くにさくロゴ
1951/06/06 第13回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第013回国会 法務委員会 第64号
姉妹サイト
 
1951/06/06 第13回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第013回国会 法務委員会 第64号

#1
第013回国会 法務委員会 第64号
昭和二十七年六月六日(金曜日)
    午後三時三十四分開議
 出席委員
   委員長 佐瀬 昌三君
   理事 鍛冶 良作君 理事 田嶋 好文君
   理事 山口 好一君 理事 中村 又一君
      安部 俊吾君    北川 定務君
      高木 松吉君    高橋 英吉君
      古島 義英君    松木  弘君
      眞鍋  勝君    猪俣 浩三君
 出席政府委員
        法務政務次官  龍野喜一郎君
        検     事
        (法制意見第四
        局長)     野木 新一君
        中央更生保護委
        員会事務局長  齋藤 三郎君
 委員外の出席者
        判     事
        (最高裁判所事
        務総局刑事局
        長)      岸  盛一君
        専  門  員 村  教三君
        専  門  員 小木 貞一君
    ―――――――――――――
本日の会議に付した事件
 裁判所侮辱制裁法案(田嶋好文君外四名提出、
 第十回国会衆法第四七号)
    ―――――――――――――
#2
○佐瀬委員長 これより会議を開きます。
 裁判所侮辱制裁法案を議題といたします。質疑を行います。質疑の通告がありますのでこれを許します。古島義英君。
#3
○古島委員 これは提案者に聞くのがあたりまえだと思うのでありますが、監置処分にするわけですが、監置処分にするということは、拘留などとどれだけ違うのですか。監置ならばこういうふうなゆるみがある。拘留ならば、こういうふうな厳格さがある。何かそこに区別があるのかどうか。その区別を明瞭にしていただきたい。
#4
○田嶋(好)委員 提案者としてお答えいたしますが、これは非常に法律的な問題にもなりますので、その専門的な立場から法務府の局長にその点はお答えいたさせます。
#5
○野木政府委員 監置と拘留の実質的に異なる点は、どこにあるかという点でございますが、拘留、すなわち刑法に刑罰として定めてあります懲役、禁錮、拘留、その拘留との区別を申し上げますと、ただいま申し上げます拘留でございますが、これは刑罰であり、監置は刑罰でない。秩序罰でありますが、その内容といたしましては、監置に処せられた者に対しましては、労役を科し、教護を施すような刑罰的色彩を有するものは全然行わないで、衛生上特に必要ありと認められるときのほかは、その意思に反して頭髪を刈つたり、ひげをそらしたりすることはないようにしてあるのであります。そうしてこれらの点は、未決拘留のいわゆる勾留に準じて考えておるわけであります。しかし一面監置は、無罪の推定を受けておる未決拘留と違いまして、制裁の一部でありますから、刑罰である拘留に準じて考えるべき点もございます。その点は秩序維持等のために、たとえば被告人には認められています糧食の自弁とか、無制限の接見とか、信書の授受、この点につきましては秩序維持の点を、監置につきましては重く見まして、糧食は官給とし、接見と信書は、特に必要ありと認める場合のほかは、親族でない者とはこれをなさしめないことにしてあります。なお規律に違反しました場合の懲罰につきましては、これは刑罰たる拘留と異にいたしまして、無罪の推定を受けておる被告人の未決拘留の場合と同様に、七日以内の減食の懲罰もこれを科してはならない、こういうことになつております。その処遇の内容におきましても、自由刑のうちで一番軽いものとされておる拘留よりも、ずつと緩和した処遇を考えておる次第であります。
#6
○古島委員 私はあえて法的効果を承つておるのではないのであります。私の聞くのは、実質的に、拘留はどういうふうなことをやるから拘留である。監置はこういうことであるから監置なのだ。そういう実質的の差異があるかどうか。もちろん拘留よりは寛大な処置が願えることだと思うのです。あなたも今御答弁になつたように、ひげをそることはできる、接見を自由にすることができるというならば、家族の人を呼んで朝から晩まで接見をして、お互いにむだ口をきいておつても、一向さしつかえないような程度まで緩和するのかどうか。それも、必要があれば面会させるというので、必要がなければ面会させないのか。その辺はどうなのか。実質的に話してください。
#7
○野木政府委員 具体的の場合といたしまして、接見の事柄が今上りましたから、これにつきまして述べますと、この監置については、接見は規律維持の必要上拘留囚の場合に準じて考えておりまして、特に必要ありと認められる場合のほか、親族にあらざる者の接見をなさしめないことができるというような内容になつております。ただ監置と拘留とは、文字を使いわけたというだけではありませんで、ただいま申し上げましたように、処遇の内容が異なるのみならず、私どもといたしましては、懲役、禁錮、拘留というのは、国民感情の上におきましても、すでに長年、刑罰として観念せられておるところでありまして、この監置というものは、新しく考えられた制度でありまして、一つの秩序罰の体系のうちに包含して考えておりますので、国民感情のうちにおいても、おのずからそこに差異があるものと考えておる次第であります。
#8
○古島委員 世間ではどういうふうに考えるかしらぬが、監置処分を受けた者と拘留処分を受けた者と、受けた者からいうならば、一向差異がないと私は思う。一方も必要があるならば、面接をさせるという。必要があれば面接させるのは当然です。しかもこれは秩序罰であつて、刑罰でないからというからには、さらに一段とこれが緩和されたものでなくんばならないと思う。初めてやるのだから、こういうふうだといいますが、初めて設けた監置処分なるがゆえに、それを明瞭にしておかなければならぬ、拘留と一向かわらぬことであり、しかも場所も監置所というものを別にこしらえないで、刑務所を代用に使うというならば、これはもうその監置される者個人から考えれば、自由を束縛される点においては労役には服さぬが、ほとんど懲役と一向かわらぬ。こういうふうな厳重な処分を、わずかに侮辱いたしたとか、わずかに秩序を乱したというだけをもつて処分するということは、あまりに苛酷だと私は思う。そこで、初めて設けるというのだから、こういうことも許される、ああいうことも許されるのだということで、監置はきわめて寛大なものだということを、あなたの方は明瞭にしなければならぬと思う。すなわちひげをそる自由がある、あるいはタバコを吸う自由がある、酒を飲む自由があるというように、どの点までは自由が許されるのであるが、どの点から以上はいかぬというのでなくんば、これは拘留と一向かわらないと私は思う。そこはどうですか。酒は飲めるか。タバコはのめるか。接見は自由にできるか。どこが違うのですか。そこを具体的に承りたい。
#9
○野木政府委員 ただいま刑務所の例が出ておるわけでありますが、現在の刑務所の制度のもとにおきましては、刑務所には懲役、禁錮、それから拘留囚のほかに、刑罰でない、すなわち無罪の推定を受けておる未決拘留中の者も刑務所に収容されておるのでありまして、これらは広く在監者と監獄法では呼ばれておりますが、こういう刑罰でない未決拘留囚につきましても、現在は「酒類又ハ煙草ヲ用ウルコトヲ許サス」、こういう規定になつておるわけであります。この監置は秩序罰とは申しましても、一つの制裁でありますから、未決拘留よりもさらに寛大にするということはいかがかと存ぜられますので、酒、タバコなどを自由に吸わせるというまでの処遇には考えておらないわけであります。
#10
○古島委員 どうもこういうことを押問答しますと、いかにも私がくどいように聞かれて残念なのだが、どうしても明瞭にしておかなければならぬことは、あなたの言う今の未決拘禁でもこれは酒は飲ませない、タバコはのませないといわれるのでありますが、未決拘禁は、私が申し上げるまでもなく、あるいはこれが有罪になつて懲役になるかもわからぬ、もしくは死刑になるかもわからぬ、こういうことが予測されておる事件です。ところが監置処分は、監置処分というものの言い渡しを受ければ確定したのです。確定して監置される。その確定されたる監置者、監置されている者と、拘留処分になつて拘留されている者とどこが違うかということを、私は聞いておるのであります。監獄則で片方は、タバコものませない、酒も飲ませないことになつておるからそれに準ずるというのなら、それに準ずるでよろしいが、監置と特に名前をつけて、いかにも寛大らしくここに表示したのは、どういう意味か。監置はこれだけの自由がある。拘留よりは楽だということで、これが監置だということがなければならない。ただ一方において、刑事罰と秩序罰、これは法律的には刑事罰であつても、秩序罰であつても、そのやられる者からいえば同様の苦しみを感ずる。いわゆる人権を擁護する意味において、どれだけの自由を許されるかということを明瞭にしておきたいから、私質問するのです。ほかのことは言わぬでもよろしい。そこだけをあなたは答言えていただきたい。
#11
○野木政府委員 この案におきましては、監置の処遇の具体的内容は、附則の第二項の監獄法の一部を改正するという点に盛られておるわけでありますが、この立て方によりますと、一口に申しますと、無罪の推定を受けておる、いわゆる未決拘留囚と、それから刑罰であります拘留囚との中間の処遇をとつておるわけでありますが、その理由は先ほども申し上げましたが、これは秩序罰でありますので、拘留処遇よりも軽くなければならない。しかしながら、やはり制裁でありますから、ある程度規律維持の点におきましては、全然未決拘留である被告人と同じにするわけにも行きませんので、たとえば接見とか信書の授受、それから糧食、それから衣類等につきましては、これは拘留囚に準じて考えておる。教誨とか、それから衛生上からの頭髪を刈るとかという点、それから懲罰の点、これは被告人と同じように考えておる。その他の点につきましては、普通の被告人と同じ処分になる。被告人の処遇も拘留囚の処遇も、その他の点については同じでありますから、これもその他の点については同じである。そういう立て方であります。
#12
○古島委員 この、裁判所を侮辱するとか、あるいはまた秩序を乱すとかいうような事案が起つた場合には、その被疑された者は、弁護人を選任する期間がありますか。
#13
○野木政府委員 この案の立て方におきましてはいわゆる裁判所侮辱行為を処罰するのは、裁判所の秩序を維持七、その威信を高からしめるものでありますので、原則として、その裁判所がその場所なりその機会の継続中に処罰するというのを原則といたしますので、そこに、たとえば被告人等の場合におきまして、弁護人でもおつた、あるいはすぐ手近に弁護人の助力を借り得るという場合ならば、この手続の迅速な処理を特に妨げない限りは、弁護人の助力を借りるということに従わないわけではございませんが、弁護人がなければ、この裁判所侮辱に当る事件の制裁を科することができないというほどまでの強い立て方には、この法案はなつていないものと存ずる次第であります。
#14
○古島委員 そこで重大な問題が起るのです。拘留処分ならばいかに簡単なる拘留処分でも、それを受ける前には弁護人を選任することができるのです。そうしてこの監置処分にされるという場合には弁護人を選任する機会がない。しかも効果はどうかというと、監置処分も拘留処分も実質的にはかわりがないという。そうすると、一ぺんこの皮をむいて考えると、一方は防禦する方法がないので、効果は同様の効果がある。まず罰せられる方から言うならば、自由を束縛される。一方は弁護人を選任する機会があり、攻撃、防禦の方法が十分講じ得られるので、同様の結果を来す、こういうのですから、同じ効果を生ずるのに、一方は弁護人を選任する機会さえもない。そうして多くは即決で、そういうふうな二十日間という長い期間の自由を束縛されてしまう。ここで監置はかように楽なものである、拘留はかように苦痛なものであるということのけじめをつけておかなければならぬと思うのですが、けじめのつけ方は別にありませんか。
#15
○野木政府委員 未決拘留の意味の拘留の場合につきましては、弁護人は選任する機会を与えるという規定になつておりますが、それとこの場合と事の性質において少し違うのじやないかと存ずる次第であります。この案にとつております裁判所侮辱は、どこまでもいわゆる直接侮辱という範疇に属するものでありまして、裁判所なり、裁判官の面前とか、直接することができるその場所で行為が行われたということでありますので、事柄といたしましては、犯罪の嫌疑があつたということで警察官なりが逮捕して来て、それを間接にいろいろの証拠で調べて拘留状を発する場合と非常に異なる点があるものと存ずる次第であります。それが一つと、それから二つには、この制裁自体が刑罰の場合と比へて非常に軽微であるということ、それからこれが一つの一番大きな本質的な理由になるかもしれませんが、この裁判所侮辱制裁法という制度が考えられますのは、国民の権利を守るための裁判所の機能は、円滑に権威を持つて行われる、そういう大目的を妨げる行為を迅速に処理して、そして本来の大目的を達成しようという点にありますので、この裁判所侮辱制裁を科する手続が普通の刑事手続と同様に煩瑣なものであつてはその目的を達しがたいという点もあるのでありまして、これは一つのきわめて特異な場合に当るものと存ずる次第であります。
#16
○古島委員 御答弁のお考えはよくわかるのだが、ほかのことを私は聞いておるのじやないのです。今まで拘留というものはあつたのだが、監置というものは従来なかつた。このなかつたものをここで創造するのだから、創造に先だつて、監置というものはこういうものだということにして、将来これに類似した法律が出た場合に監置というようなことが出て参るかもしれぬ。そこで初めてここにこしらえられる法律であるから、しかも監置処分というのは初めてやる処分であるから、これはどこか違うようなことにしておかなくんば、実質的には同様だというようなことでは相ならぬと思う。実際は処分の形式、その苦痛の程度が違うのだということを明瞭にしておいて、今後もこれを援用する場合があり、今後も監置というようなことが出て参る場合もあるかもしれぬから、今日ほんとうに今までなかつたものを創造するがゆえに、一応考えておいたらどうだ。そこであなたに拘留と監置とのけじめをつけ、実質的にはこういうところが違うのだということを言うていただいておいて、将来の参考にする必要があると思う。
#17
○田嶋(好)委員 事務当局から専門的なお答えがあつたわけでありますが、私たち立案者の気持といたしましては、監置は拘留とまつたく違つた制度機構のもとにやりたいという気持で立案したのであります。そこで監置場等も刑務所に収容しないで特別な施設を設けるという方針で進んで参つたわけであります。現在の予算面からいたしまして、急速にこの法案成立と同時にその設備ができない。そこで今われわれの考えといたしましては、いずれ予算を獲得する場合、監置場は当然現在の刑務所と分離してやるべきであるという気持を持つております。とりあえず全国にそれをつくることができませんので、今の話合いといたしましては、東京、大阪、名古屋というようなところに、予算さえできれば持つて行きたい。こういうような気持で監置と拘留をまつたく違つた気持で取扱い、また制度上もそうしたいということで苦心をして来たわけであります。
#18
○古島委員 あなたのお考えは、人権の問題にはまつたく何らの御考慮をめぐらしていただけないのであります。予算がとれたら監置場をこしらえるというが、予算のとれるまでの間は相当期間があります。その前にこの監置処分を受ける人が出て参る。そうすると、この予算のとれる前に監置処分が出て参ることになると、これは刑務所へつながれることになる。予算がとれないから執行しないというわけには参らぬでしよう。そうすると、同じ監置処分を受けても、甲のときには刑務所につながれたが、乙のときには別の建物につながれたということになる。そうすれば、予算のとれるまでの間この法律を施行しないというだけのお考えがありますか。
#19
○田嶋(好)委員 これは提案者といたしましてほんとうの気持を申し上げたわけなのであります。お説の点は種々ごもつともで、私もその点について考えなかつたわけじやありません。しかし一応現在の状況としてはやむを得ないということにしてこの法案の成立を考慮しようじやないか。お気持は十分わかつておりますし、その気持で実は進んでおります。しかし現在の状況をもつてしてはこれ以外にない、こういうことであります。
#20
○古島委員 最後に私から申し上げますが、監置処分は面接も自由にやれる。つまり必要があればというような制限を置かずに、自由にやれるということにし、酒は許すというわけには参なぬが、タバコぐらいはのめるくらいにして――タバコの自由があり、そして構内を散歩するくらいの自由があり、そして面接の自由があるというくらいな緩和した監置ということにするわけに参らないか。そこだけを拘留に比してゆるみをつけておくわけには参りませんか。
#21
○田嶋(好)委員 これは現在の監獄法その他の改正問題にも及びます。従つてすぐにこの法案と同時にその原則を確立するということは、影響するところが大でございますのでできませんが、御趣旨のことを十分体しまして――これは私たち立案者のこの法案の立案とは違つたことになりますが、法務委員会として今後そうした面に法案が改正されるように法務府その他関係当局と話し合うということをお約束申し上げて御了解を得たいと思います。
#22
○古島委員 わかりました。
#23
○佐瀬委員長 他に御質疑はございませんが。――なければ、本案に対する質疑はこれにて終局いたしました。
 次に、本案に対する修正案が鍛冶良作君より提出されておりますので、その趣旨説明を求めます。鍛冶良作君。
#24
○鍛冶委員 裁判所侮辱制裁法案の一部を次のように修正する。
  題名を次のように改める。
   法廷等の秩序維持に関する法律
  第一条を次のように改める。
  (この法律の目的)
 第一条 この法律は、民主社会にお
  ける法の権威を確保するため、法
  廷等の秩序を維持し、裁判の威信
  を保持することを目的とする。
  第二条の見出しを「(制裁)」に改
 め、同条第一項中「これを妨げ、そ
 の命じた事項を行わず、その執つた
 措置に従わず、その他裁判所の威信
 を害する行状をした者は、裁判所侮辱とし、」を「秩序を維持するため裁
 判所が命じた事項を行わず若しくは執つた措置に従わず、又は暴言、暴行、けん騒その 他不穏当な言動で裁判所の職務の執行を妨害し若しくは裁判の威信を著しく害した者は、」
 に、「百日」を「二十日」に、「五万円」
 を「三万円」に改める。
  第三条第一項を次のように改め
 る。
   前条第一項の規定による制裁
  は、裁判所が科する。
  第三条第二項中「裁判所侮辱」を
 「前条第一項」に改める。
  第四条中第二項を第三項とし、第
 三項を第四項とし、第一項を次のよ
 うに改める。
  制裁を科する裁判は、決定です
  る。
 2 前項の裁判は、第二条第一項に
  あたる行為が終つた時から一箇月
  を経過した後は、することができ
  ない。
  第五条第二項及び第三項中「原裁
 判をした裁判所」を「原裁判所」に
 改める。
  第六条第三項中「前条第三項」を
 「前条第二項前段及び第三項」に改め
 る。
  第七条第六項中「第四条第三項」
 を「第四条第四項」に改め、同条第
 七項を次のように改める。
 7 監置の裁判の執行は、当該裁判
  があつた時から三箇月を経過した
  後は、開始することができない。
 8 監置の裁判を受けた者につい
  て、当該裁判の執行によつて著し
  く健康を害する虞があるとき、そ
  の他重大な事由があるときは、裁
  判所は、本人の請求又は職権によ
  り、当該裁判の執行を停止するこ
  とができる。
  第八条中「裁判所侮辱に係る事件
 の手続その他について」を「制裁を科
 する裁判に関する手続その他の」に
 改め、同条を第九条とし、第七条の
 次に次の一条を加える。
 (補償)
 第八条 制裁を科する裁判につき、
  第五条文は第六条の規定により取
  消の裁判を受けた者が、すでに当
  該制裁を科する裁判の執行を受け
  た場合には、その者は、国に対し
 て、当該制裁を科する裁判の執行
  による補償を請求することができ
  る。
 2 前条第二項の収容状による抑留
  は、前項の規定の適用について
  は、監置の裁判の執行とみなす。
 3 第一項の規定による補償につい
  ては、無罪の裁判を受けた者の補
  償に関する刑事補償法(昭和二十
  五年法律第一号)の規定を準用す
  る。補償決定の公示についても同
  様である。
  附則第三項を次のように改める。
 3 法務省設置法(昭和二十二年法
  律第百九十三号)の一部を次のよ
  うに改正する。
  第八条中第六号を第七号とし、第
  五号の次に次の一号を加える。
  六 法廷等の秩序維持に関する法
   律(昭和二十七年法律第
   号)により監置に処せられた者
   に関する事項
 以上であります。
 次いで裁判所侮辱制裁法案の一部を
 修正する理由を説明いたします。
 修正の要点は、次の六点でありま
 す。以下順次にその説明をいたしま
 す。
一 先ず第一点は、題名及び第一条の
 規定の修正についてでありますが、
 これは、本法案は、制裁によつて
 個々の裁判所または裁判官の威信を
 保持するためのものではなく、民主
 社会の存立の前提である法の権威を
 確保するためには、法廷等の秩序を
 維持し、裁判の威信を保持する必要
 があり、本法案は、その目的の達成
 をはかるためのものであることを明
 確にしようとするものであります。
二 第二点は、第二条第一項の規定の
 修正についてでありますが、これに
 よりまして、制裁を科すべき行為を
 一層明確具体化するとともに、制裁
 の限度を適当に低減しようとするも
 のであります。すなわち、制裁を科
 すべき行為は、秩序維持のために裁
 判所が命じた事項を行わずもしくは
 とつた措置に従わない行為または暴
 言、暴行、けん騒その他不穏当な言
 動で裁判所の職務の執行を妨害しも
 しくは裁判の威信を著しく害した行
 為に限ることとし、制裁の限度は、
 その秩序罰たる性質にかんがみ、監
 置については、その最高限度を二十
 日に短縮し、これに対応して過科の
 最高限度についても、これを三万円
 に低減したのであります。
三 第三点は、第三条第一項の規定の
 修正についてでありますが、本法案
 による制裁は、制裁を科すべき行為
 が行われた際に、これを現認した裁
 判所が時機を失せず早急にこれを科
 する場合が多いでありましようが、
 場合によつては、当該裁判所以外の
 裁判所がこれを科するものとするの
 が適当であると考えられますので、
 制裁を科する裁判所を特に当該裁判
 所に限定しないこととしたのであり
 ます。
四 第四点は、第四条に制裁を科する
 裁判をすることができる期間を定め
 る規定を第二項として、第七条に監
 置の裁判の執行開始の期間を限定す
 る規定を第七項としてそれぞれ新た
 に加えたことについてであります。
 本法案による制裁は、すみやかにこ
 れを科し、その執行に着手すること
 によつてその目的を達成し得べきも
 のであることにかんがみまして、か
 つ、制裁を科せられるべき行為をし
 た者をいつまでも制裁を科せられる
 かいなかの不安定な状態に置いてお
 くことを防止する趣旨に出たもので
 あります。
五 第五点は、原案の第七条第七項の
 制裁の執行免除に関する規定を削
 り、新たに第八項として監置の裁判
 の執行停止に関する規定を新たに加
 えた点についてでありますが、裁判
 所が一旦科した制裁についてみずか
 らその執行を免除し得る制度を認め
 ることは、かりにその運用が寛に失
 することがないものとしても、制裁
 が法廷等の秩序を維持し、裁判の威
 信を保持する目的のために科せられ
 るものであることにかんがみ相当で
 なく、むしろ監置の制裁を科する裁
 判の執行によつて本人の健康を著し
 く害するおそれがあるとかその他重
 大な事由があるときに限つて、その
 執行の停止を認めるものとするのが
 適当であるとの趣旨に出たものであ
 ります。
六 第六点は、制裁を科する裁判につ
 いて、取消しの裁判があつた場合
 に、補償を認める規定を新たに第八
 条として加えた点についてでありま
 すが、刑罰の場合について補償の制
 度を認めたのと同様の考え方から、
 本法案による制裁についても補償の
 道を開くのが相当であるとの趣旨に
 出たものであります。
 修正の主要な点は以上の通りでありますが、その他に右の修正等に伴いまして、必要な若干の字句の訂正整理を行いました。
 以上、本法案に対する修正の要旨を説明いたしました。何とぞ御賛成あらんことを希望いたします。
#25
○佐瀬委員長 ただいま聴取いたしました修正案に対し、質疑の通告がありますのでこれを許します。猪俣浩三君。
#26
○猪俣委員 これは修正案でも前の案でも同じことでありますが、念のために裁判所説明員の方に確かめておきたいと思いますが、これを実行なさる際に第二条の秩序を維持するために、裁判所が命じた事項を行わず、もしくはとつた措置に従わずということは、裁判所法の第七十一条のこのことを意味するのであるか、七十一条以外のことも含めてあるのでありますか。七十一条に基いてやつたことに対して従わぬ場合、あるいはその命令に従わぬとか、とつた処置に従わぬというのは、七十一条の命令の処置のことをいうのであるか、そこをひとつ確かめておきたいと思います。
#27
○岸最高裁判所説明員 その点は仰せの通りでありまして、七十一条に規定する処置をとつた場合と考えます。
#28
○猪俣委員 それから本法と裁判所法の七十三条との関連でありますが、本法によりまして監置あるいは過料の制裁があつたといたしましても、七十三条の審判妨害罪というものが別に成立することになるのでありますか、その点についても確かめておきたいと思います。
#29
○岸最高裁判所説明員 その点につきましても、仰せの通り、七十三条はまた別個に考えられるわけであります。
#30
○猪俣委員 そうすると本法によりまして監置しておる間に、七十三条において起訴せられるということになりますと、今度は監置者が執行の状態においてどういうふうに転換するのでありますか、これを御説明願いたいと思います。
#31
○岸最高裁判所説明員 本法によつて監置されたものについて、七十三条の審判妨害罪によつてかりに公訴が提起されるということになりますと、それ以後は刑事訴訟法の手続に従つて手続が進められることになると思います。
#32
○猪俣委員 そうすると二十日間監置されておるものが、十五日に公訴提起せられたとすると、あとは未決拘留ということに相なるわけですか。
#33
○岸最高裁判所説明員 そういう場合には、監置の執行が終ると同時に、公訴の提起がなされる、おそらくそういう運用になろうと思うのであります。その後は普通の刑事訴訟の手続に従つて、刑事訴訟法上の理由がなければ拘留ということはできませんし、あとは一般の刑事手続に従つて手続が進められることになろうと思います。
#34
○猪俣委員 そうすると、監置服務中公訴提起せられて、刑事訴訟法上の拘留の理由があるという場合においては、それが十五日になつたのであるが、五日間はなお監置の執行を受けておいて、それが済んでからあらためて刑事訴訟法に従つて未決拘留になる、こういう説明でありますか。
#35
○岸最高裁判所説明員 その監置の制裁について、それを停止するとかなんとかの裁判のない限りは、やはりそういうことになろうと思います。
#36
○猪俣委員 監置というのは、今古島委員がるる質問されまして、私も相当同感な点があるのであります。名前は、率直に言つて――るる政府委員が説明しておりまするけれども、実際は拘留と何ら違いない。ただ拘留というのは伝統的歴史的な響きがあるがゆえに、行政罰の精神を徹底すべく、監置という別な言葉を使つたのだというのが、私は正直な点じやないかと思う。内容においては何もかわつてはおらぬ。そうしますと、審判妨害罪によつて未決拘留に入れられた場合に、監置の執行を終らぬうちは、それが始まらぬということになるとどうも二重に監置せられるようなこと、あるいは身体の自由を束縛せられるようなおそれがあるような気がするのですが、それは一体どういうように調和したらいいのですか。
#37
○岸最高裁判所説明員 この監置とそれから審判妨害罪による刑罰を科する、いわば二重の処罰になりはせぬかという、そういう御懸念からの御質問だと思いまするが、こういう例がはたして憲法の三十九条にいわゆる二重処罰の禁止に当るかどうかという非常にむずかしい問題があろうと思います。その点につきましては、ただいま私からとやかく申し上げる筋ではありませんが、ただほかの立法例におきまして、たとえば刑事訴訟法の中で証人の宣誓違反、出頭義務違反等について、秩序罰としての過料を科する規定とそれから刑罰を科する規定とが両方設けられておるのであります。刑罰と秩序罰との関係は憲法三十九条の規定には違反しないという趣旨でその法律がつくられておるのだろうと思うのでありますが、この問題につきましても、やはりそれと同様に考えらるべきじやないか、さように考えます。
#38
○猪俣委員 その説明には私は疑義がありますが、意見になりますからこれくらいにしておきまして、次にこの監置は秩序罰だというのでありますが、これは一体身分証明書に記載されることに相なるのでありますか、実際はどうなりますか。これは政府委員の説明をひとつお願いしたい。
#39
○野木政府委員 この監置はいわゆる刑罰と違いますので、刑罰を受けた者はいわゆる前科者だ、あるいは刑罰を受けたということは前科だというよう意味合いで、いろいろな身分に関係して来るという場合がありますが、これについては別にそういうことは考えておりません。
#40
○猪俣委員 ちよつとはつきりしなかつたが、もう一度御説明願いたい。
#41
○野木政府委員 この制裁はいわゆる前科と異なりますので、別に措置を講じない限りは、身分証明書とか、いわゆる前科と同様な取扱いにはならないものと存ずる次第であります。
#42
○猪俣委員 それでよろしゆうございます。
#43
○古島委員 私はこの修正案を出した鍛冶君に質問をいたしたいのですが、第一条の裁判の威信を保持するということはどういうことであるか。裁判の威信を保持することを目的とすると書いてありますが、どういうことを意味するのですか。
#44
○鍛冶委員 法の尊厳を維持すると同様の趣旨と考えております。
#45
○古島委員 法の尊厳を維持すると同様だというのですか。
#46
○鍛冶委員 そのように考えております。
#47
○古島委員 元来裁判というものは、判事がやるのが裁判じやないですか。そうすると裁判の威信を害するということをかりに言えば、判事がだらしのない裁判をするということが裁判の威信を害する。また判事が正当な裁判をしたのを、あの裁判は実に常識のない裁判だということで誹謗することになれば別問題ですが、裁判の威信を害するということはほかの者ならできない、不能なことではないですか。
#48
○鍛冶委員 法の命ずるところによつて秩序正しく行わるべきものを、その秩序を破壊して法の命ずるところに従わない場合は、すべて裁判の威信を害したものと、かように解釈いたしております。
#49
○古島委員 しからばあなたの同じ修正案のうち、四条には裁判ということがずいぶん使つてあります。「裁判は、決定でする。」「裁判所は、裁判をするについて」云々、それから「制裁を科する裁判をしたときは」云々、こういうように裁判というのが盛んにありますが、この裁判はどうして威信を害することができますか。同じ法案のうちで第一条の裁判と第四条以下にあるところの裁判とは、裁判の意味が違うのですか。
#50
○鍛冶委員 裁判はいずれも裁判で同じであります。
#51
○古島委員 もし同じであるということになれば、「裁判は、決定でする」というその裁判はどうしてもこれは威信を害することができません。決定でなく、判決は判事がやるものである、ほかの者にはやれない、もしくはまた裁判所が裁判をすることについて必要があれば云々ということになれば、証人尋問ができることになる。その裁判も威信を書することはできますまい。それから制裁を加える裁判ということも、制裁を加える裁判で威信を害することはできますまい。そうすれば、この裁判ということは、少くとも判事がなす決定、判決、その他の制裁をするという、これが裁判じやないですか。その裁判というものは、何人らにもこの判決、決定その他のものを誹謗する以外に威信を害することはできない。しからばこの場合において、どういう決定があるかしらぬ、どういう判決がまだあるかしれぬが、法廷で、傍聴に行つておつて、そんな判決があるかいと言つたとき以外には何ものもない。ところがそんな判決があるかいと言つても、裁判の威信は害されない。裁判は厳然として判事がなしておる。その裁判というものは、判事がだらしのない裁判をする以外には、裁判の威信は害されない。ほかの傍聴者なり被告なりその他の弁護人なりが威信を害することは当然できないのです。第一条には、こういうふうにして裁判の威信を保持するのが目的だというのですが、この書き方をかえて、元の手法の方がいいのじやないですか。
#52
○鍛冶委員 なるほど狭い意味においての裁判ということは、裁判官が宣言をすることです。けれども、ここに第一条にいいまするのは、手続から宣言するまでを含めまして、手続上においてこれを定める場合にも、やはり宣言をする者の威信が害されるものと、かように解して入れたのであります。そのほかに至つては具体的の当該の裁判ということですから、これは宣言するだけのことになる、かように解釈しております。
#53
○古島委員 あなたの言う広い意味、狭い意味の裁判というよりは、かえつて元の第一条「司法の円滑な運用を図ることを目的とする。」というように元にもどした方が、第一条に関する限りいいように思いますが、そうは考えませんか。
#54
○鍛冶委員 尊重すべき御意見と承つておきます。
#55
○北川委員 私もこの際修正案等につきまして二、三の点を明確にいたしておきたいと思います。修正案におきまして、抗告によつて取消しの裁判がなされた場合には、刑事の無罪の判決を受けた場合と同じように、刑事補償法によつて国家に補償を請求することができるという修正案でありますが、まことにけつこうだと存じます。この場合にさらに国家賠償法によつてもなお請求ができると思うのでありますが、この点に関します御見解を伺いたいと思います。
#56
○野木政府委員 この補償法によつてなお損害が十分カバーされず、なおかつ故意または重大な過失によつて監置に処する裁判等がなされたというような、国家賠償法にわたる事由がありますれば、別に国家賠償法によつて請求することができると存ずる次第であります。
#57
○北川委員 次に今度の修正案によりますと、審判の妨害を受けた判事、裁判官だけでなくして、他の裁判官もまた裁判をなし得るという規定になつております。この場合にたとえば嘱託をするような場合もあると思うのでありますが、その他の裁判官がなす場合の手続、書面をつくるかどうか、あるいは嘱託書をつくるかどうかという問題、それから嘱託を受けた裁判官がこれを裁量する権能、それらについて構想を伺いたいと思います。
#58
○野木政府委員 その裁判所が裁判しないような場合には、おそらくその法廷の調書にそれをとどめ、それからその調書を他の裁判をする裁判官の方に移されるということになると思いますが、その詳細は裁判所の規則によつて具体的に手続をきめていただく、そういう考えになつております。
#59
○北川委員 嘱託を受けた裁判官のその裁判に対する決定権ですが、処罰せずという裁判をし得るか得ないかということです。その点について伺いたい。
#60
○野木政府委員 裁判をするわけでありまするから、その裁判をする裁判所はもしこれが第二条に規定する行為に当らないというならばこれは制裁をなさないという裁判をもちろんなし得るわけであります。
#61
○北川委員 最後に一点だけ伺つておきたいのですが、第二条の規定によりますると、一定の行為をなしたものは監置に過料を併科することができる規定になつております。刑法で併科し得る場合はきわめてまれな場合であつて、特に戦争中などの統制法令等には併科規定がたくさん見受けられるようであります。私は併科し得る場合は一定の行為が特に犯情が悪い場合または財産的に不法の利益を得る場合にこの併科規定が設けられているものと思つております。第二条のような秩序罰、行政罰についていかに犯情が悪くてもこれを併科する規定を設けるのはどうかと思うのでありまするが、この第二条につきまして併科規定を設けられたお考えを伺いたいと思います。
#62
○野木政府委員 御質問の点は確かに一理あることとは存じますが、これらの考え方といたしましては具体的の実情に応じて処理し得るように広くいたしたわけでございます。たとえば非常に資産のあるというような人に対しては、場合においては過料はきき目はない。住所不定の人に対しても過料ではきき目がないという場合もありましようし、また場合によつては両方を、すなわち監置と過料を適宜按配して両方科した方が制裁として効果もある場合もあろうと、その辺は一に良識ある裁判所の健全な運用にまとうという考えでありますが、しかし実際のところといたしまして併科するという場合は比較的少いのではないかと存ずる次第であります。
#63
○北川委員 過料と監置の処分とどつちが重いかということになれば、これは監置の処分が重いじやないかと実は思つているのです。この場合に犯情の重いものには監置処分を言い渡せば足りるのであつて、財産犯でもないこの種の軽い秩序罰は、やはり監置または過料に処するでけつこうじやないかと実は思つているのですが、そのどちらが重いかということを伺いたいと思います。
#64
○野木政府委員 やはり事柄の性質といたしましてこの法律の順位はつけてありませんが、自由の拘束である監置の方が制裁の重いものと考えている次第であります。しかしながらこの監置の制裁も期間が短いものでありますから、特別の場合にはそれでも足りないという場合も予想せられないわけではありませんので、例外的ではありまするが、両方併科するという場合もあり得るように規定は広く立案してあるものと存ずる次第であります。
#65
○北川委員 終りました。
#66
○佐瀬委員長 ただいまの質疑をもつて質疑を終局いたしたいと思いますが、他に御質疑はございませんか。――御質疑がなければ裁判所侮辱制裁法案及び鍛冶良作君提出の本案に対する修正案を一括討論に付します。ちよつと速記をやめて。
    〔速記中止〕
    〔委員長退席、田嶋(好)委員長代理着席〕
#67
○田嶋(好)委員長代理 速記を始めて。
 討論の通告がありますから順次これを許します。山口好一君。
#68
○山口(好)委員 私は自由党を代表いたしまして、本法案に関しまする鍛冶良作委員の修正案に賛意を表し、この修正部分を除きました原案に対しまして賛成をいたすものであります。
 現下の裁判の秩序に関しましていろいろと遺憾な事件が頻発いたしております折からにもかんがみ、またアメリカ、イギリスなどの諸外国の在来のこういう点に関しまする立法なども検討をいたしますれば、かかる法案の必要なることをわれわれも痛感いたす一人でございますが、ただ原案につきましては、この裁判所の威信を保持するという点が強調されておりまして、実際はその根源をなしまする法廷の秩序の維持という点がそれに合流するような体裁になつておりまたことは、われわれ遺憾としておつたところでございますが、鍛冶君の修正案によりまして、本案の建て方がまつたく性格をかえまして、その法案の名称におきましても法廷等の秩序維持に関する法律案ということにかわりまして、その内容におきまして、やはり法の権威を維持するその根底となりまするものは、現実問題として法廷の秩序維持がなされなければならぬ。法廷の秩序維持が全きにおいて、初めて公平厳正なる裁判が行われることは理の当然なことであります。さようなる建て方のもとにここに鍛冶君から修正案が提出いたされまして、その修正案に対する一々につきましての批判は申し上げませんが、原案におきまして裁判所の威信ということを土台といたしまして展開されておりましたる遺憾とする点が、この修正によつて大体修正せられ、またこの監置という一種の行政制裁でございまするが、これの持つておりますところの性格、こういうものもはつきりいたしました。従いましてこの裁判は、その処置をなすかなさないかということが長きにわたつて引ずられておつては相ならないというところから、この監置の制裁に関しまする裁判については、ごく短かい除斥期間を設けることとか、また裁判が決定いたしましても、本人の健康その他の重大な事由がありまする場合には執行の停止もできるというようなこともいたし、さらにこの制裁の執行につきましての除斥期間というようなことも設けられまして、万般この監置の制度に対しまする適宜の修正と考えますので、これに賛成をいたすものでございます。なおその修正部分を除きまする原案につきましては支障のないところと考えますので賛成をいたす次第でございます。
 ただここに一言私どもとして申し上げたいことは、裁判所の威信というようなものは、裁判官の高潔なる人格とその熱心なるところの審理と、そうして人権を尊重いたしまするその態度、そういうものによつて今日まで保たれておるのでありまして、今後も万般の事件につきまして、裁判官は国民から高い信頼を受け得るような態度、人格をますます涵養しこれを実行して行かなければならないものと考えまするので、この法案が出ましたためにその態度が弛緩する、あるいはこれを利用して自己の非をおおうというような傾向が見られましたならば、これは重大なことでございまするので、本法案の成立後におきましては、最高裁判所におかれましても、さらに一層下級の各裁判所に周知徹底いたさしめますようにさような点を御注意くださいまして、この法律の成否のいかんにかかわらず、日本の裁判は実に信頼すべきものであるという点にまで今後ともますます高めますることを御努力を願いたいということを一言つけ加えまして、私の賛成の意見表示をいたす次第でございます。
#69
○田嶋(好)委員長代理 中村又一君。
#70
○中村(又)委員 私は本法案の提案者の一人でありますが、本日この委員会に改進党の委員が他に出席をいたしておりません関係から、私はここに改進党を代表して、本法案に対し一言討論を申し上げたいと思います。
 本法案並びに本日提案せられましたる修正案に対しまして、もちろん改進党といたしましては賛成をいたすものであります。そもそも国内の裁判事情を見渡しますると、福島の裁判所に起つたる事件といい、あるいは横浜裁判所に起つたる事件といい、さらに東京における裁判所の問題といい、この姿がこの法案の必要を国民の輿論の裏づけとして求めておるであろうことは、もとより私どもの確信する事実であります。法治国を建前といたしまするわれわれ民主主義国民が法の権成を要求するということ自体は、当然なる私どもの義務であろうと存ずるのであります。従つて裁判官は法律の上に尊重せられまして、裁判の威信をわれわれの手によつて高め、またこれを維持することは、憲法上から見ましても当然なるわれわれの国民的共同責任であろうと思うのであります。従つて裁判官の正当なる裁判上の職務執行にあたりまして、その措置に従わず、または暴言、暴行、喧噪その他の不穏当なる言動で裁判の執行を妨害し、もしくは裁判の威信を著しく害するがごときことがありましたならば、これを処理しまして、平穏なる裁判の進行とその結了を求むるために、法律がそこに一つの制度を設くることは当然な行き方であろうと思いまして、本法案の提案となつたものでございます。修正案では裁判官の法廷警察権に基く行政罰の性質を持たせまして、監置処分としましては二十日以下という軽微な制度を規定いたしておるのでございまするが、私はむしろいま少しく重い方がよかつたのではないかと考えております。私は提案者の一人としてここに意見を述ぶることは穏当ではございませんけれども、この事件が裁判所に起つた場合において、一箇月を経過すれば裁判、審理決定してはならぬという経過規定、いわば時効の規定または二十日以下の監置をする場合に、その決定の執行が三箇月経過した後にはもう開始することができない、むろん刑罰ではありませんから、こういう規定に相なつたものと考えます。
    〔田嶋(好)委員長代理退席、委員長着席〕
そこで裁判官も最も注意をせられ、この法律の運用に考慮を払わなければならない点は、三箇月経過すればその決定した、たとえば二十日以下の監置の決定を執行してはならぬということに相なりますが、病気やその他において執行の停止の規定がありまして、病気病気で三箇月も病気届で経過すれば、最初から執行は行い得ないことに相なるのであります。それでありますから、この執行停止の規定と三箇月を経過した後は執行まかりならぬという規定との矛盾の調整については、この法の運用上最も注意を払わなければ、この法を制定した意味をなさぬということを御注意申し上げておきたいと思います。しかしこういう法律ができたということは立案者といたしまして、いわゆる人権擁護の立場から、なるべく人権を尊重したいということをあまりに強く考えましたために、こういう軽微なものになつてしまつたということも一面考えられるのでございまして、刑罰を科するのがもともとの目的ではなかつたという点にこの法案の大きなる特徴があるということをお考え願わなければなりません。これはどこまでも刑罰を加えるにあらずして、裁判をどうして平穏に進行せしめ、無事に結了せしめるかというところに観点が置かれておるのでありますから、もし裁判を妨害する者があるならばそれを監置しておいて、とにかく平和裡に裁判を行うというところにこれの目的があるのであります。従つてこの法律ができましたならば、裁判官みずからもますますその地位に自覚せられまして、いまだ一件もありませんが裁判官弾劾訴追の手続などに落ち込むような裁判官が全国に一人も出ないように御注意をお願いいたしたいということを申し上げまして、私は改進党を代表して満腔の賛意この法案に捧げるものでございます。
#71
○佐瀬委員長 猪俣浩三君。
#72
○猪俣委員 私は社会党二十三控室を代表いたしまして、この修正案に賛成し、なお修正部分を除いた原案に賛成をいたします。
 自由党及び改進党の諸君が最初出されました裁判所侮辱制裁法案には私は反対するつもりでありました。しかるにその後両党諸君の鋭意なる御研究によりまして、相当進歩的色彩の濃厚な修正案ができましたので、私も賛成する気になつて参つたのであります。両党の御努力に対しては敬意を表します。ただ提案者ならざる党といたしまして、若干の裁判所側に対しまする要望を述べさせていただきたいと存ずるのであります。近来治安立法その他いろいろの法案が出まして、これは相当大衆の反対があることは御存じの通りでありまするが、その根本原因は、結局この法律を施行いたしまするところの官僚に対する不信用から来ているのであります。その法それ自体、正面解釈から来ましたことに対する反対よりも、濫用に陥るのではないかという配慮から反対が強くなるということは事実であります。日本の今までの官僚に対しましては、私どもまだ信用しきつておりません。相当法を拡張解釈いたしまして、できるだけ自己に便利なように法を適用して参りまして、そのために相当の基本的人権が侵害せられて参りましたことは、私が呶々を要せぬと思うのであります。幸いに日本の裁判官は過去におきまして、一般の行政官僚あるいは検察庁のごとき官僚と比較いたしまして、相当民衆の信頼を博して参りました。これは事実だと思います。これは裁判官にもその人を得た点がございましようが、制度がまたあずかつてこれに力があつた。たとえば裁判の原則といたしまして、不告不理の原則あるいは裁判官除斥の原則あるいは弁護権の活用、こういう制度が裁判官をして、とにかく民衆の信頼を博せしめておつたということも過言ではないと考えるのであります。今やかような裁判の大きな原則をすべて超越いたしまして、本法ができ上つておるところにわれわれ非常に危惧の念があるのであります。そこでより一層裁判官諸公におかれましてはその点に留意せもれまして、いやしくも基本的人権を、この権力を振りまわすことによつて蹂躙するようなことが万々ないように、これはくれぐれもお願い申しておきたいのであります。これは本法には明らかになつておりませんけれども、現実の姿といたしまして、これの適用を受ける対象はどういうものであるかと申しますならば、共産党あるいは共産主義者及びその同調者、ほとんどこういう連中に限られるのではないかと考えられるのであります。そこでこういう人たちが裁判所において特に秩序を乱すという根本原因については、よく裁判官諸公も反省せられまして、その原因をよくお考えになつていただきたい。私がこういうことを申上げますることは、近時どうも私どもといたしましてはなはだ首肯できないことが見受けられる。それは全国の裁判官の監督権及び人事権を握つておられますところの最高裁判所の長官の言動というものが、どうもはなはだしく矯激なる言動をなさつておる。裁判官会議その他におきまして、この共産主義者その同調者に対しまする非難というものは、いわゆる反共団体としてのフアツシヨ、右翼団体の頭領の人たちも三舎を避けるような言動をなさつておる。ただいま田中耕太郎氏は、裁判官訴追委員会に八十五名の在野法曹によつて訴追されております。この訴追請求書を読んでみますと、私ども暗然といたします。証拠としていろいろ提出せられておりまする長官の言動というものは、これが一体日本の長官としてかような言動を吐くことが適正なりやいなや、私は田中長官の態度に対しまして、実に不可解に存ずる。長官が、裁判官会議等において、かようなる矯激なる反共的な思想を表明せられますと、その監督下にありまする全国の裁判官は、権力ある長官の告示でありますから、栄達をはからんとする者は遵々乎してそれを守りましようし、あるいは内心反対であつてもそれを表面に出せない、長官の意を迎えるような態度になる者もありましようし、またこの該博なる知識とそしてクリスチャンとして崇高なる人格を持つておると尊敬せられておりました田中長官の言であるがゆえに、この訓示に非常に薫陶せられる裁判官もございましよう。そういたしますならば共産主義あるいは共産党というものに対しまして、はなはだ矯激なる先入観念を裁判官が植えつけられておると見なければならない。はたしてしかりとするならば、これは裁判の危機であります。日本の憲法の十九条においては良心の自由信条の自由が許されておる。しかも憲法の七十六条によりましては、良心に従つてのみ裁判官は裁判をするということに規定されております。今、世界の二大あるいは一大思想として共産主義というものが存在しておるのであります。これをまるで鼠賊のごとくののしるがごときは、はなはだその思想の狭隘にして視野の狭小なることを示すものでありまして、裁判官がかような態度、先入観念をもつてこの裁判に臨みますならば、共産党だという身分だとか、共産主義的の言論を吐いただけで、それに憎しみを感じ、特別なる態度、感情をもつてこれに接するというようなこともあるいは起るのじやないか、こういうふうに思われる。それに対しましては当然反撃が起る。こういうところに彼らが特に法廷を乱すがごとき言動をなす者が出ることも一つの原因じやないか。もちろん彼らの中にはそれを目的としてやつておる者があつて、一種の確信犯人というような者、そういう者に対しては、私はこの法律は効力はないと思う。かえつてこういう法廷闘争の渦中の主人公として裁判官が登場するというようなことで、私はこの法案とかえつて逆な効果が将来起るのじやないかということを憂慮しておるものでありますが、とにかくそういうことにつきまして、裁判官諸公におかれましては十二分なる用意とまつたく公平無私なる態度で臨んでいただきませんと、検察権と裁判権を両手に握つておるようなこの法案でありまするがゆえに、これをえたり賢しといたしまして、いやしくも傲岸なる態度をとり、弁護人その他に対して優越感を持ち、もつて法廷を自分の権力によつて押えつけんとするがごとき態度をとる者があるといたしますならば、根本的に日本の裁判官は非難せられるのみならず、日本の司法裁判それ自体に非常なる危機が来るということを私は警告したいと存ずるのであります。ことに田中耕太郎氏のごとき思想を持ち、それを宣伝これ努めておる現下にありましては、この法案というものは非常に危険があると私は考えておりますが、とにかく一応こういう修正案が出たのでありますし、現下の法廷のはなはだ無秩序なる態度に対しましては、私どもまつたく快からざる思いをいたしておる一人といたしまして、これに賛成いたす者でございますが、どうぞ何らかの機会におきまして、片寄つた思想、片寄つた主義によつて裁判官が法廷に臨むというようなことのないように十二分なる御注意をしていただきたいと思います。私どもも裁判官訴追委員会におきまして田中長官の反省を求めたいと存じまするが、もしこういう長官のような片寄つた思想で鼓舞激励いたしまして、下部の裁判官諸公がその線に沿うてこの法律を背景といたしまして、法廷に臨むことがあるように相なりまするならば、これはやぶをつついてへびを出すような失敗をすることに相なりまして、この責任たるや、重大なることが発生すると存じますから、この法案には賛成はいたしますけれども、くれぐれも、今までの裁判官が比較的民衆の信頼を博しておつたことは、制度そのものが相当力あつたものであることを反省せられまして、そうして共産主義者が何がゆえにかく騒ぐのであるかということに対しまして、ただ彼らが悪いのだどいうことのみならず、そこに至りまするいろいろの原因につきましても十分探究いたされまして、この法律が燦として栄光を収めることのできますように、私は衷心からこいねがうものでございます。
 こういう意味におきまして賛成をいたす次第でございます。(拍手)
#73
○佐瀬委員長 これにて討論は終局いたしました。
 採決を行います。まず鍛冶良作君提出の裁判所侮辱制裁法案に対する修正案を表決に付します。本修正案に賛成の諸君の御起立を願います。
    〔総員起立〕
#74
○佐瀬委員長 起立総員。よつて修正案は可決されました。
 次にただいま可決されました修正部分を除く原案を表決に付します。修平部分を除く原案に賛成の諸君の御起立を願います。
    〔総員起立〕
#75
○佐瀬委員長 起立総員。よつて修正部分を除く原案は可決されました。伴いまして裁判所侮辱制裁法案は、鍛冶良作君提出の修正案の通り修正議決すべきものと決しました。
 この際お諮りいたしたいのであります。ただいま議決しました法律案に閲する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#76
○佐瀬委員長 御異議なしと認め、さようにとりはからいます。
 本日はこれにて散会いたします。
    午後四時二十二分散会
ソース: 国立国会図書館
姉妹サイト