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2018/04/11 第196回国会 参議院 参議院会議録情報 第196回国会 国際経済・外交に関する調査会 第4号
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2018/04/11 第196回国会 参議院

参議院会議録情報 第196回国会 国際経済・外交に関する調査会 第4号

#1
第196回国会 国際経済・外交に関する調査会 第4号
平成三十年四月十一日(水曜日)
   午後一時開会
    ─────────────
   委員の異動
 二月二十二日
    辞任         補欠選任
     徳茂 雅之君     尾辻 秀久君
 四月十日
    辞任         補欠選任
     杉尾 秀哉君     古賀 之士君
    ─────────────
  出席者は左のとおり。
    会 長         鴻池 祥肇君
    理 事
                三木  亨君
                宮本 周司君
                吉川ゆうみ君
                大島九州男君
               佐々木さやか君
                武田 良介君
                石井 苗子君
    委 員
                猪口 邦子君
                今井絵理子君
                小野田紀美君
                尾辻 秀久君
                大野 泰正君
                酒井 庸行君
                藤川 政人君
                宮島 喜文君
                小林 正夫君
                古賀 之士君
                鉢呂 吉雄君
                熊野 正士君
                里見 隆治君
                木戸口英司君
                江崎  孝君
                伊波 洋一君
   事務局側
       第一特別調査室
       長        松井 一彦君
   参考人
       東京理科大学教
       授        大庭 三枝君
       千葉大学大学院
       社会科学研究院
       教授       石戸  光君
       政策研究大学院
       大学研究科長・
       教授       増山 幹高君
    ─────────────
  本日の会議に付した案件
○国際経済・外交に関する調査
 (「アジア太平洋における平和の実現、地域協
 力及び日本外交の在り方」のうち、信頼醸成と
 永続的平和の実現に向けた取組と課題(多国間
 協力枠組みの在り方等)について)
    ─────────────
#2
○会長(鴻池祥肇君) ただいまから国際経済・外交に関する調査会を開会いたします。
 委員の異動について御報告いたします。
 昨日までに、徳茂雅之君及び杉尾秀哉君が委員を辞任され、その補欠として尾辻秀久君及び古賀之士君が選任されました。
    ─────────────
#3
○会長(鴻池祥肇君) 国際経済・外交に関する調査を議題といたします。
 本日は、「アジア太平洋における平和の実現、地域協力及び日本外交の在り方」のうち、「信頼醸成と永続的平和の実現に向けた取組と課題」に関し、「多国間協力枠組みの在り方等」について参考人から御意見をお伺いした後、質疑を行います。
 本日は、東京理科大学教授大庭三枝参考人、千葉大学大学院社会科学研究院教授石戸光参考人及び政策研究大学院大学研究科長・教授増山幹高参考人に御出席をいただいております。
 この際、一言御挨拶を申し上げます。
 先生方には、御多忙のところ本調査会に御出席をいただき、誠にありがとうございました。
 先生方から忌憚のない御意見を賜りまして、今後の調査の参考にいたしたいと存じますので、何とぞよろしくお願い申します。
 本日は、まず、各参考人からお一人二十分程度御意見をお述べいただいた後、午後四時頃までを目途に質疑を行います。
 なお、御発言は着席のままで結構でございます。
 それでは、まず大庭参考人からお願いを申し上げます。大庭参考人。
#4
○参考人(大庭三枝君) 本日は、参議院国際経済・外交に関する調査会で意見陳述をする機会を設けていただきまして、このような場にお招きいただき、本当に光栄に存じます。
 私は国際関係論を専攻にしておりますが、中でも、アジアの地域主義やアジアの地域制度の形成、それとアジアにおける国際関係、国際政治経済との関係をずっと研究してまいりました。
 今日は、その観点から、今日のテーマである信頼醸成と永続的平和の実現に向けた取組と課題、これはこのアジア太平洋地域においてどのように永続的な平和と信頼醸成を実現させるかということだと思いますが、それについての私の意見というものをここでお話しさせていただきたいと思います。少し病み上がりで声が少し通らないときがあるかもしれませんけれども、どうぞ御容赦ください。
 アジアにおいて地域制度あるいは地域主義といったものが果たしてあるのかという質問が以前はよく言われました。というのは、ヨーロッパにおけるEUやNATOといったものに比べて、アジアは地域制度が手薄であったということは過去にございました。特に冷戦時代において、今でも存続していて冷戦時代に設立された地域制度というもので代表的なものは、恐らくASEANと、それから、そのちょっと前に設立されたアジア開銀、アジア開発銀行、そして、冷戦が終わる直前というか、冷戦がちょうど終わる過程の、これはまあ偶然なんですけど、一九八九年の十一月に設立されたAPEC、この三つは冷戦時代に設立されて今でもアジアの状況に非常に大きな影響を与えている地域制度なんですが、それ以外は見られなかったわけです。
 ところが、今はアジアにおいては実は数としてはわさわさいろんな地域制度がありまして、今日これを説明することが目的ではないんですけれども、どれだけのものがあるかということについて、今日お配りしたこちらの、皆様にはこのような形で資料になっておりますけれども、これはパワーポイントの資料なんですけれども、これをめくっていただいて、そのめくっていただいた次に表があると思うんですけど、ASEANから一番下のアジア協力対話というもの、これは聞いたことがほとんどない方が多いかもしれませんけれども、二〇〇〇年代初めに当時のタイのタクシン首相が主導してつくった枠組みで、今でもまだ閣僚級の会議を繰り返し開いていて、首脳級の会議もたまに開くといった枠組みもございます。
 このようにたくさんいろいろ制度ができていまして、これらは主に冷戦が終結した後に積み重なるように様々な形で制度が形成されました。
 さらに、めくっていただくと、この主なものについては輪っかのようになっていて、これも今日は詳しく説明するつもりはありません。これだけ今、恐らく多少整理も必要ではないかと思われるぐらいに、アジアにおいては、多国間で共通の地域の問題を協議する、あるいは意見交換する、地域協力を進めるといった枠組みが乱立している状況があるということです。
 我が国にとっても、そして地域にとっても、この中でも非常に重要な枠組みであったのが、次にめくっていただいて、その次の次になります、図二というところにありますASEANを中心とする地域アーキテクチャーというものです。これはASEANを中心とする地域制度と言ってもいいんですが、各様々なASEANやASEAN関連の文書の中ではアーキテクチャーという言葉を使っているので、そのままの形、言葉を使わせていただいていますけれども、ASEANを中心とする地域アーキテクチャーというものが地域の中で非常に注目をされて、地域諸国が集まって協力をしたりあるいは意見交換をしたりする場として注目をされてきましたし、そしてこの地域の安定化に一定の寄与をしてきたということです。
 ASEANを中心とするといったところで非常に奇異に感じるわけですが、なぜASEANが中心なのかということですね。これに関しまして、ちょっと後でお話ししますが、取りあえずこの図を基にASEANを中心とする地域アーキテクチャーってどういうものかということをちょっと説明しますと、これは私が事前に参考資料として皆様にお配りしている「「ASEAN+」が担う対立緩和のメカニズム」というところにどういう形で形成されてきたのかということは詳しく書いてはあるんですが、取りあえずこの図を基に少し説明します。
 まず、ASEANが中心にあります。ASEANは一九六七年に当時の東南アジアの五か国のみで形成された組織です。この五か国は非常にいろいろな意味でばらばらで、しかも六〇年代は紛争が絶えなくて、ある種、彼らの関係自体が非常にもうどうしようもなかった状況でした。
 例えば、マレーシアとインドネシアは軍事的な直接対決をしておりますし、シンガポールは、当初マレーシアの一部だったんですが、民族問題その他の対立がもとでマレーシアから一九六五年に分離独立をしているというように、この五か国自身が非常に関係が悪かったんですが、一つだけ大きな共通項があって、それは当時、あのベトナム戦争のさなかにおいて、この五か国は反共、若しくは反共ということを掲げていなくても西側に非常に近い外交的スタンスを取っていたということです。
 そういった共通項を一応見出しながらも、そしてそのベトナム戦争のときのいろんな危機というものを念頭に置きながらも、この五か国間の関係の安定化ということを図ることで共産主義の脅威というものから逃れようといった、そういった組織として始まったASEANなんですが、それが結局いろんな形で発展をしていきます。
 一つは、ASEANとしてまとまって、ほかの大国との間の交渉力を付けて自分たちの要求を通していくといった制度をつくり始めたことで、これが最初、七〇年代に制度化されたのは対話国制度と言っております。このときの対話国制度の対話国というのは、ASEANと外相級の協議をする、定期的に行うことのできる域外国のことを指しておりまして、当時のASEANの最高意思決定機関は外相でしたので、これはASEANの最高の意思決定をする人々と外相レベルで話合いができる国ということになります。
 この対話国制度で、最初は日本やアメリカを中心とした西側諸国のみがこの対話国でした。ところが、冷戦が終わった後は、その対話国に中国やロシアといった国々も入るようになりまして、ASEANを中心として域外国と対話をするといった、そういった枠組みができていったということです。
 そして、ASEAN自身も冷戦が終結した後は拡大をしまして、当初ASEANからはもちろん排除されていたベトナムやカンボジア、ラオス、ミャンマーといった諸国が一九九〇年代を通じて全てASEANに加盟して、現在、ASEANは十か国の加盟国になっています。
 こういったそのASEANは、現在はASEAN共同体というものを設立したという宣言をしておりまして、このASEAN共同体は、一番注目されるのはやはり経済共同体なんですけれども、ほかに政治・安全保障共同体、そして社会・文化共同体といった三本柱の共同体をもってASEAN共同体の設立を二〇一五年に既にもう宣言済み、設立を宣言済みであるということです。
 こういったそのASEANが最もこういったアーキテクチャーの中では制度化されているコアの部分に当たるんですが、それとともにASEANは、特に冷戦が終結した後の一九九〇年代以降は、自らがもっと、広域の地域秩序の安定化に自分たちがイニシアチブを取るという観点から、広域地域秩序の維持を目指す組織にも積極的に関わり、あるいは自分たちが主導するようになりました。
 細かい点は省きますけれども、そういったそのASEANの主導力、あるいはASEANの役割というものの自覚から生まれたのがASEANプラス3、そして二〇〇五年の東アジアサミット、そして二〇一〇年から発足しましたASEAN防衛大臣会合プラス、ADMMプラスと言われているものです。そして、言い忘れましたけど、一九九四年には、この地域において常設で正式に政治、安全保障についての協議や協力を行う枠組みとしてASEAN地域フォーラム、ARFというものも設立されています。こういったASEANを中心とする地域制度というものが実際にアジアにおいて大きな影響力を持ってきたということです。
 なぜASEANなのかというときに非常に重要だったのが、多国間の枠組みを形成するときに大国のリーダーシップが不在だったということです。つまり、日本はリーダーシップを取りたいと思った本音はあったと思いますが、一九九〇年代の時点ですと、やはりまだ過去の負の遺産ですね、第二次世界大戦中の大東亜共栄圏の再来といった批判はこれは避けなければいけなかったし、なるべく日本が独りだけで表に立たずに、むしろASEANと協力をして、日本はASEAN支援をするという形で、実質的には地域のマルチの形成のリーダーシップ、実質的な貢献をするといった道を取っておりました。
 そして、中国は、今現在は非常に大きな影響力を持っていて、後でその話はしたいと思っていますけれども、まだその九〇年代は、中国自身が自分たちのいろんな外交的な選択の幅を狭められたくないということで、この地域制度の参加自体に非常に消極的でした。二〇〇〇年代に入ると、むしろ中国は積極的に地域の、ASEANを中心とするアーキテクチャーにおいても積極的な役割を果たそうとするんですけど、その場合もASEANを立てるということを常に忘れなかったという、そういった非常に引いた態度を取っていました。
 そして、アメリカは元々アジアにおけるマルチには全般的には消極的です。少なくとも政府レベルのものはそれほど積極的ではなくて、その観点からすると、オバマ政権のときのアジアのマルチに積極的に参画するというアメリカの姿勢というのは非常に印象的、私からすると印象的でした。それまでとは随分違うものであるなと思っておりました。
 こういったそのASEANを中心とするアーキテクチャーにおいて、政治、安全保障、経済、社会、文化などの様々な分野における共通の問題が協議されたり協力の枠組みが形成されたりしたんですが、今日はこの詳細については割愛をいたします。
 最近のお話、最近のトレンドについてお話をしたいと思います。ちょっとめくっていただいて、地域制度形成の新たな段階へというところにちょっと入っていきたいと思います。
 そもそも、なぜ、冷戦が終わった後の一九九〇年代、二〇〇〇年代に急速に様々な制度がアジアにおいて形成されたのか、そしてその中でASEANがそれなりの大きな影響力を発揮できたのかというのは、ASEANは中小国連合ですから、ほかの大国に比べれば国力の差というのは明らかで、そういう中で中小国連合であるASEANがそれなりのイニシアチブを発揮するという形が取れたのはなぜか、そしてこのような制度が形成されたのはなぜかというと、私は、一つには時代背景があると思っています。
 これを私はリベラルの時代というふうに今のところ仮に呼んでいるんですけれども、冷戦が終わった後、明らかに世界は価値の収れんが起こりました。つまり、冷戦時代においては、共産主義とそれから資本主義の陣営、あるいは自由主義とそれから社会主義の陣営に分かれていて二つの価値が併存する社会だったのが、冷戦の終わりというのは、結局、この元々の西側的価値に世界が収れんしていく時期であったということです。
 もちろん、一九九〇年代において、特にアフリカでは紛争が絶えませんでしたし、いろんな戦火からこの世界は免れることはできませんでしたけれども、他方で、やはり人権や民主主義ということを保障していく、進めていくということについてのある種の合意といいますか、これが正当なのであるといった認識はこの二十年間は非常に強かったと思いますし、法の支配、グッドガバナンス、そして何よりも市場経済によって経済運営していくということについての価値のある種の収れんが一定程度見られたのがこの時代であると思います。
 そして、国際関係のマネージについても、これについても力によって現状変更するということは実際には行われたわけですが、しかし、それはやはりよろしくないと。国連の場、その他の様々な話合い、そういうことを使って、やはり複数の国が国際協調を行うことで国際社会の維持をしていくというようなそういったことが、実際にはいろんな形で裏切られながらも、そういったことであるべきだといった規範がある程度の力を持ったのがこの二十年間、一九九〇年代、二〇〇〇年代だったと私は考えています。
 そうしますと、今現在、特に二〇一〇年代からはどうなのかというと、これは私は、今欧米で様々な論者が語っておりますが、リベラルの後退とかリベラルの撤退という議論が相当にされておりますが、やはり、まあポストリベラルというところまで言っていいのかどうかはともかくとして、リベラル優位ということが少なくとも揺らいでいるのが現在だと思います。これの具体的な形として、一つは力による現状変更ということを許すような状況があるということ、それからもう一つが民主主義、人権、法の支配、グッドガバナンス、そして自由市場経済といったものについての疑義が表面化しているということですね。
 これは世界の中心であるというふうに考えられてきた欧米の内部からも見られる現象で、しかも、プラスアルファ、そういった欧米を中心とした世界があったとすると、周辺に当たるというふうに考えられるロシアや中国といった国々が外からリベラルの世界というのを揺り動かしている状況が全般として見られるということです。このようなリベラルの後退の時代にあって、アジアの状況も揺れておりますし、アジアの制度の在り方自体も非常に大きく変わってきております。
 ここのレジュメには、ASEANの中心性を前提としない様々なイニシアチブの顕在化というふうにあるんですけれども、少しこのレジュメにそのまま沿わない形でちょっとお話をさせていただくと、やはりASEANの流儀という、ここにちょっと突然出てきているんですけれども、ASEANの協力の仕方というのは、やっぱり緩やかに、緩やかに無理のないようにと、これはかなりはしょって言っているんですけれども、そういった形でまとめ上げるといった手法がASEANの流儀であるとすると、実際に地域統合を進めるだとか、本当に国家安全保障に関わるような問題を協議してそれの解決を図るだとか、本当の意味での地域協力を進めるためには、ASEANを中心とする制度というのはある種生ぬるいところもあります。
 そういった問題点が、リベラルが揺らいでいる時代に、それまでは何となくそういった緩さも含めてこれでうまくいっているんだと思われてきたことが、本当にASEANが直面している、あるいはASEANが中心として存在しているアーキテクチャーの問題、そしてこの地域秩序をこの地域においてどのように維持していくのかというときに非常に大きくクローズアップされているということです。
 そういう中で、例えば経済分野でいきますと、TPP、拡大TPPの交渉が開始されたのがやっぱり二〇一〇年代ですけれども、そうしますと、やはり実質的に地域統合を進めていく枠組みと考えたときに、これはASEANが中心となっていない方がいいと。変な言い方ですけど、ASEANが中心というよりは、むしろ違うイニシアチブを拡大することで地域統合を進めるという動きは非常に顕在化しましたし、何よりも二〇一〇年代に大きく変わったのは、中国から地域ビジョンが明確に示されるようになってきたことです。
 これはAIIBしかり、それから一帯一路しかりですが、それまでの中国はASEANを中心とするアーキテクチャーの中で自分たちの役割を拡大するということには非常に熱心でしたけれども、自分たちで独自の地域秩序構想を出すということではなかった。ところが、習近平政権になってからはそれが非常に変わってきていて、そのことが今の地域情勢を大きく変えています。
 それと連動している話ですけれども、やはりこの地域において二〇一〇年代に見られるのが、近年特に見られるのが米中パワーバランスの変化ということでありまして、これは必ずしも覇権の交代とは言えませんけれども、やはり相対的にアメリカの力が落ちていて、中国の影響力が拡大しているということは明らかです。
 そして、中国の影響力というのは、先ほどの地域ビジョンの提示ということとともに、南シナ海問題に見られるように、いわゆるリベラルを揺さぶっている動きの一つですけれども、力による現状変更ということを辞さない姿勢も一部見せているということですね。
 そして、アメリカのアジアへのコミットメントは、もちろん日米同盟は今、日本の外交の根幹でして非常に大事ですし、そのことをアメリカ政府も十分分かっているとは思いますが、しかしながら、アメリカがこれまでのように、アジアに同じような、そして同等のコミットをするかということについては非常に不透明感が漂っています。
 そして、今日はもう時間がありませんので質問があればお答えしますが、ASEAN自身の中でもこういった動きの中で分裂の兆しが見えるのではないかという懸念が相当に表から見られるわけです。
 ASEANについて一言だけ。ASEAN諸国は一般的に大国に引き裂かれる存在であるというふうに描かれることが非常に多いですが、私はそれほどやわではないというふうに思う反面、日本にとって非常に大事なパートナーだけど、彼らには取扱いは非常に注意をしなければいけないと考えています。
 ASEAN諸国は元々、ASEANを用いたり、自分たちの外交政策でも多くの大国とバランスを取って、それで自分たちの実を取るということをやってきました。そういった数ある大国の中の一つが日本です。もちろん中国もその一国です。ですので、今単純に中国に傾斜しているというだけで捉えるのは危険であろうと思いますし、それから、私がブルネイやカンボジアを始めとするいろんな国に行っていろんな聞き取り調査をした結果を聞いていても、やはり彼ら自身にはバランスを取ろうという意識もあるし、中国の経済的支援が政治的な意図を持つ可能性があるという危険性も十分に認識しているということです。
 ただ、彼らがバランスを取るつもりでも、実際に中国の影響力が非常に大きくなると、その結果、彼らにとっては日本も中国もそしてアメリカともいい関係を築いてそれぞれから実をもらいたいと思っていても、気が付いたら中国の影響力が非常に大きくなるということは考えられ得るわけで、そういうところで日本が、中国以外のチョイスというものを、オルタナティブとはあえて言いませんけど、チョイスを日本が出せるような、そういった状況に置いておくということが非常に大事なんだろうと思います。
 そういう中で、日本の課題としては、今もう既に現在進めているように、ASEANの強化やASEANを中心とする地域制度の強化ということを進めるとともに、TPP11それからRCEPというものの強化も進めていくべきですし、あるいはRCEPの場合はまだ交渉中ですから、これの妥結に向けた試みをするべきですし、今、日本政府が提唱している自由で開かれたインド太平洋ということにおいても、これも日本から発する地域ビジョンという意味では非常に重要なキーになり得る概念なのではないかと思っています。
 ただし、こういったことを進めるときに非常に大事なのは、究極の目的は、制度をつくることであるとか連携を進めるというだけではなくて、それはこの地域におけるルールベースの国際的なリベラルオーダーを形成すると、それを維持するということにありますので、その観点からしますと、まず中国を排除せずに、中国をどうやって包摂しながらそのようなことを実現していくかということ、その目的のためにASEAN諸国とどのようなパートナーシップを今後築いていくかということが今後も一層重要になってくるであろうと思います。
 少し長くなりまして済みませんでした。
#5
○会長(鴻池祥肇君) 次に、石戸参考人、お願いいたします。
#6
○参考人(石戸光君) 千葉大学の石戸でございます。
 本日は、お招きくださいましてありがとうございます。
 私は、経済の観点から、配付させていただきました資料に基づいて簡潔にお話しさせていただきます。
 では、資料の一ページ目の方を御覧いただきます。
 多国間協力枠組みの在り方ということでございますけれども、貿易自由化による相互依存の高まりといいますのは、経済的な厚生水準が上昇する、つまり食べたり飲んだりといった、そういったものの消費財の多様化及び廉価化ということと同時に、域内の安全保障の度合いを高めるという効果を持つのではないかと。そして、すなわち、多様性に満ちたアジア太平洋地域の平和と繁栄というものを実現していく上で、貿易面での地域協力は経済的そして安全保障的に非常に大きな意義を持っているということでございます。
 ここで、いわゆる貿易戦争という最近見聞きする言葉でございますけれども、こちらの生産、分配、消費、生産、分配、消費と延々続くグローバルな経済循環のうち、自国による生産ということを短期的に確保しようという行動であって、こちらはポピュリズム的で大衆にいっときアピールはいたしますけれども、国家間での競合が必然的に起こってまいりますので、また、比較優位ということを度外視して不得意なものも含めて抱え込もう、生産しようと、そうしますと結果的に生産、分配、消費というものが連鎖的に縮小してしまって長期的には勝者はいないということではないかというふうに拝察いたします。
 アジア太平洋地域の経済的な構造や課題、既存の多国間協力枠組みの成果や限界ということでございますけれども、経済的な構造といたしまして、アジア太平洋地域、特にAPECというもので見てまいりますと、域内貿易の規模はEU及びNAFTAを大きく上回っているということでございます。
 日本と幾つかのASEAN諸国の貿易、投資には、二国間FTAの存在というものがプラスの影響を与えているという点が指摘できるかと存じます。他の国々の締結しているFTAを考慮いたしました場合にも、同様に、FTAというものが発効している存在というものが貿易量にプラスの効果をもたらしているという点が成果ではないかというふうに思われます。
 しかしながら、二国間FTAが複数存在している、乱立しているというような状況がアジア太平洋地域の現状でありますため、貿易ルールが錯綜しかねないということが限界でないかというふうに思われます。そして、物品に係る関税の引下げによるアジア太平洋地域の産業集積ということも一種の頭打ちということになってまいりますでしょうから、二国間FTAでは多国間の部品相互調達といったことにも限界が生じてまいります。
 ですので、より実効性のある多国間協力の実現ということが、要は線から面への転換、すなわち二国間FTAの林立ではなく、TPP、RCEPを始めとしました多国間の貿易協定の締結ということが政策的に極めて重要となっておりますということでございます。
 そして、日本政府様が進めておられますインド太平洋戦略ということからいたしましても、TPP及びRCEPに参加する諸国間を結ぶ、これはシーレーンの確立、安定確保といったことというふうに思われます。そして、競合しがちな状況をなるべく協調的な形に移行させていくための方策といったものが課題になってまいります。そのためには、非国家間のやはりサブリージョナルな形での協力といったものも必要となってくるように思われます。
 我が国が果たすべき役割と具体的取組についての提言でございますけれども、TPPやRCEPなどの貿易、投資の枠組みや関連政策のみならず、より幅広い視点で様々な分野の協力について検討するために、貿易自由化と企業の規模、生産性に関するメリッツ効果といったこと、それから空間経済的効果、そしてサービス経済、この三つから簡単に提言させていただきたいと存じます。
 提言一といたしましては、貿易自由化と企業の規模、生産性に関するメリッツ効果。こちらはハーバード大学のマーク・メリッツ教授が提唱しておられる非常に学界的には有力な理論となっておりまして、貿易費用が低下し、そして貿易の自由化といったものが進展いたしますと、メリッツ教授が提起しましたように二つの効果が生じてまいりますと。
 一つは、貿易費用の低下のために輸出が容易になる。輸出のための閾値といったものが下がり、これまで輸出できなかった低い生産性の企業の一部も輸出を行えるようになります。もう一つは、国内で活動するために必要な生産性水準、参入閾値といったものが上昇していく。そのことによりまして、生産性の低い企業は、ただ手をこまねいているということですと撤退を余儀なくされるということでございます。
 ですので、理論上は、輸出を行えるような生産性の高い企業が雇用者を増やすということで実質賃金の上昇が生じ、十分な賃金を支払えない生産性の低い企業の退出というものが促されていくということでございます。貿易自由化の結果として、相対的に生産性の高い企業のみが生き残るということになってまいります。労働市場といったものに仮に摩擦がないということでしたらば、高い利潤を上げる生産性の高い企業に多くの労働者が集まっていくということになる。それはプラスの効果ということになりますけれども、このため、経済全体としては、生産性が上昇し、そして厚生も上昇すると、そういったことでございます。
 ただ、企業の海外進出の規模分布といった現状を見てみましても、やはり大規模な企業が海外進出ということに偏っておるということでして、その点の政策的な是正が課題ではないかというふうに拝察いたします。FTAにおける中小企業に関する章ですとか経済協力に関するチャプターをより具体化するための域内協力措置といったものを官民連携で拡大させていくことが重要と考えられます。
 提言二といたしましては、TPP、RCEPなどFTAのもたらします空間経済的効果。こちらは日本の藤田教授ですとかポール・クルーグマン氏らによる研究成果ということでございますけれども、FTAによる貿易費用、広義の輸送費といったものが低下することによりまして、効率的な経済活動は、明治以降ということですと、分散していたものが大都市集積型になりました、これが、更に輸送費といったものが低下いたしますと再び分散型となってくる、これが空間経済学が理論的に予測していることでございます。
 アベノミクスで言います地方創生、つまり、地方で暮らす人たちが幸せを実感できる社会へというためには、恐らく経済活動が再び分散化することが重要であり、TPP及びRCEPを通じた国際的な政策においても、この再びの分散効果をもたらすための協力が重要ではないかと考えられます。
 あわせまして、旧共産圏といいますか、ミャンマーですとかカンボジア、ラオス及びベトナムのインドシナ半島及び朝鮮半島におきましても、この空間経済的な効果といったものは非常に重要な役割を果たすのではないかというふうに拝察いたしております。
 二十世紀の前半に、アジア太平洋においては複数の小さな港と複数の都市が分散的に存在していました。その後、広義の輸送費の低下によりまして、シンガポール、香港など少数の貿易港が隆盛してまいりました。今後は更に分散的なシーレーン、産業集積の開発といったものが効率的となってまいりますので、日本及び中国、ASEAN加盟国が南シナ海でも調和して目指さなければならないものではないかと。アジア太平洋地域の多面的な協力は、協働といったことを通して平和構築の精神を育てるのに役立つのではないか。TPP及びRCEPの規定内容を実効性あるものにするためにも、このような具体的な案件を積み重ねていくべきではないかというふうに思われます。
 APECといったものが打ち出しておりますFTAAP、アジア太平洋自由貿易圏、こちらがTPP及びRCEPといったものを経由させながら最終的に実現させていくということも中長期的には念頭に置くべきではないかというふうに思われます。
 提言三というところでございますけれども、サービス経済という視点からでございます。サービス産業といったものは、生産性向上及びFTAによるサービス貿易自由化のための施策といった観点で、非常に注目すべき、そして手厚く政策がなされていくべきではないかといったことを提起させていただいております。
 中国におきましても、物といった分野から事、つまりサービスによる付加価値上昇といったことが、日本へのインバウンドの観光という面におきましてもシフトが起きているということでございます。
 地方の観光資源もサービスとして経済価値へと転化させていくという必要がございますでしょうということであります。中小企業の多くが存在しますサービス分野、その分野での貿易自由化によりましてコンパクトな集積地帯を分散的に立地させていくことが、平和的なアジア太平洋の経済活動にとってもやはり重要ではないかというふうに思われます。
 小括とさせていただきますけれども、中国の入っておりますRCEPは、アジア太平洋地域における信頼醸成と永続的平和の実現に向けた取組と課題ということに大きく関連、もちろんいたしております。現在、ASEAN市場における中国の優位性が非常に目立つということでございまして、国際河川であるメコン川流域を総合的に開発するための話合いのメコン・フォーラムといった場でも、南北回廊、中国が中心で雲南省から伸びるそういった回廊を推進するような中国の姿勢が非常に目立っております。
 けれども、技術的な面では、中国は依然として日本にある意味依存といいますか、注目をしているのではないかと。例えば、宝鋼集団など中国の国有企業の主導する鉄鋼生産ですとか環境対策技術、それからADBによる開発金融のノウハウなどは中国が主導いたしますAIIB及び一帯一路に大きく関連いたしますけれども、日本の経験から学び取ろうという姿勢が現場感では感じ取れるということでございます。
 RCEP交渉は、ASEANセントラリティーといったことを建前としております。そして、ASEANは合意形成といったものがコンセンサスベース、いわゆるASEANウエーでありますために交渉ペースがえてして遅くなりがちではありますけれども、RCEPにおける例えばサービス貿易章は、分野や提供形態をあらかじめ除外せず、WTOサービス貿易に関する一般協定、GATS、それからASEANプラス1のFTAによるサービスの約束、こういったものを基礎として形成されるといったことが現状でございます。
 ですので、日本の主導により設立されましたERIA、東アジア・ASEAN経済研究センター、インドネシアのジャカルタに所在しておりますけれども、といった研究機能ですとかの更なる活用によりまして、ASEANを後方支援しながらサービス貿易の自由化を進めるということも重要な課題ではないかというふうに拝察いたします。
 さらには、日本が主導してハード面、道路、港湾などのインフラ面ですとか、それから、上物のソフト面、いろんな技術を用いた制度的な措置、ソフトの双方で、アジア太平洋地域、インド太平洋域も含めまして、における支援といったものを行っていくべきと。環境面では、例えば初期費用の安さということではなくライフサイクルコストといったことが中長期的には重要だ、こういったソフト面での価値形成といったことも重要ではないかと思われます。
 急速に発展する中国が二〇一三年に開始しました一帯一路のイニシアティブは、中国、アジア、ヨーロッパ、アフリカ及び経済移行国を更に結び付け、新たな貿易ルートの確立を目指しております。このイニシアティブは、輸送コストの削減、貿易の拡大と関係する全ての国への新しい市場開拓、ASEAN加盟国の発展を促進するのに役立つとされております。
 これらのRCEP関連の取組により中国と連携を実質的な活動を通して目指しながら東アジアの経済的な一体化を高めていくということが、この米国によるTPPへの何らかの回帰といったものをより平和的に促していくことに貢献するのではないかと拝察いたします。
 アジア太平洋地域の分散型の経済システムの構築は、これまでその国の地場企業としてのみ操業してきたサービス関連を含みます中小企業のグローバル化を後押しし、日本は多国間協力枠組みとして分散的、後方支援的な地域協力を目指していくということを明確化した上で、その政策姿勢をパブリック外交としてあらゆる機会に発信していくべきではないか、このように拝察しております。
 私からは、一旦、以上でございます。ありがとうございました。
#7
○会長(鴻池祥肇君) ありがとうございました。
 次に、増山参考人、お願いいたします。
#8
○参考人(増山幹高君) 政策研究大学院大学の増山と申します。今日は意見を述べさせていただく機会をいただきまして、ありがとうございます。
 こちらの、中身はない分ちょっとカラフルな資料を御用意させていただきましたので、こちらを使ってお話をさせていただきたいと思います。
 今までの方と違いまして、私は外交の専門家でも国際関係の専門家でもございませんので、そういった経験に基づいてお話をすることはできません。今回、事務局からこのお話をいただきましたときに、私なんぞで何かお役に立てるんでしょうかとちゅうちょもしたんですが、これまでのヒアリングでも専門家の方々から実践的、実務的な意見を聞いてこられており、今日のお二人にもありましたように、そういった意見も聞いた上で、補足的なものとして、議会の制度的な観点から、理論的な観点から議会の外交とか政党や議員による外交といったものがどのように捉えられるのかということを説明せよということでございましたので、そういうことであるならば私も何がしかお役に立てるのではないかと参った次第です。
 私の専門は政治学でございまして、特に議会の制度を研究しております。この数年は、国会の審議映像をいかに活用できるのかとか、会議録では分からないような議会の時空間を映像ですとか音声を利用して理解しようと努めてきております。
 一方、政策研究大学院大学、御存じの方は御存じだと思いますが、ミッドキャリアの公務員を対象にした大学院でございまして、主に、三百名ほど修士課程でいいますとおりますが、その三分の二以上は海外からの留学生でありまして、そういった毎年五十か国以上の国々からの公務員が私どもの大学で勉強しておりまして、将来それぞれの母国のリーダーとなるよう励んでいるような大学です。
 そういう意味では、私も、外交とは言えないにしても、日本の国際貢献の何がしか一端を担っているのではないかと思いますので、そういった観点から少しお話をさせていただきたいと思っておりますが、大学の政治学概論のようなお話をさせていただくことにもなりますので、少し実務、実践から距離を置いた制度の理論、デザインの問題としてお聞きいただければ幸いです。
 お手元の資料を一枚おめくりください。余り小難しい話になってもいけませんので簡単なキーワードで申しますと、余りにも一般的かもしれませんが、議院内閣制と大統領制というのが大きな政治制度を分けるものになります。釈迦に説法ではございますが、その本質的な違いとは、権力をいかに分かち持つかというところに懸かってきまして、究極的には、行政権を握る者がどうやって選ばれるのか、またその行政権が誰に対して責任を持って行使されるのかというところに帰着します。
 そういう意味で申しますと、大統領制というのは、行政権をつかさどる大統領が国民に直接選ばれて、大統領が行政権を国民に対して責任を持って行使するという制度と言うことができます。大統領は立法権をつかさどる議会に対しては抑制と均衡の関係にありまして、これを我々は権力の分立と言っておるわけです。一方、議院内閣制というのは、行政権をつかさどる内閣、なかんずく首相が議会の信任に依拠して、議会に対して責任を持って行政権を行使する制度ということになります。
 こうした信任関係が成り立つ限りにおいて立法権と行政権というのは一体不可分となり、権力が融合することによって政治は国民に対して責任を持った権力行使が可能になるという制度でございます。
 また、政治制度の重要な一部として選挙制度がございまして、我々は小選挙区だとか比例代表制ということをよく用いますけれども、こういった選挙制度も大きく分けますと、有権者が投票するときに何を意識して投票するかということで分かれてきます。大きく分ければ、有権者が投票するときに、政権を意識するか、あるいは有権者自らの意見をより良く代弁する代理を選ぼうとするのかというところに帰着していきます。
 そういう意味で申しますと、典型的には、小選挙区というのは、有力候補者二人の競争を促して二大政党制が実現することによって選挙を有権者にとって政権選択の機会とするものです。一方、比例代表制というのは大選挙区における議席配分の方式でして、選択肢が多いほど有権者の意見分布を比例的に反映することが可能となって、それは多党制をもたらし、選挙は有権者にとって代理選択の機会となるものです。
 一枚おめくりください。こちらの図は、一つ目のポイントである立法権と行政権の分離というものと立法権の共有、専有というものを一院制か二院制かの問題として両者を組み合わせて図示しております。権力の融合、集中、権力の分立、分散という問題は左上から右下の対角線上の軸として捉えることができます。
 一枚おめくりください。こちらの図は二つ目のポイントをやはり図示しておるものなんですが、選挙制度と議会制度の分権度というものを組み合わせております。選挙を通じた代表と議会を通じた立法とにおけるそれぞれの権力の融合と分立というものを表現しているものでございまして、左上の政権選択受動議会というのは、選挙制度としましては小選挙区制を採用し、選挙が政権選択の機会となると。内閣に権限を集約させて、議会は集権的な制度を採用すると。この場合、議会の役割というのは、極端に申せば内閣を誕生させる瞬間で役割は果たされるわけです。したがって、議会ですべきことというのは内閣が主導する立法を実現させることでして、それを通じて与党は現政権の存続を有権者にアピールする、野党は代替的な政権構想を有権者にアピールするということになります。
 一方、右下の代理選択能動議会というのは、選挙制度としては比例代表制を採用し、選挙が代理選択の機会となるとともに、議会制度は比較的に自立的な委員会制度といった分権的な制度を採用しまして、議会で繰り広げられる政党間の交渉というのは、議院内閣制といえども、与野党にかかわりなく、立法のあらゆる段階において可能な限りの権限を行使し、政策的な実利を勝ち取っていくというゲームになります。
 これらの二つのポイントを更に組み合わせますと、原点に権力が一元化された小選挙区制による一院制の議院内閣制がありまして、そこから権力の多元化によって立体的な空間が広がって、その一方の極に比例代表による二院制という分権的な議会制度が採用されて、また別に行政権をつかさどる大統領が国民から直接選ばれるといった政治制度が位置付けられることになります。
 こうした権力の融合、分立度に応じて、政治家の皆様の当選、再選というものも、政権の命運とともにあるべきなのか、あるいは政治家個人の資質、能力、活動といったものが重視されるのかということに関わってまいりまして、それに応じて政党の凝集性というものもおのずと異なってきます。権力の多元化が進めば、議員の皆様のその黒子としての舞台回しの能力だけではなくて、舞台に上がって見せる部分の役割も重要になってきます。有権者の方もそうした政治的環境の下に順応して議員や政党を評価するようになってくる、こういうのが政治制度の在り方だということでございます。
 一枚おめくりください。では、こうした政治制度の権力融合、分立という観点において日本はどこに位置するのかということです。御案内のように、現行の選挙制度で申しますと、小選挙区制というのは衆参の議席でいいますと約半分ぐらいになりますので、先ほどの政権選択か代理選択かというと中間的な位置付けになるわけです。
 一枚おめくりください。もちろん、言うまでもなく憲法は衆議院と内閣においてのみ信任関係を求めておりますので、日本の議院内閣制における権力の融合というのは衆議院においてのみ作用すると言えます。
 したがって、政治制度の比較という観点でいいますと、まさしくこの参議院が日本の議院内閣制を位置付けて特徴付けているのでありまして、首相指名、予算、条約、会期といったことを除けば衆参は対等に位置付けられておりまして、憲法は、釈迦に説法ではございますが、立法における両院の一致というものを求めております。
 内閣との関係におきましては、例えばイタリアの上院などとは異なりまして、日本の参議院は解散もなく半数改選で、継続の院としての特徴付けがなされております。内閣とは信任関係もなく、むしろ大統領制のような権力分立の関係にあるというのが参議院の制度的な位置付けです。
 さらに、衆参両院とも比較的に分権的な委員会制度というのを採用しておりますので、議会制度という観点でいいましても日本は中間的な位置付けになってまいります。
 そこで、三ページの図の方に戻っていただきますと、じゃ、日本の議院内閣制はどこに位置付けられるかということでありますが、縦軸においては、二院制ですので相対的に言えば下側にありまして、横軸で、立法権と行政権の分立の問題でいいますと、参議院がありますのでかなり中央寄りということになります。
 さらに、四ページの図で申しますと、選挙制度的にも議会制度的にも中間的なものと捉えられますので、この両者のポイントを重ね合わせますと、この権力融合、分立の政治制度的な空間において日本はほぼ真ん中にあるというのが日本の政治制度的な特徴です。
 このような政治制度的な環境において繰り広げられてきたのが日本の政党政治でありまして、比較的に代理選択的要素の強い選挙制度を通じて、緩やかな連合体としての与党が長く政権の座にあり、立法に関しましてはそうした与党の了承を得るということが政府・与党関係の焦点となってまいります。国会では、与党は内閣主導の立法の実現を目指そうとし、野党の先生方がいる前でなんですけれども、野党としては政権の受皿としてまとまることは少なく、また一方で政策的な交渉を制度化するにも至っていないというのが日本の政党政治の現状だろうと思われます。
 一枚おめくりください。こういった政党政治の状況を視覚的に表現するものとして御用意しましたのがこのグラフでありまして、これは、衆議院の総選挙における自民党と自民党でない最大の政党の全国総得票数を時系列で示しております。破線は並立制が導入されてからの比例代表部分を示すものでして、青の実線が自民党の総得票数、赤の実線が自民党でない最大政党の全国総得票数ということになります。
 したがって、この図から明瞭だと思いますけれども、両勢力が拮抗するのは二〇〇〇年代に入ってからということで、せいぜい、目で見ていただければ分かるんですけど、二〇〇五年か二〇〇九年ぐらいしかないわけです。二〇〇九年に政権交代が起こったというのも、その非自民党勢力が初めて、それも日本においては一回だけになってしまうんですけれども、政権の受皿としてまとまったということが唯一の要因なわけです。それ以外の時期におきまして、日本の有権者は政権選択の機会を提供されたことがないというのが日本の政党政治であります。
 一枚おめくりください。同様のものを参議院について見ましたのがこのグラフでして、二大勢力の参議院通常選挙における全国総得票数の推移というものを示しております。
 参議院におきましては、この二大勢力の拮抗というのは、衆議院に先立ち、一九八九年の選挙で起きております。一九八九年の選挙というのは、御案内のように、消費税、リクルート、総理の女性問題という、日本では珍しいことなんですけれども、が起きまして、自民党が初めて参議院の過半数を失うということになった選挙です。これ以降、単独で参議院の過半数を占めるという政党がいないという状況が長く続きまして、これが連立政権時代の端緒になったとも言えます。
 ですから、政治制度的な観点から申しますと、参議院というのは、本来は内閣と信任、不信任の関係にあるわけではないんですけれども、制度的に、憲法の求めるところによって立法権を衆議院と共有し、立法においてほぼ対等な関係にあるがゆえに、内閣としては議会の基盤を盤石とするために衆議院と同様の政党化を参議院にも求めてこざるを得ないわけです。
 ですから、逆説的ではありますけれども、参議院の権限が強いがために政党化の圧力にさらされるということで、それによって政党政治というのは、政権選択のアピールをすることもなく、分権的な議会制度や権力分立的な政治制度で起こり得るであろう政策的な実利交渉も定着しないまま、参議院の皆様は直接政権の批判と関係のないようなもので選挙で御苦労されているというところが参議院の制度的ジレンマとも言えます。
 少し時間も押しておりますので次のグラフははしょらせていただいて、質問のときなどで時間があればお話ししたいと思いますけれども、るる制度論をお付き合いいただきましたけれども、最後に少し国際的なことに触れさせていただいて終わろうと思います。
 政治学者として近年個人的に驚いたというか興味深いと思いましたのは、二〇一六年のイタリアにおける憲法改革の失敗という事例です。この憲法改革というのは、参議院の皆様は特に関心がおありかもしれませんが、改革案としては上院の権限、議員数を大幅に削減するというものでして、御案内のように憲法改正案は国民投票で否決されて、実現しておりません。
 私にとって興味深かったのは、そういった上院にとっては自滅的な法案というのがなぜ上院自身が支持したのかということです。国民投票というので否決された理由は、アンチ既成とかアンチエスタブリッシュメントを標榜するいわゆる五つ星運動というものの影響が指摘されておりますけれども、こういった潮流には政府や政治に対する全般的な不満、不信というものが背景にあったのだと考えられます。
 このイタリアの憲法改革につきまして、私が編集に関わっている専門誌で、実はこちらにいらっしゃいます猪口先生が名付け親でもある専門誌なんですけれども、それにイタリア人の友人に小論を寄稿してもらっておりまして、そこでは彼はコンスティチューショナルデマゴギーとコンスティチューショナルペダゴギーということを申しておりまして、私はそれをそれぞれ憲法の大衆扇動、憲法の市民教育と訳しております。昨今憲法論議が盛んになっておりますところ、私はこの指摘はとても重要だと思っておりまして、特に日本の政治制度とか参議院の在り方を考えるに当たっては重要だと思っております。
 日本の有権者が長く置かれてきた政権選択でも代理選択でもないというフラストレーションはかなりたまっていると思っておりまして、何かをきっかけにそれが一挙に反理性主義的な傾向を強める可能性はなくはないと思っております。その中で、政治制度について冷静な議論、理解がないままに、勢いや単なる批判だけで我が国の行方が左右されるのではないかということを非常に懸念しております。
 外交につきまして私は専門的なことは何も申せませんが、こういったこれまでの調査でも諸外国における議会内外の取組を検討されてきたと伺っておりますが、そういった取組も、それぞれの国の制度、社会経済、歴史、文化的な環境の上に成り立って機能しているものだと思います。諸外国の取組を学ぶこと自体は大変結構なことだと思うんですけれども、その部分的にいいところだけを異なる環境に接ぎ木しても、機能すべきものも機能しないというのが私の見解です。
 例えば、アメリカ的な権力分立の環境で二大政党が対峙する中において、例えばシンクタンクといったものも、それが政策的なアイデアの源泉となり、資金的にも競合するがゆえに成り立っていくのがシンクタンクの在り方であり、これはシンクタンクにとどまらず、ほかの準公的な組織的な取組にも当てはまろうかと思います。
 また、ヨーロッパであればEUの枠組みを度外視するわけにもいきませんし、先ほどASEANといった指摘がございましたように、そういう環境の中でどういった取組ができるのかを考えるべきだと思います。
 また、例えばドイツにつきましては、例えばですけれども、議会、政党、行政というのが非常に密な社会でありまして、例えば公務員の立場を維持したまま議会職員になったり政党職員になったりという雇用関係が成り立っておるわけですね。そういう環境において機能する組織というものは、そういう環境にないところに移植しても機能しないのではないかと思っております。
 今朝のニュースでもございましたけれども、例えば韓国の議員が竹島の問題で何かをするというのも、これももちろん文化や彼らの主義主張にも関わっておりますが、韓国の大統領制ということを考えれば分からなくもない行動というふうに理解できるのかもしれません。
 こういった外交の外縁ということを拡充していくこと自体は大変結構なことだと思いますけれども、それは単に交流レベルのものなのか、何がしか政府間の関係であるのかといったこと、また、それを通じて何を目指すのかといったことの議論があって、その上で人道支援や経済支援といったものが成り立ち得て、それぞれに応じた組織形態といったものも考えていけるんだろうと思います。制度環境によっては機能する場合もしない場合もあろうかと思います。
 政治制度についてるる申してまいりましたのも、この日本の政治が政権選択を志向していくのか、代理選択をして志向していくのかがまさしく参議院の皆様に懸かっておりまして、この世の中で文書の書換えだとか首相案件だとか騒いでいるときにこういう調査会をやられるというのも参議院の見識だと思うのですが、そういった環境にあるということが参議院が参議院たるゆえんであって、その中でどちらの方向性を示していくのかが、日本の有権者に対してどういう政治を提示していけるかの参議院の皆様の見識の在り方かと思います。
 議会独自の活動ですとか議会の外交といったものも、そういった権力の多元化の志向の中においては機能するものでありますでしょうし、そういう中においては参議院の独自性、組織的な活動というのは奨励されるべきものだと思います。しかし、もし日本の政治制度が政権選択といったものを目指すべきなのであれば、むしろそういった多元的な取組というのは責任所在の不明確化につながるかもしれません。
 最後に、言わば交通ルールと同じですけれども、何らかの規制、制約を受け入れるがために我々は公共的な利益としての交通の安全ですとか安心を得るわけです。それと同様に、参議院も立法権の共有という権限に固執すればするほど政党化の圧力にさらされることは変わりません。ですから、参議院の永遠のテーマかもしれませんけれども、参議院独自の活動、議員独自の活動というものが評価されるには、何らかの権限の放棄なり制約というものを同時に考えていただくのが必要かと思います。
 長々となりましたが、どうも御清聴ありがとうございました。
#9
○会長(鴻池祥肇君) ありがとうございました。
 以上で参考人からの意見聴取は終わりました。
 これより質疑を行います。
 本日の質疑はあらかじめ質疑者を定めずに行います。
 質疑及び答弁の際は、挙手の上、会長の指名を受けてから着席のまま御発言くださいますようお願いをいたします。
 まず、大会派順に各会派一名ずつ指名させていただき、その後は、会派にかかわらず御発言をいただきたいと存じます。
 委員の一回の発言時間は答弁を含め十分以内となるよう、また、その都度答弁者を明示をしていただきますよう御協力のほどお願いをいたします。
 それでは、質疑のある方、挙手を願います。
 猪口邦子君。
#10
○猪口邦子君 ありがとうございます。
 本日は、アジア太平洋における平和の実現、地域協力及び日本外交の在り方のうち、信頼醸成と永続的平和の実現に向けた取組と課題、多国間協力枠組みの在り方等について、三人の参考人から、大変有意義で、また参考になる御意見、分析をいただきまして、まず感謝申し上げたいと思います。
 先回、会長、私はここでやはり申し上げましたけれども、この信頼醸成ということは、基本的に国家間、主権平等で、お互いの予測可能性をできるだけ高めていきたい。主権平等でありますから、それぞれ非常に大きな権限を持って国際場裏で行動しますので、予測可能性を高めていく。そして、そのようなことを担うのは人ですから、そういう人材育成、キャパシティービルディングなどについても非常に熱心にやっていく。これが信頼醸成の基本ではないかと思います。
 元々、軍縮外交から来ている言葉で、ホットラインを開設するとか、そういうことからの流れで、今日、広い意味で経済連携あるいは地域統合の動きなどもこのような信頼醸成の枠と考えられるようになっています。
 そこで、三人の参考人の皆様に、共通するところもありますので、お伺いしてまいりたいと思いますけれども。
 まず、経済連携につきましては、元々EUは、大庭参考人そうおっしゃったんですけれども、EUとASEAN、似ているようで、ASEAN流という非常に緩やかな、がちっとした制度化ではなく、よってブレグジットのような激しい退出もまだ予定今のところされていないということでもあると思うんですが、元々そのような経済連携は安全保障上の理由から発生したと思われます。
 EUは、史上最大の戦争の結果、戦争が起こることを防ぐには戦争資源である石炭と鉄鋼をその中心のメンバーが共同管理すればいいのではないかということから始まっており、ASEANは、大庭先生がおっしゃったとおり、ベトナム戦争の脅威から発生しているかもしれません。今日、ASEANが軍事的に脅威を感じているとすれば、どういう点に今あるのか。
 そして、むしろ非常に懸念していた日本が全く逆の、非常に生まれ変わった心優しい能力の高い国として、また、後方支援という言葉を石戸先生おっしゃいましたけれども、非常に適切な感じのポジショニングをしていくという、そういうことについて、今後ASEANが、安全保障認識、脅威認識と、それから石戸先生のおっしゃった空間経済的なスケールメリットと、あとある程度集積効果で効率がいいということと、そういうことの合わせ技が元々安全保障のことからのみ多分発生したと思われる二十世紀型の地域統合とは違う二十一世紀型の発展をする、こういう可能性について、それぞれ石戸先生、大庭先生、どう考えるかちょっと伺いたいと思います。
 それから、大庭先生が説明の中で経済と政治とカルチャーの交流でとおっしゃった。ここが非常にちょっと微妙で、人間社会の発展には私は三つあると思うんですね。まず政治発展、経済発展、そして社会発展なんですね。社会発展ではなくてカルチャーのこと、文化の交流になったということは、じゃ、社会発展とは人権、人道、平等、社会的公正、そういうことの発展の時期というのをASEANという共同体はどのぐらい今後重視したり共通項として持っていくのか。それを余り話さないことによって統合性を維持していくという、そういうちょっとアンビバレントな、しかし非常に課題としては彼らが直面しなきゃならない、そういうことがあるだろうということをちょっと指摘しておきたいと思います。
 あと、マルチのこのような枠組み、アメリカはマルチ疲れが出ているわけですね。それは、公共財を提供するとき自分ばかりが負担を負っていると。そういうトラップにASEANが陥らないためにどうしたらいいのかということをそれぞれお伺いしたいと思います。
 それから、増山先生には、こういう信頼醸成、そして予測可能性を国家間が高めていくというとき、私が思うのは、重層的な交流及び会議形態が国家間、諸国家間及びマルチの枠にあることが大事で、知識人は知識人、学者は学者、文化人は文化人でいろいろ交流される、そして、経済人はもちろん、大企業だけでもなくというのが石戸先生の話に出てきているわけですね。生産性だから別にベンチャー企業だって輸出のしやすい社会になるというお話でした。ですから、そういうふうになる。
 議会人はどうなのかというと、この民主主義の非常に大事な枠組みの中で機能している我々として、なかなかやはり国際交流や国家間の議員団会議などに参加できる機会が制約もされるんですね。そういうのをどう乗り越えて、もちろんお互いに協議すれば、このテーブルのこちらと向こうで協議すればいいことではありますけれども、見識をお伺いしたいと思います。
 それで、最近私が思いますのは、年齢も非常に、昔はやっぱり若者交流とか、あるいは生産年齢、でも、これから高齢化する社会の中で、高齢者も国際交流や、そういうですから非常に多層的な交流の中で信頼醸成というのを、じゃ、既に枠のあるASEANとかASEANプラスであるとか、そういうものがあるかなと思います。
 お願いします。
#11
○会長(鴻池祥肇君) 先生方には、お答えいただく時間があと四分ほどになりましたが、ひとつよろしく取りまとめをいただきますように。
#12
○参考人(大庭三枝君) 努力いたします。
 まず、ASEANが感じている今の安全保障の脅威ですが、南シナ海問題の現状変更についてはもちろんです。でも、それは中国だけではなくて、ASEAN諸国それぞれが軍事的な拡大をしておりますので、軍拡をしておりますので、それぞれの相互の問題もあります。
 それからもう一つ、テロの問題があります。今、テロが非常に南、東南アジアは増えておりますので、そういった問題がありまして、いずれにしても、中国だけが脅威ということではなくて、近隣諸国間の関係が非常にざわつく状況があると。ただ、それが直接の軍事的脅威とつながるかというのはちょっと疑問です。
 それから、猪口先生がおっしゃられた社会的公正の話なんですが、既にASEANは、ASEAN憲章の中で、民主主義、人権その他についてはASEANの目的としておりますので、それなりにそのコンセンサスはあるんですけど、各国の様々な実情というものがここに追い付いていないことがあるということです。
 以上です。
#13
○参考人(石戸光君) 経済の面ですと、やはり人材育成、キャパビルといったものは大変重要というふうに存じておりまして、私もASEANの方に赴かせていただいたり、いろいろ人材育成に登壇させていただくこともございますが、本当にオープンに会話がはかどりまして、そのオープンなといいますのは、ロビーであったりですとか割とオフレコ的なそういったところでの信頼育成といったものがまさにパブリック外交的で大事なことではないかというふうに思っておりまして、そして、そこにはもちろん中小の企業の皆さん、そして大企業、いろんな方々が付加価値貿易的な観点から関わっていけるようなといったことが、恐らく援助疲れ、マルチ疲れということもなく、つまりお互い貿易を拡大するということは、これは日本にとりましても、それからASEANにとりましても重要なことですと。そういった意味で、ウイン・ウインの関係というのを探っていくということがやはり重要だなというふうに拝察しております。
#14
○参考人(増山幹高君) 交流ということでいいますと、それは活発にするべきであることには間違いないと思います。
 事前の資料にもございましたように、日韓議員連盟というのが先細ってきたのでコミュニケーションが足りないといったこともありますし、そういったことは議員レベルで活動していっていただければ結構かと思います。私どもの大学でも日韓会議というものを隔年でやっておったりしますので、そういったレベルでの活動は必要だと思います。
 議員の活動につきまして、全般的なことですが、日本の議員の皆様、あるいは事務局の人たちもそうですけれども、とても忙しいと思います。総理が国会に張り付けられるということについて非常に不満を持たれていますけれども、それは逆に言うと、ほかに議員の方々も一緒にくっついているわけですから、むしろそういうところで日本の日常的な業務の処理に関わらない議員の在り方というのを参議院は参議院で考えていただければ、もう少し議会関係者のそれこそ働き方改革にもつながって、より自由な活動をしていただけるのではないかと思います。
 以上です。
#15
○会長(鴻池祥肇君) ありがとうございました。
 お三方の先生方、御協力誠にありがとうございました。
 次に、小林正夫君。
#16
○小林正夫君 民進党・新緑風会の小林正夫です。
 今日は、お三人の参考人の方、本当にありがとうございました。大変勉強になりました。
 私の方からは、三人の先生に具体的な課題についてお聞きをしたいと思います。
 増山先生の方のお話で、参議院に期待する、こういうところもお話を今日いただきました。今ちょうど参議院では選挙制度改革の論議をしているところなんですが、合区をしたり一票の格差をなくすという努力はしてまいりましたけれども、今後の参議院選挙制度の在り方について御所見があればお伺いをしたいと思います。
#17
○参考人(増山幹高君) 参議院選挙の在り方でございますが、今日お話しさせていただきました政権選択か代理選択かという意味でいきますと、参議院の選挙制度というのは代理選択の要素を色濃く持つ制度でございまして、そういった形を望ましいという合意がある場合ですと、今のような比例代表について、非拘束名簿方式で、より個人の資質や特性、活動がアピールできるような制度をより一層推進していけばよろしいかと思いますし、いや、そうではないんだと、野党もまとまって政権を狙うんだという政治体制にしていくというのであれば、むしろそういった個人的要素が入り込む選挙制度というのは望ましくないのかもしれません。
 そういう場合は比例代表制度ではなく、まあちょっと極端な話かもしれませんけれども、全国区というのもやめてしまうとか都道府県ごとの代表というものに変えるとか、そういったものも考えてもいいんじゃないかと思いますし、私個人としては、一票の平等という問題は必ずしも全てに優先されるべき問題ではないのかと思います。
 ですから、例えば参議院の院というのが地域代表をすべきなのだというのであれば、各県に一人ずつ同じ数の議員を選出するという政治制度でも可能だと思いますし、それはひっきょう、どういう政治制度を目指してどういうことを政治として実現していくかという議員の皆様、国民の合意に基づくものだと思います。
 以上です。
#18
○小林正夫君 ありがとうございました。
 大庭先生にお聞きをいたします。
 先生の御著書の中で、経済についてはインフラ整備に注目をしている、特に地域の連結性にいかに貢献するかという視点を大切にしたいと、このように述べられている御本がありました。
 アジア地域において、電力、鉄道、通信、水などのインフラ輸出がこれからもアジアで進められていくと思いますけれども、文化だとか政治体制の違いがある中で何に気を付けていく必要があるのかということと、具体的に原子力発電の建設だとか廃炉事業、これは国外の展開の今後の見通し、特にアジア地域での見通し、どのような見通しをお持ちか。
 さらには、インドに高速鉄道を造るということで日印で調印をしています。昨年、新幹線の台車の亀裂が発生をして少し社会的問題になっておりますけれども、これらの問題があるんだけれども、インドの高速鉄道の建設については順調にいくというふうに考えていいのかどうか、この辺についてお聞きをいたします。
#19
○参考人(大庭三枝君) 御質問ありがとうございました。
 今、アジアにおいてその連結性の評価というのは、ASEAN単位でも、それから東アジア、そしてもっと広く、もっと拡大したインドも含めた範囲でも非常に重要なテーマでして、ここに日本が関わっていくというのは非常に重要な点だと思います。
 ここは正直なところ、しかしながらある種の競争の側面も含んでおりまして、ほかの国々もインフラ整備にかなり、特に中国ですけれども、注力する中で、日本がどのような独自性を出していくかということだと思います。
 私は、日本が進めている高度なインフラ整備というのは大事なんですけど、ここを非常に重視しなければいけないのは、中国その他の国々のインフラ整備も今は質は上がってきているということです。中国で何度も高速鉄道乗りましたけど、全然支障、問題ありません。日本では事故の話がクローズアップされますけどそれほど問題はありませんので、もちろん日本の売りとして高度なインフラ整備というのを売りにするのはいいんですけれども、それはかなりライバルの方も相当なレベルで力を付けてきていて、それで先ほどおっしゃられたような政治体制や政治的な価値の問題が絡むと、日本はやはりそのところは譲ってはいけないので、かなり苦しい戦いを強いられるんではないかというのが私の予想です。
 それで、原子力はまだ導入しておりませんので、今のところは、それを廃炉も含めてどうだという問題は一部の国を除いてありません。フィリピンは元々あったのをどうするかという話はありますけれども、一般的にはやはり東南アジア全般で原子力については否定的な空気というのが、特に福島原発の後は強まっているというふうに考えております。
 インドの高速鉄道ですが、インドの鉄道の歴史はとても古いので、これを新しくするというのは非常に大事なんですけど、インドでいわゆる事業をやること自体の難しさというのが相当あるので、これもスムーズにはいかないけれども、もし日本が貢献できるのであれば、非常にこれは大きな、日本にとってもインドにとっても大きな機会になるのではと考えています。
 以上です。
#20
○小林正夫君 石戸参考人にお聞きをいたします。
 先ほどのお話の中で、多国間協力枠組みの在り方について述べられました。
 新しい枠組みの環太平洋経済連携協定、十一か国で結ばれました。これは、アメリカはTPP交渉、当初入っていましたけれども、十二か国の署名が、残念ながら、トランプさんが大統領になって、米国の雇用を失うと、こういう理由も述べられた上で離脱をされた。
 今回の十一か国の枠組みの協定は日本の経済とか雇用にどのように影響を及ぼしてくるのか、また、雇用が増えるとしたらどこの分野の雇用に期待できるのか、この辺についてお聞きをいたします。
#21
○参考人(石戸光君) TPP11につきまして、やはり米国が抜けてしまったということは、政治的な意味、それからアナウンスメント的には大きなインパクトというふうにはなりますけれども、ただ、その凍結項目といったものを詳しく少し見てみますと、そこまで大きな痛手になるようなものはないように感じておりまして、要は、アメリカが御主張していましたIPR、知的財産権の保護期間ですとか、そういったことを凍結しようというふうなことがTPP11ではないかなと。
 ですので、実利としましてはやはりサービス分野、これはGDPで八割、日本でも、それからアメリカでもですね。ですので、ここが雇用を失うといいますのは、再トレーニングといったことがもしなく座しているということですと、先ほどメリッツ効果と申し上げましたけれども、そういったことから競争条件が上がってしまって、結局、座していてはいけないと。ですから、勉強し続けるということがありますと、低生産のサービス部門から高生産のサービス部門の方に雇用が移っていくと。そうしますと、賃金上昇ということにもつながってまいります。それが分散的にもたらされるというようなことが一番大きな起爆剤ではないかなというふうに私は拝察しております。
#22
○小林正夫君 これで終わります。ありがとうございました。
#23
○会長(鴻池祥肇君) 里見隆治君。
#24
○里見隆治君 公明党の里見隆治でございます。
 本日は、三人の参考人の先生方、ありがとうございます。
 私は、まず、国際関係の話題に入る前に、一番最後に増山先生が御指摘をされていたイタリアの憲法改正の経緯について。
 これ、私自身も、その捉え方としては、何かその施策メニューそのものの判定ではなくて、政権そのものに対する賛成反対がそのまま投票結果に出てしまったという、そういう反省があったというような受け止めをしておりますけれども、これを、日本も全く同じ環境でということではないので、そのままうのみにはできないでしょうけれども、この日本に与える示唆といいますか、これについてどう学んでいくべきかという点についてもう少し詳しく教えていただければと思います。
#25
○参考人(増山幹高君) ありがとうございます。
 イタリアの憲法改革の経過ですけれども、既に皆様は御存じだと思いますが、レンツィ政権というものが、上院、それまでイタリアが完全な二院制と言われるような典型の国として、それが政治的な膠着状態の元凶とみなされるに至って、そこで、それを打開するために上院改革というのを起草しまして、先ほど触れましたように、権限を大幅に削減する、議員数を大幅に削減し、議員も直接選挙ではなくて地方自治体からの間接選挙にするというような形に大きく変えるものでありました。
 そのこと自体が上院で支持されたこと自体に私は驚いたんですが、今御質問いただきましたように、国民投票の方では、むしろ制度改革の中身というよりは、そこにレンツィ首相の戦略的なミスもあったと思いますが、御自身の政権の命運をその投票に懸けるといったことになってしまいまして、それはその劣勢を盛り返すための戦略だったのかもしれませんが、結果的にはうまくいきませんでした。
 そこでの劣勢に至った経過というのが、先ほどちょっと触れました五つ星運動というような欧米各地で台頭してきたある種のアンチエスタブリッシュメント、アンチ既成政党というような大きな流れでして、そこの背景には、さらにヨーロッパにおける移民問題ですとか、それに対する排外主義だとか、保守化、ナショナリズム、右傾化といったものの流れと軌を一にして、政権批判というところにだけ執着してしまって国民投票では合意を得ることにできなかったということでございます。
 そこで、私が先ほど触れましたのは、私の友人の議論でいきますと、そういったポピュリスティックな大衆扇動的な状況において、憲法改革というような本当に冷静に議論しなければいけない問題を国民投票にかけてもうまくいくわけはないだろうと。ですから、そこに至るまでに必要な、コンスティテューショナルペダゴギーと彼が言う、まあ私は憲法の市民教育と訳しておりますけれども、そういった土壌を培っていくことが重要であろうし、日本で憲法改革の議論をする際には、特に参議院の位置付けというものを議論して、そこでどういった、参議院としての政権選択を目指す政治に向かうのか、あるいはより個々の議員や政党の活動を重視する政治体制を目指すのかという議論があって、その上で憲法の制度ですとか政治体制の議論をしていくべきなんだろうというのが私の理解です。
 以上です。
#26
○里見隆治君 ありがとうございました。
 次に、石戸参考人にお伺いをいたします。
 石戸参考人から二国間FTAについて、その功罪をお話しいただきました。プラスの面、それから複数あることについてその貿易ルールが錯綜しかけているという限界について。
 私自身も過去にフィリピン、インドネシア、ベトナム等のEPAに関わったことがありますけれども、どうも二国間でやりますと、何かお互いのいいものと悪いものを交換し合ってとんとんにして、何とか交換しましょうと。そうすると、工業分野、農業分野あるいは人の移動でどうしても貸し借りができて、まあ何とか帳尻合わせはするけれども、各分野でそれなりのギャップが生じるという、そういった不満が出てきてしまうのかなと。そこへいくと、やはり今回のTPP11のように地域内でのルール作りをしていくというのは、より高次元の、そういう国際経済活動をしていくという意味ではより高次元のものになるのかなと。
 それぞれメリット、デメリットありますけれども、そういう中で、より経済が広域化していく中で今後二国間FTAがどのようになっていくのか。これは消えていくのか、あるいは違う形で残っていくのか、その辺の見通しについてお伺いできればと思います。
#27
○参考人(石戸光君) 御質問ありがとうございます。
 やはり当面は二国間FTAといったものがもちろん存続して、その中でFTAの関税が低いというメリットが享受されていくのかと思いますけれども、やはり長期的にはTPP11といったものが、ひいてはTPP12になりますか、あるいはそれがFTAAP、アジア太平洋全域をカバーする、そういった面の方向になってまいりますと、それではどこにその個別の付加価値があるのかと。
 例えば、原産地規則ということでも累積制度といいますものが、御存じのとおり、面のFTAですと地域的な原産ということが認められてまいりますので、そこに二国間ならではの更に深掘りのメリットといった、そんな競争的な効果がありましたら二国間でもメリットはございますでしょうけれども、そういったことでもない限りは、やはり将来的には面的なFTAといったものに収れんしていくのではないかなというふうに拝察しております。
#28
○里見隆治君 最後に、大庭参考人に教えていただきたいと思います。
 最後の方ではしょられていた点で私が聞きたかったのがインドの存在ですね。先ほども若干触れられましたけれども、やはり今後、人口の面では中国を抜いていくと見込まれる大国インドとどのようにその位置付けを持っていくか。ASEANも相当いろいろとお考えだろうと思います。そういう中で、私ども日本としては安倍総理が自由で開かれたインド太平洋戦略というものも掲げているという中で、このインドの存在をASEANはどう見ているか、またどう取り組んでいくか、それに当たって日本はどうそれに関与していくべきか。その辺りを、まとめて済みません、短時間で教えていただければと思います。
#29
○参考人(大庭三枝君) ありがとうございます。
 インドに関しては、ASEANからの見方としては、明らかに中国の影響力を相対化する存在としてインドの重視ということは行って、今そういう見方をしていると思います。そういう意味では、インドを入れて協力をするということにはそれなりの合理性があるのですが、一方、やっぱりインドというのは非常に地域大国でプライドも高く、それぞれ独自の世界観を持っておりますので、簡単に日本のパートナーになれるような国ではないというふうに私は思っています。
 それはASEAN諸国も同様なんですが、それでも、先ほどおっしゃられたような人口の拡大、それから経済発展、政治的な潜在性という観点からもインドは無視できない存在になって、ASEANは明らかに重視の方向ですが、インドとの付き合いにくさというのは十分に分かった上でのことであろうと思いますし、日本もその辺りは、今インドとの連携を非常に深めていますけれども、日本の思いどおりの動きをするというふうに思わずに、その辺りはある程度さめた目で、しかしながら協力を様々な形で、安全保障面においても経済面においても進めていくのがよろしいかというふうに考えています。インドは大変な国だと思っております。
#30
○里見隆治君 ありがとうございました。以上で終わります。
#31
○会長(鴻池祥肇君) 武田良介君。
#32
○武田良介君 今日は三人の参考人の先生、ありがとうございました。
 大庭参考人にお伺いをしたいと思います。
 ASEANというのは非常に面白いユニークな共同体として、歴史もありますし、発展してきたかなというふうに思っているところでありますが、今日お話には出てきませんでしたけれども、今回のテーマに関わって私がお聞きしたいと思ったのは、アジア政党国際会議、ICAPPというものがあるかと思います。たしか二〇〇〇年から始まっていたかというふうに思います。
 これも、アジア各国の与党や野党を問わず、それぞれ文化だとか信条が違う各政党が集まりながら非常に幅広のテーマで議論が行われる非常にユニークなものかなというふうに思っておりますけれども、まず、このアジア政党国際会議というものをどのように御覧になっているかということをお伺いしたいと思います。
#33
○参考人(大庭三枝君) アジア政党国際会議については、私もそれなりには見ておりますが、どちらかというと行政府、政府中心の制度というのを見ておりました関係で、余りそれほど深掘りしているわけではないということを念頭にお答えしたいと思います。
 今のような制限を掛けていても、政党間の関係というのは、政府間の関係での様々な制約というのを超えた連携が可能なものであろうと思います。そして、何よりも重要なのは、今アジアの国々は多くの場合、これはブルネイのようにほとんどもう議会がないのと等しいところもありますが、しかしながら、多くの場合、一応議会があって、選挙もやって、これはカンボジアでもそうです、選挙もやって、議員がいると。
 そういった制度を多かれ少なかれほとんどの国々が採用しているという事実でありまして、そういった観点からすると、それは政府間の関係であるとか完全に純民間の関係に加えて、政党間の関係というものを深めていくということは、先ほどの人材育成ということも絡みますけれども、様々な各国の知見というものを交換し合い、民主主義や人権の推進ということについて刺激をし合うという意味で非常に重要な枠組みであるというふうに私は考えています。
 以上です。
#34
○武田良介君 それに関わって、大庭参考人の文面読ませていただきましたけれども、日本がこれまでどちらかというと二国間の外交を展開する傾向が強かったけれども、多国間の外交が必要になってくるのではないかという趣旨のことが書かれていたかと思います。
 私もそのとおりかなというふうにも思いますし、お聞きしたいのは、じゃ、多国間で話し合うというときにどんな政治的なテーマがあるのかなということなんですけれども、今のアジア政党国際会議というものも、日本共産党としてもこれは参加して、核兵器のない世界ということも繰り返し発言もしてきました。
 必ずしも政府の立場ではないという今のお話のとおりなんですけれども、忌憚なく各国与野党問わず意見交換する中で、核兵器禁止条約という、結果的に今そういうところまで来ているわけでありますけれども、日本の利益が周りの国の皆さんの利益にもなるんだという外交が大事というようなことをたしかお書きになられていたかというふうに思うんですけれども、どんなテーマがあり、どういう外交が必要かということをちょっとお聞きしたいというふうに思っています。
#35
○参考人(大庭三枝君) 具体的なテーマにつきましては、枠組みによります。例えば、ASEAN、日・ASEANの枠組みでやるのであれば、これは非核というのは非常に容易に話すことが可能ですけれども、そこにインドや中国が加わった場合にどうなるかとか、やっぱり枠組みがたくさんあるので、その枠組みごとの設定し得る政治的なアジェンダというのは変わってくると思います。ただし、そういうような煩雑さがあっても、私は多国間の枠組みでの外交というのは今後大事になってくると思います。
 それは、短期的に言うと、やはりアメリカの政策の不透明性と中国の影響力の拡大という中で、従来日本がやってきた二国間アプローチであるとか、あるいは日米関係に非常に多く比重を置くということだけでは恐らく日本の外交が難しいのではないかと思っているわけで、アジアが自発的に自分たちの共通の課題を話す枠組みに日本が積極的に関与して、そこで何らかのイニシアチブを取っていくことが今後非常に重要だと思います。その上で、政治的なアジェンダは、当面のところ、その枠組みごとに何が話せるのかということの、そのリアリズムを前提とした上で様々なものが設定できるのではないかと考えています。
 以上です。
#36
○武田良介君 今の国際社会が非常に不安定な要素がたくさんある、今のアメリカや中国の話があるという中で、大庭参考人に最後にもう一つだけ、非常に大事だなと思ってお聞きしたいんですが、ASEANの流儀という話がありまして、やはり緩やか、まあ悪く言うと曖昧なのかもしれないですけれども、しかし、緩やかだからこそこの間長くASEANなりの発展をしてきたのかなというところもあるかなというふうに思っておりまして、最後、後半のところに分断の懸念があるという話もありましたけれども、一方でそんなやわでもないと。
 私、ASEANのこういった流儀というものは、これからの国際社会の中で、先ほどのお話じゃないですけれども、私、重要なものではないかなというふうに考えているんですが、今後どんな役割をASEAN、そのASEANの流儀というものが果たしていくというふうにお考えか、お聞きしたいと思っております。
#37
○参考人(大庭三枝君) ASEANの流儀は大事なんですけど、これはとにかく一言で言ってしまうと、その国によって都合の悪い協力はせずに、都合のいいところだけでやっていくというふうに取られかねないところがあります。
 でも、それでもってASEANが多様なスタンスを持ちながらまとまってきて、それなりの影響力を発して、周りの域外国も取り込みながら多国間の枠組みが形成されて、それが運営されてきたのも事実なんですけれども、それはそのとおりなんですが、ただ、本当に、例えばTPPにあるような、国内の規制というものを取っ払って何か実際に協力をしていくというときに、その生ぬるいやり方でいいのかどうかというのはASEANの内部からも疑義がありまして、ASEANの流儀を今後どうやって維持していくかということについては、ASEANの中でも様々な議論があるということをちょっと一つ付け加えておきたいと思います。
 その上でであれば、そのASEANの流儀というものがある種の知恵であって、多様な意見やスタンスを持っている国々をまとめ上げる一つのやり方であるということであるのは事実なので、今のところ、ASEANが中心となっているアーキテクチャーは、そのようなASEANの流儀に従って恐らくまとまっていくであろうと思います。
 それと、ASEANがなかなか強靱というか、そんなにばらけないと言っているのは、非常にASEAN諸国自身がASEANを重視しているからで、これはまた別の機会にお話をしたいと思います。
 以上です。
#38
○武田良介君 ありがとうございました。
 石戸参考人に一つだけ。
 今日のお話の最後のところに中小企業のグローバル化を後押しというお話がありました。まあこれ、中小企業でグローバルというと、確かに現状、大企業なんかが中心というふうになっていますが、ここの展望はどのように御覧になっているのかということをお聞きしたいと思います。
#39
○参考人(石戸光君) 中小企業と申しましても、やはり生産性といったことに差がございまして、そして、特にニッチな部分ですと、それこそ日本食絡みというフード産業のセクターですとか、それから製造業の中でもよりその金型の方に、要はがちゃがちゃとやるそちらに近い部類ですと、まだまだ日本の中小企業、まあ大田区がくしの歯が欠けるようにということはありますが、やはりここには伝承されたものがありますと。
 そういったものが外に出ていくことによって、恐らく生産性が、逆にその日本でのその研究開発努力といったものも刺激されていくというようなことが還流されて起きないとも限らないと、こういったことが研究者かいわいで指摘されて、また実証的にもそのことが示されて、臥竜企業、伏している竜ではなく飛び立つような、そういった中小企業というのを期待したいというところでございます。
#40
○武田良介君 時間ですので、終わりにしたいと思います。ありがとうございました。
#41
○会長(鴻池祥肇君) 石井苗子君。
#42
○石井苗子君 ありがとうございます。日本維新の会の石井苗子です。
 参考人の方々、今日は本当に有意義な御指摘、いろいろありがとうございます。三名の方にそれぞれ御質問させていただきます。
 大庭参考人は、一月三十日の日経新聞、この「提言 五つの柱」でございますが、三番目の外国人労働者の受入れに関することに積極的になること、日本への留学生を倍増させるという二点につきましては、我が党も盛んに国会でも同感を示しまして、機会があれば発言をさせていただいております。
 しかし、今日はいっぱい質問をしたいんですけれども時間の制限がございますので、先ほど武田議員の方からもASEAN流儀の御質問がありましたが、まず、大庭参考人に関しましては、これまでアジアで多国間の協力の枠組みが発展してきたというのがありますが、地域大国である日本や中国が一歩引いてASEANを運転席に据えるというような、ASEAN中心性とでも申しましょうか、そういう各国が尊重してきたことが背景にあると言えますが、そうした中で中国の、やっぱりこの一帯一路、私はちょっと脅威を感じておりまして、大庭参考人は、中国とASEAN各国の、このバイラテラルというんですか、両立の関係が基本でASEAN中心性を前提にしていないという見方も示していらっしゃいます。この一帯一路が今後アジアにおける多国間の枠組みに与える影響というのを一つお伺いしたいと思います。
 それから、石戸参考人の、このFTAでできること、非常に理想的であったんですけど、具体例の質問ができませんが、ちょっと時間の関係で。このやっぱり一帯一路の関係で、南シナ海で領有権問題を抱えているフィリピンですけれども、開発資金の提案を受けて、国内の産業団体などに関しましてはミクロ主体の影響で政治を棚上げしたというふうに指摘されていらっしゃいますが、こうした国内における様々な関係性に着目したところで、地域の平和とか繁栄を主張して実現する上で国家の限界があるかどうかをお答えください。
 最後に、増山参考人には、参議院が院として行っている外交的な活動というのがあるんですが、その重要なものに国際的な、国際会議への議員の派遣というのが掲げられていますが、その際に、派遣議員については、議院運営委員会の理事会で、各会派の所属議員数を基本に一定の算定法で会議ごとに会派割当てを決定した、その後に各会派から推薦される運用になっています。参議院が外交的な活動を責任を持って行っていく上で、こうした運用について改善するべき点があったら御所見を伺いたい。
 この三つでございます。
#43
○参考人(大庭三枝君) ありがとうございます。
 一帯一路の影響はもう当然ありまして、やっぱり一番大きなインパクトは、これまでの多国間の何らかの協力ということを考えたときに、ASEANが中心となっているものが非常に大きな比重を占めていたのが明らかに低下していくということです。
 この流れ自体は止められないと考えていて、それは、止められないというのは相対化されるのは止められないという意味でありまして、それはどうしてかというと、ASEAN諸国自身がその一帯一路を一面では非常に歓迎しているということです。やはり彼らとしては開発資金が欲しいということがあります。
 ただし、一方で、ASEAN諸国が、だったら一方的にもう一帯一路は万歳と言っているかといったらそうでもなくて、非常に懸念もあるんですね。やっぱりそれは、ASEANの中心性が失われるということについて、つまり彼らの多国間の枠組みを通じた影響力の維持ということが明らかに損なわれるという側面についての危機感。
 それからもう一つは、明らかに中国の経済的な支援の裏にある政治的な意図についての危機感です。これ、私が先ほど時間の関係で言わなかったスリランカの教訓というのがありまして、スリランカにおいて中国マネーで港を造ったはいいが、結局それの資金を返すことができなかったのでスリランカのその港の管理というのを中国の国営企業に売り渡さざるを得なかったというこの事例ですね。これは実はASEAN諸国においては非常に広く共有されていて、カンボジアですら、すらというのは失礼なんですけれども、カンボジアですらその教訓は共有されていました。
 彼らが言うには、カンボジアが言うには、我々はシアヌークビルという港は日本にやらせたんだというわけです。それはバランスを取った、中国だけにやらせない。ところが、行ってみると、その周りの経済特区は全て中国企業が握っていたりする実態があります。
 ということで、ASEAN自身は、自分たちの中心となる枠組みもASEANとしての一体性も、あるいはASEANとして影響力を持っていくことや自分たちの自立について非常に関心があるし、中国だけになびいているわけじゃないから、そういう意味では彼らがそんなやわではないんだけど、一方でそのような現実もあると。両面を見ながら対応していくことが非常に大事だというふうに考えています。
 そういう意味では、一帯一路は非常に今後のアジアの、特に経済協力に関する枠組みの在り方というのを変えていく可能性があるということです。
 以上です。
#44
○参考人(石戸光君) 私は経済の方からの観点で申し上げますと、例えばフィリピンのことを例に挙げてくださいまして、七千余りの島で、私も一年ほど国連職員時代に住みまして、あそこはバランガイといいまして、ビレッジレベルのキャプテン、要は村長さんと日本語で言いますその存在、バランガイキャプテンに一番政治的それから人々の信頼感というものがあると。必ずしも国の政府、それはもうスパニヤード、スペイン人がやってきた的に外様的に捉えていると。ですので、やはり一帯一路も、割と民衆レベルではそういった観点で、やはりお金は確かにやってくるけれども、そういった意味の国家の限界といったものはバランガイレベルでは非常に感じていると。
 ですから、やはり日本でもそういった市民レベルの草の根的な活動、それから、それこそ中小ですとか民間レベル主導の開発努力といったものが、特にフィリピンなどに関しましてはバランガイキャプテンを巻き込んでやっていく、これが一番ボトムアップ的に、一帯一路といったもの、これは防ぐことはできませんけれども、そこの中に一種食い込んでいくということでは重要ではないかなというふうに思っております。
 以上でございます。
#45
○参考人(増山幹高君) 参議院の外交ということでございますが、幾つか論点はあるのかなと思います。
 まず、そもそも参議院として外交ということをすべきなのかどうかですけれども、先ほど私の意見の中で、交流といったところから外交までかなり幅広く活動というものは捉えられるでしょうし、外交といった関係、国際関係というのは広いものだと思います。どこかで線は引かなければいけないのかもしれませんが、参議院としての、組織としての外交というものがどういうふうに位置付けられるのか、それはそれぞれの国において政治制度的にも左右されてくることなのかなと思います。
 そこで、もう一つは手続的なことでございますけれども、議院運営委員会で決定し、会派に比例してということが挙げられましたけれども、例えば今私どもの手元にある、質疑者一覧というのもいただいておりますが、議会の運営として会派ごとに発言者を割り当てていくという運営をされているわけですよね。調査会ですから勝手に発言してもよろしいのかもしれませんし、発言者が各会派に割り当てられなければいけないわけではないんですが、そういう運用をされておる。そういう議会の中で、発言権というのは非常に重要なものであって、委員長が指名しない限りは発言してはいかぬという運用があるから我々も挙手せいと言われているわけですね。それを先ほど控室で説明したりもしたんですけれども。
 そういった議会の運営の中の手続といったものは、議員の皆様方が変更されることは議員の皆様方の判断でできることですし、その中で各会派比例的に議員団を派遣してというところから、そもそも参議院の外交というものが、全体的に目的が組織的な、儀礼的なところに落とし込まれるんだとするならば、余り交流と大して変わらないのかなと。交流と大して変わらないのであれば、むしろ議員の方々が独自に交流のルートをつくって、それが促されるような国会の運営の在り方をむしろ定着させていけば、そういった時間的な余裕もできますでしょうし、もしそれが資金的な問題であるならば、資金的に集められる能力のある議員の方々がそういった外交分野で能力を高めていくということが培われて、そういう方々が参議院での外交をリードしていかれるのだと思います。
 ですから、この会派の運用といったものは、皆様方が見直すべきであると思われるならば見直されるべきでしょうし、戦後何十年間の間に培った議会運営のルールというものもございますでしょうから、その下で比例配分的な方法は見直されるんであれば見直されればいいかなと思います。
#46
○石井苗子君 非常に参考になりました。ありがとうございます。
 終わります。
#47
○会長(鴻池祥肇君) いいですか。
#48
○石井苗子君 四十九分、時間でございますので。ありがとうございました。
#49
○会長(鴻池祥肇君) 続いて、木戸口英司君。
#50
○木戸口英司君 会派希望の会、自由党の木戸口英司です。どうぞよろしくお願いいたします。今日はありがとうございます。
 まずは、石戸参考人にお伺いをいたします。
 この資料の中に、経済活動が再び分散化することが重要だと、本当にそのとおりだと思いますが、非常に難しい、分散化と違う方向、集積型ということも矢印で書いておりますけれども、むしろこのTPPやRCEP、このメガFTAの推進というのはなかなか分散化ということと逆行することではないかというイメージを持っております。経済のグローバル化、国家主権と民主政治と時として対立するわけでありまして、これが今、EUやらアメリカのトランプ政権誕生などもそういう揺らぎ。先生は臨界点ということも論文で書かれております、これが研究課題だということをおっしゃっておりますが、この分散効果、分散型ということ、分散化ということについて今どういうことが必要か、そのことを教えていただきたいと思います。
#51
○参考人(石戸光君) やはり、これは当然机の上の議論ではなく非常に難しいということは私も重々承知いたしておりまして、広義の輸送費、つまり大規模な都市に住まなければ何か得られない利便性、サービスといったものが、これがなるべく地元で済ますことができないかと。
 当然それは、いろんな段階、この機能は、例えば野球場でしたらばそれぞれ持てるかもしれないけれども、もう少し高付加価値的なものですとやっぱり都市機能集積していなければいけないという、その段階。都市には一種の第一レベルの分散、第二レベルの分散、第三レベルの分散と、そのどの規模を目指していくかということを、恐らく、私は千葉県に属しておりますけれども、その千葉県の地方の市でもやはりそのことを議論を今共にさせていただいていまして、ですから、全部を抱え込む分散ということでは当然ございませんで、やはり可能な、その地域の需要というものが取り込める、そしてそれは輸送費ということから確かに地元にあった方がいいのではないか。これがその技術的な効果と相まって、よりその臨界点といったものが動いて、より分散、親和型ということになるのでしたらば、それは恐らくTPP、RCEPという、そういう中小企業章、経済協力章といったところに大きく関わることと存じます。そこの実効性を実際の措置を伴わせていくということが非常に民主政治上も大事なことではないかなというふうに拝察しております。
#52
○木戸口英司君 ありがとうございます。
 それでは、大庭参考人に。
 先ほどお話がありました、武田委員のお話の中で、ASEANの重要性がそれぞれASEAN諸国の中で共有されているということ、後で詳しくというお話がありましたので、私もその点、ASEANの流儀ということ、先ほど、今の石戸参考人からもお話聞いたとおり、分散型ということと、今後そのメガFTAということ進む中で、非常に国民主権、民主政治と対立するということを私申し上げました。そうすると保護主義かということになるんですが、そうじゃない、やはりそこのいいあんばいということが非常に大事で、その辺でいうとASEANプラス1という、そのやり方を丁寧にやってきた、そこに実は政治があるのではないかという考え方も持ちます。
 その意味で、その重要性というところ、最初の質問になりますけれども、少し教えていただけますでしょうか。
#53
○参考人(大庭三枝君) ASEAN諸国にとってのASEANの重要性というのは、もうまさしく自分たちの力は限界があるという、そういった認識の上で、それまで培ってきたASEANのアセットを捨てるつもりはないということです。
 もちろん、いろんな形でASEANは分断されているとか、もう関心がないというようなことを簡単に言う報道は出ているんですけれども、各国の外交の柱は既にもうASEANにあって、それは非常におもしろいんですけれども、今、各国の政府の中、例えば外務省とかそういったところの省庁の中にASEAN共同体に関する部署は既にありまして、ASEAN共同体というものを推進していくこと自体は既にもう制度化されたプロセスになっているということです。
 なので、彼らにとって、もちろんほかにいろんな活動の場を求めていくということがないわけではないんですけれども、一方で、ASEANとしてASEANの一体性を守りながら自分たちの利益を確保していくというのは、もう各国の外交にとって礎の一つになっているという意味で私は重要だと言いました。
 もちろん、この中で外れるとすると、インドネシアのようなもう非常に人口も多い国、大きい国が自分たちの活路を求めて別の方向に行くという、こういったことも考えられるんですけど、実際に今のジョコ政権の初期にそのような動きを見せたかに見えた時期があったんですが、また再び、やはりASEANはASEANで重要で、その上でインドネシアがそこでどのようなイニシアチブを握れるかということがまたテーマとして浮上してきているようで、その辺り、やはりASEANがここ五十年以上培ってきた外交的アセットを守るということが彼らの外交政策の中で非常に重みがあるという意味で非常に大事だということです。
 あともう一つだけ付け加えますと、とはいえ、ASEANの特に初期の頃というのは、もう完全にエリートだけのまとまりですね。つまり、国を超えていろいろ協議しているのは結局国のトップレベルだけで、それがだんだん政府レベルになってきて、今の段階というのは、実質はまだ政府主導の組織ですが、人民志向のASEANということで、もっと人民を巻き込んだ共同体を目指すという方向性を示してはいます。これは、今はまだASEAN諸国は経済発展のためにはグローバル化に乗った方がいいという、これでもう大体まとまっているので、グローバル化の影の側面がASEAN内の格差にどう影響するかとか、そっちの方までまだアジェンダ化していないんですね。
 ところが、今後、本当にASEANの諸国の中でもっと民主化が進むようなことがあって、そしてグローバル化にもっともっと深く関わっていくと、恐らく遠い将来、少なくとも中期的、長期的には、ASEANの中でもグローバル化そのものをどう考えるかということが出てくると思います。そのときでも、やはり東南アジアという地域の基盤でもって、彼らの共通の利益を図る枠組みとしてのASEANは重要になっていくだろうというふうに考えています。
 以上です。
#54
○木戸口英司君 ありがとうございます。大変よく分かりました。
 それでは、増山参考人にお伺いいたします。
 非常に重いテーマをいただいたと思っております。それで、先ほど、一票の格差の問題、違う考え方があるんではないかということをおっしゃいました。これは、本当に真剣に考えなければいけない問題だと思います。
 その中で、今衆議院は政権選択選挙という制度で、参議院もややそこに似通ったような制度になっている中で、例えば県代表的な考え方。これはアメリカの上院もある程度そういう考え方になっているわけですけれども、その中でもやはり政党選挙、政権選択選挙という中にある、これはまた議会活動との兼ね合い、考え方なんだと思いますが、またそこに比例代表、先生がおっしゃるのは個人的な立場でと、政党色をなくすのか薄めるのかと、そのような兼ね合いもある。
 その中でいうと、今の制度の中で、代理選択ということを強めながら、また議会活動としてもそういう立場を強めていくということが一つあり得るのかなという感じがいたしますが、ここ、またどこか接ぎ木をしてもということを私たちもよく考えるんですが、そういう中で、そういう今私が申し上げたような考え方と、あとは、諸外国でやはりどこか参考例を求めたくなる悪い癖があるんですけれども、増山参考人、こういうところ少し勉強してみたらどうだというところ、事例などがあればお知らせいただきたいんですが、いかがでしょうか。
#55
○参考人(増山幹高君) 事例というのは具体的なのはございませんけれども、先ほど制度的な観点から日本の状況というのを位置付けますと中間的なところに位置するというお話をさせていただきまして、そこがどちら付かずの状態になっているところが有権者に対するフラストレーションの根源ではないかということで、政権選択的な要素を強めるのであるならば、一番目指すべきところは一院で小選挙区で二大政党といったような形をする議院内閣制というものが目指す方向でしょうし、いや、むしろそうではない、今の会派ごとの意見を述べるというような慣行をもっと更に強めて、より小会派でも発言権を維持していくべき制度であるならばということですと、比例代表選挙の要素を強め、個人的な議員の代理選択的要素を強める、できれば行政権も立法権も分かれるというような政治制度を目指すというのも選択肢だろうと思います。
 その中で、日本の特殊性というのをちょっと考えていただきますと、先ほどスライドでお見せしましたように、小選挙区比例、衆議院の方は小選挙区を導入しましたけれども、衆議院の方でさえ実際には政権選択的な状況には余り至っていないんですね。小選挙区を導入してもなかなか進まないところであって、たまにといいますか、その時々の政治主導とかいったことが国民にアピールすると選択肢が二つに絞られる、その結果、政権交代が起こるというようなことで、選挙制度の結果なのかどうかはちょっと定かでないというところが日本の中途半端さの原因かなと思っておりますので、むしろ議員の皆様、議会で議席を占めて国民の代表として活動される方々には、どちらの方向を目指すべきなのかというのをお考えいただきたいと。その際に参照すべきは、少し非現実的かもしれませんけれども、両極端なモデルというのを考えていただけるとということでございます。
#56
○木戸口英司君 ありがとうございました。
#57
○会長(鴻池祥肇君) 江崎孝君。
#58
○江崎孝君 立憲民主党の江崎と申します。
 まず、増山先生にお伺いしたいんですけれども、お話の最後に、代理選択であるならば参議院の今の権利を放棄する必要があるというふうにおっしゃったんですね。
 今の現状で参議院が持っている権利、例えば放棄をする、代理選択のためにはどういう放棄をした方がいいのか、どういう内容を放棄した方がいいのか、どんなふうにお考えなんでしょうか。
#59
○参考人(増山幹高君) 極端な話で申しますと、立法権を共有するというところが、行政権側からすると、参議院でも与党によって、多数によって支持されねば日常の業務が支障を来すということですから、参議院にも多数が存在することを確保しなければ政権が成り立っていかないという状況になってしまいます。
 ですから、極端な話ですけれども、例えば予算の審議につきましては、衆議院で予算審議が終わって衆議院で可決されたならば、参議院でよほど実質的な修正、代替案が提示されない限りはもう衆議院の議決を国会の議決としてみなすとして、参議院では予算審議をしないというようなことが運用上できるか。
 現実の憲法の規定としましては三十日間参議院が何もしなければ衆議院の議決が国会の議決となるという規定ですから、それを運用上、参議院の審議をはしょるということはちょっと非現実的かもしれませんけれども、やろうと思えばできなくないことですし、その間、参議院が審議を実質的に留保するということを与党側、行政権側が確保できるならば、参議院にはむしろ自由な議論をしてもらっても何も支障がないわけですね。
 それであるならば、予算の日程に固執、執着しないような年間の国会の日程というのを参議院は自由に考えてできるわけで、そうであるなれば、大臣を委員会に張り付けるとか、そういった確保ですとか、日常の今まで培ってきたような議会運営の方式とは異なる方式を参議院でも運用することはできるかもしれません。
 例えばの例ですけれども、権限の放棄というのはそういったことを指しておりまして、イタリアの議会の例を出しましたのは、イタリアも実質的に上院の議決を必要とせず国会の意思決定をするように変えるという案だったわけですね。そういったことが世界中で議論されてきている背景には、一般国民の政治的な非効率性に対する不満ですとか政治に対する不満というものがそういった意思決定の非効率性に対して向けられていて、各国がそれに対して制度改革の案を提示してきているということで、それは日本も検討をすべきことではないのかなとは思っております。
#60
○江崎孝君 もう一度増山先生にお伺いしますけれども、先ほど、文化とか伝統とか、二院制の日本が、世界が二院制やっているんですけれども、僕は日本的な二院制があってもいいと思うんですね。そう考えたときに、先生御自身の思いですけれども、じゃ、参議院は今おっしゃったように代理選択という世界をやっぱり目指していくべきなのか、いや、それとも今の二院制の中で、現実的に今どんどんどんどん参議院も政権選択のそういう渦中の中に取り込まれていっているというか、そういう世界に入ってきていますので、どちらの方を先生は支持をされますか、難しいと思いますが。
#61
○参考人(増山幹高君) 少しずるいお答えかもしれませんが、私は患者を診る立場でいけば医者みたいなものですから、漢方で処置しましょうというのか外科的な手術をしましょうが、どちらでも処方箋は御提案できます。ですから、日本の国として政権を争うような政治体制を望ましいとお考えであれば、そのような政治制度とそのような政党の凝集性の高いシステムをつくり上げるという方策は考えられますし、いや、むしろそうではなくて、個々の議員の自発性なり独自性を望ましいと合意調達すべきであり、例えば、私個人的には日本は国の規模、人口規模や経済規模を考えれば二つの院でしっかり議論をするという政治体制は別に合理的だと思うんですね。その整合的なシステムを考えるに当たって、では、国の決定をするに当たって政権を争って物事を決めるべきなのか、あるいは社会の様々な意見を吸い上げるようなシステムをつくるべきなのか、もし後者であるならば代理選択の制度にかじを切った方がいいんではないかと思います。
#62
○江崎孝君 ありがとうございました。
 石戸先生にお伺いします。もう時間がなくなってきたので、大庭先生まで行かないと思います、済みません。
 先生、TPP11の前のアメリカが入ったTPP、これには賛成ですか。
#63
○参考人(石戸光君) 基本的にはやはりマーケットが拡大するという意味で、それから大国ですし、賛成というふうになってしまいます。
#64
○江崎孝君 グローバル化って我々も大分議論しました、貧困が広がるんじゃないか、あるいは雇用が奪われるのではないか。EUと違って、東アジアの、ASEANの場合というのはやっぱり国の中に相当まだ貧困があるし、国と国との間も相当違う中で、仮にASEANも含めたTPP11が、そうじゃないんだけれども、こういう自由貿易協定が入っていくとすると、更に国家間の格差、貧困の格差が広がるというふうに、このメリッツ効果はそうなるわけですよね。本当は先生、このメリッツ効果を期待されているんですか。
#65
○参考人(石戸光君) まさにその逆でございまして、メリッツ効果がそのままですと起きてしまいますので、その現状を改めるために中小企業の章ですとかそれから経済協力章といったものを非常に活発化させて、そしてサービスといいますのは地方密着型でございますので、やはり地方密着の資源を掘り起こすということを中小企業ということの支援と併せてしていくということが少しでもメリッツ効果的なことが分散型になっていくのではないかという、そういう意味、趣旨でございます。
#66
○江崎孝君 安心しました。
 メリッツ効果の最後のところに、企業海外進出の規模分布の御参照というところで、中小企業章、経済協力章云々という、ここがなければやっぱり相当厳しくなってくる。ここが、TPP11も含めて今後どうできるのか。
 しかし、これは結構時間が掛かることですよね。そうなると、先に自由貿易が入ってしまうと、その前に国家間競争にさらされてしまうという危険性はございませんか。
#67
○参考人(石戸光君) まさにそのことを名立たる経済の学者も指摘をしておられますので、そこを、恐らくASEANがまさにそうでありまして、ステップ・バイ・ステップという形で何らかその国内の措置を伴わせるべきだと私も実は思っておりまして、それは農産物、それから食品産業等が特にそういったことに関係がもちろんございます。
 ですので、時間が掛かるものでございますので、その時間を、ずっと未来大丈夫だから保護がありますということではないまでも、そのステップ・バイ・ステップにそういった措置を自由化を少しずつ進めていきながらも、可能な部分は輸入だけじゃなくて輸出もできるのですというリトレーニング的なことにも目を向けていただく、そういった措置が必要だというふうに思っております。
#68
○江崎孝君 もうちょっと時間がありました。
 大庭先生にお聞きします。
 先生の最後に、自由で開かれたインド太平洋戦略という中で、中国を包摂しながらどう進めるかという、こういう話をされたんですね。非常に難しい話だと思うんですが、それでもやっぱりやっていかないといけない部分があると思います。どういう戦略がありますか。例えば、手段としてどういうことを考えられていらっしゃいますか。
#69
○参考人(大庭三枝君) 私も、正直なところ、中国を排除した何かのシステムがこの地域で永続的だと思えないので、中国の包摂というのをあえて、矛盾も少し今の時点では生じるのかもしれませんが、言っています。
 今のところ私にも具体的にどうすればいいのかということの決定打はないんですが、今年一月の施政方針演説の中で安倍首相が、インフラ整備について中国と協力できたらということをインド太平洋戦略を言及したすぐ後にお話ししたんですね。
 もちろん、これはインド太平洋戦略に中国を包摂するという話ではないんですけれども、去年から日中関係が以前の非常に最悪な時期からは改善されている中で、本当にそのときに両国でできる協力を積み重ねていくことというのをずっと進めていくことが恐らく重要なんだろうと思いますが、全体のそのシステムに私は、中国は最終的には包摂せざるを得ないというか、包摂する形でないと難しいのではないかと思う反面、今は、今日私がお話しした多層的な地域アプローチを進める中で、中国との連携ということも念頭に置きながら一歩一歩進めていくしかないのかなというふうに思っています。そういう意味では、RCEPも非常に大事な方策の一つであろうと考えています。
#70
○江崎孝君 終わります。
#71
○会長(鴻池祥肇君) 伊波洋一君。
#72
○伊波洋一君 沖縄の風の伊波洋一です。
 三名の参考人の貴重な御意見、ありがとうございました。
 大庭参考人のお話で、一九六七年に発足したASEANが、冷戦の反共連合として発足したASEANが冷戦後のリベラルの時代に、中国やベトナム、豪州を含めて、アジアの多国間国際関係の中心として成長してきたことがよく分かりました。
 資料もいただいて、今後の発展も含めるとASEANが急成長しているということはGDPでもよく分かりますし、昨年のこの調査会でも、東南アジアにおいてインドネシアが購買力平価において日本をいずれは超えていくであろうというふうな御指摘もありました。そういう意味では、その上で、大庭参考人の御意見として、日本は中国を排除せずASEANとの関係を深めていくことが重要であるというふうに提言していたと思います。
 そこで質問ですけれども、日本は外交、国際関係のトップに日米同盟を据えています。ASEANでは、中国との関係において、米国とのこのような軍事同盟の関係というのはある意味で薄まっている面もあるのではないかと思いますが、ASEANは米国をどのように見ているんでしょうか、安全保障の関係の中で、そしてまた、日本をどのように見ているのでしょうか、もし御意見があれば伺いたいと思います。
#73
○参考人(大庭三枝君) 御質問ありがとうございました。
 ASEANの本質は、反共連合でもあったんですけれども、一方で、非常に関係の悪かった原加盟国間の対立の緩和でもありました。だから、その知恵を冷戦が終結した後にASEANの外にあった国々に適用してきたというのが恐らく正しい理解ではないかと思います。
 その上でちょっと申し上げますと、ASEAN諸国と協力していくならば、日本が中国と対立しているのは非常にまずいということなんですね。それは、中国はもちろんいろんな形で警戒すべき相手でもあるけれども、ASEAN諸国にとっては、警戒すべき相手であるとともに、いろんな利益を与えてくれている相手でもあるということなんです。両面あるということです。
 そうすると、完全に旗幟鮮明にはしたくないし、できない中で、余りにも日本が、例えばインド太平洋戦略を、もうこれは対中連携、対中同盟だというようなことを言ってしまうと、恐らくASEAN諸国は乗れなくなるということに表れるように、中国とうまくやることとASEANと協力していくことというのは、これは必ずしも矛盾しないというふうに考えています。というか、そうだと思って、ASEAN諸国は、むしろ余りそこの対立が先鋭化するのを恐れていると思います。
 アメリカですが、中国がこのように影響力を拡大する以上、アメリカの影響力はやはり地域に残ってほしいというふうに考えている国が多いと思いますが、他方で、民主主義や人権といった問題でアメリカと対立している国もあります。そして、正直なところ、アメリカの東南アジアへのアプローチが余り繊細ではないので無用な対立を生んでいるところもあって、その辺りを日本が、いや、アメリカだけに協力しているわけではなく、我々はあなた方の事情も分かっていて、だけどやはり長期的にはリベラルオーダーは大事だよということをささやいてその方向に導いていくのには、日本は非常に大事なプレーヤーであると考えております。
 そういう意味で、アメリカは、もちろんみんながASEAN諸国が嫌いだとかそういうことを言っているわけではないんですけれども、アメリカ自身も東南アジアではかなり微妙なプレーヤーで、覇権国でありますので、多くの国が、力の維持は求めているけれども、アメリカのアプローチをそのまま持ってこられるのには拒否反応があるということは念頭に置いておいていた方がいいと思います。
 以上です。
#74
○伊波洋一君 今、日本の政府はASEANシフトといいますか、中国からも、ASEANのこれから発展しようとしているラオス含めて、企業自体がそこへ行こうとしている面もあると思います、ほかの国々も含めてですね。
 ところが、日本は常に先ほど申し上げた日米同盟というものが頭の中にもあるので、経済のことに関して一応やってはいるんですけれども、政治重視の流れが多いんですが、ASEAN共同体の中では、やはりこれは経済中心の、あるいは多国的国際関係という話し合う場、まさに信頼醸成装置的な役割の方がとても歓迎されるんじゃないかなと思うんですが、日本のアプローチとしてはどういうふうであるべきでしょうか。
#75
○参考人(大庭三枝君) ASEAN共同体自身が非常に多面的なものでありますので、経済共同体が大事なことは、これはASEAN諸国にとっても日本にとっても非常に大事です。日本の企業のいわゆる生産ネットワークの拡大のことを考えたら、東南アジアが地域経済統合をすることは非常に重要ですから、経済共同体はもちろん重要です。
 でも一方で、ふだんどうしても看過されがちなのが、おっしゃるとおりで、ASEANが果たしてきた信頼醸成の仕組みの要であるというところで、そこは非常に大事でありまして、私がASEANを非常に重視すべきだと言うときには、もちろん経済共同体の側面もありますが、そういったASEANが果たしてきた政治、安全保障上の役割というもの、こちらを絶対忘れるべきではないということなんですね。
 ですので、恐らく議員とは意見がその辺は一致しているのであろうと思います。
#76
○伊波洋一君 ありがとうございました。
 石戸参考人にお伺いしますが、石戸参考人は中国の一帯一路を評価されているようにも思いました。一帯一路では、貿易費用や効率化という観点からアジアに大きな影響を与えるのではないかというような指摘だと思いますが、やはり今後、中国が力を入れて取り組むこの一帯一路というものがアジアをどのように変え、また、日本はどのように関与すべきか、御意見を伺いたいと思います。
#77
○参考人(石戸光君) 私も、一帯一路のその覇権的なヘゲモニックな動きには非常に警戒をASEANの皆様と同様に覚えるものでございますけれども、止めることができないのであればどうすべきかというような観点を持っておりまして、であれば、やはり中央に、それこそ内陸の資源がパイプラインで中央集権的に吸い取られるというような一帯一路を目指すということではなく、各道の駅的な、一帯一路的なところでの道の駅的なものに、そういった地域的な集積といったものが分散的にもたらされていくということを起こしていくべきではないか。そこには、日本の国内の、それこそ大分モデルで一村一品ですとか、そういった国内総合開発という、この日本の歴史のあります、この国会でも取り上げてこられました、そういったノウハウを輸出できるのではないかと、そんなふうな観点を持ってございます。
#78
○伊波洋一君 ありがとうございました。
 最後に、増山参考人にお伺いしますが、御意見の中に、政権選択のない我が国は国民の間にフラストレーションがたまっているというような御指摘がありました。国際的なそれぞれの国々において、日本と比べてどの程度政権選択がない、まあ我々はよく知ってはいますが、ほかの国はどのような形でそうして政権選択がよく起こっているのか、もし御意見があればお伺いしたいと思います。
#79
○参考人(増山幹高君) 世界的に見てということでございますけれども、例えば、これは非常に典型的な例でございますけれども、イギリスのような国ですと、小選挙区で議会を構成しと。イギリスも上下、庶民院と貴族院という二院でございますが、貴族院の方は実質的に権限が抑制されていると。実質的な一院制を採用しております。で、その庶民院の方が小選挙区に基づいて選出されるということで、そういうところでは選挙区における二者択一に近い状況が実現していて、そういう国々においては政権選択的な状況が、より近い状況が実現しているということでございます。
 ただ、実際イギリスがそれほど二大政党制かといいますと、地域的に、日本の自由民主党と同じ名前の政党がございまして、訳せばですけれども、そこの、地域的には選挙区でその二大有力候補者による競争というのは実現していて、国レベルでは三党に近いような国もあります。
 そういう意味では、現実的に一番その政権選択的な政治制度に近いのはニュージーランドのような国で、ただ、ニュージーランドも比例代表という部分を加味した選挙制度を採用しておりますので、そういった国々では政権選択的な選挙が行われていると言えますし、アメリカのように権力分立の政治制度におきましても、選挙制度的に小選挙区を伝統的に採用しておりますと二つの選択肢が国民に提供されるということで、定期的に二つの勢力が戦うという状況になっております。
 それを鑑みますと、日本は、先ほどの資料で御覧いただきましたように、ほぼ戦後の長きにわたって自民党に匹敵するほどの政治勢力というのが存在しなかったわけですね。唯一、二〇〇九年ぐらいが、有権者にこの政権か違う政権かというオルタナティブを提示して、有権者が政権を選ぶというような選挙が実現しました。それは小選挙区を導入した成果でもあろうかと思うんですが、その状況は長く続かず、スライドを見ていただければ分かりますが、二〇〇九年に自民党がかなり負けたときの総得票数よりも今は下回り続けているんですけれども、それに対抗するだけの勢力はなく、現在、自民党が政権に居続ける理由は、自民党が世の中から支持されているというよりは、それに代わる選択肢が提示されていないと。まあ議員の方々いらっしゃる前で申し訳ありませんけれども、野党がまとまらないがゆえに自民党政権が続いていると言っても仕方がありません。
 ですから、小選挙区、衆議院の方に関して言いますと、選挙制度的には政権選択を実現する可能性は高いんですけれども実現できていない。そこにどういう方向性を選ぶべきなのか。まさに議員の皆様にお考えいただいて、どちらを選択していくべきなのか。まとまるならまとまる、分裂して皆さん独自にやるなら独自にやるといった土俵を整えて、日本の政治をリードしていっていただければなと思うところです。
 以上です。
#80
○伊波洋一君 どうも貴重な御意見ありがとうございました。
 終わります。
#81
○会長(鴻池祥肇君) 以上で各会派一巡をいたしました。これより自由に質疑を行っていただきます。
 質疑のある方は挙手を願います。
 宮島喜文君。
#82
○宮島喜文君 どうも今日は三人の先生方、ありがとうございました。
 私は、二つぐらい、参考人の先生にお聞きしたいと思います。
 一つは、大庭参考人にお聞きしたいんですが、日本の課題ということで最後にまとめていただきました。多層的な地域アプローチをというお話でございました。
 その中で、幾つか挙げられた中で、自由で開かれたインド太平洋という言葉が出てまいりました。ここで、確かにまだ先行き不透明であるがポテンシャルは存在するというお話の中で、三つの柱という形で出てまいりましたけれども、これはある意味で条件というのか、という形でおっしゃっているのかというふうに理解したわけでございますが、その一つは、地域の大国間の連携ということがございまして、地域の秩序維持、これは前提であろうと思っているところでございます。
 そういう中で、先ほどからも話が出ておりますが、日米豪だけじゃなくて中国というもの、これもやっぱり存在価値が、存在というか、無視できないだろうと思うわけでございまして、はてなというところがそうなのかななんて見ていたところでございます。これについての御意見を少しお聞きしたいことがございます。
 それからもう一つ、これは私がちょっと、あっ、ここまで考えるのかというふうに思ったところがございます。それが二点目の、アジアとアフリカという、アフリカという言葉が出たわけでございますけれども、このアフリカに関してASEAN諸国はどのような見方をしているか、先生の段階でよろしいんですが、教えていただけたらと思いますし、また、ASEANとアフリカを考えた場合、まだまだ社会的なインフラではアフリカの方がまだ整っていないという、こういうような格差と申しますか違いが、大きな違いがある。そういう中で経済、これは支援ではなくて連携ということになるときに、どういうところが大切なことになってくるんだろうかなというところをちょっと気になったわけでございます。
 この二点について、先生、教えていただけたらと思います。
#83
○参考人(大庭三枝君) 御質問ありがとうございました。
 インド太平洋は私が提唱したわけではなく日本政府が提唱しておりますので、あくまで私の見方ということなんですが、というのは、自由で開かれたインド太平洋についての言及は増えてはいるものの、まだ大きなピクチャーというのが、概略は示されているんですけれども、しかしながら今のところどういうようなことを進めていくのかということについて、外務省の国際協力局からの資料はあるんですが、まだまだ手薄なんですね。
 なので、今、インド太平洋戦略をつかむためには、首相や外相その他の方々のいろんなステートメントから抽出してどういうことを狙うものなのかということをつかんでいるという段階で、私がレジュメの中で言った三つの柱というのは、そこからつかんだ三つの柱ということで、一つは、どうやら地域大国間連携による地域秩序維持ということを考えているのではないかというのが一つの柱で、そのときにコアになるのが日米豪印ではないかと。二番目が、アフリカとアジア、インド洋と太平洋の連結性を深めて更なる経済的な発展をシナジー効果で実現するという、こちらですね、これはインフラ整備なんかをするんだということを盛んに言っている。三番目が、これは海洋秩序も含めた、ルールに準拠した国際秩序を実現するということ。
 これを、この三つが今のところインド太平洋戦略の中の柱ではないかというふうに考えたということでありまして、条件というよりは、今の日本政府が言っているインド太平洋というのは、非常に幅広い中で、三つの柱というのがあるのではないかという私の考察を述べたのがこのレジュメになります。
 私がこれを、ちょっと危険性もあると思いながらも、これはもし中国に対して対抗するんだというような色彩が非常に強くなると、私は危険だと思う反面、ポテンシャルがあるというふうに考えているのは、明らかに今世界の政治と経済のグラビティーが変わっているということで、つまり、アジア太平洋で語れることはまだたくさんあるんですけど、やはり先ほども何度か言及があるインドの台頭ということを考えたときに、やっぱりアジア太平洋単位だけではない、もうちょっと西に寄った形で地域というものあるいは世界秩序の中心を考えるということも非常に重要になってきているという世界的な流れがある中で、インドは私はすごく大変な国だとは思うんですけれども、かといって、そのインドを視野から除いて何かを考えるということだけでは多分済まない世界があるという中で、インド太平洋が重要になってくるんだろうという、そういう意味でのポテンシャルなんですね。だから、日本政府がこのような広い視野でいろんなことを語るというのは、それはポテンシャルがあるだろうというのは、そういった世界におけるグラビティーの変化ということを念頭に置いています。
 そして、アフリカなんですけど、恐らくここにアフリカが入ってきて、二〇一六年に安倍首相がTICADのYでこのインド太平洋について明確に演説をした際に、やはり何でこれがTICADというアフリカ支援の枠だったかというと、やはりこのインド太平洋戦略自体が日本の外務省の国際協力局の影響力が非常に強い中で、やっぱりこれから日本が協力していく先というのは、もちろんASEAN諸国の中にも従来型の日本のODAを供与する余地はあるんだけれども、アフリカが非常に重要で、アフリカが重点領域として浮上しているということが恐らくあるのではないかと考えます。
 それと、実は戦略的な発想というのはちょっとずれているというか、必ずしも一緒じゃないんだけど、それも全部一緒にしているのが恐らくインド太平洋戦略ではないかというふうに考えていて、そうすると日本にとっては、アフリカというのは、恐らく今後日本がODAその他を含めて様々な手段で経済的な発展と政治的な安定に寄与し得る非常に重要な、あるいは寄与しなければいけない非常に重要な地域であるということで、このインド太平洋の中にアフリカが入っているということだと思います。
 ただ、ASEAN諸国としては、ちょっとアフリカは、正直なところ、私が聞いた範囲だと、ちょっと広過ぎて、むしろASEANの目線からすると、なぜインド太平洋と語ったときにアフリカの支援まで入っているのかということで、その視野がちょっと広がり過ぎて日本のインド太平洋戦略自体がつかみにくいという、そういうようなある種の実感を、この間たまたまASEAN諸国に出張したときにかいま聞きました。
 つまり、非常に幅広い内容を含んでいて、アフリカ支援も入っているんだけど、それがゆえにどこに焦点があるんだということと、それから、アフリカとアジアとあるけど、じゃ、ASEANの位置付けはということを彼らはすごく気にするんですね。インド太平洋の中でのASEANは、中心線はどこにということで、これは日本政府の方でも反応して、やはりASEANはその中の連結点であるということを強調する方向になっているようですが、そのように、ASEAN側からすると、アフリカ支援が入っていることが非常にちょっと視野が広がり過ぎているという印象を持っているようですということです。
 以上です。
#84
○宮島喜文君 ありがとうございました。
 石戸先生に一つ、時間もございませんので一言お聞きしたいんですが、石戸参考人に、日本が主導してやる、資料にも書いてございますが、ハード面とソフト面がこれから必要なんだという、これ、ソフト面というのは非常になかなか分かりにくいというところがございます。
 先生に、ちょっとそのソフト面のイメージをちょっと語っていただきたいということを、短い時間で申し訳ございませんが、お願いいたします。
#85
○参考人(石戸光君) 例えば、インフラで道ですとか港湾ですとかできますと、必ずそれは運営、オペレートしなければいけない。その体制を、特にその国間のコネクティビティーという議論もございますけれども、それがつながるときには、国と国の間で、例えば基準認証ですとかそういったところで必ず合わせなければいけない。その合わせるというときに非常に分断されて、我々はこれだから、以上というふうになってしまいがちだというふうに聞いております。
 そうではなくて、その統一の基準認証というのをFTA等を通じましてすり合わせていく。これは、恐らくサービス貿易という上物、ソフト面、それから並んで基準認証の規格といったものの統一という、非常に地味なことではございますけれども現場では非常に重視されるような項目になっておりまして、それをどうやってオペレートしていくのか。ビルド・オペレート・トランスファーなのか、オウンした上でのなのか、そういった新幹線的なことも、今までどういうふうにビルドしたところがトランスファーしてオペレーターに行くのか、そういったソフトのことでございます。
#86
○宮島喜文君 ありがとうございました。
#87
○会長(鴻池祥肇君) 石井苗子君。
#88
○石井苗子君 ありがとうございます。
 日本維新の会の石井苗子です。
 これまでの質問は前もってこちらを勉強させていただきましたが、今日の御教授いただいたことにつきまして、石戸先生、先ほど来からメリッツ効果という点につきまして、私もメリッツ効果を石戸先生が提唱していらっしゃるんだとばっかり思っていたんですけれども、非常に理想的な理想論が書いてございますけれども、問題解決の具体論につきましてちょっとお教えいただきたいんですけれども。
 これ読んでいますと、生産性の低い企業は退出を余儀なくされるという、まあ弱肉強食のような感じがいたしますが、しかしながら、生産性の高い企業のみが生き残っていくことになると、そこに人が集まるんだからいいではないかというような感じなんですけれどもね。先生の描かれたグラフを見ますと、まさしくトランプ大統領などは、それでいくと自国の産業が倒れてしまうといって、アメリカ・ファーストと言ったわけです。
 では、具体的に、先生、日本の農業でございますけれども、フリートレードで安いものがたくさんスーパーマーケットに並ぶのは結構なことでございますが、今平均年齢が七十歳以上だということで、日本の農業はもういつも政治課題として挙げられるわけですね。こうなると、フリートレードで日本の農業が生き残っていくために、私は一つアイデアがあるんですが、問題解決の具体論として先生は何か御示唆がございますか。
#89
○参考人(石戸光君) 御指摘ありがとうございます。
 メリッツ効果といいますものは、そのままほっておいたのではこうなってしまうということでございまして、ただ、そこに、日本政府の試算、TPPの試算という、以前にございました。そちらも実は、単に失業をしてしまって退出を迫られて終わってしまう、そうではなく、今までパパママショップ、最近ニュースでも取り上げられておりますけれども、中小のサービスの生産性が非常に低いといったところを、ITといったものを活用して、なるべくITの活用でもって生産性を上げていくのだという議論が実は日本の国内でも必要になってきていると、そのことと併せ持った議論になっておりまして。
 例えば、具体的に日本の農業ということですと、新潟県に、私も新潟に実は生まれまして、実は地元の耕作放棄地といったところが非常に多いというのは懸念しておるのですが、そういったところで農協の青年団のトップの方とお話ししますと、やっぱり生産性上げていかなきゃいけないけれどもどうしたらいいんだ、商社に何もつてがないんだけれどもと、そうおっしゃっておられるんです。
 ですので、私は、そういう方との新潟県での会話の中から思いましたのは、やはり地元の青年団が組織する農協の生産性を上げるというときに、じゃ、どうすれば具体的に実際に生産性が上がるかというときには、恐らくまず名刺交換というところが最初なのではないかと。
 つまり、物流の商社さんに、日本のそれこそ魚沼産のコシヒカリといったものをなるべく高付加価値で輸出するというときにも、それはブランド化するにはどうしたらいいんですか、三年、五年掛かるんですよねということを遠巻きでおっしゃられるので、そういったところに是非商社の方が足を運んでくださって、まずは名刺交換から始めて、その農業輸出といったことがどういう可能性があるか、それで、タイに実際輸出しているイチゴの農家さんがございますけれども、そういったところがどうして成功できたのかといったその事例をお話をしていただくようなことがあれば、新潟の魚沼産のコシヒカリのようなものでも、もしかしましたら物流ということを商社さんといったところと連携していく。
 非常に初歩的で基礎的ではございますが、どうしたらいいのか実際分からないとおっしゃっておられましたので、そういったところが私は具体的なその方策ではないかなというふうに思っております。
#90
○石井苗子君 生産性を上げるという、要するに、高齢化した農業のその期待の中で生産性を上げるには、ITとかICTとかおっしゃいますけれども、なかなかそういうふうに一長一短に動くものでもないと思うんですね。
 この生産能力のないものは撤退を余儀なくされるということは、今の農業が、日本が置かれている立場だと思います。農協のシステムの問題というふうにおっしゃいますけれども、それはそれですが、私の質問は、生産性を上げていくにはどうしたらいいかということについて何か御所見がございますでしょうか。
#91
○参考人(石戸光君) 例えばITということは非常に大規模というふうに捉えられている部分もございますでしょうけれども、なるべくダウンサイズで、タブレットを使って、そして遮光のシステム、要はビニールハウスというものをなるべく温度管理ということができるような、タブレットでできますよと。
 気候がこういうふうになっていったときには、これミャンマーの事例でございますけれども、どういった高山性植物がどういう気温では育つかといったことを、植物工場と言ったらちょっと大げさではございますけれども、タブレット、プラス少しのビニールハウス的なものを使えば、そのことによって生産性が二倍程度に上がる可能性があるという予測結果を目にしたことがございまして、そういったことを中国とミャンマー、あるいはその境目、あるいはタイの国境の辺りの、タイですとロイヤルプロジェクトといったものが、国王がやっておられたものですけれども、そういったところに日本の農業技術というものが行っておったと。その流れの延長として、最近で、はやりの言葉でございますけれども、ICTを活用したような、生産性を上げるといったことが可能なのではないかなといった、そういった一つの提言でございます。
#92
○石井苗子君 私は、そのやり方のアイデアはあると思うんですが、現場に行ってそのやり方を定着させる人がいないので生産性が上がらないんだという考えがあります。その中に入っていって、実際に農業をやっている人にITの能力や機能がなければいけないわけですね、そこの中継ぎをする人が今いなければ、アイデアだけが先行して、現場は高齢化で悩むんだと思います。
 ありがとうございました。終わります。
#93
○会長(鴻池祥肇君) 他に御発言もないようでありますので、本日の質疑はこの程度といたします。
 お三方の先生方には、長時間貴重な御意見をお述べいただきまして、誠にありがとうございました。大変有意義な調査を行うことができました。調査会を代表いたしまして、厚くお礼を申し上げます。ますますの御活躍を祈念申し上げます。ありがとうございました。(拍手)
 本日はこれにて散会いたします。
   午後三時四十一分散会
ソース: 国立国会図書館
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