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1951/06/03 第13回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第013回国会 法務委員会 第61号
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1951/06/03 第13回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第013回国会 法務委員会 第61号

#1
第013回国会 法務委員会 第61号
昭和二十七年六月三日(火曜日)
    午後二時五十七分開議
 出席委員
   委員長 佐瀬 昌三君
   理事 鍛冶 良作君 理事 山口 好一君
      安部 俊吾君    角田 幸吉君
      北川 定務君    高橋 英吉君
      花村 四郎君    古島 義英君
      松木  弘君    眞鍋  勝君
      大西 正男君    加藤  充君
 出席政府委員
        検     事
        (法制意見第四
        局長)     野木 新一君
 委員外の出席者
        最高裁判所事務
        総長      五鬼上堅磐君
        判     事
        (最高裁判所事
        務総局刑事局
        長)      岸  盛一君
        専  門  員 林  教三君
        専  門  員 小木 貞一君
    ―――――――――――――
五月三十一日
 委員加藤充君辞任につき、その補欠として立花
 敏男君が議長の指名で委員に選任された。
六月三日
 委員立花敏男君辞任につき、その補欠として加
 藤充君が議長の指名で委員に選任された。
    ―――――――――――――
五月三十一日
 戦争犯罪者の減刑等に関する請願(青木正君紹
 介)(第三二六九号)
の審査を本委員会に付託された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した事件
 裁判所侮辱制裁法案(田嶋好文君外四名提出、
 第十回国会衆法第四七号)
    ―――――――――――――
#2
○鍛冶委員長代理 これより会議を開きます。委員長所用のため、私が委員長の職務を行います。
 裁判所侮辱制裁法案を議題といたします。質疑を行います。質疑の通告がありますからこれを許します。山口好一君。
#3
○山口(好)委員 ただいま議題となつております裁判所侮辱制裁法案につきまして、以下数点の質問をいたしたいと思います。
 第一に、本法案の名称でありますが、本法案によりますれば、これを裁判所侮辱制裁法、こう言つております。私考えますのに、アメリカあるいはイギリスなどにおきましては、古くから裁判所侮辱制裁法というような法律がありましてその名前もコンテンプトという名前になつておりますが、これはアメリカやイギリスなどの、多年の慣習と、憲法上の根拠が承りまして、裁判所に対して侮辱的な行動があつた場合には、当然処罰せらるべきものであるというようなことが、国民感情になつております。従いましてこの侮辱制裁法という名称が、それぞれの国民にとつて適当な名称というふうに受入れられておるからで承ります。しかるにわが国においては、今まで裁判所侮辱罪というような慣習もなく、また司法権優越というような憲法上の明文もございません。かえつて裁判所侮辱というと、旧のあの菊の御紋章時代の、天皇の名において裁判をしたころの裁判所の権威を思い出しやすいのであります。
 翻つて、近時裁判所の内外に行われております集団的暴力行為、これが横行しておりますのに対しまして、裁判所の秩序を何とか維持して行かなければいたし方なしというこの信念は、目下わが国朝野の要望であると考えるものであります。従いまして裁判所の秩序を維持する法案、こういうふうになりますれば国民もはなはだ納得が行くと思うのでありますが、私といたしましては、裁判所の秩序を維持する法案あるいは法廷などの秩序維持に関する法律案、こういうふうに改めた方が国民に納得が行くのではないかと思いますが、その点の御所見を伺いたいと思います。
#4
○野木政府委員 ただいまの御発言はわが国の現状から見ますといろいろ傾聴すべき点があると存せられる次第であります。しかしながらただいま議題になつております裁判所侮辱制裁法案なるものは、どうしてこういうような名前のもとに出て来たかということを考えてみますと、新憲法におきましては、旧憲法と違いまして最高裁判所を頂点といたします裁判所は、その権力の根源を国民の中に見出しておるものでありまして、旧憲法の時代のように陛下の官庁であるという観念とは観念的にも非常に違うものでありますし、また旧憲法時代にはなかつたもしくははつきりしてなかつた法律の憲法違反てあるかどうかという点の審査権をも明文をもつて與えられ、非常に高い権限を與えられた。しかもこのような裁判所のあり方は、従来の欧州大陸法的の裁判所のあり方ではなくて、むしろ英米法的裁判所のあり方なり精神を範にとつておるものと存ぜられる次第であります。しこうしてただいま御指摘のように、英米におきましては裁判所侮辱制裁法とでも申しましようか、コンテンプト・オブ・コートの制度がございまして裁判所の威信を保持し、司法の円滑な運用をはかるのに非常に貢献いたしておるわけであります。ただいま申したように、新憲法は英米法流の裁判所の精神を大いに取入れておるというところからいたしまして、この執判所侮辱制裁制度も取入れたらどうかということが新憲法制定当時にもいついろ議論になつたところでありまして、この趣旨がこの法案に出て来ておるのだと存せられる次第であります。もちろん欧米の伝統なり社会の実情というものは、わが国の伝統なり社会の実情とは異なりますので、この法案におきましては裁判所侮辱制裁法というように銘は打つておるものの、欧米における裁判所侮辱制裁法とはその範囲を非常に異にしまして、欧米におけるいわゆる直接侮辱のみを取上げておるもののように思われるのであります。いわゆる間接侮辱と申しましようか、広く裁判所の命令に従わないというような場合とか、その他非常に広汎にわたりますが、そういう点はこの案には取入れられておらないで、裁判所または裁判官の面前における侮辱行為のみを取りげておるのであります。なぜこのような取上げ方をしたかと申しますと、わが国の伝統なり現状が英米と非常に異なつていることとともに、また現実の問題として裁判所あるいは裁判官の面前の侮辱行為を取上げることが一番必要であり、その他はもし必要であれば漸を追うて行くというような態度になつておると思うのであります。しかして直接侮辱と申しましようか、この案に盛られている点は、侮辱行為と申しましてもその実態をしさいに検討してみますと、先ほどの御発言にありますように、裁判所の秩序を維持するという点を中核としておりまして、裁判所の秩序が保たれないということは一番裁判所の威信を失墜せしむるものであるということを重点としているように考えられるのであります。従いましてわが国の現在の実情その他から考えて名を捨て実をとるというような点から考えますれば、あるいは裁判所の秩序を維持するための法律という名前に改めるということも一案だと存ずる次第であります。あるいは多少この案よりも範囲が狭くなり、考え方に多少ずれが来るかもしれませんが、大体そういう名前にしてもねらうところは同じになるかとも存ぜられますので、その点は当委員会の愼重審議の結果にまつべきものと存ずる次第であります。
#5
○山口(好)委員 ただいまの政府の御答弁によりますと、結局裁判所の威信というものは法廷などの秩序が維持せられて初めて保たれるものである、こういうところから日本の国民感情としては、裁判所の侮辱というよりも法廷秩序の維持に主眼点が置かるべきものであるという御答弁と了解いたすのでありますが、私の考え方から申しますと、この法案は裁判所侮辱制裁法というよりもむしろ法廷などの秩序維持に関する法律と名称を変更した方が日本の国民感情にぴつたりすると考えられます。しかして法廷の秩序維持を目的としてこの法案をつくり、さような違反行為があつた場合には、これに対して監置あるいは過料という秩序罰を科することに相なつております。
 さてそこで法廷の秩序を害しましたる場合においては、裁判所法にすでに第七十一條から第七十三條にわたりまして審判妨害罪が規定されております。この審判妨害罪も、今度のこの法案も、法廷の秩序維持を目的とするという点においては共通であると考えるのであります。ただ審判妨害罪の方はその制裁が刑罰であるが、この法案の制裁は秩序罰である。そこでそういう制裁の差異のほかに、裁判所法の審判妨害罪とこの法案の違反行為との間にはどういう差異があるかということを一応承りたいのであります。換言いたしますれば、裁判所の威信の保持ということより、法廷の秩序維持という、現実の暴力化に対する対抗策としての性格をこの法案は持つておると見てよろしいかどうかという点であります。この点についての政府の御所見を伺いたい。
#6
○野木政府委員 御指摘のように、現在裁判所法中にいわゆる審判妨害罪に関する規定がございまして、本法案の第二條と多少似通つた点があります。しかしながら本法案第二條の裁判所侮辱行為に対する制裁と、いわゆる審判妨害罪とを比較してみますると、審判妨害罪の方は、法廷における秩序維持のため裁判長または裁判官が発した命令に違反して、裁判所または裁判官の職務執行を妨げた者を、普通の犯罪という面から取上げましてこれに一年以下の懲役もしくは禁錮または千円以下の罰金を科しておるわけでありまして、審判妨害罪が成立するためには、必ず裁判長なり裁戦盲の命令があることを前提といたしております。しこうしてこの審判妨害罪の今までの運用状況を見ますると、これは普通の刑事犯罪でありますので、検察官の起訴を待つて裁判所で審判するという立て方になつております。検察官は、審判妨害罪が起つたその事件につきましては当事者の立場に立つて、相手方を摘発するというような立場に立ちますので、検察官の起訴ということも心理的になかなか行われがたいような状況にありますことと、手続が起訴を待つて論ずるということで煩雑になりますし、また他の裁判所が行うということになりまして、証拠その他の関係で非常に手続がめんどうになるというようなこと及び裁判所の命令ということが前提になりますので、命令を聞いたか聞かないかというような点もあつたりいたしまして、この運用が必ずしも十分てなかつたように思つております。そういう一面がありますとともに、裁判所なり裁判官の審判の仕方は旧憲法時代における訴訟法と違いまして、新憲法下における訴訟法におきましては、いわゆる当事者主義と申しましようか、民事訴訟法はもちろん、刑事訴訟法におきましても昔の職権主義的色彩が非常に後退いたし、当事者主義的色彩が非常に表面に出て来まして、裁判官というものは上から職権をもつて調べて行くというよりも、むしろ中正な立場に立つて判断をするというような面が非常に強調されて来ておりますので、法廷における当事者の発言とか取調べ等が順序よく行われるためには、その手続が妨げられずに、円滑に進行されるという点が前よりも一層必要になつて来ているわけであります。そういうような裁判所の手続がかわつて来たということ、及びそのかわつて来たということは英米法的思想が大いに取入れられたという点、しこうして英米におきましては、先ほど申し上げたようにコンテンプト・オブ・コートというものがありまして、その当事者主義的訴訟手続と密接に結びついてこれをささえているというような事実もありますので、そういうような英米における法制の立て方をも参酌し、またわが国における現実のそういう必要性等をも考えあわせてこの案ができたものであるかと思います。いずれにせよ、何と申しましようか、これは一時的立法というのではなくて、むしろ恒久法として考えられておるものでありまして、さしあたつての当面の治安と申しますか、それのみを目途として立案せられたものでなしに、いま少し裁判所のあり方と密接に結びついた恒久的な考え方のもとに、立案せられたものと存ぜられる次第であります。
#7
○山口(好)委員 その点はさように承つておきます。
 この法案におきまして一番問題になり、また最も一般から警戒をせられておりますのは第二條であろうと思います。この第二條を見ますると、法廷の秩序違反行為の成立要件をあげておりまして、その中に裁判所の職務の執行を妨害したり、あるいは裁判所の命令に従わなかつたり、あるいは裁判所のとつた処置に反抗するというような行為を掲げております。これらの行為について、なるほどこれは法廷の秩序違反行為であるということは納得ができるのでありまするが、実際の規定の形式としまして、この法案によりまするとかなりその範囲が広くとられ、時には濫用されるおそれが相当にあるというふうに、一般的な要望のもとに規定せられておるようであります。たとえば「その他裁判所の威信を害する行状をした者」というふうに書いてあります。こういうふうに書かれますることは、一般国民としましてもあるいは法廷に密接な関係を持ちまするわれわれ弁護士などといたしましても、これは裁判所の裁量によつて、その考え方によつて時に濫用せられるのではないかというようなおそれが大きいのでありますが、かような規定の形式がよろしいか、それともこれを、行為をしぼると申しましようか、明確にするために、たとえば例示的に暴行、暴言あるいは喧嘩の行為というものによつて裁判所の法廷の秩序を乱した、こういうふうに、少くとも行為を例示的な言葉を用いてしぼつて行く、こういうやり方の方が一般国民に対しましても、本法案がその適用にあたりまして濫用のおそれが少くなる、こういう感じを持たせることは確実であると思うのであります。政府におきましてはいずれの形式をとるべきものであるか。現在出ておる原案としましてはかなり広く解釈のできる規定になつておりますが、これを例示的な適当な言葉をもつて表わすことができれば、その方がよいと考えておりますかどうですか、その点を伺います。
#8
○野木政府委員 本案の第二條は、御指摘のようにやや包括的な立案方法になつておることは確かであろうかと存じます。おそらくこの案がこういう形になりましたのは、一つはこの案の立案に際して裁判所というものに非常な信頼が置かれたためと思います。また表現の方法等におきまして、適当なしぼり方もなかなかむずかしいので、そういう点が相まつてこういうことになつたものと存ぜられますが、当委員会における慎重審議の結果、なお適切な表現方法が見つかりまするならば、あるいは一般国民に対する関係から申しまして、その方が妥当だという御発言は十分考慮に値するものと存ぜられる次第であります。
#9
○山口(好)委員 次に第二條の制裁の範囲規定でありますが、この裁判所侮辱行為に対する制裁としまして、第二條は「百日以下の監置若しくは五万円以下の過料」ということに相なつておりますが、この点につきましては、他の御意見を聞きますのに、大体二つにわかれるようであります。一つは制裁の範囲につきまして、この行為は確信犯であるというところから、原案のこの制裁ではまだ実際の効果が薄い、もつと厳重な秩序罰を科した方がよろしいという意見があります。アメリカの法律を見ますのに、六箇月の拘禁というような制裁も盛られておるようであります。もう一つは、これは法廷の秩序維持という純粋な秩序罰の立場から、暴言または騒擾、暴行とかいうようなことをした者を法廷から退廷させれば、それで十分である、退廷した後のことまでいろいろおせつかいをやかなくてもよいのではないか、そういう関係から監置の規定はいらないという意見もあるようであります。アメリカでもこの点につきましては六箇月の拘禁というような重いのもありますが、三十時間の拘禁というごく軽いのも見受けられるのであります。この点につきまして裁判所は何日ぐらいの監置がよいとお考えになつておりますか。原案におきましては百日となつておりますが、なおこの点の御所見を伺いたいと思うのであります。
 それから、なおもう一つ、この監置は秩序罰という御説明でありまして、これはわかるのでありますが、刑罰ではないか、憲法で規定しておらぬところの刑罰を科することになるのではないかというような御意見も他にあるのでありまして、これが刑罰でなくして秩序罰であるということをはつきり国民に納得せしめていただきたいと思うのであります。従つて監置におきましての処遇方法などにおきましては、拘留とどういう違いがあるか、また第二には設備面などにおいて監獄とどう異なるところがあるかというような点を詳細に御説明願いたいと思うのであります。
#10
○野木政府委員 まず監置の日数等、すなわち制裁の軽重の問題でございますが、この制裁の軽重に関しましては、確かにただいま御指摘のような二つの考え方があるものと存ぜられます。しかしてこの案はどちらかというと単なる法廷からの退去をさせるというだけでは足りない、いま少し重い措置をとらなければならないという考えに従つたことは間違いないと思います。
 実はこの第二條に当るような措置は、いわゆる裁判所侮辱制裁法という思想のない大陸法系の裁判所に関する法律においても見受けられるのであります。たとえば大陸法系をくみました旧裁判所構成法におきましても、審問を妨げる者等に対しましては、場合によつては五日以内の拘留に処することができるというようになつておりまして、ドイツ、フランスなどもこれに似ておるように記憶しておるのであります。このような点から見ましても、単に法廷から排斥するというだけでは不十分でありまして、やはりある程度の身体を拘束する措置が必要になるものと存ずるのであります。しかして裁判所侮辱制裁法というような観念をとつております英米法におきましては、六箇月に及ぶのもありますし、またもつと短いのもあります。しかしながら短く期間を切つたところにおきましても、ある州におきましてはその制限を越えて科したとしても必ずしも違法でない。その期間は一つの目安に過ぎなくて、刑法の懲役等拘禁のように、その期間を越えてはならない絶対的な拘束力を有するものでないというような判例もたしかあつたように記憶しておる次第であります。そういうような点を考えまして、しかもこの案はどちらかといいますと、英米流の裁判所侮辱制裁法という思想をくんで立案せられておりますので、拘束処分も百日以下というまず中くらいのところをとつて来たものと存ぜられる次第であります。
 次に監置というのは、御指摘のように、この案では刑罰でなくて、いわゆる秩序罰に属するものと考えておる次第であります。刑罰と秩序罰とどこが違うかと申しますと、現在におきましても過料、罰金という二つの制裁があるわけでありまして、これは旧憲法下にもあり、新憲法下においても引続いて各種の法律で規定せられておるわけでありますが、やはり罰金に処せられるということと、過料に処せられるということとにおきましては、国民感情において非常に差がありますし、またその内容におきましても、罰金につきましてはいわゆる労役場留置の処分がありますが、過料につきましてはそれがないというような実質的の差異もありますし、また罰金と過料というふうに、刑法の刑名とそうでないものとの形式上の差異のあることももちろんであります。しかして監置というりものは、少くとも今まではあまり類例がない新しい秩序罰の一つでありますが、これもいわゆる刑法の懲役、禁錮、拘留というような刑罰と比べてみますと、身体を拘束するという点におきましては似通つた点がありますが、国民感情といたしましてやはり罰金と過料に相応するような感情上の差異が考えられますし、またその処遇の実体におきましても、この案におきましては刑罰のうちで一番軽い拘留と、そうして刑罰ではありませんが、刑罰を科する前の一つの保全処分としての未決勾留、これは無罪の推定されておる被告人が拘置所に拘禁される処分でありますが、その二つを考えまして刑罰としての拘留と、無罪を推定されておる被告人が身体を拘禁される、いわゆる勾留との中間の措置をとりまして、中間の処遇を考えておる次第でございます。中間の処遇といいますのは、むしろ被告人に近い処遇を考えておるようであります。その処遇の差はこの法案の附則に出て来ております監獄法の一部改正によつて、その処遇の差が出て来るわけであります。なお具体的に申しますと、この制裁を科せられた者に対しましては、刑罰の拘留囚におきましては必ず教護を施すべしというのに対しまして、この制裁を科せられたものに対しましては、その制裁を科せられた者から教護をしてくれという申出があつた場合に教護を許すことができるというような差異になつております。また頭髪やひげなどは、拘留囚につきましては、これをそつたり刈つたりすることができるということになつておりますが、こちらは衛生上特に必要ありと認むる場合のほか、その意思に反してこれをそつたり刈つたりしてはいけないというようなことにいたしましたり、また賞罰につきましても、刑罰の拘留囚には制限がないのに対しまして、この制裁を受けた者に対しましては普通の被告人と同じように七日以内の減食の懲罰を科せないというように、賞罰につきましても制限を付しております。そういうような点が刑罰の拘留囚と処遇の内容において違つて来ております。
 なおこれを拘禁する場所におきましても、刑罰の方の懲役、禁錮、拘留につきましてはそれぞれ監獄のうちの懲役監、禁錮監、拘留場という特別の監房に入れるのでありますが、この監置につきましては監置場に入れることにいたしまして、建前といたしましては区別いたしておるわけであります。しかしてこの監置場は、懲役監、禁錮監、拘留場と同一のものではなくして、むしろ労役場というものに並べまして監獄に付置するということにいたしまして、本来の懲役監、禁錮監、拘留場とは同一に並べておらないことになつております。こういう点がその拘留の場所及びその処遇の内容におきまして刑罰の懲役、禁錮、拘留と区別せられてはるかに緩和されておるわけでありまして、裁判所侮辱制裁法という非常に特殊のものの制裁といたしましては新しい例でありますが、この程度のことは憲法の許す範囲内であると確信しておる次第でございます。
#11
○鍛冶委員長代理 関連して承ります。が、この附則の2に――これは一番もとですが、「監獄法の一部を次のように改正する。」とあつて「第八條中「労役場」の下に「及ビ監置場」を加え、」こういうことになつておりますが、要するに監獄を監置場に充て、そうして労役場と併置して行うということは、今の御説明から行くと理論上合わないように思いますが、この点はどうお考えになりましようか。
#12
○野木政府委員 一番理想的に考えますと、これは刑罰ではありませんので、このための監置場というものを全然別個につくるのが一番理想であるとも存じますが、そのために特別の行政庁を設置したり、またはそのために特別の管理要員を置いたりするということは、国家の予算等の面から見ましても非常に困難な点がありますし、また刑務所と申しましてもその刑務所を管理するというような意味合いでありまして、いわゆる監獄自体ではないわけであります。今の監獄におきましても、たとえば刑事被告人というようなものはまだ有罪、無罪きまつていない者もいわゆる拘置所という広い意味の監獄法で管理しておりますので、それらと比べましてもこの程度のことはやむを得ないものではないかと存じておる次第であります。
#13
○古島委員 ちよつと関連して私も承りたいのですが、今の御答弁によりますと、この裁判所侮辱法を法廷の秩序維持に関するという名前にしたい、これはまことにけつこうであります。ところが法案の内容を見ると、裁判所の判事が侮辱されるとか、裁判所の法廷内の秩序を乱すというようなことになつているのですが、われわれはそのほかにかえつて判事があべこべに秩序を乱すようなことも目撃するのです。これはあまりに極言をするようでありますが、たとえば判事は法廷の秩序を維持するという権利をもつて法廷指揮権を持つております。ところが弁護士が証人調べその他の反対尋問等でもいたしますと、それに対しその権限を逸脱して、さらに一歩進んで、そこまで聞かぬでもよろしいと言うのはまだいい。ところが、そういうことを言われるとあなたの質問は変なことになりますぞと言つて、若い弁護士などをたしなめる場合がある。若い弁護士がそれを承知いたしませんと、今度はしかりつける。そうなると判事が法廷の秩序を破壊するということになる。しかもこの法案によれば、判事が即時に決定をもつて拘置する、もしくは過料に処すということになるのですが、そのようにかえつて弁護士等が侮辱されて、法廷の秩序を破壊されるというときには、別の手続で告発をするとかもしくは告訴するとかいう以外には方法がない。この法律で取締るということはできないことになりますが、そこはどうでありますか、これでやれますかどうか承りたい。
#14
○野木政府委員 本法案におきましては、裁判所または裁判官が手続をするに際しまして、その支配する手続を妨害されたり、あるいは裁判所、裁判官が威信を傷つけられたりする場合に対する制裁を規定しておるのでありまして、裁判官が弁護士を侮辱するというような場合がかりにあつたといたしましても、この法案ではそれは考えておらないものだと存ずる次第であります。
#15
○古島委員 そこでこれが裁判所侮辱制裁法というので通ればそのままでよろしいでしよう。ところが法廷の秩序維持に関する法律というのであれば、判事が秩序を乱す場合にも何かの制裁を加えねばならぬと思う。いわゆる法廷という一つの場所があり、そこに法廷の威信というものがある。それを破壊する者は、あるいは弁護人の場合もあり、被告の場合もあり、証人の場合もあり、傍聴人の場合もある。また判事もやる場合がある。法廷の秩序維持に関する法律ということにするならば、万般の者がその法廷の威信を害するような場合にはこれを処罰することにせねばならぬと私は思う。もしまたこれがただ裁判所侮辱制裁法の名前を法廷侮辱とやつた方が便利だからそうやるのだというならば、今度は判事の侮辱法、弁護士の侮辱法というようなものを別にこしらえなければならぬ。それがめんどうなら、この法律の中に、秩序を維持するためにはいかなる者が秩序を破壊してもこれを処罰するということにしなければならぬと思う。しかしそれでは判事が直接にその事案に対して決定を持つて拘置するとか、あるいは過料に処すということにすればその実効は上らないと私は思うが、その場合にはどういうような制裁が行われますか。
#16
○野木政府委員 かりにこの法案が法廷秩序維持という点を表面に出しまして、法廷等の秩序を維持する法律というようなことになつたといたしましても、法廷の秩序というものはやはりその法廷を支配する裁判所なり裁判官を中心として考えらるべきものであろうと存ずる次第であります。従つてむしろその法廷を支配する裁判所または裁判官がみずから支配する手続を妨害することは考えられないというような考え方で行かなければ、あるいはこの法案自体が成り立たないのではないかと存ずる次第であります。
#17
○古島委員 名前を申し上げることはまことに気の毒ですから、名前だけは省略いたしますが、あなたの御同僚で予審判事を長くやつた方で某という有力な判事ですが、弁護士が証人調べの補充尋問をする際に、その人が、そういうことを言うと承知なりませんぞという一語を漏らしたことがある。その弁護士は若い人でありますが、なかなか承知せぬ人であつたので、承知せぬとは何事だというので、そのために約一時間も議論をした。そこでわれわれはその次に事件をやるのでありますが、われわれの事件はやれないような境遇になつてしまつた。そういうのを私は一つ見ました。それからもう一つは、非常に口の多い判事であつて、そういう補充尋問等があると必ずくちばしをはさんで何か言うくせのある人でありましたが、例によつてやりました。そこでこれもまた議論になりまして、結局その日はあとに待つている人はだれもできなかつた。これなどは法廷の威信を害するどころではない、法廷の審判の進行を妨げるほどまでに秩序を破壊した。こういうことはあなた方はお耳にしないであろうと思いますが、実際はそういうことがあるのです。これらはいかんとも方法がない。そこでむしろ裁判所法のあの罰則によつてやる方がいいので、こういう法律をこしらえる必要はごうもないと思つておりますが、裁判所法を拔きにしてもこの法律を特にこしらえなければならぬ理由がありましたら伺いたい。
#18
○野木政府委員 ただいま御指摘のようなことがありましたら、あまり上手な裁判の進行の仕方ではないと存じますが、それかといつて、そういう裁判官に対してただちに制裁を科す手続を設けたらいいかどうかという点は大問題でありまして、むしろ私はそういう手続は設けないで、裁判官が熟練しないでその場限りの不手ぎわだというのならともかく、しよつちゆうそういうことをやる裁判官があるならば、裁判官として必ずしも適格でないということになりましようし、何かほかの方法でそういう裁判官の注意を喚起したり何かして是正する道があるのじやないかと存ぜられます。従つてこの法案のような仕方でやるのはまずいのではないかと存ずる次第であります。
 第二点でありますが、実は私も裁判所侮辱制裁法の立案に関係したわけでありますが、この立案を始めましたのは大分前でありまして、そのころは裁判所の制度は大いに英米の制度を取入れました。英米におきましては裁判所侮辱制裁法という制度は裁判所と密接不可分の関係にありまして、裁判所の機能を非常に助けているというような事柄が看取されましたので、それをわが国に継受したらどうかというような考えから出発して立案の参與に当つたわけでありますが、たまたま最近のようないろいろな事例などを見ておりますと、そういうような一つの観念的な継受の仕方のみならず、実際上の必要性におきましても、やはりこの法案のような法律ができれば裁判の円滑な運用に資することが多いのであろう。そういうように強く感じている次第であります。と申しますのは、裁判所法の審判妨害罪の方でありますと、ある事件について審判をしておりますと、そこで審判妨害行為が起る。そのはなはだしいのは検事が起訴する。そうすると別の裁判所で別件として審判手続が開始されるということになりまして、先ほど申し上げましたように手続が非常に複雑で、今までもなかなか十分には行われていないようでありまして、裁判所側の実際の要求を見ましても、そういう非常に悪質なものはあれで活用するとしても、実際の必要といたしましては、現に審理をしている際に、そこで目の前で非常に騒いだり、不穏当な行為をするそういうものをたしなめて、そこで制裁を科してその場の秩序を維持しつつ手続を進行して行きたい、そういう要求が非常に強いのでありまして、現在におきましては先ほど申しましたような一つの英米法の制度を継受するという意味合いもありますが、しかしそれよりも今言つたような現実的な必要も非常に強くなつて来ているのでありまして、かれこれあわせましてこの制度は新しい裁判所法の制度のもとにおきましてはむしろ不可欠と言つてもいいくらいに必要な制度になつて来ているのではないかと存ずる次第であります。
#19
○古島委員 この裁判所法の罰則によればこれは命令違反であつて、片方のこの方は秩序維持のためのものであるから、いずれも両方が必要なんだということであります。しかし裁判所法の命令違反ということもこれは必ずいかなる場合でも秩序保持のためには出て参ることだと思うのであります。この命令が書面で書いた命令書のみを言うのではないので、一切法廷の指揮権を持つている裁判長のこの命令に違反することでありますから、あるいは騒擾を起すとか騒ぎをするとか拍手をするとかいう場合にはこれをやめろという命令をすればいい、それに違反すれば裁判所法違反になるわけでこの法律がなくてもあの裁判所法の規定によつて十分にまかない得られるように私は思うのであります。しかも命令違反であるから、また手続は検事の起訴をまつのであるからということでありますが、かえつて起訴をまつてやるということの方が公平なんで、判事が感情に走つてこれを監置するとか過料にするというようなことはなかつた。判事がやることは判事自身が侮辱されたような感じを持つたときにただちにやるということがかえつて危険を起すのだと思うのであります。その危険を除くためには検事が起訴をいたしまして相当の手続を経てしかる上にこれを処罰するということの方が人権を尊重する点において全きものではあるまいかと私は思うのであります。この法律の言うところはあまりに簡易過ぎてどうも逸脱する心配があるように思うのですが、その点は大丈夫でございますか。
#20
○野木政府委員 御指摘の点は確かに一理あることと存ずる次第であります。審判妨害行為があつた場合に検事が起訴し、他の裁判所で裁判するという点は確かにその審判妨害行為があつた裁判官がすぐその場所で処分するというよりも、冷静に事が運ばれて行くということは確かであろうと存じます。実際裁判の手続をやつて行きます際に、その手続を妨害したというような場合に、裁判官が検事にこれを告発し、検事が起訴状を書いて裁判所に起訴し、これを今度は別の裁判所で裁判するということになると、何といたしましても手続が複雑でありまして、機宜を失するという場合が非常に多いわけであります。なるほど審判妨害行為におきましても、裁判所は命じた事項を行わないで職務の執行を妨害したという点は、この法案のうちの「その命じた事項を行わず、その執つた措置に従わず、」という部分とは大体同じことになると存じますが、先ほどもお話にありましたように、非常に大声をあげて裁判官を罵詈雑言したというようなものは、それを注意してやめさせたといたしましても、いろいろの周囲の事情によりましては、それだけでは済まないような場合もなかなかあるわけでありまして、一度注意してそれでやめて済む場合もそれはあるかもしれませんが、それでは済まない場合が最近の事例を見ますと幾多ありますので、命令を待たずに手続を妨害する行為があつたならば、それをも捕えて制裁を科し得るということにいたしませんと、どうしても新しい訴訟法のもとにおける裁判所の手続というものは、円滑に進行しないと考えられますので、裁判所法の今の審判妨害罪の方は非常に重い方の場合はこれで行くといたしましても、さしあたつての現実の法廷内の秩序の維持というような点につきましては、別にこの法案のような処置の仕方がぜひ必要であるものと確信する次第であります。
#21
○古島委員 検事をしてやらせると複雑で、ほかの裁判所をして審理させると事件が長くなるという御心配のようでありますが、検事がやる方が公平にやれるという利益がある。そして判事がただちに監置するということになれば感情が手伝うという欠点がある。そこから言うならば検事がやる方がいかにも公平にやれるように見えるのであります。それからまた事件が他の裁判所をしてやらせるということになると長くなるということでありますが、これは今一條を入れて他の裁判に先んじて、もしくは優先してそういうものはやるべきものだというふうに書けば、これはいくらでも簡単にやれることだと思いますが、そういう條項を入れてもなおこの法律をこしらえる必要がありましようか。
#22
○野木政府委員 裁判官が検事に告発なりして検事が起訴をし、別の裁判所で裁判いたすとしますと、それに対する書類をいろいろたくさんつくらなければならなかつたり、あるいは他の裁判所において証人の取調べというような問題も出て来まして、かりにおつしやるような他の裁判に先立つてやるということになりましても、相当の日数がかかるものではないかと存ずる次第であります。しこうしてこの案の立て方のように、侮辱行為をされた裁判所がその場所でやるという立て方にいたしますと、迅速の点はもとよりはつきりわかることでありまして、ただ御心配のような、裁判官が感情にかられはしないかという点が確かに一つの御心配の点だろうと存じますが、この点はこの案が成立いたしましても、その運用には十分裁判所に注意していただきまして、そういうようなあやまちのないよう期するとともに、この案の考え方といたしまして、やはりいい人を裁判官にして、その裁判官を信用してこれにまかせるというような考え方に立つて、この案を考えて行かなければならぬのではないかと存ずる次第であります。
#23
○山口(好)委員 先ほどの質疑に続きまして、この法案におきまして、第二條に次いでまた問題になつております第三條でありますが、ただいまこれに関連して古島委員からの御質疑がございました。われわれとすれば、政府の説明によりまして、裁判所法の審判妨害に関しまする規定のほかになお本法を必要とする、こういうことを是認しまして、質疑をいたすのでありますが、三條を見ますと、そのことを決定する裁判所は当該裁判所がこれをなす、その裁判所が審判する、こういうことになつております。この條文に対しまして、大方の人がやはりいろいろな疑問を持つております。すなわち法廷の秩序維持を乱されるような違反行為をされたその判事がその行為者を処罰する、こういうのでありますから、見ようによりましては、いわゆる糺問的な手続であり、また自分がそこで非常に感情を害されておるそのあとで仕返しをするのではないか、こういうふうな疑惑を持たれますので、いわゆる公平を欠く裁判になりはしないか、また人権尊重の建前からいつて逆行するのではないか、濫用されるおそれがあるのではないか、こういうようなおそれも抱かれまするがゆえに、この点について反対論者も相当多いと見受けるのであります。ただわれわれとしますれば、やはり法廷が乱されておるその現実の事態が生じて、ただちにその事態を収拾しなければならないというような必要性から、ただちにその裁判所が、自分の目をもつて見、自分の身辺に実験をしましたその判事が、そこで即座に証拠が消滅しない間にこれを行うのでありますから、証拠収集の点、いわゆる証拠調べの点では非常に的確なものができるのではないかと考えますが、反対論者からすれば、これはやはり当該裁判所によつて行わせずに、他のこれと離れた裁判所が行うべきものではないか、そうすれば、今申し上げましたような公平を欠くというおそれを除くことができ、あわせて裁判所も威信を維持するのに役立ち得るのではないか、こういう論者もあるのであります。ただそういう他の裁判所がなしまする場合には、概括的に申しまして、やはり間接証拠で臨むというようなことになり、その事態の起きました直後に、即座にその処置ができないというような、またこの法案についての最も大事な点に欠くるところがあるようにも考えられるのでありますが、政府におきましてはこの点をいかように考えておられるか。他の裁判所をもつて、国民に最も公平だと感ぜしめるような方法でやらせるようなことはお考えになつておらないかどうか。どうしても当該裁判所がこれを決定いたさなければならないというふうに考えておりまするか。さように考えられますれば、おなその点の納得の行きまするような御説明を願いたいと思います。
#24
○野木政府委員 御指摘の点は確かに一つの論点であろうと存ぜられる次第であります。元来裁判所は当事者双方の意見を聞いて、中立的な立場から裁判をするというのが、裁判所の本質的な機能でありまして、その点から申しますると、侮辱行為を受けた裁判所なり裁判官がみずからその事件を審判することは、一つの大きな異例であることは間違いないところであると存じます。しかるにこの異例が許されまするのは、この裁判所侮辱行為なるものは元来ほかの事件がありまして、その事件を調べておる過程において派生的に起るむのでありまして、本来の事件を公正迅速に審判することが何よりも大切なことであるわけであります。本来の事件を公正迅速に審判するためには、その派生的事件にあまりかかわつては、本来の事件の公正迅速な審判もおのずからそこなわれる危険が非常に大きいわけであります。しかしてこの本来の事件の裁判を公正迅速に行うためには、その手続が円滑に進行することが必要でありまして、そのためには、その手続の円滑な進行を妨害するような者に対しましては、すぐその場でこれに制裁を與え得るような措置をつくつておくことが、一つにはそういうような妨害行為を未然に防ぐことにもなりますし、またそういう措置ができることにいたしておきますれば、実際そういうことが起つた場合に、直ちにこれを排除し、克服して、本来の事件の手続を迅速公正に進めることができるということになるわけでありまして、結論として申しますと、本来の事件を公正迅速に進めるためには、その手続を妨害するような者に対しましては、その場でただちにこれを処理して行くことがどうしても必要になるものと存ぜられる次第であります。先ほども申しましたように、程度の差はありますが、旧裁判所構成法その他欧州大陸法系の構成におきましても、拘留五日とか云々というような措置がその裁判官なり裁判所に認められておるわけであります。なお今言つた拘留というのも名前は刑罰と同じ名前でありますが、これも解釈上刑罰でなくて秩序罰ということに、旧裁判所構成法におきましても、またドイツなどにおきましても解せられておつたようであります。
 なおその裁判所にやらせると濫用のおそれがないかという点、たとえば感情にかられて報復的な裁判をするおそれはないかという点を御心配になられるのも、一応そういう御心配もあり得るかとも存じますが、先ほども申し上げましたように、裁判官もこの裁判所侮辱制裁法が成立しましたあかつきには、やはりこれは伝家の宝刀のように大切にいたしまして、その運用には十分慎重を期するようになるものと存ぜられる次第でありますし、かたがた今後の行き方としましても、裁判官にはできるだけよい人を当てまして、その人に十分信頼して事を運んでもらうという考え方の上に立つて、この法案を考えて行きたいものと存じておる次第であります。
#25
○山口(好)委員 ただいまのお答えにできるだけいい裁判官を採用して行くということがございましたが、その点についてちよつと申し上げたいのですが、これは今後の問題としてはそういう方針で進むというお答えでありまして、現在職についておられるところの裁判官につきまして問題になるのであろうと思います。ですから、いい裁判官を採用して行くということはもとより考えてもらわなければなりませんが、現在職についておりまする裁判官について、先ほど古島議員からも指摘されたように、法廷の秩序維持という面につきましては、ともすればあまり質のよくない裁判官で、みずからその法廷の秩序を乱して行くというような傾向もなきにしもあらずであるということを私も目撃いたしております。さような点についてこの法律ができたというような場合に、ことにこれを扱います場合の裁判官一般に対する注意というようなこともお考えになつておるかどうか、これをお答え願いたいと思います。
#26
○岸説明員 ただいまの御意見はまことにごもつともな御意見でありまして、裁判所といたしましても、もしこの法案が成立いたすことになりましたあかつきには、この運用については十分の配慮をもつて臨まなければならないということを痛感いたしております。それで裁判官の本法案に対する心境は、先年本法案について公聴会が開かれましたときに、東京地方裁判所の小林判事が衷心その心構を吐露しております。ああいう気持が裁判官全体の気持であるというようにおくみとり願いたいと思います。先ほど来この法案についての濫用のことが問題になつておりますが、この法律を運用するものは裁判官でありまして、しかも警察官等の仕事とは違いまして、公開の法廷で衆人環視の中でこの法律を運用するのであります。裁判官が感情的にとらわれて、必要以上の制裁を科するというようなことは、おそらく考えられないのでありまして、もしかりにさような感情にとらわれて、必要以上の制裁を科するというようなことになりますれば、これは権限の濫用でありまして、その面につきましては、権限濫用ということにおいては、いかなる制裁を裁判官が受けてもいたし方がないと存ずるのであります。場合によりましては、弾劾訴追の対象にもなり得る、さように考えておりますが、濫用の点について、これまで幾多の侮辱的な、脅迫的な言動を受けておりましても、それがその判決に反映したということは聞いておりません。最近大分におきまして、これは相当猛烈な法廷闘争があつた事件で、裁判官に対する個人的な脅迫、侮辱等が行われた事件でありますが、その事件についての判決を見ておりますと、この事件は電信法違反と建造物侵入罪で起訴された事件ですが、電信法違反の方は無罪にいたしております。建造物侵入の点については、懲役八箇月という刑を言い渡しております。あの事件の法廷闘争というのは、それこそ言語に絶するような状態でありましたにもかかわらず、裁判官はそれを判決の上において個人的な感情的な復讐を絶対にやつておらないという一つの例かと存じます。しかしこういう強力な権限が裁判官に與えられますならば、今後この運用については十分法意をいたさなければならぬということは、十分承知いたしております。
#27
○山口(好)委員 最後に三点ほど伺つておきたいのであります。この原案につきましては、かような点は規定されておらないのでありまするが、ぜひこういう点も必要だと思うのでありまして、政府の御意見を伺いたいのでありますが、その一つは制裁を科する裁判の除斥期間の問題であります。監置の裁判を行いまして、その本人が逃亡しておるというような場合、その逃亡者につきいつまでもこれを追究をして、これを追つかけておるというようなことは、今後この法案の精神でありまする法廷秩序の維持というこの精神の外に出るものと考えるのでありまして、なるほどできるだけこれを早く逮捕いたしまして、その裁判を行わなければならないのでありますが、どうしてもつかまらないというような場合もあると思うのでありまして、さような場合はこの逃亡者につきましては、その捜査の強化というような面は別個の対策で行うべきであると考えまするので、やはり除斥期間を設けまして、その行為が終了したるときから六箇月を経過したる後はこの裁判ができないというような規定、あるいはこの期間はもつと短かくして一箇月というようなことにした方がよかろうという御意見もあります。この除斥期間を設ける必要及びその適当な期間はどれくらいがよかろうかというような点についての御意見をまず第一に伺いたいと思います。
 第二には同様な意味で、この監置の決定がなされまして、その執行でありますが、その執行についてやはり除斥期間を設けてはどうかということに対する御意見を伺いたいと思います。
 それから第三点は、監置の執行停止の問題であります。これも本案には見えておらないようでありますが、やはり監置された者が重病のときまたはその両親が危篤の場合、監置の執行停止を規定する必要はないかというのがその三点であります。
 以上の三点について御意見を伺いたいと思います。
#28
○野木政府委員 御指摘の三点は、この法案にはいずれも設けられておらない点でありますが、まず第一点の制裁を科する裁判をするについての除斥期間と申しましようか、期間の制限が設けられていないのは、おそらくこれはすぐ、その場で裁判をするのが原則であり、その後裁判をするということは、むしろ異例なことでありまして、その異例な措置のことにつきましては、裁判所の良識ある判断にまかせるという趣旨であるかと存じます。しかしここに適当な一つの期間を設けるということは、御審議の結果あるいは考え得る点ではないかと存ぜられるわけであります。なおこの期間はいろいろ考え方もあると存じますが、ただいま御指摘の一箇月とかあるいは六箇月というようないろいろ理由はあり得るものと存じます。一箇月というのは、これは即時その場で裁判するのが原則だから、異例な場合でも一箇月の猶予期間を置けばよいのではないかという点から来ているものと思います。六箇月の点も大体同じ考え方だろうと思いますが、ややゆとりを設けておこうという考え方だろうと思います。
 次に監置の裁判があつてから執行までの期間でありますが、これもこの案には別に期間は書いてありませんが、おそらくこの案の考え方といたしましては、監置の裁判があれば大体すぐ執行になるが、事柄の性質上刑罰などと違つて、逃亡ということもあまり重要視することもなかろうという点から、執行に関する除斥期間と申しましようか、一つの期間を設けたのだろうと存じますが、これも慎重御審議の結果、あるいは適当な期間を設けるのが相当ということになれば、あるいは刑法の拘留などの時効期間と対比いたしまして、六箇月というような期間も一応考えられるのではないかと思うのであります。
 最後に監置の執行停止という規定もこの案では考えて、明文の規定はありませんが、これも監置の期間が比較的短いから、実際問題としてそういう場合の起ることもあるまい、もしどうしても必要だという場合には、第七項の制裁執行の全部または一部の免除をすることができるということで、絶対に必要だという場合にはまかない得る場合が多かろうという考え方から来ているものだろうと思いますが、これも丁寧な規定をするという趣旨からいたしますれば、あるいは御指摘のような考え方もできるのではないかと存ずる次第であります。
#29
○加藤(充)委員 いろいろ修正の企てもあるようでありますが、一応原案について、まず字句解釈的なところからお尋ねして行きたい。
 原案の第一條ですが、「裁判所の威信を保持し、司法の円滑な運用を図ることを目的とする。」この威信を保持して、司法の円滑な運用をはかるということになりますと、円滑という文字の精神が死んでしまう、こう私は思います。これは「威信を保持し、もつて」ということですか。威信を保持したり、また司法の円滑な運用をはかつたりすることを目的とするというのですか。
#30
○野木政府委員 この第一條の趣旨は、「もつて」という言葉はありませんが、規定の考え方といたしましては、裁判所の威信を保持し、司法の円滑な運用をはかるという、やはり「もつて」というような文字を加えて結局の目的は司法の円滑な運用をはかるということを目的とするというように考えた方がよいのではないかと存ずる次第であります。
#31
○加藤(充)委員 そうすると、司法の円滑な運用をはかることが主たる目的になつて、威信を保持するというのはそのための一つの方法手段にすぎないというようなことに了解され得ると思うのですが、その点はどうなのでしようか。
#32
○野木政府委員 裁判所は、迅速適正な裁判を行うためには、その威信と申しましようか、権威と申しましようか、それが他から害せられずに毅然としてあるということが絶対に必要であろうと思います。しこうして裁判所になぜそのような威信なり権威なりを保たせる必要があるかと申しますれば、国権の作用としての司法作用が円滑に行われるということが国家のために絶対に大事なことでありますので、民主主義に立つ国家といたしましては、そのような威信なり権威なりを裁判所に保持させる必要がありますので、そこでこの裁判所の威信保持ということを強くここに掲げ、しかも「もつて」という言葉を特に入れずに、「威信を保持し、司法の円滑な運用を図ることを目的とする。」というのは、両者渾然一体をなして、民主主義のもとにおける裁判機能、司法機能の権威を高め、その円滑なる運用を期するという法案の大目的をうたつたものだと存ずる次第であります。
#33
○加藤(充)委員 大目的はわかりましたが、重々御説明になつたのですが、司法の円滑な運用をはかることが眼目だという御説明と聞いていいわけですね。
#34
○野木政府委員 司法の円滑な運用をはかることが目的であることは間違いありませんが、それが同時に「裁判所の威信を保持し、」ということと密接不可分の、うらはらの関係になつておるという点を御了承願いたいと思います。
#35
○加藤(充)委員 うらはらの関係になると、さつき私が言つたように、裁判所の威信を保持したり、また司法の円滑なる運用をはかることを目的とするためと言わなければ、いわゆるあなたが重々御説明になつた大方針、大目的というものが文字の上では出て参らないような気がいたしますが、これも私のうかつのせいかもしれませんが、そうお思いになりませんか。
#36
○野木政府委員 この「裁判所の威信を保持し、司法の円滑な運用を図ることを目的とする。」この二つのどちらがより重点かと申しますれば、やはり司法の円滑な運用をはかるということの方に趣旨としては重点があるのではないかと存ずる次第であります。
#37
○加藤(充)委員 司法の円滑なる運用をはかることが目的だということになれば、民事、刑事訴訟法があるので、その運営の全きを期し、そうして裁判官が與えられておる正当な権限を、同時に職責をあやまちなくして行けば、司法の円滑なる運用をはかる大目的は達せられ得ると思うのですが……。
#38
○野木政府委員 お言葉のような方法ではなかなか達せられませんので、こういうような法案が立案されるに至つたものかと思う次第であります。
#39
○加藤(充)委員 それでは民事、刑事訴訟法のどこに欠陷があつて訴訟の円滑なる運用をはかることができないと言われるのか、いま少し具体的に御説明を承りたい。
#40
○野木政府委員 民事、刑事の訴訟法は、大体妨害行為ということをあまり念頭に置かないで、手続の順序を順次きめて行くという仕組みになつておるものと存ずる次第であります。むしろ法廷の秩序を維持するというような方面は、先ほどからしばしば問題になりました裁判所法の方に、この類似の規定がございますが、この規定では十分でありませんし、また英米流の思想を大いに取入れておるところの現在の裁判所のシステムなり手続におきましては、それだけでは不十分で、やはりこのような妨害的行為を直接に排除するという規定が、裁判所の権威を保持して、裁判機能の円滑な運用をはかるためには必要である。そういうふうに考えられるかと存ずる次第であります。
#41
○加藤(充)委員 今答弁の中に妨害という言葉があつたのですが、妨害というものはこの法律をつくらなければ排除できませんか。いわゆる名誉毀損罪、侮辱罪、公務執行妨害罪、審判妨害罪の規定はございまするし、裁判官の訴訟指揮権に基いた法廷警察というものも配置されておるので、どうもその点がわからないのです。
#42
○野木政府委員 ただいまいろいろの措置をおあげになりましたが、やはり法廷の現実の手続を進めて行く上におきまして、それだけでは十分でありませんので、その現実の法廷に現われた現象形態というか、現われたところをつかんでその場合々々に措置して行くという手続が、裁判の円滑な運用をはかる上には必要であるものと信ずる次第であります。
#43
○加藤(充)委員 あなたの方の御説明では、言語に絶する法廷闘争とか何とかが行われた、こう言つておるのです。それだからこの法案を出さなければならないと言われた。ところが今言つたように、ここで処罰しようとする、処罰の内容になつておるような事柄には、私が今指摘しましたような幾多の他の制裁法規があるのであります。従つてこの案に盛られている制裁の原因並びに制裁の内容を考えますと、むしろひどいやつを処罰するのではなく、それに至らない簡単なものまでやつつける。こういう方向にこの法案の行き方と内容は向いておると思う。従つて妨害を制圧する制裁法規、あるいはその手続について欠陷があるというのではなくして、むしろ逆にそこまで至らないものをこういうものでやつて行ける。逆なことを言えば、裁判所の侮辱にも何にもならないようなもの、またそういうものではないとして、大目に見て来たというか、看過して来たもの、犯罪視することのできない罪質と内容を持つたものを、新しくこれで懲罰の範囲を拡充して行く。上の方に対策を立てるのではなくて、小さな対策を立てて行く、私はこう理解する。それ以外に理解の方法はないのです。従いまして大分裁判所で言語に絶するとか、あるいは広島の裁判所でどうだとかいう問題だつたら、明らかにこれは今申し上げたような罰状になるわけです。そういうものがあるからこれが出て来たというのでは、りくつとこの法案の内容がツロクしていないと思う。先ほどのあなたのお話の中にあつたと思うのですが、軽い場合もこれで処罰する必要がある。何でもかんでも処罰するという意味でありましよう。これを逆に言うと、真に法廷侮辱に至らざるもの、こういうようなものまでもやはり裁判所の都合で制裁するというのがねらいである。この法案の立案理由と内容自体が不当ではないか、少くとも説明と一致しておらぬ、私どもこう考えますが、その点はどうなんですか。
#44
○野木政府委員 この法案といたしましては、裁判所侮辱に当るもののみを制裁の対象といたしておるのでございまして、裁判所侮辱にならないものはもちろん第二條の範囲外だろうと存ずる次第であります。
 なお、たとえば今まで裁判所の審判妨害罪にならないようなもの、あるいは刑法の公務執行妨害罪あるいはその他の規定に触れないものまでも、これで行き得る場合があるのではないかという御質問でありますがその点は率直に申しますと、そういう刑法とかほかの罰状に触れない場合で、しかも第二條に該当する場合もあるものと存ずる次第であります。しかしそれかといつて何も問題とするに足りないような、いわゆる裁判所侮辱罪にならないようなものまでも、ここでびしびしやろうという趣旨ではこの法案は毛頭ないものと存ずる次第であります。
#45
○加藤(充)委員 それでは第一番に民事、刑事の訴訟法の手続を守らなければ、お前は権利の放棄をしたものである。言うべきときに発言の機会を失つたのだから、それはあとで言つても始まらないというようなことから、こういうようなコントロールの規定があるのであります。これで一応コントロールされておる。それ以上のものになりますれば、いわゆる審判妨害罪の規定があるのでありますし、場合によつては公務執行妨害あるいは判事個人に対しましては侮辱罪、名誉毀損罪というようなものまでりつぱに制裁の法規体系があるのでありまして、重々御説明を承つておりますが、どうもこれで下の方をねらつておるのではない、審判妨害罪というようなものにならないものをこれで処罰しようと思つておるのではないのだということになれば、私はどうも理解ができにくいのであります。一応何でも処罰する必要がある。何でも処罰したら邪念がいいのもがあるかもしれないけれども、民主的な裁判ということをあなた方が言われ、裁判の円滑な運営ということを言われると、これを維持して行くためには、一応考えた基本的な体系的な制度というものがあるのでありまして、こういうような法律をつくつて、これを何か便法らしく出して来ますのは、根本的に言つて、現行の犯罪体系、あるいは処罰体系というようなもの、あるいは基本的には憲法のいわゆる――あなたが言われたから私も言いますが、大精神、大眼目というものをこれでくずして行つてしまうというようなことに相なると思うのであります。こういうふうに考えますと、一官僚一、裁判官がこれは便利だと考えただけでそういう不見識のものを通すわけには断じて参らぬと思うのであります。どうもその点が政府の説明では得心が行きませんが、私は前に申しましたように、一応條文の字句解釈から承つて、そういうようなものについてはまたの機会に譲りたいと思いますので、次に移つて行きたいと思います。
 第二條では、「裁判所又は裁判官(以下「裁判所」という。)」というのでありますが、「裁判所又は裁判官」というようなことを特にここであげなければならないのはどういうわけでありますか。また「裁判所」というものと、「又は裁判官」というものを特に区別していうのであるならば、いわゆる書記――現行では事務官というのですか、こういうものは裁判所の中に入るのか入らないのか、これが入らないという当然の常識的な解釈だつたら、「裁判所又は裁判官」というようなことの区別をわざわざされたということがわからないように思うのです。
#46
○野木政府委員 裁判所または裁判官のうち、裁判所は一目瞭然だと思いますが、特に裁判官と入れましたのは、たとえば訴訟法の中によく見えでおりますように、受命裁判官とか受託裁判官などというものがありまして、裁判官として行動する場合がありますので、「裁判所又は裁判官」といたしたのであります。従つて、裁判所書記を侮辱するというようなことは、それだけでは入らないわけであります。
#47
○加藤(充)委員 裁判所というのはわかります。また裁判官というのもわかりますが、具体的にこういうような問題が規制の対象になつて参ります場合には、現実的には私は当該の裁判官以外のものは出て来ないと思います。その裁判官に対し不法なことをやつた場合には、それが同時に裁判所に対する侮辱なりあるいはいろいろな不法行為を構成する場合があつたといたしましても、こういう場合に裁判所というのは一般的、抽象的に過ぎはしないか、この点をひとつお尋ねしておきます。
#48
○野木政府委員 裁判所を侮辱するということの一番端的な場合は、裁判所を構成しておる個々の裁判官なりが侮辱される、これはひいては裁判所を侮辱することになる場合が多いと存じます。特に裁判官とありますのは、たとえば今よく問題になつておりまする勾留理由開示の手続でありますが、「公訴の提起があつた後第一回の公判期日までは、勾留に関する処分は、裁判官がこれを行う。」というような規定になつておりまして、そういう場合に疑義がないようにここで「裁判所又は裁判官」とうことを摘出したわけであります。
#49
○加藤(充)委員 これは、制裁というものは刑罰でないというような逃げ口上でお進みになつて、その立場でいろいろ説明があるのだと思うのですが、具体的な例をとつてみますと、たとえば内閣総理大臣というのがある、それがたまたま吉田茂という個人でそのポストが占められているのですが、内閣総理大臣というものは官職なり制度上の組織機構でありまして、そのものに対していろいろ手続をするとか、あるいはそのもの自体が行動をするようなことはないのであつて、実際上の行為というようなものは、そのポストにおる人間がやるのである、つまりこの場合は裁判官がやるのであります。裁判官が三人の場合もありましようし、五人の場合もあるかもしれないけれども、その具体的な措置に対していろいろな行為がなされるのでありまして、「裁判所又は裁判官」ということになれば、私どもは見なれておりますからわかりますが、しかし実際上裁判所そのものが審理をする、いろいろな手続を担当して、それを執行するようなことはない。観念上あつたといたしましても、具体的な行為はその裁判所を構成する生きた人間としての裁判官によつてやられる。そういう具体的な出方に対していろいろな反対的な対抗的な措置、行動というものがあつて、その行為の価値判断がこれでなされて行くのではないか。これ以外に裁判所の侮辱制裁ということは私には考えられないのでありまして、むしろこういうやり方であるならば、一般的に法廷を侮辱したとかいうことになつて行けば、よしあしは別としてはつきりする。法廷を侮辱したことが、理論的にそれは裁判所を侮辱したということになつてもならぬでも、そういうふうにした方が具体的ではないのですか。私がこんなわかり切つた事柄をここで問題にいたしますのは、裁判所というような抽象的な文字を使つておりまするが、第二條の、次に続く言葉を見ると、その裁判所云々というような事柄があまり抽象的になり過ぎておるし、これは刑罰の法規としては不適当なものてはないか、こう思います。
#50
○野木政府委員 御質問の趣旨がややわかつたような気持がいたしますが、この第二條の冒頭に掲げてある「裁判所」、まずこの意味でございますが、一番典型的な場合は、たとえば刑事、民事で事件を審判する受訴裁判所、これは具体的の場合におきましては、必ず三人の裁判官あるいは一人の裁判官をもつて構成せられることになつております。第二條の下の方を見ておりますと、そういう裁判所が「法廷又は法廷外で事件につき審判その他の手続をするに際し、」とありますから、第二條の「裁判所」は、訴訟法上の裁判所であるにしても、いかにも一人の裁判官あるいは三人の裁判官で構成せられた抽象的な裁判所のように考えられますが、あとの方との結びつきにおいて考えますと、この裁判所というものは、結局裁判所が法廷において審判その他の手続をするに際しということになりますと、必ず三人の裁判官なりあるいは一人の裁判官で構成せられた具体的の裁判所になりますので、従つてその構成をしておる裁判官の職務執行中、その職務執行の場面において、その裁判官をあるいは罵倒しあるいはその裁判官の職務の執行を妨げ、結局それが裁判所を侮辱しあるいは裁判所の職務の執行を妨げたということになろうと思います。なおその裁判所が主宰しておる法廷におきまして、たとえば裁判官でなくして、検事を大いに罵倒するとか、あるいはその他裁判所書記官を大いに罵倒するというような場合も、そのときの法廷全体から見て、その裁判所が主宰するその手続においてそのような暴言を吐き拠るいは暴行をするというようなことは、結局その裁判所の主宰する手続を妨害し、ひいてはその裁判所を侮辱するということになる場合も相当あろうかと思いますので、法廷の侮辱ということと、実際の場面においてはそう違つて来ないのじやないかと存ずる次第であります。
    〔鍛冶委員長代理退席、委員長着席〕
#51
○加藤(充)委員 そこでさつきの問題に関連してのお尋ねでありますが、審判その他の手続をするに際し、これを妨げ、その命じた事項を行わず、そのとつた措置に従わずというこれらのことは、一体どういうことになるのか。また「その他裁判所の威信を害する行状をした者」こういうことになつておりますが、さきにあげた名誉毀損罪あるいは侮辱罪、公務執行妨害、審判妨害罪の規定及び裁判官の訴訟指揮権の行使としての法廷警察力の執行ということとの関連で、この第二條の今指摘しました行為が特に処罰されなければならないということについてお聞かせ願いたいと思います。
#52
○野木政府委員 御質疑の中の「その他の手続をするに際し、」というのはどういうことかと申しますと、たとえば法廷外で検証手続をしたり、証人尋問手続をしたりする場合、または先ほど申しました勾留開示の手続という場合がこれに当るわけであります。「その面前その他直接に知ることができる場所」というのは……。
#53
○加藤(充)委員 それはわかります。
#54
○野木政府委員 それでは省略いたしまして「これを妨げ、」と申します「これを」というのは、事件につき審判その他の手続をするに際し、その手続を妨げるという意味であります。
#55
○加藤(充)委員 それはどういうことですか。
#56
○野木政府委員 たとえば公判手続中におきまして、拍手をしたり、足を踏み鳴らしたり、あるいはがやがや騒いだりして訴訟の円滑な進行を妨げるというような者がこれに当るわけであります。
 次に「その命じた事項を行わず、その執つた措置に従わず、」と申しますのは、裁判所が、たとえば退廷命令を出し、その他ある行為をしている者にそれを中止しろというような命令をするとき、そういう命令を無規してこれに従わないという場合がこれに当る典型的な場合であります。「その執つた措置に従わず、」と申しますのは、たとえば法廷で申しますと、裁判所が傍聴券を発行してそれを持つている者のみを入廷させるというような措置をとつていた場合に、これを無視して傍聴券なしに入つて来たという者や、あるいは検証現場で、なわでも張つて検証中ここから中には立ち入つてはいけないというような措置を裁判所が係に命じてとらせていた場合に、それを無視してその措置に従わないというような場合が考えられるのではないかと思います。
 また「裁判所の威信を害する行状をした者」と申しますのは、たとえばこのごろよく各地にあるそうでありますが、公判廷で退廷を宜してまさに裁判官がドアを排して法廷から出ようというような場合に、背後から売国奴裁判官とかなんとかいろいろきつい言葉でこれを罵詈誹謗するというような者などはこれに入るのではないかと存ずる次第であります。
#57
○加藤(充)委員 時間がないので第二條の字句の解釈だけを承りたいと思います。今指摘したようなもの、たとえば退去を命ずる場合、退去しないといつてもなわつきで警察はそこにおるのじやないですか。またそれは増強されておるのではないですか。そういう場合に退廷しなかつたから、退廷を拒んだからこれを処罰するというようなことは思い上りもはなはだしい。なぜならば退廷を命ぜられたまま審判を受けるということは、被疑者ないし被告にとつては重大なる利害の問題なのであります。そういうことをしておいて、しかも警察を配置しておいて、万般の用意をしておいて、それで退廷しなかつたから、命令を聞かなかつたからというだけで出しておいて審判しますか。出しておいて審判はできないでしよう。警察はあるでしよう。そこでどこかに引きずり出してしまつたというような場合には、不出頭のまま審判を受けることがあり得る。そういうことをやつている。それに警察官や何かに退廷を命ぜられれば、警察官に取巻かれておるのですから、退廷を拒んだつて拒み切れはしない。こういうようなことは都合がよいことかもしれませんし、あつてじやまにならぬかもしれませんが、被疑者、被告にとつてはまことに気の毒だし、人権蹂躪もはなはだしいものが出て来ると思うが、この点どうですか。
#58
○野木政府委員 ただいま御質疑の点は、被告及び被疑者を主体にして申されましたが、法廷の秩序を乱したりする者は、そのほかに傍聴人等も最近の事例におきましては多々あるようでありまして、傍聴人などにつきましては、ただいまの御質疑の点は当らないのではないかと存ずる次第であります。
#59
○加藤(充)委員 傍聴人に対してだつて退廷命令はできるし、退廷命令が出たら、もう待ち構えたように――武装警官が法廷の中にだつて入つておりますよ。私服だつて入つておる。私服でももちろんピストルを持つておりますよ。そういうものが来て引きずり出して行く。広島で被疑者が勾留開示のときに逃げた、警察官がたくさんおつて、だれかがピストルでもぶつぱなしたり、なぐりつこでもしたかと思つたら、していない。広島で被疑者に逃亡されたから裁判所侮辱制裁法でもやらねばならぬといつておるが、一つも理由にならぬ。あなたの説明がからまわりしていて何もわからない。傍聴人は被告人ともちろん違うが、これは公務執行妨害もあるし、審判妨害だつて傍聴人には適用にならないという法律の解釈を、私はまだ聞いたことがない。まつたく権力の中で、具体的な武装された力の中で行われる法廷、ここで具体的な問題があつたら、問題によつては審判妨害になるだろう。広島の例のごとく、何もしないうちに逃げてしまつたというのは、被疑者が悪いのでなくて、裁判所と警察がぼんくら過ぎるからだ。それでは警察にたくさん武装警官を配置するということの意義が死んでしまうじやないか。警察官にただ月給を拂つているわけじやありません。こういう警察をなんぼでも必要なだけ、裁判所の命令なり、裁判所の要請で配置ができるというような規定があるのに、なぜこれで処罰するというのか、わけがわからぬ。審判妨害罪もある。その他の法律の罰條もある。しかしこれなんか何か私はわからぬので、あとて聞こうと思うが、監置は、監置場に留置するということで、つかまえていきなり引つぱつて来て警察署にぶち込んでしまつたり、どうなるのです。それよりすごいものができるならいいけれども、内容から見ると、本質はすごいけれども、何だかふろの中でへをひつたような形のものになつて来るので、これでは対策にならぬと思うが、どうですか。これで対策になるとすれば、さつき言つたように、公務執行妨害罪にも、審判妨害罪にもならぬやつをこれでひつくくるということがねらいである。私がへのつつぱりにもならぬと言つたことで、そうでないと言うならば、実はこういうことで、こういう実益があるんだということを説明してくださらなければ、私の言つたことが暴言かもしれぬけれども、どうも意味したことは、私の方が正しいと思うがどうですか。
#60
○野木政府委員 裁判所侮辱制裁法案が、あまりすごい法案じやない、大した法案じやないというような御意見もありましたが、見方によれば、百日以下の監置、五万円以下の過料というような制裁でありますから、威力がないと言えばそう言えるかもしれません。しかしてこの法案は万能薬ではないのでありまして、この法案が出たら、今各地にある法廷闘争と申しますか、法廷の秩序を乱す行為が、立ちどころになくなつてしまうというまでのことはないだろうと存ぜられますが、しかし、この法案が出れば、他の措置と相まつて、少くとも今よりは法廷の秩序を維持するということに役立つことは間違いなかろうと存ずる次第であります。
#61
○加藤(充)委員 五時も過ぎましたから、私の質問は留保して、本日はこれで終ります。
#62
○佐瀬委員長 本案に対する質疑は、本日はこの程度にとどめ、明日午後一時より会議を開きます。
 本日はこれにて散会いたします。
    午後五時五分散会
ソース: 国立国会図書館
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