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2021/01/21 第204回国会 参議院 第204回国会 参議院 本会議 第2号 令和3年1月21日
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2021/01/21 第204回国会 参議院

第204回国会 参議院 本会議 第2号 令和3年1月21日

#1
令和三年一月二十一日(木曜日)
   午前十時一分開議
    ━━━━━━━━━━━━━
○議事日程 第二号
  令和三年一月二十一日
   午前十時開議
 第一 国務大臣の演説に関する件(第二日)
    ━━━━━━━━━━━━━
○本日の会議に付した案件
 議事日程のとおり
     ─────・─────

#2
○議長(山東昭子君) これより会議を開きます。
 日程第一 国務大臣の演説に関する件(第二日)
 去る十八日の国務大臣の演説に対し、これより順次質疑を許します。水岡俊一さん。
   〔水岡俊一君登壇、拍手〕

#3
○水岡俊一君 立憲民主・社民の水岡俊一です。
 会派を代表して、政府四演説に対し、質問をいたします。
 まず、総理、そして大臣の方々にお願いがございます。
 今日は、是非、建前論や御飯論法、あるいははぐらかし、ごまかしを一切やめ、私たち議員の向こう側にいる国民の皆様に向かって自らの言葉で本音を答えていただきたい。総理始め大臣の理念や政策を切々とお話しいただければ、テレビやラジオ等でお聞きになっている国民の皆様の理解も深まると考えます。
 一月前、暮れも押し迫った十二月二十七日夜、私たちは一つのニュース速報に愕然としました。羽田雄一郎参院幹事長死去との知らせに、誰もが耳を疑い、それが間違いであることを祈るばかり。しかし、二度と彼の肉声を聞くことはかないませんでした。
 死因は新型コロナ感染症によるものであり、PCR検査をするため病院に向かう途中で息を引き取ったという続報に私たちは更なるショックを受けました。今となっては、彼の死を通して私たちが何を学ぶのか、何をしなければいけないのか、しっかりと考えていきたい、そう思います。
 十四日の内閣委員会において杉尾秀哉議員が、羽田議員のように迅速にPCR検査を受けられない方々がいるという現実をどう考えているのかという質問をしています。それに対し、厚生労働省は、検査がある意味では回るようになってきた、検査をめぐる状況は初期の事態よりはかなり改善をしてきたとの答弁をしました。十二月、一番多かった時期で週当たり三十六万件できていると胸を張る厚労省ですが、週三十六万件は、一日約五万件、これを一都道府県当たりにすると余りに僅かな数ではないでしょうか。これで回るようになったと言える神経が私たちには分かりません。
 そこで、総理に最初の質問です。
 菅総理は、感染症対策の有効な手段として、国民の不安を少しでも和らげるためにも、PCR検査を拡充すべきだとお考えなのか。それとも、医療逼迫を防ぐためとして、PCR検査はこの程度にとどめておく方がよいとお考えなのか。さらに、そのお答えを基に、菅総理の新型コロナ感染症対策が他の国とどう違うのか、科学的根拠を交えて御説明ください。
 二〇二〇年がマスクの年だとしたら、二〇二一年はワクチンの年になるかもしれないと書いた論説がありました。言い得て妙だと思います。現在、緊急事態宣言真っただ中であり、感染者数の増加、宣言による対策、特措法の改正が議論の中心となっていますが、間もなくワクチンの早期接種が国民の注目の的になってくると思われます。
 そこで、二つ目の質問です。
 全国民分のワクチンが確保できるのか、接種の優先順位はどのように付け、どこで誰が打つのかについて改めて明確に御説明ください。また、ワクチンについて、副反応や変異株への効果の最新情報やデータを公開するなど、透明性を確保する手だてと説明責任をどう考えているのか、総理の決意を含めてお答えください。
 次は、税制改正についてお尋ねします。
 コロナ禍によって、貧困世帯の増加や高所得層と低所得層の二極化など、日本が抱えていた様々な問題や格差などが顕在化、深刻化しています。この原因は今に始まったことではなく、サッチャー・イギリス首相、レーガン・アメリカ大統領の時代に始まった新自由主義や規制緩和政策を源に、およそ四十年掛けて形成されたものです。それがこのコロナ禍で一挙に噴出したのです。しかし、政府の令和三年度税制改正大綱でも格差是正のための根本的な改革はありませんでした。
 税の一番大きな役割は、所得の再分配をして格差を是正することです。本来、所得が高い人がそれに応じた負担をするというのは、社会において当然の構造です。
 日本の申告納税者の所得税負担率の実態を見ると、所得一億円までは負担率が徐々に上がり、一億円を頂点に一番高い三割弱の負担率となっています。しかし、そこを超えると、なぜか負担率は下がっていくのです。つまり、超富裕層になればなるほど所得税の負担割合は低くなっていきます。日本の税制は株の譲渡益などの金融所得課税の在り方に問題があり、このような富裕層への優遇が続いているのは国際的に見て時代遅れの税制です。
 アメリカでは、ウォルト・ディズニー・カンパニー創業者の孫やウォーレン・バフェット氏などの裕福な人々が自分たち富裕層、資産家階層への増税を求めて動き始めています。アメリカの格差が拡大し、不平等になっていることを解消するためです。残念ながら、日本ではこのような動きはまだ見えません。
 そこで、三つ目の質問です。
 コロナ禍の問題解決を考えるとき、税制が果たすべき役割は大きいと思います。コロナ禍に苦しむ今日、そして流行が収まった後の新しい時代に、格差是正のための所得再分配機能を発揮できる抜本的な税制改正を行う考えはありませんか。もし、あるとするなら、その内容を可能な限り明らかにしていただきたい。財務大臣、お答えください。
 十七日で阪神・淡路大震災から二十六年の時が過ぎました。総理は、翌日十八日の施政方針演説で阪神・淡路大震災については一言も触れることはありませんでした。一九九五年一月十七日、神戸で被災した者の一人として私は憤りを覚えます。阪神・淡路大震災から教訓として学ぶことはもうないということでしょうか。震災で救えるはずの命を救えなかった行政の責任は、なかったことにしてしまったのでしょうか。
 阪神・淡路大震災は真冬に起こったため、避難所でインフルエンザの大流行が起こり、肺炎などの呼吸器疾患による災害関連死の犠牲者が増えたと言われています。まさに今、同じ季節の日本で新型コロナウイルスによる感染症が流行しています。
 今、再び大きな災害が起きると想定した場合、避難所ではクラスターの発生を防ぐことが果たしてできるのでしょうか。避難所の運営などは様々な面で今まで以上に、また、今までにはなかった対策が必要となります。
 そこで、質問四です。
 内閣府などが避難所開設・運営訓練ガイドラインを発表していますが、政府として感染症拡大下の避難所では従来とどのような部分を変更する必要があるのか、総理から説明してください。また、総理が阪神・淡路大震災から教訓として学んだ今日的な課題をお話しください。
 先週十五日、吉川貴盛元農水大臣が在宅起訴されました。またもや安倍政権下の閣僚経験者が起訴される事態が起こったのです。この事件が発覚したきっかけは、河井克行元法務大臣と河井あんり参院議員による買収事件の捜査でした。
 河井夫妻の裁判では、現金を受け取った当事者たちの非常に生々しい証言が多数明らかにされています。ある市議会議員は、それが汚れた金という認識を持ちながら、受け取ったお金で孫にプレゼントを買ったといいます。また、別の人は、そのお金を七人の孫へのお年玉として使ったということです。おじいちゃんからもらったプレゼントやお小遣いがそのようなお金が元手だと知ったとき、家族はどんな気持ちになったでしょうか。
 今回の河井夫妻の選挙買収では、政治家だけでなく多くの一般の人にもそのお金が渡り、この事件に巻き込まれているのです。政治と金の問題は、政治家だけにとどまらず、市井に生きる普通の人たちの生活まで壊してしまいます。
 河井あんり参院議員の裁判は、まさに今日判決が下されます。容疑が事実であれば当選無効となって当然と考えますが、多くの国民に影響を及ぼした政治家として国会での説明責任があるはずです。
 そこで、質問五です。
 総理は、二〇一九年の参院選で河井あんり議員の応援演説にも入っており、無関係ではないはずです。桜を見る会前夜祭に関する問題では、総理も国会で虚偽答弁を行いました。施政方針演説の中で御自身の答弁について謝罪しておられましたが、行政府の長として、立法府に対してたった一言のおわびで済む問題ではありません。一連の政治と金の問題について、再発防止策も含めた総理のお考えをお伺いします。
 菅総理のお膝元である横浜市が、IR、いわゆるカジノの誘致を進めています。横浜市議会に提出されたその賛否を問うための住民投票を実施する条例案が一月八日の市議会本会議で否決されました。議席の過半数を占める自民、公明両党の議員の反対により、カジノ誘致の是非を問う住民投票は行われないことになってしまいました。今後、横浜市は事業者の公募など手続を本格化させるということです。
 カジノが横浜の町に必要かどうかを住民投票によって決めようと、市民が中心となり僅か二か月で約十九万三千筆の署名を集めました。
 住民による条例制定の直接請求は、地方自治法に定められたものであり、必要な署名数を設けた上で認められた市民の権利です。その必要数の三倍を超える市民の声が寄せられたことを尊重すべきではないですか。しかし、横浜市長は、住民投票の意義を見出し難いと一蹴し、全く聞く耳を持とうとしませんでした。
 そこで、質問六です。
 住民による直接請求は、一定の要件が課されている以上、その要件を満たしていれば基本的に尊重されるべきだと考えますが、地元選出の菅総理としてはどうお考えですか。
 続いての質問七は、赤羽国務大臣の見解を問います。
 IR実施法では、第九条七項で住民の意見を反映するための必要な措置を講ずるよう求めています。住民投票の実施を拒むのは、IR実施法の趣旨に反するのではないですか。住民投票を住民の意見を反映させるために必要な措置としないのであれば、何を対象としているのでしょうか。
 加えて、住民と議会との意見が異なる場合、どのように意見を調整することを想定しているのでしょうか。その際、国はどのような役割を担うのですか。
 核兵器の使用を全面的に禁止する核兵器禁止条約が明日二十二日に発効します。この条約の発効により、核兵器は国際規範上認めることができないとする国が多数となります。
 日本は、本来ならば唯一の戦争被爆国として、核兵器保有国に対して条約批准を働きかける大きな役割を果たせるはずです。しかし、菅総理は核兵器禁止条約に署名する考えはないと言い切り、締約国会議へのオブザーバー参加についても慎重に見極める必要があると述べるなど、非常に消極的な姿勢を世界に向けて発信しています。十八日の演説においても、菅総理はおろか茂木外務大臣ですら核兵器禁止条約について言及をしませんでした。大変残念なことです。
 質問八は、総理にお伺いします。
 この核兵器禁止条約を始めとする核廃絶に向けた国際社会の取組に対し、菅政権は今後、どのように関わることによって日本の責務を果たそうとしているのでしょうか。
 我が国の防衛の在り方に関し、施政方針演説にあるイージス・アショアの代替案について質問します。
 政府は、二〇一七年二月の日米首脳会談後、突如始まった地上配備型ミサイル迎撃システム、イージス・アショアの導入について、日本全国を二十四時間三百六十五日防護可能と説明してきました。しかし、その配備計画を撤回して代替案として建造することが決まった二隻のイージスシステム搭載艦は、二十四時間三百六十五日の防護態勢を取るのは困難と岸防衛大臣が認めています。地上配備型と異なり、艦艇は定期的にドックに入ってメンテナンスを受ける必要があるためです。また、建造費だけで五千億円は下らないという費用に関する指摘なども多くあります。さらに、政府は、この二隻の搭載艦をフルスペックのイージス艦として整備することも検討するというのです。当初以上の機能を期待され、その運用目的が不明確です。
 そこで、質問九です。
 この代替案の決定はこれまでの説明と大きく矛盾するのではありませんか。総理の見解をお聞きします。
 総理は、いわゆる敵基地攻撃能力の保有に関し、抑止力の強化について、引き続き、政府内で検討を行うと明言する一方、昨年の閣議決定では、敵の射程圏外から攻撃できる長射程のスタンドオフミサイルの国産開発を決定しました。これは、敵基地攻撃に事実上転用可能な装備品の開発を先取りして行うとともに、更なる敵基地攻撃能力の保有をも目指すものではありませんか。
 質問十です。
 敵基地攻撃能力の保有は、防衛の在り方を大きく変えることになります。このようななし崩しの新たな装備の増強は、憲法に基づく専守防衛に整合するものなのか、総理の説明を求めます。
 一九八〇年、私は大学を卒業して初めて公立中学校に赴任しました。その年は、学級編制基準を四十人とする義務標準法改正が行われた年でもありました。
 あれから四十年ぶりに小学校だけでも三十五人学級へと改革が進んでいることは、極めて大きな意義があると考えます。二十五人学級が世界標準とも言われる中、周回遅れの感は否めないのですが、ここに至るには多くの関係者の御努力があったものと敬意を表するものです。是非とも中学校や高校まで改革を進めていただきたいと考えます。
 しかし、問題はこれからです。
 質問十一も総理にお尋ねします。
 近年、新学期が始まっても学級担任がいないという学校が出てくるような状況で、教員不足が深刻化していますが、これにどう対処するお考えですか。教員を確保するために退職後の教員を臨時採用にしたり、非常勤講師などに頼るのはもう限界です。また、本来は子供たちのために担任とは別に配置されている加配教員を削減し、学級担任に充てるといいます。学校現場での指導工夫改善ができなくなり、教育活動に支障が生じかねないという心配にはどう応えますか。
 総理は、教育のデジタル化を一挙に進めるとおっしゃいました。コロナ禍の中、オンライン授業などICTを活用した教育の必要性が高まっていることは確かです。一方、子供のデジタル端末への依存症を懸念する声も大きくなっています。
 そのような中、今の子供たちの視力が昔の子供に比べて極端に悪くなっていることに総理は御関心をお持ちでしょうか。
 文科省が毎年行っている学校保健統計、昨年三月に公表された二〇一九年度分の調査で、小学校、中学校、高等学校で裸眼視力が一・〇未満の児童生徒の割合が過去最高となりました。しかも、視力一・〇未満のパーセンテージは、小学校で三割強、中学校が六割弱、高校においては何と七割弱という驚きの調査結果でした。一九七九年、昭和五十四年の同じ調査では、それぞれ小学校は二割弱、中学校は三割半ば、高校が五割強程度であったことを考えると、この四十年で大幅に視力が悪化していることが分かります。
 今の子供たちは、家庭でのテレビだけでなくゲームや動画の視聴など、日頃からデジタル端末に触れる機会が増えています。さらに、子供の場合は体格的にデジタル端末との距離が近くなってしまうという問題があります。目から三十センチ以内のものを三十分以上見続けると近視は進行しますから、PCやタブレットを使った授業ではよほど注意しなくては近視を増やすことにつながってしまいます。
 文科省は、児童生徒の健康に留意してICTを活用するためのガイドブックを発行していますが、その中で近視の予防や対策などについてほとんど言及されていません。一人一台の端末、電子黒板やデジタル教科書など、教育現場で子供が触れるデジタル端末は増えるばかりです。
 そこで、質問十二です。
 子供の視力悪化について総理はどのような問題意識をお持ちですか。デジタル端末への依存症について、また子供の視力悪化について、科学的なエビデンスに基づいた対応や対策が必要だと考えますが、GIGAスクール構想を含めてお考えを示してください。
 国連は、二〇三〇年までに誰一人取り残さない持続可能で多様性と包摂性のある社会を実現するため、十七の国際目標、SDGsを掲げています。例えば、一、貧困をなくそう、四、質の高い教育をみんなに、七、エネルギーをみんなにそしてクリーンになど、日本は達成に向けてまだまだ課題が山積みです。
 この貧困や教育の目標にも関連したある小冊子があります。タイトルは「子どもの夢をかなえる「お金」の準備方法」。教育資金の工面の仕方をまとめたもので、コロナ禍による経済的な理由で進学を諦めたりすることのないよう、NPO法人キッズドアによって急遽作成されました。導入部分では、高等教育を受けることで子供にとってどれだけメリットがあるのか、選ぶ進路によりどのような道が開けるのか、そして生活費などを含めると在学中どれだけのお金が掛かるのかなどを丁寧に説明しています。そして、その費用を準備するための奨学金や貸付けなどの制度を解説するページがあります。
 そもそも金銭的に余裕のない家庭はパソコンや通信回線を持っていないこともあり、このような情報はインターネットに公開しているだけでは必要な人に届かない可能性があります。この冊子は、ホームページでの公開に加え、一万部印刷して全国の高校などへ届けたといいます。
 このようなことは本来、政治が行うべき仕事ではないでしょうか。民間の一団体がここまでしていることに、私は政治家として大変申し訳なく思います。
 そこで、質問十三です。
 総理、教育は最高の投資です。この考えには総理も御賛同いただけることでしょう。質の高い教育をみんなにというSDGsの目標を達成するためにも、コロナ禍の中、教育支援をより一層手厚く、そして支援の情報は周知徹底を図るべきかと考えます。総理のお考えをお聞かせください。
 また、このような教育資金に関する情報の提供について、国としての事業を今後行うつもりはございますか。併せてお答えください。
 次は、気候変動についてお尋ねします。
 政府は、さきの臨時国会以来、二〇五〇年までに温室効果ガスの排出量を実質ゼロとする目標を示し、その実現に向けた決意を表明しました。これに対し内外の反応は様々でしたが、昨年十二月に国連事務総長のアントニオ・グテーレス氏が異例とも言える強い言葉で世界に訴えた内容に私たちは注目すべきです。彼は、簡単に言えば地球は壊れている、人類は自然に対して戦争を仕掛けて、自然は常に反撃してきている、これは自殺行為ですと述べ、温暖化対策にはもはや一刻の猶予もないことを強く訴えました。
 また、海外メディアからは、日本の二〇五〇年ゼロ宣言に対し、明確な計画が示されなかった、本当に実現する覚悟なら二〇三〇年を目標にすべきだと批判の声も上がっています。
 二〇一九年の台風十九号による経済損失はその年の世界最高額を記録し、台風十五号の経済損失と合わせて二兆七千五百億円に達しました。世界的に見ても、ここ三十年で気象関連の自然災害による経済損失額は約三倍に増加しています。
 気温が上がると大気中の水蒸気量が増えます。台風は発達するエネルギーを得やすくなり、一たび強い台風が発達すると更に強まる可能性があるということです。台風が大型化するという推定結果もあります。
 スウェーデンのグレタ・トゥーンベリさんが気候変動対策を求めてたった一人で始めたスクールストライキは、世界各国の若者に共感を広げ、未来のための金曜日、フライデーズ・フォー・フューチャーと呼ばれる取組に発展しました。二〇一九年九月の国連気候行動サミットを前に、世界中で行われたデモには約四百万人が参加したと言われています。将来を担う若者や国際社会は、気候変動による温暖化を食い止めるため、声を上げ始めています。
 そこで、質問十四です。
 日本は、後れを取ってきた省エネや再生可能エネルギーの普及について、二〇三〇年までにどのような指標を持って進めていくべきだと考えますか。総理のお考えをお伺いします。
 国連の専門機関、世界気象機関によると、産業革命以前の基準とされる一八五〇年から一九〇〇年の平均と比べて、二〇二〇年の地球の平均気温は一・二度上昇しています。気候変動の研究者は、一・五度の上昇が限界であるとし、それ以上になると二酸化炭素の排出を全てやめても地球の暴走を止めることはできないと警告しています。
 EUは、既にグリーンディールを発表し、二〇三〇年までに官民合わせて約百二十兆円の投資を決めました。経済成長と温暖化政策を両立させる政策です。二兆円の基金で胸を張る日本とは大違いです。
 プラス一・五度を超えないためには、今すぐ温室効果ガスの排出を減らし、二〇三〇年に半減、二〇五〇年までには実質ゼロとすることが必要であると思われます。
 最後は、質問十五です。
 総理は、施政方針演説でCOP26までに意欲的な二〇三〇年目標を表明すると述べられていますが、意欲的ということは、二〇三〇年に温室効果ガスの排出について半減以上の目標を掲げるという認識でよいでしょうか。また、その実現に向けての具体策と決意をお答えください。
 悪い行いをする者が世界を滅ぼすのではない、それを見ながら何もしない者たちが滅ぼすのだ。アインシュタインのこの言葉を全ての政治家が肝に銘ずるべきではないでしょうか。
 結びに。
 議場の皆様、お許しいただけるならば、今は亡き羽田雄一郎議員が安らかに眠りにつかれることを共にお祈りしていただきますよう、心よりお願い申し上げます。
 御清聴ありがとうございました。(拍手)
   〔内閣総理大臣菅義偉君登壇、拍手〕

#4
○内閣総理大臣(菅義偉君) 参議院での答弁に先立ち、羽田雄一郎議員の御逝去を悼み、謹んでお悔やみを申し上げます。
 水岡議員の質問にお答えをします。
 PCR検査の拡充についてお尋ねがありました。
 必要な方が検査を受け、その結果、感染者を早期に把握をし、療養等の対応を行うことが感染拡大を防ぐ基本であり、これまでも都道府県とも連携し、可能な限りの検査体制の拡充を図ってきたところです。
 我が国と感染状況が違う異なる他国とを一概に比較することは難しいですけれども、我が国においては、検査の拡充に努めつつ、保健所による積極的疫学調査や専門家によるクラスター対策に基づいて感染拡大の防止を図ってきているところであります。
 ワクチンの接種についてお尋ねがありました。
 昨日のファイザー社との最終契約により、全体として三億一千万回分を確保できる見込みです。まずは医療従事者、高齢者、基礎疾患を有する方、高齢者施設等の従事者から、順次、市町村が用意する施設などにおいて接種を受けていただくことになります。
 また、副反応や効果を含め、ワクチンに関する正しい理解を広げるべく、科学的知見に基づいた正確な情報を発信をしてまいります。
 避難所運営と阪神・淡路大震災の教訓についてお尋ねがありました。
 新型コロナの発生以降、分散避難や可能な限り多くの避難所の開設、避難所の衛生管理などにも取り組んでおり、必要な訓練も実施をいたしております。また、阪神・淡路大震災以降、政府としては、迅速な初動対応やボランティアと協力したきめ細かな被災者支援など、様々な教訓を踏まえた対応を行っております。引き続き災害対応に万全を期してまいります。
 いわゆる政治と金をめぐる問題についてお尋ねがありました。
 政治資金については、法令にのっとって取り扱わなければならないことは言うまでもありません。政治家はその責任を自覚し、国民に疑念を持たれないよう常に襟を正すべきものと考えております。
 IRの誘致についてお尋ねがありました。
 現在、個々の自治体が申請に向けた準備を進めているところでありますが、それぞれの自治体が法律にのっとって地域の理解を得るために直接請求も含めた手続を行っており、各自治体の判断により申請の準備が行われるものであると考えています。
 核廃絶に向けた取組についてお尋ねがありました。
 我が国は、唯一の戦争被爆国として、核兵器のない世界の実現に向けた国際社会の取組をリードする使命を有しており、これは我が国の確固たる方針であります。
 御指摘の核兵器禁止条約については、これまでも説明してきている政府の立場に照らし、署名する考えはありませんが、我が国としては、引き続き核軍縮の進展に向けて、立場の異なる国々の橋渡しに努め、国際的な議論に積極的に貢献していく考えであります。
 イージス・アショアの代替案についてお尋ねがありました。
 代替案は一定の制約はありますが、現行のイージス艦八隻とともに運用することで、情勢に応じ、常時持続的に我が国全域を防護し得ることは可能と考えております。いずれにしても、引き続き運用構想や総経費などについてもしっかり検討してまいります。
 スタンドオフミサイルの開発についてお尋ねがありました。
 昨年十二月に閣議決定した国産のスタンドオフミサイルの開発は、自衛隊員の安全を確保しつつ相手の脅威圏の外から対処を行うためのものであり、いわゆる敵地攻撃を目的としたものではなく、我が国防衛のため必要なものであり、専守防衛の考え方に整合するものであります。
 小学校の三十五人学級への改革についてお尋ねがありました。
 今回の公立小学校の三十五人学級は、四十年ぶりの学級人数の大改正です。学校現場で子供の状況を把握し、一人一人にきめ細かい教育を実現してまいります。その際、外部の人材の活用、社会人の採用、教師の計画的な採用などにより、学校現場での教育活動に支障を生じさせないように配慮してまいります。
 子供の健康についてお尋ねがありました。
 今後、GIGAスクール構想を推進し、教育現場においてICTの活用を進めるに当たっては、児童生徒の健康面にも留意することが重要です。デジタル端末を使う機会が増える中で、今後、児童生徒の視力と日常生活との関連について文部科学省において改めて調査研究を行い、ICTの活用に関するガイドブックにも反映をしてまいります。
 教育支援についてお尋ねがありました。
 政府としては、幼児教育、保育や高等教育の無償化に加え、新型コロナの感染拡大に当たり授業料減免を行う大学への支援など、様々な支援を講じております。また、これらの支援については、必要とする方々に情報が届くよう、インターネットを通じた広報や大学での説明会の開催など、周知徹底に努めてまいります。
 二〇三〇年の省エネと再エネについてお尋ねがありました。
 カーボンニュートラルの実現については、省エネや再エネの最大限の導入など、あらゆる選択肢を追求してまいります。二〇三〇年の指標については、今後、エネルギー基本計画の改定に向けて更なる分析を深め、結論を出していきます。
 二〇三〇年の温室効果ガス削減目標についてお尋ねがありました。
 本年十一月のCOP26に向けて、意欲的な目標を決定し、国際社会に示します。社会経済を大きく変革し、投資を促し、生産性を向上させ、産業構造の大転換と力強い成長を生み出すことにより、カーボンニュートラルを実現をします。
 残余の質問については、関係大臣から答弁をさせます。(拍手)
   〔国務大臣麻生太郎君登壇、拍手〕

#5
○国務大臣(麻生太郎君) 水岡議員から、税制による格差是正について一問お尋ねがあっております。
 負担能力に応じた税の在り方として、これまで再分配機能の回復等の観点から累次の改正を行ってきておりますのは御存じのとおりです。所得税につきましては、最高税率の引上げ、金融所得課税の税率引上げ、高所得者に対する基礎控除の適用制限導入などの見直しを行ってきたところであります。
 今後の税制の在り方につきましては、経済社会の情勢変化等々を踏まえつつ、再分配機能をどの程度発揮させるべきかという観点も含めまして検討する必要があろうと考えております。(拍手)
   〔国務大臣赤羽一嘉君登壇、拍手〕

#6
○国務大臣(赤羽一嘉君) 水岡議員から、IR整備を目指す自治体における手続につきましてお尋ねがございました。
 まず、IR整備法第九条第七項におきまして、自治体が区域整備計画を作成しようとするときは、公聴会の開催その他の住民の意見を反映するために必要な措置を講じなければならないと定められております。この規定に基づきまして、自治体が講じる住民の意見を反映させるための具体的な措置につきましては各自治体の判断に委ねられており、御指摘の住民投票を行わないということがIR整備法の趣旨に反するとは考えておりません。
 また、同法第九条第八項で、自治体が区域整備計画の認定申請をしようとするときは、その議会の議決を経なければならないと定められています。その際には、さきに述べましたとおり、地域住民の意見を反映させた上で作成された区域整備計画について、地域住民の代表としての議会の判断が行われるものと認識をしております。
 いずれにいたしましても、国として関与する立場にはないものと考えております。
 以上でございます。(拍手)

#7
○議長(山東昭子君) ただいま理事が協議中でございます。しばらくお待ちください。
    ─────────────

#8
○議長(山東昭子君) 武見敬三さん。
   〔武見敬三君登壇、拍手〕

#9
○武見敬三君 自由民主党の武見敬三です。
 私は、自由民主党・国民の声を代表して、菅総理大臣の施政方針演説について質問をいたします。
 初めに、羽田雄一郎議員の御冥福を心からお祈り申し上げたいと思います。
 新型コロナウイルス感染症により尊い命を落とされた方々の御冥福をお祈り申し上げます。また、重病化され、病と闘っておられる方々の一日も早い回復を願ってやみません。
 新型コロナウイルス感染症対策のため、年末年始を返上し業務に当たられた医療従事者や保健所等の皆様、エッセンシャルワーカーの方々、自粛に御協力いただいている飲食業の皆様に心より感謝を申し上げます。故郷で家族とともに新年を迎えたい気持ちを抑え、久しぶりに顔を合わせたい思いをこらえて感染拡大防止に御協力いただいている国民お一人お一人に深く感謝を申し上げます。
 我が国では、新型コロナウイルスの感染拡大が始まってから一年が過ぎ、危険な感染症のパンデミックは、国民の生命と生活を根源的に脅かす脅威であるとの認識が持たれるようになりました。戦争や紛争といった軍事的脅威と同様に、巨大地震、原発事故、津波、さらに新型コロナウイルスのような危険な感染症のパンデミック等の非軍事的脅威は、国民の生命や生活に深刻な影響を及ぼす安全保障上の脅威であることは明らかです。それゆえ、今日では、あらゆる脅威に対応するための危機管理体制を効率的に構築するために、オールハザードという政策概念が用いられるようになっています。
 そこで、我が国でも、危険な感染症のパンデミックも安全保障上の脅威であると同時に、国の責務で対応すべき課題であると認識すべきと考えますが、菅内閣においてこのような考え方に対してどのような御見解を有しておられるのでしょうか。総理にお伺いします。
 二十一世紀に入ると、重症急性呼吸器症候群、SARS、中東呼吸器症候群、MERS、エボラ出血熱など動物由来の感染症が発生する頻度も多くなり、国境を越えて広い地域にまたがり感染を拡大させるようになっています。これからも毒性の強い鳥インフルエンザなどがヒト・ヒト感染可能な感染症に変異することも予測されています。
 したがって、頻度及び被害の大きさから極めて重要度の高い安全保障上の課題であるとの認識を踏まえて、平時より感染症に対する有事における危機管理の体制を国の責務に基づき構築しておく必要が認められると考えますが、どのようにお考えでしょうか。総理の見解をお伺いします。
 我が国では、従来、感染症については、公衆衛生上の観点から保健所、地方衛生検査所、国立感染症研究所などが感染症予防法などに基づき行政管理する体制が取られ、この公衆衛生の基本に基づく対応は、積極的疫学調査などを通じてクラスターが発生したときに効果的に新型コロナウイルスを封じ込める重要な役割を担ってきました。
 しかし、今回の感染拡大のように市中感染が広がり追跡不可能な孤発例が新規陽性者の六割を占めるようになると、このクラスターアプローチにも限界があることも理解され、感染の発生率の高い地域や医療・介護施設、飲食業、教育機関、仕事場などにて集中して感染を阻止する対策を講ずると同時に、国民一人一人に不要な外出を自粛していただき、人の接触自体を大幅に減少させる必要があることも経験しました。
 今後、注意すべきは、今回の感染拡大が英国などにおいて発生した感染力が高く毒性の劣化しないウイルスの国内感染の拡大と重なり、感染の広がりを大幅に加速させることです。
 そこで、今回の緊急事態宣言の効果について、特に、政策の実効性がどの程度あると考えるのか、今後更に強化するために特措法等の改正をどのように進めるのか、総理の御所見をお伺いします。
 感染の長期化により国民の多くに自粛疲れが広がる状況下において、あるいは将来予見される強毒性の高い感染症の発生時に早期に確実に対処するためにも、より実効性のある法的措置が必要です。
 我が国の民主主義の下において、常に個人の権利や自由を抑制することには慎重であるべきですが、感染状況に応じた対策を講じるためには、自粛要請に応じない事業者への何らかの強制措置を可能とする一方で、協力する事業者に対する経済的支援を実施するなど、実効性の改善に向けた対策を徹底させなければなりません。
 そこで、特措法及び感染症予防法等を改正する際に、個人の権利と自由、そして感染抑制のための権限強化と経済支援をどのように均衡させて高い実効性を確保していくお考えでしょうか。総理の御所見をお伺いします。
 新型コロナウイルスは、軽症、無症の若い世代の陽性者を通じて感染が拡大し、かつ、感染した高齢者にとっては重症化しやすく、しかもウイルスが頻繁に変異し、感染力も高いことから、感染が長期化する特質を持っています。したがって、特効薬やワクチンが開発され普及するまで、長期にわたり、特に高齢者を対象として脅威が継続するおそれがあります。
 残念なことに、感染阻止のため人の接触や移動を制限すればするほど経済、社会、文化活動に深刻な影響を与え続けることも嫌というほど経験しています。そこから、感染症拡大を抑止しつつも、経済、社会、文化活動を維持発展させることを可能とする感染症経済学といった政策分野が重要となっています。従来の感染拡大抑止という目的のみならず、経済、社会活動を維持発展させるための公衆衛生サービスといった考え方が必要になってきたと考えます。
 例えば、交通機関の規制やテレワークを推進する効果的な仕方を検討したり、オリンピック、パラリンピックなど特定の期間、限定された地域に同じ目的で多人数の集団が形成されるマスギャザリングにおける感染防止の方法を検討したり、また、民間におけるPCR検査等の精度管理を指導しつつ、陽性者が確認できれば提携する医療機関を通じて行政サービスの対象に組み込む仕組みなどをつくることなどが考えられます。
 そこで、政府は、厚生労働省と経済産業省を連携せしめ、早急にこの未知の政策分野の所轄を明らかにするとともに、学際的政策分野の人材を養成する必要があると思いますが、いかがでしょうか。総理の御所見をお聞かせください。
 また、感染拡大を抑止させつつも、経済、社会活動の維持発展させるための公衆衛生サービスといった考え方は、我が国において従来の公衆衛生学ではその政策対象になかなか入ってこない分野であり、学術の観点からの政策学としての公衆衛生学の新たな発展を求めるエリアでもあります。
 どのように科学と政策を結び付け、政策のための科学を実現することができるのか。本来であれば、我が国の人文・社会科学、自然科学、全分野の科学者の知恵を結集し、国の内外に対して発信、提言することを期待されているアカデミーこそが、このような視点からの議論を牽引してほしいという思いでいっぱいであります。
 我が国の科学における活力が衰退しているという指摘もあります。実際、論文数とGDPとの関係には一定の相関が見られるという分析がありますが、文部科学省の研究機関によれば、自然科学の論文数で中国が米国を抜いて初めて世界一位になっている一方で、日本は四位、注目度の高い論文数では九位と、十年前より順位を落としています。
 我が国の科学の復権のためにも、経済成長のみならず、新型コロナウイルス感染症の脅威により大きく変容しつつある国民の経済社会生活や国際秩序を見据えて、課題を解決する政策学の分野を強化し、複雑化、多様化する課題の迅速な解決のために科学技術がどのように機能していくのかという視点から科学技術行政の在り方を検討すべきと考えていますが、総理の御見解をお聞かせください。
 新型コロナウイルスが頻繁に変異するウイルスであることから、この変異する過程を迅速に追跡する必要が認められます。英国で蔓延している変異した新型コロナウイルスは、実効再生産数が〇・四高く、感染力も七〇%も高いと言われており、我が国でも感染拡大を最も警戒すべきウイルスです。ゆえに、検体を採取し、迅速に収集し、ゲノム解析等可能な研究機関においてウイルスを分析し、しかも、ウイルスの変異が罹患者の症状をいかに変化させるかを調査する臨床研究と一体化した調査研究システムを構築する必要が認められます。
 そこで、ゲノム解析等が可能な大学等の研究機関の協力を得て、そこで得られたデータを国立感染症研究所に集約した上で、感染研や国立国際医療研究センターなどを母体として、こうした疫学的基礎調査と臨床研究を連携させる検体レジストリーや臨床レジストリーを有する危機管理体制を一体的に構築する必要が早急に求められると考えますが、いかがでしょうか。総理の御見解をお聞かせください。
 新型コロナウイルスの感染拡大は、我が国におけるデジタル化の遅れを象徴的に明らかにしました。新型コロナウイルスの収束の切り札となるワクチン接種を迅速に進めるためにも、このデジタル化の遅れを挽回しなければなりません。
 我が国では、医薬品の取り違え事故の防止、トレーサビリティーの確保、そして医薬品の流通の効率化のために、ワクチンなど医療用医薬品にはバーコードが表示されます。今回、ワクチンの出荷と入荷を管理する情報システムを構築する準備を進めていますが、このシステムでは、誰にワクチンを接種したかを特定化することはできません。
 ワクチンの接種は市町村の役割であり、今までは市町村が個別にワクチン台帳を作成してきました。他方、ワクチンの接種による副反応を診断した医療機関は、医薬品医療機器総合機構、PMDAに報告する義務を負いますが、これまではファクスで報告をしてきました。
 やはり、マイナンバーカードと健康保険証を一体化させる形で、国が一元的に管理することのできる健康情報システムの実現に向けて、ワクチンの流通から接種までを含めた戦略性のあるシステム設計が必要と思います。
 そこで、新型コロナウイルスのワクチンの接種管理システム、さらに、医療分野の全般でのデジタル化をどのように構築するのか、その戦略を総理にお伺いします。
 新型コロナウイルスのワクチン開発が始まった頃より高所得国と中低所得国との間のワクチンへのアクセスギャップの大きさが懸念され、各国における感染収束を確実なものとするためには、グローバルに感染を抑える必要が指摘されていました。
 しかし、米国のWHO脱退によりG7サミットのルールメーカーとしての機能が停止し、国際保健分野は早くも牽引役がいない国際社会、すなわちGゼロの時代に突入しました。しかも、ワクチンは、従来のように途上国だけでなく、高所得国においても高い需要を持つ戦略商品となってしまいました。
 そこで、ワクチン開発を推進する官民連携組織、CEPIや、ワクチンの配分と接種を担当する国際連携であるGaviアライアンスの関係者などとともに、スイス、オーストラリア、シンガポール、英国及び日本などのミドルパワーの国々が主導的役割を担い、一定の高所得国が資金提供しつつも中低所得国にもワクチンを配分するCOVAXファシリティーが創設されました。Gゼロの時代に必要とされるグローバル・ヘルス・ガバナンスを構築する上において、我が国のようなミドルパワーがその役割を拡大をする外交空間が広がり始めたと考えられます。
 今年は、我が国が一九六一年に国民皆保険制度を実現し、誰もが負担可能なコストで適切な医療にアクセスすることができるというユニバーサル・ヘルス・カバレージ、UHCを達成して六十年を迎える記念すべき年です。既に、我が国は、UHCを国連の持続可能な開発目標、SDGsの目標に組み込む際に重要な役割を担い、G7伊勢志摩サミットではホスト国として、第一にUHCの達成の促進、第二に感染症危機管理体制構築のための準備と予防体制の整備、第三に多剤耐性菌、AMR対策の充実を三本柱とする伊勢志摩フレームを提唱した実績を持っています。
 保健医療分野において、国際的にも健康長寿国を実現した比較優位性を国内に保持しており、国際保健分野は、我が国が国際社会の多くの諸国から信頼をされ、ルールメーカーとして一定の影響力を有する国となる上において重要な役割を担い得る外交分野であると考えています。
 そして、保健分野にとどまらず、自由で公正な貿易のルールを守る拠点となるTPP11といった通商貿易分野、さらに、防災や環境といった国際社会で比較優位性のある地球規模の課題の分野等において、積極的かつ戦略的に課題を解決する二国間及び多国間の外交体制を整えることは、我が国がより多くの国から支持を受け、外交基盤を強化し、ひいては我が国の総合的な安全保障を強化することにつながると考えます。総理の御所見をお聞かせください。
 また、この二国間及び多国間外交を組み合わせた外交体制を強化する上で、最も重要なツールがODAであり、保健外交の分野も全く例外ではありません。党としても、政府に対し保健ODA戦略の改革につき提言をしたところですが、外務省、経産省、財務省及び文科省等各省庁を横断する分野でもあることから、内閣官房における司令塔機能の強化、及び民間とも協力し民間資金を活用しつつ保健ODAの規模を五年で倍増することが、ルールメーカーとしての国内基盤強化にとり極めて重要と考えています。この点についての総理の御所見を伺います。
 米連邦議会にトランプ大統領の支持者が乱入し、一時占拠するという前代未聞の事態は、日米同盟の根幹である自由と民主主義という価値を揺るがす衝撃的な出来事でした。現地時間で昨日、バイデン新大統領が就任しましたが、大統領選後も米国内での分断は根深く、これからの国内政治に深刻な影響をもたらすことが予見されています。
 当面、米国の混乱は続くと思いますが、その中で、唯一の同盟国である米国の新政権との信頼関係をどのように構築するかは、我が国外交の最優先の課題と考えます。日米二国間の安全保障分野は当然のこととして、バイデン新政権と連携して機能停止したG7の再構築を進め、国際的なデジタル覇権をめぐる熾烈な競争分野、自由と民主主義と法の支配に基づく通商貿易分野、さらに、防災、環境、保健といった地球規模課題の分野において多層的に日米協力関係を構築し、同盟関係の基盤強化を進めなければなりません。
 このような状況で、日本に期待されている役割は、米国との強固な関係を生かして多国間協調の枠組みに米国を引き戻し、劣化し始めている国際機関の機能を回復させることです。
 一つの事例が、現在、日米間で続けられている大臣級による保健対話、日米グローバルヘルス協力対話です。官民を巻き込んでいるこの対話を通じて日米関係がより強固となれば、米国と欧州との間に隙間が生まれがちであったG7の機能回復を進め、WHO改革にも主導的役割を担うことが可能となります。
 バイデン新大統領は、トランプ前大統領と異なり、人権や保健医療、環境を重視し、また多国間交渉にも一定の配慮がなされる外交政策を行うものと予想されておりますが、このような状況の下、日米間の同盟関係を強化するには、これまで積み重ねてきた保健医療分野における日米関係の更なる強化が重要となります。
 そこで、総理は、G7の機能の拡大、強化、さらには保健医療分野をも含めてどのような分野でバイデン新大統領の下、米国との関係を深めていくつもりでしょうか、お尋ねいたします。
 四方を海に囲まれ、多くの資源を輸入に頼る我が国では、常に安全保障上の最優先課題である海洋の安全が脅かされるおそれがあり、尖閣諸島を含む南西諸島防衛はもとより、違法操業などから日本海方面の防衛も強化が必要となっています。そして、自分の国は自分で守るという堅固な意思を持ち、国内における安全保障の体制強化も進めなければなりません。
 しかし、我が国の管轄海域の根拠となる重要な役割を持つ国境離島では、外国人と思われる土地保有が進んでいます。厳しさを増す安全保障環境の中、日々緊張感を持って我が国を守る活動を行っている自衛隊の施設など、重要施設の近隣でも外国人の取得と思われる土地取引・保有が行われています。取得の目的も利用の実態もはっきりせず、万一の事態があれば日本の安全保障に大きな影響が出かねません。
 外国人による土地取得への規制については、貿易投資協定上の内外無差別や私権制限の観点からの議論もありますが、取得等に関わる情報も把握できない状況では不適切です。自衛隊基地周辺など日本の防衛にとって重要な土地の取得等に対しては、しっかりと対応できるような法律整備を毅然として進めるべきだと考えますが、総理に政府の方針をお伺いします。
 中国の経済力、軍事力が増し、国際社会における地政学上の力関係が変わりつつある現状において、覇権をめぐる米中新冷戦ともいうべき深刻な対立が深まろうとしています。これは、欧州を起点としたかつての冷戦と異なり、太平洋からインド洋を含むシーレーンにかけての海を挟んで自由主義陣営と権威主義陣営が向かい合う、海洋をめぐる冷戦を特徴としています。また、バイデン新政権においてもデジタル覇権をめぐる米中間の対立が深刻化することが予見されます。
 国際社会における平和と秩序を維持するためには、力による現状を変更する覇権の道を絶対に認めてはなりません。
 大正十三年、近代中国の建国の祖であり日本をよく知る指導者であった孫文が、アジアで台頭する我が国に対し、日本はこれからアジアにおける王道の道を歩むのか、あるいは覇道の道を歩むのかを問い、我、日本が王道の道を歩むことを望むという趣旨の歴史に残る演説を神戸において行いました。残念ながら、我が国は力による勢力の拡大の道を歩み、我が国の三百万余の国民のみならず、アジアにおける多くの人々の命を犠牲とする太平洋戦争に突入しました。今や時代状況は一変し、台頭する中国に対して、自由と民主主義、そして法の支配に基づく王道を歩むのか、軍事力の増強に励み、力で現状を変更する覇道の道を歩むのかを問わねばなりません。
 我が国は、中国との関係においていたずらに対立の構図をつくり上げることなく、力による現状変更を試みることは中国にとって得策でないことを知らしむる開かれたアジア太平洋戦略を基調としつつ、自由で公平な経済関係を広げながら、国境を越えて確実に増加する防災、環境、保健分野の諸課題、さらには、人口の高齢化や拡大する社会格差の問題など共通課題について解決するための日中間の協力関係を構築し、協調関係を拡大する外交の基本姿勢が求められていると考えます。
 そこで、日中間の対立を抑止し協調を拡大するために我が国はいかなる対中外交の基本姿勢を確立すべきか、総理の御見解をお聞かせください。
 今、日本は大変大きな時代の転機に直面しています。少子高齢化、人口減少がとめどなく続きます。十五歳から六十四歳までの生産年齢人口は、令和元年から十年間に五百万人減少し、令和十一年には七千万人を割り込みます。これは大きなマイナス経済成長圧力となります。
 これをはねのけて日本が持続可能な成長を実現するために、私が参議院自民党政策審議会長当時取りまとめた内政国家ビジョンにおいて、少子高齢化、人口減少の下にあっても社会のダイナミズムを維持発展させることを目指す活力持続型健康長寿社会を提唱しています。
 その実現のための大前提は少子化対策であることは当然です。その上で、次の三つの政策を進めることが不可欠です。
 第一に、我が国デジタル化の遅れを取り戻し、人工頭脳や情報システム主導のイノベーションを通じて、人でなくてもできることはロボットやあるいは情報システムによってサポートできる仕組みをつくり上げていくことです。
 第二に、健康寿命を延ばし、元気な高齢者を増やしていくことです。幸い我が国は男女共に世界一の健康寿命の水準を維持しています。しかし、高齢者人口の割合は上昇し、令和十八年には三人に一人となります。健康寿命の延伸により、働く意思があり就業機会があれば仕事を続け、生産労働人口の減少を補う制度設計が必要です。実際、現在の七十代前半の体力、運動能力は、十五年前の六十代後半の水準です。高齢者には一定の所得が確保されれば、若い人たちへの負担も確実に軽減されます。
 健康寿命の延伸を単に生存期間を延伸させることよりも優先した保健医療のパラダイムシフトを真剣に考えるべきです。高齢者の生きがいを感じさせる選択肢を増やすとともに、特に、生産性の高い生存期間を延伸する包括的な支援政策が必要と考えます。
 そこで、総理は、現在の少子高齢化、生産労働人口の減少をいかに克服し、活力持続型の健康長寿社会の実現を図っていくつもりでしょうか、お聞かせください。
 活力持続型の健康長寿社会の三番目の鍵は、多くの女性の皆さん方が更に活躍できる社会を実現することであります。
 女性活躍推進法や働き方改革関連法に基づく企業の取組、保育の受皿整備、両立支援など、これまでの官民の積極的な取組によりM字カーブは解消に向かい、二十五歳から四十四歳までの女性の就業率は八割近く、第一子出産前後の就業継続率は五割を超えています。
 しかし、二十五歳から二十九歳をピークに正規雇用労働者比率は下がり、育児や介護等を理由に、就業を希望しながら求職していない女性も令和元年で二百三十万人余り存在しています。また、東証一部上場企業役員に占める女性の割合も上昇しているものの、六%強にすぎず、国家公務員の本省課室長相当職も六%弱となっています。
 現在、女性に関する政策は主に内閣府と厚生労働省などにまたがっていますが、全ての女性が輝ける社会の構築に向け、前例にとらわれず、柔軟な発想で検討を進めてほしいという総理が出された力強い指示を成果に結び付けるには、省の垣根を越えて方向性をそろえた政策を打ち出すことが不可欠であります。
 このため、関係組織を整理統合し、関連施策を総合的に推進する子供女性省のような調整力のある組織を創設し、少子化対策と両立させつつ、女性の社会参加を支えるためのインセンティブをかつてないスピード感で具体化していくことこそが、我が国の未来に直結する政策ではないでしょうか。総理からこの点についての御所見をお尋ねして、私の質問を終わります。(拍手)
   〔内閣総理大臣菅義偉君登壇、拍手〕

#10
○内閣総理大臣(菅義偉君) 武見委員にお答えをいたします。
 感染症に対する危機管理体制についてお尋ねがありました。
 御指摘のとおり、パンデミック対策については、安全保障上の脅威として政府一丸となって取り組むべきと認識しており、平時より感染症の危機管理体制を構築していくことが重要であると考えています。
 今般の新型コロナに対しても、私を本部長として全閣僚をメンバーとする対策本部において、専門家からの助言をいただきながら、政府一丸となって対応に当たっているところであります。今後とも不断の見直しを進め、感染症を含めた危機管理能力を一層高めてまいります。
 緊急事態宣言の実効性や効果についてお尋ねがありました。
 今回、これまでの経験を踏まえ、専門家が対策の急所と指摘する飲食により、感染リスクに対して、飲食時間の短縮、不要不急の外出自粛などの強力な措置を講じてまいります。宣言の効果については今後検証されることになりますが、まずは効果を上げるため、国と自治体がしっかりと連携して対策を実施してまいります。
 さらに、こうした感染症対策をより実効的なものにするために、特措法と感染症法について速やかに改正案を国会に提出をしてまいります。
 特措法の改正についてお尋ねがありました。
 特措法については、個人の自由と権利に配慮して必要最小限の私権の制限とした上で、まさに権限強化、すなわち罰則と経済支援をセットにして見直しを行うものであります。これにより、感染防止の観点から、より実効的な措置を講じることが可能となるものと考えています。今後、与野党の御意見も伺いながら、速やかに国会に法案を提出してまいります。
 学際的な人材養成の必要性についてお尋ねがありました。
 御指摘のとおり、国民の命と暮らしを守るために感染症拡大を抑止しつつも、経済、社会、文化活動を維持発展させることは重要であり、こうした学際的な課題には、関係府省の専門家が連携をして取り組んでいくことが必要であると考えています。
 例えば、内閣官房では、IT、データ分析の専門家と疫学の専門家などが集まり、コロナ対策について学際的な研究を進めておりますが、今後、議員の問題意識を踏まえ、政府部内でも検討を深めてまいります。
 科学技術行政の在り方についてお尋ねがありました。
 御指摘の多様化する課題解決のため、政策学の強化に向けて、昨年改正をしました科学技術基本法において、法の対象に人文・社会科学分野の振興を追加しており、その知見を最大限に活用してまいります。あわせて、客観的な根拠に基づく政策の立案と評価を行う仕組みを推進します。
 危機管理体制の構築についてお尋ねがありました。
 ウイルスの特性等の研究結果を速やかに現場の治療に活用していくことなど、科学的エビデンスに基づいた危機管理体制を構築をしていく必要があると思っています。
 このため、御指摘のとおり、大学や医療機関からの臨床情報や検体を国立感染研究所や国立国際医療研究センターに集約をします。その上で、情報解析を進めるなど疫学的基礎調査と臨床研究を一本化させることも含め、体制整備を行っていくこととしております。
 ワクチンの接種管理システム、医療分野のデジタル化についてお尋ねがありました。
 ワクチンの接種に当たっては、関係者間で接種状況などの情報を共有し、調整しながら進めることが重要です。このため、きちんとしたシステムを構築をし、円滑に接種、流通させる体制を構築をしてまいります。あわせて、マイナンバーの活用も含め、効率的に接種記録を把握できる仕組みも検討してまいります。
 また、医療分野においても必要な情報システムの構築を通じてデジタル化を進め、事務の効率化や患者の利便性の向上などを図ってまいります。
 我が国の外交の体制についてお尋ねがありました。
 我が国は、多国間主義を重視し、国際社会が直面する課題に共に取り組む団結した世界の実現を目指し、ポストコロナの国際秩序づくりを主導してまいります。
 人間安全保障の考え方に基づく国際保健分野での取組、自由で公正な貿易体制の構築、世界の脱炭素化の前進など、首脳外交も活用し、積極外交を積極的に進めてまいります。
 保健分野のODAについてお尋ねがありました。
 我が国は、保健分野の国際協力を極めて重視をしており、今般の新型コロナ対策を始め世界の保健課題の解決に向けて取り組んできました。
 政府として、自民党からの提言も踏まえ、保健分野でODAの積極的活用を図り、関係省庁及び官民で緊密に連携し、保健分野の国際貢献の更なる強化に努めてまいります。
 バイデン新政権との関係強化についてお尋ねがありました。
 政府としては、新型コロナ対策を含む保健医療分野のみならず、自由で開かれたインド太平洋の実現、安全保障分野、通商関係を含む経済分野、気候変動問題など幅広い分野において、G7の場なども活用しつつ、バイデン新政権と緊密に連携をして、同盟関係をより一層強化をさせていく覚悟であります。
 重要な土地の取得等に関する法整備についてお尋ねがありました。
 安全保障上重要な土地などの所有や利用の実態について調査や規制を行うための新法をこの通常国会に提出をいたします。本件は長年にわたり議論されてきた課題であり、この政権で成果を上げられるよう、しっかりと取り組んでまいります。
 日中関係についてお尋ねがありました。
 中国との安定した関係は、両国のみならず、地域及び国際社会のために重要であり、双方が大国としての責務を果たしていくことが国際社会から期待をされております。両国には様々な懸案がありますが、ハイレベルの機会も活用しつつ、主張すべきは主張し、具体的な行動を強く求めていきます。その上で、共通の諸課題の解決に向けて連携をしてまいります。
 活力持続型の健康長寿社会の実現についてお尋ねがありました。
 急速な少子高齢化、生産年齢人口の減少の中で、国民一人一人がより長く健康に活躍することが重要であり、御指摘の健康長寿をいかに実現していくかが重要な課題となっております。
 病気になってからの対応だけではなく、予防や健康づくりへの支援も強化し、健康寿命の延伸を図ってまいります。
 また、働く意味の、意欲のある高齢者が年齢にかかわらず働くことができる環境整備も進め、健康長寿社会を実現してまいります。
 女性活躍についてお尋ねがありました。
 女性の活躍は、国民一人一人の幸福を高めるとともに、我が国経済社会の持続的発展を確保するために極めて重要です。このため、男女共同参画会議が中心となって、縦割りを排除し、関係施策とも連携しながら、政府全体で取組を進めてまいります。
 あらゆる分野における女性の参画拡大や仕事と子育てを両立できる環境の整備を進め、全ての女性が輝く令和の社会を実現をしております。(拍手)

#11
○議長(山東昭子君) 質疑はなおございますが、これを次会に譲りたいと存じます。御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

#12
○議長(山東昭子君) 御異議ないと認めます。
 本日はこれにて散会いたします。
   午前十一時三十分散会
ソース: 国立国会図書館
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