くにさくロゴ
2017/05/09 第193回国会 参議院 参議院会議録情報 第193回国会 法務委員会 第10号
姉妹サイト
 
2017/05/09 第193回国会 参議院

参議院会議録情報 第193回国会 法務委員会 第10号

#1
第193回国会 法務委員会 第10号
平成二十九年五月九日(火曜日)
   午前十時開会
    ─────────────
   委員の異動
 五月九日
    辞任         補欠選任
     中泉 松司君     自見はなこ君
    ─────────────
  出席者は左のとおり。
    委員長         秋野 公造君
    理 事
                西田 昌司君
                山下 雄平君
                真山 勇一君
               佐々木さやか君
    委 員
                猪口 邦子君
                自見はなこ君
                中泉 松司君
                古川 俊治君
                牧野たかお君
                丸山 和也君
                元榮太一郎君
                柳本 卓治君
                有田 芳生君
                小川 敏夫君
                仁比 聡平君
                東   徹君
                糸数 慶子君
                山口 和之君
   国務大臣
       法務大臣     金田 勝年君
   副大臣
       法務副大臣    盛山 正仁君
   大臣政務官
       法務大臣政務官  井野 俊郎君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        青木勢津子君
   政府参考人
       金融庁総務企画
       局参事官     栗田 照久君
       法務省民事局長  小川 秀樹君
       財務省理財局次
       長        中尾  睦君
       厚生労働大臣官
       房審議官     土屋 喜久君
       国土交通省航空
       局次長      平垣内久隆君
    ─────────────
  本日の会議に付した案件
○政府参考人の出席要求に関する件
○民法の一部を改正する法律案(第百八十九回国
 会内閣提出、第百九十三回国会衆議院送付)
○民法の一部を改正する法律の施行に伴う関係法
 律の整備等に関する法律案(第百八十九回国会
 内閣提出、第百九十三回国会衆議院送付)
○参考人の出席要求に関する件
    ─────────────
#2
○委員長(秋野公造君) ただいまから法務委員会を開会いたします。
 政府参考人の出席要求に関する件についてお諮りいたします。
 民法の一部を改正する法律案及び民法の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案の審査のため、本日の委員会に、理事会協議のとおり、法務省民事局長小川秀樹君外四名を政府参考人として出席を求め、その説明を聴取することに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#3
○委員長(秋野公造君) 御異議ないと認め、さよう決定をいたします。
    ─────────────
#4
○委員長(秋野公造君) 民法の一部を改正する法律案及び民法の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案の両案を一括して議題とし、質疑を行います。
 質疑のある方は順次御発言願います。
#5
○真山勇一君 おはようございます。民進党・新緑風会の真山勇一です。
 大型連休も明けまして、いよいよ委員会もこれから慌ただしくなってくるのではないかというふうに思いますけれども、連休で英気を養った皆さんとともに、また健康に注意して頑張っていきたいと思います。よろしくお願いいたします。
 今日は、この民法、いわゆる債権関係をめぐる改正、これは非常に大きな改正です。しかも、明治二十九年以来の百二十年ぶりの改正ということで、期待もやはり大きいのではないかというふうに思っています。評価もできる部分もありますけれども、やはり、百二十年ぶりに改正ですけど、もう少し何とかならないのかというふうな、そういう点も多々あるのではないかというふうに思っております。
 そうした辺り、多岐にわたっているのでいろんな問題取り上げなければならないと思いますけれども、今日は、私は、その中から特に第三者保証、つまり、お金を借りるときに保証人になった人が様々なことに巻き込まれるということが起きている、それが悲劇にもつながっているというようなことが言われております。こうした問題を取り上げたいというふうに思います。
 何よりも、民法のこの債権関係というのは、やはり一般の人たちというのはなかなかそんなにそういう場面には遭遇しないと思うんですね。なかなか遭遇しないけれども、やっぱりそのときは、かなり、例えばこういう借金の話になると、お金を借りるという話は、額もきっと大きいときもあるでしょうし、そのお金をやっぱりどうやって返していくか、人生の中では様々なことが起きて、どんなことが起きるか分からない、そうしたこともありまして、やっぱり不安もありながら、しかも、お金を借りるに当たって保証人になってくれないかなどというふうに頼まれたらやっぱりなかなか断り切れないという、そういう人間関係もある、そうしたことがやっぱりこの民法のこうした債権の部分にも大きくあるんじゃないかというふうに思っています。
 特に今回この第三者保証、これは、これまでもこの問題言われてきたわけですね。連帯保証をして、そのために莫大な借金を背負って大変なことになってしまった、人生が狂ってしまったということがこれまでもあって、そのことを何とかできないかということが言われてきたわけです。今日はその辺について、新たに改正された動きもあります。この第三者保証をより危険を排除するという意味で、新たに公証役場、公証人の公正証書を作るということが出てきております。その問題を私ちょっと取り上げたいというふうに思います。
 まず、公証人制度というのは余りやっぱり一般の人というのはなじみがなくて、私なども、メディアで仕事をしていても公証役場というものは、私、この言葉に初めて接したのがオウム事件のときだったんですけれども、公証役場って一体何なんだろう、区役所とか市役所は分かるけど、役場と付く以上は何か公の組織なんだろうかというようなこともありまして、そのときに初めて公証役場ということがあって、そこに常駐しているのが公証人、特別職の公務員ということも伺いました。そういう方がいらっしゃる、言ってみれば公務員ということなわけです。その方について、ちょっと少し質問させていただきたいと思うんですが。
 今回、この第三者保証の問題、やはり、これまでいわゆる連帯保証になってしまって、会社に関係していないのにもかかわらず、特に中小企業とか零細企業、個人商店なんかにそういうことがあるというふうに言われているわけですけれども、そのときに、借金をもう少しきちっとした形で責任を持ってもらう、あるいはその責任の大きさをきちっと知ってもらうということでこの制度が設けられたというふうに伺っております。
 公証人というその仕事についてお伺いしたいんですけれども、公証人というのは一体どんな人がやっているのか、その身分、あるいはどんな基準で選ばれているのかというようなこと、それから、当然その選ぶ過程というのは何か公開されたようなシステムになっているのか、その辺りの基本的なことからまずちょっとお伺いしたいと思います。
#6
○政府参考人(小川秀樹君) お答えいたします。
 公証人は、法務大臣が専門的な法的知識、経験を有するなどの一定の任命資格を有する者の中から適任と認める者を任命することとされております。具体的には、公証人に多様で有為な人材を確保すべく、公募を行った上で、応募のあった者の中から公証人法の規定に基づきまして、裁判官、検察官、弁護士の法曹資格を有する者というパターン、それからもう一つが、多年法務に携わり法曹に準ずる学識経験を有する者で、検察官・公証人特別任用等審査会という審査会がございまして、この審査会の選考を経た者、この二つのパターンで公証人を任命しております。
 任命の選考に当たりましては、法曹有資格者の公証人につきましては、法曹資格を有する応募者に対して面接を行い、公正中立に公証の事務を行う者として適任と認められる者を公証人に任命しております。
 また、法曹有資格者に準ずる公証人につきましては、先ほど申し上げました審査会において選考が行われておりますところ、その審査会の定めに従いまして、応募につき、書類選考により多年法務に携わった経験を有するかどうかが判定されました上で口述試験が実施され、必要な学識経験と適格性を有する者として審査会の答申が得られた者を公証人に任命しております。
 公証人の選任過程につきましては、先ほど申し上げましたとおり公募の手続を採用しておりまして、その中で採用予定地などを公開しているところでございます。
#7
○真山勇一君 公証人、公証役場の数とも関連してくるんでしょうけれども、定員といったもの、人数の規定などがあるのかどうかということと、それから、今、司法関係の方がなることが多いというふうな話でしたけれども、例えば法務省とか裁判所のOBでない民間、いわゆる民間の方というのは公証人になる資格があるのか、そしてそういう方はいらっしゃるのかどうか、伺いたいと思います。
#8
○政府参考人(小川秀樹君) 法務省、裁判所のOBでない方を民間というふうに称しますと、民間の方も、先ほど言いました法曹資格を有する者であっても有しない者であっても資格はございます。民間出身の公証人は、現在数でございますが、公証人の現在員が今四百九十六名でございますが、前職が法務省職員又は裁判所職員以外であった者は三名でございます。これらはいずれも前職は司法書士でございます。
#9
○真山勇一君 特に今伺った感じでは、法務省とか裁判所出身の方に比べると、民間の方、今司法書士三人ということですが、かなり数が少ないんですけど、これは何か理由はあるんですか。
#10
○政府参考人(小川秀樹君) 平成十四年から公募の手続をスタートさせまして、民間の資格の方についても、法曹資格を有しない準ずる方につきましても一定の基準を設けて、十四年から具体的な形で採用の対象としているところでございます。もちろん前職との関係などもございますので、当然のことながら公務員として兼職禁止、職務に専念する義務がございますので、そういった理由からもなかなか民間の方から来られるということに難しい問題があるのかなというふうには考えているところでございます。
#11
○真山勇一君 兼職ができないということなので、やはりそうなるとなかなかほかの仕事をやっていると、司法の仕事をやっているとなかなかできないということは分かりますけれども、公開で公募、いわゆる公募されているということなので、人材も広く是非集めていっていただきたいというふうに思うんですが。
 これ当然、今回の改正案、第三者保証ということで公正証書を作るということになるわけですけれども、公正証書というのは当然手数料が掛かると思うんですが、大体どのぐらいの手数料が必要ということなんでしょうか。
#12
○政府参考人(小川秀樹君) お答えいたします。
 今回新たに設けられます保証意思宣明公正証書の手数料ということでお答えいたしますと、これは一律一万一千円とすることを予定しております。公正証書につきましては、例えば契約などの目的の価額によって手数料の額が決まるということとしておりますが、今回につきましては目的の価額が算定不能な法律行為に係る公正証書と同様に扱うということで、先ほど申し上げましたように一万一千円とすることを予定しております。
#13
○真山勇一君 やっぱりこういう法律関係の書類を作るというのは、一般の消費者というのはなかなか、どのぐらい掛かるのかなとか、相談しただけでどのぐらいお金が掛かるのかなとか、いろいろあると思いますので、やはりそうした、お金どのぐらい掛かるかというようなことは知っておく必要があるんじゃないかということでちょっとお尋ねをさせていただきました。
 で、いわゆる第三者保証、これまで、やっぱり零細企業の方とか個人商店の方が銀行あるいは地元の金融機関からお金を借りるときに、その保証人になってほしい、いわゆる連帯保証人になってほしいと言われたときに、知り合い、友人から頼まれたり、あるいは親戚だったり、あるいは身内、特に配偶者ということもあるわけですね。そうした、頼まれてしまうとやっぱりなかなか断れないということがあって、うっかりかなり多額の例えば借金の保証人になってしまってとんでもないことになったということがこれまで繰り返されてきた、この部分を何とかしてほしいということが今回の大きな改正の一つになっているというふうに思います。
 で、公正証書ですけれども、今回、そうした人たちに対して、やはり借金に当たってこういう条件で借りるんだということを説明する、それを、公正証書というものを改めるということになると思うんですが、例えば新たにできる公正証書ということに、借金に当たってのどんなことを、保証人に頼まれた人物、例えば友人かもしれない、親族かもしれない、あるいは配偶者かもしれない、そういう人に対してどういうような説明をしてどんなような書類を作るということになるんでしょうか。
#14
○政府参考人(小川秀樹君) 書面の作成につきましては、法律、民法で、具体的にどういう事項について口授をし、どういうことについてそれを書き留めるかということについては民法の条文に今回定めております。
 具体的には、保証契約の内容ですとか、そういうものについて公証人の方が確認をし、保証契約の意味についても、つまり主債務者が払えないような場合には保証人自らが払わなければいけなくなるんだということ、そういったことの説明も当然ながらするわけでございまして、具体的には保証契約によるリスクを十分理解してもらうということが重要な点でございます。
#15
○真山勇一君 そうですね、やはりこれまでそのリスクを全然意識しなかったり、気が付かないで連帯保証人になってしまったということがあるわけで、それをなくそうということが今回のこの改正の大きな目的の一つだというふうに思うんですね。
 例えば、そうすると、今おっしゃったような公正証書には、今度新たに作る、つまり、やっぱり知らなかったでは済まないから、保証人になるに当たって、債務者、つまりお金を、保証人に頼まれた、頼んだ人、頼んだ人ですね、お金を借りる本人はどこから幾らぐらいをどんな条件で借りて、もしそれが返せなくなったときにどういうことが起きるんだというようなことを、それの保証人になる対象者に公証人はきちっと説明するということになるんでしょうか。
#16
○政府参考人(小川秀樹君) 公証人の説明の義務の内容について若干申し上げたいと思います。
 まず、一般論でございますけれど、保証人になろうとする者が保証人となるリスクを十分に自覚せずに安易に保証人になることを防止すること、これが非常に重要な点でございます。その観点からは、保証人となろうとする者が主債務者の資力を理解していることが重要であるというふうに認識しております。また、主債務者の事業の見通しなどにつきましても、これを理解しておくことは保証のリスクを適切に判断するという観点から望ましいものと言えるものと認識しております。
 他方で、公証人がどういう点について説明を保証人となろうとする者にするかということでございますが、公証人は、保証意思を確認する際には、保証人になろうとする者が保証しようとしております主債務の具体的内容を認識していることや、保証契約を締結すれば、保証人は保証債務を負担し、主債務が履行されなければ自らが保証債務を履行しなければならなくなることを理解しているかなどを検証いたしまして、保証契約のリスクを十分に理解した上で、保証人になろうとする者が相当の考慮をして保証契約を締結しようとしているか否かを見極めます。その上で、保証意思が確認された場合には保証意思宣明公正証書を作成するが、保証意思が確認することができない場合には公正証書の作成を拒絶しなければならないと、こういう仕組みでございます。
 公証人において、債権者や主債務者などとのやり取りなど、その保証人が保証意思を持つに至った経緯についても確認するのが通常であると考えられ、その際に債権者や主債務者から強く保証人となることを求められたといった事情が判明した場合には保証のリスクを認識しているか否かを十分に確認すべきことも、これも当然でございます。
 そして、ここで言う保証契約のリスクというのは、単に保証契約の法的意味といったものではなく、その契約を締結しようとしている保証人自身が当該保証債務を負うことによって直面し得る具体的な不利益を意味しておりまして、公証人は保証人になろうとする者がこのリスクを理解しているのかについて十分に見極める必要がございます。
 こういった点につきまして十分説明をするということでございます。先ほど申し上げましたように、まずはリスク、保証契約を締結することに伴うリスクをどれだけ理解するかということに重点を置いた説明ということが言えようかと思います。
#17
○真山勇一君 まさに、今回の改正でいうと、この公正証書、公証人によって作られる公正証書は、言ってみれば莫大な借金を背負ってその責任を保証人ということで負わなければならないということを、リスクをしっかりと認識することになると思うんです。
 それで、今おっしゃったことを、確認をするということを今伺ったんですが、やっぱりその部分、とてもお金を借りるということで大事な部分で、これやっぱり説明したとしても、後になってみたら言ったとかあるいは聞いていないとか、そういうことになりかねないというふうに思うんですね。公証人の方は説明したとは思っていて説明してあるはずなんだけど、聞いている方がそれを覚えていないのかどうか分かりませんけれども、例えばそんなことは言われた覚えがない、聞いた覚えがないということになると困る。やはり、そのために一つ公正証書というものが大きな役割を果たすことになると思うんですね。この中にそうしたことを書き込むというふうに考えてよろしいんですか。
#18
○政府参考人(小川秀樹君) もちろん、一定の事項を先ほど申しましたように口授して、その内容を口述していただいたものについて公正証書の中に書くということでございます。
 具体的にどういう形で、どういうふうにやっていくかということにつきましては、施行の前に十分検討した上で具体的な形で通達というものを発出する予定でございます。
#19
○真山勇一君 実際に法改正の前にそういうことが通達で出されるという、これ、私、大事な点の一つだというふうにやっぱり思うんですね。こういう公の一つの書類としてきちっと残しておく、これが今回の大きな役割の一つだと思いますので、是非、これ、お互いにまた言ったとか言わないとかいう話にならないような、そして、公証人の方は責任を持ってこの書類の作成に当たるということを基本に置いていただきたい、消費者を守るという立場をやはり守っていただきたいというふうに申し上げておきます。
 今回、そういうことで書類を作っていく。これ新たな制度ということなので、先ほど伺った公証人の数、四百九十六人今いらっしゃるということなんですが、これで多分業務も増えてくるというふうに思うんですけれども、この新たな公正証書を作るというこの作業で、これで現在の公証役場、それから公証人の数で対応できるというふうに考えておられますか。
#20
○政府参考人(小川秀樹君) お答えいたします。
 いわゆる個人の第三者保証人によりどの程度の保証契約が締結されているのかを正確に把握することができる統計などは現在把握しているというわけではございませんが、これは、平成二十五年に行われました参議院の法務委員会における参考人の質疑の中で、全国地方銀行協会の代表として千葉銀行の役員の方が当時の千葉銀行における保証の実数などを答弁しておりまして、この数値を基礎として予測することは可能であるというふうに考えております。
 具体的には、当時の千葉銀行においては、いわゆる経営者本人保証を含む個人保証全体の件数が約三万三千件であるとのことであり、累計として、自発的な意思に基づく申出により経営に実質的に関与していない第三者が保証人となっているものが約五十五件、代表取締役を退いた会長や取締役を退いた実質オーナーなど、経営に実質的に関与している第三者が保証となっているものは約三千五百件であると答弁されております。
 この件数を基といたしまして、一年ごとに新規に締結される保証契約の件数を出した上で、銀行の貸出残高などと対比させまして一定の推計をしたものがございます。全体で申しますと、四万数千件から五万件程度というのが一つの推計でございます。
 これ、全体として今回増えるものということでございますが、本年四月一日現在での公証人の数は四百九十六名でございまして、先ほどの見込まれる件数を現在の公証人の数で割りますと、一人当たり増加する事件数は年間約百件程度というふうに考えております。現在、公証人一人当たりの公正証書作成や定款認証などの主要な公証事件は年間約一人当たり二千百件程度でございますので、年間百件程度の増加であれば現在の体制で差し当たっては対応することが可能であるというふうに認識しております。
 もっとも、以上はあくまでも推計によるものでございますので数値にも一定の幅があることが想定されます。したがいまして、公証全体に対する今後の需要の高まりですとか、その推移などを十分見定めつつ、公証人を適正に配置するように引き続き努めてまいりたいというふうに考えております。
#21
○真山勇一君 それからもう一点、今回の改正でまだ問題点として残っているのが、第三者保証、いわゆるそれについては公正証書を作成するということになっているんですが、その中で唯一例外事例があります。配偶者なんですが、この配偶者について公正証書の作成を例外にしている、この理由は何でしょうか。
#22
○政府参考人(小川秀樹君) 今御指摘いただきました点については、検討の過程でも様々な御意見がございました。
 その中で、中小企業団体や金融機関からは、主債務者が法人であるか個人事業主であるかを問わず、主債務者の事業に現に従事する配偶者については、経営者との経済的一体性や経営の規律付けの観点から保証人となることに合理性があり、現にこの配偶者が保証人となる事例は少なくないことを踏まえ、公証人による意思確認の手続の例外とすべきであるとの強い意見がございました。
 しかし、改正法案では、例外とすべき配偶者の範囲は、法人である事業者の代表取締役の配偶者などは含めないこととしておりまして、あくまでも個人事業者の配偶者であって、事業に現に従事している者に限定して例外扱いをすることとしております。
 この理由でございますが、まず、個人が事業を営んでいる場合には、その個人の財産がその事業に供され、かつその利益はその個人に帰属することとなるわけですが、その個人事業主が婚姻しておりますときは、事業に供した個人の財産及び個人が得た利益は、これはもちろん夫婦別産制が前提ではございますが、その配偶者とともに形成した夫婦の共同財産であると評価され得るものでございます。
 夫婦の共同財産が事業に供されるだけでなく、その配偶者がその事業に現に従事しているのであれば、事業を共同で行う契約などが夫婦間に存在せず、共同事業者の関係にあるとまでは言い難い事例でありましても、財産や労務を事業に投下し、他方で利益の分配を受けているという点で、実質的には個人事業主と共同して事業を行っているのと類似する状態にあると評価することができます。これを家計と経営が基本的には一体だというふうに説明することもございます。
 こういった理由から保証のリスクを、経営状況を理解しておりますので、配偶者の方は、こういった類型の配偶者は、その意味で、保証のリスクについて認識せずに保証人となるということは類型的に低いと、こういう前提でございます。
#23
○真山勇一君 時間が来ておりますのでまとめたいと思うんですが、合理性があるということは分かるんですけれども、やっぱり夫婦といえども今の社会状況でいえば別人格ということもありまして、この辺り問題として今後に残るんですけれども、これについて最後に金田大臣のちょっと見解をお伺いしたいと思います。
#24
○国務大臣(金田勝年君) 真山委員の御質問に対しましてただいま私どもの局長の方からお答えをした事情があったわけですけれども、そういう中で、主債務者の配偶者を除外する理由としては、個人事業主に関しては、経営と家計の分離が必ずしも十分ではない、主債務者とその配偶者が経済的に一体であると見られることが多いことから、配偶者を保証人とすることによって金融機関から融資を受けている事例も現に少なくないというのが実情だということ、それからもう一つは、改正法案の内容として、このような融資の実情も踏まえて、主債務者が個人事業主である場合のその配偶者については、主債務者の事業に現に従事していることを要求して、主債務者の事業内容をなお一層把握可能な立場にある場合に限定して例外として扱うこととしておること、この要件に該当する配偶者につきましては、これを主債務者の保証人とする実務上のニーズも強く、かつ保証のリスクを認識することも可能なものと言えることから、保証人による意思確認の対象としないことに合理性があるという御説明であります。
 なお、こうした立場にあります配偶者が実際に保証人となるかどうかは配偶者の意思によるところがあると、このように考えております。融資を受けることでその家業の事業継続が可能になるといったような事態も想定いたしますと、自らが保証人となることで融資を得たいという配偶者の判断は一概に軽率であるとか安易であるとかは断じ難い面があるのではないかと、このように考えられます。
 したがいまして、私ども法務省としては、改正法案の成立後は、配偶者による保証を含めまして、個人保証に依存し過ぎない融資慣行の確立に向けて引き続き関係省庁と連携をしながら取り組んでまいることにしたいと、このように考えておる次第であります。
#25
○真山勇一君 ありがとうございました。終わります。
#26
○小川敏夫君 民進党・新緑風会の小川敏夫でございます。
 また今日も瑕疵担保の点についてお尋ねいたします。
 前回質問したことを少し整理させていただこうかと思うんですが、私自身の疑問は、これまでの瑕疵担保ですと損害賠償という金銭的なものであったわけですけれども、今度は、それに対して、今度は瑕疵を除去するというような意味の追完請求権というものが新たに認められたわけであります。それで、これも前回もお話ししましたように、本来なら、その瑕疵によって受けている買主側の損害というものは金銭的に評価するとゼロとか非常に微々たるものだというような場合、しかし、それを除去するためには多額の費用が掛かるという場合に、買主の方は金銭的請求ではなくて多額の費用が掛かる追完請求権を行使できるのかと、もしそうであれば少し不合理ではないかというような観点から質問させていただいたわけでございますが、こうした場合、実際に買主側が受けている金銭的な損害と見込まれる額よりも著しく多額の費用が掛かるような追完請求が認められるのかどうか、こうした点についてお答えいただければと思いますが。
#27
○政府参考人(小川秀樹君) お答えいたします。
 改正法案におきましては、引き渡された目的物に契約との不適合があり、売主が担保責任を負う場合には、買主はその修補や代替物の引渡しなどの履行の追完の請求をすることができる旨の規定を新設しております。五百六十二条の第一項でございます。
 他方で、改正法案では、債務が履行不能であるときは、債権者はその債務の履行を請求することができない旨の規定を設けております。これが四百十二条の二でございます。
 この履行不能に関しましてですが、現行法の下で、債務の履行に過大な費用を要する場合にはその債務は履行不能となり得るという解釈論が一般的でございまして、改正法案においてもそのことが前提でございます。
 したがいまして、売主が追完義務を負う場合において、その追完に極めて多額の費用を要するときにはこれは履行不能に当たるものと解されまして、現実に追完をすることを要しないということがあり得るというふうに考えているところでございます。
#28
○小川敏夫君 履行不能といっても、それは技術的に履行不能じゃなくて、要するに著しく多額な費用が掛かる場合には法的な評価として履行不能とみなすと、履行不能として扱うということだと思うんですが、それはかなり明白な場合だと思うんですよね。
 例えばの話、地下に何か埋まっていると。それは、結局建物を建てるについては何の弊害もないんで具体的な損害はないし、上を舗装してしまえば運動場にもなるということで、通常の使用には何にもないと。ただ気分が悪い、あるいは人から言われるのが嫌だという程度のものでしかないと。しかし、それを除去するとしたら八億円掛かるというようなことが今騒がれておるわけであります。これが、じゃ、そんなに不釣合いだったら履行不能として認められないのかどうか、まあ個別の案件だから答えないでしょうけれども。
 ただ、実際に一般論としてはケースがあると思うんですよね。例えば、買主側の損害を百とすると。そうすると、追完請求する場合にその百倍の一万掛かるといったら、それは余りにもひどいから履行不能でいいんじゃないかという気もするけど、買主側の損害を査定したら大体百でしかないと、しかし追完請求したら百五十だ二百だといった場合に果たして履行不能と言えるのかどうか。
 私は、そうした完全な履行をしない売主側の責任も考えれば、簡単に履行不能とは言えないと思うんですよね。だから、はっきりこれはもう余りにも非常識じゃないか、履行不能として扱っていいというケースもあるでしょうし、判例はそういう場合を言っていると思うんですがね。
 だんだんだんだん、だんだんだんだん、その履行請求、追完請求した場合の掛かる費用と現実の損害の差が縮まってきた場合にどこで線を引くのか。少なくとも、損害が百だから、それに掛かる追完に要する費用も百なら釣合いが取れるけど、じゃ、百一以上は全部履行不能になるのかというと、そうじゃないと思うんですね。じゃ、そこ、どこに境目が来るの。それは個別具体的にということになるんでしょうけれども、だけど、そこを、じゃ、それは裁判所の判断に任せましょうというんじゃなくて、そもそも今回の改正の趣旨は、そうして法律の規定がなくて裁判所の裁判例に任せた、判例に任せて解決している部分とかそういうものをなるべく立法化して分かりやすくしましょうと言うんだけど、という趣旨だと思うんですがね。
 結局、そこら辺のところの解釈の指針も何にも入っていないんで結局また判例にお任せになっちゃうんじゃないかというふうに私は考えるんですけれども、そこら辺のところ、何かもう少し具体的な指針とか解釈の基準になるようなものをもう少し明確に示していただけたらなと思うんですが、どうでしょうか。
#29
○政府参考人(小川秀樹君) 今御指摘いただきました、要するに極めて過大な費用を要する場合の履行不能というのは、委員の方からも御指摘ありましたように、言わば評価の問題が大分あろうかと思います。一般的に説明する際も、事実的な不能というよりは社会的に不能と評価されるというような言い方をすることもございまして、そういう意味では、やはり個々具体的な事案あるいは契約の趣旨などに立ち返って判断しないと、そういった評価が非常に難しいというのが現状でございます。
 今回の改正につきましても、もちろん少しでも分かりやすくするということは重要でございますが、判例もそういう意味では、一般論として展開するというよりも、やはり個々具体的な個別の事案に応じて判断しているものでございますので、その中から一定の基準を抽出するというのはなかなか困難な作業だろうというふうに考えております。
#30
○小川敏夫君 また、いわゆる裁判で損害賠償請求をしたところ負けてしまったと。しかし、じゃ今度は追完請求権があるんだから追完請求の裁判をしようと。いわゆる訴訟物の話ですけれども、ここは前回いろいろ学説があっておるというようなお話でしたけれども、もう少し具体的にそこのところの扱いを御説明をいただけたらと思うんですが。
#31
○政府参考人(小川秀樹君) お答えいたします。
 先回も申し上げましたが、いわゆる旧訴訟物理論というのが一般的に裁判実務で運用されているものだというふうに理解しております。
 その旧訴訟物理論の下では、請求権ごとに訴訟物は別であるというふうに理解されております。そのため、旧訴訟物理論を前提といたしますと、売主の損害賠償請求権と修補などの追完請求権とは、これは別の訴訟物になるものと理解しております。したがいまして、一般論としては、例えば売主が訴えを提起して損害賠償を請求し、その請求が棄却された場合でも、売主は新たな訴えを提起して、今度は修補などの追完請求をすること自体、このこと自体は既判力に抵触することはないものというふうに解しております。
 もっとも前訴と後訴、つまり前の訴えと後の訴えで争点が共通するなど、後の訴えが前の訴えの蒸し返しであるというようなケースもあるわけで、こういったケースにおきましては、判例は、個別の事情を踏まえて訴訟上の信義則などを根拠として後の訴えの提起を許容しないこととし、紛争の適切な解決を図っているものと認識しております。そして、売買の担保責任に関する紛争においても、このような枠組みの下で審理が行われるものというふうに認識しているところでございます。
#32
○小川敏夫君 学説で旧訴訟物理論という、旧というと何か昔の理論でもう終わった理論のように聞こえるけれども、実際に今の判例は旧訴訟物理論だから現行の理論ですよね。現行の判例が適用している理論。これを旧、旧とただ学者が言っているだけであって、現行の訴訟物理論であれば、これは両方請求できるわけです。ちょっとそこのところが、だからもう少し整理した方がいいんじゃないかなと。
 同じ瑕疵について損害賠償請求して負けちゃったら、でも、その同じ瑕疵についてそれを追完請求はまた別の訴訟物だから請求できると。理屈ではそうなのかもしれないけど、何か少し実際の実務に合わないんじゃないかというような気もするので、追完請求権というものを新設したところでそうしたところの配慮をした規定も必要だったんじゃないかなと私は感じるんですが、どうでしょうか。
#33
○政府参考人(小川秀樹君) 実務で運用されております訴訟物の理論を前提として請求権が複数ある場合というのは様々ございます。例えば、一般的な請求権競合のような場合でも同じような状況は考えられるわけでございまして、そういう意味では、民事の紛争に関してこのような状況というのは広く生じ得る問題であるというふうに考えております。
 それから、御指摘いただきました問題、民事訴訟における既判力の範囲などに関する問題でありますため、これを実体法であります民法の中で規定を設けて解決するということは、これは技術的にはなかなか難しいものがあろうかと思っております。そのため、御指摘の請求権相互間における処理については、今回の民法中に明文の規定は設けておらないというところでございます。
#34
○小川敏夫君 まあ瑕疵といってもいろいろな態様がありますし、そういうものを一律的に規定するのは難しいというところは分からないわけでもないわけですけれども、まあ実際、瑕疵というものはどういうふうに評価するのかいろいろ難しいところがありますけれども、今日はその瑕疵、瑕疵がまさに問題となっているいわゆる森友学園の土地の問題について国交省にもお越しいただいています。
 そもそものこの計算なんですが、ごみの混入率が四七%ですか、というようなふうに出ているんですけれども、このごみの混入率はどういうふうにして算出したんですか。
#35
○政府参考人(平垣内久隆君) お答えさせていただきます。
 地下埋設物の撤去処分費用の見積りに当たりまして、埋設物の混入率を四七・一%とした理由について御説明申し上げます。
 本件土地の売買契約におきましては、買主は売主である国の責任を追及できないと、こういうことになってございます。このため、売主の責任を追及できない代わりに、土地の価格、時価を決めるに当たりまして、将来の埋設物のリスクの分だけ土地の価値を下げておくと、こういう必要があるということでございます。
 このような前提の下で、埋設物の混入率につきましては、平成二十二年に大阪航空局が実施いたしました地下構造物状況調査におきまして廃材等を確認した箇所における廃材等混入率の平均値が四七・一%であったこと、平成二十八年二月から三月にかけて行われた九・九メートルのくい掘削工事において現地で確認された廃材等の廃棄物及び平成二十八年三月二十五日と三十日に実施された工事関係者における試掘において三・八メートルの深さまで確認された廃材等の廃棄物の写真を検討したところ、廃材等を含む土壌が平成二十二年の調査と同じようなものという様相を呈しているということを確認してございます。それらを確認いたしまして、勘案いたしまして、地下埋設物の撤去処分費用の見積りに当たりまして、埋設物の混入率を四七・一%と設定して見積りを行うことが合理的であると判断したところでございます。
#36
○小川敏夫君 その平成二十二年の調査報告書は、ごみの埋設物六十八か所を試掘したと、それで試掘した箇所の生活ごみの混入率は大体二〇%だというふうになっているんですけれども、そして、なおかつコンクリート殻の部分も含めて、道路下等も含めた全体の敷地からいうと、ごみの混入率はコンクリート殻も含めて大体八%だと、こういう報告書になっているわけです。
 それがなぜ、その報告書が四七・一%だと言うんですか。
#37
○政府参考人(平垣内久隆君) お答えさせていただきます。
 まず最初に、先生御指摘いただきました二〇・七%ということでございますけれども、これは六十八か所全ての、先ほどの平成二十二年の地下構造物状況調査におきまして試掘いたしました六十八か所全部の平均値である二〇・七%ということをおっしゃっているものと承知しております。
 地下埋設物の撤去処分費用の見積りに当たりましては、地下埋設物の存在を見積もる部分として、そもそも本件土地の総面積の全てではなく六〇%程度を対象としております。この六〇%の面積は、廃材等のごみが出ることが想定されない箇所を除外いたしまして、廃材等のごみが出ることが想定される箇所のみで設定した面積でございます。このため、対象といたしました面積区域内における混入率につきましても、平成二十二年に大阪航空局が実施いたしました地下構造物状況調査におきまして廃材等のごみが確認されなかった箇所の混入率ではなく、廃材等のごみの存在が確認された箇所のみの平均値である四七・一%を活用するということとしたというところでございます。
 もう一点、先生御指摘の八・一%のところでございますが、これは、埋設物混入率といたしまして、アスファルトの部分を含めた地下埋設物の平均混入率を算定しているという数字ではないかと承知しております。
 八・一%の混入率につきましては、アスファルト部分についてはレーダー調査が物理的にできないあるいは試掘ができないということでございましたので、アスファルトのみが存在するという想定で算定したものでございますけれども、実際のくい掘削工事や工事関係者の試掘において見積りの対象とした範囲では、廃材等のごみが地下に、アスファルトの下の方に存在するということが想定されますので、アスファルト部分につきましても、アスファルト以外に地下埋設物が存在しないことを想定して算定された混入率八・一%を採用するということは適切でないと考えて、先ほどの四七・一%を使用したということでございます。
#38
○小川敏夫君 まず、その後半の方から言いますけれども、土地を宅地造成して道路をアスファルト舗装したと、それから住民が入ってきたと。住民が生活ごみを捨てるときに、アスファルト舗装されている道路の下にごみを捨てられるわけがないからアスファルト舗装の下はごみがないという、そういう推定だと思うんですが、非常に、アスファルト舗装した道路の下に生活ごみがないという想定は相当な推定だと思うんですけれども、まあ、これは議論になるからやめましょう。
 その四七・一%ですけれども、今非常に大事なことをおっしゃいました。ごみが出ているところの部分を計算したら四七・一%だったというふうに言っておるわけです。だけど、おかしいですよね。ごみが出ているところの一部からごみが出ている、そのごみが出ているところの平均が四七・一%だから残りの部分含めた全体が四七・一%という理屈はどうやったっておかしいでしょう。
 百平米の土地があって、十平米は四七・一%のごみがたくさん詰まっている、残りの九十平米はごみが詰まっていない。じゃ、さて百平米のごみの混入率は何%ですか。小学生が手を挙げますよ、四・七・一%ですよ。
 ごみが出ているところの部分だけ取り上げた平均値が四七・一%です。ごみが出ていないところの部分も含めた平均値が何で四七・一%になるんですか。
#39
○政府参考人(平垣内久隆君) お答えさせていただきます。
 繰り返しの答弁で恐縮でございますけれども、見積りに当たっては、本件土地の総面積の六〇%程度を対象としたということでございます。この区域には平成二十二年の地下構造物状況調査におきまして廃材等のごみが確認されなかった箇所も含まれておりますけれども、これらの箇所におきましても、平成二十八年の二月から三月にかけて九・九メートルまでの深さのくい掘削工事が行われ、工事写真により、地下からごみが出たということが確認されてございます。深い部分から浅い部分までごみが混入しているというふうに考えられるわけでございまして、したがって、地下埋設物の処分、撤去費用の見積りに当たりましては、本件土地の六〇%程度の区域におけるごみ混入率として、地下構造物調査において廃材等のごみが確認された箇所二十八か所の平均、四七%を用いるということにしたものでございます。
#40
○小川敏夫君 だから、おかしいよね。敷地の一〇〇%のうち六〇%だけを取り出したと。でも、六〇%だけの中のまたそのごく一部でごみがあるのが四七・一%だから、取り出した六〇%の全体の土地が四七・一%という計算になっているんですよ。どう考えたっておかしいですよね。
 これ、大事なことなんですよ。四七・一%というふうにやった結果、ごみの量が一万九千五百トンだとなっている。これ、ごみの混入率が四七・一%じゃなくて、例えば二〇%だったら半分以下になると。土砂の撤去費用その他も半分になるから、八億円がそれだけで四億円より下の金額になっちゃう。計算おかしいと思いませんか。だって、六〇%の土地に限定したといっても、六〇%の土地の中の試掘したごく一部のごみが出た部分だけを計算したら四七・一%で、ほかにごみが出なかった分というものは全然計算入れないで平均を取るということは、明らかな間違いですよね。
 ですから、その後、二十八年になってくいを掘ったからどうのこうのといったって、そんなのは全然客観的に何も論証されていないし、それに、この間、国土交通委員会でも議論したじゃないですか。九・九メートルのくいを掘ったと。泥を撤去したと言っているけど実際には泥は撤去していないので、ただかき混ぜてこねくり回しただけで、深いところの土砂、泥なんか出ていないんだということは、もう解決済みの議論じゃないんですか。
 その九・九メートルのところから出てきたごみがたくさんあったから云々かんぬんというのは、まだその主張をされるんですか。
#41
○政府参考人(平垣内久隆君) お答えさせていただきます。
 本件の掘削工事の工法は、先生御案内のとおり、プロペラの羽根のようなものが付いた掘削機を地中に貫入させることによって土をかき混ぜ、柔らかくしながら同時にセメントミルクを流し込むということで、地中の土とセメントミルクを一体化させてくいを形成していくという特殊な工法を取ってございます。したがいまして、地中の土砂につきまして、くい掘削機を地中に貫入させるときや地中から引き抜く際に一部が地表に排出されてセメントミルクと一体となった砂については、くいとしてそのまま残ることになります。くい掘削機の先端部分に絡み付いた廃材等を含む土砂については、地下九・九メートルの位置に存在するものも含まれているということが考えられるというところでございます。
#42
○小川敏夫君 ここ、委員会が違うからあれだけれども、どういう議論をしているのか、じゃ、ちょっとそこをもう少し分かりやすく言って、それで今日の質問を終わりたいと思いますけど。
 国土交通省は、要するに、九・九メートルを掘って九・九メートルの空洞にして、その九・九メートルの穴の土を全部掘り出すと、掘り出した泥の中にごみがたくさん埋まっているから九・九メートルまでのところにごみが埋まっている可能性があるというお話だった。
 しかし、国交大臣に確認したところ、泥を掘り出している工事じゃないんです、このくい工事は。このくい打ち機でどんどんどんどん土をこねくり回してかき混ぜながら、土をほぐしながら九・九メートルまで下に行って、泥は取り出していないんですよ。泥を全部そうやってほぐした後、このくい打ち機の中央からセメントミルクを流して、下からセメントミルクを流して、泥とセメントミルクを攪拌して固めながら、結局、泥を一つの柱の素材にして、セメントと泥で柱を造成して、上に上がってくるわけですよ。
 だから、九メートルのそんな深いところの土なんか出てきていないんですよ。ただ、ほぐした後にセメントミルクを入れるから、その分だけ容量があふれちゃいますよね。九・九メートルで幅は一メートルぐらいのこの煙突の中で、下の、底からセメントミルクを入れてどんどんどんどん圧力を加えれば、容量があふれちゃうから泥がはみ出てきますよ。でも、はみ出てくる泥は上の土ですよね。九・九メートル掘った下から圧力を加えたときに、容量が膨らんで土が盛り上がって地上にはみ出てくる泥は上の土ですよ。下の土なんか出てこないんですよ。
 もうこの間聞きましたね。だから、土砂が積んである、九・九メートルのくいを掘ったそのとき出た深いところの土が積んであって、そこにごみが出ているというのはこれは間違いであると。くいの掘削工事の過程において出てきたのは、容量が行ってはみ出てきた、この地表に近い部分の泥がはみ出てきただけであって、深い部分の泥なんか出てきていない。だから、そのくいの中の深い部分のごみなんか確認されていないということがこの間国土交通省の、質疑の中でも確認されたと思うんですが、これ確認されていないんですか。
#43
○政府参考人(平垣内久隆君) お答えさせていただきます。
 先ほど申しましたように、くい掘削機先端部に絡み付いた廃材等を含む土砂については、地下九・九メートルの位置に存在するものが含まれているということが考えるというふうに考えてございます。また、先生先ほど御指摘されました地表に排出された土砂の中にも、地下九・九メートルの位置に存在する廃材等が含まれる可能性は否定できないのではないかというふうに思ってございます。
 いずれにいたしましても、この地下九・九メートルまでに廃材等のごみが存在するということの設定に当たりましては、今のこの話だけではございませんで、三月十四日の現場確認でありますとか、平成二十二年の地下構造物状況調査、あるいは本件の土地の地歴、あるいは工事関係者のヒアリングといったところを総合的に勘案しまして、くい掘削箇所については深さを地下九・九メートルと設定して見積りを行うことが合理的であるという判断をしているというところでございます。
#44
○小川敏夫君 残り一分なんでね。
 だけど、九・九メートルと幅、もうほとんど竹筒ですよ、円筒ですよ、円筒形ですよ。そこで、泥が詰まっている竹筒で、下から圧力を加えてぽんとやったら、下の土が上の土を追い越して出てくるんですか。あり得ないじゃないですか。あり得ないことを、九・九メートルの下の部分の土が出てくる可能性もあるなんてあり得ないことをおっしゃっている。
 そのことを指摘して、私の質問を終わります。
#45
○仁比聡平君 日本共産党の仁比聡平でございます。
 前回、被害者の権利救済と消滅時効について議論をさせていただいたわけですが、局長との議論が中心になりました。
 そこで、大臣に今日冒頭お尋ねしたいと思うんですけれども、消滅時効というのは時の経過によって権利の行使を阻むということになるわけです。今度の改正案でも、五年、十年、二十年というこの時の経過によって、それぞれ要件は違いはありますけれども、不当に被害者救済が阻まれることになってはならないと思います。大臣は、これどのように被害者救済が図られているという御理解ですか。
#46
○国務大臣(金田勝年君) 仁比委員からの御質問にお答えをいたします。
 今回の改正法案におきましては、消滅時効に関しましては、現行法第七百二十四条後段の長期の権利消滅期間を消滅時効期間に改めまして、また、人の生命又は身体の侵害によります損害賠償請求権の消滅時効の特例に関する規定を新設をしております。これらはいずれも被害者救済に資することを期待をしているわけであります。
 まず、前者の不法行為による損害賠償請求権の期間を定めました現行法第七百二十四条後段の二十年の権利消滅期間につきまして、判例は、時効期間よりも被害者にとって厳格であるとされる除斥期間を定めたものであるとしております。しかし、長期の権利消滅期間が除斥期間であるとすると、長期間にわたって加害者に対する損害賠償請求をしなかったことに真にやむを得ない事情があると認められる事案におきましても被害者の救済を図ることができないおそれがあります。このために、改正法案におきましては、長期の権利消滅期間を除斥期間ではなく消滅時効期間とすることとしておるわけであります。
 また、二つ目の生命や身体の侵害によります損害賠償請求権につきましては、他の利益の侵害による損害賠償請求権よりも権利行使の機会を確保する必要性が高い、そして生命、身体について深刻な被害が生じた後、時効完成の阻止に向けた措置を速やかに行うことを期待することができないことも少なくないわけであります。そこで、改正法案におきましては、生命、身体の侵害による損害賠償請求権について、時効期間をより長期化することとしております。
#47
○仁比聡平君 大臣が今の御答弁の冒頭の辺りで、私の聞き間違いかもしれませんけれども、七百二十四条の後段、つまりこれまで最高裁が除斥期間だと解釈をしたことがある条文ですね、ここを改めましてという表現をされたように私ちょっと聞こえたのですが、その意味は、後の部分に御答弁されたように、つまり現行法の解釈について最高裁とそうではない考え方がある、つまり除斥期間という考え方と消滅時効期間であるという考え方とあるわけですね。
 その解釈に争いがあるわけですけれども、それを除斥期間とは解せないように、除斥期間であるというような余地はないようにしたというのが今度の改正案であると、そういう御趣旨でいいですか。
#48
○国務大臣(金田勝年君) そのとおりと考えております。
#49
○仁比聡平君 そうした形で前回、小川局長と議論させていただいたことも含めて、被害者救済がこの新しい時効制度の下でも十全に図られていくことが大切だと思うわけです。とりわけ、現行法の解釈に当たっても、もはや除斥期間と解して二十年の時の経過で権利を退ける、裁判所が門前払いをすると、こんなことはあってはならないと私は考えます。
 そこでといいますか、ところがなんですが、前回小川委員も指摘をされたんですが、労働基準法に労働債権の短期消滅時効、百十五条ですけれども、この規定があるわけですが、大臣、これ、今回一緒に改正しなかったのはなぜですか。
#50
○国務大臣(金田勝年君) 一括審議がされておりますいわゆる整備法案は、各省庁において民法の一部改正に伴う整備が必要であると判断した法律の改正規定を一本の法案にまとめる形で立案したものであります。すなわち、今回の民法の一部改正の趣旨を踏まえて、民法以外の他の法律の規律を実質的に変更する改正規定を整備法案に設けるかどうかは、その法律の所管省庁の判断によるものであります。
#51
○仁比聡平君 所管省庁の判断とは、いかにも現代の安倍政権らしい言い方だと思うんですけれどもね。だって、大臣、百二十年ぶりの民法、債権法改正でしょう。
 百二十年前、民法の現行百七十四条ですかね、これ、どんな規定か、ちょっと局長、御紹介いただけますか。
#52
○政府参考人(小川秀樹君) 百七十四条は一年の短期消滅時効に関するものでございまして、月又はこれより短い時期によって定めた使用人の給料に係る債権などにつきまして、一年間行使しないときは消滅すると定めるものでございます。
#53
○仁比聡平君 ありがとうございます。
 という規定、つまり、働く人の賃金は一年で時効で消滅するんだという規定が元々現行法、それこそ百二十年あるわけですよ。これ、おかしいでしょうということで、戦後、一九四七年ですが、労働基準法によって、労働者の賃金債権の時効は二年という趣旨の規定になっている。
 つまり、民法の百七十四条と労基法の百十五条というのは、これは言わば不可分一体ですよ。その民法を改正する、債権法を改正すると提案をしておられながら、この労基法の百十五条を残すかどうか、それはもう所管省庁、つまり厚労省が判断したんだと、私は知らないんだと。おかしくないですか。
#54
○政府参考人(小川秀樹君) 一括して審議されております整備法に関するものだと思いますが、基本的には債権に関する民法の規定の見直しが行われることに伴って、それに伴って改正を要するかどうかということについては、これは所管の省庁で判断することでございます。もちろん、それぞれ立法趣旨、立法の理由があるわけでございますので、その点については、基本は所管省庁の判断をベースとするというのが私どもの手法でございます。
#55
○仁比聡平君 今局長がおっしゃった、特則にそれぞれの立法理由があるというのは私も了解できるところなんですよ。つまり、民法の原則がある、一般法としての原則がある、けれども、ほかの法律関係には特別の状況があるから、特則として私が今申し上げている件で言えば労基法の百十五条を置く、それの立法趣旨は所管する省庁がしっかりつかんでいきますよということは、それはそうでしょうねと思うんですよね。
 だから、私が大臣に尋ねているのは、つまり民法の短期消滅時効と特別法、労基法の百十五条というのは、これの特別法の関係になるんではないですかと。つまり、現行民法の一年では労働者保護に欠けるから賃金債権の時効は二年にするという、そういう関係になっているんじゃないんですかということなんです。
#56
○政府参考人(小川秀樹君) もちろん、一般法の民法に対比する形で特別法として労働基準法なりなんなりで定められているということだろうというふうには理解しておりますが、一般法が変わったことによって必然的に改正が特別法についても必要となるかどうか、この点については一定の判断が必要であろうというふうに考えております。
#57
○仁比聡平君 一般、特別の論理関係だけから言うとそういう局長のおっしゃるようなことがあり得るかもしれないけれども、厚生労働省においでいただきましたが、お尋ねしたいと思いますが、つまり労基法の百十五条というのは労働者の保護規定ですよ。民法の原則どおり百七十四条のままということにしておくと、一年で未払の賃金が時効に掛かってしまうことになる。これ、明々白々に、一年以上前に働いていたし、けれども賃金が未払であると、幾ら未払であるということの証拠を労働者が持っていても、不当な使用者が一年前のものなのだから払う必要はないと言えばこれ泣き寝入りしなきゃいけなくなっておかしいじゃないかと、だから労基法二年にしている、そういう意味での労働者保護規定だということなんじゃないんですか。
#58
○政府参考人(土屋喜久君) お答え申し上げます。
 お尋ねの賃金債権等の消滅時効が二年とされている趣旨につきましては、お話ありましたように、現行の民法では月又はこれより短い時期によって定めた使用人の給料に係る債権は一年間の短期消滅時効とされているところ、基準法制定当時におきます議論の中で、労働者にとって重要な請求権の消滅時効が一年ではその保護に欠けるという点があり、その一方で十年になると使用者には酷に過ぎ、取引の安全にも及ぼす影響も少なくないということから二年とされたというふうに承知しております。
#59
○仁比聡平君 そのときに二年と定めた経過なり趣旨はちょっと長くなる議論なんで私もちょっと別の機会に譲りたいと思いますけれども、そもそも二年で未払賃金の消滅時効が完成してしまうということ自体が私は極めて不合理だと思っています。だって、五年前の未払賃金を、明々白々な徴憑を持っている、証拠があるという、そういう労働者、あるんですよ。本当に小さい小企業なら別として、大企業でありますから、十五年前の未払賃金というのを払ってもらえていないという労働者は現にいるわけです。それを不当に未払にしてきた使用者側が、二年前のもの以上は払わないと、この消滅時効を援用することができること自体が私は極めて不当だとこれまで考えてきたわけですが、そこはちょっと今回はおきますけれども、何にせよ、そういう問題状況の下で二年としているわけですよ。民法の原則だったら一年、けれども、これでは余りにひどいでしょうというので二年にしているわけでしょう。
 これ、今回の債権法改正法案が成立して施行されたら一体どうなるかと。原則に対して特別に労働者を保護するはずの、してきたはずの労基法百十五条の規定が、何しろ今度は原則五年に統一されるわけですから。短期消滅時効といいますか、時効期間の原則は、権利行使ができることを知ったときから五年ということが原則的になる、ここに統一された。労基法はあえて労働者の賃金債権だけは二年で消滅させるんだと。全く逆転しているということになりませんか。
#60
○政府参考人(土屋喜久君) お尋ねの賃金債権等の消滅時効の取扱いにつきましては、法制審議会での検討が大詰めを迎えた段階で、労働政策審議会においても状況報告をいたしまして審議を行ったところでございます。
 その審議においては、本件の取扱いについて、専門家も含めた場において多面的に検証をした上で更に議論を深めるべきとの結論に至ったことから、今般の民法改正の整備法案には労働基準法第百十五条に定める賃金債権等の消滅時効の取扱いについては盛り込まれなかったところでございます。
 厚生労働省としては、国会におきます民法改正案の御議論を踏まえつつ、労使の意見もよく聞きながら、この消滅時効の在り方についてしっかりと検討してまいりたいと思います。
#61
○仁比聡平君 私は厚生労働省がそんな答弁をしているからおかしいと言っているんですよ。
 だって、一般法に対して、労働者を特別に保護するために強行規定として労基法がある。その中で二年という短期消滅時効の期間を定めた法文があるわけでしょう。この前提になっている民法の一年という規定がなくなることがはっきりした、そうしたらば、これと同時に改正するというのが当然であって、いや、法案審議が、債権法案の審議が事ここに及んでいる今の段階で、一体何を検討するというわけですか。
#62
○政府参考人(土屋喜久君) お答え申し上げます。
 債権の消滅時効に関する法律的な論点の整理のほかに、例えば労働基準監督官の業務など労働関係の実務への影響、あるいは企業での実務への影響など様々な観点が存在すると考えておりまして、これらについて多面的な検証をした上で議論を深めるということで今後対応していきたいというふうに考えております。
#63
○仁比聡平君 今おっしゃった労働基準監督官の体制などの検討というのは分かります。それは労基官、労基署を抜本的に体制強化して国民の権利を守るべきだと私たちは思うんですが、企業実務への影響ともう一点おっしゃった点、これ企業実務への影響というのは、これ具体的にどんなことがおっしゃりたいわけですか。
#64
○政府参考人(土屋喜久君) 賃金債権の存在に関する関係書類の保全等があるかと思っております。それらについても議論をした上で、今回のこの改正に関する議論を踏まえまして、労使の意見も聞きながらしっかりと検討してまいりたいというふうに考えております。
#65
○仁比聡平君 厚労省は、今どき、二年で全ての労務関係書類を、資料やデータを、もう何だかどこに行ったか分からなくなるような時代だとでも思っていらっしゃるんでしょうか。百二十年前あるいは戦後直後の一九四七年、その時期と現代とでは、労務管理の技術的な手段とか、あるいはそのデータを正確に保管していく上での技術的なコストとか、全く状況は違うでしょう。小企業でおかみさんが付けていたメモがどこかになくなってしまうかもしれないと、そういう世界では全然ないわけですよ。その下で巨額の未払残業が行われているでしょう。その現実に対して、企業の関係書類の保全の問題というのは、結局企業側が未払残業、未払賃金を発生させても結果払わないで済むという、結局コストの問題だけということになりはしませんか、賃金コストの問題だけということになりはしませんか。
#66
○政府参考人(土屋喜久君) 御指摘の点も含めまして、労務関係についての労使の御意見をよく踏まえながら検討をしてまいりたいというふうに考えております。
#67
○仁比聡平君 おかしな話なんですね。先ほど厚労省がお話しになった労政審の労働条件分科会にこの債権法の消滅時効の改正問題が報告をされて、つまり表の場で議論をされたのは二〇一五年の二月の十七日のことです。これは債権法案が閣議決定して国会に提出される言わば直前の時期なんですけれども、債権法改正に当たって消滅時効の期間を、いわゆる今統一と言われている、こういうふうな時効期間の問題を大きく変えようというテーマは、ぎりぎりになって、法案提出のぎりぎりになって出てきた話じゃないんです。もう法制審に諮問がされた当初の頃から大テーマとして議論になって、その当時から、労働法制に関わる様々な方々から、民法の原則規定を改定するんだったら労基法を改正するのは当然だという声が次々と、そうした労働法の世界の著名な雑誌だとか論者が物を言っているじゃないですか。だから、厚労省がそれ全く知らなかったとか労政審のメンバーが知らなかったなんてあり得ないんですよね。
 それだけ、言わば諮問から法案提出までは六年間の期間がありました。その法案提出されてから今この審議の時点までもう何年もたっているというときにですよ、一体何で、これから先いつになるか分からないみたいな議論をするんですか。
#68
○政府参考人(土屋喜久君) 御指摘の労働政策審議会におきます議論は、平成二十六年八月に民法改正案の要綱仮案が取りまとまった後に、この審議会において状況報告をし審議を行ったものでございます。
 今後、検討を行うに当たりましては、この国会における民法の改正案の御議論を踏まえつつ、その動向を踏まえつつ、あるいは施行期日等を踏まえながら、しっかりと検討してまいりたいというふうに考えております。
#69
○仁比聡平君 その施行期日のことをしきりに労政審で村山労働条件政策課長がおっしゃっているので確認したいんですが、労働条件政策課長は、施行までの期間は相当の期間取られるのだろうと、法務省からも繰り返し施行までの時間は相当期間確保したいという意向が表明されていると、こういう発言がございます。
 これちょっと併せて考えると、法務省は相当の期間施行期間を取ると、までの期間を。厚労省は労政審の議論も踏まえてそれまでには必ず改正すると、そういう意味ですか。
#70
○政府参考人(土屋喜久君) 厚生労働省としては、先ほど申し上げましたように、今回の改正案の議論の動向やその施行期日等を踏まえながら、しっかりと検討してまいりたいということでございます。
#71
○仁比聡平君 ここまで具体的に時間使って聞いてもはっきりお答えにならない理由が何かあるんですか。
 その審議会での政策課長の発言で、多面的な検証をした上で、労働基準法等の議論の必要があるということになれば、三者構成のこの場で議論を詰めていただくプロセスに入ると発言しているんですね。
 これ一般法、特別法の関係に、申し上げてきたように不可分一体であるならばですよ、つまり、現行労基法百十五条の趣旨が労働者保護にあるんだということを先ほどお認めになったということであれば、労働基準法等の議論の必要があるということはこれははっきりしている。
 この今の労基法の二年を何年にするのかという議論はもしかしたらあるのかもしれないけれども、これ五年に債権法統一しているわけでしょう。商事債権、商法の規定は今回一緒に改正して、これも民法に統一されるわけでしょう。なのに、労働基準法上、労働者の賃金債権だけがそれよりも短いなんというようなことあり得ないじゃないですか。厚労省、そうは思っていないんですか。
#72
○政府参考人(土屋喜久君) 先ほど来申し上げて恐縮でございますが、既にこの問題については労働政策審議会に状況報告をし、一旦の御審議をいただいているところでもございまして、今後、今回のこの法案の議論の動向を踏まえまして、しっかりと検討してまいりたいというふうに考えております。
#73
○仁比聡平君 本当は公正証書問題についても質疑をしたいと思っていたんですが、時間がなくなってきてしまったので、今回この問題で質問を終わらざるを得ないので、少し大臣に聞きたいと思いますけれども、ヤマト運輸の未払残業問題、未払賃金問題というのが発覚して、国会でも大きな議論になってきましたし、報道されているということは、政治家としては当然御存じでしょう。
 そのヤマト運輸の労働者の中で、未払の残業代あるいは休日出勤の分、これどんなふうに今されているかというのは御存じですか。これ、まずもって、会社からは、過去二年間にサービス残業があれば裏付けの証拠を示してほしいなどと言われているわけです。つまり、支払は過去二年分に限るということが何だか当然の前提のようになって、で、本当にサービス残業があったかどうかの証明というのは社員の側に立証責任があるというわけですよね。
 この会社でも、近年の話ではなくて、二十数年前からそういう未払残業は横行していたと。帰宅時間になるとタイムカード押すけれども、その後に残って仕事をするとか、休日に出勤してタイムカード押さずに仕事をするとか、そんなようなことが横行していると。これ、未払残業、サービス残業、長時間労働が蔓延している日本の企業社会において、言わば残念ながらよくあることですよ。
 その下で私が尋ねたいのは、賃金債権、この未払債権、未払になる賃金の請求が二年たったら今は消滅時効だと言われている。だけど、民法を改正して、どの債権も原則五年というわけでしょう。民法よりも労働者が保護されないなんというのは、これおかしいじゃないですか。そのことを民法改正案、整備法改正案を提出している主管大臣としてちゃんと厚労省に物を言うと、塩崎さんにちゃんと物を言ってくださいよ。
 それは、労政審で労使の意見をちゃんと聞いて、法律的な整理もするというのはそれは分かります。だけれども、これ、民法、債権法の、改正債権法の施行の後にも労基法百十五条がそのままなんというのは、これ逆転じゃないですか。法律によって労働者を特別に短くすると、消滅時効を。労働者だけは特別に消滅時効期間が短くて早く権利を失うと、そんなことを許すわけにいかないと、法務大臣としての決意を伺いたいと思いますが、いかがですか。
#74
○国務大臣(金田勝年君) 今回の民法の一部改正の趣旨を、これを厚生労働省にお伝えすることは、ただいまの御質問の趣旨を踏まえて、所管省庁である厚生労働省に対してその趣旨を踏まえてその趣旨をお伝えすることはできようかと思います。そして、一方で、土屋審議官がただいま答弁を申し上げていたようですが、しっかりと検討をしていきたいというお話がございました。したがって、それを踏まえて、その対応を私どもとしては見守っていくということになろうかと考えております。
#75
○仁比聡平君 今の答弁を聞いても、安倍内閣の働き方改革なんというのは本当に口先だけだと厳しく指摘をして、今日は質問を終わります。
#76
○東徹君 日本維新の会の東徹でございます。
 衆議院の方ではなかなか法務委員会が開催されないというか、ちょっと停滞しているような、そんな感じではありますが、テロ等準備罪につきまして、前回も申し上げさせていただきましたが、今回も少しだけ申し上げさせていただきたいと思います。
 テロ等準備罪、これからやっぱりオリンピックとかが開催されるに当たって、海外でもテロが行われている中で、テロを未然に防止するという観点、非常に大事だというふうに思いますし、また、TOC条約というのもやっぱり日本として早く批准していかなければならないというふうに思っております。
 そんな中で、我が党といたしまして五つの修正項目を述べさせていただきました。一つは取調べの可視化、それから弁護人の付与、そしてまたGPSを可能にする、通信傍受、それから親告罪、こういった五項目を出させていただいたわけですが、当然、テロを未然に防ぐに当たりまして、これからGPSとかそれからまた通信傍受、非常に大事だというふうに思います。
 ただ、やはり犯人、取調べをするに当たりましてそこがやっぱり一番大事だというふうに思っておりまして、前回も質問させていただきましたが、やはり取調べにおいて証拠になるのは供述人だということであります。その供述人のしゃべった内容、こういったものを、供述が大事なわけですから、そこを可視化する、録音、録画を入れていく、こういったことは非常に大事だと思いますし、現在でも裁判員裁判とか検察独自の捜査とか、そういったものは一〇〇%近く導入しているというわけでありますから、今回のテロ等準備罪、これも非常に僕は件数が少ないと思います、こういったことで年間行われる取調べというのはですね。だから、取調べの可視化を入れても当然問題ないというふうに思っておりまして、是非そこを修正していただきたいということを要望しておりますので、是非御検討いただきたいと思います。
 その上で、今日は質問をさせていただきますが、今回の民法の改正案につきましてですけれども、明治二十九年以来の百二十年ぶりの改正ということでありますが、真山委員からも今日は質問がありました、今回の法案で、保証人の件でありますけれども、事業用の融資について、経営者以外の保証人については公証人による意思確認手続を新設ということであります。これによって公証人の扱う事件数もこれから増えていくことになるというふうに見込まれます。
 現在、公証人が全国に何人いるのか、また東京や大阪など都市部にはどれぐらいいるのか、まずはお伺いをさせていただきたいと思います。
#77
○政府参考人(小川秀樹君) お答えいたします。
 平成二十九年四月一日現在の公証人の員数は四百九十六名でございます。そのうち東京法務局に所属する公証人の員数は百五名でございまして、大阪法務局に所属する公証人の員数は三十一名でございます。
#78
○東徹君 東京では百五名、大阪では三十一名、これ極端に、人口規模からいくとかなり違うなと思うんですが、これだけ違いがあるということでありますが、この違いはどういったことでこれだけの件数の違いになるのでしょうか。
#79
○政府参考人(小川秀樹君) 公証人の定め方は、基本的には支局に配置するということが前提なんですが、最終的には公証の需要などを考慮した上でということになりますので、そういった点を総合考慮した結論ということだと思います。
#80
○東徹君 それではお伺いいたしますが、これの、公証人の手数料収入についてでありますけれども、前回、四月二十五日の委員会で、平成二十七年における全国平均、月額約百二十五万円ですというふうな答弁でありました。
 公証役場、全国で二百八十六か所あるわけですけれども、その場所によって公証人が扱う事件数もこれは異なるということでありますが、手数料収入にこれ差が出てくるわけでありますけれども、東京や大阪の都市部における手数料収入と都市部以外での手数料収入がどの程度差があるのか、お伺いをさせていただきたいと思います。
#81
○政府参考人(小川秀樹君) まず、監督法務局におきましては、公証人の、これ手数料収入が全てでございますので、手数料収入の総額を把握することはできるわけですが、公証人が負担している役場維持費などの必要経費を把握することができないため、正確な実収入額は不明でございます。
 法務局で把握しております手数料の収入の総額を基に平成二十七年における公証人の手数料収入の全国平均を算出いたしますと、これ月額約二百五十万円でございます。これが全体としての、手数料収入の総額を基にした計算でございます。
 都市部の方を申し上げたいと思いますが、東京法務局所属公証人の手数料収入の平均は月額約三百二十万円程度でございまして、大阪法務局所属公証人の手数料収入の平均は月額約三百四十万円程度でございます。公証人は、この中から役場維持の経費として、事務所の賃料ですとか執務用設備の購入維持費、あるいは、もちろん補助者が必要でございますので、書記、事務補助者などの人件費などを支払っているというところでございます。
#82
○東徹君 都市部以外での手数料収入についてもお伺いしたんですけれども。
#83
○政府参考人(小川秀樹君) 逆に、都市部以外というくくりはなかなか難しい点もございまして、今回は全国平均二百五十万円と対比した形で、都市部、東京と大阪という形で出させていただきました。
#84
○東徹君 じゃ、最も低い都道府県では幾らですか。
#85
○政府参考人(小川秀樹君) 申し訳ありません。その点は承知しておりません。
#86
○東徹君 じゃ、全国の各都道府県、一人当たりの手数料収入について数字を出していただけますでしょうか。
#87
○政府参考人(小川秀樹君) 全国の、例えば、ある県につきましては公証人が二名ないしは三名程度というところがございますので、役場の収入を出すということ自体が恐らく個人の収入に関わる部分がございますので、もちろん検討はさせていただきますが、なかなか全部を示すということは難しい点があろうかというふうに考えております。
#88
○東徹君 まあ、あれでしょう、二人のところもあれば三人のところも確かにあるんだと思います、一人のところはないんだろうと思いますけれども、個人の収入がイコールではないわけですよね。当然、補助者の方もいるだろうし、そしてまた賃料とかも払わないといけないわけでしょうから、全く、個人の給料というか、それが分かるわけではないと思いますので、是非、全国四十七都道府県、これ出していただきたいと思いますので、そこはもう是非お願いいたします。
 今日、真山委員からも質問がありましたが、公証役場というのは公的機関ですか、それとも個人的機関ですか。
#89
○政府参考人(小川秀樹君) 公証役場は、基本的に公証人がそこで公証事務を執る場ということで法律で定められたものでございまして、公的な機関でございます。
#90
○東徹君 公証役場は公的機関だということですよね。そして、じゃ、そこの公証人、これは公務員なのか、じゃ、全く個人、民間人なのか、この辺はどうなんですか。
#91
○政府参考人(小川秀樹君) 国家公務員法上の公務員ではございませんが、実質的な意味での公務員というふうにされております。
#92
○東徹君 公証役場は公的機関であって公証人は公務員だということですよね。であるならば、公務員であるならばですよ、その方の収入が幾らなのかというのを分かったら何でまずいんですかね。
#93
○政府参考人(小川秀樹君) 公証人は、先ほど申し上げましたように実質的な意味での公務員ということでございますが、事業形態自体は個人事業主と同様でございますので、公証人が受け取る手数料額そのものを示すということは個人の情報に関わる点だというふうに考えております。
#94
○東徹君 これ、何でここにこだわるかというと、先ほども言いましたように、本当に手数料収入、手数料が一体どうなのというところ、手数料収入が一体どれぐらい入っているのというところですね、そこがやっぱりはっきりと分からなかったら、この制度というものは一体どういう制度なのかなと。
 はっきり申し上げさせていただきまして、私も公証人役場の方は公務員だという認識でおりました。でも、その収入については、言ってみれば出来高払だというふうなことになるわけですよね。じゃ、相談者がゼロだったらその方の収入はゼロになるわけですか。
#95
○政府参考人(小川秀樹君) 公証人は手数料のみが収入でございまして、それ以外は受け取ってはならないということになりますので、例えば相談というのも手数料をいただくわけにはまいりません。
 そういう意味では、公正証書を作成するですとか定款認証をするですとか、事件についての成果を出したときに手数料をいただくというのが前提でございます。
#96
○東徹君 ということは、成果がゼロ件だった場合、相談は来ても結局その手数料に関わるようなきちっとした成果が出ない限り、その公証人の方の収入はゼロということで間違いないんですよね。
#97
○政府参考人(小川秀樹君) さようでございます。
#98
○東徹君 でも、やっぱり公証人役場は各都道府県にあるし、公証人役場というのはもちろん必要だし、そこにやっぱり、ある以上はやっぱり公証人の方がいていただかないといけないわけですから、その人たちのやっぱり安定的に仕事をしていただくためにも、何かこの制度というのは変だなと思うわけですよね、一般的に。だからお聞きしているわけですけれども。
 ちょっと進ませていただきまして、公証人については、平成十四年度から公募制度というのがこれは導入されておりますけれども、検事や判事などの法曹の資格を持つ人たちと、それから法務局長や司法書士など法曹資格を持たない者とで異なる選択方式が取られていると。今日もツーパターンありますよということで話がありましたけれども、この公募制度、どのようなものなのか、なぜ異なる方式なのか、まずはお伺いをしたいと思います。
#99
○政府参考人(小川秀樹君) 公証人の任用につきまして公募制を採用いたしましたのは平成十四年度からでございます。具体的には、公募を行いました上で、応募のあった者の中から、法曹有資格者の公証人につきましては面接を行って適任者を任命しておりまして、法曹有資格者に準ずる公証人につきましては検察官・公証人特別任用等審査会の選考を経た者を任命しております。
 このように異なる方式によっておりますのは、公証人法が法曹有資格者公証人と法曹有資格者に準ずる公証人とで異なる任命方式を定めているからでございますが、公証人法がそのような差異を設けているのは、法曹有資格者につきましては基本的に公証人に要求される法的能力を有しているものと考えられるのに対しまして、法曹有資格者に準ずる公証人につきましては検察官・公証人特別任用等審査会の選考を通じて公証人に要求される法的能力を確保する必要があると考えられるためでございます。
#100
○東徹君 法曹有資格者については、選考者が、法務省の幹部職員がこれ面接するということでよろしいんでしょうかね。
#101
○政府参考人(小川秀樹君) さようでございます。当省の幹部職員が面接を実施しております。
#102
○東徹君 法曹有資格者については法務省の幹部職員がこれ面接をすると。法曹有資格者に準ずる学識経験を有する者、これについては、選考者が検察官・公証人特別任用等審査会、こういった方たちが行うということでありますね。
 昨年、平成二十八年九月二十日でありますけれども、内閣官房が出された国家公務員の再就職に係る資料によりますと、大阪府地方検察庁の検事正、平成二十七年十月二日に退職して、同年十月十九日に梅田の公証役場にこれ再就職をされているわけですね。また、和歌山地方検察庁の検事正が、平成二十八年一月二十五日に退職をして、同年二月十四日に板橋公証役場にこれ再就職しているわけですけれども、共に退職日から再就職日まで三週間弱となっているわけですね。在職中に公募に応じているということでよろしいんでしょうか。
#103
○政府参考人(小川秀樹君) 申し訳ございません、梅田の方はちょっと私どもの方も調査しておりませんので、板橋の公証役場の関係の方で申し上げたいと思います。
 御指摘いただきました者は、平成二十七年七月に実施した公証人の公募に対し応募し採用されたものでございまして、検察官としての在職中に公証人に応募したものでございます。
#104
○東徹君 梅田の件は聞いておられないと、これちゃんと通告していたはずだと思うんですけれどもね。
#105
○政府参考人(小川秀樹君) 申し訳ございません、ちょっと私どもの方、把握しておりませんので、またこれは調査して御報告したいと思います。
#106
○東徹君 これ、通告していなかったということですか。
#107
○政府参考人(小川秀樹君) 私どもがいただいた用紙には和歌山の方が記載されていたというふうに承知しております。
#108
○東徹君 これ、大阪の地検の検事正が大阪梅田の公証役場に再就職しているという事例があるわけでして、これが事実だとすると、これエリアが重なるわけですよね。実質的に現職職員による利害関係企業等という、営利企業及び営利企業以外の法人というところがありますけれども、こういったところに該当するのではないかというふうに思うわけですね。これについては把握しておりませんということですから、是非一度きちっと調査をしていただきたいと思います。
 国家公務員である検事が在職中に公募に応じられているということになると、公募の面接官はこれは法務省の職員でありますから、これは法務省自ら組織的に再就職になるんじゃないのかなというふうに思うんですが、いかがでしょうか。
#109
○政府参考人(小川秀樹君) 公証人は法務大臣が任命する実質的な公務員でありまして、公証人法が定める一定の任命資格を有する者の中から、公募を通じて適任者を任命しているわけでございます。法曹有資格者公証人の面接におきましても、中立公平な立場から口頭試問を行って、応募者の法的能力、知識や人格、識見を判定し、それに基づき採否を決定しておりまして、現に不採用とした例もございます。
 以上のとおりでございますので、特段の問題はないというふうに理解しているところでございます。
#110
○東徹君 不採用にしたこともありますというふうにおっしゃるんですが、今日は資料をお出しさせていただいております。
 平成二十八年度から平成二十四年、過去五年間に遡ってこれ確認したところ、検事の方は、百十七人の応募があって実際の任命されたのは百十六人、たった一名だけということですよね。判事につきましては、九十二名が応募されて全員が任命されているということになるわけでありますが、これは司法書士さん、司法書士もこれ大変難しい試験に合格されて資格を取られて、実務経験をしっかりと積んできた方も中にはおられるだろうというふうに思うわけですが、公証人はこれ全国に四百九十六人ということで、その出身については、法務省又は裁判所以外の人については、先ほど真山委員の方からも質問がありましたけれども、以外はたった三人しかいないということですよね、たった三人しかいない。
 この公募についてでありますけれども、司法書士など法務省や裁判所のOB以外からの応募、過去五年間ではどの程度なのか、また実際に公証人に任命されたのは何人か、お伺いをいたします。ちょっとダブりますが。
#111
○政府参考人(小川秀樹君) 過去五年間、先ほどの資料にもございますけれど、公募を実施した公証人のポストが合計五百九十五でありましたのに対しまして、全体で三百三十四名の応募があって、法務省や裁判所職員であった者の応募がそのうち三百十三名でありまして、それ以外の応募、司法書士の方などを含むグループということになりますが、そのグループが二十一名でございます。その中から実際に公証人に任命されたのは三百三名でございまして、法務省や裁判所職員であった者がそのうち三百二名、それ以外の者が一名ということでございます。
#112
○東徹君 司法書士さんたちがこれ二十一人応募して採用されたのがたった一人しかいないわけですよね。これは非常に、何でこんなに採用されないのかなと。結局、やっぱりこの公証人というのは、法務省の職員であったり裁判所の職員であったり検事であったり判事であったり、そういった方しか公証人になれないというようなことになっているんじゃないのかなというふうに思うんですが、いかがですか。
#113
○政府参考人(小川秀樹君) 先ほど申しましたとおり、公募が始まったのは平成十四年からでございまして、その後しばらくは司法書士の方の応募はなかったんですが、最近、平成二十年前後頃から司法書士の方の応募も増えつつあるということだと思います。
 確かに、五年間を見ましても、二十一名の方の応募のうち任命された方は一名ということではございますが、これは、先ほど申し上げましたように、審査会の審査を経ているものでございまして適切な判断によるものというふうに理解しております。
#114
○東徹君 応募自体が少ないんですよ。少なくても二十一人あって、実際に任命された人が一人ということなんですね。結局、そういった数字を見ると、一体これは開かれた公募と言えるのかなというふうに思うわけですよね、公募公募と言うておきながらですよ。
 これ今、公証人の定員数、一体幾らが定員であって、今現在公証人として仕事をされている方は一体何人なんですか。
#115
○政府参考人(小川秀樹君) 現在、制度上の定員は六百六十九名でございまして、現在員は、先ほど申し上げましたとおり、四百九十六名でございます。
#116
○東徹君 定員が六百六十九もあって、実際に採用されて公証人として仕事をされている方はたった四百九十六人しかいない。もうかなりこれ定員を満たしていないわけですよね。
 定員に満たしていないんだったら、これを定員を満たす努力をしないといけないんじゃないんですか。
#117
○政府参考人(小川秀樹君) 定員の定め方は、先ほども申し上げましたが、まず支局単位での配置ということになりますので、いかなるところでも支局があれば一名配置するというのが制度としての前提ではございます。ただ、実際上は、先ほども申し上げましたように、公証の需要というものがございますので、その上での判断として現在員が四百九十六名ということでございます。
 ただ、もちろん、これでじゃ足りているのかというと、いろいろと公証の需要、これからも増加することが見込まれるわけでございますので、法務省といたしましても、適切な配置に当然のことながら努めてまいりたいというふうに考えております。
#118
○東徹君 これは大臣に是非お伺いしたいと思うんですが、司法書士と同様に法曹資格を持っていない法務省とか裁判所のOB、過去五年間で百四人が応募して九十四人が任命されております。一方、司法書士等については二十一人が応募して任命されたのはたった一人だけということになっているわけですね。
 このような状況を踏まえて、そもそも法務省や裁判所OB以外からの応募自体が非常にこれ少ないわけでありますけれども、その後の任命状況に大きな差があることについてどのように考えているのか、大臣の見解をお伺いしたいと思います。
#119
○国務大臣(金田勝年君) 東委員の御質問にお答えをいたします。
 公証人につきましては、平成十四年度からの任用のための公募を実施しているという話は先ほどございました。現在までのところ、非常に、民間出身者から任命された者が、法曹有資格者に準ずる公証人について、司法書士が四名、現職三名という状況にあるということであります。これは、民間出身者からの応募がそもそも極めて少ないことが主な原因であると、このように考えております。理由は様々なものが考えられるわけでありますが、例えば公証人には職務専念義務、兼業禁止義務が課せられるために、弁護士などの方は既に職を持っている者が応募することが実際上困難であるという事情等に由来するものではないかと考えられるわけであります。
 また、いずれにしましても、公証人の任用に当たりましては、前職のいかんを問わず厳正な審査を行って、人格、識見共に公証人としてふさわしい者を採用しているものであります。
 法務省としては、民間からの登用の推進に向けた環境づくりを進めるため、公募制度の周知、実施した試験の概要の公開といったような措置を行っておるわけでありますが、引き続き、民間からの応募につきましての環境整備に努めてまいりたいものと考えております。
#120
○東徹君 今弁護士の方だって、司法書士の方もなかなか仕事がないというふうなことをお聞きしたりもします。専任だからといって、これ数字で見るとそんなに収入が低くないんじゃないかなと思ったりするわけです。でも、じゃ実際にどれぐらいの公証人の方が収入があるのかというのが、これ分からないんですよ。分からないと、じゃ手数料がこの手数料で本当に適正なのかどうかということもやっぱり分からないわけですよね。何かブラックボックスになってしまっていて、これ一体どういうことなのと。公証役場は公的機関だというし、公証人は公務員だというわけですよね。だったら、もうちょっとこれきちっと情報を開示して、これが本当に適正なのかどうかきちっと議論しましょうよということですから、是非この情報をしっかりと開示していただきますようによろしくお願いいたします。
 以上で質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。
#121
○糸数慶子君 沖縄の風、糸数慶子です。
 前回は民法全体についてお尋ねいたしましたが、本日は民法の審議の第二回目ということで、個別の問題について質問したいと思います。
 まず、法定利率について伺います。
 法定利率は、今まで百二十年以上ずっと五%だったのが、今回三%に引き下げられることとなります。長く続く低金利時代において三%というのはまだ高いように思われますが、新しい法定利率を三%とした理由をお尋ねしたいと思います。
#122
○政府参考人(小川秀樹君) お答えいたします。
 現行法の第四百四条は、その制定当時の市中におけます一般的な貸出金利を前提として法定利率を年五%といたしました。当時も、言わば年五分というのがそういう意味では普通、当然であるという理解の下でそのような定めが置かれたようでございます。
 しかし、その制定以来約百二十年もの間見直しがされていないために、昨今の超低金利の情勢の下では法定利率が市中金利を大きく上回る状態が続いております。しかし、法定利率が市中金利を大きく上回っておりますと、これは法定利率が機能する場面といたしますと、債務者が支払うべき利息、これは合意で定めていない場合に当然定まるのが法定利率でございますので、債務者が支払うべき利息ですとか、あるいは遅延損害金の額が著しく多額となる一方で、損害賠償額を算定する際の中間利息の控除の場面では、これも法定利率が機能する場面とされておりますので、不当に賠償額が抑えられるなど、当事者間の公平を害する結果となっているとの指摘がされているところでございます。そこで、現在の市中金利の水準に合わせて法定利率を引き下げる必要があると考えられたわけでございます。
 市中金利の指標には様々なものがございますが、貸金債権の利息を算定する場面ではもちろんのこと、金銭債務の遅延損害金を算定する場面でもほかから金銭を調達するときの利息分が主な損害として想定されるということから見ますと、法定利率の引下げ幅の検討に当たりましては、これは預金金利などではなく貸出金利の水準を参照すべきであるというふうに考えられます。また、その際には、法定利率の適用場面は様々でありますため、借り手が大企業や中小企業である場合のほか、一般消費者である場合の水準も広く考慮に入れる必要があると考えられます。
 さらに、法定利率の引下げの際には、遅延損害金の額が低くなり過ぎると、これは債務の不履行を助長する結果ともなりかねませんことや、やはりこれまで百二十年にわたって年五%で実務運用がされてきたこととのバランスも考慮する必要があろうかというふうに考えております。
 そこで、改正法案におきましては、以上の様々な事情を総合的に判断するとともに、簡明な数値とする必要性なども勘案いたしまして、法定利率を年三%に引き下げるということとしたものでございます。
#123
○糸数慶子君 今回の改正で法定利率が三%に引き下げられるとともに金利の変動制が導入されることとなるわけですが、この金利変動の仕組みについて具体的にお伺いいたします。
#124
○政府参考人(小川秀樹君) お答えいたします。
 御指摘いただきましたとおり、改正法案におきましては、法定利率を引き下げるということにとどまりませんで、金利の一般的動向を示す一定の数値を指標といたしまして、その数値が大きく変動した場合に法定利率をその変動に合わせて緩やかに上下させる変動制を採用することとしております。
 具体的な内容でございますが、国内銀行が全ての融資の際に付した短期貸付けに係る約定金利の平均値として日本銀行が公表しております貸出約定平均金利というものがございますので、この貸出約定平均金利を指標といたしまして、その過去五年分の平均値を基準割合と位置付けた上で、法定利率の見直しはこれは三年に一回行うこととしておりまして、かつ、その際も、前回の変動時と比較して基準割合に一%以上の変動があった場合にのみ一%刻みの数値で、すなわち、これは一%未満の端数があった場合にはそれを切り捨てるという前提で法定利率の変動が生ずるようにしております。
 その上で、この基準割合については、三年をもって一期とされるそれぞれの期の初日の属する年の六年前の年の一月から前々年の十二月までの合計五年、六十か月分になりますが、六十か月の短期貸付けの平均利率の合計を六十で除して計算しまして、これをその期の基準割合として法務大臣が告示することとしております。このような定めを置きまして、法定利率の変動の制度を設けたということでございます。
#125
○糸数慶子君 法定利率の変動の際に用いられる基準割合は短期貸付けの平均利率の平均値を用いることになるわけですが、この短期貸付けの平均利率は具体的にどのような金利のことをいうのでしょうか。
#126
○政府参考人(小川秀樹君) お答えいたします。
 短期貸付けの平均利率とは、具体的には、これは国内銀行が新規に短期、すなわち約定時の貸出期間が一年未満で貸付けを行う際の金利の平均値でありまして、日本銀行が公表している数値であります。この対象となる国内銀行には、都市銀行、それから第一地銀、第二地銀、信託銀行などが含まれているものでございます。
#127
○糸数慶子君 三%というこの法定利率は、第四百四条第二項に規定されることとなるわけですが、法定利率が三%から変動した場合、新しい利率はどこに規定されることになるのでしょうか。
#128
○政府参考人(小川秀樹君) お答えいたします。
 改正法案では、当初の法定利率を三%と定めます。これは四百四条の二項でございます。その上で、法定利率の変動の仕組み自体を、先ほど申し上げました三年ごとに見るというようなことなどの仕組み自体を規定しておりまして、他方で、その変動後の数値自体は将来の不確定な数値に基づいて算出されるものでありますため、現時点では当然ながら具体的なものとして規定するわけではございません。
 実際に法定利率が変動する場合には、法務省といたしましては、変動後の法定利率がどのようなものとなるのかを国民各層に対して、これはもう非常に重要な点でございますので、十分に周知していくという所存でございます。
#129
○糸数慶子君 この法定利率は、不法行為に基づく損害賠償請求権の遅延損害金の算定に用いられる等、重要な意味を持っているというふうに思います。民法を見ただけでは法定利率が分からないというのは、これは国民一般に分かりやすい民法という観点から問題があるのではないでしょうか。
#130
○政府参考人(小川秀樹君) お答えいたします。
 法定利率の数値は関係者間の利益対立が先鋭化する事柄でありますために、合理的な変動の仕組み、これをあらかじめ法律で定めておきまして、それに従って機械的に数値を変動させることにより、社会全体として法定利率の予測可能性を高めるというのがより適切であると考えられたわけでございます。そこで、改正法案では法定利率の変動制を採用しております。法定利率の変動制を採用する場合には、変動後の法定利率は、これは一律には定まらないというのが変動制の意味でございますので、その利率について民法中に具体的な数値として規定することは、これは困難と言うほかないところでございます。
 もっとも、改正法案の仕組みの下では、法定利率が変動することが確定してから現に変動するまでの間には一年程度の期間の猶予がございます。これは、周知期間としてその分を取ることが前提でございまして、そのため、実際に法定利率が変動する場合には、法務省としては、この猶予期間内に、一年程度の期間の猶予がございますので、十分な広報を行いまして、変動後の法定利率がどのようなものとなるのかを国民各層に対しまして十分に周知していきたいというふうに考えております。
#131
○糸数慶子君 次に、中間利息控除についてお尋ねいたします。
 不法行為等によって人が亡くなった場合、被害者の逸失利益を算定するに当たり、将来得たであろう収入を現在価値に換算するために利息相当額を除外することとされています。この中間利息控除といい、新しく第四百十七条の二に規定が設けられることになっていますが、同条によりますと、利息相当額を計算するのに用いる利率は法定利率となっていますが、この利率を法定利率とした理由をお聞かせください。
#132
○政府参考人(小川秀樹君) お答えいたします。
 まず、中間利息控除に用いる率を法定利率とした理由でございますが、これは基本的に、やはり判例が大きな意味を持つものというふうに考えております。
 最高裁の判例は、これは平成十七年六月十四日のものでございますが、将来において取得すべき利益又は負担すべき費用を現在価値に換算するために控除すべき、これがいわゆる中間利息の考え方でございますが、その中間利息の割合については法定利率の割合によらなければならないものとしております。これが平成十七年の判例の基本的な内容でございます。
 この判例は、年五%の固定制を、もちろん現行法の下でございますので年五%の固定制を前提としたものでございますため、法制審議会の中での審議の過程では、法定利率を引き下げて変動制に改める場合であっても、中間利息の控除については改正後の変動制の法定利率を適用せずに現状の年五%を維持するという考え方もございました。
 しかし、遅延損害金の算定などに用いられます法定利率を引き下げつつ中間利息控除に使用する利率のみを現状維持とするのは、不法行為の被害者の請求可能な金額がこれは単純に減少するということになりますので、こういったことを考慮いたしますと、関係者間の公平に欠ける面があって、改正法案を検討する過程で行ったパブリックコメント手続においても同様の指摘が多数寄せられたところでございます。
 そこで、改正法案の内容でございますが、改正法案においては、法定利率の適用場面に関する現状の制度の枠組みを維持することといたしまして、中間利息の控除を行う際には、損害賠償の請求権が生じた時点を基準時として、その時点における法定利率を適用するということとしたものでございます。
#133
○糸数慶子君 中間利息控除については、利率が低いほど控除される金額も少なくなり、被害者が受け取ることのできる金額も大きくなるわけですから、より被害者保護となります。中間利息控除の算定に用いる利率に市場金利よりも高い法定利率を採用することは被害者救済の視点、観点からは酷であり、利率の高さは切実な問題となります。
 被害者保護のため中間利息控除の利率は法定利率より低くするべきであるというふうに思いますが、この点についての御認識を伺います。
#134
○政府参考人(小川秀樹君) お答えいたします。
 先ほど申し上げましたとおり、改正法案におきましては、法定利率の適用場面に関する現状の制度の枠組みを維持することといたしまして、中間利息の控除を行う際には、損害賠償の請求権の発生時点、例えば交通事故の場合を例に取ってみますと、そういった交通事故の発生した時点を基準時といたしまして、その時点における法定利率を中間利息控除の場面で適用するということとしております。
 被害者の保護の観点から見ますと、中間利息控除に用いる利率については運用利率を参照することとし、法定利率よりも更に引き下げるべきではないか、委員の御指摘ございましたような御意見があったのも承知しております。
 もっとも、法定利率は、交通事故の損害賠償に関して見ても、一方で遅延損害金の割合に用いられ、他方で逸失利益の中間利息の控除に用いられるなど、その適用場面は一様ではございません。したがって、このうち、中間利息控除に用いる利率のみを引き下げることは、これはかえって不公平感を増すことにもなります上、その引下げ幅によっては損害賠償額が今度は著しく高額化し過ぎるという問題も生じまして、現在の損害賠償実務を混乱させるおそれもございます。
 また、運用利率を参照するといいましても、厳密に言えば運用主体の属性や状況、想定される運用期間などによって異なるものでございまして、その制度趣旨を踏まえた適切な数値の設定が極めて困難であるという問題もございます。
 そこで、改正法案におきましては、以上申し上げましたような点を考慮いたしまして、中間利息の控除を行う際の利率といたしましては法定利率を用いることとしたものでございます。
#135
○糸数慶子君 次に、消滅時効についてお尋ねいたします。
 今回、消滅時効の規定が改正され、時効の起算点として、債権者が権利を行使することができることを知ったときからという債権者の主観による主観的起算点が導入されました。改正後は、原則として主観的起算点によることとなりますが、主観的起算点は客観的起算点と比較すると不明確であると思われます。
 主観的起算点を原則とすることとしたその理由をお伺いいたします。
#136
○政府参考人(小川秀樹君) 消滅時効の制度の見直しの点について、まず御説明しておきたいと思います。
 現行の民法第百七十条から第百七十四条まで、それから商法五百二十二条では、五年あるいは三年、二年又は一年といった短期間の消滅時効の特例を定めております。しかし、これらの規定は、その適用の有無の判断が困難であったり、社会経済情勢の変化に伴って合理性の説明が困難なものとなったりしております。そこで、これらの短期消滅時効の特例を廃止した上で、基本的な時効期間については統一化を図り、シンプルなものとすることが合理的であると考えられたわけでございます。これが短期消滅時効の特例の廃止という問題でございます。
 もっとも、その特例を単純に廃止するだけでありますと、例えば現在二年とされる生産者や卸売商人の売買代金債権の時効期間が今度は十年に大きく延長されるということになるわけですが、これに対しましては、法制審議会において関係諸団体からヒアリングを行った際に、領収書の保存費用など弁済の証拠保全のための費用が増加するおそれがあるという懸念なども示されました。さらに、現在五年で時効が完成いたします商行為債権につきましても、商取引の実情として多数の取引債権に適用されており、現在の規律を前提として安定した実務運用が行われているため、改正の影響を極力抑える必要があるとの指摘が関係各界から強く寄せられました。
 これらの指摘等を踏まえますと、短期消滅時効の特例を廃止して時効期間の統一化を図るには、現行法では権利を行使することができるときという、これは客観的な基準でございますが、そのときから十年とされる原則的な時効期間そのものをより短くすることを検討する必要があったわけでございます。
 他方で、権利を行使することができるときから十年という原則的な時効期間を、商行為債権の消滅時効を参考にして仮に権利を行使することができるときから五年とすることに対しましては、例えば、今度は不当利得に基づく債権ですとか安全配慮義務違反に基づく損害賠償債権など、権利行使が可能であることを容易に知ることができない債権の債権者が大きな不利益を被るとして、この点に対しましても強い反対がございました。
 以上の問題状況を踏まえ検討が進められました結果、現行法の、権利を行使することができるときからの十年という現行法の時効期間を維持した上で、権利を行使することができることを知ったときから五年の時効期間を追加し、そのいずれかが完成した場合には時効により債権が消滅するとの案が大方の賛同を得るに至ったわけでございます。
 この債権者の認識に着目した五年の時効期間の導入により、権利行使が可能であることを容易に知ることができない債権の時効期間が短くなることを避けながらも、その余の多くの債権については時効期間が短くなり、改正の影響が抑えられるものでございます。そこで、改正法案においても、債権の消滅時効に権利を行使することができることを知ったときから五年の時効期間を追加することとしております。
 こういった起算点の異なる短期と長期の権利消滅期間を設ける法制は、比較法的に見ましても、ドイツですとかフランスなどの諸外国においてもあるところでございます。
#137
○糸数慶子君 今回の改正で消滅時効が十年間から五年間になることにより、施行日を挟んで、施行日前の債権の時効は十年間で施行日後の債権の時効は五年間であるという逆転現象が生ずることになるわけですが、この逆転現象による社会の混乱も予想されますが、問題はないのでしょうか。また、これに対する経過措置等は講じているのでしょうか、お伺いいたします。
#138
○政府参考人(小川秀樹君) お答えいたします。
 債権の消滅時効一般についての時効期間に関する経過措置におきましては、債権の発生時点、ただし、法律行為に基づくものにつきましては法律行為の時点を基準時として、改正法の施行後に発生した債権に改正法が適用されることとしております。要するに、行為の時点を基準時とした上で改正法の施行後に発生した債権に改正法が適用されると、これが基準でございます。改正法の附則の第十条四項に定めるところでございます。
 したがいまして、御指摘がありましたとおり、改正法案によって消滅時効の期間が短縮される債権については、債権の発生時点を改正法適用の基準時とすることにより、改正法案の施行直後に発生した債権の方がその施行直前に発生した債権よりも先に時効消滅するという事態、これも生ずるわけではございます。しかし、債権者といたしましては、その債権が生じた時点における消滅時効期間を前提として時効管理などを行うのが通常であると考えられるため、債権の発生時点を改正法適用の基準時といたしましてもその予測や期待を害することはないと考えられます。通常の時効管理というのは発生時を基準と考えると思いますので、その点では特段の問題はなかろうということでございます。
 また、債権が時効消滅することについて利害関係を有します第三者にとりましても、客観的に明確な債権の発生時点を基準時とすることが合理的であると考えられるところでございます。このように、債権の時効消滅の利害関係者の予測可能性の観点からは、債権の発生時点を改正法適用の基準時とするのが合理的でございます。
 そして、その結果として、改正法案の施行後に発生した債権の方がその施行前に発生した債権よりも先に時効消滅するという、先ほど逆転現象と御指摘がございましたが、そういった事態は生ずることにはなるわけですが、これによって予想外の不利益を被る者は想定し難いということを考慮いたしますと、特段の問題はないものと考えられるところでございます。そのため、改正法案の施行直後に発生した債権の方がその施行直前に発生した債権よりも先に時効消滅するという委員御指摘のような事態を防止するような経過措置は特に設けることとはしておりませんが、この点につきましては、法律の変更によって社会に混乱を招くことのないように十分に周知を図ることとしたいというふうに考えております。
#139
○糸数慶子君 今回、商事消滅時効も廃止され、民法の消滅時効に統一されることになっています。商事消滅時効は客観的起算点から五年間でしたが、民法では主観的起算点から五年間、客観的起算点から十年間で時効となります。つまり、商事消滅時効については、民事とは反対に改正前とそして同じ時効期間かそれより長くなることになりますが、その影響はどの程度あるのでしょうか、また、これについて問題はないのでしょうか、お伺いいたします。
#140
○政府参考人(小川秀樹君) お答えいたします。
 いわゆる整備法案におきましては、民法中の職業別の短期消滅時効の規定などの削除と併せまして、商法第五百二十二条、商事の消滅時効に関する規定でございますが、これを削除することとしておりまして、その結果、商行為によって生じた債権についての消滅時効期間は、改正後の民法の消滅時効期間の規律により、「権利を行使することができることを知った時から五年間」、あるいは「権利を行使することができる時から十年間」のいずれか早いものの経過によって消滅するということになります。要するに、一般原則のとおりになるということでございます。
 このように商事消滅時効の規定を廃止した理由でございますが、例えば銀行の貸付債権は五年の商事消滅時効が適用されるわけですが、信用金庫、これは商人ではないというふうにされておりますので、信用金庫の貸付債権には民法の十年の消滅時効が適用されるというのがこれまでの仕切りでございました。時代の変化に伴いまして、商行為によって生じたか否かにより時効期間に差が生ずることを合理的に説明することが、今の銀行ですとか信用金庫の例から見ましても明らかなように、なかなか合理的に説明することが難しくなっていること、さらに、商事消滅時効については民法の時効とどちらが適用されるのかが争いとなることも多く、その判断も容易でない事案が少なくないこと、こういった点を踏まえたものが消滅時効の規定の廃止の理由でございます。
 もっとも、商事債権につきましては、基本的に当事者間の契約に基づいて発生するものがほとんどでありまして、客観的に権利を行使することができるときには権利を行使することができることを知っているのが通常であると考えられます。要するに、客観的な起算点と主観的な起算点で大きな違いは出てこないだろうというところでございます。したがいまして、商事債権に関する取扱いについては、主観的な起算点から考えますと、実質においては大きな変更はないと考えられるわけでございまして、その影響は小さいものと私どもは認識しているところでございます。
#141
○糸数慶子君 それでは、保証について伺います。保証については既に多くの質問がなされていますが、改めて伺います。
 第三者保証については公正証書の作成が必要とされ、保証人の保護が図られていますが、保証の意思を確認する保証意思宣明公正証書を作成した後、そのまま執行認諾文言付きの公正証書が作成されてしまう、その可能性があります。執行認諾文言付公正証書は債務名義となるため、裁判が行われることなく保証人に対して強制執行することが可能となります。これは保証人保護の観点から大いに問題があると思われますが、この点についての認識及び対策について伺います。
#142
○政府参考人(小川秀樹君) お答えいたします。
 まず、執行認諾文言付きの公正証書による問題ということでございますが、平成十六年頃、本人に無断で作成された委任状が利用されて、本人が知らない間に執行認諾文言付きの公正証書が作成されるといった濫用事例の発生が指摘されたことがございます。執行認諾文言が付された保証契約の公正証書は、これは必ずしも本人が公証役場に出向いて作成する必要はなかったため、代理人の嘱託によっても作成することができますので、こういった点をもとといたしまして今申し上げましたような濫用事例の発生の問題が生じたものでございます。
 この問題につきましては、公証人法施行規則の改正によって、代理人の嘱託により公正証書が作成された場合には公正証書作成の事実を書面により本人に通知しなければならないことといたしましたことに加えまして、執行認諾文言が付されている場合にはその意味を通知するという特別の様式で、執行認諾文言というのはこういうもので、強制執行を掛けられますよということを説明する、そういうこととしております。そういった対応は既にしたところでございます。
 また、改正法案において作成が求められる保証意思確認のための公正証書は、保証人本人が自ら公証人に直接口頭で必要な事項について述べることなどが法律上要求されておりますため、公証役場への出頭が必要でございます。したがいまして、保証人の意思確認のための公正証書を作成する際はもとより、これと併せて、執行認諾文言付きの保証契約の公正証書を仮に作成するといたしましても、その際には問題の発生を防止する措置がとられている状況にございます。
 法改正後は、公証人において保証人になろうとする者の意思確認を厳密に行うことにより、委員の御懸念のような事態はこれまで以上に防ぐことができるものと考えられるところでございます。
 法務省といたしましては、今後も、公証人による適切な直接の意思確認、これが実施されるよう十分監督をしてまいりたいというふうに考えております。
#143
○糸数慶子君 時間が参りましたので終わりますが、通告いたしました件に関しては、また次回に回したいと思います。
 ありがとうございました。
    ─────────────
#144
○委員長(秋野公造君) この際、委員の異動について御報告いたします。
 本日、中泉松司君が委員を辞任され、その補欠として自見はなこ君が選任されました。
    ─────────────
#145
○山口和之君 無所属の山口和之でございます。
 今日は、これまで論点とされてきたところを含めて、改正後の運用に関する疑問点などに関して質問させていただきます。
 意思能力等について伺います。
 今回の改正で意思能力に関する規定が新設されておりますが、その趣旨は何か、また意思能力とは何かをまず伺いたいと思います。
#146
○政府参考人(小川秀樹君) まず、意思能力の意義でございますが、人は原則として自己の意思に基づいてのみ権利を取得し、又は義務を負担するものでございまして、これは私的自治の原則の一つの表れでございます。この私的自治の原則は近代法の根本原理とされるわけでございます。
 この原理の具体的な表れとして、人が契約などの法律行為をするには行為の結果を判断するに足るだけの精神能力、すなわち意思能力を有していなければならず、意思能力を有しない者がした法律行為は無効となると考えられております。この考え方は、民法にこれまで明文の規定はございませんでしたが、言わば当然の前提として判例、学説上異論なく認められてきたところでございます。この考え方は、意思能力を有しない者がした法律行為を無効とすることで判断能力の低下した高齢者などが不当に不利益を被ることを防ぎ、これを保護する役割を果たしておりまして、高齢化社会が進展する中でその役割は今後ますます高まっていくものと考えられます。
 このように、国民生活に身近で重要なルールはできる限り適切に明文化して、民法を国民一般に分かりやすいものとすることが必要であると考えられるところでございます。そこで、改正法案におきましては、意思能力を有しない者がした法律行為は無効とすることを明文化することとしております。第三条の二の規定でございます。
 意思能力の定義ですが、一般に意思能力とは、行為の結果を判断するに足るだけの精神能力をいうなどと言われております。
 その具体的な内容について、学説上は、意思能力を事理弁識能力と理解し、個別具体的な法律行為の内容にかかわらずこれは一律に判断されるんだというふうに考える考え方と個別具体的な法律行為の内容に即して判断されるとする考え方、これがございまして、両者が対立しております。
 改正法案におきましては、意思能力を有しない者がした法律行為は無効とすることを明文化することとしておりますが、これは先ほど申し上げました異論のない解釈をその限度で明文化したものでございまして、先ほど申し上げました意思能力の意義あるいはその判断基準等に特段の変更はないというふうに解されるところでございます。
#147
○山口和之君 法律行為の当事者が意思表示をしたときに意思能力を有しなかったときはその法律行為は無効とするとのことでしたけれども、この無効を主張できる者は誰なのか、そして、表意者に限られるとの意見が通説と聞いておりますが、意思能力がなければそもそも法律行為が存在せず、誰でも無効を主張できるとする方が論理的ではないのかと思いますが。
#148
○政府参考人(小川秀樹君) お答えいたします。
 法制審議会の検討の過程におきましては、意思能力を有しない者がした法律行為の効力を否定することができるのは、一般に意思能力を有しない者の側の関係者のみ、要するに表意者といいますか、意思能力を有しない者の側の者のみが無効を主張することができて、契約の例えば相手方などについてはその効力を否定することができないと解されていることを理由として、意思能力を有しない者がした法律行為は、無効とするのではなく取り消すことができるものとすることが検討されました。
 つまり、現在の学説でも、意思能力の無効の主張については、一般的に意思能力を有しない者の側の主張のみを認めるというのが一般的な考え方でございます。しかし、法律行為を無効とするのではなく取り消すことができるものとする、先ほど申しましたように、無効ではなくて取消しにした方がいいのではないかという御意見もあったわけですが、取り消すことができるものといたしますと、その取消し権の行使期間は五年に制限されることになり、意思表示をした者の保護が不十分になるおそれがございます。また、意思能力のない者のした法律行為は無効であるとした場合でも、その主張をすることができるのは意思能力を有しない者の側の関係者のみであると解することは、先ほど申し上げましたように現に多くの学説が認めるところでございまして、理論的に見ても大きな問題点があるとまで言うこともないと考えられます。
#149
○山口和之君 民法を国民一般に分かりやすいものにするということの観点からすると、このことを明文化してもよかったのかなとは思います。
 次に、意思能力のほかに権利能力、行為能力とありますが、それぞれどのように定義しているのか、教えていただきたいと思います。
#150
○政府参考人(小川秀樹君) 民法上、権利能力及び行為能力の内容を定義する規定はございませんが、一般的に権利能力とは、私法上の権利及び義務の帰属主体となることができる資格をいうとされております。また、行為能力とは、単独で有効に法律行為をすることができる法律上の地位又は資格をいうとされております。
#151
○山口和之君 権利能力の始期は原則として出生の時点とされております。しかし、不法行為、認知、相続、遺贈に関しては例外的に胎児にも権利能力が認められているとのことですが、医学上の胎児は妊娠十週以降の子等と定義されておりますが、民法上の胎児の定義はあるのでしょうか。
#152
○政府参考人(小川秀樹君) 御指摘がありましたように、民法には胎児に一定の能力を認める特別の規定がございますが、胎児そのものの定義につきましては明文の規定はございませんで、判例上もこれを明らかにしたものはないというのが現状でございます。
 もっとも、民法には、先ほど申し上げましたように、不法行為に基づく損害賠償請求ですとか、相続、遺贈といった場面において胎児は既に生まれたものとみなす旨の規定が設けられておりまして、これらは、出生すれば権利能力者となる胎児について出生前に一切の権利取得を否定するのは不公平であるという趣旨に基づくものであると考えられます。
 こうした観点から見ますと、なるべく早い時期から胎児としての権利能力を認めるのが公平、あるいは胎児の保護にもかなうものと思われるというところでございまして、胎児の意味といたしましては、懐胎時から出生時までの間の子、これを胎児というものと考えるところでございます。
#153
○山口和之君 不法行為に関しては、「胎児は、損害賠償の請求権については、既に生まれたものとみなす。」と規定されているとのことですが、親権者は胎児について代理権を行使することができるか、確認させていただきたい。また、今回の改正案で、不法行為による損害賠償請求の消滅時効が「被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から三年間行使しないとき。」とされているが、例えば父が殺害された胎児の慰謝料請求権について、時効の起算点についてはいつになるのか教えていただきたいと思います。
#154
○政府参考人(小川秀樹君) お答えいたします。
 まず、代理権行使の可否の点からでございます。
 民法第七百二十一条は、胎児は損害賠償の請求権については既に生まれたものとみなす旨を規定しておりますが、胎児が出生する前に胎児の父母が親権者として胎児について代理権を行使することができるか否かという点につきましては、明示的に定めた規定はございません。
 もっとも、判例は、民法第七百二十一条の規定に関し、胎児の母が胎児を代理して加害者と示談し、胎児の権利を処分することはできないという、その旨を判示しております。
 一般的には、胎児の父母は胎児の損害賠償請求権について代理権を行使することはできないというふうに解されているところでございます。
 また、三年の消滅時効期間の起算点という点でございますが、御指摘のように、改正法案においても、不法行為による損害賠償請求権は、被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知ったときから三年間行使しないときに時効によって消滅する点で現行法を維持しておりますが、先ほど述べたとおり、胎児の父母は胎児について代理権を行使することができないと解されていることからいたしますと、胎児の父母が損害及び加害者を知ったとしても法定代理人が損害及び加害者を知ったとは言えず、胎児が出生し父母が親権を行使することができるようになったときと父母が損害及び加害者を知ったときのうち、いずれか遅い方がこれは三年間の消滅時効の起算点になるものというふうに解されるわけでございます。
#155
○山口和之君 この辺りは論点であって、実務上も問題となることがあると聞いていますので、明文化を図ってもよかったのではないかなというふうにも思います。
 次に、権利能力の終期は死亡の時点とされておりますが、明文の規定はありません。今回の改正では、権利能力の終期に関して明文化の議論は行われなかったのか。また、ここでの死亡とは具体的にいつのことなのか、脳死は含まれるのかについて伺いたいと思います。
#156
○政府参考人(小川秀樹君) お答えいたします。
 まず、権利能力の終期の明文化の点でございますが、今般の民法改正案の提出に至る過程におきまして、権利能力の終期を明文化することについての議論は、これは行われておりません。権利能力は、私法上の権利及び義務の帰属主体となることができる資格と解されておりまして、民法上明文の規定はないものの、自然人の権利能力が死亡によって消滅すること、このことは明らかでございます。
 こうした民法上の死亡の時期をいつの時点とするかについては、民法上明文の規定はないため、医学的所見を基礎とする社会通念に基づき判断されるものと考えられまして、伝統的には、心臓停止、呼吸停止、あるいは瞳孔散大というような三徴候によって判定する、いわゆる心臓死の時点であると考えられてきたものと認識しております。
 委員御指摘の臓器の移植に関する法律など、これは脳死などを議論の対象とするわけでございますが、臓器移植に関しまして死体の定義の中に脳死した者の身体が含められているものの、民法上の死亡について定めたものではございません。そのため、民法上の死亡に脳死が含まれるか否かについては、あくまでも社会通念に基づいて判断されるものと言うほかはございませんが、現段階ではこの点に関する判例はまだなく、一般的に脳死が死亡に含まれるとの社会通念が形成されているとまで断定するのは困難ではないかと考えているところでございます。
#157
○山口和之君 民法を国民一般に分かりやすいものとする観点から、権利能力の終期についても明文化してもよかったのではないでしょうか。
 次に、行為能力に制限を受けている者の法律行為は取り消すことができるとされておりますが、制限行為能力者が法律行為時に意思能力を有しなかった場合、当該法律行為は取消ししか主張できないのか、それとも取消し及び無効の両方とも主張できるのか。取消しには五年の期間制限があるのに対し、無効には期間制限がないなどの違いがあり、論点になっていることなので確認させていただきたいと思います。
#158
○政府参考人(小川秀樹君) お答えいたします。
 制限行為能力者が法律行為時に意思能力を有しなかった場合、これが前提の事案でございますが、意思能力を有しなかったことを理由としてその法律行為が無効である旨を主張することができるとともに、制限行為能力者であったことを理由としてその法律行為を取り消すこともできると考えられます。そのため、取消しが五年の期間制限によりできない場合であっても、意思能力を有しなかったことを理由とする法律行為の無効、それを二重にということで主張することは可能であると考えられるわけでございます。
#159
○山口和之君 取消し期間に制限があるかないかというのは大きな問題だと思いますし、わざわざ裁判所に後見開始の審判を申し立てた者が裁判を受けない者よりも不利な扱いを受けることがあってはならないので、このような場合には取消しも無効も両方主張できるべきだと思います。そのことを法律に盛り込むことも必要ではないかと考えております。
 以上で質問を終わらせていただきます。
#160
○委員長(秋野公造君) 午後二時に再開することとし、休憩いたします。
   午後零時四十一分休憩
     ─────・─────
   午後二時開会
#161
○委員長(秋野公造君) ただいまから法務委員会を再開いたします。
 休憩前に引き続き、民法の一部を改正する法律案及び民法の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案の両案を一括して議題とし、質疑を行います。
 質疑のある方は順次御発言願います。
#162
○古川俊治君 では、古川から質問をさせていただきます。
 この民法の議論がずっと入ってきまして、主に時効と保証という大きな論点が中心に審議されていますけど、私は弁護士としてもうちょっと違った観点から、今まで、実は審議会の整理されていない論点についてちょっとお聞きしたいと思っております。
 実はこの民法改正について、私が最初にこれ報道に触れたというのは二〇〇六年のことなんですね。このときは、私もまだ全然政治家になろうとも思っていない、候補にもなっていない頃でしたから、一弁護士としてそのとき思ったのは、古いかもしれない、確かに民法ってね、だけど、別に今機能しているじゃないかと、何でそれをわざわざ変えなきゃいけないんだと、これ正直にそう思ったんですよ。
 それで、国会議員になってみて法律というものになじんでくると、確かに法律として不出来なところがあるからちゃんとしなきゃいけないのかなと、そういうのも分かるようになったんですけれども、一般の法曹からすれば、特に古い、丸山先生なんて私よりずっと古いんですけれども、そういう人は、はっきり言って面倒くさいんですよ、今更面倒くさいと、そういうね。ところが、やっぱり多分、学者とかそれから官僚の皆さんというのは、多分法律どうありべしみたいな話なんでやりたいと。だから、このスタンスにははっきりこう、改正を慎重にやるという方と推進したいと、こういう両派があると思うんですね、これ両方あると思うんですけれども。
 今回、実はこの議論が始まったときに、今、その趣旨というのは、すごく取引が複雑化して高度化して情報の提供手段がすごく飛躍的に伸びたとか、やっぱり社会情勢が変わったということと、それから民法の判例がずっと積み重なってきていて、それが分からなくなっていると、条文からは。それで、それに判例の趣旨をちゃんと盛り込むという話なんですけど。
 もう一つの視点として、実は私がずっと聞いていたのは、法務省にずっといらした内田貴名誉教授がリードされてきたんですけど、アジアとして債権法の総合的なものを発信していくんだという話は前から聞いておりました。我々は、この日本というのは民法をフランスとドイツから輸入してきたわけで、ドイツが二〇〇一年に債権法を改正したと。フランスもたしか去年の十月頃にいよいよ始まったんですよね。そういう状況で、あとヨーロッパ各国でもまだ今債権法改正進んでいると、民法改正がですね。
 そういう中で、内田さん、本をちょっと引いてきたんですけれども、問題となっているのは、今、世界的に共通化に向かって動いている債権法の流れの中で、舶来の民法とはいえ既に一世紀を超える運用実績を持つ日本がどのようなスタンスを取るかであり、すなわち、ヨーロッパで形成されつつある共通法のモデルができるのを待って十九世紀と同様にまた輸入するという態度を取るのか、それともグローバルスタンダードが確立する前に共通法としての債権法のモデルの一つを発信しようとするスタンスを取るのかが問われているんだと。その上で、今、中国やあるいは韓国でも民法典の改正が進んでいるということを前提として、そういったアジアの動きがある中で、日本がどのようなスタンスを取るかが問題とされているんだと。日本にとって、債権法の抜本改正は、日本の国際的プレゼンスの懸かった国家戦略の問題でもあると言っているんですね。
 そういった観点は非常にポリティカルな話なんですけど、今回の議論では全くされないで来ちゃったんですね。この点について指摘する学者も結構いるわけですよ。
 ちょっと私は、それで取りあえずは推進派も慎重派もなくてちょっとお話しすると、実際、アジアの中でそうした今新しい債権法を共通して作っていく、それをヨーロッパとは違ったもので発信していくという、もう実際動きがあるのかどうか、そして、アジアの共通の債権法というものが、中国と日本が同じ債権法の原理を持つということは考えられるのかどうか、その辺ちょっとお聞きしたいと思っているんですけど。
#163
○政府参考人(小川秀樹君) お答えいたします。
 民法のうち財産法に関する分野については、委員御指摘のとおり、二十一世紀の到来間近の時期から、これはアジア地域においても中国、ベトナム、カンボジアなどで民法の制定又は全般的な改正が行われているものと承知しております。
 ただ、各国における民法の改正内容は、やはりそれぞれの国の歴史的、文化的なバックグラウンドや、我が国を含め法整備を支援した国の影響を受けてこれは異なるものとなっていると承知しております。もっとも、各国共に、やはりドイツやフランスなどの民法のほかウィーン売買条約といった統一的な条約がございますので、そういった国際条約などを参照として民法の制定、改正作業が行われておりまして、それらの影響を受けているものと承知しております。
 その結果ということになりますが、例えば売買の目的物の品質が契約の内容に適合しない場合における売主の責任については、今回契約責任説に立つわけですけれど、我が国で言う契約責任説の考え方によったルールがアジアの諸国などにおいても採用されている点で共通しているものと承知しております。
#164
○古川俊治君 そういった動きがあると、アジアの中で共通法ができていると、それは日本の中で恐らく取引の、アジア全体の取引の活性化というか、同じ考え方で作られていますから、そういう意味ではいいのかもしれませんけれども、今後、民法というものが、日本の民法が例えば国際的な取引の基準となっていくと、そういうふうになるための民法としてあるべき条件とか、あるいは準拠法となることの重要性というのはどういうふうにお考えなんでしょうか。
#165
○政府参考人(小川秀樹君) 今御指摘ありましたように、国際取引の契約では、契約の準拠法、これは両当事者の合意に基づいて選択することがあるわけですが、日本企業にとっては、日本法を準拠法とすることができれば契約内容及びその後の法的リスクを容易に理解し予測することができるため、国際取引における法的コストを低減することができるという利点がございます。したがいまして、日本の民法が国際取引で適用される準拠法となることは、これは我が国にとっても重要な意義を有しているものと認識しております。
 そして、契約当事者が準拠法を選択する際の条件としては、その法律の内容が明確で、国際的にも理解しやすく透明性の高いルールであるかどうかが、これが重要でありまして、この点では今回の改正法案はこれらの条件を満たす方向のものになっていると認識しております。
 もっとも、準拠法として選択されるに当たりましては、それ以外にも契約当事者間のこれはもう力関係によって一方当事者にとって有利な準拠法が選択されることがあり、ルールとしての合理性や透明性のみが準拠法として選択されるための条件であるとは、これは残念ながら必ずしも言い難い状況にあるものと承知しております。
#166
○古川俊治君 我々の日本の取引ということを考えると、それはやっぱりアジアということもありますけれども、欧米というのもすごく重要な国なわけですよ。欧米の法律というと、これはもう御案内だと思うんですけど、大陸法と英米法の違いがあって、これは根本的にその考え方も違うところがある、債権法についても同じですよね。
 日本が今取ろうとしている債権法というのは、大陸法と英米法の違いという観点からするとどうなんでしょうか。
#167
○政府参考人(小川秀樹君) まず、現行の民法ですが、よく指摘されますように、フランス民法を基とし、その後ドイツ法的な考え方を導入してきたというのが経緯だと思います。ただ、一部に、例えば民法四百十六条の損害賠償の範囲に関する規定などはこれはイギリスの判例を基としたものだと言われておりますし、契約の成立に関する発信主義なども英米法の影響を受けたものだという指摘がございます。その意味では、現在の民法それ自体も元々、様々な比較法的なものを取り入れているものだということが言えようかと思います。
 基本的に、特に我が国の民法は、大陸的な特徴として、例えば法典の方式自体がいわゆる総則からまとめて書いていくというパンデクテンの方式を採用しておる点や、あるいは法律行為といった概念を用いている点などが、その意味では非常に大陸法的な特徴だということで、今回の改正でもそういった大きな枠組みは維持されているものでございますし、先ほど申しましたイギリス法に沿革を有する民法四百十六条の規定なども今回の改正ではこの規定の基本的な考え方は維持されております。
 もっとも、近時の諸外国における民法改正においては、大陸法や英米法に特徴的な規律が採用されにくくなっている傾向にもあるとも言われておりまして、かつてのように截然と英米法、大陸法と分けるということに必ずしもなってはきていない部分もあるのかなというところでございます。
#168
○古川俊治君 明確に私は、準拠法として取り入れられるということは、日本のこれからの経済社会の発展にとっても有利であるという話はした方がいいと思っているんですね。それは今の法曹には、そんなこと関係ないんだと、市民の法律でどうして改正する必要があるんだと言っている人も多いわけですから、しっかりその点は政府としても話していいんじゃないかと思っています。
 もう一つ、この観点をちょっと変えていきたいと思うんですけれども、せっかく民法、百二十年ぶりに変えるというんであれば、もっとやるという方法もあったんじゃないかという気もしているんですね。
 一個が、そのさっき言ったパンデクテンの話なんですけれども、それずっと維持してきているんですけど、これはちょっと今日時間の関係でもうここは飛ばしますけど、はっきり言って並べ方を変えた方がもっと整合性のある債権法になったという気もするんですね。特に契約の総則なんか、債権の人のところに移すとかですね、そういうことや、あとは今の総則編にあるやつを債権法の方に持ってきたり、物権法に行けば、時効とか法律行為なんかは全部持ってくればもっと整合性はあると思うんですけれども、それはもうやらないで、パンデクテン方式は取りあえず維持したと。
 もっと言えることは、私思っているのは、民法って言ってみると抽象的な人という概念をすごく取っているんですね。一人の人がどういうような、私人の根本の法規なので、そこにはすごく、そこは抽象的な人というのをイメージしているというはずなんですが、基本は今までそうだったんですが、今回の改正では、そこにもうちょっと具体的に人の色づけができてきて、例えば取引をする人という概念が一つ出てきていると。
 それからいうと、今の私人間取引というのは、多くは事業者取引、一般の市民がやるような、か、言ってみれば消費者取引なんですよ。そうすると、今は事業者取引には商法と民法が適用されていると、消費者取引には消費者契約法と民法が適用されている、こういうふうになっているから、それはまあ一緒くたにした方がきっと一元的に考えられるんじゃないかと、こういう考え方ができると思うんですね。だから、より抽象的な人という概念から、もっと、生きている、社会で生きているような人の法律に民法をしていくということになると。
 例えば、今回の法律改正で、事業者取引からいえば、例えば、商行為法のうちで総則と売買の規定とか寄託の規定というのは、これは、実は民法の契約の成立の規定とか売買とか寄託のところと完全に重なっているんですよね。
 それも、だから言ってみると、今回、商法は何かその商事時効と利率のところが、ここも基本的には改正されて、残ったところは余りやられていないんですけれども、実は、そういったもっと商法の規定を取り入れてくることとか、あるいは消費者契約法ですよね、これ今回は約款だけやりましたけれども、消費者契約法を丸ごと民法に持ってくるということも、もう、より何というか一般法としてのジェネラルなベースを広くするんであればあったと思うんですが、そういう議論というのは全くなかったんでしょうか。
#169
○政府参考人(小川秀樹君) まず、消費者の方を申し上げますと、法制審議会の中でも、市民社会の構成員が多様化し、構成員の間には経験、知識などにおいて格差が生じていることなどから、消費者の概念を民法に取り入れるかどうか、取り入れる場合にこれらの概念をどのように定義するか、取り入れる場合にどのような規定を設けるか、どのような規定を特別法に委ねるのかといった点が議論されております。
 しかし、民法は私法の一般法であり、そのことを踏まえると、取引当事者の情報や交渉力の格差の是正を図るなど、消費者の保護それ自体を目的とする規定を設けるのであれば、それは特別法である消費者契約法などによることが基本になるものと考えられます。そこで、改正法案においては消費者に関するルールを設けることとはしなかったということでございます。
 それから、逆に、商事の関係でございますが、今回の改正法案は民法のうちの債権関係の規定について全般的な見直しを行うこととしたものでございますが、その際に現行商法の関係規定についても検討の対象とし、私人間の取引一般に妥当する規律であると考えられるものについては、その要件を見直して民法に移設することとしておりまして、商事時効を廃止するということにとどまりませんで、例えば、法令又は慣習により取引時間の定めがあるときは、その取引時間内に限り債務の履行をして、又はその履行の請求をすることができる旨、これは取引時間の規定でございましたが、これなどは民法に移したということになっております。
 他方で、削除した規定も商事時効のようにございます。ただ、やはり商法についても、民法の特則としてどのような規定を設けておくことが適切であるかという観点からの全般的な検討は今回の改正法案の立案に当たっては行われておりません。しかし、商法総則及び商行為の規定の一部については、現代の取引実態に十分適合していないなどの指摘があるものと承知しております。民事基本法制に関する立法課題は数多くある中で、商法総則、商行為の規定の現代化も重要な課題の一つであると認識しておりまして、その見直しの要否等について、引き続き検討の上、適切に対応してまいりたいというふうに考えております。
#170
○古川俊治君 百二十年ぶりということでもっとやればできたんじゃないかなというところもあるんですけど、引き続き今の体制でやるという話ですけど、商法の方もしっかりお願いをしたいと。それで、必要に応じてそのときはまた民法との関係をいじっても私はいいんじゃないかと思っていますので、ここで改正したからもうまた百二十年改正できないというわけじゃないですから、より整合性の高い、国民に分かりやすい法体系になるようにお願いをしたいと思っています。
 もう一点申し上げると、今回やっぱり大きい視点として、契約重視という考え方がすごく前に出たというふうに思うんですね。これも今までとはちょっと違った観点で、特にそれが出ているのが四百十五条の一項ただし書にすごく出ているわけですけれども、その中で、今までは、その債務不履行の規定で、債務者の責めに帰すことができない事由、この言葉は変わっていないんですけど、これ今度は、契約その他債務の発生原因の趣旨に照らして判断されるという言葉が入ったんですね。ということは、その帰責事由というのが、契約その他債務の発生原因を離れた客観的な過失の有無というものではないということがはっきりしたわけでありまして、そうすると、今まで帰責事由というのは、債務者の故意、過失又は信義則上それと同視すべき事由という、そういう伝統的な考え方があったんですけれども、それはもはや解釈論としてはこの法律の中ではないと。要するにこれは、過失責任主義というのを取らなくなったんだということは、この参議院の調査室が作ってくれた京大の山本先生の論文でももう明確に書いてありますし、あるいは内田先生の本にも書いてあります。
 小川局長は、衆議院の方の法務委員会の審議で、無過失責任主義に変わることはないというふうに言っている、変わるということじゃないんだと言っているんですね。過失責任主義を放棄したのかどうかということについては、学理的な議論には踏み込まないとして答弁を避けているんですけれども、ただ、帰責事由の通説的な考え方、すなわち債務者の故意、過失又は信義則上それと同視すべき事由と同じかどうかという、これは非常に重要な観点だと思うんですよ。この観点からちょっともう一回お答えいただきたいんですけれども。
#171
○政府参考人(小川秀樹君) 改正法案に対しましては、債務不履行による損害賠償責任に関して過失責任主義を否定し、債務不履行による損害賠償の基本的な枠組みを大きく変えるものであるといった指摘は確かにございます。
 まず、過失責任主義とは何かということでございますけれど、過失責任主義とは、一般にある行為について故意又は過失がなければ損害賠償責任を負わないという考え方をいうとされております。
 現行法において、この過失責任主義は、不法行為責任に関する七百九条において明示的に採用されております。他方、債務不履行による損害賠償責任についても、伝統的な通説によれば、四百十五条後段で債務者の帰責事由が必要とされているのは過失責任主義の表れであると説明されております。
 もっとも、そもそも帰責事由を過失責任主義と関連するものと理解するか、また、過失責任主義を前提とするとしても、その具体的内容をどのように理解するか、不法行為と全く同様のものと理解するのかなどについては、これは学説は多岐に分かれており、必ずしも明瞭ではございません。もちろん、御指摘のありました論文の山本教授のように、契約を非常に重視する立場ですとか、様々の立場がございます。
 そこで、改正法案におきましては、このような言わば学説的な争いといった学理的な議論には踏み込まないで、債務者の帰責事由という現行法の文言をそのまま維持しております。そこは従来と全く変わりません、帰責事由というところ自体は。
 そして、帰責事由の有無の判断に当たって考慮すべき事情を明確化するために、「契約その他の債務の発生原因及び取引上の社会通念に照らして」との文言を加えることとしております。これは、現在の裁判実務等においては、帰責事由の有無は、個々の取引関係に即し、契約の性質や目的などの契約その他の債務の発生原因に関する諸事情を考慮し、それから併せて社会通念をも勘案して判断されているということから、このような実務上の取扱いを、それを明確化するものでございます。
 以上申し上げましたとおり、改正法案は債務不履行による損害賠償責任について学理的な争いに立ち入らないこととし、従来の通説的見解からは過失責任主義の表れとされている債務者の帰責事由という要件をそのまま維持しておりますほか、現在の実務上の取扱いに従って帰責事由の有無を判断する際の考慮事情を明確化するものであります。
 したがいまして、改正法案は従来の通説的な考え方やこれに基づく実務運用などを否定するものではないというふうに考えております。
#172
○古川俊治君 いや、今まで過失責任主義かどうかはいろんな議論があったという話なんですけれども、例えば、僕、局長がやられたことがあるかどうかは知りませんけれども、例えば医療過誤をちょっと示したいんですが、あれって不法行為か債務不履行かって全く示さずに判断しているんですよ。それは御存じだと思いますよ。裁判官の方も同じだからあれができるんですよね、結局。だから、そんな、今これからはどっちかが争いがあるって、それは要するに過失の判断というのは同一だからどっちでも示さないでできているんですよ、判断が。それがここで変わっちゃったら実務に大きく影響するじゃないですか。
 これから、じゃ、一個医療過誤の話ですると、これから契約の趣旨を重視するという話になって、これから帰責事由は契約の趣旨あるいはその他の債務の発生原因に照らして判断することになったわけですよね。これ、一番ありがちなのがインフォームド・コンセントの話なんですよ。要は、インフォームド・コンセントの内容というのは、すごく、これはちょっとこういう事情があってあなた死ぬかもしれませんよと、これ受けてもらうわけですよね。今までは、死ぬかもしれないといっても、やっぱり客観的な過失があるかどうかというところでまずは立証していくというのが普通だったわけですよ。
 それで、どんなインフォームド・コンセントがあってもそれは請求原因が違っていて、客観主義の方で取るという、過失があればそれはそれで十分医療過誤だったわけですけれども、これから先は、例えばインフォームド・コンセントで、あなたのこういう場合にはこういうふうにやるということで、まあ立証のやり方なんですよ。要は、すごくその債務の要するに共通の事項として合意内容がどうであったかということを立証していくか、それとも客観的な医療行為のそごというのを追及していくか、これは弁護士としても全然やり方が変わってくるので、この点について実務の影響というのはどうお考えなんでしょうかね。
#173
○政府参考人(小川秀樹君) 現行法におきましても、契約において当事者がどのような義務を負うのか、あるいは帰責事由の判断がどのようにされるのかといった問題については、基本的には当事者の合意と、それから考慮要素として書いておりますような取引上の社会通念に基づいて定まるのが原則であるというふうに考えております。
 御指摘の診療契約もその点では基本的には同じであるというふうに考えられるわけですが、他方で、診療契約は従来の学説などでも例えば手段債務といった形で非常に特別な取扱いを受ける考え方が強いわけですが、診療契約は人の生命、身体に関わるものでありまして、本来は違法行為ともなり得る侵襲行為を内容とするもので、専門家の地位にある医師が主体となるものであることから、売買、消費貸借などのごく一般的な取引とは異なる性質を有するものと考えられます。
 そして、このような特質を有する診療契約については一般に一定の水準以上の医療行為をすべき注意義務を負うものと考えられ、これを当事者の合意によって引き下げることは当事者の合理的な意思に合致しないものと認められることが通常であり、仮にそのような合意があったと認定するほかないとしても、例えば公序良俗などの観点からもそのような合意の効力は直ちには認めにくいものと考えられる、そういう特殊性があるというのが診療契約の特質ではないかと考えております。
 このような意味で、御指摘の診療契約はその他のより一般的な契約類型とは異なり、当事者の合意内容に従って義務違反や帰責事由の有無を判断するわけにはいかず、むしろ取引通念に基づく判断が実際上優先されるべき性質を有しているものと考えられます。
 なお、改正法案においても、帰責事由の判断に当たりましては、先ほど来出ておりますように契約その他の債務の発生原因及び取引上の社会通念に照らすこととしておりますので、診療契約についても先ほど申し上げたような整理することと条文の文言との間には基本的には矛盾、抵触は存在せず、診療契約に関する判断枠組みが今回の改正法案の下で変更されるといったことはないものと認識してございます。
#174
○古川俊治君 まあ何か契約の種類によって違うというお話を今されましたけれども、それは今回の法律改正上明確になっていないので、ちょっと今の御答弁で、ちょっと時間がないのでもうやめますけれども。
 契約その他の取引上の社会通念という話もここに出ていますけど、別に医療行為の中で社会通念があるわけではないんですよ、やっぱり。非常に特別な事情があれば特別な事情をもってインフォームド・コンセントで考えていただくというのが普通の医療のやり方なので、そうすると、すごく社会通念上の取引というものと契約内容というのは相対的にできていますので、その意味からいうと客観的に何か過失というのはなかなか決まり難いと。
 今回は、本当は、その契約を重視してくれたのであれば私はその方がいいと思っているんですね、実は。ですから今の答弁はちょっと残念だったんですけれども、その意味では。だから、本来はもうちょっと、言ってみると患者さんの意思が生かされるような裁判があってほしいなと私は常々そう思ってきたので、今のはちょっと残念でございました。それはいいです。
 あと一点なんですけれども、今回実は、権利についての協議を行う旨の合意が書面でされたときは時効は完成しないということに一項なったんですね。協議による時効の完成猶予という話ができたんですけれども、実は二〇〇七年から東京三弁護士会では医療ADRというのをやっているんですよ。これは、余り裁判にならずに簡単に、できるだけ医事紛争を減らしていこうという話なんですけれども、実は今まではこのADRの申出というのは時効の中断事由にならないということになってきました。だから、時効が心配な場合には改めてちゃんと提訴してくださいという形になっていたんですけれども、裁判所に訴えをやってくださいとなっていたんですけれども、今回、協議を行う旨の合意が書面でされたときに時効は完成しないというんですけど、ADRでは医療側と患者側のあっせん人が出てきて書面でやり取りしますから、少なくとも交渉を行っているということは明らかな、書面上は、なんですけれども、ただ、ADR利用促進法が今度改正されます、同時に、それの二十五条一項では、相変わらず、相手側に、和解が成立する見込みがないことを理由にこのADRが終了した場合において、一か月以内にその訴えを提起したときにのみ時効の完成猶予になると書いてあるんですね。ということは、やっぱり訴えが要るということが書いてあるんですよ、これ。
 それは、そもそもこのADR利用促進法が使えるのは法務大臣の認証を受けた機関だけなので、ところが、弁護士会の医療ADRは受けていないんですよ。ということになると、やっぱりせっかく協議による合意による時効完成猶予といっても、書面上やり取りをしていながらやっぱり時効は完成しちゃうのでしょうか。このADR利用促進法二十五条一項からだと、何かADRをやっているうちの話合いなんというのは協議内容の合意に入るのかどうか、ちょっとその辺が不明なので教えていただきたいと思っているんですけど。
#175
○政府参考人(小川秀樹君) 今回の改正法案におきましては、協議を行う旨の合意による時効の完成の制度を新設しております。権利義務の当事者間において何らかの協議が行われたり、あるいは協議を行う合意があったというだけで時効の完成が猶予されることとすると、事後的に時効の完成猶予の効果が発生したか否か等をめぐる紛争が生じ法律関係が不安定になるおそれがありますので、改正法案におきましては、権利義務の当事者間において権利についての協議を行う旨の合意が書面又は電磁的記録でされている場合に限って時効の完成が猶予されることとしております。このような改正法案の趣旨からいたしますと、ここでいう書面というのは当事者双方の協議をする者の意思が表れているものでなければならないと、こういう基準があろうかと思います。
 医療ADRにおいて協議を行った場合でございますが、ある医療事故をめぐって金銭的解決を求めて医療ADRの申立てが行われる事案においても、その手続の過程などにおいて、例えば当事者間で協議を行う旨の合意をし、かつそれを書面化しておけば、そのことにより協議を行う旨の合意に基づく時効の完成猶予の効果が発生するものでございます。
 なお、具体的にどのような場合に書面で協議を行う旨の合意がされたと認められるかは、これはもちろん個別具体的な事情によりますが、例えば医療ADRの申立書の記載内容によっては、権利についての協議を行うことを相手方に申し入れたと評価し得る場合もあると考えられるわけですし、これに対する相手方が提出した書面に誠実に協議を行いたいといった記載があるのであれば協議を行う旨の合意が書面でされたと評価し得る場合もあるものと考えられます。
 ただ、もっとも、先ほど申し上げましたように、事後的に完成猶予の効力が発生したか否かが争いになるおそれもありますので、協議を行う旨の合意については明瞭に書面化しておくことが望ましいと考えております。
#176
○古川俊治君 ありがとうございました。今のはADRの中の基準になると思いますから、実務の運用にもすごく影響すると思っております。
 今回改正して、債権法改正と言っていますけれども、債権法には、契約とそして事務管理と不当利得と不法行為があると。今まで判例が積み上がっているのは不法行為の方も同じなので、これも今後また検討していただきたいと思っております。
 以上で質問を終わります。
#177
○佐々木さやか君 公明党の佐々木さやかです。今日の質疑の最後ということで質問をさせていただきます。
 今ほど協議の合意について御質問がありまして、私もちょっとその内容を今日確認させていただきたいと思いましたので、少し重なる部分がありますけれども質問をさせていただきます。
 今の議論は、医療ADRの場合どういうふうになるのかというお話でございました。私、事前にレクでいろいろ議論した中では、比較的この協議の合意というのは広く成立するのかなというような印象を受けておりまして、その前提認識はあるんですけれども、具体的な点を確認をしていきたいと思います。
 まず、そもそも、この協議の合意というものが今回、時効の完成猶予事由として新しく創設をされましたので、そもそもその協議の合意というのは、どういう内容を合意をすれば協議の合意と言えるのかと。承認とか催告という概念もありますけれども、そういうものとの違いというものも併せて説明をしていただけると分かりやすいかなと思いますので、まずこの協議の合意というのはどういうものなのかということをお聞きしたいと思います。
#178
○政府参考人(小川秀樹君) 改正法案におきましては、当事者間において権利についての協議を行う旨の合意が書面又は電磁的記録によりされた場合には時効の完成が猶予される旨の規定を新設することとしておりますが、ここでいう合意といいますのは、問題とされております債権の存否や内容について協議を行うこと自体を合意することというふうに考えております。
 承認、催告といったこれまでのいわゆる中断事由との対比でございますが、承認とは、時効の利益を受ける当事者が、時効によって権利を喪失する者に対しその権利の存在を認識しているものを表示することだというふうに考えられております。これに対しまして、改正法案における協議の合意では、債務者側が権利の存在を認めていない場合であっても、その存否等について協議を行うことを合意していればよいという点で違いがございます。
 次に、催告との対比ですが、催告とは、債務者に対して履行を請求する債権者の意思の通知でありまして、これは債権者の一方的な行為であります。これに対しまして、改正法案における協議の合意においては、債権者と債務者の双方が合意することが必要であるという点で違いがあるということでございます。
#179
○佐々木さやか君 協議の合意の対象としては、債権の存否、内容自体について協議、話合いをするということを合意するという御説明でございました。
 承認とか催告とは明確に違うかなと今の説明でも思いますけれども、これまでは催告という時効完成の猶予事由がありまして、債権者の側から一方的に履行を催告をすると、通知を送ったりとかですね、そういったことをすれば取りあえず完成は猶予されて、その間に訴訟の提起などを行えば時効の中断ということも認められたわけですけれども、こういう協議の合意という新しい完成猶予事由を設けたのがそもそもどうしてなのかと。こうした催告の効力というものもこれまでもあったわけですけれども、それと別に今回設けた趣旨について、前提として確認したいと思います。
#180
○政府参考人(小川秀樹君) 現行法におきましては、当事者が権利をめぐる争いを解決するための協議を継続していても、これは時効の完成が迫りますと、完成を阻止するためだけに訴訟を提起するとか、あるいは調停といったものの申立てなどの措置をとらざるを得ず、そのことが当事者間で自発的な柔軟な紛争解決を図る上での障害となっているという指摘がされておりました。そのため、このような協議を行っている期間中は時効が完成しないように手当てをする必要があると考えられたわけでございます。
 また、現行はもちろん催告という制度があるわけですが、現行法においても催告は時効の完成を猶予する効力を有しますが、催告は、時効の完成間際において裁判上の請求などの時効中断の措置を講ずるための準備期間を与えることを目的とするものでありますことから、六か月という短期間に限って時効の完成を阻止するものとされておりまして、協議期間がこれより長期間となることも少なくないという事情を踏まえますと、催告では時効が完成しないようにするための手当てとしては十分ではないと考えられたわけでございます。
 そこで、改正法案においては、当事者間において権利についての協議を行う旨の合意が書面又は電磁的記録によりされた場合には時効の完成が猶予される旨の規定を新設することとし、その期間は最長で五年に及ぶこととしております。
#181
○佐々木さやか君 今説明がありましたように、やはりこの協議の合意というのは当事者間の話合いによる解決を促進していくという効果があるのかなというふうに思います。私も以前、ADRについて取り上げさせていただいたことがありますけれども、そうしたADRの推進をしていくという方向性とも合致をするのかなと思っております。
 そのことがもう少し具体的なこの協議の合意の仕組みにも表れておりますけれども、協議の合意を一度した後に再度の猶予というものも認められております。これも先ほど申し上げた催告との違いであって、催告というのは、一度催告をして、その後もう一回催告をしても猶予の効果はありませんけれども、この協議の合意というのは、一度協議の合意をして、その後、更にもう一度協議の合意をしてということも認められるというふうに制度がなっておりますけれども、この趣旨というのはどういうところにあるのか、この点を説明をお願いいたします。
#182
○政府参考人(小川秀樹君) 改正法案におきましては、協議を行う旨の合意による時効の完成猶予は、先ほど申しましたが、合意などから一年を経過したときに終了することとしております。これは、時効の完成猶予の期間が不相当に長期化するといった弊害が生ずることを防止するため、通常であれば協議を終了させるのに十分な期間であると考えられます一年間、これを限度として時効の完成猶予を認めるものでございます。
 もっとも、実際の事案の中にはその協議が一年を超えてされることもあり、その時効の完成猶予の期間を延長すべきケースもあるとの指摘がございます。また、改正法案におきましては、協議を行う旨の合意による時効の完成猶予は、当事者の一方が相手方に対して協議の続行を拒絶したときは、その拒絶の通知のときから六か月を経過するときに終了することとしておりますが、拒絶をした者が翻意をして改めて協議を再開したいということももちろんこれはあり得るわけでございます。
 そこで、改正法案におきましては、これらのケースに対応するため、協議を行う旨の合意による時効の完成猶予中に再度協議を行う旨の合意があったときは、その合意の時点から時効の完成が更に猶予されることとしたものでございます。
#183
○佐々木さやか君 やはり当事者間の話合いというもので紛争を解決することを期待できる制度かなと思います。やはりADRというのはまさにそういう当事者間の話合いの場ですので、今後の運用においてどういうふうにこれを活用していけばいいのかというところの解釈の指針なり、そういったことも明らかにしていく必要があるのかなと思っております。
 それから、先ほども説明があったとおり、再度の猶予というものが認められているわけですけれども、そうだとしても、時効が本来完成すべきときからですか、それか最初の猶予のときからでしたか、五年という期間の制限があるという形になっています。この五年という期限にした理由をお聞きしたいんですけれども、五年というのは非常に長い期間でありまして、消滅時効が今回そもそも五年に短くなるということで、言ってみれば倍の時効の完成猶予というのが認められるということになります。
 ですから、当事者間の話合いの促進という面もありますけれども、本来五年で完成すべき時効が倍の期間完成をしないという効果もあるわけでありますので、この趣旨といいますか、どのようにバランスを取ってこのような五年という期間にしようと設計をしたのかについてお聞きしたいと思います。
#184
○政府参考人(小川秀樹君) 改正法案におきましては、先ほど申し上げましたが、協議を行う旨の合意による時効の完成猶予中に再度協議を行う旨の合意があれば、その合意の時点から時効の完成が更に猶予されることとしております。
 しかし、時効制度には、長期間にわたって権利の存否に関して不確定な状態が継続することを防ぐという、こういった公益的な機能もございますので、時効の完成猶予の効力の延長を私人であります当事者に無制限に委ねるということは妥当ではないというふうに考えられるわけでございます。
 また、当事者間の協議が五年を経過してもなお整わない場合には、これはもはや協議による紛争解決の見込みは薄いものと思われまして、時効の完成を阻止するために訴えの提起や民事調停の申立てなど裁判所の利用を要求することとしたといたしましても、これは不当とまでは言えないというふうに考えられるわけでございます。
 そこで、改正法案におきましては、協議を行う旨の合意による時効の完成猶予中に再度協議を行う旨の合意があったときは、その合意の時点から時効の完成が更に猶予されることとする一方で、そのような時効の完成猶予の効力は、時効が本来完成すべきときから通算して五年を超えることができないとの言わば今申し上げましたバランスを取った制度を設けることとしております。
#185
○佐々木さやか君 この協議の合意というのは恐らく今後多く活用されるのかなというふうに思っておりますけれども、こういう効果が生じるものですので書面による合意としたということです。
 じゃ、その書面というのはどういうものである必要があるのかということも明らかにするべきだと思いますけれども、この協議の合意の書面というのは様式というようなものはあるんでしょうか。また、電磁的記録によっても大丈夫であるという規定になっておりますけれども、では、例えばメールですとか、またSNSなどといったものについても大丈夫なのか。そうだとした場合に、メールなんかで、例えばこの争いについて話し合いましょうというようなメールが送られたと、それに対して何らかの返答をしてやり取りが続くということが考えられますけれども、どのようなやり取りがあればその電磁的記録による書面による合意と言えるのかというようなところについてどのように考えているのか、御説明をお願いします。
#186
○政府参考人(小川秀樹君) 権利義務の当事者間において何らかの協議が行われたり、あるいは協議を行う合意があったというだけで時効の完成が猶予されることといたしますと、事後的に時効の完成猶予がされたか否かなどをめぐる紛争が生じ、かえって法律関係が不安定になるおそれがございます。
 そこで、改正法案におきましては、権利義務の当事者間において、権利についての協議を行う旨の合意が書面又は電磁的記録でされた場合に限って時効の完成が猶予されることとしております。このような改正法案の趣旨からいたしますと、ここで言う書面とは、当事者双方の意思の両方が表れているものでなければならないものと解されます。
 ただし、その様式、御指摘ありましたような様式自体には特段の制限はございませんので、当事者の署名や記名押印が要求されるわけでもございません。また、当事者双方の意思が一通の書面に表されているという必要もございません。したがいまして、当事者間で協議を行うか否かについてのやり取りが行われている中で、一方の当事者が協議を行うことを申し入れる書面を交付し、他方の当事者がその申入れを受諾する書面を交付したケースでは書面で協議の合意がされたものと認められます。
 もっとも、先ほども述べましたとおり、権利についての協議を行う旨の合意は書面でされた場合に限って時効の完成が猶予されるものでありますので、例えば当事者間で何らかの交渉が行われるとともに双方の意見を記載した書面が交換され、協議を行う旨の合意が黙示的に行われている場合であっても、その合意が書面でされているとは言えないときには時効の完成猶予の効力は生じないものと考えられます。
 それから、メールやSNSの関係ですが、ここで言います電磁的記録も書面による場合と同様に当事者双方の意思の両方が表れているものでなければならないものと解されますが、例えば当事者の一方がメールやSNSを用いて協議の申入れをし、他方の当事者がメール又はSNSでそれに応ずる旨を返答すれば、先ほどの書面と同じように、電磁的記録による場合におきましても協議の合意があったものと扱われるものになると考えております。
#187
○佐々木さやか君 最終的に協議の合意があったかどうかが争いになった場合に、最終的には訴訟の場での事実認定ということになるんだとは思うんですけれども、ただ、やはり、例えばメールで合意をしましょうという申込みがあって、それに対して明確に応じる内容を書かなくても、黙認するというような形でやり取りをしていたりとか、要するに今何をもって書面による合意がなされたと言えるかどうかというのが非常にはっきりしないところがあるなというふうに思います。
 ですので、実際に法律、法案が成立をして施行されるということになった場合には、様々解釈の指針になる点をできる限り明確にしていただくことが不要な紛争を招かないことなのかなと思いますので、今後御検討をお願いしたいと思います。
 それから、じゃ具体的にこういう場合はどうなんでしょうということで質問したいんですけれども、一般的に契約書を取り交わす場合に、賃貸借契約もそうですし、消費貸借契約ですとか業務委託契約とか、いろんな社会で結ばれている契約書の中に協議条項というものが大体入っております。例えば、本契約に定めのない事項又は本契約の解釈に疑義の生じたときは、甲乙誠意を持って協議して解決するものとするというような条項というのが大体入っております。また、裁判管轄条項というのもほぼ必ず入っている条項でありますけれども、例えば、甲及び乙は本契約に関して裁判上の紛争が生じた場合はどこどこ地方裁判所を第一審の専属的合意管轄裁判所とすることに合意するとかですね、こういう条項も入っていると思います。
 こういうものというのは、この契約上の権利関係に、解釈に争いが生じた場合には協議をしましょうという内容ですので、ここでいう時効の完成猶予事由である協議の合意というものに当たるのかどうなのか、これについてはどのように考えたらいいのか、協議条項と裁判管轄条項について、それぞれお聞きしたいと思います。
#188
○政府参考人(小川秀樹君) 御指摘いただきました協議条項などにつきましても、様々なものが存在すると考えられます上、その条項を含む契約書がどのような経緯、状況で作成されたのかも多様な状況が想定されるところでございます。
 したがいまして、御指摘のような条項があった場合に、協議を行う旨の合意があったものと扱うことができるか否かについては、やはり個別具体的な事情によって判断するほかなく、一概にお答えすることは困難であります。
 もっとも、まず協議条項でございますが、協議を行う旨の合意に時効の完成猶予の効力を認めることとしておりますのは、債権の存否や内容について具体的に紛争が生じていることを前提に、その紛争の解決を協議で行うことについて合意をしたときに、その協議のための時間を確保させようというものでございますので、紛争が生ずる以前の契約を締結する段階で将来的に協議を行う旨の合意がされたとしても、その合意を完成猶予の効力が生ずる協議を行う旨の合意と言うことはできないのではないかというふうに考えております。
 なお、裁判管轄条項につきましても、これはあくまでも紛争が生じた場合の裁判の管轄裁判所を定めるものにすぎませんので、通常は協議を行う旨の合意があったと認めることはできないのではないかというふうに考えております。
#189
○佐々木さやか君 今の前者の協議条項の方ですけれども、これについては、契約が成立する段階のものであって、まだ権利義務自体も発生する前というか、その合意によって発生するような段階のものなので、その時々に、事情によりますけれども、当たらない場合が多いのじゃないかというような御答弁でしたでしょうか、そのように受け止めました。
 それであれば、それであればといいますか、私がちょっと懸念をしたのは、要するにこの協議条項というもの、協議条項というか、協議の合意ですね、というものが、消費者ですとか債務者の不利に濫用されたりとか、そういったことがないかどうかというところを確認したいと思ってこういう趣旨の質問をしたんですけれども、そういう意味で、契約段階じゃなかったとしても、その事前の合意といいますか、もし将来この権利関係について紛争というか、何というんですか、考え方が分かれた場合には話合いをしましょうというようなことを事前のどこかの段階で合意をあらかじめしておく、こういう事前の合意というのは有効なのかどうか、この点はどうでしょうか。
#190
○政府参考人(小川秀樹君) 事前の合意の関係でございますが、先ほど申し上げましたように、紛争が生ずる以前の契約を締結する段階であらかじめ将来的に協議を行う旨の合意がされたとしても、もちろん個別具体的な事情にはよるわけですが、一般的には協議を行う旨の合意があったと認められないと考えております。
 時効の完成前に協議の合意があったと認められることが仮にあったといたしましても、協議を行う旨の合意によって時効の完成が猶予される期間は、合意時から一年経過時、あるいは合意において一年未満の協議期間を定めた場合はその期間の経過時、さらに、協議の続行を拒絶する旨の書面等による通知のときから六か月経過時のいずれか早い時点までとしております。そのため、協議を行う旨の合意があっても、その合意があったときから一年以内に消滅時効の期間が経過するケースでなければ、これは時効の完成猶予の効力は意味を有しないものと言えるかと思います。
 したがいまして、契約を締結した場合やあるいは時効完成の相当前の時点で協議を行う旨の合意がされたといたしましても、そのような合意によって時効の完成が猶予されるという効果が発生することは、通常はないものではないかというふうに考えております。
#191
○佐々木さやか君 濫用的に用いられて消費者とか債務者の利益が不当に害されるようなことは余り想定しにくいのではないかという説明だったと理解をいたしました。この点については、今後の運用ですとか、また判例の蓄積などもされていくところかとは思いますけれども、国民生活に非常に関わりが深いところでありますし、かつ分かりにくいところでもあるので、今後の運用について注視をしていきたいというふうに思っております。
 ということで、最後に一問、法定利率についてもちょっと質問しようと思いましたが、今日も議論も出ておりましたので省かせていただいて、今申し上げたような協議の合意ですとか保証の問題、それから法定利率の変動金利ですとか、いろいろな、今回、民法の改正というのは非常に大きな改正が盛り込まれておりまして、かつ国民生活に身近な制度でありますので、よく施行前に国民の皆様にも知って、また内容を理解していただく必要があるかと思います。
 専門的な内容も多く含みますし、この周知をどのようにしていくかということも難しいところもありますけれども、重要な変更についてどのように国民に周知を行っていくのかということについて、最後、質問をさせていただきます。
#192
○国務大臣(金田勝年君) 佐々木委員の御質問にお答えをいたします。
 改正法案は、民法のうちの債権関係の諸規定を全般的に見直すものでございますから、国民の日常生活や経済活動に広く影響を与え得るものでございます。法律として成立をいたしました後は、その見直しの内容を国民に対して十分に周知をしていく必要があると、このように考えております。具体的な周知方法につきましては、国会における審議の結果や各種関係団体等を含めた国民からの意見も踏まえながら今後検討してまいりますが、例えば全国各地での説明会の開催や、法務省ホームページのより一層の活用、分かりやすい解説の公表などを想定をしているところであります。
 いずれにしましても、法務省としては、改正法が適切に施行されますように、国民各層に対しては効果的な周知活動を行うつもりでございます。
 なお、委員御指摘の法定利率や消滅時効に関する改正に加え、保証や定型約款等、一般の国民に対しまして影響が大きい個別のテーマにつきましては、国民生活のうち具体的にどのような場面に影響があるのかを踏まえながら、各テーマ別に周知方法を工夫することが効果的な周知に当たって肝要であると、このように考えておる次第であります。
 このような観点も含めまして、効果的な周知活動の在り方につきましては、弁護士会や裁判所、中小企業団体等といった関係諸機関とも協力をしながら検討してまいりたい、このように考えております。
#193
○佐々木さやか君 よろしくお願いをいたします。
 通告が以上で終わりましたので、少し時間が余りましたが、今日は以上で終わらせていただきます。
 ありがとうございました。
#194
○委員長(秋野公造君) 本日の質疑はこの程度にとどめます。
    ─────────────
#195
○委員長(秋野公造君) 参考人の出席要求に関する件についてお諮りいたします。
 民法の一部を改正する法律案及び民法の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案の審査のため、参考人の出席を求め、その意見を聴取することに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#196
○委員長(秋野公造君) 御異議ないと認めます。
 なお、その日時及び人選等につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#197
○委員長(秋野公造君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後二時五十五分散会
ソース: 国立国会図書館
姉妹サイト