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2021/01/18 第204回国会 衆議院 第204回国会 衆議院 本会議 第1号 令和3年1月18日
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2021/01/18 第204回国会 衆議院

第204回国会 衆議院 本会議 第1号 令和3年1月18日

#1
令和三年一月十八日(月曜日)
    ―――――――――――――
 議事日程 第一号
  令和三年一月十八日
    正午開議
 第一 議席の指定
    …………………………………
  一 国務大臣の演説
    ―――――――――――――
○本日の会議に付した案件
 日程第一 議席の指定
 災害対策を樹立するため委員四十人よりなる災害対策特別委員会、政治倫理の確立及び公職選挙法改正に関する調査を行うため委員四十人よりなる政治倫理の確立及び公職選挙法改正に関する特別委員会、沖縄及び北方問題に関する対策樹立のため委員二十五人よりなる沖縄及び北方問題に関する特別委員会、北朝鮮による拉致等に関する諸問題を調査し、その対策樹立に資するため委員二十五人よりなる北朝鮮による拉致問題等に関する特別委員会、消費者の利益の擁護及び増進等に関する総合的な対策を樹立するため委員三十五人よりなる消費者問題に関する特別委員会、科学技術、イノベーション推進の総合的な対策を樹立するため委員三十五人よりなる科学技術・イノベーション推進特別委員会、東日本大震災からの復興に当たり、その総合的対策を樹立するため委員四十五人よりなる東日本大震災復興特別委員会及び原子力に関する諸問題を調査するため委員四十人よりなる原子力問題調査特別委員会を設置するの件(議長発議)
 地方創生に関する総合的な対策を樹立するため委員四十人よりなる地方創生に関する特別委員会を設置するの件(議長発議)
 菅内閣総理大臣の施政方針に関する演説
 茂木外務大臣の外交に関する演説
 麻生財務大臣の財政に関する演説
 西村国務大臣の経済に関する演説
    午後零時二分開議

#2
○議長(大島理森君) 諸君、第二百四回国会は本日召集されました。
 これより会議を開きます。
     ――――◇―――――
 日程第一 議席の指定

#3
○議長(大島理森君) 日程第一、議席の指定を行います。
 衆議院規則第十四条によりまして、諸君の議席は、議長において、ただいまの仮議席のとおりに指定いたします。
     ――――◇―――――
 特別委員会設置の件

#4
○議長(大島理森君) 特別委員会の設置につきお諮りいたします。
 災害対策を樹立するため委員四十人よりなる災害対策特別委員会
 政治倫理の確立及び公職選挙法改正に関する調査を行うため委員四十人よりなる政治倫理の確立及び公職選挙法改正に関する特別委員会
 沖縄及び北方問題に関する対策樹立のため委員二十五人よりなる沖縄及び北方問題に関する特別委員会
 北朝鮮による拉致等に関する諸問題を調査し、その対策樹立に資するため委員二十五人よりなる北朝鮮による拉致問題等に関する特別委員会
 消費者の利益の擁護及び増進等に関する総合的な対策を樹立するため委員三十五人よりなる消費者問題に関する特別委員会
 科学技術、イノベーション推進の総合的な対策を樹立するため委員三十五人よりなる科学技術・イノベーション推進特別委員会
 東日本大震災からの復興に当たり、その総合的対策を樹立するため委員四十五人よりなる東日本大震災復興特別委員会
及び
 原子力に関する諸問題を調査するため委員四十人よりなる原子力問題調査特別委員会
を設置いたしたいと存じます。これに賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕

#5
○議長(大島理森君) 起立多数。よって、そのとおり決まりました。
 次に、地方創生に関する総合的な対策を樹立するため委員四十人よりなる地方創生に関する特別委員会を設置いたしたいと存じます。これに賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕

#6
○議長(大島理森君) 起立多数。よって、そのとおり決まりました。
 ただいま議決されました九特別委員会の委員は追って指名いたします。
     ――――◇―――――

#7
○議長(大島理森君) この際、暫時休憩いたします。
    午後零時五分休憩
     ――――◇―――――
    午後二時二分開議

#8
○議長(大島理森君) 休憩前に引き続き会議を開きます。
     ――――◇―――――
 国務大臣の演説

#9
○議長(大島理森君) 内閣総理大臣から施政方針に関する演説、外務大臣から外交に関する演説、財務大臣から財政に関する演説、西村国務大臣から経済に関する演説のため、発言を求められております。順次これを許します。内閣総理大臣菅義偉君。
    〔内閣総理大臣菅義偉君登壇〕

#10
○内閣総理大臣(菅義偉君) 内閣総理大臣に就任をして、政権を担って四か月、直面する困難に立ち向かい、この国を前に進めるために、全力で駆け抜けてまいりました。
 そうした中で、私が一貫して追い求めてきたものは、国民の皆さんの安心そして希望です。
 国民の命と健康を守り抜く。まずは安心を取り戻すため、世界で猛威をふるい、我が国でも深刻な状況にある新型コロナウイルス感染症を一日も早く収束させます。
 目の前の患者を何とか救うため力を尽くす医療従事者の皆様、感染拡大の防止に奔走する保健所の皆様、細心の注意を払い高齢者と向き合う介護関係者の皆様。全ての関係者の方々に、厚く御礼を申し上げます。
 また、国民の皆様には、生活や仕事に御負担、御苦労をおかけする中で、多大な御協力をいただきました。しかし、今回、再び制約のある生活をお願いせざるを得ず、大変申し訳なく思います。
 今一度、国民の皆様の御協力をいただきながら、私自身もこの闘いの最前線に立ち、都道府県知事をはじめ自治体関係者とも連携しながら、難局を乗り越えていく決意であります。
 今回、緊急事態宣言を発出しました。これまで一年近くの闘いの経験に基づき、効果的な対象に徹底的な対策を行っております。
 私自身、連日、状況を聞き、専門家とも議論を重ねておりますが、東京都で六割を占める感染経路不明の多くが、飲食と見られています。
 特に、三十代以下の若者の感染者が増えています。多くの方は無症状や軽症ですが、若者の外出や飲食により、知らず知らずのうちに感染を広げている現実があります。
 飲食での感染を抑え込むことが極めて重要であり、飲食店については、協力金を百八十万円まで引き上げ、二十時までの営業時間の短縮を徹底します。
 それ以外にも、テレワークの七割実施、不要不急の外出・移動の自粛、特に二十時以降の不要不急の外出自粛、さらに、イベントの人数制限をあわせて実施いたします。
 こうした対策により、感染を抑え込み、減少傾向に転じさせます。専門家が緊急事態宣言のレベルとする、いわゆるステージ4を早急に脱却いたします。
 さらに、新型インフルエンザ特別措置法を改正し、罰則や支援に関して規定し、飲食店の時間短縮の実効性を高めます。議論を急ぎ、早期に国会に提出をいたします。
 その上で、感染対策の決め手となるワクチンについては、安全性、有効性の審査を行った上で、自治体と連携して万全な接種体制を確保し、できる限り二月下旬までには接種を開始できるよう準備いたします。私も、率先して接種します。
 大事なのは、必要な方に必要な医療をしっかりと提供していくことです。あらゆる方策を尽くし、医療体制の確保を強力に進めていきます。
 先月には、新型コロナ対応を行っている医療機関に派遣される医師や看護師への支援額を倍増いたしました。新たに新型コロナ患者用の病床を確保するため、一床当たり最大で千九百五十万円を助成します。年明け以降、東京都では、千を超える病床の確保について、最終的な調整を行っております。現場の負担となっている清掃業務などの委託経費を支援いたします。保健所の負担を減らすために、応援派遣を千二百名から三千名に増員します。
 知事の要請があれば、自衛隊の医療チームなどをいつでも投入できるように、万全の体制を整えています。
 何としても事業を継続していただき、暮らしと雇用を守っていく。それが、政治の責務です。
 所得が低いひとり親世帯に追加で五万円、更に二人目以降の子どもについて三万円ずつの支給を、昨年中に行いました。
 手元資金にお困りの方々への緊急小口資金は、昨年以来、五千億円が利用されています。返済を免除する特例も、三月末まで延長いたします。
 雇用調整助成金について、これまで対象とされていなかったパートや非常勤の方々に日額一万五千円を支給する特例を来月末まで延長します。緊急事態宣言に伴い、大企業にも特例を拡大します。
 官民の金融機関による無利子無担保融資に十分な資金を用意し、さらに、四千万円の限度額を六千万円に引き上げ、手続も簡素化いたします。返済にお困りの方には、公庫などが更に一定期間の返済猶予を行うなど、柔軟に対応し、民間金融機関に対しても同様の対応を要請いたします。
 前年と比べ、自殺者が五か月連続で増加し、とりわけ女性が顕著な傾向にある事態を重く受け止め、SNSを通じた相談窓口などにより、不安に寄り添う体制を強化します。
 過去最多となった児童虐待について、児童相談所の児童福祉司を五千名体制に強化し、学校、警察、弁護士と連携して、早期発見につなげます。
 困窮する学生の修学を支援し、新卒扱いの柔軟化を要請します。就職氷河期世代の就職も引き続きサポートしてまいります。
 三月十一日で、あの東日本大震災から十年となります。改めて、犠牲となられた多くの方々の御冥福をお祈りし、被災された全ての方々に心からお見舞いを申し上げます。
 心のケアなどのきめ細かな取組を継続するとともに、原発事故で大きな被害を受けた福島においては、創造的復興の中核拠点となる国際教育研究拠点を設立します。原災地域十二市町村に魅力ある働く場をつくり、移住の推進を支援します。
 福島の本格的な復興再生、そして東北復興の総仕上げに、全力を尽くしてまいります。
 震災の経験も教訓とし、さらに、ここ数年の相次ぐ水害やこの冬の大雪、災害の激甚化の中で、災害発生時には、万全な対応を速やかに行います。防災・減災、国土強靱化についてもしっかりと進めます。五年集中で、事業規模十五兆円を目途に対策を実施します。
 大雨予測の精緻化、遊水地や貯留施設の整備、ダムの事前放流、土地利用の見直しなど、ハードとソフトの対策により住民の命を守ります。
 暮らしの安全、安心を確保します。ストーカー規制法を改正し、違反行為をGPSによる位置情報の取得にも広げます。銃刀法を改正し、クロスボウの所持を禁止し、許可制とします。
 ネット通販トラブルの増加を踏まえ、デジタルプラットフォーム企業に対し、違法商品、危険商品の出品停止を求めます。SNSの誹謗中傷について、発信者情報の開示命令などの裁判手続を整備し、被害者の迅速な救済につなげます。
 国民の皆さんの希望を実現したい。そうした思いで、我が国の長年の課題に答えを出してまいります。
 バブル崩壊後、我が国が抱える問題について、長年にわたって次のように言われ続けてきました。日本企業のダイナミズムが失われた、デジタル化の流れに乗り遅れ、新たな成長の原動力となる産業が見当たらない。
 アベノミクスの三本の矢により、日本経済はバブル期以来の好調を取り戻しました。しかしながら、ポストコロナの時代においても、我が国経済が再び成長し、世界をリードしていくためには、多くの壁が立ちはだかっています。行政の縦割り、既得権益、そして悪しき前例主義を打ち破り、未来を切り拓いていく。困難な課題にも答えを出していくのが、私の内閣であります。
 地方で、家族を育み、老いても安心して暮らせるよう、地方の方々の所得を引き上げる施策を追求してまいります。そうした動きを国全体の活性化につなげ、我が国が持続的に発展していくため、成長志向の政策運営を続けます。
 高齢者をはじめ、誰もが安心できる社会保障制度をつくり、未来を担う子どもたちや若者のための政策を進めます。
 まずは、次の成長の原動力をつくり出します。それが、グリーンとデジタルです。
 二〇五〇年カーボンニュートラルを宣言しました。もはや環境対策は、経済の制約ではなく、社会経済を大きく変革し、投資を促し、生産性を向上させ、産業構造の大転換と力強い成長を生み出す、その鍵となるものです。まずは、政府が環境投資で大胆な一歩を踏み出します。
 過去に例のない二兆円の基金を創設し、過去最高水準の最大一〇%の税額控除を行います。次世代太陽光発電、低コストの蓄電池、カーボンリサイクルなど、野心的なイノベーションに挑戦する企業を腰を据えて支援することで、最先端技術の開発、実用化を加速させます。
 水素や洋上風力など再生可能エネルギーを思い切って拡充し、送電線を増強します。デジタル技術により、ダムの発電を効率的に行います。安全最優先で原子力政策を進め、安定的なエネルギー供給を確立します。二〇三五年までに新車販売で電動車一〇〇%を実現いたします。
 成長につながるカーボンプライシングにも取り組んでまいります。先行的な脱炭素地域を創出するなど、脱炭素に向けたあらゆる主体の取組の裾野を広げていきます。CO2吸収サイクルの早い森づくりを進めます。
 世界的な流れを力に、民間企業に眠る二百四十兆円の現預金、更には三千兆円とも言われる海外の環境投資を呼び込みます。そのための金融市場の枠組みもつくります。グリーン成長戦略を実現することで、二〇五〇年には年額百九十兆円の経済効果と大きな雇用創出が見込まれます。
 世界に先駆けて、脱炭素社会を実現してまいります。
 この秋、デジタル庁が始動します。
 デジタル庁の創設は、改革の象徴であり、組織の縦割りを排し、強力な権能と初年度は三千億円の予算を持った司令塔として、国全体のデジタル化を主導します。一兆円規模の緊急対策として改革に着手し、全国規模のクラウド移行に向け、今後五年間で自治体のシステムも統一、標準化を進め、業務の効率化と住民サービスの向上を徹底してまいります。
 マイナンバーカードの普及のため、マイナポイントの期限も半年間延長します。この三月には健康保険証との一体化をスタートし、四年後には運転免許証との一体化を開始します。
 行政機関が保有する法人などの登録データをシステム上の、いわゆるベースレジストリーとして整備し、デジタル社会の形成に不可欠なデータ利活用を進めてまいります。
 組織の要は人です。公務員の採用枠にデジタル職の創設を検討し、高度なスキルを持つ民間人材を迎え、自治体、民間とも行き来させ、官民のデジタル化をダイナミックに進めます。
 教育のデジタル化も一挙に進めます。小中学生に一人一台のIT端末を揃え、九千人のデジタル専門家がサポートします。子どもたちの希望や発達段階に応じたオンライン教育を早期に実行してまいります。
 あらゆる手続が役所に行かなくてもオンラインでできる、引っ越した場合の住所変更がワンストップでできる、そうした仕組みをつくります。
 高齢者や障害者、デジタルツールに不慣れな方々もしっかりサポートし、誰もがデジタル化の恩恵を最大限に享受できる社会をつくり上げてまいります。
 民間企業においても、社内ソフトウェアから生産、流通、販売に至るまで、企業全体で取り組むデジタル投資を、税制によって支援します。
 ポスト5G、6Gを巡る国際競争が過熱する中、官民を挙げて研究開発を進め、通信規格の国際ルールづくりを主導し、フロントランナーを目指します。
 さらに、身近な情報通信の利用環境を国民目線に立って変えていきます。
 携帯電話料金については、大手が相次いで従来の半額以下となる大容量プランを発表し、本格的な競争に向けて、大きな節目を迎えました。
 放送番組と同じ内容をインターネットでも同時に視聴できるよう、著作権法を改正します。
 NHKについては、業務の抜本的な効率化を進め、国民負担の軽減に向け放送法の改正をします。これにより、事業規模の一割に当たる七百億円を充て、月額で一割を超える思い切った受信料の引下げにつなげます。
 「はやぶさ2」のカプセルの帰還に、世界が湧き立ちました。高い技術力により世界初の偉業の数々を成し遂げた、歴史的な成果です。子どもから大人まで夢や希望を与えてくれた、津田先生をはじめJAXAの皆さんに、心から敬意を表します。
 科学技術立国日本にとって、二十年近くも続く研究力の低迷は、国の将来を左右する深刻な事態です。博士課程学生の支援を拡大し、未来を担う若手研究者を育成します。
 十兆円規模の大学ファンドにより、若手研究人材育成などの基盤整備を行い、世界トップレベルの成果を上げる自律した大学経営を促します。
 こうした取組により、今後五年間の目標として、政府の研究開発予算を三十兆円、官民の研究開発費の総額を百二十兆円とし、積極的にイノベーションを促してまいります。
 二〇二五年大阪・関西万博では、我が国が誇る先端技術の粋を集め、「いのち輝く未来社会のデザイン」を世界に示し、日本が大きな飛躍を遂げるきっかけといたします。
 我が国企業が、過去の成功体験にとらわれず、未開拓の分野に進出し、次の成長の担い手として中小企業、ベンチャー企業が育っていく。こうした環境をつくり出すことも、長年の課題でした。
 雇用の七割を支える中小企業を取り巻く状況は非常に厳しく、資金繰り支援を続けます。持続化補助金や手形払いの慣行の見直しを通じて、生産性の底上げを図り、賃金の上昇へとつなげます。さらに、中堅企業への成長、海外市場への挑戦を後押ししてまいります。
 最低賃金は、雇用にも配慮しながら継続的な引上げを図り、経済の好循環につなげてまいります。
 業種を超えた再就職や在籍型出向を支援し、デジタル教育訓練を強化し、新しい分野への移動を促します。
 コーポレートガバナンス改革を進め、我が国企業の価値を高めてまいります。我が国を代表する企業の役員の三分の一以上を独立社外取締役とし、女性、外国人、中途採用者の管理職への登用について目標の公表を求めることにします。
 国際金融センターをつくることも、長い間言われてきたことです。日本には、良好な治安と生活環境、千九百兆円の個人金融資産といった大きな潜在性があり、金融を突破口としてビジネスを行う場としても魅力的な国を目指します。
 税制について、外国人の国外財産を相続税の対象外とし、運用成果に応じた収入にかかる所得税は、主要先進国と比べて遜色のない水準である二〇%の税率を一律に適用します。海外の人材がビジネスを容易に開始できるよう、在留資格の特例も設けます。
 東京一極集中の是正、地方の活性化も長年叫ばれてきた課題です。
 東京圏と言われる一都三県の消費額は全国の三割に過ぎません。残りの七割の消費は地方なのです。地方の所得を引き上げ、その消費を活性化しなければ、日本全体が元気になりません。
 我が国の農産品はアジアを中心に諸外国で大変人気があり、我が国の農業には大きな可能性があります。昨年の農産品の輸出額は、新型コロナの影響にも関わらず、過去最高となった二〇一九年に迫る水準となっています。
 二〇二五年二兆円、二〇三〇年五兆円の目標を達成するため、世界に誇る牛肉やいちごをはじめ二十七の重点品目を選定し、国別に目標金額を定めて、産地を支援いたします。農業に対する資金供給の仕組みも変えていきます。
 さらに、主食用米から高収益作物への転換、森林バンク、養殖の推進などにより、農林水産業を地域をリードする成長産業とすべく、改革を進めます。美しく豊かな農山漁村を守ります。
 我が国には、内外の観光客を惹きつける、自然、気候、文化、食が揃っており、新型コロナを克服した上で、世界の観光大国を再び目指します。
 先を見据え、短期集中で、ホテル、旅館、街の再生を進めます。全国百程度の地域で、街中に残る廃屋を撤去し、魅力ある施設へとリニューアルします。
 皇室ゆかりの三の丸尚蔵館は、我が国が誇るべき二千を超える国宝・重要文化財級の美術品を所蔵しています。それらを、地方に積極的に貸し出し、文化観光の核とします。国立公園などにおける自然の中での宿泊体験や、城や寺社、古民家での滞在など、地域に眠る観光資源を磨き上げ、滞在型観光やワーケーションを推進してまいります。
 日本酒、焼酎などの文化資源について、ユネスコ無形文化遺産への登録を目指します。
 ウポポイが、昨年夏、開業しました。アイヌ文化の素晴らしさを体感できるよう、様々なイベントを充実させ、観光の起爆剤とします。
 沖縄では、名護東道路がこの夏に全面開通し、美ら海水族館や世界遺産の今帰仁城跡へのアクセスが大幅に改善をされます。
 新型コロナを機に、改めて地方への関心が高まっています。二十三年間、東京都へは人の転入が超過していましたが、昨年の夏以降は、五か月連続で流出が続いています。
 そうした機会をとらえ、地方にいても都会と同じ仕事、同じ生活ができる環境をつくり、都会から地方への大きな人の流れを生み出してまいります。
 来年度までに光ファイバーが離島を含めて整備され、全国的にテレワークの環境が整います。最大百万円の交付金、住宅購入には最大百万円分のポイント付与で、地方への移住を希望する方々を強力に後押しします。
 行政が求める押印のほとんどをなくし、手続をオンライン化します。民間の手続の見直しも進めます。テレワークに必要となるルールも改定し、多くの企業に活用されるよう、働きかけてまいります。
 オンライン診療・服薬指導について、初診の取扱いや対象疾患など、恒久化に向けて夏までに骨格を固め、実行に移してまいります。
 大企業で経験を積んだ方々を、政府のファンドを通じて地域の中堅・中小企業の経営人材として紹介する取組が始まりました。まずは銀行からスタートし、今後三年で対象業種を広げて一万名規模に拡大します。
 地域の経済の核となる地域金融機関の経営基盤を強化することとし、統合などの支援を日本銀行とも連携しつつ進めます。
 ふるさと納税は、今では年間約五千億円となり、活力ある地域づくりに大いに役立っています。企業版ふるさと納税も控除額を九割まで引き上げており、多くの企業に活用いただき、地方の活性化につなげていきたいと思います。
 希望と活力に満ちた日本を未来につなげていくためには、世界に冠たる我が国の社会保障制度を次の世代にしっかり引き継いでいかなければなりません。これが我々の世代の責任です。
 給付は高齢者中心、負担は現役世代中心という構造を見直し、未来を担う子どもからお年寄りまで全ての人が安心できる社会保障への改革を進めていきます。
 長年にわたり、我が国の最大の課題と言われてきたのが少子化の問題です。
 結婚や出産、子育てを希望する方々の声に丁寧に耳を傾け、一つひとつの望みを実現していきます。
 年間で五万七千人のお子さんが、不妊治療により生まれています。子どもが欲しいと願い治療を続ける皆さんに寄り添い、不妊治療の保険適用を、来年四月からスタートし、男性も対象にします。それまでの間は、現行の助成制度の所得制限を撤廃するとともに、二回目以降の助成額を倍にし、予算成立後、一月一日にさかのぼって実施します。
 不妊治療と仕事の両立に、後ろめたい思いをさせてはなりません。不妊治療休暇を導入する中小企業を支援し、社会的機運を高めます。
 不育症に悩む方には検査費用最大五万円の助成、若年者へのがん治療に伴う不妊への支援拡充など、きめ細やかに対応してまいります。
 長年の懸案である待機児童問題については、女性の就業率の上昇も見込んだ上で、四年かけて十四万人分の保育の受け皿を整備し、最終的な解消を図ってまいります。そのため、幼稚園やベビーシッターの活用など、地域の子育て資源をフル活用します。
 出産、育児の負担がこれまで女性に偏ってきた中で、男性の育児参加という当たり前のことを実現していきます。
 男性国家公務員には一か月以上の育休取得を求めています。全ての企業に対し、男性が育休取得しやすい職場環境を整備することを義務付けるとともに、希望に応じて一か月以上の休業を取得できるようにしていきます。
 全国の小学校について、現在の四十人学級を四十年ぶりに人数を引き下げ、三十五人学級へと改めます。現場で子どもの状況を把握し、一人ひとりにきめ細かい教育を実現します。
 女性の登用拡大や女性に対する暴力根絶など、基本計画で掲げられた目標の達成に向けて全力で取り組みます。女性と男性が互いに尊重し合い、全ての女性が輝く令和の社会をつくり上げてまいります。
 若者と高齢者で支え合い、若い世代の負担上昇を抑えることは、長年の課題であり、いよいよ待ったなしです。
 七十五歳以上の高齢者のうち、単身者の場合、年収二百万円以上の方々の窓口負担割合を二割とし、急激な負担増とならないための経過措置を設けます。これにより、現役世代の保険料負担が七百二十億円減ることになりました。
 薬価の改定を毎年行うことにより、医薬品の七割の品目を薬価引下げの対象とし、医療費で四千三百億円、国費で千億円、国民が負担の軽減を実感できるようにしました。
 四月から介護報酬、障害福祉サービスなどの報酬を引き上げるとともに、デジタル化や介護ロボットの導入を支援します。現場で働く皆さんの処遇改善や生産性向上を通じて、安全、安心のサービスを提供してまいります。
 重度障害者の方々が企業や自宅で働く場合の介助支援が始まりました。市町村への更なる活用を促し、必要な方が利用できるようにします。民間企業にも、障害のある方々への合理的配慮を求めます。障害や難病のある方々が個性を存分に発揮し、活躍できる社会をつくり上げてまいります。
 経済あっての財政との考え方の下、当面は感染症対策に全力を尽くし、経済再生に取り組むとともに、今後も改革を進めます。
 我が国は、多国間主義を重視し、国際社会が直面する課題に共に取り組む、団結した世界の実現を目指します。ポストコロナの国際秩序づくりに指導力を発揮していく決意です。
 COP26までに、意欲的な二〇三〇年目標を表明し、各国との連携を深めながら、世界の脱炭素化を前進させます。
 デジタル時代の信頼性のある自由なデータ流通のためのルールづくりを加速させるとともに、WTOの改革を推進します。
 RCEPの進展や日英包括的経済連携協定の発効は、自由で公正な経済秩序の構築に貢献しました。TPPについても、本年の議長国として、その着実な実施と拡大に向けた議論を主導してまいります。
 日米同盟は、我が国外交、安全保障の基軸であり、インド太平洋地域、さらには国際社会の自由、平和、繁栄の基盤であります。バイデン次期大統領と早い時期にお会いをし、日米の結束を更に強固にします。そして、新型コロナ、気候変動などの共通課題で緊密に協力をしてまいります。
 同時に、日米の抑止力を維持しつつ、沖縄の皆さんの心に寄り添い、基地負担軽減に引き続き取り組みます。普天間飛行場の一日も早い全面返還を目指し、辺野古沖への移設工事を進めます。
 世界の活力の中心であるインド太平洋地域では、法の支配に基づく自由で開かれた秩序の形成が極めて重要です。米国をはじめ、ASEAN、豪州、インド、欧州などとの協力を深化させつつ、より多くの国、地域と共に自由で開かれたインド太平洋の実現に取り組んでまいります。
 厳しさを増す安全保障環境の中で、我が国の領土、領海、領空、そして国民の命と平和な暮らしを守り抜くことは、最も重い使命です。ミサイルの脅威に対応するため、イージスシステム搭載艦を整備するとともに、抑止力の強化について、引き続き、政府内で検討を行います。
 経済安全保障の確保に、政府一丸となって取り組みます。安全保障上重要な防衛施設や国境離島を含め、国土の不適切な所有、利用を防ぐための新法を制定します。
 政権の最重要課題である拉致問題については、私自らが先頭に立ち、米国を含む関係国と緊密に連携しつつ、全力を尽くします。金正恩委員長と条件を付けずに直接向き合う決意に変わりはなく、日朝平壌宣言に基づき、拉致、核、ミサイルといった諸懸案を包括的に解決し、不幸な過去を清算して、国交正常化を目指します。
 安定した日中関係は、両国のみならず、地域、国際社会のためにも重要です。両国には様々な懸案が存在しますが、ハイレベルの機会も活用しつつ、主張すべきは主張し、具体的な行動を強く求めていきます。その上で、共通の諸課題の解決に向けて連携してまいります。
 北方領土問題を次世代に先送りせず、終止符を打たねばなりません。二〇一八年のシンガポールでの首脳会談のやり取りは引き継いでおり、これまでの両国間の諸合意を踏まえて交渉を進めます。平和条約締結を含む日露関係全体の発展を目指してまいります。
 ASEANは、戦略的なパートナーであり、かけがえのない友人です。就任後の最初の訪問先をベトナムとインドネシアとしたのも、そうした考えからです。ASEANとの間で、今後とも、自由で開かれたインド太平洋の実現に向けた協力を更に進めてまいります。
 韓国は重要な隣国です。現在、両国の関係は非常に厳しい状況にあります。健全な関係に戻すためにも、我が国の一貫した立場に基づき、韓国側に適切な対応を強く求めていきます。
 憲法は、国の礎であり、そのあるべき姿を最終的に決めるのは、主権者である国民の皆様です。国民から負託を受けた政治家がその責任に正面から向き合い、与野党の枠を超えて憲法審査会の場で議論を深め、国民的な議論につなげていくことを期待します。
 安定的な皇位の継承などに関する課題については、衆参両院の委員会で可決された附帯決議の趣旨を尊重し、対応してまいります。
 夏の東京オリンピック・パラリンピックは、人類が新型コロナウイルスに打ち勝った証として、また、東日本大震災からの復興を世界に発信する機会としたいと思います。感染対策を万全なものとし、世界中に希望と勇気をお届けできる大会を実現するとの決意の下、準備を進めてまいります。
 まずは、一日も早く感染を収束させ、皆さんが安心して暮らせる日常、そして、にぎわいのある街角を取り戻すために、全力を尽くします。
 未来への希望を切り拓くため、長年の課題について、この四か月間で答えを出してきました。皆さんに我が国の将来の絵姿を具体的に示しながら、スピード感を持って実現してまいります。
 一人ひとりが力を最大限発揮し、互いに支え、助け合える、安心と希望に満ちた社会を実現します。
 こうした社会を実現するためには、国民の信託を受け、国政を預かる立場にある政治家にとって、何よりも国民の皆さんの信頼が不可欠であります。先の国会における桜を見る会前夜の夕食会に関する私の答弁の中に事実と異なるものがあったことについて、大変申し訳なく、改めてお詫びを申し上げます。
 私は、四十七歳で初めて衆議院議員に当選をしたとき、かねてより御指導いただいていた当時の梶山静六内閣官房長官から二つのことを言われ、以来、それを私の信条としてきました。
 一つは、今後は、右肩上がりの高度経済成長時代と違って、少子高齢化と人口減少が進み、経済はデフレとなる。お前はそういう大変な時代に政治家になった。その中で国民に負担をお願いする政策も必要になる。その必要性を国民に説明し、理解してもらわなければならない。
 もう一つは、日本は、戦後の荒廃から国民の努力と政策でここまで経済発展を遂げてきた。しかし、資源の乏しい日本にとって、これからがまさに正念場となる。国民の食い扶持をつくっていくのがお前の仕事だ。
 これらの言葉を胸に、国民のために働く内閣として、全力を尽くしてまいります。
 御清聴ありがとうございました。(拍手)
    ―――――――――――――

#11
○議長(大島理森君) 外務大臣茂木敏充君。
    〔国務大臣茂木敏充君登壇〕

#12
○国務大臣(茂木敏充君) 第二百四回国会に当たり、外交政策の所信を申し述べます。
 国際社会は、今、三つの大きな変化、課題に直面しています。第一に、新型コロナの世界的拡大がもたらす危機、そして、人間の安全保障への挑戦という厳しい状況をいかに乗り越えるかです。第二に、保護主義や一方的な現状変更の試みなど、これまで国際社会の平和と繁栄を支えてきた普遍的価値や国際秩序に対する挑戦。そして第三に、グローバル化、デジタル化の進展、気候変動といった国際社会が直面する共通の課題や、宇宙、サイバーといった新領域、経済安全保障など新たな課題の顕在化です。
 このような時代を画する変化の中にあって、ポストコロナの世界を見据え、多国間主義を尊重し、安全保障面でも経済面でも、自由で公正な秩序、ルールの構築に向け、日本がより一層主導的な役割を果たします。これこそが日本外交の目指す確かな方向であると考えます。
 まず、新型コロナへの対応について申し上げます。
 これまで外務省としても、新型コロナの世界的な拡大の状況を分析しつつ、様々な対策を講じてきました。感染症危険情報を始めとする関連情報のきめ細やかな発出や水際対策の強化、さらには、中国・武漢からの帰国オペレーションに始まり、海外からの出国、帰国が困難となっていた在外邦人への支援に全力で取り組んできました。これまでに、百一箇国、一万二千人を超える邦人の出国、帰国を実現しています。今後も在外邦人の安全確保及び支援に万全を期します。
 新型コロナの世界的な感染拡大、人間の安全保障の危機に対応していくためには、国際的な連携協力が不可欠です。新型コロナを一日も早く収束させ、次なる危機にも備えるため、国際保健課題を担うWHOの改革や機能強化、また、ASEAN感染症対策センターへの支援を始め、途上国の保健医療システムの強化に積極的に貢献していきます。また、誰の健康も取り残さないとの考えの下、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジを推進するため、途上国を含めたワクチンへの公平なアクセスの確保を全面的に支援します。
 以上を申し上げた上で、今後、特に七つの分野に焦点を当て、包容力と力強さを兼ね備えた外交を更に前に推し進めていきます。
 第一に、日米同盟の強化です。日米同盟は、日本外交、安全保障の基軸であり、今やインド太平洋地域の平和と繁栄の礎でもあります。地域の安全保障環境が厳しさを増す中、明後日発足するバイデン新政権との間で、抑止力、対処力の強化も含め、日米同盟をより一層強化していきます。その中で、普天間飛行場の一日も早い辺野古移設を始め、地元の負担軽減に全力を尽くします。さらに、新型コロナ対策、気候変動問題といった国際社会の課題についても、バイデン新政権と緊密に連携していきます。
 第二に、自由で開かれたインド太平洋の実現です。我が国が推進する自由で開かれたインド太平洋は、法の支配に基づく自由で開かれた秩序を構築することにより、地域全体、ひいては世界の平和と繁栄を確保していくというビジョンであり、今、多くの国々がこの考えを共有しています。そして、ポストコロナに向けて、このビジョンの意義、重要性はますます高まっています。二国間や日米豪印を含む様々な多国間対話の機会を捉え、考え方を共有する米国、豪州、インド、ASEAN、更には欧州、中東、アフリカの国々とも連携協力を進めていきます。
 第三に、近隣諸国との外交に、明確な基本方針の下、積極的に取り組みます。
 まず、中国への対応です。中国との安定した関係は、日中両国のみならず、地域及び国際社会の平和と繁栄のために極めて重要です。日中は世界第二位、第三位の経済大国として、地域及び国際社会の諸課題に取り組んでいく責務を共有しており、両国がその責任をしっかり果たしていくことが、国際社会の期待に応えることとなります。同時に、尖閣諸島周辺海域を含む東シナ海における一方的な現状変更の試みは、断じて認められません。今後とも日本の領土、領海、領空を断固として守り抜くとの決意の下、冷静に、かつ、毅然と対応していきます。南シナ海をめぐる問題についても、緊張を高めるいかなる行為にも強く反対し、力や威圧によらず、国際法に基づき問題を平和的に解決することが重要であると改めて強調していきます。中国との間には様々な懸案が存在していますが、引き続き首脳会談や外相会談等のハイレベルの機会を活用し、主張すべきはしっかりと主張し、懸案を一つ一つ解決し、また中国側の責任ある行動を強く求めていきます。
 次に、韓国。韓国は重要な隣国であり、北朝鮮への対応を始め、地域の安定には日韓、日米韓の連携が不可欠です。しかしながら、最近の日韓関係は、旧朝鮮半島出身労働者問題や慰安婦問題などにより更に厳しい状況に陥っています。特に、今般の元慰安婦等による対日訴訟判決については、国際法上も、二国間関係上も、到底考えられない、異常な事態が発生したと極めて遺憾にとらえています。私から康京和韓国外交部長官に電話をし、強く抗議するとともに、韓国が国家として国際法違反を是正するための措置を早急に講じることを強く求めました。政府として、両国間の問題に関する日本の一貫した立場に基づき、今後とも韓国側に適切な対応を強く求めていきます。また、竹島は、歴史的事実に照らしても、かつ、国際法上も日本固有の領土であり、この基本的な立場に基づき、冷静に、かつ、毅然と対応していきます。
 ロシアとは、平和条約締結問題を含む政治、経済、文化等、幅広い分野で日露関係全体を発展させていく考えです。最大の懸案である北方領土問題の解決のために、首脳間のみならず外相レベルでも緊密に対話を重ねることが必要です。二〇一八年のシンガポールでの首脳間のやり取りをしっかりと引き継いでおり、領土問題を解決して平和条約を締結するとの基本方針の下、交渉責任者として粘り強く交渉に取り組んでいきます。また、北方四島における共同経済活動の更なる具体化に向けた取組や元島民の方々のための人道的措置も着実に進展させていきます。
 第四に、北朝鮮との間では、日朝平壌宣言に基づき、拉致、核、ミサイルといった諸懸案を包括的に解決し、不幸な過去を清算して、国交正常化を目指すという基本方針に全く変わりはありません。今後とも、日米、日米韓で緊密に連携し、中国、ロシアを含む国際社会とも協力しながら、関連する国連安保理決議の完全な履行の確保と朝鮮半島の非核化を目指します。また、政権の最重要課題である拉致問題の早期解決に全力で取り組みます。
 第五に、中東情勢への対応です。中東地域においては、高い緊張状態が継続し、また、イスラエルと一部のアラブ諸国が国交を正常化するなど、情勢の変動が見られます。世界各国が様々な関係を持つ、この地域の平和と安定は、我が国を含む国際社会の平和と繁栄に不可欠です。我が国は原油輸入の約九割をこの地域に依存しており、中東地域の海域において、航行の安全を確保することは極めて重要です。引き続き、中東地域の緊張緩和と情勢の安定化のために、多方面に信頼関係を有する日本の立場も活かし、粘り強い外交努力を通じて貢献していきます。
 第六として、新たなルール作りに向けた国際的取組を主導します。
 世界で保護主義や内向き志向が強まる中、日本は、TPP11以来、日・EU・EPA、日米貿易協定、日英EPA、RCEPなど、自由貿易の旗振り役としてリーダーシップを発揮してきました。引き続き、日本が推進してきた自由で公正な経済圏の拡大や、ルールに基づく多角的貿易体制の維持強化に取り組みます。また、本年開催が予定される第十二回WTO閣僚会議での具体的成果も含め、WTO改革を主導します。
 ポストコロナで重要性が増すデジタル分野においては、G20大阪サミットで議長国として立ち上げた大阪トラックを国際的に推進し、データ流通の共通ルール作りを主導するとともに、国連、WTO、OECD等の場においても、国際的なルール作りの中心的な役割を果たします。また、質の高いインフラ投資に関するG20原則や大阪ブルー・オーシャン・ビジョンなど、日本がG20サミットで打ち出した原則、ビジョンの普及、具体化に向けて、引き続き国際的な指導力を発揮します。
 以上に加え、日本企業の海外展開支援を始め、官民連携の強化に一層取り組みます。また、東日本大震災から十年を迎える本年、海外における風評対策と日本産食品に対する輸入規制措置の撤廃に向けた働きかけも一層強化します。
 同時に、日本の政策、取組、立場に対する理解と支持を拡げるため、パブリックディプロマシーを一層力強く展開するとともに、先般訪問した中南米を始めとする世界各地の日系人社会との連携にも、これまで以上に取り組んでいきます。
 第七に、地球規模課題への対応です。
 人間の安全保障の理念に立脚し、積極的かつ戦略的なODAの活用を通じ、SDGsの達成を始めとする地球規模課題への取組を加速します。特に、現在、気候変動問題への取組は最も重要な課題です。二〇五〇年までに温室効果ガスの排出を実質ゼロとする、カーボンニュートラルの実現に向け、パリ協定が目指す脱炭素社会を実現するため、本年のCOP26を含め、各国と連携しつつ、国際社会の取組をリードしていきます。また、海洋プラスチックごみ、人権、難民・避難民、女性の参画、防災など、SDGs達成に向けた諸課題にも積極的に取り組みます。
 来年、二〇二二年にはアフリカで二回目の開催となる第八回アフリカ開発会議、TICAD8のチュニジアでの開催が予定されています。新型コロナの感染拡大でその重要性が更に高まっている保健分野を含む開発課題に対し、人材育成を始め、アフリカ自身が主導する発展を引き続き力強く後押しします。
 新型コロナの世界的な感染拡大により、今まで以上に国際協調が求められる中、日本はこれまでも国連を始めとする多国間の枠組みを重視してきました。この点、日本の常任理事国入りを含む安保理改革は待ったなしの課題であり、具体的交渉を開始すべく取り組むとともに、国際社会の平和と安定に一層貢献するため、来年、二〇二二年の安保理非常任理事国選挙での当選を目指します。また、国連PKOや三月に日本で開催をされる第十四回国連犯罪防止刑事司法会議、通称京都コングレス等を通じて、幅広い国際課題に積極的に貢献していきます。こうした多国間の枠組みを通じた貢献を一層進展すべく、より多くの有能な日本人が国際機関で活躍する機会を増やす取組を強化していきます。
 さらに、八月に開催が見込まれる核兵器不拡散条約、NPT運用検討会議が意義ある成果を収められるよう、国際的な議論に積極的に貢献していきます。
 厳しい状況を乗り越え、今年の夏は、特別な夏にしたいと思います。人類がウイルスに打ち勝った証として、安全、安心で感動を呼ぶ東京オリンピック・パラリンピック競技大会を開催できるよう、外務省としても政府全体の取組に貢献してまいります。また、今年は、第九回太平洋・島サミットや第十三回日・メコン首脳会議を始めとする国際会議も日本で開催予定であり、日本と各国との協力関係を新たな高みに引き上げていきます。
 ここまで七つの分野について政策方針を申し上げてきましたが、これらの政策の推進、包容力と力強さを兼ね備えた外交の機動的な展開のために、在外公館の数と質両面の強化を含め、外交実施体制の強化に取り組みます。
 二〇二一年、米国でバイデン新政権がスタートする中で、日米同盟を一層強化するとともに、今や世界に拡がりつつある自由で開かれたインド太平洋を一層推進していきます。そして、我が国としてポストコロナの新たな秩序・ルール作りに向けた国際的な取組で主導力を発揮する中で、国際社会における存在感、プレゼンスを更に高める一年とすべく、責任感と使命感を持って全力で取り組む決意であります。
 議員各位、そして国民の皆様の御理解と御協力を心からお願い申し上げます。(拍手)
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#13
○議長(大島理森君) 財務大臣麻生太郎君。
    〔国務大臣麻生太郎君登壇〕

#14
○国務大臣(麻生太郎君) 令和二年度第三次補正予算及び令和三年度予算の御審議に当たり、財政政策の基本的な考え方について所信を申し述べますとともに、予算の大要を御説明させていただきます。
 日本経済につきましては、新型コロナウイルス感染症の影響により、依然として厳しい状況にあります。令和二年度第一次補正予算及び第二次補正予算の政策効果等もあり、持ち直しの動きがみられますが、新型コロナウイルス感染症が内外経済を下振れさせるリスクは十分に注意する必要があります。
 このような状況の下、昨年十二月八日に、国民の生命と暮らしを守る安心と希望のための総合経済対策を閣議決定いたしました。総合経済対策を通じて、雇用と事業を支えながら新型コロナウイルス感染症の拡大を防止するとともに、ポストコロナに向けた経済構造の転換、好循環の実現を図り、防災・減災、国土強靱化等の推進など安全、安心の確保を進めてまいります。
 先般、新型コロナウイルス感染症に関する緊急事態宣言が発出されました。今後も感染状況や経済、国民生活への影響を注意深く見極め、引き続き、新型コロナウイルス感染症対策予備費を含めた累次の補正予算、令和二年度第三次補正予算及び令和三年度予算の着実な執行により、適切に対応してまいりたいと考えております。
 日本の財政は、少子高齢化に伴う構造的な課題にも直面をいたしております。経済財政運営と改革の基本方針二〇二〇等を踏まえ、二〇二五年度のプライマリーバランスの黒字化目標等の達成に向けて、引き続き、これまでの歳出改革の取組を継続し、経済再生と財政健全化の両立を図ってまいりたいと考えております。
 次に、総合経済対策の実行等のために今国会に提出をいたしました令和二年度第三次補正予算の大要について申し述べます。
 一般会計につきましては、歳出面において、総合経済対策に基づき、新型コロナウイルス感染症の拡大防止策に係る経費に約四兆三千六百億円、ポストコロナに向けた経済構造の転換、好循環の実現に係る経費に約十一兆六千八百億円、防災・減災、国土強靱化の推進など安全、安心の確保に係る経費に約三兆一千四百億円の合計十九兆一千八百億円を計上いたしております。
 このほか、国税の減少に伴う地方交付税交付金原資の減額の補填等を行うとともに、既定経費の減額を行うことといたしております。
 歳入面におきましては、租税等の収入について、最近までの収入実績や企業収益の動向等を勘案して約八兆三千九百億円の減収を見込んでおります。また、税外収入について、約七千三百億円の増収を見込むほか、前年度剰余金約六千九百億円を計上することといたしております。
 以上によってなお不足する歳入について、公債を約二十二兆四千億円発行することとしております。
 なお、剰余金の処理につきましては、別途、所要の法律案を提出し、御審議をお願いすることといたしております。
 この結果、令和二年度一般会計第三次補正後予算の総額は、一般会計第二次補正後予算に対して歳入歳出ともに約十五兆四千三百億円増加し、約百七十五兆六千九百億円となります。
 また、特別会計予算につきましても、所要の補正を行っております。
 財政投融資計画につきましては、総合経済対策を踏まえ、現下の低金利状況を活かして、生産性向上や防災・減災、国土強靱化を加速するとともに、ポストコロナ時代の社会経済構造変化に対応した民間投資を促進するため、約一兆四千三百億円を追加いたしております。
 続いて、令和三年度予算及び税制改正の大要を御説明させていただきます。
 令和三年度予算は、令和二年度第三次補正予算と合わせて、新型コロナウイルス感染症の影響を受けている国民の命と生活を守るため、感染拡大防止に万全を期すとともに、将来を切り拓くために、中長期的な課題を見据えて着実に対応を進めていく予算といたしております。
 具体的には、感染症危機管理体制や保健所体制の整備等によって感染拡大防止に万全を期すとともに、予期せぬ状況変化への備えとして、五兆円の新型コロナウイルス感染症対策予備費を措置することとしております。また、デジタル社会、グリーン社会の実現や、全世代型社会保障の構築など、中長期的な課題にもしっかり対応するものといたしております。
 同時に、歳出全般にわたり見直しを行い、一般歳出等について、新経済・財政再生計画の目安を達成するなど、歳出改革の取組を継続いたしております。
 一般歳出につきましては約六十六兆九千億円であり、これに地方交付税交付金等約十五兆九千五百億円及び国債費約二十三兆七千六百億円を加えた一般会計総額は、約百六兆六千百億円となっております。
 一方、歳入につきましては、租税等の収入は約五十七兆四千五百億円、その他収入は約五兆五千六百億円を見込んでおります。また、公債金は約四十三兆六千億円となっております。
 なお、特例公債の発行につきましては、別途、所要の法律案を提出し、御審議をお願いすることといたしております。
 次に、主要な経費について申し述べます。
 社会保障関係費につきましては、職員の処遇改善にも配慮した介護報酬改定、障害福祉サービス等報酬改定の実施に必要な経費を確保しつつ、毎年薬価改定の実現等、様々な歳出抑制努力を積み重ねた結果、実質的な伸びを高齢化による増加分におさめるという方針を達成いたしております。
 文教及び科学振興費につきましては、小学校三十五人以下学級の実施に向けて必要な教職員定数の措置及び合理化等を図るほか、大学改革、安全、安心な学校の施設整備等を推進するとともに、科学技術基盤を充実し、イノベーションを促進することといたしております。
 地方財政につきましては、国税及び地方税の税収の落ち込みに対し、地方の一般財源総額を適切に確保し、地方に最大限配慮することといたしております。
 防衛関係費につきましては、安全保障環境の変化に対応するため、中期防衛力整備計画に基づき、調達の効率化を徹底しつつ、宇宙やサイバーといった新領域を含め防衛力を着実に強化することといたしております。
 公共事業関係費につきましては、ハード、ソフトが一体となった防災・減災対策と維持更新コストの増加抑制の観点を踏まえつつ、国土強靱化の取組への重点化を図るほか、生産性向上のためインフラ整備等を推進することといたしております。
 経済協力費につきましては、新型コロナウイルス感染症の国際的な収束に向け、保健分野での途上国支援を強化しつつ、ODAは予算、事業量ともに必要な額を確保することといたしております。
 中小企業対策費につきましては、生産性向上を促進するための設備投資や、事業再生、事業承継に対する支援を充実するほか、資金繰り対策にも万全を期すことといたしております。
 エネルギー対策費につきましては、再生可能エネルギーの主力電源化やカーボンリサイクルの推進など、イノベーションによる脱炭素化を推進するほか、災害時に強いエネルギー供給網の整備に取り組むことといたしております。
 農林水産関係予算につきましては、農林水産物・食品の輸出拡大、農業経営の生産性向上を進めるほか、グリーン社会実現に向けた森林資源管理や、改正漁業法を踏まえた適切な水産資源管理に取り組むことといたしております。
 東日本大震災からの復興につきましては、第二期復興・創生期間の初年度において復興のステージに応じたきめ細やかな取組を着実に実施するため、令和三年度東日本大震災復興特別会計の総額を約九千三百億円といたしております。
 令和三年度財政投融資計画につきましては、新型コロナウイルス感染症の影響を受けた企業、事業者及び地方公共団体への強力な支援、イノベーションの大胆な加速と事業再生、構造転換、低金利を利用した生産性向上や防災・減災、国土強靱化等につながるインフラ整備の加速のため、総額約四十兆九千百億円といたしております。
 国債管理政策につきましては、借換債を含みます国債発行総額が約二百三十六兆円と、過去に類を見ない規模になる中で、引き続き市場との緊密な対話に基づき安定的な国債発行に努めてまいります。
 令和三年度税制改正につきましては、ポストコロナに向けた経済構造の転換、好循環の実現を図るための企業のデジタルトランスフォーメーション及びカーボンニュートラルに向けた投資を促進する措置を創設いたすとともに、こうした投資等を行う企業に対する繰越欠損金の控除上限の特例を設けることといたしております。また、中小企業の経営資源の集約化による事業再構築等を促す措置を創設することといたしております。さらに、家計の暮らしと民需を下支えするため、住宅ローン控除の特例の延長等も行うことといたしております。
 このほか、日本の金融資本市場を国際金融センターの一つとして発展させ、海外から金融事業者、高度人材を呼び込むことは、重要な課題と存じます。政府一体となってこの課題に取り組み、所要の税制上の措置を講ずることといたしております。
 以上、財政政策の基本的な考え方と、令和二年度第三次補正予算及び令和三年度予算の大要について御説明させていただきました。
 次の世代に未来をつないでいくためには、今回の危機を乗り越えるとともに、構造的な課題に着実に取り組むことで、経済再生と財政健全化の両立を進めていく必要があります。そのため、これらの予算及び関連法案の一刻も早い成立が必要であります。
 何とぞ、御審議の上、速やかに御賛同いただくとともに、財政政策につきまして、国民の皆様及び議員各位の御理解と御協力を切にお願い申し上げます。(拍手)
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#15
○議長(大島理森君) 国務大臣西村康稔君。
    〔国務大臣西村康稔君登壇〕

#16
○国務大臣(西村康稔君) 経済財政政策担当大臣として、我が国経済の現状と課題、政策運営の基本的考え方について所信を申し述べます。
 二〇二〇年の日本経済は、新型コロナウイルス感染症の影響により、大変厳しい状況となりました。四、五月には、緊急事態宣言の下、経済を広く人為的に止めたことで戦後最大の落ち込みを経験しました。その後は、各種政策の効果や海外経済の改善もあり、持ち直しの動きが続いていますが、経済は依然としてコロナ前の水準を下回っており、回復は道半ばです。
 特に、最近の感染拡大による経済の下振れリスクに十分な注意が必要です。
 政府は、今月、十一都府県を対象とする緊急事態宣言を発出したところですが、今回の緊急事態宣言においては、これまでの経験、知見や専門家の分析を踏まえ、感染リスクの高い場面に効果的な対策を徹底します。あわせて、昨年春の経験も踏まえ、いわゆるエッセンシャルワーカーの方々には配慮しつつ、テレワークにより出勤者数の七割削減、不要不急の外出自粛など、国民の皆様に御協力をお願いして、何としても感染拡大を抑えることを最優先に対応してまいります。
 この難局を国民一体となって乗り越えるため、これらの措置によって厳しい影響を受ける方々には、協力金の拡充など予備費の活用も含めた支援策を講じてまいります。また、対策の実効性を高めるため、新型インフルエンザ等対策特別措置法など関連法改正について、幅広い関係者の意見を聴きながら早期に国会に提出します。
 引き続き、国民の皆様の御理解、共感をいただけるよう適切な情報発信をしながら、感染対策に全力で取り組みます。
 政府は、昨年十二月、決してデフレには戻さないとの強い決意で、財政支出四十・〇兆円程度、事業規模七十三・六兆円程度の、国民の命と暮らしを守る安心と希望のための総合経済対策を閣議決定しました。
 医療提供体制の更なる強化やワクチン接種体制の整備など、新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止に全力を挙げるとともに、感染症の厳しい影響に対し、雇用と生活をしっかり守ること、同時に、成長分野への民間投資を呼び込みながら、民需主導の成長軌道の実現につなげることという二つの視点の下、予算、規制、税制といったあらゆる政策手段を総動員し、防災・減災、国土強靱化の推進も盛り込んだ総合的な対策としています。本対策の裏付けとなる令和二年度第三次補正予算を令和三年度当初予算と一体的に、十五カ月予算として切れ目ない経済財政運営を行ってまいります。
 これらにより、緊急事態宣言による厳しい状況を乗り越え、来年度の経済成長率は、実質四・〇%、名目四・四%程度、GDPは来年度中にはコロナ前の水準を回復することを見込んでおります。その実現に向けて、デフレ脱却、経済再生に全力で取り組んでまいります。
 また、経済再生なくして財政健全化なしとの基本方針の下、民需主導の成長軌道に戻すことに万全を期すとともに、新経済・財政再生計画改革工程表の着実な実行やデータに基づく政策立案により政策効果の高い歳出への転換を徹底し、財政健全化につなげてまいります。
 今回のコロナ危機は大変厳しい試練ではありますが、その一方で、これまで困難と思われてきた課題への対応も、やればできるということがわかりました。
 就業者の三割以上、東京二十三区では六割近くがテレワークを経験し、地方移住への関心も高まっています。内閣府の意識調査では、今では東京圏在住の三割が地方移住に関心を持ち、二十代の若者に限定すれば、その割合は四割に上るとの結果となっています。これは長年の課題であった東京一極集中是正に向けたチャンスでもあり、二地域居住やスマートシティーの実現、ワーケーションを始めとする新たな働き方など、未来に向けた芽が出始めています。
 こうした動きを後戻りさせず、新たな日常を定着させ、更に拡大してまいります。このことが、感染防止と経済の生産性向上を両立させつつ、ウィズコロナ、ポストコロナ時代の新しい成長につながると考えます。
 そのためには、まず、デジタル化の推進です。デジタルガバメントの確立に向けた取組を抜本的に加速し、あわせて、5Gのその後も見据えた通信網の高度化、交通、物流分野等におけるデジタル化など、デジタルニューディールを強力に推進し、デジタル化を通じた民間企業の経営革新を促してまいります。
 グリーン社会の実現に向けた取組もカギとなります。二〇五〇年カーボンニュートラルの実現に向け、成長が期待される十四の産業において、高い目標を設定し、あらゆる政策を総動員する戦略として、昨年末にグリーン成長戦略が策定されました。更なる深掘りを進め、今年の成長戦略に反映し、民間の大胆な投資やイノベーションに向けた取組をグリーンニューディールで全力で後押ししてまいります。
 また、日本企業の組織の硬直性を打破することが急務です。
 定期的にシリコンバレーを訪問してきていますが、あるベンチャー企業からは、日本企業はたくさん視察に来るが、いつも五十歳前後の男性ばかり。スーツ姿にネクタイだけ外して、毎回同じような質問ばかりして帰っていく。そして、その後何の連絡もない。なぜ、日本企業には外国人、女性、若者がいないのか。このように、日本企業の多様性の低さについて、目が覚めるような指摘を受けました。
 今こそ、多様な人材の登用を促し、多様な発想で未来を切り拓くときです。コーポレートガバナンス改革を推し進め、外国人や若者、女性の活躍の機会を増やすことにより、企業の経営革新につなげ、GAFAのような世界を牽引する企業が日本からも創出されるような事業環境を作ってまいります。大企業からベンチャー企業まで、産学官オープンイノベーションの推進に取り組みます。また、中堅・中小企業に対しては、新たな分野への展開、業態転換等を支援するための最大一億円の事業再構築補助金を創設し、前向きな取組を後押ししてまいります。
 そして、何より重要なのは人への投資であります。一人ひとりの人材能力を引き出し、新たな時代に適応したイノベーションを生む人材の育成に取り組みます。子供たちには、少人数学級とICT活用を両輪とした個別最適な学びの実現、社会人には、キャリアアップ支援やリカレント教育の強化、テレワークや副業、兼業、フリーランス等の多様な働き方の環境整備を進め、多様な人材の能力、発想が存分に発揮されるよう、人への投資、正にヒューマンニューディールを進めてまいります。
 成長戦略会議で取りまとめた実行計画において、ポストコロナ時代を見据えた主要改革の基本的方向性を具体化しました。今国会において、産業競争力強化法の改正など所要の法案を提出するとともに、最終取りまとめに向けて、成長戦略の検討を更に進めてまいります。
 イノベーションの創出や地方創生のためには、海外から高度な人材、技術、豊富な資金を呼び込むことが重要です。対日直接投資の一層の促進に向け、法人設立手続きのオンライン化、英語化に加え、高度人材の受入れや新しい時代に向けたデジタル投資や企業再編を促進すべく、税制改革を含めた事業環境の整備を進めてまいります。本年春までに、次期達成目標設定を含めた中長期戦略を取りまとめてまいります。
 また、世界で自国第一主義が広がる中、TPP11協定等を通じた自由貿易の重要性が改めて認識されています。本年のTPP委員会の議長国として、特に、デジタルの実装、サプライチェーンの強靱化といった分野での議論を更に深め、協力を推進していきます。その一環として、デジタル経済に関してウェブ上の国際的なセミナーを開催したいと思います。
 このハイスタンダードでバランスの取れた二十一世紀型のルールを世界に広めていくため、引き続き署名国による協定の早期締結を促すとともに、TPP11協定の着実な実施、拡大に取り組んでまいります。その際、加入に関心を示しているエコノミーが協定の高いレベルを満たす用意ができているかどうかについては、しっかりと見極めてまいります。
 医療や介護の現場の方々、生活に困っておられる方への支援に携わる方々など、年末年始も休まず最前線に立ち続けている皆様に心より感謝を申し上げます。
 今回のコロナ危機はそれぞれの社会の脆弱なところを浮き彫りにしており、我が国においても非正規雇用の方々や女性など弱い立場にある方々が大変厳しい状況に直面しています。生活困窮者やひとり親世帯への支援、再就職支援やトライアル雇用に対する賃金助成などを通じ、セーフティーネットを強化し、誰一人として取り残されない包摂的な社会の構築に取り組んでまいります。
 また、暮らしと雇用を守りつつ、一人ひとりの能力を最大限に引き出しながら働きがいを持って仕事に取り組めるよう、働きながら更なる能力向上に取り組める環境整備、新たな分野への円滑な労働移動の支援など、パッケージとして総合的に取り組みます。就職氷河期世代の方々についても、お一人お一人に寄り添いながら、それぞれの事情に応じたきめ細かな支援を行ってまいります。
 成長と分配の好循環を実現するためには、雇用の確保とともに、最低賃金を含めた賃上げの流れを継続していくことが大切です。厳しい状況にある企業も多くあることは承知をしておりますが、政府として、中小企業を始めとする生産性向上に向けた支援、雇用増や賃上げなど所得拡大を促す税制措置を講じるなど、賃上げのモメンタムを維持できる環境整備に全力で取り組んでまいります。
 少子高齢化が急速に進む中、少しでも多くの方に、支えられる側から支える側として活躍いただけるよう、現役世代の負担上昇を抑えながら、全ての世代の方々が安心できる社会保障制度を構築し、次の世代に引き継いでいくことが、我々の世代の責任です。昨年末閣議決定された全世代型社会保障改革の方針に沿って、少子化対策の抜本的強化と高齢者医療について負担の仕組みの見直しに取り組むことで、改革を更に前へ進めていきます。
 本通常国会では、方針において示された後期高齢者の自己負担割合のあり方等、必要な法案の提出を図るとされた項目について、法案を提出し速やかに御審議いただけるよう万全を期してまいります。
 新型コロナウイルス感染症は、我が国経済が抱えてきた長年の課題を改めて浮き彫りにしました。感染拡大を全力で抑えながら、今こそ、こうした課題に正面から取り組むときです。デジタル、グリーン、ヒューマン、この三つのニューディールに全力で取り組み、民間の創意工夫、投資意欲を引き出すとともに、多様な人材の能力、発想が花開く社会にしていきたい。コロナ禍の中、今は大変厳しい状況にありますが、その中だからこそ、未来への扉を開いていこうではありませんか。三つのニューディールこそが未来の扉を開きます。そして、一人ひとりが扉の向こうに向けて新たな一歩を踏み出す、その勇気を全力で応援していきたいと思います。
 本年二〇二一年が、我が国経済社会の大きな変革のラストチャンスとの気概を持って、日本が新たな、そして大きな一歩を踏み出す一年となるよう全力を尽くしてまいります。
 国民の皆様、議員各位の御理解と御協力をよろしくお願い申し上げます。(拍手)
     ――――◇―――――

#17
○武部新君 国務大臣の演説に対する質疑は延期し、来る二十日午後一時から本会議を開きこれを行うこととし、本日はこれにて散会されることを望みます。

#18
○議長(大島理森君) 武部新君の動議に御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

#19
○議長(大島理森君) 御異議なしと認めます。よって、動議のとおり決まりました。
 本日は、これにて散会いたします。
    午後三時三十三分散会
     ――――◇―――――
 出席国務大臣
       内閣総理大臣  菅  義偉君
       財務大臣    麻生 太郎君
       総務大臣    武田 良太君
       法務大臣    上川 陽子君
       外務大臣    茂木 敏充君
       文部科学大臣  萩生田光一君
       厚生労働大臣  田村 憲久君
       農林水産大臣  野上浩太郎君
       経済産業大臣  梶山 弘志君
       国土交通大臣  赤羽 一嘉君
       環境大臣    小泉進次郎君
       防衛大臣    岸  信夫君
       国務大臣    井上 信治君
       国務大臣    小此木八郎君
       国務大臣    加藤 勝信君
       国務大臣    河野 太郎君
       国務大臣    坂本 哲志君
       国務大臣    西村 康稔君
       国務大臣    橋本 聖子君
       国務大臣    平井 卓也君
       国務大臣    平沢 勝栄君
 出席内閣官房副長官
       内閣官房副長官 坂井  学君
ソース: 国立国会図書館
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