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2017/05/11 第193回国会 参議院 参議院会議録情報 第193回国会 法務委員会 第11号
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2017/05/11 第193回国会 参議院

参議院会議録情報 第193回国会 法務委員会 第11号

#1
第193回国会 法務委員会 第11号
平成二十九年五月十一日(木曜日)
   午前十時開会
    ─────────────
   委員の異動
 五月十日
    辞任         補欠選任
     自見はなこ君     中泉 松司君
    ─────────────
  出席者は左のとおり。
    委員長         秋野 公造君
    理 事
                西田 昌司君
                山下 雄平君
                真山 勇一君
               佐々木さやか君
    委 員
                猪口 邦子君
                中泉 松司君
                古川 俊治君
                牧野たかお君
                丸山 和也君
                元榮太一郎君
                柳本 卓治君
                有田 芳生君
                小川 敏夫君
                仁比 聡平君
                東   徹君
                糸数 慶子君
                山口 和之君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        青木勢津子君
   参考人
       早稲田大学大学
       院法務研究科教
       授        山野目章夫君
       弁護士      辰巳 裕規君
       弁護士      山本 健司君
       弁護士
       法政大学大学院
       法務研究科教授  高須 順一君
       静岡大学人文社
       会科学部教授   鳥畑 与一君
       司法書士     山田 茂樹君
    ─────────────
  本日の会議に付した案件
○民法の一部を改正する法律案(第百八十九回国
 会内閣提出、第百九十三回国会衆議院送付)
○民法の一部を改正する法律の施行に伴う関係法
 律の整備等に関する法律案(第百八十九回国会
 内閣提出、第百九十三回国会衆議院送付)
    ─────────────
#2
○委員長(秋野公造君) ただいまから法務委員会を開会いたします。
 委員の異動について御報告いたします。
 昨日、自見はなこ君が委員を辞任され、その補欠として中泉松司君が選任されました。
    ─────────────
#3
○委員長(秋野公造君) 民法の一部を改正する法律案及び民法の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案の両案を一括して議題といたします。
 本日は、両案の審査のため、参考人から御意見を伺います。
 午前に御出席いただいております三名の参考人は、早稲田大学大学院法務研究科教授山野目章夫君、弁護士辰巳裕規君及び弁護士山本健司君でございます。
 この際、参考人の方々に一言御挨拶を申し上げます。
 本日は、御多用のところ本委員会に御出席をいただきまして、誠にありがとうございます。
 参考人の皆様方から忌憚のない御意見を賜り、今後の審査の参考にいたしたいと存じますので、どうぞよろしくお願いを申し上げます。
 議事の進め方について申し上げます。
 まず、山野目参考人、辰巳参考人、山本参考人の順に、お一人十五分程度で御意見をお述べいただきまして、その後、各委員からの質疑にお答えいただきたいと存じます。
 なお、意見の陳述、質疑及び答弁のいずれも着席のままで結構でございますが、御発言の際は、その都度、委員長の許可を得ることとなっております。また、各委員の質疑時間が限られておりますので、御答弁は簡潔にお願いいたします。
 それでは、山野目参考人からお願いいたします。山野目参考人。
#4
○参考人(山野目章夫君) おはようございます。
 本日は、意見陳述の機会を与えていただき、誠にありがとうございます。早稲田大学の山野目と申します。勤務する大学におきまして、法科大学院の教育研究に携わっております。民法を専攻分野としております。この度、審議されております民法の一部を改正する法律案を政府が準備するに当たりましては、法制審議会の調査審議が行われましたところ、この審議会の下に設けられた専門部会の幹事を務めました。この経験に基づき、本日はこの法律案について所見を述べさせていただきます。
 顧みますと、ここで御審議をお願いしております民法の一部改正は、政府において、二〇〇九年、法務大臣がその諮問機関である法制審議会に対し、その準備の作業を促す諮問をしたことに端を発するものでございました。法務大臣の諮問八十八号であり、それによりますと、民事基本法典である民法のうち債権関係の規定について、同法制定以来の社会経済の変化への対応を図り、国民一般に分かりやすいものとする等の観点から、国民の日常生活や経済活動に関わりの深い契約に関する規定を中心に見直しを行う必要があるところから、その見直しの内容として適切なものを検討してほしいというものでありました。この諮問を受け、法制審議会には専門部会が設けられました。その部会の会議は九十九回に及び、部会の審議の一環として行われました分科会も加えますならば、会議は百回を超えるものでございます。
 この調査審議の成果を反映する法律案は、二〇一五年三月三十一日、民法の一部を改正する法律案として閣議で決定され、その年の常会において内閣から衆議院に提出されました。この後、御高承のとおり、法律番号の年に係る事務的な修正がありましたものの、その余は原案のとおりに衆議院において可決され、御院に送付されて本日を迎えます。
 改めてここで法務大臣の諮問を読み返しますと、まず民法の内容を社会経済の変化に対応したものにしようという観点がございます。
 今般の法律案の全般がこの観点を背景とするものでありますが、その観点から見て二つほど注目されるものを挙げますと、まず、明治に民法を作った当時は、高速鉄道や航空機、宅急便、生命保険、損害保険、倉庫取引やインターネットを利用するための契約を公衆を相手として大量にされることは想定されておりませんでした。今日、私たちは、これらを欠いて生活や事業をすることはかないません。その際、一々契約条件を精密に把握しなければならないことは煩わしいですし、半面、事業者が提示する契約条件に著しく不適切なものが含まれている場合、それをまた一々交渉をして外すということも難儀でございます。そこで、法律案におきましては、定型約款と呼ばれる概念を用意し、それが契約に組み入れられる要件と、著しく不当な契約条項が契約の内容とならないとするためのルールが用意されております。
 また、金銭債権から生ずる利息や遅延損害金などの附帯金の利率を当事者が定めなかった場合の利率は、現在、年五分とされておりますが、今日の金利情勢から申しますといささか高過ぎると感じます。そこで、改正規定の施行時に年三%にするところから始め、法令で定める計算方法に従い、三年ごとに見直すという仕組みを取り入れようとしております。
 そのほか、弊害が見られる個人保証の中でも、特に第三者保証について、保証人となる者の意思確認の仕組みを新しく導入しております。五年にわたる法制審議会の調査審議の間には、これと並行して様々な関連する取組もされました。個人保証の問題は、並行した中小企業庁と金融庁、そして日本商工会議所と全国銀行協会の取組により、事業資金の融資で保証の安易な徴求を控えるよう促す試みが始まっております。また、今般の民法を改正する法律案には、入居者が借家を退去する際の敷金の精算の在り方という市民生活に身近な問題につきましてもルールの明確化を図っているところに注目をしておきたいものでございます。
 お話の後半に参りますと、法務大臣の諮問は、民法を国民一般に分かりやすいものとするということも求めております。こちらも二つほど話題をお出しするならば、まず、債権が時間的にいつまで続くかという消滅時効の問題は、現在誠に複雑であります。
 演芸を業とする者が一生懸命に歌を歌ったり演奏したりして、その報酬の時効は一年であります。労働基準法が適用されれば二年になりますけれども、いずれにしても、なぜこのように殊更に短くするか、それ自体よく分かりませんし、お金を貸す債権の時効より短いということについて納得感が得られるか疑問であります。しかも、その貸金の債権も、銀行の融資の債権は五年、法人である貸金業者のものも五年、しかし、個人の貸金業者の債権は十年、信用金庫のものも十年というふうに、困惑を禁じ得ない複雑さがあります。
 これらを整理し、改革の方向としては、原則として権利行使可能時から十年の経過で消滅時効の完成が認められるほか、権利行使が可能であることを債権者が知ったときから五年の経過でも消滅時効の完成が認められるというふうに、すっきりしたものにしようとしております。
 また、時効とは異なるお話を取り上げますと、契約と申せば、その基本の中の基本は何と申しましても売買でありますが、これも論議がいたずらに複雑な部分があります。売買がされた物にきずがあったというような場合は売主の担保責任により解決されますが、担保責任の理解をめぐり学説理解は複雑に対立し、理解が簡単ではありません。契約成立前に物が壊れて駄目になっていた場合の諸問題も、六法全書には書かれていない概念で処理されており、とても国民に分かりやすいとは感じられません。改正をお認めいただくことになりますと、これらの場面の全ては契約解除と債務不履行の損害賠償を基本とする統一のルールにより解決が与えられます。
 もちろん、契約は売買のみではなく、そのほか民法が規定を用意する典型的な十三個の契約のうち、今般何らかの見直しがされようとしているものは実に十個に及びます。
 このような内容が盛り込まれている法律案でありますところ、今後この法律案の国会における審議を経て、その帰趨が定まった後の課題ということにつきましても考えるところがございます。
 再び二〇〇九年の法務大臣の諮問に立ち返りますと、まず、そもそも今般の民法の見直しは、国民の日常生活や経済活動に関わりの深い契約のルールをより良いものにしようという観点から始められたものであり、この観点からの仕事はこれからも続けられなければなりません。実際にも、既にさきの常会において成立を見ました平成二十八年法律第六十一号による消費者契約法の改正により、消費者が契約を取り消す権利の拡充なども図られております。
 また、さきの法務大臣の諮問は、差し当たり民事基本法典である民法のうち債権関係の規定の見直しを求めるものでありましたが、この観点におきましても、いわゆる六法全書に載っているような基本的な法律について、これからも社会経済の動向を踏まえた内容の見直しを検討し、また漢字片仮名交じりの漢文調の堅苦しい文体を改めていくことが望まれます。例えば、商法の運送の部分を見直すとともに、商法の法文を現代語化することなども取り組まれております。これらの政府の施策の積み重ねにつきましても、立法府におきましては引き続き御関心を抱いていただきたいとお願いするものでございます。
 なお、本日は、申し上げてまいりました民法の改正の法律案に加え、民法の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案も議題とされていると理解しております。民法は他の多くの法令と関連があり、今般改正に伴い、他の各種の法令のどこが変わるかも見落とすことができません。関係する法律の整備といたしましては、商法や消費者契約法、さらに借地借家法など国民生活にとって重要である基本的な法律が、提案されている民法の考え方と整合するようにするために措置が提案されてございます。
 また、この度の法律案が御院において原案の基本的な内容に即して採択されるに至るということになりますならば、政府としてはその施行の準備を進めることとなりますが、民法を改正する法律案の附則によりますと、新しい規律の大部分は公布から三年以内に政令で定める日から施行するとされております。この最大で三年という期間が周知期間となります。
 明治に民法が制定されてからこの方、空前の規模の改正であり、内容が多岐にわたり、従来の考え方を改める事項がある傍ら、確立した判例や通説として定着している考え方を確認する事項も見られます。消費者保護や企業法務の実務において、施行までに新しい民法のルールを十分に理解してもらうことが求められます。大学における教育や国家試験の施行、また司法修習など、教育や資格試験の実施に際しても必要な準備をしなければなりません。
 新しい民法のルールは、細かな例外はあるにしても、基本は、その政令で定められる日の以後に発生した債権、また施行日以後に締結された契約に適用するものとされます。施行日前に生じた法律関係は、なお従前の例によるものとされます。例えば、東日本大震災から六年がたちますが、津波被害や原子力損害賠償の権利を主張しようとする人々の権利の主張は、新しい消滅時効の制度に影響されることなく現在において有している法律的な立場が保たれるものとされております。
 これらの実施に向けての留意点を含め、御院におかれましては議題とされております法律案につきまして鋭意充実した御審議をいただき、また、それらが国会として議決をいただく際は、政府において適切に施行の準備を進めることを切望いたします。
 以上が所見でございます。ありがとうございました。
#5
○委員長(秋野公造君) ありがとうございました。
 次に、辰巳参考人にお願いいたします。辰巳参考人。
#6
○参考人(辰巳裕規君) 兵庫県神戸市で弁護士をしております辰巳と申します。本日は、発言の機会を与えていただきまして、誠にありがとうございます。
 私は、現在、日弁連の消費者問題対策委員会の多重債務問題を担当する副委員長をしております。本日は、民法改正の中でも保証の問題を中心に意見を述べさせていただきたいと思います。
 私が保証人の問題に関心を持つきっかけとなったのは、やはり商工ローンの問題になりました。少し商工ローン問題というものを振り返ってみたいと思います。
 ちょうど私が平成十年に弁護士を神戸市で始めたときですけれども、当時はまだ阪神・淡路大震災の傷痕から地元の中小企業も癒えていない、そういう状態でしたが、その中小企業を二重、三重に苦しめていたのが商工ローンでした。当時、京都に本社のあった日栄という商工ローン業者がありまして、大変取立てが厳しく、弁護士が付いた後も法律事務所に直接乗り込んできたり、あるいは裁判所の待合室に従業員が入ってきたりということも当時は平気でございました。
 私の依頼者で建設業をしていた個人の方ですが、同業者や親族を日栄からの借入れの保証人としていた方がいましたが、保証人が厳しい取立てを受けて、その取立てを受けた保証人から今度責められるという結果になりまして、結局その方はその後消息不明になってしまったということがありました。
 ほかにも、商工ローンの事件では、自殺未遂をして首に生々しい傷が残ったままでおられた自営業者の方、あるいは自営業をしていた夫を自殺で失った配偶者の方など、自殺に絡む事案というものも当時は珍しくありませんでした。日栄の従業員の恐喝的な取立てが大きく報じられたのはそれから数年後のことだったというふうに覚えております。
 商工ローンなど事業者向けの融資は、小規模な事業者でもやはり一千万円を超えるような高額な借入れとなることが少なくありません。大手企業の会社員や公務員など比較的経済的に余裕のある方が保証人となる場合でも、やはり事業者向け融資の保証債務を一括で返済をするということは、多くの場合、困難を伴います。親族や同業者など情義的な関係があり、主債務者には迷惑は掛けないと頼まれて、自分は一円ももらうことなく無償で親切心から保証人となった普通の方々が、ある日突然高額の保証債務の返済を迫られる、家族含めて生活破綻に追い込まれるということになります。商工ローン問題というのは保証人被害の問題であったというふうに理解しております。
 ところで、この商工ローンでは根保証という問題がありました。百万円の借入れを保証したつもりなのに、知らない間に極度額目いっぱいの一千万円の追加融資分についての保証の責任を負わされたという訴えも当時たくさんありました。
 平成十六年民法改正において、保証契約は書面で行うこと、貸金等根保証契約については極度額を定めることなどが定められました。もっとも、この極度額については現行法でも上限はございません。
 また、時の経過とともに主債務者の経営状態も、あるいは保証人自身の生活状態というものも変化していきます。保証契約の時点では大丈夫である、合理的であると判断したとしても、その後に主債務者の経営状態が悪化していく、あるいは保証人さん自身の生活が変わっていくということもあり得ます。根保証は、限度額や期間の制限がありますけれども、しかし、保証人に予想外の負担をなお及ぼす危険な、特殊な保証契約であるという点は今も変わらないと思います。
 もう一つ、商工ローン業者の話になりますが、商工ファンド、SFCGという会社がございました。SFCGに特徴的であったのは、複写式の契約書に公正証書作成のための委任状を忍ばせておいて、保証人が知らない間に執行認諾文言付きの公正証書が作られ、主債務者に不履行があると、裁判なしに保証人が突然給料や売掛金などが強制執行されるという、公正証書の濫用の取立て被害が発生した点にあります。
 保証債務を請求される裁判が起こされたときに、保証人は利息制限法や民法上の錯誤あるいは信義則違反などを主張して保証債務の減免を争うことが可能な場合もあるのですが、突然裁判もなしにいきなり生活の糧となる給料や売掛金が差し押さえられると、保証人は理論上は請求異議訴訟を起こすことになりますが、しかし、多くの保証人にとって、給料や売掛金などが差し押さえられた状態で司法に救済を求めるということは困難な状態となります。
 この公正証書の濫用が問題となった際に、公証人サイドからは、印鑑証明書と実印を確認している、委任状という書類があることをしっかりと厳正に確認しているから、法律に基づいて公正証書を作成しているというような弁解があり、公正証書が濫用されてしまったことについての問題意識は余り感じられませんでした。
 そこで、日弁連消費者問題対策委員会では、平成十六年に日本の公証人制度の母法であるドイツの公証人制度の視察調査を行いました。ドイツでは、公証人に教示義務、日本でいえば説明助言義務でしょうか、が損害賠償責任に裏付けられた法的義務と定められていること、中立公正な立場から両当事者に教示義務を尽くして公正証書を作成しており、市民に高い信頼を得ていることを目の当たりにして深い感銘を受けました。公正証書は、単に立派な経歴を持つ方が公証人となって作成しているから権威があるというものではなく、法律専門家が予防司法の観点から教示義務を尽くした上で公正証書を作成するからその公正証書に高い信頼が得られているということでした。教示義務は、ドイツでは公証人制度のマグナカルタであるとの説明もありました。
 日本においても、公証人法二十六条あるいは施行規則十三条等の規定がございますが、これらは努力規定であり法的義務ではない、公証人は積極的な調査義務は負わないというのが判例、通説とされているようです。関西での表現かもしれませんが、公正証書を取得することを公正証書を巻くという表現などを使うことがあります。公正証書は、何か債権回収のためのテクニックであるかのように扱われることがあります。SFCGも公正証書を飛び道具と称して公正証書を濫用していました。
 改正法案における保証意思宣明公正証書のみならず、養育費の不払であるとか、あるいは任意後見など、今後、公証人、公証制度の役割というものは非常に重要になっていくと思われます。しかし、公証人法は、明治時代から大きく改正はされていません。公証人の意思確認義務、教示義務あるいは説明助言義務を法律上の義務とすることを中心とした公証人法の改正も併せて検討する必要があると考えております。
 なお、平成十八年には、あの有名なグレーゾーン金利をめぐる最高裁判決というものがございましたが、この最高裁判決もシティズという商工ローン業者をめぐる裁判でありました。そして、このシティズも第三者個人保証人を徴求していました。私が担当した最高裁の事件における依頼者も、サラリーマンの保証人の方でした。貸金業法四十三条のみなし弁済をめぐって裁判をずっと争い続けて、最高裁でようやく逆転ができ、保証債務の負担を軽減することができました。
 このような商工ローン被害あるいは消費者金融の多重債務被害を受けて、同じく平成十八年の十二月、第一次安倍政権下ですが、高金利引下げ、過剰融資規制を柱とする改正貸金業法が与野党全会一致で成立し、その後、官民挙げた多重債務改善プログラムが実施され、多重債務被害は大いに減少しております。もっとも、改正貸金業法においても、保証被害の救済については残された課題となっております。ちょうどそのような時期に、今般の民法改正、債権法改正の動きが活発化してきました。
 私は、民法改正と聞いて、真っ先にやはりこの保証の悲劇をなくすことが必要であると考え、民法改正では保証人保護制度の拡充に取り組むべきだと考えて、消費者問題対策委員会から日弁連の債権法改正を担当する委員会にも参加して、法制審の議論について、日弁連から選出された法制審委員、幹事のバックアップという形で今日まで関わっております。
 法制審議会では、保証人保護の拡充に向けて大変熱心な議論が積み重ねられてきました。様々な利害関係を乗り越えて、保証人保護拡充のために様々な規律が法案として結実することに至ったことについては、私は保証人保護の観点からも前進であると評価したいと思います。
 日弁連の保証についての意見につきましては、本日お配りさせていただいた資料の二以下に付けさせていただいておりますが、私のレジュメの資料一の三ページ目から、日弁連の保証についての意見と、それについて法案に反映させていただいたかどうかをマル、バツ、三角という形で付けさせていただいております。おおむね日弁連が求めた項目の多くが基本的には取り入れられたと考えており、今国会で改正を是非実現していただきたいと思います。
 もっとも、以下に述べるような課題もなお残されておりますので、今国会において、可能な点については修正も視野に御検討いただくとともに、それでも残された課題については、平成十六年民法改正においては保証に特化した改正がなされておりますので、同じように今般の民法改正をステップに、引き続き更なる保証人保護の拡充のための改正を目指していただきたいと思います。
 残りの時間で、若干ですけれども、この改正法案の残された課題について意見を述べさせていただきます。
 まず、第三者個人保証の原則禁止についてです。
 法制審では、第三者個人保証の原則禁止は残念ながら見送りとなり、保証意思宣明公正証書の作成を要件とする制度となりました。
 資料一のレジュメの一ページ目から二ページ目にも記載しておりますが、保証は個人破産、多重債務の大きな要因となっております。また、保証は自殺の大きな要因ともなっております。これに対して政府では、多重債務改善プログラムの取組、あるいは自殺総合対策大綱による取組などを進められておりますが、多重債務あるいは自殺の要因としてこの保証人という問題が挙げられているところです。
 さらに、資料一の二ページ目(三)ですけれども、円滑な起業、ビジネスを起こすという起業ですね、それから円滑な事業承継、再チャレンジの機会の保障など、中小企業の活性化は我が国の成長戦略にとって重要な課題の一つとなっておりますが、個人保証がこれらを阻害しているという指摘はいろいろなされており、金融庁の監督指針あるいは経営者保証ガイドラインにおいて、個人保証に依存しない融資慣行の確立が目指されているところです。
 地域経済活性化支援機構法改正法の附帯決議では、個人保証に依存しない融資を確立すべく、民法(債権法)その他の関連する各種の法改正等の場面においてもガイドラインの趣旨を十分踏まえるよう努めることとされております。
 民法改正においても第三者個人保証の原則禁止に可能な限り踏み込むことで、これらの施策を後押しするような取組を進めていただきたいと思います。
 資料一のレジュメの五ページになります。真ん中の辺りですけれども、例えば第三者保証の原則禁止については、創業者支援、エンジェルというような個人保証が必要であるということが言われることがありますが、仮にそうであるならば、そのような創業時においてのみ例外的に第三者個人保証を認めるなど、そのような措置がとれないかと考えております。また、先ほど述べた予想外の責任を負う可能性のある貸金等根保証契約について第三者保証を禁止してはどうかとも考えております。国会の政治的な判断で、民法改正においても第三者保証の原則禁止に一歩でも踏み出していただきたいと思います。
 次に、保証意思宣明公正証書についてですが、資料一、五ページ目以下です。
 公正証書が商工ローンに濫用されたことは先ほど述べたとおりです。改正法案では、公証人に意思確認義務も説明助言義務も定められておりません。公証人法二十六条、施行規則十三条はございますし、通達による適正化もなされると思いますが、法的義務として位置付けられない限りは、公証人による意思確認は実効的な制度とはならないのではないかと考えます。むしろ、保証意思公正証書の作成に続けて、同日連続して保証契約自体も公正証書で、しかも執行認諾文言付きで行われるならば、債権者に取立ての道具を与えるだけともなりかねません。
 公証人の意思確認というものを厳格にする、保証人を慎重にさせるということであれば、保証契約に先立って作成される公正証書は少なくとも保証契約の前日、一日前に作成されることを要件とすべきです。一日だけでも、一晩だけでも熟慮期間を与えていただきたいと思います。
 なお、保証債務をめぐる事案では、無効、取消し、信義則違反など、保証人にもいろいろ言い分がある場合が少なくありません。改正法案では情報提供義務違反の取消しも追加されております。保証人がその責任の有無や範囲を裁判で争う機会を実質的に与えるために、保証契約には執行認諾文言を付さないということも検討すべきと考えます。
 次に、大きな問題となっております配偶者保証の例外についてです。
 個人の事業者の事業に従事する配偶者については、公正証書の作成すら要しないとされております。多くの場合、夫が個人自営業者である場合の妻が予想されると思いますが、夫に仕事上も、あるいは経済的にも、家庭においても何らかの関係下、影響下にある下で保証人にやむを得なくなってしまうというのが情義的な保証としての妻の保証人ではないでしょうか。
 中小企業団体からは強い要望があったということですが、本来は個人自営業者も配偶者を保証人にしたくはないというふうに思います。法制審議会でも多くの委員、幹事がこの配偶者保証の例外には反対していると伺っております。既にこの法文の死文化、あるいは限定解釈を唱える方もおられます。立法の段階で、今の段階でこの配偶者保証の例外の規定は削除することを検討していただきたいと思います。
 残り時間短くなりました。
 レジュメに指摘させていただきましたけれども、保証契約締結時の情報提供義務、これが盛り込まれたことは大いに評価したいと思いますが、これが実効的に取消し権が行使できるように、例えば公正証書に情報提供の有無や内容を記載することも検討されてよいと思います。また、支払能力を超えるような保証というものが果たして合理的かということについても、改めて見直しが必要になるかというふうに思います。
 多重債務という観点からは、保証以外にも諾成的消費貸借や、あるいは法定利率の問題などもありますが、時間の関係もございます。レジュメの方に問題意識を記載させていただきたいと思います。
 私の意見は以上としたいと思いますが、法制審議会で結実した議論を基に、この参議院の法務委員会においても充実した審議が行われて立法が実現することを期待いたしております。
 以上です。
#7
○委員長(秋野公造君) ありがとうございました。
 次に、山本参考人にお願いいたします。山本参考人。
#8
○参考人(山本健司君) 大阪で弁護士をしております山本健司でございます。本日はこのような意見陳述の機会を与えていただき、誠にありがとうございます。
 お手元にお配りさせていただいております資料を御参照いただきながら、今般の民法改正法案に関する所見を述べさせていただきたいと思います。
 資料一の一ページから二ページに図解をさせていただきましたとおり、高止まりしている我が国の消費者トラブルへの対応策として、社会的な被害の防止や拡大阻止に有効な業法による行政規制の整備とともに、実際に発生した個々の被害者の被害救済に有効な民事私法による民事ルールの整備、具体的には、基本法である民法と特別法である消費者契約法の整備は極めて重要な立法課題であると考えます。
 私は、日弁連消費者問題対策委員会において、他のメンバーとともに、法制審議会で審議されておりました債権法改正論議の諸論点について、消費者保護という観点からその内容を検討し、その時々に意見を述べてまいりました。
 通し番号二十三ページ以下の資料三は、平成二十三年六月に法制審議会のヒアリングに呼んでいただいた際に、日弁連消費者問題対策委員会の有志のメンバーで作成、提出した意見書です。当時はまだ中間論点整理が終わった段階で、最終的に法制化が見送られた項目を含め五百以上の検討項目がありました。この当時からこのように意見を述べておりました。
 この資料三の二の、通し番号で言えば五十ページから六十二ページでは、内閣府が平成十九年に行った不当条項に関する調査結果を抜粋させていただいております。同じく通し番号の七十五ページから七十六ページでは、暴利行為に関する裁判例を抜粋させていただいております。また、別冊資料のブックレットは、消費者への影響という観点から見た民法改正法案の重要論点について、法案の内容の紹介とともに残された問題点をまとめた文献でございます。それぞれ、定型約款、暴利行為、その余の消費者の利益に関係する諸規定に関する今後の御審議のお役に立てていただけましたら幸いでございます。
 資料一の二ページの二の部分にお戻りいただけますでしょうか。
 今回の民法改正法案への基本姿勢を申し上げます。我が国の民事私法の基本法である民法を国民に分かりやすいものとし、かつ社会経済の変化にも対応したものとすることを目指す今回の法案に賛成をいたします。冒頭にも申し上げましたとおり、民事私法による民事ルールの整備は我が国において非常に重大な立法課題であると考えます。是非とも今国会での成立をお願いいたします。
 もっとも、定型約款に関する規定など、一部には規定内容や条文の適用範囲を施行前に明確にしておいていただきたい規定がございます。それらについては、実務に誤った理解や運用を招かないよう、今後の国会の御審議における内容の明確化と法務省の逐条解説等による周知をお願いいたします。また、暴利行為規定など残念ながら法制審議会の議論の過程で今回の改正法案には盛り込まれなかった重要な民事ルールについて、検討の継続と今後の法制化をお願いいたします。
 以下、いささか細かくなりますが、個別論点に関する意見を申し上げます。
 まず、定型約款に関する意見です。資料一の四ページを御覧ください。
 最初に、五百四十八条の二第一項が規定するみなし合意規定と同条二項が規定するみなし合意除外規定に関する意見です。
 第一に、みなし合意規定では、契約締結前の個別の約款条項の開示や認識可能性が組入れ要件とされておりません。この点が消費者など相手方に過酷な結論を招来することになってはならないと思われます。そこで、みなし合意規定については、相手方がおよそ知り得ないような定型約款を無制約に契約内容とすることを認める法文ではないこと、もし重要な約款内容を事業者が説明しなかった場合には、信義則上の説明義務の義務違反となる場合があり得ることや、みなし合意除外規定によって契約の内容とはならない場合があり得ることについて、今後の御審議における明確化と周知をお願いいたします。
 第二に、みなし合意除外規定は、条文を一読すると、約款使用者に一方的に有利な内容の契約条項を押し付けた場合、いわゆる不当条項の事案だけに適用される規定のように見えます。そこで、みなし合意除外規定については、不当条項の事案のみならず、通常想定し難いような契約条項の不意打ちという事案、いわゆる不意打ち条項の事案にも適用されることについて、今後の御審議における明確化と周知をお願いいたします。
 第三に、みなし合意除外規定と消費者契約法十条との相互関係が明確ではありません。そこで、第一に、みなし合意除外規定に基づく組入れ除外の要件と消費者契約法十条に基づく無効の要件が共に満たされる場合、消費者がいずれも主張できること、第二に、消費者の消費者契約法十条に基づく無効主張に対して事業者がみなし合意除外規定に基づく組入れ除外を抗弁として主張することはできないことにつき、今後の御審議における明確化と周知をお願いいたします。
 次に、五百四十八条の四が規定する定型約款の変更に関する意見です。五ページを御覧ください。
 契約の一般原則からすれば、既に成立した契約の内容を相手方の同意なく一方的に変更することは、理論的にも、相手方の権利利益への影響の大きさという観点からも、本来許されないはずです。その例外規定である本条について、もし仮に、実体要件イとして記載しております要件、すなわち、契約をした目的に反せず、かつ、変更の必要性、変更後の内容の相当性、定型約款の変更に関する規定の有無、内容、その他の変更に係る事情に照らして合理的なものであるときという要件が緩やかに解されてしまうような事態となれば、消費者など定型約款の相手方の地位は極めて不安定なものになってしまいます。
 そこで、定型約款の変更規定については、事業者に定型約款の無制約な変更を認めるような趣旨の法文ではないこと、慎重に判断される必要がある例外的な規定であること、相手方の重要な権利利益を制約するような約款変更はそれに見合うだけの目的の正当性と手段の相当性を備えることが不可避であること等について、今後の御審議における明確化と周知をお願いいたします。
 また、仮にこの変更要件を相手方の不利益な方向に緩和する特約を定めても、文字どおりの法的効力が認められてはならないものと考えます。この点についても、今後の御審議における明確化と周知をお願いいたします。
 次に、暴利行為に関する意見です。六ページを御覧ください。
 急速に進む高齢化社会の進展と高齢者被害の増加の中、改正法案が暴利行為規定の明文化を見送ったことは非常に残念なことです。暴利行為規定は高齢者被害の救済策として非常に有用であり、引き続きの御検討と法制化をお願いいたします。
 次に、取消しの効果に関する意見です。七ページを御覧ください。
 詐欺・強迫取消しに基づく取消しの場合、被害者には原状回復義務がないと考えないと、加害者のやり得となり、社会正義に反する結論となってしまうと思われます。そこで、民法上の詐欺取消し、強迫取消しや公序良俗違反に基づく無効についても、消費者契約法六条の二と同様の規定を明文化しておくべきではないかと考えます。少なくとも、詐欺の被害者等には原状回復義務がないという解釈論につき、今後の御審議での明確化と周知をお願いいたします。
 次に、今回の法案で実現しなかった諸規定に関する意見です。三ページの(四)の部分を御覧ください。
 法制審議会の議論の過程で、情報提供義務、説明義務、役務提供契約、いわゆるサービス契約に関する中途解約権などの民事ルール、抗弁接続、複数契約の解除、格差契約に関する解釈規定などの有益な諸提案が今回の改正法には盛り込まれないことになりました。それらについて、今後の法律の運用や社会実態を踏まえた法改正に向けた引き続きの御検討をお願いいたします。
 最後に、消費者契約法の改正に関する意見です。三ページの(五)の部分を御覧ください。
 法制審の議論の過程で、消費者契約に関する特則規定は今回の改正民法には盛り込まれないこととされ、その立法化は消費者契約法の改正に委ねられました。消費者契約法は、昨年五月に一部論点の法改正がなされ、現在、残る論点を内閣府消費者委員会の専門委員会で議論中です。民法が定める民事ルールを実質的に補完する消費者契約法についても、早期改正の実現を併せてお願いいたします。
 国会において民法改正法案に関する充実した議論がなされ、今国会で成立することを期待してやみません。
 以上で私の意見陳述を終わらせていただきます。御清聴ありがとうございました。
#9
○委員長(秋野公造君) ありがとうございました。
 以上で参考人の意見陳述は終わりました。
 これより参考人に対する質疑を行います。
 質疑のある方は順次御発言願います。
#10
○山下雄平君 自由民主党の山下雄平でございます。今日は、お三方の先生に貴重な御意見をいただきまして、ありがとうございます。
 時間の範囲内で質問をさせていただければと思いますが、トップバッターですので概括的な質問をさせていただければというふうに思います。
 お三方の先生からそれぞれ今回の民法の改正の意義についてお話をお伺いいたしました。なるほどなと思いましたし、ただ一方で、百二十年ぶりの大改正ということで、百二十年間改正されなかったというのであれば、現実の社会問題として、この現在の民法の規定のままでも、判例の積み重ねを含めて、決定的な問題がなかったのじゃないかというような指摘もあるのかもしれません。
 お三方の先生は、具体的な論点について、改正の意義についてお話しになりましたけれども、そうした意義に加えて、今回の民法改正の意義について、一昨日の当法務委員会で我が党の古川先生の方からは、日本の新しい民法の形を世界に発信していくというような意義もあるのではないかと、各国が民法改正に動く中で、日本が世界のモデルとなる規範を作ることによって、それが国際的な取引のルール、共通のルールになるというような意義もあるのではないかというような御指摘もありました。
 そうした視点について、民法を抜本的に改正することによって新しい日本の民法を世界に発信していくという意義、世界の規範のモデルを日本が作っていくんだというような意義について、どのようにお三方の先生お考えになっていらっしゃるのか、お考えをお聞かせいただければと思いますが、意見陳述が山野目先生からでしたので、今回は山本先生の方から順にお考えをお聞かせいただければと思います。よろしくお願いします。
#11
○参考人(山本健司君) 御質問いただきましてありがとうございます。
 民法の改正ということに関しまして、普遍性のある部分と各国固有の問題に関する対応が必要な部分とがあると思います。今回の民法については、そのいずれについての側面もあるんじゃないかというふうに個人的には考えております。したがって、世界に発信できる部分と我が国固有の規定に関する部分があるんだろうというふうに思っております。
 百二十年間改正されなかった法律を改正する必要があるのかという御意見についてお聞かせいただきました。この点について、種々の御意見があるとは思いますけれども、実務家として考えて意見を述べさせていただきますと、先ほど私が詳述させていただきました約款の分野に関しては、我が国では何ら規定がないものですから、現場において、実際に存在する約款について限定解釈をしたり、公序良俗で個別的な対応をしたりして、何とか現場でやりくりしていたというのが現実のところではないかというふうに思います。したがって、どのような場合に約款の効力が認められ、また制限され、また否定されるのかというのは、実際に最後までやってみないと分からないというところがあったのではないかというふうに思います。
 それが今般の民法改正においてルールが明確化すれば、トラブルというのが紛争をまつまでもなく解消される部分が出てくるのではないかというふうに期待できるというふうに思います。そういう点において、今回の民法改正法案には大いに意義があるのではないかというふうに考えております。
 以上です。
#12
○参考人(辰巳裕規君) 私は、消費者問題中心に国内的な方に目を向けている弁護士ではありますけれども、一方で、そのように、民法、私法の企業間あるいは国際的な取引にも影響するルールだということも認識いたしております。一方で、やはりお隣さんとか親戚とかのお金の貸し借りとか、そういった日常の私たちの、国内で暮らす人の生活を律する法律であるのも民法でして、その辺りが、大きな企業間の取引から本当に個人間の身近な取引までを併せて規律するというところになかなか改正の一方では難しさもあったのかなというふうには感じるところであります。
 しかし、今回、今、山本参考人からありましたとおり、定型約款については今まで約款という規定がないところをこれを設けるに至った、これは、むしろ国際的には一歩ちょっと下がっていたところを日本も追い付いてきた面がある。そう考えていくと、例えば消費者保護という観点から見ても、むしろ日本から発信していくような改正というものがあるのではないか、自分の関心領域に引き付けていえば、保証人保護というところで少し打ち出してもよいのではないかなどとも感じるところです。
 以上です。
#13
○参考人(山野目章夫君) 一昨日の御審議を拝見しておりまして、なるほど約百二十年ぶりの改正であることの意義は大きいかもしれないけれども、反面、百二十年改正しなくてよかったのならばしなくてよいではないかというふうな見方もあり得るというふうなお話を伺って、いろいろ考え込むところがございました。
 これだけ長い間大規模な改正がなかったのはなぜかということは、いろいろな要因があると感じますけれども、一言で申せば、元々がよくできていたという部分はあるだろうというふうに思います。
 国際学会のシンポジウムなどでアジア諸国の現在における動きや、さらにアフリカの各国の様子などを見ますと、外国がいろいろ支援をしてさしあげてそれぞれの国の基本法典を作っているような例もございますけれども、明治の日本は、そういう側面もありましたけれども、何よりも大変優秀な法律家がヨーロッパに留学をし、一生懸命勉強して戻ってきて、そしてまた、単に優秀だというだけではなくて、精魂込めて作ってくださいました。物権とか債権とかいう言葉を作って、日本語で良い民法典を作ってくれた明治の先達に私たちは感謝をしなければならないと感じます。その後の運用も、大変優秀な裁判官、弁護士によって運用されてここまでやってまいりました。こういったことが決定的な不便が生じなかった要因ではないかというふうに感じます。
 反面におきまして、しかし、その後の判例、学説の発展などを踏まえて、民法の法文を見たのみではどういう規範になっているかということは、優秀な裁判官や弁護士には分かるんですけれども、市民一般から見ては大変分かりにくくなってきております。言わばエリート層によって任されて運用されてきた日本の民事法制、その根幹を成す民法が二十一世紀においてもそういうままでよいのかということを考えたときに、そうではないであろうということが今回の改正事業の出発点にあったのではないかというふうに感じます。
 今後、この法律案を御審議いただき、採択の運びとなる際には、政府において是非英語での良い訳を作っていただきたいというふうに感じますし、私はフランスのことを勉強しておりますけれども、そういうことを勉強している同学の人に呼びかけて、明治民法を最初に作ったときに日本の民法のフランス語訳が作られておりまして、大変よく練られた翻訳になっているんですけれども、そういう仕事を引き継いでいくことによってアジアやその他の各国の人々にも見てもらうようにしていただくというふうな努力もしていかなければならないということを感じております。
#14
○山下雄平君 貴重な御意見、ありがとうございました。
 次は、将来の議論に資するために先生方にお考えをお聞かせいただきたいんですけれども、今回の民法改正というのは債権の分野に関してでしたけれども、今、法制審なんかでは相続についても議論がされているところですけれども、民法の守備範囲というのは相続だったり物権だったり家族法だったりという広い分野ですけれども、債権以外について今後こういった分野のこういったところについてやはり改正が急がれるべきじゃないかというようなお考えがございましたら、もしなければ結構ですけれども、御意見をお伺いしたいというふうに思いますけれども。
 では、山本参考人の方からまたお考えをお聞かせいただければと思います。
#15
○参考人(山本健司君) 御質問いただきましてありがとうございます。
 今回の民法改正の目的の中でも、国民に分かりやすい民法と現代化というのが二つの大きなテーマとされていたかというふうに思います。その意味において、例えば不法行為の分野においては少ない条文でいろいろな類型についてやりくりされているという実態があります。各要件についてそれなりに最高裁判例や事例の積み重ねもあります。その辺りについて法文化して明確化を図るというふうなことは、同じく分かりやすい民法と現代化ということに資するのではないかというふうに思います。同じことは担保物権の分野についても言えると思いますし、その点においては、債権法以外の分野についても同じような必要性というのはあるのではないかなというふうに私は思っております。相続法に関しても同じでございます。
 以上です。
#16
○参考人(辰巳裕規君) 私も同じように不法行為の損害賠償のルールについて挙げたいと思います。
 これも広い意味では債権法の中には入るのですが、今回の改正の中心からは外れております。論点としては、中間利息控除あるいは遅延損害金というところでは損害賠償に関わるところではございますが、やはり中間利息控除も含めて、どこまで行ってもある面、損害賠償金としてはフィクションの面をどうしてもはらんでおります。逸失利益として将来得べかりしものはこれくらいであると算定するという形になっておりますが、果たして人の生命・身体侵害における損害賠償というものがそれが適切なのか、あるいは、企業間のいろいろ公害とかの問題のときの懲罰賠償などという制度が日本では取れるのか取れないのかという問題もあるかと思います。
 被害救済というものと今の損害賠償ルールが沿っているか、これはまだまだこれから大きくいろいろ検討しないといけない将来的な課題ではあると思いますが、必要かなというふうに思っております。
#17
○参考人(山野目章夫君) ただいま御質疑で問題提起をいただきましたことは、大変重い問いでございまして、難しい部分もございます。上手にお答えできるかどうか分かりませんけれども。
 どういうふうにお話ししたらよろしいでしょうか、人と財産という二つのキーワードを取り上げてお話を差し上げるといたしますならば、まず、これまでの私たちの社会も、多様な人々が暮らす、それから構成される市民社会でありましたけれども、これから二十一世紀の現代社会はますますそういう状況が進行するであろうというふうに思います。多様な人々の在り方に思いを致して、それに即応していく民法の諸制度でなければなりません。
 高齢者が急激に増えてくるという問題が一方であります。そればかりではなくて、特に子供の将来ということも考えていかなければなりません。成年後見制度を福祉と連携させたものとして見直していくということが求められますし、しかし、その議論は未成年後見を置いてきぼりにした議論であってはいけないであろうというふうにも感じます。東日本大震災で震災遺児が直面した状況がどのような問題を提起したのかということも確かめた上で、そういった方面の課題にも向き合っていかなければいけないと感じます。
 もう一つ、財産ということで申し上げますと、これも東日本大震災の被災地から提起された問題という側面がございますけれども、土地制度の改革ということが今後の日本における一つの重要なイシューになってくるのではないかと感じます。そのこととの関係で民事法制においても見直していくべき側面があるとするならば、そういうものを避けていってはいけないということも感じております。
 あと、細かなお話になりますけれども、本日、辰巳参考人から個人保証について様々な問題や今後の課題の御議論もいただきました。身元保証ニ関スル法律というのがございまして、これが今後このままでよいのかということも立法課題としては認知しておきたいというふうに考えているところでございます。
#18
○山下雄平君 ありがとうございました。
 以上で質問を終わらせていただきます。
#19
○有田芳生君 民進党・新緑風会の有田芳生です。よろしくお願いします。
 お三方の参考人のお話を伺いまして、お二人は弁護士さん、そしてお一人は研究者と言っていいんでしょうか。そして、この法務委員会を見渡しても、いつも思うんですけれども、弁護士出身あるいは検察官出身の法曹関係者が多くいらっしゃるわけですけれども、真山委員と私は別の放送関係者で、なかなか、まあ山下委員もメディアですけれども、やはり消費者の立場として報道してきたということがあると思うんですよね。そのときに、どうしても分かりやすさということを伝えなければいけないということで、今回の民法の改正についても、債権法関係、百二十年ぶりだということが大きく報じられている。しかも、約款、保証、時効など、特にメディアでの注目のされ方というのは消費者の立場に立って、これは、社会経済の変化、そして、もっとより分かりやすい民法に変えていくんだというところがかなり大きな報道の位置を占めていると思うんですよ。
 ただし、例えば債権譲渡の問題について言えば、その分野での研究者の方々は、今度の法改正、なかなか分かりにくいところがあるという御意見もある。あるいは、例えば瑕疵担保責任、これは森友学園であるとか東京の築地市場の移転の問題などでも出てくるわけですけれども、その言葉がなくなって契約不適合というものに変わる。だけど、そうはいったって、やはり紛争解決の結論は変わらないというふうに思うんですよね。
 そう考えてくると、全体の大きな改正の中で、確かに消費者の立場に立って分かりやすさを広げていくということは非常に大事なんだけれども、全体の今回の債権法関係の民法改正の中で、どういう問題点というのか課題というのか、評価と課題というものをそれぞれの方にお聞きしたいなというふうに思いました。
 山野目参考人から順番に話していただければというふうに思います。
#20
○参考人(山野目章夫君) 今議員から問題提起をいただいた事柄というのは大変多岐にわたりますので必ずしも上手にお答えをすることができませんけれども、話題にしていただきましたような消費者の視点であるとかあるいは債権譲渡の問題であるとかいうふうなことに関連して思い起こしますことは、今からもう十年以上経過しますけれども、二〇〇四年の臨時国会というものがございました。秋に開会されていた国会でございましたけれども、ここで本日と同じように民法の一部を改正する法律案が議題とされておりました。債権譲渡登記の問題や個人保証の問題、これについては辰巳参考人からも先ほど御紹介があったところでございます。
 債権譲渡の制度を見直すことによって中小企業が資金を得やすくするというふうなことが課題である、それに応えようということで一定の取組が行われましたし、辰巳参考人からお話があったように、個人保証の問題についても多々弊害があるということについて一定の対応はされましたけれども、債権譲渡と個人保証の両面について、この二〇〇四年の臨時国会は合わせてこれら二つの宿題を残したんだというふうに私は理解をしております。
 今般、本日御審議をいただいております民法の一部を改正する法律案において、債権譲渡は債権譲渡の制限特約という新しい概念を導入し、企業間の取引において債権譲渡を制限する約束がされたとしても、それが一律に債権譲渡の効果を奪うものではないんだというふうな規律を表現としても明確化することによって中小企業の資金調達を後押ししようとしている側面がございます。民法の法文を変えただけで直ちにそうなるかどうかは分かりませんで、これから金融庁や中小企業庁などと法務省が連携して様々な取組をしていくことが求められるとは感じますけれども、今般の法律案を御採択いただくことがかないますれば、その点で一歩前進になるんだろうというふうに思います。
 個人保証についても、既にこの委員会でたくさんの御議論があったとおりでありまして、二〇〇四年の臨時国会以来宿題であったことを更に完全なところまで理想的に進めることができているかどうかは分かりませんけれども、進めているという面があるのではないかというふうに考えております。
#21
○参考人(辰巳裕規君) 大変大きな質問ですのでちょっと私の能力で答えられるかというところもございますが、評価としましては、最初、研究者のグループが提示したところ、あるいは法制審の第一読会の段階で提示された大改正というところから見ると、中規模改正というか、現行の民法、実務のところの安定性を損なわない範囲で行われた、まとまってきたものだというふうに考えます。
 もちろん、ドラスチックな改正というものを期待する一方で、他方で、今ある実務あるいは安定した経済取引基盤というものが不安定になってはならないという要請の中で、非常に苦労されて法制審の中でまとめ上げられていったというふうに考えられますし、やはり民法という法律は、先ほどもお話ししましたけれども、企業間取引から本当にお隣さんとのお金の貸し借りまで、あるいは事業者と消費者の間まで、いろんなプレーヤーを規律するところですので、これを、どちらかの利益だけを取ると何かほかに弊害が出てくるというところでなかなか難しい立法作業だったと思いますが、その中では安定的なところに落ち着いた、ただし、それで物足りなさがいろんな部分で残るという評価にもなるのかもしれないなと思っております。
 今後の課題ですが、やはり消費者問題に携わってきた観点からいいますと、個々の規定もそうなんですけれども、やはり当事者といっても力関係、消費者契約法で言われている格差というものがある。ですので、契約自由というものだけが強調されるのではなくて、その背景にある当事者の力の差あるいは情報交渉力の差というものも背景にした判断というものが、これが裁判所において、裁判官において実現していただくような立法に今後どうしていくのかということも大事なのかなというふうに思っております。
#22
○参考人(山本健司君) 御質問いただきありがとうございました。
 消費者保護の立場からの意見、事業者サイドからの意見、あと研究者の先生方からの比較法等を踏まえた意見、様々な意見が、法制審議会において委員の方々が意見を述べられて、熱心な議論を重ねられて、一つの、それで今般の民法改正法案ができ上がっているというふうに理解をしております。法制審のそういうふうな様々な意見の中で、このコンセンサスを形成するのに大変な御努力をなさっておられたということについては、バックアップチームをしておりました私も近くで見させていただいてきたところでございます。
 その意味で、一つの価値観に基づいてできている民法改正法案ではないのではないかというふうに考えております。いろいろな価値観を持っている人が、全ての法人や個人に適用される民法という法律であるということを踏まえて皆が受け入れられるところが、合意形成ができるところが報告がされているのが今般の民法改正法案になっているのではないかというふうに考えております。
 その点、御指摘いただきましたように、消費者保護の観点からの民法改正というふうなマスコミ報道等がなされておりますことは私も承知しております。消費者保護の観点に資する法改正がその内容に含まれているということについては、これは間違いないところかと思いますけれども、必ずしもそのような価値観のみからの改正ではないということもまた言えるのではないかというふうに思います。
 その反面において、全ての価値、いろんな価値観を持っている人が受け入れられる法案になっているということの反面として、個々の論点については現時点ではなかなかコンセンサスが難しいということで継続検討のようになっている論点、今般の民法改正法案には入っていない論点というのがある。これらを今後個別的に法制化について継続して検討していっていただく必要があるというのがまだ今後の課題として残されているところではないかと、そのように理解しております。
 以上です。
#23
○有田芳生君 時間との関係で、約款について山本参考人と山野目参考人に伺いたいんですけれども、私たち、百二十年ぶりの改正ということになると、明治、大正、昭和、そして平成、さらには新しい時代に入っていく。だけど、振り返ってみれば、明治だって大正だって、昭和だってそうですけれども、インターネットなんというのは存在していなくて、ついこの間を振り返ってみたって、畳十二畳ぐらいのスーパーパソコンが今私たちがポケットに入れているスマートフォンの機能になっているぐらい大きな科学技術の変化があるわけですよね。
 そういう中で、インターネット上の契約というのは非常にこれからも問題が出てくると思うんですけれども、山本参考人にまず伺いたいのは、諸外国と比べて、ネット見たってそうですけれども、いろんな約款の細かいものがありますよね、あれは外国と日本というのはもう一様にあのぐらい細かい規定になっているのかというのを山本参考人に伺いたいのと、あと山野目参考人のあの論文読ませていただいて非常に興味深かったのは、例えば私たちが電車に乗る、そのときに、例えばどこかに行くときに、飛行機でも新幹線でもいいんだけれども、チケットを買ったときにホテルまで一緒に付いている、だけどそのホテルに泊まらなかったら債務不履行になるのかというような例が具体的にあるのかどうかということを含めて、非常に身近な問題だと思いますので。例えば、電車乗るときだって約款あるわけですよね。だけど、駅員にしゃべって電車乗るわけでもないし、じゃ無人駅だったらどうなるのかということを含めて、非常に身近な課題だと思いますので、これが今度の民法改正でどうより前向きになるのかということをお二人に簡潔にお聞きしたいというふうに思います。
#24
○参考人(山本健司君) 御質問いただきましてありがとうございます。
 全ての外国の例は知りませんので、私の知る範囲での答えということになりますけれども、約款の分量ということに関して、諸外国と日本とで大きな違いが生じるような、そういう根本的な理由はないのではないかなというふうに思います。
 また、インターネット取引の場合は、この約款に合意するというクリックをすればいいだけの話なので、約款を多くするということに関しても負担が少ないので、どんどんどんどん増えていくという傾向がまたあるのではないかなと、リスクヘッジの観点からあるんじゃないかなというふうに思います。
 ただ、一方において、増えれば増えるほど実際のユーザーは読まない、読めないという傾向が強まっていくのも事実でございます。したがって、その意味で今後、不当条項、特に不当条項規制に関してですけれども、それについては、今般の民法では不当条項リストの制定というのは見送られていますけれども、それが民法という法形式になるのか約款規制法という法形式になるのか消費者契約法か分かりませんけれども、不当条項リストについて具体的に、これはブラックリストで無効だとかグレーリストで無効だというふうな不当条項規制については今後重ねられていく必要があるのではないかなというふうに思います。
 EUでしたら、EU指令で既にヨーロッパでは詳細な不当条項規制が加盟国に指令が出ておりますし、ドイツでは約款規制を組み入れた民法の中で詳細な不当条項リストの規定が設けられております。我が国においても、今後、そのような具体的な不当条項リストについて、予見可能性を高めるという観点からも議論が必要になっていくんじゃないかなというふうに思います。
 以上です。
#25
○参考人(山野目章夫君) 有田議員におかれましては、私が法律雑誌に記しました拙い論考をお目通しをいただきまして誠にありがとうございます。あそこに、確かに、飛行機のチケットを予約したならば、何かその約款に書かれてあって、気が付かないうちに特定のホテルに泊まらなければいけないというような条項が入っていたら、とても不当だから拘束されることを認めるわけにはいきませんよねという例を出させていただきました。
 そういう実例はないのだろうというふうに思います。実は、雑誌でそういうことを書くときというのは、大変拙い論考ではありますけれども、影響が大きゅうございますから、何か特定の企業がしている特定の契約条項を取り上げてあれはおかしいというふうに実例を狙って記すということはいささか穏当に欠ける部分もございます。一応調べてみました。そういうものは今どこの鉄道会社もあるいは航空会社もしていないのだろうというふうに認識しております。
 この定型約款の制度の導入というのは、既に議員御指摘のとおり、大きく分けて二つの側面があるでしょうか。一方においては、約款に記されていることが契約の拘束力を持たなければいけませんという方向の問題がございます。今御提案申し上げている民法の規定がなければ、当事者が交渉して申込みと承諾をしたことについてしか契約になりませんよというピュアな原則が働いてしまうわけなんですけれども、約款の場合にはそういう理屈だけではうまくいきませんよねと、しかし約款は使わざるを得ないですよねという側面がありますので、その組み入れられる契約の内容になるということのためのルールを入れましょうという方向の議論がございます。
 反面において、まさに例としてお出しいただいたように、何でも契約の内容になってしまうんですかと。よく見ないで契約をする、あるいは見ないで、よく見ないというよりも全く見ないで契約をするという想定で取引が行われる場面でありますから、一般消費者などが知らないうちに非常に不利な内容の契約条項に縛られるということがあってはいけないと。そこで、不当条項を除外すると。こちらは、契約の内容になるのではなくて、契約の内容にならないという方向でのルールも整備していかなければいけなくて、この表裏両面のルールが法律案に盛り込まれてございます。
 当面は、使われている鉄道や航空会社の約款などがまさにこの規定にのっとって契約の拘束力を持ちますよというところが目に見える形で法律案の施行が作用していくということになりましょうけれども、世の中にはそういう鉄道、航空などを一般に営んでいる事業会社のみではなくて様々な事業者がいるわけですから、その定型約款の制度を悪用して不当な条項が入ってくるということになると困りますので、それに対する歯止めについても不当条項を考えておこうということではないかと考えます。
 今後の課題としては、これは山本参考人がお話しになったように、今回、この不当条項の排除という問題について最小限のルールは提案申し上げておりますけれども、ブラックリスト、グレーリストと言われるようなものを掲げて、もう少し内容に立ち入ったコントロールをしていこうというところまでは行っておりません。既に御指摘があったように、内閣府の消費者委員会においてその問題意識を引き継いだ検討がなされているというふうに理解しておりますから、立法府におかれましては、そちらの方の取組についても御関心を抱いていただきたいと考えます。
#26
○有田芳生君 ありがとうございました。
#27
○佐々木さやか君 公明党の佐々木さやかです。
 今日は、参考人の先生方、ありがとうございます。どうぞよろしくお願いいたします。
 今も議論に出ておりました定型約款について、少し重なるところもあるかもしれませんが、山野目参考人にまずお伺いしたいと思います。
 そもそも、この定型約款についての条項を今回民法に入れるかどうかというところから最初は議論がスタートして、いろいろな意見があったわけでございます。特に、経済界側からは、この約款というものは、消費者契約法などの特別法の問題であるというような意見があったりとか、また事業間取引が対象になるのではないかというような懸念もあったりなどいたしました。結局、そうした懸念について対応した上での改正になったと理解はしておりますけれども、こうした懸念についてどのような議論がなされていったのかというところが一つと。
 それから、契約というのは、意思が合致して、その内容を理解した上で成立するというのが大原則なわけですけれども、この定型約款というのはこれまでの民法の考え方とはかなり異なる部分もあるということで、こうした新しい定型約款という条項を民法に入れることについてどういうメリットがあるのかというところについて、主に二点でございますけれども、まず伺いたいと思います。
#28
○参考人(山野目章夫君) ありがとうございます。
 定型約款という言葉自体は、法制審議会における調査審議が進行したかなり後ろの方の段階になってから登場した言葉で、ずっと約款、約款という言葉を用い続けていました。最終的に法制的な仕上げとして定型約款という言葉が用いられることになりました。
 簡単に約款という言葉で申し上げさせていただくということにいたしますと、約款のことが問題ですよねと、そのことを民法で規定を整備しましょうということについては、この調査審議において議題となった当初の段階から、なるほど、それはもっともなことだというふうに、皆さん、雰囲気的にはといいますか、感覚的には了解してしまっていたところがあるんですけれども、更に突き詰めて、なぜ約款のことが問題なんですかと、約款でどういう人をどのような意味で保護しなければならないんですかということを考えたときには、幾つかの視点があるように感じます。
 大量にされる取引であって、中身を見ないで取引をするということに合理性や需要があるけれども、そういうものにきちっと裏付けを与えましょうねというふうな観点が、先ほども申し上げましたけど、もちろんあります。加えて、一般消費者が相手方になるときには、消費者保護という観点も重要ですよねという、消費者保護アプローチとでも言ったらよろしいんでしょうか、そういう観点もございます。
 それから、有田議員の御質問にもありましたけれども、インターネットが用いられるようになったときの、一言で言えば、思わずクリックしちゃうよねみたいな、そういうふうな問題に応えていかなければいけませんよねという、現代的な電子商取引の問題性といったような問題意識もあったのだろうというように思います。
 どれも大事な問題意識であって、それぞれの観点を取り入れて法律案のルールができ上がっているものではありますけれども、しかし、御提案申し上げている民法の新しい規定の基本的な考え方は、一番最初に申し上げました、中身を見ないで取引が進んでいるんだけれども、それであっても、一定の要件の下で合理性があるときには個別に交渉をして、それを経た契約条項でなくても契約の内容になることを認めるということを考えていきましょうという制度ででき上がっているのだというふうに感じます。結果的にそれは、電子商取引における様々な面での不安の払拭であるとか、消費者保護に結果としてなっているという部分はあるかもしれません。
 そのようなものとして整備していくということについて、最終的に法制審議会での議論に参画した人々のコンセンサスが得られたということではないかというように理解しております。
 御指摘のように、経済界から、最初、約款の概念が曖昧であるとか、どういうふうな具体的なルールの中身になるのかといったような観点からの懸念が述べられましたけれども、そういう懸念と向き合った審議がなされたんだというふうに理解しております。
 お尋ねの後半になりますけれども、それは、どうしてこの民法に入ってこのようなものになっているのかというその問題意識、ごもっともなことであって、それは先ほど申し上げましたように、必ずしも新しく導入しようとしている定型約款の概念が、事業者と消費者との間でのみ用いられる、事業者と消費者との間の契約においてのみ用いられるという、そういうその限定された空間でのみ機能するということを考えているものではありませんと。定型約款の概念自体はきちっと絞っていかなければいけませんけれども、もう少し一般的なものなのですという発想でこの概念の立て付けが与えられているのではないかというふうに理解をしております。
 そうであるとしますと、それは例えば消費者契約法のどこかを改正して入れるということではなくて、まさに契約という民法が相手取る重要な概念の一つの成立形態といいますか、その中身の問題であるということがありますから、それを民法の規律としてきちっと掲げようということに至ったのではないかと理解をしております。
#29
○佐々木さやか君 ありがとうございました。
 やはり、まさにこの定型約款の条項というのは、いろいろな取引が登場してきて社会経済が大きく変化してきたというものに対してどう対応するかという現実の必要性といいますか、そういったところから出てきたものであるなと改めて思いました。
 この定型約款について山本参考人にもお聞きしたいと思いますけれども、先ほども意見の中で、消費者保護の観点から審議の中でもいろいろと明らかにして周知をしていかなければいけないというところがあるということで幾つか問題意識をお話ししていただきましたけれども、取り組んでまいりたいというふうに思っております。
 先ほど有田委員との議論の中で出てまいりましたが、不当条項リストの問題ですけれども、この民法ではそういったことは明らかにはなっていないわけでありまして、今後消費者契約法を含めて議論が必要かなとも思っております。その参考にといいますか、EUでしょうか、先ほどお話があった、例えば諸外国では不当条項リストとしてどういったものがリストとされているのか、また、様々な御経験から、どういう条項について今後の日本における議論において注意をしていかなければならないというふうに考えていらっしゃるか、具体例などがありましたら教えていただければと思います。
#30
○参考人(山本健司君) 御質問いただきましてありがとうございます。
 先ほど山野目先生もおっしゃっていましたけれども、約款に関する問題というのは必ずしもBツーCに限る問題ではないというふうにまず思っております。
 一つの事業者が作成した約款に顧客全てが拘束されるという取引形態において発生する弊害ということかと思いますので、顧客は法人もあれば個人もあり得ると。預金規定とかコンピューターソフトの利用約款とかなどは、ユーザーは法人もあれば個人もあると。そこにおける約款の問題というのは、BツーBでもBツーCでも生じ得る問題であるというふうに思います。したがって、消費者契約法というのはその点BツーCの契約ですので、消費者契約法で約款規制を充実させるというのは、そのうちのBツーCの分野についてはカバーされるけれども、BツーBの分野についてはカバーされないということになりますので、今回の約款規制が民法に入っておりますように、BツーCの分野でどこまで保護してBツーBの分野にどこまで広げて法制度を設けるのかというのは、これは御検討いただくべき重要な問題になるんだろうというふうにまず前提としては思います。
 ただ、法人も含めた約款規制においても、BツーC分野における約款規制においても、問題となる不当条項というのはある程度共通性があるんじゃないかなというふうには思っております。代表例は、やっぱり解約制限などが一つ大きな具体例としてはあると思います。また、免責規定、事業者の責任を免除する規定というのも代表例だと思います。また、過大な違約金を定める条項、キャンセルコストを定める約款というのも代表例ではなかろうかなというふうに思います。その辺りが種々ある不当条項の中で特に重要性の高い不当条項の類型になるのではないかなというふうに思います。
 具体例を若干挙げさせていただきますと、お配りさせていただきました資料の五十一ページ以下の先ほどの表なんですけれども、例えば五十六ページ、百四分の五十六ページに二百六十二番という不当条項の例として、理由のいかんにかかわらずキャンセルはできませんとかいうふうな条項がございます。あと、六十ページの四百九十一番という条項のところで、支払われたお金はいかなる理由があろうとも一切返金しませんとか、この辺りの、こういうのがよくある、また問題が多い不当条項の代表例じゃないかなというふうに思います。
 以上です。
#31
○佐々木さやか君 ありがとうございました。
 最後に、辰巳参考人に保証の点でお聞きをしたいと思います。
 今回、保証意思を公正証書によって明らかにするということで、保証によって多額な債務を負ってしまって、それによって破産ですとか自殺といったような悲惨な結果が発生するという問題について一つ大きく前進することもできているのかなとは思っております。
 ただ、反面、御懸念がありましたとおり、やはり公証人によって本当にしっかりと保証意思というのが確認をされるのか、例えば定型の公正証書の文言といいますか、内容を、ただこのとおり読めばいいですからねというような形で例えば債権者から言われて、よく意味も分からないまま公証役場に行ってしまわないかとか、それから執行認諾文言付きの公正証書を同日に作成されることがかえってもしかして増えるんじゃないかとか、私も個人的にちょっと心配をしているところもございます。そういったところで問題意識が共通するのではないかなと思いながらお聞きをしておりました。
 ちょっと、残り時間があと二分程度しかないものですから、申し訳ないんですが、先ほどの御意見の中でもこの点についてお話ししていただきましたけれども、例えば一日は考え直すようにした方がいいのではないか、最低でも前日に保証意思の確認の公正証書を作るようにすべきではないかみたいな形のお話もございましたけれども、一日で本当にいいのかとか、この時期の関係についてもう一度改めてお話をいただければと思います。
#32
○参考人(辰巳裕規君) 御質問ありがとうございます。
 先立つ公正証書という制度をつくる趣旨は、今御質問にありましたとおり、公証人によって保証人の意思をしっかりと確認させるという趣旨であるというふうになります。その先立つという言葉からいくと、しかし、実務上は、恐らく公証人役場にあらかじめ予約を入れて、こういう内容で今から保証意思宣明公正証書を作りたいんです、保証契約の内容はこういうことを考えておりますと言って、大分お膳立てをしてからある日にみんなで公証役場に行くというのが遺言などでは多いのかなというふうに思いますので、そうすると連続して保証契約も認諾文言もという御懸念の問題が起こるということで、少なくとも一日と言いましたけれども、熟慮期間としては本当はやはり一日では足りないのではないか。
 もう一つ申しますと、銀行等、健全に融資をする際には、当然保証人さんの支払能力とか審査もするはずですし、あるいは保証人に対しても貸主がいろいろ説明をする場というのがあって、その後に初めて保証契約が締結されるわけですので、公正証書の作成、その後そのまま保証契約締結に至るというのは、逆に本来はちょっと不健全な姿なのではないかというふうにも思います。ですので、そう考えるならば、一日といわず一定の期間の猶予期間を与えたとしても、融資においては、むしろそれは通常のプロセスを踏む過程で公正証書が作られているというふうに理解すれば弊害も少ないのかなというふうに思います。
 以上です。
#33
○佐々木さやか君 終わります。
#34
○仁比聡平君 日本共産党の仁比聡平でございます。
 三人の参考人の皆さん、本当に今日はありがとうございます。
 債権法改正の総論について、これまで随分御意見を伺いました。私、端的に三人の参考人に一問だけ伺いたいと思いますのは、過失責任主義と帰責事由の考え方というのが今度の改正で変わったのかと。私はそうではないと思うんですけれども、山野目参考人、辰巳参考人、山本参考人、それぞれいかがでしょうか。
#35
○参考人(山野目章夫君) 契約及び取引上の社会通念に照らして責めに帰すべき事由があるかどうかということを見定めた上で損害賠償責任の成否を定めるというルールを提案申し上げているところでございます。
 責めに帰すべき事由の方は、現在の法制においても存在をしているものでありまして、そうしますと、その上にのせた契約及び取引上の社会通念ということが一体いかなる意味を持つのかということが議員お尋ねのことに関わって重要になってくるであろうというふうに感じます。
 法制審議会における調査審議のプロセスを顧みますと、大づかみに図式化して申し上げますれば、まず、契約に照らして責めに帰すべき事由があるかないかということを考えましょうということが出発点でした。
 それはどういうことかと申しますと、契約ではない不法行為の損害賠償のときには、言わば純粋に客観的な過失責任主義とでも申し上げたらよろしいんでしょうか、交差点で出会い頭にぶつかった自動車、その運転者が加害者で、被害者が歩行者であるというときに、全然関わりのない一般市民同士の接触によってそういうアクシデントが起きたときの賠償責任の成否は、客観的に運転者、加害者に過失があったかどうかということを問うて判断するということになりますということでしてまいりましたし、これからもそうなんだろうと思います。
 しかし、契約というものを、決して強制されて契約をしたわけではありませんで、基本原則は、自由で契約関係に入った人同士の間でどういうレベルの義務を果たさなければいけないのですかということを考えれば、それは、そういうピュアな客観的な判断ではなくて、その契約に即して判断されるべきでしょうという発想がありまして、ここでまず契約に照らして責めに帰すべき事由を判断すべきだという議論が始まります。
 しかし、これに対しては一方で懸念が唱えられまして、ということは契約に書かれたことが絶対で全てなんですねと、契約の内容をコントロールする側、極端に言うと、契約書に自分に有利なことを書き込ませる側のみが自分の狙った法的解決を獲得することができる者になってしまうんですねという懸念が出されることになります。
 決してその契約を強調している側の議論というのはそうではないはずなんですけれども、しかし規定がそう読まれてしまうんではないんですかという懸念に応えていくために、今度は、契約と並べて社会通念に照らしてというのが入ってきていいのではないかという議論になります。
 ところが、今度は、そういたしますと、社会通念に照らしてというのはどういうことですかと。世の中の空気がみんなそっちに流れているようなときがある。例えば、ある時点での日本の社会が政治的にみんなでこっちの方でやろうみたいなことが有力になってきているときに、何かそれを基準にして個別の取引の中身が解釈されるんですかと。それは何か乱暴な言葉を使えばちょっとした全体主義であって、そういうことでいいんですかという懸念もまたそれに対する再反論として出てくるわけですね。
 そこで、いやいや、申し上げているのは、何か政治的な社会の空気のようなそういう社会通念なのではなくて、その取引をする人たちが普通どう考えますかということを言っているんですよと。それを考慮しろというのは全然常識的な話であっておかしくはないのではありませんかという議論になりますが、しかし、そのことも規定上はっきりさせてほしいというお話になりますから、社会通念の上に取引上のというふうに付くことになりまして、でき上がったものは、契約及び取引上の社会通念に照らして責めに帰すべき事由があるかないかということを判断せよというような、新しく出てくる概念がどうしても慣れ親しまないところがありますけれども、法制審議会の調査審議における苦心の産物であるというふうにお受け止めいただいて、また立法府においてこれを御覧いただければ有り難いと考えます。
#36
○参考人(辰巳裕規君) 帰責事由が過失責任主義を取って、維持しているのか放棄したのかなどというところは、これはもう民法学者の先生方、山野目先生もいらっしゃいますが、の中での学理的な問題ですので、ちょっと私はコメントはできないんですが、実務家という立場から考えますと、ふだん契約があり、契約違反あって、お金貸したのに返してくれないといったら、返してくださいというところに余り過失責任主義というのは意識しない、契約不履行の場合は。ところが、医療過誤とか労災とか、そういう安全配慮義務違反、学校事故とかも含めてですね、そういう場面ですと、かなり不法行為に基づく損害賠償と似た構造を取っていて、安全配慮義務の中でやはり予見可能性であるとか過失に似たようなことを検討していくという作業があります。そのときに、過失責任主義というものが維持されているのかいないのかというのは非常に大きな問題になるかもしれません。
 ですので、契約の単なる債務不履行と安全配慮義務違反の損害賠償という場面についてはひょっとすると少し考えが違うのかもしれないなと思いつつ、この先はちょっとやはり学者の先生に更に理論を深めていただきたいなというふうに思うところです。
#37
○参考人(山本健司君) 御質問いただきましてありがとうございます。
 理論的な評価については分かれるところはあるかもしれないと思っております。しかしながら、少なくとも実務上は、これまでと運用と大きく変わることはないであろうというふうに思っております。
 以上です。
#38
○仁比聡平君 実務上の運用変わるところはないという山本先生のお話は私もそのとおりかなと思うんですが、第三者保証の問題について辰巳参考人から傾聴すべき御意見をいただきました。
 まず、金融の円滑が第三者個人保証を原則禁止すると阻害されるのではないかというこの疑問に対して、いただいている資料では具体的な御意見がおありだと思うんですけれども、先ほど述べられる時間がなかったかと思いますので、そこについての御意見を伺いたいと思います。
#39
○参考人(辰巳裕規君) 御質問ありがとうございます。
 私の資料一、レジュメの五ページ目の上の方に書かせていただきました。やはり保証が取れないと金融の円滑が阻害される、これは例えば貸主の、利息制限法の金利、出資法の金利引下げのときも、利息を下げると借りられない人が増えますよというような話も出たりしました。常に借主というのはこういう恐怖に置かれております。
 しかし、この金融円滑が本当に阻害されるかどうかというところを考えたときに、まず問題なのは、本当は保証人なしでも融資できるにもかかわらずもし保証を取って融資しているのであればそれが問題だし、あるいは、貸し渋りというものが起こる懸念があるのであれば、やはりそれはそちらを是正するという姿勢が要るのではないかというふうに思うところです。
 それから、制度上やはり保証人が取れる制度になっているのであれば、金融機関としたらやはり債権保全にベストを尽くすという観点からは、やはり制度上取れるものは取るということになっていくのではないかというふうにも思います。取れる制度だから取っているという面もあるのではないかというふうに思っております。
 果たして本当に、支払能力がない方を保証人に取って結局破綻しても債権回収にはならない。じゃ、何のために取っているのかというところがございます。本当に円滑が阻害されるのか。現に今も監督指針の下で第三者保証は取らない運用が原則的になっているというところで、多分、千葉銀行さんの、以前の審議のときの例なんかも引かれていて、その割合は大変低いのだというのが示されているというふうに思っておりますので、果たして本当に生じるのかというのは、むしろこれまで余り、今回の改正の中では、少し科学的なというか経済学的な調査ということが余りないままイメージ論で、借りられなくなってしまう、阻害されるというのが少し走っているのかなというふうに思います。
 保証人がなくても借りられるのであれば中小企業さんはそれが一番良いというふうに考えているはずですので、中小企業さんが保証人制度がなくなると困ると言っているのは、それはやはり借りられるというところを確保してあげるということが一方では必要ではないかというふうに思います。
#40
○仁比聡平君 そうした下で、今回の改正案は公正証書による保証意思の確認ということになっているわけですけれども、先ほど辰巳参考人が述べられたような、商工ローンあるいはクレジット、サラ金、ヤミ金などの被害に対して、私も同じような弁護活動を経験をしてきたわけですけれども、特に公証人あるいは公正証書の取られ方の件について少し伺いたいんですが、当時、日弁連の意見書なども出されまして、けれども、先ほどお話のあった、印鑑証明と実印が押してある委任状があればこれは本人の意思であるというような判断が公正証書の作成においてされてきたと。その現実の公証人役場での運用というのは変わったんでしょうか。
#41
○参考人(辰巳裕規君) 当時と今とまず一つ違う点は、改正貸金業法の下で、貸金業者は委任状を取って公正証書を作ることはできなくなっているというので、かつての形の、金融会社の従業員が債務者、保証人の代理人となって公証役場に行く、その結果、公証役場にその借主、保証人が一度も足も運んでいないのにいつの間にか公正証書が作られているという事態は防がれているということは前提としてはあると思います。
 ただ、その上でですが、弁護士なので一番公証役場に縁があるのは遺言の場面ということになりますが、やはり事前に契約書とかあるいは案文とかを公証人さんとの間で、弁護士がほとんどファクスとかしてあらかじめ案文とか作るまでお膳立てをしてから日を決めてみんなで公証役場にぞろぞろと行く、それで公正証書を作るという作業をその日にもう一気に行うというのがやはり実務かなというふうに思っていまして、その際に丁寧に説明がされる、いろいろこういう権利がありますよ、こういう問題がありますよというふうにおっしゃってくださる公証人さんもいれば、本人さんたちがこういうふうに申し出ているからということで、もう黙々と公正証書の作業をされる公証人さんもいると思います。
 そこはやはり個々人の公証人さんの、皆さんそれぞれ法曹としての経験積んだ上でお仕事をされているわけですが、しかし、ある人はこうで、ある人は違うというようなことではやはり問題があるので、公証人が当事者に対して直接法的な意味を分かりやすく説明して、意思を確認した上で立派な公正証書ができ上がるという仕組みを制度としてどうつくるかということが大事かと思います。
#42
○仁比聡平君 今の点に関わって、改正案四百六十五条の六で、公正証書を作成しようとする、保証人になろうとする者が具体的な保証債務の内容について公証人に口授しなきゃいけないと。この口授というのは何なのかと。話をしていて意味が分かっていないんじゃないかと公証人から見たら考えられるとき、あるいは、口ごもって、単に記憶をさせられていることを述べているだけじゃないのかとか、いろんな場面が想定されるんですけれども、その際の公証人のサイドには、その意思があるということの確認の義務みたいなもの、あるいは辰巳参考人のおっしゃった教示義務のようなもの、こうしたものがこの法文上はどう考えたらいいのか。公証人の義務が果たされていないということになればその公正証書は無効であると評価されるべきだと思うんですが、そうした規定は今回の改正案の中にはないんですけれども、ここはどう考えたらいいと思われますか。
#43
○参考人(辰巳裕規君) 今般の改正法案そのものには、公証人の面前で口授をして、それに基づいて公証人が公正証書を作成するとしか書いていないわけでして、口授の際に意思について疑問があったりしたときにどうするかということはこの改正法案の中にはどこにも書いていない。それは、公証人というのは法律家として、そういう問題があればそういうことを指摘し、問題があれば作らないのだというふうには説明されるわけですが、それはどこにも担保するものがない。もちろん、先ほどお示ししました公証人法の二十六条には無効とか取消しになるものについて公正証書を作ってはいけませんよという規定があったり、そういうことを施行規則ではちゃんと確認しなければいけませんよということが書いてある。
 これは法文としては非常に立派な規定ですので、じゃ、これを実際に法的義務としてきちっと各公正証書を作成する際にそれが実現できるような手当てというものをどうしていくか。現に立派な施行規則がありますから、例えばこれを法律上公証人法に格上げするとかも含めて検討はされていいのかなというふうに思います。
#44
○仁比聡平君 山本参考人、あと一分しかなくなって申し訳ないんですが、これまでちょっとお述べになる機会がなかったと思うんですけれども、暴利行為、これは見送られたということですが、典型的な幾つかの具体例と、これを法律上考えるべきだというお考えについて、少し聞かせてください。
#45
○参考人(山本健司君) 御質問いただきましてありがとうございます。
 配付資料の七十五ページを御覧いただけますでしょうか。具体的な裁判例の事例を見ていただいた方がイメージ湧いていただけるんじゃないかなと思います。
 二番の奈良地裁、平成二十二年七月九日判決の事例でございます。これは認知症の女性に呉服や宝石を買わせ続けたという案件なんですけれども、財産の管理能力が痴呆症のために低下している原告に対して、それを知りながら、個人的に親しい友人関係であるかのように思い込ませて、これを利用し、原告自身の強い希望や必要性のない商品を大量に購入させ、その結果、原告の老後の生活に充てられるべき流動資産のほとんどを使ってしまったものであると。このような売買は、その客観的状況において、通常の商取引の範囲を超えるものであり、民法の公序良俗に反するというべきであるというふうな、この事案については公序良俗で救われた案件ですけれども、このような類型について明示的に一つの類型として、暴利行為としてその契約は無効になるというふうな規定を設けていただくというのが一つ明示的な暴利行為規定の成文化として有用ではないかというふうに思っております。
 以上です。
#46
○仁比聡平君 ありがとうございました。
#47
○東徹君 日本維新の会の東徹でございます。
 三人の参考人の皆さん、今日は本当にありがとうございます。どうぞよろしくお願いをいたします。
 まず、三人の参考人の方からお一人ずつお伺いをしたいというふうに思うわけですけれども、最初に山野目参考人の方からも法制審議会のお話がありました。何か百回ぐらいの法制審議会があったというふうなことでありますが、御苦労が大変あったんだろうというふうに思うわけでありますけれども、法制審議会について質問をさせていただきたいんですが、法制審議会の在り方ですね、例えばメンバーであるとか、その構成であったり、また運営の方法であるとか、そういったことについて何か課題とか問題点とか、こうしていった方がいいんじゃないかとか、そういったことがありましたら、お一人お一人ちょっとお聞かせいただければというふうに思います。
#48
○参考人(山野目章夫君) 私、実はついせんだって国土審議会の委員というものを拝命いたしまして、その手続をするに当たりまして委員の皆様のリスト等を拝見いたしまして、国会両議院の議員の方々が委員になっておられるという御様子を拝見したりもいたしました。ああ、こういう審議会があるものなのだなというふうなことを学ばせていただいたような次第であります。
 審議会の在り方というものは、様々なものがあるのではないかということも思います。お尋ねの法制審議会について申し上げますと、これは様々な社会経済の具体の利益につきまして、その思いを伝える役割を担っていただく各界各方面の方々に委員、幹事をお願いして集っていただいております。消費者、労働者、あるいは金融、経済界、中小企業の皆様方などであります。それらの御意見を踏まえて、さらには、そういう個別の利益ではなくて、より一般の利益について考えを巡らせてもらうという役割を期待して、一方においては実務家である本日のお二人の参考人の先生方のような弁護士の方々においでいただくし、理論面からは研究者が参画して、これらの方々で構成され、そこで得られた調査審議の産物というのは、現実がそうなっているかどうかはともかく、目指すものとしては、その時代の法律家と利害が関係する各界の方々の共通理解の表現物を作ろうと、それを作り上げた上で、国会にお出ししてまた厳しく御審査をいただこうという役割分担で、民事の法制は少なくともいろんな場面でこれまで作ってきたという経緯があるのだろうというふうに理解しております。様々な問題はありますけれども、今後もこのような仕方で立法の準備の手順をし、進めていくことがよいのではないかというふうに考えます。
 両議院の議員の皆様方は、国政に様々な諸課題があって大変お忙しくていらっしゃいます。九十九回の会議に毎回おいでになってくださいというふうにお願いすることも難儀でありますし、議員の皆様方のエネルギーというのをそういうところに割いてくださいというふうにお願いするよりは、法制審議会は審議会で審議したものを今回また衆議院及び参議院において丁寧に厳しく御審査をいただいているわけでありまして、このような役割分担というのは一つの在り方として、今までも借地借家法の審議であるとか、二〇〇三年の民法改正の際であるとか、必ずしも法制審議会において審議して決めたことが一〇〇%法律になっているわけではなくて、両議院における審査の結果、重要な修正がなされて、今日それが適切な運用を見ているという事例もございます。そういうことなのではないかなというふうに感じているところでございます。
#49
○参考人(辰巳裕規君) 法制審議会の在り方とか、ちょっとそれも私の知見を大きく超える御質問な面もあるんですけれども、しかし一方で、法制審議会で案がまとまってきたということについては、恐らく国会においては、一方ではこれを大変尊重してその審議の経過というものを法案に結実させる使命というのがあると思いますし、他方で、法制審議会で上がってきたものであれば、もうそのまま一字一句変えないということでもなくて、そこはやはり法制審議会では限界のあった、先ほど言いました自殺対策とか、それから多重債務対策とか中小企業の活性化とか、もう少し政策的、政治的な判断からいろいろな要素を加味して、これに更に良い方向で改めていくということも期待されるというふうに思います。それをどのプロセスで、法制審の段階からある程度行っていくのか、あるいは国会の中で行っていくのか、これは各立法作業においてもいろいろ異なると思いますので、また法制審の在り方ということも皆さんの中で検討していっていただけたらというふうに思います。
#50
○参考人(山本健司君) 御質問いただきましてありがとうございます。
 あくまで外部から見た感想ということになりますけれども、種々の立場の方々が異なる意見を述べられて、議論を闘わせられて、その中で共通認識を得られる、譲歩できる、合意形成できるというところを探っていくというふうなことで意見形成をされておられる組織体でいらっしゃるんじゃないかなというふうに思っております。また、実質的に全会一致ということで運営されておりますので、非常に丁寧に議論されておりますように見受けられます。あと、コンセンサス形成は非常に御苦労なさっているなということを外部から見て感想として持ちましたけれども、それだけに、でき上がったものについては全ての方々が同意しておられる、いろんな立場の方々が同意しておられるような内容になっていると、そういうことになっているんじゃないかなというふうに思います。
 今まで種々の試みの中でそういう運用が一番公正ではないかということで積み上げられてきた結果なのかなというふうな感想を持っております。
 以上です。
#51
○東徹君 ありがとうございます。
 今回見送られたこともありまして、どういった議論がいろいろあったのかなというふうなところも我々も是非聞いておきたかったし、そしてまた、もっといろんな、多方面な方も入っていただくとか、そういったこともあってもいいのではないのかなと思いまして、ちょっと質問をさせていただきました。
 今回規定が見送られた中で、私もこれはちょっと見送られて問題じゃないのと、こう思うのが暴利行為なんですね。先ほども山本参考人の方からも話がありました。一つの事例を出しておられたんだと思いますけれども、例えば、お金を貸して、返せなければ生命保険の解約金で払わせると、これも暴利行為だと思うんですけれども、こういった規定は、それはもう是非これ無効にするというふうにすべきだというふうに思うんですが、これ、山本参考人と辰巳参考人の方からこのことについてちょっとお伺いできればと思います。
#52
○参考人(山本健司君) 御質問いただきましてありがとうございます。
 先ほども意見述べさせていただきましたとおり、これから高齢化社会がますます進展していく中で、暴利行為に該当するような事例は増えていくんじゃないかなというふうに思っております。
 本日お配りさせていただきました資料の十二ページに、ここ最近十年の国民生活センターと消費生活センターへの相談事例の年齢別推移の表を挙げさせていただいているんですけれども、上から三行目のところに明記されておりますとおり、二〇一五年の六十歳以上の全相談に占める割合は全体で約三四%であり、二〇〇六年度の六十歳以上の合計約二三%の一・五倍になっていますということでございます。
 したがって、このように高齢者の消費者被害の相談の割合が増えてきているということは暴利行為の規定が妥当するような被害事例が増えているということでしょうし、今後ますますその必要性は高まっていくんじゃないかなというふうに思っております。是非とも法制化していただきたい規定であるというふうに考えております。
 以上です。
#53
○参考人(辰巳裕規君) 高齢者の被害、今、山本参考人からありましたけれども、投資被害とか複雑な金融デリバティブ商品を高齢者に販売するようなものの被害とかもあります。こういうのは、まさに暴利行為という形での救済が図れないかというところは投資被害に取り組む弁護士なんかもよく言っているところです。
 一方で、成年年齢の民法上の引下げというのも課題になっていて、これはいろいろ意見があるところだと思いますが、それにかかわらず、若年者、若者の消費者被害というものも非常に増えていて、まさに若年者というのは未経験、あるいは無知という言葉が適切か分かりませんけれども、そういう立場で、そういう若者を付け込む被害というのも多くなってくる。そうなってくると、この現代型暴利行為の規定というものは非常に意義を増しているのではないか。
 取引とかを萎縮させるというような懸念があるというようにも聞いておりますけれども、現在の公序良俗規定でも、やはり被害があれば私たちはその公序良俗違反だという主張をして争っております。そうであれば、逆にどういうものが公序良俗違反になるのかという基準を法律である程度示して、それをお互い事業者も被害に遭った方も議論していくという方が、事業者にとっても予測可能性が増すのではないかなというふうにも思うところです。
 以上です。
#54
○東徹君 ありがとうございます。
 次に、第三者保証のことについてお伺いをしたいと思います。
 これ、もし実務的なところでお分かりでしたら、また辰巳参考人とか山本参考人にお伺いをしたいなというふうに思うわけですけれども、先ほど、配偶者保証の例外規定を削除すべきではというふうな御意見もいただきました。私もそうだというふうに思います。家族であってもなかなか経営的な状況というのは知らされていない、知ろうとしてもなかなか教えてくれないということももちろんあると思います。
 それ以外にも、中小企業の取締役になっていたとしても、これたまたま、何というんですか、親戚で、ちょっとなってくれとか、そういうふうに頼まれただけで、決して会社の経営に携わっていない中小企業の方々もたくさんおられると思うんですね。そんな中で第三保証人になってくださいよと頼まれたら、まあちょっと仕方がないな、義理で仕方がないなとか、やっぱりそういったところも出てくるんじゃないのかなというふうな心配もありまして、そういったところの議論というのはどのように感じておられるのか、どのように思っておられるのか、教えていただければというふうに思います。
#55
○参考人(辰巳裕規君) 御質問ありがとうございます。
 公証人、公正証書作成によって保証人保護を図るというのが今回の案にはなっておりますけれども、その今御質問のありました情義的なところ、夫婦であるとか親族であるとか同業者であるとか、頼まれたら断れない、あるいは、以前自分が借入れするときに逆に保証人になってもらっていたなどということもあるかもしれません。そういう情義のところは、やはりプロセスをどんなに重くしたとしても結局断れない人は断れないわけですから、そうすると、手当てとして、今回のところはこの情義的な保証という点についてはやはり不十分な面が残っているというふうに考えられます。
 多くの国民がやはり保証人になるあるいは保証人を頼まないといけないという場面に遭った経験というのはあるし、その中でいろいろつらい思いをした経験、あるいはつらい思いを人に掛けてしまった経験を持たれている方も多いと思いますので、この情義的な保証というものを縛りを掛けていくというところについては、やはりその保証契約そのものを制限していくという、どうしても政策的な立法というものが必要になるのではないかというふうに感じます。
#56
○参考人(山本健司君) 御質問ありがとうございます。
 基本的に辰巳参考人と同意見でございます。当面は、個別具体的な事情で、信義則制限等で対応していかざるを得ないのかなというふうに思っております。
 以上です。
#57
○東徹君 時間が来ておりますので、これで終わらせていただきます。ありがとうございました。
#58
○糸数慶子君 沖縄の風、糸数慶子です。よろしくお願いいたします。
 まず、改正項目について三人の参考人の方にお伺いしたいと思います。
 大変示唆に富む貴重な御意見をいただきながら聞いておりますと、今回の債権法改正では約二百項目が改正対象になっておりますが、法制審議会民法部会が二〇一一年四月十二日に決定をいたしました中間的な論点整理では五百以上の項目がありました。
 ただ、今回改正対象とならなかった項目について、改正対象とすべきであったと思われる項目はあるでしょうか、またどのように改正すべきとお考えになっているでしょうか、山野目参考人からお伺いしたいと思います。
#59
○参考人(山野目章夫君) 非常に重要なお尋ねをいただきまして、お答えとして申し上げたいことは実はたくさんございます。何かリストにしてお配りしたいくらいの気持ちを抱いておりますけれども、本日ここでの審議の中で、あるいは本日までのこの委員会において話題になることも多くていらっしゃるこの個人保証の問題に関して、本日、私のほかのお二人の参考人もおっしゃったところでありますから申し上げるとさせていただきますと、やはり先ほど辰巳参考人もお話しになっていましたけれども、今回お出ししている法律案の中に個人保証の入口のところで公正証書を作ってコントロールしようという入口コントロールは入っていますけれども、しかし、辰巳参考人がおっしゃったように、入口だけだとどうしても入口が擦り抜けられてしまって、保証はせざるを得ないという状況に置かれる方々がいます。
 それはそれでどうしても残るんだと思うんですけれども、その方々が、言わば出口に対するコントロールといいますか、どうしても保証人としての責任を負わざるを得なくなったときに、それはもう身ぐるみを剥ぐまで額面どおり保証人としての責任を負わなければいけないんですかということについては、そこもやはり出口のコントロールは必要だというふうに考えます。
 法制審議会の調査審議の中でも、この出口のコントロールのための幾つかの案が何回か話題になりましたけれども、法制技術的に必ずしもうまくいかない部分があったり、委員、幹事のコンセンサスを得ることが難しかったりして見送られましたけれども、しかし、個人保証というこの漢字四文字をキーワードにした問題の議論というのは、私はまさに今回のこの国会で始まるんだというふうに考えております。今般の法律案の後も、政府において引き続き新しい制度の運用実態を見て必要な見直しを適時に考えていただきたいと思いますし、両議院においても見守っていただきたいというふうに考えるものでございます。
#60
○参考人(辰巳裕規君) まず保証以外のところでちょっと若干だけ指摘させていただきますと、情報提供義務、これは保証契約においては今般導入されましたけれども、契約一般においてもやはり情報提供義務というものをどう考えるかというのは、法制審では議論はされたんですけれども結局見送りになっているところですので、これについてやはり今後も議論が必要であろう。
 それから、錯誤について、相手方が動機の錯誤をわざと呼び起こしたような場合について、これも議論されて立案の手前まで来たという認識がありましたけれども、見送られている。これについてもやはり必要なのではないかというふうに思っております。
 保証のところは、今、山野目先生、参考人からありましたとおり、過大な保証をどう制限するのか。貸主は、金融機関はプロでして、借主の審査をしてそれに応じた利息も設定をする、あるいは信用保証協会とか保証機関もちゃんと審査をして、保証するかどうか、あるいは保証料も決める。ところが、そういったプロの金融機関が、最後にその全てを個人の素人の、しかも一銭もお金ももらっていない保証人に全部押し付ける結果となったときに、全部押し付けていいのか。一定程度のその責任分配というかリスク分配というものが図れる制度というものが要る。それが責任制限という形なのか、保証人に特化した債務整理手続なのかは別として、引き続き検討していく必要があるのかなというふうに思います。
#61
○参考人(山本健司君) 御質問いただきましてありがとうございます。
 法制審議会では、種々の立場、意見をお持ちの委員、幹事の方々が議論された結果、コンセンサスが形成されて、現在の民法改正法案に至っているというふうに思われます。種々の立場に立つ方々が、そのよって立つ立場から、あれがあればよかったというふうに思われる項目は異なってくるのかなというふうには思います。
 私は、先ほどから申し上げておりますとおり、消費者保護という立場から意見を述べておりましたので、そのような立場からの意見ということを前置きさせていただいた上で、あれがあればよかったかなと思われる規定というのは、本日配付させていただいておりますレジュメの二ページの上の方の図の左側、これがあれば被害救済に資するなというふうに思って立法に向けて働きかけをしていた諸論点、具体的には暴利行為、今も出ました情報提供義務、説明義務、不実表示。あと、六番のところですけど、継続的契約や役務提供契約に関する一連の民事ルールの制定。あと、抗弁接続。これは、商品販売契約とかサービス契約を取り消したときに、その代金を与信業者に出してもらっているときにその与信債務の返済をどこまで拒めるかということで、割賦販売法の抗弁接続を一般法化するような規定の是非や要件について議論された論点なんですけれども、その辺りの論点とかについて、あと格差契約に関する解釈規定などが議論されている中で、立法されたら消費者保護、救済に有益なのになと思っていた項目でございます。
 以上です。
#62
○糸数慶子君 ありがとうございました。
 次に、消費者概念の民法典への導入について辰巳参考人に伺います。
 消費者概念の民法典への導入について、法務省は、民法は私法の一般法であり、消費者の保護を目的とするその規定は特別法である消費者契約法などによるべきであるとして、消費者概念を民法に取り入れることはしなかったと答弁をしています。消費者概念の民法典への導入について辰巳参考人はどうお考えでしょうか。
#63
○参考人(辰巳裕規君) 山本参考人の方がお詳しいところかもしれませんけれども、私の感じるところでございますけれども、一方では、これだけ消費者取引が身近にある、誰もが消費者取引を日々行っているという中で、民法が消費者というものを取り上げないということ自体が現代化にとって不自然なところがある。これは、民法においても消費者というものをどんどん取り入れていくべきだという発想がある。
 ところが、一方で、消費者概念を取り入れてしまうと、百二十年間改正がなかった民法、あるいは社会の基盤としてそう軽々には変えられない民法において、いろいろ消費者被害とか発生したときに迅速に法改正をしないといけない消費者問題について、逆に法改正の機動性が失われるという議論があり、消費者問題に取り組む弁護士も本当に悩んだところのテーマであります。
 しかし、一般的に認められてきた消費者ルールについては民法の中に入ってきてもいいのではないか。あるいは、それは消費者を代表とする契約弱者というものを取り込んでいくことは可能なのではないか。しかし、もっと個別のいろいろな消費者被害については特別法で手当てをしていくという役割分担ということも一つの作り方としてはある。一方で、消費者契約法という法律がありますので、これをどんどん充実させていくということも併せて両輪として必要じゃないかというふうに思います。
#64
○糸数慶子君 ありがとうございました。
 次に、法定利率について山本参考人にお伺いをいたします。
 法定利率が五%から三%に引き下げられましたが、現在のこの低金利下ではまだ高いように思われます。法務省は、預金金利ではなく貸出金利を参照すべきこと、そして、遅延損害金が低くなり過ぎると債務不履行を助長しかねないこと、今まで百二十年間、五%で実務を行ってきたこととのバランス等の事情を考慮したとのことですが、改正後の法定利率が三%であることをどう思われるのでしょうか。
#65
○参考人(山本健司君) 御質問いただきましてありがとうございます。
 法定金利というのは、貸金のときの約定金利に使われる局面と、あと債務不履行のときの遅延損害金の算定、約定がない場合に適用されるという二局面で適用されると思います。その点、約定金利の点で考えたときには、高いという評価はあり得るところかも分かりません。しかしながら、遅延損害金レートというのを考えたときには、例えば一般的なBツーCの契約でもBツーBの契約でも、現在の実務上は遅延損害金レートは一四%が多いんじゃないかなというふうに思います。したがって、それとの対比で考えた場合に、遅延損害金の法定の金利が三%というのは必ずしも高いものではないというふうに思います。
 むしろ、貸出金のときのような約定金利と債務不履行のときの遅延損害金を分けてもいいぐらいだったんじゃないかなというふうに思います。それを共通で、今までどおり二つの場合に適用されるレートとして考えるときには、三%というのは一つの考えられる選択肢だったのかなというふうに思います。
 むしろ、五%から三%に法定金利が下がったことを踏まえて、今実務で行われているような、一四%までの約定金利は許されるというふうな方を併せて下げる必要があるんじゃないかと。消費者契約法でも一四・六%ぐらいの金利は、遅延損害金利率認められていますけれども、それを併せて下げる方向で検討する必要があるんじゃないかなというふうに思います。
 以上です。
#66
○糸数慶子君 次に、中間利息、この控除について辰巳参考人に伺います。
 中間利息控除は用いる利率が低いほど被害者保護になるため法定利率より低い利率とすべきであるという考えについて、法務省は、中間利息控除の利率だけを違う利率にするのは不均衡であるとして否定する答弁をしていますが、中間利息控除の利率についてどのようにお考えでしょうか。
#67
○参考人(辰巳裕規君) 御質問ありがとうございます。
 まず、最高裁判例で法定利率と中間利息控除率を一緒にするというのが大前提になってしまうとそういう理論、理屈になってくるのかなと思いますが、果たして本当にそうなのかというところはもう一回考えてもよいと思います。
 中間利息控除の問題は、先ほど損害賠償法の今後についてという話も少しさせていただきましたが、被害に遭った方の適正な賠償をどう見るかというところから導かれるものであります。一方で、法定利息というものは、あくまでいろいろな取引において実勢を見て約定がない際にはこの金利にするというものですので、必ずしも同じ観点から出てくるものではない。
 もちろん、被害に遭われた方が今後逸失したものを算出する、それを現在価値に割り戻す際には今のレートというもので考えるのだということですが、そうするとやはり三%でも今の低金利下ではどうなんだろうかという問題も出てくるかもしれませんので、損害賠償として適正なものを保障する、そのためには今回の中間利息控除とその引下げというところになるのは非常に良いことだというふうに思いますが、そのことと法定利息、多くは約定で、貸付けの際は高い利息が決められ、預金については非常に低い金利が決められているのが実情ですので、そこは必ずしも同一にする必要はなく、分けて考えてもいいのではないかというふうには感じております。
#68
○糸数慶子君 以上でちょっと終わりたいと思いますが、また午後の審議に回したいと思います。
 ありがとうございました。
#69
○山口和之君 今日はありがとうございます。
 自分は福島県が地元なんですけれども、第一原発事故で東京電力が損害賠償責任を負っておるところですが、損害の範囲について東電と県民の間で大きな隔たりを感じたりすることがございます。そうなっている理由に、不法行為における損害とは何を指すのかというところが民法上非常に分かりにくいのではないかというふうにも思います。
 差額説や損害事実説といった複数の見解があるとも聞いておるんですが、参考人の方々は何をもって損害とすべきであるというふうに考えるのか、それぞれ伺わせていただければと思います。
#70
○参考人(山野目章夫君) ただいまのお尋ねで問題提起をいただきました事柄は、それ自体の性質としては、民法の中で申せば七百九条が定めている損害の範囲についての検討をもっとしっかりせよというお話になってくるのだろうというように考えます。これについては、政府に設けられた検討の場が指針を提示して、裁判外紛争処理の仕組みも設けられて、一定の積み重ねが今日までされているところではありますけれども、議員御指摘のとおり、損害がどこまでかということをめぐって種々の議論があって、必ずしも一番つらい思いをしていらっしゃる方々の納得を得ていない側面があるということは御指摘のとおりではないかというように考えます。
 それとともに、本日議題として御審議をいただいておりますこの民法の今般の一部改正の中では、四百十六条という法文について見直しの提案を盛り込んでいるところでございます。こちらは、主にそれが機能する場面というのは、契約を結んだ当事者の間での債務不履行に基づく損害としてどういうものが考えなければいけないのかということについて、従来もこの問題はあって、やはりその民法の規定が規律してきたところでありますけれども、きちっとその後の判例、学説の積み重ねを反映するなどして読みやすいものにしようという提案をしてございます。
 御指摘の原子力損害賠償の問題、今後もきちっと考えていかなければならないことであろうというように考えます。冒頭の意見陳述でも申し上げましたけれども、消滅時効の観点から、原子力損害賠償の被害者の立場について不適切な影響をもたらすことはしないということまで今般その措置を講じているところでございまして、御指摘のことについても引き続き考えていかなければいけないのだと感じます。
#71
○参考人(辰巳裕規君) 民法そのものは、七百九条以下、本当に僅かな条文でして、その中には損害賠償の具体的なことについては何も書かれていない。我々実務家は、一般的には、交通事故というものが損害賠償の世界では多くあって、交通事故賠償の実務の中で積み上げられてきたものというものがございます。差額説、あるいはその個々の損害を積み上げていって評価する積極損害、消極損害という形で評価するという実務が定着しております。これについても、本当に交通事故の被害に遭われた方の損害賠償に見合うものになっているのかという観点はもう一度考えないといけないのかもしれません。
 さらに、福島原発事故、その他公害事件などでもそうですけれども、平穏的な生活権、あるいは包括的な生活利益というものが奪われてしまう。いろいろ避難を余儀なくされた方、強制された方、いわゆる自主的な避難という形で避難を余儀なくされている方、一方で、福島県の中で復興の中で頑張られている方、いろいろな多様な損害というものがあって、これは、今までの実務の個々の損害費目を足し合わせる積み上げ型では把握できない人格的な、包括的な損害というふうに考えられます。
 そういったものを果たして損害賠償でどういうふうにくみ上げるのかというものについては、今の条文も、あるいは交通事故の損害賠償実務で持たれているものでもまだ足りないのではないか、まさにそこが今のこの未曽有の事故に対するところで問われている問題じゃないかなというふうに思います。
#72
○参考人(山本健司君) 御質問をいただきましてありがとうございます。
 種々の見解が得られる難しい御質問であるというふうに理解しておりますけれども、消費者被害の救済という観点からの見解としては、今、辰巳参考人が述べられたような見解が、私も同じ意見でございます。
 以上です。
#73
○山口和之君 次に、日本ではいわゆる懲罰的損害賠償というのは認められていないとされております。最高裁でも我が国の公の秩序に反するから認められないというふうにしているようですが、参考人の方々は懲罰的損害賠償制度についてはどのように考えているのか、それぞれお聞かせ願えたらと思います。
#74
○参考人(山野目章夫君) 損害賠償法に関するかなり骨太と申しますか、民法による民事損害賠償とは何なのかという抜本を問う大変重い、難しいお尋ねを頂戴いたしまして、深められたお答えを差し上げる自信はありませんけれども、民事の損害賠償は、少なくとも日本の法制は、今日ここまで生じた損害を填補するという発想を基本に考えてまいりました。それについて、ただいま御指摘があったように、側面、局面によっては問題があるということは確かであろうというふうなことも感じます。
 反面におきまして、では、例えば民法を改正して、一般的なルールとして懲罰的損害賠償のようなことを例えば裁判官が裁量で命ずることができるというような規律を入れましょうかということを考え始めますと、少なくとも私個人は相当勇気が要ることではないかというふうに感じます。
 それと同時に、現在の法制の中を見てみましても、不法行為や債務不履行の様々な損害賠償の局面で、確かに議員御指摘のとおり、これはペナルティーとして重くてあるべきだというような局面については個別の立法で手当てが設けられているところがございます。鉄道営業法の中には割増金に類する制度が置かれておりますし、それから労働基準法は、使用者がきちっと労働者に対する債務の履行をしなかったときに裁判所が付加金の支払を命ずるという制度を設けているというところでございます。
 議員御指摘のようなことを不法行為法の抜本的な改革を見据えて引き続き考えていかなければならないと同時に、喫緊の問題についてはやはりその個別の法制をきちっと考え込んでいくということではないでしょうか。
#75
○参考人(辰巳裕規君) 企業による消費者被害という場面で考えますと、今までは消費者被害があっても多くの方が泣き寝入りをする、その中で勇気を持って訴えを出る人が一部いて、それについていろいろ弁護士が支援をして裁判をしていくというパターンが多いと思いますが、結論としたら、やはり被害救済が図られたとしても一部の方の一部の損害ということになります。違法行為を抑制するというような観点からいけば、懲罰賠償という制度の下で企業の違法行為というものをあらかじめ防止することで国民、消費者全般の利益が図られる仕組みというものは、ちょっと民法という法律が適切なのかどうか、PL法とかそういう場面でよく言われている問題ですので、そういう中でこの懲罰賠償というものも考えていく必要があるのではないかと思います。
#76
○参考人(山本健司君) 御質問ありがとうございます。非常に難しい御質問を頂戴しているというふうに理解しております。
 責任追及の立場に立ったときには懲罰賠償でプラスアルファの損害賠償請求ができるというのはメリット面ありますけれども、立場変われば逆にそれが非常に厳しい問題になるということも事実であって、ある意味もろ刃のやいばのところがあると思います。
 もし考えるとすれば、今、消費者から事業者に対する請求の場面とか、適用場面を限定して考えるとか、片面的な適用を考えるとか、適用範囲について、もし導入するとしたらどういう場面でそれを認めるかというのを考える必要があるんじゃないかと。広く一般的に認めるとなったらなかなか、いろんなケースに一般的に適用されるとなったら、いろんな局面でいろんな問題が生じてくるのじゃないかなという考えを持っております。
 以上です。
#77
○山口和之君 今回の民法改正では、社会経済の変化への対応を図ること、それから民法を国民一般に分かりやすいものにすることを目的とされております。
 この二つの目的を達成するために現在の法案では不十分だなと思う点や今後対応が必要だなという点、今までもお話しされていると思いますが、強調をしたいところですね。あと、これで最後ですので、参考人の方々の言い残したこと、これだけは言っておきたいというのがありましたら、説明したこと以外でも結構ですので、お聞かせ願えたらと思います。
#78
○参考人(山野目章夫君) お尋ねをいただきましてありがとうございます。
 様々ございますけれども、個人保証の領域から二つほど話題にさせていただくということにいたしますと、一つは既に法律案で話題になっていることでありますし、もう一つは必ずしも法制審議会の調査審議の過程でも明確な論議の対象にならなかったことでございます。
 前の方から申し上げますと、この個人保証について、保証意思宣明公正証書によるコントロールをするという、それ自体としては期待することができる規律が入ろうとしています。それで、その主たる債務者とともにする事業に従事する配偶者という問題は、あの文言のとおりに衆議院及び参議院において御採択をいただくということになるのであれば、実務家の弁護士の先生方はまたその下での運用に努めるでしょうし、法律家の端くれとして、私も研究者としては様々な解釈理論を工夫して、そのことの問題と向き合っていって、良い法律運用ができるように努めていこうという覚悟がございますけれども、あの規律の導入が相当であるかどうかということについては立法府としては鋭意御検討いただければ大変有り難いですし、原案のとおり法律案が採択されるという運びとなります際は、今後の規律の運用について、政府に対し特段の注意を促していただければ有り難いと感じます。
 もう一点、個人保証との関係で申し上げますと、実は保証人が死亡したときに、保証債務もまた被相続人の有していた債務として特段のことがなければ相続人に承継されるものでありますけれども、何分にも保証債務というものの存在に気付かずに単純承認又は法定単純承認をし、又は法定単純承認が生じてしまうことに機縁がある紛争があり、様々な悲惨な例もあるものでございます。
 法制審議会の調査審議の過程で、これ中間的な論点整理も盛り込まれておりませんで、正面から議論するチャンスがありませんでしたけれども、私個人は、今後の個人保証の改革との関係でも問題視していかなければならないというふうに感じております。
 せっかくのお尋ねでございますので、申し上げさせていただきました。ありがとうございました。
#79
○参考人(辰巳裕規君) ちょっと大きな点と小さな点と一点ずつだけ述べさせていただきます。
 一つは、民法という法律は、法務委員会にはほかにもたくさんのいろいろな重大な法律がかかってくると思いますが、地味な法律であります。地味ですけれども、本当にふだんの生活、国民生活の基盤となる重要な、地味ですけど重要な法律ですので、是非充実した審議の上で、より生活者として良くなることがあると考えられる点については、そういったところも良い方向になるように修正いただいたり、あるいはそういうような点を答弁の中で明らかにしていっていただくような作業というものが求められるのかなというふうに思います。
 今後は本当に、また十年後あるいは百年後とかのときに、この民法の立法過程はどうだったんだろうということで、多分、法制審議会の議論あるいはここの法務委員会の議論、国会においての議論というものが、将来の法律を目指す人、実務家という人が立法者意思ということでいろいろ見ることになると思いますので、その中で、なぜこういう法律になってきたんだろうかというところが後世にも伝わるような、そういう充実した審議というものをお願いしたいと思います。
 他方で、非常に各論的な話になりますが、時間がなくてちょっと言えなかった点、消費貸借のところです。
 諾成的消費貸借という形にして、お金借りる前にでも契約は成立する、それ自体は書面によるということになっておりますが、借りる前に解除したときには損害賠償の責任を負う場合がある、あるいは、お金借りた後も、途中で早く返したときにはその損害賠償を負う場合があるという規定が明文化されております。しかし、普通に考えると、借金はなるべくしなければしない方がよい、それから、借金があったらなるべく早く返した方がいいよというのが庶民的な行動規範かなというふうに考えたときには、早く返す、あるいは借りなかったことに損害賠償というものを課すことを条文として設けるのはどうなのか。もちろん、大きな金融の資金調達の場面とかそういう企業間取引においてそういうことが必要な場面があると思いますが、それはもう事業者は特約契約書でそういう損害金条項を設ければよいということなので、あえて私たちの生活に関わる民法でそういう損害賠償権があると書く必要はないのではないかということを最後申し添えたいと思います。
 以上です。
#80
○参考人(山本健司君) 御質問いただきましてありがとうございました。
 今国会においてこの民法改正法案を成立さしていただきたいというのがまずもっての意見でございます。ただ、その一方において、これで十分ではないということも事実かと思います。
 今回のような抜本的な法改正はなかなか難しい、それを近い時期に再度行うというのはなかなか難しいことだというふうに思いますけれども、個別の補充的な法改正というかバージョンアップというか、そういうものについては、社会情勢を見ながら不断に図っていただきたいなというふうに希望いたします。
 具体的な論点としては種々ありますけれども、まずもって暴利行為ではないかなというふうに思います。
 あと、最後に一言述べさせていただくとすれば、私の本日の意見の冒頭の方でも申し上げたんですけれども、行政規制と民事ルールの整備というものについては被害救済の車の両輪でございます。行政規制を強化して業者に対していろんなルールを設定するということについては、被害の予防や拡散防止にはつながるんですけれども、それによって個々の被害者は必ずしもストレートには救済はされません。交通事故の加害者に対して免許を取り上げたり刑事罰を科しても、それで被害者は直接に救済されないのと同じことでございます。被害者の救済には民事ルールの整備が不可欠でございます。
 したがって、一般法である民法、特別法である消費者契約法の充実は、ここも図っていただきたいと思いますし、また、いわゆる三階部分に当たる業法の整備についても、特商法に一部クーリングオフの規定とか中途解約のときの違約金の制限とかありますけれども、行政規制においても、重要なものについては民事効を入れていただいて、被害救済という観点からの法制度というのを、いろんな、この民法もありますけど、ほかの法律においても、業者に対する縛りと一緒に、被害者の具体的な救済の規定、民事ルールの規定というのを充実させていっていただきたいなというのが希望でございます。
 以上です。
#81
○山口和之君 ありがとうございました。
#82
○委員長(秋野公造君) 以上で午前の参考人に対する質疑は終了いたしました。
 参考人の方々に一言御挨拶を申し上げます。
 本日は、長時間にわたり御出席を賜り、貴重な御意見をお述べいただきまして、誠にありがとうございました。委員会を代表して厚く御礼を申し上げます。(拍手)
 午後一時半に再開することとし、休憩いたします。
   午後零時二十五分休憩
     ─────・─────
   午後一時三十分開会
#83
○委員長(秋野公造君) ただいまから法務委員会を再開いたします。
 休憩前に引き続き、民法の一部を改正する法律案及び民法の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案の両案を一括して議題といたします。
 両案の審査のため、参考人から御意見を伺います。
 午後に御出席いただいております三名の参考人は、弁護士・法政大学大学院法務研究科教授高須順一君、静岡大学人文社会科学部教授鳥畑与一君及び司法書士山田茂樹君でございます。
 この際、参考人の方々に一言御挨拶を申し上げます。
 本日は、御多用のところ本委員会に御出席をいただきまして、誠にありがとうございます。
 参考人の皆様方から忌憚のない御意見を賜り、今後の審査の参考にいたしたいと存じますので、どうぞよろしくお願いを申し上げます。
 議事の進め方について申し上げます。
 まず、高須参考人、鳥畑参考人、山田参考人の順に、お一人十五分程度で御意見をお述べいただきまして、その後、各委員からの質疑にお答えいただきとう存じます。
 なお、意見の陳述、質疑及び答弁のいずれも着席のままで結構でございますが、御発言の際は、その都度、委員長の許可を得ることとなっております。また、各委員の質疑時間が限られておりますので、御答弁は簡潔にお願いいたします。
 それでは、高須参考人からお願いいたします。高須参考人。
#84
○参考人(高須順一君) 高須でございます。本日は、発言の機会を与えていただきまして、誠にありがとうございます。
 私は、日本弁護士連合会から推薦を受け、二〇〇九年十一月から審議が開始されました法制審議会民法(債権関係)部会の幹事としてその審議に参加させていただきました。そこで、今回の改正法案に対する日弁連の基本的立場を含めた私の意見をまずお話しさせていただき、その上で、今回の改正項目の中でも、市民生活あるいは取引社会との関係において重要と思われる幾つかの論点について、今回の改正法案に至る法制審の議論の経過を説明させていただきたいと思っております。よろしくお願い申し上げます。
 まず、今回の改正法案に対する日本弁護士連合会の意見、評価でございますが、日弁連としては、今回の改正法案について、保証人保護の拡充や約款ルールの新設等、健全な取引社会を実現するために必要かつ合理的な改正提案になっていると評価させていただいており、賛成という立場を表明しております。
 お手元の、配付をお願いしてあります資料の四になりますが、平成二十七年三月十九日付けの民法(債権関係)の改正に関する要綱に対する意見書がそれでありまして、一部にはなお道半ばという部分はあるにせよ、一八九六年制定以来百二十年余を経過した民法、債権関係法についてその現代化に真正面から取り組んだその意義は十分に盛り込まれた内容になっていると評価させていただいております。
 なお、日弁連が今回の改正法案についてどのような評価をしているか、また、法制審議会の審議に対して日弁連がどのように取り組んできたかにつきましては、やはりお手元の資料の二と三でございますが、改正法案の評価、あるいは日弁連のこれまでの取組というA4一枚物のペーパーに、より見やすい形で記載されておりますので、これも御覧いただければと思います。この日弁連の評価は、私自身のそれと同様のものであります。
 そもそも民法という言葉についてでございますが、幕末から明治維新にかけて活躍した津田真道によって初めて日本語に翻訳され、以後定着した言葉とされております。津田がこの民法、この法律を民法すなわち民の法と翻訳したことにはやはり意味があることであり、この法律は民に寄り添い、民のためになる法でなければならないと思っております。
 そのような観点から考えた場合に、今回の改正法案は、保証人保護といった民の要請に応えるものであり、また、日常生活を行うに当たり今やその存在を無視することはできない約款取引についても、その規律を新たに設けることとなり、民の健全な経済活動を支える重要なルールになると考えております。また、今回、消滅時効制度などもより分かりやすいシンプルな内容にすることが目指されており、全体として、二十一世紀に入った日本社会において、津田がまさに民法と名付けた法の内容としてふさわしい改正法案になっていると思っております。
 以上のような視点から、今回の法案に盛り込まれました重要テーマについて幾つか御説明をさせていただきます。
 お手元の資料の一、「民法(債権関係)改正法案の概略」、これは主に関係する改正法案を抜粋したものでございますが、これを御覧いただければと思います。
 まず、個人保証人の保護を強く意識した保証法制の改正でございます。様々な工夫が盛り込まれておりますが、中でも、今回の改正において、事業資金とするために金融機関から融資を受けるようないわゆる事業用貸金契約について、個人が保証契約を締結する際には、原則として、保証人になろうとする人は、公証人から一定の説明を受けた上で、公正証書で公証人に対し保証意思を有する旨を表示しなければならない、この規律、法案四百六十五条の六でありますが、この規定は重要な改正条文であると考えております。保証人になろうとする人が、保証契約締結に先立ち、直接の利害関係を有しない公証人と話をすることにより、よく考える機会をつくる、その意味で、保証人にならざるを得ない状況下にある人にいま一度考える権利、熟慮する権利を与えるものであると評価できるものと思っております。
 個人保証人の保護という問題は今に始まったものではなく、古くから存在する問題ですので、一方では保証契約が経済活動において必要とされているという場面がある、このことを十分に踏まえて、一歩一歩進めていく問題であると考えております。
 法制審議会において、中小企業の資金調達の必要性、そのために個人保証に頼らざるを得ない実情があることが参加メンバーである委員から表明され、その点も十分に考慮した規定として今回の改正法案の規律になったと理解しております。今後、更に検討していくべき事柄が残されているとしても、百二十年余の歴史を経て、これまで相対でなされてきた保証契約に公証人が一定の関与をする制度が設けられ、それをもってこれから保証契約を締結しようとする保証人によく考える権利、熟慮する権利が保障されることは大きいと考えております。
 次に、定型約款でありますが、この規律も大変重要なものであると考えております。日弁連も強くこの規律の導入を主張してきた経緯がございます。
 約款取引が現在の取引社会において日常的に行われているということは言うまでもないことだと思います。電車に乗れば運送約款、ホテルに泊まれば宿泊約款、携帯電話を購入すればそれに伴う分厚い約款というように、私たちはこの種の約款を介在させた契約行為を日常生活において繰り返し行っております。
 しかしながら、約款の内容を契約締結時に確認し契約を締結するということはまれだと思います。一定の約束事が書かれているのだろう、これぐらいの認識はあるとしても、その具体的な内容はよくは承知していない、そのような取引が日常的に行われているということだと思います。約款を利用した契約のことを希薄な合意などと呼ぶところです。このような中で、今回の改正法案が民法が規律する約款の内容を定型約款として定義付け、さらに不当条項、不意打ち条項と呼ばれるルール、つまり契約の拘束力から逃れるための規定を設けたことは大変に意義のあることと考えております。
 法案五百四十八条の二第一項は、約款を利用して行う契約について、ある特定の者が不特定多数の者を相手方として行う取引であって、その内容の全部又は一部が画一的であることがその双方にとって合理的なものである場合、これを定型取引として民法の規律の対象となることを明らかにしています。この定型取引の定義において、不特定多数との画一的な契約を想定するのみならず、その内容が画一的であることがその双方にとって合理的である、そのことを必要としている、その旨を宣言していることは重要だと思っております。あくまで契約当事者の双方にとって内容が合理的なものであることを要求し、そのような約款取引についてこれを保護し規律するという姿勢を示したことは、約款取引が日常となっている現代の契約社会において意義のある改正になると思っております。
 そして、この法案五百四十八条の二第二項が、約款の条項については一定の場合には有効な合意にはならない、合意があるとはみなさないとしたことは、いわゆる不当条項、不意打ち条項と呼ばれていたものの明文化であり、現代約款取引において、認めるべき約定は認め、認めるべきでない約定は排除するという明確なルールを設けることができたと理解しております。
 そもそもが、約款取引が適正かつ実効性ある形で運用されることは約款を使用する企業にとっても重要なことでありますから、これらのルールの明確化を実現したことは企業経済活動の健全性の維持にも役立つものであり、調和的な規定を作ることができたと理解しております。
 続きまして、消滅時効制度の改正でございます。
 今回の改正法案でも大幅な変更が試みられているところでございます。民法が定める規律というものの中には、専ら法律家が裁判等を行うときのルールを定めている、そのような規律も存在いたします。私が個人的には大変関心を持っております詐害行為取消し権の規定などがまさにそれに当たります。この詐害行為取消し権につきましては、日常生活を営む中でお目にかかるようなものではないと思っております。
 しかし一方で、民法の規律の中には、ごく普通の日常生活の中で、弁護士や裁判所の関与など無縁の場面においても問題となるものがあると思います。消滅時効などというのはまさにそのような規律であり、一定期間経過した後に支払を請求されたようなケースにおいて、それってもう時効じゃないのということが脳裏をよぎるという場面が間々あると思います。
 そのようなときに、さてどうするか、とりあえず民法を見て確かめよう、今はインターネット全盛の時代でありますから、家庭に六法全書がなくても、ともかくネットで調べようなんということは幾らでもあると思います。そんなときに民法のルールが余りにも複雑だと、結局よく分からない、判断が付かない、諦めるとなってしまっては、もはや民のための法律とは言えないと思います。ここではシンプルで分かりやすい規律が必要になるところだと思っております。
 今回、消滅時効に関しては、話を複雑にしていた短期消滅時効に関わる規定を削除し、債権の消滅時効は、権利を行使し得ることを知ったときから五年か、権利を行使し得るときから十年のいずれか早い方、つまり主観的起算点と客観的起算点にそれぞれの一定の時効期間を割り当てる一律の制度としてこれを整理しています。時効のような身近な法律問題に関わる分野は、分かりやすいことが何よりでございます。そのような改正法案になっていると思っております。
 最後に、法定利率を取り上げたいと思います。
 これは私たちが日常に関わるという問題ではありませんが、万一のときに重要となる規定です。現行民法四百四条では法定利率は年五分、五%と定められています。そして、この利率が、例えば交通事故被害に遭ったようなときの損害賠償金額の算定の際に重要な役割を有することになります。逸失利益に関する適正賠償額を定める際に中間利息控除ということが問題になるということでございます。
 この点、平成十七年の最高裁判決が、民法は民事法定利率により中間利息を控除することを予定しているものと考えられると判断しており、そこで現在の損害賠償実務では、年五%の割合による減額、つまり中間利息控除が行われています。
 しかしながら、バブル期の高金利の時代であればともかく、現在の経済環境では、現時点でもらった金銭を銀行に預金したところでそれほどの利息を期待することはできません。金融機関等にお金を預けておけば五%の運用益が生じて、結果的にそろばん勘定が一致しますよなどと言える人は恐らく一人もいないと思います。
 そこで、この中間利息のこと一つを考えても、今の法定利率五%は社会の実情に合っていない、もっと低い利率にする必要があるということだと思います。しかし一方で、余り急激な利率の変更は、変更前のケースと変更後のケースで大きな違いをもたらすこととなり、それにより不利益を受ける人に不公平感をもたらすことになります。改正の必要を感じながらも、改正による弊害も危惧される。
 法制審議会でもとても難しい審議でありました。最終的には、大幅な利率の変更を避け、改正法を施行する際の出発点となる利率は年三%とする。その上で、今後の金利相場についてどのような急激な変化があるかは分かりませんので、そのような大きな変化があった場合には対応できるような緩やかな変動制を取るということも改正法案の内容となっております。極端な改正にならないようにしつつも社会の実態に合わせる、このようなことを試みた改正法案になったと思っております。
 以上の次第であり、今回の改正法案は、一八九六年、明治二十九年以来の社会の変化に対応するものであり、かつ公に対する民、この民に関わる、民に寄り添う改正になっていると思います。まだまだ努力しなければならない問題、まだまだ考えなければならない問題もありますが、百二十年間改正をしないできたという状況を考えれば、その全てを今回の改正で解決するということは困難であり、今後も、民の法である民法については、これを更に民のためのものにするための不断の努力を続けていかなければならないのだろうと考えております。
 以上をもちまして、私の説明とさせていただきます。御清聴ありがとうございました。
#85
○委員長(秋野公造君) ありがとうございました。
 次に、鳥畑参考人にお願いいたします。鳥畑参考人。
#86
○参考人(鳥畑与一君) 静岡大学の鳥畑です。
 本日は、百二十年ぶりの抜本的改正と言われる本法案審議において貴重な発言機会をいただき、御礼を申し上げます。
 実は昨年、内閣委員会でカジノ問題で参考人で呼ばれましたが、本来は自己資本規制の国内金融に対する影響、金融行政についてを研究分野の一つとしております。とはいえ、法曹界の大家の先生方と比して余りにも浅学非才であり、かつ門外漢であります。そういう金融学者からの一意見としてお聞き流しいただければ幸いです。
 まず、本法案趣旨説明にもありますように、保証人の保護を図るための保証債務に関する規定の整備を一つの柱とした本法案において、保証人に対する主要な債務者の財産や収入等の情報提示義務など、数多くの保証人の保護規定が新設又は強化されたことを評価するものです。とはいえ、衆議院法務委員会等の質疑でも指摘されましたように、事業債務に対する第三者保証の原則禁止や保証人の負担能力を超えた保証責任の制限、いわゆる比例原則の見送りなど、依然として多くの課題が残されております。このことは、近年の担保、保証に過度に依存しない中小企業金融の政策的推進や金融実務の到達点、とりわけ第三者保証が原則禁止とされている現実に対して、民法という基本法が二、三周遅れるばかりか、逆方向への影響を与えてしまうのではないかと懸念するものです。
 本日は、事業活動に係る第三者保証の原則禁止を通じた人的保証に依存しない中小零細企業金融の促進こそが、金融機関の定性的評価を軸とした事業性に着目した融資に対する目利き能力を高め、ひいては中小零細企業の健全な育成、発展に貢献することを訴えさせていただきたいと思います。
 現行民法制定以降の金融技術の発展は著しく、企業の経営内容や将来性に対する信用評価手法等の発展は顕著であり、金融庁金融行政方針等においても、担保、保証に過度に依存しない、事業を見た融資の転換促進が掲げられているところです。実際、中小零細企業への融資における担保、保証への過度な依存の弊害がバブル経済崩壊以降顕著となり、デフレ経済の克服を含めた日本経済の健全な発展を妨げている要因の一つとしての認識が共有されています。
 主たる債務者の信用補完を行う保証は法人保証と個人保証に分けられ、個人保証はさらに経営者保証と第三者保証に分けられますが、物的担保が乏しく、かつ企業と経営者個人が一体となっている傾向、いわゆる法人個人の一体性が強い中小零細企業においては個人保証が重要な役割を果たしてきました。とりわけ経営者保証は、信用補完、債権保全とともにモラルハザードの防止等の経営の規律付け、情報の非対称性の克服に資する役割が大きいとされます。中小企業の八七%が経営者保証を提供しているように、中小零細企業において、経営者保証が金融の円滑化において重要な役割を果たしていますが、後述しますように、過度の依存からの脱却が政策的に追求されているところです。
 一方で、第三者保証については、そのような経済的合理性や経済的貢献が乏しい上に、その弊害の大きさがバブル崩壊後に社会問題化し、金融の現場では第三者保証を原則禁止とする取組が進んできています。
 二〇〇六年三月には、中小企業庁は、事業に関与しない第三者が個人的関係等によりやむを得ず保証人となり、その後の借り手企業の経営状況の悪化により、事業に関与していない第三者が社会的にも経済的にも重い負担を強いられる場合が少なからず存在することは、かねてより社会的にも大きな問題にされてきているとして、信用保証協会における第三者保証人徴求の原則禁止を行っています。
 また、二〇一〇年の金融資本市場及び金融産業の活性化のためのアクションプランの「経営者以外の第三者の個人連帯保証を求めないことを原則とする融資慣行を確立し、また、保証履行時における保証人の資産・収入を踏まえた対応を促進する」という方針を受けて、二〇一一年七月には、金融庁は、個人連帯保証に関する監督指針の改正についてで、経営者以外の第三者の個人連帯保証を求めないことを原則とする融資慣行の確立を各金融機関に求めています。
 新たな監督指針においては、経営者以外の第三者の個人保証については、副次的な信用補完や経営者のモラル確保のための機能がある一方、直接的な経営責任がない第三者に債務者と同等の保証債務を負わせることが適当なのかという指摘がある。また、保証履行時における保証人に対する対応いかんによっては、経営者としての再起を図るチャンスを失わせたり、社会生活を営む基盤すら失わせるという問題を生じさせるのではないかという指摘があることに鑑み、金融機関には、保証履行時において、保証人の資産、収入を踏まえたきめ細やかな対応が求められるとして、一、個人連帯保証契約について経営者以外の第三者の個人連帯保証を求めないことを原則とする方針を定めているか、二、例外的に経営者以外の第三者との間で個人連帯保証を締結する際には、「信用保証協会における第三者保証人徴求の原則禁止について」における考えを踏まえているか、三、契約者本人による自発的な意思に基づく申出によるものであって、金融機関から要求されたものでないことが確保されているか、四、保証債務弁済の履行状況及び保証債務を負うに至った経過などその責任の度合いに留意し、保証人の生活実態を十分踏まえて判断される各保証人の履行状況に応じた合理的な負担方法とするなど、きめ細やかな対応を行う態勢となっているか等を検証するものとしています。第三者保証が例外的に認められている場合であっても、契約者本人が自発的な意思に基づき申出を行った旨が記載され、自署、押印された書面の提出での確認が求められています。
 これを受けて各金融機関の融資においては、第三者保証を原則求めないことが通常となってきております。日弁連、保証制度の抜本的改正を求める意見書によれば、第三者保証人非徴求割合は、政策金融公庫一〇〇%、商工組合中央金庫九九・九%、信用保証協会九九・八八%となっています。衆議院質疑の中でも、第三者による自発的な申出による個人連帯保証契約はほとんどないと答弁されています。
 さらに、経営者保証についても、二〇一三年の経営者保証に関するガイドラインにおいて経営者保証に依存しない融資の一層の促進がうたわれ、一、法人と経営者との関係の明確な区分、分離、二、財務基盤の強化、三、財務状況の正確な把握、適時適切な情報開示等による経営の透明性確保などの一定の条件を満たす融資においては経営者保証を求めないことが金融機関に求められました。法的強制力はなく、経営者及び金融機関による対応についての自律的な準則という位置付けではありますが、現実に経営者保証を付けない融資が拡大しつつあり、新規融資の一四%が経営者保証を付さないものとなっています。経営者保証ガイドラインで重要なのは、経営者保証が行われた場合でも、支払能力に対して過度な保証負担を回避し、かつ保証履行時において一定の財産を手元に残すことで家計の破綻を回避し、その再生基盤の維持を確保しようとしている点です。
 中小零細企業における個人保証については、既に第三者保証については原則禁止とされ、さらに経営者保証についても依存を減らす取組が推進されているのが金融の現場の到達点です。この方向性は、全国中小企業家同友会が政策的要求として、個人保証に過度に依存しない金融制度の確立は、円滑な創業や事業承継、事業の拡大を進め、地域経済の振興を図る上で不可欠であるとし、全国商工団体連合会も担保や人的保証に依存しない融資慣行の普及に努めるとするように、中小零細企業の切実な要求でもあります。審議の過程では、ある中小企業団体の強い要求に基づいて第三者保証の原則禁止等が見送られたとのことですが、広範な中小企業団体の要求に基づくものと言えるのでしょうか。
 第三者保証の原則禁止は、同時に経済的にも合理的な方向性であると言えます。すなわち、過度に個人保証に依存することは、金融機関の融資時における審査や融資後のモニタリング機能を通じた情報生産へのインセンチブを低下させ、その結果、中小零細企業の事業性や経営者の資質などの定性的評価に基づいた審査能力を弱める結果になります。さらに、個人保証を負うことで、経営者の新たな事業への挑戦や抜本的な企業再建、事業承継等を妨げることが指摘されています。
 第三者保証は、経営者保証の補完を通じて上記の弊害を促進するとともに、経営者による第三者保証への依存は、経営者の規律等を低下させ、モラルハザードを引き起こす可能性もあります。第三者保証の特性として指摘されている情義性、未必性、軽率性、無償性、利他性、これらは、第三者保証を引き受ける当人が経済的合理性よりも人間関係に左右され、正確なリスク評価に基づかない安易なリスク負担を引き受け、報酬がない下で突然の支払能力を超えた過大な負担を強いられることを招きます。このことは、経営者の規律を高めるどころか、健全な市場経済と金融取引をゆがめる前近代的な融資慣行とも言えます。
 また、このような特性を持つ第三者保証の問題性は、公正証書作成による意思確認のみでは、これまでの質疑でも指摘されたように是正できません。予見不可能なリスクについて一般的、抽象的な説明では、第三者に自己責任ではない負債を負わせることを防止することはできません。審議において明らかにされている公正証書作成に伴う弊害の大きさに鑑みれば、第三者保証の正当性を公正証書に委ねることは避けるべきと考えます。
 このような第三者保証については、日弁連が一四年二月の意見書、保証人保護の方策の拡充に関する意見書でも述べているところです。
 ところが、今回の法案では、第六回部会、改正に関する検討事項で、「個人の保証人が必ずしも想定していなかった多額の保証債務の履行を求められ、生活の破綻に追い込まれるような事例が後を絶たないこともあって、例えば、自殺の大きな要因ともなっている連帯保証制度を廃止すべきであるなどの指摘もあるところである。」、「このような状況を踏まえ、保証に関する規定の見直しに当たり、どのような点に留意して検討を進めるべきか。」とされていましたが、結果的には、第三者保証の全面的禁止は中小企業の円滑な金融を妨げる、金利負担の上昇等による借り手の負担を増大させるとして見送られ、公正証書作成による意思確認で代替されることになりました。
 しかし、現実に金融の現場では第三者保証の原則禁止が一般的となっており、民法上原則禁止とすることが金融の円滑を妨げることはあり得ないと考えます。現に中小企業庁の第三者保証の原則禁止においても、一、実質的な経営権を有している者、営業許可名義人又は経営者本人の配偶者が連帯保証人となる場合、二、経営者本人の健康上の理由のため事業承継予定者が連帯保証人となる場合、三、財務内容その他の経営状況を総合的に判断して通常考えられる保証のリスク許容額を超える保証依頼がある場合であって、当該事業の協力者や支援者からの積極的な連帯保証の申出があった場合は例外とされており、原則禁止の場合でも金融の円滑に障害をもたらしていないのが現実ではないかと考えます。
 また、エンジェル投資家等の第三者保証のニーズについても、物上担保で対応可能であるほか、例外規定として対応すればいい問題であり、第三者保証の原則禁止を妨げる要因とはなり得ないことはこれまでの質疑で明らかではないかと考えます。全面禁止にできないから原則禁止を飛ばして公証人に委ねるというのは論理的な飛躍であり、同時に、公正証書作成の諸コストを中小零細企業、保証人に強いるばかりか、公証人制度の不備を第三者保証の負担という形で転嫁するものと言えます。
 配偶者を公正証書の作成対象外とする点においても、主たる債務者との一体性がある場合であっても公正証書を義務付けることで障害をもたらすことは考えにくいものと考えます。経営と家計の一体性、そして主債務者と配偶者の経済的一体性があればこそ、自動的に保証人となることを当然とするのではなく、夫婦財産の独立性の原則を含め個人としての主体性を尊重した保護を強化すべきと考えます。このことは、中小零細企業経営の破綻と家計の破綻の連鎖を防ぐ意義を有するものと考えます。保証に依存しない金融の目標が過度の負債による個人又は家庭の破綻を防ぐことにあることを忘れてはいけないと考えます。
 全国中小企業家同友会は、経営者の資力に比例した限度でしか保証人は責任を負わない原則の確立として、保証債務履行の際、その前二年間を平均した年間可処分所得の二倍に保有資産の価額を加えた額の限度まで保証人の責任を減じるとして、個人保証を代替する制度の必要性として個人保証共済制度の創設を提案しています。個人保証における負担能力を超えた保証責任の是正についても比例原則の導入をお願いするものです。
 以上、私の発言を終わらせていただきます。御清聴ありがとうございました。
#87
○委員長(秋野公造君) ありがとうございました。
 次に、山田参考人にお願いいたします。山田参考人。
#88
○参考人(山田茂樹君) 司法書士の山田と申します。この度は意見陳述の機会をいただきまして、誠にありがとうございます。
 さて、まず初めにですが、私ども司法書士は、不動産登記等の登記に関する業務、あるいは簡易裁判所における訴訟代理業務等を業としているという立場の者でございます。今般の債権法の改正につきましては、我々司法書士の実務においても極めて重要な法改正であるというふうに言えます。
 さて、まず最初に総論的なことから申し上げるのですが、今般の改正についてですが、おおむね賛成をしておりまして、慎重審議の上、迅速な成立を求めるとともに、その周知におきましては、平成二十八年十二月六日の衆議院法務委員会で民事局長が御答弁されたように、司法書士、弁護士等の法律実務家を活用すべきであるというふうに考えております。
 さて、今日のこの本委員会においてですが、私、一司法書士としての実務の視点から、法案の個別の規定についての意見として二点、それから、法案には盛り込まれなかった観点についての意見を一点述べさせていただきたいというふうに思っております。
 さて、今日これから述べさせていただく意見についてですが、時間の都合もあることから、例えば保証ですとか定型約款あるいは暴利行為等、当方としても重要であるとは考えているもののこれまでの審議等において取り上げられている論点については取り上げず、これまでの審議において余りある意味言及されていなかった点について取り上げるということで作っておりますので、御了承ください。
 それでは、具体的な内容についてお話をさせていただきたいと思います。
 まず、法案の個別の規定についての意見ということで、二点のうちの一点目でございます。一点目は、将来債権の譲渡、法案でいきますと四百六十六条の六関係ということになります。
 これは、我々の業務で見ますと、主に不動産登記あるいは債権譲渡の登記に関連する事項でございます。
 法案につきましては、将来債権の譲渡の有効性を認めているこれまでの判例法理を明文化したものと言え、これによって資金調達等の要請から将来債権の譲渡は活発化する可能性があるというふうにまず評価をするものであります。
 この将来債権の譲渡の典型例ということで、不動産で絡めますと典型例というのは賃貸物件における賃貸人の将来の賃借人に対する賃料債権というものがございます。例えば、こうした賃貸物件の将来債権たる賃料債権につき債権譲渡がされた後に、当該賃貸物件につき売買が行われ所有者が交代したと、こういう場合がありますが、この場合、その賃料は将来債権の譲受人に帰属するのか、それとも新しい所有者に帰属するのかにつき、混乱が生じるケースというのが想定をされます。
 譲渡制限特約については今般の四百六十六条の六の第三項で一定の手当てがされておるんですが、将来債権譲渡と不動産の所有権の過程、どちらの方が優先するのかについては様々な考えがあるところでありまして、法制審の中でも様々な議論が交わされているところですが、結局、統一的な見解もなかなかないということで解釈に委ねられているということになりますので、今申し上げたような、どっちに払ったらいいんだと、こういうような混乱が発生する懸念がございますと。これが一点目の点でございます。
 それから、続きまして二点目ということですが、二点目は、新民法の法案の五百九条関係ということで、不法行為等により生じた債権を受働債権とする相殺の禁止に関する規定でございます。
 こちらにつきましては、配付されている民法の一部を改正する法律案の説明資料等でも言及されている点なのですが、ちょっと別の観点から一点申し上げたいと思います。これは、具体的にどういった事件が典型例かといいますと、物損交通事故の損害賠償請求事件というので考えますと、次のような事態が生じるのではないかというふうに考えております。
 シンプルな例で申し上げますと、例えばAとB、XとYについて物損交通事故が発生したと。この事故によって、Xの自動車もYの自動車も修理代等でそれぞれ百万円ずつの損害が発生しましたと。過失割合については、Xが二、Yが八、こんなような割合ですと。よくあるような話です。
 この前提で、示談が成立する場合は、実務上、今更ここで申し上げることでもないのですが、Xの視点に立ってみると、自分の方が請求する修理代、いわゆる自働債権の方については、百万円のうちの八割を相手に請求する、つまり八十万円を請求しましょうと。そして、反対に、Yさんの方の車の修理をしなきゃならない。修理代については、過失割合は二ということになりますから二割だけ負担すればいい。ということは、二十万だけ払えばいいということになると、示談が成立すれば、実務的には、Xから見たら八十万円から二十万円を引いたトータル六十万円を、これをYがXに払うと。こういう形で処理をするというのが実務の流れでございます。
 ところが、現行法ですと、これ、示談がまとまらずに訴訟になった場合ですが、相手方の修理費の請求というのは、御案内のとおり、これ、不法行為に基づく損害賠償請求権ということになりますので、現在の民法の五百九条では相殺が禁止されていると、こういうことになりますので、先ほどのように相殺の意思表示をXからYにするということはできないということになりますと、裁判のやり方としては、Xとしては自らの修理費用百万円を請求する訴えを提起し、仮にYが欠席したということになりますと、百万円の給付判決を得ることになりますと。ということになりますと、実はY側からXに対してする修理費の請求権については未解決の状態が続いてしまっている、何ともすっきりしない状態が続くという、こういうことでございます。
 その意味において、今回の法案につきましては、物損交通事故のこういった場合についても相殺を認めると、こういう改正でございますので、Xからすれば、以上のような事態を回避して一回性の解決を図ることができるものであり、その意味において本改正は意義があるというふうに言えます。
 しかし、これをYの方の視点に立ってみた場合どうかというところでございます。
 Yからすれば、欠席判決による不利益、この場合ですと、Xの損害を全額認めるということではなくて、Y自らに生じた損害も結果としてはこれ一部放棄をするという結果にもなるというふうにも言えます。
 欠席判決ということですから、Yには元々Xの訴え提起に対する応訴の機会があると言ってしまえば別にそこまでじゃないかということもあるのですが、実際、特に簡易裁判所の代理人が付かない本人訴訟のケースですと、結果として、どう対応したらいいのか分からないというときに結果として欠席判決になってしまったというようなケースですとか、まあ御病気ですとか、超高齢社会でございますので高齢者の方が十分に応訴できなかったという形もないことはないと思います。そのような場合に、今般のここの部分の改正というのは、もちろん一義的には大変意義があるものではあるとはいえ、反対側のYサイドから見た場合については若干のもしかしたら問題があるのかもしれないなというふうに考える次第です。
 以上が、具体的な本案に関するこちらの意見ということになります。
 最後ですが、三点目といたしまして、今回法案には盛り込まれなかった観点について意見を述べさせていただきます。具体的には、中小個人事業者を狙う契約トラブルに関する件でございます。
 まずもちまして、小規模事業者への支援の必要性という点については、特にこれは異論がないところだと思います。その上で、現状でございますが、極めて小規模な事業者も含む中小の個人事業者に対して、悪質な事業者が電話勧誘等の方法によって、事業の用に供するためとして不当にホームページの作成、節電器や電話機などにつきリース契約をさせたりローンを組ませた上で売買契約などを締結させるという事案が散見されるところでございます。
 こうした取引に関するトラブルにつきましては、特別法として特定商取引法ですとか消費者契約法あるいは割賦販売法などが存在するのですが、これらの法律ではその対象は消費者に限定しているとか、あるいは非営利性目的の取引当事者という、言わば抽象的な意味でのブルネラブル、脆弱な人を対象としているという作り込みになっていまして、事業に関連して契約をした個人事業者は原則としては対象とはならないと、こういう作り込みになってございます。
 このためですが、例えば個人事業者が事業に関連して契約をした場合、消費者契約法の規定では不当条項に該当し得る高額なキャンセル料特約が存在したとしても原則として当該特約に拘束されるということになりますし、また、個人事業者が事業に関連しまして個別クレジットを組んで商品を購入したところ、商品納入前に販売業者が倒産したというようなケースだと、非営利性の割賦販売であれば抗弁の接続規定に基づいてクレジット会社に対する支払を拒絶することができると、こういうふうに法律の規定はなってございますが、事業性で個人事業者の方が契約したという事案になってしまいますと、営利性があるゆえに割賦販売法の適用はないということになりますと、特段の事情がない限り、要は商品の給付を受けられないにもかかわらず当該事業者についてはクレジット会社に対する支払を拒絶することはできないと、このような結論になってしまうということでございます。
 現在の特商法等の特別法の枠組みが消費者や非営利性の取引を対象とする以上、これらの法律を受皿として今申し上げたような中小個人事業者等に対する取引被害への対応を図るということには一定の限界があるのかなというのが個人的な見解でございます。消費者、非営利性目的の取引当事者というこの抽象的な脆弱性のある、持つ人を対象とするというのは一見明確、妥当な区分にも見えますが、そもそもその脆弱性として考慮すべき要素というのが、非営利性ですとか消費者性に限ったものではないのではないかと、このように考える次第でございます。
 また、抗弁の接続につきましては、終局的には損失を誰が負担するのかということになると思いますが、当該取引が単に営利目的を持っていたということがゆえにこの事業者さんがクレジット会社等への支払を余儀なくされるというのは、ちょっとこれは余りにも酷ではないのかなというふうに考えます。そもそも私人間の契約は、消費者契約を含め、情報量や交渉力等の格差が存在する非対称性の認められる取引が少なくございません。その意味において、一般法たる民法において、当初提案で試みられたこともあったのかと思いますが、以上のような現状を踏まえた規律として何らかの対応、例えば抗弁の接続を民法に設ける等の規定というものなんかも考えることもできたのではないかと、このように思う次第でございます。
 私の御説明は以上とさせていただきます。ありがとうございました。
#89
○委員長(秋野公造君) ありがとうございました。
 以上で参考人の意見陳述は終わりました。
 これより参考人に対する質疑を行います。
 質疑のある方は順次御発言願います。
#90
○山下雄平君 自由民主党の山下雄平です。
 三人の先生には、本当に貴重なお時間を、すばらしいお話をお伺いできまして、ありがとうございます。
 私からはまず保証人について改めてお考えをお伺いしたいと思うんですけれども、鳥畑参考人からは先ほど詳しく個人保証について意見陳述がございました。第三者保証をやめること自体が中小企業のためにもなるんだというようなお考えの表明もありました。我々一般の個人が保証人になってしまって、その後の生活がもう立ち行かなくなるような事態はやはり避けなければならないと思いますし、民法が個人を保護するというのも非常に重要な役割だというふうにも考えます。
 一方で、やはりなかなかお金を借りづらい環境になってしまわないでくださいよというような不安の声もやはり我々の方にも聞こえてくるところではありますけれども、鳥畑参考人からはそういった考えの表明がありましたが、山田参考人と高須参考人にもお考えをお聞かせいただきたいんですけれども、安易な個人保証の抑制という点と資金調達の支障がないような形にしていかなければいけないという、その二つのバランスについてどのようにお考えになっていらっしゃるでしょうか。
 山田参考人と高須参考人にお考えをお聞かせいただきたいと思いますが、まず山田参考人の方からお考えをよろしくお願いします。
#91
○参考人(山田茂樹君) 御質問いただき、ありがとうございます。
 保証に関してですが、まず全体的な評価といたしましては、従来の保証被害というものに関しては当方もいろいろ具体的な事件等で見ているところでございまして、今般の規定によって一定の保証契約を結ぶに当たっての慎重さが図られることになるであろうという点についてはまず評価をするところでございます。
 ただ、じゃこれでベストかどうかというところでございますが、こちら、私の個人の見解としては若干懸念をする点がございます。
 二点ほどございますが、まずその一点目は、いわゆる経営者等の定義のところでございますが、細かくいろいろと決められている中で、一緒に共に事業に従事する配偶者、言わば田舎でいう父ちゃん母ちゃん会社のお母ちゃんの方も経営者になると、こういう御配慮というところで、確かに地域の実態としてはそのような家族、何というんですかね、構成で法人事業をやられている方がいらっしゃるのは事実なんですが、果たしてそういった配偶者の方を経営者というふうにまずちょっと見ていいかどうかというところについては若干個人的には疑問がないわけではございません。
 それから、具体的な作り込みといたしまして、経営者以外の場合について公証人の方で事前にいわゆる保証意思宣明公正証書というものを作るという立て付けがございますが、条文上を見ますと、あくまでもそれを作って一か月以内に保証契約を結ぶという形で余り期間を空けないという形だと思うのですが、これは実務的な流れでいきますと、例えば、ある日に保証意見、保証の意思の宣明公正証書を作り、終わったらそのままその足で保証契約を結ぶということももちろん可能にしている作り込みだと思います。
 元々、実は保証人問題に関しては、いわゆる情義的保証のことも含めてですけれども、慎重にその保証人に本当になるということでいいかどうかという、ある意味慎重さを求めたいということなんだと思います。その意味において、公正証書をかませるということも確かにあるとは思うのですが、例えば、一回作りましたと、で、もう一回、例えば一日、日を置いてもう一回頭を冷静に冷やして、それでもやっぱり私はきちんと保証をするという意思に間違いはないと、そういうふうな形で保証意思について確固たる意思を持っていただく、それぐらいの慎重さが求められてもいいのかなというところがございまして、その意味において、ちょっとこういった規定ができたことによって、それはちょっと鳥畑参考人の意見に賛同するところではあるのですが、もしかすると実際に保証被害の方がこれによって解決するという方向にはいかない懸念というものも個人的にはございます。
 最後に、保証も含めてですが、元々やはり担保という観点でございまして、元々情義的保証人の、まあ末路と言ってはなんですが、結局、情義的保証人について、求償したからといって、じゃ、債権の回収が図れるかといったら、図れないケースというのが多いというところはもう御案内のところだと思います。
 その意味で、債権者におかれましても、本当に真の担保という意味については、もう少し、どういったものを取れば担保として有効に活用できるのかという辺りは、むしろそれを検討していただくということの方が健全な金融の方につながるのではないかなというふうに考えます。
 以上でございます。
#92
○参考人(高須順一君) 御質問ありがとうございます。
 この問題は、実は非常に法制審でも議論を重ねたところでございます。日本弁護士連合会としては、むしろ、今、鳥畑参考人からも御指摘があったように、第三者保証を原則禁止するという、そういう立て付けをすべきではないかと、こんなことも実は従前から主張していたところでございます。今日の私の参考資料の四のところの、通し番号の十三分の十でございますが、日弁連の意見書の中にも、個人保証につきましては将来的には第三者保証を無効とする制度を導入するのがあるべき姿なのであろうと、こういうような形で記載しておるところでございます。
 ただ、法制審の議論では、やはりここで、法案を作る、法案のたたき台となる、そういうものを作らせていただくという段階で、広範な意見をどこまで取り入れて社会的に認めていただけるような内容のものを提示できるかと、ここが非常に大きな問題になりました。やはり、商工会議所の方の御意見ですとか様々なところから、余り厳しい制限を掛けると貸してもらえなくなるのではないか、そうではないという場合もあるのかもしれないと思いつつも、やはりそういう心配があると言われますと、それを無視するのでしょうかと、こういう話になります。やはり、その意味で、法制審議会あるいは法案のたたき台を審議する場面としては、非常に先行するような形でまずこういうものにしていきましょうという議論はなかなか最後まで押し通すことはできないところだと思います。
 今日御指摘いただきましたように、ソフトローで金融機関その他が自らそういう形でやっていくという現状があり、そこに法律が追い付いていくというのもやむを得ない部分もあるのかもしれない、そんなふうに考えていた次第でございます。
 以上でございます。
#93
○山下雄平君 ちょっと同じ文脈で高須参考人にもう一点お聞かせいただきたいのは、約款についてなんですけれども、先ほどのお話の、一番最初の意見表明、意見陳述の中で、民法というのは民のための法律なんだと、なので国民のためにならなければならないというような視点のお考えの表明があったと思うんですけれども、一方で、民法というのは社会全般の経済活動についてを規定する規範なので、ルールを明確化して、約款だったりとか契約の内容を重視すべきだというような、それが経済の活性化にもつながるんだというような視点もあろうかというふうにも思います。
 一方で、私も法律の専門家でもありませんし、普通の人が普通の感覚で判断するようなことをやっぱり重視しよう、信義則を重視すべきだというような考えもあって、そのバランスなんかも非常に難しいんだと思いますけれども、改正案の規定について、そのバランスについてどのように評価されているのか、お考えをお聞かせください。
#94
○参考人(高須順一君) 御質問ありがとうございます。
 結局、法案のたたき台を検討する際には、私が先ほど民という言葉を言わせていただいたように、今の日本社会で活動している、生きている我々みんなが、その全ての者が納得し得るようなものでなければならないのだろうと。民といいましても、私どもも民の一人として経済活動も行っております。昼間は一生懸命働いて、夜は少し休ませていただくと、こういうようなものが本来の民であり、経済活動と我々庶民の活動というのは別に矛盾しているわけではないのだろうと。そうすると、その接点を見出すという作業というのは、やはり社会的に極端な弊害のような状況が生まれたところをどうやって補っていくのか、こういう視点ではないか。
 そうなると、現在、約款につきましては、何せ百二十年前に作られた法律でございますので、約款のヤの字も入っていない、これをともかく明文化することが大事なのだろう。その中で、不当条項とか不意打ち条項というのが、消費者契約法をお作りいただいたときのその努力などがありまして、先行的にそういう条項の必要性なんというものが言われておりましたので、何とかそれを実現させましょうと。そういったところで、入れてまいりましょうということで今回の改正になったと思っております。信義則の重要性、もちろん大事だと思うのですが、その条文を一つずつ置いていくというのがなかなか難しい作業でございまして、幾つかのところではそれを含んだ趣旨の改正になったと思っておりますが、信義則の規定自体は既に今の民法は持っておりますから、これをきちんと適用していくことではないかと思っております。
 以上でございます。
#95
○山下雄平君 同じ点について、約款との、その信義則の関係について、鳥畑参考人についてはどのようにお考えでしょうか。
#96
○参考人(鳥畑与一君) 約款についてはちょっと素人ですので、今日はお答えする能力はないということで、御勘弁いただければと思います。
#97
○山下雄平君 分かりました。
 では、質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。
#98
○真山勇一君 民進党・新緑風会の真山勇一です。
 三人の参考人の皆さん、本当に急な参考人のお願いということで御迷惑をお掛けしたのではないかというふうに思いますが、今日はありがとうございました。
 私は、まずお三人にそれぞれお伺いしたいというふうに思いますが、まず高須参考人からお話を伺いたいというふうに思います。
 私も法律の専門家ではないので、今回のこの民法の改正というのは、やはり消費者の立場から見て、自分がその立場に置かれていたらどうなんだろうか、こういう知識があるのだろうか、これで大丈夫なんだろうか、不安はないんだろうかと、いろんなことを考えると思うんですよね。そういう観点から話をお伺いしたいというふうに思っておりまして、今、参考人の、民に寄り添う改革、改正であるということを評価すると聞いて、確かにやはりそれが大事じゃないかなというふうに思っております。
 ただ、その一方で、やはり基本的に民法というのは基になる法律ということで、公平だったり公正なルールという、つまりどっちが強くてどっちが弱いということじゃなくて、お互いに契約だよという面もあると思うんですね。そうすると、そうした面からやはり見ていきますと、今回百二十年ぶりの改正ということで、しかも多岐にわたっています、債権の中の。
 私が思うのは、やっぱり民法のこの改正部分だけじゃなかなか、きっとうまく運用できないこともあるのではないか。例えば、消費者保護法とかあるいは公証人法とかいろいろあるわけですね。二百ぐらい今回変えられた項目があるということなんですが、参考人御自身で、この中で、民法改正に伴って、この法案、法令についてはやはり今後もう少し中身きちっと詰めた方がいいんじゃないかという、改正をした方がいいという法令があるのかどうかということが一点と、それから、これだけ大幅な改正ですから、消費者に、あるいはその利用者に周知をさせるということがとても大変だと思うんですね。周知をさせるためのいいアイデア、方法というのを何か専門家として考えておられるかどうか、お伺いしたいと思います。
#99
○参考人(高須順一君) 御質問ありがとうございます。大変難しい御質問をいただいたと思っております。
 まず一つには、民法には公正公平なルールなるものがそもそもありますよね。民法が本来想定してきた契約当事者というのは、対等な立場で公平なルールの下に契約をするという、そういう姿を思い描いてこの法律はそもそもできておりますよねということだと思います。
 今回その中で、今日御質問いただいたように、消費者という概念が二十一世紀に入ってだんだんと大きなものとなってきて、この消費者ということについての保護といいますか、保護というよりは、社会の大部分の人が消費者ですから、むしろあるべき権利はどういうものなのでしょうかという観点だと思うのですが、そういうことを意識した民法も考えねばならない。その観点で、今回の個人保証とか定型約款の問題なども、その一環としての改正にはなったとは思います。
 ただ、前提としては、今委員から御指摘があったとおり、公正公平なルールを旨とする民法の中での改正でございますので、さらにここでは消費者契約法のより充実でありますとか、実は消費者契約法と常に言っておりますが、もっともっと消費者に関する法律はなければならないのかもしれません。消費者契約の場面だけではない、消費者関連法案というのがもっと必要なのかもしれない。全体としての消費法典のようなものですね。こういったものを本来の民法と併せて、消費者の民法というのも変かもしれませんが、そういったものも含めた体系的な私法体系、これが必要ではないかと思っております。
 そういう意味で、より充実した規定が更に必要になる法案としては、今回の民法の改正を手掛かりに、消費者法についても更に充実したものが必要になるのではないかしら、返す刀で商法も大事ですよねと。商法につきましても、民法をいじればやっぱり改正することが間々出てまいりますので、そんなふうに思っております。
 最後の周知の問題でございますが、私もこの問題を十年ぐらい取り組ませていただいておりますが、なかなかうまくまいりません。余りにも、逆に言えば民法というのは日常生活に親しまれている法律なものだから、何となく目新しさがなくて、何となく変わっていくのかしらぐらいのイメージを持っておられるのかもしれません。
 ですから、やはりここは、もう法律に関わる者が、その関わる者というのは、もう立法の段階の先生方にしても、あるいは解釈に関わらせていただく研究者の先生方にしても、それから使わせていただいている、裁判で使っておる我々のような実務家にしても、みんなが一環となってこの民法の重要性なるものを訴えていくしかないのかしらと。何の答えにもなっていないかもしれませんが、そのように思っておる次第でございます。
 以上でございます。
#100
○真山勇一君 ありがとうございました。
 続いて、鳥畑参考人にお伺いしたいと思います。個人保証のことをお伺いしたいと思うんですね。
 参考人は、中小零細企業の発展のためにはやっぱりこの個人保証というのは問題、特に第三者保証、これは原則禁止すべきだ、とても熱い御意見だったと思います。
 それで、私もやはりそのとおりだというふうに思うんですね。経営と家計の分離とか、それから、いろんな理由はあるでしょうけれども、やっぱり夫婦といえども人格は別だと私は思っているんですね。ですから、こういうものを残すということは、やはり何か民法の古いものをそのまま残してしまうという形になってしまうんじゃないか、そういうふうにやっぱり考えている方も多いと思うし、実際にそういう目に遭った方というのはここを何とかしてほしいという思いがあったんじゃないかというふうに思うんですけれども、なぜそれにもかかわらずここが残されてしまったのかということを鳥畑参考人御自身の考えでちょっとお伺いしたいということと、これを解決するための何か対策というのはあるでしょうか。よく言われているのは、貸し渋りがあるから駄目なんだと、だからここを残しておくというようなことを言っておりますけれども、逆に、じゃ、貸し渋りが起きないような、金融の専門家の参考人としてはどんなことならばこの解決策があるかということをお伺いしたいと思います。
#101
○参考人(鳥畑与一君) 御質問ありがとうございます。
 個人保証が信用補完として役割を果たすのは中小企業に特有の問題だと思うわけです。資料でも、企業規模に応じて、二十人以下になりますとやっぱり八〇%を超える個人保証に依存をするということになっていると思うんですね。
 その個人保証から脱却していくというときに、経営者保証ガイドラインに対応できる中小企業とできない中小企業というのがあると思うんですね。経営者保証ガイドラインのQアンドA等の事例でもそうですけれども、やはりかなりの規模が、中小企業の中でも規模があって将来性があるというような部分だと思うんです。
 それに対して、そういう対応できないとりわけ小規模企業、この小規模企業については、小規模企業憲章というものができまして、白書等でも、単なる成長だけではなくてその継続、地域を支え続けるということの役割に注目をして支援をするという方向に転換をしてきていると思うんですね。
 とりわけ小規模企業の金融において個人保証というのが非常に重要な役割を果たしているのは論をまたないんですが、やはり経営者保証であれば経営者自身が事業内容について熟知していると。ただ、第三者については、先ほども述べましたように、必ずしも事業内容について熟知するわけでもないし経済的、合理的に行動できるわけでもないということで、非常に問題が大きいということで、ここの是正が焦点になってきたわけだと思うんですね。
 ただ、これがなぜ原則禁止まで踏み込めなかったのか。衆議院までの質疑を拝見している限り、その根拠がやはり薄弱、もうエンジェル投資というニーズがあるであるとか、中小企業家団体が強く言っていると。といっても、それは一つの中小企業家団体が繰り返し言っているだけであるということですね。
 私は、個人保証に脱却していく方向としては、先ほどちょっと説明しませんでしたけれども、制度保証というものがあると思うんですね。いわゆる小規模事業主、規模の小さい中小企業ほど信用保証を付けて融資を入れると、依存しているわけですね。
 ただ、ここが今、一〇〇%保証から八〇%保証、責任共有制度という形で進んでいるわけですね。そうすると、金融機関から見れば、一〇〇%保証じゃなくて八〇%保証で切り下がった部分の信用補完をどうするかということになっていくと思うんです。だから、そういった意味では、個人保証から脱却した金融というのは制度保証の充実と併せて進めていく必要があるのじゃないかというふうに考えております。
#102
○真山勇一君 ありがとうございました。
 それでは、最後に山田参考人にお伺いしたいと思います。
 山田参考人の方から、余り取り上げられない問題を取り上げましょうという提案があってお話を伺ったんですが、私のお聞きしたいのは、山田参考人が取り上げなかったことについてちょっとお伺いしたいんです。それは、御自身の司法書士という立場でのことをちょっとお伺いしたいというふうに思うんです。
 今回の改正の中で、公証人制度のところの改正というのはとても大きいわけです。第三者保証の件です。ただ、司法書士の資格を持っていらっしゃる方は公証人になる資格も同時にあるわけですけれども、現在、伺ったところによると、四百九十六人いる公証人のうち、もうほとんどが裁判所とか検察官とか法務省の関係のOBの方、こういう方が多いというふうに伺っているんですね。いわゆる民間出身という言い方をしていいかもしれませんが、そういう方が、司法書士の方だけが三人いらっしゃるというふうに伺っているんですね。
 とてもこのバランスがちょっと私には不思議なので、その辺りをちょっと山田参考人に伺いたいんですが、資格があるけれども、何でこんなに司法書士から例えば公証人になる人が少ないのかなということですね。もっと人数的に言えば多くてもおかしくないというのが、なぜこうなのかということと、それから、その辺りは選任のプロセスに何か問題を感じておられるのかどうか、あるいは司法書士にとって公証人という仕事は余り魅力がないのかなとか、いろいろ考えるので、その辺を、実際の御経験とそれから御自身の考えを交えてでも結構です、お話を伺えればと思います。
#103
○参考人(山田茂樹君) 御質問ありがとうございます。
 まず、公証人自体の試験、いろいろ試験ですとかになりますが、公証人の職務自体につきましては、まず今回の第三者保証の件も含めまして大変極めて重要でございまして、個人的な見解としては大変やりがいもある仕事である、これはもう言うまでもないところだと思います。
 ただ、人数についてですが、これは、ある意味、司法書士が手を挙げれば、じゃ、あなたはいつから公証人になれますよという制度ではなくて、民間から必要に応じて、試験を受けるんだと思いましたけれども、一定のそういったものを受けた上で選抜されると、こういう形なものですから、その意味で、試験の行われるタイミングとかも、普通の例えば国家試験のように毎年一回とかというタイミングでもない点もあって、事務所とかを経営している段階で、じゃ、公証人の試験を受けてみようかということには、業界の個々の会員の考えはそれぞれあると思うんですが、なかなかその辺がただうまく合致をしていないだけということではないかなというふうに個人的には見ております。
 以上です。
#104
○真山勇一君 済みません、じゃ、ちょっと追加で。
 そうすると、少ないということは、やはり希望者が少ないとか、何か公証人の資格を取るのは難しいとか、そういうことだけなんでしょうか。何かそれにしても、大事な、今おっしゃったような重要な仕事だけれども、ちょっとやる人が少ないということが気に掛かるんですが、いかがでしょう。
#105
○参考人(山田茂樹君) なかなか公証人制度自体という大きな問題になってくるものですから、もう個人的な希望というかあれになりますが、機会自体が多く与えられるという、もしそういう制度設計に変わってくるということであれば、もちろん是非公証人という職務に就いてやってみたいという司法書士というのは、少なからずそれは存在するのかなというふうには思っております。これは、私自身もそのような考えも個人的にはないわけではございません。
 以上です。
#106
○真山勇一君 ありがとうございました。終わります。
#107
○佐々木さやか君 公明党の佐々木さやかです。今日は、参考人の先生方、ありがとうございます。
 早速ですが、まず保証に関して、高須参考人と鳥畑参考人にお聞きをしたいと思います。
 情報提供義務についてなんですけれども、保証人保護については、保証意思宣明公正証書の制度の創設など、今回大きな改正がなされております。その中に、情報提供義務の明文化というものもあるわけでございます。契約時と、それから債務の履行がいまだ完了していない段階、その後の段階と、それから期限の利益が喪失された段階ということで、それぞれ主たる債務者、また債権者からの情報提供義務というものが記載をされております。
 この制度の、この義務の明文化について、それぞれお二人の参考人から、評価ですとか意義というところと、それから、にもかかわらず課題とか、実際の運用で今後どのようになされていくというふうに思っていらっしゃるかとか、そういった点について、それぞれ、高須参考人、鳥畑参考人の順にお考えをお聞かせいただけますでしょうか。
#108
○参考人(高須順一君) 御質問ありがとうございます。
 まず、意義の方から申し上げさせていただけるとすれば、保証契約も伝統的には相対の、つまり対等な、保証人になる人と保証を受ける人というか、要するにいざというときは保証で請求しますよという立場との間の契約関係とされております。伝統的な契約関係、観点で考えると、それはもうお互いの間の自分の判断でやるんだと、保証人になる人は保証人になる人が自分のリスクで本来引き受けるべきものですよというのが伝統的な恐らく契約観だったと思います。
 ところが、御承知のとおりでございまして、保証ということについていろんな問題が起きる、社会的にも悲劇がたくさん起きているという状況下で、今回の改正では、相対の取引というような発想ではなくて、やはり保証人はならざるを得ない立場にあるんだと、ならざるを得ない立場の人にはきちんと情報を示して、それで、できる限り適正な判断の下に、できることであればなるかならないかの判断をしていただきましょうと。先ほど鳥畑参考人の御説明にもありましたように、そこにただ情義性とか軽率性とかが入ってまいりますのでなかなかそうはいかないという現状があるのですが、せめて軽率性のところに関してだけでも、十分な情報提供義務を課すことによって、ちょっと待てよと、こういう思いが生じるという、そういうところに期待できるような立法にせねばならないのではないか、そういうことで今回、契約締結時の情報提供義務というのが非常に詳細な規定として入ったということでございます。その意味では意義のあることだと思っております。
 問題点はしかしそれでもたくさんございまして、やはり幾ら情報提供したところで義理人情で保証する人はいるのではないでしょうかと言われれば、そうかもしれないなという部分がございます。したがって、情報提供義務だけでどこまで救えるかということについては余り楽観的なことを言ってはいけないのだろう、ここは法律に携わる者はこの規定の運用をしっかりしていかなければならないのだろうと思っております。
 それと、もう一点でございますが、とりわけ契約成立時の情報提供義務の難しいところは、保証契約自体は債権者と保証人の間でやります。ところが、情報提供をするのは、保証を頼もうとする主たる債務を負っている債務者、簡単に言えば、銀行がある人にお金を貸しますというときに、保証人になってくれって頼むのはお金を借りた人なわけですね。だけど、その保証契約の債権者は銀行になります。そういう意味で一種の三人関係者が出てくるわけですが、提供義務はその債務者が本来説明をして、それに例えばお金を貸した人がどこまで関わっていたら取消しができるかというような立て付けになっております。これはなかなかやむを得ない立て付けではあるのですが、そうなるとそう簡単に情報提供義務違反の取消しが認めるわけではないという可能性がございますので、この辺りの規律の趣旨に従った運用、つまりそこは厳しく見ていきますよということが今後必要になるのではないかと思っております。
 以上です。
#109
○参考人(鳥畑与一君) 御質問ありがとうございます。
 第三者保証において、公正証書作成で意思を確認するというときの前提が、やはり第三者保証が正確な情報に基づいて、自ら負うリスクを正確に判断をするということが欠かせないかなと思うんですね。この点について、今回の法案では、当初債権者に保証人に対する説明義務を負わせる立て付けであったものが、途中で、今御説明がありましたように、主たる債務者が保証人に対して説明する義務を負うという形に変わったというふうに伺っております。ところが、例えば金融庁の監督指針におきましては、経営者以外への第三者保証があった場合、保証人の要請があれば銀行、つまり債権者自身が説明する義務を負うような立て付けになっているわけです。
 だから、そういった意味では、今回の法案というのは、金融庁が監督指針等で進めている金融実務の在り方から比較しても、ちょっと後退するような方向に行っている。で、実質的に保証人が正確な情報を入手することを非常に困難にしているんじゃないかというふうに考えている次第であります。
 以上です。
#110
○佐々木さやか君 ありがとうございました。
 次に、消滅時効について、これも高須参考人と、あとこれは山田参考人にもお聞きしたいと思います。
 消滅時効の改正の中に、完成猶予事由として協議というものが入りました。協議の合意がなされた場合に完成猶予されるということでございます。これも新しい制度でありまして、当事者間で話合いによって紛争を解決をしていこうという方向に進む制度ではないかなと思っております。
 例えばADRの推進といったこととも関係してくると思いますけれども、この協議の合意については、制度が新設されることについてのこれも評価と、それから、それぞれ実務家のお立場から今後どのように実務で活用されていくのか、協議の合意というのは具体的にはどういうものをいうのかとかですね、仮に争いになった場合には今後の裁判例の蓄積を待たなければいけないかもしれませんけれども、実務的な観点から、問題提起ですとかお考えがありましたら聞かせていただければと思います。
#111
○参考人(高須順一君) 御質問ありがとうございます。
 今御指摘いただきましたように、協議を行うことによって時効の完成が猶予される、これは今回の改正で新しく取り入れた、時効障害事由と言いますが、時効の完成を妨げる事由ということになります。
 従前、私ども弁護士がふだん日常的に経験していることでございますけれども、いわゆる示談交渉のようなものが長引くと、そうすると時効期間が迫ってきてしまうということがあり得るということでございます。今までの一般的な消滅時効十年ですと、そう十年も交渉はしないでしょうということだと思いますが、これが交通事故のような場合の不法行為債権ですと三年ということになりますから、三年も弁護士さんは交渉するんですかと言われるとまたお叱りを受けるかもしれませんけれども、ケースによってはないわけではない。もう少し行けば何とか示談でまとまりそうなのだけれどもというようなときに、もう時効が迫っております、取りあえず裁判を起こしてあとは裁判所で話し合いますかみたいなことをせざるを得ないという場面がございました。今回は、そういうことに対して協議による時効完成を止める、猶予するという制度を設けたというのは、比較的実務に即した改正がなされたのではないかなと思っております。その点では評価してよろしいのかなと。
 二つ目は、むしろこれは自戒にもなるわけですが、そうなりますと、協議で時効を止めるという選択をしたわけですから、それはもう真摯な協議をしなければなりませんよねと。何となくとか、話し合っているような話し合っていないようなというようなことでは許されないのだろう。したがって、この規定を作っていただくということがもし可能になりますれば、これに関わる者は、つまり協議をする者は真剣に協議するという多分姿勢が求められる。それがもしできないと、今回の改正は余り良くなかったんではないですかというお叱りを受けてしまうと思いますので、これからの責任ある運用が大事なんだろうと思っておる次第でございます。
 以上です。
#112
○参考人(山田茂樹君) 御質問ありがとうございます。
 協議による時効の完成猶予の点でございますが、実務家といたしましては、もちろん模索をしながらではございますが、積極的に活用をしていきたいと考えるものでございます。
 その理由についてですが、現行法でいきますと、その時効を気にすると、とにかく中断事由に当たるものを何か模索しようということで訴え提起をするですとか、一部でも債務を払ってくださいと言って承諾という形を取るとか、いろいろやっていくしかある意味ないということになります。
 ただ、今御質問もいただいたところでも出てきましたけれども、その紛争が全てばちばちでガチンコで対決するということばかりではなく、当事者間同士では、解決という志向については一致しているんだけれども数字の面が折り合わないですとか、多少の感情のもつれがあるけれども解決する志向は強いと、こういったケースというものも少なからずございます。
 そういった意味で、これからこういう場を設けて、とにかくそうやって前向きに解決するという方向を生かしていきましょうよという形の場を正式に法的に認めていただくと、こういう評価をしてございまして、そうであると、紛争当事者間が自発的に解決をしていこうと、こういうような形でシフトをしていくということも期待できますので、そのような意味で、この協議による時効の完成猶予につきましては研究しながら活用していきたいと思う次第でございます。
 以上でございます。
#113
○佐々木さやか君 以上で終わります。
 ありがとうございました。
#114
○仁比聡平君 日本共産党の仁比聡平でございます。
 今日は、三人の参考人の皆さん、本当に急な参考人のお招きということになったにもかかわらず、大変深い御意見をいただいておりまして、心から感謝を申し上げたいと思います。
 時間の制限がございますので、第三者保証と特に比例原則という問題についてお尋ねしたいと思うんですが、まず鳥畑参考人から御意見をいただきました。私も、担保、保証の依存からの脱却という中小企業金融の政策的な前進に対して、この改正案が、逆に二、三周遅れるということになるのではないか、逆方向への影響を与えてしまうのではないかという参考人の御意見、大変胸に刺さるところなんですけれども、その中で比例原則とは何かと、金融庁の新たな監督指針に関して参考人から御紹介がございました。私の方で読み上げますと、保証債務弁済の履行状況及び保証債務を負うに至った経過などその責任の度合いに留意して、保証人の生活実態を十分踏まえて判断される各保証人の履行状況に応じた合理的な負担方法とするなど、きめ細やかな対応を行う態勢になっているかというのがその監督の指針になっているということですよね。
 その実際の運用とか、あるいは現実に保証人が保証債務の履行を請求されたときに、その合理的な負担の範囲なり負担の仕方なりというのがどんなふうに行われているのかというような実務といいますか、あるいはこれからどうあるべきかというような先生の御認識などございましたらまず伺えればと思うんですが、いかがでしょうか。
#115
○参考人(鳥畑与一君) 御質問ありがとうございました。
 やはり、この比例原則に基づいた金融の現場の実際の運用というものは、この監督指針である意味追求されているんじゃないかなと思います。で、それを踏まえた経営者ガイドラインというものがありまして、根幹は、経営者の生活基盤までは奪わない、再チャレンジの可能性を奪わないということで、一定の財産を残す、必要に応じては、保証金額であるとか債権を減額をするというような形で対応するということになっているかなというふうに思うんですね。
 それで、今日お配りした資料のところで、図の九と図の十という形で記載させていただいておりますが、民間金融機関における経営者保証ガイドラインの活用実績というところのDというところがそれに当たるのじゃないかなと思いますが、保証金額を減額した件数というものが一定数、これが増加しつつあるというふうに伺っているわけです。
 以上です。
#116
○仁比聡平君 今、鳥畑参考人の資料で御紹介いただいた数字は、つまり、保証金額を減額した件数が、平成二十七年の十月から二十八年の三月の半年間で八千百七十七件、平成二十七年度の累計で一万五千八百九十六件と、こうした数字ということかと思います。
 今、金融行政や金融の実務の現場の実情としてその一端をお示しいただいた、その比例原則なり保証人の責任の限度ということについて高須参考人にお尋ねしたいと思うんですが、今日お配りいただいている資料で、日弁連の意見としても、この責任制限を設けるべきであるという課題が強く提起をされているわけですが、これまでの保証債務という考え方からすると、根保証のように極度額までその責任を負うんだというような大変ひどい考え方はあっても、主債務の範囲であるにもかかわらず保証債務の中身を、責任を限度付けるという考え方、これはなかなか難しかったと思うんですね。
 日弁連としてのこの比例原則の考え方や、あるいは責任を制限するという法技術といいますか、どんな立法論を提起を私たちは受け止めればよろしいでしょうか。
#117
○参考人(高須順一君) ありがとうございます。
 比例原則につきましては、フランスでは既に取り入れられているという御紹介がございます。したがって、やってやれないことはないのだろうと私どもは、私どもというのも変ですが、日弁連としてはそう思って、そういうことを参考にしながら、一定の想定される法案のたたき台のようなものを作らせていただいたような経緯もございます。
 その場合に、今委員御指摘のように、どこの限度で線を引くかと、絶対的な金額の問題なのか、それとも保証金額との割合の問題なのか、絶対的な問題だとした場合には、その絶対の割合の金額の線引きはどこでするのでしょうかと、非常に難しい問題をやはり抱えてしまうことになります。ただ、やってやれないことはないと思っておりますので、私どもはそう思っておるんですが、法制審ではなかなかその具体的なところまで皆さんと共通の理解を得ることはできなかったというふうに思います。
 強制執行のような場面まで行ってしまったようなときに、どこまで結局執行できない財産みたいなものを認めていいのかというような兼ね合いなどもございまして、幾らまでしか責任を負わなくていいという絶対的基準を作ってしまいますと、なかなか今度はそれ以上のところとの区別が付かなくなるというようなことも指摘されておって、やや、今の委員の御質問に対してなかなか明確な答えを言いづらいんですけど、確かにテクニックとしてはなかなか難しい問題はあるとは思いますが、ただ、繰り返しになりますが、やってやれないことはないと思っておりますので、立法の知恵、フランス法などを参考にしながらやったらよろしいのかしらなどと思っておるところでございます。
#118
○仁比聡平君 私、やってやれないことはもちろんないし、これをやらないと日本の経済、とりわけ地域経済の主役である特に中小企業の経営の安定というのが図れない、だから後継者も後を継いでいくのがなかなか難しいということになっているのではないかと、大きな日本の政治の課題なのだろうと思うんですね。
 そこで、ちょっと鳥畑参考人にもう一度なんですが、日弁連の、今日、高須参考人からいただいている資料での表現を私は紹介しますと、保証履行責任が顕在化したときの保証人の責任制限制度を新設することは、保証人の生活保護ないし再建のためのみならず、日本経済の中核を担う中小企業の活性化のためにも必要な改正検討項目であるということで、生活の全てを奪ったりすることはしてはならないということと、それから経済の活性化、中小企業の活性化のためにという観点がこの責任制限をすべきだという観点として提起をされているわけですけれども、金融庁などを始めとした今の金融実務というのもそうしたところも含めて行われているという理解でよろしいんでしょうか。
#119
○参考人(鳥畑与一君) 御質問ありがとうございます。
 ちょっと不勉強なため、実際、金融実務の中でどこまで広範にそういうことが行われているかどうかについてはお答えすることはできませんけれども、少なくとも経営者保証ガイドラインというものはそういった形での、要するに経営者保証を負っている経営者の再生可能性を高めるということで保護拡大を図っているわけです。
 それから、先ほど、御質問とはちょっと外れるかもしれませんが、絶対的水準が決めにくいから今回見送られたということなんですけれども、それは、それぞれの保証人の経済力、支払能力というのはそれぞれ違うわけですので、その支払能力に応じて何倍かというような形の決め方であれば極めて柔軟なやり方かなと。ということで、今日は中小企業家同友会の提案というものを一つ最後の方で紹介をさせていただいたわけですけれども、これはやっぱり是非、比例原則を導入することによって経営者の生活破綻に追い込まないような仕組みを是非つくるべきだというふうに考えている次第です。
#120
○仁比聡平君 先生に御紹介いただいた中小企業家同友会の提案というのは、繰り返しになりますが、保証債務履行の前二年間を平均した年間可処分所得の二倍に保有資産の価額を加えた額の限度までにするという考え方で柔軟な解決ができるのではないかということだと思うんですね。
 山田参考人に、司法書士の実務でも、それから会の活動でも、恐らく地域のそうした中小自営業の皆さんの言わば町中の法律相談家としていろんな相談に乗っておられると思うんですが、今私の申し上げてきた観点で、責任制限あるいは個人保証について何かお考えあれば聞かせていただきたいと思います。
#121
○参考人(山田茂樹君) 御質問ありがとうございます。
 経営者保証ガイドライン等もございまして、今、実務的に見ておりまして、いわゆる平時の、通常の我々司法書士の業務で言うところの登記を、例えば抵当権、担保設定とか、この場面について保証人の責任制限の問題等々が顕在化してくるということはまず余りございません。
 むしろ、破綻をした場面のところでございますが、まだ過渡的なところだと思うのですが、到底個人の資産的には返済不能なような保証額を負わざるを得ないというケースというのはまだ散見されるところかなというような感覚がございます。現時点での感覚としては以上ということになります。
#122
○仁比聡平君 ちょっとそこに関わって最後、配偶者の問題なんですけれども、今朝、午前中も山野目参考人も含めて、「主たる債務者が行う事業に現に従事している主たる債務者の配偶者」というこの規定が改正案に盛り込まれるのはいかがなものかという趣旨が皆さん恐らく共通しておられるんじゃないかと思うんですね、参考人の方々に。百二十年ぶりの改正といいながら、現に従事しているということで配偶者を全て、つまり共同に事業をやっているんだったらまた別として、この配偶者を入れるということはまさに前近代的なのではないかと私は思うんですが、三人の参考人、それぞれ端的にお答えいただけますか。
#123
○参考人(高須順一君) 御指摘いただいたとおりでございまして、私どもも法制審の中で非常に激しい議論をさせていただいたんですが、私どもとしても力及ばすの部分があったのではないかと思っておるところでございます。
 以上でございます。
#124
○参考人(鳥畑与一君) 御質問ありがとうございます。
 中小企業庁の通達ではそこも例外規定としているわけですけれども、やはり配偶者とはいえ個人として自立をしている、かつ事業に従事しているから配偶者の保証は当然であるというのは、ある意味経営と家計が一体化している中で、家族そのものといいますか、根こそぎ生存基盤を奪うような方向に持っていく、非常に問題のある仕組みじゃないかなというふうに考えております。
#125
○参考人(山田茂樹君) ありがとうございます。
 先ほども述べさせていただいたとおりでございまして、私もこちらについては妥当ではないというふうに考えてございます。
#126
○仁比聡平君 ありがとうございました。
#127
○東徹君 日本維新の会の東徹でございます。
 三人の参考人の先生方、今日はお忙しいところお越しいただきまして、本当にありがとうございます。
 では、質問をさせていただきますので、よろしくお願いをいたします。
 まず最初に、高須参考人にお伺いをさせていただきたいと思います。
 法制審議会でいろいろと議論されてきたけれども、なかなかそれが通らなかった部分というのがたくさんあったというふうにお聞きしているわけですけれども、もし今度また民法を改正する機会があれば、どことどことどこ、まあ三つぐらい挙げるとしたらどこを改正すべきというふうにお考えなのか、まずお聞きさせていただきたいと思います。
#128
○参考人(高須順一君) とっさに考えるのが難しい御質問をいただいたと思いますが、まずは、確かにまだまだこれから考えていかねばならない問題があるということはお話しさせていただきましたが、しかし、今回の改正で二百ほどの改正の案を、たたき台を作らせていただいております。その意味では、審議会だけでも五年有余の審議会を重ねたということのそれなりの結論は出ているのではないかと思っておる次第でございます。
 その上を踏まえて、今の委員からの御質問の、足りないところはどこでしょうかと、こういうところを今話しながら考えておるところでございますが、まず一つあるとすれば、先ほどの、前の発言とも少し絡みますが、やはり二十一世紀、今の現代の時代には消費者という問題は避けて通れない問題でございますから、民法と消費者との、消費者法典ですね、消費者契約法を前提とする消費者を保護するような法令、法案との兼ね合い、関係性、こういったものについて、もう少しそれがつながりが付くような多分規律が必要になるのではないか。今回の改正では、民法は民法、消費者契約法は消費者契約法として、今後も、その契約法の方の改正もまたそれはそれでしていただくというような形で、区別したままで行きましたけれども、今後、もしかするとその辺りをより連携性のある、そういう規定を設けていくということが必要になるのかもしれないと、このように思っております。
 それから、既に言われていることかもしれませんが、やはりこういう複雑化した世の中で明確な規律だけで判断することが難しい状況というのは間々ございますので、信義則とか公序良俗違反とか言われるような問題についてもう少し具体的に、こういう場合ならもうこれは信義則違反ですよねとか公序良俗違反ですよねというようなことの参考になるような規定がやはりあってもいいのではないか。暴利行為などというものについて、今回、明確な規定が設けることができなかったわけですが、その暴利行為なんというのももう既に判例法理としてはあってはならないことだよねということが認められているわけですから、そういうところも明確にできたらよろしいのかなというようなところ。
 それから三つ目、最後、三つとおっしゃられましたので宿題を果たそうと思いますが、やっぱり従来は売る買うとか、貸す借りるという契約を非常に典型的な契約と考えておったわけですが、現代社会ではサービス契約といいますか、古くさい言い方をすれば役務提供契約になるわけですが、このサービス契約ということが非常に重視される社会になっております。そうなりますと、今の民法がまだ必ずしも、今回の改正でも、サービス契約に関わる部分、雇用、請負、寄託、委任、この辺りの規定の改正は余り十分ではなかったのかもしれないな、社会の実情に応じてよりその辺も充実させなければならないのかな、こんなように思っておる次第でございます。
 以上でございます。
#129
○東徹君 ありがとうございました。
 もう私は暴利行為を是非これは改正すべきだなというふうに思っておりまして、入っていて良かったなと思いました。
 続きまして、鳥畑参考人にお伺いをさせていただきます。
 本当に、お話聞いておりましてすごく納得できる部分がありました。私も今回、先ほどお話がありました配偶者であったりとか、特に第三保証の例外規定のところでありますけれども、そしてまた中小企業とか零細企業とか、これはもう本当に企業といえども、取締役になっていたといえども、名前だけみたいな方もやっぱりたくさんおられると思っていまして、こういったものが例外規定に入っているというのはいかがなものかなというふうには思っております。
 そんなことで、本当に鳥畑参考人にはもうこれ以上聞くことがないのかなというふうに思ってはおるんですが、ちょっと一つだけお聞きしたいのは、公証人のところへ行くわけですけれども、公証人のところへ行って、何かどうなんだろうなと。ちゃんと例えば公証人の方が、あなた、こんなのだったらもう公正証書をやめた方がいいよとか、そういうことを言ってくれればいいとは思うんですけれども、実際どうなのかなというふうに思っておりまして、その点についてはいかがでしょうか。
#130
○参考人(鳥畑与一君) 御質問ありがとうございます。
 私もおいっ子の奨学金の保証人になっておりますが、やはり兄貴に頼まれて、はいはいということですね。じゃ、例えばそれが公正証書が必要だといった場合でも、やはりそういう身近な中では一々、じゃ、兄貴、おまえの所得幾らだとか、そんなのを示せとはやっぱり弟としては言えない。はいはいと言って、決意表明だけしてサインをするというようなことになっていくんじゃないかなというふうに思うんです。
 質疑の中で指摘されていましたように、そういう公正証書が同時に執行証書みたいな形が紛れ込むと悪用をされるということでありますから、運用次第によっては公正証書が逆に保証人の保護に逆行するような形になりかねない。そこの部分のやっぱり制度保証というものが今回の議論を伺っていてやっぱり不十分なままになっているなというふうに考えられます。
 以上です。
#131
○東徹君 ありがとうございます。
 山田参考人の方に、では、お伺いをさせていただきたいと思います。
 先ほど真山議員の方からも話がありました。司法書士さんで公証人になることもこれできるわけですけれども、まず、公証人の報酬というのは、これ出来高払というか、相談だけだったら結局収入にならないんですよね。公正証書を巻いて初めて、巻いてというのは何か大阪というか関西だけの言葉らしいんですけれども、公正証書を作成して初めて収入になるということだそうなんですね。だから、一定の給料保証というのは全くないんですよ。
 じゃ、どれぐらいの収入なのかなと聞いてもなかなかこれ分からないんですけれども、一定、例えば東京だったら、平均ですね、公正証書を例えば巻いたりとかして、作成したりとかして入ってくる収入が平均三百二十万ぐらいらしいんです、月ですね。ただ、そこからいろいろと雑費みたいなのが引かれますから、実際手元にはどれだけか分からないんですけれども。
 例えば、この三百万か二百五十万か、月ですよ、月に、だったら、これは職業として成り立つのかどうか、ちょっとお伺いしたいなと思うんですけれども。
#132
○参考人(山田茂樹君) 私が答えるものかどうか、ちょっとなかなか難しい問題ではありますが、経費がどれぐらい具体的に掛かるのかというところではございますが、諸経費からいって、公証人役場によって抱えている要は事務員さんの数とかいろいろあると思うのですが、どうなんですかね、二、三百というと、いわゆる普通の中小的な事業体ですと、二、三百だと経費引くと利益はとんとん出るかなぐらいの基準ではあるとは思います。
 以上です。
#133
○東徹君 ありがとうございます。
 五年間で司法書士さんが、公募で決めるんですけれども、公募に応募した方が二十一人おられるんですけれども、たった一人しか採用されなかったんですけれども、この現状についてはどのように思われますか。
#134
○参考人(山田茂樹君) ありがとうございます。
 これについても、先ほど来のほかの先生方の御質問にもございましたが、公証人の役目、職務自体が大変重要な役割であるということで、やりがいがある職業であるというふうには思っておりまして、そういった意味で、社会に貢献するという気持ちを持っている司法書士というのも少なからずおるわけでございまして、その意味では、人数的にそこはもし許容されるようであれば積極的に御活用いただきたいなというふうには思っております。
 以上でございます。
#135
○東徹君 ありがとうございます。
 なかなか司法書士さんには開かれていないのかなというふうにちょっと私も感じておりまして、ちょっとそういうことをお聞きしたんですけれども。
 もう一つは、今回、これ第三者保証で公正証書が必要なときには公証役場の方へ行くわけですけれども、そのことによって、今回の法改正によって公証人の方の案件が増えればこれ収入が増えることになるわけですけれども、それは公証人にとっては収入が増えるということになるんだろうと思うんですけれども、ただ、この今の制度だと、本当にこの方、相談、半分相談的に来られる方も中にはおられると思うんですよね、そこでやっぱりやめておこうかと、公正証書も作るのをやめておこうかとなったときには、これ公証人の方の収入にはならなくなっちゃうんですよね。だから、こういう制度というのはちょっとどうなのかなというふうに私は思うんですけれども、山田参考人、鳥畑参考人、どのように思われますでしょうか。
#136
○参考人(山田茂樹君) ありがとうございます。
 もちろんいわゆる完璧な営利事業体としてやっていくということになれば、当然ながら経営を考えながらということになりますので、言わば民間における給料は全額出来高制という形と同じですので、そうすると、どうしても契約を取りたい、仕事を取りたいという形にシフトするというのは人間としては当然の心理になると、これはもう否定ができないところだと思います。
 ただ、とはいえ、そこについては私は、個人的な見解では、公証人の職務とやはりそこの民間のいわゆる完全出来高制のところは大きく違うというところがございまして、少なくとも公証人が作る文書は公文書になるというところで法的にも大きな意味合いを持つものでございますので、そこの辺りは私は、少なからず現在実際に公証人をおやりになっている先生方におかれましては、じゃ、これはちょっと怪しいけれどもこれで利益上げたいから通しちゃえなんというようなスタンスはないという形だと思いますし、少なくとも現在公証人を希望される方の趣旨、意向ですかね、お気持ちとしてはむしろ社会的な意義でおやりになっているのかなというふうに考えますので、そのようなことはないのかなというふうに考えてございます。
#137
○東徹君 ありがとうございます。
 個人事業主なんですよね、公証人というのは。
 じゃ、鳥畑参考人。
#138
○参考人(鳥畑与一君) 御質問ありがとうございました。
 本来、公証人の場合、顧客の利益を優先して契約をする、作成するということが原則だろうと思いますが、この出来高制に伴います問題についてはいろんなやっぱり弊害というものが、例えばサブプライムローンというのがアメリカで大きな問題になりましたけれども、あのときはローンの金額に対して手数料を取る、できるだけ高い金額、高い金利で貸せばもうかるというような仕組みになっていました。それから、格付会社の場合もやはり契約ですね、ということで、できるだけ甘い格付を出すところに契約が行くと。
 今回の質疑の中でも、公証人で、要するにお客側が公証人を選べるんだ、ここの公証人がちょっと厳しかったらほかの公証人に行くというふうな議論もされていたわけですけれども、そういった形のケースでいえば、やはり公証人自身が収入を増やすために、何といいますか、非常に甘い形での公正証書作成ということに行きかねない、そういう危険性というのはやっぱりあるんじゃないかなというふうに思っております。
#139
○東徹君 時間になりましたので、これで終わります。ありがとうございました。
#140
○糸数慶子君 沖縄の風、糸数慶子です。
 参考人の皆様には示唆に富む貴重な御意見をいただきましたこと、心から感謝を申し上げます。
 午前中の参考人質疑でも伺いましたけれども、まず改正項目について高須参考人、山田参考人に伺います。
 今回の債権法改正では約二百項目が改正対象となっていますが、法制審議会民法部会で二〇一一年四月十二日に決定いたしました中間的な論点整理では五百以上の項目がありました。
 今回改正対象とならなかった項目について、改正対象とすべきであったと思われる項目はあるでしょうか、またどのように改正すべきとお考えでしょうか、お伺いいたします。各参考人にまずお伺いいたします。
#141
○参考人(高須順一君) 御質問ありがとうございます。
 御指摘のとおりでございまして、中間論点整理という段階まで、いろんな改正すべき項目かどうかということで議論を重ねてまいったときには、一応五百を超える項目がございました。それが、その後の改正の審議の中で二百項目ぐらいになっていった。その中には、もちろん改正の必要なしという結論になっていったというものもございます。ただ、全てがそうかというと決してそうではございませんで、結局、その改正の必要性を認めつつも、どういう方向で改正したらいいのか、具体的な改正の中身の問題で意見の一致を見ることができなかったというものも相当数ございます。
 その中で幾つか、もし私の今考えている、記憶している限りの中で御説明させていただけるとなると、一つは、先ほど消費者契約法との兼ね合いというところでも少し御説明させていただいたのですが、いわゆる悪徳商法みたいなものとの関係で、民法がどこまで頼りになる法律になるのかという観点があるのかと思います。
 現在、消費者契約法ですとかほかの法律によって救済の一定の規定が図られているわけですが、民法自体がしっかりしなければならないのではないか。従前ですと、錯誤とか詐欺とか、これに当たらないと、なかなか民法上、契約を無効にするとか取消しにするということができなかったわけですが、もう少しその辺りを民法の意思表示の規定のところで取り入れることはできないのか。詐欺とまでは言えなくても、やっぱりきちんとした説明を受けていないよねということで契約を無効にできるような制度、あるいは取消しできるような制度、これも実は途中まで議論したわけですが、そんなことを盛り込まれるようになればよりよろしいのかなと、一つ思っております。
 二つ目は、先ほども、むしろ委員の方からも出ておるのですが、暴利行為ですね。公序良俗規定のより具体化というようなこともあるところまでは議論したのですが、何が暴利行為なのかというところでの意見の一致を見ることがなかなかできない状況にございました。
 一つには、現時点で暴利行為の中身が分かっていないですよという意見。それから、更に言うと、将来的にどうなるかが分かりませんよという意見もございまして、例えば裁判規範として考える場合には、余り見切り発車で要件を立ててしまうと、かえって判例を作りにくくなりますというような議論もございまして、要するに煮詰まっていないということでやはり見送られたという経緯がございます。この辺りのところは更に議論を重ねて、本来であれば御提示できるような内容にできたらよかったのかなと思っております。
 以上でございます。
#142
○糸数慶子君 山田参考人、お願いいたします。
#143
○参考人(山田茂樹君) 御質問ありがとうございます。
 そうしますと、今回のその御検討、検討いただきたかった点につきまして、そうですね、三点ほど申し上げたいと思います。
 まず一点目ですが、民法ができた頃と比べて、まず大きな現代社会の違いというのは、やはり取引の複雑化、多様化、ある意味分業化ということでございます。すなわち、実際、表面上、一対一の契約のように見えても、実は複数当事者の複数の契約が絡み合って一つのサービスを形成しているとか、そのようなものが多々ございます。
 そのような意味で、当初の議論の中で、異なる当事者の複数契約について、一方で何かトラブルが発生した場合についてどうするのかということで、複数契約の無効ですとか複数契約の解除、あるいは先ほど最初の意見陳述の際に述べさせていただいた抗弁の接続規定等々、異なる当事者間の複数契約が存在するという現状を踏まえた対応というものが民法典の、民法の中にあるといいのではないかというふうにまず一点目は思ってございます。
 それから、二点目も、先ほどの意見陳述の際に申し上げた小規模事業者等の件でございますが、要は、その実際の一般の今の私たち、私人間の取引、社会というのはいろんな格差があるプレーヤーが存在するということになっていまして、じゃ、民法の中で、その格差ゆえに生じたトラブル等をどう解決できるのかという意味におきましては、最終的に、よく最後困ると信義則で、いろいろ信義則上、例えば情報提供義務があるとかいろいろやっていく中で、その信義則というものを用いてやっていくときにも、格差というものが存在するというところが一つのてこになるんですよというような解釈理念というんですかね、原則みたいなものが信義則の中にもし盛り込めるのであれば、それはそれでよかったのかなというふうに思っております。これが二点目でございます。
 最後、三点目ですが、高須先生の方の御意見とも重複しますが、実際、いわゆる悪質な契約トラブルを見ておりますと、だましていないし脅していない、だけど、ある意味正常な判断能力、判断することができない状況で何か契約をしてしまったというマインドコントロール的な事案ですとか、いわゆる恋人商法的なものというのはございます。その意味で、やっぱりそれが、意思形成がそこは健全であったかというと健全ではない、ある意味瑕疵ある意思表示ということになるわけでして、その意味においては、ある意味錯誤や詐欺、それから強迫ではないさらに別概念で、やはり意思形成に問題がある取引についても何らかの民事的な手当てというものも検討されてもよかったのではないかなというふうに思います。
 以上でございます。
#144
○糸数慶子君 鳥畑参考人にお伺いいたします。本法律案の提出理由の一つでありますが、国民一般に分かりやすいものとするということについてお伺いをしたいと思います。
 今回のこの改正によって民法が国民一般に分かりやすいものになったと言えるでしょうか。言えると思いますか。
#145
○参考人(鳥畑与一君) 御質問ありがとうございました。
 今回は非常に急な参考人質疑ということで、民法の法案、実は目を通す余裕、債務者保証の部分だけを中心に検討させていただいたわけですが、やはり分かりにくいわけですね。例えば、主債務者が返済できなくなった事実を保証人がどう知るか、それが同時に債権者が知り得る立場にないと駄目みたいな、そういう説明があると、これは私もよく分からないということで、以前に比べては分かりやすくなったのかもしれませんが、国民一般に分かりやすくなったかと言われると、やはりそれはまだ難しいままじゃないかなというのは率直な思いです。
 以上です。
#146
○糸数慶子君 山田参考人にお伺いいたします。
 消費者概念のこの民法典への導入について、法務省は、民法は私法の一般法であり、消費者の保護を目的とする規定は特別法である消費者契約法などによるべきであるというふうに言っております。消費者概念を民法に取り入れることはしなかったというふうに答弁しておりますが、消費者概念の民法典への導入について、山田参考人はどうお考えでしょうか。
#147
○参考人(山田茂樹君) 御質問ありがとうございます。
 日本の法律におきましては、特別法で、今現在、消費者契約につきまして、消費者につきましては消費者契約法という法律があるところでございまして、その意味において、消費者概念については少なからず、ある意味、消費者契約法という特別法だからこそ消費者保護に資するような改正等に踏み切れるという面に関しては私はメリットだと思っておりまして、消費者概念を民法典に取り込まなかったこと自体については、その意味では何か批判的に考えるところではございません。
 ただ、これは先ほど来申し上げていて、若干質問のもしかしたら回答からそれるのかもしれないのですが、いわゆる格差があるのは消費者と事業者という、そういうステレオタイプな事案だけではないですよというところからすると、そういう非対称性という概念というものは民法典の方で持ち込むということはあるのかなというふうに考えてございます。
 以上でございます。
#148
○糸数慶子君 引き続き山田参考人にお伺いいたします。
 法定利率ですが、この法定利率が五%から三%に引き下げられました。法務省は、預金金利ではなく貸出金利を参照すべきこと、そして遅延損害金が低くなり過ぎると債務不履行を助長しかねないこと、今まで百二十年間、五%で実務を行ってきたこととのバランス等の事情を考慮したということなんですが、これについてどう思われるかということ一点と、法定利率に変動制が導入されたことについても併せてお伺いしたいと思います。
 条文上の法定利率は三%のままであり、ここから変動したとしても、条文上は変動後の利率は分かりません。法務省は、変動後の利率を民法中に規定するのは困難であると答弁していますが、現在の利率が条文上明記されず、またどこで知ることができるかさえ規定されていないことは適当だと思われるでしょうか。併せて二点お伺いいたします。
#149
○参考人(山田茂樹君) 御質問ありがとうございます。
 まず、利率の妥当性につきましては見識を持ち合わせておりませんので、済みません、回答はちょっと留保させていただきます。
 そうすると、残りの二点ですが、変動制を取り入れることにつきましては、やはり実情等々ございまして、そこは私は、例えば頻繁に毎月変えるとかという話でなければ法的な安定性を損なうものでもありませんし、ある意味、実情に照らして妥当な結論になると思いますので、こちらは私としては賛成をしております。
 その利息の、利率の変動の方法の公示方法等ですが、これは、つまるところ、いわゆる公表、いかにして知らせるかというところかと思いますね。この辺りは様々な方法で、今現在、インターネットも含めて様々な媒体普及してございますので、こちらは努力でいろいろできるのかなというふうに考えてございます。
 以上でございます。
#150
○糸数慶子君 もう一点ですが、山田参考人に伺います。
 消滅時効についてですが、この時効の原則が今までの客観的起算点より不明確な主観的起算点となったことについて、法務省は大方の賛同が得られたというふうにしておりますが、問題はないでしょうか。
#151
○参考人(山田茂樹君) 御質問ありがとうございます。
 こちらについても、いろいろと検討したことはございますが、今回の主観的起算点を取り入れることについて、あと、期間の年数においても、こちらとしても特にこの五年という数字自体については何か問題であるというふうには考えてございません。
 以上です。
#152
○糸数慶子君 最後に、保証について鳥畑参考人に伺います。
 保証意思宣明公正証書を作成した後、そのまま執行認諾文言付公正証書が作成される可能性について、法務省は、現在でもこの問題の発生を防止する仕組みがあり、今回のこの改正によって更に問題が発生しにくくなると答弁しておりますが、実際に執行認諾文言付公正証書が作成される心配はないと考えてよいのでしょうか、お伺いいたします。
#153
○参考人(鳥畑与一君) 御質問ありがとうございました。
 ただ、それについて私、回答能力ございませんので、御勘弁いただければと思います。申し訳ございません。
#154
○糸数慶子君 それでは、高須参考人はいかがでしょうか。
#155
○参考人(高須順一君) 三十年弁護士をやらせていただいておりますので、その間いろんなことがありました。保証をめぐるやはりいろんなトラブルということも実際に担当させていただいたりしております。その意味で、今委員御指摘の心配が全くないのかと言われれば、そんなことはないのだろう、この問題は本当に腰を据えてしっかり見据えて考えていかねばならない問題だと思っております。
 ただ、今回の改正の中で一点、先ほど、最初の十五分いただいたときに御説明させていただいたのですが、今回の条文の趣旨は、熟慮する権利、よく考える権利を公証人との対話を通じて実現しようという趣旨でございますから、直後に、例えばそのまま本来の公正証書を作ってしまうということになると、果たして熟慮する機会がきちんと与えられたのだろうかと、こういう観点から新たに考えるという余地があるのではないか。そうすると、そこを一つの切り口として、今後、実務の問題として更に進めるような、今回の改正を更に進めるようなことが可能になってくるのではないか、まだ試み段階ではありますが、そんなことを考えていかねばならないのではないかと思っております。
 以上でございます。
#156
○糸数慶子君 ありがとうございました。終わります。
#157
○山口和之君 無所属の山口和之でございます。今日はありがとうございます。
 まず初めに、皆さんにお伺いしますが、今回の改正では、債権譲渡を活用した資金調達を容易にするためとの理由で、当事者間に債権の譲渡禁止の特約がある場合であっても債権譲渡の効力が妨げられないこととされるというふうにあるんですが、本当に債権譲渡を活用した資金調達が容易になるのか、また、どこから資金調達が期待できるのか、参考人の方々の意見をそれぞれ伺いたいと思います。
#158
○参考人(高須順一君) 御質問ありがとうございます。一弁護士には分かりかねない問題も含んでおるかと思います。
 実はおっしゃるとおりでございまして、譲渡禁止特約と従来呼ばれていたものを譲渡制限特約として、約束に反しても債権譲渡だけはできますよと申してみても、約束に反するわけですから、そんなことをしちゃいけないよねという話かもしれない。そうすると、今回の改正でどこまで言わば資金調達の可能性が出てくるのかというのは必ずしも明確ではないように私個人としては思っております。
 ただ、今回の改正で、そのことのみをもってここの改正を試みたのかというと、また少し視点が別な面もあるのかなと実は審議会の中では私は思っておりまして、やっぱり相対の契約で譲渡をしてはなりませんよと言ってみても、第三者にどこまでそれを押し付けることができるのかと、債権の譲受人自体は譲渡禁止の特約自体には何の関わりもないわけですから。
 その意味で、従来の判例法理の中でも、知らなかった人間にはしようがないよねとか、こういう扱いをしてきたところでございますので、法律論全体の流れの中で、この譲渡禁止特約だけが当事者間の合意なのに第三者に対してもかなり強い効力を持っているということについて見直すと、これが何がしかの関係で資金調達との関係でプラスになれば、そこは、先ほど申しましたように、確固たる定見はないのですけれども、それはなればなるにこしたことはないのではないか、そのようなところでなかったかと思っております。
 以上でございます。
#159
○参考人(鳥畑与一君) 御質問ありがとうございました。
 申し訳ない状態が続くんですが、今回時間がございませんでして、個人保証の問題に限定して準備してきた関係上、ちょっと答える能力ございませんので、よろしくお願いいたします。
#160
○参考人(山田茂樹君) 御質問ありがとうございます。
 必ずしもこの大きな譲渡禁止債権の、債権譲渡に関する実務に関わっている者ではないものですから、あくまでも全体から見た感想ということになりますが、一方で、今までの融資に関して担保としては不動産を担保に取るというのが古くから行われてきているところでありまして、ただ、いろいろ今不動産の担保の評価が難しくなってきているという現在の中で、別の担保として何があるのかというと、これはやはり債権というものは重要だというふうに考えています。
 その意味で、その担保、今回の改正というのが担保の多様性というところには資するところはあるというふうに考えておりまして、その意味では活用されていくという要請もあったかと思いますが、その意味では非常にこれは改正としては今後期待されるものではないかなというふうに考えております。
 以上でございます。
#161
○山口和之君 ありがとうございます。
 あと、何度か関連で出てきておるんですけれども、これも三人の参考人の方にお伺いしますが、事業用の貸金債務の保証については第三者保証を禁止すべきだという意見、先ほどからずっと出ていると思うんですが、経営者保証も含め個人保証全般を禁止すべきだという意見などもあります。経済的破綻の原因となっているだけではなくて、自殺の原因や再チャレンジの阻害の要因ともなっているという実情を踏まえれば、第三者保証はもちろん、経営者保証についても制限していくことが望ましいと考えるのですが、参考人の方々の意見をそれぞれお伺いしたいと思います。
#162
○参考人(高須順一君) 御質問ありがとうございます。
 大変重要な御示唆をいただいたんだろうと思っております。本来であれば、やはり保証というものがどこまで、それも人的保証というのは非常に危険な制度でございますから、どこまでこの二十一世紀の社会で必要とされるのかということを考えねばならないと思います。ただ一方で、長い歴史の中で保証ということが現に行われてまいりました。それを今回の改正でまさに断ち切ることができるのかとなると、少なくとも法律で一刀両断にそこまですることの判断は難しいのではないか。法制審はもちろんたたき台を検討する場でございますから、最終的には法律を作っていただく国会の先生方の御判断なわけですけれども、私どもの非力な了見ではなかなかそこまでは踏み切れないのではないかというのが現状でございました。
 ただ、長い目で見ていけば、本当は保証に頼らない社会ということを実現していかねばならない、これは大事なことなんだと私も思っております。
 以上でございます。
#163
○参考人(鳥畑与一君) 御質問ありがとうございました。
 企業にもいろんな企業がありまして、いわゆるマーケットベースでの借入金利では資金調達ができない、そういったいわゆる信用力の低い企業に対してどういうふうに資金を提供するか、これについては例えば協同組織金融という形での円滑化の方法もあったわけです。もう一つは、こういう個人保証といいますか、保証によって信用補完をすると。こういう形で、どうしても物的担保が乏しい、信用力が乏しい中小企業、とりわけ小規模企業に対して必要な資金を供給するかということは重要であると。そういった意味で、私は個人保証の中でも経営者保証については一定のやっぱり役割はあるだろうと思っております。
 ただ、繰り返し言いますけれども、第三者保証については、事業に関わっていない場合については事業内容も分からないわけですから、自己責任の取りようのない債務を負わされるということはやっぱり前近代的な、経済的な合理性がない部分であろうかなというふうに思っております。
 あわせて、個人保証を減らしていく中で、制度保証というものをやっぱり充実させていく必要があるかなというふうに考えております。
 以上です。
#164
○参考人(山田茂樹君) 御質問ありがとうございます。
 恐らく今回の改正法案につきましては、一方ではやはり資金需要の関係でこの保証制度自体の禁止までは困るという部分と、ある意味、度々いろいろな問題提起がされていますが、保証による自殺等を含めた深刻な被害の防止というところのバランスをどう取っていくのかというところだったのだと思います。その意味で、先ほど来意見を陳述させていただいておりますが、今回の改正がベストであるというふうには思っておりませんが、しかしながら、保証人を取るという現場での需要にも一定程度応えつつ被害の防止にも資するという意味では、その第一歩を踏み出したというふうに評価をさせていただいているところでございます。
 ただ、今後は、とはいえ、度々ありますが、終局的にはやはり個人保証ではない形で資金需要回っていくのがよろしいのかなというふうにも考えているところであり、こうした改正を機に、同時並行にはなると思うんですが、別の担保の方法辺りも研究をされていくということを期待する次第でございます。
 以上でございます。
#165
○山口和之君 ありがとうございます。
 最後になりますが、今回の民法改正では、社会経済の変化への対応を図ること、それから民法を国民一般に分かりやすいものにすることを目的としているということで、この二つの目的を達成するために現在の法案では不十分な点、今後対応が必要な点はないか、先ほど来出てきておりますので、再度強調したいところ、また言い残したところ、それから今回のプレゼンの中にないことでも何でも結構ですので、言いたいことを言っていただければと思います。時間が五十分までです。よろしくお願いします。
#166
○参考人(高須順一君) 御発言の機会を与えていただいて、ありがとうございます。五十分までだそうでございますから。いっぱい実はあります。やっぱり民法というのは本来の、私法の一般法と言ってしまえば簡単ですけど、私どもの本当に日常生活に関わる部分であって、これをいいものにしていくということは、先ほど申しましたように、やっぱり不断の努力で続けていかなければならない。
 そうすると、今の社会がどういうものなのかということをよく見据えて、その社会に応じた法律を作っていくという努力をみんながやらねばならないのだろう。消費者契約についてもやっぱり大事ですよねとか、先ほどのサービス契約という問題についても余りにも今民法の規定は少な過ぎやしませんかとか、そういうところがたくさんございまして、まずはこの社会がどういうものなのかをよく見据えて、私どもも勉強していきたいと思っておる次第でございます。
 ありがとうございます。
#167
○参考人(鳥畑与一君) 御質問ありがとうございました。
 私がお答えできるのは、この個人保証の部分だけにもう今日は限定されるんですけれども、やはり経済の健全な発展、とりわけ中小零細企業の発展といった場合に、担保、保証によらない、やっぱり経営者の資質でありますとか技術力でありますとか、そういった数字で表せない部分について金融機関がしっかり評価をして助けていくという方向、こういう方向を法律というものがどういうふうに支えるんだという部分ですね。そういった意味で、より踏み込んだ民法の改正が必要じゃないかなということで今日は意見を述べさせていただいた次第です。
 以上です。
#168
○参考人(山田茂樹君) 御質問ありがとうございます。
 各論的な部分につきましては何度か御発言させていただきましたので、少し総論的な点で一点だけ申し述べたいと思います。
 民法自体の在り方ということですが、民法は一般的にフィフティー・フィフティーの人間間の契約等を前提として作られていると、こういうふうになっているかと思いますが、しかし、現代社会におきましては、一つは超高齢社会という現状になっておりまして、いろんな様々な年齢層の方、高齢者の方も増加を大変しているという状況、それから取引がどんどん複雑化して、その業種をやっている方じゃないと何も、もう何を言っているか全然分からないよと、こういうような取引も様々ある中で、これを全て特別法でカバーしていくというのも限界がございます。
 その意味において、一般法である民法においてこうした様々な格差が人間間にもあるんだよということを基本的な価値として置いていただいて、何か改正を今後考えていただけるといいのかなというふうに思っております。
 以上でございます。
#169
○山口和之君 時間配分ありがとうございました。
 以上です。
#170
○委員長(秋野公造君) 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。
 参考人の方々に一言御挨拶を申し上げます。
 本日は、長時間にわたり御出席を賜り、貴重な御意見をお述べいただきまして、誠にありがとうございました。委員会を代表して厚く御礼を申し上げます。(拍手)
 本日の審査はこの程度にとどめ、これにて散会いたします。
   午後三時四十八分散会
ソース: 国立国会図書館
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