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2017/02/09 第193回国会 参議院 参議院会議録情報 第193回国会 外交防衛委員会 第2号
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2017/02/09 第193回国会 参議院

参議院会議録情報 第193回国会 外交防衛委員会 第2号

#1
第193回国会 外交防衛委員会 第2号
平成二十九年二月九日(木曜日)
   午前十時開会
    ─────────────
   委員の異動
 二月二日
    辞任         補欠選任
     小野田紀美君     武見 敬三君
     神本美恵子君     藤田 幸久君
     宮崎  勝君     山口那津男君
 二月八日
    辞任         補欠選任
     武見 敬三君     松川 るい君
    ─────────────
  出席者は左のとおり。
    委員長         宇都 隆史君
    理 事
                阿達 雅志君
                堀井  巌君
                山田  宏君
                大野 元裕君
                浜田 昌良君
    委 員
                佐藤  啓君
                佐藤 正久君
                滝沢  求君
                中曽根弘文君
                中西  哲君
                松川 るい君
                山本 一太君
                小西 洋之君
                福山 哲郎君
                藤田 幸久君
                山口那津男君
                井上 哲士君
                浅田  均君
              アントニオ猪木君
                伊波 洋一君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        宇佐美正行君
   参考人
       岡本アソシエイ
       ツ代表      岡本 行夫君
       慶應義塾大学総
       合政策学部教授  渡邊 頼純君
       北海道大学名誉
       教授       木村  汎君
       千葉大学法政経
       学部長      酒井 啓子君
    ─────────────
  本日の会議に付した案件
○外交、防衛等に関する調査
 (最近の国際情勢と日本の外交・安全保障に関
 する件)
    ─────────────
#2
○委員長(宇都隆史君) ただいまから外交防衛委員会を開会いたします。
 委員の異動について御報告いたします。
 昨日までに、宮崎勝君、神本美恵子君及び小野田紀美君が委員を辞任され、その補欠として山口那津男君、藤田幸久君及び松川るい君が選任されました。
    ─────────────
#3
○委員長(宇都隆史君) 外交、防衛等に関する調査のうち、最近の国際情勢と日本の外交・安全保障に関する件を議題といたします。
 本日は、参考人として岡本アソシエイツ代表岡本行夫君、慶應義塾大学総合政策学部教授渡邊頼純君、北海道大学名誉教授木村汎君及び千葉大学法政経学部長酒井啓子君に御出席いただいております。
 この際、参考人の皆様に対し、本委員会を代表して一言御挨拶を申し上げます。
 本日は、御多用中のところ本委員会に御出席いただき、誠にありがとうございます。
 皆様から忌憚のない御意見をいただき、今後の調査の参考にさせていただきたいと存じますので、よろしくお願い申し上げます。
 議事の進め方について申し上げます。
 まず、岡本参考人、渡邊参考人、木村参考人、酒井参考人の順にお一人十五分以内で順次御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑にお答えいただきたいと存じます。
 御発言の際は、その都度、委員長の許可を得ることになっておりますので、御承知おきください。
 また、参考人、質疑者とも発言は着席のままで結構でございます。
 それでは、まず岡本参考人にお願いいたします。岡本参考人。
#4
○参考人(岡本行夫君) このような場で意見を陳述できることは光栄であります。お招きいただいたことに感謝いたします。
 私も長い間世界情勢を見てきましたけれども、残念ながら将来の展望を今ほど不安を持って感じたことはございません。
 我々の前には新しい世界が広がりつつあります。どのような世界か。単純化して申し上げれば、新しい帝国主義と漂流の時代ではないでしょうか。
 根っこにあるのは、グローバリゼーションの揺り戻しです。
 人、物、情報、サービス、資金などが国境を越えて自由に行き来することによって世界には大きな富がもたらされました。一九九〇年と二〇一五年を比較してみますと、世界のGDPは二十三兆ドルから七十四兆ドルに、貿易は輸出総額が三兆五千億ドルから十六兆三千億ドルに、直接投資は二千億ドルから二兆ドルにと飛躍的に伸びました。
 しかし一方で、高額所得者とその他の人々の間に大きな格差がつくり出され、世界の上位一割の人々が世界の総資産の八八%を保有する一方、下位五割の三十五億人の総資産は合わせても一%にしかならないという極端なまでの所得格差が発生しています。先進国でも二極分化が起こり、人々は高額所得か低額所得かどちらかになり、中産階級が減っていくという事態が起こっています。
 特に、現在の揺り戻しの大きな原因になっているのが、物づくりのベースが先進国から途上国に移動したことです。先進国の製造業の雇用者の数を同じく一九九〇年と二〇一五年で比較しますと、アメリカのコンファレンス・ボードによる計算では、アメリカで二八%、イギリスで四九%、日本でも三八%の雇用減少が起こっています。当然、職を失ったり収入の減った人々の間には大きな不満がたまっていきました。昨年、アメリカでトランプ候補を当選させ、イギリスのEU離脱をもたらしたのも、基本的にはこの揺り戻しでした。
 時代は転換しました。前回起こった転換は、一九八九年から九一年の時期です。ベルリンの壁の崩壊、東西ドイツの統一、ソ連邦の解体、中東での湾岸戦争といった重大事件により、世界の対立構造が基本的に転換しました。そのときの転換は未来への展望をもたらすものと受け止められ、人々は楽観と期待を抱きました。しかし、世界の人々の多くにその恩恵がもたらされなかったことは先ほど述べたとおりです。
 政治的にも、世界には平和と民主主義が広まり、人権が尊重される新しい枠組みに収れんしていくと思われましたが、そうはならず、紛争はやまず、かえって大規模テロが多発する世界になってしまったかの感があります。アラブの春の失敗でも明らかなように、その大きな原因の一つには、やはりグローバリゼーションの揺り戻しがあったと思います。
 今回の時代転換は、更に世界全体を漂流させ、理念や国際法秩序ではなく、武力と自己都合が支配する世界へと向かわせる憂鬱なものになるかもしれません。しかも、この新しい時代は短期的ではなく、これから長期にわたって続く気がいたします。
 アメリカではトランプ政権が誕生し、アメリカ第一主義に向かっています。EUは分裂し、弱くなっています。アメリカとEUが国際情勢へのチェック機能を果たせなくなる中で、ロシアと中国は勢い付き、帝国主義的な拡張主義を一層強めているように見えます。
 トランプ大統領は就任演説で、世界の国々は自国の利益第一主義でいこう、アメリカがその模範を見せると宣言しました。トランプ演説をそのまま読めば、各国はお互い背を向け合ってもいいということになります。そうなってしまえば、自由、民主主義、法の支配、自由貿易、多角的経済システム、人権尊重、国際機関の強化、貧困国支援、環境保護といった国際公共財は誰が負担し、誰が守るのか。アメリカは世界をそのような時代に向かわせるのでしょうか。
 私は、トランプ大統領が政治経験を積んで軌道修正を図ること、そして、今任命されつつある立派な閣僚たちがバランス感覚を持って特に対外関係を扱ってくれることに望みをつないでいます。例えば、ティラソン国務長官やマティス国防長官など、外交・安全保障に携わるチームは、現実的な考えと経験を持った人たちです。オバマ政権よりも強力な布陣である気がします。
 アメリカ経済は当分良くなるでしょう。元々アメリカの景気サイクルは好循環の局面にあったのが、さらに、トランプ大統領の大規模なインフラ整備や大幅減税や規制緩和などによって、短期的には一層の弾みが付いていくでしょう。ただし、既に景気拡大が八年も続いている中で、米国経済がやがて減速に向かう局面には十分注意しなければなりません。
 心配なのは通商面での保護主義です。これは渡邊参考人にお任せしたいとは思いますが、TPPの発効は絶望的になりました。しかし、日本は自由貿易制度をどこよりも必要とする国家です。日米二国間のFTAも検討してよいのではないでしょうか。元々二〇〇六年にチリなど四か国がTPP構想を発表するまでは日本政府もアメリカとの二国間FTAの是非を検討してきたのですから、驚くような話ではありません。RCEPや日EU間のFTAもあります。日本は、アメリカが保護主義に傾いても自由貿易ネットワークづくりの旗振り役となっていくべきだと思います。
 深刻なのは欧州の状況です。今やメイ首相のEU離脱の意思は固く、かつてはEU残留派が多数を占めていたイギリス議会の空気も離脱の方へ固まりつつあるようです。EUを失うイギリス、イギリスを失うEU、共に大きな損失を被ることになると思いますが、より懸念されるのは、イギリスとEU残留国との対立、そして欧州全体に生じつつある亀裂の深さです。
 こうしてプーチン大統領の念願していた構図が出現しつつあります。プーチン氏の野望は強大なロシアの復活にあります。もはやクリミアを手放すことはなく、さらにウクライナの東部二州を狙って分断工作を進めるでしょう。
 その上で、更に西方への影響力の拡大を画策するおそれもあります。標的は、エストニアを始めとするバルト三国であり、さらにその先のポーランドの不安定化かもしれません。もちろん、それらの国々はNATO加盟国ですから、ロシアが直接的な武力を行使することはないと思いますが、イギリスの離脱とそれに伴うEUの政治力低下は、こうしたロシアの攻勢に欧州が一体化して立ち向かうことを困難にしています。
 また、これまでイランとの核合意締結を始め国際政治の場でも影響力を発揮してきたEUの弱体化は、中東などでのロシアの影響力拡大を容易にします。
 アジアにあっての脅威は、中国と北朝鮮です。
 北朝鮮は、アメリカ大陸に到達するミサイルとそれに搭載する小型核弾頭の保有が国家目的であり、この目標を達成するまでは必要なだけ、何度でも実験を繰り返すでしょう。これに対する最も有効な制裁は中国から北朝鮮への原油輸出を禁止することですが、中国はこれに応じる気配は見せていません。つまり、北朝鮮問題は中国への対応ぶりと一緒に考えなければなりません。
 南シナ海への拡張を続ける中国に日本が対応するには、当然ながら米国との協力が前提になります。尖閣への安保条約の適用をトランプ政権の重要閣僚が明言していることは心強いことですが、米国の抑止力を万全にすることが日本の生存のためには不可欠です。抑止力とは、米国が日米安保条約に従って日本を防衛する意思を日本の周辺国に明確に示し続けることです。つまり、抑止力とは、日米安保体制の実効性をどこまで信じ続けるかという周辺国の心証の問題なのです。隙間のない日米協力体制が全般にわたって必要なのはそのためです。
 もちろん、日本は中国との関係を対決の構造にしてはなりません。中国でもいわゆる第六世代など、日本に対し、より合理的な見方をする世代が国家の幹部になりつつあります。日中関係は既に最悪の時期は脱し、徐々に改善の方向に向かっていると思います。中国の軍事的な野望には十分気を付けながら、協力できるところは協力していくことが必要です。
 これと対照的に韓国との関係は複雑で、本来あるべき緊密な日韓関係の構築には至っておりません。容易なことではありません。
 中国の場合も韓国の場合も、日本と先方の若い世代同士の交流を広げていくことが極めて大事だと思います。
 さて、このような新しい世界の中で日本はどのように生きていくべきでしょうか。私は、日本の友人であるアメリカやEUの影響力が縮小し、逆に国境や世界秩序を力で変更しようとする国々の力が増し、日本の生息スペースが狭まっていく中で、日本はむしろ安全保障面でも経済面でも文化面でも積極的に世界に打って出なければいけないと思うのです。日本にとって狭まるフロンティアを自らの力で切り開かなければならない時代になったと思うのです。
 我々はトランプ大統領のアメリカ・ファースト主義を批判しますが、誤解を恐れずに申し上げれば、日本もこれまで自分の都合だけのジャパン・ファースト主義でやってこなかったでしょうか。
 例えば、日本は難民や移民の受入れはほとんど行っていません。恥ずかしいぐらいです。しかし、アメリカが今回移民の受入れを一時的に停止すると、国会では、なぜ日本の総理大臣だけがアメリカを非難しないのかという議論が行われます。
 日本は軍事力による貢献はできないから経済協力でいくのだと世界最大の援助供与国として胸を張ってきましたが、それは既に二十年前の話になりました。今のODAは、当初予算ベースで見れば一九九七年のレベルから四割も減っています。しかも、年々返済される過去のODA供与分を再び援助に回していますから、新規のODAの額は驚くほど少ないのです。日本のODAはGDP対比でおおむね〇・二%と、DAC加盟二十八か国のうち下から三分の一ぐらいのところにいます。
 世界の安全保障への貢献は各国に比べて大きく後れを取り、二年前に平和安全法制ができるまでは、日本を守ってくれる国々の艦船が目の前で攻撃を受けても助けないという制度を変えようともしないでやってきました。日本の民間人や商船は全て外国の軍隊に守ってもらう、イラクに出かけた自衛隊すら外国の軍隊に守ってもらう、逆に日本は外国人を助けない、そのような体制の中で来ました。GDPとの対比でいえば、日本の防衛費は世界で第百二番目です。
 予算は専ら自国の繁栄と福祉のために使ってきました。ジャパン・ファーストだと言われても実は仕方がない国柄だったと思います。
 こうした国の在り方に根本的な議論が必要なときだと思います。戦後七十年を経て、日本は実力もあり、身も心も平和を志向する民主主義国家になっています。考えてみれば、世界の新しい漂流時代の到来は、日本をジャパン・ファースト主義から転換させ、国際公共財を担う新たな国家としての出発を促すことになるのではないでしょうか。そうしなければならないと思います。
 安倍総理大臣が十日にトランプ大統領と会談されます。時代の大転換が起こっているときだけに、極めて重要な日米首脳会談だと思います。アメリカを国際社会につなぎ止めること、日米関係の強さと安保体制の実効性を周辺諸国に強く印象付けること。今や自由主義社会の首脳の中で他国をリードする立場になった安倍総理が、立ち上がったばかりのトランプ大統領に、その経験と日本の立ち位置から見た世界情勢を説明することは自由世界全体にとって大事なことだと存じます。
 ともすれば閉塞状況に向かいつつある世界を、今こそ日本がこれまで蓄えてきた力と哲学をもって明るい世界へ動かしていくこと、これが日本の目指すべき道だと信じます。
 ありがとうございました。
#5
○委員長(宇都隆史君) ありがとうございました。
 次に、渡邊参考人にお願いいたします。渡邊参考人。
#6
○参考人(渡邊頼純君) 今日は、こういう大変重要な会議、参議院の外交防衛委員会にお呼びくださいまして誠にありがとうございます。大変光栄に存ずる次第でございます。
 今、岡本行夫参考人が述べられましたように、私も、この新しい潮流、特に新しい帝国主義の台頭とでもいいましょうか、あるいは私の分野に引き付けて申しますと、新経済ナショナリズムとでも言ったらいいような状況が展開していることに非常に大きな懸念を持っております。特に重商主義的な傾向、つまり貿易をゼロサムゲームで見ると。私が得をするとあなたは損をするというような形で、貿易を二国間のベースで見る傾向が非常に強くなってきているということに極めて深刻な懸念を持っているわけでございます。
 私に本日与えられましたテーマは、アジア太平洋の経済秩序と日本外交ということでございますので、今日はそこにまずは焦点を絞ってお話を申し上げたいというふうに思うわけでございます。
 パワーポイントで作りました資料を用意してございます。お手元にあるかと思いますので、そちらを御覧になっていただければと思うわけでございます。
 一枚目の表紙をめくっていただきますと、二ページ目でございますが、ここには、どのような大型の自由貿易協定、あるいは自由貿易の構想ですね、アイデアがあるかということを示させていただいております。世界中に現在、自由貿易協定、FTAを中心といたしました経済統合は世界で二百八十二件あるというふうに言われております。これは二〇一五年のジェトロの報告書に出ている数字でございます。本来は、ガット、WTOという多国間の貿易体制の中では例外というふうに位置付けられている自由貿易協定、これが二百八十件以上あるということは、それ自体も一つの驚きでございます。
 近年の状況は、そのような二国間のEPAが徐々に収れん、収束いたしまして、大型のFTA、これをメガFTAと呼んだりしております。その様子をスライド一枚にまとめてみると、このような形になるかと思います。まずは、大きな地域、地域統合が進んでいる大きな地域が大きく分けて三つあるというふうに考えていいかと思います。
 一つは、EUを中心とする欧州、その図の左の上の方に出ております。
 それから、大西洋を渡りますと、今問題になっておりますNAFTA、北米自由貿易協定というのがございます。そして、同じ米州ですが、南の方へ下がってまいりますと、CAFTA、これはセントラルアメリカのFTAということで、中央アメリカですね、グアテマラとかホンジュラスとかコスタリカといったような国がございますが、それとアメリカが二国間で結んでいるようなFTAがございます。さらに、南の方に下がってまいりますと、メルコスールですね、これは南米の共同市場ということでございます。さらに、南米のアンデスを挟んで太平洋側を見ますと、そこにはメキシコ、チリ、コロンビア、ペルーという四か国が太平洋同盟というのをつくっております。そういうような地域統合の動きが北米、南米それぞれにあるということでございます。
 そしてさらに、太平洋を飛びまして東アジアに参りますと、東アジアではASEAN十か国が独自のFTAをやっております。それに付け加えまして、ASEANプラス3、つまりそのスリーは日中韓でございますが、このASEANプラス3の枠組み、さらにはASEANプラス6ということで、そのASEANプラス3にインド、豪州、ニュージーランドを加えましたASEANプラス6という枠組みがございます。今は、このASEANプラス6がRCEP、リージョナル・コンプリヘンシブ・エコノミック・パートナーシップということで、包括的な東アジアの経済連携協定というのを目指して交渉しているという、こういう状況でございます。
 御覧のように、欧州にあってはEU、そして北米にあってはNAFTA、そして南米にあってはメルコスール、さらには太平洋同盟、そして東アジアにはRCEP、さらには日中韓のFTAもあるわけでございます。
 このように、それぞれのメガ地域にはそのメガ地域内の地域統合を進めている大型のFTAがある。さらに、二〇一〇年以降の傾向といたしましては、その地域と地域を結ぶ地域間の統合の枠組みもできてきているということでございます。
 現在問題になっておりますTPPは、まさにこの東アジアと米州、その米州の中でも太平洋の沿岸諸国ですね、これが元々はAPECというこの地域の貿易と投資の協力枠組みがございますが、そのAPECの中から言わば出てくるような形でTPP、環太平洋経済連携協定というのが出てきております。
 また、EUとアジアの間にもASEM、アジア欧州会合というのがございました。まさに、日EUのEPA交渉というのはそういうプラットホームの上で展開をしているというふうに理解していいと思います。
 そして、最後にEUと米州でございますが、このEUと米州の間でも、特にEUとアメリカとの間では、環大西洋の貿易秩序をつくるための環大西洋貿易投資パートナーシップ、いわゆるTTIPというのが交渉されていたわけでございます。
 このように、確かに二国間のFTAというのは二百八十ほどあるわけですけれども、徐々にそれが収れん、収束する形で、今申し上げたような、現在では地域間の大型FTA、メガFTAというのが一つのトレンドになっている。そして、特に日本にとって関係が深いのは、今まさに問題になっておりますTPPでありますとか、日EUのEPAでありますとか、さらにASEANプラス6の枠組みでありますところのRCEP、さらには日中韓のFTA、この四つぐらいの大型FTAというのが日本にとって非常に関係が深いところだというふうに理解してよろしいかと思います。
 一枚めくっていただきますと、アジア太平洋における地域統合ということで、それぞれの枠組みにどういう国が入っているかということを示している枠組み、ちょっと錯綜しておりましてやや複雑な印象を与えるかもしれませんが、御覧のように、重層的、複層的に現在アジア太平洋の経済統合は進んでいるというふうに申し上げてよろしいかと思います。
 そんな中でも、RCEP、ASEANプラス6の枠組み、これは二〇一三年の五月に開始をしております。また、日中韓のFTAも二〇一三年の三月、日EUのEPAも、総理とそれから欧州委員会の委員長との間での電話会談でスタートしておりますが、それも二〇一三年三月ということで、この二〇一三年というのは極めて重要な年でございます。まさにこの年に日本は、二〇一三年三月十五日のことでありましたが、安倍総理がTPP交渉参加を決意され、同年、二〇一三年七月二十三日から日本はTPP交渉に参加をしたということでございます。
 そういうふうに考えてまいりますと、ここに複数のFTA、EPAの枠組みがございますけれども、やはりTPPが一番、交渉の進展の度合いといいましょうか、それが著しく進んでいるものである、最も発展した形態である、そして、幸いにも合意、そして署名までは来たわけでございます。そういう状況がアジアにおける地域統合の状況かと思います。
 一枚更にめくっていただきますと、四ページ目でございますが、ここには、日本のアジア太平洋におけるEPA戦略、FTA戦略のこれからの展望みたいなものを紹介させていただいております。
 この左には、日本の二国間のEPA、これが既に十五件ございますが、日本の二国間のEPA、これが日本の対外貿易のおよそ二三%ぐらいをカバーしております。
 さあここからどういうふうに進んでいくかということでございますが、恐らく二つの方向性があるということでございます。一つは、矢印、上の方に向かっておりますが、東アジアに向かう方向、そしてもう一つは、矢印、下の方に向かっておりますが、環太平洋に向かう方向ということでございます。そして、東アジアの方はまさにRCEP、日中韓FTAということになる。そして環太平洋の方はTPP、さらには日本とカナダのFTAというのもここに入れてもいいかと思います。
 そして、最終的な目的地といいましょうか、最終的なランディングゾーンはアジア太平洋自由貿易圏ということでFTAAP、これがAPECワイドのFTAをやるということで、APECの二〇一〇年の横浜APECでありますとか、あるいは二〇一四年の北京APECで合意をされているところでございます。御覧のように、最終的には、アジア太平洋ではそういうAPECワイドのFTAであるところのFTAAPを最終目的地として今交渉が進んでいる、その中で重要な枠組みとしてRCEPや日中韓やTPPというのがあると、こういうことでございます。
 日本にとりましては、実は対外貿易の四六%はRCEPの構成国が仕向け先になっております。それに対しまして、TPPの方は日本の対外貿易の約三割でございます。もちろん、オーストラリア、ニュージーランド、シンガポール、マレーシアといったような国々はTPPにも属しておりますし、RCEPにも属しておりますから、若干の重複、オーバーラッピングはあるわけでございますけれども、大ざっぱに申し上げますと、輸出ではRCEPがよりTPPよりも重要であると。
 じゃ、対外投資はどうかと。海外投資で申しますと、今度これが逆転いたします。対TPP加盟国への日本からの投資は四〇%強でございます。それに対して、対RCEP加盟国への投資は三割にとどまっております。
 というふうに、貿易でいえばRCEPがより日本にとっては重要、そして投資ということでいいますとTPPがより重要。まさに日本にとりましてはRCEPとTPPというのは補完的な関係にあるというふうに申し上げてよろしいかと思います。
 もう一枚めくっていただきますと、アジア太平洋EPAの効果ということでございますが、御覧のように、ブルーの色が付いておりますところは関税撤廃による効果でございます。これがどれだけGDPの変化に寄与するかということです。そして、関税撤廃及び非関税の、関税以外の措置の削減というのがより濃いブルーになっているところでございます。
 御覧のように、TPPもRCEPもそれぞれ重要ですが、特にRCEPにおきまして非関税措置の削減ということができたときの効果が非常に大きいわけですね。ですから、まさに日本はTPPとRCEPを組み合わせていく、そして、その行き着く果てとしてのFTAAP、そこが日本にとって非常に大きなメリットがあるということであろうかと思います。
 一枚めくっていただきますと、FTAAP、APECワイドのFTAになりますが、FTAAPで鍵を握るAPECのメンバーエコノミーということでいいますと、中国が最も大きく裨益をする。そして二番目は米国、日本はマレーシア、メキシコに続きまして五番目に裨益をするということが見えてきております。
 最後の結論部分でございますが、もう一枚めくっていただきまして、トランプ政権の通商戦略と日本の対応、どうしたらいいかと。
 一つ目のポイント。私が申し上げたいのは、今お示しいたしましたFTAAPでどれだけの経済効果があるということから見ても、実はアメリカというのは二番目に裨益する国でございます。ですから、TPPから実は離脱して損をするのはアメリカ自身であるということでございます。もとより、RCEPのメンバーではアメリカはございませんので、そういう意味では、TPPから抜けるということはアメリカにとって最も残念なシナリオであると申し上げざるを得ないと思います。日本としては、そういう中で、アメリカのTPP復帰を周到に準備し、いつでもアメリカが戻ってこれるような状況をつくるということが重要だろうと思います。
 それから二つ目のポイントですが、米国抜きのTPPというのは、これはやはり輸出の最終仕向け先としてのアメリカが欠落するというのは非常に所得効果が小さくなるということがありますが、非関税措置については一定の効果があるということがありますので、TPPマイナス1も早急に発効させる必要があると思います。
 三つ目のポイント。先ほど申しましたように、TPPとRCEPは相互補完的でございます。ですから、日本企業が東アジアで構築してまいりました生産ネットワークの維持強化のために、やはりRCEPの推進というものを今後も鋭意進めていく必要があると思います。
 次に、太平洋同盟、メキシコとコロンビア、ペルー、チリの四か国の同盟ですが、この太平洋同盟と日本との包括的経済連携というものを交渉していく、これも一案ではないかと思います。
 最後に、やはり民主主義であるとか法の支配とか、それから人権とか、そういうユニバーサルな価値観を共有しておりますEUとの日EU経済連携協定の交渉を最終決着させる、これを早期に実現するということは極めて重要であるということを指摘させていただきまして、私の冒頭の陳述を終わらせていただきます。
 ありがとうございました。
#7
○委員長(宇都隆史君) ありがとうございました。
 次に、木村参考人にお願いいたします。木村参考人。
#8
○参考人(木村汎君) 最初に、米ロ関係について一言申し上げます。
 私は、トランプ政権の外交行動様式が非常に予想困難で、時期尚早に何かしゃべることは慎まないといけないと思っておりますけれども、米ロ関係を長年研究してきた者の一人として一つのことだけ申し上げたいと思います。
 それは、過去三代のアメリカの政権、ひょっとすると四代にわたってロシアとの関係には次のようなパターン、サイクルが見られるということでございます。どのようなパターンか、サイクルかと申しますと、政権当初はどの米国政権もロシアに対して関係改善をしようと努力するわけでございますが、時間の経過とともに米ロ関係は悪化しまして、最終段階になりますと最も悪化するという、なぜかこのパターンが過去三代あるいは四代にわたって見られるわけでございます。
 その例をちょっと皆様に御紹介いたしますと、遡って申しますと、一番最近のオバマ米政権、これは民主党でございますけれども、リセットということを提唱したのは有名でございます。それでノーベル賞をもらったぐらいで、再構築といいますか、米ロ関係を再構築したいとオバマ大統領はおっしゃって、高邁な理想をお立てになったんですが、しばらく成功した後、ウクライナの危機が起こりまして、結局は今、新冷戦とも言われる最も悪い米ロ関係になっている。これは大変皮肉なことでございますが、現実でございます。
 その前の政権は共和党でございました。ブッシュの息子さんの、ジュニアの方でございましたが、この方も、九・一一事件がすぐ起こりましたので、プーチン大統領に協力を求めたところ、プーチン大統領はいろいろな思惑からそれに乗りまして、米ロ関係は、まあ蜜月と言うと言い過ぎですけれども、一種いい関係が生まれました。ところが、ジョージア、昔はグルジアと申しておりましたところにロシアが軍事侵攻しましたために関係が悪化しまして、結局はブッシュ大統領の末期は関係悪化したまま政権を去るということになりました。
 三番目に、更に遡りますと、クリントン、今度は民主党でございます。ヒラリーさんの御主人のビル・クリントンの時代はエリツィンが登場した頃でございますから、エリツィンがどうかして、西側のような民主主義あるいは市場経済へ近づこうとするかのようなそぶりといいますかジェスチャーというか改革を見せたものですから、クリントン政権は、ここで助けなければ男が廃ると、変な言い方ですけど、というような意気込みでロシアを助けました。ところがその後、コソボ空爆とかいろんな事件が起こりまして、やはり最終的には関係が悪化したと。
 更にその前にも遡ることはできますけど、それは省略いたします。
 そうしますと、ここに私が見出すのは、一つの米ロ関係におけるパターンでございます。それは、米ロ関係は複雑な関係でございまして、二つのC、英語のCから成り立っております。一つはコオペレーション、協力の頭文字のCでございます。もう一つはコンフロンテーション、つまり対立のCでございます。
 最初のうちはどの政権も、乃公出ずんばというような意気込みもあって、ロシア関係を改善してみせるという非常に善意な意図で開始するわけで、最初はコオペレーションのCの方が主流を占めます。ところが、最終的にはなぜか、それはこの後で述べますけれども、コンフロンテーションのCの方が目立つ関係になって政権を離れていくという皮肉な関係でございます。
 その理由はいろいろありましょう。しかし、一、二挙げますと、アメリカのいわゆる単独主義といいますか一国主義、ユニラテラリズムというものがやはりこの根底にあるんですね。それに対抗してロシアは、冷戦に事実上敗れたとはいえども、自分もかつては第二位の、アメリカと対抗した強大国である、少なくとも核では現在そうであると。そして、ロシアは独自の民族、文化、言語、宗教、地理、歴史を持った、独自の価値観に基づいて国づくりをする国であって、必ずしも西欧流の民主主義や市場経済を猿まねするつもりはないという自負心がロシア人にはございます。冷戦に敗れたとはいえ、それはヒトラー・ドイツや日本が敗戦、負けたように軍事的な敗戦ではなくて、観念上の、理論上の敗戦であって、ロシア人の大半は自分の国が負けたとは決して思っておりません。これはひょっとしたらアメリカの陰謀によって負けたことになっているのではないかという思いすらあるわけでございます。
 ですから、軍事的な敗北を経験していないロシア人には、まだ自分たちは大国であるという意識があるので、日本人とはそこは根本的に違う。それどころか、ドイツに対して、連合国の勝利を導いたのは自分たちの犠牲において、貢献においてでないかとすら思っている。
 そういうわけで、プーチン大統領のイデオローグは、主権民主主義という言葉を唱えました。これは形容矛盾な言葉なんですね。なぜかというと、民主主義というのには形容句、修飾語を付けてはいけないので、民主主義は民主主義で絶対的なものなんです。ところが、ロシアの場合は、ロシアの主権を維持したままでの民主主義であって、ロシア型民主主義、ロシア型市場経済主義、ロシア型国家資本主義なので、それに外国がいちゃもんを付けたり干渉することは甚だ迷惑である、千万であるという意味で、自分たちの主権を、ロシアの主権を維持しつつ一般的な民主主義へアプローチする国だという、米欧型のモデルを猿まねするようなことは自分たちに潔しとしないというこういう意識ですね、こういう意識がロシア人のほとんどにある。これが一番目の理由じゃないかと思います。
 二番目は、それに関連しまして、プーチン政権は、自己のサバイバルが大事でございますから、下からの人民反乱によるレジームチェンジという政体の変更、ロシア型の民主主義や市場経済から、国家資本主義から、西側、欧米流の民主主義や市場経済になるいわゆるレジームチェンジ、政体の変更を非常に嫌っております。
 そして、プーチン自身の体験は、述べる時間はございませんけれども、東独に派遣されているときにベルリンの壁が崩壊した、あるいはホーネッカー体制が崩れた。その後も、カラー革命が自分の近くの国で、かつての衛星国とみなしたグルジアやウクライナで起こって、最近はまたウクライナでマイダン革命が起こって、その大統領が命からがら自分の国に逃げてくるのを保護しなければならなかった。あるいは、アラブの春というようなことが起こった。あるいは、自分の国のお膝元で、二〇一一年の暮れにはモスクワでプーチンは去れといったような集団的な集会やデモも行われたぐらいで、下からの革命ということを彼は非常に恐れているわけですね。ちなみに、今年はロシア革命百周年でございます。そのこともあって、下からの革命ということをプーチンは気にして、来年の再選につなげたいと思っている。こういうことも二番目として言えるかと思います。
 第三番目に、ロシアやアメリカがコオペレーションを進めようと思いましても、世界にはそれ以外の国々がありまして、その国々、例えばジョージア、ウクライナ、シリア、その他その他がいろんな問題を引き起こして、それに介入する態度がロシアとアメリカでは違っておりまして、ここからも対立が発生するのではないかと思います。そのほかも皆さん思い付かれることもあると存じます。
 次に、日ロ関係に参りますと、安倍政権は、新アプローチ、新発想を提唱されました。そして、去年プーチンが来ました。十二月十六日の共同記者会見で分かったことは、安倍首相が、過去にいつまでもこだわっていては一ミリも日ロ関係は前進しないとおっしゃって、日ロ関係は過去に目を向けるのではなくて未来志向でいきましょうということをおっしゃった。これが私は新しいアプローチの内容だったということと思っております。
 ところが、これに対してはちょっと疑問を抱きますのは、過去の上に現在が築かれ、現在の上に初めて未来が築かれるわけですから、過去のことを一切ないがしろにして、清算して、きれいさっぱり行水を浴びたかのごとく未来に進もうとしても、人間は連続した心理を持つ生きた動物でございますから、果たして日本とロシアの国民の間に何らのわだかまりのない明るい関係が構築できるかと思うと、僕は大いに疑問でございます。
 そのときに思い出すのは、ゴルバチョフという前の政治家が述べた言葉で、相互に日ロ関係は血が生き生きと通う、ロシア語で言うとポールノクローブノエ・アタナシエーニェ、関係にならなければならないと言ったんですが、そういう関係が果たしてできるでしょうか。日本人の一部には、ロシアが領土を返さないで平和条約を結んだ場合、してやられた、何かだまされた、こんな国民はもう今後尊敬できない、信用できないという気持ちがかえって日ロ関係の未来を妨げるんではないかと思います。
 共同経済活動そのものに関しても、よく言われているように三つの疑問があります。
 一つは、これはよく言われていることで、主権問題を棚上げした特別区とか特別な制度というものが果たして可能かという法律的な問題であります。課税権はどうするのか、警察権はどうするのか、裁判権はどうするのか。これは国家主権の一部でありますから、その国家主権を曖昧にして果たして可能なのか。
 二番目に、人間住むところ必ずトラブル、紛争、犯罪等の発生が不可避でございます。それで、一番参考になるのが、最近、名越健郎という方が、「北方領土の謎」ということで、北方四島に何度も訪問されて、学術アドバイザーって訪問されて、向こうの二つの新聞、「赤い灯台」と「国境にて」を日本で唯一取られて、そのロシア語を三年間、四年間熟読された結果分かったことは、この北方領土では犯罪が非常に多い、ロシア人の間で犯罪が多発している、殺人、強姦、その他が起こっている。ほかに娯楽がないことかもしれませんけど。そこへ日本人という違った価値観を持つ国民が入っていって協力して犯罪やトラブルが起こらないか、大いに疑問だと思います。
 思い出すのは、樺太が、現サハリンでございますけど、かつて実は日本人とロシア人が混住していた地域だったんですね。しかし、それが余りにもトラブルが多発するもので、一八七五年の樺太千島交換条約を結ぶことになった。そのことを我々はもう一度思い出すべきではないでしょうか。
 しかも、その後、ロシアはソビエト時代というものを経験し、いまだに主権的民主主義を主張している、我々と価値観が違う国民でございます。価値観や体制の違う日ロ両国民が果たしてこの四島で平和共存的に共同経済活動をトラブルなしに運営できるものか、私個人は分かりません。私は、人間を少し、善意のものでなくて性悪説に立っているかも分かりませんが、一抹の懸念を持ちます。
 そして、仮に安倍首相がおっしゃるように経済活動が万一うまくいく場合でも問題がございます。そうすれば、もうこれでいいじゃないかということで、領土問題はもう解決しなくても実際平和共存しているんだからいいんじゃないかということで、これはロシアの思うつぼに入るんである。実効支配しているのはあくまでもそれはロシアの側であり、ロシアの法律の下ででございましょうから、結局はロシアの方に主権が及んでいくのではないかと思います。
 そして、最後に、箇条書で読むだけにさせていただきますけれども、日ロ関係にはまだまだ問題がございます。一抹の懸念は、経済協力のみが先行して領土問題の解決が半永久的に後回しにされる危険。二番目に、交渉に自ら期限を設定する愚を回避すべきだと思います。領土交渉は主権をめぐる交渉ですから、オール・オア・ナッシングになる形しかないわけで、一ミリごとの進歩ということは実はあり得ないので、言葉のあやにすぎません。三番目に、プーチン政権は安定しているからこの時期にこそという考え方があると思いますけれども、彼が、愛国心があって領土を決して譲ろうとしない、それはクリミアを併合した点からも分かります。
 そういう意味で、取引は確かに必要でございましょうけれども、まだそのタイミングは熟していないというのが私の意見で、国際情勢は時々刻々動いておりますけれども、私の関係では、ロシアはこれから衰退一方の国でございますから、時期さえ待てば日本に有利な時代が来る。したがって、短気は損気だという平凡な結論になります。
 御清聴ありがとうございました。
#9
○委員長(宇都隆史君) ありがとうございました。
 次に、酒井参考人にお願いいたします。酒井参考人。
#10
○参考人(酒井啓子君) ありがとうございます。
 諸先生方が全体的な外交政策についてのお話をされた中で、私は、専門分野でございます中東、特にトランプ政権のアメリカの対中東政策、今後どうなるかということを中心にお話をさせていただきたいと思います。
 皆様もよく御存じのように、トランプ政権が最初に打ち出した政策が中東・北アフリカ七か国の国籍を持つ者に対する入国禁止の大統領令ということで、これはアメリカ国内のみならず中東諸国、さらには全世界的に今大きな批判が巻き起こっているということは皆さんよく御存じのことかと思います。
 ここで、木村先生に倣いまして過去三代におけるアメリカ政府の対中東政策をどのように考えればよいかということで、要約すればこのようになるかと考えます。ブッシュ政権、これは三代前ですけれども、九・一一以降、アフガニスタン戦争、イラク戦争などに見られるように、中東に対する過干渉、過剰な干渉がブッシュ政権の対中東政策の根幹でありました。続きましてオバマ政権は、これに全く逆行いたしまして、あつものに懲りてなますを吹く状態の消極的あるいは不介入が基本の外交政策を取っておりました。
 お配りした私が書きました外交の記事において、私はこのトランプ政権の中東政策は基本的にはオバマ政権の消極的な中東外交の連続であるのでさほど大きな変化はないのではないかというふうに申し上げましたけれども、改めてこの入国禁止令などを見て考えると、トランプ政権の対中東政策の特徴はこのように言えると思います。積極的な国内政策の見識なき海外流出。つまり、国内の安全保障対策、雇用対策を積極的に進めていくが、そのことによって対外関係にどのような悪影響を与えるか、十分な検証がなされていない状態で外交政策が展開されているということだと思います。
 つまり、ブッシュ政権のように覚悟を持って対外強硬姿勢を取ったり、オバマ政権のように外交政策自体が煮え切らないものになったりするのではなく、トランプ大統領にとっての対外関係はあくまでも国内政策の結果であり、その対外的な影響に対して全く無頓着であるということが最大の問題だと言えましょう。オバマ政権が外交の劣化だとすれば、トランプ政権は外交の不在ということになろうかと思います。
 このそういった定見のなさ、外交政策に関する定見のなさは、今回の入国禁止令からも見て取れると思います。
 今回選択された中東・北アフリカの七か国、これはアメリカにとっては九〇年代の敵国概念に非常に近いものというふうに見られます。イラン、シリア、イラク、リビア、スーダンなど、過去にアメリカがテロ支援国とみなしてきた国がカウントされているわけです。
 しかし、ここで重要なことは、こうした国々の幾つかは既に政権が交代し、むしろ現在、欧米諸国の手を借りて国家再建に臨んでいるというそういう国だということです。とりわけ、周知のとおり、イラクは、イラク戦争後二〇一一年まで米軍が駐留し、その後も密接な関係を維持して、現在、イスラム国掃討作戦に携わってきております。リビアもまた、二〇一一年のアラブの春の際にNATOが反乱部隊を支援するという形でカダフィ政権が打倒されたという経緯があります。少なくともこの二か国については、アメリカが、あるいは欧米諸国がある種特別に支援してきたわけでして、そうした国に対して入国禁止令を出すということは極めて矛盾した政策になっているわけです。
 でも、実際問題、この七か国の国民が対米脅威をもたらすものなのかどうなのかということで見ますと、過去の経緯を見ますと、確かに最近のアメリカ国内のテロ事件においては、テロ犯、特に二〇一五年から二〇一六年にかけましてアメリカ国内で起きたテロ事件の犯人にイスラム教徒が多いということは確かです。その中でも、昨年オハイオで起きた事件二件に関しては、ソマリア系のアメリカ国籍あるいは永住権を持つ者が犯人だったということで、それだけ捉えるとソマリアが今回入国禁止の対象になっているのは理があるというふうに考える方もいらっしゃるかもしれません。しかし、それ以外の六か国の出身者でアメリカ国内のテロ事件に関与した者は今世紀に入って一人もおりません。
 アメリカ国内のテロ事件の犯人の出身国として多いのは、九・一一事件を見ても分かるように、サウジアラビア、エジプトでしたし、それ以降、近年多い犯人の傾向は、パキスタン系のアメリカ国籍のホームグローン・テロが非常に多いということになっております。近年の事件の中にはアフガニスタン出身の二世も含まれているわけです。しかし、これら述べましたようなサウジ、エジプト、パキスタン、アフガニスタンというような国々は、全く入国禁止の対象になっておりません。これだけを見ても、必ずしもアメリカ国内のテロ対策のためにこの七か国が選ばれたということではない、恣意的な判断が見て取れます。
 問題になるのは、このように、イラクやリビアなどのように、既に反米の国ではなくなっているにもかかわらず、四半世紀前の知識で敵対国扱いをするということが今後どのような影響をもたらすかということになります。
 まず最大の問題は、イラクにしてもリビアにしても、一旦親米政策にかじを切った国がアメリカに対する信頼を徹底的に失うということが最大の問題かと思います。特にイラクでは、イスラム国が侵攻して以来、国内の親米路線とあるいはナショナリスト路線、あるいはイラン寄りの路線といったような様々な路線を調整する形で非常に難しいバランス取りを強いられてきております。これに対してアメリカは、IS、イスラム国が侵攻した当時、当時のマーリキー政権を退陣させアバーディー政権を成立させた。これはアメリカの判断なしには成立しなかったことかと思います。このように、米軍を撤退させたとはいえ、イラク国内の治安情勢に関しては最低限の関与を持ってアメリカはアバーディー政権を支えてきたという経緯があります。
 しかし、入国禁止令のような今回のアメリカの政策が出されますと、イラク国内にくすぶっている反米勢力の声が高まりかねません。更に言えば、アメリカが頼りにならないのであれば隣国イランに頼るしかないというますますイラン寄りの路線が強められるということが懸念されます。実際問題、イラク戦争後、国内の治安悪化要因の一つだったサドル派は、今回の政策を受けて、イラクに渡航するアメリカ人に対して同様の対抗措置をとるべきであるといった主張を行っております。
 次に懸念される材料としては、今申し上げましたとおり、イランの地域的影響力の高まりと、それに対するアメリカの対抗政策ということになります。
 イラクでアメリカに対する信頼が損なわれることは、自動的にイラクにおけるイスラム国に対する掃討作戦の停滞を意味いたします。現在、モスルを占拠するイスラム国に対する掃討作戦が昨年十一月から開始されておりますけれども、数週間で終わると喧伝されていたにもかかわらず、いまだに町の一部しか到達できない、年単位の戦いになるというふうに観測されております。オバマ政権は、イスラム国に対して徹底的に抵抗する勢力としてシリアやイラクのクルド少数民族に依存するしかありませんでしたけれども、同様にイスラム国に最も有効な戦いを展開しているのは、イランの革命防衛隊とレバノンのヒズボッラーです。
 こうしたイスラム国をせん滅するという政策をもしトランプ政権が実現しようと思ったらば、イランとの協力、調整が不可欠となります。しかし、現在トランプ政権はイランに対してもこのように入国禁止令を出すという態度を強化させておりますので、イランを、イラクを敵視してイスラム国掃討作戦を遂行しようと思えば自ら行うしかないという、非常に矛盾した政策になっております。
 さらに、こうした中東諸国の国民感情を逆なでする事件としては、トランプ政権が駐イスラエル・アメリカ大使館をエルサレムに首都移転するという計画を明記していることです。一九六七年にイスラエルが占領し、その後併合した東エルサレムを含めエルサレムを首都とみなすことは明白な国際法違反であり、パレスチナ諸勢力のみならず国際世論の激しい反発を招くということは自明のことかと思います。
 このように、トランプ政権の最大の問題は、中東諸国の中でも対米不信、フラストレーションが高まるということが懸念でありますけれども、こうしたことを一言で言ってしまえば、トランプ政権がつくり上げたテロを育む土壌というものが拡大生産されている、しかしながらアメリカ国内は自国のみを守るという、まさにテロ輸出国にならんとしているという懸念がございます。そうした風潮は、アメリカ国内でもイスラム教徒に対する排外的な行動やヘイトスピーチの蔓延といったようなものが見られることからも分かるわけでありまして、ホームグローン・テロを出現させる傾向が強く出ております。
 こうしたことは、不満分子のリクルートに力を入れているイスラム国にとってはまさに格好の勢力拡大の機会であります。ですので、昨年十一月にトランプ氏が大統領選に勝利したときにイスラム国は真っ先に歓迎の意を表しております。まさにその意にまんまとはまった形でトランプ政権が政策を展開しているというふうに言えると思います。
 さて、最後に、日本が、じゃ、こうした事態に対してどのように対応すべきかということを申し上げたいと思います。
 アメリカに行きたくても行けない、入国禁止令などでアメリカに行きたくても行けない、欧米で学びたくても学べない学生や若者に対して活躍の場を提供する国がどこかで必要になります。アメリカに行けないとなればどこか別の国がそれを引き取る必要がある。新聞、メディアなどでは難民を引き取る引き取らないということばかりが注視されますけれども、入国禁止の対象になった者には学生やビジネスマン、そうした一般の普通の商活動、教育活動の一環でアメリカに行かざるを得ない人たちがたくさんいたわけです。既に、カナダが拒絶された難民への門戸を開いております。日本に期待される役割というのはそういったところにあるのではないかと私は考えております。
 具体的な例を申し上げます。九・一一事件以降の事例が参考になるかと思います。九・一一のときにも、やはりアメリカには行きたくても行けないという中東イスラム圏出身の人々があふれました。その際に、アメリカに留学できなかった学生がアジアに向かいました。日本でも例外ではございません。私が当時教鞭を執っておりました東京外国語大学には多くの中東出身の学生が日本に留学を希望いたしました。こうした日本で勉強した学生の中には、凝り固まった出身地での教育から抜け出して、世界に目が開かれて、驚くほどリベラルに大変身した学生が実に多くおります。そうした学生の中には、現在紛争解決の最前線に立っている者がおります。
 私事になりますけれども、先月末、国際機関に勤務している二人のシリア人を日本に招聘し、講演会を開催いたしました。そのうちの一人は、シリア国内の国連開発機構に勤める医師ですけれども、彼は二〇〇九年まで千葉大学の医学部に在籍し、整形外科医として博士号を取得した人物です。彼の上司は日本人の国連職員です。もう一人は、アンマンのユニセフ事務所の緊急事態専門家としてシリア国内避難民への支援など、中東全体の紛争、難民問題に取り組んでいます。彼女は、私が在籍した頃の東京外国語大学に研修生で来日し、二〇一〇年に早稲田大学で修士号を取っております。このように、紛争や難民問題の解決に取り組む紛争地の国民を日本で教育し、育成するということは、国際協力のためには大きな資源となっております。
 ですので、こうしたこと、つまり、難民を受け入れる云々ということも十分重要ですけれども、同様に、教育、ビジネスの関係で紛争地出身の者を日本が受け入れて育成していくということは非常に重要な問題だと思います。
 さらに、もう一つ申し上げれば、アメリカと話をしたくてもできない、そういうアメリカに嫌われた国とアメリカの仲裁や橋渡しをする外交というのは、かつての日本外交の重要な要素でありました。パレスチナのPLOをテロ組織として接触を禁じるアメリカに対して、当時のアラファトPLO議長を日本に招いた経験もあります。あるいは、イランのハータミー大統領を呼んで、日本の国会で演説したということもございます。そうした柔軟な日本独自の外交を展開する余地が、特にトランプ政権の下のアメリカに対してはあるのではないかと私は思料いたします。
 どうもありがとうございました。
#11
○委員長(宇都隆史君) ありがとうございました。
 以上で参考人の意見陳述は終わりました。
 これより参考人に対する質疑を行います。
 質疑のある方は順次御発言願います。
#12
○阿達雅志君 自由民主党の阿達雅志でございます。
 本日は、四人の参考人の皆様から様々な角度から現在の国際情勢、またアメリカの新大統領の影響ということで、非常に貴重な御意見をお聞かせいただきまして、誠にありがとうございました。
 そしてまた、改めて思いますのは、当選から三か月、そしてまだ就任から三週間でもう国際世界にこれだけ、国際政治にこれだけ大きなインパクトを与える、やはりこのアメリカというのがいかに世界において大きな影響力を持っているかということを改めて四人の参考人の先生方のお話を聞いて思ったところでございます。
 私は、ちょっと岡本参考人に何点かお聞きをしたいと思います。
 一点目は、まず、トランプ大統領、自国の利益第一ということで今回就任をされ、そして今いろんな行政命令、あるいはいろんな政策に取り組んでいると。こういう中で、私もトランプ大統領の就任演説を読んで非常に驚きました。中身としては、それまでのキャンペーンで言っていた中身が非常に多かったわけですけれども、今までこういう就任演説で書かれていたような米国的価値についての説明がほとんどなかった、そしてまた外交についてほとんどない、またアジアについても全く触れていないという中で、今日、岡本参考人のお話にもありましたけれども、こういう国際公共財について、あるいは自由主義、民主主義という価値観について非常にはっきりしない、少なくとも言葉としてはっきり発していないというところがあるように感じたわけでございます。それに対して、この就任演説に対して安倍総理が祝辞を出されました。その中にははっきりと自由、民主主義、法の支配、こういったものを共有する、価値観を共有する中での日米同盟ということがはっきりうたわれていたわけでございます。
 そうすると、こういう自由、民主主義、法の支配ということを表面に出してこないアメリカ、そしてまた自国第一ということで、国際公共財というところにはっきりコミットをしていないように見えるこういう大統領の下で、先ほど木村参考人のお話でしたかの中にもあったかと思うんですが、通商政策はあっても外交政策はないというような、こういう部分がある中で、やはり日米同盟自体については、確かにトランプ大統領も極めて重要だということはおっしゃっている、そしてまたトランプ大統領の周りの方もおっしゃっているわけですけれども、こういう自由、民主主義、法の支配という共有する価値というものを間に置かずして、じゃ、日米同盟というのは一体どういう意味を持つんだろうか、一体アメリカは日米同盟というのをこれからどういうものだと考えていくんだろうかと、これは非常に疑問に思うわけですけれども、これについて岡本参考人の御意見をお聞かせいただけますでしょうか。
#13
○参考人(岡本行夫君) 御指摘のとおり、トランプ大統領の就任演説というのは、自由、民主主義、そういう言葉すら出てこない極めて特異な演説でございました。歴代大統領でそのようなアメリカ的な価値に触れなかった就任演説はございません。
 おっしゃるとおり、アメリカと基本的な価値が共有できないならば、同盟ということは相対的なものになるわけですね。それでは、ほかの、じゃ、中国と日本が同盟したってそこは変わらないじゃないかというような議論にもなるわけであります。ですから、トランプ大統領が変わっていくことを祈るばかりでありますが。
 先ほども申しましたように、私は、今アメリカの政府全体を見ればかなりいい方向へ行く、そういう兆候もあるわけでございますね。先ほども申し上げたティラソン、マティス、そういった人々がこれから外交の最前線に立つ、そしてトランプ大統領はそうした閣僚たちにかなりの権限を委譲しているわけでありますから、アメリカ政府全体とすれば、そう変なところに行かないのではないかと。
 トランプ大統領を選出した、全投票者のうち四六%が彼に投票したわけでありますけれども、三〇%ぐらいが非常に固いトランプ思想の共鳴者でありますが、残りの一六%というのは、ヒラリー・クリントン大統領候補に対する反感とかワシントンに対する反感とか、そういったものからアンチテーゼとしてトランプ大統領に投票をした。ところが、投票してみたら自分たちが思った以上に過激な、攻撃的な大統領になったということで、今戸惑いを感じているわけですね。
 次の中間選挙を考えてみますと、トランプ大統領の支持率が、今はまあ四三%ですか、それが更におっこっていくというようなことになると共和党全体の危機になりますから、党内からもそういったトランプ大統領の行き方に対する制肘が出てくると思います。
 ですから、全体として申し上げれば、私は、アメリカ全体が自由、民主主義という価値を放棄したわけではもちろんない、依然として世界のその点でのリーダーだと思いますので、日米同盟は必要、強化していくべきだと思っております。
#14
○阿達雅志君 どうもありがとうございます。
 トランプ大統領がやはりこれから、そういうアメリカ国民の声をしっかり受け止めながら、そういう価値というものについても重要視していただくことを祈るばかりでございますし、また、今の時点ではやはり内政を重視するということで、外交のところについてはっきり政策がない中でやられているような部分もあるのかなというふうに若干楽観的にも思うわけですけれども。
 先ほど、岡本参考人のお話の中で、日米FTAもあってもよいのではないかというお話がございました。ただ、この中で、今商務長官に指名されているウィルバー・ロスさんなんかは、FTAについての考え方ということでおっしゃっている中に、二国間の貿易拡大だけでなくて、アメリカにとって貿易赤字を発生させないFTAでないと意味がないんだと、こういうことをおっしゃられているわけです。
 そうすると、このFTAというのは明らかに、どうしても二国間でやった場合にはなかなかノンゼロサムというよりはゼロサムになることが多いわけですけれども、こういうアメリカ側のFTAについての見方を前提にした場合に、日本にとってアメリカとFTAを結ぶ意味というのはどういうところにあるのでしょうか。それとも、もう少しFTAというものを違う解釈をされているのか、その辺をちょっと岡本参考人に教えていただきたいと思います。
#15
○参考人(岡本行夫君) 今御指摘のように、アメリカは基本的には貿易赤字を全ての国との間でなくしたい。しかし、こんなことは所詮無理であります。世界貿易というのは補完的に行われるものでございますから、アメリカもそのことは本心ではよく知っていると思います。
 私が日米FTAでもと言ったのは、やはり日本の全貿易に掛かってくるFTAのカバー率というのが、例えば韓国に比べて著しく低いわけでございますね。日本はまだ二〇%台、韓国は七〇%に近いところまでFTAでカバーされているわけであります。だから、FTAがあるかないか、それはやっぱり日本にとってはあった方がよろしいと思います。
 二国間FTAを結ぶ場合のやはり難しさというのは、向こうもこちらも五〇%ずつの発言権を持つわけですけれども、その中ではやっぱり国家間の力関係というのが利いてきてしまう。例えば、農産物に対してアメリカはTPPにおけるよりも更に強い要求を出してくるのではないかというような懸念は当然あるわけでございますが、他方、政治的に考えますと、トランプ大統領は、まず日本との間のFTAというものを結んで、それを世界にモデルとして見せ付けたいんだと思うんですね。イギリスとはこの間、原則的な合意をしましたけれども、イギリスがEUを脱退するまでは交渉も始められないわけでありますから、まだ大分先の話であります。
 そうしますと、日本としては、早めにトランプ大統領の要求に従って、FTA、先ほども申しましたように、日本はもう日米FTAということについては一応のその検討は昔からしてきているわけでございますから、それに乗ってやる方がかえって向こうも、スピード感を持ってやった方が向こうも譲歩をしてくる、余り強い要求をしてこの日米FTAというのがいつまでもできないということは避けるのではないかという期待もあるわけであります。
 もちろん、渡邊参考人がおっしゃったように、本筋はTPPをアメリカがいつでも入ってこれるような状態にしておくということでありますが、それが非常に難しいという状況の下では、やはり日米FTAというのは有力な選択肢になると思います。
#16
○阿達雅志君 どうもありがとうございました。
 まだまだ聞きたいことはありますけれども、もう時間が参りましたので、質問を終わらせていただきます。
#17
○大野元裕君 民進党の大野元裕でございます。
 本日は、先生方からすばらしい御意見を頂戴をいたしまして、本当にありがとうございました。
 今日は大変豪華な顔ぶれで、皆さんに質問をしたいんですが、私がいただいた時間は十分だけでございますので、全員に御質問ができないことを御容赦をいただきたいと思っています。
 専ら木村先生にお伺いしようと思ったんですが、一点だけ先に岡本参考人にお伺いをさせていただきます。
 岡本参考人におかれましては、北米一課長時代から私も横で非常に熱心にアメリカとやり合ってきたということを拝見をし、尊敬をさせていただいておりますけれども、おっしゃるとおり、アメリカに対するその予測不可能性というのは、政策の問題もあると思うんですが、もう一つは、日本にとってなじみの薄い顔ぶれが多いということもあるのではないかと思っています。
 マティスなんというのは本当に評判いいですけれども、私もCENTCOMのとき会ったことがありますが、ただ、日本の防衛省とはほとんどやり合ったことがないという人であります。そういった意味ではなじみが薄いと思うんですが、他方で、岡本参考人は恐らく、ウィルバー・ロスなどは日本ととてもなじみの深い人ですし、それから、ライトハイザーなども多分交渉されたことがあると思うんですが、そういった古い、古いというんでしょうか、日本との関係がある程度、あるいは計算が成り立つような人たちとの関係をどう使って、分からない人たち、あるいはバノンのように接触もなければよく考えていることも分からないという人もいるかもしれませんが、どう我々、人間関係を構築していくべきかということについて、是非御意見をいただきたいと思っています。
#18
○参考人(岡本行夫君) 私も、今度閣僚に任命された方々、直接に存じ上げている方はおりません。ただ、その周辺の人たちを若干名知っているというだけであります。
 今、大野先生はマティス国防長官の例を出されましたけれども、マティス国防長官は、ヒラリー・クリントン政権が成立していたとしても有力な国防長官候補にはなったであろうと言われているような人でありまして、大体、日本の新聞がマッドドッグを狂犬と誤訳しているのが非常に彼にとって気の毒なわけですね。あれは、マッドドッグという言葉には狂ったというニュアンスは英語ではありません。彼は若いときに、訓練のときに猪突猛進をやって勇名をはせたのでそういう名前が付いたと、まあ本人はそれを非常に嫌っているわけですが、ちょっと余計なことを申し上げましたけれども、大変に立派な人でありまして、我々、やはりそういう知らない、隠れた、隠れたというか、我々が知らない有望な立派な人材がたくさんいるということは忘れてはならないと思います。ティラソン国務長官も、あの上院の公聴会での発言は大変にバランスの取れた立派なものでありました。
 おっしゃるとおり、今ホワイトハウスの中にはかなり特殊な考え方をするような人たちもいるわけでございますけれども、これから、閣僚、内閣との間の綱引きと申しますか、だんだんと実際の権限が、次官、次官補、次官補代理という、これが非常に大事でございますけれども、陣容が充実してくるにつれて閣僚の方に移っていくのではないかという気がしております。
#19
○大野元裕君 ありがとうございます。
 次に、木村参考人にお伺いをさせていただきたいと思っています。
 今、我慢のしどきである、少し機が熟すのを待てと、こういう御指摘でございましたが、他方で、我々政治家は、今年どうするんだとか、日々に追われていることも事実でございまして、今どうするべきかということなんですが、この交渉に従って、まあ、得るものはほとんどなかったんだろう、先払いばかりが多かったというような、こういう話かとも私も伺っておりましたし、実はあの八ポイントの経済協力については、新たな予算措置が必要であるにもかかわらず、なぜか国会にも諮られないということで、我々これを議論する立場すら与えられていないという不思議な状況でございますが。
 他方で、先生にお伺いしたいのは、これまでの我が国の例えば領土に対する立場と若干変わってきているのではないか。特に、例えば一九七九年のたしか十月でしたね、ソ連が我が国の固有の領土である北方四島に対して軍の恒久的施設を強化させたときには、我が方は北方領土の早期返還と軍の撤退を求めています。これは我が国の昭和六十一年に国会が決議したのも同じように撤退を求めているんですが、なぜか今回そういったことが行われずに、例えば地対艦ミサイルが二種類、バルとバスティオンというのが配備されましたが、バスティオンに関していえばマッハ二・二で超低空ということで、我が方からは迎撃する有効な手段を持っていない。これが新たに会談の直前に、一か月ほど前に配備されたにもかかわらず、実は撤退を言っていないんですね。懸念としか言っていない。あるいは、その直前に菅官房長官の、ロシアの三百九十二の軍事施設があると言いながら、注視しているとしか言わない。
 こういった領土に対する我が方の立場の後退というかは、どういう影響を機が熟すまでの間与えてしまうのかということについて是非教えていただきたいと思います。
#20
○参考人(木村汎君) いろいろ御質問されましたけど、一番最後の点が先生の御質問のポイントだと思いますので、お答えいたします。
 おっしゃるとおり、北方四島の一部に地対空ミサイル等そういったものが、軍備が強化されていることに関しては私はもっと強く抗議すべきだと思います。特に2プラス2、皆様に御説明するまでもなく、ロシアが希望したのか日本が希望したのか、2プラス2という外務大臣のほかに防衛大臣が加わっての場というものができておって、確かにそれはウクライナの問題で中断して二度目が開かれておりませんけれども、そういう枠組みが、同盟国でないにもかかわらず、平和条約がない国であるにもかかわらず、安倍政権の下にはロシアとの間にあえてつくったわけですから、2プラス2という場で防衛的なことも話し合うなら、こういったミサイルの配置に関して早速、即座に僕は抗議すべきだと思います。
 私の勘ぐるところ、安倍内閣は日ロ関係を少しでも領土問題その他で進めたいという気持ちが先走っているものですから、相手側の機嫌を損ねるようなことはもう一切というか、少し弱めにするということで、そういう点での抗議が少ないんじゃないかと思います。
 ところが、これは大野先生の御存じのもう一人のロシアの専門家の袴田茂樹青山学院大学元教授が常に言っていらっしゃいますように、ロシアというのはやっぱり、弱気で来る、遠慮して来る国の外交は尊重しないんですね。
 先ほどのお話に私続けますと、オバマ大統領がなぜリセット外交を失敗したかというと、向こうの回顧録が出ておりまして、弱い政治家、最初に弱く出てくる政治家は信用しないんだと。それは何か理由があるんだろうと、弱気に出ざるを得ない。だから、むしろその前の、何と、ブッシュという人は共和党で強硬派なんですね、ロシアに関して、それの方がロシアで人気があるというのは、思い切ったことを言う、自分たちの耳に聞こえて具合悪いことでもずばずば言う、しかし、腹に二物はないんで、その言ったとおりの人間だということで、何とブッシュ・ジュニアの方が、オバマのようなインテリの、僕らから見ると穏健の、民主党の大統領よりもはるかにプーチン大統領とメドベージェフ元大統領は高く評価しているので、そういうふうですから、何かちょっと、つらいんですね。こちらがジェントルマンに、下手に出るというか穏やかに出ると、それはその国に何かそうせざるを得ない弱みがあるからそうするんじゃないかとロシア人は猜疑心を持って疑ってくるんで、強い立場で出てくる方があっさり要求が分かって好きだと。そういう意味で、僕はトランプさんとでも相性、ケミストリーが合うんじゃないかと思うぐらいで、オバマ大統領より。
 ちょっと余談にそれましたけれども、私は、ロシアに関しては時期尚早であって、言うべきことを言って初めて、世界の尊敬ばかりでなくロシアの尊敬を得られると思います。
#21
○大野元裕君 時間がないので終わりますが、腰砕けの今の外交ではいけないということを御指摘いただいたんだと思っています。特に、四十九年間、実はタルトゥースというシリアの港、弱気に出た瞬間に租借されてしまったという今の状況ですので、是非我々も参考にさせていただきたいと思っています。
 ほかの先生に質問ができずに申し訳ございません。ありがとうございました。
#22
○浜田昌良君 公明党の浜田昌良でございます。
 本日は、四人の先生方、参考人を引き受けていただきまして、心より御礼申し上げたいと思います。
 私は、渡邊参考人に、対米、対アジア、対ヨーロッパ、一問ずつ三問御質問させていただきたいと思います。
 まず対米ということで、トランプ政権はいわゆる国境税を導入するということが検討されていると、そういうことが報道されておりますけれども、これがガット、WTO法上どういう位置付けになるのかということなんですけれども、いわゆる日本のように消費税を導入している国の場合は、輸出する場合は今まで掛かっている消費税を還付するという制度がありますし、輸入する場合には本来掛かるべき消費税を一挙に国境で掛けるということができるわけですが、アメリカの場合はそれは国としての消費税はないわけですね。それを法人税でやってしまうということが、どういう形で導入されるとそれがガット・WTO違反になるのか。また、どういう形でやればガット・WTO法違反にならないのか。また、もし御存じであれば、世界の中で法人税で、こういう形で国境税を導入している国があればお教えいただきたいというのが一問目の質問でございます。
 二問目につきましては、いわゆるRCEPの交渉戦略についてでございますが、資料もいただきました。その中で、いわゆるFTAAPに上っていく道としてTPPとRCEPがあったわけでございますけれども、従来は、このTPPを日米が主導しながら質の高いものに仕上げて、そしてそれをモデルなりテンプレートにしてRCEPに行こうというのが今までの日本の戦略だったと思います。
 ところが、TPPが少し時間が掛かると。腰を据えて説得していくとなりますと、従来はRCEPについても質の高さというのを目標にしていたわけですが、スピードというのも少し大きなファクターになってくるのかなと。そういう意味では、自由化の度合いの高さよりも、中程度にしながらも、例えばこのRCEPについては日本がある程度のレベルで妥協すれば一年以内にまとまるんじゃないかという説もあるぐらいなわけなんですけれども、例えばTPPの二年ぐらいというめどがありますから、それぐらいのめどにまとめていくという、そういうことを目標にしたらどうだろうかと。
 じゃ、どの程度の自由化にするかについては、先生の資料でもいわゆる関税の分野と非関税の分野があります。この非関税の分野、制度的なルールについては、例えば電子商取引であったりとか知的財産保護であったりとか投資規制とかサービス貿易と、こういう分野についてはなるべく質の高いものを目指しながら、物品の関税については、これインドが非常に苦労しているわけですね。ASEANプラス1の協定見ても、インドのASEANとの連携協定は関税撤廃率が七六・五%ですから、それについてはそのプラスアルファぐらいで一旦結んだ上で数年後に再協議をすると、そういう形にして、二つを、制度と物品関税を分けるという形の考え方はどういうふうに評価されるかについてお聞きしたいと思います。
 三つ目は、ヨーロッパの関係で、今、日本は日EU経済連携協定を急いでいるんですが、この急ぐことがEUの統合、まあ今ブレグジットもあるわけですけれども、これについてどういう意味合いを持つのか。また、それが余り分断を助長しない形で、どういうふうな日本としての日EU経済連携協定を考えていけばいいのかについて、この三点について、済みませんが、お答えいただければ有り難いと思います。
#23
○参考人(渡邊頼純君) 浜田先生、どうもありがとうございました。
 三つとも大変難しい質問でございまして、チャレンジングな質問を頂戴して、感謝申し上げます。
 まず一つ目の、アメリカで今言われております国境税というものについてなんですけれども、これはもう少し、実際にはこれが一体実態としてどういうふうに施行されるのか、どういうふうにインプリメントされるのかということを確かめないと、ちょっと軽々には申し上げられないという点がございます。
 ただ、あくまでも一般論として申し上げますと、もし、例えばメキシコで作られたものに対して国境で何らかの税を掛けるということになりますと、これはガットの二条に書かれております譲許表、その中に関税あるいはその他の課徴金とかそういったようなものを全てWTO加盟国のWTO上の義務として記載をする必要があります。譲許表に記載をしていく必要がある。
 つまり、それは、各国、他のメンバー国、WTOのメンバー国からの輸出に対して課せられるという意味では、既にアメリカがWTOに約束をしている、これ譲許しているといいますが、その譲許しているレベル以上に国境でのアジャストメントのレベルが高くなるということになりますと、これはガットの第二条違反を形成する可能性がございます。ですから、そういう意味では、それが国境で徴収されるものである限りにおいては、ガットの二条の制約の下に置かれるということだろうと思います。
 ですから、先生の御質問のように、後半にありましたように、どうやればWTO違反でないことができるのかということになりますと、それはちょうどEUのいわゆるバリュー・アデッド・タックス、付加価値税がそうでありますように、輸出に仕向けられる産品については国内の付加価値税で還付をそれぞれの生産段階で受けるという、そういうシステムにEUの中なっておりますけれども、そういう形で行われるのであれば問題とはなりませんけれども、国境で輸出国からの産品に対して国境税を課すということになりますと、その点だけを捉えますと、ガット二条に対する違反を形成するというふうに考えていいのではないかというふうに考えます。
 これが一つ目の御質問に対する私からの拙い回答でございます。
 RCEPについて二つ目の御質問として頂戴しておりますが、スピード感も重要、まさにおっしゃるとおりだと思います。先ほど申しましたように、二〇一三年の五月から交渉しておりますが、TPPと比べますとはるかに交渉の進展、進捗の度合いが低くございます。やっと初期の物の関税の、物品関税の初期のオファーとリクエストが今ようやく交換されつつあるということで、実はまだ入口に立ったばっかりというような状況でございます。先生からは、非関税分野の制度的な改善というのはこれはしっかりやっていったらいいのではないか、おっしゃるとおりだと思います。
 物品の関税とどこまで切り分けるかという御質問もありましたが、今やはり包括的経済連携というのは、物品のマーケットアクセスの改善と、それから投資とかあるいは知的所有権とかあるいは競争政策でありますとか、そういったようなものにつきましてのルールの方というのは一つのパッケージとして交渉しております。ですから、このパッケージをばらしてしまうと、例えば非関税分野だけ進めればいい、あるいは物品だけ進めればいい、あるいは物品の中でも農業はおいておいて製造業の産品だけやろうというふうに、どんどんある意味で分断、細分化が進んでいってしまう。
 やっぱり交渉をまとめていくという観点からしますと、いろんな交渉分野を一まとめにして一括受諾という形で交渉していくというのが極めて重要なんですね。ですから、それを基本として進めていく。これはシングルアンダーテーキングというような言い方しておりますけれども、WTOの基になりましたウルグアイ・ラウンド交渉以来、通商交渉というのは一般的に、そういうルールメーキングの交渉とそれからマーケットアクセスとの交渉を分断しないというのが一つのセオリーになっております。ですから、まさにRCEPでもそうやって進めることによって両方のでき上がった協定の価値を維持していくというのが重要だと思います。
 他方では、おっしゃったようにスピード感も重要だということでございますが、スピード感は確かに重要なんですが、RCEPの場合は、その基本にASEANプラス1というのが五本ございます。ASEANプラス日本とかASEANプラス中国、ASEANプラス韓国というのもあります。そういった五本のASEANプラス1でこれまでできているレベルは少なくとも超えるようにしましょうということがあるわけですね。ですから、そういう意味では、そこは何とか維持する必要がある。
 例えば、先生御自身が言及してくださったように、インドは、例えばASEANとインドとか、そういうものは七六・五%、これは非常に低いわけですね。あと、中韓のFTAも実は七〇%台というようなことになっておりまして、野心が非常に低いわけですね。ですから、スピード感も重要ですが、この野心のレベルを維持していくというのもやはり大きなイシューではないかというふうに考えております。
 最後に、日EUのEPAですけれども、これは、今EUの中でも、EUの統合、市場統合に対して、ブレグジットあるいは中東欧のEUメンバー国からのいろんなブラッセル主導の動きに対する反発とか出てきております。そういう意味では、日EUのEPAをまとめるということは、EUにとりましても、あるいはその政策当局である欧州委員会にとりましても重要なことだろうと思います。ですから、そういう意味では、この日EUのEPAをできるだけ早く、特に三月にはオランダの選挙、そして五月にはフランスの大統領選挙、さらには九月にはドイツの選挙がございます。ですから、ヨーロッパが政治の季節に入る前に日EUのEPAをできるだけ早くまとめるということが今重要ではないかと思います。
 特に今、世界には保護主義あるいは保護貿易主義というものが蔓延しつつあるかのような前兆がございますので、そういうところで日本とEUがEPAで大筋合意できるというのは、世界に対しても極めて重要なメッセージになります。そしてまた、日本がそれだけオープンな貿易体制をつくっているということをアメリカにもアピールすることになると思いますね。
 ですから、そういう意味では、日EUのEPA、これをできるだけ早期に合意に持っていくということが日本の国益にとって重要ではないかと考える次第でございます。
 以上でございます。
#24
○浜田昌良君 ありがとうございました。
 ほかの先生方、質問できませんで申し訳ございませんでした。どうも済みません。
#25
○井上哲士君 共産党の井上哲士です。
 今日は、参考人の皆さん、本当に貴重な御意見ありがとうございます。
   〔委員長退席、理事堀井巌君着席〕
 酒井参考人に二点、まずお伺いいたします。
 今のトランプ政権の中東政策がむしろテロの土壌を拡大しているという趣旨のお話があったと思うんですが、その一つに大使館のエルサレム移転のお話がありました。これがどういう中東にとって意味を持つのか、もう少し詳しくお話しいただけないかというのが一点です。
 それから、世界的には、国連事務総長やまたEU諸国も含めて、いわゆる入国拒否問題などに様々なコメントを出している、批判のコメントを出したわけですが、安倍総理は、これは内政問題だということで特段コメントをしないということになっております。
 ただ、これは先ほど言われましたように、テロの土壌を拡大するということもありますし、国連総会でも、特定のそういう宗教や国と結び付けないということはこれは総会でも確認をされてきたということでいいますと、やはり国際問題だと私は思うんですね。
 そういう点で、先ほどPLOの過去の話とかありましたけれども、今、日本がアメリカに対して、また国連の場などで、外交としてこの問題でどう発言をしていくのかということについて、是非御意見をいただきたいと思います。
#26
○参考人(酒井啓子君) ありがとうございました。
 まず、一点目のエルサレム移転についてどのような意味を持つのかということでございます。
   〔理事堀井巌君退席、委員長着席〕
 報告の中でも少し触れさせていただきましたけれども、エルサレムをイスラエルは今後首都にするというふうに言っているわけなんですけれども、御存じのように、エルサレム西半分はイスラエルが建国時に本土の中に入っていたわけですけれども、東エルサレムの方は、これは西岸地域の一部ということで、一九六七年の第三次中東戦争で占領し併合したという、基本的には国際法的にはイスラエルの占領下にあるとみなされたものなわけですね。一方的な形で併合いたしましたので、これに関しては、ジュネーブ条約でも出ておりますように、占領地に対して一方的な変更はあってはならないというふうな規定があるとおりに、これについては国連の決議等々でも併合に対する批判的な決議が出ているわけです。
 ですので、そうした東と西と併合地を含むエルサレムをまとめて国の首都にするということに対しては国際的には非常に批判が強いということで、イスラエル自身は首都として各大使館を招致したいというふうに言っているわけですけれども、アメリカも、ブッシュ政権の時代もそうした動きはございました。しかし、やはり国際法上の問題、そして国際世論に対し与える悪影響ということで実施してきていないわけです。それだけ中東イスラム圏の人々にとっての意味は大きいということはもちろんですけれども、国際法上、別に中東イスラムの国の人たちだけではなくて、明確な国際法違反行為ということになりますので、もし実行するということになると非常に大きな問題がある。実際問題、そういうことを行えばアメリカに対して実力行使も辞さないと言っているような武装勢力は多々ございますので、その影響は計り知れないということがあろうかと思います。
 二番目の、入国禁止令のことについてということでございますよね。
 入国禁止の問題につきましては、報告の中でも申し上げましたように、実際問題、アメリカの国内の政策として出されていることは確かなんですけれども、先ほど申し上げましたように、トランプ政権の最大の問題は、対外的なインパクトが非常に大きい外交政策として配慮しなければいけない問題を、国内政策であると言い切って単独で実施しているというところが問題でございますので、その外交政策に与える影響というのは、これはアメリカだけで処理する問題ではない。先ほどカナダの事例を挙げましたように、アメリカがそういう政策を取っても、欧米諸国あるいは国際社会全体がそのように中東イスラム圏に対して排外的な、排除するような政策を取っているわけではないんだということを強く示していく必要があろうかと思います。
 その意味では、ここはアメリカのそうした政策と日本は距離を取って、日本はまた別に、先ほど言いましたように、難民あるいはそれらの国々出身者の人材育成に努めるというような、むしろ積極的に政策を打ち出していくいい機会なのではないかというふうに私は考えております。
#27
○井上哲士君 ありがとうございます。
 次に、岡本参考人にお聞きいたしますけれども、米国がTPPを離脱表明したにもかかわらず日本国内では批准をして、今後二国間交渉に入ったときに、求められたときに一層の譲歩が求められるんじゃないかということを指摘、私どもしてきましたし、そういう声がありました。
 そういう中で、総理は今度訪米をするわけでありますけれども、あらかじめもう、いわゆる七十万人の雇用をアメリカにつくるとか、そういうのを持っていくということが今報道されています。話合いもする前から、いろんなトランプが発信することをおもんぱかって持っていくようなやり方に対してはいろんな声も上がっておるわけですけれども、こういうのを見ますと、今後一層日本が譲歩をどんどん受け入れていくんじゃないかという懸念の声がありますが、その点は岡本参考人、どのようにお考えでしょうか。
#28
○参考人(岡本行夫君) 私、安倍総理がどのような案をお持ちになるかは一切存じませんので、その点についてのコメントは差し控えさせていただきます。
 アメリカとの交渉で日本が損をするんではないか。現在、日本は、昨年の貿易統計でいけば中国に次いで、中国よりはずっと少ないですけれども、第二番目の黒字をアメリカに対して記録しているわけでございますね。ですから、日本がアメリカから一方的にやられるだろうというのは私は同意できません。七十万人の雇用も、私はその真偽のほどは分からないわけでございますけれども。
 TPPは、先ほども私ちょっと絶望的というきつい言葉を使ってしまいましたけれども、本当はアメリカの国内にもTPPをやりたいと思っているセクターは農業セクターとか大企業とかいろいろあるわけでございまして、今後の展開によってはまだ分からないわけでございますね。ですから、何事も交渉であります。先に何の譲歩もしないぞという覚悟でいくのも、これも私はいかがかと思う次第であります。
 以上です。
#29
○井上哲士君 ありがとうございました。
 終わります。ありがとうございました。
#30
○浅田均君 日本維新の会、浅田均です。
 四人の参考人の先生方、今日は貴重なお話を伺わせていただきまして本当にありがとうございます。
 私の方からは、主として岡本参考人にお話をお伺いしたいと思っております。
 先ほどお話しの中で、中国の拡張政策というかについてのお話がありました。このお書きになったものを読ませていただいても、一九八〇年代にトウ小平が劉華清という有名な海軍提督に命じて作らせた海軍戦略があると。で、それに基づいて二〇三〇年ぐらいまでは行っちまうんだなという御感想をお書きになっておられます。
 この中国の拡張政策に関しては昔から御懸念をお示しでありまして、太平洋進出ですか、今度、ロシアからですかウクライナからですか、遼寧という航空母艦を買って次々列島線を突破して太平洋進出を試みていると。これに対しまして、日本の防衛体制といいますか日本の体制は、潜水艦が少ない、それからロシアに向けて戦車が集中的に北海道に配置されていると、そういうお話を以前伺ったことがあります。
 それで、先生、先ほど抑止力というのは周辺国の心証の問題であるというふうに御発言されておるんですが、こういう周辺国の心証の問題を考えるときに、今の日本の防衛体制、潜水艦が少ないとか戦車が北海道に集中的に配備されている、こういう体制は今なお有効であるというふうにお考えなのかどうか、まずお考えをお聞かせいただきたいと思います。
#31
○参考人(岡本行夫君) 私は、日本の防衛予算は絶対的に少ないと思います。特に、二〇〇〇年からの中国の急速な防衛費の伸びに対して、日本は最近は少しずつ、一%以下でありますけれども、防衛予算を伸ばす方向には来ていますけれども、格差は開くばかりであります。
 特に、浅田先生の御指摘の潜水艦、中国は二〇三〇年頃には、私は、西太平洋のかなりの部分を軍事的に制圧するに至っている、ヘゲモニーを握る能力を持つに至っていると思います。それに対して、韓国もベトナムもオーストラリアも二〇三〇年ぐらいの中国の海洋進出を念頭に潜水艦をかなり増強しているわけであります。
 日本は、基本的には十六隻体制で参りました。そして、数は増えました、二十隻ですか。ただ、それは鉛筆で潜水艦の船齢、耐用年数を延ばしただけでありまして、予算が増えているわけではない。私は、やっぱり日米安保に余りにも安住して、そして、周辺諸国が、日本よりもずっと経済規模の小さい国がやっているような、そういうこともやっていないという気がしてなりません。
 おっしゃるとおり、アメリカが日本を、安保条約五条を必ず守るんだという意思を示し続けることが抑止力で一番大きいものではありますけれども、ただ、日本自身が中国の脅威に対して余り長期的な戦略を持たない、脅威感も防衛力の整備上は余り反映させないで来ているということに対しては懸念を覚えるものであります。
#32
○浅田均君 次にお伺いしようと思っていた予算の話が出てきましたので、防衛予算もODAも減り続けていると昔おっしゃっていたのを覚えています。
 ただ、防衛費に関しましては、百二位という数字ではありますけれども、ある時点からまた増加に転じ始めているという事実があります。GDPの二%ぐらい、EUの国々も大体GDPの二%ぐらいを防衛予算に使っているんだから、それぐらいまでは日本も持つべきではないかという意見もあるんですが、こういう点に関しまして岡本先生はどういうふうにお考えでしょうか。
#33
○参考人(岡本行夫君) 私は、現実的な問題として、日本がGDPの二%を防衛費に振り向けるのはとてもそれは不可能だと思います。更に五兆円を積まなければいけないわけであります。日本の、しかし、今の〇・九八%というのはやはり目立って低い。
 大事なのは方向性であります。GDPの一%に制限するというのは、表現を変えれば、日本の防衛力というのは景気の指標とリンクするんだということですよね。日本の経済がどんどん伸びれば防衛費はどんどん伸ばしてもいいと。これは、周辺の脅威分析とは無関係に決まってくるという、少し私はおかしな議論だと思っております。
 ですから、今申し上げたように、大事なのは、日本もこれからきちっと自分で防衛力を整備していくという方向性、これを示すことだと思います。
#34
○浅田均君 最後に、非常に重要な御発言があって、漂流の時代、グローバライゼーションに対する揺り戻し、漂流の時代を迎えているんではないかという御懸念をお示しになりました。
 グローバリゼーションに対する揺り戻しというのは私も同感できるところはあるんですが、その中に、先生の御発言の中にポリティカルコレクトネスの行き過ぎに対する揺り戻しというものも含まれているのかなというふうな感じも持つんですが、先ほど酒井先生の方からお話ありましたように、七か国からの入国を禁止した、そういうのは行き過ぎたポリティカルコレクトネスに対する揺り戻しの一例かなというふうな感想を持って酒井先生のお話を聞かせていただいたんですけれども、こういう揺り戻し、ある時点になって止まらないことには困るわけですけれども、どの辺りで止まるというふうに予想されているのか、あるいは止めるために日本は何かできることがあるとお考えになっているのか、その点についてお考えをお聞かせいただけたら有り難いです。
#35
○参考人(岡本行夫君) 先ほども申しましたように、揺り戻しの主たる原因というのは、絶望的なまでの富める者と貧しき者の間の所得の格差であります。これは世界的なものであります。
 これに対して日本が何かできるか、それはなかなか難しい。日本は、福祉政策も含めて国内の不平等感をできるだけ緩和する、そしてそれを世界にモデルとして示していくということしかないんだろうと思います。
 入国禁止については、先ほど酒井参考人がおっしゃられたように、その相手国の選択は非常に恣意的なものがアメリカ側にあると思います。井上先生が先ほど、じゃ、それに対して日本はなぜ声を上げないんだということをおっしゃいましたが、ただ、それを言うためには、日本がもっとまず移民も難民も引き受けるようにしてから、今のように二桁も下の方、各国が何千人、何万人単位で受け入れているときに日本はほとんどゼロという状況を是正してからでないと、日本の発言というのは世界に届かないと思っている次第でございます。
#36
○浅田均君 ありがとうございます。終わります。
#37
○アントニオ猪木君 元気ですか。無所属クラブ、アントニオ猪木です。
 皆さんに一点ずつお聞きしたいと思いますが、まず、岡本参考人にはいつもあるところで会いまして、私が酒を飲んでいるところで大変難しそうな話をしていますけど、一点は、今回のトランプ大統領の誕生ということで想定外ということを言われていましたが、国会でも質問したら安倍総理が、猪木さんがスポーツ平和党で当選したのも想定外でしたと、何かごまかされたような感じで。
 一つは、ロビイストというか、やっぱり余りいい言葉じゃないかもしれませんが、その辺の、要するに表と裏の情報というんでしょうか、また後でロシア関係もお聞きしますが、その辺について、もうちょっと日本の国自体しっかりその辺を力入れていくべきだと思うんですが、御意見をお願いします。
#38
○参考人(岡本行夫君) トランプ大統領誕生の理由ということであれば、私が申し上げることは一つだけであります。
 通常は、ラストベルト地帯のブルーカラーとか、それからアメリカのハートランドと呼ばれる中西部の全く国際情勢とは関係ないところに住む白人の男性たちが当選の原動力になったというふうに言われておりますけれども、もう一つ注目すべきは女性票の多さであります。人種、性別でアメリカの投票者を分けますと、白人女性というブロックが一番大きゅうございます。その白人女性のうちの五三%がトランプに投票したということは、彼女たちは何も排外主義とかヨーロッパの一部に吹き荒れているような国粋主義でトランプを支持したんではなくて、やっぱり自分たちの生活条件の劣化に対して小さな安定した幸せを取り戻してほしいという極めて理解できる動機から入れた。となると、私はやっぱり、トランプ大統領自身は今いろいろと想定外の行動、言動をしていますけれども、それを選出したアメリカの市民社会自体の健全性というのはまだ続いているんではないかと思います。
 以上でございます。
#39
○アントニオ猪木君 次に、酒井参考人にお聞きしたいと思いますが、イスラムの世界ということで、ちょっと資料も読ませてもらいました。
 本当に一九九〇年の私もイラクとの関わり合い、そして今イスラム関係という、パキスタンとか、ちょっと宗教は違いますが、インドにもイスラム教がいますけど、その辺の国際交流、スポーツ交流ということで、今月ですかね、今予定しているのが、ワガというボーダーラインでイベントを仕掛けるんですが、一つはISに向けて何らかのメッセージを、国連制裁、いろんなところが制裁は掛けるけど、彼らに対話を呼びかけたことが一回もない。ブレア首相も言っているとおり、あれがなければISは生まれなかったと、この辺が一番大きな今後の問題なんですが、お考えをお聞かせください。
#40
○参考人(酒井啓子君) ありがとうございました。
 ISに対してメッセージを呼びかけたことがないという御指摘ですけれども、ISそのものがやはり、何というんでしょうか、統一的な団体ではなくて、指導部があれば、それを支持する者もあり、さらにそれに合流する者もおり、様々な母体から成り立っている存在だというふうに私は考えております。ISに対して何か対話あるいは和解を求めるメッセージを発出するというのは、そういう意味では余り効果はないのではないかと。例えば、そのうちの幹部の一人が受け取ったとしても、それがどれだけ全体の戦略につながるかというのは難しい。
 それよりも、私が一番懸念いたしますのは、やはりISがこれだけ力を付けたことには三つ理由があると思います。一つは、イラク戦争でやはり理不尽に自分たちが権利を奪われたと考える人々がたくさんいて、それが新しいイラクの政権の中で参与できずに放置されたという不公平感が一つですね。同様の不公平感がやはりシリアにもあって、シリア内戦の中で、やはり政権側あるいは反政府側の中で、内戦のごたごたの中で行き着く場所がないということでISに吸収されていったような人々、これもある意味では紛争の被害者ということなわけです。三つ目の勢力、これがフランスにしても、ヨーロッパ全体でやはり移民の二世、三世と言われた人々がイスラム教徒であるということだけの理由で差別を被ってきたという、これもまた不公平感というものを非常に強く持っていると。
 そういう意味では、ISという存在というよりも、ISのようなものをつくり上げる土台に対して、そういったものを解消していくためにはどうするかということを考えることが必要だろうと。
 そういう意味でのメッセージという意味では、まさに世界に蔓延している不公平感を、少なくとも日本はそれを認めない。例えば、先ほど御指摘のあったような、ロシアが一方的に軍港を租借するというようなことに対しても、ある意味でIS対策としてロシアの力を借りざるを得ないというリアルポリティクスの中で、かなりの蛮行が繰り返されているということに対して国際社会が黙っているというのは、これはまさに逆にISに合流しようという人々を再生産する行為にほかならないわけです。
 そういう意味では、日本政府としては、いろんな意味で、そういったリアルポリティクスに邁進して、アメリカにしてもロシアにしても、不公平をかこっている若者に対して無頓着であるという状況に対して、日本は少なくともそれに対しては考慮しているよと、世界は公平であるべきであると。きれい事に聞こえるかもしれないけれども、日本の培ってきたスポーツの平和因子であるとか、スポーツ的な公正感といったものをむしろどんどん積極的に発信していくことが日本の外交の要になっていくべきではないだろうかと私は考えております。
#41
○アントニオ猪木君 次に、木村先生にお聞きしたいと思います。
 ロシア外交というのは強い外交でなくちゃ駄目だということで、八九年にロシアの選手をスカウトしまして東京ドームで興行をやったことがあるんですが、確かに私も契約書を、一か月前になって全然違っちゃったもので、ひっちゃぶいて、全部もうやめたといって帰ってきたことがありますが、それ以来向こうの要人が出てきて状況が変わったということがありまして、そういうようなやっぱり外交の在り方という、これは本当に学問ではない、体験でしかないのかなと思いますが、さっきお話聞いておりまして、佐藤優君も昔一緒に通訳もしてくれて、ウオツカを飲んで、みんな向こうの要人をぶっ飛ばしたという経験がありますけど、それについて、今後のロシア外交について、また良き指導をしていただきたいと思いますが、一言。
#42
○参考人(木村汎君) いや、先生のおっしゃるとおりでして、ある意味で日本人とロシア人とはこの地球上で一番正反対の国民なんですよ。だから、国民性を理解することから交渉を始めないとね。
 例えば、一例を挙げますと、日本人は最も気が短くて、もうこれ七十年間領土が返ってこないといって、もうこれ以上待てない、強制的に引き揚げさせられた人々はもう八十一・何歳になっている、もう少なくなってきている、もう時間がないといって、しかし、ロシアの人はもう反対でして、時間の取り方が物すごい長く取る。
 それから、二番目には、先生が御経験になったように、昼間、官庁に訪ねていきますと非常に冷たい官僚的な態度を取るんですが、夜、ウオトカを一杯飲んでやりますと、同じ人間かと思うぐらい砕けて、向こうから妥協してくれたりするような人懐っこさも持っている。
 それと同時に、最後の、飛行機のタラップに足を踏みかけたときに彼らは決断するというのがソビエト時代から上の人に命令されていまして、初めから妥協すると、それの上にまた更に妥協と言われるんじゃないかと思っているから、領土問題に関しても一歩も譲らないように見えるのは、最後には少しは譲ってくれると僕は見ているんですよ。
 しかし、日本はそのまさに正反対の交渉術をやっていまして、最初に、極端に言えば樺太までと言ったらいいと言う人、共産党の方もおっしゃるぐらい、それか十八の千島列島全体と。それをもう初めからぎりぎりの正札を出しているから、向こうはその正札の四というのを更に半分にしろと。そして、その半分にしかけたら、それをもう更に半分にしろと。こういうふうに、交渉術にかけてはちょっともう少し日本人は、信頼とか誠意という善意、人間は善意で行動するんだという性善説を取って、少し性悪説も取らないと、トランプさんもこの頃言っているのはディール、ディールですから、その点でもう少し国際政治的に日本人は大人にならなきゃ。その意味で、おべんちゃらするようですけど、この会合は非常に有意義で、僕も勉強させていただきます。
#43
○アントニオ猪木君 RCEP、渡邊先生にお聞きしようと思ったら時間がなくなっちゃったので、済みません、また次回、機会をいただければと。
 ありがとうございました。
#44
○伊波洋一君 沖縄の風の伊波洋一です。私は沖縄選出の議員でございます。
 今日は、本当に専門的なお話をいろいろ聞かせていただきまして、ありがとうございます。
 実は昨日も国際経済・外交に関する調査会がありまして、多くの参考人の方からお話を伺ったんですけれども、先ほど来ありますように、この十四、五年間、大きくアメリカや欧米が中心になってきたと思いますが、この間にやはり今顕著に現れているのは新興国の台頭であり、またアジアの台頭であり、その中での欧米の地盤沈下、そういうアジアの台頭の中でも日本の地盤沈下が激しいということが指摘をされました。
 向こう十五年、二〇三〇年までにどうなっていくかということも元財務官の榊原氏の方からもありましたけれども、既にもう購買力平価では二〇一四年に中国が世界第一の経済国になり、二〇三〇年にはアメリカ、インド、日本が二、三、四位、中国がトップという状況であると、こういうふうな指摘があります。二〇五〇年になりますと、中国、インド、アメリカに続いて、インドネシア、ブラジル、メキシコ、日本と続くと。
 こういう流れを考えますと、沖縄、日本の安全保障環境をやはりもうちょっと中長期的に考えなきゃいけないんじゃないかと。今、日本では、例えば普天間問題にしても、三十年掛けても解決していない、二十年もそのような状況で来ている。これから十五年というのは随分違う世界になっていくということを考えますと、その中で特に私は、今日はあんまり議論ないですけれども、お隣の中国との関係、とても大事ではないかと、このように思います。
 RCEPの問題も指摘されましたけれども、アメリカなき状況で、RCEPは基本的に中国のイニシアチブで行われるのではないかと。そういう意味で、ドゥテルテ・フィリピン大統領が、要するに現状凍結といった形で南シナ問題を、それを中国がある程度のめば、この南シナ海を中心とするエリアのASEAN諸国にとってはほっと一息という形で大きく前進するのではないかと、こういう指摘もありました。
 そういう中で、今沖縄の尖閣列島という問題が大きくとげになっていますけれども、岡本参考人に聞きますけれども、尖閣問題以外に中国と日本の間に問題はあるんでしょうか。
#45
○参考人(岡本行夫君) それはたくさんあるわけでございますね。もう先生も御承知と思います。それは東シナ海のガス田の開発も、それから一番根っこには歴史問題があるわけであります。日本が戦争中に中国に遺棄した化学兵器の問題もまだ片付いておりませんし、案件は非常に多いと思います。その中でも一番重要なのが尖閣問題と、それから歴史問題だと思います。
#46
○伊波洋一君 今、日本の輸出、輸入合わせた最大は中国であると。また二万を超えるような企業が中国に進出をして、そういう意味では本当に日中間の貿易的な関係、しっかりしているわけですね。そういう中で、今南シナ海でそのドゥテルテ大統領のような現状凍結という提起を、例えば日本が中国に対して尖閣問題の現状凍結というものを提起をしながら、やはりこれから、今アジアの流れですから、その中で日本の役割をやはり持っていくことこそが重要ではないかなと思いました。
 酒井参考人からもありましたように、もはや今外交不在のトランプ外交がこの四年間どういうことを私たちの周辺で起こすか分からない、台湾問題にしても含めて。いろんなことが、予測不能なことが起こっていく中で、やはりこれから大事なのは、今年は日中国交正常化四十五周年、来年は平和友好条約締結四十周年なんですけれども、今こそやはり日本が中国と向き合っていくべきではないかと思いますけれども、それに対して岡本参考人、先ほどの御発言の中では、西太平洋をかなり武力で支配するようなイメージなんですけれども、決して中国はそういう状況ではないのじゃないかと。つまり、国の中に多くの問題を抱えておりますので、そういうところで日本と中国との平和的な友好関係を築くことこそが今求められているのではないかと思いますが、どうでしょうか。
#47
○参考人(岡本行夫君) 伊波先生の御指摘のとおり、中国はいろいろな内政上の問題がございます。しかし、その対外的な進出の姿勢というのは変わっていないわけであります。南シナ海にしても既に七つの島に軍事施設を建設し、そして今一番問題になっているのはスカボロー環礁でありますけれども、ここに大きな滑走路を土砂を持ち込んで建設する可能性すら指摘されるわけであります。それを阻止しようとすれば一挙に緊張が高まる、そういう状況であります。
 尖閣の現状維持というのは一見甘い言葉に聞こえるんでございますけれども、日本が二〇〇九年以前の、つまり中国の公船が、今のように接続海域へ軍艦が毎日のように来、領海にも公船が入るというような状況が出る以前の状況を現状と認識して、そこで凍結しようということならば私は日本は乗れると思うんですけれども、中国が言っているのは、要するに、今中国の公船が自由に日本の領海や接続海域に入っている、そのことを現状と捉えてそこで凍結しようということは、取りも直さず尖閣を共同管理しようということでありますから、これはやはり日本はとても乗れないと思います。
 ただ、全般的な日中関係の改善、これが非常に重要であることはもちろん先生の御指摘のとおりであります。
#48
○伊波洋一君 RCEPが要するに中国のイニシアチブで展開されるとなりますと、やはりここの安全保障環境も中国を含めた形で実現していくものと思われます。そういうことを含めて、渡邊参考人にお伺いしますけれども、TPPではなく、アメリカ抜きのRCEPの経済圏の確立というものがどういうことをもたらすだろうかということをお伺いしたいと思います。
#49
○参考人(渡邊頼純君) どうも御質問ありがとうございます。
 RCEPは、その元をたどりますと、これ日本提案でございます。二〇〇四年に東アジアのFTAをやるときに、イーストアジアのFTAというのを中国が二〇〇四年に提案いたしましたのはASEANプラス3、ASEANプラス日中韓でございます。その時点で日本は、ASEANプラス3であれば中国の存在が余りにも大き過ぎるというふうに考えまして、ASEANプラス3、排除することはしませんが、しかし、そこに更にインドでありますとか豪州、ニュージーランドという三つを加えてASEANプラス6を提案したのは日本なんですね。ですから、実はASEANプラス6イコールRCEPなんですが、そのRCEPを中国が非常に強いイニシアチブで引っ張っているというのは一種のイメージでありまして、実際には必ずしも中国が積極的にRCEPをリードしてきているということでは必ずしもないという事実もやはり押さえなければならないと思っております。
 TPPとRCEPの関係なんですが、TPPが順調に進んでいきまして、めでたくTPPが発効しておりますと、RCEPもそれを追いかける形で前進をしてきたものと思われます。ただ、今TPPが残念ながらフェードアウエー、立ち消えになりつつありますので、そうなったときに、果たしてRCEP、とりわけその中にいる中国が、国営企業の問題も含めて構造改革をしていくインセンティブが中国国内にあるかどうかというのは大きなこれ疑問点でございます。TPPがあれば、そのTPPを見ながら、ある意味でTPPに触発されて中国の国内改革も進んだかもしれません。そして、そのためにRCEPを使うという、言わば外圧としてのRCEPをうまく使って中国の国内改革をしていくという、そういうシナリオをサポートしている中国の識者もいたわけですね。
 ただ、今TPPがそういうような意味で立ち消えになったとすれば、そういう中国の中で、言わば抵抗勢力といいましょうか守旧派といいましょうか、そういうふうに今の体制でいいんだと思っている人たちがより声を大にすることになって、中国の中で改革を目指していた人々の力が弱くなってしまう可能性があります。そうなったときに果たして中国が本当にRCEPをリードしてくれるのかどうか、これは大きな疑問でございます。
 ですから、まさに日本はTPPの合意を念頭に置きつつRCEPをリードしていく、これはまさに日本に課せられた任務ではないかと思っております。
#50
○伊波洋一君 ありがとうございます。
 木村先生、酒井先生には質問できないんですけれども、時間がなくて、本当は中国と日本人はうまくやっていけるだろうかという質問をしたかったんですけれども、どうも、また次の機会にさせてください。
 ありがとうございました。
#51
○委員長(宇都隆史君) 参考人に対する質疑はこの程度にとどめます。
 この際、一言御礼を申し上げます。
 参考人の皆様方には、長時間にわたり大変有益な御意見をお述べいただき、誠にありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。(拍手)
 本日はこれにて散会いたします。
   午後零時九分散会
ソース: 国立国会図書館
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