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2020/06/03 第201回国会 参議院 第201回国会 参議院 本会議 第21号 令和2年6月3日
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2020/06/03 第201回国会 参議院

第201回国会 参議院 本会議 第21号 令和2年6月3日

#1
令和二年六月三日(水曜日)
   午前十時一分開議
    ━━━━━━━━━━━━━
○議事日程 第二十一号
  令和二年六月三日
   午前十時開議
 第一 社会保障に関する日本国とスウェーデン
  王国との間の協定の締結について承認を求め
  るの件(衆議院送付)
 第二 社会保障に関する日本国とフィンランド
  共和国との間の協定の締結について承認を求
  めるの件(衆議院送付)
 第三 地域の自主性及び自立性を高めるための
  改革の推進を図るための関係法律の整備に関
  する法律案(内閣提出、衆議院送付)
 第四 都市再生特別措置法等の一部を改正する
  法律案(内閣提出、衆議院送付)
    ━━━━━━━━━━━━━
○本日の会議に付した案件
 一、公益通報者保護法の一部を改正する法律案
  (趣旨説明)
 一、日程第一より第四まで
 一、行政監視、行政評価及び行政に対する苦情
  に関する調査の中間報告
     ─────・─────

#2
○議長(山東昭子君) これより会議を開きます。
 この際、日程に追加して、
 公益通報者保護法の一部を改正する法律案について、提出者の趣旨説明を求めたいと存じますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

#3
○議長(山東昭子君) 御異議ないと認めます。衛藤晟一国務大臣。
   〔国務大臣衛藤晟一君登壇、拍手〕

#4
○国務大臣(衛藤晟一君) ただいま議題となりました公益通報者保護法の一部を改正する法律案の趣旨を御説明申し上げます。
 公益通報者保護法の制定後においても、消費者の安全、安心を損なう社会問題化する事業者の不祥事が明らかになっています。こうした国民の生命、身体、財産その他の利益の保護に関わる法令違反の発生状況等に鑑み、これらの法令の規定の遵守を図る必要があります。
 こうした状況を踏まえ、事業者に対して公益通報に適切に対応するために必要な体制の整備を義務付けるとともに、公益通報者及び通報対象事実の範囲の拡大並びに公益通報者の保護の強化を行うなどの必要があるため、この法律案を提出した次第です。
 次に、この法律案の内容につきまして、その概要を御説明申し上げます。
 第一に、通報者に対する不利益な取扱いを未然に防止するとともに内部通報に適切に対応できるようにするため、事業者に対して必要な体制の整備等を義務付け、その違反に対して行政措置を導入することとしています。また、通報者を特定させる情報の守秘を義務付け、その違反に対して刑事罰を導入することとしています。
 第二に、行政機関等への通報を行いやすくするため、権限を有する行政機関に対する通報の保護要件について、氏名等を記載した書面を提出する場合を追加するとともに、被害の拡大の防止等に必要と認められる者に対する通報の保護要件について、財産に対する損害のある場合等を追加することとしています。また、公益通報に適切に対応できるようにするため、権限を有する行政機関に対して必要な体制の整備等を義務付けることとしています。
 第三に、退職者や役員を保護の対象となる者に追加するとともに、行政罰の対象となる不正を保護の対象となる通報に追加することとしています。また、公益通報をした通報者に対して損害賠償を請求することができないこととしています。
 なお、一部の附則規定を除き、公布の日から起算して二年を超えない範囲内において政令で定める日から施行することとしています。
 政府といたしましては、以上を内容とする法律案を提出いたしましたが、衆議院におきまして、附則の検討条項について、検討を加える対象として、公益通報をしたことを理由とする公益通報者に対する不利益な取扱いの裁判手続における請求の取扱いを明記する修正が行われております。
 以上、公益通報者保護法の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を御説明申し上げた次第であります。(拍手)
    ─────────────

#5
○議長(山東昭子君) ただいまの趣旨説明に対し、質疑の通告がございます。順次発言を許します。田村まみさん。
   〔田村まみ君登壇、拍手〕

#6
○田村まみ君 国民民主党の田村まみです。
 立憲・国民.新緑風会・社民の会派を代表し、公益通報者保護法の一部を改正する法律案について、衛藤大臣に質問いたします。
 また、闘病中の皆様にお見舞いを申し上げます。そして、新型コロナウイルス感染症で亡くなられた皆様の御冥福をお祈り申し上げ、御家族の皆様にお悔やみを申し上げます。
 自粛、休業要請の中でも感染への不安の中、働いていた方々、自粛、休業要請に応じ積極的に感染防止のために行動を変えて協力されていた皆様にも心から敬意を表し、感謝を申し上げます。
 しかし、現実は、ねぎらいの気持ち、感謝の言葉だけでは生計は成り立ちません。政府のコロナ対策は、現場に様々な問題を生じさせています。
 新型コロナ対策の柱である持続化給付金、五月一日からの申請が始まり、一か月が過ぎました。事業が継続できるかどうかの瀬戸際、大変な状況なのに、申請に不備があるのかどうかも分からない、電話も通じない、持続化給付金は届かない。
 持続化給付金の業務は、実態のよく分からない一般社団法人サービスデザイン推進協議会が中小企業庁から七百六十九億円で業務を委託され、このうち七百四十九億円が電通に再委託され、その先にも再委託されています。
 この差額の中抜きされた二十億円について経済産業省に聞いたところ、協議会は事業の遂行能力があり、委託費は必要な額と説明。具体的に何に必要なのか不透明なままです。そもそも国民の税金であり、緊急時に巨額の国のお金を使う、公正さと透明さは大前提ではないでしょうか。利益を追求するものが絡めば、公正さはゆがみます。
 会派でこの協議会を視察しました。誰もいない、電話もない、御丁寧に呼び鈴まで外されていました。しかも、直後の五月二十八日に、サービスデザイン推進協議会の代表理事が六月八日の社員総会で辞任すると。その代表理事が、給付事業の受託について全く知らなかったと言っている。
 事業の中身をトップが知らない、説明すらできない、実態の見えない、でたらめで怪しげな法人に業務委託をするのは、幾ら緊急時とはいえあり得ません。事業の遂行能力とは、コロナ禍のどさくさに紛れて税金の無駄遣いや疑惑を隠し通す能力のことなのでしょうか。
 第二次補正予算の予備費も同じです。十兆円もの巨額の予備費を積んでいますが、その使途についても、政府に白紙の委任状を与えることは、財政民主主義や国民への説明責任の観点から大問題です。
 先が見通せないなら、明確に不足しているところに予算を付けるべきです。そして、使い道が決まったら、その都度予算委員会を開いて国会に報告し、議論し、審議して、国民に説明するべきです。実態の見えない業者に平然と委託するような政府に白紙の委任状を渡すわけにはいきません。新しい生活様式に向けて実直に行動を変えている国民に説明をするのに、何か不都合なことでもあるのでしょうか。
 その新しい生活様式の実践例を踏まえた新しい日常に向けて消費者に知っておいていただきたい事項についてお伺いします。
 緊急事態宣言時も国民生活を支えるために医療・介護、小売・サービス業で働く仲間から悲痛な声が私のところにたくさん届いています。
 マスク着用が当たり前の中の生活様式の中で、例えば、お買物に来られたお客様からの問合せ、申出が聞きにくく、従業員が、お客様、もう一度よろしいですかと尋ねると、一回で聞き取れといった威圧的な強い口調で迫ってこられる。コロナ禍で急激な環境の変化から、顧客からの迷惑行為、いわゆるカスタマーハラスメントは増えて従業員は疲弊しています。
 そんな中、業界発表のガイドラインを受けて、消費者庁は二十二日、緊急事態宣言が解除された後の新しい生活様式について、消費者や事業者が注意すべき点をまとめて公開しています。
 それぞれのガイドラインの入館者の健康チェックの項目では、発熱がある、三十七・五度まで、平熱プラス一度など、基準がばらばらです。利用する側には基準が不明確です。なぜあっちはよくてこっちの施設は駄目なのかと現場での混乱が想定されます。しかも、その基となる業界団体の八十一のガイドラインには、引用や参考、出典など、それぞれ記載されていないものがほとんどなのです。消費者庁として、内容の根拠等を確認された上での御対応なのでしょうか。
 それでは、法案の質問に入ります。
 平成十六年六月に制定された公益通報者保護法ですが、衆参議院内閣委員会では九つと六つの附帯決議がされました。その項目に、「附則第二条の規定に基づく本法の見直しは、通報者の範囲、通報対象事実の範囲、外部通報の要件及び外部通報先の範囲の再検討を含めて行う」とあります。五年を目途とする検討規定が置かれているにもかかわらず、施行後十四年も改正案の提案に至らなかった明確な理由をお答えください。
 事業者がとるべき措置として、内部通報体制の整備を義務付ける項目が新設されていますが、三百人以下の民間事業者、行政機関は努力義務とされました。
 内部通報体制には、会社法や東京証券取引所のコーポレートガバナンスコードの中に重複する部分があります。これに照らせば、大企業が企業防衛、法令遵守、株価、株主への利益対応のために内部通報制度を導入するのは必然なのです。直近の消費者庁の調査によると、内部通報制度の導入状況は、大企業で九九%、中小企業では四〇%。今回の新設の項目は、単にできていることを法文に書き込んだだけと言えます。三百人以下とした根拠をお示しください。
 一方、中小事業者に整備義務を課したとしても、人手不足の理由から形骸化し、実際には機能しないことが懸念されています。更なる制度の周知と現在のガイドラインの周知だけではこれまでの対応と同じで、設置が広がらないのは十四年間の結果を見れば明らかです。中小に特化したガイドラインの作成等、これまでとは違う具体的な対策は検討されているのでしょうか。また、されるのでしょうか。
 報告書では、全ての企業への対応を将来的に義務付けの範囲の拡大をしていくということが期待されています。拡大に向けてのスケジュールについて、大臣はいかがお考えでしょうか。
 次に、内部体制整備の一つとして、公益通報対応業務従事者を定める義務が課せられます。その上で、事業者がとるべき措置や守秘義務の指針策定までは改正案となりました。特に、十二条に守秘義務が記載されていますが、正当な理由があれば対象外になるとあります。どのような理由が当たるのでしょうか、お示しください。
 また、公益通報対応業務従事者には守秘義務に対して刑事罰が科されますが、事業者には刑事罰がありません。事業従事者も調査する場合には、業務を複数人で実施する場合もあれば、不正の是正を行う場合に他部署、組織の上役との連携も必要です。業務従事者のみへの刑事罰ではバランスも悪く、誰も通報対応する業務をやりたがりません。抑止効果を考えると、事業主にも刑事罰等は設けないのでしょうか。いかがでしょうか。
 通報対象事実の範囲についてお伺いします。
 ガイドラインには、通報対象となる事項の範囲として、法令違反のほか内部規程等、記載しています。なぜ行政処分の対象となる規則違反の事実は法律に盛り込まなかったのでしょうか。
 この法律に基づき通報するのは一般国民です。しかし、通報の対象として、過料の対象となる規則違反行為の事実は追加されましたが、行政処分の対象となる規則違反行為の事実の追加は盛り込まれず、限定的です。あわせて、別表記載の四百七十もの法律が対象です。対象法律が列挙のままとされた理由と、一般国民が分かりづらく、通報手前の対象法律かの確認作業の負担についての対策は検討されているのでしょうか。
 対象になると分かっていても、本来、より多くの人が使いやすい法律でなければ意味がありません。平成二十八年の労働者における公益通報者保護法制度に関する意識等のインターネット調査に、不正行為があることを知った場合に通報しない理由が、不利益取扱いを受ける、嫌がらせを受けるという回答は合計で四割を超えています。しかし、通報を理由とする不利益取扱いに対する行政措置は今回導入されませんでした。
 その理由として、衛藤大臣は、事後的な行政措置による不利益取扱いの是正ではなく、不利益取扱いの事前抑止を通じて制度の実効性を高めることが重要であると答弁していますが、つまり、事前抑止の体制整備義務の履行が徹底されなければ、不利益取扱いを受けるおそれは払拭できないということになります。全国の事業者における内部通報体制の整備義務が実効的に機能する形で履行されていることをどのような方法で調査し、事実認定し、不利益取扱いが生じる前に行政措置を行いますか。いかがでしょうか。
 事前抑止となる内部通報体制整備義務の実効性確保のためのより強力な措置、命令制度、命令違反に対する刑事罰を設けるなど、制裁措置を強化するべきだと考えますが、御認識はいかがでしょうか。
 重ねて、衛藤大臣は、通報を理由とする不利益取扱いに対する行政措置を導入しなかった理由を、消費者庁では裁判と同程度の事実認定を行うことが困難であるとともに、執行体制に課題があるという答弁をしていますが、事実認定に関しては、法律に基づく調査権限を規定して、労働監督行政を担う厚生労働省や法令所管省庁の連携協力を得れば可能と考えますが、連携協力は得られないのでしょうか。
 また、執行体制についても、関係省庁と連携協力することや、法施行までの間に消費者庁の体制を拡充することで十分可能です。本法律案により導入される内部通報体制整備義務違反に対する行政措置が執行できるのであれば、不利益取扱いに対する行政措置も執行できるのではないですか。不利益取扱いに対する行政措置を導入できなかった本当の理由は、通報者を絶対に守るという姿勢と、ひいては消費者、公益に資するという認識はないと言っても過言ではないのでしょうか。大臣、御認識をお伺いします。
 そして、もし不利益な取扱いとして解雇や配置転換について訴訟を起こすとしても、一個人が社内で得られる情報は限られ、解雇などの不利益取扱いを主張、立証することは困難です。本法律案においては施行三年後をめどとする検討規定が置かれていますが、衆議院における全会一致の修正により、この検討対象に公益通報者に対する不利益な取扱いの裁判手続における請求の取扱いも明記されました。これにより、政府には立証責任の転換に関する規定の創設も視野に入れて検討することが義務付けられますが、具体的なスケジュールと検討方法をお示しください。
 最後に、私が働いてきたサービス、商品を提供している最前線の労働者は、消費者からの改善を求める声に日々向き合い、職場で励んでいます。改善をしようと励んでいます。消費者の声によって知り得た自らの会社の異変やその予兆は真摯に受け止めています。しかし、職場での是正に努めるとき、会社から不当な扱いを受けるようであれば、その消費者の声も届きません。
 万人が公益に資する行動ができるための答弁を求め、質問を終わります。
 ありがとうございました。(拍手)
   〔国務大臣衛藤晟一君登壇、拍手〕

#7
○国務大臣(衛藤晟一君) 田村議員にお答えいたします。
 まず、消費者に向けた新しい生活様式に関する周知内容についてお尋ねがありました。
 新しい生活様式を実践し、感染予防と経済活動との両立を図るためには消費者の協力が不可欠です。
 そこで、新型コロナウイルス感染症対策専門家会議での議論を基に作成された業界団体ガイドラインについて、日常生活に関係する内容を消費者に知っていただくため、関係省庁と調整の上、消費者庁ホームページ上で紹介しています。内容については順次見直しを図り、消費者に分かりやすい情報を発信してまいります。
 次に、改正法案の提出まで十四年を要した理由についてお尋ねがありました。
 消費者庁としては、平成十八年の法施行以来、御指摘の附帯決議や附則を踏まえ、法の執行状況に係る調査、ガイドラインの策定、改正、周知、広報に取り組むなど、制度の実効性向上に必要な対応を行ってきたところです。
 また、法改正に向けた検討に際しては、論点によって積極的な立場と慎重な立場の意見の隔たりが大きく、関係者間で十分調整を行う必要があり、関係者の意見を丁寧に聞き、法制化に向けた調整を進めてまいりました。
 こうした制度の実効性向上に向けた取組や調整の結果、今国会においてこの改正法案の御審議をお願いすることとなったものであります。
 次に、三百人以下の民間事業者や行政機関の内部通報体制の整備を努力義務とした根拠についてお尋ねがありました。
 消費者の安全、安心を守るためには、中小事業者においても内部通報に適切に対応していただくことが重要です。もっとも、中小事業者において内部通報に対応いただくコンプライアンス部門等に十分な人員が確保されているとは限らず、その規模にかかわらず一律に義務を課すと過大な負担となるおそれがあることを踏まえ、努力義務としたところであります。
 次に、中小事業者向けの取組についてお尋ねがありました。
 今回の改正法案が成立した後、改正法の周知、広報に努めるとともに、中小事業者団体とも連携を図りながら、中小事業者にも体制整備に取り組んでいただけるよう、様々な取組を進めてまいります。具体的には、中小事業者向け説明会の開催やガイドラインの見直し、新たなモデル内規の策定等、中小事業者向け支援策を検討してまいります。
 次に、内部通報体制の整備に関し、全ての事業者への義務付けの拡大についてお尋ねがありました。
 今回の改正法案が成立し施行された後、大規模な事業者のみならず、中小事業者にも制度が普及するよう周知啓発に取り組み、その定着状況を定期的に調査する予定としております。中小事業者を含む全ての事業者への義務の拡大については、中小事業者における制度の定着状況や実効性の状況等を注視し、それらの実態も踏まえつつ、関係者の意見も聞くなどしながら検討してまいります。
 次に、改正法案第十二条の正当な理由についてお尋ねがありました。
 守秘義務は、公益通報者に対する不利益取扱いを抑止するために重要である一方、法令遵守という公益通報者保護制度の目的を達成するためには、守秘義務によって必要な調査が過度に妨げられないようにすることも必要です。このような観点から、公益通報者本人の同意がある場合や法令に基づく場合のほか、公益通報に関する調査等を担当する者の間での情報共有など、通報対応に当たって必要な場合などを正当な理由がある場合として規定しています。
 次に、守秘義務に関する事業者への刑事罰についてお尋ねがありました。
 公益通報者保護制度の実効性の向上に当たり、公益通報者を特定させる事項の漏えいを防止することは極めて重要です。
 今般の改正では、事業者に内部の公益通報に対応するための体制整備等を行う義務を課し、その義務には通報に関する情報を適切に管理することも含まれます。義務違反に対しては、最終的には事業者名が公表されることとなっており、これにより事業者としての対応が期待されます。
 次に、行政処分の対象となる違反行為の事実を通報対象としなかった理由についてお尋ねがありました。
 今般の改正においては、公益通報者の範囲の拡大や保護要件の緩和、守秘義務違反に対する刑事罰の導入などの大幅な見直しに対応するものとして、通報対象事実の範囲を検討し、行政罰への範囲拡大にとどめたものです。なお、消費者利益の擁護等に係る行政処分の対象となる違反行為のほとんどは刑事罰や行政罰の対象であるため、今回の改正で通報対象となると考えられます。
 次に、通報対象法律を列挙する形式を維持した理由等についてお尋ねがありました。
 現行法は、通報対象となる法律を明確化するため、対象法律を列挙する形式を取っており、これは今般の法改正に伴い対象法律が追加された後も、通報者と事業者の双方にとって必要であると考えています。
 消費者庁としては、通報をしようとする者が対象法律かどうか確認する際の負担を軽減する観点から、消費者庁ウエブサイト上の対象法律と通報先の行政機関を検索することができるサービスを改めて周知するほか、消費者庁に一元的相談窓口を設けて対応するなどの負担軽減策を進めてまいります。
 次に、体制整備義務の行政措置の実施方法についてお尋ねがありました。
 体制整備義務の実効性を確保する観点から、消費者庁としては、事業者の重大な不祥事を注視し、必要に応じ事業者に報告を求めるほか、消費者庁に設置する一元的相談窓口を広く周知して労働者などから情報を受け付けるとともに、関係省庁とも連携を強化し、体制整備の状況について情報収集するなどした上で事実認定を行いたいと考えております。このように、体制整備義務の行政措置を実施することで、体制整備義務が履行されないことによる不利益扱いが生じないようにしてまいります。
 次に、内部通報体制整備義務の違反に対する制裁措置の強化についてお尋ねがありました。
 内部通報体制整備義務の違反に対しては、各事業者の事業や組織の実情に応じた是正を促すことが適当と考えられることから、助言、指導、勧告、公表といった段階的な措置を講ずることとしております。まずはこれらの措置を着実に実施することが内部通報体制整備義務の実効性確保にとって重要と考えております。
 次に、不利益取扱いに対する行政措置の導入における行政機関の連携協力についてお尋ねがありました。
 政府としては、不利益取扱いに対する行政措置を導入するには、事実認定や執行体制について更に検討が必要な課題があると考えています。
 特に、解雇その他の不利益取扱いが公益通報を理由とすることの因果関係に関する事実認定を行政機関が行うことが困難との課題は、執行の主体が消費者庁であっても厚生労働省であっても変わりはないものと認識しています。こうした点も踏まえ、現時点において不利益取扱いに対する行政措置を導入することは困難と判断したものです。
 なお、今回の改正法案の国会提出に当たっては、厚生労働省を含む関係行政機関の間で必要な調整を実施した結果も踏まえ、事前抑止の強化を中心とした制度の実効性を高めることとしたものです。
 次に、不利益取扱いに対する行政措置を導入しない理由と消費者庁の姿勢についてお尋ねがありました。
 不利益取扱いに対する行政措置に必要となる公益通報と不利益取扱いとの因果関係の事実認定においては、体制整備義務の違反とは異なる困難な判断が必要となります。
 なお、消費者庁としても通報者の保護は極めて重要な課題と考えており、刑事罰付きの守秘義務を規定し、事前抑止の強化を中心に公益通報者保護制度の実効性向上を図ることとしたものです。
 次に、検討規定による見直しのスケジュールと方法についてお尋ねがありました。
 施行後三年を目途とする見直しの内容については、附則第五条の規定の趣旨を踏まえ、まずは消費者庁において施行後の状況についてしっかりと把握、分析していくことが必要であると考えております。これらの分析結果等も踏まえ、不利益取扱いに対する行政措置や刑事罰、立証責任の転換など、どのような対応が適当であるかについて、関係者の意見も聞きながら検討してまいります。(拍手)
    ─────────────

#8
○議長(山東昭子君) 松沢成文さん。
   〔松沢成文君登壇、拍手〕

#9
○松沢成文君 日本維新の会の松沢成文です。
 会派を代表し、ただいま議題となりました公益通報者保護法の一部を改正する法律案について質問いたします。
 まず、法案の質問に先立ち、憲法審査会の問題について申し上げます。
 参議院では憲法審査会が二年半近くも開かれていないという異常な状態が続いており、このままでは国民の負託に応えられないばかりか参議院の存在意義すら疑われます。
 日本維新の会は、今国会でも林芳正会長に二度も開催要請を行いましたが、残念ながらいまだに開催されていません。開催の見通しが立たないのであれば、私たちは会長の不信任動議を提出いたします。是非、各党各会派の皆様におかれましては、今国会での憲法審査会の開催に向けて御協力を賜りますようお願いをいたします。
 それでは、公益通報に関連して、まず、麻生財務大臣に伺います。
 森友学園の国有地売却問題、いわゆる森友事件で、公文書の改ざん作業を強要された元近畿財務局職員の赤木俊夫さんが二年前の三月七日に自死されました。改めて御冥福をお祈りいたします。
 その赤木さんが残した遺書が、三回忌を迎えた今年三月に公表されました。この遺書は、刑事罰を受けるべき者として当時の佐川理財局長ほか財務省の幹部職員の実名を挙げ、国有地売却をめぐる背任罪や公文書改ざんをめぐる公文書変造罪を訴える命懸けの内部告発書でありました。
 なぜ赤木さんは生前に公益通報制度を利用して不正を告発することができなかったのでしょうか。その理由は、残された遺書の文章からもよく分かります。察するに、総理夫人が関わる事件で内部通報をしても、財務省から仕返しをされるし、検察に告発しても全ての責任を自分に押し付けられるに違いないと確信したのでしょう。
 それだけではありません。当時、匿名の通報も受理することや、通報者に不利益な扱いがあった場合の救済措置を定めた公益通報者保護法の規則を改正する通知を、財務省は何と三か月以上も放置していました。実際に近畿財務局へ通知が届いたのは、赤木さんが自死された後のことです。新規則が近畿財務局にも適切に周知されていたならば内部通報のハードルは低くなり、赤木さんが内部通報制度を利用した可能性も否定できません。赤木さんの死は、内部通報制度の機能不全を訴えているとも言えます。
 残された遺書では、公文書改ざんについては全て佐川氏が指示を出していたことなど、財務省の調査報告書には記載されていない新しい事実が明らかにされています。安倍総理や麻生大臣は再三、再調査するつもりはないと発言されていますが、財務省の調査報告書には、今後、新たな新事実が明らかになるような場合には更に必要な対応を行っていくことになると記されています。
 そうであるならば、当然、遺書に残された新事実に基づいて改めて調査すべきではないでしょうか。また、本法案が成立して、新たな内部通報があった場合には再調査するということでよろしいですね。併せて麻生大臣にお尋ねいたします。
 それでは、法案の内容について、以下、衛藤消費者及び食品安全担当大臣に伺います。
 十四年前に施行された公益通報者保護法の目的は、公益通報者を保護し、国民生活の安定及び経済社会の健全な発展を図ることにあります。同法の附則第二条は、施行後五年をめどとして施行状況を踏まえ必要な措置を講ずるとしています。
 現行法においては、保護すべき通報者や通報対象事実の範囲が狭過ぎるなど問題点が多々指摘されてきたにもかかわらず、改正は先送りされてきました。現行法が果たしてきた役割と問題点をどう認識していますか。なぜ改正案の提出にこれほどまでの時間を要したのでしょうか。御答弁願います。
 通報対象事実について、現行法では、刑事罰の担保により限定され、最終的に刑事罰が科せられる法令違反行為とされています。改正案では、消費者委員会答申に基づき過料の対象となる規則違反行為、つまり行政罰が加えられました。しかし、法の実効性を確保するためには更に条例などの法令全般に適用されるべきと考えますが、いかがでしょうか。
 現行法の通報対象事実の範囲は、国民の生命、身体、財産その他の利益に関わる法律に限定されています。その他の利益という広範な文言も入っていますが、現在の法目的による限定が十分に機能しているとお考えでしょうか。通報件数が多い各種税法や補助金適正化法のほか、昨今の政治家や官僚の不祥事を鑑みますと公文書管理法や国家公務員法、政治資金規正法などを追加し、通報対象事実の範囲を拡大してしかるべきと考えますが、いかがでしょうか。
 現行法の対象となる法律は、令和元年九月現在で、法の別表と政令に掲げられた四百七十本です。公益性の観点から社会的対処が必要な事実にも対応すべく、その他公益に重大な影響を及ぼす場合といった包括条項を置く方式も政府に提案されたと聞いていますが、対象法律の限定列挙する法律は見直されていません。なぜでしょうか。今後もこの方針を貫くお考えでしょうか。
 改正案では、内部通報体制の整備について、事業者は、公益通報対象業務従事者を定め、公益通報に適切に対応するために必要な体制整備その他の必要な措置をとることになります。しかし、事業者がとるべき必要な措置に関しては、内閣総理大臣が必要な指針を定めるとして、具体的な内容は規定されておりません。これでは指針の内容次第では規制が骨抜きになってしまいます。法の実効性を高めるために、事業者がとるべき措置は指針で定めるのではなく、法律に明記すべきではないでしょうか。指針で定める理由はどこにあるのか、お答え願います。
 また、消費者庁が策定している既存の各種ガイドラインにも内部通報制度の整備、運用に関する記述がありますが、このガイドラインと指針のダブルスタンダードで混乱が生じることはないのでしょうか。併せて伺います。
 常時雇用の労働者三百一人以上の事業者は全国で約一万七千あると言われています。これほどの多くの事業者の内部通報体制の整備状況をどう判断、検証するのでしょうか。地方支分部局という現場を持たない消費者庁で対応できるのでしょうか。適正で円滑な執行に向けて消費者庁内部の体制を構築していく計画はあるのでしょうか。このような業務は、本来、全国に出先機関を持って労働行政をこなす厚生労働省が主体となるべきと考えますが、いかがですか。
 現行法は通報者に対する不利益取扱いを禁じていますが、事業者に対して不利益取扱いの是正や抑止に資する行政措置や刑事罰は設けられておりません。消費者委員会答申では、不利益取扱いを行った事業者に対する行政措置の導入が求められましたが、改正案では見送られました。
 この最も重要な対策が抜け落ちたのは、経済界の意向に加え、消費者庁に不利益取扱いの事実認定をするマンパワーがないからだと言われていますが、本当でしょうか。相次ぐ不祥事を起こす企業ではなく、通報者を保護すべきですし、事実認定をする消費者庁の負担が大きいのであれば、これも労働紛争を扱う厚生労働省の労働局に任せればよいのではないでしょうか。明快な答弁を求めます。
 以上、日本維新の会を代表しての私の質問を終わります。(拍手)
   〔国務大臣衛藤晟一君登壇、拍手〕

#10
○国務大臣(衛藤晟一君) 松沢議員にお答えいたします。
 まず、現行法の役割と問題点、法案提出に時間を要した理由についてお尋ねがありました。
 公益通報者保護法の施行後、大企業や行政機関を中心に内部通報制度の整備が進むなど、制度の普及が進んだ一方、その実効性に課題があり、公益通報制度が十分機能していれば早期の是正が期待し得た事業者の不祥事が後を絶たない状況があります。
 消費者庁としては、現行法の施行後、法の施行状況調査、ガイドラインの策定、改正、制度の周知、広報など、制度の実効性向上に必要な対応を行ってきたところですが、こうした状況を踏まえ、消費者委員会も含め法改正に向けた検討を進めてまいりました。
 ただ、検討に際しては、積極的な立場と慎重な立場の意見の隔たりが大きい論点も多く、関係者間の調整を丁寧に進める必要があったところです。
 こうした制度の実効性向上に向けた取組や調整の結果、今国会においてこの改正法案の御審議をお願いすることとなったものです。
 次に、罰則等による通報対象事実の限定についてお尋ねがありました。
 この法律においては、どのような行為が通報対象事実として保護の対象になるかは、通報者と事業者双方にとって明確であることが必要です。また、今般の改正においては、保護要件の緩和、守秘義務違反に対する刑事罰の導入などの大幅な見直しがなされているため、通報対象事実はそれに対応する必要があります。このため、今回の法案改正では、刑事罰や行政罰で担保される行為を通報対象事実としたところです。
 次に、法目的による通報対象事実の限定についてお尋ねがありました。
 この点に関しては、消費者委員会の議論でも、対象となる法律がどの程度広がるのか不明瞭であるという意見や、行政機関等の負担増大による体制面の懸念があるという意見があり、法目的の限定を外した場合、公益通報と消費者の生活や利益との関連性が希薄となることの妥当性が問題となります。政府としては、今後、法改正案成立後の施行状況等を分析しつつ、必要な対応を検討してまいります。
 次に、この法律の対象になる法律の規定の方式についてお尋ねがありました。
 御指摘のように、対象法律を列挙しない法律とした場合、通報者にとっても事業者にとってもその通報が保護の対象に含まれるのか不明確になってしまうと考えられます。消費者委員会の答申でも、対象法律を列挙する法律を取りやめることには、対象法律を特定目的の法律に限定しないこととした場合に検討すべき課題として位置付けられており、法律の目的による限定を維持する今般の改正法案では、これまでと同じく対象法を列挙する方式としたものです。
 次に、内部通報体制の整備に関する指針についてお尋ねがありました。
 体制整備義務の実効性を確保するためには、実施すべき事項をある程度詳細に定めておくとともに、臨機応変に改正する必要があるため、その内容は法律ではなく指針に定めることとしました。また、御懸念のような混乱が生じないよう、改正法案が成立した後、改正内容を踏まえ、関係者の御意見も聞いて、各ガイドラインと指針の在り方を検討してまいります。
 次に、事業者における内部通報体制の整備状況を確認するための体制整備についてお尋ねがありました。
 事業者の内部通報体制整備の実効性を確保する観点から、消費者庁としては、事業者の重大な不祥事を注視し、必要に応じて事業者に報告を求めるとともに、消費者庁に設置する一元的相談窓口を広く周知して労働者などから端緒情報を受け付けるなど、体制整備の状況について確認したいと考えております。この際、必要に応じて厚生労働省を含む関係行政機関と連携強化していくことを想定しております。
 今後、事業者の体制整備義務の整備状況を確認するため、関係省庁とも連携を強化するほか、より一層消費者庁内でも体制整備を進めてまいります。
 次に、不利益取扱いに対する行政措置を行うための体制整備についてお尋ねがありました。
 政府としては、不利益取扱いに対する行政措置を導入するには、事実認定や執行体制について更に検討が必要な課題があるものと考えています。
 特に、解雇その他の不利益取扱いが公益通報を理由とすることの因果関係に関する事実認定を行うことは困難との課題は、執行の主体が消費者庁であっても厚生労働省であっても変わりないと認識しております。こうした点も踏まえ、現時点において不利益取扱いに対する行政措置を導入することは困難であると判断したものです。
 以上でございます。(拍手)
   〔国務大臣麻生太郎君登壇、拍手〕

#11
○国務大臣(麻生太郎君) 松沢先生から一問お尋ねがあっております。
 近畿財務局の職員が亡くなられたことにつきましては、残された御家族、御遺族の気持ちを思うと言葉もなく、静かに謹んで御冥福をお祈りするものであります。
 文書改ざんの問題、これは極めてゆゆしきことであって、誠に遺憾の極み、深くおわびを申し上げなければならないと考えております。
 財務省の調査報告書は、文書改ざんなどの一連の問題について、財務省としても説明責任を果たすという観点から、できる限りの調査を尽くした結果をお示ししたものであります。
 その上で、調査報告書におきましては、一連の問題行為は佐川元局長が方向性を決定付け、近畿財務局職員の抵抗にもかかわらず、本省理財局の指示により行われたと結論付けられております。手記と調査報告書の内容に実質的な違いがあるとは考えられておりませんので、再調査を行うようなことは考えておりません。
 なお、新たな内部通報がなされた場合につきましては、今般の改正法案等を踏まえまして、適切に対応してまいります。(拍手)
    ─────────────

#12
○議長(山東昭子君) 大門実紀史さん。
   〔大門実紀史君登壇、拍手〕

#13
○大門実紀史君 日本共産党を代表して、公益通報者保護法改正案について質問します。
 私は、今まで企業や官庁の不正行為を数多く国会で取り上げてきましたが、そのほとんどは内部告発者から寄せられた情報と事実証拠に基づくものでした。
 告発された方々に共通していたのは、企業や組織の不正を知り、見て見ぬふりをしたら消費者被害が拡大する、会社も信用を失ってしまう、黙認した自分も人間として駄目になるという思いでした。ごく普通の職業意識や価値観を持った人が、社会と会社のため、自分の尊厳を守るために勇気を出して告発に踏み切ったのです。
 しかし、今まで多くの内部告発者は、企業や組織から解雇や降格、陰湿ないじめなどの報復を受けてきました。
 二〇〇四年に公益通報者保護法が制定されるきっかけになったのは、富山県のトナミ運輸の幹部社員だった串岡弘昭さんの裁判でした。串岡さんは、運輸業界の闇カルテルを社内で告発してから三十年にもわたって会社から草むしりの雑役を強いられ、隔離されるなどの報復を受け続けました。二〇〇二年、串岡さんは損害賠償と謝罪を求めて訴訟を起こし、三年後に見事勝利をいたしました。串岡さんの訴訟は、公益通報者保護法の必要性を社会に訴えるものとなったのです。
 ところが、経団連は、公益通報者の保護は日本を密告社会にしてしまうという的外れなキャンペーンを展開し、法案の骨抜きを図りました。その結果、制定された公益通報者保護法は、通報者や通報対象の事実の範囲を極端に狭め、外部通報にも厳しい要件を課すもので、内部告発者の保護に全く役に立たないものとなりました。
 さらに、同法の附則では施行後五年を目途とした検討が規定されているにもかかわらず、全く手付かずのまま十四年間も放置されてきました。衛藤大臣、なぜ附則を無視して十四年間もの長い間法改正が放置されてきたのか、改めてその理由をお答えください。
 意見の隔たりがあったなどといいますが、要するに、十四年も掛かった最大の理由は経済界の根強い抵抗でした。経団連は、表向きは法改正に反対とは言いにくいために、もっと情報の収集が必要だと改正の先延ばしを図る戦術を取りました。同時に、経済界に配慮し、見直し作業に消極的だった消費者庁の責任も重大です。
 しかし、二〇一〇年代に入ると、内部告発を弾圧する企業の姿勢がかえって企業の存亡の危機を招くという事件が相次ぎました。
 特に、オリンパスの巨額の粉飾決算事件や東芝の不正会計事件では、早くから内部で是正を求める告発の声が上がっていましたが、経営陣はそれを無視し、事実を隠蔽し続けました。結局、外部への通報で全てを暴露され、社会的な信用も失い、企業存続の危機にまで陥ったのです。もっと早く内部告発者の意見を聞き改善を図っていれば、会社への壊滅的打撃も避けられたはずです。組織内の不正を安心して告発できる公益通報者保護制度の確立は、企業の自浄作用を保ち、健全な企業風土を培うことにもつながり、企業にとってもメリットが大きいのです。
 公益通報者保護法を実効性のあるものにするため、二〇一八年十二月の消費者委員会の答申では、通報を理由として通報者に不利益扱いをした企業に対する助言、指導、勧告、公表など行政措置の導入が提言されました。ところが、今回の改正ではこの行政措置の導入がそっくり抜け落ちています。なぜ不利益扱いに対する行政措置の導入が見送られたのか、衛藤大臣、改めてその理由をお答えください。
 行政措置の導入が見送られた背景には、経済界の反対だけでなく、厚生労働省の抵抗がありました。
 解雇や降格などの不利益扱い、不当労働行為について具体的に指導するのは、労働省の労働部局の仕事になります。今年二月三日、本改正案の原案となった自民党プロジェクトチームの提言をまとめた小倉將信事務局長、衆議院議員は、記者会見で、行政措置の導入を見送った理由として、その厚生労働省の労働部局が職員数の関係で対応できないと言っていることを挙げました。また、二〇一八年六月の消費者委員会専門調査会でも、厚生労働省の課長が、職員の数に余裕がないから消費者庁との連携は難しいと公然と法改正に抵抗する姿勢を示しています。
 不利益扱いに対する行政措置の導入には、公益通報者保護という明確な立法事実があります。役所の体制というものは、立法化されたものに対応して整備、強化するべきものであって、体制が足りないからといって立法化を拒むのは本末転倒ではないでしょうか。
 加藤厚生労働大臣、厚生労働省として行政措置の導入に積極的に協力し、本当に職員数が足りないのなら、政府に人員増を要求するのが筋ではありませんか。答弁を求めます。
 消費者庁の姿勢も問題です。二〇一八年十一月二十二日の専門調査会では、消費者庁は行政措置の導入について関係省庁の協力が得られないと泣き言ばかり並べています。公益通報者保護を本気で考えるなら、もっと熱心に関係省庁と交渉すべきだったのではありませんか。
 消費者庁の気概のなさも問題ですが、一番に問われるべきは、公益通報者保護制度の確立を全省庁の課題に据えようとせず放置してきた安倍政権の責任ではないでしょうか。衛藤大臣の認識を伺います。
 私が三年前、悪質マルチ商法、ジャパンライフ事件を取り上げたのは、消費者庁内部からの告発がきっかけでした。お年寄りの被害が広がっているのに、消費者庁が政治家や役所のOBに配慮し、文書指導にとどめて業務停止命令を出そうとしない、このままではたくさんのお年寄りが食い物にされてしまうという思いからの告発でした。消費者庁にも正義感と気骨を持った人はいたのです。
 国会でジャパンライフ問題が取り上げられ、マスコミの報道もあり、ようやく消費者庁も本格的処分に乗り出すようになりました。しかし、消費者庁の対応が遅れた間に、多くのお年寄りがジャパンライフに老後の資金を奪われました。
 安倍総理が桜を見る会の招待状をジャパンライフ会長に送ったこととともに、消費者庁の対応の遅れが被害を拡大した、このことについて衛藤大臣に反省の気持ちはありますか。
 その一方で、当時、消費者庁の中では外部への通報者は誰かという調査が行われました。公益通報者保護を担当する消費者庁が、通報者を捜し回るというブラックジョークのようなことが実際行われたのです。
 消費者庁が発足して十年以上が過ぎました。年を追うごとに消費者庁に対する信頼は失われています。消費者庁をつくるために尽力された消費者団体や弁護士さんたちから異口同音に聞かれるのは、こんなはずじゃなかったという言葉です。
 信頼を失ってきた原因は、ジャパンライフや安愚楽牧場事件などへの対応の遅さ、そして今回の公益通報者保護法改正案を含め、この間の法改正が消費者の立場に立ち切れず、ことごとく中途半端なものになってきたことにあります。
 この点を厳しく指摘して、質問を終わります。(拍手)
   〔国務大臣衛藤晟一君登壇、拍手〕

#14
○国務大臣(衛藤晟一君) 大門議員にお答えいたします。
 まず、改正法案の提出までに十四年を要した理由についてお尋ねがありました。
 消費者庁としては、平成十八年の法施行以来、御指摘の附則等の趣旨も踏まえ、法の施行状況に係る調査、ガイドラインの策定、改正、周知、広報に取り組むなど、制度の実効性向上に必要な対応を行ってきたところです。
 また、法改正に向けた検討に際しては、論点によって積極的な立場と慎重な立場の意見の隔たりが大きく、関係者間で十分調整を行う必要があり、関係者の意見を丁寧に聞き、法制化に向けた調整を進めてまいりました。
 こうした制度の実効性向上に向けた取組や調整の結果、今国会において改正法案の御審議をお願いすることとなったものです。
 次に、不利益取扱いに対する行政措置の導入についてお尋ねがありました。
 公益通報者に対する違法な不利益取扱いは通報をちゅうちょさせるものであり、あってはならないと考えます。この観点から、不利益取扱いを事前に抑止することは、制度の実効性向上や通報者保護のため、まずは重要と考えています。その上で、不利益取扱いに対する事後的な行政措置を導入するには、事実認定や執行体制について更に検討が必要な課題があると考えています。こうした点も踏まえ、現時点では、不利益取扱いに対する行政措置を導入することは困難であると判断したものです。
 次に、安倍政権における公益通報者保護制度の課題認識についてお尋ねがありました。
 公益通報者保護制度の実効性を向上させることは、消費者利益の擁護に加え、事業者の信頼性や法令遵守の確保等の観点から、政府として極めて重要な課題と認識しています。このため、今回の改正法案の国会提出に当たっては、厚生労働省を含む関係行政機関の間で必要な調整を適切に実施してまいりました。こうした調整も踏まえ、今回の改正法案では、不利益取扱いに対する行政措置に関して事実認定や執行体制について課題があることから、事前抑止の強化を中心に制度の実効性向上を図ることとしたものです。
 なお、法改正以外にも、行政機関向けガイドラインを改正し、関係行政機関に対する周知を徹底するなど、公益通報者保護制度の実効性を向上させる取組をしてきているところであります。
 次に、ジャパンライフ事件における消費者庁の対応についてお尋ねがありました。
 ジャパンライフ社に対しては、消費者庁において平成二十八年十二月から一年間で四回にわたって厳しい行政処分を行うなど、悪質な法違反事件として全力で取り組んできたところです。
 ジャパンライフ事件のような悪質商法の被害防止という観点から、より一層の迅速な取締りが必要だとの指摘があることは承知しており、現在、消費者庁において、こういった悪質商法に対して一層の迅速かつ強力な対応が可能となるよう、特定商取引法や預託法の改正も視野に実効的な対策について検討を行っております。
 今後も、厳しい御指摘も踏まえ、消費者の立場に立ち、消費者被害の防止のために全力で取り組んでまいります。(拍手)
   〔国務大臣加藤勝信君登壇、拍手〕

#15
○国務大臣(加藤勝信君) 大門実紀史議員にお答えをいたします。
 公益通報者保護法に対する厚生労働省の協力についてお尋ねがありました。
 公益通報者に対する不利益取扱いは、通報者の保護及び法令遵守という同法の目的に照らし、是正されるべきものだと考えております。
 今回の改正法案においては、不利益取扱いに対する行政措置の導入について、不利益取扱いが公益通報を理由とすることとの因果関係を行政機関が立証することは困難であるなどの課題があることを踏まえ、規定を設けないこととしたと承知をしております。
 その上で、厚生労働省としては、同法の対象法律に関する通報があったときは、引き続き、必要に応じて通報を受理した上で調査を行うなど適切な対応を行うとともに、今回の法案が成立、施行された場合には、都道府県労働局等の窓口において公益通報の一層の周知や相談者に対する丁寧な説明を行うこと、都道府県労働局に設置している労働相談・個別労働紛争解決制度関係機関連絡協議会に、消費者庁にも参加を求めた上で、公益通報者保護制度についても情報共有を行うことなどにより、消費者庁と連携し、公益通報者保護の一層の実効性確保に努力をしてまいります。(拍手)

#16
○議長(山東昭子君) これにて質疑は終了いたしました。
     ─────・─────

#17
○議長(山東昭子君) 日程第一 社会保障に関する日本国とスウェーデン王国との間の協定の締結について承認を求めるの件
 日程第二 社会保障に関する日本国とフィンランド共和国との間の協定の締結について承認を求めるの件
  (いずれも衆議院送付)
 以上両件を一括して議題といたします。
 まず、委員長の報告を求めます。外交防衛委員長北村経夫さん。
    ─────────────
   〔審査報告書及び議案は本号末尾に掲載〕
    ─────────────
   〔北村経夫君登壇、拍手〕

#18
○北村経夫君 ただいま議題となりました条約二件につきまして、外交防衛委員会における審査の経過と結果を御報告申し上げます。
 まず、スウェーデンとの社会保障協定は、両国間で年金制度に関する法令の適用について調整を行うこと等を定めるものであります。
 次に、フィンランドとの社会保障協定は、両国間で年金制度及び雇用保険制度に関する法令の適用について調整を行うこと等を定めるものであります。
 委員会におきましては、両件を一括して議題とし、両協定締結の意義、今後のアジア各国との社会保障協定締結に向けた政府の方針、日中社会保障協定の改正に向けた政府の取組等について質疑が行われましたが、その詳細は会議録によって御承知願います。
 質疑を終え、採決の結果、両件はいずれも全会一致をもって承認すべきものと決定いたしました。
 以上、御報告申し上げます。(拍手)
    ─────────────

#19
○議長(山東昭子君) これより両件を一括して採決いたします。
 両件を承認することに賛成の皆さんの起立を求めます。
   〔賛成者起立〕

#20
○議長(山東昭子君) 総員起立と認めます。
 よって、両件は全会一致をもって承認することに決しました。(拍手)
     ─────・─────

#21
○議長(山東昭子君) 日程第三 地域の自主性及び自立性を高めるための改革の推進を図るための関係法律の整備に関する法律案(内閣提出、衆議院送付)を議題といたします。
 まず、委員長の報告を求めます。地方創生及び消費者問題に関する特別委員長佐藤信秋さん。
    ─────────────
   〔審査報告書及び議案は本号末尾に掲載〕
    ─────────────
   〔佐藤信秋君登壇、拍手〕

#22
○佐藤信秋君 ただいま議題となりました法律案につきまして、地方創生及び消費者問題に関する特別委員会における審査の経過と結果を御報告申し上げます。
 本法律案は、地域の自主性及び自立性を高めるための改革を総合的に推進するため、地方公共団体等の提案等を踏まえ、都道府県から指定都市への事務・権限の移譲を行うとともに、地方公共団体に対する義務付けを緩和する等の措置を講じようとするものであります。
 委員会におきましては、新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえた地方創生の進め方、地方分権改革の成果と今後の提案募集方式の在り方、地方への税源移譲を進める必要性等について質疑が行われましたが、その詳細は会議録によって御承知願います。
 質疑を終局し、採決の結果、本法律案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
 以上、御報告申し上げます。(拍手)
    ─────────────

#23
○議長(山東昭子君) これより採決をいたします。
 本案に賛成の皆さんの起立を求めます。
   〔賛成者起立〕

#24
○議長(山東昭子君) 総員起立と認めます。
 よって、本案は全会一致をもって可決されました。(拍手)
     ─────・─────

#25
○議長(山東昭子君) 日程第四 都市再生特別措置法等の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)を議題といたします。
 まず、委員長の報告を求めます。国土交通委員長田名部匡代さん。
    ─────────────
   〔審査報告書及び議案は本号末尾に掲載〕
    ─────────────
   〔田名部匡代君登壇、拍手〕

#26
○田名部匡代君 ただいま議題となりました法律案につきまして、国土交通委員会における審査の経過と結果を御報告申し上げます。
 本法律案は、都市の魅力及び防災機能を高め、都市の再生を図るため、滞在快適性等向上区域が都市再生整備計画に定められた場合における関係法律の特例を設けるとともに、立地適正化計画の記載事項への都市の防災に関する機能の確保に関する指針の追加、災害危険区域等に係る開発許可の基準の見直し等の措置を講じようとするものであります。
 委員会におきましては、災害ハザードエリアを踏まえた防災まちづくりの推進策、居心地が良く歩きたくなるまちなか創出に向けた取組、居住誘導区域において用途制限の緩和等を行う意義等について質疑が行われましたが、その詳細は会議録によって御承知願います。
 質疑を終局し、討論に入りましたところ、日本共産党を代表して武田良介理事より本法律案に反対する旨の意見が述べられました。
 次いで、採決の結果、本法律案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
 なお、本法律案に対し附帯決議が付されております。
 以上、御報告申し上げます。(拍手)
    ─────────────

#27
○議長(山東昭子君) これより採決をいたします。
 本案に賛成の皆さんの起立を求めます。
   〔賛成者起立〕

#28
○議長(山東昭子君) 過半数と認めます。
 よって、本案は可決されました。(拍手)
     ─────・─────

#29
○議長(山東昭子君) 行政監視委員長から、行政監視、行政評価及び行政に対する苦情に関する調査の中間報告として行政監視の実施の状況等に関する報告を求められております。
 この際、報告を聴取することに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

#30
○議長(山東昭子君) 御異議ないと認めます。行政監視委員長川田龍平さん。
    ─────────────
   〔調査報告書は本号末尾に掲載〕
    ─────────────
   〔川田龍平君登壇、拍手〕

#31
○川田龍平君 行政監視委員会における行政監視の実施の状況等について御報告申し上げます。
 平成三十年六月に合意された本院の行政監視機能の強化に関する参議院改革協議会報告書において、行政監視機能の強化に議院全体として取り組むとされたことを受け、本委員会は本院の行政監視機能の主要部分を担うべく、行政監視機能の強化の具体化に向け、取り組んでまいりました。
 委員会においては、政府からの説明聴取及び質疑を行うとともに、国と地方の行政の役割分担に関する件について参考人からの意見聴取及び質疑を行いました。
 さらに、国と地方の行政の役割分担の在り方等について調査検討するため、国と地方の行政の役割分担に関する小委員会を設置し、小委員会において政府に対する質疑を行いました。
 委員会及び小委員会においては、国と地方の行政の役割と連携の在り方、地方自治体の業務負担の実情、新型コロナウイルス感染症に対する政府の対応状況など多岐にわたる議論が行われましたが、その詳細は会議録によって御承知願います。
 このほか、理事会等において、行政監視機能の強化の在り方に関する協議を重ね、本委員会における行政監視機能の強化に関する申合せを行うとともに、参議院のホームページに開設した行政に対する苦情窓口を通して苦情を受け付けるなどの取組を進めました。
 以上、御報告申し上げます。(拍手)

#32
○議長(山東昭子君) 本日はこれにて散会いたします。
   午前十一時十九分散会
ソース: 国立国会図書館
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