くにさくロゴ
1951/02/21 第13回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第013回国会 地方行政委員会 第9号
姉妹サイト
 
1951/02/21 第13回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第013回国会 地方行政委員会 第9号

#1
第013回国会 地方行政委員会 第9号
昭和二十七年二月二十一日(木曜日)
    午前十一時十一分開議
 出席委員
   委員長 金光 義邦君
   理事 大泉 寛三君 理事 河原伊三郎君
   理事 野村專太郎君 理事 門司  亮君
      川本 末治君    佐藤 親弘君
      前尾繁三郎君    吉田吉太郎君
      鈴木 幹雄君    藤田 義光君
      大矢 省三君    立花 敏男君
      大石ヨシエ君
 出席政府委員
        内閣官房長官  保利  茂君
        総理府事務官
        (全国選挙管理
        委員会事務局
        長)      吉岡 惠一君
        国家地方警察本
        部警視長
        (刑事部長)  中川 董治君
 委員外の出席者
        参  考  人
        (警視総監)  田中 榮一君
        専  門  員 有松  昇君
        専  門  員 長橋 茂男君
    ―――――――――――――
二月十九日
 国会議員の選挙等の執行経費の基準に関する法
 律の一部を改正する法律案(内閣提出第三五
 号)
の審査を本委員会に付託された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した事件
 ポツダム宣言の受諾に伴い発する命令に関する
 件に基く全国選挙管理委員会関係諸命令の廃止
 に関する法律案(内閣提出第七号)
 ポツダム宣言の受諾に伴い発する命令に関する
 件に基く警察関係命令の措置に関する法律案(
 内閣提出第八号)
 国会議員の選挙等の執行経費の基準に関する法
 律の一部を改正する法律案(内閣提出第三五
 号)
 治安状況に関する件
    ―――――――――――――
#2
○金光委員長 これより会議を開きます。
 まず去る十九日に本委員会に付託されました国会議員の選挙等の執行経費の基準に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。まず政府より提案理由の説明を聴取いたします。保利政府委員。
#3
○保利政府委員 ただいま議題となりました国会議員の選挙等の執行経費の基準に関する法律の一部を改正する法律案の提案理由並びに内容の概略を御説明申し上げます。
 国会議員の選挙等の執行経費の基準に関する法律は、国会議員の選挙、最高裁判所裁判官の国民審査及び日本国憲法第九十五條の規定による一の地方公共団体のみに適用される特別法の制定に関する住民投票の適正かつ円滑な執行を確保するため、国において負担することになつておりますこれらの選挙等の執行経費で都道府県及び市町村に交付する経費の基準を定める目的をもつて、昭和二十五年に制定されたものであります。
 この法律は、昭和二十五年六月執行の参議院議員通常選挙を初めとして、数府県に執行されました国会議員の補欠選挙及び再選挙並びに熱海市、松江市等における日本国憲法第九十五條の規定による住民投票等約二十件の選挙及び投票の経費について適用されて参りましたが、本法施行後の物価及び賃金の騰貴は、とうてい法定の基準による経費ではまかない切れない状況となつて参りましたので、規定の整備を要する若干の事項とともに、ここに改正することといたしました次第であります。
 改正の内容について申し述べますと、第一点は、本法施行後、公務員の給与基準が、六千三百円ペースであつたものが七千九百八十一円ベース及び一万六十二円ベースと二度にわたつて改訂されまた昨年暮れには鉄道旅客運賃、郵便料金、電信電話料金及び電気料金も改訂され、さらに用紙、燃料等選挙執行に必要な物資の価格も、相当騰貴いたして参りましたのに伴うものでありますが、選挙事務の執行に支障のない限り節約をいたすとともに、その事務の執行にもくふうをして、経費の増高を避ける趣旨をもちまして、経費の基準算出の基礎となつております内容について検討いたしました結果、節約によつてもなお補うことのできない選挙事務従事者の超過勤務手当、選挙事務執行のための旅費、通信費、電燈料、薪炭費、用紙、ガソリン代等について改訂の必要を認めまして、これら人件費、物件費の変動を織り込んで経費の基準を改正いたしました。
 第二点は、公職選挙法の一部改正が行われまして、選挙に関する届出時間の改正等選挙事務の態様にも多少の変更がありました。その結果経費の基準についても検討をする必要が生じたのであります。
 第三点は、本法施行後の実績にかんがみまして、特に市及び区において要します事務費を増額いたす必要が認められますので、新たに経費積算の基礎を規定いたしました。
 なお、参議院議員の再選挙または補欠選挙を執行いたします場合の経費を算出する方法を明確にする等現行法では運用上疑義のある点について若干の規定を整備いたしました。
 なお、昭和二十七会計年度において執行を予定されております衆議院議員総選挙の執行経費は、この改正案に基き算定し、別に予算案に計上いたしておりますが、それによりますると、衆議院議員総選挙に要する経費の総額は十四億五千二百余万円となり、うち、地方公共団体に交付いたします委託費の額は、最高裁判所裁判官国民審査の執行に要します経費総額四千二百余万円のうちの地方委託費四千十七万一千円を含めて十二億四千五十万六千円となつておりまして、これを昭和二十四年一月執行の衆議院議員総選挙及び最高裁判所裁判官国民審査の執行経費のうちの地方委託費九億一千五百十五万三千円に比べて三億二千四百余万円の増加となり、昭和二十五年六月執行の参議院議員通常選挙における経費の地方委託費九億六千九百八十九万三千円に比べて二億七千余万円の増加となります。
 以上がこの法律案を提出いたしました理由及びその内容の概略であります。何とぞ慎重御審議の上御賛成あらんことをお願い申し上げます。
#4
○金光委員長 本案に対する質疑は次会より行うことといたします。
    ―――――――――――――
#5
○金光委員長 次にポツダム宣言の受諾に伴い発する命令に関する件に基く全国選挙管理委員会関係諸命令の廃止に関する法律案を議題として質疑を続行いたします。質疑はございませんか。――なければ本案に対する質従は、これをもつて終局いたすことといたします。
    ―――――――――――――
#6
○金光委員長 次にポツダム宣言の受諾に伴い発する命令に関する件に基く警察関係命令の措置に関する法律案を議題といたします。質疑を続行いたします。質疑はございませんか。――なければ、本案に対する質疑はこれをもつて終局することといたします。次会に討論採決を行いたいと思います。
    ―――――――――――――
#7
○金光委員長 これより警察に関する件について調査を進めることといたしたいと思いますが、御異議ございませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#8
○金光委員長 御異議なければそのようにいたします。
#9
○立花委員 警察関係で調査をやられるのはけつこうだと思いますが、どなたか来ておられますか。私前会から警視総監の出席を要求しておつたのですが、その点はどうなつていますか。
#10
○金光委員長 ただいま中川刑事部長が見えているそうでありますが、田中警視総監を参考人として出席するよう要求中でありますから、この際暫時休憩いたします。
    午前十一時二十二分休憩
     ――――◇―――――
    午前十一時四十四分開議
#11
○金光委員長 これより再開いたします。
 警察に関する件について調査を進めることといたします。この際お諮りいたしますが、最近の治安状況について参考人として田中警視総監より実情を聴取することにいたしたいと思いますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#12
○金光委員長 御異議なしと認めます。さよう決します。
 富士銀行千住支店行金強奪事件につき、田中参考人より説明を伺います。田中参考人。
#13
○田中参考人 御指名によりまして私から去る十八日千住に起りました富士銀行千住支店行金強奪事件につきまして、概略を御説明申し上げたいと存じます。
 二月十八日午後三時十五分ごろとおぼしいころ、富士銀行千住支店東口通用門に白人の米兵らしい服装をした者でありまして、まだ米兵であるか、シヴイリアンであるか、その点が十分確認はされていないのでありますが、とにかく白人二名と日本人風の男、これも日系の米人であるか、二世であるか、日本人であるか、それも確認されていないのでありますが、とにかく白人二名と日本人風の男、三名を乗せた一台のジープが立ちどまるとみるや、この日本人風の男、これはちようど年令二十五、六才で、レイン・コートを着して白マスクをかけておつたと見られておりますが、南口から――ちようど銀行は午後三時に表門を締めまして、一般のお客の入るのを一応とめまして、中で整理をいたしておるのでありますが、ちようど三時十五分ごろ、南口のよろい戸を半分ほどおろしておつたそうであります。そこへよろい戸をくぐりまして四十五ミリ口径の拳銃を携えて、まず構内に侵入いたしたのであります。そしてただちに五分間ほど静かにしろとどなつたのであります。そして手を上げろということで、行員は非常に驚愕してうろたえているところへ、さらに他の二名――白人二名であります。一名は三十才ぐらいで、背の高さが五尺五寸ぐらい、コールマンひげをはやしておつたそうであります。いま一人は三十才前後で、これは少し背が高うございまして、五尺八寸ぐらい、非常に好男子であつたそうであります。これが、東口通用門といいますと、道路からちよつと入つた裏口から入れるようになつておりますが、それも口径四十五ミリの拳銃をかまえて侵入いたしました。その中の一名がつかづかと黒田支店長のもとに歩いて来てホールド・アツプをさせまして、うち一名の者が行員を脅迫して金庫に案内させて、格納されておりました約二百八十四万円ほどを強奪、これを持参しましたズツク製の袋に急いで詰めました。またその日本人風の男は出納係の机上にあつた現金五万六千円を強奪、ポケツトに入れて逃げたのであります。この際に石橋秀子という女の行員がすぐ机の下にありました非常ベルを鳴らしまして――この非常ペルは千住消防署に通じておつたのであります。これを三回ほど鳴らしたわけであります。千住消防署の水村消防手ほか一名が火災が起つたと直感しまして、急いで現場に参りまして、まず水村消防士がよろい戸をくぐつて中に入つたとたんに、今言いまして日本へ風の男にホールド・アツプを命ぜられまして、いかんともすることができなかつたのであります。そしてその三人は、金を詰め込むと同時に、急いで東口からジープに乗つて逃走をいたしたのであります。当時この水村消防士らが火事と思るて飛んで来たために、その付近におつた人々が、何事ならんと思つて銀行前に集まつて来たのであります。そこで犯人らは、その道を明けさせる意味におきまして、威嚇的に拳銃を一発発射いたしまして、ジープの窓をぶち抜いておるのであります。そして銀行からさらに左折いたしまして、間もなく右折して西新井橋方面へ逃走いたしたのであります。この拳銃を威嚇発砲したために、民衆が非常に驚きまして、そのうちの一名が、そこから約一千メートルほど離れておりました警察に、かけ足で事の急を通報いたしたのであります。そこで警察といたしましては、ただちにその場にありましたジープに数名の制服警察官が搭乗いたしまして、その車を運転して銀行に行つたのでありますが、その際にはもうすでに逃走したあとであつたのであります。
 それからいま一つ、その銀行の表門の電車通りをへだてた前に、現在パトロール員の連絡所があるのでありますが、この連絡所におつた。パトロール員が見ておつたけれども、手をむなしゆうしたというようなことが言われておるのでありますが、これはそうでなくして、ちようどここは大師道の駐在所ということになつておりまして、常時巡査は無配置になつております。そしてパトロール員がパトロールから帰つて来て、異常があつたとかないとかを電話によつて本署に連絡する場所になつておつたのであります。ちようど有阪部長と峯巡査の二人がパトロールから帰つて参りまして、その駐在所に帰りついたところが、銀行の前に人だかりがしておるので、どうしたのかと思つているところに、民衆の一人が、こういうことがあつたということを知らせてくれたのであります。両巡査は驚いて、急遽その旨を本署にとりあえず電話で通報をしたのであります。そして民衆に、今ジープが逃げたその方向はどつちかと言つたところが、千住大橋の方に向つて逃走したという知らせがあつたので、たまたまそこを通り合せましたトラツクに頼みまして、そのトラツクに便乗いたしまして、この有阪部長が追跡いたしたのであります。ところが先ほど申し述べましたごとくに、ジープは間もなく右折して西新井橋の方に行つたのを知らずに、そのまま一直線に行きましたために、全然ジープの姿を発見することができませんので、むなしく手をこまねいてまた銀行までもどつて参つたような状況でございます。従いまして、二人の警察官が手をむなしゆうしておつたというのではなくして、時間的にもかような誤差がありましたので、この点を御説明申し上げておきたいと思います。
 それからさつそく現場を視察いたしまして、同時にまた米人が加わつておつたということによりまして、ただちにCIDにも連絡いたしますし、またCIDからも調査官が参り、本部からも捜査官が参りまして、現在千住署に捜査本部を設けて、CIDと警視庁の捜査本部とが共同捜査をいたしておるような状況でございますが、ただちに管下全体に手配をいたしますと同時にまた車輌によつて逃走いたしておりまするので、近県方面にも手配をいたしまして、ただちにこうした自動車が来た場合には、すぐこれをとめてもらいたいと手配いたしたのであります。これより先、昨日のいろいろの調査によりますと、現場から二キロ半ほど離れておりました省電の前に、ちようどこの一時半ころから三時近くまで、ジープと高級車が二台とまつておつたという目撃者が二、三名出て参つたのであります。そしてそのジープには目撃者が見たような風ていの男が、三人乗つておつたということがわかつて参つたのであります。
 それから当日の午後三時半ごろ、西新井橋から上手に江北橋というのがございますが、その江北橋の付近を警羅中に、最初ジーブが走つて参りまして、あとから高級車が参りまして、江北橋の手前に来たときに、高級軍がサイレンを鳴らしたところが、前のジープが急停車しましたので、その高級車は追い抜いてこれまたとまつて、そしてジープの中から二人の者が出て高級車に乗りかえて行つたのを、西新井署の佐々木巡査部長が警羅中に目撃いたしておるのであります。そしてその後佐々木部長は、ちようどそこにジープが乗り捨てられましたので、おかしなことであるというので、一応ジープの番号を記録しておきまして、巡視の帰途、西新井警察署のある派出所に立寄つたところが、今かような緊急手配があつたということで、ただちに佐々木部長は、それではあのジープに違いないというので、また現場に参りまして、そのジープがまだ遺棄されていることを確認したのであります。その際に佐々木部長が瞬間的に、別にこうした犯罪が起るものとは全然予感なくして一応見ておつたために、その高級車がどういう番号であつたかということは、はつきり記憶いたしていないのでありまするが、同部長の目撃した瞬間に受けた感じからいたしまして、あるいは五一年式のダツジまたはプリムスではないかと一応想像できるのでございます。それでこの犯行は私どもの見方としましては、相当専門的にこうしたことを前々から計画いたしておりまして、千住等は中小商工業者の多いところでありまして、三時ごろになると現金収入が銀行にある。場所的にもちようど手ごろであるということから、千住銀行を選んだのではないかと一応想像されるのであります。従つて、前前からこうしたことが計画的に敢行されたのではないかと考えております。ことに犯人がいずれも手袋を着用いたしまして、指紋を現場に残さないようにしておることによつても、相当専門的に考えておる犯行と考えます。
 なお犯行に使用いたしましたジープは、去る十七日午後十一時ごろ都内の築地の東劇前において、盗難にかかつたものでありまして、逃走の際前面だけのナンバーをとりはずしておつたようであります。また高級車も盗難品と一応考えられるのであります。ただ新聞にも発表されました二―二三八八という番号でありますが、これも二ダツシユぐらいまでは確認されておるようでありますが、あとが二三八八であるか二三三八であるか、その辺がまだしつかり確認をされてないのであります。またこうした番号は、場合によつてはいつでも自由にとりかえられることになつておりますので、この高級車の番号のみをたよつて捜査することは、非常に危険を来すことになるのであります。
 それからなおCIDと警視庁並びに各県の自治体警察、国警と緊密なる連絡を保持いたしまして、近くモンタージユ写真を――この銀行内の目撃者の談話、受けた感じ等を詳細に多数の人から聴取いたしまして、それによつて最も正しいと認められるモンタージユ写真を、これはもうすぐできると思つておりますが、これをCID並びに警視庁管下はもちろんのこと、近県方面にも配付いたしまして、これによつていろいろ捜査をいたしたいと考えております。
 犯人はこの乗りかえた高級車に乗りまして、西新井、埼玉方面に逃走した疑いがございまするので、主としてその方面に相当手配をして、厳重に捜査をいたしております。十九日十一時ごろ栃木県の日光町小西旅館に、夜中の三時ごろ米人二名が日本人一名をつれてセダンの自動車で宿泊した事実を探りまして、これをCIDで調査いたしたのでありますが、その後伊香保方面に走つたという知らせがあつたので、これもCIDにおいて、また地元の警察において調査いたしましたところが、くだんの自動車とは全然違うことが確認をいたされたのであります。
 なお本件の調査といたしましては、あるいはホテル、旅館その他売春婦等の線からも、いろいろと調査をいたしておる次第であります。現在MP司令官が全国のMP司令官に向つて手配をして、相当厳重に調査をせられておると思いますし、また警視庁を中心にいたしまして、全国の国警、自警に緊密なる連絡をとりまして、現在調査をいたしておる次第であります。
 犯罪の発生並びにその後の経過状況は、大体以上のようなものであります。それからなお本件捜査にあたりまして、いろいろ日本の裁判官管轄権につきまして問題があると思いますので、本件につきましては念のために申し上げておきたいと存じます。昭和二十五年十月十八日付で総司令部より、民事、刑事裁判権の行使に関する覚書が、日本政府に送られておるのであります。
 その中に日本の当然正当なる職権を持つ官公吏、これは警察官並びに警察吏員でありますが、これが占領軍要員は左の二つの事情が同時に存在する場合に限つて、日本の法律執行当局によつて逮捕されるということになつておるのであります。その一つは占領軍警察官が現場に現に居合せない場合、占領軍警察官といいますから、これはMPであります。MPが現場に現に居合せなかつた場合、それから第二は、身体に対する危害または財産に対する重大なる損害を含む犯行、身体に対する危害と申しますのは、何か物をもつて傷害を与えるとか、強姦をするとか、あるいは射殺せんとするというような相当重大なる危害でございます。こうした身体に対する危害または財産に重大なる損害を含む犯行あるいは犯行のおそれのある場合、これらの二つの状況のもとにおきましては、日本の警察官といえどもつかまえることができろのであります。そのつかまえる対象は第一は、各国の連合国の軍隊の構成員、第二は、連合国人にして占領軍に公に付属する者またはこれに付随して占領軍業務に服する者、第三は、公務を帯びて日本に在住する連合国人、第四は、以上の者に随伴する親近家族及び被扶養者、これらの者が現に今申しました二つの場合におけるような状態において犯罪を行いまた行わんとする場合においては、日本警察官といえどもこれを逮捕することができる、かようになつております。従つて今度の富士銀行の場合を考えてみますと、軍人のような服装をしておつたということでありますが、かりにこれが軍人軍属であると一応いたしておきまして、その場合におきまして、もし日本警察官がその場に行つた場合におきましては、占領軍警察官が現場に現に居合せておりません。それから場合によつては身体に危害もあるかもしれない、また財産に対する重大なる損害を含む犯行のおそれある場合ということにも該当いたしますので、当然これは現行犯として日本の警察官が逮捕できるのであります。なお今申しました四つのものに該当しない者つまり軍人軍属及びその家族にあらざる者につきましては、当然日本の警察官によつて犯罪の捜査をし、また令状によつてこれを逮捕することができるという解釈をとつておるのであります。また現に令状によつて軍人軍属にあらざる者を逮捕した実例も持つておるような次第であります。
 そこで富士銀行支店におきまする犯行は、すでに本人らは逃げておるのでありまして、逃げておりますと、これがいわゆる現行犯ということでなくなつて、非現行犯容疑者ということになつて参るのであります。現にこれが軍人、軍属であることがはつきりしておりまするならば、当然これは一応占領軍の警察によつて逮捕せねばならぬ。それからまたこれが軍人、軍属にあらざるものであるとするならば、これは当然日本の警察によつて捜査、逮捕ができて、もし逮捕せられた場合におきましては、ただちに身柄をもよりの占領軍当局に引渡さなければならぬということに相なつております。従つて現在のところ目撃者の談話、証言等からいたしますると、軍人のような服装をしておつたというのでありまして、軍人であつたかあるいはふつうの米人が軍人のような服装をしておつたのであるか、その辺りが十分に確認をいたされてないのであります。従つて現在のところあるいは軍人であつたならば、当然これは占領軍警察官憲によつて逮捕されねばなりませんし、またそうでない場合には、日本の警察官の令状によつて逮捕できるのでございます。まだその辺は十分に確認をされておりませんので、万全の措置を講じまして、現在占領軍警察当局並びに日本警察当局が緊密なる連絡をとりまして、いわゆる合同捜査ともいう態勢を整えて、現在捜査に鋭意努力をいたしておるような次第でございます。
#14
○金光委員長 これより田中参考人に対して質疑を許します。河原伊三郎君。
    〔立花委員、「委員長、委員長」と呼ぶ〕
#15
○河原委員 本件は全国民に、はなはだしき衝撃を与えましたところの重要な案件でありまして、連合軍が現在の……。
    〔立花委員、「委員長、不公平だ」と呼ぶ〕
#16
○金光委員長 公平にやつております。御着席を願います。
#17
○河原委員 本件に関しまして、現在の警察力が足りないことから、こういうことになつたのか、また日本人でないからつかまえなかつたのかという点について、大きな疑惑を持つておるわけでありまするが、田中警視総監は、日本人であつても捕縛は困難であつたか、日本人でなかつたから逮捕されなかつたのか、この点について、いかようにお考えになつておるか伺いたいと思います。
#18
○田中参考人 お答えいたします。もちろん犯人逮捕に対する警察官の心構えといたしましては、相手が日本人であろうが。また日本人にあらざるものであろうが、犯人を逮捕する気持、またその熱意、努力につきましては、何らかわりはないのであります。ただ日本人である場合とそうでない場合との区別は、先ほど私が説明いたしましたごとくに、捜査権の行使の上におきまして、進駐軍要員等については、その逮捕の場合における條件が、非常に制限をされておりまする関係もありますので、この点捜査の上においても若干不便、不利を来す場合があろうと思います。しかしながら現在占領軍警察当局も非常な熱意をもつて、むしろ日本の警察と競争的に今双方において捜査に最善の努力をいたしておりまするので、今の段階におきまして、犯人が日本人であるからどうだ、日本人にあらざる者であるからどうだということはなかろうと、私は考えております、やはり同じような能力において犯人逮捕ができるものと確信しております。
#19
○河原委員 そういたしますと、日本人によつて同じような事件が白昼今後もたびたび繰返されるおそれが、現在の警察力をもつてしてはあるのだ、こういうふうに解してよろしいのでしようか。その点を伺いたい。
#20
○田中参考人 とかくこういう事件は類は類を呼ぶおそれがあるのでございまして、今までの経験によりますると、ある特殊の犯罪が行われますと、それに類似したような犯罪がただちに模倣的に行われるというような可能性が非常に多いのであります。実は十六日に京都市内におきまして、やはり銀行ギヤングが起つたのであります。そしてそのことを聞きましてすぐ次の十七日に警視庁幹部と協議いたしましてただちに銀行その他の金融業者、その他こうした犯罪の行われ得ると想像できるようなところに連絡をとりまして、何らか今後の防犯措置を講じようじやないかといつて、いろいろ計画中に、たまたま十八日にこういう事件が起りまして、私自身としましても、偶然こうしたことが起つたということに対しまして、非常に驚いておる次第でありまして、警視庁といたしましては、こうした事件が今後起るかもしれぬといういろいろの心配からいたしまして、ただちに都下の銀行業者に連絡をとりまして、現在防犯的措置を講じてないようなところに対しましては、経費を惜まずにただちに防犯的措置を講ずる、と申しますのは、非常ベルを設置するとか、あるいはまた何らかほかの方法によつて銀行の構内のこうした設備をさらに完備するといつたようないろいろな防犯措置を講ずるように、ただちに連絡をとつておるような次第で、将来ともこうした事件の起らないように、われわれとしましては万全の措置を講じたい、かように存じております。
#21
○河原委員 ただいま日米行政協定が結ばれようとして、その交渉中と聞いておるのでありますが、本件の直接な関係といたしまして、この行政協定に対しまして、治安確保の第一の責任者である参考人は、特に本件によつて感じ得られましたところにより、こういうふうなことはぜひともこの行政協定に織り込む必要があるといつたふうな特別な感じを持たれた点はありませんか。もしあるとすれば、そういう点を承りたいと思うのです。
#22
○田中参考人 今回の事件は、ちようどたまたま行政協定が結ばれる直前に起りました事件でありまして、この点われわれはあらゆる点におきまして考えさせられることが多々あるのでございます。先ほど私が申し述べました昭和二十五年の十月十八日付のメモランダムでございますが、こうしたことはもちろんのこと、さらに具体的に申し上げてここで意見を発表するまでには至つておりませんが、これよりもさらにいま少し広く解釈いたしまして、いま少し一般民衆の生命、身体、財産の保護が確実にできるような警察権の行使の方法が協定されれば、非常に都合がよいと考えております。ただいま私がここで、しからばどういうふうにするかということにつきましては、今までの経験を生かしまして、十分に研究いたして、国警なり、また法務府なり、さような面とも十分に緊密な連絡をとりまして、適当なる案を作成いたしました上で、措置を講じたい、かように考えております。
#23
○河原委員 わかりました。
#24
○金光委員長 ただいま立花君より委員長不信任の動議が提出されましたので、一身上のことでありますから、本席を野村專太郎君に讓ります。
    〔委員長退席、野村委員長代理着席〕
#25
○野村委員長代理 委員長の指名により私が委員長の職務を行います。ただいま委員長不信任の動議が提出されておりますから、これを議題として議事を進めることにいたします。
 まず提案者よりその趣旨の説明を聴取いたします。
#26
○立花委員 この問題は非常に重大な問題だと考えまして、事件が起きました日に私は警察にも参りました、消防署にも参りました、銀行までも参りまして調べて参りました。で、すぐこの地方行政委員会にもその旨を伝えまして、特に田中参考人の出席を要求いたしました。理事会でも発言いたしまして、理事会の同意を得まして、その手続をとつたわけです。ところが前回の委員会には理由が不明確のまま、田中警視総監の出席がなかつたわけです。非常に重大な問題でございますし、まだ犯人が逮捕されるに至つておりませんので、委員会の調査を特に必要と考えておりましたところが、今日幸いに開かれましたので、警視総監の再出頭をまたお願いいたしまして、警視総監が出て参られておりましたので、警視総監に承りますと、まだ手続が完了しておらないということでございましたので、あらためて委員長にお願いいたしまして、手続をとつていただいた、こういうふうに、私の方といたしましては、最初からこの問題を調査し、特に理事会に持ち込み、あるいは委員長に話しまして、この問題を私の方から質問いたしたいということを了解を得てあつたわけです。しかるにこの委員会が開かれますと、私の質問が最初に拒否されまして、警視総監の説明がまず始まり、それも私、がまんいたしておりました。私が質問のために、その了解のもとに呼んでいただいた警視総監に、私の質問がなくて、総監の説明から始まり、しかも私に対して何ら事前の了解がない。非常に不満だつたのですが、私はその点も黙つて見ておつたわけです。私といたしましても、当然質問に入ります前には、警視総監の説明を私の方から求めるつもりでおつたのですが、何ら了解なしにそういうやり方をされる、これも非常に不満でした。従つてそういう警視総監の一般の報告が終りましたなれば、当然呼んでいただいた私の質問を許していただけるものと思つておりましたところが、そういう意味で最初に私が発言を求めましたのに、私よりあとで発言をお求めになつた河原君に発言が許される、しかもその前に委員長は決してこの発言の通告を、文書によつて、あるいは口頭で委員長に申し出ろということを言われておりませんし、もし申し出るにいたしましても、先ほどから申し上げておりますように、前回の委員会から、私は特に警視総監を呼んでいただいて、質問するということを申し入れておるので、当然そういう措置はとつていただかなければならないと思うのです。こういうことで発言の制限が委員長によつて行われておりますし、また警視総監がここにおられることも、委員長の言によりますと、十二時過ぎまでということを言われておりまして、もうほとんど時間がないわけなんです。そういたしますと、私が前からそういう形で問題の重要性を訴えまして、せつかく来ていただいた警視総監に私が質問する時間がほとんどないわけです。こういうことになりますと、何のために警視総監を呼んでいただいておるのかわからぬわけです。こういう議事の運営をなさることに対しましては私は非常に遺憾です。だから委員長の席へ行つて、委員長の反省を求めたのですが、委員長の反省がありませんので、やむを得ず委員長不信任の動議を出しまして、今までの経過を明白にし、委員長の委員会運営の不公平をただすという方法をとるのもやむを得ないと考えましたので、私は委員長の不信任を出したわけであります。
#27
○野村委員長代理 暫時休憩いたします。
    午後零時二十八分休憩
     ――――◇―――――
    午後零時三十二分開議
#28
○野村委員長代理 これより委員会を再開いたします。
 ただいまの動議に対しまして、討論を省略して、ただちに立花君の動議について採決いたします。立花君の動議に対しまして、賛成の諸君の起立を願います。
    〔賛成者起立〕
#29
○野村委員長代理 起立少数。よつて同君の動議は否決されました。金光委員長にかわります。
    〔野村委員長代理退席、委員長着席〕
#30
○門司委員 議事進行について……。きようの問題について、私は議事の進行上ひとつ将来の問題を考えていただきたいことは、きようの田中総監に来ていただきまして、事情を聴取するということは、実は公報には載つていないのであります。従つて公報に載つておりませんことが、たまたま警視総監がおいでになつて、しかもそれは前日来からの要求に基いてきようおいでになつたということでありますので、従つてこういう問題が将来勃発しないとも限らぬわけでありまして、公報に載つていることについての発言は、おのずから前もつて予告することもできますし、また通知することも当然できますけれども、こういう公報に載つておらないようなことが行われる場合の発言の順序その他がありますので、この委員会の将来の運営の一つの方法として、発言はやはりあらかじめ委員長の手元へ通告をして、当日の問題はその通告順によつて一応行うというようなことにでも、ひとつきめておいていただきたいのであります。今の立花君のお話もそうだと思う。大体従来の慣例からいいますると、通告したこともあればしないこともあるのであつて、大体順序として、質問を持つておいでになる方に質問が許されて、それでスムースに行つておつたわけでありますが、こういう問題が起つて来るということになると、一応議事の取扱い方について、ぎこちないようでありますが、一つの区分をきめておいてもらいたいと思います。しかるべく委員長においておとりはからいを願いたい。
#31
○金光委員長 ただいまの御発言の御趣旨ごもつともでありますから、理事会に諮りまして、適当な処置を講じたいと思います。
#32
○立花委員 別にむずかしい規則をつくつていただかなくても、私はいいと思います。常識的にやつていただいたらいいので、その点は私決して機械的な決定を求めるものではありません。しかし今回の事件のように、初めから私がお話をし、私が警視総監をどれだけ待つておつたかということは、通告以上に委員長にわかつておつたはずですが、それが許されないで、ああいう形でやるということは、非常にぎごちないものがありますので、そういう形でなしに、だれが見ても常識でわかるような、円満な委員会の運営をお願いいたします。
#33
○金光委員長 了承いたしました。
 質疑を続行いたします。
#34
○立花委員 警視総監にお尋ねするのですが、現在では米兵であるか、あるいは米兵以外の者であるか、言葉をかえて言いますと、日本の警察が逮捕できるものであるかできないものであるか、不明であるというふうに総監の言葉は聞かれるのですが、そうなんですか。
#35
○田中参考人 お答えいたします。当時富士銀行支店内におきまして、目撃した者の談話を聴取いたし、それからさらにジープがとまつておつたときに目撃した者の目撃談を総合して考えてみますると、軍人のような服装をしておつたという言葉でありまして、軍人であるかどうか、その辺が非常に今のところ確信を持つて、米軍人であるということが、今言えないわけであります。そこでもし軍人でないといたしまするならば、これは当然十月十八日付の覚書によりまして、軍人軍属でなければ、日本官憲によつていつでもこれは容疑者として逮捕できるわけであります。しかるに今のところ、軍人らしい点もあるというような点が、非常に捜査上混同されまして、万一の場合を考えましてまたMP側も、もし軍人であつた場合においては、もしそれがために日本官憲が逮捕の機を失するようなことがあつてはいかぬ、かような趣旨から、今CID側においても、もし軍人であつたならば、自分の方で出てやるからというので、全国に今手配をいたしまして、そして米軍側とそれから日本警察側とが、おそらく各県におきましても、同様に相当緊密な連絡をとつて、今双方で捜査を続行している、かように考えております。
#36
○立花委員 そうなりますと、警視総監の言葉は、千住署長の言葉と同じように、逮捕していいかどうかわからないということになつて来ると思います。たとえばそこに犯人がおるとした場合に、警視総監はそれを逮捕してもいいかどうかわからぬのですか。
#37
○田中参考人 これが軍人、軍属にあらざる者であることが確認をされておりましたならば、日本警察がただちにこれは逮捕できるだろうと思います。ところが現在のところ、いまだ犯人が確認されていないのであります。そこでかりに軍人、軍属でありましても、何のなにがしであるということがはつきりわかつておりますれば、そしてこういう者を逮捕しろというようなことがはつきりしておつたならば、米占領軍の警察当局から、これこれの者を指名手配しているから、この者ならばただちに逮捕すべしという命令または指示がありました際には、これは日本警察といえども、その者を見たならば、すぐ逮捕できるであろうと思います。ただそれも今のところ、何のなにがしであるということがわかりませんし、またそれが軍人であるかシビリアンであるかということが、米軍当局にもまた日本警察にもわかつていないのであります。そのために捜査の機を失してはならぬというので、現在のところ双方が出てやつております。これがもしシビリアンであるということがはつきりおかつておつたならば、占領軍当局は手を引いて全部日本の警察にまかせるだろうと思います。ところがそれがはつきりわかつていないために、占領軍警察当局も出て、現在一緒にやつております。もし犯人とおぼしき者がおつたならば、ただちに占領軍警察当局も一緒に出て逮捕しよう、こういうことになつております。
#38
○立花委員 あなたはきのうの参議院の地方行政委員会で、現在犯人を逮捕できるのは、佐々木部長一人だけであるとおつしやつたという記事がきようの朝日新聞に出ておりますが、犯人は自動車で逃亡いたしましたので、全国どこへ行つておるかおそらくわからないと思うのですが、全国十数万の警察官がおりましても、現在逮捕できるのは一人しかないのだということになると、これはまつたく困ると思うのです。しかもその犯人がいつピストルを持つて目の前に出て来るかわかりませんが、それを日本警察官が逮捕できないということでは、何のために莫大な国費を使つて捜査をやつているのか。あなたの話を聞きますと、モンタージユ写真までつくつて、国警、自警が全部動員されてやつておるということになると、非常に重大な問題ですし、莫大な費用もいると思いますが、その十数万の警察官の中で佐々木部長一人だけしか逮捕できないで、ほかの日本の警察官は逮捕できない、こういうことになりますと、とんでもないことだと思いますが、総監の言葉を聞いておりますと、そう解せざるを得ないと思う。きようの新聞にも、総司令部のスポークスマンが発表いたしておりますように、東京管区だけで三百人の脱走兵がある。この連中が犯行の大部分をやつておるというような記事が出ておりますが、その連中が犯行をやり、しかもそれをつかまえることができないということになると、これは非常に重大な治安上の問題なんで、こういう点をどうお考えになつておるか。それからCIDの方にも、この富士銀行支店のギヤングをやりました米兵の所属も氏名もわかつていないのか。あるいはわかつておつて、警視総監の方に知らされていないのか。合同捜査本部をお持ちだとおつしやいますが、合同捜査本部で、日本の警官はそういう本質的なことも何も知らされないで、犯人の所属、氏名も何も知らされないで、ただMPの下働きをやつているのか。この点をひとつ明確にしていただきたいと思います。それから脱走兵の三百人と申しますのは、これは脱走自体でも一つの犯罪でしようし、こういう者がしかも犯罪を行つておるということをスポークスマン自身が認めているのだから、三百人の脱走兵の氏名なりあるいは写真なりを、警視総監としてお受取りになつているのかどうか、これを聞かせていただきたい。それから総監も言われておりますように、向うのCIDあるいはMPの方の指示があれば日本の警察官も逮捕できるとおつしやつております。また法律の上でもそうなつておると思いますが、今度の富士銀行支店のギヤング事件について、特にMPの方から、日本の官憲で逮捕しろ、これは軍人、軍属あるいは親近者であるとそれ以外の白人であるとを問わず、今度のギヤング事件は重大だから、日本に重大な被害を与えているのだから、これは日本の官憲で、発見次第逮捕しろという指示があるのかないのか。また警視総監の方から、それを要請される意思はないのかどうか。そこに犯人がおりましても、逮捕できないというような状態でほおつておくつもりなのかどうか。これもひとつ明白にしていただきたいと思うのです。まだ伺いたいことが多少ありますが、そういう重大な点で総監の御意見を承りたい。
    〔委員長退席、野村委員長代理着席〕
#39
○野村委員長代理 ちよつと御質疑される方にお願いいたしたいと思いますが、田中警視総監は都議会の関係で、数回にわたつて出席方を求められております。ただすべきところは十分ただしていただかなければならぬと思いますが、時間の関係もありますので、御了承の上で御質疑を願いたいと思います。
#40
○田中参考人 第一の、現在では米兵かしからざるか不明だから逮捕ができない、これは先ほど何回も私が申し上げましたごとく、米兵であるということがわかれば、当然日本には捜査権はないと思うのでありますが、米兵か何かわからないので、やはり日本の警察が捜査できることになつておるのであります。
#41
○立花委員 米兵だつたら、捜査権もないのですか。
#42
○田中参考人 米兵でありましたら、先ほど申しましたメモランダムによつて、逮捕ができないのです。
#43
○立花委員 捜査権はあるのですか。
#44
○田中参考人 捜査権も、今のところはないわけです。向うから何か特別に、捜査に対して協力してもらいたいということになれば、こちらとしては当然捜査することができるだろうと思いますが、軍人、軍属に対しては、捜査権も逮捕権もないわけであります。
 それから脱走兵のお話が出たのでありますが、これはCIDの方から、犯人の名前なんかは全然私の方に通知を受けておりません。もし通知を受けておつたら、逮捕はきわめて容易だろうと思いますが、CIDの方にも、だれがやつたかということがわかつておりませんので、従つて私の方に氏名を連絡する方法がないわけであります。
 それから本質的に知らされないのかどうかという問題でありますが、従来は非常に緊密に連絡をとりまして、もしそういうようなことがありましたならば、ただちにこういう者が、こういうところで、こういう犯罪を犯したから、参考のために連絡するということは、私どもの方にもときどき必要があれば連絡をつけている場合があるのでありまして、従つてCIDの方で、まだ今度の犯人については、全然だれがやつたかという手がかりがありませんし、また脱走兵がやつたかどうかということも、全然まだわかつておりません。
 それから脱走兵が何人おるか、私は全然知りません。それからその脱走兵が犯罪を犯すのではないかという心配がありますが、私どももその脱走兵の今後のことにつきましては、非常に心配いたしておりますが、ただその脱走兵の氏名を、いろいろ軍の機密もございましようから、私の方には全然知らされておりません。
 それから、先ほども申しましたごとく、軍人、軍属であつても、特に何か占領軍当局で、こういう者が今犯罪を犯しているから、日本警察官がこれを逮捕しろという、特別の指示があるならば、逮捕できるということは、先ほど申し上げた通りでありますが、今のところまだ氏名も具体的にわかつておりませんから、私どもにはまだそういう指示はございません。
 それから、私の方からそれを要請する意思があるかどうかということでありますが、もし氏名等がわかつて、必要があるならば、当然私の方からも連絡をしてみたいと考えておりますが、まだかんじんの犯人が何のなにがしであるということがわからないために、非常に捜査上双方とも不便を来しておるようなわけであります。
#45
○立花委員 委員長も時間がないとおつしやつておるのですが、だから私は発言順序の問題を言いましたので、できるだけきようは警視総監にゆつくりおつていただくように、委員長から頼んでおいていただきたいと思います。それで、氏名がわからないから、結局向うからの依頼もないし、あなたの方から要請もできない。そういうことになつておるから逮捕もできない。逮捕できないのだから、いつまでもつかまらない。従つて日本の警察は何をしておるかわからないということになるのですが、氏名がわからなければ何もできないというのではなしに、犯人を日本の警察官が目撃しており、明白なんだから、また合同捜査本部まで設けておるのだから、その合同捜査本部の両方の官憲が逮捕するようにすべきが私は当然だと思います。なぜそれが氏名がわからないという簡単な理由でできないのか、なぜあなたの方から要請されないのか、あなたの方では佐々木巡査が少くとも目撃しているのだから、それに基いてやはり逮捕権、捜査権を主張すべきだと思います。そうしないと、さつき言いましたように十二万の警察官がおりましても、佐々木巡査がただ一人しか逮捕できない。結局この犯人を目の前に見ても、逮捕できないということになりますので、この点はひとつ明白にしていただきたいと思うのです。白人であることがわかつておるし、軍人軍属あるいはその親近者あるいはそれ以外の者かということ、この二つしかないので、どつちでもいいからつかまえたらいいのじやないか。だから名前がわかつておらないから、とつつかまらないというのではなしに、重大な犯罪を犯しているのですから、どつちであろうと、合同捜査本部で逮捕できるようにするのが当然だと思うのです。その点警視総監はどうお考えですか。
#46
○田中参考人 よくわかりました。氏名が不明だと申しますのは、占領軍警察当局で氏名を隠しているのではないのでありまして、向うでもどういう者であるかモンタージユ写真が手に入りましたならば、全部一々該当者を調査するだろうと思います。どういう者がやつたのではないか、あるいは当時東京にいなかつた者とか、そういうものをCIDの方でも、目下鋭意調査中であります。もしそれがわかれば、当然日本の警察の方にこういう者だということを知らしてくれるだろうと考えております。従つてもしそれが参りましたら、CIDの方もこちらの方も、捜査が非常に容易にできるのではないかというふうに考えております。いま一つ佐々木巡査の件についてお話がありましたが、私は参議院では佐々木巡査のことにつきましては、申し述べておりません。これは私の方の事務当局があるいは新聞社に発表したことであるかどうか、この点は私自身もまだこういうことであるかどうかということは考えておりませんので、この点だけは御了承願います。
#47
○立花委員 そうなりますと、日本には軍人軍属関係の白人がたくさんおるわけです。これはアメリカ人とは限つておりません。それが何か犯罪を犯しました場合に、名前がわからない以上は、日本の警察はちつとも手が出せないということになるのですが、これは重大な問題だと思います。いつ白人がどんな犯罪を犯すかわからないのです。日本の財産あるいは身体に対しまして、重大な犯罪を犯しました場合に、氏名がわからない以上は、これが軍人であろうとなかろうと、氏名がわからないというだけで、外人の犯罪は一切日本で捜査もできなければ、逮捕もできない、こういうことになりますが、こういうことであつてもいいのかどうか。こういうことになりますと、日本の治安というものはまつたく保てない。これ以上不安なことはないと思う。白人の中にもいいやつばかりはおりませんので、悪い白人もたくさんおる。それが何をやつても、その氏名がわからなければ一切捜査できない。そういうことになりましたら、とんでもないことだと思うのですが、一体どうなのですか。
#48
○田中参考人 それは立花さんの非常な誤解でありまして、軍人軍属でない者は、日本人と同等になるわけです。日本人と同様にできるわけです。(立花委員「わからないじやないか」)いや、氏名がわからなくとも、一応容疑者として逮捕令状をとつて、犯罪の捜査並びに逮捕ができるわけです。ただ軍人軍属については、さようには参つておりませんが、そうでない場合には、日本の法律執行当局によつて逮捕できることになつております。
#49
○立花委員 今度の場合でも、つかまえてみなければ軍人か軍属かわからないでしよう。そうでしよう。軍人軍属以外の者かもわからぬでしよう。だから町で犯罪を犯した白人が軍人か軍属かはわからないでしよう。その場合はとつつかまえることはできないじやありませんか。その場合にとつつかまえることができるならば、今度だつてとつつかまえることができるじやありませんか。軍人、軍属ということが明白になつていないのだから、これはとつつかまえることができない。その場合にその白人の身分なり氏名なりがわからなかつたらつかまえられない。そうなりますと、日本に講和後たくさん白人が来て犯罪をやりました場合に、片一方に進駐軍がおる、こうなりますと、すべての白人の犯罪が、その身分氏名が明確になるまで、どんな犯罪を犯しても捜査できないということになるのじやありませんか。
#50
○田中参考人 よくわかりました。現在そういうような白人であつて、軍人軍属であるかどうかわからぬというときには、やはり占領軍警察当局と日本警察とが合同捜査というようなことにあるいはなるのではないかと思うのであります。しかしこれは私どもが言う限りではないのでありますが、将来協定さるべき行政協定に、いかようにこれを取入れるかということが、今後問題になるわけであります。占領下における現段階におきましては、こうしたことが起つたときに、その犯人が軍人軍属であるかどうかわからぬというときには、やむを得ず今言つたメモランダムの趣旨によりまして、占領軍警察当局並びに日本警察当局が合同捜査せざるを得ないのであります。しかし従来警視庁におきましても、軍人軍属にあらざる白人が犯罪を犯したという場合におきましては、警視庁独自の立場におきまして、令状をとつて逮捕しておるような実例があるのであります。将来條約が発効したあかつきにおきましては、日本の裁判管轄権につきましては、何らかそういう点について、はつきりしたとりきめをされることが必要であろう、こういうふうに私は考えております。
#51
○佐藤(親)委員 関連して簡単にお伺いいたします。逮捕状の発行要件が、法律に規定されておるのですから、犯人が現に犯行を行つた場合においては、逮捕状なくして逮捕できるが、もうその場から逃げてしまつた以上は、軍人の場合は別ですけれども、軍人以外の者であつても、また日本の一般人といえども、犯罪を犯した場合においては、逮捕状の発行を要するのはきまつている。だから逮捕状なくしては逮捕できないはずであるから、まあ御無理なことを言つているわけじやないと思う。要するに先ほど来の御説明で、もうだれでも行きあたりばつたりつかまえるということができないのは、もつともだと思う。だが特に御注意願いたいことは、要するに逮捕状は、どんな容疑者であろうと、なるべく逮捕状の要件を備えて、早く、一通の逮捕状でなくして、なるべく例外のあの規定によつて、数通発行できるように逮捕状を要求されて御捜査願いたい。それ以外にはないのです。いくら繰返しても、逮捕状の発行要件が法律できまつているので、その点できるだけ手配をしてやつていただきたいということを申し上げるよりほかないと思います。
#52
○田中参考人 逮捕状につきましては、十分に万全の措置を講じて、捜査に努力いたしたいと思います。
#53
○野村委員長代理 門司亮君。
#54
○門司委員 この機会にごく簡単に田中さんにお聞きしておきますが、今の議論を聞いておりますと、われわれちよつおかしなところがあります。その点だけを聞きただしておきたいと思いますが、軍人と軍人にあらざる者とのことは、先ほどのあなたからの御説明の通りだと思います。同時に捜査権、逮捕権の問題も同じだと思いますが、万一日本の警察官が、あるいは軍人でありましても、これが犯人に間違いないという断定ができたときに、これを逮捕した場合に、一体日本の警察官に対してどういう処罰があるということが明示せられておるかどうか、一応お聞きしておきたい。
#55
○田中参考人 軍人軍属でありまして、日本の警察官がこれを逮捕したという場合は、メモランダムの趣旨と違つた手続によつてやつたということでありますから、逮捕したことは決して悪いことじやありませんので、逮捕することは事実上できるかもしれませんが、ただ法律上の将来の問題が発生するおそれがありますから、この際につきましては、十分に正しい手続によつて逮捕するような措置を講ずる必要があるのじやないかと思います。きわめて抽象的でありまして、御了解になるのは非常に困難だと思いますが、たとえばある温泉に進駐軍の現行犯がおつた。そこでまさにこれが逃げようとするというときに、ただちに警察官が行つてやるのも一つの手であるかもしれませんが、それではこのメモランダムの趣旨に反しますので、ただちに沿道のMPに連絡をとつて、途中において扼して逮捕する、あるいはただちに関係署に連絡をとつて、その自動車の番号とか特徴その他を全部言つて、あとから追尾して行き、それによつて適当なところでチエツクして逮捕するというようなことで、できるだけメモランダムの趣旨に沿うよう警察において可能な範囲内において、最善の処置をとつて行くというよりほかないのではないか。しかし何としてもそれでなかつたらだめだというときには、またそれはそれとしての何らかほかの方法をとるほかなかろうと思いますが、まあやつたら、ただちに警察が処罰されるとか何とかいうものではなかろうと思います。ただ現在占領下でありまするから、いろいろむずかしい問題が発生するおそれがありますので、なるべくそうしたトラブルを起さぬような方法でつかまえることが、警察としては最善の措置ではないかと、かように考えております。
#56
○門司委員 私のさつきお聞きいたしましたのは、覚書にそういうことが書いてないから、ただその書いてある範囲内で行わなければならぬということになつて参りますと、さつきの総監のお話のように、目の前に確実にそれだと思う者がおつても、逃亡する危険性が相当あります。おそらく逮捕は困難だと思う。パトロールその他が十分あるところならよろしゆうございますが、MPが必ずしもその場所にいるわけでもありませんし、また連絡がとれるわけでもない。従つて日本の警察官は、みすみす犯人だということがはつきりしておつても、逮捕することができないということは非常に困ると思う。私は、もし覚書にそういうことが書いてないとするならば、当然日本の警察の立場にある人は、連合軍との了解事項の上において、その手続をとられることは至当だと考える。私はそれくらいのことはやれると思う。それはどういう事件でも一切そういうことができるというのでなくて、事件がすでに起つておりますので、この事件に対してこういう行動をとるという了解事項のもとにおいて行えば、アメリカその他もそうやかましいことは言わぬと私は思う。こういつた処置を総監としてとられるお考えがあるかどうか。これは総監にお聞きしても無理であつて、木村さんにでも来てもらつて聞いた方がいいと思いますが、しかし一応総監のお考えがありまするならば、この機会にお聞かせを願いたいと思います。
#57
○田中参考人 この点につきましては、メモランダムというのがありまするので、現在の段階におきましては、この範囲内において警察としてできるだけの可能な範囲において、適切なる措置によつて、犯人を早急に的確に逮捕するということに努力するよりほかなかろうと思つておりますが、ただ今後の問題といたしまして、條約発効の場合における行政協定等においては、われわれも今度の事件については大いに考えさせられるところがありますので、こういつた点につきましては、ひとつそれぞれ意見を立て、適当な手続によつて、それぞれ上司等に上申してみたいと考えておる次第であります。
#58
○門司委員 どうも私はそれがわからぬのです。行政協定の場合は行政協定の場合でありまして、これはあるいは少し言い過ぎるかもしれませんが、もしそういうものが考えられるとするならば、こういう事件のあつたときに、既成の事実として、この事件に限つて、そういうことを了解事項のもとに既成事実としてつくり上げていいと思う。これはもし総監にそういう御熱意がなければ別でありますが、総監としてはそれくらいの御熱意があつても、ちよつともさしつかえないのじやないかということを考えます。今の総監の態度では、おそらく私は逮捕は困難じやないかと考える。目の前にいても、それが軍人軍属である限りは、おそらく逮捕することはできないと考える。そうなつて参りますると、ますます捜査は困難になり、国民の不安は解消されないと思う。従つて公の治安を担当いたしておりまする警察としては、罰則があつて、あるいは死刑にでもなるというのなら別でありますが、そういう罰則もなく、ただこういう場合にこうするという具体的の指示も受けておりません場合においては、私は当然目の前にいればやつてもいいと思いますし、あとからでも了解ができると思います。従つて私が総監にお願いするのは、ぜひひとつそういう努力をしていただきたいと考えております。
 なおこの機会に申し上げておきますが、この問題について、この次の機会に法務総裁に来ていただきまして、そういう法的根拠あるいは向うとの関連について、もう少し私は聞きたいと思いますので、ぜひひとつ法務総裁を呼んでいただくよう委員長にお願い申し上げます。
#59
○田中参考人 ただいまの御意見まことに私はごもつともと考えております。なお私どもといたしましても十分研究いたしまして、さつそくこういう点につきまして、進駐軍当局の方にも連絡をとつてみたいと考えております。
#60
○野村委員長代理 今門司委員からも御要望がありましたごとく、最近治安関係において、その重要性は各位が非常に関心を持つておるところだと思います。関係大臣なり参考人もまた出席を求めて、質疑の通告が他にもございますので、さらにその機会に残余の質疑を行いたいと思います。
 本日はこれをもつて散会いたします。
    午後一時七分散会
ソース: 国立国会図書館
姉妹サイト