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1951/06/07 第13回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第013回国会 水産委員会 第41号
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1951/06/07 第13回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第013回国会 水産委員会 第41号

#1
第013回国会 水産委員会 第41号
昭和二十七年六月七日(土曜日)
    午前十時四十六分開議
 出席委員
   委員長 川村 善八郎君
   理事 小高 熹郎君 理事 田口長治郎君
   理事 永田  節君 理事 林  好次君
   理事 佐竹 新市君
      石原 圓吉君    久野 忠治君
      鈴木 善幸君    冨永格五郎君
      二階堂 進君    松田 鐵藏君
      水野彦治郎君    木村  榮君
 出席政府委員
        外務事務官
        (欧米局長)  土屋  隼君
        水産庁長官   塩見友之助君
 委員外の出席者
        専  門  員 杉浦 保吉君
        専  門  員 徳久 三種君
六月六日
 漁船乗組員給與保険法案(田口長治郎君外十四
 名提出、衆法第六六号)
 水産業協同組合法の一部を改正する法律案(木
 下辰雄君外五名提出、参法第一〇号)(予)
五月三十一日
 田子漁港を第三種に指定の請願(宮幡靖君紹
 介)(第三三四三号)
六月二日
 内路港を漁港に指定の請願(玉置信一君紹介)
 (第三四二三号)
 上磯漁港の整備計画に関する請願(冨永格五郎
 君紹介)(第三四二四号)
の審査を本委員会に付託された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した事件
 漁船乗組員給與保険法案(田口長治郎君外十四
 各提出、衆法第六六号)
 公海漁業に関する件
    ―――――――――――――
#2
○川村委員長 これより水産委員会を開きます。
昨日田口長治郎君外十四名提出の、傭船乗組員給與保険法案が本委員会に付託になりましたので、これより本案を議題として審査に入ります。
 まず本案の趣旨について提出者の説明を求めます。田口長治郎君。
#3
○田口委員 ただいま議題となりました漁船乗組員給與保険法案提案理由を御説明申し上げます。
 御承知の通り、日本漁船の拿捕抑留は、最初にその発生を見ましたのは、昭和二十一年の十月三日でございます。それ以来現在まで支那東海、黄海及び北海道近海等で実に四百九そうの漁船が拿捕されておるのであります。これに伴いまして、漁船乗組員の拿捕抑留もまた総数が四千三百二十五名に達しておるのであります。もつとも抑留船員は漸次送還されて参りましたが、現在なお総数の一割強すなわち四百三十一名程度がまだ帰還していないような実情であります。
 この漁船抑留の事実は、日本の漁業にいかなる影響を與えるかということを考えてみると、事業主は唯一の生産手段であります漁船を拿捕されるのでありますから、ほとんど致命的の被害をこうむるのでございますが、一面、この漁船乗組員の生活状態においても、非常に深刻なる結果をもたらすのであります。大きな漁業会社は、一部の漁船を拿捕されましても、拿捕船員留守家族に給與を支沸うことができる実情でありますけれども、この種の漁業には、小さい船主がほとんど八〇%程度あるというような関係からいたしまして、これらの船主は、船を拿捕されると、抑留船員留守家族に紬與を支拂うことができない。こういうような実情になつておりまして、これが原因で、この船員の生健意欲が非常に低下をする。あるいは事業主は漁業経済に非常に困る。こういうような現状にあるのでありまして、漁業の生産という見地から、まことに遺憾に存じておるのでございます。この点に対しまして、当委員会といたしましては、これが救済方法について、五月十日に漁業制度小委員会にこの問題に対する処置を付託された次第でございますが、それ以来小委員会としてはいろいろな案について検討をいたしました結果、最後の案といたしまして、これは船主の保險制度で救済するよりほかに方法はないというような結論に到達したのであります。もちろんただいま起つている抑留拿捕は国際関係から起つたものでありますから、われわれといたしましては、国家において当然ある程度補償すべきものであるというふうに考える次第でありますけれども、目下の国の財政を考えますとなかなかさようにも行かないのでありまして、目下拿捕は日々起りつつあるというような現状から、早急にごの問題を解決しなければならぬという見地に立ち、船主の保険事業によつて解決をするということに結論を求めまして、この保險事業の法文化ということを五月十日以来努力して参つたのでございます。
 ただいまお手元に配付をしております案が小委員会として決定いたした法律案でございまして、その内容をごく簡単に申しあげますと、このわれわれの考えているところの漁船乗組員給與保険は、現在漁船損害補償法によつてあります漁船保険組合にこれを行わせる、言いかえますと、漁船保険組合の特別会計に一特別勘定を設定いたしまして、それによつて実行をさせ、この漁船保険組合の保険を国家が再保険するというような建前をとつたのであります一契約金額についていろいろ検討いたしました結果、漁船ごとにその乗組員の給與月額の合計額を基礎にいたしまして、合計額を越えない金額において、または合計額の百分の六十を下らない金額において契約金額を定めるということにいたした次第でございます。それから保険料の問題でありますが、事業主が負担をすることにいたしまして、乗組員に負担をさせないことにする。保険期間の問題は四箇月を原則といたしまして、漁船保険組合が別段の定めを省令の規定によつてすることができるというような建前にいたした次第でございます。
 第二に、保険契約の問題でございますが、事業主は漁船ごとにその乗組員の二分の一以上の者が給與保険に加入すべき旨の申出をしたときは、正当な理由がある場合のほか保險加入をこばむことができないということにいたしました。それから保険の事故でございますが、この法律に「抑留」という言葉を使つております。この抑留ということは、乗組員が自己の意思に反して日本国の領土外に連行留置された、その場合を抑留と称するのでございまして、この抑留が確認されたときに保険の事故が発生したこととするのであります。それから保険料の問題でございますが、純保険料は契約金百円について一円三十七銭程度になると思うのでございますが、これはあとで省令で正確にきまることと存ずるのであります。賦課金は純保険料の百分の十といたしております。それから保険金の支拂いの問題でございますが、組合の保険金支拂いの責任は保険関係が成立した日の翌日から始まるものといたしたのでございます。保険金の支拂額は保険事故のあつた乗組員に対する保険金獺とする、保険金の支拂い期間は乗組員が抑留された日の属する月から抑留の済んだ日の属する月までといたしまして、抑留された月及び抑留が終つた月の端数については日割計算をする、こういうことにいたしておるのであります。
 第三に、政府の再保険問題でございますが、政府は組合の保険責任を再保険する、そして再保険の金額は契約金額の百分の九十とする、再保険に要する事務費はその全額を国が負担することにしておるのであります。それから末端の漁船保険組合の事務費の一部は国庫が負担する、こういうことにしております。
 大体法案の骨子についてただいま申し上げたのでございますが、拿捕、抑留という不慮な事故に当面いたしました場合の事業主の窮状、漁船乗組員の深刻な生活不安の実施について御了察をいただきまして、何とぞ慎軍審議の上、すみやかに御可決あらんことをお願いいたしまして提案理由の説明とする次第であります。
#4
○川村委員長 これより質疑に入ります。本案について質疑があればこれを許します。――別に御質疑もないようでありますので、本案に対する質疑はこれにて終了いたします。
 次に本案を討論に付する段階でありますが、別に討論の通告もありませんのでこれを省略し、ただちに採決いたしたいと思いますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#5
○川村委員長 御異議なしと認め、さよう決定いたします。
 これより本案について採決いたします。本案に賛成の諸君の御起立を願います。
    〔総員起立〕
#6
○川村委員長 起立総員。よつて本案は原案の通り可決いたしました。(拍手)
 なお本案に対する委員会報告書の作成につきましては、先例により委員長に御一任を願いたいと思いますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#7
○川村委員長 御異議なしと認め、そのように決定いたします。
    ―――――――――――――
#8
○川村委員長 次に公海漁業に関する件について調査を進めます。この際本件について質疑の通告がありますので、順次これを許します。本日政府委員として外務省欧米局長土屋隼君、同じく水産庁長官塩見友之助君の両氏が出席されております。鈴木君より通告がありますので、まず鈴木君の御発言を許します。
#9
○鈴木(善)委員 今回政府から承認を求められております北太平洋の公海漁業に関する国際条約の内容について、政府当局にお尋ねいたしたいと思うのであります。
 日、米、加三国間に締結調印されましたところの本国際漁業條約は、わが国が独立後最初に締結する漁業條約でありますだけに、全国民が重大な関心を拂つているところであります。特に私どもがこゆ條約の交渉の進行中、国会を通じて国民の意思として政府に表明して参りました点は、公海自由の原則であるのであります。そこで本條約におきまして、この公海自由の原則が完全に貫かれておるかどうかということが、本条約審議の一番重要なポイントであると私は考えるのであります。
 そこでまず政府にお伺いいたしたいのは、国際法及び国際慣習上からいたしまして、公海並びに領水という、この公海と領水の意義につきまして政府の正しい見解を承りたいというのであります。すなわち私どもは、領水とは距岸三海里までの水域というぐあいに解釈をいたし、それより外の海はいわゆる公海であるというぐあいに解釈いたしておるのでありますが、政府はどのような見解をお持ちになつて、本條約を締結されたか。その点をまずお伺いしたいと思うのであります。
#10
○土屋政府委員 ただいまの領海並びに公海に対する御見解は、私どもといたしましても全然同じ趣旨をもつて、本條約締結の交渉に当りましても領海は三海里、その三海里以外の海域はすべて公海と了解いたしてこの條約の交渉に当りました。
#11
○鈴木(善)委員 そこで問題になりますのは、ただいま土屋欧米局長から御説明がありましたところの領水並びに公海につきまして、ソ連邦が、この国際通念とはまりたく相反するところの十二海里説を固執しているということが伝えられておるのであります。中共につきましては、いまだ私どもは中共の見解をつまびらかにすることができないのでありますが、おそらく中共もソ連と同じような見解をもつて臨んで来るのではないかと思うのであります。そこで国際法上認められております公海の概念の上に立つて日本の漁船が行動いたしました場合に、しかしてソ連並びに中共が、彼ら独自の見解をもつてこれに臨んで来るという場合に、そこに大きな食い違いが起り、これが漁業上の幾多の紛争を惹起するおそれがあると思うのであります。この点について、政府はいかに対処されるかをお尋ねいたしたいと思うのであります。
#12
○土屋政府委員 領海三海里の主張は、最近まで前世紀以来国際法上認められた大きな原則であることについては断言できると思うのであります。ただ、ただいまお話がございましたように、最近ソ連その他の国において十二海里ないしは六海里という特殊の主張をして来たわけでありますが、この特殊の主張をして来ました間に一つの御説明を加えたいと思います点は、従来領海三海里説に一つの例外があつたと思うのであります。その例外は保健的な措置から、あるいは関税上の措置から、領海三海里を出ても、彫る意味で公海におきまして漁船というものはその沿岸国の行政権を黙認して来た事態があるわけであります。そういう点から発展いたしまして、ソ連並びに少数の国が十二海里もしくはそれ以外の領海の擴張的な主張をして来たことは、これも事実であります。ただ現在の段階におきましては、ソ連その他の三海里以外の主張というものは、しよせんいまだに少数説といわざるを得ないわけでありまして、多数の国の承認を得た国際法上の慣習もしくは原則と認めることはできないと思うのであります。その関係から、わが国といたしましては、現在いまだに国際法上の慣習と考えられます三海里説を主張し、またこれを主張すべきであると考えておりますので、その点から、お話のようにソ連もしくはソ連と同趣旨であろうかと想像できます中共その他の地区につきまして、この十二海里説の主張というものが日本漁船の行動に対して、制限を加えるということの心配として考えられるわけであります。ただわが国は、先ほど申し上げましたように国際法上、現在において原則と認められる三海里を主張すべきことは当然でありまして、その点につきまして、ソ連もしくはその他の国の主張を認めることはできないわけであります。ただ現実の問題には、遺憾ながらこれら諸国との外交関係もいまだに確立されておりません関係上、外交上しからばいかなる手を打つか、強制手段にうつたえてこれを防止することができるか、いろいろの実際上の難点はあるのでありますが、法律上の問題といたしましては、日本は日本の主張を当然に守るべきだと考えております。
#13
○鈴木(善)委員 政府当局の領水並びに公海に対する明確なる御見解が明らかになつたのであります。そこで私は水産庁長官にお尋ねいたしたいのであります。今後国際漁業に対しまして、政府はただいま土屋局長から表明されました公海の解釈の上に立つて、距岸三海里のいわゆる公海であれば日本漁船の操業を自由に認める方針で行政の指導をなさるのであるか、また現実の事態を考慮されて、自発的に紛擾等を避ける意味合いで、何らかそこに漁業許可にあたつて自発的な制限を加えてこれに対処される御方針であるのか。この点は漁業者が非常に重大な関心を拂つておる点でありますので、この際政府の御方針を御明示願いたいと思うのであります。
#14
○塩見政府委員 現実の事態を考慮しまして、必要のある場合には自発的に抑制をして、紛争を起さないようにするような方針をとらざるを得ない場合もあると思います。そういうふうな方針で行つた方がいいと思われるような場合には、やはり自発的に抑制措潰を講じ得るということでお考えを願いたいと思います。
#15
○鈴木(善)委員 昨日の外務委員会との連合審査会におきまして、石原委員から御指摘がありましたが、韓国が李承晩ラインを一方的に宣言をいたしております。この李承晩ラインは、ただいま政府からはつきり御説明がありましたところの国際法上における領水、公海の観念をまつたく無視した一方的な、独善的な宣言であるわけでありますが、韓国のこのような主張に対しましても、政府は、ただいま長官からお話がありましたような態度で臨まれる方針でありますか、韓国に対しては、あくまでこの公海自由の原則を一歩も讓らずに、最たる態度で臨む御方針でありますか、その点を伺いたいと思うのであります。
#16
○塩見政府委員 韓国の声明しましたところの李ラインのような不当な線につきましては、われわれといてしましてはこれを認めるわけには行かないわけでございまして、もちろん漁業者の強い要望が多いわけでございますので、そういうふうな李ラインというものを前提としての自発的な抑止ということは、今のところ全然考えておりません。
#17
○鈴木(善)委員 日、米、功三国漁業條約におきまして、條約国の條約海域におけるところの漁船活動は、それぞれこの條約條項に基いて自発的抑制する、魚類の保存措置を講ずるということに相なるわけでありますが、條約国以外の国の漁船の漁撈活動はどのような関係に立つか、この点をお尋ねいたしたいと思うのであります。
#18
○土屋政府委員 この條約が締結され、有効になりましたあかつきに、條約の適用される、あるいはこれによつて義務を負う国は締約国以外にはないということは、條約の性質上遺憾ながらいたし方のない現実の事実でございます。従つて日、米、加三国が漁業協定を結びましたあかつきに、他のどこかの国がこの水域において漁撈に従事するという場合においては、第三国はこの條約に拘束されないわけであります。その結果、かりに保存措置を講じておるこの附属書に掲げたような魚類につきまして、第三国が実際の漁獲に従事する場合に、ここに大きな問題が起きますのは、條約自体の性質あるいは條約自体の効果ということに疑いが出て来るわけであります。この点からいたしまして、本案の第六條に、大体そういう事態もあり得るということを予測いたしましたので「締約国は、この條約の締約国でない国の国民又は漁船が委員会の事業又はこの條約の目的の達成を妨げていることを知つたときは、」この「妨げていること」というのは、どの程度を「妨げていること」というのか、これも一つの認定の問題になりますが、そういう場合には、他の締約国の注意を喚起して、各国は協議の結果、この妨害的な影響を輝けるために適当な措置を講ずるというふうに害いてあります。そこで適当な措置というのはどういうことかということでありますが、まず第一に考えられることは、そういうことであれば、第三国をこの條約に入れて、その国にも條約を適用するということがまず一番公平な手段のように考えられるわけでありますが、それもできない場合もございましようから、その場合には別段の外交交渉をするということにもなりましようし、またその外交交渉自身がうまく行かない場合には、はたして保存措置をこれ以上継続して行くことがこの日、米、加三国の間で有効な措置であるかどうかということについての考慮を加えなければならないわけであります。そういう点から日、米、加三国につきましては、少くともこの條約の適用によつて規定されたところを守る義務がありますが、これがお話のように第三国において漁獲に参加した場合の影響には、現実の問題に当面して保存措置をさらに講じて行くか、行かないとすれば、それを廃止するか、もし続けるとすれば第三国の処理をどうするか、外交交渉によりその條約加入を勧めるか、しかし條約にも加入しない、それからこちらの外交交渉にも応じない場合には、自発的に当方としていかに自衛措置を講ずるか、これは国際委員会が実際的にきめて行かなければならない問題だと思います。第四條の但書のあとの方につけ加えておりますように、この締約国以外の一または二以上の国が大部分を漁獲している漁種につきましては、従来の保存措置というものは守らなくてもよいという例外規定を設けておるのもその趣旨にほかならないのであります。
#19
○鈴木(善)委員 ただいまの御説明にもありましたように、私が指摘いたしました條約国以外の国の漁船の漁撈活動がまつたく自由である。これは本條約の一番の弱点であると私は思うのであります。要するに本條約の締結の動機がまつたく平等な立場において締結するとは言いながら、一方的に北太平洋において日本の漁船の漁撈活動を抑圧せんとするところの米並びにカナダの意図の上に本條約の締結が行われたものではないか、こういう見解が国民のうちに広まりつつあるということを、遺憾ながら指摘せざるを得ないのであります。この点について当局はいかなる御見解を持つておりますか、お尋ねしたいと思います。
#20
○土屋政府委員 この條約が日本のみに義務を課し、従つて日本の漁船のみに対する制限であつて、他のアメリカ、カナダの二国には何らの制限も及ぼしていないという御非難は、実はごの條約の中をよくごらんになりますと、附属書にございますが、さけにつきましてカナダ自身も日本とともに自発的抑止をする條項がごいますのが一つ。もう一つは、この條約はなるほど従来実績のなかつた日本もしくは部において、カナダが自発的な抑止するということに対する義務を負いますが、同時にアメリカもしくは場合によつてカナダもその判例になりますが、従来実績のあつた国は現在以上の漁業活動をしないという制限を受けるわけであります。つまり国際委員会で定められた共同の保存措置を守るという点につきましては、抑止する国も、また今後漁獲に従事する国も同じように條約の規定を受けるわけであります。つまりこの條約におきまして日本も義務を負いますと同時にアメリカもカナダも義務を負うわけで、その点は、実施国といたしまして各締約国が自主的に、自由意思によつて協議をして、お互いの義務を分担して行くという点において、條約の公平性というものはこの條約は約束していると私どもは考えるのであります。もう一つの点につきまして、日本が漁獲を自発的に抑止されるという点が非常に強く使われますが、形式的にこの條約がそういうことを朗らかにうたつて曲る点承多々あるのであります。ただ私はこの際、御質問の方並びに委員の方によく御了解をいただきたいと思いますのは、本條約は形において日本が片務的な義務を負つたように見えますが、これを実質上の点から検討をしていたがきますと、従来日本が実績のなかつたこれらの漁種について、またこれらの漁業区画におきまして、日本自身が実績のなかつたという点から抑えられて自発的な抑制義務を負うということは、実質上には実は日本の国民に大きな悪影響を及ぼして来ないということになるのではないかというふうにも考えられますので、私どもは一応形の上でも実質の上でも、日本がほかの国より特に重大なる不利のあるところの義務を負わされたというふうには考えないのであります。
#21
○鈴木(善)委員 ただいまの土屋さんの御説明では、私は遺憾ながら納得が行かないのであります。私が申し上げますのは、アメリカ並びにカナダは、実際問題として、北太平洋における漁傍活動において日本のみがその対象であることは、これは明らかなる事実であります。日本以外の国々の漁船の活動というものはほとんど歯牙にかけていない。そこでこれはもつぱら日本とアメリカとカナダの三国は平等の保存措置を講ずるところの義務を負うという形をとりながら、実質的には日本の漁船の漁撈活動を一方的に抑制するという結果に相なつておるのであります。事実この保存措置によつて利益をこうむるものはアメリカ並びにカナダの両国のみである。とられるところの魚はアメリカ並びにカナダの漁業者の利益を増進する結果になるのであつて、日本がそのわけ前にあずかる点は何ら記載されておらないのであります。かつてのラッコ、オットセイ條約におきましては、共同の保存措置を講じました。とつたところのラツコ、オットセイの分配については、締約国は平等なるわけ前にあずかるという公正な條約が締結されておつた。今回面府は公海自由の原則が本條約において貫かれたということをいつておりますが、この公海において三国が共同して保存措置を行つたことによる漁獲の農高限度の生産性の持続、こういう成果については日本は何らあずからずに、ひとりアメリカ及びカナダのみがこの利益にあずかるということは、はたして公海自由の原則が貫かれておるかどうかということを疑問とせざるを得たいのでありますが、この点、政府はいかようにお考えになりますか。
#22
○土屋政府委員 ラッコ、オツトセイについてのお話もございましたが、この点はやや性質が異なるかと思うのであります。そのゆえんは、さけ、ます、ハリバツトにつきましては、アメリカ、カナダが一たび資源が枯渇いみしましたのを、あらゆる金と費用を投じまして、長年にわたつてつちかつて来た保存漁場であります。この保存漁場につきましては、日本は当時実績もなく、それほどの関心もなかつたわけでありまして、従つてこの保存措置は従来日本は真に協力もして来なかつたわけで為ります。こういう点から目まして、今回の保存措置を講じて来た特殊の魚種に限りまして、その現実の事実を認め、そうして日本自身はほかの魚種につきまして、あるいはほかの漁場におきまして、漁獲に従事する余地が十分に北太洋ではあるのでありますから、そういう点から日本が米、加の従来の権利と実績を尊重し、そうして日本自身身が自発的な抑止をする、これは将来の公海運漁業につきまして実績を尊重すという大きな原則ら打立てることになるわけであります。しかもこれは三者協議の上でそういう結論に達したのであります。その点からいつて日本が自由平等の立場から手を引いてしまつたというわけではなくて、公海自由の原則というものは依然としてあるわけであります。これに対して従来のそういう点を考慮に入れて日本がここから一応手を引くというわけでありますが、日本の漁獲の権利が放棄されたわけではないのでありまして根本的に見まして、私は依然として公海自由の原則というものは認められておる、お互いの協議で制限されただけであるというように解釈するものであります。
#23
○鈴木(善)委員 私はこの点につきましては、あとに続く委員諸君のさらにつつ込んだ御質問があると思いますので、與党の委員としてこの程度にとどとることにいたします。次に保存措置を講ずる必要があるとして、附属書に明記されましたとこるの魚種は、これは本條約によつて今後五年間は調査研究の結果保存魚種としての條件を具備しなくとも、これに対して附属書からはずすとか、そういうようなことができないということに相なつておるのであります。何ゆえに政府はこの附属書に明記すべき魚種の選定にあたりまして、単なる書類上の資料や、あるいは日本を除く両国の一方的な調査の結果を前提として、これをうのみにして附属書に保存魚種として明記されたのであるか。私どもの見解をもつていたしますならば、この国際漁業委員会によつて今後日本とアメリカとカナダが平等の立場において共同の調査研究を遂げて、そして三国共同の調査研究の結果まさに保存魚種としての條件を具備しておると三国が確認をするに足るところの科学的結論、科学的基礎を得ました場合に、初めてれを付属書に明記すべきものである、登載すべきものであると考えるのであります。それであるのに、この魚業委員会で三国共同の調査研究の科学的基礎を発見せざる現段階において、何ゆえにあわててこれを附属書に記齢するを得なかりたか、この点を政府にお伺いしたいのであります。政府はこの点についてきわめて慎重さを欠いたのではないか、あるいはアメリカ並びにカナダに一方的にそれを押しつけれたのではないか、こういう点をわれわれは非常に疑問を持つのであります。このことを納得すおように御説明願いたいと思います。
#24
○土屋政府委員 附属書にあげました魚種につきましては、アメリカ並び日本の調書は、ほかの魚種に比較いたしまして比較的に詳細なものが手元にあつたわけであります。この調書両方を合せまして、大体においてここにあました魚種が、第四條に掲げてあります抑止の條件、保存措置の條件に合致すると認めるという現実的な科学的な條項があつたわけであります。その結果を附属書に掲げたことになりますので、卒然としてこの魚種をアメリカ並びにカナダの要求において載せたということはないわけであります。ただいつかも御質問がございましたように、さけ、ますにつきましては百七十五度線というのが両者の調書に大きな食い違いがございましたので、この点は遺憾ながら百七十五度を暫定線として一応の同意を見たということがきまらなかつた点でありますが、その他につきましては、両者に意見の食い違がないほど調書というものは比較的全であつたということが言えると思ます。それから五年間動かせないという事実につきましては、いろいろ調査してみたのですが、これらの魚種につきましては、長年間の科学的調査が必要でございますので、短かい期間の間に、従来三国が持つておりました長年にわたる調書をくつがえすという事実が出て来ないという点が、三国代表の間で大体意見の一致を見ました。その結果この條約について最初に規定した三つの魚種につきしては、一応五年間すえ置きをしよう、但しその間には本問題について全然委員会が手をつけないわけではございません。それは第三條の一の3にうたつてございますが、この記載された魚樋につきましても毎年この調査を続けて参りまして五年たつたあとで従来の保存措置を変更する必要があるかないかという資料を年々調査して収集して行くわけでありますから、この点につきましても、五年間の一応の期間をすえ置くことが適当と認めまして五年間すえ置くということが規定されたわけであります。
#25
○鈴木(善)委員 ただいま土屋局長からお話もございましたように、今回附属書に明記ざれました魚種について完全な科学的基礎の上に立つておるということは私ども了解できない。局長のお話になりましたように、さけ、ますにつきましては、西経百七十五度線というものについていろいろ議論がわかれた、それはアメリカ棲のさけ、ますが回遊になるものであるか、あるいはしからざるものであるかという点については、今後の三国間における共同の調査研究の結果を見なければ、科学的基礎を発見することができないというのが、動物学者の見解であります。こういう点を率然としてうのみにして、腰だめでもつて百七十五度線によつて妥協するというようなことは、あくまで科学を前提とし、正しい科学調査研究の上に立つた魚類の保存措置という條約の精神から申しまして、これは政治的な一つの堕落である、そういうぐあいに私ども思うのであります。今後いろいろ公海漁業についてのとりきめが行われると思うのでありますが、私はこの共同の保存措置を講ずべき魚種の選定につきましては、政府は、天下に恥じざるところの科学的調査研究の基礎を発見した上に、初めてこれをとりきむべきものであるということを主張いたしたいのであります。他に質問者もあるようでありますから、私はこの程度に質問をとどめたいと思います。
#26
○川村委員長 石原君。
#27
○石原(圓)委員 昨日の私の質問に対する石原外務次官並びに土屋欧米局長の御答弁の一部を要約いたしますと、今回提出された日、米、加漁業條約は、これまでの漁業上の国際條約の前例を破つて、国際間の公海企業の自由を制限する片務的の漁業制限を設定したこと、すなわち国際間の漁業企業の自由の原則に例外を設けたこと。この漁業制限を画する一線を條約の本文に明記したこと。これはおそらくは今回が例外であると思うのであります、前例があるならば、この際参考のために御提示を願つておきたいのであります。
#28
○土屋政府委員 ただいま公海上一線を画したことになり、自由企業に対する片務的な義務になるが、そういう前例があるかというお話でございます。この條約はある魚種につきまして一定の線を画したようなかつごうになりますが、一般漁業、ほかの漁種に対しては開放されておることはもちろんのことでございます。そういう点から見て一つの点があると思います。一方片務的に日本が義務を負つてしまつて、ほかの国に義務を負わせない、自由平等の原則を破つたものであるというお話ですが、前々から石原次官並びに私から御説明申と上げましたように、私どもは、この條約を片務的な條約だと思つておりません関係上、公海における企業自由の原則がこれによつて破られたというおしかりを受けるのはどうも困るのであります。そこで先例ということにつきましては、国際間の公海自由の原則はこの條約においても認められておりますので、ここでも破つていないと同様に、そういう先例があるということは、ちよつと考えられない、こういうことであります。
#29
○石原(圓)委員 一線を画したことの前例がないとすれば、それは自由平等の原則に対する日本の譲歩といわなければならぬと思うのであります。しかしごのことはこれだけを申し上げて次の質問に移ります。
 一九四五年九月二十八日にトルーマン大統領は、アメリカの距岸百五十マイルないし二百マイルの漁業保警。海区を太平洋に設定するという宣言をしたことがあります。しかるに列国の反対気勢を考慮して、一九四七年には国務長官の名において、このように特定国が公海を独占するようなことは延期すると、半ば取消しを意味する声明を発表していることは御承知のことと思います。これはわずかに距岸百五十マイルないし二百マイルという、公海においては一つの線にも足らないのでありますが、きわめて小さい公海である。それすらも大統領の宣言は取消されておるような世界的な輿論が起つたことは御承知のことと思うのであります。しかるに何事でありましようか、太平洋のまつただ中に線を引いて、これからアメリカ寄りには出漁をさせぬとは大それた申分ではないか。外交的辞令としては何とでも説明はできる。日本国の自発的漁業の抑止、満限に達しておる水産資源の保存措置への協力、いわく何々、いわく何々と、いくらでもあります。ともかく国際間の公海企業の自由を大幅に制限をし、しかも太平洋とべーリング海の半分に日本の漁業の操業を制限されたことは、動かすことのできない事実であるといわなければならぬのであります。さきに述べたように、トルーマン大統領は、わずか距岸百五十マイルないし二百マイルの漁業保護海区を、一度宣言しのたさへも、世論の硬化をはばかつてこれを取消したではないか。また古くは一八九五年のスコットランド政府の北海における保護海区の宣言、一九二六年のワシントン会議の保護海区の提唱等、一ことごとく公海制限は列国の反対にあつて中止、もしくは取消しをされておるのであります。これらの事情なり沿革なり歴史は、政府当局も十分御承知のことと思うのであります。私は思うに、日、米、加漁業会議において、いま少し政府当局が慎重なる研究を重ね、世界の公論に訴え、正々堂々の論陣を張つて臨んだならば、トルーマン大統領の宣言同様、西経百七十五度線は米、加側において取消しのやむなきに至つたであろうと察するのであります。少くとも世界的輿論を喚起することに日本の政府は非常に緩慢であつた。不行届きであつたといわなければならぬと、私は思うのであります。條約の條文に明記することを避けて、北太平洋漁業国際委員会への付託事項とすることをもつて最も妥当なりと確信するものであります。政府は今からでも遅くはない、この国家百年の大計を誤る條約の修正に善処するの意思はありませんか、一応承つておきます。
#30
○土屋政府委員 トルーマン宣言あるいは李承晩ラインの主張というものは、あの線で画されました全体の水域につきまして、あらゆる魚種について自国の権利を守り、他国をこれから排他しようという思想がその背後に含まれていたと考えるわけであります。御説のごとく、この両国の主張は、おそらく今後とも現実の国際法上の措置として、あるいは慣習として認められて行くということは、まずなかろうと考えられるのであります。その点から北太平洋における漁業條約がさけ、ますその他につきまして一線を画したということになりますれば、その前提をなすものであつて、はなはだ憂うべき点だという今の石原委員からの御質問でございますが、私どもは、その線を画しまするとか、その協定をきめますにつきましては、やはりあくまでこれは各国家が公海の責任を持つて、最も有効に、最高の持続的生産性を維持するために協力するというその協力が大事だと考えたわけであります。この点から見まして、私どもはある特殊の魚種だけに限りまして、その魚種について、この條約に掲げましたような科学的に証明のできる魚種について保存措置が講ぜられているものについては、その締約国の他国もこれを尊重して行こうという国際協調の考え方を多分に織り込んでこの條約は考えられたわけであります。従つて百七十五度線という線は非常に問題になるのでありますが、これはさけ、ますに関してだけの問題でありまして、その限られた水域につきまして、日本の漁船がさらに他の漁獲に従事するということは、この條約によつて当然認められている日本の権利であります。その点は何らの阻害をされていないという点をひとつ御記憶をいただきたいのであります。
 こういろ点から見まして、逆にこいう科学的な基礎の上に立つたものに対して日本は協調し、アメリカ、英国も協調するというようなことが、今後の国際社会におきまして、公海の自由漁業ということに対して、かえつて健全な基礎づけをするものでありまして、もしそれをしないことによつて、各国がたまたま主張するような大きな領水区域を限るというようなことは、将来の公海自由の原則または公海自由の漁業に対して大きな支障をなすものだと思うのであります。その点でこういう協定を結んで、各国が協定によつて協力すること自体が、今後の公海自由の原則を守るゆえんではないか、こういろふうに考えるわけであります。従つて私どもは、この條約案はあらゆる見地から現実に即したものとして一応採用してさしつかえないものだと考えましたので、お説のように、その点から考えて、この條約の修正を今アメリカ、カナダに迫つて、これを取消させるということは、技術うえ困難であり、またその必要もないように認められるのであります。
#31
○石原(圓)委員 百七十五度線は科学的にこれを尊重すべきであるというようなお説は、もつてのほかといわなければならぬと思う。公海の自由を認める原則において、かかる一線を引くことが科学的に必要だということは、私は暴論に近いと思う。ことにさけ、ますというものはとれないが、その他のものは何でもとれると言うけれども、その他にどういう魚がおるのでありますか魚のおらない所へ、わざわざ日本の漁業者は、経費と油と漁具を使つて、ゆうゆうと行くような余裕はないのであります。私はその説には全面的に反対でありまして、この経度百七十五度線を撤廃するべき処置をとる意思ありやいなや。あなたの御意見のみならず、外務省内、水産庁の御意見をとりまとめて、次の機会に御答弁願います。
 本日はこれをもつて私の質問を打切ります。
#32
○小高委員 ただいま同僚委員と土屋外務省欧米局長との間に質疑応答がかわされましたが、私どもは、本問題はきわめて重大な問題でございまして、今ただちにこの時間をもつて結論を出すことは困難でありますので、本問題はこの程度できようはとどめて、さらに数日間余裕を置きまして、もう一度当委員会において慎重に審議いたしたいと思います。さように御進行願いたいと思います。
#33
○川村委員長 ただいま小高委員より、本問題は漁業にとつては非常に重大な問題でありますので、本委員会としても十分研究しなければならぬので、数日間の研究期間を置いて、さらに本委員会を開いて質疑をしたらどうかという御発言がありましたが、いかがとりはからいますか。
    〔「賛成」と呼ぶ者あり〕
#34
○川村委員長 小高委員の御意見に全員が御賛成のようでありますので、次回の委員会は適当な日数を置いて開くことにいたしまして、その間委員諸君の御研究も願うとともに、そのときの委員会におきましては農林大臣、外務大臣の出席を求めて質問いたしたいと思います。
#35
○小高委員 特に委員長にお願いいたしておきたいことは、この次の本問題を審議いたしまする機会には、必ず外務大臣の出席を得られますようおとりはからい願います。
#36
○川村委員長 了承いたしました。本日はこの程度にとどめ、次会は公報をもつてお知らせいたします。
 散会いたします。
    午前十一時四十八分散会
ソース: 国立国会図書館
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