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2017/01/24 第193回国会 参議院 参議院会議録情報 第193回国会 本会議 第2号
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2017/01/24 第193回国会 参議院

参議院会議録情報 第193回国会 本会議 第2号

#1
第193回国会 本会議 第2号
平成二十九年一月二十四日(火曜日)
   午前十時一分開議
    ━━━━━━━━━━━━━
#2
○議事日程 第二号
  平成二十九年一月二十四日
   午前十時開議
 第一 国務大臣の演説に関する件(第二日)
    ━━━━━━━━━━━━━
○本日の会議に付した案件
 議事日程のとおり
     ─────・─────
#3
○議長(伊達忠一君) これより会議を開きます。
 日程第一 国務大臣の演説に関する件(第二日)
 去る二十日の国務大臣の演説に対し、これより順次質疑を許します。蓮舫君。
   〔蓮舫君登壇、拍手〕
#4
○蓮舫君 民進党・新緑風会の蓮舫です。
 私は、会派を代表して、安倍総理の施政方針演説に対し、質問をします。
 自由、共生、未来への責任を結党の理念とする民進党として、未来をつくる、未来を開くとされた総理の姿勢そのものには基本的に賛同します。
 総理は、施政方針演説で、次なる七十年と言われました。七十年が区切りかどうかはともかくとして、時代が大きな曲がり角を迎えようとしている実感は私にもあります。
 昨年、多くの人が豊かさにつながると考えてきたグローバリズム、自由貿易体制に対して、疑問の声が世界各地で上がりました。私たちが子供の頃に夢見ていた自動運転の車や人工知能が今や手の届くところに来るなど、人々を追い立てるかのように技術も進歩しています。国内に目を向ければ、昨年生まれた子供の数は、記録上初めて百万人を切りました。戦後の我が国の繁栄を支えてきた環境が曲がり角を迎えています。
 その中で、引き続き安定成長を実現していく考えに変わりはありません。しかし同時に、経済的な豊かさに偏重するのではなく、一人一人の価値観を大切にし、様々な考え方、生き方を認め合う多様性を大事にすることがこれからの豊かさだと思います。
 全ての人に居場所と出番のある社会、これが民進党の目指す未来です。
 私たちは、子供を持つことを希望する女性が、仕事を失う不安を覚えることなく産むという選択ができる社会、どんな経済事情の家庭に生まれても、子供が学ぶことができる、自分の可能性を自分で見付けることができる環境、男でも女でも自分の能力を存分に生かすことができる職場や仕事など、その在り方を、シニア世代が年金、介護、医療の不安に押し潰されることなく自分らしい生き方を過ごせる社会をつくりたい。老若男女、誰もが、生まれてきたことを、自分が必要とされていることを実感できる国を民進党は目指します。
 総理は、施政方針演説で、御自身の政策の成果、自画自賛、そして他者の批判をちりばめられましたが、御自身に都合の悪い現実は語ろうともしませんでした。それは何か。
 総理は、我が国の未来は子供たちと、教育の充実に触れられました。教育は大事です。子供たちの未来をつくるのは政治の責務です。しかし、今、その教育をつかさどる文科省に批判と非難の目が向けられています。組織を挙げた職員の天下りのあっせんについて、なぜ一言も語られなかったのでしょうか。
 調査をした再就職等監視委員会は、文科省職員と元高等教育局長による再就職等規制違反行為を認定しました。元高等教育局長の天下りのほかにも、九件もの法律違反のほか、組織的なあっせんの可能性のあるものが三十七件あったと報道されています。さらに、文科省は、委員会の調査に虚偽の答えをし、関係者に口裏合わせを依頼し、想定問答まで作成していたことも明らかになりました。
 総理、子供の未来、教育を語るのであれば、まずこの不祥事の説明から口にすべきだったのではないでしょうか。なぜ触れられなかったのですか。触れるほどのことではない、大切ではないとの判断だったのかお聞かせください。不都合な現実に触れもせず教育を語られても、その言葉に重みはありません。文科省の天下りあっせんに対し、率直にどのようにお考えかもお聞かせください。
 民主党政権発足直後に、天下りあっせんの原則禁止、独立行政法人等の役員の公募制導入を決定しました。その結果、再就職先のあっせんを伴う早期勧奨退職はなくなり、独法役員に占める公務員OBは二九・五%から六・九%まで大幅に低下をしました。
 政官業の癒着の疑い、不透明な再就職をなくすために、必要な行革は継続をすることです。行革は一度取り組んで終わるものではありません。が、我々が下野した後に誕生した安倍内閣では、当時の行革担当大臣であった稲田朋美現防衛大臣が、民主党政権で総理が天下り禁止を決めた発言を引き継ぐことはないと答弁、天下り禁止の根拠を欠く状態が続くこととなり、改革は骨抜きになり、今回明らかになったように、事実上の天下りあっせんが見逃されてきました。
 総理、国民の国家公務員に対する信頼確保の観点からも、各省庁に対し法令遵守を厳格に行わせるとともに、国家公務員の退職管理の一層の適正化を図るため、再就職等監視委員会の監視機能を強化すべきと提案をいたしますが、いかがでしょうか。
 教育をつかさどる文科省の問題を猛省し、再発防止策を講じていただくことを前提に、教育を充実する方策を議論いたします。
 今、我が国に求められるのは、異次元の金融緩和や大規模な財政出動ではなく、人材育成に投資をする視点です。人への投資を国家百年の計と位置付け、国の責任で行うことが足下の消費を拡大し、さらには人口減少に歯止めを掛けることにつながると私たちは考えます。中でも、未来をつくる子供たちがその能力を最大限に発揮するためにも、国が全ての子供たちの学びを支援することが必要です。
 教育は国の力です。子供たちは未来です。我々が実現した高校無償化をばらまきと批判していたことを忘れたかのように、安倍総理は今回、教育への思いを語られました。
 給付型の奨学金制度の創設は評価をします。ただ、中身が残念過ぎます。二十九年度予算で七十億円の基金をつくり、まずは二千八百人を対象に開始、三十年度から本格実施するとしていますが、その対象は一学年当たり二万人にすぎません。現在、無利子奨学金を受けている学生は四十八万人、有利子奨学金を受けている学生は八十四万人います。給付型奨学金の対象が一学年二万人では、大学生の二人に一人が借金を抱えながら学ぶ状況を改善するにははるかに及びません。総理には、この規模の措置で十分だとお考えなのでしょうか、お聞かせをください。
 全ての子供たちが未来に希望を持てるようにと演説される内容と予算措置の乖離に本気度が感じられません。
 民進党は、全ての子供たちが経済的な心配をすることなく希望する教育を受けられるよう、教育の無償化を進めます。幼児教育から高等教育までの教育の無償化を目指し、保育を含む就学前教育費の負担軽減、給食費等を含む就学支援、学習支援事業の国の責任に基づく抜本的拡充、大学の授業料減免、給付型奨学金の推進と無利子奨学金の拡充など、国による個人の教育費負担の抜本的軽減策を大胆に進めます。
 教育と子育てに予算を集中して投資をすること、それは日本の未来を背負う子供たちを豊かにし、この国の力を底上げするだけではありません。我が国の構造的な課題である人口減少を止め、女性の社会進出と活躍を促して生産性を向上させ、さらには新たな需要と消費を喚起します。その意味で、教育と子育て、その支援は内外の専門家が指摘しているように経済政策としても極めて重要です。
 例えば、子育て支援の経済効果は二・八倍との研究があります。大学を含む高等教育の費用対効果は二・四倍と言われ、公共事業の経済効果一・一倍を大幅に上回ると試算されています。教育に重点を置いた支援を実現するためにも、例えば税制のゆがみを正し、能力に応じた負担を求めることも含めた財源も確保します。
 教育、教育、教育。これが私たちのアベノミクスに対する対案です。
 大手広告代理店で働いていた二十四歳の高橋まつりさんがクリスマスに自ら命を絶ちました。長時間労働による過労死でした。その日の朝、お母さんが心配で電話でお嬢さんに死んでは駄目よと伝えた直後の話であったと伝えられます。まつりさんの過労死は、同じ子を持つ親として身が引き裂かれる思いです。
 長時間労働をなくしましょう。心身の健康を守りながら、一人一人の能力を最大限発揮できる仕事を改革しましょう。それが政治の責務だと私たちは提案を続けてきています。格差を是正するためにも、同一価値労働同一賃金の実現、過労死を防ぐための長時間労働の是正は急務です。
 昨年初めて出された過労死等防止対策白書で、一か月の残業が最も長かった正社員の残業時間が過労死ラインの八十時間を超えた企業が二二・七%ありました。情報通信業、学術研究、専門・技術サービス業では四割を超えていたとされ、ホワイトカラー職場で月百時間以上の残業が横行している実態が明らかになりました。もはや精神論や矜持で対応できる働き方ではありません。
 私たちはここを正したい。そのための法案を出しています。実質的に無制限となっている時間外労働に法律で上限を規定するとともに、勤務と翌日の勤務までの間に一定時間以上の継続したインターバルの付与を義務付ける法案を既に国会に提出していますが、与党が審議に応じてくれません。総理が働き方改革を掲げるのに、なぜなのでしょうか。教えてください。
 総理は演説で、法改正に向けて作業を加速しますと言われました。ところが、今国会での提出予定法案に長時間労働規制法案はありません。検討中のリストにも載っていません。二度と過労死が繰り返されないようにするためにも迅速な対応が求められますが、我々の法案は審議をしない、政府から法案が出てこない中では、総理の言う真摯かつ建設的な議論を闘わせ、結果を出すことなどはできません。
 総理は、抽象的なスローガンを叫ぶだけでは世の中は変わりません、重要なことは、時間外労働の限度は何時間なのか具体的に定めることですと言われました。その言葉、そのままお返しいたします。いつ具体的な法案を提出されるのでしょうか。昨年末、政府は同一労働同一賃金のガイドライン案を示されました。これも法案がないと機能しません。まさか今国会では出さないということでしょうか。確認をさせてください。
 二十四歳の息子さんを過労死で亡くしたお母さんの言葉が胸に刺さっています。彼女は、子供たちが今直面している現実をこう言われました。奨学金返済という借金を背負って頑張る、そして正社員からこぼれないようにただ頑張るしかない、それはおかしいと。教育と労働分野における人への投資の必要性は待ったなしです。
 次世代に残すのは、借金ではなく、安心と希望だと民進党は考えます。
 総理、金融緩和、財政出動に大きく偏ったアベノミクスを一度立ち止まり、我々の提案する人への投資に大きくかじを切るべきだと考えますが、いかがでしょうか。
 総理は、未来をつくるための挑戦の結果として、名目GDPの成長、中小企業の倒産件数の減少、三年連続のベースアップを誇られました。
 なぜ名目で語るのでしょうか。実質経済成長率で見ると、安倍内閣は年平均一・三%で、我々の政権時の年平均一・六%を下回っています。一部でベースアップは実現したかもしれませんが、全体で見れば賃金上昇より物価上昇の方が大きく、実質賃金は四年間マイナス、直近も弱含み、実質賃金指数では二〇一〇年を一〇〇とすると直近の三か月は九六・一です。
 確かに、中小・小規模事業者の倒産件数は低水準となっています。とはいえ、二〇一六年に自主的に休業、廃業、解散した会社の数は二万九千五百件を超え、過去最多を更新する見通しとなりました。後継者難、国内需要の伸び悩みなど先行きへの不安から自主的に廃業する会社の数は、総理が誇る倒産件数統計には現れません。望まない解散や廃業は、労働力や技術が失われ、潜在成長力が下押しされることにつながり、決して無視はできません。
 総理、あなたが見ていない統計の背景にも目を向けるべきと考えますが、いかがでしょうか。
 安倍政権の四年間で、我が国全てがバラ色になったわけではありません。安定した仕事に就けない方、経済的理由で学業を諦める人、将来の確信のできない地方の皆さんなど、今の生活に必死で夢や希望を抱けない人がなお多くいます。バラ色の現実だけを見る、語るのではなく、そうした方々に手を差し伸べるのが政治の役割だと私たちは考えますが、いかがでしょうか。
 私は、地方を回る中で、こうした皆さんの声を繰り返し聞いてきました。そして、アベノミクスは失敗したと改めて確信をしています。総理に伺います。総理は、アベノミクスは本当に成功したと思われているのか、是非考えをお聞かせください。
 一月の四日に行われた安倍総理の年頭記者会見では、本年も経済最優先、鳥が大空をかけるように颯爽とデフレ脱却に向けて金融政策、財政政策、そして成長戦略の三本の矢を打ち続けてまいりますと言われました。ころころ変わるスローガンとともに的も変わり、矢は的に届かず、今や弓が引かれたかさえもあやふやなアベノミクスをまだ続けるのでしょうか。
 端的に伺います。四年前に総理が掲げた最大の公約、デフレ脱却は一体いつ実現するのでしょうか。具体的な時期を答えてください。
 今回提出された第三次補正予算案には、経済政策の限界も現れました。平成二十八年度当初予算は、名目三・一%、実質一・七%という夢のような経済成長率を前提に税収見積りを行い、総理は昨年の参議院選でも税収増を喧伝しました。ところが、結果はどうでしょうか。現時点で成長率の見込みは名目一・五%、実質一・三%にしかすぎません。さらには、年度内に一・七兆円もの歳入不足が明らかになり、第三次補正予算で年度途中に赤字国債を追加発行する羽目に陥りました。リーマン・ショック以来七年ぶりのことです。
 総理、赤字国債発行の原因はどこにあるとお考えでしょうか。為替の影響による税収減が原因だとお考えであれば、アベノミクスは為替頼みということでしょうか。併せてお聞かせください。
 消費が伸びないのはなぜか。それは、ライフステージにおける節目節目の不安に政治が応えていないからです。産むことをためらい、教育費が家計を直撃、不安定雇用の不安はなおあり、社会保障への疑問にしっかりと政治が安心をもたらせば経済の好循環は動き出します。そのためにも、現行の社会保障制度の枠内での数字合わせだけではない在り方を議論すべきときではないでしょうか。
 ヨーロッパでは今、ベーシックインカムという政策が注目を集めています。ベーシックインカムとは、皆さんが生活を営む上で基本的な所得を保障するため、一律で現金等を給付する仕組みのことです。その長所は、中低所得者の底上げができることだけでなく、現在の複雑な税制や社会保障制度をシンプルな制度に移行することにより、行政の大幅な効率化も望めます。
 民進党は、勤労意欲の低下という短所を打ち消しながら、中低所得者を底上げし中間層を復活させる具体策として、日本型ベーシックインカム構想を提唱します。その柱は、所得税減税と給付を組み合わせた就労税額控除の導入です。給与所得控除を再編成して、勤労意欲の低下を防ぎつつ中低所得者の手取りを増やします。現金給付だけではなく、社会保険料の支払として充てることで、年金保険料未納問題の解決、ひいては将来的に生活保護に陥る方々をなくしていくことにもつながります。
 総理は、私たちのベーシックインカムについて、新たな取組がもたらす社会保障制度の持続可能性についてどのようにお考えか、御所見を伺います。
 総理、未来を語るのであれば、総理が語らなかった不都合な現実にも是非目を向けてください。
 国、地方の長期債務残高は、二〇一四年度末に一千兆円を超えました。当初予算に補正予算と繰り返し大規模な財政出動を行ってきた結果、この四年間で財政は更に悪化しました。長期債務の国内総生産比は、四年前、一四三%だったものが、今や一五六%となりました。
 それでも、総理はアベノミクスの果実で財政健全化は達成可能としてきましたが、明日開催予定の経済財政諮問会議に提出される内閣府の中長期の経済財政に関する試算では、プライマリーバランスの赤字幅の見直しが、二〇二〇年度にゼロにするとしていたものが八兆円台となり、去年七月の試算から三兆円近く悪化すると報道していますが、これは事実でしょうか、確認をさせてください。
 この試算は、安倍内閣でまだ達成していない名目三%程度の成長が続くことが前提です。安倍内閣の過去の実績から見て、二〇二〇年度のプライマリーバランス黒字化、債務残高の対GDP比の中長期的な引下げという経済・財政再生計画に掲げた目標達成は困難と見えますが、なおアベノミクスの果実で財政健全化は実現できるというのでしょうか。その魔法のような理由も是非教えてください。
 あわせて、総理自身が、経済政策はうまくいっていると誇られながら、新しい判断として消費税増税を二度も先送りをしました。結果、社会保障の充実は滞っています。一方で、総理は、七十歳以上の高額療養費の上限額引上げ、介護の利用者負担割合引上げなど、今年若しくは来年から医療や介護の自己負担増はしっかり推し進めようとしています。他方で、我々も提案する社会保障の充実である介護保険料の更なる負担軽減や年金の年最大六万円のかさ上げが来年度予算案では見送られました。総理が消費税増税を見送ったからこうした充実策も見送りとの判断になったのか、お知らせください。
 また、総理は、昨年九月の所信表明演説で、アベノミクスの果実を生かし、優先順位を付けながら社会保障を充実していきますと述べました。今年度予算で既に歳入欠陥を埋めるための赤字国債を発行していながら、新たなアベノミクスの果実は一体幾らあり、何に使うのでしょうか。安定財源とは言い切れないこの果実がなくなったら、社会保障の充実は打ち切るのでしょうか。明確にお答えください。
 総理が誇る政策成果の全てを否定しませんが、増え続ける長期債務、極めて達成不可能な財政健全化には正面から目を向けてくださらないと、その負担を担わされる次世代、未来への責任は果たすことはできないし、未来を語る資格はなくなると強く申し上げておきます。
 財源が限られている中、行っていく政策の優先順位は各政党によって違いがあります。だからこそ、言論の府である国会での議論を、審議を、知恵を話し合うその中身と時間を私たちは大切にしています。
 ところが、総理は演説の中でこんなことを言われました。ただ批判に明け暮れたり、言論の府である国会の中でプラカードを掲げても何も生まれません。意見の違いはあっても、真摯かつ建設的な議論を闘わせ、結果を出していこうではありませんかと。衆議院における我々の行動に問題があるという批判は真摯に拝聴いたしますが、自民党が野党だった頃、例えば二〇一〇年、衆議院総務委員会の郵政改革法案や放送法改正法案の採決、内閣委員会の国家公務員制度改革関連法案の採決時に、同じくプラカードを掲げ、やじとともに反対行動を取られたのは自民党ではないでしょうか。
 総理、私たちへの批判とどう整合性を付けておられるのでしょうか。そろそろ他者を批判して自分のみが肯定されるという手法は改めていただきたいと強く申し上げます。
 また、安倍総理は、あたかも民進党が国会で批判に明け暮れているといった誤った印象を語りましたが、昨年の通常国会で私たちは、成立した政府法案五十四本に対し四十七本賛成、適切な審議を経て納得できる法案への賛成率は八七%です。臨時国会で同じく成立した政府法案に対しての賛成率は八三%で、必要な法改正には粛々と賛成をしています。まるで我々がずっと批判に明け暮れているという言い方は訂正をしてください。
 そもそも、国会で与野党が衝突したのはなぜか。さきの国会でいえば、強行採決三昧だった乱暴な自民党の国会運営ではないでしょうか。カジノ解禁法案の衆議院審議、僅か五時間三十三分、年金カット法案はたった十九時間で審議打切り、強行採決、野党の声も聞かないどころか、カジノ解禁法案では連立与党を組む公明党を捨ておきました。まずは、立法府軽視そのもの、議論は必要ではないというその姿勢を猛省すべきだと提案しますが、いかがでしょうか。
 強行採決を結党以来考えたことがないとの名言を残した安倍総理ですが、改めてこの場で、総理自らが主張された真摯かつ建設的な議論のためにも、自民党は強行採決をしないと約束をしていただけるでしょうか。
 今月二十日に第四十五代アメリカ大統領にドナルド・トランプさんが就任をしました。新大統領の誕生に祝意を述べるとともに、八年間大統領を務めてこられたバラク・オバマ前大統領に敬意を表します。我が党としては、オバマ氏が核なき世界を希求されたその姿勢をトランプ新大統領にも引き継いでもらいたいと強く願います。
 保護主義こそが偉大な繁栄と強さにつながると就任演説でアメリカ第一主義を掲げたトランプ大統領は、環太平洋パートナーシップ協定、TPPは正式に終わったと、離脱に関する大統領令に署名をしました。また、日本との自動車貿易を不公平だと名指しし、批判をしています。
 これまで築いてきた自由貿易体制を維持する必要性をトランプ大統領に粘り強く説得をしていただきたいと申し上げると同時に、これまで総理は、TPPの誕生は我が国のGDPを十四兆円押し上げ、八十万人の雇用を生み出すと言われていましたが、アメリカが離脱を正式に決め発効の見通しが立たなくなったTPPに代わり、GDPを十四兆円押し上げ、我が国の経済成長を牽引する政策を何なのかを総理は語られませんでした。失われた十四兆円をどの政策で補うのか、教えてください。
 日米同盟関係への影響について伺います。
 日米同盟は、日本の安全保障はもちろんですが、アジア太平洋地域の平和と安定、そして国際社会の繁栄のために存在しているというのが両国のこれまでの共通の認識です。しかし、新政権の日米同盟や在日米軍駐留経費負担に対する認識に不安を覚えます。今回、トランプ新大統領が国防長官として指名したマティス氏は、同盟国に応分の負担を求める考えも示唆しています。日本は、既に在日米軍駐留経費負担の七五%程度を負担していると言われています。これ以上の負担の是非について、総理のお考えをお聞かせください。
 トランプ政権の言う応分の負担は金銭面だけに限らない可能性もあります。就任演説でトランプ大統領は、イスラム過激主義を地球から完全に根絶すると言われました。一昨年成立した安保法制によって、国際平和共同事態対処法に基づく外国軍の後方支援が可能となりました。安保法制審議の中で、安倍総理は、現在米軍がイラクやシリアで遂行する作戦に協力支援活動を行うことは法律上は可能になったが政策としてはあり得ないと答弁されましたが、米国が今後のISILとの戦いに自衛隊の後方支援を求める事態も全くの杞憂とは言い切れないように思います。この方針は今もって変わらないのか、安倍総理に確認を求めます。
 一年間に生まれてくる赤ちゃんが百万人を切って、九十八万人になりました。統計を取り始めた一八九九年以来、初めてのことです。子供が減り、御高齢者の割合が高くなり続け、生産年齢層の縮小、人口減少社会の日本でどうやって未来を開くのか。異次元の金融緩和や大胆な財政出動では経済成長が実現できなかった三年間から学ぶのは、分配の在り方を大きく変えることだと私たちは考えます。
 子供たちの育ちを支え、学びを保障し、雇用の安定を生み出し、シニア世代の安心をつくる。人への投資が日本の未来を切り開くことにつながります。株価や為替に一喜一憂するのではなく、ライフステージにおける確かな安心を民進党はつくり上げたいと考えています。それが、日本に生まれ、育ち、生きていることに豊かさを実感できる社会に確かにつながる道であります。
 国家があって国民があるのではなく、一人一人の国民がいて国家がある。一人一人を大切にする政治を私たちは今年も力強く進めてまいりますと申し上げ、質問を終わります。
 ありがとうございました。(拍手)
   〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇、拍手〕
#5
○内閣総理大臣(安倍晋三君) 蓮舫議員にお答えをいたします。
 文部科学省の天下りあっせんに対するお尋ねがありました。
 国家公務員の天下りについては、安倍内閣として、これまでも厳にこれを根絶していくとの姿勢で一貫して取り組んでまいりました。本事案が判明したのは、このような姿勢の下、厳格な監視が機能したからであります。天下りにおける不正は絶対に許さないという方針は、これまでも、今後も変わらない方針であります。(発言する者あり)
#6
○議長(伊達忠一君) 静粛に願います。
#7
○内閣総理大臣(安倍晋三君)(続) このため、演説においてあえて触れることはしませんでしたが、重要なのは、言葉よりも実行であります。事案公表後、国民の疑念を払拭するため、速やかに山本国家公務員制度担当大臣に対し、同様の事案がないかどうか、全省庁について徹底的な調査を行うよう指示をいたしました。また、文部科学省において関係者の厳正なる処分を行いました。
 徹底した調査を行い、再発防止策を講ずるなど、天下り根絶のためにしっかりと取り組んでまいります。
 国家公務員の天下りについてのお尋ねがありました。
 稲田大臣の国会でのやり取りをもって天下りあっせんを見逃してきたかのような御質問でありますが、以前も私や稲田大臣が答弁しているとおり、天下りのあっせんは厳に禁止していることを明確にしておきます。
 また、各省庁が現行法令を遵守することは当然のことです。今回の文部科学省における再就職規制違反事案に際しては、事案の重大性に鑑み、内閣人事局長でもある萩生田官房副長官から各省の事務次官等に対して直接、再就職規制の遵守の徹底を指示したところであります。
 現行制度による厳格な監視が機能したからこそ本事案が明らかになったものでありますが、本事案で生じた国民の疑念を払拭するため、山本国家公務員制度担当大臣に対し、同様の事案がないかどうか、全省庁について徹底的な調査を行うよう指示しました。
 今後、準備ができ次第調査をし、その結果を明らかにしてまいります。必要なことは何でもやるとの考えで、国民の信頼を確保してまいります。
 給付型奨学金についてのお尋ねがありました。
 教育投資は未来への先行投資であります。特に、どんなに貧しい家庭で育っても夢をかなえることができるよう、誰もが希望すれば進学できる環境を整えなければなりません。このため、これまでも、奨学金制度の充実、授業料免除の拡大などに取り組んできたところであります。
 来年度からは、成績にかかわらず、必要とする全ての学生が無利子の奨学金を受けられるようにするとともに、返還不要の給付型奨学金制度を新たに創設することといたしました。
 意欲と能力があるにもかかわらず、経済的理由によって進学を断念せざるを得ないということがあってはなりません。高等教育について、家庭の経済状況にかかわらず、必要とする全ての子供が機会を与えられるようにしていきたい。今後とも必要な財源を確保しつつ、しっかりと取り組んでまいります。
 働き方改革についてお尋ねがありました。
 一年余り前、入社一年目の女性が、長時間労働によって過酷な状況の中、自ら命を絶ちました。このような悲劇を二度と繰り返さないとの強い決意で、長時間労働の是正に取り組みます。
 野党が提出している労働基準法改正案では、何時間の上限にするのか全く決まっておらず、厚生労働省令に丸投げするなど、具体的な中身がありません。具体的な内容を示し実行しなければ、それが責任のある政党の責務と考えます。
 実現会議で取りまとめる三月の実行計画に沿って、いわゆる三六協定でも超えることができない、罰則付きの時間外労働の限度を定める法改正に向けて、作業を加速し、早期に法案を提出します。
 同一労働同一賃金については、昇給の扱いが違う、通勤などの各種手当が支給されない、福利厚生や研修において扱いが異なるなど、不合理な待遇差を個別具体的に是正するため、詳細なガイドライン案を昨年末公表しました。このガイドライン案の実効性を担保するため、裁判での強制力を持たせるように、中身のある法改正案の早期国会提出を目指し、三月の働き方改革実行計画の取りまとめを受けて立案作業を進めてまいります。
 安倍内閣の経済政策についてお尋ねがありました。
 安倍内閣が進めている政策は、成長と分配の好循環をつくり上げていくというものであります。成長し富を生み出し、それが国民に広く均てんされ、多くの人たちがその成長を享受できる社会を実現していきます。
 御指摘の実質GDPの伸びについては、民主党政権において、二〇〇九年七―九月期から二〇一二年十―十二月期の間、年平均一・六%となっているのは事実であります。ただし、名目GDPは年平均〇・三%しか伸びておらず、その差の一・三%分は物価が下がったことによるものであります。民主党政権下では、二〇〇九年以降デフレが進行し、その後、抜け出すことはできませんでした。殊更に実質成長のみを持ち出すのは、デフレを自慢するようなものであります。(発言する者あり)
#8
○議長(伊達忠一君) 静粛に願います。
#9
○内閣総理大臣(安倍晋三君)(続) また、民主党政権においては、リーマン・ショックによって六%以上一挙に落ち込んだ水準から四四半期で五・五%程度戻っただけで、これは麻生政権末期の大規模な経済対策の効果によるものと考えられます。さらに、その後はほぼ横ばいで推移しています。
 これに対し、現政権下では、デフレではないという状況をつくり出す中、二〇一二年十―十二月期から二〇一六年七―九月期の間、名目GDPは年平均二・三%伸び、実質GDPも年平均一・三%伸びており、物価、名目GDP、実質GDPのいずれも上昇、特に名目GDPの伸びが実質GDPの伸びを上回るという健全な経済成長の姿を実現しているものと考えています。
 また、国民にとって最も大切な雇用も大きく改善しています。
 民主党政権において十万人減少した就業者数は、二〇一二年から二〇一五年の間で百十万人近く増加しています。民主党政権において、一倍を超える県が八つにとどまった、たった八つにとどまった有効求人倍率は、史上初めて四十七全ての都道府県で実現をいたしました。
 御指摘の実質賃金の減少については、消費税率引上げに加え、デフレ脱却に向かう過程で物価上昇したことや、景気が回復し雇用が増加する過程においてパートで働く人が増えたことによるものであります。なお、足下では、平成二十七年七月以降増加傾向となっております。
 また、二〇一六年の倒産件数は、政権交代前の二〇一二年と比べて約三割減少しています。これは事実でありますから、受け止めていただきたいと思います。
 二〇一六年の休廃業、解散件数が過去最高となったことは事実でありますが、御指摘の休廃業、解散した企業は、基本的には資産が負債を上回っている状況にありながら、経営者の高齢化や後継者不足などを理由に事業を停止しているものであり、企業が債務の支払不能に陥り経済活動を続けることが困難になる倒産とは本質的に異なります。
 今後も、アベノミクスの取組を更に進め、力強い成長を実現してまいります。そして、成長の果実も生かしながら、人への投資や一億総活躍社会の実現に向けた取組を進めていきます。平成二十九年度予算においては、保育士、介護人材等の処遇改善や教育費負担の軽減等、若者への投資も拡大しております。安倍内閣は、言葉を重ねるだけではなくて、結果で応えてまいります。
 デフレ脱却についてですが、安倍内閣では、政権交代後、アベノミクスによって、極めて短い期間でデフレではないという状況をつくり出すことができました。経済最優先で、金融政策、財政政策、成長戦略の三本の矢の政策を続けることでデフレから脱却し、日本経済の新たな成長軌道を確固たるものとしてまいります。
 赤字国債発行の原因についてお尋ねがありました。
 平成二十八年度第三次補正予算においては、税収について、対当初予算比で一・七兆円減の五十五・九兆円と見積もりました。その主な要因は、海外経済に弱さが見られる中で、平成二十八年の年初から円高が進行したことにより、法人税収や消費税収が当初予算から減少すると見込んだためです。こうしたことから、今回、赤字国債を追加発行することで対応することといたしました。
 アベノミクスが為替頼みという御指摘でございますが、平成二十九年度の税収は、平成二十八年度補正後税収から一・九兆円増の五十七・七兆円と見込んでおります。これにより、安倍内閣において、国、地方を合わせた税収は、民主党政権時に比べて二十二兆円増加することとなります。政権交代以降、税収が増加している基調に変化はなく、アベノミクスは為替頼みとの御指摘は当たらないと考えております。
 消費についてお尋ねがありました。
 個人消費は、所得の伸びと比べれば緩やかな伸びではありますが、三四半期連続で前期比プラスとなるなど、持ち直しの動きが見られます。
 消費を取り巻く環境を見ると、消費マインドに持ち直しの動きが見られ、有効求人倍率は二十五年四か月ぶりの高水準、失業率は約二十一年ぶりの低水準となるなど、雇用環境が改善する中、賃上げは、中小企業を含め、今世紀に入って最も高い水準の賃上げが三年連続で実現し、パートで働く方々の時給はここ二十三年間で最高の水準となっているなど、所得環境の改善も進んでいます。このような雇用・所得環境の改善等を背景に、税や社会保障負担等を差し引いた家計の可処分所得は二年連続で増加し、二〇一五年にはその伸びが高まっています。
 この流れをより確かなものとするため、今年の賃上げに向けて、少なくとも昨年並みの水準の賃上げ、特に四年連続のベアの実施、期待物価上昇率も勘案した賃上げの議論等を産業界に対してお願いをしているところです。一月十七日に経団連が今年の春季労使交渉に向けた基本スタンスを取りまとめた経労委報告はこれを受けたものとなっており、今年の春季労使交渉において成果が出ることを期待しております。
 また、一億総活躍社会実現に向けた最大のチャレンジである働き方改革を断行します。同一労働同一賃金を実現し、正規と非正規の労働者の格差を埋め、若者が将来に明るい希望を持てるようにすることにより、中間層の厚みを増し、より多くの消費につなげていきます。
 就労税額控除についてお尋ねがありました。
 御指摘の就労税額控除については、就労インセンティブを高めながら低所得者対策を行うといった政策目的の下、勤労所得等を有する者に対し、所得等に応じて税額控除や給付を行う制度であると承知していますが、これを検討するに当たっては、低所得者対策全体の議論の中で、生活保護制度など同様の政策目的を持つ制度との関係を十分に整理することがまず必要と考えます。さらに、所得や資産の把握が難しいといった問題や過誤、不正受給といった支給の適正性の確保など、多岐にわたる課題があり、慎重な検討が必要と考えます。
 財政健全化についてのお尋ねがありました。
 安倍内閣においては、政権交代後、アベノミクスによって、極めて短い期間でデフレではないという状況をつくり出すことができ、名目GDPは九・〇%、四十四兆円増加、実質GDPも五・一%、二十五兆円増加し、過去最高の水準となりました。また、国、地方を合わせた税収が二十二兆円増加し、また新規国債の発行額が十兆円減少し、国の一般会計プライマリーバランスを十四兆円改善させました。二〇一五年のプライマリーバランス赤字半減目標も達成する見込みとなっています。私たちは結果を出しています。まず、これらの事実を明確にしておきたいと思います。
 今後とも、経済最優先で金融政策、財政政策、成長戦略の三本の矢の政策を続け、デフレから脱却し、日本経済の新たな成長軌道を確固たるものとしてまいります。
 さらに、社会保障の改革を含め、徹底的な歳出の重点化、効率化に取り組み、経済再生を図りながら二〇二〇年度のプライマリーバランス黒字化を実現し、債務残高の対GDP比を中長期的に着実に引き下げてまいります。
 なお、中長期の経済財政に関する試算については、現在内閣府において作成中であり、近日中に公表する予定であります。
 消費税率の引上げと社会保障の充実についてのお尋ねがありました。
 消費税率の引上げによる増収分を活用した社会保障の充実については、給付と負担のバランスを考えれば、消費税率の引上げを延期する以上、全てを行うことはできないと判断したものです。
 しかしながら、来年度予算では、これまで講じてきた社会保障の重点化、効率化による効果も活用して社会保障の充実について安定財源を確保し、喫緊の課題となっている保育、介護の受皿整備や年金の受給資格期間の短縮などを実施することといたしました。
 さらに、ニッポン一億総活躍プランに掲げた保育士、介護人材等の処遇改善について、アベノミクスの果実も含めて財源を確保し、優先して実施することといたしました。
 なお、来年度の税収は今年度より増加すると見込んでいるなど、安倍内閣における経済財政政策の成果であるアベノミクスの果実は着実に生まれています。今後も可能な限り社会保障を充実させることができるよう取り組んでまいります。
 国会における議論に関してお尋ねがありました。(発言する者あり)
#10
○議長(伊達忠一君) 静かにしてください。
#11
○内閣総理大臣(安倍晋三君)(続) 自民党であろうと他のどの政党であろうと、言論の府である国会の中でプラカードを掲げても何も生まれない、これは同じことであります。自民党だけを正当化する考えは毛頭ありません。
 過ちて改めざる、これを過ちというとの言葉もありますが、自民党は、あの厳しい野党時代、試行錯誤を重ねながらも、全国各地で国民の声に耳を傾け、それを糧に大きく生まれ変わりました。だからこそ、四年前、政権奪還を実現し、そこから四度にわたる国政選挙において国民の皆様の強い支持を得ることができたと考えております。
 今後も、常に国民の目線を忘れず、不断に自らの行いを省み、緊張感を持って自己改革に努めながら国民の負託に応えていく決意であります。
 なお、施政方針演説では、ただ批判に明け暮れたり、言論の府である国会の中でプラカードを掲げても何も生まれませんと申し上げましたが、これはあくまで一般論であって、民進党の皆さんだとは一言も申し上げていないわけであります。自らに思い当たる節がなければ、これはただ聞いていただければいいんだろうと、このように思うわけでありまして、訂正云々という御指摘は全く当たりません。
 さらに、演説では、意見の違いはあっても、真摯かつ建設的な議論を闘わせと申し上げており、立法府を軽視するどころか、国会における議論を重視している旨、明らかにしております。採決など国会の運営についてはまさしく立法府がお決めになることですが、国民から負託を受けた私たち国会議員は、ただ議論に時間を費やすだけでその責任を果たしたことにはならないと考えます。演説でも申し上げたとおり、真摯かつ建設的な議論を闘わせ、その上でしっかりと結果を出していく必要があると考えております。
 先ほど蓮舫代表は、衆議院における民進党の皆さんの行動に問題があったと正面から認められましたが、論語の言葉を再び借りるならば、野党であろうと与党であろうと、過ちてはすなわち改むるにはばかることなかれであります。国民の負託に応えられるよう、この国会においても、蓮舫代表を始め民進党の皆さんとも互いに切磋琢磨しながら、正々堂々、建設的な議論を行わさせていただきたいと思います。
 TPPと我が国の経済成長についてお尋ねがありました。
 トランプ大統領は自由で公正な貿易の重要性については認識していると考えており、TPP協定が持つ戦略的、経済的意義についても腰を据えて理解を求めていきたいと考えています。
 数年間の交渉を経てTPP協定に結実した新たなルールは、今後の通商交渉におけるモデルとなり、二十一世紀の世界のスタンダードになっていくことが期待されます。この成果を基礎として、日EU・EPAのできる限り早期の合意を目指すとともに、RCEPなどの交渉において質の高い協定を目指してまいります。
 同時に、世界の自由貿易の推進に主導的な役割を果たしていく我が国として、海外展開を行おうとする中小企業等への支援、対内直接投資の活性化、農林水産業の体質強化など、我が国の経済再生、地方創生のために必要な施策も着実に実施してまいります。
 在日米軍の駐留経費及びISILへの軍事作戦への後方支援についてお尋ねがありました。
 日米同盟は、我が国の外交・安全保障政策の基軸であり、トランプ政権との間でも、信頼関係の上に、揺るぎない日米同盟を更に確固たるものにし、現在の日米のきずなを一層強化していきたいと考えています。
 トランプ政権の在日米軍駐留経費に係る立場について予断することは差し控えますが、アジア太平洋地域の安全保障環境が一層厳しさを増す中、日米同盟はアジア太平洋の平和と繁栄の礎として不可欠な役割を果たしています。日米安保体制は日米いずれかのみが利益を享受するような枠組みではなく、したがって、在日米軍の駐留経費についても、日米間で適切な分担が図られるべきものと考えます。
 ISILについては、これまでも繰り返し御説明してきているとおり、政策判断として我が国はISIL軍事作戦に参加する考えは全くなく、ISILに対する軍事作戦への後方支援を行うことも全く考えておりません。なお、そのため、かかる活動について、平和安全法制の要件を満たしているかは政府として判断しておりません。また、我が国がいかなる支援を行うかは、あくまでも我が国が主体的に判断すべき事柄であります。
 我が国は、今後とも、難民、国内避難民に対する食糧・人道支援など、我が国ならではの支援を拡充し、非軍事分野において国際社会における我が国の責任を毅然として果たしていく考えです。
 以上のような我が国の立場をトランプ新政権に対しても十分に説明してまいります。(拍手)
    ─────────────
#12
○議長(伊達忠一君) 吉田博美君。
   〔吉田博美君登壇、拍手〕
#13
○吉田博美君 自由民主党の吉田博美です。
 私は、自由民主党・こころを代表して、安倍内閣総理大臣の施政方針演説について総理に質問いたします。
 質問に先立ちまして、昨年十二月に新潟県糸魚川市で発生した大火において被害を受けられた皆様に心からお見舞いを申し上げます。自由民主党としても、二階幹事長を団長とする視察団を派遣して、現地の声を伺いながら迅速な対応に努めているところであり、今後とも復旧復興に向けて全力を尽くしてまいります。
 さて、安倍内閣が政権に復帰してから五年目となりました。第一次内閣を合わせた総理の在任期間は、佐藤栄作、吉田茂、小泉純一郎各総理に次いで戦後歴代四位となっています。内閣支持率も高い水準を維持し、政界は安倍一強とも言われる状況です。
 しかし、本当に世の中で言われるほど、総理は人の意見に耳を貸さずに一方的に物事を進めているのでしょうか。自民党、公明党の政権復帰以降、私は参議院自民党で、幹事長代理、幹事長代行、国対委員長、そして幹事長を務めてまいりました。しかし、その間に一度も安倍総理から上意下達で指示を受けたことはありません。総理だけではなく、官房長官、副長官など、官邸から一方的に指示をされたことは一度もないのです。全て相談をいただき、話合いの中で決められてきたのです。
 一昨年の平和安全法制、昨年のTPP関連法案などのときも、総理からの一方的な指示は一切ありませんでした。強いて言えば、平和安全法制の審議に際して、デモ隊に一人でも死傷者を出してはいけないと強くおっしゃっただけです。
 総理は、昨年五月には広島を、十二月には真珠湾を米国のオバマ前大統領とともに訪問され、かつて激しい戦火を交わした両国の和解と未来志向の関係を訴える演説をされました。ハワイでの日系人との夕食会では、千人以上が詰めかける中、総理は全てのテーブルを回って写真撮影に応じたと伺っています。
 本当にこの人が、日本を戦争する国にし、徴兵制を目指し、民主主義を軽視するという、一部の野党やメディアが言うような強権的な指導者なのでしょうか。メディアがつくり上げているイメージと実際の姿とは大きく異なっていると私は感じます。
 私は、前回の総裁選のときには安倍総理を応援しませんでした。しかし、総理は、応援した人もしなかった人も公平に扱われます。私が総理と直接お話しするときにも、総理はとても丁寧に話を聞いてくださいます。一時間近くにわたってお話しすることもあり、耳障りなことも申し上げていますが、一度も嫌な顔をされたことはありません。誰とでも同じ目線で接することができるのが総理の最大の強みだと思います。ですから、総理は党内で幅広い支持を得ています。総理には人の気持ちをつかむ力があるのだと思います。
 それは国内にとどまらず、海外との関係においても当てはまります。総理は、ロシアのプーチン大統領との個人的な信頼関係を築かれています。米国のトランプ大統領とも就任前に会談され、気持ちをつかみました。今後会談を重ねる中で、更に信頼関係を強固なものにできるはずです。世界のリーダーとファーストネームで呼び合う関係がつくれるのは、総理の人柄のたまものであると思います。
 私は、内閣とは一線を画す参議院自民党の幹事長という立場ですので、どちらかというと、総理に苦言を呈する役割が多くなっています。
 そこで、あえて申し上げますが、私は、総理が一番恐れるべきは、裸の王様になることだと思います。総理の周辺で誰も苦言を呈さなくなったときには、都合の悪い情報が上がらなくなり、バランスの取れた判断ができなくなってしまうからです。そうならぬよう、これからも総理には苦言を呈していきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
 さて、昨年、我々参議院自民党では、初めて女性の議員会長が誕生しました。また、公明党におかれては、七年以上にわたり参議院議員が代表をお務めになっており、同じ参議院議員として大きな誇りであります。野党第一党でも、昨年、民主党、民進党を通じて初の女性代表が参議院から就任されました。女性の活躍推進が叫ばれる中で、女性の参議院議員が活躍されることも誇りに思います。
 しかし、野党第一党の女性代表は、就任当初、提案型、対案型という話だったはずですが、先ほどの質問では提案もされましたが、さきの臨時国会での姿を見ていると、対立型、対決型であったと言わざるを得ません。政府・与党の方針にただ反対し、対決するだけではなく、建設的な、そして現実的な提案を行うことで、政権交代可能な野党になってほしいと願っています。与党と野党がお互いに切磋琢磨し、我が国の民主主義を更に発展させていく、そんな関係をつくっていければと思っています。
 では、総理に対する質問に入ります。
 初めに、経済財政政策について伺います。
 今年は、世界経済の動向について、これまで以上に注目が集まる年になりそうです。一月二十日、米国でトランプ新大統領が就任いたしました。就任演説では、米国の国益を最優先にするアメリカ・ファースト、米国第一を表明しました。就任直後に公表した主要政策でも、強固で公平な貿易協定で国際貿易を経済成長や雇用の回復に生かすことができるとし、TPPからの離脱やNAFTAの再交渉の開始など、米国第一の考えが反映されています。
 新大統領は、自由で公平な貿易の重要性を理解されていると考えますが、仮に、今後、企業に対して米国内での生産や雇用を半ば強引に求める手法が取られるとすれば、我が国の産業や経済を含め、世界経済にどのような影響をもたらすのか、予断を許しません。
 保護主義的な色彩の強い経済政策が各国にも波及すれば、国際的な貿易や投資が停滞するという事態にもなりかねません。経済の不確定要素が高まるとの懸念がある中、我が国としては、国際社会に対して粘り強く自由貿易の重要性を説き、世界が保護主義の連鎖に陥らないようにすることが大切であると考えます。
 そこで、まず本年の世界経済の展望と、それを受けての我が国の経済財政運営についての基本的な考え方を伺います。
 次に、平成二十九年度予算案について伺います。
 本予算案は、経済・財政再生計画二年目の予算として、経済再生と財政健全化の両立を実現する予算となっています。経済再生については、一億総活躍社会の実現や日本経済の成長力を高めるような施策への重点配分がうたわれています。中でも、日本の未来を支える子供たちのために、経済事情にかかわらず、希望すれば大学に進学できるよう、返還不要の給付型奨学金制度の創設が盛り込まれています。
 一方、財政健全化については、一般歳出全体や社会保障費の伸びを抑制し、国債発行額を引き続き縮減する予算となっております。
 しかし、予算の資料を見ますと、一億総活躍社会や経済再生に関する重要政策でも百億円単位の項目が並んでおり、全体として小粒であるという印象も受けます。
 本年四月から予定されていた消費税引上げが延期された影響で厳しい予算編成であったことは十分理解できますし、国債発行も縮減したことでかなり緊縮度の高い財政運営になっているように感じますが、平成二十九年度予算案について総理はどのように評価されているか、御見解を伺います。
 次に、働き方改革について伺います。
 総理は、昨年八月の内閣改造で働き方改革担当大臣を任命され、内閣の重要課題としてこの問題に取り組んでいく姿勢を示されました。また、昨年九月から働き方改革実現会議を開催して、具体策が議論されています。総理は、この会議の中で働き方改革のテーマとして九項目を挙げられましたが、その中でも大きなテーマは、長時間労働の是正と同一労働同一賃金であります。
 長時間労働の是正は、我が国にとって高度成長期以来の宿題と言ってもよい長年の課題です。これまで我が国では、大企業から中小零細企業まで、多くの企業が社員の長時間労働に依存してきたことは否定できない事実です。そして、企業の中では長時間労働をする人の方が評価されるという風土が存在することも、また事実であります。
 昨年、大手広告代理店の若手社員が過労自殺したことが大きく取り上げられましたが、長時間労働を認めてしまうような風土が多くの企業に広がる中で、過労死や過労自殺といった痛ましい悲劇が後を絶ちません。命を絶つに至らないまでも、うつ病などの精神疾患の患者数は近年増加を続けています。こうした状況を改善するためには、個々の企業の努力のみならず、社会全体として長時間労働に頼らない働き方に変えていく必要があります。
 また、長時間労働の是正は、女性の活躍や仕事と子育て、介護との両立支援という観点からも重要です。特に、我が国の将来にとって大変深刻な問題である少子化への対策のためには、子育てに時間を取れる働き方を普及することが課題となっています。
 このように、長時間労働の是正が急務であることは論をまたないわけですが、一方で、政府はこれまで、労働規制を緩和し、自由な働き方を可能とする方向の改革も目指してきました。一部の野党が残業代ゼロなどと批判した労働基準法の改正案もそうであります。
 一見すると、長時間労働を是正するという方向性と自由な働き方を認めるという方向性とは矛盾するようにも感じるため、政府がどのような方向を目指しているのか、一部に不安や誤解もあるのではないでしょうか。長時間労働の是正について基本的な考え方と自由な働き方を認めるという考え方との整合性について御見解をお聞かせください。
 同一労働同一賃金については、昨年十二月に政府の働き方改革実現会議がガイドライン案を発表しています。これを見ると、正社員と非正規社員の間で賃金に差を付けてよい場合とよくない場合が具体例をもって示されています。
 それぞれの事例は、非正規社員の待遇改善という観点に立てば妥当なものであると思います。ただ、気になるのは、同一労働同一賃金というのは正規と非正規の格差の問題だけなのかという点です。同じ仕事をしている正規と非正規の間に差があってはいけないのであれば、同じ仕事をしている若手とベテランの間にも賃金に差があっていいのかという話が出てくることは避けられません。
 例えば学校の教員やバスの運転手など、新人とベテランで外見上は同じような仕事をしていても、賃金が大きく異なるという場合はよくあるはずです。こうした場合の賃金差を説明することが難しくなると、我が国で広く行われてきた年功序列のシステムそのものが問われることになります。逆に言えば、同じ仕事をしている限りは何年勤めても給料が上がらないという事態もあり得ることになります。
 政府としては、同一労働同一賃金は正規と非正規の間の格差に限った話であると考えているのでしょうか。あるいは、将来的に年功序列を改めるなど、我が国の雇用体系全体の改革まで視野に入れているのでしょうか。将来的にどのような賃金・雇用体系が望ましいと考えているかが見えないと、雇う側も雇われる側も不安になってしまいます。将来的に目指している同一労働同一賃金の姿についてお考えをお聞かせください。
 次に、外交・防衛政策について伺います。
 本年は、主要国で選挙や政権交代が相次ぐ重要な年となります。先日、米国のトランプ大統領が就任しましたが、四月及び五月にはフランスの大統領選挙、九月にはドイツの連邦議会選挙が予定されています。また、時期は分かりませんが、韓国でも大統領選挙が行われることになります。
 米国の新政権の動向も大いに気になるところでありますが、その他にも、ヨーロッパでの極右勢力の台頭や韓国での反日感情の高まりなど、我が国にとっては注意すべき状況があります。昨年の英国のEU離脱決定とも重なりますが、各国において内向きの姿勢が強まっていると感じます。これが高じれば、各国の協調体制が揺らぎ、国際的な摩擦や紛争が増えるという事態も懸念されます。
 現在、G7諸国の中では安倍総理とドイツのメルケル首相がベテランであり、存在感を発揮しています。今後の選挙などを通じて更に各国の指導者交代が進む可能性もありますが、在任期間が長い安定政権であるという長所を生かして、平和で安定的な国際協調体制の強化に向けて更なるリーダーシップを発揮されることを期待いたします。そこで、本年の外交の基本方針についてお考えを伺います。
 次に、具体的な問題として、中国と韓国について伺います。
 中国については、我が国周辺や南シナ海において軍事的な動きをますます活発化させています。今後、我が国周辺での軍事的な緊張が更に高まる可能性も否定できません。
 日本と中国との間では、最近、緊張関係ばかりが注目されますが、本来は長い友好の歴史があります。総理も終戦七十年の談話の中で感謝を示されたように、中国に置き去りにされた三千人近い日本人の子供たちが無事成長し、再び祖国の土を踏むことができたのは、中国の方々の寛容な心のおかげでした。最近でも、中国からの観光客は年々増加し、昨年は六百万人を超えるまでになっています。多くの方が日本の魅力を発見し、日本人を好きになって帰っていかれます。
 もちろん、中国の一方的な行動に対しては、日米や他の周辺国が連携して抑制していくことも必要です。一方で、中長期的に、日中両国の友好関係を再構築し、前向きに協力し合う関係にならなければ、アジアの平和と安定は保たれません。今後の対中関係についてどのような方針で臨まれるお考えか、御見解を伺います。
 次に、韓国との関係について伺います。
 昨年十二月の朴槿恵大統領の弾劾可決による職務停止や釜山の日本総領事館前への慰安婦像の設置によって、それまで改善に向かっていた韓国との関係が一挙に不透明になりました。
 私はこれまで多くの韓国の方々とお付き合いをしてきましたが、皆さん義理人情を大切にし、約束をしっかり守る人たちです。そのため、どうして今回のような事態になったのか、大変心を痛めています。在日本大韓民国民団でも、両国政府が苦悩の末選択した結果である日韓合意の着実な履行と慰安婦像の撤去を訴えています。韓国国民の中にも冷静で良識ある判断を求めている人は多いと信じています。
 政府としては、どのようにして今回の事態を乗り越え、日韓合意の着実な履行と今後の日韓関係の発展を目指していくお考えなのか、御見解を伺います。
 次に、社会資本の整備について伺います。
 グローバリゼーション化の中で、産業活動を活発化させ、経済の発展を図るためには、生産や物流の効率化の基盤となる社会資本の整備が不可欠です。今、G7各国は、雇用を生み出す投資を確保し、人と物の移動を容易にするために、いずれも厳しい財政環境の中で、社会資本のストック効果に着目し、積極的に交通網などの社会資本の整備に取り組んでいます。
 特に、人口減少に直面している我が国では、他の先進国以上に、労働力の減少を補うべく生産性を向上させ、成長の基盤を確保するために、高速交通ネットワークなどの社会資本を整備していくことがますます重要になっています。また、国土のバランスのある発展を実現するためにも、過疎に悩む地方でも、人口集中に対応しなければならない都市でも、着実に整備を進めていくべき社会資本はまだまだあります。
 地球温暖化が原因かもしれませんが、昨年の台風十号は過去にはない経路で日本に上陸し、台風直撃への備えが薄かった東北や北海道に大きな被害をもたらしました。温暖化が進むと強い台風が発生する率が高くなるとの分析もあります。また、東海地震、東南海地震、南海地震のような巨大地震が発生するリスクも高まっています。
 このような国土に住む我々は、経済、暮らしが自然災害により致命的な被害を受けることを防ぐと同時に、万が一、被害を受けても迅速な復旧復興が実現できること、すなわち国土の強靱化を速やかかつ強力に進めていくことが必要です。自然災害は我々の準備を待ってはくれないのです。
 社会資本整備を進めていくに当たっては、無駄を排除し、効率性を重視しなければならないことはもちろんですが、社会資本そのものを無駄と決め付けて整備を遅らせることは、国際競争の中で我が国の経済活動を発展させる上でも、地方創生を進める上でも、国民の生命や財産を守る上でも、絶対に避けなければならないと考えています。
 我が国の生産性の向上や地方創生、国土強靱化の推進の観点から、社会資本の整備をどのように進めていくお考えか、お伺いしたいと思います。
 最後に、農業政策について伺います。
 農業政策においては、農業者の方の所得を向上させ、安心して農業に取り組めるようにすることが何よりも大切な課題です。
 そのためには、農業の経営力強化のための支援が欠かせません。我が国の農業従事者の平均年齢は六十六歳を超えているなど、農業の活性化は待ったなしの課題です。安倍内閣では、農業の成長産業化の実現に向け、農政全般にわたる抜本的な改革を進めた結果、四十代以下の新規就農者が年間二万人を大きく超え、統計開始以来最多となりましたが、更に新しい時代に向けた農業政策への転換の中で安心して農業に取り組めるよう、生産から加工、流通まであらゆる面で骨太の農業政策を推進していく必要があります。
 まずは、農業者の方々が安全で質の高い農産物を将来にわたって安定的に生産できる環境が必要です。こうして生産された優れた農産物が、国内の消費者にも行き渡るとともに、海外の市場でも高く評価され、輸出の増加につながるような支援も必要です。生産基盤の強化と市場の拡大が農業者の所得向上と更なる生産につながるという持続可能な農業をつくり出す好循環を生み出すことが政府に求められる重要な役割です。
 総理は、施政方針演説の中で、八本に及ぶ農政改革関連法案を今国会に提出し、改革を一気に加速しますとおっしゃいました。この改革の中で、農業者の方々が安心して農業に励み、市場の拡大と所得の向上につなげられる仕組みづくりをどのように進めるつもりなのか、お考えを伺います。
 慰安婦問題に関する日韓合意のように、これまでお互いが身を削るような交渉を経て積み上げてきた合意を、気に入らないからといって一方的にほごにするような行為に対しては、我が国は国際社会の責任ある一員として、断固としてノーと言わなければなりません。
 各国が内向きの姿勢を強める中で、今後、我が国が国際社会で果たすべき役割はますます重くなっていると言えます。
 安倍総理におかれましては、たとえ相手がどこの国の誰であっても、世界が保護主義に陥ることのないよう、グローバリゼーションを推進する立場から強力なリーダーシップを発揮していただきたいと思います。G7のベテランとして総理はそれができる立場にあると思いますので、大いに期待を申し上げて、私の質問を終わります。(拍手)
   〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇、拍手〕
#14
○内閣総理大臣(安倍晋三君) 吉田博美議員より示唆に富んだ質問をいただきました。お答えをさせていただきたいと思います。
 世界経済の展望と我が国の経済財政運営についてお尋ねがありました。
 昨年後半から世界経済は全体として上向きつつあり、今後も緩やかな回復が続くことが期待されます。ただし、各国における政策に関する不確実性などについて留意が必要です。
 米国では、二十日、トランプ大統領が就任演説において、選挙期間中に主張してきた米国第一主義を改めて掲げ、米国を再び偉大にするとの決意を国の内外に鮮明にされたところであります。
 トランプ政権の貿易政策については、今後、閣僚人事の承認が進み、体制が整うに従って具体化されてくることと思われます。まずは、日米経済関係をどのように発展、深化させていくか、新政権と様々なレベルで議論していきたいと思います。
 トランプ大統領も自由で公正な貿易の重要性については認識していると考えており、TPP協定が持つ戦略的、経済的意義についても腰を据えて理解を求めていきたいと考えています。
 TPP以外にも、我が国は現在、日EU・EPA、RCEP、そして日中韓FTAといった広域の経済連携交渉に精力的に取り組んでいるほか、二国間の経済連携、投資協定も積極的に推進をしてきています。
 今後とも、世界経済の動向を注意深く見守りながら、ぶれることなく、金融政策、財政政策、成長戦略の三本の矢の政策を続け、デフレからの脱却を確かなものとし、経済をしっかりと成長させていきます。
 平成二十九年度予算についてお尋ねがありました。
 平成二十九年度予算においては、かつて毎年一兆円ずつ増えていた社会保障費の伸びを平成二十八年度予算に引き続き五千億円以下に抑え、新規国債発行額は安倍内閣発足以降の五年連続で縮減となっています。
 同時に、一億総活躍社会の実現に向け、保育士及び介護人材等の処遇改善や給付型奨学金の創設などの主要な取組を確実に行います。科学技術振興費を伸ばすとともに、公共事業関係費の成長分野への重点化を行うなど経済再生に直結する取組を推進するなど、GDP六百兆円の達成に向けた取組を推進していきます。御指摘の一億総活躍社会の実現に向けた施策については、一般会計、特別会計合わせて対前年度〇・五兆円増の二・九兆円を措置しているところです。
 このように、平成二十九年度予算は、経済・財政再生計画の二年目に当たる予算として、経済再生と財政健全化の両立を実現する予算となったと考えております。
 長時間労働の是正についてのお尋ねがありました。
 働き方改革は、働く人の立場に立って、一人一人の事情に応じて多様な働き方を可能とするものです。その際、長時間労働を是正すれば、女性、高齢者も仕事に就きやすくなります。これについては、しっかりと問題の構造を突き詰め、時間外労働の限度は何時間なのか、具体的に定め実行しなければなりません。
 他方、現在提出している労働基準法改正案は、長時間労働を是正し、働く人の健康を確保しつつ、その意欲や能力を発揮できる新しい労働制度の選択を可能とするもので、整合性のあるものと考えます。
 長時間労働の是正については、政府としては、三月の働き方改革実行計画の取りまとめに沿って、いわゆる三六協定でも超えることができない罰則付きの時間外労働の限度を定める法改正に向けて作業を加速し、早期に法案を提出します。
 同一労働同一賃金についてお尋ねがありました。
 同一労働同一賃金は、いわゆる正規雇用労働者と非正規雇用労働者の間の不合理な待遇差の解消を目指すものです。
 新人とベテランの待遇差についてのお尋ねでありますが、昨年末に公表したガイドラインでも、職業経験・能力、業績・成果、勤続年数に応じて支給しようとする場合について定めており、同じであれば同一の待遇を保障し、違いがあれば違いに応じた待遇を保障することとしております。欧州でも、労働の質などの違いは同一労働同一賃金原則を判断する際に考慮に入れています。
 将来に向けては、各企業において職務や能力等を明確化し、それに基づく公正な評価を推進し、それにのっとった賃金制度を労使の話合いにより可能な限り速やかに構築していくことが望ましいと考えています。
 本年の外交の基本方針についてお尋ねがありました。
 本年は様々な国のリーダーが交代し、大きな変化が予想されます。先の見えない時代においては、しっかりと軸を打ち立て、ぶれないことが最も大切です。在任期間の長い首脳として、新しいリーダーとしっかりと信頼関係を構築してまいります。
 日米同盟は我が国の外交・安全保障の基軸であり、トランプ大統領との信頼関係の下に揺るぎない日米同盟のきずなを更に強化していきたいと考えています。
 地域の平和と繁栄のため、近隣諸国との関係改善を積極的に進めるとともに、自由、民主主義、人権、法の支配といった基本的価値を共有する国々と連携してまいります。
 自由貿易の旗手として、公正なルールに基づいた二十一世紀型の経済体制を構築していくとともに、積極的平和主義の旗を高く掲げ、テロ、難民、貧困、感染症等の世界的な課題に対して引き続き積極的に貢献していきます。
 今後も、地球儀を大きく俯瞰しながら、ダイナミックな平和外交、経済外交を展開し、世界の真ん中でその責任を果たしてまいります。
 日中関係についてお尋ねがありました。
 習近平国家主席とは、昨年九月のG20杭州サミット及び十一月のペルーでのAPECの際に会談し、本年の日中国交正常化四十五周年、来年の日中平和友好条約締結四十周年といった節目の機会を捉えて関係を改善していくことで一致しました。
 東シナ海から南シナ海に至る地域では緊張が高まり、我が国を取り巻く安全保障環境は一層厳しさを増しています。政府としては、冷静かつ毅然と対応するとともに、地域の平和と安定のため、近隣諸国との連携を進めてまいります。
 日中関係には隣国ゆえの難しい課題もありますが、戦略的互恵関係の考え方の上に、大局的な観点から共に努力を重ね、御指摘の観光面を含め関係改善を進めていきます。
 慰安婦問題及び日韓関係についてお尋ねがありました。
 日韓合意は、慰安婦問題が最終的かつ不可逆的に解決されることを確認するものであり、この合意が全てです。我が国は、この合意を誠実に履行してきており、日本側の義務は全て果たしてきています。韓国側に対しても、合意を誠実に履行していくよう粘り強く求めていきます。
 韓国は、戦略的利益を共有する最も重要な隣国です。これまでの両国間の国際約束、相互の信頼の積み重ねの上に、未来志向で新しい時代の協力関係を深化させてまいります。
 今後の社会資本整備の進め方についてお尋ねがありました。
 社会資本の整備は、未来への投資により次の世代に引き渡すしっかりとした資産を形成するものであり、これまでも地方を含め我が国の経済成長を支えてきたものと認識しております。少子高齢化に立ち向かい、生産性向上による経済成長や地方創生を実現していくため、今後のインフラ整備は、中長期的な見通しの下、効率化を図りながら計画的に推進していくことが必要です。
 既存施設やソフト施策の最大限の活用を図りつつ、国際競争力の強化、国土強靱化、防災・減災対策、老朽化対策などの分野について、選択と集中の下、効果が最大限発揮されるよう戦略的な取組を進めていきます。
 農政改革についてお尋ねがありました。
 安倍内閣においては、農業従事者の平均年齢が六十六歳を超えているなど、農業を取り巻く環境が厳しい中で、農業を産業として強くし、農家の所得を向上させるため、農政全般にわたる抜本的な改革を進めてまいりました。
 これにより、御指摘のように四十代以下の新規就農者が年間二万人を超え、この九年間で最も多くなりました。農林水産物・食品の輸出は七千億円を超え、そして生産農業所得も過去十一年で最も高い水準になるなど、着実に成果が現れ始めています。
 この動きに弾みを付けるため、今国会に八本に及ぶ農政改革法案を提出いたします。生産資材価格の引下げ、農産物の流通・加工構造の改革によるコスト削減、生産行程等の規格化による国際競争力の強化、土地改良制度の見直しによる農地集積の促進、収入保険制度の導入によるセーフティーネットの整備等の改革を同時並行で一気呵成に進めていきます。
 安倍内閣は、農業の成長産業化を更に加速します。若者が農業に自分たちの未来を託すことができる農政新時代を切り開いてまいります。(拍手)
#15
○議長(伊達忠一君) 質疑はなおございますが、これを次会に譲りたいと存じます。御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#16
○議長(伊達忠一君) 御異議ないと認めます。
 本日はこれにて散会いたします。
   午前十一時三十七分散会
ソース: 国立国会図書館
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