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1951/01/26 第13回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第013回国会 本会議 第8号
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1951/01/26 第13回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第013回国会 本会議 第8号

#1
第013回国会 本会議 第8号
昭和二十七年一月二十六日(土曜日)
 議事日程 第七号
    午後一時開議
 一 国務大臣の演説に対する質疑(前会の続)
    ―――――――――――――
●本日の会議に付した事件
 国務大臣の演説に対する質疑(前会の続)
 議事進行に関する川崎秀二君の発言
    午後一時二十五分開議
#2
○議長(林讓治君) これより会議を開きます。
     ――――◇―――――
#3
○議長(林讓治君) 川崎秀二君より議事進行に関する発言を求められております。
    〔「議事進行」と呼び、その他発言する者、離席する者多く、議場騒然〕
#4
○議長(林讓治君) その内容は、予算書の違法に関する問題とのことであります。本日の議題は国務大臣の演説に対する質疑の継続でありますから、この議事進行は適当な時期に許します。
#5
○議長(林讓治君) 国務大臣の演説に対する質疑を継続いたします。小川半次君。
    〔発言する者多く、議場騒然〕
#6
○議長(林讓治君) 小川半次君の登壇を望みます。
    〔発言する者多く、議場騒然〕
#7
○議長(林讓治君) 小川半次君(発言する者多し)小川半次君。――継続いたします。小川半次君。
    〔小川半次君登壇〕
#8
○小川半次君 私は、民主党を代表いたしまして、吉田総理並びに閣僚諸君に、以下質問申し上げたいのてあります。
 二十七年度予算を審議する第十三回国会は、独立日本がいかに門出をするか、すなわち自主独立をよく打立てるか、あるいは反動的か、奴隷的か、もしくは民主的な門出をするか、国民は希望と不安の錯綜する中に、総理の施政方針と、周東、池田両大臣の財政、経済演説に耳を傾けたのであります。しかるに、その説くところ、いずれも自信と精彩を欠き、新味に乏しく、通り一ぺんの紋切型の説明にとどまり、具体的な方策を聞くことができなかつたのであります。
 いつの場合においても、通常国会における総理大臣の施政方針は、政府の方針を総括的に宣明する重大なものとされているのであります。それだけ、国民は、その趣旨内容に特殊の関心を拂い、事実これに値する重要性と指導カを有するのであります。特に今回は、歴史的な意義を持つ通常国会に臨んだのでありまするから、このときこそ国民に希望と理想を持たせ、民族を振い起さしめ、国民の向うところを明らかにすべき施政方針でなければならないはずてあります。しかるに、吉田総理にはその熱意なく、その述ぶるところ、しごく自信なく、平凡なる項目を常識的に羅列したにすぎないのてあつて、特に国民が聞かんとした外交政策とその見通しに至つては、遂に耳をふさがれてしまつたのであります。もちろん、国際問題は、いやしくも不用意、無責任な政策は嚴に愼まねばならぬのでありまするが、他面、政府の抱懐する主張、政策をあまねく宣明するに何らはばかるところはないはずであります。また、かくすることが国民に希望と自信を與えるゆえんにほかならないと思うのであります。日本は、講和條約に調印したその瞬間から西欧民主主義陣営に参加したのでありますが、そのことは決して向米一辺倒を意味するものではなく、ややもすれば向米一辺倒的感じと誤解を與えておる政府の態度を、総理は施政方針によつて明確にしておくべきであつたのであります。
 アジアの日本は、領土的、歴史的かつまた文化的に見ましても、アジアの友邦とは断ち切ることのできない宿命的な協同関係に置かれているのであつて、この根本的理念に立つて、日本は西欧民主主義国と手をつなぎつつ、さらにアジアの友邦と団結してアジアの発展に努力するという高邁なる政策を持たなければならぬと考えるのであります。そうした根本理念に立つてアジア政策を考えるとき、かつて日華事変当時、中国政府が日本に向つて、東條政権を憎むが、日本国民を憎まない、また日本軍閥を相手にしないが、日本国民を相手とするといつた、あの外交的名句を思い出すのであります。中共の地域内には、日本と経済通商を行いたいと願つておる多数の経済人があり、また日本国民と友好和親を結びたいと念願しておる多数の民衆のあることを忘れてはならぬのであります。私が吉田総理に望むものは、中共政権を相手にしないが、そこにある純朴なる四億五千万の民衆と手を握りたいという大理想がほしいのであります。こうした意味において、総理の外交政策の方針を承りたいのであります。
 私が中国対策の必要を考えるゆえんは、現在も将来も貿易に依存しなければならない日本が、中国の広い市場を放棄して、はたしてこれにかわる市場がどこに求められるかを案ずるからであつて、幸いにしてかわりの市場が得られれば、日本の自立経済も促進されるし、国民も安堵するのであります。中共を相手とせずといわれる政府は、これにかわる市場をどこに求められるつもりであるか、その具体案を示してほしいのであります。
 自立経済の基礎は貿易にあるのであつて、貿易のいかんによつて日本の運命が決せられるのであります。ところが、総理の施政演説を伺つておりますると、アジアを対象とする貿易には無関心であり、熱意のほどが示されていないのであります。大蔵大臣の自立経済論と対照的に、総理は外資導入論を強調されたのであつて、そこには貿易よりも外資導入に重きを置くという意図が多分に見られるのであります。外資導入まことにけつこうでありますが、それではその外資をアメリカ政府から借り入れるのであるか、あるいはアメリカの民間から借り入れるのであるか明確でないのであります。政府ではすでに四年前から外資導入を唱えているのでありまするが、いまだにその実現を見ない今日、はたして政府の思う通り行くかどうか。ことに目下のアメリカにおきましては、軍備拡大に朝野をあげて資金資材を投じているのであつて、民間投資が日本にまで及ばないのではないかというのが、アメリカ経済界の常識となつておるのであります。政府では、はたして外資導入に自信があるのか、あればその点を明確にしておかなければならぬのであります。
 次に、予算に関してお伺いしたいと思います。独立国家を維持するにあたつて最も不可欠なものは、自立経済と並行して長期財政計画であります。この財政計画が立てられない限り、国民は絶えず不健全、不安定な経済的立場に立たされねばならぬのであります。今回の予算は、一応つじつまは合せてありますが、長期財政計画が明示されていないのは、至つて心細く、遺憾に思うのであります。ひつきよう、これは自由放任政策のもとでは確固たる見通しが立たず、従つて長期財政計画が樹立できない証左なりと思うのであります。(拍手)
 さて、今回の予算のうち、国民の一番関心を寄せているのは、何といつても防衛関係費の千八百二十億円でありまして、このうちおもなるものは、防衛支出費六百五十億円、警察予備隊を軍隊化するための六百十億円、安全保障のための措置費が五百六十億円となつておるのでありまするが、この安全保障諸費というのが納得できないのであります。安全保障のためには、防衛分担金と予備隊費が別に計上されているにかかわらず、それ以外に、同様の性質の予算が、別個に、しかも五百六十億円の巨額の費用を支出しなければならないという理由は、いかなる必要によるものであるか、はなはだ不鮮明であります。大蔵大臣の演説中の、今後における諸情勢の推移により内容がさらに具体化するのを待つて、これら経費の分配を適切にしたいという苦しい説明だけでは、納得するわけには行かないのであります。いやしくも、これだけの厖大な予算が漠然として、ただ政府のいう営舎の建築や通信あるいは道路の施設または巡視船等の装備を強化するためだと聞いても、多少の経済的知識を持つ者であれば、だれしも賛成できないと思うのであります。
 国民は、日米安全保障條約に伴つて、わが国がある程度の防衛費を負担するの必要は承知し、覚悟しておるのであります。しかしながら、その額が日本の経済力を越えたものであつてはならないし、日本経済の自立と国民生活を脅かすものであつてはならないのであります。そうした立場から国民の予想していた防衛費は、大体従来の終戦処理費を上まわるものであつてはならないというところにあつたのであります。また第十二国会において、総理や大蔵大臣も同様の答弁をされておつたのであります。ことに、その点について国会には強い要望があつたのであります。しかるに、終戦処理費の二倍に近い千八百二十億円という防衛関係費を組んで、妥当な予算だとうそぶくに至つては、その厚顔にあきれざるを得ないのであります。国会の要望を無視する態度は、みずから国会の権威を傷つけるものであります。国会は政府に白紙委任状を渡したものではないのであつて、この不明確な予算によつて、かつての東條内閣と同じような臨時軍時費的な暗い印象を與えることを嚴に愼まなければならぬのであります。
 また池田大蔵大臣は、防衛分担金はアメリカよりも少いと発表しておりますが、これはまつたく国民を欺瞞するものであつて、米軍の駐留費予算一億五千五百万ドル、すなわち約五百五十八億に比べて、わが国の負担は六百五十億円で、はるかに重いのであります。大蔵大臣は、この点をあいまいにせんがために、米軍の装備、食糧、被服及び給與等は米国側において負担すると言つておりまするが、これは当然のことで、従来の終戦処理費の中には、これらの費用は一切含まれていなかつたのでありまして、いまさら不必要なことを持ち出すところに、予算を単なる技術的説明で押し通さんとする、ふまじめさがうかがわれるのであります。(拍手)大蔵大臣は、私のこの評言に不満であるならば、それでは防衛関係費が千八百二十億円でなければならぬという積極的な論拠を明確にしていただきたいのであります。(拍手)
 私は、国民とともに疑問に思うことは、政府は警察予備隊に対して大砲や戦車や、あるいはまた海上保安隊に対しては駆逐艦を與えて、事実上軍隊化しておきながら、再軍備反対を唱えていることであります。八千五百二十七億円の予算のうち千八百二十億円の防衛関係費は、予算の二一%に当るものであつて、かつて軍国日本といわれた準戦時時代の軍事費にほぼ近い予算であります。こうした予算面あるいは予備隊強化の現実を見るとき、形式の表現はどうあろうとも、実質的には再軍備の第一歩が踏み出されたと見るべきであります。政府は、本年中に予備隊三万五千人を増員して十一万人とし、さらに二十八年度には三十一万人に増強すると伝えられているのであります。こうして、警察予備隊や海上保安隊を、ずるずると、なしくずし的に軍隊に持つて行く方針のようでありますが、こういう政府の態度は、憲法第九條の解釈をあいまいにし、また憲法全体の権威を失わしめるものであつて、将来に禍根を残すものであり、今こそ第九條の解釈を明確にする必要があると思うのであります。従つて、必然憲法の改正問題が起つて来るのでありますが、その点、政府において憲法改正の意図があるかを伺いたいのであります。
 一体、本質的に軍隊意識のない者を軍隊として、ただ数だけをふやしても、はたして祖国防衛ができるかどうか問題であります。二箇年勤務で六万円の退職金が與えられるというサラリーマン制度では、祖国の難に挺身するというかたい信念に乏しく、アルバイト式精神で日を送るという安易感に流れるのであります。かかることが堕落の原因となつて、予備隊や海上保安庁の幹部の中から、次々と汚職事件が生まれるのであります。また予備隊の性格そのものもあいまいであつて、日常やつている訓練の実態は軍隊であり、その身分や建前は警察であります。このような、あいまいな性格のもとでは、指導者も隊員の教育に困惑するであろうし、隊員自身、おのが心の置きどころに迷うのであります。このような状態では、祖国の安全を託する気にはどうしてもなれないのであります。警察予備隊は、一応本年九月、二箇年の任期満了となるのでありますが、政府では引続き同様の制度を置くのであるか、あるいはあらためて軍隊を創設するのか、明示していただきたいのであります。
 政府では、再軍備反対の理由として、大体三つのことを引用しておられます。すなわち、現在わが国の経済は安定しておらず、国力は十分でないから、今その時期でないというのが一つであり、また再軍備するかどうかは国民に聞き、国民がきめるべきであるということが一つ、もう一つは、外国は今日本の再軍備を望んでいないという、この三つであります。第一の、経済は安定していないという意見でありますが、吉田内閣の大番頭である池田大蔵大臣は、ことごとに得意然として経済は安定して生産は上昇したと言つております。ここに意見の矛盾があります。また次の、再軍備するかどうかは国民がきめるべきであるということでありますが、それなれば衆議院を解散して国民に問えばよいのであるが、それも行わないとすれば、ここにも理由があいまいとなつて来るのであります。いま一つの、外国は望んでいないという考え方は、まつたく当を得ていないものであつて、日本の再軍備の必要は外電がしばしば伝えておるところであり、また本日来朝したラスク大使の意図もそこにあると信ずるのであります。かくのごとく、政府の軍備反対の理由は一つとして自信に満ちたものがないのであつて、この際国民にあいまいな考え方を與えず、堂々と自衛軍を創設すべきだと思うのであります。
 世界の独立国家で軍隊を有していない国は、日本の一府県程度の小国であるところのアイスランド、パナマ、コスタリカ、この三箇国だけであります。また独立国家で外国の軍隊のみに依存しておる国はどこにもないのであつて、外国軍隊に保護されているうちに、その国の国民は、知らず知らずのうちに奴隷化され、屈辱的な植民地思想に陷つて、再び立ち上るというたくましさを失つて行くのであります。しかしながら、軍備を持つにしても、過去の日本のように侵略的軍隊をつくつてはならないのであつて、あくまでもその本質は、自国の領土とその民族と文化を守る軍隊であり、その費用は国民所得の四%を越えてはならないという限度におくべきだと思うのであります。こうした立場から今回の防衛関係費を見るとき、われわれの構想する軍備費をはるかに上まわつておるということが言えるのであります。
 次に、東南アジア開発に関してお尋ねいたします。総理も安本長官も、得意然として東南アジア開発の経済協力を強調されたのでありますが、この東南アジア開発については、国民に多大の関心と期待を持たれているのみならず、これによつて生活水準の低いアジア民族に幾分でも潤いが持たれることが期待できるのであつて、このことはアジア各国民の歓迎する方策であると思うのであります。しかるに、この経済協力に関して、政府ではどのような計画ができているのか、その片鱗すらうかがうことができなかつたのであります。資金、資材の乏しい日本はどのようにして協力するのか、あるいは技術のみの提供による協力であるのか、ある程度明示できないはずはないのであります。特にわれわれの不安に思うのは、計画性経済のもとに運営されている東南アジアと、自由経済を一枚看板とする吉田内閣との間に、はたして経済的協力が完全にできるかどうか、そこに大きなギャツプのあることを考えるとき、政府のいう東南アジア開発に協力するというのは、単なるゼスチュアか、あるいは希望的表現の範囲にすぎないのではないかと思うのであります。この点、内容を明らかにするとともに、計画性経済で行くのか、自由経済で行くのか明示してほしいのであります。今や、世界いずれの国においても、計画なき経済を行つている国はどこにもないのであります。世界の政治経済情勢が転換したにもかかわらず、依然として自由主義経済を表看板として統制を廃止することに専念し、主食に対してさえもその統制を撤廃しようとの現状認識に欠けた方針を堅持している吉田内閣を見るとき、自由経済病が膏肓に入つたと、あきれざるを得ないのであります。
 政府は、かくのごとく、物の面では自由放任策をとりながら、金融の面では強固な統制を行つておるのであります。すなわち、一方にはインフレの素因をつくりながら、他方には金融引締めによつてこれを押えようとする、最もしろうとくさいデフレ政策をとつておるのであります。この物と金とのアンバランスから来るところの必然の結果として、物価価格の混乱が生ずるのであります。最近の実情からいえば、金融引締めは、割高物価の是非に役立つというよりも、一部のくずれかかつておる商品価格を不当に圧迫しておる傾向であり、従つて一般的割高是正よりも、商品間の価格の不均衡を促進する傾向さえ見られ、このことは一部商品生産者の利益を確保する反面、他の商品生産者の利益を不当に圧迫する結果となつておるのであります。
 朝鮮事変以後、わが国の物価が国際価格に比し割高であり、それが輸出停滞の最大の原因となつておるのでありますが、その物価高の原因は、金融政策に深い関係を持つのであります。御承知のごとく、戦前のわが国経済界は、自己資金で運営していたものが大多数であつたのでありますが、近年はいずれも自己の手持ち資金で運営しておるのではなく、すべて銀行その他から高利の融資を受けて運営しておるのである。従つて、その利子が生産コストに加えられるために、それだけ割高となつておるのであつて、この割高な物価をいかにして是正するかがわが国経済の重要課題である。この点、政府においていかなる対策があるか、明らかにしてほしいのであります。しかしながら、現状としては、融資が停止されれば、さらに経済界を混乱に陷れることは明らかであつて、昨年末において、代表的な商社の倒産だけでも二百数十社を数えたのであります。これが余波として、三月には、さらにその十倍が倒産の運命にあうといわれておるのであります。これらのよつて来る原因は、政府の金融政策の失敗と、昨日苫米地委員長が御指摘されたごとく、ドル物資の輸入と備蓄を奨励した政府の見通しの失敗によるものであつて、政府は強くその責任を感じなければならないはずであります。(拍手)
 敗戦後、極端に資本不足に悩む日本経済において金融機関の持つ役割が高く評価されるに至つたのでありますが、特に最近の情勢は、あまりにも金融偏重的なきらいがあり、金融機関が産業界を支配する傾向となり、まさに金融フアッシヨを現出したのであります。従つて、こうした金融フアッシヨの裏面には、必ず汚職またはそれにひとしい行為が隠されているであろうことも想像できるのであります。まじめな中小企業者が倒れて行く反面、大会社は融資された金でどしどしビルを建てたりあるいは不生産的なトルコぶろやキヤバレーに億と名のつく金をつぎ込む現象が起つて来るのでありまして、吉田内閣の政策が生んだ典型的な記念物と言いたいのであります。(拍手)
 次に海運及び造船政策について各関係大臣に伺いたいのであります。政府は船腹増強政策を強調しながら、その説かれるところと実際とは著しくかけ離れており、昨年秋以来、造艦政策の失敗に対しては、海運及び造船業界のみならず、国民一般の著しく失望するところであります。安本長官は、外航用船腹が百五十万トンできたと高言しておられますが、現在の対外貿易から計算してその輸出入物資の五〇%を日本船で輸送するとしましても、なおかつ百万トン以上の不足であるという事実、さらに現在の百五十万トンの中には、今後数年しか使用に耐えない老朽船と、戰時標準型の改装船が約四割含まれておるという事実を認識しなければならぬのであります。このために、外国の船舶に大量の物資を輸送してもらつており、高い運賃と貴重な外貨が国民の負担において支拂われつつあるのであります。
 昨年、政府は、二十六年度第七次後期造船は二十万トンを八月ごろまでに起工すると発表し、業者はそれを期待しておつたのでありまするが、これに反し、政府部内では金融問題で衝突して意見の一致を見ず、日本銀行とも摩擦を起して、最近に至り遂に十一万トンを着手したという大醜態を演じたことは、御承知の通りであります。このためにか、先日の内閣改造に山崎運輸大臣を更迭せしめ、この失政から国民の目をおおわんとしておることは、まことに物笑いの種であります。(拍手)これは決して運輸大臣だけの責任ではなく、政府の財政を握つて、ことごとにその主管大臣を圧迫して自己の我を通さんとする池田大蔵大臣こそ、その政治的責任を負うべきであると思うのであります。(拍手)第二次吉田内閣成立以来、計画造船は数次にわたつて継続されましたが、この間、各船主及び造船所は、この制限トン数内で自家の新船を獲得すべく、猛烈な出願競争が演ぜられ、そのために一部船主または造船所においては莫大なる運動費がばらまかれたといわれ、今日までに造船された第五次以下五回の実績表を見ると、大資本または大手筋が特別に擁護され、中小業者は、その内容や努力のいかんにもかかわらず、ほとんどらち外に放逐されたことは、その数字が明瞭に立証しておるところであります。すなわち、一流大手筋といわれる船主は毎回必ず入選認可されており、また政府と格別の関係にある戦後派やみ成金の進出などが海運界を暗くしておるのであります。新しい日本は、少数の利益独占を排して大衆に均霑せしめる民主的な経済政策の実行が嚴に要請されておるのであつて、吉田内閣の、かかる弱胸強食的政策や、少数富者のために多数を犠牲にするが、ごときは、われわれの絶対容認できないところであります。村上新運輸大臣は、従来の計画造艦の実施について、いかなる構想を持つておられるや、並びに今後の方策と第八次計画の具体策、建造船主の選定方法について詳細なる明示を願いたいのであります。
 次に、外貨についてお尋ねいたします。大蔵大臣や安本長官は、国際金融の面では、わが国外貨の手持ちが九億ドルに上ると自讃しておるのでありますが、この九億ドルの実質は大部分がポンドであつて、昨年来のポンド過剰、ドル不足は、ますますひどくなつておるのであります。現在日本は重要物資をポンド圏に輸出して、しかも得だポンド貨によつては何も輸入できずして、たまる一方で、すでに支拂協定を一千万ポンドも越えており、一方ドル圏への輸出は振わず、必要な原材料の輸入がはかどらず、わが国の産業界はこんとんとしておるのであります。これはポンドとドルのバランスがとられていない政府の無策によることはもちろんでありますが、もう一つの原因は、昨年の国会において池田大蔵大臣が、二十七年三月までには日英支拂協定額の七千万ポンドには達しないという、見通しの誤つたことを言明したことに災いのあつたことも認めなければならぬのであります。支拂協定の規定によれば、日本の手持ちが七千万ポンドを越えたときには協定を更新しようとうたつてありますが、この協定変更に際して日本のとるべき具体案をお示し願いたいのであります。
 次に大蔵大臣は、今後も増税は極力避けると言明しておられますが、すでに本年の補正予算は、すなわち二十七年度の補正予算は四千億から五千億と伝えられており、また賠償費を含んだ平和回復処理費がかさむことが予想され、従つて来年度はインフレ傾向が強くなることは必至であります。もし、このままの税制で実施するならば、国民の税負担の増大するのは明らかなことであつて、大蔵大臣は増税を避けるという以上は――その裏づけとして、税制を現在よりも軽くする考案がなければならぬはずであります。
 また国民所得の見積りは、昨年末予算案を閣議で決定したときの推定では四兆九千億円だと発表したのに、その後数日を出ずして五兆三百億円にふやしておるのでありますが、これは明年度予算を今年度予算通り国民所得の一七%にとどめたという、この一七%の数字をつくるために、政府がかつてに作成した五兆三百億円という数字であつて、この推定に基き税収入の見積りも苛酷となるのは当然であります。政府のいう国民所得の根拠はどこにあるのか。生産指数、分配指数、消費指数の科学的根拠に基けば、日本の国民所得は四兆をわずかに上まわる程度となつておるのであります。かくのごとく、政府が、苛酷な税をとるための名目や、パーセンテージを埋め合せるための形式から、かつてに架空な国民所得額を作成することは、今後賠償問題等に響くことなどを考えて、もつと愼むべきであります。(拍手)
 こうした問題のみならず、大体大蔵大臣は、国の予算を私物扱いにしておる傾向があるのであります。橋本前厚生大臣が、戦後久しき貧苦と悲しみに耐え忍んで来た戦争犠牲者に、独立国家の門出にあたつて明るい希望を與えたいという思いやりから、当然妥当と見られる予算を要請したにもかかわらず、彼に対する個人的な感情から大蔵大臣はこれを拒絶したり、また廣川農林大臣とわずか五分間のやみ相談の結果、開拓者資金融通への繰入れに五億円と、農林漁業資金に十億円を簡単にふやしたり、実にかつて気ままに予算を私物化しておるのであつて、今国会において、これらの諸点が徹底的に暴露されなければならぬと思うのであります。(拍手)最後に一言したいのであります。今や日本経済は、アジアの断崖にはえた一本の松の木のようなものであつて、かつてこの松の木に七千数百万の人口がすがりついていたゆえんは何であつたか。がつてその根は朝鮮、台湾、中国等に伸び広がり、かなりゆたかな経済補給の血路を切り開いていたからにほかならないのであります。さらにその葉は遠くアメリカ、イギリス、南洋諸島に伸び海運、繊維、雑品等の輸出貿易に負うところが大きかつたのであります。しかるに、今やその経済補給の根は完全に刈り取られ、商船の八割五分は海底のもくずと消え去り、日本経済は、根も葉もない、まる裸の姿となつたのであります。この活カを失い、枯渇にひとしい日本経済を再建するには、吉田内閣のとりつつある自由放任にしてしかも貧困なる政策では、断じて救えないのであります。(拍手)計画性と知性のある自立経済を樹立することによつて初めて救われるということを申し上げ、以上各大臣の答弁を求めるものであります。(拍手)
    〔国務大臣吉田茂君登壇〕
#9
○国務大臣(吉田茂君) お答えをいたします。
 私の過日の施政演説において何ら聞くべきものがないというお話でありますが、聞く聞かれないは別といたして、私としては言わんと欲するところを言い盡したつもりであります。(拍手)日本の外交政策のアジアに対する根本理想は何かということに対しても、善隣関係を確立したいということをはつきり申しております。また世界政策の理想についても何ら聞くところなしというようなお話でありますが、これはりつぱに国際連合の趣意に従つて、方針に従つて日本国は世界の平和に貢献したいということを、はつきり申しております。
 また中国市場を失つた日本として、これをどうするかということでありますが、戦前といえども、中国貿易は全貿易のわずかに五%ないし六%を占めておるのであります。(発言する者あり)これは数字が明らかにいたしておるところであります。ゆえに、戦後中国市場は失いましたが、にもかかわらず、日本の経済は、このために枯渇はいたしておりません。のみならず、近年ますます日本の繁栄――生産指数にいたしても、貿易にいたしても激増しておる事実がこれを証明いたしております。(拍手)
 その他の問題については関係大臣からお答えをいたします。
 この機会に、猪俣議員の質疑に対して答弁いたします。
 質問の第一は、反共のためには戦争も辞せないかというお尋ねであつたそうでありますが、平和は政府としてはあくまでも堅持いたす考えであります。
 第二問は、国民政府承認のダレス大使あて書簡を発した理由及びその動機いかん。これはすでに答弁いたしました。
 この書簡は公文書なりやいなや。これは公文書であります。
 蒋介石政権を認めることの英国、インド、東南アジアに與うる影響いかん。この問題についてもすでに説明いたしましたが、アジア諸国における平和愛好国としての立場を強化するものであるということを申しております。
 中共との貿易なしに日本の自立経済が成り立つか。これはただいま答弁いたしました。(拍手)
    〔国務大臣池田勇人君登壇〕
#10
○国務大臣(池田勇人君) お答え申し上げます。
 外資導入の見通しいかんというのが御質問の第一点でございますが、これは私の推計では、すでに八千万ドル程度の外資が入つて来たと計算されておるのであります。今後の問題につきましては、外資導入法の改正等によりまして、今まで以上にどしどし入つて来ることを期待いたしております。しかして、外資導入は政府間の問題か、あるいは世界開発銀行の問題か、民間の問題か。いずれでも入つて来ればよろしゆうございます。
 第二の点は、安全保障費あるいは防衛分担金が多過ぎるというお話でございますが、これは財政演説で申した通り、私は今の財政上から申しまして、国民所得に対して三・七%――西ドイツは七・五%を負担しております。その点から、この程度はやむを得ないと思います。なお再軍備は国民所得の四%くらいにとどめたいという御計画のようでありますが、私はなかなかむずかしい話ではないかと思います。
 次に、輸入のために商社で困つたものがある、政府の責任だとおつしやいますが、これは、みなが、ふなれのために起つた問題でありまして、その跡始末は、みなで適当な処置をつけつつあります。どうぞ御安心願います。
 その次には、外貨が九億ドルたまつた、ポンドが過剰ではないか、こういうお話でございますが、九億ドルの外貨は、六億ドルがドルでございます。そうして二億ドルに相当するものがポンドでございます。一億ドルがオーブン・アカウントの勘定でございます。決してポンドばかり多くなつたのではない。今はドルもふえて参りました、ポンドもふえて参りました。しかして、この対策といたしましては、極力ポンド地区からの輸入をはかるようにいたしております。そのためには、金融上の施策、あるいは様子によつてはその他の処置もとりたいと考えております。ただ問題は、イギリスとお互いに話し合つてできるだけ日本に輸出をしてもらうように話を進める所存でおりますから、しばらくお待ちを願いたいと思います。
 なお補正予算で四千億、五千億組むつもりではないかというお話でございますが、何のために四千億、五千億組むのでございましよう。これこそ賠償その他に悪影響がありますので、四千億、五千億の補正予算は公言なさらない方が適当であると思います。私はそんな補正予算を組む考えは毛頭持つておりません。
 なお国民所得の問題につきまして一七%にとらわれておる、こういうお話でございますが、これはもう少しお調べになつたらわかると思います。昭和二十六年度は一七・六%、それは四兆五千億の計算で行つております。しかして今回は、四兆九千億であつても一七・三%。それで二十六年度よりも減つておるのであります。しかし、最近の安本の数字は、昭和二十六年度の四兆五千億が四兆六千何ぼになつておる。しかして、二十七年度の見通しは五兆三百億であります。その割合が一七%を割つております。私は一七%にとらわれるために国民所得を動かすような、そんな下手なやり方はいたしません。(拍手)
 なお大蔵大臣は予算を私物化しておるとおつしやいますが、大蔵大臣は予算の主管大臣であります。閣議にかけて大蔵大臣がきめるのは当然であります。大蔵大臣がほかの人にきめてもらうようになつたら、日本の財政は持てません。私が所管してやるのであります。(拍手)
    〔国務大臣周東英雄君登壇〕
#11
○国務大臣(周東英雄君) お答えいたします。
 東南アジア開発に関しては、日本は金も何もないから技術だけかというお尋ねであります。これは一昨々日の施政方針にも申し上げましたように、日本といたしましては、技術、また輸出銀行を通しまして、資金あるいはプラント輸出等による器具機械等によりましても援助を考えておる次第であります、同時に、東南アジア開発ということは、日米経済協力を通じつつ、その方面からの資金資材等の援助も受けつつ開発をいたし、日本の経済復興に資したいと考えております。
 なお、国民所得について何か作意的に増加したような御質問でありますが、ただいま大蔵大臣からも申しましたように、これは今日の状況並びに物価、賃金、生産の指数を愼重に考慮いたして、統計的に数字を出したのでありまして、作意的につくつたものではなく、かつ二十六年度の見込みよりも実績がふえた結果、それを元にした結果、正しい数字として五兆三百億が出たのでありますから、御承知を願やたいと思います。(拍手)
    〔国務大臣村上義一君登壇〕
#12
○国務大臣(村上義一君) お答え申し上げます。小川さんの御質問は、計画造船の実施についてという点、それから第八次造船計画の具体策並びに建造船主の選定について、この三点であつたと記憶いたします。
 日本の海運におきまして最も痛感されておりますのは、外航就航の大型貨物船が不足しておるという点であると思うのであります。お話の通り、日本海運としましては、日本の輸入物資の五〇%を日本船になつて積み取るということが造船の目標となつておりまして、この目標に到達するために、二十四年以来新船の建造、戰標船の改造、また沈船の引揚げ、外船の買入れ等に種々の努力を沸つて外航就航船の増強をはかつて今日に至つておることは、御承知の通りであります。現在クラス・ボート二百五十五隻、百五十万総トンを保有しております。また本年度末におきましては百八十三万総トンのクラス・ボートを保有し得るはずであるのであります。今日なお貿易量の約三〇%を積み取つておるにすぎないのでありまして、目標には相当の距離がある次第であります。特に遠洋航路の大型船の不足が最もはなはだしいのであります。従いまして、従来の造船計画におきましては、それらの遠洋就航用の大型貨物船の建造に重点を置いて参つたのであります。今後におきましても同様大型貨物船の建造に重点を置いて行きたいという考えであるのであります。また、日本海運が貿易の振興に寄與し、かつ貿易外収入の増加に貢献すると同時に、国際海運に伍してその堅実な発展をはかるためには、どうしても定期航路の整備が必要であるのであります。現在の日本の商船隊中には定期航路に適する船舶がきわめて少いことは、これまた申し上げるまでもありません。定期航路の再開に支障を見ておる次第でありまして、二十六年度の造船計画におきましては、特に定期航路用の船舶建造に重点を置いたのであります。今後の造船計画におきましても、相当重点をここに置きたいと考えておる次第であります。かくして三、四年の後には、輸入物質の五〇%積取り目標をほぼ達成したい、同時に日本を中心とする基本的な定期航路の整備を完了したいと考えておる次第であります。
 次の点について申し述べます。昭和二十七年度の建造計画につきましては、まだ決定を見ておりませんが、私としましては、少くとも三十万総トンの建造を確保したいと考えておる次第であります。目下二十七年度以降の船腹不足量、定期航路整備の見通し、また建造資金の面、すなわち海運会社の自己資金の造成の可能量、市中金融機関の融資限度、財政資金の必要量などを検討中でありましてでき得る限り早い機会に決定するよう取運びたいと考えております。従いまして、建造船主の選定も未定でありまして、政府としましては、日本海運の所期する目的を達成するとともに、最も公正に選定をする覚悟であります。(拍手)
    〔国務大臣大橋武夫君登壇〕
#13
○国務大臣(大橋武夫君) 警察予備隊は軍隊化しておるという御説でございましたが、警察予備隊は、一般警察力を補うことによりましてわが国の平和と秩序を維持し、公共の福祉を保障するために設けられたものでございまして、その使命は国内の治安を確保するにあるのでございます。しかして国内の治安とは何であるかと申しますと、国民の権利と自由とが常に正しく守られておるということでございます。普通警察の対象となつております一般犯罪の発生が国民の権利と自由とを破壊いたしますることはもちろんでございまするが、外国勢力の不法なる侵略、外国の扇動または干渉による大規模なる騒擾、内乱等に至りましては、それこそ国民の権利と自由とを根本的に脅かし、国内の治安を全面的に破壊せしむるものといわなければなりません。かくのごとき場合に対処する措置を講じますることは、国内治安確保のために欠くべからざるところでありまするがゆえに、警察予備隊はかかる場合に備えて設けられたものでありましてその編成、装備等も、かかる場合にも応ずるためにくふうせられつつあるのでございまして、あくまでも国内治安確保のための重要なる機構であり、決して軍隊ではない、こう言わなければならないのでございます。かような警察予備隊の性格は、創設以来今日まで一貫して與えられておるところでございまして、この間何ら変更をいたしておる事実はございません。今年の秋に、現在応募いたしておりまする一般隊員の募集の当初の期限でありまする二年の期限が参るのでございまして、そのときに際しましては、退職者も多少はあろうかと存じまするが、政府といたしましては、退職による欠員を補充いたしました上、年度内におきましてさらに三万五千名を増員いたし、現在の制度のまま存続させるつもりなのでございます。従いまして、今秋から軍隊になるということも、むろん考えてはおらないのでございまするから、憲法改正をして軍隊を創設したらどうだという御議論もございましたが、政府は予備隊を軍隊化する考えはなく、従つて、たびたび申し上げておリます通り、憲法改正の必要を認めるに至つておりません。(拍手)
#14
○議長(林讓治君) 先ほどの総理大臣の答弁に対し、猪俣君より再質問の要求がありますから、これを許します。猪俣浩三君。
    〔猪俣浩三君登壇〕
#15
○猪俣浩三君 昨日私が質問をいたしました第一の点は、アジア並びに日本の現状におきまして、平和を確保し、戦争を回避することが最高の政策ではないか、これ以上の価値ある政治原理があるやいなやと、総理大臣の信念をお尋ねしたのであります。なぜならば、いわゆる太平洋戰争の首魁とされておりました東條英機でも、戦争はしたくない、平和はよろしいということを言つておつた。しかるに、あの戦争に突入したのであります。彼は、この言葉のそのまた上に一つの原理を持つておつた。米英を打倒し、新しい世界秩序を建設し、八紘一字の皇道を世界にしくという、これを最高理念としたのであります。この理念のためには平和を破つてもよろしいということに相なつて、あの戦争となつた。そこで、ただ平和を確保するということだけでは安心出来ない。それ以上の何か政治原理をお持ちであるかどうか。この平和を最高の原理となさるものであるかどうか。
 近時、反共の名におきまして反動思想が勃発し、いわゆる国粋団体が台頭して参りました。あるいは天皇を神聖視するような国民実践要綱が文部大臣から出されようとしたり、あるいは紀元節の復活を考える有志が現われたり、あるいは国防増強の名において、だんだん再軍備に進行しておる政策を政府がとつたり、今また国民政府を承認するということによりましてここに新しい波紋を世界に投げかけたり、この総理大臣の国会における答弁を見ましても、中共あるいはソ連に対しまする対抗意識はなはだ盛んにして、私どもは多大の不安を感ずるのであります。(拍手)かような状態におきまして、青年の学徒にまたわだつみの声を聞かせ、「原爆の子」というような、昨日読みました書物の材料が提供されるような、かような情勢が来ないであろうかどうかということは、国民一般が多大なる不安を持つている点であります。(拍手)
 しかるがゆえに、この平和を確保するということが最高の価値ある政策であるという信念をお持ちであるかどうか、これを表白していただいてこの一般国民の不安を解消していただきたい。また、かような政策を堅持する見通しをお持ちであるかどうかということに対しましても御質問を申し上げる次第であります。(拍手)
    〔国務大臣吉田茂君登壇〕
#16
○国務大臣(吉田茂君) お答えをいたします。平和を堅持するという理想理念は、これは人類として最高の理念であります。これ以上の理念はないと思います。またこれに対して実行を疑う人は、その人の心をわれわれは疑わざるを得ないのであります。(拍手)政府としては、あくまでも平和を堅持いたします。(拍手)
#17
○議長(林讓治君) 川崎君より議事進行の発言を求められておりましたから、適当な機会にこれを許す旨先刻申しましたが、議場に徹底しないようでしたが、本日の国務大臣の演説に対する質疑が終つた際これを許します。
 松尾トシ子君。
    〔松尾トシ子君登壇〕
#18
○松尾トシ子君 私は、日本社会党を代表いたしまして、政府の施政方針につき数個の質問をいたしたいと存じます。
 まず第一に、吉田総理大臣にお尋ねをいたします。
 古来、国と国との外交は、表面は美しい言葉で飾られておりましても、真に友愛と信義で結ばれた例は少いと思います。お互いに右手で握手をしながら、左手に郷を持つた姿で外交は表現されて参りました。英国人の間には、政争は水ぎわまでという合言葉がございますが、これはアングロサクソンの外交に対する心構えを表わしているものと思います。一国の利害のためには、外交上のとりきめは常に破り去られて参りました。すなわち、外交とはその国の利益を守るためにのみ存在したのであつて、他国のために犠牲になつて滅びてもかまわないと、当初のとりきめを最後まで正直に守るという行き方は、昔の外交にはございませんでした。最近でも、第二次大戦のとき、独ソ同盟並びに日ソ不可侵條約は、一方的御都合主義で破り去られたのでございます。かくのごとき国際信義を破らないための機構として国際連合は偉大な努力を拂つているのでありまするが、朝鮮事変を顧みましても、一抹の不安を感ずるのであります。
 私どももう終戦後、この国会におきまして新しい平和憲法を議決いたしましたが、顧みまするのに、占領下にある国会が、占領指導者の助言なくしてみずからの憲法を完全な自主的な総意によつてつくることができたでありましようか。世界情勢の変化と朝鮮事変の勃発によりまして新しい極東の事態が生れつつあるとき、講和発効を目捷の間に迎えまして、わが国の外交方針はますます慎重でなければなりません。かつては戦争放棄の助言が與えられ、今また軍備をせよとの助言がありましようとも、みずからの道はしつかりときめて行かなければならないと思うのであります。(拍手)いわんや、特定国の鼻息によつて外交が左右されるがごときことがあつては、外交上の独立と信義がいつの日にかまた破り去られる心配なきにしもあらずなのでございます。(拍手)この点につきまして、総理の御所見を伺いたいと思うのであります。
 次にお尋ねいたしたいことは、平和に対する総理のお心構えでございます。平和は何人もこれを求め、これを口にして参りましたが、古来より人類社会に戦争は絶えない実情でございます。「東洋平和のためならば」と軍歌を歌いながら、日本は東洋の各地を侵略して今日の敗戦を招いたのでございます。(拍手)家庭の主婦は、宿命的な敗戰のどん底から立ち上つて、ささやかながら家庭の平和をとりもどしつつございます。吹けば飛ぶようなバラツクでも、一家団樂のとりでとして、再び戦火に燒かれないことを悲願としてやみません。およそ一国の平和は、その国を構成する各家庭の生活の安定と家族的平和を無視して存在するものではないと、かたく信じているのであります。(拍手)
 日米防衛協定に基く巨額な防衛分担金は、当然に各家庭の生活を犠牲にいたします。家庭の主婦は、貧しい生活をさらにさらに切り下げまして、新しい武器を整えることに協力しなければなりますまい。その上、最愛の夫や、かわいい、いとしい子供を戦場に譲らなければならないといたしましたら、平和を求める婦人の本能的悲願は無残に踏みにじられてしまうのでございます(拍手)政府は、何がゆえに日米安全保障條約を結び、さらに中国政府を選択するかという点についても、特にこれら婦人に対して納得の行くように御説明を願いたいものでございます。(拍手)すなわち、家庭の幸福に直結する平和は当分あり得ないというのか、あるいはその昔軍閥によつて表現いたされましたように、子孫の繁栄のために現在の生活を犠牲にしなければならないというのか、総理の御教示をつまびらかに賜わりたいと思うのでございます。(拍手)
 申すまでもなく、平和とはいずれの国とも戦争をしないということだと思うのであります。特に武力のない力が特定の国と深入りした條約を結ぶということは、戦争介入のおそれがないとは申されません。(拍手)さらに国際情勢は複雑多岐になり、固定化した外交方針で貫くことは、ますます困難を加えて参ります。共産党ぎらいの吉田首相は、御自分の感情論で外交方針を左右なされるような軽率な方だとは毛頭思いませんが、かつて日独伊防共協定に心中をしました旧軍閥の失敗を繰返さないように切望してやまないのであります。(拍手)
 次に、大蔵大臣に少々お尋ねを申し上げたいと思います。御提出になりました来年度予算は、一応均衡を維持しているかに見えまするが、内容的にはいわゆる超均衡予算というべきではないかと思うのであります。大蔵当局は、この超均衡予算さえ維持すればインフレーションの襲来を防ぐことができると考えていられる御様子でありますが、その考え自体が一つの錯覚ではないかと思うのであります。
 来年度の予算中、税収入六千三百八十一億円と計上されておりまするが、蔵相の説明によりますと、この数字は確実であつて将来収入不足のために増税に訴えるようなことは断じてないと言明されました。昨年度の予算執行のときにもさようであつたように、この言明の裏には、税法上の減税を行つても実質的には増税になつてしまうのだからという意味が含まれておると思うのでございます。(拍手)すでに巨額の滞納であるにもかかわらず、税収入は予期以上に税政があつて自然増となつているということは、反面におきまして、当局がいかに苛酷な税の取立てをやつておられるがということを物語つておるのだと思うのです。一方におきまして講和諸経費の激増は必然不可避の状態でございますにもかかわらず、予算上の均衡とつじつまを合せるために、裏面においてかくした苛酷不当な取立てを行えばよいということであれば、かかる方法はまつたく国民を欺瞞するものだといえましよう。(拍手)過去数年にわたりまして、税法上の減税、事実上の増税で味を占めて来た大蔵当局が、依然として同じ方針を持続するものであるならば、私どもはこれを看過することはできません。
 さらに問題の点は納税問題であります。しかも、その納税をする場合に、その金の出所が問題なのであります。もつとも、政府に大きな信用があつて、自己資本の百倍もの大きな財源を貸してもらえるような会社におきましては、たくさんの収益を上げ、内部の積立てをするどころか、働く者の賃金を引上げるどころか、不当に近い配当をしている法人もございますが、その他は、おおむね納税する場合に、その実態は大体借入金によつて納入されておるのが現実でございます。あるいは、すでに借入れてしまつた中をくずして納税するとか、あるいは一歩讓つて、自己資金を納税に充てておる場合が多いということがいえます。結局、こうした三つの方法によりますと、預金として金融機関に預けていたものを取起して納税に充てるのでございますから、政府の収入面はつじつまが合つても、納税者側は赤字がふえて、事業量は心さくなり、あるいはこれを閉鎖してしまわなければならないような状態にも陥るものが多々あると思うのであります。ゆえに、言いかえますると、その結果はとりもなおさず納税のインフレーシヨンを招来するといえるのではないかと思うのであります。予算上を見ますと、その他にたくさんのインフレ要因が表面に出ております。しかし、この問題のみは陰に隠れた問題ではありまするけれども、財界を建て直す最も重大な問題であると思いますので、池田大蔵大臣の御所見を伺いたいと思うのです
 第二点は、当面の金融政策についてちよつとお尋ねいたします。朝鮮事変勃発当時の備蓄輸入以来、巨額の対外支拂いがかさみまして、その後の中だるみの景気によつて輸入資金支拂いに困窮いたし、滞貨の増大となり、現にこれが救済資金及び運転資金に苦しみ、資金詰まりのために、中小企業が軒並に破産のうぎ目をみましたことは、蔵相も御承知であります。
 他の党の方々も幾回も繰返して申しましたけれども、独立後の自立経済に最大な関係を持ついわゆる三月危機に対して、いかなる対策をお持ちになるかを承りたいと思うのであります。蔵相が、その財政演説中にこの問題について触れておらなかつたことは、私ははなはだ遺憾に思うところでありまして、およそ国家経済の裏づけのない予算は、数字だけはつじつまを合せても、一般経済からは遊離してしまつてそればかりか、その結果は財界の悪化を促進するように思われるのであります。特に国家資金に依存することの多いわが国の経済界に対しましては、その金融政策というものは最も研究の上これを指示していただかなければならないと思うのであります。
 第三点は、防衛支出金と安全保障諸費が一千二百十億円計上されておりまするが、この金額のみで講和後の安全が保障されるかということであります。蔵相の御演説によりますれば、平和回復善後処理費の比較的少いというのは、交渉の関係上最初の年からこれを支出する必要がないと認められたからであると説明なされております。もし、しかりとするならば、この種の経費はますます今後増大するものと解釈されるのであります。やがて開催されるであろうところの行政協定の交渉におきまして今後増大して行く防衛関係費を米国側が負担して行くという確実な了解がない限りは、来年度の予算はさらに巨額な支出を要し、内政費の圧迫されることは火を見るよりも明らかではないでしようか。これまでは占領下にあつたために、最後の保障を米国に期待することができたのでありまするが、今後は独立自主の財政の建前から、その継続的確立を期さなければならないと思うのであります。従いまして、長期にわたる新しい防衛経費の性格を予算の上に明記すべき時期に到達しているのではないかと思いまするが、この点に関する大蔵大臣の御所見はいかがでありましようか。
 要するに、本年度予算は、莫大なる防衛費の支出を増税によることなく、また他面インフーシヨンを防止しながら、しかも国民生活もそんなに圧迫しないでこの予算を遂行して行かれると説明しているようでありますが、それは単なる口頭禅にすぎないと私は申し上げたいのであります。(拍手)どんなに大臣が否定されましても、この予算はあくまで暫定予算であつて、あらためて補正予算を組まなければならないと思います。(拍手)総選挙を控えた今日、最も重要な国家予算を一党の選挙対策の一環として処理されたことは、まことに言語道断であります。蔵相は、あくまで補正予算なしと断言される勇気がございますか、御所見を賜わりたいのであります。(拍手)
 およそ敗戦国の財政を建て直すことが困難であるということは、何人もこれを認めるところでございます。池田蔵相が、三年有余の長期にわたつてこの難局に立たれていることは、その労を多とするにやぶさかではございません。目前の生活の苦しさのあまり、敗戦国民の不平は、一国の財政担当者に一番風当りが強いということも、やむを得ないと信じます。反対党といいましても、蔵相の公的立場に冷静な理解を忘れるものではございません。風雨の強かるべき公的立場に立つてその信念を貫かれる大蔵大臣を持つことは、財政の確立のために望ましいことであります。しかしながら、その大臣がワンマンをまねしたり、その人柄の官僚的高慢のために不評を買うことは、おのずから別個の問題であります。いわんや、全国民の先頭に立つて、わが国経済の確立のために超党派的大道を進まなければならない一国の大蔵大臣が、巨額な費用を投じまして、自己の選挙区のみに年賀状をばらまかれたということは、その信念のほどを疑わざるを得ないと思うのであります。(拍手)
 次に食糧確保の対策につきまして、農林大臣に、時間が、ございませんから、軽くお尋ねを申し上げます
 終戦後、あらゆる生産資材の不足の際にかかわらず、農民の皆さんの御協力によりまして食糧事情が好転いたして来たことは、御同慶にたえません。しかしながら、当分の間は、国内産の食糧は、その需要度において絶対量は不足と思います。もちろん、政府はさらに食糧増産とか、輸入食糧によつてこれを補填して行こうと努力することと思いますが、当然に食糧確保の重点を国内食糧増産に置くべきであると思いますけれども、当局の具体的、詳細な施策を明らかにしていただきたいと思うのであります。
 さらに食糧配給については、昨年末、米の自由販売問題でたいへんな失策を暴露いたしました。首相の施政演説にも、まつたくこの問題ばかりは、ほおかむりにいたしておりますが、廣川農林大臣の御所見はいかがなものでございましようか。
 また、本年度供出米二千五百五十万石を基準といたしまして現在の配給状態を勘案いたしますれば、三月末までには一千二百万石を消費することに相なります。超過供出も十分に望むことができない現状でございますから、下半期の配給を現在と同様に持続することができなくなるではないかと心配しているのであります。さらに労務加配米とか、あるいは入院患者用とか、あるいは刑務所の特別配給米を考慮いたしましたときに一抹の不安を感じますので、その点について、特に輸入の見通しを詳細にお知らせ願いたいと思います。
 最後に、時間がありませんから、社会保障制度にちよつと触れてみたいと思います。国民生活に深い関連性を持つているところの社会保障制度につきまして、首相の施政方針演説において一言も触れていなかつたことは、私のはなはだ遺憾とするところであります。社会保障制度審議会の進行に従いまして総理大臣に勧告される重要な案件も、それを具体化されるかいなかは、結局内閣の熱意いかんによるものではないかと思うのであります。健康保険問題が紛糾したり、遺家族援護費の問題に現われた閣議そのものの冷淡さなどは、吉田内閣の反動性を如実に物語るものではないかと思うのであります。健康保険が二十年の歴史を持ち、労務者とその家族を合せて三千五百万人、農民とその家族とともに二千七百万人という被保険者を擁しながら経営困難に陷つたことは、重大な政府の責任といわなければならないのであります。
 また終りに臨んで、戦争犠牲者たるといなとを問わずに、未亡人の更生問題について、当局のあたたかい、あたたかい方策を、あわせてこの際厚生大臣からお伺いいたしたいと思います。
 私の質問はこれで終りといたします。(拍手)
    〔国務大臣吉田茂君登壇〕
#19
○国務大臣(吉田茂君) お答えをいたします。わが外交は、あくまでも信義を守り、平和を守ることをもつてその根本方針といたします。(拍手)
    〔国務大臣岡崎勝男君登壇〕
#20
○国務大臣(岡崎勝男君) 安全保障條約についての御意見でありますが、現在の状況では、米軍の駐留を求めるのが最善であると信じております。家庭の平和の大切なことは、まつたく御同感であります。しかし、大蔵大臣の累次の説明の通り、今回の予算は、国民生活の安定に十分の配慮をいたしております。
 また特定国とのみ條約を結ぶことは戦争介入のおそれありとの御意見でありますが、これもたびたび申し上げました通り、われわれはむしろ、これによつてのみ戦争の危険を防止できるものと信じておるのであります。(拍手)
    〔国務大臣池田勇人君登壇〕

#21
○国務大臣(池田勇人君) お答え申し上げます。
 第一、租税收入の問題でございまするが、来年度の六千三百八十一億円は、たびたび申し上げるように確保できます。私は大蔵大臣といたしまして、租税収入の予算額だけとらなかつた年はありません。いつも少な目に見ておる程度でございます。確保はできます。
 次に、徴税は会社の赤字を増すという御議論でございまするが、これは私には納得できません。もう一度お考えくださいまして、委員会で議論いたしましよう。徴税というものは所得の一部をとるのでございまして、赤字を増すということはございません。
 第二に、三月危機と言われまするが、何を根拠で言つておられるのですか。思い起します。一昨年の三月に、三月危機というので騒いでおつたが、じたばたした人は損をして、じつとしていた人が得をした。今度また、こういうふうに三月危機を叫ばれるが、その根拠いかんとお聞きしたい。経済は安心は許しませんが、私は危機のないような財政金融政策をとつておりまするから、御安心願います。
 次に、平和回復善後処理費の中で、今回の予算額では、今年度の百億円が相当来年度にまわりますのと、年度の当初からの支出がないと見込まれますので、あの程度にいたしたのであります。御承知の通り、賠償も今交渉には入つておりますが、今度内にはきまりますまい。なるべく早くきめたいと思いますが、来年度の四、五月ごろ、五、六月ごろ、七、八月ごろになるかもわかりません。しかもまた、外債の支拂いもまだ交渉に入つておりません。またガリオア、すなわち対日援助資金を拂うにいたしましても、どういう拂い方かきまつておりませんので、フルに来年度でできないということを言つております。年度の当初からの支出は予定いたしていないと申し上げておるのであります。それから将来におきまして、平和回復善後処理、すなわち賠償、外債支拂い等につきまして相当の負担になることは覚悟しなければなりませんが、これはわれわれは交渉によつできるだけ少いことを望んでおるのであります
 次に暫定予算とおつしやいますが、これは憲法、財産法をお読みになりましたならばわかるように、今回のような予算は暫定予算ではございません。本予算でございます。しかして、補正予算を組むか組まないかは、そのときの財政経済の状況によつて考えるべきであつて、総選挙をやるとかやらぬとかで補正予算を組む組まぬとかの問題ではございません。総選挙をやる費用は、十何億円今度の予算に組んでいるのであります。総選挙のための予算は、補正予算で組む必要はないと考えております。(拍手)
    〔国務大臣廣川弘禪君登壇〕
#22
○国務大臣(廣川弘禪君) 食糧増産という、農村にとつて実に重大な問題を軽く聞かれてはたまらぬのであります。私は、これは真劍にお答え申し上げます。
 この食糧の増産確保、非常に重大な問題であるのであります。今年度の予算においてごらんになればわかるのでありますが、非常に増額をいたして、真劍に取組んでいるのであります。この増産の方法を詳細に言えということでありますが、増産のきめ手は一つ、二つではないのあります。農林省の予算全部が影響いたしているのであります。なおまた他の省にも影響している予算があるのであります。あらゆるものを集結して増産にカを注ぐ考えでおります。
 それから配給の問題であります。この配給の問題も非常に御心配のようでありますが、決して御心配はおかけしない考えでおります。特に供出米のことについて御心配のようでありますが、超過供出について目下各県と個別折衝をいたしておりますが、幸い本年は東部地方は非常に豊作であります。
    〔議長退席、副議長着席〕
西部の方におきましては悪い県が大分あるようでありますが、東部の地方は今までまれに見る豊作だということが、実収してみたところ、わかつて来たのであります。これを補正いたしまして米食率を下げないように十分検討努力いたすつもりであります。
 また輸入につきましても、計画量より上まわつて現在入つて来ているようなわけでありまして、どうぞ御家庭におきましては御心配のないことを切にお願い申しあげます。(拍手)
    〔国務大臣吉武惠市君登壇〕
#23
○国務大臣(吉武惠市君) 松尾さんのお尋ねにお答えをいたします。
 社会保障制度について熱意がないというお話でございますが、そうではございません。私どもは、社会保障制度につきましては、毎年相当額の予算を計上して充実をはかつて来ておるのであります。今年におきましても、御指摘になりました健康保険につきましては、事務費全額国庫負担をいたしております。
 なお未亡人対策についてのお尋ねがございましたが、母子寮、授産場その他の施設を漸次増設しているわけであります。社会保障制度の充実は、何と申しましても国力の充実と相またなければならないのでございまして、今後国力の充実とまつて漸次充実をはかつて行くつもりでございます。(拍手)
#24
○副議長(岩本信行君) 山口武秀君。
    〔山口武秀君登壇〕
#25
○山口武秀君 私は、日本共産党を代表いたしまして、吉田政府の財政経済演説に対し質問をいたします。
 まず、今回提出の予算原案の作成についてお尋ねいたしたい。言うまでもなく、今回の予算は、本年四月に始まり、二十八年三月に終る予算であります。すなわち、当然政府のいう講和発効後の予算であります。しかるに、政府は、今回の予算編成にあたつて終始総司令部の指示を受け、その最後的了解を得て原案の閣議決定を行つております。政府のいう講和発効後の予算が、依然占領軍としての総司令部から指示され、その最後的了解を必要とするのは、いかなる理由に基くのであるか。それならば、独立予算なるものは、占領下予算とどこに違いがあるのか。
 次いで、この予算は事実上どこの国の予算なのでありますか。国民はラスク、ドツジ、ダレス氏らの来朝によつて本年度予算がつくられたと見ている。單に対外関係の経費だけではなく、予算そのものが、税金の取立ても、予備隊の経費も、公共事業費の額も、すべてがそうであると思つている。警察予備隊と海上保安庁の経費は、米国の要請と計画によつてつくられたと新聞は書いている。防衛分担金は、公然アメリカの予算によつてつくられるものである。そして、五百六十億という安全保障費なるものは、日本国民には説明されていない。政府自身も知つていないし、それを知つているのはアメリカだけである。そうすると、一千八百二十億の防衛関係諸費について、これを決定したのは、日本政府ではなくてアメリカである。アメリカの軍備拡張計画である。防衛関係諸費は、本年度予算の中核であります。国内の諸経費も、税金の取立ても、すべてそれによつて決定されている。従つて、今回提出の予算案は、米国の軍備拡張予算の中に組み入れられたものであり、その一部であるといわざるを得ないのであります。
 政府のいう独立予算とはかくのごときものである。單独講和の正体はここに暴露されている。政府のいう独立とはこのようなものであつたのか、今回の予算案が独立第一年目の予算であるといういわれはどこにあるのか、それは全国民の聞かなくてはならないところである。池田大蔵大臣の返答を承りたい。
 次に、すでに明らかなごとく、本予算案は再軍備予算であります。それは八千五百二十余億という、日本財政史上未曽有の厖大な予算である。そして、そのうち純然たる軍事費である防衛関係諸費は二一%を占めている。さらに間接的軍事費として見られる外国為替特別会計、平和回復善後処理費、連合国財産返還補償費等々及びアメリカ軍拡経済、日本の軍需産業の再編成のための出資、投資と見られる支出を合せると、実に全予算の約六割以上が直接間接に軍事的色彩を持つている。
 この予算による予備隊は、現在米国製の追撃砲、ロケツト砲、そして間もなく大砲、高射砲をもつて武装され、米国の方式で戰闘訓練が行われている。海上保安庁には、近く米国の二千トン級海防艦十隻、監視艇五十隻がまわされ、その所要乗組員五千名が養成され、その上に航空母艦、潜水艦等までが計画されいていると新聞は報じております。さらに政府は、予備隊隊員の任意退職の制限、召集、予備役制の制定、退職金の廃止を意図しているといわれ、大橋国務大臣は、国民に対して、はばかるところもなく、予備隊の海外派遣を語つております。完全なる陸海軍の復活である。しかもそれは、外国の大金持たちの━━━━のためにつくられた━━━であります。
 また、米国軍隊が国内至るところに基地をつくり、駐屯するために六百五十億が予定されている。この結果は、日本の国土がその演習場とされ、通信機関も交通機関もそのために使用され、すべての産業もそのために動員される。米国が他国と戦争に入つた場合、国民の意思には一切関係なく、日本は第一線基地として━━━━━━━━━━━━━れる。
 さらに提出された本予算案を見るならば、現在すでに補正予算の編成、公債発行を企図していることは明らかである。将来の軍備拡張に備えて、三百億ないし五百億の隠し財源が残されておると言われるのは、まさにこのためではないか。国民のだれが、他国の戦争にかり立てられたり、自分の命に金をつけてやるような予算に承知できるのか。だれがそのようなために税金を拂うのか。再軍備かいなかを決定する権利を有するものは国民以外にはないはずである。国民は、いつこのような再軍備の予算編成を政府に許しているか。戦争放棄を規定した憲法は、もはや存在していないというのであるか、吉田首相、池田大蔵大臣、大橋国務大臣の所信を承わたい。
 知らないままにサンフランシスコの講和に期待を持つていた人々も、本年度の予算によつて、それが独立ではなくて━━であつたこと、平和への道ではなくて━━━の道であつたこと、国民の負担が軽減されるのではなくて、逆に加重されたことを知つて憤激している。日本労働者階級は、低賃金と舶来職階制に反対し、賃上げと最低賃金制を要求している。また労働三法の改悪、ゼネスト禁止法、団体等規正法の制定に対しては、全国的なストライキをもつて反撃せんとしている。そして、今サンフランシスコ両条約の廃棄は、労働階級最大の目標となつている。
 農村では、全国農地の大半が、今すぐ土地改良と治水工事を必要としておる。しかし、そのための支出はきわめて少い。農業共済保険の費用も削られている。再軍備にまわす金はあつても、そちらにまわす金はないというのである。開拓農民の多くは、いまだ電燈のない原始生活を行つている。朝鮮戰争の弾丸をつくるためにまわす電気はあつても、開拓者に使わせる電気はないというのである。
 次いで、政府のとつている軍需巨大産業への集中金融政策は、中小企業、平和産業への融資を、不急不要あるいは経営不良の名のもとに貸出しを制限し、倒産するにまかせ、独占企業への集中合併を促している。さらに政府は、銀行法の改正によつて貸出し制限を強化し、一方大蔵大臣の監督権を増大させて、金融機構に対する大蔵官僚の統制を強めんとしている。これは、かつての戦時金融統制の再現である。しかも、外国の金融資本がこれをにぎらんとするためのものである。
 さらに、ここで一言尋ねておきたい。政府のいう講和が発効するならば、日本の貿易の自主権はどうなるのか。独立するならば、いかなる外国の指示、指令からも完全に解放されて、日本国民の意思に従つて世界各国と自由な貿易ができるはずではないか。大蔵、安本、通産各大臣の答弁を要求するものであります。
 国民生活が再軍備か、平和か戦争かの岐路に立つて、吉田政府は明らかに再軍備と戦争の道を選んでおります。二つの道が両立するものでないことは当然である。再軍備と戦争の道は、国民のあずかり知らざるところである。政府は、━━━━━━━━━━━によつてこの道を選んだ。しかし、再軍備と戰争への道は、今全世界において破綻している。アメリカによつてなされた西欧再軍備計画は、西欧諸国はむろんのこと、アメリカをも含めて、きわめて重大な経済的、社会的困難を引起し、行き詰まつております。欧州を視察したアメリカ上院議員の言葉をまつまでもなく、西欧諸国民は完全に軍備拡張計画に背を向けている。
 そして、今この情勢の中で世界に起つて来たものは、軍備拡大の動きではなく、軍備縮小への動きであります。ソ同盟は、国連会議において、繰返し原子兵器の禁止と軍備縮小を提案している。しかるに、吉田政府は、世界のこの流れに逆行して再軍備を強行し、外国軍隊の日本駐屯、基地建設をあえて行つております。政府は、この軍備縮小への世界の流れを何と見ているのか。平和憲法があるならば、日本政府はどこの国よりも先にこの流れにさおさす義務があるはずでなかつたのが、関係大臣の所見を承りたい。
 最後に、国際経済会議について質問をいたしたい。アメリカは、その軍備拡張計画とともに、ソ同盟、中国、東欧諸国に対する現在の禁輸政策をとつております。このアメリカの政策によつて、世界経済は無理やりに東西二つに分断された。その結果生れたものは何であるか。西欧諸国のきわめて深刻な経済的困難である。西欧諸国は、東欧市場がとざされた後、それにかわるものを世界のどこにも見出すことができなかつた。東欧に対する禁輸の措置は、その目的に反し、東欧を傷つける前に、西欧経済自身に危機をもたらしてしまつた。結果は、わが国においても同じように現れております。
 日本は、單独講和によつてアジア諸国と隔絶され、アメリカの対中ソ禁輸政策に同調させられております。そのため、日本の鉄鋼産業に必要な中国の鉄鉱石、粘結炭の輸入が、船賃のべらぼうに高いアメリカを中心とするドル圏に切りかえられた。だが、自国の軍拡に狂奔するアメリカは、その計画を実行できず、確たる見通しのない東南アジア市場に出路を求めよと日本に迫つております。しかしながら、ここでも、それは燎原の火のごとき民族解放闘争とイギリス資本とのはげしい競争のために、計画倒れに終ることは明らかであります。このことによつて、日本の鉄鋼並びにその関連産業は、原料高と、アメリカ大商人のものすごい買いたたきにより、重大な打撃を受けている。
 また、日本の貿易は外国の大金特たちの手に握られ、その計画に従つた輸出入をしいられ、外国の戰争商人の厖大な投機の対象となつております。この戦争計画と投機の犠牲になつて、皮革、ゴム、油脂、繊維関係の貿易産業では、過剰輸入と輸出繊維の解約により倒産する商社、企業が続出し、最近では鉄鋼、木材、紡績等に及ぼす影響が決して少くない状態である。しかもなお中ソとの貿易はきびしくとざされ、わが国の貿易は、ポンド地域に対しては輸出超過、ドル地域には輸入超過となり、ますますアメリカへの隷属を深めておる状態であります。二つの世界の自由なる交易をはばむことは、人類の幸福を奪い、その生存する権利を脅かすことである。世界の何人にそうした権利があるというのか。東西の貿易は、人類の生存のために必要なのであり、実業界の要求であり、全世界の国民の要求であります。
 昨年二月、ベルリンに開かれた世界平和評議会は、諸国民の生活水準を向上し、各国間の経済的協力を復活させるため、国際経済会議の開催を決定したのである。会議は、各国及び各制度の平和的協調、すべての国との経済的結合の拡大により人々の生活條件をよくする可能性を見出すことを議題として、本年四月、モスクワにおいて開催される。この会議の提唱は、今全世界をゆるがしている。世界の実業家、経済学者が、この会議に期待をかけている。世界の諸国民は、最大の希望をこの会議に持つている。西欧再軍備計画の中において、アジアにおける日本と同じ地位に立つ西欧の新聞は、軍拡よりも東西貿易の振興の方がはるかにすぐれた平和への保障であると書いている。すでに、わが日本の実業家、経済学者に対しても会議の招請状が届いている。この会議こそ、日本の貿易、産業を破局から救い、各国との間に自由にして平等な貿易を促進させ、産業の平和的発展を保障し、国民生活に希望と光明をもたらすものである。
 ソ同盟、東欧、新中国の社会主義、人民民主主義圏における平和的建設の発展のため、そこにはほとんど無限の市場が全世界に開かれている。日本政府は、産業と国民生活の破綻を清算することを望むならば、この会議への参加を積極的に支援すべきである。もしこの会議への参加を妨害するならば、それは日本を戦争と隷属の奈落に転落させることを意味する。予算の編成権はもちろん、いかなる秘密文書の交換も強制されない、この公明正大な国際経済会議への参加を支援するのかどうか。政府は、とるべき態度とその理由を全国民の前に明言する義務がある。さらにまた奇怪なことには、外務省当局は招請された入々に旅券の下付をはばみ、旅費のための外貨の割当を拒否し、渡航途中における身体保障をせぬと言つたといわれているが、かかる事実があるかどうか。ありとすれば、だれの意思でなされているのか。首相及び関係各大臣の明確な答弁を望むものであります。(拍手)
 質問を終るにあたつて一言したい。政府は、日本国民を無視し、憲法を否定して、臆面もなく外国製の再軍備予算を提出した。これはサンブランシスコ両條約の当然の結果である。しかし日本国民は、断じてかかることに承服はしない。(拍手)
    〔国務大臣吉田茂君登壇〕
#26
○国務大臣(吉田茂君) 御質問には関係大臣からお答えをいたします。
    〔国務大臣池田勇人君登壇〕
#27
○国務大臣(池田勇人君) この予算はどこの予算かという御質問でありますが、ソ連の予算でもなしアメリカの予算でもございません。日本国の予算でございます。しかして独立の予算と申しますのは、四月、五月には、独立がなるものと見まして昭和二十七年度の予算を組んだので、これを独立後の予算といつておるのであります。しかして、司令部と予算につきまして承認を得るべく交渉いたしましたのは、占領下であるからであります。
 その他のことは……。
    〔国務大臣大橋武夫君登壇〕
#28
○国務大臣(大橋武夫君) 共産党の山口党員にお答えを申し上げます。
 御質問の諸点につきましては、先ほど小川議員にお答え申したところによつて御承知を願います。(拍手)
    〔国務大臣岡崎勝男君登壇〕
#29
○国務大臣(岡崎勝男君) モスクワの会議について、たいへん詳しい情報をお持ちのようでありますが、政府はまだそういうことを聞いておりません。
#30
○副議長(岩本信行君) 河口陽一君。
    〔河口陽一君登壇〕
#31
○河口陽一君 私は、農民協同党を代表いたしまして、二十三日行われました吉田総理の施政方針演説に対し御質問を申し上げたいと存じます。同僚議員がそれぞれ御質問になつたので、重複を避けて、簡単に御質問を申し上げたいと存じます。日本は、平和條約の締結とともに、列国の批准とその効力の発生が目捷に迫つているのであります。これで日本も世界の一員として列国に伍するわけでありますが、戰前と戰後を比較いたしますれば、まことに感慨深いものがあるのであります。第一に、国土はその四四%を失い、そのために米麦、大豆等の生産は四〇%から六〇%の不足となつているので、これがため年々三百六十万トンの主食の輸入は、自立経済の最大の重圧になつておるのであります。
 今を去る八、九十年前、かつて北欧に覇をとなえたデンマーク帝国は、打続く再度の戰争で敗れ、残された国土の三分の一をさらにドイツに奪われた。それはデンマークにとつては最良の開けた土地であつたのであります。それ以来、デンマークは、北海道の半分しかない、資源皆無のやせた国土に押し込められたのであるが、このときもしもこの国民に一つの啓示がなかつたならば、おそらく歴史の上から間もなく姿を消していたに相違ないと思うのであります。すなわち、かの有名なダルガ大尉が、われわれは外に失つた土地を内に取返そう、劍をもつて失つた国土を、くわをもつて開発しようではないかと呼びかけた、敗戦の国土開発であつたのであります。劍をもつて奪つた土地は、いつの日かまた劍をもつて奪い返される。金力、権力をもつて得た土地は、金力権力で奪われるが、すきやくわをもつて開いた土地は何人にも侵されない真理を、戦争を捨てた日本民族は、意義深い独立国としてのスタートにおいて、まく反省し、銘記せなければならぬと思うのであります。(拍手)彼の叫びは、全デンマーク国民の虚脱状態をゆり起し、そのためユトランド全州を復興し、全国土の二割のヒース荒地を、新たに木材、家畜、農産物の宝庫として更生させ、戦争で外に失つたところを償つて余りある物心の成果を国土の中に取返したのであります。まことに失意にくじかれた敗戦デンマークは、国土開発を契機として再起したのであります。
 またオランダは、世界第二次戦争の結果、インドネシアより本国に引揚げた三十七万人を迎えて、あたかも今日の日本のように、領土資源の減つた上に人口が急増して来たので、ゾイデル海湾二十万町歩の大海干拓に大わらわであるのでありますが、このうちすでに八万町歩は完成し、そこに新農村ができておるが、これにはわれわれの想像以上の努力と、巨額の経費が支出されておるのであります。世界の商業国として自他ともに認めるオランダが、何ゆえかかる犠牲を拂つてまでも国土の開拓、造成に真剣に努力を拂うのか欧州一の人口過剰国が、国内の食糧増産によつて生活を安定し、国民に生業を與え、産業を振興して、その商工業、貿易活動発展のためには、このような世界に類のない海面干拓までやつたのも、それが将来この国民の生きるための基礎を築くことであることを知るからであります。
 今日、国土開発の世界的モデルは、アメリカのテネシー河流域の総合開発、コロラド及びミズーリの流域開発と、ソ連が戦後着手しているといわれる中央アジア、コーカサス、カスピ海に至るステツプ地帯の大植林と耕地化並びに北極に注ぐオビ、エニセーなどの大河を逆流させてシベリア不毛地帯の近代化をはかる大規模なる総合開発と思われますが、それは持たざるデンマーク、オランダのように、外に失えるところを内に取返さなければ国が特たぬというほどの窮余の策ではないが、むしろ、あり余る国土資源の豊富さの上に、さらてその国民生活の発展と、民族永遠の繁栄の基礎を固めるために、なお孜々としてこれだけの国土資源の保全利用に対する努力がなされておるのであります。実に驚嘆すべき、たくましさであります。
 国の條件はそれぞれ違いますが、生きんとする国家民族の意力の強さと、その計画化された理想実行の底力には共通したものがあるのであります。世界中の民族の、これだけ過去と現在にわたる確かなテストケースが示されておるのであるから、敗戦で国土の四四%と、資源、施設、海外財産まで合せて失つた日本は、いつまでも自立できるかできぬかと先の思案にあぐむのは、愚の骨頂といわなければならないのであります。
 そこで、日本でも国土総合開発法が生れたが、それが個々に立てられたにしても、こう幾十、幾百と、地域や事業が、あれもこれもと広がつては、財布の小銭を八方に散らばし、目をちらつかせるだけで、結果の見きわめがつかないと思われるのであります。あちらこちらの食い散らかしの総花的総合開発では、各国がやつたモデルの日本版の模倣にもならぬし、国土資源開発本来のねらいたる再生産基盤の底力ある建設計画としては、当面の要請に期待がはずれそうであるのであります。
 私は、わが党の松本委員長が、平和條約に全権代理として出発以前、吉田総理と会見されたとき、北海道開発に対する総理の所見を伝え聞いたのであります。このことを北海道道民に伝えたるところ、道民ひとしく明るい希望と大なる期待をもつて今日処しておるのであります。御参考に吉田総理の言われたことを申し上げまするならば、濠州の外務大臣が来られて、日本の人口問題に対してはいかなるお考えであるかという問いに対し、吉田総理は、戦争前は大陸に向けて人口のはけ口を求めていたが、敗戦後四つの島にとじ込められた、しかして静かにながめたとき、北海道のあるのを忘れられていた、ここを開発すれば今後一千万人の人口を入れることが出来るので、今後十年間ぐらい、日本の人口問題は他国にお世話にならぬでもよい、と答えておいたという話であります。すなわちこのことは、北海道の開発を重点的にやつて、人口問題、食糧問題の当面せる解決策を意図された意思表示なのでありますが、二十七年度予算には、その面影が出ていない。大方吉田総理は予算を見ておられない結果ではないかと思つております。(拍手)白たびばかりおはきにならぬで、少しは地下たびをはいて、国土開発をおやりになつてはどうですか。(拍手)
 今日要請されておる総合開発は、経済自立の基盤をつくる国内資源の開発でありますが、二十年、三十年かかつて国の経済、文化、社会福祉の施設を総体的に高めようという時間の余裕や資金の用意があつてやる仕事ではないのであります。あるのは、荒廃の国土に残された眠れる資源と、食うことのできない労働力混けであるから、これを結びつけてとりあえず生産的基盤を新たに造成し、またこれを足場にして国民所得を高め、次の段階に進もうという、まつたく開拓農民の生活建設のようなものであります。それだけに、贅肉的な不急不要のことはあとまわしにして、不自由をがまんしつつ、すべてを生産手段と労働手段に集中して、最短距離で土台を固めなければならぬのに、終戦以来、文化だ、娯楽だ――都市美だという調子で、料理屋、待合、キヤバレー、酒場、競輪場、トルコぶろ、公園、娯楽場、観光地設営の不生産投資から始まつて、各種官庁公衙の民主化と美化という名目で、裁判所や県庁、役場、議事堂、警察などの建築は、まつ先に、堂々、壯麗なるものがほとんどできたのであります。このごろでは、金融資本の間接投資で、都市では鉄骨コンクリートの高層の大ビルの新建築工事が林立して、こんな民間資本の余裕がどこにひそんでいたのかと、驚異の目をむかせておるのであります。これらの不急投資は、おそらく数千億あるいは兆にも上るでしよう。一概に全部が不生産的投資とは言えぬにしても、生産手段の復興投資を先にした西欧の政策等から対照すれば、まつたく緩急先後を逆にした不健康な国民資本の使い方であると非難せざるを得ないのであります。(拍手)戦後の日本を視察したフイリピンの代表たちが、きつい賠償要求を主張する理由が、かかる国民の一部のぜいたくと、不急不要投資の印象から発しておることを思い合すとき、自由民主主義の政治にも、もう少しブレーキのかかつた反省と批判が必要になつたと思うのであります。うわついた、根のない文化のあだ花を咲かすよりも、うちに資源の根をつちかう生産蓄積に国民の労力と投資の主力を傾けてかかる勇断を必要と考えるが、吉田総理並びに周東安本長官の所見を承りたいのであります。(拍手)
 今のような状態でありますと、日本はアジアの孤児になるのではないかと不安の念にかられるのであります。すなわち、平和條約ができても、それに調印されたのは、おおむね西欧諸国で、東亜の諸国は数少いし、また東亜における調印国といえども、前に申し述べましたことく、賠償その他の問題で、なかなか困難性が想像される。かかる段階において、よほどわれわれ日本民族が平和国民であり、平和国家建設に努力している実情を示さなければならぬのに、予算の上では、何かしら内政費を大幅に削つて、平和維持費という、しごく表面は穏やかであるが、昨年の終戦処理費にプラス一千億というのでは、われわれはまあまあ吉田さんを信頼するとしても、外国が何と見るか。そんなことから、アジアの孤兒になりはせぬかと心配するのであります。遠い親戚より近い他人ということわざもあります。明細にお聞かせ願いたいのであります。
 次に、ヤルタ協定は平和條約によつて廃棄になつたとダレス氏が言明されたと聞くが、このことについては、昨日苫米地氏からも御質問になつたのでありますが、御承知の通り、南樺太及び千島は北海道と近接いたしておるのであります。最近の情報によると、樺太から千島にソ連軍艦が毎日行き来しておるということであります。こういう実態を見て、北海道の人々は、この問題に対して最大の関心を持つておるので、でき得ればもう少し詳しく御説明を願いたいと思うのであります。(拍手)
 周東安本長官にお尋ねいたします。国土開発が新生日本の最大事であることは、いまさら申し上げるまでもないことであります。この線に沿つて北海道開発法の施行を見、第十国会において、会期を三たび延長して局を分離したことも、御承知の通りであります。しかるに、その後北海道の開発は遅々として進まない。大体、北海道の開発を一地方分権という立場に立つてお考えになつておられるのではないですか。総理も言われておるように、日本の人口問題、食糧問題解決のホープなのであります。地下資源にしても、森林資源あるいは魚族にしても、耕地にしても、これからであります。
 勇拂郡占冠村の石炭の埋蔵量は、優に三億余トンといわれております。占冠村と申しましても、わかりにくいでしようが、有名な狩勝峠の近くであります。ここに行くに、金山駅からわずか四十キロ程度の鉄道を敷設すれば、無盡蔵の木材と石炭が出せるにもかかわらず、いまだに放置されておる、終戰後、ここに行くのに隧道を掘つてくれと要求したところ、そんな金はないというので、今、山の頂上を削つて、一応人馬の通る道路をつけておるが、隧道を掘れば、たんたんたる道になるのであります。鉄骨ビルの一つの金があれば、こんな隧道は二十でも三十でも掘れるのではないでしようか。
 金鉱にしても水銀鉱にしても日本一、いな、水銀鉱は世界一といわれておるし、根室の国の先の羅臼は、パライトと硫黄が無盡蔵です。ここにも鉄道がないので船でこのパイライトを釧路の工場に運んでいるが、マツカーサー・ラインの関係で、始終拿捕されておる。しかし、向うさんも、つかまえても積んでおるものが石なのですから、すぐは帰してくれるそうですが、まつたくばかげた苦労をしておる。
 農地にいたしましても、終戦後、日本の開拓耕地は百五十万町歩、その半分は北海道というデータができておる。根室、釧路の根釧原野、天塩、北見、宗谷の天北原野等はその最たるもので、ことに宗谷のオホーツク海に面する暖かい地帯の猿拂川の切りかえをすれば、五十万町歩の農耕地ができるのであります。二、三十億もかかるビル一つ建てる思いをすれば、こんな川五、六本の切りかえはできるのではないですか。
 今の予算を見ますと、金を北海道へ注ぎ込まずに、逆に北海道から持つて来ている。たとえば営林署関係で、北海道であげた三十億円を内地の赤字補填に使われているといつたぐあいであります。こんなことでは、内地の大都市は美化されても、国力は日一日とやせて行くのであります。(拍手)東京中心の政治で、種距離の北海道、九州が大体まま子扱いになつておる。
 私は昨年九州に参りましたが、鹿児島附近に参りますと、あすこの農民の姿はまつたく原始的である。いな、むしろ神ながらの百姓と言いたい。それだけ災害復旧も文化も遅れておる。周東長官、もつと国力を増す施策を勇断をもつて強行していただきたい。次に池田大蔵大臣に御質問をいたしますが、附加価値税の問題でお尋ねをいたそうと思いましたが、きようの新聞で一年延期ということであるので、これを省略いたします。
 なお過日の大蔵大臣の財政演説を拝聽いたしましたところ、自由党の政策を実施したと盛んに言われて、あたかも自由党のみの大蔵大臣であるとの印象を受けたことは、まことに遺憾であつたのであります。また自由党に籍を持たれるから、自由党の政策を実施されることは当然であると考えるのに、何かしらん力を入れておつしやつたのは他意あるのではないですかとお尋ねをいたしたいのであります。また自由党の政策をそれほど忠実におやりになるならば、なぜ米の統制撤廃をおやりにならぬのですか。
 御承知のごとく、二十四年一月の選挙には、自由党は米の統制撤廃を一枚看板にして国民の支持を受けたのであります。従つて、米の統制撤廃は今議会で提案になるのが自由党の既定の方針であり、最終段階であると考えるのでありますが、これが出ないということを、われわれ外部から見れば、減税を強行されたから米の統制撤廃がつぶれたとしか判断されぬのであります。なお減税と言われますが、それはあくまで税法上の減税で、実質的には減税になつておらないとするならば、現実には一つも政策が実施されなかつたといつてもよいのではないかと思うのであります。一葉落ちて秋を告ぐ、自由党にも秋が来たと思うのであります。
 最後に、廣川農林大臣に御質問申し上げます。三百六十万トンの輸入食糧を日本経済自立の一大障害とするならば、食糧の一大増産を最短距離でおやりになつてはどうか。それには、かんしよ、ばれいしよなどを主食として実際にお取扱いになつてはどうか。また酒に年々相当の米をつぶしておられるが、これを全部澱粉に切りかえて行くことも考えられるのではないか。農林大臣に所見を承りたいのであります。
 次に昨年度の供出割当でありますが、国全体の割当は別といたしまして、府県別の割当でありますが、高知県の実収が反当一石三斗で、北海道が一石九斗の割当となつておるのであります。その他内地府県には、北海道より反収の少い割当県が数多くある。このために、北海道は三十五万石も補正せなければ一〇〇%にならぬという実情であります。昨年の割当は、御承知のごとく事後割当であります。事前割当ならば、天候、風水害あるいは病虫害の結果補正の要もあろうが、ことしは事後割当であるから、そう大きな狂いもないと考えていたのであるが、一方災害は若干あつたとはいえ、一石三斗で、北海道は七月末までほとんど凶作だといつていた。わずかに八月の天候回復で、ようやく、しいなまじりの米をとつたのであります。しかるに、この北海道に反当牧穫一石九斗の割当をしたというのであります。われわれ側面から見て、明らかに政治的意図の割当としか受取れない。公正であるべき供出割当が、かかることでは、正直な農民の思想上に影響するところまことに甚大であるのであります。すみやかに是正して、明るい食糧政策を立てられんことを希望いたしまして、私の質問を終ります。
    〔国務大臣吉田茂君登壇〕
#32
○国務大臣(吉田茂君) 国土総合計画は、この内閣としての重要政策の一つであります。詳細は主管大臣からお答えいたします。
 一言つけ加えますが、ヤルタ協定は連合国間の協定でありまして、これの見通し等の批評は差控えます。
    〔国務大臣周東英雄君登壇〕
#33
○国務大臣(周東英雄君) お答えします。国土総合開発というものが、わが政府の重要政策の一つであることは、ただいま総理から申された通りであります。従つて、今年総合開発審議会において全国十九箇所を指定いたしまして、これに対しての具体的な計画の進み次第、予算について計画を進める準備をいたしております。なおその一環として北海道開発の重要性をお説きになわましたが、これにも政府はまつたく同感であります。従つて、昨年特別な開発に対する機構をつくりましたが、いかにも今年少い予算のようなことをおつしやいましたが、実は本年は北海道の開発に関まして、農業、河川、山林、漁港、各般のものを通じまして昨年は七十三億円程度でありましたが、今年は三十三億円を増加いたしまして百五億になつておりましてこれは本年度全国に対する増加の額が大体二割五分程度でありますにかかわらず、北海道は特に政府が意を用いまして、昨年に比して四割五分方の増をはかつてやつて行くつもりでございます。(拍手)
    〔国務大臣池田勇人君登壇〕
#34
○国務大臣(池田勇人君) お答え申し上げます。
 内政費と講和関係費の問題でございまするが、たびたび申しておりますように、内政費の方に十分意を用いております。従いまして、国土開発にも千億近く、また食糧増産にも四百億余りの金を出しておるのであります。
 次に減税の問題でございまするが、税法上の減税とか、実質的に減税とかおつしやいましたが、議論はいたしません。北海道へお帰りになりまして、農民の方にお聞きになつたらおわかりと思います。
    〔「何だ、その態度は」と呼び、その他発言する者あり〕
#35
○副議長(岩本信行君) 御静粛に願います。
#36
○国務大臣(池田勇人君)(続) 次に自由党の政策をとやこう言われましたが、私は自由党の党員でありますので、自由党の政策を述べたのであります。
 米の統制撤廃につきましては、適当な時期に実現するよう努力いたしておりまするから、しばらくお待ちを願います。(拍手)
    〔国務大臣廣川弘禪君君登壇〕
#37
○国務大臣(廣川弘禪君) 三百万トン以上も食糧を輸入するのはやめて、増産の最短距離を行つたらどうかというお話でありますが、この増産のことにつきましては、先ほども申し上げた通り、真剣に取組んでおるのでありまして、いもその他についての食糧を増産することは十分意を用いておるわけであります。
 北海道の予算についての前々からのお話でありましたが、農林省に関する北海道の予算も、十分とは申し上げられませんが、意を用いて、満足する程度にわれわれは気を配つておるのであります。
 なお、米の少いときに、酒米を切りかえていもにしたらどうかというお話でありますが、ごもつともな意見であります。幸い、最近酒の主成分となる菌が、いもを主材とする麹の中から発見されまして、すでに四種類のパテントをとつておるのでありまして、将来この方向に私は向いて参ると考えております。
 それから北海道の供出の割当のことについてでありまが、われわれ農林省の者は、決してえこひいきはいたしませんので、神様のような気持で供出割当に当つておるのであります。この補正は各県とも個々折衝をいたしておる最中であります。そういうところがありまするから、北海道は個々に折衝をいたしておるので、必ずあなた方が満足行くような補正ができると思う次第であります。そして、そういうところから明るい食糧政策を行いたいと考える次第であります。(拍手)
#38
○副議長(岩本信行君) これにて国務大臣の演説に落する質疑は終了いたしました。
     ――――◇―――――
#39
○副議長(岩本信行君) この際川崎秀二君の議事進行に関する発言を許可いたします。川崎秀二君。
    〔「大蔵大臣の失言を取消せ」百姓に聞けとは何事だ」と呼び、その他発言する者多し〕
#40
○副議長(岩本信行君) 御静粛に願います。──御静粛に願います。
    〔川崎秀二君登壇〕
#41
○川崎秀二君 目下国会に提出中の予算書は、明らかに財政法に背反し、憲法に背反するところの重大な疑義を含んでおるのであります。これは、今回提案を見ました昭和二十七年度一般会計予算書の第四十六ページに継続費というものがあります。その継続費は、北海道開発事業として、幾春別川総合開発事業費二十億を含みまして、本年度の費用として五億を計上し、また鬼怒川外二河川の総合開発事業費として四十六億四千二百四十万円を計上しまして、本年度十四億七千八百五十万円を計上いたしておるのでありますが、このことの出て来ました法律的根拠というものは、きわめて奇々怪々でありまして、想像するに、これはただいま参議院で審議中の財政法第十四條の二の改正によつて出て来たものと思うのであります。従つて、現在の財政法を基礎としたものでないことは明らかであります。
 これは「国は、工事、製造その他の事業で、その完成に数年度を要するものについて、特に必要がある場合においては、経費の総額及び年割額を定め、予め国会の議決を経てその議決するところに従い、数年度にわたつて支出することができる。前項の規定により数年度にわたつて支出することができる経費は、これを継続費という。こういう改正案を目下参議院で審議中でありますが、元来継続費なるものは、新しい憲法の精神からいうと、これを認むぺからざるというのが憲法註解に明らかであります。すなわち、憲法第八十六條は「内閣は、毎会計年度の予算を作成し、国会に提出して、その審議を受け議決を経なければならない。」と規定しておりまして、旧来の憲法と違うことを明らかにいたしておるのであります。しかるに、財政法第十四條の改正を企てんとするこのことは、いまだ参議院において審議中なるにもかかわらず、その成立を見越して予算書を編成して来たということは、政府の法律無視、また憲法背反の議論が起つて参つておるのであります。(拍手)
 もとより、この継続費そのものすら憲法に背反するものであるという解釈は、有力なる学者の中において相当程度高まつておるにもかかわらず、このことが審議中に、新たなる財政法に基いて予算書を編成するがごときは、断じてわれらの許すぺからざるところでありまして、私はこの問題について発言を求めたのであります。(拍手)
 今度の予算は、これだけではなしに、非常な矛盾と法律背反の根拠がある。たとえば第四百十九ページを見ますと、平和回復善後処理に必要な経費といたしまして百十億が計上されておる。説明を読むと、いかにももつとものようであります。「平和回復に伴い、條約の履行その他善後処理に関し諸般の施策を講ずる必要が生ずるので、その処理のため必要な経費である。」と書いてあるが、この中には対日援助費の返済をも含んでおるのだという説が、今日大蔵大臣の身辺から発せられておる。対日援助費は、われわれは従来までは、これは日本の復興のために必要な経費であつて、アメリカが日本に対して援助をしてくれておる、決してこれを返済するものではないと考えておつたのでありますが、先国会における大蔵大臣の議員に対する答弁によると、これは債務であるということであります。しかし、これが債務であるとするならば、財政法を尊重して、それに従つて予算書が出て来なければならぬのに、かかる平和回復処理費などというものに求めて来たことは、明らかにこれまた財政法並びに憲法の背反であつて、断じてこれは許すことができないのであります。
    〔発言する者多し〕
#42
○副議長(岩本信行君) 御静粛に願います。川崎君に申し上げます。議事進行を願います。
#43
○川崎秀二君(続) また今度の予算は、内容がまつたく不明確であつて、国民は審議することができないから、私は発言を求めたのである。たとえば、今度の講和関係諸費の中には、五百六十億という驚くべき厖大なる経費が出ておつて、これは一体何で出したかというと、日米行政協定の締結に伴う費用だという……。
    〔発言する者多し〕
#44
○副議長(岩本信行君) 川崎君に申し上げます。議事進行を願います。
#45
○川崎秀二君(続) この日米行政協定というものが、いまだ明白ならざるに……。
    〔発言する者多し〕
#46
○副議長(岩本信行君) 御静粛に願います。
#47
○川崎秀二君(続) 予算の方が先行しておるということは、これまた断じて許すことはできない。(拍手)
 以上三つの点から見て、今度の予算は審議をする根拠のないものでありまして、八千五百億の費用のうち三千億に上るものが、法律の根拠のない、しかして協定よりも先に予算が出て来るというような重大なる誤謬を犯しておる。かかる予算は審議することができない。(拍手)予算委員会は、これに対して審議の以前にあつて、当然この予算を返上すべきであると思うのであります。
    〔発言する者多し〕
#48
○副議長(岩本信行君) 御静粛に願います。──御静粛に願います。
#49
○川崎秀二君(続) 一体、かかるずさんにして違法なる予算書を、議長はいかにして受理したか。これは内閣に追つて返上を求むべきものであると思うのでありまして、(拍手)この点に対する議長の所見を承りたいと思うのであります。
 先ほど以来、大蔵大臣は、この議場において北海道の問題に対して、われわれに侮辱を與えておる。今回の予算提出にあたつても、一万部も財政説明の本を書いて、これをパンフレツトにして出すような不條理なる方針を立てておつて、しかもなお、かかるずさんにして違法なる予算書を出すがごときことは、断じてわれらの許すところではないのであります。明白なる政府の答弁並びに議長はいかにして受理したかということを私はお伺いしたいと思います。(拍手)
#50
○副議長(岩本信行君) 議長よりお答えをいたします。申し上げるまでもなく、予算の編成権は内閣にありまして、国会はその内容を審査して、ただすべきものがあれば十分にこれをただし得るのであります。議長といたしましては、政府より提出されました議案の内容をみずから審査する権能かありませんので、正式に提出されました予算は、これを受理いたしまして、たたちに予算委員会に付託して、その内容の審査を願つておる次第であります。
 なお川崎君の議事進行に対しまして、大蔵大臣において何か御発言かあれば、この際お答えを願いたいと存じます。
    〔国務大臣池田勇人君登壇〕
#51
○国務大臣(池田勇人君) ただいま河口君の御質問に対する私の答弁で不備不満のところがありますならば取消します。
 次に議事運営の問題につきましての御質問で、財政法の改正を参議院で審議中に、その財政法の改正案にのつとつて予算を組んだことは違憲なり、違法なりという御議論でありますが、これは川崎君は長い間御存じたと思いますが、大体財政法が昭和二十二年に出されましたときに、その財政法にのつとつて予算が出ておるのであります。しかもまた、昭和二十四年の移用の関係で財政法を改正して、同時にそれに基いて予算案を出しております。しかも今回は、この財政法の継続費の改正につきましては、さきの国会におきまして、衆議院の議決を経ております。参議院が継続審査になつたのでございます。私は、今までの前例から申しましても、決して違憲にあらず、違法にあらずと考えております、もし、あなた方の議論がいいとしてやつたならば、総予算案というものは十二月に出すことを通例とするのであります。そうしますると、財政法を前の国会で議決しておかなければ予算案は出せぬというような、非常な不便な問題が起つて来るのであります。これはアメリカの予算案とは違いまするから、よく御研究を願います。決して違法でも違憲でもございません。
 なおまた、予算案の内容につきましてとやこう言つておられまするが、これは今後十分国会て御審議を願いたいと思います。
#52
○副議長(岩本信行君) 本日はこれにて散会いたします。
    午後四時二十分散会
ソース: 国立国会図書館
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