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2017/05/25 第193回国会 参議院 参議院会議録情報 第193回国会 法務委員会 第14号
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2017/05/25 第193回国会 参議院

参議院会議録情報 第193回国会 法務委員会 第14号

#1
第193回国会 法務委員会 第14号
平成二十九年五月二十五日(木曜日)
   午前十時開会
    ─────────────
   委員の異動
 五月二十四日
    辞任         補欠選任
     有田 芳生君     野田 国義君
 五月二十五日
    辞任         補欠選任
     牧野たかお君     宮本 周司君
     野田 国義君     有田 芳生君
    ─────────────
  出席者は左のとおり。
    委員長         秋野 公造君
    理 事
                西田 昌司君
                山下 雄平君
                真山 勇一君
               佐々木さやか君
    委 員
                猪口 邦子君
                中泉 松司君
                古川 俊治君
                牧野たかお君
                丸山 和也君
                宮本 周司君
                元榮太一郎君
                柳本 卓治君
                有田 芳生君
                小川 敏夫君
                野田 国義君
                仁比 聡平君
                東   徹君
                糸数 慶子君
                山口 和之君
   国務大臣
       法務大臣     金田 勝年君
   副大臣
       法務副大臣    盛山 正仁君
   大臣政務官
       法務大臣政務官  井野 俊郎君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        青木勢津子君
   政府参考人
       内閣府大臣官房
       審議官      大塚 幸寛君
       金融庁総務企画
       局参事官     栗田 照久君
       法務大臣官房司
       法法制部長    小山 太士君
       法務省民事局長  小川 秀樹君
       国土交通大臣官
       房建設流通政策
       審議官      海堀 安喜君
    ─────────────
  本日の会議に付した案件
○政府参考人の出席要求に関する件
○民法の一部を改正する法律案(第百八十九回国
 会内閣提出、第百九十三回国会衆議院送付)
○民法の一部を改正する法律の施行に伴う関係法
 律の整備等に関する法律案(第百八十九回国会
 内閣提出、第百九十三回国会衆議院送付)
    ─────────────
#2
○委員長(秋野公造君) ただいまから法務委員会を開会いたします。
 委員の異動について御報告いたします。
 昨日、有田芳生君が委員を辞任され、その補欠として野田国義君が選任されました。
    ─────────────
#3
○委員長(秋野公造君) 政府参考人の出席要求に関する件についてお諮りいたします。
 民法の一部を改正する法律案及び民法の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案の審査のため、本日の委員会に、理事会協議のとおり、法務省民事局長小川秀樹君外四名を政府参考人として出席を求め、その説明を聴取することに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#4
○委員長(秋野公造君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
    ─────────────
#5
○委員長(秋野公造君) 民法の一部を改正する法律案及び民法の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案の両案を一括して議題とし、質疑を行います。
 質疑のある方は順次御発言願います。
#6
○真山勇一君 おはようございます。今日も朝一番目の質問の機会いただきまして、ありがとうございます。
 民法についての質疑を始めさせていただく前に一言申し上げたいんですが、今朝の、皆さん、新聞それからテレビのニュースも御覧になったと思うんですけれども、加計学園、森友学園の問題がまた大きな局面というか、大きな動きがあったというふうに思います。
 なぜかというと、やはりこのところ大きな問題になっていたあの文書ですね。どういうものかというのが分からないうちに怪文書だなどと決め付けるというのもちょっとおかしいと思いますし、それから、ああいうものがある以上は、やはり真偽がどうなのか、それからその中に書かれている真実がどうなのかということはやはり調べなくては私はいけない問題だというふうに認識をしております。
 特に、前文部事務次官という、社会的にも、それから私たちのこの政治の世界でも大変重要な地位、ポストにあった方があれを認めている発言を今しているように伝え聞いております。そういうことになりますと、なおさらどういうことなのかということをきちっと私たちこの国会の場でやはり真相を究明していくということは必要なことでもあり、国民の皆さんに対する義務でもあるというふうに私は思います。
 是非、与党それから野党の皆さんにもお願いしますが、この法務委員会の審議と並行して、こうしたものの真実の解明、特に森友学園問題については、あの土地をめぐる価格の問題はまだ決着の付かないまま、そのままになっているというふうに思います。是非、国会議員協力して真相解明をやりたいということを皆さんに呼びかけをさせていただきたいと思います。よろしくお願いします。
 それでは、民法に関する質疑を始めさせていただきたいと思います。
 もうかなり論点もいろんなところ、様々な委員から様々な論点について質疑をさせていただきました。今回のこの民法の改正が、やはり消費者のため、消費者を保護するため、そういった大きな目的が一つあるわけですね。
 そうした面からちょっとまた質問させていただきたいんですが、その中で、私、今日取り上げたいのは賃貸住宅。誰でも一回か二回は家を借りた経験がある、その家を借りた経験のときに賃貸契約書なるものを作る、そしてその賃貸住宅に住む、そしてあるときまた別なところへ引っ越すために明け渡すことがある、そうしたことは誰でも、これ、むしろこの民法の中でもこういうことこそ消費者が割合と実感として感じることなわけです。その中にもルールの変更あるいは新しく設けられたものがある。なかなかこの辺というのはそのときにならないと分からないということもあって、えっ、そんなふうに改正されているのというようなこともあるんじゃないかというふうな感じも私は受けております。
 今日は、この衣食住の住の部分ですね、私たちが生活する上で恐らく民法の一番身近なところだと思うんです。この辺のことを少しルールが変わったということでお伺いしたいというふうに思います。
 部屋を借りたり、特に民間の部屋を借りたり、それから家を借りたりする、いわゆる賃貸住宅を借りるときに、私たちはやっぱり不動産屋さんへ行って、一番最初に賃貸契約書なるものを目の前に出されて、そして大家さんと、それから借り手、たな子さんと、それからその仲介をする多分不動産業者あるいは宅建業者というような形で賃貸契約書というのを作ると思うんですが、今回の民法の改正の中で第三者保証というのがありましたね。この賃貸契約書の中にも保証、保証人という欄がありますね。大体一般的には両親がなるとか、あるいは親類がなるとか、それでも見付からないときは友人とかという方が保証人になる。この保証人も何かのことがあれば保証しなくちゃいけないというふうに思うんですけれども、この保証人というのも、今回のいわゆる第三者保証、つまり、言われている公証役場の公証人の公正証書というのが必要な、そういうようなものに対象になるのかなという、そういう疑問を持たれる方もいらっしゃると思います。まず、この点から伺っていきたいと思います。
#7
○政府参考人(小川秀樹君) お答えいたします。
 改正法案では、公証人による保証意思の確認手続を新設しておりますが、その対象は事業のために負担した貸金等債務、この定義は四百六十五条の三第一項にございまして、金銭の貸し渡し又は手形の割引を受けることによって負担する債務でございます。この事業のために負担した貸金等債務を主債務とする保証契約とされております。
 したがいまして、貸金等債務には該当しない賃貸借契約における賃借人の債務を主債務とする保証契約はその対象とはなりません。したがいまして、賃借人の賃貸人に対する債務を主債務とする保証契約については公正証書の作成は必要でございません。
#8
○真山勇一君 ありがとうございました。
 賃貸住宅の場合は金銭の貸し借りじゃなくて、借主がきちっと家賃を払ってくれるかどうかということに対する保証人ではないかと思うんで、いわゆる今回の第三者保証の対象にはならないということで、そうすると、この賃貸契約書を作るときに特に公証人のそういう公正証書は必要ないということで、これは今までと変わりなくということになると思います。
 そうすると、その保証人の役割、どういうふうな役割になるのかということと、それから、この保証人、例えば家賃の未払があったときというのは一番分かりやすい例だと思うんですが、保証人の役割ですね、それから、どこまでその責任範囲があるのかというようなことについて伺いたいと思います。
#9
○政府参考人(小川秀樹君) 保証人の役割と保証の範囲についてのお尋ねでございます。
 まずは、賃貸借契約に伴う保証における被担保債権の範囲は、これはやはり個別具体的な契約によって異なるところでございます。例えば、不動産の賃借人が賃貸人に対して負担する賃料債務その他の賃貸借から生ずる一切の債務を主債務とする根保証契約が締結された場合には、一般に、賃借人の負う賃料債務のほか、賃借人が賃貸人に対して負います損害賠償債務についても保証の範囲として含まれることになると考えられます。
 したがいまして、もちろんこれも個別の事情によるとは考えられますが、例えば、賃借人が賃借物件の内部で自殺し、それが契約違反に当たり、賃借人に損害賠償債務が生じていたと認められる事案については、保証人はその損害賠償債務について責任を負うことになるものと解され、その賠償の範囲についても物件価値の毀損分等が損害として認められるということも、これはもちろん契約の趣旨にもよるわけでございますが、そういうこともあり得るものと考えられるところでございます。
#10
○真山勇一君 意外と、大金を借りるケースと違って、家を借りるときの保証人というのは、そうすると、頭の中で浮かぶのは、借主が家賃を滞納しちゃったり、家賃を払わないでどこかへ逃げちゃったり、それから何か不測の事態がちょっとあってお金が掛かるような修理が必要だぐらいかなというふうに思うんですけれども、今答弁伺っていますと、例えば、やっぱり不測の事態って結構いろいろ考えられるような今発言、答弁伺って感じたんですが。
 例えば、例えばですよ、今独り暮らしの方が多くなっていますよね。そうすると、孤独死というのがすごく問題になりますね。借りた部屋の中であるとき突然その借主の方が亡くなられるということもある。そういうこともある。それから、その部屋の主の方が部屋で不幸にして人生悲観して自殺しちゃうようなこともあるかもしれませんし。それから、場合によっては、部屋なら部屋でいいんですけれども、ケースとしては、そのマンション、借りている部屋のあるマンションですね、マンションの屋上なり階段の踊り場なりから飛び降り自殺みたいなことをしてしまうと、そのマンション全体の、何というんですか、イメージとか評価とか、それから貸しに出すにしても、やっぱりそういう事実があるとなかなか大家さんにとっては厳しいことになると思うんですが、つまりこの保証人というのは、そういうこともあったら保証の対象になるというふうな見解でよろしいんでしょうか。
#11
○政府参考人(小川秀樹君) もちろん、これは現行の制度の説明ということになりますが、契約の趣旨にもよりますが、自殺などの場合には、先ほど申し上げましたように、保証の対象と、損害賠償義務が発生して保証の対象となるということは考えられます。お話にありましたような自然死のような場合はまた、責めに帰すべき事由があるかどうかということの議論は当然あるところかと思います。
 なお、改正法案におきましては、保証人が個人である根保証契約については、保証人が契約時には予想していなかった過大な責任を負うリスクがあることから、賃借人の債務を主債務とする根保証契約を含めて、主債務の種別を問わず極度額を定めなければ効力を生じないこととしております。この改正点は、お尋ねにありました賃貸借契約に伴う保証人の責任について限定する機能を果たすことが期待されているところでございます。
#12
○真山勇一君 そうすると、現行とそれから今度の新しいルールになると、今おっしゃった極度額、これ、法律の専門用語じゃないかと思うんですが、言ってみれば賠償の限度額というふうに言ってもいいと思いますけれども、それをあらかじめ決めておかなくてはいけないというような、今度の新しいルールはですね、おっしゃったんですけど、そうすると、普通、賃貸契約書の中でそこまで書き込んであるか、あるいはそこまで説明を例えば仲介業者から受けるかというと、現時点では何か受けていない、それからそういうのを書き込むところもないというような気がしますけれども、今おっしゃった極度額というのを新しいルールでいうと、何か契約上で変化、そのときに説明するなりあるいはそういう書類なりということで準備をしないと、保証人というのは言ってみればとんでもない予想外の賠償をしなくてはいけないケースになるということなんでしょうか。
#13
○政府参考人(小川秀樹君) 保証契約の方が書面によることを求めていますので、契約書に様々な条項を記載していただく必要が出てまいります。先ほど申し上げました根保証の極度額につきましても同様に記載していただくということになります。
#14
○真山勇一君 念のためですが、そうすると、この新しいルールになった場合は、賃貸契約書の中に、多分保証人の欄のところに保証人が負うべき義務というか責任というか、そういうものがある程度明記されるというふうに解釈してよろしいんでしょうか。
#15
○政府参考人(小川秀樹君) 記載されることになると思います。
#16
○真山勇一君 お金の貸し借りと違って、家を借りるときの保証人って気軽に、それこそ気軽に引き受けてしまうことが多いと思うんですけれども、そのときに万々が一大きなそういう事態になるとやっぱり困るので、その辺はやはりきちっとした体制というのをこれからつくっていかなくてはいけないと思いますので、よろしくお願いします。
 それから、今回の改正の大きなポイント二つあるというふうに言われています。一つは敷金の問題と、それからもう一つは借りている部屋なり家を出るときの退去時の原状回復と。これ、本当に家借りたことある人にとっては、必ずやっぱり大家さんとあるいは不動産業者と細かいところでいろいろ食い違いがあったり、場合によってはトラブルになるということもあると思うんですね。
 その敷金ということについて、今回の新しいルールではどういうことになるんでしょうか。
#17
○政府参考人(小川秀樹君) 御指摘の敷金につきましては、その返還をめぐって、例えば敷金をいつ返還するのか、あるいはどのような範囲で返還するのかといった紛争がこれは日常的に極めて多数生じております。
 そこで、改正法案では、まず敷金の定義自体を明瞭なものとするほか、敷金返還債務の発生時期については、判例に従い、賃貸借が終了して目的物が返還されたときに敷金返還債務が生ずるなどとしております。さらに、返還すべき敷金の額につきましても、これも判例に従いまして、賃貸物の返還完了のときに、受け取った敷金の額からそれまでに生じた被担保債権の額を控除した残額につき発生するなどという規定を設けております。
#18
○真山勇一君 それから、敷金というと必ず、一般的に言うと二か月分というふうなことがあったり、最近は一か月分とかあるいは敷金要りませんというような契約もあるように聞いております。それから、逆に言うと、例えば大きなビジネス、商業用のビルみたいなものだと、やっぱり逆に言うと一年分とかそういう大きなお金の敷金を要求するケースもあるというふうに伺っているんですが、これ、敷金のそうすると限度額、つまり幾らぐらいまでなら敷金ということで相手に求めていいのかみたいなところというのはあるんでしょうか。その辺の敷金の性格について、これは法務省というよりは国土交通省の方になりますか、どちらでも、じゃ局長で、よろしくお願いします。
#19
○政府参考人(小川秀樹君) 改正法案では敷金の額に関しましては特段の規律は置いておりません。これは、言わば契約自由の原則の下での当事者間の合意に委ねているということでございます。
 もっとも、個別の事案によりましては、敷金に関する合意の目的や経緯、賃料その他の取引条件などの諸事情に照らしまして過大な敷金の金額を定めたという場合には、これは公序良俗に反すると認められて無効とされることはあり得るものと考えられます。そのような場合には、賃借人は敷金の定めが無効とされた範囲で交付した金銭の返還を求めることができるということになると考えております。
#20
○真山勇一君 細かいことに入るようですけど、決まりがないということは、逆に言えばオーナーというか貸主の方が、いや、あなたが入居している物件については例えば一千万円の敷金入れてほしいとか、そういう一億円とか法外な敷金を要求しても、それは可能ということですか。
#21
○政府参考人(小川秀樹君) もちろん、敷金という名目で交付する金銭の趣旨は様々ございまして、損害賠償部分を担保するもの以外にも多分いろんな目的で交付する部分もあろうかと思いますが、いずれにいたしましても、先ほど申し上げましたように額それ自体についての規律を設けているわけではございませんが、一般条項によりまして公序良俗に反すると認められるような場合には無効となるということは十分考えられます。
#22
○真山勇一君 そうですね、確かに公序良俗ということで余りそう法外なあれはやっぱりおかしいと、一般常識から見ておかしいということになるんじゃないかと、それはよく分かりました。
 そして、今度の法案の中に、新しく改正の中にその敷金というのは、まあ一般的には敷金と言われていますけど、名称は問わないということが指摘されているのは、名称は問わないということはどういうことかと。そうすると、敷金じゃないほかの何か呼び方、名称というのはあるんでしょうか。
#23
○政府参考人(小川秀樹君) 例えば保証料というような言い方で、基本的な敷金の性質は損害賠償の担保ということになると思いますので、保証料名目で取るということはあろうかと思います。
#24
○真山勇一君 損害賠償の保証料ということだというふうなことで、敷金あるいは保証料というような名目で賃貸契約書の中に出てくるというふうに理解をいたしました。
 そうなると、保証料ということになると、次の質問をさせていただきたいんですが、大きく影響を受けることは、もう一つの大きな今回の民法のルールでありますいわゆる原状回復ですね、退去するときに部屋の状態をどうしていくのかというのは、これ結構、これは貸主と借主の間で結構まあいろいろ細かいところまでいろんなことがあるんじゃないかというふうに思っているんですが、この原状回復というのがその言葉だけだととてもどういう状態のことかというのが分からないんですが、一般的に言われているのは、普通にその部屋を使っていて汚れたり傷んだりした場合というときはどうなのかとか、あるいは、別の言葉で言えば経年変化という言い方をしますけれども、こうしたことと、それから、明らかにこれはちょっと普通の状態と違うよねということがあると思うんですが、その辺の原状回復というのはどの辺りを基準に考えられているものというふうに思えばよろしいんでしょうか。
#25
○政府参考人(小川秀樹君) まず、今回の改正法案の御説明いたしますと、改正法案では、従来の確立した判例実務を踏まえまして、通常の使用及び収益によって生じた賃借物の損耗、すなわちいわゆる通常損耗でございます、それから賃借物の経年変化につきましては、賃借人は原状回復義務を負わないということを、これは六百二十二条の二の第一項で明記しているところでございます。
 通常損耗とは何かということを簡単に申し上げますと、通常損耗とは一般に賃借人の通常の使用により生ずる賃借物の損耗などを意味し、それから、経年変化は年数を経ることによる賃借物の自然な劣化又は損耗等を意味するものというふうに解されております。
#26
○真山勇一君 そうすると、出るときに普通の傷みなのかあるいは借りた人の特定の傷みなのかというのはとても難しいし、それから、例えば壁とか、何ですか、廊下に大きな傷があったりなんかした場合どっちが、最初からあったのかあるいは付けたのかというのは分からないと思うので、やはり原状回復の話をしていると、私は、退去時も大事ですけれども、逆に言うと入居時、トラブルを避けるためには入居時がむしろ大事なのかなと。入居時の認識が一致していれば、出るときに、入るときこうだったよねという話である程度トラブルを防げるような気がするんですが、入居時というのは何か特定の今回ルールというのは設けているんでしょうか。
#27
○政府参考人(小川秀樹君) もちろん、ある意味証拠を得ておくという観点からは、入居時に一定の管理をして証拠の保全をしておくと、写真を撮るなりするということも一つの方法だと思いますが、改正法案では特に入居時に何かをしなければならないというようなことについては定めておりません。
#28
○真山勇一君 そうすると、その場合の入居時の、今おっしゃったように写真を撮るとか、入るときの状況がどうだということを、何ていうんですかね、お互いの了解をできる状況にしておく、証拠にしておくみたいなこと、これはどういうふうなことで決められているのか、これはお答えいただけますか。
#29
○政府参考人(小川秀樹君) 法律のルールなどというものはないというふうに承知しておりますので、言わば自主的にあるいは家主さんなり等の合意の下でそういったことを行われるということだと思います。
#30
○真山勇一君 自主的のような気がするんですけど。そうすると、その辺りのトラブルをしないようにという、まあ不動産業者とか、賃貸契約書なんで宅建業者とか、そういうところになると思うんですが、この辺は国土交通省の方でちょっとここの辺りを聞かせていただけないでしょうか。
#31
○政府参考人(海堀安喜君) お答えいたします。
 今委員御指摘のように、退去時にその物件の状況の確認等についてトラブルになるということは十分考えられますので、入居時において宅建業者仲介の下、貸主と借主の間で現状確認をするというような実務上の取扱いがなされております。
#32
○真山勇一君 それについても特に法律に基づいてということではないんですね。
#33
○政府参考人(海堀安喜君) 特段法律に基づいてということではございません。
#34
○真山勇一君 法律に基づいてということでないだけに、やっぱりそのケースケース、ケース・バイ・ケースで非常にいろんな状況変わると思います。やはり原状回復のトラブルというのを解決するためには、出ていくときも、退去時もそうですけれども、やはり入居するときの対応というのはこれ大きな影響があるんじゃないかというふうに思います。この辺り、是非現場の賃貸契約書を作るところでなるべく退去時のトラブルを防ぐような方法、対応の仕方というのはあってしかるべきだというふうに思いますので、是非この辺をしっかりやっていただきたいというふうに思います。
 それから、今回の改正の中で賃貸借契約期間というのが、普通の場合は二年とか五年とかそのぐらいずつで契約更改をしていくということがあるんでしょうが、上限が二十年ということに現行法ではなっていると伺っています。その後、契約を延ばせてもあと二十年、つまり最大四十年ということでしょうかね。それが今度の新しい法案では五十年に変更されているということなんですが、この理由について伺いたいと思います。
#35
○政府参考人(小川秀樹君) 現行法の第六百四条は賃貸借の存続期間の上限を二十年と定めておりまして、当事者の合意があってもそれより長い期間の賃貸借契約をすることはできないとされております。これは、存続期間が長期である賃貸借を一般的に認めてしまうと賃貸物の損傷や劣化が顧みられない状況が生じ、言わば国民経済上の問題があるとの趣旨に基づくものというふうに指摘されております。
 しかし、現代社会におきましては、例えばゴルフ場の敷地に利用するための土地の賃貸借などのように存続期間を二十年以上とする現実的なニーズがあるにもかかわらず、この規定が障害となって存続期間を二十年とする賃貸借契約を締結せざるを得ず、二十年の経過後に改めて再契約をするという不安定な契約実務を強いられているとの指摘がございます。
 そこで、改正法案におきましては、物件である永小作権の存続期間の上限が五十年と定められていることとの均衡なども考慮いたしまして、賃貸借の存続期間の上限を五十年に伸長することとしております。
#36
○真山勇一君 同じ借家に何年住むかというのはやっぱりそれぞれ事情が違うので、五十年住む方というのはそんなにたくさんいるかどうかということもありますけれども、現在の状況に合わせて五十年にしたということは理解をできました。
 それから、やっぱり気になるのは、原状回復というか、賃貸借のルールですね。借りる方と貸した方でトラブルをなるべく起こさないようにということだと思うんですが、特に、これやっぱり民間の住宅の場合は、貸す方も、大家さんも民間人、それから借りる方も民間人という場合は、やっぱりそれぞれ両方ともそれぞれ消費者的な立場でしょうから、貸す方が法人とか大きな会社、マンション会社なんていうとまた別なんでしょうけど、やはりこの辺りはトラブル本当にない方がいいことですし、お互いのためにもやっぱり問題なく退去できて、新しい人を探すことができるというのがいいと思うんです。
 私、これ、ちょっといただいたのは、国土交通省住宅局、原状回復をめぐるトラブルとガイドラインと。その原状回復をめぐるトラブル、いろいろこれまでにあった具体的な例がこれ挙げられているんですが、やっぱりこんなに、こんなにあるんですね、この原状回復ということだけで。恐らく契約の時点では原状回復というすごく簡単なこの四文字で済んじゃうんですけれども、実態のそのトラブルというのはやっぱりこんなにあると。これは、具体的な例を挙げてその場合どういうふうに解決するかということの一つの指針になっていると思うんですね。
 ですから、貸す方と借りる方もあると思うんですけど、その仲介に立つ立場の宅建業者とかあるいは不動産業者にとってはこれ物すごく大事なことだと思うんですね。これから新しいルールができたらこの辺りをやはりどうやって周知をしていくか、その辺りをどういうふうに考えておられるか、伺いたいと思います。
#37
○政府参考人(海堀安喜君) お答えさせていただきます。
 宅地建物取引業者への周知の方法でございます。
 今般の民法改正は、賃貸借契約に係る事項など、非常に国民生活、経済活動に関連の深いものがあるというふうに認識をしております。国土交通省といたしましても、関係省庁や業界団体と十分連携を図りながら、宅建業者に対しまして説明会の開催あるいは研修等の取組を推進するとともに、不動産賃貸借の媒介を行う宅建業者の方々に対してもこの改正の内容の周知の徹底に努めてまいりたいというふうに思っております。
#38
○真山勇一君 かなり賃貸契約書を作るときに宅建業者、免許を持っている方から丁寧な説明が最近はするようになったというような話も聞いております。大事なことだと思います。これを是非しっかりやっていただきたいというふうに思います。
 それから、時間ですので、最後に大臣にお伺いしたいんですが、やっぱり今回の民法改正、これまでずっと議論しています。それで、たくさんの改正点あります。二百項目とも言われています。これだけたくさんいきなり改正されてしまうと、本当に周知って大変だと思います。
 私、今回勉強させていただいた本に、日本弁護士連合会が作ったこういう本があったんですね、「消費者からみた民法改正」。消費者から見たという、こういう分かりやすいやっぱりものがその項目ごとに私は必要じゃないかと、そのケースごとにですね。何かこういう分かりやすい例えばパンフレットを作って啓蒙に努めるとか、やはりその周知が大事だと思うんですね。
 三年間の間に大変なそれをしなくちゃいけないと思いますが、その辺り何か工夫があるか、大臣のお考えを伺いたいと思います。
#39
○国務大臣(金田勝年君) ただいま真山委員から、賃貸借契約あるいは敷金あるいは原状回復等々、様々な観点から御質問、質疑を行っていただきました。聞いておりまして、非常に国民生活に関わりが深いよなという思いを私も本当に思った次第であります。
 特に、民法のうちの債権関係の諸規定を全般的に見直すものでありますから、今回の改正はですね、したがいまして、国民の日常生活、経済活動には広く影響を与え得るものであると、このように考えております。その見直しの内容を、ただいま御指摘のとおり、国民に対して分かりやすく十分に周知する必要があるというふうに私も受け止めております。特に、改正法案に関する国会の審議の過程では様々な懸念も示されておりますし、その対応策としての周知の重要性についての御指摘もいただいたものと受け止めておるわけであります。
 具体的な周知方法についてお尋ねでございます。私ども法務省といたしましても、また担当しています民事局もちろんですけれども、法務省全体としても、また政府全体としても、利用可能なリソースといいますか、そういうものを広く活用いたしまして、改正法が適切に施行されますように国民各層に対して効果的な周知活動を行っていきたいと、このように受け止めて考えておる次第であります。
#40
○真山勇一君 今おっしゃったように懸念もあります。今回、総体としては評価をしたいというふうに思うんですけど、やっぱり懸念、隠せないと思うんですよ。そして、今回の委員会でも扱っていない問題、まだ二百項目もありますから、いろいろあると思うので、問題点がもしかするとまだ実際に出てくるということもあると思います。
 こういう辺りをしっかりと見直しを進めながら是非法案の実施ということをお願いしたいんですが、できれば、本当ならばもう少しこういう問題点、更に審議するような機会も必要じゃないかということを申し上げて、私の質問を終わります。
 ありがとうございました。
#41
○小川敏夫君 民進党・新緑風会の小川敏夫でございます。
 私の最大の関心事は消費貸借、繰上げ弁済なんですけれども、質問の流れもありますので、少し賃貸借のことを質問させていただいてから、その消費貸借の方にと思います。
 今回、敷金についての新たな条項が加えられるというようなことで、借家に関しての一つのルールが定められたと思うんですが、借家に関して言えば、例えば更新料。
 今、住宅を借りますと大体多いのが二年契約で、二年たつとそのまま契約は続いているんだけど契約更新だということで大体一か月分の更新料を取られると、こういうようなのが一般に行われております。ただ、借家法は、更新はごく一部の賃貸人の方の正当事由か何かの、何かじゃなくて正当事由という要件があって、その要件を満たさない場合には更新を拒絶できないと。ですから、賃貸人の法律上の要件を満たす場合以外には法律上当然に契約は更新されるという位置付けになっているのに更新料を払わなくてはいけないという契約はこれはおかしいのではないかということで、これまでも実際に論争になっているんですが、この更新料のことについては何か検討しなかったんでしょうか。
#42
○政府参考人(小川秀樹君) お答えいたします。
 更新料につきましては、判例によると、期間が満了し、賃貸借契約を更新する際に、賃借人と賃貸人との間で授受される金員であるとされておりまして、その法的性質については、一般に賃料の補充ないし前払、賃貸借契約を継続するための対価などの趣旨を含む複合的な性質を有するものであるというふうにされております。
 改正法案におきましては、この更新料につきましては、同様に賃貸人、賃借人の間で授受されます金銭の敷金とは異なりまして、特段の規定は設けておりません。法制審議会でも特にその点についての検討があったものとは承知しておりません。
#43
○小川敏夫君 その借家法の更新拒絶、これは、まあ言わば強行規定ですよね。借家法に規定した規定に反するような約定があってもそれは無効だという意味で強行規定なわけです。
 そうすると、法律上当然に、貸主側に正当事由があるというような法定要件を満たした場合以外は法律上当然に更新されるのに、しかし更新の際に更新料を義務付けるというのは借家法の強行規定に反しているんじゃないかと、こういう議論があるわけでありまして、ですから、更新料の約束をしてもそれは無効じゃないかということでしばしば裁判になるわけでありまして、言わば非常に議論があるところ。
 それから、実際の社会の実情としましても、これ賃借人に結構負担なんですよね。ずっと借りているのに契約は別に二年にされて、それ以上借りる予定であっても大体二年にされて、二年来るたびに一か月分の更新料を払うと。こうなっているのは結構賃借人、逆に言えば広い意味では消費者サイドが借家法の趣旨に反した、趣旨に反していることは明らかだと思うんですけれども、そうした面で紛争がある、あるいは何らかの解決が必要じゃないかと思うんですが、ちょっとその更新料について全く議論がされなかったというのは大変残念なんですけれども、どうです、大臣、こういうことはもっと一つのルールをしっかりと定めた方がいいんじゃないかと思うんですが、いかがでしょう。
#44
○政府参考人(小川秀樹君) まず、更新料の関係で規定を設けていない理由ですが、先ほど申しましたように、敷金との比較で申しますと、敷金につきましては、返還の要否や額、充当の可否などについて紛争が生じやすい上に、確立した判例法理が存在することから、これを明文化するのが適切であると判断したものでございます。
 これに対しまして、更新料につきましては、これはもちろん借地借家法という民法の特別法の世界で起きる現象だというふうに理解しておりますが、その要件や有効と認めるべき範囲等については民法に規定すべき判例法理が存在せず、したがって、規定を設けるとしてもどのような内容とすべきかについては明らかではないというのが現状だというふうに理解しております。
#45
○小川敏夫君 現実に、下級審では、更新料支払義務がないという下級審の裁判例もありますよね。しかし一方で、局長が言われたような更新料の支払義務を認めた裁判例もある。実際に紛争があると思うんですよね。
 借家法の問題だって言うけど、今回の敷金だって、賃貸借はいろいろあるけど、敷金というのは住宅の賃貸借で使う言葉ですよね。事業用の事務所の賃貸ですと敷金という言葉は使わないので、大体保証金という言葉を使っているので。だから、本来借家法の領域に入るような住宅の賃貸に関してこうした敷金の規定を設けている。設けていることはいいんですよ、別に悪いと言っているんじゃないんだけど、ただ、敷金のことについてそうした規定を設けたのに、更新料のことについて検討していないのは不十分じゃないかなという指摘をさせていただきました。やはり、現実に紛争がある、あるいは借主側に負担を与えるという実態を考えれば、やはりきちんとしたルール、更新料をなくせば、それは賃料の補充だというんだったら賃料に反映すればいいんですから、賃貸借契約の当初に。そういう意味で検討をまた引き続いてしていただきたいと思います。
 また、賃貸借で、一つは解約予告期間というのがあります。要するに、契約は二年ということになっていても、賃借人は中途で解約することができるけれども、その場合に、解約予告、一か月とかそこら辺の期間前に解約予告しない場合には、もしその解約予告期間に満たない期間残して退去した場合には、退去した後でもその期間分の賃料を払えと、こういうことになるわけでありますけれども、まあ解約予告の仕組みが悪いとは言わないので、一か月ぐらいはしようがないかなと思うんですけれども、しかし、中には半年間の解約予告期間を定めるような契約もあるわけであります。ただ、その六か月の解約予告になりますと、本来、この解約予告の趣旨は、中途で解約された場合に新たな賃借人を見付けるのに日にちが要するだろうという趣旨があると思うんですけれども、そのような長過ぎる解約予告期間というものについて法的効力を全く無原則に認めていいのかどうか。
 例えば、解約予告期間残して出ていっちゃった後、使ってもいないのに五か月分、六か月分の賃料を払うと。一方、貸主は、すぐ賃借人見付けて賃借人入れてしまえば損害がない。少なくとも六か月間空くのかというような話も考えられるわけでありまして、ですから、この解約予告期間ということも賃貸借について検討を加えるなら検討していただきたかったと思うんですが、この解約予告期間について検討したことはございませんでしょうか。
#46
○政府参考人(小川秀樹君) 解約の予告期間につきましては特段の検討をしておりませんし、審議会の中でも特にそういった指摘がなかったというふうに承知しております。
#47
○小川敏夫君 例えば、消費貸借の繰上げ返済については検討して、貸主に有利な規定をわざわざ置いている。何か事業主が求めるところは検討したんだけど、消費者、借主が求めているようなところは検討すらしていないというのは少し民法全般のルールを定める中で在り方として私は偏っているんじゃないかというふうに思うんですが、それは私の意見でございます。検討していないんだから法律に反映されていないということでありますので、私はそれは不十分だったということを、意見を言わせていただきます。
 あと、この賃貸借でちょっと実情と全然離れている、余りよろしくない規定があるんじゃないかと。敷金で、六百二十二条でしたか、六百二十二条の二が今回敷金ということで新たに加えられました。この中で、敷金の返還で、賃借人が適法に賃借権を譲り渡したとき、これは敷金を返還しなければならないと、こういう規定ができました。私は、これ、取引の実情を全く知らない、取引の実情に反する規定だと思いますよ。
 一つの具体的な例を挙げましょう。賃借権の譲渡といっても、余り住宅では賃借権の譲渡なんてないんですよね、住宅から出ていってもらって新たに新規契約すればいいわけですけれども。賃借権の譲渡がある、多いというのは営業用店舗なんですよ。いわゆるお店、あるいはクラブとかスナックとか非常に内装、設備にお金を掛けている施設、設備があって、それを営業権も付けて、いわゆる居抜き売買というやつですね、そうした店舗の内装、そうしたものを付けて賃借権も譲渡するというのが一般的に行われていることなんです。
 その場合、賃借人は、いわゆる賃借権の譲渡人ですよね、賃借人は大変にお金を掛けて造作しているわけだから、それを造作のまま新たに売ってしまうわけだから、原状回復をしないわけです。原状回復をなされないのに大家さんは敷金を全額返さなければいけない、賃借権の譲渡があった場合には敷金の全額を返さなくてはいけないというと、これは実情にそぐわない規定だと思うんですが、いかがでしょうか。
#48
○政府参考人(小川秀樹君) 御指摘ありました改正法案第六百二十二条の二第一項第二号は、敷金返還債務の発生時期につきまして、これは判例に従いまして、賃借人が適法に賃借権を譲渡したときに、その時点で敷金返還債務が生ずることを明文化したものでございます。
 今申し上げました判例は、賃借権の譲渡に伴って旧賃借人が賃貸借関係から離脱した場合にも敷金関係は存続することといたしますと、新賃借人が新たに負担することとなる債務についてまで長期にわたって旧賃借人が担保させられるという点で、旧賃借人に重い負担が課されることなどを考慮されたものであります。したがいまして、それに基づきます、その判例の趣旨に基づきます改正法案の規律は合理的なものであるというふうに考えております。
 もっとも、これはあくまで任意規定でございますので、御指摘の事業譲渡の居抜きのようなケースなどにおきましては、この規定の内容とは異なる特約が締結されることはもちろん可能でございまして、そういった特約も有効でございます。
 改正法案の下でも、様々な取引慣行がある類型の賃貸借の場合には、敷金関係を承継させる黙示の合意があったと認定されるなどして、敷金関係が新賃借人に承継されると判断することも考えられるというふうに承知しております。
#49
○小川敏夫君 この六百二十二条の二の書きぶり見ますと、「返還しなければならない。」という書きぶりなんですけれども、返還しなければならないという書きぶりであってもこれは任意規定なんですか。何か、返還しなければならないという法律ですと強行規定のようにも読めるんですけれどもね。
#50
○政府参考人(小川秀樹君) 任意規定でございます。
#51
○小川敏夫君 そうですか。まあ、つまらない言葉の論争してもしようがないけど、返還しなければならないという法律なんだけど任意なんですね。
 今局長が言われた、答弁された、何か随分長いことお話しされたんですけれども、判例はどういう事例ですか。
#52
○政府参考人(小川秀樹君) 失礼いたしました。
 土地の賃貸借における敷金契約に関するものでございます。
#53
○小川敏夫君 つまり、それは土地の賃借権の譲渡、それはありますよ。だけど、それだけ見て、実際に賃借権の譲渡が実態で行われている営業用店舗の譲渡、こちらの方が社会的には相当多いんですよ。
 それから、実際に敷金の返還、原状回復義務と一対になって議論するわけですけれども、実際に営業用建物のいわゆる居抜きの譲渡という場合に関しては、やはり純粋に理屈を言えば、賃借人は内部造作、随分お金を掛けた。そのお金を掛けた内部造作を売るんですけれども、敷金を返還しなければならないといいますと、大家とすれば、敷金を返してもらうということは、原状回復が全部なされていれば敷金を返すけれども、原状回復がなされないんなら敷金を返す義務ないわけですよ。原状回復の資金に充当しちゃったっていいわけです。
 だけど、どうなんですか。これは原状回復が全くなされないまま敷金を返さなければならないという規定ですと、少なくとも実際に今現状行われている居抜き取引との、この取引の実情とは乖離した規定じゃないかと思うんですが、そういうふうには認識は持たれないでしょうか。
#54
○政府参考人(小川秀樹君) 繰り返しになりますが、これは任意規定でございます。言わば原則的なものを定めたということにとどまるわけでございまして、事業譲渡、いわゆる居抜きであれば、それを前提とした形でどのような義務を承継し、それによって対価がどうなるか、あるいはどういう権利義務関係を承継するかということを逐一定めていただく合意を設けるということだと思いますし、先ほど申し上げましたが、仮にそういうものがない場合であっても、一定の敷金関係を承継させるという黙示の合意を認めることは可能だというふうに考えております。
#55
○小川敏夫君 まあこれは任意規定だから、取引の実情に合ったらその実情のとおりやれというんだったら、こういう規定要らないじゃないですか、そもそも。
 これは賃借権が譲渡されたときの基本原則を定めておるわけでしょう。だけど、取引の実態が合わないような基本原則を定めたから、それを指摘されたら任意だからそれなりにやればいいというのは、法律の在り方として私は実情を踏まえていないと思うんですがね。任意規定だから別にいいじゃないかというのなら、任意規定なんだから別にいいじゃないかと、実害がないじゃないかというふうに思いますけれどもね。
 私は、非常に、この敷金を返すということについて、余り実情を知らない方が議論をしてこういう条文を設けたんだなという印象を抱いておりますが、任意規定だから実害がないというのならそういうことで、しかし混乱は招くと思いますけれどもね。まあそういったところで、これ以上の議論はやめましょう。
 さて、私が一番関心を持っている消費貸借の件でございます。
 まず、大臣、どうです、私は、この借金があるときに、期間前であっても残元本を返せばそこで全部借金はきれいになって、これで全部清算できるというふうに思っているのが国民的な感覚だと思うんですが、大臣、そういうふうにはお感じになりませんか。
#56
○国務大臣(金田勝年君) 小川委員から、繰上げ返済の場合でございます。通常、利息や費用などを支払う必要がないと国民が一般的に受け止めているのではないかという考え方に対するお答えを申し上げたいと思います。
 改正法案の第五百九十一条の第三項についての理解なんですが、現行法においては、期限の利益の放棄によって相手方の利益を害することができないと定めた第百三十六条の第二項を根拠に、利息付きの金銭消費貸借において、借主が弁済期の前に金銭を返還した場合であっても、貸主は借主に対して弁済期までの利息相当額を請求することができると解するのが一般的であったものと承知をしております。
 期限前返済の実態でございますが、もっとも、例えば国民に比較的身近な住宅ローンを期限前に返済するという場合には、返済時までの利息に加えて銀行所定の手数料を支払わなければならないとされていることが多いと承知しているものの、その額の定めには様々なものがあるものと認識をいたしております。
 このような状況に照らして考えますと、繰上げ返済の場合にどのような金額を支払うべきかに関する国民の理解についても、一概に言えないのではないのかというふうに考えている次第であります。
#57
○小川敏夫君 私がこの点について、まあ私一人がいろんな人にお会いしました、弁護士会とかマスコミの人、あるいは一般のごく普通の方。大体みんな驚いていました、えっ、借金って返せば、そのとき返せばもう終わりでしょうと。借金返したのに、その後、返した後の分の利息も損害だから払えというのが、みんな驚く感覚だと思いますけれども、大臣は、国民はその民法百三十六条の期限の利益の放棄の場合には債権者の分も賠償しろということをみんな認識していると、しかも、返した後も、返した後の利息も払うんだと国民は認識しているというような趣旨の答弁されましたけど、それは違うと思いますよ。
 まあここで、じゃ、国民の認識をどうだこうだと言ったって、私も一億人に聞いたわけじゃありませんから、私の周囲の人、せいぜい数十人か百人か、あるいはもう少し多かったかもしれませんけど、聞いただけですけれども、ほとんどの方が一様に驚いていましたよね。
 どうでしょう、委員長、国民のこの繰上げ返済に対する認識が大臣と私とで相当違うようですから、こういうときこそ参考人にお越しいただいて、消費者あるいはそうした方がどういう認識でいるのか、しっかりと聞いて、私は審議、判断するのが適切だと思いますので、参考人を呼んで審議していただくことを求めます。
#58
○委員長(秋野公造君) 後刻理事会にて協議します。
#59
○小川敏夫君 局長、そもそもこの審議会で繰上げ返済の損害金の規定についてはどういう議論がなされたんでしょうか。
#60
○政府参考人(小川秀樹君) まず、現行法の理解という点でございますが、現行法におきましては、期限の利益の放棄によって相手方の利益を害することができないと定めた第百三十六条第二項を根拠に、利息付きの金銭消費貸借において、借主が弁済期の前に金銭を返還した場合であっても、貸主は借主に対し弁済期までの利息相当額を請求することができると解するのが、これが学説一般でございます。私も改めてまた基本書などを確認いたしましたが、皆こういう書きぶりでございます。
 この点につきまして、五百九十一条第三項の規定を設けるに当たりまして法制審議会でももちろん議論をしたわけでございます。その中では、改正法案の立案に向けた検討の過程でということになるわけですが、貸主が弁済期までの利息相当額を当然に請求することができるとするのは、つまり学説の言わばこぞって指摘している考え方については、それは適切ではないんじゃないかという御意見はいただきました。貸主が弁済期までの利息相当額を当然に請求することができるとするのは相当でないという意見がございました。
 他方で、反対に、貸主が想定していた利息を受け取ることができないことによって貸付けのために支出した費用すら賄うことができないのも相当ではないという意見、これらの意見が言わば双方出たというところでございます。
#61
○小川敏夫君 消費貸借で繰上げ返済したときに、民法百三十六条の規定で、当然返済後の、いわゆる返済期間までの返済後の利息を賠償するのが当然で学説に異論がないんだ、通説だという答弁は前回もいただきました。
 じゃ、その根拠資料を見せてくれというふうにいただきました資料は、懐かしい我妻栄さんの「民法講義」の民法、契約各論ですか、をお持ちいただきました。いただいた資料、こういうふうに書いてありますよ。そこの部分だけ読みますと、「利息付消費貸借では、学説は分れているが、」、「学説は分れているが、原則として期限までの利息をつけ、とくに債務者」云々と、こう書いてある。
 法務省の方でお探しいただいた、学者の間に異論はないといってお示しいただいたこの民法の大家の先生は、結論のところは別だけれども、その結論の前に学説は分かれているがというんだから、学説は分かれているんじゃないですか。
#62
○政府参考人(小川秀樹君) 私どもがお持ちしましたのは、言わば伝統的な見解として非常によく読まれている基本書と、よく読まれていたというのが正確かもしれませんが、そういう基本書であるという趣旨でございまして、昭和二十年代、三十年代の状況に基づいた記述でございます。
 その後の学説につきましては、その教科書の記載を踏まえたものということになるのかもしれませんが、利息相当額を支払うことを当然のように書いているものでございます。
#63
○小川敏夫君 いただいた我妻栄の「民法講義」の契約各論五百四十二款のところですけれども、私も五十年前に多分読んだんだなと思いますけれども、でも、その後の文献ないんでしょう。ここで学説は分かれているといってそれ以外にお示しいただかないのは、余りこの分野を学者が議論していなかったんじゃないですか。
#64
○政府参考人(小川秀樹君) 決してそういうことはございませんで、基本書、教科書には、消費貸借の終了というところで、おおむね大体そういう記載を設けるところがございまして、利息相当額を支払うことを記述しているものが、少なくとも私はつい最近改めて確認いたしましたが、その教科書にはそういう旨の記載がございました。
#65
○小川敏夫君 そうですか。通説だという証拠、根拠の資料を見せてくれといって、持ってきた資料が我妻栄さんのこの「民法講義」一個だけなものですからね。そこには学説が分かれていると。それで、これも我妻栄さんがこういうふうに言っているので、みんな検討していないんじゃないか、私はこういうふうに思うんですよ。
 そもそも、民法百三十六条、これは民法の総則で基本通則です。ですから、民法の基本通則ですから、特に規定がない分野についてはこの基本通則が全部使われるわけです。この消費貸借の五百九十一条は、特に消費貸借に関して、借主はいつでも返済をすることができると書いてある。
 これは、法形式の一般として、一般論は全てに適用されるけれども、一般論と違う場合の適用をするときには特に規定するんですよ。そういう意味で、消費貸借の五百九十一条というのは民法の通則とは違って、消費貸借は借主はいつでも返済できるんですよという消費貸借独自のこの規定という意味で置かれているのが私は法律の在り方の一般だと思うんですが、どうして、消費貸借という個別の契約に関してですよ、消費貸借とは借主はいつでも弁済できるものだと書いてあるものについて、それと異なる通則を適用するんですか。その構造が、私はもう構造の発想から間違えていると思うんですけれども、どうでしょう。
#66
○政府参考人(小川秀樹君) まず、現行法の五百九十一条二項の点から御説明いたしますと、現行法の五百九十一条第二項は返還時期の定めがない消費貸借について定めたものでありまして、これは一項がそういう前提で書かれ、二項はそれを受けた形での規定ということになりまして、返還時期の定めがない消費貸借について定めるものというふうに理解されております。返還時期の定めがある消費貸借について定めるものではないというふうに解されております。
 返還時期の定めのある場合に、期限前に返還することができるかどうかは、期限の利益が貸主のためのものである場合には、借主が期限の利益を放棄することができるかどうかという問題として理解され、現行法の下での学説では、利息付きの消費貸借については原則として期限までの利息を付さなければならないと解されていることは先ほど来申し上げているところでございます。
 単純に返還することができることを定めるという法的意味はないという御趣旨かとも思われますが、借主が返還をしますと貸主は目的物を受領しなければならないという負担を負うことからいたしますと、返還時期の定めがあるときに借主が期限の利益を放棄することができるとしても、貸主が当然に目的物を受領しなければならないかは必ずしも自明ということではなく、やはり借主がいつでも返還することができる旨を定めることには意味があるのではないかと考えているところでございます。
#67
○小川敏夫君 これについて判例はあるんですか。
#68
○政府参考人(小川秀樹君) 消費貸借ではございませんが、消費貸借の規定を準用する消費寄託についての大審院の判例がございます。
#69
○小川敏夫君 その大審院の判例は、定期預金について銀行がですよ、銀行が満期前に解約してお支払いしちゃうと。しかも、それはどういう場面かというと、預金が差し押さえされたんで、差押債権者には支払いたくないから相殺しちゃうと、相殺したいと。で、相殺するためには期限が来ていなくちゃいけないからというんで、その定期預金は期間前だったけれども解約しちゃったと。
 社会の常識として、定期預金の場合に、預けている人、定期預金ですから、預金は預けている預金者が債権者で銀行は債務者ですよね。だから、銀行は債務者という立場かもしれないけれども、定期預金を預けている、その預けている期限の利益は、やはりその期限まで利息をもらえるという預金者の方にあると思うんですよ。
 ですから、今回のこの一般の消費貸借の借主の繰上げ返済とは事例が異なる。少なくとも、判例の場合には、銀行が定期預金者の同意も得ずに解約してしまったというケースでありますけれども、その債権者である銀行預金者の方に明らかに期限の利益があるというような事例の場合であるわけであります。
 ですから、消費貸借ではなくて消費寄託、消費貸借の規定が準用されているかという包括的な理由で私はそれが先例になるとは思わないんですが、いかがですか。
#70
○政府参考人(小川秀樹君) 私どもも、判例があるのかということに対しましては、大審院の判例があるという趣旨で御説明しておりまして、今回の改正法案においてそれを前提とし、あるいは先ほど来申し上げています通説を前提とし、それを前提とした規定ぶりにしているわけではございません。その点については改めて申し上げておきたいと思いますが。
 先ほども申し上げましたけれど、どういう規定を設けるかということについて、検討の過程で法制審でも意見が分かれました。一つは委員の御指摘のような考え方であり、もう一つは、やはりそうはいっても、貸主が想定していた利息を受け取ることができないことによって貸付けのために支出した費用すら賄うことができないのも相当ではないという意見でございました。
 それを踏まえた上で、改正法案におきましては、弁済期の定めのある利息付きの金銭消費貸借において、貸主は期限前の返還によって損害を受けたときは、借主に対しその賠償を請求することができる、言わば損害があればその賠償をすることができるということを規定するにとどめまして、利息相当額を請求することができるということを定めているわけではもちろんございません。利息相当額を請求することができるかどうかといったことも含め、損害の有無及びその額については、言わば解釈あるいは個々の事案における認定に委ねるということで規定を設けたという趣旨でございます。
 したがいまして、私も学説や判例がありますということを御紹介しているわけでございまして、それに基づいて、その考え方のみに立ったことで今回の条文ができ上がっているというわけではないことを改めて申し上げたいと思います。
#71
○小川敏夫君 判例は、要するに、いわゆる融資を受けた債務者が繰上げ返済をするということについての判例、そういう事例の判例ではないということを私は指摘させていただいたわけであります。
 もう一つは、今の局長の言われたことについて議論させていただきますと、損害が幾らになるかというのはそれは個々の事情によるものであります。別に、期限前繰上げ返済したときから本来の返済期までの利息相当分が全額損害になるかどうかは、それは個々のケースによるわけですからケース・バイ・ケースです。
 ただ、論理として、損害があれば賠償するんだから、その損害の中にはこの民法の法律の損害論からいって履行利益も入りますねというふうに、これはこの間、前回確認しまして、履行利益も損害論としては当然論理的には入るという答弁をいただきました。
 それで、履行利益が入るんなら、貸主側の履行利益とは何ですかといえば、それは利息を受けて収益を上げることが履行利益だということで、論理必然的に、論理として、繰上げ返済後の、債権者から見ればもらい損ねた利息が損害になるんですねという論理になるんですねということは、もう前回、論理としては解決済みだったんじゃないでしょうか。
#72
○政府参考人(小川秀樹君) あくまで損害論一般としては、言わば発生した損害、あるいは差額説というような言い方もありますけれど、本来の状態とそれによって実現した状態との差をどう見るかということだと思います。
 利息相当額を取れるような場合というのがどういう場合があるとすると、仮にあり得るかとすれば、やっぱり普通は金融機関のようなところであれば、返済を受けた金銭は、これは当然のことながら他の顧客に対する転用が可能でございますので、そういう意味では言わば損害はもうそこで終わっているというのが一般ではないかと思います。そういう意味では、転用が可能でないような状況があり得るとすれば、その部分については損害として想定することもあり得るという程度のことではないかというふうに考えております。
#73
○小川敏夫君 私は、局長が言われた中で、結論は賛同しないんですけれども、非常にいいことを言われたと思いますよ。借主はいつでも返還することができるという規定の趣旨は、要するに消費貸借、お金ですよ。すると、貸主は返してもらえばお金はすぐほかに運用できるわけですよ。返してもらったら返してもらった途端にそのお金を運用できるんだから、そこから先の利息金なんかは別に取る必要ないじゃないかというんで、私は学者じゃありませんけど、私は借主がいつでも返還できる、もう返した後の利息なんか全く払う必要がないという趣旨で、こうやって借主はいつでも返還できるということが置かれたんだと思いますよ。消費貸借というのは、お金を返せば、返してもらった債権者はすぐに運用できるんですから。そういう基本的前提があると思うんですけどね。
 局長は、すぐに運用できるから損害は生じないんだという実際論の、事実論で今お答えになりましたけど、私は法律の趣旨として、そもそも消費貸借が、なぜ期限返済してそのことについて債権者の不利益を考慮する必要がないのかといったら、債権者は返してもらった金をまた運用できるからです。これは私の意見ですから、学者じゃありませんけど、一人の人間としての意見ですけど。
 どうでしょうか、損害があるかないか、要するに、局長の答弁はいろいろ何か、私は先回の質疑の中で、貸主側、債権者側の履行利益も、失った逸失利益、これも論理としては損害の中に入るということのこの論理は、論理としてはですよ、その実際の適用場面において損害がどういうふうになるかというのは実際の実情の問題でしょうから、損害があるかないか、損害が多いか少ないかということはケース・バイ・ケースでありましょうけれども、この損害の論理として、やはり損害の中に逸失利益も入るんではないかというのは、これは論理としてはそうなるということは前回御答弁いただいたと思うんですが、そういうことなんじゃないですか。
#74
○政府参考人(小川秀樹君) もちろん、一般論としてそういうものが含まれるということは申し上げたかと思います。
 仮に、例えば利息相当額を損害賠償することができるような場合を考えてみますと、例えばということになりますが、事業者間の取引における高額の貸付けのように、期限前に返済を受けたとしても金銭を再運用することが実際上困難で、他方で返済期限までの利息相当額を支払ってもらうことの代わりとして利率が低く抑えられていたようなケースなどは比較的保護に値するケースだろうというふうには思います。
 ただ、これも繰り返しになりますが、私どもも利息相当額が当然に請求できるということを申し上げているわけではなくて、いろいろと損害額については解釈、認定に委ねているというのが今回の規定の内容でございますということを改めて申し上げたいと思います。
#75
○小川敏夫君 いや、損害の額が個別の事情によって様々だということは当然のことで、別にこの今の五百九十一条の場合に限らず何だってそうですよ、一般の債務不履行だって不法行為だって、損害があるのかないのか、損害が幾らかというのは、それぞれの事情によってそれぞれの状況で判断するわけですから。
 ただ、だから、もっとしつこく言えば、ここでいう損害は、まさに掛かった費用だけじゃなくて、いわゆる信頼利益だけじゃなくて履行利益も入りますね、そうしたら法律論としては入るということは、ああ、もう前回答弁いただいているんだから、まあいいや、もうそれでね。要するに、信頼利益だけじゃなくて履行利益も入るんでしょう、損害論の一般の論理として。
#76
○政府参考人(小川秀樹君) あくまで一般論として、履行利益が入らないということは申し上げておりません。
 先ほど申し上げましたように、事業者間取引における高額の貸付けのように、期限前に返済を受けたとしても金銭を再運用することが困難で、返済期限までの利息相当額を支払う代わりに利率が低く抑えられていたというような場合は、単なる信頼利益の問題とはまた別ではないかというふうに思います。
#77
○小川敏夫君 期間まで借りることを前提に金利が低く抑えられていたというような特殊な事情があれば、これ強行規定じゃありませんから合意すればいいわけですよね、ですから、一般の取引の中では、そういう特殊な事情があって期間前の返済が不利益となる場合には、特別に金利を安くすると同時に、併せてそういう特約が入っているはずですよ。
 私は、そういう、局長が言われるような、巨額な融資で特別な長期間のことを想定して、長く借りるから安いんだという特殊な事情であれば、私は当然、実務の在り方として、そういう繰上げ返済の禁止か、禁止じゃなくても賠償のことが入っているのが普通だと思いますけれども。
 どうでしょうね、ケース・バイ・ケースによると言うけれども、実は、理屈で考えていくと、悪い悪い、金利が高い金貸しほど論理的に損害が生じちゃうんですよね。つまり、銀行のような優良な貸し手は返してもらってもまたすぐ貸出先があるから、しかも、この人間には安く、この人間には高くということないから、大体同じような金利で貸し出しているわけです。だから、ある債務者が期間前返済してきたら、ああ、よかったですね、おめでとうございます、元気でといって、そのお金はまた広く一般で融資に回せるわけです、同じような利率で。だから、そういう面では、銀行などは繰上げ返済を受けても、繰上げ返済を受けたことの損害というのは少なくとも逸失利益という面の計算ではなかなか少ないのかなと、あるとしても少ないのかなというふうに思います。
 ところが、だんだんだんだん、これが金融の質が下がってきて、金利が高いと。金利が高いと借り手がなかなか見付からないわけですよね。ですから、やっとこ、金利、今の一%で借りられる時代に一五%で借りてくれる借主を見付けて一五%の運用を見付けたのに、これで五年間ずっと一五%の金利が入って俺は随分もうかるなと思っていたら、急に返されちゃったと。で、返されちゃったお金を運用しようとしても、なかなか一五%で貸せる人間は見付からないというような状況だと、これ損害が出ちゃうんじゃないですか。
 私は、まさに金利が高ければ高いほど、金利が高く貸す業者ほど理屈の上においては逸失利益が出てしまうと思うんですけれども、そういうふうには局長、思いませんか。
#78
○政府参考人(小川秀樹君) まず、やっぱり業者であれば、基本的に転用することを言わばなりわいとしているわけでございまして、そういう意味で転用可能性というのは決して低くない、仮に高額の、いわゆる高利貸しと称される方々であっても、決して転用可能性が低いということにはならないというふうに思います。
 それから、仮に非常に高額な金額を意図的に貸し付けるような形で、言わば正当なものと評価しにくいような場合であれば、当然のように一般条項が機能することは考えられようかと思います。
 また、これ、損害賠償の損害額自体は請求する側が主張、立証するわけですので、今のような点について十分主張、立証ができるのか、損害額がこれだけありますよということを言えるのかどうかはかなり難しい面が多いのではないかというふうに考えたところでございます。
#79
○小川敏夫君 高利貸しが、あるいは金融会社が暴利行為になるような極端なことをやれば、それは無効になりますよ。だけど、世の中には暴利行為になるような物すごいひどい話もあるけれども、暴利行為にならないようなちょっとひどい話もありますし、あるいはずるいじゃないかという話もありますし。暴利行為というのは極端な場合しか無効にできないんでね。そんな極端なひどい暴利行為になるようなもの以外は有効だったらやっぱりおかしいですよね。
 何かいろいろ言っているけど、結局いろんな状況によるということでしょうけど、しかし、やっぱり私はこの規定は、繰上げ返済したことによって債権者の方で余計に掛かった費用、事務手数料とか、こういうものはいいと思いますよ。だから、今銀行が住宅ローンなどでも、いわゆる銀行が、繰上げ返済しますと当然それは受け入れて、その代わり五千円とか一万円とかそういう事務手数料は取られますよ。私は、そういうものはしようがないと思っている。
 ですから、じゃ、規定は、逸失利益も含んだ履行利益じゃなくて、ここにいう損害は信頼利益だと、あるいは繰上げ返済したことによって新たに生じたそうした事務的な費用ということで限定した方がよかったんじゃないかと思うんですが、いかがですか。
#80
○政府参考人(小川秀樹君) 一般的には、先ほど来申し上げていますように、業者が貸し付けるような場合には、恐らく、何が具体的な損害かということになれば、費用的なものであろうというふうに私どもも考えております。
 そういう意味では、その点について十分、これは貸す側にも借りる側にもそういう点を認識してもらう必要がございますので、その点については十分な周知を図っていきたいというふうに考えております。
#81
○小川敏夫君 その周知徹底じゃなくて、私は、ここでいう損害は、要するにもう逸失利益、履行利益は含まないので、繰上げ返済によって新たに生じた事務費用などのものに限定すべきじゃないかと言っているんでね。ですから、もっと具体的に言えば、そういうふうにこの法文を修正した方がいいんじゃないかと思うんですが、どうですか。
#82
○政府参考人(小川秀樹君) 繰り返しになりますが、基本的には費用相当額などが大部分の場合だというふうには理解しております。
 ただ、民法では、契約が解除された場面においては、一般に費用相当額についてもこれを損害として、損害賠償請求の対象として五百四十五条の規定の中にも含めておりますので、そういう意味では、他の規定との関係で申しますと、ここだけを、費用を例えば支弁するとか費用の償還を請求するというように書くのは、それは全体との整合性という観点から見ますと困難な点があろうかというふうに考えております。
#83
○小川敏夫君 だけど、局長、さっきいろいろ言っていたじゃないですか。この消費貸借の場合には特性があって、返してもらったらすぐまた運用できるというそういう特性があるんだというのが消費貸借でしょう。返してもらったらすぐ運用できるというんだったら、そういう特殊な事情があるんだから、別にほかとのバランス云々じゃなくて、消費貸借の特性からきた特別な規定ということがいいんじゃないですか。その契約の類型が違うものまで全部同じにしなくちゃいけないという必要はないんでね。いかがですか。
#84
○政府参考人(小川秀樹君) もちろん、いろいろな規定ぶりあるわけですが、今回の規定ぶりは、あくまで損害を受けたときはその損害について損害の賠償を請求することができるというわけで、損害の内容も決めているわけではありませんし、一般的には費用相当額などが通常考えられるわけですし、場合によっては、先ほども申しましたような非常に例外的な場合に、それよりも、費用よりも増える可能性もあり得るということを申し上げて、それを全部受け止める規定として今回、五百九十一条三項を設けたわけでございます。
#85
○小川敏夫君 金貸しがありとあらゆる形で、まさに警察に捕まらなきゃいいと、あるいは、違法であっても捕まらなきゃいいとかいって、もう本当に債務者からお金を巻き上げるということだけ考えるようなのがいるのがこれまでのまさに金貸しの実態ですよ。まさにこれ、繰上げ返済してきても駄目だという格好の口実をたちが悪い金融会社に与えることになるんじゃないでしょうか。
 例えば、局長は先ほど、いや、損害を請求するといったって、損害を請求する裁判をやらなきゃ駄目だみたいなことを言いましたけど、私は違うと思いますよ。
 例えば、抵当権設定してあったらどうなんでしょうか。いや、これだけの元本を持っていって、もうこれで弁済して抵当権抹消してくださいと言ったって、金貸しが、冗談じゃないと、損害金の方に先に充当して、まだ元本残っているんだから抵当権抹消しない、抹消しねえって言って頑張られたらどうするんですか。結局、債務者の方が裁判を起こさなくちゃいけないという費用と負担を負うことになりますよね。それで、最終的に裁判で決着を付けろといったって、法律で損害があればというんだから、勝つか負けるか分からないでしょう。
 少なくとも、貸主側が幾らたちが悪かったって、請求するためには裁判を起こさなくちゃ駄目だというんだからという論理は、私は、実際の実情とは違いますよ。もらった担保を返さなきゃいいんだから、貸主側は。
#86
○政府参考人(小川秀樹君) 今御指摘ありましたような事案でありましても、損害額の主張、立証自体は損害賠償請求をする貸している側の責任でございますので、実際上はそういう意味の負担を負わされるということでございます。
 それから、もちろん借りる側にとってもこれは非常に重要なことでございますので、先ほど来申し上げていますように、周知は、貸す側はもちろんということになりますが、借りる側について、消費者側の方にそういう点については十分お伝えしたいと。これは五百八十七条の方にもそういう御議論が法制審の中でもございましたので、併せて十分な周知を図っていきたいというふうに考えております。
#87
○小川敏夫君 十分な周知しても、いわゆる高利貸し、悪質な金貸しは全く無視すると思うんですけれどもね。
 少し議論が膠着してきたんで、ちょっと気分を変えてみようかと思うんですけれども、例えば、これは繰上げ返済、ちょっと気分を変えて約款の問題に入りますけれども、この消費貸借の例を挙げながら。この繰上げ返済でも、しかし、費用じゃなくて損害金を取れるということを、合意すれば有効なわけですよね。現実に、今上場しているような大手の金融会社でも、繰上げ返済の場合には二%の手数料をいただきますというような規定が入っているような貸出ししている会社もあります。
 私は思ったんですよ。これは約款の問題ですけれども、例えば、かつて上場会社でも商工ファンドのような社会問題を起こすような悪質な金融会社があった。しかし、上場会社になるほどですから、かなり多くの顧客を相手に、しかも類型的に取引をしているでしょう。ですから、言わば約款を設けるにはふさわしいような取引実態があると思うんですね。
 そういうところと、お金を借りに行って、返済期とか利息とか金額とか、そういったことは契約書に書いてあるんだ、借用証書に書いてあるんだけど、そのほかのことは当社約款によります、当社規定によりますという一文が入っていたとすると。それで、その会社には約款なるものが備えてあって、その約款の中には繰上げ返済の場合には満期までの利息金を全額お支払いしますというような規定が入っていたというような場合、しかし、約款があるということは承知していると、こういうケースの場合に、債務者が繰上げ返済に行ったら、いや、元本だけじゃない、期間までの利息を払えと、こう請求されたというような事例を考えた場合、これはどうなるんでしょうか。これは約款の問題ですけれども。
#88
○政府参考人(小川秀樹君) 多分、不意打ち条項の典型的な場面かと思いますが、不意打ち条項、不当条項の類型の中の一つとして、予測を超える、客観的に予測を超える状態のものの条項が入っていた場合にはその効力を否定するというのが今回の五百四十八条の二第二項の考え方でございますので、まさに予期しない、客観的に予期しないような条項が突然入っていたからといって、それに拘束されるいわれはないということだと思います。
#89
○小川敏夫君 そうですか。でも、大臣、冒頭に言いましたよね。繰上げ返済の場合には、貸している側の利息等とかそうしたものについては当然支払うのが国民一般の常識だみたいなこと言いませんでしたか。
 繰上げ返済の場合には費用、損害金を取られるということは国民一般の常識なら、特に不意打ちとは言えないというようなことをその悪徳業者が言い出したらどうするんですか。
#90
○政府参考人(小川秀樹君) もちろん、冒頭の大臣の発言も一概には言えないということを申し上げていたと思いますが、取引の実情によることは確かだろうと思います。ただ、一般的に見て予測ができないようなものであれば、まさにいわゆる不意打ちということで、もちろんそういう実質を持つことが必要でございますが、不意打ち条項としての取扱いを受けることが十分考えられるということだと思います。
#91
○小川敏夫君 でも、借主は、約款によるということは承知したけど、約款の中身まで読んでいなかったと。だけど、書いてあることは、繰上げ返済の場合には、しかし期限後までの利息も払えということ。
 しかし、不意打ちだ不意打ちだと言うけれども、この五百九十一条で期限前返済しても貸主の損害を賠償しろという法律の規定が入っているんですから、いや、不意打ちなんかじゃないよ、ちゃんとこの法律の規定にのっとって、それでうちは本来得られるはずであった利益を請求しているんだから、別に不当じゃないでしょうと業者が言ったらどうなんですか。
#92
○政府参考人(小川秀樹君) 今のような御趣旨であれば、まさにいわゆる違約罰の条項ということで、損害の発生の有無にかかわらず取れるものは取ろうという趣旨になるのかなと思いますので、その点についてもやはり不当条項としての取扱いを受ける可能性は十分あるというふうに考えております。
#93
○小川敏夫君 いや、局長、違約罰というのはおかしいんじゃないですか。だって、五百九十一条の法律の三項で新たに損害を請求できるという法律上の裏付けがあるんですよ。法律上の根拠に基づいて、いや、利息をもうけ損なったんだからその分賠償してくれといって、それ、違約罰じゃなくて法律の根拠に基づいて請求していることになると思うんですがね。
#94
○政府参考人(小川秀樹君) 損害が発生していないにもかかわらず請求する、あるいは、損害が極めて少額、費用相当額にとどまるにもかかわらず多額の請求をする、これらを違約罰の場面として捉えたわけでございます。
#95
○小川敏夫君 私が言いたいのは、この約款の規定ですけれども、要するに約款によりますよということを消費者が認識していれば、約款の中身まで知らなくても約款に書いてあることが効力が生じてしまうわけですよね。しかも、約款の中身は業者の方が必ず示さなくちゃいけないということはないので、消費者の方から約款の中身を見せてくれと言われたら見せなくちゃいけないというだけですよね。
 ですから、約款によるということが認識したら、中身を知らないのに、消費者が中身まで認識していないのに、契約の効力が生じてしまうというこの構造が私は問題を引き起こす構造だという観点からお尋ねしておるわけであります。それを、今、お金の貸し借りになぞらえて指摘しておるわけでありまして。
 じゃ、例えば不意打ち条項だと、そんなたくさんの金額が、例えば繰上げ返済したと、しかし、返済時期から本来の弁済期までの間の利息も払えと言われたら、それは余りにもひどい不意打ち条項だ、あるいは不当な違約罰だというのであれば、そこまでひどいことに至らないものだったらどうするんですか。
 例えば、満額は請求しないけど、しかし、俺は一〇%で貸したんだから法定利率の三%を引いて七%まではいいんじゃないかとか、だんだん、明らかな不当なところまで行かないけど、ちょっとひどいじゃないかというところまでレベルが下がってきたらどうなんですか。しかし、消費者としては予想外の負担を感じるような場合はどうなんでしょう。
#96
○政府参考人(小川秀樹君) 今御指摘いただいた点は、恐らく違約罰の条項などに関する一般論の問題だろうと思います。どの程度になれば不当条項になり、あるいはどの程度のものであればその他のことも考慮した上で不意打ち条項になるかということだと思いますので、一概に申し上げることはなかなか難しいと思います。
 ただ、そういった点の規制というのは、必ずしも私法、民法だけの世界ではなくて、一定の業法のような規制ですとか行政的なチェックということも全体としての一つの、枠組みの中の一つの要素ではないかというふうに考えております。
#97
○小川敏夫君 つまり、この約款の問題は、今言ったように、繰り返し言うけれども、約款によりますということを消費者が認識していればいいので、約款の中身まで認識しなくてもいいというところからくる問題なんですね。
 それで、消費者は約款の中身を知らないと、それで、取引してみたら、えっと驚くような規定があったと。しかし、それは、まず大前提として、契約の効力が生じているというのが大前提です。それで、今のこの法律の書きぶりは、しかしそうはいっても余りにひどいものは無効にするよというだけで、余りにひどいレベルに行かない、すなわち暴利行為とか、そうした明らかにひどいものに行かないレベルのものは有効なんですよ。
 だから、試験の成績なら八十点以上取りゃ褒められるんだけど、逆に悪さレベルで、ひどさレベルで八十点以上のひどいものは無効だけど、七十九点までひどいやつは有効だというふうになっちゃうのがこの今回の約款の仕組みじゃないでしょうか。私は、それは消費者が不利益を被る、予想外の不利益を被ることになるんだということを指摘しているわけなんですが、いかがでしょう。
#98
○政府参考人(小川秀樹君) その点も定型約款の議論の言わば一般論ということだろうと思いますが、やはり不当条項の判断というのは、今お話がございましたような、非常に厳格なものとして公序良俗に相当するような場合でなければ駄目かというと、それよりは、もちろん定型約款という性質から見まして、不意打ち条項的なものも含め、条項の中身に加えて、何といったらいいんでしょうか、態様なども含めて幅広く考慮されるものだというふうに理解しておりますので、いわゆる民法上の一般条項が発動される場面でなければならないということではございません。
#99
○小川敏夫君 じゃ、どのくらいひどかったら発動されるんですか。
#100
○政府参考人(小川秀樹君) これも定型約款の一般論ということだと思いますが、一概に一般論として申し上げることは非常に困難でございます。具体的な事案に応じて判断されるべきものだというふうに理解しております。
#101
○小川敏夫君 具体的な事案に応じるんでしょうけれども、今、民法上は、当事者が納得して、当事者が合意して契約ができたと、契約が成立している、それがしかし内容が不合理だから無効になるという場合には、まさに暴利行為という規定があるわけですよね。暴利行為というのが無効になるという位置付けがあるわけですよ。今回約款においては、暴利行為というようなその契約の効力を是認できないものとはまたレベルが違う無効要因というものを設けたわけですか。
 私の理解ではそうではなくて、やはり民法の一般原則で暴利行為というものは法律の効力を与えられない、それと同じレベルのものは約款であっても当然法律の効力は与えないという趣旨だと思ったんですが、そうじゃなくて、暴利行為よりも更に緩い、緩い無効の類型があるという概念が今回のこの約款において設けられたということなんでしょうか。
#102
○政府参考人(小川秀樹君) 暴利行為の基となります公序良俗違反と比較いたしますと、ある条項について公序良俗に違反しているかどうかという点は、専ら合意された条項の内容の不当性に着目して判断されることになると思いますが、定型約款の個別の条項の効力の有無は、内容面の不当性のみに着目するのではなく、相手方がその条項の存在を明確に認識可能なものであったかなどの様々な事情を加味して判断するのが相当であると考えられます。
 したがいまして、公序良俗の違反の判断よりも、先ほどの御質問であれば、緩いということは言えようかと思います。
#103
○小川敏夫君 その緩いという緩い部分は、どれだけ契約の中身を、約款の中身を認識していたかどうかということの判断において緩いという、そういうことですか。
#104
○政府参考人(小川秀樹君) 言わばハードルの高さという表現使えようかと思いますが、そういう意味ではハードルが低いということだと思います。
#105
○小川敏夫君 そのハードルの高さが非常に個別の、所詮は個別具体的な事情によって判断するということになるんだから、ハードルが高いか低いか、今ここで言ったって議論が余り煮詰まらないんですがね。
 ただ、その暴利行為あるいは公序良俗違反という概念よりも広いというと、じゃ、どのくらい広いのかなと。つまり、民法の規定までの公序良俗違反まで行かないと無効にできないとなると、相当消費者は不利益を被ると思うんですけれども、ただ、その不利益を被る基準は、本来公序良俗違反というか、本体は公序良俗違反なんだけれども、しかし約款においてその中身をどれだけ知り得たかどうかという要素が一つ加わるだけだと、こういうことなんでしょうか。
#106
○政府参考人(小川秀樹君) 普通の契約であれば一対一の関係で一定の合意に基づいて契約が作成されるということだと思いますが、これはまさに定型約款の特殊性があるわけですので、そういう意味では、御指摘ありましたように、様々な事情、とりわけ合意を形成がしにくいものであるという特殊性なども考慮した上で判断されることだと思います。
#107
○小川敏夫君 これ以上観念的な議論をしてもしようがないけれども、ただ、私、約款でどうしても、法律の効果を生じるのであれば、約款によるということだけを合意したというのではなくて、やっぱり約款の中身をきちんと債務者に説明する、分からせしめるということが私は原則でなくてはいけないんですね。ただしかし、鉄道運賃の切符を買うとか、そんなところで一々約款の中身を示せとかなんとか言っても始まらないから、あくまでも、約款によることだけではなくて、約款の中身も示すということを原則の上において、しかしそれが余りにも実情において不合理だという場合には例外的に積極的に見せなくてもいいぐらいの規定にしなければ、私は消費者の利益は守られないとは思うんですが、そんな考えの議論はなかったんでしょうか、この制定過程において。
#108
○政府参考人(小川秀樹君) 定型約款の言わば開示といいますか、表示をどの程度までするかということは法制審議会の中でも議論のされたところでございます。
 改正法案では、定型取引の当事者である顧客に定型約款の内容を知る権利を保障するため、定型取引を行い、又は行おうとする定型約款準備者は、定型取引合意の前又は定型取引合意の後相当の期間内に相手方から請求があった場合には、遅滞なく、相当な方法でその定型約款の内容を示さなければならないこととしております。そして、定型取引を行い、又は行おうとする定型約款準備者が取引を開始する前に定型約款の内容の表示を請求されたにもかかわらず、これを拒絶した場合には、一時的な通信障害が発生した場合その他正当な事由がある場合を除き、定型約款の条項について改正法案の規定による合意があったものとみなす効果を付与しないこととしております。
 これが法制審の議論に基づく考え方でございます。
#109
○小川敏夫君 だから、一律に約款によるということを合意すればいいんで、あと約款の中身は消費者側から要求されたら見せればいいんだというのが今のこの約款の構造ですよね。私が言っているのはそうではなくて、原則は約款の中身も事業者は消費者に説明するべきものだと、ただ、それが実情にそぐわないような場合に限ってはやらなくてもいいぐらいの規定にした方が私は消費者の利益にかなうんではなかったかというふうに思うんですが、一律に事業者は約款の中身を説明する義務は負わない、自ら積極的に説明する義務は負わないと、ただ要求をされたら、求められたら示すというだけでは私は消費者の保護が足らないんではないかと、こういう指摘をしているわけなんですが、いかがでしょう。
#110
○政府参考人(小川秀樹君) 今申し上げましたのは定型約款の民法の規定としてということでございますが、信義則上の情報提供義務ですとか、これは信義則を根拠として認められることのある信義則上の情報提供義務ということになると思いますが、そのほか行政法規などが定める重要な情報を提供すべき義務などもございまして、民法の表示の内容に決してとどまるというわけではございません。
#111
○小川敏夫君 私は、非常にこの約款は、この後、これからもし適用されれば、消費者が不利益を被る場面が出てくるんじゃないかと思うんですがね。
 それで、この法律ではしかし、相当ひどい場合とか、要するに不意打ちとか何か極端な場合には無効となるというような規定になっていますけれども、しかし、消費者がそれを無効だとして代金の減額を求める場合、でも究極的にはやっぱり訴訟を起こさなくちゃいけないわけですよね。ただ、私は思うのは、これ、定型取引だとすると、契約した消費者は相当数が多いと思うんですよ。みんな一律に契約しているという中で何人かが、一人かあるいは何人かが訴訟を起こした場合に、仮に消費者側が勝訴すると、余りにも中身がひどいので勝訴するといっても、裁判を起こした人間にしか無効の効果が及ばないですよね。つまり、代表訴訟のような制度ができておりませんですね。
 だから、定型的に、そんなひどい内容、無効となるような内容の約款による取引が例えば一人の者においても無効ということが司法で確立されればやはり定型的に同じ取引については無効とするとか、あるいは、一人が全員を代表してやるとか言わなければ、相当多数の被害者が出ても、結局訴訟という救済手段を取った人間しか被害の救済の道がないというのは、私は消費者を守る観点から不十分だと思うんですが、いかがでしょうか。
#112
○政府参考人(小川秀樹君) もちろん、一般論とすると、訴訟は個別性があるわけですので、効力とすると当事者間にのみ発生するというのが一般論でございます。ただ、実際上、勝訴の事実があれば事実上の効果としては非常に大きいのではないかというふうに考えております。
 それに加えて、制度として、消費者契約法に基づく差止め請求ですとか幾つかの手段は残されていますし、更に言えば、立法論として、定型約款の無効を主張することによって効力を他にも及ぼす、先ほどお話ありましたような団体訴訟のようなものであるとか、あるいは一種の代表訴訟的なものであるとか、そういったものの検討は十分考えられると思います。
#113
○副大臣(盛山正仁君) 私もこの約款の部分、まとめるところで関わったわけでございますけれども、先ほど小川先生がおっしゃったような切符、鉄道の運賃なんか、こういったものはそれぞれ鉄道営業法なり鉄道事業法なりがあって、約款というのをこのような形でというようなことで利用者の保護その他も図ってきたわけでございますね。
 それで、そういうところに今回民法で新たに約款の規定を設けるというのは、鉄道の運賃であり、あるいは電気料金であり、そういう個別の事業法その他で守ってきた、消費者の保護を図ってきたそういう分野以外の約款というものの利用が大変広がってきた、そんな中で消費者をどのように守っていくべきか、そんなことで入れたのが今回の約款の規定だと私は思っております。
 経済団体ですとか事業者の方などとの相当なやり取りを踏まえて、それぞれの個別の事業法といったようなもので守られる以外のところについても、民法に約款という規定を置くことによって全体として広く国民の保護を図る、そのために作った規定ということでございますので、小川先生のお考えの理想というところにはまだまだ遠いのかもしれませんが、ただ、この約款の根拠、そしてこれによって何らかの修正をし得ることができるんだということを設けたということで、前進したというふうに我々は考えているところでございます。
#114
○小川敏夫君 約款というものの規定を設けること自体は私は何にも反対しているわけじゃないし、その意義はあると思いますよ。
 ただ、私が問題にしているのは、すなわち、約款によるということを消費者が認識すれば、約款の中身まで認識していなくても契約の効力が生ずるというところの配慮が足らないんではないかと言っておるわけで、業者側が一律に全ての場合に、ですから鉄道運賃の切符の例を挙げて、業者側あるいは事業者側に一律に約款の中身まで説明義務を課すことは実情に照らして適当でない場合が多いと思いますよ。
 だけど、様々な取引が世の中にある場合において、全てが約款の具体的な中身まで消費者が知らなくてもいいだろうということにはならないので、やはり消費者が知っていた場合に契約を効力を与えた方がいいのではないかというものも社会の中には随分あると思うんですよ。
 ですから、私は、一つの考え方として、原則は、約款によるということだけではなくて、約款の中身まで事業者には知らせる義務があると、ただし、そこまでの必要がないもの、その取引の実情からそこまでの必要がないものや実情にそぐわないものについては例外的にすればよかったのではないかというふうに言っておるわけでありまして、一律に約款によれば約款の中身を消費者が認識しなくても契約の効力を生ずるという規定の仕方はやはり問題があるのではないかなという私の指摘でございます。
#115
○副大臣(盛山正仁君) 先生の御趣旨を私が十二分に理解していないのかもしれませんが、例えば先ほどの鉄道であれば標準運送約款ということで、国土交通大臣の認可を得るような形で、一般的に切符の売買なんかのときに契約を見ることは考えられないといったようなことでちゃんとチェックをしているわけでございますし、ただ他方、現実にはインターネットなんかでの契約というのが多いと思うんですけれども、同意をするというところにボタンを押してどんどんどんどん進んでいくことになるわけでありまして、そういう内容のものについて、どういうふうに消費者、利用者を保護していくのかという観点かと思います。
 そして、その約款の具体的なものについて、まあ実態が先行しているからでしょうけれども、そこをどのような形で利用者に明らかにしていくのか、利用者の方が要求すれば必ず分かるようにというようなことではないかと私は考えておるわけでございますけれども、進んでいる実態のところをどのようにこれから利用者保護をしていくのかという観点で入れておりますので、小川先生のおっしゃっている方向性での今回の規定の追加ということではないかと我々は考えているところでございます。
#116
○小川敏夫君 ちょっと議論がかみ合っていないと思うんですが、もう時間も来ましたけど、一言だけ。
 さっき局長が言われたように、立法論としてということで、集団訴訟とかそうしたことをお話しされました。私は、今回この法律を作った後、立法論としてそういうことを検討するということではなくて、そういうこともしっかり踏まえて検討して、それを盛り込んだものをやっぱり出すべきではなかったかということを指摘させていただきます。
 残りの質問はまた午後にさせていただきます。
    ─────────────
#117
○委員長(秋野公造君) この際、委員の異動について御報告いたします。
 本日、野田国義君が委員を辞任され、その補欠として有田芳生君が選任されました。
 午後一時に再開することとし、休憩いたします。
   午前十一時五十八分休憩
     ─────・─────
   午後一時開会
#118
○委員長(秋野公造君) ただいまから法務委員会を再開いたします。
 休憩前に引き続き、民法の一部を改正する法律案及び民法の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案の両案を一括して議題とし、質疑を行います。
 質疑のある方は順次御発言願います。
#119
○小川敏夫君 午前に引き続いて質問させていただきます。
 今日は、与党が質問をなさらないで野党に十分な質問時間、ただ今回の法案の重要さ、多さに比べると、まだそれでも時間が足らないとは思うんですけれども、ただ、非常に野党に時間をたくさんいただいて与党がやらないというのは、私はあるべき姿で大変いいことだと思っております。議院内閣制ですから、議院内閣制の下で言わば答弁者の方は与党の方でありますから、またある意味では与党のお仲間が出した法案を審議しておるわけですから、これは与党は与党の中で十分御審議されておるでしょうし、あるいは与党の中で十分意見交換をする場所があるわけでありまして、そう考えますと、やはりこうした委員会の質疑は野党にこそ質疑時間を与えていただくのが本筋だと思っておりまして、今日は与党がなさらないで野党に十分時間をいただきましたのは本当にすばらしい委員会の持ち方だと思っておりますので、是非これからも、また予算委員会でも是非そういうふうにしていただければと、そういうふうに私の希望とお礼を述べさせていただきまして、質問に入らせていただきます。
 消費貸借について大分いろいろ議論を重ねたんですけれども、じゃ、要するに履行利益ですか、要するに繰上げ返済しちゃった後、本来の弁済期までの利息分について債権者が損害として請求できるかどうかという話でありますけれども、局長、端的にお伺いいたします。そういう繰上げ返済した後、本来の弁済期までの利息分は、これはもう損害にはならないんだと、こういうふうに断定的に答弁されるんでしょうか。それとも、ケースケースによってなることもある、ならないこともある。なることもあるというのは、法律的にはなるということなんですよ。ですから、どちらなのか、ちょっとそこのところを結論的に御答弁いただければと思うんですが。
#120
○政府参考人(小川秀樹君) お答えいたします。
 通常は損害にはならないと思いますが、先ほども御説明しましたように、非常に特殊な場合、事業者間の取引における高額の貸付けのように、期限前に返済を受けたとしても金銭を再運用するということが困難で、かつ返済期限までの利息相当額を支払う代わりに利率が低く抑えられていたケース、これは、このような場合などは利息相当額を損害賠償することができる場合として考えることはできるだろうと思います。もちろん、ほかの事情に大分左右されるところもありますが、今のような場合は利息相当額の損害賠償請求が可能な一つのパターンではないかというふうには考えております。
#121
○小川敏夫君 ほかにはないんですか。例えば、ですから私がさっき言ったように、相場より高い金利で貸している貸金業者が、今返してもらっても同じ金利では運用できないから、だから運用できないという実態があるんだから、やはり期限の利益を借主の方が放棄したことによってもうそれだけの運用ができないという損害を被ったんだと、こういうことがある場合はどうなんでしょう。通常ではなくて、高い金利だという場合に生じる問題なんですけれども。
#122
○政府参考人(小川秀樹君) もちろん様々な事情があり得るとは思いますが、通常、業者であれば、やっぱり転用可能性を否定することは非常に難しいのではないかと思いますので、実際上そういうものを損害として主張、立証していくというのは困難な場合が多いのではないかと思います。
#123
○小川敏夫君 そうかなあ。主張、立証は簡単だと思いますよ、裁判官が採用するかどうかの問題だけど。だって、一五%で貸しているんだもん。一五%で貸しているという事実は、これはもう立証するまでもないですよね。しかし、世間一般の金利は二%だ三%だと。一五%で借りてくれる人間なんか一生懸命探したんだけどいなかったよと立証するのは簡単じゃないですか。ただ、それを正当な損害として裁判官が認めるかどうかは、これは裁判官の判断ですから分かりませんけどね。
 私は、やっぱり世の中は善人ばかりじゃなくて、例えばこういう履行利益を請求しない、五千円や一万円の手数料だけで繰上げ返済してくれるという銀行だけが貸主なら私はそんなに心配しないんですけど、いや、銀行でももっと悪くなると、この法律ができたら突然手数料を十万円に引き上げるんじゃないかという、そんなことまで気が及んじゃうんですけどね。ただ、そういう善良なる貸し手ならいいんだけれども、私が心配しているのは、善良じゃない、特に金融の場面では、善良でなんて言えない、もう金もうけだけ考えているというような、そういう金貸しあるいは金融会社がいるものですから、現実に。そして、そうした人たちに泣く被害者がいるものですから、それを心配して私はもうしつこく聞いておるわけであります。
#124
○政府参考人(小川秀樹君) 繰り返しになりますが、いろいろな意図、企業側が持っている意図ですとか客観的な状況によって左右される面がありますので確定的なことは申し上げられませんが、実態とすると、損害が認められるということは、先ほども申し上げましたけど、なかなか難しいのではないかとは思っております。
#125
○小川敏夫君 まあ、ここももう何回もしてもあれですけど、ただ、結局、局長の答弁でも、法律的にそういう請求はできないという答弁にはこれは局長としてはできないわけでありまして、だから、やっぱり法理論としてはそういう履行利益の賠償も損害としてあり得ると。ただ、局長のおっしゃられることは、なかなか事実上そういうケースは少ないんじゃないか、あるいは立証が困難じゃないのかと言っているだけだと思うんですけどね。法理論的にはやっぱり入るということだと思うんです。
 まあ、じゃ、どうぞ答弁してください。
#126
○政府参考人(小川秀樹君) 一般的な説明とやっぱり個別の事案というのは大分異なる面があると思いますが、いずれにしましても、この点については普通の場合は損害というのは利息相当額まで及ぶということは考えられませんので、そういう点については、繰り返しになりますが、貸主側、借主になる側に十分周知、考え方を説明するような資料を作成して十分に周知するようにしていきたいというふうに考えております。
#127
○小川敏夫君 今回の民法の改正、多岐にわたっておりまして、消費貸借だけが私の関心事じゃなくて、債権譲渡でもまだ宿題が、もらっていないというか、そこに関する質疑もしていない部分もあるんですけれども、もう本当にまだまだ時間をもらわなくちゃいけないんですけれども。
 ただ、消費貸借、私はとてもやっぱり納得できません。まず、大臣の最初の認識が納得できないんですよね。どうしたって、えっ、返したのに、返した日の後の利息を損害金として取られちゃうんですかと、取られることがあるということが、私は国民の今の理解とは異なると思うんですがね。ただ、国民の理解は私が決めることじゃありませんので、この点はまた時間をいただいて、またよく整理した答弁もいただきたいというふうに思います。
 聞きたいことはたくさんあるんですけど、詐害行為取消しのこともちょっとお聞きしたいんですが、いいですか、これ質問通告していないけど。
 詐害行為取消しですけど、私は常々、詐害行為取消し権について、まあ質問通告していないんでもう少しポイントを絞ってちょっと長く質問させていただきますけれども、私は、今の現行のこの詐害行為取消し権というのは非常に、平等を実現するという制度の建前だけど、実際には不平等だと思うんですね。どういうことが不平等かというと、例えば債務者が実質支払不能状態になると。そうすると、債権者はたくさんいるわけですよね、例えば二十人ぐらい債権者がいるとしましょう、まあ実際にはもっといるかもしれません。そのうちの一人の債権者が抜け駆けして財産も安く買ったりすると、ほかの債権者を害するということでこの詐害行為取消し権の対象になるわけですよね。
 じゃ、詐害行為取消し権だといって、その抜け駆けした一人に対してそれは詐害行為取消しだからといった場合に、その主張が通った場合はどうなるか。今度は、おまえ抜け駆けじゃないかといって詐害行為取消し権を行使した債権者が全部持っていっちゃうんですよね。だから、あれ、何かおかしいなと。
 要するに、債権者が二十人いて、一人抜け駆けして財産を持っていっちゃったと。じゃ、そこに月光仮面が現れて、それで取り返して、さあみんなで平等に分けようというんだったら私は理想的な姿だと思うんですけれども、ずるいやつが一人抜け駆けして持っていっちゃったと。そこで別の人間が、おまえ、そんなえこひいきなことあるか、とんでもない、返せといって、それは詐害行為だとして認められたら、今度はその抜け駆けして持っていった財産を、主張した一人が全部持っていっちゃうんですよ。そうすると、ほかの十八人の、二十人の例でいえば、十八人は結局不公平なまま終わっちゃうわけで、何か月光仮面が現れて、みんなのためだと思ったら、月光仮面が悪いやつから財産取り返した、取り返した財産を月光仮面が全部持っていっちゃうという話が私は今の詐害行為取消し権だと思うんですがね。
 どうでしょう、局長、そういうふうに思いませんか。
#128
○政府参考人(小川秀樹君) 突然の御質問ですので十分整理できていない面あるかもしれませんが、詐害行為取消し権は本来、執行の準備のため、強制執行の準備のためですので、今御指摘いただいたようなことであれば、詐害行為として最初の例えば弁済を取り消して、債権者じゃなくて債務者のところに持ってきて、それでその上で全員で分割していくということであれば平等な弁済が実現するということだと思いますが、確かにそういう制度にはなっていなくて、よく説明されるのは、多分、動機付けといいますか、債権者にとって詐害行為取消し請求をやる気にさせるという意味でもそういう運用といいますか、判例の考え方もそうだと思いますけれども、そういうものが採用されているというふうに言われていますので、いろいろ見方はあって、委員御指摘のような見方も十分あり得ると思います。
#129
○小川敏夫君 例えば、今回の改正によっても、誰かが土地を、じゃ、ただで無償贈与を受けちゃって、ほかの債権者が債権侵害受けたと、不公平だというときに、だから、二十人いる債権者のうちの一人が、そんな土地の無償で受けたのはけしからぬ、詐害行為取消しだといって取消し権行使するわけですよね。そしてその結果、その土地を行使した人間が持っていっちゃうんでしょう。その土地を引き渡せということにならないんですか。
#130
○政府参考人(小川秀樹君) 不動産の場合といいますか物の場合はそうはならないと思います。
 最初申し上げたのは、金銭債権の場合には自ら詐害行為取消し権者の手元に行き、債権と相殺することによって実際上の満足を得るというのが言わば詐害行為取消し権の問題点の一つと言われているところだと思いますので、不動産の場合はそういう状況にはならないというふうに理解しております。言わば執行の準備として戻されるということにとどまると思います。
#131
○小川敏夫君 不動産が詐害行為権者のところに所有が行っちゃったと。詐害行為取消し権を行使すると、その不動産は登記を抹消して本来の債務者のところに戻せと、そういう裁判をやれということですか。
#132
○政府参考人(小川秀樹君) 詐害行為取消し請求の場合はそうだと思います。
#133
○小川敏夫君 じゃ、譲受人から今度は転得者の方に行っちゃって、譲受人にその転得者から受け取った代金を請求するというような場合はどうなんでしょう。
#134
○政府参考人(小川秀樹君) 一旦債務者に戻った上での処分ということはもちろんあり得ると思いますが、それを阻止するためには、例えば一定の保全処分を打つなりそういう対応が債権者とするとできるのではないかと、ちょっと余り自信ありませんけれど、そういう気がいたしますが。
#135
○小川敏夫君 いや、そこのところは聞いている私も自信がないのに、答弁する人も自信ないんじゃ、これはまた改めて私も勉強し直して、十分に質問通告してまた正確な質疑をしたいというふうに思いますけれども。
 ただ、土地のことは別にして、今の優先弁済、金銭的な場合には行使した人が全部持っていっちゃうわけですよね。だからそこは、要するに、何十人も債権者がいる中で一人が抜け駆けしたときに、その抜け駆けした人間を相手に詐害行為を起こしたその一人が全部持っていっちゃうわけですよね。だから、私が言った、月光仮面が現れて不公平なやつを成敗してくれたけど、だけど、成敗したお金は月光仮面が全部持っていっちゃったということになると思うんですけれども、それが、現行の詐害行為取消し権はそうだと思うんですね。
 今回改正しても同じなんだけど、私はそこで不満があるんですよ。何で詐害行為取消し、つまり公平を害する行為をした人間をとがめる制度なのに、結果的にはそういう詐害行為取消し権を起こした人間だけがもうけちゃう制度、仕組みになっていて、その債権者全員の公平は実現されないのか、そんな解釈になってそんな運用になっているのかと私考えまして、私が思い付いたのは、今判例はそうなっていますけど、実務もそうなっている。でも、何でそんな不公平を正す制度なのに結果的には不公平な結果になるんだろうとよくよく考えると、法律の規定が悪かったんですよ。つまり、詐害行為取消し権に関して実に法律の条文が少ない。少ないから結局、みんなで分ける手だても何にも法律の規定がないから、結局、しかし詐害行為取消し権なるものがあるから詐害行為取消し権を行使した人間に権利を帰属させるしかないというふうなことになっちゃったから、そういうことになっているというのが私の考え方なんですよね。
 その前提に立つと、民法改正なんだから、そういう不十分な規定の上に成り立っているこの少しおかしな仕組みを正しくみんなが公平になるように、制度に直すのが本来の民法改正だと思うんですよね。ところが、私が言いたいのは、そもそも不十分な規定によって不十分な結論が得られている、最高裁もそれを判例として認めている、それを、判例が認めているんだから、それを是認しちゃった法改正しかやっていないんですよね。じゃ、何だ、これはと。すなわち、根本的な制度の本質の欠陥について何も触れないまま、制度の欠陥によって生じているその不合理な部分を更に追認しちゃって具体化しちゃったのが今回の法改正だというふうに私は思うんですけど、ちょっと長い質問でしたけど、いかがですか。
#136
○政府参考人(小川秀樹君) いろいろ見方はあり得るとは思います。ただ、今回の改正の一つの大きな考え方は、やはり、実務で確立しているような判例を前提として、そういったものを可能な限り明確にしていくというのも一つの方針でございますので、安定的に運用されている実務があるとすれば、そういうものを取り入れていくというのは一つのやり方ではないかというふうに考えています。
 それから、先ほど委員御指摘のような点については、例えば訴訟参加をするなり、実務的に実体法の問題とは別に手続法的な工夫などもあり得るところではないかというふうに考えております。
#137
○小川敏夫君 だから、そういうところでいろんな工夫をすれば、もっと債権者間の、単に権利行使した、詐害行為取消し権の権利行使した人間だけが利益を得るんじゃなくて、もう少し債権者全体が利益を得る、あるいは債務者のところの資力が回復する、そこに資産が戻るというような制度づくりを検討すべきじゃなかったのかというふうな意見を述べさせていただきます。
 何か残り時間が少なくなっちゃったんですけれども、債権者譲渡のところで、将来債権の譲渡のところでしたか、いわゆる預金は譲渡禁止ということが絶対的だということになっているけれども、保険についてはないのかということをお尋ねしました。そのときに、その点についてもう少し詳細な議論をしようということになっていたと思うんですが。
 私は、質問の趣旨を少し長く解説させてもらいますと、要するに、昔、事業者保険というのがあって、会社が従業員に保険を掛けて、その受取人は会社だという保険があったと。そうしたら、従業員に保険掛けて、その従業員を会社の経営者が殺しちゃって保険金はもうけちゃうという、何か保険が殺人事件を誘発したような、そんなひどい事件がありまして、それで、実際今保険の運用として、会社が従業員に保険掛けちゃうというようなことはかなり制約されているということが実際の実務であります。
 それで、私が言いたいのは、質問したいのは、しかし、そういう不心得な人間が、今の実際上の、表立って会社自身が受取人となるような保険は加入できないと。だから、取りあえず従業員に保険を掛けさせて、その受取人が妻であればこれはほとんど無条件で入れると。そういうような形で正当な受取人を、妻なら妻を受取人として保険に入ると、まあ入るというか入らせるですね。で、入らせた後、その受取人から将来の保険金の債権譲渡を受けると。こういうことをした場合に、それを全部認めるようなことになれば、脱法的な方法によってそうした不法な保険が悪用されることになるんじゃないかというふうに趣旨で質問させていただきました。
 そこで、保険会社がそういうことを防止するために、保険金の譲渡禁止の特約があったとしても、この譲渡禁止の特約はそもそも譲渡禁止の有効無効に影響しない、すなわち債権譲渡そのものは有効だと、こういう法律の立て付けになっていますので、例えば保険の約款なり保険契約で保険金の譲渡が禁止という特約になっていても、しかし、それが譲渡されれば有効だと、債権譲渡したものは有効だということになると事業主が受け取れることになるんじゃないかと。そうすると、言わば不心得な考えで、つまり、不正な不当な意図で従業員に保険掛けさせて、そして殺害などによって保険金をもらおうということが起きないように保険を制限した趣旨が脱法されてしまうんではないかというようなことをちょっと指摘させていただきました。
 それについて、保険会社については譲渡禁止の特約について特に例外としなかった、預金については譲渡禁止のことについては有効とする特約が置いていますけれども、保険金については置いていないので、保険金についてもそういう対応をした方がよかったんじゃないかという観点で質問をさせていただいたわけですけれども、長々質問、五分もしゃべっちゃいましたけど、いかがでしょうか。
#138
○政府参考人(小川秀樹君) 保険契約につきましては、民法の特別法として保険法がその効力などを定めておりまして、保険法は、保険者が被保険者の死亡に関し保険給付を行うことを約する生命保険契約、すなわち死亡保険契約に基づき保険給付を請求する権利の譲渡について、被保険者の同意がなければその効力を生じない旨を定めております。言わば同意によることにしているわけでございます。
 これは、例えば保険金を取得する目的で故意に被保険者の生命を害する危険などのいわゆるモラルリスクの防止などの趣旨に基づくものでありまして、かつ、その性質はいわゆる強行規定であると解されております。
 他方で、今回御指摘いただきまして保険会社の約款なども見てみましたが、必ずしも譲渡禁止の特約があるという保険会社ばかりではないようでございます。要するに、そういう意味ではこの四十七条の同意によって対応しているというところも少なくないようでございます。
 譲渡禁止による特約は、主として弁済の相手方を固定することにより見知らぬ第三者が債権者となるといった事態を防ぐという債務者の利益のために付されるものでございます。そのため、譲渡禁止特約を付すか否かも当事者の判断に委ねられるところでございます。これに対して、御指摘いただきましたような犯罪に用いられるといったモラルリスクの防止は保険法の関係規定によるべきと考えられるところでございます。
 なお、先ほど申し上げました死亡保険金請求権の譲渡に関する被保険者の同意は、これは被保険者の真意に基づくものであることが必要であり、例えば使用者がその強い立場を利用して強制的に従業員に同意をさせたような場合には、被保険者である従業員の真意に基づく同意であるとは言えないというふうに考えられます。したがいまして、このような場合には、死亡保険金請求権の譲渡の効力は発生せず、会社の経営者が生命保険契約から利益を受けることはできないというふうに考えられます。
 そういった全体としての枠組みの下で一定の手当てがされているということだというふうに理解しております。
#139
○小川敏夫君 保険法は被保険者の承諾、同意ということですけれども、私も別に、私が挙げた例は被保険者に無断でやったということは言っていないので、被保険者とその奥さんが受取人となることを合意の上にやった上で、受取人の奥さんからその将来の保険金をもらうということを申し上げたので、ですから、被保険者、受取人も同意の上でやっているので、保険法による無効とはまた違うと思うんですよね。
 それで、職務上の地位を利用した云々、そういう場合はあるかもしれないけれども、そうじゃない場合もあるわけでして、世の中いろいろありますから、やはり預金に例外を設けるんだったら、保険だって例外を設けた方が丁寧じゃなかったかなという気はいたします。やっぱり保険金の受取人というものを、特に、発生した保険金じゃなくて将来の保険金、将来事故があった場合に受け取るという、将来発生するかもしれない将来の保険金という場合にはもう少し対応があってもよかったんではないかというふうに思っております。
 多分同じ答弁いただくことになると思うので、答弁は要りません。
 あと、前回の質問の中で、相殺ですね、四百六十九条でしたか、この四百六十九条の二項の二号、これについて具体的にどういう例かと。前回は一般論としての御説明を聞いていたところで終わっちゃったんですけれども、もう少し具体的にということで委員会の外で説明いただきましたところ、理解したところは、例えばある事業者が継続的に物を販売している、その継続的に物を販売しているその売掛金を債権譲渡したと、対抗要件も具備した後も継続的に取引している、ですから将来発生するという意味での債権も譲渡しているというような場合に、その納めた商品に不具合があって、債権譲渡の債権でいえば債務者、譲渡人からいえば物を売る販売先に大きな損害を与えてしまったと。例えば、エアバッグを自動車会社に納めていたところ、自動車会社がエアバッグを付けて販売していたところ、エアバッグが欠陥品だったので大変なリコールになって大変な損害を被ったと、こんなのも一つの分かりやすい例かなとも思うんですけれども。
 そんなときに、要するに、この譲受人の取得した債権の発生原因である契約に基づいて生じた債権というのはそういうことだというふうにお伺いしましたけれども、ただ、そうしますと、譲受人は想定していなかったことによってこの譲受け債権がゼロに帰する、売掛金を上回るような損害が債務者、いわゆる製品の納入先に発生して損害賠償金が発生して、その損害賠償を債権と相殺されてしまうと譲受け債権は無に帰してしまうわけであります。
 そうした意味で、譲受人は予期しなかったことによって損失を被ることになると思うんですが、取りあえず、私が今指摘したような事実の組立てでよろしいんでしょうか。
#140
○政府参考人(小川秀樹君) 委員御指摘の事案では、そのリコールの事案では、買主は売主に対する損害賠償請求権を自働債権とする相殺をもって債権の譲受人に対抗することができるというのが四百六十九条の二項の帰結でございまして、その損害賠償請求権が仮に売掛債権の全額を上回るということであれば、売掛債権の全額は相殺によって消滅することもあり得るということ、そういう意味では法律関係の説明としては御指摘のとおりだろうというふうに思います。
#141
○小川敏夫君 そういう事態が生じた場合に、その債権の債務者と債権の譲受人がどちらが損するかという話だと思うんですが、損失を負担するかという話だと思うんですけれども。
 そもそも、今回のこの債権譲渡の改正の要点は、中小企業の資金調達の円滑化を図るために債権譲渡をしやすくすると、だから譲受人のリスクも減らすというのが一つの債権改正の、この債権譲渡の部分の改正に関する一つの方向性だったと思うんですよね。ところが、今度は、この部分に関してはそうではなくて、損失を譲受人の方に負担させるということで、言わばそうした方向性とは逆の方向になると思うんですが、これはいかがでしょうか。
#142
○政府参考人(小川秀樹君) 今回の債権譲渡に関する改正の大きな内容は、御指摘いただきましたように、譲受人の保護といいますか、債権者の差押債権者との関係でいうと、譲受人が優位に立つような仕組みづくりというのが一つございますが、他方で、債務者が弁済者を固定する利益についても十分配意しているつもりでございます。様々な形で弁済の相手をどうするかとか、あるいは供託などによって債務者の保護を図っているところでございます。そういう意味では、全体としてのバランスをどう見るかということだと思います。
 改正法案第四百六十九条第二項第二号の趣旨は、同一の契約から生じた債権債務については、特に相殺の期待が強いことから、その相殺の期待を特に保護するために、譲渡された債権の発生原因である契約に基づいて生じた債権については、特別に相殺権の行使を可能とした点にあります。
 このように、相殺権の行使を可能とする債権を同一の契約から生じたものに限定しております関係上、限定しているということの意味は、まあ関連性といいますか牽連性もその範囲で非常に強いわけですし、その意味で債務者の利益も保護に値するということでございますが、他方で、そういった形で限定しておりますので、債権の譲受人としては債権を譲り受ける前にその債権がどのようなものであるか、あるいは相殺のリスクがあるかどうかなどについて調査をすることで二号に基づきます相殺のリスクを回避することも可能でございます。
 このような債務者と債権の譲受人の地位を考慮いたしますと、債務者による相殺権の行使を認め、これによって売掛債権が消滅する事態、先ほどのように売掛債権全体が消滅することが仮に生じ得るとしても、そのことをもって不当とは言えないのではないかというふうに考えているところでございます。要するに、債務者と譲受人のバランスをどう図るかという問題だというふうに理解しております。
#143
○小川敏夫君 これは不正不当という問題じゃなくて、譲受人か債務者かどちらに損失を負わせるかということだから、考え方だと思うんですが、ただ、基本的には、譲受人の方の不測の損害というものを減らして中小企業の資金調達を円滑化しようという方向性からいうとちょっと逆の方向だなというふうに思いましたので、言わばそのちぐはぐさを指摘させていただいたわけでありますけれども。
 同じように、債権を強制的に取得する、これは債権譲渡は任意ですけれども、債権が移転する債権差押え、それから債権差押転付命令という強制執行があるわけです。この場合にはこういう規定はないですよね。
#144
○政府参考人(小川秀樹君) 四百六十九条二項二号に相当する規定はございません。
#145
○小川敏夫君 ですから、債権譲渡の場合には譲受人が損失を負担するという四百六十九条二項二号の規定があるけれども、強制執行で債権差押転付命令という形で、その執行手続によって債権の移転が行われた場合にはない規定がこの債権譲渡の場合にはあるというのも私はバランスを欠いていると思うんですが、この点はいかがでしょう。
#146
○政府参考人(小川秀樹君) 五百十一条にも関わる点でございますので、若干その点についての説明もさせていただきたいと思います。
 改正法案では、差押えを受けた債権を受働債権とする相殺の範囲について、差押後に取得した債権が差押前の原因に基づいて生じたものであるときにも相殺を対抗することができることとして、現行法と比べて差押債権者に相殺を対抗することができる債権の範囲を拡大しております。
 他方で、債権が譲渡された場合に、譲渡人に対して有する債権と譲渡された債権の相殺を譲受人に対して対抗することができる範囲については、その債権が対抗要件の具備時よりも前の原因に基づいて生じたときだけでなく、その債権が対抗要件の具備時よりも後の原因に基づいて生じたものであっても、譲渡された債権の発生原因である契約に基づいて生じたときは相殺を対抗することができることとしております。
 これが、先ほど来出ております四百六十九条第二項の一号とそれから二号の説明でございます。
 これらは、債務者が有していた相殺の期待、いずれも債務者側とすると一定の相殺の期待を持っていたという場面でございますので、債務者が有していた相殺の期待をどの範囲で第三者に対抗することを認めるかという問題でありまして、問題状況としては基本的に一致しております。その上で、債権譲渡の場合には将来債権譲渡が幅広く許容されているため、相殺の期待を有する債務者の利益を保護する観点から相殺の範囲を拡大し、譲渡後に債務者が取得した債権との相殺についても広い範囲で相殺を可能とする必要があると考えられたわけでございます。
 これに対しまして、債権の差押えの場合には、差押えの時点でその債権の発生の基礎となる法律関係が存在していることが要請されており、さらに、差押えによる強制執行を実効的なものとする、実効性のあるものとすることも重要でありますことから、債権譲渡の場合と同程度に債務者の利益を保護するのは妥当ではないというふうに言えるわけでございます。
 このような利益条件の違いを考慮いたしまして、債権譲渡と差押えの規定、要するに二号に相当する部分の有無というのも異なるものとしたところでございます。
#147
○小川敏夫君 どうもここら辺が、今回の債権譲渡、前回も質問させていただきました供託の問題とか、譲受人が債務者に譲渡人に弁済をするよう求めることができるとか、何かかなり技巧的なところの細かい規定が入ったんだけど、それゆえに何か一貫性がなくなったような改正のような気がしてならないんですけれども、まあここのところはそうした指摘をさせていただくことで、また別のことを聞きたいと思いますけれども。
 ちょっとこの債権譲渡、例えば中小企業の資金の円滑化のために、融資をしやすくするために、売掛金を譲渡担保として資金調達を円滑化するというような方向性ということでありました。私は、債権を売り掛け譲渡担保とした場合に、この充当関係がどうなるのかなというふうにちょっと疑問を抱きました。
 まあ直接この民法改正の問題じゃないんだけれども、いわゆる売掛金債権を担保として資金の融資を受けたと。しかし、債務の履行が滞ったので担保権を実行するという場合に、その担保権の回収によって充当するんだけど、百円の額面の債権が百回収できれば充当問題何にも起きないんだけど、額面を百として半分の五十しか回収できなかったと。その場合に、額面の百をもって充当するのか、あるいは実際に回収できた五十をもって回収をするのか。あるいは、実際の取立てに代えて債権をまた転売しちゃって売却代金を充当するという場合に、その売却代金が、百の債権を百で売ればいいんだけど、百の債権を五十で売っちゃったと。その場合に、売っちゃった五十が被担保債権の元本に充当する金額なのか、ちょっとその充当関係が私どうなのかなと思いましたので教えていただきたいんですが、ここら辺はどうなんでしょうか。
#148
○政府参考人(小川秀樹君) 今の御指摘は、お尋ねは譲渡担保に関するものでございますが、譲渡担保は基本的には慣習法上の担保権でありまして、法定の担保権ではないため、要するに根拠となる法律はございません。その実行方法についても法定されておらず、債権者と担保提供者との間の譲渡担保の設定契約によってその実行方法が任意に定められるものであると承知しております。
 このことを踏まえた上で、あくまで運用あるいは実務の一般論として申し上げますと、譲渡担保権の実行には譲渡担保設定契約の内容に従って二つの種類があるというふうに言われています。一つが帰属清算方式と言われるもので、譲渡担保権者が債務者に対して譲渡担保権を行使して目的財産権を確定的に取得、債権であれば債権を確定的に取得する旨を表示する譲渡担保の実行通知をして、目的財産の適正評価額と被担保債権額との差額を清算金として譲渡担保権者が債務者に支払う、言わば実行した上で差額を支払うという帰属清算方式と、譲渡担保権者が目的財産を第三者に処分し、目的財産の現実の処分価格と被担保債権額との差額を清算金として債務者に支払う処分清算方式があると承知しております。
 債権譲渡担保の実行につきましては、こういった実行方法としての、債務者の債務不履行があった場合に、その他の方法もあるようではございますが、基本的に今申し上げました帰属清算方式と処分清算方式の二つが主要なものとされております。
 委員御指摘のとおり、例えば典型的に売る方、売却の方で申し上げますと、いわゆる処分清算方式が取られた場合のように、ある債権に担保権を設定した担保権者がその債権を第三者に売却してその対価を取得するということは考えられます。譲渡担保についてはそもそも民法には規定がない非典型担保であります上、約定担保権であることから、担保権者と担保権設定者の約定による部分も多く、どういう場合にどういう形で充当されるのかということについて一概にお答えするのは困難でございます。
 もっとも、裁判例がございますので、それを申し上げますと、処分清算型の譲渡担保においては、原則として売却代金を前提として充当が行われますが、例えば不当に低い価格でされた場合には適正な評価額を前提として充当を行うべきであると判示するものがございます。同様に、学説におきましても、譲渡担保権設定者の利益を考慮し、処分清算型の場合であっても充当される金額は実際に売却された金額とは限らず、適正な処分価格であることを示唆するものも学説としてございます。
 これらの裁判例や学説に従えば、先ほどお話がありました額面額よりも低い金額で譲渡担保の目的である債権が売却処分されたような場合には、売却金額とは異なる金額で充当される余地もあるというのが実務ないしは裁判例ではないかというふうに理解しております。
#149
○小川敏夫君 この譲渡担保って、もう非常に重要な実際に担保として社会的に機能しておるんですよね。ですから、もう当たり前のごとく売掛金の譲渡担保でというようなことが出てくるような話でありますけれども、実は民法に規定がないと。しかし、社会の実態にはもうしっかり確立して根付いていると。一方で、民法には規定がないけど、社会の実態として確実に存在して実際に重要な役割を、位置を果たしていると、しかし充当とかそういったことに関して何の法律の規定がない、だから解釈によるんだというところが問題なんですよ。
 だからこそ、民法改正はこんなに重要な部分、民法に何にも規定がないけど、社会に担保権、そういう譲渡担保になるものがあれば、じゃ、そのことについて明確に、譲渡担保とは何か、譲渡担保の清算方法はどうするかとか、様々なことをしっかりとこういう機会に決めるのが本来民法改正としてやるべき私は重要な課題だったと思うんですよね。今回の民法改正に、そうした譲渡担保が今まで民法の規定になかった、しかし社会に、実態にはあると。それをそのまま放置して、またこれからも民法の規定にないままというのは、私はこの民法改正で非常に重要な部分を落としているんじゃないかというのが一番言いたい部分なんですが、いかがでしょう。
#150
○政府参考人(小川秀樹君) 譲渡担保も言わば担保権、先ほど言いました慣習法上の担保でございますので、担保としての位置付けということで考えておりまして、今回は債権に関する規定全般の見直しということでございますから、言わば一つの対象ではなかったということが言えようかとは思います。
 ただ、担保一般について言うと、実務でやっているからこそなかなか利用しやすいんだというような面もあり得て、いずれにしろ、立法のテーマとして検討する上では実務的な観点からの検討が十分される必要があるだろうというふうには考えております。
#151
○小川敏夫君 確かに、譲渡担保は担保だから、今回は債権法だから入っていないと言われれば確かにそうかもしれませんけど、じゃ、担保の方の改正の際には必ずそこら辺のところを明快にしていただきたいというふうに思っておりますけれども。
 なかなか法律の細かいところに入ると退屈になって委員会も眠気が来ちゃうようなことになっちゃうんですけど、でも法律の規定は、法律は法律でやっぱり存在をすると、それがやはり社会を規律して一つのルールとなっていくわけですから、つまらない内容の法律であっても、細かいことであっても、やはりそれなりに影響は大きいと思うんですよね。
 ということで、私も細かいこともいろいろ質問させていただきましたけれども、細かい、債権譲渡で、四百六十六条の三ですか、ここで三行目の括弧の中で、「同項の債権の全額を譲り受けた者であって、」ということでこの要件が限定されているんですけれども、じゃ、債権の一部を譲り受けた人間にはないんですよね、こういう権利は。
#152
○政府参考人(小川秀樹君) 括弧書きに書かれていますように、このルールが働くのは、債権の譲渡、債権の全部を譲り受けた者に限られるということでございます。
#153
○小川敏夫君 一部かどうかはもう切り離して、そもそも供託させることができるというふうに規定なんだけれども、供託させたその供託金は結局譲受人が持っていっちゃうんですよね。供託させることができるといっても、供託したお金は譲受人が取るんですよね。だったら、そんな供託なんという迂遠な方法を取らないで、譲受人に弁済をすると言っちゃっても同じだと思うんですけれども、それを譲受人に弁済と言わないで供託させるということにした意義は何なんでしょうか。
#154
○政府参考人(小川秀樹君) これはまさに債務者の弁済者を固定する利益であり、譲渡人や譲受人との関係に立ち入らずに、言わば譲受人に支払わずに弁済の効果を得られるというのがこの意味だろうというふうに理解しております。
#155
○小川敏夫君 債務者とすれば譲渡人の方に返すつもりでいたのが、何か知らない譲受人に行っちゃってやだ、やだという、弁済先を固定したいということを考えたということであればね。
 しかし、供託するといっても、供託したお金は譲受人しか取れないんだから、譲受人が取っちゃうというんだったら余り変わらないんじゃないかと思うんですよね。だって、ワンクッション置いただけでしょう。供託したら供託金を取れるのは譲受人だけだというんだったら、何か少し技巧的過ぎて余計な手間かかせるだけじゃないかというふうに思うんですけれども。まあ、それは私の意見です。
 それで、私また質問ですけれども、じゃ、このときに供託させることができる、だから譲受人は債務者に対して供託しろという請求ができるんでしょうけれども、債務者がそれに応じなかったらどういうことになるんでしょうか。
#156
○政府参考人(小川秀樹君) その場合は譲受人側が供託をせよということを求めるということだと思います。
#157
○小川敏夫君 だから、私の質問は、供託せよと求めても債務者が供託に応じなかった場合にどうなるのかと聞いているんです。
#158
○政府参考人(小川秀樹君) 供託をさせることを求めて訴訟を起こすことが考えられるのではないかと思います。
#159
○小川敏夫君 供託せよという訴訟を起こすわけですか。
 だけど、あれですよね、悪意の人間の請求に対しては、債務者は履行拒絶権があるんじゃなかったでしたっけ。そこのところはあれですか、僕の無理解が誤解を招いているんですか。ちょっと。
#160
○政府参考人(小川秀樹君) 原則はおっしゃるように拒絶可能でございますが、これは特則として供託の仕組みをつくったものでございますので、それとは別に、これに基づいて供託せよということを求めるということだと思います。
#161
○小川敏夫君 じゃ、僕の理解は正しいわけですよね。履行拒絶権があるわけですね。履行拒絶権があるんだけど、供託しろと言われたら供託しなくちゃいけないんだったら、履行拒絶権、意味ないじゃないですか。で、供託したらその供託金をもらうのは、譲受人が当然持っていっちゃうことは確定しているわけだから、履行拒絶の意味ないですよね。
#162
○政府参考人(小川秀樹君) 四百六十六条の三が適用されますのは譲渡人について破産手続開始決定があったときに限られるわけですので、この場合についてのまさに特則ということだと思います。
#163
○小川敏夫君 そう。でも、譲渡人が破産になったって、債務者は譲受人には履行拒絶権があるわけですよね。譲渡人が破産しようが破産しまいが、悪意の譲受人に対する履行拒絶権、債務者の履行拒絶権は譲渡人の資産状態にかかわらずありますよね。
#164
○政府参考人(小川秀樹君) 御指摘のとおり、履行拒絶は可能だとは思います。
#165
○小川敏夫君 そうすると、履行拒絶権があるのに供託する義務があって供託しなければならない、裁判を起こされたら強制執行されちゃう。で、供託したらそれが譲受人にしか還付の請求権がなくて、譲受人が取っちゃうというんだったら、履行拒絶権、何にも意味がなくなっちゃうと思うんですけれども。済みません、もう時間がなくなっちゃったんで、改めてまたきちんとした対応をもし検討して、答弁と違うような、答弁の趣旨と違った説明をいただけるのであればいただきたいというふうに思います。
 大臣、もう今日これで終わりでありますけれども、一つ大臣にお願いがございます。いわゆる、私が何回も聞いております消費貸借の繰上げ返済の点ですけれども、私は、多くの人に接したら、繰上げ返済したと、残元本を繰上げ返済したらそれ以降の利息は払わなくていいし、損害賠償もしなくていい、残元本を払えばそれで終わるというのが接した方のほとんどの印象だったということで、残元本を払っても、なおかつ、えっ、損害も払うの、あとの利息も払うのというのはみんな驚いた反応をしておったんですけれども、どうでしょう、大臣、この委員会、今日終わりましたら、後ろにいらっしゃる民事局の方じゃない方に、大臣がお付き合いされているごく普通の方に、おい、どうだい、繰上げ返済したときに、残元本を払えばチャラになるんじゃなくて、残元本のほかに損害金だとかその後の利息も払わなくちゃいけないみたいだよというようなことなんだけど、どう思うと少し数多く聞いていただけませんか。
#166
○国務大臣(金田勝年君) 長時間にわたって委員の御指摘をいただいておりました。その中で最も多いのがこの改正法案の第五百九十一条の第三項の趣旨についての御指摘だったと思います。
 法務省としましては、委員御指摘のような問題が生じないようにするために、改正法案第五百九十一条の第三項における損害の額の解釈、あるいは損害の額について相当な特別の約定がなされた場合には無効となる可能性があるという解釈などを含めまして、不当な被害が生ずることのないようについて、貸し手側それから借り手側の双方に対して十分に周知を徹底してまいりたいと、このように考えているわけであります。
 具体的には、貸し手側の業界団体に対します周知活動についてなんですが、関係省庁とも連携しながら、趣旨を誤解することのないように取り計らっていくとともに、他方で、借り手側についても、関係省庁のほかに消費者団体、弁護士会等とも連携をいたしまして、不当な請求に応じてしまうことがないように十分に対処していきたいと、このように考えておる次第であります。
#167
○小川敏夫君 私は、ごく普通の方に感想を聞いていただきたいというお願いをしただけでございますから、是非よろしくお願いします。
 今日のところはこれで終わらせていただきます。
#168
○仁比聡平君 日本共産党の仁比聡平でございます。
 今日は、少し積み残しておりました第三者保証における保証人保護の問題についてしっかりお尋ねをしたいと思っております。
 五月十六日のこの委員会の質問で、深刻な保証被害を具体的に少し大臣にもお示しをいたしまして、長年にわたるこの保証被害から保証人を保護すべきだというこの議論の上に立って今回の改正案に、やっとと言っていいと思うんですけれども、ようやく盛り込まれた保証人保護の規定、これ一歩ではあるけれども、重要な規定ということで御議論をさせていただいたわけです。
 まずお尋ねしたいのは、そういう到達点の上に立ってようやく新設される、されようとしている保証人保護規定からあえて配偶者を外すというこの問題をどう考えるのか。私は前近代的な不当なやり方ではないかと繰り返し申し上げてまいりました。
 そこで、まず順番に聞いていきたいと思いますけれども、大臣、今申し上げたように、新設するこの規定というのは、つまり保証人保護ということだと思うんです。このといいますのは、法案、法改正案の第三目、事業に係る債務についての保証契約の特則、とりわけ第四百六十五条の六、この公正証書による宣明証書と、この手続ですけれども、これは保証人保護ということで理解してよろしいですか。何から保証人を保護しようとするのでしょうか。
#169
○国務大臣(金田勝年君) 仁比委員の御指摘、御質問にお答えをいたします。
 ただいま御指摘ございました保証人を保護すべきという視点、私はそのとおりだというふうに考えています。事業のために負担した貸金等債務を主債務とする保証契約におきましては、その保証債務の額が多額になりがちであって、保証人の生活が破綻する例も相当数存在すると言われております。
 その理由としては、保証契約は個人的情義等に基づいて行われることが多いということや、保証契約の締結の際には保証人が現実に履行を求められることになるかどうかが不確定であることもあって、保証人の中にはそのリスクを十分に自覚をせずに安易に保証契約を締結してしまう者が少なくないことが指摘されております。
 そのために、今回の改正案の内容についてでございますが、個人がリスクを十分に自覚せず、安易に保証人になることを防止するという観点から、事業のために負担をいたしました貸金等債務を主債務とする保証契約につきましては、公的機関が保証人になろうとする者の保証意思を事前に確認をしなければならないものといたしまして、この意思確認の手続を経ていない保証契約を無効としたものであります。
#170
○仁比聡平君 おっしゃる御答弁をこの国会通じて述べてこられましたけれども、ところが、その保護から配偶者をお外しになるわけです。大臣、改めてお尋ねしますが、それはなぜですか。
#171
○国務大臣(金田勝年君) ただいま申し上げたことの繰り返しになりますが、意思確認手続創設をいたしました理由というのは、ただいま申し上げましたが、保証意思宣明公正証書の作成を義務付ける趣旨でございますが、個人的情義等からの保証のリスクを十分に自覚をせずに安易に保証契約を締結することを防止することにあるわけであります。そのため、改正法案の立案の過程においても、個人的情義等から保証人となることが多い主債務者の配偶者を例外とするのは相当ではないという指摘もございました。
 主債務者の配偶者を除外する理由としては、個人事業主に関しましては経営と家計の分離というものが必ずしも十分ではない、そして主債務者とその配偶者が経済的に一体であると見られることが多いということから、配偶者を保証人とすることによって金融機関から融資を受けている事例も現に少なくないのが実情であるということであります。そして、改正法案の内容といたしましては、このような融資の実情も踏まえて、主債務者が個人事業主である場合のその配偶者について、主債務者の事業に現に従事していることを要求いたしまして、主債務者の事業内容をなお一層把握可能な立場にある場合に限定をいたしまして例外として扱うことにいたしておる次第であります。
 この要件に該当する配偶者につきましては、これを主債務者の保証人とする実務上のニーズも強く、かつ保証のリスクを認識することも可能なものと言えることから、公証人による意思確認の対象としないことが相当であると考えております。
 なお、このような立場にあります配偶者が実際に保証人となるかどうかは配偶者の意思によるところでございますが、融資を受けることでその家業の事業継続が可能になるといったような事態も想定いたしますと、自らが保証人となることで融資を得たいという配偶者の判断は一概に軽率であるとか安易であるとかいうのは断じ難い面があると、このようにも考えられるわけであります。
 私ども法務省といたしましては、改正法案の成立後は、配偶者による保証を含め、個人保証に依存し過ぎない融資慣行の確立に向けて引き続き関係省庁と連携をしながら取り組んでまいりたい、このように考えておる次第であります。
#172
○仁比聡平君 私、やっぱりさっぱり分からないのです。
 最後のくだり、つまり主債務者の事業内容をなお一層把握可能な立場にある場合に限定して外したと、そういう御答弁ですよね。保証人の意思を公証人によってしっかり確認しなきゃいけないようにして保護するという趣旨が、そもそもリスクを十分に自覚せずに安易に保証人になることを防止するという観点からであると。であるから、主債務者の事業内容をなお一層把握可能な立場にある場合に限定してこれ外すんだと、配偶者はそういう立場なんだと、公証人によるしっかりした意思確認の保護は必要ない、全く必要ない立場なんだと、大臣、そうおっしゃっているわけですか。
#173
○国務大臣(金田勝年君) 先ほど申し上げましたが、融資の実情を踏まえた場合に、主債務者が個人事業主である場合のその配偶者については、主債務者の事業に現に従事していることを要求をいたしまして、主債務者の事業内容をなお一層把握可能な立場にある場合に限定をして例外として扱うということにしているものであります。
#174
○仁比聡平君 金融実務については後ほど金融庁にしっかりお尋ねしたいと思っているんですけれども、理屈の話として、先ほど主債務者の事業内容をなお一層把握可能な立場にあるから外すんだとおっしゃって、実際、個人事業にしても、配偶者がその事業内容をしっかりそれこそ把握している場合というのは、これはもちろんあります。けれども、そうでない場合というのだって当然ありますよね。
 大臣のお連れ合いとの把握の関係がどんなのかは知りませんけど、例えば私のところでいいますと、そんなに把握し合えているのかと、そんなことは考えることもありますよね。連れ合いは福岡で働いておりまして、私はこうして国会に相当の時間いる。別にこれは事業をやっているわけじゃありませんから、本改正部分と特段関係があるわけじゃないんですけれども。
 ところが、大臣、先ほどのその答弁の後の部分で、一律に安易、軽率と言うことはできないというふうにおっしゃいました。これ、第三者保証を考えるときに、保証人になろうとする者が一律に安易で軽率だとかいうことをそもそも前提にする話ではないですよね。情義性や軽率性がある、だから保証意思に不確かな部分があってはならない、その不確かな保証意思によって思いもしなかったようなリスクを負うことになってしまって、生活も成り立たない、自殺に追い込まれる、そういう保証被害なくそうということでしょう。ですから、一律に保証人になろうとする者から何かを外すというのはそもそもがおかしい。
 もう一回聞きますけれども、配偶者ならば、その事業の内容、これ絶対に把握できるはず、あるいは把握しているはずみたいなことになるんですか。
#175
○政府参考人(小川秀樹君) 個人事業者、個人事業主についての配偶者の問題でございまして、例えば法人の代表者の場合の配偶者は今回の例外の対象ではございません。個人の事業主につきましては、まさに家計と経営の一体性といいますか、とりわけ配偶者が業務を行っているわけでございますので、そういう前提でございますので、その場合には配偶者は基本的には一定のリスクについての認識も持っていることが通常であるということでございます。ただ、それだけが例外を認めた理由ではございませんで、やはり一定のニーズですとか、そういった点も大きな理由の一つでございます。
#176
○仁比聡平君 局長に確認しますけれども、今通常であるというふうにおっしゃいましたけど、配偶者であってもリスク認識を持っていない場合だってもちろんあるでしょう。
#177
○政府参考人(小川秀樹君) そういう意味で、制度としてつくるときには事業に現に従事しているということが必要でございまして、この事業に現に従事しているということは、例えば単に書類上の事業に従事しているとされているだけでは足りず、あるいは保証契約の締結の際の一時的な従事というわけでもございません。あくまで保証契約の締結時においてその個人事業主が行う事業に実際に従事していると言えることが必要であると考えておりまして、その前提で考えますと、先ほど申しましたように、リスクについての認識というのを認めることは十分可能だろうというふうに考えております。
#178
○仁比聡平君 リスクについての認識を、一般に第三者保証をしようとする人と、そして配偶者というのを質的に分けているということに本当に合理性がありますか、不当ではありませんかと、私、お尋ねをし続けているつもりなんですね。
 大臣の先ほどの冒頭の御答弁に戻りますと、つまり政府の基本的な立法理由に戻りますと、個人事業主に関しては家計と経営の分離が必ずしも十分でないことが一般的だとか、主債務者とその配偶者、通常主債務者が夫で配偶者は妻であることが多いんじゃないかという、そういう場合に、経済的に一体的であるということが多いなどと言って、一般的だとか多いとか、そうした漠然とした認識を皆さん大前提にしておられるんですよね。それで本当にごまかしちゃっていいんですか。
 つまり、公正証書、公証人による保証意思の確認によって保証被害をなくそうと、こうして改正をされるのに、配偶者の中にそうした情義性やあるいは軽率性や、こうした保証被害って現にいっぱいありますよ。その存在を無視するのかということが私全然分からないわけです。
 その立場に立って改めて、先ほど局長が御答弁をされ、触れましたけれども、条文そのものについてお尋ねしたいと思うんですが、この四百六十五条の九で公正証書の作成に関する「前三条の規定は、保証人になろうとする者が次に掲げる者である保証契約については、適用しない。」とされ、その三号で「主たる債務者(法人であるものを除く。以下この号において同じ。)と共同して事業を行う者又は主たる債務者が行う事業に現に従事している主たる債務者の配偶者」という条文になっているんです。
 配偶者と私が申し上げているのは、条文上は主たる債務者が行う事業に現に従事している配偶者なんですけれども、この現に従事しているというのは改めてどういう意味でしょうか。
#179
○政府参考人(小川秀樹君) 改正法案におきましては、個人事業主の配偶者を保証意思確認の例外としておりますが、それはあくまでも事業に現に従事している配偶者に限定されておりまして、この点は重要だというふうに考えております。
 すなわち、比較的零細であることが多い個人事業主の事業を前提といたしますと、現に事業に従事している配偶者であればその事業の状況等を把握することは十分に可能であると考えられるのでありまして、そうであるからこそ、先ほど申し上げましたように保証意思の確認手続の例外とすることが考えられるわけでございます。
 そして、このような趣旨に照らしますと、現に事業に従事しているというのは、まさに保証契約の締結時においてその個人事業主が行う事業に実際に従事していると言えることが必要であると考えられます。したがいまして、単に書類上事業に従事しているとされるだけでは足りず、あるいは一時的な従事というのも除かれるものでございます。
 また、このようにその要件を満たすためには、保証契約の締結時においてその個人事業主が行う事業に実際に従事していると言えるかが問題でありまして、実際に従事していれば、主債務者との間に契約があるか否か、契約の形態が何か、あるいは報酬の有無などは問われないものというふうに考えております。
#180
○仁比聡平君 実際に従事しているかどうか、そこが重要だと言うんですが、そうすると、ちょっと議論先に行っちゃいますけれども、実際に従事しているか否かの判断で公正証書の手続が必要かどうかが切り分けられるわけですよね。実際に従事していないという実態なのに公正証書による保証意思の宣明をしていないということになると、一体どうなるんですか。
#181
○政府参考人(小川秀樹君) 今のような場合でありますと四百六十五条九の要件を満たしませんので、証書は無効ということになると思います。
#182
○仁比聡平君 証書は無効になるとおっしゃいましたけれども、証書は作られていないわけですから、もう一度。
#183
○政府参考人(小川秀樹君) 契約は無効でございます。失礼いたしました。
#184
○仁比聡平君 その保証契約は無効であると。そうすると、この現に従事しているか否かというのは極めて重大な争点になるということになるようですが、この実際に従事しているかどうか。
 先ほど法形式として、例えば役員だとか従業員としての雇用契約だとか、あるいは委任のような形もあるのかもしれないですけれども、そういうどんな契約の形態かというのはこれは関係ないんだという御答弁でした。その従事によって対価を得ているかどうか、これも関係ないんだということでした。そうすると、実際に従事しているのかそうでないのかというのは、これはどうやって判別していくことになるんですか。
#185
○政府参考人(小川秀樹君) もちろん客観的に事実として従事しているかどうかという点についてが重要だというふうに考えております。
#186
○仁比聡平君 客観的に従事しているかどうかというのは、つまり例えば販売、小売業であればお店に立ってお客さんの相手をしてやり取りをされているかとか、あるいは製造業であれば物づくりのところで何か携わっているかとか、それが実際に仕事しているかどうかという話だと思うんですけれども、その事実だけで配偶者を不当な保証被害から保護できるほどの、保護するか否かというほどのメルクマールができますかね。
 私、今の局長の御答弁の趣旨なのであれば、これからの、仮にこの法案が成立して実際に配偶者保証というのがどうなるのか、例えば貸す側にしてみれば、配偶者だからいいと思って公正証書取らなかったけれども、後から、あっ、これ駄目だ、無効だということになってしまったということになっちゃうんじゃないだろうかと思うんですが、いかがです。
#187
○政府参考人(小川秀樹君) 先ほども客観的な事実で判断するということを申し上げましたが、基本的には、貸す側であります例えば金融機関の方の調査によることになろうかと思います。調査した結果として、従事しているということが認めにくいということであれば公正証書を作成するということになろうかと思います。
#188
○仁比聡平君 それを金融機関が調査する、何の観点で調査するのかよく分からないですね。
 後でちょっと金融庁にまとめて聞きますけれども、つまり金融機関が調査をするのは、その事業の事業性だったり、あるいは経営者の資質だったり、だから貸すお金がちゃんと返ってくる、その将来性があると、やっぱりそういう意味での目利きですよね。何か、配偶者がどんな仕事を実際実務でやっているのかとか、後から争われるんじゃないかとか、そんなことを調べているんだったら、最初から公正証書をちゃんと取ってもらった方がよほどいいということになるんじゃないかなと思うんですけれども、ちょっとそこは後で聞きたいと思うんですが。
 ちょっともう一つ聞きたいと、ああ、それの前に、そういう意味で、どんな働き方であろうと、対価をもらっていようともらっていまいと、その事業に従事していれば保証人として公正証書の保護はないということになるわけですけれども、元々、保証人になるかならないか、なってふさわしいかどうかというのは、つまり事業のあるいは事業債務の、この法律上の考え方でいうとリスク、普通の金融、円滑な金融という観点からいえば経営や事業の将来性というようなところに、しっかりと責任を持てるのか、その認識は持てるのかということにあるんじゃないかと思うんですよね。
 それを、ただでちょっと手伝っている、こういう人たちも含めてこれは入るんだというようなことになると、そもそもこの制度の趣旨からして何だか変な話になりませんか。
#189
○政府参考人(小川秀樹君) 繰り返しになりますが、主債務者となろうとする者についての一定のリスクの有無についての認識が得られるかどうかというのが一つの基準でございますので、現に事業に従事しているということであれば、その要件を満たすということだというふうに考えております。
#190
○仁比聡平君 そうあくまで繰り返されるわけですが、別の角度で聞きますが、この本条に言う配偶者と法律上の婚姻の届出との関係についてもうこれまでに質疑がありまして、届出の有無で区別する、つまり法律婚なんだと、配偶者というのはというふうに御答弁があっているわけですが、この法律婚か否かで区別するという合理的な理由がどこにあるのかもさっぱり分からないんです。配偶者が事実婚であったにしても、当然、経営の実態をよく把握しているという場合は当然あるわけでしょう。法律婚だったら把握しているとか、事実婚だったら把握していないとか、あり得ないじゃないですか。何でそんな区別をする合理的な理由があるんですか。
#191
○政府参考人(小川秀樹君) 実質的なリスクの認識という点では、確かに法律上の配偶者と事実上の配偶者に差を設けるということは難しいのかというふうに考えておりますが、改正法案におきましては、事業のために負担いたしました貸金等債務について個人が保証人となる場合に、公証人による保証意思確認の手続を要しないという例外に該当するか否かという判断、これは契約の有効、無効に関わるものでございますので、その意味では形式的かつ客観的に容易に判断することが可能な要件とする必要が出てくるということでございます。
 したがいまして、四百六十五条の九第三号に定める配偶者は、まさにその文言どおり法律上の配偶者を指すものでありまして、事実婚の配偶者は例外の対象とはならないものというふうに認識しております。
#192
○仁比聡平君 いや、もう本当に苦しい答弁でしょう。
 同じ例外規定になっているこの三号に、配偶者と同列に扱われるのが主たる債務者と共同して事業を行う者です。これは平たく言えば共同経営者と理解してよろしいでしょうか。
#193
○政府参考人(小川秀樹君) 御指摘ありましたように、改正法案では、事業のために負担した貸金等債務についての保証契約であっても、主債務者が個人であり、かつ保証人がその主債務者と共同して事業を行う者である者については、保証意思宣明公正証書の作成を要しないこととしております。
 ここでいう共同して事業を行うということの意味でございますが、組合契約など事業を共同で行う契約などが存在し、それぞれが事業の遂行に関与する権利を有するとともに、その事業によって生じた利益の分配がされるなど、事業の成功、失敗に直接的な利害関係を有する場合を指します。
 したがいまして、例えば共同して事業を遂行するため当該事業に出資をするとともに事業の遂行の一部を担っているなど、いわゆる共同事業者である場合には主債務者と共同して事業を行う者に該当するということでございます。
#194
○仁比聡平君 前段といいますかね、それはそういう意味なわけですよ。配偶者であっても、そうした意味でのいわゆる共同経営者が公正証書によらずに保証意思を、保証契約を結ぶことができるということは、それは分かりますよ、百歩譲って。けれども、そういう共同経営者と配偶者を同列に置いて保護から外すというのは、これ不合理ではありませんか。
#195
○政府参考人(小川秀樹君) 個人が事業を営んでいる場合には、その個人の財産がその事業に供され、かつその利益は個人に帰属することとなるわけですが、その個人事業主が婚姻しているときには、事業に供した個人の財産及び個人が得た利益は、その配偶者とともに形成した夫婦の共同財産であると評価され得るものでございます。
 そして、夫婦の共同財産が事業に供されるだけでなく、その配偶者がその事業に従事しているのであれば、事業を共同で行う契約などが夫婦間に存在せず、共同事業者の関係にあるとまでは言い難い事例でありましても、財産や労務を事業に投下し、他方で利益の分配を受けているという点におきまして、実質的には個人事業主と共同して事業を行っているのと類似する状態にあると評価することができると考えられます。
 また、比較的零細であることが多い個人事業主の事業を前提といたしますと、現に事業に従事している配偶者であればその事業の状況等を把握することは十分に可能であると考えられます。
 そういたしますと、個人事業主の事業に現に従事している配偶者は、事業を共同で行う契約などがなく、形式的には共同事業者とは言えないものの、その個人事業主の事業の成否に強い利害関係を有し、その状況を把握することができる立場にあり、その意味で、共同事業者と同様に公正証書作成の例外とするのは合理性があるというふうに考えているところでございます。
#196
○仁比聡平君 いや、局長のお言葉ですけれども、それは合理性あるとは言えないですよ。それは、共同経営者と類似する、そういう配偶者もいらっしゃるでしょう。けれども、そうじゃない配偶者というのだってたくさんいるじゃないですか。第一、従事するという言葉の意味は、先ほど確認したように、私は本当に無限定だと思いますよ。しかも、今おっしゃったような共同経営者に類似するというような状態、あるいは夫婦の共同財産、共有財産というふうな形になっていくというような実態が形成され得るというのは、これ、法律婚でも事実婚でも全く変わりませんよね。今おっしゃった議論をもって配偶者を保証人保護の例外とするという、これは私は通らないと思うんです。
 ちょっと別の角度で聞きますけれども、これは、大臣もお戻りになりました、少し耳を傾けてもらえればと思うんですが、配偶者であれば事業のリスクについてもちゃんと把握し得るというお話があるけれども、そういう場合もあるでしょうけれども、逆の場合だってありますよね。
 一緒の家に住んで、配偶者である。だから、父ちゃんがこの大きな借金を高利に書き換えようとしている、借り換えて、何とかこの苦しくなっている事業を維持しようとしている、無理かなと思うけど、お父ちゃんが頑張っているんだから私が保証人になって応援してあげなきゃね、世の中でもうお父ちゃんの味方は私しかおらぬもんって。これ、情義的な保証というんじゃないんですか。
 あるいは、配偶者、おおむね夫の側ですけれども、家庭内暴力も含めて、その配偶者を常々制圧的に扱う人。保証人になるの当たり前やないかと、もう説明もしない。主債務の内容だとかその事業の見通しだとか、そういうものを語り合うなんてことは全くない。ここから金借りることにした、これ判こつけと。もうほぼ意思制圧されているという状況だってありますよ。
 さらには、同じ家にいるわけですから、どこに奥さんの実印があるかとか印鑑証明のカードがあるかとか分かっていますから、だからこれ勝手に、俺が作って何が悪いと言って印鑑証明、そして実印を押して委任状を作れば、あるいは保証契約やっちゃえば、つまり保証契約の冒用ですよね、あるいは実印の冒用。こういうことだって具体的にいっぱい事件あるじゃないですか。
 そうした中で、現に保証債務が現実化して、根こそぎ家族、奥さんの財産も奪われてしまうと、そういうようなこともあり得るんですよ。で、現にあるわけです。それを何で保護しないと言うんですか。
#197
○国務大臣(金田勝年君) ただいま仁比委員から御指摘がございましたお話を伺っておりまして、主債務者に抑圧をされて保証契約を締結させられるようなケース、あるいは主債務者が配偶者の印鑑を無断で使用する、そして配偶者に無断で配偶者を保証人とする保証契約を締結するといったようなことが実際に起こり得るんではないのかという御指摘があったと思います。そういったことを防止するためにも配偶者を例外とするのはおかしいんではないかという、そういう御指摘だったと思うんですが、改正法案の趣旨との関係で御説明申し上げるとすれば、保証意思宣明公正証書の作成を義務付けるのは、個人的情義等から保証のリスクを十分に自覚せずに安易に保証契約を締結することを防止することにあると。他方で、御指摘の問題は、保証のリスクを十分に自覚せずに安易に保証契約を締結するといった問題とは別のものであろうかというふうに考えられます。保証に固有の問題とも言えないものであろうと、こういうふうに考えられるわけであります。
 したがいまして、御指摘の問題は保証意思宣明公正証書の義務付けによって対応するものではなくて、民法上、まずは強迫による意思表示は取り消すことができるとする第九十六条、あるいは無権限で締結された契約の効力に関する第百十三条無権代理といったような規定を基に対応すべきものではないのかと、このように考えられる次第であります。
#198
○仁比聡平君 それはそうですね。そういう法律構成で救済を図るということは、それはもちろん可能ですけれども、そんなことせずに、公証人にきちんと、本当に保証意思ありますかということを確認する対象に入れれば一気に解決するんでしょう、公証人による公正証書で本当の保証意思が確認できるというお立場に立って政府は法案出しておられるわけですから。だから、あえて配偶者を外すということは不当ではないかと申し上げているんです。
 先ほど来金融実務の話が出ておりますが、ちょっと金融庁お待たせしましたが、お尋ねしたいのは、結局、配偶者がいる方が、その配偶者が保証人に立っていないからお金は貸しませんと、そういうようなことが現実にあるのか、つまり、奥さんがいるのに、奥さんが保証しない限りは貸しませんというようなことが実際あるんでしょうか。
#199
○政府参考人(栗田照久君) お答え申し上げます。
 配偶者の方が個人保証を求められた場合の対応といたしましては、求めに応じて保証を締結するということによって融資が実行されるケース、あるいは配偶者は保証人にならないけれども代替的な担保や保証を提供することによって融資につながるようなケース、あるいは保証が提供されないということで融資条件が折り合わないで融資が実現しないケースなど、様々な事案があるものというふうに承知しております。
#200
○仁比聡平君 そのとおりでしょうね。ですから、配偶者がいる方が、貸金、金融を受けようとするときに、資金を調達しようとするときに、配偶者が保証することが絶対条件だなんという、そんな世の中じゃないですよ。
 五月十一日の鳥畑参考人が紹介をされた日弁連の二〇一二年の意見書の数字をちょっと紹介すると、第三者保証人を徴求していない割合は、政策金融公庫で一〇〇%、全てですよね、商工組合中央金庫で九九・九一%、信用保証協会の制度融資でいえば九九・八八%と。つまり、個人連帯保証契約というのはほとんどないというような実態にあるんではないかと思うんですね。
 これ、もし、配偶者がいるけれども、その配偶者が共同経営に実質関わっているとかいうんであれば、あるいは逆に経営の実質的な経営者はその配偶者であるというような場合であればいざ知らず、結婚しているのにその相手が保証人に立たないからというその理由だけをもって貸し渋る、貸さないというようなことは、それ自体が私、もうちょっともはや問題だと言ってもいいんじゃないかと思うんですけど、金融庁、ちょっと御感想あれば。
#201
○政府参考人(栗田照久君) お答え申し上げます。
 先ほどお答え申しましたように、実務の対応としては様々なケースがあるというふうに承知しておりますけれども、金融庁といたしましては、過度に担保、保証に依存しないで融資をしていただきたいというのが基本的な考え方でございます。
#202
○仁比聡平君 その過度に保証に依存しないということで、過度の依存からの脱却が政策的に追求をされてきているわけですけれども、今申し上げているのはつまり第三者保証ですよね。この第三者保証というのは、経済的合理性や経済的貢献が乏しいのに保証被害が広がるじゃないかというのが私や鳥畑参考人が申し上げている大前提なんですけれども、経営者保証というのはこれとはちょっと違うと。経営者保証というのは、信用補完や債権保全、あるいはモラルハザードの防止といった意味での経営の規律付けのようなこともあって、ここからの依存からは脱却しようということではあるけれども、経営者保証をどんなふうにしていくかということでいろいろ工夫をしておられるということだと思うんですよ。そうした中で、経営者保証の実情について鳥畑参考人が、新規融資の一四%が経営者保証を付さないものにもうなってきているという紹介ですが、まあ大体そんな感じなんでしょうか。
#203
○政府参考人(栗田照久君) 経営者保証を求めないで融資を行うという事例が増えてきているということは承知しております。
#204
○仁比聡平君 そういうときに、結婚していれば、法律婚の配偶者のみこうして公正証書の保護の例外にしてしまうというような、こういう考え方というのは、やっぱりこれは不合理であるということを否めない、不当だと言わざるを得ないと思うんです。
 少し別の角度で同じ問題聞きますが、配付した資料の最後のページに所得税法五十六条というものの条文を紹介をしています。これは、中小自営業者の場合によく問題に、多く問題になるわけですが、家族、もちろん配偶者を含むわけですが、の働き分が税務申告上の必要経費として認められないということなわけです。ですから、この今の所得税法が大問題じゃないかということで一貫して運動が広げられてきたんですが、その長年の声があって、とうとう二〇一五年、一昨年十二月の閣議決定、第四次男女共同参画基本計画でこの問題が書き込まれることになりました。
 内閣府、おいでいただいていますが、何と書かれているでしょうか。
#205
○政府参考人(大塚幸寛君) お答えいたします。
 委員御指摘の第四次の男女共同参画基本計画におきましては、「自営業等における就業環境の整備」といたしまして、「商工業等の自営業における家族従業者の実態を踏まえ、女性が家族従業者として果たしている役割が適切に評価されるよう、税制等の各種制度の在り方を検討する」とされているところでございます。
#206
○仁比聡平君 大きな運動の力があって、元々この所得税法五十六条の論理そのものがおかしいじゃないかという議論も国会の中でも繰り返されて、この基本計画の記載に私はなっていると思うんですね。
 財務省も丁寧に検討していくとおっしゃっているわけですが、その背中を押すように、二〇一六年の三月七日、国連女性差別撤廃委員会の総括所見で、この所得税法五十六条を見直せという、検討を求められることになりました。言わば政府の背中を押すという形なんですが、この撤廃委員会はどう述べたんでしょうか。
#207
○政府参考人(大塚幸寛君) お答えいたします。
 お尋ねの国連女子差別撤廃委員会より示された委員会の最終見解、昨年三月でございますが、以下のように記述をされております。
 委員会は、締約国が農山漁村女性の政策形成への参画を制約する全ての障壁を取り除くこと、及び家族経営における女性の労働を評価し、女性の経済的エンパワーメントを促すため、所得税法の見直しを検討することを要請する。
 以上でございます。
#208
○仁比聡平君 そのように国際社会からも背中を押されているわけですよね。これは、元々家族の働き分を事業の必要経費として税務上認めないということが法律の理念としてどれほどおかしいか。皆さんも、先ほど来の民事局長の御答弁もそうですけれども、個人事業で家族、配偶者がどれだけ必死で働いているかということがおっしゃりたいわけでしょう、結局。朝の早くからの仕入れから、もう夜遅くの帳簿、帳面、本当に頑張っておられる方々たくさんいらっしゃいます。そうした中で、その働き分を正当な対価として評価するなら、年間例えば百五十万円とか二百万円とか、そういう賃金が支払われて当たり前と、そういう実態の労働を、この税務申告上は、この所得税法五十六条というのは、白色申告だと妻の場合八十六万円だけ、そのほかの親族は五十万円しか認めないというわけです。人間が実際に働いてそういう評価を受ける仕事をしているのに、それを税務上八十六万円あるいは五十万円としてしか認めない。これ極めて不当なんですよ。だから、この国際委員会の総括所見でも見直しをということが求められているわけですよね。それで、財務省もこれ見直していくという、そういう方向での丁寧な検討というのが進んでいるという状況でしょう。
 大臣、きっとこうした議論も私以上によく御存じなのかもしれないんですが、つまり、事業主の家族や配偶者の働き分を独立して正当に評価しようと、人格を尊重して自立を社会のあらゆる場面で確立していこうという、そういう時代の流れのときに、元々個人の尊重を基本原理とする民法に、あえて配偶者がまるで事業や事業主の附属物のように扱う、先ほど来一体となっているというお話ありますけど、そういう規定を新設するというのは、これ前近代的だとは思いませんか。
#209
○国務大臣(金田勝年君) ただいまの御指摘に対しまして、まず前提でございますが、主債務者の配偶者を除外する理由、これも前に申し上げましたが、個人事業主に関しましてはやはり経営と家計の分離が必ずしも十分ではないということを申し上げましたが、そういう事情、それから、主債務者とその配偶者が経済的に一体であると見られることが多いことから、配偶者を保証人とすることによって金融機関から融資を受けている事例も現に少なくないという実情、こうした融資の実情も踏まえまして、改正法案の内容として、主債務者が個人事業主である場合のその配偶者について、主債務者の事業に現に従事していることを要求をいたしまして、主債務者の事業内容をなお一層把握可能な立場にある場合に限定をして例外として扱うこととしているわけであります。
 この要件に該当する配偶者につきましては、これを主債務者の保証人とする実務上のニーズも強く、かつ保証のリスクを認識することも可能なものと言えるので、公証人による意思確認の対象としないことは相当であると考えているところであります。
 御指摘ございました第四次男女共同参画基本計画に基づきます検討、この詳細については承知をしていないものの、改正法案は主債務者と配偶者を決して一体として見るといったものではなく、このような合理的な申し上げた理由から例外を定めることとしたものであると考えておるわけであります。
#210
○仁比聡平君 決して世の中はそんなふうに受け止めていない、そのことは与党が御推薦になってこの委員会にお招きをした法制審に参加をされた山野目参考人や高須参考人も、共通してこの規定については大問題だという認識を示しておられるわけですね。
 そうした下で、大臣がおっしゃりたいのは、極めて限定的なんだと、そういうふうに扱うんだとおっしゃりたいんでしょうけれども、実際、規定ぶりからするとそうならない可能性が十分あるわけですよ。これはもう速やかに除外する、削除するという提案を政府自身が速やかにされるということを強く求めたいと思います。
 意外に早く進んでしまうもので時間がなくなってきましたが、保証人、そうした中で、配偶者はこの公正証書による保護も受けずに保証債務も負うということにこれからもなるわけですが、その下でその保証人の責任制限という議論があります。
 前回も少し紹介をしかけたところでしたけれども、中小企業家同友会の全国協議会の私ども国会議員への要請では、経営者の資力に比例した限度でしか保証人は責任を負わない原則、これ比例原則の確立をという強い要望がありますし、参考人質疑で日弁連もあるいは鳥畑参考人も強くおっしゃったわけですね。
 つまり、この中小企業家同友会の御提案でいいますと、保証契約で定められた保証人の負担が、保証契約の締結に至る諸事情に加えて、保証契約の締結時の保証人になろうとする者の資産及び収入に照らして過大であると認められる場合において、保証債務履行の際、その前二年間を平均した年間可処分所得の二倍に保有資産の価額を加えた額の限度まで保証人の責任を減じること、こういう制度にしてはどうかと、入れてほしいと。
 これ、金融実務で随分いろんな取組がされていると思うんですが、まず金融庁にお尋ねしたいと思います。配付した資料の一枚目の紙ですが、これ平成二十七年度の累計というのが一枚目の紙にありますけれども、保証金額を減額した件数、これが数字が挙がっています。私が今紹介している問題意識とイコールかどうかはちょっとおいておいて、ここの数字の意味合い、それから二枚目に二十八年度の四月以降の実績が出ていますけれども、その前の年と比べても随分いろんな取組が進んでいるようにも見えるんですが、現場の取組というのはどんなことになっているでしょうか。
#211
○政府参考人(栗田照久君) お答え申し上げます。
 経営者保証ガイドラインにおきましては、経営者保証の契約時の債権者の対応といたしまして、形式的に保証金額を融資額と同額とせず、保証人の資産、収入の状況等を総合的に勘案して設定するということなどが記載されてございます。
 民間金融機関がこの経営者保証ガイドラインに基づき保証金額を減額した件数は、今御紹介がありましたように、平成二十八年度上半期で八千四百八十九件、前の半期、これは二十七年の下半期でございますけれども、では八千百七十七件ということで、三百十二件の増加ということになっております。
 また、具体的な金融機関の取組といたしましては、不動産担保による保全状況などを考慮して保証金額を減額した事案、あるいは経営者への規律付けということに関しては、保証金額は融資額の一定割合で十分であるという考え方の下に、有担保の場合には原則として保証金額を融資額の二〇%に限定するということを組織全体の方針とされている事例なども見られているところでございます。
#212
○仁比聡平君 今回の法案には盛り込まれなかったんですけれども、これ大臣、一言で端的にいただけませんか。保証法制の中にこれ盛り込んでいくべき検討、これはやっぱりするべきじゃないですか。
#213
○副大臣(盛山正仁君) 仁比委員御指摘のとおり、金融の実務では中小企業団体及び金融機関団体共通の自主的かつ自律的な準則として経営者保証ガイドラインなどが活用され、債権者である金融機関等の判断により保証人の責任が軽減された事例があるということは承知しております。
 しかしながら、法的に保証人の責任を強制的に減免するなどの方策を導入し、債権者の意思に反する場合にも保証人の責任を軽減することについては、法制審議会におきましても、裁判所が保証人の資産状況を適切に把握することは困難であり、保証債務が保証人の資力に比して過剰となっているかどうかの判断基準の設定も容易ではないこと、あるいは、主債務者の信用を補完するという保証の持つ機能が低下し、その結果、円滑な資金調達に支障が生ずるおそれがあるといった理由を挙げて反対する意見も強く主張されたところでございます。
 そのため、改正法案におきましては、保証人の責任を強制的に減免するなどして事後的に制限する法的な仕組みの創設は見送ったものでありまして、そのような仕組みの創設については、改正法案の施行状況や金融実務における実情の変化などを踏まえた慎重な検討が必要であるというふうに我々考えているところでございます。
#214
○仁比聡平君 恐らく実務の方向は、こうした責任制限や比例原則的な考え方を実際強めていくような流れに私はなるんじゃないかと思うんです。そこはよく見ていただいて、速やかな導入をお願いしたいと思います。
 最後に、あと四分残りあって、これちょっと最後、民事局長にきっちり答弁をいただきたいというテーマがありましてお願いしたいと思うんですが、前回の十六日の質疑でも、一体、公正証書で保証意思を確認するというときに公証人は何を確認するのか、公証人が何法に基づいてどのような義務を負っているのか、実際に作成された公正証書がそういうしっかりした、保証人になろうとする者の意思確認がされていないということになったときに、この公正証書の効力というのは一体どうなるのか、その宣明証書に加えて作成された保証契約の公正証書の効力はどうなるのかという趣旨のお尋ねをいたしました。
 少し局長の答弁を改めて議事録精査すると、おっしゃっていることが分かるようでいてもうちょっと分からない部分があるんですが、残りの時間で御答弁いただけないでしょうか。
#215
○政府参考人(小川秀樹君) お答えいたします。
 まず、確認すべき事項でございますが、公証人は、保証意思を確認する際には、保証人になろうとする者が保証しようとしている主債務の具体的内容を認識していることや、保証契約を締結すれば、保証人は保証債務を負担し、主債務が履行されなければ自らが保証債務を履行しなければならなくなることを理解しているかなどを検証し、保証契約のリスクを十分に理解した上で保証人になろうとする者が相当の考慮をして保証契約を締結しようとしているか否かを見極めることが予定されております。
 仮に保証人の保証意思を確認することができない場合には、公証人は無効な法律行為などについては証書を作成することができないとする公証人法第二十六条の規定に基づきまして、公正証書の作成を拒絶しなければなりません。
 さらに、保証契約に先立ち、保証意思宣明公正証書が作成されていなければならないわけですが、ここで言います保証意思宣明公正証書は、保証人になろうとする意思が表示されたものでなければなりません。したがいまして、保証意思がないにもかかわらず公証人が保証意思宣明公正証書を作成することは、これは民法上予定されておらず、そのような状態で公正証書が作成されたとしても、改正後の第四百六十五条の六、所定の公正証書には該当いたしません。
 この結果、四百六十五条の六第一項に基づきまして、保証契約についても無効となると解されるというふうに認識しております。
#216
○仁比聡平君 時間が来たので終わりますけれども、今の一番最後の局長の答弁は、実際これからこの法律が成立すれば、公正証書の効力をめぐって重要な論理なんだと思うんです。こうしたこの法の意味がしっかり公証人の方あるいはその実務に関わるとりわけ貸し手の方々に本当に周知されないと駄目なので、まず通達にこの公証人の義務などを記すということを前、御答弁になっていますけれども、この通達にできるだけ詳しくしっかりとこれを書き込むということと、それから実務界にしっかりと周知するということを強く求めまして、質問を終わります。
#217
○東徹君 日本維新の会の東徹でございます。
 もう今日は四十分ということでありますが、公証人のことについては今日はもう質問をしませんが、質問しませんが、やはり、ちょっと答弁を、同じ答弁を繰り返し繰り返しいただいておるんですけれども、やっぱり納得ができないなと、こう思っておりまして、もう一度だけ、質問はしませんが、言いたいことを言わせていただきたいなというふうに思います。
 大臣からも何度も答弁をいただいておりまして、公証人というものは、弁護士や司法書士と同じように法律専門職として経営において個人事業主の性格を有しているという御答弁を何度もいただきました。でも、私は、町にいろんな弁護士さん、司法書士さん、そういった事業活動をやっておられますけれども、そういった方だったら別にこんなことを言うわけでも何でもないわけです。やはり、法務省の出先機関として公証役場があるわけですよね。これは民間機関ではなくて、公的機関なわけですよね。そこでお勤めになられる公証人という方は金田法務大臣が任命する形になるんでしょうかね、任命する方がそこで国家公務員として働くということも御答弁の中であったというふうに思います。だから、町にある司法書士さんや弁護士さんが個人事業としてやっているのとは全然違うわけだということが一点ですよね。
 今回のこの民法の改正によって、第三者保証のところでありますけれども、言ってみれば、原則的には公証役場へ行って公正証書を作ってもらわないといけないわけですよね。一万一千円お金が掛かるわけですよ。これが今回の法改正ですから、恐らくこのことによって、公証役場に行かれる方、そこで手数料をお支払いになられる方、恐らく増えるんだろうと思いますよね、これは原則としてこうなるわけですから。ですから、よりやっぱり行政としての、機関としての透明性も必要だというふうに当然これ思いますし、その手数料の変更については、公務員の給料の変動に合わせてその手数料の改正もこれは検討していくんだという御答弁もいただきました。
 だから、非常にやっぱり公的機関としての公務員的な要素が非常に強いというわけですし、もう一つは、これ、四百九十六人という公証人の方がおられるわけですけれども、四百九十三人は前職が裁判所の職員であったり法務省の職員であった方というわけですから、もう言ってみれば約一〇〇%近い方々が裁判所でお勤めだったか法務省の職員、言ってみれば行政機関の天下り機関というふうに、そういうふうに見られても仕方がないという状況でありますから、そういうことであるから是非これは透明化すべきじゃないですかと、やっぱり情報をきちっと公開して透明化していくべきじゃないですかと、そういうことを言わせていただきました。
 個人情報保護という観点からというふうなこともありました、一人の公証人の役場もあるというふうなお話でした。恐らく、小さい都道府県だったら二か所ぐらいしかなくて、公証人がお一人でやっているところもあるんだろうと思います。例えば、そういうところであれば、都道府県としてまとめて情報公開もできると思うんですね。だから、そういったことをやっぱり是非検討していかなかったら、一体収支状況がどうなっているのか外から見て分からないということではやっぱりいけませんし、やはり行政、公務員の方がやっておられるわけですから、きちっとした情報公開等、きちっと税務申告もやっているんですよということをしっかりと目に見える形で情報を公開していくべきだというふうに思いますので、是非御検討をお願いしたいというふうに思います。
 今日、いつも通告だけしていてなかなか質問できなかったことがたくさんありましたので、今日は全部できるんじゃないかなというふうに思っておるんですけれども、一つだけ順番を変えさせていただいて、まず質問をさせていただきたいと思います。
 第三者保証のことについてです。
 今回の改正では、第三者保証の改正後の四百六十五条の六におきまして、その保証人になろうとする者は公証人のところに行って保証意思宣明公正証書を作成しなくてはならなくなるわけですけれども、この保証人になろうとする人が高齢のために成年被後見人であった場合、こういったこともこれから、高齢社会ですから、こともあるかもしれません。成年後見人が代わりに公証人に口授することになるのかどうか、また、この場合、被後見人本人の意思が十分に確認できると考えるのか、まずこの点についてお伺いをさせていただきたいと思います。
#218
○政府参考人(小川秀樹君) お答えいたします。
 改正法案におきましては、公証人において保証人の保証意思を確認し、安易に保証契約が締結されることを防止するため、保証人になろうとする者が保証債務を履行する意思を表示することを要求しておりまして、ここで口授をするのは保証人になろうとする者本人でございます。
 このことは、成年後見人が成年被後見人を保証人とする保証契約を締結する場合でも変わりがなく、この場合における保証人になろうとする者は成年被後見人でございまして、口授をするのも成年被後見人でございます。
 したがいまして、公証人は口授をした成年被後見人が保証意思を有しているのかを確認することになるわけですが、成年被後見人は事理を弁識する能力を欠く常況にあり、通常は保証意思を有しているとは認められませんので、公証人は保証意思宣明公正証書の作成を拒絶することになると考えられます。
#219
○東徹君 拒絶することになると。はい、分かりました。
 それでは、第三者保証について、保証人が死亡してしまった場合、今度、死亡した場合はその相続人が相続を単純承認するなどして保証債務を承継してしまうことがあると思います。特に、被相続人が保証人にはなったけれども債務者の事業が順調だったとしたら、相続の時点でいまだ債権者から支払請求とか余り来ないと思いますので、これ分からないということがあると思うんですね。そういったときには、相続人は保証債務の存在を全く知らないまま承継してしまうということもあると思います。
 このような場合に、相続人が保証債務を承継した時点で相続人の保証意思をこれは確認すべきというふうにも考えられますけれども、新たな公正証書を取り直す必要があるのかどうか、伺いたいと思います。
#220
○政府参考人(小川秀樹君) 保証意思宣明公正証書は保証契約を締結する前提として作成するものでありまして、一度締結されました保証契約に基づいて発生した保証債務が相続などによって承継される際には作成を要しません。
 したがいまして、御指摘の、保証人が死亡し、その相続人が保証債務を承継したという事案におきまして、その相続人について保証意思宣明公正証書を作成し直すという必要はございません。
#221
○東徹君 作成する必要はないということになりますと、これはもう、その方はこの保証人が死亡してしまったときに保証債務を承継してしまって、これについて支払っていかないといけないということになるということでよろしいんですか。
#222
○政府参考人(小川秀樹君) 保証債務を承継するということであれば、そのとおりだと思います。
 ただ、相続の放棄の問題がございまして、相続の放棄は、原則として相続人において相続人となった事実を知ってから三か月以内の熟慮期間内にしなければなりませんが、この三か月が経過したといたしましても、相続人において相続放棄等をしなかったのが相続財産が全く存在しないと信じたためであり、かつそのように信じるについて相当な理由があるといった要件を満たす場合には熟慮期間は進行しないと解されております。
 このため、例えば被相続人に保証債務があることを含め相続財産があることを相続人が全く知らなかったような場合などには、相続開始を知った後三か月を経過した後であっても、保証人の相続人は相続放棄の方はすることができる場合があり得るということだと思います。
#223
○東徹君 なかなか相続時点においてこういった保証人になっていたということが分からない場合があるというふうに思うわけですね。
 だから、相続放棄することができるにしても、果たして後からこういったトラブルが出てくるのではないのかなということを心配しておるわけでありまして、四月二十五日の委員会でも質問しましたけれども、我々の日本維新の会は参議院の方で合計百三本の法案を出させていただいておりまして、どんな法案を出しているのか余り知られていないんですけれども、その中で個人保証廃止法案という法案を出させていただいております。
 これはもう何度もこの中で議論になっておったことでありまして、事業用融資に係る保証については、個人的な情義等から保証人となった者が、想定外の多額の保証債務の履行を求められて生活の破綻に追い込まれる事例がやっぱり後を絶たないわけでありまして、政府が提出したいわゆる債権法改正法案では、事業用融資に係る個人保証等の制限が提案されておりますけれども、その内容は公正証書の作成を当該個人保証の効力要件とみなすものであって、また、保証人となる者についての例外が多数認められていることから、規制としては不十分だというふうに考えておるわけなんですね。
 事業用融資に係る保証、根保証であって保証人が個人であるものは無効とすること、内容としてですね。政府は、個人保証なしに中小企業に対する事業用融資が行われるよう、速やかに、事業用融資について事業に係る動産等を担保とする手法の拡充、中小企業の経営基盤の強化等について検討し、その検討の結果を踏まえ、所要の措置を講ずるものとすることという個人保証廃止法案という法案を出させていただいております。
 そういった法案をこれ出させていただいておるんですけれども、大臣からは個人保証を一律に禁止することは現時点において相当ではないというふうな答弁をいただいておりましたけれども、これまでやっぱり参考人の方々の御意見、それから我々もこういう法案を出させていただいている、そしていろんな委員から同じような意見もたくさんありました。それを踏まえて、もう一度大臣の御見解をお伺いをさせていただきたいと思います。
#224
○国務大臣(金田勝年君) 東委員の御質問にお答えをいたします。
 前のときと変わらない答えになるかもしれませんが、その点をお含みおきいただいて申し上げたいと思います。
 個人保証に依存し過ぎない融資慣行の確立が必要だという考え方についてまず申し上げますが、特に事業性の融資については、経営者その他の個人が保証人となったためにその生活が破綻する例も少なくないと言われていると、このような現状に鑑みれば、個人保証に依存し過ぎない融資慣行の確立は我が国社会において極めて重要なものであると認識をしております。
 他方で、個人保証を全面的に禁止した場合には、特に信用力に乏しい中小企業の資金調達に支障を生じさせるおそれがあるとの指摘が中小企業団体を始めとします関係団体等から強く寄せられておりまして、この指摘も重く受け止める必要があると考えております。
 個人保証の問題に関しましては、これまでも個人保証に依存し過ぎない融資慣行の確立に向けた取組が行政的な枠組みを中心に進められてきておりますが、その中でもこれらの相反する要請をどのようにバランスの取れたものとしていくかが重要であったものと認識をいたしております。
 立案に当たりまして検討状況というものはあるわけですが、改正法案の立案に当たりましても、これらの要請をどのように調和の取れたものにするかに配慮をしつつ検討が行われましたが、事業性の融資に関しましては、公証人による意思確認手続を経ない場合には保証契約を無効にするという強力なルールを設けることを前提に、このルールの適用対象は弊害が顕著であります第三者が保証するケースに限定することとしたものでございます。
 なお、今般の改正におきましては、債権譲渡についての譲渡制限特約の効力の見直しなども行うことといたしておりまして、個人保証に依存し過ぎない融資慣行を確立するための環境整備にも取り組んでおるわけであります。
 したがいまして、このように個人保証を一律に禁止することは現状に照らすと相当ではないと、このように考えておるところでありまして、このような考え方は参考人質疑や委員各位の御発言等を踏まえてもなお維持するべきものであると考えておる次第であります。
 法務省としましては、引き続き、個人保証に依存し過ぎない融資慣行の確立に向けまして関係省庁と連携をしながら改正法案の施行後の状況を注視していきたいと、このように考えております。
#225
○東徹君 大臣の言う、個人保証に頼らない、依存し過ぎない、そういった融資慣行の確立ということをおっしゃるんですけれども、これ現実的にはやっぱりなかなかそれは進んでいないというところがあるから、やっぱりあれだけ参考人の方々たちからも意見があり、ここでもそういった意見も出、我々もやっぱりそれは、そういったことが大事だろうということでこういった法案を出させていただいているわけですけれども、それは個人保証に頼らないで、法律を作らずに、個人保証に頼らない、そういった融資慣行の確立というのは、これ、じゃ、いつまでにそういった確立がどうやってできるのかなと本当思うんですけれども、どれぐらいをめどに、じゃ、どういった方法でやりますよということって答えられますか。
#226
○副大臣(盛山正仁君) 委員が今御指摘されたとおり、答えられますかと言われまして、なかなかやっぱり、はい、いつまでですというふうにお答えしづらいというのが正直なところではないかと思います。
 やはり、これはその法律上のルールをどう作るのかということとも絡むわけでありますが、金融の実態、これがどのように現実の金融が変わっていくのか、そしてもちろん政府として個人保証、特に安易な個人保証で大変悲惨な結果になっているということを減らしていくために、どのように金融機関とも協力をしながら現状を変えていくことができるかと、こういうこととの関係だと思います。我々としては、関係行政機関とともに努力して努めてまいりたいと考えております。
#227
○東徹君 法務省が関係行政機関と連携してとおっしゃるんですけれども、本当にそうなるのかなと、本当にそれが進んでいくのかなというふうに思うんですよね。やっぱりこれ、法律でもってそういったことを禁止していくという以外になかなか法務省として積極的に取り組むことというのは余りないんではないだろうかなというふうに思います。是非また、こういうふうに取り組んでいるということがまたあれば、是非また御報告をしていただければ有り難いなというふうに思います。
 もう一つ、今日、耳慣れない言葉だと思うんですけれども、ブロックチェーンという制度というか技術がありまして、これはビットコインとかに使われている新しい技術なんですけれども、これは改ざんのない記録を共有できる基礎技術というふうにも言われておるわけですが、今までのシステムのように中央の大型サーバーというものを置くのではなくて、分散型の共有台帳というものを置いて、共有台帳に記録して共有していくというものなんですけれども、実際にはベルギーのアントワープという市で、大阪のベンチャー企業がつくったこのブロックチェーン製品を用いて将来の行政サービスへのブロックチェーンの適用に向けた検証をこれ今行っています。
 我が国では政府の規制改革会議において、極めて低コストでシステム構築できることから行政の効率化が実現できるというふうにされておりまして、その具体的な例として不動産登記が挙げられております。
 先ほど指摘した、先ほどじゃないですね、前に指摘させていただきました民事法務協会というのがあります。民事法務協会というのがありまして、平日のみ、かつ有料で提供されている不動産登記情報ですけれども、ブロックチェーンを用いて無料化できるのではないかという意見がこれ出されております。
 ブロックチェーンの活用についてどのように考えているのか、大臣の見解をお伺いしたいと思います。
#228
○副大臣(盛山正仁君) 今、東委員が御提起をされましたブロックチェーンというものについて、大変今注目を集めているということは我々も承知しております。しかしながら、まだブロックチェーンの技術そのものは外国においても実証実験にとどまっていると、まだ実運用に至っている例はないというふうに承知をしているところでございます。
 先ほど御指摘されましたように、不動産登記制度、あるいはインターネットによる登記情報の提供制度など、社会の重要なインフラ基盤において本技術を活用することにつきましては、今後のこの技術の成熟度合いなどを注視しつつ、慎重に検討してまいりたいと考えております。
#229
○東徹君 この必要性についてなんですけれども、よく御存じだと思いますが、官民データの活用はこれ成長戦略における重要課題というふうに言われております。
 不動産登記については、現状では、国が一般財団法人民事法務協会を通じて、平日の八時半から夜の九時の利用時間においてPDFの形式で有料でこれ提供されておりまして、利用者からは、利用時間の拡大や利用料金、これもうちょっと安くならないかということが要望として挙げられています。前にも指摘させていただきましたように、またこの民事法務協会ですけれども、これもまた法務省の天下り先ということになっておりますが。
 また、この不動産登記簿については、民間事業者において特に所有者を把握するための重要な情報源というふうになっているものの、不動産登記情報が実態とこれ乖離しておって、民間開発などに支障が生じているという指摘もされております。
 また一方で、現状の不動産市場については、住宅資産額が住宅投資累計額より五百兆円程度下回って、空き家率においても二〇三三年には三〇%になるというふうに予測されているなど、不動産市場の活性化が急務というふうなことも言われております。
 不動産登記情報と乖離の解消に向けた取組を進めていくとともに、民間事業者による更なる活用が促進されるよう、所有者情報など不動産登記の一定の情報については無料公開も含めた環境整備が重要と考えられるというふうなことで、この必要性をこれ言われております。
 こういったことで、ブロックチェーンを活用して休日を含めて無料で国民に提供することが国民の利便性を向上させて行政コストの削減につながっていくというふうに考えるわけですが、金田大臣の見解も同じでしょうかね、先ほどと。
#230
○国務大臣(金田勝年君) 先ほど申し上げましたとおりで、同じであります。
#231
○東徹君 でも、これからのやっぱり検討すべき課題だというふうに思います。やはり、いっぱい行政コストを削減していくこと、そしてまた、やっぱりこういった不動産の活性化をさせていくこと、非常にこれ大事だというふうに思いますので是非御検討いただきたいと思いますが、検討ぐらいはするというふうに言っていただけるのかなと思うんですが。
#232
○副大臣(盛山正仁君) 問題意識は我々も同じ方向性であります。ただ、我々法務省だけでできる話ではございません。国土交通省その他関係の機関とともに、登記あるいは所有者の把握、こういういろんな観点について検討を進めつつあるところでございます。
#233
○東徹君 是非検討をお願いしたいと思います。
 私、参考人質疑の中でも質問をさせていただいた中に、今後の民法改正についても参考人の方にお聞きをいたしました。五月十一日の参考人質疑において、今後改正されるべき民法の分野は何かということを議論されましたが、参考人からは様々な分野が提案をされました。
 その中で、不法行為の分野において改正が必要じゃないかという意見が出されました。これを受けて、不法行為法の分野のどのような点を改正の必要性があるというふうに考えておられるのか、お伺いをしたいと思います。
#234
○政府参考人(小川秀樹君) 民法の不法行為の分野につきましても、これも明治二十九年の制定以来、全般的な見直しが行われていない一方で、これはまた様々な重要な判例も示されておりますことから、今回の債権法改正と同様の状況にあるものというふうには認識しております。もっとも、不法行為の分野につきましては、これまで法改正に向けた検討の土台となる具体的な議論の蓄積が必ずしも十分にあったわけではなかったことや、改正作業の分量をも考慮しまして、今回の債権法改正を先に行うこととしたものでございます。
 したがいまして、不法行為関係の規定の全般的な見直しは法務省といたしましても今後の重要な検討課題であると認識しておりまして、関係各方面における議論の進展をも注視しながら適切に対処していきたいというふうに考えております。
#235
○東徹君 これから日本も高齢化がまだまだこれ進んでいく中で、高齢者が関係する契約のトラブルというのも今後どんどんと増えてくるんだろうというふうに思います。
 参考人質疑の中で、高須参考人から、民法と消費者契約法との連携を進めるための規定を設けてはどうかという意見もいただきました。この意見についてどのように受け止めておられるのか、お伺いをしたいと思います。
#236
○政府参考人(小川秀樹君) 先日の参考人質疑におきまして、高須参考人から今後の改正事項として、ただいま委員御指摘のありましたような意見が述べられたことは承知しております。
 その際、高須参考人も述べられておりましたとおり、法制審議会においても消費者の概念を民法に取り入れるかどうか、取り入れる場合にこれらの概念をどのように定義するか、取り入れる場合にどのような規定を民法に設け、あるいはどのような規定を特別法の方に委ねるのかなどが議論されたわけでございます。
 しかし、民法は私法の一般法でありまして、そのことを踏まえますと、取引当事者の情報や交渉力の格差の是正を図るなど消費者の保護それ自体を目的とする規定を設けるのであれば、やはり特別法であります消費者契約法などによることが基本になるものと考えられるわけでございます。そこで、改正法案においては、消費者に関するルールを設けることとはしなかったものでございます。
 もっとも、今回の民法改正は消費者の保護を主たる目的としたものではないとしても、消費者の利益に資するものと考えられる点も少なくありません。例えば、保証制度の改正は、消費者的立場にある個人保証人を保護するという要請を踏まえて実現したものであり、これによって個人保証人が想定外の多額の保証債務の履行を請求される事態を防止することができるなどの意義があると考えております。また、定型約款に関する規定が新設されたことについては、消費者の視点からは約款を利用した取引の適正化による紛争の防止というメリットが考えられます。
 法務省といたしましては、これらの改正事項を含め、改正法案が法律として成立した後には、その趣旨を適切に周知していきたいというふうに考えております。
#237
○東徹君 是非、また今後の改正について検討していっていただきたいと思います。
 参考人質疑のときにも、暴利行為についてもいろいろと話がありました。私も暴利行為について前回も質問させていただきましたけれども、暴利行為の明文化を見送る理由として、無効とされている暴利行為の内容が確立していない、暴利行為の要件を適切に設定することが困難である、現時点で一定の要件を設定することが将来の議論の発展を阻害しかねないなど、民事局長から答弁がありました。
 現行法では、暴利行為に関する直接の規定はなくて、民法九十条を根拠に判例でもって暴利行為は無効であるというふうにされております。暴利行為に関する規定を作ると取引を萎縮させてしまうということも答弁の中でありましたけれども、既に民法九十条があって判例上の規制はされておりますが、これによって取引が萎縮しているというふうなことはないと思います。むしろ、民法九十条は非常に抽象的な規定であることからすれば、どういった場合に暴利行為として公序良俗違反で無効となるのかという参考になる規定を作った方が、国民の予測可能性を高めて、より安心して取引をすることができるようになるのではないかというふうに考えます。
 規定を設けることが予測可能性を確保することにつながらないということは考えられないというふうに思うわけですが、実際に、これは中間試案のたたき台では、中間試案のたたき台、民法九十条関係ということで暴利行為とあるわけですけれども、相手方の困窮、経験の不足、知識の不足その他の相手方が法律行為をするかどうかを合理的に判断することができない事情があることを利用して、著しく過大な利益を得、又は相手方に著しく過大な不利益を与える法律行為は無効とするものであるというふうに中間試案のたたき台ではあったわけでありますが、暴利行為の規定を定めたとして、その後、これに該当しないけれども無効とするべき行為が別にできた場合は民法九十条などを用いてそれを無効にすればいいだけでありまして、法制審議会で議論が煮詰まらなかったということで、国会において暴利行為に関する規定を今後追加してはどうかというふうに考えますが、大臣の見解を伺いたいと思います。
#238
○国務大臣(金田勝年君) 東委員から暴利行為についてお尋ねがありました。
 国会において暴利行為に関する規定を追加してはどうかという視点も前回あったように思うんですが、法務省における民事基本立法の改正作業におきましては、一般的に、法制審議会の答申に基づいて法案を作成いたしまして、これを内閣提出法案として国会に提出いたしました上で、立法府で御審議をいただくというのが原則的な流れになっております。立法府である国会の御判断によりまして、法案に規定が追加されることがあり得ることは申し上げるまでもないところであります。
 暴利行為につきましては、法制審議会において、古い判例を参考に、民法を国民一般に分かりやすいものとする観点から暴利行為を無効とする明文の規定を設けることが検討されたと承知をいたしております。しかし、何をもって暴利行為というのかを抽象的な要件で規定いたしますと逆に取引への萎縮効果が生ずるとして、経済団体を中心に明文の規定を設けることに反対する意見がありました。また、無効とされるべき暴利行為の内容が確立しているとは言い難い現状にあるということで、その要件を適切に設定することが困難であると、また、現時点で一定の要件を設定することで将来の議論の発展を阻害しかねないとも考えられたわけであります。
 この結果、改正法案においては暴利行為に関する規定を設けることとはいたしませんで、引き続き個別の事案に応じた現行法第九十条の解釈、公序良俗、第九十条の解釈に委ねることとしたものでありまして、このような判断には現状においても合理性があると、このように考えている次第であります。
#239
○東徹君 九十条で対応していくということでありますけれども、公序良俗という、それも非常に抽象的ではないのかというふうに思います。
 続きまして、定型約款についてお伺いをいたします。
 前回の参考人質疑でも、定型約款の不当条項に関する意見が出されておりました。本来であれば、当事者の申込みと承諾があって初めて成立する契約の世界に、今回の法改正で定型約款という、当事者が内容を全く読んでいなくても契約として成立させ、当事者を拘束する例外を導入する一方、一般消費者などが知らないうちに非常に不利な内容の契約条項に縛られることがないように、不当条項を除外する規定もこれは含まれておるわけであります。
 そこで、不当条項に具体的にどのような規定が該当するのか、例えば事業者は責任を負いませんとか、そういった免責規定とか、高額な解約手数料を要求する規定などが該当するのか、この辺の見解についてお伺いをしたいと思います。
#240
○政府参考人(小川秀樹君) 改正法案におきましては、相手方にとって負担となるような条項、すなわち相手方の権利を制限し、又は相手方の義務を加重する定型約款の個別の条項については、両当事者間の公平を図る基本原則であります信義則に反して相手方の利益を一方的に害すると認められるときは、合意をしなかったものとみなすこととしております。これがいわゆる不当条項の問題でございます。
 この規定によって効力が否定される条項としては、多様な取引における様々な条項があり得ることから、これを網羅的に申し上げるということは困難でございますが、今御指摘ありましたような、事業者は責任を負いませんという免責条項が定型約款準備者の故意又は重過失による損害賠償責任をも免責する趣旨である場合ですとか、高額な解約手数料に関する条項が相手方に対して過大な違約罰を定める趣旨である場合のほか、例えば売買契約において、本来の商品に加えて想定外の別の商品の購入を義務付ける不当な抱き合わせ販売の条項などが、これ不当条項に該当し得ると考えられるところでございます。
 現行法の下では、これらの条項の効力を争う手段については必ずしも確立した見解もない状況にあるものと考えられますが、改正法案におきましては、このような不当な条項の効力の有無についての判断枠組みが法律上明確化され、約款をめぐる紛争の適切な解決に資するものと考えられるところでございます。
#241
○東徹君 この不当条項の規定なんですけれども、やはり具体的に示していかなかったら、国民からはどのような条項が不当条項になるのかというのがこれなかなか判断ができないと思うんですね。
 改正法案の立案過程では不当条項のリスト化が検討されて、いわゆるブラックリスト、常に不当なものと評価され、常に無効とすべき条項をリスト化したものとか、それからグレーリスト、一応不当なものと評価されるけれども、当事者が不当でないことを主張、立証することで不当という評価を覆す余地がある条項をリスト化したものと言われるものを考えられましたけれども、結局これリスト化が見送られたわけでありますけれども、私もこういったやっぱり何かブラックリスト、グレーリストというと、国民に判断が分かりやすいような不当条項のリスト化というのは僕は大事じゃないかと思うんですけれども、これについていかがでしょうか。
#242
○政府参考人(小川秀樹君) まず、御指摘いただきましたブラックリストと呼ばれるものは、常に不当なものと評価され、不当性を阻却する事由の主張、立証を許すことが相当でない状況を定めた規定をいうとされております。これに対しましてグレーリストと呼ばれるものは、一応不当なものと評価されるが、当事者が不当性を阻却する事由を主張、立証することによって不当という評価を覆す余地がある条項を定めた規定をいうとされております。
 立案の過程におきましては、不当条項のリストを設けることが検討されました。しかし、一般法であります民法において不当条項リストに挙げられるべき条項を網羅的に抽出することは困難であるという問題がございました。
 さらに、ブラックリストを設けて、このような条項について常に無効とするという効果を定めることに対しましては、契約締結に至る経緯、当事者の属性、対価の多寡などを含めた総合的な判断の余地をなくす結果となるため、具体的に妥当な結論を導くことができないこととなるおそれがあるほか、リストに挙げられた条項以外のものが無効ではないという反対解釈を招くおそれがあるとの懸念もございました。
 また、グレーリストを設けることについては、当事者は、形式的にグレーリストに該当していればそれが不当条項には該当しないと確信を持って判断することができない限り無効とされるリスクを回避するという観点から、その条項をできるだけ契約に用いないこととせざるを得ず、これによって取引に過度な萎縮効果が働くおそれがあるという懸念なども指摘されました。
 以上のような点を踏まえまして、改正法案においては不当条項リストの規定を設けないこととしたものでございます。
#243
○東徹君 もう時間が来ましたのでこれで終わらせていただきますけれども、やはりより国民に分かりやすく説明できる制度を是非今後も検討いただきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いします。
 以上で質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。
#244
○糸数慶子君 沖縄の風、糸数慶子です。
 今回の債権法改正案については、法案提出の経緯から個別の論点、そして今後の民法改正に至るまで一通りの質問をしてまいりました。しかし、今回の改正は民法制定後百二十年を経過して初めての抜本的改正であり、改正対象が広範多岐にわたるため余り議論されていない論点も数多く残っています。本日はこれらについてお尋ねをしたいと思います。
 まず、意思能力についてお尋ねをいたします。今回、意思能力に関する規定が新設されましたが、意思能力とはどういうものなのか、お尋ねいたします。
#245
○政府参考人(小川秀樹君) 人は原則として自己の意思に基づいてのみ権利を取得し又は義務を負担するのであり、この言わば私的自治の原則は近代法の根本原理とされるわけでございます。この原理の具体的な表れとして、人が契約などの法律行為をするには行為の結果を判断するに足るだけの精神能力、すなわち意思能力を有していなければならず、意思能力を有しない者がした法律行為は無効となると考えられております。
 なお、この考え方は民法に明文の規定はございませんが、当然の前提として、判例、学説上、これまで異論なく認められてきたところでございます。
#246
○糸数慶子君 今回の改正では、意思能力がどういうものか定める定義規定は置かれていません。国民一般に分かりやすい民法という観点からは、この意思能力の定義規定を置くべきだったのではないでしょうか。定義規定を置かなかったのはなぜなのか、お尋ねいたします。
#247
○政府参考人(小川秀樹君) 意思能力につきましては、行為の結果を判断するに足るだけの精神能力をいうなどと言われてはおりますが、その具体的な内容についてはこれまでも学説上様々な見解に分かれておりました。
 そこで、改正法案の立案の過程におきましては、民法を分かりやすいものとするとの観点から、現在の裁判実務を踏まえまして意思能力の定義規定を置くことも検討の対象となりました。具体的には、裁判例の中には意思能力として要求される精神能力は具体的な法律行為ごとに異なるとの考え方を採用するものがあることを踏まえまして、このような考え方を前提とした規定を置くことが検討されました。
 しかしながら、このような考え方は現在の裁判実務において一般的であるとは必ずしも言えないと考えられるわけでございます。また、法律行為ごとに意思能力が異なるとの理解を強調いたしますと、意思能力によって無効となる事案が増大し、取引の安全が不当に害されるのではないかという懸念もございました。
 他方で、意思能力は個別具体的な法律行為の内容にかかわらず行為者ごとに一律に判断されるとする考え方もございますが、この考え方自体も裁判実務で確立しているものではなく、このような考え方を前提とした規定を置くのは相当ではないと考えられました。
 そこで、改正法案におきましては、意思能力を有しない場合の効果に関する規定を設ける、三条の二でございますが、そこの規定を設ける一方で、意思能力の定義を置かないこととし、意思能力の具体的な内容は引き続き実務の解釈、運用に委ねることとしております。
#248
○糸数慶子君 では、次に公序良俗について伺います。
 第九十条の改正によって条文上は無効となる法律行為の範囲が広がったように読めますが、そのような解釈でよいのでしょうか、お伺いします。
#249
○政府参考人(小川秀樹君) まず、今回の九十条の改正の趣旨でございますが、現行法の九十条によって無効とされるのは、公序良俗に反する事項を目的とする法律行為と規定されておりまして、その文言上は、法律行為の内容が公序良俗に反するものが対象とされております。
 しかし、判例は、例えば賭博の用に供することや賭博で負けた債務の弁済に充てるという、そういう動機の下で行われました金銭消費貸借契約のように、法律行為の内容自体は公序良俗に反するものではない事案におきましても、その動機を相手方が知っている場合には法律行為を無効としており、民法制定以来の解釈、運用を通じて、法律行為の内容だけでなく、法律行為が行われる過程その他の事情も広く考慮して無効とするか否かが判断されるようになっております。
 そこで、改正法案においては、このような裁判実務における判断の枠組みを条文上も明らかにするため、「事項を目的とする」という文言を削除し、端的に公序良俗に反する法律行為を無効とすることとしております。
 無効となる法律行為の範囲という問題ですが、このように改正法案は現状と比べて無効となる法律行為の範囲を実質的に広げるものではございませんが、裁判実務における現状の判断枠組みと一致するように文言の修正を図ったものということが言えようかと思います。
#250
○糸数慶子君 第九十条では、公の秩序又は善良の風俗に反する法律行為は無効とされています。一般条項とはいえ、法律行為の無効という効果の重大性と比べて、公の秩序又は善良の風俗に反するという要件は、これ余りにも曖昧なのではないでしょうか、改めて見解を伺います。
#251
○政府参考人(小川秀樹君) 今回の改正も、民法を国民一般に分かりやすいものとするという観点に基づくものが理由の一つでございますが、民法を国民一般に分かりやすいものとするとの観点は重要ではございますが、そのためにどのような規定を設けるのが適切であるかは、これは一概には申し上げることはできませんし、適用される規律をその細部まで明快に規定することには技術上の限界もございますので、個別に慎重に検討する必要があるということが言えようかと思います。
 そして、民法第九十条につきましては、法律行為の無効という重大な行為をもたらすもの、これは委員御指摘のとおりでございますが、その要件の具体化については、予測可能性を向上させるという指摘がある一方で、具体化したとしても、ある程度抽象的な要件とすることは避けられないものであるため、取引への萎縮効果をもたらすなどの指摘もされているところでございます。
 現に法制審議会におきましても、公序良俗違反の一つの例であるとされる暴利行為について、その明文化を図るか否かを審議いたしましたが、賛否が分かれ、改正法案には盛り込まれなかったものでございます。
 このような経緯なども踏まえまして、改正法案においても、公の秩序又は善良の風俗に反するという要件は維持することとしたものでございます。
#252
○糸数慶子君 この公序良俗又は善良の風俗という要件について、私は今内容が曖昧ではないかということをお伺いしたわけですけれど、この要件の可能な限りやはり具体化すべきではないかというふうに思います。
 また、これは先日の参考人質疑におきまして高須参考人も、こういう場合なら公序良俗違反になるというようなことの参考となるような規定があってもよいのではないかというふうな意見を述べていらっしゃいます。
 国民一般に分かりやすい民法という先ほど御答弁もございましたけれども、その観点から、確立した判例を明文化したのが今回の改正法の内容の一つであるということですが、やはり第九十条については、このような試みはなさらなかったのでしょうか。
#253
○政府参考人(小川秀樹君) 法制審議会におきましては、民法第九十条の規定の内容の全般を対象として国民一般に分かりやすいものとするという観点からその規律の具体化を図る検討を行ったことはございません。これは、民法第九十条については、公序良俗違反に当たる行為の類型としてどのようなものがあるのか、これ現時点におきましても確立した解釈があるわけではなく、規律の具体化が困難であるということによるものと考えられます。
 ただ、これに対しまして、公序良俗に反する行為の典型例の一つと言われます暴利行為につきまして、その明文化が検討されるなどの試みはございました。もっとも、無効とされるべき暴利行為の内容がこれも確立しているとは言い難い現状において、近時の裁判例をも踏まえてその要件を適切に設定することは困難でありまして、必ずしも予測可能性を確保するという目的を達成することはできない上、現時点で一定の要件を設定することで将来の議論の発展を阻害しかねないとも考えられました。
 そこで、改正法案におきましては、民法第九十条との関連での暴利行為に関する規定を設けることとはされなかったわけでございます。
#254
○糸数慶子君 四宮和夫、そして能見善久、この二人による「民法総則」には、我が国の公序良俗による司法的介入は諸外国よりも広い範囲で行われているという記述がございます。
 このように、公序良俗という抽象的な要件のままでは経済が必要以上に司法的コントロールに服することになり、例えば新規分野における私人の経済活動の予測可能性を低下させるなどの恐れもあるわけですが、この点についての御認識をお伺いいたします。
#255
○政府参考人(小川秀樹君) 民法第九十条により無効となる場合を明文化することにつきましては、私人の経済活動の予測可能性を向上させ得るとも考えられますが、逆に明文化するとしても、ある程度はやはり抽象的な要件で規定することになりますため、これに当たるかどうかについて疑念を生じ、かえって取引への萎縮効果を生じさせるなど、経済活動に悪い影響を及ぼし得るという指摘もされているところでございます。
 例えばこれ、先ほども述べましたところですが、法制審議会においても公序良俗違反と評価できる幾つかの類型の一つであります暴利行為についてその明文化が検討されたわけですが、これについては何をもって暴利行為というかを抽象的な要件で規定すると取引への萎縮効果が生ずるとして、これ、経済団体を中心に明文の規定を設けることに反対する意見もございました。
 このように、民法九十条に該当する一定の場合を明文化するに当たりましては、どのようにして適切な要件を設定するかが重要であると考えられますが、現状におきましては十分な最高裁判例の蓄積などもなく、民法第九十条の具体化については慎重に検討する必要があるのではないかというふうに考えているところでございます。
#256
○糸数慶子君 今回の民法改正、大きな目的の一つに国民一般に分かりやすい民法という、その観点から今の答弁を伺いますと、中身といいますか内容というのがどんなに角度を変えて質問しても同じような答弁しかなさらないということから考えていきますと、一部の経済界のそういう意見を聞いて、国民一般に分かりやすい民法という観点からはちょっと外れているのではないかというふうに思います。
 次に、民法に規定されている契約類型についてお尋ねいたします。
 民法第三編の債権編の第二章契約には、贈与から和解まで十三種類のいわゆる典型契約の規定があります。何度も申し上げてまいりましたが、民法制定以来百二十年が経過して、その間の社会経済情勢の変化も大きいと思いますが、今回新たな契約類型を設けることは検討されたのでしょうか、伺います。
#257
○政府参考人(小川秀樹君) 現行法には、御指摘ありましたように、売買、消費貸借などの十三種類の典型契約についての定めが置かれております。これは現行法の起草時に諸外国の法制ですとか我が国の取引の実態を勘案して、主要な契約についての規定を設けることとしたものであるというふうに言われております。
 改正法案の立案過程におきましては、現代の取引の実態を踏まえ、主として、ファイナンス・リース契約、それからライセンス契約についての規定を追加することが検討されました。また、法制審議会の初期段階におきましては、委任や請負等に該当しないサービス契約についての規定を設けるということが検討されたところでございます。
#258
○糸数慶子君 では、次に、要物契約及び諾成契約についてお尋ねをいたします。
 今回の改正で、典型契約のうち使用貸借及び寄託は、成立のために目的物の授受が必要な契約である要物契約から、当事者の合意のみで成立する契約である諾成契約へと変更されています。また、要物契約であった消費貸借について、諾成的消費貸借のその規定も新設されたため、典型契約は全て諾成契約として締結できることとなります。
 このように、今回の法改正は、要物契約をなくす、そのような方向の改正であると思いますが、これはいかなる理由によるものでしょうか、お伺いいたします。
#259
○政府参考人(小川秀樹君) 現行法の五百八十七条は消費貸借は金銭などの目的物が相手方に交付されたときに成立するとしておりまして、このように契約の成立に目的物の交付を要する契約を御指摘ありましたように要物契約といいます。しかし、金銭の借入れについて貸主と借主が合意したにもかかわらず、契約はまだ成立していないとして借主からの金銭の交付請求を貸主が拒絶することができるとするのでは、確実に融資を受けたい借主にとっては不都合でございます。このため、判例は、現行法の下でも当事者間の合意のみで貸主に目的物を貸すことを義務付ける契約をすることができるとしておりまして、このような契約は諾成的消費貸借と呼ばれております。そこで、改正法案においては、このような判例を踏まえまして、諾成的消費貸借に関する明文の規定を設けることとしております。
 また、寄託の関係で申し上げますと、現行法六百五十七条は寄託を要物契約であるとしております。しかし、寄託物の保管について寄託者と受寄者とが合意したにもかかわらず、契約はまだ成立していないとして受寄者が寄託物の引取りを拒絶することができるとするのでは、保管場所をあらかじめ確保しておきたい寄託者にとりまして不都合であります。このため、現行法の下でも当事者の合意のみで受寄者に寄託物を受け取って保管することを義務付ける契約が可能であると解されておりまして、これも諾成的寄託と呼ばれ、実務上も広く用いられているわけでございます。そこで、改正法案におきましては、寄託契約を諾成契約とすることとし、寄託は当事者の合意がある場合には寄託物の交付がなくともその効力を生ずることとしております。
 さらに、使用貸借の関係でも、五百九十三条はこれを要物契約であるとしております。しかし、目的物を無償で貸すことについて貸主と借主が合意したにもかかわらず、貸主が契約はまだ成立していないとして借主からの目的物の引渡し請求を拒絶することができるとすれば、確実に目的物を無償で借りたい借主にとって大きな不利益を生ずることになります。このため、現行法の下でも当事者の合意のみで貸主に目的物を無償で貸すことを義務付ける契約をすることができると解されておりまして、これは諾成的使用貸借と呼ばれております。そこで、改正法案では、使用貸借を諾成契約とすることとし、使用貸借は当事者の合意があれば目的物の交付がなくともその効力を生ずることとしております。
 このように、改正法案におきましては、言わば取引の実態を踏まえつつ、確立した解釈を明文化することで民法を国民に一般に分かりやすいものとするため、そういう観点から今申し上げました要物契約を諾成契約としたものでございます。
#260
○糸数慶子君 贈与契約については我が国では諾成契約とされていますが、諸外国では安易な贈与の約束を防ぐために贈与が要式行為とされている国も多いということであります。諸外国と比べた我が国の贈与契約の特徴及び贈与契約を要式行為とすることについての認識をお伺いいたします。
#261
○政府参考人(小川秀樹君) まず、我が国の贈与契約の特徴という点でございますが、贈与契約とは、当事者の一方がある財産を無償で相手方に与える意思を表示し、相手方が受諾をすることによってその効力を生ずる契約をいいまして、その無償性及び非取引行為性にその特徴があるなどと言われております。
 また、諸外国の民法では贈与を一定の要式を必要といたします要式契約としているのに対しまして、日本の民法では贈与を諾成契約としているなど、比較法的には、日本の民法は贈与の合意そのものに大きな保護を与えている点に特殊性を有していると言われております。
 我が国の民法は、贈与をもって要式行為とせず口頭をもっても有効に贈与契約が成立するものとしておりますが、書面によらない贈与については、その履行の終わった部分を除いては各当事者が解除をすることができるとされておりまして、贈与を要式行為とした場合とその効果において実質的に大きな違いはないと考えられるわけでございます。
 そのため、従来の我が国における贈与についての考え方を改めてまで贈与契約を要式行為とする必要はないものと考えているところでございます。
#262
○糸数慶子君 次に、契約の成立についてお尋ねいたします。
 まず、今回の改正で新設された第五百二十一条は契約の締結及び内容の自由についての規定ですが、この規定を新設するその趣旨をお伺いいたします。
#263
○政府参考人(小川秀樹君) 近代私法の基本原則と言われます契約自由の原則、これは、契約を締結するかしないかの自由、それから契約の内容を決定する自由、契約締結の方式の自由などをいうとされておりますが、これらの基本原則は現行民法の下では明記はされておりません。これらの基本原則は確立した法理として一般的に認められているものでありまして、民法を国民一般に分かりやすいものとするためには明文化することが望ましいと考えられます。
 具体的には、契約を締結しない自由があることなどの多くの消費者が知るべく基本的なルールが言わばより読み取りやすくなるものと考えられるわけでございます。そこで、そういった観点から、改正法案におきましてはこれらを明文化することとしております。御指摘ありましたように、五百二十一条に明文化した規定を設けておるところでございます。
#264
○糸数慶子君 同条第一項の法令に特別の定めがある場合とは具体的にどのような場合でしょうか、また、同条第二項の法令の制限とは具体的にどのようなものでしょうか、お答えください。
#265
○政府参考人(小川秀樹君) まず、法令に特別の定めがある場合についてですが、改正法案におきましては、何人も契約をするかどうかを自由に決定することができる旨の規定を新設しておりまして、これは五百二十一条の第一項です。これは契約締結の自由と呼ばれております。
 もっとも、契約締結の自由も無制限ではなく、法令上、契約の締結を義務付ける規定が設けられている場合などがあることから、こうした場合を除くという趣旨で、御指摘の「法令に特別の定めがある場合を除き、」という文言を加えております。その具体的な例ですが、例えば、水道事業者は水道法により正当な理由がなければ給水契約の申込みを拒んではならないとされておりまして、契約締結の自由が制限されておりますので、典型例として挙げることができようかと思います。
 それから、法令の制限の方の関係ですが、改正法案におきましては、契約の当事者はその内容を自由に決定することができる旨の規定を新設しており、これは契約の内容決定の自由と呼ばれております。
 もっとも、当事者の合意さえあればどのような内容であっても契約をすることができるわけではなく、法令によって制限される場合があることから、そのような制限の存在を明確化する趣旨で、御指摘の「法令の制限内」という文言を加えております。例えば、借地借家法につきまして、借地権の存続期間は三十年以上とされ、これより短い存続期間の定めは無効とされております。こういったものを例として挙げることができようかと思います。
#266
○糸数慶子君 今回の改正では隔地者間の契約の成立に第五百二十六条第一項が削除されることになりますが、その趣旨をお伺いいたします。
#267
○政府参考人(小川秀樹君) 現行法は、いわゆる隔地者に対してした意思表示について、原則としてその意思表示が相手方に到達したときに効力を生ずるものとしております。しかし、隔地者間の契約につきましては、意思表示の到達に時間が掛かりますため、早期に契約を成立させ、承諾者にその履行の準備を開始させる必要があることを考慮して、申込みをされた者が承諾の通知を発したときに契約が成立するという、いわゆる発信主義というものを採用して、その特則を設けております。これが現行法の五百二十六条一項でございます。
 もっとも、発信主義は取引の迅速性の要請は満たすわけですが、承諾の通知の発信時に契約を成立させる結果、仮に何らかの理由で承諾の通知が申込者に到達しない場合にも契約は成立し、申込者は不測の損害を被ると、こういう事態が生ずるおそれがございます。
 また、高度な通信手段が整備された現代社会におきましては、隔地者間の取引でありましても、通知が迅速、確実に相手方へ到達することが見込まれる上、当事者が迅速な契約の成立を望むのであれば電話や電子メールなどの様々な手段を用いることが可能となっていることから、あえて隔地者間であることに着目した特例を設ける必要性は乏しくなっていると考えられます。
 そこで、改正法案におきましては、隔地者間の契約の成立時期について発信主義の特則を定めました現行法五百二十六条一項を削除して、承諾の通知が申込者に到達した時点で契約が成立するということとしております。
 以上でございます。
#268
○糸数慶子君 確かに、民法制定から現在に至るまでのこの百二十年間における通信手段の発達は大変大きなものがあるわけですが、隔地者間の通信手段として想定されるものは民法制定当時と現在とではどのような違いがあるのでしょうか、改めてお尋ねいたします。
#269
○政府参考人(小川秀樹君) 民法のうち債権関係の規定につきましては、明治二十九年に制定されまして以来、約百二十年間実質的な見直しがほとんど行われておらず、おおむね制定当時の規定内容のまま現在に至っているわけでございます。
 この間における我が国の社会経済情勢は、取引量が劇的に増大するとともに、取引の内容が複雑化、高度化する一方で、情報伝達の手段が飛躍的に発展したことなど、様々な面において著しく変化しております。
 例えば、民法制定当時は情報伝達の手段としては主に郵便が想定されていたと考えられるわけですが、現在では郵便のみならず電子メールなどの様々な手段を用いることが可能となっている、これが民法制定当時と現在での通信手段における大きな違いと言えようかと思います。
#270
○糸数慶子君 隔地者間の契約の成立に関しては、二〇〇一年に成立した電子消費者契約及び電子承諾通知に関する民法の特例に関する法律、この第四条において既に、隔地者間の契約における電子承諾通知については民法第五百二十六条第一項及び第五百二十七条の規定の適用を排除して到達主義を採用しています。今回の改正によって発信主義を廃止するため、この特例法も第四条が削除され、題名も変更になります。しかし、幾ら通信手段が発達しても、いわゆる対話者間、つまり両当事者が直接相対している場合、電話で話している場合と電子メールでやり取りをする場合とは若干違いがあると思います。
 特例法制定時の国会における議論でも、サーバートラブルでメールが届かない場合は裁判によって個々の事情によって判断する旨の答弁がありました。サーバートラブルでメールが届かないことは現在でもあり得るわけですが、その場合はどのような処理になるのでしょうか、お伺いいたします。
#271
○政府参考人(小川秀樹君) 現行法は隔地者に対していたしました意思表示について、原則としてその意思表示が相手方に到達したときに効力を生ずるものとし、例外的に承諾の通知について、通知を発したときに契約が成立するという特則を設けております。これが九十七条一項と発信主義を定めました五百二十六条一項の関係でございます。
 意思表示の到達とは、意思表示が相手方の了知可能な状態に置かれることをいうとされております。ここでいう了知可能な状態とは、画一的に判断されるのではなく、個別の事案の事実関係に即して判断される一種の規範的な概念ということが言えようかと思います。
 もっとも、電子的手段による意思表示によって契約がされる場合については、現在でも御指摘ありました電子消費者契約及び電子承諾通知に関する民法の特例に関する法律によって民法の特例が設けられており、ここでは承諾の通知についても到達主義が採用されております。
 そして、その到達時期については、最終的にはこれは個別の事案ごとの判断となるわけですが、やや抽象化した事案で一例を申し上げますと、電子メールにより意思表示がされた場合には、当該電子メールが相手方の通常使用するメールサーバーの中のメールボックスに読み取り可能な状態で記録された時点であるなどと解されているものと承知しております。この解釈を前提といたしますと、サーバーのトラブルなどによって当該電子メールが相手方の通常使用するメールサーバー中のメールボックスに読み取り可能な状態で記録される前の時点では意思表示が到達したとは言えないため、その意思表示は効力を生じないことになると考えられます。
 なお、改正法案におきましては承諾の通知についてもその意思表示が相手方に到達したときに効力を生ずるものとしていることに伴いまして、整備法案におきましては先ほど申し上げました電子消費者契約及び電子承諾通知に関する民法の特例に関する法律第四条は削除することとしております。これが整備法案二百九十八条の規定でございます。
#272
○糸数慶子君 次に、法定利率について伺います。
 法定利率の変動制への移行に伴い、第四百十九条第一項、金銭債務の特則についての規定も改正されます。これは、金銭債務の不履行における損害賠償額を債務者が遅滞の責任を負った最初の時点の法定利率によって定めるというものです。
 同項ただし書では、約定利率が法定利率を超えるときは約定利率によると規定していますが、約定利率が法定利率を下回っている場合はどうなるのでしょうか、伺います。
#273
○政府参考人(小川秀樹君) 第四百十九条第一項は、金銭の給付を目的とする債務の遅延損害金の額は法定利率によって定めるが、約定利率が法定利率を超えるときは約定利率によるものとしております。したがって、御指摘にありますような約定利率が法定利率を下回っている場合の遅延損害金の額については文言上は規定をしておりません。
 もっとも、約定利率が法定利率を下回っている場合に、遅延損害金の額がその約定利率によるべきか否かにつきましては、これは判例はございませんで、また学説上も必ずしも確立した学説はなく、いまだに議論の乏しい状況にあるようでございます。そのため、御指摘の問題について確たることは申し上げにくいわけでございますが、その文言からいたしましても、約定利率が法定利率を下回っている場合に遅延損害金の額がその低い約定利率によるとの解釈が取られる可能性は低いのではないかというふうに考えております。
#274
○糸数慶子君 今回の改正では法定利率が見直され、五%から三%に下げることになりましたが、これは市場金利と乖離した法定利率を市場金利に近づける趣旨である旨の答弁があったかと思います。近年の低金利下では、約定利率として三%を下回る利率を定める場合も想定できると思いますが、そのような利率の合意は無効となるということでよろしいのでしょうか。
#275
○政府参考人(小川秀樹君) 遅延損害金の額について約定利率として定めた三%を下回る利率で算定するという合意、これにつきましては第四百十九条第一項に反し無効となるか否かという点についても、判例もなく、また学説上も確立した考え方はなく、いまだに議論の乏しい状態にあるものと承知しております。そのため、この点につきましても確たることは申し上げにくいわけですが、契約自由の原則に照らしても、そのような合意が直ちに無効とまで言うことは困難であると考えております。
 もっとも、第四百十九条第一項に反すると言うかどうかはおくとしても、そのような合意は債権者にとっては大きな不利益をもたらすものでありますので、具体的な事案ごとの判断ではありますが、そのような合意は公序良俗に反し無効とされる可能性もあるのではないかと考えられるところでございます。
#276
○糸数慶子君 現在のこの低金利下でそのような合意ができないということになりますが、それでいいのでしょうか、またこの点につきまして議論はなかったのでしょうか、お伺いいたします。
#277
○政府参考人(小川秀樹君) 先ほども申し上げましたが、そのような合意が第四百十九条第一項に反し無効となるとは、これは直ちに言うことはできないというふうに考えております。
 また、法制審議会における検討の過程においては、遅延損害金の額について約定利率として定めました三%を下回る利率で算定するとの合意が第四百十九条第一項に反し無効となるか、あるいは無効とすべきかといった議論は、この点につきましてはなかったものというふうに承知しております。
#278
○糸数慶子君 では、最後に金田大臣にお尋ねをいたします。
 三月九日のこの法務委員会で、成人年齢の十八歳引下げの民法改正案の審議が見送りになるのではないかという報道があり、事実であるかどうかお尋ねしたところ、金田大臣は、「法務省としては適切な時期に民法改正案を提出する考えであります。」と答弁をされました。四月十三日にも同じくお伺いいたしましたが、同じ答弁でございました。
 適切な時期というのはいつなんでしょうか、それは一日も早くということではなかったんでしょうか、お伺いいたします。
#279
○国務大臣(金田勝年君) 糸数委員のお尋ねにお答えをいたします。
 民法の成年年齢を十八歳に引き下げるとともに、女性の婚姻開始年齢を十八歳に引き上げる内容の民法改正法案につきましては、昨年九月に実施をいたしましたパブリックコメント手続に寄せられた御意見等を踏まえながら、現在、法案提出に向けた準備作業を進めております。
 法務省としましては、この法案の提出を後回しにしているというわけではございません。できる限り早期に国会に提出することができるように、その準備作業に全力を尽くしているところであります。
 いずれにしましても、法務省といたしましては適切な時期にこの民法改正法案を提出する考えであります。
#280
○糸数慶子君 成人年齢の引下げとともにこの提出予定だった婚姻年齢の十八歳への引上げについては、今大臣お話ございましたが、これは九六年の法制審答申にあったわけです。国連は、十八歳未満の婚姻を児童婚と指摘をし、婚姻最低年齢の引上げを求めております。婚姻年齢については与野党ともこれは異論がないはずなんですが、なぜ後回しにされるのでしょうか。
 金田大臣、改めてこの改正案をいつ提出されるか伺います。
#281
○国務大臣(金田勝年君) ただいま委員の御質問にお答えしました中にもございましたが、できる限り早期に国会に提出することができるように、その準備作業に全力を尽くしているところであります。
#282
○糸数慶子君 何度御質問申し上げましても、できるだけ早くとおっしゃるんですが、具体的にその明確な答弁が出ないのは本当に残念であります。
 やはり法務委員会というのは、人権を侵害するおそれのある共謀罪法案を優先し、人権政策を軽視する政府の在り方に、本当に問題であるということを言う場所ではないかというふうに思います。人権を所管するこの法務省が何といっても最優先に取り組むべきものは人権問題であるということを強く申し上げて、時間が参りましたので私の質問を終わりたいと思います。
 改めて大臣に御要望を申し上げたいと思いますが、先ほど何度も繰り返しておりますけれども、是非とも、この九六年の法制審からの答申もあった、そして国連の方からも指摘をされております婚姻の最低年齢の引上げを早急に議論ができる、その状況をつくっていただくようにお願いを申し上げまして、質問を終わりたいと思います。
 ありがとうございました。
#283
○山口和之君 無所属の山口和之でございます。
 質問に入る前に、小川民事局長さんがずうっと答えられていて、私たちは水があるんですけれども、バッターが交代交代で水を飲んでいるんですけど、答える方は水を飲む場所がないということなので、できればそこにコップとコースターを置いていただけたらと思います、置いてもらったらいいなと。
 今までなるべく質問がかぶらないようにしてきたところですが、今日もそうしていきたいところと思っております。
 まずは、履行の強制に関してお伺いしたいと思います。
 東京電力福島第一原発事故の除染廃棄物を保管する中間貯蔵施設に関して、福島県大熊町は、町有地に地上権を設定する方式で用地を提供する方針と聞いております。中間貯蔵施設では、最大二千二百万立方メートルの除染廃棄物を最長三十年間保管する予定とのことですが、本当に三十年で明け渡してもらえるのかが不明です。
 そこで、地上権が設定された土地にその存続期間経過後も利用者の運び込んだものが置かれ続けた場合、土地の所有権者はどのような手段で明渡し義務の履行を強制することができるのか。事実上、他の場所での保管が不可能なものの強制撤去の方法も含めて、金田大臣に伺いたいと思います。
#284
○国務大臣(金田勝年君) 山口委員からのお尋ねにお答えをいたします。
 委員お尋ねのケースにつきましては、あくまで一般論としてお答えをいたしたいと思います。
 地上権が設定されていた土地に地上権が消滅した後も地上権者であった土地利用者がその所有物を残置している場合には、例えば土地所有者は土地利用者に対して土地所有権に基づく返還請求権や妨害排除請求権に基づいて土地の明渡しや残置物の撤去を求める訴えを提起することが考えられます。
 仮に、これらの請求を許容する判決がなされ、それが確定した場合には、土地所有者はその確定判決に基づいて強制執行の申立てをすることが考えられまして、その方法としては、直接強制、代替執行及び間接強制があります。
 委員お尋ねの土地の明渡し請求等を認める確定判決に基づきます強制執行が申し立てられた場合については、その土地上に他の場所に移すことが不可能な廃棄物があるときにどのような方法で強制執行を行うことができるかについては、個別具体的な事案によりますため一概にお答えをすることは困難であると、このように受け止めております。
#285
○山口和之君 まあ大体分かりますが、はい。
 除染廃棄物は、三十年後には福島県外の最終処分場に移すということになっております。その約束が守られず、中間貯蔵施設が最終処分場にされてしまうのではないか、そんな心配をしている福島県民も少なくありません。最終処分場の選定にはもはや一刻の猶予もなく、早急に確定させることが必要であり、仮に三十年後までに最終処分場が決められない場合には強制撤去という話も出てくると思われます。そうならないことを期待しておりますので、是非とも、この件につきましても国を挙げて何とか対処していただきたいと思っております。
 それでは、今回の改正案では履行の強制に関する四百十四条が変更されているが、その趣旨は何か、何が変更しなければならない必要性があったのかを伺いたいと思います。
#286
○政府参考人(小川秀樹君) 現行法第四百十四条第一項本文におきましては、債権者は、債務者が任意に債務の履行をしないときには履行の強制を裁判所に請求することができるとされております。この規定は、債権の効力として、債権者は国家の助力を得て債権を実現することができることを定めたものと言うことができます。
 また、現行法第四百十四条第二項及び第三項には、履行の強制の具体的な方法を定めた規定も設けられております。もっとも、債務の履行を強制する具体的な方法につきましては民法のほかに民事執行法にも規定がございますので、民法と民事執行法の規定を整理し、強制執行の手続に関する規定については手続法である民事執行法に一元的に定めることとするのが合理的であると考えられます。
 そこで、改正法案におきましては、債権者は、債務者が任意に債務を履行しないときには履行の強制を裁判所に請求することができるとする現行法四百十四条第一項の規定を基本的に維持した上で、履行の強制の手続に関する同条第二項と第三項につきましては、現行法の規定を削除し、これは民事執行法の方で、民事執行法において規定することとしております。
 このように、民法や民事執行法に分かれる関係規定を合理的で分かりやすく配置し直すことで法律の理解を容易にするというメリットがあるのではないかというふうに考えているところでございます。
#287
○山口和之君 次に、直接強制とは何か、また、直接強制について債務の性質がこれを許さないときとはどのような場合なのかを伺いたいと思います。
#288
○政府参考人(小川秀樹君) 直接強制とは、執行機関が直接に執行の目的たる利益状態を実現する方法をいいます。例えば、動産の引渡しあるいは不動産の明渡しを目的とする債権につき、債務者の占有を解いて債権者の占有に移すこと、これが直接強制に該当する例でございます。
 また、債務の性質がこれを許さないときとは、債務の性質により国家の助力を得て債権を実現することができないときを意味するものであります。例えば、画家が絵を描く債務など、債務者が自由な意思で創造的活動を行うことが債務の本旨に従った履行の前提となっているような場合には、これらの直接強制はすることができない場合と解されております。
#289
○山口和之君 次に、代替執行とは何か、また、代替執行について債務の性質がこれを許さないときとはどのような場合なのかを伺いたいと思います。
#290
○政府参考人(小川秀樹君) 代替執行とは、代替的作為義務、これは建築物の取壊しなどが例となりますが、代替的作為債務などにつきまして、債権者が自ら又は第三者により作為内容を実現できる旨の授権及びその費用を債務者から取り立て得る旨の授権を執行裁判所より受けて、これに基づき債権者又は第三者が権利内容を実現し、これに要した費用を債務者から取り立てると、こういう方法でございます。
 また、債務の性質がこれを許さないときというのは、これも債務の性質により国家の助力を得て債権を実現することが許されないときを意味するものでございます。例えば、これも先ほど申し上げましたが、画家が絵を描く債務など、債務者が自由な意思で創造的活動を行うことが債務の本旨に従った履行の前提となっているような場合には、代替執行もすることができないと解されております。
#291
○山口和之君 次に、間接強制とは何か、そしてまた、間接強制について債務の性質がこれを許さないときとはどのような場合なのか、伺いたいと思います。
#292
○政府参考人(小川秀樹君) 間接強制とは、債務者の不履行について、執行裁判所が金銭の支払を命ずることによって債務者に心理的な強制を与え、債務者による履行を強いる方法であります。
 また、債務の性質がこれを許さないときとは、債務の性質により国家の助力を得て債権を実現することが許されないときを意味するものであります。これは以前述べました二つと同様です。例えば、画家が絵を描く債務のほかにも、間接強制の場合には、夫婦が同居すべき義務については間接強制をすることができない例として解されているところでございます。
#293
○山口和之君 次に、その他の方法による履行の強制とありますが、それは具体的に何を想定しているのか、伺いたいと思います。
#294
○政府参考人(小川秀樹君) 御指摘ありましたその他の方法による履行の強制としては、意思表示をすべきことを債務者に命ずる判決などがある場合について、その確定等のときに意思表示をしたものとみなすという、意思表示の擬制の方法などが想定されております。
#295
○山口和之君 約束が果たされず債務が履行されない場合、損害賠償というお金の問題で済ませたいという方もいらっしゃいますが、わざわざ契約を締結したのだから、何としても履行してもらいたいと考える人も少なくないと思います。そのことで四百十四条はこのような希望をかなえるための重要な条文なので、今後適切に運用されることを期待しております。
 次に、定型契約について伺いたいと思います。
 売買契約を定義している民法五百五十五条は、「売買は、当事者の一方がある財産権を相手方に移転することを約し、相手方がこれに対してその代金を支払うことを約することによって、その効力を生ずる。」と定めています。
 「我妻・有泉コンメンタール民法」によれば、代金とは金銭に限られるものであり、金銭以外のもので支払われる約束であれば、それは売買ではなく交換であるとされております。
 近年、金銭以外の決済方法でビットコインというものが用いられておりますが、ビットコインを用いた取引は売買契約なのか交換契約なのか、伺いたいと思います。
#296
○政府参考人(小川秀樹君) 売買と交換とを区別する基準は、当事者の一方が交付する目的物が金銭であるか、金銭の所有権以外の財産権であるかという点にございます。そして、金銭につきましては、民法においては、四百二条に言う通貨、すなわち強制通用力を持つものを指し、それ以外のものは、金銭類似の機能を有するものであっても金銭そのものではないことが前提とされていると考えられます。このような考え方を前提といたしますと、金銭ではないビットコインは、売買契約における代金となり得ないということになりますため、交換契約とも考えられます。
 もっとも、ビットコインを対価とする契約については、ビットコインの移転に伴う手続の履行をも負担するなどの特色があると考えられますことから、これ売買契約でも交換契約でもない、非典型契約、いわゆる無名契約であると解する余地があるとも考えられます。
 さらに、ビットコインを決済方法として用いる取引において売買契約か交換契約かの区別が問題となり得る具体的な事例を想定してみますと、例えば、ビットコインを用いた決済をすることができる店舗において、客が一万円の商品を購入する際にビットコインを用いて決済したという事案を挙げることができます。このような事案においては、当事者間において、その商品に関する売買契約を締結した上で、代金の支払に関してビットコインによる代物弁済の合意をしていると解する余地もあるものと考えられます。
 以上でございます。
#297
○山口和之君 また、近年、マイルやポイントを用いた取引も多く行われておりますが、それらを用いた取引は売買契約なのか交換契約なのか、お伺いしたいと思います。
#298
○政府参考人(小川秀樹君) 先ほど申し上げました、金銭が民法においては四百二条に言う通貨、すなわち強制通用力を持つものを指し、それ以外のものは金銭類似の機能を有するものであっても金銭そのものではないという考え方、これを前提といたしますと、金銭ではないマイルやポイントにつきましても、売買契約における代金となり得ないということになりますため、これを直接の対価とする契約が締結されました場合には交換契約となるとも考えられます。
 もっとも、マイルやポイントについては、個人が直接これを第三者に移転することが許容されていないことが多いものとも考えられますため、マイルやポイント自体を対価とする契約は実際には存在しないものとも考えられます。
 また、例えばマイルやポイントを発行している企業の商品を購入する際にマイルやポイントを用いて決済したという事案におきましては、当事者間において、その商品に関する売買契約の代金額に関してはマイルやポイントに相当する値引きをする合意をしていると解する余地があるものとも考えられます。
 更に申しますと、例えばマイルやポイントを発行している企業以外の企業の店舗で商品を購入する際にマイルやポイントを用いて決済したという事案では、当事者間において、その商品に関する売買契約を締結した上で、代金の支払に関してマイルやポイントによる代物弁済の合意をしていると解する余地があるものとも考えられます。
 以上でございます。
#299
○山口和之君 ある取引が売買契約とされた場合と交換契約とされた場合とでどのような違いが生じるのか、そもそも売買契約と交換契約を区別する実益はどこにあるのか、教えていただきたいと思います。
#300
○政府参考人(小川秀樹君) 売買契約と交換契約との関係でございますが、民法は売買について詳細な規定を置いておりますが、これらの売買に関する規定は、五百五十九条によりまして売買以外の有償契約に原則として準用されております。したがいまして、基本的には同様の規律が適用されるということになります。
 もっとも、ごく細かに違いを考えてみますと、例えばということになりますが、AとBとがそれぞれの有する不可分な財産を交換する旨を約した事案において、AがBに対して給付した財産が契約の内容に適合しないものであった場合に、Bは、五百五十九条において準用する五百六十三条に基づき売買の代金減額請求に相当する請求をすることができないとの違いが生じます。これは、交換契約においては代金が存在せず、売買契約であれば、代金に相当するものが不可分であればそのものの一部を給付するということもできないため、これによるものでございます。
 このように、売買契約においては代金があり、これは可分であるのに対しまして、交換契約においては不可分な財産が給付されることもあることから、それぞれの契約を一応区別する実益はあると考えられますが、多くの場合につきましては両者を区別して議論する実益には乏しいのではないかと考えられるところでございます。
#301
○山口和之君 次に、近年、レンタルオフィスと呼ばれる契約が増えております。オフィスを提供する側の説明では、サービスの利用契約若しくは施設利用契約であって、賃貸借契約ではないと言われていることが多いようであります。
 そもそも賃貸借契約の要素とは何か、レンタルオフィスの契約が賃貸借契約に当たらない場合とはどのような場合なのか、教えていただきたいと思います。
#302
○政府参考人(小川秀樹君) まず、賃貸借契約の要素ですが、賃貸借契約は現行法の条文上、当事者の一方、これが賃貸人になりますけれど、賃貸人がある物の使用及び収益を相手方、つまり賃借人にさせることと、賃借人がこれに対して賃料を支払うことを約することによって成立するとされております。
 もっとも、賃貸借契約が終了したときに賃借人が目的物を返還する義務を負うことも賃貸借契約の本質的な要素であることから、改正法案では、引渡しを受けた物を契約が終了したときに賃借人が賃貸人に返還することを約すること、このことも賃貸借契約の成立要件として明記しております。
 レンタルオフィスが賃貸借に当たるかどうかという点でございますが、レンタルオフィス契約が賃貸借契約に当たるかどうかを判断するに当たりましては、レンタルオフィスの利用者が対象物につき使用収益期間を有しているかが重要と考えられます。
 例えば、利用者がオフィスのスペースなどを独占的に使用するのではなく、その空間を多数の第三者と共用しているといったケースでは、物の使用収益権を有しているとは判断されず、賃貸借契約に当たらないと認定されることがあるものと考えております。
#303
○山口和之君 レンタルオフィス契約では、利用者の支払が滞った場合に契約者の入室を認めないといった措置がとられていることが多いようです。このような措置は賃貸借契約においては違法な自力救済とされることが多いが、何か問題はないのか、また、利用者が物権的返還請求権を主張してオフィス内の物の返還を求めた場合にオフィス提供側がそれを拒むことはできるのかを伺いたいと思います。
#304
○政府参考人(小川秀樹君) まず、一般的に申しますと、例えば賃貸借契約において賃借人による賃料の支払が滞った場合にその入室を認めないといった対抗措置をとること、すなわち、いわゆる自力救済ですが、この自力救済を行うことは判例では原則として認められておりません。
 他方で、賃貸借契約において期限どおりに支払がされない場合には、賃料の支払がされるまで入室を禁じたり、室内の物品の返還を拒むことができるとする旨の特約を設けること、これは一般論としては可能でございます。
 もっとも、当該契約の性質や内容、当事者間の関係など個別の事情によりましては、これらの特約が公序良俗に反する、権利の濫用に当たるといったことはあり得るところだというふうに考えております。
#305
○山口和之君 民法には典型契約と呼ばれる十三の契約がありますが、これらだけで現在の取引を規律することはできているのかは疑問があります。
 法制審議会では新しい契約類型の追加等に関してどのような議論が行われたのか、伺いたいと思います。
#306
○政府参考人(小川秀樹君) 現行法上は売買、消費貸借などの十三種類の典型契約についての定めが置かれております。これは、現行法の起草時に、諸外国の法制や我が国の取引の実態を勘案して、主要な契約についての規定を設けることとしたものというふうに言われております。
 改正法案の立案過程におきましては、現代の取引の実態を踏まえ、主としてファイナンスリース契約とライセンス契約についての規定を追加することが検討されました。
 もっとも、ファイナンスリース契約についての規定を設けることに対しましては、ファイナンスリース契約が税務や会計の影響によって契約内容が変わり得るものであり、実態と整合的な規定を基本法である民法に設けることは困難であると考えられ、リース会社が担保責任を負わない旨の規定などが設けられることによってユーザーの保護に欠ける事態が生ずることも懸念されたところでございます。
 また、ライセンス契約についての規定を設けることに対しては、著作権や商標など様々なライセンスの対象を想定して共通の規定を設けることは困難であると考えられた上、主として事業者間で締結される契約でありますため、民法に設けるのが相当かについては疑問を呈する意見が少なくなかったという状況であります。
 このような経緯などから、改正法案におきましては、ファイナンスリース契約及びライセンス契約に関する規定を設けることはいたしませんでした。
 以上のほか、法制審議会におきましては、当初、委任や請負などに該当しないサービス契約についての規定を設けることも検討されましたが、多種多様なサービス契約に対応する規定を設けることは困難であるとの意見があったことなどから規定を設けることは見送られておりまして、これらについては引き続き個別の事案に応じた対応に委ねることとしております。
#307
○山口和之君 百二十年前とは社会経済状況が大きく変わっております。サービス給付を目的とする契約の中には十三の典型契約では対応困難なものがあると思います。今後、そのような新しい契約をどう取り扱うかについても立法上の問題としてしっかりと検討していく必要があると考えます。
 次に、分かりやすい民法ということで質問させていただきます。
 分かりやすい民法の実現が改正の目的とされておりますが、パンデクテン方式を取っている以上は一般国民に分かりやすくはならないという意見もあります。
 パンデクテン方式とは何か、また、なぜ日本の民法典でそのような方式が取られているのか、パンデクテン方式以外の民法典の方式にはどのようなものがあり、それが採用されなかった理由は何かも踏まえて、お答えをお願いします。
#308
○政府参考人(小川秀樹君) 御指摘ありましたパンデクテン方式とは、共通に適用される一般的な規定を冒頭に配置し、個別の法律関係についてはその後に規定するという構成でありまして、我が国の民法はこの方式を採用しております。
 具体的には、我が国の民法におきましては、第一編総則、第二編物権、第三編債権、第四編親族及び第五編相続の全五編で構成されておりまして、冒頭の第一編には第二編以下に共通の事項が規定されております。また、第二編から第五編までの中には、これもそれぞれ冒頭に総則の章が置かれておりまして、それに続く各章に共通の事項が規定されております。
 パンデクテン方式とは異なる方式としては、ユスティニアヌス方式あるいはインスティトゥティオネス方式と呼ばれるものがあり、この方式では人、物、債務に分けて規定するという構成となります。例えばフランスの民法におきましては、第一編人、第二編財産及び所有権の様々な変容、第三編所有権を取得する様々な仕方といいました全三編で構成されておりました。我が国でも、現行の民法典の前に、成立はいたしましたものの施行されなかったいわゆる旧民法では基本的にこの方式を採用しておりました。これは、旧民法がフランスから来られたボアソナードによって起草されたためでございます。
 なお、我が国の民法でパンデクテン方式が採用されました理由については、これは必ずしも明らかではございませんが、制定当時のドイツ民法草案がパンデクテン方式であることに影響を受けたためなどと言われているものと承知しております。
#309
○山口和之君 今回の法改正において、このパンデクテン方式の見直しについてどのような議論が行われたのか、伺いたいと思います。
#310
○政府参考人(小川秀樹君) 法制審議会における審議の過程では、規定の配置について、法律行為の規定を第三編債権に置くべきであるという考え方の当否を始め、幾つかの考え方について議論されましたが、この議論はいずれも今回の改正が民法のうち債権関係の規定を対象とするものであったことなどから、パンデクテン方式自体を見直すものではなく、現行のパンデクテン方式による編別構成を基本的には維持することを前提としたものでございます。
 なお、パンデクテン方式を見直すこととした場合には、規定の配列が全般的に変わることとなるため民法の条文番号が全く新たなものとなり、実務への影響が極めて大きなものとなってしまう懸念がありまして、この点からも相当ではないと考えられるわけでございます。
#311
○山口和之君 通常の条文は法律要件と法律効果が具体的で分かりやすくなっております。しかし、一般条項と呼ばれる条文は法律要件と法律効果が抽象的で分かりにくい。一般条項はどのような役割があるのか、その意義について伺いたいと思います。
#312
○政府参考人(小川秀樹君) 一般条項とは、法律行為の要件や権利の行使方法などについて抽象的、一般的概念を用いて定めた規定をいうなどとされ、例えば民法では、信義誠実の原則や権利濫用禁止の原則を定めました第一条、公序良俗に反する法律行為を無効とする第九十条がこれに当たります。
 このような一般条項は、その適用範囲が極めて広範なものとなりますが、そのため、個別の事案においてある個別の規定を型どおりに適用したのでは不当な結論となる場合に、一般条項を適用することで不当な結論を回避し、柔軟で妥当な解決を可能とするという機能を果たすものということができると考えられます。
#313
○山口和之君 一般条項は条文を読んだだけでは何の規定をしているか分からず、解釈の指針が必要であります。例えば一条二項がそうであると思います。信義誠実の原則とはどのような要件を満たした場合にどのような効果をもたらすのか、御説明願いたいと思います。
#314
○政府参考人(小川秀樹君) 信義誠実の原則とは、社会共同生活の一員として互いに相手の信頼を裏切らないように誠意を持って行動することを要求するルールのことをいうなどとされております。
 信義誠実の原則は、権利の行使及び義務の履行全般に関する指導原理でありまして、その要件及び効果は具体的な適用場面ごとに異なるものでありますため、一般的に御説明することは困難でありますが、例えば契約条項が一方の当事者に不当に不利益であるような場合に、その契約条項の効力を制限するといった形で適用されたり、使用者が被用者の不法行為によって損害を被った被害者に対し損害を賠償したような場合に、使用者から被用者に対する求償権の行使を制限したりするといった形で適用されております。
#315
○山口和之君 一条三項の権利濫用とは、どのような要件を満たした場合にどのような効果をもたらすのかも御説明願います。
#316
○政府参考人(小川秀樹君) 権利濫用とは、一般に、形式上は権利行使としての外形を備えるが、その具体的な状況と実際の結果に照らし、その権利の本来の目的及び内容を逸脱するため、実質的には権利の行使として許容することができないことをいうなどとされております。
 そして、権利濫用と認められるか否かは、主観的要素と客観的要素を考慮して判断されると言われております。主観的要素としては、その権利行使が権利者に何らの利益ももたらさないのに、ただ相手方を害する目的のみでされたか否かなどが問題となります。また、客観的要素としては、権利者個人の利益と相手方又は社会全体に及ぼす害悪との比較考量がされることになります。
 権利濫用と認められる場合には、その権利行使の効果が生じないことになります。また、権利濫用と認められる場合にその行為によって相手方の利益を害している場合には、不法行為に基づく損害賠償責任が生じ得るということでございます。
#317
○山口和之君 なかなか休む間もなく、済みません。
 契約の自由の原則とは何かについても伺いたいと思います。
#318
○政府参考人(小川秀樹君) 契約自由の原則は、近代私法の基本原則と言われております。具体的には、契約の相手方の選択を含めた契約を締結し又は締結しない自由、契約の内容を決定する自由、書面でするか口頭でするかなどの契約締結の方式の自由などがその内容であると言われております。
 これらの基本原則は確立した法理として一般的に認められているものでありまして、民法を国民一般に分かりやすいものとするためには明文化することが望ましいため、改正法案におきましてこれらを明文化することといたしております。
#319
○山口和之君 民法の条文の中には任意規定と強制規定があります。契約自由の原則があるとはいっても、強行規定に違反する契約は無効となります。そのため、どの条文が任意規定でどの条文が強行規定かは非常に重要であるが、国民は何を基準に判断すればよいのか、教えていただきたいと思います。
#320
○政府参考人(小川秀樹君) 法令の規定のうち、当事者の意思いかんにかかわらず適用されるものを強行規定といい、当事者間の特約が優先し、当該規定と抵触する特約がない場合に適用されるものを任意規定と申します。
 ある法規がそのいずれであるかにつきましては、条文に別段の意思表示がないときはとある場合のように、任意規定であることが形式上明らかであることもございますが、一般的にはその条文の文言から形式的に区別がされるものではなく、その法規の趣旨などから具体的に判断することになると言われております。
 また、ある条文が強行規定と言われる場合にも、例えば一方当事者に不利な場合にのみ強行規定として扱われるといったこともあり得るため、これを一概に示すことには困難も伴うものでございます。
 もっとも、改正法案では、事業のために負担した貸金等債務を主債務とする保証契約については公証人による意思確認手続を経なければ無効とする規定を置いておりますが、この規定は保証人保護を図るものであり、当事者の意思によってそのような確認手続を省略することはできず、法務省としてもこれは強行規定であるというふうに理解しております。
 したがいまして、改正法案における規定が強行規定であるのか任意規定であるのかについては、先ほどの規定のように明瞭に強行規定というべき規定については積極的に強行規定であることを含めた周知を図ることが適切であると考えられますし、それ以外の規定についてもその判断の根拠となる規定の趣旨の周知が重要でありますことから、国民各層に対しまして効果的な周知活動を行ってまいりたいと考えております。
#321
○山口和之君 いろいろ質問してきましたけれども、分かりやすい民法にはまだまだ分かりにくいところがあるというのが率直な感想です。この点は今後とも改善していく必要があると思います。
 最後に大臣にお伺いしたいんですが、今回の法改正で社会経済状況の変化への対応が大きく前進するが、こちらの点も課題が山積みだと思います。参考人の意見にもあったとおり、民法は私法の一般法であり、生活者同士の関係を規律する最も重要な法であります。絶えずバージョンアップが必要であるが、金田大臣は本法律成立後に着手すべき優先順位の高い民法上の問題は何だというふうに考えておられるか、民法をより良いものにしていくための御決意を伺いたいと思います。
#322
○国務大臣(金田勝年君) 山口委員からの御質問にお答えをいたします。
 民法の各規定は、国民生活を支える最も基本的な法的インフラであるということ、そして、広く国民一般に適用されるものであるということ、非常に申し上げるまでもありません。このような性格を持つ民法の規定につきまして、社会経済の変化に適切に対応させていくことは極めて重要である、このように考えております。
 その中でも優先順位の高いものとして、例えば、先ほどの質問にも出ておりましたが、民法の成年年齢を十八歳に引き下げるとともに女性の婚姻年齢を十八歳に引き上げる内容の民法改正案について、現在、法案提出に向けた準備作業を進めているところでありますし、適切な時期に法案を提出する考えであります。
 また、相続法制の分野につきましては、高齢化社会の進展や家族の在り方に関します国民意識の変化等の社会情勢に鑑み、法制審議会民法(相続関係)部会において、平成二十七年四月から調査、審議が進められているところであります。
 これらの事項を含めて、今後とも、民法を社会経済の変化に対応させてより適切なものとするために、具体的な改正の必要性を見極めながら見直しを検討してまいる所存であります。
#323
○山口和之君 今回の改正は百二十年越しの大改正です。これで終わりということはないと思います。引き続き、民法をより良いものにする努力が不可欠であると思います。法改正が施行されれば国民の暮らしに大きな影響を及ぼします。円滑な改正となるよう、改正内容についての周知徹底についても力を入れていただきたいと思います。
 以上で終わります。
    ─────────────
#324
○委員長(秋野公造君) この際、委員の異動について御報告いたします。
 本日、牧野たかお君が委員を辞任され、その補欠として宮本周司君が選任されました。
 暫時休憩いたします。
   午後四時五十七分休憩
     ─────・─────
   午後五時三分開会
#325
○委員長(秋野公造君) ただいまから法務委員会を再開いたします。
 休憩前に引き続き、民法の一部を改正する法律案及び民法の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案の両案を一括して議題といたします。
 他に御発言もないようですから、両案に対する質疑は終局したものと認めます。
 これより両案について討論に入ります。
 御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。
#326
○小川敏夫君 民進党・新緑風会の小川敏夫でございます。
 本法案につきまして、反対の立場で意見を述べさせていただきます。
 本法案、民法、我が国の私法取引の基本法でございます。このような重要な法案につきまして百二十年ぶりの改正ということでございまして、私としまして、十分な議論を経て、そして国会で一致してこうした法案を成立させるということが望ましいというふうに思っておるところでございますが、審議も不十分な中で、しかしどうしても賛成できないという部分があることは大変残念に思っております。
 以下、反対とする理由の要点、三点だけ述べさせていただきます。
 一点は、保証の点でございます。
 やはり、事業主に、主債務者、事業主に対する個人保証、公証人の面前でのその保証の意思の聴取ということも、一歩前向きであることは認めますが、しかし、やはり基本的にはそれを禁止するということによって抜本的な解決が望ましいものでありまして、大変に中途半端なものでございまして、悲惨な保証人の被害というものを完全には防止できないということでありまして、大変不十分というものでありますので、残念なことでございます。
 二点目は、消費貸借の期日前返済、繰上げ返済の点でございます。
 やはり多くの国民の認識は、繰上げ返済をすれば、その時点の残元本を支払えばこれで債務は終わるというのが国民の多くの認識であるというふうに思っております。私の認識では、そうした多くの国民がそのように思って実際に取引が運用されているということを鑑みれば、もう慣習法に近いほどの位置付けがあるのではないかというふうにも思いますが、そうした中で、今回は、特に合意がなくても法律上当然に損害が発生するという明文の規定を殊更置く必要がどこまであったのか。国民の認識に反するようなそうした規定が置かれたということはとても容認できないものでございまして、その点についても反対させていただく所存でございます。
 最後に、新たに採用いたしました約款でございます。
 約款の中で、約款で取引するということを明示すれば約款の詳細については消費者に説明しなくてもいいというような形になっておりますが、確かに様々なそうした取引形態の中には逐一消費者に約款の中身まで説明する必要がないという取引があることは十分認めておるわけでございますが、しかし、だからといって、全ての取引におきまして約款の中身を説明する必要がない、事業者が消費者に説明することがないという、そうした一律必要がないという規定の仕方は行き過ぎではないかというふうに思っております。
 事業の形態によりましては、十分な内容を消費者が認知しないまま不利益な規定を、約款があるということでそうした状況に置かれてしまうということで消費者の被害が生ずるのではないかというふうに思いますと、約款のこの導入の在り方はやはりまだ議論が不十分だったというふうに思っております。
 こうした観点から、大変この基本法という位置付けに反対するというのは残念でありますが、しかし反対いたします。
#327
○東徹君 日本維新の会の東徹です。
 本日の議題であります民法の一部を改正する法律案及び民法の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案について、賛成の立場から討論をいたします。
 我が国の民法は、一八九六年、明治二十九年に制定されて以来百二十年余りを経過して、ようやくその債権法部分について改正がなされることとなりました。民法を、社会経済情勢の変化に対応するとともに、国民一般に分かりやすいものとすることは重要であり、今回の改正案には、不十分なところもあるものの、おおむね賛同できるところが多いと考えます。
 本委員会でも多く議論された事業用貸金債務の第三者保証については、保証契約に先立って公証人による公正証書の作成が必要とされ、保証人になろうとする者が保証に関わるリスクを把握できるような仕組みが導入されようとしています。しかしながら、その例外として、債務者の配偶者等には公正証書の作成が不要とされており、頼まれて断り切れないなど、情義に基づく第三者保証をなくすことはできないものとなっております。
 また、このように重要な役割を担う公証人は、実質的には公務員であるとされながら、公証役場ごとの決算書も作成されず、また、手数料の根拠も費用から計算されない非常に曖昧なものとなっていることから、まさに公証人は高額の収入が保障されている法務省や裁判所OBの天下り先になっています。法務省は、公証人は公募により適切に採用されていると言いますが、特に法曹有資格者について、法務省現役幹部による面接だけでほとんどがそのまま採用されており、形だけの公募となっています。
 国民から支払われる手数料で成り立っている公証制度は、国民から制度自体に疑念を持たれないよう公証制度の透明化を図るべきであり、公証役場ごとの決算書の公表のほか、手数料根拠の開示や、公証人の公募の在り方の見直しは必要不可欠であります。
 以上、公証人制度の全般の見直しが可及的速やかに行われるべきであることを申し上げ、賛成の討論といたします。
#328
○委員長(秋野公造君) 他に御意見もないようですから、討論は終局したものと認めます。
 これより採決に入ります。
 まず、民法の一部を改正する法律案について採決を行います。
 本案に賛成の方の挙手を願います。
   〔賛成者挙手〕
#329
○委員長(秋野公造君) 多数と認めます。よって、本案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
 この際、真山勇一君から発言を求められておりますので、これを許します。真山勇一君。
#330
○真山勇一君 私は、ただいま可決されました民法の一部を改正する法律案に対し、自由民主党・こころ、民進党・新緑風会、公明党、日本共産党及び沖縄の風の各派並びに各派に属しない議員山口和之君の共同提案による附帯決議案を提出いたします。
 案文を朗読いたします。
    民法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)
  政府は、本法の施行に当たり、次の事項について格段の配慮をすべきである。
 一 情報通信技術の発達や高齢化の進展を始めとした社会経済状況の変化による契約被害が増加している状況を踏まえ、他人の窮迫、軽率又は無経験を利用し、著しく過当な利益を獲得することを目的とする法律行為、いわゆる「暴利行為」は公序良俗に反し無効であると規定することについて、本法施行後の状況を勘案し、必要に応じ対応を検討すること。
 二 職業別の短期消滅時効等を廃止することに伴い、書面によらない契約により生じた少額債権に係る消滅時効について、本法施行後の状況を勘案し、必要に応じ対応を検討すること。
 三 法定利率が変動した場合における変動後の法定利率の周知方法について、本法施行後の状況を勘案し、必要に応じた対応を検討すること。
 四 中間利息控除に用いる利率の在り方について、本法施行後の市中金利の動向等を勘案し、必要に応じ対応を検討すること。
 五 個人保証人の保護の観点から、以下の取組を行うこと。
  1 いわゆる経営者等以外の第三者による保証契約について、公証人による保証人になろうとする者の意思確認の手続を求めることとした趣旨を踏まえ、保証契約における軽率性や情義性を排除することができるよう、公証人に対しその趣旨の周知徹底を図るとともに、契約締結時の情報提供義務を実効的なものとする観点から、保証意思宣明公正証書に記載すること等が適切な事項についての実務上の対応について検討すること。
  2 保証意思宣明公正証書に執行認諾文言を付し、執行証書とすることはできないことについて、公証人に対し十分に注意するよう周知徹底するよう努めること。
  3 個人保証の制限に関する規定の適用が除外されるいわゆる経営者等のうち、代表権のない取締役等及び「主たる債務者が行う事業に現に従事している主たる債務者の配偶者」については、本法施行後の状況を勘案し、必要に応じ対応を検討すること。
  4 我が国社会において、個人保証に依存し過ぎない融資慣行の確立は極めて重要なものであることを踏まえ、個人保証の一部について禁止をする、保証人の責任制限の明文化をする等の方策を含め、事業用融資に係る保証の在り方について、本法施行後の状況を勘案し、必要に応じ対応を検討すること。
 六 譲渡禁止特約付債権の譲渡を認めることについては、資金調達の拡充にはつながらないのではないかという懸念や、想定外の結果が生じ得る可能性があることを踏まえ、更に幅広い議論を行い、懸念等を解消するよう努めること。
 七 定型約款について、以下の事項について留意すること。
  1 定型約款に関する規定のうち、いわゆる不当条項及び不意打ち条項の規制の在り方について、本法施行後の取引の実情を勘案し、消費者保護の観点を踏まえ、必要に応じ対応を検討すること。
  2 定型約款準備者が定型約款における契約条項を変更することができる場合の合理性の要件について、取引の実情を勘案し、消費者保護の観点を踏まえ、適切に解釈、運用されるよう努めること。
 八 諾成的消費貸借における交付前解除又は消費貸借における期限前弁済の際に損害賠償請求をすることができる旨の規定は、損害が現実に認められる場合についての規定であるところ、金銭消費貸借を業として行う者については、資金を他へ転用する可能性が高いことを踏まえれば、基本的に損害は発生し難いと考えられるから、その適用場面は限定的であることを、弱者が不当に被害を受けることを防止する観点から、借手側への手厚い周知はもちろん、貸手側にも十分に周知徹底を図ること。
 九 諾成的消費貸借における交付前解除又は消費貸借における期限前弁済の際に損害賠償請求をすることができる旨の規定については、本法施行後の状況を踏まえ、必要に応じ対応を検討すること。
 十 消滅時効制度の見直し、法定利率の引下げ、定型約款規定の創設、また、個人保証契約に係る実務の大幅な変更など、今回の改正が、国民各層のあらゆる場面と密接に関連し、重大な影響を及ぼすものであることから、国民全般、事業者、各種関係公的機関、各種の裁判外紛争処理機関及び各種関係団体に早期に浸透するよう、積極的かつ細やかな広報活動を行い、その周知徹底に努めること。
 十一 公証人の果たす役割が今後更に重要となることに鑑み、本法施行後の状況も踏まえつつ、公証人及び公証役場の透明化及び配置の適正化、公証役場の経営状況の把握、民間等多様な人材の登用等、公証制度が国民に更に身近で利用しやすいものとなるよう努めること。
 十二 消費者契約法その他の消費者保護に関する法律について検討を加え、その結果に基づいて所要の措置を講ずること。
   右決議する。
 大変長いんですが、以上でございます。
 何とぞ委員各位の御賛同をお願いいたします。
#331
○委員長(秋野公造君) ただいま真山君から提出されました附帯決議案を議題とし、採決を行います。
 本附帯決議案に賛成の方の挙手を願います。
   〔賛成者挙手〕
#332
○委員長(秋野公造君) 多数と認めます。よって、真山君提出の附帯決議案は多数をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。
 ただいまの決議に対し、金田法務大臣から発言を求められておりますので、この際、これを許します。金田法務大臣。
#333
○国務大臣(金田勝年君) ただいま可決されました民法の一部を改正する法律案に対する附帯決議につきましては、その趣旨を踏まえ、適切に対処をしてまいりたいと存じます。
#334
○委員長(秋野公造君) 次に、民法の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案について採決を行います。
 本案に賛成の方の挙手を願います。
   〔賛成者挙手〕
#335
○委員長(秋野公造君) 多数と認めます。よって、本案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
 なお、両案の審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#336
○委員長(秋野公造君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後五時十八分散会
ソース: 国立国会図書館
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