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2017/05/23 第193回国会 参議院 参議院会議録情報 第193回国会 法務委員会 第13号
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2017/05/23 第193回国会 参議院

参議院会議録情報 第193回国会 法務委員会 第13号

#1
第193回国会 法務委員会 第13号
平成二十九年五月二十三日(火曜日)
   午前十時五分開会
    ─────────────
   委員の異動
 五月十八日
    辞任         補欠選任
     東   徹君     片山 大介君
 五月十九日
    辞任         補欠選任
     片山 大介君     東   徹君
    ─────────────
  出席者は左のとおり。
    委員長         秋野 公造君
    理 事
                西田 昌司君
                山下 雄平君
                真山 勇一君
               佐々木さやか君
    委 員
                猪口 邦子君
                中泉 松司君
                古川 俊治君
                牧野たかお君
                丸山 和也君
                元榮太一郎君
                柳本 卓治君
                有田 芳生君
                小川 敏夫君
                仁比 聡平君
                東   徹君
                糸数 慶子君
                山口 和之君
   国務大臣
       法務大臣     金田 勝年君
   副大臣
       法務副大臣    盛山 正仁君
   大臣政務官
       法務大臣政務官  井野 俊郎君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        青木勢津子君
   政府参考人
       法務大臣官房審
       議官       高嶋 智光君
       法務大臣官房司
       法法制部長    小山 太士君
       法務省民事局長  小川 秀樹君
       法務省刑事局長  林  眞琴君
       防衛省地方協力
       局長       深山 延暁君
    ─────────────
  本日の会議に付した案件
○政府参考人の出席要求に関する件
○民法の一部を改正する法律案(第百八十九回国
 会内閣提出、第百九十三回国会衆議院送付)
○民法の一部を改正する法律の施行に伴う関係法
 律の整備等に関する法律案(第百八十九回国会
 内閣提出、第百九十三回国会衆議院送付)
    ─────────────
#2
○委員長(秋野公造君) ただいまから法務委員会を開会いたします。
 政府参考人の出席要求に関する件についてお諮りいたします。
 民法の一部を改正する法律案及び民法の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案の審査のため、本日の委員会に、理事会協議のとおり、法務省民事局長小川秀樹君外四名を政府参考人として出席を求め、その説明を聴取することに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#3
○委員長(秋野公造君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
    ─────────────
#4
○委員長(秋野公造君) 民法の一部を改正する法律案及び民法の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案の両案を一括して議題とし、質疑を行います。
 質疑のある方は順次御発言願います。
#5
○小川敏夫君 民進党・新緑風会の小川敏夫でございます。
 今回の民法改正案、百二十年ぶりの改正案で、いいわいいわでしゃんしゃんと進むようなものではなくて、非常に多岐にわたる、法務省が言っているように、約款と保証、個人保証と時効、消滅時効ですか、この四つが改正事項だというようなことでいろいろ公表しているようですけれども、実はそうではなくて、大変にこの民法という我が国の取引の基本に関する事項について多岐にわたる改正点がございまして、本来ならこれ、一つの国会をこの一つの法案十分な審議をすべきというぐらいの重要な法案であります。
 多岐にわたる部分について、論点が多いんですが、順番に質問させていただきます。
 まず、消費貸借、一般には金融ですか、お金を借りるという契約なんですが、これ、今の規定は、借主はいつでも返還をすることができるということが基本原則となっておりますが、今回の改正によりまして、いつでも返還することができるというのは基本は変わらないんだけど、新たな項目が付け加えられました。当事者が返還の時期を定めた場合において、貸主は、借主がその時期の前に返還をしたことによって損害を受けたときは、借主に対しその賠償を請求することができると。
 いわゆる一般的に繰上げ返済、期日よりも前もってもう借金を早く清算しようと、あるいは、もっと金利が安いところがあるから借り換えて負担を軽減しようというようなことで、繰上げ返済というのは頻繁に今も行われておるわけでありますけれども、今度は、そうした繰上げ返済、やるのは自由だけど貸主の方に損害を払わなくちゃいけないという規定がわざわざ追加されたわけであります。
 大臣、この規定を追加した趣旨はどういうことなんでしょうか。
#6
○国務大臣(金田勝年君) 小川委員の御質問にお答えをいたします。
 現行法におきましては、期限の利益の放棄によって相手方の利益を害することができないと定めました第百三十六条の第二項を根拠に、利息付きの金銭消費貸借において、借主が弁済期の前に金銭を返還した場合であっても、借主が弁済期の前に金銭を返還した場合であっても、貸主は借主に対し弁済期までの利息相当額を請求することができると解するのが一般的でありました。
 もっとも、改正法案の立案に向けた検討の過程におきましては、貸主は返還を受けた金銭を他に貸し付けるなどして利益を得ることができることや、利息は実際に元本を利用していることの対価として生ずるものであることを指摘いたしまして、貸主が弁済期までの利息相当額を当然に請求することができるとするのは相当ではないとの意見が出されました。他方で、貸主が想定していた利息を受け取ることができないことによって、貸付けのために支出した費用すら賄うことができず、損害を被るのも相当ではないという意見も出されました。
 そこで、改正法案におきましては、弁済期の定めがある利息付きの金銭消費貸借において、貸主は期限前の返還によって損害を受けたときは借主に対してその賠償を請求することができることを規定するにとどめ、これが第五百九十一条の第三項でございますが、利息相当額を請求することができるかどうかを含めて、損害の有無及びその額については個々の事案における解釈、認定に委ねることとしたところであります。
#7
○小川敏夫君 大臣の答弁の中で、貸主にも当然、民法の利益の放棄、相手方の利益の放棄を侵害してはいけないということで、当然にできるというようなちょっと答弁に聞こえたんですが、決してそうではなくて、この返済期の定めが借りている人間の利益のためにあるものであれば、借りている人間が一方的に利益を放棄するだけであるから特に貸主の利益を害することにはならないという解釈もあるわけでありまして、ですから、この新たな三項の規定がなくても当然に貸主側の損なった利益を賠償すべきということにはならないと思うんですがね。少なくとも解釈の見方によって様々な見解があったと思うんであります。
 例えば判例は、特約があった場合にはそうした貸主側の請求を認めるケースもあるようでありますけれども、特に特約もないのに、全く消費貸借契約、期限付だから貸主側に利益があるんだといってそのまま認めた判例は私が探した範囲ではないように思うんですが、どうでしょう、この規定がなくても今まで全く同じだったのか、この規定は当然のことをただ規定しただけだということでよろしいんでしょうか。
#8
○政府参考人(小川秀樹君) 若干現状の学説などに関わることでございますので、私の方から御説明させていただきます。
 現行法においては、第百三十六条第二項を根拠に、利息付きの金銭消費貸借において、借主が弁済期の前に金銭を返還した場合であっても、貸主は借主に対し弁済期までの利息相当額を請求することができると解するのが一般的であります。多くの解説書などにもそのように書かれているところでございます。
#9
○小川敏夫君 私、質問通告で、債権譲渡と第三者弁済は技術的にわたるから局長でも答弁はいいと言っていましたけど、この消費貸借等については大臣に御答弁いただくということで通告しておるわけであります。
 大臣、この民法の一部を改正する法律案提案理由、これ、一番最初にお読みいただきました。ここにこう書いてありますよ。国民一般に分かりやすいものとするように改正したんだと。国民一般に分かりやすいように改正したんだったら、大臣、国民一般の中でも非常に良識あるはずの大臣がお答えしていただかなくちゃ困るじゃないですか。大臣が答弁できないんじゃ、国民一般に分かりやすく改正したなんて言えないと思いますよ。
 じゃ、まあ局長でいいですよ、判例にわたるから。今の局長の答弁の中で、そういう解釈が一般的だということでありましたけれども、そういう解釈を認めた判例があるんですか。
#10
○政府参考人(小川秀樹君) 判例でございますが、消費貸借そのものについてはございませんで、それと同様に考えられます消費寄託についての裁判例ということでございます。
#11
○小川敏夫君 だから、銀行からお金借りる、金貸しからお金を借りるということについて、判例はないんですよ。ただ学者の中でそういうような見解があるというだけでありますけれどもね。しかし、実際ある裁判例見ますと、必ずしもそんなに貸主に当然というようなことでもないように思うんですがね。
 じゃ、もう少しちょっと別な角度から議論いたしましょう。この新たに追加された五百九十一条三項で、貸主は要するに損害を請求できるというんですが、この損害は、貸主が、ずっとお金貸していれば利息が入ったのに、借りている人間が返してきちゃったからもう利息が入らない、言わば利息をもうけ損なった、法的には履行利益と言うんでしょうかね、将来の利息を取り損なったから、その将来取り損なった利息を、これはもうけ損なった損害が生じたんだからそれを賠償しろという、この履行利益のこの損害は入るんでしょうか。
#12
○政府参考人(小川秀樹君) 先ほども大臣御答弁されたと思いますが、改正法案では、弁済期の定めがある利息付きの金銭消費貸借において、貸主は、期限前の返還によって損害を受けたときは、借主に対しその賠償を請求することができることを規定するにとどめておりまして、利息相当額を請求することができるかどうかという点については、これは今回明文で定めているわけではございません。従来どおりの考え方、解釈の問題として理解されるということだと思います。
#13
○小川敏夫君 局長はいわく、先ほど大臣が答弁したようにということであるなら、また今回も大臣に答弁していただきゃいいのでね。大臣が答弁したことを、同じことをしゃべるなら大臣にしゃべっていただきたいですけれども。
 要するに、繰上げ返済をすると、貸主の方が将来ずっと利息をもらえたのに、それをもらえなくなっちゃったから取りっぱぐれた損害が出たということの損害が入るのかどうか。そうすると、入らないとは言わないんですね。
#14
○政府参考人(小川秀樹君) あくまでも解釈に委ねているわけでございますので、入らないというふうに決めて掛かっているわけではございません。
#15
○小川敏夫君 だから、入るんじゃないですか。解釈に委ねるって、入るか入らないか分からない。
 じゃ、局長にお尋ねしましょう。この損害というときには、契約が存続していれば将来入るであった利益を逸失した、これも損害論一般の中では損害の中に入りますね。
#16
○政府参考人(小川秀樹君) 一般的な損害の中には含まれると思います。
#17
○小川敏夫君 つまり、法律上損害というのは、将来もうけ損なった分ももうけられなくなっちゃったら損害に入るわけですよ。
 じゃ、大臣、この五百九十一条三項、貸主は損害があったら借りている人間へ請求できるというんだから、もうけ損なった分だって請求できると、つまり、繰上げ返済したって将来の返済期までの利息は貸主は取りっぱぐれになっちゃうんだから、その取りっぱぐれ分は損害だからこれは払えという論理が成り立つじゃないですか。そのことを特に認めた規定じゃないんですか。
#18
○国務大臣(金田勝年君) ただいまの御指摘に対しましては、改正法案におきましては、先ほども申し上げたんですが、弁済期の定めがある利息付きの金銭消費貸借においての貸主は、期限前の返還によって損害を受けたときは借主に対してその賠償を請求することができることを規定する、それにとどめまして、利息相当額を請求することができるかどうかを含めまして、損害の有無、そしてその額については、個々の事案における解釈、認定に委ねることにしたものと理解しております。
#19
○小川敏夫君 それってこの法律の解釈なんですか。だって、損害といったら履行利益も含む、まあ一般的な言葉で言えば、もうけ損なった、利益を取りっぱぐれた分も含むというのがこの民法で言う損害論なんですよ。条文では、損害を受けたときには請求できるというんだから、賠償請求できるというんだから、だから、この条文の規定上明らかに、取りっぱぐれ分は利益を取り損なったからその分は払えと、繰上げ返済があっても期間までの利息分の損害金を払えという解釈になるしかないじゃないですか。じゃ、ここに書いてある損害は、要するに民法一般で言う履行利益は含まない、履行利益は含まないんだ、そのときの時々の解釈によるんだと、こういう意味ですか。
 じゃ、端的に聞きましょう。五百九十一条三項に書いてあるこの損害、これは民法の一般理論で言っている損害とは異なる損害なんですか。
#20
○政府参考人(小川秀樹君) もちろん民法一般の損害と同様でございます。
 ただ、その損害がどういう損害であるかということについては、どういう具体的な内容を持つかということについては、個々の事案によって異なるところでございますので、そこで解釈に委ねているということになります。
#21
○小川敏夫君 局長、法律上、定義では入ることになった、じゃ、示してください。どういう場合に請求できる、どういう場合に請求できないんですか。
#22
○政府参考人(小川秀樹君) 具体的には個々の事案によると言うほかないわけですが、法制審議会の中での議論として紹介いたしますと、改正法案の立案に向けた検討の過程においては、貸主は返還を受けた金銭を他に貸し付けるなどして利益を得ることができることや、利息は実際に元本を利用していることの対価として生ずるものであることを指摘して、貸主が弁済期までの利息相当額を当然に請求することができる、今申し上げたようなことを根拠として、当然請求することができるとするのは相当でないという意見が出されておりました。
 他方で、貸主が想定していた利息を受け取ることができないことによって、貸付けのために支出した費用すら賄うことができず、そのために損害を被るのも相当ではないという、こういった考え方が両方示されていたところでございます。
#23
○小川敏夫君 いや、それは議論の過程を言っただけで、私は、しつこいようだけど、この民法の法律の損害という定義にはもうけ損ない分が入るということは入るということで、ほかの損害論と全く同じだと言っているわけですよ。だけど、じゃ、この三項について、局長は、いや、解釈によって入るか入らないか決めるんだとおっしゃるから、じゃ、入る場合はどういう場合が入るので、入らない場合はどういう場合が入らないかという、この法の適用を聞いているんです。この立法に至る議論を聞いているんじゃないんです。どういう場合がもうけ損ないとして請求できる損害で、どういう場合はもうけ損ないとして請求できない損害なのか。
#24
○政府参考人(小川秀樹君) 基本的にはやはり合意の趣旨によると思いますが、例えば調達にどれだけの手間が掛かるかとか、あるいは金利状況が市場から調達するときにどのぐらいの状況なのかなど、恐らく具体的な状況によって損害としてどれだけ発生するかということの蓋然性も違うと思いますので、その意味では履行利益として発生する蓋然性が高い場合があるかどうかということだと思います。
#25
○小川敏夫君 いや、今局長の答弁で、最初でちょっとおかしいことがありましたよ。
 基本的には合意によって決まるんだと。でも、この五百九十一条三項は、合意によって生ずるんじゃないんですよ、この法律の規定によって生ずると言っているんですよ。だから、合意によって決まる話じゃないでしょう。法律が規定しているんだから、法律が当然できると言っているんだから、合意の問題じゃないですよ。
 だから、この法律の規定によって損害論というなら履行利益が入ると。だから、私は当然もう入るしかないと考えようがないんだけど、局長は、いや、入る場合と入らない場合があるんだと言うから、じゃ、どういう場合が入るか、どういう場合が入らないかを聞いているので、合意によって決まるという話じゃないんですよ。この法律の規定ではどうなのかと聞いているわけです。
 私は、局長が一言、いや、履行利益は入りますと分かりやすく答弁すればいいものを、殊更、いや、損害は、損害論一般の履行利益は入るという損害と全く変わりませんと言いながら、この三項の適用の場面においては、履行利益は損害ですと、一言で入りますと言えばいいものを、いや、入る場合もあります、入らない場合もあります、個々の状況によって違いますと言うから、じゃ、この法律の解釈、どういう場合が入るんで、どういう場合が入らないのか、この法律の適用の場面を聞いているわけです。
#26
○政府参考人(小川秀樹君) 先ほど合意の趣旨というふうに申し上げましたのは、基本的には、本体の消費貸借の内容にもかなりよるということで御理解いただければと思います。
 それから、先ほど申しましたように、消費貸借の趣旨として、前提となります金利の状況ですとかそういうものによって左右されることは繰り返したいというふうに思っております。
 もちろん、履行利益が入る場合もあるわけで、その意味では履行利益も入り得るわけで、民法一般の損害も基本的には必ず履行利益を意味するということではなくて、あるいは信頼利益を意味するということではなくて、それは具体的な損害の発生の内容に応じて損害の解釈というのが導かれるということだろうというふうに理解しております。
#27
○小川敏夫君 まあ契約の状況によると言うけど、だって、お金を借りるというのはお金を借りるだけですから、別に契約の種類があれこれあれこれあるわけじゃないですよ。利息が違うとかその程度の話でしょうけどね。
 端的になぜ一言はっきり、すっきり言わないんですか。要するに、繰上げ返済の場合でも、貸主がもうけ損なった利息の分は損害の中に入ると。入るとしか言いようがないと思うんですけどね。だけど、局長の答弁でも入らないと言わないんだから、入るわけでしょう。つまり、入る場合と入らない場合があると。でも、入る場合があるんだったら、もう法律上は入るとしか言いようがないじゃないですか。入らないと言わないんだから入るんでしょう。
#28
○政府参考人(小川秀樹君) 私の方も入り得るということを申し上げているわけで、それは個々の事案、先ほども出ましたように、金利の状況ですとかあるいは資金調達の市場の動向であるとか、例えば非常に借主側が、借りる側が多いような状況であるとか、あるいは借りる側が少ないような状況であるとか、それは様々な状況に応じて損害というのは考える必要があろうかというふうに思っております。
#29
○小川敏夫君 私は、これ、多くの人が住宅ローンとか自動車ローンとかお金借りる場面が多いわけで、今の一般の銀行の実務ですと、繰上げ返済、これは全く無条件で、せいぜい数千円とか手数料は銀行が請求するけれども、そうした将来の利息まで払えということは銀行ではないので、繰上げ返済は自由にできるという感覚なんだけれども。
 ただ、銀行じゃなくて、これ金融会社、具体的には名前は言わないけれども、何とかリースとかそういう金融会社になってくると、実は繰上げ返済した場合に、そんな数千円だ一万円だの手数料じゃ済まない。二%を払えとか、そんなふうになっていると。ただ、これも、あらかじめそういう手数料であることが分かっていてお金を借りているわけだから、お金を借りる方はそういうことも承知の上で借りているわけですよ。
 ただ、今回は、この五百九十一条は、じゃ、また確認しますけれども、借主があらかじめ合意していなくたって、そういう、この三項について、貸主の損害ということについて全く合意していなかったという場合でも、これは当然適用されるわけですよね。
#30
○政府参考人(小川秀樹君) 合意がない場合でも適用される規定でございます。
#31
○小川敏夫君 ちょっと、これ、きちんと国民に説明しないと、国民は驚くんじゃないですか。いや、繰上げ返済したら、それですっきり整理できない、繰上げ返済するんだったら将来の分の利息まで払わなくちゃいけないんだと。
 実際、銀行はそういう実務をやっていないから全く自由だと思っているけれども、実際にはそういうことをやるところがあるわけですよ。だんだん金融会社の言わば質が下がってくると、ひどい話もあるので、実際の裁判例の中でも、金貸しが繰上げ返済に来た人間に将来の利息も全部請求して、計算したら結局繰上げ返済しても元本と同じだけの金額を払わされた、請求されたというような例もある。ただ、それは余りにも取り過ぎだからということで、暴利行為ですか、利息制限法に照らして暴利行為だからということで法律の効果を与えなかったような裁判例もありますが。
 どうでしょうね、こんなに正面から、しかも借りている人間が、あらかじめ合意もしていないのに、当然、繰上げ返済したときには将来の貸主のもうけ分を賠償しなくちゃいけないという規定。これ、かなり借主側、言わば国民が驚くような、国民が納得しないような私は改正だと思うんですが、大臣、私はそういうように思うんですが、借りている人間が繰上げ返済したら、いや、繰上げ返済した後、その後のずっと約束した返済日までの利息を賠償として払えと言われたら私は国民は驚くと思うので、何でそんなふうに改正しちゃうんですかと驚くと思うんですが、大臣はどうですか。
#32
○副大臣(盛山正仁君) 済みません、ちょっと私の方から一言申し上げさせてください。
 私自身も仕事でいろんな経験をしてまいりました。金融というのは生き物でございますから、資金需要がタイトであるかどうであるか、そしてまた、今でこそ変動金利が当たり前になっておりますけど、多分三十年ぐらい前までは変動というのはほとんどなくて、固定が当たり前、こういうような時代であったかと思います。そんな中で、借主の側の保護、これを図るのはもちろん当然ということでもございますが、他方、一方、貸主の立場をも考えないといけないというのが民法ではないかなと思います。
 そういう中で、いろんな議論を踏まえた上でこのような形になっているということでもありまして、小川先生が先ほどおっしゃったように、私も自分で住宅ローンを借りて繰上げ返済、一時期したりしたことがありましたけど、その頃は千円、二千円じゃなくて、もうちょっと高い手数料を取られたような気がしますけど、そこも含めて、今回の民法改正には約款の部分もございますが、約款その他ということで消費者の保護を図る、そういうことも含めて、いろんな形で、いろんな人の利害を含めて今回検討してこのような規定を置かせていただいたというふうなことを是非御理解いただければと思います。
#33
○国務大臣(金田勝年君) 小川委員の御指摘に対しまして、改正法案の立案に向けた検討の過程において、貸主は返還を受けた金銭をほかに貸し付けるなどして利益を得ることができることなどを指摘をして、貸主が弁済期までの利息相当額を当然に請求することができるとするのは相当ではないという意見、あるいは、貸主が想定していた利益を受け取ることができないことによって、貸付けのために支出した費用すら賄うことができず、損害を被るのも相当ではないという意見など、異なる方向性の意見が出されたと、このように承知しております。
 そこで、改正法案におきましては、貸主は、期限前の返還によって損害を受けたときは、借主に対しその賠償を請求することができる旨を規定するにとどめることといたしまして、利息相当額を請求することができるかどうかを含めて、損害の有無及びその額については個々の事案における解釈、認定に委ねることにしたと。そして、これによって新たに債権者が利息相当額を請求するような事案が頻発するといった事態は生じないものと考えておりますが、いずれにしても、法務省としては、御懸念も踏まえながら、改正法案の趣旨や改正の経緯について十分な周知を図っていかなければならないと、このように考えておる次第であります。
#34
○小川敏夫君 私は、局長の答弁で、局長がこういう答弁なら私は納得するんですよ。つまり、法律は貸主側の損害賠償を認めている、その損害賠償の中には当然履行利益も含まれる、これはもう損害の一般論からして当然含まれる、だからこの法律の規定は当然履行利益も含むんだと。ただ、実際の運用の中で、その履行利益なるものが発生するかどうかは個々の事情によると。
 つまり、法律論としては、履行利益も損害だから損害賠償請求できるんだというのが法律論ですよ。三項に書いてあるのは、そのことしか書いていないんだから。あと、個々の事情によるというのは、実際のその貸主の履行利益、もうけ損ないの分が損害に当たるとして請求できるのか、それとも、そもそも損害として認定されないから請求できないというのは個々の事例によりますというんだったら私は分かる。ところが、局長は、そうじゃなくて、この損害が、履行利益が損害に当たるかどうか、損害が請求できるかどうかが個々の事例によると言うから、私は法律の解釈としておかしいと言っているわけで。
 それで、じゃまた、済みません、私の疑問について、またこの次の機会にまた整理して御答弁いただければそれでいいですけどね。
 それで、私は、あっ、何か答えられますか。じゃ、どうぞ。
#35
○政府参考人(小川秀樹君) 私の理解が不十分なのかもしれませんが、履行利益かどうかということが一つの問題で、例えば損害賠償の対象として調達コストしか生じないような場合があると思うんです。要するに、それはすぐほかの人に回せて即日同じような消費貸借契約ができるとすれば、何が損害かと言われれば、それはそのまさにコストにとどまるような場合が考えられると思うんですけれど、そういうものは履行利益というのかどうかということで、ちょっと私の方、履行利益という表現について必ずしも理解が十分じゃないのかもしれませんが、今のような調達コストしか損害にならないような場合は履行利益とは普通言わないんじゃないかというふうには思っております。
#36
○小川敏夫君 だからそれは、法律論としては履行利益も損害に含むんだけど、実際の適用の場面においては履行利益がそもそも本来生じないと、つまりもうけ損ないの損害は生じていないという、適用のお話なんじゃないでしょうかね。法律論としては当然入るというのが私は筋だと思いますよ。
 それで、じゃ、その点について、また改めて整理した答弁をいただければと思いますけれども。ただ、私は、今局長が言われたように、調達コストと金利との関係で、あるいは債権者が返済を受けたらその金をすぐ運用できるかどうかとか、そういう総合的な状況によって逸失した履行利益があったかどうかを判断するんだということになりますと、私は銀行のような優良な貸付けは案外履行利益の逸失はないんじゃないかと。逆に、高利貸しのようなものほどもうけ損なった逸失利益が生じるんじゃないかという、非常に正義感に反するような結果が出ると思うんですよね。
 つまり、銀行は調達コストも安い、貸出金利も低いと。しかも、銀行の場合には、返してもらっちゃったって、その金はまた別の人に貸してすぐ運用できるから、だから特に、返してもらったお金をすぐに運用できるんだからもうけ損ないは、別の人にすぐ運用したから、そこによって利益が生じているんだから特にもうけ損ないはないんだと。それから、お金の調達コストも安いから、だから貸せなくたってそもそも銀行の損害は少ないんじゃないかというように私はなっていくと思うんですよね。
 じゃ、これが高利貸しになったらどうですか。利息制限法で認められている一五%で金貸すと。金返してもらっちゃっても、そんないいカモやっと見付けてしこたまもうけさせてもらっているのに、今度はいきなり返してもらっちゃったら、そんなすぐまたカモ見付けられないよと。一五%でそんなすぐ借りてくれるそんなカモはいないから、じゃ、返してもらっちゃったら困るんだよ、約束じゃ一五%でずっと五年も十年も借りてもらう約束だったじゃないかと。そんだけもうけるはずだったのに、返してもらっちゃったら、お金借り手がいないから銀行に預けたって〇・一%にしかならないとかですね。もうけ損ないは、そういうたちの悪い、金利が高い金貸しほど、もうけ損ないのいわゆる逸失利益が出てくるんですよ。しかも、金貸しだから、仲間の金貸しから借りたので金利も高いんだと。
 何か、私は、まともな健全な銀行ほどこの繰上げ返済による逸失利益というのは出てきにくい。一方で、そうしただんだんだんだん劣化した、言わば社会的評価がだんだんだんだん悪くなるような、まさに一番悪いような金貸し、まあ金貸しといっても、例えばかつて商工ファンドとか日栄とかかなり社会問題になった金融会社がありました。あれ上場会社ですよね。そういうような社会問題を起こしたような金融会社があるし、もっともっと、もっともっと悪質な金融会社もあるわけで、捕まらなきゃ何でもやるような金貸しだっているわけで。
 ただ、また元の話に戻っちゃうけど、そうした調達コストとか、そうした回収して返ってきたお金の運用が可能かどうかとか、そういったことで損害の有無を判断するとなると、私は、さっきも言ったように、金利が高い、たちの悪い金貸しほど損害が認定されやすくなるんじゃないかという、私は社会の正義感に反するような結果になっちゃうと思うんですが、私のこの思いについてはいかがでしょうか。
#37
○政府参考人(小川秀樹君) いわゆる金融関係のところでも、例えば大量に顧客を抱えているようなところというのは多分返ってきたものをすぐ貸し付ける相手がいるわけでしょうから、そういう意味では損害の額というのは比較的低く考えられる。あるいは、業として比較的小口の貸付けを行うようなところも同様に損害の額というのは低く考えることが、言わば大量的なものであって代替性も利くということだろうと思います。
 仮に、非常に限られた顧客にのみ多額の貸付けを行うような業種があるとすれば、一般論とすれば損害は大きくなっていく可能性はあるとは思いますが、ただ、またそれはちょっと別の理由で、例えば一般条項的なものによってその効力が問題になるということではないかというふうに思っております。
#38
○小川敏夫君 だから、別の理由というのは、例えば暴利行為とかそういうところだと思うんですけれども。しかし、暴利行為にならないような、随分ひどい損害だったら暴利行為かもしれないけれども、じゃ、随分ひどいまでいかないけどちょっとひどいんじゃないのと、ちょっとこれひどい、もうけ過ぎじゃないのというのは、暴利行為にならなかったら認められちゃうわけですよね。
 だから、どうでしょうね、大臣、私、こんな規定要らないと思うんですよね。だって、借りている人間はいつでも返済できると、この規定がなくたって、さっき言った民法百何条でしたか、その規定によって、貸主が不利益ならそれ損害が請求できるということになるわけですよ。それから、特に貸主と借主があらかじめ合意していれば、それはそれでまた貸主はその合意の範囲で請求できるわけですよ。
 私は、そういう中で、しかし、このこれまでの五百九十一条、借主はいつでも返済できるんだと、この規定があるから、暴利行為の判定においても何においても、基本は借主はいつでも返済できるんだというのが原則なんだというのがあるから、私は借主が不当な不利益に遭わないような解釈ができると思うんです。
 今度は、借主が返済できるんだ、いつでも自由に返済できるんだ、ただ、貸主の賠償金を負担しろなんていうことが新たに入っちゃうと、貸している方は別に困らないけど借りている方が困るし、これからの貸主側の損害を判定するにおいても、貸主側の損害を言わば法律上当然のものとして考えるように広がってしまうんじゃないかと。私はただ単に借主側の立場を不利にする規定でしかないと思うんですが、大臣、今からでもこの三項を削りませんか。
#39
○国務大臣(金田勝年君) 小川委員の御指摘、議論をお聞きしておりました。先ほども申し上げたんですが、改正法案の立案に向けた検討の過程で、貸主は返還を受けた金銭をほかに貸し付けて利益を得ることができるなどということを指摘して、貸主が弁済期までの利息相当額を当然に請求することができるとするのは相当ではないという意見、あるいは貸主が想定していた利息を受け取ることができないことによって、貸付けのために支出した費用すら賄うことができず、損害を被るのも相当ではないという意見といった、異なる方向性の意見が出された中で改正法案をこのように整理をしたということに、先ほど申し上げたわけですが、そういう中でこういう規定になって、いずれにしても、御懸念も踏まえながら改正法案の趣旨や改正の経緯について周知を図っていきたいということで申し上げた次第なんですけれども、これによって新たに債権者が利息相当額を請求するような事案というものが頻発するといった事態、これが生じるか生じないかというところの議論というのはあるのかなという感じでお聞きしておりました。
#40
○小川敏夫君 大臣、私は、この規定によって、もう高利貸し、いわゆる金貸し屋は大喜びすると思いますよ。彼らは何にかこつけたって捕まらなきゃ、警察に捕まらなきゃどんどん請求するわけですから。今度は、期日前返済、繰上げ返済してきた債務者に対して、ふざけるなと、この法律の規定があるから俺は請求するぞって、どんどん言いやすくなるんじゃないですか。元々なくたって大臣の話じゃ貸主は請求できるというんだったら、こんな規定、私、要らないと思うんですよ。
 私は到底、この繰上げ返済、言わば将来利息まで損害に含まれるというのは納得できない。これを明記するということは納得できないし、しかも借主があらかじめ合意もしていない場合でも発生するというのは到底納得できないんで、この規定はやはり削除する、削除しても特別弊害がないというような御趣旨だと思いますので、私は削除すべきだというふうに申し上げます。
 この問題だけでというわけに、まだいろいろ議論しなくちゃいけない問題があるんですけれども、少なくともちょっと前回、債権譲渡の問題が少し積み残しになっていましたし、また私も債権譲渡で聞きたいことがあるんで、消費貸借の繰上げ返済のところは、じゃ、納得できない、削除すべきだということを指摘して、取りあえず今日は別のところに行きますけれども。
 債権譲渡の問題。まず一つは、四百六十六条の、あれ何条でしたかね、譲受人が悪意、重過失の場合に債務者は履行を拒絶できると。その場合に譲受人は、債務者に対して譲渡人に払えという請求ができると。私がそのときに、じゃ、債務者が譲渡人に払いに行ったら、譲渡人はそれを受け取らないという場合、受領遅滞だったという場合に、じゃ、どうするんだと、宙に浮いちゃうじゃないかという点を指摘させていただきました。改めて、そういう場合にどう対応するのか、局長、お願いいたします。
#41
○政府参考人(小川秀樹君) 改正法案では、中小企業などの資金調達を円滑なものとするため、譲渡制限特約が付されていても債権の譲渡の効力は妨げられないが、譲渡制限特約が付されていることを知り、又は重過失により知らなかった譲受人その他の第三者に対しては債務者は履行を拒むことができ、譲渡人に対して弁済をした場合にはこれを対抗することができることとしております。これは、御指摘いただきましたように四百六十六条の二項と三項でございます。
 この規定の下では、悪意又は重過失の譲受人については、債務者が譲渡人に対して弁済した金銭を譲渡人から受領することによって債権を回収することが想定されております。要するに、債務者から取るということになりませんので、譲渡人から回収するという、そういう関係になるだろうというふうに理解しております。
 そのため、譲渡人が意図的に債務者からの弁済の受領を拒絶するような事態が生じた場合についても、これは債務者側には落ち度がございませんので、譲受人とするとやはり債務者から直接回収するということはできないと考えられます。その意味では、あくまで譲渡人と譲受人との関係にとどまるということだと思います。もっとも、この場合には、譲受人としては譲渡制限特約付きの債権を譲渡する旨の契約に関する債務不履行があるわけですので、その債務不履行を根拠として譲渡人に対して損害賠償をすることができ、さらには譲渡契約を解除することも可能であると解されるところでございます。
 なお、債権者が弁済の受領を拒絶するような事態であれば、債務者としては供託をすることによって債務を免れるのが通常であると考えられます。この場合には、譲受人はその還付を請求することも可能でございます。
 以上申し上げましたように、譲渡人が受領遅滞となるような場合には、譲受人は以上のような対応が可能でございまして、譲受人に特段の不都合は生じないのではないかというふうに考えているところでございます。
#42
○小川敏夫君 いや、その論理は私おかしいと思いますよ。例えば、債権譲渡というもののこの法律の改正、一番の違いは何だということでありましたら、これまでの現行法ですと、債権譲渡した譲渡人の債権者が差押えしてしまった場合には、その譲渡人の債権者が勝つと。譲受人は、しようがない、じゃ、その場合どうしたらいいんだとなったら、譲受人はもう権利をなくしちゃうから、じゃ、譲渡人に契約解除するなり賠償請求すりゃいいんだという話ですよね。
 今局長答弁されたように、債務者が譲渡人のところに弁済に行ったんだけど、譲渡人が受け取らないって宙に浮いちゃったらどうするんだとなったら、いや、そういう場合には、譲渡人と譲受人との間で契約解除するなり賠償請求すりゃいいやと言うんだったら、譲受人に不都合が生じたら債権譲渡契約を元に戻せばいいんだ、賠償請求すりゃいいやというんだったら、そもそもこの法律の改正の趣旨の譲渡人の債権者が差し押さえた場合に譲受人が不利益を被るという場合だって、譲受人は不利益を被ったら譲渡人に請求すりゃいいんだから何もこんな改正する必要ないんで、今までのままでよかったんじゃないですか。少なくとも、譲受人に不利益が生じたら、その債権譲渡契約、また解除なり無効なり賠償請求すりゃいいやと言うんだったら、私はそれは法律として意味ないと思いますよ。
 譲受人をきちんと保護するため、法律関係をはっきり確定するためにやっているわけでしょう。譲受人の利益を守るために、債務者に、俺に払わないんだったら譲渡人に払えという請求ができると。だけど、その請求が無意味化したら譲受人の利益は守られないじゃないですか。
 その分損害が生じたら譲渡人に請求すりゃいいやと言うけれども、譲渡人が無資力だったら譲受人は結局、実質損害が生じますよね。だから、譲受人に実質損害が生じたら譲渡人に請求すりゃいい、債権譲渡契約を解除すりゃいい、どうのこうのと言うんだったら、別にどんな場合だってそうなんだから、どんな場合だって損が生じたら、契約なんなり形だけ、実質上取れるかどうかは別にして、形上、賠償請求権か契約解除か不当利得か、何でもいいから請求ができるんだから別に問題ないと思うんですよね。
 私は、今の局長の答弁は、債務者が譲渡人の受領遅滞によって弁済できない場合に宙に浮いちゃうなと、譲受人に不利益が生じますねというこの規定の不備を私は全然説明するものになっていない。
 譲受人が不利になったら譲渡人に損害賠償請求すりゃいいじゃないかというのは、現実に譲受人に生じちゃった不利益を生じないようにするための法律の規定が必要なんじゃないですか。譲受人に不利益が生じないようにするために、債務者に対して譲受人が自分に払えと言えないんだったら、じゃ、譲渡人に払えと言うことによって、譲受人の地位、利益を守るために設けた規定でしょう。だけど、その設けた規定が機能しないんですよ。じゃ、この規定そのものが不備なんじゃないですかというのが私の指摘です。
#43
○政府参考人(小川秀樹君) 今回の債権譲渡に関する改正は、幅広く関係者の利益を考慮したものでございます。
 一つには、委員から御指摘もございましたように、債権者の、譲渡人の差押債権者と譲受人との関係で譲受人を保護する、これは債権の流通性を高め、ひいてはそういうことを担保とすることによって資金調達の方法をバラエティーに富むものにするという大きな理由によるものでございます。
 ただ、譲受人だけ保護すればいいかというと、当然、債務者、債権譲渡については債務者の利益も保護する必要があるわけでございますので、債務者が基本的には債権譲渡によって不利益を受けないようにする仕組みも必要でございます。その意味では、どこか一つだけに不利益を負わせるということではなくて、全体としてバランスを取り、債務者が不利益を受けずに、例えば供託を使うことによって譲受人が還付受けるような形をすることを取ってバランスを取るというのが今回の改正の基本的な枠組みだというふうに理解しております。
 委員御指摘の場合というのは、債権者が受領遅滞という言わば非常に異常な状態を生じさせたものでございますので、そのリスクについては債務者が負担するには適切ではなく、やはり契約の当事者であります譲受人自らがリスクを負担して、先ほどのように損害賠償請求でありあるいは解除といった形で決着を付ける。もっとも、先ほど申しましたように、債務者にとってみると、供託によって責任を免れるというのが最も法律関係確定するわけですので、そういう意味では、通常は、債務者側とすると、供託を利用することによって最終的には譲受人の権利が保護されるというのが一般的な考えられる道筋ではないかというふうに考えております。
#44
○小川敏夫君 世の中、善人ばかりじゃありませんから、一般的に良識ある取引をする人ばかりじゃないんで、法律に欠点があればその欠点を悪用して不当な利益を図ろうとする。例えば、今言ったように、債務者が譲渡人に弁済しようとしても譲渡人が受け取らないと、その場合に譲受人は手がなくなっちゃうと。
 考えてみたら、譲渡人と債務者というのは元々人間関係があるんですよ。それから、持っている債権を売っ払っちゃうというのは大体資力がない場合が多いし、そうすると、結局、譲渡人と債務者が結託しちまえば、どうせ譲受人なんか赤の他人なんだからいいじゃないかといって意図的にやる場合だってあるわけですよね。少なくとも、今言ったような場合、債務者は譲渡人のところに弁済に行く、譲渡人は受け取らないと、それ以上手がないと。譲受人は譲渡人に対して契約解除なり賠償請求すればいいやといったって、譲渡人はすかんぴんだといったらもう譲受人の被害が確定しちゃいますよね。法的には賠償請求権なり債権は発生するけど、実際には取りっぱぐれですから、実害が発生しますよね。だから、私はこの規定が不十分なんじゃないですかということを指摘させていただいたので、大変今日の局長の答弁をいただいても全くその不十分さは解消されていません。
 それから、私、また寝ながら一つ考えまして、こういうこと、局長、今、債務者が供託すればいいというふうにおっしゃいましたけれども、この場合、つまり、譲受人から請求されて債務者は譲渡人に対して弁済することができると、そのときに、譲渡人が受け取らないという場合には債務者は譲渡人に対して供託ができるんじゃないですか。つまり譲渡人が弁済の受領権者だと、だから譲渡人に対して供託をするという道があるんじゃないですか。
#45
○政府参考人(小川秀樹君) もちろん、債務者から債権者に対して弁済したところ、それを拒絶されて受領遅滞に陥っているわけですので、一般的な弁済供託もすることは可能でございます。
#46
○小川敏夫君 そうですよね。債務者が譲渡人に対して行う弁済も債務の履行なんだから、できると思うんですよ。これは弁済の供託だから、ですから、供託の相手側は譲渡人だけですよね。これが問題なんですよ。そうすると、供託金の還付請求権は譲渡人が持っているわけです。
 そうしたら、その供託金還付請求権を譲渡人の債権者が差し押さえちゃったらどうなるんですか。
#47
○政府参考人(小川秀樹君) 譲渡人の還付請求権はもちろん差押え可能でございますので、ほかの債権者も差押えに掛かってくるかもしれませんが、当然のことながら、譲受人も差押えすることによって、還付請求権を、によって履行を受けることも可能だというふうに考えております。
#48
○小川敏夫君 いや、それは差押えに参加することができるというだけであって、つまり、そうすると、債務者はまず譲受人に対して供託ができますよね、これは当然です。それから、どっちに払ったらいいか分からないから、債権者、隔地で、両方相手に供託もできる。これはできますよね。だから、その場合には、債権者は隔地だから、譲渡人と譲受人との間で裁判をやるなりして決めればいいので、そこで譲受人が勝てばいいんだから、別に不利益は生じないと。
 ただ、今、この規定による供託は、譲受人に言われた債務者は譲渡人に弁済する、その譲渡人の弁済供託ですから、その供託金還付請求権は譲渡人にしかないんですよ。ここが問題なんですよ。じゃ、今、局長は、譲受人も差押えすればいいといったら、それは両方の差押えで案分配分でしょう。ほかの債権者が入ってくれば、みんなで案分配分になっちゃう。
 それから、私は悪い人間のことしか考えていませんから、債務者と譲渡人が組んだら、だって、債務者が供託した供託通知は譲渡人にしか行かないんですよ。譲受人がそこに供託金があるということは分からないんですよ。分かるわけないでしょう。債務者がしゃべれば別ですよ。私は言われたことを、このお金をこれこれこういうふうに供託しましたよ、供託番号は幾らですよということを親切に譲受人に説明すれば譲受人は分かりますよ。だけど、それを聞かない限り、譲受人は供託金の差押え、参加差押えなんかできないじゃないですか。どこの法務局、供託されたかどうかも分からないし、供託金がどこの供託金か、供託番号も分からなかったらできませんよね。
#49
○政府参考人(小川秀樹君) 御指摘のとおり、供託の通知は譲渡人のところに行くと思いますので、それを前提とした上で譲受人とすると行動を取る必要があろうかと思います。
#50
○小川敏夫君 だから、前提といったって、譲受人分からないんですよ。譲渡人も債務者も悪意なんだから。
 それで、私が言いたいのは、そうすると、その供託金還付請求権を、譲渡人が払渡しを受けたらその金を譲受人に渡さなくちゃいけないから、嫌だから、その譲渡人は、譲渡人の債権者が差押えして持っていっちゃうわけですよ。これ、可能ですよね。そうすると、あれっと、また元に戻るわけですよ。
 そもそも何でこの債権譲渡でこういうふうにしたのといったら、譲受人と譲渡人の債権者がいて、今の現行法は譲渡人の債権者が勝っちゃうと。だから、譲受人の地位を守るために、譲渡人の債権者には行かないようにするためにこういう規定にしたというわけでしょう。だけど、今言ったように、そういう手順を踏んだら、債務者が譲渡人に弁済供託すると、その供託金還付請求権を譲渡人の債権者が差押えしたら、譲渡人の債権者が全部持っていっちゃうと。事実上、この法律の意図した改正の趣旨とは全く異なる結論ができちゃうじゃないですか。
 世の中、みんな善人ばかりなら問題起きないかもしれないけれども、悪人がいるから弁護士は商売できるのでね、裁判所が忙しいわけで、いろんなことの法律があれば、法律の形式を使って少しでも、何とかしてでも、警察に捕まらなきゃ、もうけりゃいいんだというのが、やたらか少しか知らないけど、世の中にはいるわけですよ。私は、今度の法律は、まさに、譲渡人の債権者が金を持っていっちゃうのはおかしい、譲受人を守るんだと言うんだけれども、実はこの法律の規定、手続を踏んでいったら、何だ、譲渡人の債権者が法的に持っていっちゃうんだということができるんじゃ、これは法律の規定の仕方が悪い、法律に欠陥があるんじゃないかと私は指摘しますが、いかがですか。
#51
○政府参考人(小川秀樹君) 先ほども申し上げましたが、今回の改正は基本的には各関係人の利益を考慮してバランスを取るものでございます。その意味では、一定の前提となるところがスムーズにいかない場合にリスクを関係人が負うことも、これはやむを得ないところだと思います。
 そういう意味では、順調に進めば非常に円滑にいく物事が、例えば、御指摘いただきました事案では、譲渡人が受領遅滞あるいは債務者と一定の共謀関係に立つような形で弁済供託という方法を取られるようなこと、これによって生ずるものでございますので、制度設計する上で、今申し上げましたやや異例な状態まで全てを視野に入れて円滑に進むようにするということまでは、これは正直なところなかなか難しいのかなというのが印象でございます。
#52
○小川敏夫君 何か私が指摘した悪巧みは合法的にできることをお認めいただいちゃったような答弁でありますけれども。
 つまり、何か中途半端に技術的なんですよね、これ。つまり、債権譲渡は自由だ、もう譲渡禁止の特約なんか無視していいんだと言いながら、じゃ、無視するなら、金銭債権はそもそも誰から払ってもらおうと全く違いはないんだから、全く無視して、債務者の利益なんか無視しちゃえばこういう問題は起きない。だけど、いやいや、そうはいったって、債務者には債権者を特定したい、そういった利益もあるからというふうに考えるから、そっちの利益を守るなんて言ってこんな技法的なことをやったら、私が指摘した隙間ができちゃったわけですよ。金銭債務以外の何らかの特色がある債務なら別ですけれども、金銭債務ならとにかく譲渡禁止特約そのものがもう効力を有しないぐらいに思い切った改正すればこういう問題は生じなかったんですけどね。
 私は、だから、この部分に関しては、何か中途半端で、かえって悪人に、悪知恵を働かせた人間が不法な利益を得るような、あるいは譲受人が思わぬ損害を被るようなことができる抜け道があるんで、私はこの改正、規定の仕方は欠陥があるというふうに思いますが。
 ちょっと時間がまたなくなっちゃって、一つだけ、債権譲渡ですけれども、相殺です。
 今までも、四百六十九条の二項ですか、二項の二かな、つまり「譲受人の取得した債権の発生原因である契約に基づいて生じた債権」、つまり債権譲渡がされた、まあ債権譲渡がされる前に既に発生した債権だったら債務者が相殺していいよと。それから、発生していなくても、債権譲渡の前に発生原因がある債権なら相殺してもいいよというのが、これは原則だと思うんですよね。ところが、今度は、今あった四百六十九条の二項の二はそうじゃないんで、債権譲渡がされた後に発生した債権でも相殺できるっていうんですよね。
 これは、そうすると、一言で言えば、譲受人が思わぬ損害を受けるんじゃないか。そうすると、譲受人とすれば、そういうリスクがあれば、そもそも債権譲渡を資金調達手段の円滑化という趣旨で広げた趣旨には反する規定じゃないかと思うんですが、これはいかがでしょう。
#53
○政府参考人(小川秀樹君) これも債権譲渡による利益と相殺の期待とのバランスということだと思いますが、御指摘いただきました四百六十九条の二項においても、対抗要件の具備の前の原因に基づいて生じた債権ということですので、譲受人の取得した債権の発生原因である契約に基づいて生じた……(発言する者あり)
 具備時より後の原因に基づいて生じたものであっても、譲渡された債権の発生原因である契約に基づいて生じたものであるときには相殺の期待が生じていると、それは保護に値する相殺の期待だという理解をしておりまして、その上で一号の規定を設けたものでございます。
#54
○小川敏夫君 すると、私、これまたいろいろ悪巧みを考えるわけですよ。継続的取引をしていますよね。債務者がいる、譲渡人から材料を買って、だから材料を買ったから売掛金債務があるわけですよね。で、売掛金が譲渡されちゃうと。一方で、その債務者はその買った商品を今度加工してまた譲渡人に売買すると、その売買代金があると。で、今のような場合、債権譲渡した後に発生した売買代金は相殺できるんですか、できないんですか。
#55
○政府参考人(小川秀樹君) 別の原因ということになりますので、できないというふうに考えられます。
#56
○小川敏夫君 そうすると、この二項の二が言っているのは、具体的にどういう事例を言っているんですか。
#57
○政府参考人(小川秀樹君) 債権の具体例といたしましては、将来発生する売買代金債権を将来債権として譲渡する合意がされ、その対抗要件が具備された後にその売買代金債権の発生原因であります売買契約が締結されたが、その売買契約に基づいて損害賠償債権が事後的に発生したという事案における当該損害賠償債権が典型的な対象ということが言えようかと思います。
#58
○小川敏夫君 将来債権を売買すると。将来の債権を売買するけれども、その将来の債権の基本は定まっているけれども、金額はその取引状況によって増減すると、こういう場合を想定しているわけですか。ちょっと申し訳ありませんけど、今の説明聞いただけで、どういう具体例かすっと頭に入らないんですよね。
 もう時間が来ちゃったから、またこの委員会の外で少し説明いただいて、改めて、また私が疑問を、悪巧みの道がないかどうか、しっかり考えて質問させていただきたいと思いますけれども、済みません、何かもう本当にいろいろ聞きたいことがあるんだけど、今日も質問項目をすごい残しちゃいましたけど、そういうことで、今日の質問は終わります。
#59
○仁比聡平君 日本共産党の仁比聡平でございます。
 先週の金曜日に衆議院の法務委員会において共謀罪法案を強行採決した政府・与党、断じて許せない。委員会に差し戻して、本会議の上程なんか絶対駄目だと、徹底審議を衆議院の法務委員会において尽くすことを強く求めたいと思います。あわせて、百二十年ぶりのこの債権法改正を私たちが徹底して十分な審議をできる環境を壊していくこの与党のやり方というのも断じて許せない。
 大臣に本当はお尋ねすること自体がもう怒りでこらえられないぐらいですけれども、そういう下ですから、開かれた以上お尋ねしたいのは、あなた方が強行採決を行って、週末に世論調査が行われましたけれども、共同通信の行った世論調査において、説明不十分という声が七七%に上っている。当然御存じだと思いますが、これ、大臣、どんな御認識ですか。
#60
○国務大臣(金田勝年君) 仁比委員のただいまの御指摘に対しましては、御指摘ございました報道があったことは承知をいたしておりますが、調査方法の詳細等については承知をいたしておりませんので、個別の調査結果についての所感を申し上げることは差し控えたいと考えております。
#61
○仁比聡平君 大臣が世論調査の調査手法を知っているのかとか、共同通信がどんな調査をしたのか知っているのかとか、そんなことを聞いているわけじゃないですよ。
 世論調査で国民が説明不十分だと言っている。説明が不十分だというのは、つまり、あなたを始めとした安倍政権の答弁が、これ、国民には分からないということでしょう。大臣、その自覚はあるんですか。
#62
○国務大臣(金田勝年君) 国会における審議の進め方につきましては国会において判断していただくべき事項でございまして、法務大臣の立場から所感を申し上げることは差し控えたいと思います。
 その上に、その前提に立ちまして、この法案につきましては、様々な観点からこれまでも充実した審議を、参議院におきましても衆議院におきましても審議をいただいてまいりましたことを受け止めておりまして、私としても、予算委員会あるいは法務委員会等の委員会において委員の方々から様々な御質問をいただき、誠実な答弁に努めてきたところであると、このように申し上げたいと思います。
 今後の審議におきましても、国民の皆様に法案の必要性、重要性を御理解をいただいて、与党のみならず皆様からも広く御支持をいただけるよう、これまで同様に分かりやすい丁寧な説明を尽くしてまいりたいと、このように考えておる次第であります。
#63
○仁比聡平君 まず、私、今、国会の審議の進め方、議会の運営の問題について大臣に認識問うているんじゃないんです。
 大臣の答弁の中身そのもの、それが説明不十分、つまり国民には理解ができないという声が八割に上っているでしょうと。御自身が答弁をしてこられて、今もお話ありましたよね、誠実に答弁してきたと。これまでと同様に、今後ともできる限り理解を得ていきたいというわけでしょう。あり得ないじゃないですか。これまで大臣が誠実に答弁してきた、政府参考人もそうなんでしょう、だけれども、分からないと国民が言っている。これまでと同じことをやっていて、これ理解されるわけがない。
 例えば、三月八日の参議院の予算委員会で、私、下見と花見や散歩はどう区別するのかと大臣にお尋ねして、これ、速記を中止するとか、議場で一体これどうなっているのかということになりました。どうやって、外形上区別ができない、法益侵害に向かう危険がという観点からするとそれはないというこの行為をどうやって処罰するというのか、どう捜査するというのか、これ大きな国民的な疑問になりましたよね。一般紙あるいはテレビの報道でも随分紹介されるようになりました。
 与党は、外形的行為、外形的な事情というもので区別するんだみたいな答弁を四月の二十八日に林局長に求めたけれども、私どもの議員のその日の質問で、いや、外形上区別できないじゃないかと聞かれて、大臣、よく紹介されているとおりですが、ビールと弁当を持っていれば花見、地図と双眼鏡なら下見だと、そういう答弁された。
 これ、これで誠実に答弁して、これで国民の不安が払拭された、そういうことなんですか。
#64
○国務大臣(金田勝年君) 仁比委員からはテロ等準備罪の法案の、私どもは、実行準備行為というものを計画に加えて初めてこれが行われたときにその処罰範囲というものの対象、処罰の対象というふうになるし、捜査の対象となるというこの中で、組織的犯罪集団という限定を置いた主体がその対象であるということも含めて様々な議論が行われてきましたが、その議論にただいま御質問が及んでおりますので、私から申し上げますと、私としては、テロ等準備罪につきましては、犯罪の主体のただいまのような限定、組織的犯罪集団への限定、それから、一般の会社や市民団体、労働組合などの正当な活動を行っている団体が適用対象とはならないということを一層明確にしたつもりでありますし、さらに、犯罪の計画行為だけでは処罰されなくて、実行準備行為があって初めて処罰の対象となることによりまして、内心を処罰するものでもないことについても一層明確になったということを申し上げてまいりました。そして、処罰範囲が限定されたものになっているということ、こうした点を始めとして、このテロ等準備罪の法案につきましては、国民の皆様方の御理解を得られるように丁寧な答弁に、そのポイントをしっかりと踏まえた上で答弁に努めてきたところでありますが、ただいまの御質問をいただきましたので、引き続き誠実な丁寧な説明を国民の皆様に対して申し上げたいということを申し上げたわけであります。
 ただ、今、花見と下見の話が出ましたので申し上げますと、あくまでも、犯罪の下見行為あるいは外形的には花見との区別というふうな話になった場合には、やはり前提として申し上げているところからしっかりと受け止めていただかなければいけないんだと、このように思っております。
 計画をしたものであるか否かで判断をするという前提、計画に基づく行為であるかどうかで判断するという視点、それから、計画に基づく行為と認められるかの判断方法としては、やはり犯行場所や逃走経路あるいは下見の必要性が認められる場所といったものに他に特段の理由もないのに赴いたのであれば下見行為である可能性が高いと言える一方、それが計画と無関係な場所なのであれば実行準備行為であるとは言えないということになるということも申し上げてきたつもりであります。同時に、主観的要素の判断方法というものについても申し上げてまいりました。ある行為……(発言する者あり)それから、実行準備行為に当たるかどうかの判断方法についても、携帯品やその状況といった外形的な事情から区別され得るものであると考えられますが、その行為が実行準備行為に当たるか否かについては、個別具体的な事実関係を離れて一概に申し上げることは困難であるという前提の上で、一般論として申し上げれば、例えば地図等を携行し、地図に書き込みをしたり、計画された犯罪の遂行上意味のある場所の写真を撮ったりしながら歩くなどの外形的な事情が認められる場合には実行準備行為と認定する積極的事情となると考えられることも申し上げてきたつもりであります。
 そして、一般論として申し上げれば、そういう実行準備行為と認められない場合、証拠上、下見目的であったことが明らかとならない場合には実行準備行為とは認められないんだということも証拠上の議論として申し上げてまいりました。
 そういうふうな全てを含めて御理解をいただきたいものと思います。
#65
○仁比聡平君 いや、結局、大臣、長々まがまがしい言葉をいっぱい並べて、その上で、やっぱりビールを持っていれば花見、双眼鏡や地図だったらば下見というわけですよ。それが分からないと国民は不安を募らせているわけですね。
 今、計画との結び付きというお話されたから、ちょっと一問だけそこ聞きますけど、計画というのは別に文書になっている必要はない。メールやLINEのやり取りでも成立することはあり得るというのは、もうこれまでも議論してきたとおり、確認をしてきたとおりで、結局、外から見て分からない歩いている行為があるでしょう。これが大臣のおっしゃる計画に基づいているものかどうかというのは、その計画、つまり話合いの中身、やり取りの真意、これをつかまないことには分からないということになるじゃないですか。外から見て危険はない行為、その内心という言葉がお嫌いなら考えでいいですよ。頭の中でもいいですよ。どういう真意でその行動を行っているのかということが大臣の関心事ということになるわけでしょう。大臣、違いますか。
#66
○国務大臣(金田勝年君) 捜査のお話、そして監視のお話にお話が……(発言する者あり)いや、及びましたので。捜査というのは、過去に行われた犯罪について行われるのが通例であります。この点は、テロ等準備罪についても同様であります。すなわち、組織的犯罪集団が関与する重大な犯罪について、計画行為と実行準備行為のいずれもが行われた後にそのような行為が行われたことの具体的な嫌疑が発生した場合に行われるのが通例であります。
 したがって、リアルタイムで、リアルタイムで捜査をするのではなくて、これらの行為が終了した後に……(発言する者あり)大事なことを申し上げております。リアルタイムで捜査するのではなく、これらの行為が終了した後に行われるのが通例でありまして、そのように開始された捜査によって収集された証拠に基づいて計画の内容や実行準備行為の該当性などが判断されることになるわけであります。
 したがって、計画行為が行われる前から監視していなければ計画の内容を把握できない、あるいは実行準備行為に当たるかどうかについては判断できないといったことはないわけであります。
#67
○仁比聡平君 いや、私が問うたのは、ずっと監視していないと駄目かという議論じゃないじゃないですか。(発言する者あり)何を言っているんですか。大臣が勝手に論点を設定して、私の質問に答えない。そういう議論の仕方を衆議院の法務委員会でもぐるぐるぐるぐる行って、三十時間少し超えたからといって強行採決をしたのがあなた方だ。それを許されないと国民が大きな声を上げているんですよ。
 私が尋ねたことを大臣は今もおっしゃいましたよ。だって、証拠で認定するんでしょう。証拠で認定する対象は何かと、それは人のやり取りの真意でしょうと。だから、その人の内心に立ち入って、考え方に立ち入って、どんな真意で歩いているのか、それによって花見と下見、区別するというわけだから、だったらばそこを、捜査でも調査でもいいけれども、今日はここはおいておきますが、その対象にするということじゃないですか。
 大臣、幾ら言葉を並べても結局大臣の答弁がそういうことになってしまうのは、共謀罪法案というのが憲法違反の共謀罪にほかならないからなんです。強行採決を受けて国会を包囲した若い世代の、未来のための公共の皆さんの集会で、説明できない法案通すなという声が私はとても強く印象に残りました。徹底して審議を尽くして私は廃案にすべきだと思いますが、そのためにも衆議院の法務委員会に法案を差し戻すということを強く求めたいと思うんです。
 この問題についてジョセフ・ケナタッチ国連特別報告者が安倍首相に送付した書簡がございます。これも大問題になっておりますが、これ、大臣としてはどのような検討を行われたんですか。
#68
○国務大臣(金田勝年君) 五月十八日、先週の金曜でございますか、国連人権理事会のプライバシーの権利特別報告者が、日本政府に対する書簡におきまして、現在国会で審議中のテロ等準備罪処罰法案について懸念を表明したことは承知をいたしております。
 しかしながら、書簡の中で記載されております懸念や指摘事項の多くは、本法案の内容や国際的組織犯罪防止条約の義務等につきまして必ずしも十分な理解のない中で記載されているように見受けられると受け止めております。直接説明する機会が得られることもなく公開書簡が一方的に発出されたこと、そして同書簡の内容が明らかにバランスを欠き不適切なものであることにつきましては、外務当局において強く抗議をしたものと承知をいたしております。
 そもそも国連は、累次の国連総会決議や安保理決議により繰り返し表明しておりますとおり、我が国を含む残された数少ない未締結国に対しまして国際組織犯罪防止条約の早期締結と実施を求めている、プライバシーの権利特別報告者は独立した個人の資格で人権状況の調査、報告を行う立場にあり、その報告、勧告等は国連の立場を反映するものではないものと考えております。
 申し上げるまでもなく、テロ等準備罪は国際組織犯罪防止条約を締結するに伴って必要なものとして新設するものであるところ、二つございます。一つは、先ほどから申し上げておりますが、対象となる団体を明文で組織的犯罪集団に限定することによって、一般の会社や市民団体、労働組合などの正当な活動を行っている団体が適用対象とはならないことを一層明確にした点、それからもう一つの点は……(発言する者あり)したがって、こういう考えの下、私どもは、本法案はプライバシーの権利を含めおよそ人権を不当に制約するものではないことは明らかであると、このように私どもの考え方は関係省庁と整理をいたしておりますし、同時に、外務当局において強く抗議をしたものと承知をいたしております。
 以上であります。(発言する者あり)
#69
○仁比聡平君 いや、なるほどと自民党が言っていますが、驚くべき国際社会に対する不遜な態度じゃないですか。
 このケナタッチさんは、個人というふうに官房長官もえらく強調して言葉を使っていますけど、人権理事会の決議に基づいて、プライバシーに関する権利の特別報告者としての任務に基づく照会でしょう。これ、様々な国際人権や国際法に関して、あるいは様々な条約の実施に関してこうしたやり取りが行われることはありますけれども、四項目情報提供を求められていますが、これ、情報提供するべきものなのではないんですか。
#70
○国務大臣(金田勝年君) ただいまの御指摘のプライバシーの権利特別報告者からの指摘につきましては、その書簡の中身を精査をいたしまして、外交ルートを通じてしかるべき回答をするものと承知をいたしております。
#71
○仁比聡平君 いや、しかるべき回答って、求められている情報提供をするというのが日本政府の務めであって、法務省はそこに関わって、実際に、さっき大臣、少しおっしゃり始めたけれども、だから私は、国際社会に、国連に対してそれを言ったらどうかというんですよ。そういう情報提供をしっかりやるというのが政府の立場でしょう。それを、その書簡が届いたしな、いきなり不適切だ、抗議するという、これ、国連人権理事会に対しても極めて不誠実な態度だと私は思うんですけれども、大臣、そういう認識はないんですか。
#72
○国務大臣(金田勝年君) 国連特別報告者の書簡に対する政府としての対応につきましては、本来、外務省から答弁すべきものであろうと、このように思います。したがって、私、法務大臣としてお尋ねをいただきましたので、テロ等準備罪処罰法案を所管する立場からあえて申し上げておりましたのが先ほどのお答えであります。
#73
○仁比聡平君 この特別報告者から、我が国官房長官の声明に対する反論が出ております。これ、大臣、御存じなのかどうか知りませんけれども。
 私が日本政府から受け取った強い抗議は、ただ怒りの言葉が並べられているだけで、全く中身のあるものではありませんでした、その抗議は私の書簡の実質的内容について一つの点においても反論するものではありませんでしたと厳しく述べ、私は安倍晋三内閣総理大臣に向けて書いた書簡における全ての単語、ピリオド、コンマに至るまで維持し続けます、日本政府がこのような手段で行動し、これだけ拙速に深刻な欠陥のある法案を押し通すことを正当化することは絶対にできません、こう述べていますよ。今こそ日本政府は立ち止まって内省を深め、より良い方法で物事をなすことができることに気付くべきときなのです、私が書簡にてアウトラインをお示しした全ての保護措置を導入するために、必要な時間を掛けて世界基準の民主主義国家としての道に歩を進めるべきときです。
 このような反論が出されるほど、日本政府の今の態度というのは極めて不誠実。言い方を変えますと、国内で異論や批判を数の力で封殺する、国際社会の人道法にのっとった道理のある指摘に対しても、こうやって言わば感情的に反発する。これ、異論を封じて何が何でもというごり押しをする安倍政権に対する、私、この特別報告者の書簡というのは極めて痛烈な批判だと思うんですけれども、大臣、いかがですか。
#74
○国務大臣(金田勝年君) ただいま委員から御指摘ございました報道があるということは承知をいたしております。日本政府として正式に反論を受けたわけではないことから、コメントすることは差し控えたいと、このように考えております。
 いずれにしましても、先ほどから申し上げておりますように、特別報告者からの指摘につきましては外交ルートを通じてしかるべく回答をしていくものと承知をいたしております。
#75
○仁比聡平君 大臣、そんなふうにおっしゃっても、この特別報告者から、日本政府がこのような手段で行動し、これだけ拙速に深刻な欠陥のある法案を押し通すことを正当化することは絶対にできませんと言われている、その法案の責任者ですからね、大臣。外務省がとか菅官房長官とかいう、そういう話じゃないですから。大臣御自身の責任なんですから、大臣の答弁の中身の問題なんですから。そのことをよくわきまえた上で、衆議院の本会議の上程など断じて許さないということを厳しく申し上げておきたいと思います。
 時間の制限がありますから、民法改正案について私、資料をお配りをさせていただきました。平成八年の十二月二日付けでSACO最終報告がお手元に見えるかと思います。二枚目に、米兵などによる事件の被害者に対するSACO見舞金制度についての資料がありますけれども、防衛省、おいでいただいておりますが、このSACO見舞金の制度、とりわけこの二枚目の平成十年一月十三日の通知にあります、裁判所の確定判決額が米国政府による補償額を上回る事例が生じた場合の取扱いというものを措置している理由、趣旨、これについてまずお答えいただけますか。
#76
○政府参考人(深山延暁君) お答え申し上げます。
 委員が配付された資料にございますこの制度でございますけれども、これは我々SACO見舞金制度と呼んでおりますけれども、これはSACO最終報告にございますように、米国政府による支払額が裁判所の確定判決の額に満たない事例が生じておるという事例を踏まえまして、その差額を埋めるために創設されたものでございます。
 要件といたしましては、被害者側が地位協定十八条六項の規定により米側から補償金の支払を受けていること、加害者たる合衆国軍隊の軍人等を被告とした損害賠償請求訴訟において確定判決を得ていること、確定判決額が地位協定十八条六項の規定による補償額を上回っていることを支給要件として行っているものでございます。
#77
○仁比聡平君 そもそも、伺いたいんですけど、確定判決額というのは、これは取り返しの付かない事件、事故によって国民が米軍関係者による被害を受ける、これに対して国民の皆さんが裁判に訴えて出て、本当に大変な裁判を闘って、やっと判決が確定するということになるわけですよね。にもかかわらず、今局長がおっしゃったけど、その確定判決額が米軍によって支払われない、米国政府によってその確定金額よりも下回るという事例があるんだと。これ、一体どういうことなんですか。米軍は日本の裁判所に従わないわけですね、つまり。米政府は、自分が言う金額の基準というのをこれははっきりさせているんですか。
#78
○政府参考人(深山延暁君) お答え申し上げます。
 先ほど申し上げました地位協定十八条第六項の規定は、当事者間の示談が困難な場合に、防衛省が被害者側から補償請求を受けまして、その内容を審査して米側に報告書を送付した上で、米側が慰謝料の額を決定し、被害者の受諾を得た上で支払うということになっておるところでございます。
 一方、被害者側が訴訟を起こすことは全くそれは禁じられているものでもなく、そうしたことはあるわけでございまして、そうした場合にその確定判決が米側の決定した支払額を上回る、確定判決の方が大きくなるということが現実にございます。
 こうした米国の政府の支払額につきましては最終的には米国政府の自らの判断に基づいて決定していることでございますので、こうした事象が起こるものと承知しております。
#79
○仁比聡平君 おかしな話でしょう。だって、公務外で米軍関係者が事件、事故を起こす。これについて管轄権が我が国にあるのはこれは当たり前で、そこで民事の判決が、損害賠償金額が確定する。ところが、アメリカはそれに従わない。自分の基準で勝手に決めて、今、慰謝料金額とおっしゃいましたけどね、その慰謝料金額をどのように決定するのか、その基準を明らかにしていますかと言っているんです。
#80
○政府参考人(深山延暁君) お答え申し上げます。
 先ほど言いましたように、地位協定に基づく枠組みにおきましては、防衛省がその被害者からの補償要求を、精査を受け、米側に報告書を送付するということになっております。一方、米側がその後どのような具体的積算方法について決定したかについては、当方としては説明を受けたことはございません。
#81
○仁比聡平君 金額さえ明らかにしないんですよ。それで日本の確定判決に従わないんですよ。
 しかも、米側が支払をするときには、加害米兵を免責するという条項に被害者が同意しないとできないんですよ。このSACO見舞金制度というのも、この一枚目の支給要件(1)にそれがあるように、加害米兵の責任をもう免除しますということを約束しないと支払われない、始まらないということになっているんですよ。
 取り返しの付かない被害を受けた被害者が何で加害米兵を許さなきゃいけないのか。許すんだったら、米国政府は判決どおりに満額をよこせというのは、これは当然の心情じゃないですか。この議論は赤嶺政賢議員始め様々されていますから、今日はもうここではしませんけれども、これ以上。
 民事局長、ちょっとお尋ねしたいんですが、この防衛施設庁の通知にある裁判所の確定判決額というこの言葉の中には、一般論として言えば、遅延損害金を始めとして、確定判決の主文で認められる請求権というのはこれ含まれますよね。
#82
○政府参考人(小川秀樹君) お答えいたします。
 もちろん文書の趣旨によろうかと思いますが、一般的に言えば、裁判所の確定判決額には今議員御指摘の点についても含まれるものというふうに理解しております。
#83
○仁比聡平君 ところが、二枚目、皆さんも御覧いただくと、支給額というのは、見舞金の額は裁判所の確定判決額と地位協定第十八条六項の規定による補償額の差額とするとした上で、なお、遅延損害金及び訴訟費用は支給の対象としないと書いてあるわけです。これ、防衛省、なぜですか。
#84
○政府参考人(深山延暁君) お答え申し上げます。
 一般に、確定判決において遅延損害金の支払を命じられている場合は、その遅延損害金は支払われるべきものと承知しておりますが、この判決による遅延損害金の支払は、不法行為をそもそも行った者に対して示されたものであると認識しております。
 他方、この制度、SACO見舞金の制度におきます防衛省の立場は、防衛省自ら不法行為を行ったわけではなく、また損害賠償責任を負わない場合であっても、被害者救済のためにSACO見舞金を支払ってきていると、そうした性格で支払われているものと考えております。
 したがいまして、防衛省としては、賠償金が支払われないことに対する延滞料の性格を有する遅延損害金については支払の対象としてはおりません。こうした制度の下ではありますけれども、今後ともこのSACO見舞金の適切な運用という、支払には努めてまいりたいと考えておるところでございます。
#85
○仁比聡平君 いや、とても理解ができないんですよ。理屈が通っていないと思うんですけれども。
 延滞料の性格を有するから払いませんというのは、どういう意味ですか。
#86
○政府参考人(深山延暁君) お答え申し上げます。
 今申し上げましたが、そもそも判決で認められている賠償額と申しますそれが支払われない場合に遅延損害金が付くというのは、犯罪を行った者に対する責任を問うという観点から出ているものだと考えております。
 一方、これは、私どもがお支払いしているSACO見舞金といいますのは、見舞金という名称を付けておりますけれども、こうした制度の結果、日米の地位協定に基づく算定、そして訴訟、その結果出た差額を埋めると、そのことによって被害者救済を行うという趣旨でございます。
 したがいまして、我々日本政府側が延滞の責任を負ってそれを払うという性質のものではないと考えまして、損害額との差額ということでこれまで運用してきているところでございます。
#87
○仁比聡平君 ちょっと先に後の部分を確認しますけど、つまり被害者救済のために発生している被害を補填する、穴埋めをするという、そういう趣旨のものだということですね。
#88
○政府参考人(深山延暁君) このSACO見舞金の性格はそのようなものであると理解しております。
#89
○仁比聡平君 つまり、発生している被害を補償する、補填する、それは、局長、あれですよ、防衛省、損害賠償というものはそういうものですよ。防衛省が、あるいは日本国がその責任、損害賠償の責任を負っているのか否かは、ちょっとここはおいておきましょう。自衛隊が組織としてとか自衛隊員が行った行為というのとはこれは場面が違うでしょうと、そういう意味でおっしゃっているなら、それはそうだろうということなんですけれども。
 ちょっと民事局長にお尋ねしますけど、そもそも損害賠償と遅延損害金ということなんですけど、事件、事故による被害というのは取り返しが付きません。けれども、事後的に損害を補填することによって公平あるいは正義を回復するというのが損害賠償制度の趣旨で、遅延損害金、不法行為の場合に遅延損害金が不法行為のときから発生するということになっていることも含めて、事件、事故のときから完全に損害が補償されるまでの遅延損害金が支払われてこそ公平と、私はそういう考え方なんだと思うんですけど、いかがでしょうか。
#90
○政府参考人(小川秀樹君) いわゆる不法行為に基づく損害賠償の考え方は、基本的にそういうところだと思います。
#91
○仁比聡平君 防衛省深山局長が先ほど、延滞料というのは、つまりこれ遅延損害金とおっしゃりたいんだと思うんですけど、これ、犯罪を行った責任を問うものであり、あたかも防衛省は犯罪は行っていませんと、何だかそんな答弁されたんですが、それ理由にならないでしょう。
#92
○政府参考人(深山延暁君) お答え申し上げます。
 累次御答弁申し上げておりますけれども、今のSACO見舞金の運用の基になっている考え方は、私が御答弁いたしましたとおり、遅延損害金、これにつきましては、本来その不法行為の責任を有する者に問われるべきものであろうということで、我々は支払っていないということでございます。
 その一方で、じゃ、なぜ見舞金を払っているかといいますと、見舞金という言葉にもございます、厳密にこれは法的に日本政府に責任があるかどうかという問題ではなくて、やはり被害者の方々に相当の償いを申し上げるべきだということによりまして、確定判決と米側から支払われた額の差額、それはそこには遅延損害金を含まないという解釈をしておりますので、今御批判をいただいているところでございますが、そうしたことでできておるものでございますので、私どもはこれまでそれでやってきておりまして、そうしたことについてはそれなりの妥当性があるのではないかと考えておるところでございます。
#93
○仁比聡平君 御答弁になっていないんですよ。
 被害者に償いをするんだと、今償いというお言葉も使われたとおり、つまり被害を回復する、それは民法の言葉で言えば損害賠償ですよ。そうおっしゃりながら、その損害賠償の重要な構成部分である遅延損害金は除くと言うから、なぜですかと聞いても、その理由が結局立たないじゃないですか。今の御答弁は、妥当であると思いますと最後おっしゃったのみでしょう。
 ちょっと別の角度で聞くんですけど、資料のその次のページに、SACO見舞金についての防衛省のホームページから資料をお配りしていますが、この見舞金について、相続人が複数存在する場合、相続人の一人が損害賠償請求訴訟において確定判決を得ていれば、損害賠償請求訴訟を提起していない被害者の相続人もSACO見舞金の支給対象となり得ますのでお問い合わせくださいという紹介があるんですね。
 これ、相続人に見舞金請求権があるというのは、私、当然のことだと思うんです。このときにほかの相続人の委任状も求める、そういう手続をしておられると思うんですが、これはなぜですか。
#94
○政府参考人(深山延暁君) 委員御指摘のとおり、米軍人等が起こした事件などにより亡くなられた被害者の相続人が複数存在する場合に、相続人の一人が損害賠償請求訴訟において確定判決を得た後、SACO見舞金の支給を受けるためには、ほかの相続人の全ての方からの委任状を得ることを求めております、そういった必要があると説明しております。これは、SACO見舞金の支給に当たり、相続人間で争いが生じることのないよう、あらかじめ他の相続人の御意向を個別に書面により明らかにするためにこのような措置をお願いしているわけでございます。
#95
○仁比聡平君 昨日レクでも確認をしましたけれども、もちろん、相続人という言葉が使われているとおり、亡くなられた被害者の全ての相続関係を明らかにして、その全ての相続人の下でこの手続が行われるようにしているということなんですよ。
 これ、つまり、亡くなられた被害者の損害賠償債権を相続人が相続しているからというのが大前提になっているんじゃないですか。
#96
○政府参考人(深山延暁君) お答え申し上げます。
 SACO見舞金という名目ではございますが、実質的にやはり損害を補填申し上げる、差額を埋めるという趣旨でありますから、実質的には損害賠償請求権、そうしたものと同旨に扱うのが適当だと考えまして、このような措置をとっております。
#97
○仁比聡平君 いや、今大事な答弁されたと思うんですよね。見舞金という制度の名前にはなっているけれども、実質は損害賠償請求権であり、これと同旨に扱うというのが妥当ということなんですが、これ、ちょっと言い方変えると、SACO見舞金というのは、加害者とそれから米政府によっても補填されない損害を日本政府が補填するもの。言い方変えると、平たく言うと肩代わりすると言ってもいいのかもしれませんが、その見舞金の実態、実質、あるいは原点や出発点というのは、これは被害者の損害賠償債権。だからこそ、確定判決額というのを皆さん問題にしている、そういうことなんじゃないですか。
#98
○政府参考人(深山延暁君) 累次御答弁申しておりますが、このSACO見舞金ができた趣旨に鑑みますと、これは、確定判決が出たにもかかわらず米側からの支払がそれに満たず、そこが満たされなかったという、そうしたことの不利益を埋めてさしあげるという観点でつくられたというものだと認識しております。
#99
○仁比聡平君 先ほどの答弁は大事な答弁だと思うんですよね。
 大臣、そうした実質を有する見舞金なのに遅延損害金は払わないというと、これ、おかしいと思いませんか。
#100
○国務大臣(金田勝年君) 仁比委員のただいまの御指摘を聞いておりました。そして、御質問にお答えいたしますが、御質問の見舞金をいかなる範囲で支払うべきかについては法務省としてはお答えする立場にはありませんので、答弁を差し控えさせていただきたいと思います。
#101
○仁比聡平君 私は、大臣の所管ではないというのはそれはそうでしょうと。だけれども、同じく損害賠償を実質としているのに、この見舞金のときだけ遅延損害金が払われないというのは、これは極めて不合理だし、不当な結果をもたらしているわけですよね。
 これ、ちょっとお配りする時間がありませんでしたけれども、防衛省に、実際に米側が慰謝料の金額を出してくるまでの期間、実際に米側からの支払が被害者になされるまでに要した期間というのを、これまでSACO見舞金が適用されている十三件の例について資料で提出していただいたんですが、最も長い期間は二千八百二十七日ですよ。つまり、七年九か月、米側は事件、事故が発生してから自らの支払の額を出してこないわけです。次に長いのは二千二百四十七日間ですよ、六年二か月。その次は四年七か月であり、四年四か月というのもある。
 先ほど民事局長に御答弁いただいたように、事件、事故のときから不法行為に基づく損害賠償債権の遅延損害金というのが発生するわけです。例えば、金額で一番大きい確定判決額というのは二億五百三十四万七千円という事故ですけれども、その遅延損害金が六年、七年払われないことによって被害者の側に生まれる損失というのは極めて大きいものがあるでしょう。
 お金の問題じゃないんですよ。けれども、その被害者の被害が回復されない、その損失リスクが、加害者や米政府ではなく、全て取り返しの付かない被害を受けた被害者の側に押し付けられると。これ、大臣、公平に反すると思いませんか。損害賠償制度というのが根本からひっくり返ってしまいませんか。
#102
○政府参考人(小川秀樹君) 先ほどの点でございますが、見舞金制度を所管する立場にございません私どもといたしましては、この点につきましては答弁を差し控えたいというふうに考えております。
#103
○仁比聡平君 大臣も民事局長もこの場ではそうおっしゃらざるを得ないのかもしれないんですけど、今日傍聴席においでいただいているのは、皆さん、二〇〇六年の一月三日に横須賀市で起こった事件、御存じだと思います。米空母キティーホークの乗組員の米兵が佐藤好重さんに対して、顔面を殴る、体をコンクリートの壁を目掛けて投げ付ける、腹部などを足で多数回踏み付けるなどの暴行に及んで現金約一万五千円を奪った。結果、佐藤好重さんは右の腎臓及び肝臓の破裂による出血死で殺害をされたという強盗殺人事件です。
 この事件で、おいでになっている御遺族の民事訴訟の判決が二〇〇九年の五月二十日、横浜地裁で確定をしました。判決金額は約六千五百万円、及び事件発生の日から支払済みまで年五%の遅延損害金の支払が日本の裁判所によって命じられているわけですね。これが確定している。ところが、今も一円も払われていないわけです。
 この間の損失リスク、この国民の損害を全て御遺族に押し付けると、そんな仕組みになっているこのSACO見舞金というのは、やっぱりこれ改めるべきでしょう。
 防衛省、この遅延損害金を全く払いません、それが妥当ですと言うけれども、損害賠償の制度の趣旨からしたらそんなことは通らない。これ、変えるべきじゃないですか。
#104
○政府参考人(深山延暁君) 本制度の趣旨につきましては委員に御答弁申し上げたとおりでございますが、今の御指摘は十分承りまして研究はいたしたいと思っておりますけれども、現在我々が運用している趣旨につきましては今申し上げたとおりであると考えております。それについては御理解を賜りたいと思っております。
#105
○仁比聡平君 時間が参りましたので、私の提起、この委員会での議論の趣旨を踏まえて研究したいとおっしゃったことはとても大事なことだと思いますから、これからも徹底して議論していきます。
 第三者個人保証について大事な質問を残していますけれども、次回、徹底して審議することを申し上げて、今日は質問を終わります。
#106
○東徹君 日本維新の会の東徹でございます。
 今日も質問通告を幾つもしてきておりまして、ちょっと時間の関係で順番を変えさせていただきたいというふうに思います。
 今日は、通告では天下り問題、それから公証人のこと、それからまた暴利行為、そして第三者保証、定型約款ということで大きく五つ質問通告をしておりますけれども、少し順番を変えさせていただいて質問させていただきたいと思います。
 ずっと公証人のことをやってきておりますが、やっぱり聞けば聞くほど、公証役場、公証人、このお金の問題とか、またそれから公募のこと、そういったところの問題がどうもやっぱり納得がいきませんので、今日も少し公証人のことについてまずはお聞きをさせていただきたいと思います。
 これまでもお話をさせて、質問させていただきましたが、四百九十六人公証人がおられて、そのうちの四百九十三人は前職が裁判所職員、法務省の職員の方であった者ということになっていまして、平均年齢は六十四歳で、そして大阪法務局の所属の公証人は月の平均収入が三百四十万円で、東京法務局の所属公証人の月平均は、手数料収入ですけれども、これも三百二十万円ということであります。
 ほとんどが裁判官、検察の方たちが公証人になっておる、民間の方で司法書士さんがなられたのはたった三人ということになるわけですけれども、この間からちょっとお金の話をさせていただいておりますが、公証人の金銭管理についてまず伺いたいと思います。
 五月十六日の委員会でも議論させていただきましたけれども、公証人の収入は手数料収入のみということでありますけれども、この手数料収入などの金銭の管理、これは一体誰がどのようにやっているのか、まずお伺いしたいと思います。
#107
○政府参考人(小川秀樹君) 公証人役場には、一般に公証人のほかに書記や事務補助者などが勤務しているものと承知しておりまして、各公証人役場において金銭の管理を具体的に誰がどのような形で行っているかについては、私ども法務省といたしましても把握はしておりません。
#108
○東徹君 いや、それやっぱりおかしいと思うんですね。公証役場というのは公的機関なわけでしょう。公証役場は公的機関なわけで、公証人は公務員なわけですよね。やっぱりきちっと金銭管理がどのように行われているのか、公証役場でですよ、それはきちっとルールがあるはずだと思いますし、そのルールというものをきちっと把握していないとおかしいと思いますが、こういった、きちっとその公証役場の、言ってみれば、来られた方が公証人に依頼をして、そして手数料を払って帰られるわけですから、そのお金をどういうふうに管理しているかということぐらいは、これ公証役場の中できちっとルールが、どこの公証役場でもきちんと同じルールに基づいて金銭管理をしていくということはこれ当然のことだと思いますけれども、違うんですかね。これは大臣にお伺いしたいと思いますけど。
#109
○国務大臣(金田勝年君) 委員の御質問にお答えをいたします。
 公証人役場には、一般に公証人のほか書記あるいは事務補助者などが勤務しているものと承知をいたしております。
 各公証人役場において金銭の管理を具体的に誰がどのように行っているのかについては、法務省としては把握をしていないのが現状であります。
#110
○東徹君 把握していないんだったら、是非これ把握するようにしていただきたいと思いますが、どうですか。
#111
○政府参考人(小川秀樹君) 公証人制度それ自体が、繰り返し申し上げていますように、独立採算制で個人事業主と同じ立場でございますので、金銭の管理の方法、もちろん手数料収入が幾らかということについては国としても重要な関心を持ちますので、手数料について何件幾らということについての申告を国側にしてもらうことは重要なことなんですが、その他の金銭の管理そのものにつきましては、個人事業主と同じ立場でございますので、私どもとして深く関わる理由が多分今の制度ではないということだと思います。
#112
○東徹君 これ何度も言いますけれども、手数料収入が何件で幾らというのがきちっと把握されているんであれば、そうしたら、あと、そこが入ってきて、事務処理とかそういった事務機器とか、書記とかそういった人件費が出ていって、じゃ、どういうふうにお金が最後手元に残るのかとか残らないのかとか、そのお金を、じゃ誰が管理しているかとか、僕これ非常に大事なことだと思いますよ。
 ちゃんと通帳作っているわけでしょう。一体、通帳は誰の名義で通帳作るんですか、これ。
#113
○政府参考人(小川秀樹君) それも恐らくそれぞれの公証人のやり方によると思います。
 もちろん公証人個人が管理するのであれば公証人名義ということが一般的には考えられると思いますが、私どもとしてその点について関知しているわけではございません。
#114
○東徹君 じゃ、法務省は、公証に係るコストは把握していないという答弁もありましたけれども、公証人本人は、自分が業務を行っていく上で必要な経費は当然これ把握しているはずだと思います。これ把握していなければ税務申告なんてできないというふうに思うんですけれども、公証人はこれ、どのようにして税務署に確定申告するんですか。
#115
○政府参考人(小川秀樹君) 各公証人が具体的にいかなる方法で税務申告をしているのかについては、これも法務省として特に関知するわけではございませんで、ほかの個人事業主と同様に、もちろん法令に基づいて適切に税務申告を行っているものと理解しております。具体的には、確定申告であれば、総収入あるいは必要な経費の控除、その上での所得の計算などによって申告書を提出するという、いわゆる個人事業主と同様の手法を取るものと理解しております。
#116
○東徹君 ですから、公証人が確定申告するときには、全体の収入が幾らあって、そして経費としてこういったものに支払って、自分の個人の収入が幾らですよという書類を作るわけでしょう。間違いないですよね。
#117
○政府参考人(小川秀樹君) もちろん作ることになると思います。
#118
○東徹君 じゃ、作るんだったら、そういった書類があるわけですから、それをきちんと公表すれば、もう書類があるわけですから、ちゃんと公的機関として僕はきちんとやっているんだなということになるというふうに思うんですね。だから、きちっとそれぞれの公証人が確定申告するためには、やっぱりどれだけの総収入があって、そしてどれだけに人件費を支払ってとか、書記に、事務機器に払ってとか、そういったことをきちっとやるわけですから、あるはずです。
 公証人は、実質的には公務員であるけれども個人事業主であって、どれだけ公正証書を作成したかによって収入が変わるという成果主義を取っているわけですけれども、公証人が同じ役場に複数人いる場合、まあほとんどだと思いますけれども、公証人間で収支を平準化しているというふうに聞きましたが、まず、このような事実があるんですか。
#119
○政府参考人(小川秀樹君) 御指摘いただきましたように、公証人が複数人いる合同役場、ほとんどということはございませんで、地方には一人の公証役場も多数ございますが、公証人が複数人いる合同役場におきましては、一般に収支の平準化が行われているものと承知しております。
#120
○東徹君 恐らく東京だとか大阪だとか、そういったところでは当然これは複数人おるわけでありますけれども、じゃ、どのようにやってこれ平準化するんですか。
#121
○政府参考人(小川秀樹君) これは公証人法施行規則に規定がございまして、同規則の五十四条でございますが、二人以上の公証人は、事務の合理化及び品位の向上を図るために必要があるときは、役場又は収支の全部若しくは一部を共にする合同役場を設けることができるとされており、その収支の平準化は、この規定に従いまして公証人が複数人いる合同役場における制度として行われております。
 収支の平準化は、各合同役場において規約を定めて行っておりまして、具体的な取決めの内容は各合同役場において様々なものがあるというふうに承知しております。
#122
○東徹君 それだけの結構細かいルールを作って金銭管理をしているということを御存じなわけじゃないですか。そうでしょう。今、どうやって金銭管理しているのか把握していませんと言いましたけれども、結局、複数人公証人がいる場合は、平準化するために結構ルールを作って、平準化をするためのルールがあるわけですよ。ということは、どういうふうにそのお金をやり取りするのかというのはやっぱり決めているわけですよね。
 公証役場が公証人が勤める公的機関であるならば、国民から公正公平であるというふうに見てもらえるように、これ、透明性をやっぱり確保していくというのは私はこれは行政機関として当然大事なことだと思います、行政機関ですから。そうでしょう。公証役場ごとに決算書を作って公表する、どのぐらいのコストが掛かっていて、国民が負担する手数料はどのように使われているのかということを示すことは、これは当然、当然なことだと思います。
 公証役場ごとに決算書を作ってこれを公表すべきというふうに考えますが、大臣の見解をお伺いしたいと思います。
#123
○国務大臣(金田勝年君) 公証人は、弁護士あるいは司法書士といった他の法律専門職種と同様に、経営におきましては個人事業主としての性格を有しておりまして、その事業に関する情報につきましては個人情報として保護されるべきものでございます。したがいまして、法務省としては、公証人役場ごとに決算書を作成して公表することは適切ではないと、このように考えております。
#124
○東徹君 いや、違いますよ。公証役場は公的機関ですから、公証人は公務員ですから、ほかの弁護士さんや司法書士さんが個人事業主として自分で事業やっているのとは全然違うわけですよ。大臣、そうでしょう。公証役場ですよ。公証役場という公的機関で公務員という身分でもってこの公証制度をやっているわけですから、ほかの弁護士さんや司法書士さんと同じにしちゃ駄目です、これは。そんな個人事業主と同じ扱いにはなりません。
 確かに、これ、成果主義でやっているのかもしれませんけれども、ここはそういうふうにして、公的機関で公務員だったら、きちっと公的機関としてのやっぱり透明性の確保というのは大事です。
#125
○政府参考人(小川秀樹君) まずは第一に、公務員でありましても当然個人情報の問題は生じてまいります。
 それから、これは公証人制度そのものの問題ということになるのかもしれませんが、弁護士や司法書士と同じように法律専門職種として経営において個人事業主の性格を有しているということにつきましては、前回も御説明したかもしれませんが、比較法的にもあるいは歴史的に見てもそういう状況でございまして、決して日本の仕組みが非常に異例であるということではないというふうに理解しております。
#126
○東徹君 誰も他国と比較してくれなんて言っていません。
 やっぱりこれは、もう一つは、個人情報だと言いますけれども、それは、別に誰々さんが幾ら給料をもらっているのかということまで示せなんということは一切言っていません。誰もそこまでのことは、私も言いません。でも、やっぱりある程度、公証役場が公的機関で、そして、その公的機関で公証人が公務員という身分の下で仕事をしている公的機関、でもってその手数料というのは、これはもう法令で決めるわけですよね。だからこそ、やっぱりきちっと行政の透明性の確保というのが大事だというのは、これ当たり前の話ですよ。そんな機関ほかにないですよ、恐らく。きちっとその公証役場の制度、この公証人の制度がどうなっているのか、これは透明化するべきです。金田大臣、それぐらいのことはもう是非やれと号令を掛けていただきたいと思います。
 前回、前々回だったか、ちょっと忘れましたけれども、大阪地方検察庁の検事正が平成二十七年十月二日に退職して、その十七日後の同年十月十九日に大阪梅田の公証役場に再就職しているケースがあるわけですね。これ、私の方が通告がちょっと足らなかったかもしれませんけれども、五月九日の委員会においてこれ質問したんですけれども、このケースについてですが、在職中に公募に応じているということでいいのか、また、この公募に応募した人はこの方一人だけなのか、確認したいと思います。
#127
○政府参考人(高嶋智光君) お答えいたします。
 御指摘の者は、平成二十七年の三月に実施した公証人の公募に対して応募し採用されております。検察官として在職中に公証人に応募したものでございます。また、当該公証人の公募に応じた者は一名でありました。
#128
○東徹君 応募したのは一名なんですよね。ということは、もうその応募に当たって、法務省の後輩が在職中の先輩に再就職の希望を聞くためだけの面談だったというふうに取られても仕方がないと思うんですね。
 大臣、やっぱり、こういったことが行われている、これも大阪地方検察庁の検事正が大阪梅田の公証役場、この管轄も同じところなわけですよ。だから、公証人の仕事をしていたら、またこれ知っている方がお会いして、難しい相続のこととかやっぱり話を聞いて公正証書を作るということもあるわけですから、こういったことはちょっと問題だと思うんですけれども、いかがですか。
#129
○国務大臣(金田勝年君) 国家公務員法第百六条の三第一項が在職中の利害関係企業等に対する求職行為を原則として禁止した趣旨というものは、職員が離職後に再就職する目的でその地位や権限を利用して企業等に便宜を図る行為を防ぐための行為規制を導入いたしまして公務の公正性を確保することにあると、このように考えております。
 これに対し、公証人は、公証役場により採用されるのではなくて、法務大臣が任命する実質的な国家公務員であって、利害関係企業等には当たらないことから、御指摘のような例が再就職規制やその趣旨に抵触するものではないものと理解をいたしております。
#130
○東徹君 問題はもう一つありまして、平成二十八年の公募数、これ百十二件あったわけですけれども、このうち応募がなかったものが何件で一人しか応募がなかったものが何件か、伺いたいと思います。
#131
○政府参考人(小川秀樹君) お答えいたします。
 平成二十八年度の公募数百十二件のうち、応募した者がなかったのが五十四件、応募した者が一人であったものが五十一件でございます。
#132
○東徹君 平成二十八年で百十二件公募が行われて、そのうち五十八件の公募に六十六人のこれ応募があったんですよね。そのうち、五十八件のうち一人しか応募がなかったものが五十一件という状況なんですけれども、間違いないですかね。
#133
○政府参考人(小川秀樹君) 平成二十八年の公募数百十二件のうち、応募した者がなかったのが五十四件で、応募した者が一人だったものは五十一件でございます。
#134
○東徹君 入札でも一者入札というのがよく問題になりますけれども、ここでも一人入札、一人応募というんですかね、一人公募というか、結局、応募していても、ここで一人誰かいますかといっても、結局、応募してくるのは一人しかいない、そういう状況になっているわけですね。五十八件のうち一人しか応募がなかったものが五十一件、八八%、ほとんどが一人しか応募しないというふうな形になっているということですね。このように一人応募ばかりになっている理由についてどのように考えているのか、お伺いしたいと思います。
#135
○政府参考人(小川秀樹君) 平成二十八年度の公証人の公募に対する応募につきましては、公募数百十二件のうち応募者がなかったものが五十四件、応募者が一人であったものが五十一件であったほか、応募者が二人以上であったものが七件ということになります。
 このように公募に対する応募が少ない理由は、様々考えられるところではございますが、一つには、公証人には兼業禁止義務が課せられておりますため、弁護士など既に職を持っている者が応募することが実際上困難であるなどの事情が理由の一つではないかということも考えられるところでございまして、引き続き、法務省といたしましても、幅広い人材が得られるよう公募制度の周知に努めてまいりたいというふうに考えております。
#136
○東徹君 結局法務省のOBの方をこれ当てはめていったというような形に取られても仕方がないというふうに思うんですが、金田大臣、いかがでしょうか。
#137
○国務大臣(金田勝年君) お答えをいたします。
 公募は市区町村単位で指定されるところでございまして、どこに応募するかは応募者の選択に委ねられておると、このように言えるのではないかと考えます。このため、一般論として申し上げれば、居住地と役場の距離あるいは規模といったものを考慮いたしまして応募先を選択しているものと推測されるところでございます。
 なお、実際に、同一の採用予定地の公募に対して複数の応募がある一方で、応募がない場所もあるというのが現状であるわけであります。
#138
○東徹君 一つは、先ほどから申していますように、この公証人の制度でありますけれども、やはり透明化というのは必要ですよ。国民の皆さんから手数料をもらっている、その手数料の金額というのは、これは法令で決めているわけです。公証役場というのは公的機関で公証人は公務員、そういうことであるならば、これはやっぱり行政機関ですから、行政機関であり公務員ですから、だから、ここはきちっとその透明化を図るために、どれだけの収入があって、どういったことにお金が使われていて、どれぐらいのお金が人件費として公証人に払われている。私は何もどの公証人が幾らもらっているかまで示せなんということは言っていません。言っていませんけれども、やっぱりほとんどの方が、四百九十六人中四百九十三人までが法務省のOBの方がそこへ行かれているわけですから、言ってみれば大大天下り団体みたいなものですよ、天下り団体みたいなものですよ。だからこそ、やっぱりきちっとそこは透明化すべきでしょうということを申し上げさせていただいております。
 もう一つは、その公募の在り方なんですけれども、何回もこれ指摘させていただいていますように、その司法書士等の方々というのは、もうこれ五年前、平成二十四年度に一人だけしか採用されていないんです。でも、毎年、五年前から、三人、三人、四人、六人、五人と、この公募には一応申し込んでいるんですけれども、実際に採用されたのは五年前の一人だけしか採用されていないというこの状況。検事とか判事の方は、ほぼ、ほとんどが応募に手を挙げればそのまま任命されているという現状。そういったことを考えれば、この公証役場、公証人制度、こういったことのまずはやっぱり金銭のことについての透明性、そして公募も透明性をしっかりと確保していく、そういうことをしなかったら、国民からやはり一体どうなっているんだというふうな目で見られるというのは当然ですから、大臣、是非ここは改善をしていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
#139
○国務大臣(金田勝年君) 公証人の任用のための公募に当たりましては、私ども法務省としては、官報への掲載あるいは法務局の掲示板への掲示といったほかに、他の法務省関係の採用や試験と同様に広く法務省のホームページに公募情報を掲載することによりまして、適切に公募を行っているところであります。
 それにもかかわらず、全体として、先ほどの御指摘にもございましたが、応募が少ないというのは、公証人の職務専念義務、兼業禁止義務といったものが弁護士など既に職を持っていらっしゃる方の応募を実際上困難にしている面があるといったような理由によるものと考えられるわけでありまして、いずれにしましても、公証人としてふさわしい者からの応募を確保することが重要であると、このように考えております。
 こうした観点から、法務省としても、公募制度の周知、実施した試験の概要の公開といった措置を行っているところでありますが、引き続き応募の環境整備に努めてまいりたいと考えております。
 委員御指摘の透明化というお話については、私も非常に中身については聞き入ってはおりますが、これまで答弁を申し上げてきたような事情があることも御理解を賜りたいと、このように思っております。
#140
○東徹君 透明性の確保というのは大事ですよ、金田大臣、それはもうやっぱり公的機関で公務員の方がやっているわけですから。そこは、国民から見たときにきちんとやっぱり見える化をしていくということは、これは当然やっていかなことでありまして、今までの大臣の御答弁では全然理解は得られません。
 私は何でこんなことをくどくどくどくど言うのかというと、この間これ読売新聞に出ていた記事なんですけれども、今日皆さんにお配りしている資料の中で、国土交通省と法務省なんですが、その利害先求職、これ天下り問題、文部科学省の方で天下り問題非常に問題になりました。問題がなってから、職員による在職中の利害関係企業等への求職活動の有無のチェック、こういったことが、内閣人事局の方から全省庁へチェックの徹底を改めてこれ要請があったということなんですけれども、法務省はこの要請を受けて求職活動の確認を開始したけれども、天下り規制を軽んじてきたと、実態が浮き彫りになったということがこれ書かれておるわけですね。
 「天下り規制 人事局の通知軽視」というふうなことになっておるわけですけれども、これ、職員による在職中の利害関係者への求職活動に関して、形式的なチェックをですね、しておらず、本人や所属部署へ確認していなかったというふうにされておるわけですけれども、これは事実なんですか。
#141
○政府参考人(高嶋智光君) お答えいたします。
 御指摘の報道は承知しておりまして、この報道を基にしますと、あたかも法務省がこの人事局の調査の指示に関して何ら形式的なチェックしかしていないかのように読める部分もあるんですが、実はそうではございません。
 当省におきましては、一月に問題となりました再就職あっせん問題が発生する以前、それからその以後、その後も、この提出された届出の記載内容につきましては、人事課がということではなくて、その各部局がそれぞれ独自で確認をしてまいりました。今回もしております。報道は、人事当局が直接個々人に当たって確認しているわけではないということなんですが、若干そういう意味では不正確な記載になっているのかなというふうに考えております。
 これまで当省が内閣人事局の通知を軽視して利害関係の有無を確認してこなかったという指摘は当たらないものと考えておりますので、御了解いただきたいと思います。
#142
○東徹君 そうしたら、あれですか、所属部署ではやっているけれども、法務省としてはやっていなかったということですか。
#143
○政府参考人(高嶋智光君) 官房人事課の指示に基づきまして、各所属部署が、各部局が独自に直接確認をしているということであります。その確認も、届出内容から利害関係がないことが明白な再就職先もございます。しかし、利害関係がないことが必ずしも明白でない場合につきましては、直接その再就職先に当たりまして確認する作業をしたということでございます。
#144
○東徹君 これ、やっぱりこういう記事を書かれること自体が不本意じゃないですか。こういうことを書かれるということは、やっぱり法務省としてきちっとこの天下りのことについて対応していなかったというふうに取られても仕方がないと思うんですね。各部局の方ではやっていたんだったら、法務省としてもきちっとこういうふうにやりましたとやっぱり言えるような状況をつくっていくべきだというふうに思います。
 何か時間があと一分しかありませんので、次にお伺いしたいと思いますけれども、四月十七日の内閣人事局から改めて通知が出される前ですけれども、三月二十二日の法務委員会で、一般財団法人民事法務協会において、ハローワークを隠れみのにして法務省OBが面接を行って法務省のOBを採用している、言わばこれは組織的な天下りであるというふうに指摘しましたけれども、委員会でも具体的な組織的天下り事例を指摘されながら、なぜこれ調査をしなかったのか。本当に、法務省は天下り問題に対して問題意識が低いんじゃないのかというふうに思うんですが、いかがでしょうか。
#145
○国務大臣(金田勝年君) 法務省におきましては、これまでも各部局を中心に再就職に係る届出について再就職先との利害関係の有無を確認してきたと報告を受けております。再就職規制に関する問題意識が低いとの指摘は当たらないものと考えております。
 いずれにしましても、法務省としては、再就職規制に違反する行為の有無をより的確にチェックするための方策の検討を含めまして、今後とも再就職規制の遵守の徹底に努めてまいりたいと、このように考えておる次第であります。
#146
○東徹君 前に指摘させていただいたこの一般財団法人民事法務協会ですけれども、これはハローワークというのを隠れみのにして法務省のOBが面接を行っているわけですよね。で、法務省のOBを採用していると。これは本当に、言わばこれ組織的な天下りをやっているというふうに取られても仕方がないというふうに思います。
 是非、こういった問題の改善、そしてまた公証人の公募の件、そしてまたこの公証人の金銭的な収支の透明化、こういったことを是非行っていただきたいというふうに思いますので、よろしくお願いいたします。
 時間が来ましたので、これで終わらせていただきます。ありがとうございました。
#147
○委員長(秋野公造君) 午後一時四十分に再開することとし、休憩いたします。
   午後零時四十一分休憩
     ─────・─────
   午後一時四十分開会
#148
○委員長(秋野公造君) ただいまから法務委員会を再開いたします。
 休憩前に引き続き、民法の一部を改正する法律案及び民法の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案の両案を一括して議題とし、質疑を行います。
 質疑のある方は順次御発言願います。
#149
○糸数慶子君 沖縄の風、糸数慶子です。
 十六日に質問できなかった定型約款に関して、まず質問したいと思います。
 定型約款については、個別に相手方と合意をすることなく内容を変更できるとされています。これも、効果が重大であるにもかかわらず、要件は大変抽象的であります。定型約款を変更できる要件の一つに定型約款の変更が相手方の一般の利益に適合するときとありますが、相手方の一般の利益というのは具体的にどのような場合を想定しているのか、お答えいただきたいと思います。
 また、もう一つの要件である、変更の必要性、変更後の内容の相当性などの変更に係る事情に照らして合理的なものというのも極めて抽象的であります。こちらについてももう少し具体的に、どのような判断基準となるのか、お示しいただきたいと思います。
#150
○政府参考人(小川秀樹君) お答えいたします。
 改正法案においては、定型約款準備者が相手方と合意をすることなく一方的に契約の内容を変更する、いわゆる定型約款の変更ですが、その要件といたしまして、定型約款の変更が相手方の一般の利益に適合するとき、これは一項一号でございます、それから、変更が契約の目的に反せず、かつ、変更に係る事情に照らして合理的な変更であるときであることを要するものとしております。こちらの方が二号でございます。
 このうち、一号の相手方の一般の利益に適合するときというのは、特定の相手方の利益に適合することでは足りず、変更の内容が相手方全員の利益に適合する場合を意味するものでございます。この場合に相手方の合意がなくても一方的に契約の内容を変更することができるということといたしましたのは、要するに、相手方の一般の利益に適合するときであれば、通常、相手方が変更に合意すると言えるからでございます。この具体例としては、例えば、継続的に一定のサービスを有料で提供する契約において、顧客である相手方が支払義務を負う金額を減額する場合のほか、定型約款準備者が提供するサービスの内容を拡充するような場合、こういったものが想定されるところでございます。
 次に、変更が契約の目的に反せず、かつ、変更に係る事情に照らして合理的な変更であるとき、これを定型約款の変更の要件とした理由でございますが、法令の変更や経済情勢、経営状況に変動があったときなどに、それに対応して定型約款を変更する必要性があるため、契約の目的に反しないことなどの厳格な要件の下でこのような変更も許容すべきものと考えられるからであります。
 そして、変更に係る事情に照らして合理的な変更であるときという要件については、変更に係る事情といたしまして、変更の必要性、変更後の内容の相当性、定型約款の変更をすることがある旨の定めの有無及びその内容が例示されていることからも明らかなとおり、これは、事業者側の事情のみならず、相手方の事情も含めて総合的に考慮した上で客観的に見て合理的であると言えなければならないという趣旨でございます。したがいまして、相手方の事情として、変更後の契約内容が顧客にどのような不利益をどの程度与えるのか、あるいはその軽減措置が図られているのか、軽減措置の効果がどのようなものであるのかといったことを考慮することは当然のことでございます。
 以上でございます。
#151
○糸数慶子君 定型約款のこの変更については、定型約款準備者が変更後の定型約款の内容及びその効力発生時期をインターネットの利用その他の適切な方法により周知しなければならないというふうに規定されています。しかし、今なおインターネットを利用できない高齢の方も大勢いらっしゃるわけですが、そういう方々に約款の変更を周知するのはその他適切な方法ということになるわけですが、具体的にはどのような方法になるのでしょうか。
#152
○政府参考人(小川秀樹君) お答えいたします。
 まず、改正法案の説明でございますが、定型約款の変更をするには、五百四十八条の四第一項各号に掲げます先ほど申し上げました実体的な要件のほか、定型約款準備者は、定型約款を変更する旨と変更後の定型約款の内容や変更の効力発生時期をインターネットの利用その他の適切な方法により周知しなければならないこととされております。そして、五百四十八条の四の第三項では、定型約款の変更が相手方一般の利益に適合する場合に当たらない場合において、効力発生時期が到来するまでにこの周知をしなかったときには、相手方保護の観点から変更の効力は生じないこととしております。
 この周知でございますが、周知というのは広く知らせることを意味するものでございます。相手方にインターネットを利用できない方が含まれている場合であっても、その方も他の者を介するなどして変更後の定型約款の内容などを知り得るところですので、直ちにインターネットの利用以外の方法によることまで必要となり、例えば書面などによる個別の通知が必要になるわけではないと考えられます。また、この定型約款の変更は契約の締結後に行われるものであるため、相手方の住所などが判明しないケースもありますが、そのようなケースにおいてはインターネットを利用した周知は安価で効果的なものとして評価をすることも可能でございます。
 もっとも、定型約款の変更には多様なものが含まれ得るところから、インターネットを利用した周知では足りないケースもあるものと考えられます。例えば、顧客の不利益を軽減する措置がとられており、その措置があるからこそ定型約款の変更が合理的であると言うことができるといったケースにおきましては、顧客の年齢層などの属性などにもよるところではございますが、各顧客に個別に書面で通知をし、軽減措置を実行する機会を与えなければならないことも、こういったこともあり得るものと解されるところでございます。
 このように、定型約款の変更に当たりましては、個別の事案に応じて適切な方法による周知を行うことが求められているものでありまして、その趣旨を十分に周知してまいりたいというふうに考えております。
#153
○糸数慶子君 その他の適切な方法にということで今お伺いしたわけですが、インターネットを利用できない方々に対する個別の通知をきちんとやっていただくということで受け止めてよろしいでしょうか。
#154
○政府参考人(小川秀樹君) もちろん、先ほど申し上げましたように、個別の事案によるわけですし、内容などによるわけですが、いずれにいたしましても、適切な通知が行われるように私どもとしても十分周知してまいりたいというふうに考えております。
#155
○糸数慶子君 次に、十一日の参考人質疑で参考人から伺った御意見に関連してお尋ねしたいと思います。
 まず、本法案の提案理由の一つである国民一般に分かりやすいものとするということについてお伺いいたします。
 鳥畑参考人は、債務者保証の部分について、以前に比べて分かりやすくなったかもしれないが、国民一般にとってはまだ難しいままではないかと述べられました。これは、保証の規定に限らず、民法を国民一般に分かりやすいものとするために更なる検討が必要であると思われますが、それに対する御認識を伺いたいと思います。
#156
○政府参考人(小川秀樹君) まず、裁判の実務におきましては、多数の事件について民法を解釈あるいは適用する中で膨大な数の判例が蓄積されてきております。さらに、学説なども、確立した学説上の考え方が実務で広く受け入れられ、言わば不文のルールとして解釈の前提となっているものも多うございます。しかし、それらの中には、条文からは必ずしも容易に読み取ることのできないものも少なくないため、法律の専門家でない国民一般にとっては民法が定める基本的なルールが分かりにくい状態になっているという指摘がございます。
 そのため、改正法案におきましては、民法のうち取引社会を支える最も基本的な法的インフラであります契約に関する規定を中心に、社会経済の変化への対応を図るための見直しを行うだけでなく、これに加えて国民一般に分かりやすいものとする観点からの見直しも行うこととしたものでございます。
 民法を国民一般に分かりやすいものとするとの観点は重要でございまして、この点は、今後とも、社会経済の変化を踏まえて、裁判例や学説上の考え方の一つであったものが実務に広く受け入れられて確立したルールとなり、それが基本的なルールに該当すると判断するに至ったときはその明文化を検討することは、これはあり得るというふうに考えております。
 もっとも、民法の債権関係の規定は取引社会を支える最も基本的な法的インフラであることから、その規定内容の見直しは取引社会に多大な影響を及ぼすおそれがあるなど、その改正に伴う社会的なコスト、これも大きなものとなり得るところでございます。
 そのため、法務省といたしましては、社会経済の変化への対応の必要性と改正に要するコストを勘案しながら、改正法案の施行後の状況を注視した上で更なる民法改正の必要性について検討してまいりたいというふうに考えております。
#157
○糸数慶子君 次に、個人保証についてお伺いいたします。
 山野目参考人は、今回改正対象とならなかった項目のうち改正対象とすべきであったと思われる項目についての私の質問に対して、個人保証の出口に対するコントロール、つまり、今回規定された公正証書の作成という入口のコントロールを擦り抜けて保証せざるを得なくなった方についての責任の制限を挙げられました。山野目参考人は、この個人保証の出口コントロールについて、今後も政府において引き続き必要な見直しを考えていただきたいと述べられています。
 この点についての政府の考えをお伺いいたします。
#158
○政府参考人(小川秀樹君) まず、法制審議会におきましても、個人保証人の責任を事後的に減免する法的な仕組みを設けることの当否、これが検討されたものと承知しております。これに対しましては、保証債務の額が保証人の資力を超えている場合には、その超過部分は元々回収することができないのであるから、債務の減免などを認めても債権者を害することはないということ、それから、負担している債務が保証債務のみである者は、このような仕組みを導入することによって破産などの手続によらずに生活再建を図ることが可能となることなどを理由といたしまして賛成する意見もございました。
 しかし、他方では、破産などの手続によらずに裁判所が保証人の資産状況を適切に把握することは困難であり、保証債務が保証人の資力に比して過大となっているかどうかの基準の設定も容易ではないこと、それから、保証人の責任が事後的に減免されることがあるとなると、その可能性を念頭に融資をせざるを得なくなり、主債務者の信用を補完するという保証の持つ機能が低下し、その結果、円滑な資金調達に支障が生ずるおそれがあるといった理由を挙げて、このような仕組みに反対する意見も強く主張されたところでございます。
 法制審議会におきましては、このような議論を経ました上で、円滑な資金調達に支障が生ずる懸念を払拭することができないことを重く見て、最終的には保証人の責任の範囲を事後的に制限する法的な仕組みを設けることは見送ることとされたというふうに承知しております。
 これを踏まえまして、改正法案においても個人保証人の責任そのものを限定する規律を設けるとはしておらないわけでございまして、保証人の責任を強制的に減免するなどして事後的に制限する法的な仕組みの創設については慎重な検討が必要であるものというふうに認識しているところでございます。
#159
○糸数慶子君 それでは、これまで質問いたしましたものの政府の答弁に対して疑問が残った内容について再度お伺いをしたいと思います。
 まず、法定利率の表示についてお伺いをしたいと思います。
 法定利率が三%から変動した場合の新しい利率の表示についての質問に対し、民法中に規定するのは困難であるが、変動後の法定利率について十分に周知するという答弁がございました。
 確かに、法定利率が変動するたびに民法改正をするのは難しいことは分かります。しかし、今の仕組みでは、法定利率が変動した後も条文上は改正後の最初の法定利率である三%が残ることになり、変動後の利率は、法務省が予定している周知によらない場合は基準割合を見て判断しなくてはなりません。
 最初の利率変動の場合はそれでもまだいいでしょうが、本改正が施行されたとして、何十年も経過すると、その間に何回か利率が変動することがあり得るわけです。その場合、最初の基準割合から見ていくしか方法がなくなるわけですが、変動後の法定利率は民法上に直接規定しなくても法務大臣が告示するということも可能であります。そうすれば、現在の法定利率は明白ですし、また変動のその判断についても変動時以降の基準割合のみを参照すれば可能となります。現に、法定利率変動の判断基準となる基準割合は法務大臣が告示することとされています。
 現在想定されている法定利率の変動を法務省による周知のみに頼る方法を見直して、変動後の法定利率についても告示等をするつもりはないでしょうか、お伺いいたします。
#160
○政府参考人(小川秀樹君) お答えいたします。
 改正法案では、当初の法定利率を三%と定めた上で、法定利率の変動の仕組み自体を規定しております。他方で、その変動後の数値自体は将来の不確定な数値に基づいて算出されるものでございますので、法律では具体的にこれを規定しておりません。そして、委員御指摘のとおり、改正法案では、法務大臣が基準割合を告示、告示は国の場合には官報によるのが通常でございますが、基準割合を告示することとはしておりますが、変動後の法定利率自体を告示することとはしておりません。
 もっとも、改正法案の仕組みの下では、法定利率が変動することが確定してから現に変動するまでの間、この間に一年程度の期間の猶予がございます。そのため、実際に法定利率が変動する場合には、法務省といたしましては、この猶予期間の中で、官報によってする周知にとどまらず、より国民に伝わりやすい方法によって、これはもう本当に十分な広報を行いまして、変動後の法定利率がどのようなものとなるのかを国民各層に対して十分周知していくという所存でございます。
#161
○糸数慶子君 次に、中間利息控除の利率についてお尋ねいたします。
 中間利息控除は、用いる利率が低いほど被害者保護になるため、法定利率より低い利率とするべきであるという考えについて、辰巳参考人は、損害賠償として適正なものを保障するためには中間利息控除と法定利率は必ずしも同一にする必要はなく、分けて考えてもいいのではないかと述べられております。
 被害者の逸失利益を現在価値に割り戻すと考えますと、今の低金利において三%でも高いと思われますが、改めて法務省の認識をお伺いいたします。
#162
○政府参考人(小川秀樹君) お答えいたします。
 まず、改正法案の説明でございますが、改正法案におきましては、法定利率の適用場面に関する現状の制度の枠組みを維持することといたしまして、中間利息の控除を行う際には、損害賠償の請求権の発生時点、例えば交通事故の場合でありますと事故の時点を基準時といたしまして、その時点における法定利率を適用することとしております。
 委員御指摘のとおり、被害者保護の観点からは、中間利息控除に用いる利率については、法定利率よりも更に引き下げるべきではないかとの御意見があったことは承知しているところでございます。もっとも、法定利率は交通事故の損害賠償に関してみても、一方で遅延損害金の割合に用いられ、他方で逸失利益の中間利息控除に用いられるなど、その適用場面は一様ではございません。したがいまして、このうち中間利息控除に用いる利率のみを引き下げることはかえって不公平感を増すことにもなる上、その引下げ幅によっては損害賠償額が著しく高額化し過ぎるという問題が生じまして、現在の損害賠償実務を混乱させるおそれもございます。
 さらに、運用利率を参照するといっても、厳密に言えば、運用主体の属性や状況、想定される運用期間などによって異なるものでございまして、その制度趣旨を踏まえた適切な数値の設定は極めて困難と言うほかございません。
 そこで、改正法案においては、中間利息の控除を行う際の利率としては法定利率を用いることとしたものでございまして、このことには合理性はあるものというふうに考えているところでございます。
#163
○糸数慶子君 それでは、暴利行為についてお伺いしたいと思います。
 暴利行為の規定を設けることについては、小川民事局長より、この要件の具体化が困難である旨の答弁がありました。また、高須参考人からも同様の意見が述べられました。
 しかし、一般的に暴利行為と言われる、相手方の困窮、さらに経験不足等に乗じて著しく過大な利益を得ることを目的とする行為については、民法第九十条の公序良俗という一般条項ではなく、より具体的な規定を設けるべきであるというふうに思います。高須参考人も、更に議論を重ねて内容を提示できればよかったというふうに述べられていらっしゃいます。
 暴利行為についての規定を設けることについて、今後も検討を続けるべきであるというふうに思いますが、見解をお伺いいたします。
#164
○政府参考人(小川秀樹君) お答えいたします。
 法制審議会では、古い判例を参考といたしまして、暴利行為を無効とする明文の規定を設けることが検討されました。
 しかし、何をもって暴利行為というかを抽象的な要件で規定すると取引への萎縮効果が生ずるとして、経済団体を中心に明文の規定を設けることに反対する意見がございました。また、最近の下級審裁判例では、暴利行為として無効となる範囲が広がりつつあるんだという見方もございました。
 すなわち、最近の下級審裁判例を分析し、契約を無効とするかどうかの判断に当たっては、利益の絶対的な大きさだけでなく、相手方がそのような負担を課せられる理由の存否のほか、相手方の財産状態、さらには主観的態様なども考慮しているとして、著しく過当な利益という要件ではなく、不当な利益という要件とする方がより適切であるという指摘もございました。
 このように、無効とされるべき暴利行為の内容が確立しているとは言い難い現状において、このような近時の裁判例をも踏まえて、その要件を適切に設定することは困難でありまして、必ずしも予測可能性を確保するという目的を達することはできない上、現時点で一定の要件を設定することで将来の議論の発展を阻害しかねないということも考えられたわけでございます。
 そこで、改正法案におきましては、法制審議会における議論の状況を踏まえ、暴利行為に関する規定を設けることとはせず、引き続き、個別の事案に応じた現行法第九十条の解釈に委ねることとしたわけでございます。
 今後のことですが、このように、暴利行為の明文化については、暴利行為という法理自体を否定的に評価する立場だけでなく、肯定的に評価する立場からもあるべき要件を具体的に設定することの困難さが指摘されているというふうに言えようかと思います。
 したがいまして、暴利行為に関する明文の規定を設けるには、少なくとも、具体的な事案を前提とした最高裁判例や下級審裁判例が蓄積し、これについての学説上の議論が積み重ねられて、暴利行為についての適切な要件設定の議論が可能となることが必要ではないかと考えられるところでございます。
 以上申し上げましたように、暴利行為については、引き続き個別の事案に応じた現行法第九十条の解釈に委ねることとした判断には、現状においても合理性があると考えられ、暴利行為を明文化することについては、これは、今後の実務運用の進展などを踏まえました上で慎重な検討が必要になるものというふうに考えているところでございます。
#165
○糸数慶子君 改めてやはり暴利行為についての規定を設けることについて今後も検討を続けていくという御答弁をいただきましたので、改めて御検討を続けていただくということを申し上げたいと思います。
 次に、消費者概念の民法典への導入についてお伺いいたします。
 この点につきまして辰巳参考人は、消費者を代表とする契約弱者というものを取り込んでいくことは可能なのではないかというふうに述べられています。
 民法は私法の一般法であると言われますが、消費者あるいは契約弱者に関する一般的なルールを民法上に取り入れることは可能であり、また取り入れるべきであるというふうに思いますが、この点についての御認識を改めてお伺いいたします。
#166
○政府参考人(小川秀樹君) お答えいたします。
 法制審議会におきましては、市民社会の構成員が多様化し、構成員の間には経験、知識などにおいて格差が生じていることなどから、消費者の概念を民法に取り入れるかどうか、取り入れる場合にこれらの概念をどのように定義するか、また、取り入れる場合にどのような規定を民法に設け、どのような規定を特別法に委ねるのかといった点についての議論がされたわけでございます。また、御指摘いただきましたように、このような観点からは、消費者以外の属性に基づく弱者についての特別なルールを設けることも検討の対象となり得るものと考えられるわけでございます。
 しかし、民法は私法の一般法でございまして、そのことを踏まえますと、取引当事者の情報ですとか交渉力の格差の是正を図るなど消費者の保護それ自体を目的とする規定を設けるのであれば、これはやはり特別法であります消費者契約法によるなど、問題とされている弱者の属性に応じた特別法によってその保護を図るのが基本になるものと考えられるわけでございます。そこで、改正法案では、消費者や契約弱者に関するルールは設けることとはしなかったというものでございます。
 以上でございます。
#167
○糸数慶子君 金田大臣にお伺いしたいと思います。今後の民法改正についてお尋ねいたします。
 私、今回いろいろ御質問いたしました。そして、ほかの委員の方々からも御質問ありました。参考人の方々からも、引き続き民法の改正について検討を続けるべきであるとの意見が述べられました。例えば、山野目参考人は、「二〇〇九年の法務大臣の諮問に立ち返りますと、まず、そもそも今般の民法の見直しは、国民の日常生活や経済活動に関わりの深い契約のルールをより良いものにしようという観点から始められたものであり、この観点からの仕事はこれからも続けられなければなりません。」というふうにおっしゃっていらっしゃいます。
 本法案の提出理由とされている社会経済情勢の変化、これはこれからもますます大きくなっていくというふうに思われます。今回、民法制定から百二十年という時間が経過して初めて抜本的な改正が行われるわけですが、民法を社会経済の実情に合ったものにするための努力はこれで終わるものではありません。今後、百二十年後ということではなく、必要に応じて民法の見直しを行っていくつもりはございますでしょうか。
#168
○国務大臣(金田勝年君) 糸数委員からのただいまの御質問にお答えをいたします。
 民法制定以降これまでの間におきます我が国の社会経済情勢というものは、一つは、取引量が劇的に増大するという状況、それに取引の内容が複雑化、高度化しているという状況、あるいはその一方で情報伝達の手段が飛躍的に発展しているという状況など、様々な面において著しい変化を遂げているわけでありまして、今回の改正法案はこうした社会経済の変化に対応することを目的としているわけであります。今後も民法を社会経済の変化に対応させていくということは極めて重要であると、このように認識をいたしております。
 他方で、民法の債権関係の規定というのは取引社会を支える最も基本的な法的なインフラであることから、その規定内容を変更することに伴う社会的なコストというものにも留意が必要であろうかと考えます。
 そこで、法務省といたしましては、社会経済の変化への対応の必要性と改正に要する社会的なコストを勘案しながら、改正法案の施行後の状況を注視した上で、更なる民法改正の必要性について検討していくということになろうかと考えております。
#169
○糸数慶子君 今回の債権法の分野の改正でありますが、そのほかの民法総則そして物権法については、これは部分的な改正は行われたものの、全面的な改正は行われてはおりません。さらに、法制審議会から九六年に答申されました家族法分野についても部分的な改正にとどまっております。
 そこで、金田大臣にお伺いいたします。
 参議院厚生労働委員会で四月二十日、事実婚カップルの不妊治療費用の助成を求められた塩崎厚生労働大臣は、多様化している家族の在り方などを受け止めていかなければならない、社会はどんどん変化をして家族観も変化をしていると述べた上で、前向きに検討する意向を示されました。
 かつて政府は選択的夫婦別姓制度について、国民意識の動向を把握しつつ、結婚に伴う氏の変更が職業生活にもたらしている支障を解消する観点からも選択的夫婦別氏制度について国民の議論が深まるよう引き続き努めるというふうに答弁をしていました。ところが、安倍政権になると、このことに対して賛成が増えたにもかかわらず、我が国の家族の在り方に深く関わるものであり、国民の間にも様々な意見があることから慎重な検討が必要であるというふうに後退をしております。
 家族の多様化や考え方が様々あるのに選択肢を増やすことに慎重であるということは、これは一部の価値観だけを尊重し、多様化を認めないということになりますが、金田大臣はどのようにお考えでしょうか、お伺いいたします。
#170
○国務大臣(金田勝年君) 糸数委員の御質問にお答えをします。
 まず、民法全般についてのお尋ねであります。
 今回の改正対象以外の分野におきましても、民法を社会経済の変化に適切に対応させていくこと、これは重要であると、このように認識をいたしております。例えば、相続法制の分野につきましては、高齢化社会の進展あるいは家族の在り方に関する国民意識の変化といった社会情勢に鑑み、法制審議会民法(相続関係)部会の場において平成二十七年四月から調査審議が進められているところであります。今後とも、具体的な改正の必要性を見極めながら個別に見直しを検討してまいることになろうかと、このように考えている次第であります。
 そして、ただいまの質問の中にございました平成八年、一九九六年の答申についての御指摘でございますが、平成八年の法制審議会答申では、この答申では、選択的夫婦別氏制度を導入すること、あるいは女性の婚姻開始年齢を十八歳に引き上げることといったことが盛り込まれたところでございました。
 このうち選択的夫婦別氏制度の導入につきましては、我が国の家族の在り方に深く関わる事柄でありまして、国民の大方の理解を得て行うべきものと考えておるところであります。今後も引き続き国民各層の意見を幅広く聞くとともに、国会における議論の動向を注視しながら、慎重に対応を検討する必要があるのではないかと、このように考えておる次第であります。
 そしてまた、婚姻開始年齢につきましてでございますが、他方、平成二十一年の民法の成年年齢に関する法制審議会においても、民法の成年年齢を引き下げる場合には、婚姻適齢については男女とも十八歳とすべきであるとされたところでございます。民法の成年年齢の引下げと併せて検討する必要があるものと認識をいたしております。
 民法の成年年齢を十八歳に引き下げる内容の民法改正案につきましては、現在、法案提出に向けた準備作業を進めているところでありまして、適切な時期に法案を提出したいものと考えておる次第であります。
#171
○糸数慶子君 大臣、私の質問の中身、ちゃんとお聞きになられたんでしょうか。
 先ほど私が質問いたしましたのは、やはりこの大臣の答弁を伺っておりますと、一部の価値観だけを尊重している、そのように思えてなりません。今、法改正されないために、やむを得ず事実婚に至る、又は通称使用では不便だからとペーパー離婚をするカップルが増え続けています。法律婚主義といいながら、名前を名のり続けたいカップルには法律婚させない制度を放置しているというのが現状であります。残念でございます。
 国連の人権条約機関から度々法改正を勧告されておりますけれども、政府は不誠実な対応を取り続けています。一方で、この条約加盟に必要だからといって、衆議院でのあの法務委員会での共謀罪の法案を強行可決をしています。条約加盟に必要だからと共謀罪法案を強行可決している状況の中で、国連からも人権の観点で、私が今質問いたしましたこの件については度々勧告を受けてもなかなか変えていかない。私は、これが人権を尊重する国家なのかと疑わざるを得ません。
 やはり、国連の人権条約機関から度々法改正を勧告されております。もっともっと真摯に受け止めて、そして国民の状況に合わせて変えていく。それも、一部の価値観だけを尊重しているということは認めるわけにはいきません。どうしても今のこの状況を本当に不利益を被っている方々がいらっしゃるということも改めて申し上げたいと思います。
 やはり政府の都合のいいように条約を恣意的に使っている、これが今の現実ではないかと思います。もう少し国際的にも通用するような、人権をきちんと守っていく、国連の人権条約をきちんと真正面から受け止めていく、それを是非政府は誠実に対応していただきたいということを強く申し上げまして、私の質問を終わりたいと思います。
 以上です。ありがとうございました。
#172
○山口和之君 無所属の山口和之でございます。本日も、参考人質疑を踏まえた質問を中心に何点か行いたいと思います。
 まず、損害論について伺います。
 福島第一原発事故に関する集団訴訟では、過失相殺が一つの問題となっていると聞いております。この過失相殺の問題として損害軽減義務というものがあり、今回の改正に関係するものなので、まずお尋ねしたいと思います。
 今回の改正法案では、債務不履行に関する過失相殺の規定に損害軽減義務が盛り込まれておりますが、不法行為に関する過失相殺の規定には盛り込まれておりません。このことは、不法行為においては損害軽減義務違反を理由に過失相殺できないということでよいのか、金田大臣にお伺いしたいと思います。
#173
○国務大臣(金田勝年君) 山口委員の御質問にお答えをいたします。
 ただいまの御指摘の中で、福島第一原発事故に関する訴訟というお話が出ましたが、個別の訴訟事案についてコメントすることは差し控えさせていただきたい、あくまで一般論としてお答えをしたいと、このように考えております。
 まず、債務不履行についてでございますが、御指摘のとおり、今回の改正案では、債務不履行に関する過失相殺に当たって考慮すべき事由として、損害の発生や損害の拡大を追加することにいたしております。これは第四百十八条でございますが、一般に、債務不履行に関する過失相殺に当たりましては損害の発生や損害の拡大に関する債権者の過失も考慮すべきものと解されておりますことから、このような解釈を明文化することにしたものであります。したがって、今回の改正案によりまして過失相殺に関する従来の解釈が変更されるものではないと考えております。
 一方、不法行為についてでありますが、今回の改正案では、不法行為に関する過失相殺の規定、第七百二十二条第二項でございますが、これについては改正をしておりませんが、これにより、債務不履行に関する規定とは異なって、損害の発生や損害の拡大が過失相殺の明示的な考慮事由とされるわけではないわけであります。これは、不法行為に関する過失相殺については多くの様々な判例の蓄積がありまして、明文化に向けた検討課題が多岐にわたるために、不法行為を主な検討対象とはしない今回の改正におきましてはその明文化を見送ることとしたものであります。
 もっとも、不法行為に関する過失相殺においても、一般に、損害の発生や損害の拡大に関して被害者に過失があった場合にはそれを考慮すべきものと解されていることは債務不履行と同様でございまして、こうした解釈が今回の改正によって変更されるものではないと、このように考えておるところであります。
#174
○山口和之君 損害軽減義務は被害者の生活行為に制限を加えるものであって、原発事故などによって生活を根本から破壊された被害者に対して加害者が損害軽減義務を理由に過失相殺の主張をするのは損害の公平な分担という不法行為の趣旨を害するため、仮にそのような主張がなされても認めるべきではないと考えます。
 次に、改正後の民法四百十八条の過失相殺と民法七百二十二条の過失相殺の共通点及び相違点について伺います。また、なぜそのような相違点を生じさせているのかについても説明をお願いします。
#175
○政府参考人(小川秀樹君) まず共通点でございますが、改正法案による改正後の四百十八条の過失相殺は、公平の原則及び信義則から、債務不履行又はこれによる損害の発生若しくは拡大に関する債権者の過失を考慮して債務不履行に関する債務者の損害賠償の責任及びその額を定めることをいいます。また、七百二十二条の過失相殺は、公平の観念から、不法行為の被害者の過失を考慮して加害者の損害賠償額を定めることをいいます。これらはいずれも公平の観念を基礎とする制度でありまして、被害者側の過失を考慮して損害賠償額を減額するものであるという点で共通しております。
 次に、両者の相違点ですが、債務不履行における過失相殺については債務者の賠償責任を否定することも損害賠償額を減額するにとどめることもできますが、不法行為における過失相殺については加害者の賠償責任を否定することはできないと解されていること、また、債務不履行における過失相殺については債権者の過失があれば必ず考慮しなければならないが、不法行為における過失相殺については被害者の過失があっても裁判所はこれを考慮しなくてもよいと解されていることが挙げられます。
 こういった相違点は、不法行為においては、加害者に不法行為がある限りは加害者が損害賠償責任を免れることはないという理念、こういった理念に基づくということで説明されているところでございます。
#176
○山口和之君 参考人の方々の見解を伺ったところ、今回の改正では不法行為における損害については余り議論されていないようであります。法務省としては何をもって損害と考えているのか、伺いたいと思います。
#177
○政府参考人(小川秀樹君) 民法七百九条は、「故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。」ということを規定しております。いかなるものが損害に当たるかについては個別具体的な事案に応じて判断されるものでございますが、加害者が賠償するべき損害については、実務上は一般に、違法な行為と相当因果関係がある損害と解されているところでございます。
#178
○山口和之君 次に、いわゆる懲罰的損害賠償とは何かを伺いたいと思います。
#179
○政府参考人(小川秀樹君) 御指摘ありました懲罰的損害賠償制度につきましては、各国によってその制度内容は異なるものの、一般的には、不法行為の当事者間において、加害行為の悪性が高い場合に、被害者が加害者から実際に生じた損害の賠償に加えて、制裁及び一般予防を目的とする賠償金の支払を受け得るとする制度であるというふうに承知しております。
#180
○山口和之君 懲罰的損害賠償については、我が国の公の秩序に反するから認められないとした最高裁判例があります。ここで言う我が国の公の秩序とは何を指すのか、また、この判例は法改正によって懲罰的損害賠償制度を導入することも否定しているものなのか、教えていただきたいと思います。
#181
○政府参考人(小川秀樹君) 御指摘いただきました最高裁判決は平成九年七月十一日のものでございまして、懲罰的損害賠償の支払を命じたアメリカ合衆国カリフォルニア州の裁判所の判決について、我が国の公の秩序に反するとしたものでございます。
 この判決は、我が国の不法行為に基づく損害賠償制度は、被害者が被った不利益を補填して不法行為がなかったときの状態に回復させることを目的とするものでありまして、加害者に対する制裁及び一般予防を本来的な目的とする懲罰的損害賠償の制度とは本質的に異なるものであるとしております。その上で、懲罰的損害賠償の支払を命ずることは、我が国における不法行為に基づく損害賠償制度の基本原則ないし基本理念と相入れないものであるとして、カリフォルニア州の判決は我が国の公の秩序に反するからその効力を有しないものとするという旨を判示しております。
 したがいまして、御指摘の判決に言う我が国の公の秩序とは、損害の填補を目的とするという我が国の不法行為に基づく損害賠償制度の基本原則ないしは基本理念のことを意味するものと理解しております。
 御指摘の最高裁判決は、現行の制度を前提に懲罰的損害賠償制度が我が国の公の秩序に反するかどうかを判示したものでございまして、将来法改正によって懲罰的損害賠償制度を導入することの可否について判示したものではございません。そのため、この判決が法改正による懲罰的損害賠償制度の導入まで否定しているか否かについては明らかではないというふうに解されるところでございます。
#182
○山口和之君 懲罰的損害賠償の導入が難しい理由として日本において民事責任と刑事責任が峻別されていることが挙げられておりますが、民事責任と刑事責任を峻別するメリット、デメリットについて法務省はどのように考えているのかを伺いたいと思います。
#183
○政府参考人(小川秀樹君) 我が国におきましては、民事責任と刑事責任とを峻別し、加害者に対する制裁や一般予防は刑事責任に委ね、民事責任は被害者に生じた損害の填補、すなわち被害者が被った不利益を補填して不法行為がなかった状態に回復させることを目的とするものとする考え方が一般的でございます。こうした両者を峻別する考え方は近代法において初めて確立したものとされておりまして、我が国においても明治時代にこれを踏まえて民法及び刑法が制定されたと言われております。
 これによるメリットでございますが、民事責任と刑事責任について、それぞれ異なる目的の下に要件、効果が定められることによりまして、加害者に対する制裁や一般予防、被害者に生じた損害の填補の両方の目的が達成されることが挙げられようかと思います。他方、両者を峻別することによる具体的なデメリットが存在するとは特に承知しておりません。
#184
○山口和之君 懲罰的損害賠償については、平成十三年六月十二日に提出された司法制度改革審議会の意見書の中で、将来の課題として引き続き検討すべきであるとされておりますが、その後どのような検討がされたのか、なされているのか、伺いたいと思います。
#185
○政府参考人(小川秀樹君) 御指摘のとおり、平成十三年六月十二日付けの司法制度改革審議会の意見書で、懲罰的損害賠償制度について、将来の課題として引き続き検討すべきであるとされております。
 懲罰的損害賠償制度の導入は、損害の填補を目的とするという我が国の不法行為に基づく損害賠償制度の基本原理との整合性が問題となり得るものでございます。また、懲罰的損害賠償制度を設けた場合には、実際上、諸外国における懲罰的損害賠償の支払を命じる判決について、我が国の公の秩序に反するとして、その執行を拒むことが今度は困難になるという一面もあると考えられます。これらの理由から、我が国において一般的に懲罰的損害賠償制度を設けることについては慎重な検討が必要であると考えられ、現時点で懲罰的損害賠償制度の導入に向けた具体的な検討は進められておりません。
 法務省といたしましては、懲罰的損害賠償制度の導入については、今後とも、各関係方面における議論の進展をも注視しながら、適切に対処していきたいと考えているところでございます。
#186
○山口和之君 今回の債権法改正では、不法行為の部分は契約法の改正に必要な限度でしか改正が行われていないようです。不法行為は契約と違って、社会的接触関係になかった当事者たちの利害を調整するものであり、契約よりもルール整備の必要性が高いとも言えます。不法行為に関して、損害の補填の仕方や損害の予防の在り方など、引き続き検討を続けていくべきと考えます。
 続きまして、最近の話題について少し触れたいと思います。
 近年、コンサートチケット等の転売が問題になっておりますが、主催者側は購入者本人しか入場させないといった措置をとっております。今回の法改正で、譲渡制限特約について悪意又は重過失であっても債権譲渡自体は有効になるため、主催者が譲受人の入場を拒むことが難しくなるのではないか、主催者側が入場を拒んだ場合、法律関係がどうなっているかについて伺いたいと思います。
#187
○政府参考人(小川秀樹君) 御指摘いただきましたコンサートチケットなどの転売行為がされた場合の法律関係は、これは個別具体的な事案によりますので一概に申し上げることは困難ではございますが、通常は、コンサート会場への入場等を目的とする債権を譲渡するというのではなくて、コンサートの主催者に対する様々な債権債務を含めて、契約の当事者としての地位を包括的に譲受人に移転するものであるというふうに考えられます。
 このような契約上の地位の移転について、改正法案では、判例や一般的な理解に従い、契約の当事者の一方が第三者との間でその契約上の地位を譲渡する旨の合意をした場合に、その合意どおりの効力が発生するためには契約の相手方の承諾が必要であるとしております。
 したがいまして、チケットなどを主催者の承諾を得ることなく転売行為をした場合には、この規定に基づいて契約上の地位の移転の効力が生じないことになるため、主催者は購入者を債権者として扱えばよく、チケットなどの譲受人の入場を拒むことができると考えられます。したがいまして、改正法案の下で入場を拒むことが難しくなるということはございません。
 なお、仮にコンサートチケットなどの転売行為が債権譲渡であるとされた場合についても、改正法案についてはその譲渡自体は有効であるとされるわけですが、この場合にも、債務者である主催者は譲渡制限特約について悪意又は重過失である譲受人に対してはその債務の履行を拒むことができるとされております。
 したがいまして、チケットなどの転売行為が債権譲渡であるとされる事案におきましても、一般にはチケットの譲受人の入場を拒むことができると考えられます。そのため、やはり入場を拒むことが難しくなるということはないというふうに考えているところでございます。
#188
○山口和之君 チケットの転売、特に高額転売は、アーティストやプロモーター、ファンたちにとって大きな問題となっております。業界自体を揺るがしかねないという声もあり、早急な対策が必要となっているので、今回の民法改正と整合性の取れた有効策の検討を急ぐべきだと思います。
 次に、契約には成立要件と有効要件があるとされておりますが、契約が成立するための要件、成立した契約が有効であるための要件にはそれぞれどのようなものがあるのか。また、昨今現金の売買が問題になっておりますが、番号がぞろ目であるとか印刷ミスがあるとかといった個性があれば別なのかもしれませんが、特に個性のない現金を売買することは契約の有効要件の観点から何か問題はないのか、決済方法がクレジットカードか否かで契約の有効性に違いが生じるのかも含めてお答えをお願いします。
#189
○政府参考人(小川秀樹君) 契約が成立するための要件としては、相対立する複数の意思表示が合致することが必要でございます。合意のみによって契約が成立するか否かは契約類型によって異なり、売買のように合意のみによって成立する諾成契約もありますが、使用貸借のようにいわゆる要物契約とされるものもございます。
 次に、契約の有効要件としては、意思能力、行為能力、詐欺、錯誤などの意思表示の瑕疵のように、契約の当事者に関わる有効要件や契約内容についての有効要件などがあるとされております。契約内容についての有効要件としては、例えば九十条の公序良俗に反する法律行為を無効とする規律などが挙げられます。
 御指摘ありました現金の売買でございますが、金銭も動産の一種でありますため、これを売買の目的物として契約を締結することは可能であり、有効なものとなり得るものでございます。もっとも、先ほど申し上げました契約の有効要件が欠けているとして効力が認められないこともあり得ます。
 例えば、当事者がマネーロンダリング目的で現金を売買する場合には、公序良俗に反するものとして民法九十条により無効とされることがあり得ます。また、買主が自己に全く返済余力がないことを認識しながらクレジットカード決済によって額面を大きく上回る価格で現金を売買し、その現金を費消するといったことも考えられますが、この場合には、売主がこれを知っている場合には、九十条の公序良俗に反する法律行為として売買契約が無効となることもあり得るというふうに考えられます。
#190
○山口和之君 無個性な現金の売買を目的物にするというのは通常ではないような気がします。このような契約を有効なものとして、その内容の実現に法が助力を与える必要があるのかないかは慎重に検討すべきと考えます。
 次に、詐欺、強迫と公序良俗違反について伺いたいと思います。
 民法九十六条の詐欺と刑法二百四十六条の詐欺は同じ表記となっておりますが、どのような関係にあるのか、それぞれの定義を踏まえて教えていただきたい。また、詐欺罪が成立しない場合でも詐欺取消しが認められることはあるのかどうかも伺いたいと思います。
#191
○政府参考人(小川秀樹君) まず、民法九十六条の詐欺とは、表意者を欺罔して錯誤に陥らせ、それによって意思表示をさせる行為であるとされております。そして、民法上、詐欺による意思表示は取り消すことができるとされております。
 他方で、刑法二百四十六条の詐欺とは、人を欺いて財物を交付させることであるとされております。
 これらは同じ文言を用いておりますが、それぞれ別個の概念でありまして、ある行為が各規定の要件に該当するかどうかはそれぞれ独立に判断されます。
 したがいまして、一般的に言えば、ある者の行為について、刑法上は詐欺罪が成立しない場合であっても、民法第九十六条における詐欺には該当し、取消しが認められるということはあり得るものと考えております。
#192
○山口和之君 次に、民法九十六条の強迫と刑法上の脅迫は違う表記となっておりますが、どのような関係にあるのか、それぞれの定義を踏まえて教えていただきたいと思います。また、刑法上の脅迫に当たらない場合でも強迫取消しが認められることはあるのか、それについて伺いたいと思います。
#193
○政府参考人(小川秀樹君) まず、民法九十六条の強迫でございますが、これは、相手方に害悪を示して畏怖を生じさせ、それによって意思表示をさせる行為であるとされております。そして、民法上、強迫による意思表示は取り消すことができるとされております。
 他方で、刑法二百四十九条の恐喝とは、財物を交付させる目的をもってする脅迫をいうとされておりまして、この脅迫は脅かすという方ですが、人を畏怖させるに足りる害悪の告知であるとされております。
 これらはそれぞれ別個の概念でありまして、ある行為が各規定の要件に該当するかどうかはそれぞれ独立に判断されるものでございます。
 したがいまして、一般的に言えば、ある者の行為について、刑法上は脅迫に該当せず恐喝罪が成立しないという場合でありましても、民法九十六条における強迫には該当し、取消しが認められるということはあり得ると考えております。
#194
○山口和之君 犯罪の違法性は公序良俗に反すると言われております。そうすると、少なくとも詐欺罪や恐喝罪の被害者が行った意思表示は公の秩序に反する法律行為として無効を主張することができるのではないかと思いますが、その件についてお伺いしたいと思います。
#195
○政府参考人(小川秀樹君) 犯罪行為そのものを内容とする契約ですとか犯罪に加担する契約は、公序良俗に反して無効とされる典型例であると解されております。したがいまして、詐欺罪や脅迫罪の構成要件に該当するような行為が行われた場合には、その行為は公序良俗違反の行為として無効となることはあり得るところであると考えられております。もっとも、表意者に対する相手方などの行為が刑法の詐欺罪や恐喝罪の構成要件に該当するとしても処罰されることまではないといった事案も想定され、そのような場合には、契約が公序良俗に反するものとして必ず無効となるとまでは言い難いとも考えられます。
 このように、詐欺罪や脅迫罪に該当する行為がされた事案においては、それに基づいてされた法律行為は公序良俗違反により無効となることが多いものと考えられるわけですが、相手方の行為の違法性の程度や結果の重大性などに照らして契約が公序良俗に反するとまで言えないと評価されることはあり得るものと考えられ、あくまでも個別具体的な事案ごとに判断されることになるものと考えているところでございます。
#196
○山口和之君 改正後の民法九十条を見ても、国民は何が公序良俗違反として無効になるかを判断することはできないと思います。法律として書き込むことは難しくても、類型化した上で具体例とともに国民に説明する義務があると思いますが、金田大臣の見解を伺いたいと思います。
#197
○国務大臣(金田勝年君) 山口委員の御質問にお答えをします。
 民法を国民一般に分かりやすいものとするという観点、これは今回の改正の主な目的の一つであります。そして重要なものであると、このように認識をしている次第であります。
 しかしながら、民法第九十条については、公序良俗違反に当たる行為の類型としてどのようなものがあるのか、現時点においても確立した解釈があるわけではありません。また、仮に一定の考え方に基づいて公序良俗違反に当たる行為を類型化して説明することとした場合には、結局その類型に当たるか否かについて議論を生じることとなり、取引への萎縮効果を生ずるといったような弊害もあるものと考えられるわけであります。
 したがいまして、公序良俗違反に当たる行為を類型化して国民に説明をすることにつきましては、今申し上げました観点から慎重な検討を要するものと考えている次第であります。
#198
○山口和之君 民法九十条は非常に重要な条文でありますが、法律の素人がこれを読んでも具体的にどのような法律行為が無効になるかの判断は難しいと思います。解釈が必要な条文についてはしっかりとサポートになる情報を提供していくことが重要ではないかと思っております。そのことについてしっかりと提供していく体制をつくっていただきたいと思います。
 以上で用意していた質問が終わりましたので、これで終わりにさせていただきます。以上です。
#199
○山下雄平君 自由民主党の山下雄平でございます。質問の機会をいただき、誠にありがとうございます。
 今回の民法改正、債権法の分野でございますけれども、債権の分野に入る前に、同じ民法ですけれども、家族法について何点かお伺いしたいというふうに思います。
 私、佐賀県の出身ですけれども、先週、佐賀県の県庁の幹部の方と意見交換をする機会がありました。その中で、県内の子供の貧困の問題が話題になりました。その子供の貧困の大きな理由の一つとしては、シングルマザーの方々が養育費を受け取れないという問題が、これが大きな要因の一つになっているという話がありました。これは佐賀県の話だけではないと思うのですけれども、シングルマザー、シングルファーザーの方が養育費を受け取っていない割合というのは全国的にどのくらいなんでしょうか、お聞かせください。
#200
○政府参考人(小川秀樹君) 養育費の受給率につきましては、厚生労働省において平成二十八年度に全国母子世帯等調査を実施しておりまして、現在、その集計結果を待っているところでございます。
 なお、厚生労働省において平成二十三年度に実施した全国母子世帯等調査結果によりますと、離婚した母子世帯の養育費の受給率は一九・七%でありまして、父子世帯の養育費の受給率は四・一%であるものと承知しております。
#201
○山下雄平君 シングルファーザーの場合が四・一%、シングルマザーが一九・七%、まあ二〇%ぐらいということですかね。シングルファーザーというのは、女性の方が資力があって給料が高いけれども、男親の方が子供を引き取って、でも養育費を払ってもらえなくて本当に大変だという家庭も多くいらっしゃるのかもしれません。一方で、男性が資力があって、また給料が十分にあって養育費が要らないと言われているのかもしれなくて、これはちょっと分析が必要なのかなというふうにも思います。一方で、シングルマザーの方でも二〇%の人しか養育費をもらっていない、払ってもらっていないというのは非常に大きな問題だというふうに思います。
 そもそも、離婚するときに養育費の分担について取決めをしている割合というのはどのぐらいなんでしょうか、お聞かせください。
#202
○政府参考人(小川秀樹君) 平成二十三年に、未成年の子のいる夫婦が離婚をする際に養育費の分担等の取決めをすることを促すことなどを目的として民法等の一部を改正する法律案が成立いたしましたが、法務省では、その趣旨を周知する方法といたしまして、離婚の届け書の様式改正を行い、届け書に養育費の取決めの有無をチェックする欄を設けて、平成二十四年四月からその使用を開始しております。
 このチェック欄の集計については、現在二十四年四月から二十八年六月までのデータの集計ができておりますが、養育費の分担について取決めをしているという欄にチェックされたものの割合は、当初は五〇%を下回っておりましたが、その後次第に上昇し、平成二十五年以降はほぼ六〇%台前半、六〇%から、六〇%の間ということになりますが、六〇%台前半で推移しているところでございます。
#203
○山下雄平君 六〇%ぐらいの人があらかじめ取決めをしているということですけれども、そういう意味でいうとまだまだ取決めすらしていない方もいらっしゃるので、それを促す制度にしていかなければならないというふうにも思いますけれども、そもそも、離婚時の取決めというのは法的拘束力があるのでしょうか、お聞かせください。
#204
○政府参考人(小川秀樹君) 当事者間において養育費の金額や支払時期などの取決めをした場合には、これは一般の契約と同様に当事者間においては法的な拘束力が生じることになりますが、取り決めた内容について後日紛争が生じないよう、書面に残しておくことが重要だと考えられます。
 さらに、養育費を支払ってもらえないとして強制執行の手続を利用するためには、養育費の取決めについて例えば公正証書を作成するとか、あるいは家庭裁判所に対して家事調停などの申立てをして、調停調書、審判書き等の法律で定められた文書を得ることが必要でございます。
#205
○山下雄平君 強制執行するためには公正証書だったり家事調停が必要だということですけれども、現実問題として、離婚するときに相手方の協力がなしにそういったことをやるということは可能なんでしょうか、お聞かせください。
#206
○政府参考人(小川秀樹君) 相手が養育費の話合いに応じてくれない場合ですとか話合いがまとまらない場合には、家庭裁判所の家事調停手続を利用することができます。もっとも、家事調停手続においても話合いがまとまらなかった場合には、家事調停手続は終了しますが、引き続き家事審判手続に移行しまして、そこで必要な審理が行われた上で、審判という、これは裁判でございますので、審判という裁判によりまして結論が示されることになります。
 したがいまして、相手方の協力が得られない場合であっても、最終的には家庭裁判所の審判によりまして養育費の分担を定めることができるということになります。
#207
○山下雄平君 根気強くやっていけば、法的拘束力が持つ、強制執行力が持つ結果を得られることができるということですけれども、仮にそこまでやったとしても、強制執行しようとしても、相手方、元夫だったり元奥さんかもしれないですけれども、行方をくらましたりとか、資産を隠してしまっていたりして分からないという状態であると、強制執行しようにも、なかなか払わせることが難しいんじゃないかなというふうに想像もいたします。
 ふだんからの私生活ですごく仲よくさせていただいている井野政務官は、非常に家庭的なので、こんな話、個人的には多分関係ないのかもしれませんけれども、法律家として、弁護士として、このような案件も弁護士時代にいろいろ扱ってこられたのかもしれません。
 是非お聞かせいただきたいんですけれども、この養育費の支払の強制執行をきちんとできるようにするためには、その相手方がどこにいるのかということを、住所だったりとかを開示させたり、住所を調べるようなことができるような権限を持たせたりとか、また相手方が財産を持っているのかどうかということを調査できるような権限を持つ必要もあるんじゃないかなというふうに思うんですけれども、その点について、今後の法改正の方向性なんかお考えがございましたらお聞かせください。
#208
○大臣政務官(井野俊郎君) 先生御指摘の点でございますけど、基本的には強制執行全般に関わる分野なのかなというふうに思っております。
 もちろん、養育費については当然に子の福祉等の観点から適切に支払われるべきものであるということも十分に認識しておりますが、やはり強制執行についてはどうそういった履行を確保していくかということでございます。
 私自身もやはり養育費の確保というのは裁判でやったことございますけれども、なかなか理解がない親御さんがいて、例えば子供と会っていないということからなかなか支払いたくないというような親御さんもいたりと、本当にそういった意味では、どうその親御さんの認識というか、そういう、払ってもらえるということを確保していくかということが重要なのかなというふうに思っております。
 その上で、現在、民事執行法、例えば債務者の財産開示の手続であったり、今の、例えばそのほかの就業先をどうやったら調査できるかということで、そういった、法制審議会民事執行法部会において様々な検討がなされているところであるというふうに承知をしております。こういった法制審議会の議論を受けて、これから様々な法改正に向けて努力をしていかなければならないというふうに思っております。
 いずれにしても、こういった養育費履行確保のための取組を実施していくことを重要と考えており、引き続き、関係各方面からの御意見を耳を傾けつつ、必要な法整備の在り方について検討していきたいというふうに考えているところでございます。
#209
○山下雄平君 是非、現場をよく知っていらっしゃると思うので、残念ながら離婚するという家庭というのはあると思いますけれども、子供には何の責任もないわけですから、そうした離婚を契機に子供の生活が本当に貧困に陥ることがないように、そうした家庭を減らしていけるように是非いろんな制度改正考えていただければというふうに思います。
 それでは、今回の法改正にある債権法の分野について質問を移らせていただきます。
 今日の審議の中でも個人の第三者保証について質問が出ましたし、これまでも多くの議論が交わされてきました。個人の方が保証人になって、多額の債務を肩代わりしなくちゃいけなくなって生活が立ち行かなくなることを防がなければならないというのは、全ての委員の皆様の多分考えていらっしゃる、同じことだと思います。なので、議論の中では完全に第三者保証をやめてしまった方がいいんじゃないかというような意見をおっしゃる方もいらっしゃいましたし、一方で、そのことまで踏み込んでしまうと、資金をどうやって確保するかということに対しての支障が出てくるんじゃないかというような視点での話もありました。
 今回の法改正の中では、公証人を利用して、その中でその意思確認の手続をするということが盛り込まれております。
 今回のその改正の流れで余り議論になってないというところが、保証人に対して情報提供義務ということに関する分野についても改正が盛り込まれておりますので、この点について質問をさせていただきたいと思っております。
 保証人になろうとするときに、保証人になるかどうかというのの判断の一つとして、自分にその債務が降りかかってくるリスクがどのぐらいあるのかということが大きな点だというふうに思いますけれども、その点において、債務者の方が自分の財産や収入の状況を契約時にその保証人になろうとされる方に情報を提供するという義務がこの改正案には盛り込まれていると思いますけれども、その具体的な内容についてお聞かせいただければと思います。
#210
○政府参考人(小川秀樹君) 保証人になるに当たりましては、主債務者の財産や収支の状況などをあらかじめ把握し、保証債務の履行を現実に求められるリスクを検討することが重要でございます。とりわけ、事業のために負担する債務は極めて多額になり得るものでありまして、この債務を保証することは個人である保証人にとって負担が大きなものとなることから、これを主債務とする保証においては、個人である保証人が主債務者の財産及び収支の状況を把握することが特に重要であると言えようかと思います。
 しかし、現行法には、保証人になろうとする者において、主債務者の財産及び収支の状況などに関する情報を得ようとしても、これを制度的に保障する規律は設けられておりません。
 そこで、改正法案におきましては、保証人が個人である場合には、保証人保護の観点から、事業のために負担する債務を主債務とする保証などでは、その委託をする主債務者は、自己の財産及び収支の状況などに関する情報を保証人となろうとする者に対して提供しなければならない情報提供義務の規定を設けているところでございます。
#211
○山下雄平君 情報提供義務が課せられているということですけれども、その財産状況だったり収入の状況だったりという情報が誤っていた場合というのは、この保証人になるという契約についてどのような影響を与えるのでしょうか。また、その誤った情報を伝えたときに、それが誤った情報だということを分かって伝えていた場合、若しくは善意無過失で自分の伝えた情報が誤っていると知らなくて伝えた場合についての違いというのはあるんでしょうか、お聞かせください。
#212
○政府参考人(小川秀樹君) 主債務者の財産や収支の状況等に関する契約締結時の情報の提供義務について、改正法案では、主債務者が事実と異なる情報を提供したために委託を受けた者がその事項について誤認をし、それによって保証契約の申込み又はその承諾の意思表示をした場合において、主債務者がその事項に関して事実と異なる情報を提供したことを債権者が知り又は知ることができたときは、保証人は保証契約を取り消すことができることとしております。
 したがいまして、主債務者から提供された情報が誤っており、この規定のほかの要件にも、これは要件がございますので、そういった要件にも該当する場合には、保証人はこの規定に基づき保証契約を取り消すことができるということになります。
 この取消し権については、提供した情報が事実と異なるものであるかに関する主債務者の認識は要件とされておりません。そのため、提供した情報が事実と異なるものであれば、主債務者が事実と異なる情報であると知って提供した場合であっても、主債務者がその情報が事実と異なることについて善意無過失であっても、他の要件に該当する限り、保証人は保証契約を取り消すことができることとなります。
 以上でございます。
#213
○山下雄平君 この件についても、恐らく、いろんな具体例からすると、債権者は、保証人の、まあ本当に債務者だけが悪い場合って、債権者にとっても保証人にとってもそんなことがというときにどうなるのかというのはかなり難しい問題ではあろうかと思いますので、またいろいろな、もし仮に成立した場合の施行状況についていろいろ注視していただければというふうに思います。
 また、契約時の債務者の状況というのを正しく知ることも重要だと思いますけれども、保証人になってしまって、その後についても非常に重要だと思っております。例えば、債務者の支払が滞ってしまっていて、いつの間にかどんどんどんどんその債務が大きくなっていってしまったという状況を保証人が知らないというのは非常に危険な状況だというふうにも考えます。なので、債務者が履行をどのような状況をしているかということについても情報提供をする必要があると思いますけれども、この点についてはどのようになっていますでしょうか。
#214
○政府参考人(小川秀樹君) 保証人にとりまして、主債務者が主債務を履行しておらず遅延損害金が日々生じている状況にあることや、主債務の残額が幾らになっているかといった情報、すなわち債権者が把握している主債務の履行状況に関する情報は、履行しなければならない保証債務の内容に関わる重要な情報でございます。にもかかわらず、現行法にはこれらの情報を保証人に提供する義務を債権者に課すといった規定はございません。
 法律の規定がなくとも、保証人からの問合せに応じて、債権者が任意にこれらの情報を主債務者に提供することはあり得ますが、主債務の履行状況に関する情報は主債務者の信用に関わるものであり、これを保証人に提供することにより守秘義務や個人情報保護に反するおそれがございます。そのため、法律の規定がない状況では、保証人に対して情報を提供することに債権者がちゅうちょを覚えるとの指摘が、これは銀行などから寄せられたところでございます。
 そこで、改正法案においては主債務の履行状況に関する情報の提供義務に関する規定を新設することといたしまして、保証人が主債務者の委託を受けて保証した場合には、債権者は、保証人の請求があったときは遅滞なく主債務の元本、利息、違約金などの債務の不履行の有無、それから、これらの各債務残額と残額のうち弁済期が到来しているものの額に関する情報、こういったものを提供しなければならないこととしております。
#215
○山下雄平君 保証人の方が予想外にいきなり多額の債務を肩代わりしなくちゃいけなくなる事例としては、例えば、期限の利益が喪失してしまって一気に債務がどおんと膨らんでしまうという事態が考えられ得ると思います。保証人からしてみれば、そういう状態になっているのであれば、教えてもらえれば、もう自分でそういうふうに債務がめちゃくちゃ膨らまないうちに支払ったというふうにも思われるかもしれませんし、また、ずるい債権者からしてみると、期限の利益が失われて債務が今後膨らんでいくけれども、保証人がお金持ちで、この人、資力がかなりあって取りっぱぐれがないというのであれば、そのまま放置しておいて後で回収した方が利益になるというふうに思われる債権者ももしかしたらいるかもしれません。
 こうしたことを考慮していかなければいけないんじゃないかというふうにも思いますけれども、債務者が期限の利益を喪失した場合に、その点についての情報提供ということに関しては今回の法改正はどのようになっているんでしょうか、お聞かせください。
#216
○政府参考人(小川秀樹君) 保証人の責任は、主債務者が支払を遅滞すると日々発生する遅延損害金によって増大していきます。特に、主債務者が分割金の支払を遅滞するなどして期限の利益を喪失し、保証した債務の全額について弁済期が到来した場合には発生する遅延損害金の額が多額なものとなり、個人である保証人にとってはその負担は大きなものとなっているわけでございます。
 他方、主債務者が期限の利益を喪失したことを保証人が知ることができれば、先ほどお話にありましたように、保証人は早期に立替払をすることにより、多額の遅延損害金の発生を防ぐことができた可能性もございます。しかし、主債務者が期限の利益を喪失したことは保証人が容易に知り得る情報ではなく、また、現行法にはそのことを知る機会を保証人に対して保障する制度は設けられておりません。
 そこで、改正法案におきましては、保証人が個人である場合には、保証人を保護するという観点から、主債務者が期限の利益を喪失した場合には債権者は二か月以内に保証人に通知しなければならず、通知をしなかったときは、保証人に対して、期限の利益を喪失したときから通知を現にするまでに生じた遅延損害金を請求することができないということとしております。
#217
○山下雄平君 今、小川民事局長が二か月以内に通知しないといけないというふうにおっしゃいましたけれども、二か月以内に通知したけれども相手方、保証人に届かなかった場合というのはどのように判断されるんでしょうか、お聞かせください。
#218
○政府参考人(小川秀樹君) いわゆる期限の利益の喪失の通知ですが、これは講学上は観念の通知と呼ばれるものでございまして、この観念の通知は、意思表示それ自体ではないものの、基本的に意思表示に関する規定が類推適用されると解されておりますため、これは相手方に到達しなければその効力を生じないと考えられます。
 したがいまして、期限の利益の喪失の通知についても、債権者が二か月以内に通知を発したが二か月以内には保証人に到達しなかったという場合には、これは二か月以内に通知したとは言えないということになります。
 以上でございます。
#219
○山下雄平君 届かなければならないという話でしたけれども、先ほどの養育費の件じゃないですけれども、保証人がどこに行ったか分からないとか、連絡取る手段が見当たらないというふうな場合だって想定できるわけですけれども、そういう事態のときには債権者はどのように対応すればいいんでしょうか、お聞かせください。
#220
○政府参考人(小川秀樹君) 期限の利益の喪失の通知は保証人に到達することが必要でございますが、保証契約の締結後に保証人の所在が不明となり債権者が保証人に通知をすることが事実上困難となったというような場合には、債権者は裁判所に申立てをすることによりまして、公示、公に示すということですが、公示の方法によって保証人への通知をすることが可能でございます。これは民法上規定がございます。九十八条になります。
 したがいまして、通知を送る送付先が分からないといった事態が仮に生じたとしても、債権者の利益が不当に害されることはないというふうに考えております。
#221
○山下雄平君 では、今度は債権者が、その債権が譲渡されたりとか相続されたりした場合はこの通知の義務というのはどのようになっていくんでしょうか、お聞かせください。
#222
○政府参考人(小川秀樹君) まず、債務者が期限の利益を喪失した場合において、債権者が保証人に対してその旨の通知をしない間にその債権が譲渡され、又は相続されるということはございます。この通知義務は債権に付随する義務でありますので、債権が相続された場合はもとより、債権が譲渡された場合においても、債権の相続人や譲受人が通知義務を当然に引き継ぎ、これを負うことになると解されます。
 なお、債務者が期限の利益を喪失した場合において、債権者が保証人に対してその旨の通知をした後にその債権が譲渡され、又は相続された場合には、既に通知がされているので、債権の相続人や譲受人は改めて通知をする必要はございません。
 それから、債務者が死亡し、その債務が相続したような場合であっても、債権者及び保証人には変更がないという場合には、債権者の通知義務については特段の変更は生じません。
 なお、債務者が期限の利益を喪失した場合において、債権者が保証人に対してその旨の通知をした後に債務が承継された場合には、既に通知がされておりますので、債務の相続人には改めて通知をする必要はございません。
#223
○山下雄平君 この個人の保証の保証人になることについての保護については、不特定の債権についての根保証契約についても今回の民法改正では盛り込まれていると思うんですけれども、この根保証に関する規定については、個人の保護という観点では以前の民法改正でも規定が新たに設けられたと思うんですけれども、以前の改正の内容について、またそのときの国会の議論というものを御紹介いただければと思います。
#224
○政府参考人(小川秀樹君) 今御指摘ありました根保証契約におきましては、特定の債務を主債務とする通常の保証契約とは異なりまして、主債務となる債務が保証契約の締結後に追加される可能性があり、保証人が契約時には予想していなかった過大な責任を負うリスクがございます。このため、平成十六年の民法改正によりまして、主債務に貸金等債務が含まれている保証人が個人であります根保証契約については保証人の責任の上限となる極度額を定めなければならないこと、それから、債務の元本が確定する期日を原則として三年後とすること、それから、主債務者や保証人に破産や死亡などの事情が生じた際にも元本が確定することとしたわけでございます。
 他方で、貸金等債務以外の債務が主債務である根保証契約についてはこのような規律が設けられなかったわけでございますが、この点につきましては、衆参両院におきまして、貸金等債務以外の債務を主たる債務とする根保証契約についても個人保証人を保護する措置を講じることについて検討することという旨の附帯決議が付されておりました。
#225
○山下雄平君 貸金以外についても改正の検討ということで附帯決議に盛り込まれたということで今回の改正に至ったというふうに思いますけれども、では、今回の民法改正案について、根保証についてどのような規定が盛り込まれているんでしょうか、お聞かせください。
#226
○政府参考人(小川秀樹君) 改正法案におきましては、根保証契約に関する規律のうち極度額と元本確定事由に関する規律について、それぞれ適用対象となる保証契約の範囲の拡大などを行っております。
 まず、元本確定事由でございますが、現行法におきましては、保証人が個人である根保証契約のうち、主債務に貸金等債務が含まれているものに対象を限定して極度額を定めなければ契約が無効となる旨の規律が設けられております。しかし、この規律の対象とされました貸金等根保証契約以外の根保証契約についても、個人である保証人が予想を超える過大な責任を負うおそれはあり得るわけでございます。
 そこで、法制審議会において規律の対象を拡大することの要否に関して調査審議が重ねられましたが、裁判例の中には、不動産の賃借人の債務を主債務とする根保証契約において、賃借人が長期にわたり賃料を滞納した事案や賃借人が賃借物件において自殺した事案などで親類や知人である個人保証人に過大な責任を求めることが問題となったものもあることから、極度額に関する規律の対象を貸金等根保証契約以外の保証人が個人である根保証契約にも拡大すべきであるとの意見が大勢を占めました。
 他方で、建物賃貸借の根保証は賃料以外にも賃借人が負う損害賠償債務なども保証するものでありまして、将来発生する損害などを予測して極度額を定めることは実務的に困難であるとの意見もございました。しかし、予測が困難であることのリスクを個人保証人に負わせるのは適当でなく、個人保証人については極度額を定めることとした上で、必要に応じて現在の実務でも用いられている法人の保証人をより活用することが適切であるとの意見が大勢を占めました。
 そこで、改正法案におきましては極度額に関する規律の対象を一般的に拡大いたしまして、保証人が個人である根保証契約については主債務の種別を問わず極度額を定めなければならない、そうしなければ効力を生じないということとしております。
 次に、元本確定事由の関係でございますが、現行法では、主債務者か保証人のいずれかが破産したり死亡したり、あるいは債権者から強制執行などを受けるといった、合計六つの事由が定められております。
 もっとも、貸金等根保証契約以外の保証人が個人である根保証契約においても契約締結後に著しい事情変更が生ずることはあり得ます。そのため、法制審議会においては、元本確定事由に関する規律の対象を貸金等根保証契約以外の保証人が個人である根保証契約にも拡大することの要否について調査審議が重ねられましたが、予想外の事態が生じた場合における個人保証人の責任をできる限り低減する観点から、貸金等根保証契約以外の保証人が個人である根保証契約についても基本的に元本確定事由の規律を及ぼしていくべきであるとの意見が大勢を占めました。
 他方で、主債務者が債権者から強制執行などを受けたこと、それから主債務者が破産したことという二つの事由については、これを保証人が個人である根保証契約一般の元本確定事由とすることに否定的な意見が大勢を占めました。典型例と言える不動産の賃借人の債務を主債務とする根保証契約について、これらの二つの事由によって主債務の元本が確定してしまうと賃貸借契約は主債務者である賃借人の破産等によっても終了しないため、賃貸人としては保証契約の存在を前提として賃貸したにもかかわらず、以後は保証契約のない状態での賃貸を強いられるという、そういう不都合が生ずるからでございます。そこで、改正法案においては、これらの二つの事由を除く元本確定事由に関する規律について、その対象を拡大したものでございます。
 以上に対しまして、元本確定期日に関する規律については対象を拡大する改正を行っておりません。
 法制審議会では、保証人の責任を限定するため、元本確定期日に関する規律の対象を貸金等根保証契約以外の保証人が個人である根保証契約にも拡大することの要否が検討されました。しかし、貸金等根保証契約以外で保証人が個人である根保証契約の典型例であります不動産の賃借人の債務を主債務とする根保証契約について、例えば最長でも五年以内には元本が確定することとすると、賃貸人としては、保証契約の存在を前提として賃貸借契約を締結したにもかかわらず、五年を超えて賃貸借契約が存続した場合には保証がないまま賃貸することを強いられるという不都合が生ずるというところが指摘されました。
 他方で、改正法案においては個人根保証契約一般について極度額を定めなければならないこととしておりますから、元本確定期日に関する規律の対象とされなくとも、保証人が予想を超える過大な責任を負う事態は最低限回避が可能となるということが言えます。
 そこで、改正法案におきましては、元本確定期日に関する規律の対象は拡大することとはしておりません。
 以上でございます。
#227
○山下雄平君 局長からるる、るる説明がございましたけれども、一方、極度額の対象を広げるということではありましたけれども、実際の現場で極度額がすごい高額だったら、結果的にそういう意味で保証人の保護につながらないんじゃないか、保証人の被害になってしまうんじゃないかというおそれもあろうかと思いますけれども、この点について副大臣はどのようにお考えでしょうか、お聞かせください。
#228
○副大臣(盛山正仁君) 山下委員の御指摘のように、その極度額、これが余りに高額であればと、こういうような御心配あろうかと思います。
 今回の民法の改正の案によりまして、その個人の保証、個人の根保証の保証というものを金銭債務以外に拡大をすると、こういう議論でなってきたわけでございますけれども、まずは、極度額の上限というものについて定めないということにつきましては、当事者間の合意というものがやはり何よりも優先されるということでございます。
 どういうような契約の内容であるのか、その個々の事情に応じて決めるべきであり、そして法律でその上限額をここまでとしなければならないというような設定をするというのが困難である上、仮に一定の金額を上限額と法定する場合、場合によっては円滑な金融を阻害するおそれもあると、そういうふうにも考えられるところであります。
 また他方、高額の極度額が定められるということでの被害が生ずるのではないかということにつきましても、内容次第でございますけれども、その主たる債務者の資金需要、保証人の資力等を勘案しない著しく高額な極度額が定められるという場合については、ケース次第ではございますが、保証契約それ自体が無効とされる、公序良俗に反する、こういう可能性もあろうかと思います。
 いずれにせよ、法務省としましては、当事者が合理的な極度額を定めるよう、極度額に関する規制を設けた今回の法改正の趣旨というものを十分に周知していきたいと考えております。
#229
○山下雄平君 経済活動を阻害しないということと個人のいろんな被害を防止するというのはバランスの非常に難しい問題ではあろうかと思っておりますけれども、またこの法律が、改正がもし実現したならば、随時その執行状況を見て、いろいろな形で必要な手当てをしていっていただきたいと思います。
 以上で終わらせていただきます。ありがとうございました。
#230
○元榮太一郎君 自由民主党の元榮太一郎です。質問の機会をいただきまして、大変ありがとうございます。
 この法務委員会では、民法改正法案について保証などを中心として様々な質疑が展開されています。他の改正項目についても重要な改正項目が存在していると思っております。そこで、今回は余り触れられていない改正項目について質問をさせていただきたいと思います。
 まずは、詐害行為取消し権です。
 現在の実務においては、民法四百二十四条から二十六条まで、債権の回収を実現するための重要な役割を果たしているこの詐害行為取消し権ですが、改正の対象となっています。この詐害行為取消し権の要件については僅か一か条の規定があるのみでありますけれども、破産法などの改正を踏まえまして、より具体的な行為類型ごとに要件を明確にしたものというふうに承知をしております。
 改正法案において、この行為類型ごとの要件の特例を定める規定を新設した理由をお聞かせいただきたく思います。
#231
○政府参考人(小川秀樹君) まず、現行法でございますが、現行法においては、どのような行為が詐害行為に該当するかに関しましては、債権者を害するという一般的な要件のみが定められておりまして、判例は、例えば相当の対価を得てした処分行為であっても原則として詐害行為に該当すると解釈するなど、比較的広範に詐害行為該当性を認めていると理解されております。
 他方で、御指摘ありましたように、平成十六年の破産法の改正では、詐害行為取消し権と類似の制度であります否認権につきまして、その要件が不明確かつ広範であることによって取引の萎縮効果などが生ずることを回避するという観点から、行為類型ごとに要件の見直しがされました。しかし、その結果、今度は同じ行為であっても詐害行為取消しの対象にはなるが破産の場合の否認の対象にはならないといった事態が生じ得ることとなりまして、類似の制度間でアンバランスが生じることとなりました。そこで、改正法案においては、相当の対価を得てした財産処分行為、既存の債務についての担保の供与及び債務消滅行為に関して、行為類型ごとに債権者を害するという一般的な要件の特例を置きまして、今申し上げましたようなアンバランスを解消することとしたわけでございます。
#232
○元榮太一郎君 ありがとうございます。
 責任財産保全のための制度である詐害行為取消しとそして否認権のその対象のアンバランスといったものの解消は非常に有意義なことだと思っております。
 その詐害行為取消し権行使の相手方に関する改正でありますが、改正法案においては、受益者に対する詐害行為取消し請求と区別をして、いわゆる転得者に対する詐害行為取消し請求についても特則を設けておりますが、この内容と理由について教えていただきたく思います。
#233
○政府参考人(小川秀樹君) 現行法の条文からは必ずしも明確ではございませんが、判例は、受益者が善意であり、その者に詐害行為取消し請求をすることができない場合であっても、悪意の転得者には詐害行為取消し請求をすることができるとしております。しかし、このような場合に転得者との間で詐害行為取消し請求を認め、転得者が善意の受益者から受け取った財物を失うことになりますと、これは善意の受益者が転得者から担保責任を追及されて財物の対価として受け取った金員の返還を求められるなど、善意の受益者の取引の安全が害されるおそれがございます。また、そのようなおそれがあると、善意の受益者が将来の責任追及を危惧して自己の財産の処分をちゅうちょするおそれもございます。
 否認制度におきましては、相手方が善意である場合の取引の安全などを考慮いたしまして、善意の相手方に対して否認権を行使することができない場合には転得者に対しても否認権を行使することができないとしておりますが、その趣旨は詐害行為取消しの場合においても妥当するものと考えられるわけでございます。
 そこで、改正法案においては、転得者に対する詐害行為取消し請求については特則を設けることといたしまして、否認制度に倣って、受益者が善意でなく、受益者に対して詐害行為取消し請求をすることができる場合に限り転得者に対しても詐害行為取消し請求をすることができることとしております。なお、転得者自身が転得の当時、債務者がした行為が債権者を害することが知っていたことも必要でございます。
#234
○元榮太一郎君 善意の受益者の取引の安全というのはしっかりと守らなければならないということで改正だと思いますが、この善意の者が受益者であれば悪意の転得者は保護される、つまりその詐害行為取消し請求ができないということになりますと、悪意の者がこの詐害行為取消し請求を不当に免れるために、善意の者を形式上の受益者にして、その善意の者から無償で財産の移転を受けたことにした、こういうような事例においても詐害行為取消し請求ができなくなるのではないかなというような懸念があるんですけれども、その点についてはいかがでしょうか。
#235
○政府参考人(小川秀樹君) 改正法案におきましては、問題となっております行為が詐害行為であることについて、受益者が悪意でなければ転得者に対して詐害行為取消し請求をすることはできないということとされております。もっとも、そういたしますと、悪意の者が債務者と直接取引をするのではなく、まずは善意の者に債務者と問題となる行為をさせ、その後、その善意の者から無償でその行為によって移転した財産の移転を受けるといった形式を整えることで、詐害行為取消し請求を不当に免れることができるようにも思われるわけでございます。
 しかし、このように不当な目的を持って善意の第三者を介在させた事例では、その善意の者はその悪意の者と区別される取引上の主体と評価することはできず、悪意の者と一体の者として扱われるべきであります。そのため、このような善意の者が形式的に存在したとしても、善意の者が介在したと評価されることはないと考えられます。
 したがいまして、このような事例におきましては、善意の受益者が形式的に存在、仮にしたといたしましても、債権者が詐害行為取消し請求をすることは妨げられないと考えられるところでございます。
#236
○元榮太一郎君 一体として取り扱うということで、そのような懸念は防止できるということだと受け止めています。
 続いてですが、現行法は詐害行為取消し権の行使としてはどのような請求ができるのかということについて、その具体的内容については特段の規定はございませんが、この改正法案においては詐害行為取消し権の行使の方法について規定を置いております。その具体的な内容を教えていただきたいと思います。
#237
○政府参考人(小川秀樹君) 改正法案では、詐害行為取消し権の行使方法に関しまして三点、まず一点目は逸失した財産の債務者への返還請求権等の明確化、それから二点目が債権者から相手方への直接の支払請求等の明確化、それから三番目が取消し可能な範囲についての明確化をしております。
 まず、逸失した財産の債務者への返還請求権等の明確化についてでございますが、現行法は、詐害行為取消し権を行使する債権者が、行為の取消しのほか、どのような請求ができるかを明示的には定めておりません。もっとも、判例は、財産を取り戻して責任財産の保全を図るという目的を達する観点から、債権者は詐害行為取消し請求において、行為の取消しだけではなく、その行為によって移転した財産の返還を請求することができるとしております。そこで、改正法案においては、その旨を明文化するとともに、その財産の返還をすることが困難であるときは、その価額の償還を請求することができることとしております。
 次に、債権者から相手方への直接の支払請求等の明確化でございますが、例えば、受益者への金銭の贈与について詐害行為取消し権を行使した場合において、受益者に対して債務者への金銭の返還を請求することができるのみで債権者はその受取ができないとすると、債務者が受領を拒否したときには責任財産の保全という目的は達成することができないということとなります。
 そのため、現行法に明文の規定はないものの、判例は詐害行為取消し権を行使した債権者は自己への金銭の支払などを求めることができるとしております。そこで、改正法案におきましては、その判例に従いましてその旨を明文化することとしております。
 最後に、取消しの可能な範囲の明確化でございますが、現行法に明文の規定はございませんが、判例は取消しの範囲を債権者の債権の保全に必要な範囲に限定する観点から、債権者は、債務者がした行為の目的が可分であるときは、自己の債権の額の限度においてのみその行為の取消しを請求することができるとしております。そこで、改正法案におきましては、この判例に従いましてその旨を明文化することとしております。
 以上でございます。
#238
○元榮太一郎君 今までは明文の規定がなくて判例で解釈されていたところを明文化したということで、まさに分かりやすい民法ということに一歩近づいた、そのような改正だと思っております。
 その現在の実務ですけれども、例えば、詐害行為取消し権を行使した債権者が、自己に支払を受けた金銭の返還債務と債務者に対する自己の債権とを相殺して、債権者はその民事執行の手続を取ることなく自己の債権を事実上優先的に回収することができるということで、実際にもそのような利用が行われている例は少なくないと思います。
 他方で、こういうような事例については、学説上は詐害行為取消し権の制度趣旨、責任財産の保全を超えるということで批判も強かったというふうに認識しております。
 改正法案においては、詐害行為取消し権を行使した債権者が自己に支払を受けた、この金銭の返還債務と債務者に対する自己の債権とを相殺することについてはどのような取扱いなのでしょうか。
#239
○政府参考人(小川秀樹君) 現行法の下では、債権者が詐害行為取消し権を行使して自ら金銭の支払を受けた場合には、その金銭の返還債務と債務者に対する自己の債権とを相殺することは許容されると一般に解されております。これによりまして、御指摘ありましたように、債権者は民事執行の手続を取ることなく自己の債権を事実上優先的に回収することができ、実際にもそのような利用がされる例は少なくないというふうに承知しております。
 しかし、この実務あるいはこの考え方に対しましては、詐害行為取消し制度は後の強制執行に備えて責任財産を保全するものであるから、債権者が民事執行の手続を取ることなく債権回収を図ることは、御指摘ありましたように、制度趣旨を超えているなどとする批判がございまして、法制審議会における検討の過程でも相殺を禁止する案も検討されました。
 もっとも、この場面での相殺による債権回収を否定いたしますと、債権者が詐害行為取消し権を行使する動機を減少させ、詐害行為がされても詐害行使取消し権が行使されなくなるため、詐害行使取消し制度が有する言わば詐害行為の抑止という効果が減退してしまうと、また、保全すべき金銭債権が少額でその債務者が行方不明であるケースなどのように、民事執行の手続を取ることを要求するのは酷な場合もあるなどとして相殺を禁止することに消極的な意見も強く主張され、最終的にはこのような意見が大勢を占めるに至りました。そこで、改正法案では相殺を禁止する規定は設けないこととしております。
#240
○元榮太一郎君 確かに、相殺を禁止しますと債権者の詐害行使取消しの動機、モチベーションは著しく低下することになりまして、そういった意味ではそもそもこの責任財産の保全の制度である取消し権の行使すら行われないというような実情を加味してのことだと認識しております。
 そして、現行法の下では、判例は詐害行使取消し請求を認容する確定判決の効果は債務者には及ばないで、受益者は債務者に対して反対給付の返還を求めることができないというふうに解されています。改正法案についてはこの点を大きく見直すこととし、詐害行使取消し請求を認容する確定判決の効果を債務者にも及ぼすこととした上で、財産処分行為が取り消された場合には受益者は債務者に対して反対給付の返還を請求することができると、このようにされていますが、この理由はなぜでしょうか。
#241
○政府参考人(小川秀樹君) 現行法の下で、判例は詐害行為取消しの効果は債務者には及ばないとしておりますことから、例えば、債務者を売主とする自動車の売買契約が取り消され、買主である受益者がその自動車を債権者に返還することになった場合であっても、受益者は債務者に対し自動車の反対給付である代金の返還を求めることはできないというふうに解されております。
 しかし、このような場合において、受益者は債権者に自動車を返還しなければならないわけですので、そうであるにもかかわらずその反対給付である代金の返還を求めることができないというのでは公平を欠くというほかはないと考えられます。また、やはり類似の制度であります破産法上の否認制度におきましても、財産処分行為が否認された場合には、相手方はその財産処分行為における反対給付の返還を請求する権利を行使することができるとされております。
 そこで、改正法案におきましては、詐害行為取消し請求を認容する確定判決の効果をこれは債務者にも及ぼすことといたしました上で、財産処分行為が取り消された場合には受益者は債務者に対し反対給付の返還を請求することができることとしております。
#242
○元榮太一郎君 類似の破産法の否認制度においても同じように反対給付の返還を請求する権利を行使できるということですので、そことのバランスという点でもこの改正は妥当だと思っております。
 そこで、詐害行為取消し請求を認容する確定判決の効果が債務者に及ぶということになるのであれば、この債務者にしっかりと審理に関与する機会を付与しなければならない、手続保障の観点でもそのように思うわけですが、改正法案においては、詐害行為取消し請求に関与する機会を保障するためにどのような見直しをされているのでしょうか。
#243
○政府参考人(小川秀樹君) 現行法に明文の規定はございませんが、判例は、詐害行為取消し請求を認容する確定判決の効果は財産の返還を求める相手方には及ぶが債務者には及ばないということを前提といたしまして、詐害行為取消し請求に係る訴えにおいては、相手方を被告とすべきであり、債務者を被告とする必要はないとしております。
 改正法案におきましては、判例に従いまして財産の返還を求める相手方を被告とすべきことを明文化しておりますが、先ほど御答弁いたしましたように、判決の効果が及ぶ債務者、判決の効果が及ぶわけですので、判決の効果が及ぶ債務者にも審理に参加する機会を保障するために、債権者は、その訴えを提起しましたときは遅滞なく債務者に対して訴訟告知をしなければならないこととしております。これが改正法案の四百二十四条の七の第二項でございます。
#244
○元榮太一郎君 ありがとうございます。手続保障もしっかりと担保されていると、こういうことであります。
 続きまして、テーマを変えまして、意思表示について伺います。
 契約の最も重要な要素である意思表示についても今回改正の対象となっておりまして、もう全ての人に一番利害が関係する、そのようなテーマ、改正項目の一つだと捉えております。この意思表示に関して、契約当事者以外の第三者が登場する場面があります。この場面をどのように取り扱うかということについては、現行法では必ずしも明瞭ではなくて、解釈も様々なものであるというふうに認識をしています。
 改正法案ではこの点を整理したということになるわけですが、まず、改正法案において、心裡留保による意思表示を信頼した第三者の保護規定について新設した趣旨を御説明ください。
#245
○政府参考人(小川秀樹君) まず、現行法でございますが、現行法には心裡留保による意思表示を信頼した第三者を保護する規定はございません。
 しかし、例えば、心裡留保による意思表示をした売主がパソコンの売買契約をした後、買主から第三者が更にそのパソコンを購入するといった事例のように、心裡留保による意思表示を前提として、その後、第三者が更に契約などをすることが考えられるわけでございます。
 心裡留保による意思表示が無効とされる場合でありましても、真意ではないことを知りながら真意と異なる意思表示を行った表意者には、そのような無効な意思表示を行ったことについてこれは責められるべき事情がありますことから、その意思表示を信頼した第三者が現れたときは表意者よりもその第三者を保護すべきであると考えられるわけでございます。このため、現行法に明文の規定はございませんが、判例の趣旨も、善意の第三者に対しては心裡留保による意思表示の無効を主張することはできないとするものと考えられております。
 そこで、改正法案におきましては、この判例の趣旨に従いまして、心裡留保による意思表示の無効は善意の第三者に対抗することができない旨を明文化することとしております。
#246
○元榮太一郎君 善意の第三者には対抗できないということが、心裡留保について判例を明文化したということになっています。
 次に、詐欺による意思表示ですが、詐欺による意思表示を信頼した第三者の保護規定の見直しも行われておりますが、これはどのようなものでしょうか。
#247
○政府参考人(小川秀樹君) まず、現行法でございますが、現行法は、詐欺による意思表示の取消しは善意の第三者に対抗することができないと規定しておりまして、その文言上は詐欺による意思表示を信頼した第三者に過失があったかどうかを問題とはしておりません。そして、この点は、虚偽の意思表示を信頼した第三者の保護規定、これは九十四条二項でございますが、これと同一でございます。
 しかし、自ら虚偽の外観を作出して虚偽の意思表示をした表意者と比べますと、詐欺による意思表示をした表意者は責められるべき事情が小さい。要するに、詐欺による意思表示をしたわけですので、表意者としては責められるべき事情が小さいことから、詐欺による意思表示を信頼した第三者を保護するためには、その第三者の信頼が虚偽の意思表示を信頼した第三者より保護に値するものでなければバランスを欠くことになると考えられます。
 そこで、改正法案におきましては、詐欺による意思表示の取消しは、善意でかつ過失がない第三者に対抗することができないこととし、過失がある第三者には対抗することができることとしております。
#248
○元榮太一郎君 善意無過失の第三者に対抗できないということで、表意者の責めに帰すべき事情がどの程度あるのかという度合いに応じてバランスを取っているということと認識しております。
 そうしますと、さらに錯誤ですが、錯誤による意思表示を信頼した第三者の保護規定も新設していますが、その理由をお聞かせください。
#249
○政府参考人(小川秀樹君) まず、現行法でございますが、現行法には錯誤による意思表示を信頼した第三者を保護する規定はございません。
 しかし、例えば詐欺に陥った売主がパソコンの売買契約をした後に、買主から第三者が更にそのパソコンを購入するといった事例のように、錯誤による意思表示を前提として第三者が更に契約などをすることはあり得るわけでございます。このような第三者が現れた場合に、その第三者が錯誤について善意でかつ過失がないときは、錯誤に陥って意思表示をしたことについて表意者に責められるべき事情がある以上、表意者よりもその第三者を保護するべきであると考えられます。
 そこで、改正法案におきましては、錯誤による意思表示の取消しは、善意でかつ過失がない第三者に対抗することができないこととしております。これが九十五条の四項でございます。
#250
○元榮太一郎君 さらに、強迫については、改正法案においても現行法においても同様に第三者を保護する規定は特段置かれてはおりません。これは、先ほどのその表意者に責めに帰すべき事情がどの程度あるのかというところで責められる点はなく、それとの対比で善意だったとしても第三者を保護するのは適切ではないと、このような判断によるものと理解しております。
 この点も含めまして、意思表示と第三者保護に関しては、相互の利害状況の差を踏まえつつ、バランスよく規定が設けられておりまして、今回のこの意思表示に関する改正も非常に評価ができるというふうに思っております。
 そのところに関連いたしまして、少し異なりますが、第三者による詐欺が行われた場合の規定の見直しも行われていると思いますが、これはどのようなものでしょうか。
#251
○政府参考人(小川秀樹君) まず、現行法でございますが、現行法は、第三者が詐欺を行った場合には、相手方がその事実を知っていたときに限ってその意思表示を取り消すことができるとしております。
 しかし、第三者が詐欺を行ったことを相手方が知らなくても、知り得たという場合には、相手方の信頼は保護に値するとは言い難いと考えられますし、この場合に詐欺による意思表示の取消しが許されないと、心裡留保の場合において表意者が真意と異なる意思表示をしたことを相手方が知り得たときに無効になるとされていることとのバランスも欠くことになると考えられます。
 そこで、改正法案におきましては、第三者が詐欺を行ったことを相手方が知り得たというときも、その意思表示を取り消すことができることとしております。
#252
○元榮太一郎君 ありがとうございます。
 ところで、意思表示の中でも錯誤については、意思を決定する際の動機の段階で誤解があった場合、いわゆる動機の錯誤に関してこの表意者をどこまで保護するのか、こういうような問題がありまして、理論的にも実務的にも重要な論点でありますが、先ほど第三者保護規定について質問しましたが、それ以外に、この改正法案においては錯誤による意思表示に関してどのような見直しが行われているのでしょうか。
#253
○政府参考人(小川秀樹君) 錯誤による意思表示とは、表意者が誤った認識又は判断を原因としてした意思表示をいい、その中には、いわゆる書き間違いや言い間違いなどのように意思表示の内容と真意とが一致していない表示の錯誤と、それから意思表示の内容と真意とは一致しているものの、その基礎となった事実に誤解がある動機の錯誤と呼ばれるもの、この二つがあると言われております。
 改正法案は、錯誤に関しましては、錯誤による意思表示を信頼した第三者の保護規定、これは先ほど申し上げたところですが、その新設のほかに、錯誤による意思表示の効力を否定するための要件の見直し、錯誤の類型の区別の明示と動機の錯誤の特則の新設、それから錯誤による意思表示の効果の見直しを行っております。
 まず、錯誤による意思表示の効力を否定するための要件の見直しでございますが、現行法は法律行為の要素に錯誤があることを錯誤による意思表示の効力を否定するための要件としておりますが、改正法案におきましては、それに代えて、錯誤に基づき意思表示がされていたことと、錯誤が法律行為の目的及び取引上の社会通念に照らして重要なものであること、これをその要件とすることとしております。
 それから、錯誤の類型の区別の明示と動機の錯誤の特則の関係でございますが、現行法は先ほど申し上げました二つの類型、表示の錯誤と動機の錯誤とを区別して規定しておりませんが、改正法案におきましては両者を区別して規定し、動機とした事情が法律行為の基礎とされていることが表示されていなければ動機の錯誤による意思表示の効力を否定することはできないということとしております。
 それから、効果の関係ですが、現行法は錯誤の効果を無効としておりますが、改正法案におきましては錯誤の効果を取消しに改めることとしております。
#254
○元榮太一郎君 今御答弁いただきました錯誤による意思表示の効力を否定するための要件の見直しですが、改正法案の九十五条一項においては、意思表示が錯誤に基づくものであり、かつ錯誤が法律行為の目的及び取引上の社会通念に照らして重要なものであるときに限り、錯誤による意思表示を取り消すことができる、このように規定しておりますが、その理由を御説明ください。
#255
○政府参考人(小川秀樹君) 相手方に欺罔行為がある錯誤とは異なりまして、錯誤は相手方の行為によらずに表意者自らが誤解をしたことが原因となっております。そのため、ささいな錯誤でありましても無効の主張ができるといたしますと、取引の安全を著しく害するおそれがございます。
 そこで、現行法は、法律行為の要素に錯誤があるときに限り錯誤による意思表示は無効となるとし、判例は、錯誤がなかったならば表意者自身がその意思表示をしないであろうと認められるほどに錯誤と意思表示との間に因果関係があり、かつ通常人であっても意思表示をしなかったであろうと認められるほどにその錯誤が客観的に重要である場合でなければ法律行為の要素に錯誤があるということは言えないというふうにしております。
 もっとも、そのような判例の理解を現行法の法律行為の要素という文言から読み取ることは、これは著しく困難でございます。そこで、改正法案におきましては、判例の趣旨を端的に明文化し、錯誤を主張することができるのは、意思表示が錯誤に基づくものであり、かつ錯誤が法律行為の目的及び取引上の社会通念に照らして重要なものであるときに限ることとしております。
#256
○元榮太一郎君 確かに、法律行為の要素という文言からはとても読み取ることが難しい点でありましたので、このような明文化は有意義だというふうに私も思っております。
 その九十五条第一項ですが、表示の錯誤と動機の錯誤を区別しまして、動機の錯誤を理由とする意思表示の取消しは、動機とした事情が法律行為の基礎とされていることが表示していなければすることができないとされていますが、その理由をお聞かせください。
#257
○政府参考人(小川秀樹君) 錯誤による意思表示には、これは先ほど申し上げましたとおり、表示の錯誤と動機の錯誤の二つの類型がございます。もっとも、現行法の九十五条はこの両者を区別せず、単に意思表示は法律行為の要素に錯誤があれば無効とするとのみ規定しております。
 しかし、動機の錯誤の場合には、表意者は意思表示の内容自体は正確に理解して表示しております。また、動機といっても、表意者の動機が相手方には明らかではない場合も多いと考えられます。したがいまして、表示の錯誤と同様の要件でその効力を否定したのでは、取引の安全を著しく害するおそれがございます。
 そのため、これは判例の考え方ですが、動機の錯誤を理由として意思表示の効力を否定するためには、その動機が意思表示の内容として相手方に表示されていなければならないとしております。もっとも、このような判例の考え方は、現行法の九十五条の文言からは読み取ることが困難でありまして、動機の錯誤に関する具体的なルールを明文化するのが望ましいと考えられます。
 そこで、改正法案におきましては、動機の錯誤を表示の錯誤と区別した上で、動機の錯誤を理由とする意思表示の取消しは、その事情が法律行為の基礎とされていることが表示されていた場合、すなわち動機となった事情が契約の当然の前提となるなど法律行為の基礎とされ、その旨が明示又は黙示に表示されたと言える場合に限り、することができるということとしております。
#258
○元榮太一郎君 ありがとうございます。
 この動機の錯誤ですが、最後に、この改正では取り上げられなかった論点ということになりますが、いわゆる惹起型の錯誤、つまり相手方の言動によって表意者が法律行為の基礎とした事情についてその認識が事実に反する錯誤、これについては、法制審議会では、この動機とした事情が法律行為の基礎とされていることが表示されているというこの要件を満たさなくてもいいのではないかと、そういうような特別の定めを置くことが検討されたと聞いておりますが、この定めを置かないこととしたのはなぜなのでしょうか。
#259
○政府参考人(小川秀樹君) 改正法案におきましては、動機の錯誤を理由とする意思表示の取消しは、これは先ほども申し上げましたが、その事情が法律行為の基礎とされていることが表示されているときに限り、することができるということとしております。しかし、法制審議会における検討の過程では、御指摘ありましたように、相手方がその錯誤を惹起した場合には、その意思表示が取り消されても相手方はこれを甘受すべきであるから、動機の錯誤において、その事情が法律行為の基礎とされていることが表示されているかどうかにかかわらず、意思表示を取り消すことができるとする特則を設ける案も検討されたわけでございます。
 しかし、この案に対しましては、錯誤により意思表示を取り消すことができる範囲が現状の無効とされている範囲よりも拡大し、取引の安全が害されるのではないか、自由で活発な取引を萎縮させるおそれがあるのではないかといった観点からの反対意見のほか、不実の表示をして錯誤を惹起した者が情報量や交渉力に劣る中小企業や消費者等である場合にまで容易に意思表示の取消しが認められることになるという観点からの反対意見なども出されました。
 また、その事情が法律行為の基礎とされていることが表示されているとは、明示的に表示されている場合だけでなく、その意思表示に至る経緯等に鑑み、黙示的に表示されている場合をも含むものでございます。
 したがいまして、相手方が惹起した錯誤が契約などで重要な意味を持ち、意思表示の取消しを認めるのが相当な事案については、明示の表示がなくても、黙示的に表示されていると認定することにより事案の適切な解決を図ることが可能であるとも考えられるわけでございます。
 そこで、改正法案におきましては、相手方が錯誤を惹起した場合についての特則は、以上申し上げました点を考慮して、置かないこととしたものでございます。
#260
○元榮太一郎君 ありがとうございます。
 今日は、詐害行為取消し権と意思表示について伺いました。この二つの改正の趣旨を伺うにつき、やはり責任財産の保全だったり破産法や類似の制度とのバランス、さらには表意者や第三者の保護のバランス、取引の安全、こういった点で非常に考え抜かれて、そして判例の明文化等も含めてまとまっている改正案だと私は評価をしております。
 ただ、これが一〇〇%完全かというと、ここから更に進化の余地はあるかなというふうに思っておりまして、百二十年ぶりの改正ということで、また百二十年間改正されないということではなく、これから定期的に見直して、やはり第三者保証のところとか、保証については配偶者、事業に従事しているだけで含めていいのかとか、さらには、暴利行為についての明文化等々も含めて、私の思いとしてももっともっと盛り込みたい、もっと考えるべきところがあるのではないかという進化の可能性を感じておりますので、またそういったところも含めて様々議論をして、新しい民法をどんどんと進化させていくということを私も誓いまして、お願いしまして、私の質問を終わらせていただきます。
 ありがとうございました。
#261
○佐々木さやか君 公明党の佐々木さやかです。
 今日は、前回の質問に引き続きまして、定型約款について伺いたいと思います。
 定型約款につきましては、今回新たに新設をされます第五百四十八条の二以下に規定がありますけれども、不特定多数の者を相手方として行う取引であって、その内容の全部又は一部が画一的であると、こういうような定型取引、これを行うことの合意をした場合に定型約款の個別の内容についてもそれに拘束をされると、こういう規定になっております。
 この定型取引というものはどういうものが想定されるかといいますと、恐らく鉄道の運送契約ですとか郵便ですとか、そういったものが典型に当たるのかなと思っております。こういうものというのは、約款というものがあったとしても、一々それを都度確認をすることももちろんありませんし、どこにあるのかというのも意識をしない、間々こうした契約を日々行っているわけであります。
 また、銀行の預金の取引ですとか、それから保険などについても約款というものはございます。これについては、例えば口座を開設するときに分厚い約款の規定集をもらったりすることもありますけれども、それについて一々どれほど読んでいるか、意識をして認識をしているかというと疑問もあるわけであります。
 そのほかには、例えばインターネット上の取引ですとか、パソコンを使って何かソフトをダウンロードしてそれを使う場合にも細かい条項なんかがいろいろ出てきて、それについては、大体同意をするかしないかというようなチェックボックスが設けられたりしておりますけれども、このように私たちの生活の中で約款というものが非常に幅広く使われている状況にあると。
 その中で、民法にはこの約款に関するルールというものがこれまで規定がされておりませんでした。そうした現実の取引の必要性、そういったところから今回この規定というものが設けられる背景になってきたというふうに認識をしております。
 具体的な条項としては、先ほど申し上げたとおり、五百四十八条の二以下にございますけれども、定型取引を行うことの合意をした場合に、次に掲げる場合には定型約款の個別の条項についても合意をしたものとみなすと定めがありまして、次に掲げる場合として、五百四十八条の二、一項の一号、二号という定めがございます。
 一号というのは、「定型約款を契約の内容とする旨の合意をしたとき。」、定型約款の内容については具体的認識はしていないけれども、その定型約款の内容を契約の内容とする、そういう合意が当事者間にあったときということだと思います。二号についてはどう書いてあるかというと、「定型約款を準備した者があらかじめその定型約款を契約の内容とする旨を相手方に表示していたとき。」と記載がされております。
 ちょっと、ぱっと条文を読んだだけではどう違うのかということが分かりにくいかなとも思いますので、まずこの一号と二号の違いというところと、また特に二号の、表示型と言っていいかと思いますけれども、定型約款を準備した者があらかじめその約款を契約の内容とする旨を相手方に表示していたときと、これを設けた理由、また具体的にどういう場合が、どういう形でされることが想定されているのかというところについてまず伺いたいと思います。
#262
○政府参考人(小川秀樹君) 民法の原則によりますと、契約の当事者は、契約の内容を認識して意思表示をしなければ契約に拘束されないというふうに解されるわけですが、約款による契約の成立要件については、現行法の下で、約款の内容を認識していなくとも、特定の約款によることの合意があれば、約款による意思で契約したものと推定すべきであるとする判例がございます。約款を利用した取引の安定を図るという観点からは、この判例の考え方の方向性は基本的には妥当であると考えられます。
 また、特定の約款によることの合意をしている当事者がその約款の内容に拘束されるのは自己の責任に基づくものであると言えますし、約款の内容を認識していないことにより生じ得る不利益については、これは不当条項規制を設けることによって対応することが可能であります。
 そこで、改正法案におきましては、定型約款を契約の内容とする旨の合意があったときに定型約款の個別の条項について合意があったものとみなすこととしております。これが一号でございます。定型約款を契約の内容とする旨の合意は、明示の合意だけではなく黙示の合意であってもよいが、あらかじめその定型約款を契約の内容とする旨を相手方に表示していたときに当事者が実際にその取引を行ったのであれば、通常は定型約款を契約の内容とする旨の黙示の合意があったと言えようかと思います。
 しかし、黙示の合意の認定は一般に必ずしも容易ではなく、これは紛争の原因となるおそれもございます。とりわけインターネットのサービスを利用する際にはサービス提供者が用意した利用規約などが画面上に掲示されているが、非対面で行われるといったインターネット取引の特性上、紛争が生じたときには黙示の合意の立証が困難であるとの指摘がされております。
 そこで、改正法案におきましては、定型約款を利用した取引の安定を図る観点から、あらかじめその定型約款を契約の内容とする旨を相手方に表示していた場合において、現に取引が行われたときには、定型約款の個別の条項について合意があったものとみなすことといたしまして、五百四十八条の二第一項第一号の定型約款を契約の内容とする旨の合意を立証することを要しないということとしているわけでございます。
#263
○佐々木さやか君 御説明で理解できる部分もあったんですけれども、いろいろ確認をしたいと思うんですが。
 一号については、実際に定型約款を契約の内容とする旨の合意がございますので、その詳しい具体的な内容は相手方に任せるような形で合意をするということもあろうと思いますし、そうした合意があるということであれば、民法の原則である契約というものは当事者間の合意によって成立をするということから考えても納得しやすいかなというふうに思います。
 それに対して、二号というのは、やはりこれまでの民法の原則にのっとって考えますと、何というか、例外的と言うとちょっと表現があれですけれども、原則から考えるとちょっと疑問が、どのように考えたらいいのかなということが疑問に思っております。
 表示をしていたということはありますけれども、定型約款を契約の内容とするような合意は特になかった、また、その表示をしていた、定型約款を契約の内容とする旨を表示をしていただけで大丈夫ですので、契約時に内容の認識ができたかどうかとか、定型約款の内容を認識できたかどうかというような条件も特に付いてはおりません。
 そういったことからすると、やはり、従来の認識可能性も必要ないとなると、従来の契約というのは当事者の意思の合致によるという原則との関係が疑問に感じるわけですけれども、もう一度この二号の部分について、黙示の合意との関係でどのように考えられるのか、御説明をお願いいたします。
#264
○政府参考人(小川秀樹君) 先ほど申し上げましたとおり、定型約款を契約の内容とする旨の合意、これはいわゆる組入れの合意ということになりますが、をした場合だけではなく、あらかじめその定型約款を契約の内容とする旨を相手方に表示していた場合にも、定型約款を利用した取引の安定を図る観点から、定型約款の個別の条項について合意があったものとみなすこととしております。これが二号でございます。
 この要件は、定型約款を契約の内容とする旨の黙示の合意があったと言えるような場合を抽出する趣旨でありますことから、表示していたときというのは、取引を実際に行おうとする際に、顧客である相手方に対して個別に面前で示されていなければならず、定型約款準備者のホームページなどに一般的にその旨を公表しているだけでは表示とは言えないと考えられます。
 また、ここに言う表示は、相手方が契約内容の詳細を確認したいと考える場合には、その表示を踏まえて定型約款準備者に内容の開示を請求し、その内容を確認した上で不満な点があれば契約を締結しないことが可能となるようなものでなければなりません。
 したがって、この規律は、定型約款を契約の内容とする旨の黙示の合意があると評価することが可能と言えるような場合を抽出し、定型約款の個別の条項について合意があったものとみなすこととしたものでございまして、これに加えて、現に取引を開始しておりますわけですので、合意があった場合と同様に取り扱う根拠があると考えられるものでございます。
 そういう意味では、改正法案の規律は、民法の意思主義の原則などとおよそ整合しないといったようなものではなく、必要かつ合理的な範囲でその特則を定めるもの、設けるものであるというふうに考えております。
#265
○佐々木さやか君 つまり、表示していたというふうに言えるためには、黙示の合意が成立したと言える場合と同じように評価ができなければならないと。今、答弁の中にもありましたけれども、会社のホームページに載せてあるというだけではなくて、個別の取引の際に、繰り返しになりますが黙示の合意があったと言える程度の表示がなされる必要があると。そういう考え方に基づいてこの二号が設けられたという御説明でありました。
 この定型約款については、今も申し上げたとおり、定型約款の内容そのものについて認識していること、若しくは認識可能性があることと言ってもよいかもしれませんけれども、それは必要はないわけですけれども、その次の条文に定型約款の内容の表示に関する規定がございます。
 この五百四十八条の三というものを見ますと、定型取引を行い、又は行おうとする定型約款準備者、事業者の方といいますか、消費者と事業者の契約であれば事業者の方と言っていいかと思いますけれども、定型取引合意の前又は定型取引合意の後相当の期間内に相手方から請求があった場合には、遅滞なく、定型約款の内容を示す必要があると、こういうふうに記載がされておりまして、つまり、定型約款の具体的な内容を知りたいというふうに思った場合には、この五百四十八条の三によって内容の開示を請求できるということであるというふうに思います。
 こうした規定を置いた趣旨について確認をしたいと思います。
#266
○政府参考人(小川秀樹君) 定型取引の当事者は、定型取引を行うことを合意した場合には、定型約款に記載された個別の内容について認識していなくとも定型約款中の個別の条項に拘束されることとなりますため、このような取引をこれから行おうとする場合はもちろんのこと、契約を締結した後におきましても定型約款の内容を知る権利が保障されている必要がございます。
 そこで、改正法案におきましては、定型取引を行い、又は行おうとする定型約款準備者は、定型取引合意の前又は定型取引合意の後相当の期間内に相手方からの請求があった場合には、遅滞なく、相当な方法でその定型約款の内容を示さなければならないということといたしまして、定型約款の内容を表示するよう定型約款準備者に請求する権利を顧客であります相手方に保障することとしておるわけでございます。
#267
○佐々木さやか君 知る権利として、この定型約款の内容の請求があれば開示をする必要があるということであります。
 それで、この開示の請求については、契約、定型取引の合意の前又は後ということで場面が二つに分かれております。まず、これからその取引の合意をしようと思う場合に、定型約款の内容について具体的に知りたいので内容を教えてくださいと、こういうことが言えると。その仮に請求をした場合に、内容を教えてもらえなかった場合にはどうなるかというと、五百四十八条の三の二項という規定がありまして、定型約款準備者が定型取引合意の前において前項の請求、つまり内容を教えてほしいという請求ですけれども、この請求を受けたにもかかわらず拒んだときには、前条の規定は適用しない、つまり、定型約款の合意、定型取引の合意の内容として定型約款に拘束をされるというその効果は発生しないという規定がされております。
 こうした規定を置いた趣旨についても確認をしたいと思います。
#268
○政府参考人(小川秀樹君) 先ほど申し上げましたとおり、改正法案におきましては、定型取引の当事者である顧客に定型約款の内容を知る権利を保障するために、定型約款準備者は、相手方から請求があった場合には遅滞なく相当な方法でその定型約款の内容を示さなければならないこととしております。
 他方、取引を開始する前に現に表示の請求がされたにもかかわらず、定型約款準備者がこれを拒絶していた場合には、幾ら相手方がその後に取引を行うことを合意したといっても、定型約款の個別の条項について合意したものとみなすという法的効果を付与することは行き過ぎと考えられ、相手方に請求権を与えた趣旨も没却されることになると考えられます。そこで、この場合には、一時的な通信障害が発生した場合その他正当な事由がある場合を除きまして、定型約款の条項について合意があったものとはみなさないこととしております。これが二項の規定でございます。
 取引開始前の表示請求を拒絶した場合に限って定型約款の条項について合意があったものとはみなさないこととしたのは、特に取引を行う前には、取引を行うか否かの判断に当たって契約の内容とみなされる定型約款の内容を知ることが重要であることから、定型約款準備者が義務を履行しなかったために内容を知る機会が失われた以上、これは定型約款準備者に対しまして強力なサンクションを課すということとしたものでございます。
#269
○佐々木さやか君 今御説明をいただいたとおり、合意前の内容の表示については、五百四十八条の三の二項で合意自体が効果を発しないというような形で強い履行の確保がされているというふうに思います。
 では、定型取引の合意の後に、合意したけれども、どういう内容に拘束されているのか定型約款の内容が知りたいと思って、内容を教えてくださいと、このように言った場合にはどうなるのかということを質問したいんですが、条文を見ますと、定型取引合意の後、相当の期間内に相手方から請求があった場合には遅滞なく内容を示さなければならないとあります。ですので、いつでもできるというわけではどうやらないようですけれども、この定型取引合意の後、相当の期間内というのはどの程度の期間になるのか、また、こうした相当期間内ということで限定をした理由を教えていただきたいと思います。
 また、その契約、合意の前の内容の表示の請求に比べると、もう合意は成立をしておりますし、この開示についての履行の確保が少し弱いようにも感じますけれども、この合意後の内容の表示についてはどのような形で担保されることになるんでしょうか。
#270
○政府参考人(小川秀樹君) 先ほど申し上げましたとおり、改正法案におきましては、定型取引の当事者であります顧客に定型約款の内容を知る権利を保障するため、定型約款準備者は、相手方から請求があった場合には、遅滞なく、相当な方法でその定型約款の内容を示さなければならないこととしております。もっとも、定型取引合意の後、いつまでも定型約款の内容を示さなければならないといたしますと、これは定型約款準備者に過度の負担を課すおそれがありますことから、この請求は定型取引合意の後相当の期間になされる必要があるとしております。
 この相当の期間の具体的な意義につきましては個別の事案の具体的な状況に応じて判断されるということになりますが、定型取引の当事者である顧客に定型約款の内容を知る権利を保障する観点からは、例えば契約が継続的なものである場合には、契約が継続している間はこの請求をすることができ、その終了から一定の期間は相当の期間が経過していないものとして請求が可能であるものと考えられるところでございます。
 それから、定型約款準備者が、取引を行った後に定型約款の内容の表示を請求されたにもかかわらず、これを正当な事由もないのに拒絶していた場合の効果については、これは特別な規定を設けてはおりませんが、この場合でありましても定型約款準備者は約款の内容を表示すべき債務を負いますので、相手方は定型約款準備者に対し、民法第四百十四条によりその強制的な履行を請求することができるほか、民法第四百十五条による債務の不履行による損害賠償の請求ですとか、あるいは民法五百四十一条によります解除、こういったことが可能となるということがあり得るということでございます。
#271
○佐々木さやか君 取引の合意後の開示については基本的には相当の期間としか条文には書いておりませんけれども、取引が継続している場合には、その間にはきちんと開示をする必要があるというような答弁でございました。こうした形で、定型約款の具体的内容について知りたいというふうに思った場合には、取引の合意の前においては仮に拒絶があれば合意そのものが効力を発しない、また、取引の合意後の請求であっても仮に応じなければ債務不履行に当たるという形になっております。
 しかしながら、五百四十八条の三のただし書で、こうした内容の表示についての請求はこういう場合には認められないということが書いてございます。どういう場合かというと、既に定型約款を記載した書面を交付をしている、又はこれを記録した電磁的記録を提供していたときという形になっております。
 書面で定型約款の内容を交付をしているか若しくは電磁的記録を提供しているという記載がありますけれども、こういう場合には定型約款の内容を知りたいと思っても請求できないということになるかと思いますので、具体的にどういう場合にこうした電磁的記録、書面を交付したと言えるのか、ここを確認したいと思います。書面についてはイメージがしやすいので、電磁的記録を提供していたときというのはどのような場合を具体的に言うのかについて確認をしたいと思います。
#272
○政府参考人(小川秀樹君) 改正法案におきましては、定型取引を行い、又は行おうとする定型約款準備者は、定型取引合意の前又は定型取引合意の後相当の期間内に相手方から請求があった場合には、遅滞なく、相当な方法でその定型約款の内容を示さなければならないこととしているのは、先ほど来述べているとおりでございます。これは、これも繰り返しになりますが、定型取引の当事者に定型約款の内容を知る権利を保障する必要があることから、定型約款準備者の表示義務を定めているものでございます。
 もっとも、定型約款準備者の負担が過大になることを防ぐため、定型約款準備者が既に相手方に対して定型約款を記載した書面を交付し、又はその内容を記録した電磁的記録を提供していたときには、定型約款の内容の表示義務は生じないこととしております。これが一項ただし書でございます。
 この電磁的記録の提供ということでございますが、定型約款の内容を記録したCD、DVDなどを提供することや定型約款の内容を記録したデータを電子メールにより提供するなどの方法、すなわち、顧客がそのデータを管理し、自由にその内容を確認をすることが可能な態様、そういったものを提供する方法によらなくてはならないと解されるところでございます。
#273
○佐々木さやか君 今ありましたように、顧客が実際にその電磁的記録を例えば手元に置いていつでも自由にそれを見ることができると、こういう形にしなければならないということですので、例えば会社のホームページにその定型約款の内容について記載があって、ただ、それが会社のホームページの例えば変更とか会社側の事情でホームページを畳んでしまうとか、そういった形で顧客の方で見れなくなってしまう、そういった場合には顧客の方で自由に見ることができるとは言えないと思いますので、この五百四十八条の三のただし書には当たらないのではないかというふうに理解をいたしました。
 これまで質問させていただいたとおり、定型約款の具体的な内容について認識をしていなくてもその内容に拘束される合意が成立をするわけでございますけれども、その定型約款の内容について非常に重要な内容が含まれているとか、請求があれば初めて開示をすればいいということではなくて、やはりその取引、契約をしていく中にあってこの条項は大事だろうというものも恐らくあると思います。そういう場合にはやはり説明義務というものがあるのではないかと思うんですけれども、この民法の条文だけを見ますと、そうした定型約款の内容についての説明義務という条文はございません。
 これは、民法の各規定によって説明義務というのが免除されるようなことになるのかどうなのか、若しくは、明文はございませんけれども、信義則上説明義務が生じるというような場合があるのではないかと思うんですけれども、この点はいかがでしょうか。
#274
○政府参考人(小川秀樹君) 御指摘いただきました現行法第一条第二項の信義則を根拠として認められることのある信義則上の情報提供義務のほか、行政法規などが定める重要な情報を提供すべき義務などは、改正法案第五百四十八条の三の規定により、契約内容が相手方に表示されたとしても、それにより、当然にこういった情報提供義務が履行されたということにはならないものでありまして、これらの情報提供義務の履行がされたか否かについては、やはり各義務の根拠規定に照らしつつ判断されるものというふうに考えております。
 このような改正法案の趣旨につきましては、改正法案が成立した際には法務省としても十分に周知することとしたいというふうに考えております。
#275
○佐々木さやか君 是非よろしくお願いいたします。この民法の規定によっても説明義務が免除されるとか、そういったことではないわけでありますので、しっかりと周知をお願いしたいと思います。
 この契約約款については、仮に不当なものとか消費者の利益を一方的に害するようなものが盛り込まれていた場合には合意の内容にならないというような規定もあるわけでありますけれども、やはりその契約約款、できるだけ適正な内容の約款が使用されるようにしなければならないと思います。個別のトラブルがあって初めて訂正されるということではなくて、できる限り適正を確保して今後運用されるようにするべきであるというふうに思っております。
 例えば、許認可があるような業種、公共的なサービスを行うような事業者などについては、比較的イメージとして余り不当な条項は入っていないのではないかなと、こんなふうに思うわけでありますけれども、この定型約款というのは冒頭申し上げたとおり非常に幅広くて、インターネット上の例えば物を買ったりとか、そういう場合にも今後この規定が適用されていくことも考えられます。そうした個々の事業者に対してきちんとした定型約款の内容を作っていってもらうということも重要ではないかと思っております。そういう観点からも、例えば不当条項とか不意打ち条項というのはどういうものなのか、そうしたものを類型化して、法案が成立した場合には施行までの間にしっかりと周知をするとか、そうしたことをやっていっていただきたいと思います。
 こうした契約約款の内容の適正というのは今後どのように確保していくおつもりなのか、伺いたいと思います。
#276
○政府参考人(小川秀樹君) 約款につきましては、いわゆる業法においてその内容が規制されているものがございます。例えば、保険業法では、保険約款の内容が法律で定められた基準に適合するかどうかを内閣総理大臣が審査することとされております。また、宅地建物取引業法では、宅地建物取引業者が締結する契約について一定の条項を無効とする旨の規定も設けられております。このように、顧客に与える影響の大きさなどを考慮して、一定の取引関係につきましては業法による約款の規制が行われておりまして、これによる約款の内容の適正化と顧客の保護は重要な役割を果たしているものと承知しております。
 他方で、約款の内容の適正化は、消費者契約法や民法第九十条の規定などの私法ルールにおける不当条項規制によっても図られてきている面がございます。そして、定型約款に関するルールは、これらに加えて、定型約款を利用した取引について現行法には欠けておりました極めて基本的なルールを定めるものであり、その中では、改正法案第五百四十八条の二第二項の不当条項のルールが約款の内容の適正化に一定の効果を有するものと位置付けられるものと考えております。
 このように、業法による許認可規制等が存在する取引については業法と私法ルールが重畳的に適用されておりますが、業法による約款の規制と私法ルールによる不当条項規制は、大きな目標は似通っているとはいえ、それぞれの要件、効果を異にするものでありますので、改正法案の下においても引き続き両者の役割分担は変わらず、言わば一体となってその内容の適正化が図られるものでございます。
 他方、業法による許認可規制などが存在しない取引については私法ルールによる約款内容の適正化の余地しかないわけでございますが、その中では、改正法案五百四十八条の二第二項の不当条項のルールはより重要な役割を期待されるものであるというふうに認識しております。
#277
○佐々木さやか君 業法によるルールと私法によるルールの関係について御説明をいただきましたけれども、最後に確認をさせていただきたいのが消費者契約法との関係であります。
 今回の、消費者契約法十条には、消費者の権利を制限し、消費者の義務を加重する消費者契約の条項であって、民法の信義則に規定する基本原則に反して消費者の利益を一方的に害するものは無効とするという規定がございます。民法と同様の規定が存在することになるわけですけれども、消費者契約法については消費者契約でありますが、民法の定型約款、定型取引が消費者契約に当たる場合に、この十条との関係、例えば要件ですとか、それから効果に違いがあるのかどうか、また、消費者としてはこの二つの条項については選択的に主張ができるのかどうか、この点を最後に確認したいと思います。
#278
○政府参考人(小川秀樹君) 改正法案におきましては、定型約款の個別の条項のうち、相手方の権利を制限し又は相手方の義務を加重する条項であって、信義則に反して相手方の利益を一方的に害すると認められるものについては合意をしなかったものとみなすこととしております。
 他方で、消費者と事業者との間の契約である消費者契約に適用される消費者契約法第十条は、消費者の権利を制限し、又は消費者の義務を加重する消費者契約の条項であって、信義則に反して消費者の利益を一方的に害するものは無効としております。
 このように、改正法案第五百四十八条の二第二項と消費者契約法第十条とは、いずれも契約の当事者の一方にとって不当な内容の契約条項の効力を認めないこととするものであり、かつその要件も類似しているように見えますが、次に申し上げますような相違点がございます。
 そもそも、定型約款に関する規定は、消費者と事業者との間の消費者契約に適用対象を限定しておりませんので、例えば企業がワープロソフトを購入する契約を締結した場合のように、事業者間の取引でありましても改正法案五百四十八条の二は適用され得るものでございます。また、その要件の中でも最も主要な部分であります信義則違反の有無の判断についても、改正法案においては顧客であります相手方が約款の個別の条項の内容を認識しないまま取引が行われるという定型取引の特質が重視されることになるのに対しまして、消費者契約法第十条におきましては、消費者と事業者との間に様々な格差があることを踏まえて判断されます。
 このように、改正法案第五百四十八条の二第二項と消費者契約法第十条とは適用範囲を異にするのみならず、その判断において重視すべき考慮要素も異なり、導かれる結論に違いが生ずることもあり得るものでございます。
 次に、主張を選択的にできるのかという点でございますが、改正法案第五百四十八条の二第二項のみなし合意除外規定と消費者契約法第十条の両方の要件に該当する際には、これは選択的に主張することは可能でございます。
 すなわち、改正法案第五百四十八条の二第二項は、ある条項についての合意の有無を定めるものであるのに対し、消費者契約法第十条は、ある条項について合意が成立していることを前提とした上で当該条項の有効性を判断するものでありますが、改正法案第五百四十八条の二第二項による合意の有無の判断を先行して判断しなければならないという関係にはなく、当該条項の拘束力を争う当事者はこれは選択的に主張することが可能でありまして、裁判所も同様に改正法案第五百四十八条の二第二項について先行して判断しなければならないというわけではないというふうに考えているところでございます。
#279
○佐々木さやか君 今後、法案が成立した場合の現場での運用、解釈について指針となるような答弁だったのではないかなと思います。
 以上で私からの質問を終わります。
#280
○委員長(秋野公造君) 本日の審査はこの程度にとどめ、これにて散会いたします。
   午後四時三十二分散会
ソース: 国立国会図書館
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