2021/12/21 第207回国会 参議院
第207回国会 参議院 本会議 第5号 令和3年12月21日
#1
令和三年十二月二十一日(火曜日)午前十時一分開議
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○議事日程 第五号
令和三年十二月二十一日
午前十時開議
第一 国務大臣の報告に関する件(令和二年度
決算の概要について)
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○本日の会議に付した案件
一、日程第一
一、全ての世代が将来にわたって信頼できる年
金・医療・介護等の社会保障制度の確立に関
する請願外四件の請願
一、委員会及び調査会の審査及び調査を閉会中
も継続するの件
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#2
○議長(山東昭子君) これより会議を開きます。日程第一 国務大臣の報告に関する件(令和二年度決算の概要について)
財務大臣から発言を求められております。発言を許します。鈴木俊一財務大臣。
〔国務大臣鈴木俊一君登壇、拍手〕
#3
○国務大臣(鈴木俊一君) 令和二年度の一般会計歳入歳出決算、特別会計歳入歳出決算、国税収納金整理資金受払計算書及び政府関係機関決算書を会計検査院の検査報告とともに国会に提出し、また、令和二年度の国の債権の現在額並びに物品の増減及び現在額につきましても国会に報告いたしましたので、その概要を御説明申し上げます。まず、令和二年度の一般会計の決算につきましては、歳入は百八十四兆五千七百八十八億円余、歳出は百四十七兆五千九百七十三億円余であり、差引き三十六兆九千八百十四億円余の剰余を生じました。
この剰余金は、財政法第四十一条の規定により、既に令和三年度の一般会計の歳入に繰り入れております。
なお、令和二年度における財政法第六条の純剰余金は四兆五千三百六十三億円余となります。
次に、令和二年度の特別会計の決算でありますが、同年度における特別会計の数は十三であり、これらの決算の内容につきましては、特別会計歳入歳出決算のとおりであります。
次に、令和二年度における国税収納金整理資金の受入れ及び支払につきましては、同資金への収納済額は八十二兆二千五百六十九億円余であり、支払命令済額及び歳入組入額は八十兆八千二百四十七億円余でありまして、差引き一兆四千三百二十二億円余が令和二年度末の資金残額となります。
次に、令和二年度の政府関係機関の決算でありますが、その内容につきましては、それぞれの決算書のとおりであります。
次に、国の債権の現在額につきましては、令和二年度末における国の債権の総額は二百三十九兆四千九百五十三億円余であります。
次に、物品の増減及び現在額につきましては、令和二年度中における純増加額は七千三百九十億円余であり、この結果、令和二年度末における物品の総額は十五兆四百八十一億円余となります。
以上が、令和二年度の一般会計歳入歳出決算等の概要であります。
なお、令和二年度の予算の執行につきましては、予算の効率的な使用や経理の適正な処理に努めてきたところでありますが、会計検査院から二百十件の不当事項等について指摘を受けましたことは誠に遺憾であります。
今後とも、予算の執行に当たっては一層配慮をいたし、その適正な処理に努めてまいる所存であります。
何とぞ御審議のほどお願いを申し上げます。(拍手)
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#4
○議長(山東昭子君) ただいまの報告に対し、質疑の通告がございます。順次発言を許します。藤末健三さん。〔藤末健三君登壇、拍手〕
#5
○藤末健三君 自由民主党・国民の声の藤末健三です。ただいま議題となりました令和二年度決算につきまして、岸田総理に質問申し上げます。我々参議院は、決算の院として決算審議に力を入れてきました。充実した決算審議のためには、統計への高い信頼性が不可欠です。にもかかわらず、建設工事受注動態統計調査で不適切な集計処理が行われていたことが明らかになりました。一刻も早く統計への信頼を取り戻す必要があります。
今後、国土交通大臣の下、第三者委員会において徹底的に検証されますが、岸田総理に、決算の重要性を踏まえた上で、統計調査の信頼回復にどう臨むか、お考えを伺います。
次に、コロナ禍で大きくダメージを受けた事業者への支援について伺います。
新型コロナウイルスが世界に広まった後、世界各国は医療体制の強化、そして経済や雇用への影響を最小化するために財政出動に踏み切りました。日本政府も、刻々と変わる状況に機動的に対応し、最大限の対策を講じてきました。
令和二年度の一般会計決算は、歳出と歳入とも過去最大、公債金収入、税収も過去最大となっています。令和元年度、二年度のコロナ対策費は六十五兆四千億円余り、繰越額は二十一兆八千億円余りとなっています。この七割を占める飲食業、観光業、文化芸術事業等に対する支援を含む経済・雇用対策については、コロナ感染症の波が繰り返すことから、執行率は七〇%、繰越額は十三兆円余りとなっています。
日本の競争力があり成長著しい漫画、アニメ、音楽など文化芸術を支えるクリエーターたちは、ワクチン・検査パッケージの運用も始まることから、この冬から本格的に再開される世界最大の同人誌即売会、コミックマーケットの再開を皮切りに、映画、舞台公演など、感染抑制と日常生活の再開の両立に大きな期待を掛けています。
文化芸術事業を含め、コロナ禍で大きく縮小した事業者やクリエーターの再生を支えていくという政府の決意、そして、そのためには繰越しとなった予算を生かし切るという覚悟について、総理に伺います。
また、マスコミで多く取り上げられる飲食、旅行業の甚大な被害は、既に酒類小売業者、ガソリンスタンド、プロパンガス販売事業者など小規模な事業者に及んでいます。同様に、文化芸術に対する新型コロナの破壊的な影響は、アーティスト、クリエーターのみならず、高度な専門技術を擁して現場を支えるいわゆる一人親方やフリーランス、エンジニアなど様々な技術産業、事業者に及んでいます。
私は、岸田総理と同じく現場主義を掲げ、国民の皆様の声をいただき、政策を実現することをモットーとしています。現場に伺い個々の声を聞かせていただき、また支援制度を説明させていただいていますが、政府による資金繰り対策や持続化給付金などの支援策が、余りにも煩雑そして複雑なものであり、十分に活用されていないという状況を見てきました。
また、支援事業事務局も多岐にわたる現場を把握し切れずに、残念ながら的確な判断ができていないと感じる場面も多々ございました。
情報の周知、柔軟かつ効果的に活用できる制度設計などは今後のコロナ禍からの再生に大きな影響を及ぼします。
繰り越された予算はもちろん、昨日成立しました平成三年度補正予算の執行においても、(発言する者あり)失礼しました、令和三年度補正予算の執行においても、クリエーターや一人親方といった個人事業主、そして酒類小売業など小規模事業者の方々が、国からの支援が必要なときは、その情報は必ず届き、必要があれば相談でき、迅速に申請に対応してもらえるといった利用者本位の予算執行が行われるべきと考えます。この点を総理にお伺いしまして、私の質問を終わらさせていただきます。
どうもありがとうございました。(拍手)
〔内閣総理大臣岸田文雄君登壇、拍手〕
#6
○内閣総理大臣(岸田文雄君) 藤末健三議員の御質問にお答えいたします。統計調査の信頼回復についてお尋ねがありました。
統計は、現在、未来の国民に対する政府の説明責任を果たすために重要であり、委員御指摘のとおり、充実した決算審議には統計への信頼性、これが重要であると認識をいたします。
こうした中、今回の事態になったことは大変遺憾なことと考えており、徹底的に経緯や原因の検証を行い、再発防止に取り組んで、政府統計への信頼を取り戻すことが必要であります。
このため、私から国土交通省に対して、統計の専門家だけではなく法律の専門家を入れた第三者委員会を国土交通大臣の下に立ち上げ、経緯や原因の検証を行い、一か月以内に取りまとめ、再発防止に取り組むよう指示をしたところです。
そして、その取りまとめた後、今度は統計の専門家による第三者委員会である統計委員会の専門的な知見による精査を行い、政府統計全体に対する国民の信頼を確保するため、真剣に取り組んでまいります。
文化芸術を始めとする事業者やクリエーターへの支援についてお尋ねがありました。
累次の補正予算等により、公演等の活動支援や感染症対策の強化などの支援を行うとともに、実質無利子、無担保融資による資金繰り支援や雇用調整助成金による雇用維持の支援を行っており、今回の補正予算においても措置をしているところです。
昨年から繰越しとなった予算事業も含めて、こうした各支援策を総動員し十分に活用することで、引き続き厳しい状況にある文化芸術を始めとする事業者等の活動を支えてまいります。
個人事業主や小規模事業者への支援についてお尋ねがありました。
新型コロナの影響を受けている事業者の皆様をお支えするため、今回の補正予算では、事業復活支援金や持続化補助金など、小規模事業者にも御活用いただける様々な支援策を盛り込みました。
大切なことは、これらの支援策を必要とする事業者の皆様に迅速にお届けすることだと考えます。このため、政府としては、ホームページやSNSを活用し、分かりやすい情報発信に努めるとともに、地域に密着した商工会あるいは商工会議所、各都道府県に設置された支援拠点などとも連携をしながら、相談や申請サポートを行うなど、事業者の皆様の目線に立った、寄り添った支援を行ってまいります。(拍手)
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#7
○議長(山東昭子君) 杉尾秀哉さん。〔杉尾秀哉君登壇、拍手〕
#8
○杉尾秀哉君 立憲民主・社民の杉尾秀哉です。ただいま議題となりました令和二年度決算について、会派を代表して質問します。まず冒頭に、森友問題について。自死された近畿財務局元職員の赤木俊夫さんの妻、雅子さんが起こしていた裁判が、国側による認諾で先週、突然終結されました。私も、金曜日に雅子さんにお目にかかりましたが、雅子さんは、真相究明の道が不意打ちで閉ざされたことにショックを受け、総理と是非面会をして話を聞きたい、こうおっしゃっています。
そこで、岸田総理に伺います。
総理も真摯に説明責任を果たすと言うのなら、是非面会に応じて、雅子さんに認諾の理由の説明と謝罪をしてもらえないでしょうか。被告と原告の関係という言い訳は通用しません。
もう一つ、これも先週明らかとなりました国土交通省による建設統計書換え問題について伺わざるを得ません。会計検査院による指摘がきっかけでした。
この不正行為は国交省が自ら主導したもので、生データそのものを書き換えるという極めて悪質な手口でした。統計法違反の可能性がある上、アベノミクスのGDP底上げが狙いだったのではないかとも指摘されています。
そこで、岸田総理に伺います。
第三者委員会設置の方針を表明されていますが、一体誰が、いつから、どんな目的でデータの書換えを始めたのか。組織ぐるみの可能性を含めて、総理自らが強いリーダーシップで真相解明する必要があるのではないですか。関係者の処分や再発防止策を含めて御答弁ください。
中国、宋の時代に杜黙という詩人がいました。杜黙が作る詩はいいかげんで、誤りが多かったことから、杜黙の杜と詩を作る意味の撰の二文字を取って「杜撰」という言葉ができたとされています。
会計検査院による二〇二〇年度決算検査報告で示された新型コロナ対策予算は、まさにこのずさん極まる無駄遣いのオンパレードでした。
コロナ対策費は、去年二月からの五回にわたる緊急対策により、二〇一九年度から二〇年度にかけて六十五・四兆円にも達しましたが、このうち約三分の一に当たる二十三兆円もの使い残しが生じています。これは、真に必要な事業の精査を怠り、いたずらに規模を膨らませた証拠以外の何物でもありません。血税を納めた国民から見れば、到底看過し難い、許し難い事態です。
では、未執行額がこれだけ膨れ上がったのはなぜなのか。そもそも必要なところに必要なお金が届くのが遅かったのではないか。だとすれば、その理由は何なのか。また、こうした前代未聞のずさんな予算編成や執行に対する反省と、不明朗な予算編成の原因を徹底究明するとともに、国民に対して十分な説明を行う必要性について、総理の考えをお示しください。
無駄遣いの最たるものが、中小企業庁が実施する持続化給付金事業です。再委託費率は何と九九・八%で、最大で九次下請まで繰り返され、参加者は延べ七百二十三社にも上りました。私たちも実地調査を基に何度も事業の不明朗さを指摘してまいりましたが、ここまでひどかったとは、まさに開いた口が塞がりません。
この事業を委託された法人は電通やパソナなどが設立に関わっていましたが、こうした尋常ではない再委託費率について、どのような具体的、客観的理由で妥当と判断したのか。
また、再委託の繰り返しで、いわゆる中抜きされた金額と不正受給の総額並びに返還状況、さらには、不正受給の背景にあるとされる高い再委託費率の中でチェックが甘くなった可能性についても、経産大臣、御答弁ください。
次に、世紀の愚策、いわゆるアベノマスクに代表される布マスク配布事業について伺います。
全国民に布マスクを配れば、不安はぱっと消えます。安倍元総理の側近官僚によるこんな助言で始まったとされる布マスク配布事業は、結局、二億九千万枚中、八千三百万枚、百十五億円相当が使われないまま倉庫に山積みされ、保管費用だけでも、これまでに少なくとも六億円以上を要する状況が続いています。また、髪の毛など異物の混入や汚れの付着など不良品が相次ぎましたが、なぜこんな無駄が発生したのか。
また、布マスクの不良品数やその比率と、検品や代金の返還などに掛かった費用の総額、さらには、大量の在庫を抱えた布マスクの今後の使途を含め、世紀の愚策のツケをどのように払うつもりか、総理の答弁を求めます。
なお、松野官房長官によれば、アベノマスクが欲しい人や希望する自治体に配布するそうですが、少なくとも私はこうした希望を寡聞にして聞いたことがありません。自治体に押し付けないでください。
このほかにも、コロナ関連の無駄遣いはまだまだ続きます。接触確認アプリCOCOAのソフトウエアの不具合をめぐる不適切な対応について、指摘されたシステムのテストやコスト管理について厚労省としてどのような処置を行ったのか、また、雇用調整助成金でも起きた不正受給や不適切な支払事例の実態と再発防止策について、厚労大臣、お答えください。
この雇調金は、財源が枯渇しつつある一方で、自民党の政治家の支部が支給を受けていた実態が次々と明らかになっています。政党支部が雇調金や緊急雇用安定助成金を受け取ることについて、自民党総裁としての見解と、徹底した調査を行う気があるかどうかを、岸田総理、お答えください。
こうしたコロナ対策で無駄遣いされた金で、例えば、真に困っている人やサービス業などの支援に上乗せができれば、どれほど多くの国民が救われたことか。そして、今年度補正予算でも、ばらまき色や規模ありきのやり方が改善されているようには全く見えません。
そこで、岸田総理に伺います。
今回指摘されたコロナ対策のずさんさや予算編成の問題点は、今年度補正予算の中でどう考慮され、どう生かされたのでしょうか。十万円相当の給付をめぐる政策の迷走に対する自身の政治責任を含めて、できる限り具体的にお答えください。
入るを量りて出るをなす。五経の一つ礼記に出てくるこの言葉は、財政の心構えを説くものとして余りにも有名です。
かつて米沢藩主の上杉鷹山は、この精神で財政改革に取り組み、アメリカ・ケネディ大統領も上杉鷹山を尊敬していたそうです。また、政府が出す骨太方針では、ここ二年続けてワイズスペンディング、賢い支出の徹底と財政健全化の堅持が掲げられています。
しかし、こうした言葉は新型コロナ禍での大盤振る舞いで事実上、死語と化したに等しい。確かに、未曽有の感染拡大という危機において、緊急事態的に止血作業をすることは私も決して否定しません。しかし、今回、会計検査院が指摘したとおり、ワイズスペンディングとは懸け離れた支出が行われたのは紛れもない事実でしょう。その結果、我が国の財政はどうなったのか。
先ほどにもありました今月六日、国会に提出された令和二年度決算によりますと、歳出決算額百四十七・五兆円、歳入決算額百八十四・五兆円、翌年度繰越額三十・七兆円、不用額三・八兆円といずれも過去最大。また、一般会計のプライマリーバランスは八十・四兆円の赤字で、こうした結果、国及び地方の長期債務残高は千百六十五・七兆円と、対GDP比でついに二〇〇%台に達しました。
そこで、岸田総理にお尋ねします。
こうした厳しい財政事情でも、なお二〇二五年度PB黒字化の目標は堅持されるのでしょうか。ちなみに、鈴木財務大臣は目標を堅持する考えを表明しておられますが、二五年度のPB黒字化達成は、平均で年三・三%の名目経済成長率を前提としています。ところが、この四半世紀で名目三%の成長を達成した年は僅か一回しかありません。想定自体が非現実的過ぎます。もうこんな虚構の議論はやめにしようじゃありませんか。
こうした中で、自民党の選挙公約から財政健全化への言及がなくなりました。さらに、党内の一部には財政再建派は絶滅危惧種との声さえあるようです。しかし、肝腎の岸田総理のスタンスがはっきりしません。
そこで伺いますが、そもそも岸田総理は財政規律派ですか、それとも総理は、MMT、現代貨幣理論が言うように、政府が自国建て通貨の借金を幾ら増やしても財政は破綻せず、インフレはコントロールできると、このようにお考えでしょうか。
こうした状況に、国民の間にも不安の声が広がっています。今月三日、国の財政制度等審議会は、新型コロナ対応で肥大化した国の財政支出を戦後最大の例外と位置付け、財政拡大路線からの脱却を強く迫る建議を提出しました。
そこで、これから財政の正常化にどう取り組むおつもりか、総理の明快な説明を求めます。
また、岸田総理は、予算の単年度主義の弊害是正を挙げておられますが、その具体策の一つとされる基金の活用は失敗だらけです。例えば、クールジャパン機構の累積赤字は二百三十一億円まで膨れ上がっています。今回の補正予算でも新たに基金が積み増されましたが、こうした基金はガバナンスが弱まる上、憲法八十三条の財政民主主義の観点からも大問題です。
そこで、総理はこうした基金の濫用にどう歯止めを掛けるおつもりでしょうか。
人間は忘れていく生き物である。これはヘルマン・エビングハウスというドイツの心理学者が残した言葉です。エビングハウスは、人間は物事を記憶してから一日後には急激に記憶を失っていくという忘却曲線を発見しました。
こうした人間の特性をフルに利用したとも言えるのが安倍元総理です。アベノミクス、地方創生、一億総活躍、人づくり革命などなど、次から次にスローガンを繰り出しては食い散らかし、挙げ句の果ては去年八月に政権を投げ出してしまいました。この間の数々の公約を国民はもう忘れてしまったようです。
そもそも、財政悪化が著しい我が国では、予算の使い方や政策効果について検証を行い、次の政策策定や予算編成に生かすこと、つまり、PDCAをしっかり回すことが極めて重要で、この参議院の決算審査の意義もまさにそこにあります。
そこで、過去に掲げた政権公約についても、どれだけの予算を投入してどのような効果を上げたのかをチェックし、国民に明らかにすることが不可欠と考えますが、岸田総理の考えをお聞かせください。
政府は、安倍政権の看板政策を担当するため内閣官房に設置された一億総活躍、働き方改革、人生百年時代構想、それに、先ほども触れた統計改革の各推進室を先月、ひっそりと廃止しました。しかし、目標だった名目GDP六百兆円も、希望出生率一・八の実現も、介護離職ゼロも、いずれも達成とは程遠い状況と言わざるを得ない。にもかかわらず、政権が替わったから知りません、組織を廃止して、はい、おしまいでは余りにも無責任じゃないでしょうか。
岸田政権でも新たに、新しい資本主義実現本部などが設置されましたが、まずはこれまでの政策効果について検証、総括をした上で新たな部署を立ち上げるのが筋ではないでしょうか。この様子だと岸田総理肝煎りの政策スローガンの実現も先行きは厳しそうです。なぜなら、これから具体策の検討をそれぞれ新しい会議体に丸投げするという有様だからです。
例えば、デジタル田園都市構想ですが、宏池会の先輩である大平元総理の田園都市構想に今はやりのデジタルを単にくっつけただけではないのか。そもそも、中途半端に終わった安倍政権肝煎りの地方創生の単なる看板の掛け替えとどこがどう違うのでしょうか。また、新しい資本主義にしても、本来なら持てる者と持たざる者の分断という構造的課題に真正面から切り込むべきなのに、金融所得課税強化のように、既に腰砕けの姿勢では総理の本気度そのものが問われます。反論があればお聞かせください。
現在の日本の財政状況や、今なお続く高成長を前提にした財政再建目標の甘い見通しなどをチェックし改善するため、独立財政機関、IFIをつくろうと、こういう動きがあります。二年前に経済同友会が設置を提言し、今年八月には超党派の議員連盟も発足しました。IFIはOECDに加盟する三十八か国中三十か国に設置され、G7でIFIがないのは日本だけです。議連では、このIFIを国会に数年以内に設けることを目指しています。
そこで最後に、岸田総理に、日本にもこのIFIをつくることについて、政府としての基本的な見解を伺います。
参議院における決算審査の重視は、六年間の安定した任期を持つ参議院にふさわしいものとして、与野党を問わず、今日まで絶え間なく取り組んできた成果と理解しております。しかし、いかに参議院での決算審議が充実しても、時の内閣が聞く耳を持たなければ、形骸化のそしりは免れません。
岸田総理が自ら特技と誇る聞く力が看板倒れにならないか、真に国民目線で監視していくことを宣言しまして、私の質問を終わります。
御清聴ありがとうございました。(拍手)
〔内閣総理大臣岸田文雄君登壇、拍手〕
#9
○内閣総理大臣(岸田文雄君) 杉尾秀哉議員の御質問にお答えいたします。まず、森友学園案件に関する訴訟についてお尋ねがありました。
今回の訴訟については、財務省において裁判所の訴訟指揮に従って訴訟を進め、損害賠償請求を全面的に認めたものであると承知をしております。御遺族とは現在もこの別途の訴訟が継続中であるところ、原告と被告の立場でありますので、直接お会いすることについては慎重に対応したいと思いますが、今回、損害賠償請求を全面的に認めるに当たり、財務省に対し、森友学園問題については今後も様々な場において真摯に説明を尽くしていくよう指示をしたところであり、今後も必要に応じてしっかりと説明をしてまいります。
国土交通省の統計における不適切な事案についてお尋ねがありました。
統計は、現在そして未来の国民に対する政府の説明責任を果たすために重要であり、民主主義の根幹を成すものであると認識をいたします。
本件に関しては、私から国土交通省に対して、統計の専門家だけでなく法律の専門家を入れた第三者委員会を国土交通大臣の下に立ち上げ、経緯や原因の検証を行い、一か月以内に取りまとめ、再発防止に取り組むよう指示をしたところです。
そして、この国土交通省における第三者委員会での、この議論を行い、検証を行った上で、その後、今度は総務省にあります統計の専門家であります第三者委員会であるこの統計委員会、ここで専門的な見地による精査を行って、政府統計全体に対する国民の信頼を確保するため、真剣に取り組んでいきたいと考えております。
そして、コロナ対策予算の編成と執行についてお尋ねがありました。
新型コロナ対策につきましては、感染の影響が不明な中で万全な対応を期すため、十五か月予算として切れ目のない支援を行うべく十分な措置を行ったこと、また、地方自治体や事業者等から申請を受けて支出するものが多かったこと、こういった事情もありまして、予定した年度内に支出に至らなかったものもありますが、足下では、令和二年度から令和三年度へ繰り越された予算について、一部を除きおおむね着実に執行が進んでいると承知をしております。
会計検査院の御報告については、その内容をしっかりと受け止め、令和三年度補正予算につきましては、盛り込まれた施策、できるものは年内から迅速かつ適切に実行していくよう、各大臣と連携を図ってまいります。
布製マスクの配布事業についてお尋ねがありました。
布製マスクの在庫は、マスクの需給状況の改善を踏まえ、昨年七月末、当初予定していた全ての介護施設への一律配布をやめて、希望に応じた随時配布に見直したことなどから生じました。
品質基準等を明確に定めた仕様書を作成していなかったことなどから不良品が生じました。昨年四月から五月に厚生労働省が直接検品を実施したところ、約七千百万枚のうち約一千百万枚、約一五%が不良品でありました。
また、決算検査報告によれば、その際の検品費用が約九億、失礼、約六億九千二百万円であったほか、その後に納入事業者が実施した検品費用が約十億七千万円、検品に時間を要したことに伴う追加費用、これが三億三千万円とされています。
布製マスクの在庫につきましては、介護施設等への随時配布を始め費用対効果の観点から適切な方策を検討していきたいと考えております。
そして、雇用調整助成金等についてお尋ねがありました。
政党支部は雇用保険の適用事業所であり、雇用保険料も納めている以上、被保険者たる従業員の方が要件を満たしたときに失業手当等の雇用保険給付を受けること、これ自体は適法なことであります。
しかしながら、政党支部がコロナ対策の雇用関係の助成金を受給するということについて、政党交付金等を主たる収入の原資とする政党支部が受給することがいいのかどうか、また、コロナによって政治活動の制約を受けた収入等の減少が一般の事業者の収入減と同じように扱われることについてどう考えるか、こういった点について多くの国民の皆さんが疑問に感じられるということ、このことについては私も理解ができます。
いずれにせよ、与野党問わず政党支部がコロナ対策の雇用関係の助成金を受給することについては、それぞれの政治家が国民からの信頼を基本としてそれぞれ判断し、説明責任を果たしていくべきであると考えております。
そして、補正予算と子育て世帯への給付についてお尋ねがありました。
令和三年度補正予算は、新型コロナ対応に万全を期すとともに、新しい資本主義を起動するために必要不可欠な施策を積み上げたものであり、ばらまき、あるいは規模ありきといった批判は当たらないと考えております。
また、子育て世帯への給付については、地方自治体の意見や国会における議論を踏まえ、地域の実情に応じた柔軟な対応が可能となるようにいたしました。この給付を始め今年度補正予算の執行に当たっては、地方自治体等の意見を聞き執行に反映するなど、万全の体制を取ってまいります。
プライマリーバランス黒字化目標等についてお尋ねがありました。
プライマリーバランス黒字化目標については、骨太の方針二〇二一において、二〇二五年度のPB黒字化目標を堅持する、ただし、感染症でいまだ不安定な経済財政状況を踏まえ、本年度内に感染症の経済財政への影響の検証を行い、目標年度を再確認する、このようにされております。この骨太の方針に従って必要な検証を行ってまいります。
御指摘の現代貨幣理論、いわゆるMMTにつきましては、自国通貨建ての国債を発行する国の政府は、過度なインフレが起きない限り、幾らでも国債を発行して支出することができる、こういった考え方として知られていると承知をしております。財政については様々な議論があります。ただ、政府としてはそのような考え方に基づく政策は取ってはおりません。
私としては、経済あっての財政であり、順番を間違えてはならないと考えております。新型コロナの危機をまず乗り越え、そして経済をしっかり立て直してまいります。そして、財政健全化についても取り組んでまいりたいと考えます。
そして、基金についてお尋ねがありました。
これまで基金事業については、行政事業レビューの枠組みの下、各府省自らが基金の執行状況や余剰資金の有無を毎年度自己点検し、その結果を公表することで不断の適正化に取り組んでいるところです。
こうした取組に加えて、今般の経済対策においては、多年度にわたって取り組む施策については、成果を測定するためのKPIを設定し、PDCAの取組を推進し、その進捗を評価する、こうしたことで基金の効果的な、効果的かつ効率的な活用に努めてまいります。
また、これまでの政策に関する効果の検証についてお尋ねがありました。
アベノミクスでは、デフレではない状況をつくり出し、GDPを高め、そして雇用を拡大いたしました。さらに、一億総活躍や人づくり革命などの政策課題に取り組む中で、働き方改革や幼児教育等の無償化を進めたほか、地方創生の旗印の下、地域の創意工夫を生かした取組が行われるようになりました。その際、フォローアップを行い、進捗状況を把握するなど、各施策が着実に実施されるよう、必要な検討を行いつつ取り組んできたところです。
こうした成果の上に、岸田内閣では、官と民が協働して成長と分配の好循環を生み出すための新しい資本主義実現会議を設置し、新しい資本主義の起動に向けて経済対策を策定いたしました。引き続き、社会経済状況を踏まえて、その時々の重要課題について機動的に対応してまいります。
デジタル田園都市国家構想及び金融所得課税についてお尋ねがありました。
デジタル田園都市国家構想は、高齢化や過疎化などの社会課題に直面する地方にこそ新たなデジタル技術を活用するニーズがあることに鑑み、デジタル技術の活用によって、地域の個性を生かしながら地方を活性化し、持続可能な経済社会を実現するものであります。
地域の個性を生かした地域活性化など、その理念には大平元総理の田園都市国家構想と共通するところもありますが、デジタル基盤の整備や、自動配送、遠隔医療、オンライン教育など、地方における先導的なデジタル実装の取組を進めていくことで地方から国へ、国全体へボトムアップの成長を実現してまいります。
また、分配戦略において、各政策を進めていくためには順番が大切であり、まずは実際に所得を底上げする施策に重点を置きました。
その上で、金融所得課税については、令和四年度の与党税制改正大綱において様々な観点を踏まえ総合的に検討していくということとされております。順番を大事にしながらこうした取組を進めていきたいと考えております。
そして、独立財政機関についてお尋ねがありました。
国会内、院内における機関の設置については国会において議論をいただく事柄ですので、政府としてそれについてお答えするのは控えなければならないとは思いますが、政府としては、経済財政諮問会議において、専門的、中立的な知見を有する学識経験者なども参加する形で、経済財政運営について議論をこれからも続けていきたいと考えております。
残余の質問については、関係大臣から答弁をさせます。(拍手)
〔国務大臣萩生田光一君登壇、拍手〕
#10
○国務大臣(萩生田光一君) 杉尾議員からの質問にお答えします。持続化給付金事業についてお尋ねがありました。
この事業は、全国四百万を超える事業者の皆様に給付金をお届けする前例のない事業であり、申請サポート会場を全国五百か所以上に設置したほか、最大四千席の審査体制を構築するなど、短時間で必要な体制を整備する必要がありました。こうした業務を単一の事業者が担うことは難しいため、高い再委託費率につながったものと考えております。
また、事務の委託先に対しては確定検査を実施し、再委託先を含めて手続や取引内容の適正、適切性を確認しており、中抜きがあったとの御指摘は当たらないと認識しております。
さらに、持続化給付金では、簡素な申請手続により、迅速な給付を実現してきましたが、その反面、多くの不正受給が発生したことは事実です。十二月十六日時点で約八百五十件、約八億六千万円の不正受給を確認しており、このうち約八割から返納を受けております。
この教訓を踏まえ、一時支援金や月次支援金では、申請時の第三者による事前確認等を必須とするなどの対策を講じているところです。
いずれにせよ、不正受給が認定された者に対しては返納の督促などを行うなど、引き続き国庫返納を強く求めてまいります。(拍手)
〔国務大臣後藤茂之君登壇、拍手〕
#11
○国務大臣(後藤茂之君) 杉尾秀哉議員にお答えいたします。COCOAに関する会計検査院の指摘への対応についてお尋ねがありました。
COCOAの不具合対応としては、COCOAの保守、運用を担当するデジタル庁と共同して、実際に携帯端末を用いてシステムのテストを実施してきたところです。
また、COCOA等の各種システムの開発、保守等に関して、テストが適切に実施されるよう、仕様書にテストの内容を具体的に定めること、納品されたシステムが契約内容に適合していない場合には、不具合に係る修理費用が請求額に含まれていないかを検証することとしています。
現在、これらに関するマニュアルを作成しており、関係職員に対して周知徹底をいたしております。
雇用調整助成金の不正受給の防止策等についてお尋ねがありました。
雇用調整助成金については、コロナ禍において、特例による手厚い措置を行うとともに、申請手続の大幅な簡素化により、迅速な支給決定にも取り組んでまいりました。
こうした状況を背景に、会計検査院からは、架空雇用など事実と異なる不正受給案件や支給額が実際の休業手当額を上回るケースがあることなどの指摘を受けております。
不正の防止については、都道府県労働局に不正受給対応チームの編成、実地調査の計画の策定及び実施の強化、労働者間での、労働局間での不正手口等の共有、警察等関係機関との連携等について改めて指示したところです。また、支給額が休業手当額を上回る事案についても、九月より、実態に即した助成額となるよう算定方法の見直しを既に行ったところです。
真に制度を必要とする事業主に利用いただけるよう、不正受給対策等にも的確に取り組んでまいります。(拍手)
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#12
○議長(山東昭子君) 横山信一さん。〔横山信一君登壇、拍手〕
#13
○横山信一君 公明党の横山信一です。私は、会派を代表し、ただいま議題となりました令和二年度決算について、総理並びに関係大臣に質問いたします。
令和二年度歳出決算額は百四十七・五兆円で過去最大となりました。その内訳を見ると、新型コロナ感染症対策により対前年度九・四兆円増の社会保障関係費や、対前年度十五・四兆円増の中小企業対策費が顕著に増加をいたしました。歳入決算額においては、税収及び公債金収入も過去最大となりました。
令和二年度歳入決算額に占める公債依存度は七三・五%となりましたが、経済再生のためには新型コロナ感染症の収束が第一であり、そして効果的な財政出動が必要です。
会計検査院が検査した令和元年度及び二年度コロナ関連事業には、予備費使用額以上の繰越額や不用額を計上している科目があることなどが明らかになりました。会計検査院は、多額の繰越額や不用額を計上したコロナ関連事業の適時適切な実施を求めています。会計検査院の報告に対し早急な改善が必要です。
新たな変異株の出現により、更なる感染症対策に取り組む中、会計検査院の報告をどう受け止め、どのように対応するのか、総理の御所見を伺います。
次に、雇用調整助成金について伺います。
コロナ禍での雇用を守るために雇用調整助成金の果たした役割は極めて大きく、今後も着実な実施が必要と考えます。
厚生労働省は、コロナ特例により事後確認を重視した上で、雇用調整助成金の申請書類の簡素化を進めました。人材不足の中小企業の事務処理を軽減したことと評価をしたいと思います。
しかし、会計検査院からは不正受給等の指摘を受けました。具体的には、二重に申請を行って二重に受給したり、副業先の休業を利用して複数の会社で受給したりなどの制度の趣旨に合わない不適切な事例が報告されています。
今後、事後確認に求められる対応方策をどのように考えているのか、また、副業の仕組みを利用した不適切な受給にどのように対応するのか、厚生労働大臣に伺います。
次に、放課後児童健全育成事業について伺います。
放課後児童クラブは、子ども・子育て支援交付金により、市町村が自ら運営したり法人等に委託したりするなどして実施されています。おおむね四十人以下の支援単位ごとに二人以上の支援員を配置することになっていますが、利用児童数が少ない土曜日等には複数の支援単位が合同で実施できることになっています。この場合、それぞれの支援単位の開所日として実施するには、支援単位ごとに支援員を二人以上配置しなければなりません。
会計検査院は、十二都府県の四十七市町村で会計検査を行ったところ、この開所要件を満たしていないなどにより、一億六十万円の過大交付を明らかにしました。この原因として、都道府県に対し実績報告書の具体的な審査の内容を示さなかったことや、市町村に対し開所要件を満たしているかの確認方法を示さなかったことが報告されています。
再発防止のために政府はどのような方策を講ずるのか、また、過大に交付された交付金の取扱いをどうするのか、野田内閣府担当大臣にお聞きします。
厚生労働省では、開所要件をQアンドAで示していますが、市町村ではその理解が不十分だったと報告されています。厚生労働省では、今後、再発防止にどのように取り組むのか。また、少数の児童となる土曜日等に多くの支援員を配置する現行の仕組みは交付金の無駄であり、実態に合わせた開所要件に見直すべきと考えますが、厚生労働大臣の所見を伺います。
次に、東日本大震災復興特別会計について伺います。
東日本大震災復興特別会計予算の執行率は七四・二%で過去最高となりました。とりわけ、原子力災害からの復興再生の執行率は八七・六%であり、対前年度三五・九ポイントの増でありました。これらは、帰還促進に向けた環境整備の着実な進捗を反映しているものと考えます。
政府には、コロナ禍にあっても復興事業に遅れを生じさせることのないよう、万全の取組を求めます。
他方、被災者支援の執行率は年々減少しています。
岩手県と宮城県でのハード面での復興事業は総仕上げの段階に入りましたが、被災者の心身の健康の維持や生きがいづくりなどの心の復興は、時間の経過とともに複雑化、多様化しています。
本格的な復興を迎える福島県においても、避難者や被災者の子供たちの心のケアなど、心の復興の課題は多数あります。執行率が減少する被災者支援の中で心の復興を今後どのように進めるのか、復興大臣に伺います。
東日本大震災では、何らかの理由により、避難所に居場所を確保できず、自宅に戻って避難生活を続け、被災者の生活場所が避難所から仮設住宅に移っても自宅での生活を続けた人たちがいました。
生活再建を目指す被災者が抱える課題は多様で、被災者一人一人異なる支援が必要になります。そのためには、個別の被災状況、生活状況などを把握し、社会福祉協議会や市町村らが連携して支援策を検討し、個々の被災者に必要な支援を届けることが重要です。
こうした仕組みは、災害ケースマネジメントと呼ばれ、在宅被災者に限らず、様々な理由で生活再建が遅れた人たちの支援になると考えられています。災害が発生したときには、地方公共団体が被災者支援の一環として社会資源を生かした災害ケースマネジメントができるよう、平時からその仕組みを整えておく必要があると考えます。災害ケースマネジメントの必要性について、総理の御所見を伺います。
次に、貨幣回収準備資金について伺います。
貨幣回収準備資金は、政府による貨幣の発行と回収を図り、貨幣の信頼維持を目的として設置されています。回収した貨幣のうち、金地金は記念貨幣の製造材料として保有されます。
平成九年以降は記念貨幣が額面価格を超えて販売されるようになり、金地金の使用量は、平成五年に三十六トンあったものが、平成九年以降は四トン以下と少なく、令和元年度末の金地金保有量は百二十九・四トンでした。
会計検査院は、使用見込みがない金地金を保有し続ける事態は適切ではなく、売払いなどの改善を求め、これを受けて財務省は、金地金八十・七トンを外貨準備として外為特会に売り払い、五千四百二十億三千百四十八万円を一般会計に繰り入れました。
売払いの判断の背景には近年の金相場の値上がりがあったと思いますが、五千億を超える財源確保とは驚きです。見方を変えれば、財政健全化に向け先頭に立って財源確保に努めるべき財務省が、会計検査院の報告がなければ財源化に動かなかったということです。もっと早く財源化していれば国債の利払い費を支払わなくて済んだはずです。財源化しなかったのはなぜか、財務大臣に伺います。
また、我が国の外貨準備は、諸外国と比べ金の比率が低いという特徴があります。そのため、金地金の導入は資産構成のバランスを修正する作用を持つと言われます。今後の外貨準備としての金保有の考え方を財務大臣に伺います。
今月一日から新型コロナの三回目ワクチン接種を、公明党が繰り返し求めてきたとおり、無料で受けられるようになりました。
令和三年度補正予算が成立し、新型コロナ感染症拡大への対応に加えて、公明党が求めてきた十八歳以下への十万円相当給付を始め家計、事業者への給付や、一人最大二万円分のマイナポイントが段階に分けて付与される消費喚起策などが実施されることになります。
これらの事業を着実に実施するとともに、公明党は、あらゆる現場で国民の声に耳を傾け、国民生活を守るために全力で取り組んでいくことをお誓いし、質問を終わります。(拍手)
〔内閣総理大臣岸田文雄君登壇、拍手〕
#14
○内閣総理大臣(岸田文雄君) 横山信一議員にお答えをいたします。会計検査院の報告の受け止めと対応についてお尋ねがありました。
新型コロナ対策につきましては、感染の影響が不明な中で万全な対応を期すため、十五か月予算として切れ目のない支援を行うべく十分な予算を措置したことや、地方自治体や事業主等からの申請を受けて支出するものも多かったこと、こうした事情もあり、予定した年度内に支出に至らなかったものもありますが、足下では、令和二年度から令和三年度への繰り越された予算については、一部を除きおおむね着実に執行が進んでいると承知をしております。
会計検査院の御報告については、その内容を受け止め、令和三年度補正予算につきましては、盛り込まれた施策を、できるものは年内から迅速かつ適切に実行していくよう、各大臣と連携を図ってまいります。
そして、災害ケースマネジメントに関する仕組みづくりについてお尋ねがありました。
災害ケースマネジメントは、被災者が抱える多様な課題が解消されるよう、一人一人の被災者の状況を丁寧に伺い、関係者が連携して必要な支援を行う、こうした取組です。
政府としては、これまでも、被災者の方が自らに適した支援制度を活用して生活再建に取り組むことができるよう見守り、そして相談の機会、さらには被災者台帳を活用したきめ細かな支援等を行ってきたところです。
また、効果的、体系的な被災者支援を実施できるよう、先進的な取組を進めている自治体による災害ケースマネジメントの好事例について、本年度中に全国の自治体に共有を図ることとしております。
このような取組を平時から行うことにより、今後とも、民間団体等を含めた多様な主体が連携した災害ケースマネジメントの仕組みづくりを進めてまいりたいと考えます。
残余の質問につきましては、関係大臣から答弁をさせます。(拍手)
〔国務大臣鈴木俊一君登壇、拍手〕
#15
○国務大臣(鈴木俊一君) 横山議員から、金地金の売払い及び外貨準備としての金保有の考え方についてお尋ねがございました。財務省では、今回の会計検査院による指摘以前から、貨幣回収準備資金が保有する金地金について、市中売却により金市場に不測の影響を与えない、かつ、政府が保有する金を海外に流出させないとの考えに立ち、売却に向けた検討を続けてまいりました。
先般、外国為替資金特別会計において、円資金の手当てが可能な状況となったことを受け、当面の記念金貨の製造に支障が生じないよう見極めた上で、金地金の一部を同特会に売却いたしました。
また、同特会における外貨準備については、金保有を含め、従来からの安全性、流動性及び収益性についての基本原則に沿って運用を行ってまいります。(拍手)
〔国務大臣後藤茂之君登壇、拍手〕
#16
○国務大臣(後藤茂之君) 横山信一議員にお答えいたします。雇用調整助成金に関する指摘事項への対応についてお尋ねがございました。
雇用調整助成金については、コロナ禍において、特例による手厚い措置を行うとともに、申請手続の大幅な簡素化により、迅速な支給決定にも取り組んでまいりました。
こうした状況を背景に、会計検査院からは、不正受給に対応するためには、申請書類の偽造等に関する事後確認や、同一人物が副業と見せかけて複数の会社で休業対象となる事案への対応方策が肝要であること、一方、申請件数が高止まりしていることから、事業所訪問調査等による事後確認が本格実施に至っていない等の指示、指摘を受けております。
これを踏まえて、各都道府県労働局には、不正受給対応チームの編成、実地調査の計画の策定及び実施の強化、労働局間での不正手口等の共有、警察等関係機関との連携等について改めて指示したところであります。
真に制度を必要とする事業主に利用いただけるよう、迅速支給を最優先としつつ、不正受給対策にも的確に取り組んでまいります。
放課後児童クラブに関する指摘事項への再発防止策についてお尋ねがありました。
放課後児童クラブに関し、利用児童が少数である土曜日等の開所要件の理解が不十分だったことにより、交付金の算定誤りがあったことから、厚生労働省としては市町村に対し、児童利用の少ない日において複数の支援単位が合同で開所した場合や、やむを得ない理由により閉所した場合の取扱いについて改めて周知徹底し、再発防止に努めてまいります。
なお、令和二年四月一日より放課後児童クラブの人員配置、資格要件基準を、従うべき基準から参酌すべき基準にしたことから、御指摘の利用児童が少数となる日も含め、支援員の配置については自治体の責任と判断により、質の確保を図った上で地域の実情に応じて運営を行うことが可能となっております。(拍手)
〔国務大臣野田聖子君登壇、拍手〕
#17
○国務大臣(野田聖子君) 放課後児童クラブに関する会計検査院の指摘についてお尋ねがありました。放課後児童クラブに係る今般の会計検査院からの指摘について、内閣府として真摯に受け止め、過大交付との指摘を受けた市町村に対し速やかに返還手続を取るよう通知するとともに、全ての市町村に対し今般の指摘と同様の事案がないか調査を実施しているところです。
また、再発防止に向けて、内閣府においてチェックシートを作成し、自治体が実績報告書を内閣府に提出する際に、併せて各クラブにおける開所日や開所時間等が補助要件を満たしているか確認を行わせることにより、引き続き事業の適正な運営の確保に努めてまいります。(拍手)
〔国務大臣西銘恒三郎君登壇、拍手〕
#18
○国務大臣(西銘恒三郎君) 東日本大震災からの心の復興についてお尋ねがありました。被災者支援総合交付金につきましては、被災自治体等の要望を踏まえ必要な予算を確保しておりますが、横山議員御指摘のとおり、復興の進展に伴う被災者の状況の変化によりまして、需要の減少や継続されなくなった事業、さらには規模を縮小した事業等もあり、執行額が減少しております。
しかしながら、被災者が生きがいを持って前向きに生活してもらうための支援は必要と認識をしております。心の復興事業では、人と人のつながりや生きがいを持って暮らしていけるような機会を提供する取組を支援しております。
引き続きまして、自治体や支援団体等と連携をしながら、被災者に寄り添った取組を推進してまいります。(拍手)
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#19
○議長(山東昭子君) 川合孝典さん。〔川合孝典君登壇、拍手〕
#20
○川合孝典君 国民民主党・新緑風会の川合孝典です。会派を代表して、令和二年度決算について岸田総理に質問いたします。冒頭、国土交通省による統計データの改ざん問題について質問します。
毎月勤労統計の不正事案が発覚してから僅か二年余り、隠蔽に隠蔽を重ねた国土交通省の姿勢は言語道断であります。今後、国土交通省から提出される全ての政策や法案について疑いの目を持って審議しなければならなくなったということを政府には重く受け止めていただきたいと思います。
この問題を受けて、岸田総理に質問いたします。
統計不正の再発によって総務省の監視機能に不備があることが明らかになりました。統計法には、統計の作成機関に対する総務大臣及び統計委員会の権限が規定されていますが、この権限はいずれも、何々することができるというできる規定になっており、強制力に欠けております。
今回の問題で省庁の自浄能力に期待できないことが明らかになったわけですから、統計法に基づく総務大臣や統計委員会の権限を、資料提出命令や立入調査の権限を設ける等、相手が拒むことができない程度まで引き上げるべきと考えますが、総理の認識を伺います。
令和二年度決算について質問します。
令和二年度決算は、一般会計の歳出百四十七・五兆円と前年度から四十六・二兆円増加、歳入は百八十四・五兆円と前年度から七十五・四兆円増加して、共に過去最大となっています。
令和二年度の新規国債発行額は百八・五兆円に上り、一般会計のプライマリーバランスは八十・四兆円の大幅な赤字となっております。また、巨額な予算を計上したものの年度内に執行できず、翌年度に繰り越した額は三十・七兆円、不用額が三・八兆円と、共に過去最大額でした。
これだけ多額の翌年度繰越金と不用額が生じたということは、そもそも予算の積算が適正に行われていたのか疑問を感じます。コロナ禍があったにせよ、ずさんな予算編成の言い訳にはなりません。史上最高額の丼勘定となった令和二年度決算について、一体どのように総括しておられるのか、岸田総理にお伺いします。
翌年度繰越額が多額となっている背景には、補正予算と翌年度の当初予算を一体として編成する、いわゆる十五か月予算の考え方がありますが、これに対して決算は十二か月のままであり、予算と決算の月数に差異が生じる事態となっております。十五か月予算の妥当性を検証するための情報が政府から適切に示されなければ、国会において十分な決算審査を行うことはできません。
十五か月予算に対する決算情報の示し方についてどのように考えているのか、また、今後どういった対応を図るのか、総理にお伺いをします。
次に、新型コロナウイルス感染症対策の政策効果の検証に関する認識についてお伺いします。
会計検査院による新型コロナウイルス感染症対策の検査は、現在もコロナ禍が続いていることがあり、十分な規模での実地検査ができておりません。また、パンデミック時の医療提供体制や危機管理対応、防疫体制の在り方についても総括できておりません。
今回の新型コロナウイルス感染症対策の効果を検証、総括し、今回の経験を踏まえて将来の危機に備える必要があります。これまで政府が行ってきた新型コロナウイルス感染症対策の効果を経済、医療の両面から検証することの必要性についての御認識をお伺いします。
次に、布製マスク、いわゆるアベノマスクの過剰在庫への今後の対応について伺います。
厚生労働省が備蓄用として保管している布製マスクの在庫は、令和三年三月末現在で八千二百七十二万枚、保管費用などが八か月で六億九十六万円となっていることで物議を醸しました。また、その時点から既に九か月経過していますので、費用は更に七億円近く掛かっているものと推計できます。政府は、布製マスクの在庫の有効活用をうたっていますが、令和三年十月末時点での在庫は八千百三十万枚とのことで、月平均で約二十万枚しか減っておりません。
このままのペースだと、在庫処分に要する期間は約四百か月、三十三年以上掛かる計算となります。その場合、在庫減少による保管スペースの漸減を織り込んでも、単純計算して、保管等に要する費用は更に約百五十億円、百五十億円要することとなります。在庫の有効活用といっても、これだけ市中に高機能マスクが出回っている状況では、布製マスクの用途は限られるでしょう。
総理は布製マスクを一体何に有効活用するお考えなのか、御説明ください。
私は、これ以上の税金の無駄遣いを止めるため、損切りの観点から、売払い、譲与、資源リサイクル等も考慮に入れた対応を速やかに検討する必要があるのではないかと考えますが、総理の御見解を伺います。
次に、新しい資本主義について伺います。
私は、当初、岸田総理の掲げる新しい資本主義に期待感を抱きました。分配重視路線は、小泉内閣から菅内閣まで続いた新自由主義路線からの大転換であり、まさに新しいと感じたからであります。ところが、最初の所信表明演説から一気にトーンダウンしてしまい、その後の岸田総理の答弁を何度聞いても何が新しいのか全く分からなくなりました。
そこで、確認をさせていただきます。
岸田総理は、当初、分配なくして成長なしと力強く訴えておられましたが、その後の新しい資本主義実現会議では、成長戦略で生産性を向上させ、その果実を働く人に賃金として形で分配することで国民の所得水準を伸ばし、次の成長を実現していくと発言しておられます。
成長と分配の好循環を目指そうとするこの路線は、安倍政権の骨太の方針と全く同じであります。岸田総理の新しい資本主義は、安倍政権の骨太の方針と何が違うのか、我々が理解できるように御説明をください。
あわせて、令和版所得倍増計画に関して伺います。
岸田総理が就任当初、目玉政策として掲げられた令和版所得倍増計画ですが、その後言及されなくなっています。昭和の高度経済成長を象徴する池田勇人元首相の国民所得倍増計画を想起させる令和版所得倍増計画は、今、一体どうなっているのか教えてください。また、本当に令和版所得倍増計画を実行するおつもりがあるのか、お聞かせください。
次に、最低賃金と収入の壁に係る問題について御質問します。
今年も二十八円、最低賃金の引上げが行われました。いわゆる官製春闘の在り方についての議論はさておき、時給が上がること自体は歓迎すべきことと私は捉えております。
しかし、その一方で、税金や社会保険料負担に関する収入の壁が存在することから、配偶者の扶養の枠内で働こうとすると、時給単価が上がるほど労働時間を短くしなければならず、その結果、人手不足に拍車が掛かるという事態が生じています。
岸田総理は、今後この収入の壁をどのようにすべきとお考えでしょうか、御認識を伺います。
私は、そもそも日本が低賃金構造に陥った最大の理由は、行き過ぎた労働法制の緩和による非正規雇用労働者の増大にあるものと考えております。非正規の雇用形態で働く労働者が労働者全体の約四〇%に達しようとしている現在、低賃金構造の温床となっている非正規雇用労働者の処遇を改善するための労働者派遣制度の見直しを図ることが喫緊の課題だと考えますが、岸田総理の御認識を伺います。
最後に、法人税制の在り方についてお伺いします。
私は、岸田総理が新自由主義的政策の誤りを認めて、分配を重視した政策への転換を意識されたことの意義は大変大きいことと考えております。経済成長のためにはGDPの約三分の二を占める内需を拡大させる必要があり、そのためには勤労者所得を増やすことが不可欠だからであります。
日本人の世帯当たり所得はここ二十年で約八%減少している一方、第二次安倍政権下で三度にわたって法人税減税が実施された結果、資本金十億円以上の大企業の内部留保は、コロナ禍を物ともせず過去最高額を更新し続け、昨年はついに三百兆円を超えました。成長と分配の好循環が全く機能していないばかりか、不公平な分配が経済成長を阻害しているものと言えます。
税制優遇措置によって利益を上げ続けても、ため込むだけで還元しない企業に対しては、税の適正負担の観点から、法人税制を応能負担の原則に照らして累進課税に戻すべきことも検討すべきと私は考えます。
最後に、この点について岸田総理の御認識を伺い、私の質問を終わります。
御清聴ありがとうございました。(拍手)
〔内閣総理大臣岸田文雄君登壇、拍手〕
#21
○内閣総理大臣(岸田文雄君) 川合孝典議員の御質問にお答えをいたします。総務大臣や統計委員会の権限についてお尋ねがありました。
まず、今回の事態が生じたことについて、大変遺憾なことであると考えており、なぜこのようなことが起こったのか徹底的に経緯や原因の検証を行い、再発防止に取り組んで、政府統計への信頼を取り戻すことが必要であると考えます。
このため、私から国土交通省に対して、統計の専門家だけでなく法律の専門家も加えた第三者委員会を国土交通大臣の下に立ち上げ、経緯や原因の検証を行い、一か月以内に取りまとめ、再発防止に取り組むよう指示をしたところです。
そして、その上で、今度は総務省にあります統計委員会、統計の専門家による第三者委員会であります統計委員会の専門的な知見による精査を行い、政府統計全体に対する国民の信頼を確保するため、真剣に取り組んでまいります。
そして御質問は、総務大臣そして統計委員会の権限ということでありますが、その際に、現行法では、総務大臣が各大臣に措置要求を行うことができる、また、統計委員会も各大臣に勧告を行うことができる、このようになっております。これらの権限の運用の在り方を含めて検討してまいりたいと思います。
そして、令和二年度決算と決算情報の示し方についてお尋ねがありました。
令和二年度決算については、感染の影響が不明な中で万全な対応を期すため、十五か月予算として切れ目のない支援を行うべく十分な予算措置をしたこと、また、地方自治体や事業者等からの申請を受けて支出する、こうしたものが多いこと、こういった事情もありまして、繰越しや不用が生じたものであると考えております。
また、決算情報の示し方については、憲法や財政法の規定により、毎会計年度作成し、会計検査院の検査を経て、そして国会に提出する、このようにされております。
現在審議をお願いしている令和二年度決算についても、憲法や財政法の規定を踏まえ、二年度における執行実績に基づくものとなっております。
コロナ、失礼、新型コロナ対策の検証についてお尋ねがありました。
中長期的な視点から感染症危機への対応体制を整えていくため、コロナ対策担当大臣を中心に関係閣僚がしっかりと責任を持って、医療面、経済面を含め、これまでの対応の分析、検証を進めてまいります。
検証に当たっては、人流抑制や国と地方自治体との連携、さらには司令塔機能、この三点を中心にしっかりと考え、来年六月までに司令塔機能の強化を含めた抜本的体制強化策を取りまとめてまいります。
布製マスクの配布事業についてお尋ねがありました。
布製マスクの配布事業は、昨年度、新型コロナの実態が分からず先が見通せない中、コロナの、失礼、マスクの需給が逼迫し、入手困難となっていた、こうした状況において緊急的に実施をしたものであると認識をしております。
そして、布製マスクの在庫については、これまでの介護施設等への随時配布を始め希望する自治体への配布など、費用対効果の観点から適切な方策、これを検討してまいりたいと思います。
そして、新しい資本主義及び令和版所得倍増についてお尋ねがありました。
岸田政権では、アベノミクスなどの成果の上に、市場や競争に任せず、市場の失敗や外部不経済を是正する仕組みを成長戦略と分配戦略の両面から資本主義の中に埋め込み、資本主義がもたらす便益を最大化しようとする新しい資本主義を進めております。
総裁選挙で掲げた令和版所得倍増については、こうした新しい資本主義を実現していく観点から、官と民がそれぞれの役割分担をしつつ成長と分配の好循環を生み出すためには、所得の引上げ、すなわち人への投資、これが重要であるという考え方を示したものであります。この方針は全く変わっておりません。
今後、好循環の流れを大きく加速していくための鍵は、日本の未来を担う若者世代、子育て家庭だと考えております。ここにターゲットを置き、賃上げも含めた大きな意味での人への投資を集中させ、その所得を大幅に引き上げることを目指した政策を推進してまいります。
また、いわゆる収入の壁、労働者派遣制度についてお尋ねがありました。
労働時間や収入によって社会保険の適用が変わる問題など、幅広く女性の就労の制度的制約との指摘のある課題について、今後、全世代型社会保障構築会議を中心に検討し、その見直しを進めてまいります。
労働者派遣法については、これまで、同一労働同一賃金の実現など、労働者保護の、保護等の観点から必要な制度改正を行ってまいりました。こうした制度が適切に運用され、派遣労働者の待遇改善や雇用安定が図られるよう、関係者へのこの制度の周知、また指導監督、これを徹底してまいりたいと考えます。
また、法人税制についてお尋ねがありました。
これまで取り組んできた法人税改革は、稼ぐ力の高い企業の税負担を軽減することで、企業の積極的な投資や賃金引上げが可能な体質への転換を促すことを意図としてきたと承知をしております。
こうした成長志向の法人税改革は、コロナ禍前まで、企業の賃金や設備投資が継続的に増加するなど、経済の好循環に一定程度寄与したものであると考えております。
御指摘の法人に対する累進税率の適用については、企業の規模、形態に対し中立的であることが望ましいことから、課題があると考えております。
今後の法人税制の在り方については、経済社会の構造変化を踏まえながら、引き続き総合的に検討してまいりたいと考えます。(拍手)
─────────────
#22
○議長(山東昭子君) 柳ヶ瀬裕文さん。〔柳ヶ瀬裕文君登壇、拍手〕
#23
○柳ヶ瀬裕文君 日本維新の会の柳ヶ瀬裕文です。私は、会派を代表して、ただいま議題となりました令和二年度決算に関し、総理並びに関係大臣に質問いたします。
令和二年度は、政府も国民も新型コロナウイルス対策に明け暮れた一年でありました。国民一丸となって様々な対応や対策を行ってきたことはたたえられなければなりません。一方で、新型コロナウイルス感染症の対応に苦慮したことで、図らずも決算において財政運営の問題点が浮き彫りとなりました。
会計検査院による令和二年度決算検査報告において、新型コロナウイルス感染症対策に関連する諸施策の予算執行状況につき、経済・雇用対策の繰越額が十三兆円、不用額が五千四百億円となりました。これは予算を超えてしまった額ではありません。使わなかった金額が十三兆五千億円ということです。
新型コロナウイルス感染症によって、多くの方が備えをする間もなく仕事を失いました。有効求人倍率は一九七五年のオイルショック以来、四十五年ぶりの下げ幅となり、多くの人がそれまでの日常生活の激変を余儀なくされました。
このような状況で、なぜ経済・雇用対策の予算が余るのでしょうか。これは、省庁の担当者が仕事をしていなかったわけではありません。予算を執行しようにも複雑な申請条件により対象者が限られたり、事務処理量の限界等でこれ以上支出できなかったからであります。要するに、だぶついていたんですね。財政で対応できないのであれば最初から税金を徴収しなければいい、国民の手元にできるだけ多くの現金を残す、これが一番の経済対策ではないでしょうか。
岸田総理は、消費税の減税を決断すべきであります。二〇一九年、当時の安倍総理は、消費税一〇%への引上げを控え、リーマン・ショック級の出来事がない限り一〇%に引き上げるとしていました。今回のコロナショックは、リーマン・ショック級以上の出来事であります。一〇%から引き下げることが妥当だということになりませんか。消費税減税について、岸田総理の見解をお示しください。
次に、新型コロナウイルス対策の具体的な費目について伺います。
令和二年度決算検査報告によると、治療薬・ワクチン開発等関係経費は、予算額一兆九千億円に対して決算額は約一兆一千億円、執行率は五〇%台にとどまりました。まず、この理由について、厚生労働大臣の答弁を求めます。
現行のワクチンは、当初は自身の感染予防や他者への感染予防効果が言われていましたが、結局、アルファ株やデルタ株の感染拡大を防ぐことはできませんでした。そして、オミクロン株に対しては、肯定的なものから否定的なものまで様々な報告はあるものの、いまだ定まった定説はありません。
一方で、厚生労働省は、十二月三日、現行のモデルナとファイザー社製のワクチンについて、心筋炎及び心膜炎について重大な副反応と認定し、警戒度を引き上げました。ワクチン接種後、若い男性で通常より高い頻度でこれらの症状が報告されているからであります。
このような重大な副反応や感染拡大を回避できる新たなワクチンや治療薬が望まれています。スパイクたんぱく質の全体ではなく一部を抗原とする案など、国内からも有力なものが多く芽を出しています。これら次世代のワクチン及び治療薬の開発と製品化に繰越し、不用額を投入していくべきと考えますが、総理の見解を伺います。
学生の学費及び生活費負担と給付型奨学金制度について伺います。
新型コロナウイルス感染症は、学生の修学にも多大な影響を与えました。入学から一度もキャンパスに通えない学生が続出。飲食店を中心とするアルバイトの減少により収入の道を断たれ困窮する中で、学費だけは以前のままということが問題視されました。
そのような中、学生が負担する学費と生活費を給付型奨学金の形で支援する大学等修学支援費は二千九十一億円の不用額となり、不用率は四二%でした。学校側からの交付申請額及び事業規模が予定を下回り、授業料等減免費交付金の支払が少なかったためとのことですが、この金額は、単純に百万人の学生に案分しても、一人につき二十万円を支給できる額であります。追加的に給付する設計ではないとはいえ、より多くの学生に恩恵を受けてもらうことはできなかったのでありましょうか。
給付型奨学金制度ができたとしても、制度がよく分からない、申請の手続の煩雑さによって実態としては手続にまで移らない人が多くいるのです。困窮している学生を漏れなく支援していくためには、申請主義ではなく、そもそも学費を無償化して徴収しなければいい。生活費は、学費の支払のために入学手続時に学校法人に提出している口座に給付すればよいでしょう。
日本維新の会は、幼児教育から大学院までの学費の無償化を訴えていますが、真の学生の支援に向けて、より簡素な制度にすべきと考えますが、岸田総理の見解を伺います。
外国人技能実習制度について伺います。
国会の検査要請を受けた会計検査院の検査報告によって、外国人材の就労改善の検討が十分に行えない状況であることが明らかになりました。
そもそも外国人技能実習制度は、実習生が日本の技能を取得した上で出身国に持ち帰ってもらい技能実習生の出身国の経済発展に貢献するという、言わば国際協力のための制度です。日本国内で安価な労働力として使うための制度ではありません。技能実習生の逃走が問題になっていますが、事業者も競争環境の激化により外国人技能実習生を労働者として採用しなければ立ち行かないという状況に追い込まれているのです。事業者が外国人技能実習制度に頼らざるを得なくなっているこの背景について、総理の認識を伺いたいと思います。
この点について私の見解を申し上げれば、労働関係法令の規制が現代に合っておらず、そのゆがみが外国人技能実習制度として現れてきたと考えています。離職しても再就職が不透明という現状や、転職を重ねるほど再就職に不利になるという不合理な慣行のため、ますます労働市場が硬直化し、雇用者にとっては安い賃金で雇用を継続できる。競争力の衰えた事業者が生き残り、ついには外国人技能実習制度に依存する。
成長と分配の好循環を起こすためには、労働者への分配水準を高めることが不可欠ですが、今の雇用規制では無理でしょう。事業者側に分配を高めようという動機が働かないからであります。
総理の言われる新しい資本主義のためにも、金銭による雇用契約の解除を始めとして、雇用の在り方を抜本的に改める規制改革を進めるべきと考えますが、総理の見解をお示しください。
今の政府は、国民から託された税を効率的に、そして効果的に分配することができているのでしょうか。コロナ禍で困窮する皆さんに必要な施策をお届けすることができているのでしょうか。十三兆円の繰越額、五千四百億円の不用額、決算で露呈した財政運営の問題について真摯に反省しなければなりません。
私たち日本維新の会は、税金が効率的、効果的に使われるために、マイナンバーのフル活用、デジタル化を基礎として、減税と規制改革に取り組むことが必要であると考えています。今後も、納税者の視点を徹底し、日本を前に進める改革を提案する、このことをお約束し、私の質問を終わります。(拍手)
〔内閣総理大臣岸田文雄君登壇、拍手〕
#24
○内閣総理大臣(岸田文雄君) 柳ヶ瀬裕文議員にお答えいたします。消費税率の引下げについてお尋ねがありました。
消費税については、社会保障に係る費用をあらゆる世代が広く公平に分かち合うという観点から社会保障の財源として位置付けられており、当面、消費税について触れることは考えておりません。
新型コロナワクチン及び治療薬の開発等についてお尋ねがありました。
ワクチンに関しては、研究開発や生産体制の整備などを、また、治療薬に関しては、飲める治療薬を含め研究開発や医療機関での治験などをそれぞれ計上した予算を活用して積極的に支援をしてまいります。
御指摘の経費の繰越し、不用額は、その大半がこの自治体の新型コロナワクチンの接種体制確保等への補助に要する費用として繰り越したものであり、今年度中に適切に支出する予定となっております。
引き続き、政府を挙げて、ワクチン及び治療薬の開発支援にしっかりと取り組んでまいります。
学生の学費及び生活費への支援についてお尋ねがありました。
給付型奨学金と授業料等減免については、令和二年度に対象となる学生を約五十一万人と想定し、要件を満たす希望者全員が支援を受けられるよう、十分な予算を準備したところです。今後、進路指導の充実などにより、徐々に利用者が増加するものであると考えております。
さらに、政府広報や各学校に対する周知を一層充実することなどにより、支援を必要とする学生に情報が分かりやすく行き渡るよう努めてまいります。
そして、外国人技能実習制度についてお尋ねがありました。
技能実習制度は、技能等の移転を通じた開発途上地域等への国際協力を目的とした制度ですが、一部、人手不足分野においてこの制度を活用して技能実習生が数多く受け入れられている、こうした実態があります。
政府としては、人口減少下にあって、経済の持続的な成長のためには、安定的な労働力の確保が重要であり、まずは国内において労働力の確保を進めていくことが必要であると考えております。このため、引き続き働き方改革等により働く人の環境整備を図るとともに、今後は成長分野の人材育成等にも取り組んでまいります。
雇用の在り方についてお尋ねがありました。
新しい資本主義を起動するための分配戦略の柱として、人への投資を積極化させることとし、今般の経済対策において、三年間で四千億円規模の施策パッケージを新たに創設をいたします。これにより、学び直し、職業訓練を支援し、再就職や正社員化、ステップアップ、これらを強力に進めて、成長と分配の好循環、実現してまいりたいと考えます。
また、解雇無効時の金銭救済制度は、金銭を支払えば自由に解雇できるといった制度を導入しないことを前提に考えるなど、労働関係法制の在り方については、労働者保護等の観点から、労使の御意見も伺いながらこの検討を進めていきたいと考えております。
残余の質問については、関係大臣から答弁をさせます。(拍手)
〔国務大臣後藤茂之君登壇、拍手〕
#25
○国務大臣(後藤茂之君) 柳ヶ瀬裕文議員にお答えいたします。治療薬、ワクチン開発等関係経費の執行率についてお尋ねがありました。
治療薬、ワクチン開発等関係経費のうち、未執行となった経費の多くは、新型コロナワクチンの接種費用や自治体における接種体制の確保を支援するために必要な経費です。
これらの経費は、自治体ごとの接種の進捗状況に応じて執行されるものであり、令和二年度中に完了しない場合であっても、引き続き支援するために、当該予算が繰り越され、適切に執行することとしております。(拍手)
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#26
○議長(山東昭子君) 岩渕友さん。〔岩渕友君登壇、拍手〕
#27
○岩渕友君 私は、日本共産党を代表し、二〇二〇年度決算に関わって岸田総理に質問いたします。国土交通省が、建設工事受注動態統計のデータを改ざんし、二重計上していたことが明らかになりました。少なくとも安倍政権の二〇一三年から八年も続けられており、GDPにも影響した可能性があります。
毎月勤労統計調査の不正が問題になった際、参議院は政府に対して警告決議を議決しました。政府は、全省府の統計作成プロセスの適正化等の取組を着実に推進し、統計に対する信頼を回復する措置を講じると約束したではありませんか。
それにもかかわらず、国土交通省が改ざんを続けていたことは重大です。総理、反省を口にするのであれば、第三者委員会任せではなく、政府の責任ですぐにでも真相を究明し、再度全省庁の点検を行うべきではありませんか。
森友問題で、公文書の改ざんを強要され自ら命を絶った赤木俊夫さんの妻、雅子さんが国を訴えた裁判で、政府は突如、認諾し裁判を終結させる暴挙に出ました。俊夫さんがなぜ自殺に追い込まれたのか原因と経過を明らかにしてほしいという雅子さんの思いを踏みにじり、隠蔽することは断じて許されません。世論調査で八割近い国民が再調査が必要だと答えています。総理、再調査をするべきではありませんか。
そもそも、なぜ、誰のために改ざんが行われたのか、真相究明のために、関係者の国会招致の実現など、国民の声に応えて参議院の役割を果たそうではありませんか。
二〇二〇年度当初予算にはコロナ対策が一円もなく、三次にわたる補正予算で積み増しされたものの、政府の後手後手ぶりをさらし、巨額の予備費で白紙委任を求めるなど財政民主主義に反する局面が続きました。公衆衛生や社会保障の予算を抑える一方、軍事費は米国からの兵器爆買いなどで史上最高を更新してきました。この路線の転換が求められています。
二〇年度は、東日本大震災と東京電力福島第一原発事故から十年の年です。私は福島県の出身です。原発事故さえなければ失うことのなかった命があります。ふるさとが奪われ、家族がばらばらにされた怒りや悔しさ、そして原発のない社会をつくってほしいという思いをこの六年、国会に届け続けてきました。
総理は、東北の復興なくして日本の再生なしと言いながら、先日の所信表明演説で大震災について一言触れただけ、原発事故には触れませんでした。さらに、初めて復興大臣が兼任となりました。原子力緊急事態宣言は今も発せられたままです。総理は、大震災も原発事故の被害ももう終わったという認識なのですか。
今も戻ることができない帰還困難区域のある浪江町の生活保護世帯は、二〇一五年の二世帯から二〇二〇年には八十二世帯に激増しています。避難が続いているのに損害賠償が打ち切られ、暮らしの実態は深刻です。ところが、政府は、医療や介護の減免措置を早ければ二三年度に見直すと言います。事故から十年たった避難者の生活の実態を政府の責任で把握し、支援を続けるべきではありませんか。政府が帰還困難区域について、除染をしなくても避難指示解除できるとする方針を示したことに怒りの声が上がっています。全域の除染を行うとともに、その費用は東京電力が負担することは当然ではありませんか。
ALPS処理水、汚染水について政府が海洋放出の方針を決定したことに、福島県内だけでなく、岩手、青森、茨城など全国で怒りの声が上がっています。宮城県石巻市で若手の水産加工業者から、漁業を続けたい、人生が懸かっている、希望を奪わないでと訴えられました。政府は、関係者の理解なしにはいかなる処分も行わないという福島県漁連との約束をほごにするのですか。風評被害対策というなら、海洋放出しないことが一番の対策です。方針を撤回し、汚染水そのものを増やさない対策に本気で取り組むべきではありませんか。
半径三十キロ圏に九十四万人が生活する東海第二原発の運転差止めを認めた水戸地裁判決は、実効性ある避難計画策定の困難さと人格権侵害の具体的危険があることを指摘しました。しかも、東日本大震災で被災した老朽原発であり、再稼働は中止するべきです。お答えください。
第六次エネルギー基本計画では、二〇三〇年の原発比率を二〇から二二%としており、老朽原発を含め二十七基程度の原発を稼働することになります。ドイツは、来年末までに原発を停止し、石炭火力を八年前倒しして廃止すると決めました。原発も石炭火力もゼロの決断をしてこそ、省エネや再生可能エネルギーの導入に本気で取り組むことができるのではありませんか。
二〇年度の最大の課題は新型コロナ対策です。中小事業者支援では、一時支援金、月次支援金事業をめぐって、何度申請し直してもいつまでも支給されない不備ループが大問題になってきました。埼玉県内の事業者からは、三年分の膨大な資料も提出したのに不備通知が繰り返されている、うちを潰そうとしているとしか思えないと怒りの声が寄せられています。先日、我が党議員の質問に萩生田大臣は、今改善をしている、丁寧に対応すると答弁しました。不備ループを解消し、一刻も早い支給と審査体制の改善を行うことを総理も約束してください。
事業復活支援金は持続化給付金の半額程度の給付にしかならず、これではとても復活できないという声が上がっています。給付額の増額や給付対象の拡大など、抜本的な拡充が必要ではありませんか。
政府は、病床確保を求めながら、地域医療構想の名で四百三十六の公立・公的病院の統廃合と急性期病床など二十万床を削減する計画を進め、二〇年度にも三千四百床を削減しました。秋田県から、大雪になれば遠い病院には行けない、高齢者の通院を考えるとここに病院が必要などの声が寄せられています。このまま計画を進めれば、地域医療を守れない、医療提供体制が崩壊することになります。それでいいということなのですか。
米価暴落、原油高騰、さらに赤潮被害が加わって、北海道の経済と道民の暮らしを直撃しています。米価対策、原油高騰対策を更に強化するべきではありませんか。赤潮被害の緊急支援事業が閣議決定されましたが、前例のない災害級の被害です。既存の枠を超えた支援が必要ではありませんか。
コロナ禍の下、非正規の七割を占める女性にしわ寄せが集中する中、働く女性の自殺が増加しています。シフトが減らされ、雇い止めが相次ぐなど、女性の多くが雇用の調整弁とされ、経済的な困窮が広がる下で、命を絶つまで追い詰められる事態になっています。
非正規を含む男女の平均賃金で見ると、生涯の賃金格差は一億円近くにも上ります。これが年金に連動して格差は更に広がります。政府として男女の賃金格差の実態を調査し、EUのように企業に実態の公表を義務付けるべきではありませんか。非正規の低賃金をなくすためにも、最低賃金の早期の抜本的な引上げが必要です。
賃金の平等はジェンダー平等社会を築く上の土台です。コロナ危機を経て、ジェンダー平等を求める国民の声が高まっています。この声に応え、政府が本気で取り組むことを求めて、質問を終わります。(拍手)
〔内閣総理大臣岸田文雄君登壇、拍手〕
#28
○内閣総理大臣(岸田文雄君) 岩渕友議員の御質問にお答えいたします。統計問題の真相究明についてお尋ねがありました。
平成三十一年一月の毎月勤労統計の不適切事案を受け、政府全体として再発防止策を進める中で、今回のような事態になったことは大変遺憾なことであると考えます。
このため、私から国土交通省に対して、統計の専門家だけでなく法律の専門家も加えた第三者委員会を国土交通大臣の下に立ち上げ、経緯や原因の検証を行い、一か月以内に取りまとめ、再発防止に取り組むこと、こうした指示を行ったところであります。
そして、この国土交通省のこの第三者委員会でのこの検証を行った上で、その後、統計の専門家による第三者委員会である総務省の統計委員会において専門的な知見による精査を行い、政府統計全体に対する国民の信頼を確保するための方策、検討してまいりたいと考えます。
そして、森友学園案件に関する再調査についてお尋ねがありました。
森友学園問題については、まず、財務省においては、自らの非を認めた調査報告を取りまとめております。会計検査院においても、二度にわたる検査報告を国会に提出をしております。さらに、第三者である検察の捜査が行われ、結論が出ていると承知をしております。
今般のこの損害賠償請求を全面的に認めるに当たりまして、財務省に対し、別途の訴訟についてまず引き続きしっかりと丁寧に対応することを指示し、そして、今後も様々な場において真摯に説明を尽くしていく、このように指示をしたところであります。今後も、必要に応じてしっかり説明をしてまいりたいと考えております。
そして、東日本大震災についてお尋ねがありました。
岸田内閣は、原発事故を含む震災からの復興を内閣の基本方針と掲げ、全閣僚に対して、被災地、特に福島の復興に全力を尽くすよう指示を出しているところです。
復興大臣を務める西銘大臣は、就任以来、精力的に被災地を訪問するなど、原発事故の被災地である福島の復興再生、さらには沖縄及び北方対策の両方の重要業務をこなしていると認識をしております。
東日本大震災からの復興に向けては、引き続き被災者支援や産業、なりわいの再建などの課題が残り、福島の復興再生は中長期的な対応が必要であると認識をいたします。今後とも、閣僚全員が復興大臣であるという認識を共有し、総力を挙げて東北の復興に取り組んでまいります。
医療、介護等の減免措置についてお尋ねがありました。
これまで、原発事故により設定された避難指示区域等に居住されていた方について、医療、介護保険等の保険料、窓口負担の減免措置を実施してまいりました。本措置については、復興の基本方針において、被保険者間の公平性等の観点から、避難指示解除の状況も踏まえ、適切な周知期間を設けつつ、激変緩和措置を講じながら、適切な見直しを行う、このようにされております。
見直し内容については、被災者の方々の実態を把握している各自治体の意見も踏まえながら、復興庁と厚生労働省において連携して検討してまいります。
帰還困難区域の除染や解除についてお尋ねがありました。
将来的に帰還困難区域の全てを避難指示解除し、復興再生に責任を持って取り組むとの決意、これについては全く揺らぎはありません。
また、帰還困難区域の解除に向けた除染については、特定復興再生拠点区域の除染を進めるとともに、同区域外にあっては、住民の帰還の意向を個別に丁寧に伺いながら、人口回復などを通じて復興を後押しするために、政府方針を踏まえ、国の負担において行ってまいります。
そして、福島第一原子力発電所のALPS処理水についてお尋ねがありました。
まず、政府が海洋放出を決定したのは、汚染水ではなくALPS処理水であります。その上で、ALPS処理水の処分については、復興の、福島の復興を成し遂げるためには避けて通れない課題であると認識をしています。
引き続き、政府が前面に立ち、処理水の安全性を確実に確保するとともに、風評払拭に向けてあらゆる対策を行うことを通じて、地元漁業関係者も含め、皆様の理解を得てまいりたいと存じます。
汚染水発生量の抑制対策については、凍土壁や地下水バイパスの設置等の対策により、昨年度は、対策開始前と比較して発生量が約四分の一程度まで減少しています。引き続き、しっかりと取り組んでまいりたいと思います。
東海第二発電所についてお尋ねがありました。
原子力発電所については、いかなる事情より安全性を最優先にし、高い独立性を有する原子力規制委員会が科学的、技術的審査を行い、世界で最も厳しいレベルの新規制基準に適合すると認められた場合のみ、その判断を尊重し、地元の理解を得ながら再稼働を進める、これが政府の方針であります。
こうした方針に基づき、新規制基準に適合すると認められた東海第二発電所についても、地元の理解を得ながら再稼働を進めてまいります。
原発と石炭火力についてお尋ねがありました。
エネルギーは全ての社会経済活動を支える土台であり、安定的で安価なエネルギー供給を確保することは政府の最重要課題の一つであると認識をしております。単一で完璧なエネルギー源が存在せず、今後の技術革新などの不確実性を踏まえれば、徹底した省エネ、再エネ、原子力、CCUSなどあらゆる選択肢を追求し、カーボンニュートラルを目指すことが重要であると考えております。
原子力については、安全性の確保を大前提に、原子力規制委員会が新規制基準に適合すると認めた場合には、その判断を尊重し、地元の理解を得ながら再稼働を進めてまいります。
また、石炭火力については、二〇三〇年に向けて、非効率な石炭火力のフェードアウトを着実に進めてまいります。さらに、二〇五〇年に向けては、水素、アンモニアやCCUS等を活用して脱炭素型の火力に置き換える取組を推進するなど、我が国としてもしっかりと取り組んでまいります。
そして、一時支援金などについてお尋ねがありました。
まず、一時支援金と月次支援金については、緊急事態宣言等の影響を受けた事業者を支援するものとして、これまで、累計約三百万件の申請に対して約二百八十万件の給付を行ってまいりました。月次支援金は、現在も十月分の申請を受け付けており、引き続き迅速な給付に努めてまいりたいと思います。
申請書類については、過去に申請したことがある者の負担軽減策を講じているところですが、その際に、提出された書類からは給付要件を満たすことが確認できない申請者に対しては、必要最小限の追加書類を提出することをお願いし、速やかに手続を終えるよう努めております。
事業復活支援金については、事業規模に応じて支援上限額を最大二百五十万円としていることに加え、新たに売上高の減少割合が三〇%以上の事業者も支援対象とするなど、持続化給付金よりも手厚い支援措置となっております。
地域医療構想についてお尋ねがありました。
地域医療構想については、人口構造の変化を踏まえ、地域の医療ニーズに合わせ、質の高い、そして効率的な医療提供体制の確保を目指して取り組むものです。こうした観点から、地域での合意を踏まえ、自主的に行われる病床の減少に対して支援を行っているところです。
病床の減少、失礼、病床の削減あるいは統廃合ありきではなく、地域の事情を踏まえつつ、地方自治体等との連携、地方自治体等と連携して検討を進めてまいります。
そして、米価、原油高騰、赤潮被害への対策についてお尋ねがありました。
新型コロナによる米価の下落に対しては、当面の需給の安定に向け、新型コロナによる需要減に対応する十五万トンの特別枠を設け、保管や長期計画的な販売等を支援してまいります。
原油高騰に対しては、経済対策において、国民の皆様が年末から春先まで見通せるように、農業や漁業等に対する業種別対策を強化いたします。加えて、ガソリン、軽油、灯油、重油の急激な値上げに対する備えとして、年内から小売価格の激変緩和事業も講じてまいります。
北海道での赤潮被害については、漁業共済等による減収補填に加え、漁業共済の対象外であるウニについても、ウニ殻の除去等の漁場環境の回復の取組を経済対策等により支援をしてまいります。現場の状況を丁寧に把握し、被害を受けた漁業者の皆様に寄り添って対応してまいりたいと考えております。
そして、男女の賃金格差と最低賃金についてお尋ねがありました。
女性活躍推進法においては、男女の賃金格差は、管理職比率と勤続年数の差異を始め、複合的な要因があること等の理由により、情報公開の対象とはしておりません。
政府としては、更なる格差の改善が必要であると考えており、その是正に向けて取り組んでいきたいと考えます。
また、労働者全体の賃金の底上げを図ることも重要であり、御質問の最低賃金につきましては、骨太の方針二〇二一に基づき、より早期に全国加重平均千円とすることを目指してまいりたいと考えます。
以上です。(拍手)
#29
○議長(山東昭子君) 以上で質疑は終了いたしました。これにて休憩いたします。
午後零時九分休憩
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午後三時一分開議
#30
○議長(山東昭子君) 休憩前に引き続き、会議を開きます。この際、日程に追加して、
本日厚生労働委員長から報告書が提出されました全ての世代が将来にわたって信頼できる年金・医療・介護等の社会保障制度の確立に関する請願外四件の請願を一括して議題とすることに御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#31
○議長(山東昭子君) 御異議ないと認めます。─────────────
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〔審査報告書は本号末尾に掲載〕
─────────────
#32
○議長(山東昭子君) これらの請願は、委員長の報告を省略して、委員会決定のとおり採択することに御異議ございませんか。〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#33
○議長(山東昭子君) 御異議ないと認めます。よって、これらの請願は委員会決定のとおり採択することに決しました。
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#34
○議長(山東昭子君) この際、委員会及び調査会の審査及び調査を閉会中も継続するの件についてお諮りいたします。─────────────
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#35
○議長(山東昭子君) 本件は各委員長及び各調査会長要求のとおり決することに御異議ございませんか。〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#36
○議長(山東昭子君) 御異議ないと認めます。よって、本件は各委員長及び各調査会長要求のとおり決しました。
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#37
○議長(山東昭子君) 議事を終了するに当たり、一言御挨拶申し上げます。今期国会では、代表質問や令和三年度補正予算の審議を通じ、国民生活に深く関わる諸課題について熱心な議論が交わされたほか、本日、令和二年度決算の審議をスタートすることができ、ここに、議員各位の御尽力に対し、心から敬意と謝意を表する次第です。
内外の時局ますます多端な折、議員各位におかれましては、御自愛の上、一層御活躍くださいますようお祈り申し上げまして、御挨拶といたします。(拍手)
これにて散会いたします。
午後三時四分散会