くにさくロゴ
2021/05/06 第204回国会 参議院 第204回国会 参議院 法務委員会 第11号 令和3年5月6日
姉妹サイト
 
2021/05/06 第204回国会 参議院

第204回国会 参議院 法務委員会 第11号 令和3年5月6日

#1
令和三年五月六日(木曜日)
   午前十時開会
    ─────────────
   委員の異動
 四月二十七日
    辞任         補欠選任
     加田 裕之君     山崎 正昭君
     新妻 秀規君     谷合 正明君
 四月三十日
    辞任         補欠選任
     山崎 正昭君     足立 敏之君
     渡辺 猛之君     山田 修路君
     谷合 正明君     安江 伸夫君
 五月六日
    辞任         補欠選任
     山田 修路君     今井絵理子君
     安江 伸夫君     谷合 正明君
    ─────────────
  出席者は左のとおり。
    委員長         山本 香苗君
    理 事
                磯崎 仁彦君
                豊田 俊郎君
                真山 勇一君
                伊藤 孝江君
                清水 貴之君
    委 員
                足立 敏之君
                今井絵理子君
                小野田紀美君
                中川 雅治君
                福岡 資麿君
                森 まさこ君
                山下 雄平君
                山田 修路君
                難波 奨二君
                谷合 正明君
                安江 伸夫君
                川合 孝典君
                山添  拓君
                高良 鉄美君
                嘉田由紀子君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        青木勢津子君
   参考人
       東京大学大学院
       法学政治学研究
       科教授      橋爪  隆君
       弁護士      川村 百合君
       自営業      大山 一誠君
    ─────────────
  本日の会議に付した案件
○少年法等の一部を改正する法律案(内閣提出、
 衆議院送付)
    ─────────────

#2
○委員長(山本香苗君) ただいまから法務委員会を開会いたします。
 委員の異動について御報告いたします。
 去る四月三十日までに、新妻秀規君、加田裕之君及び渡辺猛之君が委員を辞任され、その補欠として山田修路君、足立敏之君及び安江伸夫君が選任されました。
    ─────────────

#3
○委員長(山本香苗君) 少年法等の一部を改正する法律案を議題といたします。
 本日は、本案の審査のため、三名の参考人から御意見を伺います。
 御出席いただいております参考人は、東京大学大学院法学政治学研究科教授橋爪隆君、弁護士川村百合さん及び自営業大山一誠君でございます。
 この際、参考人の皆様に一言御挨拶を申し上げます。
 本日は、御多忙のところ御出席をいただきまして、誠にありがとうございます。
 皆様から忌憚のない御意見を賜りまして、今後の審査の参考にいたしたいと存じますので、よろしくお願い申し上げます。
 次に、議事の進め方について申し上げます。
 まず、橋爪参考人、川村参考人、大山参考人の順にお一人十五分程度で御意見をお述べいただき、その後、委員の質疑にお答えいただきたいと存じます。
 また、御発言の際は、挙手をしていただき、その都度、委員長の許可を得ることとなっておりますので、御承知おきください。
 なお、御発言は着席のままで結構でございます。
 また、各委員の質疑時間が限られておりますので、御答弁は簡潔にお願いいたします。
 それでは、まず橋爪参考人にお願いいたします。橋爪参考人。

#4
○参考人(橋爪隆君) おはようございます。
 ただいま御紹介いただきました東京大学の橋爪と申します。専門分野は刑法でございます。本日は、このように参考人として意見陳述をする機会をいただきまして、大変光栄に存じております。
 私は、法制審議会少年法・刑事法部会の委員として、少年法改正をめぐる審議に参加いたしました。本日は、部会における議論を踏まえて、若干の意見を申し上げたいと存じます。A4で一枚、表裏の資料をお配りしておりますので、それに即して進めてまいります。どうぞよろしくお願い申し上げます。
 まずは、前提といたしまして、今回の少年法改正の概要について確認しておきたいと存じます。
 まず、十八歳、十九歳の者、すなわち、公職選挙法の改正によって選挙権が認められ、また民法改正によって民法上の成年となり親権者の監護教育を離れた者についても少年法の適用を肯定すべきかが問題となりますが、改正法では、少年法の適用年齢を引き下げず、十八歳、十九歳の者も少年法の適用対象としつつも、特定少年という新たな類型を設けて、その取扱いに関する特例を規定しております。
 具体的には、①ですけれども、特定少年、すなわち十八歳以上の少年の保護事件についても、全件を家庭裁判所に送致する全件送致主義を維持した上で、原則として家庭裁判所から検察官に送致すべき事件、いわゆる原則逆送事件の範囲を拡大しております。すなわち、現行法二十条二項によれば、犯行時十六歳以上の者が故意の犯罪行為により被害者を死亡させた罪の事件は原則として検察官送致をするとされておりますが、改正法案六十二条二項では、これに加えて、死刑、無期又は短期一年以上の懲役、禁錮に当たる罪の事件であり、行為当時、行為者が十八歳以上であった場合を原則逆送事件の対象としております。これによって、強盗罪、強制性交等罪、現住建造物等放火罪等の犯罪も原則逆送事件となります。
 ②番ですが、検察官送致された事件、場合も、少年の刑事事件については特別な取扱いをする規定がございますが、特定少年については、これらの特例の適用が原則的に排除されております。例えば、少年について、有期の懲役、禁錮を科す場合には、刑の長期と短期を言い渡し、その範囲で刑を執行する、いわゆる不定期刑の制度がございますが、特定少年にはこれが適用されません。
 さらに、少年が家庭裁判所で保護処分を受ける場合にも、特定少年については、犯情の軽重を考慮して相当な限度を超えない範囲を上限として保護処分に付されます。これは、保護処分について、いわゆる責任主義、すなわち犯罪行為の際の行為責任を上限として処分を課すべきという原則が妥当することを意味します。これによって、虞犯少年は、将来犯罪を犯す危険性があるとはいえ、既に犯罪を犯したわけではなく、行為責任を負うものではないことから、特定少年に関する保護処分の対象からは除外されております。
 最後に、少年事件に関する推知報道を禁止する少年法六十一条につきましても、特定少年のときに犯した事件について公判請求が行われた場合にはこれを適用しない旨の規定が設けられております。
 このような改正法の概要につきまして、以下、意見を申し上げます。
 今回の法改正の契機は、御承知のとおり、公職選挙法及び民法の改正を契機とするものであり、十八歳、十九歳の少年の行動や、その実態の変化に基づくものではございません。したがいまして、十八歳、十九歳の者が生物学的にも社会的にも成長過程にある未成熟な存在であること、そして、万が一非行に走った場合にも、再犯防止、健全育成の可能性を十分に尊重し、重点的な働きかけが必要である点につきましては、一切変わりはございません。また、民法や公職選挙法の年齢要件が改正されましても、年齢要件は個別の法律の趣旨に従って検討すべきでありますので、少年法の適用年齢を直ちに引き下げることが必然というわけではありません。
 しかし、民法や公職選挙法の改正の趣旨が一定の範囲で少年法の適用可能性に影響を有することも事実です。すなわち、民法改正によって、十八歳以上の者は親権者の監護教育に服さず、自律的な意思決定が可能な主体として扱われております。このことは少年法の保護処分の在り方にも大きな影響がございます。
 と申しますのは、現行法の保護処分は、少年が犯罪等の問題行動に出た場合には、親権者の監護教育が十分に機能していないと評価して、言わば国家が親代わりとなって後見的、補充的に少年に介入し少年を保護する制度として理解されております。しかしながら、民法の改正によって、十八歳、十九歳の者は親権者の監護教育を離れます。したがいまして、国家が親代わりに介入するという発想はその前提を失ったと言えます。すなわち、十八歳、十九歳の者についてその健全育成を支援する必要があるとしても、従来の少年法の保護処分と全く同じ原理原則で対応することは民法の改正によって困難になったと言わざるを得ません。
 また、公職選挙法の改正も、十八歳、十九歳の者が国政に参加する主体として責任ある立場で社会に参加することを要求するものと言えますので、論理必然的ではありませんが、これらの者が犯罪を犯した場合にも、社会的な期待の変化を一定の範囲で刑事司法制度に反映させる必要があると言えます。
 このように、十八歳、十九歳は、未成熟で可塑性に富んでおり、重点的な働きかけが必要であるという意味においては二十歳以上の者と区別されるとともに、他方において、今回の民法、公職選挙法の改正によって、後見的、補充的な観点からの権利制約を正当化することが困難であり、自らの行為責任に対応した処分を受けるべき主体になったという意味において、十八歳未満の者とも区別される存在になったと言えます。このような意味において、十八歳、十九歳の者には中間層、中間類型としての評価を与える必要があります。
 そして、このような中間層、中間類型については、少年法の適用対象にとどめた上で一般の少年と区別した特例を設けるのか、あるいは、少年法の適用年齢を引き下げた上で十八歳、十九歳を対象とした新たな特別法を設けるか、二つの選択肢があり得るところであり、今回の改正法案は前者の方向性を選択したものと言えます。私個人は、十八歳、十九歳の者に対しては、後見的、保護的な介入が困難であることに鑑みれば、むしろ後者の方向性を選択し、少年法の適用年齢を引き下げた方が理論的には明快だと考えておりました。ただ、仮に少年法の適用年齢を引き下げたとしましても、十八歳、十九歳が未成熟であり、特別な対応が必要である以上、やはり家庭裁判所の人的資源やノウハウの蓄積を活用して、改善更生、再犯防止に向けられた必要な処遇を効果的に実施することが必要となりますので、仮に特別法を設ける場合でも、その手続や処分の内容については大幅に少年法の規定を準用する必要が生じますので、条文の規定形式がかなり複雑になります。
 このような意味においては、十八歳、十九歳の者を少年法の適用対象として、少年審判手続の対象であることを明示しながら、保護処分の内容や刑事責任の在り方については一般の少年とは違った特例を設けるという改正法の方向性は、立法政策として一定の合理性があるものと評価できます。
 裏面に参りますが、以上の評価を前提に、特定少年に関する特例の内容について若干の意見を申し上げたいと存じます。
 まずは、原則逆送事件の拡大です。原則逆送事件については、保護処分よりも刑事処分を優先するようなことになりますので、少年法における原則と例外が逆転します。このように、刑事処分を原則とすべきかの判断は、その主体が刑事責任を負うべき法的地位にあるか否かによって変わってくると思われます。論理必然ではありませんが、十八歳、十九歳に対する法的評価の変更に伴い原則逆送事件の範囲を拡張することは、十分にあり得る政策判断であると思われます。
 この点につきましては、改正法案では、強盗罪や放火罪等も原則逆送の対象となるが、これらの犯罪の中には必ずしも悪質とは言えないような行為も含まれており、これを検察官送致の対象とすることは適当ではないという批判があるところです。もっとも、強盗罪も現住建造物等放火罪も、いずれも人の生命、身体に対する危険性をはらむ重大な犯罪でございます。また、改正法案は、これらの事件を全て検察官送致する義務を課しているわけではなく、改正法案六十二条二項ただし書において例外が設けられております。例えば、強盗事件につきましても、被害の軽微性等を考慮して検察官送致を行わない決定は十分に可能でございます。
 さらに、十八歳、十九歳の者に対する法的評価の変更は刑事事件に関する特例の適用の排除にも反映されております。これも論理必然ではありませんが、特定少年に対する法的評価や社会的な期待の変更に伴い、一定の重大事件を犯し、刑事処分を受けるべき場合についてまで少年の健全育成を重視した特別な取扱いを維持することは困難であるという価値判断が示されたものと言えます。
 他方、家庭裁判所において、少年に、少年を保護処分に付す場合にも、特定少年に対する保護処分は行為責任が上限となることが明確に示されており、一般の少年の保護事件とはその根拠が変わっております。現在、現行法の少年法の保護処分は、少年の要保護性、すなわち少年に再犯を犯す危険性があり、保護処分によって矯正可能性があることを根拠に課されております。したがいまして、極端な例ではありますけれども、極めて軽微な犯罪であっても、本人の犯罪性が根深く、長期間の矯正教育によって初めて矯正可能であるという場合については、少年院に収容することも可能であります。これは、国家が親権者の代わりに後見的、補充的に介入するという保護処分の性質から導かれる帰結と言えます。
 しかし、民法改正によって、特定少年は親権者の監護教育に服していないわけですので、国家による後見的介入を正当化することは困難であります。したがって、特定少年に対する保護処分は、刑罰と同様、行為責任によって上限を画した上で、その範囲内で少年の要保護性を考慮して決定すべきとなります。特定少年に対する保護処分も、再犯防止、健全育成を目的とする点については変わりありませんが、責任主義と両立する限度でこれらの目的が追求されているわけです。これは、十八歳、十九歳の者の法的地位の変更の必然的な帰結と言うべきです。
 最後に、推知報道の禁止の解除でございます。
 推知報道の禁止は、少年の社会復帰を支援する目的で報道の自由を例外的に制限するものであり、少年の社会復帰、健全育成が報道の自由よりも優先されるべきであるという価値観を前提として正当化されます。そして、十八歳、十九歳の者に対する法的評価や社会的な期待の変化に伴い、重大な刑事事件については、こういった価値観が後退するとして、推知報道禁止の解除を正当化することも可能であろうと考えます。
 この点につきましては、少年法五十五条によって家庭裁判所移送決定の可能性があることから、事後的には保護処分の対象となる少年について推知報道を認める可能性があり、問題があるという批判がございます。もっとも、家庭裁判所によって検察官送致決定が行われ、さらに検察官によって公判請求がなされた事件は、言わば二重のフィルターによって選別が行われておりますので、終局処分の確定いかんにかかわらず、この段階で推知報道の禁止を解除することにも一定の合理性があるように思われます。
 私の意見は以上でございます。御清聴、誠にありがとうございました。

#5
○委員長(山本香苗君) ありがとうございました。
 次に、川村参考人にお願いいたします。

#6
○参考人(川村百合君) 弁護士の川村百合と申します。本日は、意見陳述の機会を頂戴し、ありがとうございます。
 私の経歴の詳細は履歴書をお配りさせていただきましたので、本日の意見のベースになる点に絞って御説明させてください。
 私は、平成九年に弁護士登録をして以降、一貫して子供の権利擁護活動に携わってきました。子供の権利保障を実現するためには、様々な分野を横断した活動が必要となります。そのため、私が実践してきた子供の権利擁護活動は、福祉分野、教育分野、少年司法の分野、少年矯正の分野にわたり、さらには、少年矯正の分野と児童福祉の分野の架橋、橋渡しをすることもあります。そのような経験を踏まえて、私は今般の少年法改正法案には反対です。なぜなら、現行の少年法は、少年の非行防止、将来の犯罪予防という観点から極めて有効に機能していると評価されているため、これを改正すべき立法事実がないからです。
 今回の改正を厳罰化と評することがあります。私は、必ずしも、厳罰化だから今回の改正案に反対しているのではありません。刑罰化に反対しています。刑罰化に反対するのは、少年の更生、再非行予防により効果があるのは刑罰よりも保護処分だからです。
 少年法が予定する保護処分は甘いと誤解されることがあるのですが、保護処分は決して甘いものではありません。少年院では、一日中教育的働きかけの対象とされ、全人格的な成長、発達を期待して、少年の内面にまで立ち入って内省を求めるという教育をします。被害者に対する贖罪意識を醸成する教育、決して表面的ではない、真の反省に至ることができるような働きかけをします。刑務所での懲役刑は反省していようといまいと満期になれば出所できますが、少年院ではいまだ教育的効果が不十分だと判断されれば収容期間を延長することも可能です。
 厳罰化という意味では、私自身は反対していましたけれども、二〇〇〇年以降に重ねられた少年法改正により、重大事件についての厳罰化はとっくになされています。人の死亡という結果が生じている事件を重大事件というならば、今回の改正は、重大事件ではない比較的軽微な犯罪までを原則逆送の対象に含めようとするものです。そのため、逆送後、起訴されても、初犯だからと執行猶予が付いて社会に戻されることが多くなるでしょう。現行法の下では少年院に送致されるような少年たちが、今後は、何らの教育も支援もなく社会に戻されることになります。非行少年たちが社会の中に放置されるということです。それは社会にとって利益になりません。
 十八、十九歳の非行少年はどういう少年なのかということを御理解いただきたいのですが、十八、十九歳の子供は、非行少年ではない一般の子供の平均的なレベルであってもまだ心身の成長発達の途上であり、まだまだ成長発達が見込まれる年齢ですが、とりわけ非行少年の多くは、虐待家庭や貧困家庭など、ハンディのある生活、生育環境の中で育ってきています。中には、先天的な資質上のハンディ、すなわち発達障害や知的障害などがあるにもかかわらず、専門的な治療や療育を受けられなかった子供もいます。そのような背景を持って非行に至ってしまった少年の多くは、年齢に比して人格的発達、精神的発達、知的発達などが未熟あるいは劣っている子たちなのです。それは少年鑑別所で行われる知能テストや心理テストの結果からも明らかです。
 不適切な養育環境で育ってきたがために非行に至ってしまうような少年は、本来、非行に至る前に児童相談所に適時適切に保護されるべき要保護児童でした。しかし、実際には児童相談所が適時適切に保護しなかった子供たちです。また、親が不適切な養育をしているのは、必ずしも邪悪な意図を持ってやっているわけではなく、親自身の病気や知的なハンディや貧困など、様々な理由があって養育能力が不足しているということもあるので、親に対しても福祉的な支援が必要だったのにされていなかったということが少なくありません。すなわち、非行に至る少年とその家族は、社会の中のセーフティーネットからはじかれてしまった親子あるいは家族だということが言える場合が多いのです。
 ここで、改めて少年法の理念について確認しておきたいと思います。少年法一条には健全育成と書いてありますが、これは、我が国が一九九四年に子どもの権利条約を批准する前の古い用語です。子供を人権や権利の主体として考える子どもの権利条約にのっとって少年法一条の理念を現代的に捉え直すならば、それは子供の成長発達権保障と読み替えるべきであると最近の少年法の基本書には書いてあります。そして、非行は、成長の過程において虐待やいじめの被害に遭ったり、貧困、差別などの生育上の困難を抱え、成長発達権が十分に保障されてこなかった子供たちのSOSと言える場合が多いのです。したがって、非行という形で発せられたSOSを契機として、改めて少年の成長発達権を保障し、育て直しをするために選択されるのが少年法上の保護処分であるということになります。
 このような理念に基づいて少年法が採用しているのは、科学主義です。科学主義とは、非行の原因を人間諸科学を駆使して解明し、要保護性を図り、再非行、再犯予防の観点から必要な処分の要否や種類を選択するものです。少年の資質上の問題ないしハンディは、少年鑑別所で心理テスト、行動観察、医師の診察などの心身鑑別を行うこととされています。また、家族関係や交友関係等の環境上の問題は、家庭裁判所調査官が社会調査を行うことになっています。このように、科学主義にのっとって審判が進められ、処分を決められることにより、成人の再犯リスクより少年の再非行リスクは低く抑えられてきました。さらに近年、脳科学の発達により、幼少期からの不適切な養育が脳を萎縮させたり損傷させたりすること、一方で、受容的な育て直しによって、二十五、六歳ぐらいまでは脳が変化することも分かってきました。
 一九四八年に少年法が制定された当時の医学の力では、まだ脳の中まで見てそれを性格や行動に結び付けることはできませんでしたが、でも、先人たちは、経験に基づいて、少年たちには可塑性、変化する可能性があることを知っていました。そのため、第三種少年院、これは以前は医療少年院と呼ばれていたものですが、そこでの処遇は、家庭裁判所の収容継続審判を経れば満二十六歳に達するまで延長することができるのです。
 このような少年法の仕組みが正しかったことを裏付ける最新の脳科学の知見が知られるようになったのに、それに逆行するような実質的な少年法適用年齢引下げになる制度改正を今なぜする必要があるのでしょうか。
 今般の改正案の問題の第一は、原則逆送対象事件の拡大です。
 新たな原則逆送対象事件として、強盗、強制性交、現住建造物放火、それから、いわゆる振り込め詐欺等特殊詐欺も、単純な詐欺罪で立件されるのではなく組織犯罪処罰法を適用して立件されると、短期一年以上の犯罪となります。これらの犯罪は一見するとおどろおどろしい罪名のように聞こえるかもしれません。しかし、非行に至った原因を探ってみると、例えば強盗は、家庭で虐待を受け家出した少年が、おなかがすいてコンビニでおにぎりを盗んだら警備員にとがめられて、逃げようとした際に警備員を突き飛ばしたというような事案もあります。強制性交、放火、特殊詐欺、それぞれの具体例の説明は割愛いたしますが、いずれも少年の資質上あるいは生育上のハンディが背景あるいは原因にあって非行に至っているという典型的な少年事件、少年事件らしい少年事件と言うことができます。
 にもかかわらず、原則逆送対象事件を拡大し、犯情重視、結果重視となると、家裁調査官の調査が弱体します。そして、調査、審判が変質するでしょう。二〇〇〇年に十六歳以上の少年の重大事件について原則逆送規定が創設されたときも、少年法の理念は変わらないと立法提案者は言っていました。しかし、実際には二〇〇〇年以降、調査官調査は弱体化、変質しています。この犯情という概念は刑事裁判的なものです。それを少年法に持ち込むことは、少年法が採用する科学主義、処遇の個別化、教育主義に反します。犯情の軽重を重視するということは、非行原因の個別性を無視して、量刑相場にのっとり、応報刑にシフトするということになります。しかし、これでは再非行、再犯防止にはならないのです。
 次に、実名推知報道の解禁は少年の更生及び社会復帰を妨げるものです。
 そもそも法案では、逆送後起訴されたら実名推知報道解禁となっています。しかし、起訴されても無罪になる可能性はあります。憲法上の大原則である無罪推定の原則からしても、起訴されたからとして実名報道を解禁するのは大いに問題があります。しかも、少年の場合は、起訴後に刑事裁判を受ける中で家裁の審判に戻される可能性があります。にもかかわらず、起訴されたからといって報道されてしまえば、インターネット社会ではどんどん情報が拡散しますから、後に無罪になったり家裁に戻されたりしたとしても取り返しが付きません。また、有罪になって刑に服した場合、残念ながら今の日本の社会では前科者に対して極めて冷たいです。
 したがって、実名推知報道がされた情報がネットで検索して発掘されてしまうと、社会復帰は困難になります。とりわけ就職は困難になります。その結果、非行少年の人生がやり直しが利かないというだけでなく、被害者や遺族の方に対して一生懸命働いて損害賠償をしようにもそれができないということになります。それは被害者の権利を保障することにも反するのではないでしょうか。実名報道されないから少年が悪いことをするという言説があるようですが、それは非行少年たちの実情と乖離しています。
 また、職業制限、資格制限についての特例がなくなることも、就ける職業に制約ができて少年の社会復帰を困難にします。これも実名報道と同じく、少年が社会復帰して働いて収入を得られるようにならないと、結局は被害者への損害賠償もできなくなるということにつながります。
 もう一つ、十八、十九歳の虞犯少年が保護処分の対象から外れたことは、厳罰化とは逆のベクトルですが、要保護性があるのに放置されるという方向であり、大問題であると考えます。
 虞犯少年というのは児童福祉と司法の端境にいる少年たちです。児童福祉行政がその責任を全うできなかった少年たちです。現状、少年院が最後のセーフティーネットになっています。ところが、虞犯が保護処分の対象から外れるとどうなるでしょうか。特殊詐欺などをして生きる、体を売って生きるというような人生になってしまいます。これは将来の犯罪の増加につながります。
 以上のとおり、非常に有効に機能していると評価される法律をいじり、実質的に少年法の適用年齢を引き下げるということは改正ではなく改悪であり、百害あって一利なしと言えます。
 最後に、被害者の権利保障を拡充すること、実効性あらしめることの必要性について申し上げます。
 犯罪被害者やその御遺族の中にもいろいろなお考えの方がいらっしゃいますが、中に少年法適用年齢引下げを望んでいらっしゃる方がいらっしゃるのは承知しています。被害者や御遺族に対して本日の私の意見を押し付けようとは思っていません。ただ、国の制度はどうあるべきかということを考えるときには、犯罪被害者の権利保障と少年の権利保障は対立するものと捉えるべきではなく、それぞれの権利保障を両方とも実現するということが必要だと思います。願わくは、犯罪被害者を生まない社会をつくりたいと思います。
 少年非行の背景にある虐待、いじめ、貧困、差別、これらは私たち社会の病理であり、解決しなければならない問題です。でも、解決できていない現実があります。その現実の中で社会の病理の被害に遭っている少年たちがいる、被害者だった者が犯罪の加害者になるという悪循環があります。非行という形でSOSを出した少年が引き起こしてしまった犯罪被害について、一人少年の責任に負わせるべきではなく、私たち社会全体が一人の人間の成長発達権を保障することができなかった非をわびて、責任を分かち合うべきだと考えます。
 以上です。ありがとうございました。

#7
○委員長(山本香苗君) ありがとうございました。
 次に、大山参考人にお願いいたします。大山参考人。

#8
○参考人(大山一誠君) よろしくお願いします。
 今日は、神奈川県から来た大山一誠です。現在四十二歳です。自営業です。仕事は水道の仕事を十九年やっています。国家試験にも合格し、茅ケ崎市の上下水道指定工事登録店をしています。
 私は、二十五歳の頃から少年院での講話をしてきて、運動会や盆踊り大会の行事にも参加し、そのたびに少年たちに頑張れよと声掛けし、固い握手をしてきました。出院後の少年と関わることもありました。二十か所に及ぶアメリカの刑務所やNGOなどの民間団体の視察で、二度にわたり渡米もしました。現在、妻子いる身なので、静かに生きたい、そう思えば今回の少年法改正を黙って見ていればいいのですが、これまで会った少年らに顔向けができません。そういう思いで今日は来ました。
 私は、まさに今議論されている十八歳から十九歳の頃に少年院に入っていました。
 私の両親は沖縄県の出身者で、父は本島北部の小さな部落、母の両親は奄美大島と徳之島の出身で、母方の祖母は本土の人と区別するため一文字姓を名のらされていました。私は両親が上京したときの子供で、弟がおなかにできたとき、両親は沖縄へ帰ります。両親の間でいろいろとあって、私が三歳の頃、離婚します。乳飲み子の弟と私を連れ、母は姉さん夫婦を頼り、再度上京します。それからが地獄の始まりでした。
 着るものはいとこのお下がり。電気、ガス、水道は止まり、次の母の給料日まで止まったまま。食事もろくになく、抜きになるのも日常的にあり、学校や、いとこの家に行ったときの夕飯が楽しみでした。今でも覚えているのが、食べるものがないときに母にかびたパンを出されたときです。そのカビだらけのパンを言われたとおりカビの部分をちぎって食べるんですが、酸っぱくてとても食べれません。飲み込もうとしても喉を通らない。要らないと言えばたたかれて。
 母は、生活苦で姉さんからお金を借り、それでも足りなければ消費者金融からお金を借りていました。母は私や弟によく暴力を振るいました。しつけとは程遠い、殴る蹴るの暴行。木の棒や布団たたき、ベルトなどでもたたかれました。後に自分が働くようになって気付きましたが、母はお金のなさに苦しみ、おかしくなって自分の子供に当たっていたのです。それが許されるかは別にして、母もかわいそうでした。
 私は、そのような家庭環境から、小学校に上がる頃から同級生に暴力を振るってばかりいました。幼い頃から、両親を恨み、貧乏を恨み、金持ちを恨み、社会を恨んでいたからです。中学生になると非行は進み、喫煙、飲酒をし、暴走族の先輩らと遊ぶようになります。高校は県立に進学しますが、高校にも入れないばかだとは思われたくなかっただけのこと、すぐに暴力事件を起こし逮捕され、高校は退学になります。そして私は更に荒れて次々と事件を起こし、暴力団の人たちとも関わるようになっていきます。
 二度目に逮捕されたのは十七歳の頃で、鑑別所に送致されました。しかし、私は更生しませんでした。それは、私の心の中の様々な恨みが根深いのと、鑑別所が少年を鑑別するところで、教育を受ける場ではなかったからだと思います。
 それから十八歳になってナイフを使用した事件で逮捕され、少年院に送致されます。相手の方は亡くなってはいません。少年院に送致され、初めの頃は院内の生活の仕方や行動訓練を学び、私語は禁止、私語は懲罰の対象になり、刑務所とは違い進級制なので、問題を起こせば一か月単位で出院は延びていきます。そして徹底した体育。社会にいると喫煙や飲酒、薬物に手を染める者も少なくありません。健全な心は健全な体からということです。毎日日記は大学ノート一ページ分が課せられ、週二回の課題作文、裏表のある八百字詰め原稿用紙の裏半分まで書くことも課せられます。そして内省です。壁に向かい正座して黙想するのを一回三十分、日に五、六回行います。こうして社会の誘惑や劣悪な家庭環境、不良交友や暴力団と切り離し、罪と向き合い、自分と向き合っていくのです。
 私の考えを一変する出来事がありました。単独室で内省していたときの話です。幼少の頃からの自分の人生を振り返っていました。怒りや悲しみに満ちた人生です。二つの考えがありました。一つは、もう少年院まで来てしまったじゃないか、もう後戻りはできないぞ、あんなにみんなを恨んでいたじゃないか、社会に戻ったらやくざにでもなろうぜという考えで、もう一つは、まだ戻れるぞ、本当にそれでいいのか、自分の人生もっと自分を大切にしろよと、いろいろなことが頭の中をよぎり、気が付けば涙を流し、おろおろと泣いていたのです。
 自分はこの先どうすればいいのか、考え過ぎて頭がおかしくなっていたのかもしれませんが、そのときに耳元で、何のために生まれてきたんだという声が聞こえたのです。ほかに誰もいない単独室です。私は心を入れ替える決意をします。これまでの自分は間違っていたと思うと、少し楽になった感じを覚えています。
 私は、少年院に入ってあの経験がなければ今の自分はないでしょう。十八歳、十九歳という年齢は、確かに少年でもない、大人でもない年齢です。しかし、私のように、まさに人生の岐路であり、見えない境界線があります。その見えない境界線を本人が越えないように我々大人が目を見張り、教育していくのが明るい社会づくりだと思います。
 続きまして、今回の少年法等の一部改正について三点申し上げます。
 まず第一は、少年院のことです。
 これは私の経験から今まで申し上げてきましたが、改正案は、犯罪の軽重を考慮して三年以下の期間を定めるとなっています。犯罪の軽重というのは素人の私にはよく分かりませんが、犯罪のいきさつや手段がひどいとか被害が大きいとかだと思います。
 ここで気になっているのは、初めに期間が決められたら、その期間が来たら出院できるということです。少年院は進級制度もあり、努力して改善したと認められなければ出院できませんでした。面接や作文などいろいろな働きかけがありました。もし期間が決まっていると、しんから改善をしないで出院を待つようにならないか心配です。そうなると再犯防止の点からも危うくなると思います。
 二つ目の点です。原則逆送の対象事件拡大について。
 二〇一九年のデータになりますが、少年院に送致された少年は千七百二十七名で、男千五百九十四人、女百三十三人です。それから十年遡りますが、二〇〇九年では三千九百四十二名で、男三千五百四十四人、女四百十八人で、十年で半分以下になっています。少子化ではないのかという声もあると思いますが、少年人口比で見ても犯罪は減っていて、少年法が有効に機能していると言えます。
 厳罰化賛成の方々が言う抑止力になるという意見があると思いますが、刑務所の方が再犯が多いと聞いています。刑事犯で検挙された人員のうち再犯者は四八・八%で、ほぼ半分を占めています。少年院では三四%です。少年院の方が有効に機能している証拠ではないでしょうか。
 民法で成人年齢が引き下げられ、選挙権が与えられるようになりますが、社会において責任ある主体として積極的な役割を果たすことが期待される立場と言われますが、高校生や大学生の年齢で一体どれだけの少年が自立しているのでしょうか。
 また、少年院収容人数のうち六四・五%が中卒、高校中退者です。また、その少年らのうち、知的障害、発達障害、その他精神障害が含まれます。そして、虐待された経験を持つ者は、男子三四・六%、女子五四・九%です。多くの少年は家庭の状況によって勉強に動機付けられておらず、知的能力に比し学力が低いのです。同じ十八歳、十九歳の高校や大学に通う少年らとは明らかに大きな差があるというのが私の主張で、その大きな差が責任能力にも影響されると思っています。
 重大事件については、被害者が死亡した場合ですが、それ相応の罪を受けるべきだと思います。その中で、原則逆送致制度の導入、刑の緩和の制限、刑の引上げなど、これまでの法改正で相当程度対応されており、拡大する必要性はないと思っております。
 三つ目、最後になります。推知報道についてです。
 昨今のSNSの普及により個人の意見を発信できるようになり、それ自体はいいことですが、長引く不況、政治不信、コロナ禍により人々は疲弊し、怒りや悲しみに満ちた世の中で、復讐心が入り交じる正義感で誰かを攻撃する人たちがたくさんいます。報道の過熱ぶりも問題です。芸能人が一度問題を起こすと社会全体でこれでもかとこてんぱんにするさまが見受けられます。気分のいいものではなく、私はそれが嫌です。
 加害者は、社会の根強い偏見や悪意のあるうわさのため、住宅の確保や就職など基本的な生活基盤を築くことが難しく、本人に真摯な更生意欲があっても社会復帰が厳しい状況にあります。また、加害者本人だけではなく、その家族も社会からの偏見や差別を受けることがあります。加害者家族の自殺も起きています。そんなの当たり前じゃないかという声もありますが、それでは汚れ多き、人にあらずという意のえた非人であり、江戸時代の身分制度と同じです。
 死刑にでもならない限り、加害者は社会に戻ってきます。社会の一員として生活をするためには、真っ当な仕事に就き、本人の強い更生意欲とともに、家族、職場、地域社会など周囲の人々の理解と協力が何よりも必要です。犯罪から社会を守り、安心して暮らせる社会を築くためには、警察や司法が犯罪の取締りを強化し、犯罪者を罰するだけでは十分ではありません。罪を犯した人が再犯しないよう温かく支援する地域社会づくりが重要なのです。
 そういう理由により、推知報道の解除に反対です。
 二〇一六年、平成二十八年施行の再犯の防止等の推進に関する法律第三条、基本理念にはこう書いてあります。犯罪をした者等の多くが定職、住居を確保できない等のため社会復帰が困難なことを踏まえ、犯罪をした者等が、社会において孤立することなく、国民の理解と協力を得て再び社会を構成する一員となることを支援すると書いてあります。今回の特定少年の取扱いによる改正は矛盾し、行き過ぎた改正だと思っています。
 これまで、少年法の改正が沸き起こるたびに加害者と被害者遺族の意見が衝突するように思います。その一番の問題は、被害者、被害者遺族を救済する制度がないことです。これはつくらないといけません。
 最後に、国には、現在の少年法を維持していただきつつ、被害者、被害者遺族を救済する施策を総合的に策定していただき、実施していただきますようお願いし、終わりにしたいと思います。
 ありがとうございました。

#9
○委員長(山本香苗君) ありがとうございました。
 以上で参考人の御意見の陳述は終わりました。
 これより参考人に対する質疑を行います。
 なお、質疑及び答弁は着席のままで結構でございます。
 質疑のある方は順次御発言願います。

#10
○山下雄平君 自由民主党の山下雄平です。
 お三方には貴重な御意見をいただきまして、ありがとうございます。
 私からは、今度は、大山参考人、川村参考人、橋爪参考人の順番で質問をさせていただければというふうに思っております。
 まず、大山参考人についてですけれども、御自身の経験を赤裸々に語っていただいて、本当にありがとうございます。
 そこで、お伺いしたいのは、少年院を経験された人の中で、大人になっても犯罪を繰り返される人と、そうではなく更生されていく人ということの違いというのはどういったところにあるのかというのを、御自身の経験であったり、周りでいろいろお話をお伺いしたり見てこられた経験からお聞かせいただければと思います。

#11
○参考人(大山一誠君) 私は刑務所の経験がないので、参考人で来る前に少年院、刑務所両方経験した方とお話をして、少年院と刑務所がどう違うのかということを話を聞いてきました。
 私は、少年院で立ち直れたというのは教育があったからだと思います。一般の方や国会議員の方には少年院、刑務所って、大体は分かると思うんですけど、実際にやっぱり経験していないので、どう違うのか分からないと思うので、ちょっと少し説明させてもらってもよろしいでしょうか。
 少年院の場合は、基本的に私語は禁止です。例えば、四人部屋の集団部屋でも、おまえ、どこから来たんだ、何やって来たんだということを言うと懲罰の対象になります。刑務所の場合は私語はオーケーだそうです。おまえ、何やって来た、どこの組なんだというような話は全然しても問題ないそうで、少年の場合はこれは懲罰になりますが、少年の懲罰の場合は単独室で正座をして反省文とか書くんですね。一回の懲罰で一か月、進級制なんで、少年院の場合は。一か月単位で延びていきます。刑務所の場合は、正座はあるんですけど、反省文とか一切ないそうです。日頃の課題作文とかもないそうで。
 私は、自分、体育少年院にいたもので、本当に、腕立て伏せとかスクワットとか各数百回ずつやっていました。グラウンド何十周も走りましたし。刑務所の場合は体育ではなくて運動で、集団でやるのはラジオ体操程度、あとはもうキャッチボールしたり、走りたい人は走ったりとか、もう個人に任せているそうです。
 ふだんの、日頃から、その行動訓練、体育もそうですけど、やっぱり集団の輪を乱すなという、多分社会に照らし合わせているんでしょうけど、そういう日頃からの教育と、あと内省とかによって変われたんだと思うんです。刑務所のその入った方は言っていたのは、正直、出る日にちが決まっていると。それで、更生しようが更生しまいが出れるんだと、少年院とは違うと言っていました。なので、自分が変われたのは少年院の教育だと思います。
 ありがとうございました。済みません、長くなって。

#12
○山下雄平君 ありがとうございました。
 続いて、川村参考人にお伺いしたいんですけれども、少年による事件が起きてしまう背景として、虐待や貧困など、家族の問題であったり、先天的な問題が非常に大きいという話、私もまさにそのとおりだと思いますし、川村参考人がいろんなところでお話しになられた記事も読ませていただいて、やはり福祉的、教育的な役割が非常に重要だというふうなこともおっしゃっておられて、それも、ついても非常にうなずけるところだというふうに思っております。
 川村さんが過去にお話しされた記事の中で、今日、意見陳述の中で触れていらっしゃらない点についてお伺いしたいんですけれども、川村さんは、今回の十八歳、十九歳が少年法の適用から一部外されることについて反対されていて、維持するべきだという御主張だと思うんですけれども、加えて、やはり今の若い人たちの現状を見るにつれて少年法の適用をむしろ二十歳より上に引き上げるべきだと、特に少年院入所の上限である二十六歳までに引き上げるべきだということも触れられていると思うんですけれども、仮に少年法の適用を二十六歳ぐらいまでに引き上げた場合、そのときに、民法の成年年齢や選挙権年齢というものはどうすべきだというふうに考えておられるのか。これは法律の目的が違うので、その点について、その二つについては一切影響しないというふうに、若しくは影響させるべきではないというふうに考えておられるかどうかということについてお伺いさせていただければと思います。

#13
○参考人(川村百合君) ありがとうございます。
 私は、民法成年年齢も本来は引き下げるべきではなかったという考えを持っておりますが、現状、引き下げられたという中において、法律の目的が違うので、それぞれの法律によって年齢はそれぞれ定めることが合理的であるというふうに考えているわけです。
 そして、少年法がいわゆる国親思想を取っていて、まあ家庭的な環境が悪いので国家が親代わりになるという考え方を取る場合には、民法上成年か成年でないかということが影響するというお考えもあるようですが、私は、先ほど申し上げたとおり、少年法の理念というのは、できた当初と子どもの権利条約が批准された後とでは考え方が変わってきているというふうに考えております。
 そして、国親思想というのは子供を保護の対象と見る、保護の客体と見る考え方ですが、子どもの権利条約は、先ほども申し上げたとおり、子供を権利の主体、人権の主体として捉えるべきという発想にあって、子供の成長発達権を保障するのが少年法であるというふうに考えております。これは、成長発達権を保障しなければいけないというのは若年成年であってもそれが当てはまるということになりますから、二十歳でぴったり切れるというものではないと思っています。
 そして、この子供の成長あるいは若年者の成長発達権を保障するということは、その人の最善の利益にかなう、将来の利益にかなうということになるので、それは、民法上の成年年齢に達していたとしても、将来の最善の利益にかなう成長発達権保障ということを実現する制度をつくるということは決して矛盾していない、民法と矛盾しない考え方だというふうに思っています。
 その場合に、やはり成長発達権が保障されるような制度であるかどうかということ、余計な介入で不利益なことを強いるばかりということではなくて、成長発達権が保障されるような制度になっているかということはもちろん問われるとは思います。
 以上です。

#14
○山下雄平君 ありがとうございます。
 続きまして、橋爪参考人にお伺いしたいんですけれども、今ほどの川村参考人の御指摘を踏まえつつ、いわゆる少年法の適用年齢を引き下げるのではなくて、本人の成長であったり発達の度合いといった個々の実態に即した判断ができるような法体系にすべきだという主張について、橋爪参考人のお考えをお聞かせいただければと思います。

#15
○参考人(橋爪隆君) お答え申し上げます。
 非常に難しい問題でございますけれども、私、今、大学におりますと、大学三年生は二十歳なんですね、二十歳になっても全然やっぱり未熟な者はいっぱいいるわけです。そういった意味では、十九歳、二十歳ってほとんど変わりがないわけなんですが、やはり二十歳になりますと、まあ成人であるわけですね。やっぱり本人の意に反して不利益を課すためには何か責任が要ると思うんです。つまり、何か犯罪を犯して、非難ができるがゆえにそこに対しては介入ができると思うんですね。つまり、何といいますか、未成年であって少年であるがゆえに、本人の意に反して不利益を課すことが例外的に正当化できるわけでありまして、成人については、幾ら本人が支援や保護が必要であるとしましても、やはり本人の意に反して不利益を課すためには責任が要ると思うんです。
 そういった意味では、責任の範囲で処分を受けるものと。責任がなくても後見的な支援ができるかということにつきましては、やはり民法の規定を基準として考えざるを得ないというふうに考えております。つまり、民法が十八歳を成人としておりますので、十八歳からは責任を持って、言わば親権者の監護を離れて、自らが主体的な決断ができるというふうな意思決定をしているわけです。
 そういった意味からは、やはり責任によって処分の内容をコントロールするか否かの基準としましては、やはり民法の規定を参照した上で十八歳を基準とする以外には方法がないように考えております。
 以上でございます。

#16
○山下雄平君 加えてもう一点お伺いしたいんですけれども、ほかのお二人の御指摘によると、いわゆる矯正施設において、例えば改善を促すような、例えば入所期間の短長を後で事後的に決めるなどの仕組みであったりとかが欠けているのでなかなか矯正施設では改善が促されないというような御指摘がありましたが、そういった点について、その問題点についてどう考えていらっしゃるか、またどういうふうに改善していけばいいかというお考えがございましたらお聞かせください。

#17
○参考人(橋爪隆君) お答え申し上げます。
 まずですが、改正法案の少年院送致処分は上限三年でございますけれども、その範囲内で家庭裁判所がまずは決定をします。さらに、それを上限とした上で、矯正機関の方で具体的に判断をした上で期間を短期化できるわけですね。つまり、そういった意味では、常に固定した期間があるわけではなくて、そのあくまでも対象者の改善度合いに応じて処遇機関の方で柔軟な対応ができます。
 そういった意味では、頑張っても頑張らなくても刑期が決まっているというものではないような感じがしておりますので、そういった意味では、改正法案の中でも本人に目標を与えて改善更生を促すことは十分に可能であるというふうに考えております。

#18
○山下雄平君 ありがとうございます。
 以上で終わらせていただきます。

#19
○真山勇一君 立憲民主・社民会派の真山勇一です。
 三人の参考人の方、今日は、東京では緊急事態宣言も出されている、そういう中でおいでいただきまして、本当にありがとうございます。貴重なお話伺いましたので、質問をさせていただきたいというふうに思います。
 まず、橋爪参考人にお伺いしたいんですが、橋爪参考人は法制審のメンバーでもいらっしゃったということですね。結局、法制審の最終的な結論の中では十八歳、十九歳というのはどういうふうに、どんなふうに呼ぶのかということがなかったわけですけれども、結局、法案の段階で特定少年という言葉が出てきましたね。私はこの特定少年という言葉にとてもちょっと引っかかるというか、気になるんですが、やはり法律というのは、その一つできることによって独り歩きを始めるということですね。
 私が橋爪参考人にお伺いしたいことは、特定少年という一つの、一くくりの十八歳、十九歳に決めたこと、この位置付けについてどういうふうに考えていらっしゃるのかということと、それによってやっぱり何かいろんな影響出るんじゃないかと思うんですが、その辺りをどんなふうに見ていらっしゃるか、伺いたいと思います。

#20
○参考人(橋爪隆君) お答え申し上げます。
 法制審議会では、御案内のとおりですが、十八歳、十九歳を中間類型というふうに扱った上で、それをどのように呼称を制定するかについては立法作業に委ねる決断がされております。
 特定少年という用語でございますが、正直、私も若干違和感が全くないわけではないのですけれども、年長少年という言葉は既に使われているんですね。そういう、年長少年と別の概念を使わざるを得ないという観点から考えると、特定少年というやや違和感がある表現でございますけれども、これを使わざるを得なかったというふうに理解しております。
 特定少年という言葉の響きは、やはりそれは今後私たちの方で、中間層、中間類型、すなわち年長少年であって、なお支援が必要であるけれども、しかし、さらに、自分の責任に応じて責任を負担すべき存在というふうな位置付けをまた与えるような形で議論をした上で、実態に対応するような実質を盛り込んでいきたいというふうに考えてございます。

#21
○真山勇一君 ありがとうございました。
 次に、川村参考人にお伺いしたいんですけれども、川村参考人の中で、少年院教育の問題についてちょっとお伺いしたいと思うんですが、本当に現在のこの更生、少年院の更生という、こういう環境というのは本当に機能しているのかどうか。反省して、本当に反省して、それで更生するということは大事だと思うんですが、こうしたことは、今、やはり変えると、この今の機能が失われるのではないかという懸念もお持ちではないかと思うんですが、その辺りはいかがでしょう。

#22
○参考人(川村百合君) 真の更生、真の反省というのがどういうことかというのはなかなか難しい問題だとは思いますが、真の反省という言葉を使わせていただきますけれども。
 先ほども申し上げたとおり、被害者としての側面を持っている、背景を持っている少年が加害者になってしまったときに、その加害行為について反省し、被害者に、自分が加害したその被害者に対して、あるいはその遺族に対して真の謝罪の気持ちを持つというためには、まずは自分が被害者であったことが受容されケアされるということが必要だと考えています。
 少年が非行を犯し、逮捕され、鑑別所に行き、少年院に入りという過程の中で、さんざん厳しくは接しられてきますし、また、そうでなくても、自分がやったことが悪いことだ、この社会の中で許されないことだということは、頭の中では当然分かっているわけです。
 でも、じゃ、その自分がやったことのゆえに被害者がどれだけ傷ついたか、あるいは御遺族がいる場合に御遺族がどれだけ悲しい思いをしているかというような、その気持ちを考えてみましょうといったときに、いや、でも、自分は、暴力、さんざん暴力を振るわれて生きてきた、そのときに誰も助けてくれなかった、痛かったけど、でも、それは、心を閉ざして、痛みだけを右から左に受け流して今まで生きてきたというような少年は、どうして、自分は被害に遭ったときに、暴力を受けたときに助けてもらえなかった、誰も謝ってくれないのに、どうして自分は今捕まって、その被害者に悪いという気持ちあるけれども、でも何でこんなに言われなきゃいけないんだろうというふうに思う、ますます被害感情を強めて心を閉ざしてしまうということになりかねないと思っています。
 ですから、少年院での教育というのは、まずは少年の被害性、少年の生きてきた人生のつらかったことなどを受け止め、受容して、その上で、でもこれは、あなたがされてきたことは許されないことであった、でも、それを誰も止めなかった、そのことを誰も謝罪していない、それは許されないことである、この社会の中で本当はあってはならないことである、それを、私たち社会の一員としてあなたに対して本当に申し訳ないと思う、でも、その上で、自分がやったことが人をどれだけ傷つけたのかということを考えられるようになりましょうというステップが必要なはずです。
 なので、厳しく厳しくやるということでは真の反省というのにはたどり着かず、まずは受容してケアすると。その上に真の反省があるとすれば、やはり刑務所ではなく、少年院の教育が奏功しているということが言えると思います。

#23
○真山勇一君 川村さんにもう一つ伺いたいんですけれども、いわゆる推知報道なんですが、今回、推知報道が少し緩められるということなわけですが、実際に、川村さんのこれまでの経験の中で、その少年の中に、実名が報道されないからいいんだとか、少年だから罪を受けないとか、軽くて済むんだということで実際に非行に走ってしまうという、そういう少年というのはやっぱり多いんでしょうか。
 例えば、推知報道を広げることによって、それが一つの、何といいますかね、防ぐための手段になるのかどうか、その辺りについてお伺いしたいと思います。

#24
○参考人(川村百合君) 私が経験した中で、つまり私が接した少年の中で、推知報道がないからいいんだとか刑務所に行くことはないからいいんだということで非行に至ったという少年は皆無です。出会ったことがありません。
 もちろん、世の中にそういう少年がゼロかといえば、いるかもしれません。ただ、現代型の今の非行は、先ほど申し上げた、いろいろな背景があるということを申し上げましたけれども、二十年ぐらい前に、暴走族華やかなりし頃にはそういう非行集団の中でいろいろ悪知恵を付けられて、どうせ刑務所に行かないんだとか、どうせ報道されないんだとうそぶくような少年がいたかもしれませんが、今はそのような集団非行というのはもうほとんどないんですね。孤独に追い詰められて、それでもう非行というSOSを出すしかなかったという少年は、そのように、自分が報道されるかどうかとか、刑務所に行くかどうかとか、厳罰に処せられるかとか、そんなことを考えている少年に私は出会ったことがありません。
 逆に、非行を犯してしまった後で、実際には報道がされていないけれども、でもネット上ではいろいろな情報が出ているという中で、自分が周りの人には犯罪者というふうに知られてしまって、それで社会復帰できないのではないか、仕事に就けないのではないかということで悩んでですね、それで疑心暗鬼になってしまって、実際には報道されていないんだけれども、周りの人がみんな自分のことを知っているような気がするということで、疑心暗鬼になってしまって仕事を変わらざるを得なかったというような少年に出会ったことはあります。

#25
○真山勇一君 ありがとうございました。
 次に、大山参考人にお伺いしたいというふうに思うんですが、今の川村参考人の話ともちょっと通じるところがあるんですけれども、大山参考人御自身どう思っているか伺いたいんですが、今のように、未成年なら処罰が軽くて済むとか少年なら名前が出ないからいいんだとかっていう、そういう意識というものは、大山さん御自身そういう意識があったかどうか、あるいはお仲間、仲間の中でそういうふうな考え方の少年がいたかどうか、その辺りを聞かせてください。

#26
○参考人(大山一誠君) 私がその非行に走っていた頃なんですけど、未成年だから名前出ないとか、そういうつもりはなかったです。
 ただ、土地土地の不良集団というか、ありますよね。そのグループに入っていたので、やっぱり、例えば鑑別所へ行ったら、何というんですか、勲章ではないですけど、もう思考とかが、思考がそういう状態なんです。日々起きている、周りにいる友達、先輩、例えば暴力団の人とずっとつながっているから価値観がそういうふうになっているんですね。
 そういうつもりはなかったです、未成年だから名前が出ないとか。

#27
○真山勇一君 分かりました。ありがとうございます。
 それからもう一つ。
 大山参考人の今お話伺っていると、最初は、その少年院、鑑別所、反発を感じていらっしゃったようですが、心の変化があって、やはり必要だ、逆にそこでの、入ったことは自分の人生にとってはいい経験だったということをおっしゃっていましたが、その心の変化、大きな心の変化になったきっかけというのは何ですか。

#28
○参考人(大山一誠君) 先ほど話した内省だったんですけれども。自分は、不良交友だけじゃなくて、暴力団とか在日韓国人の先輩とかもいたりして、その人の家が暴力団だったりとか、そういう先輩とかがいて、そこに、朱に交わればじゃないですけど、そこにいると染まっていくんですよね、人間って。考え方もそうだし、行動もそうだし、そういうふうに染まっていって、それが正しいと思っていたし、これまで社会を恨んでいたりとかそういう気持ちもあったんで、根深かったんでずっとそのままであったんですけど、先ほど話したとき、内省のときに、自分の五年先、十年先、二十年先ということを真剣に考えたんです、初めて。そのときに、もう見えない境界線があるんですよね。もう次は刑務所だし、もし心を入れ替えなければ、その暴力団の人たちと一緒になっていたかもしれないです、もしかしたら。
 そこの少年院の先生たちの教えもありました。例えば、私の少年院とかなんかは一緒に先生たちも体育やったんですよね、ほかの少年院とかだと、ちょっと珍しいんですけど、命令すればいいだけ、指示すればいいだけなんですけどね。
 その中で、心がどんどん変わってきました、やっぱり。自分の劣悪な家庭環境だとか不良交友だとか暴力団と、社会から切り離されてやっと素の自分になれたというか、本当にこのままでいいのかというのを感じたんですよね。それを感じる少年というのは少なくはないと思います、全員とは言えない、言えないですけどね。もっと根深い、例えば在日中国人であったりとか在日韓国人とか、そういう、被差別部落の出身者であったりとか、そういうのが根深く残っている人たちはやっぱりその人個人だけではないので一概には言えないと思いますけど、私はそこで心が入れ替わりました。

#29
○真山勇一君 お三方、ありがとうございました。
 終わります。
    ─────────────

#30
○委員長(山本香苗君) この際、委員の異動について御報告いたします。
 本日、山田修路君及び安江伸夫君が委員を辞任され、その補欠として今井絵理子さん及び谷合正明君が選任されました。
    ─────────────

#31
○伊藤孝江君 公明党の伊藤孝江です。よろしくお願いいたします。
 三名の参考人の先生方、本当に今日は貴重な御意見を賜りまして、ありがとうございます。
 まず、橋爪参考人にお伺いをさせていただきます。
 法制審における議論についてお伺いをしたいんですが、今回の少年法の改正を検討する前提として、現行の少年法に対する評価ですね、十八歳、十九歳に対しても有効に機能しているという点では法制審でも意見の一致を見ているというふうに承知をしています。この有効に機能しているという評価をされた根拠についてはどのように考えられているのかということを教えていただけますでしょうか。

#32
○参考人(橋爪隆君) お答え申し上げます。
 今御指摘ございましたように、少年法部会におきましても、少年法における処遇というのが有効に機能しているという前提で議論が進んでおります。そこにおきましては、やはり再犯率と申しますか、少年院へ入所した方の再犯率がやっぱり低いということも含めまして、現在の少年法の仕組みというのは有効に機能しているというふうに考えて議論を進めてまいりました。

#33
○伊藤孝江君 ありがとうございます。
 その再犯率が低いということを踏まえて少年法が機能しているという中で、ただ、今回、その現行の少年法の枠組みを維持しながらも、十八歳、十九歳に対しては原則逆送対象事件を拡大するということも含めて改正案が示されているところでもあります。
 今回、この十八歳、十九歳に対する特定少年という位置付けをすることについて、公職選挙法の改正だったり、また成年年齢の引下げというところが関連しているというところが大きいのかなというふうには考えているんですけれども、厳罰化という趣旨なのかどうかですね。特に、世論では少年法は甘過ぎるというような意見も、それが、私は、自身は誤解だと思っていますけれども、そのような意見も大きいところでもありますし、今回の改正案について、少年犯罪に対して厳罰化という観点を入れたものなのかどうか、厳罰化という点に対して法制審でどのような議論がなされたのかという点について教えていただけますでしょうか。

#34
○参考人(橋爪隆君) 今の点でございますけれども、厳罰化という議論を特に法制審でした覚えはございませんし、私個人も、今回の改正といったものが少年犯罪に関する厳罰化であるというふうには考えてございません。あくまでも少年処遇は有効に機能しておりますけれども、今御案内のとおり、民法の改正が大きいと思うんですね。やっぱり十八歳からが成人であって、社会的に責任を負うべき主体というふうな位置付けがあるわけです。
 そうしますと、十八歳の者は民法においては成人として、まあ一人前であるという評価があるわけですので、十八歳の者が犯罪を犯した場合についてもそれ相応の責任といったものを負担する必要があるだろうという観点で、まさに十八歳の少年の法的地位の変更に伴った修正を行っているというわけでございまして、言わば新しい法的な地位、身分に即した改正を行うわけでございまして、特に少年犯罪が横行しており厳罰化の必要があるといった議論をしたことではないと承知しております。

#35
○伊藤孝江君 ありがとうございます。
 次に、川村参考人にお伺いをさせていただきたいと思います。
 今回の改正法案では、原則逆送対象事件が拡大をされています。ただ、もちろん、家庭裁判所の調査官の調査の結果次第では、刑事処分以外の措置を相当と認めるときは例外が認められているところでもあります。ここで、特定少年、十八歳、十九歳に適切な処分がなされるかどうかというところでは、家裁調査官の調査の在り方、また内容が大変大きく関わってくるのかなというふうに思っています。
 先ほど、川村参考人の御意見の中では調査官調査の弱体化という御指摘もあったところなんですけれども、本来、全件家裁送致とされた趣旨からしますと、原則逆送対象事件であっても、この調査については逆送しないための特段の事情があるか否かを調査するというだけでは足りなくて、特定少年の要保護性についても十分な鑑別、調査が行われる必要があるのではないかというふうに私自身は考えているところです。原則逆送対象事件とそれ以外の事件と、どちらの事件においても調査官調査は同じようになされるべきであるというふうに考えているところです。
 そこで、川村参考人にお伺いを三点させていただきたいと思っています。
 まず、現状の原則逆送対象事件に関して、調査官調査の運用というのがどういうふうになされているのかという評価について、また、原則逆送事件の運用が硬直化しているというふうな指摘もされるところでありますけれども、併せてその点についてもお伺いできればと思います。そして、原則逆送対象事件における要保護性の調査の必要性について、特に今回拡大される対象になる事件について、要保護性の調査というのがどのように重要かどうかという点についての御意見をお聞きできればと思います。

#36
○参考人(川村百合君) ありがとうございます。
 今おっしゃったように、原則逆送対象事件であろうがなかろうが、少年の要保護性を十分に調査する必要があるというふうに私も考えておりますが、現実には、二〇〇〇年の少年法改正以降、私たち弁護士の目から見ると、必ずしも十分ではない、十分な調査がなされてきていないというふうに言わざるを得ない実態があると思います。それは、二〇〇〇年改正前から、調査官、家裁の調査官をされておられた方たちも、そのことは残念ながらということでお認めになっている発言も聞いておりますので、まあ間違いない評価だろうというふうに思っています。
 やはり、現実には、犯情、犯罪自体の直接の動機とか犯行態様とかその結果ということで逆送するかしないかということが基本的に決められてしまった場合に、特段の事情があるかどうかということをその少年の根深い生育歴や資質上の問題などに遡っての調査ということはされなくなってきているように思います。例えば、本当にその生育歴を調査するのであれば、昔であれば三世代、親の世代、おじいちゃん、おばあちゃんの世代まで調査しろというふうに言われていたというふうに聞いているんですけれども、最近はそのようなことはされている調査票は見なくなってきています。
 それから、例えば、調査官が少年に面会する回数も、昔だったら四回、五回と面会していたものが、二回、三回ぐらいでもう特段の事情なしということで逆送の決定を、逆送の意見を書くというようなものも見られています。また、例えば、家庭訪問をして実際にその家に行ってみて、少年の気持ちになってみて少年を理解しようとするんだというふうに私は二〇〇〇年より前から調査官をしている方にお聞きしましたけれども、そのようなことも最近されていないように見えます。
 また、学校関係者や児童相談所に係属していた歴がある少年もいますから、そういう少年について、関係機関に行って実際に会って話を聞くというようなこともされず、書面での照会、回答というようなことにとどまってしまう表層的な調査しかされないような傾向はあるように見えます。そして、その実際に調査したものを、調査官は手控えとしては持っていても、私たちに開示される調査票の中にきちんと情報が盛り込まれていない、とても内容の薄い調査票になっているものが散見されます。
 それは、もう最高裁当局の指導として簡にして要を得た調査票を書けということで、原則逆送対象事件についてはその生育歴などを長々と書くなというような指導がされているようにも聞いておりますので、そういう意味で、二〇〇〇年改正前と後とでは、調査の実態も、またそこから出てくる成果物としての調査票にも変化が出てきていると思います。

#37
○伊藤孝江君 済みません、ごめんなさい、さっき質問をたくさん一度にしちゃったので。原則逆送対象事件、特に今回拡大される事件において要保護性の調査の必要性ですね、その点についても、済みません、川村参考人にお伺いをさせていただきたいと思います。

#38
○参考人(川村百合君) 言い漏らしましたけれども、当然、原則逆送対象事件、それは、今の原則逆送対象事件も、また今後もし対象を拡大されるとした場合も、要保護性についての調査は当然必要だというふうに思います。
 それは、矯正可能性があるのかどうか、矯正可能性がある場合にどのような処遇をする必要があるのかという人間科学を駆使した点での評価ですから、そのためには要保護性の調査をきちんとすると。その上で逆送するのかしないのかということを決める必要があると思いますが、これも二〇〇〇年のときの経験からいうと、だんだんだんだん先細っていくのではないかということを懸念しております。

#39
○伊藤孝江君 ありがとうございます。
 大山参考人にお伺いをさせていただきたいと思います。
 今日は本当に、御自身の経験を通して様々な思いを語っていただきまして、本当にありがとうございました。
 その中で少年院を出られた後のことについてもお話をいただいたんですが、事前にいただいている資料を見せていただいたときに、事前にいただいている資料の中で、出院後、出られた後の立ち直りについてもしっかりとフォローをしていくことがやっぱり必要なんではないかというような御意見もいただいていたところなんですけれども、実際に御自身の体験であったり、また、今少年院に入っている子供たちに接しておられる中で、出院後の立ち直りについて、もっとこういう点での支援というのがなされるべきではないかという点でお考えありましたら教えていただけますでしょうか。

#40
○参考人(大山一誠君) 二つ話します、出院後のときに。
 自分、決意して、更生するのを、まず一番何最初にしたかというと、不良交友を断ち切ることなんですけれども、出院したその日に、みんな、町のその自分と同い年の不良グループがみんなもう、そのときはもうみんな車とか乗っている年なので、バイクとか車で迎え来たんですよ、もちろん神奈川に戻ってからですけれども。その日、その日の晩、自分は立ち直る気持ちがあったので、ただ、会いに来てくれたのはうれしいと、だからその日は遊びました、ありがとうという気持ちを込めて。で、その後、帰り際に、もう遊ばないと、もう少年院で心が変わったと、もう連絡取らないからというふうな決別、友達と決別ですよね、しました。
 もう一つ話します。ちょっと話が脱線していますけどね。
 もう一つは、出院後、仕事に困りました。自分が住んでいる町はちょっと小さかったもので、もう知れ渡っているんですよね、まず、その三回目、少年院入る前からずっとそうなんですけど。要は、村八分というか、そういう状態になっていて、例えばコンビニで高校生がアルバイト可能、成人可能と書いてあって、ああ、じゃ、俺働きたいなと思って、やっぱり生きていくためにはお金が必要ですからね。それで、電話するんですけど、名前言った途端に、いや、うちでは無理だから、がちゃって切られてしまうんですよ。そういうことがあるので、隣町まで、隣の市まで行かないといけないんです。バイクとか、まあその頃免許持っていましたけど、バイクに乗って四十分とかしないと行けなくて。
 今回の推知報道になった場合、多分仕事できなかったです、完全に。どこ行っても、あっ、あいつだあいつだっていうふうになるわけじゃないですか。そうなったときに、どうやって、更生する気持ちは本当はあるんですよ、そのとき。自分はよかったのは、推知報道がなかったから仕事に就けれたんですよね。もしなかった場合、暴力団とか不良グループに戻らざるを得なくなると思います。
 なので、私は、どうしてほしかったかというと、もうそっとしておいてほしかったと、もう気持ちは固まっていたんで、そういう気持ちはありました。

#41
○伊藤孝江君 ありがとうございます。
 以上で時間ですので、ありがとうございました。

#42
○清水貴之君 日本維新の会の清水と申します。
 本日は、お忙しい中、貴重な御意見ありがとうございました。
 質問させていただきます。
 まず、川村参考人と大山参考人に同じ内容の質問をさせていただきたいというふうに思います。
 川村参考人から、被害者の方の中にはやはり厳罰化を望む声があるという、こういうコメントがあったかのように思います。なぜそういうふうになるかというと、先ほど真山委員の質問でもありましたとおり、加害者側のこの反省の、真の反省というお話がありましたけど、反省の気持ちとか、あとは、実際にその加害者側がどのように罪を償うといいますか、被害者と向き合っていくかというのがまだまだ十分じゃないと被害者側が感じることが大きな原因の一つじゃないかというふうに思います。
 例えば、損害賠償とかになって、お金を、補償金というんですかね、賠償金を払っていくに当たっても、途中からなかなかこれがうまく機能しなくなったりとか。私、地元が神戸ですので、連続児童殺傷事件などでしたら、少年Aと言われているあの男性が突然本を出版したりとか、やっぱり被害者側の感情をなかなかこう読み取れていない、酌み取れていない、逆なでするようなことも起きてしまっている。こういうことが起きると、被害者側からしたらやっぱり許せないというような気持ちになってしまう。だから厳しくということに、そこ、つながっていくんじゃないかというふうに思うんですね。この辺り、川村参考人、加害者側が被害者とどう向き合っていくかということ。
 大山参考人にもお聞きしたいんですが、国として被害者遺族の救済をしっかりというお話もありました。これはこれで別で、国としてしっかりやるべきだと思うんですが、と同時に、加害者側が被害者とどう向き合っていくか。もうお金とか補償とかの問題よりも、やっぱり感情のところがこれ大きいんではないかなというふうに思うんですね。この辺りについての御意見お聞かせいただけたらというふうに思います。

#43
○委員長(山本香苗君) まず最初に、川村参考人。

#44
○参考人(川村百合君) 被害者の、あるいはその遺族の処罰感情が強い事件というのは、今回の改正で逆送対象になった事件ではない事件ということで、もう既に逆送対象になっている、そして刑罰を科せられる事件だというふうに理解しております。
 その前提で申し上げますけれども、先ほども申し上げたんですけれども、その償いを形で表す一つがやはり賠償、金銭で賠償するしかないということになってきたときに、刑務所に入っているときには当然賠償するつもりだということで頑張って出てくるわけですが、実際に社会に出て賠償金を賄えるほどの、自分の生活を成り立たせた上で賠償金を賄えるほどの仕事に就けるかどうかというところにまずハードルがありますし、それが続けられるかどうかということに現状でもいろいろ困難が伴う中で推知報道がされるというようなことになってきて、仕事に就けない、あるいは就いてもすぐ辞めざるを得ないということになれば、賠償しよう、したくてもできない状況に追い込まれ、無職で、それこそ生活保護でも受けて生きるしかないか、あるいは犯罪を再びして生きるしかないかというような状況に追い込まれてしまうと、その贖罪の気持ちを形で表すということができなくなってきてしまうということになると思います。
 ですから、そうならないためにも、やはり少年の社会復帰を社会全体で支援していく、いろいろな不利益になりかねないような要素は排除していくということが必要なんだろうと思います。そういう意味で、実名報道のことや、それから職業制限などができてしまうということは、その被害者の感情にも合わない、逆方向だろうというふうに思います。
 それから、全員が少年院に行って被害者の方に納得してもらえるような更生を果たし、贖罪の気持ちを持てるかというと、それは一〇〇%全員ということはないと思います。
 やはり、今、神戸の少年の事件を出されましたけれども、あの少年は、報道されている範囲の審判の内容によっても自閉症スペクトラム障害があるということで、人の気持ちを理解しにくい、そういう発達特性を持っている方だというふうに認識しております。それを頭では理解して、犯罪行為に及ばないようにということを訓練していくわけですけれども、やはりそれは被害者の遺族の方からすると、何でこんな行動をというような行動になってしまうという方も、それはゼロではないと思いますが、そういうケースが一件、二件あるだけで、それがもう全てであるかのように取り上げられてセンセーショナルに報道されてということで、多くの少年がそうではない、真摯に罪に向き合おうとしているということが忘れ去られてしまっているのが残念に思います。

#45
○委員長(山本香苗君) 続きまして、大山参考人。

#46
○参考人(大山一誠君) 川村さんとちょっと考え方というか、あれも似ているんですけど、被害者とどう向き合っていくのかというのなんですけれども。
 この厳罰化の話になると、いつもその話になるじゃないですか、やっぱり。当然のことだと思います。光母子殺人事件とか酒鬼薔薇とか、自分も子供が、もう今二歳の子供がいるので、同じことになったら本当に殺してやりたいなと、仕返しをしてやりたいなという気持ちにはなるんですけれども、僕が思うのは、もう、ちょっと話、ずれてしまいましたね。
 その話になってしまうことで、今回の改正の場合って、それに、何というんだろうな、結局罪名で振り分けられてしまうようになっているところが問題だと思っています、僕は。いつもその話になって、一部の、その少年院の中でも、少年院とか少年刑務所の中でも特別な存在の人たちに合わせて、ここの下の層までがみんな同じに罰せられてしまうというか、なってしまうので、そこが僕は問題だと思っていて、ちょっと済みません、話が脱線してしまって。
 例えば、今回の拡大についてなんですけど、例えば強盗と聞くと、みんなが想像する強盗というのは、例えば刃物とか拳銃を持って家の中に押し込み強盗するイメージだと思うんです。ただ、少年の場合のケースだと、例えばミニバイクに乗って自転車に乗っている人の籠からひったくったりとかして、その際に転倒したりして、例えば骨折になってしまうかもしれないです、打撲で済むかもしれないですけど。それで病院に行って被害届を出すと、もう窃盗ではなくて強盗になってしまうんですね。
 あと、例えば組織的犯罪も含まれています。組織的犯罪になると、例えば振り込め詐欺、ちょっと社会問題になっていますけど、これをやっているのは一番上で、もっと年上の例えば暴力団だったりとか、半グレグループでも一番上の人間が一番悪いんですけれども、一番末端の、少年院に来るような子なんというのは本当に末端の子が多いんですよ。出し子なんかといって、もらった金額は十万円とか。でも、組織で大々的に報道されてしまったりとかすると、罪と罰の釣合いが取れていないと私は思っています。確かにその神戸の話とかは、僕はもうそれ相当の、相応の厳罰は必要だとは思っています。それは否定しないです。ただ、一緒くたには、その拡大することで一緒くたにはしてはほしくないなというのが思いで。
 で、被害者に対してどういうふうに接せられるかという話があったんですけど、そういう制度が今現在多分ないと思います。私が少年院に入っていたときも、被害者に直接手紙を書きたいと言ったら、先生に、多分その制度がないからでしょうね、先生は、やめてくれと言われました。それは何でかというと、多分まだ話合いが済んでいなくてですね、国とかですよ、国とかその少年院の中で話合いが進んでいなくて、例えば反省していない者が手紙を出してしまったりとか、そういうケースが出てくると思うんです。なので、今後もし、どう接していくのかというのであれば、制度をつくっていくしかないと私は思います。

#47
○清水貴之君 ありがとうございました。
 続いて、橋爪参考人、お願いいたします。
 これまでの御発言を聞かせていただいておりまして、民法との関係で、やはり権利と義務というお話をされてきておられます。
 こういった中で、今回の法改正は、中間的なものをこう、どっちかといったら、まあ折衷案というんですかね、そういった立場の法案、改正だというふうに認識をしているんですけれども、橋爪参考人としては、議論に参加、部会の方に参加されている中で、ある意味納得をされてこの結論に至られたのか、それともやはり、元々のやっぱりお持ちの考え方というのはもう変わらずにずっとこの部会に参加されてきたのか。
 部会の中身がちょっと分かりませんので、その辺の部会での議論などももし踏まえてお話しいただけたら有り難いんですが、よろしくお願いいたします。

#48
○参考人(橋爪隆君) お答え申し上げます。
 部会におきましては、十八歳、十九歳が中間類型であるという点については見解の一致があったわけなんですけれども、それを少年に近い方で考えるのか、成年に近いかということについては議論がちょっとあったんですね。そこについてはなかなかやっぱり議論が収束しなかったことがございます。
 私、個人的には、やはり民法の改正によって少年に対して後見的な介入が困難になったことを考えますと、本当は少年法の適用年齢を引き下げた方が理論的には明快だったというふうに考えております。ただ、どういう名前を付けるかということ自体は余り意味がないと思っておりますので、少年法の中に位置付けた上で特定少年として特別な対応を取ることについても十分な合理性があるように考えておりますし、多分新しい法律を一から作るよりは少年法の中に修正規定を置いた方が簡明であると考えますと、こういった方向については十分賛成できるというふうに考えております。

#49
○清水貴之君 非常に難しい内容で、やっぱりどちらの意見もあって、それをまとめていく過程というのは非常に大変だったのではないかというふうに思います。部会ももう数十回開かれているわけですよね。その中でどう集約していったのか。
 もちろん、賛成される方、反対される方、様々な意見があります。犯罪被害者の方もこの部会には参加していらっしゃったというふうにも聞いておりますし、一部報道などで、実情は分かりませんが、部会よりも、なかなか部会の結論が出ないから与党協議の方が先に先行して、もう与党の協議に、ある意味、を参考にする形で部会の方も進んでいったのじゃないかという、こういった報道もあったりしますけれども、その辺り、もしお話しいただけることがありましたら、お願いいたします。

#50
○参考人(橋爪隆君) 確かに政治判断があったことは承知しておりますけれども、それとは全く無関係に、部会では理論的な研究、検討を進めておりました。やっぱりなかなか難しい問題は、やはり委員全員の見解の一致としまして、現在の少年法の適用について基本的な問題はないということが出発点にあったんですね。その上で、民法や公選法の改正のインパクトという観点で議論があったわけです。
 そういった意味で、民法や公選法を改正しても少年法については変更する必要がないという議論もあれば、私のように、やはり民法が基本法である以上は民法の例に従って少年法についても修正が必要という理解もございまして、そこについてはやっぱり議論が紛糾したところがございまして、最終的には、ある種、十八歳、十九歳は中間層、中間類型という形で意見の集約を見たというふうに考えてございます。

#51
○清水貴之君 ありがとうございました。以上で質問を終わります。

#52
○川合孝典君 国民民主党・新緑風会の川合と申します。本日は、三名の参考人の皆さんには大変示唆に富んだお話をいただきまして、ありがとうございました。
 時間の関係がありますので、私はまず橋爪参考人と川村参考人のお考えをお聞かせいただきたいんですが、この問題、できるだけ中立的に物事をちょっと捉えようと私自身は努力しておるんですけれど、そこで、基本的なところに立ち返ってそもそもということを考えたときに、大人と子供の線引き、違いというのは一体どこにあるのかということなんです。客観的なそのスケールがない状況の中で議論しておりますので、どちらからでもこの問題はアプローチできるわけなんですけれど、この議論を進めるに当たって、大人とは、子供とはということをそもそも一定定義付けで物を考えないと、意見が出るたびにぶれる、自分自身に揺らぎを感じております。
 したがって、お二方にお聞きしたいのは、大人と子供の違いをどこで捉えていらっしゃるのか、これをお聞かせいただきたいと思います。

#53
○委員長(山本香苗君) 最初に、じゃ、橋爪参考人。

#54
○参考人(橋爪隆君) お答え申し上げます。
 恐らく、人間はだんだん段階的に成長していくと思うんですね。そういった意味から、単純にここからが大人というふうな線引きは難しい気がするんです。
 そういった意味で、現行の民法改正のインパクトを踏まえますと、やはり十八歳と二十歳が二つ線引きの基準がございまして、十八歳と二十歳という二つのステップを踏まえて段階的な成長をして成人になっていくというふうに考えておりますので、そういった意味では、まさに十八歳から二十歳というのは、半分大人、半分は子供と申しますか、ちょっとだけ中間的な類型として位置付けることができるというふうに考えてございます。

#55
○参考人(川村百合君) 今の御意見に近いんですけれども、やはり大人と子供というのがどこか一点で区別できるわけではなくて、成長の度合いにはグラデーションがあるというふうに認識しております。それは人によっても違うわけですから、何歳ということは全員に当てはまるということではなくて、やはり社会の中のコンセンサスとして何歳からを大人というふうに見ましょうかというのは、時代によって、国によって、社会によって違ってくるんだろうというふうに思っています。
 そして、民法の成年年齢引下げのときに、私は人権に関する立法というものは必ずしも国民の多数がいいとか悪いとかじゃなくて、決めるべきとき決めるということはもちろんあるとは思いますけれども、少なくとも民法成年年齢に関して言うと、日本の国民は、世論調査では、民法成年年齢の引下げはしない方がいいという意見が圧倒的だったはずです。そういう意味で、社会の中では二十歳からが大人だよねということが日本の社会の中では浸透していたと思います。そして、そのことは、飲酒とか喫煙とかギャンブルが何歳からできるのかということは二十歳までは駄目よということを法律をいじろうという気配もありませんので、やはり社会のコンセンサスとして、やっぱり二十歳までは未熟だよねということがあるんだろうと思います。
 そして、高齢化に伴って、寿命が長くなってくるに伴って、やはり成年と、成熟するにはやはり時間が掛かってくるということ、しかも、この複雑な社会の中で十分な判断能力を持つにはそれなりの時間が掛かるということが認識されるようになったからこそ、児童福祉法では十八歳未満が児童としていて、それ以降に保護することはできなかったのが、十八歳ではまだ十分に自立もできないだろうということで、児童の定義自体は変えていませんけれども、二十二歳まで児童福祉施設に措置が延長できるようなふうに法律変わっております。ということは、やはり社会的なコンセンサスとしても、まだ十八というのは大人とは言えないよねという考えが強いというふうに思っていますので、グラデーションがあるものの、少年法の適用年齢が何歳かというときに民法に一致させる必要はなくて、少なくとも二十歳、私はもっと上でもいいぐらいと思っていますけれども、少なくとも二十歳から引き下げる理由はないだろうというふうに考えています。

#56
○川合孝典君 もう一つ橋爪参考人と川村参考人に御質問させていただきたいと思いますが、今の川村参考人の御発言の中にも若干関わることではあるんですけれども、少年法の対象年齢と成年年齢をどう、同列に論じるか否かということについての議論は既にいろいろなされているわけでありますが、少年法の対象年齢の引下げについて賛否を確認したところ、八割以上の方が少年法の対象年齢引下げに賛成されているというデータが出ています。これ反対は一四%少しだと。その一方で、選挙年齢と成年年齢の引下げへの賛成、反対については、賛成が四八・五、反対が五二・二という数字が出ているという、これはある資料から引っ張ってきた数字でありますので、そういう数字が出ています。
 ということは、少年法の対象年齢と、いわゆる成年年齢、選挙年齢の捉え方、国民の捉え方に随分矛盾が生じてしまっているわけですよね。このことが今回の一連の議論の中でどう影響したのかということを私自身ちょっと興味深く見ているものですから、この数字の違いというものについて先生方がどのように捉えていらっしゃるのかということを簡単にお聞かせいただければと思います。

#57
○参考人(橋爪隆君) お答え申し上げます。
 難しい問題でございますけれども、アンケートの調査結果を拝見いたしますと、少年法につきましては、やはり少年法が甘過ぎるとか厳罰化の要請というふうな側面があったように理解しておりますけれども、そういったものは個人的には必ずしも正しい認識ではないところがございますので、やや違和感がございます。
 確かに、一方、民法の改正につきましては賛成、反対が拮抗しているというふうに承知しておりますけれども、ただ、いずれにしましても民法の改正がもう実現するわけですね。実現する以上は、民法によってでき上がった価値観というものを前提に法体系というものを整備しなければいけないと。そう考えますと、やはり民法の改正によって、十八歳の者は親権者の監護教育を離れて自らが主体的に決断できる人間として評価があるわけですね。そういったものがこれからの法改正においてもやはり一定の影響があるというふうに考えてございます。

#58
○参考人(川村百合君) 少年法の適用年齢引下げについて世論が賛成が多いという点は、その前提として、少年事件に対する認識、それから少年法に対する認識が誤っているというふうに私は考えております。
 つまり、世論の多くは、少年事件は増加している、凶悪化しているというような認識を持っているということがいろいろなところで、アンケートなどでも出てきていますが、実際には、御承知のとおり、少年事件はどんどん減ってきています。減っているのは、先ほどもちょっと話ありましたけれども、少年人口が減っているから絶対数が減っているというだけではなくて、人口比でいっても少年年齢千人のうちの非行を犯してしまう人数の割合というのもどんどん低下してきている。でも、そういうことはみんな知りません。
 マスコミ報道で誤った報道のされ方がされて、そこでは少年事件は増加しているとか凶悪化しているというようなフレーズがしょっちゅう使われます。それをうのみにし、そしてまた少年法は甘いんだと、少年院というのは甘いんだというふうに誤解している方たちが、そんな甘いのはけしからぬだろうということで引下げに賛成するんだろうというふうに思います。
 ですから、そこは、やはり国民というのは自分が被害者になる可能性というのは考えて、そういう被害者の方の気持ちには寄り添いやすい、だけれども、自分が、もし自分の生育環境がこうではなかったならば、もしかしたら自分も犯罪を犯したかもしれないとか、自分の家族が非行を犯すかもしれないという加害者の側の気持ちにはなかなか寄り添いにくいところがあって、被害者の側に寄り添ったときに、間違った情報の下で少年法は甘いと考えているので、適用年齢引下げという世論になっているんだろうというふうに私は分析しております。

#59
○川合孝典君 ありがとうございました。
 続いて、大山参考人に御質問させていただきたいんですけど、仕事が非常に見付けにくかったと、少年院をお出になられてから就職するのに大変御苦労をなさったという話を伺いました。もしも国や行政が、いわゆる少年院から出られた方々若しくは刑に服して社会に復帰された方々が仕事をすることができる、きちっと生活の基盤をつくることができるということが何よりのその更生につながるという意味でいったときに、そういうその就業支援の枠組みというものをもっと充実させるべきなんじゃないのかということはよく言われているんですが。
 済みません、ぶしつけな質問になるかもしれないんですけど、御自身の御経験から、就業支援、もしそのとき、御苦労をされたときにどういう支援をしてもらったら助かったと思われたかという、こんなことをやってくれたらもっと簡単に仕事見付けられたのにとかいう、そういう思いというのは何かお持ちになったこと御記憶にありますでしょうか。

#60
○参考人(大山一誠君) ああ、それは、そこまではちょっと当時考えていなかったですね。何でかというと、立ち直ることは、もうそういう道には行かないという覚悟はできていたんですけど、どの仕事に就くとか、まだ二十歳、出てきたとき十九過ぎてもう二十歳ちょっと前だったんですけど、自分がこれからどうなりたいのか、何をやりたい、何の仕事するのか、どういうふうになっていきたいのかというのは、どこに住みたいのかとか、まだはっきりしていなかったですね。
 その中で、自分なんかはブレークダンスやっていたんですけど、後にダンススクールとかで子供から大人まで教えましたけど。何かまだみんな人生模索している途中だと思うんですよ、二十五ぐらいまでは。早い人はそれなりに、例えば家の教育だとか、家が例えば商店やっているとか、そういうんだったら何か継がなきゃいけないということで早期に、何というんですかね、道順というか、決まっているのかもしれないですけど、自分はそうではなかったので、どうやって生きればいいのかなというのがあったので、そのときに例えば就業支援があるからどうですかと言われても、ちょっと、ううんという感じかもしれないです。
 でも、それを必要としている人ももちろんいると思います。

#61
○川合孝典君 ありがとうございます。
 あともう一点、大山参考人にお聞かせいただきたいんですが、少年院の中で内省の時間がたくさんあって、自らを省みることが非常に役に立ったということをおっしゃったんですけど、例えば今後の、これが刑務所も含めてということになるのかもしれませんが、服役されている方が、そういう更生のための教育プログラムというものが仮に刑務所なんかで導入されるということになったときに、それは有効に機能すると思われますか。

#62
○参考人(大山一誠君) これ多分、少年院と刑務所の性質の違いだと思うんですけど、例えば、自分、刑務所、少年院一緒に両方行っている人と数日前に話したんですけど、やっぱり暴力団組長とかそういう人たちもいるじゃないですか。法務教官とやっぱり対等なんですよ、立場が違うだけで、大人と大人同士。だから、そんなに、何というんですかね、例えば法務教官の方が年下であることもあるわけじゃないですか。そこで、例えばもうそういうことを課せるときに、ちょっと果たしてできるのかなというのは疑問に思います。
 少年院の場合だと、大人と子供というのが、はっきり上下関係ができているわけですよ。だから、例えば教員に、中には例えば十年に一遍とか五年に一遍とか教員に手出すやつはいるかもしれないです、過去にそういうのがあったので。ただ、出しづらいですよね、少年院という中では。自分が子供という、まだ未成年だという認識もあるので。
 だから、多分その内省は刑務所では無理ではないかなと思います、そういう理由から。

#63
○川合孝典君 急な投げかけにお答えいただきまして、ありがとうございました。
 三人の参考人の皆さんには、貴重な御意見ありがとうございました。
 私、質問これで終わります。

#64
○山添拓君 日本共産党の山添拓です。
 参考人の皆さん、今日はありがとうございます。
 初めに、橋爪参考人に伺います。
 今日も議論になっておりますが、法制審では、その答申では、少年法の適用年齢の引下げについては明確な結論が出されたわけではなく、国民意識や社会通念等を踏まえたものとすることが求められると、そして、今後の立法プロセスでの検討に委ねるとされています。実際には与党PT合意に沿って法案が作られて、十八歳、十九歳が少年法の対象とされるということになりました。
 参考人も先ほど、民法や公選法の年齢引下げに伴って少年法を改正することは必然ではないという言い方もされておりましたが、つまり、十八歳や十九歳の位置付けというのは、今度の法案では民法の成年年齢と完全に整合されたというわけではなく、そこには一つの政策判断があってこういう形になっているものかと思うんですけれども、その点についてはいかがでしょうか。

#65
○参考人(橋爪隆君) お答え申し上げます。
 今御指摘ございましたように、民法と少年法は別の法律ですので、別な観点から年齢要件については決定しても構わないというふうに考えております。
 ただ、十八歳以上につきましては、やはり保護者がいないわけですよね。保護者がいないわけですから、保護者を前提とした保護処分というものを課すことは難しいだろうと。そういった意味では、少年法の中に、厳密に申しますと二類型の保護処分が併存していると。つまり、十八歳以下の保護処分と若干内容が違う保護処分というものが併存しているという形式で、年齢要件自体には手を加えないとしましても、その内部において、民法の発想といったものを取り入れて保護処分の二元化というものを図っているというふうに考えております。

#66
○山添拓君 そのような法理論の在り方というのも政策判断ですので、判断いかんによっては別の判断もあり得ると、こういうことでしょうか。

#67
○参考人(橋爪隆君) 私が申し上げたかったのは、少年法を引き下げるかどうかということについてはいろんな選択肢があるというふうに思うんですけれども、やはり十八歳になって民法上保護者の監護を離れているわけですね、かつ、民法の改正の趣旨としましては、やはり十八歳以上というものは自分で責任を持って振る舞う人間であるというふうな評価がされております。そうしますと、従来の少年法のように責任がなくても介入することを正当化することは困難だろうと。
 これを法理論としまして、やはり十八歳以上につきましては責任がある限度で処分を課すということについては、私の中では論理必然的に出てくるというふうに考えておりました。

#68
○山添拓君 続いて、橋爪参考人と川村参考人に伺います。逆送事件における起訴後の推知報道解禁についてです。
 被害者については制限なく報道されるのに、少年だからといって報じられないのはバランスを欠くと、こういう観点で語られることがあるかと思います。しかし、それは被害者のプライバシーの保護をどう図るべきかという問題であって、被害者保護の更なる充実が検討されるべきかと思います。
 更に言えば、成人の事件であっても起訴時点では無罪推定、川村参考人からもありましたが、ですので、表現の自由や報道の自由がいつでも優先という場面ではないということも考えられるかと思うんですが、この点についてはいかがでしょうか。

#69
○参考人(橋爪隆君) お答え申し上げます。
 確かにおっしゃるとおりでございまして、加害者側と被害者側を同列に扱う議論をする必要はないと考えております。
 その上で申し上げますが、成人に関しては、現在、推知報道は自由にできるわけですよね。例えば、最終的には無罪になった場合につきましても推知報道はできるわけです。それを前提としますと、十八歳以上であって公判請求されるという状態に至っておりますと、それについては現在の成人と同様の扱いをしても特に理論的に問題ないだろうというふうに考えておりました。
 やはり憲法上は報道の自由といったものに重要な価値がございますので、やはり実名報道が原則であって、推知報道禁止は例外的な規定であるという観点から議論をする必要があると考えております。

#70
○参考人(川村百合君) 今の山添議員の意見、おっしゃるとおりだと思います。
 犯罪被害者がその意思に反して実名報道され、プライバシーが社会にさらされたり名誉が毀損されたりという現実があることが問題なのであって、被害者の権利が保障されるように改善すべきことだろうというふうに思います。被害者の権利が侵害されているから加害者の権利も侵害していいんだという両方をおとしめる方向ではなくて、両方の権利をより高めるという方向に法制度としては持っていくべきだろうと思います。成人の場合の実名報道というのも現実には社会復帰が困難になっている例というのは枚挙にいとまがないと思いますので、成人の報道の在り方というのも見直されるべきところがあるように思っています。
 とりわけ、いわゆる忘れられる権利というのが我が国ではまだ確立しておりませんので、忘れられる権利というもの、どこかの段階で情報の削除を求められるというようなことをセットで立法していただかないと、今の社会では報道というものが社会的な制裁、社会的なリンチのように使われてしまっているということが問題だろうというふうに思っています。

#71
○山添拓君 ありがとうございます。
 川村参考人に続いて伺います。
 法案は、十八歳、十九歳、虞犯の対象から外すものとなっています。与党PT合意では、罪を犯すおそれのある十八歳、十九歳の者の更生、保護のため、行政による保護、支援の一層の推進を図るべきであるとされていました。しかし、今回の法案では具体的な支援策が盛り込まれているわけではありません。
 参考人はNPO法人のカリヨン子どもセンターの理事や一般社団法人Colaboの理事も務められて若年女性の支援などにも関わっておられるかと思いますが、現場でお感じになっている十八歳、十九歳への保護や支援の必要性、また虞犯規定の存在意義についてお感じのことについて御紹介いただきたいと思います。

#72
○参考人(川村百合君) 先ほどの意見でも少し述べましたけれども、虞犯に至っている少年というのは、児童福祉の分野できちんと保護がされていなくて犯罪行為を行うに至ってしまっている。でも、被害届が出ていないので犯罪として立件はされていないけれども、実際には犯罪に近いところにいるような少年たちが、私が理事を務めております今御紹介にあったような法人で支援をしているとたくさん出会うところです。
 本来であれば公的機関、行政がきちんと福祉的な支援をするべきであったのにしていなかったがために、でも、家庭で虐待を受けているので家にはいることができなくて家出をして、そして行く場所がなくて民間の支援団体につながってくるというような子たちがたくさんいるわけですが、その子たちにとっては先ほども申し上げたやはり少年院しかもう行き場所がないという状態になっている。少年院が最後のセーフティーネットになっているというような子たちが少なからずいるのです。
 それは、まず、十八歳、十九歳の年齢の場合には、先ほども申し上げましたけれども、もう児童相談所が十八歳になってから一時保護をして保護所に入れるというようなことがもうできませんので、もう一時保護、児童福祉の対象外ということになってしまって、じゃ、どういうところに保護できるのかというと、民間のいろいろな団体が施設を運営しているところもありますけれども、やはり非行化が始まっている子供はちょっと厄介な子供ということになって、民間の施設は受け入れたがらない、受入れを拒否するということになって、結局行き場所がないから夜の町をさまようしかないというような子たちがたくさんいるんですね。
 やはり、少年法の中の、国の法律によって財政的な裏付けがあって、人的な裏付けもあってつくられている少年院というところは、やはりどんなに難しい子であっても、人をつぎ込んでも支援ができる、教育ができるような体制をつくることができるという法律の根拠があった中での運営ができるわけですから、やっぱりそういうところが最後のセーフティーネットにならなければ、本当にどこにも行き場がないという子たちが続出してしまうと思いますので、そういう意味で、今回虞犯を外すということは社会的な悪影響が大きいだろうというふうに思っています。

#73
○山添拓君 ありがとうございます。
 大山参考人に伺います。
 今日は、大変当事者的な立場で困難がある中で御発言いただいたことに感謝を申し上げたいと思います。
 三度目の逮捕で少年院送致となって、内省の時間、それが立ち直りの契機となったというお話でした。
 家裁調査官、裁判官、少年院の法務教官など、そこに至るまでに少年法の手続の中で様々な人と、人が関わっていたかと思います。今思い返して、思い返されてみて、どういう関わり方が特に印象に残っているかということについて御意見伺えますでしょうか。

#74
○参考人(大山一誠君) 関わり方でいうと、ちょっと今、家裁の調査官とかいろいろあったんですけど、自分の中でその関わった中で特に印象深かったのはやっぱり少年院での教官の人たちで、もう体育も、さっき言ったみたいに、体育も指示だけではなく、先生も、本当五十手前の先生もいたんですよ、その人がもう毎日、一年中ですよ、十代の子と一緒に走り回って、腕立て伏せも百回、二百回、三百回ですよ、それを一緒にやるんですよ。それで、そういう人って今この世の中にあんまりいないですよね。すごく貴重な存在だと思っていて、で、自分聞いたんですよ、運動会とか行事に参加していたんで出院後に。先生、何で指示すればいいだけなのにやるんですかって言ったときに、その土地土地の不良少年たちが来て俺たちも本気でやらないと駄目だというふうに言っていたんですよ。
 それ聞いたときにすごい感動してしまって、そのときにぱっと思ったのは、これは昔、自分たちが子供の頃って大人の人たちが平気でよその子供とか怒っていたじゃないですか。それがいいか、現代に即しているかどうかは別にして、大人の方がやっぱり強かったわけですよ。それで、今になったら、それは凶悪な少年事件、確かにあります。それでちょっと逆転してしまって、大人の方がちょっとびびっているんじゃないかなというのもあって。そのときに、何かこの少年院の先生たちってすげえなって、本気でぶつかっていくんだなって、少年と向き合っているんだなっていうのを感じました。
 それで、体育だけじゃなくて、少年に個別、例えば、集団部屋でも単独室でもそうなんですけど、夜、余暇の時間とかあるんですよ、自習していたりとかする時間に。そのときに個別に先生が話しているのを、やっぱり耳に聞こえてくるんです。例えば、暴力団もやっている少年もいるし、相手が亡くなってしまった少年もいました、自分の部屋の中には。で、聞いていると、やっぱり先生たちは、怒ることもしますけど人情味あふれる話で接しているのを聞いて、ああ、ちょっとやっぱり信頼できるなって、やっぱりこの人はちょっと違うなっていうふうな信頼感は僕はありました。
 それがちょっと思い出というか、ぱっと思い付いたことです。

#75
○山添拓君 ありがとうございます。
 最後に川村参考人に伺いたいのですが、そうした少年院の、少年院送致ですね、これは一応の期間が定められていますが、進級できなければ延びることがあると、大山参考人からもありました。これは教育的な措置を中心に据えている保護処分の大きな特徴かと思います。
 少年院での生活に上限が決まっていて、短縮はあり得るとしても、上限が決まっていて一定の期間で必ず出られると、こういうことになっているとすると、その処遇というのはどのように変わり得ると考えられるでしょうか。

#76
○参考人(川村百合君) 刑務所での処遇に近くなってくるのではないかというふうに懸念します。つまり、先ほどもちょっと申し上げましたが、もう満期が来れば反省していようがいまいが出られるから、とにかくきついことも耐え忍ぼうというのが刑務所で起きがちなわけですけれども、少年院でも、もう上限決まっているので、そこまでに進級ということを断念しても、進級のために内省を深めていくというようなことを自分が放棄してしまったとしても、まあ間もなく出られるだろうということで、しかも、犯情を考慮してその処分がされるということになってしまうというのが大きな変更ですから、要保護性が大きいから、要保護性が根深いから長い処遇期間を掛けるということではなくなってしまうので、少年院の持っている、目標に向かって頑張る、頑張れば早く出られるという、そのいいところが失われてしまうというふうに思います。

#77
○山添拓君 ありがとうございます。
 今後の審議の参考にしたいと思います。

#78
○高良鉄美君 沖縄の風の高良鉄美でございます。
 今日は貴重な御意見をいただきまして、ありがとうございました。改めて感謝を申し上げます。
 まず、三人の参考人の方々にお伺いします。
 今回、少年法改正というのは成年年齢の引下げによって見直しを行うというものですけれども、沖縄の風は、実は二〇一八年の成年年齢の引下げにも反対したんですが、女性の婚姻適齢の引上げには賛成はしたんです。しかし、成年年齢を引き下げるのに、若年層、若年者の自立を促すような施策とか、あるいは消費者被害の拡大のおそれ等の問題の解決のための施策というのが十分取られていませんでした。例えば、消費者契約法に、知識とか経験あるいは判断力不足に付け込んで締結された契約、こういったものの取消し権の創設というのには最低限必要でしたけれども、それは行われませんでした。若年者が消費者被害に遭わないようにするための実践的な教育、消費者教育の充実というのが必要不可欠だったにもかかわらず、こういった懸念は払拭されませんでした。
 また、この成年年齢の引下げによって、養育費の支払終期というのが早まるんじゃないかと。それだけじゃなくて、大学の学費ですね、養育費としての大学の学費に分担が行かないんじゃないかというような懸念も払拭されていません。ですから、成年年齢の引下げにも、少年法の見直しにも、大変憂慮をしているところでございます。
 厚生労働省が四月三十日にまとめた社会的養護経験者の調査結果では、高校を卒業すると、経済的自立がなくても養護施設からは出ていかなければならないという十八歳の壁があるということが分かりました。十八歳は大人だから大人として同じ責任を負うべきだという考えがある一方で、今回もまさにそういう部分が焦点だと思いますけれども、一方では、この少年たちは未熟で教育や保護が必要という現場の声があります。
 少年法の理念を考えると、成年年齢に合わせた法改正をする必要があるのか、それを憂慮しているわけですけれども、このような声をどういうふうに受け止められるでしょうか、お三方にお伺いします。もうそれぞれの立場で結構ですので、よろしくお願いしたいと思います。

#79
○委員長(山本香苗君) それでは、橋爪参考人からお願いします。

#80
○参考人(橋爪隆君) お答え申し上げます。
 十八歳、十九歳の存在と申しますと、二面性があると思うんですね。つまり、民法の改正に従いまして、親権者の保護を離れて自律的な主体であるという評価の反面、今御指摘がございましたように、なおまだ精神的にも未熟であって支援が必要であるという観点がございます。そういった意味では、少年法につきましても、このような二つの観点を共に満たす形で改正が必要であるというふうに考えております。
 すなわち、保護処分自体は存置した上で、なお要保護性に従った処遇ができるというふうな仕組みは維持した上で、しかしながら、本人にメリットがあれば何をしてもいいわけではありませんから、そういった意味では責任という概念を導入した上で責任を上限とした形で保護をするということは十分にあり得ますし、そういった観点から、二つの要請を共に満たす形で今回の改正が行われているというふうに考えてございます。

#81
○参考人(川村百合君) 私も、先ほど申し上げましたが、民法成年年齢の引下げということは反対の立場でした。そして、民法成年年齢引下げを答申した法制審も、無条件に引き下げるべきと答申したわけではなくて、自立を促す施策とか消費者被害を防ぐための施策を講じた上で、その後で、社会の中で十八歳が大人だというコンセンサスが得られたら引き下げろと言っていたのに、その施策が全く不十分な状態で、また社会の中のコンセンサスとして十八歳が大人だよというふうにも必ずしもなっていない中で引下げが決まってしまったということで、問題だと思っています。
 そして、先ほど非行少年の、能力が低い子が多いということを申し上げたんですけれども、そういう意味では、その非行少年になるような少年たちというのは、民法の成年年齢が引き下げられて経済行為も自分の責任でやるということになったために、でも難しいことは判断できないので消費者被害に遭うということが頻発するだろうということを恐れています。そして、自分が消費者被害に遭って金銭的な損害を被ってしまった、それを取り返そうと、というか、生きていくためにお金がなくてしようがないので犯罪に至らざるを得ないというような連鎖になりかねないということで、その民法成年年齢引下げと非行ということが無縁ではないのではないかというふうに思います。
 大人と同じ責任というような言い方が先ほど来されているんですけれども、先ほど私は非行少年ってどんな少年だということを御紹介しましたが、資質上のハンディがあるというのは本人の責任ではないことです。また、生育歴上過酷な生育環境にあった、虐待を受けてきたというようなことも、本人の責任ではないことによって、人格が未熟であったり、また人格的な発達がちょっとゆがんでしまったりということで非行に至るということは、それは本人の責任として本人に責任を負わせるべきことではないというふうに私は考えております。
 ですから、民法上経済行為について責任を負うということになったからといって、非行少年としての責任の負い方というのが変わらなければいけないということではないというふうに考えています。

#82
○参考人(大山一誠君) その十八歳と十九歳のことについて、自分もちょっとすごく難しいな、難しい問題だなと思うんですけど。さっき消費者金融の話とかも契約できるとかそういうのもあるし、この自立ができない、成人としては扱われますけど、民法上。自立できないわけじゃないですか、実際、多くの人はもう学生、高校生か大学生で。
 それで、よく凶悪事件のような話がこういうことが起きるたびにあるんですけど、自分は本当に同じ部屋で、これはちょっと名前も伏せてあれですけど、やっぱり相手を死なせてしまったという、不正会話になって懲罰の対象になるので本当はやってはいけないんですけど、話したときがありました。そのときに、どうしたかと、もう家どうなっているのというのを聞いたら、両親、世間一般の人がみんな知っている会社だと、両親が勤めている会社は。それで、早期退職して退職金もらって、それで被害者に充てたと。それで、それでも足りなくて持家も売ったと。今、弟と両親、昼夜働いているという話をしていました。僕が一緒にいた部屋ですけどね、もうこれ地獄みてえな話だなと思って自分はそのとき聞いていたんですけど。
 やっぱりそういう、例えば被害者の、謝罪というのは、もちろん謝るのもそうなんですけど、最終的に例えば相手が亡くなってしまったり、著しく障害が残ってしまった場合とかですよね、のときに、あと、例えば詐欺とかで金品取ってしまった場合とか何か、お金で謝るしかない部分ってあると思うんですよ、それが大人の責任だとは思うので。それを考えたときに、自立していない、自立すらできていないのにそれを果たしてできるのかという、この保護者がいないということは逆に弊害が出てくるのではないかなというのは私は思っていて、なので、民法の、この少年法、引下げ、一番最初の頃なんですけど、新聞記事とかを見ると成人年齢とこの民法、少年法を一致させた方がいいという、そういう理由なんですよ。僕からしたら、この例えば少年院、再犯率とかも刑務所より低いし、十年連続でもう下がっていて減少しているんで、理由の体を成していないなというのははっきり言って正直思いました、この十八歳に合わせるというときは。
 なので、ちょっと十八歳、十九歳の取扱いについてはもうちょい議論を進めていただきたいなと思っているのがありますし、国民の理解が得られないという御意見もあると思います。でも、そのときになると、やっぱりどうしても、昔の神戸の事件もあるし、それを全部一律で話してしまうので、話が元に戻ってしまうんですね。なので、僕が思うには、やっぱり、そこをそうじゃないんだよと。国民が理解してくれないから、じゃ、国民の言うとおりにしようじゃなくて、それを説明してくれるのが国会議員の仕事だと思っています。
 よろしいでしょうか、そんな感じで、十八歳、十九歳については。

#83
○高良鉄美君 ありがとうございました。
 現場からの声とか体験の声というのは非常に重いなと思いました。
 川村参考人にまたお伺いしますけれども、川村参考人は子供の権利擁護の活動にもすごく携わっているということで、事件を犯してしまった少年の付添人とか弁護人もされているということですので、ちょっとその辺りの現場のこともよく御存じのことなので、幾つかお伺いしたいと思います。
 まず、少年院教育によって少年は本当に反省し、更生するのでしょうか。先ほどもありましたけれども、川村参考人の方にお伺いします。

#84
○参考人(川村百合君) 一〇〇%全員が再非行しないで済んでいるかというとそういうわけではないので、そういう意味で完璧な制度かというと、まあ人間がつくる制度に完璧はないので、完璧ではないかもしれませんが、やはり刑務所との比較ということでいうと、少年院の教育の中で、少年は本当に反省し、再非行に陥らないように頑張っているという、そういう効果的な教育がされているというふうに思います。
 実際、少年院で少年に会ったり、あるいは少年院から出てきた少年に会って、本当に幼い、凶悪な事件を犯したと言われていても、実際にはとっても幼い、かわいらしい男の子、女の子で、とても素直になってきて、そして、先ほど申し上げた、自分が受け入れられるということを知る、自分が受容される、そして、鑑別所の心身鑑別の段階では、大体判で押したように自己肯定感が低い、自尊感情が低いという判定がされるんですね。自分のことを大切に思えないということですが、自分のことを大切に思えない人は人のことも大切に思えないということになって非行をしてしまうということになるんですが、少年院で受容されるという経験の中で、あっ、自分は大切にされている、自分は生きていっていいんだということが分かるにつれて反省の気持ちも深まり、贖罪の気持ちも深まっていくということだと思います。
 ただ、やっぱり社会に出ると、社会の現実というのはとても厳しくて、そういう、よし、頑張るぞと思って出てきた後にも、仕事がなかなか見付からないとか、仕事を変わらざるを得ない、仕事がうまくいかなくて、失敗しちゃって変わらざるを得ないとかですね。それから、そもそも住む場所がなかなか見付からないという少年が、少年院から出てくる、まあ出てこれない、なかなか少年院から仮退院が決まらないという少年がいるんですけれども、それは、なかなか帰住先が決まらないという少年が少なからずいるんですね。
 物理的な居場所というものと、それと、人間の精神的なつながりの中での信頼関係ということでの居場所というものが確保されないと、社会の中で居場所がなく、物理的な居場所もまた精神的な居場所もなく孤立して生きていくということはやはり現実難しいので、そういう中で、孤立してしまって、仕事もうまくいかなくてという中で再非行に至ってしまう少年もそれはいますが、それはやっぱり、その受入先をどれだけ私たちの社会がいわゆる社会資源として用意できるかということに懸かっているというふうに思います。

#85
○高良鉄美君 ありがとうございます。
 もう時間ですので終わりますけれども、非常に、体験上の問題と、それから再非行が少ないということもよく分かりました。ありがとうございました。

#86
○嘉田由紀子君 ありがとうございます。三名の方それぞれに本当に大事なポイントを指摘していただきまして。
 碧水会の嘉田由紀子と申します。それぞれに質問させていただきます。
 まず、橋爪参考人ですが、刑法というのは社会の秩序を維持するためだろうと思うんですが、これも先ほど出ていたんですけれども、今回の改正に、世論調査をすると、賛成だと、少年の犯罪、凶悪犯が増えているから賛成だというのが多いんですが、犯罪白書など数字で見ていきますと、少年による刑法犯の検挙件数は平成十五年以降急激に減少しておりますよね、社会的事実として。それで、犯罪の件数が減っている。それはもちろんもう少年の人数が減っていることもあるんでしょうけど、それ以上に、比率としても、年少人口に対する比率としても減っているわけです。
 そういう意味では、イメージだけ危ないというのが広まり、社会的事実としては少年犯罪は減っているということを考えると、今回の十八歳、十九歳を特定少年として、言わば、先ほど来川村さんが言っていらっしゃる厳罰化ではなくて刑罰化だというのは、より厳しくするわけですけれども、これはそもそも立法事実がないんじゃないのかと私自身は疑問に思っております。この辺り、刑法学の立場から、橋爪参考人の御意見、お伺いしたいと思います。

#87
○参考人(橋爪隆君) お答え申し上げます。
 ただいま御指摘のとおりでございまして、確かに少年犯罪は減少しておりますし、少年法の処遇が有効に機能しているという事実についても今異存ございません。
 ただ、今回の立法事実はやっぱり民法改正でございまして、民法の改正によって、十八歳、十九歳の存在に関する評価が変わってくると思うんですね。そういったものについて、やはり少年法としても一定の手当ては必要であるというふうに考えられまして、その観点から、今回の改正法案というのは、少年法の適用年齢自体は変更しないと、だけども、十八歳、十九歳、すなわち責任を持って振る舞うべき主体についてはそれ相応の対応といったものをしようという形式の法改正というふうに考えております。

#88
○嘉田由紀子君 民法の改正がということですが、ただ、例の飲酒とかあるいは喫煙はまだ二十歳ですよね。ですから、必ずしもこれ社会生活の中で全て民法改正に合わせるというものではないので、ここはどう思われるでしょうか。

#89
○参考人(橋爪隆君) そのとおりでございまして、もちろん、個別の法ごとに、法律ごとにそこは検討する必要があると考えております。
 今御指摘の飲酒、喫煙につきましては、未成年者の健康保護という観点が大きいと思うんですね。そういう観点からは、生物学的な変更がない以上、飲酒、喫煙について法改正はする必要はないと考えております。
 ただ、今回、少年法につきましては、やはり、現在の保護処分というのは親権者が要ると、親権者の保護が十分でないところに国が後見的に介入する仕組みをつくっておりますので、そういった意味からは、親権者の保護といったものが観念できない年齢については、やはりそこは見直しの必要があるだろうと。そういう観点から、個別の法律ごとにその必要性というのを考えていくということかと考えております。

#90
○嘉田由紀子君 ありがとうございます。
 今回は政策的判断ということですから、法案の提出者とこのような議論はするべきだと思います。御意見、ありがとうございました。
 川村参考人にお伺いしたいんですけれども、少年院の入所者の言わば生育歴ですね、ずっと子どもの権利条約とかやっていらっしゃるということですけれども、これ統計で示されておりますが、実の父母に育てられた少年院入所者の割合は、男児で三三パー、女子で二六・三パーと。それから、身体的な虐待を受けた少年院入所者は、男児で二七・九%、女子で三九・八%と。もちろん、家族の在り方によってどうこうという差別を助長してはいけないんですけれども、やはり生育歴、家族関係、背景というのは、生育環境が、少年事件の加害者、ですから、加害者であるけど実は社会の被害者なんだと、十分生育環境整っていなかったという、そういうことを川村さん御自身も先ほど来言っていただいていますし、書物でも主張しておられます。
 そういうときに、加害者の特徴が、ある犯罪行為とある程度相関があるんでしょうか。例えば、傷害や暴行、窃盗など、犯罪の種類がいろいろありますね、そういうところと生育歴との何らかの関係性などがあるのかどうか。もしそういうデータなり御経験ございましたら教えていただけますか。

#91
○参考人(川村百合君) ありがとうございます。
 まず、前提としまして、今、少年院入所者の被虐待歴が、身体的虐待が男子二七・九%、女子三九・八%という数字を御紹介くださったんですが、これは犯罪白書の数字だと思いますが、この犯罪白書には注釈がありますとおり、この数というのはあくまでも少年が少年院に入所するときに自分が申告した数でして、このネグレクトや心理的虐待、性的虐待を合計すると、男子の場合三三%、女子の場合五四%ぐらいになりますけれども、これもあくまでも本人の申告した数字ですね。
 身体的虐待を受けている子も、客観的には身体的な虐待を受けていても、それが当たり前になってしまっていて、自分が虐待を受けているとは思っていない、自分が悪いことをしたから、あるいは親の期待に沿えなかったから親から殴られた、それは当たり前だというような価値観を身に付けてしまっていて、だからこそ虐待を受けたかというふうに聞かれても、いや、虐待なんて受けていないというふうに答えるような子がいて、なので、実際には少年院に入っている少年のほとんどが、身体的虐待だけではなくネグレクト、心理的虐待、性的虐待や、さっき申し上げた、その親の側に悪い意思があるわけではないんだけれども客観的に見ればネグレクトとか、あるいは親同士の暴力を見せさせられて、いわゆる面前DVにさらされていた、これも心理的虐待に当たりますが、少年自身はそう認識していないものも含めると、やっぱり生育環境が悪かった子がほとんどということが言えるというふうに、少年院の先生たちも実際に面接して話を聞いてみると、やっぱり家庭環境が恵まれていなかった子がほとんどであるというふうに聞いています。そういう子はやはり暴力でコミュニケーションを取るということが当たり前になっているので、自分も衝動的に暴力を振るってしまうというようなことになりがち。
 あるいは、暴力、身体的な暴力だけじゃなくて、いろいろな虐待によっていわゆる愛着関係がうまく形成できていなくて他人との信頼関係もうまく形成できていないので、社会的に不適応を起こしてしまって社会生活がうまく営めない。それが自傷行為という形で自分自身にやいばが向くか、他害行為ということで犯罪行為になってしまうかというのは表裏の関係でどちらにでもなり得るというようなことで、その生育歴が犯罪と相関関係あるかというと、あるということだと思います。
 ただ、それが暴力的なものが暴力的になるだけではなくて、暴力的な被害を受けた子が窃盗だとか振り込め詐欺などの加害ということもあるので、ちょっと私は、そこの数字を専門的にデータとしてあるのかどうかというところまで、完全なその相関関係についてのデータまでは承知はしておりませんけれども、やっぱり暴力を受けていたら暴力的な傾向になるというところは自分の接している少年の体験からいうと、あるように思います。

#92
○嘉田由紀子君 ありがとうございます。
 そういう意味では、家族の在り方なり、あるいは本当に貧困の問題も子供たちの今大きな社会問題になっていますけれども、そこから言わば根本的にサポートしていかないと、犯罪の後からだと後追いになってしまいますよね。
 その辺りで、今の日本の社会を考えるときに私はいつもこの話をするんですけど、離婚がどんどん増えていて、そして離婚の後が片親親権という、これ明治以降ずっと。ヨーロッパ、アメリカはもうかなり基本的には両親親権、夫と妻が離婚しても父子、母子の関係を維持するという両親親権なんですが、この辺り、この日本の言わば民法に関わる家族制度の改善の可能性というのは何か御意見ございますでしょうか。

#93
○参考人(川村百合君) 共同親権にすべきかどうかというところについては、いろいろな意見があるところだというふうに考えております。
 そして、その非行との関係ということでいうときには、その親権が、法的に親権があるかどうかというよりも、やはり現実に適切な監護養育を受けられていたのかどうかということが問題になり、それは血のつながった実の親による監護養育ということの必要はなくて、主たる養育者と言っていますけれども、主たる養育者との間で愛着関係が形成されて、人間に対する信頼関係が育まれていくということが精神的な成長発達に重要というふうに発達心理学などでは言われているようですから、必ずしも共同親権かどうかとか、親権者かどうかとかというところではない、社会学的な実態の部分が影響しているかなというふうに思います。

#94
○嘉田由紀子君 ありがとうございます。法曹界でもいろんな御意見があるということは伺っております。
 大山参考人にお伺いをしたいんですが、本当にもう涙が出るような大変な人生でおられたなと。私、ちょうど息子が二人、ほぼ同じ年なので、母親の気持ちについついなってしまうんですけど、お母さんが本当に大変だったと思うんですね、子供さんを、乳飲み子を二人抱えて、それで収入の問題など。
 これ、お伺いしていいのかどうか分からないんですが、もし立ち入りたくないということでしたらよろしいんですけど、今は親御さんは、大山さんが立ち直っていられるところをお母さんはどう思っていらっしゃるでしょうか。もし何かヒントがありましたら、お願いします。

#95
○参考人(大山一誠君) ちょっとどう思っているのかは、それはあれなんですけど、でも、今二歳になる子供がいて、で、やっぱり連れていくと孫の顔見れてよかったって言いますよ、やっぱり。ああ、喜んでくれているなって。だから、何か、何の用事もないのに電話掛けてきたりとかしたりとかして。まあ昔とちょっと違うかなと思っています。

#96
○嘉田由紀子君 もしよろしかったら、お父様とのつながりは特には今ないんですか。

#97
○参考人(大山一誠君) 父親とは関係、あります。
 十六歳ぐらいまでほとんど会ったときなかったですよ。一回だけ、小学校一年のときに上京してきて、ファミコン買ってくれたんですけど、買えなかったから。何か好きなもの買ってやるって言われて、ファミコンの本体が欲しいって言って、当時はやっていたので、それで買ってもらったんですけど、それから、その一回こっきりで、次会うのが十六歳のときですよね。だから、もう写真でしかほとんど見たことなくて。で、その十六歳で行ったときは殺してやろうと思っていましたね、正直。まだ自分、少年院とか入る前でしたけど、恨んでいましたから。ただ、会って顔を合わせてみたら、やっぱりちょっとできなくて、涙がやっぱりそのときもぼろぼろ出ましたけど。
 なので、今でも沖縄には二年に一遍ぐらいは帰ります。

#98
○嘉田由紀子君 ありがとうございます。
 立ち入ったことを聞いてしまって、ごめんなさい。やはり、継続的に愛着を寄せてくれる、あるいはつないでくれる家族がいるということも本当に大事だったのかなと思います。この後また法案審議に入らせていただきますけれども、本当に言いにくいところをお伝えいただきまして、ありがとうございました。
 以上で終わります。

#99
○委員長(山本香苗君) 以上をもちまして参考人に対する質疑は終了いたしました。
 参考人の皆様に一言御挨拶を申し上げます。
 参考人の皆様方には、長時間にわたりまして貴重な御意見をお述べいただきまして、本当にありがとうございました。委員会を代表いたしまして心より厚く御礼申し上げます。(拍手)
 本日はこれにて散会いたします。
   午後零時四十一分散会
ソース: 国立国会図書館
姉妹サイト