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1947/03/18 第2回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第002回国会 海外同胞引揚に関する特別委員会 第6号
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1947/03/18 第2回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第002回国会 海外同胞引揚に関する特別委員会 第6号

#1
第002回国会 海外同胞引揚に関する特別委員会 第6号
昭和二十三年三月十八日(木曜日)
    午後一時五十五分開議
 出席委員
   委員長 天野  久君
   理事 川合 彰武君 理事 庄司 彦男君
   理事 水谷  昇君 理事 若松 虎雄君
      高瀬  傳君    藤原繁太郎君
      和田 敏明君    亘  四郎君
      菊池 義郎君    松本 一郎君
      西山冨佐太君    村瀬 宣親君
      吉川 久衛君    根本龍太郎君
      高倉 定助君
 出席國務大臣
        厚 生 大 臣 竹田 儀一君
 出席政府委員
        大藏事務官   河野 一之君
        復員事務官   荒尾 興功君
 委員外の出席者
        議     員 受田 新吉君
    ―――――――――――――
本日の会議に付した事件
 末復員者給與法改正に関する件
 ソ連関係地域よりの引揚促進懇請に関する件
 マツクアーサー元帥及びスターリン閣下宛書簡
 に関する件
    ―――――――――――――
#2
○天野委員長 それではこれより会議を開きます。
 本日は前回以後におきましての行動の御報告と、それからソ連及びシーボルト等に対すり陳情書の文案及び未復員者救護法の改正に対する問題に対して会議を開いたのでありますが、大藏省の方が委員会の関係でお急ぎだと言われますので御報告その他は後回しにいたしまして、未復員給與改正に対する問題を議題といたしまして、会議をいたしたいと思いますから、どうぞ御了承願いたいと思います。どなたか未復員給與に対する御意見はありませんでしようか。――それでは委員長から未復員給與に対しての増額に対する要求を大藏省当局に申し上げたいと思います。未復員者の提養手当額家族一人当り百五十円は内地政府職員の家族手当と同額であるが、これだけの額によつて生活するということは昨今の経済事情から見てありまにも常識はずれであるとし、内地政府職員の額は近く家族一人りに五十円程度引上げられるがごとく聽いているが、少くとも二百五十円にする必要があるし、さらに未復員者の場合は内地職員の場合のようにその家族が本人の本俸に依存して生活することができないことを考えるならば、家族一人当り三百円を下ることは適当でないと思う。なお生活保護法による扶養金額の標準が、家族三人の市制地の例を見ると、月千円程度にはなるのである。この点から見ても、扶養手当の額月三百円を下ることは当を欠くものであるという理由であります。
 次に帰郷旅費の増額について申し上げますと、復員者の帰郷旅費現行の三百円は一昨昭和二十一年五月に定めた額があつて、これではとても上陸地から帰郷地までの旅費を弁ずることができないので、上陸地でせつかく支給された被服類を賣拂うことが通常である。そこでこの窮状を救うためには少くとも現行定額の三倍半、千円くらいの旅費を支給してやらなければならないという理由であります。
 次に遺骨の取引に関する給與額について申し上げますと、遺骨に関する給与としては、現在遺骨取引のために遺族が出頭する旅費二百七十円と、遺骨を埋葬するための経費三百十円が支給されておるが、いずれも一昨昭和二十一年七月末定められた額であつて、現状に即していないものである。そこで遺族の出頭の旅費は六百円に、遺骨を埋葬する経費は五千円に引上げる必要があると認められるのです。遺骨を埋葬する費用の基準を定めることはむずかしい問題であるが、某世話課の実例報告によりますと、大体五千円程度は入用である。また目下関係筋で研究されておる公務員災害補償法案によると、葬祭料は二千九百二十円ベースによつて大体五千円ぐらいになるから、これは一應葬祭費の実費と見ることができると思う。以上のような理由によりまして未復員給與法をただちにこの際改正いたして、今未復員になつておられる人のまことに声なき声に対して、われわれ國民といたしましては、これに増額した給與を支給するよういたすことが当然のとるべき途ではないかと思いまして、大藏当局にこの増額方を要望いたして、大藏当局の御所見をお聽きしたいと考えておるのであります。
#3
○河野(一)政府委員 ただいま委員長からお話しになりました点についてお答え申し上げます。未復員者給與増額すなわち法律を改正いたしまして、未復員者の給與を増額せよとのお言葉はたびたび当委員会の熱烈なるお申出でありまして、私どもまことに御同感に存じ上げる点が多々あるのであります。復員廳当局におきましても当委員会のお申出あるいは海外における声なき声をお聽きになりまして、目下明年度予算の編成に際しましてお話のありましたような点につきまして御要求がある次第であります。現在明年度の予算の編成につきましては、物價の問題、税制改正の問題、その他幾多の問題が絡み合いまして、また改変その他の関係もありましたため、多少その編成が遲れておるような事情でありまして、最近の機会において四月分の暫定予算を提出することに相なつておるわけでありまするが、明年度予算の編成も極力急いであります。目下復員廳当局とその問題についていろいろと御折衝申し上げておる段階でございまして、的確なることを申し上げにくいのでありまするがまた関係方面の御意向の点もありまするし、的確にどういうふうにいかなる程度までこれを増額するというようなことは申し上げにくいことを御了解していただきたいと存じまするが、できるだけ御希望に副うように、また財政面ともにらみ合わせまして、できるだけ御期待に副うように目下努力しておる次第であります。もちろんこの給與は一般の給與とは相当事情を異にいたしております。家族手当に例をとりますと、官公職員の家族手当は現在百五十円になつておりますが、これを上るとこれと均衡をとつて扶養手当を上げなければならないというようなことになろうかと存じまするが、帰郷旅費、遺骨受領費あるいは遺骨埋葬費等におきましては、なかなか言語に盡しがたいような各種のこみ入つた事情もございまするし、また財政の面から何しろ数が多いのでちよつと單價を上げましても相当巨額の金に上るといつたような事情も一方にございます。從いましてこの辺のところを十分勘案いたしまして、復員廳当局とも十分御折衝申し上げ、できるだけこの未復員者の氣持に代つて、國家としてできるだけのおもてなしをいたしたいというふうに考えて、目下努力中でございますので、何とぞさよう御了承あらんことをお願い申し上げる次第でございます。
#4
○天野委員長 ただいま大藏当局の理解ある御答弁をいただきましたが、この大藏当局といたしましての御努力には感謝いたしますが、われわれの見地からみますと、この未復員者は日本の現状においては二番不遇な、一番氣の毒な立場にある。この理由は何かと申しますと、戰爭のために召集を受けて、好むと好まざるとにかかわらず戰爭に出て、その後はソ連あるいは各地方に抑留されて見渡す限りの鉄窓、鉄網の中に自由を束縛された生活をしている。一家の柱石でいる、一家の家族を養う責任者であるその人が、そういう立場にありますために、その家族はやはりその支柱である一家の主人がおられないために、その日々の生活というものは非常に氣の毒な状態である。しかるに今社会は、戰爭に負けたために、この國家のために働いて犠牲となつているこの人たちに対しての顧み方がいかにも冷い感じがする、その結果その家族の生活状態を各地方についてみますと、まことに氣の毒な状態に立至つている。これは敗戰の結果でありますから、連合軍等に遠慮もあるかもしれませんが、私はこの際この人たちを救うためにはなんの遠慮は要らないと考えております。この人たちが好んで負けたのでもなければ、この人たちが好んでこういうように日本の國をしたのでもない。從つてその人たちが國にささげた犠牲はまことに人後に落ちないものがあるのでありますし、またこの人たちは今後の新しい日本の再建のためにもやはり盡せる人であり、また働く人でありますので、この事情からまいりまして、どうかひとつこの委員会の要望に対しては、断然何をおいてもこれに副つてやろう、それに努力してやろうというはつきりした御答弁を願つて、予算編成におつくしあらんことを重ねてお願いいたします。
#5
○河野(一)政府委員 よく了承いたしました。
#6
○水谷(昇)委員 ただいま委員長からお話しがあつた点でありますが、この委員会においてはぜひとも増額を熱望するものでありまして、この委員会においても再三再四この熱望を当局にも申し上げたのでありますが、予算編成にあたつとぜひともこれを実現いたしますように御努力を当局に願いたいと思います。つきましては一つお尋ねいたしたいのは、先刻委員長が申されましたように、遺骨を迎えるにあたりまして、その葬祭料が四十円、死亡賜金が二百七十円、出頭旅費が二百七十円、支給の額が合計で五百八十円という今日の時代においてはまことに僅少なものでありますから、これは先刻委員長から申されましたような程度に増額を願いたいのであります。ところで予算編成にあたつて、これはすでに支給したものに対しても、今度予算が増額いたされます場合には、さかのぼつてその差額を支給するのか、あるいはこれから後のものだけに支給するのか、その点をお伺いいたしたいと思います。
#7
○河野(一)政府委員 その問題でございますが、前回の國会に未復員者給與法というのが制定に相なりまして、七月までさかのぼつてやりましたのでございます。それでずつと現在まで來ておるのでありますが、これは現在本予算の問題として取上げられているわけでございます。本予算の編成が遲れまして暫定予算ということに相なりまするので、新しいものは原則として暫定予算にはいれてまいりません。本予算のときにこの問題は考慮せられるのでありますが、いわゆる過去にさかのぼつての給與ということは、私の考えでありまするが、ちよつと困難な点がありはしないかと思われるのであります。と申しますのは、この前は七月にさかのぼつたのでありますが、当時といたしましてはいかにも給與というものが低かつた。たとえて申しますれば、上等兵で月十円程度の金額でありましたので、そういう関係もありまして、それから法律が出まして、案がきまりましてからでき上るまでに相当の時日があつたわけでございます。これは実態についてもいろいろ議論がございます。その関係もありまして七月にさかのぼつたのでありますが、現在としてはこういうような給與法ができまして、一應の体系が実は整つたということでその單價をどうするかという問題になつているわけでありまして、これを過去にさかのぼつてやるということは、実行上の問題からいたしましてもなかなか困難な点があるのではないか。殊に今年度にかかるということになりますと、会計年度区分の問題もございまするし、なかなか簡單に考えるわけにはいかぬのではないか。私の考えとして申し上げます。
 それからちよつと速記を止めていただきまして……。
#8
○天野委員長 ちよつと速記を止めてください。
    〔速記中止〕
#9
○天野委員長 速記を始めてください。
#10
○水谷(昇)委員 ただいま御当局からくわしい御説明をいただいてよく了承するのでありますが、復員の帰郷旅費の点は、本人が帰つてくるのですから、それはそれでよいとして、死亡者に対して葬祭料の四十円とか、死亡賜金の二百七十円というのは、これは非常に少し、出頭旅費の二百七十円は辛抱できるが、今申しましたように、葬祭料の四十円と死亡賜金の二百七十円というのは、これはとうてい遺族のものは満足いたしません。第三者が考えてみてもまことに軽少でありますから、これを十分増額をしてもらいたいのであります。私が希望として、増額が決定した場合にさかのぼつて給與するかしないかという問題は、こちらの方面を言うので、帰郷者に対する方はさかのぼらなくても辛抱ができるが、遺骨となつて帰つた場合は本人が亡くなつておりますから、なるべくならばさかのぼつて差額を支給してもらいたい、こういう希望であります、これは数においてもそう大したことはなかろうと思います。
#11
○河野(一)政府委員 御指摘のような点もよく研究いたしますが、これはなかなか数の多い問題なのでありまして、御了承願いたいと思うのであります。それからこういう点も御了解を願わないといかぬのじやないかと思いますが、大体この給與は生死の判明するときまでこの給與をやるのです。ですから、三年前にビルマで戰死いたしましても、現在まで生死が判明しなり限り毎月の給與が行くわけであります。ですから、ほんとうをいえば、普通の政府職員その他でありますと、もし死亡の事実が判明いたしますとその給與を返さねばならぬが、それを返さないでよいことにいたしておるのであります。そういう点もございまして、それだから何月関日からこういうふうに、上つたから、過去のものを全部支給しろということは、いつまで遡及するかという問題もございまして、その点だけでもちよつと御返答申し上げかねると思いますが、なおよく研究いたします。
#12
○受田新吉君 今の大藏御当局の御答弁でちよつと私再質問申し上げたいのです。未復員者の給與法がいよいよ実施せられておりますが、この法律は過去七月にさかのぼつて適用されることになつておりますので、でき得べくんば今の御質問の戰死者の取扱いに対しても、すなわち引取旅費と埋葬費、これを七月一日として未復員者給與法と同じ施行期をもつてするようにしていただくならば、前にさかのぼるという例の未復員者給與との関係は解決すると思います。それからもう一つ戰死者の遺族に対して実は非常に冷遇しておることに対して私つい数日前にこういう現実を見ております。遺骨を引取つて郷里へ帰られる遺族が、英靈をそでに隠すがごとくして帰つておる。それから雨傘の下へ隠して帰つておる。人目を避けて悄然と英靈を抱いて帰つておる現実をなまなましく見たのでありますが、こういうような人たちはこれは実に悲惨な極であつて、大事な人を人目を避けて帰らねばならぬような世相にしたということは、社会道義の低落ということもありますが、一面また政治の惡さということも考えられると思います。埋葬する経費も実に少額であつて、そのわずかな経費で賄えないで英靈をわざととりにいかないようなことさえあつて、現に地方各縣の世話課においては、英靈が引取れないので放任してあるような状態だと思います。その遺族に聽いてみると、実にすてばちのような形で英靈をとりに行けないような点もあると思いますが、こういう点において公務による死亡者としての取扱いをしていただけないか、労災法による公務の傷病者や死亡者が相当多額の補償をされておると同じように、少くとも公務による死亡者としての取扱いをするくらいの温かい政治力を発揮してもらえないか。これが一つ。
 もう一つは未復員者の範囲でありますが、あの未復員者給與法の第一條にはもとの陸海軍に属している者で、未だ復員せざる者というあの範囲の中へ満洲國の軍人、軍属であつた者も入れていただくように、また朝鮮その他植民地で警察事務に属して、まつたく軍隊と同樣な仕事をしておつた人たちが、お前は軍人と同じことをやつたといつて拉致されている者がたくさんあります。こういう者については軍人、軍属と同じ取扱いをしてもらえないか。警備に当つた警官が相当数おりますが、その家族などは、軍人の家族とまつたく同じ待遇をしていただかなければならないのじやないかと思います。この点大藏当局の例の未復員給與に関して重ねての御答弁を願いたいのであります。
#13
○河野(一)政府委員 遡及の点は、先ほど申し上げた通りいろいろ議論があると思います。
 それから金額も戰死者の遺族その他につきまして、給與を公務員と同じようにというようなお話もありました。なるほどごもつともな点もあるのでありますが、これは時勢が変りましたので、そういうふうな見方もあろうかとも思われますが、一祈の國民の義務として戰爭中は行つておつたわけでありまして、それを戰死の場合において公務員、一般の政府職員と同じように扱うことについては、社会立法の建前からいろいろ困難な問題がございます。現在政府といたしましては、生活保護法によつてその点を考えているという建前になつているわけであります。その他復員者援護のいろいろな施設のろ題といたしまして、それ以外において政府としてもいろいろ考えている点についてはよく御存じのことと存じます。
 それからもう一つは、満洲國の軍人というお話、その他外地の職員ということでありますが、警察官その他で外地で勤務いたした者につきましては、これは別途外務省の予算でございますが、帰つて來るまでの給與をやるというような建て方に実はなつているわけであります。満洲國自身のものと、滿洲國の軍隊あるいは満洲國の職員ということになりますと、これはいろいろな関係がありまして、これを從來の日本の軍人と同じに扱うことについては、各種の関係上いろいろ支障が多いのじやないかと思います。從いまして、現在のところでは、この問題は一般の在外邦人と同じに実は取扱つております。從つて在外邦人で引揚げてこられた方の取扱いにつきましては違うような考え方で、しかし未復員者給與とは権衡のとれた方法でやつておりますので、正面切つてこれを復員者給與の中に入れることは、今のところちよつと困難じやないかと考えます。何とぞ御了承願いたいと思います。
#14
○受田新吉君 ただいまの御答弁の中に、戰死者は國家の義務で出たものであるということがありましたが、それは戰時中のことであつて、戰爭が終れば当然復員しなければならないものであるのにかかわらず、それがいろいろな支障のために復員が遅れて、從つて現地においていろいろな公務を從事しておつて、戰爭のためでなくて、戰爭終了後の公務で死亡しているものを指しているのでありまして、そういう人たちがまつたく戰爭と違つた公務で死亡した。從つてこれは当然公務による死亡者であつて、戰爭目的の死亡者じやない。その人たちに対する待遇が今の五百八十円のようにわずかな涙金で埋葬せよというようになつておるのがこれが不穏当であるという意味であつて、関係方面においても当然人道的な立場から、これは御了察をしてくださるものと私は信じておるのでありまして、この点について特に御高配のある御答弁が願いたいと思うのであります。
 なおもう一つの満洲國軍人、軍属であつた者に対しては、戰時中はこれを日本の軍人、軍属と同樣に取扱つていたと思うのでありますが、そうすれば当然未復員者の方もその方面において給與法の中に入れるべきではないかと思います。この点重ねて御質問いたすわけです。
#15
○河野(一)政府委員 おつしやいました点につきましては今後も十分研究をいたす考えでございます。
#16
○天野委員長 ちよつと一言委員長として御挨拶いたしたいと思います。今日は海外同胞引揚の促進の委員会が、委員会をあげてまことに喜ばしい事態があることを皆さんに御報告申し上げたいのであります。それはこの海外同胞引揚に最も理解をもち、最も率先していろいろと働かれた竹田氏が厚生大臣に就任されまして、本委員会に今日初めて顔を見せていただきましたことは、これはおそらく七十数万の在外同胞、國に残る三百万の遺家族が大臣の就任によつて私は非常なる幸福をもたらしてくることではないかと考えております。おそらく大臣は、この引揚げに対しては大臣就任以前から御努力願つておりますので、今後もより以上の御盡力が願えることを期待しております。とともに、私は氏が今回厚生大臣に就任されたことを、委員会を代表いたしてまことにおめでたく、御祝辞を申し上げる次第であります。
#17
○竹田國務大臣 ただいま天野委員長より痛み入つたる御丁重なる御挨拶に接して汗顔に存ずるのであります。御承知の通りに、私ども衆、参両院の議員をもつて組織いたしました同胞救援議員連盟の理事長に、組織以來なつておりましたので、この引揚促進ということはこの同胞救援議員連盟の仕事の最重点的な仕事であることを自党いたしまして、過去二箇年の間微力ながらこの問題に達成に盡力いたして來たつもりであります。さいわいに南方支那方面の引揚げが全部済んだのでありますが、北方方面における七十七万の引揚げがまだ済んでおらぬことは諸君とともに同憂に堪えざる次第であります。一昨年も國民大会を開き、昨年も國民大会を開き、不肖ながらその座長を勤めまして、天にも響けとこの引揚促進を絶叫いたした次第でありまして、これが海外に残つておられまする七十万余の未復員、未帰器の方々にどれだけの鼓舞激励を與えたかと思うときに目頭の熱くなる氣持がするのであります。一日千秋の思いで波路遥かに北の國に待つておる同胞のことを思うと、まことに心配に堪えぬのであります。また数百万人に垂んとする留守家族の方々が今日は帰るかと待つておるその人々のことを思いますときに、また涙なきを得ないのであります。こういうことを考えますときに、これは何人かの政治家がこの問題にたおるるというくらいの決心で、この問題に当らなければならたことを痛感いたすのでありまして、過去二年間、微力ではありましたが、この問題についていささか関係をもちました私は、何の御因縁か厚生省にはいりましてこの問題に携わることを得ますることは、まことに欣快といたすものであります。今委員会を代表して委員長から御激励の、またお祝いの言葉を頂載いたしましたことを謹んでお礼を申上げるとともに、万幅の努力を拂いましてこの問題に挺身することをお誓い申し上げるものであります。
#18
○受田新吉君 厚生大臣竹田さんに対し初質問をする光栄を担うわけでありますが、実は委員長の御挨拶のことと関連して、私初めて國会へ出たときに、國会の内部における最も引揚促進に熱意を見せられる人物として、竹田厚生大臣が復員廳その他の関係方面から非常に期待されておつたことを今思い出します。そして実は十四日に郷里山口縣で厚生大臣の引揚促進に関するラジオ放送を聽いて、まことに感銘深くこれを拜聽したわけであります。さいわいにして引揚促進に関する最も理解あるこの竹田さんをこの方面の大臣に迎えて、そしてこの機会に引揚促進が徹底的に有終の美を発揮できまするように、大臣にお願い申し上げまするとともに、引揚者が、また未復員者が、この大臣の在任中にこの有終の美を発揮せられることをいかに期待しておるかということを、私臆測するにやぶさかではありませんし、希わくばこの引揚促進に関しては最後の厚生大臣であるというお立場から御盡力せられんことをお願いし、御健鬪を祈る次第であります。
 私先ほど大藏当局に質問いたしましたことについて、重ねて大臣の責任ある御答弁をお願いしたいことがあるのでありますが、実は私はこの引揚促進問題については國民代表として常に非常な関心をもつて努力してきましたにかかわらず、なかなか現実にこれが報いられていないということを悲しんでおります。それは輿論は非常に痛烈にこの問題を支持しながらも、実際の問題はこれよりもどんどん遅れておる。また戰死者の遺族の保護についても、生活保護法による適用しかされてないというような現実を見ても、一般労務者が公務で死亡したときの取扱いより、これは下げて待遇されておるということに考えられるのであります。そうするならば一般國民と同等の待遇をせよという関係方面のあの言葉に應ずるためには、少くと労働者と同じ待遇をすべきではないか、こう考えますので、戰死者遺族の救恤に対しても、また傷病患者の保護に対しても、労務者と同等の待遇、すなわち労災法による待遇を適用するように、大臣の格段の御努力をお願いしたいと思います。私先ほど申し上げたように、郷里で戰死者の遺族が英靈を連れて帰る場合に、まことに●蹐して、小さくなつて帰つておる。これは一般國民と同等でなくて、むしろ下げた待遇による一つの必惨な事実じやないかと思うのであります。また自動車に乘つても、英靈に席を讓るということがなくて、若い者が席を占めながら、英靈を抱いた遺族は実に小さく隅の方に立つておるという現実が到るところに見られます。この点において、政府の上においてこういう戰爭犧牲者をおおらかに救いあげるという対策を十分お立て願つて、しかもそれは言葉の上でなく、現実の上に現わしてくるようにあらゆる施策をとつていただきたい。この点については人道を尊重せられ、博愛主義を尊重せられる占領軍当局も、十分御了察願つて御了解いただけると思います。占領軍では必ずやこの点については御了解いただけると思いますので、私重ねてこの点につき、大臣が十分の御決意をもつて、この尊い戰爭犧牲者というものを、一般國民と事実の上において同等に取扱われるように、御盡力願うことをお願いいたしますとともに、その御決意をお聽き申し上げたいと思います。
#19
○竹田國務大臣 ただいま受田君より御熱心なる遺骨受領旅費ならびに遺骨埋葬料等に関する御意見をお述べくださいまして、まことに同感に存ずるのであります。先ほど來の受田委員の大藏当局に対する御質問のとき、この席におきましてつぶさにその御意思のあるところは承つたのでありまして、重ねての御意見の御開陳に対して、深く敬意を表する次第であります。今日遺骨がもどつてまいります場合に、かさの下へ隱して帰るとか、あるいは若い諸君に座席を讓ることがないというようなことは、わが國道義の上から見ましてまことに遺憾に存ずるのでありまして、一面から見まするならば、政治の貧困ということがかかる結果になつたのではないかということを考えますときに、私ども政府当局の一員たるもの、まことに深く考慮すべきものがあるやうに存ずるのであります。ただ問題は大藏政府委員が申し述べましたように、これのこういうふうな決定になりましたことについて、いろいろ複雜微妙ないきさつもありますことは、先ほど大藏省の政府委員が申し上げた通りである。なおこの問題についてきよう御質問のあることを知りましたため、正十二時前大藏大臣であつた栗栖君を訪ねて、詳しくそのいきさつを聽いてきたのであります。いろいろ事情がありますので、なかなか骨の折れる点があると思います。でき得る限り努力をいたしたいと思し上げることで、一つお許しを願えれば仕合せに存ずるのであります。
#20
○天野委員長 ほかに厚生大臣に対する御質問はありませんですか。
    ―――――――――――――
#21
○天野委員長 それでは前会の結果について御報告申し上げます。前会衆参両院議員全員の署名をもつてスターリン及びマツカーサー司令部、それから國際連党、トルーマン大統領等に嘆願書を出す、こういう御決議を願いました。早速シーボルド議長のところへ参りまして、その由を申し上げましたところ、シーボルド議長には非常に喜んで、われわれの話を約三十分にわたつてそれぞれ聽いていただきました。そうして帰還促進にはできるだけの努力をしよう。そうしてその嘆願書の斡旋については、スターリンとマツカーサー元帥に対しては自分で取扱つてやろう、こういう御快諾を得たのであります。それによりまして、ここに文案を作成いたしまして、ただいまお手もとへ差上げましたが、これを皆樣に御檢討願いまして、お差支えなければ、これをもつて決定した嘆願文案といたしまして、これに署名をつけて、さつそく御傳達方をお願いしたいと考えております。どうかごらんを願いたいと思います。一應嘆願文を朗読してみますが、お氣づきの点がありましたら、しかるべく御訂正が願いたいと思います。
   ソ連関係地域よりの引揚促進懇請に関するマツクアーサー元帥宛書簡案
  マツクアーサー元帥閣下
  親しく占領政策の遂行に当られ、我が國の現在及び將來について日夜肝膽を碎かれつつある閣下に対し、私共衆議院及び参議院に議席を占むるもの一同は、心からなる感謝の意を表します。
  ここに、一同の連署を以て特に書を呈し、全國民に代わり、ソ連地域残留者の引揚促進について懇願致しまする所以のものは、その帰還を待つ三百万家族の衷切なる心情をこの上座視するに忍びざると共に、今なお多数の抑留者を残しているこの事実が絶えず一般國民に深刻なる不安の念を與え、為めに日本國再建の歩みを阻むこと大なるものあるを深く憂うるが故であります。
  閣下
  私共日本國民は、誠に時宜を制する諸般の御政策に深く信頼し、あらゆる努力を以つてこれに協力しつつある次第でありまして、在外残留者の引揚を繞る諸問題についても完全なる御認識を有せらるることは、私共が確信して疑わぬところであります。そこで、或いは統計を掲げ、或いは実例を挙げて従らに閣下を煩わすことは、この際これを避け、只國民衷情の一端を末尾に添えましたる嘆願書によつて御推察頂き度く存ずるのであります。
  ここに、私共が衷心よりの感謝と共に、閣下に対し特に報告致し度き二つのことがあります。その一つは、故アチソン議長及び現シーボルト議長の屡次の対日理事会に於ける引揚問題についての御盡力と、昨年末ソ連側の還送中止前後に於ける総司令部の御努力とが國民に対し格別なる感銘と感激を與え、ひいて、日本國民が愈々深く占領政策の精神趣旨を理解するに至れる事実でありまして、このことは、最近各種國民大会等に於いて私共が現実にこれを確認しつつあるところであります。なおその一つは、去る二月十二日の極東委員会に於けるソ連地域抑留日本人捕虜の取扱いに関する決定及びその採択に関するアメリカ当局者の御努力に対し、我が國民が、想像を超え深く感動致している事実であります。
  これ等の事実は、日本國民が在外残留引揚者引揚促進の問題につき如何に深き関心を抱いているかを物語るものでありまして、かくまで深きこの國民の関心が、たとい如何ようなる理由あるにせよ、又感激すべき米國側の御努力にも拘らず、ソ連よりの還送が全く中止せられている現事態に於て、今や憂うべき焦燥の念に変りつつある状況も報告致すべき事項の一つであります。ソ連側の各種理由を挙げての声明も、昨年九月五日より十月十五日の間引揚促進連盟全國協議会の提唱に應じた嘆願書の提出四二〇万に余るという事実が示
 す國民の激しい心情を決して納得せしむるものではないと申さなければなりませぬ。抑留者の還送が更に、遷延して今一度抑留地に越冬せしめるが如き事態となり、為めに日本國が蔭微の間永くその心に、あらゆる武器を投げうち非武装平和の文化國家として、新しき歩みを続けんとするに、特に有害なる恨みの情念を残すに至らんことは、私共の最も恐れる所であります。
  私共日本國民は、無暴なる戰爭を引き起した償いとして加えらるべき神の鞭を、敢えて免れんとするものではありませぬ。この鞭によつて過去に対する反省を愈々深くし、占領政策に衷心より協力して、新たなる国家再建の遂に上らんとしつつあるのであります。然しながら私共は、ポツダム直言の完全履行を誓う國民が、他面抑留同胞の身の上を思うて抱くその至情の深く且つ正しきを認めざるを得ないと申し上げ度いのであります。而して正しき國民感情なるが故に、常に閣下を始めとして、連合軍側の御同情を得つつあるのみでなく、更のその御盡力によつて、喜びの日を迎える日も決して遠からざることは、よくこれを承知いたしておるのであります。然るにも拘らず、抑留者還送終了の日を明確に承知し得ざる國民大衆が、今や深き憂いに陥つている次第と共に、又その不安感を一刻も速かに拂拭し去つて全國民が相携えて專心國家再建の遂に進み得ることを念願する私共の微意は、ともに閣下の御賢察を賜わり得るを信ずるものであります。
  措辞非礼且つ意を盡さざるを恐るるのでありますが、閣下從來の御厚志に対し深甚なる感謝の念を捧げつつ國民大衆と共に切に懇談するところのものは、一日一刻も速かにソ連関係地域からの抑留者還送が再開せられ、且つ第四十四回対日理事会におけるシーボルト議長御主張の通りにその速度を倍加し、我々同胞が続々内地に帰還せんことの一事であります。而して國内の受入れ諸準備については、あらゆる努力をもつてきの上ともその整備拡充に努め、方ケ一にも御期待に副わざるが如きことなきを、固く誓うものであります。
  最後に、閣下の御健勝と占領政策の円滑なる御遂行とを衷心より祈願致しつつ、この書簡を終ります。
    〔速記中止〕
#22
○天野委員長 次にスターリンにあてた書簡案の方をごらん願いたいと思います。
  私共日本國衆議院及び参議院議員は、ここに全員の連署を以つて書簡を呈し、日本國民を代表して、貴殿に対し貴國関係地域の我が残留同胞に対する從來よりの御配慮を謝し、併せて我が國内状況の一斑をお傳え致して、今日なお帰還を見ざる残留者の引揚促進に関するお願いを致さんとするものであります。
  千九百四十六年十二月貴國関係地域から我が残留同胞が還送を開始されてより満一ケ年、昨年十二月引揚の一時中止に至るまでの間に、無事その家郷に帰來して復員を終つた旧軍人軍属竝びに引揚を終わり内地において新しき生活を開始せる一般邦人は、その数合計約六十一万人でありまして、引揚者自身の喜びは勿論、その帰還を鶴首しつつあつたこの家族新族友人等の満足は容易に筆舌に現わしき難きものがあります。私共は、これ等の人々にこの喜び、その満足から來る感謝の意甚だ深きものあることを貴殿にお傳え致すと同時に、それら引揚者の帰還に方り貴殿及び貴國側関係者の拂われたる御努力に対し、深甚の謝意を表明するものであります。
  嘗つては貴國関係地域に時を過し、今や内地に引揚げ來つた者の大部は、各々家郷に帰つて平和の生業に服し、殊にその大多数が耕作農民に属する関係上我が國現下の重要問題たる食糧増産に努力し、以つて過去の戰爭災害の恢復に寄與しつつあります。又帰るべき家郷無き者も自らの力にて定着地方在住民との融和協力及び引揚者相互の扶助によつてその困難を克服し、進んで一般國民に伍して再建事業に積極的参加し得るに至つて居ります。以上の事実と併せて、引揚者が貴國関係地域にありし日に得たる教訓を常に思い起すと異口同音に語り合いつつある状況は、共にこれを貴殿に対し大なる喜びを以て報告致し度いのであります。
  他面これ等引揚者及びその家族と、今なお残留者を持つ家族とが常に対比の対象とせられるのでありますが、一はこの上なき喜びに満ちて再建に力を奮いつつあるに対し、他は憂愁に閉され空しく北方の空を眺めて帰還を待ちわびつつ生業にも十分なり力を注ぎ得ぬという状況でありまして、この対比は時間の経過とともにますます顯著となりつつあり、留守家族の一部には、家族の一員殊に生活の支柱たるべき壮年の夫、子、父を未帰還のままに差し置かれ、既に生計を維持するためにも逐次困窮の底に陥るものを生じ、失望自棄に近き言動をなす者をも見るに至つておることは蔽うべからざる実際の状況であります。これについては、もちろん貴殿既に御推察もあられることと存じ、これ以上の冗筆を避けたく存じますが、ただ添付いたしましたる留守家族よりの嘆願書について御判断あらんことを御願いする次第であります。
  日本國民は、ひたすらに平和なるみずからの將來を築きあげんがために営々努力いたしております。しかしながら、終戰後二年有半にして未だ帰り來らざる相当多数の海外残留者あるがゆえに、その胸中になお十分に割り切らざるものを持ち、その感情の中に著しく不安定感を残していることもまた事実であります。殊に私共直接政治に携わるものが心ひそかに深く憂いまするところは、國民の一部に自棄の念よりする他邦に対する恨みの兆し絶無とは為し難き点でありまして、平和に徹すべき我が國民の將來を案ずるの念から、敢えて貴殿に書簡を致して引揚促進を懇願致す理由の一つもここにあるのであります。而して、我が日本國國会に於きましては、この問題につき、あらゆる政党政派を超越して議員の全員がその憂いを同じくし、その志を一にし、以つて引揚完了の一日一刻も速かならんことを切望致して居る状況であります。
  今後の引揚実施については、昨年十二月三十一日のモスクワ放送によつて私共が直接耳に致したる如く、一刻も速かに日本人を還送せられる御用意のある趣を私共はよく了承致して居ります。然しながら、それにも拘らず國民の一部には前述の如き不安の念の兆しもあるのでありまして、私共は、全日本國民が、本年中には残留者全部その家郷に帰還するを得べしとの悦ばしき確信を以つて、速刻にも意を安んじ、專心その業に励み得る如く、格別の御処置あらんことを強く切に懇願致したいのであります。
  なお、帰還者を受入れる我が方の態勢については、引揚げの開始せられたる直後に於いて、指導の不十分等から帰國後一時その去就に迷うが如き少数の氣の毒なるものがあつたことも事実でありますが、今日においては受入れの準備も頓に完備し、毎月十五万人以上の引揚にも十分対処出來るよう相成つて居ることは私共が確認致して居るところであります。私共としては、なおこの上その完全を期する為め努力を続ける決意でありますることを附言致します。
  以上誠に非礼なる冗筆を弄し、特に敗戰國而も平和克服も未だ成らざる國際的関係をも顧みない点あるは誠に申訳なき次第でありますが、これとても我が國民の実情の一端就中海外残留者の問題を繞る切なる感情を為し得る限りお傳え致さんとの私共の徴意に出でたるが為に他なりませぬ。願わくは貴殿の明晰なる御判断により右の実情を洞察せられ、我が日本國民が安んじてその自力による立直りに邁進し、その理想とする
 平和に徹し得る如く、この引揚の問題について速やかに格段の御措置あらんことを切に懇願致すものであります。
  終りに臨み、残留日本人に対する從來の御配慮に対し、ここに重ねて國民大衆と共に感謝の念を捧ぐると共に、貴殿の御多幸を祈りつつ擱筆致します。
 これがスターリン議長にあてる文書でありますが、これを陸方に見比べていただいて、しかるべく御訂正願いたいと思います。
#23
○水谷(昇)委員 マツカーサー元帥の所へは「閣下」といつて、スターリンあては「貴殿」と書いてあるのは、どう違うのですか。
#24
○和田委員 どう書くのが彼に対する敬称として一番いいかという問題ですね。
#25
○天野委員長 それではこれは最高の敬称をつけることにいたします。速記を止めてください。
    〔速記中止〕
#26
○天野委員長 速記を始めて。それでは今御意見のように、委員長において訂正して発送いたすことにいたしますからどうぞ御了承願いたいと思います。
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#27
○天野委員長 なお御報告申し上げることがあります。先日函館、舞鶴へ委員派遣を決議されましたが、これは議院運営委員会の方で、ほかの委員会派遣と同じように暫時保留しておくようなことになつているそうですから、どうかその点御了承願いたいと思います。
 本日はこれで散会いたします。
    午後三時二十八分散会
ソース: 国立国会図書館
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