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1951/05/26 第13回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第013回国会 人事委員会 第16号
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1951/05/26 第13回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第013回国会 人事委員会 第16号

#1
第013回国会 人事委員会 第16号
昭和二十七年五月二十六日(月曜日)
    午前十一時四十九分開議
 出席委員
   委員長 田中不破三君
   理事 田中伊三次君 理事 藤枝 泉介君
   理事 平川 篤雄君 理事 松澤 兼人君
      伊藤 郷一君    小澤佐重喜君
      塩田賀四郎君    澁谷雄太郎君
      田中  豊君    西村 久之君
      本間 俊一君    今井  耕君
 出席国務大臣
        国 務 大 臣 大橋 武夫君
 出席政府委員
        警察予備隊本部
        次長      江口見登留君
        警察予備隊本部
        人事局長    加藤 陽三君
 委員外の出席者
        警察予備隊本部
        人事局人事課長 間狩 信義君
        專  門  員 安倍 三郎君
    ―――――――――――――
本日の会議に付した事件
 保安庁職員給與法案(内閣提出第二二八号)
    ―――――――――――――
#2
○田中委員長 これより人事委員会を開会いたします。
 ただいまより保安庁職員給與法案を議題として質疑を継続いたします。松澤兼人君。
#3
○松澤委員 昨日中川委員からもいろいろ話がございまして、概括的なことについては一応了解したのでありますが、二、三質問してみたいと思うのであります。
 問題はやはり、私は保安庁職員というものが、どういう理念に立脚してその勤務を遂行するかという点にかかつて来るのではないかと思うのであります。そこで昨日は資料をお願いいたしまして、けさ一つ手に入れたのでありますが、しかしこれだけでは、ほんとうに私たち納得できないのでありまして、この際保安庁職員の勤務の理念とか、あるいは使命観とかいつたようなものに対する大橋国務大臣の所見をお伺いしたいと思います。
#4
○大橋国務大臣 保安庁というものは、現在の警察予備隊並びに海上警備隊を継承いたしまする保安隊、それから警備隊の管理をするというのがこの役所の使命でございます。従いましてこの警備隊、保安隊の使命というものについて、完全にこれを理解して行くということが、その職務を遂行するにあたつて第一に要請せられることであると存じます。保安隊、警備隊は、法案においても明らかにいたしてあります通り、わが国の平和と秩序を保持し、国民の権利と自由を守るということがその使命になつておるのでございまして、この使命のために、常に実力を涵養し、そうして必要に応じて総理大臣の命令によつて、その実力を十二分に発揮することによつて、その使命を全うする、こういう建前に相なつておるのでございます。
 そこで平和と秩序を維持するということが根本でございますが、これは、それではどういうことであるかということをさらに分析して考えて参りますと、平和と秩序を破壊するものに対して、実力でこれを防止するというのが、その根本になつておるわけでございまして、平和と秩序の破壊者というものは、国内において犯罪として発生する場合もございます。暴動であるとか、騒擾であるとか、あるいは集団的な暴行であるとか、こういつた方法によつて発生する場合がございます。かような発生いたしまするものも、單純に国内において独立的に計画され遂行されるものもございまするし、また国外の勢力の教唆または干渉によつて引起される場合もあるのでございますが、いずれにしても、それが純粋に国内において計画され発生するという点においては、国内的な破壊活動と見ることができると思うのでございます。これらの破壊活動は、すでに国内法において犯罪とせられておるのでございますから、これを防遏し、鎮圧するということは、第一次的には普通警察の職務であります。しかしながら普通警察の手に余るような事態に発展いたしまするならば、当然に警察予備隊あるいは海上警備隊がこれが処理をしなければならない。
 この場合におきましては、警備隊、保安隊の鎮圧手段として予定されておりまするのは実力活動でございます。従いまして実力によつてこれを処理するということになるわけでございます。すでにこれらの暴動なり騒乱なりというものが実力行為として現われており、これに対して実力で処置をするということになりますると、その際における隊員個人としての生命、身体に相当な危険を覚悟しなければならぬということは当然でございます。かような危險を予想しながら、しかもあえて国のために職務を行わなければならぬという点は、これらの職員の職務の執行について、特に注意をすべき点ではなかろうかと考えられる次第でございます。もちろんすべての公務員は、個人的な安全を犠牲にしても職務を遂行しなければならぬということは、当然のことでございまして、ひとり保安隊、警備隊に限つたことではございません。たとえば警察官のごときは、そういう場合がしばしばあるでありましようし、また監獄職員等についても考えられまするし、また税関の役人等にも、そういうことは相当考えなければならぬ。まあ程度の差こそあれ、公務員には一般にそうした心がけが必要であることは、もとより申すまでもないのであります。
 ただ警察予備隊なりあるいは海上警備隊といたしまして、さらに他の公務員と多少違つて考える必要がありはしないかという面は、国内の平和と秩序の破壊活動というものは、国外から引起される場合があるわけであります。これはいわゆる侵略行為となつて現われるわけでございますが、これらの侵略行為というものが、多くの場合において外国の軍隊というものを背景とする、あるいは軍隊そのものの活動として現われて乗る。従いまして、この際において警察予備隊、海上警備隊が使命を遂行する場合における危険の度合というものは、非常に大きなものがあるということは、当然考えなければならぬことであろうと思います。こうした場合におきまして、職員がその使命を遂行するためには、もとより決死の覚悟をもつて当らなければならぬのでございまして、自己の生命、身体を顧慮いたしておつたのでは、その使命の遂行はとうてい不可能であるといわなければならぬと思います。そういう意味において、予備隊の職員に、そうした場合にあくまでも使命を完全に遂行してもらいまするためには、かつての軍人と同様な、非常に高い愛国心というものが要求される。この犠牲、奉仕の観念が基礎にならなければ、そういう危險なる職務を完全に行うことを期待することは不可能だろうと思うのであります。
 こういう見地からいたしまして、警察予備隊の隊員に対する訓練は、かような愛国的な犠牲心の発揮を促すということが、創立以来指導にあたつて最も力を入れておる点なのでございます。こういうふうな考え方のもとに、国のため、国民大衆のために犠牲となつて、その利益と幸福を守る。こういう考えはいわゆる民族的な愛であり、国家に対する愛国心でございます。これはいかなる基礎に基いてそういう考え方を起して行くか。いろいろ考え方はあろうと思うのでございますが、私どもは、国家というものが国民の生活のため第一義的に必要な存在であり、そうしてこの基本をなしておるところのものは民主主義的憲法でございまするから、この民主主義的憲法というものをどこまでも守つて行く。これによつて保障された国民の権利と自由を守つて行く。そのために必要な組織である。この国家を維持して行くということがひつきよう民族の幸福のために、また世界の発展のために第一義的なものであるという考え方を十分に徹底することによつて、その基礎をなすところの国家に対する犠牲、奉仕の観念を養う、これが最も大切なことである、こう考えておるわけでございます。
 従いまして予備隊といたしましては、創設以来こうした考えをできるだけ早く徹底して、隊員の使命遂行に一段と遺憾なきを期して参りたい、こういうふうに考えておるわけでございます。但しこれらの考え方は單に一つの考え方として、いわゆるお説教を聞かせるというだけではとうてい効果をあげ得るものとは考えられませんので、予備隊全体のあらゆる仕事の面を通じて、こうした考え方を常住座臥隊員に対して訴えて行くということが必要であろう、こういうふうに思いまして、特にそうした精神指導のための特別の訓練という時間は設けておりません。折に触れてそうした考え方々伝えて行く。そうしてあらゆる訓練を通じてそうした考え方に実際上指導するような効果を上げるようにいたしたい、こういうやり方をいたしておるわけでございます。
#5
○松澤委員 一般的な方針としては仰せの通りだろうと思うのでありまして私のきよういただきました総隊総監訓示の一節というのを拝見いたしますと、その中で警察予備隊の基本精神は愛国心、愛民族心であるというふうにうたつてあります。この点につきましては異議がありません。しかしただ愛国心、愛民族心ということで、はたしてそういう危險に立ち向つて行くだけの一つの精神的な態度というものができるかどうかということを検討してみなければならないと思うのであります。と申しますのは、戰後歴史に対する検討や、あるいは日本の国自体に対するいろいろの批判が起つて参りまして、はたして無條件に現在の国また政府の施策というものに対して、犠牲奉仕の精神で立ち向つて行くほどの心構えができているかどうかという点は、国全体としてもちろん考えなければならない問題でありますが、同時に、そういう国内における破壊活動に立ち向つて行くための保安庁職員が、特にそういう基本的な理念なり、あるいは心構えなりを持つているかどうか、その答弁に対しては私は非常に消極的であり、また国民自身としてもいろいろと過去の間違つた歴史は清算するが、そうかといつて建設的に国全体の将来ということについては、まだはつきりとした考え方というものが一致していないように考えられるのであります。この点は今後保安庁職員の実際的な訓練を指導する人々は非常に大きな責任がおると思うのでありまして、この訓示のまたほかの場所には、警察予備隊の基本精神、根本理念の確立という問題がきわめて重要である、この点についてはまだ十分に確立されていないというような意味のことが、それに続いて書いてあるのであります。どんな基本的な各個訓練なり、あるいは部隊訓練なりをいたしましたところで、やはりそれらの活動の基本的なまとまりというものがなければ、私は部隊全体を動かして行くことは非常に困難であると思いますので、その基本的精神あるいは根本理念というものを伺いたい、こう考えているのでありまして、今国務大臣のお話、一応はもつともでありますけれども、もつと深いものがそこになければならないので、その点について現在どうなつているかということを、重ねてお尋ねいたしたいと思うのであります。
#6
○大橋国務大臣 松澤委員の御質疑の点はまことにごもつともでおると存じます。愛国心あるいは民族愛と申しましたところで、終戰後の実際のわが国のあり方から見まして、なかなか簡單にそうした気持を喚起するというような状態にはないのではなかろうか、おつしやつた点についても、私はごもつともに存ずるのであります。ただ私といたしましては、なるほど終戰後におきまして、わが国の歴史というものが再検討され、また従来の国家至上主義的な考え方というものが新しい立場から批判されつつある、このことは実際事実でございます。しかしながらこの歴史の再検討なり、あるいは国家至上的な思想に対する再検討の根本となつておる考え方というものは、そうした過去の歴史なり、過去の考え方なりが近代国家における愛国心あるいは民族愛を喚起するという上からいつて、ふさわしい方法ではないのではなかろうか、近代国家を打立てる正しい愛国心なり、正しい民族愛というものを喚起する方法としては、もつと適切な根拠なり、あるいは適切な方法なりがあるのではないか、こういう気持からこれらの批判なり再検討なりが行われつつあると私は確信をいたしておる次第でございます。従いましてこれらの再検討なり、あるいは批判なりというものは、愛国心あるいは民族愛というものを根本的に否定しようという立場に立つてなされておるものではなくて、むしろ真の愛国心なり民族愛というものを打立てるために、それらの基礎となるべき正しい根拠を求めようという動機からなされておる。だから私は現在のごとき批判なりあるいは再検討なりが正しい方向に進めば進むに従つて、正しい意味における愛国心なり民族心なりというものが育成されて行きつつある。それを育成するについての現在のあり方は、一つの必要なる過程である、こういうふりに基本的には考えておるわけでございます。従いまして私は現在の批判なりあるいは再検討なりがいろいろな角度から行われつつあるにもかかわらず、わが国の社会においては正しい愛国心、愛民族心というものが漸次育成されつつあるし、またその方向に急速に進みつつあるという、こういう基本的な信念のもとにこれらの問題を考えておる次第でございます。
 しかしながらこれらの態度に立つて考えた場合において、現在の段階における予備隊のこうした意味の育成の程度というものが、十分に使命を達成する上において、満足するに足りる段階であるかどうかということになりますと、これはまた必ずしも現在において完全に満足すべき状態にあるとは言い切れない、こういうふうに思います。この点は、当事者といたしましてはまことに申訳ない次第なのでございますが、しかしかような部隊の根本的な考え方、指導精神、こういうようなものは、なかなか一朝一夕において簡單にでき上るものではないと思います。さきにも申し上げましたるごとく、これは軍に一つの理論ではなくして、その理論が隊員の生活のあらゆる部分に滲透せられて初めてでき上るところの一つの実践でなくてはならぬわけでございますから、理論がいかに巧妙に確立され、そしてそれがいかに隊員によつて理解せられましても、それだけでは不十分であつて、それが隊員の生活の中に溶け込んで、そうして絶えずそれが実践的に行動となつて現われて来るという段階にならなければ、満足すべき状態とは言えないと思います。こういう意味において、満足すべき状態をつくり上げるということは、もとより急務中の急務とは存じまするが、しかしながら相当の年月をかけなければならぬことである。またただ紙に書いた文章が上手にでき上つたという段階ならば、相当の月日をかけずともできましようが、しかしそれがほんとうに生活となり、行動となつて実践される段階まで行きますには、よほど長年月を要するものである、こう考えております。こういう意味において、今日の段階は、なお今後に期さなければならぬ点が多々あると存じます。しかし方向といたしましては、逐次よい方向に向いつつある。そうして効果としても、教育の効果というものは相当上りつつあると確信をいたしておるような次第なのでございます。
 もちろんこれらは一つの批判に相なりますから、私どもの主観的な批判がはたして客観性ありやいなや、これらはなおいろいろ論議の余地があろうと思います。しかし私どもといたしましては、そうした意味における精神指導というものは、逐次満足すべき状態に向つて行きつつある、そうしてやがて予備隊みずからが国民の前に誇るに足る、そうして世界の人々の前に誇るに足るところの指導精神というものを、みずからの生活の中から生み出して行く時期はそう遠い将来ではなかろうと期待をいたしておる次第でございます。
#7
○松澤委員 自然にそういう基本的な理念ができ上るということは、まことにけつこうなことでありますけれども、しかし保安隊あるいは警備隊というものは、一つの特別の社会でありまして、何か目標があつたり、あるいは使命観というものがなければならないことは当然だろうと思うのでありまして、国家全体という広い立場から考える場合と、一つの機構として、もしくは部隊として考える場合とは、おのずから別個でありまして、隊員をそろえている以上、その隊員に特別の理念なり、あるいは使命観なりというものをまず與えて行かなければならない、自然にでき上つて来るのを待つということは、民主主義的で非常にけつこうでありますけれども、そうかといつて、部隊の中においてそういう問題を検討して、下からの盛上りを待つということは、時期的にいいましても非常に歳月のかかることでもあるし、また一種の部隊であり、別の言葉でいえば、軍隊的な一つの組織を持つている場合においては、下からの意見を盛り上らせるということは、むしろこれは逆な方向であつて、一つのものを與える、そうしてその與えたものが、いろいろと運営の面において批判され、修正されるということは、当然考えなければならぬのでありますが、そうでなくて、ただ下からの盛上りを待つているということであれば、実際必要な場合における行動力というものが非常に鈍つて来るわけでありまして、技術的な訓練がどんなに進んでおりましても、それを指導する基本的な精神というものが欠けていれば、結局それは力のない組織にしかならないわけであります。
 そこでこういう問題について、警察予備隊の中において、どういう対策なり、方針なり、あるいは研究なりが行われているかどうかということを、具体的にお話を聞きまして、何にも行われていないということであれば、それはまた別個に考えなければなりませんが、ただこれが自然に出て来るのを待つという方針では、私は現在の段階において非常にいけないのじやないかと思うのであります。いかがでございましよう。
#8
○江口政府委員 ただいま大臣から御説明がございましたが、具体的な方法といたしまして、何か精神教育の資料になるようなものをつくつてはどうかという御質問のようでございますが、もとより、予備隊が創設されました当初から、お話にあります基本精神と申しますか、根本理念と申しますか、そういうようなものについての検討を行おうとする熱意と努力とは持つておるのでございます。しかしながら、現在までの過程におきましては、技術的な、あるいは実技的な部面が主となりまして、そういう精神的なよりどころを與えるというような作業にまで具体的に入る余裕のないほど、そういう実際面の方が早く、あるいは強く強調されて参つたのでありますので、お話のように、そういう指導方針と申しますか、モットーと申しますか、そういうものを早く掲げたいとは思つておりますが、まだ考慮中でございまして、それが文字になつた資料として外に配布する、あるいは各隊員に読ませるようにするというところまでは行つておりません。しかし、もとよりそういう何か文字として、実践され得る――われわれの考えておるところと、一般隊員の考えておるところとが一致するような指導精神というものをつくるべく、努力は続けておりますので、大臣からお話がありましたように、遠からず、無理のない、みんなが納得した、いわゆる予備隊精神と申しますか、そういうふうなものを確立し得るものと、かように考えておる段階でございます。
#9
○松澤委員 ただいま御答弁いただきまして、考えていることは事実らしいのでありますが、もしそうだとすると、根本精神あるいは基本理念として適当であると考えられるものを四つ、五つあげてみるとしたら、どういうことが基本理念となりますか。
#10
○江口政府委員 これは国家百年の大計と申しますか、そういう点をも考慮して、非常に慎重に考慮をしなければならない問題かと存じます。そういう具体的な作業に入りました際には、もとより国会の皆様方、あるいは有力な学者、あるいはいろいろな方面における経験者、そういう人たちのものの考え方などをよく参考にして、早くお話を承つた上で、そういうモットーと申しますか、精神というふうなものを文字に表わして行かなければならぬと考えております。昔のように一億総蹶起とか、あるいは忠君愛国、そういうふうな字句を簡單に打出すこともいかがなものかと考えております。もとよりこの仕事に当つておりますわれわれとしましては、どういう文字の面を強く打出すべきかという個人的な考え方はおのおの研究しつつ持つておりまするが、これを試案として公表するというようなことは、非常な大きな影響力を與えるものだと考えまするので、皆さんの意見がまとまつて、これなら大体案として打出せ得るという時期まで来なければ、ただいまとるとすればどういう言葉があるか、どういうモットーがあるかというようなお話でありますが、なかなかむずかしい問題でありまして、基本的には愛国心、愛民族心、これを基礎にした何かの精神を打出したいと思つておりますが、まだ試案としても文字に現わすという段階には到達していないわけであります。
#11
○松澤委員 私はすでに警察予備隊というものがあり、これは機構の上におきまして、今度は保安隊及び警備隊というようにかわつて行く、少くとも今まで警察的な一つの部門を担当している予備隊であるというふうに考えられていたものが、明らかに今度は保安隊という形に切りかわるわけでありまして、その切りかわりの際でも、予備隊がすなわち保安隊なのか、あるいは予備隊プラス・エツクスといろものが保安隊になるのかということは、これは重要な問題でありまして、そこまで装備あるいは精神、こういつたようなものが切りかわるときにおいて、警察予備隊と保安隊というものとが全然同一なものであるというならば、これはまた今までの愛国心、愛民族心というような漠然たるものでやつて行ける。しかし警備予備隊というものから脱して、新たなる機構の中で行動を要請せられる場合においては、この切りかえのときにおいてやはり隊員一般に対して一つの新しい使命観を與えるということが必要ではないか、こう考えてこの問題を取上げているのでありますが、その切りかえのときにおいても、やはり今までと何ら異ならない基本理念というものでやつて行かれるのかどうか、その点をお伺いしておきたい。
#12
○大橋国務大臣 私どもの考え方といたしましては、警察予備隊を保安隊に切りかえるのは、その使命なり任務なりについて、その際根本的な改革をするというふうな考え方をいたしておりません。これは名称を適当に改めるとともに、従来の使命任務というものをより一層適切に表現する、また法律のいろいろな規定につきましても、過去二年間の経験に徴しまして、本来の警察予備隊の使命、任務を遂行するために、より適切な規定にこれを改めるというふうに考えておるのでございまして、これは警察予備隊を保安隊に切りかえるというふうな表現から来る印象は、いかにも新しいものがここででき上るように感じられるのですが、もしわれわれの考え方をその通り表現するといたしまするならば、これは警察予備隊をより警察予備隊らしくしますために、必要な内部の改正をする、この程度の気持でいるわけでございます。しかしそれにいたしましても、基本的な考え方を打出すということは、これはないよりもある方がいいわけでございまするから、そういう機会をとらえて御趣旨のように考え方を何か確立するというようなことをやるといたしまするならば、それは非常にいい機会の一つである、とこう考えます。しかしそれまでまだ半年近くの日もあることでございまするから、なお今後十分検討を加えまして、そうした自信あるものができ上りましたならば、むろんそういう時期にでもそういう措置をとるようなことを考えてみたいとは思つております。しかしこれは今後の研究がそこまで効果を上げ得るやいなやということにかかつているわけであります。
 現在においていまだ警察予備隊としましては、こうしたようなことは根本であるぞというような具体的な文字による表現はいたしておりません。しかし大体ある程度の考え方というものはすでに実践をもつて指導いたしつつあることはこれは事実なのでございます。たとえばもともとわが国では軍人勅諭におきまして、軍人は忠義を盡すが本分である。あるいは礼儀を正しくする、紀律をとうとぶ、あるいは勇気をとうとぶ、あるいは信義を重んずる。こういつたような軍人として当然努力しなければならぬ道徳的実践の目標が指示してあつたわけでありますが、これらの目標というものは、これはよく考えてみますると、ひとり軍人にのみ要求される道徳律ではないのでありまして、これは一般国民に要求される道徳律を、特に軍人に対してはその使命から考えて、道徳的水準をできるだけ引上げるという意味において、軍人に対する勅諭として特に強調されたものではないかと考えているわけであります。こうした意味におきまする一般的を道徳律というようなものにつきましては、警察予備隊のあらゆる訓練を通じて隊員に呼びかけている。これは現にやつているわけでございます。紀律を守り、礼儀を正しくする、あるいは仕事に当つては勇気を持つて行かなければならぬ、あるいは約束を重んずる、あるいは国家のために與えられた使命を遂行するには犠牲的な考えを持つてやらなければならぬ。こうしたことはひとり予備隊独自の道徳というものではなくして、それは国民一般の当然な道徳なのでございまして、私はそうした意味における道徳律というものはすでに予備隊においてもある程度実践によつてなされつつあるということを申し上げたいと思うのでございます。
 もとよりかような部隊組織でございまするから、またその使命から考えまして、道徳的水準がより高い部隊というものは、使命を遂行するにより能率的であるわけでございますから、一般社会以上の道徳をここにおいては常に持つというふうにすることが必要でございます。今後ともそうした道徳律については一段と注意をいたしまして指導に当らねばならぬと考えております。
#13
○松澤委員 警察予備隊が保安隊に切りかえられるときには、別段そこに新しくつけ加えるものはない、こういうようなお話であります。そういうつもりで警察予備隊というものはつくられたものと思いますが、それが保安隊にかわる、保安隊がもし将来軍隊にかわる、こういつたような段階において、やはりその切りかえは一つの非常に新しい目標があつて、漸次かわつて行くもので、結局初めのものと最後のものとが全然変化のないものであるということには、私はならないと思うのでありまして、軍隊の組織になるかどうか、それは今後の問題といたしまして、やはり新しい組織には新しい一つの考え方を與えなきやならない。この機構の改正にあたつては、今までと違つた精神で隊員の気持を新しくして、さらに重大な使命感を感じさせるというふうにして行くことが、上にある人たちの当然なすべきことだと思うので、たとい警察予備隊が保安隊となつても、そこに新しい何もつけ加える必要がない。こういうふうにお話になるのはどうも私にはわからない。今軍人勅諭のことが出ましたが、私もそれ全部が悪いとは考えられません。そういうものが一定の社会の中において必要であることは私も認めるのであります。すでに警察予備隊ができてから相当の時間を経ているのに、それに対する一つの規律なりあるいは使命感なりというものができておらないことに私は非常に疑問を持つのでありまして、これ以上は議論になりますから申し上げませんが、少くとも早急に一定の目標なりあるいは基本的な理念というものを研究して、これならばというものをおつくりになることが適当だ、こう考えます。
#14
○田中委員長 本日はこの程度にとどめ、次会は明二十七日午前十時半より開会することにいたします。本日はこれにて散会いたします。
    午後零時三十四分散会
ソース: 国立国会図書館
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