くにさくロゴ
2019/11/19 第200回国会 参議院 参議院会議録情報 第200回国会 財政金融委員会 第3号
姉妹サイト
 
2019/11/19 第200回国会 参議院

参議院会議録情報 第200回国会 財政金融委員会 第3号

#1
第200回国会 財政金融委員会 第3号
令和元年十一月十九日(火曜日)
   午前十時開会
    ─────────────
   委員の異動
 十一月八日
    辞任         補欠選任
     三浦  靖君     藤川 政人君
 十一月十八日
    辞任         補欠選任
     音喜多 駿君     浅田  均君
 十一月十九日
    辞任         補欠選任
     浅田  均君     音喜多 駿君
    ─────────────
  出席者は左のとおり。
    委員長         中西 祐介君
    理 事
                有村 治子君
                中西 健治君
                藤末 健三君
                那谷屋正義君
                熊野 正士君
    委 員
                大家 敏志君
                長峯  誠君
                西田 昌司君
                林  芳正君
                藤川 政人君
                宮沢 洋一君
                宮島 喜文君
                大塚 耕平君
                勝部 賢志君
                川合 孝典君
                熊谷 裕人君
                古賀 之士君
                杉  久武君
                浅田  均君
                音喜多 駿君
                小池  晃君
                大門実紀史君
                浜田  聡君
                渡辺 喜美君
   国務大臣
       財務大臣     麻生 太郎君
   副大臣
       財務副大臣    藤川 政人君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        前山 秀夫君
   政府参考人
       金融庁企画市場
       局長       中島 淳一君
       金融庁監督局長  栗田 照久君
   参考人
       日本銀行総裁   黒田 東彦君
       日本銀行理事   衛藤 公洋君
       日本銀行理事   吉岡 伸泰君
       日本銀行理事   池田 唯一君
    ─────────────
  本日の会議に付した案件
○政府参考人の出席要求に関する件
○参考人の出席要求に関する件
○財政及び金融等に関する調査
 (日本銀行法第五十四条第一項の規定に基づく
 通貨及び金融の調節に関する報告書に関する件
 )
○外国為替及び外国貿易法の一部を改正する法律
 案(内閣提出、衆議院送付)
    ─────────────
#2
○委員長(中西祐介君) ただいまから財政金融委員会を開会をいたします。
 委員の異動について御報告をいたします。
 昨日までに、三浦靖君及び音喜多駿君が委員を辞任され、その補欠として藤川政人君及び浅田均君が選任をされました。
    ─────────────
#3
○委員長(中西祐介君) 政府参考人の出席要求に関する件についてお諮りをいたします。
 財政及び金融等に関する調査のため、本日の委員会に、理事会協議のとおり、金融庁企画市場局長中島淳一君外一名を政府参考人として出席を求め、その説明を聴取することに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#4
○委員長(中西祐介君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
    ─────────────
#5
○委員長(中西祐介君) 参考人の出席要求に関する件についてお諮りをいたします。
 財政及び金融等に関する調査のため、本日の委員会に日本銀行総裁黒田東彦君、同理事衛藤公洋君、同理事吉岡伸泰君及び同理事池田唯一君を参考人として出席を求め、その意見を聴取することに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#6
○委員長(中西祐介君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
    ─────────────
#7
○委員長(中西祐介君) 財政及び金融等に関する調査のうち、日本銀行法第五十四条第一項の規定に基づく通貨及び金融の調節に関する報告書に関する件を議題といたします。
 日本銀行から説明を聴取いたします。黒田日本銀行総裁。
#8
○参考人(黒田東彦君) 日本銀行は、毎年六月と十二月に通貨及び金融の調節に関する報告書を国会に提出しております。本日、我が国経済の動向と日本銀行の金融政策運営について詳しく御説明申し上げる機会をいただき、厚く御礼申し上げます。
 まず、我が国の経済金融情勢について御説明いたします。
 我が国の景気は、輸出、生産や企業マインド面に海外経済の減速の影響が引き続き見られるものの、所得から支出への前向きの循環メカニズムが働く下で、基調としては緩やかに拡大しています。やや詳しく見ますと、海外経済の減速の動きが続く下で、我が国の輸出は弱めの動きが続いています。一方で、国内需要は増加しています。すなわち、設備投資は、企業収益が総じて高水準を維持する中、増加傾向を続けているほか、個人消費も、消費税率引上げなどの影響による振れを伴いつつも、緩やかに増加しています。先行きも、当面、海外経済の減速の影響が続くものの、国内需要への波及は限定的となり、景気の拡大基調が続くと見られます。
 物価面を見ると、消費者物価の前年比はプラスで推移していますが、景気の拡大や労働需給の引き締まりに比べると、弱めの動きが続いています。先行き、当面、原油価格の下落の影響などを受けつつも、マクロ的な需給ギャップがプラスの状態を続ける下で、中長期的な予想物価上昇率は高まっていくと見ています。このように、物価安定の目標に向けたモメンタムは維持されており、消費者物価の前年比は、二%に向けて徐々に上昇率を高めていくと考えています。
 次に、金融政策運営について御説明します。
 日本銀行は、長短金利操作付き量的・質的金融緩和の枠組みの下で、強力な金融緩和を推進しています。このうち、長短金利操作については、物価安定の目標の実現のために最も適切と考えられるイールドカーブの形成を促すよう、短期政策金利をマイナス〇・一%、十年物国債金利をゼロ%程度とする金融市場調節方針を掲げ、市場において国債の買入れを実施しています。
 先行き、我が国経済は拡大基調を続け、物価も二%に向けて徐々に上昇率を高めていくと見ていますが、引き続き、海外経済の動向を中心に、下振れリスクに注意が必要な情勢にあると考えています。こうした情勢判断の下、日本銀行は、緩和方向を意識した金融政策運営が適当な状況にあると考えています。先月の金融政策決定会合では、政策金利についての新たなフォワードガイダンスを決定し、物価安定の目標に向けたモメンタムが損なわれるおそれに注意が必要な間、政策金利について現在の水準を維持する、あるいは、状況によっては、現在の水準よりも引き下げる方針を明確にしました。
 日本銀行は、こうした政策運営スタンスの下で、今後も、物価安定の目標の実現に向けて、強力な金融緩和を推進していきます。その際、金融市場や金融仲介機能に及ぼす影響などを含め、政策の効果と副作用の両方を考慮することが重要だと考えています。
 この点に関し、日本銀行は、低金利環境や金融機関間の厳しい競争環境が続く下で、金融機関収益の下押しが長期化すると、金融仲介が停滞方向に向かうリスクや金融システムが不安定化するリスクがあることも認識しています。現時点では、金融機関は充実した資本基盤を備えていることなどから、これらのリスクは大きくないと判断していますが、今後とも、こうした点を含め、金融政策運営の観点から重視すべきリスクの点検を行うとともに、経済、物価、金融情勢を踏まえながら、適切な政策運営に努めていく方針です。
 ありがとうございました。
#9
○委員長(中西祐介君) 以上で説明の聴取は終わりました。
 これより質疑を行います。
 質疑のある方は順次御発言願います。
#10
○長峯誠君 おはようございます。質問の機会を与えていただきましたことに御礼を申し上げます。
 去る十月十八日までワシントンで開催されましたG20財務大臣・中央銀行総裁会議におきまして、閉幕後のプレスリリースで以下のような表明がなされました。グローバルステーブルコインが政策及び規制上の一連の深刻なリスクを生じさせることになると。ここでいうステーブルコインは、主にフェイスブックが来年発行しようとしていたリブラを想定しています。アメリカでは、信託銀行やカストディーの使用、資金移動業のライセンスの取得などの要件をクリアするとステーブルコインとして成立するそうであります。
 ステーブルコインは法定通貨に裏付けされているもので、その意味で暗号資産と違いステーブルである、つまり、安定していると言われています。ただ、ほかにも金や原油などの実物資産の価値に裏付けされたものや、仮想通貨やトークンなどを担保にしているものもあります。また、担保もなく貨幣数量説に基づいて需給に応じて発行量を調整するものまであります。ここまで来ると、果たして本当にステーブルなのかという疑問も湧きますが、ともかく、しっかりと法的に定義した上で規制する必要があると思われます。
 まずもって、日銀としてステーブルコインの定義をどのように考えているか、お伺いいたします。
#11
○参考人(池田唯一君) お答え申し上げます。
 日本銀行といたしましてステーブルコインを特に定義しているというわけではございませんけれども、FSB、金融安定理事会あるいはG7作業部会の報告書などによりますと、ステーブルコインとは、暗号資産のうち法定通貨建て資産、又はそのバスケットなどの裏付け資産を確保することによってその価値を安定させようとする仕組みを備えたものとされているというふうに承知をしているところでございます。
#12
○長峯誠君 フェイスブックが発行を予定していたリブラの仕組みについては、まず、フェイスブックのユーザーが販売業者から法定通貨、例えばドルでリブラと交換をいたします。販売業者はドルをリブラ協会に入金し、リブラと交換をいたします。リブラ協会とは、大手の金融業者による運用コンソーシアムであり、リザーブ資産として法定通貨を銀行預金や短期国債などで安定的に運用します。このことでレートが安定し、投機的にならず、よって決済手段となり得るということになります。
 このリブラに対し、冒頭述べましたとおり、G20は強い懸念を示したのであります。トランプ大統領も信頼性に欠けると批判をし、十月に行われたアメリカ議会の公聴会でマーク・ザッカーバーグ会長兼CEOも、規制上の懸念に完全に対応し、適切な承認を得るまで、リブラのサービスを開始しないという答弁に至ったところでございます。
 そこで、黒田総裁にお伺いいたします。リブラの規制上の懸念とは具体的にどういうものでありましょうか。
#13
○参考人(黒田東彦君) リブラといったいわゆるステーブルコインには、コストや決済時間などの面で課題のある様々なグローバルなクロスボーダー決済を改善するという面もありますし、また、金融包摂、いわゆるフィナンシャルインクルージョンを促進するという可能性もございます。
 ただ、そうした便益というものは、マネロン、あるいはテロファイナンス、さらにはサイバーセキュリティー、市場の健全性、データ保護、消費者、投資家保護、税制上のコンプライアンスなど、様々な課題あるいはリスクへの適切な対応がなされて初めて実現するものであります。
 また、実はこのスキームに関する法的な明確性についていろいろな議論がありますし、また、その健全なガバナンスあるいは厳格なリスク管理体制の確保ということが大前提になるわけですが、これらの対応が不十分なままステーブルコインを発行するというのは適切でないということであって、その面はG7あるいはG20などでもそのように述べられているわけであります。
 更に申し上げますと、巨大な顧客基盤を持つステーブルコインの普及がグローバルに仮に進んだとしますと、金融政策や金融システムの安定にも影響を及ぼす可能性があります。このほか、競争政策上の問題も引き起こし得る点にも留意が必要ではないかというふうに思われ、この点もG7あるいはG20でも指摘されているところでございます。
 日本銀行は民間のイノベーションというものを重視しておりますけれども、ステーブルコインについては、やはり内外の当局者と協力しながら、引き続きリスクや課題に対する対応を行ってまいりたいと考えております。
#14
○長峯誠君 関連して、金融庁にお伺いいたします。
 日本は、世界に先駆けて仮想通貨を資金決済法で規制をしました。リブラはこの仮想通貨の定義には当てはまらないのでしょうか。リブラに対する様々な懸念は資金決済法の規制で解決できないものなんでしょうか。リブラ固有の課題など、具体的にお示しいただきたいと存じます。
#15
○政府参考人(中島淳一君) お答えいたします。
 リブラを始めとするいわゆるステーブルコインについては、異なる金融サービスの性質を兼ね備えているといった指摘がなされております。具体的には、例えば、ある利用者から別の利用者に送金を行うような機能、すなわち資金決済法上の資金移動業のような性質のほか、利用者から資金を預かり、それを送金に用いたり払い戻したりする預金のような機能、すなわち銀行法上の銀行業のような性質、さらには、利用者から預かった資金を運用し、収益を利用者に分配するような機能、すなわち投資信託法や金融商品取引法上の投資信託、MMFのような性質などを兼ね備えているという指摘もございます。
 したがいまして、ステーブルコインの発行主体やその取扱主体に課される規制は、個々のステーブルコインやそれに関する枠組みの具体的な内容に応じて判断していく必要があり、リブラの詳細が明らかとなっていない現時点において、国内で課され得る規制について一概に申し上げることは困難と考えております。
 なお、グローバル規模で用いられるステーブルコインについては、G7やG20などの国際的な場においても、マネーロンダリング対策、利用者、データ保護などに関連する多くの重大なリスクが生ずるという指摘がなされており、金融庁といたしましては、財務省や日本銀行とも連携しつつ、国際的な議論に積極的に参画し、必要な検討を進めてまいりたいと考えております。
#16
○長峯誠君 ザッカーバーグ氏はアメリカ議会公聴会でリブラの延期を表明しましたが、同時にこうも言いました。中国がリブラと同じような構想を数か月で打ち上げるだろう。実際、中国人民銀行の幹部も、中国人民銀行はリブラを注視していると述べています。リブラはあくまでドル基軸体制の中で生まれることになり、リザーブ資産もドルを中心としたものになるでしょう。中国から見ると、リブラによってドルが更に力を持つと考えているのです。
 G20はこぞってリブラを批判しましたが、その底意は同床異夢でした。アメリカはグローバル企業対国家の通貨主権の対立と捉えたのに対し、中国はアメリカのドル基軸体制が強化されると捉えたのであります。
 さて、人民銀行は、ビットコインの誕生を受け、五年前からデジタル人民元を研究をしています。これにより、元の国際化を進めようと考えています。九月には、十一月十一日、独身の日でございますけれども、この日から深センで社会実装を始めると報道されていましたが、今のところその動きはございません。
 デジタル人民元はどのようなもので、どの程度まで開発が進んでいるのか、お伺いをいたします。
#17
○参考人(池田唯一君) 中国におきましては、現金に代わるデジタル通貨の発行が検討されているものと認識をしております。その仕組みについて、現時点で必ずしも詳細が明らかになっているわけではございませんけれども、中央銀行が民間決済事業者向けにデジタル通貨を発行いたしまして、民間決済事業者がリテール向けのデジタル通貨の供給を担うといったことが想定されていると承知をしております。
 現時点では、御指摘のとおり、なお検討、開発段階にございまして、その発行時期等は明らかでございませんけれども、日本銀行としては、今後ともその動向について注視してまいりたいというふうに考えているところでございます。
#18
○長峯誠君 現時点では、国際金融・通貨体制の中で、中国の存在感というのはアメリカに大きく劣後していると言えると思います。しかし、ICTの世界ではその差は相当程度縮まっている、もう今、同レベルまで来ているのではないかという認識を持った方がいいんじゃないかなと思います。その意味では、デジタル人民元がゲームチェンジャーになる可能性というのはないか、大変危惧をいたしております。
 リブラがなぜ市場から期待されているかというと、国際決済の時間とコストの問題でございます。個人間でも企業間でも、海外送金には長い時間と多額の手数料が掛かります。国際決済には、国際銀行間通信協会、通称SWIFTを通さねばなりません。送金は複数のコルレス銀行を経由して行われるため、それぞれの銀行で手数料が発生をいたします。この問題を解決するイノベーションは、多くの人に求められていると考えます。
 中国からは、世界中に多くの華僑や労働者が渡航をいたしております。デジタル人民元が送金や決済の通貨として使えるのであれば、その便益はとてつもなく大きいでしょう。現在でも電子決済が末端まで普及している中国で国際決済もデジタル人民元で行えるとなれば、瞬く間に人民元経済圏を拡大していくのではないかと考えます。通貨版の一帯一路になるという指摘もございます。
 デジタル人民元が中国の覇権を強化し得るものになる可能性はあるのか、黒田総裁に御見解をお伺いいたします。
#19
○参考人(黒田東彦君) 今御指摘になったような点について、様々な議論がいろいろなフォーラムで行われていることは事実でありますけれども、日本銀行として、他国の通貨政策あるいは通貨主権についてコメントするというのは必ずしも適切でありませんので、発言は控えたいと思います。
 その上で申し上げますと、日本銀行としては、実は世界各国におけるデジタル通貨に関する取組あるいはその影響について今後とも注意深く見てまいりたいと思っておりますし、御承知のように、先進国の中ではスウェーデンの中央銀行がかなり前からデジタル通貨の発行を検討しておられます。その他、幾つかの国でそういう動きがあるということも事実でありまして、そういったことも含めてよく情報交換をし、その影響については注意深く見てまいりたいというふうに思っております。
 なお、主権国家の発行するデジタル通貨は、リブラのような民間団体の発行するデジタル通貨と根本的に違っておりますので同じように扱うことはできないと思いますけれども、同じような問題も引き起こし得るという点は事実でありますので、この点も実はG20で議論になりまして、引き続きG20、さらにはG7も含めてでしょうけれども、議論が行われていくというふうに思います。
#20
○長峯誠君 今総裁おっしゃったとおり、スウェーデンの中央銀行リクスバンクは、二〇二一年ですから再来年ですね、にもデジタル通貨のeクローナを発行する予定というふうに伺っております。かつ、先ほど中国が今年の独身の日に深センで社会実装をやると言っていたということは、恐らく技術的にはもう相当なところまで来ているんではないかなというふうに考えております。
 翻って日銀ですけれども、このデジタル法定通貨、デジタル円と言っていいんでしょうか、これについてどのような検討を行っていらっしゃるのか。かつてブロックチェーン技術が出てきたときに、日銀の中に何かそういう組織をつくって検討、四年か五年ぐらい前ですかね、始められたというふうに伺っておりますが、そのデジタル法定通貨についてどんな検討を行われているのか、お伺いいたします。
#21
○参考人(黒田東彦君) 御案内のとおり、我が国では現金流通高がなお増加しているような状況でありまして、現状、中銀、いわゆる中央銀行のデジタル通貨の発行を求めているというふうには考えられませんけれども、将来デジタル通貨発行の必要性が高まったときに的確に対応できるように、日本銀行としてもデジタル通貨については調査研究を進めております。
 具体的に申し上げますと、技術面ではECBとの共同研究でプロジェクト・ステラというものをやっておりまして、いわゆる分散型台帳技術に関する調査研究を進めております。これまで三本の報告書を公表いたしまして、内外における様々なイベントあるいはコンファレンス等でその研究成果を説明しております。また、法律面では、情報技術が急速に発達する下で、仮に日本銀行がデジタル通貨を発行する場合にどのような法的な論点があって、それについてどのような解釈が成り立ち得るかということについても検討を進めてきたところでありまして、その検討結果は今年の九月に金融研究所から報告書として対外公表しております。
 この間、いわゆるフィンテック企業あるいは銀行など民間部門が発行するデジタルマネーも多々ある中で、日本銀行としては中央銀行のデジタル通貨に関する調査研究を進めると同時に、こうした民間マネーの利用を促進していくことで、中銀デジタル通貨が目指す決済機能の向上の実現を達成していくことが重要であるというふうに考えております。
 したがいまして、今の時点で円のデジタル通貨を出すという計画があるわけではありませんが、いつでもそういう必要が出たときに対応できるような調査研究は進めているということでございます。
#22
○長峯誠君 イギリスの中央銀行であるイングランド銀行のカーニー総裁は、八月のジャクソンホールの講演で、名指しこそは避けたものの、トランプ大統領の保護主義を批判し、その力の源泉となっているドル基軸体制による支配の変革を訴えました。同時に、ドルから人民元へ覇権が入れ替わるぐらいならリブラを容認する方が好ましいという見方を示されました。これ、ほかではなくて、イギリスの中央銀行総裁からこういう発言が出たというのは大変な驚きだと思います。ただ、まあ、これG20に先立つ発言ですから、その後、G20でまたいろいろ議論はされたと思うんですけれども。
 その上で、カーニー総裁は合成覇権通貨、シンセティック・ヘゲモニック・カレンシーという考え方を提唱しました。詳細は言及されていないんですけれども、ブロックチェーンなどの技術を活用して、中央銀行がデジタル通貨ネットワークを通じて公的セクターによってデジタル通貨が法定通貨として提供されるイメージのようでございます。
 このカーニー総裁のアイデアを黒田総裁はどのように評価されるか、お伺いいたします。
#23
○参考人(黒田東彦君) このカーニー総裁の構想というものは、複数の法定通貨を裏付けとしたデジタル通貨を中央銀行が協力して発行するという構想のようであります。
 御案内のように、IMFにSDRという国際通貨がありまして、これはもう五十年ぐらい続いているわけですけれども、現在は、SDRの構成バスケットというのはドル、ユーロ、円、ポンド、そして人民元という五つの通貨の一定の割合でSDRというものをつくって、それを国際決済、各国間の国際決済に使えるようにしているわけでありますが、このSDRについて市場でも使えるようにしたらどうかという意見が昔からあったんですが、これは結実しておりません。
 カーニー総裁の発想は、このSDRを実際に民間の人たちがデジタル化した形で使えるようにするという構想とよく似ていると思うんですけれども、そういう意味で全く何か変わったことを言われたというのではなくて、従来からあるドルだけに依存した国際通貨体制を、もう少しバランスよく幾つかの主要な通貨のバスケットのようなものを、SDRのようなものを国際的な取引に幅広く使うことによって、ドルに対する過度な依存が、一方で米国に恩恵も与えているんですけれども負担も与えていると、それが、国際通貨体制が米国の財政金融政策によって大きく影響を受けるということを是正しようという動きが従来からあるわけですが、カーニー総裁の話は、そういったことの流れの中で、リブラが出てきたということもあって、公的なところでそういうことをしてはどうかという話だと思うんです。
 大変興味深い話ではあるんですが、先ほど来申し上げたように、SDR自体、もうずっとつくられて五十年ぐらいたっているんですけれども、各国間の決済には使われているんですけれども、ある程度、しかし、民間では使われていないし、残高も、リーマン・ショックの後に倍増したと思いますけれども、その後余り大きく伸びていないということですので、この構想が実際に何か実現するという可能性はなかなか難しいのかなと思います。思いますが、こういった技術革新の成果を中央銀行が活用して世界の安定につなげていくということ自体は大変結構なことだと思います。
 そういった意味で、日本銀行としては、先ほど申し上げたECBとの共同研究、さらには、今、香港金融管理当局とクロスボーダーのDVPリンクの構築を進めております。こういったことも含めて、日本銀行としては、デジタル社会にふさわしい中央銀行間の協力を今後とも更に高めていきたいというふうに考えております。
#24
○長峯誠君 以上で終わります。
#25
○熊谷裕人君 立憲・国民.新緑風会・社民の熊谷裕人でございます。
 今日も質問の機会をいただきました。一生懸命質問させていただきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
 まず最初に、先ほど総裁から報告書に関する御発言をいただきました。私もこの報告書を読ませていただいて、経済・物価情勢の展望十月号というやつを見まして、その中でちょっと気になっていたのは、二〇二一年度の消費者物価指数の政策委員見通しの中央値が二一年度もプラス一・五という数値になっております。
 この中央値が二%に満たなくなったのはいつからなのかなという素朴な疑問がございましたので、その辺をお聞かせをいただきたいのと、また、政策委員の大勢見通しについても二%に満たなくなったのは果たしていつ頃からなのでしょうか、まず御質問させていただきたいと思います。
#26
○参考人(黒田東彦君) いわゆる政策委員会の委員の見通しの中央値が二%に達しない見通しになったというのは、特に二〇一五年七月以降になったわけですが、この見通し期間中にも、一番最後でも二%に達しないというふうになったのは二〇一八年の七月以降であります。
 御案内のとおり、世界経済の中で特に大きな変動がありましたのは、原油価格が一時百二十ドルぐらいになっていたものが三十ドルを割るぐらいのレベルまで一年半ぐらい掛けて下がったことがございます。それが相当日本の消費者物価の上昇率を引き下げまして、実はその頃は欧米も非常に下がってゼロ%近くになっていたんですが、我が国の場合若干マイナスになりまして、その後、原油価格が半分ぐらい戻したわけですけれども、欧米の場合は比較的この消費者物価の上昇率もある程度戻ったのに対して、我が国の場合は足下、もう御承知のように生鮮食品を除いたところで〇・五%前後というところで、なかなか戻っていないわけであります。
 そういったことを前提に、やはり需給ギャップがプラスの状況ではあるんですけれども、なかなかこの中長期的な予想物価上昇率が上昇してこないということもありまして、足下の物価上昇率がまだ二%にはかなり遠い段階にあると。その下で今後、今の緩和的な金融政策を続けていって、需給ギャップのプラスも持続し、物価上昇率が少しずつ上がっていって、予想物価上昇率もそれに合わせていくということで進んでいくと、御指摘のように二〇二一年度でプラス一・五%程度になるということであります。
 月ごとの見通しというのはありませんので何とも申し上げられませんけれども、基本的には二〇二一年度でも二%に達しないというのが政策委員の見通しの中央値であろうというふうに思っております。
#27
○熊谷裕人君 ありがとうございます。
 先ほどの総裁の報告の中で、中長期的な予想物価上昇率は高まっていき、そして二%に向けて徐々に上昇率を高めていくというコメントがございました。
 私がこの二%って本当に達成できるんだろうかと、国民の皆さんも思っているんだと思うんですけれど、私も率直にそんな感じをしておりまして、この十月の消費増税の影響が具現化をこれからしてくる。そして、先般の七―九月期のGDPの速報値でも伸びが鈍化をしているというような報告もございました。足下の経済状況が悪くなっている中で、本当にこの二%目標というのは現実的なものなのかどうかというふうな気がしておりまして、この二%にこだわっている理由というのをもう一度聞かせていただけないかなと思います。
#28
○参考人(黒田東彦君) まず、二%の物価安定の目標の実現には時間が掛かっておりまして、そのこと自体は残念なことであると思っております。
 もっとも、日本経済自体は、強力な金融緩和の効果もあって、物価が持続的に下落するという意味でのデフレではない状況となっております。先行き、極めて緩和的な金融環境による下支えなどを背景に景気の拡大基調が続く中で、消費者物価の前年比は二%に向けて徐々に上昇率を高めていくというふうに考えているわけでございます。
 なぜこの二%かということにつきましては、従来から三つほどの点を挙げておりますけれども、一つは、消費者物価指数がやや実態よりも高めに出ると。これは御承知のように、五年ごとに中身、それからウエートを見直すわけですけれども、どうしても、そういうことから上昇率が実際よりも高めに出てしまうと。それからもう一つは、そうした上で若干の余地を残しておいた方が、そうでないと、すぐに実際の、実態の物価上昇率がマイナスに落ち込んでしまうということになりますので、一定のその過大評価部分に加えて一定のまた余地を加えると。そうすると二%程度というのが適切ではないかと。それが言わばグローバルスタンダードに現在なっておりますので、三つ目のポイントとしては、主要国の中央銀行が二%の物価安定目標を実現するということで金融政策を運営しているということが、ある意味で、中長期的に見れば、その主要国間の為替レートを安定する方向に機能しているということがあろうかと思います。
 そういった意味で、諸外国でも二%の物価安定目標についていろんな議論が現状行われていることは事実なんですが、欧米における議論はむしろ二%よりも引き上げようという議論でありまして、私はそういった議論にはくみさないんですけれども、少なくとも引き下げようという議論は世界的に見てもほとんどないと思います。
#29
○熊谷裕人君 ありがとうございます。
 そうしたら、次に行きたいと思うんですけれど、アメリカでは、トランプ大統領がFRBに引下げをずっと要求をして、現実的に引下げがなされてきました。しかし、十三日の新聞に出ていたんですけれど、アメリカの議会証言で、パウエル議長の方が今後の利下げには慎重な姿勢を証言をされています。
 先ほどの報告書の中で、状況によっては現在の水準よりも引き下げる方針を明確にしているというふうな御発言ございましたが、これもまた先般の銀行、三メガ銀行グループの中間決算の速報なんですけれど、収益が軒並み三年ぶりに減収をしていて、低金利がやはり影響しているんじゃないかというようなお話があったり、生保が低金利過ぎてなかなか商品がつくれなくなっているというようなことがあって、様々なところに影響が出てきています。
 先ほどの、状況によっては更なる利下げも考えるということでありましたが、どのような状況になったら利下げを考えなければいけないのかどうか、もしお聞かせいただければお聞かせいただければと思います。
#30
○参考人(黒田東彦君) 私ども、従来から物価の動向については二つの要素が非常に重要であると考えておりまして、需給ギャップがどのようになっていくかということと、中長期的な予想物価上昇率がどのように展開していくかということであります。そういった意味で、その両方の点を中心に、物価安定目標に向けたモメンタムが維持されているかどうかというのを毎回の決定会合で議論しているわけであります。
 そういった観点からいいますと、前回の決定会合では、海外経済を中心として下振れリスクが大きいことは事実でありますけれども、その時点で、物価安定目標の実現に向けたモメンタムが失われたとか、あるいは、その損なわれるリスクが非常に高まったという状況ではないということで、政策については現状維持をした上で、金利のフォワードガイダンスについてより明確化をしたということでございます。
 今後も、したがいまして、海外経済を中心としたリスクがどのように展開するのか、顕在化するのか、あるいは、それが日本の経済に影響を与えて、今申し上げた需給ギャップあるいは中長期的な予想物価上昇率にどういう影響が出てくるかと、で、そうしたものが大きな影響を受けて、物価安定目標に向けたモメンタムが損なわれるおそれが一段と高まるということになれば、やはり政策金利の引下げも含めて当然追加的な金融緩和をちゅうちょなく検討するということになると思いますが、現時点ではまだ何らかの予断を持っているということではございません。
#31
○熊谷裕人君 ありがとうございます。
 私の持ち時間が少なくなってきたので次に移りたいと思いますが、次は、ETFについてちょっと疑問点がございますので、お尋ねをいたしたいと思います。
 ETFの買入れ、年間六兆円規模でということが決まりまして、かなりのETFを日銀お買い入れになっていると思いますが、私は、この株式というリスク資産を余り持つことが、問題になるのではないのかなというふうに思っております。
 また、ネット上では、このETF、どんな状況になったら買い入れるというようなことが予想をされて、今日は買入れがあるんじゃないかなんていうような話も出ております。このところ一か月は大きな買入れ、ないようでございますが、昨日の時点であと二兆円ちょっとの、一九年という一年のスパンで見れば二兆円ちょっとの枠があるようでございますが、あと、一九年、一か月半ぐらいでこの二兆円を買うということになると、市場に影響がかなり大きいのではないかなというふうに思っておりますし、この日経平均のものを買っていくという中で、信託銀行、信託さんにお任せをしているので内容については日銀の方で指示をしているわけではないと思いますが、企業業績が本当に反映をされたものにETFの買入れがなっているのかなというふうにも思っておりまして、この株を日銀が大量に買うということについて私は若干懸念があると思っているんですが、どのようにお考えなんでしょうか。
#32
○参考人(黒田東彦君) 確かに、このETFの買入れにつきましては、株式市場の機能低下あるいは日本銀行の財務への影響ということが副作用として指摘されているわけでありまして、その点はよく承知をいたしております。
 ただ、ETFを通じた日本銀行の株式の保有割合は株式市場全体の五%程度にとどまっておりますし、また、コーポレートガバナンスの面でも、スチュワードシップ・コードの受入れを表明した投資信託委託会社によって適切に議決権が行使される形となっております。また、財務面につきしましても、日銀が保有するETFには含み益がありますので、株価が下落しても直ちに決算上の期間損益に影響を与えるわけではありません。
 金融政策の運営に当たりましては、効果と副作用をバランスよく考慮する必要がございますけれども、ETF買入れは、これまで株式市場のリスクプレミアムが過度に拡大することを防ぐという意味では大きな役割を果たしてきたと考えておりまして、引き続き必要な措置であるというふうに思っております。
 なお、こういった株式あるいは株式の組合せであるETFのようなものを買い入れている中央銀行は現時点では世界で先進国でないと思いますので、その意味では十分注意しながら行っております。
 その上で、年間幾らというそのめどは示しておりますけど、これ、別に、残り、枠があるから買わなくちゃいけないとかそういうものはありませんので、ごく弾力的に、リスクプレミアムの状況から見て、買い入れる必要がなければもっと少ないですし、買い入れる必要があればそれをそのめどを超えて買い入れることもあり得ると。むしろ、そういう形でリスクプレミアムの過度の拡大とか変動を防ぐという役割を持っているというふうに御理解いただきたいと思います。
#33
○委員長(中西祐介君) 時間が来ています。おまとめください。
#34
○熊谷裕人君 はい。
 ありがとうございます。用意した質問が半分ぐらいしかできませんでした。済みません。
 このETFにつきましては、買入れと今度貸付けのところも様々疑問点持っているところがございますので、また時間が取れたときに質問させていただきたいと思います。
 以上で私の質問終わりにさせていただきます。ありがとうございました。
#35
○大塚耕平君 立憲・国民.新緑風会・社民の大塚耕平でございます。
 今日は、私の前のお二人の質問者から大変いい御質問がありましたので、少しそのこともフォローさせていただきながら質問をさせていただきたいと思います。
 なお、日銀の皆さんには御協力いただいて総裁だけにお座りいただいておりますが、アメリカの議会もFRBの議長だけがお座りになっておやりになるのが慣行でありますので、こういう姿もいいかなと思って今日もお願いをさせていただいた次第でございます。
 まず、リブラについて、先ほど御質問があったんですけれども、私もこの仮想通貨の話、幾つか懸念があって、日銀からも金融庁からもいろいろお話をお伺いをしておりますが、総裁が先ほど御質問にお答えになって、民間が出す仮想通貨と中央銀行が出す仮想通貨は根本的に違うというふうにおっしゃったんですが、どこが根本的に違うのか、ちょっと現時点での御認識を簡単にお伺いしたいと思います。
#36
○参考人(黒田東彦君) 中央銀行自体が発行するまあ仮想通貨というか、いわゆるセントラルバンクデジタルカレンシーというものは、中央銀行が現在発行している現金に代わるものでありまして、より便利になるとか使いやすくなる面があるとしても、それ自体の法的性格とか、いわゆる信用の裏付けというものを大きく変えるものではないと思います。
 他方、民間の企業、金融機関が発行する仮想通貨というものは、仮にこのステーブルコインと言われるようなものであっても、先ほど来申し上げたように、ステーブルコインを発行して、そこで得た各国の通貨を様々な形で運用すると。それをどういう形で運用するのかとか、あるいはそれがどのようにその仮想通貨、そのステーブルコインの価値に影響するかとか、その他様々な問題があり得るわけですので、そこは若干というか、かなり違っているというふうに思います。
 ちなみに、御承知のように、民間のステーブルコインというか、それに匹敵するものは中国でも相当発行されているわけですが、人民銀行は、それについては発行したものの代わり金を一〇〇%準備預金で積め、準備預金を積めということにしていますので、その限りでは、銀行の預金あるいはそれ以上に価値が安定したものになるという可能性はあると思います。
 ただ、いずれにいたしましても、中央銀行が発行するデジタルカレンシーというものは、中央銀行の今出している銀行券に代わるという技術的な変更だけですけれども、民間の場合はかなり違ってくるというふうに思いますので、その点は、特に現在構想が進んでいるリブラのような、様々な国で様々な通貨と交換してリブラを発行する、その発行代わり金をスイスのリブラ・アソシエーションというところで様々な運用を行うという形になってきますと、先ほど来申し上げているような価値の保証、ガバナンス、その他様々な論点が出てくるということだと思います。
#37
○大塚耕平君 長峯さんの御質問に対する御答弁をフォローさせていただいているので、十分にもし御用意できていないとすれば、もう根本的に違うとおっしゃるならばどこが根本的に違うのかということも一度よく整理していただきたいと思いますし、恐らく瞬間的にはシニョレッジのことを御想像になられたんじゃないかなと思って聞いていたんですけれども、ところが、東南アジアの国々やアフリカの国々で民間企業に自国の仮想通貨を委ねて発行しようとする動きも出ていて、シニョレッジの概念そのものも変わってくる可能性があると思っていますし、それから、SDRのことについて総裁お触れになったんですが、特別引き出し権は民間に流通させることを想定していませんから。だから、今度の仮想通貨は、リブラにしてもデジタル人民元にしても、SDRとは、国際的に通用させようとしているという面においては同じですけれども、全然その流通するレイヤーが違いますから、SDRとの対比だけで考えるのもなかなか難しいことになってきているなと思います。
 さらに、私ももう決して若くないので、最近の若い世代の皆さんの話やエンジニアの話聞いていますと、多分総裁がイメージしていらっしゃる以上の物すごい加速度的な変化をしていますので、是非この仮想通貨問題についてはより積極的にちょっと取り組んでいただきたいなと思います。
 先ほど、いつでも対応できるように調査研究をしているというふうにさらっと御答弁になられましたけれども、これ本当にそうなんだろうかと。私が知り得る限りでは、我が国においては、財務省においても金融庁においても日銀においてもそこまでは行っていないだろうと思います。
 そういう観点でひとつ、今日は財務副大臣もこの委員会におられますので、情報共有をさせていただきたいんですが、総裁、来年のオリンピック前にデジタル人民元が日本国内で使われる可能性はあると思っていますか、ないと思っていますか。
#38
○参考人(黒田東彦君) デジタル人民元というのがいわゆる中央銀行のデジタル通貨ということであれば、現時点では人民銀行はリテールレベルのデジタル人民元を発行するつもりはないようでありまして、ホールセールレベルというか、民間の金融機関あるいはデジタル通貨を扱う業者、そうした人たちの決済のところでデジタル人民元を発行するということを考えておられるようなんです。まだ、人民銀行の方々もいろんなことをおっしゃっているのでどれが統一見解かよく分からないんですけれども、今のところそういうお考えのようですので、デジタル人民元、中央銀行の発行するデジタル人民元が日本で来年のオリンピックで流通するという可能性はないと思いますけれども、思いますが、アリペイとかそういった民間の発行するデジタル通貨、それを認めるかどうかはこれは金融庁の判断だと思いますけれども、そういうものが中国の中では流通していますので、金融庁が認めれば認められる可能性はあると思いますけれども、具体的にどういうことを金融庁で検討しておられるのか、私、今の時点ではよく存じませんが、様々な支払手段を、キャッシュだけでなく、外国の観光客、オリンピックに来る人たちにも、キャッシュとクレジットカードだけというのではなくて、その他の支払手段も認めてはどうかという議論があるのは承知していますし、そういったことも必要かもしれませんが、先ほど来申し上げているように、人民銀行の発行するデジタル人民元が来年のオリンピックの時期に日本で流通するという可能性はないと思います。
#39
○大塚耕平君 総裁を困らせるつもりはありませんので、情報共有をさせていただきたいんですが、この週末、私の後援会もバス旅行で高野山へ行っていましたら、高野山のお土産屋さんも当然アリペイやウイチャットペイ使えますよといって置いてあるわけですよ。当然、アリペイやウイチャットペイは別に今仮想通貨出しているわけではありませんので、デジタル人民元とは全然次元が違います。
 これは確認ですが、日本銀行も法律上我が国の通貨の信用や我が国の通貨システムを守っていくことは、それは日本銀行の法的責務だという認識でよろしいですか。
#40
○参考人(黒田東彦君) それは日本銀行法に、決済の円滑を確保するということが日本銀行の一つの役割になっておりますので、当然、金融システムの安定あるいは決済システムの安定ということについては日本銀行は最大限の努力が必要であり、かつそのための必要な役割も持っているというふうに思っております。
#41
○大塚耕平君 ということであれば、日銀にも、たまたま委員会に同席しておられる財務副大臣にも情報を共有していただくためにお願いをしておきますが、来年、オリンピック前にあるいはオリンピックのときに中国からおいでになる観光客の皆さんが、自分のスマホに、もしそれまでにデジタル人民元がリリースされていればですよ、デジタル人民元をここにプールしてきて、例えばお土産屋さんで、アリペイとかウイチャットペイじゃなくて、デジタル人民元なら払えるんだけどと言って、売る側がデジタル人民元でお受けしますと言って、そのデジタル人民元で支払をして、そのデジタル人民元、そういうふうにプールしておいてくれたら、後々中国の銀行あるいは、ここが心配なんですが、日本の銀行も、それを持ち込んでくれたら円に替えるのでどうぞデジタル人民元で受け取ってくださいというやり取りがなされると、これはもう事実上日本の国内でデジタル人民元が流通するということとほぼ同義になるわけでありまして、そういうことが起こり得る、ないしは計画をしているのではないかという情報も飛び交っておりますので、是非ここのところは、我が国の通貨システム、通貨覇権あるいはシニョレッジ、こういう問題に大きく関わってきますので、先ほど長峯さんの御質問のやり取りを拝聴していて非常に重要な局面に来ていますので、是非日銀も今まで以上に少し体制を強化して、関係当局とよく協議をして対処していただきたいということをお願いをしておきたいと思います。
 それから、熊谷さんの御質問にも幾つか大変重要な御答弁をされておられるんですけれども、総裁、まず、二%になかなか物価上昇率が達しない、そして時間が掛かっているのは残念だとおっしゃったんですが、残念なだけですか。
#42
○参考人(黒田東彦君) 日本銀行としては、もちろん物価の安定というのが日本銀行法に掲げられている使命でありますので、当然それは果たさなければならないということであろうと思います。たしか日本銀行法には、日本銀行は物価の安定を通じて国民経済の健全な発展に資するということが書いてあったと思いますので、そういった趣旨で、物価安定の目標に向けて最大限の努力を払っているというところでございます。
#43
○大塚耕平君 当初は、二年間でマネタリーベースを二倍にして、物価上昇率を二%にするという目標を掲げてスタートされたわけでありますので、既に七年目に入っているということも踏まえて、より重く受け止めていただきたいなというふうに思います。
 ちなみに、ちょっと資料を配らせていただきましたが、新しく国会に御当選された先生方もいらっしゃいますので、ちょっと資料を御覧いただきますと、二枚資料を配らせていただいたんですが、グラフが付いているものがありまして、これは塩川財務大臣の頃から使わさせていただいて今日に至っておりますが、財政赤字の対GDP比ということで、いろんな指標が出ているんですが、赤い線は日銀の保有国債の対GDP比で、この赤い線がこうぐっと伸びているのは、これはアベノミクスの下でこうなっているわけであります。
 この間、先ほど、その二%目標をいつまで維持されるのかと熊谷さんがお聞きになったんですが、やはりなかなか、どんどんこの赤い線が少しびっくりするようなスピードで伸びている中で、二%にそうこだわる必要もないし、二%にすることが何か合理的理由、理論的根拠があるんですかというやり取りがこの委員会で何度も行われておりますが、私の記憶では、他国の中央銀行も同様の目標を掲げているのでそれが根拠ですというような答弁に終始していたような気がしたんですけれども、今日お伺いすると、若干その根拠めいたことを幾つかおっしゃったので、もう一度ちょっとお伺いしたいんですが、二%目標を我が国の今の経済状況の中で掲げていらっしゃるその理論的あるいは合理的根拠というのは何なんでしょうか。
#44
○参考人(黒田東彦君) これは、従来から同じことを申し上げていたと思うんですけれども、消費者物価指数というものが消費者物価の実際の動きよりも高めに出てくるという癖があるということで、それを考慮しないで、例えば消費者物価指数の動きをゼロというのを目標にしてしまうと、実際は消費者物価自体はマイナスで、デフレに陥っているという可能性がありますので、その点を考慮しないといけないということと、さらに、一定のその、まあ、のり代というのもちょっとやや俗な言葉ですけど、一定の余地を残しておかないと、すぐに実際の物価上昇率がマイナスに陥ってしまうというおそれがありますので、そういったことを踏まえて、二%という物価安定の目標を、各国もそうですし、我が国も設定しているわけであります。
 その上で、現在、日米欧の、あるいは主要国の中央銀行がほとんど全て二%の消費者物価上昇率というものを物価安定の目標に掲げてやっておられるということは、結果的に、中長期的に見て、主要国間の通貨の交換レートである為替レートも安定的に推移する、機能し、そのように機能しているというふうにこの三つのポイントを御説明しているわけでございます。
#45
○大塚耕平君 その二%を意地でも達成するということでいろいろ御努力をされておられるわけですが、そのために国会にもいろんな御説明をしてくださっているわけでありますが、ちょっと今までと今日の総裁の雰囲気と違うなと感じているのは私だけなのか、ほかの皆さんもどうお感じになっているのか。割と今までは自信満々にお答えになっていたような気がするんですが、今日は少し、随分お静かにお答えいただいていて、在任中の二%達成がなかなか厳しくなってきたという御認識をお持ちなのかなということも感じながら聞かせていただいたんですが、在任中の二%達成は、現時点では引き続き目標にしておられるということでしょうか。
#46
○参考人(黒田東彦君) 在任中云々ということと関係なく、二%の物価安定目標をできるだけ早期に達成するということは、たしか二〇一三年の一月に決定会合において決定し、さらに政府と日本銀行の共同声明にも盛り込まれているわけでありまして、その点は引き続き最大限の努力を払ってまいりたいというふうに思っております。
 現時点ではっきりしているのは、展望レポートその他でも示しておりますように、二〇二一年度の政策委員の見通しの中央値が一・五%であるということでありまして、先ほど申し上げたように、月々のデータは示しておりませんので、絶対に二〇二一年度中に二%に達しないというふうに言い切れるわけではありませんが、二〇二一年度で一・五%という数字は、恐らく二〇二一年度中に二%に達する可能性は極めて薄いということだというふうに感じております。
#47
○大塚耕平君 そうすると、この七年間この委員会でどういうやり取りが行われてきたかというと、例えば、さっき御覧いただいたグラフのあの反対側にはマネタリーベースの対名目GDP比と日本銀行の総資産の対名目GDP比がありまして、これはこの委員会の御了解を得て、たしか四、五年前から皆さんにも配付をさせていただいている資料であります。
 これ御覧いただくと、マネタリーベースの対名目GDP比は、総裁が御就任になったときには二九%だったのが、直近データはまた過去最高を更新して九四%。日本銀行の総資産対名目GDP比も、御就任のときには三三%であったのが、今また過去最高の一〇三%になっているということなんですね。
 だから、今のお話ですと、二〇二一年度でも消費者物価上昇率の予想中央値は一・五、二にはまだ届かないわけですから、そういう中で、どういうふうにこれから対応していきますかというやり取りをここでさせていただくと、次のようにおっしゃっていて、また、日本銀行における記者会見でも同じようなことをおっしゃって記事になっていたこともありますが、金融緩和の深掘りは幾らでもできる、金融緩和の手段は無尽蔵にあると。さらに、この委員会では、私が、このマネタリーベースの対名目GDP比あるいは総資産の対名目GDP比について上限はお考えになっておられますかと聞きましたら、上限はないと、青天井だということをおっしゃっているんですが、そのお考えに、今るる申し上げました、深掘りに限界はない、手段は無尽蔵にある、この対名目GDP比に上限はないというお考えに変わりはありませんか。
#48
○参考人(黒田東彦君) マイナス金利の深掘りに限界がないとかその手段は無尽蔵だというふうに申し上げたことはありません。申し上げているのは、現在のマイナス〇・一%の政策金利を更に深掘りすることは可能かと、あり得るかということに対して、それは可能であり、あり得ると。
 欧州では、ECBが最近マイナス金利を更に深掘りしてマイナス〇・五%にしているわけですし、スイスなども非常に大きく深掘りをしているということもあります。もちろん、日本と欧州の銀行の状況というのは違いますので一概には言えませんけれども、私自身、それから私どものスタッフや政策・審議委員も含めて、マイナス〇・一%が限度でこれ以上深掘りできないというふうに考えておられる人はほとんどいないと思います。
 それから、金融政策の手段につきましても、この政策金利だけでなく、長期金利の操作目標であれ、あるいは資産買入れのプログラムであれ、マネタリーベースの増加ペースの加速であれ、様々な金融政策の余地がまだ残っているということは申し上げられると思います。
 ただ、そういった上で、当然のことながら、実際に追加的な金融緩和措置をとるという場合には、その効果と副作用というか、ベネフィットとコストを十分比較考量して最適な組合せの政策を取るということであろうと思います。
 それから、日本銀行の国債の買入れの限度につきましては、現在五〇%ぐらい買い入れているわけですが、まだ市場には国債がありますし、今の時点で、何か、どこかの手前で、ここまでしか買い入れられないということは考えておりません。
#49
○大塚耕平君 いや、今の御答弁お伺いして、私は、ちょっと、じゃ、これまでの認識を少し改めたいと思います。
 総裁が今日御答弁になられた内容を今後はベースにして私もいろいろ議論をさせていただきたいと思いますが、今までは、私だけではないと思います、恐らく、深掘りに限界はない、手段は無尽蔵にある、そして、先ほど御覧いただいたあの赤い線のグラフですね、あの伸び方についても、限界はないという御認識をここでおっしゃっていたというふうに捉えている人はほかにも、マーケット関係者の中にもいると思いますので、一定の限界が存在するという、ないしは、その一定というのはどこかというのは明示は多分おできにならないと思うんですが、何がしかの限界があるかもしれないという御認識はお持ちなんだなというふうに少し捉え方を私も修正をさせていただきたいと思います。
 その上で、先ほど、熊谷さんがETFの購入についてお聞きになったんですが、例えばETFは、二〇一三年度末で市場残高の四八%を日銀が持っていた。二〇一三年度末なので、総裁が御就任されてちょうど一年後ぐらいですね。だから、恐らく御就任のときにはもうちょっと低かったと思うんです、三〇とかそういう数字だったと思うんですが、二〇一八年度末、今年の三月は既に七八%、ETFの残高の。
 それから、長期国債については、今、国債についてはまだ買う余力があるというふうにおっしゃったんですが、それはまあそうです。でも、その余力というのは、日銀が既に約五〇%、今年の三月末で四六・二%、市場残高のうち、持っているわけですね。これ、二〇一三年度末は一八・六%。恐らく、総裁が御就任されたその一年前はもうちょっと低かったと思うんですよ。だから、五〇%既に持っている、残り五〇%あるからまだ買えるというのは、そうとも表現できますが、もう、ちょっとそろそろ無理なんじゃないんですかという気が私はしております。
 その上で、ちょっといきなり話が変わるようですが、まず、大雨等で被害に遭われた被災地の皆さんには改めてお見舞いを申し上げるんですが、なぜこういうことを申し上げるかというと、例えばトランプ大統領は、地球温暖化はうそだと、パリ協定も離脱するという、こういうことで、論争にもまだなっていますけれども、しかし、地球温暖化が理論的にうそか本当かは別にして、現に平均気温が上がってきていることによって、やっぱり現象面としては、そのことによって世界各地で大雨が降ったり洪水が起きたり、そうなるわけです。
 同様の文脈で考えると、さっき御覧いただいたグラフとか、このマネタリーベース対名目GDP比のこの数字とか、再三ここで総裁にお伺いしたり、私だけじゃないです、いろんな方が、大丈夫かというふうに聞くと、大丈夫ですと。中には、現に起きていないから大丈夫だという御主張の方もいらっしゃったんですが、ただ、今の地球温暖化が本当かうそかは別にして、平均気温が上がれば当然何かが起きるということと同様に、これらの指標が現にこういうふうに上がってきているということは、何も起きないかもしれないけれど、何か起きる確率は確実に高まっているというふうに理解を私はしておりますので、だから、金融緩和の深掘りに限界はない、手段は無尽蔵だ、対GDP比に上限はないというように聞こえていたので大変心配をしていたんですが、一定の認識は総裁と共有できたと思いますけれども。
 そうすると、今日御通告申し上げている質問の四番目ですけれども、利下げ及び金融緩和の余地について現時点での御認識はいかがかということをもう一度お伺いしたいと思います。
#50
○参考人(黒田東彦君) 先ほど来申し上げておりますとおり、いろいろな追加緩和の手段というものはあり得るというふうに考えておりまして、政策金利の引下げであるとか長期金利の目標の引下げであるとか、さらには資産買入れプログラムの拡充、マネタリーベース増加ペースの加速といったこと、それらの組合せ、あるいは改良された形というものもいろいろあり得ると思っております。その上で、従来から申し上げているとおり、マイナス〇・一%の政策金利について、まだ深掘りの余地は十分あるというふうに思っております。
 ただ、もちろん、無制限に幾らでもできるとか、あるいはその手段が無尽蔵にあるというようなことは申し上げておりません。当然、そういった手段を援用する場合には、そのベネフィットだけではなく、コストもよく勘案して、比較考量して最適な政策手段を決めていくということであると思います。
 なお、ETFにつきましては、随時そのマーケットの株式を組み入れてETFが組成されますので、ETFの中でどれだけ日銀が保有しているかというのはそれほど重要な指標でないと思っておりまして、あくまでも、やはりマーケット全体のベースでいいますと五%程度であるということで、マーケットの機能に何か影響を与えているということではないと思っております。
 また、国債につきましては、確かに五〇%買い入れているわけですが、まだ市場には十分な国債がありますので、国債を買い入れることがもうこれ以上できないとかそういうことはないと思いますし、現時点で、御承知のように、イールドカーブコントロールの下で実際の国債買入れ額は年間二十兆円程度になっているということも申し上げておきたいと思います。
#51
○大塚耕平君 もう一枚今日資料をお配りしているんですが、これは直近の展望レポートの三十一ページから三十二ページにかけてなんですが、今日、随分私は、私の個人的受け止め方ですけど、私自身のこれまでの過去数年間の質疑の中においては、大分総裁と話がかみ合って有り難い質疑ができているなと思うんですが、あわせて、前回質疑させていただいたときに、この半期報告のときに、金融機関の経営に対する影響についてもやっぱり触れるべきでしょうと申し上げていたところ、これについてもちゃんと加筆をされるようになって、少しずつ建設的な方向に進んでいると思うんですが。
 もう一個、最後に、今日は、あと数分間ありますが、この展望レポート、今お配りしたこのページが政策決定会合やここでの半期報告のベースになっている非常に重要な部分なんですけれども、例えば三十二ページの方を見ていただくと、左側の列の真ん中辺りに、「その後も、需給ギャップがプラスの状態を続けることに加え、企業の賃金・価格設定スタンスが積極化し、家計の値上げ許容度が高まっていけば、」と、こういうふうに書いてあるんですね。こういう認識が全ての説明のベースになっているんですよ。
 総裁にお伺いしたいんですが、ここに書いてある「需給ギャップがプラスの状態を続けること」、そして、後段に行くと「いけば、」と書いてありますが、これは日銀の予想なんですか、それとも期待なんですか。
#52
○参考人(黒田東彦君) これは予想でもあり期待でもあると思いますけれども、いずれにいたしましても、中長期的な予想物価上昇率の形成につきましては日本国内でも国際的にも様々な議論が行われておりまして、いわゆるフォワードルッキングな形で予想が形成されるという部分と、アダプティブというか、実際の物価上昇の程度に応じてその予想が形成されるという両面があるということはよく言われているわけですが、従来から我が国の場合は、フォワードルッキングな期待形成もあるけれども、どうしても長くデフレが続いたということによって人々の物価観というものがかなり影響されており、そうした下では、実際の物価上昇率が、例えば原油価格の低下ということによって一時的に下がったときに、どうしても予想物価上昇率もそれに合わせて下がってしまう傾向があるという、そういうアダプティブな面もかなりあるということを指摘しておりますけれども、そういった点をここで述べているということでございます。
#53
○大塚耕平君 もう時間に限りがありますので、最後、私、発言をして、総裁に最後一言だけ御答弁いただいて終わりにしたいと思いますが。
 例えば、今御覧いただいた三十二ページの右側にも、国会での予算委員会の議論でも大変重要な部分で、真ん中辺りに、「実質賃金は、労働生産性の向上に追い付くかたちで、徐々に上昇ペースを高めていくことが想定されている。」。これ、こういう想定されている現象は書いているんですけど、根拠については意外に説明がなくて、その下の「名目賃金の伸びが上記の消費者物価の伸びを上回っていくことを見込んでいる。」、これもその予想なのか期待なのか、予想であれば何を根拠にそういうふうにこの展望レポートの中で言っているのかということについて記述なり説明が十分ではないということをまずこちら側の認識として申し上げた上で、総裁御自身が今、フォワードルッキングな期待形成と適合的な期待形成ということをおっしゃったんですが、これ今日質問の通告をさせていただいていたちょうど内容なんですけど、フォワードルッキングというのは、総裁、私が在職中からそういう言葉は使っていましたが、つまり、日銀が二%を目指す、そしてそれを実現するために政策を行うということを発表するから、みんなが先を見越してそれに付いてくるという意味では、これは分かるんです。
 ところが、適合的な期待形成というのは、この両ページでも出てきますけれども、そうはやってみたけれども結果がそうならなかったらその結果を見て市場はまた予想を変えるので、日銀の思いどおりにならなかったときには、それは実際にそういうことが実現できなかったのでそうならなかったんですという、すごいトートロジーの使い方をしているんです、これ。
 だから、私の認識では、もしFRBやヨーロッパでも適合的な期待形成という言葉を使っているとすれば、それは、過去において実現した現象を見て、それを踏まえて市場が予想を形成するという意味であって、日銀が使っている意味は、日銀が政策を行うけれども、もしそのようにならなかったら、そのようにならなかったことをベースにまた市場の予想が変わっていくという、ちょっと実現できなかったときのための方便として、方便という言葉はやめておきましょう、実現できなかったときの理屈付けに使っているような気がしてしようがありません。
 そこで、最後にお願いで終わりにしますが、適合的期待の用語と概念の使い方について、FRBやECBでどのような使い方をされているかということを整理して御報告をしていただきたいと思いますが、そのことだけお願いをして、終わりにさせていただきます。
#54
○委員長(中西祐介君) 既に時間が過ぎておりますので、簡潔にお答えください。
#55
○参考人(黒田東彦君) はい。
 検討させていただきます。
#56
○大塚耕平君 終わります。
#57
○熊野正士君 公明党の熊野正士です。よろしくお願いをしたいと思います。
 まず、消費税率引上げについて御質問させていただきたいと思います。
 先月、十月から消費税が八%から一〇%へと引上げが行われました。この影響ということで、いわゆるその影響緩和策ということで、政府として、例えば軽減税率であるとか、あるいはキャッシュレスのポイント還元事業、そういったこともやる中で、なるべく駆け込み需要、それから反動減、これ起こらないようにということで取り組んできたわけでございますが、日銀の方でも、経済それから物価情勢の展望の中でこの消費税引上げについての影響について分析をされていると思いますが、まずそこのところをお伺いしたいと思います。
#58
○参考人(黒田東彦君) 十月に実施されました消費税率引上げの影響につきましては、まず、九月までの個人消費に関する各種データを見ますと、今回の消費税率引上げ前の需要増、いわゆる駆け込みは、二〇一四年の引上げ時と比べて小幅なものであったというふうに判断しております。
 次に、税率引上げ後の家計の支出動向については、現時点でその動向を把握できるデータは限られておりますし、また、台風十九号といった自然災害などの影響から実勢が見極めにくくなっております。ただ、現時点で入手可能なスーパーの売上げなどを見ますと、税率引上げ後の需要の反動減は前回の引上げ時と比べれば小さいようでございます。
 もとより、この点については今後公表される各種の経済指標などをしっかりと確認していきたいというふうに考えております。
#59
○熊野正士君 駆け込み需要、そんなに多くなかったという分析のようですが、日銀の方でいただいたこの展望を見させていただきますと、そんなに、確かに駆け込み需要、多くはないようです。また、マスコミ等でもいろいろ調査があって、その二〇一四年の四月のときと比べると、大体三割とか四割ぐらいじゃないかというふうな結果も出ておりますけれども。これで見ますと、ちょっと家電がかなり二〇一四年の四月のときと似ているのではないかなと思ったり、あるいは、この間、自動車工業会の方に伺いましたら、十月のいわゆる車の売上げがかなり落ち込んでいるというふうにお話を伺いました。
 確かに、先ほど総裁もおっしゃいましたように、台風十九号の影響が車の売上げにも影響があったんじゃないかというふうにもおっしゃっていましたけれども、前回、二〇一四年四月に消費税が五パーから八パーに増税されたときも、ゴールデンウイーク明けから夏にかけて消費が冷え込んだわけでございますが、そのとき、何か冷夏、涼しい夏ということで、そういった影響があるんじゃないかということも何かあったようですけれども、結局はやっぱり消費増税の影響が大きかったんではないかなというふうに思います。
 物価安定目標、先ほど来議論になっておりますけれども、二%の達成ができなかった要因の一つに、前回、二〇一四年四月に消費税が引き上げられたことがその要因としてあって、需要の低迷があったんではないかということですが、日銀としてこれから消費増税の影響について注視されていくと思いますけれども、もう一度、総裁の方に、今回の消費増税の影響と、そして今後の見通しについて御答弁をいただければと思います。
#60
○参考人(黒田東彦君) 確かに、政府は、軽減税率であるとか幼児教育無償化などに加えまして、駆け込み反動減というその需要の変動をならすような措置を講じられておりまして、その効果が出ていると思うんですけれども、御指摘のその十月の自動車販売というのは減少しましたけれども、企業からは台風十九号といった自然災害などが相応に影響しているという声が聞かれておりまして、十一月には回復するのではないかというふうな声も聞かれております。
 いずれにいたしましても、今回の消費税率引上げにつきましては、引上げ幅が前回よりも小さい、そして軽減税率、教育無償化などの措置が実施されているということから、その影響の大きさは基本的に前回増税時と比べると小幅なものにとどまるというふうに見ております。
 ただ、消費税率引上げの影響は、御指摘のような様々な他の事象にも影響されて、消費者マインドあるいは物価の動向などによっても変化し得るわけですので、注意して見ていく必要があるというふうに考えております。
 日本銀行としては、こうした点も含めて、個人消費、そして経済全体の状況を引き続き丁寧に点検してまいりたいというふうに考えております。
#61
○熊野正士君 次に、ポリシーミックスについて総裁にお伺いしたいと存じます。
 十一月の五日の日に、名古屋市内だったと思いますけれども、総裁が講演をされて、その後、記者会見を行われたと伺っております。
 そのときに、いろいろと記者とのやり取りの中で総裁がおっしゃいましたが、仮に政府が必要に応じて財政政策を更に活用するということになれば、財政、金融のポリシーミックスという形で、財政政策あるいは金融政策が単独で行われる場合よりも効果が高まるということはそのとおりだと思いますし、政府が必要に応じてそういうことをされた場合には、日本銀行のイールドカーブコントロールの下で非常に財政政策の効果も高まるであろうと思っています、このように発言をされておられます。
 こういった発言をお聞きをして、やはり財政政策というものをうまく組み合わせていくことは必要だというふうに私自身も思ったわけですが、ちょっと総裁に質問なんですけれども、要は、この現在の日本における金融緩和政策の下で、現在、今ので財政政策は効果が高まるという御認識でよろしいでしょうか。
#62
○参考人(黒田東彦君) 確かに、中央銀行が物価安定目標を実現するために金融緩和政策を推進しているという状況の下で政府が必要に応じて財政政策を活用する場合には、こういったことの相乗効果によって景気刺激効果がより強力なものになるというふうに考えております。
 こうした政策の組合せは、いわゆるポリシーミックスと呼ばれておりまして、マクロ経済政策として一般的な考え方ではないかというふうに思います。
#63
○熊野正士君 ありがとうございます。今、総裁から伺いました。
 経済対策について次伺いたいと思うんですけれども、十一月の八日の日に安倍総理の方から経済対策について指示がありました。
 補正予算の議論も進行していると承知しておりますけれども、経済対策について、これは財務省に伺いたいと思いますけれども、総理からは、経済対策として、一つは、災害がございましたのでその災害の復旧復興の加速とそれから国土強靱化の推進ということと、さらには経済下振れリスクに対応した、中小企業などの支援ということだろうと思いますが、そういった経済の下振れリスクに対応した対策支援、さらには東京オリンピック後の経済力の維持向上、そういったこと、三つの柱というふうに伺っております。さらに、中長期に成長していく基盤というものを重点的に構築する、引き続いて国内消費をしっかり下支えするというふうな、そういった考え方だというふうに伺っております。
 今、黒田総裁の方からも、一般論ということではございましたけれども、ポリシーミックスの御答弁もございました。タイミングとしては、私的には、現在、この今のタイミングでしっかり財政出動をしていくのが好機ではないかなというふうに考えるわけであります。中長期の成長基盤を構築するということも、いわゆる潜在成長率というものを向上させていく、そういった取組も必要だというふうに思っておりまして、財務省として、今回の経済対策への対応についての御見解をお願いしたいと思います。
#64
○副大臣(藤川政人君) 先生の質問にお答えをいたします。
 現政権下では、経済再生なくして財政健全化なしとの基本政策の下、三本の矢の取組の一つとして、必要に応じた機動的な財政政策を行っているところであります。
 十一月八日の総理よりの経済対策のお話、今先生がおっしゃっていただいた三点について、災害復旧復興、安心、安全の確保、そして下振れリスクの回避、それに対する重点支援、そして未来への投資とオリパラに対するしっかりとした経済対策、その後を見据えた経済対策に対しての指示がございました。
 そして、その際には、委員御指摘のとおり、現下の低金利状況を生かし、財政投融資の積極的な手法を活用することによって、成長への投資を活性化することとしております。
 経済対策の具体的な内容につきましてはこの指示に基づいて検討することとなりますが、日本が人口減少そして少子高齢化という課題を乗り越えて、しっかりとした生産性を向上した上で力強い成長を実現できるよう、しっかり取り組んでまいりたいと思います。
#65
○熊野正士君 是非よろしくお願いしたいと思います。
 いろんなところでやはりこの日本のいわゆる潜在成長率というものをもっともっと高めていかなければいけないということで、喫緊の災害対応、復旧復興ということと、それから世界経済の動向等を見ながら、下振れリスクということもありますし、先ほど副大臣の方からもお話ございました未来への投資という部分で、しっかりと予算を確保しながら経済対策をしっかりやっていただきたいなというふうに重ねてお願いをしたいと思います。
 次に、金融システムレポートについて伺いたいと思います。
 地方銀行、それから信用金庫といった地方の金融機関、これ、ずっとこの委員会でもその収益力の低下ということが言われているわけでございますけれども、今回、十月の金融システムレポートの中で、収益力の低下であるとかあるいは信用リスクが増大しているといったような記載もございましたが、この辺りのことをまず日銀の方に伺いたいと思います。
#66
○参考人(衛藤公洋君) お答えをいたします。
 今委員御指摘ありましたように、我が国の金融機関の収益力でございますけれども、国内の預金、それから貸出業務を中心といたしまして低下を続けているというふうに認識をしております。
 これには、低金利環境の長期化ということに加えまして、より長い期間で見ますと、人口減少を反映した潜在成長率の低下、あるいはそれに伴う借入需要の趨勢的な低下といった構造要因によるところが大きいのではないかというふうに考えております。特に、地域金融機関においては、国内の預貸業務、預金貸出業務への依存度が高いということもありまして、こうした要因の影響が強く現れているということでございますので、そのように認識しているところでございます。
#67
○熊野正士君 構造的な要因、また低金利の金融政策の下でということだと思いますが、この金融レポートの中に、第五章ですかね、金融機関の収益力という項目がございまして、そこに、大手銀行、そして地方銀行、信用金庫ということで三つに分けてグラフがあるんですけれども、そのグラフを見せていただきますと、いわゆる収益力というのが、これがもう二〇〇六年からのデータなんですが、もうずっと右肩下がりで、もうずっとずっと右肩下がりになっているということで、なかなか収益力の低下に歯止めが掛かっていないのが現状だというふうに思います。
 こういったこともあって、先ほどの信用リスクも増大しているということで、かなり要注意だろうということだと思いますが、この辺で、日銀として金融機関に期待することというか、あるいは日銀としてやれることといいますか、そういったことをちょっと御答弁いただけたらなと思います。
#68
○参考人(黒田東彦君) 先ほど理事から答弁申し上げたとおり、人口減少等の構造要因がかなり収益の下押し圧力となっておりますけれども、これは今後も続くのではないかと思われるわけであります。
 したがいまして、地域金融機関は、地域経済あるいは営業基盤の展望を踏まえた上で、中長期にわたって持続可能な経営を実現するための方針を明確にしていく必要があるというふうに思います。
 具体的には、まず第一に、企業の課題解決や家計の資産形成支援などの金融サービスの提供力を強化していくということ、第二に、これを踏まえたリスクに見合った金利の確保あるいは非資金利益の拡大を図っていくこと、さらには、三番目に、業務プロセスや経費構造の見直しなどを加速させていく必要があるというふうに思います。また、これらの経営効率化の改善を効果的に推進する観点から、金融機関の間の統合、提携、あるいは他業種とのアライアンスも有効な選択肢となり得ると考えております。
 これらは実は既に地域金融機関の一部でそういった動きが見られておりますけれども、今後とも、こうした動きを日本銀行としても、考査、モニタリングあるいはセミナーなどを通じてその取組を後押ししていきたいというふうに考えております。
#69
○熊野正士君 ありがとうございます。
 構造的な要因の中でいろいろとやれる手はあるというふうなお話だったと思います。日銀としては、考査であるとかモニタリングであるとか、あるいはセミナー等でそういったことを、今総裁おっしゃられたような中身のことを発信されているんだろうというふうに思いますが、それを踏まえた上で、金融庁、これ、今まではいわゆる監督する省庁の金融庁から、いわゆる成長させていくんだというふうなことだと思いますが、この構造的に問題がある中で、今総裁の方からお話ございましたけれども、金融庁として、いわゆる特に地方の金融機関に対してどのように収益力を向上させていくのかと、そういったところの取組について御答弁をいただければと思います。
#70
○政府参考人(栗田照久君) 地域金融機関を取り巻く環境は厳しい状況が続いているわけでございますけれども、地域金融機関におかれましては、こうした中でも、例えば地域企業の課題解決などを通じて地域企業の生産性向上を図り地域経済の発展に貢献すると、そういうことを通じまして持続可能なビジネスモデルを自ら構築することが重要であると考えております。
 こうした観点からの金融庁の政策対応といたしましては、持続可能なビジネスモデルの構築に向けた環境整備が重要であるというふうに考えておりまして、そのため、例えば地域商社につきまして地域銀行が一〇〇%まで出資することが可能であることを明確化する監督指針の改正など、業務範囲に関する規制緩和ですとか独占禁止法の特例法など、地域金融機関を取り巻く環境整備などを進めてまいりたいというふうに考えております。
 このうち、独占禁止法の特例法につきましては、本年六月の成長戦略実行計画では、地域銀行の経営統合について、経営統合により生じる余力に応じて地域経済への貢献が見込まれる等の場合に、独占禁止法の適用を除外し、シェアが高くても地域銀行の経営統合を特例的に認めるための法案を次期通常国会に提出するとされているところでございまして、現在、関係省庁において法案提出のための準備を進めているところでございます。
#71
○熊野正士君 ありがとうございます。
 独占禁止法の特例、例外措置ということも言及いただきました。しっかりと、地方の金融機関が地方経済を支えていくわけでございますので、今後ともよろしくお願いを申し上げまして、質疑を終わりたいと思います。
 ありがとうございました。
#72
○浅田均君 日本維新の会、浅田均でございます。
 私は、先般、十月十六日の予算委員会で、黒田総裁に日銀のバランスシートのことについて質問させていただきました。その中で、長期金利が上がると長期国債に含み損が、評価損が出るのではないかという質問をさせていただいたところ、黒田総裁の方から、日銀の長期国債は時価との比較で評価損が出たということで損に計上することはないと御答弁になっております。
 つまり、時価評価をしないと。つまり、償却原価方式決算仕訳を行っているということでございまして、これは、それらの長期国債が満期保有目的の国債であると明言されたのと理解せざるを得ませんが、間違いございませんか。
#73
○参考人(黒田東彦君) 日本銀行では、有価証券の評価方法につきましては、企業の会計原則を尊重しつつ、中央銀行としての財務の特性あるいは保有の実態等を踏まえて適切な方法を採用しているところでございます。
 国債については、過去、一部の例外を除くと、売却を行わず満期保有となっております。こうした国債保有の実態などを踏まえまして、国債の評価については償却原価法を採用しているところでございます。
 なお、こうした扱いは多くの海外主要中央銀行も同様でございます。
#74
○浅田均君 満期保有目的国債であると今御答弁をいただきました。すなわち、満期まで持っていたら額面金額で償還してもらえると。だから、時価評価をしないということでございます。
 ここで問題になりますのが、満期保有目的国債、つまり保有国債は市場には出ないと考えているのであれば、満期償還のときにどうするのかという問題が生じると思うんですが、この点はどのようにお考えでしょうか。
#75
○参考人(黒田東彦君) 日本銀行が保有する国債のうち、満期が到来したものにつきましては、一部は国会での議決を経て借換えのための引受けを行って、残りを現金償還をしていただいているわけです。
 具体的に、例えば二〇一八年度は、償還期限の到来した保有国債五十三兆円程度のうち、二・五兆円は割引短期国債による借換え引受けを行いましたが、残りの五十兆円程度は現金償還を受けております。
#76
○浅田均君 ありがとうございます。
 今、借換えの、借換債の額は少ないということをおっしゃりたかったんだろうと思いますが、今金利が非常に低いので、私が問題にしたいのは、まだ物価、先ほど来議論されておりますけれども、物価目標二%に至っていないと。それでいろいろ、量的緩和、異次元の緩和とかやってこられて、今イールドカーブコントロールというところに至っているということでございまして、その景気上昇局面になりますと、今のように保有国債をまた買ってもらうというか現金化するということは、マーケットに出ていくお金が増えるということでございますので、景気上昇局面において満期になった国債に関しては、借換えの額を増やしていく、あるいは借換えしかないんだと私は思うんですけれども、いかがでしょうか。
#77
○参考人(黒田東彦君) 先ほど申し上げたとおり、日本銀行では、満期が到来した保有国債につきましては、国会での議決を経て、借換えのために引き受けるごく一部を除きまして、全て現金償還を受けております。
 このごく一部の借換えのための引受けというものは、財務省からの要請を受けた場合において、金融調節上特段の支障が生じないことを確認した上で、先ほど申し上げたように、割引短期国債により行っているものでございます。
 したがいまして、先ほど申し上げたように、基本的に現金償還を受けており、今後とも現金償還を受けられるというふうに認識しております。
#78
○浅田均君 景気上昇局面でのお話をさせていただいています。
 景気上昇局面ですと、市場のマネーを回収する必要があるわけですよね。マネーを回収する必要があるときに放出するということになってしまう。だから、借換債を増やさざるを得ないと私は思うんですが、いかがですか。
#79
○参考人(黒田東彦君) 諸外国のFRBとかECBの状況を見ますと、量的緩和を拡大して正常化に移る際には、新たにその国債の保有残高を増やすということはしなかったわけですけれども、それを一定にしていたわけですね、一定期間。それは、現金償還を受けた分、その中央銀行の保有国債がどんどん減っていくということを避けて、現金償還を受けた分を別途市場から国債を買っていたわけです。ただ、それは一定期間だけでありまして、それが終わると、現金償還を受けた分については別途国債を市場から買うということをされなくて、残高はずっと減っていたわけです。
 ただ、その過程の中で、御承知のように、ECBの場合は、この正常化プロセスを止めて、今金融緩和に戻っていますので、長期国債を新たに買い入れて残高を増やしているという状況にありますけれども、基本的には、先ほど申し上げたように、経済が順調に拡大して物価安定の目標を実現する、あるいはできたという状況になれば、当然、金融緩和、正常化していきますので、その段階で、先ほど申し上げたように、現金償還を受けた分について、最初はちょうどそれを打ち消すぐらいの市場からの買入れをやっていましたけれども、それは一定期間で終わって、現金償還を受けた分だけどんどん残高が減っていくという、それは、経済の実態に合わせてそういった形で長期金利も正常化していくということを金融政策当局として容認したというか、それを実現したということだと思います。
#80
○浅田均君 今、ECBのお話をされましたが、FRBなんかは、もう一応市場に引き取ってもらうという方針だったのを、影響が大きいからやめるということになったと承知しております。
 それで、もう一度この点を確認させていただきたいんですけれども、日銀の引受けは禁止だと。ただ、総裁、今、額がごくごく僅かというふうにおっしゃいましたけれども、国会の議決を経た金額の範囲内で借換えを行うことができると、この財政法五条ただし書の適用は妥当であるというふうにお考えでしょうか。
#81
○参考人(黒田東彦君) 繰り返しになりますけれども、日本銀行では、満期が到来した保有国債については、国会での議決を経て、借換えのために引き受けるものを除いて全て現金償還しているわけですが、まず、借換えのために引き受けたのは割引国債、短期国債ですので、一年で翌年には現金償還してもらっていますので、借り換えた部分、満期到来国債のごく一部について借り換えた部分についても、結果的に一年間返済が延びたというだけでございまして、こういった日本銀行によるごく一部の一年間の割引短期国債による借換えというものは、何か国債をずっと永遠に持ち続けるというようなことを意味したものでもありませんし、先ほど来申し上げているように、財務省からの要請に従って、金融政策、金融調節の上で支障のない限り、一部について一年間の割引国債の借換えを国会で認めていただいているということでございます。
#82
○浅田均君 これ、私は調べたんですが、満期保有目的にすると、九〇年代の後半ですよね、その頃は引き受けていた国債というのはほとんどが短期で、それが今物すごく超長期の国債に変わってきているということが一番の状況の変化だと思います。
 だから、総裁は借換えはごく僅かだとおっしゃいますけれども、これから、先ほど来のお話になりますけれども、景気上昇局面になってお金を回収する必要があると、回収する必要があるときにお金を放出するのは矛盾すると。方針、矛盾しますよね。だって、景気上昇局面だったらお金を回収する必要があるわけでしょう。そういうときにまたお金を放出するというのは方針に反すると、だから借換債しかないんではないですかと。しかも、その借換債が九〇年代後半のように短期のものではなしに非常に長期のものであると。しかも、調べますと、今、保有国債四百六十三・五兆円のうち四百五十七・三兆円、九八・七%が固定利付債、利率、クーポンは〇・六四%であるという資料をいただいております。
 だから、九〇年代後半の状況のことを頭に入れてこれからも対応できるというふうに多分総裁はお考えだと思うんですけれども、日銀のバランスシートを見る限りにおいて、その資産の、保有の国債の質が大幅に変わってしまっていると、だからこういうことを申し上げているんですが、いかがでしょうか。
#83
○参考人(黒田東彦君) 先ほど来申し上げているとおり、現金償還を受けるのは政府から現金償還を受けるわけでして、別に現金を市場にばらまいているわけではありません。したがいまして、現金償還を受けること自体はむしろマネタリーベースの減少につながるわけでありまして、金融緩和の正常化になるわけですね。
 ですから、先ほど来申し上げているとおり、FRBやECBは、いきなり、現金償還された、新たな買入れをやめて現金償還される分でそのままやっているとどんどん保有国債が減りマネタリーベースも減少していきますので、そうならないように、経過的に現金償還された分だけ市場から新たに買い入れて残高を一定にし、マネタリーベースの縮小を防いだわけですけれども、本格的な正常化ということになれば、当然バランスシートを縮小し、マネタリーベースの増加を抑制していく、金利を引き上げていくということですので、そこに至ったわけですけれども、そこで、世界経済の状況がやや悪化して減速したということも踏まえて、ECBはそういった正常化プロセスを一旦中止して、むしろもう一回緩和にかじを切り替えたと。
 米国の場合は、量的な方は特別なことをやっていませんが、短期金利について、それまでずっと下げてきたものを引き上げてきたんですが、ずっと引き上げてきたんですが、それをこの三回だけ短期金利を引き下げて緩和方向にまたかじを切り替えたということでありますが、まあ量的な部分の方は特別な変更はなかったということであります。
#84
○委員長(中西祐介君) 時間が過ぎましたので、おまとめください。
#85
○浅田均君 はい。
 満期保有国債なら市場への売却はないということを質問したかったんですけれども、時間になりましたので、また次回、次の機会に質問させていただくということを申し上げまして、終わらせていただきます。
 ありがとうございました、どうも。
#86
○大門実紀史君 大門です。
 今日は、金融政策のマクロ的な意味について取り上げたいと思っておりますけれど、その前に、日銀の物価目標二%についての議論がありました。これは何度も何度もこの委員会で議論がされて、今日も熊谷さんから、改めてなぜ二%かというような質問ありまして、これについてちょっと取り上げさせてもらいたいと思うんですけれど、ずっと同じ答弁を繰り返されているんで聞いておきたいなと思ったわけでございますが。
 要するに、自民党の甘利さんが、税制調査会の会長ですかね、今ね、一日に都内で講演をされまして、報道もされておりますけれども、アベノミクスの物価目標二%の達成は非常に難しいと、物価一%でもデフレ脱却と言っていいんじゃないかというようなことをおっしゃっているんですね。よく言うなと思いますよね。大体、甘利さんは、安倍内閣発足当時から国会でも何度も質問されて、なぜ二%が必要なのかと、で、二%は必ずやれるんだということを度々国会で答弁していた人が、あっさり撤回と。あっさり、もういいんじゃないのと。何なんだと思いますよね。
 麻生大臣も、この委員会で私の質問に対して、日銀は二%にこだわり過ぎじゃないかというような、こういう発言が続いているわけなんですけれど、大体、安倍政権は二%という物価目標はもうどうでもよくなっているんじゃないかというふうに思うんですね、率直に言ってね。もう株も上がったし、期待どおりね。
 ところが、日銀だけがこだわり続けていると。たしか七年前になるんですね、もうそろそろ。共同声明があって、二%掲げて、日銀と政府で共同声明まで出して二%と言ったのに、政府の方だけもう別にいいんじゃないのと言ってやっているわけですよね。
 言いたいことは、だからもう日銀もこだわらないで、何度も申し上げておりますけれど、二%にこだわるから、いこじにこだわるからいろんなことを続けなきゃいけないとなっていると思うんで、二%ということを、もうここまで甘利さんまで言われるような状況だから、もう取り下げて、何度も申し上げているとおり、正常化の道にもう踏み出されるような政治的な環境になっているんじゃないかと思いますが、まずその点、黒田総裁、いかがですか。
#87
○参考人(黒田東彦君) 先ほど来申し上げているような三つのポイントも含めて、二%の物価安定の目標というのは必要であり、今後も必要だというふうに考えておりまして、ちなみに、この二%の物価安定の目標というものは日本銀行の政策委員会が自ら決定したものでありまして、もちろん政府との共同声明に盛り込まれていることは事実でありますけれども、あくまでも物価の安定という日本銀行の使命を果たすためにその実現を目指すことが必要というふうに考えているという点には変わりはございません。
 日本銀行としては、引き続きその使命を果たすために、自らの責任において二%の目標の実現に向けた適切な政策運営を行ってまいりたいというふうに考えております。特に、現在は海外経済の減速の動きが続き、下振れリスクについて引き続き注意が必要な状況にあると思いますので、物価安定の目標に向けたモメンタムが損なわれるおそれが高まることがないか、様々なリスクを注意深く点検してまいりたいというふうに考えております。
#88
○大門実紀史君 世界経済の悪化は取り上げますけど、その対応と二%の目標とは別だと思うんですよね。対応はしなきゃいけないけれども、二%というのは関係ないと。別にそんなの掲げなくたっていいわけですね。そういう黒田総裁の姿勢がいかに家計にもマイナスになってきているかということを今日は取り上げたいというふうに思います。
 おっしゃったように、世界経済は悪化しておりまして、欧米でも各中央銀行が金融緩和を続ける状況になってきております。
 ただ、金融緩和が家計に直接何をもたらすかという点でございますけれども、これも何度か取り上げてきたテーマで、お配りした資料も、この委員会でも大塚耕平さんも使われたと思いますが、よく使われてきた、私も何回か出してきた資料の一番最新版ということでございます。
 低金利政策による家計と企業の損得勘定について示したものでございますが、具体的に言いますと、一九九一年の金利水準が二〇一七年まで続いていたとしたらどうかというような資料でございまして、家計でいえば、利子の受取が増える一方で住宅ローンについては支払が増えますので、その差引きで見ないといけないわけでございますが、二十七年分を年平均でいいますと、下の方の枠にありますけれども、家計部門でいえば、利子の受取が二十六・三兆円増えて支払が九・六兆円増加して、差引き逸失利子所得、つまり、利息が高ければもっと受け取れたであろう利子が年平均で十六・七兆円になるということでございます。企業の方は、受取が十一・一兆で支払が三十五・六兆でございますので、差引きマイナス二十四・五兆、つまり年平均二十四・五兆円支払わないで済んだという意味でございますね。したがって、家計部門から利子の受取が年平均ネットで十六・七兆、二十七年間でいいますと四百五十兆円マイナスになっていて、安倍内閣になってから二〇一七年まででいえば二十四兆円のマイナスになっているというのがこの表で分かるわけでございます。
 これ、何度もこのところは黒田さんに、私も二回目か三回目になりますけど、改めて、この数字は新しいものでございますから、マクロ的に言いますと、家計部門から企業部門に所得移転が行われたというふうに見られるのではないでしょうか。いかがでしょうか。
#89
○参考人(黒田東彦君) 一般論として申し上げますと、確かに金融緩和は資金の貸し手から借り手への所得移転を伴うという性格、性質を持っております。ただ、金融緩和の効果につきましては、経済全体に与える影響を踏まえて評価する必要がございます。実際、金利水準の低下は、設備投資や住宅投資などの経済活動を刺激して雇用・所得環境の改善、資産価格の上昇などを通じて、家計全体にとってもプラスの効果を及ぼしていると考えております。
 日本銀行としては、低金利環境が家計に及ぼす悪影響にも注意を払いつつ、マクロの金融経済情勢の改善を通じてそのメリットが国民全体に広く及ぶよう金融政策運営面から努めてまいりたいと考えております。
#90
○大門実紀史君 全く四年前の質問と同じ、対する、質問と同じ答弁なんですよね。
 随分四年前と変わっているわけでございまして、いろいろおっしゃいますけど、実質賃金上がらないし、消費も停滞から抜け出しておりませんし、予算委員会でもお示ししましたが、一番大事な消費者動向指数も落ち込んでいるというような状況でありまして、いわゆるいろいろ循環して家計部門にもプラスが及ぶというのは、そうなっていないんですよね。だから、企業から家計への所得移転が全然ないとは言いませんけど、低レベルのままだから内部留保が増えているという関係にもなるわけでありますし、もう一つは、その二%目標の関係でいえば、四年前のときは二%が実現すればデフレマインドは払拭をされるんでというようなこともおっしゃっていましたけど、もうその二%も実現していないということでございますので、ちょっと四年前と同じことを言われても困っちゃうんですけれども。
 もう一つ、さらにマイナス金利で見たらどうなるかというのが二枚目の表でございます。これ、みずほ総研が試算をしていて、大変興味深いので示させてもらっておりますけれど、日銀が二〇一六年にマイナス金利を導入した後、これは二〇一八年の第二・四半期までの期間にどういうふうなことが起きたかということなんですが、各経済主体がマイナス金利によってどんな影響を受けたかということなんですけど、その所得移転効果、そういうものを試算したものでございます。
 家計は、要するに、損失が六百十八億円、利益は四百五十八億円、差引き百六十億円の損失と。金融機関以外の企業は差引き四千四百二十三億円の利益が出ていると。政府は六千百九十一億の利益になっていると。預金取扱機関、金融機関は大変な時代になっておりまして、マイナス七千五百八十七億と、こうなっているわけでございます。
 この資料を見て、改めて黒田総裁、どういうふうに捉えられますか。
#91
○参考人(黒田東彦君) 先ほど申し上げたとおり、金融緩和の効果については、金利低下に伴う直接的な経済主体間の所得移転という点に限定するのではなく、経済全体として国民所得の増加を実現するという幅広い観点から確認する必要があるというふうに考えております。
 こうした観点から見た場合、現在の長短金利操作付き量的・質的金融緩和の枠組みは、名目金利から予想物価上昇率を差し引いた実質金利を引き下げることを通じて経済活動の改善に大きく寄与しております。実際、家計部門につきましても、失業率は大幅に低下し雇用者数が着実に増加する下で、雇用者所得も緩やかに増加しております。
 このように、現在の金融緩和は家計部門の所得増加にも貢献してきたというふうに考えております。
#92
○大門実紀史君 これ、ネットなんですよね。ネットで具体的にこの利子の受取、支払でいえばマイナスになっていると、このことを申し上げているわけで、循環していろいろあるだろうというようなことを申し上げているわけではないんですね。逆に言えば、家計がプラスになったっていいわけですよね。家計がプラスになったり金融機関もプラスになってもらわな困るわけですよね。そうなっていないということを申し上げているわけで、あれこれの全体的な話に話を広げられると困るんですけどね、金融政策の問題でございますので。
 この数字をどう見るかというのは、みずほ総研の高田創さんが、このタイトルになっておりますけれど、要するに何が起きたかというと、単純化すれば、勝ち組は政府と企業で負け組は金融機関と家計であると、これがマイナス金利政策の利子の受取、支払という世界でいく結果であるという、見たとおり、そのとおりになっているということですね。したがって、もう少し言いますと、家計が政府と企業に所得を吸い上げられる構造になっているということで、高田、みずほ総研の方は、金融機関や家計はステルスタックス、隠れた税金、見えない税金ですね、を掛けられたようなものだということをおっしゃっていて、私もそのとおりだなというふうに思います。企業には逆に言えば補助金を払っていることになると、それが株高につながっているんではないかというのがみずほ総研の高田さんの見方ですけど、もう普通に見ればそう見られるなというようなことになるというふうに思います。
 これは聞いてもまた同じ答弁だと思いますので、もう一つは、ちょっとそもそも論なんですけど、長期にわたる長い間のこの超低金利政策は何をもたらすかという点をよく考えてみなきゃいけないと思うんですね、そもそもですね。総裁おっしゃったように、貸し手から借り手への所得移転を伴う性質をこういうものは持っているというのがございますよね。ただ、一般的なものではなくて、大体、何で低金利が景気対策に役に立つのかというふうにいいますと、それは低金利が、当たり前のことですが、資金を借りやすくして設備投資とか住宅投資を促進する効果があるからと。ただ、それは一般論でありまして、需要がないときに幾ら金利を下げても、設備投資をしようと思っても、世の中不景気で物が売れないときに設備投資しようと思わないから、お金借りないわけですよね。あるいは、幾ら住宅ローンの金利が下がっても、幾ら下がったといっても、毎月払える所得がなければ、あるいは自己資金がためられていなければ、幾ら住宅ローンの金利が低くても住宅ローンを組まないわけですよね。だから、需要といいますかそういうものが、景気が大変大事なわけでありまして、ただ下げれば良くなるとは限らないということが一つありますね。
 もう一つは、これは専門家の方々が指摘されていて面白いなと思ったんですけれど、金利の高低に対する人々のマインドと。そもそも金利というのは高いときがあって低いときがあると。だからこそ、高いときに、金利が低くなれば借りようと、低くですね、借りるなら今だというような、これは専門家に言いますと異時点、異なる時点での代替効果と呼ぶそうなんですけれども、そういうものがあって、金利の高低があるから、つまり金融政策そうですよね、上げたり下げたりして人々に刺激を与えるというのがそうですけれども、ずっと低いと、ずっと低金利だとその異時点の代替効果が表れない、刺激効果が働かないと。急いで借りる必要はない、下がったわけでもないし上がる見込みもないし、今借りる必要ないということで、低金利政策というものがそもそも経済に与える影響から考えて、こんなに長期に低金利状態が続くということそのものが、この今大きな、何というんですかね、ジレンマといいますかね、はまり込んでいるんじゃないかというふうに思うわけです。
 こういうときに何が起きるかというと、いわゆる経済効果的なものが表れないで、単に、単に資金の余ったところから資金の不足しているところにお金が動く、所得が移転されるというふうなことが起きているんではないかというのが、これも専門家の方々も指摘しておりますけれど、つまり、マクロでいえば、日本の場合でしたら、金融資産を有する家計から国債を発行している政府に所得移転が生じるということが起きているんではないかということですね。もっと分かりやすく言えば、国民から政府が資金を吸収していると。
 ですから、先ほど、この高田さんも言われていましたけど、低金利は、長期化すればするほど実際の経済効果は余り表れないで、資金の移動、所得の移転だけが行われると。国民から政府に移転が行われるので、これは隠れた税金と同じだと、ステルスタックスだというようなことも指摘されるぐらい異常な事態になっているんではないかというふうに思うわけでございます。
 そういうふうに見た方が、先ほどいろいろおっしゃいましたけど、ほとんどそんな効果表れていないと思うんですけど、表れないで、今日申し上げたような利子所得の問題とか家計部門から企業部門、政府部門にの移転ということが説明付くんじゃないかと、逆にですね、そういう事態が今、主なことが起きていると。
 つまり、日銀の異次元金融緩和は、マイナス金利も含めてですけど、最大の副作用は家計所得を奪っているということに私はあるんじゃないかと思いますが、いかがですか、そういう指摘に対して。
#93
○参考人(黒田東彦君) 二〇一四年の四月から量的・質的金融緩和を導入して、現時点では長短金利操作付きの量的・質的金融緩和ということになっておるわけでございます。その間、明らかに経済は改善し、失業も減り、雇用も増え、そして雇用者所得も増加しております。したがいまして、何と比較するかということですけれども、こうした量的・質的金融緩和を行わなかった場合と比べて現在の経済状況が大幅に改善しているということは、多くのエコノミストも認められるというふうに思います。
 それから、先ほど来申し上げていますように、金融緩和自体は、資金の出し手から借り手への所得移転を伴うということはいかなる金融緩和においてもそのとおりでありますけれども、そういうことを通じて経済全体が拡大し、雇用者所得も増加しているということは事実であるというふうに思っております。
 失礼しました。二〇一三年の四月に量的・質的金融緩和を導入したということであります。
#94
○大門実紀史君 何といいますかね、そんなに効果が出ているんだったら、こんな消費の落ち込みとか先行き不安がこんな広がっていることはないと思うんですよね。だから、やっぱりこういう数字をもっと謙虚に受け止められるべきではないかと。家計の所得がこれだけ減っているということは何なんだろうと、金融はどうなっているんだろうというふうに、謙虚にやっぱり見られるべきだなと思うんですけれどね。
 もう一つ、三枚目の資料なんですけれども、これは、先ほど申し上げた、名前が出たみずほ総研の高田創さんが参議院の国民生活・経済に関する調査会に参考人として来られたときに配付された資料であって、大変興味深いので御紹介している、配付をしたんですけれども、要するに、何を言っているかというと、上の方は、簡単に言いますと、金融緩和、この流れが結局資産格差の拡大につながったプロセスを描いておられて、これについていろいろ述べておられるんですね、調査会では。是非、議事録面白いんで見てもらえればと思いますけれど。
 下の方のグラフですね、そういう金融緩和、金融資産拡張がもたらした格差ということでタイトルになっておりますけれども、要するに、棒グラフは世界の金融資産の総額の推移ですね。株式等々を合わせたものがどんどんどんどん膨らんできていると。折れ線グラフの方は世界のGDPと金融資産の比率です。つまり、実体経済と金融資産との比較でありまして、簡単に言いますと、金融資産と実体経済の比率というのは、七〇年代、八〇年代までは大体一対一、一〇〇%ぐらいですから一対一だったんですけれど、今や三〇〇%。つまり、実体経済の三倍も金融は膨張していると。ここに格差の原因があるということを調査会で述べておられるわけでございます。
 実はこれ、国際決済銀行、BISもこういう指摘をしておりまして、二〇一六年にBISが発表した富の分配格差と金融政策というのがありますが、これもこういう、結論から言いますと、金融の膨張の中で、株価の上昇を通じて資産格差の拡大を促したということを、各国の例を引きながら国際決済銀行も指摘しているところでございます。
 こういう、家計部門から企業部門にだけではなくて、格差の拡大も進んでいるということなんですけれど、そこで、ちょっと私、この間、気になるのは、アメリカとヨーロッパの中央銀行は、一遍リーマン・ショックの後、量的緩和やって、それからまたそれを脱却して利上げをやろうとして、また景気悪くなって利下げをやると。また量的緩和、つまり資産の買入れもやろうというふうに揺れ動いてきていますよね。
 世界経済の悪化といいますけれども、米中貿易戦争ですけどね、具体的には、それが量的緩和やったら金融で何か何とかなるのかなというふうにちょっと思うところがあるんですけれどね。要するに、FRBも短期債の購入を続けるということを発表しましたし、欧州の中央銀行、ECBも、資産購入、二百億ユーロですかね、毎月、の購入を発表いたしました。つまり、量的緩和、資産の買入れの方にまた戻ってきたといいますか、やるわけなんですけど、これは、私、景気の悪化を懸念というけれども、そうではないんじゃないかと思うんですよね。
 一旦、何度もこの委員会で日銀に対して厳しく申し上げましたけど、金利政策ではなくて、この資産の買入れ、量的緩和をやり始めますとなかなか抜けられませんよと、なぜならば抜けるときに債券の価格や株が値下がりするから抜けないでくれという市場の圧力が掛かるから、一旦資産の買入れ、量的緩和に踏み込むとなかなか抜けられませんよということを指摘させてもらってきましたけど、今、FRBもECBもその金融圧力といいますか、今そうはいっても株価すごいですよね。高止まりですよね。これが下がらないように下がらないように金融で支えてくれというようなことが実は主要な圧力であって、FRBもECBも一旦金利引上げとか正常化の方向に動いたのが、また同じことをやらざるを得ないと。
 これはやっぱり、日本がもうそうなっていますけど、資産買入れに走りますとこういうことになってなかなかやめられないと、一旦踏み込むとということを表しているんじゃないかと私は見ているわけでございまして、だから、引き続き金融緩和をやれ、マネーを入れろ、買い支えろ、売ると下がるからやめろというようなことがわあっとあって、実はそうなっているような気がするんでございます。だから、量的緩和にはまり込むと、一遍はまり込むと、もうわなにはまるようにそれを続けなきゃいけないようなところに、実は、世界経済の悪化とかいろんなことを言いながら、結局、FRBもECBもそんなところにはまり込んでいるのではないかというふうに思うわけですけれども。
 黒田さんにお聞きしたいと思います。そのとおりとはおっしゃらないと思いますけど、相当そんなことが、日銀と同じようなことが広がっているんじゃないかと思うんですが、いかがですか。
#95
○参考人(黒田東彦君) ほかの国の金融政策についていろいろコメントするのは若干気が引けるわけですけれども、まず、FRBの方は、いわゆる量的緩和を再開したわけではありません。御指摘の短期のものを買ってそのリクイディティーを市場に供給しようというのは、数か月前にありましたレポ金利が急騰して二桁になったということに対応する措置でありまして、長期債を購入してやる量的緩和、量的・質的緩和というものを再開したわけではないということであると思います。
 ただ、金利をずっと上げてきたのを中断して三回金利を下げたということの意味では、金融緩和を再開したことは事実ですけど、それはあくまでも世界経済の下方リスクが高まったということと、現に世界経済自体は減速したわけですけれども、それと通商政策をめぐる不確実性というものに対応して、一種の保険として三回金利を下げたということだと思います。
 ECBの場合は、実際にユーロ圏の経済自体がかなり減速して、御承知のように、ドイツ経済のごときは四―六はマイナス成長、七―九もプラス〇・一%成長ということで、経済の実態が相当悪化したということで、本格的に正常化を止めて、むしろ金融緩和に、量的なものも含めて金融緩和を始めたということであるというふうに思います。
#96
○大門実紀史君 終わります。
    ─────────────
#97
○委員長(中西祐介君) この際、委員の異動について御報告をいたします。
 本日、浅田均君が委員を辞任され、その補欠として音喜多駿君が選任をされました。
    ─────────────
#98
○委員長(中西祐介君) 質疑を続けます。
#99
○渡辺喜美君 国会は年がら年中株主総会をやっているようなところでございますので、半期報告、諦めてしばらくお付き合いをいただきたいと思います。
 中国で、余り話題になりませんけど、今起きているポークショックというのがあるんですね。豚肉ショックですよ。中華料理には豚肉が欠かせない。パーコー、酢豚、ホイコーロー、チンジャオロースー。アフリカ豚コレラの影響で、豚肉価格が一〇〇%以上になっていると、食料CPIが何と一五%ぐらいになっておると。FTの電子版によりますと、中国の十一月分のCPIは予想の三・三%を上回り、来年春節の頃には六%に達する予想が真実味を帯びていると報じております。日本もこの間、豚コレラのワクチンを打つようになったわけでありますが、アフリカ豚コレラが入ってくると、これ、今の騒ぎではないですね。もう既に中国でそういうことが起きている。
 一方において、中国は大変な経済減速ですよ。IMFは六・三%の予想から六・一、六・〇、そして直近では何と五・八と、中国のGDPの予想以上の景気減速が起きているということでありますが、総裁はどう評価されるでしょうか。
#100
○参考人(黒田東彦君) これもよその国のことではありますが、御承知のように、中国は日本の輸出産業にとって最大のマーケットでありますので、中国経済の動向というのは我々も常に注視しております。
 御指摘のように、IMFの経済見通しも切り下げられまして、たしか二〇一九年は六%で、二〇二〇年が五・八%という、六%を割るという見通しになっていると思います。
 その意味で、中国の経済が減速していることは事実ですけれども、他方で、中国政府自体、財政、金融で緩和的な政策を打ち出しておりまして、その効果がいずれ発現してくるというふうに思っておりますが、財政政策につきましては、かつてのような公共事業を大拡張するというよりも、減税のようなことを通じて個人の消費を刺激するという形になっていることもあって、財政政策の効果の発現が少し遅れぎみになっているということはあると思いますが、いずれ、やはり六%程度の成長というものは中国経済の現状として続けられるとは思っておりますが、長い目で見ると既に生産年齢人口は減少に転じていますので、それから、先進国との間の技術のギャップというものも縮んでいますので、長い目で見れば、十年、十五年、二十年という目で見れば、六%成長じゃなくて、五%、四%台というふうにだんだん減速していくとは思うんです。ただ、現状、ここ数年、六%程度の成長は政策対応もあって実現できるのではないかというふうに見ております。
#101
○渡辺喜美君 これは日本経済にも大変な影響、累が及ぶ可能性がありますので、お聞きをしているわけであります。
 お手元に配ってあります中国の債務残高の推移、二枚目ですかね、こういうグラフ、いつも使っておる図でありますけれども、これが日本の、大体、九四年、九五年、ピーク時ですね、金融パニックが起きる直前、その水準にまで中国の企業債務、家計の債務両方合わせたものが迫ってきていると。企業の中には当然、中国ですから、国営企業みたいなものも含まれるわけであります。
 最近よく、中国企業の錬金術と言われるドル社債の償還が困難になったなんというニュースがちらほら聞かれるようになってきております。かなり高金利のドル建て社債の償還が困難になると。中国は膨大な外貨準備持っているはずなんですけれども、ドルが不足する、こういう事態になりますと、これはちょっとショックの度合いがのっぴきならないところに陥る可能性があるんですね。
 この中国の企業債務、家計の債務、日本も経験済みのことでありますから、日本の教訓でいきますと、どれくらい穴が空いているんだという問題ですよ。産業サイドから見れば過剰債務、金融サイドから見れば不良債権ということになるわけでして、日本の教訓でいきますと、こういう過剰債務、不良債権がありますと、経済それ自体が非常に足が遅くなるんですね。鈍くなる。取引相手に過剰債務企業がいると、もう取引するのはやめようということになっていくわけでありまして、最終的にこの問題は、流動性、リクイディティーの問題ではなくて、本質的には支払能力、ソルベンシーの問題になっていくわけであります。
 日本もそうだったんですけれども、大手術が必要になった。日本の失敗の教訓は、小出し小出しにやっちまったと。兵力の逐次投入というやつですね。一気呵成にやらなかった。そこで、日本が失われた二十年、失われた三十年の世界になってしまったのは御案内のとおりであります。
 こういう非常に厄介な、中国、構造問題を抱えておりますが、どのような御所見をお持ちでしょうか。
#102
○参考人(黒田東彦君) 確かに、BISの推計によりますと、中国の政府債務は低水準でとどまっているわけですが、企業債務が国有企業を中心に大幅に増加したということで、GDP比で一五〇%になっている。それに、このグラフでもありますように、家計債務も加えますとGDP比で二〇〇%程度という極めて高い水準になっております。
 ただ、こうした高水準の債務に対しまして、近年、中国当局、人民銀行及び金融監督当局その他ですね、政府の全体としてその抑制に向けた各種の政策を実施しておりまして、このグラフにもありますように、足下では債務の拡大に歯止めが掛かっているわけであります。
 ただ、御指摘のような、一部の企業の破綻であるとか、それから、地方の銀行ですけれども、銀行の破綻が起こって、その処理を政府、中央銀行で行っているということも起こっておりまして、確かに、不良債権の問題、御指摘のこの過剰債務というか、そういう問題というのは解決されたわけではまだないと思いますが、足下で、先ほど申し上げたように債務の増加もストップしている、さらには、金融機関の不良債権処理もある程度進んで不良債権比率も増加していないということでありますので、今の時点で何か、クライシスというか、爆発的な債務不履行による金融システムとか経済全体の機能不全が起こるというふうには見ておりませんが、ただ、御指摘のその外貨債務の問題とか、全体でなくても部分的なところでいろいろな障害が起こると影響が出るおそれがありますので、中国当局はもちろんよく承知しており、十分チェックしているようでありますけれども、我々としてもよく点検をするというか状況を注視していきたいというふうに考えております。
#103
○渡辺喜美君 ユーラシア・グループのイアン・ブレマー氏が政治リスクが経済リスクを呼び起こす時代になったということを言い始めてもう久しいのでありますが、リスクというのは、御案内のように、計測可能な不確実性のことをいうんですね。不確実性が計測できるうちはいいんですよ。ところが、計測不能な不確実性が出てきたときが一番厄介なんですね。これはもうリーマン・ショックのときがまさにそうでした。計測不能の不確実性に世の中全体が包まれちゃったものですから、不安の連鎖反応が広まってああいう事態を招いたわけですね。
 中国の問題見ていて、さっき申し上げたポークショックなんというのは、逆に習近平主席にとってはメンツを保つ、米中交渉のですね、譲歩をしたんじゃないよ、こういう緊急事態だからアメリカの農産物を輸入するんだよというメンツを保つのには良かったのかもしれない。しかし、あの香港の事態見ていると、どうもこの二、三日、もうかなりきな臭くなってきておりますけれども、アメリカでは御案内のとおり香港関連の立法がなされる、一方においてデモ、自由化運動が収まる気配がないというわけで、これが天安門事件化する可能性は捨て切れないわけですね。
 そういったことがきっかけになって真の不確実性というものが出てきやせぬかということを私などは心配をしておるわけでありますが、いかがでしょうか。
#104
○参考人(黒田東彦君) これはなかなかお答えしにくい御質問だと思いますが、中国経済が減速してきたということは事実でありまして、その影響は東アジア、東南アジア全域に及んでいるわけですけれども、その影響も、みんなひとしく影響されているわけではなくて、例えば、御案内のとおり、韓国、香港、シンガポールはマイナス成長に陥っているわけですが、韓国、シンガポールは恐らく対中輸出というもののシェアが非常に大きいというところで、中国の資本財とかIT部材に対する需要が減って急激に輸出が落ちて、成長率にマイナスになったと。香港の場合は、御指摘の、もう半年近くになるデモが観光客それから様々な小売の売上げに大きな影響を与えてマイナス成長になっているということだと思いますが。
 他方で、ベトナムはもう絶好調でありまして、これは中国からの輸出が代替されているからかもしれないんですが、しかし非常に順調に成長している。さらには、フィリピンは七%程度の成長をしておりまして、実はアジアで最も成長していると。インドが七、八%の成長をずっと続けてきたんですが、足下ちょっと五%台ぐらいに減速していますので、アジアで一番成長している国じゃないかというぐらいになっている。
 ですから、東アジア、東南アジア全体を取ってもなかなか一筋縄でいかないいろいろな状況があるということをまず御指摘したいと思います。
 それから、様々な不確実性の中で、リスクであればヘッジできるわけですけれども、昔たしかフランク・ナイトという学者が言っていた、確率分布の分からない完全な不確実性、アンサートンティーについては、普通の意味でのヘッジができないと。それは非常に大きなショックを与えるおそれがあるということはそのとおりだと思うんですけれども、バイ・デフィニションですね、よく分からないということでありまして、今から何かそういうことが起こるだろうというか、起こる可能性があるということで過度に警戒するのもいかがかと思いますが、他方で、何かあったときに対応できるような姿勢というか、用意はちょっと言い過ぎだと思いますけど、そういう心構えというか気構えというか、そういうものは必要であろうと思います。
 いずれにせよ、中国経済の動向は日本経済にとっても大きな影響を与えますので、引き続き十分注意して見ていきたいと思います。
#105
○渡辺喜美君 お手元の資料の三枚目に、先ほど来御議論のありますデジタル人民元のペーパーを付けております。この左下ですか、左下の二重構造のイメージというところが分かりやすいポンチ絵になっておりますけれども、人民銀行、PBOCというのは人民銀行ですね、人民銀行が市中の銀行、四大銀行とか、それからアリババとかテンセントとか、そういったところにこのデジタル人民元を流すと。一帯一路というのは、通貨の側面でいくとデジタル人民元の国際化にもつながると。国内的にはもう完璧な管理社会ですよ。もう既にアリペイのスコアリングモデルで格付け、婚活に利用されているという社会にもうなっているわけでありますから、デジタル人民元が出てまいりますと、ジョージ・オーウェル、「一九八四年」をはるかに超える管理社会が実現をしていくんだろうと思いますね。
 私が、どうも深謀遠慮で中国が考えているのは、先ほど来申し上げている債務問題なんですよ。この債務問題がはじけたときに、今の体制でいきますと、ドルと事実上ある程度ペッグしているわけでありますから、膨大なキャピタルフライトが起きかねない。
 そこで、こういう一帯一路と併せたデジタル人民元というのを考えて、いざというときにこのデジタル人民元でソルベンシーの問題、支払能力の問題を覆い隠しつつ流動性を大量に供給しようと考えているのではないかというのが私の推測なんですが、いかがでしょうか。
#106
○参考人(黒田東彦君) 先ほど来申し上げておるとおり、中国で現金に代わるデジタル通貨の発行が検討されているということはよく承知しております。易綱総裁にせよ、担当局長などが記者会見等でいろいろなことを述べておられます。
 ただ、現時点では必ずしも詳細が明らかではないわけですけれども、人民元について、その人民銀行の関係者の多くが語っておられるところによると、御指摘のように、人民銀行が民間の決済事業者、つまり銀行であるとか、先ほど言われたような送金、決済業者向けにデジタル通貨を発行して、民間決済業者はそれ自体がそれをバックにしてリテール向けのデジタル通貨を発行すると、二段階を考えておられるようですけれども、そういうふうにした場合に、人民銀行がその民間決済業者向けに発行するデジタル通貨については、確かにいろいろな動きをフォローすることはできると思いますが、それは、今でも先進国の中央銀行は銀行等の決済業者に対して資金を供給したりあるいは預金を受け入れたりしていますのでその動きは分かっているわけですが、問題はそのリテール向けのデジタル通貨を発行する民間の決済業者のデータを政府が持っているかどうかということなんですが、日本や米国、欧州の場合はそういうものは持っていないわけですけれども、御指摘のように、中国ではあるいはそういうものを把握することができるのかもしれません。
 そういうことになると、あらゆる資金取引、対外的なものも含めて把握できるようになるという点はそのとおりだと思いますが、そういうふうになっているのかどうかまず分からないということと、その一帯一路とか、あるいはキャピタルフライトを避けるためにこれを考えているというふうに言われる方がおられることは事実なんですけれども、必ずしもそういうふうに割り切って言えるとは限らないわけでして、御案内のとおり、中国は巨大で人口も十三億以上あって、人民銀行はもう莫大な数の支店、出張所を設けて現金をくまなく流通させるようにしているわけですけど、物すごいコストが掛かるんですね。偽札もかなり出ているというようなこともあって、人民銀行自体としても何らかのデジタル通貨を将来的に発行するということは、莫大な現金通貨の流通コストを考えると前向きに検討していいと思っていたと思うんですね。
 そういうことがある中で、世の中で、スウェーデンの中央銀行がデジタル通貨の発行を検討しているとか、あるいは民間でリブラみたいな動きが出てくるという中で、やや検討を加速している可能性はあると思うんですけれども、一帯一路の問題とか、過剰債務が解消される過程でキャピタルフライトが起こるんじゃないかとか、そういうことに対応するためにデジタル人民元を今急いで導入しようとしているということまではちょっとうかがえないというふうに思います。
#107
○渡辺喜美君 この問題はまた後日やらせていただきたいと思いますが。
 お手元の法人企業の予想インフレ率というグラフがございます。これは、前回申し上げた安達誠司さんが日銀の販売価格DI、これを基に作られた法人企業の予想インフレ率でありますけれども、これを見ると、もう今年の六月ぐらいから予想インフレ率が下がってきているということが傾向として見て取れるわけでありますが、いかがでしょうか。
#108
○参考人(黒田東彦君) 物価や予想物価上昇率の動向を把握するためには、確かに企業の価格設定スタンスについて見ていくということが非常に重要だと思います。
 御指摘の推計で用いられている短観の販売価格DIにつきましては、確かに、全産業全規模ベースで見ると、このところ上昇超幅が若干縮小していることは事実でありますが、これはもう最近の国際商品市況の下落の影響を受けて素材業種を中心に低下したものではないかというふうに見ております。それに対して、家計消費と関係の深い企業の販売価格DIについては上昇超でずっと推移しておりまして、むしろ緩やかながら改善傾向を続けているという状況でありますので、こういった分析自体はよく分かるわけですけれども、私どもとしては、今申し上げたようなことで、これで何か消費者物価が更に下落する大きな要因になっているというふうには見ておりません。
 ただ、確かに原油価格が下がったことの影響が今になって少しずつ公共事業料金とか何かに出てきていますので、それは足下、若干、消費者物価、生鮮食品を除く消費者物価指数の引下げに寄与する可能性はあるとは思っていますけれども、全体として企業の価格設定スタンスというか価格設定力が何か低下しているという指標とは考えにくいということだと思います。
#109
○渡辺喜美君 安達さんの説が正しいとすれば、これは実質金利が上昇するという意味なんですね。これ、厄介ですよ。実質金利は下がっているという前提ですからね、今の日銀の政策はね。ところが、実質金利が上昇し始めているということになったら、これ、政策変えないと駄目ですよ。
 先ほどから、相変わらず、もう金融政策は限界だとか、もうこれ以上やるなとかいう御意見が多いようでありますけれども、私はまるっきり逆ですね。もうやり方が足りない、量が足りない、マイナスの深掘りが足りない、だからいまだにこんなところをうろちょろしているとしか言いようがありません。
 GDPギャッププラスなのに物価が上がらないのはなぜですか。
#110
○参考人(黒田東彦君) これはいろいろな理屈があろうと思いますが、一つの要素としては、先ほど来申し上げているように、デフレが長く続いて、人々の物価観というのが物価はそれほど上がらないというものになっているということがあって、中長期的な予想物価上昇率がなかなか上がっていかないということがあると思います。
 また、それと関連していますけれども、企業収益は非常に良いわけでして、バブル期を超えているような企業収益の状況ですけれども、その割には労働市場は非常にタイトになって、失業率も二%前半ですけれども、なかなか賃金がそれに見合うほどにはまだ上がっていないということも、やはり企業とか家計の物価観等も影響していると思いますけれども、そこが必ずしも十分上がっていないというところが一つと。
 それから、三つ目としては、このところ企業が設備投資を非常に活発にやっておりまして、それが省力化投資、生産性向上のための投資等を行っておりますので、ある程度賃金が上がってもそれを価格に転嫁しなくても済むという形で、なかなか価格が上がってこないと。
 ただ、これは、こういう形で生産性が上がれば中長期的な成長率も上がりますし、それを踏まえて企業の価格設定スタンスも更に積極化していくと思いますので、経過的な問題だと思いますけれども、今言ったような三つの要素が複合的に絡んでいるのではないかというふうに見ております。
#111
○委員長(中西祐介君) 時間が過ぎておりますので、おまとめください。
#112
○渡辺喜美君 ロスジェネ世代が統計に出てこないんですね。もう失業して、無業者になって、就職活動もやっていない、そういう人たちが全部表に出てこないとなかなかボトム打たないんですよ。だから、マイナス金利の深掘りはもっとやってください。量もたくさんもっと買ってください。国債不足については、これはもう自民党政府の責任において補正予算で大量に発行できるように、副大臣、大臣によろしくお伝えください。
 以上、終わります。
#113
○委員長(中西祐介君) 本件に対する質疑はこの程度にとどめます。
 参考人の皆さん、どうぞ御退席ください。
    ─────────────
#114
○委員長(中西祐介君) 外国為替及び外国貿易法の一部を改正する法律案を議題といたします。
 政府から趣旨説明を聴取いたします。麻生太郎財務大臣。
#115
○国務大臣(麻生太郎君) ただいま議題となりました外国為替及び外国貿易法の一部を改正する法律案につきまして、提案の理由及びその内容を御説明させていただきます。
 外国為替及び外国貿易法は、投資自由を原則としつつ、一定の業種に対する対内直接投資等につきまして、国の安全等の観点から事前届出を求め、審査を行うことといたしております。
 この事前届出制度に関し、日本経済の健全な発展につながる対内直接投資の一層の促進を図る一方、国の安全等を損なうおそれのある投資について、昨今の主要国における対応強化の動向も踏まえ、適切な対応を図る必要があります。このような状況に鑑み、本法律案を提出した次第であります。
 以下、本法律案の内容につきまして御説明申し上げます。
 第一に、一定の基準を守り、国の安全等を損なうおそれがないとみなされる対内直接投資等について、事前届出を免除する制度を新たに設けることといたしております。
 第二に、上場会社の株式取得を行う場合に事前届出が必要となる株式の取得割合を引き下げるとともに、株式取得以降の会社の経営に重要な影響を与える一定の行為を事前届出の対象に追加することといたしております。
 第三に、国内外の行政機関との情報連携を強化する規定を追加することとしております。
 その他、所要の規定の整備を行うことといたしております。
 以上が、この法律案の提案の理由及びその内容であります。
 何とぞ、御審議の上、速やかに御賛同くださいますようよろしくお願いを申し上げます。
#116
○委員長(中西祐介君) 以上で趣旨説明の聴取は終わりました。
 本案に対する質疑は後日に譲ることとし、本日はこれにて散会をいたします。
   午後一時一分散会
ソース: 国立国会図書館
姉妹サイト