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2017/01/25 第193回国会 参議院 参議院会議録情報 第193回国会 本会議 第3号
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2017/01/25 第193回国会 参議院

参議院会議録情報 第193回国会 本会議 第3号

#1
第193回国会 本会議 第3号
平成二十九年一月二十五日(水曜日)
   午前十時一分開議
    ━━━━━━━━━━━━━
#2
○議事日程 第三号
  平成二十九年一月二十五日
   午前十時開議
 第一 国務大臣の演説に関する件(第三日)
    ━━━━━━━━━━━━━
○本日の会議に付した案件
 議事日程のとおり
     ─────・─────
#3
○議長(伊達忠一君) これより会議を開きます。
 日程第一 国務大臣の演説に関する件(第三日)
 昨日に引き続き、これより順次質疑を許します。山口那津男君。
   〔山口那津男君登壇、拍手〕
#4
○山口那津男君 私は、公明党を代表し、ただいま議題となりました施政方針演説等政府四演説について、総理並びに関係大臣に質問いたします。
 二〇一七年、新たな年を迎えました。安倍連立政権は発足から五年目となりますが、経済再生、一億総活躍、働き方改革など、国民生活の安全、安心、安定への歩みを止めるわけにはいきません。
 一方で、世界に目を転じれば、英国のEU離脱、トランプ米国大統領の誕生などにより世界経済の先行きに不透明感が増し、さらにはテロや災害など不安定な社会情勢も広がっています。各国が社会の在り方や秩序を求めて模索を続けていると言ってもいいでしょう。従来の常識や想定を超えて世界が動く、我が国もこうした心構えを持ちつつ、国際社会の動向に柔軟に対応し、国内政治を進めていくことが求められます。
 その中で、日本の政治は、安定した政治状況の下、経済再生や平和外交など着実な成果を上げてきました。政権基盤の更なる安定を図り、内外における責任を果たしていくためには、政権を担当する自公両党が、決しておごることなく、国民のニーズに的確に応える不断の努力を積み重ねていかなければなりません。
 安倍政権の使命はますます重大であり、その一翼を担う公明党は、これからも国民目線で与党としての責任を全うしていく所存です。
 以下、主に、平和外交の展開、経済再生と地方創生、そして安心と輝きの未来への三つの観点から質問いたします。
 初めに、安倍総理が進める地球儀を俯瞰する外交に関して質問いたします。
 昨年は、G7伊勢志摩サミットの成功を始め、その後のオバマ大統領の広島訪問、さらには安倍総理の真珠湾訪問など、平和外交を大きく展開する一年となりました。本年に入ってからも、安倍総理は、アジア、豪州を歴訪されるなど積極的な外交を展開しており、引き続き、地域の安定と繁栄のため、平和国家にふさわしい貢献をお願いしたいと思います。
 米国では、トランプ大統領が正式に就任し、新たなスタートを切りました。戦後、日米両国は、自由、民主主義、基本的人権の尊重、法の支配といった基本的価値を共有し、強固で広範な日米同盟を築き上げてきました。我が国の外交・安全保障の基軸である日米同盟のきずなを深め、トランプ新政権との基本的な信頼関係を構築していくためにも、早期に首脳会談が行われることを期待します。
 今後の日米関係について、総理の見解を伺います。
 今年は日中国交正常化四十五周年、来年二〇一八年は日中平和友好条約締結四十周年の節目に当たります。これまで進めてきた経済交流や人的交流など幅広い分野における取組を官民挙げて行うとともに、両国関係を発展させ、この節目にふさわしい具体的な取組を検討すべきです。我が党も政党間交流などを通じて日中関係発展のために尽力をしていきたい。
 また、日中韓サミットの枠組みによる対話は非常に重要です。現在、韓国内での政治の混迷もあり、早期開催が難しい状況にありますが、議長国として粘り強く対話を重ね、早期開催が可能となるよう強く期待します。
 日中関係、日中韓サミットについて、総理の見解を求めます。
 貿易立国である我が国にとって、貿易や投資の自由化、円滑化を進める経済連携協定の締結は極めて重要です。
 日EU経済連携協定の締結に向けた交渉は大詰めを迎えていますが、畜産物等の重要品目に配慮しつつ、可能な限り早期に大筋合意がなされることを強く求めます。
 並行して、日中韓の自由貿易協定、いわゆるFTAや東アジア地域の包括的な経済連携、いわゆるRCEP、さらに、昨年私が訪問したコロンビアとの経済連携など、各国との交渉を積極的に進めるべきです。
 米国トランプ大統領のTPP離脱方針や英国のEU離脱を踏まえ、我が国の通商戦略や海外進出する日系企業への影響が懸念される中、二国間、多国間の経済連携をどのように進めるのか、総理の見解を求めます。
 昨年は、核兵器廃絶に向け大きな進展がありました。この流れを加速させるため、唯一の戦争被爆国である我が国は主導的な役割を果たすべきです。
 核兵器のない世界を実現するためには、核保有国と非保有国が協力して現実的かつ具体的な措置を積み重ねていくことが不可欠です。日本は過去二十三年間にわたり核廃絶決議を提案し、昨年の決議は米国を含む百六十七か国の幅広い支持を得て国連総会で採択されました。この決議は、核保有国と非保有国が協力し、核兵器のない世界へ向けて現実的な道筋を示すものです。
 他方で、核兵器禁止条約の交渉を開始する決議も採択されました。我が国が反対したのは、核保有国が全て賛成しない中で、保有国と非保有国の対立を一層助長しかねない懸念があったからと認識しています。しかし、決議が採択され具体的な交渉が始まる以上、積極的に議論に参画し、より良い結果となるよう尽力すべきです。また、NPT、いわゆる核兵器不拡散条約の体制強化に向けた日本の役割も重要です。
 核兵器のない世界へ、我が国の主体的な取組について、総理の見解を求めます。
 深刻化する貧困や飢餓、感染症など国境を越えた脅威から人々を守る人間の安全保障、その理念に立脚した持続可能な開発目標、二〇三〇アジェンダ、いわゆるSDGsがスタートして一年が経過しました。その取組を促進するため、我が国は、NGO、NPO等の多様な主体と連携しつつ、積極的な貢献を果たすべきです。
 具体的には、我が国の知見、経験を生かした防災の主流化を進めることが重要です。一ドルの防災事前投資が七ドルの復興コストに匹敵すると言われるように、防災は、人命を守るだけでなく、復興コストを抑制し、貧困撲滅と持続可能な開発に寄与します。
 また、誰一人取り残さないとのSDGsの理念は、広く未来を担う子供たちの心に深く刻んでほしい重要な考え方です。そのため、教育の中に、具体的には学習指導要領に基づいてSDGsに関する学習を進めることを強く求めたい。総理の見解を求めます。
 京都議定書に続く温暖化対策の新たな国際的枠組みとなるパリ協定が発効しました。パリ協定の特徴は、途上国を含む協定参加国が二酸化炭素の削減目標を掲げ、その削減達成を目指す点にあります。その意味から協定の成否は途上国が握っています。それには、協定に盛り込まれた環境協力を通じて途上国の二酸化炭素の排出量を削減する二国間クレジット制度、いわゆるJCMの活用が重要です。JCMで自国の削減目標の達成も進めつつ、我が国の低炭素技術なども相手国に普及できるJCMは有益な仕組みです。
 ただ、それでも、温室効果ガス削減の本命は国内での削減です。そのためには、再生可能エネルギーの普及を図ることはもちろん、今後は水素エネルギーの活用が焦点になってきます。一例を挙げれば、簡便に低炭素な高圧水素ガスを製造する機器の実用も始まっており、こうした取組の普及が急がれます。
 今後の温暖化対策の取組方針について、総理に見解を求めます。
 次に、経済再生と地方創生の観点から質問いたします。
 これまで安倍政権では、デフレ脱却、経済再生を第一に取り組んだ結果、国内景気は緩やかながら回復基調が継続しています。過去四年間で企業業績は改善し、雇用の安定や賃金の上昇をもたらすなど、その成果は着実に現れています。
 そして重要なことは、経済成長の成果を一人でも多くの人々に行き渡らせていくことです。経済成長一辺倒では格差が生じます。社会の実態に目を凝らせば、かつての高度経済成長期と比べ、社会構造が大きく変わっています。少子高齢化が進み、働いて賃金を得て生活する人ばかりでなく、年金等で生活を支える人々も増えました。生活者の目線で経済成長の果実を適切に分配し、希望が行き渡る社会を構築していくことが持続可能な経済成長の基盤ともなります。
 そうした中、二〇一七年度の税制改正、予算案では、中小企業の所得拡大の促進や設備投資、イノベーション創出による生産性の向上、さらには働き方改革、無年金対策、奨学金制度の充実など、安倍政権が進めてきた成長と分配の好循環を更に後押しする施策が盛り込まれており、早期の成立、執行が欠かせません。
 これまでの経済再生への取組と成果、そして我が国の経済を更に強靱にしていく取組について、総理の答弁を求めます。
 経済の好循環をより確かなものとするためには、全事業者の九割を占める中小企業・小規模事業者への重点的な支援が欠かせません。経営者の高齢化や雇用環境の改善による人手不足など、中小企業を取り巻く環境は深刻であり、後継者が決まらないとの理由から黒字企業の廃業も増えつつあります。
 こうした課題を解決するには、第一に中小企業の継続的な賃上げ支援が必要です。来年度の税制改正では、公明党が要望した固定資産税の軽減措置の拡充や賃上げを行う企業への支援強化が盛り込まれました。また、下請取引条件の改善や社会保険・労働保険料負担の軽減など、中小・小規模事業者の賃上げや設備投資を後押しする支援策も求めてきました。
 第二に、企業の稼ぐ力を強化することが必要です。そのためには生産性の向上が不可欠であり、その鍵を握るのが、IoT、ビッグデータ、人工知能等を活用した第四次産業革命の推進です。我が国が誇る高い技術力を生かした技術や商品を国内外に展開する販路開拓支援を強化し、企業の収益力向上や継続的な賃上げへとつなげるべきです。
 中小企業・小規模事業者の賃上げや生産性向上の取組について総理に伺います。
 地方創生は、日本を元気にするための最重要テーマの一つです。
 本年は、地方創生の五年間の政策目標などを示したまち・ひと・しごと創生総合戦略の策定から三年目に突入します。昨年、ほぼ全ての都道府県、市区町村で地方版総合戦略が策定されていますが、国においては、この総合戦略の本格的な実行に際して、PDCAサイクルが十分に機能しているかを含め、きめ細かな支援を継続すべきです。
 また、地方創生を進めるには、その取組を下支えする若い世代が集まる流れをつくることが重要ですが、その手法の一つに教育における社会活動が挙げられます。島根県では、廃校寸前だった島唯一の高校で、多様な文化や価値観の中で多くの学びが生まれる島留学を実施。全国から多くの生徒が集った結果、生徒数は七年間で約二倍に拡大しました。さらに、将来の進路を考える契機とするため、生徒が地域住民とともに社会活動を実践する科目も創設しています。
 地方創生の成否は、いよいよ重大な局面を迎えています。政府は、地方版総合戦略の実行に向けて、情報、人材、財政の面から支援することはもちろん、教育の観点も含め、若者の活躍を通じた地域活性化を後押しすべきです。
 地方創生について、総理の見解を伺います。
 観光立国の推進について伺います。
 訪日外国人は昨年二千四百万人を突破し、今や観光、なかんずくインバウンドは、日本の経済成長とともに地方創生を進める上で重要な柱となっています。今後、二〇二〇年度の四千万人の高みを目指していく上で、さらに日本の伝統文化、芸術、体験、歴史など、全国各地にある観光資源、それらを支える人を最大限に生かしていく体制を一層強化しなければなりません。
 既に政府は、訪日外国人受入れのためのあらゆる環境整備の促進、訪日プロモーション活動などを行っていますが、外国人の方が何に魅力を感じ日本を訪れているのか、ゴールデンルートに集中する外国人旅行者の流れをどう地方に波及させていくのか、リピーターや長期滞在者をどうすれば増やせるのかなど、民間等と連携をしながら知恵を絞り、的確な手を打ち続けていくことが求められます。
 観光立国の更なる推進について国土交通大臣に伺います。
 東日本大震災から間もなく丸六年となります。公共インフラの復興、災害公営住宅の整備などが着実に進む一方、生活再建とともに、産業、生業の再生、東北観光復興などはもう一段の支援が必要です。心の復興、人間の復興を成し遂げるまで、徹して被災者に寄り添う支援を継続していきたい。
 福島では、最新鋭の農林水産業を促進し、安全、安心な福島ブランドの普及など、風評被害を払拭する更なる取組が必要です。また、廃炉・汚染水対策とともに、新たな産業基盤をつくる福島イノベーション・コースト構想の具体化を促進すべきです。
 さらに、二〇二〇年の東京オリンピック・パラリンピックは、復興五輪として、福島県内で野球などの競技を開催する方針に大きな希望の光が広がっています。国内のみならず、世界中が刮目するような輝かしい東北復興の姿を示していきたい。
 東北復興の取組について総理に伺います。
 昨年は、熊本地震や鳥取県中部地震、台風など、相次ぐ自然災害に見舞われました。被災地の皆様が未来に希望を持って進めるよう、復旧復興の取組を加速させなければなりません。
 被災現場では、様々な課題が浮き彫りとなりました。熊本地震では、耐震改修が遅れていた庁舎や病院などが損壊し、防災拠点として機能しないケースが相次ぎました。北海道や岩手を中心に襲った台風による集中豪雨では、堤防の決壊による河川の氾濫で、災害弱者の避難体制や堤防の強化などが課題となりました。新潟県糸魚川市の大規模火災では、その原因に、強風とともに木造建築物の密集が指摘されました。他方で、防災無線や地域住民による声掛けが早期の避難につながったことは、地域防災力の重要性を改めて認識するものでした。
 これらに加え、社会インフラの老朽化対策も急がれます。昨年十一月、産官学民が連携したインフラメンテナンス国民会議が発足しました。老朽化対策を通じた防災、減災の加速化とメンテナンス技術という新しい産業の育成、活性化を図るものとして期待されています。
 国民の生命と財産を守り、自然災害に強い国づくりを実現する防災、減災の取組について、国土交通大臣の答弁を求めます。
 次に、安心と輝きの未来へという視点から質問いたします。
 働くことを希望する女性が安心して子供を産み育てられる社会、そのためには、保育の受皿整備と保育士の確保が欠かせません。
 公明党が求めてきた保育士の処遇改善策では、二〇一七年度から保育士給与を月額六千円増やすことに加え、技能や経験に応じて更に四万円を上乗せすることとしています。
 こうした処遇改善を通じ、新たな保育士の養成や潜在保育士の活用など、保育士確保に向けた取組を一層強化すべきです。総理の答弁を求めます。
 介護人材の確保も急務です。介護職員等の処遇改善により、二〇一七年度から月一万円程度給与が上がることは大きな前進です。しかし、それでもなお人材不足は深刻であり、再就職支援を含めた人材の確保や離職者を減らすための抜本的な対策が必要です。
 介護現場で働く方の悩みとして、仕事量に対する低い賃金や深夜業務への不安、人間関係、利用者からの暴力や暴言等が挙げられています。現場任せにはせず、実態を踏まえた相談体制の強化を進めるとともに、介護ロボットの活用やICT化による業務負担の軽減も促進すべきです。
 介護職員の幅広い処遇改善策について、総理の見解を求めます。
 国民一人一人の活躍を後押しする働き方改革、その実効性ある取組が急がれます。
 公明党は、昨年末、働く人の立場に立った働き方改革の実現に向けた提言、いわゆる中間報告を総理に提出しました。今般策定された政府の同一労働同一賃金のガイドライン案には、基本給だけでなく、賞与、各種手当、福利厚生を含めた非正規労働者の処遇改善施策など、我が党の主張が反映されており、これを評価いたします。
 以下、この提言内容に沿って二点伺います。
 一点目は、テレワークや副業、兼業といった多様な働き方の推進です。
 長時間労働の是正やワーク・ライフ・バランスの実現、さらには職場内、職場外を含めた能力開発の機会を充実させ、若者、高齢者、障害者等の多様な働き手の参画を後押しする取組が重要です。
 テレワークは、子育てと仕事の両立を始め、離職防止の観点からも大事な取組です。また、副業、兼業は、オープンイノベーションや起業の手段として大きな効果が期待されています。勤務時間の管理の難しさや更なる長時間労働を助長する懸念などが指摘されていますが、こうした課題の解決に取り組みつつ、労働生産性の向上の観点から更なる普及を図るべきです。
 二点目は、女性が活躍しやすい環境整備です。
 女性活躍推進法や改正育児・介護休業法により、女性が働く環境は改善しつつあります。しかし、正社員として活躍する女性が増える一方で、働く女性の六割近くがパートなど非正規雇用であることや男性との賃金格差も課題となっています。また、女性の復職、再就職について、正社員だった女性が子育てなどで一旦離職すると、パート等の非正規で働き続けざるを得ない実態もあります。リカレント教育により多くの方が学び直しできるよう助成制度を拡充することや、短時間勤務の導入など、女性がライフステージに応じて再就職しやすい環境整備を急ぐべきです。
 働き方改革の取組について総理に伺います。
 若者の活躍推進について伺います。
 公明党は、これまで青年議員を中心に各地で懇談会や意識調査などを行い、学生を始め若者の声を国政に反映してきました。その結果、若者雇用促進法の制定や、いわゆるブラック企業、ブラックバイトの根絶などの取組が前進しました。また、地方版政労使会議を提案し、地方における賃上げや働き方改革も推進してきました。
 他方で、若者に関する施策は各省庁に分かれており、政策効果を高めるためにも横断的な取組が必要です。政府には、青年政策を担当する大臣を明確にすることや担当部局の体制強化など、総理のリーダーシップで青年政策を総合的かつ力強く進めていただきたい。
 若者の活躍推進に向け、総理の答弁を求めます。
 教育について申し上げます。
 教育の原点は子供の幸福にあります。しかし、子供たちにとって楽しく学ぶ場であるはずの学校が、いじめなどの深刻な問題により、生きる喜びが奪われてしまうことがあります。
 昨年の調査結果では、いじめの認知件数が二十二万四千五百四十件と過去最多となりました。いじめの兆候を早期に把握しようとする学校現場の機運の高まりとの見方もありますが、深刻な数字と受け止め、これまで以上に未然防止や相談体制の充実に全力を挙げるべきです。そして、何よりも、未来の宝である子供たちを苦しめるいじめは絶対に許さないとの気風を社会全体で確立していくことがいじめの根絶につながります。
 また、不登校児童生徒の数は十二万六千人に上ります。全ての子供にとって、学ぶ権利は尊重されなければなりません。
 さきの臨時国会では、フリースクールや夜間中学など多様な学びの場を提供するための教育機会確保法が議員立法で成立しました。同法の趣旨を踏まえ、学校に行けない児童生徒に学びの場を確保していただきたい。「ひとしく教育を受ける権利を有する。」との憲法二十六条を社会の変化に応じて具体化していく取組が求められます。
 いじめ、不登校問題への対応について総理に伺います。
 最後に、三年後に開催される平和の祭典、東京オリンピック・パラリンピックについて質問いたします。
 前回の東京大会が開催された一九六四年は、公明党が誕生した年でもありました。当時の大会では、新幹線や高速道路の開通など、現在にも残る数々のレガシーが生み出され、戦後の荒廃から立ち上がった日本の復興を世界に示す象徴となりました。
 二〇二〇年の大会においても、高齢社会、環境・エネルギー問題など、日本を始め多くの国々が直面する共通課題を踏まえ、日本の強みである技術、文化を生かしながら、その先頭に立って課題解決に取り組む姿を世界に示し、次世代に誇れるレガシーを創出していかなければなりません。
 具体的に三点伺います。
 まず、テロなど組織犯罪への対策強化とともに、高齢者や障害者など誰もが安心して生活、移動できるユニバーサルデザインの町づくりや、心のバリアフリーを含め全ての人の社会参加を後押しする取組を一層強化すべきです。
 次に、オリンピックでは世界各国から多数の人が集まることもあり、選手村を始めとして、日本で提供される食品には安全の確保や環境への配慮が求められます。この大会を契機に、国際的に通用する認証取得に取り組みつつ、多様な食文化への対応が可能となれば、日本の食の競争力を高め、輸出拡大のチャンスともなります。
 さらには、オリンピックは文化の祭典でもあります。文化芸術を通じて世界に日本の魅力を発信するとともに、文化芸術立国の実現を推し進めるため、昨年十月にスタートした文化プログラムを全国津々浦々で展開し、成功させていただきたい。
 東京オリンピック・パラリンピック競技大会に向けた取組について、総理の見解を求めます。
 以上、我が国が直面する内外の政治課題について述べさせていただきました。
 冒頭申し上げたとおり、世界経済や各国の政治体制に不確実性が高まる中にあって、我が国は安定の要としてその責任を果たし、国際社会の平和と安定に積極的な貢献をしていかなければなりません。
 連立政権の一翼を担う公明党は、引き続き、国民の声に真摯に耳を傾けながら、こうした課題を克服し、安心と希望ある未来を切り開くための政策を着実に実行していくことをお誓いし、私の質問を終わります。(拍手)
   〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇、拍手〕
#5
○内閣総理大臣(安倍晋三君) 山口那津男議員にお答えをいたします。
 トランプ新政権と今後の日米関係についてお尋ねがありました。
 トランプ大統領は、就任演説で、選挙期間中に主張してきた米国第一主義を改めて掲げ、米国を再び偉大にするとの決意を国の内外に鮮明にされました。日米は、自由、民主主義、人権、法の支配といった普遍的価値のきずなで固く結ばれた揺るぎない同盟国であります。トランプ大統領とできるだけ早期に会談し、トランプ大統領との信頼関係の下に揺るぎない日米同盟のきずなを更に強化していきたいと考えています。
 日中関係及び日中韓サミットについてお尋ねがありました。
 公明党には、連立与党のパートナーとして、これまで政党間交流を通じた日中関係の発展に尽力いただいております。特に、山口代表には、政権発足直後及び一昨年十月に訪中していただき、私の親書を習近平主席にお渡しいただくなど大変重要な役割を果たしていただいており、改めて感謝申し上げます。
 昨年九月のG20杭州サミット及び十一月のペルーAPECの際に習近平国家主席と会談し、本年の日中国交正常化四十五周年、来年の日中平和友好条約締結四十周年といった節目の機会を捉えて関係を改善させていくことで一致しました。
 政府としても、引き続き、戦略的互恵関係の考え方の上に、大局的な観点から共に努力を重ね、政治、経済、文化、人的交流など、様々な分野で対話と交流を促進し、安定的な友好関係の発展に努めていきます。
 日中韓サミットについては、御指摘のとおり、具体的な日程は現時点では決まっておりませんが、我が国は、議長国として、引き続き日程調整に意を用い、本年のできるだけ早い時期に日本で開催できるよう努力してまいります。
 経済連携の進め方についてお尋ねがありました。
 自由で公正な共通ルールに基づく自由貿易体制こそが世界経済の成長の源泉です。トランプ大統領も自由で公正な貿易の重要性については認識していると考えており、TPP協定が持つ戦略的、経済的意義についても腰を据えて理解を求めていきたいと考えています。
 数年間の交渉を経てTPP協定に結実した新たなルールは、今後の通商交渉におけるモデルとなり、二十一世紀の世界のスタンダードになっていくことが期待されます。この成果を基礎として、日EU・EPAのできる限り早期の大枠合意を目指すとともに、RCEP、日中韓FTAなどの交渉において質の高い協定を目指してまいります。
 コロンビアを始めとする二国間の経済連携協定にも積極的に取り組み、自由貿易の推進に全力を尽くしていきたいと思います。
 核兵器のない世界の実現に向けた取組についてお尋ねがありました。
 核兵器のない世界の実現のためには、核兵器国がそれに同意することが必要不可欠です。御指摘の核兵器禁止条約の交渉開始決議については、最初から核兵器国は一国たりとも交渉に参加せず、決議にも賛成しませんでした。この決議は、核兵器国と非核兵器国の間の亀裂を一層深め、核兵器のない世界の実現を更に遠のかせてしまう結果となることから、我が国は反対しました。
 我が国は、唯一の戦争被爆国として、核兵器のない世界の実現に向け、国際社会の取組をリードしていく使命を有しています。そのため、我が国は、核兵器国と非核兵器国の双方に協力を求め、核兵器のない世界の実現に向けて、現実的かつ実践的な取組を重ねていくべきとの一貫した立場を取っています。この考えは、我が国の核兵器廃絶決議として、国連において圧倒的多数の支持を得て採択されています。このような現実的かつ実践的な取組を重ねることで、NPT体制の強化を含め、軍縮・不拡散の国際的な取組をリードしていきます。
 核兵器のない世界の実現に向けて、我が国としては、主張すべきは主張していくことが重要であると考えます。核兵器禁止条約交渉については、ただいま申し上げた考え方の下、政府全体で検討していく考えです。
 持続可能な開発目標の達成に向けた防災及び教育分野での取組についてお尋ねがありました。
 持続可能な開発目標には、我が国の国際社会に示してきた人間の安全保障の理念が反映されており、政府としては、持続可能な開発目標推進本部の下、NGO、NPO等の多様な主体と連携しつつ、率先して取り組んでまいります。
 そのために、御指摘のとおり、我が国の知見や経験を生かした防災の主流化を進めることが重要であります。我が国は、二〇一五年三月に仙台で開催した第三回国連防災世界会議において、事前の防災投資の推進を含む仙台防災協力イニシアティブを発表しました。今般策定した持続可能な開発目標実施指針の下でも、同イニシアティブを着実に推進してまいります。
 教育についても、御指摘のとおり、誰一人取り残さないとの理念は、広く未来を担う子供たちの心に深く刻んでほしい重要な考え方です。実施指針の下、二〇二〇年度から開始される新しい学習指導要領に基づく教育課程や教材の改善、充実を推進していく考えです。
 今後の温暖化対策の取組方針についてお尋ねがありました。
 国内においては、徹底した省エネルギーや再生可能エネルギーの最大限の導入等に取り組みます。特に、水素エネルギーは温暖化対策の切り札です。議員御指摘の水素ガス製造機器を活用するなど、水素ステーションを順次整備し、二〇二〇年には現在の四十倍、四万台規模で燃料電池車の普及を目指します。生産から輸送、消費まで、国際的な水素サプライチェーンを構築するなど、世界に先駆けて取り組み、イノベーションによる解決を進めます。
 世界全体の排出削減については、二国間クレジット制度等を活用して、低炭素技術を普及させることで最大限貢献していきます。引き続き、内閣の最重要課題として地球温暖化対策に全力を挙げてまいります。
 経済再生への取組と成果についてお尋ねがありました。
 安倍内閣においては、政権交代後、アベノミクスによって極めて短い期間でデフレではないという状況をつくり出すことができ、名目GDPは九・〇%成長し四十四兆円増加、実質GDPも五・一%、二十五兆円増加し、過去最高の水準となりました。
 特に、国民生活にとって最も大切な雇用は大きく改善しており、就業者数は百十万人近く増加、有効求人倍率は史上初めて四十七全ての都道府県で一倍を超え、賃上げは中小企業を含め今世紀に入って最も高い水準の賃上げが三年連続で実現し、税や社会保障負担等を差し引いた家計の可処分所得は二年連続で増加するなど、全国津々浦々で確実に経済の好循環が生まれています。
 平成二十九年度予算においては、一億総活躍社会の実現に向け、保育士及び介護人材等の処遇改善や年金受給資格期間の短縮、給付型奨学金の創設などの主要な取組を確実に行っています。また、科学技術振興費を伸ばすとともに、公共事業関係費の成長分野への重点化を行うなど、経済再生に直結する取組を推進しています。
 さらに、平成二十九年度税制改正において、中小企業の攻めの投資を後押しするため、固定資産税の軽減措置の対象を拡大し、あわせて賃上げ環境整備のため、中小企業に係る所得拡大促進税制の拡充を実施することとしています。
 また、一億総活躍社会の実現に向けた最大のチャレンジである働き方改革を加速します。同一労働同一賃金を実現し、正規と非正規の労働者の格差を埋め、若者が将来に明るい希望が持てるようにすることにより、中間層が厚みを増すことにつながると考えています。
 アベノミクスを更に加速させながら、成長と分配の好循環をつくり上げるとともに、こうした取組を続けることにより、格差が固定化されず、誰にでもチャンスがあり、頑張れば報われる社会を実現してまいります。
 中小企業・小規模事業者の賃上げや生産性向上の取組についてお尋ねがありました。
 人手不足や事業承継の問題を解決し、経済の好循環をより確かなものとするため、議員御指摘のとおり、中小企業・小規模事業者の賃上げや生産性向上に重点的に取り組んでまいります。
 高い賃上げを行う中小企業に対しては、所得拡大促進税制による税額控除の拡充を行います。下請取引条件の改善に向けては、五十年ぶりに下請代金の支払についての通達を見直し、現金払を原則としました。下請法の運用基準は十三年ぶりに抜本改正し、金型を無料で保管させるなど、コストの一方的な押し付けが禁止されていることを明確にしました。また、雇用保険料率を引き下げ、中小企業・小規模事業者の負担を軽減します。
 生産性向上に向けた取組については、一定の要件を満たす経営計画を持った企業であれば赤字であっても活用できる固定資産税の軽減措置や低利融資等の支援を安倍政権において創設しました。今般、これを製造業から小売・サービス業にも拡大することで、商店街等における攻めの投資を促します。
 第四次産業革命に挑戦する中小企業については、技術革新の成果を現場に速やかに導入できるよう、革新的な物づくり、サービス開発などの設備投資を積極的に支援してまいります。国内外の販路開拓も支援していきます。今月のフィリピン、インドネシア、ベトナムなどの出張の際にも、優れた技術を持ち海外展開に意欲を持つ中堅・中小企業に参加をいただきました。引き続き、きめ細かな取組により、中小企業の賃上げや生産性向上を支援し、成長と分配の好循環を実現してまいります。
 地方創生についてお尋ねがありました。
 現在、ほぼ全ての地方公共団体で地方版総合戦略が策定され、各地方公共団体においては、PDCAサイクルで成果をチェックしながら地方創生事業を着実に実施しています。御指摘のとおり、教育を通じて若者の力を地方創生に生かしていただきたいと考えています。
 御紹介のあった島根県の高校のほか、例えば北海道音威子府村では、村立の美術工芸高校が地元木材を生かした木工芸の教育で全国から生徒を集め、高校生たちが地元の運動会やボランティア活動に積極的に参加しています。同じく北海道の三笠市では、高校生が地産地消による食堂「まごころきっちん」を運営し、地域経済に貢献しています。こうした若者が積極的に地域社会に関わる取組を情報、人材、財政面で支援し、地方創生にチャレンジする地方の皆様を全力で応援してまいります。
 東日本大震災からの復興についてのお尋ねがありました。
 今年の三月で東日本大震災から六年がたちます。復興は着実に進展しておりますが、避難生活が長期化する中で、コミュニティー形成、生きがいづくり等の心の復興など、今後とも切れ目のない被災者支援に取り組むとともに、農業、水産業など、なりわいの再生を力強く支援してまいります。また、観光先進地・東北を目指し、東北の外国人宿泊者数を二〇二〇年に百五十万人にするという目標の達成に向け、東北の観光復興を加速してまいります。
 福島では、東京電力福島第一原子力発電所の廃炉・汚染水対策について、引き続き国が前面に立って安全かつ着実に取り組んでまいります。浜通り地域に新たな産業集積を生み出す福島イノベーション・コースト構想についても、福島復興特措法を改正し、着実に推進してまいります。また、ロボットの活用等による最新鋭の農林水産業を促進するとともに、福島県産農林水産物のブランド力を回復するため、グローバルギャップ等の取得支援や信頼回復の取組に関する情報提供など、生産から流通、販売に至るまで風評の払拭を総合的に支援してまいります。
 東京オリンピック・パラリンピックは、被災地が復興を成し遂げつつある姿を世界に発信する絶好の機会です。復興五輪に向け、被災地の自治体の声も十分に伺いながら、東北の復興を加速してまいります。
 東北の復興なくして日本の再生なし。あの大震災、困難の日々を胸に刻みながら、被災地の皆さんと力を合わせ、新しい東北の未来を切り開いてまいります。
 保育士の処遇改善についてお尋ねがありました。
 安倍政権では、高い使命感と希望を持って保育の道を選んだ方々に仕事を続けていただくために、処遇改善を始め、潜在保育士の再就職支援や保育士の事務負担の軽減などに総合的に取り組んでいます。
 安倍政権は、政権交代直後から毎年度、保育士等の処遇改善に取り組んできました。来年度、全職員について二%、月額約六千円改善し、安倍政権の下、合計一〇%の改善が実現します。これに加え、キャリアアップの仕組みとして、経験年数がおおむね七年以上の中堅職員に対しては月額四万円などの処遇改善を行います。
 さらに、平成二十九年度予算では、保育の人材確保策として、保育士の宿舎借り上げの支援事業の拡充、離職者の再就職支援を行う保育士・保育園支援センターの体制強化などを盛り込んでいます。これらの対策に総合的に取り組み、必要な保育人材の確保を図ってまいります。
 介護職員の幅広い処遇改善についてのお尋ねがありました。
 介護職員の処遇改善に当たっては、介護の仕事は本当にやりがいがあると大きな希望を持って介護の道を選んだ皆さんの高い使命感にしっかりと応えていくことが重要です。
 このため、ニッポン一億総活躍プランに基づき、一旦仕事を離れた人が再び仕事に就く場合の再就職準備金の倍増を図ったところであり、さらに、平成三十年度の介護報酬改定を待つことなく、平成二十九年度から、技能や経験に応じて昇給する仕組みを構築し、月額平均一万円相当の処遇の改善を行います。
 あわせて、介護労働者が働きやすい職場環境や健康確保のための専門的な相談援助の実施、介護ロボットの活用やICT化による生産性向上の推進などにより、職場環境の改善や現場の負担軽減を進めます。このように、あらゆる手を尽くして介護職員の処遇改善に取り組んでまいります。
 働き方改革についてお尋ねがありました。
 誰もが生きがいを持ってその能力を存分に発揮できる一億総活躍社会をつくる、その最大のチャレンジは働き方改革であります。
 テレワークは、子育て、介護と仕事の両立の手段となり、女性、高齢者、障害者等の離職を防ぐ効果も期待できます。副業や兼業を行うことは、新たな技術の開発、オープンイノベーションや起業を進める機会が生まれます。我が国の場合、テレワークの利用者、副業、兼業を認めている企業はいまだに極めて少なく、その普及を図っていくことは極めて重要であります。
 他方、これらが長時間労働を招いては本末転倒です。労働時間管理をどうしていくのかも整理する必要があります。ガイドラインの制定も含めて、多様な政策手段について検討を進めます。
 女性の活躍については、我が国では正社員だった女性が育児で一旦離職するとパート等の非正規で働き続けざるを得ないことが多い事実があります。労働生産性の向上の点でも問題があります。
 出産などを機に離職した皆さんのリカレント教育などの支援を抜本的に拡充するため、助成の対象となる教育訓練の講座を大幅に拡大し、多様なスキルの習得の機会を増やすとともに、受講費用に対する教育訓練給付の給付率を引き上げることなどを内容とする雇用保険法改正法案を今国会に提出します。短時間正社員制度の導入支援など、女性がライフステージに応じて再就職しやすい環境整備を急ぎます。これらの内容を含め、三月に実行計画を決定し、改革を加速します。
 若者の活躍推進についてのお尋ねがありました。
 子供が健やかに成長し、次代を担う若者として自立、活躍できるよう支援することは政府の重要課題です。
 政府においては、青少年の健全な育成に関する事務について、加藤内閣府特命担当大臣の担当とするとともに、私を本部長とし、全閣僚によって構成される子ども・若者育成支援推進本部を設置し、子供、若者の育成支援に関する施策を総合的に推進しています。
 同本部においては、昨年、子供、若者の育成支援に関する施策についての政府全体における基本的な方針策を定める子供・若者育成支援推進大綱を決定しました。この大綱を踏まえ、引き続き、子供、若者の健全な育成のため、若者を始め幅広く国民各層の意見を取り入れながら政策を進めてまいります。
 いじめ及び不登校への対応についてお尋ねがありました。
 いじめは決して許されないことであります。しかし、どの学校でも起こり得るものです。このため、いじめ防止対策推進法に基づき、全ての学校で学校いじめ防止基本方針を策定し、教職員や専門家から成るいじめ防止に必要な組織が設置されたところです。また、子供たちがいじめは絶対に許されない行為であると自覚することができるよう、道徳の特別の教科化など道徳教育の充実を図るとともに、学校におけるスクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカーの配置の充実を進めてまいります。
 不登校については、先般成立した教育機会確保法を踏まえ、教育支援センターの整備促進、スクールカウンセラー等の配置の充実や学校との情報共有の推進などの取組を進めているところです。今後とも、いじめや発達障害など様々な事情で不登校となっている子供たちが自信を持って学ぶことができるよう、フリースクールの子供たちへの支援を拡充してまいります。
 二〇二〇年東京大会へ向けた取組についてお尋ねがありました。
 次はいよいよ東京大会であります。私もしっかりとブラジルからバトンを引き継いでまいりました。そして、昨年十二月、新国立競技場整備事業も本格化いたしました。
 東京大会については、世界中の多くの人々が夢と希望を分かち合う歴史に残る大会、東日本大震災から復興を成し遂げた日本の姿を世界に向けて発信する大会、パラリンピックの開催を通じ、我が国が障害者の方々にとってバリアのない、世界で最も生き生きと生活できる国であることを示す大会としていきたいと考えています。
 三年後に迫った東京大会を必ず成功させる。政府としては、基本方針を決定し、必要な準備を進めているところです。サイバーセキュリティー対策、テロなど組織犯罪への対策を強化します。また、受動喫煙対策の徹底、ユニバーサルデザインの推進、多様な食文化への対応など、この機を生かし、誰もが共生できる町づくりを進めます。
 アスリートが最高のパフォーマンスを発揮し、全世界に向けて夢と感動、そして平和を発信できる世界一の大会の実現に向け、政府一丸となって取り組んでまいります。
 残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。(拍手)
   〔国務大臣石井啓一君登壇、拍手〕
#6
○国務大臣(石井啓一君) 観光立国の更なる推進についてお尋ねがありました。
 我が国を訪れる外国人旅行者の数は、二〇一二年からの四年間で一千五百万人以上増え、昨年は二千四百四万人となり、史上初めて二千万人を超えました。また、外国人旅行者の消費額は、同じくこの四年間で二兆六千億円以上増え、三兆七千四百七十六億円となりました。
 昨年三月に政府は、明日の日本を支える観光ビジョンを策定をいたしまして、訪日外国人旅行者数を二〇二〇年四千万人、二〇三〇年六千万人、訪日外国人旅行消費額を二〇二〇年八兆円とすること等を新たな目標に掲げ、その実現のために必要となる骨太の政策を取りまとめたところであります。
 今後とも、この観光ビジョンに基づきまして、国立公園、文化財、古民家等の観光活用の推進、広域観光周遊ルートの形成、充実等を進め、外国人のニーズを十分に把握しながら、我が国ならではの魅力的な体験等もアピールをして地方への誘客を促進する。また、長期滞在の傾向のある欧米豪や富裕層を新たなターゲットに位置付け、リピーター化の促進にもつながる訪日プロモーションの展開、観光を支える経営人材の育成や宿泊業の生産性向上により、観光産業を我が国の基幹産業へ変革をする。さらに、ストレスなく快適に観光できるよう、出入国管理体制や通信、交通、決済などの受入れ環境を整備するといった施策を関係省庁、民間企業等、様々な関係者と連携して具体化し、実行していかなければならないと考えております。
 引き続き、観光先進国の実現に向け、政府一丸、官民一体となって全力で取り組んでまいります。
 次に、防災、減災の取組についてお尋ねがございました。
 御指摘のとおり、昨年も数多くの災害が発生をいたしました。被災地の方々が一日でも早く日常の生活に戻れるよう、早期の復旧復興に向け、国土交通省も全力で取り組んでまいります。
 また、このような災害の教訓を踏まえ、災害リスクに関する知識と心構えを社会全体で共有し、地震、洪水、土砂災害等の様々な災害に備える防災意識社会へ転換し、整備効果の高いハード対策と住民目線のソフト対策を総動員していく必要があると考えております。
 まず、地震への備えといたしましては、熊本地震も踏まえ、建築物の耐震化を推進いたします。特に、防災拠点となる建築物については、倒壊しないだけでなく、防災拠点として継続的にその機能を発揮できるよう、地方公共団体の耐震対策を支援をいたします。
 また、切迫する南海トラフ巨大地震や首都直下地震については、想定される具体的な被害特性に合わせ、避難路、避難場所の整備、ゼロメートル地帯の堤防の耐震化等、実効性のある対策を推進をいたします。
 特に、糸魚川市の大規模火災も踏まえ、木造建築物の密集した市街地の対策については、地方公共団体と連携をし、取組を更に促進をしてまいります。
 頻発、激甚化する水災害については、一昨年来、水防災意識社会再構築ビジョンに基づき、堤防の強化やタイムラインの作成などハード、ソフト一体となった取組を進めてまいりましたが、今国会では、この取組を更に加速するため、水防法等を改正する法律案を提出する予定であります。具体的には、水害リスクの高い地域に立地する介護施設等における避難計画の作成、訓練実施の義務化等を図ります。
 あわせて、インフラの老朽化対策について、高度経済成長期以降に整備したものが今後一斉に老朽化することから、昨年十一月に設置をいたしましたインフラメンテナンス国民会議の場を通じて、メンテナンス産業の育成、活性化を図りながら、産学官民が一丸となって技術や知恵を総動員して戦略的に取り組んでいくことといたします。
 今後とも、国土交通省の現場力を最大限活用し、国民の生命と財産を守り、自然災害に強い国づくりを実現するため、総力を挙げて防災・減災対策に取り組んでまいります。(拍手)
    ─────────────
#7
○議長(伊達忠一君) 小池晃君。
   〔小池晃君登壇、拍手〕
#8
○小池晃君 日本共産党の小池晃です。
 会派を代表して、安倍総理に質問します。
 総理は、施政方針演説で、全国津々浦々で確実に経済の好循環が生まれていると述べました。しかし、国民にはそうした実感は全くありません。
 確かに、大企業の経常利益は三年間で一・五倍近くに増え、内部留保は五十二兆円増えて過去最高の三百八十六兆円余りに達しました。しかし、労働者の給与、賞与は、大企業正社員でも一・四%の伸びにすぎず、消費税の増税もあり、実質では大きなマイナスです。中小企業や非正規も含めた全労働者では、安倍政権発足前と比べ、実質賃金で実に年収十九万円ものマイナスです。家計消費も十五か月連続で前年比マイナスを続けています。
 大企業に巨額の内部留保が積み上がる一方で、実質賃金が下がり、家計消費が落ち込んでいます。これを総理は、経済の好循環だと言うのでしょうか。
 国民生活基礎調査では、この二十年間、生活が苦しいと答えた人が四二%から六〇%となる一方で、普通と答えた人が五二%から三六%になりました。普通に暮らしていた人々が苦しい生活に追い込まれています。今や、リストラ、病気、介護などで、誰もが貧困に陥ってしまう社会になってしまいました。こうした社会の立て直しが政治の最大の責任なのではありませんか。
 格差と貧困を正し、中間層を豊かにするために、今政治が行うべきことは何か。
 第一は、税金の集め方の改革です。消費税増税を中止し、富裕層や大企業への優遇を正し、能力に応じて負担する公正公平な税制を実現することです。
 第二は、税金の使い方の改革です。軍拡や大型開発中心の予算にメスを入れ、社会保障、教育、子育て支援など、格差と貧困の是正につながる予算を増やすことです。
 第三は、働き方の改革です。長時間労働を規制し、非正規から正規への流れをつくり、最低賃金は時給千五百円へ。八時間働けば普通に暮らせる社会の実現です。
 第四は、産業構造の改革です。大企業と中小企業、大都市と地方などの格差を是正するため、中小企業を日本経済の根幹として支援し、農林水産業の抜本的充実を図るべきです。
 以上が日本共産党の提案ですが、今回は社会保障と雇用の問題について質問します。
 総理は、かつて毎年一兆円ずつ増えていた社会保障費の伸びは、今年度予算に続き来年度予算においても五千億円以下に抑えることができたと胸を張りました。しかし、この削減は国民に激痛を与え、家計消費を冷え込ませるものにほかなりません。
 安倍政権は、この四年間、年金の削減、入院食費の負担増、介護保険利用料への二割負担の導入など、給付を削り、負担を増やしてきました。さらに、来年度予算では、後期高齢者医療保険料の大幅な引上げ、七十歳以上の高額療養費の患者負担増、高額介護サービス費の負担増など、保険料負担、患者負担を更に引き上げようとしています。
 総理は、社会の安定のためには中間層が重要であり、中間層が安心して消費ができる状況が経済活性化のためにも必要だと述べてきました。しかし、医療や介護の自己負担引上げは、家計を苦しめ、現役世代の不安を増大させ、中間層の生活の安定と消費の喚起にも大きな障害となります。大企業への四兆円もの減税をやめ、社会保障の自然増削減はきっぱり中止し、充実に向かうべきではありませんか。
 働き方改革についても質問します。
 総理は、罰則付きの時間外労働の限度を定める法改正を提出すると述べましたが、その上限は何時間ですか。月八十時間で検討しているとの報道もありますが、過労死基準を上限にするなど許されません。大臣告示は、残業は週十五時間、月四十五時間以内ですから、当然これを法令とすべきではありませんか。
 勤務の間の休息時間の確保、いわゆるインターバル規制も必要です。ヨーロッパのEU指令では、二十四時間につき最低連続十一時間とされています。我が国でもこれを法定化すべきではありませんか。
 電通に勤め、二十四歳の若さで自ら命を絶った高橋まつりさんの無念に応え、このような苦しみを繰り返さないために、野党四党は衆議院に長時間労働規制法案を提出しています。直ちにこれを審議し、成立させようではありませんか。
 政府は、長時間労働の規制を言いながら、残業代ゼロ法案を撤回しようとしません。しかし、これはそもそも一定の労働者を労働時間管理の対象から外してしまう法案です。残業時間の上限規制をしながら、その一方で規制が掛からない労働者を増やす、こんなことは許されません。残業代ゼロ法案はきっぱり撤回すべきではありませんか。
 一%の富裕層や大企業ではなく、九九%の国民を豊かにする政治を。そのために日本共産党は全力を挙げる決意を表明するものであります。
 元高等教育局長の天下りを文部科学省が組織的にあっせんしていたことが明らかとなりました。隠蔽工作や大学側との口裏合わせまで指摘されており、組織的な天下りあっせんの疑いがあります。
 とりわけ文科省は、大学運営交付金や私学助成、さらに科研費などの競争的資金を配分する権限を持っています。そうした権限を背景にして、国立大学の人事を牛耳り、私立大学への組織的な天下りあっせんを行っていたのではありませんか。全容解明を求めます。
 重大なのは、第一次安倍内閣が二〇〇七年、それまでの国家公務員法にあった離職後二年間の規制期間や人事院による承認をも撤廃し、天下り、天上がりを原則自由化し、内閣の下で一元化する仕組みをつくった下で今回の事件が起きていることであります。我が党は、これは天下り自由化法だと批判をし、新たな政官財癒着に道を開くと指摘しましたが、そのとおりの事態になったではありませんか。当時、これは天下り問題を根絶する法案だと答弁した総理は、その責任をどう考えていますか。明確な答弁を求めます。
 沖縄では、名護市辺野古の美しいサンゴ礁を埋め立て、海兵隊の新基地建設が強行されています。東村高江ではやんばるの美しい森を破壊してオスプレイ着陸帯が、伊江島でもF35戦闘機着陸帯の建設が住民の声を無視して進められています。これらは、米軍基地を世界への殴り込みの一大拠点として抜本的に強化、固定化するものにほかなりません。
 沖縄では、これまでの選挙で繰り返し新基地建設反対の審判が下されています。ところが、総理は施政方針演説で、辺野古沖への移設工事を進めると明言しました。総理は、保守、革新を超えて示されているオール沖縄の民意を一顧だにする必要もないと考えているのですか。それは民主主義の国の政府としては許されないことではありませんか。
 昨年十二月、米海兵隊のオスプレイが名護市の海岸に墜落した事故は、日本と沖縄の植民地的実態を浮き彫りにしました。今回の事故について、海上保安庁が捜査協力を申し入れたにもかかわらず、米軍は無視し、物証となる機体の回収を進めました。基地外での日本の警察権行使を拒否し、証拠を隠滅する行為は、日米地位協定上も許されない無法なものではありませんか。
 米軍は事故後僅か六日でオスプレイの訓練を再開し、事故後三週間余りで空中給油の訓練も再開しましたが、政府はいずれも理解すると表明しました。日本の捜査機関は独自の情報を何も持っておらず、米軍の調査でも事故原因は特定されませんでした。それなのになぜ、政府は一体どのような根拠で理解したのでしょうか。
 沖縄県民や国民の安全より日米同盟を優先する、主権国家にあるまじき安倍政権の態度を断じて許すわけにはいきません。米国のトランプ新大統領の米国第一に対して、今までのような日米同盟第一という硬直した思考を続けたら、国民との矛盾は深まるばかりであります。異常なアメリカ追随外交をやめ、対等、平等、友好の日米関係に切り替えることを強く求めます。
 東京電力福島第一原発の事故は、時とともにその深刻さが一層明らかになっています。今年も八万一千百三十名の方が避難先で六年目のお正月を迎えました。国民の経済負担も重大です。安倍政権は、福島原発事故処理費用として二十一兆五千億円に上る国民負担を、株主や大銀行の責任を問わないまま電気料金などで押し付けようとしています。
 総理、費用の増大はこれで終わりと断言できますか。事故原因の究明どころか、壊れた原子炉の内部状況や溶け落ちた核燃料の所在さえ不明です。汚染水対策も、保管量が増え続ける状態が今後も続き、費用が更に膨れ上がる可能性を否定できるのでしょうか。
 一旦大事故が起これば、故郷は奪われ、仕事も奪われ、平穏な暮らしや家庭が壊され、人々の健康と地球環境を危険にさらす、その上、膨大なコストが生じるのが原発です。再稼働せず、原発ゼロの日本に踏み出すべきではありませんか。
 政府は、高速増殖炉「もんじゅ」の廃炉を決定しました。「もんじゅ」には一兆円もの資金を投入しながら、初臨界から二十二年間、稼働したのは僅か二百五十日です。総理は、「もんじゅ」は失敗だったと認めますか。
 政府は、「もんじゅ」に代わる新しい高速実証炉の開発に着手するとしています。しかし、高速実証炉は世界でも実用化できるめどは全く立っていません。「もんじゅ」の失敗の総括もなく、なぜ核燃サイクルにしがみつくのか。たとえ幻であっても、核燃サイクルが回るように取り繕っておかないと、核のごみ問題に対策がないことの言い逃れができなくなり、再稼働ができなくなるからではありませんか。
 使用済核燃料の処分方法の見通しが立たないまま再稼働を強行するのは、余りにも無責任です。原発再稼働を中止し、再生可能エネルギーの本格的導入に大胆に転換する決断を強く求めます。
 今年は憲法施行七十年の節目の年です。総理は、憲法審査会で具体的に議論を深めようと述べ、憲法改定に執念を燃やしています。しかし、多くの国民は改憲を求めていません。直近の世論調査でも、憲法改定の議論を急ぐ必要はないと過半数が答えています。総理は、国民の多くが改憲が政治の優先課題ではないと考えている事実を認めますか。
 憲法を変えるのではなく、憲法を生かす政治こそ必要です。しかし、憲法施行後の七十年間、憲法は生かされるどころか、自民党政治によって、逆に踏み付けられてきました。とりわけ総理は、歴代自民党内閣の憲法解釈を踏み破り、立憲主義を破壊する暴挙を重ねてきました。集団的自衛権行使容認の閣議決定を行い、安保法制、戦争法を国民の反対を無視して強行成立させ、戦後日本の一人も戦争で殺さない、殺されないという在り方を根本から変えようとしています。
 安保法制に基づいて、南スーダンPKO、UNMISSに派遣されている自衛隊に駆け付け警護などの新任務が付与されました。
 そこで、質問します。
 総理は、南スーダンが事実上の内戦状態にあることを認めますか。
 昨年十二月の国連人権委員会の南スーダン調査団を始め、国連の公式文書は内戦状態であることを繰り返し指摘しています。UNMISSの楊超英軍司令官代理も、和平合意が維持されているとは言えない、ジュバの治安状況は予測不可能で非常に不安定と述べています。こうした見方は全て誤っているというのですか。危険を危険と認めない安倍政権の態度こそ最も危険であります。
 二点目。南スーダン政府軍が、国連PKO、国連施設、職員への攻撃を繰り返している事実を認めますか。
 昨年九月、南スーダンに関する専門委員会の書簡は、政府軍が国際機関のスタッフの居住区画で殺害、レイプ、略奪などを行ったことを明らかにしました。十一月の国連事務総長の南スーダン報告でも、UNMISSの要員に対する逮捕、拘束、迫害などが指摘されています。このような状況下で自衛隊が駆け付け警護を行えば、自衛隊が南スーダン政府軍に武器を使用することになり、憲法が禁止する海外での武力行使となるのではありませんか。
 自衛隊の新任務付与を直ちに撤回し、自衛隊を南スーダンから撤退させ、日本の貢献を非軍事の民生・人道支援に切り替えることを強く求めます。
 日本共産党は、憲法違反の安保法制、戦争法を廃止するために、野党と市民の共闘を更に発展させていく決意を表明するものであります。
 最後に、安倍政権が国会に提出しようとしている共謀罪について聞きます。
 共謀罪とは、実際の犯罪行為がなくても、共謀、すなわち相談、計画しただけで処罰するものであります。これは、犯罪行為が実行された場合のみ処罰できるとした刑法の大原則を転換するだけでなく、思想及び良心の自由を保障した憲法十九条に背く違憲立法にほかなりません。たとえテロ等準備罪と名前を変えても、対象犯罪を絞っても、その本質は何ら変わりません。
 政府はテロ対策のためと言いますが、既に日本はテロ防止のための十三本の国際条約を締結し、五十七の主要重大犯罪について未遂より前の段階で処罰できる国内法も持っています。それなのに、現行法ではテロを未然に防ぐことが不可能だというのでしょうか。
 政府は、共謀罪創設について、テロを防ぐ国際組織犯罪防止条約を締結するためとしています。しかし、この条約が採択されたのは、同時多発テロ以前の二〇〇〇年です。その目的は、マフィアや暴力団による経済犯罪への対処であり、テロ対策ではありません。
 総理、条約を締結したのは何か国で、そのうち新たに共謀罪を制定した国は何か国かお答えください。
 ウィーン条約十九条は、条約の締結に留保を付することができるとし、国連が作成した立法ガイドは、締約国の国内法の基本的原則と合致した方法で行うとしています。共謀罪を留保しても、条約締結の壁にはなりません。
 一般人は対象にならないといいますが、それを判断するのは捜査機関であり、共謀しているかどうかをつかむためには、多数の一般人が盗聴や監視の対象となるのではありませんか。
 テロ対策の名で国民を欺き、国民の思想や内心まで取り締まろうという共謀罪は、物言えぬ監視社会をつくるもので、現代版治安維持法と呼ぶべきものです。共謀罪の国会提出を断念することを強く求めて、質問を終わります。(拍手)
   〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇、拍手〕
#9
○内閣総理大臣(安倍晋三君) 安倍内閣の経済政策についてお尋ねがありました。
 アベノミクスにより、政権交代後、極めて短い期間でデフレではないという状況をつくり出す中で、名目GDPは四十四兆円、実質GDPは二十五兆円増加し、過去最高の水準となりました。
 過去最高水準の企業収益を雇用・所得環境の改善につなげることにより、就業者数は百十万人近く増加、有効求人倍率は史上初めて四十七全ての都道府県で一倍を超え、賃上げは中小企業を含め今世紀に入って最も高い水準の賃上げが三年連続で実現し、税や社会保障負担等を差し引いた家計の可処分所得は二年連続で増加するなど、全国津々浦々で確実に経済の好循環が生まれています。
 御指摘の実質賃金の減少については、消費税率引上げに加え、デフレ脱却に向かう過程で物価が上昇したことや、景気が回復し雇用が増加する過程においてパートで働く人が増えたことによるものであります。なお、足下では、平成二十七年七月以降、増加傾向となっています。
 世帯当たりの消費を捉える家計消費は、世帯人員の減少などから長期的に減少傾向となっていますが、一国全体の消費を捉えるGDPベースで見ると、個人消費は二〇一六年に入ってから三四半期連続の前期比プラスとなっています。
 生活意識については、様々な世論調査がある中で、昨年八月に公表された内閣府の国民生活に関する世論調査によれば、満足と回答した割合は、一九九五年以来の七〇%を超える水準を、二〇一三年以降、つまり政権交代して以降、四年連続で維持しております。
 政府としては、一億総活躍社会実現に向けた最大のチャレンジである働き方改革を加速します。同一労働同一賃金を実現し、正規と非正規の労働者の格差を埋め、若者が将来に明るい希望が持てるようにすることにより、中間層が厚みを増すことにつながると考えています。アベノミクスを更に加速させ、格差が固定化されず、誰にでもチャンスがあり、頑張れば報われる社会をつくり上げてまいります。
 医療と介護の見直しと国民生活等についてのお尋ねがありました。
 平成二十九年度予算の医療、介護の制度改革は、社会全体が高齢化、社会保障費が増大する中、制度を持続可能なものとし、次世代に引き渡していくため、高齢者の方々にも負担能力に応じた御負担をいただくものです。
 このため、今回の改革においては、七十歳以上の高額療養費制度の見直しや介護保険制度の利用者負担の見直しなどを行います。その際、高額療養費制度について激変緩和のため段階的に見直しを行う、長期的にサービスを利用される方の年間の自己負担が増えないよう年間上限を創設して負担額を抑える、医療と介護を併せて利用し高額の自己負担をされている方の年間の負担が増えないよう年間上限額を据え置くなど、きめ細やかな配慮を行うこととしております。
 社会保障に関しては、持続可能な社会保障制度を構築するために、今回のように医療や介護などの給付と負担の在り方について不断の見直しを行いつつ、社会保障・税一体改革やニッポン一億総活躍プランに掲げたとおり、安定財源を確保して、保育、介護の受皿整備や年金の受給資格期間の短縮などを実施する、保育士、介護人材等の処遇改善を行うなど、しっかりと充実を行ってまいります。
 なお、大企業に四兆円もの減税を行ったとの御指摘ですが、安倍内閣において平成二十七年度、二十八年度に取り組んだ法人税改革は、課税ベースの拡大等により財源をしっかりと確保しながら税率を引き下げたものであり、御指摘は当たりません。
 働き方改革についてのお尋ねがありました。
 一年余り前、入社一年目の女性が長時間労働により過酷な状況の中で自ら命を絶ちました。このような悲劇を二度と繰り返さないとの強い決意で長時間労働の是正に取り組みます。
 野党が提出している労働基準法改正案では、誰に対して何時間の上限にするのか全く決めておらず、厚生労働省令に丸投げしています。政府としては、具体的な内容を示し、実行しなければなりません。実現会議で取りまとめる三月の実行計画においては、現在の大臣告示に強制力がないことを踏まえ、実効性のある規制となるよう、罰則付きの時間外労働の限度が何時間か具体的に定め、法改正に向けて作業を加速し、早期に法案を提出します。また、インターバル規制については、中小企業への助成金の創設などを通じ、規制導入についての環境整備を進めます。
 なお、現在提出している労働基準法改正案は、長時間労働を是正し、働く人の健康を確保しつつ、その意欲や能力を発揮できる新しい労働制度の選択を可能とするものです。残業代ゼロ法案といったレッテル貼りに明け暮れていては中身のある議論はできないと考えます。
 国家公務員の天下り等についてお尋ねがありました。
 今回の文部科学省における再就職規制違反事案は、国民の信頼を揺るがすものであり、あってはならないことであります。文部科学省において、全容の解明に向け徹底した調査を行い、再発防止策を講じてもらいたいと思います。
 国家公務員の再就職について問題なのは、官民の癒着につながりかねない公務員OBの口利きや、予算、権限を背景とした再就職のあっせん等の不適切な行為であります。このため、平成十九年の国家公務員法改正により、各府省による再就職の禁止等厳格な規制を導入するとともに、監視体制として再就職等監視委員会を設置したところでございます。
 現行制度による厳格な監視が機能したからこそ本事案が明らかになったものでありますが、本事案で生じた国民の疑念を払拭するため、山本国家公務員制度担当大臣に対し、同様の事案がないかどうか、全省庁について徹底的な調査を行うよう指示しました。今後、準備ができ次第調査をし、その結果を明らかにしてまいります。
 沖縄における基地負担軽減についてお尋ねがありました。
 普天間の辺野古移設によって、学校や住宅に囲まれ、市街地の真ん中にあり、世界で最も危険と言われる普天間飛行場は全面返還されます。辺野古の埋立面積は、返還される面積の三分の一以下であります。また、飛行経路が市街地の上空から海上へと変更されることにより、住宅防音が必要な一万以上の世帯数がゼロとなり、安全性も大幅に向上します。
 北部訓練場、四千ヘクタールの返還は、〇・九六ヘクタールのヘリパッドを既存の訓練場内に移設することにより、二十年越しで実現したものであり、沖縄県内の米軍施設の約二割、本土復帰後最大の返還であります。地元の国頭村や東村からは、国立公園の指定、世界自然遺産への登録を目指すとして早期返還の要望を受けていたものであり、基地負担軽減に大きく寄与するものであります。
 伊江島においては、既存の施設の老朽化に伴い改修工事を行っているものです。
 このように、米軍基地を抜本的に強化、固定化するとの御指摘は全く当たりません。
 沖縄における選挙の結果については、いずれも真摯に受け止めています。沖縄の基地負担の軽減を図ることは政府の大きな責任です。同時に、この思いは国も沖縄の皆さんも同じであり、変わらないはずであると思います。
 政府の進めている基地負担軽減の取組が沖縄の民意を一顧だにしないとの御指摘は、これも全く当たりません。引き続き、地元の皆さんの御理解を得る努力を続けながら、普天間の全面返還に向けて全力で取り組んでまいります。
 オスプレイの不時着水事故及び日米関係についてのお尋ねがありました。
 日米地位協定の合意議事録は、米軍機の機体のような米軍財産は原則として米軍がこれを取り扱い、日本側当局は米側の同意がない限り捜索、差押え等を行えない旨定めています。この規定は、高度な軍事性や機密性を有する米軍財産について、その捜索や検証を徹底的かつ綿密に行うためにはその財産を熟知した米軍が一義的に取り扱うことが適当であること等を踏まえたものです。
 したがって、仮に米軍が日本の警察当局による米軍機の検証に同意を与えないことがあったとしても、それが日米地位協定に直ちに違反するものではなく、日米地位協定上許されない無法なものであるとの御指摘は当たりません。
 海上保安庁では、現場海域周辺において機体の一部と思われる浮流物を回収し、当該回収物の写真撮影などの捜査を実施しており、引き続き、米側にも協力を求めつつ、所要の捜査を実施してまいります。
 また、オスプレイを含め米軍機の飛行安全の確保は、米軍が我が国に駐留する上での大前提であります。先般の事故については、事故後、飛行停止と空中給油訓練の停止措置がとられましたが、その再開に当たっては、米軍だけの判断ではなく、日米で協議を行い、日本政府においても防衛省・自衛隊の専門的知見及び経験に照らして独自に分析を行いました。その結果、米側が事故を引き起こした可能性のある各種要因に有効であると思われる対策を幅広く取っていることを確認しました。また、今後とも空中給油訓練は陸地から離れた場所でしか行わないことも確認しています。
 これらのことから、日本政府として、再発防止について有効な対策等が取られていると判断したことから、その再開については理解できると述べたものであります。引き続き、事故の再発防止を強く求めるとともに、米側と連携を密にして安全確保に万全を期してまいります。
 日本と米国は、自由、民主主義、人権、法の支配といった普遍的価値のきずなで強く結ばれた揺るぎない同盟国です。また、日米同盟はいずれかのみが利益を享受する枠組みではなく、アジア太平洋地域の平和と繁栄の礎として不可欠な役割を果たしています。トランプ新政権との間で揺るぎない日米同盟を更に確固たるものにしていきたいと考えております。
 福島原発事故の費用増大と原発の再稼働についてお尋ねがありました。
 今回の所要資金の見通しは、現時点で最新の情報に基づき一定の蓋然性を有するものとしてお示しをしたものであります。上振れすることは想定しておりません。
 福島原発事故に係る対応については、東京電力が責任を持って対応し、負担することが大原則です。その上で、福島の復興再生のため、国も前面に立って取り組みます。福島原発事故の費用に関し国民負担との御議論もありますが、政府としては、事故当事者である東京電力の経営改革による資金捻出を基本とするなど、国民負担を極力抑えつつ、福島の復興再生を一日も早く実現するとの方針で臨んでおります。
 また、原子力発電所の再稼働については、仮に事故が起きれば住民の方々を始めとして極めて重大な影響が及ぶことを認識し、安全神話の信奉があのような悲惨な事態を招いたことを片時も忘れず、真摯に反省し、その教訓を踏まえつつ、二度と事故を起こさないようにすることが重要だと考えております。
 したがって、政府としては、高い独立性を有する原子力規制委員会が、科学的、技術的に審査し、世界で最も厳しいレベルの新規制基準に適合すると認めた原発のみ、その判断を尊重し、地元の理解を得ながら再稼働を進めるという方針で臨んでおります。
 「もんじゅ」及び核燃料サイクルについてお尋ねがありました。
 「もんじゅ」については、昨年十二月の原子力関係閣僚会議において、これまでの位置付けを見直し、原子炉としての運転再開はせず、今後、廃止措置に移行することとしました。
 「もんじゅ」は、これまで、設計、建設、四〇%出力までの運転を通じて高速炉開発に関する様々な技術的成果を獲得し、研究人材の育成にも貢献するなど、今後の実証炉の開発に貢献する成果を上げたと考えております。他方で、その保全実施体制や人材育成、関係者の責任関係などマネジメントに様々な問題がありました。このことは、昨年十二月の原子力関係閣僚会議において取りまとめられた政府方針に明記されているところです。
 核燃料サイクルは、高レベル放射性廃棄物の量及び放射線レベルを格段に減少させ、長期的な管理をより安全にする観点及び資源の有効利用及びエネルギー安全保障の向上の観点から、原子力を重要なエネルギーとして使用してきた我が国にとっては必要なプロセスだと考えています。
 核燃料サイクルについては、直面する様々な技術的課題やトラブルを、問題点を明らかにした上で一つ一つ解決していかなければなりません。国として責任を持って、安全の確保、技術の向上に万全を期しながら、引き続き自治体や国際社会の理解を得ながら取り組んでまいります。
 憲法改正についてお尋ねがありました。
 憲法が施行されてから今年で七十年になります。憲法は、国の未来そして理想の姿を語るものであり、新しい時代の理想の姿を私たち自身の手で描いていくという精神が日本の未来を切り開いていくことにつながっていくと考えております。
 もとより、憲法改正は国民が国民投票によって決めるものでありますが、新しい時代にどのような憲法がふさわしいのか、各党各会派がそれぞれの意見を持ち寄り、国会の憲法審査会において議論が深められ、具体的な姿が現れてくることを期待したいと思います。なお、憲法改正の議論を国会で進めるべきであるとの意見が五〇%、そして進めるべきではない、反対が二一%という世論調査の結果もあることは承知しております。
 南スーダンPKOについてお尋ねがありました。
 御指摘の事実上の内戦状態が何を意味するものか、必ずしも明らかではありませんが、南スーダンにおいては、現在も武力衝突や一般市民の殺傷行為が度々生じており、その治安状況は極めて厳しいものと認識しています。首都ジュバについても、今後の状況は楽観できず、引き続き注視する必要がありますが、現在は比較的落ち着いています。
 このような我が国の情勢認識について、国連とも基本的に異なるものではないことを確認しています。また、国連の報告書において、UNMISSに対する移動制限等が報告されていることは承知しています。
 他方、南スーダン政府自身は、これまで累次の機会にUNMISSへの協力を表明してきています。また、自衛隊に対しては、南スーダンのキール大統領や政府内で反主流派を代表するタバン・デン第一副大統領からも感謝の言葉が示されており、また、南スーダン政府によるUNMISS及び自衛隊に対する受入れ同意は安定的に維持されているものと考えています。
 このように、南スーダン政府が自衛隊に敵対するものとして登場しないことを確保していることから、自衛隊が南スーダン政府との間で駆け付け警護の任務に基づき武器を使用する事態が生じることは想定されず、自衛隊が憲法の禁ずる武力の行使を行うことはありません。
 これまでも、我が国は、自衛隊派遣のみならず、人道支援や民生支援などで大きな貢献を行い、南スーダンや国連を始め、国際社会から高い評価を受けています。今後とも、現地情勢について緊張感を持って注視しながら、国際社会の平和と安全に貢献していく考えであります。
 国際組織犯罪防止条約の国内担保法についてお尋ねがありました。
 東京オリンピック・パラリンピックを三年後に控える中、テロ対策に万全を期すことは喫緊の課題であります。テロを防ぐためには、テロ等準備罪の整備に加え、逃亡犯罪人引渡しや捜査共助、情報収集において国際社会と緊密に連携することが必要不可欠であり、既に百八十七の国と地域が締結している国際組織犯罪防止条約の締結は、そうした協力関係を構築する上で極めて重要であります。
 国際組織犯罪防止条約を締結するに当たり新たに国内法を整備した国としては、ノルウェー及びブルガリアがあると承知していますが、米国や英国等は重大な犯罪の合意罪を、ドイツやフランス等は参加罪をこの条約の締結以前よりそれぞれの国内において法制化していたため、新たに国内法を整備する必要はなかったと承知しております。
 国内担保法の在り方については、現在、犯罪の主体を一定の犯罪を犯すことを目的とする集団に限定し、準備行為があって初めて処罰の対象とするなど、一般の方々がその対象となることはあり得ないことがより明確になるよう検討を行っているところであり、国民の思想や内心まで取り締まる、多数の一般人が監視の対象となるといった御懸念は全く根拠のないものであります。
 また、現在政府が検討しているテロ等準備罪は、テロ等の実行の準備行為があって初めて処罰の対象となるものであり、これを共謀罪と呼ぶのは全くの誤りであります。(拍手)
#10
○議長(伊達忠一君) これにて午後一時まで休憩いたします。
   午前十一時四十三分休憩
     ─────・─────
   午後一時一分開議
#11
○副議長(郡司彰君) 休憩前に引き続き、会議を開きます。
 国務大臣の演説に対する質疑を続けます。片山虎之助君。
   〔片山虎之助君登壇、拍手〕
#12
○片山虎之助君 日本維新の会の片山虎之助です。
 私は、我が党を代表して、安倍総理に質問いたします。
 今年で第二次安倍内閣が誕生してから五年目を迎えます。そして、我々日本維新の会も、旧党時代を含めれば、結党から五年となります。この間、我が党は安倍政権に対して是々非々の姿勢で臨んできました。野党であっても、単なる批判や反対ではなく、建設的な対案を示すように常に努めてきたつもりです。
 安保国会では、新たな平和安全法制の必要性を認めつつも、包括的な対案を出し、政府・与党と、まとまりはしませんでしたが、修正協議を重ねてまいりました。TPP協定や本年度第二次補正予算案は、他の野党が反対しても賛成し、公務員給与引上げ法案には、与野党とも賛成の中で、我が党は毎年反対してきました。昨年の参院選で我が党は十二人となり、提案権を得て、参院に百一本の議員立法を提案いたしました。立法府復権のためにも、今後、各党各会派の御賛同を得つつ、順次立法化を進める考えであります。御協力をお願いします。
 また、我が党は、引き続き健全な第三極として、是々非々で政府に緊張感を与え、与党を鍛える野党でありたいと願っています。そして、やがて国民の支持を拡大し第二極となり、政権を目指してまいります。
 それでは、まず憲法改正についてお伺いいたします。
 安倍総理は、施政方針演説で、未来を生きる世代のため日本をどのような国にするのか、その案を国民に提示するため、憲法審査会で具体的な論議を深めようと呼びかけました。昨年、どの政党よりも憲法改正に向けて汗をかいてきた我が党としては、この呼びかけを歓迎し、高く評価します。
 憲法審査会では、これまで総論的な議論が中心でしたから、今国会からは各論に入るべきです。まずは具体的な項目の絞り込みが必要です。国民投票で過半数を得るためには、国民が心の底から実現したいと願うものを改正項目とすべきです。したがって、我が党は、九条改正や緊急事態条項のような国論を二分する問題よりも、国民全てが身近で切実に悩んでいる課題の解決を憲法改正で行うべきだと考え、教育の機会均等実現のための教育の無償化、東京圏一極集中打破のための地方分権・統治機構改革、平和安全法制等につき憲法判断を行う憲法裁判所の設置という三項目を選びました。
 安倍総理にお伺いいたします。
 これらの課題は今国会での憲法改正項目として望ましいとお考えですか。特に優先的に取り組むべきと思われる項目があれば御指摘ください。
 憲法改正の具体的な項目につき絞り込みを行っていくためには、全ての党が賛成するのを待つのでなく、個別の項目ごとに各党間の協議を呼びかけ、国民の関心や支持を得て、どの党も議論に参加する環境をつくっていくべきと考えますが、どういう御認識でしょうか。
 教育無償化の実現には必ずしも憲法改正によらなくてもという意見があります。しかし、我々は、憲法に規定することは、国の大方針を鮮明にし、以降の立法や予算措置が拘束されることになります。フランスのように憲法に定めることが恒久的な教育無償化のためには望ましいと考えますが、総理の御所見をお伺いします。
 総理も施政方針演説で示唆されましたが、教育無償化の範囲を特に高等教育にまで広げることには大きな意義があります。高校も大学、大学院も、私立を含めて無償化する方向付けを今国会で思い切って総理に決断していただきたい。長期安定の安倍政権でこそできる骨太の政策だと私は信じております。総理の御決意をお聞かせください。
 また、幼児教育を無償化すれば少子化問題の解決に大きく貢献します。待機児童問題も抜本的に解決します。政府・与党は既に一昨年から無償化の方針を打ち出していますが、いまだに実現していません。幼児教育の無償化も高等教育の無償化に併せて今国会で具体化することを強く望みます。いかがですか。
 さらに、我が党は、先ほど述べました議員立法百一本出しておりますけれども、この中には幼児教育から高等教育に至る教育無償化に関する法案も入っております。今国会でも再提出を考えておりますけれども、その場合、成立に向けて我が党と真摯に御協議いただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
 次に、外交・安保政策についてお伺いいたします。
 まず、日米関係についてです。
 先日、アメリカでトランプ大統領の就任式が行われました。大統領選で激戦を制して勝利を収めたトランプ新大統領に心からお祝いを申し上げます。
 トランプ氏は、就任演説で米国第一を繰り返し、経済・外交政策の抜本転換を訴えました。TPPを離脱する大統領令にも署名しました。しかし、トランプ政権の下でも、日米同盟を堅持し、日米両国が力を合わせて普遍的価値の普及を始め世界の平和と繁栄に貢献をしていく責務があると私は考えます。したがって、トランプ新政権の考え方に日本政府のこれまでの方針と相違する点があっても、日米同盟の重要性に鑑み必ず調整が行われなければなりません。仮に、トランプ大統領が日本にこれまで以上の防衛上の負担を求めてきたとき、真剣な検討を行うべきではないでしょうか。
 我が党は、党の政治理念に、自立する個人、自立する地域、自立する国家を掲げています。自分の国は自分で守るという原則に向けて、防衛関係費の例えば対GDP比等につき必要な見直しがあるとすれば検討すべきではないか、その場合には、併せて日米地位協定の改定や沖縄基地再編の問題も論議すべきでしょう。総理のお考えをお聞かせください。
 両国の経済関係について、今後とも、我が国の譲れない原則は原則として、世界情勢の変化やアメリカの政権交代という現実に柔軟に対応していく必要があります。トランプ大統領は、アメリカでの雇用創出で結果を出そうとしております。日本としても、それに何らかの協力をすることを考えてはいかがですか。
 一九八〇年代の貿易摩擦の際、日本政府は、対外直接投資を増やすための企業代表団派遣や投資行動指針の作成等によりアメリカへの投資を増やそうとしました。同じように、企業の経済活動の自由を守りつつも、対米直接投資を増やす努力に官民挙げて取り組むことを今回も検討すべきではないかと思いますが、総理の御所見をお伺いします。
 TPPについて、まずはアメリカの翻意を粘り強く促すという方針は正しいと考えます。我が党は、結党以来、一貫してTPP賛成を訴え、昨年の臨時国会ではTPP承認と関連法案に賛成しました。TPPは、自由で公正な貿易・投資のルールを作ることにより、経済上、さらに安全保障上の大きなメリットを加盟国に与えるとともに、中国、韓国を含めた東アジア自由貿易圏の形成のためにも極めて有効なものと考えます。
 しかし、TPPは長期的には世界各国、特にアメリカに大きな利益をもたらすと説くだけでトランプ大統領の理解は得られるでしょうか。そこが問題です。自由貿易協定の恩恵を実感できないアメリカ国民が余りにも多いという現実も直視しなければなりません。
 仮に、トランプ新政権が二国間協定を求めてきた場合、TPP加盟国は、しっかりと結束した上で、交渉には応じるべきだと考えます。現在のTPP協定の内容が交渉のゴールとなるよう加盟国同士であらかじめ合意をして、各国がアメリカとの二国間交渉に臨む、日本がリーダーとなって取りまとめていくべきではないでしょうか。総理の御所見をお伺いします。
 一方、中国ですが、力による海洋進出の方向を改めず、また、経済的優位の確立を目指しての各国への更なる投資を行い、更にRCEPに積極姿勢を取ることにも言及しており、ダボス会議では習近平主席が自由貿易の堅持を訴え、存在感をアピールしました。こうした言わば中国の経済的攻勢にどう対処するのか。アメリカなどと連携して日本が主導的な立場を担うべきだと考えますが、いかがでしょうか。
 次に、日ロ関係についてお伺いします。
 安倍総理が、日ロ関係について新しいアプローチを取るべきだとの考えの下に、先日、日ロ首脳会談に臨み、北方領土と平和条約の問題を現実に動かそうとされた努力は評価します。また、旧島民の自由往来に併せて、経済協力により、経済人、ビジネスマンらとロシア住民との交流が進めば、ロシア化一色の中で日本化が交錯し、領土交渉の強い足掛かりになると考えます。
 安倍総理は、共同経済活動が行われる際の特別な制度について特区を想定していると述べておられます。他方、ロシアは、ロシアの主権を前提にすると見られ、実現可能性を疑問視する見方もあります。この特別な制度を今後どのように実現させるのか、お伺いします。
 次に、第三次補正予算案及び来年度予算案に関連してお伺いします。
 今年度予算では税収が当初見込みより一兆七千億円少なくなったため、第三次補正予算案では赤字国債を発行することになります。年度途中の赤字国債の追加発行は七年ぶりなので、今後、補正予算が必要となった場合の財源や財政全体の先行きを懸念する声もあります。来年度の経済見通しは名目GDP二・五%プラスですが、過去十年で政府の見通しを上回ったのは二回だけです。アベノミクスの果実で新たな施策を講じていくこれまでの手法はこれから厳しくなるのではないか、総理の御見解を伺います。
 来年度予算案の規模は九十七兆五千億円で過去最大となりました。安倍政権では、予算規模全体の膨張に歯止めが掛かっておりません。行財政改革による歳出削減の継続的な努力が足りないのではないかと考えますが、総理の御認識を伺います。
 そうでありながら、財政再建、特にプライマリーバランスを二〇年黒字達成するとの旗は下ろしておりません。これをどう実現されますか。総理の答弁を求めます。
 文部科学省で組織的な天下りが発覚し、政府は全省庁について調査するとのことです。言語道断の事態です。
 来年度予算案で、国立大学運営費交付金は一兆円、私学助成金は四千億です。これらの一部が違法、不当な天下りで再就職した者への給与になっているとしたら、ゆゆしき問題でしょう。文科省の予算のこうした支出は徹底的に見直して削減すべきではないでしょうか。いかがですか。また、全ての独立行政法人への財政支出二兆八千億円についても、天下りの有無と併せて徹底して見直すべきではないか、お伺いします。
 政府・与党の来年度税制改正大綱を見ると、配偶者控除の見直し等が明記されましたが、とても将来をしっかりと見据えたものとは言えず、いかにも小手先の改正の感が拭えません。
 人口減、少子高齢化の我が国においては、世代間の格差を是正し、若年層、低所得者層が意欲を持って働き、安心して結婚して子供を産み育てることができるとともに、地域経済が活力を持つような、それを後押しする税制の確立が必須の課題です。
 我が党は、こうした問題意識の下に、昨年末、税制に関する当面の考え方をまとめました。そのポイントは、第一に、配偶者控除を夫婦控除に改め、併せて所得控除から税額控除を基本とした所得税体系を構築すること、第二に、広く薄く相続税の課税ベースを拡大すること、第三に、大企業の内部留保を従業員給与の引上げや設備投資、研究開発等に誘導する内部留保課税を導入すること等であります。総理の強力なリーダーシップの下に、このような将来を見据えた税制の抜本改革に取り組む決意はおありでしょうか、お伺いします。
 次に、働き方改革、特に高齢者の働き方改革と社会保障制度改革についてお伺いします。
 既に述べたように、生産年齢人口の減少が我が国経済の根本的課題であることは論をまたず、政府も各般の働き方改革を検討、実行中であります。
 この度、日本老年学会などが高齢者の定義を七十五歳以上に見直し、六十五ないし七十四歳は准高齢者として社会の支え手として捉え直すよう求める提言を発表しました。十年前に比べて、身体の働きや知的能力が五ないし十歳は若返っているとの判断です。
 生産人口を増やすための最も効果的で即効性のある施策は准高齢者の就業です。それには多様な働き方を可能にする仕組みが必要で、法的整備のみならず、経済界や労働界も人事管理、健康安全管理の手法を准高齢者用に組み替えることが求められます。しかし、この場合、准高齢者個々人の価値観や身体能力の個人差が大きく、個別の対応は簡単ではありません。したがって、雇用や社会保障も、場合によっては複数の制度をつくり、かつ弾力的に運用される必要があるという難しさが残ります。
 この際、企業の人事管理体制や労働関係法制、さらに、高齢者として六十五歳以上を支えられる側として設計されている年金、医療、介護などの社会保障制度についても、七十五歳を基本とした仕組みに改めることについてそろそろ総合的に検討を始めることも必要ではないかと考えますが、総理の御所見を求めます。
 天皇陛下の譲位問題について、せんだって衆参で質問がありました。この問題については、衆参両院の正副議長が各党各会派の合意を得てそれぞれ個別に意見を聞く手続を既に開始しておりますその最中ですが、それは、言うまでもなく静かな環境で落ち着いた議論を行うためであります。このため、各党の率直な意見の開陳や交換は、少なくともその場で、衆参の正副議長が設置したその場で透明性を確保しながら行うことが私はベターではないかと考えますが、総理の御認識を伺います。
 本年は、各国のリーダーの交代も予想される、先の読めない不透明な年と言われております。逆に言えば、多くの新たな可能性を秘めたチャンスやチェンジの年でもあります。本年をそのチャンスやチェンジを生かす節目の年としたい。我が党は、身を切る改革、徹底行革の党として、また地方分権、統治機構改革の党として本年も最大限努力することをお誓い申し上げまして、私の代表質問とします。
 御清聴ありがとうございました。(拍手)
   〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇、拍手〕
#13
○内閣総理大臣(安倍晋三君) 憲法改正についてお尋ねがありました。
 日本維新の会、憲法改正について、教育のあるべき姿を含め、具体的な考え方を示し、各論に踏み込んで真摯に議論しようとされていることに、まずもって敬意を表したいと思います。
 子供たちこそ日本の未来であります。次なる七十年を見据えたときに、教育が極めて重要であることは論をまちません。そして、憲法は国の未来、理想の姿を語るものであります。新しい時代の理想の姿を私たち自身の手で描いていくという精神が日本の未来を切り開いていくことにつながっていくと考えております。新しい時代にどのような憲法がふさわしいのか、各党各会派がそれぞれの意見を持ち寄り、国会の憲法審査会において議論が深められ、具体的な姿が現れてくることを期待したいと思います。
 教育無償化についてお尋ねがありました。
 教育投資は未来への先行投資です。特に、どんなに貧しい家庭で育っても夢をかなえることができるよう、誰もが希望すれば進学できる環境を整えなければなりません。このような思いについては御党とも共有しているのではないかと思います。
 このため、これまでも、幼児教育無償化の段階的推進、奨学金制度の充実、授業料免除の拡大などに取り組んできたところであります。来年度からは、幼児教育の無償化や高校生への奨学給付金を拡充するとともに、成績にかかわらず、必要とする全ての学生が無利子の奨学金を受けられるようにします。さらに、返還不要の給付型奨学金制度を新たに創設することとしました。
 意欲と能力があるにもかかわらず、経済的理由によって進学を断念せざるを得ないということがあってはなりません。今後とも、必要な財源を確保しつつ、しっかりと取り組んでまいります。
 なお、御党の提出される法案については、国会において御判断いただくものと考えております。
 日米同盟についてお尋ねがありました。
 日米同盟は我が国の外交・安全保障政策の基軸であり、トランプ新政権との間でも、信頼関係の上に、揺るぎない日米同盟のきずなを更に確固たるものにしていきたいと考えています。
 トランプ新政権の日本による防衛上の負担に係る立場について予断することは差し控えますが、アジア太平洋地域の安全保障環境が一層厳しさを増す中、地域の平和と繁栄の礎として日米同盟の重要性は増しています。もとより、安全保障政策において根幹となるのは自らが行う努力であるとの認識に基づき、我が国としても防衛力を強化し、自らが果たし得る役割の拡大を図ってまいります。また、日米安保体制は日米いずれかのみが利益を享受するような枠組みではなく、したがって、在日米軍の駐留経費についても日米間で適切な分担が図られるべきものと考えます。
 日米地位協定については様々な御意見があることは承知をしておりますが、政府としてはこれまで、手当てすべき事項の性格に応じ、効果的かつ機敏に対応できる最も適切な取組を通じ、一つ一つの具体的な問題に対応してきているところであります。引き続き、そのような取組を積み上げることにより、日米地位協定のあるべき姿を不断に追求していく考えであります。
 沖縄の負担軽減を図ることは政府の大きな責任であります。地元の方々の理解を得る努力を続けながら確実に結果を出していかなければなりません。今後とも、米国との信頼関係の下、抑止力を維持しながら、沖縄の負担軽減に一つ一つの結果を出していく決意であります。
 トランプ新政権の下における日米経済関係についてお尋ねがありました。
 米国商務省によると、米国における日本企業の累積直接投資額は四千百十億ドルに上り、約八十四万人の雇用を生み出していますなど、日本企業は米国の良き企業市民として米国経済に貢献しています。
 トランプ新政権の雇用政策が日本企業の活動に与える影響については引き続き注視していきますが、活発な貿易、投資は日米経済関係の活力の源泉であり、政府としては、トランプ政権との間で日米経済関係の更なる発展、深化を図るため、官民を挙げて取り組んでいきたいと考えています。
 トランプ新政権がTPPに代えて二国間協定を求めてきた場合についてお尋ねがありました。
 トランプ政権の貿易政策については、今後、閣僚人事の承認が進み、体制が整うに従って具体化されてくることと思われます。それまでは米国の方針を予断することは差し控えたいと思います。
 まずは、日米経済関係をどのように発展、深化させていくか、新政権と様々なレベルで議論していきたいと考えています。その中で、TPP協定が持つ戦略的、経済的意義についても腰を据えて理解を求めていきたいと考えています。
 我が国としては、引き続き、TPP協定の発効に向けた取組についてリーダーシップを発揮し、他のTPP署名国と緊密に連携していく考えです。
 中国の経済的攻勢についてお尋ねがありました。
 中国が国際社会のルールや法を遵守する形で経済的に発展し、地域の繁栄に貢献していくことは、我が国にとっても望ましいことであると考えます。かかる観点から、我が国は、TPP交渉における成果を踏まえ、中国も参加する経済連携の枠組みであるRCEP及び日中韓FTAにおいて質の高い協定を目指して精力的に交渉を進めていきます。
 我が国としては、米国、豪州を始め、ルールや法を尊重する国々と連携し、アジア太平洋地域に二十一世紀にふさわしい自由で公正な経済圏を構築していく上でリーダーシップを発揮していく考えです。
 北方四島における特別な制度についてお尋ねがありました。
 北方四島における特別な制度の下での共同経済活動については、四島において初めて日本人とロシア人が経済活動を行うことを通じ、互いを理解し合い、地元住民の日本への信頼を深めていくという点で、平和条約の締結に向けて大きなプラスになると考えます。そのためにも、お互いの立場を損なわない新しい仕組みをつくるべく、交渉を進めていきます。これは困難な挑戦ではありますが、私とプーチン大統領との間で、平和条約の締結に至るプロセスの一環としてこの交渉を行うことで合意しました。
 七十年以上動かなかった領土問題の解決は容易なことではありませんが、高齢となられた元島民の皆様の切実な思いを胸に、平和条約締結に向け、着実に前進していく決意であります。
 平成二十九年度予算と財政健全化についてのお尋ねがありました。
 平成二十九年度の税収は、平成二十八年度補正後税収から一・九兆円増の五十七・七兆円と見込んでおり、政権交代以降、税収が増加している基調に変化はありません。安倍内閣における経済財政政策の成果であるアベノミクスの果実は着実に生まれています。
 また、安倍内閣においては、これまでも、社会保障の改革を含め、徹底的な重点化、効率化など歳出削減に取り組み、その結果、かつて毎年一兆円ずつ増えていた社会保障費の伸びを今年度予算に続き来年度予算においても五千億円以下に抑えることができました。さらに、政府に対する国民の信頼を得る観点から、行政の在り方を不断に見直し、税金の無駄遣いをなくしていく行政改革の重要性は論をまちません。
 今後とも、徹底的な歳出の重点化、効率化に取り組み、経済再生を図りながら、二〇二〇年度におけるプライマリーバランスの黒字化を実現してまいります。
 文部科学省の天下りに対するお尋ねがありました。
 今回の文部科学省における再就職規制違反事案は、国民の信頼を揺るがすものであり、あってはならないことであります。まずは文部科学省において徹底した調査を行い、再発防止策を講じてもらいたいと思います。
 本事案で生じた国民の疑念を払拭するため、速やかに、山本国家公務員制度担当大臣に対し、同様の事案がないかどうか、全省庁について徹底的な調査を行うよう指示しました。また、文部科学省において関係者の厳正なる処分を行いました。徹底した調査を行い、再発防止策を講ずるなど、天下り根絶のためにしっかりと取り組んでまいります。必要なことは何でもやるとの考えで国民の信頼を確保してまいります。
 なお、大学に対する財政支援は、大学の教育研究水準の向上などを目的として措置するものです。しかし、それは真に必要なものに対して措置されるべきものであり、徹底的に効率化を図り、不要なものについて削減することは当然のことです。このことは、独立行政法人向け財政支出も同じであります。
 税制の改革についてお尋ねがありました。
 御指摘の夫婦控除については、与党の税制調査会の議論において、高所得の夫婦世帯にまで配慮を行えば非常に多額の財源を必要とすること、国民の理解が深まっていないことなどの問題があるとされたところです。こうした中、働きたい人が就業調整を意識せずに働くことができる仕組みを構築する観点から、配偶者控除等について配偶者の収入制限の引上げなどを行うこととしています。個人所得課税改革については、御指摘の控除方式の在り方を含め、引き続き検討を進めてまいります。
 相続税については、資産再分配機能を回復する観点から、基礎控除の引下げや最高税率の引上げ等の見直しを行い、平成二十七年から適用されています。まずは、こうした見直しの効果を検証していく必要があるものと考えています。
 法人税については、平成二十七年、二十八年度改正において、課税ベースを拡大しつつ税率を引き下げるとの考え方の下、成長志向の法人税改革を行ったところであり、今般の改正において、研究開発税制や所得拡大促進税制について、インセンティブ機能を強化する見直しを行うこととしております。これにより、企業における投資や賃上げへの積極的な取組を期待しております。
 高齢者の働き方改革と社会保障制度改革についてのお尋ねがありました。
 御指摘のように、高齢者の方々にできる限り社会の支え手として活躍していただける環境を整えることは重要であります。安倍内閣としても、一億総活躍社会の実現に向けた施策を進めているところです。
 一方で、社会保障制度における高齢者の考え方を見直すことについては、企業の雇用慣行や国民意識も踏まえつつ、慎重に議論されるべきものと考えております。御指摘の提案についても、医学的な立場から検討されたものと承知しております。
 高齢者の方々の働き方改革については、六十五歳以降の継続雇用延長や六十五歳までの定年延長を行う企業などに対する支援や、ハローワークにおける再就職支援の強化に努めてまいります。また、高齢者の方々には、健康で末永く活躍いただけるよう介護予防の取組などを進めてまいります。
 天皇陛下の御公務の負担軽減等に係る国会での議論の在り方についてお尋ねがありました。
 国会におかれては、衆参両院の議長、副議長を中心に各党各会派からの意見聴取が行われ、静かな環境で議論が進められるものと承知しております。政府としては、そこでの御議論をしっかり受け止め、更に検討を進めていく所存であります。(拍手)
    ─────────────
#14
○副議長(郡司彰君) 風間直樹君。
   〔風間直樹君登壇、拍手〕
#15
○風間直樹君 民進党・新緑風会の風間直樹です。
 私は、会派を代表して、政府四演説に質問します。
 冒頭、東北被災地、熊本、そして地元糸魚川の皆様とともに復興を誓います。
 最初に、内閣のあっせんによる会計検査院OBの天下り疑惑についてお尋ねいたします。
 検査院退職者のうち毎年約十人が再就職していますが、内閣のあっせんが疑われる事例があります。
 第一は、検査院OB指定ポストの存在が疑われる事例です。
 江戸川区にあるA学園に平成二十一年、二十二年、二十三年と三名が、またS大学に平成二十三年、二十八年と二名が再就職しています。ほかにも、学校法人への再就職は、平成二十二年S工業大学、二十四年N医科大学、二十四年K大学、二十七年K工業大学に各一名あります。
 また、二十五年三月末に検査院を退職したT氏は、直ちに検査院に再任用され、私立大学補助金検査を行う第四局に勤務、二十六年二月、第五局に異動、同年四月、N大学に非常勤嘱託で再就職。今も検査院勤務を続けています。人事院、総務省はなぜこれを許したのですか。総理に伺います。
 さらに、成田国際空港株式会社に平成二十四年と二十八年、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構に平成二十五年と二十七年、家電量販店であるY電機の子会社C社に平成二十二年と二十六年、いずれも二名が再就職しています。文科省、国交省、経産省は所管の法人等にこれらをあっせんしているのではないですか、お尋ねします。
 ほかにも、省庁関連の法人等へのあっせんが疑われる事例が多数あります。
 平成二十六年、独立行政法人科学技術振興機構、二十六年、一般社団法人建設物価調査会、二十六年、公益社団法人建設荷役車両安全技術協会、二十八年、中日本ハイウェイ・エンジニアリング東京、二十五年、一般社団法人農業農村整備情報総合センターに各一名が再就職しています。文科省、国交省、農水省は検査院OBに指定ポストをあっせんしているのではないですか、お尋ねします。
 第二は、複数の再就職先を同時に掛け持ちする猛者のケースです。
 検査院事務総長官房審議官のI氏は、平成二十四年に二つ、二十五年に三つの企業に再就職しました。うち四社はさきのY電機と関連会社です。しかし、翌年、決算委員会での指摘以降、なぜかこうした猛者が消えました。検査院の危機管理能力の高さがうかがえます。経産省にお尋ねします。この複数再就職をあっせんし、国会で指摘され、こっそりと取りやめたのではないですか。
 以上、指摘した事例において、各省OBによるあっせんも存在するのではないですか。文科、国交、経産、農水の各大臣は併せてお答えください。
 さて、河戸会計検査院長は、これらについて、職員の営利企業等への再就職あっせんは一切行っていないと言います。国民はこの説明に納得されるでしょうか。
 会計検査院は、憲法九十条で国の決算検査を義務付けられ、なあなあやもたれ合いは許されません。検査院には、私らはあなたたちの世話にはならないよという独立性と、不正があればびしびし指摘するよという倫理観が求められます。そのため、会計検査院法第一条で、「検査院は、内閣に対し独立の地位を有する。」とされています。
 検査院は、内閣の再就職あっせんなど間違っても受けていませんか。税金の使い道を何のしがらみもなく厳しくチェックしていますか。
 実は、最近、検査院OBの省庁への再就職が増えています。検査対象への再就職など許されるのでしょうか。総理に伺います。
 安倍総理、これらの疑いを払拭するため、総務省設置法四条、行政機関の監視調査と、国家公務員法十七条、抜かずの宝刀、人事院の調査権限、この発動による全省庁の徹底調査を約束してください。憲法七十三条一号、すなわち法の誠実な執行を確保するのは、総理、あなたの責任です。
 各省一人の事務次官を目指し、職員が生涯を懸けて競争するキャリアシステム。再就職あっせんは平成十九年に禁止されましたが、検査院OBがなおあっせんを受けているこの疑惑。総理、問題の根源、キャリアシステムを見直すべきではありませんか。
 官僚支配著しい我が国では、国会の官僚機構常時監視が必要です。政府と官僚機構をつくる衆議院、それを監視する参議院という新視点から私は提案します。参議院に行政の組織、人事に関する常時監視機関をつくり、人事院の調査権限を移す、これで天下りを根絶しようではありませんか。
 日米同盟についてお尋ねします。
 施政方針演説に、これからも、日米同盟こそが我が国の外交・安全保障政策の基軸である、これは不変の原則ですとあります。果たしてそうでしょうか。英国は永遠の同盟を持たない、不変の敵もいない、永遠の国益に基づくのが我が責務だという英国首相パーマストンの言葉に私は真理を見ます。
 総理は国益を短期的に捉えてはいませんか。それとも、米国と永遠の同盟を築ける理由があるのですか。真意を伺います。
 福岡高裁那覇支部の辺野古訴訟判決について伺います。
 沖縄県敗訴の判決後、同支部裁判官異動人事に対する官邸の介入が指摘されています。これは事実でしょうか。
 判決を出した多見谷寿郎裁判長は、平成二十七年十月、東京地裁立川支部から福岡高裁那覇支部に異動。同じく蛭川明彦判事は、二十七年四月、東京地裁立川支部から福岡高裁那覇支部に異動。二人の立川支部での勤務は、二十六年八月から二十七年三月まで七か月重なっています。
 また、報道によると、福岡高裁那覇支部が国、沖縄県双方に和解を勧告した平成二十八年一月二十九日の四日後、二月二日、定塚誠法務省訟務局長と当時の真部防衛省整備計画局長、元沖縄防衛局長が官邸を訪問しています。定塚訟務局長はここで、国敗訴を避けるため、訴訟戦略について総理に助言、説明したのではありませんか。さらに、定塚訟務局長と多見谷裁判長は、平成六年七月から七年三月までの八か月、共に、東京地裁判事補として、さらに二十六年四月から八月までの四か月、東京高裁判事として過ごしています。このように、定塚訟務局長、多見谷裁判長、右陪席の蛭川判事の勤務の軌跡はぴたりと重なる。三人が意思疎通できることは明白です。
 国民の皆様、辺野古訴訟は、監督安倍総理、脚本定塚訟務局長、主演多見谷裁判長、助演蛭川判事というキャスティングで行われたお芝居だったのではないでしょうか。
 行政が人事を通し司法の独立を侵すことを民進党は許しません。鬼丸かおる最高裁裁判長の判断も含め、国民は国会を通してこれら裁判官をチェックし、また最高裁裁判官国民審査により罷免する権利を有しています。
 在日米軍基地について伺います。
 私は、沖縄北方問題特別委員長当時、約二十の在日米軍基地を視察しました。圧倒的な米空軍の打撃攻撃力、日本海軍が築き上げた施設の大半を占有する米海軍、海兵隊用の沖縄の広大な訓練用地と海、そして極めて少ない米陸軍兵力、安全保障の視座に大きな影響を受けました。
 また、このとき、米軍高官より、在日米軍は日本に侵攻する勢力の根拠地を打撃攻撃力でたたくことにより、安保条約上の日本防衛義務を履行すると聞きました。総理、これは事実でしょうか。
 国民は在日米軍基地の実態を知らされていません。しかし、在日米軍駐留経費負担増の是非を考えるなら、事実を知る必要があります。日本国内における米軍施設・区域は幾つありますか。総理は、国会議員に当選以来、それらのうち、どこを幾つ視察されましたか。
 最後に提案します。総理、この際、大統領訪日時に両最高指揮官共に米軍基地を視察し、実態を把握されてはいかがでしょうか。
 以上で代表質問を終わります。(拍手)
   〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇、拍手〕
#16
○内閣総理大臣(安倍晋三君) 風間議員にお答えをいたします。
 会計検査院OBの再任用及び再就職についてお尋ねがありました。
 御指摘の平成二十五年三月末に会計検査院を退職した職員の事例につきましては、会計検査院において国家公務員法の規定に基づく再任用が行われ、再任用期間中における兼業についても、国家公務員法に基づき会計検査院において所要の手続を行った上で許可が行われたと承知しています。また、この職員については、検査対象の会計検査の事務には従事していないと聞いております。
 会計検査院は、会計検査院法に定められているとおり、内閣に対して独立した地位を有する機関として厳正かつ公正な会計検査を実施することが求められており、会計検査院の職員の再就職については、こうした趣旨を踏まえるとともに、国家公務員法の規定にのっとって行われていると承知しています。また、会計検査院の職員が会計検査の対象である府省庁や団体に再就職している場合においても、会計検査院としては、当該府省庁や団体に対して厳正な会計検査を実施していると承知しています。
 総務省設置法に基づく調査の発動について御指摘がありましたが、先日、国家公務員制度を担当する山本大臣に対し、全省庁について徹底的な調査を行うよう指示したところであり、これには会計検査院も含まれます。今後、準備ができ次第、調査をし、その結果を明らかにしてまいります。なお、退職管理に関しては、国家公務員法の規定により、人事院の調査の権限は及びません。
 また、キャリアシステムの見直しについてのお尋ねがありましたが、これまでの国家公務員法の改正において、人事評価に基づく能力・実績主義による人事管理を導入するとともに、幹部職員の候補となり得る管理職員としてその職務を担うにふさわしい能力及び経験を有する職員を総合的かつ計画的に育成するため、幹部候補育成課程を導入しました。こうした制度をしっかりと運用することにより、能力・実績主義を踏まえた採用年次等にとらわれない人事を推進してまいります。
 我が国の同盟の在り方についてお尋ねがありました。
 そもそも同盟とは、我が国が武力攻撃を受けたときに命懸けで日本を守るとの義務を負うものであります。我が国を取り巻く安全保障環境はますます厳しさを増しており、もはや日本のみで自国の安全を守ることはできません。これを踏まえ、我が国の近隣諸国を見渡した場合、いずれの国と我が国が同盟を結ぶべきでありましょうか。自由、民主主義、人権、法の支配といった普遍的価値を共有し、我が国を守る意思と能力を有するのは米国のみであり、これ以外に我が国が同盟を結ぶ相手はあり得ません。トランプ新政権との信頼関係の下に揺るぎない日米同盟のきずなを更に強化していきたいと考えています。
 福岡高裁那覇支部における裁判官の人事等についてお尋ねがありました。
 行政が裁判官の人事に介入するなどして司法の独立を侵害するようなことは全くありません。御指摘は全くの臆測に基づくものであり、誠に遺憾であります。なお、私が各府省の幹部から業務について報告を受けることは当然のことであります。
 在日米軍の役割及び在日米軍基地の視察についてのお尋ねがありました。
 我が国を取り巻く安全保障環境が一層厳しさを増す中、様々な緊急事態に迅速かつ機動的に対応できる態勢を維持している在日米軍の駐留は、日米安全保障体制の中核的要素です。
 日米防衛協力のための指針において、米軍は、日本防衛のため、打撃力の使用を伴う作戦を実施することができるとされていますが、日米安保条約第五条に基づく対日防衛義務の履行はこれにとどまるものではなく、指針においても、米軍は、日本防衛のため、空域の防衛、海域の防衛、陸上の防衛、弾道ミサイル対処などの作戦において自衛隊を支援し補完することが明記されています。
 このような在日米軍の安定的駐留を維持するため、米軍施設・区域は重要な役割を果たしています。平成二十九年一月一日現在、在日米軍の使用に供している米軍専用の施設・区域の数は全国七十八であります。私が視察した米軍施設・区域の場所と箇所については特に記録を取っているわけではありませんので正確なお答えはできませんが、外務大臣秘書官の時代を含めると、嘉手納、岩国、横田、三沢などを視察しております。
 米国大統領の訪日については何ら決まっておらず、現時点で仮定に基づきお答えすることは差し控えたいと思います。
 残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。(拍手)
   〔国務大臣松野博一君登壇、拍手〕
#17
○国務大臣(松野博一君) 会計検査院OBの再就職についてお尋ねがありました。
 文部科学省としては、あっせんの事実は把握をしておりません。
 いずれにしても、今回の文部科学省の再就職規制違反事案で生じた国民の疑念を払拭するため、総理から山本国家公務員制度担当大臣に対し、同様の事案がないかどうか徹底的な調査を行うよう指示がされていると承知しており、文部科学省としてこの調査にしっかりと協力して事実を明らかにしてまいります。
 また、文部科学省としても、今後、再就職等監視委員会から指摘を受けた事項について徹底した調査を行うのはもちろんのこと、これらのほかに再就職等規制に違反するものがなかったかどうかにつきましても、この再就職等規制制度発足時に遡ってしっかりと調査をし、厳正に対処してまいります。(拍手)
   〔国務大臣石井啓一君登壇、拍手〕
#18
○国務大臣(石井啓一君) 会計検査院職員OBの再就職についてお尋ねがございました。
 国土交通省として把握しているあっせんの事実はございません。
 いずれにいたしましても、文部科学省の再就職規制違反事案で生じた国民の疑念を払拭するため、総理から山本国家公務員制度担当大臣に対し、同様の事案がないかどうか徹底的な調査を行うよう指示がされていると承知をしておりまして、国土交通省としてこの調査にしっかりと協力して事実を明らかにしてまいります。(拍手)
   〔国務大臣世耕弘成君登壇、拍手〕
#19
○国務大臣(世耕弘成君) 会計検査院職員OBの再就職についてお尋ねがありました。
 会計検査院からは、これまでの国会審議においても、あくまでも本人と再就職先の合意により再就職したものと答弁されていると承知をしております。
 経済産業省としましても、把握している再就職あっせんの事実はありません。
 いずれにせよ、文部科学省の再就職規制違反事案で生じた国民の疑念を払拭するため、総理から山本国家公務員制度担当大臣に対し、同様の事案がないかどうか徹底的な調査を行うよう指示がされており、経済産業省としてもこの調査にしっかりと協力をして事実を明らかにしてまいります。(拍手)
   〔国務大臣山本有二君登壇、拍手〕
#20
○国務大臣(山本有二君) 会計検査院OBの再就職につきましてお尋ねがございました。
 農林水産省として把握しているあっせんの事実はございません。
 なお、文部科学省の再就職規制違反事案で生じた国民の疑念を払拭するため、総理から山本幸三国家公務員制度担当大臣に対し、同様の事案がないかどうか徹底的な調査を行うよう指示がされていると承知しておりまして、農林水産省としてこの調査にしっかりと協力して事実を明らかにしてまいります。(拍手)
    ─────────────
#21
○副議長(郡司彰君) 岡田直樹君。
   〔岡田直樹君登壇、拍手〕
#22
○岡田直樹君 自由民主党の岡田直樹です。
 私は、自由民主党・こころを代表して、安倍総理大臣の施政方針演説について総理に質問いたします。
 まず、これまでの平成の世を思い起こしながら、天皇陛下の御負担軽減について伺います。
 昨年八月、天皇陛下は、国民に対するビデオメッセージで、象徴としてのお務めについてお言葉を述べられました。その中で、これまでのように全身全霊をもって象徴の務めを果たしていくことが難しくなるのではないか、こうしたお気持ちを表明されたことを我々として重く受け止めなければなりません。そうした陛下のお気持ちを酌みながら、主権者である国民の代表として今後の象徴天皇の在り方について議論していくことは、我々国会議員に課せられた重大な責務であると考えます。
 平成の世になってから三十年近くがたとうとしておりますが、思い起こせば激動の時代でありました。平成元年はバブルの絶頂期であり、我が国は空前の好景気を謳歌していました。国際的には、天安門事件が起きた年であり、ベルリンの壁が崩壊した年でもあります。その年の十二月には、米ソの首脳がマルタ島で会談し、冷戦の終結を宣言しました。
 まさに世界史の転換点と言える年に始まった平成でありますが、我が国では、その後、バブルが崩壊し、経済的には厳しい時期が続きました。失われた二十年とも言われた出口の見えない景気の低迷に、自信を失いかけたこともありました。しかし、第二次安倍政権の発足後、デフレからの脱却が視界に入り、経済が好調に回り始めているのであります。
 一方で、平成七年には阪神・淡路大震災、平成二十三年には東日本大震災など、甚大な災害にも見舞われました。そのたびに、天皇皇后両陛下は、自ら被災地に赴いて、被災された方々を励まされたのであります。避難所で膝をついて被災された方々と同じ目線で話される両陛下の姿は、国民の目に深く焼き付いています。このことで、どれほど多くの人々の傷つき疲れた心が救われたことでしょうか。こうして国民に寄り添う姿こそが新しい時代の象徴天皇の姿であると、陛下御自身が身をもって示されてきたわけであります。
 また、陛下は、戦後七十年に当たる一昨年にはパラオを、続いて昨年はフィリピンを訪問され、戦没者の慰霊をし、平和を祈念されました。特にパラオは、両陛下が訪れるにふさわしい宿泊施設などがない厳しい環境であったにもかかわらず、実現を強く望まれた末の御訪問でありました。
 両陛下が御訪問先で献花され、さきの戦争で亡くなった全ての人々を追悼し、その遺族の歩んできた苦難の道をしのばれるお姿は、戦争の苦しみを慰めると同時に、平和の大切さを改めて思い起こしたのであります。
 新しい時代の象徴としての天皇のお姿がどうあるべきかという問題は、我々一人一人が党派を超えて真剣に考える問題です。国民統合の象徴としての陛下の御負担軽減の問題は決して政争の具にすべきではない、この点においては、この場に御参集の全ての皆様が同意されることと思います。二十三日に政府の有識者会議により、今後の検討に向けた論点の整理がまとめられました。立法府としても、党派を超えた真摯な議論と速やかな法整備が必要であります。
 ここで、天皇陛下に対する総理の思いを伺うとともに、今国会における天皇陛下の御退位等に関する法整備について、総理の御見解を伺います。
 次に、各分野の基本方針について伺ってまいります。
 昨日、我が党の吉田幹事長から経済財政や外交・防衛などを中心に質問いたしておりますので、私からは、国民の安全、安心の確保や地方創生を中心に質問させていただきます。
 まずは、防災対策について伺います。
 昨年十二月二十二日に新潟県糸魚川市で大規模な火災が発生し、多くの人が住まいや職場を失う甚大な被害をもたらしました。住宅や店舗など百四十七棟が焼け、その八割に当たる百二十棟が全焼するという、我が国では過去二十年で最悪の火災となってしまいました。
 自由民主党では、今回の災害をフェーン現象による強風がもたらした自然災害と位置付けて、被災者生活再建支援制度を適用するよう政府に検討を申し入れるとともに、大みそかの十二月三十一日にも幹事長以下が現地入りし、新潟県知事、糸魚川市長らと意見交換を行いました。総理も今月十一日に現地を視察されていますが、まずは速やかな復旧に政府を挙げて引き続き取り組んでいただきたいと存じます。
 今回の教訓を生かして、全国的に火災に対する備えを見直していく必要があると考えます。近年、地震や水害などの大きな自然災害が続いたこともあり、防災、減災に対する国民意識は高まってきております。これを機に、火災も含めた様々な種類の災害を想定し、防災・減災対策を一層充実していく必要があると考えますが、いかがでしょうか。総理の御見解をお伺いします。
   〔副議長退席、議長着席〕
 重ねて、災害からの復旧復興についても伺います。
 糸魚川大規模火災のほかにも、昨年は、四月に震度七を二度も記録した熊本地震があり、八月、九月には台風十号を始めとする台風被害が生じるなど自然災害が続いた年でありました。まだ復興が道半ばである東日本大震災の被災地でも、重ねて台風による被害を受けた地域もあります。
 私も、自民党台風十号被害視察団の一員として岩手県に派遣され、九名もの高齢者の命が失われたグループホームなどの被害状況を確認してまいりました。気候変動のせいか、これまでとは全く異なる経路で台風が東北地方に上陸し、思い掛けない被害が生じてしまったのであります。御冥福を祈るとともに、災害対策に万全を期さなければならないとの思いを新たにしたところであります。
 政府は、熊本地震や台風被害に対して激甚災害の早期指定を行ったほか、災害救助法や被災者生活再建支援制度の適用など、一日も早い復旧に努めてきました。引き続き、復旧事業の早期完了のために、事業を進められるところは速やかに発注し、すぐに工事に取りかかるといった対応で復旧復興を進めていただきたいと思います。
 しかし、熊本では、建設業の人材不足が著しいため、復旧事業の入札に業者が集まらず入札が成立しない、そのため、なかなか復旧事業に着手できないという状況もあると聞いております。また、北海道、東北では、積雪のために冬の間は工事が難しく、春には直ちに工事に着手する必要があります。もし業者が集まらずに入札が成立しないとなれば、復旧復興のタイミングを逃すことにもなりかねません。
 このように、建設業の人材不足などにより災害復旧が円滑に進まない状況は、東日本大震災の復旧復興事業においても見られるところであります。今後も各地で同じような状況が続けば、我が国の災害対策にとって大きな障害となるとも考えられます。防災、減災に対する取組とともに、災害後の復旧復興の円滑化についても政府を挙げて対策を検討すべきであると考えます。
 防災、減災及び災害からの復旧復興事業を円滑に進めていくため、総理はどのように取り組んでいくお考えか、お尋ねをします。
 次に、同じく安全、安心の観点からテロ対策について伺います。
 我が国は二〇二〇年に東京オリンピック・パラリンピックを開催しますが、テロ対策にしっかりと取り組み、是非とも成功に導かなければなりません。東京オリンピック・パラリンピックをテロリストから絶対に守らなければならないのであります。
 開催国たる我が国は、国際社会と協力し、テロ対策に万全の体制を整える必要があります。にもかかわらず、テロ等の組織犯罪と闘うために百八十七の国と地域が締結している国際組織犯罪防止条約については、署名から十六年もたっているのに、いまだ我が国は締結できていません。テロ対策に万全を期すべきオリンピック・パラリンピック開催国が、そのための国際的な捜査協力や情報ネットワークに入れないのは、異常な事態とさえ言えます。そのための国内法整備として行われるテロ等準備罪の創設は、組織犯罪を実行する前の準備段階で処罰するものでありまして、これが一般国民が対象になるようなことはあり得ないと私は考えます。
 早急に条約を締結するため、必要な法整備を行うべきと考えますが、総理のお考えをお聞かせください。
 続いて、この東京オリンピック・パラリンピックと地方創生について伺います。
 宮城県で開催予定のサッカーに加え、野球、ソフトボールでは、試合の一部を福島県で開催するといった案も検討されていると聞いております。このように、東京オリンピック・パラリンピックに復興五輪という意味を持たせることが重要であります。また、被災地を含め、全国にその恩恵が及ぶように、言わば地方創生五輪にもなるように工夫をしていくべきだと考えます。
 二〇一二年のロンドン大会では、ロンドン以外の地域でも、雇用や投資の増加が発生し、広い地域に経済効果が及んだとされています。また、大会後も、ロンドン以外でも観光客が大きく増加したとのことであります。
 オリンピック・パラリンピックは、地方創生を加速化させる大きなチャンスであります。我が国においても、こうした成功事例に学んで、オリンピック・パラリンピックの効果を全国に波及させるための取組を進めていくべきだと考えております。東京オリンピック・パラリンピックを地方創生に生かすことに関する総理の考えを伺います。
 次に、教育再生について伺います。
 総理が演説で表明されていたとおり、我が国の未来、それは子供たちであります。子供たちの一人一人の個性が大切にされる教育を進めることが何より重要であります。さらに、家庭の経済事情により、進学を希望するにもかかわらず断念せざるを得ないという状況を変え、誰もが希望すれば進学できる環境を整えなければなりません。
 そのため、政府は、フリースクールの子供たちへの支援や高校生への奨学給付金の拡充、返還不要の給付型奨学金制度の創設など、全ての子供たちが未来に希望を持ち、夢に向かって学んでいくことができる施策を講じています。これこそ、総理の施政方針演説に引用された兼山のハマグリであり、日本の未来をつくる大きな一歩であると考えます。
 教育再生、誰にでもチャンスのある教育の実現に懸ける総理の思いをお伺いいたします。
 次に、女性の活躍について伺います。
 今回の税制改正では、パートで働く方々が就業調整を意識することなく働くことができるよう、配偶者特別控除の収入制限を大幅に引き上げております。アベノミクスにより、パートの方々の時給も確実に上昇しています。企業活動を支えているパートの皆様が今まで以上に活躍できる環境を整えることは、企業にとっても大きなメリットとなります。
 子育て、介護、日頃の家事など様々な場面で活躍している方々からの視点は、もっともっと社会で活用されるべきであります。例えば、近年、トラックドライバーや建築、建設分野への女性の進出が増加傾向にあります。女性の能力の発揮で経済の活性化が図られるものと大きく期待しております。
 女性の活躍の重要性への認識と、今後どのように女性の活躍を進めていくお考えか、お聞かせを願いたいと存じます。
 次に、私の持論として、鉄道ネットワークの整備、すなわち鉄道の復権について伺います。
 安倍内閣の大胆な挑戦により、我が国には経済の好循環が生まれております。地方創生にとって大切なことは、この経済の好循環を更に全国津々浦々まで届けることであります。そのために、生産活動、観光、地域住民の生活などに不可欠な道路、空港、港湾等の交通ネットワークが重要な役割を果たしていることは言うまでもありません。
 昨年九月の臨時国会の所信表明演説で、総理は、リニア中央新幹線と整備新幹線の建設を加速し、東京と大阪を大きなハブとしながら、全国を一つの経済圏に統合する地方創生回廊に言及されました。
 私の地元である石川県でも、一昨年、北陸新幹線が金沢まで開業した際には、観光客が増え、ビジネスのチャンスも膨らみ、地域開発の効果が極めて大きいことを実感いたしました。そうした経済的、社会的効果を見れば、鉄道、特に高速鉄道ネットワークは、もちろん北陸のみならず全国的に社会資本ストック効果が大きいインフラであり、国土のバランスある発展にとっても必須であると考えます。
 我が国の鉄道ネットワークは、その正確さや安全性において世界に誇れるものであり、国民生活の向上や経済の発展、観光の振興などに大きな役割を果たしてまいりました。東日本大震災の被災地でも、鉄道の区間が復旧するたびに大きなニュースとなり、町が喜びに包まれます。このように、鉄道は人々の希望を運ぶ存在でもあるのです。
 全国各地で予想もしない災害が続いている昨今の状況を考えると、鉄道ネットワークの整備に当たっては、一部の路線が災害でダメージを受けたとしても、他の路線が代替的機能を果たすことで速やかな復旧復興活動や継続的な経済活動を確保するというリダンダンシーという考え方がますます重要になっております。
 昨年末、与党プロジェクトチームにおいて敦賀―新大阪間のルートが一本化された北陸新幹線も、このリダンダンシーという観点から整備が急がれるべきと考えます。万一、太平洋側で地震や津波などの大規模災害が発生した場合、東海道新幹線の代替補完機能として、日本海側を回る新幹線は大きな役割を果たすと期待されているからであります。
 加えて、鉄道は環境にも優しい交通機関であります。鉄道が旅客一人を運ぶのに排出するCO2は、自動車の六分の一、飛行機の五分の一であります。このように優れた特徴を持つ鉄道でありますが、国の予算という面では、とても十分な予算が措置されているとは言えません。国の道路予算が約一兆七千億円であるのに対して、鉄道予算は約一千億円にすぎないのであります。道路、港湾などの着実な整備を進めると同時に、鉄道予算は相当額を増額すべきと考えます。
 地方創生、防災、環境・エネルギーなど、様々な面から鉄道の意義を見直し、政府としても鉄道復権に向けて力を入れていく必要があると考えますが、総理の御見解はいかがでしょうか、伺いたいと存じます。
 次に、地方創生の更なる推進について伺います。
 地方創生は我が国の最重要課題の一つです。地方の過疎化も都市の過密化も背中合わせの問題であり、国民がひとしく安心して活力ある生活を送るために解決しなければならない課題であります。防災、減災や環境問題を考えた場合にも、東京一極集中は大きなリスク要因であり、国土のバランスの取れた発展は不可欠であります。
 地方では、その地方を愛し、地域資源に工夫を加えて地方創生に取り組んでいる人々がたくさんおられます。このような取組を全力で支援せずに地方創生を実現させることはできないと感じます。自由度の高い地方創生交付金は、まさに自分たちの地方の未来を自分たちの創意工夫と努力で切り開くという意欲的なチャレンジを応援する仕組みとして大いに期待をいたしております。
 しかし、地方創生は地域の力だけでは足りない場面もございます。例えば、先ほど質問いたしました新幹線などの高速鉄道ネットワークの整備がそうです。国として整備すべきものはしっかりと整備するという姿勢が大切と考えます。その観点で、政府機関の地方移転についても触れたいと思います。
 昨年決定された政府関係機関移転基本方針では、文化庁が京都に移転することになったほか、私の地元である石川県にも国立近代美術館の工芸館が移転することになりました。しかし、各省庁からは政府機関を東京に残したいという移転に対する抵抗感も強いと感じられます。
 現状、全体としては拠点の設置や連携の強化といった内容が多く、本格的な移転を期待していた地方からは残念な結果であったという声も出ていることは事実であります。しかしながら、これで終わりということではなく、これをあくまでも出発点として、今後ともできるものから一つずつ分散移転していくことが必要であると考えます。
 また、地方の雇用を生み出すためには、企業の本社機能の移転や生産拠点の分散立地も重要であります。税制措置などは用意されていますが、地方創生のためには更に深掘りする必要があるのではないかと考えます。
 政府機関や民間企業の地方移転も含め、どのように地方創生の更なる推進に取り組んでいくのか、その決意をお尋ねいたします。
 最後に、参議院改革について申し上げます。
 国権の最高機関、唯一の立法機関の一翼を担う我々参議院は、昭和四十六年に河野謙三議長による参議院問題懇談会が設置されて以来、二院制における参議院の在り方、独自の使命などについて、常に議論を続けてまいりました。
 山崎正昭前議長の下では選挙制度協議会が設置をされ、私も協議会のメンバーの一人として、各会派と議論を重ねてまいりました。意見の隔たりは大きいものがありましたが、最終的には四県二合区を含む十増十減を主な内容とする公職選挙法改正が行われ、昨年の参議院選挙でそれが実施されました。
 しかし、今回、合区がされた各県では、投票率の低下など深刻な影響が指摘をされております。合区反対と書かれた無効票も少なからずあったと聞きます。自らの県から国会に代表を送れないということは、一層の地域間格差をもたらす、地域間格差に拍車を掛けることが懸念されます。そして、合区を解消し、地域の声が国会に届く体制を取り戻してほしいという切実な要望が全国知事会を始め地方六団体から相次いでおります。
 衆議院が政権を選択するための国民の意見を集約するという役割を持つのに対し、参議院は多様な国民の意見を国政に反映させるという機能を果たすことが期待されております。そのために、参議院は創設以来、地域代表と職能代表という性格を持った選挙制度を採用してまいりました。
 地方創生が国政上の重要課題となる中で、地方も都市も歴史的、文化的、社会的、経済的にも一体性を有し、我が国の政治や行政の多くの場面で現実的に重要な役割を果たしている都道府県という単位で、地方の声をしっかり国政に届けるために代表を国会に送り出すことには大きな意味があると考えます。
 現在、参議院自民党では、参議院在り方検討プロジェクトチームを設置し、そもそも参議院はどうあるべきか、そのための選挙制度はどうあるべきかについて忌憚のない意見交換を行い、議論を深めている最中であります。各都道府県から集まる代表が、互いの課題を把握して国全体の施策として解決していくことは、今まで都道府県を選挙区としてきた参議院だからこそできることではないでしょうか。
 各都道府県から半数改選で必ず一名の代表を出すために、我々は憲法改正も一つの選択肢として議論すべきと考えております。
 日本国憲法の施行から七十年がたち、当初は存在しなかった様々な課題が生じています。新しい人権、安全保障環境の変化、緊急事態への対応などがよく挙げられる論点でありますが、地方の人口減少と大都市への人口集中、それに対応した選挙制度の改革も大きな課題であり、憲法議論の俎上にのせるに値する問題と考えます。
 参議院の独自性として、決算審査の重視とODAをめぐる諸問題の調査に積極的に取り組むという成果を生み出したかつての参議院改革協議会はしばらく開かれておりませんが、改革に向けた不断の努力は続けなければなりません。今こそ、党派を超えて、選挙制度を含めた参議院の抜本的な改革について協議を始め、真に国民のための制度設計を行うことが必要であります。
 このことを皆様に強く強く呼びかけまして、私の代表質問を終わります。
 御清聴ありがとうございました。(拍手)
   〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇、拍手〕
#23
○内閣総理大臣(安倍晋三君) 岡田直樹議員にお答えをいたします。
 天皇陛下の御公務の負担軽減等についてお尋ねがありました。
 昨年八月、天皇陛下が国民に向けてお言葉を発せられたことを重く受け止めております。この問題は、国の基本、そして長い歴史とこれからの未来にかけての極めて重い課題であります。決して政争の具にしてはならず、政治家がその良識を発揮しなければならないものです。
 現在、有識者会議で御議論いただいており、一昨日、論点整理が行われ、公表されました。昨日には、衆参両院の議長、副議長にもお示ししたところです。今後、衆参両院におかれまして、議長、副議長を中心に各党各会派からの意見聴取が行われるものと承知しております。それをしっかり受け止め、政府における検討を更に進めていく所存であります。
 防災・減災対策についてお尋ねがありました。
 糸魚川の大規模火災で被災された方々に、改めて心よりお見舞いを申し上げます。
 一日も早い生活再建や事業再開のため、被災者生活再建支援法を適用するとともに、瓦れき処理や事業再開の資金調達の支援を厚くするなど、できることは全て行うとの考え方の下、被災地の復旧復興に全力で取り組んでいるところです。
 今回のような木造建物が密集した地域における消防の在り方については、有識者を含めた検討会を設置し、今回の消防活動等を検証した上で、火災予防や消防活動、消防体制等の充実強化の在り方について検討を行ってまいります。
 今後とも、様々な災害から国民の生命と財産を守るため、これまでの災害対応の在り方を検証し、そこから得られた貴重な教訓をしっかりと踏まえ、避難に関する情報提供の迅速化や自治体への人的、物的支援の充実など、ソフト、ハード一体となった総合的な防災・減災対策の体系的な見直しを不断に行ってまいります。
 災害後の復旧復興の円滑化についてお尋ねがありました。
 東日本大震災はもとより、昨年の熊本地震や北海道、東北地方を襲った一連の台風など、災害からの復旧復興を円滑に進めるためには、建設業の人材を確保し、災害復旧事業や復興事業を着実に実施する必要があります。
 特に、入札の不調が増加している熊本地震の被災地では、東日本大震災の際にも実施したように、被災地の実情を反映した予定価格の設定を行うなどの対策を講じるなどして、事業の円滑な施工確保に努めているところです。また、北海道や東北などの積雪地においては、国庫債務負担行為を活用し、雪解け後直ちに工事着手できるよう事前に工事契約を行っているところです。今後とも、被災地の復旧復興に向けて、スピード感を持ってきめ細かく対応してまいります。
 国際組織犯罪防止条約の国内担保法の整備についてお尋ねがありました。
 東京オリンピック・パラリンピックの開催を三年後に控える中、テロ対策は喫緊の課題です。御指摘のとおり、テロを防ぐためには、逃亡犯罪人引渡しや捜査共助、情報収集において国際社会と緊密に連携することが必要不可欠であり、既に百八十七の国と地域が締結している国際組織犯罪防止条約の締結は、そうした協力関係を構築する上で極めて重要です。
 国内担保法の在り方については、現在、犯罪の主体を一定の犯罪を犯すことを目的とする集団に限定し、準備行為があって初めて処罰の対象とするなど、一般の方々がその対象となることはあり得ないことがより明確になるよう検討を行っているところであり、国民の皆様の御理解を得られるような法整備に努めてまいります。
 東日本大震災から見事に復興を成し遂げつつある日本の姿を世界に示すことは、二〇二〇年東京オリンピック・パラリンピック競技大会の大きな目的の一つです。被災地を駆け抜ける聖火リレー、被災地での大会イベントの開催等を進めるとともに、被災地における取組を世界に伝え、風評被害を払拭し、産業面を含めた着実な復興へとつなげてまいります。
 大会の開催により多くの選手、観客等が来訪することを契機に、地域の活性化等を推進します。そのため、事前キャンプの誘致等を通じ大会参加国・地域との人的、経済的、文化的な相互交流を図る地方公共団体をホストタウンとして、被災地を含む全国各地に広げていきます。
 また、伝統的な芸術からクールジャパンとして世界中が注目するコンテンツ、地域性豊かな食文化などを通じて、日本全国で大会の開催に向けた機運を醸成するとともに、これらを世界に発信し、地方創生、地域活性化につなげてまいります。
 教育再生についてのお尋ねがありました。
 我が国の未来、それは子供たちであり、一人一人の個性を大切にする教育再生を着実に進めることが重要です。
 どんなに貧しい家庭で育っても夢をかなえることができるよう、誰もが希望すれば進学できる環境を整えなければなりません。このため、幼児教育無償化や高校生への奨学給付金を拡充するとともに、成績にかかわらず、必要とする全ての学生が無利子の奨学金を受けられるようにします。さらに、新年度から、返還不要の給付型奨学金制度を新たに創設することとしました。
 また、先般成立した教育機会確保法を踏まえ、いじめや発達障害などの様々な事情で不登校となっている子供たちが自信を持って学んでいける環境を整えます。
 教育は未来への先行投資です。全ての子供たちが未来に希望を持ち、それぞれの夢に向かって頑張ることができるよう、今後とも、必要な財源を確保しつつ、教育再生にしっかりと取り組んでまいります。
 女性の活躍についてお尋ねがありました。
 御指摘のとおり、子育てや介護、日頃の家事など様々な場面で活躍している女性の視点がより広く社会で活用されることで、様々な場面における意思決定の質が高まるものと確信しています。
 今回の税制改正では、配偶者控除等について、配偶者の収入制限を百三万円から百五十万円に引き上げるなどの見直しを行うこととしています。これにより、女性を含め働きたい人が就業調整を意識せずに働くことのできる環境づくりに寄与するものと考えています。
 出産などを機に離職した方の再就職や学び直しを支援するため、復職に積極的な企業を支援する助成金を創設し、職場で求められるスキルに直結する専門教育講座の受講料の補助を拡充する雇用保険法の改正案を今国会に提出するとともに、子育て女性が土日、夜間でも受講できる講座を増設してまいります。
 安倍内閣は、これからも全ての女性が輝く社会の実現を最重要課題として全力で取り組んでまいります。
 鉄道ネットワークの整備についてお尋ねがありました。
 鉄道は、定時性、高速性に優れ、信頼性の高い交通機関であるとともに、環境に優しい交通機関です。特に新幹線は、開業から五十二年間にわたって乗客の死亡事故がゼロであり、最短三分間隔の運行での定時性の確保など、まさに世界に誇るべき日本の技術の結晶です。
 全国をつなぐ鉄道ネットワークは、地域の交流を促進し、我が国の産業の発展や観光立国の推進に大きく寄与してきました。また、災害時における代替輸送ルートの確保など、国土強靱化の観点からも重要な意義を有するものであります。
 鉄道がこのような役割を最大限に発揮できるよう、利便性の高いネットワークの構築が重要です。一昨年は北陸新幹線、昨年は北海道新幹線が開業し、地域に大きな活力をもたらしました。これから、札幌や敦賀、長崎へと整備新幹線の着実な整備により、地方に成長のチャンスを生み出してまいります。また、リニア中央新幹線について、財投の活用により、大阪までの全線開業を最大八年間前倒しし、整備効果を早期に発現してまいります。
 リニアと新幹線による高速鉄道ネットワークを軸に、東京や大阪、名古屋がハブとなって、日本全国、北から南まで地方と地方をつないでいく。地方創生回廊をつくり上げ、全国を一つの経済圏に統合することで地方に成長のチャンスを生み出していきます。
 地方創生の更なる推進についてお尋ねがありました。
 政府関係機関の地方移転の取組については、政府関係機関移転基本方針等に基づき、京都への文化庁の全面的な移転や石川県への東京国立近代美術館工芸館の移転、産業技術総合研究所の研究連携拠点の設置などを進めることとしております。こうした各機関の移転について、今後、関係省庁と地元が一体となり、国と地方の双方にメリットとなるよう着実に具体化してまいります。
 企業の本社機能の地方移転については、株式会社小松製作所が本社機能の一部を石川県小松市に移転した先駆的な例があります。こういった取組を更に広めるため、地方拠点強化税制を拡充し、企業の本社機能の地方移転をより一層支援してまいります。
 今後とも、情報、人材、財政面での支援など、あらゆる手段を活用し、地方創生にチャレンジする地方の皆様を全力で応援してまいります。(拍手)
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#24
○議長(伊達忠一君) 牧山ひろえ君。
   〔牧山ひろえ君登壇、拍手〕
#25
○牧山ひろえ君 民進党・新緑風会の牧山ひろえです。
 会派を代表して、政府四演説に対して質問をさせていただきたいと思います。
 安倍政権のこれまでの歩みは、日本を取り戻すどころか、日本の良さをそぎ落としていくものでした。
 唯一の被爆国として、日本ならではの世界への貢献の仕方を考えるのではなく、海外での武力行使を可能とする。派遣法の改悪で、生涯派遣で低賃金、結婚や子育てなど将来設計もままならない状態を当たり前にする。いじめや子供の自殺が続発する中で、少子化を理由に教育の予算を減らそうとする。物価が上がった場合でも、賃金が下がれば年金は容赦なく下げる。
 働く世代が安心して仕事ができ、老後の社会保障も安定していたこの国の良さをこれ以上破壊しないでほしいです。
 未来を切り開くと強調されていましたが、これまでの安倍政権の政策は、日本の未来を担う子供たちにとって果たして最善のものだったでしょうか。
 私は、二人の母親として、平和な世の中を子供たちにプレゼントしたい、広い意味での良い環境を残したい、そんな意味を込めていつもオリーブグリーンの洋服を着ていますが、総理にも子供たちに対し同じ思いを持っていただきたい、人として、政治家として最大限のことをしていただきたいと思います。
 私は、初当選以来、命を守りたいという政治を志した初心を忘れずに各種の政策に取り組んでまいりました。本日は、国の外側との関係で命を守る外交・安全保障、及び国の内側で命を守る厚生労働、教育分野をテーマとさせていただきます。
 まずは、外交・安全保障についてお伺いしたいと思います。
 米国のトランプ新大統領が、就任前にトヨタ自動車のメキシコ新工場建設計画を批判しました。NAFTAの見直しを行う以前に、個別企業の経営に介入するような今回のやり方は、私たちが共有しているはずの自由主義経済をゆがめるものです。
 米国の利益を最優先するアメリカ・ファーストを掲げ保護主義に傾くトランプ新大統領の標的になり得る日本企業は、トヨタだけにとどまりません。衆議院の質疑において、日米経済関係について議論する中で説明を行う旨答弁されていますが、日本政府としては、ルールに基づいて自由な経済活動をしている企業を攻撃するのはいかがなものかと一般論としてではなく意見すべきではないでしょうか。このような個別の日本企業が非難のターゲットとなるケースが相次いでも今回のように傍観されるのか、対応の基本方針をお示しください。
 一月十六日、日米地位協定の軍属に関する補足協定が締結されました。一歩前進ではありますが、米軍人・軍属による犯罪を防止する抜本改革とは言えません。
 また、二〇一六年十二月のオスプレイの事故の際には、事故現場をアメリカ側は統制し、日本の捜査権が及んでいないとの指摘があります。さらに、二〇一五年八月に発生した米陸軍相模総合補給廠の爆発事故の際に、日米共同調査が行われたのは三日後の一回限りと報じられています。これらは、日米地位協定及びその関連文書において米軍の管理権が規定されていることによります。米軍関係の事故発生時に日本の捜査当局が十分に、そしてタイムリーに捜査を行い、原因究明に当たることができるようにすべきと考えますが、総理の御見解をお示しください。
 次に、厚生労働分野の主要課題であります働き方改革、特に同一労働同一賃金についてお伺いしたいと思います。
 正規、非正規労働者間での不合理な労働条件の相違の禁止は、既に労働契約法などに定められています。しかし、日本におけるパートタイム労働者の賃金水準は、フルタイム労働者の六割に達しません。これは、同一労働同一賃金が浸透している欧州の八割から九割と比較して極めて低い水準です。
 現在、非正規労働者は全労働者の四割に達し、非正規労働者の待遇改善は喫緊の課題となっております。正規、非正規労働者間の格差是正に資する同一労働同一賃金の実現のためには、労使で対立のあった際には司法の場で判断を仰ぐことにより、その実効性を確保することも重要です。
 各企業における賃金等の処遇は使用者が運用するものであり、労働者が処遇差が不合理であるとの立証をすることは困難です。このため、法案化に当たっては、処遇差の合理性の立証責任は使用者が負うことを明記すべきであると考えます。衆議院の質疑において総理は、法制度の具体的内容については働き方改革実現会議等の場で議論をいただきたいと逃げの答弁をされていましたが、参議院では使用者に立証責任を負わせることを法案に盛り込むかどうか、総理に明確にお答えいただくよう求めます。
 また、一億総活躍プランには、同一労働同一賃金によって正規労働者と非正規労働者の賃金差について欧州諸国に遜色のない水準を目指す、つまり、四割程度の賃金差を二割程度に縮めるとの目標を掲げられています。この目標はいつまでに達成するのか、総理にお伺いしたいと思います。
 安倍内閣は、消費税率の一〇%への引上げを再延期し、消費税増収分を活用する社会保障の充実策については、当初の予定であった本年四月から完全実施することができなくなっています。
 特に介護保険に関しては、本来であれば本年四月から低所得高齢者の介護保険料の軽減措置が完全実施されるところでしたが、安倍内閣は、社会保障を充実させるどころか、中所得高齢者の高額介護サービス費の月額上限引上げ、介護納付金の総報酬割の導入、現役並み所得の高齢者の利用者負担割合の引上げなど、高齢者や現役世代の負担を一層強いる改革を実施しようとしています。利用者負担割合をめぐっては、一定以上の所得がある高齢者の負担割合について、平成二十七年八月に一割から二割に引き上げられたばかりです。
 たとえ介護保険制度のみが持続可能となっても、肝腎の要介護者やその家族が必要な介護サービスを利用できなくなるようでは本末転倒と言わざるを得ません。安倍総理が行おうとしている介護の負担増によってそのような事態が起きることはないのか、総理の御所見をお伺いしたいと思います。
 次に、未来をつくる子供たちの教育問題について質問します。
 政府は、これまで加配で措置してきた発達障害や外国人児童生徒への対応を基礎定数化することで対応することにしています。この基礎定数化については、地方公共団体による教職員の安定的、計画的な採用や配置が可能になるため、望ましいと考えます。他方で、教職員についての概算要求において文部科学省が三千六十人を要求したのにもかかわらず、予算案では基礎定数と加配を合わせても八百六十八人の改善にとどまっており、不十分と言わざるを得ません。
 多忙な教員が児童生徒と向き合う時間をしっかりと確保できるようにするためには、小中学校の全ての学年での三十五人以下学級の実現が必要です。そのためにも、教職員定数の一層の改善が必要不可欠と考えますが、政府の方針を御説明いただきたいと思います。
 また、いじめ、不登校や貧困などへの対応を推進するためには、スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーの更なる拡充が重要となります。現状、非常勤として配置されることの多いこれらの専門職について、中央教育審議会の答申で示されたように、将来的には正規の職員として規定するとともに、教職員定数に含め、国庫負担の対象とすべきと考えますが、総理の御見解をお伺いしたいと思います。
 昨年の臨時国会では、カジノ解禁、年金カット、TPPと強行採決が相次ぎました。これらが今の日本にとって手段を選ばず実現しなければならない最優先課題だったのでしょうか。あしたの暮らしに行き詰まる非正規社員、将来に夢を持てなくなっている若者、老後に不安を抱える高齢者が急増している中で、現在と未来の国民にとって本当に一番最優先すべきことは何なのかということを真摯に自省していただくことを総理に強く御要望申し上げて、質問を終わらせていただきたいと思います。
 ありがとうございました。(拍手)
   〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇、拍手〕
#26
○内閣総理大臣(安倍晋三君) 牧山議員にお答えをいたします。
 トランプ新政権の下における日米経済関係についてお尋ねがありました。
 トランプ新政権の貿易政策については、今後、閣僚人事の承認が進み、体制が整うに従って具体化されてくることと思われます。まずは、日米経済関係をどのように発展、深化させていくか、新政権と様々なレベルで議論していきたいと思います。その中で、日本企業の米国経済への貢献等に関する説明を含め、主張すべきは主張し、理解を深めていきたいと考えています。
 米軍による事件、事故についての対応と日米地位協定の見直しについてお尋ねがありました。
 米軍による事件、事故は本来あってはならないことであり、御指摘の事故の発生は遺憾です。米軍機の飛行の安全や米軍施設・区域の安全な運用の確保は、米軍が我が国に駐留をする上で大前提であり、政府の大きな責任であります。引き続き、事故の再発防止を強く求めるとともに、米側と連携を密にして安全確保に万全を期してまいります。
 日米地位協定については、様々な御意見があることは承知していますが、政府としては、これまで、手当てすべき事項の性格に応じて効果的かつ機敏に対応できる最も適切な取組を通じ、一つ一つの具体的な問題に対応してきているところです。引き続き、そのような取組を積み上げることにより、日米地位協定のあるべき姿を不断に追求していく考えであります。
 今月、日米両政府は日米地位協定の軍属に関する補足協定に署名しました。日米地位協定を補足する国際約束の締結は一昨年の環境補足協定に続き二件目であり、これまでの運用改善とは一線を画す画期的な成果であると考えます。この補足協定の着実な実施を通じて、日米間の協力を一層促進し、事件、事故の再発防止につながるよう、引き続き全力で取り組んでまいります。
 同一労働同一賃金についてお尋ねがありました。
 昇給の扱いが違う、通勤などの各種手当が支給されない、福利厚生や研修において扱いが異なるなど不合理な待遇差を個別具体的に是正するため、詳細なガイドライン案を昨年末公表しました。このガイドライン案の実効性を担保するため、裁判での強制力を持たせるようにする法改正案の早期国会提出を目指し、三月の働き方改革実行計画の取りまとめを受けて立案作業を進めます。
 裁判上の立証責任についてのお尋ねがありますが、訴訟においては、訴える側、訴えられる側がそれぞれの主張を立証していくことになるものと思われます。不合理な待遇差の是正を求める労働者が実際に裁判で争えるよう、実効性のある法制度としてまいります。いずれにせよ、法改正の内容については、働き方改革実現会議等の場で議論いただきたいと考えています。
 ガイドライン案は、欧州での法律の運用実態の把握を行った上で策定したものであり、正規労働者と非正規雇用労働者の間の不合理な待遇差の解消を図り、欧州諸国に遜色のない水準を目指す内容となっていると考えます。なお、産業構造の違いの影響などにより、欧州の中でも国により待遇差の水準は異なっており、単純に待遇差の数値を比較することはできませんが、我が国でも不合理な待遇差が早期に解消することを期待します。
 介護保険制度の見直しについてお尋ねがありました。
 今回の介護保険制度の見直しは、社会全体が高齢化し、介護費が増大する中、制度を持続可能なものとし、次世代に引き渡していくため、高齢者の方々にも負担能力に応じた御負担をいただくものです。年齢を問わず負担能力に応じた負担を求めていくことは、民主党政権時代の平成二十四年二月に閣議決定された社会保障・税一体改革大綱にも示されております。
 今回の見直しは、特に所得の高い層の利用者負担割合を三割に引き上げる見直しや高額介護サービス費制度の見直しなどを行う予定です。その際、所得の低い方については、そもそも自己負担の上限額を据え置く、長期にサービスを利用される方の自己負担が増えないよう一定の範囲の方について年間上限を創設するなど、きめ細かな配慮を行うこととしています。このような配慮により、介護保険制度の持続可能性を高めるとともに、必要な介護サービスが利用者に行き届くよう、高齢者の生活をしっかりと支えてまいります。
 なお、介護保険料の軽減強化を含め、消費税率の引上げによる増収分を活用した社会保障の充実については、給付と負担のバランスを考えれば、消費税率の引上げを延期する以上、全てを行うことはできませんが、今後も可能な限り実現できるよう取り組んでまいります。
 教職員定数及びスクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカーについてお尋ねがありました。
 教育再生に向け、教育の質を高めていく上で、教職員の指導体制の充実は重要と考えております。このため、平成二十九年度予算では、発達障害や日本語能力に課題のある子供の教育の充実などのため必要な教員定数の措置を講じるとともに、これまで加配で措置してきた教員の基礎定数化に向けた法案を今国会に提出する予定です。
 また、少人数学級については、現在、小学校一、二年生の三十五人以下学級を実現しており、引き続き、教員が子供一人一人に対してきめ細かく対応し、より質の高い教育が実現できるよう必要な検討を進めてまいります。
 さらに、いじめ、不登校などの様々な課題に対応するには、スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーの配置が効果的であり、その配置の拡充を図りつつ、法的位置付けについては引き続き検討してまいります。(拍手)
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#27
○議長(伊達忠一君) 山本太郎君。
   〔山本太郎君登壇、拍手〕
#28
○山本太郎君 自由党共同代表の山本太郎です。
 先日、安倍総理が施政方針演説で、ただ批判に明け暮れても何も生まれないとおっしゃいましたので、今日は批判ではなく、政権の今までのお仕事を肯定的に振り返り、褒め殺しぎみに、希望の会(自由・社民)を代表し、総理に質問いたします。よろしくお願いします。
 政治の使命は、この国に生きる人々の生命、財産を守ること、そう考えます。安倍総理は、誰のための政治を行っていらっしゃいますか。
 安倍総理は、きっちりとお仕事をされております。庶民を犠牲にして大企業をもうけさせる。その御活躍ぶり、歴代の総理大臣を見てもナンバーワンです。庶民から搾り取った税金で、庶民への再分配は最低限に抑え、真っ先に手当てをするのは選挙や権力基盤づくりでお世話になった経団連など大企業や資本家、高額納税者への御恩返し。とことんおいしい減税、補助金メニューを提供。一方で、派遣法を改悪し、働く人々をコストとして、切り捨てやすくする、ルール改正などを取りそろえる。おかげで、上場企業はあのバブルのときよりももうかり、過去最高益。一方で、中小零細企業の解散、休業は過去最高。見ているのは大口の支持者のみ。まさに大企業ファースト。これぞ額に汗を流す政治家のかがみではないでしょうか。
 子供の貧困問題を人々の善意、基金で解決しようというウルトラCは、安倍総理が薄情で指導者の器ではないのではなく、総理はただ興味がないだけなんです。
 今まで国会やメディアで取り上げられてきた厚労省の国民生活基礎調査ではなく、違うデータを持ち出して、総理は、子供の貧困率が低下したと演説されました。持ち出したのは総務省の全国消費実態調査。この調査は非常に面倒な作業を対象者に求めるもので、お金と時間に余裕がある人しかなかなか対応することができず、低所得者層の実態をしっかり反映しづらいという傾向があると言われます。
 厚労省の国民生活基礎調査では、子供の貧困率は一六・三%。今年、最新のものが発表される予定ですが、この調査で、アベノミクス効果により子供の貧困率がどれぐらい下がるのか、総理の予想値を聞かせていただくとともに、今年、子供の貧困改善の数値目標をお答えください。
 ここ数年、奨学金問題、非常に大きくなってきております。OECDなどの先進国グループの中で教育に最も金を出さないどけち国家の第二位が日本なんです。
 個人消費を引き上げる意味でも、少子化問題を改善する意味でも、奨学金という名のサラ金地獄から対象者を救い出す必要があるのは言うまでもありません。新たな奨学金国債を発行して借り換える、マイナス金利に合わせて過去の有利子奨学金を全て無利子に転換するなどはもちろんやりません。なぜ国がサラ金のようなシステムで若い人々を苦しめるのか。奨学金の利息収入は年間三百九十億円ほど、奨学金の延滞金収入は年間四十億円ほど。これらで金融機関を潤わし、取立てを行う債権回収会社に対しても手堅い仕事を提供する。若い者たちの未来には投資をしない。企業のためだ、若いうちの苦労は買ってでもしろ、安倍総理の親心ではありませんか。
 安倍政権になってからは、正規の雇用は三十六万人減って、非正規は百六十七万人も増えています。ですが、安倍総理は以前、正規の雇用が増えたとおっしゃっていました。以前ですね。確かに、二〇一五年労働力調査を見てみると、正規では前年比で二十六万人増えています。まさにこれこそがアベノミクス効果ではないですか。この正社員二十六万人のうち二十五万人は介護福祉職。介護福祉職のうち福祉施設介護員は全産業平均より月々十一万円給料が安いんです。もちろん安倍総理はここにも改革を進めます。月額たった一万円ほど上げるそうです。
 現在、労災認定で一番多いのが心の病。その中で、労災申請、過労自殺のトップが介護福祉職。現場の悲鳴は聞こえないふり、細かい中身は見ないでいただきたい。表側の数字だけで評価するんです。これこそがアベノミクスの真髄ではありませんか。
 安倍晋三閣下は、行政府の長であるばかりか、立法府の長でもあると御本人が御宣言されました。司法の長になられるのも時間の問題ではないでしょうか。そのためにも、現行憲法など守っていられませんし、守りもしません。当然です。不都合な真実、事実を声高に叫ぶ人間は邪魔です。オリンピックに向けて、火事場泥棒的に治安立法を成立させます。安倍総理、オリンピックを成功させるためには共謀罪が必要との趣旨の発言がありました。共謀罪をテロ等準備罪と名前を変えるようですが、テロ等準備罪の「等」、この「等」とはどういう意味ですか。テロ以外にも適用される余地を残す理由を教えてください。
 世界一安全な東京とアピールをしておきながら、たった数週間の体育祭を開催するのに、国民を監視し、密告制度で相互監視までさせ、相談しただけでアウトという、権力が思想、信条の領域にまで足を踏み入れるとんでもない法律が必要な理由は何なんでしょうか。
 東電原発事故による放射能汚染水問題について総理にお聞きします。
 ブエノスアイレスでの御発言、汚染水は〇・三平方キロメートルの港湾内でブロックされている、これにお間違いはないでしょうか。海では、潮の満ち引き、潮の流れなどがあり、港湾内の水がブロックされること自体があり得ません。八日間で九九%、港湾内と港湾外の水は入れ替わります。大量の海水でゆっくりと希釈された結果、港湾外に出た汚染水の数値は低く見えるものの、垂れ流される汚染の総量に変わりはありません。去年初め、静岡県沼津市の漁港で水揚げされたアオザメから基準値の七倍ものセシウムが検出されました。汚染水の影響は明らかに海洋生物にも見られますが、皆さん、細かいことは気にしないでいただきたい。総理がブロックされているとおっしゃっているんですから、それを信じようじゃありませんか。
 お聞きします。
 最終的に東電原発事故の収束費用はトータルで幾ら掛かるとお考えになりますか。将来、もう一か所で原発の過酷事故が起きた場合、国の経済破綻は免れないと考えますが、いかがでしょうか。日本は、火山国であり、地震大国です。それでも原発再稼働を進めて大丈夫だと言い切れますか、お答えください。
 福島東電原発の収束は、その方法もなく、現在ではほぼ不可能。費用も今後桁違いの額になることは容易に想像できます。事故原発の原因も究明しない、安全基準でたらめ、避難基準適当、原発がなくても電力は余っていますが、原発は再稼働します。海外に売り付けるために再稼働します。プルトニウムを持ち続けるために再稼働します。三菱、東芝、日立、鹿島建設、大林、大成、竹中、清水、IHI、富士電機、三井住友銀行、UFJなどなどなど、原発に関係する企業の皆さん、安心してください。安倍政権は脱原発など絶対にやりません。安倍政権は税金と電気料金を湯水のように使える発電方法は諦めません。
 首都圏直下型地震、三十年以内にマグニチュード七で発生する確率約七〇%。東南海地震・南海地震、三十年以内マグニチュード八から九で発生する確率約六〇パーから七〇%。日本列島、北から南まで五十の活火山が二十四時間体制で監視されていますが、火山噴火予知連絡会、こうおっしゃっている。全ての噴火が前もって分かるわけではない、我々の予知レベルはそんなものだとコメント。火山予測のプロでも、ほぼ予測不可能だそうです。
 自動車事故、医療事故、過失であれば当然処罰されます。しかし、原発事故では、いまだ過失で処罰された者は一人もいません。全ては想定外という魔法の言葉で逃げるおつもりでしょう。次の事故が起きたとしても、安倍総理ならもっと上手にごまかせます。皆さん、安倍総理を信じてこのバスに乗り込みましょう。次の停車駅は地獄の一丁目一番地です。
 今回無理をして、批判は避けようと思いましたが、どう考えても無理です。総理、あなたがこの国の総理でいる限り、この国の未来はもちません。最後にお伺いします。総理、いつ総理の座から降りていただけるのでしょうか、教えてください。
 以上をもちまして、私の代表質問を終わります。(拍手)
   〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇、拍手〕
#29
○内閣総理大臣(安倍晋三君) 山本議員にお答えをいたします。
 アベノミクスと子供の貧困率についてお尋ねがありました。
 子供たちの未来が家庭の経済事情によって左右されることがあってはなりません。経済的にも様々な困難を抱えている一人親家庭や子供の多い世帯には、きめ細かな支援が必要です。子供の貧困対策については、御指摘の子供の未来応援基金の活動のみならず、政府としては、児童扶養手当の多子加算の倍増、子供の学習支援の充実など、一人親や子供の多い御家庭などへの支援を積極的に行っており、来年度予算においても充実を図っています。
 総務省の全国消費実態調査は、家計の収支などを総合的に把握している調査です。詳細な家計簿を三か月間付けていただくなど、一定の御負担を掛けることは確かですが、所得の低い世帯からも回答をいただいています。低所得者層の実態がどのように推移しているかを把握できるものと考えています。
 昨年公表された全国消費実態調査における子供の相対的貧困率については、集計開始以来初めて低下しています。十五年前の九・二%から、十年前に九・七%と上がり、五年前に九・九%と更に上がったものが今回七・九%と、二ポイント改善しています。これは、アベノミクスの成果により雇用が大きく増加するなど経済が好転する中で、子育て世帯の方々の収入が増加したことによるものです。
 国民生活基礎調査における子供の貧困率については、本年、精査の上、取りまとめる予定であり、それ以前の段階での予想は用意していません。
 子供の貧困率については、世帯の資産が評価されないこと、算定の基礎となる所得に現物サービス等が含まれないことなど、指標として制約、限界があるため、数値目標とするにはなじまないと考えています。政府としては、子供の貧困対策に関する大綱に掲げている貧困率を含む二十五の指標が全体として改善するよう取り組んでいます。
 安倍内閣が進めている施策は、成長と分配の好循環をつくり上げていくものです。アベノミクスを更に加速させ、格差が固定化されず、誰にでもチャンスがあり、頑張れば報われる社会をつくり上げてまいります。
 奨学金の在り方についてお尋ねがありました。
 教育投資は未来への先行投資であります。特に、どんなに貧しい家庭で育っても夢をかなえることができるよう、誰もが希望すれば進学できる環境を整えなければなりません。このため、これまでも、奨学金制度の充実、授業料免除の拡大などに取り組んできたところであります。
 来年度から、低所得世帯の子供たちに係る成績基準を実質的に撤廃するとともに、残存適格者を解消し、必要とする全ての学生が無利子の奨学金を受けられるようにすることとしております。また、返還不要の給付型奨学金制度を新たに創設することといたしました。
 経済的理由で返還が困難な者に対しては、返還に係る相談窓口を設置し相談に応じるとともに、従来から返還月額の減額や返還期限の猶予などの対応をしてきたところであります。加えて、返還負担を大幅に軽減する所得連動返還型奨学金制度を来年度から導入することとしております。
 また、有利子奨学金の金利についても、現在の低金利の恩恵が行き渡るべく見直しを行い、現在〇・〇一%でありますから、百万円借りて百円であります。非常に低いものとなっております。このような総合的な仕組みにより学生の負担軽減を図っており、奨学金という名のサラ金地獄、国がサラ金のようなシステムで若い人を苦しめるとの御指摘は全く当たりません。
 意欲と能力があるにもかかわらず、経済的理由によって進学を断念せざるを得ないということがあってはなりません。高等教育について、家庭の経済状況にかかわらず、必要とする全ての子供が機会を与えられるようにしていきたい。今後とも、必要な財源を確保しつつ、しっかりと取り組んでいきます。
 国際組織犯罪防止条約の国内担保法についてお尋ねがありました。
 東京オリンピック・パラリンピックを安全に開催するためには、国際社会と緊密に連携して、テロ対策に万全を期する必要があります。そのため、既に百八十七の国・地域が締結している国際犯罪防止条約の締結は必要不可欠であります。
 国内担保法の在り方については、現在、犯罪の主体を一定の犯罪を犯すことを目的とする集団、すなわち、テロ組織を始めとする組織犯罪集団に限定し、準備行為があって初めて処罰の対象とするなど、一般の方々がその対象となることはあり得ないことがより明確になるよう検討を行っているところであり、御指摘は全くこれも当たりません。
 また、現在、政府が検討しているテロ等準備罪は、テロ等の実行の準備行為があって初めて処罰の対象となるものであり、これを共謀罪と呼ぶのは全くの誤りであります。
 汚染水の影響についてお尋ねがありました。
 福島第一原発の港湾内の水は、潮汐の影響等により港湾外の水と一定の入れ替わりがありますが、港湾外の放射性物質濃度は、法令で定める基準値に比べて十分低いままとなっています。IAEAからも、周辺海域や外洋では放射性物質濃度は上昇しておらず、世界保健機構、WHOの飲料水ガイドラインの範囲内にあり、公衆の安全は確保されているとの評価を受けております。
 私がブエノスアイレスで申し上げたように、汚染水の影響は福島第一原発の港湾内に完全にブロックされており、状況はコントロールされているとの認識に変わりはありません。
 原発事故の収束に係る費用についてお尋ねがありました。
 東京電力福島原発事故について、政府及び原子力事業者がいわゆる安全神話に陥りあのような悲惨な事態を招いたことを片時も忘れず、真摯に反省し、その教訓を踏まえていくべきことは当然のことです。二度と事故を起こすようなことがあってはなりません。
 原発事故の収束、廃炉に係る所要資金の見通しについては、現時点で最新の情報に基づき、一定の蓋然性を有するものとして八兆円という数字をお示ししたものであり、上振れすることは想定しておりません。これについては、東京電力が徹底した経営改革を進めながら責任を持って負担することとしています。
 原発の再稼働についてお尋ねがありました。
 原発については、高い独立性を有する原子力規制委員会が科学的、技術的に審査し、世界で最も厳しいレベルの新規制基準に適合すると認めた原発のみ、その判断を尊重し、地元の理解を得ながら再稼働を進めるというのが政府の一貫した方針であります。
 この新規制基準は、福島第一原発事故の教訓を踏まえ、我が国の地震、火山といった自然条件の厳しさ等も勘案して十分な対策を要求しており、原子力規制委員会は、この基準に従って、地震や火山による影響についても科学的、技術的に厳格な審査を行い、再稼働に求められる安全性が確保されているかどうかを確認しているものと承知しています。
 誰のための政治を行っているのか、そして私の在任期間についてお尋ねがありました。
 総理大臣として、また国会議員として、常に私の頭の中にあることはただ一つ、国民の負託に応え、結果を出していくことであります。そのことのみであります。(拍手)
#30
○議長(伊達忠一君) ただいま理事が協議中でございますので、しばらくお待ちください。
 山本君の発言につきましては、速記録を調査の上、議長において適切に対応いたしたいと存じます。
 これにて質疑は終了いたしました。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後三時十九分散会
ソース: 国立国会図書館
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