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2021/04/14 第204回国会 参議院 第204回国会 参議院 国際経済・外交に関する調査会 第4号 令和3年4月14日
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2021/04/14 第204回国会 参議院

第204回国会 参議院 国際経済・外交に関する調査会 第4号 令和3年4月14日

#1
令和三年四月十四日(水曜日)
   午後一時一分開会
    ─────────────
  出席者は左のとおり。
    会 長         鶴保 庸介君
    理 事
                今井絵理子君
                柘植 芳文君
                中西 祐介君
                川田 龍平君
                三浦 信祐君
                柳ヶ瀬裕文君
                上田 清司君
                伊藤  岳君
    委 員
                朝日健太郎君
                猪口 邦子君
                金子原二郎君
                二之湯 智君
                森 まさこ君
                山田 修路君
                吉川ゆうみ君
                小沼  巧君
                熊谷 裕人君
                田島麻衣子君
                横沢 高徳君
                里見 隆治君
                高橋 光男君
                高良 鉄美君
                ながえ孝子君
   事務局側
       第一特別調査室
       長        清野 和彦君
   参考人
       神戸大学名誉教
       授        坂元 茂樹君
       明海大学外国語
       学部教授
       公益財団法人日
       本国際問題研究
       所主任研究員   小谷 哲男君
       元海上保安庁警
       備救難監     向田 昌幸君
    ─────────────
  本日の会議に付した案件
○国際経済・外交に関する調査
 (「海を通じて世界とともに生きる日本」のう
 ち、我が国が海洋立国として国際社会を牽引す
 るための取組と役割(海洋の安全確保等に向け
 た課題と取組)について)
    ─────────────

#2
○会長(鶴保庸介君) ただいまから国際経済・外交に関する調査会を開会いたします。
 国際経済・外交に関する調査を議題といたします。
 本日は、「海を通じて世界とともに生きる日本」のうち、「我が国が海洋立国として国際社会を牽引するための取組と役割」に関し、「海洋の安全確保等に向けた課題と取組」について三名の参考人から御意見をお伺いした後、質疑を行いたいと思います。
 御出席いただいております参考人は、神戸大学名誉教授の坂元茂樹君、明海大学外国語学部教授・公益財団法人日本国際問題研究所主任研究員の小谷哲男君及び元海上保安庁警備救難監向田昌幸君でございます。
 この際、参考人の皆様に一言御挨拶を申し上げたいと思います。
 コロナ禍の中、こうして御出席をいただきましたこと、誠にありがとうございます。
 また、皆さんから忌憚のない御意見をいただきまして、本調査会の参考にさせていただきたいと思います。闊達な御議論よろしくお願いをいたします。
 次に、議事の進め方について申し上げます。
 まず、坂元参考人、小谷参考人、向田参考人の順にお一人二十分程度で御意見をお述べいただき、その後、午後四時頃までを目途に質疑を行いますので、御協力をよろしくお願いいたします。
 また、御発言の際は、挙手をしていただき、その都度、会長の許可を得ることになっておりますので、御承知おきをいただきたいと思います。軽く手を挙げていただければ結構ですから。
 なお、御発言は着席のままで結構でございます。
 それでは、まず坂元参考人からお願いをいたします。坂元参考人。

#3
○参考人(坂元茂樹君) 御紹介いただきました神戸大学の坂元です。
 二十分と時間が限られていますので、早速レジュメに沿って御報告をさせていただきます。適宜、資料の条文も御参照ください。
 一九八二年に採択された国連海洋法条約は初めて領海の幅を十二海里に統一し、その外側、十二海里に接続水域を、そして二百海里の排他的経済水域、それ以遠の深海底とその資源を人類の共同財産と規定しました。
 このように、海洋法条約は、秩序形成の基盤として、それぞれの海域に対する沿岸国とその他の国の権利義務を定める海域区分の考え方を採用し、また、航行、漁業、資源開発、海洋環境の保護、海洋の科学的調査という事項別規制の方式を取っています。公海における規制実現の方式としては船舶の旗国主義を採用をしております。
 同条約は、現在、百六十八か国の締約国を有する普遍的な条約であり、その規定の多くは、海洋法条約の非締約国に対しても慣習国際法として拘束をしております。
 海の憲法とも称される海洋法条約の解釈、適用をめぐる紛争を平和的に解決できるように、海洋法条約は、十五部に紛争解決の条文を置き、義務的な紛争解決手続を定めております。つまり、海域区分に基づき、国の権利義務を定める国連海洋法条約の体系と両立しない形の国の主張は認められる余地がないということであります。
 これが明確に示されたのは、二〇一六年七月の南シナ海仲裁判決であります。これはフィリピン対中国の訴訟なんですけれども、フィリピンは、二〇一三年一月、アキノ政権下で、領有権の争いのある礁や低潮高地を実効支配する中国を相手取って第十五部の義務的仲裁手続を開始しました。
 しかし、中国は、二〇〇六年に、東シナ海の一方的ガス田開発を始めるに当たって、海洋境界画定紛争や軍事的紛争などについて裁判所の管轄権を認めないという海洋法条約二百九十八条に基づく選択的除外宣言を行っていました。ですから、フィリピンが中国を訴えるためにはこの裁判管轄権をいかにかいくぐるかが重要な関門だったんですけれども、フィリピンは、中国が実効支配する礁や低潮高地は領海やEEZ、大陸棚を持ち得るのかという権原取得紛争として提訴いたしまして、この管轄権の壁を乗り越えました。
 二〇一六年七月十六日、南シナ海仲裁裁判所は、中国が主張する南シナ海における九段線は国連海洋法条約に違反するとの判決を下しました。この判決は、中国の九段線内の生物資源あるいは非生物資源に対する歴史的権利の主張というのは、海洋法条約が規定する中国の海域の限界を超える限度において海洋法条約と両立しないと結論し、したがって、中国の海洋法条約への加入、また同条約の発効によって、九段線の中で中国が有していたかもしれない歴史的権利は、国際法の問題としては、中国とフィリピンの間において海洋法条約が規定する海域の限度、すなわちEEZや大陸棚によって取って代わられたと判示をしたわけであります。中国の主張を否定したということですね。しかし、中国は同判決を違法かつ無効とし、この判決の履行を拒んでいます。
 判決は、アメリカ・ワシントンで中国の戴秉国元国務委員が述べたような、決して一枚の紙くずではありません。判決の拘束力は海洋法条約二百九十六条に明記されています。ただ、国際社会には判決を強制執行する手だてがないというだけであります。
 こうした判決を無視する中国の態度は、南シナ海における中国の海洋権益の擁護という国家の重大利益の前には国際法を無視してもいいと述べているのと同じであります。国際社会は、中国による拘束力ある判決を無視するという国際義務の違反を容認せず、南シナ海を海洋法条約が適用される平和な海にする努力が求められます。今回の中国の海警法には中華人民共和国の管轄水域という表現が採用されているんですが、南シナ海仲裁判決に対する強烈な反発とも読めるわけであります。
 三に移ります。
 海洋法条約は、各国が海洋の利用について立法、執行、司法の権限を行使する際に協調した処理をするための客観的な枠組みを設けるものであります。各国が海洋法条約の規定を国内法に取り込み、自らの国内措置に反映することを求めています。こうしたことが実現されて初めて海洋秩序の国際法的な枠組みとしての意義を持つことになります。そのため、各国は、自らの国内法の制定に当たっては海洋法条約に準拠するという、こういう必要があるわけであります。
 しかし、中国は、海洋法条約の締約国であるにもかかわらず、海洋法条約に合致しない国内法を制定している国であります。
 例えば、一九九二年の中国の領海及び接続水域法六条二項は、外国の軍用船舶、軍艦は、中国の領海に入る場合には中国政府の許可を得なければならないとして、国連海洋法条約にない外国軍艦の中国領海の通航につき事前許可を求めています。
 さらに、同法十三条は、中華人民共和国は、接続区域内において、安全、関税、財政、衛生又は出入国管理に関する法律又は法規に違反する行動を防止し、処罰するための管轄権を行使する権限を有すると規定しています。ところが、国連海洋法条約は、三十三条で、接続水域については、関税、財政、衛生の、出入国管理の、こういう管轄権は認めていますが、安全に対する管轄権は認めていません。でも、中国はこれを規定をしているということであります。
 さらに、一九九八年の排他的経済水域及び大陸棚法では、この法律の諸規定は、中華人民共和国の歴史的権利に影響を与えるものではないとしまして、南シナ海における先ほどの九段線を歴史的権利の水域として意識した規定になっています。
 さらに、二〇〇三年の無人島保護及び利用管理規定二条も、中華人民共和国の内水、領海、EEZ、大陸棚及びその他の管轄水域における無人島の保護と利用活動に適用するとして、その他の管轄水域という表現で、海洋法条約が認める以外の水域を管轄水域に加えております。
 二〇二一年一月二十二日、中国全人代常務委員会は、海警法を可決、成立させ、二月一日より施行させました。中国外交部の汪文斌副報道局長は、この海警法について、国際慣例や各国の慣行に合致しており、中国の政策に変化はないと述べたのですが、条文を見ると、海洋法条約の規定に合致しない諸規定があると。さらに、本年三月八日、中国の栗戦書全人代常務委員長は、その活動報告で、海警法制定の目的を、習近平強軍思想を貫徹し、新時代の国防と軍隊建設の必要に応えるためと述べ、海警が第二海軍の性格を持つことを明らかにいたしました。
 時間の関係もあり、二点のみを、その懸念点といいますか、申し上げたいと思います。
 一つは、曖昧な中国の管轄水域という概念と追加された防衛任務です。
 同法三条は、海警機構は、中国の管轄水域及びその上空において海上権益擁護の法執行業務を展開し、本法を適用すると規定しています。海警が管轄権を行使する水域として、中国の管轄水域という定義のない曖昧な表現を採用しております。これにより、中国に都合のいい恣意的な運用がなされる可能性がございます。
 懸念されるのは、三条が、海警機構がその上空において海上権益擁護の法執行業務を展開できるとしていることです。領海の上空は領空であり、上空飛行の自由は認められず、領空侵犯になりますけれども、EEZの上空は公海と同様に上空飛行の自由が認められており、この空域で中国が管轄権を行使すれば国際法違反になるということであります。
 もう一つの懸念点は、外国軍艦等に対する強制措置を定めた二十二条です。
 同条は、国家の主権、主権的権利及び管轄権が、海上において外国組織及び個人の違法な侵害を受ける又は違法な侵害を受ける緊迫した危険に直面する場合、海警機構は、本法及びその他の法律又は法規に基づき、武器の使用を含む全ての必要な措置を講じ、現場において侵害行為を制止し、危険を排除する権利を有すると規定しております。
 外国軍艦や外国公船は一般に執行管轄権からの免除が認められており、海警がこうした中国国内法の違反に対する執行措置をとれば海洋法条約違反となります。
 さらに、二十二条は、武器使用の対象範囲を外国組織にまで広げ、さらに、同法四十六条及び四十九条は、より積極的な武器の使用を容認する規定のように読めます。武器の使用は本来例外的措置であるべきなのに、原則化したというところに問題があるということです。
 尖閣諸島周辺海域を主権が及ぶ自国の領海と称している中国は、日本漁船を追尾する中国公船に対して、日本の海上保安庁の巡視船が日本漁船の追尾を中断させる行為を行った際には、中国の管轄水域として、中国海警法上は四十六条三項の、海警機構職員が法に基づき任務を遂行する過程において、障害、妨害に遭遇した場合の妨害行為として中国公船による武器の使用の可能性も排除されない、そういう条文構成になっております。国際法は武器の使用について必要性や均衡性を要件としますけれども、そうした国際法への配慮が条文上は見られないということであります。
 また、今回の海警法によって防衛任務が付け加えられたんですけれども、防衛任務と法執行機能の二重の機能を持つ海警の武器の使用の場合、軍事活動における武力の行使なのか、法執行活動における武器の使用なのか、その境界が曖昧になるという問題もあります。国際海洋法裁判所、ITLOSは、二〇一九年のウクライナ艦隊抑留事件暫定措置命令で、軍事的活動と法執行活動の区別は、紛争当事国による性質決定のみに依存するわけではなく、問題となる行為の性質の客観的評価に基づいて行われるべきだと判示をしております。
 今回の海警法が提起したのは、海洋法条約は、各国が海洋の利用について立法、執行、司法の権限を行使する際に条約に基づく協調した処理を行うことを求めていますけれども、中国は、立法、執行の面において海洋法条約と異なる国内法を制定したということになります。
 中国による今回の海警法の施行によって、世界最大とも言われる海上法執行機関の力を背景に、中国による国際法違反の局面が立法から執行へと移るということを意味いたします。もしそれを許せば、南シナ海や東シナ海における海洋秩序を法の支配から力の支配に委ねることになるということであります。
 それでは最後に、今後の日本としての対応はどうあるべきかということで、対米国については、四月十六日に開催される菅総理大臣と米国のバイデン大統領との首脳会談において、一月二十四日の岸防衛大臣とオースティン国防長官との電話会談で確認された共同防衛義務を定めた日米安保条約五条が日本の施政下にある尖閣諸島に適用されることを首脳同士で改めて確認する必要があると思います。
 対欧州には、日、米、豪、インドによる戦略的な枠組み、自由で開かれた太平洋戦略、QUADに英国、フランス、ドイツなど欧州諸国あるいはカナダなどの更なる関与を求めると。法の支配を含むルールに基づく国際秩序の確保、航行の自由、紛争の平和的解決などの共通の価値観の共有を広げていく必要がある。
 じゃ、中国に対してはどうするのかということですが、日中両国の海上警察機関の衝突という不測の事態が生じないように、二〇一八年五月九日に日中首脳会談で合意された海空連絡メカニズムに関する覚書の対象に日中両国の海上警察機関の船舶や航空機を加えるよう交渉をすると。同覚書では海警の船舶あるいは海上保安庁の船舶は対象外となっていますので、これを加えるよう交渉するということでございます。
 じゃ最後に、日本独自の対応ということですけれども、日米で日米安保五条の適用範囲だというふうに確認をすると、中国の立場に立てば、尖閣諸島に対して、日米安保条約の発動の要件たる武力攻撃、組織的、計画的な武力行使に当たらない行動、いわゆる純然たる平時でも有事でもないグレーゾーン事態での行動を模索すると思われます。こうしたグレーゾーン事態に切れ目なく対応できる海上保安庁と自衛隊の緊密な連携の構築が必要です。
 中国は、日本が尖閣諸島を実効支配している現状をあからさまに力によって変更しようという動きを行っており、国際社会における法の支配の実現に努力する日本としては、力の支配を排するために自らの対応能力を強化していく必要がございます。
 選択肢としては幾つか考えられます。一つは、自衛隊を前面に出すと武力紛争になるので、海保を準軍事組織化し、権限と装備を強化して対応すべきではないかという選択肢。二番目は、自衛隊を前面に出しやすくするために、巡視警戒を自衛隊の任務に加えて、防衛出動の手続を迅速化すべきだとの選択肢。三番目には、現行法には隙間がないので、海保から自衛隊への移行を更にスムーズにできるよう合同訓練などにより連携をし強化をすべきだという選択肢であります。
 個人的には、現在の段階では三がいいように思います。なぜなら、一ですと、庁法二十五条の解釈規定の改正が必要となります。日本としては、庁法二十五条の解釈規定の存在を国際的に広く発信し、日本の海上保安庁はその機能が法執行活動に限定された文民の警察機関であることを周知させると。そのことにより、警察機関である海保が仮に武器の使用に至ったとき、第一義的には武力の行使ではなく、法執行活動における武器の使用であるとの推定が働くと。中国の企図するエスカレーション、すなわちグレーゾーン事態において海保や自衛隊が最初に武力の行使を行ったと主張できる状況をつくりたいと彼らは考えているわけで、それを防ぐことができると。この点は、自衛隊の海上警備行動についても法執行活動であることを国際的に周知させる必要があります。ただし、海保や自衛隊の限定された法執行活動に基づく実力行使、それ自体によって武力紛争が発生しなくても、相手の反撃によって武力紛争が発生する可能性は否定できません。海上ではあくまで実力行使の烈度によって国際的な武力紛争の発生が判断されるからです。
 日本政府としては、その意味ではあらゆる場合に対外的な説明責任を果たせるような対処方針を作成する、策定する必要があると考えます。
 私の報告は以上です。

#4
○会長(鶴保庸介君) ありがとうございました。
 次に、小谷参考人にお願いをいたしたいと思います。小谷参考人。

#5
○参考人(小谷哲男君) ただいま御紹介いただきました明海大学の小谷でございます。
 本日は、このような機会をいただきまして、ありがとうございます。
 私の方からは、今、坂元参考人からもございました中国海警法について、安全保障の観点から私見を述べさせていただきたいというふうに思っております。
 まず、中国海警法、今年の二月一日に施行されまして、それによって中国海警の行動がどのように変わっていくのかということが日本だけではなくこの周辺諸国においても注目を浴びているところですけれども、その中国海警法の背景について、まず私の考えを述べさせていただきます。
 中国海警局は二〇一三年に創設されたのですけれども、それ以前は、中国において五つの海洋部局がありました。この海洋部局は、例えば海監ですとか漁政という、二〇〇八年以降、尖閣諸島の領海に侵入していた船を運用していた部局なんですけれども、これらが二〇一三年に、五つの部局、これは五竜と呼ばれていましたが、そのうちの四つが統合されて中国海警局となりました。
 その背景には、当時の胡錦濤国家主席が海洋強国を目指すというスローガンを掲げたのですけれども、その際、この五竜が管轄権でありますとか予算をめぐって互いに争っている状態、それがこの海洋強国を目指す上で障害になるという認識があったということです。
 この中国が海洋強国になるためには、例えば、日本の海上保安庁が海洋法執行機関として日本の海における海洋管轄権をしっかりと行使していることだけではなく国際協力の枠組みも広げているのを見て、そして、中国もそのような組織を持つべきだということでこの中国海警局が創設されたというふうに理解しております。つまり、中国海警局のモデルは海上保安庁であると言っても過言ではないかというふうに思います。
 ですが、実態としましては、中国海警局は四つの部局の寄せ集めという状態が長らく続きました。それぞれ船の名前は元の部局の名前で運用しておりましたし、制服はばらばら、採用、訓練についてもなかなか統一されないという状況が続いておりました。また、この中国海警局は、組織上は国家海洋局の下に置かれたものの、運用に関しては武器を使用するということから公安部の指揮を受けるという形で、やや中途半端な浮いた存在であったということが言えます。
 何よりも、新しい国家海警局というものをつくったわけですが、その根拠法が存在しませんでした。実態としては省庁間協力というまま海警局は運用されていたということになります。
 今回の中国海警法というのは、真っ先に、一番最初の目的はこの海警局の根拠法を制定するということであり、むしろ問題は、なぜ今できたのかというよりも、なぜ今までできなかったのかということではないかというふうに思います。
 なぜできなかったのか。それは、やはり中国の縦割りの文化の中で、なかなかその四つの部局を統合する形で法律をまとめるというのが難しかったというのが一番大きな理由だったというふうに理解しておりますけれども、言わば海上保安庁法がないまま海上保安庁が存在するような状態が七年以上続いていたということになります。
 それが、この海警法が今回制定された一番大きなきっかけになりましたのが、二〇一八年に海警局が武警の下に移管されたということであります。この武警に移管されたことで、この根拠法である海警法も作りやすくなったということになります。
 では、なぜ海警局は武警に移管されたのか。
 表向きの理由としては、武器を使う組織はやはり共産党が指導するべきだということで、中央軍事委員会の下にある武警の更にその下に海警を入れたということであります。それは、今の習近平体制を更に強化するという流れの中にも位置付けられるかというふうに思います。
 ですが、今述べましたとおり、この海警法の一番の性質が海警局の根拠法であるということ、そして、七年以上根拠法のないまま海警は活動してきた、その中には、武器の使用もありましたし、周辺国との摩擦を引き起こすような事案もありました。
 どちらかといえば、この海警法というのは、この七年あるいは八年の海警の行動を後から法律で裏付けるというものですので、この海警法ができたからといって私は、急速に、急激に海警の行動が変わるとは見ておりません。
 もちろん、長期的に見れば、海警がこの海警法に基づいてその役割を拡大する可能性は否定できないと思いますけれども、短期的に、急激に海警の行動が変わるというふうには思っておりませんし、実際施行されて二か月以上たっておりますが、海警の行動が変わっているということは、公の情報では今のところ出ておりません。
 とはいえ、海警法の中には、坂元参考人の方からもありましたとおり、国際法の観点から見て逸脱していると思われる部分が散見されます。やや繰り返しになるところもございますが、海警法自体を見ますと、やはり海上保安庁法をかなり参考にしたのではないかと思われる部分がありますが、例えば、二章では海警の組織について、三章では海洋安全保障について、そして第六章では武器の使用について書かれております。この全体を眺めますと、この海警という組織の性質がやはり軍に近くなったということは間違いないというふうに思います。
 海警の関係者と私は一年に何度もお話をする機会がありますが、生え抜きの海警の人たちは、自分たちのモデルは海上保安庁であるということを常に言っております。しかし、今回の海警法あるいはその前の武警への移管を受けて、中国海警局は、例えばアメリカのコーストガード、沿岸警備隊、つまり軍の一部という性格が更に強まったと言わざるを得ないというふうに思います。また、海警法の十二条を見ますと、国家主権の防護というものがその役割に含まれております。やはりその点から見ても、海警局は軍に近い存在になったということが言えると思います。
 一方、武器の使用について、日本の中でもかなり注目が高まりましたが、武器の使用について規定している六章を見ますと、これは必要最小限、そして合理的な水準で使用するとなっておりますので、この武器の使用については特段国際的な基準を大きく逸脱したというところは見られません。
 一番この海警法で問題だというのは、先ほどもありましたが、その管轄水域、管轄海域の定義が非常に広く取られている可能性があるということです。
 お手元のレジュメ、一枚紙のレジュメに地図を載せておきましたけれども、この濃い黄色が中国が主張している領土なのですけれども、薄い黄色の部分が恐らくこの海警法が適用される管轄水域ということになろうかと思います。その中には、領海、EEZ、大陸棚以外にも、九段線の中の水域及び台湾海峡、そして台湾の東側の海域、さらには東シナ海、これは沖縄トラフまでが含まれるというふうに考えられます。これほど過剰な海域に対して、この海警法、特に武器の使用も含めて適用されるとすれば、これは海洋法秩序を大きく揺るがしかねない事態を引き起こすかもしれないというふうに考えています。
 加えて、二十五条では、海上臨時警戒区というものをやはりこの管轄水域の中に設けられるとなっておりますが、一般的には、領海において警戒区を限定的に制定するということはあることですけれども、恐らく中国の考えは、かなり広い海域で、言わば侵入禁止を制定できる海域を考えているのではないかというふうに思われます。
 また、二十一条につきましては、外国の軍艦及び政府公船に対しても、違法な行為を行っている場合、強制措置をとれるという規定がありますけれども、これもやはり主権の免除という原則を大きく逸脱しかねない問題で、これは場合によっては武力の行使に当たる可能性がある非常に大きな問題ではないかと思います。これが実際に、この条文が実際に使われますと、これは、例えば日本に対して使われた場合は自衛権の発動につながるような事態を引き起こす可能性もありますし、米軍が行っている航行の自由作戦、これに対して海警局が妨害をするような行為というものも考えられるのではないかというふうに思います。
 それでは最後に、求められる日本の対応について私見を述べさせていただきます。
 まず、日本としては、何よりも冷静かつ、そして国際法に基づく対応というものを考えていくべきだと思います。
 この海警法、確かに問題は多く含んでおりますが、これを過剰に評価してこちら側も過剰に反応するということは日本の国益にはならないというふうに思います。既に危害射撃の件について国会等でも議論がされまして、これが外国のメディア等にも報道されておりますが、日本がやや過剰な反応を示しているのではないかということを米国の専門家あるいは東南アジアの専門家からも聞きますし、何より中国がこの問題を取り上げて、日本が過剰な反応をしているという世論工作を始めております。この点はやはり気を付けるべきでしょうし、何よりもその武器の使用基準というものは、こちら側の手のうちを見せることになりますので、国会という公の場で議論することが果たして適切なのかということも考える必要があろうかと思います。こちらの手のうちを見せないことが抑止、抑止力につながるということもあろうかと思います。
 そしてもう一つが、現場負担の軽減ということを考える必要があると思います。
 私も、これまで何度か石垣の尖閣専従部隊を訪問して隊員の皆様のお話を聞いてきましたが、皆様、もう体を張って、有事にならないように日々頑張っているというふうに承知しております。この海警法の制定を受けて、もう海上保安庁の船と人の数を増やせばいいという議論もございましたが、海上保安庁はもうぎりぎりのところで私は頑張っていると思いますし、仮に船を増やしても、それを動かす人が十分確保できない状況になっています。ですので、この現場にもっと頑張れというやり方ではない対応というのが必要ではないかと思います。
 では、それは何かといいますと、やはり政治の責任でこの東シナ海の問題あるいは海洋法秩序の問題に取り組むということではないかと思います。
 例えば、この海警法に基づいて海警局が尖閣諸島に上陸するようなことがあった場合、この前の国会の議論では、これは海上保安庁法に基づいて海上保安官が対応できるということでしたが、政府の組織である、しかも軍のもう一部と考えられる海警局が尖閣諸島に上陸するということは、これは組織的かつ計画的な武力侵攻とみなすことも十分できるかと思います。そのような場合、現場の判断に任せるのではなく、やはり政治がその責任においてきちんと武力攻撃事態だと認定できるものであれば認定する、それによって日本側もきちんとした対処をするということを議論していくべきではないかというふうに思います。
 最後に、やはりこの海警法の問題は日本だけではなく周辺諸国が懸念を強めておりますので、周辺諸国とともにこの問題について中国にきちんとした対処を求めるということが大事ではないかと思います。
 昨年十一月に海警法の草案が公開されまして、これに対して周辺諸国から様々な意見が出ました。一番この海警法の問題である管轄水域について、草案の段階では、内水、領海、EEZ、大陸棚及び中国が管轄する水域というふうに明確に定義がされておりましたが、最終的な文面からはこれが削除されました。
 これはなぜかということを中国側の専門家に聞いたところ、それは周辺諸国が懸念を挙げたからであるということでした。つまり、周辺諸国が一丸となって懸念を伝えれば、中国はまだ行動を改める余地があるということですので、ここは国際的な連携を深めて、中国が海警法を海洋法の精神に逆らうような形で運用しないように圧力を掛けていくということが必要ではないかと思います。
 私からは以上となります。

#6
○会長(鶴保庸介君) ありがとうございました。
 次に、向田参考人にお願いいたしたいと思います。向田参考人。

#7
○参考人(向田昌幸君) ただいま御紹介にあずかりました向田でございます。
 時間の制約もございますので、早速、皆さんのお手元にお配りしておりますレジュメと別添の参考図に沿って、本日私に与えられましたテーマに関する意見を申し述べさせていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。
 まず、本論に入る前に、国連海洋法条約の採択、発効後の我が国周辺海域の状況につきまして、簡単におさらいをしておきたいと思います。
 図一を参照してください。
 この図は、先生方既に御案内のとおり、国連海洋法条約に基づき、我が国が、我が国周辺海域において主権及び天然資源の利用、管理等の特定事項に関する主権的権利や管轄権を主張している領海、EEZ、大陸棚の現状を示しております。
 国連海洋法条約は、戦後、国連を中心に、一九五八年二月に新しい成文化された国際海洋法秩序の構築に向けた作業がスタートいたしまして、それから二十四年もの年月を掛けて、一九八二年四月三十日にようやく採択にこぎ着けたものであります。この条約が発効したのは、それから更に十二年後の一九九四年十一月十六日のことであります。
 この国連海洋法条約が伝統的な海洋法秩序にもたらした変革のうち、特に沿岸国の海洋権益等を大きく左右する重要なものとして、次の二つを挙げることができます。
 一つは、それまでの領海の幅は一般的に三海里、約五・六キロが採用されてきましたが、初めて十二海里、二十二キロの、統一され、拡大されたということであります。もう一つは、沿岸国に自国の領海の外側の領海基線から最大二百海里、三百七十キロの沖合までの公海上に新たに排他的経済水域、EEZと新しい大陸棚の概念が導入されたということであります。
 EEZは、沿岸国に漁業資源や鉱物資源の開発、利用、管理、その他特定の事項に関する主権的権利や管轄権を認めております。また、新しい大陸棚は、同じく領海の基線から沖合に延びる、基本的にはEEZと同じ二百海里までの大陸棚の海底とその地下の天然資源の開発、利用等に関する主権的権利などを沿岸国に認めるとともに、海底地形や地質等に関する一定の条件が満たされるのであれば、二百海里を大きく超えて更に沖合までその限界を延長できるという可能性があります。
 こうして、国連海洋法条約によって、それまでの狭い領海と広い公海という伝統的な海洋法秩序から、広い管轄海域と狭い公海へと大きな変革がもたらされたことによりまして、海洋の価値が一気に飛躍的に上昇したわけであります。その結果、世界の国々が自国の海洋権益を確保し、また保全するとともに、安全保障の観点から、先を競うようにして海洋進出を目指すようになり、世界中の海は各国の国益と威信を懸けた争奪戦の様相を呈するようになったわけであります。
 こうした状況は我が国周辺海域も例外ではなく、近隣諸国等の国力が向上してまいりますにつれて、国家間の海洋をめぐるあつれきが顕在化、先鋭化してきました。このため、領土問題につきましても、これまでにも増して、解決に向けた筋道が非常に不透明になってきたように思われます。
 そうした中で、我が国は、一九九八年、平成八年六月二十日に国連海洋法条約を批准し、その一か月後の七月二十日に同条約が日本に効力を生じました。その日をもちまして、その日を機に、我が国は世界で初めて国民の祝日として海の日を施行したことは御案内のとおりであります。
 それでは、本論に入りたいと思います。
 レジュメの一の一、我が国周辺海域における海上法執行活動をめぐる現状の(一)に、我が国が主張している又は設定しております領海及びEEZのうち、海洋法執行活動がままならない海域とその要因を列挙しております。
 図二は、北方領土周辺のロシアに実効支配されている海域の根室海峡の地理的中間線の状況を示しております。
 ロシア側に実効支配されている海域では、法執行活動が事実上不能となっております。
 図三を御覧ください。
 これは、韓国との間でEEZの境界が画定されておりませんので、それまでの間、それぞれの国の漁業が円滑に行えるようにと、一九九八年の日韓漁業協定に基づく暫定的な漁業管理水域として、広大な日韓漁業暫定水域が竹島周辺及び済州島の南方に設定されております。
 この暫定水域では、法執行活動は、旗国主義が採用されておりますので、韓国漁船の取締りは我が方としてはできません。特に北部暫定水域につきましては、図六に示すように、日韓間の重複水域よりも大きく日本側のEEZ内に食い込んでいる状況になっております。
 次に、東シナ海は、中国との間で二〇〇〇年六月に発効した日中漁業協定に基づく日中漁業暫定水域が設定されております。
 図四を御覧ください。
 これは、日中間の漁業暫定水域とそのすぐ北側の漁業暫定水域に準じた扱いの中間水域というものを示しております。これらも旗国主義を建前とした海域ですから、我が国の漁業に関する法執行活動はできません。両方を合わせた面積は東シナ海の約半分ぐらいにも相当しております。
 同じく図四に、北緯二十七度以南の水域が示されております。これは、日中漁業協定に附属する外務大臣書簡によって、中国国民を日本漁業関係法令の適用除外にするということで、以南水域と呼ばれているものであります。この海域の日本側EEZ内では中国漁船の取締りは行われておりません。
 しかし、中国公船が自国漁船に対し訪船指導あるいは立入検査と目される動きをしているのを海上保安庁の巡視船が散見しており、その都度、我が国EEZ内での中国の法執行活動は認められない旨の通告を行い、中止させるようにしております。ただ、この以南水域は尖閣諸島の周辺に設定されておりますので、尖閣問題と関連があるのではないかと見る向きもあります。
 図五を御覧ください。
 台湾との間でも、二〇一三年四月に締結された日台漁業取決めに基づく日台漁業暫定水域が設定されております。ここでも旗国主義が建前ですから、台湾漁船に対する漁業取締りは実施されておりません。
 次に、図六を御覧ください。
 この図は、日本と韓国がそれぞれ竹島を基準にしてEEZを主張しておりますので、竹島を挟んでEEZが重なり合っていることを示しております。
 図七は、七つの近隣諸国等とのEEZと大陸棚の重複に伴う、我が国が主張している地理的中間線を示した図であります。
 図八は、沖ノ鳥島の概要を示しております。
 この沖ノ鳥島は、人一人がやっと立つことができる程度の小さな岩礁が二つほど海面上に頭を出しており、その周辺をサンゴ環礁が取り囲んでいる状態であります。
 これに対し、中国と韓国は、EEZと大陸棚を設定することができない単なる岩だというふうにクレームを付けております。特に中国は、この海域で、海上保安庁の中止要求を無視して軍事目的と見られる海洋調査活動を活発化されております。台湾も、前馬英九政権の末期に同様のクレームを提起したことがありますが、沖ノ鳥島周辺のEEZ内で海上保安庁が違法操業で摘発した台湾漁船は、これまでのところ、全て早期釈放制度、ボンド制度に基づく担保金の提出に応じております。
 図九は、東シナ海の大陸棚の境界画定に関する日中、日韓の主張を説明する図であります。中国と韓国が共に、自国の大陸棚の限界は、先ほども御説明がありましたが、沖縄トラフまでだと主張しておりまして、これに対し、日本側は地理的中間線を主張しております。この問題はこれまでのところそれほど先鋭化しておりませんが、今後の状況は予断を許さない状況だと見ております。
 以上のことからお分かりのとおり、図一に示されたところの、我が国の領海とEEZを合わせた面積が国土面積の十二倍、世界第六位の広さだと胸を張る海域の中には、関係当局等の間において、関係当事国等との関係におきまして、我が国が有効に管理支配していることのあかしでもある海上法執行活動を始め、広範多岐にわたる海上保安業務の遂行がままならない海域が含まれており、その広さは、ざっと見積もっただけでも国土面積の二倍ぐらいの広さになると思っております。
 次に、レジュメの一の二、我が国周辺海域における海洋法執行活動をめぐる課題ですが、(一)から(八)までに掲げている課題のうち、特に(一)から(三)及び(八)が重要だというふうに見ております。
 以上、これまで説明申し上げた我が国周辺海域の実情や海域別問題点などにつきましては、事務局から事前に配付されている学士会報に掲載されております「国境離島における警備の現状と今後の対策について」と題する私の講演録を参照していただきたいと思います。
 次に、レジュメの大きな二の我が国周辺海域における海上保安体制及び海上保安庁の権限執行の在り方のうち、海上保安体制の在り方について述べさせていただきます。
 平成二十八年十二月二十一日に、海上保安体制強化に関する関係閣僚会議において、次の五つを柱とする海上保安体制強化に関する方針が決定されております。
 一つは尖閣領海警備体制の強化と大規模事案の同時発生に対応することができる体制の整備、二つ目が広大な我が国周辺海域を監視できる海洋監視体制の強化、三つ目がテロ対処や離島、遠方海域における領海警備等の重要事案への対応体制の強化、四つ目が我が国の海洋権益を堅守するための海洋調査体制の強化、以上の四つの体制を支えるため、五番目として人材育成などの基盤整備というものが挙げられております。
 海上保安体制強化に関する関係閣僚会議につきましては、平成二十八年以降、毎年開催されており、海上保安体制強化に関する方針に基づき、海上保安庁の体制強化を引き続き進めることが確認されております。このことは、海上保安庁にとりましては大変心強く、感謝しているものと承知しております。
 次に、海上保安体制強化の方針の継続についてでありますが、海上保安庁が日常的に主な活動舞台としております我が国周辺海域は、冒頭で申し上げたとおり極めて広大なものであり、しかも、その広大な海域における人命、財産の保護と治安秩序の維持に関する海上警察法執行活動を基軸といたします、広く海上の安全確保を図るための海上保安業務というものは実に広範多岐にわたっております。
 その上、これまでの体制強化の主要部分は尖閣問題への対応に充当せざるを得ないため、全庁的ないしは全国的視点から見ますと、海上保安庁の業務執行体制は人員、装備ともまだまだ十分とは言えないというのが実情であります。特に、現場の、現場部隊の訓練を十分に行うための体制の確保と海上保安官の能力向上を図るために不可欠な教育訓練施設などの拡充が喫緊の重要課題になっております。そして、現下のコロナ禍のあおりを受けまして、学生の募集、採用、教育全てにおいて附帯的な経費がかさんでいるところであります。
 そういう意味において、海上保安体制強化に関する方針につきましては、是非とも引き続き継続していただきますよう、この場をお借りしましてお願い申し上げる次第であります。
 なお、この点に関しまして、海上保安庁法十条第二項に、海上保安庁長官は、国土交通大臣の指揮を受け、庁務を統理し、所部の職員を指揮監督する、ただし、国土交通大臣以外の大臣の所管に属する事務につきましては、それぞれその大臣の指揮監督を受けるという規定がございます。これは、海上保安庁の業務が広く複数の省庁にまたがっていることを踏まえた規定であります。
 しかし、霞が関のルールでは、そのために必要な予算、定員などは基本的に所管省庁で賄うというのが暗黙の基本となっておりますが、これでは国土交通省も大変であります。ここはひとつ、関係省庁が一丸となって、海上保安庁体制の充実について支援をしていただきたいということを併せて申し添えさせていただきます。
 また、海上保安庁の体制が強化されることは、私も海上保安官OBの一人といたしまして大変喜ばしく思っておるところでありますが、広大な我が国周辺海域における海上保安体制を海上保安庁だけで一手に引き受けるというのはそもそも困難であり、効率的なものでもないと思われます。しかも、増員が認められても、一人前の海上保安官の養成は一朝一夕にはまいりません。
 そこで、国の関係省庁の横断的な連携協力体制及び国と地方自治体との連携協力体制を一層推進していくとともに、現職海上保安官の活動を補完する勢力として民間勢力の積極的な活用を図り、官公民が一致協力し、国を挙げた海上保安体制の確立を目指していくことが重要であるというふうに思っております。
 具体的に申しますと、現職海上保安官の活動を補完する民間勢力として有力な候補が考えられるのは、例えば、全国各地に在住している退職海上保安官、そして公益社団法人日本水難救済会傘下の、全国津々浦々に千か所以上設置されております救難所及び救難支所を拠点に、昼夜を分かたず捜索救助にいそしんでおります総勢五万一千人余りの民間ボランティア救助員、さらに公益財団法人日本ライフセービング協会に所属している全国のライフセーバーなどを、我が国周辺の地先沿岸水域の捜索救助勢力として、あるいは児童生徒を含む一般市民を対象とした海上安全指導員として積極的に活用するとともに、これらの団体につきましては、運営が公益財団法人の日本財団からの助成金によって支えられているところでありますが、国と地方自治体による公的な支援体制につきましても前向きな検討をお願い申し上げる次第であります。
 次に、民間との連携によって海洋、広大な海域の監視体制を充実するために、日本周辺海域で操業する漁船や一般の通航船舶並びにこれらと常につながっております漁業無線局に協力を求めていくことについて、併せて御提案させていただきたいと思います。
 関係省庁の横断的な連携体制の構築に関し、もう一つ提案がございます。それは、平素から海上保安庁と防衛省・自衛隊との有機的な連携協力体制を確保しておくことにより、我が国の国防体制と我が国周辺海域における海上保安体制が共に相乗的に向上するものと期待されるところ、そのためにも、個人的な考えではございますが、自衛隊が有事だけでなく平時においても、我が国の平和と独立を守り、国の安全を保つというその最も重要な本来任務を日常的に普通に遂行することができるよう、早急に国内環境を整備することにつきましても是非検討の一つに加えていただきたいと存じます。
 その際に、もしも自衛権による対処が必要と認められる事案に遭遇した場合につきましては、我が国の領海等として自他共に認められるような海域におきましては、外国による主権等に対し、自衛権による対処もさほど神経質になる必要はないのではないかというふうに個人的には考えております。
 以上のことは、海上保安庁の負担軽減のためにも、是非とも前向きに御検討をお願い申し上げる次第であります。
 最後に、二の二、海上保安庁の権限執行の在り方について述べます。
 外洋や遠方海域での重大事案ないしは大規模事案に対し、これまで海上保安庁が組織を挙げて対応してきた事例につきましては、レジュメの一の二の(三)に記載しているところであります。
 こうした外国漁船団の集団による不法行為に対し、放水等による排除はそれなりに有効性が実証されているところでありますけれども、再発、再犯防止を徹底するためにも、確実に制圧、拿捕、検挙し、あとはボンド制による担保金を確実に徴取するなど、毅然たる厳正な法執行が望まれます。また、裁判官や検察官ができるだけ現場に近い適当な場所に出張するなど、迅速な処理、事案処理ができますよう、関係当局においても柔軟な対応体制の整備について御検討をお願い申し上げます。
 次に、尖閣諸島周辺における中国人や台湾人に対して可能な限り、国内の他の海域における法執行と同様、厳正な法執行を実施し、ダブルスタンダードではないかと批判されることのないよう、公正公平な法執行に努めることが重要であります。
 図十は、魚釣島に不法上陸した中国の保釣活動家を海上保安庁と沖縄県警が逮捕したときの写真であります。
 図の十一は、台湾の保釣活動や中国漁船の領海侵入を巡視船艇が阻止している状況であります。
 図の十二は、中国公船による魚釣島周辺の領海への侵入を阻止するため、海上保安庁の巡視船がすぐその内側からブロックする形で並走している写真であります。不測の事態への発展することのないよう、冷静かつ細心の注意を払いつつ、毅然として粘り強く対応に当たっているところであります。
 次に、武器の使用の在り方についてですが、一般私人、私船に対する場合と外国政府に所属する公船に対する場合に分けて述べます。
 まず、一般の私人、私船への武器使用に関し、一九九九年九月二十五日の能登半島沖不審船事件のときに初めて海上保安庁は威嚇射撃を実施しておりますが、それ以外は海上保安庁の方から先に発砲した事例、前例はないというふうに承知しております。
 かつて、一九七八年四月に尖閣周辺海域で発生した中国武装漁船集団領海侵入事件では、十三ミリ機銃を装備した中国漁船百十数隻が尖閣諸島周辺海域に押しかけてきまして、日本の領海内で操業したり、徘回、停留を繰り返し、警備中の巡視船に機銃を向けるなど威嚇行動を取りましたが、その際におきましても武器で対抗はしておりません。
 次に、外国公船に対する武器使用についてですが、一般論といたしまして、そのときの状況に応じ、関係法令にのっとり、許される範囲内において適切に対処すべきであると考えておりますが、その可否又は是非につきましては一概に論じることはできないと思っております。ただ、当該外国との武力衝突等の不測の事態へと発展することを回避する上で、武器使用を含む実力行使はできるだけ避けることが望ましいことは申すまでもありません。
 なお、事務局から配付されております、メディアウオッチ一〇〇に四回に分けて連載した私の中国海警法を踏まえた我が国の対応についてと題する特別寄稿文の中で、去る二月一日に施行された中国海警法の注目すべき点と問題点を始め、尖閣諸島、尖閣問題の本質、特に中国が領有権を主張する土俵に上がることができたいきさつと対日攻勢の原動力について解説するとともに、それらについてしっかりとした認識をした上で我が国の取るべき選択肢について検討課題を提言しております。
 また、去る二月十八日付けの日経新聞インタビュー記事は、この特別寄稿をベースに、警察権による対処の限界を中心に私見を述べたものであります。併せて参照していただければ幸いであります。
 以上、私の意見陳述を終わります。

#8
○会長(鶴保庸介君) ありがとうございました。
 以上で参考人の御意見の陳述は終わりました。
 これより参考人に対する質疑を行います。
 本日の質疑はあらかじめ質疑者を定めずに行いたいと思います。
 まず、大会派順に各会派一名ずつ指名し、その後は、会派にかかわらず御発言いただけるよう整理してまいりたいと思います。
 なお、質疑及び答弁は着席のままで結構でございます。
 また、質疑者には、その都度答弁者を明示していただくとともに、できるだけ多くの委員が発言の機会を得られますように、答弁を含めた時間がお一人十分以内となるように御協力をお願いをします。
 質疑のある方は順次御発言願います。
 猪口邦子君。

#9
○猪口邦子君 自由民主党、猪口邦子でございます。
 本日は、大変重要かつ明快な御説明、報告を三人の参考人からいただきまして、心から感謝申し上げます。
 私は、千葉県からの参議員でございまして、海上保安業務につきましては、外房の長い海岸線があり、海上保安庁には大変その活動に敬意を表したいと思っております。
 私は、冒頭、まず全般的な私の考えを述べたいと思います。
 海の恒久平和、海の恒久平和がないと、その他の多くのことに対応し切れない、この時代状況の大変さがあります。私たちが海洋についてこのような調査会で考える、大まかに言うと、二つの柱があると思うんですね。一つは、こういう安全保障、それからもう一つは、海洋をめぐる環境、温暖化の影響、プラスチックごみのこと、大きな課題と今なっているわけです。平和な海、海の平和があって初めて環境問題への資源配分、財源配分、あるいは人的集中力の配分も可能になる。それに失敗すると、環境全般的に悪化し、それは陸の環境にも大きく影響し、部分的には環境難民なども発生し、そのような意味で、安全保障環境、これ非常に更に悪化するという悪循環に入ります。
 ですから、海の恒久平和、陸の平和の根本の条件をつくるところで、やはり、どうやって今御指摘の数々の問題があるにもかかわらず平和を達成できるかという観点から質問してまいりたいと思います。
 まず最初に、坂元先生についてでございますけれども、管轄水域について、御指摘のような数々の国際法違反、国連海洋法条約違反と思われるようなことが解釈の少なくとも面で起きているという御指摘、非常に深いものがありました。
 そこで、一般的には国際条約締約国である場合、締約国会議、この制度がありますから、締約国会議において、そのインプリメンテーションといいますか、法の実行はどういうものになっているのかということが問われることになると思います。この海洋法条約の場合、そういうその各国の法遵守を要求する締約国会議の仕組みというのが不十分なのかどうか、そこをまずお伺いしたいと思います。
 私の専門ですと軍縮なんですけれども、例えば核不拡散条約、今年夏にも締約国会議が、五年に一度の締約国会議がありますけれども、まずそういうシステムがありますので、このような新たな法解釈上の考えとして疑問符が付くような場合、そういうところでの考え方が提示されるのか、また、このような行動について条約のメカニズムとして対応力があるのか、まずその辺を伺いたいと思います。
 それから、このレジュメの中で、今後の選択肢として、一、二、三と書かれて、御自身も三番の方がいいのではないかと。もうそれは、先ほど向田参考人がおっしゃった、海保、自衛隊との連携などについてですね。例えば一であると、中国のこの逸脱した国際法解釈に、むしろ日本がそれに触発されて反応する中で、そっちに向かってしまうという危険もあるので、そういうことではない方法というのが必要じゃないかと思っております。
 それから、小谷先生について、ちょっとこういうことをお願いしたいかなと思うんですね。習近平主席がどう、この時代状況の中で、主要先進国及びそういうことに関心を寄せる多くの国との共通の国益とか、共通の国際益、これをどう認識してもらえるかという観点から論法を考えるべきではないか。
 例えば、台湾有事のお話とか、たくさんありますけれども、冒頭申し上げたような共通に取り組むべきより大きな課題があるときに、そうではない方向で、非常に十九世紀的なところに陥っていくのはアジアとして適切ではないと。アジアの国同士として今、成長の芽がアジアに移ったとき、平和を我らこそが達成するという観点があり得るかという質問をさせていただきたいと思います。そういう論法が可能かと。そして、それに対応するような形で、このような緊張関係、台湾有事とかですね、そういうことはあり得ない選択肢へと導くことが立論として可能な外交を展開しなきゃいけないと思っています。
 それから、最後に向田先生のお話ですけれども、学生さんとか含めてどう訓練し、また、この分野で水準の高い活動をしてもらえるか、そういう人材育成あるいはリクルートメントをどうするかということについて共感するところであります。退職された海上保安官の活用、そこは自衛隊も予備役のような形でいろいろ活用されていると思います。
 私は、ライフセービングスの関係者の活動、これを支援しております。千葉の御宿とかでいろいろなそういうイベントもございます。その若い人たちを見ていると、まさに海洋国家日本の次世代を担う、非常に良心的で、そして技術も高く、救助活動、命に対する向かい方、向き合い方、見事なものがありますから、海上保安庁で人材を獲得するというだけでなくて、どうやって民間の経済活動を含めた海洋人材を獲得して拡大できるかという観点から、更に御示唆があればお願いします。

#10
○会長(鶴保庸介君) それでは、坂元参考人。

#11
○参考人(坂元茂樹君) 猪口先生、御質問どうもありがとうございました。
 国連海洋法条約の締約国会議は、環境条約や、先ほど御紹介ありました軍縮条約のように条約遵守のメカニズムとして働くような、そういう締約国会議ではございませんので、この場で特定の国の海洋法条約の違反の問題を取り扱うということはございません。
 実際に、この判決があった後、何が起きたか。G20のサミットが杭州で行われました。このG20のサミットで南シナ海仲裁判決を守れと発言したのは米国と日本だけでした。フィリピンのドゥテルテ政権すら発言をしていません。そして、共同声明は四十八項目採択されましたけれども、ここにも一つも南シナ海仲裁判決の言及はございません。
 中国は、国際法を自分たちは破っているんだというような、そういう下手なことは言いませんので、実は、この仲裁判決の前に、中国とロシアとの間で国際法の促進に関する共同宣言というのが出ています。そこで何を言っているのかというと、中国もロシアも紛争の平和的解決、これは支持しますと、しかし、一方的に提訴されるものは紛争の平和的解決の中には入りませんというような形で自分たちを正当化しているということであります。
 私からは以上です。

#12
○会長(鶴保庸介君) 次に、小谷参考人。

#13
○参考人(小谷哲男君) 猪口先生、御質問ありがとうございました。
 いただいた御質問は、もう中国と共存していくことができるのかという大きな質問に言い換えることができるかと思いますけれども、例えば、アメリカのトランプ前政権は、中国共産党こそが問題の根源であると、この共産党体制を弱体化させない限り中国の行動を改めることができないという考えで中国に対して厳しい政策を取っておりました。あるいは、最近のアメリカの論調では、共産党ではなく習近平主席自身が問題の根源であり、習主席を取り除かない限り、アメリカは中国と共存できないというような議論も出てきております。
 しかし、やはり責任ある対応というものを考えるのであれば、この中国との共存、特に日本は隣国でありますので、しかも経済的な関係も深いという中で、どうすれば共存していくことができるのかということを考える必要があろうかと思います。
 簡単な答えはもちろんございませんけれども、やはり今のバイデン政権がやろうとしている、協力するべきところは協力する、競争するところは競争する、そして対抗するところは対抗する、そのように分けてきちんと中国と向き合っていくということが一番大事で、その際気を付けなければいけないのが、協力できる部分を増やすために、本来競争すべき、あるいは競合すべきところで譲ってしまう、それをやってしまうと元も子もありませんので、そうならないように、こちら側のきちんとした原則というものを持って向き合っていくことしかないのではないかと思います。
 以上です。

#14
○参考人(向田昌幸君) 私は、ライフセーバーに関連した御質問に対してお答えしたいと思います。
 まずその前に、海上保安庁の創設経緯とこのことも関係があると思っております。戦後、海上保安庁を創設する動きがあったときに、その以前は、国家警察の水上警察というものがあって、それ以外の海の上での海難救助も含めて活動というのは、当時の大日本帝国水難救済会が担っておりました。あと、それで駄目ならば海軍がやるという体制だったわけでありますが、戦後、海軍が解体されまして、日本水難救済会も紆余曲折があったわけでありますけれども、全省庁、戦後疲弊した日本にとって、海上保安体制を構築するにも、船もなければ人もいない、予算もないという中で、関係省庁が保有しております戦後生き残った船などをかき集めるようにして海上保安庁が誕生したわけであります。
 その際に、今まで海に関与していた省庁は、全て海上保安庁に海のことなら任せるというような状況になっておりまして、今はまさに海上のことは、全国の自治体に関係しております地先沿岸の水難救助であるとか沿岸の防安関係につきましても、本来であれば地方自治体あるいは警察、消防の方で担ってもいいと思いますけれども、海ということになりますと、地先沿岸といっても、救助勢力を確保するというと相当な負担が生じますので、地方自治体ではなかなか関与できないという状況になっております。
 ライフセーバーにつきましては、スポーツとしての活動が中心でありますけれども、夏場においては海水浴場の救助員という形でアルバイトのような形でも対応しておりますけれども、そういう意味では、公的に、海上保安庁も警察、消防もそうなんですが、船や飛行機を使って海難救助をやりますけれども、海浜事故なんかの人を自ら体を張って救助に行くというのはライフセーバーだけであります。
 そういう意味で、ライフセーバーを活用するのは、地方自治体も国も、公的なそういう専門的なポストというのがそもそもないのであります。そういうところをやっていくときに、今は夏冬関係なくいろんなマリンスポーツは盛んでありますから、事故も周年を通じて起こっております。それと、一般の市民、海のことを知らない人が多いんですが、そういう意味で安全指導というものも重要なことになっております。
 そういうことから、ライフセーバーというものをもっとうまく活用する、公的に使う方策があるんじゃないかというふうに考えております。

#15
○猪口邦子君 終わります。

#16
○会長(鶴保庸介君) 御苦労さまでした。
 次に、熊谷裕人君。

#17
○熊谷裕人君 立憲民主・社民、立憲民主党の熊谷でございます。
 お一人ずつ御質問させていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
 まず、坂元参考人にお願いしたいと思います。
 事前に事務局の方からいろいろ資料をいただいて、坂元参考人の書いた御著書のコピーなんかも読ませていただきました。国際海洋条約と異なる国内法である海警法を中国が施行したことで、やはり今いろいろ日中間で課題になっている尖閣諸島の問題というのが日本の権益にも大きく影響するんではないかなというふうに思っておりまして、日本の固有の領土である尖閣の周辺に海警局の船が来ていて、先ほどから議論になっておりますけれど、武器の使用だったりとか、漁船に対する嫌がらせというか、そういう行為なども行われているというふうに私も認識しておりますが、坂元参考人の御著書の中に、侮らせない日本になるためにはというふうに最後の方に結びで書いてあったんですけれど、侮らせない日本となるために我が国の海上保安体制の強化はどうあるべきかというところ、先ほど、最初の御発言の中で自衛隊との連携というようなお話にも言及されておりましたけれど、いま一度、お話をいただければと思っております。

#18
○参考人(坂元茂樹君) どうもありがとうございました。
 私の「侮ってはならない中国」をお読みいただいたということで、どうもありがとうございます。
 これなかなか、今御指摘いただいた点、海上保安体制の強化という点、なかなか、すぐに私も答えがあるわけではありませんけれども、現状を申し上げますと、中国が外洋で使う巡視船の数は八十七隻でございます。日本の外洋巡視船は五十七隻です。アメリカのコーストガードの外洋巡視船は、実は二十五隻しかありません。ということは、日中は世界でも一、二を争う最大規模の海上警察機関を持っているということでございます。
 ところが、中国は、その日本を上回るような形で大型化、巡視船の大型化を進めておりまして、一万二千五百トンの巨大巡視船というものを保有しようということで、これは巡洋艦並みということになります。
 結局、中国の場合には、こうした海警の船あるいは海上民兵を乗せた武装漁民の船、こういうものを使ってどういう行動をやると考えられるかというと、実は武器の使用よりも前にやりそうなことというのは体当たり戦術というやつですね。一九七四年にフィリピンとのパラセル諸島の領有権をめぐって争ったときに、中国の漁船二隻が、南ベトナムでしたけど、当時、その海軍に対してこうした進路妨害あるいは体当たりというようなことをしておりました。ですから、日本の海上保安庁の装甲は非常に頑丈にできてはいるんですけれども、こうした大型化した中国海警の船舶の体当たり戦術というようなものにどうやって対処していくのかという、こういうことは非常に重要だろうと。
 人員も、私自身は海上保安大学校で集中講義をしておりますけれども、三年生は大体四十五名程度で、そんなに急に人員を増やすことはできませんし、向田参考人が先ほど御紹介ありましたように、そんなにすぐに人材を確保することはできない。しかし、尖閣諸島の状況は厳しさを増すことはあれ、減ることはないという状況を考えますと、そうしたことも含めて、装備も人員も、引き続き国会の先生方の御理解を得て続けていただくことが必要ではないかというふうに考えています。
 私からは以上です。

#19
○熊谷裕人君 ありがとうございます。
 我々も、海上保安庁の皆さん、本当大変な業務をされているので、もっと予算付けてもいいなと個人的には思っておりますので、これからもそれを念頭に活動していきたいと思います。
 続きまして、小谷参考人にお伺いをしたいと思います。
 ちょっと今日余り言及をされなかったんですが、台湾有事のお話をちょっとお聞かせいただければなというふうに思うんですが。
 米国海軍のアキリーノ大将が議会で認証されるときに、中国は六年以内に台湾に軍事行動を起こすのではないかというような発言がありました。また、笹川財団の小原研究員の話で、南シナ海の台湾領の太平島というやっぱり無人島に中国人民解放軍の侵攻があるのではないのかなというような指摘がありまして、平時に、これ坂元参考人も書かれていたと思うんですが、尖閣諸島に上陸をしてくるようなことがあるんではないのかなというような懸念もあるという中で、その辺について、海警法ということで、自国の領海、島だというような認識を持っている中国が、余り直接的な行動に出ることは私はないと思っているんですけれど、台湾の先ほどの太平島には、日本の尖閣に上陸する前にちょっとやってみようかなんということが起きるんではないかなという懸念を持っておりまして、台湾有事に絡めて、その辺にどのような所感を持っているか、お聞かせいただければと思います。

#20
○参考人(小谷哲男君) 御質問ありがとうございます。
 尖閣有事、それから台湾有事というものは、かなり現実的な感覚を持って議論するべき時期に来ているということは間違いないと思いますし、アメリカの軍の司令官の発言、あるいは最近の日米2プラス2でも台湾に言及したということは、それも日米の当局者の間でそういう認識が広まっているということであろうと思います。
 まず、尖閣に中国が上陸してくる可能性、私はこれはかなり低いと思っております。中国の現状は、もう毎日のように尖閣周辺に海警の存在を示すことであたかも管轄権を行使しているように国内外に見せる、それで今のところは十分なんだろうというふうに思います。
 尖閣が危なくなる可能性が高いのは、台湾有事が起こった際、それに同時に尖閣に攻めてくるということは十分考えられると思います。あるいは、何らかの形で台湾が中国に統一されてしまった後に、やはり尖閣に圧力が強まるということがあろうかと思います。
 それはなぜかといいますと、中国の尖閣に対する主張は、これを台湾の一部として主張しているからです。仮に台湾が中国の領土になってしまえば、尖閣諸島が失われた領土として残ってしまいますので、しかも、台湾を持っていれば軍事作戦も非常にやりやすくなってきます。ですから、台湾の問題というのは尖閣の安全に非常に関係してくると思います。
 では、台湾はどれくらい危ないのか。
 確かに、六年以内にあるのではないかという見方が強まっています。来年、北京の冬季オリンピックがあります。そして、その先には、習近平国家主席が三期目を目指すという状況になってきます。この間は、恐らく中国は国内問題に集中しなければいけないので、周辺諸国との大規模な武力紛争というのは避けたいであろうと考えられますが、習近平国家主席が三期目をしっかりと固めて、そして、二〇二七年の人民解放軍建軍百年というものを見越したときに何らかの動きを示す可能性がやはり懸念されております。
 ただ、私は、それでもまだ二〇二七年は、台湾を武力で統一するというのは中国にとって余りにもコストが高過ぎるというふうに考えます。これが二〇三五年、四〇年となると、また話は変わってきますけれども。
 私が一番あり得るシナリオというのは、太平島という話もございましたが、台湾が実効支配している南シナ海の東沙諸島、ここが一番危ないのではないかと考えています。
 最近、人民解放軍が台湾の南西部で、特に海軍、空軍の活動を活発化しておりますが、そのすぐ先にあるのが東沙諸島です。東沙諸島は、軍のプレゼンスはありません。また、民間人は住んでおりません。一部台湾のコーストガードのプレゼンスがあるだけなので、非常に取りやすい。しかも、民間人がいないということで、ここを攻めても米軍が介入しない可能性がある。しかし、ここを攻めれば、習主席は台湾を統一するつもりがあるのだというその決意を国内外に示すことができます。
 ですので、この東沙諸島をめぐる危機というのが数年内にあってもおかしくはありませんが、その際、国際社会はそれにどのように対処するのか、果たしてアメリカはそれに対抗するのか、その辺りを含めて頭の体操をしておく必要があろうかと思います。

#21
○熊谷裕人君 ありがとうございます。
 向田参考人にも質問したかったんですが、ちょっと持ち時間なくなりましたので、私も、海保のもう少し機能、装備から人員から予算から強くするべきだと思っておりますので、しっかりと応援してまいりたいと思います。
 ありがとうございました。

#22
○会長(鶴保庸介君) それでは、引き続き質疑を続けたいと思います。
 三浦信祐君。

#23
○三浦信祐君 公明党の三浦信祐でございます。
 三人の参考人の先生方には大変貴重なお話をいただきました。心から感謝を申し上げたいと思います。
 坂元参考人、小谷参考人にお伺いしたいと思います。
 私自身は、日中のこういう危険な状態をいかに早く脱するかということに日本はしっかりと全力を尽くさなければいけないと、間違っても武力紛争等は起きないようにするために全力を尽くしたいと、そういう視点で質問させていただきたいと思います。
 海空連絡メカニズム、これがなかなか運用されないと。運用されるために必要な方策についてお伺いしたいと思います。

#24
○参考人(坂元茂樹君) 海空連絡メカニズムにつきましては、防衛省が第三回の会議をやり、また、外務省は高級事務レベル協議を第十二回やっておりまして、そのホームページ上での内容を拝見しますと、取りあえずそういったメカニズムの重要性については日中両国とも共有をしていると。ただ、ホットラインの開設というのが重要なんですけれども、これについてまだ進捗がなされていないということですので、まずはこれを行うべきではないかということが第一点と。
 第二点は、本日申し上げましたように、海空連絡メカニズムでは、今焦眉の課題になっています中国の海警、それから日本の巡視船の不測の事態が生ずるということがあっては困りますので、そうしたものも対象に加えるというようなことも併せて交渉したらどうかというのが私の今の考えでございます。
 私からは以上です。

#25
○参考人(小谷哲男君) 中国との信頼醸成あるいは危機管理の問題というのは、そもそものこの危機管理に対する考え方が違いますので、難しいということが言えます。米中間にも様々な危機管理のメカニズムがございますが、危機の際にこれが機能しないというのがこれまで分かってきたことです。危機が起こった際に、ホットラインを設定、設置していても、アメリカ側から電話を掛けても中国側が取らないということがこれまでもございました。
 日中の海空連絡メカニズム、これはまだホットラインさえ設定できていないと、設置できていないという状況ですので、まだこの危機管理に関して日中間の枠組みというのは、まだ非常に発展途上の、初期の段階にあると言わざるを得ないと思います。
 本来、この危機管理のメカニズムというのは、当局同士でこの危機を避けるために運用するものですけれども、やっぱり中国の特徴は、非常に政治的な判断がこれに絡んでくるということになりますので、当局同士でこれを運用するために幾ら議論してもなかなか難しいのだろうと思いますので、これは政治レベルで、相当上のレベルでこれを常に確認し運用していくことを議論していく必要があろうかと思います。

#26
○三浦信祐君 今先生から重要なお話をいただいたと思います。現場レベルではなかなかというところで、だからこそ日中外相電話会談も先般も開かれ、そしてコミュニケーションをたくさん取ってもらいたいというふうに先般も大臣にも要望させていただきましたけれども。
 小谷先生に伺いたいと思いますが、尖閣についてのグレーゾーン事態、これ、軍事衝突のエスカレートリスクが内包されている。それを解消されるための先生がお考えになられる具体的取組について、何か知見があれば教えていただければと思います。

#27
○参考人(小谷哲男君) このグレーゾーンに関しては、日本側も、海上保安庁と自衛隊の連携、特にその海警行動に関して迅速な手続ができるということで、やるべきことはやってきたのだろうと思いますし、また、自衛隊と海保の間の訓練等も増えているところです。
 ただ、やはり中国側がこのグレーゾーンの存在を認めていないという問題があります。中国の専門家などと話をしていると、海自が出た瞬間で、それはグレーではない、ブラックだという言い方をします。
 また、この問題は、意外とアメリカの中でもそういう反応が出てきます。名前は挙げられませんが、アメリカの軍の相当上の人でもこの海警行動について知らないというのが数年前ございました。それで、海自が出れば挑発してしまうのじゃないかというような懸念を示されたこともあります。
 ですので、様々なチャンネルを通じて、まず中国側とこの海警行動についてきちんと説明をするとともに、アメリカを含めた周辺諸国に対しても、この日本独自の、独特のこの海警行動について理解を事前にしてもらうということが大事ではないかと思います。

#28
○三浦信祐君 大変重要な御示唆をいただきました。
 向田参考人にお伺いしたいと思います。
 そうなりますと、徹底的に海上保安庁に頑張っていただかなければいけないというのが今の現状であるということだと思います。
 当然、外交努力をしていくというのは当たり前でありますけれども、先ほど、海上自衛隊と同様に海上保安庁もOBの活用をという御提案をいただきました。私自身も、自衛隊の働く年齢を延ばすということが極めて重要でありますし、何も、若い隊員さんが本当にその仕事に従事をしていくことが全体の安全保障上に活用できるかどうかという、ヒューマンリソースをどう整えていくかという課題を超えていくためには、やはり知見があり、そしてある意味セキュリティークリアランスをお持ちのOBの方に力を貸していただくというのが私は大事だというふうに思っております。
 海上保安庁でのOBの活用、私が安易に考えれば、灯台守であったりとか、また基地でのいろいろな後方支援のところにもその知見を生かしていただければいいんではないかなと。また、長年の伝統的な継承をしていく教育現場でも御活用をいただくということはありなんではないかなと。特に、私も十一管に行かせていただきましたけれども、前線で日々本当に緊張感ある中で仕事されている方にもその休養を取るということも含めて、多くの可能性を含めているのがOBの方の活用だというふうに思います。
 向田参考人の御知見をいただければと思います。

#29
○参考人(向田昌幸君) 今のOBの活用の関連しまして、このところ海上保安庁では、定年延長のことも踏まえまして、非常に急激な増員を踏まえて、現場の方では、ノウハウの伝承といいますか、そういうこともままならないということと、船を動かす有資格者あるいは飛行機を飛ばす有資格者というのも十分でないといったこともありまして、六十五歳までの再任用というものも継続しているところであります。そういったところではやっているものの、やはり再任用で対応するということになってきますと、若い世代のいわゆる昇進といいますか、士気にも関わってきますので、そういった内部の問題もございます。
 それと、実は尖閣の対応というよりも、先ほども申しましたとおり、全庁的あるいは全国的な規模で見ますと、尖閣対応以外の我が国周辺の各部署というのは非常に劣悪な人的体制、マンパワーの体制で頑張っております。そういう中で更に尖閣の方に人も取られるということになっておりまして、そういう意味では、全国津々浦々の海上保安体制をもっと充実していかなきゃ我が国周辺の海上保安体制というのはおぼつかないということになります。
 そういう意味で、全国各地に散らばっております海上保安庁のOBの活用というものは、それまで、首都圏とか大規模な都市においてはそれなりの大きな海上保安部署での対応というものはありますけれども、さらに、地方の地域における海上保安官OBの活用というものは非常に重要ではないかというふうに考えております。

#30
○三浦信祐君 今の御提案、しっかりと受け止めさせていただいて、きっちりと支援できるように、また、当然財源の問題もあると思いますけれども、やはり国民の生命と財産を守るというところに従事されている方々が存在してこそいろんな議論ができると思いますので、しっかり取り組んでいきたいと思います。
 ありがとうございました。

#31
○会長(鶴保庸介君) 御苦労さまでした。
 それでは、引き続き、柳ヶ瀬裕文君。

#32
○柳ヶ瀬裕文君 日本維新の会の柳ヶ瀬裕文でございます。
 三名の参考人の皆様には、貴重なお話をいただきまして、ありがとうございました。まずもって感謝を申し上げたいと思います。
 まず、向田参考人にお伺いをしたいというふうに思いますけれども、この国境離島の重要性についてはようやく認識が深まってきたのかなというふうに思っているところでありますけれども、例えば東京都に関しても、基礎的な調査をこれからやっていこうという、まだまだその段階にあるということだというふうに思います。
 これは、漁業資源を守っていく、またレアメタル等々の希少資源を保全していくといった観点からもここは重要だというお話はこの調査会でも何度もしてきたところでありますけれども、この二島、沖ノ鳥島と南鳥島ですね、これを具体的により活用していくためにはどのような活用方法がベストだというふうにお考えになっているのか、この点についてお聞かせいただければと思います。

#33
○参考人(向田昌幸君) まず、南鳥島でございますけれども、海上保安庁は、実は大分前に駐在を撤収したところであります。昔、ロランステーションがありまして、そこに海上保安庁の職員が交代で勤務しておりました。現在は、海上自衛隊の硫黄島の分遣隊、それと気象庁の高層気象に関する観測職員が常駐しておりまして、自衛隊の航空機で、硫黄島経由で渡海交代をやっているということであります。
 そういう意味では、南鳥島でも離島等の施設整備に関する法律に基づいて施設の整備も進んでいるというふうに承知しておりますけれども、そういう意味では、南鳥島は今のところそんなに大きな不安はないのかなと思っております。
 沖ノ鳥島でありますが、先ほどもちょっと触れましたように、人が住めるような島ではありません。しかし、海上保安庁が灯台を設置しております。また、国交省の河川局の方が監視カメラを設置するなどして、あそこは常時、巡視船と航空機のパトロールもありますけれども、監視体制を確保しております。
 そういう意味では、沖ノ鳥島も今特段大きな不安があるわけではないというふうに思っております。
 それよりも尖閣問題でありますが、私の資料の中で、メディアウオッチの特別寄稿でも申しましたし、学士会の講演録にも言っておりますけれども、実は、特定離島ということで沖ノ鳥島と南鳥島は整備が着々と進んでいるところなんですが、尖閣諸島については特定離島に指定されていないわけであります。
 そういう意味で、手が着けられないというか、手を着ける状況にないということでありまして、その方がむしろ不安であるということであります。

#34
○柳ヶ瀬裕文君 ありがとうございます。
 沖ノ鳥島、南鳥島も、より実効支配を強化していくといったことが私は必要だというふうに考えておりますので、様々な活用方法というのはあるというふうに思いますので、これを検討していきたいというふうに考えておるわけですけれども。
 そこで、ちょっと今おっしゃっていただいたんですけれども、小谷参考人にお伺いしたいと思いますが、尖閣においては実効支配の強化をしていくべきだというふうに私たちは考えています。これを、実際にこれを強化していく中でどういったストーリーが考えられるのかと。そのプロセスにおいて様々な横やり等々考えられると思うんですけれども、これについての御見解をお聞かせいただければと思います。

#35
○参考人(小谷哲男君) 御質問ありがとうございます。
 尖閣に関して実効支配を強化するために、例えば施設を建設するですとか、あるいは公務員を常駐させるという案は、この数年何度も議論されたことだと思います。私自身、それに真っ向から反対するわけではありませんが、それを仮に日本が一方的にやったというふうに国際社会に見られた場合、これはやはりマイナスの効果を生むのではないかというふうに考えます。あるいは、今回、海警法の中で中国が管轄していると主張している島嶼で建設物を造った場合、これを海警局が止めるという条文も入っているわけですので、その条文が実際に使われる事態を招くかもしれません。
 私としましては、その実効支配、常駐させるですとか建設物を造る際は、やはり中国側が何かしらの強硬な姿勢を取った後に、それへの対抗措置としてやるということが望ましいのではないかと思います。例えば、二〇一二年の八月十五日に中国の活動家が上陸しましたけれども、例えばあの後にそのまま警官を常駐させていれば、日本から動いたのではないということが言えたと思いますので、そういう形で実効支配を強化するということを考えておくというのがいいのではないかと思います。

#36
○柳ヶ瀬裕文君 丁寧な御答弁ありがとうございました。非常に貴重な御意見だというふうに思います。
 時間がないので、済みません、坂元参考人に最後お伺いしたいと思うんですけれども、この覇権主義を取っている中国とどう対峙していくのかという大きなテーマの中で、坂元参考人は、国連でも人権理事会の諮問委員会の委員も務められたというふうにお伺いをしているところであります。
 今、中国においては深刻な人権侵害が行われておるということで、主にウイグルの問題、また香港にも問題を抱えています。これからこの人権侵害に対して日本がどういう態度を取っていくべきなのか。超党派の議連では、マグニツキー法の制定、法整備、制裁できるような環境づくりといったことも考えているわけでありますけれども、この私たちの取るべき対応について御示唆をいただければと思います。

#37
○参考人(坂元茂樹君) 「侮ってはならない中国」という自分の本の中で、「おわりに」というところで中国の人権に関する考え方を挙げておりますけれども、中国は、法治主義は言いますけれども、法の支配は言いません。
 なぜかというと、法の支配というのは確かに多義的な概念なんですけれども、それによって、統治される人の権利や自由を保障するということを目的とするのであります。しかし、法治主義は法律による国家の統治を目指すものであって、法律によって縛るのは国民であって、政治や国家権力ではない、これが中国共産党が今取っている政策であって、我々は香港で何が起きたかというのを見ていますし、ウイグルの事態についても、なかなか我々が十分に知るところではありませんけれども、重大な人権侵害が起こっているということはもう皆が共有していると思います。
 そうした中で、中国にこの人権問題を取り上げると、彼らはまた歴史的問題として過去の日本の行為をやっていて、実は我々が一番大事だと思うのは、人権の問題を取り上げるときには、過去の問題もあるかもしれないけれども、今そこにある人権の危機に直面している人々に対してどのように日本としてそれを発信していくのかということが重要ではないかと思います。だから、歴史問題にすり替えさせないようなやり方が必要だと。
 そのときに、今言われている法律を作るのがいいのかどうかということについては、自分も十分に承知しておりませんので、もう少し議論を詰めて、日本外交のフリーハンドを失わせることがないように、しかし、日本という国は忘れてはならない大原則がある、それは法の支配と民主主義と基本的人権の尊重、これを最も大事に考えている国の一つだということでありますから、その観点から、今おっしゃったような人権の問題に関する法律の整備について議論を展開していただければいいなというふうに思っています。
 私からは以上です。

#38
○柳ヶ瀬裕文君 ありがとうございました。
 時間が来ましたので、終わりたいと思います。ありがとうございました。

#39
○会長(鶴保庸介君) ありがとうございました。御苦労さまでした。
 それでは、上田清司君。

#40
○上田清司君 国民民主党・新緑風会、新緑風会の上田でございます。
 本日は、参考人の先生方、ありがとうございます。
 早速ですが、まさに日中間のこの一種の武力衝突等の危機管理をどう高めていくかという課題もありますが、現実に、中国は台湾を統一するということを明確に意図していると。その上に、そうした意図に基づく行動を着実にこの布石を打ってきているという状況の中で、まさに、先ほど申されたように、台湾の一部である尖閣諸島という位置付けもしていると。
 もう一つは、やはり、台湾というよりも、中国は民間人を巻き込んでの武力紛争に関しては比較的避けていると。こうした観点からすると、尖閣はやっぱり狙いどころと、民間人が住んでいないと、こういう考え方がありますので、日本政府としては相当注意をしなきゃいけない。元々、尖閣が中国の領土なんといったことは歴史的になく、トウ小平が日本に来られたときに突然棚上げとか言って、あたかも日中間に課題があったようなことを言い始めてから話が出てきたという、こういう歴史的な経過があります。
 そういう意味で、今、アメリカは台湾を基本的に守るという姿勢の中で、今回の日米首脳会議も、何らかの形で日本に台湾の守りに関するコミットメントを求める可能性だってあるんではないかと。これが日米安全保障の一つのあかしだというふうに持ってこられたときに、日本はそうした問題に対してきちんと応えられるのか、あるいはそれを応えない場合にはどういう形で日米の信頼関係を維持することが可能なのか、この辺が、実は私、頭の中で少し体操をしているところであります。
 まず、坂元先生と小谷先生に、この問題について御所見を伺えればと思っております。

#41
○参考人(坂元茂樹君) この話は、国際法の解釈というよりは国際政治的なことですので、小谷先生の方が適していると思いますけれども、台湾問題について、日本がこれまで以上により積極的なコミットメントを今回の日米首脳会談で行うということについては、日中関係を考えたときに、より慎重であった方がいいのではないかなと個人的には考えております。その意味で、今すぐ日本がそうした事柄に明確なメッセージを出すという時期ではないのではないかと。
 ただ、先ほど小谷参考人から御指摘ありましたように、二〇二七年に人民解放軍創立百周年ということで、ここで奮闘目標というのが掲げられているわけでありまして、その奮闘目標というものの中に、軍の近代化以外に、何か台湾とかあるいは尖閣に関する、奮闘目標の中に入っているのかどうか、こういう点は日本としても注視していく必要はあるだろうというふうには思います。それは、台湾の問題も尖閣の問題に連携するのだという先ほどの小谷参考人の見解と同じように考えております。
 私からは以上です。

#42
○参考人(小谷哲男君) 御質問ありがとうございます。
 この台湾有事に日本としてどのように関わるべきか、非常に重要な問題だと思います。
 一九六九年、佐藤首相とニクソン大統領の間の共同声明の中で、台湾の安全は日本の安全保障にとって重要であるということが言われました。恐らく、明日、あさっての日米首脳会談の中でも同様に、台湾の重要性について確認がなされるのだろうと思います。
 ですが、六九年の状況とこの二〇二一年の状況を比べますと、二〇二一年の方がその緊張の度合いというのは非常に高いということが言えるかと思います。六九年と二一、今年の違い、もう一つの違いは、既に平和安全法制ができているということでありまして、万が一台湾に対して中国が武力侵攻した場合、これは恐らく、間違いなく在沖米軍基地に対する攻撃というのも同時に行われるはずですので、これは台湾有事ではなく日本有事になります。その際は、日本として武力攻撃事態として対処するということになろうかと思います。
 ただ、先ほども述べましたとおり、台湾の離島、特に無人、民間人のいない島に対する攻撃であった場合、これにどのように日本として関わるべきなのか。これは、アメリカもどのように対処するかまだ分からないところがありますけれども、少なくとも、そのような状況でも重要影響事態に認定をして、日本として米軍とともに対処をするということは、計画を立てるという形で進めていくべきだと思いますし、その計画に基づいた訓練や演習も行うということはもう避けられないというふうに考えます。
 加えて、やはり台湾の軍とのどのような関係を描くのか、築くのかということも同時に考える必要がありまして、仮に日台で直接軍事的な連携を深めることが難しければ、アメリカを介した形で情報の共有をするですとか、人と人の交流を深めるですとか、そのようなこともやはり同時にやっておかないと、その台湾有事において、日米だけではなく、やはり台湾も一緒にそれに対処するということが必要になるはずですので、考えていかなければならない課題であろうというふうに考えています。
 以上です。

#43
○上田清司君 ありがとうございました。

#44
○会長(鶴保庸介君) それでは、引き続き、伊藤岳君。

#45
○伊藤岳君 日本共産党の伊藤岳です。
 参考人の皆さん、今日は貴重な御意見をいただき、ありがとうございました。
 尖閣諸島をめぐる中国の覇権主義的な行動は、国際法から見ても決して許されるものではないと我が党も繰り返し主張してきました。領土に関する紛争問題の解決において軍事対軍事で対応することは悪循環をもたらすだけであり、国際法にのっとって外交的、平和的解決に力を尽くすことが何より重要だと考えます。
 那覇市議会で次のような意見書が採択、全会一致で採択されたそうです。中華人民共和国の海警法施行に対する適切な対応を政府に求める意見書です。
 この意見書の中では、尖閣諸島接続水域における中国公船の領海侵入は八十八隻に上り、那覇市、沖縄県の漁業者を始め、日本の漁業者が安心して操業できない極めて憂慮すべき事態だと訴えています。そして、中国の海警法は、領海において沿岸国が強制措置をとることを限定的に認めている国連海洋法条約の原則を大きく逸脱すると批判をし、日本政府に対しては、中国政府に対して国連憲章と国際法の遵守を求め、国際社会と連携し、平和、外交的に問題解決を図ることなどを強く求めています。
 そこで、小谷参考人に伺いたいと思います。
 この那覇市議会の意見書も求めるように、重要なことは、国連海洋法条約などの国際法に基づく批判であり、国連憲章と国際法を遵守せよと国際社会と連携をして中国に迫っていくということが大事だと思いますが、長年中国を見られてきて、この国際法で中国に迫るということが中国という国に与える効果というか、影響ということなど、どのように思われていますでしょうか。

#46
○参考人(小谷哲男君) 御質問ありがとうございます。
 これも大変難しい問題でありまして、やはり、我々と中国のその国際法に対するまず理解がかなり違うところがあるということがまず問題になってきます。
 先ほど、法の支配と法治という話がございましたけれども、中国の共産党は国際法よりも上に存在しているというのが中国の認識でありまして、通常であれば、どの政府であっても国際法の下にあるべきなんですけれども、そこの出だしがまず違いますので、国際法に基づいた対処を中国に求めても、なかなか効果が現れないというのが現実です。
 他方で、全く効果がないかといいますと、そうでもないということが言えます。例えば、二〇一六年、中比の間で南シナ海の仲裁判断が出て、中国の主張はほぼ全て否定をされたわけです。また、中国は、その仲裁判断を紙くずだと言って無視をしたわけですが、その後、九段線という言葉を公の場では使わなくなりました。これは、やはり九段線が仲裁判断で否定されたということを受けてのことであろうと思います。
 また、先ほど冒頭の発言でも申し上げたとおり、管轄水域が非常に過大に設定されているというのを日本側から懸念を伝えたところ、海警法の草案からそのものが消えて最終的な文面になったということもありますので、やはり国際的な評判というのを中国は気にしているということは間違いないと思いますので、言わば中国のこのメンツをうまく活用する形で中国の行動を少しでも変えさせる努力というのを地道に続けていくしかないのではないかというふうに考えています。

#47
○伊藤岳君 国際的なメンツ、大事な御指摘だと思います。
 我が党も二月十二日に、国際法に違反した中国海警法施行に抗議をし、撤回を求める談話を発表しました。日本政府は、深刻な懸念、同法が国際法に違反する形で運用されることがあってはならないと表明するにとどまり、海警法自体が国際法違反であるということを批判をしていないと指摘をさせていただきました。そして、日本政府に対しては、海警法自体が国際法違反であることを厳しく批判し、その撤回を求める外交的対応を求めたところです。
 先ほど紹介した那覇市議会の意見書の中では、国際法違反の海警法なのに、日本政府の対応は、深刻な懸念、同法が国際法に違反する形で運用されることがあってはならないと表明するにとどまっていることを指摘をしています。当事者である日本政府が、歴史的にも国際的にも尖閣諸島が日本の領土であることを、中国に対しても国際社会に対しても道理を尽くしてしっかりと主張することが重要だと考えます。
 そこで、坂元参考人、向田参考人に伺いますが、日本の外交交渉の大前提として、歴史的にも国際的にも、国際法的にも尖閣諸島が日本の領土であるということを中国と国際社会にしっかりと主張していくことが大事だと思いますが、日本政府の対応への意見も含めて御意見を聞かせていただければと思います。

#48
○参考人(坂元茂樹君) 御質問ありがとうございました。
 まず、日本政府が深刻な懸念を表明するにとどまっていて、国際法違反とは言っていないということについて御質問ございましたけれども、この点は、国際法の世界では、国家機関は立法機関、執行機関、司法機関から成っているのは御案内のとおりなんですけれども、このような国家機関が国際法違反の行為を行えば国際違法行為となります。
 立法機関の行為が国際法に違反する場合というのは一体どういう場合かというと、立法機関が国際法に違反する国内立法を行った場合、今、海警法ではそういうような主張を那覇市議会が行っている。もう一つは、国際法上義務付けられた立法を行うのを怠った場合という、この二つがあるわけですね。
 問題は、それによって何ら自国民の利益を害されない他の国が、当該国際法違反の国内立法を行った国の国際責任を追及することができるかというと、それは通常はできないということで、外務省辺りは、そこで実際に具体的な事件が発生したら中国に対して国際法違反だといって国際責任を追及するという姿勢で、今のような懸念の表明にとどまっているんだろうというふうに理解しています。
 ただ、私自身は少し別のことを考えています。どういうことかといいますと、今回の中国の海警法の曖昧な中国の管轄水域という表現によって、尖閣諸島周辺の日本の領海等で、日本の海保が懸命に漁民を守ろうとしても、中国海警の取締りを恐れて、沖縄の漁民が従来その海域で漁業を行っていたのに、その海域に出漁すれば中国海警による拿捕の危険性があり、そのため出漁を見合わせざるを得ないという、こういう状況に至った場合には、具体的に拿捕されるという事件が発生をしていなくても出漁を見合わすという、そのことによって当該漁民は損害が発生をしているわけでありますから、その損害と国際法違反の国内法、中国海警法との間に因果関係が証明されるならば、国際法違反の国内法が施行されたことでこうした事態が生じているんだとして中国の責任を追及するというのも可能性としてないわけではないということなんですね。
 それから、冒頭に申し上げましたけれども、中国は、接続水域に海洋法条約に違反する安全に対する管轄権を行使することを許す領海法を制定をすると、その執行を担保する海警法が制定された。そうすると、外国の船舶が中国の接続水域の航行を回避するということになりますと、同水域における他の国の船舶の航行の自由は既に侵害されているということになる。ですから、具体的な損害が発生していなければならないと強調し過ぎることは日本の立場として果たして適切かという問題意識は私の中にはあるということでございます。
 ただ、それからもう一つ、中国と国際法の向き合い方なんですけれども、我が国の憲法は、九十八条二項で、条約及び確立された国際法、これは慣習国際法を指しますけれども、これを誠実に遵守することを必要とするという規定を置いています。しかし、中国憲法には、国際法あるいは条約との関係を規定した条文はございません。
 ですから、中国は、国際法についてはケース・バイ・ケースで対応しているということでありまして、WTOのような場合には、積極的に国内裁判所でこれを援用したりしております。これは、中国の最高人民法院の裁判官と一度お話ししたときに、そのような条文がないのにどうやって国際法の適用されているんですかというと、答えはケース・バイ・ケースというものでした。これが中国の国際法に対する姿勢ということであります。
 私からは以上です。

#49
○伊藤岳君 向田さんにも聞きたかったんですが、時間との関係で大丈夫ですか。じゃ、短く、済みません、一言。

#50
○会長(鶴保庸介君) じゃ、向田参考人。

#51
○参考人(向田昌幸君) 日経新聞のインタビュー記事にも書いておりますけれども、我が国政府、外交当局も、尖閣諸島は我が国固有の領土であり、国際法上も歴史的にも我が国の固有の領土として、領有権を争うような問題は存在しないと、しかも現に有効に支配しているということをうたっているわけでございますが、果たしてその中国の領有権主張に対して国際社会はどう見ているのかと。ホームページはいろいろ外国語も含めて日本の主張は書いてあるわけですが、果たして、中国の主張と日本の主張、どっちがどうなんだというところは国際社会の中には十分浸透していないんではないかと思います。
 それで、実は、非常に小さな字ではありますが、お配りしている、私が書いたメディアウオッチの中国海警法を踏まえた我が国の対応についてというところは、実は、中国の海警法について云々する前に、そういう中国側の攻勢に対して、元々尖閣問題は何かということを詳しく書いております。
 アメリカとの関係で申しますと、アメリカはニクソン政権のときに、領有権については、台湾や中国を踏まえまして、米国としては中立不関与という政策を取ったわけですね。どこの国に所属するかは各国の主張に、どこの国の主張にもくみしないという態度、現在もそれを踏襲しています。これは、裏を返せば、アメリカの姿勢はどうかということを客観的に見ますと、尖閣諸島は日本の固有の領土ではないということを暗に言っているようなものであります。
 そこらを踏まえて、尖閣問題をめぐる中国の攻勢をどうそぐかということは、根も葉もない中国の主張なんだということを国内的にも国際社会に向かってももっと分かる形で主張していくべきだということが大事だと思っています。

#52
○伊藤岳君 ありがとうございました。

#53
○会長(鶴保庸介君) 御苦労さまでした。
 それでは、高良鉄美さん。

#54
○高良鉄美君 沖縄の風の高良でございます。
 尖閣の話といえばもう沖縄ということになっていますけれども、坂元先生、また元同僚で、沖縄におられたということですので。
 まず、尖閣の固有の領土という考え方を、なぜ固有なのかということを考えなきゃいけないんですが、沖縄、琉球国のときに、冊封で一六〇〇年、もっと前からですかね、千四百何年ですかね、中国との間で行き来をしているんですね。そのときに、中国から来るのは、尖閣を見て、ああ、琉球に着いたと、もうすぐだというあれなんですね。それで、沖縄の方から行った使節はかなりあって、個人的にも留学をしたり、いろんな人が行って、戻ってきたという感覚なんですよ、あれを目指して沖縄に戻るというですね。だから、そういう意味でいうと、かなり歴史的には沖縄、琉球の、琉球は沖縄県になりましたので、固有のものであるということが一つですね。
 それからもう一つ、ちょっと余り長くならないようにしますけれども、もう一つは、戦後、沖縄の場合に、この尖閣列島を調査しました。そのときには私の父が上陸して、五回上陸しています、五次にわたってですね。これ渡り鳥の調査です。そのときには何もないけれども、戦時中は台湾の人たちとともに空爆を逃れて、そこで避難をしていたんですね。
 それからもう一つは、カツオがよく捕れましたので、かつおぶしの工場ができたんですね。その工場があるところが古賀村と、古賀さんが恐らく造ったんでしょうね、そういったところができている場所だったわけです。ところが、今は無人島になっていますけれども。
 そういう形であるので、中国との関係でいうと、大陸棚、坂元先生のあれであるかもしれませんが、大陸棚も領海の関係で出てくると、中国の大陸棚が、それまでは大陸棚という概念じゃなかった、陸地からの領海だったと思うんですけれども、それが大陸棚の延長線だというところまでくると、また排他的経済水域の問題も出てくるというのがありました。
 そういう形でいいますと、ちょっと先ほど法の支配が出まして、国際法も変化していったというのがありますね、海洋法自体も昔からのものから変わっていったということですけれども。もう先ほどの坂元先生の、法の支配、中国の法治主義というのがよく分かったんですね。つまり、法の支配じゃないと、中国の中で作る法にのっとってやるのが、法治主義というような形でやっているということですけれども、中国の中には、この法の支配の考え方というのはどんな感じなんですかね。やっぱり、そういうふうにもう完全に割り切っている感じなんでしょうか。坂元先生。

#55
○参考人(坂元茂樹君) どうもありがとうございました。
 高良先生とは、私、琉球大学で御一緒でした。助手に二十七歳のときに採用されて十三年おりましたので、高良先生が憲法の研究者として採用されたときは既に教員でありました。
 今御質問あったんですけれども、中国で法の支配をどう考えているかというのはなかなか率直な意見交換が難しいところがありまして、実際に、私は、西原春夫元早稲田大学総長が、日中で戦争があってはいけないということで、国際法秩序研究協議会というのを日中間で立ち上げまして、それで、中国側は上海社会科学院が事務局になっていただいて、日本側は早稲田大学で事務局を担当しているということで、国際法の顧問として参加をしております。
 ただ、やはり習近平体制の締め付けは非常に厳しくて、日中間で、もうすぐしたらイギリスの出版社から日中の研究者による海洋法に関する本が出ます。最初は、私は、南シナ海仲裁判決書いていました。でも、全てやめてくださいと。南シナ海仲裁判決について引用するのもやめてください。仕方がないので、歴史、日本は海洋法とどう向き合ったかというような、そういう日本と海洋法の関わり、中国側もズさんという方が同じようなものを書くという形で、そういうような話に編集会議になったときに、やはり我々はかなり厳しい締め付けがあるんだなというのが分かりました。
 実際に、中国の統治体制を見たら、中国人民大法院というものが、最高裁に位置付けるものがあったとしても、それは中国政府の下にあるわけですから、だから、天安門事件で我々はそれを目撃したわけですね。なぜかというと、上海の労働者が列車を焼き討ちした、列車を焼き討ちしたその罪について、中国刑法には死刑はない、しかし、当時、人民大法院はその列車を焼き討ちした人に死刑を宣告して、即刻処刑をした。こういう国に法の支配というのを求めることは難しい。罪刑法定主義というような考え方も実は貫徹できないという、こういう国なんだということですから、法の支配というものについて、我々が観念するものと中国の人たちが観念するものというのはかなり違っているだろうと。
 しかし、そういう状況にあっても、法治という形で法を尊重するということですから、その法を尊重する姿勢を国内法のみならず国際法についても示してほしいということで、対話は続けるべきだというふうに考えているということです。
 私からは以上です。

#56
○高良鉄美君 ありがとうございます。
 日中の学会でいろいろされているということでしたので、憲法の方も日中でいろいろやって、やっぱりそういうつながりでも、今日のお話はかなり防衛的な、安全保障的なあるいは対処ということでしたけれども、そういうことも非常に大事かなと思っていて、やっぱり話すとかなりそういう部分は違って、政府が問題だと、中国のですね、今の体制が問題だとか、そういうような話が出てくるんですけれども。
 小谷参考人にお聞きしたいと思いますけれども、中国の戦略というんでしょうか、その国民の方、これもやっぱり言いにくいですよね、中国の世論がどうなのかというのもあるかと思うんですけれども、ちょっと、じゃ、形を変えて。
 尖閣列島、そもそも何でそこがいいのか、今戦略としてやろうとしているのかと、中国がですね。それは、一時は石油の問題があったとか、あるいはマグロが捕れるからとかいろんな、EEZももちろんあるんでしょうけど、これ、どういうところが尖閣の狙いなんですかねということをお願いします。

#57
○参考人(小谷哲男君) 中国のその尖閣に対する主張に関しましては、一般的に、やはり六〇年後半にあの周辺に石油が眠っているということが言われて主張を始めたとなっておりますけれども、その主張は台湾に対しては私は正しいと思います。公開されているその蒋介石の日記などを見ても、明らかにそのエネルギーの問題で、台湾はそれまで尖閣諸島と呼んでいたのに、いきなり今日から釣魚台と呼ぶというふうに日記に書いてありますので、台湾に対しては、これはエネルギーのナショナリズムだったと思いますが、中国については、私は少なくとも七〇年代において尖閣諸島には全く関心がなかったと思います。なぜ台湾から遅れること六か月後に中国外交部が尖閣諸島の領有を主張したかというと、これは台湾が尖閣諸島は台湾の一部だと主張したから。中国は台湾を自分たちの一部だと主張しているので、台湾が言い出した以上、それを主張しなければならないということだったと思います。
 しかし、当時の中国にとって一番大事だったのは、いかにソ連の脅威に対処するためにアメリカや日本との関係を改善するかということであったので、だからこそこれは棚上げしておこうというのが中国の立場だったと思います。
 しかし、それから時間がたち、例えば中国の漁業の能力が上がってきて、また、国連海洋法条約が発効してEEZという概念が出てきて、中国としてこの尖閣諸島は無視できない存在になってきたということだと思います。それが、九二年の領海法の中で尖閣諸島を初めて領土だと位置付けた流れにあると思います。
 やはり根本にあるのは、やっぱり一つの中国の政策、北京からすれば一つの中国の原則ですね、これが根本にあると思いますので、そういう意味で、先ほども述べましたが、この台湾問題と尖閣の問題というのは切り離せないということであって、台湾に対する圧力がこれだけ強まっている中、やはり尖閣に対しても圧力が強まってくるのは当然であろうというふうに考えています。

#58
○高良鉄美君 ありがとうございます。
 向田参考人は、もう時間がなくなりましたけど、私も、海上保安庁の人が学生でいて、非常に現場が緊迫したのをいろいろ伝えられましたので、私もそういう部分についてはずっとお話しのようなサポートをしていきたいなと思っています。
 感謝を申し上げて、私は終わりたいと思います。

#59
○会長(鶴保庸介君) それでは、引き続き、ながえ孝子君。

#60
○ながえ孝子君 碧水会のながえ孝子と申します。
 三人の参考人の方々、今日は示唆に富んだ御提言を含めていろいろありがとうございました。
 それでは、まず坂元参考人にお伺いしたいんですが、お話の最後にいろいろ御提言をいただきました。日本独自の対応として三つ選択肢がある中で、三番が坂元参考人としてはいいということで、海保と自衛隊が連携しながら、やっぱりその違いをしっかりと主張するというか見せていくということの重要性、承知いたしました。
 対アメリカ、対ヨーロッパ、対中国ということでいろいろ御提言をいただいたんですが、もう一つお聞きしたいのが対アジアですね。日本がどういうふうに行動していくのがいいのか、取るべき対応など、御提言をお聞かせください。

#61
○参考人(坂元茂樹君) どうも、ながえ先生、ありがとうございます。
 日本は、現在、向田参考人が詳しく御説明できると思うんですけれども、対アジアにつきましては、海上警察機関の能力構築ということで、船舶についても、それから乗員の教育訓練についても積極的に行っております。
 中国は、先ほど申し上げましたように世界最大の海上警察機関であって、そういうものが前面に出てまいりますと、なかなかASEANの諸国、南シナ海の周辺国ではこの中国の海警に対峙していくというのが難しいというのが実情でございます。
 海警法、二月に施行されましたけれども、フィリピンに三月に二百二十隻の中国漁船が集結をしたと。そこで、中国とフィリピンとの間で、スプラトリー諸島の一つなんですけど、ウィットサン礁という、こういう礁がありまして、この礁は中国名は、牛という字に軛という漢字を書いて礁で、ギュウヤクショウと読むのでしょうか、こういうふうに呼ばれている、この牛軛礁の周辺で二百二十隻の漁船が集結をして、そしてフィリピンの海上警察機関ではこれを排除することはできないし、フィリピン海軍もこれを排除することはできないと。
 CNNの報道によると、四月一日、南シナ海の環礁、ユニオン堆というところで違法な構造物が建築されたというようなことでありまして、中国は南シナ海を中国の海にしたいというふうに考えていて、そして九段線内の礁について実効支配を広げていきたいというふうに思っているわけですから、これに対抗していくためには東南アジア諸国の海上警察機関の能力構築が必要だということで、日本としてはそうした貢献は行っているということであります。
 それが十分に対抗できるものであるかどうかというのは、これはなかなか難しくて、AP通信の記者に対してドゥテルテ大統領は何と言ったかというと、習近平がこの海で漁業をしたいと言ったら彼らは漁業をするでしょうと、我々がそれを阻止しようというふうにフィリピンの海軍を出せばフィリピンの海軍は撃沈されるでしょうというような、冗談とも付かぬことを言われたというのはAP通信の記事にありました。
 そうした状況を少しでも変えていくために日本が何ができるかということで、そのような国際貢献が行われているんだというふうに承知しております。
 向田参考人が詳しいと思います。

#62
○ながえ孝子君 じゃ、向田参考人にお願いします。

#63
○参考人(向田昌幸君) 今の御質問に関連してですけれども、南シナ海と東シナ海は、歴史的にも国際法上もやはりきちっと分けて考えるべきだというふうに私は思っています。
 東南アジア諸国、海上保安庁は、海上保安機関の設立であるとか海上法執行能力の向上ということで一生懸命指導、協力を行っているところでありますけれども、その南シナ海の問題に対処するというよりも、まずどの国も従来軍隊が海のことはやっておりましたけれども、海上法執行の分野で、例えば薬物、銃器の密輸が横行するとか、いわゆる密航も横行する、そういう意味で、海上におけるいわゆる法執行の需要が非常に高まってきたと。それをやはり軍隊が一手に引き受けるというのは、余りノウハウがない、法執行にノウハウがない軍隊に任せるのは得策ではないし、手が回らないということもあって、海上保安庁のような海上法執行機関をつくっていこうと、こういう話になってきたわけです。
 ですから、そこらを踏まえた上で南シナ海について見ましても、ここは元々日本が戦前は実効支配していた海域でありますけれども、それを台湾も含めて放棄したと。実はそういったところで、まあ北方領土なんかもそうですが、じゃ、どこの国に帰属するんだというの分からないわけです。そういう中で、南シナ海のいろんな岩礁とか離島につきましては、ある意味では、表現は適切でないかもしれませんが、早い者勝ち、強い者勝ちといったようなことが物を言う世界になっておると。
 それに対して、東シナ海の尖閣諸島については、繰り返しになりますけれども、尖閣諸島は我が国固有の領土であると。サンフランシスコ平和条約においても沖縄返還協定においても、明確にその裏付けとして協定の中に、潜在主権も含めて、そういう条約、協定を見れば当然理解できる話であります。
 ですから、それは中国としてもちゃんと分かっていると思いますから、そこを踏まえて南シナ海と東シナ海の尖閣問題について、幾ら何でも中国が同じように横暴を極める対応で尖閣諸島をやってくるというふうに私は考えておりません。

#64
○ながえ孝子君 ありがとうございます。
 関連して、小谷参考人にお伺いしたいんですが、小谷参考人も、海洋法の精神に沿ったやっぱり実際の海警法も運用させるように、周辺国との連携が大事だというお話がございました。
 先ほどのそのアジア諸国の話も伺ったんですけれども、じゃ、その周辺国、アジアでどの国がキーで、どういう役割を期待するのかというのを、お考えをお聞かせいただけませんか。

#65
○参考人(小谷哲男君) アジアの中でどの国を重視して連携するべきか、やはりこれは、中国と直接係争を抱えている国がやはり重要だと思いますので、ベトナム、マレーシア、フィリピン、この辺りは当然連携をしなければなりませんし、連携を既にやっているところです。一つ抜けているところがあるとすれば台湾でありまして、やはり台湾との連携なしに東シナ海及び南シナ海の安定というのは望めないというふうに考えます。
 例えば、この中国海警法ができた後、アメリカと台湾の間では、コーストガード同士の連携を深めるという覚書が交わされました。日本としてどこまで公的機関が連携できるかという問題はあろうかと思いますけれども、やはりこれを機に、台湾のコーストガードとの協力、連携をどのように深めればいいかということを考えなければいけないのではないかというふうに考えています。

#66
○ながえ孝子君 どうもありがとうございました。終わります。

#67
○会長(鶴保庸介君) 御苦労さまでした。
 これにて一巡目が終了いたしました。
 他に質疑のある方は挙手を願いたいと思います。
 川田龍平君。

#68
○川田龍平君 参考人の皆さん、今日はありがとうございました。
 お話を伺っていて、私も、最後、ながえ議員が聞いた辺りがちょっと自分も聞きたかったことなんですが、特に中国との関係、アメリカとの関係、そしてアジアとの関係に続いて、やっぱりEUとの関係というのはどうなのかということで、最近、フランスですとかイギリスが大きいかと思いますが、イギリス、フランス、ドイツも、今後、インド洋を含めた中国との覇権主義の関係にこれから関わってくるということもニュースになっておりますけれども、そういったEUとの関係においての中国とのこの関係をどう見ていくのかということについて、坂元参考人、いかがでしょうか。

#69
○参考人(坂元茂樹君) 私、冒頭の報告の中で申し上げましたように、EUとの関係につきましては、法の支配を含むルールに基づく国際秩序の確保、航行の自由、紛争の平和的解決という、こういう共通の価値を持っていますので、そういうところでカナダも含めて中国の覇権主義的な行動に反対をするということで、更に協力して抑止を働かすということは必要なんだろうというふうには思います。そういう観点で、ドイツも共同訓練に参加をするというようなこともありますし、イギリス、フランスも積極的な対応を取っているということだと理解をしております。
 ですから、中国包囲網というものではなくて、中国がやろうとしていることは国際法秩序に対する重大な挑戦であって、もしこのような中国の主張を、あるいはその行動をそのまま認めてしまうと、国連海洋法条約という海洋の普遍的な秩序の大本が壊れてしまって、力によって、力の強い者は自分たちが欲しい岩礁なりあるいは島なりを分捕っていいんだというような、国連憲章が定めている紛争の平和的解決という考え方と異なる方向に事態が進んでいくということであります。
 ただ、非常に厄介なのは、中国社会科学院の副院長さんとお話をしたとき、二〇〇六年に選択的除外宣言をされたので、紛争の平和的解決の観点から望ましくないのではないですかと申し上げたときの彼の答えは、中国は主権の問題を国連といえども第三者に委ねる考えはないということであります。
 今回は、義務的仲裁裁判でフィリピン側に付いた弁護人が大変頭が良くて、管轄権の関門をかいくぐったわけでありますけれども、尖閣諸島の問題を国際司法裁判所で解決したらどうかというような話を聞いたりしますけれども、国際司法裁判所は強制管轄権ありませんので、中国が同意しない限り国際司法裁判所でこの問題が審議される可能性はゼロだということになるし、中国のその基本的な立場、主権の問題は第三者に委ねないということになりますと、やはり最後は外交的努力をしないといけない。その場合に、日本だけではなくて、外交的なプレッシャーを日本が価値を共有する米国や欧州の諸国と掛けていくという以外に手はないというふうに考えています。
 私からは以上です。

#70
○川田龍平君 小谷参考人には、私も台湾との関係が大変重要かなと思っておりまして、それともう一つは韓国との関係で、争いの方が多いんですが、協力関係をつくっていくということではどうなのかということなんですね、中国に対して。そういった韓国や台湾という近隣国とより関係を強めていく、争いではなく、強めていく方向に持っていくにはどのように考えているのかということを教えていただければと思います。

#71
○参考人(小谷哲男君) 韓国とのコーストガード同士の協力に関しましても、これはやはり竹島の問題がございますので、なかなか難しいところはあります。
 とはいえ、例えば北太平洋におきまして、海上保安庁、それから韓国やアメリカなどのコーストガード同士が連携する枠組みというものもあり、共同で違法漁業の監視をするというようなことも行われております。ですので、このような多国間の協力枠組みを土台に日韓の間のコーストガード同士の連携を更に深めて、中国のコーストガードとも、中国のコーストガードもこれに入っておりますので、その多国間の枠組みで様々な話合いを通じて信頼関係を築く、又はその危機管理について共通の意識を持つということは十分できると思いますので、そこは国家間の関係が難しいときであってもやり続けるべきことであろうというふうに考えています。

#72
○川田龍平君 向田参考人に聞きたいんですが、最近、「うるま」でしたか、海上保安庁の老朽艦と言われるんですかね、昭和五十五年に建造された、故障を起こしたというニュースがあるんですが、やっぱり今、中国と拮抗しているというか、一隻に対して巡視船一隻で対応しているという中で本当に一隻でも欠けることができないということが記事にも書いてあったんですが、そういった状況の中で、やっぱり巡視船、これから七隻新造していくということもニュースにはなっておりますが、そういった警備にやっぱり必要な船をいかにこれから中長期的に造っていけるかということですとか、それから、中長期的なこととしては、インドネシアですとかフィリピンですとかそういった、ベトナムとかですね、そういったこれからの非常に経済的に良くなっていく国に、そういった巡視船の供与ですとか、それから、先ほどおっしゃっていた、海上法執行能力を付けるために、かなり海上保安庁がそちらに行って教えるということなどもしていると思うんですが、そういった活動を通じて中長期的にやはり構築していく関係をアジアでつくっていく意味というのはどのように考えておりますでしょうか。
 その二つですね、新造していく船の話と、アジアとの関係を強めていく話をお話しいただければと思います。

#73
○参考人(向田昌幸君) まず、船でありますけれども、大体、基本的には、まあ二十年ぐらい使うと、外見は立派そうに見えても、船内のパイプであるとか修理できない分野というのはたくさんありまして、もういわゆる陳腐化した状態になってくると。そういう意味では、予期しないトラブルというのは古い船は起きてくるわけです。海上保安庁も、最近は、非常に高速高機能で大型で、しかも非常に新しい船というのはどんどん造ってきているわけでありますけれども、もうあっという間に二十年というのはたってしまいます。
 そういう意味で、船を造るにも、それこそ人の育成と同じで一朝一夕にはまいりませんので、数年掛かりで造っていくということになりますので、そういう意味では、あるときに一気に船ができちゃうと、そういう整備ができると、そういう船が一気に古くなってくると、そういうジレンマがあるわけです。その辺はちゃんと踏まえながら、海上保安庁の方でも、関係当局に予算要求をしながら、計画的な船の増強、更新、こういったものはやっていっていると思っております。
 それと、ASEAN諸国始め発展途上国等に古くなった巡視船を供与したこともあるわけであります。また、新しい船も、日本の関係先からODA等の関連で巡視船を供与するということもあるわけでありますけれども、船の運航、メンテナンス含めて、いろんな指導を海上保安官もJICA等を通じて行っているわけでありますけれども、なかなか、今コロナもありまして、人を派遣して付きっきりで指導するというわけにもまいらない。それと、古くなった船をどう新しく修繕していくかという、そういった能力も各国によって随分違います。
 そういったいろんな問題がありますので、ただ人的に支援する、あるいは新しい船をやればちゃんとやってくれると、そういうものではないので、そういうことを総合的に勘案しながら国際協力もやっていく必要があるというふうに考えております。

#74
○川田龍平君 ありがとうございます。
 時間です。終わります。ありがとうございました。

#75
○会長(鶴保庸介君) 他に御発言はございませんか。──御発言もなければ、参考人に対する質疑はこの程度とさせていただきます。
 参考人の皆様に一言御挨拶を、御礼を申し上げたいと思います。
 冒頭申し上げたとおり、コロナ禍の中、こうして御出席をいただいたことに加え、長時間にわたりこうして貴重な御意見をお述べいただいたこと、誠に感謝に堪えません。調査会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げたいと思います。ありがとうございました。(拍手)
 本日はこれにて散会いたします。
   午後三時四十二分散会
ソース: 国立国会図書館
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