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2018/06/28 第196回国会 参議院 参議院会議録情報 第196回国会 法務委員会 第19号
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2018/06/28 第196回国会 参議院

参議院会議録情報 第196回国会 法務委員会 第19号

#1
第196回国会 法務委員会 第19号
平成三十年六月二十八日(木曜日)
   午前十時開会
    ─────────────
   委員の異動
 六月二十七日
    辞任         補欠選任
     岡田 直樹君     こやり隆史君
    ─────────────
  出席者は左のとおり。
    委員長         石川 博崇君
    理 事
                中西 健治君
                山田  宏君
                若松 謙維君
                有田 芳生君
    委 員
                こやり隆史君
                福岡 資麿君
                丸山 和也君
                元榮太一郎君
                柳本 卓治君
                山谷えり子君
                櫻井  充君
                小川 敏夫君
                仁比 聡平君
                石井 苗子君
                糸数 慶子君
                山口 和之君
   国務大臣
       法務大臣     上川 陽子君
   副大臣
       法務副大臣    葉梨 康弘君
   大臣政務官
       法務大臣政務官  山下 貴司君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        青木勢津子君
   政府参考人
       法務省民事局長  小野瀬 厚君
       法務省入国管理
       局長       和田 雅樹君
       国税庁課税部長  山名 規雄君
       厚生労働省政策
       統括官      酒光 一章君
    ─────────────
  本日の会議に付した案件
○政府参考人の出席要求に関する件
○民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律
 案(内閣提出、衆議院送付)
○法務局における遺言書の保管等に関する法律案
 (内閣提出、衆議院送付)
○参考人の出席要求に関する件
    ─────────────
#2
○委員長(石川博崇君) ただいまから法務委員会を開会いたします。
 委員の異動について御報告いたします。
 昨日、岡田直樹君が委員を辞任され、その補欠としてこやり隆史君が選任されました。
    ─────────────
#3
○委員長(石川博崇君) 政府参考人の出席要求に関する件についてお諮りいたします。
 民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律案及び法務局における遺言書の保管等に関する法律案の審査のため、本日の委員会に、理事会協議のとおり、法務省民事局長小野瀬厚君外三名を政府参考人として出席を求め、その説明を聴取することに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#4
○委員長(石川博崇君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
    ─────────────
#5
○委員長(石川博崇君) 民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律案及び法務局における遺言書の保管等に関する法律案の両案を一括して議題といたします。
 両案の趣旨説明は既に聴取しておりますので、これより質疑に入ります。
 質疑のある方は順次御発言願います。
#6
○中西健治君 おはようございます。自由民主党の中西健治です。
 約四十年ぶりの相続法制の改正ということでありますけれども、私、地元の国政報告会などでよくこれについてお話をしますが、関心が極めて高いということではないかと思います。配偶者居住権の創設、遺言書の保管、さらに介護をした方への、どのように報いるかというようなことについて、全て関心は高いんですが、特に配偶者居住権について大きな関心が寄せられているなということを感じます。
 私、いつも申し上げるのが、高齢社会の中で相続も大量に発生していると、そこで大変増えているのが高齢の独り暮らしの女性であると。なぜ女性かというと、平均寿命が男性に比べて七歳ぐらい長いということもありますし、それに加えて、結婚する年齢が男性の方が女性より二歳ぐらい高いということですので、男性は遅く結婚して早く亡くなるということでありますから、これ足し上げて、女性が平均して九年、十年一人で住むということになってくるわけですので、住む場所の確保とそして生活費、これに対して何らかの手当てをしてくれと、こういう関心が高いのだろうというふうに思います。
 そこで、まず大臣に、この約四十年ぶりの相続法制の改正の背景や意義についてお伺いしたいと思います。
#7
○国務大臣(上川陽子君) 相続法制につきましては、ただいま委員の御指摘のとおり、昭和五十五年に改正が行われて以来、四十年改正をされない状況がございました。当時は、配偶者の法定相続分につきましての引上げ、また寄与分制度の新設等の改正がなされてきたところでございます。
 この間、我が国の平均寿命、先ほど御指摘ありましたけれども、この四十年間だけ取ってみましても、男性の場合は約七歳、女性の場合は約九歳ということで、その四十年でも女性の方が平均年齢が高くなって、長くなっているということでありまして、その上で社会の少子高齢化が進展するという状況が起きているところでございます。
 高齢者間の再婚なども増加しているなど、相続を取り巻く社会経済情勢については大変大きな変化が生じているというふうに考えております。特に、平均寿命が長くなったことに伴いまして、相対的に相続開始時における配偶者の年齢も高くなっているということで、先ほど、独り暮らしの女性の高齢者の皆さんが増えていると、そういう実感をお話しいただきましたけれども、高齢の配偶者の生活を保護する必要性については大変高まっているというふうに認識をしております。
 今回の相続法の見直しにおきましては、残された配偶者の生活に配慮するという観点から配偶者の居住の権利を保護するための方策等を設けるほか、遺言、これを利用しやすくするとの観点から自筆証書遺言の要件緩和などを内容としておりまして、まさに社会経済情勢の変化等に対応した制度に改めるものというふうに考えております。
#8
○中西健治君 ありがとうございます。
 相続が骨肉の争いの争族、争う族に、親族になってしまうと、こういう悲しいことにならないようにするためにも、遺言書というのは大変重要なツールなんだというふうに思っております。
 この間、イギリスから帰ってきた友人と話をしましたけれども、イギリスでは遺言書を書くのが本当に当たり前である、みんな書くよと、こういうふうに言っておりまして、やはり自由社会においては、自分の財産を処分するのは自己の意思に基づくんだと、こういう意識が徹底しているということなんではないかと思います。
 調べてみたんですけれども、イギリス、アメリカ、ドイツでは遺言相続が原則であったり、若しくは法定相続に優先するとされております。フランスでは法定相続が原則ですけれども、贈与や遺言によってそれを修正しており、遺言が活用されていると認識しておりますけれども、翻って我が国ではどうなのか、遺言相続の状況について伺いたいと思います。
#9
○政府参考人(小野瀬厚君) お答えいたします。
 まず、自筆証書遺言でございますが、自筆証書遺言の作成件数そのものに関する統計データはございませんが、家庭裁判所において検認された遺言書の件数については統計のデータがございます。その件数は年々増加しておりますが、平成二十七年におきますと約一万七千件でございます。死亡された方が約百三十万人でございますので、これと比較すると約一・三%にすぎないという状況でございます。
 また、公正証書遺言の作成件数につきましては、これも年々増加傾向にございますが、平成二十七年は約十一万件作成されております。死亡者数との比較といたしますと約八・六%にとどまっていると、こういう状況でございます。
#10
○中西健治君 今の答弁にありましたとおり、一・三%ですとか八・六%ということですので、やはり利用状況は、活用状況というのは極めて低調であるということなんではないかと思います。
 今回の法改正の中で自筆証書遺言の保管制度というものが創設されて、これは重要な一歩となるということではないかと思いますけれども、保管ということだけですと、やはりやや受け身であるという感じがいたします。遺言相続を推進するために今後何をしていくのか、それについてお伺いしたいと思います。
#11
○政府参考人(小野瀬厚君) お答えいたします。
 遺言は、遺産の分配方法等に関する被相続人の最終意思を明らかにするものでありまして、その意思を尊重し、遺産の分割をめぐる紛争を防止する観点から、遺言の利用を促進することは望ましいと考えられます。また、今回の法案におきましては、自筆証書遺言の方式緩和、あるいは今御指摘ありました自筆証書遺言の保管制度の創設という自筆証書遺言に関する改正が盛り込まれておりますが、遺言の利用を更に促進するためには遺言制度そのものを国民に十分周知する必要があると考えております。
 法案成立後の周知におきましては、自筆証書遺言に関する改正内容のみならず、公正証書遺言の制度についても周知を行って、自筆証書遺言と公正証書遺言がそれぞれのニーズに応じて活用されるように、パンフレットやポスターの作成、配布、さらには全国各地における講演会などを通じて遺言制度についての積極的な周知を行ってまいりたいと考えております。
#12
○中西健治君 配偶者居住権は、先ほど申し上げたとおり非常に関心が高いというふうに思っております。住む家が必要ですし生活費も必要だという中で、この配偶者居住権の創設というのは高く評価できるものじゃないかというふうに思っておりますが、二点、これについて、新しい制度、新しい概念ですのでお聞きしたいと思います。
 一点目は、この配偶者居住権の評価、価値ということに関するものでありますけれども、この配偶者居住権、建物の耐用年数ですとか平均余命ですとか、こうしたことによって価値が決まってくるということでありますけれども、あと、法定利率なども関係するということですけれども、法制審で示された簡易な方法というのは、法定利率三%で将来の価値から現在に引き戻すということで、配偶者居住権付きのまずは所有権の価値を出して、そして普通の所有権からそれを引いたものが配偶者居住権になるんですよと、こういう説明になっております。
 これ、私がちょっと手元でこの法定利率三%を使って計算してみますと、これもうすぐ明らかなんじゃないかと思うんですけれども、配偶者、夫に先立たれた、妻に先立たれた配偶者が若ければ若いほど平均余命というのは長くなりますので、この配偶者居住権の価値というのが高まるということになってまいります。
 この三%で割り引くというのをやってみると、一・〇三の二十四乗というのをすると二を超えてくるんですね。掛け算を、ずっと掛けていくと二を超えてくるということになりますので、一〇〇を二を超えたもので割るということになると五〇を下回るということになります。これが配偶者居住権付きの所有権ですから、残りの配偶者居住権が五〇を上回るということになります。法定相続分の二分の一も上回るということになってきますけれども。
 そうした場合に、この配偶者居住権を得る方はほかの相続人に対して法定相続分を超える部分、超過部分というのを支払わなければならないのか、これについてお伺いしたいと思います。
#13
○政府参考人(小野瀬厚君) お答えいたします。
 配偶者居住権の価額の算定方法につきましては様々な方式が検討されておりますけれども、委員御指摘の簡易な方式も含めまして、どのような方式によりましても、配偶者居住権の存続期間が長期にわたる場合などには、御指摘のとおり、配偶者居住権の価値が配偶者居住権の負担の付いた居住建物及びその敷地の価値を上回る場合があり得るものと考えられます。
 したがいまして、例えば、相続人が配偶者と子供であって、遺産が当該居住建物及び敷地のみであるような場合には、御指摘のとおり、配偶者居住権の価額が遺産分割における配偶者の法定相続分である二分の一を上回ることがあり得るものと考えられます。
 配偶者居住権は無償で居住建物を使用及び収益する権利でありまして、財産的価値を有するものでありますので、配偶者が遺産分割においてこの配偶者居住権を取得する場合におきまして、配偶者居住権の価値がその配偶者の遺産分割における取り分を超えているときは、やはりその配偶者はほかの相続人に対し、その差額について代償金を支払わなければならないこととなります。
 しかしながら、このような場合でありましても、配偶者は、例えば居住建物の所有権を取得する場合と比べますと、低額な代償金を支払うことで居住建物に居住することができることとなりますので、そういったものを考えましても、配偶者居住権を取得するメリットはあるものと考えられます。
#14
○中西健治君 メリットはあるとは思いますが、ちょっと厳しめかなというふうにも思います。
 フランスの民法では、同じように、配偶者に対して、相続時に住んでいた住居の終身居住権というのが認められております。その価値が相続分を超える場合であっても配偶者は超過分についての償還義務を負わないと、このようにされております。
 じゃ、先ほど言った二十四年で、平均余命二十四年あったら法定相続分を超える可能性があるということですので、実際何歳のときなのかというのを簡易生命表を見て調べてみますと、女性が平均余命二十四年になるときというのは六十五歳なんですね。六十五歳の高齢に差しかかる女性に対して、法定相続分を超えるんだからその部分を払えというのはちょっと厳しめかなというふうに私自身は感じておりますけれども、これは今後の状況を見ながら考えていかなければいけないことではないかというふうに思っております。これが価値に関わるところ、一点目であります。
 もう一点が、配偶者居住権の登記についてお伺いしたいと思います。
 改正案では、所有者が配偶者に登記をさせる義務を負うと、こうされております。ただ、現実問題としては、登記をしないままに住み続けるというケースが多数発生するかなと、このようにも思っております。そうしますと、物件が売却されてしまった、物件が売却されて、物件を購入した第三者が、いや、配偶者居住権が付いていることは知らなかったと、こういうケースもあり得ると思いますが、未登記で居住中の配偶者というのは対抗できるのか、これについてお伺いしたいと思います。
#15
○政府参考人(小野瀬厚君) お答えいたします。
 配偶者は、配偶者居住権の設定の登記を備えなければ、その後に配偶者の居住建物をほかの相続人から購入した者などの第三者に対して配偶者居住権を対抗することができないこととしております。したがいまして、設定の登記がされていなかった場合につきましては、その第三者が配偶者居住権が存在していることを知っていた場合でも、配偶者は原則として当該第三者に対して配偶者居住権の取得を主張することができないこととなります。
 もっとも、例外的に、その第三者におきまして、配偶者居住権の登記がされていないことを主張することが信義則に反するとか、あるいは権利の濫用に当たると認められるような場合には、配偶者居住権の登記がされていなくてもその第三者からの明渡し請求を拒むことができることにはなるというふうに考えられます。
#16
○中西健治君 今の御答弁ですと、第三者が配偶者居住権が存在していることを知っていた場合でも、知っていた場合でも登記をしないと対抗できないということになっておりまして、これもやや厳しめなところがあるかなというふうに思います。
 これ、非常に難しいと思うんです。非常に難しいというのは、配偶者居住権というのは無償で住み続けられる権利でありますから、そこはその権利を野方図に広げていいのかどうかというところで、バランスをどこに取るかという問題だと思います。先ほども、そうなんじゃないかと思いますが、ここら辺は一つの論点として、やはり今後に向けても頭に入れておかなければいけないところじゃないかというふうに思っております。
 その上でですけれども、高齢者の保護という観点から、権利の上に眠る者は保護に値せずということはよく分かっておりますけれども、ただ、これ、高齢配偶者の保護のためにということでつくられる権利でもありますので、登記以外にも何らかの保護策、救済策、これは考えられないんでしょうか。
#17
○政府参考人(小野瀬厚君) お答えいたします。
 この配偶者居住権につきましては、御指摘のとおり、登記以外としては、例えばその建物の引渡しを対抗要件とするということも考えられるところでございます。これは建物の賃借権と同様のものでございます。しかしながら、この配偶者居住権が無償で建物を使用することができる権利であるということから照らしますと、やはり第三者に権利の内容を適切に公示すべき必要性が高いものと考えられます。また、配偶者居住権につきましては、相続開始時に配偶者がその建物に居住していたことがその成立要件とされていますために、建物の引渡しを対抗要件として認めたといたしましても、その建物の外観上は何らの変化もないこととなりまして、公示手段としては極めて不十分になるものと考えられます。
 このようなことから、配偶者居住権については、建物の引渡しを対抗要件として認めることとはしておらないものでございます。
 このように、配偶者居住権につきましては、原則としてその設定の登記がされなければ第三者にその権利を取得することができないことになりますので、この法律案が成立した場合には、その点も含めて、改正内容について広く国民一般に対する周知に努めてまいりたいと考えております。
#18
○中西健治君 先ほど申し上げましたとおり、そもそも登記をさせる義務というのが所有者にあるということであります。そして、その所有者が登記もさせないままに売却をしてしまうということは、この配偶者というか、この配偶者居住権の保有者に対しては法的債務の履行義務違反ということじゃないかと思うんです。そのしわ寄せがこの配偶者、配偶者居住権の保有者に来るというのはいささか、いささかと疑問のあるところでもありますので、やはり救済策というのは考えていく、その周知なのかもしれませんけれども、していく必要があるんじゃないかなというふうに思います。
 所有者不明土地問題でもクローズアップされたとおり、登記というのが一般の人にとっては、なじみのないとは言いませんけれども、当たり前のものにはこの国、我が国ではなっていないということではないかと思いますので、そこで対抗できるかできないかというのは大きな問題になるということじゃないかと思いますので、この配偶者居住権については、より広く知らしめる形、これを取っていかなければいけないんだろうというふうに思います。せっかくつくった制度でありますので、そのようにお願いしたいと思います。
 そして最後に、相続人以外の介護などの貢献について、介護等の労務を提供した人を相続人ではないという形式要件で排除せず、その貢献に対して正当な評価を行うという今回の改正を評価したいと思いますが、請求権者は親族に限定されていますが、そちらについて、その背景、理由等についてお伺いしたいと思います。
#19
○政府参考人(小野瀬厚君) お答えいたします。
 この特別の寄与の制度を新設することにつきましては、法制審議会における調査審議の過程において、相続をめぐる紛争の複雑化、長期化を懸念する指摘がされていたところでございまして、そのような事態をできる限り防止するためには請求権者の範囲を限定する必要性が高いと考えられます。
 また、この制度は、被相続人と近しい関係にある者が被相続人の療養看護等をした場合には、被相続人との間で報酬の契約を締結するなどの対応が類型的に困難であることに鑑み、これらの者の利益を保護することを目的とするものであることでございますので、請求権者の範囲を限定することには合理性があると考えられました。
 こういった点を考慮して、特別の寄与に関する請求権者の範囲は被相続人の親族に限定することとしたものでございます。
#20
○中西健治君 終わります。どうもありがとうございました。
#21
○若松謙維君 公明党の若松謙維です。
 いわゆる終活ブームという言葉がありますが、生前に身辺整理を行うための、いわゆる預貯金、不動産などの自分の財産ですね、これを誰に渡すかという、それを明記する遺言書、これを作る方が増えていると、こういう状況でございます。それに伴う様々なトラブルを避けるための今回の法改正ということで、私も税理士でもあり行政書士でもありますので、本当に待ちに待った改正でもあります。
 まず、配偶者の居住の権利についてお伺いをいたしますが、今回、いわゆる配偶者居住権、配偶者短期居住権、これが新たに設けられました。この配偶者居住権、配偶者短期居住権、このような制度は諸外国に立法例があるのかどうか、お尋ねをいたします。
#22
○政府参考人(小野瀬厚君) お答えいたします。
 まず、配偶者短期居住権に類する制度といたしましては、例えばフランスの一年間の無償の居住権、あるいはドイツの三十日権と呼ばれるものがございます。
 フランスの一年間の無償の居住権でございますが、これは、生存配偶者に相続開始から一年間、住宅及びそこに備え付けられた動産を無償で利用する権利を認めるものでございます。
 また、ドイツの三十日権でございますが、これは、被相続人の世帯に属してその者から扶養を受けていた配偶者ら家族に、相続人に対して相続開始から三十日間、住居及び家財道具を無償で利用する権利を認めるものでございます。
 他方、配偶者居住権に類する制度といたしましては、例えばフランスの終身の居住権、あるいはドイツの先位・後位相続制度等がございます。
 このフランスの終身の居住権でございますが、これは、生存配偶者に、終身の間、住居に対する居住権及びそこに備え付けられた動産の使用権を認めるものでございます。この権利は、配偶者が受け取る相続権の価額から控除されるものとされておりますが、先ほど御指摘もございましたが、この居住権及び使用権の価額が配偶者の取得すべき相続財産の価額を超える場合であっても、その差額の償還義務を負わないこととされております。
 あと、ドイツの先位・後位相続制度は、例えば、被相続人が配偶者を先位相続人に指定し、子を後位相続人に指定することができるようにするものでございまして、この場合、先位相続人である配偶者は相続財産の使用及び収益の権限のみを有し、処分権を有しないこととなるため、相続財産は処分されることなく後位相続人に相続されることとなると。つまり、配偶者には配偶者居住権を遺贈し、子供には居住建物の所有権を遺贈した場合と類似の法律効果が生ずると、こういうものでございます。
#23
○若松謙維君 ということで、諸外国にあるということが分かりました。
 それでは、ちょっと質問飛ばしますが、ちょっと具体的な質問に移らせていただきます。
 特に賃貸住宅に居住していたケースでありますけれども、配偶者居住権の対象となる建物、これは被相続人の財産に属した建物ということになっております。いわゆる賃貸住宅に居住していた場合は配偶者居住権を取得することができないと、そうなっておりますけれども、当然、配偶者の居住権を保護すべきではないかと考えます。
 そこで、このような場合の配偶者の居住権を保護する方法があるのかどうか、お尋ねをいたします。
#24
○政府参考人(小野瀬厚君) お答えいたします。
 御指摘のとおり、配偶者居住権は被相続人の財産に属した建物について成立するものでございますので、いわゆる持家の場合を想定した規定でございまして、被相続人が賃貸物件に居住していた場合については成立はいたしません。
 もっとも、その配偶者は、遺産分割において建物の借家権を取得すれば、それに基づいて建物に住み続けることができるわけでございます。配偶者が被相続人とともに借家に居住していた場合で相続開始後も引き続きその借家での生活を続けたいと希望しているときは、遺産分割においても、通常その配偶者が借家権を取得することとなるものと考えられます。
 すなわち、相続人間で借家権の帰属を含めて遺産分割の協議が調わない場合には、家庭裁判所の審判によってその帰属が決められることとなりますが、民法上、遺産の分割は、遺産に属する物又は権利の種類及び性質、各相続人の年齢、職業、心身の状態及び生活の状況その他一切の事情を考慮してしなければならないとされておりまして、配偶者が借家に居住していて今後もそれを希望していると、こういった事情は、遺産分割における財産の帰属を定めるに当たりまして重要な考慮要素になるものと考えられます。また、その建物の賃借権につきましては一般的に財産的な価値が乏しいことからしますと、その建物の所有権を取得する場合と異なりまして、その価値を圧縮する手段を設ける必要性も乏しいと考えられます。
 こういったことを考慮いたしまして、賃貸物件に居住していた場合については、この法案上は特段の措置を講じていないというものではございますが、先ほど言いましたような遺産分割における適切な処理というものが期待できるものと思っております。
#25
○若松謙維君 ということは、そこの借家の方が亡くなられた、御主人がですね、で、奥様がいらっしゃる。大家さんが、契約しているのは亡くなった御主人なので出ていけと、そういうことは言えないということを確認したいんですが、そういうことですね。
#26
○政府参考人(小野瀬厚君) 借家権ももちろん財産でございますので、亡くなったからといって当然に消滅するわけじゃございませんので、その大家さんの方から出ていけとは当然には言えないということでございます。
#27
○若松謙維君 分かりました。
 それで、特定寄与制度についてお尋ねをいたします。
 被相続人が生前に献身的な介護を受けた、また自分の子供以上にお世話になった人であっても、家族などの法定相続人でなければ遺産を相続することはできないと、こういう制度になっております。現在は、生前贈与が、被相続人があらかじめ遺言書を記しておかなければならないところでありますが、この場合ですが、被相続人が急死したような場合には対応できません。
 ですので、今回の改正では、被相続人の長男の妻など介護に尽力した方を想定していると思われますが、請求の対象となる人、範囲はどこまで認められるか、また、被相続人に対する寄与について争いが生じた場合、寄与度をどのように認定するのか、簡潔にお答え願います。
#28
○政府参考人(小野瀬厚君) お答えいたします。
 この特別の寄与の制度を新設するに当たりましては、相続をめぐる紛争の複雑化、長期化を懸念する指摘がされていたところでございまして、そういったことを防止するためには請求権者の範囲を限定する必要性が高いと考えられます。
 また、この制度は、被相続人と近しい関係にある人は被相続人との間で報酬の契約を締結するなどの対応が類型的に困難であると、こういったことを考慮して、これらの者の利益を保護することを目的とするものでありますので、そういう点からも請求権者の範囲を限定することには合理性があると考えられます。こういったことから、請求権者の範囲は被相続人の親族に限定することとしたものでございます。
 この特別寄与料の額の算定方法につきましては、おおむね、現行の寄与分制度において相続人が被相続人に対する療養看護等の労務を提供した場合と同様の取扱いがされることとなると考えられます。
 現行寄与分の実務的な、代表的な考え方によりますと、寄与分の額は、第三者が同様の療養看護を行った場合における日当額に療養看護を行った日数を掛けて、乗じて算定された額を基準といたしまして、この基準額に裁判官が相続人と被相続人との関係等を考慮して決定する裁量割合を乗じて算定することとされておりまして、特別寄与料の額の算定に当たりましても、こういった考え方が参考となるものと考えられます。
#29
○若松謙維君 分かりました。
 それでは、遺言書についてお尋ねをいたします。
 今回の改正ですけれども、基本的に、従来ですと全て自書であるということが求められるということで、私も本当に大変ハードルが高い今制度だなと実感しております。それが今回の改正で、パソコン等のいわゆる目録添付ですか、等で非常に負担を軽減することができたということは非常にいいことだと思います。
 現制度が全て自書ということで、これはまた偽造を防ぐメリットもあるわけでありますが、当然、この遺言書は自書、また目録も自書で署名押印をするということでありますが、病気等の身体的な事情で自書できない場合、どのような配慮があるか、お尋ねをいたします。
#30
○政府参考人(小野瀬厚君) 委員御指摘のとおり、この法律案による改正後も自筆証書遺言につきましては、財産目録以外の部分は全て自書して署名押印する必要がございますし、また、財産目録にもその各ページに署名押印をしなければならないこととなります。
 その病気等の身体的な事情によって自書することができない方の場合には、まず、公正証書遺言の方式によることが考えられます。この方式によりますと、公証人に対する手数料などの費用は発生いたしますが、遺言者の自書を要せずに遺言することができることとなります。また、署名のみは自分ですることができるというような場合でありますれば、秘密証書遺言と、こういう方式によることも考えられます。
 したがいまして、委員御指摘のような場合には、こういった方式を利用していただくということになろうかと思います。
#31
○若松謙維君 それと、これ大臣にお伺いしたいんですが、この改正法案では自書証書遺言、これを法務局で保管できるようになると、非常に大きな前進だと思います。是非、また今後、所有者不明土地、また空き家問題対策、こういったところにも役に立つと思いますので、新しい制度、是非周知をして、遺言書の作成、法務局での保管を促していただきたいと考えますが、大臣のお考えはいかがでしょうか。
#32
○国務大臣(上川陽子君) 委員御指摘のとおり、この法務局におきましての遺言書の保管制度、これは相続をめぐる紛争防止、さらには相続登記の促進に寄与するということでございまして、また同時に、自筆証書遺言の作成の促進にも資するものというふうに考えております。
 今回の遺言書保管法案の成立後につきましては、広く制度につきましての周知活動を行う予定でございます。ホームページでの情報提供、また御指摘いただきましたような所有者不明土地問題の解消に向けた相続登記促進のための広報、これらとの連携を行うなどして、集中し、徹底した広報の実施に努めてまいりたいと思っております。
#33
○若松謙維君 今週の日曜日、麹町宿舎に私住まわせていただいておりますが、この近所の方にはがきが届きました。法務局からということで、いわゆる法務省管轄支局国民訴訟通達センターで、いわゆるオレオレ詐欺というんですかね、この変形でありますけど、公的機関の名前を使われると恐らく慌てまして、かなり、もうあしたまでという、これは考えさせない、手段が非常にこうかつになっております。
 そういうことで、こういうことがないように、単なるその、ホームページとかをどうも見ているとやっていただいているんですが、やっぱりテレビで映してやる、NHKのですね、政府広報とかこういうのを通じて、政府絡みのこういう、オレオレ詐欺ですか、やっぱり徹底していただきたいと思うんですが、それについてはいかがでしょうか。
#34
○国務大臣(上川陽子君) 法務省の名称等を不正に使用した架空請求のはがきによりまして実際に被害が発生していることにつきましては、極めて遺憾だというふうに考えております。
 これまで、定例記者会見で私から本件について発言をしてまいりましたけれども、さらに法務省ホームページや公式ツイッターでも注意を呼びかけております。また、消費者庁と警察庁に協力要請いたしまして、同庁のホームページ等でも注意を呼びかけているところでございます。さらに、報道機関に対しましても報道していただくよう協力をお願いしておりまして、一部の報道機関におきましては既に本件を取り上げていただいているところでございます。
 今後におきましては、政府広報等の広報媒体、これを積極的に活用することも含めまして検討をいたし、引き続き関係機関と協力して積極的な情報発信に努めてまいりたいというふうに考えております。
#35
○若松謙維君 是非、先ほどの報道機関、民放だと思うんですが、やはり一番影響力のあるNHKにもしっかり訴えていただくことをお願いを申し上げまして、質問を終わります。
 ありがとうございました。
#36
○櫻井充君 おはようございます。国民民主党・新緑風会の櫻井充です。
 本題に入る前に、成人年齢の引下げについてまだちょっと残っていたので、積み残し案件があるので、改めて質問させていただきたいと思います。
 未成年取消し権については、十八歳まで引き下げられたので、未成年取消し権というわけにはいかないんだろうと思うんです。ですが、この間の参考人の方からの資料にもあるとおり、未成年、二十歳以下の方とそれから二十歳をちょっと超えた方の被害というのは全然違ってきていて、成人年齢引き下げられましたが、例えば馬券を買うとか飲酒とか喫煙とか、これは二十歳に据え置かれたことを考えてくると、二十歳に据え置くべきものというのはあるんだろうと思っているんです。
 そういう意味合いで、十八歳以上二十歳未満の方々に対して、未成年取消し権と同じような、例えば若年者取消し権みたいな、そういうものを付与することというのは検討していただけないものでしょうか。
#37
○政府参考人(小野瀬厚君) お答えいたします。
 ちょっと委員も御指摘されましたとおり、未成年者に対して契約権の取消し権が付与されておりますことは、民法上、成年者と未成年者との最も重要な差異の一つでございます。したがいまして、成年年齢を引き下げるということは、これは十八歳、十九歳の者が未成年者取消し権を行使することができないとすることにほかならないものでございますので、成年年齢を引き下げることとしながら、十八歳、十九歳の者がその年齢を理由に取消し権を行使することができるとすることは困難であると考えられます。
 したがいまして、未成年取消し権そのものではないけれども年齢を理由とした何らかの取消し権という御質問とは存じますが、その内容がやはり年齢を理由とした一律の取消し権ということになりますと、やはりそこは、今申し上げました成年年齢の引下げといったこの趣旨から鑑みますと、なかなか難しいのではないかなというふうに考えているところでございます。
#38
○櫻井充君 公職選挙法で十八歳の方々が選挙権を付与されることになります。これは新たに権利を受け取ることになりますが、結局のところは、この成人年齢の引下げによって権利を失うものもあるんですよ。この権利を失うことということがすごく大きな問題になってきているわけですから、これを今のような形に、しゃくし定規に、これは成人だから、成人なのでこういう考え方なんだと断つのは、私はちょっと違うんじゃないんだろうかと。権利があったものを権利を失うような制度になるんですよ。これは非常に大事な権利なんですよ。
 役人の方だとそういう答弁になるんだろうと思いますが、大臣、改めて、二十歳に据え置いたものもあるんですよ。二十歳に据え置いたものもあれば十八歳に引き下げたものもあるんです、あの当時の、この議論で。そういう意味合いで、この若年者に対して、経過措置でも構わないので、何らかの手当てをしていただくようなことは考えていただけないんでしょうか。
#39
○国務大臣(上川陽子君) ただいま民事局長から答弁をしたとおりでございますが、十八歳、十九歳の者に一律に取消し権を付与するということにつきましては困難であるということでございます。ただ、取引内容の不当性等に着目して契約の効力を否定する制度を設けることなどにつきましては否定されるものではないというふうに考えておりますので、何らかの制度的な対応が必要と考えられる場合、今後のことでありますけれども、適切に対応してまいりたいというふうに考えております。
#40
○櫻井充君 ありがとうございます。是非検討していただきたい。
 繰り返しになりますが、ある権利を有していたものを権利を失うことになるので、果たしてそれが適切なのかどうかということを改めて考えていただきたいと、そう思います。
 それでは、今日はちょっと遺贈について質問させていただきたいと思いますが、まず最初に、事実婚の場合には、この方は配偶者と違うので、結果的には、相続を受けられるという、一般的なその相続ではなくて遺贈という概念になるということでよろしいんでしょうか。
#41
○政府参考人(小野瀬厚君) 御指摘のとおり、事実婚の方につきましては相続人とはならないものでございますので、亡くなった方の財産を承継するということになりますと、その一つの方策としては遺贈というものが考えられるところでございます。
#42
○櫻井充君 でも、今は、例えば両方とも子供さんがいらっしゃって、それでお互いに、婚姻届出すといろんな問題が起こってくるので、実際ずっとこうやって生活されている方もいらっしゃいますよね。こういう方に対しては、今回は議論にはならなかったんでしょうか。
#43
○政府参考人(小野瀬厚君) お答えいたします。
 相続の制度は、財産の承継でございますけれども、そのほかに債務の承継というものもございまして、そういう意味では、例えば相続の債権者ですとか、そういったいろんな第三者にも関わる制度でございます。
 そういった意味で、相続人の範囲、相続、その財産を承継する者の範囲というものがどうなのかというものにつきましては、ある程度明確になるということが必要でございます。事実婚の方という者が相続権を有することとした場合には、果たして事実婚であったかどうかといったことが一つの紛争の対象にもなり得るということもございまして、そういった点からは、やはり明確性という意味で、事実婚の方の相続権を認めるということにつきましては慎重な検討が必要ではないかというふうに考えられるところでございます。
#44
○櫻井充君 今回の、相続に関して法律の改正が行われたのは、社会的なバックグラウンドが随分変わってきたから、その社会的変化に対応して今回の法改正が行われたんだというふうに理解しています。そういう意味合いでは、事実婚という方々は増えてきているので、それについてもう一度お伺いしておきたいのは、議論になったのかなっていないのか、そこだけ教えていただけますか。
#45
○政府参考人(小野瀬厚君) お答えいたします。
 今回の法案の案の作成の基になりました答申の法制審議会の議論におきましては、事実婚の方を相続人にするかどうかという点につきましては議論はされておりません。
#46
○櫻井充君 そうすると、この方が例えば財産を遺贈されたということになると、税制上はどのぐらいの税金が掛かることになるんでしょうか。
#47
○政府参考人(山名規雄君) お答え申し上げます。
 お尋ねのケースにつきまして一般論としてお答えさせていただきますが、まず、遺贈を受けた者が個人の場合には、その遺贈により取得した財産は相続税の課税対象となります。したがいまして、事実婚のパートナーの方が遺贈により財産を取得した場合にも、贈与税ではなく相続税の課税対象ということになります。
#48
○櫻井充君 そうすると、相続税の課税対象になるとすると、これはどの人と同じ相続税の対象になるんでしょうか。つまり、配偶者の場合と、それから子供さんたちの場合と違うと思いますが、どの人と同じような相続税の対象になるのでしょうか。
#49
○政府参考人(山名規雄君) お答え申し上げます。
 遺贈により財産を取得した者が個人の場合には、民法上の配偶者か事実婚のパートナーの方であるか否かに関わらず、その遺贈を受けた財産につきましては相続税の課税対象となります。
 ただし、遺贈により財産を取得した者が民法上の配偶者に該当する場合には、配偶者の法定相続分又は一億六千万円のいずれか大きい金額に対応する税額を控除する配偶者の税額軽減を適用することができますが、事実婚のパートナーに該当する場合には適用することができません。
 また、相続税の基礎控除額は、相続税法上三千万円プラス六百万円掛ける法定相続人の数により算定することとされておりますが、遺贈により財産を取得した者が民法上の配偶者に該当する場合には、相続税の基礎控除額の算定上、法定相続人の数にカウントされますが、事実婚のパートナーに該当する場合にはカウントされないといった違いがございます。
#50
○櫻井充君 ちょっとよく分からないんですけど、そうすると、例えば、単純に言うと、まず三千万は控除されるということなんですか。
#51
○政府参考人(山名規雄君) お答え申し上げます。
 基本的に、相続税の課税価格を算定する上で、三千万円プラス六百万円掛ける法定相続人の数というのは対象になるんですけれども、その法定相続人の数の中に、例えば民法上の配偶者に該当する場合には法定相続人の数にカウントされますけれども、事実婚のパートナーの場合にはカウントされないという違いがあるということでございます。
#52
○櫻井充君 いや、説明は分かった。分からないことは、例えば三千万その方に遺贈した場合には税金は掛かるんですか、掛からないんですか。
 つまり、ほかに誰もいなくて、じゃ、条件全部付けましょう。誰もいなくて、子供も誰もいない方が三千万の財産があって、この三千万の財産を事実婚の方に、パートナーに対して遺贈した場合には、これはどのぐらいの課税になるのか教えてください。
#53
○政府参考人(山名規雄君) お答え申し上げます。
 今先生御指摘のケース、遺贈された方が事実婚のパートナーの方だけでございまして、かつ相続人の方がおられないというケースで三千万円というケースでございますと、相続税は掛からないということになります。
#54
○櫻井充君 なるほど、そういう制度になってきているわけですか。
 そうすると、遺言書があって、今のような、まあ誰々にお世話になったからということであると、そうなってくるとすると、例えばほかの場合どうなるのか、ちょっと教えていただきたいんですが、一つは、例えば福祉施設にお世話になったから社会福祉法人に遺贈しますと、こういう場合の税制はどういうふうになっているんでしょうか。
#55
○政府参考人(山名規雄君) お答え申し上げます。
 遺贈を受けた者が法人である場合ですけれども、この場合には、法人の区分に応じ課税関係がそれぞれ異なることとなります。
 今御指摘の法人が社会福祉法人などの公益法人等である場合には、税法上の収益事業から生じた所得について法人税が課されることとされておりますけれども、遺贈により財産の贈与を受ける行為は収益事業には当たらないことから、法人税の課税関係は生じないということになります。
#56
○櫻井充君 そうすると、いろんなところに、お世話になった、これ、済みません、社会福祉法人の場合はそうですが、一般企業の場合は、株式会社とかそういう場合はどうなるんですか。
#57
○政府参考人(山名規雄君) お答え申し上げます。
 法人が一般企業などの普通法人である場合には、全ての所得に対し法人税が課されることとされているため、遺贈により取得した財産の価額が各事業年度の所得金額の計算上、益金の額に算入されることとなります。
#58
○櫻井充君 それではもう一つ、政治団体に寄附できる、遺贈できるんでしょうか。
 つまり、これは税制の問題ではありません。個人からの寄附というのは、献金というのは百五十万までと制限されていますが、亡くなった場合に、これは百五十万という制限あるんでしょうか、それとも全額遺贈できるんでしょうか。
#59
○政府参考人(小野瀬厚君) お答えいたします。
 民法上は、民法の遺贈の規定におきまして受贈者についての特段の制限はございませんので、民法上は誰に対しても遺贈はできるわけでございます。
 ただ、ちょっと政治資金との関係につきましては、大変恐縮でございますが、ちょっと答弁は法務省としてはできないものでございます。
#60
○櫻井充君 これ、次回ここの点についてお伺いしておきたいと思いますが、なぜかというと、政治団体って、結局、済みません、ぶっちゃけ申し上げて、二世議員の方々はそれ相続されていて、相続税全く掛かっていないんですよ。
 そういう意味合いでいうと、そこを迂回してしまうと、全く多分税金掛からないで子供たちに自分の財産を渡すことが可能になってくるので、これ、次回、次回あるんですよね、次回質問させていただきたいと、そう思います。
 それから、今回の場合に、仮払い制度等の創設の要件の明確化のところで、裁判所の判例と異なるような制度にされたということです。僕は、これはこれでいいと思っているんです。我が国は判例主義ではなくて理念法なので、国会がきちんと決めたものについて、裁判所がそれに、決められたものに倣って判決を行うということでいいと思っているんですが、なぜ今回は、この制度は裁判所の判例と異なる制度にしたんでしょうか。
#61
○政府参考人(小野瀬厚君) お答えいたします。
 最高裁判所の判例でございますけれども、その一つの理由といたしましては、この預貯金債権を遺産分割の対象とすることで公平な分割をすることと、可能とすると、これが一つの理由でございます。
 したがいまして、そういったようなことが可能となった反面、この判例によりますと、遺産分割が終わるまでの間、緊急な資金需要がある場合でありましても、例えば被相続人の葬儀費用を支出する場合ですとか相続人が当面の生活費を支出する必要がある場合につきましても、全員の同意が得られない限り払戻しをすることができないという不都合が新たに生ずることとなるものでございます。
 したがいまして、この法律案におきましては、最高裁の判例変更を前提としつつ、それによって新たに生ずる不都合を解消するために仮払いの制度等の方策を設けることとしたものでございます。
#62
○櫻井充君 時間が来たので終わりますが、今のように、裁判所で決められたからそれを必ず従わなければいけないということでないとすれば、別に、裁判所から一票の格差、いろんなことを言われていますが、そうではなくて、国会の意思として提示すれば選挙制度は可能になるのではないのかなと、これは次回やらせていただきたいと思いますが、そのことを申し上げて、質問を終わります。
 ありがとうございました。
#63
○小川敏夫君 立憲民主党の小川敏夫でございます。
 今日は、余り時間がないので、この遺言書の方、遺言書の保管のことを中心にお尋ねさせていただきます。
 この自筆遺言というのは、なかなかトラブルといいますか、紛争が多い分野でして、いろんな形でトラブルがある。一つは、例えば遺言書があるはずなのにどうも都合の悪い人がその遺言書を捨てちゃったとか隠しちゃったとか、こんな例もあり得るんですけれども。
 例えば、娘が、お父さんがあのマンションは娘のおまえにやるよということで遺言書書いたよと生前聞いていたのに、いざ相続が始まったら遺言書がないと、こんなような場合もあるわけでありまして、そういうことだと、この遺言書が公的機関が保管するというのは私は非常に意義があって、その分野については全く賛同するんですがね。ただ、この自筆遺言証書に関する紛争は、それだけじゃなくて、内容に関するもの、要件に関するものというトラブルも多い。少なくとも、この保管は内容に関しては全くチェックしないわけだから、そこの点については何の紛争予防にもなっていないと思うんですが。
 もう一つ、この自筆遺言証書では、本当にこの被相続人が本当に書いたのと、遺言者が本当に書いたのかどうか分かんない、偽造じゃないかということがトラブルになることがよくあるし、実際に、遺言書が不正に作成されてしまうということも実際にあるわけでありまして。
   〔委員長退席、理事若松謙維君着席〕
 現行の制度ですと自筆遺言証書はそのままじゃ実際上使えないと。家庭裁判所に検認といって、自筆遺言証書があった場合には家庭裁判所で検認という手続を経て、その検認の場においては、相続人が全部呼び出されて、そこで呼び出された相続人にも示された中で、それで裁判所が検認したということによって初めて法的に使える状態になると。そこによって、裁判所の検認を経た後に、登記申請もできるし、預金の払戻しもできる、遺言としてのそうした効果が実際上付与されるわけでありますけれども。
 私は、今回のこの法律について、その検認制度を廃止しちゃっているんですよね。ああ、ちょっと語弊がある、検認制度を廃止したんじゃなくて、この法務局が保管した自筆遺言証書については検認は不要ということでなってしまっている。ただ、それでいいのかなと。そうすると、じゃ、この自筆遺言証書が偽造された場合に、他の相続人は知らないまま財産が処分されてしまう危険が出てきて、かえってこの被害が、被害の防止にという観点から見るとマイナスではないかというふうに思うわけであります。
 まず、この自筆遺言証書の偽造ということに関しまして、例えば、その法務局が自筆遺言証書を預かる、この法文上の規定は、遺言者が本人じゃなくちゃいけないということで、本人でチェックするということになっておりますけれどもね。ただ、実際上そういう偽造者が悪意を持って現れてきたときに、いわゆる成り済ましですね、遺言者に成り済ましてきたという場合に、これはどういうようなチェック体制というものを考えているんでしょうか。
#64
○国務大臣(上川陽子君) 今回の遺言書、自筆遺言の証書につきましての保管についての制度について、委員からは大変いい制度になるのではないかと期待をしていただいているということでございますが、成り済ましの防止という観点からの御質問に対しまして、本制度におきましては、遺言書の保管の申請等につきましては、遺言者が遺言書保管所に自ら出頭をして行われなければならないと、本人出頭ということになるわけでございます。その際、遺言書保管官におきましては、申請人が本人であることにつきまして確認をするということになるわけであります。この確認、本人確認の書類、これを提示する若しくは提出又は本人を特定するために必要な事項についての説明を求めるということでございます。
   〔理事若松謙維君退席、委員長着席〕
 具体的な内容等につきましては、今後、法務省令で定めることとしておるわけでありますが、本人確認書類といたしましては、本人特定事項として、氏名のほかにその本籍又は住所、生年月日等が記載されている公的機関が発行した顔写真付きの証明書、例えば個人番号カードや運転免許証の提示又は提出を求めること、また遺言書保管官は、これらの事項や書類に疑義が生じた場合には、申請者に対しまして必要な説明を求めることなどを予定しているところでございます。
 このように、本制度におきましては、最も信頼性の高い水準の本人確認ということを行うこととしているものでございます。
#65
○小川敏夫君 まあ本人確認といいましても、なかなか実際には完璧を期すのは難しいと思うんですよ。
 例えば、私、先日、後輩の弁護士のお父さんが亡くなられたので葬儀に行きまして、それで、随分久しぶりだったもので、で、いたもので、ああ、こんにちは、久しぶりだねって声掛けたら、いや、済みません、私は兄ですと言われて、私の後輩じゃなかった。非常に顔が似ているから区別が付かなかったんですけどね。
 遺言書を勝手に作るという場合に、パスポートの偽造のように全く無関係な人間が作るんじゃなくて、かなり人間関係の濃い人が遺言書を作るということが考えられる、まあ実際上そういう場合なわけですよね。
 例えばですね、ですから、私二つ上の兄がいるんですけどね、案外顔が似ているものですから、私が兄に成り済ますなんということは非常に簡単ですよ。まず、写真でいいっていったって、写真は顔が少し似ているんですから。それから、兄の本籍も生年月日も家族構成も職業も全部知っています。何聞かれても答えに困ることはないわけでありまして、まして、成り済ましに行こうというんだったら、そんなことはもう用意周到に十分全部把握していくでしょうから、私は、なかなか、その法務局の担当者が受け付けるときにいろいろ質問するから、チェックするからといっても、私は実際上機能しないと思うんですね。まあ全然しないとは言わないけれども、なかなか難しいんじゃないかと思いますし。
 また、公的機関が発行する写真付きの証明書といっても、例えば、今パスポートですと、運転免許証とか古い旅券とか、確かに写真付きの公的証明書の場合であればいいんですけれども、写真付きじゃない場合には二種類の書類を持ってくれば本人確認として受け付けているわけです。恐らくこれ、遺言書を預かるときも、免許証も持っていない、パスポートを持っていないからあなたの遺言は受け付けないということはなかなか難しいでしょうから、やはり写真がない証明書であっても、私はパスポート申請のように受け付けることになると思うんですよ。
 これはまだ法務省令が決まっていないからかもしれませんけれども、今大臣が説明されたように、必ず公的機関が発行した顔写真付きの証明書がなければいけないということにするということが決まっているわけじゃないですね。
#66
○大臣政務官(山下貴司君) 御質問の点でございますが、これにつきましては今後、法務省令で定めるということになろうかと思います。
 原則的にその顔写真付きの公的証明書、これを提示するということを求めるということでございますが、まだ決まっておりませんが、一つの考え方として、例えば顔写真付きの証明書が提示することができないことについてやむを得ない事由がある場合には、例外的に複数の公的機関の発行した顔写真の付いていない証明書の提示や又は提出を求めるということがあり得ると思います、考え方としてですね。その場合には、本人の氏名、本籍又は住所、生年月日等の本人を特定するための事項や、これらの事項が記載されている証明書などの書類についてもしっかりと、よりしっかりと説明を求めることになるんだろうというふうに考えております。
 そうしたことも検討しながら、そうした成り済ましの危険性がないようにしっかりと検討しながら今後の省令等を考えていきたいと思っております。
#67
○小川敏夫君 ですから、同じ議論をしてもしようがないんだけど、身近な人から見れば、質問したって答えられるだけの情報は持っているんですよ。だから、なかなか成り済ましを完全に防止するのは難しいんじゃないかなというふうに思うわけです。
 であるにもかかわらず、今回、検認が不要ということにしてしまったことについて私は大きな疑問があるわけです。すなわち、家庭裁判所の検認制度があれば、相続人は家庭裁判所に呼ばれますから、そういう自筆遺言証書があったということをそこで知るわけです。ですから、じゃ、その遺言書が使われる前にそういう遺言があるということが分かるから、偽造であるとか大きな問題があれば法的な対応ができるということになるわけでありまして、緊急の場合には仮処分とか様々な手段が取れるわけです。
 ところが、今回はその検認が不要と。法務省が預かったその自筆遺言証書は検認が不要だから、直ちに法務省、法務局から、相続が発生したら、その遺言書を使って直ちに登記もできるし預金の払戻しもできると。ほかの相続人は全然知らないうちにそれができちゃうんですよね。私はそこで非常に大きな疑問があるので、自筆遺言証書、偽造という問題も大変多い中で、そのチェックが、チェック機能を外してしまうということによってこの被害が回復できない状態ということが生じてしまうんではないか。
 私は、ですから、質問としまして、なぜ法務局が保管した自筆遺言証書について家庭裁判所の検認は不要ということにしてしまったのか。私は、そうした被害の防止のために必要な制度を不要としてしまったことについて大きな疑問を感じておるわけですが、なぜ家庭裁判所の検認制度を不要としてしまったのか、お答えください。
#68
○副大臣(葉梨康弘君) 大臣からお答えしていただくわけですけれども、小川先生の質問中に、ほかの相続人が知らない間にできてしまうということがありましたけれども、この法律では、写しの請求を一人の相続人がしましたらほかの相続人にも知らせるという形が取られておりますので、そういうことはないという上で大臣からお答えをいただきたいと思います。
#69
○小川敏夫君 いやいや、写しの請求をするでしょう、写しの請求をしたらすぐその日にも預金は払戻しできるんですよ。それから登記申請もできるわけです。特に預金なんかの払戻しはできるわけです。そうすると、写しが出されたら法務局はほかの相続人に通知するといっても、通知が来る前に既に預金はもう払戻しされちゃうんですよ。ですから、相続人が知らない間にそうした相続財産の処分がされると。しかも、成り済ましであれば悪意なんですから、元々、だから早くやっちまおうということで。
 ところが、検認制度は検認を経なければ使えないから、で、検認には相続人が呼ばれるということで、検認の前には使えないんですよ。預金が払戻しされることはないんです。そういう観点で私は質問をしているわけです。
#70
○国務大臣(上川陽子君) 今回検認を不要とするという理由についてというお尋ねでございましたので、その点についてお答えをさせていただきますと、この民法第一千四条第一項でございますが、遺言書の保管者や遺言書を発見した相続人に、遺言書を家庭裁判所に提出して検認を請求すること、これは義務付けているところでございます。その趣旨は、委員御指摘のとおり、検認時におきまして、遺言書の状態の確認、その証拠の保全ということにあるわけでございます。
 公正証書遺言につきましては、これを公証人が作成、保管をするということの制度でございますので、一般に偽造、変造等のおそれがなく、保存が確実であるため検認の対象から除かれていると、こうした制度になっているところでございます。
 そこで、今回の制度につきましては、遺言書保管所に保管されることとなる遺言書につきましても、遺言書保管官が厳重にこれを保管することから、保管開始以降、偽造、変造等のおそれがなく保存が確実であるため、公正証書遺言と同様の扱いとし、検認を不要とすることとしたところでございます。
#71
○小川敏夫君 いやいや、保管中に偽造、変造ができないのはそれは当たり前のことなので。ただ、保管する前の段階で偽造されていることについて、その成り済ましが、完全にできるのか。そして、ほかの相続人がその自筆遺言証書の存在を知る前にそうした預金が払戻しされてしまうということができ得ることになるので問題だと言っておるわけであります。
 時間も来ましたのでまた質問は改めてしたいと思いますが、別のことをちょっと、非常に重要な問題ですので、法務大臣にお尋ねいたします。
 いわゆる森友事件で、国交省、財務省等の担当者が告発された件について、先般、不起訴処分という刑事処分がありました。この刑事処分が出る前に、官邸から早く処分を出せということで何度も巻きを入れられたというような事実はありましたか。
#72
○国務大臣(上川陽子君) ただいま御質問の件でございますが、個別の事件に関しましての捜査の内容に関わる事柄でございまして、捜査機関である検察所管の法務大臣の立場から、お答えにつきましては差し控えさせていただきたいと存じます。
#73
○小川敏夫君 いや、私は捜査の内容を聞いているんじゃないですよ。
 大臣に基本的なことをお尋ねしますが、この検察の捜査に対する政府の介入というものはあってもよろしいんでしょうか、あってはならないことなんでしょうか。
#74
○国務大臣(上川陽子君) 今、一般論でお問合せということでございますが、先ほど冒頭で様々な御指摘がございました内容から推測いたしますと、これは個別の事案に関わる事柄ということでございますので、それにつきましての答弁につきましても差し控えさせていただきたいというふうに思います。
#75
○小川敏夫君 今の、大臣、それは法務大臣の素質を問われますよ。検察の捜査に政府が介入していいかどうか。いけないという、答えなくちゃいけないじゃないですか。
 もう一度お尋ねします。検察の捜査に政府が介入していいのかどうか。
#76
○国務大臣(上川陽子君) 一般論として申し上げるところでございますが、検察は、法と証拠に基づきまして、厳正公平に、また不偏不党を旨として、刑事事件として取り上げるべきものがあれば適正に対処しているということでございます。
#77
○小川敏夫君 いやいや、私の質問について答えていないですよ。一般論ですよ、検察の姿勢を、一般論を聞いているわけで、法務大臣としての姿勢を聞いているわけで、検察の捜査に政府が介入してもいいのかと聞いているんです。
#78
○国務大臣(上川陽子君) 一般論ということでございますが、先ほど来の個別の事件に関わる前段がございまして、その意味では、関係する事柄につながるということで法務大臣としてお答えすることは差し控えさせていただきますが、一般論として申し上げるわけでございますが、検察につきましては、先ほど申し上げたとおり、法と証拠に基づきまして、厳正公平、不偏不党を旨として、刑事事件として取り上げるべきものがあれば適正に対処するということでございます。何らかの政治的意図に基づいて捜査を行うなどということにつきましては、ないものと承知をしております。
#79
○小川敏夫君 だから、何らかの政治的な意図に基づくことはないという立場を述べられた。それはイコール、ですから検察の捜査は政治の関与を受けないということを言っているんじゃないですか。どうして検察の捜査は政治の干渉を、関与を受けてはいけないということをそのまま、そのとおりですと言えないんですか。
#80
○国務大臣(上川陽子君) 先ほど来申し上げるところでございまして、これを繰り返し申し上げるということでございますが、検察は、法と証拠に基づきまして、厳正公平、不偏不党、これを旨として、刑事事件として取り上げるべきものがあれば適正に対処するということでございます。その意味につきましては、何らかの政治的意図に基づいて捜査を行うということにつきましては、これはないものというふうに承知をしております。
#81
○小川敏夫君 大変納得できない。むしろ、大原則を明確に言えない法務大臣の姿勢については大きな疑問を感じますが、時間が来ましたので、今日はここで終わります。
#82
○仁比聡平君 日本共産党の仁比聡平でございます。
 今日は、法案がどんな不公平を解決しようとするのか、大臣に基本的な考え方を聞きたいと思うんですけれども。
 今日も確認があっています配偶者居住権あるいは特別の寄与、この改正部分に顕著なわけですけれども、つまり、とりわけ長く連れ合った配偶者、あるいは療養看護に努めた家族の置かれている現実が不公平であって、その公平を図るということがこの法案の基本なんだと思うんですね。
 大臣がそうした保護を強める必要性、この社会の現実、今の現実についてどんな認識をお持ちでしょうか。
#83
○国務大臣(上川陽子君) 今回の法律の趣旨ということで申し上げているところでございますが、昭和五十五年以来の改正ということになります。この四十年間の間にそれぞれ男性も女性も、女性も男性も平均寿命が延び、また高齢化が進んでいく中にありまして、そのところの配偶者の、高齢になった配偶者の皆様のその先の居住権や、また生活の安定性を図るために様々な制度につきまして検討を加えて、今回の法律の提出に至ったところでございます。
 本法律案におきましては、長期間婚姻をしていた配偶者に対しまして、居住用の建物等が贈与された場合に、その間の貢献等を考慮をして、遺産分割における配偶者の取り分、これを増やす方策、また相続人以外の者が被相続人の療養看護に努め、その財産の維持又は増加に寄与した場合におきまして、その貢献を考慮するための方策などが含まれているところでございます。
 いずれも、被相続人の財産の維持又は増加に貢献した者に、その立場やまた貢献に応じた保護を与えようとするものでございまして、利害関係人の間の実質的な公平を実現しようとするものでございます。
#84
○仁比聡平君 つまり、実質的な公平を実現しようとするものだというのは、現在の日本社会において、実質的公平に反するとかそぐわないとか、そうした現実が法改正を必要とするほどやっぱり存在するんだという、それが前提の認識のはずなんですね。
 私、続けて問いたいのは、そうした不公平というのは事実婚でも起こり得るし、現に起こっていると、それが現実だと思います。中には法律婚の場合以上に、残念ながら紛争が起こったときにこれが複雑化する、長期化するということがあると思うんですけれども、これ大臣は、その点はいかがですか。
#85
○国務大臣(上川陽子君) 本法律案につきましては、先ほど答弁したとおり、利害関係人の間での実質的な公平性を担保するということであります。逆の言葉でいえば、不公正の是正という視点が盛り込まれているということでございます。
 被相続人の財産の維持等に貢献した者にその立場や貢献に応じた保護を与えようとする方策が含まれているわけでございますが、委員御指摘のように、このような実質的な不公平につきましては、事実婚の関係にある者の間でも起こり得るものというふうに考えております。
 また、事実婚のパートナーが死亡した場合に、その財産関係をめぐりまして紛争が複雑化することがあり得るということにつきまして、委員先ほど御指摘いただきましたが、そのように私も考えております。
#86
○仁比聡平君 そのとおりだと思うんですね。
 法の基本的な在り方、あるいは法の、あるいは制度の運用に当たる司法の実務といいますか、この在り方というのは、同様の不公平は同様に解決していくと、そういうことだろうと思うんですね。これまで、この相続における配偶者の保護、あるいは事実婚や内縁の保護ということで積み重ねられてきた議論もそうだろうと思うんです。
 今回の法案でも語られていますけれども、最高裁判所が使用貸借を推定して居住権を保護するとか、あるいは遺産分割協議を実質的に公平ならしめるために、かつては預金債権は当然分割承継だとなっていたけれども、その考え方を改めて、遺産分割協議の対象にするんだというふうになってきたのも、つまりは被相続人が亡くなった場合の財産や権利関係の実質的公平を図ろうとしてきたからだと思うんですが、そうした考えでよろしいですか。
#87
○国務大臣(上川陽子君) 相続法制につきましては、これまでも配偶者の相続分の引上げ、寄与分制度の創設等の改正が行われてきたことでございますが、これらはいずれも相続人間の実質的公平を図ることを目的とするものでございます。
 本法律案につきましても、先ほど述べましたとおり、相続に関する利害関係人間の実質的な公平を図る目的のものが含まれておりまして、相続法制におきまして実質的公平を図ることは重要なことであるというふうに認識をしております。
 もっとも、具体的な制度の在り方を検討するに当たりましては、法律関係の明確性など様々な事情を考慮して総合的に判断をする必要があるというふうに考えております。
#88
○仁比聡平君 様々なことを考えなきゃいけないというので今回の法案を出しておられるわけで、けれども、その実質的公平を図るための法定の権利だとか選択のオプションだとかおっしゃる新制度を活用できるのは、相続人である配偶者、これは配偶者居住権の場合、それから特別寄与の場合は、被相続人の親族で相続人以外の場合、つまり相続人あるいは親族に限られているわけです。これがどうなのかということの議論をちょっと進めなきゃいけないと思うんですけれども。
 大臣にまずお尋ねしたいと思いますのは、仮に選択的別姓制度が実現をすれば、別姓を選択して婚姻届をするというカップルが生まれてくるわけですけれども、そうしたカップルは当然にこの改正後の配偶者あるいは親族に当たることになりますね。
#89
○副大臣(葉梨康弘君) 仮に実現すればというお尋ねですけれども、どのような制度設計になるかということ、仮にということでございますので、明確にはなかなかお答えはしづらいところですけれども、法律婚として認められれば配偶者になるということだろうと思います。
#90
○仁比聡平君 私の問いは極めて簡明なのでして、答弁にこうやって迷われるという、そこに今回の法案に対しての多様性を排除するものではないかという批判、ここが当たっているのではないかという思いをしてしまうわけですね。
 もう一回大臣に聞きますけれども、御存じのとおり、九六年法制審答申を受けて法務省も法案を準備されたわけです。これが現在の民法あるいは相続法と矛盾のないものであることは明らかであって、それが実現をすれば別姓を選択する法律婚が生まれるわけですね。
 そもそも選択的別姓というのは、今や世界で我が国だけになっている法律上の同姓の強制をやめて、カップルがそれぞれ自らの姓を選択してアイデンティティーを尊重し合う生き方、信条、これを法律婚から排除しないという法律婚の在り方なわけです。であれば、これが実現をすれば本改正案に言う配偶者、親族にこれ当然当たると。これ、大臣、よろしいですね。
#91
○国務大臣(上川陽子君) 委員御指摘のとおり、仮に選択的夫婦別氏制度、これが導入された場合、事実婚の状態にあった者が婚姻の届出をするということになります。それに伴いまして、法律上の婚姻関係に至ったということになります。したがいまして、これらの者につきましても相続法におきましての配偶者として扱われることとなるわけでございます。
 したがいまして、例えば、本法律案におきまして新設する配偶者居住権等につきましても取得することができるということになるものでございます。
#92
○仁比聡平君 配偶者なんですから当然親族だということになるわけですけれども。
 ところが、自民党は選択的別姓の実現に背を向けておられ、政府は自民党を気にしてばかりおられるという状況にあるわけですが。もちろん、現在事実婚を選んでおられるカップルが、その理由として同氏の強制だけを理由にしているわけではないということだと思います。けれども、選択的別姓が実現をすれば法律婚をしたいと願っているカップルはたくさんいるわけですね。その選択的別姓さえ実現をしない下で、法律婚の尊重、法定相続分の重視だということを柱にして配偶者保護を図るという今回の法案が、だったらば多様性を排除することになるじゃないかという強い批判にさらされているのは当然だと思うんです。
 大臣は、この法案は事実婚あるいは同性婚という生き方を排除するものなんですか。
#93
○国務大臣(上川陽子君) ただいま委員御指摘になりました選択的夫婦別氏制度、これにつきまして、これを認めるか否か、また同性婚を認めるか否かといった問題につきましては、今回の相続法制の見直しとは別個に検討されるべきものでございまして、その意味で、本法律案自体につきましては、事実婚や同性婚など多様な生き方を排除するものではございません。
 そして、現行法におきましても、御指摘の事実婚や同性婚の相手方に対しまして、遺言を活用することにより自分の財産の全部又は一部を与えることが可能であるということでございまして、そのような意味でも、遺言制度につきましては、家族の在り方等が多様化している日本の社会におきましてより重要な位置付けを持つべきものであるというふうに考えております。
 本法律案におきましては、遺言の利用を促進するための方策につきましても設けておりまして、このような生き方を選択された方につきましても一定の配慮をしているものであるというふうに考えております。
#94
○仁比聡平君 そうはおっしゃるけれども、結局、制度上これ排斥したというふうな批判に対してどう応えていくかということがこれからの大きな課題になるんだと思うんですよ。
 法制審の議論の中でも出ていますし、法案の説明を受けても、法務省が言うには、例えば近所のおばちゃんが療養看護を務められたという主張があったときに、遺産分割協議の対象にこの人たちが入ってくるとなると、どこまでなのかと、複雑化、長期化するじゃないかというようなお話をされるんですけれども、これ大臣、近所のおばちゃんと、実際に婚姻の意思を持って同居し、助け合って親密な共同生活を行っている、男女の事実婚だったら子供も産み育てているという、そういうカップルを同列に扱うという、それしか法律上、法理上、解決の道ないんだなんて、それはあり得ないでしょう。そこはどうですか。
#95
○国務大臣(上川陽子君) 今委員御指摘いただきました、一般的には、法制度上、事実上の配偶者と単なる隣人とでは異なる取扱いがされることもあり得るものというふうに考えております。
 もっとも、相続につきましては、被相続人の権利義務を相続人が包括的に承継するということを内容とするものでございます。誰が相続人であるかは、第三者にもできる限り明確かつ画一的に判断することができるようにする必要がございます。
 事実婚の配偶者に該当するか否かにつきましては、様々な要素を総合的に考慮して判断しなければならないわけでございまして、事実婚の配偶者に当たることを公示するという制度も存在しておりません。このため、仮に事実上の配偶者に相続を認めるとすると、相続をめぐる紛争が複雑化、長期化いたしまして、利害関係人までもが紛争に巻き込まれて不測の損害を受けるおそれがあるなどの問題も生じるところでございます。
 このようなことでございまして、法律案におきましての区別につきましては合理的なものであるというふうに考えておりますが、この法律案につきまして、成立し、また施行された場合におきましては、その施行状況、また社会経済情勢の変化、特に多様な家族の在り方に関しましての状況等に十分留意しつつ、今後も必要な検討を行っていくことが重要であるというふうに考えております。
#96
○仁比聡平君 今大臣がおっしゃった、区別が合理的なものかということが、この法案できっちり議論されなければならないと思うんですね。
 時間がなくなったので、あとは次回に譲りますけれども、これまで法律婚が認められてこなかったカップルや家族のアイデンティティーと多様性、信条を尊重する社会をつくろうという流れが後戻りすることは、私ないと思います。
 この渋谷区のパートナーシップ条例だとか各地の公営住宅の入居など、同性婚を尊重しようという動きも強まっているわけですよね。我々がやらなきゃいけないのは、法律婚の女性も、あるいは、一方で現行制度では法律婚できない事実婚や同性婚の人たちも、パートナーが亡くなったときに実質的な不公平を強いられないようにすると、これが政治の果たすべき役割だと思います。
 今回の改正を機に是非その議論を深めたいということを申し上げて、今日は質問を終わります。
#97
○石井苗子君 日本維新の会の石井苗子です。
 法律を改正するということは新しいルールができるということですから、それによって何かを失って社会が総合的に見て悪くなってしまったんでは意味がないと思うんですね、改正の。
 これは、今回の改正でございますけれども、社会が良くなっていくという意味付けが、少なくとも、五年後、十年後にこの社会がこうなっていくから今改正が必要なんだと、このように改正ができたんだという納得が必要だと思うんですけれども、国民の皆さんに対してもそうだと思います。十八歳成人のときも同じようなことを感じた。なぜ今二十歳から十八歳に下げるのかということに関してなかなか明瞭な答えがなかった。これはやっぱり政治主導型だったんだなと納得するしかない。
 今回におきましては、ちょっと整理をしていただきたい。配偶者の死亡により残された他方の配偶者の生活の配慮というのが第一義に書いてありますけれども、今までは、配偶者である夫が先立たれた場合に、今までは、今まで、法律が改正する前ですね、どういうケースが一番多かったんでしょうか、残された妻は。政府参考人の方、お答えください。
#98
○政府参考人(小野瀬厚君) お答えいたします。
 今回の相続法の見直しにおきましては、高齢化の進展等の社会経済情勢の変化に対応するもの、そういう観点から見直しをしたものでございますけれども、その主要な観点といたしましては、今委員御指摘のとおり、被相続人の死亡により残された配偶者の生活への配慮というものがございます。
 例えば、配偶者の居住の保護ということにいたしましても、判例によりまして、配偶者の方が遺産である建物に住んでいた場合には、亡くなった方がそういった配偶者に無償で住まわせる、そういう権利を認めていたと、こういうことを推定するというような判例はございますけれども、あくまでもこれは推定でございますので、亡くなった方が明確に反対な意思を表示していた場合には保護されないというようなものもございます。そういった観点で、例えば配偶者の短期居住権といいますものは、そういったものを法律的に保障するというようなことがございます。
 そのほか、やはり、亡くなられた配偶者の方がこれまで住んでいた建物に居住をしていくというところにつきまして、なかなか自分の、御自身の取り分の中で、そういった建物の所有権を取得してしまいますと、ほかの預金などから自分の取り分が減ってしまうというようなところもありまして、そういう点で、よりそういった居住している建物の居住を確保しやすいように配偶者居住権を創設すると。
 こういったように、現行法におきます様々な問題点、そういうことについて一定の配慮をするとの観点で今回の相続法の見直しがされているものでございます。
#99
○石井苗子君 私は、今までどうだったんだというふうにお聞きしたんですね。
 今までは、高齢になって夫が死んだら、女性は割と、そのお金をもらってどこかに出ていくか、アパートに住むとか施設に入るとかというような形になっていた。ところが、七歳も九歳も平均寿命が延びていって、これは地域医療包括ケアということになると、今後は長生きをしていく男女に対してなるべく自宅にいてもらいたい。自宅にいて地域で、人様がお亡くなりになるときにはどこかが体が悪いわけですから、なるべく自宅でお亡くなりになってほしいという傾向に、二〇二五年には七十五歳以上が増えるわけですから、そこへゴールを持っていっているというのが今回の改正の動機付けにあるのではないかと思っておりますが、改正が必要となったときに、介護を自宅でというこの方向性に向けて、残されていく人たちに住む場所、そして生活のお金というものを与えるべく変えていこうと。そうなると、公平という目で見ると、取り残されていく人というのがいてはいけないわけですね。これは国がやることですから、そこはしっかり見ていかなければならないと思います。
 女性が長生きをするようになったときの立場の待遇を改善して、残された配偶者の保護を強化したいということであれば、現在の日本の人口動態に合わせた年齢別の家族構成がどうなっているか、例えば、お独り暮らしはどのくらいいるのか、家族は離れているのかというような調査、どの程度把握していらっしゃいますか、厚生労働省の方、お答えください。
#100
○政府参考人(酒光一章君) お答え申し上げます。
 私どもの方で国民生活基礎調査という調査で世帯を調べておりますけれども、現在、最新のもので平成二十八年というものがございます。これですと、独り暮らしの方、私どもでは単独世帯という言い方をしていますが、この単独世帯の方が千三百四十三万四千人いらっしゃいます。これはもちろん若い方もいらっしゃるわけで、高齢者だけ、六十五歳以上の方だけで取ってみますと六百五十五万九千人。この六十五歳以上の単独世帯の方で、別居の子が同一の市区町村ではない、ほかの市区町村に住まわれているというケースが百三十六万五千人と、こういうことになっております。
#101
○石井苗子君 大変数が多くて、これから増えていく傾向にもありますし、社会保障費ということをどう考えていくかと。総合的な問題があって、そのときに、やっぱり住むところと暮らせるだけのお金というのをまずは与えていこうと、これまでは、そう長生きしないということを前提に女性の暮らし方というところに配慮が向いていなかったので、これは国として変えていこうと。
 こういうゴールを定めているのであればよく分かるんですけれども、何となく聞いていますと、ゴールがどこにあるかと考えたとき、相続の紛争を防止したい、遺産分割が公平、迅速に行われるようにしたい、遺言の利用を促進したいといったようなゴールが定められていて、細かいところはよくできているんですけれども、やはり、これから社会が、日本の社会が五年、十年後にどうなっていくかを見据えた法の改正であるとすれば、今発表があったように、六百五十五万九千人という数を、これからどこで最期を迎えるかといったときに、やはり自宅というものが大事になっていくんではないかと。
 このように私は考える中、配偶者居住権について伺いますが、元々、居住権、私が言った、どこに住むかということは、被相続人の内縁の妻などが、相続権のない者をどう保護していくかというために考えられていたという経緯がございます。ところが、これが今回の法の改正で取り残されていっているような感じがあるんですが。法律婚にある配偶者だけが対象になっているということで、この議論は行われたが、方向性は逆を行っています。どうしてこの考え方の転換があったのか、根拠がどこにあったのか、政府参考人の方にお答えいただきます。
#102
○政府参考人(小野瀬厚君) お答えいたします。
 御指摘のとおり、配偶者居住権はその権利の帰属主体を配偶者に限定しております。これは、夫婦は相互に同居、協力、扶助義務を負うなど、民法上最も密接な関係にある親族として構成されておりまして、一方の配偶者の死亡により、残された配偶者の生活を保障すべき必要性が類型的に高いことなどを考慮したものでございます。
 その配偶者居住権でございますけれども、基本的には遺産分割等における選択肢を増やす趣旨で創設したものでございまして、事実婚の配偶者はそもそも相続権を有しておりませんので、このような前提を見直さない限り、遺産分割によって事実婚の配偶者に配偶者居住権を取得させることはできないわけでございます。
 また、相続の手続は被相続人が残した財産を親族間で分配するものでありますために一般的に紛争性が高いと言われておりますが、現行法の下では、相続人の範囲をめぐっては紛争が生ずることは少ないわけでございますが、仮に事実婚の配偶者にも相続権を認めるなどして配偶者居住権の取得を認めることといたしますと、その事実婚の配偶者に当たるか否かと、こういったことをめぐった紛争が複雑化、長期化するおそれもあるものと考えられます。
 こういったことを考慮いたしまして、本法律案では配偶者居住権の権利主体を法律上の配偶者に限定することとしたものでございます。
#103
○石井苗子君 分かりました。紛争をややこしくしたくないから婚姻者のみとしたという、この説明だと思うんですが、ここで法務大臣にお伺いをさせてください。
 六十五歳以上で婚姻する方、大体ですけど、男子が五千百名、女子が二千四百名と、男子の方が多いわけです。死亡直前に婚姻して短い間しか一緒でなかったということで、それは法律婚になるわけですが、選択肢が増えたという、むしろ婚姻届を出さない方がお互い便利だよという高齢結婚もあるわけです。選択肢とすればそうなるわけですが、短い間でも配偶者居住権は、でも婚姻届を出せば認められます。
 長い年月事実婚だった方が自ら申請することだけではなぜ認められないのか、事実婚に対する保護に積極的になれない理由というのをお聞かせいただけますか。先ほどの紛争が長引くということ以外に何かありますでしょうか。これは大臣にお答えいただきたいんですが、いかがでしょう。
#104
○国務大臣(上川陽子君) 相続法に関する制度として、今回、配偶者居住権を設定、創設するものでございますけれども、相続の場面におきまして、誰が相続人であるかはできる限り明確かつ画一的に判断することができるようにする、このことが大変重要であるということでございます。
 したがいまして、事実婚の配偶者に該当するか否かにつきましては、先ほど先生の方からの御紹介があった、短い期間でも要するに結婚すれば対象になるけれども、長い期間事実婚で一緒に暮らし続けているケースについてはできないと、こういうお話がございましたけれども、その意味で、様々な要素を総合的に考慮して判断しなければならないということになるわけでございます。事実婚の配偶者に当たることを公示するという制度も今現在存在をしていないものでございます。
 先ほど局長が答弁したとおり、そのような状況でございますので、仮に、事実上の配偶者にも配偶者居住権を取得すること、これを認めるとするならば、相続人の範囲を直ちに判断することがなかなかできないということで、相続をめぐる紛争が長期化する、また複雑化する、そうしたおそれが出てくるわけでございます。そういったことから、今回につきましては、配偶者居住権の創設、これにつきましては対象者を法律婚の配偶者に限定をさせていただいたということでございます。
 じゃ、事実婚の関係にある方々につきましてはどうかといいますと、この保護につきましては、相互に相続権を持たないということでございますが、遺言を活用すれば貢献に報いたり生活を保護する措置を講じたりすることが可能であるわけでございまして、本法律案につきましても、遺言の利用を促進する方策、これにつきましては講じているところでございます。
 本法律案が成立した場合におきましては、改正内容につきましてできる限り幅広く皆様に周知徹底を図りまして、特に遺言制度につきましては、前回も委員から大変力強い御提言がございましたので、今回の改正の内容の周知に限らず、その利用促進を図るための様々な制度の周知につきましては尽くしてまいりたいというふうに考えております。
#105
○石井苗子君 そうなんです。ここで初めて取り残される人を救うための手段ということで遺言ということになるんですね。
 事実婚の場合などは遺言を最初から書いておいてもらいましょうと、しかも早いうちから書いておいてもらいましょう、気が変わらないうちに書いておいてもらいましょうというふうになっていくわけなんですが、その遺言書、遺言について、周知徹底、どのように広報として最大効力のあるものをお考えか、政府参考人の方にお伺いします。
#106
○政府参考人(小野瀬厚君) お答えいたします。
 御指摘のとおり、今回の見直しの一つの目的として遺言の利用促進がございます。この周知につきましては、自筆証書遺言に関する内容、改正内容のみならず公正証書遺言の制度につきましても周知を行って、自筆証書遺言と公正証書遺言がそれぞれのニーズに応じて活用されるよう、パンフレットあるいはポスターの作成、配布、さらには全国の各地における講演会などを通じて遺言制度についての積極的な周知を行ってまいりたいと考えております。
#107
○石井苗子君 大体の人は、物すごいお金持ちの方はちょっとおいておいて、あと、すごく困っている方々、いろんな意味でですね、ちょっとおいておいて、大体の方はうちで遺産の紛争ないよなって思っている方が多い。
 この周知徹底で、こういうリスクという、これをやっておかないと、遺言書を置いておかないと困るんだよという、このリスクというものを感じさせるので一番解決で成功した、アメリカのレンタカー、レンタカーを借りるときに、保険に入ってくださいという、これが、先ほどあったように、堅苦しい手続だったり、もう生年月日がどうなの、今日の日付はどうなのというのを書いてくださいといって、旅先でレンタカーを借りたいけど保険入らなくてもいいやと。でも、誰も交通事故に遭いたくない、遭ったら保険がなきゃ困るのに書かなかった。これを一気に解決した方法は、どうしても保険に入りたくない人だけサインしてくださいと変えたんですよ。車、レンタカー注文したら、同時にもう保険に入るということになりますので、全部料金含まれておりますので、こちらで手続しますが、Aランク、Bランク、Cランクと。
 このように、何か、ああ、それで自分のリスクは回避できるんだなというような周知徹底をしないと、パンフレット、ポスターでも、多くの人が、まあ今日、明日やらなきゃいけない遺言書でもないだろうとやっているのでは駄目なので、何か、アメリカのレンタカーの方法じゃないですけれども、ああ、こうしたらほとんどの人が遺言書を簡単に書くようになったというようなアイデアをつくっていかなければならない、例えば大きな不動産を買ったときには遺言書がセットになって付いてくるとか。
 そういうようなアイデアを出していって、それを大臣が、このようにして救う部分はたくさんありますという広報の効率を上げていかなければ広報にはならないと思いますので、是非今後ともよく考えていただきたいと思います。
 終わります。ありがとうございました。
#108
○糸数慶子君 沖縄の風、糸数慶子です。
 法案質疑に入ります前に、難民申請したクルド人の収容の問題について伺います。
 お手元に参考資料として毎日新聞の記事をお配りしてございます。これ、一昨日の新聞でありますが、日本人女性とその夫であるトルコのクルド人男性に関する記事であります。この記事によりますと、外国人男性は、先に来日していた親族から、日本は優しい人ばかり、いい国だよと聞いて、我が国に難民として庇護を求めるために来日し、約一年三か月収容された後、昨年二月に日本人女性と結婚し、十月に難民認定申請が認められずに再び収容されて現在に至ります。
 この夫婦は、昨年六月に約二百人を招いた披露宴を開いたとのことですが、その後僅か二か月で引き離されてしまい、現在は電話かガラス越しにしか会えない状態にあります。女性は入国管理局での面会で、ガラス越しに会う夫の腕や手首に生々しい自傷行為と思われる傷に涙で言葉が出ず、夫の仮放免許可申請を出しましたが不許可とされ、その不許可の理由さえも教えてもらえないとのことです。
 仮放免許可を認めない理由を示さないのはなぜでしょうか。法務省に伺います。
#109
○政府参考人(和田雅樹君) お答えいたします。
 御指摘のありました個別事案につきましては、個別の事案でございますので答えを差し控えさせていただきますが、一般論として、仮放免の認めない理由を示さないことについて申し上げます。
 被収容者やその代理人から仮放免の申請があった場合には、被収容者が入管法違反や刑罰法令違反の事実により退去強制令書の発付を受けた者であることを踏まえ、それまでの情状でありますとか申請の理由などの個別的な事情を考慮するほか、行政訴訟や難民手続などの進捗、あるいは送還に向けての出身国政府や大使館との交渉状況などを基に総合的に判断した上でその許否を決定しているものでございます。
 このように、仮放免は被収容者をめぐるもろもろの要素を考慮した上で総合的な判断の下に決定されるものでございますので、個別具体的に不許可理由を特定することが困難であり、かえってこれを明らかにすることが当該被収容者の心情に影響を与えるなど、今後の処遇面で支障を来しかねないことから、個々の事案については不許可の理由を明らかにしないという運用をこれまで行ってきているところでございます。
#110
○糸数慶子君 ただ、このケースの場合、身体を拘束するという状況にありまして、重大な人権の制約においても、入管行政の効率化が優先するということになるのでしょうか。
 昨今、仮放免許可を受けている被退去強制令書発付者に対して動静監視が強化され、一旦収容されると仮放免許可がほとんどされず、不許可の場合には理由も示されないまま収容期間が長期化し、被収容者の心や体がむしばまれて、収容施設内で自殺や自傷行為等が度々発生しているとの問題が指摘されております。
 先ほど紹介したような事例は、そもそも家族生活の基盤が日本にあるわけですので、在留が認められる方向で検討されるべきだと思いますが、このように直ちに送還できるような状態にはないケースについては少なくとも仮放免許可くらいはされるべきであり、仮放免を不許可にするならば、身体を拘束するという重大な人権の制約を伴う以上は、その理由を示すべきだと思います。
 我が国が加入している自由権規約二十三条の家族保護は、収容するか否か、収容後の仮放免の判断に当たり尊重されるべきだと思いますが、大臣の御見解を伺います。
#111
○国務大臣(上川陽子君) 退去強制令書、これが発付されている被退去強制者につきましては、その送還までの間、入国管理の収容施設に収容すること、これが法令上定められているものでございます。
 仮放免に関する御指摘につきましては、本人の家族関係につきましても仮放免の許否判断におきまして考慮をしているところでございますが、先ほど局長の方から答弁をいたしたとおり、仮放免につきましては、被退去強制者をめぐる種々の要素を考慮した上で総合的な判断の上に決定されるべきものであるため、個別具体的に不許可理由を特定し、お示しすることはなかなか難しいものというふうに考えております。
 しかしながら、不許可理由が分からないとして仮放免の申請を繰り返し行う被収容者も一部に見られることから、一般的にどのような場合に仮放免が認められ、あるいは認められないのかを明らかにするか否かにつきまして現在入国管理局におきまして検討をしているところでございます。
#112
○糸数慶子君 是非、人権という視点から大臣のリーダーシップを発揮していただきたいということを強く要望したいと思います。
 それでは、法案審議に入ります。
 一九九六年の法制審答申の民法改正案要綱のうち、審議が始まった九一年当初は婚姻法や離婚法が中心で、婚外子相続分規定については入っていませんでした。二年後の九三年に婚外子相続分規定が追加されましたが、追加の理由を法務省にお尋ねいたします。
#113
○政府参考人(小野瀬厚君) お答えいたします。
 平成八年二月に答申されました民法の一部を改正する法律案要綱について検討を行った法制審議会民法部会におきましては、平成三年から調査審議が開始されておりますが、御指摘のとおり、嫡出でない子の相続分の取扱いについては、当初は検討対象に含まれておりませんでした。もっとも、平成五年に、東京高等裁判所において、嫡出でない子の相続分を嫡出子の二分の一とする当時の民法の規定が憲法に違反するとの決定がされ、また、同じ年に、市民的及び政治的権利に関する国際規約の実施状況に関する国連の規約人権委員会の審査におきまして、我が国の民法の規定が国際規約に適合しないとのコメントが示されたところでございます。
 こういったような事情を踏まえまして、法制審議会民法部会においては、平成五年以降、嫡出でない子の相続分についても検討の対象に加えることとし、最終的に取りまとめた要綱においてもその見直しが盛り込まれたものと認識しております。
#114
○糸数慶子君 今回の法改正の発端は、最高裁が、二〇一三年九月四日、婚外子相続分規定を違憲と判断したことによります。
 違憲決定直後の会見で、当時の谷垣大臣は、婚外子の相続分規定の民法改正だけでなく戸籍法の改正についても言及していましたが、法案の提出には至りませんでした。その理由を上川大臣にお伺いいたします。
#115
○国務大臣(上川陽子君) 平成二十五年の九月の四日の最高裁判所の判断を受けまして、政府におきましては、嫡出でない子の相続分に関する規定を見直す民法改正案とともに、嫡出子又は嫡出でない子の別を出生届出書の記載事項とする旨の規定を削除する戸籍法の改正を検討していたということにつきましては事実でございます。
 しかしながら、民法の改正につきましては最高裁判所の違憲判断を受けておりまして、違憲状態を早期に是正する必要があったのに対しまして、戸籍法の規定につきましては違憲判断を受けていなかったということがございまして、民法と同時に改正するほどの緊急性に乏しいと判断をし、政府として国会への提出を見送ったもの、こうした経緯があったものというふうに理解をしております。
#116
○糸数慶子君 民法改正論議を振り返りますと、法務省はもちろんその議論の積み重ねをしています。むしろ政治がそれをさせなかったというのが事実ではないでしょうか。
 例えば、前回、一九八〇年の相続法改正の際、婚外子の相続分の平等化が提案されていましたが、反対論が強く、見送られています。九六年の法制審答申については、当時、民事局の参事官が議員会館に日参して説明を繰り返しておりましたが、強硬な反対で閣議決定されませんでした。
 二〇一三年九月に最高裁が婚外子の相続分規定を違憲としましたが、いきなり違憲判断されたのではありません。お配りしております資料を見ていただければお分かりでございますが、司法は度々立法府に法改正を促してきました。九三年には東京高裁が違憲決定し、この決定が確定しています。その後、九四年、二〇一〇年、二〇一一年と、高裁レベルでは違憲判決が確定しています。
 最高裁も、九五年に大法廷が合憲決定いたしましたが、五人が違憲としました。合憲とした裁判官も、結論には同調したものの、立法理由との関連における合理性はかなりの程度に疑わしい状況に立ち至った、あるいは国会における立法作業によるべきだと補足意見を述べています。これは、まさに翌年の法制審答申をにらんで合憲判断されたのではないかと思われました。その後、度々、小法廷は、極めて違憲の疑いが濃い、立法府の裁量の問題として看過し得ない非合理的な規定であると補足意見を述べてきました。
 法制審議会が五年も審議をして答申した内容に司法も言わば後押しをしてきたわけですから、堂々と法改正を主張すべきでした。政治が行政をゆがめているのは森友、加計問題だけではなく、家族法についても同じことが言えます。
 法務省は、合理的な理由を示すことなく反対する声の大きい一部政治家の代弁者になるのではなく、憲法や条約に基づいて政治家に理解してもらうよう、その努力をすべきではないでしょうか。法務省に伺います。
#117
○政府参考人(小野瀬厚君) お答えいたします。
 一般論として申し上げますれば、法務省としては、法制審議会における調査審議の結果であるその答申の内容については重く受け止めるべき立場にあり、その答申の内容が一定の法改正を求める内容である場合には、速やかに立案作業を行い、国会に改正法案を提出するのが望ましいと考えております。
 他方で、法務省が所管する民法を始めとする民事基本法の改正は国民生活に大きな影響を与えることとなりますことから、その是非については、国民の意識を踏まえて慎重に検討を行う必要もあるものと考えております。特に、家族法の改正につきましては、社会の価値観や家族の在り方が多様化している中で、国民の間でも様々な意見があり、解決が難しいテーマであると認識しております。
 法務省としましては、国民の意見にしっかりと耳を傾け、立法事実等に関する必要な調査を尽くした上で必要な法制上の措置を講ずることができるよう、不断の検討を重ねていきたいと考えております。
#118
○糸数慶子君 私は、この委員会で、九六年の法制審議会の答申を立法化しないことを問題にしてまいりました。上川大臣は、重く受け止めるとしながら、慎重な姿勢を崩していません。法制審の答申を受けながらそれに応えない大臣が今回の相続法制について法制審議会に諮問されたのはなぜか、その理由をお伺いいたします。
#119
○国務大臣(上川陽子君) 相続法制の見直しのように、国民の生活に大変大きな影響を与える基本的な制度の見直しに当たりましては、学識経験者、実務家、有識者から成ります法制審議会におきまして慎重な検討をしていただいた上で法案を立案するということが相当であるというふうに考えております。
 平成八年の法制審議会の答申に含まれる改正項目のうち、まだ実現していないものもございます。選択的夫婦別氏制度の導入の問題でございまして、我が国の家族の在り方に深く関わる事柄であります。国民の間にも様々な意見があるということから、現在まで実現に至っていないものでございます。
 この点につきましては、世論調査の結果等、国民的な議論の動向を踏まえながら引き続き対応を検討してまいりたいと考えておりまして、法制審議会に諮問する立場にある法務大臣といたしましては、法制審議会における審議及びその結果である答申につきましては大変重く受け止めるべきものであるというふうに考えております。
 今回の相続法の見直しにつきましても、さきに述べたような理由から法制審議会に対して諮問を行ったものでございます。
#120
○糸数慶子君 これまで、九六年のその法制審議会の答申を是非立法化していただきたいということで質疑をしてまいりましたけれども、先ほど仁比委員からも細かくありました。やはり、今、世の中のこの家族の在り方に関しましては、多様性というのも認められてしかるべきでございます。
 是非とも、様々な時代の流れの中でのその多様化、多様性というのを是非前面に押し出して頑張っていただきたいということを強く申し上げたい。
 終わりたいと思います。ありがとうございました。
#121
○山口和之君 無所属の山口和之でございます。
 本日から相続に関する法案の審議が始まりましたが、初めに夫婦間の相続に焦点を当てて質問させていただきます。
 夫婦間の相続は一方配偶者から他方配偶者への財産移転を意味しますが、それと同様の意義を持つものとして離婚の際の財産分与がございます。
 まず、離婚の際の財産分与についてお伺いしますが、この財産分与においては、婚姻期間中に夫婦が協力して築いた財産が二分の一ずつ帰属するように分配され、それに対しては税金が掛からないのが通常となっています。このような取扱いがなされているのはどのような根拠によるものなのでしょうか、お答え願います。
#122
○政府参考人(小野瀬厚君) お答えいたします。
 財産分与の内容は、第一義的には当事者間の協議によって定まるわけでございますが、当事者間に協議が調わない場合には、家庭裁判所において、当事者双方がその協力によって得た財産の額その他一切の事情を考慮して、財産分与をさせるべきかどうかやその額及び方法を定めることとされております。
 その家庭裁判所における実務におきましては、委員御指摘のとおり、夫婦の寄与度を二分の一ずつとする判断が多いと指摘されております。この夫婦の寄与度につきましては、個別具体的な事案に応じて判断されるべきものでございますので、その理由を一概に述べることは困難でございますが、夫婦間で異なる役割分担がされている場合でありましても、両者の協力があったからこそ一定の財産を形成することができたと評価される場合が多く、また、直接的には財産の形成に結び付かない家事、育児による寄与や精神的な協力等についてもこれを十分に考慮すべき要素が高いこと、こういったことが、そういったその寄与度を二分の一ずつとする判断が多いことの理由として挙げられるものと承知しております。
#123
○山口和之君 夫婦の一方が死亡した際の相続では、相続財産の中に夫婦が協力して築いた財産が混じっていても、その二分の一が他方配偶者に帰属するように分配される手続は行われていません。
 死別による配偶者との別れと離別による配偶者との別れで夫婦共有財産について取扱いが大きく異なっていることということになりますが、それはなぜでしょうか。
#124
○政府参考人(小野瀬厚君) お答えいたします。
 配偶者の相続権の根拠につきましては様々な見解があるところでございますが、一般的には、実質的夫婦共有財産の清算あるいは配偶者の生活保障といったことが挙げられております。そういった意味では、配偶者の相続権と離婚における財産分与はその根拠に共通性があると言われております。
 もっとも、ある財産が実質的夫婦の共有財産であるか否かという点につきましては、離婚における財産分与の場合には、離婚の当事者がおられますので、そういった両当事者がそれぞれ主張、立証を尽くすことが可能でございます。これに対しまして、死別による清算、すなわち相続の場面におきましては、その婚姻関係の当事者の一方が既に死亡しておりますので、十分な資料がそろわずにその点の事実認定が困難であるということがございます。また、相続の場面では、被相続人の債権者等第三者の利益にも配慮する必要があって、一般に紛争当事者が離婚の場合よりも多くなることから、権利関係を画一的に処理する必要性が高いものと言えます。
 そこで、現行の相続制度では、配偶者の具体的な貢献の程度は寄与分の中で考慮され得るにすぎず、基本的には法定相続分によって形式的、画一的に遺産の分割を行うこととされているものと理解しております。
#125
○山口和之君 法制審議会では、婚姻期間中に夫婦が協力して築いた財産を実質的夫婦共有財産として切り分けてから残りを他の相続人と分割する考えも検討されていたようですが、そのような考えは今回の法改正に盛り込まれていないようですが、それはなぜなのでしょうか。
#126
○政府参考人(小野瀬厚君) お答えいたします。
 委員御指摘のとおり、法制審議会民法(相続関係)部会における調査審議の過程では、実質的夫婦共有財産については配偶者が遺産分割に先立って清算を求めることができるとする、こういう考え方に関しましても検討が行われました。このような方向性は、遺産の維持又は増加に対する貢献が大きい配偶者についてはその相続分を引き上げるべきではないか、こういう問題意識に基づくものでございました。
 しかしながら、部会におきましては、実質的夫婦共有財産に当たるか否かの判断は、先ほど申し上げたとおり、必ずしも容易ではなく、このような概念を用いて配偶者の貢献の程度を実質的に考慮しようとすると相続をめぐる紛争が過度に複雑化、長期化することになるのではないかとの強い懸念が示されたところでございます。また、パブリックコメントにおきましても同様の問題点が指摘され、これに反対する意見が多数を占めたものでございます。
 こういったような理由で、このような遺産分割に先立って実質的夫婦共有財産の清算を求めるというようなことができるようにするというような考え方については、これを採用することはしなかったものでございます。
#127
○山口和之君 上川大臣にお伺いしたいんですけれども、死別による配偶者の別れと離別による配偶者の別れの不公平を解決するためにも、残された配偶者の保護のためにも、相続制度を財産分与の制度に合わせた方がいいのではないかと思いますが、どう思われますでしょうか。
#128
○国務大臣(上川陽子君) ただいま委員御指摘をいただきました相続と財産分与につきましては、同じく夫婦関係が解消される場合でありましても、死別による場合と離婚による場合とでは考慮すべき事情につきまして違いがあるということから、現行法上につきましては取扱いが異なるとしたところでございます。
 現時点におきまして、相続制度を財産分与に合わせるということにつきましては考えているところではございませんが、この法律案が成立して施行された場合におきましては、その施行状況や、また社会経済情勢の変化、これに十分に留意をしつつ、相続制度の在り方については、今後も必要な検討を行っていくということにつきましては大変重要なことであるというふうに考えております。
#129
○山口和之君 ありがとうございます。
 夫婦共有財産をどのように扱うかということは、相続の在り方だけではなく家族の在り方を定める上でも基本方針となるものであって、親族法を含む家族法全体において極めて重要なテーマですので、これからもしっかりと検討していただければと思います。
 さて、相続の在り方というお話をしましたけれども、それを方向付ける基本原理についてもお伺いしたいと思います。
 上川大臣より、本法律案は残された配偶者の保護のため相続法を改正しようとするものであると説明を受けていますが、そもそも相続法は何のために、どのような原理に基づいて定められているのでしょうか。財産法であれば、権利能力平等の原則、所有財産絶対の原則、私的自治の原則などが基本原理とされておりますが、相続法の依拠する基本原理は何なのでしょうか。
#130
○政府参考人(小野瀬厚君) お答えいたします。
 まず、現行法におきます相続制度の必要性についてでございますけれども、現在、現行法上は、我が国は私有財産制度を取っております。この私有財産制度の下におきましては、財産の帰属主体である個人が死亡した場合には、その財産を承継する個人が新たに定められなければならないということになります。また、亡くなった方の財産を承継する者につきましては、その亡くなった方の債務、これもまた承継することとしませんと、その亡くなった方に対して権利を有していた債権者等の利益を不当に害することにもなります。したがいまして、私有財産制度を採用する場合には、亡くなった方の権利義務を承継する制度として相続制度が必要になるものと考えられております。
 また、この現行の相続制度のそもそもの根拠につきましては、これは様々な見解がございます。例えば、血縁関係に根拠を置くという考え方、また、生活共同体を形成していた者の間では互いに財産形成に対する貢献があることに根拠を置くという、こういう見解、あるいは被相続人の推定的意思に根拠を置くもの等、様々な見解がございまして、必ずしも一つの根拠のみで説明できるものではないものと考えられております。
#131
○山口和之君 原則として遺言相続は法定相続に優先するという現行制度は、被相続人の意思に依拠しており、日本国憲法の基本原理である個人主義と整合的と言えます。しかし、現行制度が、遺言によっても侵害されないという遺留分制度を採用している点は個人主義に反するようにも思います。
 このような遺留分制度が依拠する基本原理は何なのでしょうか。なぜ被相続人の意思よりも推定相続人の期待的利益等を優先させることが正当化されているのか、お教え願います。
#132
○政府参考人(小野瀬厚君) お答えいたします。
 一般に、遺留分制度は、兄弟姉妹以外の相続人について、その生活保障等の観点から、遺言者の意思にかかわらず最低限の取り分を確保する趣旨で設けられたものであるとされております。また、被相続人の財産処分の自由の制約という観点につきましても、遺言による財産処分は被相続人の死後の、亡くなった後の法律関係を定めるものでございまして、被相続人自身の利益に直接関わるものではないことから、被相続人が自由にこれを定められるとする必要性に乏しく、別の観点を加味することも許容される、こういった指摘もされているところでございます。
 このように、現行の遺留分制度は、原則として被相続人の意思による財産処分を認めつつ、相続人の生活保障等の観点からこれを一定の範囲で制限しているものでございまして、相応の合理性があるものと考えております。
#133
○山口和之君 法律において重要なことは原理原則、もちろんそれだけでは法律は成り立ちませんけれども、法制度全体の整合性を取る上でも、法制度を分かりやすいものとする上でも、常に原理原則から考えなければならないと思います。今後の法案審議においても、そのような観点から質問させていただきたいと思います。
 以上で本日の質問を終わります。
#134
○委員長(石川博崇君) 本日の質疑はこの程度にとどめます。
    ─────────────
#135
○委員長(石川博崇君) 参考人の出席要求に関する件についてお諮りいたします。
 民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律案及び法務局における遺言書の保管等に関する法律案の審査のため、来る七月三日午前十時に参考人の出席を求め、その意見を聴取することに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#136
○委員長(石川博崇君) 御異議ないと認めます。
 なお、その人選等につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#137
○委員長(石川博崇君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後零時十六分散会
ソース: 国立国会図書館
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