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2017/06/15 第193回国会 参議院 参議院会議録情報 第193回国会 法務委員会 第19号
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2017/06/15 第193回国会 参議院

参議院会議録情報 第193回国会 法務委員会 第19号

#1
第193回国会 法務委員会 第19号
平成二十九年六月十五日(木曜日)
   午後二時一分開会
    ─────────────
   委員の異動
 六月十四日
    辞任         補欠選任
     福山 哲郎君     小川 敏夫君
    ─────────────
  出席者は左のとおり。
    委員長         秋野 公造君
    理 事
                西田 昌司君
                山下 雄平君
                真山 勇一君
               佐々木さやか君
    委 員
                猪口 邦子君
                中泉 松司君
                古川 俊治君
                丸山 和也君
                元榮太一郎君
                柳本 卓治君
               渡辺美知太郎君
                有田 芳生君
                小川 敏夫君
                仁比 聡平君
                東   徹君
                糸数 慶子君
                山口 和之君
   衆議院議員
       修正案提出者   井出 庸生君
   国務大臣
       法務大臣     金田 勝年君
   副大臣
       法務副大臣    盛山 正仁君
   大臣政務官
       法務大臣政務官  井野 俊郎君
   最高裁判所長官代理者
       最高裁判所事務
       総局刑事局長   平木 正洋君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        青木勢津子君
   政府参考人
       内閣府大臣官房
       審議官      大塚 幸寛君
       警察庁長官官房
       審議官      西川 直哉君
       警察庁長官官房
       審議官      小田部耕治君
       警察庁長官官房
       審議官      高木 勇人君
       法務大臣官房審
       議官       高嶋 智光君
       法務省刑事局長  林  眞琴君
       法務省矯正局長  富山  聡君
       法務省保護局長  畝本 直美君
       厚生労働省雇用
       均等・児童家庭
       局児童虐待防止
       等総合対策室長  山本 麻里君
       厚生労働省社会
       ・援護局障害保
       健福祉部長    堀江  裕君
    ─────────────
  本日の会議に付した案件
○政府参考人の出席要求に関する件
○刑法の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議
 院送付)
○参考人の出席要求に関する件
    ─────────────
#2
○委員長(秋野公造君) ただいまから法務委員会を開会いたします。
 委員の異動について御報告いたします。
 昨日までに、山添拓君及び福山哲郎君が委員を辞任され、その補欠として仁比聡平君及び小川敏夫君が選任されました。
    ─────────────
#3
○委員長(秋野公造君) 政府参考人の出席要求に関する件についてお諮りいたします。
 刑法の一部を改正する法律案の審査のため、本日の委員会に、理事会協議のとおり、法務省刑事局長林眞琴君外七名を政府参考人として出席を求め、その説明を聴取することに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#4
○委員長(秋野公造君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
    ─────────────
#5
○委員長(秋野公造君) 刑法の一部を改正する法律案を議題といたします。
 まず、本案について政府から趣旨説明を聴取いたします。金田法務大臣。
#6
○国務大臣(金田勝年君) 刑法の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を御説明をいたします。
 性犯罪は、被害者の心身に多大な苦痛を与え続けるばかりか、その人格や尊厳を著しく侵害する悪質重大な犯罪であることから、厳正な対処が求められておりますところ、明治四十年の現行刑法制定以来基本的にその構成要件が維持されてまいりました現行の罰則では、性交と同等の身体的接触を伴う強制わいせつ事案、親権者等による性交等事案などについて、適正な処罰が困難な場合があるとの指摘がなされております。
 また、現行法に対しましては、強姦罪の悪質性、重大性に鑑みると、その法定刑の下限が低きに失して国民意識と合致しない、あるいは、性犯罪が親告罪であることにより、かえって被害者に精神的な負担を生じさせていることが少なくないなどの様々な御意見が見られるところであります。
 そこで、この法律案は、性犯罪の実情等に鑑み、事案の実態に即した対処をするため、刑法を改正し、所要の法整備を行おうとするものであります。
 この法律案の要点を申し上げます。
 第一は、現行の強姦罪は、強制わいせつ罪の加重類型と考えられておりますところ、その構成要件を見直し、行為者及び被害者の性別を問わず、暴行又は脅迫を用いて肛門性交又は口腔性交をする行為等を現行の強姦と同様の重い類型の犯罪として処罰することとした上で、その法定刑の下限を懲役三年から懲役五年に引き上げるとともに、被害者を死傷させた場合の法定刑の下限も懲役五年から懲役六年に引き上げるものであります。また、これに併せて、強姦罪の罪名を強制性交等罪とするものであります。
 第二は、監護者わいせつ罪及び監護者性交等罪の新設であります。すなわち、十八歳未満の者に対し、その者を現に監護する者であることによる影響力があることに乗じてわいせつな行為又は性交等をした者に対する罰則を新設することとしております。
 第三は、強姦罪等を親告罪としていた規定を削除いたしまして、これらの罪を非親告罪とするものであります。
 第四は、同一の機会に強盗の罪と強制性交等の罪を犯した場合について、現行の強盗強姦罪と同様の法定刑で処罰することとするものであります。
 このほか、所要の規定の整備を行うことといたしております。
 以上が、この法律案の趣旨であります。
 政府といたしましては、以上を内容とする法律案を提出した次第でありますが、衆議院において一部修正が行われております。
 何とぞ慎重に御審議の上、速やかに御可決くださいますようお願いをいたします。
#7
○委員長(秋野公造君) この際、本案の衆議院における修正部分について、修正案提出者衆議院議員井出庸生君から説明を聴取いたします。井出庸生君。
#8
○衆議院議員(井出庸生君) 刑法の一部を改正する法律案の衆議院における修正部分につきまして、御説明申し上げます。
 本修正は、法律案の附則に、政府は、この法律の施行後三年を目途として、性犯罪における被害の実情、この法律による改正後の規定の施行の状況等を勘案し、性犯罪に係る事案の実態に即した対処を行うための施策の在り方について検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に基づいて所要の措置を講ずるものとする規定を追加するものであります。
 何とぞ、熟議の上、委員各位の御賛同をお願い申し上げます。
#9
○委員長(秋野公造君) 以上で本案の趣旨説明及び衆議院における修正部分の説明の聴取は終了いたしました。
 これより質疑に入ります。
 質疑のある方は順次御発言願います。
#10
○猪口邦子君 自民党の猪口邦子でございます。
 本日、私は、金田大臣が提案理由を述べられました刑法の一部を改正する法律案につきまして質問いたします。
 今年の三月七日、閣議決定を経て、刑法の一部を改正する法律案が国会に提出されました。改正法案は、刑法制定以来百十年ぶりに性犯罪に係る諸規定を大きく改正するものであります。
 趣旨説明で大臣も述べられましたが、この主たる内容は、強姦罪の構成要件の見直し及び罪名の変更、強制性交等罪となります。また、強制性交等罪の法定刑の引上げ、監護者であることによる影響力があることに乗じたわいせつな行為等の処罰の規定の新設、また、強盗強姦罪の構成要件の見直し、また、強制性交等罪の非親告罪化であります。
 刑法におきます性犯罪処罰規定の構成要件等は、明治四十年の刑法制定以来、制定当時のものが基本的には維持されてきました。これまでになされた改正は、古くは昭和三十三年、一九五八年の集団強姦罪の非親告罪化、また、平成十六年、二〇〇四年には強姦等性犯罪の法定刑の引上げ等がありましたけれども、限られた内容でありました。
 今回の改正に至る過程を考えてみたいと思いますけれども、二〇一五年十月に法務大臣、法制審議会に諮問され、性犯罪関係の刑事法部会で審議がまとまり、二〇一六年の九月ですね、答申がなされています。これに先立ちまして、二〇一四年十月から二〇一五年八月に性犯罪の罰則に関する検討会も設けられています。
 今次の改正法案に至る、しかし最も重要なこととして、数多くの性犯罪被害者の無念があると思います。その方々が、絶望にもかかわらず声を上げる勇気を持って社会的に発言してきた、被害者としての苦悩、そして法改正の必要性、これを訴え続けてくれたということがあると思います。
 声を上げる、これはレイズ・ザ・ボイスと呼ばれる活動ですけれども、そういう努力、社会発展と社会正義の原動力となるもので、私は、分野は違いますけれども、かつて国連で日本の軍縮大使として働いておりましたけれども、様々な問題の被害者が声を上げる勇気、その困難のただ中ではなかなかそれが難しいんですけれども、そのレイズ・ザ・ボイス、この無数の努力が人間社会の進歩につながると感じております。
 ですから、本日は、性犯罪被害者の無念、とりわけ十八歳未満の児童の被害者の悲しみを深く捉えまして、問題提起の声を上げた方々に敬意を表しまして質問したいと思っております。
 まず、この改正法案が出てきている時期について伺います。
 このタイミング、百十年ぶりということなんですけれども、私は初代専任の男女共同参画大臣を務めておりまして、まず、男女共同参画基本法、一九九九年に制定されまして、五年ごとに基本計画の策定が命じられています。私は第二次基本計画を担当いたしましたけれども、その後の第三次基本計画においてこの刑法改正の検討を求めているということを思い出しました。
 このような男女共同参画基本計画第三次のものがその検討を求めたということが、今次改正法案の国会提出に至る流れの一つをつくったのではないかと感じておりますけれども、これについてお考えを伺いたいと思います。
#11
○政府参考人(林眞琴君) 刑法における性犯罪の罰則に関しましては、平成十六年の刑法改正の際に衆参両議院の法務委員会附帯決議において更なる検討が求められておりましたが、委員御指摘のとおり、平成二十二年に閣議決定されました第三次男女共同参画基本計画におきまして、その中で平成二十七年度末までに強姦罪の見直し、これについては非親告罪化、性交同意年齢の引上げ、構成要件の見直し等でございますけれども、強姦罪の見直しなど性犯罪に関する罰則の在り方を検討すると、このようにされていたところでございます。
 これを受けまして法務省においては、先ほど委員も御指摘にありましたが、平成二十六年十月から性犯罪の罰則に関する検討会、これを開催しまして、さらに、その検討結果を踏まえまして、平成二十七年十月に法制審議会にこの刑法一部改正についての諮問を行いまして、その答申を得た結果、今回こういった法案を提出させていただいた次第でございます。
#12
○猪口邦子君 ありがとうございます。
 政府横断的にしっかりと取り組んでいただきたいと思っております。本来はもっと早く進めるべきだったと思っておりまして、今後は、被害の未然防止のためにも的確な対応を決意を持ってやっていただきたいと思っております。
 それでは、具体の条文内容について伺います。
 まず、この強姦罪構成要件の見直し、また集団強姦罪の廃止についてでございますけれども、この改正法は、刑法百七十七条の強姦罪の構成要件に関してですけれども、まず、これ大臣の趣旨説明にもありますけれども、主体と客体の性別による限定をなくしまして、つまり、男性による女性に対する犯罪という限定ではなくて、強姦罪という、したがって、罪名も改めまして、強制性交等罪として肛門性交や口腔性交も強制性交等罪の対象行為とする、この処罰対象を拡大している、そして法定刑の下限についても懲役三年から懲役五年に引き上げると、これは誠に国民の意識に沿うものであり、評価できると思うんですね。
 他方で、改正法は、刑法百七十八条の二の集団強姦罪、集団強姦等の罪の規定、これを削除しています。集団強姦は単独の強姦よりも悪質な類型と一般的には思われると思いますが、規定を削除すること、これを妥当とする考えの背景はどのようなものでしょうか。
#13
○政府参考人(林眞琴君) 委員御指摘のとおり、強姦のうち二人以上の者が現場において共同して犯した場合、すなわちいわゆる集団的形態の強姦につきましては、その暴力的犯罪としての凶悪性が著しく強度であるという点で悪質であると考えております。
 もっとも、現在、集団強姦等の罪の法定刑の下限は四年でございます。また、同罪に係る強姦等致死傷罪の罪の法定刑の下限は六年とされております。今回の改正によりまして、強姦罪の法定刑の下限を五年に、また強姦等致死傷罪の法定刑の下限を六年にそれぞれ引き上げることとしておりまして、集団強姦等の罪及び同罪に係る強姦等致死傷罪の罪を廃止した場合におきましても、この集団的形態で行われる強姦行為についても現在の法定刑より下限が引き上げられることになります。また、同罪に係る強姦等致死傷罪については、現在の法定刑の下限が維持されることになります。
 このように、集団による強姦という悪質性、重大性につきましては、法定刑の下限が引き上げられた強姦罪や強姦致死傷罪の法定刑の範囲内で量刑上十分に考慮して適切な科刑が可能であると考えられたことによる、それが理由でございます。
#14
○猪口邦子君 そもそも、法定刑の下限を引き上げるので百七十八条二の集団強姦罪より重くなるという御説明なんですけれども、集団での強制性交等罪の悪質性、それは局長もおっしゃったんですけれども、これは十分に考慮する必要がありまして、量刑判断におきまして、捜査当局、個々の事件に対する異なる立場で関与した者の刑事責任、これを個別に適切に問う必要がありますので、そのことを重要なこととして指摘しておきたいと思います。
 それで、次に強盗強姦罪の構成要件の見直しで、これは長年おかしいと言われていたことなんでございますけれども、強盗に入って後に強姦に及んだ場合と強姦してから強盗に及んだ場合に、後者の方が刑が軽いというのは非常におかしなことなのです。
 これまでの刑法では、刑法二百四十一条で、強盗強姦罪は強盗である者が強姦に及んだ場合のみに成立するわけですね。他方で、強姦に及んだ者がその後強盗に及ぶという場合には強盗強姦罪は成立しないという考えなんですね。そうすると、強盗強姦罪が成立すると、懲役刑、下限が七年、無期懲役も可能だったんですけれども、強姦が先の場合は強姦と強盗の二つの犯罪があるということで処断刑となりまして、下限が懲役五年、それと無期懲役は科せなかったと思います。
 ですから、今回、どちらが先かということはそれは問わない、先後を問わないということにしているのでこれは的確な見直しと考えますけれども、当局としてのその法的な立論について、この部分についてお伺いしたいと思います。
#15
○政府参考人(林眞琴君) まず、委員御指摘のとおり、現行法上、強盗犯人が強姦をした場合には強盗強姦罪が成立いたします。他方で、強盗と強姦との双方を行った場合でありましても、強姦行為後に強盗の犯意を生じて強盗した場合には強盗強姦罪は成立せず、強姦罪と強盗罪との併合罪が成立するということにとどまります。この場合、処断刑は強盗強姦罪とは大きく異なってしまいます。しかしながら、同じ機会に双方を行うことの悪質性、重大性に鑑みますと、こういった強盗行為と強姦行為との先後関係、あるいは犯意の発生時期の違いをもってこうした科すことのできる刑に大きな差異があると、このことを合理的に説明することは困難でございます。
 そこで、今回の法改正によりまして、同一の機会に強盗行為と強姦罪、今回、強制性交等罪となりますが、この行為が行われた場合につきまして、その行為の先後関係を問わずに現行の強盗強姦罪と同様の法定刑で処罰することといたしまして、あわせて、強盗の行為と強制性交等の行為との双方が未遂に終わった場合についての刑の減免についての規定や、さらに、それぞれの行為から死亡の結果が生じた場合について現行の強盗強姦致死罪と同様の法定刑で処罰ができるものとする規定の整備を併せて行うこととしたものでございます。
#16
○猪口邦子君 それでは次に、監護者性交等の罪についてお伺いします。
 現行法では、強姦罪や強制わいせつ罪、これは被害者が十三歳未満であれば暴行、脅迫を伴わなくても成立すると考えられていて、これは性的自己決定ができないものと考えられるからだと思います。他方で、被害者が十三歳以上であれば暴行、脅迫がなければそのような犯罪は成立しないということになりまして、現実にそぐわない場合が多いと思います。
 改正法では、百七十九条で監護者わいせつ罪及び監護者性交等罪を新設しておりまして、十八歳未満の者に対し以下のような規定としております。その者を現に監護する者であることによる影響力があることに乗じてわいせつな行為をした者については、十三歳以上であっても暴行、脅迫等を要件とせず、強制性交等罪や強制わいせつ罪と同様の罰則で処罰されることということですね。監護とは監督し保護する立場ということを意味しますけれども、例えば家族、親族などの中で起こること、生活の中で起こるから、毎回暴行、脅迫が伴うというわけでもないまま性的自己決定権が害されるというような実態、そういう実態があるという無数の訴えに基づいた改正でありまして、実に重要な改正点であります。
 そこでお伺いするのは、この現に監護する者、具体的にはどのような者と考えますか。これは、法律上の監護権を有するか否か、これは問わないと思います。より具体的な場合を想定してのことだと思いますけれども、御説明いただけますか。
#17
○政府参考人(林眞琴君) まず、本罪において監護するというのは、民法の親権の効力として定められているところと同様で、監督し保護することをいいます。したがいまして、この十八歳未満の者を現に監護する者といいますのは、十八歳未満の者を現に監督し保護している者を指すわけでございます。
 もっとも、本罪は、依存、被依存ないし保護、被保護の関係にある監護者の影響力がある状況の下で性交等が行われた場合には、その十八歳未満の者の意思決定は、そもそも精神的に未熟で判断能力の乏しい者に対して監護者の影響力が作用してなされたものでありまして、自由な意思決定と言うことはできないと考えられる、このことに着目して新設するものでございますので、当該行為者が法律上の監護権を有するか否か、このことに着目したものではございません。
 そこで、法律上の監護権に基づくものではなくても、事実上、現に十八歳未満の者を監督し保護する関係にあれば、現に監護するに該当し得ます。一例を挙げれば、現に監護する者というものについては、親ではなくても、親の再婚相手であるが子とは養子縁組をしていない者であって、子の寝食の世話をして指導監督している者などはこれに該当し得ると考えております。
#18
○猪口邦子君 例えば、生活費を支出しているとか、未成年の場合、いろいろな行政手続をしてあげる人がいると思いますけれども、もう少し具体的にどういうイメージなのか述べてもらえますか。
#19
○政府参考人(林眞琴君) 今一例を挙げましたが、更に例を挙げれば、例えば親の内縁の配偶者であって、子の寝食の世話をして指導監督している者、また、親が行方不明となっているために、事実上、子を引き取って親代わりとして養育している親族、このような者が該当し得ると考えられます。
 その場合の具体的な判断基準でございますけれども、具体的にはやはり同居の有無、居住場所に関する指定等の状況でありますとか、あるいは指導状況、身の回りの世話等の生活状況、あるいは生活費の支出などの経済的な状況、あるいは未成年者に関する諸手続を行っているかどうか、こういった状況、こういったことを諸事情を考慮して判断されるものと考えております。
#20
○猪口邦子君 例えば学校の先生、家庭教師、あるいは児童生徒を放課後などの時間帯で指導する立場の人、こういう方は現に監護する者に含まれるのでしょうか。
#21
○政府参考人(林眞琴君) この監護者性交等罪の現に監護する者に当たるか否かは、先ほど申し上げたような諸事情を考慮して個別の事案で判断されるべきものでございますが、一般論として申し上げれば、委員御指摘の学校の教師等につきましては、この場合、事案にもよるとは思いますけれども、通常はその児童生徒との間に生活全般にわたる依存、被依存、ないし保護、被保護の関係が認められるわけではございませんので、こういった場合に現に監護する者に当たらない場合が多いと考えられると思います。
#22
○猪口邦子君 分かりましたが、更に実態を研究していただき、やはり児童の最善の安心、安全と福祉、これに配慮する運営、運用、こういうのが大事だと思っております。
 このような立法、非常にやりがいのある立法だと思いますけれども、法があって法社会学がありますけれども、社会の認識形成の強化につながるように、監護される立場の弱い未成年、そういう人たちがこの性犯罪の犠牲となることがないよう、そのような認識形成と啓発、それも併せてお願いしたいと思っております。
 それでは、非親告罪化、ここまた非常に重要なところなんですけれども、これについてお伺いします。
 改正法では、これまでの強姦罪、今は強制性交等罪ですけれども、それを非親告罪化しています。これにより、性犯罪被害者が告訴に至る心理的な負担、また人間関係の複雑さから告訴を思いとどまりがちになる、このような指摘、従来から多々されてきましたけれども、これに対応することが可能になります。
 海外でも、例えばフランス、ドイツ、性犯罪は非親告罪でありますし、性犯罪を非親告罪とすることは世界の潮流であると思われますけれども、諸外国の性犯罪の非親告罪とされている経過、経緯あるいは理由等を伺います。
#23
○政府参考人(林眞琴君) 網羅的に外国制度を承知しているわけではございませんけれども、アメリカ、イギリス、フランス、ドイツ、韓国といった国においては、少なくとも主な性犯罪については親告罪とはされていないと承知しております。
 その経緯については、まずアメリカ、イギリスについてはそもそも一般的に親告罪という制度がございません。フランスにおきましては、かねてより性犯罪は非親告罪とされておりました。ドイツにつきましては、ライヒ刑法典が、一八七一年の制定当初はこの強姦罪を親告罪としていたわけでございますが、一八七六年の段階で刑法改正で親告罪の規定が削除され、強姦罪は非親告罪となっております。
 韓国におきましては、刑法制定当初から強姦罪や強制わいせつ罪等は親告罪とされておりましたが、被害者が親告及び告訴を敬遠することにより犯罪が隠蔽されることを防ぐことができ犯罪予防の効果があるほか、被害者の意思と関係なく加害者に対する厳正な対処効果が期待できるなどの理由で、二〇一二年刑法改正により非親告罪とされたと、このように承知しております。
#24
○猪口邦子君 私は初代の専任の少子化大臣務めたんですけれども、言うまでもなく、児童福祉の充実、そして児童が性犯罪から保護されるために大人社会は最善の努力をする、これ非常に重要だと考えておりまして、今日質問させていただいております。
 例えば、保護者は告訴権を持っているわけですけれども、その告訴権を発動しなくても、発動しない場合もたくさんあったかもしれません、そういう場合にも今回適切に対応できるということでよろしいんですよね。
#25
○政府参考人(林眞琴君) この告訴、強姦罪等が親告罪とされることについて様々指摘があったわけでございますが、その中で特に児童に対する性犯罪に当てはまるものとしましては、現在、性犯罪が親告罪とされるために、周囲の人が児童が性被害に遭っていることに気付いても通報しにくい状況にあるという指摘でありますとか、あるいは、被害者が年少者で、実母の夫や交際相手が加害者であるような強姦の事例につきましては、法定代理人である実母がその夫や交際相手と別れたくないがために当該強姦について告訴しない場合があると、こういった指摘があったところでございます。
 このような状況に照らしますと、強姦罪等が非親告罪されることによりまして、児童に対するこれまでの強姦罪等について告訴を要せずに公訴を提起することが可能となりまして、性犯罪の被害に遭った児童の保護にも資するものと考えております。
#26
○猪口邦子君 では、最後に思いますことは、非親告罪化に当たっては、今までは、心の負担というものもあって、そういう公の場での対応をイメージすれば児童は著しい不安感や戸惑いを感じてということがあったと思いますけれども、非親告罪化となります場合には、今度は、例えば司法面接の取組を更に推進する、あるいは児童相談所の機能強化など、この改正を契機に政府を挙げて児童を保護するため、そのような被害児童を保護するための取組も様々な観点から多角的にかなり誠実に進めてもらう、そのような努力が必要ではないかと考えております。
 先ほど申し上げましたとおり、性犯罪の被害者となった児童に最善の配慮を行う、そして、そのような性犯罪根絶に向けて、この法改正を契機に、国民の総意を今、更に強化して、また政府においては最善の政策を生み出していく、そのようにお願いしたいと思います。立法府の一員としても、このような仕事、やりがいがあると思っておりますが、どうぞ大臣も行政府もよろしくお願いしたいと思います。
 それでは、刑事局長のそのような方向についての決意、最後に伺いまして、私の質問を終わります。
#27
○政府参考人(林眞琴君) 児童を保護するための取組といいますのは、性犯罪の非親告罪化がなされる前からもこれは非常に重要な課題でございました。今後更に、非親告罪となった暁におきましては、更にこの取組が非常に重要であると考えております。
 これまでも、例えば検察当局については、事件送致がなされる前の段階でも警察、児童相談所と連携いたしまして、この司法面接的な手法というようなものについての取組を今もう行っております。また、平成二十八年四月一日に閣議決定された第三次犯罪被害者基本計画の中におきましても、既にございます証人への付添いでありますとか遮蔽等の措置、こうした犯罪被害者等の保護のための措置について周知徹底を図って、一層適正に運用されるように努めるということや、また、検察官に対する研修の中で、児童や女性の犯罪被害者等と接する上での留意点、また熟知した専門家等による講義を実施してこういった取組の充実を図る、こういった施策が掲げられているところでございます。
 法務省といたしましては、法務省のみならず政府全体で、また他の関係機関と連携する中でこういった取組を一層進めてまいりたいと考えております。
#28
○猪口邦子君 ありがとうございました。終わります。
    ─────────────
#29
○委員長(秋野公造君) この際、政府参考人の出席要求に関する件についてお諮りいたします。
 刑法の一部を改正する法律案の審査のため、本日の委員会に、理事会協議のとおり、厚生労働省雇用均等・児童家庭局児童虐待防止等総合対策室長山本麻里君を政府参考人として出席を求め、その説明を聴取することに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#30
○委員長(秋野公造君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
    ─────────────
#31
○真山勇一君 民進党・新緑風会の真山勇一です。
 この委員会では、本当に本当に、ついつい昨日までです、テロ等準備罪、共謀罪、審議を行ってまいりました。この委員会、全てのメンバーがやっぱり徹底的に審議を尽くすべきであるということで進めてまいりました。この委員会に来ても、やっぱり私は疑問点というか分からないことが少し多くて、そうしたものをまだまだしっかりと解明していかなければいけない法案であったというふうに思うんですね。
 例えば、組織的犯罪集団というのがどういうものなのかということですとか、一般の人というのはどういう人をいうのか、一般の人でない人はどういう人をいうのかとか、それから周辺の人、様々な問題も出ました。隠れみのという言葉も出ました。やっぱりこうしたことから、この法案の抱える心配な点というのは私はまだまだあったのに、それが会期末ということもあって十分できなかった、これは本当に残念なことだというふうに私自身も思っております。
 そして、今日未明になりますけれども、あの中間報告という、実は私も議員になりたてで日が浅いので、その中間報告などというやり方が初めてで、まさにもう本当に初体験でどういうことになるのかなというふうに思っていましたけれども、やっぱりああいう形で、非常に異例な形だと思うんですね、やっぱりね。私ども、やはり反省するのは、委員会の場でもっと審議をするべきものだったのかなというふうに今思ってきております。
 是非、この法案についてはまたこれからも折を見てしっかりと見直しをしていくということも必要ではないかなというふうに駆られております。私たちとしてはできれば廃案というふうに思っておりましたが、とてもちょっと残念なことになっておりますという、委員会終わったばっかりでこの次の法案に入っているので、ちょっとまだ気持ちの整理が付いていないということもあって一言言わせていただきました。
 それでは、この新しい刑法の改正、性犯罪についての質疑を行わせていただきたいというふうに思います。
 やはりこの性犯罪、本当に、ふだん本当にいろいろなことが私たちの社会であるわけですね。この本当に古い刑法が改正されるということで、できた当時はほとんど男社会というか、男の人たちが中心になったところで作られた法案であり、また、当時はまだ古い日本の習慣というか、そういう意味でいえば、家ですとか、それから女性の貞操を大事にするという、そういうような観点からこの法案というのは作られたのではないか。そして今、私たちの社会が大きく変わってきている。その社会が変わる中で、性の多様化ということも今言われてきています。今までだと、そんなことあるのかなとか、それから、そういうことが表に出てくることは余りないなということがあったかもしれないけれども、今私たちの周りではそういうことがごく普通なことになってきているという、そうした状況があります。
 そうした中でも、でも、やっぱり被害者の方が声を上げるというのは本当に大変なこと、勇気のあることなわけです。性犯罪を防ぐためには、やっぱりこうした方たちの声を上げてもらって、そして法改正につなげていく、卑劣な性犯罪というものをなくすためにはこれも必要なことだというふうに思っております。
 今回のこの改正の中には、そうした声も私は生かされているのではないかというふうに思っておりますけれども、今回の法案の大きな点は性犯罪の厳罰化、それから新しい点が加えられるという見直しが行われている一方で、見送られているところもあります。こうしたこと、幾つかの点について今日は伺わせていきたいというふうに思います。
 まず大臣に伺いたいんですけれども、今回の改正で、性犯罪というとやはり強姦という言葉が本当に使われてきております。この言葉は受けるイメージもそれから実態も、多分、女性が被害者になって加害者が男性という形の犯罪という言葉ではないかというふうに思うんですが、これが今回、強制性交等罪というふうに名前が変えられました。この名前が変わったことでこの犯罪がどういうふうなことになるのか、その理由、その辺りを説明していただきたいと思います。
#32
○国務大臣(金田勝年君) 今般、従来の強姦罪の客体は、ただいま御指摘にありましたように女性のみであったものを男性も含むこととし、従来の強姦罪と同等に処罰しようとする性的行為を、姦淫から、性交から肛門性交や口腔性交を含む性交等に広げることとしたことを踏まえますと、強姦罪の罪名を改める必要があると考えられたわけであります。
 そして、罪名を考える上では、強姦罪が強制わいせつ罪の加重類型と考えられること、これまで強姦の用語が共通して用いられてきた準強姦等との関係でも分かりやすい罪名である必要があることなども考慮いたしまして、暴行又は脅迫を用いて相手方の同意なく性的行為に及ぶ点が強制わいせつ罪と共通している点に着目をしつつ、その処罰対象となる行為を性交等に改めたということを踏まえまして強制性交等罪としたものであります。
 このように、強制の語を用いることによりまして、暴力や影響等に乗じた一方的な行為であることを示しており、合意の存在を前提とした性交とは区別をされていると、このように考えておる次第であります。
#33
○真山勇一君 これまでですと、なかなかどういう犯罪なのか難しいとか、あるいはそういう被害に遭っても泣き寝入りをせざるを得なかった方たちが、これからは勇気を持って訴え、被害を受けたということを言えるような、そうした広い是非法案になっていってほしいと。その強制性交等罪という名前で、やはり、よりそうした性犯罪、卑劣な犯罪をしっかりと防いでいく、そういう目的があるというふうに解釈をいたしました。
 内閣府にお伺いした方がいいんでしょうかね、ちょっと一つ数字をお伺いしたいんです。性暴力と刑法を考える当事者の会、代表という、そういうグループがあるんですが、そこの資料にも紹介されているんですが、平成二十六年の数字です。性交などの被害者、そういう女性が警察に相談する割合というのが驚くほど低いんですね。二十六年の内閣府調査だと四・三%というんですね。
 どのぐらいの被害があって、届け出る人というのはどのぐらいなのか、なぜこんなに低いのか、この辺り、お伺いできますか。
#34
○政府参考人(大塚幸寛君) お答えいたします。
 今ただいま委員御指摘のございました数値は、私どもの男女間における暴力に関する調査のデータからの引用かというふうに理解をいたしております。確かにこの中では、被害を受けた女性のうち、警察に連絡、相談したのは四・三という数字でございました。
 この理由は必ずしもつまびらかではございませんが、やはり元々の暴力、犯罪ということの性格上、ややもすると、なかなかここはやはり相談しづらい、相談するのをためらってしまうといったようなことも、一つそういった心理も一因として働いているのではないかと、このように考えております。
#35
○真山勇一君 やはり、四・三%というから、もう本当に氷山の一角で、犯罪がもう本当にたくさんあるということ。だから、やっぱりこれを何とか犯罪の対象にしていくということが今回の改正のすごく大事な点じゃないかと思うんですが、次に、その犯罪の構成要件でちょっとお話を伺いたいと思います。
 強制性交等罪、今度新しくできるこの性犯罪において、これまでの強姦とか性犯罪でもやはり言われてきたことですけれども、暴行又は脅迫、こういうことがなければ犯罪の対象にならない、性犯罪の対象にならないというふうになって、要件があるわけですけれども、もちろんこれは現在もそういうことが言われている。
 そして、この言葉ですね、抵抗できなかったことを証明するということになるんでしょうけれども、これがなかなか証明するのが大変だというふうに言われています。被害を受ける側にすれば、そのときはやっぱり身がすくんでしまったり声が出ないという、そういう状況もあります。ですから、暴行といってもどのぐらい暴行を受けたのか、あるいは脅迫でもどういう脅迫を受けたのかなかなか分からないし、その証拠を示すということになると大変だというふうに思うんですね。
 一般的にこうした暴行又は脅迫、この要件になっている暴行又は脅迫というのはどういう状態だというふうに考えればよろしいでしょうか。
#36
○副大臣(盛山正仁君) 強制性交等罪は、暴行又は脅迫ということを要件としております。これは、強姦罪においての暴行又は脅迫は、その保護法益である性的自由又は性的自己決定権を侵害する行為であることを示す客観的な要件、そして、その程度は反抗を著しく困難ならしめる程度のものであれば足りると、そんなふうに解されております。
 具体的には、被害者の年齢、精神状態のほか、行為の場所の状況、時間など諸般の事情を考慮して判断されておりますので、御指摘のように、被害者が恐怖感の結果抵抗できない場合においても、事案に即した適切な判断がなされると、こんなふうに我々は解しております。
#37
○真山勇一君 これ、なかなか難しいことじゃないかというふうに思うんですね、客観的に見ると。具体的な何か証拠が、物的な証拠があれば、暴行又は脅迫というのは成り立つと思うんですね。例えば殴られてあざがあるとか、あるいはけがをして出血をしているとか、そういうことがあれば暴行とか脅迫というのがある程度外形的にも分かるし証明しやすいと思うんですけれども、こうした犯罪に巻き込まれる被害者というのは、やはり恐怖で身がすくむし声も出ないということがありますね。そうすると、なかなかそういうことが、実際に受けなくても、被害を、実際に性犯罪の被害者になってしまうということがあるわけです。
 そうすると、現実の問題として、本当にあなたは暴行されたんですかとか、脅迫された上でそういう事態になったんですかということをなかなか証明できない。そうすると、やはりあなたの方が受け入れたんではないですかと、そういう疑いも掛けられてきてしまう。その辺りが被害者にとっては大変つらいことだと思うんですけれども、その辺り、どういうふうに判断する、先ほどのお話ですと、例えばもう恐怖ですくんでしまって声も出せなかったんですよという証言をした場合、やっぱりそれは、こういう場合、犯罪として立証できるんでしょうか。
#38
○副大臣(盛山正仁君) これは、具体的なケースにやっぱり応じると思います。
 性的行為というのは、強制ではなくお互いの合意の上でという場合と、強制であるということと、どこでどう区別をするのか、どう判断をするのかと、こういうことになるわけでございますので、何らかの外に出る形というのがあれば分かりやすいということになるわけでございます。
 しかしながら、そうはいっても、恐怖で身がすくむ、あるいは、大変屈強な例えば大男に対して小柄な方であれば、もう見ただけでなかなか抵抗できないというふうに感じられることもあるでしょうから、その辺りは具体的なケースでどこまでどううまく立証できるのか、こういうことになるのではないかと考えます。
#39
○真山勇一君 例えば、専門的な用語で言うと、被害者がこうした性的犯罪のその標的になったとき、やっぱり恐怖でフリーズ反応というのが起きることとか、あるいは心理学、精神医学的な言葉なんですが解離ということで、要するにすっかり何か放心状態になってしまうとか、そういうことがあるわけですね。そういう状態で被害を受けたとき、救済がやっぱり必要だと思うんですが、その辺り、犯罪として成立させるための救済、これは何とか考えられないのか。
 例えば、いろんな状況はあるんでしょうけれども、暴行又は脅迫というそういう言葉、状況がなくてもどうやって証明すればいいのか、あるいは、脅迫、暴行という言葉を法文から取った場合、これは差し障りというのはやっぱり出てくるんでしょうか。
#40
○副大臣(盛山正仁君) 繰り返しになりますけれども、強姦罪において、その保護法益である性的自由又は性的自己決定権を侵害する行為をどのように示すのか、やはり何らかの客観的な要件というのがなければ、恣意的な判断というんですか、判断がなかなか客観的にならないということで、それはやっぱり何らかのものが要るというふうに我々としては解しております。
 ただ、それが今委員がおっしゃったように、俗にフリーズというんでしょうかね、余りに相手が例えば大きな大男であって、声を出したら何たらするぞ、首を絞めるぞ、このナイフでみたいな、そういうことになれば、もうそこでそれ以上何もできなくなるというのもこれまた自然なことかと思いますので、そういう状況を判断して、これは暴行、脅迫があるのかないのか、つまり自由な意思というものを強制的に侵害されているということになるかどうかを判断していくということになろうかと思います。
#41
○真山勇一君 大変難しい点なのかな、これが性犯罪だと、やはり当事者のそれぞれの証言というか言葉でやっていかなくちゃいけないところがあります。物理的な何か具体的な状況があれば、今おっしゃったような例えば暴行とか脅迫を受けていなくても、確認ですが、例えばそういう大男とか、あるいは本当に使わないまでも凶器をちらつかせたとか、そういうことがあれば特に、まあ刃物ちらつかせれば脅迫になりますわね、刃物じゃないな、何だろう、例えば脅かすような、例えばチェーンをちょっと持っているとか、そうしたことがありさえすれば、必ずしも暴行、脅迫ということだけでなくてもこの犯罪が成り立つという可能性はあるわけでしょうか。
#42
○副大臣(盛山正仁君) 繰り返しになりますけど、結局個別具体的なケース、それを判断せざるを得ないわけでございます。
 ただ、やはり何らかの自由な意思を抑圧したというものがなければ、一方的に被害者と称する方からこういうふうなことがあったというふうなことにもなりかねないわけでございまして、そこら辺はやはり刑事手続を取るという場合には、何らかこれは自由な意思を押さえ付けるものであるかないか、そこの判断できるような材料は欲しいと思います。
#43
○真山勇一君 ありがとうございました。
 次に行きたいと思います。
 今度の新しく新設されるのに監護者わいせつ罪それから監護者性交等罪というのがありますね。これで見ますと、十八歳未満の相手に対して、力、強い力で上から性犯罪に及ぶということなんですが、この監護者、監護者というのはどういう定義になるでしょうか。
#44
○大臣政務官(井野俊郎君) ここにいう現に監護する者とは、十八歳未満の者を現に監督し保護している者をいうというふうに考えております。
#45
○真山勇一君 つまり、監護、保護する者ですから、肉親という解釈でよろしいんですか。
#46
○大臣政務官(井野俊郎君) 基本的には肉親であったり、一般的には、現に生活全般にわたって依存ないし被依存ないしは保護、被保護の関係が認められ、かつ、その関係に継続性が認められることが必要であるというふうに考えておりますので、必ずしもこれは肉親だけではなく、例えば養親関係であったり、例えば義理、再婚相手の、実母の再婚相手だったり交際相手だったりする場合もあるかと思います。
#47
○真山勇一君 その中に、例えば、十八歳未満で学校行っていると思うんですね、例えばそういう場合の学校の先生、教師ですとか、それから、十八歳未満ですから、それで実際に働いている方というのはそんなに多くはないかもしれませんけど、例えばその働いているところの上司など、こうした人たちはこの場合の監護者というところには入るんでしょうか。
#48
○大臣政務官(井野俊郎君) 監護をする者の判断でございますけれども、最終的にはもちろんケースごと、事案ごとになると思いますけれども、ここにいう監護する者が民法に親権の効力として定められているところと同様である者ということを踏まえると、本罪の現に監護する者と言えるためには、やはり生活全般にわたって、衣食住など経済的な観点からも人格形成などの精神的な観点からも依存、被依存関係、保護、被保護関係にあるということが認められる必要があるというふうに思います。
 その上で、教師、生徒の関係であったり上司との関係についてでございますけれども、基本的には、通常はこういった関係では被依存、依存関係、保護ないし被保護関係というのは認められるようなものではないので、現に監護する者には当たらないというふうに考えております。
 もっとも、例えば雇用関係にある場合であっても、親がおらず住み込みで働いている十八歳未満の従業員である者であったり、保護者として学校にも通わせるなどしてその世話をしたりだとか、従業員が雇用主に経済的のみならず精神的にも依存し、生活全般にわたって監督され保護を受けているような諸事情が認められる場合にはこの監護する者に当たる場合があり得るというふうに考えております。
#49
○真山勇一君 ありがとうございました。
 ちょっと質問の順番が、抜かしたところもありますけれども、次に行きたいと思います。
 やはり、性犯罪の被害者になると、そういうことになると、やはり訴え出て、取調べ、事情聴取などを受けるということがあると思います。犯罪に巻き込まれた人にとってはとてもつらいことだと思うんですけれども、自分がどんな状況でその性犯罪の被害を受けたのかということを他人にどうしても話さなくてはいけない、話さなければ捜査が始まらないということもあります。しゃべる相手は、他人というよりは捜査関係だというふうに思うんですけれども、性犯罪、その事情聴取ということでしばしば言われることが、その被害者、大変ショックを受けている、そうした中で改めて自分が被害に遭ったときの状況を話さなくてはいけないということがあります。
 その説明をする、その事情を話す。大変つらいことですし、言い方によっては屈辱的なことを聞かれたり屈辱的な状態を再現しなくちゃいけないとかということがあるというふうに聞かれています。セカンドレイプという言葉で言われていますけれども、この性犯罪事件の事情聴取ということ、一般的にはどんな形で行われるのか。例えば、状況を説明する、非常にちょっとたくさん、大ざっぱな質問になりますけど、どんな状況で事情聴取というのは行われるんでしょうか。
#50
○政府参考人(高木勇人君) もちろん事案によって様々でございます。また、届出をされた時点と被害の時点との時間的な間とか、そういったことによって様々だと思います。
 まず、被害者の方が被害から直近の場合には、けが等をされているような場合もあろうかと思います。そういった場合は、まず、そういった治療の必要性であるとか、そういったことをきちんと判断をするといったことが必要になります。その上で事情聴取等を行っていくことになりますが、その際も、被害者の現状をよく踏まえまして、また捜査の中身ないし事情聴取の中身の、なぜそういったことを聞く必要があるのかと、こういったことをきちんと説明しながら、御理解を得ながら、また被害者の方の体調も踏まえながら、できる限り心情に配意しながら、できる限り負担が少なくなるようにと、そういった配慮をしながら事情聴取を行っているという現状でございます。
#51
○真山勇一君 それで、その事情聴取を受ける相手、相手が警察の場合は警察官になるわけですけれども、例えば、被害者の方が警察駆け込んで、あるいは連れてこられて、そして被害に遭った実態を話すということになる。普通、取調べ、事情聴取ですね、どんな形で行われるのかということは、つまり聞く相手は男性の警察官と女性の警察官というのがあると思うんですね。もちろん最近は被害も、恐らく女性ばかりでなくて男性の被害者というのもあると思うんですが、基本的にこの被害者の性と例えば事情聴取をする側の警察官の性というのは、何か特定のルールみたいなものはあるんですか。
#52
○政府参考人(高木勇人君) お尋ねの件は、被害者の御希望をまず伺うということがございます。できるだけそれに沿えるようにするということになります。ただ、例えば夜間で小規模署で、被害者としては女性を希望しているんだけれども、そういったことができないといった場合もございますけれども、そういった場合には、被害者に御了承が得られれば事情聴取を続けるであるとか、ケース・バイ・ケースになろうかと思っています。
#53
○真山勇一君 被害者の方からの声の中に、やはり一般的に女性が多いわけですね、そうすると女性の被害者が、やはり男性の警察官だといろいろ話しにくいとか屈辱的だとかということが、訴えがあります。今おっしゃったように、そのケース・バイ・ケースで、やはり本人が望むなら女性警官あるいは男性警官ということをきめ細かく是非やっていただくということもこうした性犯罪をなるべく捜査していくということにとっては大事なことだと思うので、是非よろしくお願いします。
 そして、時間がちょっとなくなってしまったので、もう一つお伺いしたいんです。
 よく最近LGBTという言葉が言われます。これそれぞれ性的少数者と言われる少ない方の頭文字を取った言葉なんですけれども、レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダーというこの言葉、こうした性的な少数者に対する犯罪を防ぐという、こういうことは今回検討されたんでしょうか。
#54
○政府参考人(林眞琴君) 今回の法改正に当たりまして、基本的に、ジェンダーの関係から、もとより、元の強姦罪が女子に対する姦淫というものだけを処罰していたということ、これについては批判がございました。そういった観点から、そういった男性に対するそういった性的な行為についてもこれを処罰の対象とすべきであるといった観点での検討はいたしましたが、特にそのLGBTというような形での、そこに焦点を当てた検討はしておりません。
#55
○真山勇一君 少数とはいっても、こうした方々が様々な被害に遭ったり、それから場合によっては偏見とかあるわけですね。そうした中で闘ってきているわけなので、是非こうした、少ない数ですけれども、やはりこれからはこうした方たちにも目を向けた性犯罪の改正ということもまた是非視野の中に入れていただきたいというふうに思います。
 あと、子供のこととかワンストップ支援センターのことをお伺いしたくて内閣府それから厚労省の方もお呼びしましたけど、ごめんなさい、時間がなくなってしまいました。また機会があれば是非お伺いしたいと思います。
 ありがとうございました。
    ─────────────
#56
○委員長(秋野公造君) この際、政府参考人の出席要求に関する件についてお諮りいたします。
 刑法の一部を改正する法律案の審査のため、本日の委員会に、理事会協議のとおり、厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長堀江裕君を政府参考人として出席を求め、その説明を聴取することに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#57
○委員長(秋野公造君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
    ─────────────
#58
○有田芳生君 民進党・新緑風会の有田芳生です。
 法律の問題を考えていくときに、私は人間の根源的な価値というものは人間そのものだというふうに思っております。そういう視点から、共謀罪についても、プライバシー権の侵害などなど、やはり捜査の方向性として、一人一人の個人、もっと言えば人間というものが本当に監視されてしまう、そういうおそれを強く抱いていたものですから、強く反対をしてまいりました。
 一方、今議題になっております刑法の改正案、性犯罪の厳罰化というよりも、被害者からすれば性犯罪の適正化、厳罰化というよりも適正化、その視点で、やはり人間の深い根源的問題としてこの課題についても考えていかなければいけないというふうに考えております。
 先ほども、真山委員の方から、質問の中で強姦という言葉が出てまいりました。私も昔から、小説も含めてですけれども、この日本社会に強姦という、私の感覚でいえばまがまがしい印象の言葉としてずっと捉えてきました。
 例えば、漢字の大家、漢字学と言っていいんでしょうか、大家である白川静先生の「字統」などを見てみますと、強姦の強というのは強いるという、これはまあ誰でも分かるんですけれども、姦、女三人、何なんだろうかというふうに思っていたんです。
 改めて確認してみますと、姦というのは神を汚す行為を表していたというんですよね。簡単に言ってしまえば、女というのは不愉快な意味で使われていた、そういうことから、強姦という言葉の、女三人を強いるというような、非常に良くない言葉として日本社会にずっと存在をしてきた。だから、言ってみれば、現代社会でこういう言葉を使うべきではないという専門家の指摘もこれまであったわけですから、今度の刑法改正案、それが成立した場合には強姦罪という言葉そのものがなくなっていくわけですから、そういうことでいえば大きな前進であろうと私は考えております。
 そして、まず、そういう視点から大臣にお聞きをしたいんですけれども、百十年ぶりの刑法改正というふうにこれまで言われておりますけれども、逆に言えば、先ほど刑事局長からも簡単な説明はありましたけれども、被害者の立場からすればどうして百十年も改正できなかったんだろうか。被害者団体、被害者の方々の表現によれば、百十年間、私たちは待っていたんだ。その私たちというのは多くの被害者の方々、名のり出た方もいるでしょうし、名のり出ることのできなかった多くの方々、その思いを百十年、私たちは待っていたんだという表現に、被害者の方々が語っていらっしゃるんだというふうに思うんです。
 大臣、どうして百十年もこういう改正ができなかったと判断されたんでしょうか。
#59
○国務大臣(金田勝年君) 有田委員のただいまの御質問のベースには、やはり今回の法改正の経緯というものを振り返って考えなければいけないのかなというふうに考えております。
 刑法における性犯罪の罰則につきましては、明治四十年、百十年前になりますが、この現行刑法制定以来、昭和三十三年の刑法改正によりまして二人以上の者が現場において共同して犯した強姦罪等が非親告罪化されたり、あるいは平成十六年の刑法改正によりまして強姦罪及び強姦致死傷罪の法定刑を引き上げるといった改正は行われたものの、刑法制定当時の構成要件等が基本的に維持されてきたという経緯があります。
 これに対しまして、近年、現行法の性犯罪に関する罰則は必ずしも現代の性犯罪の実態に即したものとなっていないのではないかという観点から、様々な指摘がなされてきたと承知をしております。
 例えば、平成の二十二年に閣議決定されました第三次男女共同参画基本計画におきまして、強姦罪の見直しなど性犯罪に関する罰則の見直しが求められておりました。そしてまた、平成十六年の刑法等の改正の際、そして平成二十二年の刑法及び刑事訴訟法改正の際の衆参の両院の法務委員会によります附帯決議を見ますと、性犯罪の罰則等に関する見直しが求められていたのであります。
 今回の改正は、こうした経緯を踏まえて、やはり近年における性犯罪の実情等に鑑みまして、事案の実態に即した対処をするために、平成二十六年の十月からなんですけれども、性犯罪の罰則の検討会、これを開催をいたしまして、刑事法の研究者あるいは法曹三者、そしてまた被害者支援団体の関係者といった方々から成りますこの検討会を開催をしたわけであります。
 その結果、検討結果を踏まえまして、その後、平成二十七年の十月に法制審議会に諮問を行いました。その結果、二十八年、昨年の九月になるわけでありますが、この法制審議会から法務大臣に対してなされた答申というものがございます。これを踏まえて必要な検討と準備を行って法案を提出するに至ったという、これまでの非常に長い経緯がございます。そういう経緯を踏まえて今回の法案を提出したと、このように考えております。
#60
○有田芳生君 大臣からは現実、実態などという言葉が出て、経緯については今御説明されたとおりですが、刑事局長、お聞きをしたいんですけれども、私が素朴な疑問として持っておりますのは、多くの人間、その悲痛な経験を思い、それがずっと続いてきたわけですよね、そういう現実があった。
 だから、私が知りたいのは、どうしてそういう多くの人たちの、語ることもあったでしょう、語れない人たちも多かったでしょう、今でもそうでしょう。そういう現実があるにもかかわらず、なぜ百十年も掛かったか、その説明をお聞きしたいんですが、いかがでしょうか。
#61
○政府参考人(林眞琴君) まず、刑法というものは刑事法の基本法でございまして、これをどのように変えていくかというものについては、かなり慎重に検討しなくちゃいけないという性格のものがございます。その中で、これまでも、刑法に掲げられている性犯罪をめぐる様々な意見というものは、今回もいろんな論点につきまして刑法の改正をしているわけでございますが、時代時代でいろんな主張が一気に出たわけではなくて、これまで指摘される声が大きくなってきたその経緯というものがございます。
 特に、犯罪被害者との関係で、現在の刑法の体系、性犯罪の規定が犯罪被害者に向いているのかどうかというような指摘がなされてきたのも、恐らく二〇〇〇年前後辺りからですね、特に強く声が出てきたんだと思います。また、親告罪であることが、制度としては親告罪というのはまさしく被害者のプライバシーを守るという制度なんでございますが、それがかえって、かえって被害者にとって判断を強いる、負担になっているんだと、こういった声が出されてきたのも、やはりそういう声が大きくなってきたのは、私の考えではやっぱり二〇〇〇年前後ぐらいからだろうかなと思います。
 そういったところを踏まえて、これまでその制度についてどのように検討していくのかということを各論点について検討はしておったのでございますが、それが、委員御指摘のとおり、体系的に、ある意味網羅的に検討がなされるということがこれまではなされていなかった。二〇〇〇年以降も、まだ時間があったんじゃないか、もっと早くやるべきだったんじゃないかという御意見はあろうかと思いますけれども、そういったところについて受け止めが、検討のかなりの時間が掛かってしまったということは否めないところだと私は思っております。
#62
○有田芳生君 もう少し細かくお聞きをしたいんですが、今、二〇〇〇年辺りというお話でしたけれども、それまでにも多くの被害があったわけですよね。しかし、それが量的にあるいは質的に、社会的にこれは何とかしなければいけないという声がなかったのにもかかわらず、二〇〇〇年ぐらいからそういう声、変えなければいけないというものが増えてきたとするならば、それは何かきっかけがあったんでしょうか。
#63
○政府参考人(林眞琴君) もちろんいろんな、そういったことについて特に犯罪被害者の方からの意見というものはもっと前からあったんだろうと思いますけれども、一方で、その犯罪被害者の声に沿う形で、例えば平成十六年に刑法の改正というものをやって、一定の法定刑を引き上げるような法改正は行っております。
 そういったときに、さらに、単にこの程度の法定刑を引き上げるだけではなくて、もっと引き上げるべきではないかとか、あるいは、さらには今、今回の改正の対象となっているようないろんな論点というものがその平成十六年の刑法改正の際にも様々御意見が出て、そういったものが衆参の附帯決議等で検討をすべきであるというような意見が出されたり、こういった形で犯罪被害者の方に沿う形での法改正を一定程度やろうとすると、そういうふうなことをきっかけに、さらにその際に、これでは不十分である、あるいはもう少しこの点も手当てをしなくちゃいけないんじゃないかと、こういった声が特に明らかな形で出てきたんだと私は認識しております。
#64
○有田芳生君 ちょっと視点を変えてみますと、明治からの刑法、そして人間の意識というのは社会とともにどんどん変わってきたわけですけれども、明治、大正、昭和、そして平成、そういう時代の流れの中で、刑事局長にお聞きをしたいのは、男尊女卑の思想みたいなものがやはり社会の変化の中で変わってきたことによって、やはりそういう被害の現実、実態、そういうものを支える人たちのグループ、そういうものが、やはりこのままではいけない、刑法を早く変えなければいけないという声に結び付いたということはあるんでしょうか。
#65
○政府参考人(林眞琴君) もちろん、刑法の体系を批判されたり、あるいは御意見を言われる方に、そういったその委員御指摘のような考え方からして、この刑法というものは、当然、明治四十年にできたものでございますので、時代に沿わないんじゃないかと、そういう意見があったことは承知しているところであります。
 そういったことで、例えば先ほどの強姦罪の姦という字につきましても、これについてもやはり、恐らく明治、その制定当時は何の違和感もなく使っておられたんだと思いますけれども、我々としては、刑法が変わっていない状況でそういった言葉が使われているというのは十分に認識しながら、これまでそれを改正する機会というものが、その言葉を変えるにはやはり構成要件そのものが変わるときでないとなかなかその法的な安定性がないものですから、そういった意味で変えようということで、今回はやはり、確かにあの姦という文字を、言葉を使うかどうかというのは、改めて罪名を考えるときには、やはり使う、そういうのは避けた方がいいんじゃないかというふうな観点からの罪名の選び方というものをしたというのも、我々の側も当然その明治四十年の頃の状況というものと現在の状況の違いは認識しながら考えているという点で、やはり今、男女の平等とか男尊女卑とか、そういったある意味での社会の状況の変化というものは当然この改正には影響していると考えております。
#66
○有田芳生君 恐らく、時代の変化、そして現実、そして直接的には被害者の方々の声、それを支える人たちが、これはもう時代遅れの刑法だから何としてでも変えていかなければいけないという、そういう力が大きな原動力になったんだろうと私は考えております。
 しかし一方で、最高裁判所に次お聞きをしたいんですけれども、裁判官の意識というものが時代にまだまだ追い付いていないというところがあるだろうというふうに思います。
 例えば、古い話なんですが、最近を挙げてもいいんだけれども、裁判官の様々な不祥事、セクハラ含めた事件というものが報道されることがありますけれども、例えば一九七六年という古い時代になりますけれども、司法研究所の事務局長と教官が女性修習生に対して、女性は法律家、裁判官にふさわしくないといったような差別発言を行った。これは、今、女性は法律家、裁判官にはふさわしくないという表現でお伝えしたんですが、もっとひどい、とんでもない、驚くべき露骨な発言をしたんですよね。これは国会でも当時問題になって、しかし、それにもかかわらず、この司法研究所の事務局長は、最後には東京高裁の長官となられましたけれども。
 私はしばしば驚くことがあるんだけれども、性犯罪被害に関わる判決などを読んでみますと、三文ポルノと言っていいような、とんでもない判決を見ることがあります。何でこんな露骨にひどい表現で判決文書かなければいけないのかというようなものを目にするんですよね。だから、そういう男尊女卑の思想をやはり裁判官もいまだお持ちなのではないかという危惧があるんです。
 今、裁判官は恐らく全国で三千人ぐらいですか。だから、大きな企業なんかでもいろんな不祥事はあるんだけれども、本当にプロフェッショナルな集団の中で様々なセクハラも含めた事件というものがあるというのは、これ比例からすると少しおかしいなと思うぐらいの現実だと私は思っているんです。
 ですから、さっき言いましたように、裁判官が性犯罪被害についての裁判なんかの判決文を書くときに、何でこんな文章で判決書くんだろう、きっと一人で書いているんじゃないから、複数でチェックしているとすればそういうものを判決文に書くというのはおかしいんじゃないかと思うぐらいの内容がある。これを改めなければいけないと思う。刑法は変わる、だけど裁判官の意識がまだまだ現実に追い付いていないならば、そこにどう対処されるのかということをお聞きしたいというふうに思います。
#67
○最高裁判所長官代理者(平木正洋君) 裁判所といたしましても、被害に遭ったときの被害者の心理状態等をよく理解し、適切に審理、判断を行うことは重要であると考えております。
 そこで、司法研修所では、刑事事件を担当する裁判官を対象とした研究会におきまして、性犯罪の被害者の支援に長年携わっている大学教授を講師としてお招きして、被害時の被害者の心理状態やその後の精神状態等について理解を深める講演を行っていただくなど、被害者への配慮に関する研修を行っております。また、司法研修所では、DV、セクシュアルハラスメント、女子差別撤廃条約等のジェンダー問題への裁判官の意識を高めるために、大学教授、人権擁護に携わっている国際機関の職員などを講師としてお招きし、各種講演を実施しております。
 裁判所といたしましては、今後も適切に研修を実施してまいりたいと考えておるところでございます。
#68
○有田芳生君 裁判官も人間ですから、その人たちの意識の中に男尊女卑の思想などなどがいまだ残っているとすれば、それを内側からやはり変えていかないと、とんでもない判決文というものが出てくるということはやはり改善していただきたい大きな課題の一つだというふうに思っております。
 同時に、今お話にあったこととも関わるんですが、とにかく被害者の心のケア、カウンセリングというのは、これはもう本当に深刻な課題だと私は思っております。
 オウム事件から二年後の一九九七年に、神戸で連続児童殺傷事件がありました。法務委員会でも、その当時の十四歳、少年Aの問題についてもこの委員会で質問したときに、育て直しという現場の多くの方々の努力があったんだけれども、結果的に失敗したという、そういう結論になってしまっている。
 あの当時十四歳の少年は、小学校三年生のときに軽いノイローゼになって病院に行くんですけれども、十分な治療を受けることができなかった。そして、十四歳で連続児童殺傷事件を起こした。私はそのとき、取材をしてびっくりしたことがあった。本当に、あの事件を起こした少年だけではなくて、DVとか虐待、様々な心の問題を抱える子供たちが今でもいっぱいいる状況の下で、子供の心の専門医、それが一九九七年時点で何人いるんだろうかということを調べてみたら、二百人いないんですよね。
 それから私は、国会に来てからも厚生労働省にお聞きをしました。神戸の少年事件が起きたときに、子供の心の専門医と言われる人たち、専門医が二百人弱しかいなかった。それからもう、今からするともう二十年たっているんだけれども、どうなっているんだろうかと思ったら、変わっていないんですよね。
 診療報酬体系など非常に難しい問題もあるんだと思うんですが、それと同じように、性的被害を受けた人たちの心の問題、トラウマを抱えた人たちを本当に専門的に心の中から解放してもらうような専門家というのはどのぐらい今いらっしゃるんでしょうか。
#69
○政府参考人(堀江裕君) お答え申し上げます。
 性犯罪に遭った場合にいろいろな形での影響が出てくるわけでございまして、一つには、生殖的な、例えば意図しない妊娠につながるのではないかというようなことに対すること、それから、その起きた結果、行動上の影響ということで、何らかの、例えば自分自身、自暴自棄な感じになってリスクの高い行動に出てしまったりするようなことがあったり、それから、お答えする中心になりますけれども、その後、急性のストレス、それからまたPTSDというようなことで精神的な問題を抱えること。
 それから、場合によっては生命に関わるようなことにもつながりかねないようなことがあるということで、いろいろな支援が必要になるわけでございまして、厚生労働省でPTSDの対策について専門的な研修というのも行ってございまして、平成八年から二十年ほどで六千七百人近くの方が受講していただいていて、二十八年度ですと二百二十三名、二十七年度ですと百八十四名ということで、医師、看護師、保健師それから精神保健福祉士、臨床心理士といった方々に受けていただいているところでございます。
 こうした問題、今委員御指摘のように、医療機関としてはたくさんあるということもあるのかもしれませんけど、やっぱりこういうPTSDとかいうようなことについて特化したものというのが難しくて、また取扱いもできにくいところを、やはりこの裾野を広げていくということが大事だと感じてございまして、一方で、今御紹介申し上げました研修、どうしてもPTSDということですと災害ですとか、そうしたことの方が中心になってしまう。
 しかしながら、PTSDに関係するようなことでいいますと、いろいろなイベントがございます。例えば暴力ですとか災害ですとかそういう中で、そういうイベントに直面する人は多いんですけれども、ずっとその病気を抱えていくという方の、出現率というふうに申し上げますが、は非常に性犯罪の方は高くなってございまして、やっぱりこの今研修を行っている中で、性犯罪に関しますPTSD、特化したものというのは特に設けてございませんので、ここは少し改善もしていかなきゃいけないんじゃないかというふうに考えてございまして、三十年度に向けまして少し研究を進めさせていただきたいというふうに考えてございます。
#70
○有田芳生君 とにかく心の中から解放してもらうという課題というのは本当に大変な仕事なので、そういうところにも今後予算も付けて、いろんな方々、専門家を養成していただきたいというふうに思います。
 残された時間で大事な問題をお聞きをしたいと思います。
 元TBSの記者が当時二十六歳の詩織さんという方をレイプしたと。本人が訴えて、記者会見まで顔を出して行いましたけれども、その事実がどうかということを確認したいんではないんですが、そのときに多くの人たちが思ったことですけれども、強姦罪と準強姦罪、これがどういうものなのか、ちょっと時間もないので簡単に説明していただきたいんですが。
 つまり、世間からいえば、強姦罪というとんでもない犯罪があって、だけど、準強姦罪となるともっとレベルが低いものなのかなというふうに、やっぱり言葉で捉えてしまうようなところがあるので、そこは違うのか一緒なのか、ちょっと説明をお願いします。
#71
○政府参考人(林眞琴君) 強姦罪と準強姦罪の違い、また同じ部分ということでございますが、まず強姦罪というのは暴行又は脅迫を用いて成立する罪でございます。準強姦罪は、人の心神喪失若しくは抗拒不能に乗じて、又は心神を喪失させ、また抗拒不能にさせて成立する罪でございます。この罪、両者は、実際の同意のない性行為を行うということについては同様で、共通なんでございますが、手段が異なるわけでございます。ただ手段が異なるだけで、この準強姦罪と強姦罪の悪質性、重大性は全く同じでございます。ですから、法定刑も全く同じでございます。
 そして、準という言葉でございますが、これは強姦罪の例によるという意味での準でございまして、何かこの悪質性が一段階落ちるとか、そういう意味を持っているものでは全くございません。
#72
○有田芳生君 だから、そういう専門的な法律用語というのは一般社会で受け取られにくいところがあるので、そういうこともちゃんと説明していただきたいというふうに思います。
 残された時間で最後の最後に警察庁にお聞きをしたいんですけれども、この詩織さんという女性は自分がレイプをされたということを訴えて、その内容として、逮捕状が出たけれども執行されなかったという流れの中で、ホテルの一室の中でのことだから、そこで何が行われたのかは分からないから準強姦罪に当たらないんだという説明を受けたというんですが、要するに、準強姦罪の構成要件といいますのか、どういうことならばそれが犯罪の要素になるんでしょうか、お答えください。
#73
○政府参考人(高木勇人君) 御指摘の個別の事件についての御説明ということは差し控えさせていただきたいと存じますけれども、ただいま法務省から御説明ありましたように、準強姦罪の場合には、強姦罪と異なりまして、暴行、脅迫によらないで心理的、物理的に抵抗が不可能又は著しく困難な状態にあったということについて立証することになりますが、例えば被害者が意識喪失に至っているような場合にはその原因を明らかにするような捜査が行われることになると考えられますし、また、被疑者が被害者を心神喪失にさせたという場合には、その方法や手口についても捜査していくということになろうかと考えております。また、被害者が被害時の状況を詳細に記憶していないといったような場合でありましても、例えば被害前後の状況についての被害者の供述と客観的事実が合致しているかといったことなどについて確認するといったことによって捜査をしていくものと考えております。
#74
○有田芳生君 じゃ、ビデオがないとか写真がないから成り立たないんだということがあるとすれば、それは間違いということでよろしいですね。それだけ答えていただいて終わりたいと思います。
#75
○政府参考人(高木勇人君) 繰り返しになって恐縮ですけれども、今の個別の事件についてのお答えということではございませんけれども、一般的にその事案事案によって最適な証拠を収集して立証に努めていくということになろうかと考えております。
#76
○有田芳生君 終わります。
#77
○佐々木さやか君 公明党の佐々木さやかです。
 今日は、刑法の性犯罪についての改正案が議題になっております。今日も各委員の先生方からお話がございましたけれども、今回の法改正というのは、実に明治四十年の制定から初めてこの性犯罪についての構成要件などを大幅に見直すという改正でございます。
 この改正というのは本当に非常に大きなことであるというふうに思っております。これまでこうした性犯罪被害の問題に取り組んでこられた関係者の皆様、また法改正に向けて努力をされてきた先生方始め関係者の皆様に敬意を心から表したいというふうに思っております。とりわけ、やはり声を上げてくださった被害者の皆さん、そして被害者団体の皆さんの思いとしては本当にいかばかりかというふうに思います。先日も、被害者団体の皆様が法務大臣に三万筆の署名をお渡しをして、一日も早いこの刑法の改正案の成立というものを申し入れられたと、このようにも伺っております。
 この性犯罪被害というものは、今日も大臣も趣旨説明の中でおっしゃっていただきましたけれども、性犯罪は被害者の心身に多大な苦痛を与え続けると、このように趣旨説明をしていただきました。与え続けるということであります。
 魂の殺人という言葉をよくこの性犯罪については言われますけれども、この魂の殺人という意味についても、実際に被害に遭われた方にしか分からないところもあるかもしれませんが、私なりに思うところとしては、やはりもう全てを失うんですね、その瞬間に。殺人というのはもう命を絶たれますから、その後全て失うわけですけれども、それと同様に、性犯罪被害に遭うということは、体は生きているけれども全てをその瞬間に失うということなのかなというふうに思っております。
 つまり、例えば財産犯で強盗の被害に遭った、それ自体も非常に大変な被害ですけれども、何か物を失った、そのショックとかいろんなことから回復するのにも時間は掛かるかもしれませんが、性犯罪被害というのは、取られたものだけじゃない、そのときの瞬間の恐怖だったりとかいろんな思いだけではなくて、その後の社会生活、普通には送れなくなります。仕事も失うでしょう、それから友達も失う、そして家族との間の関係すらこれまでとは違ったものになってしまうと。
 そういう意味で、本当にそれまで歩んできた人生が一瞬にして破壊されると。その失ったものを取り戻すのにも、取り戻すことはできないというふうに被害者の皆さんは思われているかもしれませんし、実際に社会生活に復帰をされるまでも非常に長い年月を必要とするということが多いわけでありまして、そういった意味で、本当に、趣旨説明でおっしゃっていただいたとおり、著しく悪質重大な犯罪であるというふうに改めて思います。
 そういった性犯罪被害について被害者の方々が声を上げてくださった、私たちにはなかなか想像ができないぐらいのいろんな困難があったことと思いますけれども、やはりそうした被害者の皆さんの声というものが何より今回の法改正の大きな後押しといいますか、実現の力になっているのではないかというふうに思います。この被害者の声に応えるというこの法案については、各党を超えて必ず今国会でということは一致をしているところだと思いますので、改めてその決意を述べさせていただきたいと思います。
 今回の改正の各論の部分について幾つか確認をしていきたいと思いますけれども、まず最初に、強姦罪という犯罪でしたけれども、これを強制性交等罪という形に変えると。これまでの強姦罪というのは女子を姦淫したということが犯罪の成立要件でありましたので、女子を姦淫したですから被害者は当然女性のみ、女性に限られていたと。
 これがどう変わったかといいますと、姦淫のみならず肛門性交、口腔性交を含めるとしたということでありますので、女子を姦淫したということではなくて、そのように変わったということで男性も被害者となり得る、そういう点が大きく変わりました。かつ、女子を姦淫した場合に限られていましたから、これまでは加害者が男性、被害者が女性という形だけでしたけれども、被害者が男性で加害者が男性ということも当然含まれることになったわけであります。
 こういった改正がなされるわけですけれども、この点について、改めまして強姦罪の構成要件を見直して強制性交等罪としたこの改正の趣旨について伺いたいと思います。
#78
○政府参考人(林眞琴君) まず、刑法第百七十七条の強姦罪の構成要件に関する改正につきましては、これは、まず構成要件を見直して、現行法では女子に対する姦淫、すなわち性交のみを犯罪行為としているところ、これを行為者及び被害者の性別を問わず、性交のほかに肛門性交及び口腔性交をも含むものにする、これが内容でございます。
 その趣旨でございますけれども、強姦罪につきましては、その悪質性、重大性に着目した強制わいせつ罪の加重類型であると、このように考えられているところでございますが、従来は強制わいせつ罪の中で問擬されてまいりましたいわゆる性交類似行為というものがございますが、その性交類似行為の中でも肛門性交及び口腔性交については性交と同等の悪質性、重大性があると考えられることから、性交と同様に加重類型に含めて処罰するようにすると、これがまず一つの趣旨でございます。
 また、暴行、脅迫を用いるなどして行われた性交等によりまして、身体的、精神的に重大な苦痛を受けることにつきましては、これは男女に差がないと考えられますので、その客体には男性をも含むこととしまして、さらに、そのような行為をすることができる行為主体についても、男性に限られず女性をも含むこととしたものでございます。
#79
○佐々木さやか君 これまでは女子を姦淫したということで限られておりましたが、肛門性交、口腔性交の被害についても姦淫の場合と同等の悪質性が認められると、こういった趣旨で同じく処罰をするということであります。ですから、姦淫と肛門性交、性交類似行為との間には悪質性には違いがない、同じく重大であるということであろうと思います。
 それから、被害者に女性だけでなく男性もなり得るということに加えて、今御説明いただきましたが、加害者に男性だけでなく女性もなり得るという改正が行われました。これについてもう少し伺いたいと思いますが、どういうことかといいますと、現行法では、先ほどから申し上げているとおり、女子を姦淫した場合のみでありましたけれども、今回の改正におきましては、女子を姦淫する場合だけでなく、姦淫をさせる行為と言えばよろしいでしょうか、姦淫をさせる行為も同等に強制性交等罪に含まれる。また、肛門性交、口腔性交、こういった性交類似行為をさせる行為も処罰の対象であるというところから、男性のみが加害者ではなくて、女性が男性に対してそういう行為をさせる行為、これも処罰の対象になると、そういった意味で加害者に女性も入り得るという改正がなされるわけでございます。
 そういった行為を、つまり女性も加害者になり得ると、こういった改正も非常にこれまでに比べると大きな点でありますけれども、そういう行為も処罰対象にしたという趣旨について、確認で伺いたいと思います。
#80
○政府参考人(林眞琴君) 今回の強制性交等罪の性交、肛門性交又は口腔性交には、自己又は第三者の膣内等に被害者の陰茎を入れる、被害者は男でございますが、被害者の陰茎を入れる行為、いわゆる入れさせる行為というものも含むわけでございます。これにつきましては、女性が男性に対して性交を強いる強制わいせつ事案でありますとか、男性が男性に対して肛門性交を強いるような強制わいせつ事案というものも存在するところでございまして、このような被害者としては、この陰茎を人の体内に入れるという濃厚な身体的接触を伴う性交渉を強いられるという点についてはその逆の場合と差はないわけでございますので、今回、強制性交等罪として処罰するのが相当であると考えたからでございます。
 なお、性交、肛門性交又は口腔性交をしたという文言上の表現は、ここでは行為の主体と客体を文言上限定しておりません。これまでは女子を姦淫という形で限定がございましたが、今回はそのような行為の主体と客体を文言上限定しておりませんので、強制性交等罪として処罰される行為の中に自己又は第三者の膣内等に被害者の陰茎を入れる行為、いわゆる入れさせる行為というものも含むと解することができると考えているところでございます。
#81
○佐々木さやか君 これまでもこうした行為というのは強制わいせつでは処罰をされていた、強制わいせつは成立し得る行為であったわけですが、被害の重大性また悪質性ということから、強姦の場合と同様であろうということで強制性交等罪に含まれるという犯罪類型にしたというのが今回の改正であるという御説明でありました。
 この構成要件自体を変えたということに加えて、もう一点重要な改正としてはやはり法定刑であります。法定刑については、これまでは懲役三年以上という下限でありました。一番軽くても懲役三年と、そういう趣旨ですけれども、これを今回は、強制性交等罪については懲役五年以上ということで、軽くても五年、いろいろ減刑があったりする場合も事案によってありますけれども、法定刑の一番軽いものとしては五年ということで、下限を引き上げると、こういう改正がなされるわけであります。
 この法定刑の下限の引上げについてはどのような改正の趣旨なのか、伺います。
#82
○政府参考人(林眞琴君) 強姦罪の法定刑については、例えばその下限が引き上げられた平成十六年の刑法改正に係る国会審議、また公訴時効等が改正されました平成二十二年の刑法等改正に係る国会審議、このいずれの際においても、衆参両議院の附帯決議におきまして、他の罪の法定刑との均衡や被害の重大性を踏まえた更なる検討が求められると、こういった指摘がなされてきたところでございます。
 その上で、当省において開催しました性犯罪の罰則に関する検討会における検討でありますとか法制審議会における調査審議の間におきましても、この強姦罪の法定刑の下限を引き上げるべきであるという意見が多数を占めたところでございます。
 実際、平成十八年から平成二十七年までの実際の量刑を見てみますと、強姦罪については五年を超える懲役とされた事件の割合が約三二%ございました。これに対しまして、例えば強盗罪及び現住建造物等放火罪というのを見ますと、これが五年を超える懲役とされた事件の割合は、強盗罪において約二一%、現住建造物等放火罪については約二三%でございました。法定刑の下限が既に懲役五年とされている強盗罪及び現住建造物等放火罪よりも、強姦罪の方が重い量刑がなされる事件の割合が既に高くなっているという現状がございます。
 このように、法定刑の引上げを求める指摘が多くなされている状況、さらに実際になされている裁判での量刑の状況を見ますと、少なくともこの強姦罪の悪質性、重大性に対する現在の社会一般の評価は、少なくとも強盗、現住建造物等放火の悪質性、重大性に対する評価を下回るものではないということは考えられるわけでございまして、現時点において強姦罪の法定刑の下限は低きに失して、国民の意識と異なることとなっていると言わざるを得ないと考えました。
 そこで、強制性交等罪についての法定刑の下限を、強盗、現住建造物等の放火と同様に懲役五年に引き上げることが適当であると判断したものでございます。
#83
○佐々木さやか君 この法定刑の下限については、強盗と比べても低いじゃないか、強盗の場合は五年以上であるのに強姦は三年以上と、財物を取られるよりも軽いのかと、こういうことがよく言われてまいりました。
 それももちろんそうでありますし、今刑事局長から御説明をいただいたのは、実際の量刑、つまり裁判になった事件について裁判官がどのような判断をしているかというものを見ましても、強盗や現住建造物放火、家に放火をしてしまうとか、そういった罪と比べても強姦罪の方を重大、悪質というふうに、裁判官、裁判官だけでなく社会の通念としても捉えられていると言えるのではないかと、そういったことを今、実際の量刑の現状に照らして御説明をいただきました。
 つまり、強姦罪というのは三年以上の懲役ですから、裁判官がその事案に応じて、これは重大だと思えば五年にも六年にも十年にも場合によってはできるわけでありますが、一番低くて三年ということですから。じゃ、実際の裁判官の判断はどうかというところを見ると、やはり五年以上というふうに重く見ている事案が比較的多いのではないかと、三二%という御説明でありました。
 そういう意味からも、やはり被害者の皆さんがおっしゃっているとおり、これまでの現行の強姦罪の法定刑三年以上というのは適正ではない、その実態を反映していないと、そういうふうに言えるのではないかと思います。ですから、厳罰化というよりは適正化ということで表現できるのではないかなというふうに思っております。
 次に、子供が被害者となった場合の性犯罪についてお聞きしたいと思います。
 これについても、先ほどほかの委員の先生からもお話がございましたけれども、やはり大きいのは監護者性交等罪、これが設けられたということであろうと思います。十八歳未満であれば、この監護者に当たる者からの性交等については同意、不同意というものは問題にならないということであります。
 まず、こうした犯罪を新たに設けることになったその趣旨について伺いたいと思います。
#84
○政府参考人(林眞琴君) 監護者性交等罪を設けることにした趣旨でございますけれども、家庭内における子供に対する性犯罪、これ例えば監護者による十八歳未満の者に対する性交が継続的に繰り返されている場合におきましては、監護者と性交することが日常的なこととなってしまって、事件としての日時、場所等が特定できる一定の性交の場面だけを取りますと、暴行、脅迫がなく、又は抗拒不能にも当たらないというような状態がある、このような事案がございます。このような事案においては、現行法の強姦罪あるいは準強姦罪により対処することは困難でございます。
 この点、翻って考えますと、十八歳未満の者というものは、一般に精神的に未熟である上に、生活全般にわたって自己を監督し保護している監護者に精神的にも経済的にも依存している場合があります。そして、監護者がそのような依存、被依存ないし又は保護、被保護の関係により生ずる監護者であることによる影響力があることに乗じて十八歳未満の者と性交など、そういうことをすることは、これは強制性交等罪と同じで、これらの者の性的な自由ないしは性的自己決定権を侵害するものであると、このように考えられます。
 そこで今回、このような行為類型につきまして強制性交等罪と同等の悪質性、当罰性が認められると考えたことから、新たな犯罪類型として監護者性交等罪を設けて、強制性交等罪と同様に処罰するということにしたものでございます。
#85
○佐々木さやか君 家庭内における子供に対する性犯罪というのは、今も御説明いただきましたが、いろいろな事情から立証というものが困難であるという場合も少なくありません。また、例えば性交が不可能なぐらいの年少の子供に対して性交の代わりに口腔性交をすると、そういう事案も多くあるというふうに聞いておりますけれども、これまでは強制わいせつ罪といったもので対処するしかなかったわけですが、今回の改正によって口腔性交についても重く処罰されるようになった。それに加えて、こうした監護者性交等罪が設けられることによって立証の困難というものが緩和されると思います。つまり、そうした事案についてもより適切に処罰をできるようになったというふうに思っております。
 この改正によって、そうした罰則というのは充実をするわけですけれども、やはりその運用面というものが重要であります。立証の困難が緩和されると先ほど申し上げましたが、そうはいっても、やはり密室での出来事ですから、被害に遭った子供からの供述というものが非常に重要な証拠でありますし、その証拠、供述について信用性がいかに確保されるかということも非常に重要であります。それと同時に、特に子供については、そうした被害を受けているいろんな心理状態に対して保護の観点からも配慮しなきゃいけない。そういったことを鑑みて、この捜査過程において、性的虐待と言えると思いますが、受けた子供の負担軽減その他の取組というものは非常に重要だと思いますけれども、どのような取組がなされているのか、また今後についても伺いたいと思います。
#86
○政府参考人(林眞琴君) 捜査過程、特に検察における取組について申し上げますと、検察当局において、児童が性的被害を受けたような場合、こういった場合については、この被害児童の心身の負担軽減、こういったものを図りながら適正な捜査をする必要がございます。
 特に、児童の被害者においては、事情聴取を何度も行うことによって強い不安を感じたり大きな苦痛を感じるということがございます。また一方で、同じことを繰り返し問われることで、それに合わせて記憶というものが変容したりして、事実をそのまま聞き取るというようなことが困難になる場合がございます。
 そういったことから、こういったことでの取組といたしましては、最高検察庁においては、平成二十七年の十月二十八日に、一つには児童の負担軽減、もう一つには児童の供述の信用性の確保という観点から、警察とまた児童相談所と連携して行う取組についての通知を発出いたしました。この通知におきましては、検察庁と警察と児童相談所の担当者が事前に協議をいたしまして、三機関のうちの代表者が児童から事情聴取をすると、こういったことの取組について対応方針を検討することとなっております。
 この通知が発出されて以降、児童が被害者又は参考人である事件につきまして、検察官、警察及び児童相談所であらかじめ協議を行った上で代表者が事情聴取を行うという取組が全国において現在進行中でございます。
 今後とも、こういった取組について推進してまいりたいと考えております。
#87
○佐々木さやか君 性的虐待犯罪被害に遭った子供に対する聞き取りというところでは、司法面接という手法、日本でも行われるようになってきておりますけれども、まだまだ充実を是非していっていただきたいと思います。ハード面もそしてソフト面も同様であります。
 それから、供述を聴取するに当たっていろいろな専門性が必要というところについては、子供だけでなく、成人の被害者の場合も私は同様だというふうに思っております。その供述の証拠能力をいかに担保するかというところは、現場の捜査機関の皆さんはプロではありますけれども、しかしながら、やっぱり性犯罪被害者に特有の心理状態とか、そういったところに十分配慮をして、いろいろな科学的な根拠を持って、単に、何というか、自分が実体験したことを詳しく話せるかどうかとか、反対尋問に遭ってもきちんと話せるかとか、そういうことでは必ずしもなくて、もっといろんなアプローチの仕方が重要ではないかなと思っておりますので、そういったことも是非研究を進めていただきたいと思います。
 最後に、一問だけ実態調査のことについて伺いたいと思いますが、衆議院の法務委員会で、「性犯罪等被害に関する調査を実施し、性犯罪等被害の実態把握に努めること。」という附帯決議がなされました。この実態調査というのは非常に重要だと思っております。立件された、裁判になった、そういうものだけではなくて、犯罪までは至らないかもしれないいわゆる暴力と性暴力についても一体どれぐらいあるのかと、そしてその実態はどうなのかということをしっかりと把握をする、かつ継続的に把握をしていっていただく、先ほど申し上げたような被害者の心理状態についてもしっかり研究をしていっていただく、そういったことが非常に重要だと思っておりますが、この附帯決議に記載されております実態調査については、具体的に誰がどのような調査を行っていくのかと、どういう今後の取組を行っていくのかという点について伺いたいと思いますが、ちょっと時間が限られていますので、端的に答弁をいただければと思います。
#88
○政府参考人(西川直哉君) お答え申し上げます。
 昨年四月に策定をされました第三次犯罪被害者等基本計画におきまして、犯罪被害者等の状況把握等のための調査実施に向けた検討が盛り込まれているところでございますので、警察庁では、附帯決議の趣旨等も踏まえまして、現在、本年度の実施に向けて検討中でございます。
 性犯罪の被害は潜在化しやすく、また調査対象者の抽出には工夫を要するところでございます。また、調査の実施に当たっては、被害者の心情等に十分配慮する必要があるなど今後検討すべき課題が多々ございますものの、関係省庁と連携をいたしまして適切な調査を実施し、正確な性犯罪被害の実態把握に努めてまいりたいと考えております。
 以上でございます。
#89
○政府参考人(大塚幸寛君) 内閣府でございます。
 私ども、男女間における暴力に関する調査、これを三年に一回やっておりまして、実は本年度が実施年に当たってございます。例えば、これまでも、本人の意に反して異性から無理やりに性交された経験、こういう質問につきまして、これまでは女性を対象に調査を行ってまいりました。
 ただ、今般、この本改正法案、あるいはお話のございました衆議院法務委員会の附帯決議、こういった趣旨も踏まえまして、当然、その関係府省とも連携、御相談させていただいて、調査対象あるいは調査項目について見直しを行うなどによりまして、引き続きこの性犯罪、性暴力被害の実態把握に努めてまいりたいと考えております。
#90
○政府参考人(高嶋智光君) 附帯決議におきましては、性犯罪が潜在化しやすいことを踏まえての実態把握ということに言及されておりますが、これまで法務総合研究所におきましては、平成十二年以降四回にわたりまして犯罪の暗数調査、いわゆる暗数調査というのをやっております。附帯決議の趣旨も踏まえまして、今後、適切な予算措置がなされることを前提としまして、平成三十年度に五回目の犯罪被害実態調査、いわゆる暗数調査でございますが、これを実施することを予定しておりまして、同調査において性犯罪を含む性的な被害についての実態が解明されると考えております。
 なお、この手段でありますが、無作為に抽出した一定数の者に対する質問調査により、警察等に届出のない事件を含めた犯罪実数を調査しまして、その中でどの程度が届けられているか、届けられていないかということを調査するものでございます。
#91
○佐々木さやか君 三年後の附則の見直しにも向けて、しっかりと調査をお願いしたいと思います。
 引き続き取り組んでまいりたいと思います。以上で終わります。
#92
○仁比聡平君 日本共産党の仁比聡平でございます。
 まず初めに、今朝方、憲法違反の共謀罪法案を数の力で中間報告という、この法務委員会の審査中の法案を取り上げて強行した安倍政権と与党の皆さんに厳重に抗議を申し上げたいと思います。私は、断固としてこの適用を許さず、廃止のために全力を尽くしてまいります。
 そうした中でこの委員会が開かれているわけですが、議題となっている刑法の百十年ぶりの歴史的というべき改正案、これは現在の性被害の実情に合わせて大きな改正に取り組むもので、けれども、残された課題、持ち越した課題、これがたくさんあると。この法案を審議する私たち法務委員会の委員の責務といいますか、これ極めて重いものがあると思うんですね。
 ところが、申し上げているような状況の下で、衆議院のときから、この法案が本当に被害者、当事者あるいは支援の現場にいらっしゃる皆さんの声をしっかり受け止めて、しっかりした審議が本当に尽くされてきたか。そのことに対する疑問、遺憾という思いは、これやっぱり指摘せざるを得ないと思うんです。
 今日のこの委員会にしてみましても、昨夜の徹夜国会の中で委員長の職権によって立てられ、タイムテーブルも含めて正式な運営についての協議が行われたのは今日の十二時のことです。私の質問通告も午前十一時ですし、恐らく、議場にいらっしゃる議員はもちろんですが、国会職員の皆さんも、そして政府の関係者の皆さんも昨日の朝から恐らく一睡もしていない状態でこの委員会になっていると、そういう実情だと思うんですよね。これは極めて異常ですよ。
 会期末のこのぎりぎりという状況だから、この法案を少しでも、これからの、性暴力被害のその被害者の皆さんの被害を回復する、そしてそのような被害を抑止する、防止する、そういうものとしてしっかり可能な限りの議論を尽くすとともに、何しろ今日あしたということですから、これはもう時間限られている。だから、この今日あしたの議論がしっかりと次につながっていく、これは党派を超えて、しっかりとこの法務委員会、参議院の法務委員会全体のものになっていくように、政府の皆さんにも、法務省を始めとして、しっかりと実態の調査、そしてこれを必要な法改正というところにつなげていくように私たち実らせていかなきゃいけないという重い責任があるんだと、そのことをまず申し上げたいと思うんです。
 その点で、衆議院で全会一致で修正が行われました三年後の見直しというこの問題、この問題といいますか、この大きな前進について、まず大臣の御認識を伺いたいと思うんです。
 この三年後の見直しという修正があえて全会一致で行われたというのは、つまりこの法案が、大きな一歩だけれども、積み残した大きな課題がある、だから、しっかりと実情をつかみながら、もちろん施策にはいろんな施策がありますが、その中で刑法そのものが果たさなきゃいけないという、そういう役割があるでしょうと。だから、今度の提案をされている改正案、ここには反映されていないことも、ちゃんと被害の実態をつかんで、当然、その中で当事者の皆さんの声を聞きながら、言わば次の三年後の見直しのときには立法事実と言えるような実態をやっぱり法務省がしっかりつかんで、その中で見直しに言わば結び付けていくといいますか、そういう立場での検討を私は今度の修正案というのは求めていると思うんですね。
 まだ法案は成案に至っていませんから、これからということなのかもしれませんけれども、法務省を代表して、大臣の受け止め、そして具体的にどんな方向で指示をしていかれるか、そうしたお考えがありましたら、まずお伺いしたいと思います。
#93
○副大臣(盛山正仁君) 仁比先生からの御指摘がございました。我々も、今回の刑法の改正、明治四十年に制定されて以来の百十年ぶりの大きな大改正であると考えております。それだけに、私どもとしましては、これまで法務省を中心にしましていろんな方々の、もちろん中には被害を受けられた方も含めまして、いろんな方々の御意見を踏まえてまとめたつもりではございます。そしてまた、党派を超えて多くの方々から、特に女性の方が中心にもちろんなるわけでございますけれども、とにかくこの法案、重要な法案であるから早く成立させてくれ、そういうような御要望もあって現在こういうような状況になっているんだと思います。
 それで、先生の御指摘でございますけれども、我々法務省としましては、極力十分な形で法案を作ろうとして努力をしてきたつもりではございますけれども、さはさりながら、衆議院におきましての審議の結果修正案が付されたと、こういうことになっているわけでございます。
 性犯罪に対する施策の在り方というのは、先ほど来の御答弁でもありましたけれども、明治以来、人々の考え方や環境というのはどんどん変わってまいりました。そして、国民の皆様の関心も大変高うございます。特に、女性の社会進出というのが進んで、男女共同参画、そういうことが言われるようになった近年におきましては特に関心が高い事項になっておりますので、この性犯罪に対する施策をどういうふうにしていくのか、そしてその在り方を不断にどのように見直していくのか、それは大変大事で必要であると、そんなふうに思っております。
 それで、今回の附則におきましては、施行後三年をめどとして、性犯罪における被害の実情、そして改正後の規定の施行の状況などを勘案し、性犯罪に係る事案の実態に即した対処を行うための施策の在り方について検討を加えることなどが定められたところでございます。
 御審議の結果を我々は真剣に真摯に受け止め、そして、性犯罪の実情を把握するなど事案の実態に即した対処を行うための施策の更なる推進に向けまして、この法律が成立しましたらば適切に対処してまいる、そういうつもりでございます。
#94
○仁比聡平君 法律が成立をしてからということで、具体的に、法務省の中でどんな部局がどういう体制で何をテーマに検討していくというような具体的なお話はこれからということになるんだろうと思います。ですから、ここはもうこれ以上は今日は申し上げないつもりなんですが、今副大臣の御答弁の中で、関心が高いという表現があって、それは政策とか行政の用語としては理解できないわけではないんですけれども、やっぱり本質といいますか、中心のテーマは全ての方の性的な自由の問題であり、お一人お一人の性的な多様性というのがありますね。年齢あるいは住んでいる地域なんかもあるかもしれませんけれども、いろんな多様性の中で、その全ての方々の自由が侵されない、脅かされないということがやっぱり本当に大事な課題なんですよね。
 今日、同僚議員の皆さんからも、幾人からも御発言があっていますけれども、私も、今日、LGBTの支援、自助グループをしておられる、今日傍聴席にもいらっしゃいますが、方のお声を聞かせていただくことができまして、その中で、時間の関係で一言だけちょっと御紹介したいのは、当事者がここまで出てきたのは史上初めてのことではないか、国会まで来れて話ができる人はごく限られている。御自身の主宰されている自助グループにおいでになる方というのも、やっぱり性暴力の被害に遭っている全ての被害者からしたら本当に限られている。例えば、十歳のときにそうした被害に遭って、四十代の後半になって、ずっと誰にも言えず来たけれども、初めて人に打ち明けるというような思いで相談に来られる方がたくさんいらっしゃるわけですね。
 やっぱり、その被害の実態をしっかり私たちが、政府も私たち議員もですけれども、しっかりと共有をして、明らかにしていくし、間口を広く、あらゆるニーズというのをつかんで初めて、この三年後見直しというところに込められている魂に応えられるんじゃないかと思うんですけれども、大臣あるいは副大臣でも結構ですけれども、いかがですか。
#95
○副大臣(盛山正仁君) 私も今はこの副大臣という立場にございますけれども、それまでの立場にあったときにも、そう多くはありませんですけど、いろんな立場の方のお声は伺ってまいりました。そういうようなお声も踏まえて、今回の法案という形に取りあえず今回は提出させていただいたつもりではございますけれども、さっきも申しましたけれども、社会環境も大分変わってまいりましたし、被害を受けられた方、そういった方々が表に声を出す、恥ずかしいことではなくて、やはりこれは主張しなければならないんだ、あるいは私がこういうことをすることによってほかの人も助けることができるんだ、そういうような意識をお持ちの方が増えるようにもなってこられたと思います。
 そしてまた、性の犯罪被害者というのは年齢も含めまして様々な方がいらっしゃいますから、そういう方々のお声をできるだけ広く、我々、この法を所管する法務省の当局が、先生方も含めて、いろんな方等の御支援も受けながら、真摯にその実態を受け止め、そしてそれに対して何をなすべきか、何をどうしていくべきか、これを考えていかなければならないと思っております。
 民法は百二十一年ぶり、刑法は百十年ぶりと、我々法務省が預かっております法律というのは大変ベーシックな法律なのでなかなか改正しづらかったというところはあるんですが、そうはいいましても、百年以上何もしてこないというのは決して私としては正常な状況であると考えません。やはり、時代に応じ、そしていろんな御要望を受けてアップ・ツー・デートに変えていく、それが我々の務めではないかと考えております。
#96
○仁比聡平君 御答弁の全体で私は、副大臣、そして恐らく大臣も同じ御趣旨なんだろうと思うんですけれども、前向きなその意思というのは受け止めているんですが、ですから、言葉尻を捉えるつもりではないんですけれども、恥ずかしいことじゃなくという言葉が今御答弁の中にありました。この性犯罪の、あるいは性暴力の被害者が、先ほどちょっと御紹介した方であれば十歳のときから四十代の後半になるまで誰にも言えずに、そうした被害を訴えることができない、人に話すことさえできないという、この状態というのをつくり出してしまっているのは何なのかと。ここは私たちが法や政策を考える上で大事な問題ですよね。
 恥ずかしいことじゃなくという言葉でおっしゃろうとした意味はどういうことですか。
#97
○副大臣(盛山正仁君) 表現が舌足らずであればおわびしたいと思うんですが、私が申し上げたかったことは、明治の四十年、この法律ができた当初、なぜ強姦罪、親告罪となったかといったような時代背景を考えますに、多分その性的被害に遭ったということを公にするというんですかね、大っぴらになるというのが恥ずかしいという当時の家のというか、当時の時代環境の意識があったんじゃないか、そんなふうに私自身は考えていたからそういうふうに使ったわけでございまして、今、仁比先生がおっしゃられたような、今回、監護の関係の罪も新たに設けることになりましたですけれども、そういうことを念頭に置いたつもりではございませんでした。
 いずれにせよ、社会環境というのが、明治の四十年といいますのは、日清戦争、日露戦争が終わったのが明治の三十八年でございます。その二年後にできて、不平等条約の是正、これがやっと成り立ったのもペリーが来て日米修好通商条約を結んでから五十七年後だったですか、その明治四十年になって初めて関税自主権あるいは治外法権、こういうのがやっと是正されるというようになった。そういう時代にできた刑法といったようなところとの比較で申し上げたかったということでございまして、もし表現が悪ければ訂正させていただきたいと思います。
#98
○仁比聡平君 家制度の下で、貞操とか貞操権という概念が一体どんな、あの時代、そして戦争に向かう時代に観念されていたかと。これを根本的に転換してから、憲法の下、七十年ですから、憲法十三条の保障する全ての個人の尊厳、やっぱりこの多様性というものをしっかり刑法の根底に据えた調査とそして施策、法の見直しというのが私大事だと思うんですね。
 副大臣の言葉に少し私反応してしまったのは、ちょっと通告と順番変えますが、資料をお配りしているんですが、警察庁に、最後につづってある日刊警察という新聞の二〇〇六年三月七日の記事を付けていますが、審議官、これ日刊警察ってお読みですか。
#99
○政府参考人(高木勇人君) 読むことはございます。
#100
○仁比聡平君 ほかの記事御覧になって、警察組織といいますか、あるいは警察官の方々がきっと随分お読みになるんだろうなと思う新聞なんですが、ここに元警察庁官房長、菅沼清高さんというお名前ありますけれども、元官房長にこうした方いらっしゃるんですね。
#101
○政府参考人(高木勇人君) 記事にあります菅沼清高という方につきましては、平成六年十月から平成八年八月まで警察庁長官官房長を務め、同月、警察庁を辞職した人物であるというふうに承知をしております。
#102
○仁比聡平君 この際、なぜ辞職したかなんというのは問いませんが、私が申し上げたいのは、この記事そのものなんですね。「被害者というが、あんたも問題だ」というわけですよね。
 ちょっとかいつまんで紹介しますけれども、一番上の段、首をかしげたくなる被害者も出てきました、被害者というがあんたも問題だと。この記事は、京大のアメフト部のOBなどによる集団暴行事件の翌年に出ている記事なんですけれども。
 パーティー、コンパ等飲酒の場が前置されており、被害者が泥酔又はこれに準じた状況下で発生した、被害者とはいうが健全な常識からするとそちらもかなり問題なのではないか、どっちもどっちだぜ、自業自得じゃないのかということです、普通の常識を備えた若い女性はクローズされた空間で男と同席しないこと、いわんや酒の席に臨んで酔うほどに飲まないことはほんの少し前までは当たり前のたしなみでした、危険を承知し、更に言えばそれを期待、容認さえしていたと見られてもおかしくはないのです、教唆、扇動、誘引していたと言われても仕方のないことでもあります、この種事案の下敷きになっている被害者側の非常識、幼稚さ、ばかばかしさをはっきりと指摘して世の中に注意喚起することも治安当局のやるべき大事な仕事などと述べて、最後のくだりには、被害者、被害者と言うけれど、あんたにも被害者にならない選択の自由が十分にあったのではないか。だから、タイトルが「被害者というが、あんたも問題だ」というわけですよね、「ムダやめて大事なことをもっとして」と。
 この京大アメフト部のOBの事件、この捜査と、これ最高裁まで行って有罪になりましたけれども、こうした取組が無駄だとでも言うのかと、被害者が悪いとでも言うのかと。それを警察庁の元官房長という名前で、こうして警察官がよく読む新聞に載っているということ自体、審議官、どう思いますか。
#103
○政府参考人(高木勇人君) お尋ねの記事は、先ほど申しましたとおり、平成八年に警察庁を退職いたしました菅沼氏が、その十年後の平成十八年に御指摘の新聞におきまして個人的な見解を述べたものでございますけれども、その内容につきましては警察として現在考えているものとは全く異なるものというふうに考えております。
#104
○仁比聡平君 いや、それは、こんなことを国会の答弁で現在の警察組織の方針でございますなんて言われたら、もう委員会飛びますよ。
 それは全く異なるものとおっしゃるでしょうけど、だけれども、やっぱりあれでしょう、元官房長といったら、現役の警察官にとってみたってそれなりの重みのある肩書なんじゃないんですか。そうした人がこういう新聞にこういうことを書いて、結局、何というのか、平気でいるといいますかね。それが日本の法執行機関、とりわけ警察の現実なんじゃないんですかと、この新聞というのはそのことを示しているんじゃないんですかと、私、そのことについての認識を伺いたいんです。
 抽象的に聞いてもよく分からないと思うので、先ほど有田議員も御指摘になった、あの詩織さんの件で一個だけ伺いたいんです。現に捜査員から処女ですかと質問されました。捜査官は、聞かなくてはいけないことになっていると、そう言うんですが、処女ですかというのはこれ何で聞くんですか。
#105
○政府参考人(高木勇人君) ただいまのお尋ねの前に一言申し添えさせていただきますと、警察におきます捜査の基本的な考え方を示しております犯罪捜査規範におきましても、捜査を行うに当たっては、被害者の心情を理解し、その人格を尊重しなければならないというふうに明確に定められておりまして、警察としてはこれに従って運営をしているところでございます。
 ただいまのお尋ねの件でございますけれども、個別の案件についてお答えは差し控えさせていただきますけれども、事件立証上の観点から性経験の有無についての質問を行う場合もあるものというふうに考えております。ただ、そうした場合におきましても、被害者の心情に配慮しながら聴取を行うということにしているところでございまして、いずれにいたしましても、性犯罪捜査に当たりまして被害者の心情に寄り添った対応がなされるようにといった方針で捜査を行うよう都道府県警察を指導しているところでございます。
#106
○仁比聡平君 その被害者の心情に配慮するというのは聞く方の勝手な都合なので、聞かれる方、その被害に遭ってですよ、被害に遭っている、だから、警察には、被害届を出しに来ているとか相談に来ているとか、もしかしたら告訴しに来ているかもしれないけれども、とにかく被害者でしょう。その人に何で処女ですかなんて聞かなきゃいけないんですか。関係ないじゃないですか、そんなの。何で聞くんです。
#107
○政府参考人(高木勇人君) 犯罪の立証上必要な場合に聞くというものでございます。
 例えばということで申し上げさせていただきますと、被害に遭った方と加害者とされる方がお互い知り合いであったといった場合に、当事者間に性的な交渉が過去にあったかどうかといったことは立証上重要なことであるというふうに考えております。
#108
○仁比聡平君 いや、だって、夫婦の間であっても性的な自由を侵すような同意のない交渉というのは、これはあるじゃないですか。そんな過去どうだったかとか関係ないでしょう、その場どうだったのか。
 だから、そうやって立証上なんて言って、この有罪立証の、言ってみれば法律の方の都合、処罰するときの都合というだけで考えて、被害をそのまま受け止めようとしない、そこに実際の被害を警察や捜査機関の側が追いやってしまう。一度そういう仕打ちを受けたら、あるいはそういう、警察に相談しに行ったらそんな目に遭うということになったら、それこそ被害を語ることができなくなるじゃないですか。だから、ちょっと今日時間がなくなってしまって、次の機会に本当にしっかりやりたいと思うんですけれども、捜査当局が被害者の届け、つまり被害届、これをちゃんと受け止めないんじゃないのかと、受理しないんじゃないのかと。これ、私自身も弁護士活動の時代に、実際に警察に行っても相手にしてもらえない、一緒に行ってもらえませんかという相談で、弁護士が同行して初めて被害届として受理されたという、そういう事件もありました。
 元警察官の牧野雅子さんという方が書いていらっしゃる「刑事司法とジェンダー」という本に、警察には被害届の受理基準というのがある、だからこれを満たさないとなると、これ被害届受けない、こんなことになっている。こんなこと絶対あっちゃならないと思いますが、警察にはこういうのがあるんですね。
#109
○政府参考人(高木勇人君) 被害届につきましては、性犯罪も含めてでありますけれども、迅速に受理するようにということで都道府県警察を指導しているところであります。
 お尋ねのありました受理の基準といったようなものはございません。
#110
○仁比聡平君 ございませんと言ったって、実際あるよと、そういうしっかりとしたことが公表され、そして現実に被害届を出しに、まあ被害というか、被害を相談に行ってもちゃんと聞いてもらえなかった、逆に本当にひどい仕打ちを受けた、もう相談になんか行かない、もう黙っているしかない、私泣き寝入りするしかないんだろうかって、そういう被害者たくさんいるじゃないですか。そういうやり方をしっかり改めていく、そのことは、私、多様な性に対する被害をしっかりとつかんでいくという、そういう取組と表裏一体だと思いますよ。
 これは、今日本当は聞こうと思っていた、検察が嫌疑不十分で不起訴にするといったときのその実情を今つかんでおられないと、私にはそうしか思えないんですけれども、その問題をこれからの取組の中でしっかり改善していくということにも通ずる問題だと思います。
 次の機会しっかりつくって、引き続き取り組んでいきたいと思いますので、法務省の皆さんも、警察や、そして全ての省庁の皆さん、御一緒に頑張ろうではございませんか。
 終わります。
#111
○東徹君 日本維新の会の東徹でございます。
 今日は、刑法の改正ということで、性犯罪の罰則強化のことについてということでありますけれども、この法律については明治四十年の現行刑法制定以来の大改革ということでございます。非常に時間が掛かったんだなというふうなところが率直でありますけれども、これはちょっと通告はしておりませんが、もしお聞かせいただければ御答弁いただきたいなというふうに思います。
 私が知っている限りでも三年、四年ぐらい前から、法務省でも、当時の法務大臣だったかもしれませんが、性犯罪の罰則強化、これをやっぱりやるべきだと、やるということで出ていたと思いますが、恐らくそれから三年、四年たったんではないのかなというふうに思っているわけですけれども、どうしてこんなに時間が掛かるんだろうかと、非常に遅かったんではないのかなというふうに思うわけですが、その点についてはいかがでしょうか。
#112
○副大臣(盛山正仁君) 私は元々公務員でございましたけれども、法務省ではない普通の役所の公務員でございました。
 当時の私の感覚でいくと、法務省というのは法律が大変少ない、国会に提出する法案が少ない役所だったんですけど、私が四年半前お世話になりましてからは、毎年八本だの九本だの出すような役所になっておりまして、大変びっくりした覚えがございますけれど。
 刑法もそうでございますし、民法も商法も、あるいは刑事訴訟法も、大変基本的な法律、それでいてやはり、先ほどから何回も申し上げておりますけど、百二十年ぶりだとか百十年ぶりだとか、これまで長く改正せずに、だましだましというんですかね、いろいろ判例やその他も使いながらやってきて、さすがにもうそろそろ変えないといけないだろうというようなことでありながら、やはり大変ほかの各省の法律に比べて基本的な基礎的な法律を法務省が所管しているものですから、それを改正するにはそれなりにしっかりとした議論が必要であると、こういうことでもございまして、課題が大変多いものでございますので、なかなかアップ・ツー・デートな、その時代に合わせていろんな御要望にマッチをするような形で法改正案を御提示をすることができなかったと、こういうことではないかなと感じております。
#113
○東徹君 今回の改正案ですけれども、罰則強化ということで懲役を三年から五年に引き上げるとか、それから強姦罪等を非親告罪にするとか、そういったこと、そしてまた親とかそういった親族の部分も入れていくとか、そういったことは海外の法律とかから比べれば、やっぱり日本は本当にこれ遅れていたんだろうなというふうに思うわけですね。
 三年後に、今回の法律を制定して、見直しを図っていくということでありますから、まさしくもう今からやっていかないと三年後の見直しというのは本当にできないんだろうなというふうに思っておりますので、是非この後すぐにこの見直しに向けて検討していっていただきたいというふうに思っておるわけですけれども、その点についてはいかがでしょうか。
#114
○国務大臣(金田勝年君) ただいま東委員から御指摘ございました。三、四年前からこの問題については特に動きがあったんじゃないかというお話がございました。
 平成二十六年、ですから三年半前ですよね、十月から性犯罪の罰則に関します検討会というものを開催した。そして、その構成員というのは、刑事法の研究者であり、法曹三者であり、あるいは被害者支援団体関係者等から成るそういう検討会を開いた。そして、それを受けて法制審議会において、一昨年の十月ですか、二十七年の十月から二十八年、去年の九月、答申をいただくまでの間、法制審に諮問を行って、それから答申をいただいた。
 やっぱり私は、時代情勢の変化に伴って、まずはやっぱり法務省という役所が非常にアクティブに世の中の変化やそういう情勢を捉えてそういう努力をするようになっている。これはやはり、法務委員会の過去の議論の中でも、議論した結果、そういうふうな努力を現実にしていくという、そういうスタンスが、もちろん国会議員の先生方もそうですけれども、同時に法務省という役所がそういうふうな努力を一緒に前向きにしていく、時代情勢に制度を合わせていくという努力をするようになっているというのがまず基本にあると思うんです。だからこそ、今回の衆議院の三年後見直しの規定も非常に意味を持ってくると思うんですね。
 ですから、今委員が御指摘になった、国会審議の中でそういう修正が行われたということは、性犯罪に係りますその事案の実態をよく受け止めた上で適切な対処の方針というかそういうものを立てなきゃいけない。だからこそ三年後の見直し規定を置いたと思いますし、だから、逆に言えば、性犯罪への厳正な対処だけなんだろうかと、それ以外に何かないんだろうかという疑問もそこで受け止めることができるんだろうと思うんですね。
 そうしますと、今日も見えておられた警察庁の方、それからあるいは厚生労働省の方、先ほどまでも委員の皆さんの御指摘を踏まえて答弁されていたそういう役所の方々との連携というものもできてくる。だから、いろんな意味でこの時代情勢の変化に対応したこの委員会の、何というんでしょうか、努力、活性化、そういうものが現実のその法改正に結び付いてくる。だから、そういうことを、私は、本当にこの三年後の見直しというものをいただければ、それに向けてしっかりとやっていくいいきっかけになるのではないかなというふうに思うのであります。
#115
○東徹君 金田大臣から、テロ等準備罪のときとはもう全然違って、すごくもう何かアクティブな、力強い御自身の言葉でしっかりと御答弁をいただきまして、本当にうれしいなというか、非常に期待をしたいなというふうに思っております。
 それでは、通告しておりました質問からちょっと聞いていきたいと思いますけれども。
 性犯罪の動向についてなんですけれども、強姦罪の認知件数、平成十八年から平成二十七年のこの十年間では約四割ぐらい減ってきておるわけですけれども、強制わいせつ罪も約二割減ってきている中であるんですが、強制わいせつ罪については検挙率は上がってきているんですけれども、平成二十七年では六一%、平成二十八年では六八%ということで、強制わいせつの検挙率なんですが、これは七割弱にとどまっているんですが、この原因というか要因は一体何なのか、まずお伺いをしたいと思います。
#116
○政府参考人(高木勇人君) 御指摘のとおり、強制わいせつ事件の検挙率につきましては、近年上昇傾向にあって、平成十九年には四六・二%であったものが二十八年には六八・〇%となっており、十年間で約二〇ポイント上昇しているところでございます。
 このように、検挙率は上昇してきているものの、なお七割弱の検挙率にとどまっているといった理由につきましては、一概にはお答えは困難でございますけれども、強制わいせつ事件につきましては、被害者と被疑者との間に面識がない場合が多く被疑者の特定が困難なケースが強姦よりも多いということ、また、身体接触時間が短いことが多々あるといったことで客観資料に乏しいケースが多いといったことなど、様々な要因が関係しているものというふうに考えております。
 強制わいせつなどの性犯罪に対しまして、引き続き、迅速かつ的確な捜査を推進して、多くの事件を検挙していくことで安全、安心を確保できるように都道府県警察を指導してまいりたいと考えております。
#117
○東徹君 更なる検挙率の引上げに努力をしていっていただきたいと思いますけれども、先ほどから話もほかの委員の先生からも出ておりましたが、準強姦罪を含む強姦罪についてなんですけれども、平成二十七年度で、送致件数は一千二十一件に対して不起訴になったのは六百三十九件と、六割以上がこれ不起訴になっているんですね。
 先ほどから話があった、ジャーナリストの話もありました。今年五月には、フリージャーナリストの女性が同じくフリージャーナリストの男性によって、飲酒の後、性行為をされたというふうに訴えられているわけですけれども、この報道によりますと、女性の件は東京地検において嫌疑不十分ということで不起訴となったというふうに言われておりますけれども、準強姦罪を含む強姦罪において嫌疑不十分による不起訴というのが多い点について、これどのようにお考えになられているのか、お聞きしたいと思います。
#118
○政府参考人(林眞琴君) 検察統計年報によりますと、平成二十七年中の強姦罪の不起訴人員における嫌疑不十分の割合は約四〇%であると承知しております。
 この点についての、この四〇%という形で、これがどのような形で不起訴になっているか、原因、もちろん、これは個別事案の関係証拠によるもののそれを踏まえた上での起訴、不起訴の判断でございますので、どうしてこれがこのように高いのかとかいうことについては一概にお答えすること困難であると考えております。
#119
○東徹君 まあそれは、個別個別の事案でありますけれども、やっぱりそういった私は分析というのも非常に大事だというふうに思っておりますし、これは分からないで済ませていたのではいかぬのじゃないのかなというふうに思いますので、是非やっぱりここの辺の点も検証をしていくべきだというふうに思いますので、是非、この嫌疑不十分、先ほど四〇%とおっしゃいましたけれども、この四〇%嫌疑不十分になっている要素、そういったところを是非これは検証をしていっていただきたいというふうに思います。
 続きまして、昨今、JKビジネスというのがよく耳にします。少女による接客を売りにしたいわゆるJKビジネスなんですが、例えば女子高生とデートできるというふうなことをうたったりとか、裏ではアルバイトの女子高生に性行為をさせるなどの営業をしていたというふうな事例もあります。
 児童買春の温床となって、十八歳未満の少女の性的被害というのをこれは生み出しているというふうに思うわけですが、現状、このようなJKビジネスに関してどの程度検挙されているのかとか、その辺の状況についてお伺いをしたいと思います。
#120
○政府参考人(小田部耕治君) いわゆるJKビジネスにつきましては、近年、女子高校生等の児童の性に着目した営業として、大規模な歓楽街、繁華街を擁する大都市を中心として多様な形態により出現していると認識しております。これらの営業につきましては、女子高校生等が危険性や有害性を認識しないまま従事する場合があるなど児童買春等の犯罪の被害者となる危険性が高く、少年の健全育成の観点から憂慮すべきものと認識しております。
 警察におきましては、本年四月の、政府が一体となって取り組んだAV出演強要・JKビジネス等被害防止月間におきまして、いわゆるJKビジネスの経営者等を児童福祉法違反や児童買春・児童ポルノ禁止法違反で六名検挙するとともに、いわゆるJKビジネス店舗で働いていた児童四十名を補導、保護したところであります。
 警察では、各種法令を適用して違法行為について厳正な取締りを推進するとともに、これらの営業に従事している児童等に対する保護等を推進してまいりたいと思います。また、この種の犯罪は潜在化しやすいことから、警察としては、学校等との連携や各種広報媒体の活用を図りながら、児童の保護者また児童に対する教育、啓発の強化や相談体制の充実を図ってまいりたいと考えております。
#121
○東徹君 先ほどAVの話が出ましたけれども、女子高生、やっぱり被害に遭いやすいですし、まあだまされやすいというか、だましてAVに出演させて、相当なお金を荒稼ぎしているというふうなニュースもありました。本当に、この辺についてはしっかりと取締りをやっぱり強化していくべきだというふうに思っております。
 続きまして、監護者のわいせつ罪等についてお伺いをしたいと思います。
 今回の改正案、百七十九条の一項ですけれども、十八歳未満の者に対する監護者によるわいせつ罪が、二項では監護者による性交等罪が新設をされております。
 この前にも出ておりましたけれども、幼少期に性的被害に遭うと、されたことを理解できずに声を上げにくかったり、家族が被害を隠蔽したりとかなかなか人に相談できなかったりとか、そういったことがあるというふうなことを聞きます。
 このような状況を踏まえて監護者わいせつ罪等が新設されたというふうに思うわけですが、この新設された理由について改めてお伺いをしたいと思います。
#122
○国務大臣(金田勝年君) ただいまの御指摘にお答えをいたします。
 十八歳未満の者というのは、一般に、精神的には未熟である上に、生活全般にわたって自己を監督し、また保護をしている監護者に精神的にも経済的にも依存をしていると、このように申し上げることができる。監護者がそのような依存、被依存ないし保護、被保護の関係により生ずる監護者であることによる影響力があることに乗じて十八歳未満の者に対してわいせつな行為又は性交等をすることは、強制わいせつ罪又は強制性交等罪などと同じく、十八歳未満の者の性的自由ないし性的自己決定権を侵害するものであると言えるわけであります。
 そこで、このような行為類型につきましては、強制性交等罪等と同等の悪質性、当罰性が認められると考えられますことから、新たな犯罪類型として監護者性交等罪等を設けて、強制性交等罪等と同様に処罰をするというものであります。
#123
○東徹君 これも海外ではそういう性的虐待といいますか、かなり厳しかったように思うわけですけれども、これについても非常に遅かったんではないのかなというふうに思うわけですし、本当にこういった被害に遭っている人たちというのはもっともっとたくさんいるんだろうなというふうに思います。
 これらの罪ではその者を現に監護する者が主体となっていますけれども、どういう意味で、具体的にはどのような者が当てはまるのか、まずお示しをいただきたいと思います。
#124
○政府参考人(林眞琴君) まず、現に監護する者、十八歳未満の者を現に監護するという者は、まず、生活全般にわたりまして依存、被依存あるいは保護、被保護の関係にあると、こういったことが認められる必要があると考えております。
 この点で、これは、法律上の監護権を有するか否か、これは問いません。法律上の監護権があるかどうかではなくて、実際の現実の状態としてそういった依存、被依存あるいは保護、被保護の関係にあると言えるかどうか、これによって現に監護する者であるということが該当し得ると考えております。
 具体的に例えば例を申し上げれば、現に監護する者等につきましては、これについては、例えば必ずしも親である必要はないわけでございます。通常は親などが典型であろうとは思いますけれども、親でなくても、例えば親の再婚相手であるけれども子とはまだ養子縁組はしていないというような者で実際にその子供と同居してその寝食の世話をし、また指導監督している者でありますとか、あるいは親の内縁の配偶者であってやはり子の寝食の世話をし、また指導監督をしている者、あるいは親が行方不明等になっているような状態で事実上その子供を引き取って親代わりとして養育しているような親族であるとか、このような生活の実態に着目して、この現に監護をする者に該当するかどうかが判定されるということでございます。
#125
○東徹君 法律上ではなくて、実際に依存、被依存の関係になっている、昨今のニュース見ていますと、親ではなくてというふうなケースも非常に多いなというふうに見ております。
 今回の法案では、現に監護する者であることによる影響力があることに乗じてわいせつな行為をした場合に監護者わいせつ罪に問われるというふうなことになっておりますけれども、この「影響力があることに乗じて」というのは具体的にどのようなものなのか、お聞きしたいと思います。
#126
○政府参考人(林眞琴君) 本罪の「現に監護する者であることによる影響力があることに乗じて」というのは、まず、両者の関係の中に現に監護する者であることによる影響力が一般的に存在すること、その上で、当該行為においてもその影響力が及んでいる状態で性的行為をする、こういうことであれば、この「影響力があることに乗じて」と認められると考えております。
 すなわち、性的行為を行う特定の場面において監護者からこの影響力を積極的に利用するような具体的な行為がない場合でありましても、実際に影響力が及んでいる状態で被監護者との間で性的行為をすることは、その被監護者にとってはこれは自由な意思決定に基づく性的行為ではないと認められますので、積極的に影響力を利用するような具体的な行為が当該性的行為を行う特定の場面において存在しなくても、この場合の「影響力があることに乗じて」に当たると考えております。
#127
○東徹君 ちょっと影響力、まあ非常にちょっとどういう影響力なのかというところも少し分かりにくかったですが、ちょっと時間の関係で次の質問に移らせていただきたいと思います。
 現在の刑法では百七十七条で強姦罪が定められておりますけれども、十三歳以上の女子に対しては暴行、脅迫を用いた場合のみこれは成立するものというふうになっていますけれども、イギリスなど他国では同意がない場合という要件であることが多いようですけれども、なぜ我が国ではこのような暴行、脅迫の要件とされているのか、まずこの点についてお伺いをしたいと思います。
#128
○副大臣(盛山正仁君) 先ほども御答弁したところでございますが、現在の刑法で強姦罪において暴行、脅迫が要件とされておりますのは、当該性行為が、被害者の同意に基づかない保護法益である性的自由ないし性的自己決定権を侵害する行為であることを客観的に明らかに何らかのところでしなければ処罰の対象とすることがなかなか難しいということで、暴行、脅迫を要件としておりますのは、処罰すべきものであることを外形的に示す要件として設けているというふうにお考えいただければと思います。
#129
○東徹君 そうすると、強姦罪に暴行、脅迫が要件とされていることで、暴行、脅迫が立証できないために強姦罪で処罰すべきものができていないということもあるんではないかなというふうに思うわけですけれども、暴行、脅迫の要件をこれ削除するべきかどうかという、この点についてはどのようにお考えなんでしょうか。
#130
○大臣政務官(井野俊郎君) 暴行、脅迫の要件を撤廃するかどうかということですけれども、我々としては、この点については必要性に乏しく、またかえって弊害が生じるおそれがあるんではないかという意味では慎重な検討が必要ではないかというふうに考えております。
 その理由ですけれども、一つは、必要性についてでございますけれども、現時点において暴行、脅迫については、裁判所の判例によりますと、反抗の意思を抑圧する程度の暴行、脅迫と言われておりますけれども、先ほど来答弁しておりますとおり、被害者の年齢や精神状態、行為の場所、時間など様々な事情を考慮して暴行、脅迫の要件が認められているというところでございますので、必ずしもそれのみを取って、その暴行、脅迫だけで反抗意思、抑圧しているかどうかということではないという意味では、例えば、手首をつかんで引っ張るなどのそれのみではなかなか反抗抑圧とは言えない場合でも暴行、脅迫に当たり得るという意味では、そういった暴行・脅迫要件は柔軟に解釈、運用されているのかなというふうに考えているところでございます。
 加えてまた、仮に暴行、脅迫が用いられなくても、被害者の抗拒不能、すなわち物理的、心理的に抵抗が著しく困難な状態で性交などをすれば準強姦罪が成立するわけでございますので、これについても法定刑は同じでございますので、暴行、脅迫のみが障害となって処罰されていないという状況にはないのではないかというふうに考えております。
 他方で、もう一つの弊害についてでございますけれども、これ暴行・脅迫要件がなくなると、そうしますと不同意の性交となりますけれども、これ外形的な行為がない状況で不同意を、被害者が同意していなかったということを我々検察側の方として立証しなければならないわけでございますけれども、これが、じゃ、どこまで立証できるのかというところもありますし、また、内心の立証、認定は難しい上に、後から例えば不同意の性交だったなどと被害の訴えがあった場合に、男性側としても、故意の部分で、本当に故意があったのかどうなのかという部分の立証もこれ難しい部分も出てまいります。ですので、場合によってはこういった観点からも冤罪が生じるおそれもあるのではないかというふうなことも考えられますので、こういった弊害であったり必要性等も考えますと、なかなか暴行、脅迫を撤廃するというのは慎重な検討を要するのではないかというふうに思います。
 済みません、ちょっと一点だけ訂正させてください。
 私が先ほど暴行、脅迫の要件として反抗抑圧と申し上げたのは、反抗を著しく困難にする程度の暴行、脅迫という点だけ、ちょっと済みません、訂正させていただきます。
#131
○東徹君 確かに不同意の立証というのはなかなか難しいのかなというふうには思いますし、そういったところでの弊害というところも分かるんですけれども、ただ、やっぱり何か海外と比べるとかなり違うんじゃないのかなと、日本はかなりちょっとハードルが高いんじゃないのかなというふうに思ったりもするわけですけれども。
 準強姦罪についてなんですけれども、準強姦罪では、人の心神喪失とか、先ほどおっしゃった、抗拒不能に乗じたり抗拒不能にさせて強姦した場合に処罰されるということになるわけですけれども。抗拒不能とは、心理的又は物理的理由によって反抗が著しく困難な状態というものとされておりますけれども、例えば、モデルになるために必要とだまされて性交した場合のように、性交すること自体については認識しているものの、そのモデルになるために必要という動機がだまされたことによって生じたものである場合、これは抗拒不能による強姦と言える場合があるのかどうか、お聞きしたいと思います。
#132
○政府参考人(林眞琴君) この抗拒不能という定義については今委員御指摘になりましたが、この個別具体的な事例においてどういう場合に抗拒不能となるかということについてでございますが、これまでの裁判例としてお答えすれば、例えば被害者が錯誤に陥っているという理由で抗拒不能を認めた裁判例といたしましては、モデル等の職業紹介を業とするプロダクションの経営者がモデル志願者としてスカウトした女性に対しましてモデルになるための度胸試しに写真を撮るから裸になるように要求して、全裸になって写真撮影されることもモデルになるために必要であり、拒否すればモデルとして売り出してもらえなくなると誤信させて全裸にさせた事案、このような事案において、これが抗拒不能の状態に陥らせたとして、準、この場合は強制わいせつでございますが、準強制わいせつを認めたものがある、こういった裁判例があると承知しております。
#133
○東徹君 こういったケースというのは非常に多いんではないのかなというふうに思います。
 ちょっと時間が来ましたので、これで終わらせていただきますけれども、是非、この法案が成立してからも、しっかりと三年後の改正に向けて、我々もしっかりと努力をしていきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。
 以上で終わります。ありがとうございました。
#134
○糸数慶子君 沖縄の風、糸数慶子です。
 質問に入ります前に、委員長並びに政府、そして委員の皆様に一言申し上げたいと思います。
 昨日、秋野公造委員長が法務委員会で審議中のいわゆる共謀罪法案の中間報告を行い、その後、採決となりました。まず、このことについて強く抗議いたします。
 共謀罪法案の対政府質疑は、衆議院で三十時間二十分、参考人質疑は五時間五十分でした。一方、参議院におきましては、僅か十七時間五十分、参考人質疑は五時間でした。十三日の法務委員会の対政府質疑では、少数会派の質疑のみ行われませんでした。当然、本日の委員会ではその質疑ができるものだと思っておりましたので、本会議での採決によりそれはかないませんでした。
 今回の共謀罪法案は、米軍基地建設に反対する沖縄県民にとって、政府に抵抗する行為を未然に一網打尽にする意図があるのではないかとの懸念も上がっておりました。それを解消すべく、特に質問内容を書面で丁寧に通告し、答弁者についても、できるだけ詳しく答弁していただきたいということから、主に参考人に伺ってまいりました。多くの疑問や懸念が解消されないまま、質問する権利が委員長の中間報告により断たれたことに強く抗議をいたします。通告しておりました質問内容は、質問主意書で改めて提出をさせていただきたいと思います。
 委員長、昨日の議院運営委員長の解任決議案の提案理由趣旨説明で、吉川沙織議員は、委員会中心主義を取っている参議院において、委員会での審議を途中で打ち切り、本会議でその議事を決するようなことは、立法府の良識の府参議院としての自殺行為であると述べられました。その際、昭和三十八年七月五日の申合せが引用されました。「参議院の各会派は、議院の正常な運営を図るため、少数意見の尊重と議員の審議権確保に留意するとともに、議院の品位と秩序の保持に互いに協力する」とした上で、二点について言及されました。「一、議案の中間報告は、審査につき委員会中心主義を採用している国会法の趣旨にかんがみ、みだりに行なわないものとする」、「二、中間報告に関連し、本会議の運営が混乱した実情にかんがみ、今回のような中間報告は行なわないよう努力すること。」ということでありました。当時の参議院議長は、議長所信で、議案の審議は常に十分行わなければならないとした上で、このような議事の進め方を避けるよう最善を尽くす所存であると述べられています。
 秋野委員長、このような先達のその努力を踏みにじり、良識の府の参議院の歴史に汚点を残されたということを申し上げ、本日の議題である刑法の一部を改正する法律案について質問させていただきたいと思います。
 四月六日の法務委員会で、金田大臣に対し、性犯罪、性暴力は魂の殺人と言われ、性犯罪の厳罰化は性暴力の被害者の悲願であり、緊急、切迫した課題であるにもかかわらず、共謀罪法案を先行したことについて私は抗議をし、早期実現を求める被害者の声を真剣に受け止めておられるのか伺いました。これについて金田大臣は、明治四十年に現行刑法が制定されて以来初めて性犯罪の構成要件等を大幅に見直すなどの点につきまして非常に大きな意義があるものと認識していると答弁をされました。
 本会議での趣旨説明、質疑もなく、国会の最終盤に共謀罪法案の強行採決の批判をかわすかのごとく駆け足の審議ではなく、十分な審議時間を確保した上で充実した審議を行うべきと考えますが、大臣の御所見をお伺いいたします。
#135
○国務大臣(金田勝年君) 糸数委員のただいまの御指摘に対しましては、本法案、非常に大きな意義があるという点は私は変わっておりません。しかしながら、国会審議の在り方というのは国会においてお決めになるべき事柄でございますので、この場で私がお答えすべきことではありません。
 しかしながら、いずれにしましても、提出いたしました法案の必要性、あるいはその内容については誠実かつ丁寧に説明を尽くさせていただく所存であります。
 その上で、本法案についても、前も申し上げておりますが、国民生活の安心と安全にとって大変重要なものであります。そして、大きな意義がある法案でございますから、国会における御審議の上、できる限り速やかに成立をさせていただきたいものと考えておる次第であります。
#136
○糸数慶子君 では、具体的にお伺いしたいと思います。
 まず、部会において、改正後の百七十七条の罪名について、性的侵入、そして性的侵襲などの名称が適当であるという意見がありました。今回、強制性交等罪という名称を使用する理由をお聞かせください。
#137
○政府参考人(林眞琴君) まず、今回、罪名自体を改める必要があったということがまず第一点でございます。これは、従来の強姦罪の客体、女性のみであったものを今回は男性をも含むものとしたこと、そしてまた、従来、強姦罪と同等に処罰しようとする性的行為を姦淫、性交から肛門性交や口腔性交を含む性交等に広げることにした、こういったことから考えますと、まず現行の強姦罪という罪名を改める必要があると考えました。
 その上で、この罪名を考える上で、強姦罪は、まず、強制わいせつ罪、現行の強制わいせつ罪の加重類型であるということを考えまして、暴行又は脅迫を用いて相手方の同意なく性的行為に及ぶ点が強制わいせつ罪と共通している点、まずこの点に着目し、かつその場合の処罰対象となる行為が性交等に改められたということも併せ考えまして、今回、強制性交等罪としたものでございます。強制という、暴行、脅迫を用いて相手方の同意なく性的行為に及ぶという点についての意味が強制という点に表れており、その処罰対象が、先ほど姦淫というものを性交等というものに改めたということを前提といたしまして、これを合わせまして強制性交等罪としたものでございます。
#138
○糸数慶子君 強姦罪の構成要件が姦淫から性交、肛門性交又は口腔性交とされています。部会ではどのような意見があったのでしょうか。構成要件が狭くなった理由も併せてお聞かせください。
#139
○政府参考人(林眞琴君) お尋ねについては、例えば強制性交等罪、今の強姦罪でございますが、これについての構成要件について、部会において異物の挿入行為を含めるか否かという点が一つ意見が交わされました。この点は、今回の法案では、強制性交等罪の性交等というものについては、膣あるいは肛門あるいは口腔、これに陰茎を挿入するということを対象としているわけでございますけれども、陰茎以外に異物あるいは指、このようなものが挿入される場合についてこれを含めるかどうか、こういう点についての議論があったわけでございます。
 この点については、こういった例えば膣に対する指あるいは異物の挿入というものはこれを対象に含めるべきであるという意見がございましたけれども、他方で、この場合に陰茎以外に指あるいはさらに異物の挿入ということを含めてまいりますと、その場合に、異物についても様々な異物がございますので、どこまでの異物というものを処罰対象とすればいいか、この外延を画するのは非常に困難であると、こういった意見がございまして、最終的には、この異物については今回の処罰対象とせずに、その点については強制わいせつ、現行と同様に強制わいせつの中で処罰をしていくということの意見に収れんしたわけでございます。
#140
○糸数慶子君 昨年の二月、国連女性差別撤廃委員会の政府報告審査において、カダリ委員から配偶者間レイプを犯罪とするその規定がないことについて指摘がありました。
 配偶者間レイプを今回対象としなかったその理由は何でしょうか。
#141
○政府参考人(林眞琴君) まず、現行の刑法の文言上、配偶者間における強姦罪、今回、改正後では強制性交等罪になりますが、文言上、配偶者間における罪の成立は全く否定しておりません。そして、これに反対する、こういった考え方について反対する判例もございません。そういったことから、配偶者間の強姦罪について、これが成立するという確認規定を置くようなこと、これについては必要がないと考えた、判断した結果でございます。
 むしろ、配偶者間に限って、現在否定されていない状況の中で配偶者間に限って明文の規定を設けた場合には、配偶者以外の親密な関係においては強姦罪が成立しないかのような誤解を招きかねず、かえって問題が生じ得るという意見もあったところでございます。
#142
○糸数慶子君 一橋大学の本庄武教授は、夫婦間強姦が成立することについて、わざわざ明文の規定を設けて確認する必要がないとされた夫婦間であっても性的自由が尊重されなければならないとのメッセージを発することは、実務にとっては不要かもしれないが、社会に向けてはなお意味があるはずである、それをしないことにより、旧来どおり誤った観念が維持されることになれば泣き寝入りの状態が依然として続くことになりかねないと述べていらっしゃいます。
 配偶者からの暴力に関するデータを見ますと、年々増えています。配偶者間においても強姦罪が成立することを明示する規定を置くことはメッセージを発する点で意義があると思うのですが、いかがでしょうか。
#143
○政府参考人(林眞琴君) こういった配偶者間でも強姦罪あるいは強制性交等罪が成立するということは、これまでの検討会あるいは法制審の中での議論の中でも共通の認識として、例えば法曹、法律実務家の間で共通の認識としてそういうものは成立するんだと、それを前提で議論がなされておりました。その中で、それが共通の認識だとしてもやはりメッセージとして出す意味はあるんじゃないかという意見があったことも承知しておりますけれども、やはりその点につきましては、法文の中で、そういったメッセージを示すために法文にそれを書き込むということは、やはり先ほど申し上げたような弊害もあるものですから、その点は、やはり法文、条文の中でそれを書くということはやはり適切ではないだろうと、このように考えた次第でございます。
 もとより、配偶者間でもこういった強姦罪あるいは性犯罪、強制性交等罪は成立するんだという考え方、これについてはもっともっと更に社会に対してそういったメッセージを発信していくべきであるというような必要性については全くそのとおりだと思いますので、それについては法文以外の部分での広報啓発活動というようなところで行っていくのが相当であろうと考えた次第であります。
#144
○糸数慶子君 それでは、関連してなんですが、警察における配偶者からの暴力事案等の相談件数についてお伺いをしたいと思います。いらっしゃいますか、通告はしておりませんけれども。
 それでは、平成二十七年、私の手元にある資料の中には六万三千百四十一件と警察における配偶者からの暴力の事案等の相談件数が大変多く上がっております。それから、内閣府の調査によりましても、配偶者暴力相談支援センターにおける相談件数というのが随分上がっております、十一万千六百三十件という、そういうデータに基づいて先ほどもお伺いしたわけでございますけど、是非、そういう意味でも、配偶者からの暴力に関するデータを、そして、やはり配偶者間においても強姦罪が成立するという明示をきちんとその規定の中に置くことは大事ではないかということで質問させていただきました。
 次に、祖父と孫、兄と妹などの関係については対象とはなっておりません。これ、実際に広島の産婦人科のお話によりますと、聞いた話でございますが、兄と妹間で子供をもうけたケースもあるというふうに聞き及んでおりますが、実態把握をされるべきだと思いますが、いかがでしょうか。
#145
○政府参考人(林眞琴君) 今回、法案の検討に至るまでの間に、法務省といたしましても、性犯罪の罰則に関する検討会、さらにはその後の法制審議会の部会、こういったところで、特に、地位、関係性を利用した性的行為の起訴事例というものを調査いたしました。その中では、実の親子間あるいは養親子間の事案、もちろんこれは多くを占めておったわけでございますが、それ以外に兄妹間、きょうだい間の事案でありますとか、兄について強姦罪や児童福祉法違反の罪等で起訴された事案もございました。
 それを前提に、兄妹間の性暴力の実態につきましては、更に法制審議会の部会の中で補充的なヒアリングというものが行われたのでございますが、そのときのヒアリングにおきましては、やはり兄と父親による性暴力の被害者であって近親姦の虐待被害者当事者のための自助グループの活動をしている方から、こういった兄妹間の性暴力の実態等についても御意見を伺ったところでございます。
 今回、この兄妹間とかそういう形での、それをその直接的な関係での性的行為、これについてを処罰する形での構成要件、こういったものを設けたわけではございませんけれども、今回の法改正に至る間において性被害の実態ということを十分に見極める意味の中で、こういったヒアリングの中では委員御指摘の兄妹間の性暴力の実態についても伺ったところでございます。
#146
○糸数慶子君 実は、私が直接相談を受けたケースなんですが、先ほど申し上げました祖父と孫、それから義理の父親にレイプをされた小学生、実際に五年前にその相談を受けて、母親の苦しむ状況を見て、その娘が何とか義理の父親を告発をしたいという相談がありました。その相談を受けて、実は五年前は沖縄にはできておりませんでしたけれども、どちらにそういう状況を相談したらいいのかということで、大阪にありますSACHICOというところへ案内をしてまいりました。そこでは、まず産婦人科の医師、それから警察、さらには弁護士、そろってまず三者でその小学生の女の子の話を実際に聞いていただけました。
 先ほども仁比委員から質問がありましたけれども、例えばレイプの被害に遭った人がなかなか告発できない理由の一つに、例えば警察であるとか、あるいは男性の医師であるとか、被害を受けて大変傷ついているにもかかわらず、改めて、例えば先ほどもありました、処女であるのか、あるいはまたどうしてそんな時間にこういう場所を歩いていたのか、あるいは、ひどい質問によると、どうしてそのような服装をしていたのか、そういうふうにして、その被害に遭った女性があたかもその被害に遭っていくような条件があったのではないかと、被害に遭った人を責め立てるような、そういう質問の仕方、そのようなことでいわゆるセカンドレイプ、再び女性が傷を改めて付けられる、そのためになかなか告発ができないという、そういう実態が実際にありました。沖縄でも、九五年の少女の暴行事件以来、実は訴えたくても訴えることができなかったという人たちが随分声を上げてまいりましたが、それはある意味、対応してくださる警察や病院がこの事件をきっかけにして随分対応の仕方が変わってきた、それで勇気を出して告発をするという一つの、ある意味一つ進んだ事例ではありましたが、しかしまだ勇気を出してしっかりと告発のできない被害者が多いということも実態であります。
 先ほどの話に戻りますけれども、私が実際に相談を受けたその小学生は、そこのSACHICOという支援センター、そこで多くの先生方やNPOの方々に励まされて、実際にその義理の父親を訴えました、告訴いたしました。実際に有罪が決定いたしまして、ただ、その親子は沖縄に住むことができずに、全然違う県に移って現在生活をしておりますけれども、そういう意味でも、やはり被害を受けた人たちに対しては、あなたは悪くないという、そういう心のケアということをしっかりやっていくということも大変大切ではないかというふうに思います。
 先ほど、祖父と孫、そして兄や妹などのその関係、そういうその対象の実態把握、是非やっていただきたいと思いますが、御決意をお伺いしたいと思います。
#147
○政府参考人(林眞琴君) 今回、様々な議論がある中で、今度、現に監護する者、監護者において監護者性交等罪というものをつくったわけでございます。もちろん、今御指摘の場合の祖父との関係、これも祖父が監護者に当たるのであれば今回の監護者性交等罪にも当たりますけれども、そうでなければ、そういった祖父との関係とだけでは今回の監護者性交等罪は成立しないわけでございます。
 いずれにいたしましても、様々な議論の中で今回のような構成要件とさせていただきましたので、これについて今後の、先ほどございましたように、施行後三年を目途としてこういった検討を行うということになりますと、今回つくりました監護者性交等罪というものの実際の運用状況でありますとか、そういったものを実際の被害実態との比較において検討しなくちゃいけないということでございますので、委員御指摘のような場合の祖父との関係でありますとか、先ほどの兄との関係とか妹との関係とか、こういったことについても、こういった実態を十分に把握した上で検討していくことになろうかと思います。
#148
○糸数慶子君 こういう性犯罪の再発防止には、やはり性教育、性表現の在り方に対する検討も必要であるというふうに思いますが、これについて金田大臣の御所見をお伺いしたいと思います。
#149
○国務大臣(金田勝年君) 糸数委員の御指摘のような性教育、性表現の在り方についての検討ということになりますと、私ども法務省限りで検討できることには限界があるとは思われますけれども、いずれにしましても、犯罪の再発防止というのは重要な課題であると、このように考えておる次第であります。
 例えば、刑事施設におきましては、強姦等の性犯罪を行った者のうち、常習性や反復性が認められるなど性犯罪の原因となる認知の偏りあるいは自己統制力の不足といったような点がある者を選定をいたしまして、性犯罪につながる問題性の大きさに応じて高密度、中密度、低密度というふうに振り分けた上で性犯罪再犯防止指導を行っておるところでありまして、一定の再犯抑止効果が認められたものと承知をいたしております。
 また、保護観察所におきましても、性犯罪者に対しましては性犯罪者処遇プログラムというものを実施しております。そして、一定の再犯抑止効果が認められたと、このように承知をしておるところでございます。
 今後とも、私ども法務省といたしましても、関係機関と連携をいたしまして再犯防止のための施策の検討に努めていきたいと、このように考えておる次第であります。
#150
○糸数慶子君 本来でしたら、参考人質疑をやはりしていただいて、その後で質問ができましたならば更に充実した審議ができたのではないかなと思います。明日またあるようですから、改めて参考人質疑をさせていただきながら、三年後の改正に関しましてはしっかりと取り組んでいくということを申し上げまして、私の質問を終わりたいと思います。
 ありがとうございました。
#151
○山口和之君 無所属の山口和之でございます。
 本日は、性犯罪に関する刑法の一部を改正する法律案の審議でございます。構成要件及び法定刑の見直しによる厳罰化と適正な処罰によって一日も早く性犯罪が根絶されるべきことを一言申し上げて、質問に入りたいと思います。
 まず、強姦罪等を親告罪とする規定を削除する点についてお尋ねしたいと思います。
 本法案では強制性交等罪が非親告罪化される趣旨は何なのか、現行法において親告罪とされてきた立法事実はいつ頃から、なぜ通用しなくなったのか、お尋ねしたいと思います。
#152
○政府参考人(林眞琴君) 現行法上、強姦罪、準強姦罪、強制わいせつ罪及び準強制わいせつ罪、これが親告罪とされております。これは刑法百八十条でございますけれども、その趣旨は、一般に、公訴を提起することによって被害者のプライバシー等が害されるおそれがある、そのために被害者の意思を尊重する必要があると、こういったことにその親告罪の趣旨があると解されておりますし、従来も解されておりました。
 もっとも、近年の性犯罪の実情等に鑑みまして、性犯罪被害者やその支援団体関係者等からのヒアリング等をこれまで実施してまいりました。その結果、現在の実情といたしましては、この犯罪被害によって肉体的、精神的に多大な被害を負った被害者にとっては告訴するか否かの選択が迫られているように感じられたり、あるいは告訴したことにより被告人から報復を受けるのではないかという不安を持つ場合があるなど、親告罪であることによりましてかえって被害者に精神的な負担を生じさせていることが少なくないという状況に至っているものと認められたわけでございます。
 こういった近年の性犯罪の実情等に鑑みますと、これまで被害者のプライバシーの保護というようなものを立法趣旨として行われてきた親告罪については、これをあえて非親告罪化しまして被害者等の精神的負担を解消することが相当であろうと、このように考えた次第でございます。
#153
○山口和之君 それでは、非親告罪化が被害者の負担を軽減するためということであれば、今回の改正によって今よりも被害者の負担が増えることがあってはならないと思うんですが、強制性交等罪が非親告罪となった後、被害者が、処罰意思がなく、心身に負担にもなるため、捜査や起訴しないでほしいと望んだときには捜査、起訴はどのようになるのか、教えていただきたいと思います。
#154
○政府参考人(林眞琴君) 性犯罪について、その公判で事件の内容等が公になることを望まない被害者もおられることなどから、被害者のプライバシー等の保護、これは非常に重要でございます。事件の処分等に当たっても被害者の心情に配慮すること、これが必要であるものと認識しております。
 これまで、非親告罪化するかどうかについての議論のときにも、むしろこういった被害者の方々から非親告罪化が望ましいという意見はいただいたわけでございますけれども、その議論の過程におきましても、だからといって捜査、公判においてその被害者にかえって負担になるというようなことがあってはならないということも併せて指摘されていたところでございます。
 そういったことから、例えば検察当局におきましては、これまでも、例えば非親告罪であった強姦致死傷罪等につきましても、この被害者の意思を丁寧に確認するというようなこと、被害者の心情に適切に配慮すること、これが必要であるということは検察当局としても認識してきたところでございますので、今回、強姦罪等が非親告罪化された場合につきましても、引き続き、この被害者の心情に適切な配慮をして、起訴、不起訴の判断ももとよりでございますが、起訴してからの捜査、公判の遂行過程におきましても、こういったことについて十分に配慮するべきものと考えております。
#155
○山口和之君 被害者の負担を考慮して設けられた親告罪の規定が、逆に被害者の負担になってしまっていたという事実は重く受け止めなければならないと思います。法律は、目的や文言が立派でも、解釈や運用次第では正反対の結果をもたらし得ることを肝に銘じて、成立後の法律の実施状況をしっかりと見守っていきたいと思います。
 次に、最近報道で取り上げられることが多い性犯罪として、痴漢についてお尋ねしたいと思います。
 まず、本法案では、強制わいせつについては定義規定等の変更がないようですが、いわゆる痴漢行為が強制わいせつに当たるのか迷惑防止条例違反にしかならないのかはどのような基準で区別されるのでしょうか、教えていただきたいと思います。
#156
○政府参考人(林眞琴君) この両罪の区別につきましては、当然、構成要件に沿って区別することとなります。
 この場合に、まず、強制わいせつ罪でございますが、これは、十三歳以上の男女に対して暴行又は脅迫を用いてわいせつな行為をした場合、この場合に成立するとされております。他方で、痴漢行為、例えばいわゆる迷惑防止条例でございますが、これは各都道府県において規定の仕方が異なっております。
 したがいまして、一概にお答えすることは困難でございますが、例えば東京都の例を挙げれば、これは次のようなこととなっております。「正当な理由なく、人を著しく羞恥させ、又は人に不安を覚えさせるような行為であつて、次に掲げるものをしてはならない。」とした上で、「公共の場所又は公共の乗物において、衣服その他の身に着ける物の上から又は直接に人の身体に触れること。」となっております。
 したがいまして、この構成要件の違いに沿って区別、両罪の成立を区別していくということになるわけでございますが、大きな点の違いでいえば、やはり暴行、脅迫を用いて相手が同意していない状態の下でのわいせつな行為をする場合の強制わいせつ罪の成立と、一方で、迷惑防止条例においては、そこまでの認定ではなく、衣服その他の身に着ける物の上から又は直接に人の身体に触れること、これをもって足りるというふうにされているところでございます。
#157
○山口和之君 今月三日の午前零時過ぎにJR総武線の平井駅で起きた痴漢騒動は、報道によれば、無実の男性が女性から痴漢被害を訴えられたものとのことでした。
 痴漢撲滅は重要であり、痴漢は決して許すことができませんが、冤罪もあってはなりません。痴漢騒動に警察官等が駆け付けた際、女性側が痴漢を訴え、男性側がそれを否認して女性側による名誉毀損罪や虚偽告訴罪を訴えたような場合、どのように対処することになっているのでしょうか。目撃者がおらず、証拠が対立する両者の証言しかない場合に、どちらか一方だけを逮捕することはあるのか、お教え願います。
#158
○政府参考人(高木勇人君) 逮捕の判断は個別の事実関係に即して行われるものでありまして、一概にお答えすることは困難でありますけれども、その上で、一般論として申し上げさせていただければ、電車内における痴漢事犯の捜査に当たりましては、早期臨場によって目撃者等の確保に努める、被疑者や被害者からの客観証拠の収集に努める、関係者の供述内容に不自然、不合理な点がないかどうか供述の信用性をよく吟味する、供述の裏付け捜査を徹底するなどによって適正な捜査を推進するよう都道府県警察を指導しているところでございます。
#159
○山口和之君 残念ながら、勘違いや悪意によって、実際には存在しない痴漢被害が訴えられたり、犯人ではない人が犯人とされるケースが少なからずとも存在するようです。どうしても、最初に被害を訴えた側の言い分が真実で、それに反論する側の言い分は軽視される傾向がありますが、そもそも供述証拠には類型的に虚偽や誤謬の危険性を伴うことを踏まえ、慎重に対応していただきたいと思います。
 次に、痴漢は現行犯でなければ処罰が難しく、現行犯逮捕の必要性が高いと言われております。しかしながら、満員電車等で痴漢の場合、犯罪及び犯人が必ずしも明確ではなく、本来ならば現行犯逮捕できないケースが多いとも言われております。
 今年に入って、痴漢の疑いを掛けられた人が逮捕を免れようと線路に逃亡するといった事件が相次いでおりますが、その背景には、駅事務室への同行に応じてしまうと現行犯逮捕とみなされるのではないかといった心配もあるそうです。
 そもそも、痴漢の疑いを掛けられた者を駅事務所へ同行させることが私人による逮捕と呼べるのでしょうか、伺いたいと思います。
#160
○政府参考人(林眞琴君) 刑事訴訟法上、現に罪を行い、又は現に罪を行い終わった者が現行犯人とされております。そして、現行犯人は何人でも逮捕状なくしてこれを逮捕することができるとされております。したがいまして、私人においても現行犯逮捕が可能でございます。
 そして、委員御指摘の、そもそも、例えば痴漢の疑いを掛けられた者を駅事務所等へ同行させること、これが私人による逮捕と言えるかどうかということでございますけれども、これはもちろん一概になかなかお答えをすることは困難でございますけれども、単に同行させること、これについては、これは逮捕と認められることはないと承知しております。例えば、腕をつかむなどといった直接的な有形力の行使が継続的に行使されて身体の自由が奪われているような場合、このような場合には逮捕に当たり得ると思いますけれども、そうでなければ、単にその同行を求め同行していくということであれば、逮捕に当たらないと考えます。
#161
○山口和之君 痴漢を疑われた人物が弁明するために任意で駅事務所に同行したら逮捕の扱いになるのであれば、逃亡を図ろうとする人も少なくないと思います。住所や連絡先を明らかにして被害者等と接触をしない旨誓約をすれば、逃亡及び証拠隠滅のおそれが認められないので逮捕しないという方針を打ち出すなど、痴漢捜査の在り方を抜本的に見直すことが、真実発見、適正処罰に必要なのではないだろうかというふうにも思います。
 現行犯逮捕の場合、事前にも事後にも裁判所による令状審査がないため、極めて慎重な対応を要します。しかしながら、二〇一五年八月には、大阪府警警察官に現行逮捕され府迷惑防止条例違反で起訴された男性に対し無罪が言い渡され、その判決を確定しています。
 犯罪及び犯人が明白であるとして現行犯逮捕された事件が無罪となるということは本来あり得ないはずですが、なぜそのようなことが起きているのでしょうか、伺いたいと思います。
#162
○政府参考人(林眞琴君) 御指摘のような判決が言い渡されたことは承知しております。
 いずれにしても、警察官の現行犯逮捕が適法かどうかということは、その時点でのいわゆる適法性についての判断がなされるわけでございますが、その場合に、警察官により適法に現行犯逮捕された事件、いわゆる現行犯逮捕の要件を満たしたような事件でありましても、その後の刑事裁判におきましては、当事者主義の下で、検察官、被告人及びその弁護人による主張、立証を踏まえまして、裁判所によってはその有罪、無罪ということについては最終的に判断されるものでございますので、適法に逮捕がなされた事案について、逮捕が適法であったとしても、裁判所がその起訴事実について無罪判決を言い渡すということは制度上もあり得るものと承知しております。
#163
○山口和之君 令状審査のない現行犯逮捕については濫用のおそれも危惧されますので、なぜ間違いであったのか、検証をしっかり行って、厳格な運用を期していただきたいと思います。
 痴漢の冤罪は痴漢冤罪詐欺グループによってつくり上げられているものもあるというふうに言われております。警察庁としてはこういったグループの実態について把握されているのか、伺いたいと思います。
#164
○政府参考人(小田部耕治君) 虚偽の痴漢被害の申出を行うグループの存在につきましては警察庁としては把握はしておりませんが、いずれにいたしましても、警察庁としては、虚偽の痴漢被害の申出に基づいて取締りを行うといったようなことがないよう、今後とも痴漢事犯に対する適正捜査について都道府県警察を指導してまいりたいと思っております。
#165
○山口和之君 痴漢に関する取組は、犯人を厳正に処罰して被害をなくしていくことと痴漢冤罪をなくしていくことの両方を同時に行う必要があると思います。警察が痴漢撲滅に力を入れてくれていることは承知しておりますが、痴漢冤罪撲滅の取組はどのようにしているのか、伺いたいと思います。
#166
○政府参考人(小田部耕治君) 痴漢事犯は被害者にとって深刻な被害を生ずる悪質な犯罪行為であることから、厳正な取締りを推進していく必要があるとともに、虚偽の痴漢被害の申出に基づいて取締りが行われるといったようなことがないようにしていかなければならないと考えているところでございます。
 警察庁といたしましては、適正捜査の観点から、早期臨場による目撃者等の確保、早期の実況見分、写真撮影等証拠保全の徹底、供述の裏付け捜査の徹底、微物等の客観証拠の収集及び鑑定の実施等に留意するとともに、被害者が痴漢被害を訴えた経緯等についてもよく確認するなどして、適正かつ慎重な捜査を推進するよう都道府県警察を指導してまいりたいと思っております。
#167
○山口和之君 痴漢冤罪保険の申込みが急増するなど、痴漢冤罪に不安を感じる方が多くなってきております。痴漢冤罪が増えれば、実際に痴漢に遭った人が被害を申告しにくくなるということも考えられますので、意図的に痴漢冤罪をつくり出そうとした者への厳罰や痴漢冤罪に遭わない方法の告知等、痴漢冤罪撲滅の取組についても力を入れていただきたいと思います。
 次に、性犯罪に関しては、被害者の方などから捜査の在り方について苦言を呈されることが少なくないので、その点について質問したいと思います。
 まず、刑訴法百九十八条一項は、「被疑者は、逮捕又は勾留されている場合を除いては、出頭を拒み、又は出頭後、何時でも退去することができる。」と定めていますが、身体を拘束されていない被疑者は、出頭を拒み、出頭後についても退去することができるということでよろしいでしょうか。
#168
○政府参考人(林眞琴君) 委員御指摘のとおり、刑事訴訟法百九十八条第一項のただし書に定められておりますとおり、逮捕、勾留されていない被疑者は、出頭を拒み、又は出頭後、いつでも退去できるとされております。
#169
○山口和之君 次に、身体を、勾留されている被疑者について、取調べ室への出頭をし、滞留する義務、いわゆる取調べ受忍義務の有無をお尋ねしたいと思います。刑訴法百九十八条一項の反対解釈からはそのような義務があるようにも思いますが、逮捕及び勾留の目的に取調べが含まれておらず、被疑者に黙秘権があることから、これを否定する見解もありますが、法務省はどのように考えているのでしょうか。
#170
○政府参考人(林眞琴君) 刑事訴訟法百九十八条第一項ただし書において、「被疑者は、逮捕又は勾留されている場合を除いては、出頭を拒み、又は出頭後、何時でも退去することができる。」と規定をされておりますので、逮捕又は勾留されている被疑者は、取調べのために出頭し、そこに滞留する義務、いわゆる取調べ受忍義務を負うと考えております。
#171
○山口和之君 次に、参考人の取調べについて、刑訴法二百二十三条一項は、検察官、検察事務官又は司法警察職員は犯罪の捜査をするについて必要があるときは被疑者以外の者に出頭を求め、これを取り調べることができると定めていますが、参考人が出頭を拒むこと、出頭後に任意のタイミングで退去することはできるのでしょうか。
#172
○政府参考人(林眞琴君) 委員御指摘の点については、刑事訴訟法第二百二十三条第二項が委員が今言われましたその刑事訴訟法百九十八条第一項ただし書を準用しておりますので、出頭を求められた参考人は、出頭を拒み、又はいつでも退去することができると解しております。
#173
○山口和之君 最後に、大臣に伺いたいと思いますが、日本の刑事司法は、取調べに弁護人の立会いが認められていないことや長時間にわたる取調べで自白を得ていることから、国連の場で中世のようだと批判されてしまっています。日本の刑事司法制度を国際社会から批判されることがないように今後とも改善していくことについて金田大臣はどのようにお考えか、お聞きしたいと思います。
#174
○国務大臣(金田勝年君) 山口委員からのお尋ねでございます。
 我が国の刑事司法制度は、御承知のように、「公共の福祉の維持と個人の基本的人権の保障とを全うしつつ、事案の真相を明らかにし、刑罰法令を適正且つ迅速に適用実現する」と、これは刑訴法の第一条になりますが、ものとして運用されておりまして、国際社会から批判されるようなものではないと、このように考えております。
 さらに、昨年成立しました刑訴法の一部改正法律により、取調べ及び供述調書に過度に依存した状況を改めて、証拠収集手段の適正化、多様化等を内容とする法改正が実現をいたしております。これによりまして、より適正で機能的な刑事司法制度を構築することができたと、このように考えている次第であります。
#175
○山口和之君 日本の刑事司法制度はもっともっと良くすることができますし、良くしていかなければならないと思います。まずは、被害者等の参考人や被疑者に対する取調べについて、取調べを受けた者や国際社会からの批判を真摯に受け止め、見直しを検討していただきたいと思います。
 以上で終わります。
#176
○委員長(秋野公造君) 本案に対する本日の審査はこの程度にとどめます。
    ─────────────
#177
○委員長(秋野公造君) 参考人の出席要求に関する件についてお諮りいたします。
 刑法の一部を改正する法律案の審査のため、参考人の出席を求め、その意見を聴取することに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#178
○委員長(秋野公造君) 御異議ないと認めます。
 なお、その日時及び人選等につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#179
○委員長(秋野公造君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後五時五十三分散会
ソース: 国立国会図書館
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