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2017/06/09 第193回国会 参議院 参議院会議録情報 第193回国会 沖縄及び北方問題に関する特別委員会 第5号
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2017/06/09 第193回国会 参議院

参議院会議録情報 第193回国会 沖縄及び北方問題に関する特別委員会 第5号

#1
第193回国会 沖縄及び北方問題に関する特別委員会 第5号
平成二十九年六月九日(金曜日)
   午後一時開会
    ─────────────
   委員の異動
 六月二日
    辞任         補欠選任
     藤田 幸久君     徳永 エリ君
    ─────────────
  出席者は左のとおり。
    委員長         藤井 基之君
    理 事
                猪口 邦子君
                山田  宏君
                石橋 通宏君
                竹谷とし子君
    委 員
                石田 昌宏君
                今井絵理子君
                島田 三郎君
                中川 雅治君
                長谷川 岳君
                橋本 聖子君
                松川 るい君
                山本 一太君
                徳永 エリ君
                鉢呂 吉雄君
                高瀬 弘美君
                紙  智子君
                儀間 光男君
              アントニオ猪木君
                糸数 慶子君
   事務局側
       第一特別調査室
       長        松井 一彦君
   参考人
       北方領土隣接地
       域振興対策根室
       管内市町連絡協
       議会会長
       根室市長     長谷川俊輔君
       公益社団法人千
       島歯舞諸島居住
       者連盟理事長   脇 紀美夫君
       法政大学法学部
       教授       下斗米伸夫君
       新潟県立大学政
       策研究センター
       教授       袴田 茂樹君
    ─────────────
  本日の会議に付した案件
○沖縄及び北方問題に関しての対策樹立に関する
 調査
 (北方領土問題に関する件)
    ─────────────
#2
○委員長(藤井基之君) ただいまから沖縄及び北方問題に関する特別委員会を開会いたします。
 委員の異動について御報告いたします。
 昨日までに、藤田幸久君が委員を辞任され、その補欠として徳永エリ君が選任されました。
    ─────────────
#3
○委員長(藤井基之君) 沖縄及び北方問題に関しての対策樹立に関する調査のうち、北方領土問題に関する件を議題といたします。
 本日は、参考人として北方領土隣接地域振興対策根室管内市町連絡協議会会長・根室市長長谷川俊輔君、公益社団法人千島歯舞諸島居住者連盟理事長脇紀美夫君、法政大学法学部教授下斗米伸夫君及び新潟県立大学政策研究センター教授袴田茂樹君に御出席いただいております。
 この際、参考人の方々に本委員会を代表して一言御挨拶を申し上げます。
 本日は、御多用中のところ本委員会に御出席をいただき、誠にありがとうございます。
 参考人の皆様からの忌憚のない御意見を賜り、今後の本委員会の参考にいたしたいと存じますので、よろしくお願い申し上げます。
 本日の議事の進め方でございますが、まず、参考人の方々からそれぞれ十分以内で御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑にお答えいただきたいと存じます。
 また、御発言の際は、挙手していただき、その都度、委員長の許可を得ることになっておりますので、御承知おきください。
 なお、参考人及び質疑者の発言は着席のままで結構でございます。
 それでは、まず長谷川参考人からお願いいたします。長谷川参考人。
#4
○参考人(長谷川俊輔君) ただいま御紹介をいただきました、根室管内一市四町で構成する北方領土隣接地域振興対策根室管内市町連絡協議会の会長を務めております、根室市長の長谷川でございます。
 本日は、参議院沖縄及び北方問題に関する特別委員会の御高配を賜り、意見陳述の機会をいただきましたことに対しまして、心からお礼を申し上げます。また、日頃より北方領土返還運動原点の地である北方領土隣接地域に絶大なる御理解と御支援を賜っておりますことに対し、そしてまた、本年一月十二日には、北方領土問題に関する実情調査といたしまして六名の委員の皆様に根室管内にお越しをいただき、現地視察、さらには関係者との懇談等、精力的に活動いただきましたことに改めて感謝とお礼を申し上げます。
 それでは、時間の関係もございますので、早速北方領土問題に関する現地の実情等につきまして意見を述べさせていただきます。
 根室市を始めとする根室管内一市四町、いわゆる北方領土隣接地域でありますが、戦前から漁業、水産業を中心に北方領土と一体となった社会経済圏、生活圏を形成し、互いに支え合う親子の関係として緊密なつながりを持って発展を続けてきた地域であり、特に根室市は北方領土の物流及び人的交流の拠点、玄関口としてその役割を担っておりました。
 しかし、昭和二十年八月の終戦直後、北方領土が旧ソ連によって一方的に占領され、以来、隣接地域の北方領土との間には中間ラインと呼ばれる境界が設定され、このつながりは強制的に断絶されたことに伴い、元島民のふるさとである領土はもちろん、私たちの生活の基盤とも言える海峡、海域、海までもが奪われたところであります。
 御承知のとおり、現在の隣接地域と北方領土の間には国境は存在しておりませんが、北方領土がロシアに実効支配されているという現実から、中間ラインと呼ばれる厚い壁が横たわっている、まさに国際紛争地域であります。戦後七十三年を迎えようとしている今もなお、この目に見えない厚い壁によって隣接地域の漁業水域は大幅に狭められており、狭隘な漁場における水産資源は枯渇し、さらに拿捕、銃撃事件がいつ発生してもおかしくない緊張した状況に置かれていること等から、基幹産業である漁業、水産業は衰退の一途をたどり、それに起因する関係産業の縮減、それが人口減少につながるといった急激な悪循環が今もなお続いております。
 さらに、一昨年の十二月にはロシア二百海里内水域におけるサケ・マス流し網漁が禁止されたことによって関連産業は更なる打撃を受けている状況にあるなど、隣接地域は様々な日ロ関係が直接的に影響を受けている地域であり、全国的にも類を見ない、地元の力だけでは太刀打ちできない複雑な問題を抱えている地域でもあります。
 これらの課題を克服し、隣接地域が将来にわたって持続的な発展を遂げていくためには、北方領土問題解決しかないと考えるものであります。
 このような状況の中、昨年十二月、プーチン大統領訪日の際に行われた日ロ首脳会談におきまして、両首脳が平和条約問題を解決する真摯な決意を表明し、さらに、平和条約の締結に向けた重要な一歩として北方四島における共同経済活動の実施について合意されたことは、北方領土問題解決に向けた重要な第一歩として大きな期待を抱いているところであります。
 隣接地域といたしましては、この合意に対し、これまでの歴史的な経過や北方四島との交流実績、さらには地理的優位性を生かした北方領土との玄関口、交流拠点として隣接地域が中心的な役割を担っていくことが重要であり、また責務であると捉え、本年三月、隣接地域の総意として北方四島における共同経済活動の実現に向けた要望書を取りまとめ、政府等に提出させていただくとともに、委員皆さんへも御配付をさせていただいたところであります。
 現在、日ロ政府間においては、この北方四島における共同経済活動の実現に向けた具体的な協議が進められているものと承知いたしておりますが、是非とも隣接地域の思いを十分に参酌いただき、私たち隣接地域が北方四島における共同経済活動に積極的に参加できるよう、委員皆様におかれまして特段の御理解と御支援についてお願いを申し上げるところであります。
 一方、北方領土問題は、戦後七十三年を迎える今もなお、いまだに解決されていない状況が続いております。冒頭にも御説明させていただきましたが、隣接地域は北方領土問題の長期化に起因し大きな影響を被り続けている地域であります。
 国におきましては、このような隣接地域の窮状に御理解をいただき、北方領土問題等の解決の促進のための特別措置に関する法律、いわゆる北方特別措置法に基づき隣接地域の振興対策を講じていただいているところでありますが、いまだに十分な効果は得られておりません。特に北方特別措置法第十条に規定される北方基金につきましては、一度も当初見込みに達することはなく、現在においては全く機能を果たしていないと言わざるを得ない状況にあると考えております。
 北方領土問題が今もなお未解決であることに起因して隣接地域が置かれている特殊な事情に鑑み、隣接地域の振興及び住民の生活の安定に資するという北方特別措置法の目的を踏まえた効果的かつ具体的な地域振興対策の実現について特段の御理解を賜りますようお願いを申し上げるところであります。
 言うまでもなく、北方領土問題は外交問題であり、その解決には日ロ両国の政治対話によって解決されるものでありますが、その一方で、北方領土問題の長期化によって望ましい地域社会の発展が阻害され続けている隣接地域の様々な課題の解決、そしてまた元島民に対する援護措置につきましては、積極的な内政措置によって牽引されるべきと考えます。
 委員皆様におかれましては、北方領土問題の長期化によって隣接地域が被っている地域疲弊の現状、さらに元島民が置かれている現状について更なる御理解をいただき、北方特別措置法の立法趣旨に基づいた施策の展開につきまして格別なる御理解と御支援を賜りますようお願いを申し上げるところであります。
 また、北方領土問題の最終的な解決に向け、今後ともあらゆるレベルの政治対話を加速していただき、一日も早い平和条約締結に向け、委員皆様のお力添えを賜りますよう改めてお願いを申し上げます。
 隣接地域は、本来、北方四島と一体を成す地域であり、特に根室市においては、戦前、北方四島との間に八つの航路が開かれ、物流や人的交流の拠点として発展してきた町であります。元島民を始めとする私たち隣接地域の住民は、北方領土問題の解決なくして戦後はなく、経済的にも社会的にも北方領土問題が解決して初めて正常になる、まさに北方領土問題の今後によって町の将来の姿が大きく左右されるという宿命を背負っております。
 私たちは、北方領土問題の早期解決を願いながら、政府の外交交渉を後押しする立場で、いかなる困難に遭おうとも、北方領土返還要求運動原点の地の責務として、今後も全国の先頭に立って返還要求運動に邁進してまいる所存でありますので、委員皆様におかれましては、北方領土問題の解決、さらには、そのための第一歩としての取決めである北方四島における共同経済活動の実現、さらには、隣接地域の振興、発展につきましても絶大なる御支援を賜りますようお願いを申し上げますとともに、政府におかれましては、これまで以上に具体的かつ積極的な政治対話を推進していただきますよう強く要望いたしまして、参考人としての私の意見陳述を終わらせていただきます。
 ありがとうございました。
#5
○委員長(藤井基之君) ありがとうございました。
 次に、脇参考人にお願いいたします。脇参考人。
#6
○参考人(脇紀美夫君) 御紹介をいただきました公益社団法人千島歯舞諸島居住者連盟理事長の脇でございます。個人的には、私自身は国後島の出身であります。
 本日は、藤井委員長を始め委員皆様の御高配によりまして、北方領土の元居住者を代表して意見を申し上げる機会をいただき、厚く感謝を申し上げます。また、常日頃より、私ども元島民や後継者に対する支援措置を始め、当連盟の活動に対し御理解と御支援を賜っていることにつきましても感謝を申し上げる次第でございます。
 本日は、当連盟の設立の経緯や活動の内容については委員皆様既に御承知のことと存じますので詳しくは申し上げませんが、当連盟の主な課題に関して意見や要望などを申し上げてまいりますので、よろしくお願いいたします。
 当連盟は、昭和三十三年、社団法人として設立しております。当時幾つか存在していた北方領土返還要求を目的とする元島民の団体が統合する形で発足し、これまで六十年余りが経過しております。
 当連盟では、北方領土返還要求運動に関する取組を始め、領土問題に関する理解を深めてもらえるよう、各種の啓発事業や、元島民とその後継者による語り部の活動を進めています。また、元島民への援護対策の一環として、財産権を行使できなかったことや土地など残置財産に関する問題などについて検討するほか、元島民やその家族がふるさとの島を訪問する自由訪問や墓参に関する活動を進めています。このほか、今後の活動を担う二世など、後継者のリーダー育成や、活動しやすい環境づくりにも取り組んでおります。
 それでは、千島連盟の主な意見、要望について順次申し上げます。
 お手元には、当連盟の組織と事業というタイトルの冊子のほか、宣言、決議、要望書を配付させていただいております。このうち、宣言と決議は、先月、五月二十九日に開催いたしました本年度の当連盟の総会において決定、採択されたものであり、宣言は領土問題や返還要求運動に関するものであります。また、決議は、領土問題に関することを含め、外務省や内閣府など関係する省庁や機関への要望、要請に関する事項を掲げており、要望書には、これらの要望項目に関して、その背景や具体的な要望内容を記載しているところであります。
 まず、領土問題に関してですが、宣言を御覧ください。
 当連盟では、これまで一貫して北方四島の早期一括返還をスローガンに掲げ、活動を進めております。当時一万七千人余りであった元島民は、既に多くの方が亡くなり、この三月には六千百人余りとなり、その平均年齢は八十二歳を超えております。長い年月が経過しましたが、領土問題の解決、四島の返還に至る道筋はいまだに明確になっておりません。
 昨年十二月、ロシアの大統領が来日して行われた首脳会談には、私どもとしては何らかの具体的な進展があるのではないかという期待も寄せていたところでありますが、領土問題の解決に向けた具体的な道筋、成果といったものが示されず、大変残念な結果となりました。
 政府においては、これまでの発想にとらわれない新しいアプローチという考え方の下、ロシアとの交渉を進め、四島の帰属の問題を解決し、平和条約の締結を目指していくこととしております。安倍総理は、平和条約の締結や領土問題の解決に関してこれまで幾度となく強い意欲と決意を表明されていますので、早期に四島返還の具体的な道筋が明らかになるよう期待するとともに、私どもとしても、外交交渉の後押しとなるよう、引き続き返還運動などに取り組んでいくことが重要と考えております。
 政府の方針である新しいアプローチの一環として、今後、北方四島において共同経済活動が進められることになりますが、この活動はあくまでも領土返還に向けた環境づくりとして行われるものでなければならないものと考えております。いつの間にか経済活動そのものが目的となってしまい、領土問題が置き去りにされることがあってはならないと考えております。また、日ロ両国の企業などによる合弁事業など、具体的なプロジェクトが進められる場合には、我々元島民の土地などの権利が侵害されることがないよう、必要な措置等を求めていくことが必要と考えております。
 次に、墓参や自由訪問事業に関してであります。
 昨年十二月の首脳会談後の共同記者会見では、安倍総理は、自由に墓参りをし、かつてのふるさとを訪問したいという元島民の願いをかなえるための検討を進めることを合意した旨の発言がありました。これに加えて、ロシアのプーチン大統領からも、これまで閉じられていた地域への最大限自由なアクセスを保障するという、私どもにとって大変喜ばしい発言がありました。こうした両首脳の発言やこれまでの事業の結果などを踏まえ、墓参や自由訪問事業に関して幅広く要望してまいりたいと考えております。
 要望書の一ページから二ページ目、北方領土墓参・自由訪問事業等の充実と円滑な実施を御覧願います。
 (1)の墓参の関係では、これまで立入りが制限されている墓地を含め、希望する地域での実施や墓地の現地調査、荒れた墓地の修復、保全、環境整備などが重要なことと考えております。
 次に、(2)の自由訪問の関係では、元島民の子の配偶者や孫などが訪問の対象者として参加できるよう要望しております。
 また、(3)の墓参と自由訪問に共通する事項についてでありますが、今月十八日には、政府が実施する形で、飛行機を利用して国後島と択捉島での墓参を急遽実施していただく予定であり、感謝申し上げます。今後とも、可能な限り自由訪問や墓参での飛行機の利用が可能となるよう御配慮いただきたいと考えております。また、国後島と択捉島であっても空港から遠い地域や、色丹島や歯舞群島のように空港がない地域では飛行機が使えませんので、ヘリコプターの利用といったことも検討いただくようお願い申し上げます。
 このほか、先ほども墓参に関して述べたことと重複しますが、墓地や元居住地など希望する地域では、制限を受けることなく立ち入ることができ、自由な行動を可能としていただきたいと思います。
 手続の改善に関しては、八月末に実施予定の勇留島と志発島の墓参の際には、国後島の古釜布以外での場所に入域、出域の手続を行うポイントが設けられる見込みとなっていますが、これまでのところ、自由訪問では同様の措置が見込まれておらず、残念な状況にあります。
 また、何よりも残念なことは、今年度の第一回目の自由訪問として五月十五日から四日間の日程で国後島を訪れた際の対応についてであります。訪問予定の三地域のうち、二つの地域ではこれまで以上に厳しい立入り制限がされることとなり、また、従来、何の制限がなかった地域でも全く立入りが認められないという事態が生じました。訪問を待ち望んで参加した皆さんの気持ちを思うと、極めて遺憾な問題であると受け止めております。
 五月二十四日には、外務省と内閣府に対して、今後実施される自由訪問や墓参においては、希望する地域において円滑にまた確実に実施できるよう緊急に要請、申入れを行ったところであり、今後こうしたことが生じないよう関係皆様のお力添えを是非お願いいたします。
 次に、要望書の三ページ目、元居住者の権益の保護についてであります。先ほども申し上げましたが、財産権に関する問題です。
 連盟においては、これまでも土地などの残置財産の問題とともに、財産権を長年にわたって行使することができなかった損失に関して必要な措置を行うよう国に求めてきているところであります。共同経済活動といったことが議論されていく中、この時期、このタイミングで是非要望書に掲げているこれらの問題が解決、実現されるよう、政府を始め委員皆様の御尽力をお願いしたいと考えております。
 最後の項目、要望書の四ページ目、後継者の育成、活動への支援についてであります。
 返還要求運動を始め連盟の活動については、今後、さらに二世、三世といった後継者の皆さんに大きな役割を担っていただかざるを得ない状況にあります。連盟としては、後継者活動の中核となるリーダーの育成を始め、後継者に関する事業の充実に努めていくとともに、(3)に記載のとおり、北対協融資については、より多くの後継者の方がその対象となるよう制度の改正、充実がされることが極めて大事なことだと考えており、委員皆様の御理解、御支援をお願いいたします。
 終わりになりますが、私ども元島民は高齢となり、残された時間は本当に少なくなっておりますが、一日も早く北方領土の返還が実現するよう、多くの後継者を始め全国各地で返還要求運動に御尽力いただいている関係団体の皆さんと協力し連携しながら、外交交渉の後押しとなるよう力を尽くしてまいることをお誓い申し上げ、私の陳述といたします。
 どうもありがとうございました。
#7
○委員長(藤井基之君) ありがとうございました。
 次に、下斗米参考人にお願いいたします。下斗米参考人。
#8
○参考人(下斗米伸夫君) 藤井委員長、参議院の皆様、そして御関係御各位の皆様、本日は、この権威ある場所で北方領土問題について意見を開陳する機会を与えられましたことに感謝申し上げます。法政大学の下斗米と申します。
 時間の関係もございまして、要点を六点ほど申し述べさせていただきたいと思っております。
 第一は、ロシア外交の中心であるプーチン大統領の外交観、ロシア観、世界観であります。私の理解するところ、プーチン氏はロシア国家の再建を使命とする保守的政治家であります。同時に、彼は、世界の中のロシアの位置、自国の歴史や宗教、アイデンティティー、こういった問題に深い関心と造詣がある政治家でもあります。
 これから大統領選挙が来年三月に行われることになりますが、これは予測が難しゅうございますけれども、現在のところ、彼が当選する可能性がかなり高いと思われます。このプーチン氏の在任期間中に北方問題について交渉を進め、解決を図ることは極めて重要であり、両国関係に資することが大きいと考えます。
 第二に、プーチン大統領は、就任当初から、一九五六年日ソ共同宣言に基づく領土問題の解決を提示しておりましたが、昨年末の山口・東京会談でも日ロ間に平和条約がないのはアナクロニズムであると言い切りました。一八五五年下田条約以来の日ロ間の国境変更でのジグザグをプーチン氏は批判的に振り返りながら、恒久的な国境をつくりたい旨主張しました。
 同時に、十一月末に改定されました大統領外交の行動綱領と申すべきロシア連邦の外交概念という文書が公になっておりますが、そこで国境問題について次のように書かれておりました。国際法的な国境線の形成を活性化する、これは同文書二十六条e項でございますが、この表現でもって今の国境問題に彼は対処していると理解しております。つまり、日ロ関係では、先ほど長谷川市長もおっしゃられましたように、国際法上の国境線はまだ未画定だということでございます。現在、ロシアの国境線で国際法的に決まっていないのは、二〇一四年からのウクライナのクリミアとこの日本の北方四島でございます。彼のこの解決に向けた政治力と両国関係に関する歴史的、国際法的な認識、そして使命感、これは日本側としても重視すべきであります。
 第三に、しかし、この二国間関係への使命感というのは、さらに、世界政治経済の軸足の東方へのシフト、地球温暖化、中東の不安定化の中のエネルギー面での北極海開発と北極ルートの浮上、日本の十七倍もある極東地域の開発の必要、こういったロシアの置かれております地政学的そして地経学的な客観条件によっても裏打ちされております。アメリカでのシェールガス革命やトランプ政権登場による孤立主義の台頭、そして中国の政治経済的超大国化といったアジア太平洋を囲む環境の激変、そして何よりも核をめぐる北朝鮮情勢の混迷を考えますと、プーチン・ロシアの日本との接近には、単に大統領の個人的な思惑を超えた、ロシアの国益を見据えての客観的な理由があると言うことができます。日本としても、中東情勢を考えますとき、エネルギー輸入の多角化、そして一番近いロシア極東とのこの面での関係改善はもはや不可避でもございます。
 第四に、ロシアはまた上の事情からして、北東アジアでの安全保障にも関心を示しております。今年になり、日ロ両国は安全保障上の2プラス2交渉を再開させております。ウクライナ危機後、こういう次元での交渉は、G7の中では日本が最初となっております。
 今回、六月、サンクトペテルブルク・フォーラムのときの世界の主要メディアとの対話では、プーチン大統領は、北方領土での非軍事化は、緊張を高める米ロ関係もあって現状は困難であるという認識を示しております。しかし、同時に、非軍事化の原則は可能だとも主張しました。緊張緩和がこの地域で必要だとも付加しております。実は、この地域には中国も含めた不安定性が増しておりまして、北方領土の非軍事化を図ることも私は重要なことと考えます。それこそ平和条約ではないでしょうか。
 第五に、こういった文脈で、安倍政権が現在進めております新しいアプローチ、特に共同経済活動は、新旧島民を中心として両国民が当該紛争地域で主権や国境問題の最終解決以前に積極的に関わるということで、問題を解決する方策として適切なやり方と考えます。特別な枠の解釈をめぐりましても、ロシアでは、ロシア法依拠という言い方から次第に軟化して、それを害さない範囲でというふうに表現が変わっているように思われます。
 もちろん、主権と主権がぶつかり得るこの問題を、国際約束、すなわち国際法的な知恵を使って相互に受入れ可能なやり方で解決することは、時間と何よりも関係者の努力が必要でございます。しかし、それ以外に方法があるわけではございません。むしろ遅きに失したとすら言うことができます。この参考文献は大変貴重なものでございますが、六十七ページにスピッツベルゲン島の共同経済活動についての例が出ておりますが、このような共同主権、共同管理の先例も参考にしつつ、両政府や地方政府同士、そして市民間の緊密な模索による解決が求められております。
 第六に、もちろん日本のこの平和条約交渉は、日本の連合国との戦後処理の最終ページとでも言うべき側面を有しております。したがって、米国など関係諸国との支持や共感なしに達成するものではありません。その意味で、ウクライナ後の米欧のロシアとの関係の緊張、制裁などの条件が課されている、ロシアにとっては制裁が科されております。
 しかし、同時に、この冷戦後の米欧の対ロ政策の混迷と不在とが現東西関係の現状をもたらしたと言うこともできます。と申しますのも、NATO東方拡大がロシアとの対立を招きかねないという警告が、九〇年代後半、冷戦の当事者でございましたジョージ・ケナンだとか、こういった方、識者から出されておりました。その意味では、日本がロシア、ウクライナとの対立を緩和する動きと関連付けて対ロ政策、平和条約交渉を進めることは正当であると考えます。
 現在の米ロ関係の混迷は、世界政治にも大きな問題となっております。日本も、核軍縮などこの地域の積極的な緊張緩和を進める中から、日ロ関係をより前進すべきと考えます。
 私は、東日本震災後、日ロ間の領土を含めた歴史対話という企画を、五百旗頭真教授、トルクノフMGIMO大学学長、こういった日ロ三十七名の歴史家と進めてまいりました。ロシア人との共同作業をすることは可能であるということが分かりました。こういった経験を生かし、何よりもロシア人との交流の拡大、密接化があらゆる面で必要です。
 以上、日本・ロシア関係を研究してきた者として卑見を述べさせていただきました。日ロ関係の活性に向け、本院を始めとする議論と交渉の進展を期待するものであります。
 御清聴ありがとうございました。
#9
○委員長(藤井基之君) ありがとうございました。
 次に、袴田参考人にお願いいたします。袴田参考人。
#10
○参考人(袴田茂樹君) 新潟県立大学の袴田でございます。こういう場で私見を述べる機会をいただいたことをうれしく思っております。
 時間の関係で、レジュメに従いまして私の意見を述べさせていただきます。
 まず、北方領土問題の本質をどう理解するかということでありますが、もちろんこれは元島民の人道・人権問題でもあります。平均年齢がもう八十何歳。それから、漁業、資源、観光など、我が国全体の経済問題でもあります。それから、長谷川さんがいらっしゃいますが、根室を中心とした北海道の地域経済の問題でもあります。しかし、本質的な問題は、国家主権の侵害にいかに対応するかという、これがもう基礎の基礎だと。日本人は余りにもこういう主権問題というものに関しまして我々は鈍感だという、そういう危機意識を私は持っています。
 二番目、北方領土問題の原理原則の問題と、それから平和条約交渉の基本方針をきちんと区別して理解する必要があると、私は外務省の人、政府関係の人にも言っております。原理原則の問題というのは、歴史的にも国際法的にも北方四島は日本の固有の領土である。平和条約交渉の基本方針というのは、これは常に首相や外相などが日本の基本的な立場として述べている東京宣言の言葉でありますが、四島の帰属問題を解決して平和条約を締結するということであります。この区別が必ずしも外務省関係者も十分理解していられない方もいて、「われらの北方領土」の前文、一六年版でもやはりこの辺が十分明確になっていないのを残念に思います。時間があったら補足の説明します。
 それから、安倍首相の従来の発想にとらわれない新しいアプローチ、この私は論理的問題点を指摘したいと思います。
 プーチン大統領の北方領土問題に対する姿勢は、私は、近年、強硬姿勢を強めているというふうに見ております。以前は領土問題の存在を認めておりました。別の言葉で言えば、イルクーツク宣言や、二〇〇一年、日ロ行動計画、二〇〇三年の、東京宣言の重要性を彼は署名して認めていたわけですが、しかし、二〇〇五年九月に、南クリルは第二次大戦の結果ロシア領になったと、文書でも認められていると、そういう言い方をするようになって、その後、この立場を変えていません。今、下斗米先生がおっしゃった国際的な文書でということは、私は、この立場を日本も含め、アメリカも含めて国際的に認めさせたいと、その意図が私は出ているんだと思っております。
 それから、安倍首相の新アプローチのロシア側の理解は、領土問題は棚上げにして経済協力を推進するという、こういう理解に、いろんな人と会っていますが、そういう理解になっています。先ほど脇さんがおっしゃいましたけれども、これ経済関係だけが進んでもらっちゃ困ると、こうおっしゃいましたけれども、ロシア側の理解はそうです。
 ロシア側の判断からしますと、論理的に考えると、日本がこういう形で譲歩したわけですから、ロシアのこれまで態度を強硬化したその対日姿勢は正しかったということにならざるを得ない、更に譲歩を得るためには一層これまでの方針を貫けばいいということに論理的になるのではないか。これは皆さんに私が伺いたいことなんですね。
 それから、六月一日の大統領のサンクトでの記者会見の問題点なんですが、北朝鮮に対する日米韓の核、ミサイルに対する対応を、何とプーチン大統領は、イランを口実にしたヨーロッパにおけるミサイルディフェンスシステムの配備と全く同じで、北朝鮮問題は単なる口実にすぎないと。だから、我々がどれだけ北朝鮮の核・ミサイル問題をといいますか、大きな脅威、喫緊の脅威として真剣に考えているかということをプーチン大統領は全く無視するような発言をしていることを私は驚きました。
 それから、これは結局世界が、ロシアの周りの世界がミサイルディフェンス網でロシアを取り巻いているという、そういう被害者意識。これは最近、アレクサンドル三世の言葉がよく想起されるんですが、ラブロフ外相も、昨年六月、その言葉をほぼ同じように繰り返しましたが、信用できるのは軍事力だけである、同盟国でも裏切るという、そういう言葉がよく想起されます。
 もう一つは、日米安保条約ゆえに二島返還も事実上困難であると、米軍基地の進出等の問題を取り上げながらそういう発言をしたこと、これは日本に強い失望感を与えました。
 我が国のロシア認識と対ロ政策の問題点ですが、私は、首相官邸、それから経済省庁、政治家、国際問題の専門家、メディアの多くの方々に、もちろんいろいろ例外はありますが、やはり楽天的な甘い幻想があると見ております。プーチン大統領の引き分けとかお互いの譲歩とか平和条約締結は重要などの甘言に、甘い言葉に、ついついそれに飛び付いて幻想を持ってしまっているのではないかと。私自身は、プーチン大統領だけではなくて、指導部や国民の発想法、心理、そういったものをリアルに理解して対ロ対応、対ロ政策を日本は考える必要があると思っております。
 それから、日本として、じゃ、いかにすべきかという問題ですが、民間企業が自らのリスクでロシアに進出するというのは、一般論としては、つまり対ロ政策など特別なそういうあれが関係ないときには私は大いにやって結構だと思うんです。しかし、政府が国民の税金を使って、つまり政府が融資、投資あるいは企業支援、リスクカバー、進出のリスクのカバーをする、これは国民の税金を使うわけですから、税金を使う以上、私は経済協力と平和条約交渉はバランスを取って進展させるべきだと思っております。
 共同経済活動について一言言います。
 日本とロシアは、残念ながら立場が根本的に違う。ロシアは、あくまで四島における共同経済活動ですから、ロシアの法の下でという立場を譲っておりません。日本は特別の制度の下でというので合意したと言っていますが、ロシア側はそれを認めていない。共同のプレス声明でもここは玉虫色で、それぞれ勝手な解釈ができるようになっております。そういう意味で、私はこの共同経済活動、本来であれば大いに進んでほしいとは思うんですけれども、現実的には極めて難しいと思っております。
 以上です。
#11
○委員長(藤井基之君) ありがとうございました。
 以上で参考人からの意見聴取は終わりました。
 これより参考人に対する質疑を行います。
 質疑のある方は順次御発言願います。
#12
○松川るい君 ありがとうございます。自由民主党の大阪選出の参議院議員松川るいでございます。
 先生方、大変勉強になりました。それぞれの参考人の先生方にまず御礼申し上げたいと思います。
 私、北方領土問題につきましては、まず日本を取り巻く国際環境というのが非常に大きく変化をしていると。そして、中期的に考えれば、日本のサバイバルにとって非常に大事なのは、やはり中国にどのように対峙していくのかということではないかと思います。それは尖閣諸島という領有権問題があるからでもあり、また歴史戦、それからいろんな意味で、アジア太平洋の中での覇権というか、中国が欲する覇権を目指すに当たって、日本という存在が余りにも歓迎される場所には残念ながら地政学的にもこれまでの経緯からしてもいないということであります。
 そういたしますと、やはり日本のグランドストラテジーといたしましては、一番最悪なのは中国とロシアがくっつくことであると。しかしながら、もう既にロシアにとっては中国が最大の貿易相手国でありますし、軍事演習もこの前やっているということで結び付きは当然あるわけでありますけれども、ロシアにとって中国だけが頼れる先であってはならないというのは日本の国家が取るべき基本的なスタンスであろうかと思います。
 私は、安倍政権が今進めているロシアとの新しい関係の構築、北方領土問題に対してもこれまで進展しなかったという事実も踏まえて新しいアプローチを仕掛けているということにおきましては、そういったグランドストラテジー的に日ロがある意味連携の枠組みを増やすということが日本全体の外交戦略において大変重要だということが背景にあるのではないかと思いますし、それ自体は私は合理性があると思います。
 まず袴田先生に質問をしたいのですけれども、今まさに、この新しいアプローチというのは非常に幻想に基づいたもので、ややもすればこの四島における日本の主権を害しかねないところがあるのではないかという懸念を持たれているのではないかというふうに伺いました。また、ロシア側が、そもそも山口のときは解決できないのはアナクロニズムだとまで言っていたのに、六月一日になって、安保条約の適用範囲で米軍が来る可能性があるから歯舞、色丹についても分からないよと言い出したということも、向こうが硬化をしていてこちらが幻想を持つべきではないという御指摘だと思いまして、まあそうなのかもなと思ったところなんです。
 ただ、是非、袴田先生、下斗米先生にもお伺いしたいんですけど、それでは日本としてどのようなことを取れるのだろうか。私は、四島、我が領土である北方領土が不法に占拠されてしまったのは軍事によってであります、ロシアの。それと同じようなマグニチュードのことがない限りそう簡単に領土というのは返ってくるということはなかなかないというのは、これは世界的なことだと思います。
 時間は我々の方に利するのかどうか。そのときに、この新しいアプローチというのは、一定程度日本のプレゼンスを、住民であったり、共同経済活動であったり、企業の活動であったり、若しくは根室市を中心とした北海道との交流であったり、いろんな柔軟なアプローチで日本という国の存在を増やしていくということに、そして、それが積み上がれば、何かスピッツベルゲン島で起きたような国境を何とかしようという、そういう機運につながるのではないかということも背景にあるのではないかと思います。
 袴田先生と下斗米先生にお伺いしたいのですが、日本のプレゼンスを増やすことによるというそのアプローチの中で、これが何かしら領土問題に関して有効性を持つと思われるかどうか。そしてまた、軍事的な拠点化につきまして、下斗米先生御指摘もされておられました。私も全く同感で、北極海ルートが増えればより北方領土周辺の地域の軍事的重要性は高まりますので、軍事化が進むとますます返ってきにくくなるという気もするのですけれども、このアプローチについて改めてどのように思われるか、そしてそれが駄目なのであれば一体、じゃ、どうすればいいのかということについて、改めてお伺いしたいと思います。
#13
○参考人(袴田茂樹君) 松川先生、御質問ありがとうございました。
 おっしゃるとおり、私は、長期的には、日本にとってはロシアよりも中国問題の方が難しい、中国との関係の方が私は難しいものになるというふうに見ております、現在も大変難しいですけれども。そういう意味におきましては、ロシアも含めての他の国との安定した関係をきちんと構築するというのは戦略的にも重要だと思っているわけなんですね。
 ただ、平和条約がないのはアナクロニズムという、安倍さんじゃなしに、プーチン大統領の言葉ですが、私が一番懸念しているのは、プーチン大統領はもはや領土問題と切り離して平和条約を結ぶという、その方向に突っ走っているという感じがするものですから、その意味でこの言葉を聞いても私は安心できないんです。
 それから、スピッツベルゲンのような共同統治的なというあれがありますが、しかし、スピッツベルゲンは、主権は絶対的にノルウェーのものであるという。それから、これまでロシアとノルウェーとの間にいろんなトラブルが起きていまして、それで一昨年の八月も入国を、今実際にあそこで産業活動をやっているのはロシアだけなんですが、入国を拒否するという、それで一九二〇年のパリ条約を一つの口実にというか理由にロシア側は抗議すると。
 さらに、問題は、スピッツベルゲンの場合は、ノルウェーに完全に主権があると同時に、日本も含めて他の多くの国がその条約に署名しているんですから、条約署名国は皆同じ権利を持つと。したがいまして、北方領土でもし同じようなのをあれしましたら、中国や韓国が日本と同じような権利で、場合によっては労働力の安い、そういう北朝鮮とかそういうのがどんどん出ていってしまう可能性もある。そういう意味で、私はスピッツベルゲンが何か解決の一つのモデルというふうに見ることはできません。
 それから、じゃ、どうしたらいいのかということですが、やはり先ほど述べたように、平和条約交渉と領土問題を進展させるということと、それから経済協力をバランスを取りながら共に進めるという以外にないと。以前はこれはちゃんと日本はそういう立場を取っておりました。何かそれをあたかも否定したかのように、領土問題を棚上げしたかのごとくロシア側が理解していることを私は非常に問題に思っているんです。
 もう一つは、対等の立場で日ロが主権国家として付き合う必要があると思うんですが、アジアのある外交官と最近話をしましたら、日本のロシアに対する態度は、何かほれた女の後を一生懸命追っかけているようなそういう男のように見えるという、これはまあ男女逆にした方がいいのかもしれませんが、第三国からはそう見られるアプローチ、擦り寄るという。ロシア人は、ある程度緊張感を与える相手の方を嫌な相手でも内心は尊敬する。擦り寄ってくる相手は、都合のいい相手として利用はしますが、決して敬意を持って対するわけではない。
 私は、日本とロシアは対等な関係をきちんと構築すべきで、残念ながら、私は、今、日本は、あるいは安倍さんは、ロシアから、プーチン大統領から本当の意味で尊敬されているとは見ていないので、それをきちんと構築、対等の関係を構築するという意味で、そこから始めるべきだと思います。
#14
○参考人(下斗米伸夫君) 松川委員、どうも御質問ありがとうございます。
 私も今の状況が極めて複雑な国際情勢になってきたと理解しておりますが、これは冷戦後二十五年間、いろんな意味でリベラルな国際秩序というのを主導してきたアメリカ、イギリスを中心とする、そしてG7の価値観、こういったものが揺らぎが見えて、その中で、同時に、やはり中国ですとかロシアですとか、場合によってはイランだとか、こういったような国がやはり国際社会にある種の発言を求めている。その意味で、国際政治全体の転換点にあるんではないかと理解してございます。
 その中で、今、松川先生がおっしゃられた中ロの接近というものについて、私も同じような危惧を持っているわけでございますけれども、同時に、両者の違いというものもこの間はっきりしているのではないか。
 もちろん、貿易量とか何かからしますと中ロ関係は非常に、日ロ、おととし、ずっと落ちたわけでございますが、中ロは動きませんでした。変わりませんでした。しかし、基本的にプーチンが狙っているアジアシフトという角度から見ますと、中国が現在図っている戦略というのは、一帯一路は、どちらかというとヨーロッパシフトでございまして、したがって、ベクトルがよく見ると違うんですね。むしろ日本からしますと、今の北極海を含みます新しいロシアにとってのフロンティアが北極海とアジア、東、よくロシアというのは南下する国、あるいはヨーロッパの国という、こういうベクトルだけで考えてきたんですけれども、むしろプーチンの面白さはそれとは違う、北に向かい、アジアに向かうというこのベクトルが日本にとっても非常に大きなポテンシャルを持っている。
 その意味で、今の安倍外交が対応して、新しいアプローチというのは、決して何かこびを売ったり云々ということではなくて、むしろ国家間としてきちんとこの問題を処理しなければいけないという、その志が私は見えているように思います。
 もう一つ御注目いただきたいのは、やはり今のところロシアにとって国境線が決まっていないのは、かつてはノルウェー、今のスピッツベルゲンも含めてございましたし、その前は二〇〇四年の中国がございましたが、これに対し、ウクライナ問題が新しくできちゃったんですね。そして、このクリミア問題というのは、実はロシア人にとってアイデンティティーの根拠に関わる、すなわち自分たちの国家のアイデンティティーに関わるものですから、なかなかこれは厄介な問題でございまして、もちろん、今、国際社会の中では、ロシアも含めて、場合によってはクリミア半島のロシア化を早晩どこかで認めなきゃいけないという議論が出てきておりますし、ウクライナの政界の中でも、クラフチューク元大統領のように、これはクリミアというのはロシアのものであったという理解があるんですが、これと比べますと日ロ関係は実は両方とも解決する意欲があるという、そういう意味では、日ロ関係については、やはり私は、国境問題、そして領土問題、同じことでございますけれども、そのプーチンの意図は決して二重ランゲージといいますか、そうではないと理解しております。
#15
○松川るい君 ありがとうございます。
 済みません、一問ずつお伺いしようと思っていたらちょっと時間がなくなってしまいまして、先生方、ありがとうございました。
 一つ、もう時間がないので質問ということではないかもしれませんが、じゃ、ノルウェーと中国とはなぜ国境画定が、領土問題が解決できたんだろうということに関して、もう少し研究の成果を、されていることについてまた別途教えていただけたらと思います。中国はやはり軍事力で対峙をしていたから、解決の必要がロシア側にあったんだと思います。ノルウェーについてはそうではないと思うので、そこが何かヒントになればなという気がいたしております。
 一問、是非、脇参考人とそれから長谷川参考人に、両方とも、もう元島民の方は大変高齢化されていて時間がなかなか残っていないということ、そしてまた、共同経済活動についても、玄関口である根室市が中心となって、北海道との連携、非常に期待しているというお話をいただきました。私、もう政治家としてそれは是非進めていきたいと思っているところでございます。
 一つ御提案といいますか、現状どうかということも踏まえてなんですが、北方領土問題がやはり忘れられていかないために、是非、大々的な発信拠点であったり博物館であったり、そういったものがこの新しいアプローチの下であることも機にできればいいのではないかと思いますが、今既にあちらこちらにそういったものがあるのであれば、それを糾合して少し発信力を高めてもいいのかなとも思うのですけれども、いかが思われますでしょうか。
#16
○委員長(藤井基之君) 済みません、もう時間が来ておりますので。よろしゅうございますか。
#17
○松川るい君 済みません、じゃ提案ということで。
 申し訳ございません。ちょっと質問できなくて恐縮です。ありがとうございました。
#18
○徳永エリ君 民進党・新緑風会の徳永エリでございます。
 四名の参考人の皆さん、それぞれのお立場からの御意見、また御要望などもいただきまして、ありがとうございました。
 私は北海道選出の国会議員でございますから、北方領土問題というのは大変身近な問題であり、そして、元島民の皆さんやあるいは近隣地域の皆さんと同じように、もう一日も早い四島の返還を望んでいる立場であります。
 ですから、日ソ共同宣言から六十年の昨年、あの十二月のプーチン大統領の訪日、山口県での首脳会談、これは、しばらくこの領土問題が膠着しておりましたから、大きな進展があるんじゃないかということで大変に期待をいたしました。北海道では、この領土問題に全く関係がないような会合でも、いや、十二月の会談では恐らく領土問題が動くんじゃないかという声がいろんなところから上がっておりまして、本当に期待が大きかっただけに、果たして何だったんだろうかと、未来志向の新しいアプローチ、あるいは共同経済活動、これは一体何なんだろうと、本当に四島の返還につながるんだろうかということを今大変に不安に思っているところであります。そして、私たちが求めているものと安倍政権が目指しているものはもしかしたら違うのかもしれないと、そんな思いになることもあります。
 袴田参考人とそれから下斗米参考人にお伺いしたいんですけれども、東京宣言、一九九三年ですよね、二〇〇一年のイルクーツク宣言では、領土問題をロシアに認めさせて、プーチン大統領はそれに署名をしているわけですね。ところが、山口での会談の前に、日本テレビとそれから読売新聞、このインタビューの中で、ロシアの立場、いかなる領土問題も全く抱えていないと、ロシアとの間に領土問題があると考えているのは日本であるということをもう実は訪日前に言っているわけでありますよね。そういうこともありますし、それから、安全保障の問題、一九七九年のソ連による部隊の増強、北方領土、このときには我が国はソビエトに対して撤退を強く求めたわけですよね。しかし、今回はあくまでも抗議をするのみということでありまして、従来の我が国の立場から、この領土問題に対する主張も、それからこういった安全保障の問題も含めて若干後退をしているんじゃないかという、そんな印象を受けているんですけれども、それぞれの参考人、どのようにお考えなのか、お伺いしたいと思います。
#19
○委員長(藤井基之君) どなたにお尋ねしますか。
#20
○徳永エリ君 まずは、じゃ、順番でいうと袴田参考人から。
#21
○委員長(藤井基之君) それでは、順番にお答えいただきたいと思いますが、参考人の皆様に一言申し上げさせてください。
 各委員の持っている質疑時間が限られておりますので、できましたら答弁は簡潔にお願いしたいと思います。
#22
○参考人(袴田茂樹君) おっしゃるとおり、私も平和条約交渉、領土交渉はむしろ後退していると思っております。
 山口での会談に北海道の議員として大変な期待を持っておられたということですが、私は、道新ばかり読まないで、ロシアの指導部の、プーチンの、国民の心理、メンタリティーを具体的に理解する努力をやはりもっと国会議員の皆さんにやってほしいと思うんですよ。そうすれば、私はだから、もう全く期待は抱いていませんでした。それ以前から余りにも幻想を日本人は抱き過ぎているということを常に強調していたわけですので、その面を一つ指摘しておきたいと思います。
 以上です。
#23
○参考人(下斗米伸夫君) まず、今の、軍事問題について少し御質問がございましたので、私は、今、北方領土に置かれている軍事のハードウエアというのは最新式のものではございませんで、一九七九年は、当時のソ連はやはりオホーツク海に第二撃能力を持つという戦略的な決定があって、したがって北海道に攻めてくるのではないかというような恐怖感すら覚えたこともあるわけでございますけど、今置かれているのは、むしろ一種の、何というか、ロシアはこの問題で、簡単に返しませんよといったようなある種の、そしてもう一つは、やはり今、米ロ関係が非常に核軍縮だとかこういったことでの関係が悪化しているわけでございますね。
 ですから、去年、私、徳永先生の御指摘の十月から十二月、プーチンさんの発言をモスクワで注意深く聞いていたんですが、確かに九月ぐらいは非常に前向きなことを言っていたんですが、ところが、十月になって、やはり日本のある質問に対して、期限を切って交渉するのはよくないという言い方をしました。そのとき実は、これは今御案内のとおり、日ロ交渉というのはトップダウン方式でなされているものですから、その一部の内容が漏れたんだという説がありましたけれども、これは私どもが知り得る話ではございません。
 恐らく、しかしもっと重要だったのは、トランプ登場というのを実はプーチン政権も予期していなかった、十一月九日にはですね。したがって、ぬか喜びもあったんですが、それと同時に、本当にどうやってトランプとできるかという戦略的な決定の方がやはり重要で、私は、そのこともあって日ロ関係はやや後回しになったのではないかという感じがいたします。
 その意味で、ですから、今、更に米ロ関係は御案内のとおり迷走しておりまして、本来でしたらやはりこの米ロ関係というのは、核軍縮、非常に重要でございますから、今、INFだとかそちらのところでもかなりもめて、トランプ政権に対する期待としてあったグランドバーゲンというのが急速にしぼんでいるものですから、それに対して、今、袴田先生の御指摘の六月一日の発言というのはそういう文脈で読むべきだと思っております。
#24
○徳永エリ君 脇参考人と長谷川参考人にお伺いいたしますけれども、今、お二人の参考人から、領土問題は以前よりむしろ後退しているのではないかというお話がございました。このお話を受けて、改めてどのようにお感じになるかお伺いしたいと思います。
 じゃ、脇参考人からお願いいたします。
#25
○参考人(脇紀美夫君) 私自身、後退しているかどうかということについては、今、いろいろ国と国との間の交渉事だというふうな形の中で、我々元島民には交渉権がないわけですね。したがって、純粋に我々は、自分の生まれたふるさとに自由に行きたいと。返してもらうのが一番原則ですけれども、今返ってこない状況、今現在の状況の中では、自由に行きたい、墓参りもしたいというのが切実な問題です。
 ただ、十二月の会談の中で、プーチン大統領と、ロシアの、安倍総理の間において、これだけマスコミを含めて日本国中に、期待も含めて、領土問題があるということで、存在が全国民的に知れ渡ったのではないのかなというふうに思います。それは今までになかったことだと思います。したがって、これを利用しない手はないなと思っていますので、そのことも含めて、我々は今後一生懸命、返還運動、政府の後押しになるように頑張っていきたいと思っています。
#26
○参考人(長谷川俊輔君) 今、日ロ関係は後退しているのではないかということなんですけど、それは本当、私も行政の立場ではなかなか実感はしていないんですが、ただ、今の政権は、安倍総理は十七回か十八回、プーチンさんと会っていると。少しずつ近づいて、ただ、現地としては、全く今回、山口の会談で前進なかったと我々は取っていたんですが、政権とか官邸筋では、いやいや、新しいアプローチの第一歩を決めたんだということで、ここ数年以内に必ず形となって現れるという我々説明受けているんですが、どういうふうにつながるかというのがいまだに私たちも、聞いても答えてくれないんですけど、逆に先生方に聞きたいなと、もし情報があればと思うぐらいなんですが。
 そこら辺が本当に、十七回、十八回と会談して少しずつ前進していることも、我々は本当に、何といいますか、期待をしているんですが、ただ実際に、袴田先生もおっしゃるように、そんな簡単な、今までの長い歴史から見ますと簡単なものでないし、今の共同経済活動も本当に平和条約につながるかどうかも、そこら辺をもう少し政府にただして我々は聞きたいなと。それによって我々もまた期待も不安もいろいろと出てくるのではないかと思っております。
#27
○徳永エリ君 私たちも聞きたいんですけれども、なかなかお話ししていただけないという状況でございます。
 十二月の首脳会談のときに、この領土問題について首脳間でどんな話があったのかは分かりませんけれども、四島での経済活動や、それから北方墓参拡充などの新たな合意があったという部分に関しては御評価があったんだと思います。航空機を利用した元島民による特別墓参の実現、共同経済活動に関する四島への官民現地調査団の派遣、本年八月末の歯舞群島への墓参の際に追加的な出入域ポイントを設置するということがあったわけですけれども、これに関しても、先ほどもちょっとありましたけれども、脇参考人もちょっと期待していたことと違うんではないかと思っているところもあるんだと思うんですね。
 この段階で、政府に対してここをもっと強く要望しておきたいということがありましたら、是非お伺いしたいと思います。
#28
○参考人(脇紀美夫君) 特に、人道的な観点の中での墓参ということ、加えて自由訪問、自分の育った、生まれたところに自由に行きたいというその島民の願い。特に八十何歳となっている、高齢になっている状況の中で、もちろん、今回そういう点が合意されて、それが確実に実施されるということであれば大変うれしいことではあるんですけれども、現実にはまだ実施、今途中ですから、これをきちっとされるということであればいいんですけれども、何とかそれが今後、例えば飛行機にしても、今回、今月の十八日に飛行機でもって特別墓参を実施するというふうに、予定でありますけれども、このことが来年以降も、今後も継続的に安定的に続けてほしいと。今回だけで、限りで終わってしまわないようにということが我々の願いであります。
 したがって、今回、どれだけの期待していたかということは別にして、一歩でも二歩でも前進したというその部分だけであるとすれば、それはそれで歓迎したいと思っています。
#29
○徳永エリ君 自由訪問の一陣も入りたかったところに入れなかったということもありましたし、それから、官民の現地調査団の派遣、これも本当は北方四島に入らなければいけなかったのにサハリンを訪れたということでありまして、形だけというような感じにならないように、私たちも国会において、しっかりと政府に対して強く約束したことを実現するように求めていきたいと思っております。
 最後に、袴田参考人にお伺いいたしますけれども、北方四島の返還に向けて、この実現に向けて我が国がやらなければいけないこと、一つだけ、これだけは今しっかりやらなければいけないということがあれば、是非とも御示唆をいただきたいと思います。
#30
○参考人(袴田茂樹君) 国民に、また学校等で、そういう国家の主権というものがどれだけ重要性を持っているか、国際社会の中でその問題抜きに国際関係は考えられない、また、その問題は時には戦争と同じ深刻な次元の問題だと、そういうことをきちんと教育で国民にその問題を十分理解してもらうこと、それが最も重要だと思います。一つだけ言いました。
#31
○徳永エリ君 じゃ、最後に、繰り返しになりますが、イルクーツク宣言でプーチン大統領は署名しているわけです。ですから、私たちはやっぱり諦めずに声を上げ続けなければいけませんし、今回の問題で世論喚起ができたというお話がありましたけれども、私はまだまだ足りないと思っています。ここは国にもしっかり支援をしていただいて、一日も早く北方四島の返還を目指して私たちも皆さんとともに頑張っていきたいということを申し上げまして、終わらせていただきたいと思います。
 ありがとうございました。
#32
○竹谷とし子君 公明党の竹谷とし子でございます。
 本日は、四人の参考人の皆様から貴重な御意見を頂戴いたしました。まずは心から感謝を申し上げます。ありがとうございました。
 私たち参議院の沖縄北方特別委員会では、一月に、根室また羅臼町を中心として、北方領土隣接地域に視察をさせていただきました。その際には、長谷川市長、そして脇理事長にも大変お世話になったことをまずもって感謝申し上げたいと思います。
 藤井委員長始め六人で、一泊二日で根室とそして羅臼までという大変強行スケジュールでありましたが、その日は皆様の日頃の行いが、御地元のですね、良かったんだと思うんですけど、珍しく晴れ渡って、そして、早朝、根室を出発して、羅臼への道のりも順調で、そして国後島が、全島が一望を羅臼からできるという、そういう天候に恵まれた視察となりました。
 そこで、脇参考人に伺いたいと思うんですけれども、漁業の問題でございます。
 脇参考人、長谷川参考人から、北方領土隣接地域の振興ということについてお話を伺いました。私自身も一市四町の中の標津町の出身で、国後島を見て生まれ育った者でありますし、家は水産加工をやっておりました。小学校のときには二百海里問題であおりを受けた、そういう状況下で幼少期を過ごした、そういう中、漁業の問題というのは切実な環境にこの北方領土問題で置かれてきたということを痛切に感じてまいりました。根室にも根室の漁業の問題があり、また羅臼には羅臼の違う漁業の問題があるというふうに思っております。
 脇参考人からは、元町長というお立場からも、よくよくそうした課題についてもお話を以前からも伺っておりましたけれども、今回の共同経済活動の中で、一緒に資源調査を行ってもらいたいというふうに御地元の漁業関係の方からも伺ってまいりました。改めて、羅臼におけるロシアとの間の漁業問題について、そして今回の共同経済活動の中で期待をされていることを脇参考人に伺いたいと思います。
#33
○参考人(脇紀美夫君) 今、私の今の現在の立場でこのことをどこまで答えられるかは別にして、確かに、私も二年前まで地元の首長をしておりましたので、特に根室海域におけるロシアのトロール船の問題、加えて安全操業の問題という特殊な状況にあったということであります。
 したがって、今後、この経済活動が漁業の中でどうやっていくのか。ある意味では、その安全操業ということが現実にあるということでのベースにするのかどうかということ、これは今後の問題だと思いますけれども、確かに、ロシアのトロール船によってあの根室海峡において根こそぎ操業されているというような状況の中では、資源がどんどんどんどん枯渇していっているというような状況があるんだと思います。それだけではないと思いますけれども、その影響はかなり大きいんだというふうに思っています。
 したがって、これを、今おっしゃられたように共同で資源管理なり資源調査なりということは、これは前からもいろいろな場面で行政の立場からも話しされていることだと思いますけど、これを何とかやはりやって、お互いに海を、今の状況の中ではどちらというふうになっていないわけですから、日本は日本で主張はしていますけれども、現実問題は実効支配されているというような現実の中で、お互いに共同資源調査ということはやっぱり必要であろうというふうに思っています。
#34
○竹谷とし子君 次に、長谷川参考人に伺いたいと思います。
 一市四町の隣接地域、人口減少というものを私も非常に感じているところでございます。そうした中で、様々な社会インフラや生活の基盤、隣接地域の振興のために必要なものがありますが、その中でも医療環境、羅臼でも本当にお医者さんが足りなくて大変だったということを、以前、脇参考人からも伺ったことがありますけれども、医療の環境について長谷川市長に伺いたいと思います。
 これからロシアとの共同経済活動の中で医療の協力もやっていくことになるというふうに思っておりますが、これまでも外務省の事業として、隣接地域でも人道的な見地から北方領土のロシア人の現在の住人に対して医療提供を行ってきたというふうに理解をしております。一月の視察の際には、日程の関係から中標津町立病院を視察をさせていただきましたが、非常に協力的にやっていただいているというふうに思いました。
 根室も同様であると思っておりますが、この医療協力を行っていくに当たって、やはり隣接地域の医療機関に御協力をいただくことになるのではないかと思っておりますが、そもそも、地域の医療環境を支えるために、大変中標津町でも町の財政から、一般会計から負担をしているという、そういう課題もお聞きをしたところでございます。根室においてのこの医療環境、隣接地域の振興、また生活を守っていく上でも、医療環境について課題があれば教えていただきたいこと、そして、これからロシアと共同経済活動を行うに当たって、根室における医療施設がどのように協力をしていくかということについて、何かお考えがあればお聞かせをいただきたいと思います。
#35
○参考人(長谷川俊輔君) 医療関係では、今回、北隣協一市四町でまとめた国に対する要請の中でも、医療分野というのは、漁業あるいは海面養殖、観光と並んで四つの主要部門の一つでありまして、今我々が求めているのは、今、実際に北方四島から毎年十名ぐらい患者さんが来まして、根室市立病院、中標津町立病院、それでもしできない内容のものであれば札幌とか釧路の大きな病院で治療して、一か月ぐらい治療して帰るということなんですが、根室市は毎年千人ぐらいのロシア人が受診しています。それは一般のちょっとしたけがとかなんとかでありまして、そのためにロシア語をしゃべれる職員を三人ぐらい病院に派遣しているということなんですが、それと、ビザなし交流で来るロシア人が、市立病院で集団で七十名来たら七十名全員が健康診断を受けて、それで十日ぐらいで結果は分かるのでそれを知らせるんですけど、それで病気が見付かって再院する人も大体年間、先ほど言いました千人ぐらいいるということであります。四島側も非常に医療充実ということを求めています。それで、我々にも直接来ていまして、四島の医者とか看護師さんも毎年根室に来て一か月ぐらい研修して帰るというような状況であります。
 そういう対応もできるのではないかと思っていますが、医療分野での交流を深めるためには、今、市立根室病院を医療拠点病院に指定してほしいと、国にですね。町立中標津病院がその支援、医療の支援病院に指定していただきたいということなんですが、いずれも実は、先生、内容知っていると思いますが、根室管内は五、六年前までは、北海道は十四の振興局に分かれていますけれども、その中で十万人当たりの医師数が一番少ない町でありました。本当に羅臼も、今は安定していますけれども、大変な時期もありました。そういうことで、医師の確保というのは非常に大変なんです。
 それで、市立病院が今十六名まで医師が復活しましたので、三名しかいない時代があったので、今は全道の下から三番か四番まで医師数は上がっていますが、ただ、やはり根室というのは日本の最東端であって、同じ給料といいますか報酬ではなかなか根室に来てくれないということで、やっぱり根室に来るためには三割あるいは五割ぐらいの医師厚遇しないと、待遇を良くしないと来てくれないということがありまして、そういうことで中標津も根室も、余り言いたくはないんですが、十億を超える赤字を出して毎年苦しんでいます。
 それで、国に対して、あるいは道に対して、特殊事情なので、それとロシア人も千人も診ているんだし、是非そこら辺をということで今要望している最中でありまして、四島の今度の経済交流活動で恐らく具体的な話がありますので、それらと相談して、是非もう少し国に、病院の体制についても、財政的な面と医師確保、医療者の充実の面についてはよほどのてこ入れをしていただかなければ成り立たない地域でありますので、是非これは国にお願いしたいと思っております。
#36
○竹谷とし子君 ありがとうございます。
 脇参考人にもう一点伺いたいと思います。元島民の方々の財産権の問題でございます。
 これは、私、繰り返し政府に求めておりますが、今回も、新しいアプローチでとなったのであるから、これまでの姿勢というものを変えて取り組むようにということを言っておりますが、今のところまだ変わっておりません。私の友人たちも、三世の世代でありますけれども、おばあちゃんから、あんたに北方領土返ってきたら土地渡すからね、そうやって言われてきたとか、そういう思いがある財産権の問題でございます。これについて脇参考人から御意見を頂戴したいと思います。
#37
○参考人(脇紀美夫君) 千島連盟の基本的な方針の中では、原則として、まず北方四島の早期一括返還と、これを旗印に今まで運動していますし、これからもそれは変わりはありません。
 その中にあって、特に今の墓参の問題も、これは人道的な形でもってある程度、先ほども話があったように、多少は進んでいるというような状況があります。
 加えて、あとは後継者の問題。もう八十二歳を超えている我々元島民、二世、三世にその運動なりを委ねざるを得ないんですけど、その二世、三世も現役世代なんですね。まだ働き盛りなんですよ。したがって、仕事を休んでまで、じゃ、そういう運動に関わってもらえるかといったら、非常にこれもまた悩ましい問題でありまして、苦慮しているところであります。
 今の質問の財産権の問題、このことにつきましては、今までは、経済活動が今回テーマとなってくるまでは、この財産権の問題は掲げてはおりましたけれども、具体的に我々としてあえて強く取り組んでおりませんでした。しかし、今度、この経済活動が進むということであれば、当然あの島で何らかのそういう土地なりそういうところの利用がされるんだろうということになってくると、この問題をやっぱり検討せざるを得ないというふうに思っています。国としても、この問題についてはどういう方針なのかと、そのことについて。したがって、今後、経済活動が進む状況を見ながら我々としても十分検討していきたいというふうに思っています。
 したがって、今まではこの財産権の保障の問題、国は平和条約が締結した段階でというふうな形でありましたので、当連盟としては、一時棚上げではないんですけれども、一応トーンは少し下げた形でもってやってきましたけれども、今度、共同経済活動が進むということであれば、これをかなり強力に進めていきたいというふうに思っています。
#38
○竹谷とし子君 私も同じ思いで取組をさせていただきたいと思います。
 下斗米先生と袴田先生にも大変お伺いしたいことがたくさんあったんですけれども、時間の都合でもうお伺いできないんですけれども、高い見識の下、非常に今日は大局から御意見を頂戴することができました。また先生方のお考えを深く勉強して生かしてまいりたいと思います。ありがとうございました。
#39
○紙智子君 日本共産党の紙智子です。
 四人の参考人の皆さん、本当に貴重な御意見ありがとうございます。
 それで、最初に、長谷川参考人と脇参考人、お二人に伺いたいと思います。
 日ロ首脳会談について、安倍首相は、領土問題について、互いにそれぞれの正義を何度主張し合っても問題は解決することはできないというふうに述べて、現実を直視したアプローチを取らなければ日ロ間の平和条約締結というゴールにたどり着くことは決してできないということで、共同経済活動を平和条約の締結に向けた重要な一歩を踏み出すものというふうに言われました。私、このお話を聞きながら、互いの正義というんですけど、いや、ロシア側に正義というふうに言えるのかなというふうに思ったり、あるいは、正義をお互いに主張し合ってもというんですけれども、過去にどれだけそういうことがちゃんと深く踏み込んでやり取りされたのかなという思いもあるんですけれども、それはさておいて、このやっぱり主張というのは、結局、領土問題について棚上げすることにならないのかなというふうに思うんです。
 そのことに対しての率直な思いを一つお聞かせいただきたいということと、それからもう一つは、ロシアとの共同経済活動の実現に向けて、根室管内は一市四町で要望を出されていると思うんですね。やっぱり隣接地域の地域振興につなげたいという本当に切なる思いがあると思うんですよ。そういう状況、ちょっと先ほども紹介されているんですけれども、そういう思いもあるかと思います。それで、隣接地域振興につなげるということですけれども、そういうことを本当に前に進めるということにとっても、領土問題というのはやっぱり正面から取り組まなきゃつながっていかないんじゃないのかなというふうな思いもあるんですけど、その辺りのところをお二人から聞かせていただければと思います。
#40
○参考人(脇紀美夫君) 端的に、棚上げにならないかどうかということについて、私がなるとかならないということを簡単に申し上げることについては差し控えたいと思いますけれども、ただ、我々としては、新しいアプローチということで、今、国が首脳同士でもって進めようとしているというようなことの中で、先ほど申し上げましたけれども、それによって我々の元島民の財産権が侵害されてはならないと。と同時に、経済活動だけがどんどん進んでいって、領土問題が置き去りにされることの懸念、これが非常に私ども今現在感じているところであります。
#41
○参考人(長谷川俊輔君) 先ほどもちょっとお話ししたんですが、平和条約締結のための新しいアプローチとしての共同経済活動、これは本当に我々も何回も聞いたんです。
 それで、今これ中心になってやっているのは官邸と経済産業省と外務省なんですね。それぞれちょっと微妙に話が合わないんですが、官邸なんかはかなり自信を持って、後から付いてこいという感じで話はしているんですが、どうも棚上げにならないかという不信も我々はありまして、もう少しやっぱり政府は、なかなかこれ交渉事項なんで皆さんに話はできないかもしれませんが、もう少し理解できるような情報を欲しいと本当に思っています。
#42
○紙智子君 領土問題の根本ということでは、私どもは、領土不拡大という第二次世界大戦のときの戦後処理の大原則を踏みにじって、アメリカとイギリスとソ連がヤルタ協定で秘密協定を結んで、それが千島列島の引渡しということが決められて、それに拘束をされてサンフランシスコ平和条約で日本が当時千島列島の放棄を宣言してしまったというところにあると考えているわけです。
 私たちは、日ロの領土問題の解決のためには、この領土不拡大という戦後処理の大原則、これに背くやっぱり不公正そのものを是正するということ、ここをやっぱり本当に曖昧にしてはいけないというか、ちゃんとそこを中心に据えながら、やっぱり全千島ということで要求をしてきました。それは、戦争で取った取られたの前の段階の、要するに樺太と千島の交換条約によって、平和的な外交によって決まったときがあるわけですから、そこに立って堂々とやっぱり主張していくということが大事だというふうに思っているわけです。
 それで、昨年十月が日ロの共同宣言六十周年ということで、私どもの党としては、打開のためにやっぱり今の領土交渉の方針の抜本的な再検討が必要じゃないかということで提言を出させていただきました。ちょっと今日それをいろいろ説明する場ではないので。
 そこでなんですけれども、下斗米参考人と袴田参考人にお聞きするんですが、今回の日ロ首脳会談で確認をされた共同経済活動について、この共同経済活動というのはエリツィン政権時代にも議題に上ったことだった、検討されたことだと思うんですね。そして、共同経済活動委員会もつくられたと。ところが、立ち消えになってしまったわけですよね。当時、なぜ立ち消えになったのか、そのときのやり取りや要因などについてどのようにお考えなのかということをお二人からお聞きしたいと思います。
#43
○参考人(下斗米伸夫君) 紙先生、どうもありがとうございました。
 九〇年代末の、特に小渕総理の訪ロによってこの共同経済活動を進めるということで、御指摘のような二つの委員会、国境画定ともう一つはその共同経済活動、こういう形で進めようとしたわけでございますが、これはアイデアとしてはやはりロシア側がその少し前から出してきたというふうに最近伺いましたけれども、立ち消えになった理由というのは何なのかというのは私どもも必ずしもつまびらかにしませんが、やはり森政権になりまして、イルクーツク声明ですとかああいったところで、対ロ外交をどういうふうに進めるかということについてむしろ我が方の中にいろんな意見の対立が生まれて、その結果、これを推し進めるという考え方が後退したと。私はあのとき進めるべきだったと思っておりますが、その後、外務省の方でも御案内のとおり混乱が生じたということもあって、むしろこれは国内問題だったんではないかなという感じがいたしております。
 もちろん、このことについてはまだ余りはっきり、いろんな証言だとかそういったことで出ているわけではございませんので、なかなか知りにくいんですが、逆に言いますと、私は、今政治主導で、今、長谷川市長もおっしゃっておりましたけど、官邸が責任を持っているというのは、これはいい意味でも悪い意味でも重要なことだと思いますね。冷戦期の対ソ外交は、実は日本外務省が動かしておりました。したがって、幾ら首相が何を考えようが動かなかったんですね。ソ連課長、欧州局長、審議官ですか、事務次官か、この三人が結束すればどのような総理大臣としても動けなかった。逆に言うと、ソ連崩壊後、次第に政治主導という形で政治家が表になってくるようになる。そういうことを考えますと、十七回も会ったというのは何事だということもありますが、得るものは少ないとは言いますが、それまでは二十五年間、小渕総理の前は二十五年間首相がモスクワに行かなかったという、そういう時代でもあった。その意味では、むしろ地道に交渉をやって政治主導でやるということは、私は、今の政権がやっている、なかなかの考え方だと理解しております。
#44
○参考人(袴田茂樹君) 共同経済活動に対する御質問ですが、九八年のモスクワ宣言、これは小渕さんの、そこで二つの委員会がつくられた。共同経済活動委員会もつくられましたが、それが進展しなかった理由は極めて明快であります。それは、両国の立場を損ねない形でという条件が付せられていたからです。つまり、ロシアの法の下で行うということは日本はしませんよと。これは、元々、プリマコフ外相、後首相になりましたが、彼が強く主張していた意見で、我々、私は安保研の今責任者をしておりますが、日露専門家会議はずっと続けてきて、プリマコフさんたちとずっと意見交換をしておりましたので、そのことはよく知っております。
 だから、理由は、私は、今の下斗米先生のあれとはちょっと違って非常に明快で、だから今の状況と同じなんです。今も両国の立場を損ねない形でという、その条件が付いていますから。だから、私は、これは平和条約に向けての第一歩じゃなくて、新たなハードルを設けた形になるんじゃないですかと。というのは、これを乗り越えるのは大変ですから、恐らく何らかの形で、グレーゾーン的なもので、何かシンボル的にちょっといろいろ工夫はなされるでしょうけれども、本格的な共同経済活動は両国の立場を損ねない形でという、それがある限り、九八年と同じく全く本格的には進まないと見ております。
#45
○紙智子君 今回の首脳会談で、私自身は、領土問題というのはやっぱり棚上げされているんじゃないかというふうに思うわけです。プレス向けの声明にも領土という言葉さえ入っていなかったということがあります。
 それで、領土交渉を脇に置いた経済協力というのはやっぱり前のめりじゃないかという意見もあります。安倍総理は、原理原則という殻に閉じこもって、四島を返さない限りは何もしないという強気な発言を続けていれば、世論の拍手喝采を受けるかもしれないけれども、現状は一ミリたりとも動かないんだというふうに言っているんですけれども、なぜこれまで長年ずっと一ミリも動かないという状況だったのかということでいえば、それがなぜなのかということと、あと、その解決のためには何が必要かということ、もう時間が僅かなんですけれども、最後、もう一度、袴田参考人にお聞きしたいと思います。
#46
○参考人(袴田茂樹君) 先ほど、私、ちょっと批判的な、政府及び官邸について批判的な意見を述べましたが、私自身は、領土問題を解決して平和条約を締結するということに今の安倍首相ほど強い熱意を抱かれた首相はこれまでいなかったと思っておりまして、その件に関しましては私は高く評価している、それは言っておきたいと思います。
 それで、安倍首相が原理原則さえ掲げていればというふうに云々という、ちょっと先ほどおっしゃいましたけれども、日本の基本的な立場という形でこれまで首相、外相それから官房長官がずっと言われてきたことは、これは原理原則じゃなくて、ニュートラルな表現の東京宣言の文言です。四島の帰属問題を、帰属というのは返還じゃないですよ、だからニュートラルなんです、四島の帰属問題を解決して平和条約を締結すると。私は、これは決して原則論じゃないから、原則論を正面に出してしまったら、それは確かにもう交渉のテーブルに相手がのることさえできない、それを条件にした場合。そういう意味では、原理原則と交渉の基本方針はきちんと分ける。
 日本はこれまでは、私は、決して原理原則を出していたんじゃなくて、そういう意味では、ある意味で日本にとってリスキーな、東京宣言は結果について全く述べていないわけですから、だからどういう形で解決できるかについて書いていない、リスキーな、それゆえにニュートラルな、そういう意味で、私は決して日本が固い発言を続けていたから進まなかったんだというふうには見ておりません。
#47
○紙智子君 時間になりましたので、終わります。
#48
○儀間光男君 ありがとうございます。四名の参考人の先生方には感謝を申し上げたいと思います。
 持ち時間が往復十五分しかありませんから、お一人お一人に恐らく一問ずつやると時間切れになるかと思いますので、そういう基本姿勢で質問させていただきたいと思います。
 まず、北方領土についてですが、こういう宣言文やあるいは決議文、要望書などを見ると、実に血の叫びというか心の叫びで、私は、沖縄で復帰を経験した者として、大変に感動と憤りとあるいは頑張らなきゃならないというような思いを共有したいと、こう思っております。
 まず、北方領土問題、何をさておいても、私は外交防衛問題がネックになると思うんです、対ソ連との兼ね合いですから。
 そこで、下斗米先生に伺いたいんですが、日米安保が障壁となってなかなか対ロシア平和条約が結べていない中で、なかなかこの北方領土問題が、テーブルにのってロシア側が真剣に議論しようという姿勢がうかがえないというような感じを日頃持っているんですが、先生の御見解を賜りたいと思います。
#49
○参考人(下斗米伸夫君) 儀間先生、どうもありがとうございます。
 確かにこの冷戦の時代は、日本とロシアとが、当時のソ連でございますが、イデオロギー的にも経済利益的にも正反対のポジションにいて、そして何よりもこの問題があることは、何といいますか、日本とソ連が近づくことに対するある種のブレーキメカニズムでもあったわけですね。したがって、それに対してソ連側でこれを進める利益というのが、デタントのときに多少、エネルギーだとか、ことで出てまいりましたけど、結局、むしろ安全保障、そして付随的に漁業利益、これは全て、何というか、日本に対してマイナスに働きました。
 ソ連が崩壊した後はむしろそういう条件が消えてなくなったわけでございますが、しかし、何しろ中央政府の崩壊現象がずっと続いておりまして、やっとプーチン政権になってから動き出した問題だろうと思います。その意味では、日米安保はともかくとして、むしろロシアの方にも日本との経済利益を求める潮流が今プーチン政権の中で出てきている、これがポイントだろうと思います。
 それは、先ほどから申し上げております、ロシアがアジアシフトをし、アジア国家としてエネルギーなりほかの、第四次産業革命と彼らは言っていますが、そういったことまで含めて、日本との協力のメリットを得ながらアジア国家になりたいという、その意味ではようやく日本とロシアとの利益面での相互性というものが出てきた、これが恐らく一番重要なことでございまして、恐らくその中核になっておりますのが御案内のとおりエネルギー部門ということでございまして、山口会談でも、よく見ますと、平和条約交渉の向こうの中核メンバーにエネルギー会社の大物政治家たちが入っているということでございまして、これが要するにポイントだと私は理解しております。
 その意味では、ですから、今や、日米安保というものとはもちろん無関係ではございませんけれども、プラスマイナスはあるとしても、やはり日ロ関係を動かす固有の利害が出てきたということを我々は注目すべきだと思います。
#50
○儀間光男君 ありがとうございました。時間があればまた一回させていただきたいと思いますが。
 次に、袴田先生にちょっとお願いしたいんですが、私は沖縄で経験したことなんですが、日米の間で沖縄問題は主権が確認されていたんですよ、帰属問題。支配はアメリカにあるけれど、日本は潜在主権は沖縄に持っているというような日米合意がなされて、それから復帰へということで動き出すんですね。
 そういう意味では、この北方領土も、私は、今現実的なことをやりながら、この主権の問題、これは単一主権でも、あるいは方法としては共同主権でもいいと思うんですが、この帰属の問題を決着しないとなかなか進んでいかないような気がしてならないんですが、その辺、御教示をいただければと思います。
#51
○参考人(袴田茂樹君) おっしゃるとおり、私も最初から述べておりますように、北方領土問題の本質は、もちろん島民の問題でもあるし、漁業の問題でもあるし、資源の問題でもあると、それを決して軽く見るわけじゃありませんが、しかし、その本質は主権侵害にどう対応するかという、そういう問題だと。沖縄の場合、潜在主権、認められたと。
 日本でも、川奈会談の提案は、ある意味で、択捉島の北に国境線を認めれば返還の時期、様態は柔軟に考えるという、そういう提案をされたと、これはまだ公式的ではないんですが、関係者は皆述べておりますが、それはおっしゃる意味での潜在主権だと思うんですけれども、私は、しかし、今、日本の政府はそれを公式の立場にはしていないし、してはならないと思っている。東京宣言のしっかり立場を守るべきだと思っているんです。
 ただ、外務省の先ほど言いました「われらの北方領土」には、そこの、川奈提案のその文言が入れられておりまして、日本の政府は今どこにポイントを置いているんだろうかという。川奈提案はロシア側が一旦蹴っているわけですから、そういう意味では、その辺を、おっしゃった問題を日本はきちんとすっきりさせる必要、これは政府にも外務省にもあると思います。
#52
○儀間光男君 ありがとうございます。
 それでは、一通り進んでいきたいと思いますが、脇さん、お伺いしたいんですが、これは長谷川市長にも同時に聞いてもいいかと思うんですが、まず脇さんに聞いていただきたいんですけど、島への往来の自由、墓参りの自由含めてなんですが、ビザなしでやっていく、あるいは好きなときに好きな人々でもう行けるというようなことを勝ち取るべきだと思うんですね。そういう意味で、共同経済活動、これをやる中で、私は共同居住区を設けるべきだというふうな見解を持つんですね。
 北方領土で共同経済活動をするわけですから、そこにはロシアの、あるいは日本の資本も行って、雇用も発生するということであるならば、日本の北方領土を中心とする、まさに脇さんたちが行って共同居住区をつくって、ロシアの国の人々も、脇さんたち日本の島の人々も帰っていただき、あるいは居住を持っておって往来するというようなことなどして、島から返せ、返還しろという声が出た方がもっと運動として、あるいは国民の、あるいはロシアに対する訴えがより説得力を持つような、あるいは居住している間にロシアの向こうに住んでいる国民の皆さんとも理解し合う中で、そのとおりだと。一緒に居住をして、向こう、居住区の、これはできるかどうか分かりませんが、日米安保条約の中で地位協定があって、その地位協定を日米で共同運営するというようなシステムなどありますけれど、そういうようなシステムを共同居住区をつくってそこでやっていけないものかどうかということをあらかじめ脇さんに聞き、次に長谷川さんでお答えいただければと、こう思います。
#53
○参考人(脇紀美夫君) 今の共同経済活動と居住区、混住ということも含めてだと思うんですが、私もかつて四歳から七歳まで、最後の引揚げの三年間はロシア人と一緒に住んでおりました。そういう意味ではある意味で混住という形になるかと思いますけれども、それで、この経済活動がどんどん仮にお互いに順調に進んでいくと、その延長線上にはそういうこともきっとあり得るのかなと思いますけど、今、この段階でそういう形を我々元島民として求めているということでもありませんし、そうなってほしいというふうに思っているわけではありません。これはあくまでも領土の問題ですから、主権の問題であって領土の問題で、この辺の基本的なことがはっきりしない限り、我々が今ここで居住すべきとかしてもいいとかということにはならない。
 ただ、我々元島民はもう八十何歳になっているという状況の中で、二世、三世、若い人たちはそういうような考えを持っている人が最近はかなり多くなってきているということもこれはまた事実であります。したがって、将来そういうことも恐らくテーマというか、議論されていくことにはなるんだろうというふうに思います。
#54
○参考人(長谷川俊輔君) 今、脇理事長が申しておりましたとおり、実はそこら辺についてはまだ国から、将来、共同経済活動のスタンスというのを示されていないんですね。ただ、我々が求めているのは、共同経済活動をするんであれば、少なくとも日本と北方四島の住民の自由往来は必要だと。これは是非きちっとそのための船舶とかそういうものは用意してほしいという要望はしていますけれども。
 最終的には共同統治というような話もあるだろうということなんですけれども、まだ、共同居住地を設けて、そうなれば当然そういう、実際に住む、日本人があちらに行く、あるいはあちらの方が根室管内に居住するということを想定されると思いますけれども、今のところ、我々そこまではちょっと想定外の段階です。
#55
○儀間光男君 ありがとうございました。
 心配したのは、経済活動が先行して領土問題が置き去りにされはしないかという心配が根室管内一市四町の皆さんの中にあるというふうな理解をしましたから、そういうことであるならば、いっそ共同居住区をつくって、あるいは混住区とおっしゃったんですかな、というのをつくって、置き去りにされないようにということで実効支配していく積極性があっていいんじゃないかと思ったりしましたから聞いたんですが、どうもそういう状況にないようですから、失礼をいたしました。
 それで、もう時間ないんですが、下斗米先生に、日ロの平和条約が締結がされていなくて、これが障害になっているということはそのとおりだと思いますし、そうであるならば、日ロ平和、米ロ平和、こういうことにならないというと、平和条約の締結が北方領土の返還問題のネックになるとするというと、日ロ米が共同、何ですか、平和条約でも結ばぬというと、これはなかなか大変だなと思うんですよね。さっきも言ったんですが、現実的なものを進めながらこういう主権やら何やら動かすことも同時にやらぬといかぬと思うんですが、先生、御見解を。
#56
○参考人(下斗米伸夫君) 儀間先生、全く賛成でございます。
 先ほども私申し上げましたように、これは、平和条約というのは連合国との交渉の一番最終ページという側面を持っておりまして、トランプ政権とアメリカがぶつかっている方が日ロ関係が改善されるいいチャンスだとおっしゃる方もおられますが、私はそうは考えません。
 むしろ、今の状況と申しますのは、やはり米ロ関係がこれほど、ロシアの今の大体の国際政治学者たちは、これ以上悪くならないようにどうしたらいいかというふうになっていて、かつての僅か数か月前ほどのグランドバーゲン、つまり、経済制裁解除とクリミア問題の解決というような、そういう話合いをしようという雰囲気すら何か今はブロックされている状況でございまして、その意味で、私どもにとってある意味で救いなのは、これはまだよく分かりませんが、今のアメリカの国務長官が、ティラーソンさんというのがサハリン1の責任者であって、世界のエネルギーという観点からグローバルな視点を依然として持っているということだと思います。
 この問題は、ですから、今までは地政学だけの問題でございましたが、これからエネルギー協力、北極海を含む、これを重視した、そういうエネルギーの地経学との関係も出てきますので、その意味では、アメリカからシェールガスがひょっとしたら日本にも来るかも分かりませんし、そういったようなことのうまく話合いというのがこの基盤として成り立つんじゃないか。その意味で、日米ロというような話合いも、やはり北東アジアの枠組みとして、実際そういうプロジェクトが一・五チャンネルで動いていると思いますが、そういう方向でやはり問題を、緊張緩和と経済協力、こういうふうなことをアジアで一刻も進めたいと思って、進めるべきじゃないかと理解しております。
#57
○儀間光男君 ありがとうございました。
 袴田先生、済みません、もう一回やろうと思ったんですが、時間切れです。済みません。
#58
○アントニオ猪木君 元気ですか。元気があれば辛抱強く交渉もできると。しかし、もう先ほどからお話が出ていますが、もう何十年もたって、この領土問題を含めて逆に、先ほども先生方から話があったとおり、この問題は逆戻りしちゃっているんじゃないかと感じます。
 私も、一九八九年に政治の場に出たときにロシア関係をまず最初に中心にやらせてもらって、クレムリンにも何回か招かれたこともありまして、基本は、私の場合は、スポーツ交流を通じて世界平和という、人が反対できないというテーマで入るものですからね。
 そこで、今日は順番で質問させていただきますけれども、長谷川参考人に、昔は、ちょうどもう六十年近くになりますが、全国を旅をしていまして、釧路とかあの辺も興行で回ったことがあります。そんな中で、イクラが食べたいと言うと小さい小型のトラックにいっぱい積んで持ってきてくれて、五キロ、十キロの箱でですね、カニが食べたいと、そんな時代だったんですが、今は多分そんなに捕れないと思うんですが、先ほど同僚議員からも質問が出ていましたが、要するに、この漁業権という問題で、私なりのあれで、一つ次の段階になって、いい話になっていけば、これを海洋牧場というかそういうような発想で、どちらにとってもメリットがあるというような案で提案したらどうかなと思うんですが、参考人の意見を聞かせてください。
#59
○参考人(長谷川俊輔君) 今先生がおっしゃった海洋牧場、実際に我々が今、国に要望している中では重要課題の一つとして取り上げておりまして、根室も、カニもそうですが、全ての魚、北方四島がまだ日本領土だった時代、北方四島だけで四十万トンの魚が捕れまして、それが根室に入ってきて、根室は当時、根室近海で十万トンぐらいの魚が捕れましたので、両方合わせて五十万トン、それを缶詰にしたり加工して、国内だけでなく中国とかヨーロッパの方にも輸出していた。それが、五十五万トンぐらいだったのが、今は、去年の水揚げが、もちろん北方四島の部分が入っていないので当たり前かもしれませんが、六万七千トンまで落ちています。十分の一まではいかないですが、一五%ぐらいのところまで漁獲が落ちています。
 したがって、北方四島が返ってきても、返ってきてもというのは、今の共同経済活動をするとしても、実はロシア側も漁船が北方四島の近くで魚を捕って、根室に輸出してきているんですよ、もう毎年、ウニとかカニが中心なんですが。それで、大体毎年五百隻ぐらいの漁船で捕った魚を根室に水揚げして、その代金で逆に根室から生鮮食料品を買って、あるいはいろんな買物をして帰るんですが、だから、今もある面ではもう実際にはビザなしで経済交流しているような格好にはなっています。
 ただ、ロシア側も資源がかなり減ってきたので、密漁対策すごくしまして、そのことでカニもかなり根室へ入ってこなくなったということなんですが、海はありますので、資源が減った分を実はロシアの海域を使って共同養殖をしたいと今これ提案しています。カニとか高い魚を是非、ホッカイシマエビとか、そういうものは現実もう今養殖進んでいますので、日本の海では、これは是非、先生がおっしゃった海洋牧場というのは、本当に北方四島全域を日ロの共同でそういうものをつくりたいと我々は強く思っております。
#60
○アントニオ猪木君 ありがとうございます。
 次に、脇参考人にお聞きしたい。
 資料を読みましたら国後の出身ということで、先日もロシア大使ともちょっと話をさせてもらって、前から考えていることは、国後でイベントをやろうという、格闘技、スポーツイベントをという。航空写真で見ると、ちょうど港から入ったところに空き地があるんですね。私、行ったことがないので分からないんですけど、航空写真で見ると。非常に、今船をチャーターをお願いしているんですが、なかなか、もう予約が何年先ということで、日本からそのイベントを見て、島民の皆さんも見てもらって、泊まりは船の上でという、そんな計画を前から持っております。
 そこで、これからのやっぱり人の交流というのが一番大事だと思いますので、その辺の文化交流、スポーツ交流についてお聞きしたいと思います。
#61
○参考人(脇紀美夫君) 現実に、今ビザなし交流の中で、文化交流あるいはいろんなそういうスポーツ的なことも含めて、特に青少年がそうなんですけれども、非常にやっております、盛んに。したがって、これも今後もそういう形で進んでいくことによって、お互いに現島民と我々日本人との間のそういう交流が深まっていくんだろうと思っています。
 したがって、ビザなし交流が始まって二十数年たつんですが、お互いに、もう現島民と、ロシア人と日本人との間のそういう交流も含めた中での信頼関係というか、個人個人の信頼関係というのは深まっているんだというふうに思います。したがって、今後はそういうことの、イベントという話がありましたけど、それは私ども元島民がどうするこうするということではないんでしょうけれども、当然、これはビザなし交流も含めた中で今後も盛んに進んでいっていただければいいなと思っています。
#62
○アントニオ猪木君 次に、下斗米参考人にお聞きしたいと思いますが、ノルウェーのさっきスピッツベルゲンという話が出ましたが、大変すばらしい話だと思って読ませてもらいましたが、本当に、先ほど申し上げたとおり、交流、人と人の出会い、特に、今、北朝鮮問題でも、完全にドアを閉めちゃっている状態、全く情報を、正直言うと、私なんかから見ると外務省に入っている情報は全然的確じゃないなという。そういう中で、人の交流を高めていくという部分で、一つに、ロシア人気質というものをこの前も質問させてもらいましたが、とにかくロシア人の、先ほど信用するかしないかという問題もありましたが、やっぱりウオツカをあおって、ロシア人と勝負するには体力が要るよという、とにかくウオツカで、佐藤優さんというのが昔いて、一緒に、ロシア人をみんなウオツカでぶっ飛ばしたという、彼も本に書いていますけど、そんな歴史の中で、やっぱり今後、外交の在り方という部分についてどうお考えか、ロシア人との付き合い方という部分で。
#63
○参考人(下斗米伸夫君) 猪木先生、どうもありがとうございます。
 最近、ロシア人はウオツカを余り飲まないようになりまして、この八月、学生を極東に連れていくんですが、もうあらかじめ、もう禁煙領域も増えているし、ビールぐらいも十時ぐらいになったら閉めちゃうということで、なかなか人間的交流がそこまで行かないのは残念でございますが。
 冗談はさておいて、やはり一番の問題は、先生が御指摘のように、日ロ間の人的交流の幅が、あるいは量が少な過ぎて、例えば日中、日韓、これは毎日一万人以上の交流があるとすれば、往復で十四万人なんですね。だから、二週間分なんです。したがって、行く人は行くんだけれども、それ以外の人が、全くロシアというのはどういう人なのかというのが、これは皮肉にも、抑留時代の人たち以降、人間的交流のチャンネルが減ってしまって、経済交流というのがこれから進むことを期待しておりますが、スポーツ交流というのは日本とロシアの中でもやっぱり非常に重要な要素ではないかと思います。
 有名な山下さんはプーチン大統領の非常にいろんな意味での交流のチャンネルをおつくりいただいていますが、スポーツというのも重要な経済でございますので、そういったところから日ロ関係が動くことを私も祈念しております。
#64
○アントニオ猪木君 八九年に、オリンピックで活躍した選手が引退して年金生活ということで、彼らをもう一回プロの世界にということで交渉しまして、それで契約を結んで最後の確認ということで行ったら、状況が変わっていて、もう何億のお金でサッカー選手が契約したよとかこうとかと。見ている前でその契約の紙を破いて帰ってきましたが、そのときに偉い方が出てきて、何を怒っているんだと。あなたね、約束したことをこれで破るのかよというんで。
 そんなことから、やっぱり付き合い方という部分で袴田参考人にお聞きしたいんですが、ロシア人との付き合い方という、ここはなかなか難しいですけど、本当に、今の外務省の批判ではないんですが、外務省も、やっぱり男を張るみたいな付き合い方をいろんな国でやってこられないと、要するに、外務省だけの枠の中ではなかなかこれから国際交流も含めて難しいのではないかと思います。
 そこで、そこの、さっきウオツカの話も出ましたが、けんかの話というか、やはり外交というのはどうあるべきかという。非常に我々が、これから特にこの北方領土問題は、もう先ほども、何遍も重複しますのでお聞きしませんが、そういう中で、何とか先ほど言ったスポーツ交流を通じたり、あるいは二島返還、当時、八九年に二島平和利用という私は案を出したんですね。四島一括返還というのが当時、そのときの皆さんの意見でしたが、そういう中で、何とか平和利用という部分で、今、宇宙ごみがもうすごいですね、基地を四島のどこかに置いて、やはりこれは世界が反対しないだろうという部分では、宇宙ごみの回収ということで、ちょっといろいろ資料も持ってきましたが、これもこれから大きな問題になりますが、その点についてお聞きしたいと思います。
#65
○参考人(袴田茂樹君) 人的交流とともに、この北方四島では法的問題があっていろいろ難しい側面はありますが、北方四島に限らずあらゆる面での交流を広げ深める、これはもう基礎の基礎だと私は思っておりますので、今、下斗米先生がおっしゃったように、余りにも日ロ関係、そういう人的交流が今少ない。これは非常にまずい状況だと私も強く思っています。
 私自身は、五年間、ソ連時代、向こうで生活して、いろんな人間関係をこれまで継続して持ってきているものですから、そのことを特に強く感じております。
#66
○アントニオ猪木君 本当に、これからこういうものを参考にしながら、一日も早い解決と思いますが、もう本当に正直言うと大変難しい問題であるという、領土問題ですから。この辺は、私も申し上げました、また参考人のお話の中で、できるだけ交流を高めていきながら、人と人との出会いという、そんな意味で、先ほど大使の話もしましたが、来年ならもしかしたらロシア側もオーケーするかもしれませんよということを言ってくれましたので、何とか、今年はもう無理ですけど、来年辺りにイベントを成功させようという計画で今考えておりますが。
 そんな中で、本当に今日はありがとうございます。
#67
○糸数慶子君 沖縄の風、糸数慶子と申します。よろしくお願いいたします。
 本日は、四人の参考人の方々には貴重な御意見を拝見させていただきまして、ありがとうございました。
 順にお伺いをしたいと思います。最後ですので、ちょっと重なるところがあるかもしれませんが、よろしくお願いしたいと思います。
 まず、長谷川参考人にお伺いいたしますが、この北方四島における共同経済活動に関する要望の中で、特に優先順位や期待が高いものをまずお述べいただきたいと思います。
#68
○参考人(長谷川俊輔君) 私ども、今、国に要望しているのが十分野で、項目にしますと百五十七の項目を提案していまして、まだそれに対しての回答は来ていないんですが、その十分野の中でも漁業、それから、先ほど海洋牧場の話がありましたが、海面養殖、観光、医療、水産加工、この五点が、根室市や北方領土の隣接地域は漁業が基幹産業のところが多いものですから、どうしても漁業を中心にこのような重点要望事項となっております。
#69
○糸数慶子君 脇参考人にお伺いいたします。
 千島連盟が元島民の方々を対象に実施している援護対策事業の中で、戸籍、それから残置不動産相続、そして融資制度、この利用などについて、具体的にどのような相談が多く寄せられているのでしょうか、お伺いいたします。
#70
○参考人(脇紀美夫君) 今の御質問の中で、特に戸籍という部分では、今、戸籍を根室市役所で取り扱っていただいて、北方四島に本籍を移すとかというようなことは実際にやっていますね。
 特に我々元島民の間で一番要望というか、今後課題になっているのは、融資制度の問題です。特に北方領土対策協会の融資制度の問題。これはどういうことかというと、いろいろ、修学資金であるとか、建物の建築資金であるとか、借入れできる制度にはなっているんですが、元島民、そしてその後継者一人に限定されているわけですよ、二世、三世が何人いようと。そうすると、家族の中でいろいろ問題が出てくるわけですね。元島民と一緒に住んでいたにもかかわらず、自分がその後継者というか融資の対象にならないという、そういう事例もあるわけですよ、現実に。したがって、これを何とか、元島民の子供、孫、要するに、民法に規定しているような相続の問題との整合性というか、必ずしも整合性にはならないんでしょうけれども、複数以上にしてほしいと、できれば全部にそういう権利を与えてほしいと、これが一番、今、千島連盟の中で問題になっている部分であります。
 したがって、二世、三世に今後のそういう千島連盟の運営なり事業を委ねざるを得ないというような状況の中では、それも一つの大きな議題というか課題になっているということで、これを解決したいと。そのことによって二世、三世にも頑張っていただけるんだというふうに思っていますので、我々元島民はもう八十二歳、三歳となっていますから、しかし、これはもう時間がありませんけれども、先ほど猪木議員からもお話があったように、元気で粘り強く、諦めずに頑張っていきたいと思っていますので、よろしくお願いいたします。
#71
○糸数慶子君 ありがとうございました。
 北方四島を事実上管轄するサハリン州政府と中央政府とのこの力関係がどのようになっているのか。これ、墓参やそれから自由訪問で、現地の出入域手続等においてロシア側の態度は硬化しているのではないかというふうに言われたりもいたしますが、これは中央政府の意向なのか、それとも現地が独自の路線を取っていると見るべきなのか、下斗米参考人、袴田参考人、お二人にお伺いいたします。
#72
○参考人(下斗米伸夫君) 糸数先生、どうもありがとうございます。
 プーチン政権になって一番大きな、顕著な特色というのは、それまで地方政府が事実上野放しだったのを上からコントロールするというやり方でやってまいりました。ただ、極東地域全体がそうでございますけれども、この地域はやはりモスクワから遠過ぎる、それと同時に、やはり派遣できる中央政権のリソースが足りな過ぎるというようなこともございまして、とりわけサハリン政府はやはり、やや特殊な事情でございますが、エネルギー資源が豊富であること、もう一つは漁業関係の利害、これはもうお二人の方から御説明ございましたが、これが非常に特殊な形で日ロ関係に余り好意的でなかったという事情がございまして、その意味でサハリンの世論というのはやや日本に対して厳しい状況があったと思います。
 ただ、今、先ほど私ちょっと申し上げたかと思いますが、やはりこのエネルギーというのがこれまた何らかの形で日ロ関係の切り結ぶポイントになるのではないかと思うんですが、そういう方向からやはり少し緩和といいますか、日ロ関係改善の方向も出てきていて、そういうことを考えますと、中央のコントロールと同時に、地方のエリートとの関係というものも少し軟化しているのかなという感じが私はしております。
#73
○参考人(袴田茂樹君) サハリンが北方領土問題の本質に関わるような部分でプーチン大統領及び中央の意向とは異なった行動をするということはあり得ません。
 ただ、サハリン州の雰囲気はソ連時代の雰囲気を濃厚に保っています。したがって、改革派がリーダーシップを取っていた頃は、例えば領土問題等で、クナーゼ次官だと九〇年代の初めなんですけれども、外務次官、彼が日本との関係を何とかしようとしている頃などには、サハリンの雰囲気は、クナーゼは国賊だと言わんばかりの、そういう雰囲気がありました。改革派がリーダーシップを取っていた頃です。
 しかし、最近、プーチン大統領がかなり大国主義的なナショナリズムの雰囲気を強く出しているので、サハリン州がそういう反発をするということはありませんが、ただ、共同経済活動に関しても、サハリンの中では、一方でそれを歓迎する、大いに日本も来ていろいろやってほしいというのとともに、日本のプレゼンスがこれで強まるんじゃないかという、これはソ連時代的な警戒心、そういう人たちもいて、サハリンの中の今の状況は単一ではありません。
 以上です。
#74
○糸数慶子君 先ほどもありましたけれども、現在のこの北方領土の交渉なんですが、これは日ロ両政府の個人的関係に依存し過ぎということを危ぶむ面もあるわけですけど、今の日本政府は一体として取り組んでいるんでしょうか。これ、袴田参考人にお伺いします。
#75
○参考人(袴田茂樹君) 基本的に、領土問題の解決は両国首脳の決断によるものである以上は、両国首脳の信頼関係、それからそれぞれの国における安定した政権の維持というのはこの不可欠の条件だとは思ってはおります。
 ただ、今おっしゃった個人的なあれに依拠し過ぎているのではないか、あるいは国内でちょっと他の省庁あるいは組織とどういう関係になっているかという問題ですが、これは今非常に私も懸念している問題で、外務省と官邸が必ずしも一緒ではない。それから、外務省出身の官邸の中の人も、経済関係の省庁の出身者と必ずしも意見が一致するわけではない。今度は、官邸の中では、八項目等の経済プロジェクトに関しては経済関係の省庁の人はもう行け行けどんどんで、つまり、主権問題には彼らはさほど関心がなくて、そういうプロジェクトが進めば自分たちは一つの主役になれるわけですから行け行けどんどんになると。そういういろいろな側面がありまして、私自身もちょっと、日本の政府、外務省、官邸、首相が必ずしも対ロ政策で今一体化していないことをちょっと懸念しております。
#76
○糸数慶子君 下斗米参考人にお伺いいたします。
 先ほどもこれも出たことではあるんですが、これまでに共同経済活動という提案は出たわけですけど、実際に実現しなかった原因はどこにあるというふうにお考えでしょうか。
#77
○参考人(下斗米伸夫君) 糸数先生、これは今申し上げたとおりでございまして、やはり政権が替わったことによって方針が変わったと。
 しかし、私はこの問題は、やはり今までの日本外交の問題というのは、全て外務省の中に、いろんなことをリーダー、政権の方がやってきて、したがって外務省の中に自己矛盾が、どうやって進めるのか、2プラスアルファでいくのか4マイナスベータか、こういったような矛盾が沈殿していって、それで、これが森政権から小泉政権になるときにいろんな問題があったと理解しております。その意味では私は、今、これは袴田先生への御質問と重なるわけでございますが、やっぱり政治主導でやるというのは一つの見識だと思うんですよね。
 ある政権が、自分の理解する世界像に従って、こういう形で日ロ関係を進めるということを明示して進める。他方、ロシアというのは、これは大統領外交の、憲法で決まっておりますので、大統領しか決められないんです。したがって、これに見合う形で、安倍総理が自分自身のブループリントに恐らく従ってお進めになっている。その全貌は我々は必ずしもまだよく分からないわけですが、恐らくワンサイクルかツーサイクル遅れて知るようになっているのが現状だとは思いますが、その意味でも、やはり政治主導で今は特にプーチンとの関係を含めてもやらざるを得ないというのがそれなりに、やはり外務省は外務省で逆に課題を遂行するという形で整理される方向にあるのかなというふうに理解しております。
#78
○糸数慶子君 時間もありませんので、最後に下斗米参考人に今の続きでお伺いいたしますけれども、それでは、このロシアの国内事情、それぞれあるわけですけれど、今後の動向を見ていく上で、大統領以外に例えばキーパーソンになるような人物、注意すべきファクターはあるのでしょうか。
#79
○参考人(下斗米伸夫君) 今ちょっと申し上げたかと思いますが、日ロの今の国境、平和条約問題の交渉には最近ずっとエネルギー関係のトップが入っている。セーチン・ロスネフチ社長ですか、それから、あるいはガスプロムの責任者と、こういう人たちが入っているということを我々は注視すべきだと思います。
 と同時に、そういうプロジェクトが同時に進行していると思いますので、そういったところがある種の、今のロシアの政経が一緒になって、対アジアシフト、対日関係というふうに動いていると理解してございます。
#80
○糸数慶子君 ありがとうございました。
 時間になりましたので、終わりたいと思います。ありがとうございました。
#81
○委員長(藤井基之君) 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。
 参考人の皆様に御礼の御挨拶を申し上げます。
 本日は、長時間にわたり貴重な御意見をお述べいただきまして、誠にありがとうございました。委員会を代表して厚く御礼を申し上げます。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後三時二十六分散会
ソース: 国立国会図書館
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