件、そういう行為があることを仄聞いたしておりますが、例えば台湾政府の中華民国政府に対してのロイアルテイを忠実にここにいる中国人に要求する、若しもそれを応じない場合には保護をしないばかりでなく、それに対して責任をとらないという形でいろいろな事件が起り、且つそれに対して、むしろ中華民国でない、本土大陸から来ました中国人は日本政府に対して一種の保護を要求しているというようなことも聞きますが、そういう事象が起つておりますか、或いは起り得る可能性がありますか。
#55
○国務大臣(岡崎勝男君) その具体的の事項は私は聞いておりません。が、日本政府としては、ここに在留する外国人に対してどの国籍を持てということを強要する立場にはない。従つて中国人でも、若し中華民国政府の保護を受けたくないというものを、無理に保護を受けろというわけにも行かない。併しそうかといつて、在留する外国人は、在留する外国人としての保護は日本政府から一般に受けているのは当然であります。居住の安全とか、いろいろの種類の保護は当然受けておる。
#56
○曾祢益君 次に、附属交換公文の最後のところですが、第三号についてですが、要するに漁船のことなんですが、「中華民国の当局がだ捕し、」この中華民国当局の当局というのはどういう意味なんですか。私の伺いたいのは、これは国民政府系が拿捕したものに限る、こういう意味なのかと思うのですが、その点はどうなんですか。
#57
○国務大臣(岡崎勝男君) これは言葉がちよつとおかしいかも知れません、今となつては……。併し中華民国政府の機関が拿捕したものということであります。従つてその他の政権が拿捕したものはこれは別であります。
#58
○曾祢益君 そうすると、併し中華民国政府というものは、時には、一九四五年九月二日当時においては前中国の主人であつた歴史的の事実があるのですから、どこでけじめをつけるのですか、中共側の拿捕したのと、そうでないのと、
#59
○国務大臣(岡崎勝男君) これはそういう関係もありまして、つまり非常にけじめがはつきりしない場合があります。従つて当局というような字を使つたわけであります。つまり台湾に中華民国政府があつても、直接的には成る期間は本土にあつた場合もあります。それに拿捕されたというような場合もあり得ますので、当局という字を使つておるのであります。これは船自体におきましては、はつきり中華民国政府関係の機関に拿捕されたものは二十九隻ということはわかつております。これについてのみのことであります。
#60
○委員長(有馬英二君) それでは暫らく休憩にいたします。
   午後三時三分休憩
   ―――――・―――――
   午後三時二十九分開会
#61
○委員長(有馬英二君) それでは休憩前に引続きまして開会いたします。
 只今吉田総理がお見えになりました。かねて申上げました通り、本日は日程に上してあります。三条約につきまして、総理に対する質疑を行います。質疑の順序についてお諮りをいたします。質疑の通告順で行いたいと思つております。只今の事務当局のほうの順序では、平林君、金子君、曾祢君、岡田君、兼岩君、こういうような順序になつておるのでありまするが、総理は大体一時間御出席のように御通告があつたのでありますので、そういたしますると、大体お一人十五分ということにお願いをいたしたいと思います。但し只今金子君、岡田君、兼岩君の三君は御出席がないので、人を派しましたが、どうも事によると出席できないかも知れないということでありますから、そういたしますと、大分時間が余りますから、平林、曾祢両君におかれて、それだけの時間を十分お使いになつてもいいかも知れません。但しあとから又御出席になりましたら、中途でおやめを願うかも知れませんから、さよう御了承願います。御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#62
○委員長(有馬英二君) それではそういうことにお願いをいたします。
 それでは最初に平林君に質疑をお願いいたします。
#63
○平林太一君 この際項目を提示いたしまして、質疑を一括して申述べたいと存じます。どうぞそのお心組で順次御答弁を煩わしたいのであります。
 第一に申述べたいと存じますことは、只今委員長より三条約に対しての質疑というお話がありましたが、当然それにも相関連いたしまして、当面緊急の問題として質問をいたしたいところを先ず以て先に申上げたいと思います。
 国連軍は、今回休戦会談進行中の現在におきまして、何故に水豊発電所を爆撃したか、国民等しくその内容を知りたいと存じておるところであります。このことは、国連側の政策の変更を意味するものであるかどうか、この点お伺い申上げるのであります。更にこの結果が休戦会談に及ぼす影響及び見通しは如何なるものであるか。これと平行いたしまして、国連の今回の水豊ダム爆撃の措置について、中共、北鮮側が報復処置をとる虞れはないか。とるとすれば、どのようなことが予想せらるるものでありますかどうか。更にこれが原因となつて、大戦に発展する危険はないかどうか。中共、北鮮側の出方はどのような出方をするものであるかどうか。更に目下このことに当面をいたしまして、諸外国の批判及び反響というようなものが大いに注目せられるのでありまするが、このことにつきまして、先ず以て総理の御支障のない御範囲において御所懐を承わりたいのであります。
 次は、北太平洋漁業条約は、今後アジア諸国等との漁業条約を締結する場合に、日本の立場を不利に導く虞れがありはしないかとの説をなすものあり、又しばしば巷間これが心配を伝えられておるのであります。即ち侵された公海の自由が先例となつては困るのであるという心配であります。現に我が国の漁獲の実情は、戦前の二百分の一に減退をいたしておるところの現状に鑑みましても、北洋漁業の再開による殊にさけ、ます等を対象とするものは極めて重大に取扱われるべきものであると思いますが故に、この点総理のお考えを承わりたいのであります。勿論本条約は、私の記憶するところによりますれば、昨年の十一月、いわゆる昨年の中秋の候の前後に取結ばれたのでありますが、当時といたしましては、サンフランシスコにおける平和条約締結の直後第一回に結ばれた条約でありまして、当時私の考えを以ていたしましても、いわゆる米国が非常な寛大と寛容を示して、この講和後の第一回の我が国に対する非常な好意を示したということを忘れることができないのであります。併しながら講和の発効を済ましました今日におきまして、これに対しまする非難と心配がいたされて参つたのでありまするが、これらのことにつきましても、すでに条約を締結いたしました我々は、当時の米国に対する信を今日といえども忘れることができないのであります。このことを併せて勘案いたしまして、この条約に対する是非の感覚を公正にいたさなければならないと私は存じておるのであります。具体的のことにつきまして、総理より伺いたいのであります。
 次に、この日華平和条約は、吉田総理のダレス特使宛書簡の線に沿つて締結せられたと思うのでありますが、この点併せて総理から御所見を承わりたい。更に第一条の関係から中間大陸について戦争状態が終了いたしたと思うのでありますが、この点に関連をいたしまして、この点如何ようにお考えになりますか、又これに関連をいたしまして、今後中共政権に対する我が政府の方針は如何ように臨まれるか、如何ようなお考えを以て臨まれるのか、承わりたいのであります。
 次に申述べたいと思いますことは、日印平和条約のサンフランシスコ条約と異なる特徴をこの機会に総理からこれを挙げて頂きたいと思うのであります。私もひそかにこれを承わりたいのであります。この条約の成立を機として、将来の日印友好関係を如何にして一層緊密ならしめて行くかということは、我々はむしろこの条約の本質を通しまして、深い感謝と親愛の情を以ちまして、これに思いをいたしておるのでありまするが、この点総理のお考えを承わりたい。更にインドと鉄鉱開発の噂が先般来よりこの日印条約の締結を契機といたしまして伝えられておりまするが、どのようなこれが経緯、条件によつて実行せられるのでありますか、切にこれが実現を希望いたしまするが故に、殊にこのことに対して詳細のことに対しまして承われれば、非常に仕合せと存ずるのであります。
 最後に申上げたいと思いますことは、現下外交の全般に亘る問題について、総理の御見解を伺いたいのであります。即ち言葉を換えて申上げますれば、我が国外交の根本原則は何かということについてであります。即ち政府において国家外交の根幹、方針ともいうべきものが樹立されず、又それらの基本原則が国際間の相互の間に了解、徹底されていないとするならば、今後の対外交渉に当り思わざる誤解を受け、又それによつてしばしば事の前に先方から軽侮を受け、或いは軽視せらるるというような影響も受けるのではないかということを虞れ、且つ憂えるのであります。さらでだに独立後日なお浅き今日の国際情勢下に処するに当りまして、ただ事件が起るごとにその都度都度の行当り主義の追随、服従の余儀なき結果に至るということにも相成るにはあらざるやと心配をいたすのであります。故にこの際講和の発効を完全に期して多難の中にこれを成就し得ましたる吉田総理におかれましては、定めしこの機会において、将来に期するものがあり、我が国外交の基本原則、根本方針をここに置くべきものとして肝胆をお砕きになられておることと拝察をいたすのであります。以て外務大臣以下、我が外交当局の向うべき方針をここに明らかにせらるるということを私は深く期待して止まないのであります。この総理大臣といたしまして、今いわゆる独立国として我が国の自主外交がここに新しく発足するに当りまして、この方針の確固下動のものを明示せられまして、又これを内外に闡明せられますことによりまして、時に事あり又時の変化によつてその内閣変るといえども、この根本方針は、暫らくの間次代の内閣がこれを継承し、これを伝えて我が国外交の不動の態勢、対外交渉の大原則というものをここに樹立いたすということに相成ること極めて緊要な事柄と存じまして、この点まさに国家の運命を今後左右する重大なる原因とも相成るべきことを深く痛感いたしまするが故に、この点あえて総理のこれに対しまする御見解を承わりたいと存じます。取りあえず以上であります。
#64
○国務大臣(吉田茂君) お答えいたします。水豊爆撃をするに至つた原因等については、私は存じませんが、併し私のこれは想像であります。或いは外務大臣において私の所見を補正して説明して頂けるかと思いますが、私の承知いたしておるところでは、特に水豊爆撃はこういう原因で、こういう経過でということは存じておりません。存じておりませんが、大体から考えて見まして、国連軍としては、これを爆撃する必要を感じ、又爆撃をいたした結果、これが休戦条約の交渉にどういう悪影響を及ぼすか、中共軍にどういう影響を及ぼすか等については、国連軍において相当仔細に検討いたした、然るのちに決行をいたしたかと存じます。この爆撃によつて直ちに戦局が苛烈になるとか、或いは更に一層進んで大乱に及ぶということは、私は想像いたしません。何となれば、最近においてチヤーチル首相も、又アチソン国務相も、又アイゼンハウアー元帥も、最近におけるヨーロツパの状態を主として言うのでありましようが、共産国との間に対して、国連といいますか、少くとも英、米、仏等の戦力は相当増強せられたのであるというような言い方をいたしております。即ち戦争の危険は一年以前よりも薄らいだといつておるのでありますから、その論拠は存じませんが、相当根拠のある、責任のある言明であろうと思います。而も三人の責任者がそう言つておるのでありまするからして、この水豊爆撃によつて更に戦局が新たなる発展をするとか、或いは休戦条約の交渉に悪い影響を及ぼすとか、或いは中共軍が更に進出して、ここに一層大なる戦争を惹起すというようには私は想像いたしませんが、併し然らばどういう根拠であるかと言わるれば、事実は私は存じません。相当の根拠のある理由によつてこの水豊爆撃を決行いたしたのであろうと想像いたします。
 それから北太平洋条約が他の国との間の漁業条約に影響を及ぼしはしないか、即ち公海の自由云々というお話でありますが、公海の自由ということは、いろいろなところにおいてすでにこの原則は例外がほうぼうにおいて行われておるのであります。殊に北太平洋の漁業においては、魚族の保護或いは又その漁業を将来長く継続せしむるために適当な漁獲の保護、或いは又各国互いに協同して、そして漁業の永続を図つたところに趣意があるのでありまして、徒らに公海の漁業を制限したわけではないのでありますが、目的は魚族の保護というところにあるのであります。この魚族の保護ということは、ただに北太平洋において必要なるのみならず、至る所においてこれを必要といたすのでありますから、若し魚族の保護という観点からして公海の自由も束縛しなければならん、或いは互いに自制しなければならんという場合には、これは日本政府もこれに協調いたすべきものと思います。
 それから日華条約は吉田書簡に基いたかど。吉田書簡なるものは、これは日本政府として今後とるべき政策の一端を言い現わしたものであつて、即ち善隣の誼を全うしたい。隣国とは友好関係にある、或いは国連とも協力主義で行くということを闡明いたしただけでありまして、又併しながら書簡に書いてあります通り、日本の政府の外交政策について、多少議会その他における議論から誤解を生じ、若しくは疑惑を生じたというので、その疑惑を一掃するために書いたのであります。もとより日華条約は、早く隣国との間に条約関係に入りたいという考えから入つたのであります。これが将来中共政権に対して云々ということでございますが、これは、日華条約は一に台湾政権との同の関係においていたしたのであつて、中共政権についての関係はないのであります。今後どういうふうな関係に入るか、将来の発展に待つよりいたし方ないかと思います。インドとの間の条約等については、これはお話の通り、インドとの間に最も親善な政治、経済の関係を打立てたいという考えからいたしたのであつて、幸いにインドは、従来日本に対して最もいいと言いますか、日本に対して了解があり、又日本との関係をよくしたいということで、これは単に今日に始まつたのではなくて、終戦以来いろいろな事実にインドの好意は現われておるのであります。その日本に対する好意から、インド側からして成るべく早く条約に人りたいという友好的締結に至つたのであります。又インドの鉄鉱につきましても、やはりインドの好意から、日本との間に経済関係を打立て、又日本といたしては原料の供給を十分ならしめたいという考えからして協議をいたしておりますが、まだ或る約束をいたすところまで進展いたしておりません。
 我々日本政府の外交根本原則は何かと、これは申すまでもなく世界の各国との間の関係をよくいたしたいということは勿論でありますが、今日日本の政策に対して、過去の戦争その他の原因から申して、日本の外交に対して可なり疑惑があります。又誤解もあります。日本は相変らず軍国主義で行くんではないか、或いは又経済関係の上から言つて見て、不正競争をいたすのではないか。私は、日本の今日までのとつておつた、又今日以後においても不正競争をなすとか、或いは又日本の経済上の競争は他国にとつて恐るべきものがあるでありましよう。これが直ちに不正なりと断定すべきではない、この誤解は力をこめてこの誤解を解くことに努力いたしております。又日本が再び軍国主義に立直るのではないか、或いは警察国家になるのではないかといういろいろ疑惑もあります。これは多くは日本における言論からして、そういう疑惑を起しておるようであります。又破防法等において、あたかも日本政府が圧迫と申すか、圧制政治を行うのではないか、労働その他の争議に対して力を以て圧迫するのではないかというような疑惑が、日本の新聞その他の言論からして疑惑を与えておるようでありますが、これに対しては極力然らざることを弁明いたしております。要するに日本に対する誤解とか、疑惑を解くことができ、更に日本の外国との親善或いは経済を主としたもので、曾つてのように軍国主義、軍国的の外交をいたすのではないという、疑惑を解いて、そうして日本は一に世界の平和或いは世界の繁栄に協力する趣意であると、この趣意が徹底いたせば、自然日本に対する了解も進めば、又日本に対する好感も増進いたすであろうと思います。外交の基調は一にこの点にあるものと考えつつ、歩を進めて参りたいと思つております。
#65
○国務大臣(岡崎勝男君) 二、三点附加して御説明したいところもありますが、総理の出席時間は限られておりますから、私の御答弁は後にいたしたいと思います。
#66
○曾祢益君 総理に伺いたいのでありますが、只今平林委員から提起されました水豊ダム爆撃の問題でありますが、先ずこの問題について、日本政府に連合軍から相談か、或いは通知と言いまするか、予告があつたかどうか、この点を伺いたいと存じます。
#67
○国務大臣(吉田茂君) これは、私の承知いたしたところではありません。
#68
○曾祢益君 私がかようなことを伺いますのは、もとより日本が連合軍の軍事行動そのものに関与しておるわけではないのでありまするが、併しこの朝鮮動乱の拡大というような場合には、日本は最も近くにある国であり、現実には国連軍の基地的な性格にあるわけでありまするから、従いまして軍事行動そのものについての発言権或いは要求権を云々するのではなくて、併しその結果については、日本の立場というものは大いに尊重さるべきである。このことは、日本が特に国連軍に対しまして協力しておる立場から言つて、当然発言権があると思うのであります。従いましてこの特定の軍事的行動についての相談或いは予告がなかつたということは、今後における同様な問題、殊にいわゆる非常に大きな拡大を意味するような、例えば国連軍が満州を爆撃する、もとよりこれは相手の出方によることでございましようが、そう言つたような事件が起つたような場合には、総理におかれては、当然に日本の安全の立場から、国連側に対して事前に相談を受ける、このことを要求されるお考えであるか、この点を伺いたいと思います。
#69
○国務大臣(吉田茂君) お答えをいたしますが、只今申したように、水豊ダムの爆撃の結果その他につきましては、国連軍において相当の自信を持つており、これが拡大しないと考え、若しくは日本の安全に影響なしと考えてのことであろうと思います。従つて日本に対して特にあらかじめこういうことをいたすからと言つて、通告若しくは協議を必要とすることが、この場合においてはなかつたろうと思いますが、将来お話のような事態が起り、或いは直ちに日本の爆撃に移るとか、或いは極東における事態を悪化させるような原因となるようなことに考えられます場合には、当然話もあるでありましようし、当然に日本政府として説明を求めるということは、これは当然いたすべきことと考えます。
#70
○曾祢益君 了承いたします。次に、同じく平林委員から提起された中国問題でありまするが、私は、総理のダレス氏宛書簡は、一つの政府の政策の表明であると思うのであります。そこでこの政策が、今度出来た日華間の平和条約において、その政策がその儘と言いますか、根本において生かされておる。かように政策の立案者であり発表者である吉田総理はお考えになつておるか、この点を伺いたいのであります。
#71
○国務大臣(吉田茂君) お答えをいたします。この台湾政権との間の交渉は、いろいろな曲折を経ましたが、併し終始友好的精神と言いますか、余りむずかしい問題でもつてとやこうはいたしておりません。従つて私の書簡にある趣意は十分盛られており、又この条約関係に入つたことによつて、台湾政権との間、或いは台湾との経済その他の関係において、現にいい取引その他の話が進んでおります。故にこの条約関係のもたらすところの結果については、私は決して悲観はいたしておりません。
#72
○曾祢益君 まあ総理はこの後任者に対して、どうもやつたことがまずいというようなことはお認めになり得る立場にないと思うのでありますが、私たちが公平に第三者的に見て、吉田総理のダレス氏宛書簡の第一項と言いますか、これは私は対華政策の基本方針であつて、この点は国論の一致しているところではないかと思うのです。即ち窮極においては、中国との間に全面的な政治的及び経済的の解決をするんだ。これを基本としつつ、同時にその長期政策の上に立つて、これを乱らない範囲において……、あえてこれは私の註でありまするが、総理のいわゆる台湾政権、つまり国民政府と日本政府との間のまあサンフランシスコ条約に沿うたような修好的な条約を作る。修好条約という言葉は別に公権的にお使いになつておりませんでしようが、気持としてはそういう程度のものにする。そうして第三項においては、この中共政権との間には条約を締結せず……、まあその全体が私は決していいと言つているわけじやありませんが、少くとも第一項の精神はこれは異論のないところである。ところが若し私の解釈……これはどうも当事者でないのですが、そういう妥当性のあるやに見えたこの政策が、実際は台湾政権との間に友好的に話を進めて行くうちに、第一項の根本原則を極めて晦冥ならしめるような重大な譲歩をやつて、厳かな両国間の平和条約をお作りになり、どこから見ても実に立派な形式を備えた条約をお作りになり、そして実は又附属交換公文において適用範囲を制限するというような、まあ悪く言えば非常に技術的な細工を施しておる。これではむしろ吉田書簡の基本精神というものを外しておるのではないか。結果において、先ほど平林委員も御指摘になつたように、少くとも第一条の戦争状態の終結のごときは、これは立派な両国間に全面的に効果を発生すべきものである。そういたしますると、或る新聞が伝えるごとく、これはその政権そのものの全面的な承認である、こういうふうにもとられるわけです。そうすると、つまり第一の基本原則というものをここで外したんたということになつているのではないか。そういうわけから私は、総理の吉田書簡の精神というものについて、この日華条約が沿うてないという考えを持つのですが、更にもう少し詳しく御説明を願いたい。
#73
○国務大臣(吉田茂君) 台湾政権と言つて、曾つて中華民国の政府の気嫌を悪くいたしましたから、中華民国政権と言葉を改めます。(笑声)そこで、いずれにしても中国との間の日本の関係が成るべく早く良好な関係に入り……良好と言うよりは、曾つてのごとく兄弟というようなところまで行きたいと思つております。けれども、御承知のごとく中共の政策は我々と政策において違つており、又幾多不愉快な事態が発生しておりますから、この事態を、事件を清算されない限りは、解決しない限りは、直ちに中共政府と条約関係その他に入るということは事実できないのでありますが、趣意とするところは、善隣外交と言いますか、中国との関係は最も重大なものと考えて、先ずその一歩として、中華民国政権との間に条約関係に入つたので、この条約がその趣意に沿わないと言われればそれまででありますが、我々の企図しておるところは、日本が全中国との間に善隣外交と言いますか、多年の間の関係を復活して参りたい、この趣意においては毫も変らないのであります。書簡を書いた時も、或いは送つた時も、又中華民国との条約関係に入つた時も、精神においては毫も変らないのであります。そのでき工合が悪いと言えばそれだけでありますが、趣意としては、決して書簡の趣意に反しないつもりでやつたのであります。
#74
○曾祢益君 総理の趣意は大体において賛成なんですが、例えば中共との間に即座に政治的条約を作れというような説がありますが、これが国連主義に立つ日本として賛成すべきことでないし、向うの条件が非常に不当であるというような関係から、そういうことも我々は言つてない。だけれど、一等重要な点は、たびたび総理が言われる全中国との善隣関係、これこそ基本であつて、これが吉田書簡の基本精神であるとするならば、全面的に賛成です。ところがやつたことは、台湾政権からも余り感謝されないようであるし、あなたの基本的趣旨というものは、あなたの後任者がお作りになつた条約によつて、これは形式的にも実質的にも非常に壊れている。勿論台湾政権との間にも和親関係を持つことは、誰も私は反対する者はないと思う。併しその和親関係が行過ぎて、基本目標にマイナスを来たすならば、それはいけないのだというのが、吉田書簡の基本精神ではなかつたかということを言つているのですが、これは結局見解の相違だと思いまするから、その点はもう追及しませんが、ただ一点です。従つて非常に俗語で申上げまするが、この日華条約のいろいろなテクニツクや綾にかかわらず、この条約によつて日本政府は、この中華民国国民政府というものを全面的な中国の主人として承認したものではない、こう考えまするが、その点は総理のはつきりしたお考えを、イエス・オア・ノーでお答え願いたい。
#75
○国務大臣(吉田茂君) これは条約にもはつきり書いてありますが、現に中華民国政権の支配しておる土地の上に行われる事実を認めて、その支配せられておる領土を持つ中華民国との間に条約関係に入る。将来は将来であります。併し目的は終りに一中国全体との条約関係に入ることを希望して止まないのであります。
#76
○曾祢益君 総理が、差紙でお話しにならないで、ずばりと言えば、全面的な承認ではないとこういうことでございましよう。
#77
○国務大臣(吉田茂君) そういうことです。
#78
○曾祢益君 結構です。
 第三点、国連軍の問題でありまするが、これは総理がやはり安保条約作成に当つてのアチソン氏との交換公文によつて、基本的な国連軍に対するその国連軍及び日本及び附近に支持することと、それに便宜供与を与えるという基本的なことは、これは了解されておることでありますが、併しながら現に日本におるいわゆる英連邦軍というものは、これはもう占領軍のステータスを離れており、且つ講和条約の条文に従つて、発効後三カ月内に日本を去らなければならない。然るにこの問題が、いろいろな関係がありましようが、現にはつきりした国連軍との関係ができておりません。而もその事態が非常に各地で下愉快な事件を起しておることも御承知の通りです。例えば労務提供に関するごたごた、或いは裁判権の帰属等に関しては、横須賀におけるフイリツピン兵の問題は、これは日本の裁判所がやつたけれども、併し英連邦軍の呉における裁判権については、日本の裁判所はまだ遠慮をしておる。これらの事態をはつきり清算して、速かにこの協定をすることは、日本の国連に対する協力の趣旨から言つても、又国連軍と日本の国民との親和関係から言つても、絶対必要だと思うのですが、これは一体いつおやりになるか、国会に対していつこれを承認をお求めになるお覚悟であるか、これをはつきり伺つておきたいのです。
#79
○国務大臣(吉田茂君) それは現にこの問題を取扱つておられる外務大臣からお答えをいたしたほうが正確でございますから、いたさせます。
#80
○国務大臣(岡崎勝男君) これは先ほども御答弁いたしましたが、相手国が約十四カ国ありまして、その間の話合いもなかなか時間がかかるようであります。併しながらもう大体方針もきまつたようでありますので、今までも下交渉として、個々の問題についてはいろいろ意見の交換はいたしておりましたが、今後更に交渉を進めまして、できるだけ早く話合いを成立させたいと思つて、只今努力中であります。
#81
○曾祢益君 最後の点にお答え願いたいのですが……。国会にいつ承認を求めるか、この点であります。
#82
○国務大臣(岡崎勝男君) これは無論調印をいたさなければなりません。時間の関係上、この会期については、いろいろ議論があるようでありますが、今予定されておる会期では間に合わないと考えられます。
#83
○曾祢益君 事前に御承認を求められる考えですか。
#84
○国務大臣(岡崎勝男君) 事前にというのは、又法律上の議論になりますが、締結の前に、つまり効力発生の前に承認を求めるつもりであります。
#85
○曾祢益君 最後に簡単に一問、これは総理に、大まかな点ですから、御返答願いたい。ソ連の代表部の日本における問題については、政府のとつた措置、即ち従来の対日理事会代表としての地位を認めないというこの態度を、それを通告する態度を私は是認するものであります。併しこれによつて事態がそこできまるのではなくて、我々日本政府の外交方針として、ソ連との関係はどうして行く、いわゆる居坐り的の代表部がそのままおるというようなことは、これは不当でありまして、これに区切りをつけて行くのは確かであるけれども、代表部をただ追い立てるというだけではなくして、できるならばそれをきつかけといたしまして、日ソ関係の懸案の解決、或いは部分的にも和親関係の樹立にプラスになるような方向に日本は運んで行かれるお考えであるか、勿論相手があることですから、何も向うの言う通りになるというのではなくて、気持としてはそういう積極的な和親関係の樹立に問題を持つて行くような御覚悟であるかどうか、これは一つ総理の肚として伺つておきたいと思います。
#86
○国務大臣(吉田茂君) 無論ソ連との関係についても、日本政府としてこれを重要に考えております。併しソ連代表部の撤退を求めることをきつかけとして、対ソ関係全体の関係にそれを利用しようというほどの大計画は持つておりませんが、併し仕合せにして、そういうきつかけができれば結構なことでありますが、いわゆる日本政府にアグリーメントされていないものを、そのままうつちやつておくことはできませんから、それで注意を促すところです。追い立てるほど過激なことをせずに、問題を解決いたしたいと思い、極く丁重に交渉いたしております。
#87
○岡田宗司君 首相にお伺いいたします。先ほど水豊ダムの爆撃の問題につきまして、これは国連軍において十分に効果を検討してやつておるから心配はない。又チヤーチルその他の考え方で、戦争は遠のくというようなことから、そう危険がない、こういうようなお話のように承わつておりました。併しクラーク大将等のことから見ますと、満州爆撃の問題がいろいろと論ぜられております。若しこれが行われるといたしますならば、日本にあるアメリカの基地が攻撃されるというような危険のあることも想像されるのでありますが、すでにそのために、アメリカ軍のおります基地の附近における燈火管制の問題が問題になつておる。そのように、やや緊迫したような情勢が見られるわけであります。この点について、政府はこういうような事態について、如何なる措置をとられようとするか、先ず首相の御答弁を伺いたいのであります。
#88
○国務大臣(吉田茂君) 只今政府として、この水豊ダムの爆撃によつて事態が急激に悪化したというふうには私は承知しておりません。いわゆる事態が非常に悪化したとか、険悪になつたという場合は、これは国連軍側からいろいろな話があるだろうと想像いたします。その話に基いて考えますが、今のところは非常に急迫した状態になろうという通告は受けておりません。
#89
○岡田宗司君 そういたしますと、燈火管制等のことについて政府はなおアメリカ軍と協力しておらない状態にある。こういうわけでございましようか。
#90
○国務大臣(岡崎勝男君) 燈火管制なるものは、ヨーロツパにおきましてもアメリカにおきましても、燈火管制というのでなく、防空訓練というようなものは、非常に遠隔の地でもやつております。従つて日本でも当然やるのが普通と思いますが、それがために国民に下必要な不安を与えることも考えまして、今慎重に研究中であります。それは水豊ダムの爆撃とか何とかということとは全然関係がないことであります。
#91
○岡田宗司君 その点につきまして、国連軍側のほうから日本へ協力を求められておる事実はないのでございますか。
#92
○国務大臣(岡崎勝男君) 特にございませんが、例えば国連軍は軍隊でありますから、その所在地においては、例えば防空壕を掘つて訓練をいたしております。そこでその場合、日本の労務者等は、これは日本人であるから、そんなことは必要はないところであるが、軍隊だけが防空壕に入つておりますと、却つてそれが何か日本人は防空壕に入れない、アメリカの駐留軍だけが防空壕に入つておるのだというので、差別待遇だというような逆の議論もありますので、その点でアメリカの駐留軍と共に、日本の労務者等もその中に入れていいのだという話はあります。又協力してくれるならば結構だから、一緒にやろうという話もありますけれども、まだそれほど具体的にはなつておりません。
#93
○岡田宗司君 首相にお伺いいたしますが、日本は平和条約、日米安全保障条約、行政協定、その他、漁業条約、それに規定されておるいろいろな問題におきまして、アメリカから求められておるところを殆んどすべて入れておる。こういうような状態であると思うのでございますが、これは対米外交の上において、日本側は一体アメリカ側に対してどういうことを具体的に求めようとしておられるのか、又求めておるのか。その点について吉田首相の御見解を承わりたい。
#94
○国務大臣(吉田茂君) 米国の関係において、いわゆるギブ・アンド・テイクで、こういうことをしてもらいたいとか、ああいうことをするとかいうことは、各般の問題に亘つておるので、これだけをこうしたということをここに申すのもどうかと思います。けれども米国側としては、日本の経済が自立ができるように、日本の安全が確保せられるように、あらゆる手段を以て日本と協力いたしてくれております。まあそう一々こうした、ああしたということは、これは米国側の関係もありますから申しませんが、単にアメリカにだけものをやつて、アメリカの求むるままに日本がこれに屈従しておるということは事実ないのであります。日本からも相当な要求をいたし、或いはできるものはいたしますが、できないものはできないということをはつきり答えておきます。
#95
○岡田宗司君 占領政策が解かれましてから、従来アメリカ軍が駐屯、或いは押えておりました施設、区域等につきまして、例えば個人の住宅であるとか、ゴルフ場とか、ホテルだとかいうものは大分件数にしてたくさん返還されたようであります。ところがいわゆる軍事基地等につきましては、却つて多くの面積が要求されておる、多くの施設が要求されておるというふうに聞いております。この行政協定が結ばれる際に、大体占領中におけるものよりも減るんだろうということが一般に予想されておつたのでありますが、却つて軍事基地等が殖えて来ておるということになり、特に最近のように、朝鮮の休戦がかなりもつれて参りまして、危険な状態になつて参りますというと、アメリカ軍の日本に駐屯する数も多くなるであろう。そしてそれによつて、より多くの施設及び区域が要求されるであろうと思うのでありますが、吉田首相は、アメリカ軍が今日の朝鮮をめぐる諸情勢から、日本に更に多くの基地を要求されるというときに、これをお許しになるという御方針でございますか。
#96
○国務大臣(吉田茂君) これは国連協力の趣意からして、或いは又日本の安全保障その他の条約上の義務遂行のために必要なものについては考えますが、併し現在までに私の承知しておるところでは、漸次解除されつつあると承知しております。詳しいことは岡崎外務大臣からお答えいたします。
#97
○国務大臣(岡崎勝男君) 現在は、占領中よりも軍事施設についてもその範囲が狭くなつております。かなりいろいろのものは返還されております。ただ飛行場の滑走路だけは、最近におきまして元のB二九等が小さくなりまして、もつと遥かに大きな飛行機ができたり、或いはジエツト機ができたから、滑走路を長くするという必要は、これは当然でありまして、事故もしばしばあつたのであります。従つてこの点は必要でありましようが、その他の点においては、全部占領中よりは減つております。
#98
○岡田宗司君 次に日本の警察予備隊は、御承知のようにマツカーサー元帥の命令によつて置かれたのであります。本年度において十一万に殖やされましたのは、私は、昨年の暮にダレス氏が来られまして、その要求に基くものだと思います。その後におきまして、新聞に伝えられるところによりますれば、まだ占領中のことでございましたが、司令部のほうからこれを十八万にすべしということを求められておるということが伝えられております。又その後においてもしばしばそういうことが伝えられておるのであります。一体アメリカ側のほうから、警察予備隊の増加につきまして、具体的に何か求められて、今日折衝中であるかどうか、或いは又若しこういうことがありとすれば、その点を明らかにされ、それがどういうふうなものであるか、その予算措置等がどういうふうに講ぜられるか、例えば次の国会に出されるものかどうか、その点をお伺いしたいのであります。
#99
○国務大臣(岡崎勝男君) 警察予備隊等は、これは担当大臣がありますから、私からは僭越でありますが、いろいろ国内の治安上整備をいたす必要もあり、将来増員する必要があるかも知れません。併しながら只今我々の承知しておるところでは、本年度中に更に増員するという計画はないのであります。又アメリカ側からかかる要請があるということはない。ないといいますか、そういうことはないのであります。
#100
○岡田宗司君 アメリカにおきまして、国防省関係の将軍或いはその他において、日本の再軍備計画なるものが伝えられておるのであります。例えば日本の陸軍を三十万、空軍を十万、海軍を五万の兵力を持つべしというようなことが伝えられておるのであります。こういうような点から見まして、アメリカ側において、日本の再軍備のことについていいろ計画を持ち、それを日本に示しまして、日本側においてそれを実現するようにということを求められたこともないのでしようか。
#101
○国務大臣(岡崎勝男君) そういうことはございません。
#102
○岡田宗司君 次に総理大臣にお伺いしたいのでございますが、総理大臣は、中共との貿易につきましてしばしば否定的な言明をせられております。財界方面におきまして、これを要望する声が今日の経済情勢と関連いたしまして相当高くなつて参つております。通産省のほうから出ました貿易白書等を見ましても、中共貿易の必要を認めておるようでございますし、又聞くところによりますというと、現在の貿易関係を少くともバトル法の程度まで緩和するというようなことが望まれておるよりであります。然るに外務省から出されました。パンフレットを見ますというと、可なりこれについて否定的な見解を述べておるのであります。こういうような状態で、政府の出されましたものについても意見の相違があるようであります。吉田首相は、この日本の中共貿易、これはいろいろ面倒な問題もございましようが、バトル法に示されておる程度までの緩和をお考えになつておるかどうか。又この点につきましては、アメリカ側におきまして、マーフイー大使がいろいろと否定的な見解を述べられておりますが、アメリカ側とこの点について御折衝になつておるかどうか、そういう点についてお伺いしたいと思うのであります。
#103
○国務大臣(岡崎勝男君) これは甚だ……、まだ外務大臣の所管事項の域を出ませんので、代りにお答えいたしますが、通産省との関係は、これは総理も心配しておられますが、今のところ外務省と意見の相違はございません。ただ見方は違いますが、意見については同じであります。
 それからバトル法のことをおつしやいましたが、今調べましたところでは、自由主義諸国の間でも、バトル法以上に中共に対しては輸出制限をやつております。併しこの足並を揃える必要があることはしばしば申上げた通りであります。何らかの方法で、将来こういう点では成るべく近く話合いをいたし、足並を揃えるということはいたしたいと考えております。
#104
○岡田宗司君 勿論中共との貿易等について、相当むずかしい問題があることは私も承知いたしております。これは今日の日本といたしましては、一々アメリカと折衝しなければきめられない問題であるか、或いはこれは、今日日本として独自で、日本の立場でいろいろときめられる問題であるか、その点をお聞きしたいと思います。
#105
○国務大臣(岡崎勝男君) これは国連の決議の趣旨によりまして日本もとつた措置でありまするから、自由主義諸国と緊密なる連絡をとつて、協議の上できめるのが当然であります。併しただアメリカと話をするのではなくて、自由諸国と隔意ない意見を交換した上で、皆の尤もとするところに落ちつくのが自然であろうと考えます。
#106
○岡田宗司君 これは総理大臣にお伺いしたいのでありまするが、先ほど来問題になりましたいわゆる台湾政権との平和条約が結ばれましたことが、今日中国の事実上の支配的政権であります中共政府との関係と言いますか、中共政府かち非常に日本が攻撃的に見られるようになつております。又中国国民も、日本に対して相当疑惑或いは敵視を持つようになつて、私どもは却つてあれを結んだために、日本にとつて今後の東亜外交の上に不利になつておるというように考えます。又台湾政権とああいう条約を結びましたために、アジアの他の諸国、特に新らしく独立しました諸国との間においても、その問題について意見が相違することが、今後東亜外交を進めて行く上に支障になると考えられるのですが、その点についての政府のお考えを承わりたい。
#107
○国務大臣(吉田茂君) 中共との関係等は、中華民国政府との間の条約によつて悪化したかしないか存じませんが、然らざるも、中共からは平和攻勢と言いますか、いろいろ自由放送その他によつて、政府として迷惑の事態が引き起されておると考えております。この事態を中共自身が是正してくれない限りは、幾ら中共と経済関係或いはその他に入ろうとしてもできないことであり、これは中華民国との間の条約ができたから特に悪化されたとは考えられないのであります。これは中共政府の政策もあるでありましよう。ありましようからして、中華民国政府と条約ができたからと言つて、中共との関係がそのために悪化したとは考えられません。又その他のアジア諸国との間の関係が、中華民国との間の条約ができたからといつて悪化したという形跡は我々認めないのであります。
#108
○岡田宗司君 最後に一つ……。最近経済情勢が非常によくない、日本の輸出貿易が振わない、こういう状態になつております。特に東南アジア地方等におきましては、それが非常な減退になつておるようであります。東南アジアにおきましては、イギリスとの競合の問題が起つておるように考えます。このイギリスとのこういうような関係が、戦争前におきましてもいろいろ大きな問題を起したのであります。現在から近い将来にかけて起るであろうと予想されるそういうイギリスとの経済競争の問題について、首相はどういうふうにこれを調整して、イギリスとの関係をうまくやつて行くか、どういうふうにされるか、その点についての方針をお伺いしたい。
#109
○国務大臣(吉田茂君) 今日これは日本ばかりではない、イギリスその他の貿易もやや中だるみというような状態に入つて悪化しておることは事実であります。そのために、日本に対する、日本の例えば紡績業とか、その他のイギリスと競争の地位に置かれてある産業といいますか、輸出に対して自然イギリス側がいろいろな疑惑というか、誤解というか、一種の感情を持つて、日本の競争を不正競争なりと言つて誹議しておることは、これは事実であります。併しその日本に対する攻撃は、多少感情もありましようし、過去における関係、因縁もありましようし、又現存の紡績その他のイギリスの不況から生ずる感情的いら立ちというような事実はあるであろうと思います。併し若しこれが単に感情とか、誤解であるとか、或いは疑惑から生ずるものであるならば、政府としてはその疑惑を解くことに全力を注ぐべきものだと思います。故に例えば紡績等に対する問題については、競争というか、イギリスとの間の感情、誤解等については、これは当業者として、日本の紡績業者として、向うの紡績業者と成るべく親密な、極く打ちあけた交渉、協議に入るほうがいい、即ち日英の当業者の間において協議会を開くというようなことが適当ではないか、現にその準備を進めさしております。それで本質上の競争、不正ならざる競争については、これはいたしかたがありませんが、誤解から生ずる疑惑等については十分打開いたしたいと思つております。又イギリス側も、これに対しては日本と極く打ちあけた協議に人りたいという考えを持つておるようであります。私の承知しておるところでは、この秋には会合が催されるのではないかと思います。
#110
○岡田宗司君 最後にお伺いしたいのは、アジアにおけるこういうような経済問題が相当むずかしいので、例えばインド等からアジアにおける経済、貿易等についての国際会議が招集されるような場合におきましては、政府はそれに参加するという用意があるかどうか、それをお伺いしたい。
#111
○国務大臣(吉田茂君) これは、そういう場合には参加するほうがいいと思います。又参加させたいと思います。
#112
○岡田宗司君 私はこれで終ります。
#113
○委員長(有馬英二君) 総理大臣に対する質疑はこれを以て打切りといたします。
#114
○国務大臣(岡崎勝男君) 先ほど平林委員の御質問の中で、一、二総理のお答えにならなかつたのがありますので、ちよつと補足いたします。
 一つは、水豊爆撃に対する諸外国の反響はどうかという点でありまするが、これは新聞等にはいろいろ伝わつておりまするが、公式な意見はまだ出てないようであります。政府としてはまだその点は承知しておりません。新聞程度のものはこれは無論知つておりますが、それは別に御披露するほどのものでもないと考えます。
 それから例の中華民国との条約の第一条の解釈についての御質問でありましたが、これにつきましては、前にもお答えしておりますが、法理的に見れば、第一条だけを考えれば、これは当然戦争状態の終了というような、国と国との間の包括的な法律関係でありまするから、その国の一部に限つてということに限定できないわけでありまして、第一条だけから見れば、当然これは包括的関係にあるのが当然であります。ただ現在の事態は、中華民国政府の支配する地域が限られておりますので、その戦争状態終了ということにつきましても、実際の効力の生ずるのは、結局中華民国の支配下にある地域に限られてしまうことは止むを得ないのであります。従いまして我々は、第
 一条についてはさような解釈をとつております。
 以上補足して御答弁いたします。
#115
○委員長(有馬英二君) それでは、本日はこれを以て散会いたします。
   午後四時四十一分散会
ソース: 国立国会図書館
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