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1951/05/08 第13回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第013回国会 法務委員会 第46号
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1951/05/08 第13回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第013回国会 法務委員会 第46号

#1
第013回国会 法務委員会 第46号
昭和二十七年五月八日(木曜日)
    午前十時五十四分開議
 出席委員
   委員長 佐瀬 昌三君
   理事 鍛冶 良作君 理事 中村 又一君
      押谷 富三君    角田 幸吉君
      花村 四郎君    古島 義英君
      松木  弘君    眞鍋  勝君
      大西 正男君    田万 廣文君
      加藤  充君    田中 堯平君
      猪俣 浩三君    世耕 弘一君
      佐竹 晴記君
 出席国務大臣
        法 務 総 裁 木村篤太郎君
 出席政府委員
        法制意見長官  佐藤 達夫君
        刑 政 長 官 清原 邦一君
        検     事
        (特別審査局
        長)      吉河 光貞君
        検     事
        (特別審査局次
        長)      關   之君
 委員外の出席者
        専  門  員 村  教三君
        専  門  員 小木 貞一君
    ―――――――――――――
同月七日
 委員高田富之君辞任につき、その補欠として田
 中堯平君が議長の指名で委員に選任された。
    ―――――――――――――
五月七日
 戰争犯罪者の減刑に関する請願(龍野喜一郎君
 紹介)(第二五三四号)
 人権擁護局存置等に関する請願外一件(並木芳
 雄君紹介)(第二五三五号)
 同(田中重彌君紹介)(第二五七四号)
 同(多田勇君紹介)(第二六一〇号)
の審査を本委員会に付託された。
 法務府人権擁護局の存続並びに拡充強化に関す
 る陳情書(京都人権擁護委員協議会連合会副会
 長田中栄治)(第一六二六号)
 同(静岡人権擁護委員会協議会連合会長越崎昇
 太郎)(第一六二七号)
 住民登録法実施経費全額国庫負担に関する陳情
 書(名古屋市会議長横井恒治郎外五名)(第一
 六二八号)
 破壊活動防止法案反対の陳情書外一件(国鉄労
 働組合札幌中央支部代表藪上三郎外一名)(第
 一六二九号)
 同外六件(山形県南村山郡上山町鶴脛町三百六
 十四番地佐々木喜栄外九十名)(第一六三〇
 号)
 同(千葉県立旭農業高等学校教員具田相之助)
 (第一六三一号)
 同外一件(東京交通労働組合執行委員長河野平
 次外一名)(第一六三二号)
 同外二件(新潟県教職員組合佐渡郡支部水津村
 分会代表一橋晴一外三十四名)(第一六三三
 号)
 同外一件(大阪市生野区中川町陽栄製作所労働
 組合代表河内柳太郎外一名)(第一六三四号)
 同(全日本海員組合岡山県玉野地区代表船橋成
 幸)(第一六三五号)
 同外二件(日本炭鉱労働組合山口地方常盤支部
 組合長向井正市外二名)(第一六三六号)
 同(島根県仁多郡温泉村中、小学校代表堀江忠
 左エ門外十二名)(第一六三七号)
 同外四件(福岡県教職員組合戸畑支部戸畑小学
 校分会代表高木茂季外百二十九名)(第一六三
 八号)
を本委員会に還付された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した事件
 破壊活動防止法案(内閣提出第一七〇〇号)
 公安調査庁設置法案(内閣提出第一七一号)
 公安審査委員会設置法案(内閣提出第一七二
 号)
    ―――――――――――――
#2
○佐瀬委員長 これより法務委員会を開きます。
 破壊活動防止法案、公安調査庁設置法案、公安審査委員会設置法案、以上三案を議題といたし、質疑を継続いたします。
 都合によりこれをもつて暫時休憩いたします。
    午前十時五十五分休憩
     ――――◇―――――
    午後一時二十七分開議
#3
○佐瀬委員長 休憩前に引続き会議を開きます。
 質疑を継続いたします。中村又一君。
#4
○中村(又)委員 ただいまより破壊活動防止法案につきまして、質疑を申し上げたいと思います。二日間にわたりまして、本法案に対する公聴会が開かれたのでありますが、公述者のほとんど全部が、修正による賛成及び反対という色わけに相なつておりまして、原案そのままを認むる公述者のなかつたのを遺憾といたしております。私は改進党の本法案に対する基本要綱の上に立ちまして、逐條審議をいたす前に、冒頭発言を少しお許しを願いたいと存じます。
 私は極右極左の団体の暴力主義的破壊活動に対する取締り法規制定の必要は、認めるものであります。今日の国際情勢のもとにおいて、わが国情の現実から見まして、遺憾なから本法案の制定はやむを得ないものと考えております。しかしながら破壊活動の取締りということは、何をもつて破壊活動と見るか、その取締りの範囲いかんによりましては、憲法の定める基本的人権の不当なる制限と相なるのでありまして、かかる処分がときに憲法違反のものとして、法律上無効に帰するおそれがありますので、立法自体におきまして、制定するにあたり、十分の考慮を払うべきものと思います。すなわち私はこの種の立法を考える場合において、真の意味の破壊活動を取締る目的のために、最も有効で、しかも基本的人権を不当に侵害しないように明確に規定することが必要であると信じます。私は現在政府がわれわれに示しておるこの法案について、この見地から十分に検討をいたしまして、参議院において修正などの余地の存しないまでに論議を盡し、衆議院法務委員会としての権威を保持しなければならぬと考えております。政府は木村法務総裁のことでもありますので、おざなりの態度をもつて対処せられておるとは考えておりません。しかし木村法務総裁か永久にこの地位におられるといたしますれば、私は心配いたさないのでありますけれども、法律の生命は長いのであります。この立場からいたしまして、本法案の完全なる立法に努めたいと存じております。私は今日までの多くの質問者のあとでありますから、重複を心配いたしながらごく簡潔に、要点を申し上げてみたいと存じます。
 この三法案を見まするに、大きな基本問題といたしましては、三つにわけて見ることができます。その一つは、破壊活動防止法案第三條の暴力主義的破壊活動の定義というものが明確にどんなものであるか。第二は、行政機関としての公安調査庁及び公安審査委員会設置の問題であります。その三は、現政府の意図するいわゆる法務大臣の権限、または法務省という機構とこの法案運用の関係をどう見て行くべきものであるかという点であるのであります。私はこの見地から逐條の質疑を行いたいと思うのでありますが、この三つの基本問題に関連をいたしまして、まず木村法務総裁に確かめておきたいことが一つあります。それはかような立法を必要と考える現政府は、検察機構の拡充あるいは機能の向上について、どのような具体策をお持ちになつておるかという点であります。これは旧内務官僚の結束復活が伝えられておる昨今におきまして、特に重大性を増しておるばかりでなく、現在の裁判のあり方や裁判官の能力とも関連いたしまして、どうしても明らかにしておかなければならぬ点であろうと思うのであります。木村法務総裁は検察陣並びに国警を担当せられる大臣として、この破壊活動取締りのため検察ないし警察に対し、どのような構想をお持ちになつておるか、今日の特別審査局の拡大に比して、これをどう処理するお考えであるか、打明けた御所見を承りたいと存じます。
#5
○木村国務大臣 お答えいたします。政府は検察庁の拡充を考えておるかどうかというお尋ねでありますが、現在の段階におきましては、検察庁の拡充ということは考えておりません。しかしながら検察機能を最もよく発揮するにあたりましては、検察官の質の向上をはからなければ、いかに拡充いたしましても、その機能は十分に発揮し得ないと私は考えるのであります。従いまして、政府におきましては、検察官の質の向上について特段の注意を払つておるところであります。要するに検察官の人格の修養がまず第一であると考えております。いわゆる教養方面において特段の注意を払わなければいけないと考えております。従いまして、検察研究所を十分に活用して、検察官の質の向上をはかつているような次第であります。
 次に物的方面におきましては、いろいろの施設を持たなければならないのであります。あるいは無電を持つとか、その他いろいろの方面において技術的にこれを拡充して行かなければ、その機能は発揮することはできないのであります。その点につきまして、政府といたしましては十分の考慮を払つておる次第であります。従いまして、今後は人的の拡充は別といたしまして、質的の向上を十分に増進して行くようにとりはからいたいと考えておる次第であります。
 また警察官、特審局、これらにつきましても、世間にはいろいろ批判の余地もあるでありましようが、私の考えといたしましては、やはり検察官同様質の向上ということが、最も時宜に適したものであろうと考えておりまして、その点につきましては、十分の考慮を払いたいと考えております。次に質の向上と同時に各連絡が密接にとれないと、その機能というものは十分に発揮することはできないのでありますから、検察庁、国警、自警、特審局、これらの連絡を将来密にし、その調整を十分にはかつて行きたい、こう考えておる次第であります。
#6
○中村(又)委員 これから逐條質問を続けたいと思います。破壊活動防止法案第三條の規定は、第三十七條ないし第三十九條の罰則の裏づけと考え合せて検討せなければならぬのでありますが、罰則について特に扇動と並べて教唆を掲げているのは、教唆された者が、教唆にかかる犯罪をいまだ実行に移さないうちに検挙された場合に、これを教唆罪として処罰するための用意の規定であると解してよいかどうかという点、政府の御所見を承りたいと思います。
#7
○吉河政府委員 お答えいたします。この法案におきましては、法案第一條にこの法案の目的としまして、団体の規制と破壊活動に関する刑罰規定の補整をうたつておるのでありまして、これに照応いたしまして、第三條に規定された行為につきましても、刑法その他との重複を避けまして、所要の罰則を補整いたしておるわけであります。ただいまお尋ねの教唆は、独立犯として規定をいたしまして、被教唆者が教唆された犯罪の実行をするといなとにかかわらず、教唆犯として独立罪として成立するという建前になつておるのであります。これは現下の事態にかんがみまして、この種の行為が社会的に違法なるものであり、きわめて危険なるものであるという建前に立つものであります。
#8
○中村(又)委員 従来教唆は、本犯の実行が実現せない場合においては、刑罰上不問に付されておつたという関係を考え出すのでありますが、この法案によつて教唆を独立の犯罪としてこれを取上げ、扇動を一個の罪として規定するということは、破壊活動を取締るための便宜に基くものであると言われても、これはもちろん弁解の余地はない率直の事実であろうと思います。刑法に正面から規正すべき事項であると私は考えますが、堂々と刑法の改正を行つてこれをなすことが、国民の安心の上から考えても、取締りの率直簡易な立場から見ましても、重複を避けて、運用上も非常に正しく行くのじやなかろうかと考えるのであります。しかるに刑法の改正を行わずに、破壊活動防止法案において、刑法に掲ぐるところの罪の教唆とか扇動とかを新たに犯罪なりとして規定することは、取締り上の必要から犯罪とするにとどまるものと言われても、私は説明の余地はなかろうと思いますが、政府の御所見はいかがでありますか。
#9
○關政府委員 お答えいたします。教唆を独立罪といたしました現行の立法例は多々あるわけでございます。国家公務員法、地方公務員法、爆発物取締罰則、公共企業体労働関係法その他に教唆を独立罪として規定しております。もつともこの中には言葉としては「教唆」と使わずに、「そそのかし」というふうに使用してあるわけであります。これらの事例に比較いたしまして、この法案第三條に規定するようなきわめて危険なる行為の教唆ということは、現下の事態にかんがみまして、これを独立罪として十分に処罰する必要があり、また処罰しなければならないものであると考えるわけでございます。またこの法案におきまして罰則を第三十七條以下に独立的に設けておるのでございますが、この点が刑法の改正によつて行くべきではないかというお尋ねでございますが、この点につきましては、この法案は現下の事態にかんがみまして、暴力主義的破壊活動を防止するという観点から特別的な立法と考えているわけであります。そのために、一方におきましては暴力主義的破壊活動をなす団体を規制するという行政処分と、他方におきまして、この破壊活動に関する罪について、刑法との重複を避けてこの法案のうちに規定いたしたのであります。刑法は申すまでもなく、国家の基本的永久的な法律であるわけでありますから、刑法等の改正はもとよりその基本法である限りにおきまして、これを軽々になすべからざるものであると考えているわけであります。当面の必要に応じて特別的な立法を出しまして、この破壊団体規制という行政の処分と重複を避けて、特別当面必要の限度におきましてこの法案の刑事規定を盛つた、かような次第であります。
#10
○中村(又)委員 次に破壊活動に対しては、これを取締る側の取締り能力が充実いたしておりますならば、かようながんじがらめの規定を制定しないでも、刑法の運用だけで取締ることができると私は思いますが、現在の取締り能力に照してみて、ちよつとした表面に現われた行為をとらえて取締りやすくする必要が生じたから、こういう刑法に規定するようなものも、特別法をもつて規定するようになつて来たものと私は考えるのであります。立法者の考えとして、取締り能力について現在及び今後の関係から、法務総裁としての自信のほどを承つてみたいと思います。
#11
○木村国務大臣 お答えいたします。ただいま中村委員のお尋ねは、かような法案を作成せずとも、刑法の規定によつてまかない得るじやないかという御質問でございます。この法案の趣旨といたしますところは、いわゆる現下の治安と重大なる影響のある暴力的破壊活動行為を行い、または行わんとするところの団体をまずもつて規制することが第一、しかして第二には、それらの行為を行つた者に対する補整的刑事規定を設けることが眼目であるのであります。従いまして、この暴力的破壊活動を行い、または行わんとするところの団体を規制することは、刑法においては絶対にまかない得ないのであります。しかしてかような団体は、一日も国家治安の上からこれを放置することはできないので、この法案をもつて規制して行きたい、こう考えておる次第であります。しかしてこの取締りの人については、いわゆる調査官をしてこれらの調査に専念せしめまして、刑事訴追については司法警察官をもつてこの方面を担当せしめるというように、きわめて民主的な方法を考えてこの法案を作成した次第であります。
#12
○中村(又)委員 第六條の解散の指定におきまして第三條が再び問題となるのでありますが、この第六條の第二号は、第一号及び第三号と規定の仕方を異にしておりますが、後段を設けておる理由はどこにあるのでありましようか。どうして「団体の活動として第三條第一項第二号に掲げる暴力主義的破壊活動を行つた団体」と簡明に規定しないのでありましようか。相互に均勢のとれないところの文言となつておりますが、かくのごとく法案を組み立てられておる理由を承りたいと思う。
#13
○關政府委員 お尋ねの趣旨は、第六條の各号において規定の仕方が異なるではないかという点と拝承いたしますが、これにつきましては次のようなふうに考えましてかような一号、二号、三号というような書き方をいたしたのであります。
 まず申し上げたいのは、解散という措置は、団体の存在につきまして最後的な処置であるわけであります。従つてこの法案の立て方といたしましては、できるだけ第四條の制限的な規制処分で行くということが、この法案の建前であるわけであります。第六條におきましても、「第四條第一項の処分によつては、そのおそれを有効に除去することができないと認められる場合に限る。」というふうにいたしてあるわけであります。できるだけ第四條による。第六條は最後的な処置で、どうしても第四條の処置ではまかない得ない、かように認められるときに第六條の処分をとるわけであります。ところで第六條の処分につきましては、第一号の場合は、これは第三條第一項第一号の破壊活動は、その破壊活動の内容にかんがみましてきわめて悪性のものであるから、このことだけをもつてその條件の一つと考えても可なりと思うのであります。次に第二号の分につきましては、そのうちの破壊活動に軽重があると私どもは考えているわけであります。従いまして、まず第六條の第三号について申しますと、これは第一号及び第二号以外の破壊活動について第四條第一項の処分を受けた後、さらに第三條第一項第二号のイからリまでの活動の中で予備、陰謀、教唆、扇動、かようなものは、第四條第一項の処分を受けて、さらにその団体の活動として暴力主義的な破壊活動を行つた団体、そういう団体が、継続または反復して将来さらに団体活動として同様な暴力主義的破壊活動をなす場合に解散の処分をするわけであります。要するに、かように二号、三号というふうに書きわけをいたしましたのは、暴力主義的破壊活動にも軽重がありますから、解散という最後的処分の重要性にかんがみまして、その活動の中で軽重を考えて書きわけた、かようなふうに相なるわけであります
#14
○中村(又)委員 第八條の脱法行為の禁止は何ゆえに必要でありますか。このような規定がなくても取締りに困ることはないと思いますが、たとえばどのような行為を予想して第八條を規定されたのか、御説明を求めたいと思う。
#15
○關政府委員 お答えいたします。第八條につきましては、禁止を免れる行為を押えなければ、法案第六條、第七條の精神は沒却されると考えましてこの第八條を設けたのであります。その一つの例といたしましては、当該団体の役職員または構成員が主体となつて、新たな見せかけの団体を結成するというようなことがこの第八條に当る行為であろうと私どもは考えているわけであります。
#16
○中村(又)委員 第三章についてお尋ね申しますが、何よりもまず公安審査委員会の存在そのものが私は問題であろうと思います。この委員会が書面審理によつて団体の死刑とも申すべき解散を決定するということは、何人といえどもこれを問題と思うに違いありません。しかも原告に当るものが公安調査庁の長官であつて、その指揮監督者たる法務総裁の官房に委員会の庶務が行わせられるということに至りましては、これはまつたくむちやの規定ではなかろうかと思います。これは法制意見局が法務府から内閣に移つてしまうことなどを想像してみますと、法務総裁の法的な性格の上から見ましても、非常に納得のできない事柄ではなかろうかと思います。政府は何がゆえにかような委員会の設置を適当とお考えになりましたか。
#17
○關政府委員 お答えいたします。この点につきましては次のような考えから、原案がこの団体規制事務を遂行するにつきましては最も妥当であると考えた次第であります。まず基本の考え方といたしまして、団体の規制事務というのは、行政府すなわち内閣が責任をもつて行うべき純粋なる行政事務であると考えたのであります。まず内閣におきましてその事案を処理し、そうしてその処理した案件につきまして、裁判所が違法なりや適法なりやを再審査する、かようなことが行政権と司法権とを対立させた憲法の精神に合致するものと考えたのであります。
 次にしからば、この事務を行政府において扱うといたしまして、その機関構成はどういうふうにいたしたらよろしいかという問題が次の問題と相なるのであります。この点につきましては、団体規制事務の重要性にかんがみまして、調査請求する機関と、決定する機関とを分離するのが、民主主義の原則に合致するものであると考えたのであります。現行の各種行政処分の規定におきましては、おおむねは調査する機関がみずから決定するのであります。みずから調査しみずから決定する。決定機関と調査機関を分離したというのはほとんどないのであります。戦後におきまして各種の行政処分に関する法律が出たのでありますが、そのおおむねはみずから調査し、みずから決定するというのが原則になつておるわけであります。しかしこの法案におきましては、事の重要性にかんがみまして、権力の集中することを避け、最も民主主義的に行わなければならないと考えまして調査請求する機関と決定する機関とをかように二つにわけた次第であります。
 次に考えました点は、かような機関を二つわけるといたしまして、当面におきまして政府におきましては、行政機構の簡素化という線を強く打出しておるのであります。新たに役所を設置し、あるいは拡充するというようなことは、この線から強くその趣旨に沿つてこれを計画しなければならないことになるわけであります。従いましてこの線に沿いまして、公安調査庁の設置及び委員会の設置も愼重なる考慮を加えまして、原案のような線にいたしたのであります。かような次第で、この簡素化された二つの機関によりまして、この事務を民主的に公正に行うということに相なるわけであります。かような観点から、まず公安調査庁におきまして事前に十分なる審理をいたすというシステムをとつた次第であります。かような次第で十分に事前に公安調査庁において審理をいたしまして、相手方団体の意見、弁解、並びに証拠を提出することができる仕組みになつておるわけであります。かようにしてすべての団体の権利の擁護について、ほとんど遺憾なく手だてが盡してあるのでありますから、さらに小さな委員会におきまして再びさような手続を繰返すことは、その必要もなし、また妥当でないと考えた次第であります。なお委員会は委員会設置法に書いてありますごとく、独立してその事務を処理するのでありまして、総裁はただ国会の御承認のもとにその委員を任命するだけの支配権しかないのでありまして、事務的にはまつたく委員会は独立してその事務を行うのであります。かようなシステムによりまして民主的に公正にこの団体規制の行政事務は遂行せられるものであると私どもは考えておるわけであります。
#18
○中村(又)委員 公安審査委員会の建前につきまして、大分詳しい御説明があつたのでありますが、この法案を見てみますと、私としましては公安審査委員会の設置は必要ないという建前を考えておるわけでありますが、かりにこの法案の中を批判するといたしますと、まつたく公安調査庁の付随機関程度に中身がなつておるようであります。その一つは、どんな小さい委員会といえども、法律の中に堂々と事務局の設置あるいはその委員は国務大臣と同格の手当をするとか、あるいはそれぞれの立場で待遇問題なども規定されております。しかしこの委員は、ほかのたとえば警察法の国家公安委員のごときも、委員は法務総裁に準ずる報酬を受けるという規定があります。あるいは全国選挙管理委員のごときも、これまた国務大臣の俸給に準ずる報酬を委員には給するとあります。しかるにこの委員は、そういう待遇の問題もなければ、法律の建前として、正面玄関に事務局を持つではなし、法務府の官房長の部屋に間借りをして、開店をするという程度に見られる法案に相なつております。これが団体の死刑の宣告ともいうべき解散などを決定するというようなことをする判断機関として、適当な措置に相なつておるかどうか、これを繰返してお尋ねいたしたいと思います。
#19
○清原政府委員 お答え申し上げます。この委員長及び委員につきまして、待遇の点は法案には現われておりませんが、この人選は、国会の承認を得ると、その人選について十分なる注意を払うことば、法文上明らかになつております。なお事務局の点でございますが、これは行政簡素化の線に沿いまして、官房の上に置いておりますが、これは純然たる庶務的事項でありまして、委員会自体は強力なるかつ最も適当なる委員をもつて組織せられるように構成されておることは、法文によつても明らかであろうかと思います
#20
○木村国務大臣 その点につきましての中村委員のお言葉、きわめて適切で山下あろうと思います。私はその点に関しまして、進んでお答えいたしたいと思います。それでこの委員の待遇は、国家公安委員のように、国務大臣相当の待遇をしたらいいじやないかというお言葉のようでありましたが、この委員会は常時開いておるわけではありませんので、そこで待遇といたしましては、実質上国務大臣と同じ待遇をする考えで、つまり日動の委員を――俸給というと語弊がありますが、日勤の手当を出す。それがつまり国務大臣と同じ程度の俸給に相なるわけであります。この人選につきましては、国会の御承認を得て、そうして総理大臣がこれを任命するという建前をとつておるのであります。しかもその人選につきましては、ただいまの構想として、国家公安委員と同じくし各種の方面から人材を求めまして、いわゆる言論界、労働関係者、あるいは法曹界、あるいは実業界という方面から、特に優秀な人を選んで、国会の承認を求める、こういう建前をとつておるのであります。
#21
○中村(又)委員 ただいまの政府側の答弁には、ちよつと満足しかねる点がございます。むろん法案にも非常勤となつておりますが、しかしこの重要なる職務を果すところのものが、しかもこの法案を見てみますと、法務府の外局だという言葉を使つてあります。いわゆる外局とせられたところのこの機構が、委員はすべて常勤ではなく、年中いなくてもいい、必要なときに出て来ればよろしい、待遇などは日当でもよろしい、こういうことで、この大きな職責を果す機関のあり方として適当であろうかどうか。論より証拠、国会には弾劾裁判所というものがある。これはとにかく満四年間、一つか二つ仕事をいたしたことはありますが、ここ足かけ三年間は、一つも仕事をしておらぬ。しかし相当な国家の費用を使つて、全国の裁判官の監督という言葉は適当でありますまいが、いわゆる民衆のために、裁判官として適当な人間が裁判の職務に立たなければならぬという、いわばお目付役をいたしております。もちろん仕事はありません。ないほど全国の裁判官は、非常にりつぱな勤務を今日やつておるものと私は見ておりますが、いわゆる仕事がないから非常勤でよろしい、外局でもよろしいというならば、やはり私の考えのように、行政整理もしなければならぬ現状において、必要のない役所を新しくつくるというようなこと、この一つの理由の上から立ちましてもどんなものであるか。こういう点から見まして、いま一応政府の御所見を承りたいと思います。
#22
○關政府委員 お答えいたします。常勤にするか、非常勤にするかということにつきましては、事務の分量とか、あるいはどちらが広く人材を求めることができるとか、いろいろの点を考慮しなければならないと思つたのであります。常勤にいたしますと、各種の公務員法上の拘束を受けまして、なかなか適任者を得がたいと考えましたので、人材を広く各界に求めるということを考えますと、非常勤の制度にいたした方が、より適材をそこに得ることができる、かように考えまして、このような制度をとつたのであります。
#23
○中村(又)委員 ただいまの御説明でも、なおさら私は疑問を持つようになるのであります。公安調査庁も外局であり、また關政府委員が申されましたように、調査と決定の機関を分離してという説明が行われたのであります。ところが調査庁はむろん常勤ばかりであります。それに匹敵するところの、決定をなすというその機関が、あつてもなくてもいいというような役所のあり方でどんなものであるか。人物を求めるのに困難であるから常勤にしなかつたと言われますが、少くとも委員長のごときは、役所があるとするなら、時間的に束縛を受けぬにせよ、一日に五分間でも出て、その役所の監督をするということは、当然必要であります。たとえば国会の裁判官訴追委員会でもその通りであります。ここには事務局があり、いくらも事務員がおります。委員長がこれを任命します。そうでありますから、訴追委員長というものは、五分間でも毎日出勤しなければならない。判を押さなければならない。そこで委員長だけは事実上は常勤になつております。そういう建前から見ましても、御説明を聞きますと、これこそ公安審査委員会というものは、あつてもなくてもいい、いわば公安調査庁の責任の風よけに設置さるるのじないかという疑いさえも持つような状況でありまして、木村法務総裁のような方が総裁に長くおるなら、私はこういう心配はしない。しかしこれができて、一旦われわれが見た場合において、あんまり、感服せないような大臣でもこれに乗つかかつたときは、相当危険しごくの、国民不安の事実が生れて来るのじやないか。これを私は心配いたしますから、質問を繰返すわけであります。
#24
○木村国務大臣 お答えいたします。この委員会は常動ではありませんが、この設置法をごらんくださいましても明白でありますように、まつたく独立して、委員会独自の公正なる見解をもつて決定権を行使する建前をとつておるのであります。ただこの法案の建前上、団体の規制というような事項は、そう数多くないわけであります。従いまして、広く人材を求めましてするには、事あるごとに出席されて、取調べることに当つていただく方が、最も適当であるのじやなかろうか、そういう構想のもとに設置法を作成したのであります。事務局につきましても、大体において調査庁においての資料に基いて、これを調査する。しこうしてその調査に基いて決定をするのでありますから、大きな機構でなくとも、事を処理するのにはさしつかえないという考えのもとに、この設置法を作成した次第であります。
#25
○佐瀬委員長 木村法務総裁はからだのぐあいがお悪いので……。
#26
○中村(又)委員 それならいま一点だけ……。総裁がいられる間にいま一点お尋ねしておきます。この法案をあらゆる角度から検討をいたしまして、この公安調査庁及び公安審査委員会、この二つの外局を設けられまして、ことにこの公安調査庁に対して配置さるる人員数及びこの二つを運営さるる年額の予算額の予想などはどうなつておりますか。
#27
○吉河政府委員 お答え申し上げます。公安調査庁の定員でありますが、公安調査庁は、現在の特別審査局を基礎にいたしまして、これを発展解消させるという建前になつております。現在の特別審査局の定員は、約千二百名であります。これに五百名程度の必要最小限度の増員を得まして、公安調査庁を設置したいと考えておる次第であります、これに要する予算は、目下大蔵省と事務的折衝中でありまして、終局の金額は確定いたしておりません。大体経常費といたしましては、年間四億円程度のもの、これに初度の設備費を加えまして、お願いしたいと考えておるような次第であります。
#28
○中村(又)委員 法務総裁にお尋ねいたしたいと思いますが、特別審査局は、私の見るところでは、米国の占領政治下における便宜の機関としてつくられたような考え方を持つのでありますが、日本もいよいよ独立をいたして、今後新発足をしなければならぬ現状において、日本の国情にふさわしい機構の改革を目途とせらるる現政府の方針によりまして、特別審査局のごとき、いわゆる占領政治下に置かれておつた当時の遺物をそのまま生かして、こやつを改名して、これを公安調査庁として存続せしめるというその必要があるかどうか。これを一転いたしまして、四億円からの国費を予定するという、予算面の上から見ましても、あるいは検察庁の事務刷新及び強化、あるいは国警方面におけるところの充実強化に振り向けて、過般のあの不祥事件の場合を想像するにいたしましても、簡明率直に取締りが、国民の安心の行けるようにとり行わるるという、その理想の実現こそ、私は今日の政府の考え方の適正なものでなかろうかと考えますが、いつそのことこの際、この法案は必要といたしまして、特別審査局の延長、改名であるところの公安調査庁の設置をとりやめ、しかしてこの席において御説明を願つた公安審査委員会の設置法も、あわせてこれをとりやめまして、検察庁の一部に処分の請求をなし得る機関をつくつて、しかして三権分立の建前から考えますれば、これを裁判所に請求をするというような建前にせられた方が、すつきりして国情にもかない、国民も安心する法律のあり方でなかろうかと考えるのでありますが、法務総裁の御所見を承りたいと存じます。
#29
○佐瀬委員長 ただいまの点は、しばしば当委員会において、調査、捜査、裁判の関連において問題とされた点でありますから、この際法務総裁からその点に対するお答えを希望いたします。
#30
○木村国務大臣 お答えいたします。検察庁並びに国警、自警、これらはいずれもその機能を発揮するのは、事が起つてからであります。犯罪事実が発生してから活動に入るのであります。もちろん警察方面においては、犯罪の予防ということもありましようが、主として事が起つたときに、初めてその機能を発揮する建前をとつておるのであります。本法案におきまする公安調査庁、今の特審局と申しますのは、事の起らぬ前に、行政事務としていろいろなことを調査することの建前をとつておるのであります。この法案がいよいよ施行されますと、要するに行政事務といたしまして、いろいろの方面からの捜査を調査庁においていたしまして、その調査に基いて犯罪事実があれば、これは刑事方面の手続になつて、検察庁は初めて活動するという建前になるのであります。しこうしてこの委員会におきまして決定された点につきましては、それに不服があれば、初めて裁判所に対してその取消しを求める、かようになりまして、その行政処分の違法の点についての最終的決定は裁判所に求めるということになりますので、この点においては行政と裁判との厳格なる分離をするという建前が、この法規によつて現われておるような次第であります。
#31
○佐瀬委員長 法務総裁に対してはよろしゆうございますか。またあらためて……。
#32
○中村(又)委員 法務総裁は御病気だそうですから、御遠慮申してもけつこうであります。
 刑政長官並びに意見長官もおられますから、ひとつお伺いいたします。ただいま大臣の御答弁では満足というわけには行かなかつたのであります。検察庁にも今日いわゆる公安検事という者がおります。ただいまの大臣の御説明では、検察庁というものは事が起らなければ仕事は開始されないような御説明のようにも聞えたのでありますが、検察庁といえども、事が起らないように職務を行う権限を発揮する場所だと私は考えております。そこで公安検事のごときにおきましても、現に日本全国津々浦々、公安上におけるところのあらゆる事実の調査をなしており、研究をいたしておる点につきましては、特審局以上の勉強をしておると私は思う。こういう点から見まして、この検察庁に今日までの特審局の仕事を持たせて運用せしむるということが、すべての点で簡潔明瞭になつて来るのではなかろうかと思いますが、この点いかがお考えでございますか。
#33
○清原政府委員 お答え申し上げます。ただいま中村委員より、検察庁に対してたいへん御理解のある御意見を拝聴しまして、ありがたく存じます。検察庁は本来の任務は捜査でありまして、もとより犯罪の予防についても大いに努力すべきでありますが、本法案の規定いたしておりますのは純然たる行政処分でございます。かかるものを検察庁に與えるということは、かえつて権限の集中化になります。その弊害において大いに憂慮すべきものがある、従いまして本法の規定する行政処分による規制のごときものは、純然たる別個の機関に與えることこそ最も必要であろう、かように考えておる次第であります。
#34
○中村(又)委員 そういたしますと、あまりに執念深いお尋ねのようでありますが、この別個の機関に與えることこそ最善の方法だという御説明でありますが、この別個の機関が、法務総裁のもとに、同じ系統下に置かれて調査が行われ、またさらにその指揮監督下に判断、決定の事実が行われる、こういう点などから見ましても、別個の機関ということを、厳格の立場において考え得られるかどうか、こういう点ちよつと御説明を願いたいと思う。
#35
○吉河政府委員 お答え申し上げます。検察権の行使を担当いたします検察庁におきましても、法務総裁と検察庁との関係は、刑事訴訟法で厳格に規定されておりまして、検察庁はその検察の事務を公正に運営する建前になつております。この法案におきましては、行政処分として破壊的な団体に対する規制を行うのでありますが、これは法務行政として、法務総裁の責任のもとに、その調査並びに請求を行う、請求がありました場合におきましては、独自に公正な委員会が、法務総裁の指揮監督を受けず、独立して判断をするというような建前になつておりまして、権限の集中というものを避けまして、相互の牽制によつて、公正に事務が運用されるような建前になつておるのであります。
#36
○中村(又)委員 そういうただいまのような説明でありますならば、公安審査委員会もみずから判断し得る機関を持たなければなりません。公安調査庁が調査をし、一つの請求文書というものを出して、その出された文書によつて判断をするというだけでは、いくら学者であつても、いくら識見の高いお方であつても、とにかくそれは調査庁自身の判断、決定と同一な事実が結果すると思われますが、その点はいかがであります。
#37
○關政府委員 お答えいたします。団体規制のごとき行政処分を行うにあたりましては、その団体の意見弁解並びに有利な証拠を十分に提出し得るような措置を講ずることが、まず第一に必要だと思うのであります。この趣旨に従いまして、第十條から以下の破壊的団体規制の手続という章におきまして、十分なる措置をとりまして、当該団体の意見弁解並びに有利な証拠の一切が提出し得るようになるわけであります。そしてなお当該団体につき規制の処分を請求するにあたりましては、証拠とその請求書を提出するわけでありますが、公安審査委員会において審査の証拠となし得る証拠は、当該団体において意見を述べる機会が與えられたものに限定されておるわけであります。がようなシステムによりまして、さき申し上げたごとくに、行政簡素化の趣旨も十分に尊重せなければならないことから、すでに公安調査庁におきまして十分なる意見弁解並びに証拠の提出が盡されておりますからして、それだけの証拠と、そしてまた当該団体のあの意見書によりまして、公正なるところの事実認定ができ、審判ができるものと、かように考えて、このような建前をとつたわけでございます。
#38
○中村(又)委員 この公安審査委員会ないしは公安調査庁というものを検察庁に持ち込むという点につきましては、反対的御説明を承つておる次第でありますが、その御説明のごとくでありますれば、法務総裁下にまだまだ簡便に特審調査局というようなものでもおつくりになつて、そうして調査せられるという程度が、国民の負担の上から考えても便宜だというような御議論などはありませんか。
#39
○關政府委員 お答えいたします。団体の規制事務につきましては純然たる行政事務でありますが、すべてこれらは証拠によつて決定されるのであります。従つてその証拠を収集するということが必要になつて来るわけであります。しこうしてこの団体規制事務は先刻申し上げたごとく、純然たる行政事務でありまして、これをいわゆる司法警察ないしは司法検察と同一の役所において行わしめるということは、権限がそこに集中しまして、民主主義の原則に私は反するものであると考えるのであります。従いまして別個の行政機関をして証拠を収集せしめるという建前から、公安調査庁の設置、この法案に盛るがごとき組織が必要であろうと考えるのであります。
#40
○中村(又)委員 政府の説明に関連して質問を続けますが、三権分立という大きな立場から考えまして、先刻も言われました調査と決定というこの大きな機関を外局として別々に分離し、存置するお考えでありますが、ただいま申しまする三権分立の精神から考えてみるときにおきまして、調査せられたる事実に基いて請求をさるる相手としましては、壁一重の立場にある。政府委員がいかに弁解されましても、これはもうほとんど私などが見ると異体同心に違いないというような、壁一重になつております。そこでこれを裁判所に持ち込んで請求して、そうして最後の判断決定を受けるというその筋を、どうしてお考えにならなかつたのでありますか。
#41
○關政府委員 お答えいたします。この団体規制の事務は、政府におきましてはこれは純然たる行政事務であると考えるのであります。かような事務は国家公共の安全と福祉に直接に関連する重要な案件でありまして、行政権が責任をもつて行うべき事務である、かように考えるのであります。この行政権が責任をもつて行つたその事務の第二段におきまして、違法なりや適法なりやを裁判所が判断するということが、司法権と行政権を対立せしめた憲法の趣旨に合致いたすものである、かように考えた次第であります。さような点からここに行政権においてこれを行う。その行う機関として公安調査庁と公安審査委員会をここに設置いたしたのであります。なお公安審査委員会を法務府に帰属せしめたのは、今日の中央各庁におきまして法務府は法務行政に関する府でありまして、最も法律的に安定したる役所であると私は考えておるわけであります。従いまして委員会のごときは、やはり法律に基いて嚴正公平に事を行うのが要件であろうと考えるのであります。かような理由からやはり法務府にこれを置くのが最も公正なる運用を期せられる。かように考えまして委員会は法務府に設置することにいたしたのであります。
#42
○中村(又)委員 民主主義時代におきましては、行政処分と申しましても、国民の利益を奪うという行政処分は、これは全部あげて裁判所の判断にまかすという方向に持つて行くのが進歩したる私は考え方だと思います。こういう立場から考えまして、いわゆる団体の解散を決定するというようなことに相なりますと、これまさしく国民の大きな利益を奪うところの決定でありますから、たといこれが行政処分の性質を残しておるといたしましても、かかる判断、決定というものは、今日の時代においては裁判所に持たすのが当然の考え方でなかろうかと思いますが、政府の御所見を承つておきたいのであります。
#43
○佐藤(達)政府委員 中村先生に講義を申し上げることになつてはたいへん失礼でございますけれども、私の考えておりますところを一通りお聞き願いたいと存じます。今仰せられました節節は一面の真理を私は持つておると思います。しかしながら本来の日本国憲法の建前における司法権と行政権のあり方というものの原則は一体どこにあるかということについて、私の理解しておりますところでは、もとより司法権というものはこれは各国を通じて同様でございますが、本来は争いのある事実について、その事実を確認して、その確認された事実に対して法を適用するという作用であることは、これは司法権の本来の原則であろうと存じます。従いまして民事にしろ、刑事にしろ、行政事件にしろ、過去に成立いたしました事実に基いてそれを判断して適当の宣言をするということであるわけであります。ところが今回ここで御審議をいただいておりますこの処置は、たびたび他の政府委員が申されておりますように、これは行政処分であります。たまたま行政処分の基準となつておりますところが、処罰を受けるような行為が基準にあげられておりますために、いかにも団体に対する制裁のように見受けられますけれども、本質は私は行政作用であつて、たとえば精神病者というものを精神病院に強制的に監置するという処分と本質においては同じものであります。従いまして、これは今の裁判所の本来担任すべき司法権の内容とは違うものであります。それを裁判所に持たすか持たさぬかということは憲法の原則からは離れますけれども、あるいは立法政策において考えられることかもしれませんが、憲法の本質からそういうことはないと考えておるわけであります。従いましてこの処置については、本来の行政作用の担任者であるところの政府が全責任をもつてこれを処置して行く、そうして国家に対してこれは全責任を負いますという趣旨で出ておるわけであります。裁判所にお願いすることは、これは裁判所は国家に対して何ら責任はございませんから、政府としては荷物が軽くなるわけでございますけれども、さようなことはどうも憲法の本質からは離れるであろうというのが根本の気持でございます。
#44
○中村(又)委員 ただいまの意見長官の御説明はよくわかりましたが、やはり私の申し上げました通りに、たとえば団体の解散を決定するといたしましても、その決定に対しましては最初より両者間の争いはあるのであります。また争いがなければ裁判はなしというような御説明にも聞えるのでございますが、それは行政処分だ、行政作用だと言われますが、行政作用によつて決定をさるるその事実に対して最初より争いのあるものを行政決定をされるのであります。そこでその証拠には、これに異議があるものは裁判所に訴えの申立てができるとなつております。それならば最初から司法裁判権の問題として取上げてもよいのではないかと私は思いますが、いかにお考えでありましようか。
#45
○佐藤(達)政府委員 ごもつともな御懸念であろうとは存じます。しかしこの規制処分の本質は今のお言葉の争いということよりも、事実は争いの形もありましようけれども、本質はこの行政機関がある団体をつかまえて、その団体の過去の行動を検討いたしまして、しかる後に将来に対する団体の危険性というものをそこで判断して、この規制が行われるわけであります。すなわち過去の事実はこの判断の資料になるだけでございまして、将来の危険性を判断するということが重点になつておる。従つて将来の危険性が濃厚であるということになれば、規制処分をいたしますし、将来に危険性がないということでありますれば、規制処分はしないで済む性質のものであります。今御指摘の、あと裁判所に来ます場合には、行政機関でありますところの公安審査委員会が最後の決定をいたしまして、規制処分というものをやつてしまうわけであります。その規制処分というものは確定した事実になつておる。その事実が一体法律に違反してなされた違法の処分であるかないかということを裁判所に申し立てて争つていただくわけでありますから、それから先は純粹の司法権の作用であることは、これは申し上げるまでもないことであります。
#46
○中村(又)委員 政府委員の御説明は大体わかるのでありますが、そういうお考えに立脚せられての原案のつくり方でありますから、第二十四條を見ましても私は疑問を持つのであります。第二十四條の第三項は單に裁判所に対する訓示規定と私は見るのでありますが、政府当局はいかなるお考えであるか、裁判所は第二十四條第三項に従う法律上の義務はないと私は思いますが、この点を伺つておきたい。
#47
○關政府委員 お答えいたします。お尋ねの通り、司法権独立の原則のもとに、できるだけ百日以内に裁判をしていただきたい、かような趣旨が第三項になるわけであります。
#48
○中村(又)委員 これは選挙法か何かにもあつたような記憶が私はありますが、この法案の中で裁判所に訓示規定をもつて首をくくらせておくようなことが、はたして民主主義時代の立法として穏当なものであるかどうか、しかし希望條項は法律で制定できぬこともなしと言われればそれまでのことでありますが、これは世間の非難を除くための一つの便法として、いわゆる法律を知らぬ者に対する弁解の道具としてかかる無用の規定をなさつておるものと私は見ますが、いかがでありましようか。
#49
○關政府委員 お答えいたします。団体規制というものの影響するところが重要であるという点にかんがみまして、特にこの規定を設けまして、一般にその事務が迅速に行われるように扱いまして、無用の危惧を除きたいと考えましたから、かような規定を設けた次第であります。
#50
○中村(又)委員 先に進みまして、第四章、第二十六條ないし第三十三條の項目に対しまして簡單にお尋ねをいたしたいと思います。
 警察官や検察官、検察事務官のほかに公安調査官というものを特に設けて調査事務に従事させるということは、公安調査庁を必要とせらるるあなた方のお考えではもちろん必要となつて参ると思いますが、私として見ますと、ただいま申しますように、警察官、検察官、検察事務官、そういうものが幾らも日本の役人としておるのに、さらに占領時代の役職のものを公安調査官と名前をかえて、そうして調査事務に従事させるという必要がどこにあるのであろうか、こんなものを置きますから、第二十八條のような妙な規定をつくらなければならぬように相なるのであります。すなわち権限争いを調整する規定がここに出ております。検察機構と警察機構の改正運用によつて処理しますと簡單明瞭であります。特にこの第二十八條の調整規定の点につきましてお答えを願いたいと思います。現に特別審査局の幹部は御承知のごとくことごとくが現職の検事であります。その部下は多く警察官であります。こういう建前から見ましても、独立の調査庁という役所を新たに設けて、検察庁とは全然別個の建前の機関を運用して行かなければならぬという御説明は、一応納得の行く人もありましようけれども、この人的構成から見ましても、またただいま特審局長の特審局を発展解消して公安調査庁とするんだという御説明から見ましても、今回でき上るべき公安調査庁の幹部の諸公はやはり現職の検事であり、その部下はほとんど全部が警察官ということに相なる。してみますと、どうして検察庁とは別に新しい役所をつくつて、しかも中身は同じ検事が指導をして仕事の運用をはかつて行くという必要があるか、この辺の調節の方法はないものかどうか、御所見を伺つてみたいと思います。
#51
○吉河政府委員 お答え申し上げます。公安調査官の調査は、先ほどからも申し上げました通り、行政上の調査でありますが、その調査は暴力主義的な破壊活動が団体によつて行われた事実並びにその団体が継続または反復して将来さらに暴力主義的破壊活動を行う明白な危険の有無を立証する事実につきまして、証憑資料を収集してその有無を調査するという建前になるのであります。ただいま御質問がございました第二十八條は、権限争いの調節規定ではないかということでありましたが、第二十八條は協力規定でございまして、公安調査庁と警察とがおのおのその職務を異にしながらも、互いに相関連する事項につきましては、情報の部面におきまして相協力して行こうという建前になつているのであります。現在特別審査局と検察庁並びに国警、自警とは、中央から地方に至るまで逐次緊密な協力能勢か打出されておりまして、その能率も改善されているような状況でございます。
#52
○中村(又)委員 私から見ますと、この公安調査庁というものが独立して、しかも外局として存続せしめる必要があるかどうかというような疑問を持ち得る、その基礎としてもやはりこの第二十八條も有力なる理由の一つだと思います。公安調査庁が国家地方警察及び自治体警察との間に、相互にこの法案の実施に閲し、情報または資料を交換しなければならないという法律のお助けの規定をつくつて、職務の満足なる遂行をしなければならぬという実態から見ましても、独立して、しかも外局として、堂々たる役所でなければならぬ公安調査庁の基礎に私は非常な不安と疑問を持つものであります。すなわち検察庁が犯罪捜査あるいはその他におきまして、国家地方警察及び地方自治体警察と相互に法律の実施に関して協力しなければならぬというようなことを、ことさらに法律に規定するといたしますならば、日本の検察庁の権威をそこなうこと、これよりおびただしいものはないと思います。こういう建前から考えましても、中央政府の一つの外局であるところのこの役所が、こういう規定を置かなければ職務の満足なる遂行ができないのであるか、またとにかく職務の連絡その他に対しても何らの権限も持たぬのであるか、こういう点を憂えますと同時に、第二十九條を考えてみたいのであります。第二十九條の公安調査官の立会いは、司法警察員の行う捜査の場合だけについて規定されておりますが、これは検察官独自の捜査の場合は立ち会うことができない趣旨であるかどうか、承つてみたいと思う。
#53
○關政府委員 お答えいたします。第二十九條における公安調査官の立会いは、司法警察員が行う場合のみに限定したものであります。検察官の場合につきましては、この法案の構成から見まして、かような規定を設けないのが妥当であろうと考えて規定いたさなかつたのであります。
#54
○中村(又)委員 あらゆる調査、捜査というようなものが、独自の立場において、全国あらゆる場所の検察庁におきましても、行動を開始いたすことがあるのであります。しかるに第二十九條には「司法警察員が暴力主義的破壊活動からなる罪に関して行う押収、捜索及び検証に立ち会うことができる。」となつておりますが、検察庁がこれをなす場合においては立ち会うことができないようにも見られる規定と相なつております。これは片手落ちであるか、あるいは少しく勢い負けした規定のやり方であるか、私ははつきり承つておきたいと思う。
#55
○關政府委員 お答えいたします。刑事訴訟法などの考え方から見まして、司法警察員は今日第一線の捜査事務を担当する機関である、かように考えられますから、公安調査官が立ち会うというのは、司法警察員だけの場合にとどめておいても一応の目的は達せられる、かように考えましてこの規定を設けた次第であります。
#56
○中村(又)委員 少しこまかな問題でありますが、この公安審査委員会の規定の中に、委員長及び委員は国会の承認を得て、法務総裁がこれを任命するとなつておりますが、大体の委員会の先例から見てみますと、全都とは申しませんが、民主主義を建前とした委員会の構成から考えてみますと、委員は国会の承認を得て法務総裁これを任命するというのが適当じやないか、しこうして委員長は委員が互選してこれを出すべきが民主主義のあり方でなければならぬと私は思う。最初より法務総裁が委員長を任命し、委員を任命するという形式をとるならば、この規定にあります五名の中から、しつかりした、自分の意中の者を委員長にすると、その他の委員はあつてもなくてもいいというような結果も――、少しく行き過ぎた考えではありますが、そういう結果も想像せらるる事実があるのであります。「委員長及び委員は、」一とこうなつておりますが、これはやはり一応委員は国会の承認を得てこれを任命する、しこうして、委員長は委員の互選によつて法務総裁がこれを任命するならわかるのであります。そういう形式をとることが私は妥当と思うが、政府の所見いかん。
#57
○關政府委員 お答えいたします。戦後に生じました委員会の立法例にもいろいろのものがございますが、このような措置を第五條においてとりましたのは、法務総裁が責任をもつて委員長に最も適任者を充てる、かような点から見まして、このような制度が最善であると考えまして、このような規定といたした次第であります。
#58
○中村(又)委員 たいへん長くなりますので、最後のお尋ねをしておきたいのでありますが、さきにも申しましたように、第一章総則及び第六章罰則につきましても、刑法に盛るべきものは刑法の改正で行うということが本筋であるということだけは、法律家として政府当局もお認めになつてよろしいと私は思いますが、まずその点を伺つておきたいと思います。
#59
○吉河政府委員 お答えいたします。先ほども他の政府委員から御答弁申し上げました通り、刑法は基本的な刑罰法典でございまして、立法の手続、形式上刑法を改正するという場合もあります。また他の特別法によりまして刑法の内容を改正するという立て方もあるのでありまして、この法案におきましては、暴力主義的な破壊活動を防止するという見地から、団体の規制と所要の刑罰規定の補整をいたしたのでありまして、形式としてこの法案において刑法の補整をいたした次第であります。
#60
○中村(又)委員 政府のねらいは、むしろ刑法に規定すべきような点を、特にこの破壊活動防止法案にあらゆる場合を織り込んでおられるのでありますが、ほんとうのねらいというのは、破壊行為の事前行動とも目すべき予備、陰謀、教唆、扇動というようなものを処罰するということに重点を置いて、ことさらにこの破壊活動防止法案の中にかかる規定を作成せられておると見るのがほんとうでなかろうかと思うが、いかような御所見でありますか。
#61
○關政府委員 この法案において、予備、陰謀、教唆、扇動というような罪を特にことさらに処罰するために、ここに設けたのではないかという御趣旨の御質問と拝承いたしましたが、この法案におきましては、現下の事態にかんがみまして、公共の安全の確保に資するために、破壊的団体の規制という新たなる行政措置と、その暴力的破壊活動からなる罪について、刑法との重複を避けまして、新たな刑罰類型をここにつくつたのでありまして、特にこの罪だけをここに掲げてというようなことさらの意図はございませんので、公共の安全の確保に寄與するために、その二つの最小限度のラインを特別な立法の形式においてここに一まとめといたした次第であります。
#62
○中村(又)委員 公共の安全を維持するためにこそ、その任務は刑法がこれを受持つておるのでありますが、破壊活動防止という建前において団体を対象としたというこの立法のお考え方から見ますと、どうしても団体というものは、たとえば騒擾、あるいは内乱、あるいは殺人というような個々の場合を考えてみまして、団体によつてその責任を負担するわけには参りません。いわゆる刑罰の責任というものは、いかなる場合も個人であります。そうなりますからして、この規定のどこに織り込んでも、結局は刑法のごやつかいになり、いわゆる刑事手続法の力によつて処罰せなければならぬのでありますから、重複的にこれをここに掲げられておりますが――これはもう御答弁はいりませんが、どこまでも便宜主義にできた法案であり、しかも予備、陰謀、教唆、扇動というものを、手取り早くこの法規によつて取扱うことができるというところに、ねらいを持つておつくりになつておるのじやなかろうかということを、私は見るのであります。
 ついでに私はお尋ねいたしますが、破壊的団体を対象としたる法規であるといたしますならば、これは政治的な団体に対する規制と解散という二つだけをこの法案につづつて、その余のものはみんな刑法にお返しになると、すつきりすると思う。ともかく国民全体は、まわりくどい法律では解釈も何もできない、判断もつがぬのでありますから、そういう簡明率直な法の建前をなさる必要があつたのではなかろうか。これをお尋ね申すとともに、ついでにお尋ね申しておきますが、団体のみを対象とするという建前でありますならば、それにふさわしいところのいわゆる団体規制のことだけを規定する。こういうお考えは御研究にならなかつたのであるか。あるいはこの名前のごときにおきましても、破壊活動防止法というような、国民のわからぬような名前でなくて、破壊団体取締法というような、国民が見てすぐ判断がつくような名前にでもしないと、破壊活動防止法といつてもわけがわからない。こういう点などもよく御研究になつたかどうか、御所見を承つておきたいと思う。
#63
○佐藤(達)政府委員 名前の方から先にお答え申し上げますが、名前につきましてわれわれが苦労いたしましたことは、たびたび新聞に出ましたように、幾変遷を遂げておることによつて、十分なる御同情をいただけることと存ずるわけであります。いろいろお好みもございましようから、それはお好みによつて拝承しておいてけつこうでありますが、そういうように進んで参つたということをお答え申し上げておきます。
 先ほどからお尋ねの刑罰法規との関係で、これは刑法に入れるべきではないかということは、これは率直にいつて傾聴すべき御意見であると思います。私どももそういうことは一応考えて立案いたしております。ただこの関係につきましては、過去の例に見ましても、たとえば暴力行為等処罰二関スル法律とか、盗犯等ノ防止及処分二関スル法律とか、本来刑法にはめ込むべき法律が特別に立法されているものもあります。これはこの場合の例ではございませんから、ただそういう例があるということだけを申し上げるにとどめますが、この場合における建前は、やはり先ほど来の説明に盡きるのでありまして、今回の法律というものは当面の必要からやむを得ない立法である。刑罰法規の根本法というべき刑法をいじるものかどうかという点にいろいろ疑念を持つておりますから、この形が最も適当であろうという趣旨でかようにいたした次第であります。
#64
○中村(又)委員 これは最後のむしろ御注文でありますが、もしこの機構がこのまま国会の承認を得られたという筋合いに進むべきものといたしますならば、この公安審査委員会のごときを、法務府官房長の部屋に設置してその職務万端を取扱わしむるという点なども、いかにおそまつであるかという感じを持つ。この大きな役所が、法務総裁ならいいけれども、法務府の官房長の片すみでその事務を取扱うという間借人の規定がここに規定されておるのでありますが、こういう点などは大いに研究されるという方針はないか、これも承つておきたいと思います。
#65
○吉河政府委員 公安審査委員会の事務を具体的にお取扱いになる施設、場所等につきましては、その権威に恥じないようなりつぱな施設をつくるつもりであります。ただ公安審査委員会の行う事務につきまして、公安審査委員長並びに委員を直接補佐するものは、別に委員補佐という制度も置かれておりまして、さらにそのもとでいろいろな事務を行うものは、当面官房の職員をもつてこれを取扱わせるというだけの意味でそれを規定したわけでございまして、施設その他万端につきましては、決してその権威に恥じないような御待遇はしなければならぬと考えております。
#66
○中村(又)委員 私の質問は一応打切ります。
#67
○佐瀬委員長 大西正男君。
#68
○大西(正)委員 中村先生から詳細かつ大局に立つての御質問がありましたので、私は補足的にお尋ねいたしたいと思います。
 中村先生から最後に言われましたこの法案の名前の問題であります。破壊活動防止法となつておりますが、これは何か外国の立法例によられたものでありましようか。私の見解では、アメリカの回内安全保障法によりますと、破壊活動取締法――コントロール・アクトという言葉が出ておりますが、取締法ということにしないで防止法としたのは、そこに何らかの意味があるのかどうか、この点をお尋ねします。
#69
○吉河政府委員 お答え申し上げます。先ほど法制意見長官からも、本法案の名称につきまして打明けたお話が御答弁としてありました。破壊活動防止法という名前でございますが、正確に申しますと、暴力主義的破壊活動防止法、あまり名前がだらだらと長くなりますので、切詰めまして破壊活動防止法としたのであります。個人によつて行われる破壊活動につきましても所要の罰則を補整いたしまして、これを司法処分として取締る、同時に、さらにかような暴力主義的な破壊活動が団体によつて行われる危険を未然に措置するという建前から、両者を合せまして破壊活動防止法というような実態に即した名前を取上げたのであります。これは公安保障法とかいうような非常に抽象的な名前よりも、むしろ実態に即した名前の方が適当ではなかろうかというような論議もございまして、かような名称におちついた次第でございます。
#70
○大西(正)委員 今の御答弁の中に、未然にこれを防止するという言葉がございましたが、私この未然に防止するということについて非常に疑問を持つのであります。民主主義の原則から行きまして、一体未然に防止するということが、すなわち濫用の危険を生むおそれはないか、政府としては、今おつしやられました通りに、防止法というのはつまり予防法であるということを念頭に置かれて、そうしてその精神に立つてこの法案を立案されたものと思うのでありまして、われわれの予想しておつたことが今御答弁によつて明確になつたのでありますが、しかしそういう考え方に立つということ自体が、非常に危険を含んでおるのではないかとわれわれは考えるのであります。一体こういつた予防的な法律というものが民主主義国にあるかどうか、それをお伺いしたいと思います。
#71
○吉河政府委員 お答え申し上げます。将来の実害発生の可能性、その危険に対しまして、一定の保安的な措置をして、これを未然に防止するという建前は、ただいま御質問のように、他面におきましてはきわめて危険なラインであることはお説の通りでございます。従いまして、その規制の原因、対象、手続その他につきましても、きわめて厳格な法律の規定をもつて、いやしくも濫用のおそれのない必要最小限度の措置を講ずるものなければならない。かような建前から第四條、第六條等におきまして、その他本法案全体を通じまして、規制措置に関する詳細な規定を設けてあるようなわけであります。一定の犯罪をなすことを目的とする団体を刑罰をもつて取締る。結社法をつくりまして、結成、指導、加入を所罰するというような行き方も、民主主義のもとにおいては絶対にいれられないという筋合いのものでもない、ある点につきましてはいれられると思うのでありますが、さらに行政措置をもつて危険な団体について所要の規制を加えるということは、先般来御説明申し上げました通り、外国の立法例におきましてもその実例があるのでございます。
#72
○大西(正)委員 先般来承りましたのは、今のアメリカのいわゆるマツカラン法、そのほか自由主義諸国にもございますが、それとソ連あるいは中共における立法例、そういうものもあるのでありますけれども、自由主義諸国の、今のマツカラン法においても、本法が規定しておるような――濫用のおそれがわれわれから考えますと、非常にそういつた危険のある予防行為について、このような規定をしているものは私どもの見解ではないと思うのであります。しかしソ連とかあるいは中共は、これはわれわらの見解においては自由主義諸国ではない。そういう国々にそういつた事例があるということは、その国々の建前からいいまして予想され得るのであります。またそういう立法が起り得るということも予想されるのであります。しかしそういう国国の建前に基いてそういつた予防的ないろいろの治安立法ができておりましても、われわれはそれを手本にするわけに行かないと思うのであります。むしろそういうものがかかる国々にあるということをわれわらとしては反省をして、そういう立法にならないようにすることが必要ではないかと思うのでありますが、今局長の言われました先般来の立法例というのは何をさしておられるのでありましようか、伺いたいと思います。
#73
○關政府委員 お答えいたします。ごく最近の立法例といたしましては、南阿連邦におきまして、破壊的団体を解散し、さらにこれに対する同調団体に対しまして、司法大臣が解散の指定をなしたというような立法例があるわけであります。
#74
○大西(正)委員 ただの解散の事例があるかどうか知りませんが、いかなる根拠に基いてそういう処分をなし得るかということが問題だと思います。それらの点につきましては、各條に入つて行きましてからいずれお尋ねいたしますが、一応われわれは、この法案の題目に示されておるがごとくに、予防立法をしよう、そういう建前に立つておる政府の考え方自体非常に危険だ、そういう頭が非常に危険だということを痛切に感ぜざるを得ないということを申し上げておきたいのであります。
 次に第一條でありますが、この第一條の後段に、「かかる破壊活動に関する刑罰規定」という言葉がありますが、この「かかる」というのは一体何をさすのでありましようか、御説明を願いたいと思います。
#75
○關政府委員 お答えいたします。この「かかる破壊活動」と申します「かかる」は、その前にあります「暴力主義的破壊活動」なのであります。
#76
○大西(正)委員 「暴力主義的」だけにかかるのでありましようか。この第一條は、仄聞するところによると、例の第一次ストの前におきまして、政府と労働団体との交渉によつて、「団体の活動として」という言葉が新たに入つたやに承つております。元の案においては「団体の活動として」という言葉がなくして、單に「暴力主義的破壊活動を行つた団体に対する」云々ということで、またそれを受けて「かかる破壊活動」ということになつておつて、その後においてこの「団体の活動として」という言葉が入つたと思うのであります。そうしますと、文章の行きぐあいからいたしまして、「かかる」は「団体の活動として」ということも受けなければならないということになりはしないでしようか。その際にそういうことまでお考えになられたかどうか。
#77
○關政府委員 お答えいたします。この第一條の「かかる破壊活動」は「暴力主義的破壊活動」だけを意味しております。
#78
○佐瀬委員長 団体に対する犯罪能力というか、犯罪性というものはこの規定においては確認したのではないということになるわけでありますか。政府委員の御答弁を煩わしたいと思います。
#79
○吉河政府委員 さようであります。「暴力主義的破壊活動」という言葉を繰返して重複することを避けまして、「かかる破壊活動」という表現をいたしたわけであります。
#80
○大西(正)委員 それでは日本語といたしましてきわめてまずい書き方であると思います。が、しかし政府の御所見はわかりました。そこで「暴力主義的」ということでありますが、一体「暴力主義的」という言葉は、団体等規正令にはそういう言葉が使われておつたようでありますが、それ以外に何か「暴力主義的」という言葉を使われた事例がわが国の法制上にあるかどうか。第二には、「暴力主義的」とはいかなることを意味するか、これを伺いたいと思います。
#81
○吉河政府委員 お答え申し上げます。お尋ねの通り、「暴力主義的」という言葉は、団体等規正令に使われただけでございますが、暴力の行使というような言葉は他の労働関係の法律に出ております。「暴力主義的」と申すのは、一般に暴力によつて目的の実現をはからんとするやり方をいうのでございますが、特に本法におきましては、政治上の目的を暴力をもつて貫徹せんとするがごとき行き方を大体を申しておるのであります。
#82
○大西(正)委員 「暴力主義的」という言葉はあとにも出て参りますから、いずれその際にもつと詳細に質問をしたいと思います。
 次に第二條でありますが、われわれの見解では、第二條は当然のことであつて書く必要がない、書いても書かないでも同じだと思うのであります。しかしながら、第二條第一項におきましても「調査」、第二項においても「調査」となつておりまして、その他の政府の行為、つまり捜査その他の行為については何らの規定がございませんが、それは何らかの意図をもつてこれに入れられなかつたのか。入れられなかつたとすれば、どういう意図をもつて特にそれをはずされたか、それを伺いたいと思います。
#83
○關政府委員 お答えいたします。お尋ねは、捜査等の行為についてなぜここに入れなかつたかという御趣旨と拝承しますが、犯罪の捜査につきましては、すでに刑法、刑事訴訟法その他の犯罪捜査の関係法規が制定されておりまして、すべてその規則に従いまして行わるべきものであるわけであります。すでにそういう完全な立法がなされているのでありますから、従いまして第二條のごとき規定の中に、特にその基準として掲げる必要がないものと考えまして、あげなかつた次第であります。
#84
○大西(正)委員 冒頭に申し上げましたように、われわれの見解では、こういう第二條がなくても、第二條の趣旨は当然守られなくてはならないものだと思うのです。にもかかわらず、こういうのを入れたはどういうわけであるか。それが前提になつておりますので、他の法令にどういうふうになつておるかは別問題といたしまして、この法全体の中には犯罪捜査も犯罪に関する規定もあるからして、犯罪捜査に関する政府の行動もこれに関連して来るのであります。にもかかわらず、必要でないのを特に第二條に掲げて、そうしてその必要でないことを全部書くならばまだいいけれども、「調査」だけを特に取上げて書いたということは、一体どういうことかということをお尋ねするわけであります。
#85
○關政府委員 お答いたします。第二條の規定は規制及び規制のためにする調査の基準でありまして、私どもといたしましては、この規定は單なる訓示規定ではないと考えておるのであります。規制及び規制のための調査は、すべてこの基準に従つて行わなければならないのでありまして、もしこの基準の必要かつ相当な限度を越えたというようなことになりますと、それは裁判所によつて訴訟をもつて争われる事項だと思うのであります。捜査行為などにつきましては、刑事訴訟法によりまして、あるいは当該裁判所にその訂正を求めることができるとか、各種の十分なる救済規定もすでにございまして、特にかような基準を設くる必要がないほど完備されたものでありますから、この基準は、規制及び規制のための調査だけに限定した次第であります。
#86
○大西(正)委員 今、これは訓示規定ではないとおつしやいましたが、訓示規定でないところのこの第二條に違反した官憲の行為については、それを処罰するというようなことがこの法律の中には全然現われておりません。今のお答えの中に、捜査に関してはいろいろの救済規定があるというようなお答えも含まれておつたと思うのでありますが、それはなるほど刑事訴訟法その他もございましよう。これはこの本法と関連をしてまだ不十分だと思うのでありますが、それは別といたしまして、捜査については、かりに、今申されました刑事訴訟のようなものがあつて、官憲の為行について濫用をしないような一応の保障があるとする。しかるにこの調査については單に第二條というものがあるだけであつて、しかもそれは強行規定だとおつしやるけれども、あやまつて濫用した場合に、その係官が一体どういう処罰を受け、あるいは国家はどういう補償をするのか、そういう点については何らの規定がないじやありませんか、この点について承りたい。
#87
○吉河政府委員 お答え申し上げます。ただいま他の政府委員から御答弁申し上げましたが、第二條は、規制及び規制のための実質的な基準を規定したものでありますが、刑罰の規定ではございません。そこでこれが濫用の場合に対しましては、一般の場合と同様、公務員には懲戒の制度もあり、職権濫用に対する規定もあり、それから国家賠償の規定もございまして、これらの諸制度によりまして十分救済し得るものとり考えております。
#88
○大西(正)委員 それだけで十分に保障し得るということのお考えならば、まことに不十分なお考えといわなければならないと思うのであります。この法案全体を見ますと、国民の権利、しかも憲法の規定している権利を――この第二條にもありますように、思想、信教、集会、結社、表現及び学問の自由並びに勤労者の団体行動をする権利、その他の憲法に規定されている権利、旧憲法ならいざ知らず、新しい憲法に特に重大な権利として規定されているその権利を制限しようというのであります。しかもその制限に触れた場合には、その行動に対していろいろ重大な規制をするとともに、この法案によつて特別な犯罪規定を設けて、一般刑法におけるよりもさらにそれを加重した罪に処しようとしておる。国民に対しては重大な義務を課するにかかわらず、官憲はこの法案によつて特別の義務は何ら負わないということは、片手落ちではございませんでしようか。その点についてこれで十分だとお考えでございますか、それを伺いたいと思います。
#89
○關政府委員 御質問の点は、現在国家の法律制度といたしまして、国民に対して各種の不利益を付する行政処分があるわけであります。たとえば法人の解散であるとか営業免許の取消しであるとか、国民に対し重大なる不利益を付する各種の処分があるわけであります。それらに対しましては、一般的に民事的な問題としましては国家賠償法があるわけであります。また刑事的な問題としましては、刑法百九十三條の一般公務員の職権濫用罪、その百九十四條以下の特別公務員の職権濫用罪、この二種類の刑事的な規定があるわけであります。そのほか国家公務員法上の処罰として懲戒の制度があるわけであります。全体がかような国家全体の法的組織となつておりまして、その中におきましてこの行政処分を行う公安調査官の職務権限などを包括いたしましてさらに新たなる職権濫用罪を制定することは相当でない。やはり既存の今申し上げたような各種の現行制度の線に乗つてその責任を問うのが妥当であると考えまして、特別なるところの職権濫用罪の規定は設けなかつた次第であります。
#90
○大西(正)委員 いくら追究しても、これで十分だとお考えですから、今われわれがいかに言つてもそのお考えをお直しにならないと思う。けれども一方においてこういう国民の権利に重大な制限を與える、また重大な義務を課する法律をつくりながら、他面においては官憲に対してはこれに相当する義務を課して、それに違反をした場合において官憲を処罰する何らの規定を置かないということは、はなはだ片手落ちなことだといわなければならぬと思うのであります。おつしやいました国家賠償法にしても、無過失損害賠償の制度はそれには許されておらない。そういつた面とか、あるいは刑事補償法の問題につきましても、この法文の中にそれを書かれないとしても、そういうものをこれに関連して改正をする、修正をするというお考えでもここで示していただけるならば、あえてこの法律の上にでなくても、われわれはある意味において満足し得るかもわかりません。そういうお考えもないとすればいたし方ないことだと思うのでありますが、そういう点はいかがでしようか。
#91
○關政府委員 先にお答えいたしましたごとく、国家全体の法律制度から考察いたしまして、さような新たなる刑事補償法的なものをここに織り込むとか、あるいは新たなる職権濫用罪を制定することは相当でないと考えておる次第であります。
#92
○大西(正)委員 調査に関して、あるいはまた捜査についてはこれには書いてないけれども、他の法令によつて不当な濫用をやつてはならない、これは当然なことでありますが、一体この法律を運用するにあたりまして、その調査に当ります調査官は法務総裁のもとにあるのでありましようが、捜査官たる警察官、そういつたものは法務総裁または検事の指揮に服するものでありましようか。すなわち法務総裁または検事は、警察官に対してこれを指揮する現在いかなる権限がありましようか、その根拠とともにお示し願いたいと思います。
#93
○關政府委員 公安調査庁は法務府の外局でありまして、外局としての権限は、国家行政組織法によつて定まつておるわけであります。もちろん法務総裁はこの規定の建前上、公安調査庁長官を指揮することができるのであります。公安調査庁の長官は、検察庁の検事の指揮は受けないのであります。
#94
○大西(正)委員 一般の警察官に対する指揮はどうなりますか。
#95
○吉河政府委員 公安調査庁長官並びに公安調査官は、警察官に対して指揮命令する権限を持つておりません。
#96
○大西(正)委員 そういうことではありませんので、この調査につきましては、今おつしやいましたように法務総裁に一応の指揮があるでありましようが、法全体の破壊活動からなる罪に関して捜査するような場合、つまり一応規制の基準から離れて捜査の濫用を防ぐという場合に、その捜査官たる警察官に対しましては、法務総裁並びに検事はどういう指揮権を持つておるか、またその根拠はどうかということです。
#97
○關政府委員 それは純然たる犯罪の捜査になるわけでありまして、すべて刑事訴訟法の規定に従つて律せらるべきものであります。従つて検察官と警察官との関係も刑事訴訟法の規定するところに従つて律せられるのであります。
#98
○大西(正)委員 現在は私よく知らないのですが、昔は警察官職規範のようなものがありましたが、これにかわるべきものは今どうなつておりましようか。
#99
○吉河政府委員 現行の刑事訴訟法によりますと、昔と違いまして、検事は犯罪の捜査につきましては、個々の事件すべてにわたつて警察官を指揮命令する権限を持つておりません。警察官に対しましては一般的な準則を定めましてこれを指示する。捜査は二本建になつておりまして、第一線の警察官がまず自主的に捜査をやる。検事はこれに対してみずから捜査をやる場合におきましては、警察官にその補助を求めることができるのでありますが、それ以外につきましては一般的な指示を與える。この指示につきまして、ただいまお尋ねのような職務規範のようなものがつくられることと思うのでありますが、まだできておりません。
#100
○大西(正)委員 そこで検事並びに法務総裁は警察官に対して一般的な指揮命令権というものはない、こうなりますと、法務総裁がいかに警察官その他に対して、濫用しないように教養するとかなんとか言つておられますけれども、一体法務総裁はそんなことがでぎるのですか。
#101
○關政府委員 ただいま御説明しました警察官に対する一般的な指示というものの中には、事件全般に対する一つの一般的な取扱いの心構えなどを指示することは当然含まれていると思うのであります。また警察官の教養訓練につきましては、総裁が警察に向つて命令することはもとよりできないのでありますが、この事柄の重要性にかんがみまして、警察の当該の方々にさようなことの希望を述べて、そうしてそちらの方に教養訓練に力をいたすようにお願いするというようなことは、国家行政の上から見て、私は可能であると考えるのでありまして、またそれを受けた警察の方におきましても、事柄の重大性にかんがみまして、さような措置をとつていただけるものであろうと、私どもは考えている次第であります。
#102
○大西(正)委員 そこで法的には何も法務総裁、並びに検事は警察官に対して、一般的なそういつた指示とか指揮をする権能はないのでありますから、その警察官の末端による人々が、この法律を濫用するおそれがないということは法務総裁によつて保障することができないじやないですか。
#103
○吉河政府委員 お答えを申し上げます。一般的な指示は、検事から警察官に対して、発つすることができるのでございまして、それはあえて職務規範というような形だけに限るわけではございません。たとえば本法案に規定されているような教唆、扇動というような犯罪事件の処理につきましても、一般的な指示は、検事から警察官にできるわけであります。さような措置は、また法務総裁が検事総長にも勧告できると考えております。
#104
○大西(正)委員 それは拘束力を持つのでありますか、そういう権能があるのでありますか。
#105
○吉河政府委員 現行刑事訴訟法第百九十三條に、「検察官の司法警察職員に対する指示指揮」といたしまして、一、「検察官は、その管轄区域により、司法警察職員に対し、その捜査に関し、必要な一般的指示をすることができる。この場合における一般的指示は、公訴を実行するため必要な犯罪捜査の重要な事項に関する準則を定めるものに限られる。」次に第二項といたしまして、「検察官は、その管轄区域により、司法警察職員に対し、捜査の協力を求めるため必要な一般的指揮をすることができる。」先ほど御説明いたしました通りであります。
#106
○大西(正)委員 一応その点は了解いたしましたが、しかしながら、あとで各條についてお尋ねをいたしますけれども、この法案は冒頭に政府の御答弁がありましたように、予防的措置をしよう、そういう建前のもとに、またそういう構想のもとに立案された法案であり、また第二條に特にこういつた、必要でもないと思われるものを挿入をした、そこに政府当局としても、逆にその反面を考えるならば、濫用されるおそれがあるということを十分に考えられておることと思うのであります。そこでこの濫用の問題につきましては、さらに法務総裁が御出席なられました際に、もつと私はつつ込んでお尋ねをいたしたいと思つておりますので、第二條はこの程度にとどめておきます。
 第三條に移りまして、ここに再び「暴力主義的破壊活動」という言葉が出て参りますが、この「暴力主義的」ということは、たとえば今日資本主義とか社会主義とか、あるいは共産主義とか、そういつた言葉は、学問上においても、また常識上におきましても、一応確定した固まつた概念と観念を持ち得るのでありますけれども、一体「暴力主義」という言葉に、そういつた今申し上げましたいろいろの主義と同じような固まつた観念があるのでありましようか、また政府はどういうふうにお考えになつておるのでありましようか、重ねて伺いたいと思います。
#107
○關政府委員 お答えいたします。ここに「破壊活動」の形容詞的な意味で「暴力主義的」という言葉を使いましたのは、広く「破壊活動」という言葉の中には、あるいはスパイ行為であるとか、あるいは虚偽の風説を流布して経済を撹乱するとか、各種の行動が考えられるわけであります。そのうちで特に暴力を行使して、暴力をてことして事を達成せんとするもの、かようなものを今申し上げましたいろいろな「破壊活動」の中から特徴づける意味におきまして、これを「暴力主義的破壊活動」と呼称した次第であります。しかし「暴力主義的」ということは、別に今御指摘の、資本主義であるとか、あるいは共産主義というような意味の固定したものではありませんが、たとえば暴力行為等処罰二関スル法律ないしは労働組合法第一條第二項の中の「暴力の行使」というような用語例もありまして、かようなふうにこの言葉を用いることが、全体として観念が明確になるというふうに考えまして、かような表現を使つた次第であります。
#108
○大西(正)委員 そこで規制の請求をします際に、一体どういう請求文になるのでしようか。つまり「暴力主義的」ということが、規制の原因たることの一つの構成要件になるのか、また罪の面におきましても、「暴力主義的」ということが、暴力主義的破壊活動からなる犯罪の構成要件であるかどうか、それを伺います。
#109
○關政府委員 規制の請求については、第十九條に書いてあるのであります。「請求は、請求の原因たる事実、第四條第一項又は第六條の処分を請求する、」その他のことは公安審査委員会のルールで請求の記載事項を定めたいと思うのでありますが、そこで「請求の原因たる事実」とは何かということになります。第四條の団体活動の制限規定でありますが、第四條の暴力主義的破壊活動を行つた団体、従いまして第三條第一項に掲げてあるような暴力主義的破壊活動の内容を、ここに記載し、さらに第四條の條件に該当するような、そういうおそれある活動の内容を一応ここに記載するというようなことに相なると思うのでありまして、「暴力主義的破壊活動」という用語は、必ずしも必要ではないと考えるのであります。
#110
○大西(正)委員 そういたしますと、一体「暴力主義的」という言葉がこの法文の中で必要なのでしようか。
#111
○關政府委員 お答えいたします。この全体の法律の構成におきまして、第三條の第一項のこの行為をどういう表現で表わすかという点は、何か一括して表現を一つにした方がよろしくはないかということは、立法技術上ぜひともさようにいたすことが得策であるわけであります。この一項にいろいろ行為があげてありますが、それを一括してある一つの表現を使いまして、そうしてそれを各種のところで利用するということは、立法上ぜひともかようにいたさなければならないのであります。しからばその一括した表現をいかなる言葉をもつて表わすかという問題でありますが、私は今まで説明いたしたごとく、第一項の各種の行為から見まして、「暴力主義的破壊活動」という表現は、内容を適当に表現している言葉であると思つておるわけであります。
#112
○大西(正)委員 私はここに一つの混乱がありはしないかと思うのであります。この法文の全体に必要な言葉としては、今の構成要件その他に当てはめるという意味からいえば、何も「暴力主義的」などということを掲げなくても、破壊活動ということだけで十分ではないかと思うのであります。にもかかわらず、「暴力主義的」といつた、きわめてあいまいな、熟さない、しかもその奥に漠然とした何ものかを感ずるような、こんな言葉を持つて来たところに、政府の腹の中にある一種の想定があるのではないか、もしありとすれば、そういうものをもつと明確に出したならば、この法案が目的とするところがむしろ明確になつて、そうしてある意味においては、いらない不安を国民に與えないということがあり得ると思うのであります。マツカラン法によりますと、いろいろとそれの取締らんとする対象について、これをその第二條に明記をして、そうしてそういつた団体がいかに危険であるかということを証明をしておる。そういう手続をしないでこの法律を出して、しかも「暴力主義的」といつた、何か漠然としたものを感じさせるということが、はたして妥当であるかどうか。暴力主義を追究するならば、マツカラン法のごとく明快でありたいというのが、われわれの感じであります。この点については何かお考えがありましようか、なければけつこうであります。
#113
○吉河政府委員 お答え申し上げます。ただいま申し上げました通り、「暴力主義的破壊活動」という言葉は、立法技術上設定した総括概念でありまして、その内容は第三條に明確に規定いたしております。これ以外のものではございません。従つてこの概念の裏には底意はないのであります。
#114
○大西(正)委員 一応その点は打切りまして、第三條の個々の点に入りますが、第一項の一号のイによりますと、これは罰則の第三十七條以下と関連をいたしますが、刑法第七十七條その他に規定しておる行為をなすこと、こういうふうになつておるのであります。そうしてロに「この号イに規定する行為の教唆若しくはせん動をなし、」かようになつておるのであります。これも罰則に関する第三十七條以下に同じような用語になつておりますので、関連をいたしますが、前会たしか他の委員からお尋ねがありました際に、たとえば内乱に関しては、附和随行に関する扇動というものは、政府は考えないのだという趣旨の御答弁があつたと思うのであります。しかしこの法文の中からそう限定したものが、帰納されるかどうかということがきわめて疑問だと思うのでありますが、何ゆえにそうなるか、それをお伺いしたいと思います。
#115
○吉河政府委員 お答え申し上げます。教唆といい、扇動と申しますが、これは特定の犯罪構成要件の実行を教唆し、扇動するという建前になつておることは、従来刑法上の既成概念として申し上げるまでもないことでございます。騒擾、内乱等におきまして、いろいろ処罰の要件としまして、実際に騒擾事件、内乱事件が起きた場合に、それに参加する参加者の行為の態様によつて処断を受けておりますが、構成要件としては、多衆が集まつて暴行脅迫をなすということが、騒擾罪の構成要件になつております。内乱罪につきましても、朝憲紊乱の目的をもつて多衆が暴行脅迫をする、暴動を起すということが、構成要件になつております。この構成要件を教唆し、構成要件該当の実行行為を教唆し、扇動するということが、扇動、教唆に当るものと考えておるわけであります。
#116
○大西(正)委員 政府の御見解は十分にわかりました。そこでロに規定しております「行為の教唆若しくはせん動をなし、」こうなつておりますが、この口に規定しておる行為の教唆または扇動というのと、それから第六條の第一項の第二号にありますところの「人を、教唆し、若しくはせん動して、これを行わせた団体」となつておりますが、この用語の相違を御説明願いたいと思います。
#117
○關政府委員 お答えいたします。第三條第一項の一号のロと第二号のヌにおける教唆、扇動は、それ自体独立罪として規定いたしまして、相手方がこれによつて犯罪を犯すということを要件といたさないのであります。第六條におきましても、この教唆、扇動は、字の意味におきましては同様でありますが、特に二号にかような書きわけをいたしましたのは、団体の解散ということは、当該団体にとりましてきわめて重要なる問題でありますから、破壊活動の程度によつて場合をわけて考えた方が、適切妥当に事態を処理するものである、かように考えまして、結果が起つた場合と起らない場合とを区別して考えて、結果が起つた場合において、二号に取上げて、解散の指定の一つの條件となす、かようなふうに解釈しておる次第であります。
#118
○大西(正)委員 そうしますと、ロの場合は、結果が発生をしなかつた場合、結果が発生をしなくても、教唆もしくは扇動自体ですでにその対象となるということであり、それから第六條の二号の方は、結果の発生を伴つた場合である、こういうふうに承つてよいわけでありますか。――そこで少し飛びますけれども、結果を伴うというのは、未遂の場合も含むのか、既遂にならなければいけないのか、この点もお伺いしておきます。
#119
○關政府委員 お答えいたします。この「行わせた」というこの言葉におきましては、第三條第一項に掲げる各種の暴力主義的破壊活動を行わせたということに相なるわけでありまして、各條文の関係において考えなければならない問題だろうと思うのであります。たとえて言いますならば、予備または陰謀というような一つの構成要件の事実を考えてみますと、それだけで「行わせた」ことに相なるわけであります。従いまして、未遂的な行為も――もしその前段として予備に該当するような行為がありますならば、未遂の段階におきましても、予備においてキヤツチするというようなことに、解釈がなるかと考うるのであります。
#120
○大西(正)委員 結局未遂も含みますか。
#121
○關政府委員 お尋ねの趣旨を誤解しておりましたから、あらためてお答えいたします。第六條の二号にはイからリまで掲げてあるわけでありまして、このイからリまでの行為は、すべて既遂行為として規定されておりますから、未遂は入らないものと考うるのであります。
#122
○大西(正)委員 ですけれども、この既遂を要する第三條というものは、犯罪としてそれを見ておるわけじやないので、犯罪として見るのは罰則の第三十何條ですか、あれ以下のものであつて、この法律の第三條に規定されておるのは、第七十七條という刑法の條文を借りて来て、それに該当する内容、行為、その行為を問題にしておるのだと思うのであります。そこでその行為には未遂概念、既遂概念というものが、犯罪を処罰するか、しないかということとは別問題として、そういう概念があり得ると思うのであります。そこでこの「行わせた」ということは、その実行に着手をして未遂で終つたものも含むのか、既遂にならなければならないのか、それを伺つておるわけであります。そこで既遂でなければ規制の対象となるべき行為とは考えない、こういう御趣旨だと伺つてよいのでありますか。
#123
○關政府委員 この第三條第一項の暴力主義的破壊活動という観念は、これは純然たる行政上の概念でありまして、刑事法的な意味は全然ないのであります。今の第六條の二号でありますが、これは団体の活動として「第三條第一項第二号イからリまでに掲げる暴力主義的破壊活動を行い、」この行いはやはりここに掲げるこれだけの行為を行つたというふうに解釈すべきものであると考えております。「若しくはその実行に着手してこれを遂げず、」と、「遂げず」というふうに使つてあるわけであります。さらにその次に「これを行わせた団体」というふうになつておりまして、その「行わせた」ということの中には未遂は入らないものと考えるわけであります。
#124
○大西(正)委員 それでわかりました。
 そこでイに返ります。またイの範囲を多少逸脱するかもしれないのでありますが、この際多少伺つておきたいと思います。それは最近盛んに間接侵略ということが言われているわけであります。つまりある国がみずからは武力その他を使わないで、他の国にいる国内分子に対してそういうことをさせて、そして国内分子に武器を使わせて、間接的に他の国を侵略する。しかしそれは武力による侵略の一種であるというふうに考えられる。そういう場合に刑法に規定する第三章の外患に関する罪というのは、われわれの法律常識をもつてすれば、そういう間接侵略というものはこの外患の罪に該当するとは一応考えられないのであります。しかしそういつた外国と通謀したという事実が明白であつて、その外国との通謀において外国の手先として国内分子が武力によつてその国を侵略しようとした場合には、この外患に関する罪に該当し得る余地があるのかないのか。これは本法律案から多少逸脱するかわかりませんが、この際お伺いしておきたいと思います。
#125
○吉河政府委員 間接侵略という言葉は、法律上の、ことに刑法上の用語でもございませんし、また私の所管事項でもございませんので、十分まだ研究しておりませんが、ただいまお尋ねのような刑法第八十一條でございますか、外国に通謀して日本に対し武力を行使するに至らしめた者、これは日本人の立場から大体書いておるような規定でございますが、これは侵略者の立場から見るとすると、この條文に含まれるような場合もあるのではないかと考えております。
#126
○大西(正)委員 あるのではないかというのは……。
#127
○吉河政府委員 いずれさらに研究しまして……。
#128
○大西(正)委員 それじや十分研究をお願いしておきます。
 それから本案に入りまして、ロでありますが、「行為の教唆若しくはせん動」、これは明らかに教唆並びに扇動を独立のものとして考えておるのでございますから、その結果が発生をしない前に、教唆自体として、あるいは扇動自体としてそれは規制の上の調査の対象になり得るわけであります。そこで一体その教唆並びに扇動がイに規定しておる行為の教唆であり、扇動であるということはいかなる証拠によつて御認定になるか。また捜査を発動するについては、どういう資料に基いて捜査並びに調査の発動をされるのであるか、それをひとつ具体的に伺いたいと思います。
#129
○吉河政府委員 お答え申し上げます。教唆と申し、扇動といい、御承知のように、その内容は、すでに判例等によつても明確に規定されておるところであります。具体的な場合におきまして、一つの文書等が公衆に散布されて、その文書の内容自体に照して、それが内乱の扇動になるというような疑いを持つ場合におきましては、これを捜査しまたは調査することになると考えるのであります。
#130
○大西(正)委員 疑いを持つというのが、どういう程度の資料、証拠があれば、疑いを持てるのでありますか。
#131
○吉河政府委員 お答え申し上げます。教唆と申し、扇動と申しましても、何か一口言つたことが、ただちに教唆とか扇動とかいうようなものにかかるのではないのでございまして、やはりこれは実行の決意に対する一つの刺激でありまして、実行とは朝憲紊乱の目的を持つて多衆が暴動を起すということが実行でございますので、それだけの内容が明確に看取されなければならないと考えておるわけであります。
#132
○大西(正)委員 それでは、たとえば非常に物騒な連中といいますが、そういう連中が集まつておるところへ行つて、その物騒な連中に対して、その集会者ではないのでありますが、それらの集会しておる者に対して、他の集会者でない者が、たとえば吉田内閣をぶつつぶせというふうなアジ演説をやつたとしますと、それは一体そういうおそれのあるものとみなされるのでありましようか。
#133
○吉河政府委員 お答え申し上げます。吉田内閣を打倒せよというがごとき言動が、内乱の朝憲紊乱に該当しないことは、御承知の通りだと考えるのでありますが、かような捜査の端緒の問題につきましても、厳重に職員を訓練して、あやまちのないようにいたしたいと考えております。
#134
○大西(正)委員 先般公聴会におきましての公述人の陳述の中にも、思想というものは、大体扇動的なものだ、それは不可欠のものだ、こういうふうなことを述べられた方も、一、二にとどまらなかつたのでありますが――飛び飛びになりますけれども、二号との関連におきまして、たとえば新聞が政府の施策について、この間のメーデーのときの暴動に関達して、かりに、ああいうような場合に、もし政府の施策がよろしきを得ないならば、ああいつた暴動が今後も引続き起らないとは限らない。あるいはまたロシヤ革命のようなものが、政府の施策がよろしきを得ないならば、日本においても起らないとは限らないというふうなことを、社説に書いたとしますと、それは一体どういうふうな取扱いになるでありましようか。
#135
○吉河政府委員 お答え申し上げます。さような設例のごとき事案は、單に意見を述べるものでありまして、本法にいう教唆にも扇動にも該当しないものと考えております。普通社会活動の部面におきまして、その活動の有力な方法として、宣伝、扇動というような方法が行われる、これが非常に強力な方法として使われている、こういうような扇動と、本法にいう扇動とは、おのずから意味が違うのでございまして、本法におきましては、あくまで特定の犯罪の実行の決意を助長し、あるいは決意を抱かしめるような刺激を與えるものでなければなりません。さように考えております。
#136
○佐瀬委員長 その刺激を與える場合に、なお執筆者なりの意図、目的、主観といつたようなものは、どういう影響を與えるのか、その点についての政府の見解もこの際承つておきたいと思います。
#137
○吉河政府委員 お答え申し上げます。もとより教唆といい、扇動といい、これは人間の行為でありますから、そういう意図をもつて、実際にこれを受ける側にそういう犯罪を実行する決意を抱かしめるという目的をもつて、さような行為をするという場合に扇動罪が成立するものと考えております。
#138
○大西(正)委員 では今のようなことを書いた新聞をかりに持つておつて、そうしてあのメーデーのような、群衆がたくさん興奮状態に陥つているときに、その新聞を示して、やつたらどうなりましようか。
#139
○吉河政府委員 お答え申し上げます。この通りやれというようなことが加わつてない、ただ意見を述べるというような場合には、扇動には当らないものと解釈しております。
#140
○大西(正)委員 この設例が十二分でないかもわかりませんが、吉河局長はそう仰せられておりますけれども、しかしながらその新聞をもつて末端の警察官なり取締官が、これが破壊活動の扇動だとして取締りを開始し得る危険がないということは、全然言い切れないのじやないかと思うのであります。先般公述人がいろいろ言われておりました二、三の事例をここで繰返すまでもないことでありますが、現在までの実績においては、そういつたものも、警察官が、それが危険な行為であるという認定のもとに、捜査を開始した事例は多々あるのでありまして、そういう危険がないということは吉河局長の善意は信ずるといたしましても、しかしながら取締官が、熱心な余りかどうか知りませんが、そういうことになり得ることは、しばしば現実にあるのでありますから、われわれはそこに非常な危険性を認めなければならない、認めざるを得ないのであります。でありますから政府当局において教唆並びに扇動、そういつた危険性を含む扇動行為をこの法案に規定されたについては、それ相当の理由はもちろんございましようが、その半面に、そういつた危険性の存在しておるということについては、全然そんな危険がないとお考えであるかどうかを、一応承つておきます。
#141
○吉河政府委員 お答え申し上げます。終戦以来の立法例でも御承知のことと思いますが、「そそのかし」。「あおり」あるいは「扇動」というような独立罪の規定が多々あるのでございまして、特にまたこの法案におきましても教唆、扇動の独立罪を規定しております。この運用につきましては、先ほどお話の通り、一般的指示を與えて十分に周知徹底をはかることはもとより必要であり、また警察官の教養といたしましても、十分にこういう点について深い理解と教養を持たせることが必要であると考えております。
#142
○大西(正)委員 吉河局長の善意を私はあえて疑うわけではありませんが、しかしながら昨年の末に高知県で知事選挙か行われた。そのときに自由党の候補者と、そうでない候補者とが争いまして、自由党の運動員は中央からも来られたのでありますが、自由党でない候補者に対してこれを赤だということを全県下にわたつて演説してまわつたことは、これはもう周知の事実であります。そういうふうに、自由党を別に非難するわけではございませんが、今の政府、與党に属しないところの候補者というものは、全部赤だというふうなことを現に主張しておる。また吉田総理大臣も、三月十七日の第六回の自由党の臨時大会でありますか、反対党は建設的意見を出さず、いたずらにわが党の政府を批判し、民心を惑わせているが、はつきりいえばこれは共産主義の手に乗つているか、またはその手先である。こういうことを言うておられる。真意に出たものかどうか知りませんが、しかし政党は反対党を批判するのが当然の任務である。それをしない反対党なんというものはあり得ない。それが最も大切な任務であるが、批判をすることそれ自体が共産党の手先である、そしてその手先にあらずんば、共産党の手に乗つておるのだ、こういうふうな頭を持つて政府がこの法案を運用する際においては、私は恐るべき結果を招来すると思うのであります。またそういうおそれがないと私は言えないのでありまして、現実に選挙戦においてそういうことがあり、そうしてまた当の総裁がそういう考えであられるということになると、濫用されるおそれなしということは、なかなかわれわれは納得しがたいのでありまして、特にこの点については吉河局長の善意と御見解にもかかわらず、われわれはわれわれのおそれを氷解するわけには行かないということを申し上げておきたいと思うのであります。それから同じことでありますが、そのあとにありますところの文書、図画の印刷頒布、公然掲示あるいはまた所持といつたことについても、そういつたおそれが、私は多分にあると思うのであります。そこで一応お伺いしておきたいことは、文章の点に関しまして、この法案の以前には、「この号イに規定守る行為の実現に資するため、」となつでおつたやに承知しておりますが、それを「実現を容易ならしめるため、」、こういうふうに改められたのは、どういう御意図であるか、その点をお伺いします。
#143
○吉河政府委員 お答えいたします。法案の中間段階におきまして使われたり用語についての御質問でございますが、「資する」という言葉は一般になかなか理解しがたい言葉であつて、これを役立てると解釈いたしますが、非常に理解しがたい言葉でありますので、内容を明確にするために、わかりやすくするために、「容易ならしめるため、」という言葉にかえました。これはこういう行為をする人たちが持たなければならない目的を規定したものでございます。こういう目的のために行われた行為のみを取上げるという書き方になつております。
#144
○佐瀬委員長 「実現を容易ならしめるため、」というふうに限定された結果、ここに含まれる行為は、刑法でいうならば、いわゆる幇助の観念に含まれるものと思うのでありますが、これに対する政府の御見解はいかがでしようか。
#145
○吉河政府委員 お答え申し上げます。刑法における幇助の観念は、主観的要件と客観的な要件と二つながら合わさつて実現される行為であります。ここで規定いたしております行為の実現を容易ならしめるため、文書、図画を印刷したり頒布したりする行為について要求されるものは、主観的要件でございます。
#146
○佐瀬委員長 ただいまの御答弁によると、文書活動における主観的要件だという御説明のようでありますが、そういう趣旨でありますか。
#147
○吉河政府委員 さようでございます。
#148
○大西(正)委員 刑法においては客観的並びに主観的要件であるが、この第三條においては、單に主観的要件だ、こうおつしやるのですか。
#149
○吉河政府委員 ただいま委員長から幇助のお話が出まして、幇助とは特定の犯罪実行行為を容易ならしめる意図を持つて、容易ならしめるような実際の手助けをすることであると考えておりますので、ここではこういう文書、図画を印刷頒布する行為者が、行為の実現を容易ならしめる意図を持つていなければならない、目的を持つていなければならないというので、しぼりがかかつておるわけでございまして、そのしぼりは主観的要件としてしぼりがかかつておるわけでございます。
#150
○大西(正)委員 そうしますと、客観的には、その文書図画のそういうおそれが人によつてあるいはないと見得る場合でも、主観的要件があればこのロに該当する、一応そうなりますか。
#151
○吉河政府委員 お答え申し上げます。客観的な要件は、実現の正当性もしくは必要性を主張した文書でなければなりません。これ以外の文書であつてはなりません。そういう文書を印刷したり、頒布すること、その行為自体で罰則に触れるのではありません。その行為者がその半面主観的に行為の実現を容易ならしめる目的を持つていなければならないのであります。
#152
○大西(正)委員 客観的要件は、実現の正当性もしくは必要性を主張した文書、この中に含まれておるとおつしやいますが、これは実り現の正当性もしくは必要性を主張したというだけで――その文書を作成または頒布しておる者が、その文書に書かれておることの実現の正当性もしくは必要性を主張したにすぎないのであつて、実現されるかされないか、あるいはあす、あるいは緊急にその場で実現されるかされないかの客観性とは、別個のものであると思うのでありますが、どうでしようか。
#153
○關政府委員 お答えいたします。このロの「又は」以下のことでありますが、これは二段にしぼつてあるわけであります。その第一は「この号イに規定する行為の実現を容易ならしめるため、」こういうことがその行為者の意図になければならないわけであります。それで、そういう「容易ならしめるため、」という考え方をもちまして、「その実現の正当性若しくは必要性を主張した文書」――これはその文書自体を持つている人が書くということは要件でない、何人が書いたものでありましても、その内容自体におきまして、内乱の実現の正当性もしくは必要性を主張した文書、そういうものを印刷するとか、あるいはこれを頒布するとか、あるいはこれを公然掲示するとか、かような行為を規定したものであります。要するに、その行為者が、内乱の行為の実現を容易ならしめるため、そういう考えのもとに内乱の正当性もしくは必要性を主張したその文書を頒布するとかあるいは公然掲示する、かような行為がこのロの規定であるのであります。
#154
○佐瀬委員長 先般の公聴会において、委員長の質問に対し團藤教授は、この「又は」以下の文書活動は扇動の範疇に属するという意見を発表されております。この「せん動」と「その」以下の文書活動はさらにこれを合せて刑法にいわゆる幇助に該当するものではないかという解釈もあろうと思うのでありますが、その点に対する政府の御見解はいかがであるか、この際承つておきたいと思います。つ
#155
○吉河政府委員 お答えいたします。刑法に規定してあります幇助は、実行行為を幇助する行為でありまして、実行行為に接着して、その実行行為を幇助するという行為でございます。ここに規定しております行為の実現を容易ならしめる目的をもつて、実現の正当性もしくは必要性を主張した文書を印刷したり頒布したりする行為は、直接実行行為それ自体を幇助する行為ではないと考えております。
#156
○佐瀬委員長 政府の意見は一応それとして了承いたしておきます。
#157
○大西(正)委員 そういたしますと、ますますこの「又は」以下のこの規定はきわめて広汎なものになるのでありまして、これが実際の面におきましては、非常な濫用の危険を招来するものと、言わざらんと欲しても言わざるを得ないのでありまして、私はまことにこのロについては、さらに十分に考えさしていただかなければならない。これをこのままうのみにすることは、とうていできない問題だと思うのであります。
 時間が大分おそくなりましたが、第二の……。
#158
○關政府委員 なおこのロの問題について重ねて御説明をいたしたいと思うのでありますが、「実現の正当性若しくば必要性」ということは、扇動とは異なつたものであると私どもは考えておるわけであります。それは扇動はあおることでありまして、「その実現の正当性若しくは必要性」を主張するということは、あおることとは違つた行為であると思うのであります。しこうして今日現下の事態におきまして、たとえて申しますならば、このあおる行為の内容たるや、内乱というきわめて重大なる犯罪であるわけであります。かようなことの実現の正当性もしくは必要性を主張するということ、このことはきわめて危険なる行為であると私どもは考えておるわけであります。現下の事態にかんがみまして、かような行為はやはり公共の安全を確保する意味におきまして、これに必要な規制を加え、あるいはこれに犯罪として新たに処罰規定をここに設けるということは、公共の安全を確保する上に、まことに万やむを得ざるの措置であると考えておるわけであります。
#159
○大西(正)委員 御説明がありましたけれども、一向納得ができないのでありまして、われわれはむしろこれが濫用されて、真に国を憂え、社会を憂えて、その憂えるの余り出て来たその表現の自由に対して非常な制限を加え、しかもそれらの人に対して捜査官ないし調査官がある何らかの成心と主観的な構想をもつて、その構想のもとに、それらの人々の行為に対して取締りあるいは規制を行わんとすることが行われ得る面が、多分にあるということをおそれざるを得ないのであります。でありますから、その点を私は申し上げておきまして、次に移りたいと思うのであります。
#160
○佐瀬委員長 なお委員長として、その点について申し上げておきたいのでありますが、教唆及び扇動の独立性を認めるかどうかは別問題といたしまして、かつて戦時刑事特別法におきまして、国政変乱罪という規定を設け、その中で扇動と幇助を並べて規定しております。この戦時刑事特別法と、ここに破壊活動防止法にいう扇動及び幇助とは概念が違うかどうか、これもかなり重要な問題であると思いますので、政府で十分御検討願つた上、適当な機会に研究の結果、御見解を御発表していただきたいと思います。次に移ります。大西委員。
#161
○大西(正)委員 第三條の二号の冒頭に関しまして、まだお尋ねしたいことがありますが、これはまた日を改めていたしたいと思います。ただ二号の中のリに関しまして、「凶器又は毒劇物を携え、多衆共同して」という規定がございます。凶器または毒劇物を携えておる者と、携えておらない者も場合によつてはあり得るでありましようが、それらの関係につきまして――第三條は、団体としての行動を規定しておるのでありますから、さほど問題にならないかもしれません、しかしながな罰則としての第三十九條の第三号においては、携えておる者と、携えない者とについて一体どういうことになるのか、これは非常に問題になるだろうと思うのでありますが、その点はいかがでしようか。
#162
○關政府委員 お答えいたします、第三條第一項第二号のリは「凶器又は毒劇物を携え、多衆共同してなす刑法第九十五條に規定する行為」かように相なつておるのであります。そうしまして、今度第三十九條におきましては、「凶器又は毒劇物を携え、多衆共同してなす刑法第九十五條の罪」の予備、この罪の陰謀、この罪の教唆、扇動ということに相なるのであります。従いまして、たとえば扇動行為について見ますならば、凶器または毒劇物を携えて多衆共同して刑法第九十五條の罪を犯し――表現は熟しておりませんが、要するにそういうことを扇動し、または教唆するということに相なるわけであります。また予備と陰謀は、要するにここに規定するような凶器または毒劇物を携えて、多衆共同してなすこの罪の予備、陰謀ということに相なるのであります。従いまして、お尋ねのような事例におきましても、要するにその予備または陰謀というようなことは、やはりこういう凶器または毒劇物を携え、多衆共同してなす、こういうような要件それ自体の予備または陰謀というふうに考えているわけでございます。
#163
○大西(正)委員 その予備、陰謀までお尋ねしておるのではないのでありまして、この要件は凶器または毒劇物を携えておるということ、それから多衆共同しておるということ、これが刑法第九十五條に対する特別要件であると思うのでありますが、その際に毒劇物や凶器を携えていない者も、一体この第三十九條の刑罰に触れるのでありますか、どうなりますか。
#164
○吉河政府委員 お答え申し上げます。罰則の関係になりますが、実際に凶器または毒劇物を携えたり、多衆共同して公務執行妨害をなした者については、本法案におきましては、公務執行妨害罪の規定をもつて処理する。これは刑法の規定に譲りまして、こういう行為を予備、陰謀、教唆、扇動する点につきまして、補充的に罰則を規定しておるのであります。
#165
○大西(正)委員 その点はわかりました。そうすると、いわゆる本犯については別にこういう要件はいらないということになるのですね。次にこういう場合はどうでしようか。第三條の二号のリでありますが、団体の活動として多衆共同して公務執行妨害をしたのであるが、たまたまそこに団体外の者が凶器、毒劇物を携えて、それに参加して公務執行妨害をやつたというふうな場合に、その団体は規制されることになるのでしようか。
#166
○關政府委員 お答えいたします。団体が、団体といたしまして、たとえば警察に対して公務執行妨害をした、そのときに団体自体としては凶器も毒劇物も何にも持つていなかつた。ところがたまたまそれにほかの者が加わつた。その加わつた者が凶器または毒劇物を携えたというような場合は、全然このリに該当する行為とは考えないのであります。
#167
○大西(正)委員 それはどういう根拠で……。
#168
○關政府委員 リに該当いたしませんから、団体としてこのりの破壊活動を行つたものであるということにはならないと考えるのであります。
#169
○大西(正)委員 その結論はどういう根拠からそれに該当しないということになるのですか。
#170
○關政府委員 それは凶器または毒劇物を携えるということが、団体の意思決定――団体で持つて行こうというような、そういうことが全然行われておりませんから、団体活動というふうにはそれは認められないからであります。
#171
○大西(正)委員 それはそう一応承つておきます。それから二項でありますが、これは他の委員からもしばしばお尋ねがあつたようでございますが、団体の活動としては、どうしてもそこに団体としての意思決定がなければならぬと思いますが、その意思決定の方法、いかなる場合に意思決定があつたとするか、またそのあつたとする証拠はどういうふうに認められるか、その点を伺つておきたいと思います。
#172
○吉河政府委員 お答え申し上げます。御承知の通り、団体は千差万別、多種多様でございます。きわめて高度な機関構成を持つ団体もございます。またきわめて單純な団体もあると思うのであります。しかしながら、少くとも団体と認められるためには、団体として、これを構成する個人の意思とは離れて団体の意思を決定して、そうして団体活動を打出して来るというものでなければならない。通常機関構成を持つているような団体におきましては、これが意思は機関によつて決定されるという場合が一般であります。しかしながら、ごく單純な団体におきまして、機関構成も持たないような団体におきましては、全員の決議によるとか、いろいろな方法がとられるのであります。少くともその意思決定は、これを構成する構成員の意思に基いてその意思決定がなされなければならない、そうして構成員の意思に基いて意思決定がなされて、団体のためにする活動としてかくかくの行為を行おうという意思決定がなされた場合におきましては、これは団体の意思決定ありと考える次第であります。さてこれをいかなる証拠によつて認定するか。いろいろな証拠がこれに援用されると考えるのでありますが、意思決定機関の議事録とか、あるいは意思決定機関の決議書とか、いろいろなものがそこに証拠として考えられると思うのであります。
#173
○大西(正)委員 それから但書であります。言葉の意味をお尋ねするわけでありますが、「但し、ある団体の支部、分会その他の下部組織も、この要件に該当する場合には、これに対して、この法律による規制を行うことができる」というのは、支部とか下部組織が、この法の適用上、本部とか、そういつたものとは別個に、独立して規制の対象たる団体となる、こういう意味なのですか。
#174
○吉河政府委員 御質問の通りであります。その支部その他の構成單位団体が、独自の單位団体として意思決定をしなければなりません。
#175
○佐瀬委員長 この団体は団体等規正令にいう団体といかような違いがあるか、この点もできれば明らかにしておきたいと思いますが、政府の御所見を承つておきたい。
#176
○關政府委員 お答えいたします。規正令におきましては、団体として特にかような明確な定義はあげておりませんが、その解釈の運用上におきましては、大体この法に書いてあると同じようなことに理解していたのであります。本法案におきましては破壊的団体規制というこの字句の対象を明確化する意味におきまして、かような項目で設けた次第でございます。
#177
○大西(正)委員 それでは第四條に移ります。この第四條を分解しますと、一つの要件は団体活動としてその団体が過去において暴力的破壊活動を行つたということと、それから第二にはその同じ団体が将来継続または反復して暴力破壊活動を行うおそれがある、こういう二つにわけられると思います。その過去の破壊活動というものは、別にそれに関連する個人の行動が刑罰に触れて、その行為が裁判所において罰せられ、確定をしたというふうな事実があつてもなくてもいいのか。それからまたこの法律施行前の行為に関しても、そういう事実を行政庁が取上げ得るのかどうか、この点をお尋ねいたします。
#178
○關政府委員 お答えいたします。第一点につきましては、その行物が裁判所におきまして犯罪として処断されたかどうかということとは関係なく、純粹にこの法律におきまして破壊活動があつたかなかつたかという判断に基いていたすことに相なるのであります。
 第二点につきましては、この法律施行前の破壊活動についても、この法案に関する限りは、なしたという條件の一つになり得るものと考えているわけであります。
#179
○大西(正)委員 次にそれでは将来のおそれある行為といいますが、そのおそれある行為と、それから過去の行為とは同一種類であつてもなくてもいいわけでしようか。
#180
○關政府委員 お答えいたします。この団体の活動としてその後に行われる暴力主義的破壊活動の将来に起る可能性あらば、暴力主義的破壊活動のその活動の内容につきましては、第三條第一項の各号のいずれでありましてもよろしいものであると、かように考えた次第であります。
#181
○大西(正)委員 そこで次に伺いますのは、継続または反復ということは、どういうことを意味するのでしようか。
#182
○關政府委員 お答えいたします。継続または反復という言葉は、商法の第五十八條の会社の強制解散の場合に使われている言葉でありまして、ここにこの用語例をとつて使つた次第であります。その意味につきましては、継続してとは同一の意思を持続してというふうに解釈できるものと考えるのであります。反復してとは意思の継続は必要はありませんが、まだ繰返してという意味のものであるとかように解釈しているのであります。
#183
○大西(正)委員 継続は意思の持続を必要とし、反復は意思の持続は必要でない、こういう御説明でございますが、そこでその意思の継続ということは、一体何によつて判定するのでしようか。
#184
○關政府委員 お答えいたします。継続または反復ということも規制の條件でありまして、これももちろんすべて証拠によつて認定する問題であります。
#185
○大西(正)委員 もちろん証拠によらないで認定されたらたいへんであります。その判断は何によつて意思の継続ありというのでありましようか。
#186
○吉河政府委員 団体が主観的に一定期間連続して行う意思ありと認められるときに、継続してと考えられるのであります。また反復は、客観的に一定の時間的間隔を置いて繰返されるという事実、これを証拠によつて認定するわけであります。
#187
○佐瀬委員長 刑法のいわゆるかつての連続犯に関する認定の仕方と同じような結果になるかどうか。これに対してはしばしば判例があるようでありますが、判例に基いた基準がここでも妥当するかどうか、これについては政府の所見はいかがでありますか。
#188
○關政府委員 お答えいたします。刑法のかつての連続犯の観念が、この継続ということとどういうふうに関係して理解するかという点であります。その判例のとつた考え方も、継続ということの認定の一つの資料になるものと考えているわけであります。
#189
○大西(正)委員 今委員長が指摘されましたように、連続犯の問題でありますが、これは裁判所の判例によつても、いろいろにかわつておる。その状況によつて裁判所においても、常にこの問題については、具体的事実に関してそれぞれ愼重に考慮されて来ておりますが、この団体が継続または反復してそういうことをなすおそれがあるなどということを、一体びようたる公安審査委員会のごときものが、そんなことを簡單に認定するようなことができるでしようか。
#190
○吉河政府委員 これに要する証拠の収集につきましては、公安調査庁において証拠を集めまして、委員会の認定に供するわけであります。継続の言葉につきまして、いろいろ御質問がありました。特定の団体がきわめて破壊的な運動方針を提示しまして、その方針のもとにいろいろな破壊的な行為が打出されて来るような場合におきましては、主観的條件ありと認められる場合もあるかと考えております。
#191
○大西(正)委員 一向抽象的な御答弁でありまして、観念的にはそういう場合があり得ることは当然でありますが、具体的にはどうなるかということが問題であります。問題に対しては別に御回答がなく、問題に対して問題を提出されたような形でありまして、どうもわれわれそのまま理解しがたいのであります。それならば――これは別に食い下るわけではありませんが、判例でも、前の破壊活動と今度なされるかもわからないというのが、一体一年たつたらどうなるだろう、あるいは半月たつたらどうなるだろう、二年たつたらどうなるだろうという問題も起つております。そういう問題が一体簡單に片づけられますか。
#192
○關政府委員 お答えいたします。すでにこれは御承知の点かと存じますが、先ほどもちよつと申し上げたのでありますが、商法第五十八條には、会社の強制解散の一つの原因といたしまして、「刑罰法令二違反スル行為ヲ継続文ハ反覆シタ」というように書いてあるのであります。そこで、すべてかような継続または反復というのは、かつての連続犯の判例にも示す通りに、健全な社会通念によつて、合理的に、何人においても、これは継続したものである、これは反復したものであると認められる、その合理的な健全な社会通念の基準によつて、認定さるべき問題であろうと私は考えるわけであります。
#193
○大西(正)委員 しかし、おつしやる商法の解散は、これは裁判所がやるのでありまして、行政機関がやるのじやないのです。そこで先ほど申し上げました問題の回答にならぬと思うのであります。同時に例を私も考えて来ておりますが、あまり時間がたちますので、このことはいつかやりたいと思います。そこで一体そういう「継続文は反覆して将来さらに団体の活動として暴力主義的破壊活動を行う明らかなおそれがあると認めるに足りる十分な理由」えらくむずかしい言葉を並べてございますが、そういう理由があるというのは、具体的に、たとえばこういう場合がそれに該当するということをお示し願いたいと思います。
    〔委員長退席、松木委員長代理着席〕
#194
○關政府委員 お答えいたします。「当該団体が継続文は反覆して将来さらに団体の活動として暴力主義的破壊活動を行う明らかなおそれがあると認めるに足りる十分な理由」この点でありますが、この認定につきましては、まず過去においてその団体が暴力主義的破壊活動をなしたという、この一つの事実があるわけであります。それに対しまして、その方針の変更を宣言しないとか、あるいはさらに新たなる方針を打出したとか、または各種の文書において従来に増して同種の活動を計画するとかいうような、その団体の活動としてのさような行為を外に打出して来るであろうと思うのであります。さようなことによりまして、この「明らかなおそれがあると認めるに足りる十分な理由」が証拠によつて認定され得るものと考うるのであります。なお将来のこの可能性の問題につきましては、現行法におきましても、たとえば少年法の、「性格又は環境に照して、将来、罪を犯し、又は刑罰法令に触れる行為をする虞のある少年」であるとか、消防法であるとか、鉱山保安法であるとか、各種の立法例におきまして、すでに将来の可能性につきまして各種の行政処分を科しておるわけでありまして、本法におきましても、今申し上げたような各種の事実を基礎といたしますならば、これらの十分な理由は証拠によつて証明し得べきものであると考えます。
#195
○大西(正)委員 非常に詳細な御説明をいただきましたけれども、具体的な例のお示しがないので、わわれれどうも十分わかりかねますので、具体的な事例をあげて承りたいのですが、かりにこういう場合はどうでしようか。過去において何らかの破壊活動をやつた団体が、今度次の破壊活動に該当することをやろうという意思決定をした、そのこと自体でも十分な理由がありと認められましようか。
#196
○吉河政府委員 御質問のような場合には、反復の問題になるかもしれませんが、継続の問題とはちよつと意味が違うのではないかと思います。
#197
○大西(正)委員 継続、反復でなく、認められる十分な理由があるという、その根拠になるか。たとえば前に破壊活動をやつた団体が、今度また破壊活動に該当する行為をしようという何らかの意思決定をしたが、まだ行動には移つていないという場合にも……。
#198
○吉河政府委員 団体として過去にやつた暴力主義的な破壊活動を正当化し、さらに将来において暴力主義的な破壊活動をやるという決定をいたした事実がありますれば、明らかにその証拠として採用される場合があると考えます。
#199
○大西(正)委員 意思決定まで至らなくても、そういうことを議題として集まろうなんということがわかつた場合はどうなりますか。
#200
○關政府委員 お答えいたします。この「暴力主義的破壊活動を行う明らかなおそれがあると認めるに足りる十分な理由」というのは、すべて合理的な、何人によつてもなるほどと認められる、そういうことであると考うるのであります。従いまして、ただ集まるというような段階において、明らかなおそれがあると認められる十分な理由があるかどうか、一般的に、合理的にそれが承認されるかどうかという点につきましては、私はやや疑いを持つておるわけでありまして、それが会議においてどう決定されるかわからないわけでありまして、まだ私の私見といたしましては、その段階においては十分な理由というふうには言えないのではないかと考えるわけであります。なお個々的な問題につきましては、その他諸般の事情を考覈しなければならないのでありまして、一つの事実だけでここに断定的な御返事をいたすことは、誤つて理解していただくとたいへん恐縮でありますから、差控えたいと思うのであります。
#201
○大西(正)委員 まだ質問は終つておりませんが、また次に質問を続行さしていただくことにして、きようは一応これで終ることにいたします。
#202
○松木委員長代理 本日はこの程度にとどめまして、次会は明九日午前十時より開会いたします。本日はこれにて散会いたします。午後五時十一分散会
ソース: 国立国会図書館
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