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2017/11/21 第195回国会 参議院 参議院会議録情報 第195回国会 本会議 第4号
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2017/11/21 第195回国会 参議院

参議院会議録情報 第195回国会 本会議 第4号

#1
第195回国会 本会議 第4号
平成二十九年十一月二十一日(火曜日)
   午前十時一分開議
    ━━━━━━━━━━━━━
#2
○議事日程 第三号
  平成二十九年十一月二十一日
   午前十時開議
 第一 国務大臣の演説に関する件(第二日)
    ━━━━━━━━━━━━━
○本日の会議に付した案件
 議事日程のとおり
     ─────・─────
#3
○議長(伊達忠一君) これより会議を開きます。
 日程第一 国務大臣の演説に関する件(第二日)
 去る十七日の国務大臣の演説に対し、これより順次質疑を許します。大塚耕平君。
   〔大塚耕平君登壇、拍手〕
#4
○大塚耕平君 正副議長、議員、閣僚の皆様並びに国民の皆様に改めて御挨拶申し上げます。この度、民進党代表に就任いたしました大塚耕平でございます。どうぞよろしくお願い申し上げます。
 冒頭、最近の台風や集中豪雨等で亡くなられた方々に哀悼の意を表しますとともに、被害に遭われた皆様に心よりお見舞いを申し上げます。
 それでは、民進党・新緑風会を代表して、所信に関して、総理に質問させていただきます。
 総理は所信の冒頭で、二つの国難とも呼ぶべき課題を明示しました。まず、そのうちの一つである緊迫する北朝鮮情勢に関連して、総理の外交姿勢について伺います。
 国際社会において、日本が率先して平和を追求する国家であり、諸外国からもそのように一目置かれる姿は、国民共通の願いであると思います。初めに、総理も同様のお考えであるか否かを伺います。
 一方、国際社会の現実は、残念ながら恒久平和を実現できず、今日もなお紛争が絶えません。二十世紀の戦争や政治的暴力による犠牲者は、百年間で約一億六千万人に上ったとの推計もあります。愚かな歴史を積み重ねることなく、後世、二十一世紀は徐々に平和の世紀となった、その過程で日本が能動的な役割を果たしたと言われるような国のかじ取りを総理に期待するものであります。
 そこで、総理にお伺いします。自国の利益を犠牲にして他国の利益を守る国はない。是非の問題ではなく、それが国際社会の現実だと思います。その現実を踏まえ、日米関係に関する総理の基本認識を伺います。
 米国が重要な同盟国であるという事実に異論はありません。その上で総理は、米国もやはり、自国の利益を犠牲にして他国の利益を守ることはないという国際標準の国家と捉えているのか、それとも、自国の利益を犠牲にしてでも、他国の利益、例えば日本の利益を守るという国家と捉えているのか、この点に関する総理の基本認識を伺います。
 この質問に対する御答弁の内容は、今後の総理との外交・安全保障に関する全ての議論の基礎となりますので、率直な認識を伺いたいと思います。
 北朝鮮の度重なる核実験、弾道ミサイル発射は、日本の安全、極東の平和に対する脅威であり、累次の国連決議に反する暴挙です。かかる状況下、総理には、北朝鮮の情報について可能な限り国民や国会につまびらかに開陳していただくことを求めます。
 具体的には、北朝鮮が核兵器搭載可能な長距離弾道ミサイル、大陸間弾道弾の開発、実用化、配備を完了していると認識しているのか否か。また、日本に照準を定めている中距離弾道ミサイル、ノドンは何基程度と把握しているのか。一説には二百基以上とも言われるノドンに対して日本はどのように対応しようとしているのか。お伺いをいたします。
 北朝鮮は、九月十五日以降、核実験やミサイル発射を行っていません。総理はこの沈黙をどのように捉えているのか、お伺いします。
 総理は、去る九月二十日の国連総会での演説において、必要なのは対話ではない、圧力なのですと明言しました。また、十一月六日の日米首脳共同記者会見では、最大限の圧力を高めることでトランプ大統領と完全に一致したと述べました。
 圧力と同時に、北朝鮮に対話を促すメッセージを強く伝えることも一考に値すると考えますが、総理は対話は本当に必要ないと思っているのでしょうか。圧力と対話のバランスを総理はどのように考えているのか、お伺いいたします。
 また、トランプ大統領と完全に一致したと述べた最大限の圧力とは、具体的にどのような内容を意味しているのでしょうか。国民並びに国会に対してもう少し分かりやすく説明してください。
 総理は、全ての選択肢がテーブルの上にあるとするトランプ大統領の立場を支持するとも表明しました。これは軍事的オプションも含むという理解でよろしいでしょうか、お答えください。
 訪日したトランプ大統領は、日本では北朝鮮との対話や接触の必要性に言及しなかった一方、韓国においては、十一月七日の文在寅大統領との共同記者会見において、北朝鮮に対話の席に着くことを促し、取引をするのが道理だと述べ、翌日の韓国国会における演説では、北朝鮮が攻撃をやめ、弾道ミサイルの開発を停止し、非核化をすることによって、話し合う用意があると発言しました。
 トランプ大統領が日本と韓国において北朝鮮に対する発言スタンスを使い分けた理由をどのようにお考えですか。米国のどのような戦略に基づくものと捉えていますか。あるいは、それは相手国の首脳、つまり日本の総理、韓国の大統領のスタンスの違いによるものではないでしょうか。総理の御認識を伺います。
 この際、総理に、中世ヨーロッパの政治思想家ニッコロ・マキャベリの名言をお伝えしておきます。その大著「フィレンツェ史」の中で、マキャベリは次のように述べています。戦争は、誰かが望んだときに始まるが、誰かが望んだときに終わるものではない。
 総理には、慎重な上にも慎重に、かつ思慮深い外交姿勢で職務に当たられることを切望します。決意のほどをお伺いいたします。
 次に、内政について伺います。
 所信冒頭で言及した国難とも呼ぶべき課題のもう一つは、急速に進む少子高齢化でした。国民の所得が向上すれば、若い世代も所得面の将来不安が軽減され、子供を産み育てる余裕が増すことでしょう。
 しかし、アベノミクスが始まって既に五年、実質賃金指数の推移を見ると、安倍政権発足時の二〇一二年第四・四半期は一〇四・七、直近の二〇一七年第二・四半期は一〇〇・五と低下しています。失業率が完全雇用状態に近い水準になっても実質賃金が上がらない、むしろ低下しているという事態は、これまでの経済理論では説明できない何かが起きているということです。
 総理に伺います。実質賃金が低下している原因、失業率が低下しても実質賃金が上がらない原因をどのように考えているのでしょうか。
 実質賃金が改善しないことを主因に、日本の相対的貧困率の算出基準となる所得の中央値が低下していることも深刻な問題です。
 中央値とは、国民のちょうど真ん中の所得水準を指すものです。中央値の半分以下の所得の世帯構成員の割合が相対的貧困率です。直近データとなる二〇一五年の中央値は二百四十五万円であり、ピークの一九九七年の二百九十七万円に比べ、五十二万円も低下しています。つまり、貧しくなっているのです。それでも総理が、景気は改善している、全体としては豊かになっていると主張するのであれば、それは、格差が拡大していると述べているのと同じことであります。
 総理に伺います。中央値が低迷している原因をどのようにお考えでしょうか。過去五年のアベノミクスが中央値にどのような影響を与えたと認識しているのでしょうか。お答えください。
 格差が社会や成長に与える影響についての認識を伺います。
 格差が成長を促進すると考えるのか、あるいは格差が成長を阻害すると考えるのか、両論あるのが現実です。総理は、格差と成長の関係について、どちらの立場に立って経済政策を立案しているのでしょうか。
 格差が成長を促進するという考え方は、いわゆるトリクルダウン論と関連します。成長によって大企業や富裕層が潤えば、やがてその恩恵は滴り落ち、中小零細企業や中間層、貧困層にも恩恵が及ぶという主張です。トリクルダウンという言葉を最初に使ったのは、米国レーガン政権で行政管理予算局長官を務めたデビッド・ストックマンという説があります。ストックマン、すなわち株価男がトリクルダウンの生みの親とはでき過ぎの話ですが、成長すれば格差は是正されるのか、格差は成長を阻害するのか、この問題は経済理論的には決着が付いていません。
 しかし、二〇一四年から二〇一五年にかけて、OECD、IMFから相次いで後者の立場、すなわち格差は成長を阻害するとの分析結果が発表されるとともに、トマ・ピケティの著書「二十一世紀の資本」によって実証的にその主張が裏付けられました。
 総理に改めて伺います。総理は、格差は成長を促進するという立場なのか、格差は成長を阻害するとの立場なのか。仮に格差は成長を阻害するとの立場であれば、過去五年間に相対的貧困率の中央値が低下した事実は、自らの考えを経済政策に反映することに失敗したという理解でよろしいでしょうか。あるいは、やはり総理は、本音では格差は成長を促進するとお考えということでしょうか。お答えください。
 この質問に対する御答弁も、今後の総理との経済政策論争の基礎となることから、論理的かつ率直に御認識をお伺いしたいと思います。
 いずれにしても、実質賃金が改善せず格差が拡大していることは、所得の面から、若者世代を中心に、出産、子育てに対する不安を高めていると言わざるを得ません。
 企業の収益が社員や国民に滴り落ちる、還元されるという考え方に従って過去五年間の経済政策が運営されてきました。しかし、現実にはそうならなかったのですから、総理、そろそろ経済政策の基本的考え方を転換しようではないですか。経済が良くなれば生活が良くなるのではなく、生活が良くなれば経済が良くなる、そのような考え方に転換して経済政策を組み立て直すおつもりはないでしょうか。
 国民の所得増加が実現しない一方、アベノミクスの手段として行った異常な金融緩和は、後世に大変なツケを残しつつあります。
 驚くべきことに、今回の所信では金融政策や金融緩和には一切言及していません。随分短い所信でしたので、金融緩和に言及する余地は幾らでもあったはずです。今回、金融緩和に触れなかった理由をお聞かせください。
 マネタリーベースを二年で二倍にして二%の物価上昇を実現すると豪語した黒田日銀総裁の目標は、五年目に入っても未達成です。マネタリーベースが約四倍に膨張する一方、目標達成時期を六回にわたって先送りしています。
 総理に伺います。異常な金融緩和をこれほど行っても物価が上昇しない原因をどのように認識しているのでしょうか。論理的にお答えください。それでもなお、黒田日銀総裁に異常な金融緩和の継続を求めるのでしょうか。あるいは、今回の所信で金融緩和に一切言及していないのは、事の重大さに気付き始めたということでしょうか。お答えください。
 日銀は、金融緩和の手段として国債を大量購入することを続けています。これは財政ファイナンスにほかならず、債務を将来世代に付け替えている構図です。安倍総理と黒田総裁の将来世代及び日本経済に対する責任は重大です。
 総理に伺います。将来世代及び日本経済に過大な債務を負わせている自らの責任をどのように認識しているのでしょうか。
 総理がもはやデフレではないと初めて述べたのは、二〇一四年二月四日の衆議院予算委員会です。それから三年半以上も同じことを言い続け、異常な金融緩和を続けています。そして、今回の所信でも、デフレからの脱却を確実なものとしてまいりますと述べています。
 総理に伺います。もはやデフレではなくなって三年半以上もたっているのに、まだデフレ脱却が確実でないのはなぜでしょうか。デフレではないのにデフレ脱却が確実ではないとはどのような状況なのでしょうか。論理的にお答えください。この矛盾した表現が共存する状況は、もはやデフレではないという判断が間違いだったか、その後の政策が失敗したのか、論理的に考えればどちらかであります。
 今後の国会論戦のために、次の点についても確認のため是非お答え願います。デフレの定義、デフレの原因、デフレの功罪、金融政策の有効性について、総理としての公式見解をお聞かせください。
 異常な金融緩和は、国民に異常な超低金利を強います。家計や企業の金利収入の減少、すなわち逸失金利収入であります。
 例えば、事実上のゼロ金利状態入り直前の一九九三年基準で計算すると、日銀の試算によれば、二〇一五年末までの逸失金利収入、つまり国民の皆様が失った金利収入は四百四十一・三兆円です。おおむね一年間に約二十兆円の金利収入のマイナス、つまり消費購買力が奪われています。
 もちろん、金融緩和にはプラスもあります。債券、株、土地等の所有者にはキャピタルゲインをもたらしています。
 プラスとマイナスが同じ人を対象に生じるならば相殺されます。しかし、現実には、マイナスは低所得者、プラスは高所得者に相対的により大きな影響を与えます。これも相対的貧困率の中央値が低下する原因の一つであります。
 日本の家計貯蓄率は、一九七六年に二三・二%のピークを付けた後、徐々に低下。一九九六年に一〇%を切り、二〇一三年には初めてマイナスとなり、二〇一四年はマイナス〇・八%でした。貯蓄率の著しい低下は格差拡大の象徴であります。
 改めて総理に伺います。異常な金融緩和に依存することをもうおやめになりませんか。
 アベノミクスの第二の矢、大規模財政出動についても伺います。
 所信では、景気情勢に言及することはなく、成長軌道を確かなものとすると述べるにとどめています。
 総理に伺います。現在の景気情勢をどのように認識しているのでしょうか。景気は良いという認識であれば、災害対策以外の補正予算は必要ないはずです。総理は、十一月一日の閣議で経済政策パッケージ策定と補正予算編成を指示しました。どのような景気の現状認識に基づき経済対策及び補正予算編成を指示されたのでしょうか、お答えください。
 第三の矢である成長戦略についても伺います。
 所信では、生産性革命、人づくり革命を断行いたします、来月、新しい経済政策パッケージを策定し、速やかに実行に移しますと述べました。
 新しい経済政策パッケージの内容について御説明願います。現在策定中ですという御答弁はやめてください。政府は既に平成三十年度予算の概算要求を出しているのであり、本来は概算要求の基礎として骨太の方針等でそうした経済政策パッケージを示し、その上で概算要求をつくるものではないでしょうか。
 どのような理由でこの時期に新しい経済政策パッケージをつくるのでしょうか。来年度予算の概算要求は、経済政策の戦略なしで取りまとめたということでしょうか。お答えください。
 日本経済の潜在成長率を構成する要素のうち、技術進歩などを表す全要素生産性は過去五年間で低下しています。私たちが政権を総理に引き継ぐ直前の二〇一二年第三・四半期には〇・八九であった全要素生産性は、直近の二〇一七年第二・四半期には〇・三七まで低下しています。
 総理に伺います。安倍政権の五年間に全要素生産性が低下し続けている原因をどのようにお考えでしょうか。
 所信では、生産性革命に関連して、人工知能、ロボット、IoTに言及し、人手不足等に対応すると述べました。基本的方向は賛成です。
 しかし、懸念もあります。二〇一三年、英国オックスフォード大学が、米国労働市場における仕事の四七%がAI若しくはロボットに置き換え可能であるとの推計結果を発表し、世界に衝撃が走りました。二〇一五年には、日本のシンクタンクがオックスフォード大学の推計方法を用いて日本の労働市場について分析したところ、置き換え可能率は四九%と推計されました。
 AI、ロボット、IoTを活用する一方、生身の国民の雇用への影響をどのように考え、その対策をどのように行うのでしょうか。新しい経済政策パッケージの中で生産性革命を追求するのであれば、そのパッケージの中にはAI、ロボット、IoT等の普及に伴う雇用対策も含まれるべきと考えます。影響分析を含め、それを含むパッケージを策定することを提案したいと思いますが、いかがでしょうか。
 雇用問題に関連して、労働法制について伺います。
 政府は、従来の残業代ゼロ法案と時間外労働の上限規制等を束ねた法案を来年の通常国会に提出する予定と聞いています。残業代ゼロ法案には、過重労働につながる高度プロフェッショナル制度の創設や裁量労働制の対象業務の拡大が盛り込まれており、長時間労働を助長する危険性があります。一方、時間外労働の上限規制は長時間労働を是正するものであります。
 趣旨が真逆の内容を一つに束ねて審議を要求することは適切とは思えません。両法案を別々に国会に提出することを求めます。総理の方針をお伺いします。
 急速に進む少子高齢化の高齢化に関連して伺います。
 所信では、二〇二〇年代初頭までに五十万人分の介護の受皿を整備する、介護人材確保への取組を強化します、他の産業との賃金格差をなくしていくため、更なる処遇改善を進めていきますと述べました。全産業平均より約十一万円も低い介護分野の月収を来年度の介護報酬改定でどのように改善するおつもりなのか、総理のお考えを伺います。
 民進党は、今年の通常国会に来年度改定での介護報酬引上げを盛り込んだ介護崩壊防止法案を提出しましたが、与党の反対によって否決されました。介護報酬改定に向けた総理のお考えを伺います。
 診療報酬も同様です。民主党政権では二回連続で診療報酬を引き上げ、医療崩壊に一定の歯止めを掛けましたが、安倍政権下では診療報酬の引下げによって医療は再び厳しい状況に置かれています。診療報酬改定に向けた総理のお考えを伺います。
 所信では憲法改正にも言及していますので、憲法と自衛隊の関係についてお伺いします。
 国民の生命と財産を守ることは、国家として当然のことであります。もちろん、私たちも自衛のための自衛隊は合憲の立場です。
 総理は、憲法に自衛隊を書き込むことについて度々言及し、五月三日の全国紙のインタビューでは自衛隊を合憲化することが使命と発言しています。
 総理に伺います。私たちは、自衛隊は憲法に書いてあろうとなかろうと合憲の立場です。総理は自衛隊を違憲と考えているのでしょうか、お答えください。
 仮に現状でも合憲との御認識であれば、合憲の自衛隊を憲法に書き加えることで何が変わるとお考えでしょうか。自衛隊を書き加えることで自衛隊の存在や行動にどのような変化があると考えているのか、御答弁願います。
 最後に、保守とリベラルの概念について質問させていただきます。
 保守政治家を自任する総理に伺います。保守の定義、保守とは何かということについて、総理の御認識を聞かせてください。
 保守のルーツは、英国のコモンローです。先例や伝統に基づく制度や価値を尊重し、現状維持、反改革的な傾向が保守の源流です。しかし、保守も時には改革を否定しません。保守思想の祖と言われるエドマンド・バークは保守するための改革という概念を主張しました。総理にとって、何が守るべきもので、何が改革すべきものとお考えでしょうか、伺います。
 格差問題を例に取ります。社会の格差の現実に直面し、一定の範囲内の格差を容認する一方、限度を超える格差是正を守るべき価値と考えるか否か。格差是正が必要とのお立場であれば、限度を超える格差とは何か。総理のお考えをお伺いします。
 一方、ジョン・ロックに端を発するリベラルも英国がルーツです。本来の意味は権力からの自由、自己決定権重視の思想です。私的所有権や市場原理を重んじる古典的自由主義につながり、資本主義の基礎を形成しました。
 つまり、リベラルの本質は自由主義。個人の自己責任が前提であり、格差是正とは必ずしも相入れない面があります。
 しかし、自由主義がルーツの古典的リベラルは進化しました。個人の自由や生存権を重視することから、翻って、時には政府が個人の自由や生存権を守るために介入することを肯定するソーシャルリベラリズムです。日本ではこの概念が俗にリベラルと言われています。一方、古典的リベラルはリバタリアニズムとも呼ばれます。
 政府が介入してでも個人の自由や生存権を守るのはどのような場合でしょうか。それが問題です。政府が介入すべき格差とは何か。保守にもリベラルにも共通の問題です。
 保守もリベラルも変わりない印象を受けます。それはある意味で当然です。本来、保守とリベラルは対立概念ではないからです。リベラルの観点から政府が介入し過ぎると、他の人の自由や財産権を侵害する現象も発生し、リベラルパラドックスが生じます。
 何が是正すべき格差かという問題に一定の回答を提示したのはジョン・ロールズです。誰もがどのような立場で生まれても自己実現を追求できることを重視し、格差や不平等が固定化されないことを重要と考え、そのことを社会的公正と表現しました。
 社会的公正とは何か。その定義が、国の社会保障制度や社会福祉、所得再分配等の税制の在り方を決めることになります。
 総理にお伺いします。総理は、日本の諸制度が守るべき社会的公正とはどのような定義とお考えでしょうか。
 日本では、マスコミも永田町も、保守とリベラルの概念を誤った使い方をしています。必ずしも的確ではない保守とリベラルの対比をやめることが、日本の政策論争を生産的に組み立て直すことになります。
 いずれの党の中にも保守とリベラルは混在します。当たり前のことです。
 保守は好戦的であり、リベラルは平和的であるとする関連付けも深刻な間違いです。持論を他者や社会に強要し、持論に固執し過ぎるところに争い事が発生します。
 では、現在の日本の政治の対立軸は何か。私は、現在の与野党の構図は、民主主義の観点からは比較的明確に整理できると捉えています。
 民主主義は、思想ではなく、手続論です。何が正しいか、何が正義かは絶対的には言えません。二千五百年前のソクラテス以来、古今東西の知性がそう諭し続けています。何が正しいかを定めることはできないので、可能な限り議論を尽くすことを求めているのが民主主義であります。
 多数意見が必ずしも良い意見とは限らないので、少数意見にも耳を傾けることを求めています。議論を尽くせば尽くすだけ、より良い結論に到達できることを前提としているのが民主主義であります。
 だからこそ、戦後の議会の先輩たちは、意見が大きく対立するような法案は、拙速に結論を出すことなく、何国会も議論を重ねることが珍しくなかったのであります。
 一九八八年四月五日の参議院予算委員会において、与党の質問時間に関する野末陳平議員の質問に対して、竹下登総理は次のように答弁しておられます。「法律案作成に至りましても、あるいは予算編成に至りましても、政府・与党一体の責任で政調会の各部会等で十分自己の意見を吐き、質疑応答をしていらっしゃるということからして、割愛と申しますか、可能な限り少数意見に耳を傾けると申しますか、野党の皆さん方に時間を差し上げるというのが私どもが教わって今日まで守っておるところでございます。」。
 総理、この竹下総理のお考えこそ、国会において守るべき保守思想、保守政治家の矜持ではないでしょうか。総理のお考えをお伺いいたします。
 さらに、より意味のある議論を行うために、政府は可能な限り情報公開に努め真摯かつ十分な説明責任を果たすことが民主主義の基本と言えます。
 その点に照らせば、総理の姿勢、現在の政府の体質には重大な問題があります。
 慣例を覆し、野党の質問時間を削ることを主張する姿勢に、その内面が表れています。民主党が政権をお預かりした際には、時の野党、すなわち自民党の皆さんの主張を受け入れ、一対九まで質問時間を譲ったことを思い出していただきたい。二〇一〇年以降に当選され、当時は現職でなかった議場の各党の皆様には、そのことを御認識いただければ幸いです。
 また、森友、加計問題にとどまらず、PKO日報問題を含む多くの懸案に対して、総理の情報公開や説明責任に対する後ろ向きの姿勢、民主主義を破壊するかのごとくの姿勢は目に余るものがあります。その総理が謙虚を度々強調する姿は笑止千万と言わざるを得ません。
 私は、民主主義を重んじる勢力と民主主義を軽視する勢力との対立こそ、現在の日本、これからの日本に求められる重要な対立軸であると考えます。
 次の総選挙においては、民主主義を重んじる勢力を結集し、国民の皆さんと国会に対し十分な情報公開を行い、十二分な説明責任を果たし、拙速な議論や傍若無人な国会運営をすることのない、より民主主義的な政権を打ち立てるために全力を尽くす所存です。
 東日本大震災からの復興、原発問題への取組を始め、国会においては、山積する課題について政府・与党の皆さんと真摯かつ建設的な議論に努めるとともに、民主主義を重んじる勢力の結集のために粉骨砕身努力することを誓いつつ、代表質問とさせていただきます。
 御清聴ありがとうございました。(拍手)
   〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇、拍手〕
#5
○内閣総理大臣(安倍晋三君) 大塚耕平議員にお答えをいたします。
 代表に就任されたこと、お喜びを申し上げます。是非、建設的な議論を進めていきたいと思っております。
 我が国の外交姿勢及び米国との関係についてお尋ねがありました。
 私は、就任以来、積極的平和主義の考えの下、地球儀を俯瞰するような視点に立って積極的に平和外交を推進してまいりました。今後もこの立場にいささかも変わりはありません。
 米国は、我が国と基本的価値及び戦略的利益を共有する強固な同盟国です。平和安全法制の整備により、互いに助け合える同盟として、我が国とのきずなはかつてないほど強固なものとなりました。
 今後とも、日米同盟の揺るぎないきずなの下、米国は我が国と共に手を携えて、アジア太平洋の平和と繁栄のために主導的役割を果たしていくと確信しております。
 北朝鮮の大陸間弾道ミサイル及びノドンミサイルについてのお尋ねがありました。
 北朝鮮の核・ミサイル開発は、これまでにない重大かつ差し迫った脅威です。北朝鮮は二度にわたりICBM級の弾道ミサイルを実際に発射しており、ミサイルの長射程化を図っています。また、過去六回の核実験を通じた技術的成熟などを踏まえれば、核兵器をミサイルに搭載するための小型化、弾頭化を既に実現している可能性があります。他方、核兵器を弾道ミサイルに搭載して配備、運用するためには大気圏再突入技術等が必要ですが、北朝鮮がそうした技術を実現しているかについては引き続き慎重な分析が必要と考えています。
 我が国を射程に収めるノドンミサイルについては数百発を保有していると見られ、対処に当たっては日米協力が不可欠です。北朝鮮の脅威を抑止するため、平和安全法制の整備により、かつてないほど強固となった日米同盟の下、日米で緊密に協力し、防衛態勢と能力の向上を図るべく、具体的行動を取っていきます。
 また、我が国としては、陸上配備型イージスシステムを中心として弾道ミサイル防衛能力の抜本的な向上を図るなど防衛力を強化し、国民の命と平和な暮らしを守るため最善を尽くしてまいります。
 北朝鮮による挑発及び圧力と対話のバランスについてお尋ねがありました。
 九月十五日以降、北朝鮮による挑発行為は行われていませんが、言葉による挑発は続いており、北朝鮮は一貫して核・ミサイル開発を継続していると考えています。
 北朝鮮に政策を変えさせるため、あらゆる手段を使って北朝鮮に対する圧力を最大限にし、北朝鮮の方から対話を求めてくる状況をつくっていくことが必要です。
 北朝鮮に対する最大限の圧力、全ての選択肢及び日韓両国におけるトランプ大統領の発言についてお尋ねがありました。
 トランプ大統領との間では、安保理決議の完全な履行、独自制裁の実施、共同訓練の実施、北朝鮮との関係の縮小に向けた各国への外交面での働きかけなど、あらゆる手段を使って北朝鮮に対する圧力を最大限にすることで一致しています。
 また、我が国は、米国による北朝鮮のテロ支援国家再指定を、北朝鮮に対する圧力を強化するものとして歓迎し、支持します。
 我が国は、全ての選択肢がテーブルの上にあるとのトランプ大統領の立場を一貫して支持しています。その上で、政府としては、米国の今後の対応を予断することは差し控えさせていただきます。
 北朝鮮には、完全な、検証可能な、かつ不可逆的な方法で核・ミサイル計画を放棄させる必要があります。そのために、圧力を最大限まで高め、北朝鮮の側から核・ミサイル開発を断念するので話し合いたいと言ってくる状況をつくることが必要です。日米間ではこの方針について完全に一致しています。トランプ大統領が日本と韓国で述べたことは一貫してこの方針に基づいていると考えます。
 マキャベリを引用しつつ、慎重な外交姿勢についてのお尋ねがありました。
 北朝鮮問題について、挑発行為、挑発を行っているのは北朝鮮の方であります。私も、そして世界中の誰一人、紛争など望んではいません。
 私は、自衛隊の最高指揮官として、毎年、殉職された自衛官の慰霊式典に出席し、御遺族の方々にもお目にかかっています。そのような立場にある者として、問題の平和的解決の重要性については誰よりもよく理解しています。
 北朝鮮に政策を変えさせるため、あらゆる手段を使って北朝鮮に対する圧力を最大限にし、北朝鮮から対話を求めてくる状況をつくっていくことが必要と考えています。
 実質賃金及び相対的貧困率についてお尋ねがありました。
 御指摘の実質賃金は、景気が回復し雇用が増加する過程においてパートで働く方が増えたこと、二〇一四年四月の消費税率引上げに加え、デフレからの脱却に取り組む中で物価が上昇したことにより、低下していました。その後、二〇一六年に前年比プラスとなった後、二〇一七年に入ってからはおおむね横ばいで推移しています。
 雇用者数の増加を加味した国民みんなの稼ぎである総雇用者所得を見ると、名目で見ても実質で見ても、二〇一五年七月以降、前年比プラスが続いています。
 また、相対的貧困率は、これまで長期的に上昇傾向となっていましたが、政権交代後、雇用が大きく増加するなど経済が好転する中で改善に転じ、特に子供の貧困率は大きく改善しました。
 なお、等価可処分所得の中央値は、高齢者の増加等に伴い長期的に低下傾向にあります。総務省の全国消費実態調査では二〇〇九年から二〇一四年にかけて低下しております。厚生労働省の国民生活基礎調査でも低下し続けていましたが、二〇一二年から二〇一五年には経済が好転する中で若干改善いたしました。
 格差と経済成長との関係についてのお尋ねがありました。
 安倍内閣が進めている政策は、成長と分配の好循環をつくり上げていくというものであります。政府がどれだけ所得再配分を繰り返しても、持続的な経済成長を通じて富を生み出すことができなければ、経済全体のパイも個人の所得も減っていきます。成長し、富を生み出し、それが国民に広く均てんされ、多くの人たちがその成長を享受できる社会を実現していきます。格差が固定化しない、同時に許容し得ない格差が生じない社会を構築していくことが重要な課題です。
 アベノミクスの下で雇用が大きく増加するなど経済が好転する中で、相対的貧困率は改善に転じています。四年連続の賃金アップの勢いを更に力強いものとし、相対的貧困率の改善を進めていきたいと考えています。国民の皆様の生活を良くしていく、そのためにアベノミクスの政策を続け、経済の好循環を加速させてまいります。
 日本銀行の金融政策についてお尋ねがありました。
 今般の所信表明演説において、あらゆる施策を総動員することで、デフレからの脱却を確実なものとしてまいりますと述べたところであります。デフレ脱却、そして力強い成長のため、大胆な金融政策を含む三本の矢の政策を継続していく考えに変わりはありません。
 物価の動向について御指摘がありましたが、日本銀行が十月に公表した展望レポートにおいて、現状、企業の賃金・価格スタンスが慎重なものにとどまっていることなどを背景に、消費者物価が弱めの動きとなっているものの、マクロ的な需給ギャップが着実に改善していくこと等から、二%の物価安定の目標に向けたモメンタムは維持されている旨、示されております。
 また、現在、日本銀行が行っている国債買入れは、二%の物価安定目標の実現という金融政策を目的として、日本銀行自らの判断で行っているものであることから、財政ファイナンスとの指摘は当たらないと考えています。
 金融政策の具体的な手法については日本銀行に委ねられるべきであると考えており、私は黒田総裁の手腕を信頼しております。政府としては、日本経済の将来のために、引き続き日本銀行が、経済、物価、金融情勢を踏まえつつ、物価安定目標の実現に向けて努力されることを期待しています。
 なお、相対的貧困率及びその中央値については先ほど答弁したとおりです。また、家計の貯蓄率については、少子高齢化の影響もあり、長期的に低下していると認識しております。
 デフレ脱却に向けた認識についてお尋ねがありました。
 デフレとは、物価が持続的に下落する状況を指すものと認識しております。我が国経済は、長期にわたって需要が弱かった中で、企業などによる日本経済の将来に対する成長期待の低下やデフレマインドの固定化もあり、二十年近く続いたデフレに苦しんできました。
 政権交代後、アベノミクス三本の矢により、デフレではないという状況をつくり出すことができたと認識しています。中でも、日本銀行による大胆な金融緩和については、固定化したデフレマインドの払拭につながっているものと考えており、デフレからの脱却において金融政策が大きな影響を与えるということは一貫して申し上げているとおりであります。
 ただし、消費者物価は足下で横ばいが続いており、再びデフレに戻るおそれがないという意味で、完全にデフレを脱却したと言い切れる状況にはありません。
 足下の状況を見ると、雇用・所得環境の改善が続いていく中で、GDPギャップはプラスに転じ、企業収益は過去最高を更新し、人手不足感は四半世紀ぶりの高水準となるなど、デフレ脱却に向けた局面変化が見られます。こうした局面変化をデフレ脱却に確実につなげるため、引き続き、政府、日銀で緊密に連携しながら、あらゆる政策を総動員して、デフレ脱却、そして力強い成長を目指してまいります。
 新しい政策パッケージについてお尋ねがありました。
 今、日本経済は十六年ぶりとなる七四半期連続のプラス成長が実現しています。新しい経済政策パッケージについては、この経済の成長軌道を確かなものとして、最大の課題である少子高齢化の克服に向けて生産性革命と人づくり革命を断行するためのものです。
 二〇二〇年を大きな目標に、生産性革命の実現に向けて、企業による人材や設備への力強い投資並びにソサエティー五・〇の実現に向けたイノベーションを促すため、これまでにない大胆な政策を講じていきます。
 人づくり革命については、幼児教育の無償化や介護人材の確保などを通じて社会保障制度を全世代型社会保障へ転換するとともに、真に必要な子供たちに限った高等教育無償化など、人への投資を拡充します。これらの政策を力強く進めていくため、消費税率一〇%への引上げに伴う増収分などを活用した二兆円規模の政策を取りまとめます。
 年末までに経済政策パッケージを取りまとめなければ、二〇一九年度から大胆な政策変更を行うことはできません。大きな改革には大きな財源が必要となります。財源のめどがないままでは改革の中身それ自体が小さくなっていくおそれがあります。そのために、九月下旬に消費税率の使い道を見直すことを決断し、新しい経済政策パッケージを年内に取りまとめることを表明して、衆議院を解散し、国民に信を問うことといたしました。
 なお、平成二十九年度補正予算については、景気の下振れに対応するものではなく、災害対応を始めとする追加的財政需要に適切に対処するとともに、生産性革命や人づくり革命のうち緊急性が高いものへの対応や防災・減災対策、日EU経済連携協定などに備えた農林水産業の体質強化施策等を講じるため、編成を指示したものであります。
 また、既に来年度予算の概算要求基準において、新しい日本のための優先課題推進枠を設け、地域経済、中小企業、サービス業等の生産性向上に資する施策等について要望できる仕組みとしていたところです。
 全要素生産性についてお尋ねがありました。
 アベノミクスにより、雇用環境が大きく改善するとともに、設備投資もリーマン・ショック前に並ぶ水準まで回復する中、潜在成長率は改善してきています。ただし、資本や労働を活用し、どれだけ効率的に生産したかを表す全要素生産性が長期にわたり伸び悩んでいるのは事実です。
 その理由について一概に申し上げることは困難ですが、例えば、イノベーションを担う企業のパフォーマンスが必ずしも力強くないこと、情報通信技術の利活用が中小企業などで十分に進んでいないこと等が考えられます。
 このような状況を打開するため、税制、予算、規制改革、あらゆる政策を総動員して生産性革命を実現してまいります。
 生産性革命に伴う雇用への影響と対策についてお尋ねがありました。
 AI、ロボット、IoTなど、生産性を飛躍的に押し上げる新しいイノベーションによって、中長期的には産業構造が大きく変化していくことが予想されます。こうした中で、例えば、IT人材が二〇三〇年には七十九万人不足するとの試算もあり、雇用のミスマッチを解消していくことが重要な課題であります。
 このため、新しい経済政策パッケージにおいても、今後、中長期的に求められる人材像等を踏まえながら、不足しているIT人材の育成やリカレント教育の拡充等に取り組んでいく考えであります。
 労働法制についてお尋ねがありました。
 働く方の健康の確保を大前提に、生産性を上げつつ、ワーク・ライフ・バランスを改善し、女性や高齢者が働きやすい社会に変えていく。こうした社会を実現するために、労働時間法制の見直しが急務です。
 その中で、高度プロフェッショナル制度の創設、裁量労働制の見直しや時間外労働の上限規制は、いずれも、健康を確保しつつ意欲や能力を発揮しながら働くことができるよう、働く方のニーズに合った選択肢を用意することを目的とするものであり、これらを内容とする法案の早期提出を目指します。
 介護報酬改定と診療報酬改定についてお尋ねがありました。
 二〇二〇年代初頭までに五十万人分の介護の受皿を整備する、その大きな目標に向かって介護人材確保への取組を強化します。
 これまで自公政権で月額四万七千円の処遇改善を実現してきましたが、他の産業との賃金格差をなくしていくため、更なる処遇改善を進めます。
 また、平成三十年度の診療報酬と介護報酬の同時改定については、国民一人一人が状態に応じた適切な医療や介護を受けられるよう、適正化、効率化すべきことは実施しつつ、関係者の御意見も伺いながらしっかりと取り組んでまいります。
 憲法改正についてのお尋ねがありました。
 昭和二十九年の自衛隊法制定により自衛隊が設けられて以来、政府としては、一貫して、自衛隊が我が国を防衛するための必要最小限度の実力組織であって、憲法に違反するものではないと解しています。これは、選挙戦においても討論会で私は一貫して述べてきたところでございます。他方で、近年の世論調査でも、自衛隊は合憲と言い切る憲法学者は二割にとどまり、多くの教科書に合憲性に議論がある旨の記述があるという状況があります。
 自衛隊員たちに、君たちは憲法違反かもしれないが、何かあれば命を張ってくれというのは余りにも無責任であります。そうした議論が行われる余地をなくしていくことは、私たちの世代の責任ではないかと考えております。
 憲法改正の内容については、私は今、内閣総理大臣として答弁しており、自民党が検討している改正案についてこの場でお答えすることは差し控えさせていただきたいと思いますが、自衛隊の存在が憲法に明記されることによって自衛隊の任務や権限に変更が生じることはないものと考えていることは明確に申し上げておきたいと思います。
 保守とは何か、守るべきものと改革すべきものについてお尋ねがありました。
 保守とは、いわゆるイデオロギーではなく、日本及び日本人について考える際に、自分の生まれ育ったこの国に自信を持ち、今までの日本が紡いできた長い歴史をその時代に生きた人たちの視点で見詰め直そうとする姿勢であると考えています。先人たちが積み上げてきたものの重みをしっかりと感じながら、日本の大切な文化や伝統といった守るべきものをしっかりと守っていくべきと考えています。
 しかし、しかし保守と改革は矛盾するものではありません。大切なものを守るためにこそ、時には勇気を持って変えていくべきこともあります。常に変革を求めていく気持ちこそ大切なものを結果として守ることにつながる、それこそが私が考える保守であります。
 社会の格差についてお尋ねがありました。
 格差が限度を超えるかどうかについては、社会的な常識によるものであり、一概に私の方から判断をお示しするべきものではないと考えますが、格差が固定しない、同時に許容し得ない格差が生じない社会を構築していくことが重要であると考えています。この考え方については、私が官房長官のとき以来述べてきたことでございます。
 先ほど答弁したとおり、安倍内閣は、アベノミクスを更に加速させながら、成長と分配の好循環をつくり上げるとともに、格差が固定化されず、誰にでもチャンスがあり、頑張れば報われる社会を実現してまいります。
 社会保障制度等が守るべき社会的公正についてのお尋ねがありました。
 安倍内閣では、女性も男性も、若者も高齢者も、障害や難病のある方も、あらゆる場で誰もが活躍できる一億総活躍社会を目指します。
 格差については、先ほどもお答えいたしましたように、固定化しない、許容し得ない格差が生じないことが重要であると考えています。
 そのような観点から、社会保障については、医療、介護における低所得者の保険料負担の軽減や高額療養費制度の見直しなど、格差是正に向けた取組を進めてきております。また、税制についても、再分配機能の回復を図るため、所得税の最高税率引上げ等を講じ、随時実施しているところであります。
 竹下元総理の発言についてお尋ねがありました。
 竹下元総理の御発言も含め、国会におけるこれまでの様々な前例や慣例の積み上げは大切であります。同時に、国会は国民の負託に応える場であり、こうした観点から、これまでも不断の改革が進められてきたものと承知しております。
 一般論として、数万を超える得票を有権者の皆様からいただいて国会議員となった以上、与党、野党にかかわらず、政党内部の活動だけではなく国会の中において国会議員としての責任を果たすべきであり、それが有権者の負託に応えることであるとの指摘もあります。
 いずれにせよ、質問時間の配分自体についてはまさに国会がお決めになることであり、内閣総理大臣の立場である私から答弁することは差し控えさせていただきたいと思います。(拍手)
#6
○議長(伊達忠一君) ただいま理事が協議中でございますので、しばらくお待ちください。
    ─────────────
#7
○議長(伊達忠一君) 橋本聖子君。
   〔橋本聖子君登壇、拍手〕
#8
○橋本聖子君 自由民主党の橋本聖子でございます。
 私は、自由民主党・こころを代表して、安倍内閣総理大臣の所信表明演説について、総理に質問をいたします。
 総理は、緊迫する北朝鮮問題や急速に進む少子高齢化といった未曽有の国難に挑戦するため、国民の皆様からしっかりと信任を得なければならないとの決意の下、衆議院を解散いたしました。そして、私たち参議院自民党も、衆議院の同志と共に全国各地で自民党の政策を訴えてまいりました。その結果、選挙では国民の皆様から力強い御支持をいただくことができましたが、これは、安定した政治基盤の下で一刻も早い課題解決を願う国民の皆様方からの声であり、その責任の重さを深くかみしめ、身の引き締まる思いでございます。
 国民の期待に応えるべく、良識の府である参議院においても、国難に対処するために今回の衆議院選挙で訴えた政策が強力に推進されるよう、しっかりと政策本位の建設的な議論を行っていきたいと考えております。
 来年は明治維新百五十年、北海道も命名されて同じく百五十年を迎えます。この節目の年に、この国を、そして郷土を支えた先人の苦労に思いを致し、感謝の気持ちを新たにすることは大変大切なことだと思います。
 そして今、私たち、百五十年前と同じほどの国難に直面し、まさに国家の第二創業を必要としております。政治において大切なことは、国民の安心と安全を確保し、幸福で豊かな生活を約束し、次世代を育成していくことであります。しかし、これまでやや等閑に付されていた重要な点があります。それは、国民に我が国が直面している課題を共有していただき、オールジャパンで課題の解決に挑むことです。
 安倍総理一人でこの国の第二創業をなし得ることなど不可能であります。明治維新のとき、日本中からほうはいと志士が立ち上がったように、国民の一体感を醸成しなければ国難は乗り切れません。また、そうしてオールジャパンで国難を乗り切ってこそ、この国で生まれてきたことに誇りを感じることができるのであると思います。そのためにも、これまで以上に国民に対し、この国の置かれている現状の厳しさを分かりやすく周知し、政府として課題克服にどうやって取り組もうとしているのかを明確に発信する必要があると考えます。
 このような認識の下、我が国の前に立ちはだかる課題に対し、どのような決意で臨まれるのか、改めて伺います。
 次に、外交・安全保障について伺います。
 去る十一月五日から七日、トランプ米国大統領が初めて訪日されました。今朝、トランプ大統領が北朝鮮をテロ支援国家に再指定することを決めたというニュースが飛び込んでまいりましたが、これは一連の歴訪を受けての動きであると評価できるものであります。そして、拉致被害者家族会の皆様と面会をし、拉致問題解決への熱意を示し、大きな未解決の国際問題として広く世界が認識したことも今回のトランプ大統領の訪日での大きな成果の一つであります。
 今から四十年前、十三歳のときに北朝鮮工作員に拉致された横田めぐみさんと私は生年月日が同じであります。それだけに、まるで自分のことのように思え、いつも胸が締め付けられ、身につまされる思いでまいりました。これまでもこの問題の解決に向け、固い決意で取り組んでまいりましたが、今後も、政府はもちろん、国民全員が一体となって、被害者の皆様全員が一日も早くふるさとに帰ることができるよう努力を積み重ねていくべきだと考えております。
 もう一つの大きな成果は、日米両国首脳が、今は対話ではなく北朝鮮に最大限の圧力を掛ける局面であるとの考えで一致し、北朝鮮が非核化に向けて政策変更しない限り北朝鮮に明るい未来はないとの認識を共有したことであります。
 北朝鮮の弾道ミサイル開発、核開発は確実に進んでいると見られ、既に核兵器の小型化、弾頭化の実現に至っている可能性が考えられると分析をされております。このような状況の中、我が国の安全保障にとって最も重要なことは、北朝鮮に全ての核開発、弾道ミサイル計画を完全な検証可能かつ不可逆的な方法で放棄させることです。北朝鮮が核開発や弾道ミサイル計画を完了してしまえば、我が国は未来永劫その脅威にさらされることとなり、我が国はもちろん、東アジア、太平洋の安全は大きく損なわれてしまいます。
 元米政府高官が、必要とあらば、北朝鮮の核武装を容認することも必要である、その上で核の使用を抑制させ、アメリカの防衛力を高めるべきだという論文を米新聞に投稿しましたが、北朝鮮の核武装容認を前提とする考えは極めて危険であり、決して賛成できません。
 このような状況の中、日米双方で今は対話ではなく最大限の圧力で対応すると一致したことは、我が国の安全保障環境の深刻化を招く朝鮮半島の核武装化を防ぐという観点から本当に大きな意義があったと思っております。
 日米首脳会談の後に実施された米韓首脳会談においても、米国と韓国は最大限の制裁と圧力を加えるとの方針を再確認いたしました。米中首脳会談でも、米中両国は、北朝鮮を完全に非核化することで合意するとともに、北朝鮮に関する国連安保理の制裁決議を全面的に履行し、北朝鮮が無謀な道を放棄するまで経済的な圧力を掛けることで一致をいたしました。
 トランプ大統領就任以来十か月で二度のゴルフ会談、五度の首脳会談、十六回に及ぶ電話会談と、各国首脳の中で群を抜いて親密かつ信頼の厚い日米首脳の関係が今回の日米首脳会談の成功を、そして、日米首脳会談の成功が米韓首脳会談での韓国の対応の変化や米中首脳会談での米国による中国への明確な協力要請などをもたらしたことは間違いありません。加えて、平和安全法制の成立により、一層幅広い場面で海上自衛隊からの米イージス艦への給油などが可能となり、現場レベルでの同盟強化に大きく貢献していると考えています。
 ただ、日米韓三か国での共同演習がいまだに行われておらず、韓国は中国に対して日米韓軍事同盟の締結はあり得ないと言質を取られるなど、一枚岩の対応ができていないとの印象を拭い切れません。
 総理にお願いいたしますが、今回の日米首脳会談成果を踏まえて、北朝鮮からの脅威に対応するために、その拉致問題の一刻も早い解決のために、今後、日米韓の関係の在り方はどうあるべきかと考えているのか、そしてどのように発展をさせていくつもりなのかという点についてお聞かせをいただきたいと思います。
 さて、去る十月十八日、中国共産党大会の演説で習近平国家主席は、党中央委員会活動報告で、建国百周年を迎える今世紀中頃までに社会主義現代化強国の建設を目指すとする長期目標を明らかにし、二〇五〇年までに総合的な国力と国際影響力において世界の先頭に立つ国家になると宣言をいたしました。さらに、これまでの経済面での成果の中で南シナ海島嶼建設の積極的な推進を挙げております。このことについては、領有権を主張するスプラトリー諸島など、力を背景に国際法を無視して強引に進めた人工島建設を正当化したものと見ることができます。周辺国に対し経済力や軍事力を背景に露骨な圧力を加える強国路線に突き進むことがないよう、近隣諸国と連携して注意深く対応する必要があります。
 一方、北朝鮮の脅威への対応など東アジアの安全保障を考えるときに中国を抜きにして考えることはできませんし、経済活動は我が国も中国も互いをなしにして成り立たないということも事実であります。
 そこで、総理は、日本を含む東アジア地域の安全保障を考えていく上において、習国家主席の共産党大会での報告をどのように受け止め、日中外交を今後どのように展開していくおつもりでしょうか、お聞かせいただきたいと思います。
 安倍政権の成果の一つに訪日外国人数の増加があります。五年前に約八百四十万人にすぎなかった外国人旅行者数は、昨年は約二千四百万人、三倍となりました。地域経済にも大きな効果を上げています。さらには、政府は、東京オリンピック・パラリンピックが開催される二〇二〇年に四千万人という目標を掲げております。
 しかし、残念なことに、オリパラは注目度が高いためにテロ攻撃の対象となることが多く、ミュンヘン大会のテロは記憶に残っている方もいるかと思いますが、私自身もアトランタ大会に出場した際、よく使用していた選手村内のアスリートダイニングの一角で爆弾テロが発生いたしました。間一髪で被害はなかったものの、あと少しスケジュールがずれていたらと震撼した経験をしております。
 あらゆるテロ攻撃に対し万全に備えなければなりませんが、近年は特にサイバー攻撃のターゲットにもなる傾向が顕著となっており、二〇二〇年東京オリパラにおいては、攻撃は一層強烈になると思われます。
 サイバー攻撃の特徴は、地理的制約を受けることが少なく、世界中どこからでも、行政機関、電力、ガス、鉄道、航空、医療といったあらゆる重要インフラに攻撃が加えられているおそれがあります。したがって、政府内で各省庁が密接に情報共有をすることはもちろんですが、被害を広げないために速やかな対応を指示できる司令塔の体制強化が求められます。
 加えて、匿名性が高いサイバー攻撃対策では、各国との協力、信頼関係の促進も重要であります。そして、テロを防ぐためには、国際組織犯罪防止条約締結により可能となった条約加盟国との間でのテロ犯罪に関する情報共有を密に行うこと、加えて、何よりも最悪の事態を想定してシミュレーションを繰り返すことが大切であります。政府には、日頃から万が一に備えていただくことをお願いをしたいと思います。
 このような観点から、総理に、二〇二〇年の東京オリパラに向けて、サイバー攻撃に対して、隙あればともくろむテロリストを封じ込め、国民及び海外からのお客様の安心と安全を守り抜くという決意とそのための政府における体制強化の方針について伺いたいと思います。
 ここからは、経済財政政策に関連した項目について幾つかお尋ねをいたします。
 名目GDP、企業収益、そして有効求人倍率や大学生の就職内定率など多くの経済指標は、政府が全力を傾注したアベノミクスにより我が国の経済が回復したことを物語っております。
 つい先日、TPP11が大筋合意に至りました。これにより、質の高い経済連携を通じて、アジア太平洋地域の発展を我が国に取り込むことが可能となります。同時に、保護主義的な経済圏をつくろうという動きへの防波堤ともなる経済連携協定であり、今後の経済交渉の道筋となるものであります。攻めの姿勢を忘れずに、しっかりと我が国産業の競争力を付ける政策を展開することで、アベノミクスのエンジンとして、更に経済成長を加速させることができる環境が整えられたものと大いに期待をしております。
 同時に、アベノミクスの加速化には、対外的な経済政策だけではなく、人づくり革命と生産性革命といった国内の潜在的な経済成長力を高める政策が不可欠であります。少子高齢化が進展する中、経済成長を確実にするには、一人当たりの生産性を高めると同時に、これまで生産活動に参加をしていなかった層、例えば子育てが一段落した女性や退職後の高齢者を生産活動に取り込むための政策にも力を入れていただきたいと望みます。
 経済運営に関して、もう一点お願いをしたいことがあります。それは機動的な財政出動であります。
 経済が生き物であるということを忘れ、財政出動が必要な場面にもかかわらず財政均衡に過度に固執すれば、経済が停滞してしまうおそれがあります。アベノミクス前のような経済状態に戻ることがないように、景気の回復、デフレ脱却を確実にするとともに、全世代型社会保障の実現など、中長期的な視点で必要な財政出動はしっかりと行っていくべきだと考えております。
 そこで、総理に、経済財政政策を進めるに当たっては、角を矯めて牛を殺すのではなく、まずは経済成長を生み出すためのエンジンとして財政を機動的に活用し、国民の将来への不安の軽減から消費増、消費増から経済成長、経済成長から税収増という前向きなスパイラルを構築させるという考え方について、どのように受け止めるかという点についてお伺いをいたします。
 さて、経済財政政策を考えるに当たっては、医療、介護、年金等の社会保障費をどう考えるかという点を避けることはできません。我が国の社会保障費はこの二十年間で二倍以上となり、国家予算においても、歳出総額三分の一を占めるまでに至っております。
 我が国の平均寿命は、平成二十八年で男性が八十一歳、女性が八十七歳となっております。一方で、制限なく日常生活を送ることができる期間を示す健康寿命は、最新の数字である平成二十五年で男性で七十一歳、女性で七十四歳となっております。この健康寿命が平均寿命に近づけば、お年寄りも元気に健康に楽しく暮らすことができますし、医療費を抑制することができます。健康寿命の延伸は、健康面でも財政面でも健全な社会の構築につながります。
 しかし、健康寿命は対症療法だけでは延伸できません。日頃からスポーツに親しむことで気力と基礎体力を向上させること、食生活等の改善、ふだんの生活に気を付けること、医療と介護で得られたデータを共有化させるなど、人間の心身全体を診察、治療する原因療法と対症療法を統合し、病気の予防や重症化を防ぐなどが必要と考えております。
 このように、活力ある健康長寿社会を確立していく上で、スポーツによる健康増進効果も含めた予防医療の推進は極めて重要であると認識していますが、その実現のために総理はどう取り組んでいくお考えか、お聞かせをいただきたいと思います。
 次に、人づくり革命の中核であるべき人間性の育成と教育についてお尋ねをいたします。
 二〇〇〇年のノーベル経済学賞受賞者でありますジェームズ・J・ヘックマン米シカゴ大学教授の研究で明らかなように、幼児期は、動機付けや粘り強さ、自制心を身に付け、人間性を育む上で大変重要であります。さらに、命の大切さを学ぶ時期としても大切な時期であります。政府には、幼児教育や幼児期の健やかな保育の重要性を踏まえ、人との触れ合い、命の大切さを学ぶ機会を増やすことや、負担の軽減、施設の整備といった課題に全力で取り組んでいただきたいと思います。
 また、労働人口減少が大きな社会問題となっている今日、AIを用いた生産性の向上と、それを縦横に利用できる人材の確保、国際的に活躍できる人材の育成、職業教育による適材適所の人材配置、シニア層の活用など、働き方改革で目標を掲げている労働生産性向上を支える人材を育成する教育環境整備は喫緊の課題であります。
 天然資源に恵まれず、人的資源によって今日の国家の礎を築いてきた我が国にとって、人間性の育成や教育、子育て支援の問題は国家の将来を左右する大切な問題だと考えております。この点について、総理の取組について伺います。
 私たちが次世代に残すべきものはほかにもあります。その一つは、我が国の美しい景観、心のふるさととも言える山村社会の基盤となっている森林であります。
 森林は、地球温暖化を防ぐとともに、洪水を防ぐという国土保全効果も高く、かつ、我が国が誇るべきおいしい水をつくるという大切な役割も担っております。
 しかし、この森林も、林業に携わる方々の高齢化による後継者不足、所有者不明の森林の増加、そして山村の人口減少による限界集落化などにより、森林の管理が不十分な状況となっております。森林資源そのものの未来への継承が危機に直面している今日であります。
 森林を再生するには長い時が掛かります。森林に対する不安要素を排除するために、山村社会の活性化、林業後継者の育成、意欲と能力のある林業経営者による森林管理の再委託などを戦略的に展開することが必要であると思います。同時に、これらの政策を実施する主体として果たす役割が大きいと期待される市町村を組み込んだシステムの構築も不可欠であります。
 そこで、森林管理の戦略的な政策を展開するために、活発に議論をされている森林環境税の創設などの財源措置も含め、どのような方針で森林を次世代に残していくつもりでしょうか、お伺いをいたします。
 あわせて、国産材の利用拡大を図ること、例えば、東京オリパラの競技施設の建設資材や備品などへの活用、オフィスビルや商業施設等の木造化、木質化の促進等を通じた市場の拡大などを進めるといった攻めの姿勢も重要な視点だと考えますが、どのように取り組む方針か、お聞かせをいただきたいと思います。
 さて、二〇二〇年東京オリンピック・パラリンピック開催まで千日を切りました。二〇一九年九月開催のラグビーワールドカップも七百日を切っております。来年、韓国・平昌で開催される冬季大会も間近に迫っておりますが、平昌が終われば、ワールドカップラグビー、そして東京オリパラと、大きなスポーツイベントが我が国で開催され、ますます盛り上がると期待をしております。
 我が国は、スポーツをアベノミクスを支える戦略産業の一つとして位置付け、その成長に力を入れております。二〇一二年、一年には、国内で生産されたスポーツ関連の付加価値の年間総額、すなわち国内スポーツ総生産額は五兆円でしたが、これを二〇二〇年までに二倍の十兆円、二〇二五年には三倍の十五兆円に拡大させるという目標として、政府も、スポーツ界と連携し、努力を重ねております。
 ワールドカップラグビーにも期待が高まるところですが、特に東京大会は単なるスポーツイベントではなく、IT、医療・介護、健康、芸術・文化、その他様々な素材産業など、あらゆる産業に経済効果が広がる可能性を秘めております。
 このためには、スポーツを従来の視点から捉えるのではなく、トータルコーディネーター的な観点から捉える意識改革が今こそ必要であります。スポーツをクールジャパン構想のパッケージの中に組み込んで、二〇二〇年に向かって、様々な産業に横串を通す形で市場を広げていこうという発想で政府にも取り組んでほしいと考えています。
 二〇二〇年の東京大会は、過去の大会に学ばなければなりませんが、一方で、未来を見据えたオリンピック・パラリンピックとして成功させる責務が我が国にはあります。我が国は、経済成長の過程で様々な経験をしましたが、そうした困難も乗り越えて経済発展を遂げてきました。そして、現在、成熟した国家ならではの少子高齢化を始めとする難問にも直面をいたしております。この東京大会は、新しい産業と文化を創造させなければなりません。成熟した国家としての生き方を世界に先駆けて示していくために、政府には、是非、オリンピック・パラリンピックを今までと全く違った次元のチャンスとして捉えていただきたいと思います。
 このような観点から、総理には、スポーツを我が国の経済構造に変革を与える成長産業として育てるということについてどう考えるのか、そのために二〇二〇年東京大会に向けてどのような取組を行っていくのかという点についてお聞かせいただきたいと思います。
 最後に、憲法改正に関して一言申し上げます。
 日本国憲法が制定されて七十年、その間に、我が国を取り巻く安全保障環境、経済社会状況、そして国民の意識などは大きく変わりました。多くの国民からも、この変化に対応した憲法がいかにあるべきかという議論を始めるべきという声があります。現在、我が党では、安倍総裁が示した問題意識を受けて、自衛隊の明記や参議院の合区解消を含む四項目を中心に議論を行っているところであります。本日は、この項目の中で、参議院の在り方、そして合区解消について触れさせていただきます。
 現在、参議院では、全ての会派が参加して、参議院改革協議会において参議院の在り方について議論をしております。その議論の中では、衆議院の政権選択選挙という特徴とは異なる参議院の特徴を生かして、政府に対する行政監視機能を高めていこうということが話をされております。
 参議院自民党でも参議院の在り方について自由闊達な議論を行ってきましたが、地方の声を国政に反映させる参議院であるためには、政治、経済、社会、文化的に一体的な広域地方自治体である都道府県から、三年ごとに改選期において少なくとも一人を選出すべきという考え、さきの衆議院選挙でも、選挙公約の一つに掲げて国民の皆様に訴えてまいりました。現時点で、全国知事会を含め六つある地方自治体関係団体の全てと二十九に及ぶ県議会が、どの都道府県でも改選期ごとに少なくても一人の参議院議員を選出できるようにしてほしいとの決議等を採択しております。さらに、その他の都道府県においても決議等の採択へ向けた動きがあり、広がりを見せる勢いとなっております。
 再考の府、良識の府として、党派を超えた、真に国民のための選挙制度を含めた参議院の抜本的な改革、そして憲法改正についての議論の必要性を改めて皆様方に強く呼びかけをいたしまして、私の代表質問を終わります。
 ありがとうございました。(拍手)
   〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇、拍手〕
#9
○内閣総理大臣(安倍晋三君) 橋本聖子議員にお答えをいたします。
 我が国の課題解決に対する私の決意についてお尋ねがありました。
 いかに困難な課題であっても立ち向かい、次の時代を切り開いていくことこそ、政治に与えられた使命であります。
 百五十年前、誕生したばかりの明治国家にあって、近代化を牽引した岩倉具視はこう述べています。国民みんなが心を一つにして、国力を盛んにするならば、世界で活躍する国になることも決して困難ではない。明治の日本人にできて、今の日本人にできないわけはありません。
 急速に進む少子高齢化を克服し子供たちの未来を切り開く、北朝鮮の現実の脅威に対して国民の命と平和な暮らしを断固として守り抜く、まさに国難とも呼ぶべき課題を国民の皆様とともに乗り越えていく覚悟であります。
 今回の選挙での信任を力に、また参議院の皆様のお力も得て、オールジャパンで、日本の未来をしっかりと見据えながら結果を出していく決意であります。
 北朝鮮問題についてお尋ねがありました。
 北朝鮮に政策を変えさせるため、あらゆる手段を使って北朝鮮に対する圧力を最大限にし、北朝鮮の方から対話を求めてくる状況をつくっていくことが必要です。
 そのためには、日米両国のみならず、日米韓の三か国による緊密な連携が非常に重要です。
 私は、これまでも日韓首脳会談や日米韓首脳会談の機会に三か国の緊密な連携の重要性を訴えてきました。今後とも、機会あるごとに、日米韓の連携強化を図り、北朝鮮の核、ミサイル、そして何よりも重要な拉致問題の解決に向けて全力を尽くしてまいります。
 日中関係についてのお尋ねがありました。
 習近平主席は、先般の中国共産党大会での報告において、過去五年間の成果を強調するとともに、二〇三五年までに社会主義現代化を基本的に実現させ、今世紀半ばまでに社会主義現代化強国を建設するという今後の国家発展のロードマップを示したものと承知しています。
 我が国としては、中国に対し、地域及び国際社会の平和と繁栄のために積極的に貢献していくよう引き続き働きかけていく考えであります。
 先般、習近平主席及び李克強首相とそれぞれ日中首脳会談を行い、北朝鮮問題、日中間の経済関係の強化についても有益な意見交換を行うことができました。特に、習主席からは、今回の会談は日中関係の新たなスタートとなる会談であったとの発言があり、私も全く同感であります。
 本年は日中国交正常化四十五周年、来年は日中平和友好条約締結四十周年という節目の年であり、戦略的互恵関係の考えの下、大局的な観点から日中の友好協力関係を安定的に発展させていく好機であると考えます。
 今後、日中韓サミットを早期に開催して李克強首相の訪日を実現し、その後、私が訪中し、その後には習主席に訪日していただきたいと考えています。
 このような日中首脳の相互往来を通じて、日中関係を安定的に発展させていきたいと考えています。
 二〇二〇年東京オリンピック・パラリンピック競技大会に向けたサイバーセキュリティー対策の体制強化についてお尋ねがありました。
 御指摘のとおり、サイバーセキュリティーの確保は、安全、安心な東京大会の実現のため、極めて重要です。
 そのため、私自身が本部長を務めるオリパラ推進本部の下にワーキングチームを設置し、サイバー攻撃事態のシミュレーションや、これに基づくリスク評価の実施等の事前対応のための取組を進めているところです。
 さらに、関係機関等への情報提供やサイバー攻撃への対処調整を行うセンターの構築等により、事案発生時における対処体制の強化を図るとともに、諸外国との情報共有など、国際連携を一層緊密に進めてまいります。
 開催国としての責務を果たすため、政府一丸となってサイバーセキュリティー対策に万全を期してまいります。
 経済財政運営についてお尋ねがありました。
 安倍内閣においては、経済再生なくして財政健全化なしとの基本方針の下、機動的な財政政策を含む三本の矢の取組を進め、名目GDPは一〇・八%、五十三兆円増加し、過去最高となりました。
 国民生活にとって最も大切な雇用についても大きく改善しました。就業者数は百八十五万人増加し、有効求人倍率は史上初めて四十七全ての都道府県で一倍を超え、正社員の有効求人倍率は調査開始以来初めて一倍を超えています。
 この経済の成長軌道を確かなものとして、最大の課題である少子高齢化の克服に向けて、生産性革命と人づくり革命を断行するため、新しい経済政策パッケージを策定します。
 強い経済、成長の果実なくして分配を続けることはできません。成長と分配の好循環をつくり上げてまいります。
 健康長寿社会の確立に向けてのお尋ねがありました。
 我が国の健康寿命は、男性が七十一歳、女性が七十四歳と世界でもトップレベルの水準にありますが、国民が健やかで心豊かに生活し、健康で長生きできる社会を実現するためには、健康寿命の更なる延伸が重要です。このため、平成二十五年より進めている第二次健康日本21においても健康寿命の延伸を目標に掲げたところです。スポーツや適切な食生活などを通じた国民の健康づくり、健診や保健指導を通じた疾病の発症及び重症化の予防などの取組を進め、健康寿命の延伸を図り、活力ある健康長寿社会の実現に努めてまいります。
 人間性の育成と教育についてお尋ねがありました。
 幼児期は、生涯にわたる人格形成の基礎を培う重要な時期であり、この時期に質の高い幼児教育を保障することは極めて重要であります。このため、新しい幼稚園教育要領において、道徳性、規範意識の芽生えや生命尊重の内容を充実するなど、幼児教育の質の向上を図っています。あわせて、安全、安心な教育環境の整備を進めてきたところであります。
 また、労働人口の減少など、社会変化に対応した教育を行うことが重要です。このため、初等中等教育段階における情報活用能力の育成や、外国語教育、キャリア教育の充実など教育内容の充実を図るとともに、大学等での学び直しを支援しているところであります。
 今後、政府としては、人づくり革命として、幼児教育の無償化や介護人材の確保などを通じて社会保障制度を全世代型社会保障へ転換するとともに、真に必要な子供たちに限った高等教育無償化など、人への投資を拡充します。また、リカレント教育を抜本的に拡充します。
 引き続き、教育費負担の軽減と教育の質の向上を図り、我が国の未来を切り開く人材の育成にしっかりと取り組んでまいります。
 林業改革と国産材の利用拡大についてお尋ねがありました。
 我が国の森林資源は、戦後植林されたものが本格的な利用期を迎えていますが、十分に利用されず、また、適切な森林管理も行われていないという課題に直面しています。こうした状況に対応するためには、林業の成長産業化と森林資源の適切な管理の両立を旨として政策の見直しを行う必要があります。
 このため、政府においては、現在、森林所有者の経営管理権限を市町村を介して意欲と能力のある林業経営者に集積し集約化するとともに、経済ベースに乗らない森林については、市町村等が公的に管理する仕組みの創設と、あわせて、森林環境税を含めたその財源について検討をしているところです。年内には、森林・林業政策の抜本的な改革プランをまとめ、実効性のある施策を推進し、次世代へ豊かな森林を引き継いでまいります。
 また、国産材の利用拡大に向けては、中高層の建築物に活用できるCLT等の利用促進や内装材への木材利用の促進を図ること等により、東京オリンピック・パラリンピック関連施設を始め、公共建築物や商業施設などの木造化、木質化の取組を進めていきます。
 スポーツを産業として育てることについてお尋ねがありました。
 スポーツには、人々に感動をもたらし、勇気を与える力があります。そして、地域、経済の活性化や国民の健康増進など、様々な分野の課題を解決し、我が国の未来を切り開いていく大きな可能性を秘めています。このため、政府は、スポーツ産業の開拓について未来投資戦略二〇一七に盛り込み、スポーツを核とした地域活性化、スポーツ関連団体の経営力強化、スポーツの海外展開の促進、スポーツ実施率の向上など、精力的に取り組んでいます。
 また、このスポーツ産業の開拓に当たっては、民間事業者の投資やノウハウを呼び込んで行うことが重要であり、スポーツの振興はもとより、地域や経済の活性化などの観点も踏まえ、官民の力を結集して取り組んでまいります。
 二〇二〇年東京オリンピック・パラリンピックまであと千日を切りました。このスポーツの世界的祭典という絶好のチャンスを最大限に生かし、二〇二〇年以降も展望しつつ、スポーツ産業の活性化を図ってまいります。(拍手)
#10
○議長(伊達忠一君) 質疑はなおございますが、これを次会に譲りたいと存じます。御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#11
○議長(伊達忠一君) 御異議ないと認めます。
 本日はこれにて散会いたします。
   午前十一時四十一分散会
ソース: 国立国会図書館
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