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2021/05/13 第204回国会 参議院 第204回国会 参議院 財政金融委員会 第10号 令和3年5月13日
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2021/05/13 第204回国会 参議院

第204回国会 参議院 財政金融委員会 第10号 令和3年5月13日

#1
令和三年五月十三日(木曜日)
   午前十時開会
    ─────────────
   委員の異動
 四月十三日
    辞任         補欠選任
     岸 真紀子君     勝部 賢志君
 四月十四日
    辞任         補欠選任
     今井絵理子君     末松 信介君
     中西 祐介君     岡田  広君
     三浦  靖君     藤末 健三君
     山田 太郎君     宮沢 洋一君
     上田 清司君     大塚 耕平君
 四月十五日
    辞任         補欠選任
     岡田  広君     中西 祐介君
     大塚 耕平君     上田 清司君
 四月二十一日
    辞任         補欠選任
     大門実紀史君     市田 忠義君
 四月二十二日
    辞任         補欠選任
     市田 忠義君     大門実紀史君
 四月二十六日
    辞任         補欠選任
     音喜多 駿君     室井 邦彦君
 四月二十八日
    選任          宮口 治子君
 同日
    辞任         補欠選任
     室井 邦彦君     音喜多 駿君
 五月六日
    辞任         補欠選任
     大門実紀史君     市田 忠義君
 五月七日
    辞任         補欠選任
     市田 忠義君     大門実紀史君
 五月十日
    辞任         補欠選任
     中西 祐介君     山崎 正昭君
     藤川 政人君     世耕 弘成君
 五月十一日
    辞任         補欠選任
     世耕 弘成君     藤川 政人君
     山崎 正昭君     中西 祐介君
     大門実紀史君     市田 忠義君
 五月十二日
    辞任         補欠選任
     末松 信介君     今井絵理子君
     市田 忠義君     大門実紀史君
    ─────────────
  出席者は左のとおり。
    委員長         佐藤 信秋君
    理 事
                西田 昌司君
                藤末 健三君
                宮島 喜文君
                牧山ひろえ君
                秋野 公造君
    委 員
                今井絵理子君
                櫻井  充君
                中西 健治君
                中西 祐介君
                藤川 政人君
                宮沢 洋一君
                元榮太一郎君
                勝部 賢志君
                古賀 之士君
                水岡 俊一君
                宮口 治子君
                横山 信一君
                音喜多 駿君
                上田 清司君
                小池  晃君
                大門実紀史君
                浜田  聡君
                渡辺 喜美君
   国務大臣
       国務大臣
       (内閣府特命担
       当大臣(金融)
       )        麻生 太郎君
   副大臣
       内閣府副大臣   赤澤 亮正君
       財務副大臣    中西 健治君
   大臣政務官
       内閣府大臣政務
       官        和田 義明君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        前山 秀夫君
   政府参考人
       内閣官房内閣審
       議官       井上  肇君
       金融庁総合政策
       局長       中島 淳一君
       金融庁監督局長  栗田 照久君
       外務省大臣官房
       参事官      安東 義雄君
       厚生労働省大臣
       官房生活衛生・
       食品安全審議官  浅沼 一成君
       厚生労働省大臣
       官房審議官    宮崎 敦文君
       中小企業庁事業
       環境部長     飯田 健太君
   参考人
       日本銀行総裁   黒田 東彦君
       日本銀行理事   内田 眞一君
       日本銀行理事   山田 泰弘君
       日本銀行理事   加藤  毅君
    ─────────────
  本日の会議に付した案件
○理事補欠選任の件
○政府参考人の出席要求に関する件
○参考人の出席要求に関する件
○財政及び金融等に関する調査
 (日本銀行法第五十四条第一項の規定に基づく
 通貨及び金融の調節に関する報告書に関する件
 )
○新型コロナウイルス感染症等の影響による社会
 経済情勢の変化に対応して金融の機能の強化及
 び安定の確保を図るための銀行法等の一部を改
 正する法律案(内閣提出、衆議院送付)
    ─────────────

#2
○委員長(佐藤信秋君) ただいまから財政金融委員会を開会いたします。
 委員の異動について御報告いたします。
 昨日までに、岸真紀子君、山田太郎君及び三浦靖君が委員を辞任され、その補欠として勝部賢志君、宮沢洋一君及び藤末健三君が選任されました。
 また、去る四月二十八日、一名欠員となっておりました本委員会の委員として宮口治子君が選任されました。
    ─────────────

#3
○委員長(佐藤信秋君) 理事の補欠選任についてお諮りいたします。
 委員の異動に伴い現在理事が一名欠員となっておりますので、その補欠選任を行いたいと存じます。
 理事の選任につきましては、先例により、委員長の指名に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

#4
○委員長(佐藤信秋君) 御異議ないと認めます。
 それでは、理事に藤末健三君を指名いたします。
    ─────────────

#5
○委員長(佐藤信秋君) 政府参考人の出席要求に関する件についてお諮りいたします。
 財政及び金融等に関する調査のため、本日の委員会に、理事会協議のとおり、内閣官房内閣審議官井上肇君外六名を政府参考人として出席を求め、その説明を聴取することに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

#6
○委員長(佐藤信秋君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
    ─────────────

#7
○委員長(佐藤信秋君) 参考人の出席要求に関する件についてお諮りいたします。
 財政及び金融等に関する調査のため、本日の委員会に日本銀行総裁黒田東彦君、同理事内田眞一君、同理事山田泰弘君及び同理事加藤毅君を参考人として出席を求め、その意見を聴取することに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

#8
○委員長(佐藤信秋君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
    ─────────────

#9
○委員長(佐藤信秋君) 財政及び金融等に関する調査のうち、日本銀行法第五十四条第一項の規定に基づく通貨及び金融の調節に関する報告書に関する件を議題といたします。
 日本銀行から説明を聴取いたします。黒田日本銀行総裁。

#10
○参考人(黒田東彦君) 日本銀行は、毎年六月と十二月に通貨及び金融の調節に関する報告書を国会に提出しております。本日、最近の経済金融情勢と日本銀行の金融政策運営について詳しく御説明申し上げる機会をいただき、厚く御礼申し上げます。
 まず、最近の経済金融情勢について御説明いたします。
 このところ、新型コロナウイルス感染症が変異株の増加を伴いつつ拡大する中、一部の地域における緊急事態宣言を始め、公衆衛生上の措置がとられ、飲食、宿泊等の対面型サービス部門を中心に、経済活動は下押しされています。一方で、海外経済が総じて回復する下で、輸出や生産は増加を続け、企業収益の改善から、設備投資は持ち直しています。我が国経済は、感染症の影響から引き続き厳しい状態にありますが、基調としては持ち直しています。先行きは、当面、対面型サービス部門を中心に、経済活動の水準は感染拡大前に比べて低めで推移するものの、感染症の影響が徐々に和らいでいく下で、外需の増加や緩和的な金融環境、政府の経済対策の効果にも支えられて、我が国経済は回復していくと見ています。
 物価面を見ると、消費者物価の前年比は小幅のマイナスとなっており、感染症や携帯電話通信料の引下げの影響などを受けて、当面、そうした状況が続くと見られます。もっとも、物価の前年比は、一時的な下押し要因を除けば小幅のプラスで推移しています。先行き、経済の改善が続き、一時的な下押し要因が剥落する下で、物価の前年比はプラスに転じ、徐々に上昇率を高めていくと考えています。
 こうした先行きの経済・物価見通しについては、当面、下振れリスクが大きいと考えています。感染症の帰趨やその経済への影響には不透明感があります。また、成長期待は大きく低下せず、金融システムの安定性が維持されると見ていますが、これらの点にも不確実性があります。さらに、より長期的な金融面のリスクとしては、金融機関収益の下押しが長期化すると、金融仲介が停滞方向に向かうおそれがあります。一方、利回り追求行動などに起因して、金融システム面の脆弱性が高まる可能性もあり、先行きの動向を注視する必要があります。
 次に、金融政策運営について御説明申し上げます。
 日本銀行は、三月に、より効果的で持続的な金融緩和を実施していくための点検を行いました。その結果、二%の物価安定の目標を実現するため、持続的な形で金融緩和を継続していくとともに、情勢変化に対して機動的かつ効果的に対応していくことが重要と判断し、主に三つの政策対応を決定しました。
 第一に、金融仲介機能に配慮しつつ、機動的に長短金利の引下げを行うため、貸出促進付利制度を創設しました。第二に、イールドカーブコントロールについて、平素は柔軟な運営を行うため、ゼロ%程度という十年物国債金利の操作目標について、変動幅がプラスマイナス〇・二五%程度であることを明確化しました。同時に、必要な場合に強力に金利の上限を画すため、連続指値オペ制度を導入しました。第三に、ETF買入れについて、感染症の影響への対応の臨時措置として決定した約十二兆円の年間増加ペースの上限を、感染症収束後も継続し、その上限の下で、市場の状況を見極めながら、必要に応じて買入れを行うこととしました。
 日本銀行は、こうした対応により持続性と機動性を増した長短金利操作付き量的・質的金融緩和の下で、二%の物価安定の目標の実現に向けて、強力な金融緩和を粘り強く続けていく考えです。
 その上で、当面は感染症の影響への対応が重要であり、引き続き、新型コロナ対応資金繰り支援特別プログラムなどの金融緩和措置により、企業等の資金繰り支援と金融市場の安定維持に努めてまいります。
 ありがとうございました。

#11
○委員長(佐藤信秋君) 以上で説明の聴取は終わりました。
 これより質疑を行います。
 質疑のある方は順次御発言願います。

#12
○櫻井充君 おはようございます。櫻井充です。
 日銀報告ですが、最初にちょっとコロナのことについて質問させていただきたいと、そう思います。
 お手元に資料をお配りさせていただいておりますが、三か国、イスラエル、それからイギリス、それからアメリカでワクチンを接種して、患者さんがどのぐらい減ったのかということを示したものでございます。この棒グラフが患者数でして、それから赤い折れ線グラフと言ったらいいんでしょうか、これが一回接種者、それから緑色が接種を完了した人たちです。
 そうすると、イスラエルの場合には約六割ぐらいの方々が接種を完了してきていて、患者さんはほとんど発生していないという状況にあります。それから、イギリスですが、一回接種されている方が五〇%程度で、それから二回接種されている方が二五%程度で、これでも感染者数はかなり減ってきています。一方で、イギリスはロックダウンしてきていることもあって、それプラスでこういうことになっているとは思います。アメリカと比較するとよく分かるんですが、アメリカが、一回接種終わった人たちが四五%を超えて、二回目が終わっているのが三五%弱ぐらいでして、感染者数は相当減っています。しかし、感染対策を取っているか取っていないかによって、イギリスとアメリカぐらいの差がございます。
 ただし、分かっていただきたいのは、六割程度まで行けばこうやって抑えることは可能なんだと。私は、こういうその数字をもう少し政府が積極的に広報したらいいんじゃないかと。厚生労働省にこの点を伝えたら、厚生労働省から何と言われたのかというと、チリは三割ワクチンを接種したけれど感染爆発は続いていますという、そういう話でした。
 だけど、チリでやっているのは中国製のワクチンです。中国製のワクチンとファイザー社やそれからアストラゼネカ社のを一緒にして、これだからできませんというのは変な話なんですよ。我々が使うのはファイザー社、それから可能性があるのはアストラゼネカとモデルナ、この三種類です。であったとすれば、ファイザー社のデータをもってしてこういう将来予測ですよと伝えるのは僕は当然のことだと思うんですね。今のところ、悪いことだけ言われ続けるわけですよ。
 あと、こうやっていると感染爆発が起こるから何しろかにしろと言われるけど、科学的に基づいてもう少しきちんと説明して、あと半年も我慢したら、皆さん、こうやって経済活動が再開できますよと、そのぐらいのことを政府が僕はちゃんと伝えていくべきだと思いますが、改めて、この点について厚生労働省、いかがでしょう。

#13
○政府参考人(宮崎敦文君) お答え申し上げます。
 重要な御指摘ありがとうございます。
 ワクチンの効果につきましては、まさに厚生労働省のアドバイザリーボードでもこの点議論をいただいておりまして、昨日もございまして、その中で必要な対策として掲げられている中にワクチンについて一項を設けておりまして、まさに委員御指摘ございましたような、このワクチンに関しては、立証されている発症予防効果に加えて、各国での実使用後になされた研究等から、重症化予防効果、感染予防効果を示唆する報告がなされていると。
 ワクチン接種が広く進み、こうした効果が発現されれば、重症者数、さらには感染自体が抑制されることも期待されるということでございまして、そうした観点から、高齢者へのワクチン接種が始まっている中で、国と自治体が連携して、可能な限り迅速、効率的に多くの人に接種を進めることが必要だという提言もいただいているところでございまして、委員御指摘のように、このワクチンの効果、必要性などにつきましてきちんと必要な情報を説明をしてまいりたいというふうに考えております。

#14
○櫻井充君 いろいろ言われました。まあ最後はやっていただけるんだと思いますけれど、例えば、病院に来たときに二時間待つことが患者さんあったとしても、二時間待ちですと説明すると、まあむっとする方はいらっしゃいますが、いらいらしないんですよ。一方で、十五分程度の待ち時間であっても、何分待ちますと説明しないと、ずっといらいらされているんです。
 それと同じことでして、我が国として経済活動が一体いつぐらいから再開できるのかという見通しが今みんなないからいらついていて、私は内閣の支持率も下がってきているんじゃないかと思っていて、そういう点では、もうほかの国で、実証実験と言ったら怒られるかもしれないけれど、社会実験的なことをやってくれていて、こういう科学的根拠に基づいたことをちゃんとやるべきなんですよ。
 ところが、今、一方でやっていることは何かというと、酒飲むなと言われているんですけど、これいろんな人に聞いて、みんなむかついているわけです。それで、しかも、しかも厄介なことに、東京で酒を飲めないとどういうことが起こるかというと、仙台に来るんですよ。ですから、この間、仙台でクラスターが起こって、まん延防止なんかやらなきゃいけなくなっちゃうわけですよ。
 さて、ここでですが、お酒を飲んだら感染者数が増えたという明確なエビデンスはあるんでしょうか。

#15
○政府参考人(井上肇君) お答え申し上げます。
 御指摘の飲酒と感染拡大の関係につきましては、新型コロナウイルス感染症対策分科会から、感染リスクが高まる五つの場面の一つとして、飲酒を伴う懇親会が挙げられております。
 具体的なその理由といたしましては、一つとして……(発言する者あり)失礼いたしました。
 エビデンスとしては、私ども、感染症対策分科会の専門家からの意見として承っているという次第でございます。

#16
○櫻井充君 要するに、こうやって客観的データないようなことを言われるから、国民の皆さんの方がよっぽど賢いわけですよ。分科会のメンバーって本当に専門家ですか。私は、あの人たちが専門家だとはとても思えませんね。自分自身は感染症をずっとやってきた呼吸器科の医者でもあります。私の方がよっぽど詳しいと思いますよ。
 そういう点でもう一つ、何回も申し上げていることですけど、トイレの環境整備をしないと、私は解決しないと思うんですよ。
 例えばイタリアなんかは、おととしの十二月に下水道水からコロナウイルスが検出されているんです。要するに、これは便からも体の外に排出されるということですよ。中国でも同じように、今やトイレの環境をきちんと整備しなきゃいけないと。国会でも議運にお願いして、今度、院内の方も会館の方も、全部便座の蓋を閉めてから流しましょうとか、それから便座のところをちゃんとアルコール消毒してから皆さんで用を足せるように全部変えてもらいました。
 だったとすると、ほかのところでもちゃんとトイレの対策をやらないといけないと思うんです。繰り返し申し上げているのは、クルーズ船で一番検出されているのは実はトイレですよね、トイレの床なんですよ。だったとすると、そこのところからコロナウイルスが検出されてきていて、なおかつ、コロナウイルスがインフルエンザと違うのは、こういう例えばテーブルならテーブルの上で三日間ぐらい生き続けるということですよ。だったとすると、この手の対策をやらない限り抑えることは絶対できないですよ。
 今年はインフルエンザは、前回も申し上げましたが、ピークのときに九十八人。毎年二十万人、三十万人出てきているときに僅か九十八人しかいなかったんです、患者さんが。これは何かというと、インフルエンザウイルスは生体内でしか存在できないので、生存できないので、結局、飛沫感染が大半です。マスクをして手洗いした結果、飛沫感染は抑えているというこれ証左ですよ。
 だったとすると、ほかの感染経路から行っているのは当たり前であって、そういうことについてきちんと対策を取らないから、だからいまだにこうやって感染拡大が続いていて、無意味な政策を取らされて、みんな頭にきているわけです。
 ですから、そういう意味合いで、科学的根拠に基づいた政策を取っていただきたくて、もう少しトイレの環境整備とかそういうことに力を入れるべきだと思いますが、この点についていかがですか。

#17
○政府参考人(宮崎敦文君) お答え申し上げます。
 重要な御指摘ありがとうございます。
 新型コロナウイルスの主な感染経路、飛沫感染のほかに接触感染、非常に重要でありますので、この接触感染対策ということが非常に重要であるというふうに考えております。
 接触感染対策として手洗いの重要性など周知に努めておりますほか、今委員御指摘のトイレ等に関して言いますと、業種別のガイドラインの中で蓋を閉めて流してください等の関係する記載を書いていただいているところと承知をしておりますけれども、やはりこうした接触感染対策というものをきちんと周知をしていくことは重要だろうと思っております。
 飛沫感染対策の方に、もちろんこれもきちんとお伝えをしていくことが重要でございますけれども、一つのリスクを強調する余り、もう一つのリスクが伝わらないということのないように、そこは気を付けて、意を払ってまいりたいと考えております。

#18
○櫻井充君 いや、おっしゃるとおりなんですよ。
 本当に、飛沫感染を別に無視しろなんていうことは一つも言っていなくて、今の生活で相当飛沫感染は抑えているわけですよ。だったとすると、これだけ感染拡大しているんですからほかの要因考えなきゃいけないのに、「富岳」でやっていることは何かというと、タクシーの中でどうでしたとか飛行機の中でどうでしたとか、そんな話ばかりですよ。是非「富岳」でやっていただきたいのは、トイレの便座の蓋を閉めないで流したらいかに飛び散っていくのかとか、そういうのをやってもらわなきゃいけないわけです。
 そうすると、例えば東京駅などに行っていただくと分かりますが、新幹線のトイレ、新幹線というか、駅の構内のトイレは便座の蓋がないんですよ。ああいうところで流したときに一体どうなるのかということをちゃんと示さないと。そうすると、こういうことであったとすると、JRだけではないですよ、いろんなところで、ちゃんとトイレ、便座の蓋をしてくださいとか、そういうことをお願いしなきゃいけなくなるわけです。だから、もう飛沫感染のデータなんかどうでもいいんですよ、もうみんな分かっているし、みんなやっているし。
 それからもう一つ、いろんなところの大衆食堂に行くとどうなっているかというと、結構、割とトングとかみんな交換してくださいとか、あるうどん屋さんなんか行くと、揚げ物ありますけど、トングじゃなくてもう割り箸で取るようになっているんです、自分用の。だけど、座席に着いたら、しょうゆとかソースとかみんな共用ですよ。つまり、この手のものが誰かが感染者が触ったとすると、その後、ここが媒介となって接触感染が起こっていく可能性があるわけです。そうすると、みんな、こういうお店に対して、ちゃんとテーブルのところにアルコール置いて、それでちゃんと消毒してくださいねとか、そういうことをやらなきゃ駄目ですよ。
 自分で感染したからあんまり偉そうなことを言える立場にはないんですけど、だけど私はですね、私はどうして感染したかというと、たまたまトイレに行ったときに、水洗いで、お絞りで拭いただけで手づかみでつまみを食ったんですよ、ちっちゃい鳥軟骨の空揚げだったから。だけど、それで結果的に僕は感染したと思っているんです。
 そうだとすると、例えばサンドイッチとかおにぎりとか、何でもいいです、フライドポテトとか、手で食べるようなものがありますよね。ああいうときにはちゃんと手洗いしてから食べてくださいとかアルコールで消毒してから食べてくださいねと。だって、感染している経緯分からない人たち、山のようにいるんだもん。だから、そういうことをちゃんと一つ一つ教えていってあげないと何ともならないと思うんです。
 それで、感染対策ですと、ここの店はちゃんとできていますよということをチェックする際にやっぱりいろんな項目があって、残念ながら、いろんな場所に行くと、とにかくアクリル板のつい立てとかはあるけれど、ほかのことはほとんどやっていないんですよ。だって、なぜかというと、よく分からないから。
 ですから、そういう意味合いで、もう少しほかのところに力を入れていただかないと駄目だと思っているので、時間がないので後から改めていろいろやらせていただきたいと思いますが、対応していただきたいと、そう思います。
 それからもう一つ、自宅療養者が、亡くなっている方々が増えています。この間、私の知り合いの七十代の女性ですけれど、自宅療養していました、犬がいるので入院したくないと言ってですね。ところが、一週間ぐらいたってみたら酸素飽和度が九〇%ぐらいになりました。慌てて入院した方がいいからと言ったら、肺は真っ白でした。
 このときに何が問題なのかというと、熱も下がっていて、せきも収まってきたんですけど、酸素濃度だけ下がったんです。だけど、酸素濃度下がったときには自覚症状ってほとんどありません。なぜないのかというと、動いていないからです。例えば、横断歩道を渡るとか、それから地下鉄で階段上るとか、そういう動作をしたら、九〇%になったら物すごい息切れする、だから自覚症状として出てくるんですけど、残念ながら、動かないと自覚症状って全く出ないんですよ。
 自覚症状にだまされるなんてことはよくあることでして、そういう点でいうと、自宅療養者に対してはパルスオキシメーター全員に配付して、何%を切ったらちゃんとすぐに入院させるとかそういう体制取らないと、自宅療養で亡くなる方々は相当増えるんじゃないかと思っています。
 それから、自宅療養している人たちがほかの人たちに、まあほとんど僕は感染させると思いますよ。保健所から来たんですけれども、例えば家族と会わないようにとか言ったって、結局マスク外してうがいとかするわけですよ。歯磨きしますね、そうすると、洗面所でうがいしたときにははねるから、どうしたってその辺の歯磨き粉から何からいろんなものにくっつくわけですよ。トイレで用を足したときに結局便座の蓋を閉めないで流したら、そしたらそこで部屋中に蔓延することになるんですよ。
 そういう点でいうと、自宅療養に対してもうちょっと細かいことを言わなきゃいけないし、それから、今の考え方は、自宅療養の際は感染した人をホテルに移そうとしているけれど、感染者用のホテルがないんです、今。だったとすると、健常人を普通のホテルに移せばいいんです。患者さんだけ自宅に残せばいいんですよ。だって、今ホテルがらがらですから。その金を国で持ってもらったら、ちゃんとした隔離ができます。
 そういう意味合いでは、もうちょっと発想を変えて、患者さんを、患者さんをホテルに移すということができないのであれば、健常人をホテルに移して隔離すると、そういうことも併せてやった方がいいんじゃないかと思いますが、いかがでしょうか。

#19
○政府参考人(宮崎敦文君) お答え申し上げます。
 現在、自宅療養、宿泊療養に関しましては、重症化リスクのある方などに当たらずに必ずしも入院が必要でないとされた方については、宿泊療養を基本としつつ、状況に応じて自宅療養をお願いをしているところでございます。
 自宅療養の際に、同居者がいる場合には、他の家族との生活空間を分けることですとか、患者が触れるものへの定期的な消毒、まさに接触感染のおそれへの対応としてそういったこともお願いをしているところでございますけれども、内容について、今委員御指摘のような点、更にまだ不足する点がないかどうかは確認をしてまいりたいと思います。
 また、同居されている場合にそれを分ける場合に、現在は、委員先ほど御紹介いただきましたように、基本的には患者さんの方を宿泊療養の方に移っていただくということを目指しております。患者の症状に変化があった場合に速やかに必要な対応を行うという観点からそのような対応を行っているところでございますけれども、委員御指摘のように、宿泊療養施設の確保という観点で考えますと、受け入れるホテル側、ホテル等の民間事業者の側からしますと、そうした患者の受入れよりは患者さんでない方の受入れの方がハードルが低いというのは御指摘のとおりであろうとは思いますけれども、現時点では、先ほど申し上げたように、できるだけ協力を仰ぎながら、症状急変時への対応という観点から患者さんを移すということを基本に、その上で宿泊療養と自宅療養を併せて療養体制を確保できるように、都道府県と相談しながら進めているという段階でございます。

#20
○櫻井充君 言っていることに矛盾点があると思うんですよ。それは何かというと、生活空間を分けてくださいと言っていると。生活空間が分かれている中で、悪化したときにすぐ対応してくださいというのはどだい無理な話です。
 生活空間を分けるといいますけれど、じゃ、洗面所は普通の家に何か所ありますか。二階建ての家であればトイレは二か所あるというのは結構今は普通になりましたよ。だけど、洗面所は一か所でしょ、生活空間なんか絶対分けられないんですよ。そういうことだけ、現実を見ないで頭の中で計算してやっているから対策がうまくいかないんですよ。自宅療養の方々の方が圧倒的に亡くなっている割合高いんですよ。重症化しなければ入院できなくなっているから、今度は病院もすごく大変になってくるわけですよ。
 そういう意味合いでは、発想の転換が必要なんです。現実できないことを幾ら言ったって無理ですよ。生活空間を分けろと、繰り返しになりますが、生活空間なんか分けられません。分けられない中で分けろと言っている、だから家族内の感染が増えていくわけですよ。もう少し現実を見てやっていただきたいなと。理想論というかな、理屈だけで考えているからこういう話になるんです。
 それからもう一つ、時間がないので。酒をやめろと言いました。まあいいですよ、それはそれで。昨日も私は我慢していましたが、だけど、じゃ、酒屋さんには補償しているんですか。飲食店には補償しますよね。酒屋さんにはちゃんと補償してくれているんですか。
 私の知り合いの無認可保育園なんかは、国分町で働いているシングルマザーのための保育園なんです。結果的には今どうかというと、国分町ほとんど閉まっているので、この間は園児が夜来たのは一人だけ。そうすると、どうなっているかというと、収入も不十分だから毎月毎月赤字なんです。だけど、無認可だから全くその補填がないわけですよ。それで、町が再開したときにこの保育園が潰れていたら、今度は国分町で働くシングルマザーの人たちが子供を預ける場所なくなっちゃっているんです。
 飲食店だけ随分手厚くやっていますけど、ほかのところで、タクシーも含めてそうですけど、苦しんでいるところに対して十分な手当てがなされていると、そうお考えでしょうか。

#21
○政府参考人(井上肇君) お答えいたします。
 酒類販売業者への支援については、これまで、本年四月、五月の緊急事態措置、まん延防止等重点措置の影響で売上げが半減する全国の酒類販売業者を含む中堅・中小事業者に対して、月当たり上限、法人二十万円、個人十万円の月次支援金を支給することとしてきたところでございます。
 今般、緊急事態措置の延長で、酒類の提供停止による酒類販売業者への影響が長期化をすることから、酒類販売業者に対する都道府県の支援を拡充することといたしました。
 いずれにせよ、引き続き、地域の実情に応じて酒類販売業者への支援が行われるよう、しっかりと後押しをしてまいります。

#22
○櫻井充君 いや、別に代表的な例を挙げただけの話であって、本当に保育園は全くないんですよ。あと三か月ぐらい資金繰り、それでショートするだろうなと思っていて、お金借りれるかどうかと、そういう算段、今みんなで苦労しながらやっているんですよ。
 やはりそういう現実を見てちゃんと対策を取っていただきたいと、こういうところにもちゃんと光を当てていただきたいということをお願いしておきたいと、そう思います。
 それでは、本題の方に入らせていただきたいと思いますが、金融緩和を行った結果、やはり利益を受けている人と損をしている人と、大きく二つに分かれると思うんですけれど、一体どういう人が利益を得て、どういう人が損失を被っていることになっているんでしょうか。簡潔にお答えいただけますか。

#23
○参考人(黒田東彦君) 金融緩和の下で金利水準が低下しますと、資金の借り手の支払利息が減少する一方で、資金の貸し手の受取利息は減少するということになります。また、長期あるいは超長期金利が過度に低下しますと、年金などの運用利回りにも影響が出る可能性がある。そういった意味で、金利の動向によって、確かに損得というのは出てくるということは事実であります。
 ただ、金融緩和の効果については、やはり経済全体に与える影響を踏まえて評価する必要があると思いますので、実際に金融緩和によって経済活動が刺激されて、雇用・所得環境の改善などを通じて経済全体にプラスの効果を及ぼしておりますので、日本銀行では、現在の政策の下で、超長期金利の過度な低下が経済活動に悪影響を及ぼす可能性があることも念頭に置きながら金融緩和を行っているところであります。
 いずれにいたしましても、委員御指摘のとおり、プラスの影響、マイナスの影響、様々な影響が一方でありますので、できるだけそのメリットが国民全体に幅広く及ぶようなマクロの金融政策を実施してまいりたいと考えております。

#24
○櫻井充君 ありがとうございます。
 まあそういうことですよね。結局、借金をしている人たちには恩恵があるんです。だから、僕は一番恩恵を受けているのは国だと思いますけどね。政府であれだけ借金をしていても金利の利払い費が余り増えていかないというのはあの低金利のおかげだと、そう思います。
 一方で、今お話があったとおり、年金生活者の方々にとってみれば、一昔前というか二昔前というか、何年前に遡らなきゃいけないか分かりませんが、郵便局に十年も預けておけば貯金が倍になった時代がありました。そういう時代から見れば、この方々は全く財産が増えないと、そういうことになっているわけであって、マイナスになっている人たちに対して何らかの手当てをしていくんであれば、僕は話別だと思うんですよ。例えば、こういう年金生活者の人たちの年金の支給額を増やすとかですね。日銀の政策で恩恵を受けている人たちに対して何かをしてくれと言う気はありませんけれど、やはりそこで影響を受けた人たちに対して別な政策で手当てするようなことをしないと、結構生活は大変なんじゃないかと、そう思うんです。
 その上で、政策効果で物価上昇の話になっています。まず、物価上昇のときに、黒田総裁は就任時、こういうお話をされていたわけです。金融緩和をして金利が下がれば貸出しが増えていって、それで経済活動が活性化するんだという話をされていましたが、私もあの当時は、借り手の側からすれば金利が低くなった方がそれは当然よくなるだろうと思っていましたが、ここに来て金融機関の方々と話をしてみると、低金利だから金は貸せなくなったという、そういう声を本当に多く聞くようになりました。
 それはなぜかというと、一件破綻してしまうと、金利が低い、つまり利ざやが低いから、利益を出すのが本当に少なくなってきているので、一件破綻すると相当大変で、回収するのにですね、その結果、なかなかリスクを取って貸出しができなくなってきていると、そういうことを僕は金融機関の方々から話をお伺いしています。
 ですから、あの当時、我々は金利を下げたら金が回るんだという考え方に立っていましたが、必ずしもそういうことではないんじゃないかと思いますが、この点についていかがですか。

#25
○政府参考人(中島淳一君) お答えいたします。
 低金利環境の継続による利ざやの低下など、金融機関の収益環境は厳しいものとなっており、委員御指摘のとおり、貸出しの収益が貸倒れ等のリスクに見合わないとの御指摘もあるものと承知をしております。
 他方で、全国銀行の貸出額は、日本銀行によるマイナス金利導入直後の二〇一六年三月の五百三十七兆円から、昨年三月には五百九十二兆円まで増加をしております。さらに、昨年来のコロナ禍において、政府、日本銀行による政策対応もあり、貸出額が二〇二〇年九月には六百八兆円まで増加するなど、金融仲介機能は円滑に発揮されているものと考えております。

#26
○櫻井充君 額的にはそうなんですよ。じゃ、本当に銀行はそれで利益を出しているかどうかですよね。
 当座預金でマイナス金利ということになってしまって、それでも相当利益が減額されてきているということで、貸出額は増えているかもしれませんが、利益についてはどうなっているんでしょうか。

#27
○参考人(山田泰弘君) 御質問のありました金融機関収益につきましては、マイナス金利のみの影響だけを取り出すことはなかなか難しいんでございますけれども、その上で申し上げますと、金融機関の直近の二〇一九年決算における当期純利益は、マイナス金利を導入した二〇一五年度決算対比で約一・三兆円減少しております。

#28
○櫻井充君 つまり、こういうことなんですよ。銀行側からすれば貸出しを増やしましたと、だけど、結局利益は取れていないと。
 利益取れなければどういうことが、もう一つ、現場は、貸出しする人たちは何かというと、優良企業にだけまた貸出ししようとしているんです。だから、内訳見てもらわないといけないと思うんですよ。もうちょっと、グレーといいますか、ここにお金を貸したらちゃんとやれるのになというところに十分な金が行っていないと。それは、繰り返しになりますけれど、利益が出ていないからであって、貸出しの量が増えたからいいんだと、その量の中身をちゃんと精査していただかないと、政策的に正しかったかどうかは分からないと思うんです。
 それから、この委員会で黒田総裁が、物価上昇が起こらなかった中の原因として、原油価格の下落を挙げておられました。
 原油価格が下落したから東北の人間は生活ができるんですよ。それ当たり前の話ですよ。田舎の人間は車使わないと生活できないんですから。冬は寒いから暖房しなきゃ生活できないんですよ。こういう中で、賃金が上がらない中で物価だけ上がっていったら大変なことなんです。我々は、原油価格が下がって本当に良かったと思っていますもの、少なくとも我々東北の人間はね。
 ですから、物価が上がらない最大の原因は原油価格の下落であると、そうおっしゃっているのであれば、総裁が就任したときからと現時点で、原油価格を除けば一体物価ってどの程度上がったんでしょうか。

#29
○参考人(内田眞一君) お答え申し上げます。
 生鮮食品とエネルギーを除いたベースで考えますと、見ますと、CPIの水準は、二〇一三年を一〇〇といたしまして、二一年三月につきましては、この間の消費税その他制度要因全て含んだベースで見まして一〇五・九というふうになっております。また、消費税の影響及び幼児教育、保育無償化の影響を除いたベースでいいますと一〇三・六となっております。

#30
○櫻井充君 まあそんなもんなんですよ。結果的には、原油価格の影響を除いたとしても、このぐらいしか物価は上昇してきていないということです。
 そうすると、あのとき三つの経路があったはずなんですね、こうやって金が回っていきますと。さっき言ったように、金利を下げていったら貸出しが増えていってとか、それから、総理がよくおっしゃっていたのは気に働きかけるんだと。デフレということになるから、今買うより将来買った方がいいと思うから、みんな買わないんだと。それは、例えば、何でもいいです、車とか、テレビでも何でもいいんですけど、買換えしようと思ったときには安くなるまで待とうと思うかもしれないけど、米にしろ野菜にしろ、日常使うようなもの、食べるものに関して言ったら、一か月後まで待とうなんという話にならない。そうすると、物の値段がこれから上がりますよと言われたら、財布のひもが固くなるのは、これ庶民の当たり前のことなんですよね。
 ですから、あの当時、幾つかのルートをおっしゃっていて、それから、海外からの、円安になって海外からの物の値段が、輸入物価が上がるからという三つのルートを挙げていらっしゃいましたけれど、現実、ここでずっと総括してみれば、なかなかあの当時おっしゃっていたものは僕は機能していなかったんじゃないだろうかと、そう思っています。
 更に申し上げれば、賃金が上がらない中で物価だけ上げようとしゃかりきになってやられたって、私は経済良くならないと思うんですよ。だって、物価なんというのは需要と供給の関係であって、需要が増えない限りにおいては、幾ら日銀が頑張ったって私は物価そのものが上がらないんじゃないだろうかと、そう思います。
 そういう点でいうと、この政策そのものをそろそろちゃんと点検して見直す時期に来ているんじゃないかと思いますが、これ通告していませんけど、この点については日銀内で議論にはなっているんでしょうか。

#31
○参考人(黒田東彦君) 冒頭にも申し上げましたとおり、金融政策について点検というのを行いました。これは、足下で、コロナの影響もありまして、経済活動は沈滞して、物価上昇率もマイナスになったと、こうした状況が今後長く続くとは考えておりませんが、しばらく経済の下押し圧力として続く下で、やはりこの金融政策を機動的、弾力的に、効果的にするにはどうしたらいいかということでかなり詳細な点検を行いました。
 その中で、日本銀行が行ってきた大規模な金融緩和の下で、経済活動が活発化して、賃金も緩やかに上昇して、基調的な物価上昇率はプラスという状況が定着いたしました。ただ、委員よく御承知のとおり、足下では感染症の影響から弱い動きになっておりますので、足下の経済を支えるために強力な金融緩和を続けるとともに、点検で明らかになった金融政策の効果とその副作用、両方を十分に勘案して、企業収益や雇用、賃金が増加する下で物価も緩やかに上昇していくという経済を目指して最大限の努力をしてまいりたいというふうに考えております。

#32
○櫻井充君 努力していただいていることについては、それは評価させていただきたいと思います。ただ、あの当時、我々民主党が反対したら実は総裁にはなれていなかったんです。あの当時、党内で相当議論をしました。私は基本的に、個人的に申し上げれば反対の立場でしたが、政調会長として賛成に回りました。ですが、あのときに総裁に申し上げたことは、政策的に間違ったと判断したときにはちゃんと方向転換してくださいねということをお願いして我々は賛成に回っています。
 そういう点では、きちんきちんとした政策をちゃんともう一回点検していただいた上で、国民生活がより良くなるように努力をしていただきたいと、そのことをお願い申し上げまして、質問を終わります。
 ありがとうございました。

#33
○牧山ひろえ君 立憲民主・社民の牧山ひろえです。
 本日の議題であります日銀報告に関連し、金融政策に関する諸課題について幅広く取り上げさせていただきたいと思います。
 日銀の金融政策における二%の物価安定目標についてお伺いします。
 日銀は、黒田総裁が就任する前の二〇一三年一月に、物価安定目標を消費者物価の前年比上昇率で二%とするということを定めました。同時に、政府と日銀の共同声明も公表されまして、日銀が金融緩和を推進し、そしてこの目標をできるだけ早期に実現することを目指す旨が明記されました。その後、日銀は、同じ年の三月に就任された黒田総裁の下で四月に量的・質的金融緩和を打ち出すこととなり、当時の記者会見で黒田総裁は、二年程度で二%を実現すると強い意向を示されていました。
 しかし、それから八年がたとうとしていますが、大量の国債買入れに加え、他国の中央銀行では例を見ないETF、J―REITといったリスク性資産の買入れ、さらにはマイナス金利やイールドカーブコントロールなど、様々な金融緩和手段を導入してきたにもかかわらず、物価安定目標の達成の見通しは今日でも明らかではないんですね。
 物価安定目標の二%という水準自体は主要国の中央銀行で取られている考え方であり、そして日本が特に高い数値を設定しているわけではないとも言われています。また、日本だけが二%より目標を下げると為替相場にも影響するとの指摘もございます。そうはいっても、現実的に実現できるか否かが不透明な目標を持ち続けることで、過度な金融緩和による副作用が問題を生じさせることも適当とは思えないんですね。
 今日の金融政策における物価安定目標の位置付けと、それから適正な水準の在り方について、日銀の見解を伺いたいと思います。よろしくお願いします。

#34
○参考人(黒田東彦君) 日本銀行は、日本銀行法に定められた物価の安定を図ることを通じて国民経済の健全な発展に資することを理念として金融政策を運営しております。委員御指摘のような経緯がございまして、現在も二%の物価安定目標をできるだけ早期に実現するということを目指して金融政策を運営しております。
 この物価安定の目標を二%としている理由は、まず第一に、消費者物価指数には、統計の性質上、上方バイアスがあるということ、第二に、景気が悪化した場合の金融政策の対応力を確保しておくための言わばのり代を確保する必要があるということを考慮したものであります。また、海外の主要な中央銀行も消費者物価上昇率で二%を目標として政策運営を行っておりまして、グローバルスタンダードとなっております。関係国が同じ物価上昇率を目指すということは、長い目で見た為替レートの安定にも資するというふうに考えております。
 いずれにいたしましても、二%の物価安定の目標がまだ実現されていないということは大変残念なことでありますけれども、二%の物価安定目標の実現を目指して最大限の努力を引き続き払ってまいりたいというふうに考えております。

#35
○牧山ひろえ君 三月十九日に日銀は、金融政策運営に関する点検の結果を公表されています。遡りますと、二〇一六年には総括的検証を行い九月に公表するとともに、現在も続くイールドカーブコントロールの導入を決め、新たな動きの端緒としております。
 それ以来ということになりますけれども、なぜこの時期に日銀は金融緩和の点検を行ったのでしょうか。

#36
○参考人(黒田東彦君) 先ほど来申し上げましたとおり、日本銀行は二%の物価安定の目標を実現するため大規模な金融緩和を実施しておりますが、その実現に至っておりません。また、コロナ感染症の影響によりまして経済や物価の下押し圧力は今後も継続し、二%の目標の実現には時間が掛かるということが予想されます。
 こうした状況を踏まえますと、当面、感染症の影響への政策対応が必要であるほか、長期的には、二%の目標を実現するため、より効果的で持続的な金融緩和を実施していくことが必要ということを考えまして、昨年十二月の金融政策決定会合において、より効果的で持続的な金融緩和のための点検というものの実施を表明いたしまして、三月の会合において点検結果を取りまとめて公表したところでございます。

#37
○牧山ひろえ君 今回の金融緩和政策の点検によって、政策に修正を加えて副作用を抑えることで緩和策の持続性を上げるとともに、将来の危機時に機動的に対応できるようにしたというふうにされています。今回の政策点検が行われたのは、日銀が量的緩和の導入を行い、いわゆる非伝統的政策を本格採用してからちょうど二十年というタイミングだったんですが、現在の金融政策評価の前提として、この二十年全体の総括評価も行うべきだったんじゃないかなと思うんですね。
 続いてですが、日銀が三月二十七日にまとめた経済・物価情勢の展望、いわゆる展望レポートによりますと、二〇二一年度の物価見通しを引き下げています。政策委員による物価上昇率見通しによると、二一年度が〇・一%、それから二二年度が〇・八%、二三年度は一%とされています。
 一方、米欧では物価上昇が勢い付いています。足下を見ると、米国の三月の消費者物価指数、いわゆるCPIですが、前年同月比で二・六%上昇していますし、ユーロ圏も一・三%となっており、三月のCPIは〇・二%下落と六か月連続のマイナスとなっている日本と比べて大分差が目立っていると思うんですね。足下だけではなくて、将来予測の面でも、米国の物価上昇率は二一年、二二年とも二%を超えて、日本の出遅れはこれ明確だと思うんです。
 米欧諸国に比較しての物価上昇におけるこのような差異はどのような理由によるものだと分析されているんでしょうか。

#38
○参考人(黒田東彦君) いわゆる二〇〇八年から始まりましたグローバル金融危機の後、実は欧米諸国でも物価上昇率が高まりにくい状況にありました。その上で、感染症の影響を受けている足下及び先行きの見通しを含めまして、我が国の物価上昇率が欧米と比べて相対的に低いということは御指摘のとおりであります。
 その主な理由は、米欧諸国に比べて複雑で粘着的ないわゆる適合的期待形成のメカニズムが根強いということがあると考えております。すなわち、我が国においては、長期にわたるデフレの経験によって定着した物価が上がりにくいことを前提とした人々の考え方や慣行が根強いため、物価上昇率が高まるのに時間が掛かっているというふうに思います。
 委員御指摘のとおり、量的緩和というものもたしか二〇〇一年に始まったと思いますが、デフレは一九九八年から二〇一三年まで続いたわけでありまして、十五年間続いたわけでありまして、そういう意味では、長期にわたるデフレの経験というものによる、先ほど申し上げた複雑で粘着的な適合的期待形成のメカニズムが根強いと、物価が上がりにくいことを前提とした考え方とか慣行が根強いために、やはり物価上昇率が高まるのに時間が掛かっているというふうに考えております。

#39
○牧山ひろえ君 この差異は、潜在成長率の上昇など経済の底上げが国際的に比較して不十分であることの反映と評価し得ると思うんですね。
 さて、黒田総裁の総裁任期は二三年四月までです。先ほどの展望レポートによりますと、任期の二期十年を費やしても、黒田総裁の代名詞とも言える異次元金融緩和の目的である二%の物価上昇が達成できないことを日銀自身が認めたことになります。
 前回の日銀報告に伴う質疑で、二%の物価安定目標が達成されていない主たる要因として、我が国では予想物価上昇率の形成が過去の物価動向の実績に引きずられる傾向があるという、経済学者が言ういわゆる適合的な期待形成の比重が非常に大きいということを挙げられました。
 総裁が就任された当初、二年間で二%目標を達成すると約束されたときに、この要素は考慮に入れなかったのでしょうか。

#40
○参考人(黒田東彦君) いわゆる予想物価上昇率というものは、中央銀行の物価目標によるフォワードルッキングな期待形成と、現実の物価上昇率の影響を受ける適合的な期待形成の二つの要素によって形成される、これはまあ学界の通説でありますけれども、我が国では、先ほども申し上げたように、一九九八年以降、長きにわたりデフレが続いておりまして、その下で、人々に根付いたデフレマインドの転換を図って二%の物価安定の目標を実現するために、二〇一三年に物価安定の目標に対する明確なコミットメントとそれを裏打ちする大規模な金融緩和から成る量的・質的金融緩和を導入いたしました。これは、先ほどの予想物価上昇率の形成に関する考え方に基づくものであります。実際、二〇一三年以降、物価上昇率は高まり、予想物価上昇率もはっきりと上昇いたしました。たしか、両方とも一・五%程度まで上昇いたしました。
 ただ、その後、原油価格の大幅な下落などを背景に、現実の物価上昇率が低下するにつれて予想物価上昇率も低下していったわけですが、日本銀行が大規模な金融緩和を続ける下で、物価が持続的に下落するという意味でのデフレではない状況となっております。ただ、二%にはまだ道半ばというか、遠い状況であります。
 日本銀行としては、二%の物価安定の目標の実現に向けて、引き続き強力な金融緩和を粘り強く続けてまいる所存であります。

#41
○牧山ひろえ君 今まで二%目標を達成できなかったのも、今後物価上昇が他国に後れを取るのも、我が国では適合的期待形成の比重が大きいからという分析だとおっしゃっていますが、もしその考察が正しいならば、主要国と横並びの二%目標も、達成の困難性という側面では異なる意味を持つことになると思うんですね。
 この適合的期待形成、これについてより深く探求すべきだと思いますが、では、任期中に目標達成が難しくなったことに関してどのような所感をお持ちなのかということと、それから、今から振り返ればこうすればよかったという金融政策の反省点ないし改善点をお示しいただければと思います。

#42
○参考人(黒田東彦君) 先ほど来申し上げておりますとおり、二%の実現に時間が掛かっておりまして、そのこと自体は大変残念なことであります。
 その主な理由は、予想物価上昇率に関する複雑で粘着的な適合的期待形成のメカニズムが根強いということにあると思います。もっとも、このことは、人々が実際に物価上昇を経験すれば物価上昇が次第に人々の考え方の前提に組み込まれていくということを意味しておりまして、三月の点検でも確認されたように、これまで大規模な金融緩和は、金融環境を改善させて需給ギャップのプラス幅拡大とプラスの物価上昇率の定着という効果を発揮してきております。
 二%の物価安定の目標を実現するためには、金融緩和の効果だけではなく副作用にも配慮しながら大規模な金融緩和を継続していくということが重要であり、そういう観点から、委員も御指摘になりました二〇一六年九月の総括的検証、それから本年三月の点検を実施して、必要な見直しを行ってきております。
 このように、日本銀行としてはその時々で最適と考えられる金融政策運営を行ってきたと認識しておりますが、引き続き二%の物価安定の目標を実現するために適切な金融政策運営に努めてまいりたい、効果と副作用と両面に配慮して適切な金融政策運営を行ってまいりたいというふうに考えております。

#43
○牧山ひろえ君 コロナ禍の収束がなお見えない中で、当面は金融緩和を続ける以外に選択肢はないと思うんですけれども、経済の実勢から乖離した達成不可能な物価目標を長く維持していることが金融政策をゆがめ、経済、金融の安定を損ねているのではないかという、そういった真摯な検討が必要ではないかと思います。
 日銀は、二〇一六年一月にマイナス金利付き量的・質的金融緩和を導入し、日銀当座預金の一部にマイナス〇・一%の金利を付することといたしました。その後、二〇一六年九月には総括的検証を経て新たに長短金利操作付き量的・質的金融緩和が導入されましたが、短期金利の操作目標につきましては引き続きマイナス金利の仕組みが維持されています。マイナス金利の導入による副作用は、特に金融機関の経営状況に大きな影響を及ぼしています。
 二〇二〇年四月に岡三証券が公表したレポートでは、二〇一六年から二〇一九年までのマイナス金利による各セクターの影響を試算し、金融機関に一・六兆円もの損失が生じるということを示しました。この試算では、家計も預金金利低下により損失が生じ、逆に、政府や企業は国債や借入金の利払いが減るということから負担軽減効果があるというふうにされました。
 新型コロナウイルス感染症等の影響が深刻な現状におきまして、金融機関には金融仲介機能を発揮し、中小企業等の資金繰りや事業継続を支援していくことが政府からも強く求められています。このような状況において、金融機関経営に打撃を与えるマイナス金利は適切な金融市場調節の手段と考えるのか、日銀の見解を伺いたいと思います。

#44
○参考人(黒田東彦君) このマイナス金利政策というものは、イールドカーブの起点を引き下げてイールドカーブ全般にわたって強い金利低下圧力を加えることを可能にするものであります。実際、短期政策金利をマイナス〇・一%、十年物国債金利の操作目標をゼロ%程度とする金融市場調節方針の下で、極めて低い金利水準が維持されております。このことは、低い資金調達コストや良好な金融資本市場などを通じて緩和的な金融環境をつくり出しております。そうした下で経済活動が押し上げられ、デフレではない状況となりました。
 もっとも、低金利環境が金融仲介機能に及ぼす影響には注意が必要であります。ただ、当面、現在のところ、金融システムは全体として安定的に推移しておりまして、金融仲介機能は円滑に発揮されております。実際、コロナ禍において金融機関は積極的に企業等の資金繰り需要に応えておりまして、こうした点を踏まえますと、日本銀行による強力な金融緩和は経済活動にプラスの影響を与えており、また、特にコロナ対応特別対策等が企業の資金繰りあるいは金融市場の安定に貢献しているものというふうに考えております。
 ただ、何度も申し上げておりますとおり、こういった大規模、大幅な金融緩和の経済に対する効果と副作用の両面について、引き続き十分注視して、必要に応じて金融政策を調整していく必要があるというふうに考えております。

#45
○牧山ひろえ君 金融緩和による金利低下が金融機関の経営困難化を通じてかえって金融仲介機能を阻害するというリバーサルレート論にも再び注目が集まっています。金融緩和の大筋はしばらく動かしようがないにしても、金融緩和によるダメージを和らげる方策は必要だと思います。
 このマイナス金利政策に関連して、日銀が三月から適用を開始した地域金融強化のための特別当座預金制度、これについてお伺いしたいと思います。
 この制度は、経営統合等により経営基盤の強化を図るなどの要件を満たした地域金融機関について、日銀当座預金残高に対してプラス〇・一%の金利を付利するものだと聞いております。地域経済活性化や経営基盤の強化に取り組んだ地銀を応援する狙いで、昨年の十一月の政策委員会・通常会合で導入が決定されたということは御承知のとおりでございます。
 日銀当座預金残高に金利を付する制度につきましては、二〇〇八年にプラスの金利を付した際にも、また二〇一六年にマイナス金利を導入した際にも、いずれも金融政策の一環として金融政策決定会合において決定されたと聞いております。
 今回の制度は、金融政策ではなく、金融システムの安定を目的とする政策とされていますが、金融政策として設定されているマイナス金利を実質的には形骸化するとの指摘もあり、金融政策と無関係とならないと思うんですね。また、通常会合と金融政策決定会合では、議事要旨や議事録の公表などの取扱いに大きな差があります。今後の政策決定過程の検証に課題を残すことにもなると思うんですね。
 制度導入の趣旨と、金融政策との関連でのこの制度の位置付けはどのようなものなんでしょうか。そして、今回の特別当座預金制度とマイナス金利政策の整合性についても併せて御説明いただければと思います。

#46
○参考人(黒田東彦君) この特別当座預金制度は、地域における金融仲介機能の十全な発揮と金融システムの安定確保を目的とするいわゆるプルーデンス政策として実施するものでありまして、金融政策として実施するものではありません。
 本制度が市場における金利形成や金融市場調節に特段の影響を及ぼすことはないと考えております。制度の対象先は、地域金融機関のうち一定の要件を満たした先に限られておりますし、また、制度の運用面でも、付利の対象となる当座預金残高に上限を設けるなどして、市場金利に影響しない仕組みになっております。
 そういった意味で、金融政策決定会合において金融政策を決定し、それ以外の事項については通常の政策委員会で決定するという形を従来どおり取っているということでございます。
 いずれにいたしましても、この特別当座預金制度、これから具体的に実施していくわけでございますので、その効果、影響というものは十分注視して検証してまいりたいというふうに考えております。

#47
○牧山ひろえ君 特別金利の付与の対象が一部の地域金融機関に限定されるとはいえ、当該地域金融機関にとって特別金利の付与というのは実質的な利上げでありまして、これはマイナス金利政策の形骸化にほかならないと思うんですね。整合性に欠けた金融政策の実施は、長い目で見れば金融政策に対する信認の低下につながるかと思うんです。日銀が継続している大規模金融緩和の副作用で地域金融機関の収益が看過できないほど悪化している現実にしっかりと向き合って、枠組み自体を議論することが必要なのではないかなと思います。
 では、今回の特別当座預金制度について、日銀は、どの程度の応募があり、そしてまたどの程度の付利支払を想定されているのか、お聞きしたいと思います。

#48
○参考人(山田泰弘君) お答えいたします。
 この制度につきましては、地域金融機関の応募はかなりの数に上りました。その上で、今後、所定の要件を満たすことが確認された地域金融機関に対して付利を行っていくことになりますけれども、この点、この制度によって日本銀行が支払う利息の総額は、どれだけの先が要件を満たすか、あるいはその要件を満たした先がどれだけの当座預金残高を持っているかによりますので、現時点でお答えすることは難しいということになります。
 いずれにしましても、この制度が多くの地域金融機関に利用されて、地域経済を支える取組を後押しすることを期待するものでございます。

#49
○牧山ひろえ君 今回の措置は、かなり規模の大きい、地域金融機関に対する補助金的な性格を持ちます。応募件数も多く、それから適用条件も厳しいとは言えないので、結果として、地域金融機関のほとんどが適用対象になるのではないかなと思います。金融政策に影響を与えないとはちょっと思えないんですね。
 さて、日銀は今回の制度を次のように位置付けています。地域金融機関が将来にわたり地域経済をしっかりと支え、金融仲介機能を円滑に発揮していくための経営基盤の強化に資すると位置付けています。具体的には、一定の経営基盤の強化を実現することと、経営統合等により経営基盤の強化を図ることのいずれかを条件に、日銀にある金融機関の当座預金に特別金利を付けるというものです。
 政府も、現在国会に提出されている銀行法改正案で、地域金融機関の合併、経営統合の費用の一部を国が負担する資金交付制度を提案しています。統合一件に当たり最大で三十億円程度が想定されているということですが、これらの動きも考え合わせると、今回の日銀の新制度は、日銀が政府と一体になって地域金融機関の再編を後押しするものと評価されているわけです。
 菅総理が就任に際し地方銀行は数が多過ぎるのではないかというふうに発言したことで、地域金融機関再編への流れは一気に加速したことは御承知のとおりだと思います。日銀としても、地方金融機関は経営統合を進めるべきという認識なのでしょうか。地域金融機関の現状についての認識も併せて御説明いただければと思います。

#50
○参考人(黒田東彦君) 地域金融機関をめぐる経営環境というものが、人口減少や成長期待の低下といった構造要因に加えて、感染症の影響もあって、一層厳しさを増しております。
 こうした下で、この特別当座預金制度は、地域金融機関が将来にわたり地域経済を適切に支えていくための経営基盤の強化に資する観点から、日本銀行が必要と判断して実施するものであります。この制度の主な狙いは、地域金融機関の収益力や経営効率の改善であります。経営統合や合併はそのための一つの選択肢ではありますが、単独で行うのか、あるいは他業態とのアライアンスなどを通じて行っていくのかは、各金融機関の経営判断であります。
 日本銀行としては、地域金融機関の経営動向や金融仲介機能の状況について、今後とも注意深く点検してまいる所存でございます。

#51
○牧山ひろえ君 世界の中央銀行を見ても、中央銀行が地域金融機関の経営統合の支援を行うのは極めて異例だと思うんですね。地域金融機関の自主性を損なわない、極めて慎重な運用が必要ではないかと考えます。
 日銀は、二〇一〇年十月の包括的な金融緩和政策におきまして、臨時の措置として、資産買入れ等の基金を創設し、長期国債のほか、ETFやJ―REITなどリスク性資産の買入れを行うこととしました。黒田総裁就任後の二〇一三年四月に打ち出された量的・質的金融緩和では、この基金を廃止し、長期国債の買入れと並ぶ金融市場調節の手段としてリスク性資産の買入れを拡大しました。
 今日では、日銀の保有するETFは簿価で三十五兆円を超えるなど、リスク性資産の買入れ規模は導入当初とは比較できないほど大きくなっているんですね。それとともに、日銀が大量に買い入れることによる市場のゆがみですとか、事実上の大株主となることによる企業のコーポレートガバナンス上の課題などが懸念されるようになっています。
 仮に買入れをやめるにしても、リスク性資産は国債のように自動的に満期償還されるものではなく、市況に影響を与えるために市場売却も容易ではないことから、出口戦略を取る場合にも大きな制約が想定されています。コロナ禍が経済にダメージを与えている現状ですと、リスク性資産の買入れの停止は現実的ではないと思います。だからこそ、副作用を軽視する方策をしっかりと実施していくことが必要だと考えます。
 現在の金融政策を継続しますと、今後も日銀のバランスシートで巨額のリスク性資産を保有する状況が続きます。株価下落局面では含み損が発生する危険性が否定できないと思います。ETFの大量購入により日本銀行の財務が市場変動に脆弱となり、金融政策運営の安定を損なうことが懸念されます。
 現在のETFを含む国内株保有の現状からして、ほかの条件は変更がないとすると、ETFの損益分岐点は日経平均幾らぐらいなんでしょうか。

#52
○参考人(内田眞一君) お答え申し上げます。
 私ども、ETFを含みます保有有価証券の時価情報に関しましては、上期末及び事業年度の決算において公表しております。直近、一番近い公表ということですと、二〇二〇年九月末の決算情報になりますが、その後の十月以降の買入れ実績等も含めまして試算をいたしますと、やや粗い試算にはなりますけれども、足下で時価が簿価を下回る日経平均株価の水準は二万一千円程度という計算になります。

#53
○牧山ひろえ君 リスク性資産の保有が拡大するほど日銀の財務は不安定となることに、より注意を払うべきだと思います。
 二〇一〇年秋のリスク性資産買入れ政策導入時の議事録が十年経過して公開されました。そこでは、これはあくまでも臨時異例の措置であることが世の中に理解されないと、いつの間にか恒常化する危険性があるということが危惧されていました。実際、政策導入後しばらくは金額も低い水準に抑えられ、かつ基金により運用するなど、極めて抑制的かつ慎重に運用されていました。
 今でも、これはあくまでも臨時異例の措置であるとの認識はお持ちなのでしょうか。当初の恒常化の危惧についての総裁の御見解と、その御見解が金融政策にどのように反映されているのかについてお伺いしたいと思います。

#54
○参考人(黒田東彦君) リスク性資産の買入れは、この二%の物価安定の目標の実現のため、大規模な金融緩和策の一環として実施しております。このうち株価連動のETFの買入れは、他の主要中央銀行が行っていない異例の措置であります。
 その上で、物価安定の目標の実現にはなお時間が掛かると見込まれることを踏まえますと、ETF等のリスク性資産の買入れを含む金融緩和は引き続き必要な施策であると考えております。
 もちろん、先行き、物価安定の目標の実現が近づく際には、出口に向けた戦略や方針について金融政策決定会合で議論していくことになるというふうに考えております。

#55
○牧山ひろえ君 OECDの対日経済審査報告書では、ETF買入れ政策について、市場の規律を損ないつつあると指摘しています。日銀は、内外で呈されているこうした疑問に対する説明責任をしっかりと果たしていくことが求められていると思います。
 終わります。

#56
○勝部賢志君 立憲民主・社民の勝部賢志です。
 質問に入ります前に、森友問題に係るいわゆる赤木ファイルについて、今日は日銀報告ということで麻生大臣はいらっしゃいませんので、質問は次の機会にさせていただきたいと思いますが、一言指摘をさせていただきます。
 五月六日、財務省は森友問題に係るいわゆる赤木ファイルの存在を初めて認め、開示する方針を示しました。文書の改ざんを強いられ、自ら命を絶たれた近畿財務局職員の赤木俊夫さん、その妻である雅子さんが国側に損害賠償を求めた訴訟を起こしたのが昨年の三月です。その際に、このファイルの証拠提出を求めており、それから一年以上もの間、回答の必要がない、あるいは探索中などとファイルの提出を拒み続けた財務省の姿勢は、隠蔽してきたと受け止められても仕方のない、極めて不誠実な対応だと言わざるを得ません。
 また、十日の衆議院予算委員会で麻生大臣は、山井委員のこのファイルがあったことを知ったのはいつかという質問に対し、かなり前の方だったという答弁をされました。もし仮にかなり前から知っていたんだとしたら、まさに知っていながら隠し続けてきたことになり、これも看過できない問題であります。改めて、答弁の真意と事実は確認をさせていただきたいと思います。
 さらに、私たち野党は、昨年四月、衆議院議員百二十七名によって予備的調査を要求してきました。再三にわたり、このいわゆる赤木ファイルの国会提出を求めてきたわけであります。しかし、司法審査に不当な影響を及ぼすということを理由に、存否すら明らかにしてきませんでした。このことは、昨年十二月の財政金融委員会で私も質問させていただきましたが、同様の答弁に終始したわけであります。ファイルの存在が明らかになったのですから、今国会中に速やかに提出するよう改めて強く求めておきます。
 裁判所の指示で、財務省はようやくいわゆる赤木ファイルの存在を認めました。時間が掛かり過ぎたことについては先ほど指摘をしたとおりであります。存在することを認めたのですから、そうであれば、もうこれ以上隠すことなく、赤木ファイルを速やかに全面開示すべきです。そして、二度とこのようなことが起こらないようにするために、命懸けで真実を伝えようとした赤木さんの思いをこれ以上踏みにじることなく、全容解明と再発防止に誠心誠意取り組むよう強く求め、指摘とさせていただきます。
 それでは、質問に入らせていただきます。
 まず初めに、コロナが長期化してきているそのリスクに対する対応についてお伺いをしたいというふうに思います。
 三月に所信の質疑を私、この財政金融委員会で行ったときに、新型コロナウイルスパンデミックも一年以上が経過し、世界の累計患者数は一億二千万人になったと、そして累計死亡者も二百六十万人になったということに触れました。それが、それからほぼ二か月経過したわけですけれども、ワクチンの接種は海外においては進んできたところもあり、欧米などでは好転の気配もあるわけですけれども、一方、インドやブラジルでは、御案内のとおり、感染の爆発が起きておりまして、累計感染者数は世界で一億六千万人ということで、累計死者数も三百三十万人に迫ろうとしています。僅か二か月の間にこれだけ増えたという状況であります。
 先月、四月七日にウエブで開催されたG20の財務大臣・中央銀行総裁会議があり、そこで声明が出されております。私も読ませていただきましたが、その冒頭に、二〇二〇年の急速な収束後、世界経済見通しは、主にワクチン接種展開と継続的な政策支援を背景に改善してきている、しかし、回復は各国間、各国内でばらつきがあるとともに脆弱であり、新型コロナウイルスの新たな変異株の拡大やワクチン接種のペースの違いなど、より大きな下方リスクにさらされていると、このように記されているわけで、これは、まさにワクチン接種が先進国中最低である我が国の現状を指摘しているかのようであります。
 このような状況の中で、昨年来、この財政金融委員会でも何度も議論してきましたけれども、企業への資金繰り支援ですとか日銀による銀行への流動性支援策、あるいは持続化給付金や家賃支援給付金、さらには雇用調整助成金の支給拡大、そういったことを通じて、ある程度、一定程度雇用の維持は図られてきたというふうに思っていますが、しかし、つぶさに見ていくと、非常に厳しい環境であることは間違いありません。
 そして同時に、企業の債務は間違いなく拡大しています。この経済制限がこれ以上続いていくと、とにかく企業の倒産あるいは廃業というのがこの後非常に増えていくのではないかという危機感を持たざるを得ません。とりわけサービスや対面型ビジネスが主流の非製造業は、実績が回復するどころか二番底を迎えるのではないかと、こう言われていますし、比較的堅調な輸出型製造業のプラスは帳消しにされて、GDPも一―三期に続いて四―六期も前年比マイナスになる公算が非常に大きいというふうに私は思っています。
 そこで伺いますけれども、政府、日銀共に現段階に至ってこの長期化リスクについて企業支援策をどのように考えておられるのか、お伺いをしたいと思います。

#57
○副大臣(中西健治君) お答えいたします。
 新型コロナの影響を受ける事業者に対する資金繰り支援は極めて重要であると考えております。
 政府系金融機関による実質無利子無担保融資については、感染状況や資金繰りの状況を踏まえて累次これまでも延長してきております。現状は、当面、今年前半まで継続するということになっておりますが、これまでも柔軟に対応してきておりますので、今後も柔軟に対応するということになるかと思います。
 また、民間の金融機関も含めて、いわゆる借換え等に対して返済猶予等、こうしたことを柔軟に対応するようにというようなこと、これは官民の金融機関に対してですけれども、財務省を始めとして各省庁が要請を行っておりまして、昨日また緊急事態宣言が延長になりましたから、そうした要請を行ったところでございます。

#58
○参考人(内田眞一君) 日本銀行からも回答させていただきます。
 御指摘のとおり、新型コロナウイルス感染症、変異株の増加を伴いつつ拡大する中で、当面の経済活動水準という面で見ますと、これも御指摘の対面型サービス部門を中心に、感染症拡大前に比べて低めに推移するというふうに予想しております。実際、サービス消費を見ましても、昨年前半、大きく落ち込んだ後の持ち直しが緩やかであった上に、本年に入りましてからは感染症再拡大の影響から減少しているという状況でございます。
 こうした中で、特に飲食、宿泊サービスを始めとします感染症の影響を強く受けた企業等の資金繰りに関しましてはなお厳しさが見られるというふうに認識しております。
 私ども日本銀行では、感染症の影響への対応といたしまして、昨年三月以降、新型コロナ対応資金繰り支援特別プログラムというものを含みます強力な金融緩和措置によりまして、企業等の資金繰り支援、それから金融市場の安定維持に努めております。引き続き、これらの措置をしっかりと実施していくことが重要であると考えております。
 特別プログラムは、現時点では本年九月末が期限となっておりますが、これは必要であれば更なる延長も検討したいと考えております。

#59
○勝部賢志君 先ほど総裁から概要の説明をいただきました。一ページ目の下段の辺りに、感染症の影響が徐々に和らいでいく下で、外需の増加や緩和的な金融環境、政府の経済対策の効果にも支えられて、我が国経済は回復していくと見ていますと、こういう記載があります。
 私、質問の準備をする関係もあって、衆議院の財務金融委員会での報告書もちょっと読ませていただきました。それは三月五日のものなんですけれども、そこでも同じような記載があって、同じことを指摘をしているわけではなくて、同じような記載があるんですけれども、ただ、このときは、改善基調をたどると見ていますというふうに記載をした後、もっとも、感染症への警戒感が続く中で、そのペースは緩やかなものにとどまると考えられると、三月五日の時点ではこういう表現になっているんですね。しかし、ここへ来ての先ほどの説明では、その文章が取れているんです。
 何を言いたいかといいますと、私は、まさに緊急事態宣言が三度目の発出がなされていて、まん延防止特別措置も各県増えていくような状況になっています。ですから、コロナ禍におけるこのリスクが拡大をしていくという認識について、私は多少甘い見方をし過ぎているのではないかというふうに思えてならないんですね。
 時々、麻生大臣といろいろ議論するときに、とりわけ金融はマーケット相手に勝負をしているので、なかなかそう簡単に言えないこともあるんだというお話もされるんですけど、ただ、しかし、やはり現状をしっかり認識をする、そしてそれをやはり厳しめに見ていくということは非常に大事なことではないかと思いますが、これは通告はしておりませんが、せっかく総裁お越しになっておりますので、この認識についてどのようにお考えか、もう一度お尋ねしたいと思います。

#60
○参考人(黒田東彦君) 今手元に資料を持っておりませんが、その間でいわゆる展望レポートというものを政策委員会で決定しておりまして、その展望レポートによりますと、政策委員の中央見通しでは成長率が上方修正になっているんですね。他方で、物価上昇率の方は足下で若干下方修正になっているというような状況なんですけれども、これは、一方でIMFとかOECDの世界経済見通しがかなり大幅に上方修正されていまして、これは米国、中国などの成長率の見通しがかなり上方修正されたということを反映されたものですけれども、そういうことも踏まえつつ、足下の輸出や生産の状況を見ますと、前に考えていたよりもやや強いという状況なので、成長率の見通しを少し上方修正、政策委員もされたということだと思います。
 ただ、展望レポートでも述べておりますとおり、感染症の動向というのは極めて不確実で、冒頭申し上げたとおり、最近ではこの変異株というのがかなり広がっているようでして、その影響というものも相当深刻にというか、慎重に見ていく必要があるとは考えております。
 ただ、実体経済の動向は、先ほど申し上げたように、世界経済のかなり強い回復状況を踏まえて経済の実態の方は少し、前に考えていたよりは少し状況は良くなっているんですが、委員御指摘のとおり、まさに緊急事態宣言が更に五月末まで延長されるという状況で、変異株も広がっているとか、様々な問題を抱えておりますので、今後とも十分慎重に経済動向は注視していきたいというふうに考えております。

#61
○勝部賢志君 突然のお尋ねにも丁寧にお答えをいただいて、ありがとうございました。
 私は素人といいますか、金融とかあるいは世界的な経済の動向というのはなかなか承知しかねているものですから、その世界的な動きを踏まえて今後日本の動向がどうなっていくかというところの判断については言われたとおりなのかなというふうには思います。ただ一方で、やはり日本の、後半、総裁も言われた感染症の状況というのは極めて厳しく、予断を許す状況ではありませんので、そういう意味で、先ほどお聞きをした支援策というのは一方で非常に必要になってくるというふうに思いますので、そこは注意深く、きめ細やかな対応を是非お願いをしたいということを申し上げておきたいと思います。
 続いて、先ほど引用したG20の共同声明には、その続きにこのような記載があります。ちょっと読み上げますと、我々は、女性、若者、非正規労働者、未熟練労働者を含む、特に最も影響を受けた人々の経済的な傷痕の問題に取り組む、我々は警戒を続け、支援策をいかなる早まった引揚げも回避することにコミットすると記されています。
 そこでお伺いをしたいんですけれども、危機の深刻化を一定回避できた企業支援に比べて、昨年来、私ども何度も指摘をさせていただいて、先ほども議論の中でもありましたんですけれども、本当に困っている方々に手が届いているのか、光が当たっているのか、目を向けているのかというようなことを再三、いろんな場面で指摘をさせていただきました。それが我々の役割だとも思っていますので、これからもそういう観点で物を申し上げていけたらと思っているんですけれども、現状、とりわけ政府においてはそういった支援策について、十分に最も影響を受けた人々に対してしっかりと対応できているという認識なのかどうか、今日副大臣お越しですので、お伺いをしたいと思います。

#62
○副大臣(中西健治君) 勝部委員引用されたこのG20、四月に行われたわけでありますけれども、このG20以前からコロナの影響が様々な人々に及んでいると、特に弱者と言われる方々には大きな影響を及ぼしているという認識は強く持っておりまして、収入ですとか雇用などの面でやはりきめ細かく対応していかなければいけないということは常に考えているところでございます。
 そうしたこともあって、きめ細かな施策を講じる一環として三月に関係閣僚会議で決められたこととして、非正規労働者等に対する緊急支援策というパッケージが発出されました。それは、中身は御承知の部分も多いかなというふうに思いますけれども、例えば、低所得の子育て世帯に対する生活支援特別給付金の支給と、創設がされました。これまでは一人親世帯だけでしたけれども、両親がいらっしゃるところも低所得の御家庭に対しては支援を行うというようなことが決められました。また、緊急小口資金等の新規貸付け、再貸付けの継続や、債務免除要件の明確化ですとか、住居確保給付金の再支給の継続ですとか、また、NPO等を通じた孤独、孤立、自殺対策などの施策を講じるということも決められて、今実行に移されているところでございます。
 こうした施策により、それぞれの状況に応じた支援を今後も十分に図っていくことが肝要であると考えております。

#63
○勝部賢志君 経済的な傷痕という表現になっていて、確かに経済的な傷を負った方々に対する支援もちろん必要で、併せて言うと、先ほどちょっと、今副大臣も触れましたんですけど、その経済的な傷を負ったことによってまた更に波及している問題も出てきていて、私は、特に子供たちやそれから女性の中に自ら命を絶つ方々が非常に増えているという問題に心を痛めています。それは、いろいろな手だてが必要なんだと思っています。財政的な支援だけではないというふうに思っているんですが、しかし、要因の一つはやはり生活が苦しいことなどから来るものもあるので、そういうことにもきめ細やかに是非目配りをしていただきたいし、引き続き、今日はこの話はこの程度にしますけれども、引き続き議論をさせていただきたいと。
 そしてもう一つ申し上げたいのは、今日は大臣いらっしゃらないのであれですけど、大分変わってきたかなと思うんですが、最初はそのコロナの対策をいろいろ、こういうことも必要だという話をしたときに、やっぱり一番壁になるのが財政の壁なんですよね。それと、今までこういうことはやってこなかったと、これは国がやるべき話ではないというような形で、ある意味、軽く扱われていたような問題があったんですけれども、それはこの一年間で、この国会でも様々な議論をして、私は必ずしも全て十分だと思わないんですが、少しそういうのは変わってきつつあるというふうに思っていて、ですから、やっぱりやれることは最大限やると。ここに書いてあったように、早まった引揚げも回避することにコミットするというような、そういう思いでとにかく取り組んでいただきたいということを申し上げておきます。
 続いて、金融バブルの問題について、これも問題意識を持っておりますのでちょっと議論をさせていただきたいと思うんですが、ワクチンの接種は少しずつ進んではいるものの、一方でウイルスの方は、先ほど来あるように、変異株が瞬く間に世界規模で拡大しています。長期戦は避けられず、簡単にアフターコロナとかポストコロナというようなことも口にできない今状況ではないかというふうに思っています。
 そのような、先行きに暗雲が立ち込めるような状況なんですけれども、一方で、株式や暗号資産、最近ではNFTまで、金融資産市場は、大多数の生活者、働く者の苦境をよそに、史上最高額という見出しが躍っています。コロナ感染拡大で落ち込む景気や、あるいは下支えをしようと各国が次々と打ち出した財政支援と金融緩和の結果、リアルマネーの価値が一段と下落し、そのリスク回避として暗号資産や現物資産に資金が流れ込んでいるとも言われています。
 アメリカでは、現下の金融過熱に対し、FRBが六日、株式ブームやオンライン取引による個人投資家の台頭、ヘッジファンドの資金調達をめぐる不透明性などを背景にリスクが増大しているという認識を示されたという報道もありました。
 また、我が国でも、世界的に相対的に割安感がある日本の、国内外の投資マネーが日本に、割安感のある日本に集まってくるという分析もあるようであります。そして、例えばですが、時価が三万円近辺に、あっ、株価ですね、失礼しました、株価が三万円近辺に回復しただけでなくて、国土交通省が三月に公表した公示地価は全国的には下落傾向にあると。しかし、首都圏などの住宅価格は上昇傾向が続いていて、東京の不動産市場への投資額は世界でもトップと言われる状況にあると。つまり、二極化が進んでいるということなんですね。
 具体的に言うと、例えば、これは東京だけじゃなくて、軽井沢の一億円以上のリゾートの億ションが短期間で完売をするとか、あるいは高級ブランド時計のロレックスが市場から姿を消してしまったとか、日銀の銀行株も急騰するとか、まさにバブルさながらの状況になっているということがあります。
 こういった状況で、私は、先ほど申し上げたバブルがこういうふうに顕著になってきていて、このバブルがもしはじけたらどうなるのか、あるいは格差が先ほど言ったように拡大をしていっているという状況は、必ずしも今後の健全な経済回復にはデメリットになる部分なのではないかというふうに受け止めています。
 それで、今後、こういった動きの中で、金融資産バブル傾向がより顕著になっていく状況を踏まえて、どのような着目点と基本スタンスでかじ取りをされていこうというお考えなのか、政府と黒田総裁に御所見をお伺いをしたいと思います。

#64
○副大臣(中西健治君) 株価を始め地価等資産価格、これからどうなっていくのか、動向についてはちょっとコメントは差し控えますし、あと、バブルかどうかということについてもいろんな議論があるところだろうというふうに思います。
 しかし、金融活動の過熱等によって金融面で過度なリスクが蓄積することによって、様々なショックに対する脆弱性が高まる、こういう兆候が見られないかどうかということについては、これまで同様、国内外とも十分に注視していく必要があるだろうというふうに考えております。
 また、御指摘のあった格差ということについてでありますが、これは先ほどの質問にも通ずるものがあるのではないかというふうに思いますけれども、今回のコロナの影響というのは、様々、それぞれ違った影響が出ているだろうというふうに思います。
 企業にも、そして家計にも、いいところもあったり悪いところもたくさんあったりというところなんじゃないかと思いますけれども、経済格差というのは、やはり格差が固定化してはいけないということだと思いますし、格差が許容できない範囲まで広がるということにもならないようにしなきゃいけない、そういったスタンスでこれからも政策運営していきたいと思っております。

#65
○参考人(黒田東彦君) 実際、我が国の経験を振り返りますと、バブルの崩壊とその後の金融危機というものは、経済の大きな落ち込みやデフレをもたらしました。そうした経験を踏まえますと、やはりこういう点についての警戒というのは重要でありまして、日本銀行では、従来から、金融政策運営に当たってはより長期的な視点からの金融面の不均衡のリスクを点検するという枠組みを取っております。
 その上で、昨年後半以降の株価の動きを見ますと、基本的には、市場参加者の多くが今後も世界経済の回復が続き企業収益が改善していくと予想していることが反映されているというふうに見られます。
 また、資産価格の上昇が格差拡大をもたらすという議論があることは承知しておりますけれども、これまでのところ、日本銀行の金融緩和による経済活動へのプラスの効果というものが国民各層に幅広く及んでいるというふうに考えております。
 引き続き、物価安定の目標のために強力な金融緩和を続けていくことは必要だと考えておりますが、もとより、今後とも、金融面の不均衡のリスクを含めて様々なリスクに十分な注意を払いながら、適切な政策運営に努めてまいる所存であります。

#66
○勝部賢志君 ちょっと時間がなくなってきましたので、次の課題について質疑をさせていただきたいと思いますが、中央銀行デジタル通貨、CBDCについてお伺いをいたします。
 日銀は、昨年十月に中央銀行デジタル通貨に関する日本銀行の取組方針を公表しました。現時点で中央銀行デジタル通貨を発行する計画はないけれども、今後の様々な環境変化に的確に対応できるようしっかり準備をしていくという認識が示されたわけです。それに基づいて個人や企業を含む幅広い主体の利用を想定した一般利用型CBDCについて、これまでのようなリサーチ中心の検討にとどまらず、実証実験の実施を通じ、より具体的、実践的な検討を行っていくとともに、CBDCの発行に関して考慮すべきポイントなどを踏まえ、制度設計の検討を進めていくというふうにされました。
 そこで、基本的なことを含めてちょっとお伺いをしたいと思いますけれど、CBDCの必要性、有用性と、一方で懸念される点、問題点などもあるというふうに私は思っているんですが、その点について、考え方といいましょうか、教えていただけますでしょうか。

#67
○参考人(内田眞一君) お答え申し上げます。
 先生御指摘のとおり、私ども、昨年十月の方針の中で、現時点では発行する計画はないけれどもしっかりと準備をしていくことが重要ということでございます。
 その際、必要性といいますか、CBDCを導入する意義につきましては、一つには、仮に将来現金の流通が大きく減少するような場合、そういう可能性が高いと思っているわけではありませんが、仮にそういうことが起きた場合に、現金と並ぶ、これは現金に代わるではなくて、現金と並ぶ決済手段を導入する必要が生じることもあるであろうと、そういう可能性があるというのが一つでございます。
 もう一つは、より決済システム全体を考えたときにということですが、日本銀行がCBDCを発行した上で民間事業者の皆様が新たなサービスを提供することを通じましてデジタル社会にふさわしい安定的で効率的な決済システムを構築していくと、そういうことにつながる可能性があるということがメリットとして考えられるというふうに思っております。
 一方で、これも御指摘のとおり、検討に当たっては、留意すべきポイントもございます。例えばですが、CBDCの発行が金融システムに与える影響はどうなのか、それから中央銀行と民間業者の協調あるいは役割分担をどう考えるのか、こういった点につきましては、今後関係者とよく議論していく必要があるというふうに思っております。

#68
○勝部賢志君 GIGAスクール構想というのがあって、デジタル社会に向けて、特に例えば学校現場などは対応が非常に遅れていたというようなことがこの間明らかになって、それは少しスピード感を持ってやろうということなんですけど、そういう取組が世界に比べると、本当にバスに乗り遅れたような感じで、日本は取り残されているというか遅れているという現状だと思うんですね。
 ただ一方で、それを挽回しようと思って、何というんでしょうか、躍起になってなりふり構わずそれに向かっていくというやり方だと、私は、個人情報の保護の問題とか、あるいは戸惑いを感じる国民の皆さんもいらっしゃるというふうに思うんです。私自身も実はそういう思いがあります。
 ですから、こういったことを進めていく上では、信頼感と、あるいは国民全体が、何というんでしょうか、納得できる時間とかあるいは啓発というようなものが非常に必要だというふうに思います。
 細かい話もちょっとお聞きしようと思ったんですけど、時間がなくなりましたので、今のところは実際に発行する考えはないと、けれども、対応したり、中国などでも、結構海外でも増えてきているので、そういうことに対応する意味でも今から少し準備はするんだということだというふうに思うんですけれども、関係機関との連絡協議会の状況ですとか、今後、国民の皆さんへの周知啓発等のスケジュールなども含めてどのように対応されていこうというふうにお考えか、最後にお聞きをして、質問を終わりたいと思います。

#69
○参考人(内田眞一君) お答え申し上げます。
 全く御指摘のとおりでございまして、CBDCの導入を検討する場合には広範かつ大規模な取組が必要でございますし、何よりも、導入するか否かについては、最終的には国民の十分な御理解が得られるかどうかに懸かっているというふうに思っております。
 こうした認識の下で、私どもは先日、民間事業者、それから政府をメンバーといたします連絡協議会というのを立ち上げまして、議論を進めております。私ども自身、四月の初めから実証実験を開始しておりまして、その状況を御説明しながら関係者と連携協力をしっかりと進めていきたいと思っておりますし、この連絡協議会に限らず、様々な場を通じましていろんな意見交換をしていく必要があるというふうに思っております。

#70
○秋野公造君 公明党の秋野公造です。お役に立てるように質疑したいと思います。
 まず、黒田総裁は、就任以来、大胆な金融緩和を行ってきたということでありますが、昨年来、コロナの影響、経済が大きな影響を受けましたので、これまでの金融政策について点検を行いまして、本年三月十九日にその結果を公表しているところであります。まず、その点検の内容についてお伺いをしたいと思います。
 日銀による金融政策が効果を発揮する経路についてお伺いをしたいと思いますけれども、この金融緩和が長い期間にわたって続いておりまして、こういった低金利の環境が長く続くと、この金融緩和というのがどれほど効果があるのかなと素朴に思います。最初は投資や消費を刺激する効果を持つということだろうと思いますけれども、過去と比べてはだんだんと限定的なものになってしまうのではないかということではないかと懸念をしているわけでありますけれども、この借入れの金利を低くするということ以外に金融緩和が効果を発揮する経路、これにつきましてまず確認をしたいと思います。

#71
○参考人(内田眞一君) お答え申し上げます。
 私どもの今やっております政策は、大きく申しますとイールドカーブコントロール、これは名目の長短金利を低位に抑えるということでございます。もう一つはオーバーシュート型コミットメントということで、インフレ率が安定的に二%を超えるまでマネタリーベースの拡大方針を継続するということを約束することによりまして予想物価上昇率を引き上げるということでございます。この二つによりまして、名目金利から予想物価上昇率を差し引いた形の金利、実質金利ということですが、実質金利を引き下げることによりまして緩和的な金融環境を実現いたします。
 この緩和的な金融環境は、一つは御指摘の貸出金利の低下ということでございますし、もう一つは金融市場を通じた効果というのもございます。株式市場、為替市場といったものを含めた金融資本市場への影響です。
 こういったことによりまして、経済、物価への好影響を及ぼすという経路を想定しているということでございまして、三月の点検におきましても、長短金利操作付き量的金融緩和によりまして金融環境が今の二つの意味で改善いたしまして、需給ギャップのプラス幅が拡大し、プラスの物価上昇率が定着した、二%には行っておりませんが、プラスの物価上昇率が定着したという効果を発揮したことについては確認したところでございます。

#72
○秋野公造君 プラスの状況が定着したということでありますけど、これ、もしも金融緩和策取っていなかったら、このときと比較をするとどの程度の効果があったか、数字でお答えいただきたいと思います。

#73
○参考人(内田眞一君) その点検の中で、カウンターファクチュアル・シミュレーションというシミュレーションをいたしました。結果を申し上げますと、二〇二〇年第三・四半期までの期間を対象としておりますが、実績値が仮想の試算値、やらなかった場合ということですが、と比べまして、実質GDPの水準で平均プラス〇・九から一・三%程度、それから消費者物価、これは生鮮及びエネルギーを除くベースでございますが、前年比で平均プラス〇・六から〇・七%程度、それぞれ高いというものでございました。
 この種の分析は幅を持って見る必要がございますが、日本銀行による大規模な金融緩和が経済、物価にそれだけの押し上げ効果があったということを示唆しているというふうに考えております。

#74
○秋野公造君 効果があったということでありますけれども、先ほどイールドカーブコントロールの話もありました。短期金利がもうほとんど下限まで来ているような状況で、長期金利まで踏み込んで対応してきたということは評価されることだと思いますけれども、ちょっと改めて、このメリットと狙い、それから導入後の効果につきまして、以前と何が変わったのかということについてお答えいただきたいと思います。

#75
○参考人(内田眞一君) 日本銀行は、二〇一六年九月にイールドカーブコントロールを中心とした政策枠組みに移行したということでございます。それ以前は国債購入額など量を操作目標としておりまして、国債買入れを行うことで長期金利に働きかけていたということでございます。
 ただ、同じ金額の国債買入れでございましても、長期金利への低下効果、押し下げる効果、そのときの経済・物価情勢によりまして、あるいは金融市場の動向によりまして異なるということでございますし、また、イールドカーブが過度にフラット化しますと、これ再三議論になっておりますが、預貸金利ざやの縮小などを通じまして金融機関収益が減少する、あるいはマインド面の影響などを通じまして経済活動に悪影響をもたらす可能性もあるということでございました。
 こうした点を踏まえまして、直接金利水準の操作目標を示すことによりまして、物価目標の実現のために最も適切と考えられるイールドカーブの形成、これを促すことを導入の狙いとしたということでございます。これによりまして、経済、物価及び金融情勢に応じまして、緩和の効果だけではなくて副作用にも配慮しながら、持続的に金融緩和を実施していくようにできるようになったというふうに考えております。

#76
○秋野公造君 もう一点、日銀のこのETFの買入れについて確認をしたいと思いますけど、これ二〇一〇年に開始されて、黒田総裁就任されてからどんどんどんどん規模が大きくなってきているということです。ほかの先進国と比較をしますと、なかなかこういうことは行っていないということでありますけれども、例えば昨年の三月のように、どかっと株価が大きく下落するような状況下では、少なくとも大きな役割は果たしているはずだと信じます。
 ただ、この点検を踏まえて、従来の年間六兆円としていたものを、今、必要に応じて買い入れると変更しておりますけれども、その真意をちょっとお伺いをしたいのと、今後の買入れ方針、どんどん行くということなのか、お伺いしたいと思います。

#77
○参考人(内田眞一君) 三月の点検におきましては、ETF買入れの効果につきましても分析をいたしました。その結果は、市場が大きく変動した場合にまとめて大規模に行うことが効果的であるということが結果として確認されました。この結果を踏まえまして、ETFの買入れについては従来以上にめり張りを付けた買入れを行いまして、このETF買入れを含めた金融緩和の機動性、持続性を高めるという観点から、御指摘のとおりですが、年間増加ペース六兆円という従来の原則的な買入れ方針は廃止いたしました。
 一方で、これは感染症対応のために臨時措置として決定いたしました約十二兆円の年間ペース、これは上限でございますが、これは継続することといたしまして、その下で市場の状況を見極めながら、必要に応じて買い入れるということをやっております。
 そういう意味で、市場が大きく変動した場合に大規模に買うという基本的な考え方の下で、必要に応じて買入れを行っているということでございます。

#78
○秋野公造君 細かく対応しているということだと思いますけれども、この貸出促進付利制度についてもお伺いしておきたいと思いますけど、コロナの影響で新しい資金供給オペを導入するということで、このオペ残高に〇・一%の金利を支払うというと、資金を借りると金利がもらえるということでありましたら、非常にこれ画期的といえば画期的なことでありますけれども、この措置の狙い、これ何を期待をしているのか。そして、金融機関と、もっと言えば中小企業に対してどういう意味があるのか。そして、この一年間やってみて効果がどうであったかということを確認したいと思います。

#79
○参考人(内田眞一君) お答え申し上げます。
 新型コロナ特別オペでございますが、感染症の影響を受けた企業等の資金繰りを支援するということが大きな目的でございまして、そうした観点から、日本銀行が、金融機関が行う新型コロナ対応融資、これをバックファイナンスをするというものでございます。付利を行う、その他幾つかの有利な条件でバックファイナンスをするということになっておりますので、金融機関の積極的な取組を促していると、そういう効果があるというふうに思っております。
 実際やってみてということですけれども、かなり多くの金融機関の皆様に参加していただいております。従来、この手の制度に比べましても積極的な利用がございます。その結果、これは私どもだけではなくて、もちろん政府の取組、それから金融機関自身の取組によるものですけれども、緩和的な資金調達環境が維持することができているというふうに思っておりまして、効果を発揮しているというふうに考えております。

#80
○秋野公造君 改めて、今年の三月にはプロパー融資ということで支払う金利を〇・二%まで引き下げたということで、マイナス金利の深掘りも行うと、そういう仕組みも整えたということで受け止めておりますけれども、改めて、先ほど不測の事態も備えた対応だと思いますけれども、この措置によって伝えたいメッセージにつきましても改めて確認をしたいと思います。

#81
○参考人(黒田東彦君) 今回新たに決定いたしました貸出促進付利制度というものは、短期政策金利と連動しながら日本銀行が行っている貸出し促進のための資金供給の残高に応じてインセンティブを付与するという制度でありまして、金利引下げ時の金融機関収益への影響を貸出状況に応じて和らげることができるという仕組みでございます。
 もとより、この機動的かつ効果的な追加緩和の手段として長短金利の引下げというものは重要な選択肢でありますが、三月の点検で確認いたしましたとおり、市場参加者の間では、金融仲介機能への影響を理由に、金利引下げの追加緩和手段としての認識が低下しているようにうかがわれたわけであります。
 そこで、金利引下げに際しての金融仲介機能への影響に配慮する仕組みをあらかじめ整えることで、長短金利の引下げという追加緩和手段の実効性を高めることとしたわけでありまして、これによって、仮に長短金利の引下げということが行われる場合でもその金融機関収益への影響を相当緩和できると、その形で金融機関の貸出しに対するインセンティブになるというふうに考えております。

#82
○秋野公造君 大変強気ですばらしいと思いますけれども、先ほど櫻井先生も触れられておりましたけれども、かつては銀行預金の金利というのは非常に実感あるものだったということでありますが、バブル崩壊後には低金利策を取らなくてはいけなかったということ、これが日本の経済再生にとっては必要だったということだろうと思いますけれども、しかし、これ将来を展望して、一体これいつになれば、どういう状況になればこの金利が正常化といいましょうか、低金利でなくなるというのかということを、これも素朴に思います。そういったこと、ちょっと率直な御所見、お伺いをしたいと思います。

#83
○参考人(黒田東彦君) 御案内のとおり、日本銀行は、この長短金利操作付き量的・質的金融緩和という下で大規模な国債買入れを行いまして、金利を低位に安定させております。
 こうした金融緩和は物価安定の目標を実現するために行っているわけでありまして、物価安定の目標の実現にはなお時間が掛かると予想されますけれども、先行き、経済・物価情勢の改善が続いて物価安定の目標が達成されるような状況になれば、そうした状況が見込まれるようになれば、当然、金融緩和の調整、是正ということが必要になってまいります。
 その場合の金利水準というものはそのときの経済や物価上昇に応じたものになるというふうに考えておりますが、現時点ではまだ物価安定の目標の実現になお時間が掛かる状況でありますので、そういった現在の緩和政策からの出口、あるいはその将来の具体的な金利水準というものを議論する段階にまだ至っていないということを御理解いただきたいと思います。

#84
○秋野公造君 ということでありますが、中西副大臣にまたお伺いしてみたいと思いますが、二%の物価安定目標が達成された場合、我が国の金利水準、どの程度になられると思われるか、黒田総裁はお答えになりませんでしたが、副大臣の御見解、どうぞ。

#85
○副大臣(中西健治君) 黒田総裁お答えにならなかったということですけど、これ市場で決まるものですので、具体的な水準などについて、財務省としてもこれまでもコメントは控えさせていただいているものでございます。
 ただ、一般論で申し上げますと、物価上昇率が上がる、若しくは期待インフレ率が上がるということは金利の上昇要因にはなり得るというふうに思いますけれども、ただ、金利はほかの様々な要因でも決定されてまいります。海外市場の動向ですとか、経済、財政の状況ですとか、そうしたものを踏まえた上で市場において需給関係で決まってくると、このように考えております。

#86
○秋野公造君 今副大臣から様々な状況ということでありましたので、ちょっと私も気になることを少し、副大臣せっかくお見えいただきましたのでお伺いしたいと思いますけれども、まず、法人税のイエレン提言についての御見解をちょっとお伺いをしてみたいと思います。
 法人税の税率を下げるということで企業を誘致して、結果として、世界全体としては税収が下がってしまうといったような悪影響も見られているというところでありまして、それは我が国も同様のことだろうと思います。財政状況が非常に厳しい我が国で、イエレン提言、すなわちこの引下げ競争に対して警鐘を鳴らし、国際的に適切な税率の目線をそろえていくといったような提言というのは非常に重要な論点だと私は思いますけど、我が国としてこの提言にどのようなスタンスで向き合っていくつもりか、まずこれをお伺いしたいと思います。

#87
○副大臣(中西健治君) この経済のデジタル化に伴う国際課税制度の見直しの一環として、G7や、OECDやG20の場でこちら話し合われてまいりました。国際的な最低税率の合意によって企業間の公平な競争条件を確保し、法人税の引下げ競争に歯止めを掛けるということは、日本として、我が国としても重要だというふうに考えております。
 こうした国際課税制度の見直しについては、先日のG20財務大臣・中央銀行総裁会議において、本年半ばまでに合意を目指すことが再確認されております。我が国としても、議論に積極的に貢献していきたいと思います。
 また、イエレン長官のことを言及されましたけれども、米国やイギリスにおいて財源確保のための税制改正が提案されているところでありますが、我が国としては、今後、経済社会情勢の変化や国際的な動向等をよく注視していきたいと思います。

#88
○秋野公造君 株価も上昇する中で、アメリカにおいては高額所得者を対象を限定してキャピタルゲイン課税の税率を大幅に引き上げる案も検討しているということでありますけれども、これ我が国においても、所得水準に同様の観点からキャピタルゲイン課税の在り方、これを見直すお考えがあるか、これ併せて副大臣、お答えいただきたいと思います。

#89
○副大臣(中西健治君) アメリカのバイデン政権が提言していることというのは承知しておりますけれども、我が国について申し上げますと、株式等の譲渡益を含め金融所得については原則として一律二〇%の分離課税が適用されております。この二〇%に上げたのは平成二十六年、一〇%から二〇%にということでありますので、そんなすごい、ずっと以前の話ではないということでございます。これにより高所得者ほど所得税の負担率が上昇する傾向が見られて、所得再分配機能の回復に一定の効果があったのではないかと考えているところであります。
 ただ、更なる金融所得に対する課税の見直しについては、令和三年度与党税制改正大綱に、税負担の垂直的な公平性等を確保する観点から、諸外国の制度や市場への影響も踏まえつつ総合的に検討するとされておりますので、丁寧に検討していくべき課題だと考えております。

#90
○秋野公造君 どの辺にバランスを取れるところがあるのか、よく検討していただきたいと思います。
 先ほど、勝部先生も中央銀行デジタル通貨につきましてお触れになりました。私もこのCBDCにつきましてちょっとお伺いをしたいと思いますけれども、先ほど、現時点では発行する計画はないけれども、しっかり準備しておくことが重要という御答弁もありました。
 今進めている準備がどのようなものなのかということ、スケジュール感を含めましてちょっと具体的に御答弁をお願いします。

#91
○参考人(内田眞一君) お答え申し上げます。
 まず、実証実験ということでございますけれども、先月、実証実験始めました。これ、第一段階ということでございまして、今回はCBDCの基本的な要件、つまり決済手段としてのCBDCの中核でございます発行、流通、還収、これについての技術的な検証を行いまして、実現可能性、あるいは課題がないかということを探ってまいります。この期間につきましては大体一年を想定しておりまして、その後は、第二段階としまして、より複雑な周辺機能、例えばオフライン機能でありますとか、よく言われますがプログラマビリティーと、そういったものを付加できるかどうか、こういったことを検証する予定でございます。
 こうした検証、技術的な検証ですが、経た上で必要と判断されました場合には、CBDCの実際のデザインも意識しながら、民間事業者、消費者が実際に参加する形でのパイロット実験、これを行うことも視野に入れてまいります。
 実証実験はそういうことでございますが、同時に、実証実験と併せまして、これも先ほど若干申し上げましたが、民間事業者あるいは政府をメンバーとします連絡協議会を設置いたしまして、その進捗状況等の情報共有及び御意見を伺うということをやっているところでございます。
 さらに、最後でございますが、CBDCに関する制度設計面の検討というのも同時にやる必要があると思っておりまして、この点に関しましては、海外の中央銀行、日米欧の七中銀で協調してやっておりますが、そういった皆様、あるいは国内におきましては金融機関その他の皆様と協力しながら知見を高めてまいりたいというふうに思っております。

#92
○秋野公造君 ちょっと仮定の話でお答えにくいかもしれませんけれども、仮にCBDCを発行する場合、現金がなくなってしまう局面というのは想定されておりますでしょうか。それはそれでちょっと不便なことになるのではないかと思っておりますけど、ちょっとこれについて見解をお伺いしたいと思います。

#93
○参考人(内田眞一君) 御指摘のとおり、我が国では銀行券に対する信認、一貫して高い、クリーンでありますし、偽造券はほとんどないということでございますので、高い信頼が寄せられているというふうに思っております。
 この点は、先ほどから出ております昨年十月に公表しました取組方針においても明らかにしておりますが、仮にCBDCを発行することになった場合におきましても、現金に対する需要がある限りにおきまして、その供給については私ども日本銀行として責任を持って続けていく考えでございます。そういう意味で、CBDCは現金を代替するということではありませんで、現金と共存してこれを補完していく、そういう位置付けのものというふうに考えております。

#94
○秋野公造君 私がこれさっぱり分かっていないだけかもしれませんけど、なかなかイメージが湧かないので、電子的に保有するということであれば、キャッシュレス支払手段、SuicaとかPASMOとかペイペイとか、こういったものと何が違うのか、この設定次第で、先ほど民業圧迫という話もありましたけれども、そういうことが起こり得るのか、これ、総裁、御確認したいと思います。

#95
○参考人(黒田東彦君) 我が国のみならず、欧米の諸外国でも、民間の銀行あるいは決済事業者が、これまでも様々なイノベーションを駆使して新たな決済サービス、キャッシュレスサービスを提供してきたわけであります。
 日本銀行としては、こうした前向きな取組をサポートする立場にありますので、昨年公表した取組方針でも、民間の知見やイノベーションを活用することの重要性というものを強調しております。
 そうした認識の下、仮に将来CBDCが導入される場合にも、中央銀行と民間銀行による決済システムの二層構造、これを維持することが適当というふうに考えております。
 したがいまして、民間事業者は、CBDCという新たな、現金と同じような最終決済手段ですけれども、決済手段を活用した多様なサービスを顧客に提供することができますし、また、引き続き銀行預金と結び付いたキャッシュレス決済サービスを提供することもできるということでありまして、日本銀行としては、今後とも民間部門と知恵を出し合いながら、デジタル社会にふさわしい決済システムの構築に向けた検討をしっかりと進めてまいりたいと考えております。

#96
○秋野公造君 もう一つ分からないんですけど、それは、CBDCと銀行預金の違いですね。今低金利で余り金利も付かないということでありますから、例えばCBDCができますと、銀行預金からCBDCに移動してしまうといったようなことが、シフトしてしまうということが起こり得るのかどうか。そうなると、銀行の預金が減ると、貸出しなどの金融仲介機能といったものが落ちてしまうのか、金融システムへの影響というのは起こり得るのか、ちょっとそこら辺の御見解、これも総裁にお伺いしたいと思います。

#97
○参考人(黒田東彦君) もちろん、金融システムの安定を確保するということは経済が持続的に成長するための基盤でありまして、日本銀行の目的の一つでもあります。
 この点に関して、例えば銀行預金よりもCBDCの利便性が高くなると、銀行預金が減少して、これを通じて銀行の信用創造に影響を与えると、悪影響を与えるという指摘がございます。こうした指摘に対しまして、CBDCの保有額や利用額に制限を設けるということの是非などが論点になっております。
 いずれにいたしましても、日本銀行として、銀行などによる金融仲介機能の適切な発揮を含めて、金融システムの安全性確保に十分配意しながら適切な制度設計に取り組んでいく方針でありまして、金融システムの不安定化をもたらすようなことはないように考えてまいりたいと思います。

#98
○秋野公造君 中国がデジタル人民元を導入しようと着々と準備を進めるということでありますので、我が国単独でするのか、それとも先進国として協調しながら、一致しながらこのCBDCの導入に向けて準備をするのか。いずれにしろ、加速する必要があるのではないかと思っておりますが、御見解お伺いしたいと思います。

#99
○参考人(内田眞一君) 中国では、今複数の都市でデジタル人民元の発行に向けたパイロット実験が行われているところでございます。
 一方、先進国におきましては、これ先ほど若干申し上げましたが、日本銀行を含めまして日米欧七つの主要中央銀行が集まりまして、昨年以降、CBDCの活用方法、あるいは先端的な技術に関する共同研究を続けておりまして、昨年十月には、CBDCの検討を進める際の基本原則というものを合意をし、取りまとめたところでございます。これは、ハイレベルでは総裁、あるいは私自身も出ておりますが、そういったレベルを含めて真剣に取り組んでいるところでございます。
 日本銀行としまして、こうした七中銀グループの共同研究、こういった場も生かしまして、しっかりと連携を深めていきたいというふうに思っておりますし、その中で様々な理解、これは我々が受け取るだけではなくて、当然、我々がこう考えているということを示していきながら協調を図っていきたいというふうに思っております。

#100
○秋野公造君 コロナ対策、踏ん張りどきでありますので、あらゆる手段を取って国民を守っていただきますよう、中西副大臣始め財務省の皆さん、そして黒田総裁を始め日銀の皆さん、お願いをしまして、質疑を終わります。
 ありがとうございました。

#101
○委員長(佐藤信秋君) 午後一時十分に再開することとし、休憩いたします。
   午後零時二十分休憩
     ─────・─────
   午後一時十分開会

#102
○委員長(佐藤信秋君) ただいまから財政金融委員会を再開いたします。
 休憩前に引き続き、財政及び金融等に関する調査のうち、日本銀行法第五十四条第一項の規定に基づく通貨及び金融の調節に関する報告書に関する件を議題とし、質疑を行います。
 質疑のある方は順次御発言願います。

#103
○音喜多駿君 日本維新の会の音喜多駿です。
 初めに、今委員会で審議中の銀行法の改正法案に関連して、日銀の見解を幾つか伺いたいと思います。
 今回の銀行法改正案の一つの目玉となっているものが業務範囲規制の見直しです。本改正によれば、銀行の子会社、兄弟会社は、他業認可につき個別列挙がなくなり、銀行の創意工夫次第で幅広い業務を営むことが可能となります。加えて、銀行本体の業務についても、デジタル化や地方創生など持続可能な社会の構築に資する業務が追加され、これにより、システム販売やデータ分析、広告業、人材派遣業などが際限なくできるようになります。
 すなわち、これまで厳しく規制されてきた銀行の業務範囲が拡大され、銀行経営の在り方を大きく変える抜本改正案となっているわけですから、金融システム安定の役割があり、日頃より銀行の経営実態の把握、リスク管理体制の点検を行っている日本銀行にも一定の影響を与えるものと考えます。
 一般的に、経営の多角化は新たなリスクが付随すると考えられるところでありますが、この法案の銀行の業務範囲の規制の見直しが日銀考査に与える影響を現段階でどのように認識しているのか、日銀の見解を伺います。

#104
○参考人(山田泰弘君) お答えいたします。
 先生今おっしゃったように、今回の業務範囲規制の見直しは、デジタル化や地方創生など持続可能な社会の構築に向けて期待される金融機関の取組を後押しする観点から講じられたと措置と認識しております。
 日本銀行としては、今般の見直しの影響も含めて、今後とも考査、モニタリングを通じて、金融機関の経営やリスク管理の状況をしっかりと点検していきたいというふうに思っております。

#105
○音喜多駿君 日銀としては、まずは金融機関の動向を見守るということなんだと思いますが、しかし、本改正を見据えて、既に地方銀行を中心に幾つかのデジタルトランスフォーメーションの事例、サービスのリリースが始まっています。
 本改正により銀行が新たな事業モデルを生み出し、脱銀行化の流れを加速させるのであれば、日銀もその体制に合わせた金融システム安定化の仕組みに向けて、この対応、準備を進める必要があります。
 この点、日銀として銀行の経営実態の把握やリスク管理体制の点検を十分に行うためには、コンサルティング業務などこれまでにない業務に精通している、そういう以前とは別の体制、人材が求められてくると思いますが、日銀の今後の方針をお聞かせください。

#106
○参考人(山田泰弘君) お答えいたします。
 日本銀行は、これまでも金融機関の業務あるいはリスクプロファイルの変化につきまして、適切に対応しながら、考査やモニタリングを通じた金融機関の経営実態の把握、あるいはリスク管理体制の点検を行ってきているところであります。
 今般の業務範囲規制についても、その内容を踏まえまして、これまでと同様に、新たに適切な対応を講じてまいりたいというふうに思っております。

#107
○音喜多駿君 要は、今までの延長線上で対応する、できるという御認識なんだと思いますけれども、果たして今回のこの抜本改正案で想定される事態に対して、これが準備が十分なのかというと、本当にそれは大丈夫なのかなという懸念を私は覚えております。
 元をただせば本改正案は何を契機に作られたのかと申しますと、その背景には、これ金融庁の法案説明資料にもあるように、インフレターゲットの長期化とマイナス金利の継続による金融機関の経営の圧迫、これが最重要の要因として挙げられます。
 この長期にわたる低金利環境の責任の一端は、これはやはり率直に申し上げれば黒田日銀総裁も担っているわけでありまして、これ総裁の掲げるインフレターゲットの未達成とマイナス金利政策の長期継続が今回の銀行法改正にもつながっているものと考えますが、金融政策の責任者としての総裁の見解を伺います。
 あわせて、本法案は、先ほど申し上げたように日本の金融システムに大いに評価を与えるものであるとも考えますが、この点についての見解も併せてお聞かせください。

#108
○参考人(黒田東彦君) 今般のこの日銀法改正案そのものについて、私の立場から具体的なコメントをすることは差し控えたいと思いますが、その上で、一般論として申し上げますと、確かに、低金利環境が地域金融機関経営に様々な経路で影響を及ぼしているということは言えると思います。
 まず、一方で、積極的な金融緩和の下で我が国経済は緩やかな景気拡大を続けてまいりました。これによって前向きな資金需要の喚起や、与信費用の減少などを通じて金融機関収益にプラスの影響を及ぼしたというふうに考えられます。しかしながら、他方で、低金利環境の長期化に加えて地域の人口減少などの構造要因から、地域金融機関の基礎的な収益力は低下傾向を続けてきております。
 日本銀行としては、地域金融機関の経営動向や金融仲介機能の状況について、今後とも注意深く点検してまいりたいと考えております。

#109
○音喜多駿君 総裁、慎重に言葉を選んでおられますけれども、インフレ率と金利の話出てきましたので、ちょっと通告はしていないんですが、もう一問、日銀総裁にこの件に関連してお話伺いたいんですけれども、御案内のとおり、今、アメリカで急激な金利上昇、そしてインフレの傾向が見られ、市場が警戒態勢に入っております。アメリカは金融緩和を予想より前倒しで見直すのではないかという観測も流れており、これ、今CPIショックと言われていて、上限では、四月の市場予測は三・六%、上限でも三・九%であろうというところが総合四・二%まで跳ね上がったということで、これ日経新聞のニューヨークの後藤さんって記者がすごく速報を詳細してくださっているんですが、これは非常に、極めて影響が大きいと思うんですね。
 そうなれば、世界と横並びで金融政策を取ってきた日銀の方針にも大きな影響が与えられますし、日本のインフレ率と金利が低利に張り付く一方で、この違いをどう認識しているか。そして、今後の我が国の影響、見通しも含めて、現時点の総裁の見解をお聞かせください。

#110
○参考人(黒田東彦君) 先ほどの答弁の中で日銀法改正と間違って申し上げました。銀行法改正でございます。
 御指摘のように、米国では、この春先以降、ワクチン接種が進んだということや積極的な財政運営などから、需要の回復テンポが早まっております。こうした下で、半導体などの不足や労働市場のボトルネックを受けて、インフレ圧力が強まるリスクがあるという声も聞かれております。
 この点、FRBのパウエル議長は、先日のFOMC後の記者会見で、こうした供給面での制約などから、目先、インフレ率は高まると見られますが、供給制約は経済再開に伴う一時的なものであり、徐々に解消していく可能性が高いというふうに指摘しておられました。
 なお、御指摘の昨日発表された米国の四月のCPIの前年比は四・二%と、二〇〇八年九月以来の高水準となっていますが、これにはこの前年のCPIがエネルギー価格の急落等から大幅に落ち込んでいたことも影響しているというふうに言われております。
 いずれにいたしましても、新型感染症の帰趨やその経済情勢の影響は不確実でありまして、物価の先行きについても不透明な部分が大きいと思います。物価動向を含めた米国経済の情勢については引き続き注視してまいりますし、その上で、我が国の金融政策を運営していく上で日本の経済、物価、金融市場の動向を十分踏まえて、適切な金融政策運営をしてまいりたいというふうに考えております。

#111
○音喜多駿君 これ、なかなか衝撃的な結果であったんですが、四・二%。昨年落ち込んだからというのもあるんですが、それを織り込んだ市場の予測が三・九%だったのを上回ってきたわけですから、やはりこれは想像を超えることが起きているんだろうなというふうに私は認識をしております。
 今、現下で日本も財政出動と金融緩和続けるべきだということに私も変わりはありませんが、ある意味、今日もずっと議論、いつまでやるんだという議論をしてまいりましたけれども、ある意味、この金融緩和とかが許されてきたのは、世界的にもそういうことが行われているからという横並びな面はあったと思いますので、仮にアメリカがそうしたことを見直すのであれば我が国も影響は避けられないというふうに思いますので、こうした急激なインフレ、予想を超えるインフレ基調が来たときに本当に対応できるのかどうか、こうしたことも含めて慎重に注視していかなければいけないと思いますので、この御対応はよろしくお願いしたいと思います。また改めて議論をさせていただきたいと思います。
 それでは次に、暗号資産、ちょっと順番変えまして、ステーブルコインについて先に総裁にお伺いさせていただきたいと思います。
 お手元の資料一枚目を御覧ください。
 現在、USDT、USDCなどの米ドル連動ステーブルコインの発行量が急増する傾向となっており、米ドル連動ステーブルコイン、この取引量も増加をしています。
 USDCを例に取ると、既にビザなどが決済方法として認める方針を打ち出しており、フェイスブックが主導しているディエム、これ旧名リブラですね、この開発も進んできている状況で、海外ではデジタル通貨としてのステーブルコインはますます存在感を深めています。
 また、中国ではデジタル人民元、こちらはCBDC、中央銀行デジタル通貨でありますけれども、これも引き続き話題の中心になってきており、世界的に通貨のデジタル化が進んできております。
 一方、日本の事業者により既に発行されている日本円連動ステーブルコインについては、残念ながら、まだまだ普及しているとは言い難い状況です。しかし、最近では、会社からの給与支払をデジタル通貨化することなど、日本としてもこれらの動きは無視できないものと考えます。
 ステーブルコイン普及による効果としては、インターネット上の円経済圏の拡大、円で会計や税金計算が可能となることによる取引の促進、これらによる外貨獲得などのメリット、多種多様な場面での使用が想定され、非常にプラス面が大きいと考えますが、日本銀行としてステーブルコイン、いかがお考えでしょうか。これ、日銀総裁の見解、お伺いいたします。

#112
○参考人(黒田東彦君) このステーブルコインにつきましては、法的確実性、健全なガバナンス、オペレーションの頑健性やサイバー耐性などがしっかり確保されれば多くの人が利用する便利な決済手段になり得るわけですけれども、一方で、マネーロンダリング、データのプライバシー、消費者や投資家の保護など様々な課題があります。
 こうした下で、日本円連動型のステーブルコインは、足下、発行する動きも見られますが、極めて限定的な発行額にとどまっております。また、海外では、財・サービスの決済手段として広く利用されるにはまだ至っていないもののようであります。
 いずれにいたしましても、このステーブルコインにつきましては、二〇一九年の十月にG7で議論したことを踏まえてG7の議長声明というものが出ておりますけれども、先ほど申し上げたような課題をきっちり克服して、法的確実性、健全なガバナンス、オペレーションの頑健性、サイバー耐性などが確保されますと、今後多くの人が利用する便利な決済手段にはなり得るというふうに考えております。

#113
○音喜多駿君 今日、黒田総裁、元気ないですけど大丈夫ですか。体調とかちょっと心配ですが、大丈夫でしょうか。
 決済手段としてまだ余り広く認められていないというような御認識もありましたけれども、ただ、例えばJPYCなど資金決済法上の自家型前払式支払手段として発行されており、今後は外国と同様にクレジットカードにチャージして決済手段として使われることも見込まれています。今後ますます決済手段としての存在感が大きくなる、これはもう間違いない流れだと思います。
 日本が暗号資産の領域で後れを取ってしまったのは、ここ僅か数年のことなんです。資料の二枚目御覧いただきたいんですが、二〇一七年において、日本は暗号資産の取引において何と世界一でした。しかしながら、現在、その取引量は激減し、また、暗号資産の保有状況も、例えばビットコインでは市場シェアのたったの〇・六九%、アルトコインでは〇・四五%と、完全にこのシェアが海外に流出をしてしまいました。
 今後、ますますブロックチェーンを使ったフィンテック技術が発達していくことが予測される中で、日本銀行としても、これは先ほど総裁がおっしゃったように、規制というのは、保護というのは大事なんですが、これは一方で、中央銀行デジタル通貨などとともにこのステーブルコイン含む民間デジタルマネーをこれ後押しする、規制するばかりではなく促進するような取組が必要ではないでしょうか。
 そこで、もう一つ総裁に伺いますが、事業者発行の日本円ステーブルコインを含む民間デジタルマネーの利便性を高める必要性の観点からも、民間金融事業者の調整役であり日銀ネットの運営者でもある日本銀行が決済事業者間のネットワーク効果を高めるなど決済システムの効率性、これを高めていく取組を進めるべきと考えますが、見解をお伺いいたします。

#114
○参考人(黒田東彦君) 御質問にお答えする前に、まず、いわゆる暗号資産とステーブルコインは御承知のようにかなり異なっておりまして、暗号資産につきましては背景となる資産がないということで、非常に投機的な取引が行われているということで各国の中央銀行はかなり今心配しているわけですね。
 他方で、ステーブルコインは背後に資産があって、まさにステーブルな決済手段を提供できるということで、これは先ほど申し上げたように、しっかりしたシステムができて、課題が克服されれば非常に有効な決済手段あるいは決済サービスの供給になり得るというふうに各国中央銀行も考えております。
 その上で、御指摘のように、既に我が国の銀行あるいはノンバンクの決済事業者が様々な創意工夫を駆使して決済サービスを提供しているわけですが、これらのこの民間デジタルマネーの利便性を更に高めていくためには、まさにネットワーク効果を高める、決済システムの効率性を高める取組を推進することが必要だと思います。
 よく言われるインターオペラビリティーというか、相互に取引が自由にできるように、こういったキャッシュレスサービスがまさにこのデジタル社会にふさわしい安定的で効率的な決済システムの構築が必要であって、そのためには民間事業者間で競争だけじゃなくて一定の協調も必要だというふうに思っておりまして、公的部門としては、民間部門における協調を促進する言わば触媒機能を果たし得るのではないかと、そういった形で民間の前向きな取組を後押しできるのではないかと、日本銀行としても、既存の決済手段の改善や決済システムの高度化に向けて幅広い関係者との議論を進めておりまして、民間の取組をしっかりと後押ししてまいりたいというふうに考えております。

#115
○音喜多駿君 まさに日銀総裁が今おっしゃっていただいたように、ステーブルコインというのは様々な特色、そして前向きな要素も持っているわけでありますけれども、民間事業者の意見聞くと、ステーブルコインというのをそもそも日本がどういうふうに定義をしていて、法的にどこに位置付けようとしているかがなかなか見えづらいと、規制の方向も今後どうなるか分からないというような声も聞こえてまいりますので、是非ここはしっかり民間事業者と意見交換していただいて、世界の潮流に取り残されないように、再び日本がトップに立てるように、是非日銀としても後押しをしていただきたいということを要望いたします。
 残された時間で、喫緊の課題として、現時点での邦人の帰国時の検査証明の問題点について、ちょっと外務省と厚労省に幾つか聞きたいと思います。ちょっと時間ないので、厚労省さんから先に聞きたいと思います。
 現在海外にいる日本人の方、帰国する際は、コロナウイルスの検査をしていただくことになっています。しかし、この検査証明について、非常に手続が煩雑でありコストも掛かるということで、私の下にも改善してほしいという声が多数届いております。お話詳しく伺うと、領事館から帰国時の検査証明については厚労省のフォーマットを使うように指示をされているが、日本独自である特殊書式のフォーマットにわざわざサインを付けて発行してくれる医師や検査所を海外で探すことは非常に困難である、場合によっては翻訳代も掛かってくるということでありました。
 水際対策の強化のために検査証明についてフォーマット化したい、この政府の方針、考えは理解できるんですが、これ形式を厳格化することに意味があるわけじゃなくて、検査証明の内容、これがちゃんと厳格化を図ることができればいいというはずなんですね、元々は。
 厚労省のホームページをよく見ますと、本年四月十六日に、日本入国時、必要な検査証明書の要件についてというリリースを出されており、有効な検体、検査方法、そして検査時間、この三要件を満たすことが必要であるということのみが書かれていて、この三つがあれば十分であるということなんですが、しかしながら、外務省の方とかの対応を見ますと、三要件を満たした検査をした上で、更に所定のフォーマットを使用するようにということで多くの帰国者には指示が出されています。
 繰り返しになりますが、重要なのは手続の厳格化、フォーマットじゃなくて内容、これを厳格化することが大事であるはずです。であれば、日本入国時に必要な検査証明書の要件としては、厚労省指定の検体であること、厚労省指定の検査方法であること、検体採取が出国前の七十二時間以内であること、この必要な三つ。加えて、これが英語で分かる形式であれば、必ずしも所定のフォーマットを厳格に求めるべきでないと考えますが、厚労省の見解を伺います。

#116
○政府参考人(浅沼一成君) お答えいたします。
 現在、新型コロナウイルス感染症の水際対策の一環で、入国者には出国前に陰性の検査証明書の取得をお願いしているところでございます。この検査証明書につきましては、御指摘の氏名、パスポート番号などの人定情報のほかに、出国前検査における採取検体の種類、検査方法、検体の採取日時、結果の判明日などの記載を必要としているところでございます。
 なお、検査証明書につきましては所定のフォーマットを御利用いただくことを推奨しておりますが、今申し上げた必要な事項を記載した任意のフォーマットで御提出いただくことも構わないものとしております。ただ、検査証明書の記載事項の不備などを防止するとともに円滑な検疫手続を行うためには、できればこの所定フォーマットを御利用していただきたいというふうに私どもとしては考えています。
 一方で、個別やむを得ない事情があるということも理解していますが、そういう場合には、先ほど申し上げたとおり、任意のフォーマットでも提出が可能であるというふうにさせていただいているところでございます。

#117
○音喜多駿君 効率の観点、あるいはチェックの観点からその方がいいということは私も分かります。ただ、今御答弁あったように、できるだけフォーマット使ってほしいけれども、ほかのものでも要件を満たしていれば大丈夫であるということを御答弁いただきました。
 ただ、厚労省のホームページを見ても所定のフォーマットを使用することという文言が書いてあって、外務省さんの方でもやはり厚労省指定のフォーマットを使用するということで誘導、指示されているのが実態ですので、この帰国時の検査証明については、厚労省が求める三要件及び検査機関の、検査機関、そういう言語の要素が重要であって、所定のフォーマットを半ば外部から見ると強制されているような現状の手続やあるいは広報発信の在り方、これについてはちょっと見直しをして、今のちゃんと例外というか、推奨はするけれどもちゃんと要件が整っていればそれでもオーケーですよということをしっかり発信すべきと考えますが、厚労省の見解をお伺いいたします。

#118
○政府参考人(浅沼一成君) お答えいたします。
 任意のフォーマットでの提出が可能であるということにつきましては、厚生労働省のホームページでも情報発信、あるいは外務省との連携を通じまして、今議員御指摘のとおり、もう少し分かりやすく周知をしてまいりたいと考えております。

#119
○音喜多駿君 今厚労省さんから、ありがとうございます、前向きな御答弁いただきました。
 外務省さん、この答弁を受けて今後対応を改善していただきたいと思うんですが、最後、外務省の対応について見解を伺います。いかがでしょうか。

#120
○政府参考人(安東義雄君) お答え申し上げます。
 フォーマットそれ自体の考え方については、先ほど厚生労働省の方から説明したとおりでございます。在外公館においても原則として使用していただきたいということでございますが、もちろん例外というか、それ以外のフォーマットについてもその三要件を満たす限りオーケーであるということについては広報させていただいており、また、現地の方で在外公館の方に御相談いただいた場合については、まず在外公館の方でも厚生労働省が決めているそのフォーマットを使ってこの検査証明を出してもらえる医療機関、検査機関というのを、特定できるところについては特定して御案内するということをしております。また、それ以外にも、先ほど委員の方からフォーマットについて英語ということがございましたけれども、実は英語以外にも十五か国語についてこの所定のフォーマットをその現地の言葉に訳して、より使用しやすい形で提供しております。
 いずれにせよ、在外公館を通じて、実際に在留邦人、帰ってこられようとしているその在留邦人の方に御不便が生じないよう、引き続き広報等強化してまいりたいと思います。

#121
○音喜多駿君 今の対応がしっかりと伝わる広報をしていただくこと、そして在外公館もそれにのっとった対応できちんと丁寧に対応していただくということを要望いたしまして、質問を終わります。
 ありがとうございました。

#122
○上田清司君 国民民主党・新緑風会、新緑風会の上田清司です。
 総裁、今日はありがとうございます。
 さて、二〇一三年に総裁になられて二年で二%の物価上昇を掲げられ、アベノミクスの三本の矢と重なり、俗に言うアベクロバズーカ砲が炸裂し、円高是正、株価上昇、企業収益といういいサイクルになりかけました。
 しかし、この間、よく見ていけば、成長率はほぼ一%、物価上昇率は一%に届かず、企業収益も内部留保に積み上がり、投資の促進につながらずに賃金の上昇も当然ない、そして消費の拡大も進まず、結局また投資の拡大というサイクルにならない状態になり、とりわけ一九九七年の賃金のピーク以来賃金が上がらない。こういう、上がらないので高いものは買えない、まさにデフレ圧力が続くという状態になり、総裁もこの二年で二%を実現するというのも次々に先送りされて、今日では何年何月にやるという話もなくなってきたところでございます。
 最近では「貧乏国ニッポン」など、また直近では「安いニッポン」なんという本が出回っております。まさにデフレによって日本が貧乏になっていると。したがって、何らかの形でこの低賃金の日本というものを脱却していかなければ日本の新しい道はないのではないかと思っておりますが、従来の金融緩和に限界があるのではないか、こんなふうにいろいろと指摘されるところであります。
 改めて、目標達成のための新たな手法というのが、先ほど音喜多議員もお話がございました、新しい経済情勢の動きもありますので、その点を踏まえて総裁の御見解を伺いたいと思います。

#123
○参考人(黒田東彦君) 二%の物価安定目標が実現できていない主な理由といたしましては、従来から申し上げているとおり、予想物価上昇率に関する複雑で粘着的な適合的期待形成のメカニズムが根強いということにあると思います。すなわち、長きにわたるデフレの経験によって定着した物価が上がりにくいことを前提とした考え方や慣行の転換には時間が掛かるということだと思います。もっとも、このことは、人々が実際に物価上昇を経験すれば物価上昇が徐々に人々の考え方の前提に組み込まれていくということも意味しておると思います。これまで、大規模な金融緩和は、金融環境を改善させて需給ギャップのプラス幅拡大とプラスの物価上昇率の定着という効果を発揮してきております。
 こうした点を踏まえて、日本銀行は三月に、より効果的で持続的な金融緩和を実施するための政策対応を行いました。この対応によって持続性と機動性が増した長短金利操作付き量的・質的金融緩和の下で強力な金融緩和を粘り強く続けることで物価安定の目標に達成できるというふうに考えております。
 御指摘のとおり、やはりこの賃金が上昇していくということが、物価の上昇と相まって、経済をデフレから脱却させて持続的な安定成長軌道に乗せるという意味では非常に重要だと思います。二〇一三年に大規模な金融緩和を開始して、先ほどもほかの委員の御質問に答えておりましたように、実は物価は一・五%程度まで上昇したわけですね。予想物価上昇率も同じぐらいまで上昇したんですが、賃金が上がってこなかったんですね。そのために結局消費が伸びないということになってしまったと。他方で、もちろん御指摘のように企業収益は増加し、それから雇用も、単に失業率が減るというだけでなくて、女性とか高齢者の就業率も上がって、そういう意味で経済成長にはプラスになり、需給ギャップもマイナスからプラスに転じたということはそうだと思うんですが、それだけでは少なくとも直ちに賃金、物価が適切な上昇率に達するというのには不十分だったということは確かだと思います。
 そういう意味では、金融政策で物価上昇率を上げていくということは可能であるし、日銀の基本的な使命であることは事実なんですけれども、その過程で、やはり先ほど申し上げたような粘着的な価格期待形成、予想物価上昇率の形成プロセスがなかなか変わっていかないので時間が掛かると、時間が掛かって賃金と同時に物価も上がっていくというふうに、時間が掛かるということではないかと。
 ただ、このことは、その金融政策が効果がないということではなくて、我が国の場合には十五年にわたるデフレの経験から、粘着的な期待形成というものが簡単には変わっていかないということで時間が掛かっているということだというふうに御理解いただきたいと思います。

#124
○上田清司君 時間が掛かるということで、実は、まさにメガバンク始め全ての金融機関が収益の大半を海外の債券の売買。理由は、店舗の統廃合、人員の削減。こうしたことがまた改めて、言わば高給取りの人たちが今度は違う言わば所得の低い層の方に流れていく、こういう低賃金の世界をつくっていきますし、また銀行は銀行で、銀行の信用というものを利用したいわゆるカードローン会社がどんどん困った人たちに貸し付けて自己破産者を増やしていくという、こういう構図もあったり、あるいはスルガ銀行などに代表されるように、まさに経営が困難なので、利益至上主義の仕掛けのために、まさに、何というんでしょうか、危ない会社にあえて貸付けをする、あるいは危ない会社と一緒に個人オーナーをだます、まさに犯罪企業と共犯者になっていくというような構図まで出てしまったという、こういう構造がございます。まさに金融機関は展望なき構造不況業種になっているわけであります。
 そこで、銀行法改正というのが出てきているわけでありますが、こうした状況がまさにこの金融緩和、大胆な金融緩和とマイナス金利を始めとする超低金利が何らかな形でここを動かさない限り、私は、やっぱり何だかんだ言いながら、金融機関というのは経済の言わば心臓から送り出す血液だというふうに思いますので、ここがしっかりしないと、少し小手先のことをぐずぐずしても本格的な稼働につながらないと思っています。そういう一番大事なところが弱っているというこの現状も政策上の課題としてあるんで、改めて、こうしたマイナス金利等々の弊害についてどんなふうにしたら本当にそれがカバーできるのか、あるいはカバーしているのかということについて御見解を伺いたいと思います。

#125
○参考人(黒田東彦君) 二〇一六年に実施した総括的検証、あるいは本年三月の点検でも金融緩和の効果を検証するとともに、超長期金利の過度な低下がマインド面などを通じて経済活動に悪影響を及ぼす可能性、それから金融緩和が金融機関収益に累積的にマイナスの影響を与える点を指摘しております。
 日本銀行では、こうした認識を様々な形で政策運営に生かしてきておりまして、例えば二〇一六年のマイナス金利政策導入のときに採用した三層構造では、金融機関収益が過度に圧迫されて金融仲介機能を弱めることがないようにするという観点から、マイナス金利の適用を日銀当座預金のごく一部にとどめております。また、長短金利操作付き量的・質的金融緩和も政策の効果と副作用の両方に配慮できる仕組みになっておりまして、三月の点検も踏まえた政策対応も、副作用を抑制しつつ強力な金融緩和を続けるための工夫であります。
 日本銀行としては、今後も金融緩和の効果だけでなく副作用にも十分配慮しながら丁寧に政策運営を行ってまいりたいと思っております。
 なお、先ほど来申し上げておりますように、金融緩和が金融機関の基礎的収益力にマイナスの影響を与えているということはそのとおりでありまして、この点は十分認識しつつ、かつ金融機関の状況をずっとモニタリングや考査を通じて把握しております。
 御承知のように、トータルの収益が意外と安定してきているわけですね。コロナの下で貸出しがかなり大幅に増えていますので、むしろ増えた貸出しによる収益の増を今からかなり慎重に引き当てなどに充てて将来の問題を起こさないようにしていますので、そういう意味では、金融機関が信用仲介機能は十分発揮しているとは思っていますけれども、基礎的収益力がずっと低下してきて、それをカバーするのは資産運用と。その場合、海外資産の運用などもやっていますので、そちらの面で国際的な金融資本市場の変動がありますとリスクとして顕現するおそれがあるということで、その部分についても、私どもとしても十分リスク管理ができているかどうかを注視していきたいというふうに考えております。

#126
○上田清司君 日銀として一種の救済策として様々なことをやっていただいていることも承知しておりますが、基本的にはやっぱり本質論じゃないというふうに私は理解をしております。
 例えば、上位のメーンバンクの六十行を見ていくと、例えば二〇一九年と比較して二〇二〇年の上位六十行のうち、やっぱり、いわゆる伸ばしている金融機関が全部であればまさに日本経済としてはいい傾向だということですが、うち十五行がマイナスになっているというこの数値などもございます。そういうことも含めて、私は、やっぱり本質の方に行かなくちゃいけないのに、この銀行法の改正についてもですね、本筋じゃなくて、うまく、本来の経営がうまくいかないのでその他の経営でもうけてよという話になってきているような気がいたします。
 菅総理が、地銀が多過ぎるという根拠なきコメントをなさっておられます。地銀が多いか少ないかというのは軽々に判断すべきものではなくて、その地域においてその地銀がどういう役割を果たしているのか、そちらを問うべきであるというふうに思いますし、一般的に言えば、地方においては、関東のごく一部あるいは近畿のごく一部を除けば、大方地銀や信金などがメガバンクを押さえて県内のシェアを圧倒的に持っているわけです。埼玉みたいなところでも、比較的都市圏と言われているんですが、メガバンクは二割も取れないんです。そのくらい地域金融機関というのは一定の信用と一定の発信力等々を持っているわけですから、これをしっかり維持することが地方創生、地域発展につながるものだというふうに私は理解しております。
 菅総理の地銀が多過ぎるということについて日銀総裁はどう思うかという、こういう質問すると、それは答えられないというのが当たり前でございます。それ分かった上で、ただし、何らかの形でこの地域金融機関の重要性、こうしたものについてのコメントは日銀総裁としてきちっとなされるべきではないかというふうに思いますが、この点についてはいかがでしょうか。

#127
○参考人(黒田東彦君) もちろん、菅総理の発言について私の立場からコメントすることは差し控えたいと思いますが、一般論として申し上げると、我が国の地域金融機関の数は欧米に比べて特に多いというわけではありません。
 ただ、やや長い目で見ますと、低金利環境の長期化に加えて人口の減少や成長期待の低下、企業部門の貯蓄超過などの構造要因を背景に、地域金融機関の基礎的な収益力が低下してきているということであります。
 御指摘のように、地域金融機関というのは将来にわたって地域経済をしっかりと支えていくべき必要な金融機関でありますので、こうした金融仲介機能を円滑に発揮していくためにはやはり経営基盤を強化することが重要になるというふうに考えておりまして、もちろんその具体的な方法は各金融機関の経営判断でございますけれども、私どもとしても、そういった経営基盤の強化をして地域金融、地域経済に貢献していこうという金融機関に対するインセンティブを与えるような制度をプルーデンス政策として導入したわけでありまして、今かなりの応募があったわけですけれども、具体的に地域経済を支えていく方策等を示していただいて、それがしっかりしたものである場合には当座預金に付利をするというインセンティブを働かせていきたいというふうに考えております。

#128
○上田清司君 今国会で銀行法の改正案が出されたところでございます。いろいろともう多方面にわたってその趣旨が挙げられているところでありますが、その本質は、収益の苦しい金融機関の業務拡大を通じて収益改善をしてくれと、しなさいと、そのための規制緩和だというふうに理解するのが一番分かりやすいのかなというふうに私は思っているところです。
 また、音喜多議員もそうしたお話もされましたし、今後この審議を通じて議論が出てくるところですが、金融機関の本来の業務である貸出業務等が非常に悪化していると。当然であります。金利が付かないわけですから、手続が様々な形であって、収益にそれがつながらないわけですから、それ以外のことで、いろんな形でそれぞれ今努力をされているんですが、その努力にも限界があるので、もう何でもできるよというようなお話になってきているところであります。まだ私も全て読み上げたわけではありませんが、そういう傾向が出ているなというふうに思っています。
 ちなみに、地方の地銀に代表されるような金融機関は、その地域を代表する民間企業よりも様々な情報を獲得する、あるいは情報に非常にアクセスできるチャンスが多い企業であります。それからまた、その量についても大変圧倒的な量だというふうに思っております。今までみたいに自分の会社が入っているビルのメンテナンスということではもうなくなって、場合によっては根こそぎ取れるかもしれないという、そういうチャンスが金融機関にあるんですが、しかし、このことで地域が本当に発展するのかということに関しては私はちょっと疑問を持っておりますので、これはまた財務金融委員会でいろんな議論が出てくると思っております。
 日銀的には、やっぱり先ほど音喜多議員が言われたように、日銀考査という部分の中でこうした銀行法改正の動きをどんなふうにしっかり見詰めていくのかということについて問いただされたわけでありますが、ばくっとした御回答しかなかったというふうに私は受け止めております。
 そういう意味で、改めて黒田総裁に、こうしたばくっとした受け止め方では、地方創生あるいはまた金融機関の立ち上がりということはなかなか難しいんではないかと思いますので、もっと踏み込んだ形で日銀総裁としてのコメントを出すことでより安心な社会のためになるのではないかと思いますので、金融システム安定のためにももっと踏み込んだ意味での見解を受け止めたい、是非そうした見解を述べていただきたいということを最後に質問にさせていただきます。

#129
○参考人(黒田東彦君) 今般の銀行法改正案そのものについて特定のコメントをするのは差し控えたいと思いますが、私どもの理解では、今般の業務範囲規制の見直しは、デジタル化や地方創生など、持続可能な社会の構築に向けて期待される様々な役割を果たそうとする金融機関の取組を後押しする観点などから講じられた措置だというふうに理解をしております。
 したがいまして、それ自体としては必要であり、適切であるとは思いますが、御指摘のように、それが金融機関としての適切なリスク管理の下に行われるかどうかということはやはり十分注視していく必要があると思いますので、今般の見直しの影響も含めて、今後とも、考査やモニタリングを通じて金融機関の経営あるいはリスク管理の状況を点検してまいりたいと思っております。
 日本銀行のこの考査はかなり広範になっておりまして、銀行や証券会社だけでなく、その持ち株会社とか、そういうところまで含めて対象にしております。
 したがいまして、御指摘のような銀行が自分自身で、あるいは子会社を通じて様々な業務をやっていく場合には、その全体のリスク管理というものを私どもとしても十分点検してまいりたいというふうに思っております。

#130
○上田清司君 終わります。ありがとうございました。

#131
○大門実紀史君 大門でございます。
 黒田総裁への質問は久しぶりでございます。お元気そうで何よりでございます。よろしくお願いしたいと思います。
 八年前、最初に黒田総裁が登場されたときは、バズーカ砲ということで大変険しい、殺気立った雰囲気がありましたけど、最近は本当に大変丸くなられて、肩の力が抜けているようなふうに感じて大変いいなと思っておりますので、是非かみ合う議論をお願いしたいと思います。
 今日、この委員会は、かなり市場関係者が注目をしているんではないかというふうに思うんですけれども、御存じのとおり、この二、三日、株価が急落をしております。十一日の終値でいえば九百円下がって、昨日の終値では更に四百円下がって二万八千百四十七円と、二日で千三百円下がったわけですね。
 今日も、今の時点で、一時半現在で言いますが、五百十円下がっておりまして、二万七千六百四十九円、十一日に比べると千八百円ほど株価が下がっております。
 その下で、市場関係者が、恐らくこの中継も相当の方見ていると思いますけれど、日本銀行がこのときにETFを購入するかどうかということに関心があって、そのときにちょうどこの委員会が開かれて、黒田総裁が何をおっしゃるかということに注目が集まっているんじゃないかと思います。
 私は、もう御存じのとおり、そもそも日銀が株に手を出すべきじゃないということを二十年前から言ってまいりましたけれども、今や日銀のETFの購入額は簿価ベースで三十六兆円、時価で五十二兆円、巨額の購入をされるようになってきておりますので、そうはいっても市場関係者は常に日本銀行がこのETFを買うのか買わないのかということに注目が集まっております。
 今朝のテレビ東京で日経モーニングサテライトというのがございまして、番組がありましたが、その中でも日銀のことが大変話題になっておりました。一つは、今株が足りない現象になっていると。その理由の一つは、日本銀行が株を保有しているからだということ、もう一つは、もちろん企業の自社株買いというのも挙げられておりましたが、そういうふうなことの話題が一つと、もう一つは、やはりこの二、三日の株の急落と日本銀行の対応についてコメンテーターが様々おっしゃっておりました。
 一つは、日銀の顔が見えないという言い方をされておりました。これは、少なくとも十一日、下がるとき、午前中から下がり始めた午後とか、そうじゃなくても十二日、昨日には今までならば日本銀行がETFを買い入れたと、それがなかったと、顔が見えないと。前は、後でちょっと申し上げますが、前は株が下がる、例えば午前中下がると午後には日銀の買入れが入るということで、市場関係者に安心感があったということもコメンテーターが言っておりましたが、ですから、今までならもう日銀がETFを買ってくれていたはずだと、それを二日間手を出さなかったので疑心暗鬼が広がっているという言い方もコメンテーターの方がされておりました。
 これをどう見るかということでありますけれども、現在のところ、先ほど申し上げたとおり、十一日に比べたら千八百円、株が急落をしております。今までならば既に日銀の買いが入っていたはずなのに、入っていないということであります。
 この状況なんですけれども、多分市場関係者は黒田さんに聞いてほしいんじゃないかと。まだ今日、あと一時間ありますが、日銀は株を、ETFを買い支えるのかどうかということにみんな注目しておりますけれど、私が聞くのも何なんですけど、いかがお考えか、話せる範囲でお願いいたします。

#132
○参考人(黒田東彦君) 今年三月の点検で明らかになったことは、昨年の二月から三月にかけてのように、市場が大きく変動した場合に大規模にETF買入れを行うということがリスクプレミアムの抑制の点で効果的であるということが確認されたわけであります。したがいまして、日本銀行によるETFの積極的な買入れが市場の不安定な動きを緩和する効果があるということは確かだと思います。
 点検の結果を踏まえまして、ETF買入れは、感染症の影響への対応のための臨時措置として決定した約十二兆円の年間増加ペースの上限を継続する下で、市場の状況を見極めながら、必要に応じて実施しております。日々のETFの買入れにつきましては、金融政策決定会合で決定した方針の下で、その時々の市場の動向を踏まえて実務的に決定しているというふうに御理解いただきたいと思います。

#133
○大門実紀史君 午前中、秋野委員の質問のときに内田理事が、今と同じように、ETFの買入れとは、買入れするのは、市場が大きく変動したときにまとめて大規模に行うのが効果的とおっしゃったんですね。今もその趣旨をおっしゃったということは、この今の、今現在、千八百円急落というのは市場が大きく変動したというところにはまだ当たらないということでしょうか。

#134
○参考人(黒田東彦君) 先ほど来申し上げていますように、その時々の市場の動向を踏まえて実務的に決定しておるのでありまして、この具体的な運用の内容、運用の方針等につきましては、市場に不測の影響を及ぼす可能性があるためにお答えは差し控えたいと思いますが、基本的な考え方は先ほど来申し上げたとおりでございます。

#135
○大門実紀史君 少しこの一年の日本銀行のETF買入れの経過をちょっと振り返ってみたいと思うんですけれど、去年の二月頃ですかね、新型コロナの感染拡大によって経済の先行き不安が広がって、世界的に株価が急落をいたしました。各国政府は大規模な財政政策を次々と打ち出して、各国の中央銀行も大規模な金融緩和に踏み込んだわけであります。日本銀行も国債購入の上限額を撤廃すると同時に、このETFの買入れ額も従来の年間六兆円から十二兆円に倍増させたということですね。
 世界の株価は、その後急激な今度は上昇、急落して上昇して、逆に株価バブルじゃないかと言われるぐらいに上昇いたしました。日本の株価も、二〇二〇年の三月十九日の終値が一番下だったと思います。一万六千五百五十二円ですかね、それが急速に回復して三万円を突破して、今二万数千円になろうとしておりますけど、一時は三万円を突破したということであります。
 これは、要するに、私だけじゃなくていろんな方がおっしゃっていますが、世界中の中央銀行が大規模な金融緩和をやったそのマネーが、実体経済が余り元気になっておりませんから、結局株式市場に流れ込んで、実体経済は回復していないにもかかわらず株式市場が高騰するというふうなバブルをつくり出したんじゃないかということが指摘されております。
 日本銀行に関して具体的な点ですけれども、日本銀行の二〇二〇年度のETF購入額、月別の推移を見ますと、二〇一九年、その前の二〇一九年、前年は年間で四・四兆円だったのを、去年、二〇二〇年は株が落ち込んだと、その年は七・一兆円に購入額を増やされております。特に、先ほど申し上げました株が暴落した三月、四月の二か月で二・七兆円ものETFが日銀によって購入されております。
 お手元に資料をお配りいたしましたが、さらに、去年の三月の買入れ額を見ると、(1)、(2)の欄がETFの購入額なんですけれども、先ほど申し上げました一番株価が安値となった三月十九日、日銀はそれまでの倍の水準の二千十六億円、二千四億と十二億足して二千十六億円も購入されております。その後も、三月二十三日、二十六日、三十日、同じく、それまでは一千億オーダーだったのを二千億オーダーで購入されております。つまり、日銀は、三月十九日の株価の最安値を押し上げるために、僅か十日余りで八千億円以上の資金をETFの購入に充てたと、株式市場に投入したということがこの数字で分かるというふうに思います。
 こういうことがありますので、市場関係者は、株が急落すると日銀が買い支えてくれるという点で、海外の投資家も含めて、日本の株式市場は日銀のおかげで大変安心感があるというふうなことがあって、それが株価バブルをつくる一因にもなってきたというふうに思います。
 日銀のETF購入については、黒田総裁とも議論したことありますが、要するに、デフレ克服とか物価安定とかいろんなことおっしゃってきたわけですけれども、結果的に、実態として、あと市場のマーケットの評価も含めて、株価の下支えをしている役割が実態として今一番大きくなってしまっているんではないかと思いますが、総裁はいかがお考えですか。

#136
○参考人(黒田東彦君) 従来から申し上げておりますとおり、ETF買入れというものは、株式市場のリスクプレミアムに働きかけることを通じて市場の不安定な動きが企業や家計のコンフィデンス悪化につながるのを防止するということによって、経済、物価にプラスの影響を及ぼすことを目的としております。したがいまして、これは大規模な金融緩和策の一環として行っているものでありまして、特定の株価水準の実現を目指しているわけでありません。
 そう申し上げた上で、先ほど申し上げたように、三月の点検で明らかになったのは、市場が大きく変動したような場合には大規模にETF買入れを行うことがリスクプレミアムの抑制という点で効果的であるということが立証されましたので、先ほど来申し上げているように、十二兆円の年間増加ペースの上限を継続して、その中で、市場の状況を見極めながら、必要に応じてめり張りを付けた買入れを実施していくということに尽きるというふうに思います。

#137
○大門実紀史君 いろいろおっしゃいますが、今実態として、市場が、マーケットが何を思っているか、今日も何を思っているかというのは、私が指摘したことにあるんではないかと思います。
 それで、先ほどからありましたが、日銀がETF買入れをするのは、市場が大きく変動したときにまとめて大規模に行うというのが方針だといいますか、そういうやり方だとおっしゃいましたけど、実は、先月ですね、先月の四月の十九日、二十日、このときに株価が約千二百円、二日で大体千二百円マイナスになっております。四月で日銀がETFを買われたのはたった一回です、たった一回きりです。それが四月、あっ、ごめんなさい、十九、二十日ですね、四月の十九、二十日で、二日にかけて千二百円くらいマイナスになって、日銀が四月にたった一回ETFを、七百億ですが買われたのは、その翌日の四月の二十一日でございます。
 つまり、大規模な変動で大規模にまとめて買うということではなかったと思うんですけれども、四月の十九、二十日に株が下がって、二十一日に七百億買ったというのは、これはどうしてこのときに買われたんでしょうか。

#138
○参考人(黒田東彦君) 先ほど来申し上げているとおり、市場が大きく変動した場合に、大規模にETF買入れを行うことがリスクプレミアムの抑制の点で効果的であるということが立証されたわけですので、そうした考えに沿って、十二兆円の増加ペースの上限を継続する下で、市場の状況を見極めながら、必要に応じて実施するということでありまして、市場の状況というときに、委員の御指摘のように、その前の、あるいはその前の数日でどれだけ下がったとか、そういった言わば機械的なルールでやっているわけではなくて、あくまでも市場の状況、動向を踏まえて実務的に決定しているものでありまして、具体的な、こういうときにこうするというような運用の内容について述べるのは非常に不測の影響を及ぼす可能性がありますので、お答えは差し控えたいと思います。
 誠に抽象的な答弁で申し訳ないんですけど、それ以上のことはなかなか申し上げにくいということであります。

#139
○大門実紀史君 私申し上げているのは、四月にたった一回なんですよね、一回なんですよ。これは何か思い付きで買われているわけじゃないと思うんですね、日本銀行ですからね。一個一個理由があって買われると思うんですけど、このときの理由としては、前々日の株価の下落以外何もないわけでありますので、そういうことじゃないかと。私は下支えを具体的にはやられたんじゃないかというふうに思いますし、それで、改めて今日、この二、三日の話を聞きたいんですけど、そもそも私はずっと、福井総裁の頃からですかね、株に一旦手を出しますと抜けられませんよと、これ何度も申し上げてきたわけですね。日銀が買うときは大量に買いますから、抜けると株が下がりますので、一旦その道に入ると抜けられませんよということ、ですから出口はないですよと、一旦入るとということを再三申し上げてきたわけですけれども。
 その上でなんですけど、今日、おとといも昨日も買われなくて、今日あるいはあしたも、あしたも日銀がETFを購入しないとしますと、売ることはできないけど、少なくとも買わないと、この規模だと、この値下がりだと買わないということをメッセージとして出されるのかなというふうに思うわけですね。
 先ほど申し上げたように、四月二十一日は千二百円の急落で七百億買ったわけで、今回それ以上でございますが、それでも一円も買わないとなりますと、マーケット、市場関係者は、今見ておられると思いますけど、あっ、日本銀行は方針、方向転換したんだと。再三おっしゃっている、もう大規模な、市場が大きく変動したとき、もっと急落したときにもっと大規模に買うという方向に方針転換したんだというふうに恐らく関係者は、今まで千円でも日銀が買ったと思っていますから、方向転換したんだというふうに捉えるんじゃないかと思うんですね。
 私は、このことは、私はその出口戦略、正常化と申し上げてきましたが、そのことにも結び付くかもしれない話なので、私たちは買うべきじゃないと思っておりますので、増やすべきじゃないと、できるだけ市場に戻すべきだと思っておりますので、買わないということに対して何も反対というわけじゃないですよ、このマーケット関係者とは違うんですけどね。ただ、そういう出口に向けたといいますか、正常化に向けた方向転換に取られるし、事実、今まで千円下がっても買うということからすると方向転換になる、そう理解されるんではないかと思いますが、その辺はいかがでしょうか。

#140
○参考人(黒田東彦君) この点については、点検の結果を公表した際にも明らかにしておりますけれども、長短金利操作付き量的・質的金融緩和全体の金融緩和について、緩和を減らすということは全く考えていないと、あくまでも現在のような大幅な金融緩和を機動的かつ持続可能な形で続けていくためにこういった見直しを行ったということでありまして、ETFの買入れにつきましても、先ほど来申し上げているとおり、十二兆円という上限は、昨年のコロナ禍によって市場が不安定化したときに引き上げたわけですけれども、その水準をコロナの感染症の収束後も継続していくということで、全体の長短金利操作付き量的・質的金融緩和という二%の物価安定目標の達成に向けた大幅な金融緩和というのは、二%の目標の達成が見通せる段階になるまで出口とかあるいは正常化ということは考えないということでありますので、あくまでもETF買入れの機動性、持続性を高めて、必要に応じて大胆にETFの買入れを行ってリスクプレミアムの拡大を抑止するという考えには全く変更がありません。

#141
○大門実紀史君 この問題は、今日、明日、あさって、この何日間の日銀の対応全体見ないと何とも、まだ今日、今のこの時点ではですね、と思いますけど、この私の質問が終わってから買うということはないですよね。全然話が違ってくるんですけど。いずれにせよ、それも含めて次の委員会のときでもちょっと検証させていただきたいと思いますが、今日はそういう、ひょっとしたら日銀の方向転換がちょっとあらわになった日かもしれないということでございます。
 次に、このETFに関係して、ETFの貸付制度についても聞きたいというふうに思いますけれども、株は市場で売買されて、貸し借りも行われております。空売りのために借りて売るということが行われておりますが、同様にETFも、売買されるだけじゃなくて、貸し借りが行われております。
 日銀は、去年の六月からETFの貸付制度を開始されました。これは理事の方で結構でございますが、この貸付制度の仕組み、概要をちょっと簡潔に説明してください。

#142
○参考人(内田眞一君) お答え申し上げます。
 ETF貸付制度でございますけれども、ETF市場の流動性の向上を図る観点からやっているものでございまして、日本銀行が保有しますETFを市場参加者に一時的に貸し付けるという制度でございます。貸付対象先は日本銀行の当座預金取引先の中から公募により選定しておりまして、現在、証券会社を中心に十二先になっております。貸付期間は一年以内ですが、双方が随時返済を求め得る扱いとしております。

#143
○大門実紀史君 これは、要するに日本銀行が貸し付ける相手は金融機関、主に証券会社ですよね。じゃ、日銀から証券会社がETFを借りて、証券会社は何のために借りるんでしょうか。

#144
○参考人(内田眞一君) 証券会社の側でETFの売買、あるいは証券会社がマーケットメークをより機動的に行えるようにすると、そうした観点から私どもの貸付制度を利用しているものというふうに承知しております。

#145
○大門実紀史君 後でちょっと図解で説明しますが、要するに流動性を高めるためということかと思うんですけど、資料の二枚目に、ちなみにETFの流動性はどうなっているかということでグラフを示しましたが、別に日本銀行がわざわざ貸付制度なんかやらなくても十分流動性はあるんじゃないかというふうに思いますし、世界の中央銀行で直接株を買っているのは日本銀行だけでありますし、ましてや貸付制度をやるというのはちょっといかがなものかというのがありますし、今おっしゃった必要性からいっても、別に流動性はもう既にこのグラフ見て分かるとおり、特に日銀が乗り出すほどではないんじゃないかというふうに思います。
 指摘したいのは、資料の三枚目なんですけれども、この貸付制度ですね、日銀もやり始めた、これがどういうふうに市場に影響を与えているかということなんですけど、ちょっとその前に、複雑なんですが、ETFの仕組みをちょっと、本当は金融庁に来てもらって説明してもらったらいいんですけど、時間の関係でかいつまんで要点だけ私の方で説明しますが、資料の三枚目なんですけど、ETFというのは、価格が大きく言って二つあります。市場価格、これは、既にETFが取引所で上場されていますので、売買されてその取引で決まる価格ですよね、市場価格ですね。ところが、ETFというのは、御存じのとおり、中身として株式や金融商品で構成されております。その個々の株とか金融商品によって、それを集めるわけですから、それによって決まる金額を基準価額と言います。例えば日経二二五でしたら、日経平均構成する二二五銘柄の価格の合計といいますか、まとまったものが基準価額になります。
 本来、これETFは、個々の株を集めたものですから、市場価格と基準価額と一緒にならなきゃいけないんですけれど、取引する場所が違うんで、往々にしてこれずれが生じるわけですね、市場価格と基準価額というのは。本来は、これずれては困るわけですね。ずれるといろんな問題が起きるわけですね。取引の損した得したがあるんですね。
 ですから、これをできるだけ一致させるメカニズムがあります。それがお手元に配った、これちょっと複雑ですが、この図でありまして、ETFには流通市場と発行市場と二つございまして、流通市場はまさにETFが取引されている、流通しているところでございますが、もう一つ発行市場というのがございます。ここでETFを組成、つくったり、あるいはばらしたりするというのがこの発行市場であります。ここに関わっている人たちが、ちょっと複雑ですが、複数いて、まず投資信託運用会社、これは何とかアセットマネジメントと、野村とかのアセットマネジメントで、ここがETFの発行、運用をやります。運営管理をやります。受託会社というのがございまして、これは信託銀行のことですが、これがETFの中身であるA社の株、B社の株、C社の株をバスケットですね、これを管理、保管するのが信託銀行、受託会社でございます。
 右側の指定参加者が、これが主に証券会社ですけれども、この証券会社が運用会社との間で設定ということと交換ということをやります。設定というのは何かというと、この証券参加者、証券会社が運用会社にA社、B社、C社の株、バスケットを出して、ETFを発行してもらうというのが設定であります。交換はその逆でありまして、指定参加者、証券会社が持っているETFを運用会社に持ち込んで、逆に今度は持ち込んでバスケットを受け取る、引き出す。つまり、現物の株式に変えることができるわけであります。これが発行市場の大まかな仕組みです。
 この仕組みを活用して、先ほど言いました市場で取引されるETFの市場価格と、元々その中身の株とかを集めた基準価額の乖離を縮小していく仕組みが行われるわけであります。
 例えば、ETFの市場価格、そのETFそのものが市場で取引される価格が基準価額、その中の株式を集めた基準価額より大きいとしますと、この指定参加者、証券会社は設定を行います。そういう高い、あっ、ごめんなさい、株を拠出してETFを受け取ると。そうすると、高い、ETFの方が高いですから、利ざやを稼ぐことができます。市場価格が逆に基準価額よりも小さいときは、証券会社、指定参加者は今度は交換を行って、ETFを持ち込んで現物株を受け取ると、その方が利ざや稼げますので、やります。こういう仕組みを通じて価格の乖離を縮小しようということが行われております。
 問題は、これは何もやっちゃいけないわけじゃありません。そうやって価格の乖離を縮小するんですけれども、これは同時に裁定取引でもあるわけです。つまり、本来同じ価値、価格のものなんですが、一時的に価格差が生じたときに割安の方を、あっ、ごめんなさい、割高な方を売って割安の方を買うと。後で反対売買があると利ざやを稼げるというような、絶対損をしないといいますか、裁定取引、確実にもうかる取引が行われるということになります。これも別にやっちゃいけないということではないんですが、ここで相当利ざやが、高速取引を使った場合はちょっとした差が出たときにぱっと取引ができますので、かなり利ざやを稼ぐことも可能です。
 そこに、証券会社は、それは仕事としてマーケットメークということでやってもらう必要あるんですが、指定参加者、証券会社の上に大口投資家というのが書き込まれております。この大口投資家とは一体誰なのかということなんですが、これが資料の四枚目でございます。これは高速取引の一覧表なんですが、の中で線を引いたのはマーケットメーク制度に参加している業者、ものであります。
 マーケットメークというのは、要するにETFの売買を仲介して成立させることを主な仕事とする専門的な集団とか会社ですけれども、同時に裁定取引がやれると、確実にもうかる取引がやれると、利ざやを稼げるということになりますが、それをやっている、マーケットメークをやっている、一覧表と併せて見ると、線を引いたところの、恐らく海外のファンド系だと思いますが、こういうところがこのETFの価格のずれを直すための裁定取引に証券会社を通じて入ってきて利ざやを稼いでいるということになるわけでありますが、黒田総裁はこのことは御存じだったでしょうか。

#146
○参考人(黒田東彦君) これほど詳細には存じておりませんでした。ただ、高速高頻度取引業者が様々な金融商品の価格差に着目して高速、高頻度で裁定取引を行っているということはよく承知しております。
 そうした取引は売りと買いで膨大な注文が出ておりますので、当然、市場機能への影響については様々な見方がありますけど、おおむね、その取引の厚みを生み出すことによって市場流動性あるいは価格発見機能の向上に寄与するというふうに言われておりますけれども、他方で、想定外の大きなショックが生じた場合などに市場の不安定化をもたらすのではないかという見方もあるようです。ただ、裁定取引の性格として、基本的には市場の流動性を増し、価格発見機能の向上に寄与するということではないかと思っております。

#147
○大門実紀史君 これは何も日銀の責任とか言っているわけじゃないんですね。日銀が関与されているETFはこういう世界ですよということを申し上げて、いかがなものかという点もあるということでございます。
 懸念されるのは、日本銀行のこの貸付制度が、こういうことも含めて、このETFの発行の仕組みと併せてちょっとおかしなことに活用されないかどうかということなんですが、これは資料の五枚目、最後に示しましたが、二〇一九年十一月に、日銀はこのETFの貸付制度を始める前に市場関係者との意見交換会というのをされております。その場で、波線引いたところなんですが、その他のところですけど、波線引いたところですが、日本銀行から借り入れたETFの解約が可能であれば、理屈の上では、流動性の低い現物株を取得する目的で大口の借入れが行われ得る点には留意を要すると。
 これは、先ほどの図解のところでいえば、要するに一枚目のところでいいますと、ETFを日銀から借りると。それを先ほどの図解でいいますと、交換ですね、交換の方をやると。交換をしてバスケットを引き出す、つまり現物株に換えるということが、日銀の持っているETFを大量に借りて持ち込んで現物株に換えるということが行われる可能性があるのではないかと。そのときに、流動性の低い現物株を取得する目的で大口の借入れが行われるというようなこともあるのではないかという懸念がされております。
 実態として、お聞きしたら、まだそういうことは起きていないということかも分かりませんが、専門家の言葉でありますので、あながち絶対起こらないとも限らないということはあると思いますが、この点やっぱり留意していく必要があると思うんですが、いかがでしょうか。

#148
○参考人(黒田東彦君) この御指摘の専門家の意見というのは、理屈の上ではETF貸付けが流動性の低い現物株について空売りを行う際に利用され得るという点を指摘したんだと思います。
 もっとも、現物株に交換する目的でのETFの借入れについては、対象株式以外の現物株も伴うことなどから、一般にその対象株式を直接借りた方が安価であるほか、ETFの解約、再設定に相応の負担が生じるということも踏まえますと、実際にこれが行われて現物株の空売りが助長されるようなおそれは極めて低いのではないかというふうに考えております。
 加えて、ETF貸付けにつきましては、市場の価格形成に意図せざる影響を与えないよう貸付金額に上限を設けるなど、適切な運用に努めているところでございます。

#149
○大門実紀史君 一つの懸念の点として、原理的には、ですからコストの関係とかでこういうことは日常的にはなかなかないとは思うんですが、時にはこういうことに、日銀が貸出しするというのは、やっぱりそれはそれで、それを借りてという方が、借りてというようなファンドもいるかも分かりませんので、気を付ける必要があるということで申し上げておきたいと思います。
 いずれにせよ、日本銀行のETFの購入も貸付けも、本来中央銀行がやるべきことではないというふうに私は思います。そのことがやっぱり支えてくれるんじゃないかというような、市場をゆがめるし、何か健全な市場の機能も阻害しているのではないかと思いますし、この貸付制度もそういうことにつながる可能性の方が高いということは指摘をしておきたいというふうに思います。
 それで、全体の話なんですけれど、もう黒田総裁とも何度も異次元金融緩和については議論をさせていただいておりますけど、しばらくぶりですので改めてお考えを聞きたいんですが、要するに、異次元金融緩和の出発点は、日本のデフレの原因からも私たちと考えが違ってきていると思うんですけれど、貨幣現象であるとかいろいろありましたが、結局、当時何度も主張させていただいたように、言い方はいろいろありますけど、賃金デフレとか生産性の問題とかありますけど、いずれも実体経済の方に問題があって、貨幣現象ではないと。それを貨幣現象だけで、金融緩和だけで幾らやってもデフレは、二%目標は到達しませんよということは再三申し上げてきました。
 それの結果として、とにかく国債の保有規模がもう異常に膨らんで、ETFも異常に膨らんでいるというような、ちょっと姿としては、世界の中央銀行の中ではちょっと異形の、異形の中央銀行になっているのではないかということも指摘してきたところでございます。何度も申し上げてきたところでございます。
 この今の時点でまた改めてお聞きしたいのは、じゃ、どうするかというところでいきますと、なかなか出口は簡単に見えないだろうと思いますが、今ちょっとコロナの状況がありますので、これはなかなか収束しないと難しいところありますけれども、それも踏まえてなんですけど、今後の方向として、出口とは言えないけれども、正常化、正常化には踏み出すべきだということも再三指摘させていただいて、いつも、何回か申し上げましたが、五つのことが必要ではないかと。
 一つは、やはり日本銀行として、その時々の政権はいろいろありますけれど、やはり一定、全く独立というのはあり得ませんけど、一定日銀としての独自の判断で物事をお考えになってほしいというのが第一点ですね。
 二つ目には、物価上昇二%目標はもう取り下げるべきだと。これに自縄自縛、縛られていることによって、まあメンツがあるのかも分かりませんけど、これを持っていることによってもう身動き取れなくなっていると。この際、誰も期待もしていませんので、二%目標というのはもう取り下げたらどうかというのが二つ目でございます。
 三つ目には、国債保有残高を減少させる方向に、少なくともその方向を明示すべきだという点です。今のこのコロナの債務、また積み上がっておりますから、これはちょっと別の話なんですけど、どういう会計上のとありますが、日本銀行として大きな方向として残高は減少させる方向を打ち出すべきだという点が三つ目であります。
 四つ目は、その際に、今日もそうなんですけど、マーケットは何を考えているか分からないと、だから疑心暗鬼と言われると。もっとはっきり日銀は正常化に向かいますということでマーケットとの対話を始めると。国債も減らす方向で、ETFも減らす方向でやりますということを、率直な意思の疎通ですね、対話をやって、その際はやっぱり長期保有で持ってくれる、国債を持ってくれるところに移していくとか、もっとオープンにやるという点が四つ目であります。
 五つ目は、やっぱり何度かありましたが、日本銀行が正常化、方向を変えるというときに必ず海外のヘッジファンド等が空売りを仕掛けたり、いろいろなことがありましたので、そういう投機筋の規制を同時にやるというふうな五つの点が必要ではないかということを申し上げてまいりました。
 この前、予算委員会の参考人質疑のときに金融の専門家の方が二人来られたので、同じ、こういう考え方はいかがですかと申し上げたら、お二人とも今はそういう方向が大事じゃないかというふうに御意見、賛同の御意見もいただいたところで、大分時代が変わってきたなという、最初言ったときは何言ってるのという感じでしたけど、デフレの原因も含めて、ずっと言ってきたような方向になってきているんではないかと思います。
 改めて、黒田総裁としてこういう提案についていかが思われるか、お聞きしたいと思います。

#150
○参考人(黒田東彦君) この二%の物価安定目標というものにつきましては、従来から申し上げているとおりの理由でありまして、これを変更する必要があるとは考えておりません。そうした下で、物価安定目標の実現までにはまだ時間を要する状況でありますので、金融緩和の正常化のタイミング、あるいはその際の具体的な対応を検討する局面には至っていないというふうに考えております。
 その上であえて申し上げますと、将来の正常化の局面では、御指摘の拡大したバランスシートの扱いや金利水準の調整というのが主な課題になると思います。その際には、保有国債の償還や各種の資金吸収オペレーションのほか、超過準備に対する付利金利の引上げなどによって対応していくということも考えられます。
 また、ETFにつきましては、仮にそういった状況において日本銀行が買い入れたそのETFを処分するというようなことがあるとすれば、当然、金融政策決定会合で新たな処分の方針ということを定めるということになると思います。その場合の基本的な考え方としては、市場等の情勢を勘案した適切な対価によること、市場等に攪乱的な影響を与えることを極力回避すること、そして損失発生を極力回避することといった基本的な考え方は明らかにしているわけであります。
 もとより、先行き、この物価安定の目標の実現に近づく際には、当然、正常化に向けた戦略や方針について金融政策決定会合で議論して、適切に情報発信してまいりたいと思います。
 いずれにせよ、日本銀行としては、市場の安定を確保しながら、その時々の状況に応じて適切な政策運営を行うということが重要であるというふうに考えております。

#151
○大門実紀史君 終わります。

#152
○渡辺喜美君 みんなの党、渡辺喜美でございます。
 総裁、お疲れさまでございます。連休中はお休み取ることはできたでしょうか。私は、地元の穴場と言われるハイキングコース巡りをやっておりました。結構混んでいましたね。密でした。去年の今頃はほとんど人が出ていなかったところも、もう駐車場が満杯だったりとかですね。去年の連休中、私が行った穴場のハイキングコース、人がいない代わりに熊が出ましたよ。生まれて初めて熊と出くわして、小熊だったんですけど、小熊がいるというのは必ず親熊がどこかにいるなというので、もう退散してきました。
 今年、穴場と言われる高原山の、高原山という山があるわけじゃないんですけれども、その山系、高原山系の八方ケ原という割とフラットなハイキングコースがございまして、そこに山の駅というのがあるんですね。そこのアップルカレーが大変おいしくて、オペレーションをやっているのは実は本業が林業の社長なんですけれども、この社長の話聞いて、ちょっと驚きました。何と木材の、国産材の価格がもう急激に高騰していると、二割とか三割急激に上がっちゃったと言うんですね。もう忙しくてしようがないと、こういう話でした。
 以前、私が何度も言及してまいりました国際商品市況、CRB指数というのがございますけれども、気が付いてみたら、何と五年前の高値、二〇三高地などと言われていましたけれども、その二〇三高地突破して上がっているんですね。二〇七か八ぐらいでしょうか、直近の数字が。
 先ほども御議論がありましたけれども、アメリカではインフレ懸念、CPIショックが出ていると。国際商品市況というのは、御案内のように、エネルギーだけではなくて、いろんな商品、穀物なんかも含めた総合指数でありますから、これは確かにインフレ懸念というのがあるかもしらぬなと。去年の底値はたしか一二〇ぐらいだったんですね、CRB指数は。ですから、そういう議論が出てきてもおかしくはないなと。
 先ほど、黒田総裁はパウエル議長の発言を引用して、これは一時的なものだと、日本流に言ういわゆるコアコアですね、生鮮食品、エネルギーを除いたコアコアの数字でも三%上がっていると。しかし、これは一時的で、FRBは政策は変えませんよと、いきなりテーパリング、出口には行きませんよということを言っておられるんですが、こうしたそのインフレ懸念についてどうお考えでしょうか。

#153
○参考人(黒田東彦君) 確かに、一次産品価格が上昇していることは事実でありまして、特に石油は比較的安定しているわけですけれども、鉱物資源、なかんずく景気動向を反映すると言われている銅の価格などがかなり上がっているということは事実であります。
 その背景には、御案内のとおり、米国経済が予想以上のペースで回復していると、それから、中国経済は最もコロナ禍の影響が小さかったということで、この二つの、世界最大、それから第二番目の経済がかなり順調に景気を回復させて成長が戻ってきているということから、様々な一次産品についても影響が出ているというふうに言われています。
 ただ、先ほど来申し上げていますとおり、一年以上コロナ禍で相当需要が抑制されていたものが一挙に出てきていると、特に成長の回復が著しい米国や中国において出てきていると、それがこれまで経済活動が非常に沈滞していた中で急に需要が出てきて、その需要に供給が追い付けない状況が今生じているのかもしれません。ただ、それは、私自身も、それからIMF等も言っていますけれども、一時的に一次産品価格とか米国や中国などの消費者物価の指数が上昇しても、それはずっと長続きするというものではなくて、やはり一時的なものであろうというふうに言っていまして、私自身もそういうものかなというふうに思っております。
 なお、日本経済そのものについては、先ほど来申し上げていますように、経済成長見通しは若干上方修正したんですけれども、物価見通しはむしろ抑制というか、若干下方修正していまして、ほとんど変わっていないとは言えるんですけれども、この中には、もちろん携帯電話通話料の引下げとか石油価格が低下してきたことの影響が今出てきているとか、いろんなことがあるんですけれども、我が国の場合は、少なくとも米国や中国で見られているような消費者物価の急騰とかそういうような状況では全くありませんし、そういった面で懸念を感じているということはありません。
 ただ、御指摘のように、特に米国の景気回復が極めて著しい中で消費者物価が相当上がったということで、やや金融引締めが近くなったんでないかというようなマーケットの声がありますけれども、私自身は、先ほど来申し上げているように、パウエル議長も言っておられるように、この消費者物価の上昇というのは一時的なものであって、米国や中国の金融政策を変更させるものではないというふうに考えております。

#154
○渡辺喜美君 パウエル議長がテーパリングに言及しないもう一つの理由は、やはりFRBが物価の安定だけでなくて雇用の安定、これを非常に重視しているということなんですね。
 先ほどのCPIについては市場予想が三・六だったと、それが四・二になっちゃった。一方、雇用統計の方は、逆に市場予想をかなり下回った数字が出てきたわけですね、アメリカの場合は。就業者増加数が少ないと、予想よりも、そういう形で出てきていると。黒人とかヒスパニックとか、そういったマイノリティーの失業率が高止まりをしているという構造的な問題もあったりしていまして、やはり雇用の安定というのを重視する立場からは、そう簡単に出口の話にたどり着くということにはならないんだろうと思うんですね。その辺りはいかがでしょうか。

#155
○参考人(黒田東彦君) 確かに、米国の経済の著しい回復とか、そういった状況に比べると、雇用の回復がやや遅れているようなことは市場関係者も指摘しているところでありまして、急激に需要が回復したときに、その需要を満たすようなセクターにすぐに雇用が戻って、生産が増えて価格が抑えられるというふうにならなくて、若干物価が上がったり雇用の回復が遅れるということは、今、一時的な状況としてはあり得るんだと思います。
 だからこれも、米国の場合もやはり基本的に景気の回復に伴って雇用も回復していくというふうに考えていますけれども、今、一時的に需要の回復ぶりに見合うほどに雇用が伸びていないということは事実だと思います。これはいわゆる日本と対照的でして、日本はコロナ禍におきましても失業率の大幅な上昇はなく、しかも今失業率も下がってきていますし、雇用は比較的しっかりしているんですけれども、他面で物価の方は、いろんな一時的な要因があるにせよマイナスですし、そういう一時的な要因を取ったところで若干のプラスが続いているということであって、やや対照的だと思いますけど、米国について、その雇用がいろんな状況で構造的に長期的に停滞するというふうには考える必要はないんじゃないかと、あくまでも、やはり急速に雇用が、失礼、需要が回復したときの一時的な遅れではないかというふうに見ています。

#156
○渡辺喜美君 先ほど来御議論ありますように、金融資本市場はちょっと厄介かなという感じを私も受けているんですね。
 前回、アルケゴスの話をいたしました。これはもしかしたら氷山の一角かもしらぬなと。今回は、アルケゴスというよりは、ARK・ETFというんですかね、日経新聞によるとARKイノベーション、破壊的イノベーション銘柄で組成したETFに狙い撃ちの空売りが入っているというんですね。そうすると、いわゆるハイテク銘柄、新興企業というのは、将来収益は金利に非常に大きく左右されますので、金利が上昇するとなるとこういうところが空売りされてどかんと下がっちゃうと。
 例えば、リモート会議でおなじみのズームなどという会社は高値から五一%下がっていますね。テスラは三〇%ぐらい下がっている、ネトフリ、アップル、アマゾンなども軒並み一〇%から二〇%下がっている、まあこんな調子ですよ。今日の午前中には、何とテスラが車購入でビットコイン利用できますよと言ったのをやめますという話になって、ビットコイン市場が急落していると。一時一五%の急落というんですから、結構な値下がりですね。五万ドル割れになっちゃったというわけであります。
 こうした金融資本市場の動揺というのはちょっとばかにできないのではなかろうかという思いがあるんですが、もし御感想がありましたらお願いします。

#157
○参考人(黒田東彦君) 米国の金融資本市場の動向については、余り私から特別なことは申し上げるつもりはありませんが、アルケゴスと言わず、様々なファミリーオフィスという特定の投資家に投資をさせるということでディスクロージャーがなされていないということから、そのディスクロージャーがない中でレバレッジが非常に高くなっていて、それが御指摘のようないろんな市場の反応、動きによって大きく変動したりするということがあると言われていまして、私の理解するところでは、ディスクロージャーをもう少し徹底させたらいいという議論がアメリカではあるようです。
 ただ、日本に今そういうようなのがあるかというと、そういうのはほとんどありませんので、直接何か日本の金融システムがこういった新たな金融取引によって不安定化するというおそれがあるとは考えていないんですが、日本の金融機関や投資家も欧米のノンバンクなどに投資をしているわけですので、日本の金融システムと欧米のノンバンクなどを含む金融システムの動きが連環する、連環性が高まっているという分析を最近の、最新の日銀の金融システムレポートでも指摘しておりますけれども、そういった意味で、日本国内に今そういうことが起こってもいないんですが、やはり欧米のノンバンクを中心とした金融システムが大きく変動すると間接的に日本の金融システムにも影響は出得るので、その点は日本の金融機関や投資家が十分そのリスク管理を徹底させると、どういった金融資産に投資しているかということを十分把握しておくということは必要だということは私どもも認識しております。

#158
○渡辺喜美君 御案内のように、東京市場というのは七割が外人さんですからね。ドルベースで平均株価見ますと、とっくに史上最高値を更新していたんですよ。別にアメリカのダウとかナスダックが史上最高値更新中だったというわけじゃなくて、日本の株価もドルベースでは史上最高値更新中だったんですね。
 ですから、そういうところがどうも崩れかけてきていると。先ほど大門委員の御質問、マーケットはどうなっているのかなと思って固唾をのんで私も見守っていたんですけど、下げ幅拡大しちゃいましたね。TOPIXの方は日銀がETFまだ買取りやると。日経平均の方はもうやめちゃったわけですね。まず日経平均の方から下げ幅拡大して、次にTOPIXの方も下げ幅拡大みたいな感じが、もう市場閉まっていますので御自由に発言されたらいいと思いますけれども。
 そういうことがあって、やはりこれは日本にまるで影響がないということはあり得ない話なので、もう世界経済、マーケットつながっておりますから、その辺りは日銀の金融政策のかじ取りを行っていく上でも非常に留意しなければいけない問題だと思うんですね。
 先ほども申し上げたように、FRBは雇用というのを非常に重視します。黒田総裁になられて最大の貢献というのは、やはり私は雇用を増やした、就業者数を増やしたということにほかならないと思うんですが、日銀の金融政策の目的として、雇用というのはどのように位置付けられているでしょうか。

#159
○参考人(黒田東彦君) 御案内のとおり、日本銀行法で、日本銀行は物価の安定を通じて健全な国民経済の発展に資するということを理念として金融政策を運営するということになっておりますので、第一の最大の目的は物価の安定であることは事実ですけれども、それは物価さえ安定すればいいということでなくて、あくまでも健全な国民経済の発展、すなわち雇用とか賃金とか企業収益とか、そういうものがバランスよく改善していく中で物価の安定が達成されるということを目的に行っているというふうに御理解いただきたいと思います。
 ただ、米国の場合は、主要先進国の中央銀行の中でほとんど唯一だと思うんですけれども、物価の安定と雇用の極大化というこの二つの使命を与えられているわけですね。ほかの中央銀行はみんな物価の安定ということで、もちろん金融システムの安定というのは日銀であれFRBであれヨーロッパの中央銀行であれ、それも重要な使命なんですけれども、最大の使命というのは物価の安定ということなんですが、米国の場合は物価の安定と雇用の極大化と二つの使命が与えられているというところが違いがあると思いますけれども、結果として雇用の拡大というか、委員の言葉を借りれば就業者数の増加ということは物価の安定を達成する上でも必要なことであり、それ自体大変望ましいことだというふうに思っております。

#160
○渡辺喜美君 黒田総裁には釈迦に説法な話でありますけれども、物価と失業率というのは、これは逆相関の関係にあるわけですね。これはもう大学一年生の経済学の夏休みの前にお勉強するフィリップス曲線の話ですよ。実は、この関係はデフレギャップとか潜在成長率とか、そういう議論とも裏腹といいますか、セットの話になってくるわけであります。
 お手元に二枚紙でこういう潜在成長率の長期的な推移のグラフと、それから需給ギャップのグラフをお配りをしてございます。これ、いずれも日銀の展望レポートから取ってきて、ちょこっと書き加えただけなんですね。これを見ると、非常に面白いことがよく分かります。
 需給ギャップの山と谷がありますけれども、これがほとんど、一ページ目の潜在成長率の山と谷と驚くほど一致しているわけですね。これは言うまでもありませんけれども、需給ギャップというのは、潜在成長率から現在の数字がどれくらい乖離があるかと、こういう計算ですので、それ自体は別に驚くべきことではありません。
 まず、前回、前々回ですか、もお聞きした話でありますが、潜在成長率が長期低迷している最大の理由、それは財政金融政策の失敗にあったと、八番の①ですけど、と私は考えております。
 まず、その潜在成長率の最初の山、八九年から九〇年にかけて来ておりますが、この年には、御案内のとおり、八九年の、平成元年四月に消費税が創設をされたわけですね。翌月五月から公定歩合が引き上げられていきます。その年、八九年の十二月には平成の鬼平と言われた三重野総裁が就任をされて、公定歩合は合計で一年間で三・五%引き上げられていくわけですよ。その結果がこれですよ。この谷底に突き落とされたような潜在成長率のグラフになっております。
 二ページ目の需給ギャップのグラフも似たような展開になっていますね。この頃の日本の資本、民間企業の資本の構造ってどうなっていたかというと、資本対負債の比率が四・三倍ぐらいですよ。丸めて言うと、資本が二だったら負債が八という感じですよ。普通、こういうものは資本主義ではあり得ない話なんですね。資本主義というのはやっぱり資本で負債を支えると、だから半々というのが常識なんですけれども、当時は何でそんなレバレッジが効いたのかというと、それはバランスシートの反対側にある資産、こっちの方が、もう土地神話というのがあって、企業では持ち合い株式構造というのがあって、こっちの資産の方はもう必ず右肩上がりで上がりますよというわけですから、資本が二で負債が八でも幾らでもやっていけたのが当時の日本の資本主義だった、過少資本主義とも言われたものなんですね。そこへいきなり公定歩合三・五%、一年間で上げちゃうわけですから、それはひとたまりもなく日本経済が奈落の底に落ち込んで、そこからなかなかはい上がれなくなっちゃったというグラフですよ。
 これは日銀の展望レポートのグラフに私どもが勝手に書き込んだ話ですが、この山見てくださいよ、その後。二回目の増税、私が一年生議員の頃でありますけれども、一九九七年四月ですよ、ちょうどその頃、二つ目の山。それから、日本銀行がゼロ金利解除をやったのが三つ目の山の手前ですね。量的緩和解除というのもありました、二〇〇六年の三月、これが四つ目の山の頃ですよ。で、リーマン・ショックがあって、せっかくリーマン・ショックから立ち直って黒田総裁が就任してリフレ政策をやり始めた途端に消費増税、一四年の四月にやるわけじゃないですか。そこからまた下がっていくわけですよ、この潜在成長率が。
 どうですか、これ、潜在成長率のこの長期的な推移と財政金融政策と、まるで関係ないと言えるでしょうか。

#161
○参考人(黒田東彦君) 御指摘のこの潜在成長率というものが一九九〇年代以降低下しているわけでありますけれども、その背景としては、少子高齢化などによる労働投入の減少が挙げられておりますが、デフレの下で企業が積極的な行動を控えたことから設備投資の先送りによる資本ストックの伸び率低下、それからイノベーションの停滞による生産性の伸び率低下、トータル・ファクター・プロダクティビティーというものの低下というものも影響したというふうに思われます。したがいまして、経済環境の変化に適合した制度の見直し、あるいはインフラ投資、その下での民間部門のイノベーション促進といったことで成長率を強化していくということが極めて重要であるというふうに思っております。
 日本銀行としても、現在、緩和的な金融環境を提供することを通じて、企業等の成長力強化のための取組を支援してまいりたいというふうに考えております。

#162
○渡辺喜美君 潜在成長率は、このグラフ見ると、足下もうゼロ近辺にあるんですよ。この理由は何でしょうか。

#163
○参考人(黒田東彦君) この潜在成長率の計算は、御承知のようにいろんなやり方がありまして、日本銀行の試算では、このグラフにありますとおり、足下ではゼロ%程度ないし若干のプラスということになっていますが、背景としては、この分析にもありますように、生産性は幾分持ち直しているわけですけれども、感染症に伴う設備投資減少によって資本ストックが減速しているということ、それから、働き方改革に伴って労働時間が減少しているということが指摘されております。
 その上で、この先行きにつきましては、デジタル化の進展などにより生産性が緩やかに上昇していく、そして、足下でも設備投資は底堅く推移しておりますけれども、設備投資が持ち直す下で資本ストックが伸びを高めていくと、それから、働き方改革の影響も一巡して労働時間の減少ペースが鈍化するということから、潜在成長率は緩やかに上昇していくというふうに考えております。

#164
○渡辺喜美君 ということが展望レポートには書かれてあるわけですけれども、要は、コロナで急速に需要が落ち込む、雇用情勢が悪化をする、実はその前から日本経済の停滞、下落傾向が起こっていたんですね。それは言うまでもありません、一九年十月の二回目の再増税ですよ。これによって、もうはっきりと平均消費性向が下がってきていますね。
 せっかく黒田総裁が登場して、いい線まで行って、雇用情勢も随分良くなった。これは二%の物価目標を達成できるなと当時私は思ったんですよ。ところが、一回目の増税、一四年四月、これがピークで、平均消費性向というのはその後ずっと下げる傾向。二回目の増税までは何とか水平みたいな、水平飛行みたいな感じもあったかもしれませんが、もうはっきり今消費性向が下落し、ちょっとそのリバウンドでちょこっと上がっているということなんですけれども、これについていかがでしょうか。三番ですね。

#165
○参考人(黒田東彦君) 九〇年代半ば以降のやや長い目で見ますと、我が国の消費性向は高齢化とともに上昇してきたわけですが、一方、近年の消費性向の動きを見ますと、御指摘のとおり、消費税引上げ後の消費の反動減を生じまして、二〇一四年の四―六月、それから二〇一九年の十―十二月にやや大きめに低下しております。また、昨年の四―六月には、感染症の影響によって消費が大幅に落ち込んだことから、消費性向も大きく低下しております。また、近年の女性や高齢者の労働参加の拡大というものも消費性向上昇の抑制要因となっているという可能性があるというふうにも言われております。
 いずれにいたしましても、消費性向の変動には様々な要因が影響しておりますので、そうした点も念頭に置いて今後の動向を注視してまいりたい。先ほど来申し上げているとおりに、やはり雇用、賃金、企業収益その他が改善していく下で物価も上昇していくという姿がいわゆる好循環というか、望ましい姿であるというふうに考えております。

#166
○渡辺喜美君 この平均消費性向のグラフ、これも展望レポートにありますけど、これ歴史的低水準ですよ。違いますか。
 可処分所得に対する消費の割合、一九年度六六・九%、直近では六一・三%、何と五・六%の減という状況になっているんですね。
 そこで、この展望レポートでは、いやあ、そんなこと言ったって、強制貯蓄という現象があるじゃないですかと。だから、ワクチンが行き渡れば、リベンジ消費などと世間では言っていますけれども、ペントアップ需要、繰越需要、これがどかんと出てくることだってあるんですよというようなことを言っていますが、本当にそんなペントアップ需要、この調子で出てくるのかいなと思うんですね。
 元日本銀行行員であった、渡辺努さんとお読みするんでしょうか、東大経済学部の教授ですけど、この渡辺努教授が面白いことを言っていますよ。緊急事態宣言とかまん延防止措置などのいわゆる介入措置よりも、渡辺教授の研究では、自発的に感染を恐れて、その恐怖心から対面型の支出を抑える情報効果の方がずっと大きいんだという御指摘ですよ。介入効果が一とすると、情報効果の方は三になるというわけであります。介入効果の方は経済にしっかりと被害を与えているのに、それほど健康被害を抑える効果はないんじゃないんですかと、下手な政策だと、こう教授は言っておられるんですね。ですから、今後の国内消費を見る上で、消費者の恐怖心がどれくらいなくなっていくのかの方がずっと大事なんだと、こういう御指摘であります。
 こういう御指摘を踏まえると、本当にこのままワクチンが行き渡って、ペントアップ需要、リベンジ消費が起きるのかと。どうも私はそう簡単にいかないような気がしてならないんですね。一旦恐怖心を植え付けられちゃった人たちは、特に今回の変異ウイルス、若い人たちでも重症化するという傾向がもう顕著に出ているわけですね。そうすると、これ、そんな簡単なシナリオではないんじゃないかという気がいたしますが、いかがでしょうか。

#167
○参考人(黒田東彦君) これ、IMF等もかなり詳しく分析しておりますけれども、ワクチンが普及しますと感染リスクが低下するということによって、これまで抑制されてきた対人接触や移動を伴うサービス消費は再び活発となって、個人消費全体の回復も明確となるというふうにIMFも指摘しておりますし、具体的には米国などでそれが顕著に見られるわけであります。
 ただ、その御指摘の感染症下で抑制された需要を取り戻すという意味のペントアップ需要ですね、これにつきましては、財の消費についてはそういうことは十分あり得ると思いますけれども、サービス消費の場合は一定の期間内に実現可能な消費量には限界がありますので、ペントアップディマンドの顕在化のペースというのは、サービス消費については緩やかなものになるというふうに思います。
 したがいまして、もちろん感染リスクが低下すれば、当然今一番抑圧されている対面型サービス消費というのが再び活発になることは事実だと思いますけれども、取戻しのようなペントアップディマンドがどっと出てくるというのはなかなかサービス消費では、サービス消費自体は回復すると思うんですけれども、物の消費と違って、リスクが低下したからといって前のペースの倍以上何かサービス消費をするというわけにはなかなか時間的なものの中で限界があるのではないかと思います。
 その意味では、ワクチンが普及して感染リスクが低下するということによって消費全体の回復も明確になるというそのIMFなどの分析は正しいと思いますけれども、対面型サービスについてのそのペントアップディマンドがどかっと出てくるというのはなかなか難しいかもしれません。

#168
○渡辺喜美君 とにかく、何度も釈迦に説法を繰り返して恐縮でございますが、この三十年以上の間、日本の財政金融政策が明らかに日本経済の低迷に大きく作用しているのは、もうこれ間違いない事実なんですね。
 ですから、こういう中で、総裁何度も言われるように、予想物価上昇率が非常に粘着的になってきてしまっていると。これはもう頑固な便秘みたいなもので、そう簡単に解消しないんですね。であるがゆえに、財政金融政策というのがもう極めて大事な局面なんですよ。今日は麻生大臣はいらっしゃいませんけれども、財政政策ははっきり言って不十分だと思います。ですから、更に追加の財政出動というのをやってしかるべき。
 一番いいのは、これは万人にひとしく行き渡る減税ですよ。消費税の減税というのが本当は一番いいんですね。これはまた麻生大臣のいらっしゃるときにやりたいと思いますけれども、そういうことを前提としても、追加の金融緩和というのが非常に大事になると考えます。
 毎回申し上げるように、インフレ期待に働きかけるのに一番いいのは長期国債の買取りですよ。ですから、これはもう日本経済がパニックに見舞われた一九九〇年代の後半、もうこのときから日本銀行は二刀流で、長期金利と短期金利と両方、二刀流で見ざるを得なくなってきているわけで、更なる追加緩和について、改めて総裁の御所見をお伺いいたします。

#169
○参考人(黒田東彦君) 金融政策につきましては、先ほど来申し上げておりますとおり、二%の物価安定目標をできるだけ早期に実現するというために、長短金利操作付き量的・質的金融緩和という思い切った金融緩和政策を続けていくと、それが機動的かつ持続的にできるように今点検で更なる改善を図ったわけであります。
 それと同時に、従来からも申し上げているとおり、フォワードガイダンスという形で消費者物価上昇率が、消費者物価の前年比の実績値がプラスになって、それが安定的に持続するまでマネタリーベースの拡大を続けるということをコミットしているわけですし、これもフォワードルッキングな形で物価上昇、二%の物価安定目標に対するコミットメントを明らかにしているというわけであります。
 そうした中で、必要に応じて、更なる追加的な金融緩和というものは必要があればちゅうちょなくしますということも述べていまして、さらに、その際には長短金利の更なる引下げというのも重要なオプションですので、それが十分機能し得るように、金融機関の収益に対する影響を和らげるために特別の付利制度を導入いたしましたので、仮に長短金利下げた場合には付利をするということまでコミットしていますので、今後とも、二%の物価安定の目標をできるだけ早期に実現するために最大限の努力を払ってまいりたいというふうに思っております。

#170
○渡辺喜美君 そのためには、徹底した需給ギャップの解消、需要が超過になると、こういう情勢になりませんと物価は上昇いたしません。そのことを強く申し上げて、質問を終わります。
 ありがとうございました。

#171
○委員長(佐藤信秋君) 本件に対する質疑はこの程度にとどめます。
    ─────────────

#172
○委員長(佐藤信秋君) 新型コロナウイルス感染症等の影響による社会経済情勢の変化に対応して金融の機能の強化及び安定の確保を図るための銀行法等の一部を改正する法律案を議題といたします。
 政府から趣旨説明を聴取いたします。麻生内閣府特命担当大臣。

#173
○国務大臣(麻生太郎君) ただいま議題となりました新型コロナウイルス感染症等の影響による社会経済情勢の変化に対応して金融の機能の強化及び安定の確保を図るための銀行法等の一部を改正する法律案の提案の理由及びその内容の御説明に先立ちまして、一言申し上げさせていただきます。
 本法律案に三か所の誤りがあったことにつきまして、深くおわびを申し上げる次第であります。今回の事案を受け、今後このようなことがないよう、再発防止に向けてしっかりと指導いたしてまいります。
 引き続き、本法律案につきまして、提案の理由及びその内容を御説明させていただきます。
 新型コロナウイルス感染症等の影響により社会経済情勢に様々な変化が生じております中、これに対応して日本経済の回復、再生を力強く支える金融機能を確立することが喫緊の課題となっております。このような状況を踏まえ、本法律案を提出した次第であります。
 以下、この法律案の内容につきまして御説明申し上げます。
 第一に、金融グループの業務にポストコロナにおいて重要となるデジタル化や地方創生などに資する業務を追加することといたしております。また、金融グループによる地域の活性化に資する事業活動を行う会社に対する柔軟な出資を可能といたします。
 第二に、グローバルな拠点配置の見直しを行う海外の投資運用業者が日本拠点の新設をする場合に、届出による参入を認める制度を創設いたします。
 第三に、中小企業等を支援する立場にある地域銀行等が合併や経営統合などの事業の抜本的な見直しを行う場合に、預金保険機構が資金を交付する制度を創設いたします。
 その他、関連する規定の整備等を行うことといたしております。
 以上が、この法律案の提案の理由及びその内容であります。
 何とぞ、御審議の上、速やかに御賛同くださいますようよろしくお願いを申し上げます。

#174
○委員長(佐藤信秋君) 以上で趣旨説明の聴取は終わりました。
 本案に対する質疑は後日に譲ることとし、本日はこれにて散会いたします。
   午後三時三十六分散会
ソース: 国立国会図書館
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