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2020/11/24 第203回国会 参議院 第203回国会 参議院 財政金融委員会 第3号 令和2年11月24日
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2020/11/24 第203回国会 参議院

第203回国会 参議院 財政金融委員会 第3号 令和2年11月24日

#1
令和二年十一月二十四日(火曜日)
   午前十時開会
    ─────────────
   委員の異動
 十一月二十日
    辞任         補欠選任
     高橋はるみ君     山田 太郎君
 十一月二十四日
    辞任         補欠選任
     山田 太郎君     清水 真人君
     古賀 之士君     石川 大我君
    ─────────────
  出席者は左のとおり。
    委員長         佐藤 信秋君
    理 事
                西田 昌司君
                藤末 健三君
                宮島 喜文君
                牧山ひろえ君
                秋野 公造君
    委 員
                清水 真人君
                中西 健治君
                中西 祐介君
                馬場 成志君
                藤川 政人君
                宮沢 洋一君
                元榮太一郎君
                山田 太郎君
                石川 大我君
                勝部 賢志君
                古賀 之士君
                水岡 俊一君
                横山 信一君
                音喜多 駿君
                上田 清司君
                小池  晃君
                大門実紀史君
                浜田  聡君
                渡辺 喜美君
   副大臣
       財務副大臣    中西 健治君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        前山 秀夫君
   政府参考人
       金融庁総合政策
       局長       中島 淳一君
       金融庁監督局長  栗田 照久君
       中小企業庁事業
       環境部長     飯田 健太君
   参考人
       日本銀行総裁   黒田 東彦君
       日本銀行理事   衛藤 公洋君
       日本銀行理事   吉岡 伸泰君
       日本銀行理事   内田 眞一君
    ─────────────
  本日の会議に付した案件
○政府参考人の出席要求に関する件
○参考人の出席要求に関する件
○財政及び金融等に関する調査
 (日本銀行法第五十四条第一項の規定に基づく
 通貨及び金融の調節に関する報告書に関する件
 )
    ─────────────

#2
○委員長(佐藤信秋君) ただいまから財政金融委員会を開会いたします。
 委員の異動について御報告いたします。
 昨日までに、高橋はるみ君が委員を辞任され、その補欠として山田太郎君が選任されました。
    ─────────────

#3
○委員長(佐藤信秋君) 政府参考人の出席要求に関する件についてお諮りいたします。
 財政及び金融等に関する調査のため、本日の委員会に、理事会協議のとおり、金融庁総合政策局長中島淳一君外二名を政府参考人として出席を求め、その説明を聴取することに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

#4
○委員長(佐藤信秋君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
    ─────────────

#5
○委員長(佐藤信秋君) 参考人の出席要求に関する件についてお諮りいたします。
 財政及び金融等に関する調査のため、本日の委員会に日本銀行総裁黒田東彦君、同理事衛藤公洋君、同理事吉岡伸泰君及び同理事内田眞一君を参考人として出席を求め、その意見を聴取することに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

#6
○委員長(佐藤信秋君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
    ─────────────

#7
○委員長(佐藤信秋君) 財政及び金融等に関する調査のうち、日本銀行法第五十四条第一項の規定に基づく通貨及び金融の調節に関する報告書に関する件を議題といたします。
 日本銀行から説明を聴取いたします。黒田東彦日本銀行総裁。

#8
○参考人(黒田東彦君) 日本銀行は、毎年六月と十二月に通貨及び金融の調節に関する報告書を国会に提出いたしております。本日、最近の経済金融情勢と日本銀行の金融政策運営について詳しく御説明申し上げる機会をいただき、厚く御礼申し上げます。
 まず、最近の経済金融情勢について御説明いたします。
 海外経済は、大きく落ち込んだ状態から、持ち直しています。先行きも改善を続けると見ていますが、新型コロナウイルス感染症の影響が残る下で、その動きは緩やかと予想されています。
 我が国経済も、感染症の影響から引き続き厳しい状態にありますが、経済活動が再開する下で、持ち直しています。輸出や鉱工業生産は、海外経済の動きを映じて、増加しています。個人消費は、飲食、宿泊等のサービス消費は依然として低水準となっていますが、全体として徐々に持ち直しています。一方、企業収益の悪化を背景に、設備投資は減少傾向にあります。先行きの我が国経済は、経済活動が再開し、感染症の影響が徐々に和らいでいく下で、緩和的な金融環境や政府の経済対策の効果にも支えられて、改善基調をたどると見ています。もっとも、感染症への警戒感が残る中で、そのペースは緩やかなものにとどまると考えられます。
 物価面を見ると、消費者物価の前年比は、感染症や既往の原油価格の下落、GoToトラベル事業の影響などにより、当面、マイナスで推移すると見られます。その後は、原油価格下落などの影響が剥落し、経済が改善する下で、消費者物価の前年比はプラスに転じていき、徐々に上昇率を高めていくと考えています。
 次に、金融政策運営について御説明申し上げます。
 日本銀行では、感染症への対応として、金融緩和を強化しています。具体的には、新型コロナ対応資金繰り支援特別プログラム、潤沢な資金供給を通じた金融市場の安定確保、ETF等の積極的な買入れの三つの措置を講じています。こうした対応は、政府の施策や金融機関の積極的な取組とも相まって、効果を発揮しています。内外の金融市場は、なお神経質な状況ですが、ひところの緊張は緩和しています。企業の資金繰りには厳しさが見られますが、CP、社債発行や銀行借入れといった外部資金の調達環境は、緩和的な状態が維持されています。
 もっとも、先行きの経済・物価見通しは、不確実性が高く、下振れリスクが大きいと認識しています。世界的に感染拡大が収まっておらず、感染症の帰趨やそれが内外経済に及ぼす影響については大きな不透明感があります。また、感染症の影響が収束するまで、成長期待は大きく低下せず、金融システムの安定性が維持されると考えていますが、これらの点にも不確実性があります。さらに、やや長い目で見た金融面のリスクとしては、低金利の長期化や人口減少などの従来からの環境に加え、今般の感染症の影響もあって、金融機関収益の下押しが長期化すると、金融仲介が停滞方向に向かうおそれがあります。一方、こうした環境の下では、利回り追求行動などに起因して、金融システム面の脆弱性が高まる可能性もあります。現時点では、金融機関が充実した資本基盤を備えていることなどから、これらのリスクは大きくないと判断していますが、先行きの動向を注視していく必要があると考えています。
 こうした認識の下、日本銀行としては、引き続き、現在の金融緩和措置をしっかりと実施し、企業等の資金繰り支援と金融市場の安定維持に努めてまいります。また、当面、感染症の影響を注視し、必要があれば、ちゅうちょなく追加的な金融緩和措置を講じる方針です。
 ありがとうございました。

#9
○委員長(佐藤信秋君) 以上で説明の聴取は終わりました。
 これより質疑を行います。
 質疑のある方は順次御発言願います。

#10
○西田昌司君 自民党の西田昌司でございます。
 今、日銀から、総裁から報告がありましたけれども、その中でおっしゃったように、かなり低金利の金融環境、その中で銀行の収益が非常に落ちてきてくると。特に地方の銀行ですよね。
 そこで、この度、地銀と信用金庫を対象として、収益力の向上や経費削減、又は合併や他行との連結子会社化などのいずれかの条件を満たせば日銀が当座預金に〇・一%上乗せの金利を付けると。そして、金融庁も再編に踏み出す地銀に対して補助金を出すと。こういった地銀再編にかじを切るような政策が行われてきているわけです。
 私は、今回そのことについてちょっとお伺いしたいんですが、まず、この地銀が経営が悪くなってきたと。というのは、先ほどからおっしゃったように、低金利、人口減少とかおっしゃっていますけれども、基本的に低金利なんですよ。この黒田バズーカによっていわゆるゼロ金利政策、これが長らく続けられてきています。私自身は、当初、アベノミクスでこの金融の異次元の緩和、さらには財政の機動的な財政出動、そのことによって民間企業が成長戦略で投資をしていくと、この三本の矢について非常に期待をしていたわけです。
 ところが、現実問題は、日銀はそういう意味ではよくやったと思っています。日銀は本当に異次元の金融緩和をして、徹底的に金融面から支援していこうとしたんですが、結果的には財務省が財政出動を十分やらなかったと。まあアベノミクスの一年目のときには多少のお金が出ましたけれども、あとはずっと出ていないわけですよ。むしろ、この間、二回の消費増税をして、片っ方で金融緩和をしてやっているときに財政の方がブレーキを踏んでいると。まあ結果的に二%の金利達成をしようと思っていたのがならなかったわけですけれども、そもそもこの二%の金利達成を、当初、黒田総裁はどれぐらいの期間でできると考えていたわけですか。

#11
○参考人(黒田東彦君) 二%の物価安定目標の達成につきましては、二〇一三年の一月に、私が総裁になる前ですけれども、政策委員会において二%の物価安定の目標をできるだけ早期に実現するということを決定され、政府と日本銀行のいわゆる共同声明にもこれが盛り込まれていたわけでございます。
 その上で、私、二〇一三年の三月に総裁になりまして、この共同声明にも盛り込まれている二%の物価安定の目標をできるだけ早期に実現するというためには、やはり相当大規模な金融緩和措置を講ずる必要があると。その際は、やはりできるだけ早期というだけではなくて、ある程度のめどというか、そういうものとして、諸外国の中央銀行も金融政策の効果の完全な発現には二年程度掛かるというふうに言われていたことも踏まえまして、二年程度を目途に徹底した金融緩和を行うことによって二%の物価安定の目標を実現しようということで、いわゆる量的・質的金融緩和という形で乗り出したわけです。
 ただ、その後、石油価格の大幅な下落であるとか、御指摘の消費税の増税のその後の消費の低迷であるとか、いろんな状況があって、二%の物価安定の目標が二年程度というタイムスパンでは実現できないということが明らかになった段階で二年程度を目途というのは取り下げておりまして、ただ、二〇一三年の一月に政策委員会で決めた二%の物価安定目標をできるだけ早期に実現する、そのために大幅な金融緩和を行うという方針は堅持して、それに沿って最大限の努力をしてきた、ただ、残念ながら、二%の物価安定の目標は現在でも実現されていないということであります。

#12
○西田昌司君 それで、二年ぐらいを目途にということであったんです。ところが、実際できませんでしたね。
 私は、その当時から、このゼロ金利政策というのは期間限定政策ですよ。ずっとやっていれば金融機関の収益力悪くなるのは決まっているわけですね。これ七年やっているわけですよ。七年やって、そして物価上昇率が二%達成できない。この後も、まだできるだけ状況に応じては金融緩和を行うということをさっき黒田総裁おっしゃいましたけれども、確かに今の経済状況では金融緩和せざるを得ないし、そのとおりなんですが、しかし、この政策というのは、当初から金融機関に対して体力を奪い去るという大きな大きなこの副作用があることは予見できていたわけですよ、これね。
 本当は、二%を二年ぐらいで達成する、そうすると、当然、金利も二%ぐらい付けなきゃいけないわけですよね。そのことによって金融機関も安定するし、そして景気がインフレ基調になってくれば、当然のことながら企業の収益は毎年二%ずつ上がるはずなんですよね、名目上。経済も良くなるし税収も増えてくると、こういうことが期待されていたわけですけれども、そのもくろみが外れてしまったわけですよ。
 そして、外れてしまった中で、今度は金融機関を守らなきゃならないと。特に地方の金融機関を守らなきゃならないというので、先ほど言った、この合併などをすることに手助けするための〇・一%の付利をするという政策に出られた。これは、ある意味、対症療法としては仕方ないと思うんですよ。
 しかし、私は、この間これだけ日銀が金融の緩和で努力してきたのに結果二%できなかったのは、今いみじくも黒田総裁ちょっとお話しになったけれども、消費増税の話を触れられましたよ、その後、経済低迷したと。それ二回やっているわけですよ。これは、与党の中でも上げるべきではないと、私はずっと言い続けてきましたけれども、言ってきたわけですよ。
 ところが、財務省側がいわゆる財政再建、プライマリーバランス、こういうことを重視した結果、上げていったわけですよ。そして、結果的に、上げただけじゃなくて、上げれば当然景気悪くなりますけれども、そもそも金融緩和やっているときに財政出動はセットでやるものですよ、これは当然。金利が低いんですから、財政出動のこの金利負担も非常に少ない。これセットでやるべきなのに、これもやってこなかったわけですね。
 私は、今日は麻生大臣来られていませんけれど、この間の麻生大臣、財務省のこの財政政策は、本当にこれは、申し訳ないですけど、万死に値すると思っています。非常に厳しい言い方しますけれども、これは元々、金融の日銀だけにこの政策の責任を押し付けるような形になってしまっているわけですよ。
 私は、日銀の総裁、黒田総裁にすれば、政府と協調して二%上げていこうという政策のそういう取組をして、協定をしてやってきて、自分は実行していると。実行しているのに、自分たちはこれ以上することできないわけですよね、ゼロ金利政策まで入れているわけですから。その中で、政府の方に対して、はっきり言いまして、何でもっと財政出動してくれないのかと。先ほど消費税上げられた話も触れられましたけれども、少しそこに対して疑念というか疑義といいましょうかね、政府の財政政策に対して、持っておられるんじゃないかと思うんですけれども、黒田総裁自体、元々財務省、大蔵省の出身の方ですから、一番その間の事情よくお分かりだと思いますけれども、是非、そこのところ、もうちょっと踏み込んで答えていただきたいと思います。

#13
○参考人(黒田東彦君) もとより財政政策につきましては政府、国会がお決めになることですので具体的な点について私から申し上げることは差し控えたいと思いますが、共同声明におきましても、財政政策につきましては機動的な財政運営を行うと、その一方で中長期的に財政の持続可能性を高めるような措置を講じていくと、これは世界のいろいろな政策担当者にしてもエコノミストにしても同意される意見だと思います。
 そういう意味では、その時々の経済動向に応じて機動的な財政運営をするということは必要だと思いますし、この点は委員の御意見と全く同じなんですが、他方で、やはり中長期的に財政の持続可能性を高めるということ、これも財政あるいは国債に対する信認を確保するという観点からやはり必要なものではないかというふうに思っております。

#14
○西田昌司君 日銀総裁が財政政策には直接お話しできない、それは役割分担違いますから当然でありますけれども、しかし、私は、この間の財務省の財政、機動的な財政出動そのものをそもそもしましたか。一年目のときだけしかやっていないんですからね。今、今このコロナ禍でまさに機動的に財政出動といいましょうか、異次元の財政出動していますよ。そして、その結果、経済の下支えをしているわけですけれども。それで、しかし、それだけお金を何十兆円も出して、じゃ、この国家の、国債の信認が崩れるようなところの様子が今出ていますか。

#15
○参考人(黒田東彦君) この点につきましては、今回のコロナ感染症の影響というのは日本だけでなくて全世界に及んでおりまして、特にG7を含む主要先進国は全て大規模な財政出動と大幅な金融緩和というポリシーミックスで対応しているわけで、これは、今回の経済不況、経済の落ち込みというものが基本的に感染症によって起こって、それに対応する公衆衛生措置等によって経済活動は抑制されていると。しかし、金融危機とか、あるいはかつてありましたような地震とか様々な自然災害とか何かによって、金融のインフラであるとかあるいは公共的なインフラが破壊されて、それの影響があるということがあって、そういうものは直接的には影響を受けていないと。単に感染症によって一時的に大幅に落ち込むと。そこに財政として雇用と生活を守るために大規模な財政出動をするということは当然であり、これは経済学者もマーケットも当然だと。それは中長期的な財政の持続可能性を確保するための政策と矛盾しないと。
 ですから、逆に言えば、そのコロナ感染症が収束して経済の活動が戻ってきたという段階において、既に各国の政府の政策担当者が言っていますように、現在の大規模な財政出動というものをどういうふうに転換していくかということが議論になるというふうに考えております。そういう意味で、日本のやっていることが非常に、財政に対する信頼を失墜するようなものではないということは委員のおっしゃるとおりだと思います。

#16
○西田昌司君 今おっしゃったように、当然、国民生活を守るのが政府の仕事ですから、この財政出動は当然であります。それで、そのことによって通貨の信認が落ちることはない。当然ですし、各国やっているから、なおさらバランス的にもそうだと、こういうお話なんですね。
 私は、一番大事なのは、要するに通貨の信認というのは国家の信認ですよね。国家の信認とは一体何なのかと。それは、単に国債残高が多いとか少ないというのは全く意味ないんですよ。
 というのは、先ほど、今みんながやっているから円の、通貨の信認も落ちることはないとおっしゃるけれども、そもそもその前からGDPの二倍を超える国債残高だと。これは、先進国でこんなところないよということで、財務省なんかはしつこくそういうことを言ってきたけれども、そのときから常に通貨の信認が落ちていることはないんですよ、ないんです。だから、財政問題で落ちることはないし、財務省が言っているように、自国の通貨で国債を発行している以上、これはもう黒田総裁も認められているように、これがデフォルトすることは絶対理屈上もないわけですよ。ただ、問題は通貨の信認がどうだと、こういうことなんですね、いつも言われるのは。
 私が言いたいのは、通貨の信認というのは国家の信認のことで、要するに日本の国がですよ、例えば、このコロナで大変国民が苦しんでいるのに、いやいや財政を守らなきゃならないからお金を出しませんとか、それから台風や地震で町が崩れている、生活が潰れているのに、いやいやいや財政再建しなきゃならないからその予算も出しませんとか、それから中国で今たくさんの船が、海警局ですか、尖閣諸島のところにたくさん入ってきていますよ。今、この接続水域も含めてどんどん、もう常時来ているような状況ですけれども、もしもこうしたときで彼らが領土を侵犯するような事案ができたときに日本政府が何もしない、こういうような、要するに国家として守るべき国土、国民の生活、それを全く行わないときに国の値打ちはなくなるんですよ。それが通貨信認がなくなる一番のもとなんですよ。だから、財政でなくなるんじゃない。
 ところが、今一番問題は、先ほど言った中国のこの尖閣の問題も、それから国土強靱化の問題も、それから今回のコロナでもそうですけれども、一番困っているのは、PCRやるにも全部保健所の人間がやるわけですよ、検査を。辛うじてまだ保健所が残っていますからいいですけれども、保健所もこの間どんどんどんどん少なくされてきましたよ。それらは全部財政的な理由。要するに、財政を小さくして、国家がやるべきことを予算がないということで抑えてきたわけですよ。辛うじてそれがまだ今システム残っていますから通貨の信認は保たれますけれども、このまま行っちゃうと、私、とんでもないことになると思いますよ。
 ですから、今回のコロナが我々に教えてくれたのは、国債残高が多いとか少ない、この多寡によって通貨の信認が疑われるようなことはないと。事実、自国建ての国債でデフォルトすることはないわけですからね。そうであるならば、要するに必要な国家がすべき仕事、それをどんどんやっていくべきなんですよ。そして、やることが実は全て国内において多くの需要を生み出すことになると。経済的にも需要を生み出して、結局今のこのデフレの原因というのは、お金が回っていないというのは、一番の原因は結局は需要不足なんですよ。
 だから、民間の方は、デフレ下では借入れをして出す、お金を借りて投資するということがなかなかできませんから、最後の借り手と言われている国家自身がそういう政策をどんどんやっていくことによって底上げして、そして最後は民間の方に火が付いて、もう一度投資が成っていくと、こういう循環をすべきであったし、元々アベノミクスもそういう考え方で、機動的財政出動、中長期的にはちょっと足りなかったと総裁おっしゃっていましたけれども、そういう思いがあったはずなんですが、それが十分できていなかった、できていないけれども、今回のコロナでそういうことが非常によく分かったんじゃないかと思うんですけれども、黒田総裁、いかがですか。

#17
○参考人(黒田東彦君) 共同声明にありますように、機動的な財政運営、他方で中長期的に財政の健全性、持続可能性を高めるということ自体は、私は間違っていないというふうに思っております。
 その上で、やはり今欧米各国もそういう議論をしておられますけれども、やはりこういう事態に対して財政が大規模に出動するということは適切ですし、必要でありますけれども、その過程で財政赤字が非常に大きくなっているということについては、やはりコロナ感染症の収束後、適切にその状況を是正していくということが必要だということも彼らは言っているわけですね。
 その主たる論点といいますのは、委員が御指摘のその通貨の信認云々ということもあるんですけれども、やはり国債に対する信認というものが失われると、自国通貨建ての国債はデフォルトしないというのは通常そうなんですけれども、私自身もそういうふうに思っておるんですけれども、ただ、一方で、市場の方は、当然、財政状況がサステーナブルでないというふうになってくるとやはり国債価格が下落する、金利が上がっていくということが生じてしまうわけですね。ですから、そうなってくると、日本銀行も含めて今中央銀行がやっている金融緩和政策というのは、まさに金利、特に中長期の金利を低位にするということを通じて経済を支えようとしているわけですので、そういう意味でも、やはり中長期的な国債の信認というものを確保しておくということは、金融政策が十分効果を発揮するためにも必要なことではないかと。
 ただ、このことは、その時々の経済状況に応じて、財政出動をすべきときに機動的な出動をするということとも矛盾しないというふうに考えております。

#18
○西田昌司君 本当はここで麻生大臣がいて、またちょうちょうはっしで議論したいんですけれども、後で、最後、中西副大臣にはちょっと聞きますが、今、黒田総裁おっしゃいましたように、通貨の信認、国債の信認ね、そうおっしゃるんですけれども、要するに、国債の信認というのは、国債買わないということですよ、信認がなくなるということは。誰も買わないということなんです。
 しかし、国債というのは、これ要するに準備預金と裏表の関係ですよね、これは。要するに、準備預金が通貨そのもの、この日銀当座預金が、そして、それを有利子化したものが国債ですよ。要するに、国債の信認云々というのは円を使わないという意味です、これは。だから、日本国内で円を使わないというか、要するに、国債を売ったら、銀行が今、日銀が半分、あと金融機関が半分という、ばくっとそんな感じだと思いますがね。要するに、日銀がこの国債をもう信用できませんから買いませんと、これは当然ないと思いますが、まずそこだけ聞いておきましょう。

#19
○参考人(黒田東彦君) 日本銀行も含めまして各国中央銀行は、金融政策の運営に当たっては、特にこの二十世紀になって以降ですけれども、基本的に国債、長期あるいは短期の国債の売買によって市場の金利に影響を与え、それを通じて経済を、過熱している場合は抑制する、低迷している場合は刺激するということをやっておりますので、当然その国債の売買というのは金融政策の不可欠な要素になっているというふうに言えます。

#20
○西田昌司君 ですから、金融政策を行う上のツールですから、国債を買わないということはあり得ないということを、今のを通訳するとおっしゃっているわけですけれども。逆に、民間の銀行ですよ、証券会社等が持っていますけれども、国債ね。国債が、これ信用ならぬといって売ると。売ると、今度はこれ準備預金に変わるわけですね、結局。そうすると、それを持っていても金利付きませんから、何か買わなきゃいけないわけですよ、それを。
 じゃ、そのときに、国債を売って、民間のそういう金融機関は一体じゃ何を買うんですか。ドルを買うんですか、金を買うんですか。これらも当然変動が激しいものです。為替のリスクも、相場の変動もいろいろありますね。
 日本国内で事業をしている限り、結局、国債を持っている、この通貨を信認、信用して国債を持っている以外、それは持っていきようがないと思うんですけれども、何か違う選択が銀行等にありますか。

#21
○参考人(黒田東彦君) これは、日本の過去も、それから世界各国の状況を見ましても、金融機関が国債を大幅に売ると、投売りするということは起こっておりますし、それは即金融危機になるということであります。
 そういう意味では、金融機関が国債を絶対売らないで必ず持ってくれるというのはやはり一定の信認があるからであって、そうでない場合は、それこそ委員御指摘のとおり、外貨であれ資源であれ商品であれ、あるいは民間の金融債権であれ、そういうものにシフトしていくということは過去においても各国においても起こっておりますので、国債は絶対にどんなことがあっても民間の金融機関は売らないということは言い切れないと思います。

#22
○西田昌司君 私は少なくとも日本でそういうことはなかったと思いますが、じゃ、今聞きますが、もしそういうことが起こるとしてですよ、頭の体操として、日銀は、そういうことが起こった場合、当然、金利が上昇するわけですよね。金融政策を守る番人として、当然日銀はそれは抑えるために国債を買うという判断になるはずですが、いかがですか。

#23
○参考人(黒田東彦君) それはそのとおりだと思います。
 ただ、その、そういったことが起こっているときの経済状況にもよるわけでして、インフレが起こっていたらそんなことは当然できませんし、逆に物価が下落しているような状況であれば、当然のことながら、民間金融機関が売ろうと売るまいと、マーケットにおいて、国債を大量に購入してリクイディティーを市場に供給するということは中央銀行として当然だと思います。

#24
○西田昌司君 今おっしゃったように、結局、財政を下支えするという話じゃなくて、金融政策をしっかり保持するために、日銀はそういう事態になったら買わざるを得ないんです。ですから、いずれにしましても、冒頭言ったように、この自国建ての通貨の国債が破綻することはまあ理屈上もあり得ないんですね。
 そういうことを踏まえると、やっぱり余りにも今までの財政出動が少な過ぎたと。日銀だけの、財政の力だけでは二%、金融の力だけでは二%というのはできないんです。やっぱり財務省は、今のコロナのこの財政出動のことを見ても、大丈夫なわけですから、経済全体には、だからもうちょっと出すべきだったと思うんですが、最後に、中西副大臣、麻生大臣おられないから、ちゃんとあなたの本音で答えてください。

#25
○副大臣(中西健治君) 西田委員のお説はもう本当によく承っておりまして、聞き入ってしまうところもございますけれども、機動的な財政支出というのも、今、コロナの今の状況をおっしゃられましたけれども、これは年がら年中やっているわけにはきっといかないだろうというふうに思います。
 二〇一三年一月、黒田総裁がおっしゃっていたあの共同声明も、こちらの中に持続的な経済成長と持続的な財政構造ということが書かれておりまして、総裁は中長期的な財政の持続可能性ということをおっしゃられましたけど、この持続的な財政を担保していくための、そうした財政政策というのをやり続けなきゃいけないかなというふうに思っています。

#26
○西田昌司君 もう終わりますが、今日は、無担保無保証の、無利子のこの緊急融資、これが中小企業を支えていますけれども、しかし、これも出口で必ず返せないという事態になるはずなんですね。ですから、そのときのことをどうするのかと。結局は無担保無保証ですから、これは取れないわけですよ。
 ところが、実際には保証協会が代位弁済しますからね。保証協会というのはしつこく返済を求めるわけです。そのことによって中小企業はかなり経営に大きな負担を受けるわけですね。実際取れないものを返せという形で、貸借対照表上にも負債とそれから損失が残っていると。
 だから私は、今からそのことの、それを出口どうするかということの準備をするために、ある程度、例えば税務調査なんかするというような条件を付けることによってモラルハザードを止める、つまり、わざと返さないというような会社を除いて、結局そういう方らの赤字の原因はいわゆる固定費ですからね、人件費とか家賃とか、売上げないにもかかわらず払ってきた、それを免除してあげるというようなことも含めて考えるべきだというのを中企庁に聞こうと思っていたんですけど、ちょっとこれはできないので次のときに移しますが。
 いずれにしましても、コロナは新しいこの財政の現実、金融政策の現実を教えてくれているわけですから、是非この現実を見て政策転換をしてもらわなきゃならないと、特に財務省、そのことを申し上げて私の質問を終わります。
 ありがとうございました。

#27
○古賀之士君 立憲・社民合同会派の古賀之士でございます。
 今日、日銀の黒田総裁に直接質疑ができる機会を与えていただきました。ありがとうございました。総裁と私は同じ福岡県の出身でございますので、どうぞよろしくお願いをいたします。
 と同時に、先輩に苦言を呈させていただくのは大変恐縮ではございますけれども、まずは本日の、先ほど黒田総裁が御報告されました通貨及び金融の調節に関する報告書の中で、この一ページ目の「はじめに」の後、「経済金融情勢」というのがございます。その中で、二行目、「海外経済は、大きく落ち込んだ状態から、持ち直しています。先行きも改善を続けるとみていますが、」、ここまではもう大丈夫です。ただ、その後の「新型コロナウイルス感染症の影響が残るもとで、その動きは緩やかと予想されます。」。つまり、この文書を見る限りでは、新型コロナウイルス感染症がもう峠を越えたというようなニュアンスに取られかねないと思うわけです。
 もう釈迦に説法でございますけれども、御存じのように各国は史上最悪のペースでまだ亡くなる方も増えておりますし、また、ヨーロッパやカナダ、こういった都市でもロックダウンがつい先週始まってもおります。そしてまた、日本でもまさに第三波の真っただ中。危機を脱した、そしてその影響が残る下でというニュアンスではなく、つまりGoToトラベルなども見直しが行われているわけですから、現状の認識はもう少し厳しい表現がよろしいかと思いますが、済みません、突然の質問で恐縮ですけれども、総裁のお考えをお示しください。

#28
○参考人(黒田東彦君) 御指摘のとおり、コロナウイルス感染症は、ヨーロッパの場合は第一波がすっかり鎮静化した後、今第二波として非常にこの第一波を大きく上回る大規模な感染症の拡大が起こっておりまして、国によっては、第一波のときのように全国一律ではないにしても、一部都市でロックダウンとか、店舗の営業について時間を短縮するとか、そういうことを要請していると。
 米国の場合は、第二波が収まらないうちにというか、第二波が続いているのかもしれませんけれども、これもこれまでに比べますと最大規模の感染症の拡大が続いておりまして、米国の場合は州ごとですけれども、州によっては、その州全体なのかあるいはその中の都市なのかは別として、公衆衛生上の措置が講じられていると。
 我が国の場合は、御承知のように、第一波は収まった後に夏に第二波があって、第二波が完全に収まらないうちに、まあ第三波というか何か分かりませんけれども、これでこれまでよりもたくさんの感染者が発生しているということであります。
 ただ、欧米の場合も我が国の場合もそうですけれども、第一波のときが一番、何というんでしょうか、重症化率が高いとか死亡率が高かったんですけれども、今はある程度、医療体制の対応もできているということもあってか、そういう感じではなくなっています。ただ、確かに特に欧米の状況は極めて厳しい状況にあるということはそのとおりだと、特にヨーロッパがそうなんです。
 ただ、他方で、世界的に見ますと、東アジア、東南アジアは相当というかほぼ収まった状況になっているということで、世界的に一概に収まって、その残滓が残っているだけと言うつもりは全くありません。まだ完全に収束していないという状況でこういうことが起こっているという意味では、様々な措置が講じられる中で、どうしても回復というものは緩やかなものにとどまらざるを得ないというふうに私どもも見ております。

#29
○古賀之士君 少なくとも、我が国では誰一人恐らくワクチンを接種している人もいないという状況でもありますし、厳しい見方をしながら経済の緩やかな回復というものを図っていくという方がより現実に近いんではないかということを申し上げておきます。
 さて、続いて、同じくこれ通告をしておりませんで大変恐縮なんですが、資料の一で配付をさせていただいております日経新聞の十一月二十二日の記事でございます。
 FRB、アメリカの中央銀行に当たるものですが、ここは新型コロナウイルス対策として発動した中小企業向けの資金供給などを、対策を今年の年末で打ち切る方針を表明したと。トランプ・アメリカ政権が制度の延長を認めずということで、民主党のバイデン陣営は、極めて無責任などと反発したという記事でございます。
 日銀の文字どおり日本の中央銀行に当たります黒田総裁におかれては、このFRBの資金供給の縮小、打切りというようなこの記事を御覧になって、御自身、日本に対してはどのような今後対策を取っていくべきだと現時点でお考えでしょうか。

#30
○参考人(黒田東彦君) 先ほど冒頭で申し上げましたとおり、日本銀行は、新型コロナ対応資金繰り支援特別プログラム、それから潤沢な資金供給を通じた市場の安定確保、ETFなどの積極的な買入れ、この三つの措置を講じておりまして、この措置は当然必要な限り続けていくということでありますので。
 米国の場合は、御案内のとおり、これは、この二つのプログラムは財務省が資金を出して、それをベースにFRBが資産を買い入れるという仕組みだったものですから、その使用がたまたま余り大きくなかったということで、お金出したけれども、もう返してもらっていいですねということでやっているようです。
 ただ、FRB自体の金融緩和に向かっての態度には一切変更がないというふうに思っております。この部分についてだけは確かに財政補助の下でやっていましたので財政補助が終わってしまうと同じことはできないと思いますが、引き続きFRBはやはり企業の資金繰り支援とそれから市場の安定のために様々な措置を講じていますし、今後とも当分講じていくことになるのではないかというふうに思っております。
 いずれにせよ、日本銀行としては同様な懸念はありませんので、引き続きしっかりと三つの政策を実行していきたいというふうに思っております。

#31
○古賀之士君 今の現時点での黒田総裁のお考えをお聞きいたしました。ちゅうちょなくという言葉でも報告にも書いてございますし、是非お願いをいたしたいと存じます。
 それでは、通告に従って、先ほど西田先生からも御指摘がありましたが、地域経済強化のための特別当座預金制度、これは日銀が今月、今年の十一月の十日に導入する方針を決定をいたしました。繰り返しになりますが、三年間、要件を満たした地域金融機関に当座預金への追加的な利子を年〇・一%上乗せするということなんですが、まず参考人に伺います。
 法的な根拠は何でしょうか。それから、日銀法の四十三条との関係はどうなっているでしょうか。

#32
○参考人(衛藤公洋君) お答えいたします。
 今回の制度でございますけれども、地域金融機関が将来にわたりまして金融仲介機能を円滑に発揮して地域経済をしっかり支えていっていただくための経営基盤の強化、これを支援するものでございまして、日本銀行法の第一条第二項におきまして目的として定めております金融システムの安定確保、このための政策として導入するものでございます。
 日本銀行法の第四十三条には、その目的達成上必要がある業務について、財務大臣及び内閣総理大臣の認可を受けた上で実施できるとの定めがございます。本制度につきましては、この認可を取得した上で実施することになると考えております。

#33
○古賀之士君 ありがとうございます。
 一方で、資料の二を御覧ください。これは、時事通信が十一月の十四日、つまり日銀が発表された十日の四日後に配信をした記事です。この中に、一部地銀を中心にネガティブな反応を示す報道がなされております。インターネットでも御覧の方もいらっしゃいますのでちょっと一部を抜粋させていただきますが、例えば島根銀行の頭取は、決して金融再編の後押しにはならない、それから福島市に本店を置く東邦銀行の頭取は、金利上乗せを目当てに統合することはないと否定的、愛知銀行の頭取は、(再編で)銀行の数が減っていたらコロナ対応はできなかったとも指摘していると、こういうふうに否定的なコメントも報道されております。
 これに対して、一部からは、これ総理の方針に押し切られたのではないだろうかとか、あるいはまた金融機関との意思疎通は十分なされていたんだろうかという声も上がっておりますが、これに対して黒田日銀総裁はどのようにお受け止めでしょうか。

#34
○参考人(黒田東彦君) 先ほど当方の理事からも説明いたしましたように、この政策は、金融システムの安定確保という観点から日本銀行が必要というふうに判断して実施するものであります。
 既に、この地域金融機関の経営基盤強化に向けた取組の必要性そのものにつきましては、従来から金融システムレポートなどで繰り返し指摘しておりますし、金融機関や政府とも対話を積み重ねてきたところでございます。その上で、地域金融機関が将来にわたり地域経済をしっかりと支え金融仲介機能を円滑に発揮していくためには、経営基盤を強化することが重要という認識を政府とも共有してきたわけでございます。
 なお、当然のことながら、今後きちっとした成案を得るためには金融機関の意見も十分踏まえて検討を進めていく必要があるというふうに考えておりますので、私どもとしては、そういう機会も設けて地域金融機関との対話を深めて、まさに地域経済を支えるための幅広い取組を支援していくという所存でありまして、合併、統合を目的としたということではなく、むしろ経営基盤を強化すると、そのための努力を〇・一%ではありますけれども付利をすることによってサポートしていきたいということでございます。

#35
○古賀之士君 ありがとうございます。
 では、具体的にその中身について幾つか質問をさせていただきます。
 参考人の方に伺います。まず、この〇・一%の金利の上乗せ、超過準備全体にこれ行われるものなのでしょうか、それとも一定の区分けというものがなされる予定なのか、お尋ねします。

#36
○参考人(衛藤公洋君) 御理解のとおりでございます。本制度に基づく特別付利は、所要準備額を除く当座預金残高に対して行うこととしております。

#37
○古賀之士君 では、どの程度の金融機関が利用して、その対象となる金額というのはどれぐらいを、四百億円とも五百億円とも言われておりますけれども、どれぐらいを想定していらっしゃるんでしょうか。

#38
○参考人(衛藤公洋君) お答えをいたします。
 本制度でございますが、今後、経営基盤の強化に関する一定の要件を満たす地域金融機関に対しまして当座預金への追加的な付利を行うものでございますので、あらかじめ利用される金融機関の数、あるいはこれによる日銀が支払う利息の金額をお答えするということは難しい点に御理解をいただきたいと思います。
 その上で、仮にですけれども、当座預金取引先である地域銀行と信用金庫の全てがこの要件を満たしたと、そういう場合の支払額を試算いたしますと、これは二〇一九年度の当座預金残高に基づく試算でございますけれども、年間四、五百億円程度となるということでございます。

#39
○古賀之士君 ありがとうございます。
 つまり、全ての金融機関がこれを活用するという場合でも十分な予算が確保されているという理解でよろしいかと思います。
 更に進めさせていただきます。参考人の方に伺います。
 いわゆるネット銀行、こういったネットの金融機関が地銀連合、こういった形で連携をしたり傘下にというような動きもございます。この新たな制度とどのような関係があるんでしょうか。
 特に、全ての傘下銀行の適否を一体として判断するというのがあります。例えば、ネット銀行が主体になってその下に多くの地銀がある場合、ホールディングスを形成する場合、あるいはまた、制度上これを利用しようと思ってネット銀行がその多くの地銀グループの中に入ってしまうというケースもこれ想定されると思うんですが、その点についてはどのようにお考えでしょうか。

#40
○参考人(衛藤公洋君) お答えをいたします。
 個別の金融機関等に対する本制度の適用可否については言及を差し控えさせていただきたいと思います。
 その上で、まず一般論として申し上げますと、本制度は提携ではございませんで、経営統合を対象としたものであるということをまず申し上げておきたいと思います。
 その具体的な要件は、今後決まってくる部分もございますけれども、現時点では、単純な合併のほか、地域銀行を主たる構成企業とする持ち株会社、この傘下に入る形で経営統合を行う場合、あるいは地域銀行以外の銀行、銀行グループあるいは事業会社等と経営統合を行う場合などを想定してございます。

#41
○古賀之士君 ありがとうございます。
 順列組合せではありませんが、様々なケースが想定されると思いますし、それに対しての日銀さんの対応も大変難しいところもあるかと思いますが、是非本来の目的を忘れることなく続けていただければと思います。
 一点だけ追加でございますが、外資系の金融機関、こういったものがもし地銀とそういう関係を結ぶ可能性もなくはないと思うんですが、そういった場合はどのように対応を現時点では考えていらっしゃいますか。

#42
○参考人(衛藤公洋君) お答えいたします。
 本制度の適用に当たりましては、先ほども申し上げましたとおり、今後具体的な要件を決定した上でこれを満たすかどうかということを確認することになります。
 お尋ねの場合ですけれども、その外資系の金融機関との再編の形態、あるいはその後のビジネスモデル、例えば引き続き地域金融に貢献していただけるものなのかどうかというような点を踏まえまして要件等に当たるか否かを個別に判断していくことになると考えております。

#43
○古賀之士君 それでは、経営統合を表明して制度の適用を受けたものの、そういう段取りになっているそうですが、そうなって後日破談となった場合、この〇・一の追加利子、これは返却を求めることになるのでしょうか、確認のため伺います。

#44
○参考人(衛藤公洋君) 御指摘のとおりでございます。
 経営統合等の場合は、要件といたしましては機関決定がなされるということを要件としておりますけれども、その後、仮に実現しなくなった場合には既に付利した金額について返戻をしていただく予定としております。

#45
○古賀之士君 この新しい制度は、三年でこの四%の経費削減という具体的な数字が上がっておりますが、年度ごとのオーバーヘッドレシオの改善率又はその経費の減少率の目標はどのようにして導き出されたものなんでしょうか。近年でその一割程度の金融機関が恐らくこれ達成できているんじゃないかとされておりますけれども、一割ですとこの基準を置くというのは厳しいという声も上がっておりますが、この辺については、参考人に伺いますが、どういうふうに今現時点で把握していらっしゃいますか。

#46
○参考人(衛藤公洋君) お答えをいたします。
 本制度の要件としておりますオーバーヘッドレシオ及び経費の改善率でございますけれども、平均的に見てこれぐらいのペースで経営効率化が進められていけば地域金融システムの持続可能性が十分に高まるというものとして設定をいたしております。近年の実績ですと、御指摘のありましたとおり、一割程度の地域金融機関が実現していたものということでありまして、相応に難易度が高いものでございます。しかし、地域金融機関が将来にわたって地域経済をしっかりと支えていっていただく観点からは、これくらいの経営基盤強化を図っていっていただくことが重要というふうに考えております。

#47
○古賀之士君 それでは、追加として、具体的に、その地域基盤の強化がなされるということでいくと、具体的に、その運用の利益、それから経常利益、これ、どれほど改善されたりプラスになったということで一定の目安になるんでしょうか。

#48
○参考人(衛藤公洋君) 本制度に基づきます追加的の付利の金額でございますが、平均的に見ますと地域金融機関の当期純利益の五%程度と考えております。コア業務純益という尺度で見ますと三%程度かと考えております。

#49
○古賀之士君 利益五%、そして経常利益は三%ということで、この辺のハードルも高く感じるところも出てくるかとは思いますので、できればその辺も含めてしっかりとした柔軟な対応を取っていただければと思っております。
 次の質問、併せてお尋ねをいたします。
 地域経済を支えながらということと経営基盤強化に取り組んだというのは、基本的な話で恐縮ですが、両立が可能なのでしょうか。具体的には、例えば、地域の皆さんたちの雇用がきちんと守られるのか、リストラの強化に逆にむしろつながるのではないか、当然、AI化の中で人員の削減というのは当然話としては出てくるわけなんですが、その辺をどのようにお考えでしょうか。

#50
○参考人(衛藤公洋君) お答えいたします。
 まず、今回の制度でございますけれども、地域金融機関が地域経済を将来にわたってしっかり支えていっていただくためには今から基盤強化を進めておくことが必要という考え方に基づいて導入するものでございます。
 このため、本制度の中では、地域経済の持続的な発展に貢献する方針であることというのを付利の要件としておりまして、地域金融機関に、企業や家計の支援をしっかり行っていただくことも含め、金融インフラの役割を果たしていくように求めていくこととしております。その意味で、基盤強化との両立をまさにお願いするものということであります。
 近年、地域金融機関が進めておられる経費削減といいますのは、間接部門や不採算なリテール業務の人員を削減して、その分を貸出業務の方に回していくという形で地域の金融機能や収益性を高めるものでございます。こうした進め方を継続していっていただきたいというふうに我々は考えているところであります。
 また、この制度の適用を受けることによりまして、金融機関は、経営基盤の強化あるいは当座預金への追加付利を通じまして収益、自己資本が改善することになりますので、貸出余力を高めることにつながるというふうに考えております。

#51
○古賀之士君 ありがとうございます。
 ですから、地域の金融機関の方々とお話をすると、まさにその辺が一番心配をされていらっしゃるところなんですね。低金利の下で、本当に釈迦に説法ですけれども、なかなか収益を上げることができないこの昨今の中で、窓口の業務というのはなかなか効率的にも運用ができない。一方で、ネットなどはかなり積極的な積み上げ、利益をしっかりと積み上げてきているという現実があります。こういったものをしっかりとフォロー、サポートする制度であってほしいというのは、多くの地域の金融機関の、そして地域の皆さんたちの願いでもあると思いますので、どうぞひとつよろしくお願いをいたします。
 それでは、日銀の財務について次は伺ってまいります。
 国債発行総額に占める日銀保有割合、ETF及びJ―REITの発行総額に占める日銀の保有割合は、それぞれどれぐらいでしょうか。また、それぞれの市場におけるインパクト、これはどのように認識をされているでしょうか。

#52
○参考人(内田眞一君) お答え申し上げます。
 本年三月末時点でございますが、国債発行残高に占めます私ども日本銀行の保有割合は四四%程度でございます。また、ETF及びJ―REITの保有割合は、それぞれ市場全体の規模であります株式市場、それからJ―REIT市場との対比でございますが、時価総額の六%、五%、それぞれなっております。
 効果ということでございますけれども、これらの買入れは、感染症対策を含めまして、大規模な金融緩和の手段として行っているものでございます。具体的に申し上げますと、長短金利操作、いわゆるイールドカーブコントロールの下で、この国債買いによりまして適切なイールドカーブを実現していくということができております。また、ETF及びJ―REITの買入れでございますが、リスクプレミアムへの働きかけという効果をしっかりと発揮しているというふうに評価しております。
 一方で、様々なオペ運営上の工夫も行いまして、市場の機能度に著しく阻害しないようにということもやっております。現実でそういうことは起きていないというふうに認識しておりますが、この点につきましては引き続き丹念に点検してまいりたいと思います。

#53
○古賀之士君 具体的な最新の数字を挙げていただきまして、ありがとうございました。
 では、日銀の黒田総裁に伺いますが、今こういった日銀の保有割合が、例えば、国債が四四%、ETFが五・九%、J―REITが五%、こういった状況の中で、海外の中央銀行とも比較して、今現状、黒田総裁、どのように認識をされていらっしゃるでしょうか。

#54
○参考人(黒田東彦君) 御案内のとおり、日本銀行は、二〇一三年の量的・質的金融緩和の導入以降、大規模な金融緩和を継続しておりまして、それに加えて、今回の感染症拡大の影響を踏まえて、様々な手段によりまして数十兆円の規模で資金供給を拡大をいたしております。そうした下で日本銀行のバランスシートは大きく拡大しております。
 海外の中央銀行も感染症の対応としてバランスシートを拡大しておりますけれども、例えば名目GDPとの比率で比較いたしますと、日本銀行は一三〇%程度になっているわけですが、FRBの三〇%程度あるいはECBの七〇%程度をかなり大きく上回った状況にあるということでございます。

#55
○古賀之士君 それでは、コロナ禍の現状の中で大変お聞きするタイミングでは今ないのかもしれませんけれども、ただ、ちまたでは、やっぱりこういう大量の金融緩和によるバランスシートの拡大ということを受けて、早くも、例えば、新しいETFの買取りの機構をつくったらどうじゃないかとか、あるいは企業に買ってもらった方がいいんじゃないだろうかとか、あるいは割引をして個人に売っていけば、これ競争率も高くなって、人気でみんな買ってくれるんじゃないかとか、あるいは抽せん方式でNISAやiDeCo、こういった長期で保有していらっしゃる方にこれボーナスとして少しあげたらどうだろうかとか、まあいろんな説が出始めております。
 いわゆる出口戦略に関して、日銀は今どういう戦略を、今何か検討をされていらっしゃるのかされていないのか、あるいはされているとしたら、できる範囲でいいので、どういう出口戦略を今考えていらっしゃるのか、教えていただけないでしょうか。

#56
○参考人(黒田東彦君) 物価安定目標の実現には、なお時間が掛かると見込まれている状況にあります。また、先ほど来申し上げているとおり、内外の金融市場は、ひところの緊張は緩和していますけれども、感染症の影響によって経済の不透明感が強い中で、なお神経質な状況にあります。
 御案内のとおり、特に欧米等では株式市場や金利の市場においてかなり大幅な変動が起こっております。為替は比較的安定はしておりますけれども、それでも全体として金融市場が神経質な状況にあるということは事実でありまして、こうしたことを踏まえますと、国債の大量の買入れあるいはETFの買入れなどを含めて、金融緩和からの出口のタイミング、あるいはその際の具体的な対応を検討する局面には至っていないというふうに思っております。
 もちろん、先行き、物価安定の目標の実現に近づく際には、当然のことながら、出口に向けた戦略、方針について金融政策決定会合で十分議論して、適宜市場に対して情報発信してまいりたいと思っておりますけど、今の時点はまだそこは時期尚早であろうと。
 当然のことながら、特にFRBは二%にほぼ達して、少しずつ量的緩和を縮めていたんですけれども、それは今コロナの下で再び再拡大に向かっております。
 それから、ECBの場合はそういう出口のことはまだ議論しないままにコロナに来ているということで、日本銀行の場合も出口の議論をする前にコロナの感染症が来て、今、日米欧とも皆それに対応して大規模な金融緩和をしているという段階で、ここからの出口の議論というのはまだ欧米も含めて具体的には行われていないということでありまして、あくまでもコロナだけでなくその二%という物価安定の目標に向けて、それが実現が近づいてくる段階で当然出口のことは十分議論し、情報発信してまいりたいというふうに思っております。

#57
○古賀之士君 もう時間がないので終わります。
 黒田総裁、非常にそのお気持ちも分かりますよ。私も同じようなお考えを持っているところもございます。ただ、それによってまた、現状まだ出口戦略これからだということですと、また不安に覚える方もいらっしゃる。それから、あと、日本の市場というのは、御存じのようにたくさんの海外の投資家も買っていらっしゃるわけですから、大丈夫だと一言最後言っていただけると大変有り難いんですが、考えておるよと、お願いします。

#58
○参考人(黒田東彦君) 中央銀行の常として、常にいつもいろいろな事態を考えていることは事実なんですけれども、やはり具体的にお示ししたり政策委員会で議論する段階にはなっていないということであります。

#59
○古賀之士君 終わります。ありがとうございました。

#60
○牧山ひろえ君 立憲民主・社民の牧山ひろえです。
 本日は、日銀の金融政策について質問させていただきます。よろしくお願いいたします。
 新型コロナウイルス感染症の影響によって本年前半の経済情勢は極めて厳しいものとなり、企業の景況感も大きく冷え込んでいます。例えば、日本政策金融公庫が四半期ごとに実施しているアンケート調査の結果を見ますと、中小企業、小企業共に、二〇二〇年四月から六月期の業況判断DIは、リーマン・ショック時や東日本大震災時を下回り、過去最低を更新しております。悪化ペースはこれまでの危機時と比べても早く、その影響は地域や業種を問わず広範囲に及んでいます。特に、飲食店やサービス業など、営業自粛の対象となった消費関連業種の苦境が目立っていることは御承知のとおりでございます。
 日本銀行が公表した全国企業短期経済観測調査、いわゆる九月短観では、新型コロナウイルス感染症による企業の景況感の悪化について、一定の歯止めは掛かったようにも見えます。その一方で、経済活動は再開しつつあるものの、業種によっては回復度合いに明暗が分かれています。事業活動に制約が掛かっていることで需要が減少して資金繰りに不安を感じている企業が増加しており、事業活動や雇用の継続に懸念が生じかねない状況にあると考えております。
 現時点での我が国経済の状況と企業の景況感、また今後の見通しについて日銀の認識をお伺いしたいと思います。

#61
○参考人(黒田東彦君) 先ほど冒頭で申し上げましたとおり、我が国の景気はこの内外における新型コロナウイルス感染症の影響から引き続き厳しい状態にあるということでありますが、経済活動が一定の範囲で再開するという下で持ち直してきております。
 この間、企業の業況感も大幅に悪化した後、幾分改善しているわけですが、ただ、このコロナの影響が非常に大きく出た四―六月期ですね、それは物すごく大きく、日本だけでなくて欧米も大きく沈んで、これは御指摘のように、リーマン・ショックやその他の不況を上回る勢いで物すごく大きく落ちたわけですが、これまた欧米とともに、また日本もそうですけど、七―九月にかなり回復したわけですが、その後、欧米で特に感染症が非常な勢いで再拡大しているということもあって、十―十二月の回復のペースは相当落ちるんじゃないかと、国によってはマイナスになるんじゃないかという心配をするヨーロッパの国もあるようでありまして、そういう意味では、大きく落ち込んだ後、改善していると、持ち直しているということは事実なんですけれども、まだ今後の動向によってはいろいろ心配しなくちゃいけない点もあるということだと思います。
 一応、メーンシナリオとしては、そうはいっても、緩やかではあっても持ち直していくという中で、緩和的な金融環境あるいは政府の経済対策の効果にも支えられて改善基調はたどると思うんですけれども、やっぱり感染症への警戒というのはワクチンが普及するまでは日本でも欧米でもなくならないと思いますので、御指摘のような外食、宿泊、観光等、対面サービスについては、一定の回復はしたといっても、ずっと低位で低迷している状態にあるということは事実だと思います。

#62
○牧山ひろえ君 答弁でも言及がありましたけれども、日銀は十月の展望レポートで、我が国の二〇二〇年度の実質GDP成長率をマイナス五・五%と見込み、翌二〇二一年度は三・六%と強く回復して、二〇二二年度も一・六%と、特徴的な軌道に戻ると予測しています。しかし、OECDの見方はそれより厳しく、マイナス五・八%と予測しています。
 日銀の見通しは、新型コロナの大規模な感染が発生しないなどの前提に立っていますけれども、不確実性のあることも同時に触れておられます。感染状況が再び悪化して、そして第三波とも指摘される中で、改めて見通しの前提を考え直す必要もあるのではないかなと思いますが、いかがでしょうか。

#63
○参考人(黒田東彦君) 御指摘のように、十月の展望レポートでは、広範な公衆衛生上の措置が再び導入されるような感染症の大規模な再拡大はないということを見通しの前提として置いておったわけであります。
 足下、世界的に、先ほど申し上げたように、感染が再拡大して、公衆衛生上の措置を強化する国も見られております。もっとも、春先に比べますと、より限定的な形で公衆衛生上の措置を実施する国が多いようでありますし、今のところ、国内においては感染対策と経済活動の両立のバランスを取るという観点から様々な措置が講じられておるわけでありまして、現時点で展望レポートの前提がもう完全に覆ったというふうには考えておりませんが、先ほど来申し上げているように、特に欧米における感染症の拡大が非常に厳しいということなども踏まえますと、やはり不透明感も強いし、日本銀行としては、感染症の影響を中心にやはり引き続き内外経済の動向を十分注視していきたいというふうに考えております。

#64
○牧山ひろえ君 ある程度のリスクを前提とした上で予測を立てた方が、より政策的な対応の余地が大きくなると考えます。感染被害の持続を前提とした上での対応の準備が必要だと思います。また、予測の前提に変更があった際には、柔軟そして迅速に予測に反映していただくことを是非希望したいと思っております。
 二〇一二年十二月に発足した第二次安倍内閣は、アベノミクス第一の矢として大胆な金融政策を掲げました。翌二〇一三年一月には、政府、日銀が、デフレ脱却と持続的な経済成長の実現のための政府・日本銀行の政策連携についてという共同声明を公表しています。そして、日銀の物価安定目標を消費者物価の前年比上昇率で二%というふうに定めました。同年の四月に、量的・質的金融緩和を導入して、二年程度で物価安定目標を達成するというコミットメントを打ち出しました。同じ年の三月に御就任された黒田総裁が、これまでとは量、質共に次元の違う金融緩和というふうに発言されていましたために、異次元緩和とも呼ばれています。
 この物価安定目標につきましては、黒田総裁が二年を念頭にできるだけ早期に二%を達成するというふうに述べられてきましたけれども、展望レポートでの達成時期の見通しは六度にもわたり後ずれが続きました。二〇一八年四月以降は達成時期の文言が削除されて、達成時期の見通しが示されていないんですね。達成見通しを公表から非提示に切り替えたことについては、日銀は、計数のみに過度な注目が集まることは適当ではないからというふうに説明されています。ですが、このときまで達成時期の目安を示し続けたこととつじつまが合わないように感じるんですね。
 改めて、達成時期の目安を公表しなかった理由、これをもう少し私たちが理解できるように是非御説明いただきたいんですけれども、よろしくお願いいたします。

#65
○参考人(黒田東彦君) 消費者物価の前年比が二%程度に達する時期の見通しにつきましては、先行きの経済・物価見通しを示したいわゆる展望レポートで二〇一八年一月まで公表しておりました。もっとも、市場の一部では、こうした見通しを二%の達成期限と捉えて、その変化を政策変化に結び付けるといった解釈が広く行われておりまして、このため、物価の先行きの展望については、これは見通しであるということを明確にするという観点から、市場とのコミュニケーションの方式を見直したということであります。
 なお、展望レポートの後ろには常に、今年、来年、再来年度という物価の見通しは従来どおりずっと示しておるんですけれども、本文の中で二%に達するであろう時期というものを明示するということは、見通しであるということでなくて、その達成期限で、その達成期限が延びるんだったら何か即金融政策の追加が行われるんじゃないかという、予断というか、そういう議論を招いたものですから、そこは見通しであるという本来のものをはっきりさせるために本文からは削除したということであります。

#66
○牧山ひろえ君 そもそも、政策目標を策定し実施する上で、目標とする年限を策定するのは常識と言ってもいい話だと思うんですね。また、非開示が適切というならば、当初、達成予定時期を明示していたのは何だったのかなと思うんです。いずれにせよ、達成時期の目安さえ示さない政策目標を掲げ続けることには疑問が残ると思います。
 この二%目標は、アベノミクスの異次元緩和開始以来一度も達成したことがなく、直近の見通しでも二〇二二年度の消費者物価指数がプラス〇・四%、プラス〇・四からプラス〇・七というふうになっており、達成の見通しが立っていないんですね。その間、量的・質的金融緩和の導入に始まり、マイナス金利、イールドカーブコントロール、リスク性資産の買入れ増など、あらゆる金融手法を繰り出しながら未達成なんです。
 二%目標が長きにわたり未達成の理由はなぜなんでしょうか。

#67
○参考人(黒田東彦君) この二%の物価安定目標が達成されていない背景というのは、もちろん様々な要因があると思いますが、何はともあれ我が国では予想物価上昇率の形成が過去の物価動向の実績に引きずられる傾向があるという、経済学者が言ういわゆる適合的な期待形成の比重が非常に大きいということがあります。
 そうした下で、二〇一四年以降の原油価格の大幅な下落などによりまして、御案内のとおり、二〇一三年の四月に量的・質的金融緩和を導入して、消費者物価上昇率はマイナス圏から順調に上昇していって、二〇一四年の夏頃には消費税導入の影響を除いても一・五%程度まで行っていたわけですが、その頃から非常に大幅な原油価格の下落が起こりまして、それによって実際の物価上昇率も下がっていく、そういう下で予想物価上昇率も下がっていく、それがまた実際の物価上昇率にも影響するということで、予想物価上昇率が二〇一四年以降の原油価格の大幅な下落などによって再び落ち込んだということがかなり大きな影響がありました。
 また、足下では、新型コロナウイルス感染症の影響によってやはり物価に下押し圧力が出てきているということは事実だと思います。
 さらに、よりその根本的な要因としては、やはり九〇年代から続く長期にわたる低成長やデフレの経験などから、どうしてもこの賃金や物価が上がりにくいことを前提とした考えや慣行というものが企業だけでなく家計も含めて根強く残っているために、企業はどうしてもその慎重な物価とか賃金の設定スタンスが明確に転換したというふうになっていないと。少しは変化しているようですけれども、明確には転換していないということも言われております。
 さらには、企業の生産性向上の余地が大きいとか、近年のこのIT技術の進歩とか、そういうことも、これは我が国だけでなくて欧米もそうなんですけれども、物価上昇率を抑える方向に向かっているというふうに言われております。
 そういう意味で、二%の物価目標がなかなか達成されていないということについてはいろいろな背景があるとは思いますけれども、物価の安定というのは中央銀行の使命ですので、そういう意味では誠に残念であり、今後とも二%の目標の実現に向けて粘り強く金融緩和を続けてまいりたいというふうに考えております。

#68
○牧山ひろえ君 今まで七年間未達成で、将来も含めて見通しでは十年近く達成できない政策目標をかたくなに堅持し続けることに意味はあるのかなと思うんです。そもそも、本当にこの二%目標が正しいターゲット設定なのか、再考すべき時期なのではないかなと思うんですね。
 もしこの目標設定が正しいというのであれば、目標達成に向けて現実的な実効性のある戦略について改めて総合的に検討すべきではないでしょうか。

#69
○参考人(黒田東彦君) まず、二%の物価安定の目標を設定した理由としては幾つかあると思いますけれども、まず第一に、消費者物価指数には、統計の性質上、この上方バイアスがあるということでありまして、第二点としては、景気が悪化した場合の金融政策の対応力を確保していくための政策の余地を確保するという必要も考慮したものであります。
 海外の主要な中央銀行も消費者物価上昇率で二%を目標として政策運営を行っておりまして、言わばグローバルスタンダードになっているということで、これは長い目で見た為替レートの安定にも資するものというふうに考えております。
 ただ、二%の目標の達成に時間が掛かっているということは大変残念なことでありまして、二〇一三年の量的・質的金融緩和の実施以降、大規模な金融緩和を続ける中で経済は大きく改善して、物価が持続的に下落するという意味でのデフレではない状況になっているというふうには見ております。
 なお、欧米のほとんどの中央銀行につきましても先ほど申し上げた二%という物価安定目標を設定しているわけですけれども、ほとんど全てこの十年ほど達成されていないわけであります、リーマン・ショック後ですね。
 ただ、そうであっても、やはり先ほど申し上げたようないろいろな理由から二%という物価安定目標を掲げて金融政策を運営していくということは必要であると、正しいというふうに私どもも考えていますし、欧米の中央銀行もそのように考えているということであります。
 いずれにいたしましても、経済が感染症の影響から脱して改善していく下で、時間は掛かりますけれども、二%の目標に向けて徐々に上昇率を高めていくと見ておりますので、今後とも強力な金融緩和、やはり粘り強く続けていく考えであります。
 金融政策のフレームワークについてどうかということであれば、御案内のように、今のイールドカーブコントロールを導入する際、量的・質的金融緩和、マイナス金利、量的・質的金融緩和の拡大等々を踏まえて、二%が達成されていないという状況の下でどういったフレームワークが適切かということで、現在の長短金利操作付き量的・質的金融緩和を二〇一六年以降行っておりまして、今の時点でそのフレームワークを全面的に見直すという予定はありませんけれども、御指摘の点も踏まえて、必要な時点では当然それまでの対応策とその結果を踏まえて議論するということになると思います。
 ただ、今コロナの話で、日本銀行のみならず世界の中央銀行はそれに対応するための強力な金融緩和を続け、財政出動と協調して進めていますので、今の時点でそのフレームワークを見直すというのは考えられませんけれども、将来、適切な時点で議論するということはあり得ると思います。

#70
○牧山ひろえ君 この日銀の異次元緩和には様々な副作用が懸念されています。例えば、日銀による大量の国債買入れによる財政規律の緩み、いわゆる財政従属、ETFなどの資産買入れによる市場機能の低下、低金利による金融機関の収益悪化に伴う金融仲介機能の低下などです。
 財政従属については後ほど言及するとしまして、市場機能の低下、そして金融仲介機能の低下、これらについてはどのように認識されておられますでしょうか。

#71
○参考人(黒田東彦君) 確かに、強力な金融緩和による副作用として、株式市場の機能低下あるいは金融仲介機能の低下を指摘する声があるのは十分承知をいたしております。
 もっとも、ETFを通じた日本銀行の株式保有割合は株式市場全体の六%程度にとどまっている下で、株式市場の機能度が著しく阻害されているということはないというふうに思っております。また、コーポレートガバナンスの面でも、ETFを構成する株式について、いわゆるスチュワードシップ・コードの受入れを表明した投資信託委託会社、アセット・マネジメント・カンパニーですね、による適切な議決権の行使が行われることになっております。
 また、金融仲介機能という点でも、我が国の金融機関は充実した資本基盤を備えていることなどから、現時点では低金利環境の継続により金融仲介が停滞方向に向かうというリスクは大きくないというふうに判断しておりますが、この点については、引き続き、やはり政策の効果と御指摘のような副作用というかコストを点検しながら適切な金融政策運営を行っていく考えでございます。

#72
○牧山ひろえ君 金融緩和の有用性が副作用を上回るように、極めて注意深い運用が必要だと考えております。
 日本は、欧米に比べ潜在成長率が低いにもかかわらず、長期にわたり資産買入れといった非伝統的な金融政策を継続してきたこともあり、欧米中銀と比べると日銀の資産規模は二から四倍程度になっています。金額にしますと、二〇一三年三月末段階の約百六十五兆円から、二〇二〇年三月末現在で六百兆円を超えるまでに膨れ上がっています。
 異次元と称されるほどの金融緩和に伴う弊害は先ほど指摘したとおりなんですけれども、新型コロナへの対応で日銀の資産規模は更に膨れ上がる一方だと思うんですね。新型コロナへの対応は急務であり、現在の取組の必要性が優先なのは大前提だと思うんですけれども、遠い将来までも含め、いつまでも蛇口を開けっ放しということは成り立つのかなと思うんです。
 大規模な金融緩和は、リーマン・ショック以降、日銀に限らず欧米諸国でも採用されました。ですが、あくまでもそれは緊急的な措置であって、永続的なものとするのは良くないという方針が原則として認識されていました。そのため、ほかの国では、緩和措置の解除、すなわち出口戦略への移行を試みていました。
 現時点では、コロナ対策もあって諸外国も緩和基調であることは言うまでもないんですけれども、ですが、今では全くないにせよ、コロナの対応が落ち着いて物価安定などの政策目標が達成され、そして外的な条件が整った場合など、日銀の資産縮小といった出口局面に対応しなければならない時期が将来どこかで到来することは想定しておられるのでしょうか。また、この出口戦略を実施すべき時期や条件についての御所見を是非お示しいただければと思います。

#73
○参考人(黒田東彦君) 御指摘のとおり、物価安定の目標を実現するために大規模な金融緩和を行っておりますので、先行き、物価安定の目標の実現が近づく際には、当然、金融緩和からの出口についても検討していくということになります。そうした状況になりますれば出口に向けた戦略あるいは方針について金融政策決定会合で議論をして適切に情報発信をしていくことになるというふうに思っております。
 ただ、足下、物価安定の目標の実現になお時間が掛かるというふうに見込まれることを考えますと、出口のタイミングあるいはその際の具体的な対応を検討する局面には至っていないというふうに考えておりますが、御指摘のように、目標の実現が近づく際には当然のことながら出口について検討し、情報発信をしていくということになります。

#74
○牧山ひろえ君 今の段階でも、出口段階で日本経済に及ぼしかねない負荷をアベノミクス以来の金融対応でため込んでしまっていることを深く心配しております。
 日銀の国債等の保有残高は年々増加し、二〇二〇年十月末には五百三十六・一兆円に達しています。日本の名目GDPが二〇一九年度末で約五百五十二兆円ですから、これに匹敵する規模です。
 日銀は、新型コロナ対策として、金融市場の安定確保のため、四月二十七日の決定会合で以下のように定めました。長期国債の買入れ額について、保有残高の増加額年間約八十兆円をめどとしつつ、弾力的な買入れを実施するとの記述を削除して上記を撤廃しました。長期国債の積極的な買入れを無制限でということです。
 日銀は二〇二〇年三月末時点で全体の四四・二四%の国債を保有していますが、黒田総裁は、今後、保有割合が六割、七割になったとしても財政ファイナンスではないというふうに述べられております。その想定からしますと、保有率が八割、九割となったとしても財政ファイナンスではないということになるんでしょうか。

#75
○参考人(黒田東彦君) 先ほど来申し上げておりますとおり、今、日本銀行による国債の買入れというものは、金融政策運営上の必要に応じて実施しているものでありまして、政府による財政資金の調達支援が目的のいわゆる財政ファイナンスではないということであります。したがいまして、日本銀行は政府の国債を直接引き受けるということはしておりませんし、物価安定の目標を実現するため、金融市場を通じて国債を買い入れるということでございます。
 国債の保有割合自体が財政ファイナンスかどうかを判断する基準にはならないというふうに考えておりますが、いずれにいたしましても、あくまでも金融政策の必要性に応じて国債その他の金融資産の買入れを行っているということでありますので、先ほど来申し上げているとおり、二%の物価安定目標の実現に近づいた際にはそういったことも含めて出口の戦略を具体的に議論して情報発信をしていくということになると思います。

#76
○牧山ひろえ君 一般的に、政府の財政政策によって生じた財政上の不均衡を解消するため中央銀行が追随的に金融政策を調整する状況に陥ると、物価の安定が損なわれて、インフレーションが生じるおそれがあります。歴史的にも第一次世界大戦のドイツを始め、財政赤字のマネタリーファイナンスがハイパーインフレーションを招いた事例も数多く知られています。日銀による大量の国債買入れは実質的な財政ファイナンスに当たり、中央銀行の独立性を失わせるばかりか財政規律を弛緩させるおそれがあることが指摘されています。
 今回、日銀は新型コロナ対策として国債買入れの上限を撤廃していますが、その意味と狙いは何なのか、そして、どのような仕組みで必要以上の買入れを制御するのか、分かりやすく御説明いただければと思います。

#77
○参考人(黒田東彦君) 我が国の債券市場では流動性がやや低下していたわけでありまして、そうした下で、四月の金融政策決定会合で、債券市場の安定を維持し、イールドカーブ全体を低位で安定させるという観点から、当面、国債を積極的に買い入れることが適当というふうに判断いたしました。その際、金融市場調節方針を実施するために必要な金額の国債買入れを上限を設けず行うということを明確にいたしました。
 その上で、国債買入れはあくまでもイールドカーブコントロールの枠組みの下でゼロ%程度という長期金利の操作目標を実現するために必要十分な額を買い入れることといたしておりまして、足下の状況では国債の買入れ額自体はやや減少しているという状況でございます。

#78
○牧山ひろえ君 次は、CBDC等についてお伺いしたいと思いますが、CBDCとは紙幣等の現金通貨をデジタル形式で発行し流通させるものです。
 今年一月に発足した主要中央銀行などの共同研究グループは、CBDCの実現可能性に関する報告書を本年十月に公表しました。この報告書は、CBDCの発行をコミットするものではないことを前提とした上で、金融機関に利用が限られるホールセール型CBDCではなく、個人や一般企業を含む幅広い主体が利用可能な一般利用型CBDCに焦点を当てています。
 一般に幅広く利用可能な電子マネーなどについては、多くの民間企業が積極的に参入しています。その状況の中で、日銀が民間の取組を後押しするのではなく、このタイプのデジタル通貨の発行を研究する、その意味を御説明いただければと思います。

#79
○参考人(黒田東彦君) 民間の銀行あるいはノンバンクの決済事業者は、これまでも様々なイノベーションを駆使して新たな決済サービスを提供してまいりました。
 中央銀行、先ほど御指摘になった日銀を含む七つの中央銀行がCBDCの在り方について研究レポートを発表したわけですけれども、中央銀行は先ほど申し上げたような民間の前向きの取組をサポートする立場にありますので、先般公表されたBISのレポートあるいはCBDCに関する日本銀行の取組方針におきましてもこの点は強調しておりまして、CBDCを発行する場合には、中央銀行と民間部門による決済システムの二層構造、これは維持することが適当というふうにしているのもそういう考え方の表れであります。
 その上で、日本銀行としては、安全で便利な決済手段を国民に広く提供する責務を果たすという観点から、技術革新の急速な進展など、CBDCをめぐる今後の様々な環境変化に適切に対応できるよう必要な準備をしっかりと進めておくことが重要であるというふうに考えておりまして、あくまでも民間の取組を後押しするという考え方に変わりはございません。

#80
○牧山ひろえ君 時間ですので、終わります。

#81
○秋野公造君 公明党の秋野公造です。お役に立てるように質疑したいと思います。
 まず、総裁にお伺いをしたいと思います。
 黒田総裁は、二〇一三年の一月、政府、日本銀行の共同声明で確認をされたデフレ脱却と持続的な経済成長の実現のための政策連携の強化、これを政策運営の基本としてきたわけでありますけれども、政権も替わりました。今後、菅政権の間でどのような政策連携を図っていくのかということをまずお伺いをしたいと思います。
 九月二十三日には総理と初めて面談されたとお伺いをしております。今後どのように政策連携をしていくのかということ、どのようなお話をされたかということも含めて、まずお伺いをしたいと思います。

#82
○参考人(黒田東彦君) 御案内のとおり、今回のコロナ感染症への対応として、政府はリーマン・ショック時を大きく上回る経済対策を実施しております。この間、日本銀行は、強力な金融緩和措置によりまして企業等の資金繰り支援と金融市場の安定維持を図っております。このように、政府と日本銀行がそれぞれの役割の下で連携しながら政策運営を行うということで、我が国の経済、金融面をしっかりと支えておるわけであります。
 マクロ経済政策運営に当たりましては、実は日本銀行法にも明確に定められておりますとおり、政府と中央銀行が十分な意思疎通を図る必要があるということは全くそのとおりでありまして、日本銀行としては、引き続き政府としっかり連携しながら適切な政策運営を行ってまいりたいというふうに考えております。
 菅総理とお会いした際にも、政府としっかり連携して適切な政策を運営していきたいということを申し上げました。

#83
○秋野公造君 特に変更はないということで理解をいたしました。
 内閣府が十六日に発表した二〇二〇年七月から九月期のGDPはプラス成長に戻ったと、個人消費も実質四・七%の増加と、こういったことで、持ち直したという表現になろうかと思います。
 一方で、内閣府が発表した十月の消費動向調査は、消費者心理を示す消費者態度指数が〇・九ポイント上昇と、これも二か月続いて上昇しているわけでありますけれども、消費者マインドの基調判断は、依然として厳しいものの持ち直しの動きは続いているということで、判断は据え置いているわけであります。
 ちょっとここでお伺いをしたいのは、新型コロナウイルス感染症の感染拡大のリスク、雇用不安、こういった先行き不透明の状況の中で、消費者は積極的な支出を控えているのではないかということ。もう一歩踏み込んで私が懸念するのは、そもそも支出をすることが困難な方も増えているのではないかといったようなことを見解をするのですが、これちょっと、日銀の中でどんな議論が行われているか、お伺いをしたいと思います。

#84
○参考人(内田眞一君) お答え申し上げます。
 我が国の個人消費でございますけれども、新型コロナ感染症の拡大の影響で春先に大幅に減少したと。その後、先生御指摘のとおり、営業活動が再開する下で、一つ、特別定額給付金の効果、それから、いわゆるペントアップ需要と申しますか、自動車等々でそういった需要もございまして、財の消費を中心に全体としては徐々に持ち直しているということかと思います。
 もっとも、感染症への警戒ということは引き続き強いということでございますので、飲食、宿泊等のサービス消費の回復ペースは鈍いということで、全体として、個人消費全体として低水準となっております。そういう意味で、先行きにつきましては政府の経済対策などにも支えられて持ち直しを続けるというふうに見ておりますが、一方で、対面型サービスを中心にそのペースはかなり緩やかになるだろうというふうに私どもは予想しております。
 御指摘のとおり、このところまた感染者数が増えてきているということでございますので、今後、その影響、特にサービス消費に対する影響ということについてはよく見てまいりたいというふうに思っております。

#85
○秋野公造君 特別定額給付金とかペントアップ需要の重要性についてよく理解をいたしました。
 先ほど来、FRBの動きなどについての質疑もありましたけれども、ちょっと、もうちょっと大きな観点で、このアメリカ大統領選の結果の確定が今後長期化しそうな状況であります。政権が交代しても、この政権の移行というのが円滑に行われないのではないかといったことも懸念をされているわけでありまして、この混乱した状況が長引く場合に、我が国の経済あるいは金融証券市場に与える影響、そしてその対応についてどのようにお考えになっているか、これは総裁にお伺いしたいと思います。

#86
○参考人(黒田東彦君) 確かに、内外の金融市場は、特に本年の二月下旬以降、感染症の影響によって大きく不安定化いたしました。これは、やや異例とも思われる、例えば、こういうときになると国債に対する需要が増えて国債の価格が上がり国債金利が下がってもいいのに、米国債の金利が上がったり、株式市場、為替市場も含めて非常に大きく不安定化いたしました。ただ、その後、各国の政府、中央銀行がかなり迅速に、しかも積極的な対応を取ったということで、全体として金融市場の緊張はひところに比べて緩和しているということは事実だと思います。
 御指摘の米国大統領選挙につきましては、確かに金融市場への影響を懸念する声もたくさんあったわけですけれども、これまでのところは金融市場に余り大きな混乱は見られておりません。しかしながら、感染症の影響を中心に先行きの不透明感が強いということで、金融市場は依然として神経質な状況にあることは事実であります。株式とかその他のレベルだけでなくて、いわゆるリスクというか、そういうものの指標はまだかなり高い状況に残っているわけです、特に欧米におきましてですね。
 そういうことで、やはり金融市場は依然として神経質な状況にありますし、このところ市場の値動きが荒い場面も見られております。私も毎日あのスクリーンを見ているんですけれども、欧米の各所の金融市場の動きはかなり荒っぽい動きがありますので、やはり、米国大統領選挙そのものについて私が何か申し上げる立場にありませんが、いずれにしても、内外の金融市場の動向についてはやはり十分注視してまいりたいと思っております。

#87
○秋野公造君 日本銀行は、十月三十日に公表したいわゆる展望レポートにおいて、消費者物価は当面マイナスで推移をするとしているわけであります。そして、この経済、物価の先行きの見通しは更に不確実性が高く、下振れリスクが大きいと、こういう認識を示しております。ちょっとこれが懸念するのが、デフレの再燃の懸念がないのかということをちょっと確認をしておきたいと思っています。
 それは、景気回復が遅れているというか鈍くなっているということで、二〇二〇年の七―九のGDPはプラスに戻ったと先ほど申し上げましたけれども、設備投資はマイナス三・四と、住宅投資もマイナス七・九ということで減少が続いておりまして、企業の投資意欲が減退して設備投資が抑制に至っているのではないかということであれば、なかなか、多少のリスクを取っても積極的に投資へ向かうということがなかなか考えにくい状況ではないかと思っておりまして、企業の行動と、それから消費者の消極的な購買意欲といいましょうか、こういうところが相まって需要が低下をするのではないかと、そうすると値下げに動かざるを得ないのではないかと、その結果改めてデフレの状態に陥る懸念はないかと、ちょっとこういうことを懸念をしておりますが、これ総裁にお伺いしたいと思います。

#88
○参考人(黒田東彦君) 御指摘のように、設備投資が企業収益の悪化あるいは先行きの不透明感などを背景にして減少傾向になっている。特に、中身を見ますと、宿泊、飲食業などの感染症の影響を強く受ける業種を中心に減少していると。こういった業種はなかなか完全に元に戻るというのは難しいというふうに思っております。
 ただ、短観のその今年度の設備投資計画は、全体としてはマイナスに修正されたわけですけれども、現時点では小幅なものにとどまっておりますし、ソフトウエア投資計画は非常に大幅に増加する形になっておりまして、成長分野への投資意欲というものは維持されているんじゃないかと。したがいまして、先行き、感染症の影響が和らぐ下で、企業収益の改善に伴って設備投資も増加基調に復していくのではないかと見ております。
 こうした下で、物価が全般的、持続的に下落するというデフレ状況になるおそれはないかということですが、この点は、企業の価格設定行動として、現時点で値下げの動きが広範化していないということであります。その理由としては、先ほど申し上げたように、対面サービスなどサービス需要が減少しているわけですが、それが感染症の影響によってそうなっているということを企業側も分かっておりまして、経済学的に言うといわゆる需要の価格弾力性が低くなっているということでありますので、企業として今ここで値下げをして需要を取り込むということはできないということは分かっていますので、企業の価格設定行動自体がこの値下げの動きに広がっていないということであります。
 また、いろいろな議論はありましたけれども、やはり政府の所得の支援策その他が消費を支えている面もあるということでありまして、足下、確かに感染症の影響などによって物価に下押し圧力が加わっていますので、当面前年比マイナスで推移すると見ておりますけれども、経済が感染症の影響から脱して改善していく下で、プラスに転じて徐々に上昇率を高めていくというふうに見ております。なお、原油価格が下落した影響も剥落していくということもプラスに効くというふうに思っております。
 いずれにいたしましても、企業の設備投資の動向、消費者の、特にサービス消費の動向については十分注視してまいりますが、今のところ、デフレに向かっているという状況にはなっていないというふうに見ておりますけれども、やはり企業の設備投資、それからサービス消費の動向は注意を要するというふうに考えております。

#89
○秋野公造君 今、総裁、値下げによる需要喚起を図る行動が広範化していないとおっしゃったことと、それから、政府の動きが消費を支えているという御指摘も、私もそうだと思っているんですが、ちょっと細かい話なんですが、GoToトラベル、これは税金を用いた値下げによる一つの需要喚起策という捉え方もできるのではないかと思うんですけれども、私はGoToトラベルを推進する立場から、ちょっと今の、これが広範化していないといいながらも一つの大きな政策効果を上げているのは事実でありましょうから、ちょっとここについてもう少し詳しく御答弁いただけますと有り難く存じます。

#90
○参考人(黒田東彦君) GoToトラベル自身は、当然、旅行、観光需要を増やして、サービス需要を下支えしていることは事実だと思うんですね。
 他方で、消費者物価指数の計算の仕方次第なんですけれども、GoToトラベルの補助を織り込んだ形で物価指数が作られていますので、どうしてもその部分は物価の引下げ要因になると。それを含まない指数も作られていますが、それを見ますと、GoToトラベルが何か物価上昇率を押し下げているということじゃないんですけれども、こういった政府による補助が旅行、観光需要を刺激して経済、消費にプラスになっているということは事実なんですけれども、消費者物価指数の作り方によっては、それが物価の更なる引下げにつながっているように見えるということはそのとおりであります。

#91
○秋野公造君 よく分かりました。ありがとうございます。
 先ほど来も、企業に対する、三月末に期限を迎える企業に対する資金繰り支援などの延長についての議論も行われたところでありますが、先ほどの報告書の概要説明の中にも、輸出や鉱工業の生産はうまくいっているとか、あるいは、一方で、飲食、宿泊等のサービス消費は依然として低水準ということでありまして、業種や企業の規模に非常にばらつきがあるように思っておりまして、特に非製造業の中小企業の先行きにはまだまだ厳しい見方が広がっているように思います。いいところはいいんですけれども、やっぱり手を入れていかなくてはいけないところは依然存在すると思いますので、業種とか規模に応じたきめ細かな対策を講じていく必要があると私は思っておりますけれども、金融支援等の観点から日銀の中でどんな議論が行われているか、ちょっとお伺いをしたいと思います。

#92
○参考人(内田眞一君) お答え申し上げます。
 まだ感染症の影響が強く残る中で、企業金融面では当面ストレスが加わった状況が続くというふうに思っておりまして、これをしっかりと支えていくことが極めて重要だというふうに思っております。
 日本銀行、これまでも、政府とも連携しながら、新型コロナ対応特別オペ等の企業の資金繰り支援策を実施してまいりました。引き続き、これ、政府におかれて、それから日本銀行、それから現場という意味では金融機関の皆様、それぞれが役割を果たしていくと、まさにきめ細かく対応していくことが重要だというふうに思っておりまして、私ども日本銀行といたしましても、特別オペ、それからCP、社債等の買入れなど現在行っている様々な金融緩和措置を通じましてしっかりと資金繰りを支えていきたいというふうに議論しております。

#93
○秋野公造君 日本銀行が十月二十二日に公表した金融システムレポートの中では、これまでの金融システムの安定性の現状評価について、全体として安定性を維持しているとしているところでありますけれども、先行きの注意すべきリスクを三つ挙げてくださっておりまして、一つ目は国内外における信用コストの上昇、二つ目が金融市場の大幅な調整に伴う有価証券投資関連損益の悪化、三つ目がドルを中心とする外貨資金市場のタイト化に伴う外貨調達の不安定化という三点を挙げておりますけど、このリスク回避に向けた方策について、日銀内の議論をお伺いしたいと思います。

#94
○参考人(衛藤公洋君) お答えをいたします。
 今御指摘いただきましたとおり、十月の金融システムレポートにおきまして、先行きの注意すべきリスクとして、信用コストの上昇、有価証券投資関連損益の悪化、それから外貨調達の不安定化、この三つを指摘してございます。
 まず、一つ目の信用コストの上昇でございますが、これは、感染症の帰趨、それからその内外経済への影響が不確実性が極めて大きいということで、景気が長期にわたって停滞するような場合にはやはり信用コストの上昇に十分な目配りが必要だというふうに考えております。この点で重要になりますのは、金融機関から見て貸出先の企業を本業、金融両面で支援をしっかりしていくこと、その上で経営状況を踏まえた適切な引き当てを行っていくこと、これがポイントになるのではないかというふうに考えております。
 二つ目の有価証券投資でございますけれども、これも、金融市場をめぐる不確実性がなお高いということでありますので、三月のような大きな調整局面において既存のリスク管理がちゃんと機能したかどうか、これをしっかり検証して、その実効性を高める取組が重要になるというふうに考えております。
 最後に、外貨調達についてでございますけれども、我が国の金融機関はこれまでも調達期間の長期化あるいは法人預金の拡充などを通じて調達の安定化に取り組んできてはございます。しかし、今年三月の感染症の影響で外貨市場がタイト化した経験もございますので、今後も、これは調達基盤の拡充、それから資金繰り管理の強化、これを図っていく必要があるというふうに考えております。
 日本銀行といたしましても、今後も、感染症の影響も含めまして、先行きの金融システムのリスクについて予断なく点検していきたいと考えております。

#95
○秋野公造君 ETFの買入れについて、ちょっと私もお伺いしておきたいと思います。
 これまで金融緩和ということでETFの買入れをしてきたと、上限額を徐々に上げてきたということでありますが、コロナ対応においても三番目にこのETFの積極的な買入れを推進をするということですが、ここに来て、それがどれぐらい効果があるのかということ、これまでも上限額を上げてきたわけでありますが、果たしてどれぐらいの効果があるのかということをまずお伺いをしたいと思います。
 かつては四千五百億程度だったわけでありますけれども、今、十二兆円まで拡大をされているわけであります。どんどんどんどんこれを上げていけば更に効果が見込めるということなのかといったようなことも含めて、一方で株価形成のゆがみとか財務の影響とかそういったことも勘案しながらということになろうかと思いますが、ちょっと理論的なことと実際の運用を含めて、これは総裁にお伺いしたいと思います。

#96
○参考人(黒田東彦君) このETF買入れは、大規模な金融緩和策の一環ということで、株式市場のリスクプレミアムに働きかけることを通じて経済、物価にプラスの影響を及ぼしていくということを目的に実施をいたしております。
 感染症の影響によりまして、二月の下旬から三月、市場は非常に大きく不安定化したわけですけれども、日本銀行によるETF買入れは市場の不安定な動きを緩和する効果があったというふうに考えております。この間、日本銀行としても、ETF買入れを適切に実施していくために様々な工夫を行ってまいりました。例えば、個別銘柄の株価に偏った影響ができるだけ生じないように、幅広い銘柄から構成されるTOPIXに連動するETFの買入れのウエートを高めてきております。また、保有するETFの時価総額が簿価総額を下回る場合、その差額に対して引当金を計上して、これによって財務の健全性の確保を図ってきております。
 ETF買入れはこれまで大きな役割を果たしてきておりまして、引き続き必要な政策であるというふうに考えておりますが、足下では実は、毎月のETFの買入れ額は、リスクプレミアムの改善なども踏まえてかなり減少しております。これは、あくまでも十二兆円というのは、年間十二兆円という上限に、その中でマーケットの状況に応じて弾力的に行っているということでございます。

#97
○秋野公造君 最後に、LIBOR廃止に向けた取組についてお伺いをしたいと思います。
 ロンドン銀行間取引金利が二〇二〇年以降公表停止の可能性が高まっているということで、これまで、非常にこの社会的な影響が、廃止された場合の影響が非常に大きいのではないかと思っておりますが、もしもこれが廃止をされるということになりますならば、代替指標の開発といったことは我が国としても行わなくてはならないのではないかと私も思います。
 日銀において検討が今行われていると聞いておりますけれども、現在の検討状況、そして今後の課題について、日銀内の議論をお伺いしたいと思います。

#98
○参考人(内田眞一君) お答え申し上げます。
 日本銀行は、日本円金利指標に関する検討委員会の事務局を務めさせていただいております。そういう意味で市場全体の話ということになりますが、我が国では、日本円金利指標に関する検討委員会、本年の八月にLIBORの恒久的な公表停止に備えた本邦での移行計画というものを公表しております。現在は、LIBORの移行対応に関係します市場参加者が、この移行計画を参考にしながら、それぞれ自らの移行計画を策定した上で、来年、二一年末のLIBOR公表停止の可能性に備えた所要の対応を行っているという段階でございます。
 具体的に申し上げますと、この後ですが、二一年六月末をめどにLIBORを参照する貸出し、債券の新規取引を停止し、さらに、同年九月末をめどに既存、今のは新規取引ですが、既存取引につきまして、参照金利をLIBORから、御指摘いただきました代替金利指標に置き換えるような契約の更改ですとか修正、こういったものを行う、そういう準備を進めているところでございます。今後、こうした点につきまして、市場関係者との間で交渉が本格化していくということが見込まれております。

#99
○秋野公造君 よく分かりました。黒田総裁、頑張ってください。
 終わります。

#100
○委員長(佐藤信秋君) 午後一時十分に再開することとし、休憩いたします。
   午後零時十四分休憩
     ─────・─────
   午後一時十分開会

#101
○委員長(佐藤信秋君) ただいまから財政金融委員会を再開いたします。
 委員の異動について御報告いたします。
 本日、山田太郎君及び古賀之士君が委員を辞任され、その補欠として清水真人君及び石川大我君が選任されました。
    ─────────────

#102
○委員長(佐藤信秋君) 休憩前に引き続き、財政及び金融等に関する調査のうち、日本銀行法第五十四条第一項の規定に基づく通貨及び金融の調節に関する報告書に関する件を議題とし、質疑を行います。
 質疑のある方は順次御発言願います。

#103
○音喜多駿君 日本維新の会の音喜多駿です。
 菅内閣が発足いたしましたが、総裁以下日銀の皆さんも改めてよろしくお願い申し上げます。
 初めに、政府のプライマリーバランス黒字化目標と日銀の金融政策の関係について、総裁と議論させていただきたいと思います。
 先日の本委員会での所信表明で、麻生財務大臣は、二〇二五年度までのプライマリーバランス黒字化の目標を強調されておりました。私も、元来いわゆる財政保守派であり、財政再建を完全に放棄するべきだとは思っておりません。しかしながら、コロナ禍で各種の数値が悪化しており、まずは財政出動で景気回復させることが急務である現状においてプライマリーバランス黒字化に触れるのは時期尚早で、非現実的ではないかと考えています。
 というのも、五年という極めて短期でプライマリーバランス黒字化を達成すると財務大臣が発言すれば、近い将来増税があるのではないかなどという猜疑心がマーケットに生まれ、コロナ禍からの景気回復に蓋をしてしまう可能性があるからです。そして、それは日銀の掲げる二%の物価上昇というインフレ目標達成にも向かい風になるのではないかと考えます。
 そこで、まず一般論としてお答えいただきたいんですが、社会動態に不確実性が強く存在し、景気の先行きが不透明なときに、政府がかたくなにプライマリーバランス黒字化目標を維持した場合、市場及び物価に与える影響や中央銀行のインフレ目標政策に与える影響について見解を伺います。

#104
○参考人(黒田東彦君) 御案内のとおり、今回の感染症への対応として、政府は既にリーマン・ショックを大きく上回る事業規模二百三十四兆円の経済対策を実施しております。さらに、総理は新たな経済対策の策定を指示しているというふうに伺っております。この間、日本銀行は、感染症への対応として、資金繰り支援と金融市場の安定維持を図り、また、そのことを通じて、物価安定の目標を実現するために強力な金融緩和を実施しております。
 これらの政府と日本銀行の政策は、我が国経済をしっかりと支えていると考えております。また、そうした下で、一時大きく不安定化した金融市場も比較的短期間で落ち着きを取り戻しております。このように、政府と日本銀行がそれぞれの役割を果たしつつ連携して政策を行うということ、いわゆるポリシーミックスの効果によって経済、物価にプラスの影響を及ぼしているというふうに考えております。
 こうした政府と日本銀行がそれぞれ役割をきちっと果たしてデフレから脱却し、さらに経済を持続的な成長経路に乗せるという二〇一三年の一月の政府と日本銀行の共同声明というものの考え方というのは間違っていないのではないかというふうに思っております。

#105
○音喜多駿君 プライマリーバランスの黒字化という問題についてちょっと正面からお答えいただいていない印象はあるんですけれども。
 以前、日本銀行は、プライマリーバランスに関するワーキングペーパーにおいて、景気の腰折れを引き起こさないかどうかという点を重視しながら財政再建のタイミングやテンポについて検討する必要があるという内容をまとめていらっしゃいます。これはワーキングペーパーですので、日銀の公式見解とまでは言えないのかもしれませんが、景気の腰折れと財政再建のタイミング、テンポに関連性があるということは非常に説得力があり、現在のコロナ禍の状況にもまさに当てはまることだと思います。
 日銀は、今回のコロナ禍において、国債の買入れ上限を撤廃するなど、政府の大規模な緊急経済対策、先ほどおっしゃっていただいたような財政拡大路線に資する施策も行っています。こうした施策との整合性やインフレターゲットというものを考慮すれば、政府のプライマリーバランス黒字化目標についてはやはり当面撤回する、あるいは延期をする方が、日銀の施策や政策と適合し、これは説明が付きやすくなるんじゃないかと考えますが、総裁の御見解を是非お願いいたします。

#106
○参考人(黒田東彦君) ここは、財政運営そのものにつきましては、やはりあくまでも政府、国会の責任において行われるということで、具体的にコメントすることは差し控えたいと思いますけれども、一般論として申し上げると、やはり中長期的な財政健全化について信認を、市場の信認をしっかりと確保するということはやはり重要であろうというふうに思っております。
 現在、国債市場において円滑かつ安定的に金利形成が行われているのは、財政についての市場の信認が維持されていることが背景にあるのではないかというふうに思います。もとより、金融政策は主として金利を通じて経済、物価に働きかけるものでありますので、財政に対する信認が維持される下で安定的に国債金利が形成されているということは、日本銀行が適切な金融政策運営を行っていく上でも大事なことではないかと思っております。
 いずれにいたしましても、現在のようなコロナ感染症の状況に鑑みて大規模な財政出動を行うということが大変私自身も適切だと思いますけれども、一方で、やはり中長期的に財政、国債に関する市場の信認を確保していくということも重要ではないかというふうに考えております。

#107
○音喜多駿君 もちろん市場の信認というのも重要ではあるんですけれども、諸外国も今積極財政に転じていてプライマリーバランス黒字化ということは一旦棚上げしている状況においては、ある程度日本もその国際的な潮流に足並みをそろえるということは信認を失わせるものではないと思いますし、今日ずっと御議論ありますけれども、日銀の方がインフレターゲット定めて金融緩和等々やっても、国の方が増税をしたり、あるいはプライマリーバランスにこだわったりと、こうした言わばブレーキとアクセルを両方踏むようなことをやってきたことがこの長きにわたる日本の経済の低迷の原因じゃないかということはずっと指摘されていることでございますので、この点は、もちろん日銀と政府はまた別個にやられているということは十分承知をしておりますが、またこれ財務省ともしっかりとプライマリーバランスの黒字化、そしてこの三次補正予算における財政出動については議論をしていきたいというふうに考えております。
 それでは次に、日銀の手続についてオンライン化や押印廃止の観点から質問させていただきたいと思います。
 菅政権が真っ先に着手した政策の一つに、行政機関のデジタル化、そして判こ、押印の廃止があります。その目標設定とスピード感は現在のところ目をみはるものがあり、我々も大いに期待をしているところです。この改革の肝は、菅総理が所信表明演説で述べられたとおり、行政サービスのデジタル化を進めることで、コロナ禍で浮き彫りになった日本社会のデジタル化の遅れを取り戻すという点にあります。ゆえに、金融業界の先頭を走る日本銀行にもその理念を持って日本社会のデジタル化を進めていっていただきたいと思っております。
 そこでまず、日銀と国民との関わりが最も強い分野の一つである情報公開請求、この制度を取り上げたいのですが、この情報公開請求が、現在、日銀はオンラインで対応できていないということが分かりました。既に、官公庁を見ますと、国土交通省や厚生労働省、あるいは自治体では東京都などはこの情報公開請求はオンライン対応していることから、情報公開請求についてオンライン対応ができないという理由を探し出すことは困難だと考えます。
 日銀が、現在、情報公開請求においてオンライン対応を行っていない、この理由について教えてください。

#108
○参考人(吉岡伸泰君) お答え申し上げます。
 ただいま委員が御指摘になった情報公開請求の件でございますけれども、日本銀行では、現在、本店及び全国三十二の支店に情報公開窓口を開設しております。全ての窓口におきまして、対面と郵送の両方によりまして開示請求書の提出を受け付けているところでございます。
 ただ、御指摘になりましたように、これまで開示請求を受けた方からオンライン対応等、これを何か求める声は聞かれておりませんでしたので、現状、私どもは対応していないというところでございます。現状、先ほど委員から御指摘がありましたけれども、オンラインで開示請求を受け付けている行政機関、独立行政法人等、限られた数ですけれども、存在しているという点は認識しております。
 国民の知る権利に関わる重要な手続だと情報公開請求は承知しておりますので、他機関の動向等も踏まえながら、今後的確に対応に努めてまいりたいと考えているところでございます。

#109
○音喜多駿君 ニーズがなかったからやってこなかったというのはほかの分野でもよくあることなんですけれども、こうしたオンラインの手続というのができれば、当然、その利用者というのは、あっ、できるようになったんだということで使うようになってきて、そこでニーズが発見されるというか、思いに火が付くこともあるわけですね。
 そして、ほかもやっていないから日銀もやっていないというのは、これは非常に後ろ向きなスタンスであると思いますので、やはりこの金融業界のある意味ではリーダーである日銀さんがこういうことを率先してやっていただくことが日本社会のデジタル化の進展につながると思いますので、是非これは御検討をお願いしたいということを申し上げておきたいと思います。
 そして、情報公開の請求だけでなく、他の手続のオンライン化はどういう状況か、私の方でも幾つかお調べをさせていただきました。日銀は日銀ネットという情報システムを構築、運用しており、これで主に民間金融機関と取引をしているため、日銀の提供するサービスのネットワーク化は日本の公的機関の中ではトップクラスだと、そういった御意見も多くあり、この点、私も改めて高く評価をしたいと思います。
 ただ一方で、政府の行政手続などの棚卸し結果の最新の令和元年度調査によると、日銀が主体の手続八百五件のうち、少なくとも百二十五件がオンラインでの手続が不可能ということであります。また、金融機関との取引においても、非オンラインのみでしか受け付けない手続があったり、あるいは、そもそも日銀のシステムが非常に複雑であるため、オンラインを諦めて紙で提出している企業がほとんどではないか、そういった御意見も寄せられております。
 そこで、外部との諸手続におけるオンライン化について、進捗状況や利用率をしっかりと把握されているかどうか伺います。また、オンライン化を進める方針、オンライン手続や利用率を増やしていく方針は日銀内に存在するのかどうか、こちらも併せてお伺いいたします。

#110
○参考人(吉岡伸泰君) お答え申し上げます。
 委員から御指摘がありました本年三月に私どもが公表しました日本銀行が法令に基づき取り扱っております手続のオンライン利用率でございますけれども、これは約六〇%という数字でございます。御案内のように、これらの手続には、日本銀行法に基づく認可に係るものですとか、国庫、国債事務に関係するものなどもありますけれども、まだ全部が、四割というものが存在しておりますけれども、これらにつきましては、御指摘のありました政府のデジタル化の方針の下、現在、所管官庁からの指示ですとか法令改正を受けまして、鋭意、更なるオンライン化を進めているところでございます。
 また、日本銀行ではということになりますけれども、二〇一九年度に中期経営計画というのを作成しました。この中に、私どもとして、業務、組織運営に共通する情報技術に係る取組、これを重要課題として取り上げまして、行内に副総裁をヘッドとします組織横断的なIT活用推進本部を設置いたしまして、その下で、日本銀行と金融機関の間の手続をはじめまして、幅広い業務におけるITの一層の活用を進めていくと、こういう方針を固めているところでございます。

#111
○音喜多駿君 丁寧な御答弁いただきまして、今おっしゃっていただいた中期経営計画については、ちょっと一問、後でもう少しお伺いしたいと思うんですが、金融機関においてはやっぱりセキュリティーが重視されるので、オンライン化について障壁がある、抵抗があるということも理解はしているんですけれども、そこで、その金融機関、しかもそのリーダー格である日銀がやっぱり進むということは非常に強いメッセージになると思いますので、このオンライン化の利用率の向上、これは極めて重大な課題だと思いますので、是非前に進めていただきたいと思っております。
 河野大臣は、あわせて、判こ、押印廃止につき、具体的な目標である九九%廃止、こうしたことを掲げて改革に乗り出しております。そうした政府の歩調に合わせて、多くの地方自治体も押印廃止に動いております。国際金融センター構想というものもある中、日本独自の押印は、金融業界全体でもやはりここは見直しをされるべきであり、各種書類や契約書に押印を要求することはいささか時代遅れの感じもいたしております。
 そこで、日銀と外部との取引において押印を必要とする手続の数、こちらを伺います。あわせて、残高証明関係書類や考査に関する契約書、あるいは日銀定款に記名捺印を要する事項がいまだなお存在している理由についてお伺いいたします。

#112
○参考人(吉岡伸泰君) お答えいたします。
 日本銀行では、取引相手の大宗を占めます金融機関との間、これにつきましては、先ほど委員からも御指摘がありました日銀ネットなどの専用ネットワークによりまして、情報セキュリティーにも十分に配意しながら、手続のほとんどを既にオンライン化しております。
 その上でということでございますけれども、やはり商慣行や法令に基づきまして、一部の手続につきましては代表者等の押印のある書面の提出を求めているものもございます。
 委員が御指摘になりましたものも含めまして、種類ということになりますけれども、現在、一千種類超存在しているところでございます。
 これらにつきましては、政府の方針もございますけれども、それも踏まえながら、また民間実務や法改正の動向を踏まえる形で着実にオンライン化を進めてまいりたいと考えているところでございます。

#113
○音喜多駿君 確かに、日本の法制度上必要とされる押印、こうしたものは、すぐすぐというのは難しいと思います。
 ただ、御答弁にあったような商慣習上慣習として残っているもの、こちらについては、民間が言い出してくれば日銀もということではなくて、やはり金融機関のある意味リーダーである日銀がリーダーシップを取って、こういうのはやめていこうよということを言うことは非常にやはり影響力があると思いますので、不必要な押印がないかどうか、これ千種類ということですから、いま一度徹底的に精査していただいて、非効率で国際化には見合わないものというのは随時、そして早急に廃止をしていっていただきたいというふうに思います。
 そして、先ほど来の御答弁を伺いますと、オンライン化や押印廃止についてはやや受け身の姿勢で、もちろん前向きだとは思うんですけれども、受け身の姿勢で取り組んでいらっしゃるんじゃないかというような印象も持っております。せっかく政権が強く意思を持って着手をし、河野大臣も具体的な目標を持って改革を進めているわけですから、日銀も、具体的な数値目標、これを持ってデジタル改革を進めていってほしいと考えております。
 中期経営計画などを立てられているという先ほどの御答弁ありましたが、そうした計画の中で、手続のオンライン化、押印廃止の数につき、今般政府が打ち出しているような具体的な数値目標あるいは期限、こうしたものは存在するのでしょうか。また、日銀内でそうした手続のオンライン化、押印廃止を主導的に指示をしていく部局はあるのかどうか、この点、改めて参考人にお伺いいたします。

#114
○参考人(吉岡伸泰君) お答えいたします。
 先ほど委員から御指摘いただきました数値目標でございますけれども、現段階では私どもは数値目標という形では持っておりません。その点に関しまして、数値目標がないという点につきまして、これが受け身であるというふうに言われてしまうとそうかもしれませんけれども、私どもとしては、やはり積極的にデジタル化を進める方針ということは論のないところでございます。
 ただ、先ほど申し上げましたように、やはり法令ですとか商慣習ですとか、そういったものもございますし、また、政府における議論を踏まえながら社会全体の動きを見ていくと、その上でというふうに考えて、現時点では数値目標という形にはしていないというふうに御理解いただければと思います。
 その上で、先ほど、積極的に主導的に指示していく、主導していく部局はあるのかという御質問でしたけれども、ITの活用に関しましては、日本銀行の中で政策委員会室と、またシステムをやっていますシステム情報局と、この二局が共管で対応しているところでございます。

#115
○音喜多駿君 残念ながら数値目標はないという御答弁でありましたけれども、私も、都議会議員時代から、具体的な数値目標がない行政のプロジェクトというのは失敗しているという例をもう数多く、本当に数多く目にしてまいりました。
 そうした主導する部署あるいは副総裁で中期目標を作っているということですので、是非この数値目標、数字を立てていく中で、法律上できないもの、商慣習上できないもの、そういうもののえり分けというのも進んできて、ああ、このぐらいの数までだったら現実的にいけるんじゃないかと、そうしたものも見えてくると思いますので、この数値目標というのは是非設定して進めていただきますよう、せっかく前向きだとおっしゃっていただいたので、これは更に強く推し進めていただくようにお願いを申し上げます。
 最後に、総裁にもお伺いをいたします。
 こうしたオンライン化や押印廃止は、金融業界、ひいては日本社会のリーダー企業の一つである日本銀行が是非範を示すべき分野です。日銀の情報公開など外部手続において、窓口や郵送受付だけではなくオンライン化を一層進めていくべきだと考えますが、見解を伺います。
 また、押印手続についても、必要のないものは順次廃止していくべきであり、加えて、オンライン化や押印廃止を日銀が主導することが金融業界全体に広がり、国際金融センター構想などにも資すると考えますが、総裁の見解をお伺いいたします。

#116
○参考人(黒田東彦君) 先ほど理事から答弁いたしましたとおり、法令に基づく取扱手続につきましては、所管官庁からの指示や法令改正を受けてオンライン化あるいは押印手続の廃止を積極的に進めてまいりたいというふうに思っております。
 また、日本銀行と金融機関の間の手続につきましては、確かに民間実務であり、また法令によるところもありますので、そういったところは十分踏まえながらも、委員御指摘のとおり、オンライン化や押印廃止を積極的に進めて、金融業界の取組もサポートしていきたいというふうに考えております。
 いずれにいたしましても、金融面での手続がより国際標準に近づくということは、日本の金融センター、国際金融センターとしての地位向上にも資するのではないかというふうに考えております。

#117
○音喜多駿君 やはり判こといえば銀行、金融あるいは不動産、こういったイメージが世間には多くありますので、これは本当に金融業界、日銀からこれを改善していくということは非常に大きな意義があると思いますので、是非、日銀総裁のリーダーシップに期待しておりますので、よろしくお願いを申し上げます。
 残り三分となりましたので、済みません、地域金融飛ばさせていただいて、私からは中央銀行デジタル通貨について簡潔に御質問させていただきたいと思います。
 前回の日銀質疑で私もこの問題取り上げてから開発が一層進んで、日銀も、とうとう先月、今後の取組方針がリリースされるに至りました。これ中央デジタル通貨の開発は、我が国の国際的な地位を左右するものにまでなってくると思います。
 そこで、先般発表された中央銀行デジタル通貨に関して、取組方針におけるこの実証実験について、進捗や今後の見通しをお伺いいたします。

#118
○参考人(内田眞一君) お答え申し上げます。
 御指摘のとおり、日本銀行は、十月の九日に中央銀行デジタル通貨に関する取組方針を発表いたしました。現時点で、私ども、CBDCを発行する計画はございませんが、今後、様々な環境変化に的確に対応できるよう、しっかりと準備を進めておくことが重要だと考えております。その一環といたしまして実証実験を行うということでございます。
 実際の進め方ですが、まず、一般利用型のCBDCの基本的な機能、それから具備すべき特性が技術的に実現可能かどうか、これを検証する予定でございます。二一年度の早い時期に開始することを目指しておりまして、最初の段階では、決済手段としてのCBDCの中核でございます発行、流通、還収、これらの基本的機能に関する検証を行いまして、その後、より複雑な周辺機能の実現可能性、それから課題を検証していく予定でございます。
 その上で、さらに必要と判断いたしましたら、CBDCの実際のデザインを意識しながら、民間事業者それから消費者、こうした方々が実際に参加する形でのパイロット実験を行うことも展望していく、検討していく所存でございます。いずれにいたしましても、そういったことが必要かどうか、それからどういう方法でやっていくのか、これにつきましては、技術面の検証を踏まえまして、さらに、今、CBDCをめぐる内外様々な情勢がございますので、そういったことも総合的に勘案しながら判断していきたいというふうに思っております。

#119
○音喜多駿君 時間が来てしまいましたので、最後総裁にも聞きたかったんですが、この中央デジタル通貨については、やはり中国、こうしたものをベンチマークとしてしっかりと柔軟に対応していかなければいけない分野だと思いますので、より一層の実証実験などの計画を柔軟に進めていただきますようお願い申し上げまして、質問を終わります。
 ありがとうございました。

#120
○上田清司君 国民民主党・新緑風会共同会派の上田清司でございます。
 早速ですが、二〇一二年にアベノミクス三本の矢ということで、大胆な金融緩和、機動的な財政政策、そして民間投資を喚起する成長戦略という形で、二番目はいま一つで、三番目はほとんど効果がない状態で、一番目のまさに大胆な金融政策はアベクロバズーカ砲という異名も取るぐらい大変効果があり、円高が一気に円安になり、株高基調の中で企業収益が大きく改善するという効果をもたらしました。これは一つの成果だというふうに思っております。一方、労働分配率が低く、必ずしも勤労者にその恩恵が至っていないということもあり、よく、二〇一八年までの景気回復期間、実感なき経済回復と、こういうこともよく言われたところでございます。
 そこで、私は、この資料の一にGDPの額の変遷と成長率の推移をグラフに示しております、国会図書館が整理したものでございますが。
 このように、GDPの総額は確かに確実に上がってきているところでございます。しかし、成長率に関して言えば、この二〇一二年以降の期間、一%を前後して上がったり下がったりという状態でございます。必ずしも円安、株高がこうした形で成長率に寄与していないという状況が出てきております。
 この成長率に関して言えば、なぜそうなのかということについて、黒田日銀総裁としての所感、御見解について、どのように思っておられるか、伺いたいと思います。

#121
○参考人(黒田東彦君) 御指摘のとおり、やや長い目で見た経済の成長力、いわゆる潜在成長率を見ますと、我が国は欧米諸国よりも低い水準にあります。
 我が国の潜在成長率は一九九〇年代以降低下しておりまして、その背景には、少子高齢化などによる労働投入の減少に加えまして、デフレの下で設備投資が先送りされたことによります資本ストックの伸び率の低下、さらには、イノベーションの停滞による生産性の上昇率、いわゆるトータル・ファクター・プロダクティビティーというものの低下というものがあったと思います。
 ただ、ここ数年、労働需給のタイト化を背景に、女性や高齢者の労働参加が高まってきておりました。また、企業の設備投資スタンスもやや積極化して、特にデジタル化に向けた投資など、生産性向上に向けた取組も見られるようになっておりました。
 現在、足下で確かに感染症の影響により厳しい経済環境でありますけれども、政府は、ポストコロナというものを見据えて、規制改革あるいはデジタル化などの取組を推進する方針を示しておられます。そうした下で、企業のやはり生産性向上に向けた努力が続くことで我が国の成長力が高まっていくということを期待しております。
 いずれにいたしましても、こういった言わば構造問題に対応する適切な政策というものが必要であろうというふうに思っております。日本銀行といたしましても、緩和的な金融環境を維持することによって企業等が前向きの取組がしやすいという環境を引き続きつくっていきたいというふうに思っております。
 ただ、委員御指摘のとおり、かつては先進国の中で最も高い潜在成長率を持っていたのが、だんだん低下した後に八〇年代のバブル、バブルのときは成長率は比較的高かったんですが、それが崩壊した以降、九〇年代以降非常に低迷している。その基本的な要素というのは、やはり人口の少子高齢化もありますし、また、そういったそのバブル崩壊後の中で低成長が続くと、また設備投資、新しい取組も減ってしまったということがあって生産性の上昇率も鈍ってしまったということだと思いますので、金融政策としてできる範囲というのは限られてはいますけれども、やはりそういったその構造問題に対してしっかり対応していくということを中央銀行としては側面からサポートしてまいりたいというふうに思っております。

#122
○上田清司君 二枚目の資料、これは吉良州司衆議院議員が作成したものでありますが、主要先進国の名目GDP、米ドルベースで作った五年置きの棒グラフでございます。これ見て分かりますように、日本だけがほとんど平行状態で、それ以外の国々は基本的に右上がりの状態になっております。
 御案内のように、フランス、ドイツ、イタリアあるいはイギリス、こういった国々は日本よりも先に少子高齢化しております。にもかかわらず、そこそこの成長を続けているわけでございます。少子高齢化だけなのか。御案内のように、またそれぞれの国々もそうした構造的な要因を抱えながら成長軌道をつくったりしているところでございますので、これ少子高齢化とか様々な要因ばかりを理由に日本の成長率が低いということを挙げていけば、日本はいつまでたっても良くならないということになりかねないんじゃないかと思っております。
 同じように、先ほど牧山議員の御質疑がございました。私も同じような関心を持っております。先ほども、二年間で二%の物価上昇目標、全然達成できていないじゃないかと、しまいにはその数字すら落としているんじゃないかと。ここでもいろいろ理由を述べておられました。例えば、原油価格が非常に安くなって、全体として物価を押し下げていると。
 しかし、よく御覧になっていただきたいんです。原油の価格も、確かに、二〇〇八年から一〇年程度の部分では一バレル当たり百四十ドルを超すようなときもございました。しかし、二〇一二年ぐらいからは大体百ドル前後で推移しながら、逆に、二〇一四年ぐらいから、二〇一五年ぐらいから落ちてきた。まさにアベノミクスの推進している最初の一二年から一四年程度はむしろ原油価格は高かったわけでありまして、百ドル以上がメーンであります。そして最近も、確かに二〇一五年から一八年近くは六十ドルから八十ドルの推移ですけど、最近では大体八十ドル弱前後で移動していますので、百ドルと比べて二割安いという話であって、原油だけをさも安くなったということでいかにも物価上昇目標が困難であったというのは、いささか、何というんでしょうか、牽強付会とは言いませんが、余りにも短絡的な理由にならないかと。
 御案内のとおり、エネルギー、鉱物資源は十七兆輸入しております。その中にも、機械あるいはまた鉄鋼、鉱石、こういったものも入っていますので、原油そのものは大体半分ぐらいです、十七兆のうちのですね。食料だけでも七兆円ですから。こういうものは、逆に食料価格上がっていますので、にもかかわらず、なぜデフレなのかというところは見落とされているんじゃないかなというふうに思っています。
 むしろ、この輸入価格もそこそこ高いんですが、まさに賃金が上がらないので、賃金が上がらないのでなかなか物価に転嫁できにくいと。したがって、賃金を抑えていくために非正規を増やすとか、あるいは賃金を増やさないとかという形になってきますので、おのずからそこに、物価が上がらない、上げたくても上げられないという、そういう現象が起きているんじゃないかというふうに私は思いますが、総裁、いかがでしょうか。

#123
○参考人(黒田東彦君) 先ほども申し上げたとおり、二〇一四年以降の原油価格の大幅な下落ということが足下の物価上昇率を非常に下げて、それが予想物価上昇率を再び引き下げて物価安定目標の二%へ達するということが難しくなったということは、現象的にはそのとおりなんですけれども、御指摘のとおり、より根本的な要因としては、やはりこの賃金、物価が上がりにくいことを前提とした考え方や慣行が家計や企業に根強く残っているということで、委員御指摘のような企業の慎重な賃金設定スタンスあるいはそれに基づく価格設定スタンスというものが明確に転換していないということが確かに指摘されると思います。
 そういった意味で、諸外国を見ますと、石油価格が百二十ドルぐらいから最終的に二〇一六年の初め頃に三十ドルを割るぐらいまで行ったわけですが、最近四、五十ドルぐらいに、バレル当たり四、五十ドルぐらいに回復していますけれども、いずれにせよ、そういった大きな原油価格の下落が起こったときに、諸外国も物価上昇率は大きく下がったんですけれども、予想物価上昇率はそれほど下がらずに、そして原油価格がその三十ドルを割るような状況から四、五十ドルまで回復してくる中で、物価上昇率が再び、かなり顕著に、まあ二%には達しませんでしたけれども上がったということがありますので。
 原油価格の話は確かに現象的な話なんですけれども、その背後にあるこの予想物価上昇率の形成過程、そのもっと根源的には、委員がおっしゃるように、賃金、価格を含めた企業の非常に慎重な対応、なかなか賃金を上げない、なかなか製品価格を上げないというその根強い賃金、価格設定の慎重なスタンスというのがまだ十分明確に転換していないということが大きいというのはそのとおりだと思います。

#124
○上田清司君 黒田総裁、原油価格が三十ドルを割ったのはまさに一六年十一月のOPECの減産合意、このとき瞬間的ですよ、比較的、すぐまた五十ドルから八十ドルベースぐらいに戻っておりますので、余り原油価格が下がったということを理由に物価上昇が必ずしも成功できなかった、二%が達成できなかったという主たる理由を、一番最初にすぐ原油原油と言っておられますから、原因と原油、ちょっと名前は似ていますけれども、ニュアンスは、でも、原油じゃないですよ、原因は。そういうことを是非しっかり踏まえていただきたいと思います。
 また、先般、二〇二〇年の十一月九日の金融政策委員会の要旨を、議事録要旨を読んでいましたら、デフレが定着する可能性があるため金融政策上注意を要すると。要するに、コロナ禍の需要不足で、デフレ脱却どころかデフレが定着するんじゃないかと。そういう意味で金融政策上注意をすると。
 これは作文で終わるのか、それとも、どういう注意をされて少しでもブロックするのかという、そういうことがこの議論のときにはそこまでだったんですけれども、内部的により深化するような政策を考えられているのか、あるいは議論されたのか、お伺いしたいと思います。これは総裁でなくても、その枠組みでしっかり聞いておられる方々でも結構でございます。

#125
○参考人(黒田東彦君) 御指摘の意見はもちろん政策委員個人の見解であるということをお断りした上で、日本銀行としての考え方を申し上げますと、足下、確かに新型コロナウイルス感染症の影響によって物価に下押し圧力が加わっているということは事実でありまして、当面、前年比マイナスで推移するというふうに見ております。
 もっとも、この需要減少の一因が感染症への警戒感ということが認識されておりますし、また、大規模な所得支援策などもありますので、企業が値下げによって需要喚起を図る動きというのは広範化していないというふうに見ております。
 したがいまして、先行き、経済が改善していく下で物価がプラスに転じて徐々に上昇率を高めていくのではないかと思いますが、やはりこの感染症の及ぼす影響には大きな不確実性がありますので、感染症の経済に対する影響をやはり十分注視して、当面、もちろん引き続き強力な金融緩和措置を講じていくわけですが、そういったその資金繰り支援、それから金融市場の安定に努めて、それによって経済を支え、二%の目標に向けて金融緩和を続けていくということはもちろん当然なんですが、その上で、さらに、この感染症の影響がより長引くとか深刻化するということになれば、当然のことながら追加的な金融緩和措置を講じると、それはちゅうちょなく講ずるということはそのとおりでありまして、この政策委員の御意見も今もちろんデフレになるというふうに言っておられるわけじゃないようですけれども、やはりこの感染症というのは本当にどのような形で収束していくのかまだはっきり分からないというところが非常に悩みの種でありまして、我々としては、感染症の影響が深刻化していくようなことがあれば、当然ちゅうちょなく金融緩和、追加的な措置を講じるというつもりでございます。

#126
○上田清司君 ありがとうございます。
 その十一月から遡ることの二か月前の九月十六、十七日の政策委員会の議事録に、企業による付加価値の創出に向けた取組を支援するため、より多くの成長投資資金が企業に流れる仕組みを整えることが重要と、まさにそのとおりだと思っております。
 御案内のように、一九八九年から九二年まで、日本の成長力が連続四年一位と、二〇一八年に三十位になって、先般、二〇一九年度が発表されましたけど、三十四位と。そうした中でも、六十三か国の資料の中で六十三位が二つありました。一つはDX、デジタルフォーメーション、まさにこれは菅総理の炯眼だと思っておりますが、もう一つは起業家精神、この部分が六十三位。要するに先行きは何か厳しいなと。起業家マインドが六十三位で参加国で一番最下位だと、全体で三十四位ですけれども。
 そういう中でも、ちゃんと日銀の中でこうしたまさに企業による付加価値の創出、ここをもっともっと支援すべきだというちゃんとした議論が出ていることにある意味では救いがあるんですけれども、仕組みを整えることが重要であると、まさにどういう仕組みを整えようとされているのか、日銀がじかにそうした窓口をつくっていくのか、あるいは金融機関にそうした窓口をつくるところを支援するのか、このことについてお伺いしたいと思います。

#127
○参考人(黒田東彦君) この点ももちろん政策委員個人の見解でありますけれども、私どもとしても、やはり企業が新たな事業に挑むということによって収益あるいは雇用を生み出していくという際には、やはりリスクを引き受ける金融の役割というのが重要になってくると思います。
 その場合には、もちろん、具体的な方式としては、多様な資金調達源が必要であるわけですし、また各種市場のその環境整備を通じて金融仲介機能をより高めていくということが重要であります。
 御案内のとおり、日本や欧州大陸諸国は銀行が中心の資金調達というか資金融通の仕組みがある一方で、米国や英国の場合は、様々なそのファンドとかノンバンクの金融機関がこのリスクキャピタルを供給するという活動が非常に盛んであります。そういうことも、あるいは例えば米国が九〇年代、二〇〇〇年代を通じてITその他様々な新しい付加価値の創出に向けた取組を企業が行えたということの背景にあるのではないかという気もいたしておりまして、そういう意味では、そういう新しい金融資本市場の育成ということも重要ですし、しかしまた一方で、現実問題として、金融機関が企業の資金調達、そのリスクの引受役として重要であるということも事実ですので、そちらと、一方でその金融機関と両方見ながらやっていきたいと。
 ちなみに、日本銀行が特に銀行等を中心とした金融機関に対する支援としては、成長基盤強化支援のための資金供給という形で、成長基盤を強化するような投資等を行う企業に対する銀行の融資のバックファイナンスとして、より有利な形で日本銀行が要はそれを供給するという仕組みもありますので、そういったことも踏まえて、幅広く、こういった企業が付加価値の創出に向けた取組を側面、これはあくまでも側面からなんですけど、側面からサポートするということは続けてまいりたいというふうに思っております。

#128
○上田清司君 ありがとうございます。積極的な支援を期待したいと思います。
 三公社五現業を民営分割化して、まさに企業家精神を生かす形を取ってきましたが、最近の日銀の、企業の第一位の株主になっておられますので、第一位になった企業などは、これで公務員になった、これで潰れる心配はないという妙な安心感を持って、企業家マインドがなくなるんじゃないかということを私は心配しておりますので、最後にこのことを添えまして、質問を終わります。
 ありがとうございました。

#129
○大門実紀史君 大門です。
 今日は、日本銀行の独立性に関連して幾つか質問したいというふうに思います。
 中央銀行の独立性というのは、歴史的にもいろんな苦い経験を踏まえて、大変重視、世界的にも重視をされているところでございます。
 まず、黒田総裁に改めて基本的なお考えを聞いておきたいと思いますが、政府と日銀が経済金融政策において協力し合うということは、これはある意味当然のことでございますけれども、ただ、だからといって、中央銀行が何でも時の政権の意向に忠実に従うと、あるいはそんたくをすると、そういうことが続いてはまたこれは困るわけであります。
 基本的な話ですけれども、黒田総裁として、中央銀行の独立性、自立的な政策判断、こういうものの重要性についていかがお考えでしょうか。

#130
○参考人(黒田東彦君) この点につきましては、委員もよく御承知と思いますけれども、一九九八年に施行されました新日銀法におきまして、金融政策の独立性、自立性、自主性というものが極めて詳細に規定されておりますし、その金融政策を実際に決定する政策委員会の議事のやり方までしっかりと書き込まれており、そういう意味では、金融政策についての自立性というのは十分担保されていると思っております。また、日本銀行の業務につきましても、その自主性を十分配慮するということも規定されております。
 もちろん、他方で、委員も冒頭おっしゃったように、金融政策、マクロ的な金融政策の一環でありますので、政府と十分意思疎通をして政策運営を図っていくということはもちろん法律にも定められておりますし重要ですけれども、あくまでも私どもの行う金融政策あるいは業務の決定というのは自主的なものとして行われる必要があるし、それは法律、新日銀法で十分担保されているというふうに考えております。

#131
○大門実紀史君 そうはいっても、二〇〇一年に私国会に参りまして、当時は速水総裁でございましたが、いろんなことがあって、なかなか、日本銀行としての独立性が本当に維持、堅持されてきたのかという点は何度も議論させてもらっていますが、疑問に思っているところもあるわけであります。
 報道によりますと、先月の十月の二十七日に、自民党の金融調査会ですかね、山本幸三さんが会長の金融調査会のメンバーを含めて数人の方が河野太郎規制改革大臣に会って、金融庁の検査と日銀の考査の重複をなくせと、金融庁検査、日銀考査の重複をなくせという提言をされております。中身は、資料もありますが、データの一元化、金融庁検査と日銀考査の連携、分業、協業を求めておられます。それに対して河野大臣は、規制改革担当大臣は、責任を持ってフォローアップしたいというふうに述べたということであります。
 金融庁と日銀というのはそれぞれ独立した主体で、当然のことながら、それぞれの法律、根拠法に基づいて検査、考査をやっておられます。目的も違います。それをできるだけ一緒にやれという、中身をよく読みますと大変乱暴な提言がされていると私は思いました。もちろん、提言の中に日銀の独立性を尊重しつつという文言はあるんですけれども、求めている中身は日銀の独立性など全く考慮していないんではないかというような中身でございます。
 資料一枚目に配りましたが、金融庁にまずお聞きしますが、金融庁の検査と日銀の考査とは根拠法も目的も役割も違うんだと思いますが、この図に基づいて簡潔に説明をお願いします。

#132
○政府参考人(中島淳一君) お答えいたします。
 議員御指摘のとおり、金融庁は、銀行法等の法律に基づき、金融システムの安定と金融仲介機能の発揮に加え、利用者保護等の観点から、業態横断的に検査監督を行っております。
 一方、日本銀行は、日本銀行法に基づき、経済、物価安定の基盤となる決済システムと金融システムの安定のため、最後の貸し手として、決済機能の担い手である金融機関の経営やリスク管理の状況を考査等で把握しているものと承知しております。

#133
○大門実紀史君 この図配らせてもらったのは、今おっしゃったようにそもそも違うわけですけれども、業務的に重なる部分があるんではないかということで、この図でいきますと、金融システム安定のためのモニタリングと、この部分が業務的に重なるんではないかということでありますけれども、そもそも、金融庁、日銀とも、金融機関に入って調べること、聞くことが違います。時期も違います。
 金融庁は、大手行の場合は今のところ、今は必要に応じてとなっていて、日銀は、大手行は三年に一度ですかね、ということになりますし、金融庁は金融仲介機能、利用者保護の観点が一番でございまして、日銀の場合は経営の安定性、流動性を中心にということになっていると思います。
 重なる部分の、この図でいきますと金融システム安定のためのモニタリングなんですけれど、これは何かというふうにお聞きしましたら、分かりやすいのはストレステスト、株がもしも二割下落したら経営がもつかというような、そういうストレステストのようなものが中心だというふうに伺いました。
 ただ、このストレステストも、仮に金融庁検査と日銀考査が全く同じ時期に入ったら、それは両方から同じ、株が二割下がったときどうなるかということをやったら、これは全く重複しますからこれはやめた方がいいと思いますけれども、既に日銀と金融庁は同じ時期にぶつからないように調整をされております。で、別の時期でしたらストレステストをやる項目も違うんじゃないかと思うんですね、そのときは株が心配、あるときは為替が心配。時期が違うと株のことも心配にする度合いが違うということで、結局、重なっているように見えますけれども、決してダブると、重複するというようなことは原理的に余りないんではないかと、それほど多くないんではないかと、レアケースじゃないかと思います。仮に、受け手の金融機関にとって一部、金融庁も日銀も同じことを聞かれたとか、同じデータを求められたとか、それはあるかもしれませんけれど、それは時期も違いますし、同じことを聞かれるといっても金融庁と日銀では目的、角度が違うはずだというふうに思いますので、全く同じデータを求めるということは、時期も違いますから余りないんじゃないかというふうに思います。
 その上で、金融機関の負担を減らすために様々な配慮をすることは私も必要だと思いますけれども、しかし、この点は、先ほど申し上げられたように、既に金融庁と日銀はいろんな点で連携をもう既に行っておられます。事前調整ですね、入る時期の事前調整、情報交換、共通テーマでの共同モニタリング、重複データの統廃合その他いろいろ、既にできるだけ金融機関の負担にならないように調整をされているわけですね。しかし、この二枚目以降にあります自民党さんのこの提案は、更に踏み込んであれこれやれというふうになっているわけであります。
 タイトルがちょっと変だなと私思うんですけど、金融庁と日銀の縦割り打破となっておりますが、縦割りと言われるような存在なのかと、金融庁と日銀がですね。霞が関の何庁と何省だったら縦割りの弊害だとか二重行政だとかいうことがあるか分かりませんが、なぜ金融庁と独立した中央銀行を並べて縦割り呼ばわりするのかがそもそもおかしいなと違和感を大変感じますけど、黒田総裁、違和感感じませんか、このタイトルに。

#134
○参考人(黒田東彦君) 委員御指摘のとおり、日本銀行は、金融庁とは我が国の金融システムの安定確保という観点からこれまでもいろいろな情報交換もしておりますし、また、御指摘のような金融機関の負担に配慮して、同じ時期とか近い時期に検査と考査が入るというようなことは避けるように様々な工夫をしてきております。
 日本銀行としては、そうした連携を更に強めていくことで金融機関の負担を軽減するということと、これはコロナだからというわけではないんですが、より高い、もう質の高いモニタリングを、データベースというか、そういうものである程度補完していくということも必要だと思っています。そういう面では、特に金融庁とデータの共有とか、既にある程度やっているんですけれども、更にやっていくことが金融機関の負担軽減とより質の高いモニタリングを実現していくことになるのではないかというふうに思っております。
 違和感があるかどうかという点でいうと、余り特別なことは申し上げませんが、委員も御指摘のとおり、金融庁検査と日銀考査というのは異なる視点から金融機関のモニタリングを行っているということですし、日本銀行としては、やはりこの最後の貸し手としての日銀の独立性をしっかりと踏まえてやってまいりたいと思っておりますし、その点はこの提言を読む限りでは御理解いただいているのかなというふうには思っております。

#135
○大門実紀史君 先ほど言いましたとおり、そういうものを規制改革担当大臣が受け取って、この金融庁と日銀の縦割り打破を責任を持ってフォローアップしますと。なぜ規制改革担当大臣が日銀のことまで責任持ってフォローアップするのかと、これまた何か大きな勘違いをしているんではないかなというふうに思います。
 中身もおかしいんですね、これね。変なんです、この中身。データの一元化とありますけど、これ荒唐無稽の話でございまして、よく読んでみると。何というんですかね、ビッグデータの、何ですかね、データのプラットフォーム、何かビッグデータのでかいこういうのつくるんですかね。そこに、いつでも金融庁と日銀が見られるようなデータを各金融機関がそこにぶち込んでおけと。こんなことを、もう何年掛かるんですかね、こんなものを、幾ら掛かるんですかね、こんなものをつくる、システムをですね。そんなの個々の銀行に聞きゃいいじゃないですか、そのとき必要なことをですね。何かそんなふだんからこんなデータをためて、そんなもう本当によくこんな荒唐無稽なことを言っているなと思いますけど。
 あと、金融庁検査と日銀考査の連携、分業、協業、いろいろあるんですけど、分業、協業までやれと。三年に一度の日銀考査を見直して、三年に一遍にもやめて、金融庁が行う常時検査とモニタリングを一体的に運用せよと、ここまで書いております。これは、もはや山本さん始め自民党のリフレ派の方たちにとっては、日銀というのは独立した存在じゃなくて、何か霞が関の一つの省みたいな、そんなふうに扱っているんじゃないかということを強くこの提言を見て非常に違和感を感じました。
 金融庁に伺いますけれど、この提言どおりやるわけないと思いますけども、金融庁検査と日銀考査を一体化すると、分業、協業していくというようなことを金融庁としてやられるんでしょうか。

#136
○政府参考人(中島淳一君) お答え申し上げます。
 この提言におきましては、例えば金融機関が提出する計表の統合、廃止、あるいは大手金融機関を対象としたストレステストの共同実施など、これまでの取組を更に連携を、日本銀行との連携を深化させ、金融機関の負担の軽減と効果的なモニタリングにつなげていくということが提言されており、こうしたことを進めていきたいと考えております。
 いずれにせよ、日本銀行には独立性を有する最後の貸し手としての責務があるものと承知しており、両者が一体となるということを考えているものではございません。

#137
○大門実紀史君 そのとおりだと思います。
 私、なぜこれにこだわったかといいますと、やっぱり山本幸三さんだからですね。誰が異次元金融緩和をずうっと求めてきて、日銀にやれやれということをおっしゃってきたかということから、日本銀行は何か本当にもう政権の、政権の意のままにということをこれにも感じたものですから、取り上げさせていただいたということでございます。
 日銀のその独立性に関して、これはもうその山本さんが言われたとかじゃなくて、日銀そのものが、何といいますかね、自ら政権に迎合しつつあるんではないかというのが、今日も取り上げられておりましたけど、地銀再編統合に関する問題でございます。
 私は、日銀以上に日銀のことを心配しているんです。何というんですかね、本当に独立性を保って、プライドを持って業務やってほしいなという点から、余り政権に、時の政権に迎合したり、あるいはいろいろ圧力掛けられたりということが多過ぎたんで大変心配しているんですけども、この地銀の再編統合に関していえば、日銀の方からちょっと迎合しているんじゃないかという点で取り上げさせていただきたいと思います。
 菅総理が地銀の数が多過ぎるということを言って、地銀の再編統合問題が注目を集めております。金融庁だけではなく、どういうわけか日銀まで関与をし始めたということでございます。
 まず、地銀が大変だというのは私もそれは分かっておりますので、資料に、資料の五枚目ですかね、大手行と地銀の利ざやの推移ということで、日銀の資料を付けてございます。
 これは、午前中、西田さんからもあったとおり、なぜこれだけ利ざやが下がってきているかというと、一番は長期にわたる低金利ですね、ゼロ金利政策ですね。人口減少、企業減少、高齢化などの国内要因が大きいと。大手行に比べて地銀の方が大変だというのは、大手行はまだ海外取引の部分がありますけれど、地銀というのは、もう国内取引、まあ証券投資やっておりますけど、そういう関係からいって、国内要因をストレートに受けるという点からこの利ざやの推移が厳しくなっているんだというふうに思います。
 金融庁に基本的なことを伺いますけれども、地銀の経営基盤が厳しくなっているというのはもう誰が見てもそうだというのはそのとおりなんですけど、菅総理は地銀の数が多過ぎるということをおっしゃいました。それが衝撃を与えているわけですが、地銀の数が多過ぎるということと地銀の経営が厳しいということとは、私は別のことだと思っております。金融庁はそもそも今の地銀の数が多過ぎるという認識でしょうか。

#138
○政府参考人(栗田照久君) お答え申し上げます。
 地域金融機関、地銀につきましては、地域に基盤を有する金融機関として、地域の企業の付加価値向上を図って地域経済の発展に貢献していただくということが大事なわけでございます。
 したがいまして、地域金融機関としての機能がどうかということが重要でございまして、金融機関にも大小ありますので、一概に数で多いとか少ないとかということではないというふうに考えてございます。

#139
○大門実紀史君 そうなんですよね。
 私、地銀がそれぞれの経営判断で合併したり統合したりということはあり得る、その結果として数が減るということは、これは市場競争の中であり得ることだと思いますが、あらかじめ多過ぎるとか何だとかという話じゃもう全然逆さまの話で、計画経済じゃあるまいし、あらかじめ数を決めるというのは、適正な数はこうだというのはちょっと全然違うんじゃないかというふうに思っておりますので、ちょっとお聞きしたわけですけれども。
 ですから、基本的なことをもう一つ聞きますけど、地銀が状況が厳しいのは確かなんですけれども、あくまでそれぞれ地銀の、銀行の経営判断で合併なり統合をやるべきだというのはもう原則中の原則だと思いますが、金融庁、いかがですか。

#140
○政府参考人(栗田照久君) お答え申し上げます。
 金融機関の合併、経営統合につきましては、あくまで経営改革の一つの選択肢でございまして、個々の銀行の経営判断に属する事項であるというふうに考えてございます。

#141
○大門実紀史君 ですから、余り地銀が多過ぎるといって政策的に何か誘導する、誘導するようなことは、やり過ぎると違うことになってしまいますよということでございます。
 地銀の経営基盤の強化のための再編統合と言われておりますけれども、具体的に経営基盤の強化というのは一体何かということなんですが、一つは収益力を強化するということであります。
 具体的に言いますと、昔でいえば、要注意先とか破綻懸念先とか、いわゆるちょっと不良債権ですね、こういうものは引当金を積まなければいけませんので、できるだけ処理をするということですよね。あとは、カードローン含めて、手っ取り早くもうかることをやるというようなことになると思います。経費の削減という点では、店舗を統廃合する、リストラ、人員を減らすということになります。ですから、地銀の経営基盤の強化といっても決してきれい事ではないわけですね。たくさんの人の痛みを伴うことになるわけであります。
 特に、コロナで今大変な状況でございますから、こんなときに地銀の統廃合をやれやれということでやると、必死で頑張っているところまで、コロナさえ収束したら生き抜いていけるところまで潰してしまう、あるいは、貸し渋り、貸し剥がしというのはかつて大問題になりましたが、そういうことを引き起こしますし、店舗の統廃合、人員のリストラで地域の雇用がまた大変な状況になるというようなことになりますから、この経営基盤の強化というのは、借り手の中小企業、住民、従業員に厳しいことを求めることと表裏一体になるというリアルな問題だというふうに捉えておく必要があります。
 特に、今コロナ第三波が襲ってきているところでありますので、地域金融機関が必死で頑張って借り手の中小企業を今支えてくれております、地銀も含めてですね。そういうときに、もう統廃合先だと、経営基盤この最中に強化しろというふうになると、もうおのずとさっき言ったような整理をしていくことになりかねないというふうに思います。
 ワクチンが開発されるのがまあ少なくとも八か月か九か月後としても、経済が元どおりになるのはまだ時間が掛かると思うんですよね。にもかかわらず、この二、三年を集中期間ということでこの地銀の再編統合をやろうというのは、ちょっと余りにも乱暴な話じゃないかと思います。
 菅首相が、総理が地銀の数が多過ぎるということをおっしゃったときは、今のような第三波が来ていないときでしたよね、ですよね。ですから、この第三波が襲来してきているときに、まだこのままこの方針でもうやり通すということになるのかどうかですね。金融庁、やっぱり慎重に、地域経済の状況、地域金融機関の状況を考えて、この地銀の問題も進めるとしてもそういうふうにやるべきではないかと、配慮すべきでないかと思うんですが、金融庁、いかがですか。

#142
○政府参考人(栗田照久君) お答え申し上げます。
 地域金融機関におきましては、コロナ後の新たな日常を踏まえた経済の力強い回復に向けて、事業者の資金繰り支援、経営改善、事業再生、事業転換支援などに積極的に取り組んでいただきたいというふうに考えております。そのためにも自らの経営基盤をしっかりしていただく必要があるということでございます。
 この経営基盤を強化するという方法はいろいろあると考えておりますけれども、そのうちの一つが合併なり経営統合なりということになってくると思いますけれども、あくまで地域の中小企業の成長ですとか地域経済の活性化にその果実が使われるということが重要だと考えておりまして、銀行が経営判断として合併、統合を選択されるということであれば、その合併等によって生じる余力を地域での適切な金融サービスに振り向けていただきたいというふうに考えている次第でございます。

#143
○大門実紀史君 栗田さんね、それは平時の話なんですよ、平時の話なんですね。今、今それやると、さっき言ったように、今もうあれですよね、相当大変な人たちとの、借り手とね、金融機関がこう必死で支えている状況ですよね。今やると、今の借り手を整理して、整理して体力を取り戻して、次の借り手に対しては、おっしゃるように、いろいろやれるかも分かりませんが、今申し上げたのは、コロナの中で必死にお互い支え合っているようなときに、それは一遍、今の借り手をたくさん潰した後の話になっちゃうということを申し上げているので、コロナさえ収束したらやっていける企業はいっぱいあるわけですから、今はそういうことを急ぐべきじゃないということを申し上げているわけであります。
 もう一つは、この地銀の再編統合のときに必ず店舗の統廃合が行われてまいりました。あるエコノミストの調査では、単独の銀行によるものも含めてですけど、今後廃止が計画されている店舗の数というのは、都銀、地銀の合計で約千のお店が廃止の計画になっているということであります。千というと東京中の金融機関の店舗がなくなるのと同じ規模であります。そういうことがもう計画としてされていると。
 その中で問題になってきているのは、当然、店舗がなくなると、有人店舗がなくなるとお年寄りがまず、高齢者が困るというのがあります。特に、地方行きますと大変お年寄りの方々困るというのがあります。ただ、それだけではなくて、地域で頑張っている中小企業にとっても有人店舗がなくなるということは大変な打撃でありまして、融資にも関わるんですね、関わるんですね。融資というのはやっぱり、その地域に店舗があって、担当の職員さんがいて、時々のぞいて、いろんな相談に乗って、その中で経営相談も含めてお金も貸していくという姿ですから、とんとなくなっちゃいますと、今まで二週間に一遍行ったのが一か月に一遍行くか行かないかになってくるというような、中小企業、借り手の融資の問題の方が逆に大きいかなというふうに思います。
 その点で、この間でいきますと、鳥取銀行の問題が大変話題になりました、クローズアップされました。鳥取銀行は、昨年の一月、日南町にある生山、生きる山ですが、生山支店というのを撤退して、隣町の日野町の支店に業務を移転しました。
 これはもう住民も借り手も無視をした統廃合ということで、地元の町長さんがもう怒っちゃって猛反対して、町議会も移転見直しの要望書を全会一致で決議をして、町は鳥取銀行に預けている五億六千万円の預金を解約して、職員にも預金の解約をしてくれと訴えるということで、地元の経済界では鳥取の変と呼ばれるぐらいの大問題になった地銀のお店の統廃合問題がありました。
 その後、鳥取銀行の頭取が町役場を訪れて謝罪をして、配慮がなかったということを述べて、今はその日野町の銀行職員の方が日南町に定期的に足を運ぶということで、おわびも含めてやっておられるということでございます。
 この地域は、鳥取銀行だけじゃなくて、山陰合同銀行も生山支店を出張所に変更しました。このことは何を意味するかというと、この日南町の商工会の会長さんは、法人が、法人が借入れができなくなってしまうということを心配されております。こういうことは、鳥取は大変話題になりましたけど、鳥取銀行だけじゃなくて、鳥取だけじゃなくて、全国各地で同じことが起きております。
 金融庁も有人の店舗が近い距離にあることの有効性、有用性は認めてこられたわけであります。この鳥取銀行のようなことを繰り返さないためにも、金融庁として、地域金融機関、地銀などに対して、店舗の統廃合に当たってはやっぱり住民への配慮、地域社会への配慮をちゃんとしていくと、求めていくと、理解を求めていくということは努力を促すべきじゃないかと思いますが、金融庁、いかがですか。

#144
○政府参考人(栗田照久君) お答え申し上げます。
 地域金融機関によります店舗の統廃合につきましては、基本的には経営判断に属する事項ではございますけれども、その際には、各金融機関におかれまして、地域経済への貢献といった自らの経営理念に照らした店舗などの位置付け、それから利用者利便の観点にも十分配慮して検討していただく必要があるというふうに考えております。顧客企業との日常的、継続的な関係に基づき、顧客の経営課題等を適切に把握し、適切なアドバイスやファイナンスを提供するという観点で店舗が一定の役割を果たしているということも事実だと考えております。
 我々といたしましては、いずれにいたしましても、地域金融機関が店舗の統廃合を含め様々な局面においてお客様の利便もよく考慮した上で、最終的にその経営基盤をどうやって強化するかということをよく考えていただきたいというふうに考えております。

#145
○大門実紀史君 やっぱり地域金融機関、地銀、地銀も信用金庫なんかは特にそうですけど、地銀も含めてやっぱり地域の信頼を失っていくと、もうその地域金融機関そのものの中長期的な発展ってないわけですよね。やっぱりその目先の経営基盤の強化、目先のことで考えると、やっぱり大きく信用を失ってしまうということはありますので、地域金融機関の在り方としても考えるべきだというふうに思います。
 日本銀行の話でございますが、資料の最後のところに配りましたが、これ午前中も議論ありましたけど、日本銀行が地銀の再編を促す制度の創設に動き出したということでございます。
 午前中も説明がありましたので、こちらでかいつまんで申し上げますと、制度の概要で、経営統合とか経費削減に取り組んだ、経営基盤強化に取り組んだ地域金融機関に対して、つまり、これちょっと初めてのことじゃないかと私思うのですが、日銀が個々、個別の金融機関に特定の経営判断、こうしてくれたら、こうしたらという、特定の経営判断を求めると。で、それに応じた場合、日銀当座預金に上乗せ金利、年〇・一%を上乗せすると。これマイナス金利の逆のことをやろうとするわけですね、反対のことをやろうとするわけですね。
 これは、言い換えますと、補助金と同じですよね、補助金と。日本銀行が個々の銀行のやることに対して補助金を出すというような制度で、大変異例だというふうに感じておりますし、そのお金というのはどうなるかというと、日銀が国庫に納付する納付金がマイナスになるわけだから、巡り巡って税金がマイナスになって、そのお金を個々の金融機関に日銀が補助金として出すという仕組みなんですね、そういうことになるわけですね。
 こんなことは今まで日銀としてやったことないんじゃないかと、こんな個別の補助金みたいなものですね、異例中の異例だと思いますけど、そういうことではないんでしょうか、黒田総裁。

#146
○参考人(衛藤公洋君) お答えいたします。
 今委員から御指摘ありましたように、こういった政策をこれまで日本銀行として行ってきたことはございません。
 補助金ではないかという御指摘でございますけれども、今回の特別の付利と申しますのは、一定の経営効率化の目標を設けまして、これを実現した先に限定して適用するものということでございまして、こうした設計によりまして、金融機関に対して取組への動機付けを行うということを目的としております。その意味で、無条件での補助金とか収益補填でないという点は御理解をいただきたいと思います。
 それから、この制度、経営統合が狙いということではございませんで、経営基盤の強化と申し上げておりますのは、条件に入っておりますオーバーヘッドレシオに代表されますような収益性を上げていただくということが大本の狙いでございます。その方法論として経営統合を選ばれるところは、それはそれで要件として加えるという仕立てとしているということを御理解をいただきたいというふうに思います。
 それから、コロナ禍にあります企業、それから地域の経済の支援が極めて重要ということは、私どもとしても認識をしております。ただ、コロナ後の地域経済の再生、それから企業の事業再構築、これは相当腰を据えた息の長い取組が必要になるんだろうと思います。地域金融機関にとりましても体力を使う仕事になろうかと思います。
 地域金融機関が、したがいまして、将来にわたって持続的にこの役割を担っていっていただくには、自らの経営基盤の強化に今から取り組んでいただく必要があるというふうに考えております。

#147
○大門実紀史君 いろいろ言われますけど、経営統合促進が一番になりますよ、これ、今の。だって、地銀再編、菅さんが言ったと、多過ぎると。それに呼応して出されたんだから、統合が一番ともう書いてあるじゃないですか、大体、要件のところにね。
 金融システムの安定とかも言われてきましたけど、文字どおり私は、大事なのは日銀にとってそういうことであって、個別銀行の安定が日銀の仕事ではないというふうに思います。それは、金融庁なり政府がやる仕事であって、日銀がこうやって踏み込むというのはちょっと異例、異例だなと。こういう、何ですかね、金融システムの安定みたいなことで、金融システムの安定を掲げたら、これ、で、こういうことやるんだったら、何だって日銀がやっていくことになるのではないかと思います。
 やっぱり日銀として、本来やるべきことをやられるべきだと。本来やるべきことをやっていられるかというような問題あるんですけど、ちゃんとそういうことに、やっぱり持たなきゃいけないんじゃないかと思うんですよね。ちょっと、なぜこんなことをと思います。
 日銀がなぜこんな異例なことに踏み出したのかは、金曜日通告したときも、勉強レクでも、何度聞いても同じような説明ばっかりでよく分からなかったんですが、土曜日の日経の記事が出まして、それを読んで、やはりそうかというふうに思いました。今日はちょっとコピー配る余裕なかったんですけれども、日経新聞の「日銀ウオッチ」というのが土曜日に出ておりまして、「地銀支援 悲願と打算」、悲願と打算というふうなタイトルで記事が書かれております。
 ちょっといろいろ生臭い話もあるんですけど、それを抜いて言いますと、何を言っているかは抜いて言いますと、要するに、日銀がこういう異例の政策に踏み込んだ本当の狙いは、本当の狙いは、マイナス金利政策の副作用、まあ批判されてきましたよね、そのマイナス金利作用の副作用の批判を和らげるために、だからマイナス金利と逆のことをやるわけですね。今度は付けるわけですよね。表立ってマイナス金利をやめるわけにはいかないから、実質的にこういう方法で批判を和らげようとしているということが一点。
 もう一つは、菅政権が地銀再編を打ち出したと、それに日銀から擦り寄って、これ私が言っているんじゃないですよ、この記事ですよ、日銀から擦り寄って、言えばまあ、日銀も自ら、日銀もやりますと自らですね、この政策を打ち出して、その目的は政権へのそんたく、迎合、次の総裁人事に向けて政権の機嫌を取っておこうとした。この辺はちょっと、私、そこまで決め付ける気持ちはありませんが、いずれにせよ、政権に対するそんたく、私は迎合だと思いますけれど。
 これ、週刊誌の記事ではありませんからね、日経新聞の優秀な記者が取材をして書いた記事でありますので、私は、これは大変リアリティーのある、これなら分かると、これが理由なら分かるというふうに思ったんですけど、黒田総裁、いかがですか。

#148
○参考人(黒田東彦君) 具体的にこの日経新聞の記事についてコメントする立場にはありませんけれども。
 繰り返して申し上げておりますとおり、この制度は、地域金融機関が将来にわたって地域経済をしっかりと支え金融仲介機能を円滑に発揮していくための経営基盤の強化に資するという観点から、日本銀行法の規定に則して、日本銀行の目的として定める金融システムの安定確保のための政策として導入する方針を決めたわけであります。
 したがいまして、これは、金融政策決定会合で議論する金融政策の話、マイナス金利とか何かを含めてですね、そういうものではなく、あくまでもプルーデンス政策として金融システムの安定確保のためにこういった政策を導入しようとしているわけでして、現在の長短金利操作付き量的・質的金融緩和のフレームワークに影響を与えるものでもありませんし、金融政策として行っているものでもなくて、あくまでも、今申し上げたような、地域金融機関が地域の経済をしっかり支えるための金融仲介機能を円滑に発揮していくための経営基盤の強化に資するという観点から行っているということは御理解いただきたいというふうに思います。

#149
○大門実紀史君 私は、この制度をせっかく日銀が、具体的にはこれから更に固めるんでしょうけれども、使われない可能性の方が高いとも思うんですよね。これがあったからって、それじゃ合併しましょうとか統廃合しましょうという状況でもありませんのでね。
 それも含めますと、余りこういうちまちましたことを、日銀が何か細かいことをいっぱい出すような、そうじゃなくて、もう少し落ち着いて、日銀というのは、あのETFを購入されたときも私相当批判いたしましたけど、何か株価の下支えみたいな役割まで果たさせられるとか、何かそういう、本来の、本来のマクロの、プルーデンスとおっしゃったのはそのとおりだと思うんだけど、本来の金融システムの安定の仕事を中央銀行らしくプライドを持って、もっと太い筋の仕事をやってほしいなと、こういう細かいことに一々手出したりするんじゃなくてね。結局、余り使われないと笑い物になりますよ、こんなのを出しておいて、中央銀行がね。
 そういうことも含めて、本来の日銀の役割を果たしてほしいということを申し上げて、今日は質問を終わります。
 ありがとうございました。

#150
○渡辺喜美君 みんなの党、渡辺喜美でございます。
 年二回の株主総会でございますので、今しばし御辛抱をお願いしたいと思います。
 お手元に資料をお配りしてあるかと思いますが、三枚目をお開きいただきますと、国の連結貸借対照表というのがあります。よくGDP対比で国の借金が二〇〇%とか、そういう話は聞くところであります。一千兆円の借金がという話は、もう耳にたこができるぐらい聞かされている。しかし、これは財務省の公表ホームページから取ったものですよ。財務省のホームページにちゃんと書いてある話なんですね。連結バランスシートを見ると、資産と負債の差額は、一千兆円ではなくて、何と五百兆円、半分になっている。そして、国は何と一千兆円を超える資産を持っている。
 いやあ、渡辺さん、資産といったって、ダムとか道路とか売れない資産ばっかりじゃないの。有形固定資産というのは二百兆円もありませんよ。あとは何だ。大半が金融資産なんです。国が国債を発行して、自分のところでいろんな形で国債を保有をしている。だから国債の信認が暴落するわけがないんですよ。国債の保険料率みたいなCDSレートを見れば、もう一目瞭然であります。
 次のページお開きいただきますと、これは、国の連結バランスシートに併せて、一九年三末の日銀のバランスシートであります。資産と負債がこの当時は五百五十七兆円だったわけですね。日銀の当座預金というのは紙のお金、あっ、ごめんなさい、帳簿のお金です。現金、銀行券というのが紙のお金。どっちも負債性はないんですよ、これはね。
 次のページ、一と二の合算、統合政府バランスシートというやつです。元財務官であった黒田総裁は御案内のとおりでありますが、IMFでも世銀でも、各国の財政比較はこの統合バランスシートによってやっていますよね。どういうわけか、日本ではこうした統合バランスシートというのはまずお目にかかったためしがない。
 これによりますと、国の資産、政府預金や日銀への政府出資は除く、これが九百九十五兆円ですよ。一方、貸方、こっちの負債の部ですね、日銀保有分の国債を除くと四百八十六兆円。次に、日銀当座預金、帳簿のお金、これが三百九十四兆円。銀行券百七兆円。この日銀当座預金と銀行券を足しますと五百一兆五千億円になります。
 統合政府のバランスシートで、まあ形の上で差額として出てきている五百四兆円ですが、先ほど申し上げたように、当座預金と銀行券というのは負債性がありません。したがって、五百四兆から五百一兆円を引くと、ネットの赤字は三兆円ということになります。まあ、事実上、財政再建は終わっているということですよ。
 先ほど来、日銀の独立性という話があります。私が一年生議員のときでしたかね、日銀法改正、ちょうど今頃ですよ、二十四年前の十一月頃だった。総裁は松下総裁の時代だったですかね。昭和十七年頃作られた、その国家目的に奉仕するという第一条の改正から始まって、まあいろいろ議論をしました。そのときに私が申し上げたのは、日本銀行が政府から独立して糸の切れたたこみたいに飛んでいっちゃっていいんですかという議論をした記憶があります。
 日銀の独立性というのは、手段、方法の独立性ですよ。つまり、何年か前に作った、締結した日銀と政府のアコードなんというのは、もうその典型例じゃありませんか。そのアコードでもって二%の物価目標が設定をされている。しかし、残念ながら、日銀は黒田総裁になって非常によくやってきた、基本的に私は、細かいところでは不満もありますけどね、よくやってこられたと思いますよ。
 なぜ二%の物価目標が達成できなかったのかといったら、それは二度にわたる増税ですよ、先ほど来議論があるとおり。だから、この目的が達成、物価目標が達成できないのを黒田総裁の責任論に帰するのは非常に誤った考えだと私は理解をしております。
 私の演説会じゃありませんので、質問をいたします。
 まず、先ほどお示しをしました統合政府バランスシートについて、総裁、どうお考えですか。

#151
○参考人(黒田東彦君) 御指摘のこの統合バランスシートの観点から見ますと、政府が発行した国債の一部は中央銀行、日本の場合は日本銀行が保有する国債と相殺されますので、政府の債務が圧縮されるということはそのとおりであります。
 他方で、政府と日本銀行のバランスシートを統合した場合には、日本銀行が保有する国債に相当する部分が、民間銀行が日本銀行に今保有する当座預金、あるいは国民が保有する銀行券といった日本銀行の債務に振り替わることにもなりますので、統合バランスシート全体で見て、この統合バランスシートとして債務の総額は変わらないというふうに思っております。
 委員は、当座預金あるいは銀行券は返済の必要がない債務だというふうにおっしゃいましたが、これは、当然のことながら、先行き、緩和政策の出口を迎えた後、適切な金融政策を行っていくために、例えば当座預金などの縮小が必要になるということは十分あり得るわけでして、これは実際上、その債務の返済と見ていいと思います。
 したがいまして、当座預金や銀行券が返済不要な債務であるということではないというふうに考えております。

#152
○渡辺喜美君 まあ実質的に債務性がないということを申し上げているわけです。
 日銀法改正の翌年でしたか、九七年のちょうどこれも今頃ですが、すごい状況でしたよ、拓銀がコール市場で資金取れなくなってね。あの頃のコール市場というのはたしか時点決済方式とかいう、まあ丼勘定ですよ、早く言ってね。十一時に決済、十二時にまとめて、何時に決済。つまり、コール市場の誰が出したお金がデフォルトされたのか全く分からないというので、あっ、これは金融恐慌が起きたなと。三洋証券が裁判所に放り込まれた翌日、コール市場が悲鳴を上げたんですね。
 そこで、私は、これは基本、流動性の問題ではなくてソルベンシーの問題だと、バケツの底に穴が空いているかどうかの問題だということで、公的資金の注入という提案をした記憶がございます。
 その頃ですかね、翌年だったか、塩漬け金庫株ファンドという提案もしたんですね。まあ、持ち合い株式というのは当時相当あったので、そういうのを銀行から引き取って、日銀の資金で、で、塩漬けにしちゃえと。ちょうど今のETFの買取りみたいな話ですよ。
 そして、国債を大量に発行すべきだと。国債の大量発行、最終的にこれ日銀が引き取るというのも、これまた塩漬け金庫債みたいな話ですよ。予算総則にちゃんと書かれているように、償還の来た国債というのは乗換えができるわけですからね。事実上のこれ日銀引受け。ですから、これはもう金庫債、塩漬け金庫債でいいわけであります。
 ですから、国債が非常に今足りなくなってきているというのが、いつも申し上げますように、マイナス金利の背景なのであります。
 お手元の一ページの、このいつもお示しをするグラフ。おむすび山になっていますね。これは保有長期国債のグラフであります。黒田総裁が誕生したのが一三年の三月だったですかね、その頃から、保有長期国債は物すごい勢いで伸びてきた。あっ、これはいい線いくなと思いましたよ。
 つまり、期待インフレ率というのが高まってくれば、実質金利はどんどん低下をしてくるはずだと。で、八十兆円の買取り目標というところまで行って、残念ながら国債の玉が足りなくなっちゃったんでしょうね、察するに。そこで、苦し紛れというか苦肉の策といいますか、イールドカーブコントロールというのを始めた。その頃から保有長期国債はどんどん減ってきているというのが現実であります。最近ちょこっと増えて、十二兆ぐらいが底だったのでありますが、十六兆ぐらいじゃないですか、今でもね。
 そうすると、これは、FRBがこの新型コロナショックでもって再び急激な資産拡大を始めましたので、これは緩和負けするということが出てきてしまったわけです。
 今日は為替相場は百四円台ぐらいでしょうか。先週は百三円台ぐらいでしたね。麻生大臣に聞きましたら、いや、それはドル安というものだと言っておられましたけれども。明らかに緩和負けということになりますと、いつ百円を突破されてもおかしくはない。
 元財務官であられた黒田総裁にはもう釈迦に説法でありますが、黒田財務官の頃はたしか百二十三円か四円ぐらいだったんじゃないですかね。その頃、たしかカウンターパートのアメリカのテーラー財務次官ですか、テーラー・ルールのテーラーさんですね、と黒田財務官が話をされて、何兆円か介入をされた記憶があります。
 大体、為替相場というのは内閣の通信簿。あの頃は小泉内閣で、恐らく百二十円台。次の第一次安倍内閣も百二十円台。福田内閣が百十円台。麻生内閣が百円飛び台。鳩山内閣九十円台。菅内閣八十円台。野田内閣七十円台。そして、第二次以降の安倍内閣になって再び百円飛び台ぐらいになって今日来ているという状況じゃないでしょうかね。
 それではお尋ねをしますが、緩和していると、日銀の資産規模は増えているんだと言いながら、保有長期国債が余り増えていないのはどうしてでしょうか。

#153
○参考人(黒田東彦君) 先ほども申し上げましたとおり、感染症の影響を踏まえまして、四月の金融政策決定会合では、債券市場の安定を維持してイールドカーブ全体を低位で安定させるために、当面、国債の更なる積極的な買入れを行うことが適当というふうに判断いたしまして、その際、金融市場調節方針を実現するために必要な金額の国債買入れを上限を設けずに行っていくということを明確にいたしました。
 このグラフは残高ではなくて年間の買入れ額ですので、当然のことながら残高はずっと増え続けてきております。足下で、このグラフがありますように、買入れ額も増えたわけですけれども、そのほかに、もう御承知のとおり、資金繰り支援のための特別オペを通じてかなり大量に流動性を供給しておりますので、日本銀行の資産総額あるいは負債総額全体は国債のこの増加額よりもはるかに大きく増加をいたしております。
 そういう意味では、現在の長期国債の買入れ額は、まさにこのイールドカーブコントロールの下で十年債の金利がゼロ%程度になるように必要なだけの買入れを行っているということでありますので、あくまでも今のフレームワークの下では金利というものを、イールドカーブをターゲットにして必要な額の買入れを行っていると。
 そして、為替レートについて何か申し上げるのは僣越だと思いますけれども、委員も御承知のとおり、為替レートについてはいろんな議論ありますけれども、一つ、金利格差ということが言われるわけでして、バランスシートの規模だけでいうと日本銀行のバランスシートはFRBとかECBよりもはるかに大きいわけですけれども、むしろ為替に影響があると言われているものの一つはやはり金利かなと。
 ただ、金利も、為替の動きと金利の動きを短期金利とか長期金利の格差とかいろんな指標で見ても、あるときは短期金利の動きに当たって、あるときは長期金利に当たって、あるときはどっちにも相関していないというようなことがありますので、余りこの金融政策というか、金利とダイレクトに為替を結び付けることはできないとは思いますけれども。もし金融政策を結び付けるとすれば、むしろ、これは私が申し上げたというよりもトリシエという元ECBの総裁がこのところずっと十年ほど強調しておられるわけですけれども、日米欧の主要な中央銀行が二%という物価安定目標を設定して、その下で金融政策を行っているということが、間接的に、中長期的に見てこの十年ぐらい日米欧の為替レートが比較的、その前よりもですけど、比較的安定している理由ではないかと言われているわけです。まあこれはトリシエ前総裁の御意見ですけど。
 いずれにいたしましても、この国債の買入れ額が減ってきていることは事実ですけれども、また、足下でまた増えていることも事実ですが、あくまでもイールドカーブコントロールの下で適正なイールドカーブをつくるように、十年債の金利目標をゼロ%程度にして必要な額だけ買い入れているということは御理解いただきたいと思います。

#154
○渡辺喜美君 なかなか総裁のお立場で、玉が足りなくなっちゃったんで苦肉の策でイールドカーブコントロール始めましたとも言えないんでしょうね。もし国債、長期国債がもっと潤沢にあれば、また消費増税などという愚策を犯さなければ、もうとっくに二%インフレ目標は達成していましたよ。名目成長三%、四%、経済、そういうごく普通の国の経済に日本はなったはずであります。
 お手元の二枚目の縦長のグラフでありますが、これは日米の実質金利、十年名目金利からBEIを引いたもの。かつては日本も名目金利四%、実質金利三・九%なんていう時代があったんですよ。
 ちょうど佐藤委員長が道路局長をやっていた頃、私が国土交通部会長というのをやっていまして、その頃、公共事業評価の割引率というのをたしか決めて、委員長よく御存じだと思いますけど、四%は当時の平均実質利回りに近い数字だったんですね。何とそれを後生大事にいまだに四%割引率で計算しているものだから公共事業費が全然増えないという、そういう背景がありますけど、今、国交省も見直しはやっているようですけど、これはまた別にやらせていただきますが。
 日米の実質金利差、リーマン・ショックの頃から日米共に急低下しております。しかし、赤のグラフの日本よりも青の線のアメリカの方がずっと低い水準だったんですね。この間、先ほど申し上げましたように、為替は七十円台まで突っ込んだということですよ。そして、黒田総裁が登場した頃から日本の方が実質金利はアメリカよりも低いと、こういうことになってきた。ところが、最後のところで青線と赤線がクロスしちゃった。つまり、日本の実質金利の方がアメリカよりもかなり高い水準に来てしまっているというのがこれで分かるわけであります。
 したがって、まあ財務官もやられた総裁にはもう全てをお見通しかと思いますが、ここで下手な出口論とか、それからマイナス金利の解除とか、そういう隙を見せたりすると相当良くないことになると思いますが、改めていかがですか。

#155
○参考人(黒田東彦君) 先ほど申し上げたように、為替相場は内外金利差から影響を受ける面がありますけれども、それだけでなくて、いろいろな世界経済あるいは国際金融資本市場における動きの中で形成されているというふうには思っております。
 ただ、その上で、御指摘の現在取っておる長短金利操作付き量的・質的金融緩和、これは基本的に、金利を低く、実質金利をマイナスにして経済をサポートするということがずっと続いているわけですけれども、それを現在のその大幅な金融緩和によって金利を低位にくぎ付けして、そしてそういうことを通じて経済、物価にプラスの影響を与えようとしていること自体は全く当面変える必要がないし、変える必要もないと、そういうことは申し上げられます。

#156
○渡辺喜美君 要は、インフレ期待に働きかけると、これが非常に大事なことなんですよ。ですから、まあいろいろ手段、方法は日銀お任せになっていますんで、いろんなものの買取りで資産規模は増やしておられると思いますが、やっぱり一番効くのは長期国債なんですよ。だから、ここのところが、まあ十六兆円、年間通してね、まあそういう規模だとちょっとしょぼいよな。そういうのが如実に表れているのがこの実質金利のグラフなのであります。
 昨日ですかね、日経新聞に面白い記事が出ておりました。中国の社債のデフォルトが再び注目されてきていると。前にもこれお尋ねしたこともあるんですがね。まあ二〇一八年ぐらいに習近平主席がこの中国の不良債権問題に手を付けようとした。しかし、その頃、米中貿易戦争が非常に激しくなってきて、手を付けて、やろうとしたところ、もう入口でできなくなっちゃったと。まあ金融不安に近いものが起きたんでしょうね。
 中国では、御案内のように、五年に一回、党大会というのをやっています。一七年に党大会が終わった翌年、それを、荒療治ですからね、不良債権処理というのはね。次の党大会は二二年だと。そうすると、もう経済が回復しつつある今、この不良債権問題に手付けないといけないというのが日経新聞の解説でありますが。中国の名門大学、清華大学の紫光集団というんですかね、紫の光、半導体を国内生産、製造しようという、いわゆるメード・イン・チャイナ二〇二五の一環かと思いますけれども、ここの社債がデフォルトですね、リスケですから。それから、何と読むんですかね、これ、華晨汽車集団、BMWとの合弁会社、これはもう会社更生法を申請した。
 中国の社債というのは、実態としては銀行が投資家になっていると。つまり銀行融資と同じだと。ということは、もうれっきとした不良債権そのものであると。銀行の不良債権とその予備軍が六・七兆元、円換算では百兆円以上という記事でありますが、専門家の中には、先進国の基準で査定すればその何倍もあると。確かに、中国の国営企業を含めた民間債務というのが二千何百兆円だったか三千何百兆円だったか、前にお尋ねしたことがありました。
 そうすると、長期政権を目指す習近平指導部というのは、やはり政権にとってのリスク要因を取り除こうとするわけですね。日本の経験、先ほど申し上げたシステミックリスクというやつですよ。このシステミックリスクを危機の中で起こしたら、もうこれ、とんでもない話になるんですね。
 ちょっと脇道にそれますが、金融危機の中でモラルハザード回避とシステミックリスク回避はどっちを優先すべきだと思います。

#157
○参考人(黒田東彦君) 委員もよく御承知と思いますけれども、どのような時代にどのような金融危機かということではあるんですけれども、基本的に危機の下ではシステミックリスクの防止が最優先すると。それに伴うモラルハザードはもちろん極力回避していくように努める必要はあると思いますけれども、やはり危機の下ではシステミックリスクの防止が最優先するということは、そのとおりだと思います。

#158
○渡辺喜美君 銀行に対する公的資金、公的資本の注入なんというのは、もうその最たるものでしてね。システミックリスクが起きそうであるがゆえに是認されるという理解が正しいと思います。
 こういう今みたいなじわじわっと来ている危機、金融パニックのような一気に来るシステミックリスクというよりは、じわじわっとボディーブローのように利いてくる危機という種類もあるんですね。そういうときにモラルハザード回避を優先するということを前面に掲げていると、非常に危うい状況になると私は思います。
 中国の話に戻ります。
 習近平主席がAPECで、自由で開放された貿易と投資を実現する先頭に立つというようなことを言ったわけですね。アメリカは御案内のような政治空白状態が二か月半続きますので、そういう混乱に乗じてCPTPPに全面加入すると。環太平洋パートナーシップ協定ですよ。おお、すげえことを言い始めたなと。それから、デジタル経済が世界の未来を開く、デジタルインフラの建設、垣根をなくす、コロナ対策を前面に出して言っておられるようでありますが。中国のことを詳しく書いておられる近藤大介さんの指摘でありますが、これは中国包囲網の打破を狙っているのではないかと、米中デカップリングを乗り越えようと、こういう指摘をしておられます。
 今日のニュースで、アメリカの一般調達局、GSAが政権移行を認める書簡を送ったということのようでありますが、デジタル人民元というもくろみは、私から見ますと、これデジタル経済でもって中国が主導権を取ろう、最終的にはドル覇権から脱していこうと、そのために5Gだ、AIだ、スマートシティーだ、いろんなもくろみを行っている。そして、こういったことが社会主義とどうも親和性があるという指摘がありますね。コロナ対策で人民の個別行動の監視までできてしまうような、そういうシステムの使い方もできなくはないということであります。
 一方、このデジタル人民元が果たしてそこまで考えているのかどうか分かりませんが、国際金融のトリレンマというのがございます。つまり、自由な金融政策、自由な資本移動、固定相場制、この三つは一遍に実現はできませんよと、このうち二つまでだというわけであります。
 中国は、為替ターゲットの金融政策をやって、事実上のそのベルトの中で人民元とドルのペッグ体制にありますから決して金融政策が自由にやれるというわけではない、自由な資本移動もないと、その代わりにドルペッグを維持しているというのが私の見立てでありますが。前にもこの話は総裁にお聞きしたことがありまして、先ほど申し上げた中国の過剰債務、不良債権問題、こういうことに火が付いたときに、要は一種の第二人民元として、そのドルペッグの影響下にない、そういう種類の通貨を狙っているのではないか。不良債権処理のバケツの穴埋めですよ。
 こういうもくろみがあるのではないかということを前に申し上げましたが、そのとき総裁は否定されましたけれども、改めてお伺いします。

#159
○参考人(黒田東彦君) いわゆるCBDC、中央銀行のデジタル通貨につきましては、このところ確かに従来の抽象的なリサーチから、より具体的、実務的な実験に取り組む中央銀行が増えていると。その一つが中国の人民銀行であり、あるいは欧州のスウェーデンの中央銀行であるということであります。
 そういうことの背景に何があるのかというのはなかなか難しいわけですけれども、例えばスウェーデンなどの場合は、非常に大きな国で、人口密度が低くて、現金の流通というのがもう非常に少なくなってしまっていると。コロナウイルスの感染症が広がって以来、日本も含めて現金の流通量が増えているんですけれども、スウェーデンはまだずっと減っていまして、GDP当たりもう数%ぐらいになっているということで、中央銀行としての安全な決済通貨を供給するという面では、もはや紙幣、銀行券に頼っていられないので、CBDCを発行することを検討するということのようです。
 人民銀行については、どういう御趣旨なのかは分かりませんけれども、中国の場合も、非常に広い国土で、人口は日本の十倍以上ありますけれども、面積はたしか二十五倍ぐらいあって、中西部は非常に人口密度が低くて、そういうところに現札、人民銀行券を十分に流通させるということに物すごいコストが掛かるということが言われているわけです。ですから、お札が汚れているとか、あるいは偽札があるとか、いろんなことが言われていまして、そういうことも踏まえて、一方で、中国の場合はアリペイとかウイチャットペイという形で民間のデジタル通貨が広がっているということも踏まえまして、恐らくCBDCを人民銀行としても発行してはどうかということで、まだ決定したとはおっしゃっていないんですけれども、民間の人を含めて実験を始めているわけです。
 この二つが非常に前進、早いペースで、ほかのFRBとかECBとかはまだそこまで行っていませんで、研究、検討しているという段階ではありますけれども、やはり、何といっても、それぞれの事情は違ったとしても、一方で情報通信技術が急速に進歩しているということ、そういうことを踏まえて、また一部の国でCBDCに乗り出そうとしているということ、その中でやはり日米欧それぞれの国でも、中央銀行デジタル通貨に対するニーズが急速に高まる可能性があるというふうには思っております。
 したがいまして、しっかり準備しておく必要があるとは思っておりますけれども、事中国の人民元について、その不良債権処理とかそういうことと関係あるというふうな情報は得ておりません。

#160
○渡辺喜美君 アメリカが、中国軍と関係のある三十一社の投資を禁止する大統領令、トランプ大統領が署名しましたね。
 その後ですよ。今度は、習近平主席が直接決断を下したというのがアリババの電子決済システムを担っているアント、もうこれ史上最大規模の上場と言われていましたが、この上場を延期すると。先ほどの近藤大介氏によると、これはアリババの国有化を狙っているんじゃないのかという指摘もありました。
 日本銀行も、デジタル通貨の実証実験を遅ればせながら来年度ですか、始めるんだそうですけれども、理科系人材はそろっていますか。

#161
○参考人(黒田東彦君) 十分かどうかっていろんな議論があると思いますけれども、日本銀行の場合は、そもそも日銀ネットという巨大なコンピューターシステムで毎日百四十兆円ぐらいの資金決済を行っていると、さらには国債の決済も行っているということもあって、ソフトウエアの開発その他、IT関係の人材はかなりそろっております。毎年そういう人も新たに採用していますし、大学院を出てすぐの人もいますし、中途採用の方もいるということで、そこはかなりそろっているというふうに思っておりますが、先ほどうちの理事が申し上げたとおり、今の段階では日銀だけでやりますけれども、その次の段階になると、やはり民間の企業とか家計を含めた実験ということになるのではないかと思います。
 ただ、今の時点でも、当然のことながら、民間のITその他のノウハウがある企業、個人とは十分意見交換をして、遺漏なきようにきちっとした実験ができるようにしたいと思っております。

#162
○渡辺喜美君 とにかく、後れを取ることのないようにお願いしたいと思います。
 残念ながらもう時間が来てしまいましたので質問には至りませんでしたが、この展望レポートの十二ページに潜在成長率のグラフがあります。ちょうど日本銀行が公定歩合の引下げを始めた頃辺りから急激に潜在成長率が下がってきております。この検証はまた後日やらさせていただきます。
 ありがとうございました。

#163
○委員長(佐藤信秋君) 本日の調査はこの程度にとどめ、これにて散会いたします。
   午後三時二十七分散会
ソース: 国立国会図書館
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