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2017/06/13 第193回国会 参議院 参議院会議録情報 第193回国会 法務委員会 第18号
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2017/06/13 第193回国会 参議院

参議院会議録情報 第193回国会 法務委員会 第18号

#1
第193回国会 法務委員会 第18号
平成二十九年六月十三日(火曜日)
   午前十時二分開会
    ─────────────
   委員の異動
 六月九日
    辞任         補欠選任
     山添  拓君     仁比 聡平君
 六月十二日
    辞任         補欠選任
     牧野たかお君    渡辺美知太郎君
     仁比 聡平君     山添  拓君
 六月十三日
    辞任         補欠選任
     小川 敏夫君     福山 哲郎君
     山添  拓君     仁比 聡平君
    ─────────────
  出席者は左のとおり。
    委員長         秋野 公造君
    理 事
                西田 昌司君
                山下 雄平君
                真山 勇一君
               佐々木さやか君
    委 員
                猪口 邦子君
                中泉 松司君
                古川 俊治君
                丸山 和也君
                元榮太一郎君
                柳本 卓治君
               渡辺美知太郎君
                有田 芳生君
                小川 敏夫君
                福山 哲郎君
                仁比 聡平君
                山添  拓君
                東   徹君
                糸数 慶子君
                山口 和之君
   国務大臣
       法務大臣     金田 勝年君
   内閣官房副長官
       内閣官房副長官  野上浩太郎君
   副大臣
       法務副大臣    盛山 正仁君
       外務副大臣    薗浦健太郎君
   大臣政務官
       法務大臣政務官  井野 俊郎君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        青木勢津子君
   政府参考人
       警察庁長官官房
       審議官      高木 勇人君
       法務省刑事局長  林  眞琴君
       法務省矯正局長  富山  聡君
       外務大臣官房審
       議官       水嶋 光一君
       外務大臣官房審
       議官       相木 俊宏君
       外務大臣官房参
       事官       飯島 俊郎君
       外務省中南米局
       長        高瀬  寧君
   参考人
       日本大学危機管
       理学部教授    福田  充君
       弁護士      山下 幸夫君
       一橋大学名誉教
       授
       弁護士      村井 敏邦君
    ─────────────
  本日の会議に付した案件
○参考人の出席要求に関する件
○組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関
 する法律等の一部を改正する法律案(内閣提出
 、衆議院送付)
○政府参考人の出席要求に関する件
    ─────────────
#2
○委員長(秋野公造君) ただいまから法務委員会を開会いたします。
 委員の異動について御報告いたします。
 昨日、牧野たかお君が委員を辞任され、その補欠として渡辺美知太郎君が選任されました。
    ─────────────
#3
○委員長(秋野公造君) 参考人の出席要求に関する件についてお諮りいたします。
 組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律等の一部を改正する法律案の審査のため、本日の委員会に日本大学危機管理学部教授福田充君、弁護士山下幸夫君及び一橋大学名誉教授・弁護士村井敏邦君を参考人として出席を求め、その意見を聴取することに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#4
○委員長(秋野公造君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
    ─────────────
#5
○委員長(秋野公造君) 組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律等の一部を改正する法律案を議題とし、参考人から御意見を伺います。
 この際、参考人の方々に一言御挨拶を申し上げます。
 本日は、御多用のところ本委員会に御出席をいただきまして、誠にありがとうございます。
 参考人の皆様方から忌憚のない御意見を賜り、今後の審査の参考にいたしたいと存じますので、どうぞよろしくお願いを申し上げます。
 議事の進め方について申し上げます。
 まず、福田参考人、山下参考人、村井参考人の順に、お一人十五分程度で御意見をお述べいただきまして、その後、各委員からの質疑にお答えいただきたいと存じます。
 なお、意見の陳述、質疑及び答弁のいずれも着席のままで結構でございますが、御発言の際は、その都度、委員長の許可を得ることとなっております。また、各委員の質疑時間が限られておりますので、御答弁は簡潔にお願いいたします。
 それでは、福田参考人からお願いいたします。福田参考人。
#6
○参考人(福田充君) 日本大学危機管理学部の福田と申します。本日はよろしくお願いいたします。
 この度、テロ等準備罪を導入する組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律等の一部を改正する法律案に対し、賛成を表明いたします。
 現在、ほぼ毎日のように、世界のどこかで貴重な一般市民の命が奪われるテロ事件が発生しています。つい先日も、イギリスのマンチェスターでは、ライブ会場で八歳の女子児童が死亡する爆弾テロが発生しました。シリアやイラク、アフガニスタンといった中東や、ソマリア、ナイジェリアといったアフリカだけでなく、テロリズムは欧米各国でも繰り返し発生し、アジアにも拡大しつつあります。イスラム過激派によるグローバルジハード戦略によりテロリズムは国際化し、国際テロの時代が到来しました。
 一般市民の命を無差別に奪う無差別テロを根絶するためには、世界各国が協調して国際的なテロ対策を実施することが求められています。テロ対策はもはや一国だけでできる時代ではありません。戦争や紛争など安全保障の問題だけでなく、テロリズムに対する危機管理にも国際的な協調路線が求められており、テロ対策のためのグローバルネットワークに参加することが日本にも求められています。国際社会の中で日本がその責任をどう果たすかが、大きな期待とともに注目されています。
 しかしながら、我が国日本がその国際社会における責任を十分果たしているとは言えない状況であります。これまで日本では、テロリズムの研究や教育、テロ対策の実施は様々な制約により十分になされてきませんでした。
 私自身がテロ対策の研究を始めたのは一九九五年のオウム真理教による地下鉄サリン事件がきっかけでありました。その二か月前には阪神・淡路大震災が発生し、日本の災害対策、危機管理体制の不備が指摘され始めたのがこの九五年であります。このとき以来、私自身、災害対策やテロ対策、戦争、紛争などの安全保障を総合してオールハザードアプローチで研究する危機管理学の研究を始めました。それから二十二年がたちます。
 オウム真理教による地下鉄サリン事件は、世界で初めて大都市における公共交通機関が狙われた無差別化学兵器テロでありました。九五年当時の日本ではまだテロリズムという概念が十分に理解されず、メディア報道においても議会の議論においても、テロリズムという枠組みで議論、検討されることは当時ありませんでした。それと同時に、あれだけの事件の兆候がありながら、なぜ地下鉄サリン事件を未然に防止できなかったのか、日本のインテリジェンス活動やテロ対策の限界が露呈いたしました。
 その後、九八年に発足した警察政策学会テロ対策研究部会に参画し、コロンビア大学戦争と平和研究所においてテロリズムとインテリジェンスについて研究するなど、私自身、二十二年間、テロ対策について向き合ってきました。
 今、日本は、テロ対策におけるグローバルスタンダードを理解し、国内に整備するための産みの苦しみの過程にあると思います。第二次安倍政権が整備してきました国家安全保障会議設置法、特定秘密保護法、平和安全法制、そしてこのテロ等準備罪は、世界規模で国際協調しながら世界のテロ対策、安全保障を確立するために日本も協力する姿勢を示す一貫した積極的平和主義の制度化であったと評価できます。テロ等準備罪もグローバルな視点で考えなくてはなりません。
 テロ等準備罪が求められる理由又はその目的には三つの論点があると思います。一つ目は国際組織犯罪防止条約、TOC条約の締結、二つ目は二〇二〇年の東京オリンピック・パラリンピックに向けたテロ対策の強化、三つ目はテロ事件を未然に防ぐためのリスクマネジメントの確立です。この三つの論点は時間が切迫した喫緊の課題であり、この三つの課題を同時に解決するための方策がこのテロ等準備罪だと考えられます。
 一つ目の論点です。
 百八十七の国と地域が既に締結している国際組織犯罪防止条約は、現在の国際的なテロ対策の取組としても極めて重要な枠組みだと考えます。国際的にも、テロ対策としてテロ組織の資金源を断ち、テロ組織の活動を包括的に防止し、テロ事件の捜査や情報共有を促進するために、テロ対策にとっても重要な国際条約であります。
 なぜこのような国際組織犯罪防止条約が国際テロ対策として有用とされているかといいますと、国際社会においても、一般犯罪とテロリズムの線引きは極めて難しく、犯罪組織とテロ組織の線引きは非常に困難な状況にあるからです。
 二〇一四年の国連安保理決議第二千百九十五号においても指摘されているとおり、テロ組織と犯罪組織は部分的に融合し、連携し合っています。マネーロンダリングなどの諸活動において犯罪組織やテロ組織自体が国際的にネットワーク化され、連携している状況があります。二〇一五年の国連事務総長報告書においても、武器の密輸、人身取引、天然資源の不法取引、マネーロンダリングなど、組織犯罪の資金がテロ組織に流れている事例が具体的に指摘されております。
 日本としてこの国際組織犯罪防止条約を締結することで、テロリズムに必要な資金や資源を供給するための周辺的な組織犯罪を防止することが可能となり、テロリズムの根本を絶つことができます。既に百八十七の国と地域が締結している国際組織犯罪防止条約を締結することで、テロ対策においても諸外国と情報共有や捜査共助が促進され、テロリズムの防止のための国際協力が強化されると信じます。
 二点目の論点です。
 テロ等準備罪には、非常に重要なテロ対策の施策が網羅されていると評価できます。
 具体的な事例でいえば、アフガニスタンではタリバンが麻薬を栽培して資金源としています。アフリカではボコ・ハラムが児童を誘拐して少年兵や自爆テロ要員として利用し、人身売買で資金を得ています。多くのテロ組織が様々な活動を通じてマネーロンダリングや武器の密輸、人員のリクルートを行っています。そのような組織に不可欠な資金や資源を供給する行為を処罰し、テロ組織を弱体させることが求められています。こうした不法行為を取り締まる取組は国際的な体制の中でこそ実現するものであります。国際社会の中で日本だけが抜け穴になってはなりません。
 同時に、現代のテロリズムの形態は極めて多様であります。かつての要人暗殺テロから一般市民を標的にした無差別テロへ、ハイジャックから人質テロによる要求型テロ、毒物を混入したりすることで社会を混乱に陥れる社会不安型テロなど、その形を変えています。さらには、電気や水道、ガスなどの社会インフラを標的としたテロ、コンピューターネットワークを標的としたサイバーテロ、航空機、鉄道などの交通機関を標的としたロジスティクステロなど、極めて多様なテロリズムが発生しています。
 こうしたテロリズムの標的となっている、ターゲットである社会インフラを守るための法制度が不可欠であり、一度起こってしまったら社会に絶大な被害をもたらすこうした現代的テロリズムは、未然に防止するための法体系が求められています。そのための電気事業法、有線電気通信法、ガス事業法、水道法の改正であり、そのための道路交通法などの改正であると評価できます。
 また、そのテロリズムの道具、手段も、爆弾や銃だけではなく、核、生物兵器、化学兵器によるNBCテロ、CBRNテロなど、多様化しています。こうしたテロの道具となる武器の製造、保持による使用を未然に防止するため、組織犯罪防止法改正案では、武器等製造法、銃砲刀剣類所持等取締法の改正、火炎瓶や対人地雷、クラスター弾、ダーティーボム、細菌兵器、化学兵器の製造禁止や規制に関する法改正が網羅的になされております。
 テロ等準備罪に挙げられているこの二百七十七の項目は、以上のようなテロリズムの多様化に対応し、テロリズムの周辺行為をカバーしているという点において、テロ対策の研究者の目から見ても非常に抑制的であると同時に、網羅的で合理的な内容を伴っていると評価いたします。
 三点目の論点です。
 危機管理には、危険を未然に防ぐためのリスクマネジメントの側面と危機管理が発生した事後対応のためのクライシスマネジメントの側面が両方あります。現在の危機管理において、危険を未然に防ぐリスクマネジメントが重要視されています。
 同様に、テロ対策において重要なのはテロを未然に防ぐための取組であります。テロを未然に防ぐためのテロ対策を世界各国が整備しています。特に欧米の先進国においては、それぞれの国の文化や伝統に合った形での特徴あるテロ対策が整備されています。長年IRAと戦ってきたイギリスには、二〇〇〇年テロリズム法という基本法を基に、二〇〇六年テロリズム法、二〇〇五年テロリズム防止法などによる補完によってテロ事件を未然に防ぐための制度が構築されています。二〇〇一年に九・一一同時多発テロ事件を経験したアメリカは、パトリオット法においてテロ事件を未然に防ぐための網羅的なテロ対策を構築しました。テロを未然に防ぐためには、計画と準備行為の段階で拘束する、処罰するという枠組みが、これまで先進国におけるグローバルスタンダードと言えます。
 国際化したテロリズムに対して日本が立ち向かうためには、こうした欧米先進国におけるテロ対策の制度と歩調を合わせながら各国のインテリジェンス機関とテロリズムの情報共有を強化するなど、国際協調が不可欠です。しかしながら、日本にはこれまでテロを未然に防ぐための法制度が未発達でありました。日本にある陰謀罪、予備罪、準備罪等は極めて限定的で、テロ対策の分野で有効性があるとは言えない状態だと思います。
 こうした制約をグローバルスタンダードのテロ対策に適合させるためには、組織的犯罪集団に限定し、合意罪の観点から実行準備行為の段階で処罰するという枠組みが、日本のこれまでの法制度の構造になじむものと評価できます。日本の法制度の構造や歴史、文化を考慮した結果としてテロ等準備罪という制度を導入する組織犯罪処罰法改正案には合理性があると判断いたします。
 最後に、アメリカやイギリス、フランスなどの民主主義先進国においても、こうした国際基準にのっとったテロ対策が運営されています。民主主義を守るためには、テロ対策にもシビリアンコントロールが不可欠です。テロ対策における安全、安心と自由、人権の価値対立をどうやって克服するか、その両方の価値のバランスをどう取るか、合意形成が日本においても重要になります。しかしながら、自由、人権と対立するテロ対策は一切まかりならぬという考え方は、日本は国際的責任を果たすことはできません。
 私のコロンビア大学時代の恩師でありますロバート・ジャービス教授は、民主党員でありましたが、論文の中でこう言っております。テロ対策やインテリジェンス活動は民主主義にとって危険であるが、国民の生命や生活を守るためには必要不可欠なものである、民主主義的なアプローチによるテロ対策の構築が求められている。
 これまで二十年にわたって、私自身、このテロ対策における安全、安心と自由、人権の価値対立とバランスについて考え続けてきました。その観点から見ても、このテロ等準備罪は、国民の自由、人権に十分配慮した抑制的なテロ対策であると評価できます。
 以上のような理由で、私はテロ等準備罪を導入する組織犯罪処罰法改正案に賛成いたします。
 御清聴ありがとうございました。
#7
○委員長(秋野公造君) ありがとうございました。
 次に、山下参考人にお願いいたします。山下参考人。
#8
○参考人(山下幸夫君) 弁護士の山下です。本日は参考人として意見を述べる機会をいただき、ありがとうございます。
 私は、二〇〇五年から二〇〇六年当時からかつての共謀罪法案の反対運動に関わってきた立場から、この法案に反対する意見を述べさせていただきます。
 なお、以下に述べる内容は私個人の見解であり、日本弁護士連合会の見解とは異なるということをあらかじめお断りいたしておきます。
 まず、この法案六条の二の見出しは計画罪でありまして、テロ等準備罪という言葉は法案のどこにもありません。本法案の六条の二にテロリズム集団という用語はありますが、あくまでも組織的犯罪集団の例示にすぎないとされていますから、法案の六条の二をテロ等準備罪と呼ぶこと自体がミスリーディングであり、不適切だと考えられます。
 本法案の一条の目的規定には、国連の越境組織犯罪防止条約、以下TOC条約と言いますが、この条約を実施するためという文言は付け加えられようとしていますが、テロ対策という文言の追加はありません。そもそも、TOC条約の二条は、金銭的利益その他の物質的利益を直接又は間接に得ることを目的とする団体を組織的犯罪集団と定義しており、マフィアや暴力団によるマネーロンダリングなどの犯罪を取り締まることを目的とする条約であります。物質的な利益を得ることを間接的に目的とするという意味においてテロリスト集団がTOC条約で全く対象にならないわけではないとしても、その主たる目的が組織犯罪対策であり、テロ対策でないということはTOC条約の審議経過からも明らかであります。
 我が国においては四十五の予備罪、準備罪があり、予備罪についても共謀共同正犯が認められております。また、銃砲刀類の所持が罰せられるなど、実質的に見て、未遂より前の段階で組織的犯罪集団の重大な犯罪を取り締まる法律は既に存在しており、二百七十七もの罪について計画罪を新設しなければTOC条約を締結できないとは考えられません。必要があれば具体的な立法事実を踏まえて一つずつ個別立法で対応すれば足りると考えられますし、それはTOC条約を締結した後に行うこともできると考えられます。
 我が国は、二〇〇四年に内閣官房長官が本部長である国際組織犯罪等・国際テロ対策推進本部がテロの未然防止に関する行動計画を定め、関係する省庁によって様々な法改正や省令の改正などが実施されています。また、法務省が所管するいわゆるテロ資金提供処罰法や警察庁が所管するいわゆるテロ資金凍結法というものがございます。我が国は国連の十三のテロ防止関連条約に加盟し、必要な国内法の整備を終えており、テロ対策は十分にされてきております。したがって、テロ対策のために二百七十七もの計画罪を新設する本法案が必要であるとは考えられません。
 そもそもテロ対策という意味においては、いわゆるローンウルフ型のテロや組織的な背景のないテロには全く対処できないのですから、テロ対策というのは後付けの理由としか考えられません。
 次に、法案の六条の二の計画罪の要件について意見を述べます。
 法案が提案する計画罪の中核的な概念は計画であります。この計画については、かつての共謀罪法案の共謀や共謀共同正犯における共謀と基本的には同じであると考えられます。そうであれば、いわゆる順次共謀や黙示の共謀による計画も認められると考えられます。
 ところが、林刑事局長はこの国会において、法務委員会の審議において、この計画と共謀がほぼ同じ意味であるということは認め、順次共謀も認められると答弁していますが、黙示的に成立することは考え難いと答弁しています。しかしながら、この答弁は、二〇〇五年秋の特別国会でなされた大林刑事局長や南野法務大臣による目くばせでも黙示の共謀が成立するとした答弁と矛盾しております。
 この法案が成立した後、裁判所が判断する際には、黙示の共謀による計画の成立を認める可能性が極めて高いと考えられます。しかも、捜査段階における逮捕や捜索差押えなどの強制捜査の際には第一次的には警察などの捜査機関の判断によることになりますから、捜査機関による恣意的な運用のおそれがあります。
 そして、黙示の共謀でも計画が成立するということになりますと、何の言葉も交わさなくても成立し得るということになりますので、理論的には目くばせすらも不要であると考えられます。捜査機関がある団体の構成員の内心を探り、重大な犯罪を実行することを合意したと認定することになりますから、それはまさに憲法が保障する内心の自由の侵害となると考えられます。
 このような極めて曖昧な計画という概念について第一次的に捜査機関による判断で認めるとすれば、何の謀議もしていない人たちについて計画罪が成立するとされて冤罪を生むおそれがあります。
 次に、政府が団体を限定したと言う組織的犯罪集団という概念についてです。
 これは、結合関係の基礎としての共同目的について、継続的な結合体全体の活動実態等から見て社会通念に従って客観的に決めるとされており、対外的に環境保護や人権保護を標榜している団体であっても、それが隠れみのであるとか名目にすぎない、実態として構成員の結合関係の基礎が一定の重大な犯罪を実行することにあると認められる場合には組織的犯罪集団に当たり得ると金田法務大臣や林刑事局長が答弁しております。これも、第一次的には警察などの捜査機関の判断によることになりますから、恣意的な運用のおそれがあり、普通の市民運動団体や労働組合なども組織的な犯罪集団とされるおそれがあります。
 しかも、団体によっては、構成員の主要な者が一定の重大な犯罪を実行することを計画したと捜査機関によって認定されることによって、そこから直ちにその結合の基礎としての共同目的が一変したとして組織的犯罪集団になったと認定される可能性があります。
 法案にはこれを否定する文言がなく、その歯止めがありません。
 政府は、組織的犯罪集団という概念を入れたことによって適用範囲は限定されることになったと説明しています。しかしながら、条文上、計画をする主体は当該行為を実行するための組織のうちの二人以上の者です。これは組織犯罪処罰法三条一項と似た書きぶりになっており、そこでは組織というのは犯罪実行部隊を指すとされ、必ずしも団体の構成員である必要はないと解されていました。
 そして、この国会においても、本法案の六条の二の第一項について林刑事局長は、組織的犯罪集団の構成員に限らずその周辺者が主体となり得るということや、周辺者には本罪の幇助犯が成立し得ると答弁しています。すなわち、周辺者という曖昧な概念によって特定の団体の構成員以外の者が計画罪の主体となることが明らかとなっています。さらに、法案の六条の二の第二項は、そもそも組織的犯罪集団の構成員ではない者が組織的犯罪集団に不正権益を得させる等の目的で行った行為を計画する行為も処罰することになっています。
 したがって、組織的犯罪集団という要件を加えたことにより適用される範囲が限定されることにはなっていないということは明らかであります。
 次に、かつての共謀罪法案にはなかった準備行為という要件について林刑事局長は、計画とは独立した行為で、計画が実行に向けて前進を始めたことを具体的に顕在化させる行為であると説明し、予備罪における予備行為のような客観的に相当な危険性がある必要はないと説明しています。これは、アメリカの各州のコンスピラシーに要求されている顕示行為、オーバートアクトを取り入れようとするものだと理解できますが、そうであるならば、この条文の書きぶりと併せると処罰条件と見るのが自然です。
 ところが、林刑事局長は、準備行為は本罪の成立要件であると説明し、逮捕や捜索差押えなどの強制捜査は準備行為がなされてからしかできないと説明しています。
 この点についても、この法案が成立した後、裁判所が判断する際には、処罰条件であるとして計画だけで計画罪が成立すると判断され、準備行為を待たずに逮捕できると解釈される可能性があります。そして、この意味における準備行為は予備行為における客観的な危険性がなくてもよいというのですから、ATMでお金を下ろすという行為のような日常的な行為でもよいということになります。第一次的には警察などの捜査機関の判断によることになりますから、計画をした者の日常的な行為を捉えて準備行為だと恣意的に認定されるおそれがあります。
 以上のように、本法案が定める要件はいずれも極めて曖昧かつ不明確であり、それにもかかわらず、現行法上で二十一の罪にしか陰謀罪、共謀罪が規定されていないのに、これを一気に二百七十七も新設しようとするのは、刑事法の体系を根底から覆すものであります。
 これによって、刑事法の構成要件が持っている自由保障機能が失われるとともに刑事法の謙抑主義が否定され、市民運動団体や労働組合を権力が日常的に監視し、その構成員である市民の自由や人権が侵害されることになります。
 計画罪における計画、組織的犯罪集団、準備行為というそれぞれの要件を認定して検挙するためには、捜査機関が特定の団体の構成員やその周辺者の活動を日常的に監視しなければなりません。現在では、犯罪捜査は、犯罪発生の高度の蓋然性がある場合には犯罪が発生するよりも前から任意捜査が可能であると解されており、林刑事局長は、例えばテロの計画が行われ、その実行準備行為がそれに引き続いて行われる蓋然性が高度に認められるような犯罪の嫌疑がある一定の場合に任意捜査を行うことが許されると答弁しています。
 ただ、高度の蓋然性があれば任意捜査ができるというのであれば、計画の後に限らず計画の前からも任意捜査ができると考えられますし、計画があったことを知るために警察などの捜査機関が日常的に特定の団体の構成員やその周辺者を尾行するなどの任意捜査をすることが可能である必要があり、そのための法的根拠を与えることになります。
 これにより、私たち市民は、それぞれの要件が極めて曖昧で不明確であるために、何が許され何が許されないのかの区別が判然とせず、政府に反対する運動をすること自体が萎縮させられてしまいます。最近では、対象犯罪に税法や破産法などがあることから、共謀罪法案に反対するビジネスロイヤーの会が、企業活動が萎縮するという声明を出しているところであります。
 最近、国連のプライバシーに関する特別報告者であるジョセフ・カナタチ氏が指摘しているのは、まさに捜査機関による監視活動が市民のプライバシーを侵害するとの懸念であり、それに対する何らの歯止めがないということの指摘でありました。カナタチ氏は、国民に対する捜査機関の活動に対しては、事前、事後の第三者によるチェック機関を設ける必要があると指摘しています。この指摘に耳を傾け、本法案の審議においても参考にすべき点があると考えられます。
 日本政府は、国連の人権理事会に対して、特別報告者との有意義かつ建設的な役割の実現のため今後もしっかりと協力していくと述べていたにもかかわらず、カナタチ氏の公開書簡について国連の総意ではないなどとして抗議書を送付しただけで、現在に至るまで法案の英文も送付せず、質問にも回答していないということは極めて残念な対応であると言わなければなりません。
 我が国において、任意捜査については令状主義の適用はありませんから、警察などの捜査機関による尾行などの任意捜査については誰もチェックすることができず、そのため、濫用のおそれが強く懸念されます。
 我が国において、逮捕や捜索差押えなどの強制捜査については、令状主義により裁判官の発する逮捕状や捜索差押許可状が必要ですが、その却下率は極めて少なく、十分なチェックがなされているとは言えません。それは、捜査機関が作成した疎明資料だけで裁判所が判断しているからだと考えられます。韓国では、逮捕する際に被疑者を裁判所へ呼び出して、その言い分を聞いた上で逮捕状を発するかどうかを決めており、我が国の強制処分における令状主義の在り方を見直す必要があると考えられます。
 警察は、GPSの発信装置を被疑者の車両等に取り付けて、そのGPSによる位置情報を取得するというGPS捜査を任意捜査であると解して裁判官の令状を取得することなく実施していたことが判明して、刑事裁判においてその証拠能力が争われ、本年三月十五日の最高裁判所大法廷判決において、その捜査は強制処分であり、令状なしに行われたGPS捜査は強制処分法定主義に反すると判断されました。しかし、警察はその判断がなされるまでGPS捜査のほとんどのケースで無令状で実施していたのですから、警察による監視型捜査が濫用されるおそれがあるというのは単なる杞憂ではなく、大いに予想されることと言わなければなりません。
 政府は、今回の法案は刑事実体法の改正であり、刑事手続法の改正ではないということを強調しています。しかし、新たに市民にも適用される可能性のある組織的威力業務妨害罪や著作権法違反の罪などを含む二百七十七もの罪について計画罪として新たに処罰することができる根拠を作ることになりますから、捜査機関にはそのための捜査をする権限が与えられることになります。警察などの捜査機関の権限を拡大する法律であるということは間違いありません。今回、政府が二百七十七もの計画罪を新たに作ろうとし、これを急いでいる本当の狙いは、まさにこの点にあると考えられます。
 この意味において、これはまさに治安立法なのです。現代の治安維持法だという指摘がありますが、二百七十七もの計画罪が特定秘密保護法や通信傍受法などと併せて運用される中で、同じような、又はそれ以上に政府に反対する国民の活動を弾圧する武器にならないとも限らないと考えられます。
 二百七十七の罪の計画罪のターゲットは、政府がしようとすることに対して反対の運動をする市民運動団体や労働組合などであると考えられます。この法案が成立すれば、すぐにではないにしても、政府の活動に対して反対する団体、例えば沖縄の基地建設に反対する団体や原発の再稼働に反対する団体、そして集団的自衛権の行使として自衛隊の海外派兵に反対する団体や憲法改正に反対する団体について、その構成員や周辺者が警察などの捜査機関によって日常的に監視されることになることが予想されます。
 さらに、将来的には、二百七十七の罪を対象とする通信傍受法の改正や室内盗聴を可能とする立法がなされ、司法取引の対象犯罪とする刑事訴訟法改正もなされると考えられます。既にある町中の多数の監視カメラと顔認証技術の利用を併せて私たちの活動が日常的に監視される監視国家になることが強く懸念されます。
 現在、このような監視によって得られたデータを捜査機関が蓄積、管理して運用することについて何らの法的規制がありません。今回の法案を検討するに当たっては、捜査機関による私たちのプライバシー情報の収集、蓄積、運用することに対する法的規制についても併せて検討しなければならないはずであり、この点に関する議論を全くしないまま今回の法案を成立させるのは、私たち市民が抱いている深刻な懸念を払拭することは到底できません。
 今回の法案審議を見ても、審議をすればするほど法案の抱える欠陥や問題点が明らかとなっています。今回の法案の審議については、今言ったような、監視したことによって得られたプライバシー情報の収集、蓄積、運用についての規制に関することも含めて、その在り方について一から見直すべきであり、一定の時間が経過したからといってこれを可決するというような、そのような法案の審議の在り方に対しては強く反対いたします。
 本法案は、これは廃案にすべきものであると考えるものであります。
 以上であります。
#9
○委員長(秋野公造君) ありがとうございました。
 次に、村井参考人にお願いいたします。村井参考人。
#10
○参考人(村井敏邦君) 一橋大学名誉教授の村井です。
 一応、肩書、弁護士というのも付いておりますが、ほとんど弁護士の活動らしいものをしておりませんので、今日の肩書は名誉教授というだけで、刑事法を専門にして研究してきた者の立場から、この法案に対する反対の意見を述べさせていただきます。
 お手元にレジュメを配らせていただきました。
 まず、基本的なところですね。刑法の原則は何か。行為主義原則というのが刑法の原則です。行為者を中心とする行為者主義というのもありますけれども、戦後の体制は行為主義原則を取っております。これはなぜかというと、戦前における反省に基づくものです。戦前、日本及びナチス刑法が、行為者の危険性を処罰するということで、行為がなくとも処罰するという刑法体系あるいは治安法というのを持っておりましたが、これに対して、いかにそれが人民の、人々の自由を侵害し、恐怖に陥れたかということに対する反省から、刑法は行為がなければ処罰しないというのを基本原則とするというように多くの人たちが、刑法学者が考えてきたところです。
 これに対して、最近、先ほど参考人の発言にもありましたけれども、危機管理、あるいは危険が横溢しているというようなところから、危険予防の観点から処罰を早期化すべきであるという議論も起きてきております。その観点から、行為がなくても処罰をするというのが現代に適応しているんだと、刑法も現代に合わせて考えを変えなければいけないという議論が一方であります。
 しかし、基本原則を変えて現代に適応する、まあ現代をどう見るかというのはこれ自体議論が分かれるところではありますが、危険だからということで、その危機管理だけで刑法の基本原則を変えるというのは、これは我々刑法を専門として研究してきた者にとっては言わば学者の良心を捨て去るようなもので、この考え方に基づいた立法に賛成するわけにはいきません。
 そして、いや、この国会の審議の中で政府が主張することには、必ずしも行為を無視しているわけではない、従来の共謀罪と違って単に内心を処罰するのではないんだ、準備行為とか計画というのは一種の行為なんだと、だから、行為を待って処罰するんだから原則を変えるわけではないという発言もされておりますが、この場合の行為主義におけるところの行為とは、犯罪の実行行為を待って処罰するというのが行為主義であって、その前の準備とか計画で処罰するのが行為主義に合致するわけではないので、準備、計画という言葉に変わったところで行為主義原則をないがしろにするという点においては変わりがないというふうに言わざるを得ません。これが第一点ですね。
 それから、提案されているテロ等準備罪は、先ほどの発言にもちょっと出しましたけれども、共謀罪とは異なるんだというように主張されています。法構造も違うんだというように主張されておりますが、これに対しては大きな意味で二つの疑問がある。形式的な点での疑問と実質的な点での疑問です。
 形式的な点での疑問の第一は、山下参考人からも出ましたけれども、条約の要請に合致するのか。
 TOC条約、私はこれを越境的組織犯罪防止条約というので国際的というようには言っておりませんが、トランスナショナルですので、インターナショナルではないから越境的と訳すのが妥当であろうということで言っておりますが、一々そういう言葉を使うのはややこしいのでTOC条約というので省略してお話ししますけれども、TOC条約の要請は、第五条において、共謀罪又は参加罪を設けることと。これが義務的であるかどうかということについてはこの議会における審議においても議論がされてきたところでありますけれども、いずれにしても共謀罪又は参加罪を設けるということが五条で要請されているわけですが。
 テロ等準備罪、これも構成要件としては計画というのが構成要件、計画した者ということになっておりますのでそれが構成要件と考えざるを得ないんですけれども、刑事局長は準備行為も構成要件だと言って主張してきている、主張なんですが、それが通るのかどうか。この条文構成からいってそうは見れないだろうと思うんですが、構成要件としては計画ですね、計画で処罰するということですが、計画罪ということになるとこれは共謀罪と違うのか違わないのかよく分かりません。
 実は、後でもちょっと触れますが、いわゆる東京裁判で、侵略戦争の罪と侵略戦争を共謀したあるいは計画した罪、この両者で処罰されているのが東京裁判です。この点は御存じの議員の方々には御存じだろうと思いますが、共謀罪というのが言わば日本人に適用された数少ないといいますか、唯一、日本で行われた裁判においては唯一と言っていい、東京裁判において侵略戦争の罪という実行した罪と併せて準備罪あるいは計画罪というのが処罰されております。併存して処罰できるんだという形で処罰されておるんですが、そうなると、共謀というのと計画というのと準備というのはどういう関係になるんだ、違うということになるのか、そうすると条約の要請には合致しないということになってしまうという、形式的な議論をしますとそういうことになり得る。
 第二番目には、今も言いましたように、共謀罪と異なるということになると共謀罪との二重処罰は可能であるというようなことになってしまう。日本では共謀罪は設けない、計画罪だけだということになると日本での二重処罰はないということになりますが、これはあくまでも条約との関係で設けられる罪だということになると国際的には二重処罰ができると。他国において共謀罪で処罰された者が日本においてもなお計画罪で処罰されると、あるいは、他国では共謀罪で無罪になった者が日本で計画罪で有罪になるということもあり得るのか、こういう問題が出てきます。違うのか違わないのか、形式的な議論を前提とするとそういう疑問が出てくるわけです。
 実質的な点では、既に山下参考人の中でも指摘がありましたが、目的規定に条約批准のため、TOC条約批准のためとしかなくて、テロ対策は目的にはないんですね。にもかかわらず、これはテロ対策のための法案であるということが主張されている。どうしてなんだろう。テロ対策が目的ならば、テロ対策というのを第一条、法案の、法律の目的の中に書くべきであります。書いていない。それは書けないわけですね。やはりTOC条約の受けた形での、その批准のための法案であるということであるわけでしょうから、そうするとそこにテロ対策というのを入れるわけにいかない。
 テロ対策というのは、この条約を制定するときに日本も反対して、それを項目として入れるのは、入れなかったと。その入れないことについての理由はあるというのは審議録を見て分かりますけれども、しかし、いずれにしても、日本は入れることに反対したといういきさつからすれば目的の中にテロ対策を入れるわけにいかない。にもかかわらず、テロ対策法案なんだということを主張する。それは一体どういうことなのか、私には理解できません。
 それから、先ほど言ったように、計画という言葉に変えたから共謀とは違うんだと、その根拠は何なんだ。実質的に考えてみると、審議の中でもだんだんやはり具体的、個別的な計画、計画というのは合意なんだと。結局、合意ということに行き着く。とすると、共謀と異ならないということになります。一体そこはどうして計画というのが出てきたのか。計画という言葉についての法案の中での定義は一切ありません。したがって、刑事局長がそれは具体的なんだと言っても分からぬですね。国民には分かりません。私にも分かりません。もし計画が共謀とは異なるんだったら、ちゃんと計画についての定義をすべきです。その定義規定さえない。
 さらに、準備行為を要求する意味ですけれども、この点について、先ほどの山下参考人の発言にもありましたけれども、刑事局長は最後のところでちょっとそこが曖昧になっているんですが、計画と準備、備わって初めて成立するんだ、この罪は成立するんだというので、準備行為は構成要件であるという考え方を示しておりました。ところが、捜査の問題になってくると、計画したことに十分な嫌疑がある場合には捜査が可能であると。そうすると、計画の段階で準備行為がなくても犯罪は成立しているということになるのか。この発言もよく分かりません。計画と準備との関係というのは非常に曖昧であります。
 作成された法案の形式からいいますと、計画が構成要件であって、準備があったときに処罰するという、オーバートアクトですね。英米のコンスピラシーという概念にのっとって、まさに共謀罪におけるところの合意を顕現する、外に出す行為を要求するという意味でオーバートアクトというのを処罰条件として加えた、それが法形式を見てみますと素直な解釈だろうというふうに思います。
 準備行為がなければ成立しないという刑事局長の発言は、そういうように運用される、厳密な形でそこまで構成要件に入れると捜査機関が考えるならば、いや、少なくともこの法案形式よりいいかもしれないとさえ思ってしまいますが、そうはいかないでしょうね。そこが大変に危惧されるところです。
 例えばオーバートアクトで、日本では余りなじみのないオーバートアクトという言葉ですけれども、これはロス疑惑のときに、三浦和義氏が日本で共謀共同正犯、妻を殺害したという殺人罪についての共謀共同正犯が無罪が確定した後にロス地検に、ロス地方裁判所に起訴されたのが、殺人の共謀罪ということで起訴されておりますが、その起訴状によりますと、オーバートアクトがたくさん書いてあります。その中の一つは、保険金を掛けた、妻に保険金を掛けたというのがオーバートアクトということになっております。
 これは日本の場合でも準備的行為に入ってくる可能性はあります、組織的殺人というのが今回の法案の対象犯罪になっておりますけれども、共謀罪の対象犯罪になっているので。組織的殺人の一つの準備的行為として保険を掛けた。保険を掛ける行為というのは全く誰でもできることであって、それを準備的行為とするというのは、これは結局オーバートアクトというのは何のために要求するのかというと、本体である実行行為、殺人罪なら殺人罪を証明する間接証拠の意味しかないんだというふうに言われておりますけれども、まさにそういうようなものだろうと。ただ、間接証拠にしろ、間接証拠というのは本体の実体的行為を推認させるようなものでなければならないので、準備的行為というのが全く関連性のない、推認力もないようなものだと準備的行為には当たらないということになるはずです。もうその辺り、どうも刑事局長の発言を聞いていてもはっきりしない。
 先ほど来、さらに計画と準備との関係はどうなんだということを言ってきましたので。その関係がどういう関係になるのかが不明確である。内容も不明確だと。準備行為についても、例としては挙げられておりますが、花見で顕微鏡を持っていったかどうなのかというばかばかしい議論をするような問題ではないはずなんですが、それは例であって、単なる例でしかない。
 いずれにしても、この辺りの概念が一切定義がなく非常に曖昧で、構成要件なのか処罰条件なのかさえ明確でない法律構成、条文構成になっているという点、これがどうしてなんだという疑問です。
 それから、テロ団体は……
#11
○委員長(秋野公造君) 村井参考人に申し上げます。お時間が過ぎておりますので、御意見をおまとめください。
#12
○参考人(村井敏邦君) はい。
 テロ集団等の組織犯罪集団に限定されるのかということですが、この点も、テロ集団についての定義はありません。さらに、「その他」によって限定されない。組織的犯罪集団の団体の行為が、一般人とは違うんだと、これを入れたことによって一般の企業を処罰するようなものではないということですが、しかし実際、私が意見書を書いたものの中に、証券会社が業績悪化を知らせずに客を募集した場合、組織的詐欺集団であって、その従業員も共謀共同正犯として処罰されたケースがあります。これは一般の人も組織的犯罪集団として処罰され得る例であります。これも審議の中で御議論があったところです。
 いずれにしましても、こういった法案による最大の問題は、やはり捜査がどのようになるのかという懸念が持たれます。この点について、国連の人権報告者の指摘には謙虚に耳を傾けるべきであろうと思います。プライバシー侵害に対する保障措置を設けるべきであるということについて、これに抗議をするのではなくして、真摯にこれについて検討し、法案成立までにその点についての明確な回答をすべきであろうと思われます。
 いずれにしましても、今回の法案によって刑事法の基本が大きく変わるであろうということが懸念され、私は大変に心配しております。是非慎重な審議を重ねていただきたいと思います。
 ちょっと超過しましたけれども、以上で終わります。
#13
○委員長(秋野公造君) ありがとうございました。
 以上で参考人の意見陳述は終わりました。
 これより参考人に対する質疑を行います。
 質疑のある方は順次御発言願います。
#14
○元榮太一郎君 自由民主党の元榮太一郎です。
 福田先生、山下先生、そして村井先生、本日はお忙しい中、当委員会に御出席いただき、そして大変貴重な御意見をいただきまして、誠にありがとうございます。
 いろいろ参考人の皆さんからお話を伺いました。国際協調という言葉も福田参考人から出てきました。やはり、世界が連携してテロを未然に防止する、そして国際平和をもたらすと、積極的平和主義こそが日本の果たすべき役割だと私も思っております。その意味でこのTOC条約の締結は非常に重要であり、急務だと考えております。
 そこで、まず福田参考人に伺いたいと思います。
 我が国では、一九九五年の地下鉄サリン事件以来、大規模なテロはまだ起こっていないという状況にございます。その中で、テロの脅威はこの日本にも迫っている、又はテロの脅威が増大している、このような話も聞かれます。しかし、まだ、この迫りくる脅威について日本国民の理解というのはさほど高まっていない、深まっていないのではないかなと思っております。
 私はテロの脅威は確実に迫っているという危機感があるのですが、福田参考人、テロ対策の専門家として具体的にこの迫りくる脅威について御教示いただけますでしょうか。
#15
○参考人(福田充君) 先ほどの陳述でも申し上げましたとおり、国際テロリズムが世界中で勃興しております。その中で、日本だけがテロリズムの標的にならないという前提は極めて危険であると思います。イスラミックステート、ISILなどのイスラム過激派組織も、日本もテロの標的であるということを表明しております。
 これまで、やはり日本も、これまでの法制度の範囲内で懸命にテロ対策をやってきて、そして出入国管理も徹底してきた、そしてかつ、島国であるというような経緯もあってそういったテロの脅威をはねのけてこられた経緯もございますけれども、これから二〇二〇年の東京オリンピック・パラリンピックを三年目に控えております。
 これまで、ミュンヘン・オリンピック以降、ほぼほとんどのオリンピックのような、メディアイベントと僕は呼んでおりますけれども、オリンピックはテロの標的となってきました。二〇二〇年の東京オリンピック・パラリンピックも、世界中から要人が、アスリートが、メディアが、そして観光客の皆さんが日本に集中して訪れる国際的メディアイベントでありまして、この東京オリンピック・パラリンピックは、テロリスト、テロ組織にとっても格好の標的となるソフトターゲットだと思われます。
 日本人の生命や生活を守るだけではなく、こうしたメディアイベントに際して各国から訪れる訪問者の命を守るということも不可欠であり、そういった意味でも、今、テロの脅威は日本の中ではリスクとして高まっていると認識しております。
 以上です。
#16
○元榮太一郎君 ありがとうございます。
 日本もテロの標的だと名指しをされていて、また二〇二〇年のオリンピック・パラリンピックはまさに格好の標的ということで、もう三年後に迫っています。その意味で、テロ等準備罪はTOC条約の国内担保法として成立させるということが非常に重要だと思っておるわけですが、一方で、これまでの議論にもありましたとおり、このテロ等準備罪の構成要件について、内心やプライバシーという自由、人権との関係が指摘されています。
 しかし、私は、客観的に見ますと、TOC条約締結百八十七か国、そしてまたOECD各国の構成要件と比べると、非常に人権、自由に配慮した厳格な構成要件を客観的に採用しているのではないかなというふうに思っているわけです。
 具体的には、そのTOC条約五条一項(a)の(1)の組織的犯罪集団という組織要件と推進行為という行為要件という、この二つのオプションを採用しています。これはOECDの各国の中では唯一でありますし、百八十七か国の中でも僅か二か国しかないということで、やはり日本らしくこの自由、人権というものを配慮した中で、やはり国民の安心、安全、そしてテロを国際協調で未然に防止するというバランスの取れている構成要件と思われるのですが、福田参考人、まずこの点について、各国との比較の関係で御教示いただきたいと思います。
#17
○参考人(福田充君) 今御指摘にありましたとおり、この国際組織犯罪防止条約を締結しております百八十七か国の中には様々な国がございます。その中でも私自身はアメリカやイギリス、英米のテロ対策が専門でありますのでやはりアメリカやイギリスと比べることが多いわけですけれども、アメリカやイギリスにも当然刑法、刑事訴訟法の基本的な要素がありますが、それと、もう一つの体系としてテロ対策の基本法的な側面がございます。
 先ほどの陳述でも申し上げたとおり、イギリスでは二〇〇〇年テロリズム法という基本法的な法律があります。そこでは、テロリズムの容疑があれば令状なしで四十八時間勾留することができるとか、令状があれば二週間にわたって勾留することができる、極めて厳しい特徴があります。それがイギリスの歴史と国情、文化に即した制度であり、それがそのまま日本に適用することがよいとは私自身も思いません。
 しかしながら、イギリスのテロ対策若しくはアメリカのテロ対策、特にアメリカは、九・一一アメリカ同時多発テロ事件以降構築されてきましたテロ対策の基本法的な役割を果たしますパトリオット法では、通信傍受といった捜査権限も強化されています。諜報機関も強化されています。テロリストの出入国管理も強化されています。例えば四百十二条では、司法長官がテロリストと認定した外国人を七日間まで無条件に拘束できるといった項目もございます。
 そういった、イギリスやアメリカといった非常にテロ対策が強固に構築されている国家もございます。しかしながら、その中でも、イギリスやアメリカで人々の人権、自由が大きく損なわれて問題になったという事例、まあ幾つかございますけれども、非常にたくさん発生したでありましょうか。そこには、やはりイギリス、アメリカのテロ対策の法制度の中で自由や人権を守っていくという、それぞれの国の取組と制度があったわけでございます。
 それと比べましても、日本のこの度のテロ等準備罪、組織的犯罪集団に限定しているということと、そしてかつ合意罪の観点から実行準備行為の段階で処罰するという枠組みは、そういった欧米の先進諸国と比べても非常に抑制的で謙抑的な制度となっていると評価しております。
 以上です。
#18
○元榮太一郎君 ありがとうございます。
 アメリカは九・一一がありました。そして、イギリスでも、ここ直近一か月でも複数回のテロが起きています。この構成要件に関しては、やはりテロの脅威の現実の度合い、実際に悲惨なテロが頻発している地域との相関関係がうかがえるかと私は思っています。
 山下参考人と村井参考人にも伺いたいんですが、今、福田参考人からもお話ありましたとおり、構成要件という意味で世界各国との比較で考えますと、行為要件、推進行為とそして組織的犯罪集団という組織要件の二つのオプションで絞った合意罪という観点で客観的に見ますと、日本は非常に抑制的な厳格な構成要件にも思われるんですが、その点についてはどのようにお考えでしょうか。
#19
○参考人(山下幸夫君) 先ほど述べましたけれども、言葉だけ見れば一見すると限定するように見えるかもしれませんが、その概念は極めて曖昧、不明確でありまして、しかも、この間の国会における政府側の答弁を見ても非常にその適用範囲が曖昧。先ほど言いましたけど、組織的犯罪集団の構成員に限らない、それ以外の周辺者も含むということを言われたり、それから共同目的が変わったら普通の団体でも組織的犯罪集団になるとか、そういう答弁がずっと続いているわけでございまして、要するに物すごく曖昧で非常に広く適用される可能性のある。
 そういう意味では、先ほど御質問者の方は限定されているとかいろいろ言われていますけど、この文言だけではやはり限定されているとは言えない、解釈の余地を非常に多く残し、解釈によって恣意的な適用、濫用のおそれがあると私は考えております。
#20
○参考人(村井敏邦君) 先ほども私が言いましたように、英米の場合に共謀罪を設ける場合にはオーバートアクトを要求するというのが一般的になっております。したがって、オーバートアクトとして準備的行為を設けたというのは英米と同様だということになるわけですが、例えば先ほど例として出しましたロス疑惑事件の起訴状の場合に、オーバートアクトとして二十ぐらいの数の行為が挙げられております。これが起訴状の中に記載されて具体的にそれに対する攻防が行われるという点では、日本の場合、それがどうなるのかよく分かりませんけれども、構成要件であれば起訴状の中に出てくるでしょうが、処罰条件の場合には起訴状の中に出てくるのか、それから手続的な点でどうなるのかというのは全く今回の法案では手続的な提案はされておりません。
 GPS捜査を検討しようと、私はこれは大変問題だというふうに思うんですが、その法制化を検討するというのが一つ付け加わっているんですが、新たにいろいろな捜査、新しい捜査手段を要求するということになりますと、果たしてそれで人々の自由が限定されないか、また懸念が増えると思います。
#21
○元榮太一郎君 ありがとうございます。いろいろなお考えがあるところだと思います。
 しかし、例えばその組織要件に関して見ると、そもそもないような合意罪を採用している国もたくさんあるといいますか、むしろ大半となっているところだと思います。
 いずれにしましても、国民の安心、安全を守るため、そしてテロ対策を国際協調の中で推進していくという中で、人権とのバランスを各国がそれぞれ心を砕いて工夫を凝らしていて、そういう中においても、このテロ準備罪というのは国際的な比較においては構成要件としては非常に抑制的だということを改めて最後に指摘して、私の質問を終わります。
 ありがとうございました。
#22
○真山勇一君 民進党・新緑風会の真山勇一です。
 今日は、三人の参考人の方、本当にありがとうございます。
 お三方の話を伺っていて、この法案がまだまだ不明確な点が物すごくたくさんある、分からないことがたくさんある。今日もたくさんの傍聴の方いらっしゃっていますけれども、みんな、こんなにあるんだと、まだまだやはり審議をしなければこの法案どういうものなのかよく分からない、こうした思いをすごく感じられたんじゃないかというふうに思います。私も感じています。やっぱり大事な法案を作るならば徹底的に審議をして、問題点、分からない点、これをはっきりさせて、本当に法案が必要なのかどうか、これをやるのがこうした委員会の場ではないかというふうに私は思っています。そういう意味で、今日、お三方、参考人でお招きをして意見を伺ったということは、私たち議員がやる議論とはまた違った視点でお話を聞けたということをまずお礼申し上げます。
 たくさんあるので、時間足りなくなるとちょっとあれなので要領よく聞いていきたいというふうに思うんですけれども、まず福田参考人にお伺いしたいと思います。
 福田参考人がおっしゃったテロを未然に防ぐ、大事なことです。それを国際協調でやる必要がある、大事なことです。そして、危機管理上、やはりテロを防ぐということは本当に今まさに喫緊の課題であるということも分かります。そのためにTOC条約を締結しなければならない、そこまでは私も分かるんですが、例えばこのTOC条約、まずテロ対策のためでないということが言われてきております。
 パッサス教授が、立法ガイドを作った、この法案の意味を作った方が、これはテロ対策ではないよと、経済的な犯罪、マネーロンダリングとかあるいは組織的な暴力犯罪に対する、麻薬取引、そうしたものだよと言っているにもかかわらず、テロ対策だと言っているわけですね、日本ではそう言っているわけですけれども。テロ対策でないと言っていること、これについて、村井参考人も指摘されておりましたけれども、これについてどういうふうにまず思われるかということが一点と。
 それから、確かに今テロ対策もグローバルスタンダードが求められているといいますけれども、この国連のTOC条約を締結しなければならないならば、逆に、今申し上げたような立法ガイド、パッサス教授のテロ対策でないということとか、それからカンナタチ国連特別報告者が指摘しておりますプライバシーの問題、この条約を受け入れるのと同じくらい、この条約の問題点を同じ国連の方が指摘しているわけですから、こちらをやっぱり無視するのはおかしいと思うんですね。
 この辺の、テロ対策ではないとかカンナタチ氏がプライバシーに大変懸念を表明している、こちらの方については福田参考人はどういうふうに思われるでしょうか。
#23
○参考人(福田充君) まず一点目でございますが、国際組織犯罪防止条約自体がテロ対策とどう関係があるかということだと思います。
 これにつきましては、国際安全保障の研究者若しくはその実務に携わっている方、様々たくさんの方がおられますけれども、実は様々な解釈が存在していて、いろいろな方がいろいろなことをおっしゃっています。御指摘にあったような指摘も新聞報道等で私自身も拝見いたしましたけれども、しかしながら、実際、現在、犯罪組織とテロ組織の線引きというのは非常に困難な状況であるというのも一つの国際的な常識になりつつあるということであります。一般犯罪とテロリズムの線引きも極めて難しいというのが国際的な現状でございます。
 陳述でも申し上げましたけれども、二〇一四年の国連安保理決議第二千百九十五号の中でも、テロ組織と犯罪組織はかなり部分的に重なっている、一部分異なっている部分もありますけれども。そしてかつ、融合し、連携し合っている。そして、組織犯罪、犯罪組織がマネーロンダリングしたお金がテロ組織の方に流入しているという実態がある。テロ対策のためにも、こういったテロ組織に対して資金や資源を横流ししているような犯罪組織を取り締まるということは、間接的にテロ対策に非常に有効に効いてくると研究者等の立場から判断いたします。
 二点目のカンナタチ教授の公開書簡についてでございますが、私自身も十分拝読いたしました。
 しかしながら、カンナタチ教授がおっしゃっていることはテロ対策や組織犯罪対策という文脈からは非常に懸け離れていて、教授の専門であるところのプライバシー保護の観点から、そこから非常に重要な指摘、批判はなされておりますけれども、しかしながら、やはりプライバシー保護の観点からのみの御指摘であり、それがテロ対策や組織犯罪対策とどういうふうにバランスを取っていくべきか、どういうふうにかみ合わせた議論にしていくべきかというところでは、ややバランスの欠けた意見だと感じております。
 しかしながら、私自身も、テロ対策というのは、テロ等準備罪始め、これからまだまだ検討していかないといけないテロ対策の問題というのはまだ実は残されていると思います。そのテロ対策を更に有効なものにしていく過程の第一歩だと思っております。そのテロ対策を実施していくためには、今回のテロ等準備罪とは全く関係ありませんけれども、インテリジェンス活動の強化とか、若しくはそれのシビリアンコントロールというものも非常に重要になってくるだろうと思います。それは今後の課題として検討されるべきであろうと個人的には思っております。
 以上でございます。
#24
○真山勇一君 私は、締結を大事にするならば、国連のそういう一連のこの法案に対する反応というのをやっぱり大事に尊重していかなくちゃいけないんじゃないかなということをちょっと申し上げたかったんですけれども。
 次に、テロ等準備罪、福田参考人は、テロを防ぐために有効であり合理性があるというふうにおっしゃってきました。その一方で、テロって、今、非常に多様化しているともおっしゃいましたね。イギリス、フランスあるいは各地で起きているテロ、本当にこれを防ぐためには難しいというふうに思うんですね。
 確かに、このテロ等準備罪で防げるかどうかというと、これまでのこの委員会での審議の中で政府側答弁としては、やっぱりローンウルフ、つまり大きな団体で多数でやるんならば明らかに分かるけれども、ローンウルフ型、一人とか二人、それも本当に継続じゃなくて突然、今多いわけですね、本当にヨーロッパでそういう突発的に起きるようなテロが多いわけですけれども、こういうのを本当に防げるんだろうかという疑問。
 それからもう一つ、もう一点。先ほどのお話で、令状なしですとか無条件で勾留できるくらい厳しくやっぱりやっていかなくちゃ駄目だというお話がありましたけれども、そういうことによって、逆に日本の場合、ここまで本当に大胆にやっていくと、人権を守る、あるいはプライバシーを守るということは本当に大丈夫なのかどうか。今のこのテロ等準備罪と呼ばれている法案の中で本当に人権、プライバシー、守れるんでしょうか、守れるという保証が条文のどこかにあるでしょうか、お伺いしたいと思います。
#25
○参考人(福田充君) まず一点目でございますが、御指摘のとおり、現代のテロリズムの特徴は無差別テロであり、ソフトターゲットを標的としたローンウルフ型のテロ、そしてかつホームグローン型のテロが多くなっております。テロ等準備罪は組織的な犯罪集団を対象にしておりますので、こういったローンウルフ型のテロに対して直接的な効果があるかということに対する御指摘は、部分的に適合しているというか、合っている側面があると思います。
 しかしながら、現在世界中で起きておりますローンウルフ型の無差別テロも、そのローンウルフとされているテロの実行者は大なり小なり、例えばイスラミックステートであるとかアルカイダであるとか様々な国際的なテロ組織のプロパガンダや宣伝行為に影響を受けて実行しているという容疑者も多数おります。つまり、ローンウルフ型テロであっても、こういったテロ組織の元を絶つ対策、国際的なテロ組織の資金源とか資源を断つことによってそういった国際的テロ組織が弱体化することにより、世界中でそれに呼応する形で発生しているローンウルフ型のテロは間接的に減らす効果があると個人的には認識しております。
 二点目でございますが、私自身は、イギリスの二〇〇〇年テロリズム法、二〇〇六年テロリズム法がイギリスの文化の中で有効性を持っていると申し上げただけで、日本でこれをやるべきだとは申し上げておりません。アメリカ型のパトリオット法も、これが日本に適合するとも申し上げておりません。それをそのまま日本に持ってくれば、もう非常に厳しい、やり過ぎな、人権、自由を侵害するおそれのあるものになるであろうと思われます。
 それと比べると、むしろ日本のこのテロ等準備罪は、組織的な犯罪集団が関与するという要件と合意の内容を推進するための準備行為を伴うというこの二つの構成要件、これはそういった英米のテロ対策よりは人権、自由に十分配慮していると個人的に研究者として考えているということであります。
 しかしながら、どうやってこの人権や自由を損なわれないようにするための活動を行っていくかということは、こういった法律の条文の中ではない運用の側面で、まさにこれ執行するのは警察機関でありますから、その警察等の執行機関を監視するのがむしろ議会の役割であり、それがシビリアンコントロールだと思っておりますので、その中でどうやって運用し、監視していくかという制度、仕組みは検討されていってしかるべきかと思います。
 以上でございます。
#26
○真山勇一君 ありがとうございました。やっぱりそうなんですね。シビリアンコントロールが健全に機能していないとやっぱりとても危険な法律であるということは私よく分かりました。福田参考人、ありがとうございました。
 あとお二方にお伺いしたいんですが、時間があと三分か四分しかないので、ちょっと端的にお伺いします。一般人が巻き込まれるおそれ、一般人が対象になるおそれがあるかどうかということです。
 山下参考人にお伺いしたいと思います。
 山下参考人の言葉の中に目くばせとか、あるいは団体の概念が曖昧だというふうにおっしゃいました。私はとても気になっているのは、金田法務大臣が、参議院の趣旨説明の中だと思うんですが、隠れみのという言葉を使いました。つまり、違法な団体が、悪いことをする団体が普通の市民団体の名前をかたる、つまり環境保護活動をしているとか、あるいは市民グループがある目的を持ってみんなで集まっているとか、それからもちろん労働運動とか、それから宗教活動も入るかもしれません、そうしたもの、看板は普通の団体、でも実態は全く別な、犯罪をやろうとしている、場合によってはテロをやろうとしているということを調べるために、隠れみのを使う可能性があるからこれも対象になると金田法務大臣は言っています。
 この辺の危険性、恣意的な運用があるのかないのか。警察はふだんでも捜査活動と称してそういうこともあるし、それ以前に情報調査ということで日常的にやっているという、監視をされているということもありました。この辺の危険性について改めて伺いたいと思います。
#27
○参考人(山下幸夫君) 御指摘のとおり、隠れみのという話がありましたが、隠れみの又は名目にしているということは、結局それは誰が判断するかって、第一次的には警察などの捜査機関が判断するわけであります。
 そして、今回の法案は、先ほど私が言ったように、恐らく計画よりも前の段階から日常的に特定の団体の構成員やその周辺者を監視しなければ、そういう計画とか準備行為とか、又は組織的犯罪集団かどうかということを判断できませんので、そういうことができる権限を警察や検察などの捜査機関に与える法律であるということからすると、結局そういうあらゆる団体、普通の団体も含めてあらゆる団体が一応その捜査の対象になり得るわけであります。そういうところに所属している私たち一般人、当然その捜査の対象になり得るということなので、この法律はやはりどこまで行っても、もう一般人も含めた全てのそういう団体に所属している構成員や周辺者が捜査の対象になり得るということが前提になっていると考えられますので、一般人は関係ないとか、そういうことは言えないと考えています。
#28
○真山勇一君 質問時間が終了というのが来てしまったので、村井参考人、本当に申し訳ありません。是非お伺いしたいことが一つ、犯罪が共謀罪のときは重くて、更に先行くと軽くなってしまうという非常におかしな点があるんで、そんな点を是非参考人に伺いたかったんですが、時間なくなりましたんで、申し訳ありません。
 やっぱり、これくらい、要するに時間もっと欲しいんです、聞きたいんです。でも、その時間、これからもたっぷり、やっぱり審議をちゃんとしていきたいということを皆様にお誓いして、私の質問を終わりたいと思います。
 ありがとうございました。
#29
○佐々木さやか君 公明党の佐々木さやかです。
 今日は、参考人の皆様、大変貴重な御意見をいただきまして、ありがとうございます。
 私の方からは、まず福田参考人に質問をさせていただきたいと思います。
 今日、意見陳述をテロ対策の専門家としてのお立場からいただきました。恐らく、この委員会室にいる誰よりも福田参考人がテロ対策について知識をお持ちでいらっしゃいますし、いろいろなことを御存じだと思います。
 やはり、一般的に、国民の皆さんもテロに対する危機感だったりとかテロ対策の必要性があるということを抽象的には感じていらっしゃると思うんですけれども、じゃ、具体的にどういうことが今、日本として必要であって、国際社会からも求められているのか、そういう具体的なことを余りイメージできないと思うんです、やはり日常的にテロを経験しているわけではありませんので、日本の場合。ですので、そういった意味で、専門家である福田参考人から、テロ対策としてどういうことが求められているのか、そしてTOC条約、またテロ等準備罪の創設を含む今回の改正案でどういう対策が講じることができるようになるのか、こういったことをできるだけ具体的に教えていただくということは非常に重要なことであるというふうに思っております。
 その観点から、既に陳述の中でも教えてはいただいているんですけれども、やはり今日も質問の中でもありましたように、このTOC条約自体がテロ対策としてのものなのかどうかとか、テロ対策に有効なのかどうかというところからまだ意見の対立がございますので、非常に重要なところなので、重なるところはありますけれども、このTOC条約の締結、またテロ等準備罪の創設によってテロ対策にどのように有効なのか。今日、陳述の中で、その周辺行為を処罰をすることができることによってテロ組織を弱体化させる、そういった効果もあるとお話がありましたけれども、もう少し具体的にというか詳しく教えていただければと思います。
#30
○参考人(福田充君) ありがとうございます。
 非常に広範囲にわたる御質問をいただきましたので、ちょっとまとまったお答えができるかどうか難しく思いますけれども。
 具体的に申し上げますと、先ほどの陳述でも申し上げましたとおり、テロの手法とか道具というものは極めて多様化しているということがあります。これまでは爆弾テロやナイフといった、若しくは銃ですね、そういったものによって行われたテロリズムが多くございましたけれども、しかしながら、現代では、地下鉄サリン事件を経験した日本だからこそ言えるように、化学兵器、生物兵器若しくはダーティーボムといった、そういったものがテロに利用される可能性が指摘されております。そして、そういうものが保管されている機関から流出したり、若しくは盗まれたりすることによってテロ組織に流れ込んでいるという指摘もあります。
 それ以外にも、先ほどの陳述でも申し上げましたとおり、電気や水道、ガス、通信といったライフラインがテロの標的になった場合には、現在の私たちの生活の根本となる社会基盤が破壊されることになります。若しくは、例えば水道に生物兵器が混入された場合、毒素が混入されたような場合にどれだけの犠牲者が発生するか。
 そのようなことは起きるはずがないというふうに信じられているかもしれませんが、一九九五年の段階で、あれだけの規模でサリンを東京の地下鉄にまくということを一体どれぐらいの人が想像できたでしょうか。常にテロリズムというのは、私たち一般市民の想像を超えたところから想定外のテロリズムが発生するということを歴史的に経験してまいりました。だからこそ、想定外をなくすという意味で、電気や水道やガスも、そういったライフラインもテロのターゲットになる、航空機も鉄道も新幹線も、そういった交通機関もロジスティクステロというテロの対象となる。当然サイバーテロも、それによって原発等が狙われる可能性もあります。若しくは、都市の信号等が狙われることによって都市機能が麻痺するということも考えられます。こういった多様化しているテロリズムは、起こってしまったらもう後の祭りでございまして、未然に防止するということが極めて重要である。
 どうやって未然に防止することができるかというと、それはやはり実行した後ではなく計画と実行準備行為、それが発見されたときに初めて未然に防止することが可能になるわけでありますから、このテロ等準備罪が挙げておりますこうした二百七十七の項目は、こういった多様化したテロの形に対応する一つのアプローチ。もう一つは周辺行為ですね。テロ組織が行っている人身売買や若しくは麻薬の取引、若しくはマネーロンダリングといったそういった資金、資源がテロ組織に流入しないことを、流入することを防ぐための有効な手段としてこのテロ等準備罪は評価に値すると思っております。
 以上です。
#31
○佐々木さやか君 ありがとうございました。
 福田参考人は、TOC条約の締結によってテロ対策を国際的な連携、また体制の中で行っていくということが重要であるという御指摘も陳述の中でいただいたところであります。
 ここで山下参考人と村井参考人にもお聞きをしたいんですけれども、今回の法案について様々懸念の御指摘がございました。しかし、もっとも、福田参考人、テロ対策の専門家から御指摘があったように、このTOC条約の締結ということ自体はテロリズムの根本を絶つために重要であるというふうに私は思うんですけれども、このTOC条約の締結自体は山下参考人、村井参考人もテロ対策にとって重要、また効果があるというふうに思っていらっしゃるかどうか、ちょっとこの点を確認させていただければと思います。
#32
○参考人(山下幸夫君) 基本的にはTOC条約というのはマフィアや暴力団に対する組織犯罪対策の条約でありまして、確かに間接的な経済的利益を目的とするテロリズム集団が関係あるかもしれませんけど、主たる目的はあくまでこれは暴力団やマフィアのいわゆる組織犯罪対策であります。
 TOC条約は実は二〇〇〇年十二月に署名され、国会でも二〇〇三年にそれを批准することの承認の決議もしております。日本政府は、だからやろうとすればもうできたはずなのに、十六年間これを放置して、今回の国会に初めて、初めてといいますか、テロ対策を名目とした形でのこの法案の提出をしていますが、そんなの二〇〇三年から二〇〇六年の間でもできたわけですが、そのときはほとんどテロ対策とは言わず、組織犯罪対策だということで法案を出されておりました。
 いずれにせよ、私どもの判断では現在の現行法でもう十分対応できているので、条約の批准は単にもうそれは通知をすればいいだけなのであって、別に批准云々を十六年間もしていなかった方がむしろ怠慢であったというふうに思っております。
#33
○参考人(村井敏邦君) テロというのが何であるかというのが一つの問題だというお話もしましたけれども、各地で起きている、各国で起きている事態に対してどう対応するのかということについては、基本的には刑罰によっては防げないというのが、刑法を専門にしている人間がこう言うのもあれですけれども、基本はやはり社会政策をきちっとすることによってしか防ぐことはできぬだろうと。起きてしまえばおしまいだという。むしろ、そのテロをしようという気持ちを起こらないような社会につくる以外にないんじゃないでしょうか。
#34
○佐々木さやか君 ありがとうございました。
 最後に、福田参考人にもう一問お伺いしたいと思いますけれども、これも先ほどほかの委員の先生からもありましたが、テロ対策、国民の安全、命を守る、こういった必要性と、他方、それに対立する人権がある場合にはその保護とのバランスを取らなければならないと、この点についてこれまで福田参考人は研究をされてきたというふうにも陳述の中でおっしゃっておりました。民主主義的アプローチというような言葉もございましたけれども、重要なところなので、重なりますが、そうしたことをこれまで研究されてきた福田参考人から御覧になって、今回のテロ等準備罪を含む改正法案についてバランスが取れているというふうにお思いになるか、またその理由について教えていただければと思います。
#35
○参考人(福田充君) テロ対策だけではなく危機管理全般に言えることでありますけれども、当然テロ対策においても、人々の生命や命を守る、つまり安全、安心という価値と、それを強化し過ぎると人々の自由、人権の価値と対立するという、この安全、安心と自由、人権の価値というのは対立することが常に起こり得ることであります。こういった安全、安心と自由、人権のバランスをどうやって守っていくかということが、これこそ国民の合意が必要でありまして、そしてかつ、合意形成のために議論することが重要であるということをもう二十年間ずっと言い続けてまいりました。しかしながら、なかなかそれは進まなかったわけであります。
 私自身は、戦争に関する議論、法案、法整備は平和なときにこそやるべきだと思っております。テロ対策の議論は、テロが余りまだ起こっていない平和な時代にこそ冷静に合理的に議論すべきだと思っております。だからこそ、今、日本でこうやって自由や人権が守られている状況において、そしてテロリズムが頻発していないこの平和な日本の中でこそ、今テロ対策の在り方を冷静に合理的に、そしてかつグローバルな視点で考えたときに、どうやって日本人が今までのようなドメスティックな感覚ではなくグローバルな視点でテロを、どうやって立ち向かっていくか。
 これはやはり、ボコ・ハラムが少女を誘拐して人身取引していることが私たち日本人と関係ないことでありましょうか。若しくは、タリバンが麻薬を栽培して、そしてそれによってテロを行っているということが私たち日本人と関係ないことでありましょうか。日本国内の銀行若しくは日本の国内のインターネットのサーバー等がそういったテロ組織によって利用されてきた、抜け穴であったという時代が続いてきたわけであります。そういった国際的な状況を鑑みたときに、今やはり自由と人権、そして安全、安心のバランスを公平に議論できる場が、今まさにこの平和な日本で整っていると思います。かつ、今回このテロ等準備罪が、テロ対策において安全、安心、そして自由、人権のバランスが議論できる非常に重要な場になったと認識しておりますし、非常に重要な議論がこれまでなされてきたと思っております。
 そういう意味では、まだまだ合意形成には、これから更なるテロ対策の歩みの下で安全、安心と自由、人権のバランスの追求というのは続けていかないといけないと思っておりますけれども、その第一段階として、このテロ等準備罪の議論の中で安全、安心と自由、人権の議論はかなり進んできたというふうに思っております。
 そしてかつ、このテロ等準備罪において、グローバルな観点で見たときに自由、人権に配慮されているかどうかということにつきましては、陳述でも申し上げたとおり、非常に抑制的で謙抑的だと思っております。
 以上でございます。
#36
○佐々木さやか君 終わります。ありがとうございました。
#37
○山添拓君 日本共産党の山添拓です。
 参考人の皆さん、今日は大変ありがとうございます。
 TOC条約の立法ガイドを作成されましたニコス・パッサス氏は、今月の初めにもロンドンの中心部でテロがあったことなどを指して、英国は長年TOC条約のメンバーだが、条約を締結するだけではテロの防止にはならないと、こう述べておられます。
 こうした意見についてどうお考えになるか、三人の皆さんにそれぞれお答えいただければと思います。福田参考人からお願いします。
#38
○参考人(福田充君) テロ等準備罪が成立すると全てテロ対策について万能に機能すると考えるのは間違いだと思います。
 非常に有効に機能する側面はありますけれども、しかしながら、これは、テロ等準備罪でカバーできる幅広い二百七十七の項目を規定するということと、それは空間軸のような把握になりますけれども、それを実行段階より以前の段階で捕捉することができるようにする、これ時間軸の問題だと思いますけれども、その両者をカバーすることによってテロ対策を次の段階に進めるという一つの契機になっていると思いますが、しかしながら、この法制度をより有効に運用していくためには、実際の日本に今存在しております情報機関若しくはインテリジェンス機関が更にテロ対策のためにより有効な手段を用いてインテリジェンス活動を、そしてかつ日本の合法的な範囲内で、日本国憲法の範囲内で、そして日本の法制度の範囲内でインテリジェンス活動を実施する、そしてそれを強化するということが伴わなければ、このテロ等準備罪も有効に機能、もう機能しない可能性もあるかとは思います。
 以上でございます。
#39
○参考人(山下幸夫君) 御質問はTOC条約を締結したらということですけれども、百八十七か国が既に締結はしておりますけれども、アメリカ、フランス、そしてイギリス、そういう主要な国においてもテロが起きております。この条約を締結したからとか、それに対する法律ができているからとか、とりわけイギリスはコンスピラシー、共謀罪の発祥の地でありますけれども、そういうものがあるからテロを防げるとか、そういうことはございません。基本的には、きちっとした事前の情報をどれだけキャッチし、対応できるかという方が大事でありますし、そういう条約に入っているからとか法律ができたからそれでテロが防げる、そんなことはないと思います。
 先ほど村井参考人言われたように、まずテロを根絶するために努力をする必要がありまして、そういう法律や条約というのはあくまでも、それがあるから何かそれで解決をするというものではないと考えております。
#40
○参考人(村井敏邦君) 私もそうで、条約で、それだけでは駄目で、インテリジェンス活動等をする、かえってその方が怖いですね。そういうので情報を収集する、そしてテロと目される人を事前に何とかしようというのでは、実際それは有効には機能しないというふうに言われてきておりますが、仮にそれが有効に機能したとしても、それは我々が望む社会ではないだろうというふうに思います。
 先ほど来言っているように、やはりテロを起こすのを防止するということであって、テロを起こす気持ちをなくすためには、やはり今問題になっているISなどですと、貧しい状態をなくしていくということによって、ISに加入する人たちも少なくなるだろうし、ISの被害を受ける人たちも少なくなるという形になるので、これこそ国際協調をしてやらなければならないことであって、それでなければ、どんな厳しい条約を作ろうとも根絶は難しいというふうに思います。
#41
○山添拓君 ありがとうございます。
 村井参考人に伺います。
 現在の組織犯罪処罰法は、組織性を根拠に刑を加重するものとなっています。組織的に犯罪が行われた場合には目的実現の確実性が高いと、そこで重大な被害や莫大な不正の利益を生む蓋然性も高いから刑を加重するんだと説明されています。一方、共謀罪の法案では、同じような理屈で、現在は罪にならない行為、計画と準備行為の段階を罪にするんだと言っています。
 その刑を重くする理由と処罰する理由とを同じく組織性を根拠に説明していることについてどのようにお考えでしょうか。
#42
○参考人(村井敏邦君) 少し、矛盾ではないですけれども、違うことだろうというふうに思いますね。組織的に行われることについては、被害が大きくなるから、その被害の大きさということを考えて刑を重くするというのは従来から考えられてきたことであるわけです。しかし、だから計画準備段階、要するに実行行為がなくてもいいんだというのは、組織性とはそれ自体としてはつながってこないことだと思います。
 この組織性を付け加えたのは制限する意味だというように言われてきておりますけれども、組織的犯罪対策法の中でも既に、組織的な犯罪集団という言葉は使われてこなかったけれども同様の議論がされてきているわけですけれども、その中で行われてきている組織性というのは、基本的に計画とか準備とかという事前のを取り締まるという形のものではない議論をしてきたわけで、だから、計画とか準備とかに組織性がどういう形でかぶってくるのか、もうこの辺もよく分からぬのですが、私は、違う問題だというふうに言わざるを得ないだろうというふうに思います。
#43
○山添拓君 同様の観点の質問なんですが、政府は、共謀罪を処罰する必要性については、組織的犯罪集団が計画し実行準備行為を行ったこと、これを総体として見ると危険だから処罰に値するんだと、こういう説明をしています。やはりここでは組織性に重点が置かれているわけですが、一方で、共謀罪は実行の着手前の行為を処罰するものであって固有の保護法益はないのだと、専ら計画をした犯罪によって保護される法益の保護に資するものだと、こういう答弁もしています。
 この保護法益と処罰の必要性についてのこうした説明のされ方についてどのようにお考えでしょうか。
#44
○参考人(村井敏邦君) 先ほども言いましたけれども、処罰を早期化する、要するに行為がなくてもその前の段階で危険があれば処罰していこうという一つの傾向に沿った考え方だというふうに思いますけれども、この危険が具体的でなければ処罰しないというのが基本的な考え方です。ところが、準備とか計画というのは準備的行為を要求するけれども、そこまでの危険性はなくていいんだというふうに言われてきている。したがって、危険性も基準にはならない。法益侵害の危険性ということがせいぜい処罰するための条件なんですね、最低限の条件。ところが、その危険性さえなくても処罰していくというのは、これは先ほど来言っているように、刑法の基本的な考え方とは違うわけですね。
 しかも、今回の場合に問題なのは、これまでも共謀罪はあったじゃないかというふうに言われる。確かに個別的にはありました。個別的にはありましたけれども、それはあくまでも個別的犯罪で数少ないものであったんですが、二百七十七というのは刑法の全条文よりか多い数の共謀罪が設けられる。しかも、数え方によっては、二百七十七です、過ぎないわけですね、超えているというようなものを設けるというのはもう私なぞの想像を絶する状態でして、それをそのまま認めるわけにはいかないということになります。
#45
○山添拓君 ありがとうございます。
 先ほど村井参考人からもお話があったんですが、法案に言う準備行為について、これはオーバートアクトとは違うのだと政府は言っています。オーバートアクトは意思の発現として行われる明らかな外的行為だと、例えば計画の後にまたその計画を話し合うような場合もこれ含まれるわけですが、法案に言う準備行為ではこれは当たらないんだと言っています。そこで、共謀罪法案の実行準備行為の方がアメリカの法律よりも厳格な要件だとして規定しているんだと、こういう答弁をしています。いわゆるオーバートアクトよりもむしろ厳しいんだと、こういう説明をされているわけですが、この点についてはどのようにお考えでしょうか。
#46
○参考人(村井敏邦君) もしそうならば、準備罪というのは確かにあります。通貨偽造罪における準備罪というのがあるんですが、これは予備罪と考えられているんですね。要するに、その実行行為をする危険性が高いものについては実行行為前に準備罪として処罰すると、予備罪です。予備罪という形ならば理解できます。しかし、予備ではないということを言っている。予備までの危険性を必要としないんだということを言いながら、オーバートアクトではないからより慎重なんだというのはちょっと通らない議論だろうというふうに思います。
#47
○山添拓君 ありがとうございます。
 また改めて村井参考人に伺うんですが、TOC条約はテロ対策ではないという意見が様々あり、また条約締結のために共謀罪を設ける必要もないのだと、こういう意見が内外で上げられておりますが、それでも政府が共謀罪法案を通そうとすると。その背後にある狙いといいますか目的、これは何だと村井参考人の方はお考えでしょうか。
#48
○参考人(村井敏邦君) 政府に聞かなきゃ分からないので私が答える筋合いのものであるかどうか分かりませんけれども、特定秘密保護法については、小笠原みどりさんがインタビューした中でエドワード・スノーデンが言っているのは、これはアメリカの先ほど来出ているインテリジェンスからの示唆で作られたものであるというふうに公然と言っておるわけですが、これを否定するのかどうかというのは分かりませんけれども、そういう背景がある。この共謀罪については確証はありません。しかし、やはり英米の制度をそのまま入れようというのが基本なわけですね。で、批判があったので計画罪というような形にしたということになるので、アメリカとの関係というのは非常に重要な要素であろうかというふうに思います。
 それから、基本的に何が問題なのかというと、先ほど国際協調という言葉が出てきましたけれども、共謀罪を制定しないことにはそれについての国際協力が得られない、情報が得られない、あるいは情報を提供できないというようなことが背景にあるのかなというふうに思います。この辺は憶測です。憶測ですから実際のところは分かりませんけれども、確かに国際的に認められなければできないというようなのが背景にあるんだろうというふうには思います。
#49
○山添拓君 政府が率直に狙いを語ってくれればそれはそれで分かりやすいわけですが。
 最後に、山下参考人に伺います。
 日弁連や各地の単位弁護士会、共謀罪反対を掲げていろいろ運動にも取り組まれています。市民の世論にそうした運動がどのように広がり、またその中で変化があるとこの間お感じだろうかということをお聞かせください。
#50
○参考人(山下幸夫君) やはり、日弁連も含め弁護士会は、二〇〇三年から二〇〇六年にかけて国会に出されたかつての三度廃案になった法案のときから反対運動をし、反対の声明を上げてまいりました。今回も全ての弁護士会が反対の声明を上げているところでありまして、少なからずそれはやっぱり市民に対してこの法案が危険であるということを伝える役割を果たしてきている。この間、ようやくといいますか、だんだん市民の間でもこの法案は大変危険なものであるという、そういう考えが広まってきているのは、やっぱりそういう弁護士会の活動も少しそれなりにそのお役に立てているのではないかというふうに考えているところであります。
#51
○山添拓君 ありがとうございます。
 福田参考人からは、安全、安心と自由、人権、これは対立し得るものだと、バランスが大事なのだというお話があり、そのための合意形成が必要だという御指摘がありました。この国会の中でも、また内外から、合意に至るような状況にはないということがあろうかと思います。この共謀罪の法案、徹底審議を尽くしていくべきことを引き続き強調して、私からの質問を終わらせていただきたいと思います。
 ありがとうございます。
#52
○東徹君 日本維新の会の東徹でございます。
 今日は、三人の参考人の方々、本当にお忙しい中、ありがとうございます。
 まず、福田参考人の方からお聞きをさせていただきたいと思います。
 昨今、海外で起きるテロ事件、日本でもオウム真理教の地下鉄サリン事件、これも福田参考人の方からもありましたけれども、日本でもありました。特に昨今、非常にテロが世界各国で多発しているという現状も、私もそのように思っておりますし、それに対してのやっぱり危機感、未然に防いでいく、非常に大事であるというふうに思っています。また、日本ではテロだけではなくて、例えば特殊詐欺といいまして、振り込め詐欺とか、それからまた還付金詐欺とか、今そういった組織犯罪というのも行われておりますけれども、何といっても人々がまずは何とか防いでほしいと思うのはやっぱりテロだというふうに思います。
 世界各国でテロを未然に防ぐ、そういったことをやっているんだろうと思いますけれども、福田参考人からお話がありました。非常に私は大事な視点だというふうに思っています。安心、安全な社会をやっぱり一方ではつくっていかなきゃいけない、ここはもう本当にそのとおりであります。
 ただ、その安心、安全な社会をつくっていくことによって、ある一定、自由とか人権とか、こういったものがやっぱり狭められていく、こういった事実もやはり確かにあるんだろうというふうに思っておりますけれども、世界各国では、そういった安心、安全に対する取組と自由、人権のその価値をどう、自由、人権を狭められていくことに対してどう国民が受け入れていくのかとか、そういうところについての国民の受け取り方、こういったところについて、もし御存じであればお教えいただきたいなというふうに思います。
#53
○参考人(福田充君) 私自身は、日本のテロ対策以外はイギリス、アメリカのテロ対策が専門でありますので、やはりアメリカやイギリスの事例になってくるかと思いますけれども、やはりそれぞれの国によって歴史的事情が余りにも大きく異なりますので、例えばイギリスは、もう一九七〇年代、八〇年代からアイルランド共和国軍との爆弾テロに対するテロ対策を非常に強化してきた歴史があり、そして、だからこそ、イギリス国民もそのテロ対策によって得られる安全、安心の方を享受する、そういったテロ対策を受け入れるという歴史が長くイギリスにはあります。しかしながら、だからといって、イギリスが超監視社会になって自由や人権が非常に損なわれているということに対するイギリス国民の反感とか不安というものは増大していない傾向があります。
 それは、やはりテロ対策というもの自体が非常に多様的なアプローチがあり得るということでもあり、先ほどから村井参考人、山下参考人からの御指摘もありましたけれども、おっしゃるとおり、テロは監視し続けて未然に防止するということも非常に重要なんですけれども、それ以外にも、マイノリティーのコミュニティーを見守りながら、何というんでしょう、貧困問題、教育問題、就労問題、そういったことをフォローアップすることによってマイノリティーの少数者の方たちが過激化しないようにする、コンテストプログラムと言ったりしますけれども、イギリスの中では、そういうアプローチも存在します。又は、インテリジェンス活動を民主的に実行していくための議会による委員会活動のようなものもきちんと定着しております。
 様々な多様なテロ対策のアプローチの中の一つとしてこういったテロを未然に防ぐための法制度の構築というものが、イギリスの中では歴史を掛けて時間を掛けて構築されてきましたので、社会の反動とかそういったものはなかったという状況があります。
 一方で、アメリカはやはり九・一一以前と以後ではかなり違った様相を呈していると思います。
 やはりアメリカは自由と人権の国でありますから、安全、安心よりもやはり自由、人権というものが尊重されてきた時代が長く続いておりましたけれども、やはり二〇〇一年の九・一一アメリカ同時多発テロ事件以降、ブッシュ大統領によって行われてきたパトリオット法の整備もそうでありますし、国土安全保障省、DHSによるテロ対策の強化もそうであります、先ほどから出ておりますスノーデン事件で問題になりましたNSAによる通信監視等の監視、そういったものが更に強化されていくという過程の中でブッシュ大統領の支持率がどんどん低下していったと。その結果オバマ大統領が誕生したという経緯もありますので、やはりアメリカは、二〇〇〇年以降は、こういったテロ対策の在り方と自由、人権の在り方について国民が非常に、何というんでしょう、慎重に考え、かつ、社会に不安を感じた場合にはその政権に対してノーを突き付けるということを政権交代ということを通じてやってきたという経緯はアメリカにはあると思います。
 それぞれの国にそれぞれの事情がありますので、日本は、やはり先ほど申し上げたとおり、現在この平和な状況の中で合理的に理性的にテロ対策のことを考えるということが極めて重要だと認識しております。
 以上です。
#54
○東徹君 ありがとうございます。
 それでは、続きまして山下参考人の方にお伺いをさせていただきたいと思います。
 今回のテロ等準備罪にかかわらずなんですけれども、最初に陳述の中でお話がありました、冤罪が起こる可能性があるというふうなお話もありました。過去にもそういったことがあったんだろうというふうに思っておりますけれども、冤罪を防いでいくために、例えば弁護人の立会いとか、それからまた取調べの可視化、録音、録画であるとか、そういったことについては何か御意見がありましたらお聞かせいただければと思います。
#55
○参考人(山下幸夫君) 取調べの録音、録画につきましては、やはり弁護人の立会いを必ずそれと一緒に併せてやることが必要であると思っております。
 今回といいますか昨年、刑事訴訟法の一部改正によって、数年後には取調べの録音、録画が義務化されるわけですが、そこでは弁護人の立会いがないわけですので、被疑者の方が、とにかく取調べが録音、録画されるということだけでありますので、それではやっぱり防御権を適切に行使することができない、黙秘権を適切に行使することができないと思います。やっぱり弁護人の立会いというのを必ず一緒にやることによって初めてそれで被疑者の防御権が保障されるのではないか、その意味ではまだ昨年の刑事訴訟法改正でも不十分な点でございますし、今後、やはり取調べの可視化だけではなく、弁護人立会いと併せてそれが実現されていくことが必要ではないかと私は考えています。
#56
○東徹君 ありがとうございます。
 続きまして、村井参考人にお伺いをさせていただきたいと思います。
 テロ等準備罪の関係でよく出てくる罪の中で陰謀罪とか共謀罪がございます。既に現在も一部の犯罪については法制化をされておるわけですけれども、陰謀罪には内乱罪とか、それから共謀罪には爆発物取締罰則、爆発物の使用などがあります。
 よく今回のテロ等準備罪、内心の自由を侵す憲法違反だというふうな話もありますが、この陰謀罪とかそれから共謀罪、こういったことについてはそういった議論というのはあったのかなかったのか、今現在どうなのかとか、もしお考えとか知見がございましたら是非お聞かせいただければと思います。
#57
○参考人(村井敏邦君) 日本の最初の共謀罪の規定というのは爆発物取締罰則でして、これは当時、明治初期ですが、の自由民権運動を抑圧するための法律として設けられたものなんですね。したがって、このとき、爆発物取締罰則の制定そのものが、自由、人権という点からいうと大変問題のあることで、これがなぜ制定されたかというと、これは実はイギリスの当時のエクスプロージョンアクトというのをそのままそっくり持ってきて、その中に共謀罪というのが入っていたので、それをある意味で日本語化したというものなので、十分にその内容が確かめられた形で制定されたというものではないので、先ほど御質問のような議論があったかということになると、そもそもがそういう形で自由民権運動を抑圧すること自体に対する反対があったということですね。
 それから、内乱陰謀罪については戦前からあるところで、その中における陰謀という行為について、これもどちらかというと英米、ドイツなどの議論との関わり合いで制定されてきたので、深められた議論はされていないと言わざるを得ないだろうと思います。
 そのほか、最近のものですと特定秘密保護法の中に共謀罪というのを設けられました。これはこれ自体として問題だというふうに私は指摘しております。
#58
○東徹君 ありがとうございます。
 続きまして、山下参考人の方にお伺いしたいと思うんですけれども、TOC条約そのものはテロ防止を目的としたものではないというふうなこともありますが、ただ、昨今の世界情勢を見たときに、テロ対策というのはやっぱり喫緊の課題であると思いますし、現に未然に防げているケースもやっぱり世界ではあるというふうに聞いております。
 このテロ等準備罪、これを作っていくことによって、確かにTOC条約を制定したときは、当初はテロが目的ではなかったかもしれませんが、昨今の現状を考えていけば、やっぱりテロが頻発している状況、そういったことを考えれば、こういうテロ等準備罪という法律であったりとか、そしてまた、そのことでもってテロを抑止していく効果というものがあるんではないのかなというふうに思ったりするわけですけれども、その点については山下参考人はどのようにお考えでしょうか。
#59
○参考人(山下幸夫君) 先ほどから言っていますけれども、日本は国連の十三のテロ関連条約に加盟しておりますし、テロに関する様々な対策は取られております。TOC条約についても、私は先ほど言ったように現行法でもうそれで満たしているとして批准可能であると思いますので、別にTOC条約にすぐに加盟すればいいだけでありまして、何か私は政府がむしろ国内にその二百七十七の計画罪を作るためにあえてそれをこれまで批准しないで来ているだけではないかというふうに思っているところであります。
#60
○東徹君 以上で質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。
#61
○糸数慶子君 沖縄の風、糸数慶子です。
 参考人の皆様には大変貴重な御意見をいただき、感謝申し上げます。
 まず、福田参考人と山下参考人にお伺いをいたします。
 世界最強の盗聴システムを持つアメリカ、そしてフランス、共謀罪の発祥国と言われるイギリスなどで、テロ対策が進んだ国ですが、その国でここ数年テロが多発しています。テロ対策の監視対象が多く、情報処理が追い付いていないのではないかとも言われておりますが、テロ対策を行うことがテロを防止することにつながるのか、そもそもこの法案がテロ対策となり得るのかについてそれぞれ御所見をお伺いいたします。
#62
○参考人(福田充君) このテロ等準備罪がテロ対策として有効に機能するかどうかということに関しましては、テロ等準備罪が規定している効力が及び得る範囲内で有効に機能するというふうに考えております。
 それは、ここに挙げられております二百七十七の行為は確実に計画と実行準備行為の段階で処罰できるという環境を整えるわけでありますから、その環境を整えた上で、その二百七十七の項目がカバーしている項目をテロ対策として実施することが可能になります。やらなければできないわけですから、この二百七十七の項目をカバーすることが環境的に整うことによって、今後テロ対策というのはより多様な方法で実施することができると思っております。
 かつ、しかしながら、それがイコール一〇〇%テロ事件を防止できることに直結するかというのはそれはまた別問題でありまして、御指摘のとおり、アメリカやイギリスやフランスでも共謀罪やこういったテロ対策の法制度は進んでおりますし、監視のインテリジェンス活動も年々強化されております。
 実際にイギリスで発生した複数のテロでも、容疑者は実際にはこういった捜査当局からの監視対象であったということも言われております。監視対象であったけれども、しかしながら、インテリジェンス機関は見逃してしまうことがあるということであります。これは情報の5W1Hという問題もありまして、そのうちのフー、誰が危険人物かということはインテリジェンス機関も捕捉することはできるんですけれども、ホエン、いつ、ホエア、どこでそのテロが実行されるかというのは極めてインテリジェンス機関としても捕捉することが難しい状況があるということは各国同様に抱えている問題であります。
 しかしながら、このインテリジェンスの活動については今回のテロ等準備罪の問題とは本質からやや外れるところだと思いますので、私の発言は以上としたいと思います。
#63
○参考人(山下幸夫君) 私は、別に今回の法案を成立させなければテロを防ぐことができないとか、そういう関係にはない。先ほどから言っておりますけれども、こういう法律ができたからテロを未然に防止できるわけではなくて、様々なそれ以外の、既に現行で我が国はたくさんのいろいろなテロ対策も含めた犯罪対策をしておりますし、こういう法律があるからテロを防げるわけではない。先ほどから言っているように、テロを根絶するために平和な世の中をつくるような活動をしていくことこそがテロを防ぐわけであって、こういう処罰規定を、しかも二百七十七も処罰できる計画罪を作って国民を不安にする、国民の日常的監視が不可欠になる、そのような法律を作ることは百害あって一利なしであるというふうに思っております。
#64
○糸数慶子君 先ほど福田参考人は、今回のテロ等準備罪とインテリジェンスは関係ないという意味合いの発言がありましたけれども、山下参考人はこの件についてどうお考えになるでしょうか。
#65
○参考人(山下幸夫君) 先ほどから言っておりますけれども、基本的に、組織的犯罪集団であるかとか、そこが計画をしたのかとかその準備行為をしたのかって、これはもう日常的に特定の団体の構成員又はその周辺者を監視しなければそういうことを摘発したり検挙することは不可能でありますので、それが不可欠になる。そうなりますと、現在は恐らくそれはいわゆる行政警察活動として公安警察が情報収集活動としてやっておりますけれども、今後はそれを捜査として計画より前の段階から日常的にそういう監視活動を行うことが可能になる。
 そのような意味において、極めて危険なといいますか、国民のプライバシーや人権が侵害されるおそれのある極めて問題の多い法律であるというふうに思っております。
#66
○糸数慶子君 次に、村井参考人に伺いますが、五月三十日のこの法務委員会で、いわゆるロス疑惑、この事件の被疑者とされた方が、我が国において殺人罪で無罪が確定した後に、サイパンにおいてアメリカのロサンゼルス警察により殺人の共謀罪容疑で逮捕されたそのケースを引いて、今回の法案の計画罪については、独立罪としてその計画を実行した場合に成立する犯罪とは別個に二罪として処罰されるのか、それとも実行して成立する本犯に吸収されるのか尋ねましたところ、林刑事局長は、計画した犯罪が実行された場合にはテロ等準備罪を処罰する必要性は認められないので、結果的に実行された犯罪が処罰されるときはこれに吸収されると答弁していらっしゃいますけど、これについてどのような見解をお持ちでしょうか。
#67
○参考人(村井敏邦君) アメリカの場合には、吸収されずに独立で処罰されるというのがある意味では共謀罪の一つの大きな特徴なんですね。日本の場合には、従来のやり取りの中でも吸収されるというふうに言われてきています。ただ、吸収されるという保証はありません。
 先ほども言いましたけれども、今度計画罪になった場合に、共謀罪について議論したものが、共謀共同正犯ですが、共謀共同正犯と計画罪というのは別物であるというように議論することも可能なのですね。刑事局長がそういうふうに、いや、吸収されるんだということを言うならば、この計画罪というのはもう少し共謀罪に接着したものでないと、接着というのは似たような形じゃないと、ちょっと吸収というのでなくて独立罪だという議論も出てくる可能性があります。
 その辺りは、しかし捜査機関としてはどちらでもいいんですね。吸収されようが何であろうが、計画罪というのが察知できれば捜査ができるということになりますから。その辺りは、しかし大変、吸収されるというんじゃなきゃ日本の従来の法制度からいっておかしいだろうというふうには思いますが、保証はないというように言う以外はないだろうと思います。
#68
○糸数慶子君 山下参考人にお伺いいたしますが、スノーデン氏によるXキースコア情報の、先ほど省略をされました、レジュメにはありますけれども省略をされましたが、この点についての御意見をお伺いしたいと思います。
#69
○参考人(山下幸夫君) 最近、スノーデン氏はXキースコアという、ネット上でキーワードを入れると、その発言というんですかね、そういうことを言っている人をサーチして情報が得られるという、そういうソフトをアメリカの国家安全保障局、NSAから日本政府に既に提供されているという、そして今後、この共謀罪、計画罪が、法案が実現すればそういうものが、そのツールが使われるようになるであろうということを彼が最近発言しているところであります。
 したがって、そういう形でネットのいろんな様々な情報、この間、金田法務大臣なども、LINEとかそういうあらゆるSNSにおける様々な情報のやり取りも、それも計画の手段としてあり得るということで、それが捜査の対象になり得るということを認めているところですが、このXキースコアという、そういうソフトというかツールもそういう形で使われるおそれがあるということでございます。
#70
○糸数慶子君 村井参考人にお伺いいたしますが、本法案がテロ対策にはならない、むしろ弊害が大きいという見解を先ほども述べられました。村井参考人が考えられる最も有効なテロ対策、あるいはテロが起こらないために何が大切であるというふうに考えられていらっしゃるでしょうかということと、これから政府や政治家に求められるものがありましたらお伺いしたいと思います。
#71
○参考人(村井敏邦君) 恐怖政治をしくつもりならば、有効なのは、ターゲットとされる危険な人物に全部監視を付けて、監視どころか拘置してしまうということがいいでしょう。そういうふうに提案、そういうふうにしなければテロは防げないんだというふうに言っている元捜査官もいるようです。しかし、これは私の推奨するところでない。これはかえって大変恐ろしい事態になる。まさにテロリズムです、これが。本当の意味でのテロリズムがこれだろうというふうに思いますが、だからこういう社会にはしたくない。
 そうするとどうするかということになると、一朝一夕の形ではいきませんけれども、現にイギリスでもフランスでも起きていますが、ISに走る人たちに対してどういう対策をするかというと、子供たちの意見ですね、特に子供や青年の意見をよく聞いて、その不満、問題とするところを酌み上げて対策を立てるという形で、福祉政策ですけれども、行う、あるいは就職を世話する。そういう形での、もし今国際的なテロをISという形で仮に例として取るならば、そういうのが国際的に行われているところです、民間団体において、民間の個人がですね。そういう形を我々もやらなきゃいかぬだろうということになります。そういう形でないとなかなかテロに走る人たちを抑えることはできないだろうと。
 それから、自由をやはり享受することの楽しさを人々に感じてもらう以外ないですね。自由を抑圧することによってテロを防ぐんではなくして、自由というのがいかに大事であるかということを知ることによってテロに走ることはなくなるだろうというふうに思っております。
#72
○糸数慶子君 山下参考人にお伺いしたいと思います。
 衆参これまでの審議もされておりますけれども、今後、国会審議に、どういうような国会審議を望まれるのでしょうか、お伺いいたします。
#73
○参考人(山下幸夫君) 冒頭の意見でも述べましたけれども、単に時間が経過したから可決するとかではなく、やっぱり徹底した審議をしていただきたいということと、国連の特別報告者のカナタチさんからもあのような指摘があったわけですから、そのような声にも耳を傾け、また様々な、今後この法案が適用されるかもしれない例えば沖縄の現地で運動に関わっている方とか、そういう声も聞きながら、もっと慎重に、そして時間を掛けてじっくりと、やっぱり刑事法の体系を、根本的にこれを変えようとする法律ですから、時間を掛けてしっかり国民の納得のいく、そういう議論をここでしていただきたい。
 というか、今日、例えば今日とか採決をすることなく、とにかく時間を掛けて、この国会で採決するのではなく時間を掛けて、半年でも一年でも時間を掛けてしっかり議論をして、国民の納得の得られる形でこの議論を尽くしていただきたいと思っております。
#74
○糸数慶子君 終わります。ありがとうございました。
#75
○山口和之君 無所属の山口和之と申します。
 今日は本当にありがとうございます。
 まず、村井参考人にお伺いしたいんですけれども、とはいっても、テロを防ぐための法律というのはある程度やっぱり必要なんだと思うんですけれども、現状で十分なのか、どうあるべきなのか。先ほど二百七十七がなければ駄目だという福田参考人の話がありましたけれども、それに対する反論とか、もしございましたらお伺いしたいんですが。
#76
○参考人(村井敏邦君) 一番最後のところからいきますと、二百七十七の犯罪、共謀罪を設けることによって、それを徹底すればテロ対策大丈夫なんだという趣旨の発言がありましたけれども、二百七十七の捜査をし、それを起訴し、有罪にするということは可能なのかですね。現在の捜査陣の中で二百七十七もの犯罪を共謀罪で摘発することが可能なのかというと、これは今の体制では不可能だろうというふうに思います。
 まず、捜査の端緒をどう発見するのかですが、これには、刑事局長のあれにもありましたけれども、自白を求めるという形ですね、共謀者の自白を求めるということです。共謀者からの自白や自首を求める、だから自首を奨励する、密告の奨励ということになるわけですけれども、それを奨励することによって捜査の端緒を得るんだというのが法案の趣旨なわけですね。
 しかし、それは、しっかりとした組織の場合にはその中から密告者が出るということは期待できない。そうすると、その中に、組織の中にスパイを送り込む等の手段を取らなければならない。ところが、これはアメリカなどではインフォーマントというのである意味での制度化はされているんですが、日本の場合にはこれは基本的には違法な手段です。でも、それをしないと実際上の情報は得られないだろうということになる。そういうようなものを設ける形で、それから捜査として令状のないような捜査も可能にするというような、これは福田参考人も決して賛成されるわけではないですけれども、現にイギリスではそういうような措置もとられたということもあると。
 だから、こういうような手段でテロを撲滅するというのは、少しというか、かなり危険があるので、そういうような手段を取らないということになると、現在のシステムの中でどうしていくかということですと、危険が現に生じた場合には、決して共謀段階でなくても、予備やあるいは実行行為未遂、あるいは実行されれば実行行為で処罰することが可能なので、刑罰の発動というのはそういう形で行い、そうでない部分で十分な対策を取る以外にないだろうというふうに思います。
#77
○山口和之君 ありがとうございます。
 じゃ、山下参考人にも、二百七十七がなければということに対する反論がございましたら。
#78
○参考人(山下幸夫君) 当初、長期四年以上という重大犯罪の定義によりますと六百七十六あったものを二百七十七にしたということですけれども、どうしてそれが二百七十七なのか。そして、その中には、この間指摘されていますように、なぜか公務員の公務員職権濫用とか特別公務員暴行陵虐とか、政治家の政治資金規正法とか公職選挙法とか、そういうものは除かれ、保安林にキノコを取りに行くというような森林法違反は残るとか、なぜそれが二百七十七になったのかという経緯も含めて極めてよく分からないわけですし、元々外務省は六百七十六を、つまり長期四年以上を全てを作らなければ条約を批准できないと言っていたのが二百七十七でもよいとなったわけですから、別にそれは百でもよい、五十でもよいということだと思いますので、どうしてこれが二百七十七という中途半端なところにとどまっているのかよく分からないですね。
 ですから、いずれにせよ二百七十七というのは物すごい数、現在の日本にある陰謀罪、共謀罪は二十一しかありませんから、十倍以上ものものを新たに作るという必要があるとは到底考えられない。でありますし、本当に必要なものであれば本当に一つ二つ検討すればよいのであって、どうして二百七十七、つまり六百七十六から減らしていくという発想をしているから二百七十七という半分ぐらいに収めているわけですけど、むしろゼロから一つずつ、これが要る要らないという検討をしていけば、ひょっとしたら一つでも二つでもいいのかもしれないわけでありまして、いずれにせよ二百七十七という数字は極めて本当に恣意的なものではないかというふうに思っております。
#79
○山口和之君 福田参考人にお伺いしたいんですけれども、山下参考人の方から出ましたけれども、現行法でもTOC条約に批准できるのではないかという話がありましたけれども、もし、いやいや、そうではないぞという御意見がありましたらお伺いしたいなと思います。
#80
○参考人(福田充君) 私自身は、やはりTOC条約に加盟する、締結するために今回の法制度の改正は必要であると判断しております。
 そしてかつ、先ほどから六百七十六が二百七十七に減らされていった過程ということにつきまして、これが政府若しくは官庁の中でどういうふうな経緯で進んだかは私は全く存じ上げませんけれども、テロ対策の研究者から見ましたら、千から二百七十七に減らそうとも、ゼロから数え上げていっても、今挙げられております二百七十七の項目というのは非常に、例えばアメリカでパトリオット法の中で示されているような、若しくはアメリカのDHSが確立しているような国家社会基盤保護計画、NIPP等ありますけれども、その中でも十七の項目の社会の重要インフラの監視とテロ対策というのが強化されています。そういうものもきちんとこの二百七十七の中には網羅されておりますし、そしてかつTOC条約等が求めている様々な組織犯罪のものも網羅している。そういった様々な欧米の法制度の中で、テロ対策の中で必要とされている項目群を精査して検討された結果、十分、二百七十七項目の中で網羅されているという認識を私自身は持っております。
#81
○山口和之君 それでは、福田参考人にお伺いしたいんですけれども、環境が違うかもしれませんけれども、この二百七十七の法律があった場合、イギリス等でいろんなテロとか行われているんですけれども、これ、どれぐらい防げるものなんでしょうか。
#82
○参考人(福田充君) どれぐらい防げるかという定量的な数字は持ち合わせておりません。
 やはり、それは国家機密に関する法律等もありますので、欧米でもテロ事件が発生した発生認知件数は分かります。しかしながら、未遂で終わったもの等も、報道で明らかになった部分については認知することができますけれども、それ以前の段階で抑止されているものというものもたくさんございますので、これが日本に導入された結果何%ぐらい抑止できるかという数字は私自身持ち合わせておりませんけれども、しかしながら、実際にこうした具体的なその二百七十七の項目が挙げられ、そして、それが捜査の対象となるということによる抑止効果というものも存在し得ると思いますし、そしてかつ、それによって事前にテロの実行が防がれる事例はこれから出てくるであろうと、印象論ではございますけれども、認識しております。
 以上でございます。
#83
○山口和之君 イギリスでいろんなテロが起きていましたけれども、もしイギリスにこの法律があった場合、防げたものは幾つかやっぱり、どうなんでしょうかね。
#84
○参考人(福田充君) 先ほど申し上げましたとおり、イギリスは数多くのテロリズムの基本法がございます。二〇〇〇年テロリズム法、二〇〇六年テロリズム法若しくは二〇〇五年テロリズム防止法とか、あらゆる法律がございます。そしてかつ、MI5、MI6という非常に強力なインテリジェンス機関を持っていて、諜報活動も行っています。
 しかしながら、それを上回る数の過激化と、そしてかつ、それから漏れる新しい方法を使ったローンウルフ型のテロ、ホームグローン型のテロ、こういったテロの形もやはり法制度の形によって年々変わっていく現象でございます。明らかに、ホームグローンテロが発生したのは、出入国管理が国際的に強化されたからこそ、その自国内の若者を過激化させるというアプローチの反動でありますし、そしてかつ、ローンウルフ型のテロもなぜ増えたかというと、通信傍受だとか監視カメラが強化された結果、組織でテロを起こすと事前に探知されやすいからこそローンウルフ型のテロが成功しやすくなったという、そういった反動でございます。ですから、常にテロ対策の制度とそれによって抜け落ちていく新しいテロの形というのは、法制度の変化によって変わっていくことが今後も見込まれると思います。
 ですから、常に今あるテロ対策というものが現在のテロ対策に有効なのかどうかということを将来的にも検討し続ける必要があると思いますし、その第一弾として、第一歩として、このテロ等準備罪は私自身は非常に重要な施策であると認識しております。
 以上でございます。
#85
○山口和之君 福田参考人に聞こうと思っていたんですけれども、今ので答えになっていたかもしれませんけれども、先ほど来、TOCに参加してもテロが起きているじゃないかと、たくさんという意見がありましたけれども、端的に、もし追加することがありましたら。
#86
○参考人(福田充君) TOC条約自体が、陳述でも申し上げましたとおり、国際組織犯罪の防止条約でございますので、元々はですね、ですから、それによってテロが一〇〇%防止されるわけではないというのはそれは国際的な常識であります。
 しかしながら、この国際組織犯罪と国際テロリズムというものの境界線が非常に曖昧であるという現状があり、そして、その両者を車の両輪のバランスのように構築していかなければ現代の複雑なテロリズムの現象には対応できないというのが国際的な認識だと信じておりますので、そういう意味でのTOC条約の締結というのは、間接的に若しくは直接的に近い状況で日本のテロ対策に有効に機能すると評価しております。
 以上でございます。
#87
○山口和之君 最後に、三十秒ほどなんですけれども、言い足りなかったところありましたら、村井参考人からお願いします。
#88
○参考人(村井敏邦君) じゃ、私は、最後に言うとすれば、ともかく慎重な審議を再度お願いしたいというふうに思います。
 二百七十七の共謀罪というのは、一つ二つではないので、刑法の原則を大幅に変えるというような重大な法案ですので、これをもう強行採決で通してしまおうというように考えていただきたくない。参考人質疑が単なる儀式で終わらないように是非これから十分な審議を尽くしていただきたいと思います。
#89
○委員長(秋野公造君) 傍聴席に申し上げます。静粛にお願いしたいと思います。
#90
○参考人(山下幸夫君) 先ほどから言っていますように、TOC条約に加盟したからとか法律を何か作ったからテロが防げるわけではないということはもう明らかでありまして、もちろんないよりましかもしれませんけれども、それを作らなければならないとか二百七十七もの計画罪を作らなければならないとか、そのような必然性はないということだけははっきりと言っておきたいと思います。
#91
○参考人(福田充君) テロ対策には非常に多様なアプローチがあります。今日お話が出ましたとおり、マイノリティーに対するコミュニティーへの教育や貧困対策、就労対策といった長期的なアプローチも極めて重要です。これも必要なことは事実であります。そしてかつ、インテリジェンス活動の強化ということも必要でありますが、これも日本国憲法や日本の法制度の中で民主的なリベラルなアプローチというのがあり得るということを模索することが重要であると認識しております。
 しかしながら、この両者を進めることが重要でありますけれども、かといってテロ等準備罪が必要でないということにはならないということであります。やはりテロ等準備罪で二百七十七の多様な項目をカバーすることができるというのは極めて国際的にも非常に妥当なテロ対策へのアプローチだと認識しておりますので、こういった多様なアプローチでテロ対策を今後検討していくということを今後も望みたいと思います。
 以上でございます。
#92
○山口和之君 どうもありがとうございました。
#93
○委員長(秋野公造君) 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。
 参考人の方々に一言御挨拶を申し上げます。
 本日は、長時間にわたり御出席を賜り、貴重な御意見をお述べいただきまして、誠にありがとうございました。委員会を代表して厚く御礼を申し上げます。(拍手)
 午後一時半に再開することとし、休憩いたします。
   午後零時三十七分休憩
     ─────・─────
   午後一時三十分開会
#94
○委員長(秋野公造君) ただいまから法務委員会を再開いたします。
 政府参考人の出席要求に関する件についてお諮りいたします。
 組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律等の一部を改正する法律案の審査のため、本日の委員会に、理事会協議のとおり、内閣官房内閣審議官富田邦敬君外十一名を政府参考人として出席を求め、その説明を聴取することに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#95
○委員長(秋野公造君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
    ─────────────
#96
○委員長(秋野公造君) 休憩前に引き続き、組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律等の一部を改正する法律案を議題とし、質疑を行います。
 質疑のある方は順次御発言願います。
#97
○小川敏夫君 民進党・新緑風会の小川敏夫でございます。
 まず、大臣、一般人がこの法律の対象かどうかということで随分議論を繰り返しております。そこで、大臣、どうでしょう、これ私、小川敏夫は大臣が言うところの一般人になるんでしょうか。
#98
○国務大臣(金田勝年君) 一般人であります。
#99
○小川敏夫君 そうすると、大臣、私は一般人で、そして、この一般人の私が組織犯罪集団の人と共謀して、頼まれて、組織の目的のために、組織でこういうことをやるから一緒にやってくれと言われて、私、一般人だけど、そういう組織の人と共謀したら、やっぱりこの法案、法律で処罰の対象になりますよね。
#100
○国務大臣(金田勝年君) 一般の方々というのは、まずどのような人たちかということを申し上げたいと思います。組織的犯罪集団と関わりがない方々、言い換えれば、何らかの団体に属しない人はもちろんのこと、通常の団体に属して通常の社会生活を送っている方々という意味で用いております。
 ところで、ただいまの御指摘ですが、一般の方々がテロ等準備罪を犯すことは想定し難いのであります。
 テロ等準備罪が成立するためには、組織的犯罪集団の団体の活動として実行される重大な犯罪等を計画する必要がございます。そして、テロ等準備罪の計画というためには、組織的犯罪集団の団体の活動として行われる犯罪の遂行であることについての合意を要します。したがいまして、テロ等準備罪の計画をなし得る者は、関与する団体が組織的犯罪集団であることの認識を有している必要がございます。
 したがって、組織的犯罪集団と無関係の一般の方々がこのような犯罪を計画することは考え難いのであります。一般の方々は組織的犯罪集団と関わりを持つことはなく、組織的犯罪集団の構成員から誘われるということは考え難い上、組織的犯罪集団の構成員からの誘いに応じるなどということは想定されないのであります。
 したがいまして、一般の方々がテロ等準備罪の捜査、処罰の対象となることはないと、このように申し上げることができると思います。
#101
○小川敏夫君 いや、一般の方々が共謀することは、組織の人間と共謀することは考え難いといっても、考え難いじゃ私の質問に答えていないんですよね。やっぱり法律論として、犯罪の構成要件として、一般人の人間であっても、この法律の要件、組織の目的の遂行のため、そして組織の利益のためにということを知りながら組織の人間と共謀する、組織の人間に頼まれて犯罪を犯せば、やっぱり処罰されるわけですよね。
 ですから、この法律の対象で、一般人も対象になるんじゃないですかと。ですから、考え難いじゃないんで、そういう事例の場合には対象になるんじゃないですか。
#102
○国務大臣(金田勝年君) 申し上げておりますが、組織的犯罪集団、そもそも一般の方々という言葉は、一般の方々はテロ等準備罪の捜査の対象とならないという文脈におきましては、組織的犯罪集団と関わりのない方々、言い換えれば、何らかの団体に属しない人はもちろんのこと、通常の団体に属して通常の社会生活を送っている方々という意味で用いております。
 国内外の犯罪情勢等を考慮すれば、組織的犯罪集団とはテロリズム集団、暴力団、薬物密売組織など違法行為を目的とする団体に限られておりまして、一般の方々がこれらと関わりがないのはもちろん、関わりを持っていると疑われることもありません。
 したがって、組織的犯罪集団と関わりのない一般の方々、すなわち何らかの団体に属していない人はもちろんのこと、通常の団体に属して通常の社会生活を送っている方々は、組織的犯罪集団の構成員から誘われて組織的犯罪集団の構成員とともに重大な犯罪の計画を行うということは想定できないわけであります。
#103
○小川敏夫君 いやいや、大臣から、私が犯罪組織に関わらない、その周辺にいる人間でもない、真っ当な生活を営んでいる人間だということで一般人と御評価いただいたことは大変感謝しておりますけれども、でも、法律論として、私がやくざの人に誘われて、それでやくざの目的、やくざの利益のために一緒にやろうやと言われて、ついつい誘われてその気になっちゃってやっちゃったら、私はやっぱり処罰されますよね。
 じゃ、大臣の定義で、組織に入っていない人、周辺にもいない人、真っ当な生活を営んでいる人がやくざと一緒になってやったとしても、その人は処罰されないんですか。そんなことはないですよね。だから、犯罪の構成要件としてはやっぱり一般人も処罰の対象になるんですよ。そういうことはあり得ないとかいうことはないと思うんですがね。
 この問題だけに時間掛けてもしようがないけど、最後のこのまとめの答弁をいただけませんか。この犯罪の構成要件として、犯罪の構成要件として一般人であってもこういう組織の人と目的を達して共謀すれば処罰されますね。(発言する者あり)例えば、今与党の人から不規則発言で、そういう共謀した段階で一般人が一般人じゃなくなっちゃうんだという言い方なら、じゃ、一般人は対象じゃないというのは論理的におかしいと思うんですよ。
 ちょっとあれこれ、あれこれいろんなこと聞いてもしようがないから、また、犯罪の構成要件として、一般人であっても組織の人間と共謀して目的等、そういったことの要件を達すれば処罰されることがありますねと。もう、イエスかノーかで答えてください。
#104
○国務大臣(金田勝年君) 私からは答弁は繰り返しになります。したがいまして、これに細目的な部分を付け加えるとして刑事局長から答弁させます。
#105
○政府参考人(林眞琴君) テロ等準備罪の構成要件は、組織的犯罪集団の団体の活動として、当該行為を実行するための組織により行われるものの遂行を計画すること、この計画の対象は今申し上げたものでございます。それによりまして、単に犯罪行為を計画するだけでは、これは構成要件を満たしません。組織的犯罪集団の団体の活動として当該行為を実行するための組織により行われるものの遂行、これを計画した者でないと処罰の対象とはなりません。
 この場合に、計画するということはどのような場合にその意思の合致が、計画者の間での意思の合致を要する事項は、今の条文を説明いたしますと、一つは、一定の重大な犯罪の行為の遂行であること、また、結合関係の基礎としての共同の目的が一定の重大な犯罪の行為である組織的犯罪集団であること、さらには、組織的犯罪集団の意思決定に基づく犯罪の遂行であること、さらに、その犯罪行為の効果、利益が当該組織犯罪集団に帰属すること、最後に、その犯罪行為が指揮命令に基づいてあらかじめ定められた任務の分担に従って構成員が一体として行動する人の結合体により行われるものであること、この全てについての意思に合致がないと計画とは言えないわけでございますので、このような認識を持てる者というものは一般人全てに広がるわけではございませんで、前から申し上げておるように、組織的犯罪集団の構成員である場合はもちろんでございますが、構成員以外においても、この組織的犯罪集団と関わりを持っている者、こういう者でない限り、こういった計画としての意思の合致はできないと、このように考えております。
#106
○小川敏夫君 すごく論理のごまかしがありますよね。ですから、組織の目的だとか組織の利益のためだとかいろんな要件がある、いろんな要件に合致しなければ罪にならないと。だけど、言い方換えれば、そういういろんな要件を合致して、いろんなことを、諸事情を分かっている人間が共謀すればなるということでしょう。だから、私の質問に答えないで、私はその諸条件が合致する場合には一般人がやれば処罰の対象になるでしょうと聞いているのに、全然私が聞いてもいない余計な要件を付けて、それであたかも一般人が処罰の対象でないかのような説明をしている。法律家として大変に不誠実な答弁ですよ。
 大臣、私、大臣に聞いたんだけど、大臣も御説明いただかなくちゃ困るんですよね。大臣が一般人は対象じゃないと言ったけれども、総理も一般人は対象じゃないとおっしゃったけど、でも、法律の、法律論として、この犯罪の構成要件として明らかに一般人も対象になるんですよ。
 与党の方の人の理屈は、一般人は一般人なんだけど、犯罪を共謀した瞬間、一般人じゃないと、このような言い方ですけど、それは論理的な物の言い方じゃありませんよね。じゃ、犯罪を犯す人が犯罪者、犯罪を犯さない人は一般者だと、一般人は全て刑法の対象じゃないんだと、刑法は犯罪を犯した人間だけが処罰の対象になるんだと。じゃ、一般人は何ですか、一般人が犯罪を犯したら犯罪者になるじゃないですか。
 まあ、もう私の論理を理解していただいて、ただ、法務大臣、少なくとも総理大臣も、一般人はこの法律の対象じゃないと言ったのはこの法律の構成要件上誤りなんですよ。しっかりとそこは国民に正しい説明をしていただきたい、このように指摘させていただきます。答弁を求めるとまた刑事局長に振っちゃうから結構です。
 それで、次の論点ですけれども、この法律は、重大犯罪というもの、組織的に行われる中で重大犯罪というものの対処が必要だからということだということでありますけれども、一つ大臣に質問させていただきます。万引きは重大犯罪ですか。
#107
○国務大臣(金田勝年君) 御指摘の万引きについては一概には言えないんだろうと、このように考えております。
#108
○小川敏夫君 それは、万引きでも重大犯罪になる万引きと重大犯罪にならない万引きがあると、こういう意味ですか。
#109
○国務大臣(金田勝年君) やはり個別具体的な事実関係によって異なってくるものと考えております。
#110
○小川敏夫君 じゃ、どういう個別具体的な事情があったら重大犯罪の万引きなんですか。
#111
○国務大臣(金田勝年君) ただいまの御質問は技術的な質問でございます。刑事局長から答えさせます。
#112
○政府参考人(林眞琴君) 委員の御質問の重大な犯罪という意味でございますけれども、私どもがこの重大な犯罪と言っているこのテロ等準備罪をつくる場合の重大な犯罪というものは、TOC条約の五条で重大な犯罪というものが定義されておりますので、その場合には、これは法定刑で長期四年以上の刑を持っているもの、これがその重大犯罪だというふうに定義されております。
 その意味におきましては、この重大な犯罪かどうかというものは法定刑を勘案した罪名で考えているということでございます。そういった場合に窃盗罪というものについてはこれに当たるということを考えておりまして、窃盗罪の中のいろんな具体的な行為の態様、万引きであるとか被害額の数であるとか、そういったものについては今回の重大な犯罪を考えるときのメルクマールにはなっておりません。
#113
○小川敏夫君 いや、メルクマールなんという何か曖昧な言葉を使われては困るんですよ。
 この法律の犯罪の構成要件として、万引きも窃盗だから当然この法律の対象になるでしょうと。ですから、法律上なりますよね。一言で答えてください。
#114
○国務大臣(金田勝年君) 窃盗は対象犯罪になると、このように考えております。
#115
○小川敏夫君 ですから、万引きも窃盗罪でありますので、対象犯罪だということであります。
 共謀が、また別な質問ですけれども、まあ計画ですか、まあ共謀と同じようなものだと。今の共謀理論ですと、黙示の態様であっても、いわゆる目くばせであってもですね、当事者間で意思が通用すれば、通じれば、理解できれば共謀が成立するというのが確立した判例なんですけれども、刑事局長は目くばせではこの計画は成り立たないと、事実上成り立たないというようなお話をしております。また、その論理を聞くとまた長々とお話しされるので、こういう設定の場合に計画が成立するかどうか、一つの事例を出させていただきます。
 集団すり、これ組織的犯罪集団です。その組織的犯罪集団のすりの五人組ぐらいのグループが、今日は親分の誕生日だから、何にも、すりもやるのやめようと。で、親分の誕生日で御飯を食べに行こうと言って銀座を歩いていたと。だから、その日はもう、すりやる気ないんですよ。犯罪集団だけど、すりをやるつもりないと。そうしたら、目の前に、まあほろ酔い加減で分厚い財布をズボンの後ろポケットに入れている人がいたものですからね、突然、こんなカモを逃すことないぞといって、突然その親分が目くばせで、おい、やろうと目くばせでいったと。仲間の方は、うん、分かった、やろうといって、すぐもうその態勢に入って、中身は、挟み打ちするために準備に入った。どうです、こういう状況設定において、目くばせ、親分が目くばせでやろうといって、仲間も、うん、分かった、目くばせ、それでやろう、こいつをやろうというようなこの意思が合致した。目くばせで計画が成立するんじゃないですか。
#116
○政府参考人(林眞琴君) 今回の計画というのは、一定の重大犯罪を組織的犯罪集団の団体の活動として当該犯罪を実行するための組織により実行することについての具体的かつ現実的な合意をすることになります。一定の犯罪自体を合意するだけでは、これは計画とは言えません。したがいまして、そういった組織的犯罪集団の団体の活動であるということとか、当該犯罪を実行するための組織によって行うんだということ、こういった内容の意思の合致というものが目くばせだけでできるとは考えられません。
#117
○小川敏夫君 だって、初め言っているじゃないですか、集団すりですよ。集団すりを、そのすりをやるために結合している団体ですよ、継続的に。そういうその組織の犯罪集団ができているんですよ。ただ、その日はやらないつもりだったから事前には共謀はなかったんだけど、でも、そういう組織的な犯罪集団が、まさにその犯罪集団のその実行行為として、たまたまいいカモがいたから、さあやろうと。これで、さあやるぞと、具体的に計画に移すのはまさにこれ、計画でしょう。だから、私の事例、じゃ、どこがいけないか、ならないんですか、目くばせじゃ計画にならないんですか。私の事例で、まずなるかならないかを答えてください。
 私は法務大臣に聞いたんだけど、法務大臣が刑事局長に指すから、省略してもいいですよ。
#118
○政府参考人(林眞琴君) 今申し上げたように、一定の重大犯罪を組織的犯罪集団の団体の活動として当該犯罪を実行するため組織により実行すること、この部分についての全部についての意思の合致が目くばせだけでできるとは考えておりません。
#119
○小川敏夫君 だって、私、言っているじゃないですか、もう。集団すりというね、すりもこれ対象犯罪ですから、窃盗で。集団すりというその犯罪集団がいて、組織的な結合があると。それが集団すりをやる、その行為として、さあやるぞと、計画で、目くばせで意思が通じたんだから当然成立するでしょう。
 局長が言っている前提条件はもう既にクリアしているんですよ。その上で目くばせすれば、またそこで、その目くばせで、おお、俺たちはすりの集団、組織だったのかな、これからやるすりは俺たちの集団の活動の目的だったのかなんということまでお互いに認識しなくちゃいけないことはないでしょう。当然の社会の通念の考え方で、集団すりのその団体が、組織が、さあやるんだといえば目くばせで足りるでしょう。どうですか。法務大臣、どうですか、聞いていて、お答えは。
#120
○政府参考人(林眞琴君) 先ほど申し上げましたが、すりとかいう犯罪の実行を共謀するあるいは計画するだけでは今回の計画にはならないわけでございます。そういったことの組織的犯罪集団の団体の活動としてという点であるとか、当該犯罪を実行するための組織により実行すると、こういったことまでが全て目くばせで意思の合致を見るということは考えられないということを申し上げているわけです。
#121
○小川敏夫君 これ以上議論しませんが、だって、集団すりが組織のためにやっているじゃないですか。局長の答弁は、要するに、目くばせで成立するということを逃げたいからそういうことを言っているだけだけど、目くばせでも共謀が成立することがあるということは私は明らかだと思いますがね。
 結局、これまでの答弁、やはり国民に正しいこの法律の在り方を説明しないで、あたかも国民には全く影響が及ばない法律であるかのように誤った説明をしてこれを通してしまおうとしている、私はその危険性を指摘させていただきます。
 また、質問を変えます。
 よく、共謀罪、例えばTOC条約に加盟している国などで、これはもう既に共謀罪が適用しているんだというような説明がたくさんありました。日本だけが共謀罪がまだ適用されていない、成立されていないというような説明がございました。そうした観点から質問させていただきますがね。
 まず、大臣、物事の基本的な考え方で、私は、悪いことをした人間は、犯罪者は捕まえても当然だと思うんですよ。だから、犯罪者を捕まえるという考え方はいいんだけど、さらに、その上にもう一つ、こういう考えは当然必要だと思うんですが、そのこういう考えというのは、悪い人を捕まえるのは当然、でも、悪くない人まで捕まえちゃいけないと。こういうふうには、大臣、お考えになりませんか。
#122
○国務大臣(金田勝年君) ただいま委員の御指摘の、悪い方を捕まえる、これも大事であります。それから、悪くない方を捕まえてはいけない、これもそのとおりだと思います。
#123
○小川敏夫君 私が言いたいのは、TOC条約に加盟している、例えば共謀罪を採用している国においても、じゃ、その国の捜査の在り方、司法の在り方がどうなのかなと。もう少し具体的に言えば、被疑者や被告人の防御方法というものがどの程度しっかり保障されているのかというふうに考えなくてはいけないと思うんです。
 この共謀罪という広い投網を打つようなこうした武器、これは捜査する方に強力な武器となると思うんですが、一方で、誤った捜査によって無辜の人が捜査を受けたり、あるいは犯罪者にされたら困るわけで、きちんとそれに対する防御方法というものもやはり完璧にしなくては、私は、大変な人権問題が生ずる、こういうふうに思うんですが。
 ただ、日本では、例えば取調べの際に、弁護士の立会い権、認められておりません。あるいは、弁護士は被疑者に接見交通することが認められております。だけど、実際の実務においては、捜査に支障があれば接見させてもらえません。これが実務の実情です。あるいは、逮捕、勾留している人間、これを、本来の拘置所ではなくて代用監獄というところに留置して、ほとんど連日のように取調べをするというのが今の日本の捜査の実態です。
 OECDにおいては、被疑者の取調べの際の弁護士の立会い権とか、弁護士の接見交通の制限とか、代用監獄がそもそもあるのかどうかとかいうことまでしっかりその全体の法体系を見た上で比較しなくちゃいけないと思うんですが、これは、法務大臣でも外務省でも結構ですけれども、TOC条約に加盟している主要国のそうした被疑者、被告人の防御方法に関する手当てはどうなっていますか。
#124
○国務大臣(金田勝年君) ただいまの御質問に対しては、諸外国の法制度についてのお尋ねであるなと、それと比較して日本がどうかと、こういうお話だというふうに思っております。
 法務省としましては、網羅的に諸外国の法制度等についてその詳細を把握しているわけではございません。しかしながら、把握しているものについては細目的事項ということで刑事局長から答弁をさせますが、やはり諸外国の法制度ということもございますので、外務省にも、御指摘のとおり、お尋ねいただければよろしいのではないかと考えております。
#125
○副大臣(薗浦健太郎君) 今、法務大臣から答弁ありましたとおりでございまして、我が国として必ずしも網羅的にその詳細を承知しているわけではございません。また、先生御指摘のとおり、各国の法令そのものの規定ぶりのみならず、実際の運用や背景も含めた全体像の中で検討を加える必要があると考えておりまして、外務省として、一概に論ずることは困難であると考えております。
#126
○小川敏夫君 要するに、いわゆる先進国といいますか、諸外国とでもいいですけれども、と比較して、日本の制度の中で被疑者、被告人の防御権というものがやはり一番遅れている部類に入るんじゃないかと思うんですよ。その典型例として、私は、今、三つのことをお話しさせていただきましたけれども。
 ですから、犯罪の捜査をする側の立場から、どんどん捜査しやすいように、あるいはどんどん人を犯罪者として捜査、摘発できる範囲を広げるということばかりに熱心になるんじゃなくて、そうした捜査のやり方、犯罪の範囲を広げるという一方で、それに対する弊害が起こり得るということも十分考えて、やはりそれに対する防御する側、まさに防御する側の方についても遅れている日本のこの司法制度、捜査に対する在り方というものもしっかり検討して、本来ならワンセットで同時にやらなくてはいけないものだと思うんですが、そうした被疑者、被告人の防御というものについては全く何にも手を触れない、改善しないまま、一方で、こうした捜査権限の拡大あるいは捜査範囲の犯罪の拡大ということをするのは、やはり将来に禍根を残すんじゃないかと思うんですが。
 私の質問はこれで終わりますけれども、私のこの不安、思いに対して、法務大臣、何か一言所感をいただきたいと思いますが。
#127
○副大臣(盛山正仁君) これまでにも何回か御説明しているところですが、今回のテロ等準備罪は、実体法、刑事実体法を追加をするということで、手続法についての変更を何ら加えるものではない。
 その上で、今回のテロ等準備罪につきましては、対象となる団体を明文で組織的犯罪集団に限定したということ、そして対象犯罪については、長期四年以上の懲役、禁錮を定める罪のうちで、現実的に想定されるものをリスト化して、対象犯罪を明確化し、絞り込んだ、そして、犯罪の計画行為だけでは処罰されない、実行準備行為があって初めて処罰すると、こういうふうに絞り込みをしておりますので、そういう点では、小川先生への、御懸念に対して我々としては精いっぱい明らかにしているつもりではございます。
#128
○小川敏夫君 終わりますけれども、法務大臣から一言だけいいですか。
#129
○委員長(秋野公造君) 法務大臣、何かございますか。
#130
○国務大臣(金田勝年君) ただいま副大臣から申し上げたとおりであります。
 この度は、実体法の改正であるということを申し上げておりました。そういう中で、御指摘の点も含めて、私たちは、しっかりと委員の御指摘も踏まえて対応してまいりたいと、このように思っております。
#131
○小川敏夫君 終わります。
#132
○有田芳生君 民進党・新緑風会の有田芳生です。
 まず、金田大臣にお伺いいたします。
 今、一般人とは何かという議論がありましたけれども、参議院にこの法案が回ってきてから、最近になって組織的犯罪集団の周辺者という言葉が頻発するようになりました。大臣、組織的犯罪集団の周辺者とは何を指しているんですか。
#133
○国務大臣(金田勝年君) 有田委員の御質問にお答えをいたします。
 一般の方々という言葉は、使用される文脈によってその意味は異なると思いますが、我々は、一般の方々はテロ等準備罪の捜査の対象とはならないという文脈におきましては、組織的犯罪集団と関わりがない方々という意味で用いております。
 したがって、したがって、組織的犯罪集団の構成員と関わりがある者、すなわち周辺者については、我々の言うところの一般の方々とは言えないものと考えております。
#134
○有田芳生君 大臣は、参議院の法務委員会の質疑、趣旨説明の中で、環境保護団体などが隠れみのになる場合もあるんだと、そのときは捜査の対象になり得るという趣旨の御発言でしたが、環境保護団体あるいは人権団体などが隠れみのの姿を取る、姿を取っているかどうかということを判断するのは誰ですか。大臣、お答えください。
#135
○国務大臣(金田勝年君) 捜査機関、そして、最終段階では、捜査機関でありまして、最終段階では裁判所が判断すると、このように考えております。
#136
○有田芳生君 今朝の参考人質疑の中でも、オウム真理教の事件が話題になりました。そこで、具体的にお聞きをしたいというふうに思います。
 とにかく、この法案を審議する場合、現象論でも駄目で、本質論だけでも駄目で、一般の人、理解できないんだから、刑事局長のような非常に法文、厳密に解釈してくださるのはいいんだけれども、一般の人たちが分かるには実体論でなければいけない。
 大臣でも刑事局長でもいいですけれども、オウム真理教という組織的犯罪集団の中核部分には麻原彰晃という教祖がおりました。その周辺者というのは誰ですか。大臣、手を挙げられたんだから、いかがですか。
#137
○国務大臣(金田勝年君) オウム真理教の組織として、その周辺者は誰に当たるかという問いかけでございます。これに対しては局長から答弁させます。
#138
○政府参考人(林眞琴君) 組織的犯罪集団というものがあった場合に、その構成員というのが観念されます。構成員自体は周辺者ではもちろんございません。そうしますと、構成員以外の者の中で、その組織的犯罪集団の構成員らとともに計画が疑われる者、こういった者が周辺者になると思います。
#139
○有田芳生君 実態からいって、そんな説明は話にならないんですよ。
 オウム真理教の場合は、麻原教祖がいた、その周りには、事件が起きてから明らかになりましたけれども、地下鉄サリン事件、VXガス事件、坂本弁護士一家殺害事件などなど様々な凶悪事件がありました。これで起訴された人員は百三十五人です。だけど、同じ人物たちが凶悪事件に関わっているから実人員数は六十三人。教祖がいた、周りに六十三人がいた、これはもう逮捕、起訴され、判決が出ていますよ。だけど、その周りには、何度も何度も繰り返しますけれども、オウム事件当時、これは公安調査庁の数字によっても、出家信者一千人、在家信者一万人、ロシア入れれば、ロシアでは五万五百人の信者がいたんですよ。これ、周辺者じゃないんですか。
 大臣、いかがですか。教祖がいて、事件を起こした、そして、その事件を知っている人もいた、知らない人もいた、これ全部周辺者じゃないんですか。
#140
○政府参考人(林眞琴君) 今回、組織的犯罪集団と関わりがある者とか周辺者ということが出ているのは、これは、テロ等準備罪の構成要件の中に組織的犯罪集団の関与という要件が入ったから、それとの関係で述べているわけでございます。
 今委員が言われたような実態、これはその当時の犯罪捜査というものに対しては、その当時は組織的犯罪集団というのを構成要件としている罰条がございません。したがいまして、組織的犯罪集団と関わり合いがあるかないかという観点は捜査の要件ではないわけでございます。
#141
○有田芳生君 違うんですよ。
 もう我々が身にしみて体験したこの日本で起きた地下鉄サリン事件などの凶悪事件、組織的犯罪集団としてのオウム真理教、じゃ、これからこの法案が成立したら、そういう集団ができたときに本当に有効に対処できるのかということから聞いているんですよ。
 教祖がいた、周りに集団がいた、六十三人、その周りには一万人以上がいた。警察庁、伺います。そこに捜査は及んだでしょう、調べたでしょう、個人情報を。
#142
○政府参考人(高木勇人君) 刑事訴訟法第百八十九条第二項におきましては、司法警察職員は、犯罪があると思料するときに犯人及び証拠を捜査するものとされているところでありまして、警察としては、犯罪の嫌疑が生じていない方を被疑者として捜査の対象とすることはありません。
 また、御指摘の事件につきましても、犯罪の嫌疑が生じていない方について被疑者として捜査の対象としたものではございません。
#143
○有田芳生君 被疑者として捜査の対象にしていないだけでしょう。個人情報、集めませんでしたか。何千人、万に近い数を。警察が当時やっていたじゃないですか。捜査の対象としていなくても、その周辺者、徹底的に調べたんじゃないですか、否定しますか。
#144
○政府参考人(高木勇人君) 当時の具体的な捜査の内容については控えさせていただきますけれども、犯罪があると思料するときに犯人及び証拠を捜査するとされているところでありまして、犯罪の嫌疑が生じていない方を被疑者として捜査の対象としたものではございませんが、一般的な捜査の、一般論として申し上げますと、被疑者との関係性を考慮して、何らかの事情を知っている可能性が高いなど捜査の必要性が認められる場合には、相当と認められる範囲内において捜査を行うといったことがございます。
#145
○有田芳生君 だから、一般人や周辺者は調べられるんですよ。それが今の現実でしょう。
 オウムだけじゃありませんよ。後で話を聞きますけれども、今話題になっている前川前次官にしたって、菅官房長官は記者会見の中で、前川次官が、歌舞伎町の雑居ビルの中の小さな店ですよ、五十回、百回行った、尾行しなけりゃ分からないでしょう。そんなことをずっとやってきたじゃないですか。
 オウム事件だって、今語れないと言ったけれども、坂本弁護士一家殺害事件を捜査した神奈川県警は、本当に現場の人たちは苦労をして、オウム事件から二年目の一九九七年の九月に内部資料を作りましたよ。これは警視庁にも警察庁にも行っているでしょう。そこに何と書いてあるか。繰り返しですけれども、信徒八千四百五名、これは信者ですよ、実行犯じゃないですよ、さらには脱会者二百三十一人入っているんだけれども、八千四百五人の視察内偵、張り込み、尾行、宅配業者での伝票捜査、住民票捜査及び銀行捜査などやって、オウム真理教の信徒の個人情報カード、これ、神奈川県警は警視庁にも出している。当然警察庁だって行っているじゃないですか。
 だから、教祖がいて、実行犯がいて、周りにいた人たちを徹底して調べるのが捜査じゃないんですか。やってきたことを今やっていないんですか。前川さんにだってやっているでしょう、否定するんですか。
#146
○政府参考人(高木勇人君) 捜査は犯罪の嫌疑があると認める際に、犯罪の嫌疑を生じている者を容疑者として行うものでありまして、嫌疑が生じていない者を被疑者として捜査の対象としているものではありません。
#147
○有田芳生君 大臣、ちょっと聞いてくださいね。
 麻原教祖がいて、凶悪事件を起こした実行犯がいて、何にも関係ないただの信者たちが一万人以上いた。これは日本では余り強調されてこなかった、実は。凶悪集団、カルト集団、組織的犯罪集団と思われていたから、みんなが悪人だと思われたんだけど、実態は違うの。
 で、更に言いましょう。教祖がいて事件を起こした、あるいは全然関係ない一万人以上の人いた、ロシア含めたら五万人以上の人たちがいた。更にまだ周辺にいた、信者たちの家族、あるいは弁護士たち、あるいは私たち取材者。当時は弁護士にも警察当局は警護を付けましたよ。実は私にも付けましょうと来ました。
 これはあえてそういう周辺者という訳の分からない話が出たからお話をしますけれども、オウム事件から十年がたって、私は警視庁の幹部たちと池袋で食事をしました。そのときに、事件から十年たって今だから言えること、教えてください。うれしそうに語ってくれました。有田さんには税金掛かったね。えっ、何のことですか。テレビでこういう発言をしたら危ないなと判断したときには、朝六時前に家出ていましたけれども、夜中家へ帰るまで、朝早くから夜中まで、一日に私に延べ五十人の捜査員が行動確認に付いていた。それは安全のためだと思いますよ。だけど、果たしてそれだけでしょうか。たまに、たまに夜、酒場に入ることもありました。そこにも入っていたと。もっと驚くことをいっぱいしゃべってくれましたよ。私は鈍感だったんでしょう、全く気付かなかった。まあ尾行というのはそういうものでしょう、行動確認というのは。
 だけど、一旦、捜査のプロたちがやろうと思えば、環境保護団体だって、あるいは基地反対運動にしたって、あるいはそういうカルト集団にしたって、周辺だって、捜査をしているのが現実じゃないですか。一般人だって、周辺者だって、捜査の対象になるでしょう。ならないって言えますか。言えないですよ、これ現実なんだから。
#148
○政府参考人(高木勇人君) あくまで捜査は犯罪があると思料するときに行うもので、犯罪があると、嫌疑者であると思われる者についてその容疑を解明するために行うものでございます。
#149
○有田芳生君 じゃ、どうして、周辺者の預金口座から、住民票から、行動確認から、車のナンバーから、出入りから、教団組織でいえば東京、神奈川、山梨、二十四時間の監視をやったんですか。嫌疑なくたってやっていたじゃないですか。だから、そういうことを今だってやっているでしょう。だって、沖縄の山城博治さんなんかの裁判なんか見ていると、山城さんが報告をしただけで共謀だというふうな文章になっている。昔から、今から、そしてこれからだってやっていくじゃないですか。
 こんな法律が成立したら、そういう行為が合法化されるんじゃないですか。
#150
○政府参考人(高木勇人君) 先ほど申し上げましたとおり、被疑者でない方についてお尋ねがあった際に申し上げましたとおり、被疑者との関係性を考慮して何らかの事情を知っている可能性が高いなど捜査の必要性が認められる範囲内には捜査を実施することがございますけれども、相当と認められる範囲内において行うものでありまして、それはあくまで被疑者として捜査を行っているものとは異なるものと考えております。
#151
○有田芳生君 そうしたら、先ほどお伝えしました神奈川県警の正式の報告書、外には出ていません、内部文書です。九千人近い人たちの信徒個人情報カード、それだけの人たちを徹底して個人情報を調べなければいけなかったわけでしょう。全然事件、関係ない人たちだ、圧倒的に。そういうことが現実に起きているじゃないですか。
 前川さんのケースだってそうだけれども、官房長官が、雑居ビルのちっちゃな店に五十回、百回も行っていた、五十回、百回行っていたと官房長官が語っているんだから、誰かが行動確認しなけりゃ分からないじゃないですか。
 そういう捜査、今でもやっているでしょう。犯罪者でも何でもないですよ。やらないんですか。やるのが警察でしょう。だから問題になるわけですよ。違いますか。
#152
○政府参考人(高木勇人君) 捜査は捜査上の必要性が認められる範囲内におきまして相当と認められる限りにおいて行うものでございまして、あくまで法令に従って行うものでございます。
#153
○有田芳生君 必要に応じてなんだけれども、令状も取らずにやっていたでしょう。今だってやっているでしょう。やっていないんですか。やっていないならやっていないって言ってください。やっているんだったら当然でしょうって言わないですか。それは捜査の基本じゃないですか。違うんですか。
#154
○政府参考人(高木勇人君) 強制捜査以外の任意捜査につきましては、捜査上の目的を達成するために必要な範囲内で相当と認める範囲内で行うことができるものと判例上も認められているというふうに考えております。
#155
○有田芳生君 捜査の必要に応じて人の事務所を勝手に入ったり、あるいは、政党幹部がホテルに泊まったら、その宿泊した部屋に入って、その政党幹部がどんな薬を飲んでいたか、それで病状を判断するとかやっていないですか。やっているでしょう。それが捜査じゃないですか、とんでもない話だけど。
#156
○政府参考人(高木勇人君) 今例示された件については承知をしておりませんけれども、警察の行う捜査、任意捜査につきましては、捜査上の目的を達成するために必要な範囲内で相当と認められる範囲内で行うことができるというふうにされており、警察はそういった任意捜査の認められる限界の範囲内で活動しているところでございます。
#157
○有田芳生君 その言葉だけ聞いていたら、ああ、そうかなと思うかも分からないけど、問題は具体的なんです。実態があるんですよ。だから、大臣、組織的犯罪集団の周辺者、これからいろんなものが出てくる可能性はあるでしょう。だけど、中核部分からどんどんどんどん外に広がっていって捜査やっているんですよ、令状取らなくたって、行動確認から様々な驚くべきことを。一般人関係ないなんて言えないじゃないですか。周辺者、捜査の対象になるじゃないですか、そういう言葉によって。だから問題なんですよ、大臣。
 だから、この法案がもし仮に成立するならば、やはり大きな問題なのは、捜査機関の権限、組織、それが拡大していくことですよ。だから監視社会になるんじゃないかと多くの人たちは心配しているんじゃないですか。それの歯止めがないじゃないですか。歯止めあるんですか。今だってそういう捜査をやっている。だからカナタチさんは心配をして、プライバシーのことをこれまでも研究してきたけれども、日本でこういう法案が進んで通ってしまいそうだというから心配をして書簡を出した。書簡を出したら抗議をされる。とんでもない話でしょう。
 カナタチさんが出した書簡の四項目め、捜査当局や安全保障機関、諜報機関の活動の監督について懸念があります。すなわち、これらの機関の活動が適法であるか、また、必要でも相当でもない手段によりプライバシーに関する権利を侵害する程度についての監督。それを監督する組織がないじゃないですか。これからつくるんですか、この法律と一緒に。今あるんですか、海外のように警察をチェックする組織というのは。あるんだったら教えてください。
#158
○大臣政務官(井野俊郎君) 基本的に、捜査、先ほど警察の方からも答弁ありましたとおり、プライバシー権などの大変権利を侵害するような場合については令状等が必要でありますので、裁判所に審査、チェックがなされておりますので、十分それらは我が国においては機能しているというふうに考えております。
#159
○有田芳生君 機能していないでしょう。GPS捜査、十年間やってきて最高裁でも問題になったわけでしょう。
 繰り返しますけれども、今から二十二年前のオウム事件のときだって、これ神奈川県警が、八千四百五人ですよ、脱会者二百三十一人を含めて、周辺者、捜査やったんですよ、個人情報を、徹底的に、データベース化しているんだから。恐らく、警視庁、警察庁には八千何人どころかもっと多くのデータベースあるでしょう。だから、周辺者、一般の人たちだって、目を付けられたら、その周辺にいる人たちが個人情報というのはつかまれてしまうんですよ。違いますか。
 大臣、そういう危なさがあるから、今も、この時間も国会の前で雨の中で、こんな法律案廃案だって皆さんが懸念しているのはそういうことなんですよ。大臣、どうですか。この雨の中だって皆さん、何を語るかを注視しているんですよ。
#160
○政府参考人(林眞琴君) 委員の御質問の前提で、今回のテロ等準備罪ができるとその捜査の権限が拡大する、あるいは捜査が合法化すると、そういう前提でお話しになっておりますが、今回の法律は実体法でございまして、何ら捜査の権限を拡大するものではございません。
 その上で、捜査というものは実体法でやる、犯罪はどういう場合に成立するかという実体法に捜査の権限というのは画されているわけです。画されというのは、確定、それによって限定されるわけでございます。
 今回、テロ等準備罪が、組織的犯罪集団という要件を課して、その組織的犯罪集団の関与というものを要件にしたことによりまして、このことを無視して犯罪の嫌疑というものを捜査機関は考えることができないわけでございます。犯罪の嫌疑ありという形は、刑事訴訟法でそういう場合に捜査ができると書いてあるわけでございまして、その犯罪というのは実体法を見なければ確定できないわけでございます。その実体法の中に今回組織的犯罪集団の関与という要件を入れたことによりまして、捜査機関の捜査権限というものは組織的犯罪集団の関与というものがない限り嫌疑が生まれませんので、そういった場合に捜査機関は捜査ができるという形で権限が確定されるわけでございます。
#161
○有田芳生君 だから、嫌疑が生じたら、その周辺の一般人だって、周辺者だって捜査の対象にこれまでなってきたじゃないですかということを言っているわけですよ。だから、これが成立したら合法化されるじゃないですか。
 だから、大臣、さっき手挙げていらしたんですから、お答えください。
#162
○国務大臣(金田勝年君) 刑事局長からも申し上げておりますが、私からは、テロ等準備罪の新設によりまして捜査機関が常時国民の動静を監視するような監視社会になることはないと、今までも申し上げてまいりました。
 また、我が国の刑事訴訟法上、プライバシーを制約する強制処分を行う場合には基本的に裁判官の令状が不可欠であります。捜査機関においては、令状請求に当たって、その要否を慎重に検討した上で当該令状を必要とする理由を疎明する資料を提示しておりまして、その上で裁判官において厳格な司法審査を行っているという現状にあります。
 したがって、御指摘の懸念は当たらないのと、それから、先ほど刑事局長から申し上げましたが、何ら捜査権限を拡大するものではない実体法の改正であるということも申し上げているとおりであります。
#163
○有田芳生君 現実を見なきゃ駄目ですよ。これまでだって、先ほど言ったように、オウムにしたって前川次官にしたって行動確認されている。明らかなことなんです。
 誰がやっているんですか、じゃ。誰かがやっているんですよ。少なくともオウムの場合には警察官、全国各地からやったわけですよ。もちろん、とんでもない事件ですから、その犯罪捜査の延長なんだけれども、一般人だってやられた、私だってやられた、江川紹子さんだってやられた、行動確認されたんだから、周辺どんどんどんどん広がっていくんですよ。恐らく、安全確保のためというのは疑いませんが、同時に、誰に会っているんだとか、そういうことだって目的だったと思いますよ。そうおっしゃっていた、それは。どんどんどんどん周辺者というのは広がっていくんですよ。
 だから、元北海道警の釧路方面本部長で、日本の警察の階級の上から警視総監、警視監、その下の警視長をもって、つまりナンバースリーをもって警察のお仕事を辞められた方がこの共謀罪について語っています。捜査の現場は変わりますかと言われて、捜査対象が大きく広がり、警察の体制や権限が強化されるだろう、組織的犯罪集団の実態をつかむことはメンバー一人一人の情報を調べることと同じなので、警察は何とかして個人情報を集めようとする、憲法が保障するプライバシー権を守るため、警察の情報収集活動に歯止めが必要だ。現場の一線で頑張ってきた人がそういう思いを持っている。カナタチさんだってプライバシー問題の専門家として懸念を示している。それを抗議をする、答えない、そんなことでこの法案を通すなんというのはもってのほかだ。
 原田さんは更に言っている。政府は一般市民は対象ではないと説明しています。それに対してこう答えている。組織的犯罪集団かどうかは、メンバーを調べて初めて分かる。結果的に一般市民も監視の対象になるだろう。警察のナンバースリーだった方がこう言っている。捜査の対象は限りなく広がる。だけど、警察官ならルール守るはずでしょう。さっきもおっしゃっていましたよ、令状に基づいてやることはある。それは必要でしょう。
 だけど、原田さんはこう言っている。今は尾行にGPSを使い、聞き込みや張り込みの代わりに通信傍受や防犯カメラ映像を使うデジタル捜査の時代だと、そう言っている。
 だから、もう結論だけにしますけれども、抑止効果は期待できず、摘発されるのはむしろ一般市民、任意捜査と強制捜査の境目のグレーゾーンでうまくやってこそ一人前の刑事と評価される部分があるから、だから令状なんか取らなくたって、これまでもずうっと一般人の個人情報をひそかに調べたわけじゃないですか。
 尾行だといったって、後ろから付いてくるだけじゃないんですよ。前にもいる、道路の向こうにもいる。そして、気付かれたなと思ったら連絡を取り合って、その人は離れていく、そして新たな人たちが入ってくる。だから、徹底して尾行しようとしたら一日に何十人も要るというのは、そういうことなんですよ。尾行というのは後ろだけじゃない、前にも、あっちに、こっちにもいる。そういう捜査、現場の警察官はずうっとやってきたじゃないですか、個人情報を取るために、令状がなくたって。
 だから、今度の法案が通れば、それが合法化されてもっともっと大変な状況来るんじゃないですか。警察庁、いかがですか。あるいは、金田大臣、もうすぐ時間来ますから、御感想を是非伺いたい。大変だと思う。
#164
○政府参考人(高木勇人君) 警察といたしましては、あくまで刑事訴訟法その他法令に従って捜査を行っていくものと考えております。
#165
○国務大臣(金田勝年君) ただいま警察から答弁がございました。しっかり法令にのっとってやるものと私も受け止めております。
 一般に捜査は、御指摘の点もございました、適正に行われているものと承知をしておりまして、テロ等準備の、準備罪の捜査についても、刑事訴訟法の規定に従って必要かつ適正な捜査を行うことになるものと考えております。
 また、テロ等準備罪につきましては、条文上、成立要件を明確かつ厳格なものにしておりまして、恣意的な運用がなされないものになっている上に、我が国の刑事司法制度においては裁判所による審査が機能していることは先ほども申し上げたとおりであります。捜査機関による違法な捜査はできない仕組みになっております。
 さらに、衆議院における修正によりまして、テロ等準備罪の捜査を行うに当たりましては、その適正の確保に十分に配慮しなければならない旨の規定も追加されたところであります。
 私としましては、本法案が成立した後には、このような修正の経緯も踏まえて、適正に運用されるように本法案の趣旨、内容を関係機関にしっかりと周知をしていきたいと、このように考える次第であります。
#166
○有田芳生君 つまり、捜査機関が計画あるいは準備行為ではないかと嫌疑を抱けば、捜査開始するんじゃないですか。刑事局長、いかがですか。
#167
○政府参考人(林眞琴君) 嫌疑は客観的な資料に基づいて判断するものでございます。単に主観的に嫌疑ありと認めるわけではございません。
 それからもう一つは、今回のテロ等準備罪ができますと、そのテロ等準備罪の捜査に必要な捜査というものが合法化されるわけではございません。あくまでも、今刑事訴訟法では犯罪の嫌疑がある場合に捜査ができるとなっておりまして、この場合の犯罪というのは、今回テロ等準備罪については組織的犯罪集団の関与という要件がございますので、この嫌疑がないのに捜査が開始されるとなれば、それはその捜査は違法ということになるわけでございます。合法化されるどころではなくて、その犯罪の構成要件を無視した形で捜査権限を行使することは違法という法的な効果があるわけでございます。
#168
○有田芳生君 組織的犯罪集団だと確認されて捜査が開始したら、要するに周辺者、一般の人たちだって尾行とか監視の対象になっているんですよ。これが現実なんだから。これが現実なんですよ。
 もう時間だからやめますけれども、この法案についてはいろんな議論が続いてきましたけれども、七条の二、証人等買収については衆議院でも参議院でも全く議論をやっていない。(発言する者あり)ちゃんとした議論はやってない。だから、その段階で成立目指すというのはとんでもない話だと。十分な議論なんかできてないじゃない、これからやっていくんだよ。何言っているんですか。(発言する者あり)いや、だから、みんなでやらなきゃ駄目でしょう。一回やった、一人がやっただけの話じゃないでしょう。
 こんなことで法案を強行するなんというのは絶対許すことはできないということを主張しまして、質問を終わります。
    ─────────────
#169
○委員長(秋野公造君) この際、委員の異動について御報告いたします。
 本日、小川敏夫君が委員を辞任され、その補欠として福山哲郎君が選任されました。
    ─────────────
#170
○福山哲郎君 福山でございます。よろしくお願いいたします。今日は時間がありませんので、直接行きます。
 先ほどの、済みません、有田先生の質問に対してちょっとお伺いします。
 刑事局長、もちろん捜査は刑訴の、刑事訴訟法百八十九条、犯罪があると思料されるときに嫌疑があって初めて捜査が開始される、令状が要る、私もよく存じ上げているつもりでございます。しかしながら、現実には嫌疑の存在を前提にしないいわゆる行政警察活動、調査とか検討というのがありますよね。先ほど有田先生が言われた尾行、預金口座、住所、個人情報約八千人分というのは、この嫌疑が掛かる前の検討、調査で行われたという位置付けでよろしいですよね。
#171
○政府参考人(林眞琴君) 今どういったものを前提にしてお聞きになっているかが分かりませんので、お答えすることは困難でございます。
 その行政警察活動と捜査というものは必ず連動するわけではございませんので、その行為自体が行政警察活動としては何らかの目的に基づいて警察の権限においてやったんでしょう。そうした場合に、それが捜査であるかどうかというのは刑事訴訟法に照らすことが必要ですけれども、それが直接どのように結び付いていくかというのは個々具体的な場合によって異なると思います。
#172
○福山哲郎君 じゃ、質問変えます。もうオウム真理教は離れます。
 いわゆる行政警察活動で嫌疑の存在を前提にしない検討、調査というものがあって、それによって個人情報、尾行や銀行口座や住所を調査、検討することはありますね。
#173
○政府参考人(林眞琴君) 捜査として行うためには嫌疑が必要でございます。それで、委員が御指摘のそういった調査活動というものが、どういう目的で、警察がどの目的でどの範囲で行ったかということによるので、お答えできません。それはまた、法務省としてはお答えできません。警察がどのような警察法に基づく目的に基づいてやるかによりますので、私の方からはお答えすることは困難であります。
#174
○福山哲郎君 今、警察が目的に基づいてやるということは認められましたので、問題は、今回は、日本の刑法は既遂からです、捜査が始まる。僕は、百八十九条の刑事訴訟法は先ほどから申し上げているように認めています。しかしながら、今回、既遂から始まる捜査がですよ、計画の段階で現実問題として今回広がる可能性があるということは、先ほど申し上げた検討、調査という個人の情報等について調べる、私は捜査とは一言も言っていません、調べる活動が計画の段階の前からあり得るということは非常に広がるのではないかということは今皆さん危惧されています。
 それともう一つ、二百七十七もの法律に対して、計画で現実問題として処罰化する、もちろん計画プラス実行準備行為ですが、その処罰化するものが二百七十七に広がることに対して、先ほど申し上げたようないわゆる捜査、刑事訴訟法に基づく捜査ではなくてその前の段階の情報を取ると、いわゆる捜査の端緒になるものについて広がる可能性があるということを市民の皆さんも専門家の皆さんも学者も心配しているんだというふうに思いますが、私の今の位置付けは間違っていないですよね、局長。
#175
○政府参考人(林眞琴君) 少なくとも、テロ等準備罪の事実の解明につながる、そのことを目的として、捜査という名目ではなく……(発言する者あり)いや、名目ではなくそのような調査を行うとすれば、その実態はそれは捜査でございますので、嫌疑がない場合にそういうことをやったならば、それは違法ということになります。
#176
○福山哲郎君 今、捜査にして嫌疑がある場合と言っているけれども、嫌疑の前の調査、検討ということを私は聞いているんです。現実に、先ほど局長は、警察ではそういうことを目的に応じてやっているかもしれませんが、自分は分からないと言われた。
 つまり、その嫌疑の前の調査、検討が、計画という既遂のずっと前の時間のところでいわゆる調査、検討が始まる可能性がある、それが二百七十七もの法律に広がることに対して非常に今の有田先生の問題意識があるということは申し上げておきたいと思います。
 外務省、官房長官が法案成立までに英訳をカナタチさんに送るのかと昨日聞かれて、考えていないと答えられています。これ、どういうことなんでしょうか。法案成立を急ぐから、急いじゃいけないからあの書簡を出されたカナタチさんに対して、英訳すら法案成立の前に送らないと官房長官は言われていますが、官房副長官、この官房長官の発言は確認されていますか。
#177
○副大臣(薗浦健太郎君) 官房長官の発言は聞き及んでおりますけれども、一般に申し上げて、国会に提出中の法案について、これを逐次英訳することは政府として行っていないと承知をしております。
 その上で申し上げれば、特別報告者からの日本政府に対して示された懸念、指摘事項について、我が国の取組を国際社会に対して正確に説明するという観点から、内容を精査し、追ってしっかり我が国の立場を回答する予定でございます。
#178
○福山哲郎君 私、先週この審議しましたけれども、外務副大臣、じゃお伺いします。英訳は作っておられますか。それから、検討はどこでやられていますか。短くお答えください。
#179
○副大臣(薗浦健太郎君) 検討は政府部内でしかるべく行っております。(発言する者あり)現在提出中の法案について、逐次英訳することは政府としては行っておりません。一般論、一般的に申し上げております。
#180
○福山哲郎君 英訳作っていないということでいいんですね。ちょっとはっきりお答えください、英訳は作っていないと。
#181
○政府参考人(水嶋光一君) お答えいたします。
 カナタチ特別報告者からの懸念に対する、あるいは指摘事項に対します回答ですけれども、現時点で、内容を精査をし、追ってしっかりと我が国の立場を回答する予定ということでございまして、具体的にいつどのような対応を取るかについては現在検討中でございます。適当な時期にしかるべく対応したいと思っております。(発言する者あり)
#182
○委員長(秋野公造君) 福山君、もう一回お願いします。もう一度聞いてください。
#183
○福山哲郎君 英訳は作っているのか作っていないのか、お答えください。
#184
○政府参考人(水嶋光一君) 先ほどお答え申し上げましたように、今、政府においてどのような形で回答をするかということを検討してございます。英訳を提供するかどうか、それも含めて、どのような回答が最も適当かということも含めて今検討をしておるところでございます。(発言する者あり)
#185
○委員長(秋野公造君) 水嶋審議官に申し上げます。質疑者の質疑に対して御答弁をお願いをしたいと思います。
#186
○政府参考人(水嶋光一君) 繰り返しになって恐縮でございますが、回答を、どういう回答をするかにつきまして、現在、政府において内容を精査をして検討しておるというところでございます。(発言する者あり)
#187
○委員長(秋野公造君) 改めて政府に申し上げます。答弁は、質疑者の趣旨を体し、簡潔かつ明瞭に行うよう申し上げます。
#188
○副大臣(薗浦健太郎君) 英訳を作るかどうかも含めて検討中と御理解いただきたいと思います。
#189
○福山哲郎君 では、作っていないんだったら作っていないと言ってください。それだけ、イエスかノーか答えてください、副大臣。
#190
○副大臣(薗浦健太郎君) どのような段階でどのような答えをし、こちらがどのように準備するかも含めて全て検討中でございますので、それで御理解を賜りたいと存じます。
#191
○福山哲郎君 文科省の文書を再調査すると言ったら、速やかに出すと言ってもう三日も四日も出てこない。カナタチさんに英訳を送ってほしいと言われたら、何もそれに対して答えないで、法案の成立までに送ることを考えていない。そして、作っているかどうかも、今の回答だと作っていないと。非常に僕は不誠実なやり方だと思います。
 ちょっと時間がないので、お手元にお配りをしています五枚目のペーパーをちょっとお開きください。もう分かりやすくお伺いしますので、明確にお答えください。
 これ、テロ等準備罪の適用対象に対する答弁です。
 A安倍総理、テロ等準備罪は、犯罪の主体を組織的犯罪集団に限定していると明確に答えられています。
 金田法務大臣、B、テロ等準備罪は、犯罪の主体を組織的犯罪集団に限定いたしました、明確に答えております。
 C林刑事局長、何と、テロ等準備罪の主体に制限はございません。これ、私、さすがに私も、これは全く真逆の答弁だと思います。片方は限定いたしました、片方は主体に制限はございませんです。
 D金田法務大臣、構成員でない組織的犯罪集団との関わり合いがある周辺者につきまして、一定の重大な犯罪の遂行に関する云々、云々、云々で、テロ等準備罪で処罰されることもあり得る、つまり、これは構成員以外の周辺者について言われています。
 まず、金田大臣、お伺いします。金田大臣、答えてくださいね。
 安倍総理のAの犯罪的集団に限定しているという話と、林刑事局長のテロ等準備罪の主体に制限はございませんということの、AとC、これ、法案提出者として、法務大臣、どちらが正しいのかお答えください。
#192
○国務大臣(金田勝年君) 私は、このただいま御指摘の三番、二番と四番かな、この資料によります二番と四番は、四番は、これは、この黄色い部分に加えて、その後の、身分犯との構成は取っておりません云々とあります。この全体の中で、私は同じことを言っているのではないかなと、こういうふうに受け止めておる、今拝見しておりました。
 それから、テロ等準備罪は、組織的犯罪集団の関与との要件を設けたことによりまして、その主体が組織的犯罪集団の構成員及びその周辺者に限定されるとの意味で、組織的犯罪集団は主体の限定であるとの説明をしてきたものであって、その説明、関係者の説明というのはそういう趣旨であると、こういうふうに私は思っておりまして、詳細は細目的、技術的事項に及ぶことから、刑事局長から答弁させていただきたい、このように思います。
#193
○福山哲郎君 何言っているのかさっぱり分かりません。
 林刑事局長は、組織的な犯罪集団の構成員である者はもちろんでございますが、構成員でない者についてもテロ等準備罪の計画の主体となり得るということでございますと言われていて、テロ等準備罪の主体に制限はございませんと、先ほど申し上げたように言われています。安倍総理、金田法務大臣は、犯罪の主体は組織的犯罪集団に限定していると言われています。これ、どう日本語見ても逆ですよね。これ同じことを言っていますと金田法務大臣先ほど言われましたけど、これどういうことですか、金田法務大臣。いや、林刑事局長はいいんです。あなたは答弁した人間だから。どうですか。
#194
○国務大臣(金田勝年君) 先ほど申し述べたとおりであります。
#195
○政府参考人(林眞琴君) テロ等準備罪の処罰範囲を組織的犯罪集団に限定すると、こういう主体を限定するというときに、これをずっと衆議院のときから説明してまいりました。
 同じく衆議院のときから、じゃ、この限定をどのように法文上やるかというところについては、こういう場合には身分犯として法律を作る場合もございます。しかし、今回は身分犯としては作っておりません。その意味で、身分という意味ではこの組織的犯罪集団の主体の制限はございませんと、このように申し上げたわけでございます。ただ、その身分犯という形を作っていなくても、構成要件の中に組織的犯罪集団の関与というものを入れておりますので、これによってそのテロ等準備罪の処罰範囲が組織的犯罪集団というものに限定されるという説明をずっとしてきたわけでございます。
#196
○福山哲郎君 全くよく分かりません。私が頭が悪いのかもしれませんが、これを国民が見て、安倍総理は犯罪の主体を組織的犯罪集団に限定していると言われています。林刑事局長は、テロ等準備罪の主体に制限はございませんと言われています。これを見て国民は分かるんでしょうか。
 御案内のように、刑法というのは明確性の原則というのが基本です。御案内だと思います。一体誰がどういう罪をすればどういう犯罪になるのかというのは、もう刑法の基本中の基本でございます。これでどうやって国民が判断するんですか。
 金田法務大臣、これどうしたらいいんですか、これ。これ、限定していると、制限はございません、これどうやって説明するんですか。身分犯です、身分犯かどうかです、構成要件です。何ですか、それは。後から後から変なへ理屈付けないでください。こうやって国民をある意味でいうと本当に混乱に陥れて、まあ言葉は多少悪いですが、国民をごまかそうとしていると私は思いますよ。大臣、どうですか。
#197
○国務大臣(金田勝年君) ただいまの御指摘は、私はそのようには思っておりません。
 先ほど申し上げたとおりでありまして、テロ等準備罪は、組織的犯罪集団の関与等の要件を設けたことによりまして、その主体が組織的犯罪集団の構成員及びその周辺者に限定されるとの意味で組織的犯罪集団は主体の限定であるとの説明をしてきたものであり、その説明に訂正はございません。詳細は、先ほども申し上げたとおり、刑事局長から答弁を重ねてさせていただくのも方法かと存じております。
#198
○福山哲郎君 今も微妙に、大臣、ごまかしましたね。組織的犯罪集団の構成員と関わりのある人と言って、急にそういう話になりましたね。
 そして、いいですか。そこに限定したと言っているけど、林刑事局長の答弁は、制限はございませんと書いてあるんですよ。ここには制限はございませんと書いてあるんです。いいですか。いいですか、そこには関わりのあるとか周辺とか書いていないんですよ。構成員でない者についても計画の主体となるのはあり得ると言っているんですよ。今の法務大臣の答弁と全く違うじゃないですか。全く逆じゃないですか。いいですか。こんな国民を混乱させる答弁を放置したまま、この法案を採決するなんて考えられないと私は思います。
 時間がないので、次へ行きます。
 ハイジャックの事例についてお尋ねします。
 ハイジャックのテロを計画した後、計画者の一人が航空チケットを購入した場合、予備罪で処罰できますか、できませんか、お答えください、大臣。
#199
○国務大臣(金田勝年君) 先ほどの件は、先ほど私が申し上げたとおりであります。
 それに加えて、ただいまの、ただいまの御質問にお答えをいたします。
 予備罪が成立するためには、客観的に相当の危険性が必要であります。ハイジャックのために航空券の予約又は購入が行われただけの段階では、そのような危険性は認められず、航空機の強取等の罪の予備罪は成立しない事例が多いと思われ、現行法で適切に対処できるとは言えない場合があります。そして、ハイジャックのために航空券の予約又は購入が行われただけの段階では、航空機の強取等の罪の予備罪は成立しない事例が多いと考えられます。
#200
○福山哲郎君 お手元のお配りした、二ページを御覧ください。
 これ、昭和四十五年ハイジャック防止法の審議のときの辻刑事局長の答弁が黄色です。予備行為は犯罪行為を実現するための準備行為をいうと。それはいいとして、次です。航空券を買ったという場合にも云々、ハイジャックをやるというその目的でその当該の航空券を買ったというような場合が第三条の予備に当たるわけでございます、ちゃんと予備に当たると言っています。
 次のページを見てください。次のページです。
 辻刑事局長の三段目です。予備といいますのは、御案内のとおり、犯罪を実現するための一切の予備行為であって実行の着手に至らないものということになるわけでございますと、一切と言われています。そして次の、左側見てください。この陰謀、これはハイジャックの陰謀ですね、陰謀と申しますのは、犯行の謀議をするという段階が陰謀でございますが、その陰謀が更に進みまして、一つの準備行為に移っていくという段階でこの予備が成立する、予備罪の程度に至ればこの三条によって処罰の対象にしようというところです。これ見てください。これ、まさに今回の共謀罪の議論じゃないんですか。
 そして、次のページはもう短く説明しますが、これ、当時の「注解特別刑法」、「注釈特別刑法」、これ歴代の刑事局長が書かれているコンメンタールというか解説書ですが、右も左も、ハイジャックを実現する目的で行われる一切の準備行為を意味している、予備。右、左側もそうです。第一条一項の罪を実行する目的の一切の準備行為を予備といい、これ、予備で逮捕できるじゃないですか。
 これは、判例が昭和四十二年、法務大臣のよく言われている判例、予備ではできない場合があると。このハイジャック防止法の審議は四十五年なんですよ。当然、判例を踏まえているはずだと思いますよ。これ、大臣、どうですか、何で急に今回予備罪で処罰できない例があるという話になったんですか、教えてください。
#201
○国務大臣(金田勝年君) 委員も御承知のことであろうと思いますが、昭和四十二年の裁判例、この判例をベースにして、私たちは、この予備罪の成立するためには客観的に相当の危険性が必要であるということを申し上げてまいりました。ハイジャックのために航空券の予約又は購入が行われただけの段階ではそのような危険性が認められず、航空機の強取等の罪の予備罪は成立しない事例が多いと思われ、現行法で適切に対処できるとは言えない場合があるということで申し上げております。
 したがいまして、ただいまの御指摘に対しましてはお答えを申し上げているというふうに思うんですが、なお詳細、細目的な部分を付け加えるために刑事局長から答弁をさせます。
#202
○福山哲郎君 いいです。さっきと同じ答弁なんです。
 これ、四十二年の判決があった後の答弁とあった後の解説なんです。じゃ、この時分の刑事局長と法務省と学者、それも刑事局長出身の学者たちが、一切の予備行為を予備と、予備罪でやれるといった判断は、大臣、当時間違っていたということですね。
#203
○国務大臣(金田勝年君) 当時の刑事局長、ただいまの刑事局長、ただいまの刑事局長から答弁をさせます。
#204
○政府参考人(林眞琴君) 昭和四十五年四月二十八日の刑事局長の答弁におきましても、これは全ての一切の行為がすべからく予備に当たるということを申し上げているわけではございません。当然、四十二年の判例を前提として申し上げているわけでございます。
 そして、この四月二十八日の刑事局長の答弁といいますのは、これは、予備と未遂という点の限界をどういうふうにお考えになっておりますかという質問に対する答弁として、未遂罪が成立する場合との対比における予備の一般的概念を整理したものにすぎません。すなわち、未遂等との関係において予備という概念の外延を整理して申し上げたものにすぎないわけでございまして、このような要件を満たせば必ず予備罪が成立するという意味でこういう答弁をしているわけではございません。
#205
○福山哲郎君 その後、平成十年や五十六年の殺人の予備でも予備罪はかなり広く取られています。
 これ、どう考えたって、この議事録とあなたたちの今言っていることはそごがあります。じゃ、解釈を変えたということでいいんですか、局長。大臣、解釈を変えたということでいいんですか、大臣。
#206
○政府参考人(林眞琴君) 解釈は全く変わっておりません。
 予備罪というものは、構成要件の予備としか書いておりません。どういう場合に予備に当たるかというものが、判例で示されたように、客観的に相当の危険な行為と認められるかどうかという、それはその事案事案での個別の判断でございます。
 そういった場合で、必ず、定型的に例えば航空券を買うことは必ず予備になるのかと言われれば、それはその個別判断において、なる場合もありますが、ならない場合もあるということを申し上げているわけでございます。
#207
○福山哲郎君 いいですか、ずっと今まではチケットを購入したら予備罪でやれると言っていたんです。じゃ、組織的犯罪集団がチケットを購入した場合は、今回の法律ができることによって処罰できるように、すべからく処罰できるようになったということですか。
#208
○政府参考人(林眞琴君) まず、必ず航空券を買えば予備罪が成立するということをこれまで言ってきたことは全くございません。それは事案によります。
 その上で、そういうテロ等準備罪の場合に、例えばハイジャックを計画して、そして、その計画に基づいてその航空券を買ったとなれば、それは今回のテロ等準備罪の構成要件を満たしますので、それは、その航空券を買ったこと、それだけに危険性があるかないかということを離れて、その計画に基づいてその航空券を買うということが実行準備行為として認められればテロ等準備罪が成立するわけでございます。
#209
○福山哲郎君 だから私は先ほどの議事録を言ったわけですよ。犯行の謀議をするという段階が陰謀で、その陰謀が更に進んで、一つの準備行為に移っていくという段階でこの予備が成立すると、その予備の程度でいくんだと、同じことを言っているじゃないですか、今の刑事局長の話と。同じじゃないですか。予備罪で成立できる、処罰できるじゃないですか。
 じゃ、聞きますよ。もしローンウルフ、単独型の犯人がハイジャックを計画してチケットを購入した場合、今の政府の説明だと処罰できないわけですね。
#210
○政府参考人(林眞琴君) そのローンウルフというのが全くの単独であって、組織的犯罪集団というものを構成していなければ、今回のテロ等準備罪の構成要件を欠きますので、そこについては処罰ができません。
#211
○福山哲郎君 これまでは、ローンウルフ型であろうが組織的犯罪集団であろうが、いいですか、チケットを購入したら予備罪でやれたんです。今回、このテロ等準備罪をつくったおかげで、ローンウルフ型については、予備でできるのかできないのか、捜査当局が非常に運用を混乱するような余白をつくったんじゃないですか。これ、逆に穴空けたんでしょう。これ、穴空けたことになるでしょう。だって、予備でやれる場合とやれない場合ができるって、今つくったんでしょう、このテロ等準備罪をつくるために。
 どうですか、刑事局長。
#212
○政府参考人(林眞琴君) 予備罪自体はこれからも存在するわけでございます。これまでも予備罪については、必ず予備罪が成立するわけではないですが、そういったローンウルフの場合でも予備罪が成立する場合があります。そういう適用ができるのであれば、その段階で処罰ができるということでございます。
#213
○福山哲郎君 だから今問題になっているんですから。今、刑事局長の答弁は、全部、それぞれの対応に応じて恣意的に警察がやりますということになっているわけです。だから明確性の原則が緩んできたと私は言っているわけです。
 今まで、ローンウルフ型であろうが犯罪集団であろうが、実はこれは、チケットは予備罪でいけたのを、無理やり予備罪でできないものをつくったんじゃないですか、今回。これは非常に僕は問題だと思いますよ、答弁も違うし。
 そして、もう時間ですからやめますけれども、何でもかんでもそうやって次から次へと新しい答弁を出して、先ほど冒頭申し上げたように、非常に答弁が、限定されると言ったり制限されないと言ったり、もう次から次へと答弁が二転三転をします。こういった問題を整理をしてきちっと国民に伝えなければ、本当に人権侵害が起こる可能性がある。
 それから、先ほど有田先生が言われたように、もちろん嫌疑がなければ捜査が進まない、令状主義は分かっていますが、その前の調査、検討というレベルがずっと既遂の前の計画から実は始まる可能性があり、それに二百七十七の法律も広がっているということについて非常に懸念を持っている。これが実はカナタチさんのプライバシー侵害の懸念とこれ同一なんです。ところが、カナタチさんには英訳を送ろうともしないと。こんな法案、悪いですけど、採決なんか到底できませんよ。
 まだまだ課題いっぱいありますよ。私、今日半分もまだ質問できていない。そのことも含めて、この法案の審議もっともっときちっと詰めていかなければいけないと申し上げまして、私の質問を終わります。
#214
○山添拓君 日本共産党の山添拓です。
 資料をお配りしております。今日午前中、山下参考人からも紹介があったんですが、ビジネスロイヤーの方が共謀罪法案に反対する声明を発表されているという報道があります。
 これ読みますと、六月七日の毎日新聞でございますが、「企業活動の停滞 懸念」と題して、国際取引や金融に詳しい山中真人弁護士の意見が寄せられております。
 企業も共謀罪法案の対象になる。組織的犯罪集団という語感と、集団の定義が懸け離れているとして、企業は、法に触れる可能性があることを議論することもある。例えば節税。脱税との違いは専門家でも見解が分かれる。また、特許権についても、訴訟を覚悟してあえてぎりぎりのものを作り出すことがある。検討するだけで罪に当たるとなると、議論ができなくなり、企業活動は停滞するだろう。政府は正当な企業活動は対象にならないと言うだろうが、それならそう法律に書くべきだ。廃案にして再検討することが望ましい。こう述べています。
 大臣、どう思いますか。
#215
○国務大臣(金田勝年君) 通告のない質問をただいまいただきました。
 したがいまして、直ちにお答えすることは難しいのでありますが、一般の法人が組織的犯罪集団に当たることはないと、このようにテロ等準備罪のこの法案については申し上げることができるのではないかと、このように考えております。
#216
○山添拓君 通告していないんですけどね、これ六月七日の報道なんですよ。参議院に来て審議が大事なところに差しかかっている中で、こういう懸念が新聞で報道されているんですね。当然御覧になっていてしかるべきだと思うんですね。
 なぜこうした懸念が示されているのかということをお考えになっていないんでしょうか。話し合っただけで罪になる、二百七十七もの罪を創設する共謀罪法案が、普通の企業活動を含めてあらゆる場面で問題を生む、生じ得るということをこれ端的に示した意見だと思うんですね。
 今、普通の法人、会社というのは対象にならないんだという趣旨でお話しになりましたけれども、しかし、普通のこうした活動が対象になるかもしれない、ならないならないと幾らおっしゃっても、それは保証にならないんですよ。だったら、そう法律に書くべきだという意見なんですよ。これにどう応えるかということが、この間、問われている。曖昧、不明確な構成要件だということが指摘されてきたということだと思います。
 今日は余り時間がありませんので質問を続けさせていただきますが、前回、単なる共犯であれば、共謀、計画の段階では罪に問われない、ところが、組織的犯罪集団だとなれば直ちに処罰の対象になる、処罰されるかされないかの分かれ目が非常に曖昧なんだと指摘をしました。友達グループと振り込め詐欺集団の違いは何なのかと尋ねたのに対して、刑事局長は、それは団体の組織性があるかないかだと答弁をされました。
 ここで言う組織性というのは、現行法の二条一項に言う組織に当たるかどうかということだ、こういうことでよろしいですか。
#217
○政府参考人(林眞琴君) 組織という言葉は二か所で使われておりまして、今の委員の御指摘が団体要件に当たるための組織、それに関わることであればそのとおりでございます。
#218
○山添拓君 その際に、前回御紹介した二〇〇八年の神戸地裁の判決がございました。振り込め詐欺グループが現行法上の団体に当たるとされたものですが、この事件では二条一項の組織をどのような事実に基づいて認定していますか。
#219
○政府参考人(林眞琴君) 御指摘の平成二十年七月十六日神戸地裁判決でございますが、これは判例データベースに登載されていると承知しておりますが、被告人は、この被告人をリーダーとし、その指揮命令に基づき、四名の者らが携帯電話等の入手、電話等による欺罔行為及び金員の振り込み行為要求を、また、別の四名の者らが預金口座からの払戻しを、別の者らが詐取金、だまし取った金の管理をするなどの任務の分担をあらかじめ定めた組織により、反復して、不特定多数人から、親族が保証債務等の返済に追われているかのように装って金員を詐取することにより利益を図ることを共同の目的とする団体を形成し、その団体の活動として、組織により、五名の者らと共謀の上、平成十七年七月から平成十八年五月までの間、四十七回にわたり、被害者らから被告人らが管理する他人名義の普通預金口座に現金合計約一億一千六百七十七万円を入金させるなどしたとして、組織的詐欺罪が適用された事案であると承知しております。
#220
○山添拓君 まあ私が質問したのは前半の始めの方のところだけなんですが。
 弁護人は、これ単なる友人の集まりだと主張していたんですけれども、今おっしゃったような役割分担、指揮命令、そういう関係であっても、法律上は組織に当たると認定されてきたわけです。
 この振り込め詐欺グループというのは、結合関係の基礎としての共同の目的は詐欺の実行にあるわけですから、今度の法案でいえば組織的犯罪集団にも当たり得るということだろうと思います。
 そこで伺いますけれども、今の神戸地裁の判決のような組織の認定の仕方、これは共謀罪法案に言う組織的犯罪集団における組織の認定でも同じように認定されると伺ってよいでしょうか。
#221
○政府参考人(林眞琴君) 御指摘の神戸地裁判決においては、この三条一項の当該罪に当たる行為を実行するための組織の該当性が争点となって、この点についての詳細な事実認定がされているわけではございませんので、神戸地裁判決における組織の認定と六条の二第一項の当該行為を実行するための組織の認定の共通性について答弁することは困難であると考えます。
#222
○山添拓君 今答弁できないとおっしゃるんですけど、二条一項の組織というのと、今度新たに作られる六条の二の組織というのは同じものですからね、当然同じように認定するということだろうと思うんです。で、二条一項と三条一項も同じだということですから。
 それで、一方で、八日の質疑の中で、この二条一項に組織性が書き込まれている趣旨として、立法当時の解釈本が他の議員の先生から紹介をされておりました。ちょっと繰り返しになりますが読み上げますと、組織により活動を行う継続的結合体は、組織性を有していないものに比べ、その構成員に対する関係では、共同目的による統制に加えて、組織の指揮命令による強い内部統制を及ぼすことができ、また、その活動の反復継続性という点でもより反復継続した活動を行いやすいという性格を有しているんだと、だから犯罪の実現可能性が高く、重大な被害やあるいは莫大な不正利益につながるんだとしております。
 これは現行法ですから、組織性があることによって刑を重くするという理由として書かれているんですが、共謀罪で今度組織性が要求される理由もこの同じ趣旨によるものなんでしょうか。
#223
○政府参考人(林眞琴君) まず、先ほどその六条の二の一項での組織と二条一項の組織が同じだと言われましたけど、これについては、二条一項の組織というのは、これは団体の組織性の要件としての組織でございまして、六条の二の一項については、これは犯罪実行をどの組織が行うかということの組織でございますので、組織の定義自体は同じでも、全く位置付けが違います。
 それを前提で申し上げますと、この組織的犯罪処罰法第二条第一項が団体の要件として組織性を要求した趣旨は、委員が今述べられたとおりでございます。他方で、その組織的犯罪処罰法の、じゃ三条の一項あるいはテロ等準備罪の六条の二、一項も同じでございますが、これについて、犯罪に当たる行為が団体の活動としてこれを実行するための組織により行われたとき、こういった要件をその組織的犯罪処罰法の三条一項で加重事由としていたり、あるいは今回、テロ等準備罪でそれを要件としている趣旨は、やはり、このような形態で起こされる犯罪は、通常、継続性や計画性が高度で、多数人が統一された意思の下で指揮命令に基づき、あらかじめ定められた任務に従って一体として犯罪を実行するという点でその目的実現の可能性が著しく高く、また重大な結果を生じやすい、あるいは莫大な不正の利益を生ずることが多く、特に悪質であって違法性が高いと、こういったことに着目したことでございます。
#224
○山添拓君 まあ同じということなんですけど、要するに、刑を加重する理由と新たに罪をつくる理由と同じ理由なんですね。そして、その中で、今おっしゃらなかったところで、ちょっと省略をされたところなんですが、この解説文の中では、解釈本の中では、組織の指揮命令関係による強い内部統制を及ぼすことができる、だから組織性がある団体については刑を重くするべきだ、今度でいえば罪にするべきだという理屈になっているわけです。
 そこで、次に伺うのが、資料の二枚目にございますけれども、東京高裁の二〇〇二年一月十六日の判決で、これは高裁段階で一部は確定し一部は上告されておりますが、七人組の詐欺事件です。いわゆる紳士録に掲載された人物に無差別に電話を掛けて、いろんな名目で金をだまし取ったという事件ですね。
 一審は組織犯罪処罰法の適用を否定しました。そのため検察官が控訴をしたんですけれども、まず、一審判決はなぜ団体に当たらないと判断したんでしょうか。
#225
○政府参考人(林眞琴君) 一審判決、これは横浜地裁川崎支部、平成十三年三月十二日判決でございますが、これは、被告人Aはグループのリーダー的存在ではあったものの、同じ被害者から再度現金を取る回し打ちという役割を担う担当者を決める以外、他の被告人が犯行を行うに当たって時折必要な助言や指示を出していたにすぎず、電話を掛ける態様や方法、活動時間等については各被告人の裁量に任されていたこと、また、ノルマ等は設定されておらず、成功した金額が低いからといって被告人Aから叱責されたり制裁を加えられることはなく、単に当該被告人の利得額が減るだけのことだったことなどを考え合わせると、被告人らのグループが組織的犯罪処罰法が加重の根拠としたような宗教団体や暴力団等に見られる組織の指揮命令関係による強い内部統制を及ぼしていた団体というには疑問があり、その団体性は希薄であって、同法が予定する団体とは著しく異なっていると言わざるを得ないなどとして、被告人Aらのグループについて組織的犯罪処罰法二条一項の団体に当たるとは認められないとしたものと承知しております。
#226
○山添拓君 今御紹介いただいたところの前に、資料の二枚目の上の方の黄色で強調した部分ですけれども、ここでは、組織的犯罪処罰法が団体の定義に組織性による制約を加えたのは云々かんぬんとありまして、先ほど私が申し上げた解釈文の中身を述べているんですね。
 なぜ組織性が認められるのかということについて、要するに組織の指揮命令関係による強い内部統制を及ぼすことができるから組織犯罪については刑を重くするんだと。ところが、このグループについていえば、この法律が刑の加重の根拠としたような宗教団体や暴力団等に見られる組織の指揮命令関係による強い内部統制を及ぼすことができた団体というには疑問があるんだと。ですから、立法当時の解釈、法律の解釈に忠実にその意味では従って、解釈本をほとんどなぞる形で、宗教団体や暴力団のような指揮命令関係による強い内部統制のあるグループではないと、組織性は認められないと判断しているわけです。
 ところが、高裁判決は一審の判断を覆しました。組織性についてどのように論じていますか。
#227
○政府参考人(林眞琴君) 今申し上げた一審に対しまして、委員御指摘の東京高裁、平成十四年一月十六日判決は、事実認定自体はおおむね第一審の同様と、事実認定の下で、次のように言っております。
 被告人Aは、被告人らのグループの中で単なる役割分担を超えた上位者としての地位があり、被告人Aのみが他の者を従わせる指示をすることのできる立場にあったと見ることができ、本件各犯行は、個々の犯行について具体的な指揮命令をしなくとも、被告人Aの指揮命令に基づく犯行であると評価できる。また、被告人らのグループは、新規の被害者を開拓することを中心に行う者、回し打ちを主に担当する者、実行行為のほか雑用等を担当する者、送金や口座の新規開設を担当する者などの任務の分担があり、円滑に詐欺、恐喝が遂行できるようなシステムになっていたのであり、関与者が少なくても組織によって実行されていると言えるなどとしまして、被告人Aらのグループに組織性を認め、組織的犯罪処罰法二条一項の団体に当たると認めたものと承知しております。
#228
○山添拓君 肝腎なところをお読みいただけなかったんですけれども、資料二枚目に一審判決の誤りについて論じた部分として引用しております。少し読み上げます。
 この点に関する、つまり組織性に関する原判決の判示は、組織的犯罪処罰法の立法の主要な根拠を参考としたものであろうが、言うまでもなく、内部統制の強さは刑加重の要件ではなく、加重の立法根拠にすぎないと。そこで、内部統制の強弱は単なる犯情の差にすぎない、情状で考慮すべき事情にすぎないのであって、これを適用要件に絡めて判断するのは相当でないと。そして、むしろその立法趣旨からすれば、団体の構成員の結び付きは、組織的な犯罪を行うという共同の目的に沿った合理的なもので足りるはずだと。こう言っているんですね。
 ですから、立法者としては、あるいはその解釈本としては、組織性のある犯罪を重く処罰する理屈は、理由は、強い内部統制が利くものだから、だから結果発生の危険性が、実現可能性が高まるんだ、こういう理屈で言っているんですけれども、ところが、それに忠実に沿った一審判決が覆されて、むしろ内部統制の強さは余り問題じゃないんだと、適用できるかできないかの問題としては余り関係ないんだというふうに認定しているわけです。団体構成員の結び付きは合理的なもので足りるとまで言っている。
 政府は、この間、組織性というのは指揮命令系統や役割分担の問題だと言って、何かイメージするとすごく大掛かりな統率の取れた集団を描いているんですけれども、そんな必要はないというのが実務なんですよ。こういう判決のような組織性の認定のされ方、共謀罪の組織的犯罪集団の認定においても同じような認定がされていくことになるんじゃありませんか。どうですか。
#229
○政府参考人(林眞琴君) これは、今回、一審、二審で判断が分かれたのは、やはりこれは要件であるところの、指揮命令に基づき、あらかじめ定められた任務に従って構成員が一体として行動する人の結合体に当たるかどうか、この点についての判断が分かれたものと考えております。
 いずれにしましても、この事実関係の中で、先ほど申し上げたようなグループというものについては判断は分かれましたが、かなりその組織の中に指揮命令というものが存在して、役割分担というものが実際にあった事案についてその裁判所の判断が分かれたものだと考えています。
#230
○山添拓君 最後、裁判所の判断が分かれたという話がありました。結局、事実認定であれ、その評価の問題に関わるんだということをお認めになったということだと思うんですね。
 組織的犯罪集団は極めて限定的な場合にしか認められないと述べた与党の議員の方もおられましたが、とんでもないんですよ。現にこの東京高裁の事件では、一審判決が立法時の解釈本に従って厳格に解釈しようとしたのに、高裁ではひっくり返って、これは最高裁でも是認している結果になっているんですね。大臣や刑事局長が幾ら限定されると言ったところで、法の解釈、適用、これは現場の検察官や裁判官が行うわけです。法律で明文の縛りがない限りは、限定されるということはないわけです。
 これまで政府が否定されてきたようなサークルだとか同窓会、楽譜のコピーをするアマチュアの合唱団、あるいは山に、キノコに、行くキノコ取りのサークル、こういうものが何でも対象になり得るということなんですね。それこそ一般人が対象になるかならないかというさっきの話でいえば、なるかもしれない。そのことが私は重大な問題だと思うんです。対象になるかもしれない、なっているかもしれないからいつでも監視されているかもしれない、その不安が今多くの方に共有されている問題なんだということ、是非大臣にも認識をいただきたいと思っています。
 時間がなくなりますので、最後、大臣に伺いたいんですけれども、今御紹介申し上げたように、立法当時に立法者がどのように言っていたか、あるいはその政府が解釈して解釈本でどのように書いていたか、それにかかわらず、裁判所では、大臣がこの間言ってこられたような暴力団や薬物密売組織、テロ集団、これに限らず、どんどん組織的犯罪集団と認めるということがあり得るわけですよ、法律で限定していないわけだから。その懸念が広がっているということに対して、大臣、どのようにお考えですか。
#231
○国務大臣(金田勝年君) 事前の通告がないですが、度々、度々質問をいただきます。それで、お答えをします、お答えをします。今度は通告ください。
 適用対象となる団体の限定によって、テロ等準備罪において一般の会社や市民団体がテロ等準備罪の処罰の対象となることはないと申し上げております。テロ等準備罪については、対象となる団体をテロリズム集団その他の組織的犯罪集団に限定をしております。テロリズム集団その他の組織的犯罪集団は、一定の重大な犯罪等を行うことを構成員の結合関係の基礎としての共同の目的とする集団をいうことですから、これに該当し得るのは、国内外の犯罪情勢等を考慮すれば、テロリズム集団のほか、例えば暴力団、薬物密売組織といった、そうした違法行為を目的としている団体に限られるものであります。一般の会社や市民団体は、犯罪を行うことを共同の目的としていることは考えられず、組織的犯罪集団に当たらないことが明らかでありますから、テロ等準備罪の処罰の対象となることはありません。
#232
○山添拓君 全然お聞きいただいていなかったと思うんですね。
 大臣が幾らそう言っていても、実務はそうなっていないじゃないかということを事実をもって示したのに誠実にお答えにならない。こんな答弁を繰り返していて、これで時間が来たから終わりだなんてとんでもないと思います。
 以上で終わります。
#233
○東徹君 日本維新の会の東徹でございます。
 今日は十時から参考人質疑が行われました。二時間半という参考人質疑でありましたけれども、非常に大変貴重な御意見をいただいたのかなというふうに思っておりますし、今日はまた、午後からはこのように委員会が開かれていることに率直に評価をさせていただきたいというふうに思っております。
 前回質問をさせていただきました。今回、テロ等準備罪ということで、テロに注目をして質疑が行われておりますけれども、今よく頻繁に犯罪が行われている特殊詐欺、言ってみれば振り込め詐欺とか、それから還付金詐欺とかいうのがあります。これは、年間の被害額というと四百億円。しかも、被害に遭われている方というのは……
   〔真山勇一君「委員長、済みません。金田大臣の問責決議案を提出させていただきました。委員会を止めてください」と述ぶ〕
#234
○東徹君 ちょっと待ってくださいよ。ちょっと待ってください、今、僕、質問しているところですけど。(発言する者あり)ちょっと待ってください、今質問しているところですよ。いや、質問中にそういうのはちょっと失礼じゃないですか。(発言する者あり)
#235
○委員長(秋野公造君) どうぞ東先生、続けてください。
#236
○東徹君 はい。(発言する者あり)いや、いや、それは駄目です。(発言する者あり)
#237
○委員長(秋野公造君) 東先生、続けてください。(発言する者あり)
#238
○東徹君 いや、質問続けさせていただきますけれども、よろしいですか。(発言する者あり)
#239
○委員長(秋野公造君) 速記を止めてください。
   〔速記中止〕
#240
○委員長(秋野公造君) 速記を起こしてください。
 暫時休憩いたします。
   午後三時二十五分休憩
   〔休憩後開会に至らなかった〕
ソース: 国立国会図書館
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