くにさくロゴ
2020/06/16 第201回国会 参議院 第201回国会 参議院 内閣委員会 第16号 令和2年6月16日
姉妹サイト
 
2020/06/16 第201回国会 参議院

第201回国会 参議院 内閣委員会 第16号 令和2年6月16日

#1
令和二年六月十六日(火曜日)
   午前十時開会
    ─────────────
   委員の異動
 六月十二日
    辞任         補欠選任
     小野田紀美君     石井 準一君
 六月十五日
    辞任         補欠選任
     石井 準一君     加田 裕之君
     岡田 直樹君     元榮太一郎君
    ─────────────
  出席者は左のとおり。
    委員長         水落 敏栄君
    理 事
                上月 良祐君
                柘植 芳文君
                杉尾 秀哉君
                矢田わか子君
                石川 博崇君
    委 員
                今井絵理子君
                岡田  広君
                加田 裕之君
                古賀友一郎君
                元榮太一郎君
                山田 太郎君
                山谷えり子君
                木戸口英司君
                岸 真紀子君
                塩村あやか君
                高橋 光男君
                清水 貴之君
                高木かおり君
                市田 忠義君
                田村 智子君
   国務大臣
       国務大臣
       (内閣府特命担
       当大臣(科学技
       術政策))    竹本 直一君
   大臣政務官
       内閣府大臣政務
       官        神田 憲次君
       文部科学大臣政
       務官       青山 周平君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        宮崎 一徳君
   政府参考人
       内閣府大臣官房
       審議官      柿田 恭良君
       内閣府政策統括
       官        松尾 泰樹君
       内閣府知的財産
       戦略推進事務局
       長        三又 裕生君
       文部科学省大臣
       官房審議官    森  晃憲君
       文部科学省大臣
       官房審議官    梶原  将君
       文部科学省大臣
       官房審議官    増子  宏君
       文化庁審議官   森  孝之君
       経済産業省大臣
       官房長      糟谷 敏秀君
       中小企業庁事業
       環境部長     奈須野 太君
   参考人
       一般社団法人日
       本女性科学者の
       会監事(元会長
       )
       特定非営利活動
       法人日本女性技
       術者科学者ネッ
       トワーク理事   大倉多美子君
       全国大学院生協
       議会議長     梅垣  緑君
       国立情報学研究
       所研究総主幹   古井 貞煕君
    ─────────────
  本日の会議に付した案件
○政府参考人の出席要求に関する件
○参考人の出席要求に関する件
○科学技術基本法等の一部を改正する法律案(内
 閣提出、衆議院送付)
    ─────────────

#2
○委員長(水落敏栄君) ただいまから内閣委員会を開会いたします。
 まず、委員の異動について御報告いたします。
 昨日までに、小野田紀美さん及び岡田直樹君が委員を辞任され、その補欠として加田裕之君及び元榮太一郎君が選任されました。
    ─────────────

#3
○委員長(水落敏栄君) 政府参考人の出席要求に関する件についてお諮りいたします。
 科学技術基本法等の一部を改正する法律案の審査のため、本日の委員会に、理事会協議のとおり、内閣府大臣官房審議官柿田恭良君外八名を政府参考人として出席を求め、その説明を聴取することに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

#4
○委員長(水落敏栄君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
    ─────────────

#5
○委員長(水落敏栄君) 参考人の出席要求に関する件についてお諮りいたします。
 科学技術基本法等の一部を改正する法律案の審査のため、本日の委員会に一般社団法人日本女性科学者の会監事(元会長)・特定非営利活動法人日本女性技術者科学者ネットワーク理事大倉多美子さん、全国大学院生協議会議長梅垣緑君及び国立情報学研究所研究総主幹古井貞煕君を参考人として出席を求め、その意見を聴取することに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

#6
○委員長(水落敏栄君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
    ─────────────

#7
○委員長(水落敏栄君) 科学技術基本法等の一部を改正する法律案を議題といたします。
 本案の趣旨説明は既に聴取しておりますので、これより質疑に入ります。
 質疑のある方は順次御発言願います。

#8
○岡田広君 自由民主党の岡田広です。限られた時間でありますので、答弁は簡潔にお願いをしたいと思います。
 今回の法改正は、人文科学のみに関わる科学技術あるいはイノベーション創出の概念を追加するとともに、科学技術、イノベーションの推進体制も強化するものと理解をしています。さらに、今回のコロナウイルスの感染を踏まえ、新型コロナウイルス感染症など社会的課題に立ち向かっていく必要があることを考えると、大変重要な改正であると考えます。
 我が国は、科学技術に関する様々な指標において米国、中国に後れを取っております。今回のコロナウイルス感染症や世界各地での大規模災害等の前例のない被害は、我が国のデジタル化の遅れやスピード感、危機感に欠けているということが明らかになったのではないかという考え方を持つ人もおります。例えば論文数一つ取りましても、ほかの先進国は論文数を大きく増やす中、我が国のみが同水準にとどまり国際的なシェアが大幅に減少をしております。今回の法改正を一つの契機として、我が国の研究力を向上していかなければならないと考えます。
 これから我が国が何を活力として国際競争を生き抜いていくのかという意味において、次期の第六次基本計画では、総花的ではなく、どこに重点を置くのかをしっかりと示すことが重要と考えます。また、国民に分かりやすい情報発信に努め、理解を得ながら科学技術関係予算を増加していくことが大切であると考えます。
 その上で、来年四月からスタートする科学技術・イノベーション基本計画は夢のあるものにしていただきたいと考えておりますが、科学技術に一番理解のある竹本大臣の所見をまずお伺いをしたいと思います。

#9
○国務大臣(竹本直一君) 岡田先生、ありがとうございます。
 今お話ありましたように、日本の置かれている立場というのは非常に微妙なところにもありますが、今まで過去において、例えば科学論文等においても、世界で一位に近いところまでいた、おった過去もございますが、最近は全くそれが下位に来ておりまして、非常に私も危機感を持っております。
 ただ、考えてみますと、日本は資源のない、ほとんどない国でありますから、生きる道は科学技術力で国際的な存在感を示していくのが一番いいんだろうと思っております。
 そういう意味で、我々は、今回この科学技術基本計画に向けてどういうものを盛り込もうかということでございますけれども、一つはイノベーションと、そして人文科学を両方とも取り入れたものに改定しようと元々考えておりましたところ、コロナという予測もしないような大パンデミック的災害に見舞われたわけでございまして、これを見るに、やはり社会的課題の解決ということが我々に課された大きい課題であるというふうに思っております。
 そのためには、研究力の強化等々、指摘されていることに対してきっちり応える内容にしていかなければならないというふうに思っている次第でございます。科学技術、イノベーションは我が国の根幹を支える重要な政策でございますので、新型コロナウイルス感染症という難局に対して科学技術の力でいかに立ち向かっていくかということが一番大きい問題であろうかと思っております。
 二〇二一年度から始まります次期科学技術基本計画におきましては、これらの国難や環境、健康といった社会的課題に科学技術の力で立ち向かい、科学技術がリスペクトされる社会を構築していくことが必要かと考えております。計画策定に当たりましては、広く国民の意見を取り入れ、特に若手研究者が地方で活躍されている方々がたくさんおられますので、そういった方との意見も十分交換しながらやっていきたいと思っております。
 いずれにしろ、スピード感、そして危機感を持ってこの問題に取り組まなければならないというふうに思っております。
 このため、内閣府では、大学、産業界、政府の関係者から成る大学支援フォーラム、PEAKSで、大学が持つ潜在的なシーズやアイデアを産学で活用してイノベーションを生み出すことをビジョンの一つに掲げるとともに、自治体、大学、民間組織が連携してスタートアップ支援を行う、スタートアップエコシステム拠点としての形成などに取り組んでいるところでございます。
 いずれにいたしましても、関係省庁と連携をして大学のポテンシャルを生かしたイノベーション創出を促進するとともに、第六期科学技術基本計画の検討において、その更なる推進策の方策を検討してまいりたいと考えております。

#10
○岡田広君 大学との連携も非常に重要だという答弁がありました。
 科学技術の研究を活性化するためには人材への投資を拡大することが重要です。そのためには、これからは初等中等段階からのSTEAM教育の充実も大事かと考えておりますけれども、今日は時間の関係でこれは触れませんけれども、大学のイノベーション創出について伺いたいと思っております。
 科学技術、イノベーションの重要な担い手の一つとして大学の存在はあります。特に、東京一極集中の是正、そして地方創生という考え方からも、大学が地域のコミュニティーや自治体あるいは産業界と手を取り合って地域づくりに貢献をしていくということは非常に重要であります。
 この際に、それぞれの地域が持つ特色を踏まえながら、全国一律ではなく、多様な、多様で個性のある強みをつくり、地域に来る人の流れをつくっていくことも重要です。大学の持つポテンシャルを発揮してそれぞれの地域の特色ある戦略の実現や魅力づくりに貢献し、地方創生、イノベーション創出を目指すべきと考えておりますが、大臣のお考えを伺いたいと思います。

#11
○国務大臣(竹本直一君) おっしゃるように、大学を核としたイノベーション創出は非常に重要でございまして、先ほど申し述べましたけれども、大学フォーラム、PEAKSなどを使いまして、潜在的なニーズやアイデアを産学で活用してイノベーションを生み出すことに努めたいと思っております。
 そういう意味におきまして、地域社会に対する貢献、それから、全体として日本社会に対する貢献を大学自身がシーズ、ニーズを吸収してそれに応えていく。しかし、そのためには、研究者の不足あるいは研究環境の劣化というような問題がございますので、それには、政府が若手研究者の研究環境を良くし、そして、ポスドク等、将来になかなか見通しが立たないという研究者の逆境を解決し、そして、できましたその発明、発見等に対する評価については、社会が、産業界が適切に評価されるような環境をつくっていくこと、こういったことが必要かと考えております。

#12
○岡田広君 我が国の大学の研究費の企業負担については、世界的にも低いことは御承知のとおりです。共同研究費の約八割は三百万未満の小規模なものとなっています。
 一方で、企業の内部留保額は、平成三十年度に約四百六十三兆円という数字が出ております。安倍政権の発足した平成二十四年十二月のときには約三百兆。以来、六年連続過去最高を更新したと報じられており、安倍政権になってからももう百六十三兆円も内部留保が積み上がっている。
 我が国の企業が抱える多額の内部留保については、従業員還元することはもちろんのことでありますけれども、将来の投資を積極的に行うことが大変重要だと考えます。今回の法改正を契機にしまして、産学官の連携を強化し、民間企業が大学等に対する拠出する資金を増やしていくということはこれから大変重要な課題であると考えております。これからは研究開発投資についても基金化をしていく必要性もあるのではないかと考えます。
 政府においては、二〇二五年度までに大学、国立研究開発法人に対する企業の投資をOECD諸国平均の水準を超える二〇一四年度の三倍にすることを目標としておりますが、現在の伸び率のままではこの目標達成も厳しい状況にあると考えます。こういう状況の中で、政府として今後どのような取組を進めていくのか、大臣のお考えを伺いたいと思います。

#13
○国務大臣(竹本直一君) 先生おっしゃるとおり、大企業は現時点で四百六十兆円の内部留保があると思いますし、そのお金を社会のために有効に投資をしていただきたいと、我々そういう思いでございますが、やはり投資をすることにどういう見通しというか夢があるかと、可能性があるかということも示していくのが我々政府の役割であろうかと思っております。
 もちろん、それだけの内部留保があるわけですから、職員に対する賃金の支払等、あるいはほかの用途に充てることももちろん企業の自由ではございますけれども、やはり企業には社会的責任というものもあろうかと思います。ですから、そういう意味におきまして、また、自らの携わっている産業等が更に発展するためにも積極的な投資を呼びかけたいと思っております。
 ただ、いろいろの研究開発でスタートアップ等やりましても、それに対する支援というのはもちろん資金が必要でございますから、そういった資金を出していただきたいというふうに思っておりますが、政府におきましても、もろもろの、SBIR制度とかそういったものを使いながら、ベンチャーの支援をする中で産業が支えていくという状態をつくることによって、中小企業も大企業も新しい社会をつくっていくところに大きい可能性を見出していただければ有り難いと思っております。

#14
○岡田広君 企業の社会的責任という話がありましたが、まさにこれからは積極的な投資をする環境を広げていただきたいと思っております。
 今回、健康・医療戦略推進事務局を設置するとのことでありますが、人員面も含めてしっかりとした体制を構築して、医療分野の研究開発を着実に推進していくことは重要です。
 目下の医療分野最大の課題は新型コロナウイルス感染症対策です。一日も早く治療薬、ワクチンの開発が急務であることは言うまでもありませんが、今回はコロナ対策について二点お尋ねをしたいと思います。
 一つは、組織体制整備についてです。
 国立感染研究所は、SARSの発症時の翌二〇一〇年には定員を六人増やしました。その後数年たつと、定員削減の候補とされています。今回のコロナ対策を契機に、国立感染研究所の強化が急務であります。
 類似の施設として、アメリカでは米国疾病対策センター、全米や世界各地に医師や研究者や一万四千人以上の職員を抱えており、年間予算は約七千億規模だそうであります。中国にも中国疾病対策予防センター。台湾は、二〇〇三年のSARSに十分対応できなかった反省から国家衛生指導センターを設立し、今回の危機を乗り越えています。
 国立感染研究所は、今回の新型コロナ感染の封じ込めで重要な役割を担ってきております。
 国立感染研究所については、外部の有識者が十年前から、今回のような感染症流行時には現体制では対応ができないということで警鐘を鳴らしておりましたけれども、研究者数一つ取りましても、二〇一〇年度の三百二十五人から昨年度は三百七人ということで、十八人も数字でいうと減っています。合理化は私も理解をしないわけでは、理解をいたしますけれども、国立感染研究所の役割を再認識して、この計画の除外対象にすべきということも考えなければならないと思っております。
 予算も約六十億、今は約四十億ということで、細かいことは時間の関係で発言することはできませんけれども、是非この新型コロナ対策、また新たな感染症の流入は避けられない状況下で、人員、予算削減の議論ではなくして、米国や中国、台湾のように緊急事態に対応できるような組織体制にすべきではないかと考えますが、御見解を伺いたいと思います。

#15
○大臣政務官(神田憲次君) お答え申し上げます。
 今般の新型コロナウイルス感染症に対しましては、これまでも政府において、総理を本部長といたしまして全閣僚をメンバーとする対策本部を設置するとともに、その下に設置した専門家会議からの助言も得ながら、政府一丸となって国民の命と健康を守るための対応に当たってきたところです。
 他方で、感染症対策につきましては、体制の強化を図っていくことは先生おっしゃるように重要な視点であると認識しております。今後、事態が終息いたしました後、特措法改正時の附帯決議を踏まえまして、今般の事案対応を検証し、今後、感染症の危機管理体制の不断の見直しを進め、危機管理への対応力を一段と高めてまいりたいと考えておるところでございます。

#16
○岡田広君 本年の三月に新型インフルエンザ対策特別措置法が改正をされまして、それに基づいて政府は緊急事態宣言を発出したわけであります。
 今後も新しい種類の感染症が現れることが想定をされています。新しい感染症が出現するたびに特措法を改正しているのでは、非効率でスピード感に欠けるわけであります。今回の新型コロナウイルスが終息した後、感染症を包括的に対応できる法律を作り、初動に遅れが生じないようにすべきではないかと考えますが、これについても御見解を伺いたいと思います。

#17
○大臣政務官(神田憲次君) お答え申し上げます。
 特措法の適用の対象となる感染症の範囲についてですが、法改正によることなく、新型コロナウイルス感染症や先生おっしゃいました今後の同様な感染症を新感染症として特措法の対象として、迅速な対応を行うべきではないかという御意見がある一方で、特措法の適用対象を安易に拡大するということについては、私人の権利制約との関係上慎重であるべきとの意見もございます。
 こういった様々な議論も踏まえながら、互いに補完関係にある感染症法と特措法の在り方につきましては、今後、より良い仕組み、制度となるよう検討してまいりたいと考えております。

#18
○岡田広君 ありがとうございました。より良い制度の仕組みを是非検討していただきたいと思います。
 今回のコロナウイルス感染症対策を契機にしまして、私は、感染症対策を始めとして地域医療提供体制の整備充実を図ることは大変重要だと考えております。
 安倍政権の最大の課題の一つが地域包括ケアシステムの構築であります。どんな場所に住んでいても安心して医療、介護が受けられる、そんな体制をつくっていくことは大変重要であります。
 今回、都道府県にしっかりと責任を持たせて、地方創生臨時交付金利用に、地方の裁量に任せながら、医療体制の整備充実をしっかりと図っていただきたい、そしてそれを国が指導監督するということをお願いをしまして、ちょうど時間になりましたので、質問を終わりたいと思います。
 ありがとうございました。

#19
○矢田わか子君 国民民主党共同会派、矢田わか子です。
 今日は、九五年に施行されまして、日本の科学政策のバックボーンとなるこの法律、二十五年ぶりの改正です。今日の改正に併せて、基本法に加えて活性化法、そして内閣府設置法等十六本の関連法の改正の審議でもあります。
 まず冒頭、本当に三時間の審議でいいのかというような疑問を持ちつつも、少しでもこの法改正にまつわる問題点が皆さんと共有できるよう、しっかり質疑していきたいというふうに思います。
 今回の法改正において、まず冒頭、研究者の多くの皆さんが一番懸念されていることは、科学技術研究が経済的な利益につながるイノベーションの創出に重心が移され、法改正でイノベーションの定義に科学的な発見又は発明が新たに入ったとしても、そのことで基礎研究や研究者の自由な発想に基づく学術研究がおろそかになって、予算が削られるんじゃないかと、そういう懸念が上がっていることであります。
 日本では、この基礎研究、かつては民間企業の研究部門が一翼を担ってきました。現在は大学や研究開発法人に委ねられているという現実があります。国として科学技術関係予算そのものは近年僅かながら増加の傾向にありますけれども、基礎研究に携わっておられる研究者の方々にはこの分野での予算配分がこの後先細りするんじゃないかというような懸念も出ております。
 衆議院の科学技術・イノベーション推進特別委員会の審議で、竹本大臣、基礎研究への支援を減らすことはないと答弁されましたが、改めて御見解をお伺いします。

#20
○国務大臣(竹本直一君) そのとおりでございまして、基礎研究は大事でございまして、今回、イノベーションという概念が入りましても、基礎研究が削られることはないという信念で運用していきたいというふうに思っております。
 この基礎研究の推進でございますけれども、国の果たす役割は非常に重要でございまして、そのことも法案に精神を明記していきたいというふうに思っております。
 大学等における研究活動を安定的、継続的に支える運営費交付金等の基礎的経費の確保も必要ですし、科研費等を通じた継続的な支援、それからさらに、科学研究を支える若手研究者を中心に、自由な発想による挑戦的研究を支援する仕組みの創設等も取り組んできたところでございます。
 いずれにいたしましても、イノベーションという新しい実用化を目指した概念が入りますけれども、基礎研究は基本的に一番必要なものであり、この科学の世界において日本がその存在感を示すことのできる非常に重要な分野でありまして、その重要性はいささかとも衰えるものではございません。

#21
○矢田わか子君 今回この改正を行うわけですけれども、元々この法の本来の目的は科学技術の振興であり、とりわけ基礎研究の推進強化というふうに私は理解をしております。
 近年、日本ではノーベル賞の受賞者が少し増加してきておりますけれども、一方で、世界の中で本当に日本の基礎研究力、危機にあるという、そういう認識も急速に広がっております。特に深刻なのは、日本の大学、そして研究機関において、研究者各人が関心と長期的な視野に立って基礎研究に取り組む環境、急速に奪われていっているんじゃないかという懸念であります。
 今日は、その改正に当たって、科学技術計画も新たに立て直しをし、そしてそういう環境を整えていくんだということではあると思いますが、是非、今回の改正、今後の科学技術基本計画の指針として、日本の研究力、そして、必ずしもその個別具体的な応用とか用途を直接的な目標としない、基礎研究の長期的な持続的発展につながる方向性を示す内容となっていればというふうに思いますので、御要望申し上げておきたいと思います。
 続いて、民間事業者の基礎研究への支援についてお伺いをしていきます。
 資料の一を御覧ください。
 九〇年代後半から民間企業においては基礎研究からの撤退が続き、各企業の研究部門、応用研究や生産技術開発に重点が移っていっています。私の出身の会社もそうでした。これは、基礎研究が必ずしも売れる商品の開発に直結していかないこと、利益を少しでも多く株主にやっぱり還元したいとする経営方針の転換があったと言われております。しかしながら、今日でも研究力を持った研究所も数多く残っています。電機産業にもたくさんの研究所が残っています。
 資料一は、ノーベル賞の受賞された方々とそれから候補者の方々含めて、民間研究機関との関わりを一覧にしたものであります。そうそうたるお名前が並んでいると思います。ノーベル賞を受賞された田中耕一さんは島津製作所、研究所に所属されていました。以下、LEDの発明者の中村修二さん、赤崎勇さん、天野浩さん、それぞれ民間の研究所で研究を続けられ、最近では、根岸英一さん、吉野彰さんも企業の研究者でありました。さらに、これまで有力なノーベル賞の候補であった電子顕微鏡の開発者の外村彰氏、カーボンナノチューブ発見者の飯島澄男氏、さらに、リチウムイオン電池の開発をされた西美緒さんも、それぞれ企業の中央研究所に在籍されていました。
 かつて民間企業の基礎研究力は、やっぱり私、すごいものがあったというふうに思います。今後も、この民間の研究所、大学や研究法人、研究開発法人と連携していけば大きな研究成果を上げることができると確信をしております。
 今回の法改正で、民間事業者についても、研究開発法人、大学等と連携し、研究開発、イノベーション創出に努めるという努力義務を課す条文が科学技術基本法の本体に組み入れられることになりました。
 現在、企業の外部支出研究費は増加傾向にありますが、提携先の大学では、その一人当たりの研究費、依然として小規模であります。また、企業側が大学や公的研究機関に対して持っている課題として、一つ目には、実用化につながる研究成果が少ないこと、そして希望する研究テーマになかなか応えてもらえない、二つ目には契約に時間が掛かって煩雑であること、三つ目には研究のスピードが遅い、四つ目、TLOなど仲介機関の機能が不十分であるなどが挙げられています。
 今後、企業と大学との連携を含めた基礎研究への投資を拡大させていくためには大学側の対応能力を上げるなどインセンティブを持たせることが必要と思われますが、政府としての見解をお聞かせください。

#22
○国務大臣(竹本直一君) 企業の研究の状況についてお話ございましたけれども、先生はこの分野に非常にお詳しくて、まさに現実はそういうことだろうと思っております。
 私は、常日頃、科学技術がリスペクトされる社会にしないと日本は生き残れないということを常に申し上げているわけですけれども、今現在、産業界とそれからアカデミア、大学とのいい意味での意思疎通が必ずしも十分でないのではないかというふうに思っております。なかなか契約を結ぶにもいろいろ手間が掛かるというようなお話もありましたけれども、この辺をきちっとすることが絶対に必要だと思っております。
 我が方で調べましたところによりますと、アカデミアで発明、発見された一つの成果品、それを特許に回していきますと、一人当たりの特許料として回ってくるお金が年間百万を切っております。調べたところ、七十五万でした。同種のものがアメリカの大学で、アメリカではどうなっているかと調べました。一千六百万です。二十分の一ぐらいの感じなんですね。ですから、これは、成果品は同じであるにもかかわらず何でそんな低い評価しか与えられないのかと、これでは優秀な学者は皆アメリカへ行ってしまうんじゃないかと、そういう危惧を持っております。
 ですから、お互いがお互いをリスペクトする、そういう関係をつくらなきゃいけない。そういう関係をつくる中でイノベーションという新しい価値が生まれてくるのではないかと、またそういう状態にしなければいけないというふうに思っておる次第でございます。

#23
○矢田わか子君 ありがとうございます。
 やはり、民間としては中長期のリスクが高い分野ってなかなか手が出せないんですよね。ですから、大学側がどんな魅力的な提案をしてくるかということに興味があるわけでありますので、是非そこをつなぐ役割は政府としてもしっかりと連携強化をお願いしておきたいというふうに思います。
 続いて、研究者のお話出ました、その育成と研究の環境についてお伺いをします。
 日本の研究力、開発力の低下、国際競争力の低下というのが指摘されておりますが、資料四をちょっと御覧いただきまして、科学論文の引用数の国別ランキング、大学ランキング等を表したものであります。そんなものを見ても、日本の暴落ぶりが顕著になってきていると思います。
 その最も大きな要因は、博士課程への進学者、減少しているということなんですね。これだけ各分野において、博士課程、行っても魅力がないということなんでしょうか、進学者の割合が減少しているというような傾向にあります。
 確かに、九〇年代半ばから、博士課程の進学率、理系も文系も低下しているんですが、これについては、企業の基礎研究の縮小、撤退、大学や公的研究機関における任期付教員や研究職員の増加など、就職先の確保が難しくなってきているということが指摘されています。そして、常用雇用の就職先が見付からない、いわゆるポスドク問題、もう言わずもがなですが、本当に大きくなってきています。ポスドク、一・六万人今いらっしゃる、毎年千五百人ずつ増えていっているというような状況にあります。
 政府としてこの若手の研究者の支援についてどのように考えていくのかということを是非お聞きしたいというふうに思いますが、例えば、資料三にあるように、EUの欧州研究会議での若手研究者への支援制度、スターティンググラント、コンソリデーターグラントでは、日本円で二億円前後の助成金が支給されるという、そういう仕組みもあります。ちょっと欧米諸国と日本を比べてみるともうそれがよく分かるかと思いましてこういう資料三のようなものを作らせていただいたんですが、日本で研究者が毎年何人かがこのEUの欧州研究会議に対して支援制度に応募しているというようなやっぱり実態があるわけですよ。日本はというと、本当微々たるものしかやはりお渡しできていないということであります。
 科学的な発見、イノベーションにつながる研究に没頭できるような、やはり若手研究者の支援、更に拡充していくべきだと思いますが、御見解をお願いします。

#24
○国務大臣(竹本直一君) 先生お示しになりましたその資料を見ましても、日本のこの研究者に対する支援がとても十分なものとは思えないのは現実であります。我が国の研究力の低下が非常におっしゃるように危惧されているところでございますけれども、特に博士後期課程への進学率の減少、それから研究ポストの不安定な状況、研究時間の減少など、状態は非常に厳しくて、研究者になること自体に魅力が余り感じられない、ここがやっぱり一番問題だろうと思っております。
 先般、私の方で研究者の若手の方来ていただきまして、いろいろ話聞きましたけれども、例えば、研究しておりましても全勤務時間のうち六割ぐらいが雑務だと、本当の研究時間は四割ぐらいしかないというお話もありました。そんなことで、しかも、立場が任期付きの雇用であって、五年とか十年とか、そうしますと、五年ですと三年仕事したら二年後どうしようかと、こういうことを考えて打ち込むことができない、こういう非常に厳しい状況におられますし、また、大学においても、ドクターを取ってしまったら企業は雇ってくれないと、こんな雰囲気もございました。ですから、私の方からも産業界には是非ドクターをもっと採用してくださいというお話もしておりますけれども、そういったところが、勉強して成果を上げることが産業界にも役立つといういい環境をつくらなきゃいけないんですけど、今のところはそうなっていないということでございます。
 そこで、その研究者の苦境を打破するために我々もいろいろなことを考えておりまして、一つは、若手研究者を中心に自由な発想による挑戦的研究を支援する仕組み、創発的研究支援と言っておりますけれども、年間一人七百万を出して約十年近く学生を、研究者を支援する、こういうことを考えて、もう実施に、補正予算で予算が付きましたので実施しておりますが、そういった取組をしつつ、ともかく、研究者であることが将来非常にすばらしい結果を生む可能性があるという魅力ある立場に研究者を置くことが我々の努めだろうというふうに思っておる次第でございます。

#25
○矢田わか子君 ありがとうございます。ポスドクの問題、本当大きな問題だと思っております。
 これ、就職の話も出ましたけれども、私も企業にいまして、人事部門におりましたけど、やっぱり博士号を取った方とか、余り積極的な採用をしようというふうな動きはないわけですね、民間。どちらかというと、もうそこまででき上がった人は要らないわというふうな傾向にあります。たくさんそのポスドクと言われる方々がいて、不安定な身分でいながらも、正規社員として登用されるのはたった六%という数字もあります。六%です。中卒、高卒、大卒よりも低い。
 そうした中で、本当に研究開発に安心して打ち込めるはずがないと思うんですね、不安定な身分なままで。是非、やっぱり産業界との連携、大学、研究機関との連携を含めて、しっかりとポスドクで活躍していただいた方が企業の中でも活躍できるような、そういう仕組みを経産省ともつないでいただき、整備をしていただきたいというふうに併せてお願いします。日本のやはりこれ宝の持ち腐れになっていないのかということを懸念いたします。
 それから次に、私立大学と自治体運営の技術研究所についてお伺いをしていきます。
 基本的に、世界で通用する論文の発表、イノベーションにつながる研究については、国立大学や研究開発法人に集中しています。
 資料四を御覧ください。高被引用論文、つまり、各研究分野において参考論文として引用された数、世界の上位一%に入る卓越した論文数の国内の機関のランキングと、科学研究費の大学別配分のランキングを示しているものであります。
 こちらから分かるように、研究者個人、研究グループに配分される科研費は、結果的には大きな研究設備や多くの研究員を抱える旧帝国大学を中心とした国立大学に重点配分されています。しかも、旧帝大の七大学だけで全体の大学の約四〇%を占める、そんな状況にあります。
 そして、大学について言えば、高被引用論文数と国からの研究費は正の相関関係にあります。では、私立大学や民間の研究所では高度な研究、世界に通用する論文は期待できないのかと。そうじゃないはずなんです。当然、人、物、金という研究資源が集中した方が効率的、効果的であるのかもしれませんが、他方で、実際に歴史的な発明や発見をしたり、予想も付かないような技術を開発する人はどこに埋もれているか分からない。とがったと言われるその研究者、とんでもない発明をしたという事例は幾らでもあります。自分の出身のところの話をして恐縮ですが、やっぱりちょっと変わっているなと言われる人がとんでもない発明して大きな特許を取ったりというようなことも過去にもたくさんあるわけですよ。
 そういう方々を、やはり不公平なくきちっと網羅的に探し出して、しっかりとそのとがった発想なりを、イノベーション、日本の本当にもしかしたら大きな爆発的な経済発展につながるような開発になるかもしれないという位置付けで拾い上げる何かやっぱり仕組みが私は必要なんじゃないかというふうに考えておりますが、そうした仕組みについて御見解をお願いしたいと思います。

#26
○国務大臣(竹本直一君) 全国各地におられます多くの研究者のすばらしいアイデアが研究されて、我が国の知の源泉となることが日本の活力にとって非常に重要でございます。
 そのため、個人支援型の競争的資金でございます科研費において、個々の研究の学術的価値を厳正に評価して研究課題を選定しているところでございます。
 他方、そのほかの研究についても、どこかで花咲くか分からないものでありますから、そのような基礎研究もしっかりと注目することが必要と考えております。
 このため、例えば、今般、文科省において、これまでの制度とは異なる視点から、若手研究者を中心に自由で挑戦的な研究を最長十年間支援する仕組み、先ほど私申し上げました創発的研究支援事業でございますが、それを創設するなど、政府一丸となって取り組んでいるところでございます。
 引き続き、地方大学など目の届きにくいところにも気を配りながら、意欲的なアイデアを持った全国各地の研究者が腰を落ち着けて研究に取り組める環境をつくることで、我が国の研究力の強化に努めてまいりたいと、このように考えております。
 先生おっしゃったとおり、地方の大学でも、先ほどの中村教授のノーベル賞もそうです、四国でしたし、すばらしい発明、発見がされるわけでございますが、それはたまたまそうなったというような感じが今あるんですけれども、私は、AIの時代であり、デジタル化の時代であります、ですから地方の大学もデジタルで結ぶことによって十分情報が取れて、そして中央にある大学と変わらない環境になるのではないかと。だから、そういう意味で地方大学のデジタル化も進めるべきだと考えておりますが、もろもろの知恵を働かせることによって、どこでそのとがった才能を持った人があっと驚くような知恵を出してくれるかもしれない、そういう期待を胸に秘めて、やっぱり施策をしっかりとやっていかなきゃいけないなというふうに思っておる次第でございます。

#27
○矢田わか子君 やっぱり、自分で自ら目標を立てて新しいことにチャレンジしていきたいという、そういうエネルギーをしっかりとイノベーションに変えていくということに対して科研費は公平に、公的な資金ですから配分されるべきだというふうに思います。是非そうした目配りをしていただくということと、先ほど大臣からありましたその創発的研究の場、これすばらしいと私も評価をしております、去年度五千億の予算も付けていただきましたし。
 ただ、年間七百万円、そのピックアップした人に対してお支払をし、プラスその間接経費も払いながら育てるという仕組みですけれども、やっぱり私、最長十年間ということなんですが、やっぱりお金渡して終わりではなく、アメリカのように、しっかりとお金渡すけれども、成果を中間で評価をし、そして本当に評価できるものについては更なる投資をするという、この段階的な取組というものが欠かせないというふうに思いますので、是非そうした育てる仕組みも含めてお願いを申し上げておきたいというふうに思います。
 さて、ではここで、今日参考人にお越しいただいている大倉さんへの質問に移りたいと思います。
 大倉多美子さんは、日本女性科学者の会の監事、日本女性技術者科学者ネットワークの理事でいらっしゃいまして、これまで長きにわたり抗がん剤の研究、漢方の研究など、薬学の分野で研究や開発、教育に携わってこられました。特に薬学という研究分野は、基礎研究から応用研究、そして安全性や投薬効果を確かめる検証試験を経て、製品化まで一貫した研究体制が求められますが、今回の科学技術基本法がイノベーションの創出というものを全面的に打ち出したことについて、研究者の皆さんの御意見も含め、どのように感じられておられるかお答えいただけませんか。

#28
○参考人(大倉多美子君) 今回はお招きいただきましてありがとうございます。お答えをいたします。
 今回の改正ですが、二十五年前から、基本法が改定されましたけれども、それで、でもイノベーションというのはあったわけですよね、あったというよりも、それをすることが目的にはなっていました。ですから、産官学共同研究というのが活発に行われてきたわけです。
 しかしながら、現場を知らない制度改革がいつも行われていて、具体策が全くありません。幾ら司令塔を機能を強化しても、現場はますます厳しくなるばかりで悲鳴を上げております。官民の格差が広がるばかりで、国立大学が独立行政法人になってから格差は広がったような気がいたします。研究上の予算配分の仕方、審議会委員、評価委員の人選など、非常にバランスが悪いのです。科学技術の創出、研究は二十四時間体制で体力労働を強いられます。IT技術の発展などによって実験科学者が大幅に減り、安易なペーパー科学者が増えてきました。これでは本来のイノベーション、発明、発見の低下につながってきています。
 研究には、短期、長期、成果の出るものがあります。それゆえ、時限付きの研究では若者は全く育ちません。私は、ドイツのようにマスター制の導入、大学は全入時代になった今日、アメリカのように卒業を厳しく制限すれば、かなり日本は変わるのではないかと思っております。
 それと同時に、科学技術の発展が人間の社会にゆがみを生じてきています。人間本来あっての社会であり、人類は、心身共に健康で、ひとしく人生を楽しく生きていく権利があります。その意味で、人文科学のみに関わる科学技術を入れたのは良かったと思います。
 以上でございます。

#29
○矢田わか子君 御経験に基づく御意見、ありがとうございます。
 もう一問、質問させていただきます。
 参考人は、二〇一二年から一五年まで社団法人日本女性科学者の会の会長を務められてこられました。特に女性の研究者、女性の科学者の様々な悩みや要望を聞いてこられたと思います。
 特に、そういう女性研究者が十分に能力を発揮し、今後も研究に打ち込むことができる環境整備に関して、御意見があればお願いをしたいと思います。

#30
○参考人(大倉多美子君) 私も長い間、研究職、それからイノベーションの特許関係にも立ち会ってまいりましたけれども、その点でずっと今日まで女性研究者というのは非常に虐げられておりまして、大体ノーベル賞を取られている先生方の下でほとんどの実験をやっているのは女性です。その辺をよく皆さん方、分かっていただきたい。全部女性なんです。
 女性は非常に持続性があって、実験も上手なんですね。ですから、実証のものです、科学技術とかそういうのは全部実験が伴わなければ実証の学問にはなりません。そこが非常に問題のあるところなんですね。それで、肉体労働者として女性は今までずっと使われ続けてきています。そこを何とか打破しなければいけないということで、一つは、やはり研究成果を、非常に優れた女性研究者はたくさんおります。ですけれども、皆さん日の目を見ないわけですね。そういう形で使われ続けております。ですから、そして、ちょうど成果を上げなきゃならない時期に結婚、出産、育児、それが入ってきます。ですから、そのときはどうしてもスローダウンせざるを得ない、ペースダウンせざるを得ないんですね。
 それで、アメリカなんかですと、要するにテクニッシャーという正規のポストがあります。それを是非日本も入れていただきたいと思うんですね。そして人間を、人材を増やしていただきたい。そうすると、女性がそういう産休とかそういうのに入った場合に、実験をしなきゃいけないんですね、継続させなきゃいけない。そのときにそういうテクニッシャーを回して補充するということをやれれば、非常に女性が研究をしやすくなると思うんですね。ですから、そういうものをやはり是非導入していただきたいというのが一つあります。
 それから、要するに人材育成ということに関しまして、今、実際に、日本の理科教育ですね、理科教育が全く駄目になっています。小学校で理科の実験を全くしていません。自然のやはりノウハウですね、ノウハウを知り、自然界のノウハウを知り、そして命の大切さを教える、それはやはり理科実験をしなければ駄目なんですね。自然界に連れ出さなきゃいけない。それのノウハウをもう小さいとき、小学校一、二年生でそれをやらなければいけないんですが、理科教育が全く今なされていません。理科実験もやられていません。その上、臨海学校だの林間学校だの、そんなのも全部中止になっております。
 それで、ですけれども、その頃というのは、男女問わず理科の方向に進みたいという欲望の強い子供たちがたくさんおります。その芽を全部潰しているのが日本です。ですから、やはりそこにやっぱり女性の専門職の教員を置いていただきたいと思うんですね。
 やはり、昔はみんな、要するに、理科とか、それから図画工作、美術、音楽、これは専門職が必ずいました。ですから、いろんな実験もできたわけですね。それから、時間数も全く減ってしまいました。ですから、その辺のところをきちっとやはり考えていただきたいと私は思っております。
 まだたくさん言いたいことはありますけれども、もう時間でございますので。

#31
○矢田わか子君 本当に御経験に基づくお話、本当ありがとうございます。
 竹本大臣、今いろんな御指摘をいただきました。特に、これからこれ、法が改正され、また第六次の科学技術基本計画等にも盛り込んでいかれる件もあったかと思いますが、ドイツのマスター制度の導入、それから、特に女性の研究職の育成に関しては多くの御提案をいただきまして、やっぱり、これからも理系学部の女性の進学が続いて優秀な女性科学者や研究者が、やはり研究環境が整備をされて、研究活動に打ち込んでもらい、しっかりとその方々がまた新しいイノベーションを起こしていくような人材に育っていただかなくちゃいけない。そのために、今、大倉参考人の陳述にありましたとおり、研究者がやっぱり結婚や妊娠や出産、育児という、そういう家庭的な責任を担いながら、大倉さんも本当に子育てに、両立をしながらずっと続けてこられたという体験談も私もかつてからお聞きをしておりますので、そういう様々な支援策も必要だというふうに思います。
 もう一つ、ちょっと触れていただけなかったんですが、私は、この女性の研究者の要望として多く聞いているのが、結婚に伴う改姓によって、それまでの研究実績、特許の申請の実績が中断されたり研究者がいわゆる検索に引っかかってこないという不利があるんだというお話ですので、我が国の科学技術の今後の発展のためにも、選択的夫婦別姓の導入、これは欠かせないというふうに思いますが、この辺り含めた御見解をお願いしたいと思います。

#32
○国務大臣(竹本直一君) ただいま大倉先生の御体験を踏まえた鋭い御意見いただきまして、非常に心にしみ入っております。
 私は、リケジョという言葉がありますが、非常に格好いいなといつも憧れているんですが、確かに、今先生おっしゃったように、結婚を境にそこで中断せざるを得ない、後が続かないと、そういう問題がございます。それから、アメリカではテクニッシャーという制度があるという先生のお話ですけれども、それで一時的に補充をして、また子育てが終わったらそちらへ帰られるということなんだと思いますが、そういうキャリアとしてこの科学技術の道に進むことが女性も可能となるような道をそれは絶対開かなければいけないなと思って、非常に参考になりました。是非それはしっかりやっていきたいと思っております。
 この第五期科学技術基本計画におきましては、自然科学系全体での女性研究者の新規採用割合を三〇%にすることを目標として掲げております。女性が研究等とライフイベントとの両立を図るための支援を政府として行わなければならないという認識でございます。
 研究と出産、育児等の両立や研究力向上を通じたリーダー育成を一体的に推進するなど、ダイバーシティー実現に取り組む大学等に対する支援や、女子生徒等が理工系分野への興味、関心を高めるためのシンポジウム等の開催等の取組を行っております。
 政府といたしましては、科学技術イノベーション分野における女性の活躍推進に向けて、関係府省と連携し、しっかりと取り組んでまいりたいと考えております。

#33
○矢田わか子君 やはり日本のこの科学技術の更なる振興のためにも、多様なやはり能力、物の見方を持っている、ますます女性の科学者、技術者の育成というのは急務になってくるかと思いますので、是非、今日、大倉参考人来ていただいて陳述していただいた内容も加味をしながら、教育の改革とか、そうしたテクニッシャーの登用等も含め、家庭と仕事の両立などもできるような環境整備も含めて、是非竹本大臣、お願いをしておきたいというふうに思います。
 続いて、日本版SBIRの改革についてお伺いをしていきます。
 我が国におけるイノベーション創出の実態あるいはユニコーン企業の実態を見ますと、日本版SBIR、本当に機能してきたのかという厳しい評価があります。
 資料五、御覧ください。日本とアメリカのSBIR制度の日米比較であります。これまでも、アメリカのSBIRと日本のSBIRは似て非なるものと言われてきました。政府としても、今回の法改正でSBIR、見直しを図られるわけですが、真に世界とリードするイノベーションを生み出すことができるのか不透明であります。
 これまでも幾つかの問題提起がなされておりますが、次の三つの課題、専門家から指摘されておりますので、御紹介します。
 一つ目には、創造的な若者に創造の場を与えること、つまり、従来のように中小企業への補助金政策から、若いイノベーターやスタートアップ企業がきちんと選定され、資金的にフォローされるのかという課題、二つ目には、各省庁の担当者あるいは各省庁を横断する研究課題を見出し、研究方針を打ち出す内閣府の司令塔、今回設置されますが、これが公正中立、政治が介入することなく、アメリカの、優秀な科学行政官が配置できるのかという課題、そして三番目には、アメリカのSBIRが三段階方式で一研究者をイノベーターに成長させていくというプロセス取っていますが、このようなプロセスを日本でもできるのか、踏めるのかということであります。
 これまでのやはり単なる中小企業に対する経営強化的な支援策では意味がないというふうに思いますが、いかがでしょうか。

#34
○国務大臣(竹本直一君) 先生おっしゃるとおり、今までのSBIRの制度、中小企業を応援するこの制度というのは、実態は経営に困った中小企業に補助金を出して何とか生き長らえさせるというのが主流になっていたと思います。そこには余り、研究開発とかそういう概念が余りなかったのではないかと思っております。そういう意味で、アメリカのSBIR制度を横に見ながら、それのいいところを取り入れていくことが絶対に必要だとも考えております。
 現在までの制度は、中小企業等経営強化法の下でつくりました、そして中小企業庁が各省と連携して実施してきたものでございますが、しかしながら、対象分野や支援フェーズの偏りがあったり、あるいは研究開発のコンセプトを実証する初期段階からの連続的な支援が手薄になっていたりといった課題がありました。そこで、今回の改正によりまして、科技イノベ活性化法に移管することで、科学技術、イノベーションの司令塔である内閣府の下に支出目標を設定し、統一的な運用ルールを定めて各省で実施してまいります。
 これにより、若手研究者の取組も含む初期段階の支援の充実、それから専門的知見、経験に基づき、課題設定や支援の進捗管理を行うプログラムマネジャー、PMを配置する、それから、初期段階から事業化まで各段階でイノベーターや事業の成長に合わせた連続的な支援を実施する、こういうことをやりながら、若手ベンチャーの育成を進めていきたいと思っております。
 要は、そのプロジェクトのファインディングの段階、それからフォーメーションの段階、そしてフィージビリティースタディー、そして実行と、こうなっていくわけでございますが、その各段階に相談に乗ることによって、必要があれば支援をするということによって、最終的には一定のいいフルーツができるようなそういうシステムに持っていきたいと。
 そのときに参考になるのがアメリカの制度でございまして、アメリカは中小企業に三%ほどの枠を必ず研究費で配分すべきだということがちゃんと書いておりますので、さすがだと思いますが、それを参考にしながら、よりいいものに仕上げていきたいと思っております。

#35
○矢田わか子君 その日本版の経営力強化とアメリカ型のベンチャー支援では少しやっぱり私は違いがあると思いますので、是非、いい要素というか、まねすべき要素はやっぱり模倣していただいて、しっかりとその支援が真にそのイノベーションの強化につながるようにお取組をお願いしておきたいと思います。
 もう一点、私途中で触れましたけど、今回の法律の改正で内閣府に司令塔を置かれることは、一面、省庁横断によってしっかりと見極めをしていくということでもありますので意味があることと捉えていますが、ただ、やはり不当にその介入、政治的な介入がやっぱりなされないようにしていただきたいと思いますし、公平中立な運用については重ねてお願いを申し上げておきたいと思います。
 今回、法律の改正に人文社会科学を入れる改正をしますけれども、これは本当に遅きに失したというような声もある一方で、内閣府にその司令塔の機能が置かれることで、自然科学系のみならず、この人文社会学にも、資金を得る引換えに政府の政策的な介入がなされるのではないかというような、そんな声も出ていることはこれ事実なんです。是非、そういうことがないように、大臣、よろしくお願いをしたいと思います。

#36
○国務大臣(竹本直一君) こういう仕組みに切り替えますので、やはり内閣府の実際やることが一番問題だと思っておりまして、自覚してしっかりと、過度の介入をしないように、かつバランスを取って、そしてきちっとやっていかなきゃいけない。アメリカのこのSBIR制度を担当しておられる行政官、それの態様も見ながらやっていくことが必要だというふうに思っております。
 形は作ったけれども魂が入っていないのでは全く意味がないので、心して担当することにいたします。

#37
○矢田わか子君 最後に、重要な研究マネジメントについてお伺いしていきます。
 研究開発とその成果の社会実装において留意すべきことの一つに、研究組織のマネジメント、特に、トップに立つ人間のリーダーシップ、研究をつかさどる研究管理マネジャーの見識の問題があると思います。
 一つの事例を挙げます。
 今回の新型コロナウイルスです。この感染症の対策で、当初、一月、二月の段階では、与党も野党も、アメリカの感染症対策の司令塔、疾病予防管理センター、CDCの存在を大きくアピールし、日本版つくるべきだというふうな議論があったかと思います。が、しかしながら、アメリカの感染状況があのように悲惨なというか、広がってしまったというようなことを含めて、今その声が小さくなってきているわけです。
 では、なぜ世界のトップクラスの感染症の研究者、専門家を擁したCDCが機能しなかったのかということですが、この点については諸説ありますけれども、現時点では、トップや幹部のマネジメント能力の問題、そしてホワイトハウスによる政治的な介入が原因だと言われております。トランプ大統領就任以来、CDCの局長人事、適材適所ではなく、また、ホワイトハウスの方針に反発した幹部の一部が干されたことも組織が機能しなくなった原因ではないかという見方が強いということであります。
 恐らく大学研究機関においても同じことが言えるのではないかと思います。研究開発法人では、理事長というトップ人事について公募制が法的に認められております。やはり、トップとともに専任の理事、研究部門の管理職についても、研究者と研究テーマをうまくコーディネートし、きちんと予算を確保し、研究者のインセンティブを高めるマネジメント能力が求められると思います。
 このような人材をどう育成し、またスカウトするのか、研究成果を上げるために不可欠な要素だと思いますが、どのようにお考えですか。

#38
○国務大臣(竹本直一君) CDCの例を出されましたけれども、いろいろな要因があったんだろうと推測いたしますが、病院船構想というのがございますけれども、災害時において病院として働く船をつくろうという話もありますが、これもよく似た議論でありまして、ただ、何もないときに千人ほどのスタッフと施設をずっと保持していくのかと、無駄じゃないかという、こういう話があるわけです。ですから、CDCをつくるつくらないで今後議論はあろうかと思いますが、そういった平時における無駄を省くという意味にも配慮しながら、どういう形で危機に対応していけるのかということが一番問題であろうと思っております。
 そこで、先生の御主張の研究開発におけるマネジメント能力の必要性、まさに私はそのとおりだと思います。やはり人事も適切でなければいけませんし、テーマの選定についても、研究者の意向を尊重しながら、やはり全体のマネジメントの判断もあろうかと思います。そういったことをやるプロがいないということがなかなか日本の研究分野における大きい問題であろうと思っております。
 したがいまして、法人の評価に際しましては、その長の組織マネジメントについて主務大臣が確認、評価してきているんですけれども、やはりいずれにいたしましても、私は判断は総合判断だと思っておりまして、そういったマネジメント能力を前提として研究開発に理解のある方がその研究を主導していくということが必要かなというふうに思っております。今後、我が国の科学研究分野において一番要求される一つのポイントだろうと思っております。

#39
○矢田わか子君 アメリカのアップルのアイフォンの話は有名で、元々あそこにあった各々の技術、日本にもあったんですよね。でも、生み出せなかったということであります。
 それは、やっぱり外部の知識も素早く効果的に活用するオープンイノベーションというのもありますが、そうしたものをやはりコンセプトを持ってクリエーションしていく、コンセプトクリエーションみたいな構築力がやっぱりこれからはすごく大事になってくるんですよ。そのコンセプトクリエーションに持っていくために必要なのが、やっぱり内部のマネジメント。せっかくいろんな技術があっても、つなげることができなければ、革新的な技術、特に実装にはつながっていかないということですので、是非その部分についても、大臣、お取組の強化をお願いしたいと思います。

#40
○国務大臣(竹本直一君) お考え、御指示を念頭に、しっかりと頑張ってまいりたいと思っております。

#41
○矢田わか子君 ありがとうございました。
 目利きができる人材強化、是非お願い申し上げ、質問に代えます。ありがとうございました。

#42
○杉尾秀哉君 共同会派の杉尾でございます。質問の機会をいただきまして、ありがとうございます。
 先ほど、岡田委員、そして矢田委員からも話がありましたけれども、日本の科学技術の現状、深刻な状況にあるんじゃないかと、こういうふうな指摘がよくあります。
 資料配らせていただきまして、一ですけれども、先ほども指摘ありましたけれども、日本の論文、国際力が二〇〇〇年代に入って低下している、シェアの低下が著しいということなんですが、ノーベル賞を受賞された大隅先生のお言葉なんですけれども、もはや日本は科学技術で優れた国とは言えないのではないかと、こういうふうにおっしゃっています。大臣の認識はいかがでしょうか。

#43
○国務大臣(竹本直一君) 昨年十一月の総合科学技術・イノベーション会議におきまして、ノーベル賞、化学賞を受賞された吉野先生の今おっしゃった言葉だと思いますが、ただ同時に、若手研究者が本当に自分のやりたいことにチャレンジしていくことのできる環境をつくっていくことが非常に重要だというふうなお言葉も講演の中で言っておられるということでございますけれども、これまで自然科学分野のノーベル賞を受賞した研究者は、大体三、四十代の若いときに集中しております。
 研究者がじっくり腰を据えて研究に打ち込める環境をつくることが何よりも大事ですが、先生おっしゃるように、もはや基礎研究に強い国とは言えないのかもしれない。というのは、今ノーベル賞もらえる方の研究開発は皆二十年ぐらい前の話でありまして、今現在どうかというと、論文数がもう半分以下に減っておる中で、とても有力な国とは思えない。
 ただ、今世紀に入ってノーベル賞を一番もらっている国はアメリカですが、日本は一応二番目にあって十九人がいただいておられますから、是非この芽を潰さないようにしていきたいなと思っております。

#44
○杉尾秀哉君 今大臣がおっしゃったとおりなんですよね。本当にノーベル賞を毎年のように輩出して、これ自体は非常に誇らしいことなわけですけれども、実はもう二、三十年前の研究のその成果がようやく現れていると。その感じでいきますと、これからそう遠くない将来、日本もノーベル賞を輩出する、そういう状況にはもうなくなるんじゃないかと、こういう危機感があります。
 その危機感をまず共有していただいた上で、研究予算、これも先ほど来話になっておりますけれど、資料二、御覧ください。
 グラフが二つあります。左側のグラフが大学の運営交付金の推移です。右側のグラフが予算配分の内訳です。運営交付金がピーク時に比べて一千五百億円ぐらい削られています。このところ、やや上がってきてはいますけれども、相変わらずの水準ということです。
 一方、この右のグラフなんですけれども、オレンジ色と赤いところなんですけれども、この競争的資金の割合がどんどんどんどん増えていると、こういうことですね。研究現場を知らないんじゃないかという先ほど大倉参考人の話もありましたけれども、研究者の皆さんが競争的資金獲得の事務作業に忙殺されて研究時間がますます削られているんじゃないか、それがその研究力低下の原因の一つなんじゃないかと、こういう指摘があります。
 大臣は、こういう研究現場の実情というのはよく御存じなんでしょうか。

#45
○国務大臣(竹本直一君) 聞いております。いろいろ研究者が非常に苦労しておられるいろいろな要素を聞いたんですが、研究時間が全体で、雑務がいっぱいあって、研究時間はたしか四割ぐらいしかないと、半分以下だという方もおられました。それはしかし現実だろうと思っております。
 これではいけないので、雑務を省いて研究に集中できる環境をどうつくっていくかということが一番大きい課題だと思っております。

#46
○杉尾秀哉君 よく分かっておられる。四割ぐらいが、こういう時間に割かれて、四割ぐらいしか研究時間がない。いや、もっと少ないと、こういう方もいらっしゃるようです。
 これも先ほど話ありましたけれども、この左側のいわゆる運営交付金、この割合を増やしていくこと、つまり基礎研究費を増やしていくということが重要ではないかと、これはノーベル医学・生理学賞を受賞されました本庶佑先生がおっしゃっているんですけれども、大臣もこれについてどういうお考えでしょうか。

#47
○国務大臣(竹本直一君) 全く同感でございます。

#48
○杉尾秀哉君 全く同感ということでしたら、そういうふうに変えていただきたい、基礎研究費の割合をもう少し増やしていただきたい、自由裁量をやっぱりその研究現場に与えていただきたいというふうに思います。
 もう一つ、今回はそのイノベーションというのがキーワードになっているんですけれども、これも資料を用意しました、資料三です。日本のイノベーション力、技術革新力と言っていいんですかね、このイノベーション力の低下というのも併せて指摘されております。
 イノベーションに関する国際競争力を比較したIMDランキングというのがございまして、これによりますと、日本は、かつて一九九〇年代ぐらいまでは、前半までは一位でした。ところが、バブル崩壊とともに、経済も右肩並び、右肩下がりになるのと時を同じくしてランキングが下がっていって、九七年、九八年、金融危機ですか、この辺りぐらいからどおんと落ちていると、こういう現状でございます。
 大臣は、こうしたその日本のイノベーションの現状についてどういうふうに分析されておられますでしょうか。

#49
○国務大臣(竹本直一君) イノベーションは、新しい価値を生み出して、経済社会の大きな変化を創出するものでありますが、これは国の競争力の向上に大きく貢献するものでありまして、この認識が非常に大事であろうと思っております。各種の国際協力の指標におきまして我が国のイノベーションをめぐる状況の停滞が示されておりますが、大きな課題だと考えております。
 特に、御指摘のとおり、IMDの総合ランキングにおいて、かつての我が国の順位は一位を維持しておりましたけれども、今では二十位から三十位前後と、このように停滞しているわけでございます。この総合ランキングは、経済状況、政府の効率性、ビジネスの効率性、インフラの四つの要素で構成されておりまして、特にビジネスの効率性については近年低下傾向でありまして、その順位も四十六位と低い状況でございます。こういった点も踏まえまして、研究成果や技術をベースにして競争力のあるビジネスが創出される環境の整備を進めることが重要と考えております。
 要するに、昔は基礎研究が大事であって、イノベーションとかそういうのはほとんど頭になかったと思うんですけれども、社会に役立つという側面がまた必要だろうということで、そういう意味でイノベーションの面においてどの程度貢献できるかという視点も必要かと思っております。

#50
○杉尾秀哉君 先ほど本庶先生の発言を引用させていただいたんですけれども、本庶先生はイノベーションについてこういうふうにおっしゃっています。イノベーションはあくまでも結果なんだと、政府が旗を振ってするものじゃない、こういうふうにおっしゃっているんですね。よく、出るくいは打たれるという日本のことわざありますけれども、私もアメリカに三年間だけなんですがいました。アメリカの教育、子供が現地校に通っておりましたのでそういうのにも触れて、やっぱり出るくいを伸ばす、そういう教育がまず日本に必要なんじゃないか。
 それから、先ほどから研究費の話が出ておりますけれども、NIHというのがございます。NIHに勤務されている日本の研究者の皆さんとちょっと付き合いがあったんですが、物すごく資金が潤沢だそうです。使い道、その使途を制限されない、そういう資金がすごく豊富だと言っていました。とてもやっぱり羨ましい環境、そういう環境を目指してやっぱり日本人の研究者が集まっているというような状況がございます。
 日本でなぜイノベーションが起きにくいのか、どう改善していくべきなのか、これ、大臣、どうお考えでしょうか。

#51
○国務大臣(竹本直一君) 先ほど申し上げましたとおり、IMDのランキングにおいてビジネスの効率性の向上が課題となっているわけでございますが、既存ビジネスや社会構造の新陳代謝が起きないとイノベーションが進みません。
 そういう意味で、ベンチャー企業は新しい価値を持って市場を開拓する担い手であり、海外を見ても、GAFAなどはベンチャー企業から新市場を切り開き、大きく成長してきたものでございますが、そういうような状況が現実としてあるわけでございますが、今NIHの話をされましたけれども、要は研究費が全然余裕がないのとむちゃくちゃあるのと、その差だと私は思っております。
 と申しますのは、研究テーマを選択するときに、何をやってもいいと、好きなことをやりなさいと言われるのと、文科省へ行って一々細かいことまで説明して、今年度予算は幾らでこれ以上は出ませんよというようなことに一々気を配りながらやっている研究の差と、やっぱり全然違うんじゃないかなと思っております。余裕を持たせるところに発想があり、そこに天才が何かひらめきを見付け出すのではないかと思っております。

#52
○杉尾秀哉君 いや、おっしゃるとおりなんですよね。やっぱり、無駄というのが実は、時間の無駄、お金の無駄、無駄金という言葉があって、どちらかというと否定的ですけれども、それが実は大きな、先ほどから大臣が何度もシーズ、種ということをおっしゃっていますけれども、大きな種の一つなんだろうというふうに思います。
 これは確認なんですけれども、先ほど来幾つかのやっぱり懸念が示されています。私もいろんな団体の声明とか見させていただきましたけど、やっぱり一番多い懸念が、今回そのイノベーションの創出、概念が加えられたことによって、例えば経済的価値が優先されるんじゃないかとか、基礎研究の振興がおろそかになるんじゃないか、これは先ほど来否定されていましたけれども、その決意ですね、短くもう一回お願いします。

#53
○国務大臣(竹本直一君) 決意は全く変わりませんので繰り返しになるかと思いますけれども。
 この法案におきましては、科学技術の水準向上とイノベーションの創出の促進は並列的なものと位置付けております。科学技術が学術的価値等の多様な意義を有することも規定しておりまして、科学技術の振興とイノベーションの創出の双方をしっかり一体的に運用、振興していくことが必要だと考えております。

#54
○杉尾秀哉君 これ、議事録にしっかり残りますので、これから科学技術の基本計画、イノベーション計画立てる上においても、これを起点にしてやっていただきたい。
 それから、もう少し、先ほども話に出ておりましたけれども、時間が足りない、そして研究者の数がどんどん少なくなっている、こういう現状を打破して、基礎的、長期的視点に立った研究に取り組める環境づくりということをさっきおっしゃいましたけれども、具体的にそれを言っていただけませんか、どういう環境をつくっていきますか。

#55
○国務大臣(竹本直一君) 研究力強化の鍵は競争力のある研究者の活躍に尽きるわけでございますが、実際のところは、先ほど来話題になっておりますように、研究時間の減少、それから研究ポストの不安定な状況など、研究者を取り巻く状況は非常に厳しくて、研究者の能力、研究者になることの魅力が低下しているのが事実であります。
 若手を中心とする研究者がじっくり腰を据えて新たな課題に積極的に挑戦できる環境を整備することが何よりも重要であると考えておりまして、このため、本年一月、研究力強化・若手研究者支援総合パッケージ、これは毎年七百万を十年間交付する、研究者に交付するという制度ですけれども、そういったものも始めているわけでございます。
 いずれにしろ、じっくりと腰を据えて研究することによって将来夢が花が開くという可能性のある研究環境をつくることが必要であり、何よりも、研究資金、それから研究者の生活環境、給与も含めた生活環境の改善ということをしてあげないといけないと。そして、最後には、やはり産業界との、先ほども申し上げましたけれども、良き意味での連携がないといけないと。例えば、ドクターを取ったら就職できないんじゃなくて、ドクター取った人が優先的に入れるような、産業界がそれを引き受けるような、そういう環境をつくっていくことが必要かと思っております。

#56
○杉尾秀哉君 これNHKでやっていたんじゃないかと思うんですけれども、あるやっぱり国立大学のポスドクの方が、本当に厳しい研究環境、そしてその厳しい資金環境の中で将来を悲観して自殺されたという、そういうドキュメンタリーがありました。今、その自由に研究できる環境、伸び伸び研究できる環境ということをおっしゃいました。是非それを実現していただきたい、これは切にお願いしたいと思います。
 もう一つだけ。科学技術基本法の振興対象に、今回、人文社会科学、追加されました。実際に何が変わるのか、大臣、お答えいただけますか。

#57
○国務大臣(竹本直一君) 人間や社会の在り方に対する深い洞察が必要な場合がございます。そこには人文科学を含めた総合的アプローチが必要であります。
 具体的に言いますと、例えば今回コロナというのを経験しましたけれども、人の行動を見るのはやっぱり心理との関係がありますから、やっぱり人文科学の分野だろうと私は思っておりまして、ちょうどたまたまコロナという災害が発生しただけなんですけれども、このピンチをチャンスに変えることによって、この科学技術の研究において人文科学も、人文科学も取り入れてしっかりやる必要がある、そういうケースが多いと、そういう社会課題が多いと、そういう時代だというふうに思います。

#58
○杉尾秀哉君 法案に関する質疑、ここまでとします。
 ちょっと残りの時間は前回の委員会質問に関連して伺います。資料四です。持続化給付金の関係で私が質問をいたしました、サポート事務局についての質問です。その翌日に、経産省の広報室から記者クラブに文書が配付されました。二枚です。これが資料の四です。これ、取材自粛の申入れなんですけど、事実上取材するなと言っているに等しいんですね。絶対的に遠慮してほしいというくだりもございます。
 そこで、経産省に伺います。どうしてこういう文書を出したのか、誰の指示なのか、電通からの依頼なのか、お答えください。

#59
○政府参考人(糟谷敏秀君) 持続化給付金につきましては、御批判はありますが、この一か月余りで百五十万以上の事業者に二兆円を超える給付を行ってきております。これは、審査や入金の作業を行う現場の従業員の、あと職員の方々の懸命な取組によるものだと考えております。
 他方で、この間、実施主体の一つであります電通への爆破予告がありました。また、社員への脅迫などが起きております。そうした状況の中で、サービスデザイン推進協議会から、審査業務や申請サポートの事務を統括する事務所の所在が明らかになることにより、業務に支障を来すだけでなく職員の身の安全が脅かされるのではないか、このような懸念が表明されたことから、経済産業省としても、経済産業記者会に対してこの懸念を踏まえた対応をお願いをしたものであります。
 なお、これに対して経済産業記者会からは、応じられないと、取材については各社の判断で対応するという回答を昨日受けたところであります。
 私どものこのお願いは、報道そのものを控えるようにという趣旨ではありませんで、現に、報道陣、記者会の報道陣の皆さんに対しましては、持続化給付金に係るブリーフィングを担当課長から連日一時間以上にわたって行っておりまして、情報提供に努めているところでございます。

#60
○杉尾秀哉君 こんな文書を出したことはありましたか。

#61
○政府参考人(糟谷敏秀君) 私が記憶する限りはございません。

#62
○杉尾秀哉君 前代未聞なんですよ。爆破予告あったかもしれません。ただ、これ十万円の定額給付についても自治体の窓口も同じなんですよ。何でこの定額給付金の、しかもこの下請、それからその孫請、こういう状況の中でその現場だけをこういうふうに言うのか。
 しかも、これ、憲法二十一条の国民の知る権利、報道の自由の問題もありますけれども、公金を扱っているにもかかわらず、実態が極めて不明瞭なんですよ。例えば、相談会場に行っても、どこの誰だか分からないんですよ。しかも、ほとんどど素人だというじゃないですか。
 こんな実態で、これからまたお金配るんでしょう。これ、続けていけるんですか。どうですか。

#63
○政府参考人(奈須野太君) 持続化給付金事業でございますけれども、新型コロナウイルス感染症が拡大する中で、三密を避けながら二百万を超える事業者の方に給付金を届けるという前例のない事業なわけでございます。こういった事業を一社単独で行うというのはほぼ無理なわけでございます。今回、サービスデザイン推進協議会がコンソーシアム形態で多くの事業者の強みを持ち寄ってその役割分担する執行体制を構築しているということでございます。
 こういったことに対して、今回様々な、事業の体制が不明確であるとか、種々の連絡先がなかなかつながらないという、そういう声が寄せられているということは認識しております。
 こういったことを踏まえまして、私どもとしては、きちんと今後事業の透明性を確保するためにその証憑を厳格に確認していくと、そういうことで、使途の不明なお金は一切使わないと。それから、使途の妥当性を確保するということで、今月中に中間検査を実施して、その結果を皆様にきちんと御報告させていただきたいというふうに考えております。

#64
○杉尾秀哉君 あのね、一言で言って、経産省はひきょうなんですよ。だって、この事業を丸投げしておいてですよ、抗議も押し付けてですよ、それでいて抗議が来るから取材するなと、それは余りにも無責任じゃないですか。取材対応をするのは当たり前ですよ。説明責任、何と考えているんですか。
 こういう経産省の姿勢が、電通とのいろんなことを取り沙汰されたり、このほかのゴー・ツー・キャンペーン事業なんかもそうだけれども、経産省には私は大いに反省してほしいと思う。そして、報道の自由、取材の自由、何かいろんな部屋をロックアウトしているらしいですけど、報道の自由、取材の自由というのをもっと真剣に取り組んでほしいです。
 以上、終わります。ありがとうございました。

#65
○高橋光男君 公明党の高橋光男です。本日も質問の機会をいただきましてありがとうございます。
 さて、本年の通常国会も明日会期末を迎えることとなりました。今次国会は、新型コロナウイルス感染症という未曽有の危機への対処を国政の最優先課題として取り組んできました。その中での今回の科学技術基本法の二十五年ぶりの初の実質的な改正となります。
 改めて、このコロナ禍の中において本法改正を行う意義、必要性につき、竹本大臣の御認識をまずお伺いしたいと思います。

#66
○国務大臣(竹本直一君) 科学技術基本法は平成七年の制定でございます。二十五年ぶりになりますけれども、初の実質的な改正でございます。そういう意味で非常に重要な改正だと考えております。中身を申し上げますと、法の対象に人文科学のみに係る科学技術・イノベーション創出の概念を追加することが一つ。もう一つは、振興の方針として国内外の社会的課題への的確な対応を規定するなど、今後の科学技術イノベーション政策の在り方を定めるものでございます。
 新型コロナウイルス感染症対策では、医学のみならず経済学、社会学、法学等様々な知見が必要であるように、複雑化する現在の諸課題に立ち向かうには、人間や社会の在り方を研究する人文科学を含めた総合的な科学技術政策が必要でございます。本法案を基に、科学技術イノベーション政策の抜本的強化を図ってまいりたいと考えております。

#67
○高橋光男君 ありがとうございます。
 私は、今大臣が御指摘になられたように、人文科学を含む様々な学問分野の英知を結集してコロナに打ちかっていくこと、またその前提として、コロナ禍で苦しむ研究開発人材を最大限支援するという政府の意思を明確に示すことに今回の改正の意義、目的もあるというふうに考えます。
 本日は、今私たちが直面しているこの状況を踏まえて、これら二点の観点から質問をさせていただきたいと思います。
 まず、若手研究人材への経済的支援についてお伺いします。
 科学技術は国家発展の要でございます。危機下ゆえに科学技術の力が必要です。何より大事なのは、本日も様々御指摘ありましたが、科学技術を担う研究人材を支えていくこと、まさにその生活をしっかりと支えていくことだと思います。特に、コロナ禍において、人文社会科学分野を含む若手研究者への支援は待ったなしであります。彼らなくして日本の科学技術の未来はありません。その観点から、公明党が推進し実現した大学院生を含む困窮学生支援のための学生支援緊急給付金の迅速な給付が重要と考えます。
 先週八日の参院本会議での我が党山本香苗議員への答弁で安倍総理は、学業の継続が困難と認められる全ての学生等に確実に行き渡るよう支援する旨表明されました。そこで、この給付金についてお伺いします。
 まず、第一次募集、六月の十九日までというふうに聞いておりますが、この今の給付状況。そして、第二次の募集の開始時期、方法について。また次に、各大学には配分額があるというふうに承知しますが、例えば各大学の一次募集で配分額を上回った場合でも認められる余地はあるのか、反対に下回った場合にはその要因は何なのか精査をお願いしたいと思いますが、いかがでしょうか。
 そしてさらに、この支援は対象総数四十三万人想定したものでございます。全体の執行額が不十分であるのであれば、本来は要件を満たしているのに申請を断念しているケースが多いのではないかというふうに思います。私自身もそうした学生からの相談をこれまで受けてきました。総理が約束されたように確実に行き渡るようにするには、例えば第二次募集に当たっては、要件の緩和、簡素化、明確化、また、各大学が柔軟かつ迅速な審査、受給を行い、対応に差が出ないようにする必要があると考えますが、いかがでしょうか。

#68
○政府参考人(森晃憲君) 新型コロナウイルス感染症の影響で学生等が進学、修学を諦めることがないようにしっかり支援していくことが何より重要と考えてございまして、アルバイト収入の大幅な減少等により大学等での修学の継続が困難となっている者を支援するために、大学院生を含む大学等の学生等を対象に、学びの継続のための学生支援緊急給付金を創設しております。
 今回の給付金は、スピード重視の観点から、国として対象となる学生等について一定の要件は示すものの、最終的には、一番身近に学生等に接している各大学等において学生等の実情に沿って総合的に判断し、選考した上で日本学生支援機構に支援していただく、そういう仕組みとしてございます。
 また、当面困っている学生等を緊急に支援するため、五月十九日の閣議決定をもって直ちに募集を開始するとともに、各学校に対し、特に支援の必要性が高い学生等については順次推薦するよう依頼をいたしました。その結果、実際に五月二十九日には学生等への入金を開始しておりまして、現時点で既に四千名以上への支給を決定してございます。
 さらに、対象となる学生等の大学等の推薦を二回に分けて行うこととしてございまして、現在一回目の推薦を受け付けているところでございますが、今後、各学校における学生等の推薦状況を調査し、その結果を踏まえまして、六月十九日以降、二回目の推薦が行われる予定でございます。推薦に当たりましては、各大学等ごとに配分額を提示しておりますが、第一次推薦の際にこの配分額を超える者がいた場合には、直ちに選考はせず保留として、二次推薦において改めて選考する、その旨周知をしているところでございます。
 文部科学省といたしましては、大学等に対しまして、今回の給付金は大学等において学生等の自己申告状況に基づき総合的に判断していただくよう推薦する仕組みとなっていることや、審査に際しまして、学生等のヒアリングなどを通じて、実情に寄り添った形で審査、判断いただきたいことについて繰り返し周知をしてきてございまして、引き続きこの旨徹底してまいりたいと考えております。
 今後、第一次募集段階での大学等におきます学生の申請状況を調査をいたしまして、その結果を踏まえて、六月十九日以降、二回目の推薦が行われる予定でございまして、要件に合致する学生等が支援を受けられぬといった事態がないように、その支援に万全を期してまいりたいと考えております。

#69
○高橋光男君 是非万全を期していただきたいと思います。
 今、給付数四千を超えるというふうにおっしゃいましたが、先ほど私申しました四十三万という意味ではまだ百分の一しか今受けていないという状況でございますので、とにかく柔軟性、また迅速性を持って御対応いただくようにお願いいたします。
 続いて、修士課程学生への奨学金制度と博士課程学生への生活費相当額の給付に関してお伺いしたいと思います。
 まず、奨学金制度につきましては、返還困難者に対しては、日本学生支援機構の事業に関しましては返還猶予や家計急変の証明書類を柔軟に対応するなどの措置が進んでいます。一方で、自治体や民間の奨学金事業というのは別途ありますが、これらについても、内閣官房、総務省等関係省庁間の連携の下で実態把握を努めていただくとともに、同様の措置がなされるよう周知、要請を行っていただきたいと思います。また、いずれの事業につきましても相談体制を拡充すべきと考えます。
 次に、生活費につきましても、本年一月に総合科学技術・イノベーション会議で策定をされました若手研究者支援総合パッケージにおきまして、生活費相当額程度を、当面、修士課程からの進学者数の約五割に相当する学生が早期に受給することが目標になっていると承知します。
 他方におきまして、この生活費相当額、月額十五万円以上、年間百八十万円以上というふうにされているものですけれども、これを受給できている博士課程の学生は全体の一割程度にしかすぎません。また、この十五万円には授業料減免分も含まれておりますので、実質月額十一・五万円から十二・八万円というふうにも言われております。これは東京都の単身の生活保護費よりも一万円から二万円程度少なく、扶養家族がいればとても養える水準ではございません。
 この点、本年中に策定される第六期科学技術基本計画におきましては、最新の目標値、生活費相当額、達成方法等が示されるものと承知しますが、先ほど大臣がおっしゃったように、当事者である若手人材の声にどこまでも寄り添っていただき、コロナによる厳しい影響を十分に加味した上で策定をいただくようお願いします。
 とりわけ、この生活費相当額の給付につきましては、現在の目標の修士からの進学者数の五割以上に給付が早期かつ確実に達成されるように財源確保が必要かと考えますが、いかがでしょうか。
 以上につき、御答弁をお願いします。

#70
○政府参考人(森晃憲君) 初めに、私の方からは、自治体や民間奨学金事業の関係、それから関係省庁との連携による取組についてお話し申し上げます。
 日本学生支援機構においては、従来より、地方公共団体や民間団体等が主体となって行っている奨学金事業につきましてホームページで関連情報を掲載しておりますが、返還支援の充実に資すりますように、例えば、これらの団体に対しまして日本学生支援機構における返還期限猶予制度や奨学金の相談窓口など返還支援の取組内容を周知することや、当該ページに各団体が行う返還支援の情報を新たに掲載することなどについて、日本学生支援機構と連携しつつ検討してまいりたいと考えております。
 また、政府といたしましては、地方創生の観点から、内閣官房と総務省、文部科学省が連携をいたしまして、地方公共団体が地域産業の担い手となる学生の奨学金返還を支援するための取組を推進しておりますが、この中では日本学生支援機構の奨学金のみならず地方公共団体の貸与型奨学金も対象としているところでございまして、平成三十一年度には三十二府県三百五十五市町村が奨学金返還支援を進めているところでございます。
 こうした取組を通じまして、学生が卒業後に返還困難に陥ることのないように、引き続き関係省庁とも連携しながらしっかりと取り組んでまいりたいと考えております。

#71
○政府参考人(松尾泰樹君) 私の方から、委員御指摘の博士課程学生への生活費相当額の件についてお答えさせていただきます。
 委員御指摘のとおり、次代を担う若い学生がしっかりと博士後期課程に進学いただくということはこれ非常に重要でございまして、そのためには経済的支援といいますか処遇の向上というのが重要だと思っております。そういったことを踏まえまして、内閣府におきましては、関係省庁とも連携をしながら、本年一月に研究力強化・若手研究者支援総合パッケージというのを作成いたしました。その中で、先生御指摘のとおり今一〇%くらいの方々でありますけれども、それをできるだけ多く、五割近くまでということで目標を立てさせていただいたところでございます。
 この具体的な方法でございますけれども、多様な財源、これ国だけのお金ということではございませんけれども、しっかりと国もお金を用意しながら、多様な財源による優秀な博士課程後期学生へのリサーチアシスタントとしての例えば採用でありますとか、あるいは奨学金等の充実、そういったことを基にしてしっかりと対応していきたいと思っております。これは、現在検討しております第六期の科学技術基本計画、ここでも様々な方々の意見、声を聞きながら、しっかりと対応していきたいと思っております。

#72
○高橋光男君 ありがとうございます。是非しっかりとお願いいたします。
 続いて、特に大学院生の学修の保障の観点から幾つかお伺いしていきたいと思います。
 まず、今回のコロナ禍において研究活動が困難になった理由の一つには、図書館の利用制約がありました。特に人文社会科学系の学生が大きな影響を受けました。緊急事態解除宣言の後、大学図書館は感染防止策を取った上で再開をし始めていますけれども、引き続き限定的な利用の大学も見受けられます。今後の第二波、第三波に備え、遠隔で研究活動を継続できるような環境を整備することは急務と考えます。
 具体的には、文献のアクセス改善、これを図っていくことが重要でございます。この点、政府は、先月末に策定した知的財産推進計画二〇二〇において、絶版等により入手困難な資料などの図書館保有資料へのアクセスを容易にするための取組を進める方針と承知します。また、今年の夏には、十七の連携機関、約七十のデータベース、二千万件のメタデータを集約したジャパンサーチというものが正式公開されます。
 ついては、これらの周知も含め、政府として研究者へのデジタルアーカイブへのアクセス改善をどう進めていくお考えでしょうか。

#73
○政府参考人(三又裕生君) 今委員から御指摘をいただきましたジャパンサーチを始め、デジタルアーカイブの利活用促進につきましてお答え申し上げます。
 ジャパンサーチと申しますのは、アーカイブ化された多様なデジタルコンテンツのタイトル、作者名、所在等に関する情報、いわゆるメタデータをまとめて検索できる国のポータルサイトでございます。
 このジャパンサーチは、現在、十一の分野の七十一のデジタルアーカイブと連携をしておりまして、この中には、人文社会科学系の学生や研究者による活用が見込まれますもの、例えば国立国会図書館サーチや国立公文書館デジタルアーカイブ、また、人間文化研究機構統合検索システム、nihuINTと呼んでおりますが、こういったものが含まれてございます。
 このジャパンサーチの運営につきましては、国立国会図書館を中心に関係省庁等から成る委員会が主体となって取り組んできておりまして、昨年二月に試験版が公開され、既に利用をされております。加えまして、ユーザーの利便性向上のための機能改善を行った上で、今年の夏に正式版を公開する予定でございます。
 今後は、産学官フォーラムの開催などを通じまして、こうした正式版の公開などに関して大学関係者や研究者を含めた幅広い方々に対しまして周知を図ってまいりますとともに、このジャパンサーチの連携対象となりますデジタルコンテンツの拡充を促す取組や、二次利用のためのガイドラインの作成、普及を通じてデジタルアーカイブの更なる利活用を促進してまいりたいと考えております。
   〔委員長退席、理事上月良祐君着席〕

#74
○政府参考人(森孝之君) 図書館資料のアクセスについてお答えを申し上げます。
 委員御指摘のとおり、今般の新型コロナウイルスの感染拡大による図書館の休館などによりまして、図書館資料の閲覧利用が困難となったということに伴い、学生、研究者等を中心にインターネット等を通じた絶版等資料へのアクセスなどについてニーズが顕在化しているというふうに承知をしてございます。
 文化庁といたしましては、こうした状況を踏まえまして、著作権に関わる制度的な見直しについて検討していく必要があると、このように考えているところでございまして、文化庁では、文化審議会の著作権分科会におきまして、昨年度から、研究目的での自由利用を認める権利制限規定の創設について検討を開始をしているところでございますけれども、今後、それと併せまして、絶版等によって入手困難な図書館資料等へのアクセスを容易化するために、現行の著作権法における図書館関係の権利制限規定をデジタルネットワーク化に対応したものとすることについて、権利者の利益保護にも十分留意をしながら、来月にも検討開始をし、可能な限り早急に結論を得てまいりたいと、このように考えてございます。

#75
○高橋光男君 ありがとうございます。
 まさに著作権を絡むこれは課題でございまして、今おっしゃられたような権利制限規定などの整理が必要だというふうに承知しますが、是非、利用者本位に立って、アクセスが容易になるよう御対応をお願い申し上げます。
 続いて、研究時間の確保についてお伺いしたいと思います。
 本日も何度かこの話題になりましたが、研究者が研究に専念するためには職務時間の中での学内事務等に掛かっている割合、時間というものをいかに減少させていくのかが重要な課題と考えます。実際、文科省のある調査におきましては、研究パフォーマンスを高める上で大学運営業務が最も大きな制約要因になっています。
 政府は、若手研究者支援総合パッケージにおきましてもこの割合を半減することを目標に掲げ、学内会議等の業務の一層の効率化、また競争的研究費を学内業務の代行に係る経費として支出可能とする制度改革等を行っており、文科省はこの好事例の周知等されているものと承知いたしますが、是非、それらの横展開を含め、大学現場での一層の努力を促していく必要があると考えますが、どのように後押しされるのでございましょうか。

#76
○政府参考人(森晃憲君) 大学教員に研究パフォーマンスを上げるための有効な手段を尋ねました科学技術・学術政策研究所のアンケートによりますと、研究時間については、大学運営業務、学内事務手続の効率化、それから教育専任教員の確保による教育活動の負担の軽減が多く挙げられたところでございます。
 このため、文部科学省においては、学内での意思決定を担うことのできる職員の育成を図っていくことや、それから、教員の事務負担を軽減するなどの優れた取組を行う大学の好事例の周知、先ほど先生がおっしゃった横展開、そして、競争的研究費の直接経費の使途を拡大をいたしまして、教員が担っている講義やそれに付随する業務など研究以外の業務の代行に係る経費を支出可能とするなどの制度改革、こういった取組を進めてきております。
 引き続き大学教員が研究に専念できる環境づくりを推進してまいりたいと考えております。

#77
○高橋光男君 ありがとうございます。
 そうしましたら、続きまして、少し飛ばしまして、最後、二つお伺いしていきたいと思います。
 竹本大臣にお伺いします。
 まさに、人文科学、そして今回、人文科学に限ったものというものがこの科学技術基本法の対象になるというのが今回の法改正の一つの目的でございますけれども、そうした人文科学や文理、文と理ですね、これの融合型の研究開発の支援についてお伺いしたいと思います。
 現代社会には自然科学だけでは答えの出せない複雑な問題が多くございます。地球温暖化や生殖医療はその典型例かと思います。こうした難題に向き合うための文理融合による研究を我が国でも進めていく必要があると考えますが、これまでの国による支援実績は必ずしも多くはなかったと承知をいたします。
 新型コロナ感染症対策も、冒頭大臣がおっしゃられたように、医学のみならず、経済学、社会学、法学等の多分野にわたる学際的なテーマでございます。こうした研究を進めるに当たっては、一つに、先端的研究施設を活用できる余地が大いにあるのではないかというふうに私は思います。
 実際、私の地元兵庫には、今年度から試行的利用が開始したスーパーコンピューター「富岳」の研究資源を活用し、新型コロナ治療薬の物質研究や治療法等のみならず、新型コロナ感染拡大の社会経済的影響を明らかにする課題などの研究提案も募集されているところでございます。
 今回の法改正を受け、新型コロナ感染症という多分野にわたる課題に対処するためには、こうした先端的研究施設も活用して、人文科学や文理融合型の研究開発に対しても国として最大限支援していく必要があると考えますが、いかがでしょうか。

#78
○国務大臣(竹本直一君) 全く先生のおっしゃるとおりだと思います。
 新型コロナ感染症対策を含めまして、複雑化いたします現代課題に対峙するためには、人文科学の知見も含めた総合的な科学技術、イノベーションの振興が必要でございます。今回の法改正で人文科学のみに係る科学技術というのを追加いたしましたけれども、御指摘の先端的研究施設の活用も含めまして、人文科学や文理融合型の研究開発をより一層推進するための方策について検討し、次期の基本計画などにも積極的に位置付けてまいりたいと考えております。
 特に、今回のコロナという全く予測しなかったものの体験を、まさにこの文理融合型の研究開発が非常に必要であるということを痛感させられました。そのときに、一つのツールとして大きく活用できる可能性があるのは、お話にもありました「富岳」のような最先端のものを使うことによって、我々が普通は知覚しないような鋭い切り口からある種の結果が出てきて、それがコロナへの対応に役立つということもあり得るんだろうというふうに期待をいたしておる次第でございます。
 計画にしっかりと盛り込んでいきたいと思っております。

#79
○高橋光男君 ありがとうございます。是非しっかりと取り組んでいただければというふうに思います。
   〔理事上月良祐君退席、委員長着席〕
 それでは最後に、日本版SBIR制度の見直しについてお伺いしたいと思います。
 この見直しによって、政策課題の解決に資する革新的な研究開発等の促進を目的として、大学発のベンチャー等のスタートアップ、中小企業等に対し新たに指定補助金が交付され、イノベーション創出が期待されるところでございます。
 新型コロナ感染症の拡大を受けた国民の生活様式の急激な変化、例えば、今言われておりますが、新しい生活様式に応じた革新的なサービスを提供しているテクノロジー系スタートアップ企業等への支援を私は強化すべきではないかというふうに思います。
 分野は、例えば飲食業では、テークアウトやデリバリーの注文をスマホで簡単にできるモバイル注文サービスというものもできております。そのほかにも、建設業、教育、介護、テレワーク、外国人支援等、サービスの内容は多岐にわたり、省庁横断的な連携に基づく後押しが必要ではないかというふうに思います。
 新たにできる補助金制度におきましては、米国のSBIR制度のように、本改正法成立後には、施行までに分野横断的な統一的なルールが策定されることになるというふうに承知をしておりますが、それを待たずとも、特に苦しむ中小企業を支援する、スタートアップ企業等に対して現行の枠組みを使ってでもフルに活用して積極的に支援をすることが重要であり、統一的ルール策定に当たっても、私は、社会的な課題として、優先的な課題として位置付けるべきではないかというふうに思いますが、いかがでしょうか。

#80
○国務大臣(竹本直一君) 近年は科学技術のシーズ化が非常に細分化いたしまして、研究開発や実用化の道筋も非常に複雑化いたしております。イノベーションを通じて解決すべき社会課題も多様化いたしまして、スタートアップ等の持つ多様性と機動性が重要な役割を果たすと期待しているところでございます。このため、御指摘のとおり、今般の新型コロナウイルス感染症の拡大を受けた社会変革の対応といった社会課題の解決に向けて、スタートアップ等の研究開発及びその成果の社会実装の加速が必要と考えております。
 特にこの場合において参考になるのが、お話のありましたアメリカのSBIR制度でございます。アメリカのSBIR制度は、研究費の約三%を必ず中小企業に回すということで、中小企業もそのベンチャーというかスタートアップに活動、活躍できるように、そういう仕組みとしてつくっておりまして、しかも仕組みだけでは駄目で、それを具体にどうアメリカが中小企業を役立てるように、ベンチャーから役立てるようにやっているかということを、よく我々としても研究をして、それを参考にしてやっていきたいと思っております。
 プロジェクトがありますと、ファインディング、フォーメーション、それから可能性調査、そして実現とだんだんなっていくんですけど、従来のSBIR制度は、単純に中小企業の困っているところの経営安定化のために補助金を出すという程度のことに限られていたような感じがします。それを、そうじゃなくて、ベンチャーが何かやるときに各段階においてシームレスにそれを指導していっているのがアメリカの制度であると思っております。これは非常にいい参考になるもので、我々はそれを参考にしながら、日本でもベンチャーが育つような、そういう手助けをしたいなと思っております。

#81
○高橋光男君 ありがとうございます。
 まさにその継ぎ目のないそうした取組に全力で政府としても取り組んで支援をしていただくようにお願いいたします。
 本日お尋ねしましたように、科学技術の将来を担う若手研究人材への経済的支援に万全を期すこと、新型コロナという国難克服のために、人文科学、文理融合型研究開発や新たな生活様式の定着に資するイノベーション企業等に対しても国として全面的にバックアップしていくことを重ねてお願い申し上げて、私の質問とさせていただきます。
 本日は大変にありがとうございました。

#82
○田村智子君 日本共産党の田村智子です。
 科学技術基本法は一九九五年に制定されてから二十五年ぶりの抜本改正となります。是非現場の声をお聞きしたいと思いまして、全国大学院生協議会の議長梅垣緑さんに参考人としてお越しいただきました。大学院生協議会は、院生の皆さんの研究や生活の実態調査にも取り組んでこられて、各政党にそれを踏まえた要望書などもお届けいただいていると思います。日本の今後の研究力を考えたときに、博士課程への進学者が減少していることは大変重大だと思います。
 そこでまず、当事者として、博士課程の学生がなぜ減少しているのか、見解をお聞かせください。

#83
○参考人(梅垣緑君) 今御紹介にあずかりました全国大学院生協議会の議長の梅垣です。
 お答えします。
 大学院にまず在籍し続けるということに大きな経済的負担が掛かるという点、それから大学院を出た後の生活を展望するのが非常に難しいという点、この二点が大きな理由だと考えております。
 例えばですけれども、博士号を取得するまで最短で五年間、それから人によってはそれにプラスして二、三年ということになりますけれども、その間の学費、生活費、場合によっては研究費を、これを支出し続けるということが院生に求められます。出身世帯で負担するのが難しいという場合には、本人のアルバイトや奨学金ということで、借金を背負うことによってこれを捻出します。私どもの実施している全国的なアンケートでも、八〇%前後、院生の八〇%前後がアルバイトをしていて、半数近く三百万円以上借金をしているということが回答には寄せられています。
 そういうことで、ようやく学位を仮に取得したとした後でも、運が良かったとしても一年から三年の任期付きのポスドクの仕事をするということになります。通常それすらないということも珍しくないということです。こうして、生活の保障が非常に弱い、そして、同世代と比しても決して高くない給与で二十代後半に差しかかっていくという中で、自分の人生設計と自分の研究が衝突するということがあります。
 確かに、学振ですとか卓越大学院などといった競争的な資金の増加による支援を強化してきたという側面もあると思いますけれども、しかしながら、実際に支援を受けられるのが大学院生ほんの一握りということがありまして、自分が支援の対象になるか分からないという点で、将来不安がなかなか払拭されないということがあります。
 高い経済的な負担、精神的な負担、そういう中で研究を続ける、そして、しかもそれが高額の借金が前提であり、不安定な職業であるということによって、普通の生活を送るという、いわゆる大学の研究生活ではない別の道を歩む、人生設計にかじを切るという選択をする院生が増えるということは決しておかしくないというのが実態じゃないかと思います。

#84
○田村智子君 ありがとうございます。
 本当に借金だけ抱えて、先の人生設計ができないという、これが本当に皆さんの、何というんでしょう、安心して研究できないという重大な事態を生んでいるなということを痛感させられます。
 本法案では、そうした若手を含む研究者の処遇の確保がうたわれていて、若手研究者支援総合パッケージも打ち出されました。同時に、この法案ではイノベーション重視の方向も打ち出されています。
 これらによって博士課程学生の研究環境や雇用というのはどのように影響を受けると思われるか、お聞かせください。

#85
○参考人(梅垣緑君) これについてもお答えします。
 まず、いらっしゃる国会議員の皆さんに申し上げたいと思いますのは、大学院生の本業って研究ですけれども、研究そのものが、ある種、既にイノベーションの要素を含んでいるということです。
 我々院生は自分の興味、関心に基づいて研究のテーマを決めるということになりますけれども、その際、まず第一に行うのは先行研究の徹底的なレビュー、批判ということになります。つまり、既に分かっているということに研究する価値はないわけです。その点で、日々院生が研究生活、研究活動を送りながら生み出されてきているのは、オリジナルの新たな知見という意味では既にイノベーションであるということを知っていただきたいということがあります。
 その上で、衆議院の方も含めて議事録を拝読した部分あるんですけれども、研究に元来含まれているようなこういうオリジナリティー、創造性、新規性、こういったものをどう担保するかということの議論がなかなかされてきたと言えないのではないかと思います。
 今回の改正でいわゆるイノベーション重視の方向性が打ち出されていることには、イノベーションがこういった市場経済の下で成長に資するものとされている点、それから、それが国によって上から指導されるという点に大きな危惧を寄せております。
 ちょっと済みません、長くなりますが、その上で二点述べさせていただきますと、短期的な目線でいわゆるイノベーションにつながるかどうかという判断を研究に下す、要するに出口をあらかじめ設定をするということ、しかもそれに基づいて予算配分を行うことが、院生などの若い研究者が既存の枠組みを超えて知的な創造力を発揮することを妨げるのではないかということです。特に、基礎研究分野、人文社会科学分野、自由な課題設定が非常に重要である、しかもこれまで取り残されてきた、取り落とされてきたという分野で、これがイノベーション重視によって解決されるとはなかなか考えづらいというのが実感です。
 先ほど述べたとおり、院生、厳しい生活環境に身を置いているために、本来、自由に自分の知見、自由な知見を、関心を広げていくというところが、できるだけ設定された出口に寄せようとするという動機が強く働くと思います。その結果起こると思われるのは、表向きイノベーションとされる研究にできるだけ寄せられた実のところ狭い関心、切り取られた、そういう窮屈な研究ばかりになるのではないかと思っています。自由に自分の関心に沿った研究をしようとする基礎研究、人文社会科学研究などといった分野で結果としてキャリアを形成できない、学問的状況がより貧困になるということが、危惧しています。
 もう一点ありますが、そもそもどのような分野であったとしても、学問研究というのは真理の探求のために行われるという点です。その成果というのは、ある種、一つの国単位にとどまらない普遍的な価値を持つということがあります。例えば、技術にしても、人間社会全体の幸福に資するかどうかという点で意味が生まれるというところで、経済成長、イノベーション重視の方向性が打ち出されて、国がこれを目標として強く位置付ける、しかも大学にその責務が課されるということで、大学や研究現場に大きな統制が強まるんじゃないかということを危惧しております。
 特に、私、一橋大学に在籍しておりますけれども、二〇一四年の学教法改正や国立大学法人法改正、運営費交付金の削減、こういったことで選択と集中を前面に掲げる体制になって、教職員、学部生、大学院生の風通しが非常に悪くなっております。重大なハラスメントが解決されない、授業料や学生寮の寮費が値上げされる、学生が不利益を被るような制度の変更が事前の説明、話合いなく一方的に決められる、こういったことが起こってきております。
 科学や技術も、教育によってその最先端の知見を学生に伝えるということ抜きには担い手の再生産はできないということです。先ほど申し上げたとおりなんですけれども、学問研究や技術、そして高等教育、こういったものの公共性に照らして、国による統制が果たしてこれ以上強まっていいのかということを率直に申し上げたいと思います。

#86
○田村智子君 冒頭の、研究は全てイノベーションであるというのは、本当にこれはそうですよねと改めて感じましたよね。そうです、本当に。
 ごく一部のものを切り出して、これがイノベーションだと。これが本当に研究そのものの自由を奪う、狭くするという御指摘など、非常に学ぶところがあって、やっぱり基本法というのは、こういう議論の積み重ねをボトムアップでやっていくべきなんじゃないかということを改めてちょっと提起をしたいんですね。
 最後にお聞きしたいのは、それでは、博士課程学生や若手研究者にどのような支援が求められていると思うのか、山ほど言いたいことはあるかと思いますが、そんなに時間気にしなくていいですから、この際ですのでお話しください。お願いします。

#87
○参考人(梅垣緑君) 済みません。お答えします。
 これも大きくは三点なんですけれども、まず第一に、やはり学費負担を軽減する、あるいは無償化に向けて動くということです。
 今、どんなに優れた研究を残そうとして学問的貢献をしたとしても、学費を納めなければ学籍はなくなりますし、学位も得られません。結果として研究者としての道も開けません。日本では、学位というのが実質的に学費の対価として与えられているという側面があり、これが院生の生活を苦しめているとともに、本来は国立、公立、私立といった大学の設置形態を問わないはずの学問の公的性格を大きくゆがめているのではないかと考えます。これを普遍的に広く軽減して、無償化ないし権利としての高等教育を実現するということが必要です。
 第二に、奨学金の充実ということがあります。
 現在、院生向けの公的な奨学金というのは、学生支援機構の実施するものですと貸与の奨学金しかありません。科学技術基本計画、これまでも院生の二割に生活費相当、博士課程院生ですね、の二割に生活費相当額を支給するということが長年明記され続けてきておりますけれども、一向に実現をしておりません。借金ではない給付の生活費によって院生の研究を支えるということが求められているわけですけれども、行政的には放置され続けてきているということがあります。
 三つ目ですけれども、やはり安定的な職、ポストの充実ということがあります。
 院生が博士号を取得して、二十代半ばから後半、三十代前半に差しかかるというところで、二、三年程度の短い任期にとどまらない長期的な生活の安定が望めるポストがなければ、自らの人生設計と研究、これを両立することが非常に困難になります。
 こういった、これらの支援を通じて、本来の意味で自由で創造的な研究、これが実現する環境が整うということの中から優れた研究が出てくるものと考えております。

#88
○田村智子君 ありがとうございました。
 是非、本当に文科大臣と一緒になって、竹本大臣、要望に是非応えていっていただきたいと思うんですけれども。
 それでは、法案について、これまでの指摘も頭にとどめながら質問していきたいと思うんですけれども、まず、今回の法改正で、人文科学のみに関わる研究も法の対象となります。人文科学、社会科学などは、この間、文科省から学部や定員を削減するよう求められるなど、縮小、後退を余儀なくされてきた分野です。
 では、この法改正によって、若手研究者のポストや研究費、この分野で抜本的に増やされていくことになるのかどうか、お答えください。

#89
○国務大臣(竹本直一君) お答えいたします。
 先生おっしゃるとおり、複雑化いたします現在の諸課題に対峙していくためには、人間の社会の在り方に対する深い洞察が必要でございます。人文科学を含めた総合的アプローチが必要と考えたのはそのゆえであります。また、倫理的、制度的、社会的課題への対応を始めとした社会受容性確保などのためにも人文科学の役割は重要でございます。
 特に、今回、コロナという災害を経験しまして、人の行動が単純な従来の科学技術だけでは予測し得ない、そこには心理とかいわゆる人文科学の分野が大きく必要とされたということを経験しまして、まさにそのとおりだと思っています。
 このように、科学技術には、従来の科学技術とプラス人文科学の分野を含めたこの科学技術の発展を期さなきゃいけないわけでございまして、そのために、その研究に携わる人たちの研究環境を良くすることが我々の務めだと思っております。
 先般、創発的科学技術研究制度といいますか、学生、研究者を支援する制度をつくりましたけれども、これもその一環の一つでございまして、そういった努力を非常に必要とされておりまして、科学技術の目標が広がったがために研究者が研究がしにくくなるというようなことが仮にあるとすれば、それは本来我々の意図するところではございませんので、そうならないようにしっかりと努めていきたいと思っております。

#90
○田村智子君 悪くなるのはもうとんでもないんですけど、今本当にここのポストと研究費が減らされまくったんですよ。それが元に戻るのか、そこから前に進むのかが問われているんですね。ちょっと心もとないなと思っているんですけれどもね。
 一方で、今回の大きな改定は、イノベーションの創出の振興を科学技術の振興と並べて位置付けて、法律の名称も科学技術・イノベーション基本法に変更することです。
 法の改定の前から、特に安倍政権の下で、経済、産業に直結する革新的研究の旗は振られてきました。予算も重点配分されてきました。総合科学技術・イノベーション会議は、二〇一七年四月二十一日、ソサエティー五・〇の実現に貢献する等、科学技術、イノベーションに資することが期待される事業の積極的な検討、これを各府省に提示をし、指示し、科学技術関係予算の対GDP比一%の達成に向けて財務省と連携するとしたんですね。
 二〇二〇年度の科学技術関係予算は、目標には及びませんでしたが、この一七年度と比べると七千九百億円増えました。内訳を見ると、圧倒的に増えているのはSIP、戦略的イノベーション創造プログラム、そして科学技術イノベーション官民投資。既に法改正の前から、イノベーション、まあ狭い意味でのイノベーションのための研究予算への重点配分が相当に進んでいるんですね。
 そうすると、これを更に推進していくということになるんでしょうか。大臣、お願いします。

#91
○国務大臣(竹本直一君) 戦略的イノベーション創造プログラム、SIPと言っておりますけれども、これは、国民にとって重要な社会的課題の解決や我が国経済、産業競争力の強化を目指して、府省連携による分野横断的な取組を産学連携で推進すること、また、基礎研究から実用化、事業化までを見据えた一気通貫の研究開発を進めること、それに、成果の社会実装の観点から、研究開発にとどまらず、規制緩和を含めた制度改革等に一体的に取り組んでいるところでございます。
 また、官民研究開発投資拡大プログラム、PRISMと言っておりますが、これは民間投資の誘発効果の高い領域や研究開発成果の活用による政府支出の効率化への貢献が期待される領域に各府省施策を誘導すること等を目的としており、令和元年度には、国立研究開発法人理化学研究所に最先端のクライオ電子顕微鏡を設置するための追加配備を行う等、基礎研究を行うための基盤づくりにも貢献しているところでございます。
 議員御指摘のとおり、基礎研究は多様で卓越した知を生み出す源として非常に重要でございます。引き続きその振興に努めてまいりたいと考えております。

#92
○田村智子君 やっぱり出口とか産業力強化という、そこに予算がばんと付くという危惧がますます広がっていくんですね。
 実は、この科学技術関係予算については、二〇一八年度、内閣府は集計方法も変更しているんですよ。その中で、科学技術関係予算の定義も変えていて、従来は入っていなかったようなものを政府事業・制度等のイノベーション化促進という事業にまとめて入れ込んでいるんです。資料でお配りした三枚目なんですね。これは、各府省の事業、物品調達、人材育成などが先進技術の導入によって効率的、効果的になっているかどうかを内閣府が毎年審査して、イノベーション転化したぞと、変化があるぞと内閣府が認めると、それを新規転換分という形で科学技術関係予算に含めていくというやり方なんですね。
 是非、これで各府省、省庁ごとにどういうふうに予算がここに、じゃ、イノベーション転化とされたのかという資料を求めたんですけれども、内閣府は何と集計をしていないという信じ難い対応でしたので、私の事務所の方で各府省に資料の提出を求めて集計したのがこの資料三なんです。
 この三年間で、四千二十四億円がイノベーション転化だというんですね。そうすると、先ほど示しました二〇一七年度からの科学技術予算が七千九百億円増えた、そのうちの半分がこのイノベーション転化ということになるんですよ。
 最も予算が大きいのは国土交通省。公共事業費のイノベ転換分で三年間で二千八百億円なんですね。これ何のことと思うと、次のページ、資料四なんですけど、つまり、今までやっていた工事の機械を変えましたってだけなんですね。ICT化された建設機械を使うと、公共事業費が科学技術費として盛り込まれているんですよ、予算として。農水省も同じなんですよ。機械を変えてICT化すると、それが科学技術予算になるんですよ。文科省は三百十二億円、そのうち二百七十億円は高等専門学校の教育費用なんですね。これ、大学の教育予算さえ科学技術関係予算じゃないのに、何で高専が科学技術の予算なのと聞くと、大学との連携教育プログラムを導入したからだというんですね。
 これ、内閣府に資料をと求めても出てこないのは、大部分が既存の公共事業の看板の掛け替えだからじゃないのかと。竹本大臣もこんなこと御存じなかったんじゃないかというふうに思うんですけど、これが科学技術予算と言えるんでしょうか、大臣。

#93
○国務大臣(竹本直一君) i―Constructionとか、あるいは農業分野で経費の計上がこれでいいのかという趣旨だと思いますけれども、毎年防災白書というのを出しておりますけれども、大体防災関係予算は二兆円台なんです。ところが、防災であると同時に公共事業としての予算にも計上されておる。ある方から見ると防災で、ある方から見たら公共事業だと。それと、まあ例えいいか悪いかちょっと分かりませんけれども、一方から見れば科学技術予算だと言えるし、他方から見れば別の分類に入るんだと、そういうことがあってこういう計上になっているのではないかと思っております。
 なお、我々としては、科学技術イノベーション転換とは申し上げますけれども、既存事業への先進技術を導入いたしまして先端技術の実社会での活用の後押しをする、それから事業の効果的、効率的な実施等の実現を目指す、これは悪いことじゃありませんので、そういうことに研究費をつぎ込みますということで、結果としてイノベーションが進むということではないかなと思っております。

#94
○田村智子君 例えば私たちが携帯電話をスマホに変えましたって、これを、イノベーションですね、じゃ、掛かった費用を科学技術予算にしましょうなんて思いますか。そういうことですよ、これ。
 これ、OECDは研究開発を、知識の増大や知識の新たな応用を考案するために行われる作業、これが研究開発としているんですよ。知識の考案なんですよ。この定義に照らせば、考案されたものを使っているというのがイノベーション化促進事業ですから、当たらないですよ。
 文科省の科学技術政策研究所発行の科学技術指標二〇一八年度版にこう書いてあるんです。OECDの定義と日本の科学技術予算額には若干の相違があることについて留意する必要がある。科学技術予算額は、それよりは広い科学技術に関係する経費全般を対象としている、日本はね。そのため、研究開発には含まれない科学技術関係経費部分の額が、他国と比較して過大に計上されていると考えられる。
 科学技術予算これだけ増やしました言われても、本当の研究予算が増えているわけじゃないんですよ。これ、もう国際比較もできなくなるような事態なんですね。これで、これイノベーションだといってやられているんですよ。科学技術の予算に入れられちゃっているんですよ。そうすると、基本法にもイノベーション入れたら、もっともっとこんなこと進んでいくんじゃないのか。張りぼて予算で、こんなに予算増えていますよということにされるんじゃないのか。これもうやめるべきだと思うんですけど、大臣、どうですか。

#95
○政府参考人(松尾泰樹君) 先生御指摘のOECDの統計でございますけれども、これ、フラスカティ・マニュアル二〇一五、これに基づいているものでございます。そして、それに基づきまして、各国において各国の判断で政府の研究開発予算を登録しているわけでございます。
 したがいまして、我が国だけではなくて、各国がそれぞれの判断で登録しているものでございまして、各国とも一概に比較することは困難でございますけれども、我が国におきましては、科学技術の振興という観点から、研究開発のみならず、技術が社会に活用される出口をつくっていくこと、これも非常に重要だと思ってございます。
 したがいまして、イノベーション転換含めまして科学技術関係予算として入れているものでございまして、研究開発のみならず、科学技術を用いた事業化の取組、新技術の実社会での実証実験、そして既存技術の実社会での普及促進、そういったものも定義として入れているものでございます。
 なお、やっぱり注意書きにもディファレンス・イン・メソドロジーということで記載をしてございまして、我が国としてはこういった形で科学技術関係予算というものを明記しているものでございます。

#96
○田村智子君 いや、こんなことで科学技術予算増えましたよなんて言われたら、ちょっとどうかなと思いますよね。これ、GDP比一%に届かないから一生懸命かき集めたようなものなんですね。違うでしょう、もっと予算必要としているところいっぱいあるじゃないですか。
 物理学者で東大総長も務めた有馬朗人元文部科学大臣、最近日経ビジネスのインタビューで国立大学の法人化について語っておられるんですけれども、有馬氏は法人化の方向性を決めたときの文部大臣だったんですよ。何と言っておられるか。
 二〇〇四年に国立大学が法人化されると、その後、毎年一%ずつ運営費交付金が減らされていきました。こうしたことが約十年続きました。この結果、運営費交付金には人件費が入っているので若手研究者が雇えなくなったんです。全国の大学で正規雇用の若手研究者ががたっと減り、理工系で博士課程に進む数も大きく減りました。で、この大学の法人化は大失敗でしたと率直に認めておられます。さらに、運営費交付金を増やす、少なくとも元に戻すことだと思っています。国立大学法人化によって若手研究者を雇用できなくなったことについて私には責任があります。あと何年生きるか分からないけれど、世界並みのレベルにするまで徹底的にやりたいですというふうに述べておられるんですね。
 先ほど、若手研究者がいかに苦境に立たされているかということも言われました。地方大学の格差が非常につくられている。これ全部、運営費交付金削って、あるいは私立大学も含めてですけど、基礎的研究費が削られてきて今の惨たんたる状況になっているんですよ。そういうところにまともに予算付けないで、変なところからかき集めて科学技術予算増えました。全くおかしいですよ。
 これ運営費交付金、先ほど、減ったのは、大変前向きな御答弁を竹本大臣なされてちょっとびっくりしたんですけれども、もう元に戻しましょうよ、GDP比一%にしたいなら。一気に元に戻す、さらに増やす。どうですか、大臣。

#97
○国務大臣(竹本直一君) 有馬元法務大臣、私もよく存じ上げている方でございますが、有馬先生が雑誌に書かれた記事は私も読まさせていただきました。事実はそのとおりだと思いますが、じゃ、現時点においてこれからどうするかということも含めて考えてみたいと思いますが、事実として、国立大学の運営費交付金は法人化以降減少傾向にあるのは事実であります。平成二十七年度以降は対前年度同額程度というところでございます。
 政府といたしましては、大学等における研究活動を安定的、継続的に支える運営費交付金等の基盤的経費と、それから優れた研究や目的を特定した研究等を支援する公募型資金の最適な配分を考慮し、研究資金全体の効果的、効率的な活用を図ることが重要であると考えております。今後とも、基盤的経費と公募型経費のバランスを取りつつ、若手研究者への支援強化を含め研究力の強化を図ってまいりたい。
 いずれにいたしましても、このままでは駄目でありまして、何としても研究者が安心して研究に打ち込める環境をつくらなきゃなりません。私が、事あるごとに科学技術がリスペクトされる社会が日本が生きる道だと申し上げているのはそういうつもりでございまして、現在交付金が減っているのは事実でございますが、このままでは駄目なので、しっかり研究環境の改善に大臣として努力したいと思っております。

#98
○田村智子君 これまで私、実は下村文部科学大臣時代から多分四人か五人ぐらいの大臣とこの問題でずっと議論して、竹本大臣が一番前向きなんですよ、前向きなんです。
 その四人か五人に対して質問してきたときに何度も使った資料で、今日も出ていましたけれども、それが資料の一枚目なんですね。論文の、特に引用トップテンですよね、これ見てみると、全体を引っ張っているのはやっぱり国立大学なんですよ、そして国立の研究所なんですよ。そして、ここががたっと落ち込んでいるから、日本の全体の研究力、特に論文引用数で大変世界と比べてもランクが落ちていっているというのは、これ紛れもない事実だというふうに思うんですね。
 やっぱり運営費交付金の削減が若手研究者の非正規化を進めてしまった、研究時間も減少させたって、先ほどあったとおりなんですよ。科研費などの競争的経費で取れば、申請のための書類を作らなきゃいけない、中間報告もしなくちゃいけない、最終報告でもいろいろ文章書かなきゃいけない、そういう事務作業がどんどん増えていくと。だから、自由な基盤的経費である運営費交付金、これを増やしてほしいんだということを皆さんが言ってこられた。この削減が結果として日本の研究論文数やその引用数を減らしていった、これはもう率直、真っすぐに認めるべきだと思いますが、大臣、どうでしょうか。

#99
○国務大臣(竹本直一君) 注目度の高い論文における日本の順位が著しく低下しておるのは事実であります。これは私は非常に我が国の研究力の低下を示すものだと危惧しておるわけでございますが、その要因として考えられることが、研究資金が厳しいということが一つございますが、博士後期課程への進学率の減少、研究ポストの不安定な状況、研究者のキャリアパスの不足、そして研究時間の減少など、研究者の魅力が低下していることが課題でございます。
 要は、研究者になることがすばらしいことだと、魅力あることだとみんなが思えるような研究環境をつくることが一番大事かというふうに思っております。今はそういう状態になっていないと。例えば、ドクターを取ると企業が採用してくれないと、そんな雰囲気だから、もうマスターでやめて企業へ就職すると。これはまずいということで、私も先般、経団連の方に、これ何とか企業はもっと考え直してくれという話をいたしました。
 そんなことで、研究費の問題もありますが、将来の可能性に対する期待が抱かせるようなポストに、研究者としての、職業でしょうか、立場を強化することがやっぱり一番大事だと思っております。大昔だと、末は博士か大臣かと言われた言葉がありましたけれども、何か研究者がすごい憧れであるということが一番大事でありまして、安倍総理のおじいさんの岸信介さんが総理大臣のときには徹底した理科系教育の重要性を訴えられましたので、理系でなければ人でないというような雰囲気があったときがございます。
 それぐらいのことがあったから、その後、高度成長を享受できたんだと思いますし、台湾も、実は私よく行くんですけれども、日本でいう技術専門学校、物すごい優秀な人がたくさんいるんですね。それが理科系教育を熱心にやったから、今、世界のパソコンの半分近く台湾で作っているのではないかと、スマホもそうじゃないかと言われますが、やっぱりその基礎教育が、理系教育があったからこそ、今日、台湾の繁栄があるんだと私は思っております。
 そのように、科学技術をリスペクトしないと国は発展しないというのが私の信念でございまして、よろしくお願いします。

#100
○田村智子君 その研究への意欲の低下というのは、もう冒頭梅垣さんがお話しいただいたように、もう人生設計もできないような研究者、若手研究者の実態があると。やっぱり国立大学や、私立大学も含めて、大学や研究機関で研究に没頭できるんだよという生活の安定をつくるのは、やっぱり基盤的経費なんですよ。
 今日は運営費交付金については結構前向きに認めていただいたんですけど、これまで私が論戦してきた方々は、下村元大臣などはですね、私がこれだけ運営費交付金減ってきたじゃないかと、例えば国立大学、二〇〇四年から一九年までの十五年間で約一千四百億円も削減されちゃったんですよ。削減された状態で維持したって、これ回復にならないんですよ。国立研究開発法人も、二〇〇六年の七千百八十五億円をピークにして、直近では六千四百十八億円、やっぱり大きく減っちゃっているんですよ。
 それも、どうしてなのかというと、先ほどもありました、競争的経費で取ってこいよと。資料の二枚目ですけど、本当にこの中で国立大学頑張っていますよ。運営費交付金が青線でがたがたと減っているのに、全体の研究費は何とかして、法人化した当時の頃を守る、ちょっと上回る、それだけ競争的経費を一生懸命取っている。
 それから、国立大学も研究法人も、文科省から、上から、改革改革、選択と集中、重点的な研究を定めてそこに予算をぼんと入れろと、これもいっぱいやってきたんですよ。いっぱいやっていて研究力が低下している。やっていないことは一つですよ、私、一つだと思いますよ。産官学も一生懸命進めてきた。まあ、もちろんまだ足りないということあるかもしれないけど、でも、やっていないのは、運営費交付金を削った前に戻す、もうこれしかないと、これしかないと思いますよ。大臣、どうかそこに踏み込んでいただきたい。もう一度お願いします。

#101
○国務大臣(竹本直一君) 先ほど来再三申し上げておりますように、科学技術の水準向上とイノベーションの創出の促進は並列的な位置付けということは先ほど申し上げました。科学技術がイノベーション創出のみならず、学術的価値等の多様な意義を有することも規定しておりまして、科学技術の振興とイノベーションの創出の双方を一体的かつ積極的に振興していこうということでございます。この法案には、研究者の自由な発想に基づく学術研究と国が課題等を設定して行う研究との均衡についても規定しておりまして、その趣旨を十分踏まえつつ、科学技術イノベーション政策の強化に努めてまいりたいと思っております。
 いずれにしろ、研究者が研究活動をするに足りる財政的措置を更に強化していかないといけないということだろうと思います。

#102
○田村智子君 今日の大臣の答弁は、ペーパーを読まないときが一番いいですね。
 だから、内閣府ですよ、内閣府。本当、先ほど指摘したイノベーション転化なんというのを科学技術の予算に入れるとか、こんなことやっていたら駄目ですよ。まともな研究予算を、基盤的経費を抜本的に増やす、このことを改めて求めまして、質問を終わります。
 参考人、ありがとうございました。

#103
○高木かおり君 日本維新の会の高木かおりです。
 来年度から始まります第六期の科学技術基本計画、これは、今後国が五年間どのように、どのような考えに基づいて科学研究や技術開発に取り組んでいくのかを示す言わば羅針盤というふうになるわけなんですけれども、この策定に先立ちまして、今回、この科学技術政策の基本的な枠組みを定めた科学技術基本法を改正するということで、これ大変重要な改正であるというふうに思っておりまして、その視点で本日の質疑を進めていきたいと思います。
 今、そんな中、鎮静化しないこの新型コロナウイルス、これ本当に今回我々は様々なことを考えさせられたんではないでしょうか。科学技術の面では、日本が、このコロナ禍を通して改めて表面化しているということが、この世界の中で、今日も質疑の中でたくさん出てきましたけれども、世界の中で遅れてしまっている、これ本当に懸念するべき点であります。
 この新型コロナウイルスの研究について、今日お配りをさせていただいている資料二枚目ですけれども、見ていただければと思いますが、G7中心に十八の国と地域が参加して、抗体検査や治療法に関する論文をアメリカの研究機関が管理するデータベースに集約しているというような記事が載っているんですけれども、新型コロナウイルス関連の論文がこの四か月で約一万本、いち早く成果を公開する動きが広がっておりまして、よく言われる査読と呼ばれる専門家の検証を受ける前に成果を発表する、こういった研究論文、プレプリントという言い方もしますけれども、これが目立っているということなんですね。そのために、不正確な研究と批判を受けるような論文もあるので、ここは気を付けなければいけないんですけれども、やはりこのスピード重視という流れは変わらないと思います。日本もやはりこの世界の中で取り残されないように対応をしていかなければなりません。
 この研究の高速化が進む中で、日本の存在感は残念ながら、この記事にも載っていますけれども、非常に存在感が影薄いということで、科学技術・学術政策研究所、四月二十一日時点の分析では、査読前論文の数三十一本、これ日本の数ですね、世界第八位。首位の中国が五百四十五本、新聞の方に、記事に書いていますけど、二位のアメリカが四百十一本ということで、もう十分の一以下。それに続くのがイギリス、イタリア、ドイツ、カナダ、フランス、そして日本というようなデータなんです。
 今日はちょっと記事にはお付けしていませんけれども、WHOの登録データでは、論文数が中国一千百五十八、アメリカ一千十九、そして日本は何位かというと、第十七位で五十六ということで、圧倒的な差を付けられているんですね。
 今日も皆さん方の質疑の中でたくさん出てきました。懸念する部分たくさんあります。この論文の数というのは、やはり日本の科学技術力の低下、これを示すものではないかと思います。以前、私も引用論文の少なさという問題も指摘をさせていただいたことありますけれども、この今の日本の科学技術の水準、国際的に分析してどうお考えになるでしょうか、お聞かせください。

#104
○政府参考人(梶原将君) お答え申し上げます。
 議員御指摘のとおり、近年、論文数の国際的シェアが低下するなど、我が国の研究力は相対的に低下していると認識しており、新型コロナウイルスに関する研究開発の推進を始め、我が国の研究力の向上を図ることが重要な課題と考えております。
 研究力低下の原因としては、若手研究者の雇用の不安定化、キャリアパスの不透明さにより、若手研究者を取り巻く環境の悪化、新たな研究分野への挑戦の不足、国際的なネットワークの構築の遅れ等が挙げられております。
 このような状況を打破するため、今年一月に総合科学技術・イノベーション会議で策定された研究強化・若手研究者支援総合パッケージを踏まえ、基礎研究の振興、新興・融合分野の積極的開拓、研究基盤の強化に取り組むとともに、研究力向上の鍵である若手研究者への支援を強化することが重要と考えております。
 具体的には、外部資金等を含めた多様な財源による優秀な博士後期課程学生への支援の充実、優秀な若手研究者が安定かつ自立したポストに就いて研究ができる卓越研究員事業や、国立大学における人事給与マネジメント改革の推進等による若手研究者へのポストの重点化、若手研究者を中心に挑戦的な研究を最長十年支援する創発的研究支援事業の推進等に取り組んでまいります。
 引き続き、内閣府等の関係省庁と連携し、研究人材、資金、環境に関する施策を総動員して我が国の研究力回復に向けてしっかりと取り組み、新型コロナウイルス感染症に関する研究開発を始めとする科学技術、イノベーションの推進に努めてまいります。

#105
○高木かおり君 御答弁ありがとうございます。
 たくさんお答えをいただきまして、今日質疑の中でも問題点たくさん出てきたかと思います。その中にいろいろ入っていたと思うんですけれども、是非それをしっかりと実行に移していただきたいと思います。
 そこで、今日、本日、お忙しい中、参考人としてお越しいただきました古井貞煕参考人からも、今のこの日本の科学技術の国際的な水準についてお考えをお聞かせいただきたいと思います。よろしくお願いします。

#106
○参考人(古井貞煕君) 今御紹介いただきました古井でございます。
 昨年六月までアメリカのシカゴでAIを中心とする博士課程だけの大学院大学の学長を務めておりまして、昨年の夏に日本に帰ってまいりまして、今、国立情報学研究所で働いております。
 アメリカのトップの、AIを中心とする、このコロナに関する論文も、かなりの部分がAIと関係しております。今は、全てが、ほとんど全ての学問分野がAIとつながっている。AIを制覇するかどうかが、これからの世界の学術を制覇するかどうかに影響してまいります。
 そういう意味で、アメリカの大学と日本の大学を比較すると、日本の大学は悲惨です。国立大学の教授が毎年幾ら研究教育費をもらっているか御存じですか、皆さん。年間二十万円ですよ、二十万円、桁が違うと思いませんか。それで、日本の学術のレベルが下がっている、頑張れよと言われたって、何も食べないで生きろというのと一緒です。
 ですから、是非、その博士課程の学生がアメリカでも研究を担っているんです。先生が号令を振って、号令を出して、博士課程の学生が世界トップレベルの論文を書いている。AIでは毎日百本の論文が出ます。それはほとんどがアメリカ、そして中国の博士課程の大学の学生が書いているものです。日本の博士課程の学生がそういうことができるように、それを指導している教育、そして博士課程の学生に対する支援を是非厚くしていただきたい。それがこれからの日本を決めます。間違いありません。ですから、是非よろしくお願いいたします。

#107
○高木かおり君 お答えありがとうございます。
 日本の大学は悲惨だというセンセーショナルな言葉もございましたけれども、やはりここから日本、はい上がっていかないといけないと思うんですよね。そのための法改正だというふうに私も思っております。
 今、イギリスの高等教育情報誌、タイムズ・ハイアー・エデュケーション、昨年九月に世界大学ランキング二〇二〇が発表されました。日本の大学、三十六位に東大、六十五位に京大、どんと下がって二百五十一位から三百位に東北大、東工大、そしてまた三百番台に名古屋大、大阪大学というような順位なんですね。中国は、トップ百に三大学、トップ二百に七大学入っています。韓国はトップ二百に六大学。
 ちょっと口頭なので分かりづらいかもしれませんけれども、要は、優秀な人材は世界各国からランキングの高い大学に集中する。そして、そこで切磋琢磨して高度な研究が繰り広げられていると思うんですけれども、この大学のランキングを上げるには世界に門戸を開いて優秀な研究者、学生を集めなければならないとすると、大学の博士課程は、現場は意外と留学生ばかりだという声を聞くんですよね。現在、日本の国公立、私立大学の博士課程に在籍する博士課程の学生さんが七万四千七百十一人、そのうちの一万六千二百三十六人が外国人留学生、約四分の一を外国人留学生が占めていると。
 日本人の博士課程へ進む学生が先ほどの質疑の中でも減っているというお話もございましたけれども、やっぱりこれ、日本人の博士課程の学生、しっかりと支援して育成していかなければならない。この点について文科省としてどうお考えになりますでしょうか。お答えください。

#108
○大臣政務官(青山周平君) 高木委員の御質問にお答えをいたします。
 委員御指摘のとおり、近年、我が国の大学における博士課程入学者数は減少傾向にあります。特に、このうち留学生や社会人以外の進学者、すなわち日本人学生が多くを占めている修士課程からの進学者の数が大幅に減少をいたしております。我が国は、人口全体に占める博士号取得者の割合が先進諸国の中で比較的低位であり、日本人学生の博士課程入学者数が減少することは、我が国の将来的な国際競争力の低下を招きかねない危機的な状況であると認識をいたしております。
 こうした状況の背景には博士課程進学後の生活や就職への不安があることから、政府としては、今年一月に研究力強化・若手研究者支援総合パッケージを策定し、博士課程学生の処遇向上やキャリアパス拡大に向け、様々な施策に取り組んでいるところでございます。
 文科省といたしましては、今後とも、内閣府を始めとする関係省庁と連携の上、博士課程への進学者を増やし、日本人の博士人材の育成を推進することに向けて引き続き取り組んでまいります。

#109
○高木かおり君 ありがとうございます。
 ここで、古井参考人にもう少し加えてお聞きをしたいと思いますけれども。
 先ほど、アメリカ、中国、そういった諸外国のお話触れていただいたんですけれども、日本の大学に中国人の留学生の方というのも結構多いという話の中で、どうしてそういった留学生が日本に来るのか、その点について、もう少し加えてお聞かせをいただきたいと思います。

#110
○参考人(古井貞煕君) 日本に来る中国人の留学生が多い理由は幾つかございまして、まず、日本の大学に博士課程の定員がある、それを大学が埋めなきゃいけない、どこかから連れてこなきゃいけない、そうすると中国が一番いいソースなんですね。中国の学生さんから見ると、アメリカに行けない学生さんでも日本の大学なら入れます。ですから来ます。日本で、先生たちは真面目に教育しますから、いい教育を受けて、その後、中国に帰ったり、一部は日本に定着される留学生もいらっしゃいます。私の以前の研究室の学生さんでも、やっぱり日本の方がいいなというので、日本の研究所で働いている中国の学生さんだった人もいますけれども。
 やはり日本の中で外国人の研究者を、あるいは技術者を育てるという雰囲気が非常に乏しいですね。それはまあ言葉の問題とかいろんな背景があると思います。ですけれども、やっぱりこれだけ国際化が進んでいる中で、外国人の研究者、中国人の方も含めて、これから日本の中で大いに活用していく、そういうことが必要になるのでないかというふうに思います。

#111
○高木かおり君 これが日本の今の大学の現状であるというふうに思います。
 以前から言われているとおり、若手の博士課程の学生さんたちの大変な状況というのはもう今日この場でたくさんお話に出ていますけれども、そういった中で、優秀な学生さんたちが大学で残って基礎的な研究を行うというよりか、グーグルだったりマイクロソフトだったり、そういった、お給料が高い、自由度も高い、そういったところに流れていってしまっている。もちろん、中国の留学生の方々が日本の大学に来る、これは、国際交流という視点でこれはこれで大事なところではあるんですけれども、やはりこの博士課程が留学生ばかりで、修了してしまう、結局は自国に帰ってしまう。国立大学だと、結局これ、国民の税金で日本人の研究者を育てていないということにならないんでしょうかと。これ、すごく課題だと私は思っております。
   〔委員長退席、理事上月良祐君着席〕
 時間の関係で次の質問に入らせていただきますが、イノベーションの創出についてです。
 第一条にイノベーションの創出が追加されました。第三条では科学技術・イノベーション創出の振興方針が打ち出されているわけですけれども、イノベーション創出の振興の前提は研究開発の成果の実用化であると。実用化の重視は科学技術の振興にも作用して、基礎研究を圧迫してその在り方をゆがめることにならないのか。これ何度も今日出てきているかもしれませんが、この点すごく重要ですので、竹本大臣、お考えをお聞かせください。

#112
○国務大臣(竹本直一君) 大臣として答弁いたします。絶対そういうことはありません。
 イノベーションが加わったからといって、本来の基礎研究が圧迫されることはあってはならないと思っております。基礎研究があって初めてイノベが発達するわけであって、親と子が逆転することは基本的におかしいと思っております。そういう意味で、先生が御心配のようなことは絶対やりませんし、ありません。
 以上です。

#113
○高木かおり君 力強く大臣として答弁をしていただきました。
 その上で、やはりこの基礎研究こそがイノベーションの源であるということであれば、この今回の法改正とは別に、やっぱりこの、研究者が本当に安心して研究に没頭できる、そういう成果を出せる仕組み、こういったこともつくっていくことが必要だというふうにひしひしと感じるわけです。
 科学技術・イノベーション創出に係る人材の確保とか養成、処遇の確保、そして環境の整備、研究費の増額、これも今日も出ていました。研究促進のために、やはり大学の法人化によって運営費交付金が減らされたという話ありました。そのときに、規制緩和、こういったこともしないでお金だけ減らしていく、それの中で大学でやっていけ、これはなかなか本当に難しかったと思います。そういった中で今耐えているような状態なんですね。
 ここで、また古井参考人にお伺いをしていきたいと思います。
 以前、ある雑誌のインタビューで、すぐには何の役にも立ちそうにもないものが基礎研究である、大学がすぐ役に立つことを重視していたら基礎研究は育たない、ところが日本では、基礎研究ができる予算がどんどん削られ、将来の企業を支えるべき科学的知見、新しい技術が生まれにくくなっているんだというふうに述べられておられました。
 今回の法改正、イノベーションの創出を法文に書き加えたことについてのお考え、それについてお聞かせください。

#114
○参考人(古井貞煕君) 先ほど大臣もおっしゃっていましたけれども、イノベーションをやるから基礎研究がなくなるということで私はないと思います。やはりそこのバランスをどうやって取るかということなんだと思うんですね。どうしても、花火を打ち上げるとみんなそっちへ向いてしまうので、それ以外の基本的なところがおろそかになるということはあると思います。
   〔理事上月良祐君退席、委員長着席〕
 やはり、基本的なところをいかに国として守っていくか。例えば、アメリカの場合はお金持ちがどんどん大学に寄附をするんですね。それは、社会が大学を育てなきゃいけないと、そういう文化が定着しているからなんです。日本の場合はそういう寄附文化がございませんので、やはり文科省を中心とする国が、やはり大学というものを将来のために長く、将来二十年、三十年あるいは五十年先を見て支えていただくということが物すごく大事だと思いますので、よろしくお願いいたします。

#115
○高木かおり君 今、古井参考人の方から寄附のお話が出ました。
 ちょっと質問の順番を変えさせていただきまして、大学の研究者と企業とが共同研究等ができる研究開発法人の出資先事業者、これは大体寄附と知財収入が財源となるというふうにはお聞きをしているんですけれども、おっしゃったとおり、寄附文化の醸成というのは日本ではすごく課題だと思うんですけれども、寄附をもらえばしがらみが生じてしまう、毎年同じ額の寄附がもらえるという確約もない。知財収入の方も、例えばJAXAや原子力機構の方は、安全保障の観点から、特許取ったら公開されるのでなかなか特許化しにくいというような状況もあるかと思います。
 どうしてこの日本とアメリカの寄附文化の違いがあるのか、ここを私も寄附文化をしっかりと醸成していかなければいけないなと思っているんですけれども、どういったところを、どういうことをやれば日本で寄附文化が育っていくとお思いになられますか。

#116
○参考人(古井貞煕君) なかなか、それは社会の違いもございますので、アメリカのように大金持ちがいる日本ではございませんから、そういったお金を当てにするということはなかなか難しいと思うんですけれども、話を大学に戻しますと、大学というものがいかにあるべきかということが、アメリカの中では、社会が大学を育てなきゃいけない、社会のお金を動かしているのは、結果として一握りの大金持ちの人たちあるいは大企業、そこの人たちが責任を持って世の中を支えなきゃいけない、世の中の支える対象の大事なものが大学である、ですからお金を持っている人は大学に寄附をしなきゃいけない。
 日本の場合は、えてして、お金を出す人が口を出す。それは本末転倒なんですね。大学は社会のためにあるわけですから、アメリカの大金持ちもお金を幾らたくさん出しても口は差し挟みません。日本の場合もこの寄附制度というものがどう変わっていけるのか私分かりませんけれども、やはり日本の大学を支えようという方が口を出さずにお金を出していただけるという、そういう文化をつくっていただけると有り難いというふうに思います。

#117
○高木かおり君 ありがとうございます。
 ちょっと時間の関係で、あと一問になるかなと思いますけれども、今回の法改正では研究開発法人の出資先事業者においての大学の研究者と企業とが共同研究等が実施できると、これが第三十四条の六項に明確化されたわけなんですけれども、この規定が置かれたメリット、これについて御説明いただけますか。

#118
○政府参考人(柿田恭良君) お答えいたします。
 今回の法案におきましては、研究開発法人の出資規定の整備による産学官連携の活性化を目的といたしまして、研究開発法人が出資して設立する外部組織、この活動内容に、企業との間での成果の実用化に必要な共同研究でありますとか受託研究が含まれるということを明確化しております。また、今御指摘ありました大学につきましても、別の法体系でございますけれども、同様の措置を行うということで今検討をしておるところでございます。
 それで、お尋ねのメリットでございますけれども、このような成果の実用化に必要な研究開発を外部組織が担うということによりまして、例えば産学官連携に関するポテンシャルを、この法人のポテンシャルを今まで以上に引き出せると、研究開発法人の。あるいは、外部組織が本格的な産学官連携の場となりまして研究成果の社会実装を加速すると。そのことによりましてイノベーションの創出を促進する。また、外部組織におきまして産学官連携の好事例を積み重ねることによって、またそのノウハウが研究開発法人本体の改革に活用されるといったようなメリットが期待されております。
 このような取組を通じまして、産学官における知識、資金の好循環の構築にも資するというように考えております。

#119
○高木かおり君 この産学官連携というのはもう以前からずっと言われていることであって、これを世の中で実用化していくために今回もしっかりと産学官連携をやっていくということなんですけれども、ここで、せっかくお越しいただいている古井参考人にもこの点についてお伺いをしていきたいんですけれども、古井参考人は、今日お配り、資料、させていただきました一枚目に経歴の方を書かせていただいております。
 トヨタ自動車系の豊田工業大学とアメリカのシカゴ大学が共同で設立したコンピューターサイエンス専門の大学院大学で今も理事長をしておられて、そういった御経歴の中で、今日の質疑の中でもアメリカの御事情ですとかそういった諸外国のお話も出てきておりましたけれども、大学の研究者と企業との共同研究、この産学官連携、これについてのお考えを、最後、是非お聞かせをいただきたいと思います。

#120
○参考人(古井貞煕君) 今までいろいろな議論がされていると思いますけれども、大学は、やはり二十年、三十年先を見て教育研究をやっていくものだと思います。教育は本当にそうですし、研究もそうです。特に基礎研究はそうです。だから、そういった大学の長期的な視野がいかにその産学官連携というものが行われている中で守られていくかということが大事なのであります。
 大学の先生たちが産学官連携をやるのは結構ですけれども、それが大学の主体性、教員の主体性を失わせるようなものであってはならないということを思いますので、その辺のバランスがきちんと取られるようにしていただけることを望んでおります。

#121
○高木かおり君 ありがとうございます。
 やはりその産学官連携、これ非常に重要なことではありますけれども、やはり大学の先生方が自由に研究できる、そういったことが大事であって、自由な研究が保障されるかどうか、これはなかなか、お声を聞いていますと現実的に今厳しいという状態ではありますが、ここをやっぱり打破していかないと、この科学技術が、竹本大臣がおっしゃっているこの科学技術がリスペクトされるような、そういった国に発展をしていかないんではないかなというふうに私は思っております。
 時間が参りましたので質問はこれまでにさせていただきますけれども、今日質問に入れさせていただけなかったんですが、今日、女性の科学者の、研究者の方いらっしゃっていました。やはり、日本政策投資銀行なんかで「女性研究者と共に創る未来」というのが発表されているんですが、男性のみで発明した特許よりも女性研究者が入ったチームによる特許の方がより経済価値が高い傾向があるというようなことも言われています。
 そういった意味で、是非、この女性研究者の活躍、こういったことも組み込んでいただきまして、これからの日本の科学技術力がますますアップすることを期待いたしまして、私の質問を終わらせていただきます。
 ありがとうございました。

#122
○委員長(水落敏栄君) 他に御発言もないようですから、質疑は終局したものと認めます。
 これより討論に入ります。
 御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。

#123
○市田忠義君 私は、日本共産党を代表して、科学技術基本法等改正案への反対討論を行います。
 本法案は、現行の科学技術の振興と並べてイノベーションの創出の振興を目的に書き込み、科学技術政策の柱に据えています。これは、科学技術基本法の性格をより産業に直結した成果を追求するものに変えようというものであります。
 現行基本法第十条は、多様な研究開発の均衡の取れた推進に必要な施策を講ずるとしています。ところが、基本法制定後の二十五年間で、多様な研究開発の基盤となる基盤的研究費は大幅に減らされてきました。そのため、若手研究者の減少など、深刻な研究力の低下をもたらしています。
 安倍政権は、成長戦略に貢献させるために研究成果の産業化に重点を置き、選択と集中を強化してきました。イノベーションの創出の振興に科学技術政策の重心を移そうという本改正案は、この方向を更に強化しようとするものであります。
 法案が、大学等に振興方針に沿って活動する責務を課すことも重大であります。
 安倍政権は、大学などに企業からの投資を二〇二五年までに三倍増にする目標を押し付けています。こうした目標の達成が責務とされれば、幾ら自主性を強調しても、これまでの経過から見れば、財政的誘導によって大学等は従わざるを得ません。企業からの投資を増やすために、企業が望む成果の出やすい課題を優先し、基礎研究は後景に追いやられることになりかねません。軍事研究への協力さえ責務とされる危険性があります。
 法案は人文科学を振興の対象としますが、イノベーションの創出の振興に貢献することが優先され、人間と社会の在り方を相対化し批判的に省察するという人文社会科学の独自の役割が軽視されかねません。
 今必要なことは、若手研究者の雇用の減少、不安定化など研究力の低下をもたらした運営費交付金など、大学や公的機関への基盤的経費を抜本的に増額し、学術全体を振興することであります。それなしには、政府が進めようとするイノベーションの創出も含めて、新たな知識を生かした文化的、経済的、社会的、公共的な価値の創出はできないということを指摘して、討論といたします。

#124
○委員長(水落敏栄君) 他に御意見もないようですから、討論は終局したものと認めます。
 これより採決に入ります。
 科学技術基本法等の一部を改正する法律案に賛成の方の挙手を願います。
   〔賛成者挙手〕

#125
○委員長(水落敏栄君) 多数と認めます。よって、本案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
 この際、矢田さんから発言を求められておりますので、これを許します。矢田わか子さん。

#126
○矢田わか子君 私は、ただいま可決されました科学技術基本法等の一部を改正する法律案に対し、自由民主党・国民の声、立憲・国民.新緑風会・社民、公明党及び日本維新の会の各派共同提案による附帯決議案を提出いたします。
 案文を朗読いたします。
    科学技術基本法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)
  政府は、本法の施行に当たり、次の諸点について適切な措置を講ずるべきである。
 一 科学技術・イノベーション基本法の目的に「科学技術の水準の向上」に加え、「イノベーション創出の促進」が追加されることにより、今後の科学技術政策がイノベーション創出に偏重することのないよう、科学技術基本法の本来の目的である科学技術の振興とイノベーション創出のバランスに十分留意すること。
 二 第二期科学技術基本計画の計画期間以降、政府研究開発投資目標が達成されていない現状に鑑み、本法により「人文科学のみに係る科学技術」が科学技術・イノベーション基本法の対象に追加され、振興対象とする研究の幅が広がることも踏まえ、科学技術関係予算の拡充に努めること。
 三 本法において、新たに研究開発法人及び大学等並びに民間事業者についても責務規定を設けたことを踏まえ、これらの者がイノベーション創出や人材育成・人材活用などに積極的に努めることができるよう、適切な措置を講ずること。
 四 本法により、科学技術・イノベーション基本計画の策定事項に人材等の確保・養成・資質の向上、適切な処遇の確保に関する施策等が追加されることに鑑み、我が国における科学技術の水準の長期的な向上を図るため、研究者等の雇用の安定を確保するとともに、ポストドクターを含む若手研究者に自立と活躍の機会を与える環境を整備するよう努めること。
 五 研究・技術開発の現場におけるダイバーシティーが成果につながるという知見に基づき、女性研究者や外国人研究者が活躍できる環境を整備するよう努めること。
 六 中小企業技術革新制度(日本版SBIR制度)について、中小企業者等によるイノベーション創出の促進が実効的になされるよう、制度を適切にマネジメントすることのできる人材の育成・配置を行うほか、制度全体の実績等の評価を専門家の知見を活用しつつ段階的かつ定期的に行うとともに、それを踏まえ必要な運用見直しを適宜適切に行うこと。
 七 新型コロナウイルス感染症の感染拡大による、研究開発法人及び大学等並びに民間事業者における研究開発の遅れや、産学官連携の共同研究等の縮小など、研究・技術開発の現場への影響を速やかに調査・分析し、適切な措置を講ずること。
   右決議する。
 以上でございます。
 何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。

#127
○委員長(水落敏栄君) ただいま矢田さんから提出されました附帯決議案を議題とし、採決を行います。
 本附帯決議案に賛成の方の挙手を求めます。
   〔賛成者挙手〕

#128
○委員長(水落敏栄君) 多数と認めます。よって、矢田さん提出の附帯決議案は多数をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。
 ただいまの決議に対し、竹本内閣府特命担当大臣から発言を求められておりますので、この際、これを許します。竹本内閣府特命担当大臣。

#129
○国務大臣(竹本直一君) ただいま御決議をいただきました附帯決議につきましては、その趣旨を十分尊重してまいりたいと存じます。

#130
○委員長(水落敏栄君) なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

#131
○委員長(水落敏栄君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後一時八分散会
ソース: 国立国会図書館
姉妹サイト