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2021/06/14 第204回国会 参議院 第204回国会 参議院 内閣委員会 第27号 令和3年6月14日
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2021/06/14 第204回国会 参議院

第204回国会 参議院 内閣委員会 第27号 令和3年6月14日

#1
令和三年六月十四日(月曜日)
   午後一時開会
    ─────────────
   委員の異動
 六月十一日
    辞任         補欠選任
     大家 敏志君     豊田 俊郎君
     加田 裕之君     本田 顕子君
     石川 博崇君     三浦 信祐君
     市田 忠義君     山添  拓君
 六月十四日
    辞任         補欠選任
     豊田 俊郎君     加田 裕之君
    ─────────────
  出席者は左のとおり。
    委員長         森屋  宏君
    理 事
                酒井 庸行君
                徳茂 雅之君
                木戸口英司君
                平木 大作君
                矢田わか子君
    委 員
                加田 裕之君
                古賀友一郎君
                高野光二郎君
                豊田 俊郎君
                本田 顕子君
                山田 太郎君
                山谷えり子君
                和田 政宗君
                小沼  巧君
                塩村あやか君
                杉尾 秀哉君
                三浦 信祐君
                柴田  巧君
                高木かおり君
                田村 智子君
                山添  拓君
   衆議院議員
       内閣委員長    木原 誠二君
       内閣委員長代理  大野敬太郎君
       内閣委員長代理  小林 鷹之君
       内閣委員長代理  青柳陽一郎君
       内閣委員長代理  濱村  進君
       内閣委員長代理  浦野 靖人君
       内閣委員長代理  浅野  哲君
   国務大臣
       国務大臣
       (内閣府特命担
       当大臣(宇宙政
       策))      井上 信治君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        宮崎 一徳君
   政府参考人
       内閣府宇宙開発
       戦略推進事務局
       長        松尾 剛彦君
       外務省大臣官房
       参事官      大鶴 哲也君
   参考人
       公益財団法人東
       京財団政策研究
       所研究員・研究
       部門主任     吉原 祥子君
       防衛ジャーナリ
       スト
       獨協大学非常勤
       講師
       法政大学兼任講
       師        半田  滋君
       弁護士     馬奈木厳太郎君
    ─────────────
  本日の会議に付した案件
○重要施設周辺及び国境離島等における土地等の
 利用状況の調査及び利用の規制等に関する法律
 案(内閣提出、衆議院送付)
○政府参考人の出席要求に関する件
○宇宙資源の探査及び開発に関する事業活動の促
 進に関する法律案(衆議院提出)
    ─────────────

#2
○委員長(森屋宏君) ただいまから内閣委員会を開会いたします。
 委員の異動について御報告申し上げます。
 昨日までに、市田忠義君、石川博崇君、加田裕之君及び大家敏志君が委員を辞任され、その補欠として山添拓君、三浦信祐君、本田顕子さん及び豊田俊郎君が選任をされました。
    ─────────────

#3
○委員長(森屋宏君) 重要施設周辺及び国境離島等における土地等の利用状況の調査及び利用の規制等に関する法律案を議題といたします。
 本日は、本案の審査のため、三名の参考人の御意見を伺います。
 御出席いただいております参考人は、公益財団法人東京財団政策研究所研究員・研究部門主任吉原祥子さん、防衛ジャーナリスト・獨協大学非常勤講師・法政大学兼任講師半田滋君及び弁護士馬奈木厳太郎君でございます。
 この際、参考人の皆様方に一言御挨拶申し上げます。
 本日は、御多忙のところ御出席をいただき、誠にありがとうございます。
 皆様から忌憚のない御意見を賜りまして、今後の審査の参考にしていきたいと存じますので、本日は何とぞよろしくお願い申し上げます。
 次に、議事の進め方について申し上げます。
 まず、吉原参考人、半田参考人、馬奈木参考人の順にお一人十五分程度で御意見をお述べをいただき、その後、委員の質疑にお答えをいただきたいと存じます。
 また、御発言の際は、挙手をいただき、その都度、私、委員長の許可を得ることとなっておりますので、御承知おきください。
 なお、御発言は御着席のままで結構でございます。
 それでは、まず吉原参考人からお願い申し上げます。吉原参考人。

#4
○参考人(吉原祥子君) 本日は、意見陳述の機会を与えていただき、誠にありがとうございます。公益財団法人東京財団政策研究所の吉原と申します。
 東京財団は民間の政策シンクタンクで、私は、その中で日本の土地制度の課題について調査を行ってまいりました。また、昨年開催された国土利用の実態把握等に関する有識者会議に参加させていただきました。
 今日は、これまでの土地制度に関する調査の経験を踏まえながら、この度の法案の必要性と課題について所見を申し述べます。お手元にA4二ページの資料を配付させていただきましたので、御覧いただければ幸いです。
 私ども東京財団が土地問題に着目するきっかけとなったのが外資の森林買収でした。十年以上前になりますが、北海道を中心に外国資本が日本の森林を買っているという関係者からの問題提起があり、実態調査のための研究プロジェクトを開始しました。そこから見えてきたのは、実は我が国ではそもそも土地の所有や利用の実態を行政が十分に把握し切れていないという土地制度そのものの課題でした。それは言い換えれば、急速な社会の変化に対して既存の制度では対応し切れない部分があるということでもありました。
 社会の変化というのは、申し上げるまでもありませんが、まず人口減少、高齢化があります。それに伴い、空き家、空き地が増加しています。その一方で、経済活動はグローバル化し、不動産も国際的な投資対象になっています。そして、相続によって都会に住む子供世代が田舎の土地の所有者になったり、海外の投資家が日本の不動産を所有するなど、地域からは顔が見えづらい不在地主も増えています。東京都主税局によると、東京二十三区では、国外に住所を有する固定資産税の納税義務者は二〇一三年から二〇一九年の六年間で八倍に増加しているとのデータもあります。
 他方、こうした急速な社会の変化に対して、従来の土地政策は、明治以来、人口の増加や、土地は有利な資産という考えを前提に、国内市場における地価高騰や乱開発などの行き過ぎを抑制することが主眼でした。個人の所有権に関わる課題については踏み込んだ検討が行われてきたとは言えず、安全保障上の土地政策もほとんど講じられてきませんでした。
 従来の土地制度の特徴を具体的に見てみますと、まず、土地に関する情報基盤の在り方として、不動産登記簿、固定資産課税台帳、農地台帳など、目的別に様々な台帳が作成されています。しかし、それらの情報を一元的に把握できる仕組みはありません。行政が持っている台帳のうち、主な所有者情報源となっているのが不動産登記簿です。しかし、権利の登記は任意であり、登記後に所有者が転居した場合でも住所変更の通知義務はありません。
 なお、後ほど述べますが、この点については今国会で法改正が行われ、相続登記が義務化されたところです。
 また、土地所有者の探索においては住民票や戸籍が大きな情報源になりますが、土地が所在する自治体に住民票を置いていない不在地主や国外に在住する非居住者については、そうした住民票や戸籍といった基礎情報がなく、不動産登記が行われていなければ所有者探索は極めて困難になります。
 次に、規制の在り方ですが、個人の所有権は諸外国に比べて極めて強いという特徴があります。例えば土地の売買について、農地以外は売買規制はありません。たとえその土地が安全保障上重要な国境離島や防衛施設の隣接地であっても、売主と買主の合意だけで取引は成立し、購入者も問いません。売買の不動産登記は任意であり、登記をしないことも自由です。
 土地の利用規制については、農地法や森林法など、個別の法律で一定のルールは定められています。しかし、農地の違反転用や森林の再造林放棄が事実上、現状追認されているケースが少なくないなど、実質的な効力については課題も多いと言われています。
 こうした現在の土地制度が抱える課題が具体的な事象となって表面化したのが、近年、社会的な関心の高まった所有者不明土地問題であり、また安全保障上の懸念であると考えます。
 所有者不明土地問題とは、不動産登記簿などの台帳を見ても現在の所有者が直ちには分からないという問題です。そして、安全保障上の懸念というのは、土地利用の実態を把握するための法的根拠が十分でなく、万一の際に対応できる備えがないという問題です。いずれも構造的な課題であり、市場、マーケットに任せているだけでは解決が難しい問題です。
 土地は個人の財産であるとともに、我々の暮らしの土台であり、経済活動の基盤であり、そして国土です。土地は我々自身がつくり出せるものではなく、次の利用者や次の世代に適切に引き継いでいく必要がある財です。土地が持つそうした公共的な性質に鑑みると、社会の変化に応じて制度の見直しを行うことは必要であると考えます。
 それでは、こうした現状の課題について、近年どのような政策対応が取られてきたのでしょうか。
 資料の二ページを御覧ください。
 所有者不明土地問題については、問題の発生防止や土地の適正な利用と管理、相続による権利の承継の円滑化に向け、近年、土地制度と民事基本法制の両面から抜本的な改正が行われました。
 まず、二〇一八年六月には、所有者不明土地を公共的な目的のために利用可能とする特別措置法が成立しました。昨年三月には、約三十年ぶりに土地基本法が改正されました。そこでは、災害の予防、復興など、持続可能な地域の形成を図る観点から、土地の適正な管理の必要性が明示され、また、土地所有者の責務として、登記など権利関係の明確化と土地の境界の明確化に努めることが新たに規定されました。そして、今国会において、この四月に民法、不動産登記法の改正が成立し、相続登記や住所変更登記が義務化されたところです。
 他方、安全保障上の懸念への対応については、二〇一〇年に北海道の調査により道内における海外資本等の林地取得状況が判明して以来、林野庁による毎年の調査の結果の公表や旧民主党ワーキンググループによる議論などが重ねられてきました。いまだ法律の制定には至っていませんでしたが、この度の法案はまさにこうした積み重ねの上に形になったものと理解しております。
 今後、安全保障をめぐる国際情勢は緊迫度を増していくと考えられます。と同時に、人口減少が進む中、地域の活性化のためには多様な人材や優良な投資を国内外から呼び込むことは必須です。この度の法案は、そうした自由な経済活動を前提として、内外無差別の原則に立ち、国民の安全を守る観点から、土地の利用実態の基本的な調査と万一の際の利用規制を定めるものであり、これまでの日本の土地制度に欠けていた重要な法案であると考えます。
 そして、こうした新しい法律の運用に当たっては、国民への分かりやすい説明が必須であることは言うまでもありません。今後、基本方針の策定や注視区域及び特別注視区域の指定に当たっては、これまで内閣委員会の御議論で度々御指摘があったように、国会への報告や国民への十分な説明と情報開示が必須であると考えます。そして、その過程において、国にとって守るべき場所や事柄は何か、また、どのような方法が適切かということについて議論が更に深まっていくことが期待されます。
 今後、技術の進歩によって安全保障上のリスクは更に多様化すると考えられます。そうした様々なリスクに対応する万能薬はありません。今後は、今回の法案を含め、様々な法制度が相互に補完し合いながら、過度な規制が行われることのないよう、また、法の抜け穴が生じないよう、制度全体を見渡したバランスの取れた議論が必要であると考えます。是非、この度の法案が成立し、国民への十分な情報開示を行いながら適切に運用されることを心より願っております。
 以上が所見でございます。ありがとうございました。

#5
○委員長(森屋宏君) ありがとうございました。
 次に、半田参考人にお願いいたします。半田参考人。

#6
○参考人(半田滋君) 本日は、意見陳述の機会をいただきまして、ありがとうございます。
 私は、東京新聞でおよそ三十年にわたって防衛省・自衛隊、そして在日米軍のことをひたすら取材をしてまいりました。その取材を通じて、自衛隊の海外の活動や、あるいは国内の自衛隊の在り方などについて、実際に現地に行き、多くの自衛官や防衛官僚の皆さんと会って実際に取材をし、記事にしてきた者であります。現在は防衛ジャーナリストとして様々な論考を雑誌やSNSで発表しております。
 今日お話をするこの重要施設周辺及び国境離島等における土地等の利用状況の調査及び利用の規制等に関する法律案、これを土地取引規制法案と便宜上名付けまして、これから意見を述べていきたいと思います。
 まず、お手元のレジュメにありますとおり、この問題について三つのポイントに絞っています。一つは、米軍や自衛隊、海上保安庁、生活関連施設などの敷地の周囲約一キロと国境離島などを個別に注視区域や特別注視区域に指定し、所有者の個人情報や利用実態を不動産登記や住民基本台帳などを基に政府が調査をする。二つ目として、必要に応じて所有者に報告を求め、利用中止を命令できる。三つ目として、利用の中止命令に応じなければ二年以下の懲役又は二百万円以下の罰金に処すと。この三つが大きなポイントであるかというふうに思っています。
 次に、論点について具体的に説明をしていきます。
 一、個人情報が丸ごと収集される。
 この法案は、注視区域に指定される対象区域が広く、その分、広範囲にわたって住民の調査が及びます。重要施設、つまり自衛隊、米軍基地や海上保安庁施設、そして重要インフラが注視区域となり、周辺一キロに住む住民が調査対象となります。
 調査は、現地調査から始まり、内閣総理大臣が必要があると認めた場合、地方自治体などに土地利用者の氏名、住所その他政令で定めるものを求めることができると書かれていますが、その他が何かは法制定後の政令まで分からないという曖昧さがあります。土地登記簿や住民基本台帳を見るだけでは、氏名、住所が判明するだけで、土地利用者の属性は分かりません。
 そこで、政府が必要があると認めるときに土地利用者から報告又は資料の提出を求めることができるとの規定を根拠に、更に個人情報を収集することになります。収集される個人情報は、思想、宗教、家族や姻戚、友人関係、海外渡航の有無、現在及び過去の職歴、趣味などを幅広く総合的に収集することによって、初めて意味を成すことになります。つまり、重要施設の近くに住んでいるというだけで個人情報が丸ごと政府に収集される、そのこと自体に問題があるというふうに思います。
 二番目、土地取引が抑制される。
 特別注視区域に指定された場合、二百平方メートル以上の土地取引は内閣総理大臣に届出を義務付け、違反した場合に刑罰を科すことにしています。
 例えば、東京屈指の住宅密集地、新宿区にある防衛省の周囲一キロが特別注視区域に指定されるのは確実でしょう。防衛省と同様に、米軍で司令部機能のある東京の横田基地、神奈川の横須賀基地及びキャンプ座間、沖縄県のキャンプ・コートニーも指定される可能性が高いと考えられます。いずれも住宅地に囲まれ、普通に土地取引が行われています。
 土地取引規制法案が制定された場合、内閣総理大臣への届出と許可という手続が加わることにより、自由な土地取引が抑制され、土地価格が下落する可能性があります。土地価格の下落は注視区域においても発生する可能性があります。土地利用者にとっては、重要施設の周辺に居住するというだけで財産が目減りする可能性があるのです。
 大変に奇妙なのは、不動産業界、ホテル業界、建設業界などの産業界から反対の声が上がらないことです。二百平方メートルといえば、これから計画するビルやホテルの多くが該当します。手続の煩雑さに嫌気が差し、ビルやホテルの建設を他の場所にしたり諦めたりする例が出てくるのではないでしょうか。
 政府は、昨年、GoToトラベルキャンペーンに踏み切り、コロナ禍で苦しむ観光業の支援を実施しました。一方、この法案は、ホテル建設を抑制することから、外国人観光客を増やすというインバウンド政策と矛盾するのではないでしょうか。これまでの政権が目指した方向性とは真逆の法案を通常国会の終了間際に提出し、およそ熟議とは程遠い審議のまま採決に移るとすれば、大いなる矛盾を抱えることになります。
 三つ目、曖昧な重要インフラの中身。
 重要施設となる生活関連施設、つまり重要インフラについて、法案は政令で定めるとしており、これまでの国会答弁で政府は、原発と、自衛隊と共用している民間空港を挙げています。
 だがしかし、例えば、内閣サイバーセキュリティセンターは、情報通信、金融、航空、空港、鉄道、電力、ガス、政府・行政サービス、医療、水道、物流、化学、クレジット、石油の十四分野を重要インフラに特定しており、法施行後、政令によって範囲が止めどなく広がる可能性があります。
 こうした重要インフラの多くは都市部に集中しており、今回の土地取引規制法案は多くの国民に調査の網を掛けることになっている点を指摘しておきます。法案にある、政令で定めるとの言葉は、行政府への丸投げであり、立法府としての責任放棄にほかなりません。法案には、何が生活関連施設となるのか、具体的に示す必要があります。
 外国の例として、米国、豪州、韓国には、基地周辺の土地取引を規制する法律があるものの、重要インフラにまでは踏み込んでおらず、この土地取引規制法案は他に例を見ないほど土地規制の範囲が広がる可能性があります。そもそも、英国やフランスはそうした規制そのものが法律としては存在していません。
 四、立法事実がない。
 法制定をする必要性として、地方議会における懸念が示されたことが挙げられています。二〇一三年九月の長崎県対馬市議会で、韓国人による自衛隊基地周辺の土地の取得が取り上げられました。対馬市長は、取引を認めた上で、対馬の土地の〇・〇〇六九%が該当すると答弁をしました。市面積の〇・〇一%にも満たない土地の取引が問題視される必要があるでしょうか。
 面積の問題ではないという指摘もあるでしょう。私は、二〇一〇年二月、対馬に行って取材をしました。海上自衛隊対馬防備隊近くの土地を韓国資本が購入したとされ、部隊から見えるところに民宿がありました。部隊によると、所有者は韓国人で、韓国の釣り人を受け入れているとの話でした。対馬と対岸の韓国釜山との間は高速フェリーで約一時間。コロナ禍の前まで、対馬は韓国からの観光客や釣り客であふれていました。
 韓国資本が土地を購入してホテルなどを建設するのはおかしな話とは思えません。実際に、不法侵入、通信妨害など、機能を阻害する行為はあったのでしょうか。あったとすれば、現行法で対応できない理由は何なのか、政府は明らかにする必要があります。
 防衛省は、全国約六百五十の防衛施設に隣接する土地を調査した結果、自衛隊の運用に支障が出たことは確認されていないとしています。この法律を制定する必要性、つまり立法事実がないにもかかわらず制定を急ぐのだとすれば、別の理由を疑わないわけにはいきません。
 五、機能を阻害する行為はさじ加減。
 沖縄県警は、今月四日、チョウ類研究者の宮城秋乃さんの自宅を家宅捜索し、パソコンやビデオカメラなどを押収しました。宮城さんは連日のように事情聴取を受けています。
 宮城さんは、以前から、米軍から政府に返還された北部訓練場から廃棄物の回収を続けてきました。土地の返還時、原状回復は日本政府が行うことになっていますが、いいかげんな作業だったため、あちこちに薬きょうや空き缶などの廃棄物が散乱しています。その廃棄物の一部を北部訓練場のメーンゲートに置いたことが威力業務妨害などに当たるというのです。
 置かれた廃棄物は空き缶などで、またいで通れる程度の分量でしかありません。米軍は、兵士らの不道徳を恥じることはあっても宮城さんを逆恨みするのは筋が違うと思いますが、通報を受けた沖縄県警の対応は、土地取引規制法案の先取りと言うほかありません。
 法案は、安全保障上の観点から重要施設及び国境離島等の機能を阻害する土地の利用を防止とあるので、政府が機能を阻害すると認定すれば、住民が立ち退きを求められることになります。宮城さんが廃棄物を置いた行為について、沖縄県警は機能を阻害すると認定しました。この事例から、何が機能阻害に当たるのか、認定する側のさじ加減一つであることが分かります。
 六、沖縄の離島は注視区域になる。
 沖縄県など国境離島は、島そのものが注視区域に指定されるのは確実です。すると、百四十五万人いる沖縄県民全てが調査対象になる可能性があります。これを本土並みに自衛隊基地や米軍基地の周囲一キロとしても、相当数の住民が対象となります。
 例えば、普天間基地のある宜野湾市の場合、沖縄平和運動センターの調査で、対象者は宜野湾市民の九割に当たる十万人と試算しています。普天間基地は、沖縄戦のどさくさで、住民が避難している間に米軍が町役場や住宅を取り壊し、滑走路を造りました。その周りを囲い込んで基地としました。戦後、戻ってきた住民らは仕方なく普天間基地の周りに家を建てて住み始め、現在のように住宅に囲まれた基地となりました。
 一九七二年の本土復帰時、沖縄県側は原状回復を求めましたが、政府はこの要求を受け入れず、基地が固定化されました。今なお米軍専用施設の七割が沖縄に集中し、本土は沖縄の負担の上にあぐらをかいていると言われても仕方がありません。
 自衛隊のミサイル基地が開設された宮古島、開設準備が進む石垣島も同様です。特に、宮古島の場合、収賄罪で起訴された前宮古島市長の三回にわたる防衛省高官との面会で購入を求め、防衛省がこれに従ったゴルフ場跡地に宮古島駐屯地が開設されました。最初に計画した島の北東部の端にある牧場跡地でなく、市街地に近いゴルフ場となったことで、周囲一キロに住む住民が調査の対象となります。宮古島では現在でも弾薬庫の開設をめぐり反対する住民が多く、反対運動とつなげて住民の個人情報を収集するのは確実ではないでしょうか。
 七、情報保全隊が前例。
 自衛隊のイラク派遣に際し、派遣に反対する市民らの行動を東北情報保全隊が監視し、個人情報を収集していた事実が明らかになっています。公表していない本名や勤務先の情報収集はプライバシー侵害で違法だとされ、裁判所から賠償金の支払を言い渡されました。
 このように、違法な手法で個人情報を収集してきたのですから、土地取引規制法が制定された場合、必ず個人情報を収集するのは明らかではないでしょうか。現状の政府の体制では個人情報の収集に手が回らなくなるのは明らかであり、組織の新設や拡充が行われるという行政改革に逆行する焼け太りとなるのも懸念材料の一つです。
 八、まとめ。
 国の安全保障が重要なことは言うまでもありません。しかし、個人の権利を軽視した上に成り立つ国とは、ゆがんだ虚像と言うほかありません。国民の私権が抑制され、国家が利益を得るような国は、まともな民主主義国家とは言えません。この法案は、思想、良心の自由、プライバシー権、財産権などの私権侵害につながるおそれがあることを指摘しておきたいと思います。
 終盤国会に入り、国民投票法改正案といい、この土地取引規制法案といい、左右対決の法案が矢継ぎ早に審議されています。左右対決は有権者の投票行動の変化を呼び込みません。自民党支持層三割、野党支持層二割、無党派層五割と言われる支持層を一層固定化することになります。
 例えば、消えた年金問題のような富裕層と低所得層といった上下が分割されるような問題であれば、無党派層による雪崩現象が起きる可能性はあるでしょう。しかし、この左右対決の二法案を持ち出したところに、迫りくる総選挙対策を感じないわけにはいきません。有権者の目をコロナ禍による上下対決から背けさせ、左右対決に持ち込むことで、政権政党にとって有利に働くのではないでしょうか。
 これまで述べたとおり、この法案の問題は、沖縄など離島の問題ではありません。東京や神奈川といった大都市の住民が調査対象となり、各地で自由な土地取引が規制されるのです。広く国民全体の問題であることを強調しておきます。
 御清聴ありがとうございました。

#7
○委員長(森屋宏君) ありがとうございました。
 次に、馬奈木参考人にお願いいたします。馬奈木参考人。

#8
○参考人(馬奈木厳太郎君) 東京合同法律事務所に所属している弁護士の馬奈木と申します。貴重なお時間をいただき、ありがとうございます。
 私は、「生業を返せ、地域を返せ!」福島原発訴訟という、原発事故の被害者が国と東京電力を被告に原状回復と被害救済を求めた裁判に関わっています。また、沖縄の問題にも様々な形で関わってきました。そうしたことから、沖縄や原発も含め、これまで余り議論されていない論点を中心に意見を述べたいと思います。
 本論に入る前に、法案に対する私の印象を述べておきます。
 この法案は、大体において四つの言葉から成り立っています。内閣総理大臣、等、その他、できる、であります。例えば、内閣総理大臣は、○○等について、○○その他の○○に対して、○○することができるといった感じです。等やその他という幅を持たせる表現が多いです。何より、内閣総理大臣という主語が圧倒的に多い。二十八か条の条文の中に何と三十三回も出てきます。その結果、この法案は、国民の権利を保障するものではなく、政府に権限を与える行政命令のような内容になっています。言わば、内閣総理大臣の内閣総理大臣による内閣総理大臣のための法案という印象を抱かざるを得ません。
 もう一点、私は、安全保障論の専門家ではなく、法律が適用される現場に携わっている者です。そうした実務家の立場からは、この法案は一読して、現場の人や当事者の意見を聞かないまま、そうした形で作られた法案だなというふうに感じました。
 以下、四点にわたってお話しさせていただきます。
 まず、区域指定による影響と弊害についてです。
 注視区域については検討中とのことですが、特別注視区域に指定されると重要事項説明義務が生ずるとされています。売買などの契約に先立って、宅地建物取引士の方が説明をすることになりますけれども、これは書面に特別注視区域に指定されていると一行書けばいいというものではありません。根拠法令を資料に付けた上で、こんな会話が展開されることになるかもしれません。
 この土地は土地利用規制法に基づく特別注視区域に指定されています。
 それってどんな法律ですか。
 国民生活の基盤の維持並びに我が国の領海等の保全及び安全保障に寄与することを目的とする法律でして、土地等の利用実態を調査することになります。
 何のために調査するのですか。
 重要施設に対する機能阻害行為を防止するためです。
 何かリスクがあるのですか。
 リスクのあるなしも含めて調査します。
 調査内容はどんなことですか。
 氏名や住所その他政令で定めるものですが、なお必要があると認められるときは、土地等の利用に関して資料の提出や報告を求められることがあります。
 誰が調査対象者なのですか。
 利用者その他の関係者となりますが、利用者の定義はありますが、その他の関係者の定義はありません。
 いつ調査されるのですか。
 権利変動の際といった限定がないので、恒常的に調査される可能性があります。
 調査されるときは何かお知らせがあるのですか。
 そのような規定は設けられていません。
 どんな手法の調査なのですか。
 手のうちは明かせません。
 周りの人にも聞くのですか。
 第三者からの情報提供の仕組みも検討中です。
 機能阻害というのは。
 閣議決定において例示されますが、一概には申せません。でも、勧告を受けたら分かりますから、大丈夫です。
 冗談のように聞こえるかもしれませんが、これは政府答弁です。実際にこんなやり取りをしたら、皆さんは買いたい、借りたいと思いますか。
 政府は、不動産に与える影響は少ないと根拠もなく述べていますが、そんなに甘くはないはずです。当事者の立場で想像してみてください。自分が調査されるかもしれない、規制が掛かるかもしれない、そうしたところをわざわざ購入しますか。
 しかも、この法案は、政府の説明では安全保障上のリスクがあるから法整備しようという話なわけで、区域指定されるとその地域はリスクがあるというふうに一般には受け止められるのではないですか。さらに、五年後には見直しもあり得るわけで、そうすると更に規制が増えるかもしれない。一キロだって一キロのままではないかもしれない。区域指定された地域にとっては大打撃です。どの程度のリスクかもはっきりしないところで、これは官製風評と言わなければなりません。
 政府は地元から不安の声が上がっていると言いますが、地元の人も、いやいや、こんな内容は望んでいないよとおっしゃるのではないですか。区域指定されることが当該地域に与える効果や影響について、法案もそうですが、これまでの質疑でも現場感覚を伴ったやり取りがなされたとは到底思えません。実際に区域指定をする段になると、この内容のままではその地域から猛反発を食らうはずです。リスク、リスクと、あるかないか分からないものを見ようとしていますが、現場のリアリティーは見えていないようです。
 次に、これまで余り議論されていない原発について述べたいと思います。
 生活関連施設として原発が検討されていますが、なぜ原発が対象になるのか理由が全く明らかにされていません。政府は、新規制基準を世界で一番厳しい基準だと豪語しています。新規制基準にはテロ対策も含まれていますから、世界で一番安全なはずです。まさか政府は新規制基準では足りないと考えているのですか。
 それから、原発の関係で機能阻害行為とは一体何を想定しているのですか。この法案では、機能阻害というのは施設の外から人為的にもたらされる被害、そういったものが想定されているようですが、原発については施設の中から被害はもたらされています。被害者は、施設の中の事業者や、事業者を監督する国ではありません。周辺住民が被害者なのです。
 原発によって阻害されるのは、ふるさとや地域との結び付きという機能であり、日常の生活やなりわいという機能です。そこを間違えないでいただきたい。
 住民を潜在的な脅威とみなすような考えは、事故を起こした当事者である国として、厳に戒められるべきです。原発に対する阻害を恐れるのであれば、その答えは、住民を調査対象にすることではなく、原発をやめることです。
 もう一つ、ほとんど議論されていない二十二条と二十三条について述べます。
 二十二条は、内閣総理大臣は、この法律の目的を達成するため必要があると認めるときは、関係行政機関の長及び関係地方公共団体の長その他の執行機関に対し、資料の提供、意見の開陳その他の協力を求めることができるとなっています。似た表現が七条にもありますが、こちらは土地等の利用実態の調査なのに対して、二十二条にはそうした限定はなく、この法律の目的を達成するためその他の協力を求めることができるとあります。この法律の目的とは、国民生活の基盤の維持とか我が国の領海等の保全及び安全保障に寄与するというもので、広範で大ざっぱなものになっています。その他の協力というのも限定がありません。内閣総理大臣に包括的な権限が与えられています。
 例えば、基地のゲート前で座込みや集会を開き、道路やその付近に工作物などを設置している場合、それが安全保障上の観点から適当ではないとされれば道路の管理者に撤去などを求めることがこの二十二条によってできるようになるのではないですか。あるいは、都道府県の労働委員会はその他の執行機関に含まれますが、労働委員会は労働組合の組合員に関する情報を保有しています。こういった土地の利用実態には関わらない情報についても、目的を達するために必要だと言えば提供を求めることができるようになるのではないですか。
 二十二条からは、残念ながら、地方自治の本旨といった考えはうかがえません。政府と地方公共団体は法的に対等なはずですが、まるで内閣総理大臣の下請機関のような扱いになっています。
 それから、二十三条は、国が適切な管理を行う必要があると認められるものについて、買取りその他の必要な措置を講ずるよう努めるとあります。これは端的に言って、土地収用法を潜脱した形で、事実上の強制収用につながるのではないですか。
 努めるとありますが、政府は何を行うのですか。買取りを申し出ること自体、所有者には圧力となる場合があります。例えば、石垣島では自衛隊の基地建設が進行していますが、周辺で建設反対の立場を示している所有者に政府が買取りを申し出ることはないですか。
 土地収用法は、防衛に関わるものを収用や使用ができる事業には含めていません。それは、さきの大戦に対する反省があるからです。戦後作られ、長年にわたり守られてきた原則を、衆参を通じても僅か二十時間程度の審議で、しかもこの論点については全くと言うほど議論が交わされていないにもかかわらず、こうした原則を覆すようなことがあってはなりません。
 四点目は、この法案が触れていない点についてであります。
 法案では、止められる人や止められる機関がありません。事後的に検証できる制度も設けられていません。その意味で、この法案は公正とは言えません。
 どのような調査が、誰に対して、どんな手法で、いかなる協力を求めているのか、何を機能阻害行為と判断しているのか、そういった事柄を第三者がチェックし、場合によっては止めるといった手段が必要なのではないでしょうか。
 法案は、閣議決定で定める、政令で定める、府令で定める、必要があると認めるとき、こういった文言のオンパレードになっています。国会の関与もなく、独立した第三者機関の関与もなく、調査対象者に調査の事実を告げるわけでもありません。
 この法案は、全幅の信頼を政府に寄せる、そういったことを国民に求めています。しかし、立憲主義の大原則は、権力は暴走することがあるというものです。ですから、主権者である国民は、権力を監視し、チェックしなければならないのです。法案は、政府が国民を調査し、監視できるかのような内容になっており、完全に転倒しています。そして、それを止めるすべを持たないのです。第三条は、個人情報の保護に十分配慮しつつとか、必要な最小限度のものとなるようにしなければならないなどとありますが、その制度的な担保はないのであります。少なくとも、止める手だてが法案自体に組み込まれていなければ最小限度とは言えません。
 最後に、一九九五年九月まで沖縄の歴史や現実を知らなかった一人の日本人として、やはり沖縄について触れないわけにはいきません。
 法案によれば、沖縄県内の人が住んでいる島は沖縄島も含めて全てが国境離島等に含まれており、国境離島等の場合には一キロの制限なく区域指定できることから、その気になれば沖縄県全域を区域指定することができます。つまり、沖縄県民を丸ごと調査対象にすることができるということです。安全保障の名目で県民を監視下に置くかのような発想は、まるで戦前のようであります。
 昨年、沖縄県の恩納村にある、ある組織の沖縄研修道場を見学させていただく機会がありました。かつて中国に向けた核ミサイル、メースBの跡地に造られた道場は、基地の跡は永遠に残そう、人類はかつて戦争という愚かなことをしたのだという一つのあかしとしてという考えから、平和記念資料館として整備されています。また、そこには青年部、未来部が編集した都道府県ごとの戦争体験の証言集も置いてあり、戦争体験のつらさや悲惨さとともに、軍が住民をスパイ扱いした事実なども語られていました。資料館では、中国や韓国を始め各国との交流も展示してあり、外国の人々について、友と記されてありました。平和の文化の構築に向けた取組や戦争証言集の刊行など、私は大変深い感銘を受けました。
 そうした戦争の教訓も踏まえたとき、地域住民を調査対象とし、監視下に置くようなやり方は、本当に正しいものなのでしょうか。証言者の方や証言集作りに関わった先達に対して胸を張ることができますか。そして、友と呼んだ外国の人たちは、この法案を読んだらどういう気持ちになるでしょうか。
 沖縄は、長年基地被害に苦しんできました。つい先日も米軍の不時着があり、有機フッ素化合物による被害も出ています。ある学校では、米軍機が飛来すると校庭の生徒が避難しなければならない、そういった日常にあります。政府は、口を開けば負担軽減と言います。しかし、この法案は全く負担軽減にはなりません。その逆です。
 この法案が成立すると、最も影響を受けるのは間違いなく沖縄です。沖縄の人々は、選挙権が停止されていたため、日本国憲法の制定に制度的には関わることができませんでした。米軍統治の下、銃剣とブルドーザーで土地を収用されながらも、サンマ裁判と呼ばれるような闘いも経て、民主主義や自治を粘り強く獲得してきました。
 沖縄の民意や自治をまた踏みにじるのですか。そんなことが許されていいのですか。私は恥ずかしさと悔しさでいっぱいであります。
 こんな政府丸投げ法案を成立させるようであれば、国会は何のためにあるのかという話になると思います。まだ間に合います。一旦法案を取り下げませんか。
 この法案は、複数の考え方を無理に一つにしたことに問題の原因があります。その問題は、機能という言葉に象徴され、調査という言葉の意味を分裂させています。すなわち、国境離島の実態調査に問題意識がある人と、防衛施設の機能確保に問題意識のある人がいて、さらには原発もという欲張りな人が加わって、無理やり合体させたのがこの法案です。国境周辺の離島の実態調査と、都市部も含む防衛施設周辺の実態調査とではまるで意味が違います。そこを機能という言葉で無理につなぎ、軍事的合理性だけで突っ走ったから、本当にひどい法案になっています。皆さんも本当は分かっていらっしゃるのではないでしょうか。
 急がないといけない事情はないはずです。しかも、安全保障に関わるのであれば、より多くの人の納得と合意の下、進められるべきです。良識の府である参議院の役割を是非発揮していただきたいというふうに考えます。
 ありがとうございました。

#9
○委員長(森屋宏君) ありがとうございました。
 以上で参考人の御意見の陳述は終わりました。
 これより参考人に対する質疑を行います。
 なお、質疑及び答弁は着席のままで結構でございます。
 質疑のある方は順次御発言を願います。

#10
○和田政宗君 自由民主党・国民の声の和田政宗でございます。
 まず、吉原参考人にお聞きをしたいというふうに思います。
 外資や外国資本による土地買収における安全保障上の懸念について、吉原参考人御自身はどう考えるのか、もう少し詳しくお聞かせ願えればと思います。

#11
○参考人(吉原祥子君) 東京財団では、最初にこの問題に着目をしたきっかけが、そうした外国資本が日本の森林などを買うということが今後どのような安全保障上の懸念をもたらすのだろうかと、そういうところを実態調査をしてそして懸念を洗い出そうというところから私もこの問題に入っていきました。ただ、その問題について、やはり可能性としてはとても高いのだろうというふうには思っております。しかしながら、民間の力でそうした事実をつぶさに把握をするということは困難であるということをこの十年感じてまいりました。
 この度の内閣委員会における議論を聞いておりまして、そのリスクというものがどの程度のものなのか、また、立法事実というものがあるのかないのかということが大きな論点になっているということを、私も非常に重たくインターネットで聞いておりました。
 例えば、所有者不明土地問題の場合は、東日本大震災で所有者不明土地が被災地の復興を遅らせる要因になったといった明白な不利益が生じているわけです。しかしながら、安全保障の問題についてはそうした明確な実害が生じたということは、少なくとも報道で接する限りは私は存じ上げておりません。
 ただ、それが、イコール立法事実がない、懸念材料がないと言い切れるのかといったら、そうではないと思っています。調査する根拠がないからこそ分からないこともあるし、また、分かっても言えないこともたくさんあると思っています。そうした懸念に対応すること、それが今回の法律の、法案の重要性であり、必要性であるというふうに考えております。

#12
○和田政宗君 もう一つ連続でお聞きをしたいというふうに思いますが、吉原参考人がこれまで述べてきたこと、また今日述べてきたことに関連して、水源地の保全の観点から、国の現行の法制度でありますとか法整備の在り方についてどのように考えますでしょうか。

#13
○参考人(吉原祥子君) ありがとうございます。
 水源地については、現在のところ、北海道を始めとして十八の道と府県で事前届出を課す条例ができております。また、地方自治体、市町村単位でも、数百の市町村で水源保全条例などを作っています。
 そこには、地域の水は地域で守るという考え方があります。そうした地域由来の資源というものは、かなりその性質や保全の在り方に違いもありますので、地域で対応するということがいいのではないかなというふうには思っております。

#14
○和田政宗君 それでは、馬奈木参考人にお聞きをします。
 我が国防衛上重要な施設の機能保全に関連してお聞きをいたしますけれども、今年四月のウエブ「論座」の投稿を読ませていただきました。馬奈木参考人は、私自身は自衛隊という組織が丸ごと違憲だと解釈されることはないという立場ですと述べておられますけれども、自衛隊の何が違憲で何が違憲でないと考えるのか、自衛隊が我が国を防衛することも違憲だと考えるのか、お聞かせください。

#15
○参考人(馬奈木厳太郎君) 自衛隊の違憲性の問題についてのお尋ねだというふうに考えます。
 私自身、「論座」で述べておりますけれども、自衛隊の有する機能というのを個別的に見ていくという観点が大事だという意見であります。その際、「論座」の中では具体的な例として、例えば災害などの際に出動して自衛隊の方たちが人命救助などに当たる、こういったことを自衛隊が丸ごと違憲だといったような形で、そういった活動までも違憲だというふうに考える必要はないというふうに述べています。
 一方で、その自衛隊が有する機能というのはまさに様々でありますから、憲法解釈の問題としては、第九条、特に第九条の問題になると思います。日本国憲法上、例えば戦力の不保持であるとか、それから交戦権の否認といった問題がありますので、これとの観点で、これが戦力に当たるとか、あるいは交戦権の行使に当たるといった問題が出てくるものに関しては、当然ながら憲法違反だということになろうかと思います。
 したがって、個別具体的に見ていかないといけないので、そういった機能ごとに見ていくという発想、実はこれまで余りなされていなかったと思っています。そうした点をむしろ具体的に個別的に見ていくという方が、今までのような丸ごと合憲とか丸ごと違憲というよりは、生産的な営みといいますか、作業ではないかという問題意識からそのような書き方をさせていただきました。

#16
○和田政宗君 更にお聞きしますけれども、これ、自衛隊そのものが違憲ということ、自衛隊が我が国を防衛すること自体が違憲ということになりますと、自衛隊の基地自体が違憲というようなことで、その、じゃ、周囲をどうするのかということ自体も違憲ということになるのではないかという観点から更にお聞きをしたいというふうに思いますが。
 そうすると、相手国なりから我が国が攻撃を受けて我が国民の人命が何かしらその危害を受けた、こういったことから自衛隊が我が国を守るということは、これは合憲と考えるのでしょうか、違憲と考えるのでしょうか。

#17
○参考人(馬奈木厳太郎君) ちょっと、今の問いの立て方が私はちょっとかなり単純化していると思うんですね。
 これ、「論座」にも最後の方に書いていますけれども、安全保障の問題というのは、ある日突然どこかの国が攻めてきたといったような発想、それ自体からいかに脱却していくのかというのが大事な観点だろうと思っています。
 例えば、イラク戦争のときもそうですけれども、日本も協力しましたが、例えばロジスティックの問題一つ取っても、そんな一日二日でできるようなものではありません。当然ながら、諸外国の政府間同士の意見の対立というのも一日二日でできるものではやっぱりないと思っています。やっぱり積み重ねがあるわけです。今のような形で、ある日突然どこから例えばミサイルが飛んでくるとか、ある日突然どこから何かが攻撃されるというような問いの立て方、これがまさにこの法案の肝になっているんだと思います。
 先ほど吉原委員が、リスクがどの程度あるのかということについて立法事実のお話しされました。分からないけれども、それでもって直ちに立法事実が否定されるとは思わないという御発言でした。私は、そのおそれというもの、抽象的なリスクというものがかえって時間軸をどんどんどんどん前倒しにし、調査範囲をどんどんどんどん広げていく、そういった無制約なものにつながっていく、そういうふうに感じています。
 今の、まさにどこからか攻めてこられるのではないかというその土俵そのものをきちんと見ていくという、むしろそういった立場の方が大事だろうと考えています。

#18
○和田政宗君 馬奈木参考人の意見は貴重な意見として承りたいというふうに思いますけれども、これ、そうしますと、災害に対してはどうするのかとか、そういう問題も生じてくるのではないかということは今の参考人の御意見をお聞きをして感じたところでございます。
 済みません、半田参考人にお聞きをしたいというふうに思います。
 この法律によって土地の価格が下がる可能性があるというふうに述べていらっしゃいますけれども、その具体的根拠は何なのかというところがいまいち理解できなかったんですが、ここについてお聞かせをください。

#19
○参考人(半田滋君) 特に、先ほど述べた中で、特別注視区域に指定された場合に、二百メートル以上の土地の取引や建物の建設について内閣総理大臣に届出を出して、そして許可を得るというふうな、今まで行われていなかった煩雑な手続が入ってくる、これによって流動性が阻害されるということは、一つ手続が余計に入るということだけでも明らかだろうというふうに思います。
 そこで、つまり流動性が阻害されることになれば、それだけ土地の固定化というものが、これはやむを得ないことになりますから、そこで動かないものに対する市場価格というのは下がってくるというふうに思います。したがって、今回のこの法律によって土地価格の下落というものが見込まれるというふうに述べました。

#20
○和田政宗君 この土地の価格が下がる可能性については、半田参考人とそして馬奈木参考人もこれまで述べていらっしゃることだというふうに思いますが、お二人の意見に対してどうこうと言うつもりはございませんけれども。
 これ、土地取引の専門家の集団である団体にお聞きをしましたので、この意見を少し述べさせて、このヒアリングした内容を述べさせていただければというふうに思いますけれども、土地や建物の取引を行う会社から成る全国宅地建物取引業協会連合会にお聞きをしましたところ、影響はないというふうに明確にお答えになりました。連合会の幹部に更にお聞きしたところ、むしろ土地調査と規制の対象を一キロではなく三キロにすべきであると。外資、外国人の土地取得について調査や規制を強化すべきであるという多くの意見が組織内で寄せられたということです。
 土地の取引が抑制され価格が下がるのであれば、こうした団体も反対に回るのではないかというふうに私も考えますけれども、実際はそうではありませんし、土地取引の現場をつぶさに見ているプロの意見は、まずしっかりと調査をして、安全のために必要な規制をすべきとの考えでありました。
 そこで、吉原参考人にお聞きをしたいのですけれども、外資、外国人による土地取得の問題は、この従来の土地制度が抱える課題と密接に関わっているというふうにお述べになられております。また、所有者不明土地の解消に向けた民事基本法制の見直しとも関連するとの御意見を主張なさってきましたけれども、この土地法制全体として不足部分を改善をしていくという観点が今必要であるということでよろしいのか、その点をお聞きできればというふうに思います。

#21
○参考人(吉原祥子君) 土地制度全体を時代の変化に応じて、合わせて底上げをしていくことが求められていると思います。そのキーワードの一つが内外無差別だと思います。
 これまでの日本の土地制度は、地域に人がいて、その属人的なネットワークの中で相続人の情報も分かり、一代ぐらいだったら登記が古くても大体相続人調査もできるよということで、あるいは、戸籍があり住民票があるという、そうした日本人、国籍の問題というよりも居住者を、その地域の居住者を前提として、その人たちが管理責任を負い、固定資産税も払うという前提でありました。
 しかし、これからは、例えばIターンで東京から地方に移ってくる人、あるいは外国の様々な技能を持った方を受け入れていくということも必須ですし、あるいは海外からの投資というものも必須です。そうした方々こそが安心して地域の中で活動ができるためには、誰であっても同じように情報基盤に、情報基盤を共有して同じルールを共有していけるような、そういう仕組みをつくっていくことが大事であろうというふうに思います。

#22
○和田政宗君 ありがとうございます。
 さらに、そうしましたら、これ、最後の質問になると思いますが、吉原参考人にお聞きをしたいというふうに思います。
 今回の法整備に当たっては、反対の方もいらっしゃるわけですし、不安に思われる方もいらっしゃるというふうに思います。私は、徹底した情報公開が必要であるというふうに思っております。
 吉原参考人から、この情報公開に向けての観点、幾つかお示しをいただきましたけれども、より分かりやすく明快に国民に対する情報公開をしていくためには何が必要か、最後にお答え願えればと思います。

#23
○参考人(吉原祥子君) ありがとうございます。
 私も、今国会の議論を拝聴しておりまして、また、お二方の参考人の御意見も聞いておりまして、これは本当に、本当に深刻な、様々な地域の課題が抱えている中での土地問題ということで、この法案を作った後の情報公開というものにこの成否が懸かっているというふうに思います。
 一つ参考になると思うのは、北海道庁が全国に先駆けて作った水資源保全条例です、平成二十四年。北海道庁、本当に手探りで作りました、その条例を。そして、地域の住民への説明会というものを徹底して行って、道庁の職員の方々は車で何時間も走って住民説明会を道内各地で行いました。また、その過程、地域指定のプロセス、審議会の議事録、それから指定件数、五年後の見直しのアンケート調査の結果、そうしたものを全てホームページで更新をしております。それは一つ大きな参考になると思います。
 ただ、もちろん国の安全保障ですから、やはり秘匿しなきゃいけないことというのは限定的にあるとは思いますけれども、しかしながら、基本的な考え方というものはしっかりと示していかなければいけないと。この衆参の内閣委員会で出た論点一つ一つにきちんとこれから応えていかなければいけないということは強く感じます。

#24
○和田政宗君 時間が参りましたので、終わります。

#25
○杉尾秀哉君 立憲民主・社民の杉尾でございます。
 今日は、三人の参考人の先生方、貴重な御意見、大変ありがとうございました。
 まず、半田参考人に伺いたいんですけれども、これまでの法案審議、今も問題になっておりましたけれども、どのような施設が対象なのか、生活関連施設も含めて。そして、施設の機能阻害行為とは具体的にいかなる行為を指すのか。こうした一つ一つの質問に対して、これ衆参の審議を通じてそうですけれども、手のうちをさらすとか、安全保障上の理由と、こういったような理由を挙げて詳しい説明をまず政府側は避けてきたわけです、答弁避けてきたんですけれども。
 安全保障、そして基地問題、防衛問題にこれまで取材してきた立場として、こういう政府の説明が理解できるかどうか、これについて半田参考人の御意見聞かせてください。

#26
○参考人(半田滋君) はっきり申し上げて、理解できないと思います。
 手のうちをさらすといって、一つも、何が、何をもって機能を阻害する理由なのかというのを挙げてこないというのは、全く推測をするしかないということになります。
 そこで、先ほど申し上げた沖縄県のチョウ類研究者の宮城さんの事例でありますけれども、およそ宮城さんがやった行為が違法行為というふうに当たるというふうには到底思えないわけです。
 もうちょっとお話しすれば、宮城さんはちゃんと、一度回収したものを県警に連絡をして引き取ってほしいということをおっしゃったにもかかわらず、県警が放置したので、自ら運んできて、そのうちの一部を元の所有者であった米軍に返したと、そういう話になっています。
 実際、宮城さんがその後ブログなんかでお書きになっているのは、そういった廃棄物をゲートの前に置いた行為は、威力業務妨害だけではなくて、廃棄物処理法違反もあるし道路交通法違反もあると。えっと非常に驚くような罪が三つもあるということになったわけですね。
 ということは、要するに、機能を阻害する行為というのは、それを認定する側の判断次第であるということが非常に分かると。したがって、今回の国会の中で、手のうちを明かすといって中身を公表しない政府の態度というのは全く納得がいかないものであるというふうに言えると思います。

#27
○杉尾秀哉君 更に半田参考人に伺いたいんですけれども、先ほどの説明でも、立法事実がないと、こういうふうな御説明でございました。私も前回の質疑でそういうことを申し上げましたけれども。
 この一方で、本法案に明記された措置で、例えば一キロの注視区域であったり特別注視区域であったり、こうしたところでいろんな調査を、まあ様々なことが措置されるわけですけれども、こうした行為、こうしたことによって不正行為がどこまで防げるのか、防止が本当にできるのかという、いわゆるその実効性ですよね、これを問う声もありますけれども、安全保障の専門家として、この法案の実効性、本来の目的の安全保障上の目的の達成、これについてどういうふうな御意見お持ちでしょうか。

#28
○参考人(半田滋君) これは本当に、悪意を持って、調査される側の者がその実態を隠蔽しようと思えば幾らでも可能だと思います。
 つまり、表に出ている名前や住所、そのことでさえも、これを虚偽のものに置き換えて、実際の所有者と別の人が名義人になっているというようなことをすることはできると思いますので、実際のところ、この調査によって本当に土地の取引が安全保障に資するものであるというふうに断言できるとは到底言えないと思います。
 むしろ、この調査をすることによって、周囲一キロ、つまり注視区域や特別注視区域の周囲一キロに住んでいる住民が、国に従順な人と、あの人は例えば反対運動をやっていて国に逆らう人だというようなことで住民が分割されたり、国がもし不都合だと思う住民に対して転居をしてくれというような命令を下すようなことになってくると、国にとって非常に管理のしやすい地域ができ上がると。
 これは、安全保障上というよりは、はっきり言えば手抜きをしてでも自分たちの都合のいいようなエリアを確保しておく、それが今回は、単なる基地だけじゃなく、いわゆる生活関連施設にまで及んでいるというのが大変に大きな問題だというふうに思います。

#29
○杉尾秀哉君 続いて、馬奈木参考人に伺います。
 本当にひどい法案だと、こういうふうにおっしゃいました。法律の専門家という立場から、まあ我々は丸投げ法案とか、言ってみれば白紙委任状法案と、こういうふうな言い方をする人もいるわけですけれども、今回のその法案全体を通してどこが最大の問題点だというふうに思われますでしょうか。

#30
○参考人(馬奈木厳太郎君) 大変難しい質問かなと思うんですね。条文一つ、一条一条に何か所かちょっといろいろ言いたくなることがあるぐらいの法案だと思っています。
 それはなぜなのか。やはり、先ほど、内閣総理大臣はで始まる条文がほとんどだと、言い方をしましたけれども、それに対して権限が与えられるわけです。その権限が与えられる範囲も、それから手法も、期間も、誰に対してかも、全く歯止めがない、それに対してチェックを掛ける存在もない。意見を聞くという仕組みはできていますけれども、止められるような仕組みはなっていないわけですよね。だから、私は、この条文の何条が問題かというよりは、この考え方そのものが極めて危険だというふうに思っています。

#31
○杉尾秀哉君 その関連で、そのチェックする機関がない、チェックができないということなんですけれども、例えば土地等利用状況審議会、この意見を聞くという、こういうプロセスは一応ございます、その区域の指定等々に当たってですね。この本委員会の質疑でもそうでしたけれども、例えば国会同意人事に最低限すべきであるとか幾つかありましたけれども、その審議会の果たす役目も含めてどういうチェックをすればいいのか、何か御提案ありましたら聞かせていただけませんか。

#32
○参考人(馬奈木厳太郎君) 審議会の委員の方に関して国会が例えば同意を与えるというのは、確かに一つの歯止め、歯止めというか、少なくとも止める方向に働く一つの仕組みではあろうと思います。ただ、これは人事だけではやっぱり足りないと思いますね。
 やっぱり、先ほど吉原委員も情報公開が大事だとおっしゃっていました。この情報公開というのも、黒塗りにして見せましたというのは情報公開にはやっぱり入らないと思います。一般の人が、一般の国民がどこまで見れる、見るべきなのか。というのは、プライバシーの問題だったり安全保障の問題であったり、結構あると思いますので、そこは調整が必要ですけれども、少なくとも、例えば国会のしかるべき委員会の委員であるとか、しかるべき担当の人に関しては、少なくとも、当然守秘義務のようなものは課されるべきだと思いますけれども、全体像が分かるような形で例えば情報あるいはその活動に接するというようなことぐらいしないと、先ほども申し上げましたけれども、手のうち明かせませんみたいな話で、国民に対して説明をほとんど拒否するような姿勢で、しかしながら調べますよというのは、ちょっと国民主権の国の統治機関のありようとしてはいかがなものかというふうに思いますし、今、近年、日本の行政の中で問題になっているのは、この行政監視能力あるいは行政に対するこの規律の密度、これをどう高めていくのかというところが一つ課題なはずです。そうした方向からしてもこれ全く逆転しているというか、正反対の方向に行くような話だというふうに理解しています。

#33
○杉尾秀哉君 それでは、吉原参考人に伺いたいと思いますけれども、参考人は政府の有識者会議のメンバーでもございました。こういった形で、その提言を基にして、それがベースになって法案ができてこうやって国会で審議されているんですけれども、例えば重要施設、その周辺、注視区域、特別注視区域、まあ一キロという範囲になっておりますけれども、こうやって全国、しかも生活関連施設ということで、取りあえず原発、それから軍民共用空港というのが今例示として挙げられていますが、この先どういうふうに適用範囲が広がっていくかも分からないという中で、これだけ網羅的な、包括的な、そもそもは外資による不透明な土地売買をどうやって規制するかという話だったのが、こんなに話が広がってしまって、下手すりゃ沖縄も含めて全国民、全てが調査対象になってしまう。こういう法案になるということを当時は御想像されていましたか。

#34
○参考人(吉原祥子君) その会議に参加をさせていただいた者として、この法律が適切に運用されるであろうという私は信念は持っております。ただ、この条文案を読むだけでは様々な臆測が広がるおそれがあるということはこの審議のプロセスを伺っていて痛感をいたしましたので、そこはしっかりとこれから議論をしていかなければ国民の様々な解釈を呼んでしまうなということは思います。
 私が今回その有識者会議に入らせていただいて大変思いましたのが、今回の会議のメンバーには行政学の専門家やそれから民法の専門家が入っています。私は、この問題、この土地、外資の話だけではありませんが、所有者不明土地問題など、特に外資の話においては、十年間経過を見てきた中で、ああした学者の方々が正面からこのテーマを議論したのは初めて見ました。本当に真摯な議論が行われたと思っています。回数は少なかったけれども、提案書の中には重要なエッセンスが凝縮されています。それを踏まえた上での法案だと思いますので、そこは信頼、そこは私は全幅の信頼を寄せています。
 ただ、それを見える形、言語化するということは今後大きな課題であるということは思っております。

#35
○杉尾秀哉君 私も、審議会のメンバー、どういう方かチェックさせていただきました。おっしゃるとおり、行政学であったり、主にやっぱり法学というか学者の皆さんですよね。先ほどどなたか参考人がおっしゃいましたけれども、現場のその感覚というのが、例えば基地であったり安全保障であったり、その感覚というのがどこまでその提言に盛り込まれてそれが今回の法制化につながったかという、そこのプロセスはチェックする必要があると思うんですけれども。
 もう一点、吉原参考人に伺いますが、先ほど参考人は、分かりやすい説明、十分な説明ができているかと、ここが重要だとおっしゃいましたけれども、これまでの法案審議で、さっきも申し上げましたが、安全保障上の理由、それから手のうちを明かせない、こういったような説明がるる繰り返されてきて、我々は到底、例えば市ケ谷が最重要施設であって、特別注視区域に一キロメートル、これについても一切何も答弁しないわけですよね。自公で合意があったのかということも含めて、大臣はおっしゃらない。
 こういう法案の審議の在り方で国民の理解が得られると吉原参考人はお思いでしょうか。

#36
○参考人(吉原祥子君) 本当に安全保障という問題の難しさを痛感しております。
 恐らく、言えること、言えないこと、いろいろあるんだろうというふうに思います。その情報の断片でも出してしまえば、そこが何かの今後の制約になってしまう側面もあるでしょうから、言わないんだったら徹底して言えないということになってしまうのもこの安全保障の問題の難しさなんだろうというふうには思っております。本当に難しいというのが率直なところです。
 ただ、ここを乗り越えていかなければ、この問題はまた十年同じことの繰り返しだと思います。つまり、個別具体、個別の事例を特定の、ごく、こういうことを言っては不適切かもしれませんけど、幾つかの限られたメディアが個別の事例を大きくセンセーショナルに取り上げ、それを、どこまでそれがリスクなんだろうか、どこまで怖がる必要があるんだろうかということを読み手の方では分からないまま、不安だけがあおられ、国は何をしているんだという声と、いや、一方で、それはそういう思い込みなんじゃないかという両極の意見の中で、実態として法律ができないということをまた次の十年繰り返してしまっては、これはもう世界情勢を考えても、いけないと思います。ここは何とか乗り越えていかなければいけないところだというふうに思っています。

#37
○杉尾秀哉君 それでは、ちょっと最初に返りまして、半田参考人にもう一つ伺いたいことがあるんですけれども、半田参考人は、先ほども御紹介されていましたけれども、防衛省の担当が長くて、ずっとその取材を続けてこられたということなんですけれども。
 先ほどは情報保全隊の話がありましたが、特別注視区域、注視区域、今回その一キロの範囲内で、このような形でその情報が収集されるわけですけれども、どこまで個人情報が収集されるかも分からない、こういった声が当然のことながらある。そうした中で、自衛隊も、情報保全隊は今回加わらないということですけれども、地方防衛局はどうも加わりそうということで、こうした自衛隊の関係者も含めて、この自衛隊の本来任務からこうした調査に加わること、これ逸脱するおそれについて、これは参考人はどういうふうにお考えでしょうか。

#38
○参考人(半田滋君) 実は、東北情報保全隊の情報収集対象の中に私個人が入っていまして、裁判を通じて私の名前が出ているんですね。その中で、札幌で行った会合で半田がこう述べたというふうに書いてあるんですが、全部間違っているんですね。実は、その主催団体が私が話した内容の概要をホームページに載せているんですが、それと比べても全く違ったことが書かれている。しかも、情報保全隊の資料というのはその部内限りとあって、要するに、部内では見ることができるけど、私たち外部の人間は見ることができないわけですね。そうすると、誤った情報が部内で共有されていく、その実例がこれだと思うんですよね。
 したがって、今回、注視区域や特別注視区域というふうに指定されて、そういった一キロに住んでいる人たちの個人情報が適切に正しく集合、集められるかということに根本的な疑問が私にはある。だから、こんないいかげんなものを含めた法律を、これを通していくということは、ちょっと拙速に過ぎるのではないかというふうには思います。

#39
○杉尾秀哉君 時間が来ましたので。ありがとうございました。

#40
○三浦信祐君 公明党の三浦信祐でございます。
 今日は、三人の参考人の先生方々から貴重なお話をいただきました。順次御質問させていただきたいというふうに思います。
 まず、吉原参考人にお伺いさせていただきたいと思います。
 様々議論を重ねていただいた結果、今こういう法案として出てまいりましたけれども、本法案の、シンプルに聞きますけれども、安全保障上、国の安全を阻害する行為を抑止する抑止力、そういう視点での効果、これをどうお考えになられていますでしょうか。

#41
○参考人(吉原祥子君) 抑止力になると確信しております。
 これは、一キロ以上、一キロより遠いところで問題が起きたらば対象にならないので使えないじゃないかという声も当然あると思います。しかし、この有識者会議でも、まずは規制の範囲は最小限にして必要最低限のところから始めようと、それが妥当、必要であると。私権制限については、あるいはプライバシー権の保全ということについては、非常に委員の皆さん、まずそれが、プライバシー権の保全とそれから私権制限は最小限にとどめるということ、それが大前提となっていました。
 その中で、自由な経済活動を保障し、そしてその土台としての安全保障を実現する上では、こうした基礎的な調査が行え、そして、万々が一何か起きたときには規制を行える手だてというものを持つということそのものが抑止力になるだろうということは、その委員会の会議の中でも繰り返し議論がありましたし、私はそのように確信をしております。

#42
○三浦信祐君 同じく半田参考人にも、様々安全保障についての御知見があるという視点で、国の安全を阻害する行為を抑止するという部分で抑止力というふうに今単純に使っておりますけれども、抑止力にはいろんなやり方があると思います。当然、正面装備を強化をする、人的リソースをきちっと整える、法的基盤を整える、そういう観点から置いたときのこの法案の抑止力ということについての御知見を是非伺いたいと思います。

#43
○参考人(半田滋君) およそこの抑止力と今回の法案との関係というのは余りないのではないかというふうに私は見ています。
 というのは、今日述べましたとおり、防衛省が既に六百五十か所の土地をちゃんと調べた上で自衛隊の運用、機能を阻害するものはなかったということをおっしゃっていますし、そのうち七筆ですかね、外国人の土地もあったということも認めています。しかし、実際に機能を阻害する理由、事態というものが起きたことはないと。
 実際のところ、まず、我が国には普通に警察機構があって、そしてまた、自衛隊の皆さんも自分たちの土地をしっかり守るというような体制を取っているわけですね。したがって、現在の自衛隊の在り方や現行法の警察組織の在り方などからも、実際のところ、この土地取引をめぐる不穏な事態というものは、既にもうそこは心配は要らないのではないかというふうに思っています。
 むしろ、やはりここで懸念されるのは、土地の流動性が落ちることによってその土地価格の下落などの財産の目減り、そちらの方が心配だし、それより何より、やはり個人情報が誤って不当に収集されていくということの方がより大きな問題であろうと。備えあれば憂いなしという言葉がありますけれど、この法律に関しては全く当てはまらないというふうに思います。

#44
○三浦信祐君 お互い違う意見をはっきり明確に分かったところでありますけれども、世界がワクチン接種が進んで経済回復が日本より先に進んでいくという視点のときに、日本の経済回復をしっかり図るということは当然ですけれども、土地の位置付けがどう世界から見られるかということから考えると、ありとあらゆるバランス感覚を持って経済活動と安全保障を考えなければいけないというのは、従前の延長線上で考えてはいけない世界が来ているという視点は私は絶対に持ち合わせるべきだというふうに思います。
 その上で、吉原参考人に伺いたいと思います。
 安全保障と経済活動のバランスは極めて重要だと思います。片方がウエートが付き過ぎればどちらかを反対側に揺り動かすという働きが連続するということになり過ぎると、これは日本の立ち位置というのも大変難しくなってくるんだろうなというふうに思います。その上で、安全保障という位置付けと経済活動をバランスを取るという位置付けにおける本法律の果たす役割、これについての御知見を是非いただければと思います。

#45
○参考人(吉原祥子君) ありがとうございます。
 安全保障と経済活動というのは相反するものではなくて、両輪だと思います。あるいは、安全保障こそ、安全保障があってこその経済活動であると思います。
 安全保障によって守られるのは何も自国民だけではなくて、日本に来てくださる、住んでくださる外国の方、投資をしてくださる方、そうした方も、日本の安全保障が守られることによって安全な生活や投資活動というものが行われるわけですから、安全保障というのは、もちろん自国民を第一とはしていても、この地域で一緒に暮らしていく人たち、投資をしてくださる方々全てにとっての有益、必要なものだと思います。それがあってこその自由な経済活動だと思いますので、どちらかがプラスに転じればどちらかがマイナスになるというものではないというふうに思っております。

#46
○三浦信祐君 はっきり分かりやすくお話をいただいて、ありがとうございます。
 従来、日本における土地利用というのは善意の経済活動であり、これは今後も変わらないというふうに思います。本法案では、ここに規制を掛けていくわけであります。骨抜きではなくて、実効性の確保がここまでやる以上は重要なことなんだというふうに私たちは考えております。
 すなわち、立法する、そして運用していく過程で、実際には期間とか時期が不明瞭だったり、調べると言っておきながら全然調べられない、徹底がなされない、国民の理解も得られない、そういうことがあることの方がむしろリスクであって、調査範囲を膨大にしてしまうと実効性も危ぶまれてしまうであろうというのが僕は大事なポイントなんではないかなというふうに思います。
 だからこそ、今回は範囲をきちっと絞った上で、見直し規定も入れ込んで、やり過ぎてはいけないと、そして、必要なことが発生するならば、きちっとそれを国民にオープンソースの中で議論をしていくということが大事で、そして、これがどこの地域になるかというのはこれからの過程の中で、官報でもきちっと公表されていくということだと思うんですけれども、安全保障上重要な土地だったり重要なインフラの範囲を絞り実行していくことが、これが今議論の中であると思うんですけれども、現状、日本が持ち合わせているリソースでどの規模が現実的かなというところ、これ、吉原参考人、是非お伺いしたいと思います。

#47
○参考人(吉原祥子君) それは大変難しい御質問でして、私にはこれといった確答がございません。申し訳ありません。
 ただ、これはあくまでも調査を行うための法律であって、調査のための調査ではなくて、安心するための調査でもあると思います。調査をした結果、やはりほとんど何も問題なかったじゃないかということも当然あるわけです。それで国民がああよかったというふうに思えればいいわけですし、何か規制をすることは最初の目的ではなくて、あくまでも安心をするというためのものであるというふうに考えております。
 そして、不動産登記簿というものは公開情報です。誰であっても、私であっても、数百円の手数料でインターネットを使って登記簿情報というものは入手ができます。そうした公開情報をまずは活用しながら、それでも分からなければその先の調査権限を行政に持っていきましょうということでして、実はそうした、例えば固定資産課税台帳を調査に使えるといったことは、空き家対策や農地の対策、所有者不明土地対策などにおいては、必要な限度においてそうした行政が持っている情報を使えるということは既にできるようになっております。今回のこの法律では、そうしたことを安全保障上でも必要に応じできるようにしていきましょうということだろうと思います。
 御質問に戻りますと、その明確な範囲というものは私ではお答えしかねます。申し訳ありません。

#48
○三浦信祐君 まさにその範囲ということが我々国会としてきちっと議論をする機会を今後また改めてつくっていかなきゃいけないということを逆に御指摘をいただいたと思いますので、政府に丸投げをするつもりは更々ないと。ましてや、私たちもきちっとそこを整える必要があるということを逆に教えていただいたというふうに理解をします。
 その上で、三人の参考人の先生方々に端的にお答えをいただければと思うんですけれども、土地利用目的把握というのが本案のポイントになると思うんですけれども、的確な情報を得る実効性と経済活動への負担を掛け過ぎないようにするということ、利用目的の整理が私は必要だというふうに考えております。
 その上で、土地利用者の負担となる報告徴収は限定的に行うとの答弁が、私も本会議で大臣からありました。
 その上で、土地利用についての報告を求める際の目的表現の詳細の程度、追加調査をする際の判断基準についてというのがこれ大事なんだというふうに私は思います。例えば、住居に処するというふうに書いただけでは何も分からないという可能性もなきにしもあらずだと思いますので、この辺については是非御知見を御披露いただければというふうに思います。

#49
○委員長(森屋宏君) 三名の方にお聞きしますか。

#50
○三浦信祐君 はい、お願いします。

#51
○参考人(吉原祥子君) その報告徴収を求める際の明確な、依頼の際のその目的の言い方ということですか。もう少し御説明をいただいてもいいですか。

#52
○三浦信祐君 例えば、インターネット上でプルダウン式で三つぐらいしか選択肢がないような表現では、とてもその調査をした形にはならないと。要は、目的を得るとしたときに、どういう表現をしっかりと整理をすべきなのかと。この土地を何に使いますかという目的表現についての、どこまで細かいところを求めるべきなのかということについて、何か御知見があればと思って、お伺いしたいと思います。

#53
○参考人(吉原祥子君) それは、例えば北海道庁などが、あるいは林野庁が行っている調査において、資産保有を目的とするとか現状維持といった回答が多いということからの御質問なのでしょうか。
 そうなりますと、やはり実態を把握をすることが趣旨ですので、そうしたどうとでも取れるような回答では、安全保障の観点から守ると、観点から必要な情報を得るということの達成にはならないと思いますので、そこについてはもうちょっと具体的な回答が必要なのではないかなというふうに思います。
 ただ、そこもやはりその個人のプライバシー権の問題が強く関わってきますので、そうした回答を求める際に、どのような文言が適切で、また、どのような回答範囲が許容されるのかということは、まさに行政法の先生とか法律の専門家の知見が必要なところであるというふうに思います。

#54
○参考人(半田滋君) 御質問に的確にお答えできるかどうかちょっと自信はありませんが、何でしょう、今回、どんな目的で土地を取引するかという、その項目についてどの程度の細分化が必要かというようなことかと思います。
 まず、それ以前に、今回、仮にこの法案が通って成立して施行されるとすれば、恐らく、まず国がやることというのは、周囲一キロの土地におけるその利用者の利用実態を的確に把握することだと思います。まずそこから始まっていくわけですね。
 その際、恐らく、情報収集する際に市町村長に対して協力を要請することができるわけですから、内閣総理大臣の名前で、例えばその住民基本台帳であるとかあるいは土地台帳であるとか、そういったものを閲覧をするなりするということから恐らく始めていくんだろうと思います。だけど、実際のところ、それでは全く、誰がどこに住んでいるということしか分からないので、その先の調査というのが非常に複雑で、実効性が確保される必要があるはずです。
 その場合、その報告を求めたりすることができるという次の段階に移っていくわけですけれども、これは大変に煩雑な話であると同時に、全くそのいわくいわれのない疑いを掛けられているような調査になるわけですね。何ら犯罪に関わっていることもなく一般の市民として生活している人まで、なぜそこまで根掘り葉掘り国に対して答えなければいけないのかというようなことが出てきて、大変に私はこの個人情報の把握というところからして難航すると思います。
 これを実現するとすれば大変な数の担当公務員を雇っていかなければいけなくなるし、その土地取引をする以前のベーシックなデータベースを作るだけでもこれは何年も要することだし、何よりここで問題なのは、個人の私権の侵害に該当するような調査が国の手によって幅広く網を掛けるという理由で行われてしまう。
 国にとっては安全保障上何でも分かった方がいいだろうとは思います。それが結局は、要するに、基本的な人権との衝突というふうなところが問題になっていくわけですから、これはおっしゃるような土地取引の話が始まっていくよりも前に、その法律自体のいわゆる合憲性といったところも問われていく。非常に難産して、そして生まれた後もこれ成長していくのが非常に苦しい法律になっていくのではないかなと。
 したがって、先ほど……

#55
○委員長(森屋宏君) 時間が来ておりますので、おまとめください。よろしいですか。

#56
○参考人(半田滋君) はい。
 安全保障上の観点でということでしたけれども、その実効性もないのではないかというふうに思っているわけであります。

#57
○参考人(馬奈木厳太郎君) 今の御質問、端的に答えると、内閣総理大臣に対して所有者などが利用目的、所有目的を罰則付きで回答を求められる、これ自体、この一か条だけで憲法違反だというふうに思います。

#58
○三浦信祐君 時間になりましたので、終わります。
 ありがとうございました。
    ─────────────

#59
○委員長(森屋宏君) この際、委員の異動について御報告いたします。
 本日、豊田俊郎君が委員を辞任され、その補欠として加田裕之君が選任をされました。
    ─────────────

#60
○高木かおり君 日本維新の会の高木かおりです。
 本日は、本当に貴重なお話をお三方の参考人の皆様お聞かせいただきまして、ありがとうございます。
 まず、吉原参考人に伺っていきたいと思います。
 今日お話を聞いておりまして、吉原参考人のおっしゃっておられること、この本法案で重要施設、国境離島での土地の利用の調査、それから規制を行うと定めたとしても、実際には土地所有者が分からないという現実もあって、所有者不明土地の制度もきちっと整備をして本法案とともに議論していかなければやはりこれ実効性が担保されないというような、そういった御趣旨のことをおっしゃっているのかと推察いたします。
 やはり今、相続放棄の問題、これ土地に対する意識の変化というのもあるんだろうと思います。それがどうして進まないのかというと、やはり、例えば税金の負担であったり、どこが自分の実際所有の土地なのかがなかなか把握できない実態があったり、これ私も少し勉強させていただいて、これ地方だけの問題ではなくて、意外と大都市でもこういった不動産の未登記問題というのが起きているというふうに認識をしております。
 そこでお聞きをしたいんですけれども、例えばある土地がAさんからBさんへ相続されたときに、このBさんが相続登記をしなければ登記簿上は故人のAさんのままということになります。でも、しかしながら、実際の所有権というのはBさんに移転をしていて、Bさんから私が住んでいますというふうに言わなくとも、行政の方、市町村からはしっかりとその固定資産税の納付書というのは届いていくという、こういった仕組みになっているかと思うんですが、これ、つまり登記に反映されている所有者の方が実際に住んでいる人と一致しないという問題が起きているんだと思います。で、このBさんがまだこれ住んでいるならいいんですけれども、実際そこに、そこが空き家になってしまっていて、登記簿はその亡くなったAさんのままというようなことも多々お聞きをするところであります。これがいわゆる所有者の不明土地問題ということだと思うんですが。
 そういったことが危惧される中で、この問題の原因には、やはりこの所有権の移転があった場合必ず登記せよと強制力がないということだと思うんですね。ただ、今日お話にあったように、相続登記については義務化となると。けれども、いわゆる通常の売買について、これは不動産業者さんが入れば登記はされると予想は付くんですけれども、実際、個人対個人の売買、この登記については義務化されていないということで、こういったところも義務化をしていくべきなのかどうか、こういったところについて御所見を是非伺いたいと思います。

#61
○参考人(吉原祥子君) ありがとうございます。
 確認ですが、今御質問いただいたAさんからBさんというのは売買で権利が移ったということですか。

#62
○高木かおり君 相続で移ったということになります。

#63
○参考人(吉原祥子君) 相続の場合は、今先生おっしゃったとおり、相続未登記の場合であっても、行政の方で相続人調査を行って、息子さんや娘さんに納税通知書を送るということがあり得ます。ただ、売買の場合は、今後はその相続登記は義務化されていきますけれども、売買については義務化はされないということで結論が法制審議会の方で出ました。
 それについては、売買の場合は、やはり権利を移転するということが、実務上ではそれが義務に近いような形になっておりますし、名義を変更しなければ固定資産税の納税義務というものを台帳上ずっと負い続けることになりますので、やはり売手にも買手にも登記をするインセンティブ働くだろうということがございます。
 そして、先ほどお話の中で申し上げましたが、昨年、土地基本法というものが三十年ぶりに改正されまして、土地の所有者の責務というものが新しく入りました。これは、土地所有者は、もう国内の人であろうと海外に住んでいる人であろうとも、日本の土地を持っている以上は登記をしましょう、そして境界確定に協力をしましょうということが義務化をされましたので、登記をしていくということは、民法上、不動産登記法上の義務ではありませんが、売買については、土地基本法においては所有者の責務として位置付けられたところではあります。

#64
○高木かおり君 ありがとうございます。
 やはり、この問題は、所有者を特定できる制度として登記はあるけれども、この日本の登記制度というのは、登記が任意であるということもあって、冒頭申し上げたように所有者不明の要因となっているところから、ここは注視していかなければいけない点なんだろうなというふうに感じました。
 重ねて御質問させていただきたいんですが、この土地の利用よりも、今、日本では所有が優先するというような状況で、所有者の自由度が高いというような状況なのかなというふうに思っています。先進諸国の中でもかなりそういった点ではそういった意識が高いのかなというところで、例えば農地は、農地法で売買規制が定められているので、所有権の移転というのは農業委員会などで承認を得ていくという仕組みがあると思うんですけれども、それ以外のところは先ほど申し上げたように自由度が高いというふうに認識をいたしております。
 そういった中で、諸外国では、主に商業上の土地利用にゾーニングという概念を用いて、ゾーン毎に用途を決めて厳しく規制しているという制度もあるというふうに聞いているんですが、我が国でも商業での区画指定が行われていますけれども、諸外国ほどその権限が強いというふうにはちょっと感じておりませんで、そこで、安全保障という観点からこのゾーニングを用いて、土地利用の仕方というか、そういったところを規制していくというような考え方については吉原参考人の御見解をちょっとお聞きしたいと思います。

#65
○参考人(吉原祥子君) ありがとうございます。
 確かにおっしゃるとおり、例えばフランスなどでは都市計画というものが全土に適用されるのに対して、日本の場合はごく限定的だということも聞きます。
 ゾーニングを有効に使って安全保障の観点でも生かしていくということは一つアイデアだと思いますし、実は今回の法案というものはそうしたゾーニングの考え方に近いものだろうというふうに思います。この施設の周辺あるいはこうした地域というものは国の安全保障上大事なものですので、そこについては権利関係を明確にしておきましょうということの喚起にもつながっていくと思います。

#66
○高木かおり君 ありがとうございます。
 防衛の観点からもこのゾーニングの考え方というのは一つ重要な点だというふうに認識してよろしいんでしょうか。

#67
○参考人(吉原祥子君) 一つ重要な観点であるとは思います。
 ただし、安全保障をめぐる情勢というものは大変多岐にわたっていくのだと思います、これから。土地にひも付くものもあれば、例えばデータに関するもの、それからサイバー攻撃、投資に関するもの、多岐にわたりますので、この土地に関するものはその類型の一つであるというふうに考えています。

#68
○高木かおり君 ありがとうございます。
 じゃ、最後にもう一問だけ吉原参考人にお聞きしたいんですが、この今回の法案で、この土地の所有について不適切な利用を規制するという今回の法案なんですけれども、この土地利用には賃貸借の利用権というのも含めて議論していくべきかどうか、この点について端的にお答えいただけますでしょうか。

#69
○参考人(吉原祥子君) 所有者と利用者が違う場合というものは、その現状利用している賃借権者というものもやはり適切に利用する責務を負っていく人になると思います。

#70
○高木かおり君 ありがとうございます。
 そうしましたら、続きまして半田参考人に伺いたいと思います。
 今日、お話をお聞かせいただいておりまして、やはりこの私権制限とそして安全保障上の観点、このバランスというのは大変重要な点なんだろうなというふうに感じました。
 そういった中で、日本の国土を守るという考え方に立った場合、半田参考人にとって、どのような方策といいますか、考え方がこの国土の安全保障としてふさわしいのか、この点について御見解をお聞かせいただければと思います。

#71
○参考人(半田滋君) 少なくとも、今回提出されているこの土地取引規制法案というものが安全保障上、資するものではないというのはこれまで述べてきたとおりです。
 例えば、似た法律のあるアメリカやオーストラリア、韓国、そういった国の場合、例えばアメリカやオーストラリアというのは我が国と比べて国土面積が全く違うわけですね。したがって、基地があるところというのは、日本でいうところの一つの都市ぐらいの大きな基地になっているところが珍しくありません。さらに、一般の市民の方は、また別の生活区をつくって、基地とは離れて住んでいる方が多いわけです。それをあえてわざわざその基地のそばに土地を買って何かをしようとする人がいれば、これは当然疑わしいわけですから、そういった法律を作って未然防止をしていこうというアメリカやオーストラリアの考えというのは非常によく分かります。
 また、韓国の場合は、我が国と違って、朝鮮戦争がいまだに休戦状態ということで半分戦時下にあるわけですから、それは我が国よりも更に厳しい安全保障上の管理というものが必要になるだろうと、それも非常によく分かるわけです。
 ところが、今回の法案というのは、例えば基地の周りを安全を確保したいのか、それとも離島の安全を確保したいのか、あるいは原発など様々な重要インフラを守りたいのかは全てごっちゃになって、そして私権制限を大きく掛けるということになっているから、本来何をやりたいんですかと、もっとはっきり目的とその法文上の規定を明確に書かないとこれ著しい憲法違反になるんじゃないですかということを申し上げているということです。

#72
○高木かおり君 ありがとうございました。
 ちょっと時間の方が少なくなってまいりましたので、最後に馬奈木参考人に伺いたいと思います。
 参考人は、自衛隊は、今日、先ほども少しお話が出ておりましたが、丸ごと自衛隊は違憲ではないという、と解釈されることはないというスタンスだというようなお話をされているかと思います、そういうふうに認識をしておりますが。そういったことも踏まえながら、例えばそのリスクということが今日出てきましたが、リスクを感じる点、どこまで恐れるべきなのかという点、これ、馬奈木参考人にとって、この日本の今の安全保障上、どのようにそういった部分を担保していけばよいと思われるかについてちょっとお聞かせをいただきたいと思います。

#73
○参考人(馬奈木厳太郎君) 今のリスクのお尋ねですけれども、私、今、日本がどのような状況なのかというのはすごく大事な御指摘だと思っています。
 先ほど来出ていますように、リスクの程度とか、リスクの不明確さに対して、ここまでの私権の制限、あるいはここまでの権限を政府に与えないといけないのかというバランスの問題が一つありました。
 逆にちょっと言い方を変えますと、私たち自身が、自らの情報であるとか、いろんな付随する、個人に付随するものを政府に提供してもいいよと思えるのはどれぐらいの世の中的な状況になっているのかを考えてみればいいと思います。
 今の時点で、皆さんたちがここまでの情報とかここまでのことを政府にやらないといけないというふうに多くの国民の人が思っているかというと、私はそうではないと思っています。したがって、やっぱりバランスが崩れている。ということは、今回政府提案で言われているような、外国人の土地の購入の話から始まりましたけれども、出口が全く違う話になっている。
 今日の吉原参考人の御発言、私ずっと聞いていました。大変重要な指摘されていると思います。ほとんど土地の所在の不明の土地の調査の話です。でも、今回の法案は、これは機能阻害があるかないかの調査です。踏み込んでいます、もっと。全然違う、話が。そこを見誤っている。いろんな人の意見がミックスされてしまった結果ごっちゃになった法案で、だから本当にひどい法案。
 調べないといけないものってあり得ると思いますよ、一般論としては。ただ、それを無理くり、機能阻害とかまで欲張っちゃっているし、原発とかまで欲張っちゃっているし、本当にひどい法案になっています。だから、一回やり直しませんかと私先ほど申し上げました。
 リスクというのは、やっぱりそれは、どこまでを抑止するのかとか、そういうものの偏差の中で見ていかないといけないし、権利制限との相関関係で見ていかないといけない。これではもう余りにバランスが悪過ぎると私は思っています。

#74
○高木かおり君 時間が参りましたので、終了いたします。
 ありがとうございました。

#75
○矢田わか子君 国民民主党・新緑風会、矢田わか子です。
 今日は、吉原さん、そして半田さん、馬奈木さん、お忙しい中、ありがとうございます。大変勉強になります。
 さて、今回のこの法制は、長年の課題であった、十年来のこの課題である安保上の懸念の払拭をするということで、土地というものを含めて不正利用を抑制するということから、その仕組みをきちっとつくっていきましょうという情勢の高まりで出てきた法案であるという認識をしております。外国資本が自衛隊周辺の土地を買い占めるというような問題も起こっている中で、じゃ、この日本の国土を一体どのようにしっかりと守っていくのかということだと思います。
 その上で、馬奈木弁護士や半田参考人がおっしゃるとおり、過度な監視これによって広がらないかという点は極めて重大な問題だと思います。一方で、この法律で本当に安保上の懸念は払拭できるのかということも私は重要な課題であるという認識があります。その認識に立った上でちょっと質問していきたいと思うんですが。
 まず、吉原参考人、所有者の不明の土地の多くは、所有者が死亡した際に的確なその相続登記が行われていなかったというようなケースが多いと報告されています。登記がなくても管理されていればいいんですけれども、先ほど来お話あったとおり、全く管理がなされていない、空き家状態になっている、それを見知らぬ他人が勝手に住み着いたり土地利用するケースあると思いますけれども、吉原さんのこのずっと十年来研究してきた過程の中では、どの程度そういったケースがあるという想定されていますか。

#76
○参考人(吉原祥子君) ありがとうございます。
 御質問は、相続未登記のまま空き家になって、それが管理不全になっている状態のものということですか。
 正確なその数字のパーセントというのは、今御質問そのものの答えは私は持ち合わせていないんですが、国土交通省の方では、所有者不明土地、低未利用土地、それから管理不全土地、この三つについて今政策を進めていると伺っております。
 管理不全土地というのは、管理には二種類ありまして、法的にその登記がされていないということ、それから草刈りなどの適切な管理がされていない、物理的な管理がされていないということ、そして、この物理的な管理がされていないことに対して周辺住民からの苦情が寄せられているという自治体が一定数あるということは国土交通省のアンケート調査からも明らかになっています。
 そして、そうした管理不全の土地に対して自治体が関与できる法的根拠というものも今後つくっていきましょうということが検討中であるというふうに聞いております。

#77
○矢田わか子君 ありがとうございます。
 もう一問お聞きしたいんですが、この場合、例えば、外国人のグループが管理されていない民有地の森林とか空き地に建物を造ってそこに勝手に住み着いた場合、これを行政として排除する方法は手続的にどうなるのかという問題ですね。
 その場合、建物が通常、所有者も借主も生活していないような場所であっても、住居不法侵入罪が成立して警察によって逮捕などの措置で排除をしたというような例が実際に多く発生しているのかどうか。また、この土地が注視区域に当たった場合、今度これから指定されますけれども、注視区域となった場合は、その住人は所有者ではないけれども機能阻害行為を行っているという確証が得られない場合、そのまま居座ることができるのかどうか。この辺りを教えてください。

#78
○参考人(吉原祥子君) ありがとうございます。
 大変法的に専門性の高い御指摘で、正直に申し上げて、私は正確にお答えすることはできません。ただ、そこについては民法上の大きな論点になると思いますので、正確に詰めなければいけないと思います。
 申し訳ありません。不正確なお答えをするよりはお答えはしない方がいいと思います。申し訳ありません。

#79
○矢田わか子君 こうした、やはりこれから、多分、きちっと法律上どうなっていくのかということを、私自身は、やはり皆さんに、吉原さんもおっしゃっているとおり、開示していかなければいけないというふうに思います。
 その上で、半田参考人、防衛の専門でもあるので是非お聞きしていきたいんですけれども、外国人による機能阻害行為はあり得ないのかどうかということであります。
 この法案にどれほどの立法事実があるのかということは、これまでも委員会の審議において多くの時間を使って論議をされているところであります。実際に現時点においても自衛隊施設の業務や機能を阻害する行為があるのかどうか、あるいは、近い将来にその一キロ、施設の一キロ以内でその土地の所有、利用によって阻害行為を行う危険性があるのかどうかという、そういう問題について、政府側の答弁では、具体的事例は我が国の防衛能力が明らかになるので出せないが、こういった行為はあるとされていまして、一方、お二人の、馬奈木参考人も含めて、参考人は、単に幾つかの市議会で外国人の土地所有に対する市民の不安が取り上げられただけでは立法事実とは言えないというふうにおっしゃっているかと思います。
 まず、半田参考人、職業柄、様々な情報ネットワークを持っておられると思いますが、そういった自衛隊とか米軍施設の周辺に住み着いた外国人による受信妨害、通信の妨害、業務監視あるいは施設関係者への情報収集のためのアプローチなど、諜報活動はあり得ないという確証的な実態を把握されているのかどうか、お聞きしたいと思います。

#80
○参考人(半田滋君) 委員今おっしゃるような話を私が掌握しているかという御質問に対しては、それは掌握していませんと答えるしかありません。
 ただ、例えば防衛省というのは日本の安全保障の総本山であって、防衛省・自衛隊の司令部機能があるわけですね。少なくとも私の知っている限りでは、そこの情報収集部門の建物自体が外部からの電波障害を受けないような造りをしているというふうに理解をしています。また、防衛省の中の司令部機能というのは地下の三階にあって、外部からのそういった攻撃に非常に強いように造ってあるということが、これは広く知られているところであります。それらは、例えば米軍基地であっても、そういった重要施設であれば、それぞれの軍が自分たちの力でできる範囲のことをやっているというふうに思います。
 あと、最近やはり懸念される外部からの攻撃というのは、今進行中の防衛計画の大綱や中期防衛力整備計画の中でも、盛んに当時安倍首相がおっしゃっていたように、宇宙、サイバー、電磁波というものなんですね。これは近くに住み着いている人が悪さをするという話ではないんです。
 特に平常問題にされているのはサイバー攻撃で、実際に我が国の防衛産業やアメリカの石油会社などもそういった被害を受けています。これは別に、近くに住んでいるとかいうことじゃないわけですね。むしろ離れたところにいて身を隠した上でそういった悪さをするわけですから、相当特殊な考えを持った軍隊でないと、近くに住み込んで悪さしてやれというふうには思わないと思うんですね。私も、例えば、もし攻撃をしようとすれば、常にそこに住んで監視をされるような立場になっているのではなく、むしろ遠く離れたところにいて、突然やってきて、そしてさっと攻撃をして逃げていくというような一撃離脱をしていくはずだというふうに思います。
 ですから、今回の法案の中で、一キロ四方の人のその個人情報を集めていくという、その意味が分からないです。安全保障上何の意味もないことをやろうとしている。むしろ、国にとってちょっと選別をしたいなと思うような住民の退居を求めるためにこの法律を実施しようとしているのではないかなというような、そういった疑心暗鬼さえ生まれてくるということであります。

#81
○矢田わか子君 ありがとうございます。
 一キロの根拠は、私もお聞きしましたところ、銃規制ですね、銃によって、拳銃によって届く範囲で、取りあえず一キロというふうにお答えになっています。おっしゃるとおり、私も、宇宙とかサイバー空間からの攻撃ということを考えれば、一キロというところに何の意味があるのかというのは不思議だったので同じような質問をさせていただいた次第です。
 一方で、吉原参考人もおっしゃったとおり、何らかの形で例えば近くにいるということは、それだけその辺りに住み着いて、軍の方々が、自衛隊の方々も含めて、例えば飲食店をやっていろんな情報を取ったり、その地域住民として親しくなることも可能ですし、かつ、例えば高いビルなんかを買うと、自衛隊の中をのぞき込むとか、そういう監視をすることなども可能になるというふうなことではないかなというふうに私個人は思っております。だから、まずは、きちっと安保上必要と言いつつも、第一歩として、この周辺のところに最小限絞ったというふうにお答えになられたんじゃないかと思っております。
 一方で、馬奈木参考人が多分一番懸念されているのは、反対運動への規制というところではないかなと思います。私自身もそれはあります。申し上げたとおり、過度な監視が行われるのではないかというところで、やはり機能阻害行為が明確ではないわけですね、今現在も。どういうものなのですかと言っても、法の二十四条にもあるとおり、全てが政令や府令によって後々決められていくというところに皆さん不安を感じていると思います。
 特に、今回の法案で、注視区域の指定とそこでの機能阻害行為、確認をこれからしていくわけですけれども、明らかになってくるときに、沖縄等も含めてですが、そういう反対運動とか市民活動をしていることに関わっている活動家の運動を抑え込もうというような懸念があるのではないかということを心配されて皆さん反対の声が高まっているのではないかと思いますが、確かに、特に沖縄であれば基地反対運動をしている活動家が、土地の所有や利用の調査を名目に行政関係者が敷地に入り込み、あれこれと質問するとか、監視をされたり、あるいは座込み行動が機能阻害行為とされて、最終的には逮捕に至る危険性があるというような指摘もあるかと思います。
 この法律の条文上、さらに総理大臣によって決まるとされるその基本方針、政令、内閣府令、どのようなものが入るとこうした運動を抑制する法的根拠が形成されると心配されているのか。したがって、今現在も、半田参考人からもあったとおり、道路交通法違反だよとか業務妨害罪ですよということで捕まえることはできるわけで、実際にそういうふうなことが、家宅捜索とかも行われているわけですね。これ以上、ここに何が入ればもっとその法的な根拠が高まると思われますか。若しくは、逆のパターンでもいいです、何が入らなければ、どういうことが基本方針で示されれば安心感が高まるのでしょうか。

#82
○参考人(馬奈木厳太郎君) ちょっと今の御質問の意図がよく分からないところが正直あるんですけれども、どのような文言を付け加えればその市民活動のような運動をやっているような人がより安心できるのかというお尋ねと理解してよろしいですか。

#83
○矢田わか子君 それが一番皆さんの懸念だと思いますので、基本方針の中にそれが位置付けられればということです。

#84
○参考人(馬奈木厳太郎君) 基本方針の中に位置付けられるというのは、結局、これ閣議決定ということになりますから、国会への関与がないわけですね。そういう意味でいうと、それで基本方針の中で書かれていっても、それこそ例示列挙ですというのが政府の答弁なわけです。範囲が決まらないわけです。
 安心するというのは、安心感は、それは政府を全幅、全面的に信頼しているというような人でしか安心感を恐らく得られないと思いますし、国会がそこをチェック掛けられないというのは、やっぱり、今の行政に対する規律の密度がこれだけ言われている中、ちょっとあり得ない発想だとも思います。

#85
○矢田わか子君 ありがとうございます。
 私たちも審議の中で、やはり閣議決定をして政府側だけで、行政だけで決めるのではなくて、当然、立法府の立場である私たちにも報告をしてほしいという御依頼はしているところなんですけれども、できれば半田参考人からも、この問題について正確な百点満点のことはないと思いますけれども、一歩でも政府側に迫るためにも、どういう文言がこの法律の中に担保されれば皆さんの安心感が高まるのかについて、何か御意見があればお願いします。

#86
○参考人(半田滋君) 曖昧な書き方をしているところを明確に書くことですよね。政令で定めるというふうにして行政に丸投げするのではなくて、立法府の皆さんが判断できる、これでいいのか悪いのかという、そういった中身を明確に書くと、それが最低必要なことだと思います。

#87
○矢田わか子君 ありがとうございます。
 冒頭申し上げたとおり、この問題についてはまだまだ曖昧な要素もありますので、私たち野党側もしっかりと審議を与党に対しては求めておりまして、今明らかになってきているところもそれでも審議の中であると思っていて、更に付け加えて明らかにすべき点を整理していきたいなというふうに思います。
 最後に、自衛隊配置のアプローチについて半田さんにお聞きしたいと思います。
 尖閣諸島の中国公船の領海内侵入の対応とか台湾海峡の有事の備えなどから、九州の南西地域の島嶼への自衛隊の部隊配置増強が進められています。この件について……

#88
○委員長(森屋宏君) 時間が参ってきていますので、おまとめください。

#89
○矢田わか子君 はい。じゃ、簡潔に、済みません。
 法案で焦点となる、この南西地域の国境離島での阻害、機能阻害行為が起こることはあり得ないというふうに確信しておられるかどうかという点です。

#90
○参考人(半田滋君) その基地の周辺の住民が基地に悪さをするかということですか。
 それは先ほど申し上げたように、本当に悪さをする人は、近くに住んで、そこで自分の生活を台なしにするようなことはしないと思います。

#91
○矢田わか子君 分かりました。
 ありがとうございました。

#92
○山添拓君 日本共産党の山添拓です。
 参考人の皆さん、今日はありがとうございます。
 吉原参考人に伺います。
 意見陳述の中で、法案に関わって分かりやすい説明が必須だという御意見があり、十分な説明、情報開示が必要だとお話がありました。私もそのとおりだと思います。その十分な説明、情報開示は法案審議の段階でも求められると思うんですね。ところが、どこを区域にするかについて一覧では示さない、あるいは機能阻害行為、一概には言えないと、こういう説明になっています。
 政令や基本方針への委任が多過ぎる法案になっています。条文上、調査や情報収集、その対象は所有の状況には限られず、利用、機能阻害、その定義もありませんので幾らでも拡大がしかねない、そういう条文になっていると思うんです。
 先ほど、安全保障は大変難しいというお話もありましたけれども、法案としては、これは有事の法案ではなく平時の法案であります。ですから、法案としてはもっと精緻に示す、あるいは絞り込む、そういうこともできたはずだと思うんですけれども、そうはなっていません。そのことについてどのようにお考えでしょうか。

#93
○参考人(吉原祥子君) ありがとうございます。
 有識者会議での議論の際には、予見可能性を高める上で、例えば一キロ範囲、有識者会議の場では一キロという数字は出ていませんけれども、予見可能性を高める上で具体的な数字を設定する、距離を設定するとか、そうしたことは必要であるという見解でした、皆さん。
 そして、その一方で、今後の安全保障上の様々な変動の可能性を考えると、条文に細かく書き込むことがその後の柔軟な対応の、重要な対応が難しくなる要因になってはいけないのでそこは柔軟性を担保する必要があるということがございました。その結果もあり、そういうこともあり、今回のこのような法案になっているのかなというふうには思います。
 ただ、条文を読んだだけではどのようにでも解釈が可能になってしまうということは、やはりそれは本当にあってはならないことだと思っていますので、何とか今後、山添先生がこの間審議で歯止めという言葉を使っていましたけれども、この法案ができることで新たな別の不安が国民の間に呼び起こされては決していけないと思うんです。
 外国資本が土地を買っているのかなとか、所有のよく分からない土地が安全保障上何か支障になるんじゃないかなという、そういう不安があり、そして機能阻害を防止する上でこういう法律を作っていると。そうしたために、今度はプライバシー権や個人情報保護の観点から新たな懸念材料というものが生まれては決していけないと思いますので、そこを払拭するための歯止め機能というものが具体的にどういうことがあり得るのか、私は実は専門家ではないので分からないんですが。
 その意味で、先ほどの矢田先生の御質問も、どういう条文が入れば、あるいはどういう文言が基本方針に入れば、あるいは委員の立て付けをどうすれば少しでもその辺りを担保できるようになるのかというところは、是非実現していかなきゃいけないところだというふうに思っています。

#94
○山添拓君 その意味でも、馬奈木参考人からありましたように、一度法案を出し直すという決断をするべきではないかと思います。
 半田参考人と馬奈木参考人に伺います。
 法案で予定されております調査について、政府は内閣府に新設する部局が担当すると答弁しています。しかし一方で、自衛隊が協力する可能性を否定しておりませんし、米軍に情報提供をする可能性も否定していません。自衛隊や米軍の多くの基地を対象とした場合に、現実には自衛隊がその調査を担当することは十分予想されるかと思います。
 先ほど情報保全隊についてお話もありましたけれども、プライバシー侵害に当たる情報収集に及んだ実例があります。その上、米軍との情報共有をしていくと、こういうことになりますと、個人の権利をどう保障するかという観点は脇に置いて、軍隊の論理で進めていくことになりかねないと思うんですけれども、その点に関して両参考人の御意見を伺います。

#95
○参考人(半田滋君) 全く御指摘のとおりだと思います。
 やはり軍は軍の論理で動いていくわけです。自衛隊は軍ではありませんけれども、軍事的な組織ですから非常に合理性を重んじるというようなことが言えると思います。そして、私、三十年間を通じて、自衛官の皆さんの特徴というのは非常に憲法や法律に忠実に従うということです。したがいまして、この法律が成立して施行されることになれば、当然のことながら、いわゆる内閣府に協力をする形で防衛省が現場の自衛官たちにこういう調査をしなさいと言えば、それはそれは丁寧にすることは間違いないだろうと。ただし、間違うこともあると思います。そういった形で合理的なものが行われる。
 そして、もう一つ重要なのは、今、日米の連携というのは非常に密になっているわけですね。で、特にこの米軍基地の周りでどういう方が住んでいるかということは恐らく米軍の方たちも当然知りたいことであろうということですから、そういった情報が今度は日本だけにとどまらないで海外にまで出ていくと、それが本当に憲法が想定しているような基本的人権の範囲の話に収まっているんでしょうかと。海外の政府がAさんという人の個人情報を様々入手している、本当にそれが憲法で想定した事態と言えるんだろうかというところも、将来的には軍事合理性を追求していけば恐らく出てくるだろうというふうに懸念されると思います。

#96
○参考人(馬奈木厳太郎君) 私も委員御指摘の懸念は大変深刻な問題ではなかろうかと思います。
 この法案の一つの特徴は、米軍基地が含まれていることになります。そこの機能が阻害されないということを日本政府、内閣総理大臣の責任でもあるということになっているわけですね。そのときに、アメリカ軍との情報の共有の問題、あるいは米軍基地の機能の阻害って何なのかと、その問題考えていくと、とてもじゃないですけれども、私たちが今ここで想定している以上のものがいろいろ今後出てくる可能性はあると十分考えられると思います。

#97
○山添拓君 馬奈木参考人に伺います。
 空港近くの高さ制限に違反する場合であれば航空法、電波妨害であれば電波法、あるいは離島の低潮線の損壊であれば低潮線保全法など、政府がこの間例示しております機能阻害行為には既存の法律でも対応できることが含まれています、そういう中身ばかりだと思いますが。で、政府はそれでは遅い場合があるのだと、そう説明して、この法案では機能阻害行為や、そのおそれによって勧告、命令、罰則ができるのだと、対象とできるのだとしています。
 しかし、航空法や低潮線保全法は未遂罪を処罰しておりません。電波法にも準備罪はありません。個別の法令で犯罪が成立するタイミングを定めているにもかかわらず、それを大幅に前倒しした法案になっているのではないかと思います。この行為を規制するタイミングを相当早い段階に設定していることについて御意見を伺います。

#98
○参考人(馬奈木厳太郎君) 大変問題のある規定の仕方だというふうに私自身は思っています。
 御指摘のように、例えばその電波法であったり低潮線保全法であったり、あります。例えば、国境離島等の機能阻害の一例として、例えば、現に今の段階で、低潮線保全法で国交大臣の許可が得ないといけないものと同じような話がやっぱり機能阻害行為の一例として挙げられています。
 現行法で対応できるんじゃないんですかというところで、恐らく政府としてはそれが足りないということでやってきていると思いますけれども、例えば違いがどこにあるのかというと、一つは調査ができるということです。もう一つが、今委員が御指摘になった、時間軸でいうと前倒しになっている。
 例えば、この例としては共謀罪が多分私たちには一番身近だと思います。実行行為の前の準備行為とか計画であっても処罰対象としています。この説明をどう理解すればいいのか、違いをどう理解すればいいのか。
 恐らく保護法益が違うんですよ。保護法益は、今回の場合はこれは機能になっています。極めて曖昧です。通常、保護法益は機能というふうに罰則を予定するような形で日本でやった例は多分ないと思います。今回が初めてじゃないでしょうか。何で機能にしているのか。
 そうすると、行為ではないものを、行為よりも前の段階、あるいは行為と評価できないものを含めて対象にしたかったというところがあるのではないかと思います。電波を飛ばす前の段階、偵察行為と評価できる以前の段階とか、そうした段階で何らかの規制を掛けたい、そういうことから保護法益を機能という形で整理したのかなと。
 ただ、こうした可視化しづらいものを保護法益とするやり方は、罰則を予定する場合の大原則である予測可能性あるいは明確性とやっぱり抵触することになりかねないというふうに私は危惧しています。

#99
○山添拓君 ありがとうございます。
 次も馬奈木参考人に伺いますけれども、法案に立法事実がないことが衆議院以来語られてきました。しかし、それをどれだけ具体的に私たちが委員会で指摘をしても、政府やあるいは法案に賛成する会派の議員の皆さんからは、不安がある以上は何の対応もしなくてよいのかと、そういう主張がされることになり、大臣も、リスク、不安、懸念、これが立法事実だと語っています。
 そこで言われている不安というのは、外国資本や外国人一般、どこでもかしこでもということではなく、特定のあるいは一定の外国を念頭に、その外国資本や外国人について広く警戒すべきだと、そういう考えが背景にあるように思えてならないのですが、この点についてはどのようにお考えでしょうか。

#100
○参考人(馬奈木厳太郎君) リスクというのは、やっぱりゼロリスクというのはあり得ないと思います。先ほど来、抑止という話出てきましたけれども、これもやっぱり抑止も一定の目標到達との関係で考えていく必要があるのではないかというふうに思っています。
 その意味でいうと、今回のこの法案は、外国人、外国資本の防衛施設周辺の土地購入というところで提案理由はありましたが、立法事実があるかないかだけで、法整備を必要とするつまり事情があるのかどうかというそもそも論でこれだけ問題になった法案も最近では余り例がないのではないかなというふうに思います。
 私自身は、衆議院の段階でその立法事実の問題というのはもうちょっと決着済みかなと思っていますが、念のため申し上げておくと、立法事実というのは、法案の内容がその法整備を必要とする事実に対応し、充足するものである必要があります。仮に、政府が述べるように、防衛施設の周辺土地が外国資本に購入された事実が何らかの安全保障上のリスクだとして、それに対応するためにここまでの規制を及ぼし、ここまでの権限を与えないといけないのかと、リスクとされるものの程度に比べて規制内容がやっぱりバランスを崩していると。そうであるならば、やっぱり立法事実たり得ないというふうに思います。
 そもそも、外国資本がどうのこうのという発想そのものが、実は実態としては、行為に着目する考え方じゃなくて、属性に着目する考え方です。通常、刑罰などを予定する場合には行為に着目しますが、今回のこの法案のそもそもの発想は、実は属性に着目しているのではないかというふうに考えています。しかも、国籍という大くくりの属性に着目し、特定の国を潜在的な脅威であるかのようにもし扱うとするならば、私は、この発想自体がある種のゼノフォビアであって、もうヘイトにも近いものじゃないかというふうに思います。その前提には、日本の社会がホモソーシャルだという誤った認識があるのではないでしょうか。
 こうした考え方は、個人主義を基調とする日本国憲法とはやっぱり相入れるものではないというふうに思います。運用に支障がないとされている中、抽象的なおそれだけで、それこそ具体的な支障の例の一つも挙げない中、これだけの権利制限や規制を行うというのはやっぱりちょっとどうだろうと思います。
 必要なのは立法ではなくて、むしろそうした前提の認識そのものの方ではないでしょうか。多様な価値観が認められ、多文化社会となっているときに、ホモソーシャルでゼノフォビア的な発想というのはもう時代遅れなのではないでしょうか。今国会では、LGBT法など、議員の方々のそうした意識が非常に浮き彫りになったのではないかというふうに個人的には思っています。

#101
○山添拓君 最後に、お三方にそれぞれ端的にお答えいただければと思うのですが、馬奈木参考人から、この法案には、その他、あるいは等という文言が多過ぎるとの指摘がありました。私もそう思います。区域の指定、処罰対象、調査の主体、客体、対象、方法、際限なく広がることが法律上は想定されておりますし、吉原参考人も、様々な臆測を呼ぶと、そういう指摘をされたとおりです。
 政府は、現時点では想定していないと、こう言ったり、あるいは法案の三条に必要最小限になるようにという条文を追加したりと、こういうことを述べています。しかし、政権が恣意的な運用をしようとしたとき、あるいは独裁的な政権となったときに、それでも権利侵害はないと言えるのかと。これは、現在法案に賛成の皆さんにとっても大事なはずだと思うんですね。そこで、その点について端的に御意見を伺えればと思います。

#102
○委員長(森屋宏君) 馬奈木参考人からですか。

#103
○山添拓君 順に、吉原参考人から。

#104
○参考人(吉原祥子君) まさに一般論で考えれば、そうしたケースは想定され得るのだろうと思います、この法案についてということではなくて、一般論として。そうした一般論をこの法案で起こさないためにどういう歯止めができるのかということを考えなければいけないというふうに思っております。

#105
○参考人(半田滋君) 今回の罰則の中で、二年以下の懲役又は二百万円以下の罰金という、これ、行政罰としては非常に重い罪が予定されています。こういったことから、漠然とこの抑止をしていこうという思いは伝わってくるわけではありますけれども、余りにもその内容が曖昧過ぎて、実際のところ、幅広く網を掛け過ぎることによって権利侵害につながっていくと。だから、本末転倒の法律になっているというふうに思います。
 もっと中身を具体化した上で、それに、軍事基地なのか、重要施設なのか、あるいは離島なのかということを個別に全部もう一度精査し直した上で、整合性のある別の法律として出し直す必要があると、そんなふうに思います。

#106
○参考人(馬奈木厳太郎君) ちょっと私の答えの代わりに一つだけ条文御紹介したいと思います。
 何人といえども、要塞司令官の許可を得るにあらざれば、要塞地帯内水陸の形状を測量、撮影、模写、録取すること得ずとあります。これ、要塞地帯法、戦前の法律です。戦前でも、何をしちゃいけないかをこれだけ明確に書いています。
 今、戦後です。全てを閣議決定、政令、府令、それだったら国会要らないと思います。皆さんたち、今日、内閣委員のお一人お一人、問われていると思います。こういう法律は、作ったら簡単にはなくせないです。今ならまだ間に合うと思います。
 これが私の答えです。

#107
○山添拓君 ありがとうございました。

#108
○委員長(森屋宏君) 以上をもちまして参考人に対する質疑は終了いたしました。
 参考人の皆様方に一言御礼申し上げます。
 参考人の皆様には、長時間にわたり貴重な御意見をお述べいただきまして、誠にありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼申し上げます。
 速記を止めてください。
   〔速記中止〕

#109
○委員長(森屋宏君) 速記を起こしてください。
    ─────────────

#110
○委員長(森屋宏君) 政府参考人の出席要求に関する件についてお諮りをいたします。
 宇宙資源の探査及び開発に関する事業活動の促進に関する法律案の審査のため、本日の委員会に内閣府宇宙開発戦略推進事務局長松尾剛彦君及び外務省大臣官房参事官大鶴哲也君を政府参考人として出席を求め、その説明を聴取することに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

#111
○委員長(森屋宏君) 御異議ないと認め、さよう決定をいたします。
    ─────────────

#112
○委員長(森屋宏君) 宇宙資源の探査及び開発に関する事業活動の促進に関する法律案を議題といたします。
 提出者衆議院内閣委員長木原誠二君から趣旨説明を聴取いたします。木原衆議院内閣委員長。

#113
○衆議院議員(木原誠二君) 宇宙資源の探査及び開発に関する事業活動の促進に関する法律案につきまして、提案者を代表して、その趣旨を御説明申し上げます。
 月面での持続的な活動を目指すアルテミス計画が本格化するなど、人類の活動領域が、月面、火星、深宇宙へと広がりつつある中で、今後、宇宙資源の探査、開発という新しい宇宙活動が活発化していくことが予想されます。既にアメリカなど一部の国では、このような活動に関する法整備が進んでいるとともに、国連宇宙空間平和利用委員会において、国際的なルール作りに向けた議論も進められているところであります。
 また、国内においても、このような宇宙活動に取り組む民間事業者も徐々に増えてきており、その事業活動を適切な監督の下に後押しすることは、自立した宇宙利用大国を目指す我が国が早急に取り組むべき課題であると考えております。
 本法律案は、このような状況を踏まえ、宇宙基本法の基本理念にのっとり、宇宙資源の探査及び開発に関し必要な事項を定めることにより、宇宙の開発及び利用に関する諸条約の的確かつ円滑な実施を図りつつ、民間事業者による宇宙資源の探査及び開発に関する事業活動を促進することを目的とするもので、その主な内容は次のとおりであります。
 第一に、内閣総理大臣は、事業者が宇宙資源の探査及び開発を利用の目的として人工衛星の管理を行うための宇宙活動法の許可を申請する場合、その申請書に、宇宙活動法に定める記載事項のほか、事業活動の目的、期間、場所等を定めた事業活動計画の記載を求めることとし、その内容が、宇宙基本法の基本理念に則し、宇宙の開発及び利用に関する諸条約の実施に支障を及ぼすおそれがないこと等の基準に適合すると認めるときでなければ、当該許可をしてはならないこととしております。
 第二に、宇宙資源の探査及び開発に関する事業活動を国際的協調の下で促進するとともに、紛争の防止に資するため、内閣総理大臣は、宇宙資源の探査及び開発の許可等をしたときは、事業者の営業の秘密等に配慮しつつ、事業活動計画の内容等をインターネットの利用等の適切な方法により遅滞なく公表するものとすることとしております。
 第三に、宇宙資源の探査及び開発の許可等に係る事業活動計画に従って採掘等をした宇宙資源については、当該採掘等をした者が所有の意思をもって占有することにより、その所有権を取得することとしております。
 第四に、この法律の施行に当たっては、国際約束の誠実な履行を妨げないよう留意しなければならないこと、及びこの法律の規定が他国の利益を不当に害するものではないことを明記しております。また、国は、国際的に整合の取れた宇宙資源の探査及び開発に係る制度の構築に努めるとともに、国際的な連携の確保のために必要な施策を講ずるものとすることとしております。
 第五に、この法律は、原則として、公布の日から起算して六月を経過した日から施行することとしております。なお、政府に対して、この法律の施行状況、科学技術の進展状況、国際的な制度構築の取組状況等を勘案して、法制度の在り方について抜本的な見直しを含めた検討等を行うことを求める検討条項を設けております。
 以上が、本法律案の趣旨であります。
 何とぞ速やかに御賛同くださいますようお願い申し上げます。
 ありがとうございました。

#114
○委員長(森屋宏君) 以上で趣旨説明の聴取は終わりました。
 これより質疑に入ります。
 質疑のある方は順次御発言願います。

#115
○田村智子君 日本共産党の田村智子です。
 月や小惑星などの天体で、許可を得て水や鉱物などを採掘した者に、その意思があれば所有権を認めるという法案です。天体由来の物質の所有権を日本の法律で、しかも議員立法で決めるのかと、それ自体に私は大きな違和感、そんな権限が私たちにあるのかという根本的な疑問を持っています。
 現在、月など天体探査を行える国は極めて少数です。月に探査機を送った国は、米国、ソ連、日本、欧州宇宙機関、ESA、中国、インド、イスラエルの七か国。探査機を月面に着陸させ、サンプルを地球に持ち帰ったのは、米国、ソ連、中国だけです。
 現在、国際ルールがない下で、採掘等ができる国が自国の法律に所有権行使を規定する。結局、宇宙先進国による早い者競争を誘発することになるのではないでしょうか。
 この先駆けはアメリカです。二〇一五年、宇宙資源探査利用法を制定いたしました。これを受けて、二〇一六年から、国連宇宙空間平和利用委員会、この法律小委員会で宇宙資源の利用についての議論が始まりました。この中でアメリカのやり方に対して早い者勝ちだという批判があったのではないかと思いますが、外務省、いかがでしょうか。

#116
○政府参考人(大鶴哲也君) お答え申し上げます。
 二〇一五年、米国におきまして、国際的な義務の範囲内で米国民に宇宙資源の所有を認める旨規定いたしました商業打ち上げ競争力法が制定されましたことを受けまして、翌二〇一六年に、委員御指摘の国連宇宙空間平和利用委員会、通称COPUOSと呼んでいますが、この法律小委員会におきまして、国内法で自国民に宇宙資源の所有を認めることと宇宙条約等との関係をめぐった議論が行われました。その際、委員御指摘のような批判があったのは事実でございます。
 しかしながら、その後、二〇一七年にルクセンブルク、二〇一九年にはアラブ首長国連邦、UAEが宇宙資源に関する国内法を制定いたしましたが、この二〇一七年以降のCOPUOS法律小委員会の議論におきましては、国内法制定の是非そのものは焦点にはならず、宇宙資源の開発及び利用に関する国際的な枠組みですとかガイドラインの必要性等、国際的なルール作りに関する議論が進められてきているところでございます。
 なお、先週まで開催されておりましたCOPUOS法律小委員会第六十会期におきましては、宇宙資源に関する非公式会合が開催されまして、宇宙資源の開発、利用に関するワーキンググループの設置に関する議論が進められたところでございます。

#117
○田村智子君 提案者にもお聞きします。
 日本はそのCOPUOSに参加して、現在は法律小委員会の議長も出しています。法案策定に関わってきた議連の皆さんは、当然このような国際動向はよく御存じだと思います。にもかかわらず、国際ルールの制定に尽力するのではなく、国内法で先に宇宙資源の所有権を認めようという、やはりこれは早い者勝ちで、先行者同士で宇宙資源開発の利益を分配しようという考えに立つように思えるんですけれども、いかがでしょうか。

#118
○衆議院議員(小林鷹之君) お答え申し上げます。
 本法案は、第七条で、国際的な制度の構築そして連携の確保などを規定しておりまして、早い者勝ちによって、先行者同士で利益を分配しようといった意図はありません。
 そもそも、この法案では、第三条の第二項におきまして、宇宙諸条約への適合を宇宙資源の探査そして開発の許可の要件としておりまして、途上国を含めて他国の利益を不当に害するような事業活動は認められないものと考えております。
 むしろ、先行者による無秩序な開発によって現時点で宇宙開発能力を持たない途上国などの利益が損なわれることを防止する観点からも、我が国が適切な国内法を整備をして国際ルールの形成をリードしていくことは重要であると考えております。
 なお、宇宙活動から得られる経済的利益の分配につきましては、例えば、国際機関による管理を行う方法ですとか、あるいはその情報提供、技術移転、こうしたものによる方法など、様々な考え方が存在するものと承知をしております。今後の宇宙資源に関する取組の実態などを踏まえた議論が必要だと考えております。

#119
○田村智子君 また、所有権を認めるというのを先に作るわけですからね。
 アメリカの宇宙資源探査利用法、これ、監督を条件として民間人や法人に対して商業目的の宇宙資源の所有権を認めるという法律なんですけれども、具体的な手続については全く規定をしていません。この法律の中で、連邦政府が、同法の制定から百八十日以内に、許可及び継続的監督、国際的義務を果たすために必要な権限、連邦機関の間の責任配分の勧告を連邦議会に提出し、その立法措置をするようにと法律で求めているんです。しかし、現在まだそうした具体化は行われていません。
 一方、本法案では許可申請や許可の手続について具体的に定めています。極端なことを言えば、施行後は、申請があれば直ちに審査し、許可の是非を判断することにもなります。そうすると、政府には宇宙条約と適合した許可基準の策定というものが求められると思うんですけれども、これどういうふうに対応するんでしょうか。

#120
○政府参考人(松尾剛彦君) お答え申し上げます。
 法案の第三条第二項におきましては、事業活動計画の許可要件、規定されております。この中で、宇宙の開発及び利用に関する諸条約の的確かつ円滑な実施に支障を及ぼすおそれがないものであることということがございます。御指摘のとおり、この宇宙諸条約との適合性についてここで審査を行う必要があるというふうに考えております。
 宇宙条約では、宇宙空間の探査や利用につきまして原則として自由ということといたしました一方で、協力及び相互援助の原則に従うこと、あるいは他の全ての当事国の対応する利益に妥当な考慮を払うこと、あるいは月その他の天体を含む宇宙空間の有害な汚染を避けること等を定めてございます。これらに適合するかも含めて審査をしていく必要があるというふうに考えております。
 具体的には、今後、施行までの間に、国際的な議論あるいは民間事業者の取組の実態等も踏まえながら、有識者の御意見も伺いながら制度運用に必要な準備を進めてまいりたいと考えております。

#121
○田村智子君 国際的なルールもない下で審査ができるのかということですよね。
 法案では、宇宙資源として水を例示しています。水そのものが生命維持に不可欠であり、酸素の供給源にもなります。地球からの補給が頻回にできない天体では最も貴重な資源と言えるでしょう。しかも、有限で希少な資源です。国際的なルールがないまま採掘許可を与えれば、初期開発で採掘可能な物質は枯渇する、そのおそれさえあると思います。
 宇宙条約は前文に、平和目的のための宇宙空間の探査及び利用の進歩が全人類の共同の利益との認識を記し、月その他の天体を含む宇宙空間の探査及び利用は全ての国の利益のためにとしています。
 提案者は宇宙条約に適合的にというふうに言われるんですけれども、先行者による水資源の採掘を認めていくことになる本法案が全人類の共同の利益にかなうということになるんでしょうか。いかがですか。

#122
○衆議院議員(大野敬太郎君) 今委員が御指摘になられましたとおり、宇宙条約には、宇宙空間の探査及び利用が全ての国の利益のために、その経済的又は科学的発展の程度に関わりなく行わなければならないとうたってございます。
 本法律案の中の六条一項には、この法律の施行に当たっては、我が国が締結した条約その他の国際約束の誠実な履行を妨げることのないように留意しなければならない、すなわち、宇宙条約をしっかりと守っていくんだということがうたってございます。
 その上で申し上げれば、当然、構造的には、今御指摘になったように、あらゆる国の利益をしっかりと考えながら実行していくということでございまして、そういった観点から、宇宙資源の開発及び利用は宇宙空間における人類の持続的な活動を可能とするものでございまして、また、将来的には宇宙上の資源の有限性を緩和し得るものとして広く人類の利益に資するものと考えてございます。

#123
○田村智子君 その希少性というのは、まさに希少なんですよ、それを採掘し所有する権利を先に決めてしまうということですから、そうするとかなりの矛盾があると思いますよね。
 天体で採掘した宇宙資源を地球に移動させるには、大気圏突入時の衝撃や重力の影響などが大きいです。となれば、採掘現場、その近接した天体に採掘資源の加工施設や貯蔵施設というのを設けざるを得なくなるでしょう。また、採掘の必要性に応じて施設を設置するというのも現実的ではないので、巨大な投資を必要として、その費用回収のためには長期的に採掘場所というのを占有せざるを得ないと思えるんです。
 国際宇宙ステーションを見ても、一九九八年に建設を開始し、二〇一一年に完成しました。二〇一六年に運用を終了する予定でしたけれども、少なくとも二〇二四年までの運用継続が決定され、更なる運用継続ということも否定されていません。
 採掘となれば、施設等を更新しながらも同じ場所で半永久的に採掘が続くことが予想されます、あるいは資源が枯渇するまで。
 衆議院の質疑で提案者は、領有権の主張を禁止した宇宙条約があるので領有権主張につながる採掘権、開発権を認めないという答弁をされました。しかし、実質的に長期にわたって占有せざるを得ないということになれば宇宙条約に反する事態を生じさせると思いますが、その懸念についてはいかがですか。

#124
○衆議院議員(青柳陽一郎君) ありがとうございます。
 一般論として、宇宙活動のために月その他の天体を含む宇宙空間の一部を一時的に占拠することは、その活動に必要な限りにおいて認められると解されております。具体的に、どのぐらいの期間でどのような対応等であれば一時的な占拠が認められるかについては、具体的な事例に応じて個別に判断するものと考えられております。
 この点に関して、本法案第三条は、宇宙資源の探査、開発に関する事業活動の期間や探査、開発の方法等が、宇宙の開発及び利用に関する諸条約の的確かつ円滑な実施に支障を及ぼすおそれがないものであるということが認められるときでなければ、内閣総理大臣は当該宇宙資源の探査及び開発の許可をしてはならない旨を規定しており、よって、委員御指摘のような懸念は生じないというふうに考えております。

#125
○田村智子君 このような立法をなぜ行うのかなんですけれども、アメリカの動きに合わせたものと言わざるを得ません。宇宙資源の所有を認めるアルテミス協定、米国NASAが主導し、日本など八か国が締結して、月探査、火星探査に踏み出そうとしています。
 米国は、国際法で禁止されていないことは国家により実行することができるというスタンスです。トランプ政権時代の大統領令、二〇二〇年四月六日には、米国人が法に従い、宇宙空間における資源の商業的探査、回収及び使用の権利を持つべきであるという議会の意図を再確認し、同じ考えを持つ諸外国との共同声明、二国間協定又は多国間文書を締結し、宇宙資源の商業的回収と利用のための安全で持続可能な運用を可能にする米国政府の取組を主導し、一九七九年の月協定を慣習的な国際法を表すものとして扱う試みに反対するように指示をしているわけです。
 米国の戦略は、国連での協議よりも、宇宙開発能力を現に保有する先進諸国や宇宙開発事業者の権利を守る、そういう国との協議を進めて、国家実行を先行させ、それによって慣習国際法を形成しようという戦略だと理解をいたします。
 衆議院で提案者は、こうした国々とより対等な立場で国益にかなう議論を進めていくためにも今国内法の整備が必要だと答弁されました。結局、宇宙開発能力を有する国だけで有利な取決めをして競争力の確保をしようということが目的なんですか。

#126
○衆議院議員(浅野哲君) お答えいたします。
 今回の法整備ですけれども、委員が危惧されているような、一部の国だけで有利な取決めをして競争力を不当に確保するためのものではございません。むしろ、憲法が定める国際協調主義の下で、本法案第七条第一項では、国は、各国政府と共同して国際的に整合の取れた宇宙資源の探査及び開発に係る制度の構築に努めるものとすると規定しております。
 我が国は、これまでもCOPUOS等の多国間の枠組みにおける国際的な議論に積極的に関与しており、宇宙資源の開発や利用についても、一部の国だけで有利な取決めをするようなことなく、各国政府と共同し国際的に整合の取れたルール作りを主導すべきと考えております。

#127
○田村智子君 最後に、現在、水など鉱物資源の調査結果は、研究グループに優先権はあるものの、原則公表です。これは、宇宙条約十一条が、科学的調査、探査の結果などを科学界に最大限情報提供することとしているからです。
 しかし、採掘などの調整ルールがない下で宇宙資源の所有権を認めれば、調査、探査結果の公表を妨げることにはならないのかどうか、いかがですか。

#128
○衆議院議員(小林鷹之君) お答え申し上げます。
 民間事業者が探査によって取得した情報の公表につきましては事業者自身が判断するものであって、本法案におきましても、その扱いについて何らかの規定を設けているものではありません。他方、本法案によって民間事業者の宇宙活動が活発化することによって全体として得られる情報が増えて、結果として多くの情報が広く共有されることにもつながるものと期待しております。
 なお、委員御指摘のとおり、宇宙空間における科学的調査におきましては、現在でもその調査結果の公表、情報の共有が広く行われているものと承知をしております。そのような専ら科学的調査として行われる探査は、本法案にかかわらず、引き続き調査結果の公表や情報共有が広く図られるものと考えております。

#129
○田村智子君 終わります。

#130
○委員長(森屋宏君) 他に御発言もないようですから、質疑は終局したものと認めます。
 これより討論に入ります。
 御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。

#131
○田村智子君 私は、日本共産党を代表して、宇宙資源の探査及び開発に関する事業活動の促進に関する法律案に対して反対の討論を行います。
 本法案の目的は、民間事業者が採掘した宇宙資源の所有権を認めることです。国際法上明確に定められていない宇宙資源の取扱いを国内法で一方的に定め、一部の宇宙の探査、開発の能力のある先進国だけでルール作りを狙うものです。
 宇宙条約では、宇宙空間の探査、開発は人類共同の利益であり、全ての国の利益のために開発を行うとされています。そのため、条約では宇宙空間の領有権主張を禁止しています。そのため、国際的な調整の下で進めることが想定されています。
 実際、二〇一五年、米国での宇宙資源探査利用法制定を受けて、二〇一六年から宇宙空間平和利用委員会法律小委員会での議論が始まっています。宇宙探査、開発において最も力のある米国でさえ、民間事業者が採掘した宇宙資源に対して所有権を認めるにとどまり、本法案のように認可申請の手続や基準を整備するところに至っていません。宇宙資源の取扱いは、途上国も含めた合意を得た国際ルールに基づくべきです。
 提案者は、国内法整備によって国際ルール作りを先導すると言いますが、早い者勝ちの開発競争を促進することは明らかです。宇宙条約は、宇宙の探査についてその実施状況や結果の可能な限りの公開を求めており、宇宙の科学的探査の結果は他の天体の地質分布なども含めて基本的に全て公開されています。本法案が促進する早い者勝ちの宇宙開発競争によって、宇宙の科学的調査、探査結果の公開などが後退しかねません。
 本案の背景には、月面での持続的な探査の実現を目指す米国主導のアルテミス計画への参加があります。軍事面を含め、米国と一体になって宇宙政策を推進することは、宇宙の平和利用から一層逸脱するものであり、容認できないことを述べて、反対討論を終わります。

#132
○委員長(森屋宏君) 他に御意見もないようですから、討論は終局したものと認めます。
 これより採決に入ります。
 宇宙資源の探査及び開発に関する事業活動の促進に関する法律案に賛成の方の挙手を願います。
   〔賛成者挙手〕

#133
○委員長(森屋宏君) 多数と認めます。よって、本案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定をいたしました。
 なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

#134
○委員長(森屋宏君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
 暫時休憩いたします。
   午後三時四十四分休憩
   〔休憩後開会に至らなかった〕
ソース: 国立国会図書館
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