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2016/04/21 第190回国会 参議院 参議院会議録情報 第190回国会 法務委員会 第9号
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2016/04/21 第190回国会 参議院

参議院会議録情報 第190回国会 法務委員会 第9号

#1
第190回国会 法務委員会 第9号
平成二十八年四月二十一日(木曜日)
   午前十時開会
    ─────────────
   委員の異動
 四月二十日
    辞任         補欠選任
     溝手 顕正君     柘植 芳文君
 四月二十一日
    辞任         補欠選任
     柘植 芳文君     石井 正弘君
    ─────────────
  出席者は左のとおり。
    委員長         魚住裕一郎君
    理 事
                西田 昌司君
                三宅 伸吾君
                有田 芳生君
                矢倉 克夫君
    委 員
                石井 正弘君
                猪口 邦子君
                田中  茂君
                柘植 芳文君
                鶴保 庸介君
                牧野たかお君
                丸山 和也君
                柳本 卓治君
                江田 五月君
                小川 敏夫君
                加藤 敏幸君
                真山 勇一君
                仁比 聡平君
                谷  亮子君
   国務大臣
       法務大臣     岩城 光英君
   副大臣
       法務副大臣    盛山 正仁君
   大臣政務官
       法務大臣政務官  田所 嘉徳君
   最高裁判所長官代理者
       最高裁判所事務
       総局刑事局長   平木 正洋君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        櫟原 利明君
   政府参考人
       警察庁刑事局長  三浦 正充君
       法務省民事局長  小川 秀樹君
       法務省刑事局長  林  眞琴君
    ─────────────
  本日の会議に付した案件
○政府参考人の出席要求に関する件
○刑事訴訟法等の一部を改正する法律案(第百八
 十九回国会内閣提出、衆議院送付)(継続案件
 )
○参考人の出席要求に関する件
    ─────────────
#2
○委員長(魚住裕一郎君) ただいまから法務委員会を開会いたします。
 委員の異動について御報告いたします。
 昨日、溝手顕正君が委員を辞任され、その補欠として柘植芳文君が選任されました。
    ─────────────
#3
○委員長(魚住裕一郎君) 政府参考人の出席要求に関する件についてお諮りいたします。
 刑事訴訟法等の一部を改正する法律案の審査のため、本日の委員会に、理事会協議のとおり、法務省刑事局長林眞琴君外二名を政府参考人として出席を求め、その説明を聴取することに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#4
○委員長(魚住裕一郎君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
    ─────────────
#5
○委員長(魚住裕一郎君) 刑事訴訟法等の一部を改正する法律案を議題とし、質疑を行います。
 質疑のある方は順次御発言願います。
#6
○三宅伸吾君 おはようございます。一昨日に続きまして刑事訴訟法等の一部を改正する法律案につきまして質問の機会をいただきまして、ありがとうございます。
 今日は、可視化の問題を中心にお話をお聞きしたいと思っております。
 法律案の詳細に入る前に、録音と録画の一般論について少し議論をしたいと思っております。
 IT技術の発達によって様々な録音、録画のハードのコストが格段に下がっております。数年前に比べると百分の一になっているものもありまして、二、三万円ですばらしい画像のモニタリングシステムができ上がっているそうでございます。どうもゲーム機器の爆発的な世界的なヒットが規模の経済を働かせて、様々な画像のモニタリングのシステムのコスト低減につながっているということだそうでございます。
 そういった現代社会で、今私が取り上げようと思っておりますのは、御本人の個別的かつ明示的な事前同意のないまま、多くの画像データ、録音データが記録媒体に保持されていることがよくございます。例えば銀行に行きますと、銀行に行かなくてもコンビニに行ってもそうでございますけれども、ATMで現金を入れたり下ろしたりすると私の顔が様々に記録されているわけでございます。それから、当然、町の防犯カメラもそうでございます。
 先日テレビを見ておりましたら、渋谷の街頭を女子大生風の婦人警官が歩いておられまして、そしてうろうろされていると、見知らぬ男性がその婦人警官と思われる女子学生風の方に声を掛けるわけでございます。声を掛けている内容がテレビに放映されておりました。放映されているということは、流されているということは、婦人警官が隠しマイクを持っていると思われます。そうしませんと、テレビカメラを持っている人間が音を拾うことは多分できないというような状況でございました。
 婦人警官が立ち止まって何やら見知らぬ男性から声を掛けられて、ある特定の御商売の営業に誘われているような感じでございました。その瞬間、その女子学生風の婦人警官の後ろにいた男性の私服警察官と思われる方が突如前方に歩み寄って、その婦人警官に声を掛けた見知らぬ男性に任意同行を求めてパトカーの中に入っていくというような状況がテレビに流されておりました。
 いろんなところで、御本人の明示的そして個別の同意のない状況で私たちの声とか顔が認識できるような形でデジタルデータが日々蓄積されているわけでございますけれども、そこでちょっとお聞きしたいんでございますけれども、他人の音声、顔が識別できるような内容での録音、撮影行為について、当該本人の個別的、明示的な同意のない場合の法律上の問題についてお聞きしたいと思います。
 まず法務省にお聞きしたいんですけれども、民事法上許されるようなのはどのような場合でございましょうか。
#7
○政府参考人(小川秀樹君) お答えいたします。
 今お尋ねのありました個別的、明示的な同意がなく行った録音、撮影行為が民法上の不法行為に該当するか否かという点でございますが、これは個別の事案ごとに諸事情を総合考慮して判断されるべきものと言うことができまして、どのような場合に不法行為に該当するかについて一概にお答えすることは困難でございます。
 なお、人の容貌、姿態をその承諾なく撮影する行為と不法行為の成否について平成十七年十一月十日に最高裁の判決がございまして、この中で、ある者の容貌などをその承諾なく撮影することが不法行為法上違法となるかどうかは、被撮影者の社会的地位、撮影された被撮影者の活動内容、撮影の場所、撮影の目的、撮影の態様、撮影の必要性等を総合考慮して、被撮影者の人格的利益の侵害が社会生活上受忍の限度を超えるものと言えるかどうかを判断して決すべきであると判示してございます。
 個別的、明示的な同意なく行った録音、撮影行為が不法行為に該当するか否かにつきましては、この最高裁判決が示す事情などを考慮して判断されることになるものと考えております。
#8
○三宅伸吾君 たしか、和歌山カレー殺人事件の被疑者でございましたかね、法廷での様子を勝手に雑誌記者が、カメラマンが撮影をして、それを雑誌に載せたという事件の最高裁判決の御紹介があったんではなかろうかと思います。社会的地位が高ければ、勝手に顔を撮られても、声を録音されても、民事上の責任がなくなる方向に作用するということではなかろうかと思います。
 それでは、任意の捜査において、捜査機関が本人の事前の明示的かつ個別の同意なく録音、録画をするのはどのような場合に適法に行うことができるのか、警察庁と法務省、それぞれにお聞きしたいと思います。
#9
○政府参考人(三浦正充君) どのような録音、撮影が任意捜査において認められるかということは個別具体的な事情に応じて判断をすべきでありまして、一概にお答えをすることは困難でございますけれども、一般論として申し上げれば、これは平成二十年四月十五日の最高裁決定がございまして、ここにおいて判示されているとおり、捜査目的を達成するため、必要な範囲において、かつ相当な方法によって行われる録音、撮影は任意捜査として認められるものと考えているところでございます。
#10
○政府参考人(林眞琴君) 今の警察庁からの答弁と同様でございますけれども、明示的な同意を得ないで人の容貌等を録音、録画することが任意捜査として許されるのかどうか、あるいは許された場合、どのような場合に許されるのか、こういったことにつきましては、やはり具体的な事件における諸事情を考慮して個別に判断されることでございまして、それ自体にお答えすることは困難でございますけれども、やはり今紹介ございましたように、公道上及びパチンコ店内にいる者のビデオ撮影に関しましては、捜査目的を達成するため、必要な範囲において、相当な範囲、相当な方法によって行われたとして、これが適法な捜査活動であると認定された判例があるものと承知しております。
#11
○三宅伸吾君 確認でございますけれども、任意の捜査の場合に、嫌疑の内容、それから撮影した手段との関係もあるでしょうけれども、一切事前の同意のない録音、録画が許されないということはないということでよろしいわけですね。ちょっと私が二重否定を使いましたのでもう一度言い直しますけれども、本人の事前の個別的、明示的同意がなくても任意捜査において録音、録画をすることが可能な場合、合法的に可能な場合があるという理解で警察も検察もよろしいですか。
#12
○政府参考人(三浦正充君) そのとおりでございまして、当該本人の個別的、明示的な同意がない場合でありましても、先ほど申し上げましたように、捜査目的を達成するため、必要な範囲において、かつ相当な方法によって行われる録音、撮影は任意捜査として認められるものというように考えております。
#13
○政府参考人(林眞琴君) 本人の同意がある場合はこれは完全な任意捜査となりますけれども、本人の同意が事前にない場合でも任意捜査として許される場合があると考えております。
#14
○三宅伸吾君 今までの話は録音、録画する行為そのものについてお話を伺ったわけでございますけれども、じゃ、そのような形で撮られた録音・録画データについて、法廷に提出をしてそれを有罪にするための証拠として使えるのかどうかというところをちょっとお聞きしたいんでございますけれども、例えば日本全国で様々なデモが行われていると思うんですけれども、デモを撮影することも警察の方であると思いますけれども、必ずしも違法なことに発展するようなデモとは考えられないような場合で、個人を特定できるような解像度で多分結果的に撮影してしまったこともあるかと思いますけれども、そのような画像データを何らかの刑事事件の公判廷において証拠として自動的に無条件で採用できるのかどうか等について、裁判所の事実認定の基となる証拠物としてどのような取扱いが今なされているのか、ちょっと教えてもらえませんでしょうか。
#15
○政府参考人(林眞琴君) 例えばデモの様子等を警察官が撮影したそのビデオ、これについて法廷にどのような形で提出され、また証拠として許容されるのかということのお尋ねでございますけれども、これにつきましてはやはり具体的な事案でその諸事情を考慮して判断される事柄であろうかと思います。
 判例としましては、警察官による許可条件違反の集団行進に参加した者の容貌等の写真撮影に関しまして、それが現に犯罪が行われている場合になされたものであって証拠保全の必要性及び緊急性があって方法も相当なものであると、このように認めて、当該撮影が適法な職務執行行為であったものとしてそれが証拠として採用されたものがあると承知しております。
#16
○三宅伸吾君 ちょっと警察庁にお聞きしたいんですけれども、ある方がパチンコをしていた、パチンコ店も本人も同意も得ずにパチンコをしている例えば強盗殺人犯を隠し撮りをしたと、その画像データも証拠に使えるという場合があるんですか。
#17
○政府参考人(三浦正充君) それはあくまで、どのような捜査目的でどのような犯罪捜査でその必要性がどの程度あったのか、様々な事情を踏まえた上でそれが任意捜査として認められるといったような場合であれば、その撮影をしたものを証拠として提出をするということは、それはあり得ることだと考えております。
#18
○三宅伸吾君 ちょっと確認ですけれども、任意捜査で、パチンコ店の許可を当然得ていないと思いますけれども、それでパチンコ店内で強盗殺人か何かの嫌疑を掛けている人を撮影をして、それを証拠として提出できるんですか。
#19
○政府参考人(三浦正充君) それは、個別の事案の事情の下でということではありますけれども、特定の犯罪の捜査において、その目的が合法的なものであり、そして撮影の態様等においても、必要な範囲において、方法も相当であるといったような場合には、それは合法な捜査、任意捜査として認められ、それによって撮影をされた画像等が後日証拠として提出をされるということはあり得るものと考えております。
#20
○三宅伸吾君 本委員会で、可視化の一部録音の論点に関しまして、任意性それから信用性、そして判決の前提となる事実の関係についていろいろ議論があったかと思いますけれども、任意性と信用性とそれから事実認定との関係をちょっと分かりやすく御説明をいただけますか。
#21
○政府参考人(林眞琴君) まず証拠の任意性でございますが、自白の証拠能力、すなわち、この自白を証拠として用いることについての法的な許容性に関する概念でございます。この自白について、任意にされたものでない疑いのある自白、これについては証拠能力が否定されまして、犯罪事実の証明に用いることができないものとされております。
 これに対しまして信用性でございますが、この信用性の方は証拠の証明力に関する概念でございます。すなわち、証拠が事実認定に役立ち得る実質的な証拠の価値、これに関わる概念でございまして、供述に信用性が認められなければ、証拠能力があったとしても信用性が認められなければ当該供述に基づいた事実認定はされないこととなります。
#22
○三宅伸吾君 一昨日の参考人の方が配付された論文にも引用がございましたけれども、去年の二月十二日、次長検事伊丹俊彦様から検事長殿、検事正殿という宛名で、取調べの録音、録画を行った場合の供述証拠による立証の在り方等についてという依命通知というものが出ているそうでございます。これを読んでおりましたら、このように書いてあります。事案の内容、証拠関係、被疑者供述の内容等によっては、当初から記録媒体を、同項というのは三百二十二条一項でございますけれども、同項に基づいて実質証拠として請求することを目的として録音、録画を行っても差し支えないと、このようにこの依命通知の中に書いてあるわけでございます。
 この供述調書と、その内容に関する録音・録画データと、その犯罪の事実認定に供される証拠である実質証拠の関係について、今私が御紹介申し上げた、昨年二月十二日、最高検次長検事からの依命通知を踏まえて御説明をいただきたいんですけれども、その際、そもそもこの通知は何のために出したのかという点と、それからこの通知の法的性格はどのようなものか、これも併せて法務省からお答えをいただけますでしょうか。
#23
○政府参考人(林眞琴君) まず実質証拠という概念でございますけれども、これにつきましては、犯罪事実の存否等を認定する証拠ということでございます。これに対になる概念としては、例えば補強証拠というような概念がございます。これについては、証拠自体の、例えばある証拠の証明力に関する、それを補強するような証拠、こういったものを補強証拠としているわけでございますが、その観点でいきますと、取調べの録音、録画の記録媒体というものは、例えば自白あるいは自白調書の任意性を立証する、そのために使う場合におきましてはこれは実質証拠としての証拠ではないわけでございます。他方で、録音、録画の記録媒体自体、そこでの供述内容自体をこの犯罪事実の存否の事実認定に使う場合にはこれは実質証拠としての取扱いということになると思います。
 その上で、この平成二十七年二月十二日付けの最高検次長検事の依命通知、これの趣旨でございますけれども、まずどのような趣旨で発出されたということでございますけれども、この通知の中にもございますけれども、現状での裁判実務におけます被告人の供述証拠の取扱い、これに対するまず現状認識がここの通知の中にも書かれておりますが、従来、裁判、公判におきまして、被告人の供述というものが、多くの場合、捜査段階の供述調書というものが存在しておりまして、検察官といたしましても、被告人の供述を立証する立証手段といたしましては供述調書というもので立証する、こういったことが多かったと思われますけれども、最近、裁判員裁判が導入されて以来、この実務が、公判自体が公判中心主義という流れに変わってきておりまして、例えば被告人の供述というものは、いきなり供述調書による立証ではなくて、まずはやはり被告人質問という形で被告人が公判で何を語るのか、こういったことを証拠調べする、そういう方向に変わりつつあると、こういった認識がございます。
 それを受けまして、この最高検の通知につきましても、裁判員裁判においては被告人質問が乙号証、これは供述調書のことでございますが、供述調書の取調べに先行して行われるという運用が定着し、この事態に備えて検察として今後どのような立証活動を行っていくのか、それをこの通知の中で示したものでございます。すなわち、やはり裁判員裁判におきましては、検察としても、最近の実務で定着している被告人質問を先に行うということの方針を改めてここでまず通知で確認しております。
 その上で、被告人質問を行った結果、やはり捜査段階での供述の立証、これが必要となった場合に、その場合には何をもって立証するのか。その際に、これまでは供述調査だけでの立証というものしか考えられなかったわけでございますが、録音、録画の記録媒体というものが試行等によって数多くあることから、これを実質証拠として活用することを念頭に置いて様々試みをしていこう、こういう方針でいこうということではなくて、新しい取組なものですから、こういった供述調書ではない録音、録画の記録媒体を実質証拠としての立証活動も試みていこうと、こういったことを指示した文書でございます。
#24
○三宅伸吾君 公判廷での被告人の供述内容と、これから実質証拠としてどんどん積極的に位置付けていこうという被疑者段階での録音、録画の内容とが食い違っていることもあるかと思うんですけれども、その場合は録音、録画された方を検察としては前面に打ち出して主張をしていこうと、こういう理解でよろしいんでしょうか。
#25
○政府参考人(林眞琴君) 被告人質問をしまして被告人が公判廷で供述がされるわけでございますが、それでもなお、捜査段階での供述、例えばそれに反する供述等が捜査段階でなされていた、こういった場合にどのような立証活動をするかというのは、やはりそこに供述調書があれば供述調書をもってその立証をする、そしてまたその供述調書を補強する証拠として録音、録画の記録媒体を使うと、こういうことが一つ考えられます。
 しかしながら、供述調書を一旦介すのではなくて、録音、録画の記録媒体を直接その立証に使うと、こういったことも当然考えられるわけでございまして、特に近年、供述調書というものが必ず作成できるとは限らない状況がございます。もちろん供述調書への署名を得られないというような場合もございますし、そこで、検察といたしましては、捜査段階の供述がどのようなものがあるのか、その中にもし記録媒体があれば、それについてもそれをこの立証に使っていくということは当然考えられるわけでございますので、それについて試みをしていこうと、こういう指示であろうと考えております。
#26
○三宅伸吾君 先ほど街頭でのデモの話をいたしましたけれども、最近いろんなところに防犯カメラというのがあって、場合によったら音声も拾う機能を持ったものも増えているように思います。
 ちょっと警察の交番についてお聞きしたいんですけれども、交番に入ってきた方の個別的、明示的な事前同意のない交番の中での本人のお話をしている画像とか録音は、合法的に任意捜査というか、裁判所の令状がなくても、交番の中の様子は録音、録画をしてそれを公判廷に証拠として提出することは可能なんですか、場合によってはですけれども。
#27
○政府参考人(林眞琴君) その交番における録音、録画というのがどのような形で撮られた録音、録画なのか、実際に交番において、そこに来ている人についてあえてその者の供述を得ようとして録音、録画する場合、あるいはそうではなくて、交番に例えば二十四時間カメラが回っている、そこにたまたまその者の言動というものが映った場合、こういった場合で様々、場合に応じていろいろ判断が変わってこようかと思いますし、また、じゃ、その映像を裁判の、これ立証趣旨と申しますけれども、何を立証するためにそれを裁判で証拠請求するのか。例えば、そこでの供述の中身自体を証拠に使うのか、それともそういう言動がなされたという事実だけを立証するために使うのかと、こういったことも含めて様々個別に判断されるべき事柄でございます。
 いずれにしても、ある一定の場合にはそういった形では当然明示的な同意を得ないで映像がなされるわけでございますが、そういった場合が適法な証拠の収集であると評価されるのであれば、裁判においても適法な証拠として採用されることが可能であろうかと思います。
#28
○三宅伸吾君 例えば、例え話ですけれども、交番に飛び込んできた方が殺人をしましたと自白を始めて、その様子が備付けの交番の監視カメラ、そして録画機器に声と映像がデジタルデータとして記録されたと。その後の捜査においてやっぱりこの方が犯人だということになりまして逮捕、起訴されたとしましょう。その交番での自白以後、全て否認に転じた場合、公判廷において交番での一回限りの殺人の自白をした様子と思われるものを証拠として提出し、それが事実認定に使われるということも場合によってはあるんでしょうか。
#29
○政府参考人(林眞琴君) これ、かなり個別に判断しなくてはいけない難しい問題だと思います。
 例えば、交番に入ってきた人が殺人を自白するような内容を仮に言ったとしましても、それが警察官に向けて供述するものとして言っているのか、それとも、単に入ってきたときに非常にろうばいした状況で、たまたま本人も警察官に対して何かを供述するという意思もなく何か話をしている、その様子が録画されていると、こういった場合でも、場合を分けてみないと判断できませんし、また先ほどのお答えにも関連しますが、その映像自体を、じゃ、何を立証するために証拠請求するのか、例えば、そもそも本当に殺人の自白として、供述証拠としての自白として請求するのか、それとも、たまたまその人は当初こういうろうばいするような形で交番に入ってきたという事実そのものを立証するのか、これによってもまた採用されるかどうかの判断が変わってくると思います。
#30
○三宅伸吾君 音声と画像の話をずっとしてきたわけでございますけれども、新聞紙上で、去年だったと思いますけれども、判決が出ていたような気がしますけれども、最近は位置情報というのがこれ手軽に記録できるわけでございます。GPSですね。GPSによる位置情報の探知器というか、小さな端末を本人の個別的、明示的な同意のないままその人物が運転する自動車にこっそりくっつけて、捜査機関が任意捜査の段階でですね、そしてその自動車の位置情報を証拠提出することは合法的なのかどうか、この辺りのところを、司法判断の状況を踏まえて、ちょっと法務省、お答えいただけますか。
#31
○政府参考人(林眞琴君) この場合、明示的なもちろん同意なくGPS発信装置を自動車に取り付けて位置情報を取得する捜査、これが、一つの論点といたしましては、これを任意捜査としてできるのか、あるいはやはり令状を取得した上で強制処分として行うのか、こういったことが現在問題になっております。
 具体的な事件において、やはり諸事情を考慮してこれは任意捜査として許容の範囲であるという裁判例がある一方で、一方では、こういった捜査を、明示的な同意なくこういうGPS発信装置を付けて位置情報を取得するような捜査というものについては、当該事案においてはやはり検証の許可状、検証許可状という令状を取って行うべきであると、そういった点で、それを取らなかった点が違法である、こういった裁判例もありまして、事案ごとの判断でございますのでそういう状況でございますが、実際に任意捜査として許容した裁判例、それから強制処分でよるべきであるという裁判例、このように分かれている状況にございます。
#32
○三宅伸吾君 一部ちょっとこれまでの質問とダブりますけれども、念のためにもう一度確認をしてお聞きします。
 参考人、被疑者、被告人について、本人の個別的、明示的な同意のないまま音声そして顔が識別できるような内容で捜査機関が管理する建物の外で録音、録画した場合、そのデータは裁判の証拠としてはどのように扱われるのか、一般論として重ねてお聞きをいたします。
#33
○政府参考人(林眞琴君) まず、参考人、被疑者、被告人ということでございますので、これは取調べにおける録音、録画に関するものということでお答えいたしますと、その許容性については、やはりその録音、録画の目的、あるいは対象者、その対象となった者の予測の可能性、こういった等を根拠に判断されるべき事柄かと思います。
 その上で、その取調べの場所が、捜査機関が管理する建物の中か外かというようなことでは異なるものはないとは考えられます。
#34
○三宅伸吾君 これまでちょっとしつこいぐらいにこの音声と画像、そして裁判の証拠としての関係についていろいろ質問をさせていただきました。結局、現行法においても、参考人とか様々な方の供述について、隠し撮り等をしても証拠になる場合があるということだと思います。
 最後にここでお聞きしたいのは、結局、今審議をしております本法案によって、捜査機関にとってこの法案により何がどう変わるのか、明確にちょっと改めてお聞きしたいんであります。そしてもう一つ、被疑者にとって、本法案の成立により、いわゆる人質司法状態を回避する方向でのメリットか何があるのかどうか。この二点につきまして、法務省と警察庁、それぞれお答えをいただけますか。
#35
○政府参考人(林眞琴君) 御指摘のとおり、現行法でもこの取調べの録音、録画というものは運用として、特に検察においては幅広く実施してきているわけでございます。その観点としては、従来、捜査段階での被疑者の供述調書というものについて任意性を立証するためにはやはりこの録音、録画のメリットは非常に大きい、そういったことに着目してこの運用に取り組んできたものと思われます。
 他方で、今回、法律案では、一定の対象事件については録音、録画を全面的に全過程義務付けるという、これが法的な義務になったということでございます。さらには、それを確保するためにも、供述調書の任意性が争われた場合には当該取調べにおける録音、録画の記録媒体の証拠調べ請求をしなければいけない、そうしなければその供述調書の証拠調べ請求は却下されると、このような形での効果も法律に定めておるわけでございます。
 こういったことによりまして、やはりこれまでの運用にとどまらず、こういった制度を法律の義務として設けることによりまして被疑者の供述の任意性等についての的確な立証が担保されますし、また、取調べの適正な実施ということも担保されることになりまして、これによってより適正、円滑かつ迅速な刑事裁判の実現に資するものと考えます。
 他方で、被疑者側あるいは弁護人側、こういった観点でのメリットとすれば、やはり今回の録音、録画が義務付けられることによりまして、取調べの全過程について録音、録画という記録媒体が残っているということがございます。当然、これは証拠開示というものを通じて、被疑者、被告人側もそれを知ることになるわけでございますので、そういったことから、捜査段階での供述証拠に対する様々な弾劾をするということについてはそれに資することとなろうかと思います。
#36
○政府参考人(三浦正充君) ただいま法務省の方から御説明があったとおりでございますけれども、本改正法案は、裁判員裁判対象事件及びいわゆる検察官独自捜査事件につきまして、身柄拘束中の被疑者を取り調べる場合に原則全過程の録音、録画を捜査機関に義務付ける、また、供述の任意性が争われた場合に被疑者の取調べ等を録音、録画した記録媒体の証拠調べ請求を検察官に義務付けるという内容と承知をいたしております。
 こうした取調べの録音・録画制度の導入によりまして供述状況が客観的に記録され、事後的な検証を行うことが可能となりますために、被疑者の供述の任意性等についての的確な立証を担保するとともに、取調べの適正な実施にも資するものと認識をいたしております。やはり法的な義務付けになるというところは非常に大きいものというように考えておりまして、それによって今申し上げたような効果といいますか、そういった本目的が実現をされるものというように理解をしております。
 また、先ほど法務省からもございましたように、録音・録画記録は公判前整理手続において証拠開示の対象となるものでもありますところ、弁護活動の充実に資するという面もあるものと承知をいたしております。
#37
○三宅伸吾君 本委員会でも度々論点というか、野党の委員の方から指摘をされている点をちょっと質問と確認をしたいんでございます。別件の被告人ではあるけれども可視化義務対象の身柄拘束被疑者にまでまだなっていない方の問題でございます。
 本法案成立後、可視化の義務対象外の罪で起訴されている被告人を可視化の義務対象の犯罪の嫌疑で取調べをする際には可視化は義務付けられないという趣旨の答弁があったかと思うんですが、そういう理解でまずよろしいですか。
#38
○政府参考人(林眞琴君) ただいまの御質問は、別件で起訴された被告人として勾留されている者、これについての取調べということでお伺いしますが、その場合につきましては、今回の刑事訴訟法三百一条の二第四項においては、逮捕若しくは勾留されている被疑者を取り調べるときと規定しておりますので、起訴後の勾留中の取調べ、これについては今回の取調べの録音・録画義務が課される範囲には入りません。
#39
○三宅伸吾君 義務付けされないのであれば、別件の被告人が、その後可視化の義務対象の犯罪の容疑で逮捕され身柄拘束される被疑者にならなければ、それまでの間は検察には録音、録画の義務がないと、こういうことでございます。
 そうであれば、自白を何らかの方法で強要し自白する状態に追い込んだ後で身柄拘束された被疑者にしてから取調べの過程を可視化し、その録音・録画データを使って公判に有利に進めようとするおそれがあるとの批判が出ているんだろうと思います。そうであるなら、少なくともそのような懸念が出ないように運用できちんと対応すると明言すべきではないでしょうか。
#40
○政府参考人(林眞琴君) 今回、被告人の勾留中の取調べについて、これをこの義務の対象から外している理由について若干御説明をさせていただきますけれども、まず通常の被疑者段階での勾留、これにつきましては、法定の勾留の期間内にその被疑者の逃亡、罪証隠滅を防止した状態で捜査機関が必要な捜査を行うための勾留でございます。これに対して起訴後の被告人の勾留というのは、被告人の公判廷への出頭確保など公判の遂行を確保する、これが目的でございます。
 それで、他方で、起訴後の勾留中の被告人に対する余罪の取調べとなりますと、これについては、法律上被告人に取調べの受忍義務というものは課せられておりません。そういった点で、起訴後の勾留中の被告人に対する取調べというものは、法的な性格からしますと在宅の被疑者の取調べ、こういった形に近く、そういったそもそも取調べを受けること自体、これを拒否することができまして、また実際にも起訴後の勾留中の被告人の余罪取調べ、このこと自体の任意性が争われるということはほとんどないわけでございます。
 そういったことから、今回、起訴後の勾留中の被告人の余罪取調べというものについては今回の録音、録画の義務の対象とはしなかったわけでございます。
 他方で、こういった起訴後の被告人の取調べを行うということは、通常はそれまでの必要性がある場合に行うわけでございますが、その必要性がある場合に、当然、その取調べで何らかの供述を獲得しようとしたときに、それを証拠化しなくてはなりません。そうすると供述証拠ができるわけでございますけれども、その際に録音、録画を仮にしておかないと、結局その取調べで供述証拠ができた場合でも、それを裁判で証拠として請求した場合に、果たして任意性、任意の下でなされた供述であるのかということは、引き続き検察官としては立証をしなくてはならないわけでございます。
 そうしますと、その際に、義務になっていないからということで録音、録画をしなかった場合には、実際の供述証拠を証拠請求する際に、一番最近で重要とされている、任意性を立証する一番的確な証拠手段であると言われているこの記録媒体というものが存在しないという状態になります。このことは検察官にとっては大きなリスクを背負うことになりますので、やはり今後の立証のことを考えて、検察官としてはその事案に応じて起訴後の勾留中の被告人の余罪の取調べについても録音、録画を実施していくものと承知しております。
 そういった観点で、今回検察においては、罪名を問わず、将来の立証で必要になると思われるものについては幅広く録音、録画を実施していくという運用方針を既に定めて行っているわけでございますが、そういった取組の中で、立証上重要になる事件においては、やはりその運用の中で起訴後の勾留中の被告人の余罪取調べについても必要な録音、録画を立証責任を負う立場から行っていくものと考えております。
#41
○三宅伸吾君 ちょっと質問の順番を変えまして、可視化義務付け対象の取調べについて、録音、録画をしなかった場合のサンクションというか制裁規定が本法案にはないような気がするんですけれども、ないのであれば、ない理由を教えてください。
#42
○政府参考人(林眞琴君) まず録音、録画がないということの事実でどのようなサンクションあるいは不利益が捜査機関側にあるのかということでございますが、まず、法律で定めております録音・録画義務に違反して実施しないで取調べを行って、その際に供述調書が作成されたという場合については、その当該供述調書を証拠調べ請求した場合においても、義務を果たさなかったために録音・録画記録媒体がないということ自体で当該証拠調べ請求は却下されることになります。これは、法律で定めている明確なサンクションでございます。
 その上で、そうした証拠調べ請求義務の対象というものは、あくまでもその任意性が争われた当該供述調書が作成された取調べの録音・録画記録とされておるわけでございますが、それでは、それさえ、もし当該供述調書を作成した取調べの録音、録画の義務、これだけを履行しておれば供述調書の任意性が立証できるのかといいますと、これはそうではございません。あくまでも法律の義務違反にならないというだけでありまして、その供述調書があくまでも任意に作られたものであるということの立証は、引き続き検察官が負うことになります。
 そのために、その余の全過程録音、録画、例えばそれよりも前の回の取調べ、これにも録音・録画義務が課せられているわけでございますが、そこでもしその録音、録画の義務を果たしていなかったといたしますと、弁護側から、その録音、録画がされていない当該取調べにおいて今回利益誘導であるとか脅迫がなされたんだと、こういった争いが生ずる場合がございます。そういうふうに言われた場合に、検察官といたしましては、任意性はあるんだと、こういう立証をするためには、やはりその供述調書が作成された取調べよりも以前の取調べにおける録音・録画記録媒体が、これがあればそれによって任意性を立証できますけれども、それがなければ非常に大きなその任意性を立証するための最も的確な立証方法を失うことになります。
 そういったことから、その義務を履行していなかったということは、やはりその任意性を立証する一番の手段を失うという意味でのサンクションを負うこととなろうかと思います。その上で、これは法律上の、刑訴法上の義務が、録音、録画として義務として定められておりますので、こういった法令上の義務に違反することは国家公務員法所定の懲戒事由に該当し得るということにもなります。
#43
○三宅伸吾君 人事評価にバッテンが付くというサンクションがある場合もあると、こういう御答弁だったかと思います。
 可視化をすると自白しなくなる場合があると、こういうふうに警察も検察も主張されているわけでございます。今回の法案でも例外規定で、可視化義務対象の取調べを可視化しなくてもいいという例外規定が置かれているわけでありますけれども、可視化すると自白しなくなる場合があるという根拠を、ちょっと法務省と警察庁、それぞれお聞かせいただけますか。
#44
○政府参考人(林眞琴君) 御指摘の点につきましては、最高検察庁が平成二十四年七月に公表しましたそれまでの検察における取調べの録音・録画についての検証結果の中に様々な事例が挙げられております。
 すなわち、例えば被疑者が、録音、録画すると取調べにおける発言が逐一記録され、後の公判で自己に不利益な証拠として用いられるおそれがあるとして録音、録画を拒否した事例、あるいは被疑者が、録音、録画すると事件関係者である著名人のプライバシーなどを傷つけるおそれがあるとして録音、録画を拒否し、また弁護人からも被疑者自身の希望であるので録音、録画を実施しないでほしい旨の強い申入れがあったため録音、録画を実施しなかった事例、あるいは録音、録画をしていない取調べでは犯行に関連する女性との交遊関係について供述をしていた被疑者が、録音、録画を始めたその下での取調べではその点を繰り返し質問されても供述を拒み、録音、録画の下では全てを正直に話せないと自ら申し立てた事例、あるいは取調べの全過程の録音、録画をした事案で、被疑者が事件関係者に関する供述を渋り事案の背景や実態について十分な供述が結果的に得られなかったけれども、被疑者自身が捜査の最後になって、録音、録画がなければもっと突っ込んだ話ができたなどと述べていた事例、こういった事例が報告されているところでございます。
 こういったことから、録音、録画の影響により被疑者が十分な供述をしづらくなる、そういったケースがあるということ、場合があるということについては確認されているものと考えております。
#45
○政府参考人(三浦正充君) 現在、警察におきましては、裁判員裁判事件等を対象に、取調べの録音、録画の試行という形で運用として実施をしているところでありますけれども、平成二十七年度中にこうした事例の中で、被疑者の拒否等を理由として録音、録画を実施しなかったとして都道府県警察から報告があった事例は二百二十八件ございまして、その理由の内訳としては、羞恥心等によるものが百三十四件、警戒心によるものが三十件、報復への恐怖心から拒否をしたというものが五件、その他が五十九件というようになっております。
 また、過去に報告のあった事例といたしまして、例えば、殺人事件の被疑者が、録音、録画をしていない段階での取調べでは殺害について供述をしておりましたけれども、録音、録画をしたものの、殺害については供述をしなくなりまして、別の部屋に行きたいとか、カメラは見られているような感じがして嫌だというように申立てをし、供述をしない状態となったといった事例でありますとか、また、強制わいせつ致傷事件の被疑者が、録音、録画をしていない取調べにおいては全ての事実について詳細な供述をしておりましたけれども、録音、録画の下での取調べを実施をしましたところ、わいせつ行為の事実については話をしたものの、その他についてはカメラを意識して話したくないといった旨を申し立て、供述をしなくなったといったような事例、その他幾つかの事例がございますけれども、例えばそういった事例が報告をされているところでございます。
#46
○三宅伸吾君 最後の質問を法務省だけにさせていただきます。
 昨日、東京地方検察庁で、取調べ室で最新鋭の録音・録画機器を見せていただきました。スーツケースに入って持ち運べるようなものでございましたけれども、将来、参考人の自宅とか、重体で病院に入院中の参考人等の供述も録音、録画することが今後はあるのだろうかということをお聞きしたいと思います。
#47
○政府参考人(林眞琴君) 検察におきましては、被疑者の取調べの録音、録画のみならず、被害者であるとか参考人の供述についても、その供述が立証の中核となることが見込まれるなど、こういった事情がある場合には、将来の立証を見据えまして録音、録画を行うことを試行しているわけでございます。
 そういったことから、特に参考人となりますと検察庁における取調べが全てそれで賄えるわけではございませんので、必要に応じて事情聴取の場所を参考人自らの自宅でありますとかあるいはその他の場所、病院であるということもございますけれども、そういった場合が間々ございますので、そういった場合についても、必要と考えられる事案についてはこうした機材を使って取調べの録音、録画を実施していくものと考えております。
#48
○三宅伸吾君 以上です。ありがとうございました。
#49
○矢倉克夫君 こんにちは。公明党の矢倉克夫です。よろしくお願いいたします。
 今日は、まず可視化についてお伺いをしたいと思います。
 一昨日、参考人の方、四方いらっしゃいまして、まず、この問題について私の立場がやはりこの方と合っているなと思った部分、基本的なところは河津参考人がおっしゃっていたところが私も同意見のところが多かったと思います。今回の可視化については、やはり録音、録画が義務付けされたということ、そして捜査の全過程についてという形で規定をされているというところ、これは大きな一歩であるなと。河津参考人もおっしゃっていたわけですが、これを一歩として今後どのように広げていくのかというところに期待を込めた上で、方向性としてはこの方向であろうかというふうに私も認識をしているところです。
 他方で、一昨日も四人の方のお話をお伺いをしていて改めて印象的だったのは、河津参考人と大澤参考人は賛成の方向、小池参考人と桜井参考人は反対という方向であった。ただ、可視化自体はやるべきだという御意見があったわけですが、じゃ、何が違うのかというと、やはりこの可視化の制度についての検察、警察、捜査の姿勢に対しての信頼というか、そういうところが基本的に違っていたのかなというふうに思ったところであります。法案の内容もそうなんですけど、まずはこの法律について運用される方々がどういう姿勢を持って、背景の思想的なものもどういうようなものを思いながらやっていらっしゃるのかというところが確認をすべき重要なポイントではないのかなと、一昨日の参考人の質疑をして思った次第であります。
 それで、ちょっと質問の通告の順序を少し変えさせていただきたいと思っております。通告の順でいうと四つ目、五つ目という形になるか、項目としては、まず可視化と取調べについてのところをお伺いをしたいと思うんですが、まずは警察庁の方にお伺いをしたいと思います。
 今回の可視化は、趣旨としては、取調べに対しての過度な依存を排する趣旨であるということであります。他方で、過度な取調べに対しての脱却というところ、ただ、全体として、やはり取調べというものそのものは引き続き有用だという御判断もあるというふうに理解もしております。
 この可視化以後も、取調べというものについてはどのような役割があると御認識をされているのか、警察庁から答弁いただければと思います。
#50
○政府参考人(三浦正充君) 御質問にもございましたように、過度に取調べや供述調書に依存をするということは、これはもとより避けなければならないわけでありますけれども、一方で、被疑者の取調べは、故意や目的など犯罪の主観的要素、共犯関係における謀議状況等の解明、真犯人のみが知り得る犯罪の全容の解明、供述によって新たな客観的証拠の発見に至ることなど、事案の真相解明のため非常に重要な役割を果たしているものでございます。新制度の下においても、証拠収集手段の適正化、多様化を図りつつも、必要な範囲で適正に被疑者の取調べを行うことは引き続き重要と考えております。
 警察といたしましては、適正に捜査を進めつつ、事案の真相解明を図り、安全、安心を願う国民の期待に応えてまいりたいと考えております。
#51
○矢倉克夫君 今、警察庁の取調べに対しての今後のまた改めての姿勢というのがありました。
 法務省の方にお伺いをしたいと思うんですが、そのように引き続き取調べというのはある、ただ、それに過度に依存をしてはいけない、このような思想の下で法改正ということであります。
 今回の法改正、その可視化という部分に限られずでも結構ですが、この法改正によって、全般的なものも含めて、過度な取調べからどのように脱却されるというふうに認識をされているのか、答弁いただければと思います。
#52
○政府参考人(林眞琴君) 今回の法改正、法律案のまず出発点というものが、やはり検察の在り方検討会議の提言、それからそれに引き続きます法制審議会の審議であったかと思います。そこで指摘されておりますのは、やはり現在の捜査、公判、これまでの捜査、公判が、取調べとさらに取調べで作られる供述調書、これに過度に依存した状況にある、そして、このような状況は取調べにおける手続の適正確保というものが不十分になったり事実認定を誤らせるおそれがある、こういうふうに考えられると、このような指摘があったわけでございます。
 そこで、このような状況を改めて、公判廷において事実が明らかにされる刑事司法、こういったものをつくるためには、まず一つには、捜査段階では取調べのみに頼るのではなく、適正な手続により十分な証拠が収集されるように、取調べを含む捜査全般の適正を担保しつつ取調べ以外の適正な捜査手法をも整備すること、すなわち証拠収集手段の適正化、多様化が必要であるということ、さらに、公判段階におきましては、必要な証拠ができる限り直接的に公判廷に顕出されて、それについて当事者間で攻撃、防御を十分に尽くすことができるようにすること、すなわち公判審理の充実化が必要であると、こう考えられるに至ったわけであります。
 こうしたことから、本法律案に盛り込まれている様々な諸制度はそれぞれ、証拠収集手段の適正化、多様化という点と公判審理の充実化という点という、この目的に資するものでございまして、それらが一体として刑事司法制度に取り入れられることにより取調べ及び供述調書に過度に依存した状況が改められて、より適正で機能的な刑事司法制度を構築することができるものと考えているところでございます。
#53
○矢倉克夫君 公判廷というところから説明がありました。その公判廷に今まで、過度に依存した取調べ、ある意味不適切な取調べも含めたものがあった上での証拠というのが出てきたと。その根源は、やはり取調べというものの適正化をまず図らなければいけないというような部分であったというふうに私は理解もしております。
 今のお話も聞いていて、やはりこの法律の中で一番肝は可視化の部分であるなと。可視化をすることで捜査の適正化というものも図っていく。ただ、従来取調べで依存をしていたところが、逆に様々な立証の部分で、真実発見のところでは意味もあったところも、効果という部分もあったのかもしれないけど、そこが縮減されることで、それが真実発見に害しないような形で証拠収集の多様化も図るというような全体の流れもあって、肝はやはり可視化であるなというふうに理解もしているところであります。
 それで、録音、録画における取調べの可視化の効果を改めて私の方で理解をしている限りお伝えをしたいと思うんですが、今申し上げたとおり、一つは、取調べ可視化によって、それが捜査機関等にもいろんな心理的な影響等も与え、それが最終的には適正化につながるという点が一点目、二点目が、可視化、録画等をしたことにより供述調書の任意性の立証に有益であるという点、この二点であるというふうに理解もしております。ただ、何度も申し上げる、基本は捜査の適正化というところであり、供述調書の任意性の立証等が目的ということを余りに強調するのは法改正の趣旨が伝わらない部分も出てくるんじゃないかなというところは一つの問題点であります。
 その上で、次の質問、ちょっとまた法務省の方にお伺いもしたい可視化の位置付けというところですが、今回の法改正ですけど、この可視化の規定が置かれているのは証拠能力のところであります。証拠能力のところにこれ規定されているということを捉えて、これは結局、自白調書を使うということ、これをどのように立証に使っていくのかとか、そういうところを基本にした制度設計であるというような御批判もある。捜査の適正化というよりは、違う方向で制度設計をしているのではないかというような御批判もあるところであり、これは供述調書への過度な依存を排するという議論の出発点と異なるのではないかという御意見もあるわけですが、それについてはどのようにお考えでしょうか。
#54
○政府参考人(林眞琴君) 本法律案の取調べの録音・録画義務は、法制的な観点から、供述調書の任意性が争われたときの録音・録画記録の証拠調べ請求義務を前提として、その確実な履行に備えて捜査機関に録音・録画記録を作成しておくことを義務付けるものとして位置付けております。
 これは、その理由でございますが、被疑者の供述の任意性等の的確な立証判断に資する、あるいは取調べの適正な実施に資する、こういった録音、録画の効果は、いずれも記録すること自体から生じるわけではなく、事後的に記録内容が吟味される、こういう録音・録画記録の利用又はその可能性によるものでありますから、そのことからすると、法制的な観点からは、まずは検察官に公判段階における録音・録画記録の証拠調べ請求を義務付けるということが合理的であり、その上で当該義務の履行を確保するための措置として捜査機関に捜査段階における録音、録画を義務付けることが合理的であると、このように考えられたことによるものでございます。
 こういった法制的な理由から、法律案の刑事訴訟法三百一条の二におきまして、まず第一項として取調べの録音・録画記録の証拠調べ請求義務を規定し、そして第四項として取調べの録音・録画義務を定めておりますが、録音・録画義務は原則として逮捕、勾留中の取調べの全過程について録音、録画を義務付けるものでありまして、このような法制的な位置付けいかんによってこの録音・録画義務の範囲でありますとか例外事由の解釈、判断に影響するものではなく、この制度が取調べの適正な実施に資する、こういうものであることに何ら変わることはないわけでございます。
 本法律案の取調べの録音・録画制度は、被疑者の供述の任意性等についての的確な立証を担保するとともに、さらに取調べの適正な実施に資する、こういった二つのことを通じまして公判審理の充実化及び証拠収集手段の適正化に資するものでございまして、取調べ及び供述調書に過度に依存した状況を改めるという趣旨にかなうものであると、こう考えているところでございます。
#55
○矢倉克夫君 大臣にちょっとお伺いしたいんですが、今の林刑事局長からのお話ですと、録画をすること自体が適正化ということではなく、やはり事後にその立証の観点から、という側面から最終的に録画ということが検察官等の立証活動にも影響を与え、それが捜査の適正化につながるというような御意見だった、これは私も理解もするところであります。ただ、これは、あくまで立証のためのものがというところはこれは手段であり、目的はやはり捜査の適正化であるなという理解が私はしております。
 昨年の本会議で、私は代表質問で要するに今回の可視化のところについての趣旨をお尋ねをいたしたところです。捜査の適正化と任意性の立証の有用性という二つがあるが、やはり基本は捜査の適正化というところに力点を置くべきだというような質問をさせていただいたんですが、そこの辺りはまだ明確には御答弁をいただいていなかったわけですが、大臣の御所見としてはどのようにお考えでいらっしゃいますでしょうか。
#56
○国務大臣(岩城光英君) 取調べの録音、録画には、お話がありましたとおり、被疑者の供述の任意性等についての的確な立証に資する、あるいは取調べの適正な実施に資するという有用性があり、これらはいずれも重要なものであると考えております。
 本法律案の録音・録画制度の趣旨、目的は、これらの録音、録画の有用性を我が国の刑事司法制度に取り込むことによりまして、より適正、円滑かつ迅速な刑事裁判の実現に資することにありまして、真犯人の適正、迅速な処罰ととともに誤判の防止にも資するものであると、そのように考えております。
#57
○矢倉克夫君 ありがとうございます。まさに、真犯人の発見と誤判の防止、両方これやらなければいけないというところが私も先日の質問では申し上げたところであり、そのところはまさにそのとおりであるかなと思っております。
 その上で、この可視化の位置付けというところを政府として改めてどのようにお考えなのかというところに関連してまたいろいろお伺いもしたいと思うのですが、今お話もあったこのような今回の法の体系を取ることで、供述調書を作成したものだけがまず録音・録画資料の証拠調べ請求の対象となるということには明文上はなっていると。でありますので、この部分で、証拠調べの関連で可視化というものがこれは担保されているわけですけど、これは法務省の方にお伺いもしますが、それ以外についてはどのように担保されているというふうに御理解されているか、答弁いただければ。
#58
○政府参考人(林眞琴君) 御指摘のとおり、本法律案におきましては、捜査機関に対してまず、供述調書を作成するかどうかを問わず、原則として逮捕、勾留中の被疑者の取調べの全過程を録音、録画することを義務付けるとしておるわけでございます。
   〔委員長退席、理事西田昌司君着席〕
 もとより、捜査機関としては、取調べのこれは任意性が争われた場合の取調べ請求義務の対象範囲いかんにかかわらず、そのような法律の規定、すなわち全過程の録音、録画、こういうものが義務付けられており、これを遵守することになると考えております。その意味で、任意性の立証に資するというこの録音・録画制度のメリットのみならず、やはりその手続の適正ということに資する制度であるということがこの全過程の義務付けであるというところに表れているものと考えております。
 その上で、では、その取調べ請求義務が掛かっていない取調べにおける録音・録画義務、これがどのように守られるのか、あるいは守られない場合にどうなのかと、こういった御質問でございますけれども、まず、証拠調べ請求義務の対象は確かに任意性の争われた供述調書が作成された取調べの録音・録画義務とされているわけでございますが、各回の取調べで、取調べを開始する時点ではその取調べで供述調書を作成する予定が仮になかったとしても、急遽、供述調書を作成する必要が生ずるということはあり得るわけでございます。その場合に、録音・録画記録の証拠調べ請求義務違反となって、その取調べで作成した供述調書が却下されてしまうことがないようにするためにも、取調べ開始時点で、供述調書作成の予定の有無にかかわらず、捜査機関といたしましては取調べ開始当初から録音、録画を各回において実施しておかなければならないことになると考えられます。
   〔理事西田昌司君退席、委員長着席〕
 そして、検察官は、任意性が争われた供述調書が作成された取調べの録音・録画記録の証拠調べ請求をすれば証拠調べ請求義務を履行したということにはなりますけれども、それによって直ちに供述調書の任意性が立証できるわけではございません。検察官は、立証責任を負う立場として、例えば供述調書を作成した取調べの前日の取調べにおいて利益誘導があったなどとして供述調書の任意性が争われた場合、その場合には、その前日の取調べの録音・録画記録、これを用いるなどして供述調書の任意性を的確に立証していくことが求められるわけでございますが、前日の取調べについては録音、録画を義務に違反して実施していなかった場合、検察官としては任意性についての最も的確な立証方法であるところの録音・録画記録を用いることができなくなる上に、合理的な理由なく録音・録画義務に違反しておれば、そのこと自体が取調べの任意性を疑う事情として考慮され得ることとなるわけでございます。
 したがいまして、録音・録画記録の証拠調べ請求義務の対象が限られておりましても、全体の全過程における必要十分な録音、録画が行われないということにはならないものと考えております。
#59
○矢倉克夫君 今のお答えとまた関連するところであります。重なった質問になるかもしれませんが、まさに今のような現実的な実務の上からの可視化の拡大というところは、これは期待をされるところである。
 一昨日、小池参考人が、やはり自白調書の取調べの関連のみで、これまた法務省にお伺いします、関連でちょっとお伺いもしたいんですけど、やはりこのような録音、録画ということが書かれていると、結局、捜査としても録音、録画しているのはその取調べ請求する供述調書の部分だけになるんじゃないかというような御懸念があったわけですが、これについてはどのようにお考えでしょうか。林局長、よろしくお願いします。
#60
○政府参考人(林眞琴君) ただいまも御答弁いたしましたけれども、録音・録画義務を欠いていた場合、果たしていなかった場合、まずその任意性の立証という点で非常に大きなリスクを負うことになるわけでございまして、その点でも当然、その録音、録画というものを必ず履行するということになろうかと思います。
 その上で、任意性の立証に必要な場合にのみ、その当該取調べにおいて録音・録画義務が履行されたかどうか、これだけが公判で問題になるわけではございませんで、やはり証拠開示を通じまして、被疑者、被告人に対していつ、どういう取調べが、何回取調べが行われたということは開示されますし、その上で実際に録音・録画記録媒体が存在するかどうかということも開示されるということになりますので、その意味で、問題となっている供述調書が作成された取調べ以外の取調べにおける録音、録画の履行状況につきましても当然公判の中で問題とされ得るわけでございますので、捜査機関といたしましては、法定の義務を当然履行しなければそういった将来の公判でそのようなことが問題とされ得るということから、履行はされるものと考えております。
#61
○矢倉克夫君 実際の立証戦略の中で様々なケースを考え、そのケースに資するというところからやはり可視化が、法定は一部かもしれないが、様々な部分まで広がっていくという実務的な感覚であったと思います。
 一昨日も大澤参考人などが、検察側の立証の観点のみならず、例えば弁護側なども、供述の任意性等が争われた場合、その争われた事情が、それによっては、供述調書そのものではなく、その供述調書をする前に任意性を争うような事情があるとすれば、その事実についての録音、録画なども公判前の整理手続とかで弁護人からはこれを請求してくる可能性もある、そういう場合も含めてやはり考えなければいけないというような御趣旨もあった。その部分でも更に可視化はやはり広がっていく方向ではあるというふうに私は理解もしております。
 その一方で、今のような立証の観点からとともに、これはまた後ほど大臣に政治の決意として、このような可視化を通じて、現場の立証の感覚というのみならず、これをしっかりと捜査の適正化につなげていくというような部分での御決意的なものはちょっとまた後でお伺いもしたいと思っておりますが、ちょっとまず先に進めさせていただきたいというふうに思います。
 その上で、今のような一部だけ切り取る、供述調書に関しての部分での録音、録画だけを請求してきて、それだけが担保されるんじゃないかというようなところは一つ現実の立証の中ではあるかもしれないんですが、他方で、一昨日懸念があったところは、小池参考人からもう一つとして、抜け穴として言われるところは例外事由のところであると思います。一昨日も話もありました。
 例としては、例外事由の中で、こちらも法務省の方にお伺いもいたしますが、例外事由の中で、言われているところは、記録に必要な機器の故障、このような場合は可視化ができないと。ただ、それだけではなくて、その他やむを得ない事情によりという部分の例外もございます。もう一つは、被疑者による拒否。拒否をした、録音、録画は嫌だと明示的に拒否をした場合に加えて、その他の被疑者の言動により、記録をすると被疑者が十分に供述できないと認めるときという要件がございます。
 これについて、とりわけ被疑者の拒否の部分については、大澤参考人もこの辺りの解釈というところに関しては、拒否とほぼ同じような、供述できないということが大事な、私は黙秘しますから供述しませんというのではなくて、やはり録音されているから供述したくてもできませんと、そういうふうに取れるような拒否なりあるいは言動だというような一つの解釈の指針も出されていたわけですけれども。
 この二つ、その部分について、やはり捜査機関の広範な裁量に委ねられるのではないか、これが結局、部分可視化を導く根拠にもなるんじゃないかというような御懸念があったわけですが、そのような解釈、御懸念について法務省はどのようにお考えか、答弁いただければと思います。
#62
○政府参考人(林眞琴君) まず、捜査機関がこの例外事由に当たると判断して録音、録画をしなかった場合、これにつきましては、公判でその例外事由の存否が問題となり得ます。その場合には、それが裁判所の審査の対象となります。
 裁判所においてこの例外事由が存在したかどうかを裁判所の立場で判断しますので、捜査機関側としては、その段階で例外事由が確かに存在したということを立証しなければなりません。そういった意味におきまして、捜査機関としましては、例外事由を十分に立証できる見込みがない限り、例外事由に当たるとして録音、録画をしないということはできないわけでございまして、この例外事由の解釈が捜査機関の広範な裁量に委ねられるという余地はないものと考えております。
 この点、捜査機関が自分の側として例外事由に当たると思っていたとしても、仮に裁判において例外事由には当たらないという判断がなされた場合には、その取調べにおける供述調書の任意性についてはこれは証拠調べ請求が却下されてしまうわけでございますので、そういったリスクを負った上でこの例外事由を判断しなければならないという立場にございますので、恣意的な裁量に委ねられる余地はないものと考えております。
 その上で、若干その中身について申し上げますと、例えば今回、被疑者が記録を拒んだことその他の被疑者の言動により、記録したならば被疑者が十分な供述をすることができないと、こういった場合が例外事由になっておるわけでございますが、この点につきましても、被疑者が十分な供述をすることができないと認める、第一次的な認める判断は捜査機関、取調べ官が行うわけでございますが、単にそのような十分な供述ができない、記録をしたならば被疑者が十分な供述をすることができないと認めるのでは足りないわけでございまして、法文上、被疑者が記録を拒んだことその他の被疑者の言動によりという要件が掛かっております。すなわち、この十分な供述をすることができないかどうかの判断する認定の事情、材料を、外部に表れた被疑者の言動に限定されておるわけでございます。
 すなわち、その被疑者の言動というものは、一つの例示といたしましては、被疑者が記録を拒んだことというものが例示として挙げられておりまして、その他の被疑者の言動という点につきましても、外部に表れた言動で被疑者が録音、録画を明示的に拒否したときと同程度の根拠を持って、やはり記録をしたならば被疑者が十分な供述をすることができない、こういった認定ができるような必要があると、こういう趣旨での法律の規定となっております。
 したがいまして、こういったその外部に表れた被疑者の言動というものをもって、この例外事由を捜査機関といたしましては後の公判において立証しなければ例外事由が認められないという関係にございますので、この意味におきましても恣意的な裁量で例外事由を広く認定するということはできないものと考えております。
#63
○矢倉克夫君 今、立証のリスクというところとともに、解釈として、特に拒否の部分で、明示的な拒否と同程度のという明確な方針もあったかというふうに理解もいたしました。その部分では、これが恣意的に運用されるというようなリスクは相当程度低まったというふうに私は理解もいたすところであります。
 また重ねての質問になるわけですけど、法務省にまたお尋ねします。この例外事由に当たることの証明はどのようにされるのか、重なる部分もありますが、改めてお尋ねをしたいと思います。
#64
○政府参考人(林眞琴君) この取調べ録音・録画義務の例外事由の立証については、当然事案に応じて様々な方法があると思いますけれども、まず、例えば警察署の取調べ室における取調べの際に、録音・録画記録の故障を理由として例外事由に該当するという判断がなされた場合には、その取調べ室に配備されております録音・録画機器が故障していることとともに、その警察署に他に使用できる録音・録画機器がなかったこと、こういったことを捜査報告書や捜査担当者の証言等の証拠によって立証することが考えられます。
 また、例えば記録をしたならば被疑者が十分な供述をすることができないと認めて例外事由に該当すると判断がなされた場合には、この点につきましては、先ほども申し上げましたが、拒否とかそれに同程度のその他の言動、外部に表れた言動というものが、そういった言動がなされるまでの間は当然その全過程録音・録画義務が掛かっておりますので、録音、録画がなされている場合が多いと思われます。そうすれば、被疑者が録音、録画の下でそれを拒否する旨発言している状況でありますとか、あるいは録音、録画の下では十分な供述ができないんだという旨の発言をしているという状況はその記録媒体に記録されていると思われますので、こういったことを取調べの録音、録画の記録媒体でその例外事由の存在を立証したり、あるいはあらかじめ被疑者から拒否の上申書が出ていたとか、そういう場合もございましょうし、そういった場合にはそういった証拠によってこの例外事由の立証をすることが考えられると思います。
#65
○矢倉克夫君 今法務省の方から例外事由の立証について答弁があったわけですが、これをまた認定する最高裁としては、最高裁といいますか裁判所としてはいかがな態度で臨むのか、こちら最高裁から答弁いただければと思います。
#66
○最高裁判所長官代理者(平木正洋君) 取調べの録音・録画義務の例外事由があるかどうかの判断につきましては、裁判体におきまして検察官及び弁護人の主張、立証を吟味し、個別具体的な事情を踏まえて判断すべき事柄でございますので、一般論としても最高裁判所の事務当局としてお答えする立場にはございませんが、最高裁判所といたしましては、今国会での議論の状況等を全国の裁判官に確実に情報提供するということを努めてまいりたいと考えておるところでございます。
#67
○矢倉克夫君 今の様々な議論の中での状況をお伝えすると。最後は裁判所がどのように運用していくのかというところも非常に重要であると思っております。どのような理念でこの法律が与えられているのかというところを踏まえて、是非引き続きの御対応をお願いしたいと思います。
 その上で、またちょっと次の質問に行かせていただきたい。
 引き続き可視化でありますが、可視化を今適正な捜査につながるような形でどのように効果があるのかという観点でお話もしたわけでありますが、もう一つ、やはり今回この可視化の部分を含めた法がやはり重要であるなと思うのは、これが重要な一歩としての位置付けがあるというところであると思います。可視化に関しては、今回法定された部分を一歩にして、やはり今後更にこれを広げていくところが一つ見込まれているというところが私は重要な点であるかなというふうに思っているところであります。
 その議論の前提で、また法務省の方にお伺いもしたいと思いますが、対象事件に今回選定されたのが裁判員裁判と検察官独自捜査事件、このそれぞれについて、必要性の観点からというふうな御答弁も以前あったと思いますが、この内容も含めて、なぜここが対象事件となるのかというところを法務省の方から答弁いただければと思います。
#68
○政府参考人(林眞琴君) 今回の法律案の録音・録画制度は、原則として被疑者取調べの全過程を録音、録画を義務付けることを内容とするものでございますが、全ての事件一律にこの制度の対象とすることにつきましてはその必要性また合理性に疑問があり、また制度の運用に伴う人的、物的な負担も甚大なものとなります。また、録音・録画制度は捜査機関にこれまでにない新たな義務を課すものでございますので、捜査への影響を懸念する意見もございます。そこで、検察等における運用で録音、録画が行われることも併せ考慮した上で、法律上の制度といたしましては取調べの録音、録画の必要性が最も高い類型の事件を対象とすることとしたものでございます。
 この点、まず裁判員制度対象事件につきましては、いずれも重い法定刑が定められている重大な事件でありまして、取調べ状況をめぐる争いが比較的生じやすいという点がございます。また、裁判員制度対象事件につきましては、取調べ状況について公判で裁判員にも分かりやすい立証が求められるという点がございます。こういった点を比較考量しますと、この裁判員制度対象事件は録音、録画の必要性が最も高い類型の事件として考えられたわけでございます。
 もう一つ、検察官独自捜査事件について対象としているわけでございますが、この検察官独自捜査事件につきましては、通常の警察送致事件とは異なりまして、被疑者の取調べが専ら検察官によって行われます。したがいまして、被疑者が異なる捜査機関の取調べによりそれぞれ別個の立場から多角的な質問や供述の吟味を受ける機会というものが欠けております。したがいまして、その取調べ状況をめぐる争いが生じた場合、裁判所においては異なる捜査機関に対する供述状況を踏まえて事実認定をするということができない、そういった材料に乏しい類型の事件となります。その点で、司法警察員送致・送付事件と比較しまして取調べ状況に関する事実認定に用いることができる資料に制約があるわけでございます。このほかに、この検察官独自捜査事件についても、他と比較しまして取調べ状況をめぐる争いが比較的生じやすいという点もございます。こういったことから、これについてもこの録音・録画制度の対象事件とすることとしているわけでございます。
#69
○矢倉克夫君 ちょっとまた質問の順序を少し変えてというか、後ほどお伺いする予定であった法務省にまたお尋ねをしますが、弁護士会からの意見で、衆議院の参考人質疑などでも実務的運用を重ねた全面的可視化への期待というものが述べられております。
 今、林刑事局長からは、一律には難しい、これは例外事由等もあるという部分も含めてだと思いますが、あと人的、物的な、そういう物理的なところがあると。もちろん、これは考慮もしなければいけない。ただ、それらがどんどん、これは段階を追って、急にというものではなくて徐々に徐々に克服されていって、一定段階においては更に広げていくということも考えなければいけないと思っておりますが、弁護士会からもこの実務的運用を重ねた全面的可視化への期待が述べられているわけですけど、それについては御意見はどのようにありますでしょうか。
#70
○政府参考人(林眞琴君) 今回導入しようとしております録音・録画制度については、これまでにない新しい制度でございますので、その効果でありますとか課題につきましては実際に制度を運用してみなければ分からないところが少なくないわけでございます。
 この法律案の附則九条第一項におきまして、取調べの録音・録画制度について施行後三年が経過した後に必要な見直しを行うといった見直し条項が、いわゆる検討条項が設けられておるわけでございますが、この方向性についてあらかじめ現時点で確たることを申し上げることは困難でございますが、いずれにしましても、捜査機関による運用によるものも含めまして実際の取調べの録音、録画の実施状況、すなわちその運用のものと今度義務付けられる制度としての実施と、こういった実施状況全部を勘案しながら、実際の今回の制度の趣旨、すなわち、先ほど来あります被疑者の供述の任意性の的確な立証の判断に資する、あるいは取調べの適正な実施に資するという、こういった取調べの録音・録画制度の有用性というものは今回の法案の中にも、附則の中にも書き込まれておりますので、こういった趣旨を十分に踏まえて検討することが重要であろうかと考えております。
 これまでの経緯等を踏まえますと、取調べ録音、録画についての取組が後退するようなことはないものと考えております。
#71
○矢倉克夫君 今既に検察の方でも、法定対象されたもの以外のものもどんどんと試行で広げられているところであります。
 また法務省の方にお尋ねをします。
 現場の運用が重要であるというところの御意見もございました。更にまたお尋ねしますけど、具体的にどのように取り組まれるのかというところをまず法務省にお尋ねもして、その後、警察庁にも御答弁いただければと思います。
#72
○政府参考人(林眞琴君) 検察につきましては、当初四つのカテゴリーについて録音、録画をするということを行っていた時代がございましたけれども、さらに、既にそのカテゴリーを超える、すなわち罪名を問わず録音、録画に取り組むと、こういった方針の下、積極的に録音、録画を運用として実施しているところでございます。こういったまた録音、録画の対象を、被疑者だけではなく参考人に対しても広げておるわけでございます。
 こういった取組というのは、やはりこれから法律案が施行されれば義務として行われる録音、録画というものがございますが、一方で、先ほど来ありますように、やはり任意性の立証というものに資するという点はこの義務の範囲を超えて様々な取組を行う一つの考え方の柱になっておりますので、そういった観点からも録音、録画の実施に積極的に更に取り組んでいくものと考えられます。
#73
○政府参考人(三浦正充君) 警察におきましても取調べの録音、録画の試行に積極的に取り組んでいるところでございまして、直近の速報値による数字でありますけれども、平成二十七年度中における裁判員裁判対象事件等に係る取調べの録音、録画の実施件数は二千八百九十七件、一事件当たりの実施時間も前年比プラス七時間の二十一時間余となるなど、制度化も見据えながら確実に実績を積み重ねているところであります。
 しかしながら、警察におけます年間の裁判員裁判対象事件の検挙は三千件を超えておりまして、延べ四万回を超える被疑者取調べが行われているという状況でございまして、まだいわゆる対象事件の全過程について録音、録画を試行で実施をしたという比率はおおむね五割程度、半分程度というところにとどまっているところであります。
 この後まだ、法案が成立をいたしますればこの録音、録画が義務付けということになりますので、今半分程度のものを原則一〇〇%に近づけていくという大変重い課題を負っているわけでありまして、まずはこの裁判員裁判対象事件で確実に実施ができるようにするということを最大の課題と捉えておりまして、そのための運用を積み重ねているところでございます。
 今後は現場レベルで具体的かつ実践的なノウハウも積み重ねられていくわけでございまして、その制度対象外の事件につきましても、個別の事件ごとに検討いたしまして、供述の任意性等をめぐる争いが事後想定されるような場合には録音、録画を実施していくといった運用は十分に考えられるところでございますけれども、まずは現在の対象範囲の中で録音、録画をしっかりと行えるようにしてまいりたい、まずそれを最優先で取り組んでまいりたいと考えております。
#74
○矢倉克夫君 今警察の方からも制度対象外もという部分のお話もあった。まずは対象部分についての一〇〇%というところはおっしゃるとおりであると思います。
 その上で、それ以外についてもどんどん広げていくというところの趣旨の話もあったわけでありますが、一昨日の参考人の質疑のときに一つ話題になっていたのが、録音、録画の対象事件以外で逮捕、勾留されている被疑者を余罪である録音、録画の対象事件で取り調べるときに録音、録画がどこまで及ぶのかというような話もありました。
 警察としては、このような事案についてはどのような形で録音・録画義務というものを履行するために運用をされていらっしゃるお考えか、御答弁をいただければと思います。
#75
○政府参考人(三浦正充君) 例えば、殺人事件の立件に先立って死体遺棄事件の捜査を行っているといった場合など、両事件の関連性が高く、公判においても審理が併合されることが見込まれるような場合には、当初の事件、すなわち今の例で申し上げますと死体遺棄事件でありますけれども、当初の事件についての取調べの段階から録音、録画を広く行うという運用が想定をされるところであります。この点、現在警察において取り組んでいる録音、録画の試行においても既に同様の運用がなされているところでございます。
 他方、これは余り例は多くないとは思いますけれども、仮に裁判員裁判対象事件以外の事件で逮捕、勾留中の被疑者が、したがって録音、録画を行っていない場合もあるわけでありますけれども、その中で、捜査機関側の予期しないような場面で裁判員裁判対象事件に関する供述を始めたといったような場合には、それ自体を録音、録画するということはこれは物理的にできないわけでありますけれども、その後、その対象事件に関する取調べを行う時点では録音、録画を行っていなければならない、この部分には義務付けが掛かるというように承知をしております。
 いずれにしましても、こうした録音・録画制度の運用を捜査員が適切に行うことができるように教養を徹底するとともに、捜査幹部の適切な指揮の下で法の定める録音・録画義務を確実に履行できるような体制を構築をしてまいりたいと考えております。
#76
○矢倉克夫君 別件と本件といいますか、それぞれの関連性の認定などもいろいろあると思います。ただ、後々の捜査等、また立証等にも支障のないという観点からも含めて、幅広にどんどん録音、録画していくという点はやはり大事であるというところは期待をしたいと思います。
 大臣に、最後一言だけ、また改めて同じ質問をするところでありますが、やはり、先ほども法務省の方からも、任意性の立証という部分からの観点からこの義務を超えてやっていくという柱が大事だったと、そのとおりであると思います。
 それを理解した上で、大臣の御認識として、やはり録音、録画というものが、立証という部分も当然有用性はあるわけですけど、まずは捜査の可視化、適正化というものにしっかりと資するものであり、その観点から更に進めていくというような部分での御意見についてどのようにお考えかということを御質問をさせていただきたいというふうに思います。
#77
○国務大臣(岩城光英君) 重ねてのおただしでありますけれども、取調べの録音、録画には、任意性についての的確な立証に資するとともに、御指摘のとおり、取調べの適正に資するという有用性、それら二つがあるものと認識をしております。これによりまして、より適正、円滑かつ迅速な刑事裁判の実現に資することができるものと考えております。
 私といたしましても、録音、録画の持つ有用性は非常に重要なものであると考えておりますので、検察におきましても積極的に録音、録画に取り組んでいくものと、そのように承知をしております。
#78
○矢倉克夫君 ありがとうございます。大臣の御期待どおりの運用を是非現場でもしていただきたいというふうに思います。
 改めて、今回の可視化については、やはり義務という形で法定されたというところ、これに違反するところはやはり違法という評価を受けるということが明確になったというところは非常に重視もしなければいけないし、そういう観点から現場の方々もしっかりと法の運用をしていただきたいというふうに思います。それがしっかりと続くことで、様々な御意見もあるわけですが、やはりしっかりと現場が運用をしていくんだという安心感が法についての更なる理解に私はつながっていくという理解でおります。
 以上申し上げまして、質問を終わりたいと思います。ありがとうございます。
#79
○委員長(魚住裕一郎君) 午後一時に再開することとし、休憩いたします。
   午前十一時五十分休憩
     ─────・─────
   午後一時開会
#80
○委員長(魚住裕一郎君) ただいまから法務委員会を再開いたします。
 この際、委員の異動について御報告申し上げます。
 本日、柘植芳文君が委員を辞任され、その補欠として石井正弘君が選任されました。
    ─────────────
#81
○委員長(魚住裕一郎君) 休憩前に引き続き、刑事訴訟法等の一部を改正する法律案を議題とし、質疑を行います。
 質疑のある方は順次御発言願います。
#82
○小川敏夫君 民進党・新緑風会の小川敏夫でございます。
 まず、先日の刑訴法の質疑に引き続きまして、延長戦とでもいいますか、私が一番最も関心を持っております通信傍受令状の濫用防止策、これについてまた引き続いて質疑をさせていただきたいと思います。
 多少これまでの議論を整理しますと、捜査官が通信傍受を濫用して情報収集に努めたり、あるいは興味本位の傍受をしたりしたようなケースを一つ想定しますと、どうもその現場ではそれを制止するという手だてはないようであると。しかし、その濫用防止について、私の方は事後的な濫用防止もないのではないかという観点からるる質問させていただいたわけでございますが、法務大臣の方は、まず傍受した記録が全部が裁判所にある、そして、疑問を抱いた人がその記録を見れば立ち所に不正が露見するはずだ、だから、そういう不正が立ち所に露見するような仕組みになっているから、捜査官もそういう危険を感じるでしょうからそういう濫用には及ばないと、こういうような答弁をいただいたわけでございまして、私はそういうことはないんだろうということで、多少意見が食い違ったわけでございますが。
 そこで、改めてまた質問させていただきますけれども、裁判所に原記録があるというのはこれは間違いない事実でございますが、それを言わば確認するためには、やはりそこに原記録があるということを知っている人しかこれは確認できないわけでございます。それが知らなければ当然確認しようがないわけですから、そうすると、確認する、確認されるということがなければ何の不正防止の機能も果たさないと、こういう論理になるわけでございます。
 それで、知っているかどうかということでございますが、まず通知の問題でございます。通知に関しましては、結局、傍受記録にある犯罪関連通信の人にしか発しないと。ですから、捜査官が濫用に及んで情報収集とか興味本位のそうした傍受をしてしまった場合には、犯罪関連通信ではないから通信の当事者には通知しないと。通知がないんだから、傍受された人は傍受されたことも知らないし、当然、原記録が裁判所にあるが、それを確認するすべもないということになるわけですから、結局、通知制度は機能しないのではないかと、こういう観点から質問させていただいたわけでございます。
 どうでしょう、改めて私が今指摘しましたように、犯罪関連通信ではない、すなわち捜査官が濫用に及んだ犯罪以外の通信の傍受をされた者に対して通知をしないという制度の中で、そうした不正な傍受をされた当事者が原記録を、傍受された事実及び原記録が裁判所にあるという事実を知り得ないと思うんですが、この私の指摘についてはいかがでございましょうか。
#83
○国務大臣(岩城光英君) 重ねてのお答えになりますけれども、申し上げさせていただきます。
 傍受令状は、対象犯罪の高度の嫌疑が認められ、かつ犯罪に関連する通信が行われる蓋然性があると裁判官が認めた場合でなければ発付はされません。したがいまして、傍受令状により傍受を実施している間には、犯罪に関連する通信が行われ、その両当事者に通知が行われるのが通常でございます。
 特に、当該通信手段の使用者は、犯罪に関連しないものを含め、傍受の対象となった通信のほぼ全ての一方当事者でありますことが通常でありますので、通常は通知を受けることとなりますし、また、裁判官が保管する傍受の原記録に記録された全ての通信の記録を聴取等をすることができることとなります。さらに、傍受記録の内容が公判の証拠として用いられる場合には被告人やその弁護人も傍受の原記録の聴取等をすることができ、その際、全ての通信の傍受がチェックされることになります。
 したがいまして、捜査官といたしましては、傍受の実施の時点において、通信の当事者に対して通知が行われ、かつ通知を受けた者や被告人等がこれから傍受する通信の内容を傍受の原記録を通じてチェックすることになることを想定して行動せざるを得ないものになります。そのため捜査官は、ある通信を傍受しているときに、それが犯罪に関連せず、その当事者に対する通知が行われないと考えられる場合であっても、通信傍受法が許容する範囲を超えてその内容を聞くことはおよそできないこととなると、そのように考えております。
#84
○小川敏夫君 前回いただいた答弁と大体同じような話でございました。今のお話の中で、一つ大きく誤解を招くところがあるのでありますね。
 すなわち、傍受をした通信がある、そうすると、その相手方は傍受した通信の相手方だから、だから当然その会話をした相手方も、傍受した人間に通知すればその人間から連絡を受けるから分かるはずでしょうと、こういうふうな論理でございました。これが、ですから、私の指摘と全く食い違ってしまって議論になっていないんですよね。
 すなわち、私は、捜査官が濫用した傍受ですから、傍受をしたその対象の直接の当事者についても通知が行かないんですよ、だって犯罪通信がないんだから。犯罪に関する通信がないから当然傍受令状も作成されないから、法律上通知をする相手になっていないわけです。大臣の論理は、いや、その一方当事者に通知するんだから、当然その相手と会話をしている第三者は通知を受けた人から連絡が行くから分かるはずでしょうから当然ばれるんだと言うけれども、当然傍受されたことも分かるんだという論理なんだけど、私の指摘に対する答えに全くなっていないんですね。
 私は、そもそも直接の令状の傍受の対象として傍受をした当事者に対してすら行かないんですよ、通知が。すなわち、犯罪に関連する通信であれば傍受記録ができて、それでその当事者に通知が行くわけです。だけど、令状による傍受の対象となった直接の当事者についても、犯罪に関する部分がなければ通知が行かないんですよ。すなわち、今言ったように、犯罪捜査に関係しないで濫用に及ぶ傍受をした場合に、直接の当事者にも連絡が行かないんです。だから、その相手方も知らないのは当然。
 その直接の当事者にも通知が行かないと私が指摘しているんだけれども、大臣はそのことについてお答えにならないで、直接の当事者へ通知が行くんだからその電話の相手方だって分かるはずでしょうというお答えをしているんで、議論がかみ合っていないんです。いいですよね。私の言っている意味は、だから傍受された会話は、その令状の対象の電話の直接当事者と当然相手方がいるわけです。だから、直接の当事者に通知するから相手方も分かるはずでしょうという大臣の答弁は答えになっていない。
 私は、直接の当事者にすら濫用に及ぶ傍受の場合には通知が行かないんだから、傍受された両当事者とも傍受されたことを知らないんです。原記録が裁判所にあるといっても、裁判所にあることを知らないんです。だから確認しようがないですねと言っているわけなんです。いかがでしょうか。
#85
○国務大臣(岩城光英君) 一つの通話の中で、まずその該当者と犯罪に関わらない、犯罪と無関係な者との会話、これはスポット的な傍受になるわけですよね。あわせて、犯罪に関連した通話、二つの種類の通話がございますね。犯罪に関連する場合には、該当者とその相手側とに通知が行きます。スポット傍受に、要するに犯罪と無関係の通話についてはこれは通知が行かないということでありますので、まず第一点として、犯罪と関係のない通話の相手方には通知は行きませんが、犯罪と関連する通信の聞き手、受け手、こちらに行くわけでありますので、その者が今度もし被疑者となって、それで自分が無罪か有罪か、それが非常に大事な問題となりますので、この原記録を聴取して厳密にチェックすることになるものと思います。その過程の中で、違法な傍受があればそれはそこで露見するということになります。
 そして、小川先生がおっしゃっているのは、それにその上、こういった一つの通話の中で要するに傍受記録に該当するものがない場合、犯罪に関わる通話がなかった場合には通知が行かないでしょうということでよろしいんですね。
 そのことにつきましては、この傍受の実施期間中にそういった通知の対象となる通信が行われなかったということは、これはあくまで結果論でありまして、捜査官はいつでも犯罪に関連する通信が行われ得ると、そういった前提の下で該当性判断のための傍受を行うことになります。
 すなわち、捜査官としては、当初は通知の対象とならない通信であっても、その後、話題が変わって通知の対象となる通信が行われ、あるいはその後に行われる別の通話において通知の対象となる通信が行われ、すなわち犯罪に関わる通信が行われ、その結果、通知を受けた当該通信の当事者等により傍受の原記録がチェックされ得ることを前提に該当性判断のための傍受を行うのでありまして、したがいまして違法な傍受を行うことはできない、通知の対象となる通信が一度も行われなかった場合があるといたしましても、そのことは捜査官が不正を行い得る余地があることを意味するものではないと、そのように考えております。
#86
○小川敏夫君 二つのことをおっしゃられました。まず前半部分のことについて指摘させていただきますけれども、前半の部分について大臣がお話しされたのは、令状の直接の傍受の当事者に、傍受をしていると、その傍受している一つの中で、犯罪関連通信もあるけど、部分的に犯罪に関連しない通信もあった、その相手方がいるでしょうと、そうするとそれは犯罪に関係しない通信ですねという例を取り上げられました。そうすると、その場合には、法律では、こっちに犯罪通信があるんだからこの直接の当事者には通知が行きますよね。そうすると傍受がされたことが分かるから、この直接の当事者に。そうするとその人を通じて相手方も分かるはずだと、こういうお話をされました。
 だから、話が食い違っているんです。私は、犯罪通信がない場合を聞いているんですよ。大臣は、犯罪通信がある場合に、犯罪通信があって、ただ傍受の中のまたついでにというか、それにプラスアルファして犯罪に関連しない通信があった場合のことをお話しされている。私はそうじゃなくて、もう捜査官が濫用して、犯罪に関係しない、ただもう情報収集している、あるいは興味本位で聞いている、もう傍受の対象そのものに犯罪に関連する通信が、会話がない場合を私は念頭に置いて質問しているんです。だから、それに対して犯罪に関連する通信があったということを例にしても会話はかみ合わないので。
 ですから、傍受した会話の全部に犯罪に関連する通信がなければその当事者に通知は行かないですよね。これは間違いないですね。
#87
○国務大臣(岩城光英君) 先ほど二通りのお答えをしたつもりでありまして、先生がおっしゃられたことは後半の部分で申し上げたつもりでございますが、前半は確かに犯罪に関連する通話と、それからスポット傍受的に聞く犯罪に全く関係ない通話があった場合ということで申し上げました。後段ではそういった犯罪に関連する通話がなかった場合のことを申し上げたつもりなんですが、もう一度お答えをさせて──よろしいですか。
#88
○小川敏夫君 じゃ、前半部分は私の指摘について直接は答えたわけではない、後半部分でお答えになったということですね。
 そこで、私は、では、その後半部分についてまた改めて質問させていただきます。
 要するに、大臣のお話ですと、犯罪捜査のために一生懸命やっている、だから、そういう中で仮に聞いちゃったとしても、当然通知があるということがあり得るということを予測するんだから、そんな違法なことはしないでしょうというような趣旨のお話にお伺いできたんですが、私の言っている想定はまた全然違うんですよ。
 すなわち、まず通知というのは誰がするのか。要するに傍受をした捜査官が通知するんですよ。その人本人じゃなくても、そのチームの人が通知するわけですよ。そうすると、傍受をしている捜査官が聞いちゃいけない会話を傍受している、違法な傍受をしていると。そうすると、傍受をしながら自分で分かるじゃないですか、ああ、この傍受は犯罪に関連しないから通知しなくたっていいんだということを自分自身分かっているんじゃないですか。だって、聞いていた中で犯罪に関連する通信がないんだから、ああ、これは当然相手には通知しないわということは捜査官ですから分かっていますよね。通知しないということを分かっていながら違法な傍受をしていれば何の抑制にもならないじゃないですか。後から誰かが通知するということはあり得ないんだから。
 ですから、大臣は、非常に総論的に一般的な言い方の中で、通知というものがあって、それで傍受されたことを知った人が裁判所にある原記録を見る可能性があるから、だから露見する可能性があるから、そんな露見する可能性があるのに捜査官は違法な傍受をしないだろうという組立てなんだけれども、違法な傍受をしている本人が通知するんですよ、もし犯罪関連通信があったら。だから、違法な傍受をしている捜査官はもう聞きながら分かっているじゃないですか、犯罪通信がないんだからこれは相手に通知する必要なんかないんだと。通知する必要はないんだから後から露見することなんかないということが分かりながら傍受しているということになるんじゃないですか。
 だから、捜査官がそうした濫用な傍受をしていれば、通知が行かないということを自分自身分かっていながら傍受しているんだから、結局、通知が行かない、行かないから当事者には分からない、分からないから露見しないという、露見しないというそういう想定が立ってそういう違法な傍受をするということになるんじゃないですか。
#89
○国務大臣(岩城光英君) 一つの通話の中で犯罪に関わる通信が、通話がなかった場合のお話ですよね。それで、通知が行かないから分かりようないということの御指摘だと思います。
 そこで、当初は通知の対象とならない通信でありましても、その後話題が変わってなる場合もありますし、また、その後に行われる別の通話において通知の対象となる通信が行われ、そして、そうした場合にはその当該通信の当事者等により傍受の原記録がチェックされ得る、こういった可能性は十分にあるわけでありますので、そのために該当性判断のための傍受を行うのであって、違法な傍受を行うことはできないと、そのように考えております。
#90
○小川敏夫君 その後状況が変わってあるかもしれない、でも、ないかもしれないしね。それから、その後に続く傍受と言うけれども、その後に続く傍受をやらなきゃそれまでの話だし、あるいは繰り返し繰り返し違法な傍受をしているんだったら同じことですよね。
 ちょっと大臣お休みいただいて、警察庁にちょっとお尋ねしますが、この傍受をしたという通知ですけれども、これは、その傍受をした捜査官あるいはその捜査チームの人が通知をするわけですね。どこか別に通知をするための専門の部局があるわけじゃなくて、その捜査担当チームが相手に通知する、こういう仕組みになっていますね。
#91
○政府参考人(三浦正充君) そのとおりでございまして、特別にその通知を行うための部署といいますか、そういう業務を行っているところがあるわけではございません。実際にその捜査を担当した、その捜査にあずかる者が通知を行うと、こういう仕組みでございます。
#92
○小川敏夫君 ですから、捜査する方は、もうその濫用に及ぶ傍受をしているときに、これが通知する必要があるのか通知する必要がないのかというのはもう十分分かっているわけですよ。言わば、犯罪に関連する通信がなければ通知しないでいいんだから、濫用に及ぶ傍受しているときには通知する必要はない、通知する義務はないということを分かりながらやっているんだから。通知が行かなければ、これちょっと通知を受けなければ、傍受を受けた人が、傍受されたあるいは裁判所に原記録あるということは分かりようがないと思うんですが、通知を受けなければ傍受された事実、裁判所に原記録がある事実というのが分かりようがないという、これは自然な事実の理解ですけれども、この点はよろしいですよね。
 要するに、知らないうちに傍受された人が、濫用に及んで傍受された人が、しかし通知を受けなければ自分が傍受されたという事実や、それから裁判所に傍受に係る原記録が保管されているというような事実を知りようがないと思うんだけど、この知りようがないという社会的な基本事実はそういう認識でよろしいですよね。
#93
○委員長(魚住裕一郎君) これ、どなたに聞いていますか。小川先生、どなたに。警察に。
#94
○小川敏夫君 いやいや、大臣に。済みません。もう休憩終わったんで、大臣に。
#95
○国務大臣(岩城光英君) 小川委員がおっしゃられたことは、基本的にはそのとおりだと思います。
#96
○小川敏夫君 今日は最高裁にお越しいただきましたけど、これまで裁判所に原記録が保管されている、その保管に関する統計資料等はございますでしょうか。
#97
○最高裁判所長官代理者(平木正洋君) 平成二十八年三月十五日の時点で裁判所において保管されている傍受の原記録の事件数について確認しましたところ、百九十六件でございました。
#98
○小川敏夫君 事前に聞いたところ、直近のものはあるんだけど古いものについては統計資料がないというようなお話もお伺いしましたけれども、是非、重要なことなので、過去のことは別にして、これから統計資料はきちんと整備していただきたいと思いますが。
 もう一つ、次の質問は、では、その原記録の閲覧、聴取、これを受けた数はどのくらいでありましょうか。
#99
○最高裁判所長官代理者(平木正洋君) 平成二十八年三月十五日時点で裁判所が保管していた傍受の原記録百九十六件について、傍受の原記録の聴取、閲覧又は複製の請求がなされました件数を調査しましたところ、四十二件でございました。
 その内訳でございますが、通信傍受法二十五条三項に基づき検察官又は司法警察員から請求がなされたものが三十八件、二十五条五項に基づき当該傍受に関する傍受記録の取調べ請求がなされた被告事件の被告人又はその弁護人から請求がなされたものが四件でございました。
#100
○小川敏夫君 つまり、今裁判所から説明がありました、裁判所の原記録の聴取を求めてきた人、ほとんどが検察官ですからこれは別にして、残りの四件、これは刑事被告人です。すなわち、犯罪関連通信があって、しかもそれで刑事事件として立件して起訴された人です。当然、通知が行っている人ですよ。
 では、通知が行かないと思われる人、この二十五条の中には傍受を受けた人は聴取できるという規定があるけれども、要するに、通知を受けない人に関しては、今の最高裁の説明から分かったように、一人も聴取、閲覧の請求を求めてきていないと。まあ、私は当然だと思うんですよ、だって知らないんだから。傍受されたことも原記録が裁判所にあることも知らないんだから、当然その閲覧、聴取に行くわけないんで、だから裁判所の統計もゼロだということになっていると思うんです。
 ですから、私はどうしても、言わば警察官が法にのっとって正しく犯罪捜査のために傍受をした、その場合には、しかも犯罪通信があれば通知が行く、警察官が正しく職務をした場合にはきちんと通知が行くと。だけれども、警察官が法を犯して、あるいは誤って間違った傍受をしてしまったという場合には通知が行かないんだから、間違った場合、誤った場合には通知が行かないんだから。しかも、通知が行かないということを、やっている本人あるいはやっている本人のそのチームが通知するんですから、濫用していればこんな通知は、この今の傍受しているこれについては相手方に通知しなくていいんだということは分かっているわけだから、やはりこれまで法務大臣が答えたように、濫用による傍受をすれば、通知制度というものがあるから、いずれ傍受された事実を知って原記録を確認すれば、立ち所に不正、違法な傍受があったとすれば露見するだろう、露見するだろうというおそれがあるからそういう違法なことはしないだろうという論理は成り立たないと思うんです。
 私は別に法務大臣をいじめているわけじゃないんで、なかなか、私の指摘に対して何か答弁があればいいですけれども、私はそういう意見を指摘してこの部分の質疑を終わりたいと思うんですけれども。私は、ですから、今の岩城法務大臣が悪いんじゃなくて、これはそもそも十五年ぐらい前にこの通信傍受法を言わば自民党と公明党が私どもの反対を押し切って強行採決した、そのときに生じた問題ですから、それからずっと来ている。
 ただ、そういう部分を抱えても、これまで通信傍受の対象犯罪がかなり限定的だった。ですから、余り数も行われなかった。ですから、そういう中で弊害が起きなかった。起きなかったのかどうか断定できないから露見しなかったというふうに言い方変えさせていただきますけれども、だと思うんですね。
 しかし、今回対象犯罪を広げたことによって、これからもしこの法案が通れば、かなり通信傍受が今までよりも広範に行われるようになると。そうすると、この濫用に及ぶ傍受が制度的に防止できないという構造のまま更にこの制度が拡大適用されるようになると、現実にそうした濫用に及ぶ実際の不祥事があるいは被害が生ずるのではないかと、私はこういうふうに思っておるわけであります。
 ですから、今回の、私とすれば、こういう問題を全く見過ごしたまま、法制審議会が議論しないままこの対象を広げたということ、あるいは、それをまた、そういう問題を抱えながらこういう法案を提出した、これは岩城大臣じゃなくてその前の方が提出したわけですけれども、そうしたところがやはり問題があるんじゃないかと。そういうところでありますけれども、とにかくこの濫用がチェックできない、防止できないというこの通信傍受法の構造的な欠陥を私は真摯に取り組んでいただきたいというふうに思います。
 現実的にできるんですよね。例えば、一番単純な方法は、傍受したら、犯罪に係る通信があった場合にだけとするんじゃなくて、犯罪に係る通信があろうがなかろうが、とにかく強制捜査をやったんだから、強制捜査をやった相手に、事後的でいいから、事前に通知しちゃ傍受の意味がないから、必ず通知しなさいというふうに義務付ければいいだけですよ。そうすれば、必ず傍受された人に通知しろと言えば、傍受された人は何だこれはと思って確認するでしょう。そういう方法もあります。
 あるいは、捜査の都合で、傍受したということが相手に通知すると捜査しているよということがばれちゃって後の捜査がやりにくいという捜査の都合を言うんだったら、例えば原記録を裁判所に保管する、今のままじゃ裁判所は原記録預かったままで、倉庫と同じですよ。そうじゃなくて、裁判官でもいいし、あるいは中立な第三者でもいいですから、その原記録を、当事者の申請云々は別にして、裁判官自ら、あるいは第三者機関をつくったら第三者機関自らがその原記録をチェックして、濫用に及ぶ傍受はなかったかどうかをチェックするというような、そういう仕組みをしっかり設けないと、制度的に濫用を防止できないというまま行きますと、私は大きな禍根を残すのではないかというふうに指摘させていただきます。答弁は求めませんけど、もし何か御意見がありましたらお話しください。
#101
○国務大臣(岩城光英君) お答え申し上げます。
 小川委員から度重なる御指摘をいただいているわけでありますけれども、何度も申し上げておりますとおり、捜査官が傍受をした通信は全て傍受の原記録に記録されますので、捜査官が違法な傍受を行えば、傍受の原記録に動かぬ証拠が記録され裁判官の元で保管されることになることは御承知のとおりであります。また、捜査官が傍受の実施をする時点では、裁判官が保管する傍受の原記録の聴取等を行う者が現れないとの前提の下で行動することはできません。そのような状況の下で、捜査官が、後に容易に発覚し刑事罰に問われる危険を顧みずに違法な傍受を行うことは想定できません。
 このように現行の通信傍受法が定める適正確保の方策により違法な傍受は十分に抑止されるものと考えておりまして、御指摘のように傍受記録に記録されている通信の当事者以外の者に通知をするということは必要がないというふうに考えております。
 それから、裁判官がこの原記録をチェックする制度といったものについてはどうかという御提言があったものと存じます。このことにつきましては、重ねての説明になるかも分かりませんけれども、傍受した通信については全て録音等の記録がなされ裁判官が保管することとされておりまして、この記録によって捜査機関がいかなる通信を傍受したかが明らかになるようになっております。そして、通信当事者はこの記録を基に通信の傍受に関する不服申立て等を行うことが可能となります。通信傍受法は、このような制度を前提として、裁判官は第三者機関として原記録を保管する役割を担うものとしております。そして、御指摘の点につきましては、捜査機関と同じ知識や情報を持たない裁判官が原記録の聴取のみでその適正を判断することは困難であると考えられることに加えまして、職権審査の結果、傍受が適正であると認められた場合、後に当事者から不服申立て等がなされた場合の処理についても問題が生じかねないなどの問題があると考えております。
 したがいまして、傍受の適正担保の制度として裁判官による一律の職権審査は適当ではなく、傍受が適正であったか否かは不服申立てや刑事裁判の公判の手続において関係者からの主張、立証を尽くさせた上で中立公平な立場から判断するのが適当であり、そのような仕組みによって捜査官による違法な傍受を抑止することもでき、傍受の適正は担保されるものと、そのように考えております。(発言する者あり)
#102
○小川敏夫君 いや、なるほどじゃ困るんですよ。
 結局同じ議論になっちゃうけど、大臣の前提は、捜査官が、裁判所に確かな原記録がある、その原記録を後から確認する者が現れないという前提ではないということに立っているわけですよね。だけど、後から確認する者が現れない前提ではないというから、後から確認する者が現れる蓋然性が十分あるということなんでしょうけどね。
 例えば、私が小川チームの捜査官だとしますよ。それで、傍受をした、犯罪を聞くんじゃなくて情報収集ですから、ああ、これはどうも違法な傍受だということは十分分かっているけどずっと聞いたと。その傍受をしている小川チームが通知をするんですから、じゃ、分かるじゃないですか、犯罪に関連する通信を聞いていないんだから、これは通知する必要はないなということを十分分かりながら聞いているわけですよ。
 じゃ、傍受を受けた人、通知を受けない場合にどうやって、どういうケースで裁判所にその傍受をした原記録があるということを知り得るんでしょうか、ちょっと私は思い浮かばないんですけれども、いかがですか。
#103
○国務大臣(岩城光英君) 先ほども申し上げましたけれども、傍受の実施期間中に一度も通知の対象となる通信が行われなかったというのはあくまで結果論でありまして、捜査官はいつでも犯罪に関連する通信が行われ得るとの前提の下で該当性判断のための傍受を行うことになります。そして、当初は通知の対象とならない通信であっても、その後に行われる別の通話において通知の対象となる通信が行われることが十二分にあり得るわけでありますので、その通知を受けた当該通信の当事者等により傍受の原記録がチェックされ得るということを前提に該当性判断のための傍受を行うのでありまして、違法な傍受を行うことはできないと、そのように考えております。
#104
○小川敏夫君 同じ議論を繰り返してもしようがありませんけど、どう考えても私は、違法な場合に通知が行かないというこの制度的欠陥は何らかの方法で、やはりこの通信傍受制度をこれからも続けていくんであれば、この実効的な濫用防止策というものをしっかり考えていく必要があるということを述べさせていただいて、この議論については取りあえず今日のところは終わりたいと思います。
 基本的な話ですけれども、要するにこの通知の話ですけれども、いわゆる令状による強制捜査、典型的なのは逮捕令状とか捜索令状なんかが一番基本的なものですけれども、これは、本来侵してはならない身体の行動の自由とかあるいは住居の静ひつの自由とか、様々な憲法上保障された自由を侵害、侵害するというのは言葉はあれですけど、憲法上保障された権利を、この令状によってこれを制限するわけであります。
 ただ、通信傍受も、同じように憲法上保障された通信の秘密を、これを言わば制約するわけでありますけれども、この通信傍受とこれまでの伝統的な強制捜査における逮捕や捜索令状って、私は決定的に違うことがあると思うんです。
 というのは、要するに強制捜査を受けた本人がそういう強制捜査を受けたことを知っているか知らないかです。逮捕令状の場合は、逮捕されちゃうんだから通知するまでもないですよね。逮捕令状を執行されたんだから、通知を受けるまでもなく本人に分かるわけですよ。これ、捜索令状だって同じですよ。だって、自分の家を家捜しされちゃうんだから、通知なんか要らないですよね。あるいは、その場にたまたま自分がいなくたって、誰かいるんだから。つまり、これまでの強制捜査ですと、強制捜査を受けた人が自分は強制捜査を受けたということが分かるわけですよ。だから、何らかの違法なことあるいはその強制捜査に不服があれば、直ちにそれに対する対抗手段を取ることができるわけです。
 ただ、この通信傍受というのが、これが違うんですよね、事の性質上、本人に分からないようにやるわけですから。だから、本人は、実は憲法上保障された通信の秘密をこの令状によって侵害されたわけですよ、制約されたわけです、そのことを分からないという特殊性があるわけです。
 どうでしょう、これは憲法で保障された通信の秘密を強制捜査によって制約した、侵害という言葉がいいかどうかは別にして、侵害したわけです。であるならば、やはりそもそも濫用の防止策云々ではなくて、本来的な基本的人権の制約の在り方として、強制捜査をしたんだから、憲法上保障された権利に対する強制捜査をしたんだから、当然、傍受をした以上、終わった後に全員に通知をする義務があるんじゃないでしょうか。私は、憲法上の人権保障の精神からいけば、通信傍受でたまたまヒットした場合にだけ通知するというんじゃなくて、通信傍受を行ったら必ず相手方に通知すると、こういう考え方が必要だと思うんですが、いかがでしょう。
#105
○国務大臣(岩城光英君) お答えをいたします。
 現行の通信傍受法は、第二十三条第一項において、傍受記録に記録されている通信の当事者に対し、傍受記録を作成した旨等を書面で通知しなければならないとされております。他方、傍受をした通信でありましても、傍受記録に記録されたもの以外のもの、すなわち該当性判断のために必要最小限の範囲で一部傍受をしたが傍受すべき通信等に該当しなかった通信の当事者に対しては、通知をすることはしておりません。
 これは、傍受記録に記録されない通信、すなわち傍受すべき通信等以外の通信については、該当性判断のために必要な最小限度の範囲で通信の一部を断片的に傍受するにとどまり、それのみの通話の記録は消去して捜査機関の手元には残されず、その後の刑事手続において使用することはできない上、仮に傍受記録に記録されたもの以外に対しても通知を行うとした場合には、通知を行うだけのために犯罪と関係のない通信の当事者を特定する捜査を行う必要があり、かえってそのプライバシーを侵害するおそれがあって適当ではない。また、犯罪に関係のない通信の当事者にまで広く通知をすることは、当該通信手段が捜査の対象となっていることを知らしめることとなり、被疑者等の名誉やプライバシーの観点からかえって不利益になる、そのように考えられることを考慮したものでございます。(発言する者あり)
#106
○小川敏夫君 なるほど分かったというやじが飛んだけど、全くその法の無理解に私は苦言を表したいと思いますけれども。
 私は、捜査を受けた相手方に通知しなさいと言っているので、相手方と会話をした相手、また第三者を探し出せなんてことは言っていないわけです。
 強制捜査、通信傍受をしたよということを通知すると、捜査していることがばれちゃうからやりにくいという捜査側の都合もあるでしょう。だけど、考えてみてください。差押えや捜索だってそうですよ。差押えや捜索やって空振りに終わっちゃったと、だけど、捜索やったことはすぐ相手方に分かりますよね。この通信傍受だけは、やるだけやっちゃっても、空振りに終わっても何でも、要するに相手方には分からない、だから余計ますます濫用しやすい環境にあるわけであります。
 通信傍受に関しましては、さっき終わると言ったのにまた聞いちゃいましたね、失礼しました。また必要があれば日を改めて質問させていただきますけれども。
 司法取引について今度はお尋ねいたします。
 私は、司法取引について、一番根本的にここのところはどうだろうという大きな疑問を持っているのは、今回司法取引という制度をこうやって法定化して認めたわけです。司法取引をするときにはこういうふうにしなさいという一つの要件を法定したわけですね。
 私はそこで疑問に思うのは、こういう手続に乗った司法取引によらないで取引しちゃうような例もあると思うんですよ。実際のところ、例えば、これまで司法取引という制度が訴訟法上何にもなかった、だけど、実際の捜査の現場では取引ということはよく行われているように思います。例えば威圧的な方法なら、おまえ、そんないつまでもしゃべらないなら、おまえの女房や子供まで一緒におまえ引っ張ってくるぞという脅し型の、だけど、しゃべればそこまでやらないで済ませてやるわという脅し型の取引もあるでしょうし、あるいはまた脅し型じゃなくてなだめ型のやり方で、まあまあ、もういいかげんにして何とかしゃべれば、ここら辺のことをしゃべればおまえ罪は軽くしてやるから、だから覚醒剤の入手先なんかもうしゃべったらどうかというような取引だってあるわけでありまして。
 何かやじで、そういう捜査をおまえもやったのかというやじがありましたけど、私はそういうことをやったことはありません。ただ、私が担当した裁判の中で被告人がそういう取調べの状況を説明することはかなり多くありました。あるいは、もうテレビドラマじゃ有名ですよね、そんなことが。あるいは、たまに捜査の状況を録音した人の録音が漏れてきて、それらしいような話も、捜査の状況も一部かいま見えるわけでありますけれども。
 私が聞きたいのは、要するに、これまでもいろんな形で取引に属するようなそういう捜査は行われてきたと思うんです。それで、私が聞きたい、一言で言う私の質問は、今回司法取引という制度をつくりましたねと、じゃ、この司法取引という制度をつくった、この手続に乗らないで行った取引はどうなるんですか。
 私の考えでは、司法取引というものの仕組みをこうやって法律で決めたんだから、この法律の司法取引の手続に乗らないでやった司法取引は、これは違法、無効とならなくちゃいけないと思うんですが、どうなんでしょう。この法律で定めた司法取引に乗らないで事実上捜査官がやってしまった取引は、これはどういうふうに法的な評価を与えることになるんでしょうか。
#107
○国務大臣(岩城光英君) 今般の合意制度におきましては、対象犯罪や合意の内容に含めることができる事項等を限定することとしております。これに違反した場合、そのような合意に基づいて得られた証拠の証拠能力につきましては、法律上明文で対象犯罪等が限定されているにもかかわらず、これを意図的に無視しており、法軽視の態度が顕著であると言わざるを得ないこと、仮にこのような証拠を許容すれば同様の事態が繰り返されるおそれが大きいことなどから、刑事免責制度に関する最高裁大法廷判決の趣旨に照らしまして証拠能力が否定され得ると考えられます。
#108
○小川敏夫君 そうすると、もう一度確認しますけど、これ大事なことなんですよ、非常に。これからの捜査に物すごく影響を与える答弁ですから。
 つまり、司法取引という制度を今度この法律でつくったわけですね。そうすると、新たに設けたこの制度によらないで捜査官が取引したら、それは違法な評価を受けると、こういうことでよろしいわけですね。今の、私はそういうふうに聞きましたが。
#109
○国務大臣(岩城光英君) 合意制度において対象犯罪や合意の内容に含めることができる事項等を限定することとしていることに鑑みますと、これらに反する合意をすることは違法となるものと考えられます。
#110
○小川敏夫君 例えば、これまでもあったかもしれない、検察官が贈収賄の事件の取調べか何かしていると。すると、贈賄側の人間に対して、おまえ早く、この収賄、贈ったことをしゃべっちゃって、贈収賄しゃべりなよと、しゃべっちゃったら、じゃ、おまえの刑は三つぐらいあるけど一つだけにしてやるよなんということをやり取りして、何とか大臣に私は賄賂一千万円贈りましたなんということが供述したようなことがあったとしたら、この司法取引に対する今度新たな要件に載っていないわけですよ。取調べ室で検事と被告人だけが取引しちゃったわけだから。すると、それは、そうしてやることは違法だから、そういうことによって得られた供述も違法、したがって証拠能力がないと、こういう論理になっていくんですが、そういう答弁でよろしいわけですか。
#111
○国務大臣(岩城光英君) 委員の御指摘のとおりだと考えております。
#112
○小川敏夫君 いや、これは大変重要な答弁をいただきました。そういうことであれば、私はこの部分に関して、司法取引に関して少し見方を変えます。すなわち、今まで闇に行われていた司法取引が無効になって、この法律の規定に従った取引だけが合法だよということであれば、ああ、なかなか前向きな面もあるんだなということで、この部分に関してだけは評価を少し、見方が変わるかもしれませんが、また事情によって違うなんていう答弁が変わらないように是非お願いいたします。
 それで、その司法取引なんですけれども、今度は一般的に、余り法律の細かい解釈でなくて、私は不公平な一面もあると思うんですよ。すなわち、取調べを受けたその人が、良心に呵責のある人は反省して全部しゃべっちゃったと。なかなか潔くてよく反省しているし、なかなか立派な人だと思うんだけど、全部しゃべっちゃった人は取引材料がないからもう取引できないんですよね。それよりも、もう往生悪くて、俺はやってない、ああだこうだ言いながらあれこれあれこれ弁解言った、あるいは本当のことをしゃべらないような人間は取引材料があるから取引できるんですよ。すると、往生際が悪くて反省しないで頑張った人間がこの制度を利用して罪が軽くなっちゃって、本当に反省して全部しゃべっちゃって捜査に協力した人はそういう恩典を受けられないんじゃ、私は不公平なところがあると思うんだけど、どうでしょうか。
#113
○国務大臣(岩城光英君) 自発的にそういった捜査に協力した場合には、量刑上はそれは考慮されることになるものと考えております。
#114
○小川敏夫君 それは、よくしゃべったからいいよということは考慮されるけれども、でもそれは制度的には保障されていないわけで、幾らしゃべって反省しても、やったことは悪いねといって厳罰になっちゃえばそれまでの話なんですから。
 法律の範囲に入る前に、私はそれよりも、この取引はやっぱりもっと本質的に随分危ない面があると思うんですよね。
 例えば、この犯罪の対象の中に贈収賄が入っているわけです。すると、今も国民の世論は、収賄でお金もらった公務員や政治家が悪いから贈賄の人間はしゃべれしゃべれと言うけれども、贈賄者の方も自分が贈賄したと言えば自分が罪になっちゃうから、なかなかそこら辺が自供が得られない、なかなか贈収賄が捕まりにくいところがあるわけですけどね。
 今度は、贈賄側に対して、きちんと事実を明らかにすれば、おまえは悪い政治家にだまされてやむなく贈ったんだろうから勘弁してやるよというようなことになって、贈賄側に言わば事実上の免責を与えてしゃべらせるといって、本当に悪い公務員、政治家が捕まるならいいけど、しかし、いや、うそ言って贈賄したと言ったら、自分も刑務所に入るの嫌だけど、多少のうそなら、でも免責してもらえるならいいかといって陥れる魂胆があるか、あるいは、そうでもいいやと思っちゃうか何かして、贈賄側が公務員や政治家に対する収賄を、間違った供述をしてしまうようなことはないんでしょうか。そういうふうに、司法取引の犯罪の中に贈収賄も入っていますから、そういうことを考えると、だんだんだんだん謀略的なものが、今までだって謀略じゃないかと言われた贈収賄事件はよくあるわけですよね。そういうものを更に呼び込みかねないがということがあるんですけれども、どうでしょう、私のこの不安に対しては。
#115
○国務大臣(岩城光英君) 合意制度につきましては、被疑者、被告人が虚偽の供述をして第三者を巻き込むおそれがあるとの指摘がございます。
 そこで、そのようなことが生じないように、制度上次のような手当てをしております。すなわち、協議の開始から合意の成立に至るまで常に弁護人が関与する仕組みとしております。また、合意に基づく供述が他人の公判で使われるときは、合意内容が記載された書面が当該他人にも裁判所にもオープンにされ、供述の信用性が厳しく吟味される仕組みとしております。そのため、合意に基づく供述につきましては、裏付け証拠が十分に存在するなど積極的に信用性を認めるべき事情が十分にある場合でない限り、信用性は肯定されません。その結果、検察官としても、十分な裏付け証拠があるなど裁判でも十分に信用される場合でない限り、合意に基づく供述を証拠として使うことはできないこととなります。さらに、合意をした者が捜査機関に対して虚偽の供述等をした場合には、新設の罰則による処罰の対象となります。したがいまして、合意制度は虚偽の供述により第三者を巻き込むおそれに適切に対処できるものになっております。
 そしてまた、贈収賄事件のことについてお触れになられました。巻き込みが生じないようにするための制度的な手当てがなされておりまして、検察当局におきましては、これら制度の趣旨をも十分に踏まえつつ、常に法と証拠に基づき、厳正公平、不偏不党を旨として合意制度を適正に運用していくものと考えておりまして、何らかの政治的意図に基づいてこの制度を利用するなどということはないものと考えております。
#116
○小川敏夫君 さっきの通信傍受もそうだけど、警察官は職務を一生懸命やっているから、悪いことをするわけがないから大丈夫だと。それは分からない話でもないけれども、でも、それだけで大丈夫なのかなと。
 つまり、そういう職務を行う人を信用するだけで全て間違いが起こらないということはないと思うんですよね。やっぱりよこしまな人、不注意な人、勇み足をする人、やはり出る可能性があるから、だからそういう職務を行う人を信頼するだけじゃなくて、制度的にそういうことができないような仕組みをしっかり設けておかないと、やはり刑事手続ですから思わぬ被害あるいは不公平を生むことがあるのではないかということから、私は、ただ単に担当する公務員に対する信頼だけじゃなくて、制度的にそういう仕組みを設けなくてはいけないのではないかという観点からいろいろお尋ねしているわけでありまして、私は通信傍受のことに関しても、警察官がこれを利用してどんどん悪いことしてやろうと思っている集団だなんということは全く思っていませんから。ただ、残念ながら、一〇〇%絶対に間違いを起こさない集団だ、警察組織だというふうにも私は思っていない。やはり間違いは起こすことがあり得るから、制度的にそういうことがないようにしなくてはいけないと思うわけであります。
 例えば、じゃ、もう少し贈収賄のことに関して一つの想定例を挙げて質問させてもらいますけど、例えばある会社の人間が横領で捕まったと、捕まった横領の金何に使った何に使ったと、実は政治家のところにやったんだろうと、五千万円、一億円横領した、おまえ、刑務所行けばこれは懲役四年、五年だぞ、だけど政治家に三百万円贈ったというんなら、贈ったことにすればそれだけで何とか済ませてやるぞなんということになれば、いろいろそろばんはじいて軽い方向に流れるんじゃないかと。
 私がいろいろ聞いた範囲でも、贈収賄っていきなり贈収賄で捕まるんじゃなくて、何かのいろんな事件を端緒にして、不自然なお金の流れがあったりとかそんなことが一つの端緒で発覚することも随分多いと思うんですが、今回の司法取引の対象の中に横領も入っている、あるいは脱税も入っているわけです。そうした会社の経営者が、じゃ、使途不明のお金はどこに行ったんだということをいろいろ厳しく追及するわけで、そうした捜査の過程の中で、例えば政治家に対して、純粋に政治団体に対して企業献金したとかいろんなことをしていたという場合に、それを認めれば、贈賄であることを認めれば刑を軽くしてやるぞなんという誘惑的なことがあって、それで収賄というものがつくり上げられてしまったというようなことが起きたらどうするんだろうかと。そんなのは机上の空論だというふうにおっしゃるのかもしれませんけれども、私も、これ事実に基づかないで私が頭の中で考えた想定例ですから。
 ただ、世の中いろんなことがありますから、特に贈賄側をそうして免責する、あるいは非常に軽くするということは、やはり相当、巻き込むというよりも、無理に収賄者をつくり上げるとか、あるいは陰謀的に政治家が収賄で嫌疑を受けて政治生命を失っていくというようなことにもなるんじゃないかということの非常に大きな懸念を抱いておるのであります。
 これについても、重ねて答弁を求めても先ほどと同じ答弁をなされるでしょうから、また別の聞き方をしますけれども、例えばこういう司法取引によって得られた供述については、いずれ公判で裁判官がそういうものだという前提でしっかり吟味するでしょうから大丈夫だというお話がありました。ただ、この取引によって得られた証拠は、公判で使われるだけじゃなくて、逮捕令状、捜索令状、通信傍受令状も含めて、そういう令状を請求するときの証拠資料としても使うことができますよね。
#117
○国務大臣(岩城光英君) 御指摘のとおりでございます。
#118
○小川敏夫君 そうすると、令状請求、捜索令状請求、逮捕令状請求、そうしたときに、そういう取引によってできた供述調書があっても、裁判官はそうした吟味をするということはなかなかできないんじゃないでしょうか。
 あるいは、そもそも令状請求のときに、その供述調書が合意制度によって得られたものだという、その合意に関する書類が一緒に提出しなければならないというような義務規定はどこにも入っていません。ですから、そういう取引によって得られた証拠を基に例えば政治家が逮捕されたということになったらどうでしょうか。
 例えば、逮捕された、その後起訴されなくても、裁判にならなくたって、逮捕されたということだけで政治生命、社会的生命はかなり深刻な打撃を受けると思うんですが、そんなような危険な想定例を私は考えたんですが、いかがでございましょうか。
#119
○国務大臣(岩城光英君) 現行刑事訴訟法には、令状請求の疎明資料に関する規定は設けられておりません。その点に関する規定は刑事訴訟規則に設けられております。そのため、本法律案においても、合意に基づく供述調書を他人の刑事事件における令状請求の疎明資料として用いる場合について、合意内容書面を併せて提出すべき旨の規定は設けておりませんが、本法律案の刑事訴訟法第三百五十条の八の趣旨に照らせば、当然併せて提出することとなるものと考えられます。
#120
○小川敏夫君 これも私の一つの頭の中の想定例ですけれども、それで政治家は逮捕されたけど、調べた結果、どうも公判請求までできない、だから裁判にはならなかったと。しかし、検察の方は嫌疑なしとしないで起訴猶予なんという、逮捕して、逮捕は正当だったけど諸般の事情を考慮して起訴猶予とする、犯罪はあったけれども公判請求しないで勘弁してやるなんということにして不起訴にされたらどうなるでしょうか。答えなくていいです。
 その場合、政治家は逮捕された、決定的に政治生命、社会的生命を毀損されたと。しかも、その結果、検察からは、おまえは本当は収賄やったんだけど様々な情状を酌量してお目こぼししてやったという起訴猶予にされたと。しかし、された政治家の方は、冗談じゃない、全く明々白々な事実無根の無罪だったとしても、検察がした起訴猶予について、それは不当だと争う手段はありません、検察がそういうふうにやっただけですから。不起訴になったことについて不服の申立てをする手続がないからですね。
 そうすると、全くいいかげんな贈賄者の虚偽の供述を根拠に逮捕されて、しかも、そういう収賄の事実があったけど勘弁してやるわというような烙印を押されたまま、それを明らかにする手だてもないまま政治生命、社会的生命を葬られてしまうと。こんなことを、私は起きたらどうするのかと頭の中で描いて不安に思っているんですが。
 どうでしょう、やはりこの司法取引制度というものについては、そうした供述者が自己の利益のために第三者を犯罪に巻き込む、犯罪に陥れるという危険性があるということを現実に考えて、それがしっかりと行われないような制度的な担保を構築するべきではないかと思うんですが、どうでしょうか。
#121
○国務大臣(岩城光英君) いろんな例を挙げて御指摘をいただきましたけれども、先ほど巻き込みについて申し上げた三つの制度的手当て、これによりましてそのような事態に適切に対処できるものと考えております。
#122
○小川敏夫君 第三者に対する犯罪をうそをつけば新たに五年以下の懲役の罰則が設けられたといっても、それは今度は逆にうそをついたということの明白な証拠がないとなかなか起訴できないんですよ。だから、三百万円を贈ったという事実がうそだということをなかなか明白にする事実もできないんじゃないでしょうか。あるいは、捜査官側は、三百万円を収賄したということで政治家を逮捕しちゃったと。逮捕しちゃった後に、いや、供述者の供述は虚偽だったと言えば自分たちの捜査が間違っていたことを認めるわけですから、これは、そこら辺は曖昧模糊としちゃって、供述が虚偽だなんてことはなかなか言わないような方向に動くんじゃないかと思うんですがね。いずれにしろ、法務大臣はそういう心配はないとおっしゃられるけど、私はないとは到底言えないというふうに思っております。
 また、じゃ次の、具体的なことについて、この法律について少しお尋ねしたいと思うんですけれども、例えば合意をするわけですね、合意をしたと。ですから、被疑者の方は何らかの供述をする、証拠を提出する、検察側はその見返りに何らかの刑が軽くなるような、責任が軽くなるようなことをするという合意をするわけですけれども、それが実際に実行されなかった場合どうなるのかと。
 一つは、供述者が言ったことがうそだったという場合、それからもう一つは、検察官の方が約束したことを実現できなかったという両方の方向があると思うんですね。それに対しては、約束がなかった元に戻るんだという原則の規定があるんですけれども、例えば検察官の方が約束したことを守れなかったという一つの例を想定しましょうか。
 例えば、この法律では書いてあります、求刑意見を述べた、求刑に関して意見を述べたけれども、裁判官がその検察官の意見を採用しないで重い刑を科した、科してしまったというような場合、供述者は供述をするなりして証拠を提出してもう既に履行したのにその約束が守られなかった、実現されなかったということを想定した規定がありますが、私が一つ疑問に思うのは、約束が守れなかった、実現できなかったから元に戻るというような原則の規定ですけれども、だけど、供述者の方は第三者の犯罪をしゃべっちゃって、もう供述しちゃって証拠も提出しちゃったんです。つまり、真犯人は誰々さんですよと、あるいはこの覚醒剤の入手元は誰々さんですよということを話しちゃったわけですよ。もう元に戻れませんよね。
 具体的に言えば、じゃ、覚醒剤所持で捕まった人がその入手元を、この取引によって誰々さんから買いましたといって話した、だから刑を軽くしてもらえるはずが、裁判官がこんなの駄目だといって求刑よりも重く判決しちゃった、だから合意が実行されなかった、だから、じゃ、合意はなかったことにしましょうといったって、もう覚醒剤はこの人から買いましたとしゃべっちゃったんだから、もう明らかになっちゃった犯罪事実をなかったことにはできないですよね。こういう場合はどうなってしまうんでしょうか。
#123
○国務大臣(岩城光英君) 検察官と被疑者、被告人が求刑についての合意をした場合において、被告人が合意に基づく義務を履行した後、検察官が被告人の事件において合意どおりの求刑をしたものの、裁判所がこれより重い刑を言い渡したときという設定だと思います。
 このときは、被告人は合意から離脱することが可能であります。そして、検察官の求刑は量刑についての意見であって、裁判所の量刑判断を拘束するものではありませんが、実務上、裁判所の量刑判断に当たって重要な判断資料の一つとなるものである上、実際にも求刑より重い刑が言い渡されることはまれでございます。したがいまして、検察官が特定の求刑をすることを内容とする合意は、いずれも被疑者に他人の刑事事件の捜査、公判に協力することの動機付けを与えるものとして十分に実効性を有すると考えられます。
 もとより、その合意は裁判所の判断を拘束するものではなく、被疑者としても当然そのことを認識した上でその合意をするか否かを判断することとなります。被疑者の中には、そのような不確実な合意を望まない者も存在し得るところであり、その場合にはそのような合意は成立しないこととなりますが、そうであるからといって求刑についての合意が一般的に機能しないこととなるわけではなく、先ほど申し上げたことに鑑みますと、その合意は実効的に機能し得るものと、そのように考えております。
#124
○小川敏夫君 裁判官は憲法で保障された独立の原則がありますから、裁判官は裁判官で判断するわけでありまして、別に合意には何にも拘束されないわけであります。だから、何だ、さんざんしゃべったって、しゃべるのは当たり前じゃないか、こんな悪いやつは元々の刑でいいんだといって裁判官もそういうふうに科しちゃえば、裁判官は独立ですからしようがないですよね。
 合意が壊れたから離脱するといっても、だって、離脱するといったって、貸したお金をじゃ元に返せという話じゃないんだから、真犯人はこの人ですと話しちゃったんですよ、もう。元に戻らないですよね。だから、合意が守れなければ離脱するといったって元の状態に戻らないんだから、そうすると、合意しちゃった人は元々悪いことをして本当のことをしゃべったんだからいいんだといえばそれまでかもしれないけど、だけど、それじゃ制度が成り立たないですよね。少なくとも、離脱したからいいんだというんじゃまだ足らないんで。じゃ、合意がしたことによって提出した証拠、あるいは合意によって供述した覚醒剤の入手元のような真犯人、でも、その真犯人を捕まえないというのもおかしいよね。合意が壊れたから、ここに覚醒剤を売った真犯人が分かったのに、合意が壊れたから真犯人捕まえないというのもおかしいしね。で、合意のときにやった供述調書は使わないといったって、また別に供述調書を作ればいいんだからね。
 どうもこの合意がうまくいかなかったときに離脱するとしか法律には書いていないので、そこから先のことを何か触れていない、あるいはもう書き切れないから触れていないのかもしれないけれども、どうも不合理さが残るんですよね。
 それから、また別の質問をしますけれども、別の質問といっても、今度は合意が壊れた場合ですね。被疑者の方がうその供述をした、その場合で合意が壊れる場合ですね。しかし、被疑者がうその供述をして検察官と取引して、じゃ、これは罰金刑の即決裁判でいいよと。だから、本来なら公判請求して懲役何年のものを、おまえ、この取引で即決裁判でいいよと言って罰金刑にして、あれは即決裁判だからすぐ裁判終わっちゃうわけです。で、罰金刑に処せられたと。その後に、いや、それはうそだった、供述はうそだったと。そうすると、合意はなかったことになる。でも、合意はなかったことになるといっても、もう被疑者に対しては裁判は終わっちゃっているんです。罰金取っちゃっているんです。すると、一事不再理ですから、一つのことで二回処罰できないから、元に戻してやっぱりこれは公判請求で懲役だという措置はできないんですよね。だから元に戻らないんですけれども、こんなケースではどうなんでしょう。
#125
○国務大臣(岩城光英君) 検察官と被疑者が略式命令請求についての合意をした場合におきまして、検察官が合意に基づいて略式命令を請求し、その略式命令が確定したときは、その後、被疑者が合意に違反したとしても、既に略式命令が確定している以上、その内容を変更することはできません。
 検察官としては、御指摘のような事態が生じないようにするために、被告人が真摯な履行意思を有しているか否かを見極めつつ、事案に応じて、被告人が合意に基づく義務を履行したことを確認した上で略式命令請求を行うことになると考えられます。したがいまして、御指摘のような事態は基本的には生じないものと考えております。
#126
○小川敏夫君 合意したことが履行されるまでといっても、じゃ、第三者の犯罪をしゃべった、その第三者の犯罪が捜査されて、起訴されて、ずっと裁判が終わってその人間が刑務所に行くまで合意した人間の処分をほっぽっておくんですか。それもちょっとおかしいですよね。
#127
○国務大臣(岩城光英君) 重ねてのおただしでありますけれども、やはり被告人が真摯な履行意思を有しているか否かを見極めつつ、事案に応じて、被告人が合意に基づく義務を履行したことを確認した上で略式命令請求を行う、そういうことになるものと考えております。
#128
○小川敏夫君 また別のことを聞きますが、今度は法律の話ではあるけれども、これは被疑者、被告人と書いてあります。この制度は、被疑者、被告人の刑を軽くするために設けられた制度じゃなくて、あくまでも第三者の犯罪の真相を究明するために被疑者、被告人が供述しやすいような、証拠を提出しやすくする、そちらを促す方にあるので、制度の目的は他人の犯罪を解明するということにあると思うんですね。
 そうしますと、今ちょうど新聞紙上でにぎわせている、死刑囚が、つまり被告人じゃなくてもう判決を受けちゃった人ですね、が何か今新聞をにぎわせているのは、死刑囚が自分の受けた罪とは別の殺人を申告して、どうも申告どおりに死体が出てきたというような記事が、たしか昨日出ていました。
 それで、この法律は被疑者、被告人と書いてあるけれども、確定服役者に対しては、第三者の犯罪を明らかにするために話した人間に御褒美をあげて刑を軽くするというんだったら、別に被告人じゃなくたって、刑務所に入っている人間が少ししゃべれば、仮釈放を少し早くとか約束してやるとかいっても制度の趣旨としては合致していると思うんですが、どうでしょう、これ被告人じゃなくて確定囚に、確定した服役囚に対しても適用するような考えはないんでしょうか。
#129
○国務大臣(岩城光英君) その者に犯罪の嫌疑が生じて被疑者ということであれば、それは可能であります。
#130
○小川敏夫君 いや、それは限られたケースでしょうからね。その人に犯罪の嫌疑があれば被疑者ということでしょうけれども、別に他人の、第三者の犯罪をしゃべるんだから、話すんだから、その人が被疑者であるということはむしろ少ないケースだと思うんですよ。いや、別に法律的に難しい話じゃないんです。必要ないのなら必要ない、いや、考えるというなら考えるというだけの話ですから。
 今は、被疑者、被告人ですから、被告人の後の裁判が終わった人のことを聞きました。じゃ、今度は被疑者になる前の人のこと。
 どうでしょう、まだ被疑者になっていないけど、どうしてもあそこの人間、覚醒剤を売っているに決まっている、おまえもどうせやっているんだろうけれども、あの人間から買ってこいよ、買ってきたっておまえは許してやるよと言って買ってこさせて第三者を捕まえる。すなわち、まだ被疑者になる前の人に取引をして、それで、おまえはこれからやってもいいよ、言わばおとり捜査みたいなものですよね。こういうものについては、これは適用は考えていないんですか。
#131
○国務大臣(岩城光英君) その者が被疑者ということに当たるのであれば、それは可能だと思います。
#132
○小川敏夫君 いや、だから、取引するときにはまだ被疑事実はないんですよ、要するに、まだ。ただ、これから覚醒剤を買いに行くという、これから犯罪を唆して買ってきて、これから被疑者になる人間ですよ。でも、これから被疑者になったっておまえ勘弁してやるから、大丈夫だから、おまえちょっと買ってこいと言って買ってこさせたらというようなことだって、第三者を、悪い密売人を捕まえるためにはそういう人間をお目こぼししてもいいように思うんだけれども、こういうことは、少なくともこの犯罪は、被疑者になる前の人間には適用しない、考えていないということなんですね。考える気はないですか。
#133
○国務大臣(岩城光英君) 被疑者にならない者につきましては、合意の対象にはなり得ません。
#134
○小川敏夫君 じゃ、終わります。
#135
○仁比聡平君 日本共産党の仁比聡平でございます。
 先ほど、小川委員の司法取引とその違法性、司法取引の要件を満たさないものについての違法性について、私も重要な答弁があったと思います。そこで、通告した順番と違いますが、まずその問題について、先ほどあった大臣の答弁との関係で局長にこの問題をお尋ねしたいと思うんですが。
 一昨日の参考人質疑において、日弁連の河津参考人がこの問題についてこのように意見陳述をされました。ちょっと速記録から読み上げますが、証拠収集等への協力及び訴追に関する合意制度が創設されるのであれば、その要件を満たさない事実上の取引は違法であると解するべきですと。この見解について、法務当局の御見解はいかがですか。
#136
○政府参考人(林眞琴君) 今回、合意制度というものを法律で定めて、その対象犯罪や合意の内容に含めることができる事項等を法律で限定している、こういったことに鑑みますと、これらに反する合意をすることは違法となるものと考えられます。
#137
○仁比聡平君 先ほど大臣が御答弁になっていたこと、刑事当局からするとそうした御答弁だと思うんですが。
 そこで、その要件、改正案の要件を満たさない、つまり違法であるとされた場合に、一体その司法取引で得られた証拠、まず第一義的には供述証拠ですね、その供述証拠から更に捜査を経て得られる様々な物的なものも含めた証拠ということが考えられるわけです。先ほど小川委員が指摘をされたように、司法取引によって得られた供述を証拠とした身柄拘束ということも当然考えられるわけですね。
 違法な司法取引、事実上の取引によって得られたそうした様々な証拠というのが捜査と裁判においてどう使われるのか、あるいは使われないのかというのがこれは重大な問題です。私が指摘したような数々の証拠の、法律的には証拠能力といいますが、つまり、有罪を立証する証拠として使えるのか、使えないんじゃないのかと。この問題については法務省はどうお考えですか。
#138
○政府参考人(林眞琴君) 法律で定められた今回の合意制度ではない事実上の合意、こういった形での合意がなされた結果、その証拠が他人の公判に顕出され、それがそういった当該合意に基づくものであることを理由として証拠能力を争われた場合について考えますと、その場合のその証拠能力につきましては、法律上明文で対象犯罪や合意の内容に含めることができる事項が限定されているにもかかわらず、これを意図的に無視しており、法軽視の態度が顕著であると言わざるを得ないこと、また、仮にこのような証拠を許容したとすれば同様の事態が繰り返されるおそれが大きいこと、こういったことを考えますと、刑事免責制度に関する最高裁大法廷判決の趣旨に照らして証拠能力が否定され得ると考えられます。
#139
○仁比聡平君 今の御答弁よく吟味する必要あると思うんですけれども、一点だけ。他人のための公判の証拠として顕出された場合というふうに、公判廷における証拠として検察が請求した場合という裁判所の判断というふうに場面を限定をされたわけですが、司法取引あるいは事実上の要件を満たさない違法な取引によって得られ得る証拠というのは、先ほど申し上げたように様々あるわけでしょう。その情報というのは、これは捜査上も当然使い得るという前提なんですか。
#140
○政府参考人(林眞琴君) 一番争われる場合としては他人の公判に顕出された場合、これを想定して今お答えいたしましたが、全体としてこういった形での違法の程度が大きいということでございますので、そのもの、証拠につきましては、それ以外の場面においても違法に収集された証拠、こういった評価を受けることとなろうかと思います。
#141
○仁比聡平君 今、違法に収集された証拠という言葉がありましたが、これは法律家の言葉で違法収集証拠排除法則というふうに言われる概念だと思うんですが、その判断基準というのは一体どうなるのか。先ほど、公判に証拠として顕出された場合の判断の言わば要素のような事項をお答えになりましたけれども、基準はどうなるのか、判断の。ここはいかがですか。
#142
○政府参考人(林眞琴君) この違法収集証拠に関する証拠能力につきましては最高裁の判例がございまして、この中身におきましては、例えばこの関連の事案でいいますれば、令状主義を没却するような非常に重大な違法があり、これを証拠として許容することが将来における違法な捜査の抑制の見地からして相当でないと認められる場合、こういった場合には証拠能力は否定されると、こういった判例がございます。
#143
○仁比聡平君 今局長がお答えになった基準というのはこれは極めて著名な基準なんですけれども、その令状主義を没却するような場合というのがこれは司法取引の場合にも適用されるわけですか。
#144
○政府参考人(林眞琴君) 違法収集証拠排除法則、この判例というものがございますけれども、これについての適用というものについては実務上その具体的な判断基準が確立しているわけではございませんが、先ほど申し上げた判例の趣旨に鑑みますと、今回の合意制度によって、法に基づかない合意によって得られた証拠の証拠能力につきましては、先ほど私申し上げましたが、法律上明文で対象犯罪や合意の内容に含めることができる事項が限定されているにもかかわらず、これを意図的に無視しており、法軽視の態度が顕著であると言わざるを得ないこと、仮にこのような証拠を許容すれば同様の事態が将来繰り返されるおそれが大きいこと、こういうことを考えますと、そうした最高裁の判例等の趣旨にも照らしますと証拠能力が否定され得ると考えられると答弁させていただいております。
#145
○仁比聡平君 司法取引というのは検察官の判断で行うと。司法警察職員が実際上それ行うのではないのかということが大問題になってきているわけです。
 今の、実際に公判に顕出された場合に、法軽視の逸脱が顕著であるとか、あるいは将来そういう同種のことを引き起こすおそれがどうなのかというその判断というのは一義的じゃないわけですよ。これまでの裁判上でいうと、そうした違法に収集された証拠ではないかということが大争点になりながら、いや、違法でない、だから有罪証拠として使えるとされてきたのが刑事裁判の現実ですから。そのことを大前提として、違法収集をされればそれが何だか当たり前のように証拠として使えないのかといったら、そうではないのだということが大問題です。私はこの問題についても吟味をしていく必要があると思うんですね。
 第二に、部分録画規定についての解釈についてお尋ねをしたいと思うんですが、参考人質疑で示されたこの法案についての肝要な部分の解釈について、参考人と法務当局の認識が言わば一致したのかなと思うのは、今の問うた司法取引の部分くらいなんですよ。部分録画という規定の問題についてはどうか。日弁連の河津参考人は、議事録でそのまま読みますと、こうお話しになりました。
 今言及のございました今市事件のように、別件被告人勾留中に対象事件である殺人事件の取調べを行うときは、この条文の文言に照らすと録音・録画義務があると読むのが自然なのではないかと考えられます。なぜならば、これはまさに対象事件である殺人事件について、別件被告人として勾留されている対象事件の被疑者として取り調べるときに当たると考えるのが通常の読み方であると思われるからです。
 これ、今日も午前中、三宅理事が問うたんですが、この立場とは違うんだということを法務当局はおっしゃっている。これは違うわけですね。
#146
○政府参考人(林眞琴君) 河津参考人がそのような意見を表明されていたことは承知しております。
 一方で、本法律案の録音・録画義務が課される取調べについて、刑事訴訟法第三百一条の二第四項におきましては、逮捕若しくは勾留されている被疑者を取り調べるときと規定しているところでございます。したがいまして、録音・録画義務が課されるのは起訴前勾留中の被疑者を取り調べる場合に限られまして、起訴後勾留中の被告人を取り調べる場合には録音・録画義務の対象とはならないものでございます。
 参考人の中でも、小池参考人については私の法務当局での今申し上げた見解について意見を表明されていたものと承知しております。
#147
○仁比聡平君 そのとおりです。小池参考人は私と同様、刑事局長の答弁では極めて重大な部分録画の危険が起こるではないかと意見陳述をされたわけです。ちなみに、与党が推薦をされたもうお一人の参考人、大澤参考人は、今の点は恐らく河津参考人が言われたとおりであろうかと思いますと述べておられます。
 法務省は、この一括法案を、法制審議会特別部会において全会一致で採択をされた、だから成立を急げと随分宣伝をしてこられましたが、こうした肝腎要の問題について本当に全会一致だったんですか。それは採決は全会一致だったかもしれない。けれども、法案にしてみたら、実際日弁連だって与党推薦の刑事法の研究者だって違うって言っているじゃないですか。
 この問題について、大臣、前回、私こうした起訴後勾留、別件起訴によって勾留をされた被告人に自白が強要されることについてのおそれ、危険を申し上げたつもりです。大臣にそうした自白がうそかもしれないということが恐ろしいとは思いませんかとお尋ねをいたしました。
 そこに関わってお尋ねをしたいと思うんですけれども、感想をお尋ねしたいと思うんですが、今ほどお聞きのように、刑事局長は、起訴後の勾留、つまり今市事件でいうならば商標法等違反で身柄は勾留されているわけです。けれども、これは在宅にいる被疑者と同じ状態であるとおっしゃってみたり、あるいは任意同行について、これは取調べ室からいつでも立ち去ることもできる、そうした状態である、だから任意であるというふうにおっしゃっているんですが、任意でも何でもないでしょう。出ていきようがないし、その場で、例えば今市事件で、検察官から詰め寄られて、迫られて、被告人が窓に向かってうわっと突進する、そうした状況が起こっているわけですね。
 この任意だと法務省が言う取調べ室の状況を、大臣はこれどう思っていらっしゃるんですか。
#148
○委員長(魚住裕一郎君) まず法制審議会の全会一致かどうかという点について、法務省林刑事局長。
#149
○政府参考人(林眞琴君) まず、先ほどの大澤参考人が河津参考人のそのとおりと言われたくだりでございますが、その後の大澤参考人の意見を伺いますと、河津参考人の言われた中で、別件の被疑者勾留中の中で余罪取調べをした場合に、その余罪が対象事件である場合にもこの取調べの録音・録画義務が掛かると、こういった部分についてそのとおりであると言われたものと理解しておりまして、大澤参考人がこの起訴後の勾留中の被告人についての取調べにおいて対象事件を調べる場合にこの取調べの録音・録画義務が対象となるという意見を持っておられるとは私どもとしては理解しておりません。
 なお、法制審議会におきましては、この点については明確に、その被疑者の取調べ、被疑者として勾留されている者の取調べについて、対象事件について取り調べる場合に録音・録画義務が掛かると、こういった意見で統一されていたものと考えております。
#150
○国務大臣(岩城光英君) おただしの件は、法律的には任意の取調べということでありますので、いつでもそれは拒むことができますので、局長が答弁をしたとおりでございます。
#151
○仁比聡平君 その参考人質疑において、桜井参考人は、昨年六月の当時と私たちの危機感は全く違いますと、この刑訴法改正の部分可視化によってますます冤罪をつくるものという確信になりましたと述べられ、そして大臣、今まで何件もの死刑事件、無期事件、たくさんの冤罪仲間が苦しんできたのに立法府では一度たりともその検証をしたことがありません、私たちは非常に暗たんたる思いでいます、どれだけ多くの仲間が冤罪に苦しんだら冤罪をなくす手だてを国会の方たちは考えてくださるんでしょうか、どれだけ国民が冤罪に苦しんだら立法府は民主主義の最高の立場として冤罪を防ぐ法律を作ってくださるんでしょうかと述べられたことは、大臣もお聞きなんだと思うんですよ。
 現実に、任意だと言いながら、現在進行している無期懲役の判決が出ている事件で、別件の起訴後に検察は取調べを行って、これ録音、録画してないじゃないですか。その前提となる任意同行からの身柄拘束の間もその取調べの中身は定かじゃないんですね。現に捜査機関はそのように現行法でも運用しているんですよ。その下で、この法案によっても録音、録画の対象にならないと明言しておられるわけですから、その下で行われる取調べ、そこで得られる自白というのは、大臣、恐ろしいと思いませんか。
#152
○国務大臣(岩城光英君) 一昨日の参考人質疑の中で、桜井参考人がいろいろと御自身の経験からお話をされていらっしゃいました。再審で無罪となられた方々の有罪判決が確定して服役された後の苦しみ等についてのお話は、私としても非常に重く、そして厳粛に受け止めるべきものと考えております。
 その上で、自白に関わるお話でありますけれども、刑事裁判における有罪の認定は、自白だけでなく様々な証拠を総合的に検討し、検察官が掲げる公訴事実が被告人側の反論、反証を踏まえても合理的疑いを入れない程度に証明されたかどうかを判断することにより行われております。そして、検察官が公訴事実を合理的疑いを入れない程度に証明できなければ、疑わしきは被告人の利益にの原則の下、被告人は無罪となります。
 また、自白については、虚偽自白による誤判を防止するため、刑事訴訟法におきましては、任意でされたものでない疑いのある自白は証拠とすることができない、自白だけでは被告人を有罪とすることはできないという厳格なルールが設けられております。そして、自白に任意性が認められたとしても、その内容を有罪認定に用いるためには、自白が信用できるか否かについて、他の証拠をも総合して多角的な観点から慎重に検討されるものと承知をしております。
 以上のように、自白のみで被告人が有罪と認められるものではない上、厳格な任意性、信用性に関するチェックを経た自白を他の証拠とともに事実認定に用いることに問題はないと考えられる、そのように思っております。
#153
○仁比聡平君 大臣の御認識は極めて非現実的です。桜井参考人の意見陳述をおっしゃったように深く受け止められるのであれば、物証の乏しい事件、とりわけ被告人と犯人を結び付ける証拠が物的にはない場合に、自白がその被告人を真犯人だとする唯一の証拠、ほぼ唯一の証拠、そういうときに極めて危険なうその自白というのが数々の冤罪をつくり出してきたんだと、それがこれまでの現実なんですよ。その認識がない下でこの法案というのを本当に審議を行っていくことができるんでしょうか。
 私が指摘している部分録画の使われ方、使い方について、今朝、三宅理事も指摘をされていました最高検の平成二十七年二月十二日、取調べの録音、録画を行った場合の供述証拠による立証の在り方等についてという依命通知について法務省の御認識を伺いますが、もう繰り返し読みませんけれども、この依命通知は、事案によっては、より効果的な立証という観点から、記録媒体を実質証拠として請求することを検討すると言っているわけです。
 刑事局長、このより効果的な立証というのは一体何を意味しているんですか。
#154
○政府参考人(林眞琴君) この通知でございますけれども、最近、裁判員裁判を中心としまして公判中心主義の刑事公判というものに移行してきている、こういった問題認識がございます。その際に、裁判員裁判においても、検察においても証拠立証方針といたしましてまずは被告人質問という公判における立証、これによって立証を行っていこうと、こういうことを考えているわけでございます。
 その上で、被告人質問を経た上でなお捜査段階での供述、これが必要となる場合にどういった立証手段、証拠で立証していくかと、そういったことについて、ここにおきましては、被疑者供述を録音、録画した記録媒体もひとつ実質証拠として請求する、こういったことの試みをしていこうと、こういうことを述べているわけでございます。
 そういった場合に、供述証拠がある場合ない場合ございますけれども、供述証拠がある場合と仮に例えますと、その場合に、録音、録画の記録媒体といいますのは、そのまま検察官の発問も、またそれに対する被疑者の答え、応答もそのときの表情も全てそういった記録媒体に記録されておりますので、その意味において供述調書よりもより効果的な立証が可能ではないか、こういった観点で述べているものと承知しております。
#155
○仁比聡平君 私はごまかしちゃならないと思うんですよね。そんな抽象的な場面じゃないでしょう。検察は、有罪と確信して有罪の立証を行っているんです。
 裁判員裁判の流れの中で、まず第一に被告人質問を行うという法廷の運営が行われるようになった。つまり、被告人質問というのは、主には弁護人が被告人に主尋問を行う中で被告人の供述がなされる、それに対して、検察官がその被告人に対する反対尋問を行う中でその被告人の言い分を、傍聴席ももちろん公開をされている、被害者が参加をしている事件であれば被害者の方々もいらっしゃる、そうした下で、つまりオープンな法廷、公判廷で事実があったのか、そこをただしていくというのがつまり被告人質問ですよ。この質問がまず最初に行われるようになってきた、その下で、効果的な立証のために密室で撮ったビデオを法廷に使うというのは一体どういうことか。
 そのビデオによって犯罪事実があるかないかの立証のために使うというのが実質証拠だと、三宅理事に今朝御答弁になりましたね。つまり、被告人の言い分に対して、公判廷での言い分、吟味された言い分に対して、これをひっくり返すために録音、録画を使おうと、効果的な立証ってそういうことでしょう。
#156
○政府参考人(林眞琴君) 当然のことでございますが、証拠請求いたしましてそれが採用されるかどうか、検察官がこの録音・録画記録媒体を実質証拠として立証しようと考えたといたしましてもそれが採用されるかどうか、これについては裁判所の決めるところでございます。したがいまして、検察にとって例えば有利な供述部分のみを立証する、こういったことでの立証方針を取ったといたしましても、それが裁判所において入れられることになるとは限らないわけでございます。
 検察当局におきましては、捜査段階での取調べの状況というものを幅広く録音、録画することによりまして捜査段階での供述の任意性の立証、こういったものに役立てようと、こういった形でこれまで取組をしてきたわけでございまして、その中ででき上がりました記録媒体について、それを事案に応じては個々の実質証拠として請求することもひとつ試みてみようと、こういうことを述べているわけでございます。
 もとより、検察官の勝手に、検察当局によって有利な供述のみ記録した部分で立証を行っていくと、そのようなことを仮に考えたといたしましても、それが入れられるわけではございません。
#157
○仁比聡平君 いやいや、検察官は有罪立証の方針を立てて、それを実現するために法廷で努力するわけでしょう。当然、入れられることがあるかないかは、それは別の問題。何のために部分録画をするのか、それは、つまり実質証拠として請求することを検討し、そのために当初から録音、録画を行っても差し支えないというふうにこの通知は書いてあるわけですよ。
 大臣、そうした中で、部分的に録音、録画をされた、その証拠が裁判官や裁判員にどれほどの影響力を与えるのかと。これ、新聞報道はお読みになっていると思うんですけれども、今市事件の裁判員の皆さんが、情況証拠のみだったら判断できなかったとか、録音、録画がなければ判断は違っていたとか、決定的な証拠がなかったが、録音、録画で判断が決まったとか、臨場感があり、自分の目で見ることに意味があった、こうした判決後の感想を述べておられるわけですね。
 午前中も議論があったんですが、今局長が答弁になったように、どう使うのか、何のために使うのかということについて、法律家は任意性の立証のためだとか、あるいは今朝、三宅理事が示された例、設例でいえば、ろうばいして入ってきた事実を証明しようとするのか、あるいは自白、殺したというその内容そのものを証明しようとするのか、様々な場合がありますというふうに検察は言うけれども、現実にその録音、録画が再現されて、それを見れば、何が立証手段、立証目的だったかということとは無関係に、実際に強い印象、その心証を抱いてしまうというのが今示されている部分録画の懸念なんじゃないですか。
 そうした自白が最初になされたプロセスが明らかにされない部分録画、それは結局、公判中心主義に大きく動いてきたのに、これを、密室で検察官と対峙する被疑者が迫られている、この映像を法廷で見て有罪か無罪かを決めてしまうという、かつての調書裁判、これまでの調書裁判を言わば録画裁判にしてしまう。大臣、そういうことなんじゃないんですか。
#158
○国務大臣(岩城光英君) 一般的に申し上げますと、近時の裁判実務におきましては、裁判員裁判事件を始めとして、証人の尋問や被告人質問を中心とした審理が行われているという現状にございます。したがいまして、録音・録画記録が裁判における証拠として提出される場合でも、まずは証人の尋問や被告人質問が行われることと思われます。
 その上で、検察官がなお録音・録画記録による立証の必要性があると判断してこれを証拠として請求をした場合、弁護人が証拠意見を述べ、これを踏まえて裁判所がその必要性、相当性を考慮して採否を判断することとなります。そして、録音・録画記録が取り調べられる場合であっても、その信用性は、例えば公判廷における証人の尋問や客観的な証拠の取調べの結果、被告人質問において直接被告人が取調べの状況や事件当時の状況などについて供述した結果などを総合的に評価する中で適切に評価されることになるものと考えられます。
 したがいまして、検察官が録音・録画記録を証拠として用いることがあったといたしましても、そのこと自体が公判中心主義に反する、そういった御指摘は当たらないものと考えております。
#159
○仁比聡平君 いや、大臣、よく考えていただきたい。
 私のこの指摘に対して日弁連の河津参考人は、御指摘のとおり大きな危険があると思いますというふうに述べられました。真意が私が申し上げるのと一致しているのかどうかは、何かあればまた伺いたいと思いますが、公明党の矢倉理事、実質証拠としての頻発するというような事態になるという事態は良くないと思いますと、小池参考人の意見陳述を受けて御発言に一昨日なられました。
 実はこれは最近の議論ではありませんで、民主党政権の時代に滝元法務大臣が、公判主義との問題からすると、それでいいのかというようなことに突き進む、そういう懸念もないわけではありませんという法務大臣としての懸念を示しておられるんですよ。
 林局長、試行しているというふうに何か言い逃れようとされるけれども、この実質証拠として使うことを目的として録音、録画する、この通知は撤回すべきじゃありませんか。
#160
○政府参考人(林眞琴君) この通知におきまして、先ほど部分録画を試行していると、こう言われましたけれども、これはまさしく、部分的な録画を行いそれを実質証拠として請求していこうと、このようなことを内容とするものでは全くございません。検察におきましては、全体としてその全過程の録画というものに取り組んでいるわけでございまして、そういった中で、様々な試みの中で供述の録音、録画の記録媒体というものができ上がるようになりました。そういった中におきまして、実際にその供述調書というものが全く捜査段階での取調べの中で作成できない、作成されない場合もございます。そういったことも踏まえて、こういった録音、録画の記録媒体を直接証拠として請求していくという、こういうことについても試みていこうということでございます。
 なお、こういったもので録音、録画の記録媒体を証拠で請求した場合に、その立証趣旨と離れて、印象度が強いために立証趣旨と離れて犯罪事実の認定などがなされるおそれがあるという点につきましては、これは、証拠については証拠調べ請求をしたときにその立証趣旨というのは明確にされるわけでございまして、その立証趣旨から離れての認定というものは裁判所においては当然されないわけでございます。その点については、裁判員裁判におきましても、当然、裁判所、裁判官がそのような事実認定の原則というものを必ず裁判所の中で共有されるものと考えております。
#161
○仁比聡平君 そこまでおっしゃるなら聞きますけれども、今市事件において、編集された七時間の録音、録画、これ何を立証趣旨にして証拠請求したんですか。
#162
○政府参考人(林眞琴君) 個別事件でございますので、その点についてどのような立証趣旨であったかということについてはここでは差し控えさせていただきますが、基本的に、検察におきましては供述調書というものについて、供述調書があれば、それについて任意性というものの立証に記録媒体というものを使っているのが通常であろうかと思っております。
#163
○仁比聡平君 そのように任意性の立証目的だったというふうに言いながら、裁判員の皆さんは、先ほどおっしゃったように、これを見なかったら分からなかったと言っているじゃないですか。それが現実だということなんです。
 時間が迫っていまして、そうした録音、録画が、法務省は恣意的濫用の余地はないというふうに言うけれども、本当にそうですかという問題について、中心は次回に譲らないといけなくなりましたが、一問だけその問題で聞いておきます。
 現在、録音、録画が行われております。この件について、昨日、東京地検に私たち視察に訪れまして、私、総務部長に、今現在行っている知的障害を有する被疑者で言語によるコミュニケーションの能力に問題がある者又は取調べ官に対する迎合性や被誘導性が高いと認められる者に係る事件、精神の障害などにより責任能力の減退、喪失が疑われる被疑者に係る事件、こうした事件での問題があるとか疑われるとか、これは取調べ官が判断するほかない、ここに何らかの基準が作れますかと申し上げましたが、それは基準を作るのは困難でありますとお話しでした。
 さらに、被疑者の供述が立証上重要である場合、被疑者の取調べ状況をめぐって争いが生じる可能性があるものの判断や被害者や参考人の供述が重要になる事件という、この重要性の判断、これも捜査官でしかできないことなんですね。これらについて基準は作れていませんよね、局長。
#164
○政府参考人(林眞琴君) 御指摘のとおり、検察で今現在行っている録音、録画について、例えば知的障害によりコミュニケーション能力に問題がある被疑者に係る事件、こういったものについて録音、録画に取り組んでいるわけでございますが、もとよりこれは現在本格実施を行っているわけでございますが、当初はこれは試行という形で始めました。
 試行の段階におきまして、この知的障害により云々というこの事件をどうやって画するのかということについては、当然問題がございました。なぜならば、この知的障害というものは、法的にも現在統一された定義というのはございません。その中で、取調べを行う者が、どういった事件がこの知的障害によりコミュニケーション能力に問題があるかと、こういったことを画することは厳密な意味ではできませんが、少なくともその当時、検察におきましては、こういったやはり被誘導性の高いと思われる、またあるいは迎合性の高いと思われる、こういった知的障害を持つ方の取調べをどのようにしていくのかという課題に直面しておりまして、それにおいては厳密な基準は設けられないけれどもこの試行を行っていこうという積極的な意味で始めたわけでございます。
 それによりまして、今回、知的障害の判断におきましても、現実には、例えば療育手帳を持っているかどうかとか過去に特別支援学級や特別支援学校に在籍したことがあるかとか、こういう客観的な情報を集めながら認定はしておるわけでございますけれども、客観的な状況がなくても、例えば実際の取調べの中の受け答えの中でそういったコミュニケーションの能力に問題があると思われる被疑者については、幅広くそれを対象事件として捉えてこの録音、録画に取り組んでいるものと承知しております。
#165
○仁比聡平君 今局長がお話しになったとおりなんですよ。つまり、捜査官の録画するという判断によって、録画されない取調べと録画される取調べというのが区分されるんです。それは、密室で捜査官と被疑者が向き合う、そういう取調べである以上、それは当然のことなんですよね。つまり、捜査官、取調べ官側の判断で録音、録画するのかしないのかが区分される。これは、この改定案での例外規定、とりわけ今日も議論になっている十分な供述とは何かというような問題をめぐっても大問題だと思いますが、ちょっとこの問題は次に譲りたいと思います。
 最後に一問聞いておきたいのは、通信傍受に関してです。
 小川委員の質問の中で、私が問いたいと思ってきた大前提の事実は随分明らかになりました。つまり、対象犯罪の拡大によって事件がそもそも格段に増加することは間違いないでしょうという問題。それは、日常的に盗み聞き、メールの盗み読みが行われ、刑事裁判の証拠としない以上、とりわけ犯罪と無関係の通話やメール、これがほとんどなんですから、現実には。その内容というのは知らされないということなんですよね。私がこれから議論をさせていただきたいと思うのは、そうして警察が得た情報、これが一体どのように使われるのかが大問題だということなんです。
 私たちも現場で視察をしたように、電子コンピューターを使ってこれを録音、録画するというシステムを使い、これから更に開発していこうというわけですけれども、このシステムで作られるDVD―RAMのほかに紙の記録が作られます。私の手元に、平成二十二年四月三十日に警察庁が通達をしている犯罪捜査のための通信傍受に関する法律の運用に当たっての留意事項の改正についてというものの別添資料で、傍受日誌というものが作られることになっています。
 警察庁、これは通信傍受を行っているその同時進行に作るのですか。そんなことできるわけないわけだから、今であれば警察署に戻ってから、そしてこれから先は、いながらにして自分の警察署で傍受をしてゆっくりこれを作るということになるのではありませんか。
#166
○政府参考人(三浦正充君) 今回の新しい制度によりまして一時的保存による傍受ということも可能になるわけでございますけれども、それを再生、傍受するに当たりましては新しい特定電子計算機というものを用いることがこれは法定で定められるものになります。
 この電子計算機の機能によりまして、現在、傍受実施状況書というものを、これは通信傍受法に定めるものとして作成をしております。今現在では、傍受の実施の状況を記載した書面として、傍受の実施の中断又は終了後、捜査員が当該書面を作成をしているわけでありますけれども、新しい方式になりました場合には、これはまだ現在、具体的には今後また詳細検討していくわけでございますけれども、現時点においては、人為的な記載ミスの防止等の観点から、特定電子計算機の機能により傍受の実施と同時に自動的に書面の記載が行われるというものを作ることを想定をしております。
#167
○仁比聡平君 そんなふうにおっしゃるんですけれども、小川委員がずっと議論をしておられるのでよくお分かりのとおり、令状記載事実に該当するのかどうかのスポット傍受という形で実際聞くわけですね。そして、それに該当するという判断をしたら丸ごと聞くわけです。しかも、他犯罪、つまり別件の通信というのもこれは傍受できるようになっていて、これも記録をされるわけですね。
 それぞれなぜ聞いているのかという判断、これは捜査官の、何らかの根拠がある、それまでの通話やメールの中身でこれは該当するという判断があって、その根拠があって傍受するということになるわけですけれども、この警察庁の留意事項の中には、他犯罪傍受については他犯罪通信に該当すると認めた理由というのを記載するというふうなものにもなっているわけですね。
 こうした判断の理由や根拠も含めてきちんとこの報告書といいますか傍受日誌に作っていくとしたら、これはそのときのメモとか、あるいはこれまでの警察のいろんな捜査の内幕が明らかになる中で出てきた例えば取調べの小票のようなもの、傍受小票のようなもの、こんなものを作らないと裁判所に提出する書面をちゃんと作るということは私できないと思うんですけれども、つまり、裁判所に提出されるこの記録のほかに、警察において様々なメモだとかあるいは小票だとか、こういうものを作っているんでしょう。
#168
○委員長(魚住裕一郎君) 警察庁三浦刑事局長、時間が過ぎていますので、答弁は簡潔に願います。
#169
○政府参考人(三浦正充君) はい。
 実際、傍受をする場面において、そういった犯罪関連通信等を傍受をしそれを記録をしていくと、こういう作業を行いますので、当然その過程で様々なメモでありますとか、そういったものが作られるということはあるのだろうというふうに思います。
#170
○仁比聡平君 今日は終わります。
#171
○谷亮子君 谷亮子です。引き続きよろしくお願いいたします。
 私の方からは、取調べの録音・録画制度の創設につきまして伺ってまいりたいと思います。
 四月十四日の本委員会での質疑で取り上げさせていただきましたけれども、今回審議されている刑事訴訟法等の一部を改正する法律案におきまして取調べの録音・録画制度の導入が規定されておりまして、対象事件としては裁判員制度対象事件及び検察官独自捜査事件に限定されているものの、仮に本改正法案が成立し、また施行された場合、法施行後三年経過後に録音、録画の実施状況について検討を加え、必要があると認めるときには所要の措置を講ずることとされているわけでございます。
 この検討につきましては、制度の対象事件における施行状況だけではなく、それ以外の事件における録音、録画の実施状況をも踏まえて行うこととされていることから、取調べの全面可視化に向けて大きな第一歩が踏み出されるものであるというふうに考えております。
 しかしながら、その一方で、被疑者の取調べの現場において取調べ官により自白を強要され、それが虚偽のものであったとしてもそのとおりに自白せざるを得ない状況となるようなケースの生じる可能性は今後もあるのではないかとの御意見もございます。このことにつきましては、四月十九日の参考人質疑に御出席いただきました桜井参考人の方から、警察による執拗な取調べによって虚偽の自白を強いられ冤罪被害を受けたとのお話を伺わさせていただいたところでございます。
 そこで、このようなケースについて、取調べの録音、録画の際に取調べ官による自白の誘導部分についてはこれを行わず、自白部分の音声と映像が証拠として残るということになると、新たな冤罪を生じかねないのではないかという懸念に対しまして、どのようにお考えになるのか、法務省の御所見をお聞かせいただきたいと思います。
#172
○政府参考人(林眞琴君) 本法律案におきましては、裁判員制度対象事件及び検察官独自捜査事件を対象といたしまして、一定の例外事由に該当する場合を除いて、逮捕、勾留中の被疑者取調べの全過程の録音、録画を義務付けております。そのために、逮捕後に行われる弁解録取という手続がございますが、その段階から、被疑者が否認をしているのかあるいは自白をしているのかを問わず、またその変遷経過も含めまして、対象事件について全ての取調べが録音、録画されることになりますので、仮に御指摘のような例えば自白を強要する場面があれば、それも全て記録されることとなります。
 また、法律案では一定の例外事由を設けることとしているものの、この例外事由が公判でその存否、例外事由の存否が問題になりましたときには裁判所による審査の対象となり、捜査機関側の責任でこの例外事由を立証する必要がありますので、捜査機関としては、例外事由を十分に立証できる見込みがない限り、例外事由に当たると判断して録音、録画をしないということはできません。したがって、自白を強要するなどのためにこの例外事由というものを恣意的に運用されるという余地はないと考えております。
 なお、仮にある取調べにおいて例外事由に該当したといたしましても、これは法律的にはその録音・録画義務が解除されるにとどまります。あくまでも自白の任意性がそれによって認められるわけではございません。したがいまして、御指摘のような録音、録画されていない取調べで自白の強要があって、その影響でその後の取調べでも自白を維持したというような事情が主張された場合には、任意性があることの立証責任を、検察官においてそのような事情がなかったことを立証できなければ、やはり任意性に疑いがあるとしてこの自白調書などは却下されることになるわけでございます。したがいまして、そうした御指摘、御懸念は当たらないものと考えております。
#173
○谷亮子君 御丁寧に御答弁いただきまして、ありがとうございます。
 この対象事件についての取調べの録音、録画はその全過程を録音するという御答弁をいただきまして、四つの例外の適用を厳正に行いながら、冤罪が生じることのないように、仮に今回の改正法案が成立し、また取調べの録音・録画制度が導入されることとなった場合には、制度の適正な運用を進めていただくことをお願いしたいと思います。
 また、取調べは一日に一回の場合もありますし、二回、三回のときもあるということで、その取調べがその後ずっと行われて、二十回、三十回、そして五十回、さらにはそれ以上になるときもあるとのことでございまして、やはりそこは、被疑者が取調べ室に入るときから録音、録画されているという状況になるわけでございますが、取調べ官はその運用状況を取調べ室に入るときから録音、録画されるということで把握されていますけれども、それじゃ、取調べを受ける被疑者は取調べ室に入るときからこれは録音、録画がされるということ、またされているということを知っているのかということですが、このことは本法律案の刑事訴訟法三百一条の二第四項におきまして、逮捕、勾留中の被疑者を対象事件について取り調べる場合に捜査機関に取調べの録音、録画を義務付けていますけれども、録音、録画の際に被疑者に対する告知を義務付ける規定を設けるということはされていないわけであります。このことは、被疑者にその運用状況等を周知せず、勝手に録音、録画を始めるということになるわけでございますけれども、これは法律上一体どういうふうになるのか。
 また、実際のところは、被疑者の同意を得なければ実施できないものではないと規定されているわけなんですけれども、その運用状況は被疑者に対して周知徹底すべきとも考えるところもあるんですけれども、本日はこのことについては通告いたしておりませんので、次回、もし質疑の機会がありましたら、もう少し伺ってみたいというふうに思っております。
 続きまして、今回の改正法案における取調べの録音・録画制度の例外規定についてもう少し伺っていきたいと思います。
 今回の改正案の柱である取調べの録音・録画制度の創設は、捜査の透明性を高め、冤罪をなくす上で意義が大きいと思われます。
 今回の改正案により創設される録音・録画制度については例外事由が設けられています、先ほど御答弁いただきましたけれども。例えば、被疑者が録音を拒んだことその他の被疑者の言動により、記録をしたならば被疑者が十分な供述をすることができないと認めるときという例外事由については、その理由、その内容が曖昧であるとの御意見もありまして、しかも、判断権者、これは取調べ官とされておりますので、捜査機関が恣意的に取調べの録音・録画義務から免れる余地が残されているのではないかという御意見もございます。
 そこで、検察官や警察において行われている取調べの録音、録画の例外事由に当たるかどうかの判断を、これは何度もこの委員会でも質疑されていますけれども、その判断を取調べ官の裁量に任されたことについてどのように決定されたのか、法務省に伺いたいと思います。
#174
○政府参考人(林眞琴君) まず、本法律案で取調べの録音、録画、全過程を原則として義務付けるということでございますが、一定の例外を設けた理由でございますけれども、やはり取調べで録音、録画をするがゆえに取調べで供述が得られなくなって、真犯人の検挙、処罰ができなくなる、こういったことがないようにするという観点も一方で重要でありますので、このような一定の例外事由を設けたわけでございます。
 そして、取調べの録音・録画義務の例外事由の有無は、まずは第一次的にはその取調べの時点を基準として判断されるべきものでありますので、第一次的にはその取調べを行う捜査機関が、それまでに収集した証拠でありますとか把握した事実関係、さらには当該取調べにおける被疑者の供述態度などを含む状況等に基づいて判断することとなります。
 しかしながら、捜査機関がこの例外事由に当たると判断して録音、録画をしなかった場合、これは公判でその例外事由が実際にあったかないか、こういったことが問題となりますので、そうなったときには、これは裁判所による審査の対象となるわけでございます。
 したがいまして、当然、捜査機関としては例外事由に当たると考えて録音、録画をしなかった場合にありましても、後の裁判におきまして、公判におきまして、例外事由はなかったと、こういうふうに判断されれば、その意味で、その段階での録音・録画記録媒体がないということが当該取調べでの供述調書の証拠調べ請求についてそれが却下されるというような結果を招くわけでございます。そうしますと、やはり捜査機関といたしましては、この例外事由というものを公判で立証できる、こういう見込みがない限り、この例外事由を適用することはしないと、こういうことになろうかと思います。
 その上で、先ほど、例えば、記録をしたならば被疑者が十分な供述をすることができないと認めるときというのが非常に曖昧な要件であると、こういった指摘がなされることがあるわけでございますけれども、この点につきましては、この記録をしたならば被疑者が十分な供述をすることができないと認めるときというものは、それだけがこの要件になっているわけではございませんで、被疑者が記録を拒んだことその他の被疑者の言動によりという限定が掛かっております。これは、被疑者が記録を拒否したあるいはその他外部に表れた被疑者の言動によって、記録をしたならば十分供述ができないと、こういうふうに認められるときというものが例外事由となっておりますので、当然、捜査機関としては、この例外事由を適用するためにはそのような外部に表れた被疑者の言動というものをきちんと証拠化しておいて、それをもって初めて例外事由が存在することを立証できるということになります。
 そういったことから、取調べ官の裁量によってこの例外事由が恣意的に適用されるということはないと考えておるわけでございます。
#175
○谷亮子君 ありがとうございました。やはり、裁判になったときに例外事由を立証しなければならない、立証するということが前提であるということでございます。
 四月十九日の参考人質疑に御出席いただきました小池参考人からは、改正法案に規定されている取調べの録音、録画の例外事由に当たるかどうかは取調べ官の裁量によって決まることについて、これは、ただいまはないということでございましたけれども、その懸念を示された部分もありましたけれども、このことに対する法務省の御所見を是非お聞かせいただきたいと思います。取調べ官の裁量によって決まるということは、ただいまないということでございましたけれども、そうした懸念が一方の意見ではあるということに対しての御所見をお聞かせいただきたいと思います。
#176
○政府参考人(林眞琴君) 確かに、この例外事由というものが全く捜査機関の自由な裁量であったとすれば、基本的に全過程の録音、録画を定めているといたしましても、これは実質的には部分録画の義務付けであると、このように評価されることになろうかと思います。そういったことからの御意見も出されていたと思いますけれども、先ほど来申し上げましたように、この例外事由については、一定の外部的な言動等を材料に客観的にその被疑者が十分な供述ができないと認めるときというものが例外事由とされておりますので、そのことについては、裁判所で公判において審査を受けるということにおきまして、取調べ官の全くの裁量であると、それゆえに部分録画にすぎないといった意見については入れられないところだろうと考えております。
#177
○谷亮子君 ありがとうございました。ただいまの御答弁によりますと、やはり捜査機関が例外事由に当たると判断して録音、録画をしなかった場合に、公判で例外事由の存否が問題となった場合、裁判所による審査の対象となりまして、捜査機関側の責任としてこれは例外事由を立証する必要があるということで理解いたしました。
 例外事由が恣意的に運用される余地がないとの御答弁でございましたけれども、一方で、十九日の参議院の参考人質疑におきましては、例外規定に当たるかどうかは非常に抽象的で曖昧であり、被疑者の言動により、録画すれば自白しそうにないと捜査官が判断すれば録画しなくてもよくなるなど、現在、またこの法施行後においても引き続き同様に取調べ官が取調べをして取調べ官の裁量によってその取調べの録音、録画をすることが決まることから、何もこれは変わらないのではないかという運用を懸念する声がありました。
 録音、録画が有効なものとしてその機能を十分に発揮するためには、やはり新たな冤罪が生まれないように、捜査機関による安易な判断を許さず、ここは適正であり客観的な制度の運用を行っていただきますよう、その運用でいかれると思いますので、そこをしっかりと推し進めていっていただきたいなというふうに思っております。
 続きまして、合意制度の対象を特定犯罪に限定した理由について伺ってまいりたいと思います。
 今回の改正案の柱の一つとして、他人の犯罪事実の捜査又は訴追のため、必要なときに検察官と弁護人との間での協議を通じ、被疑者又は被告人側において他人の犯罪事実を明らかにするための重要な供述等の協力をすることと引換えに、検察官が特定の刑事事件を不訴追とすることや特定の求刑をすることで特に合意できるとする制度、いわゆる司法取引が設けられております。現行の刑事訴訟法には取引による事件処理について定めた規定はなく、これまでは、例えば検察官が被疑者の弁護士に対し、被害者との示談が成立すれば起訴猶予にすることを暗黙のうちに示唆し、弁護人がそれに応じるといった運用などを捉えて、実質的には取引による事件処理は手続の各場面で既にかなり広範に行われているという指摘もなされたということでございます。
 今回の改正案に盛り込まれました合意制度はそのような運用とは異なりまして、捜査、訴追及び公判を含む刑事事件の処理への被疑者、被告人による協力と、それに対する国家機関側からの一定の恩典の付与につき被疑者、被告人と検察官が協議を行い、それに基づいて合意をする仕組みを正式に導入しようとするものであります。具体的には、例えば首謀者の関与を明らかにするなどして捜査に協力し、見返りに刑事処分を軽くしてもらうといった取引的な要素を伴う証拠収集手段であるということでございます。
 このような合意制度は捜査・公判協力型と言われておりまして、アメリカなどでも導入されております。被疑者が自らの罪を認めて刑の軽減を求める自己負罪型の導入は見送られたものと承知いたしております。そして、対象となる犯罪は、租税に関する法律、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律又は金融商品取引法の罪など一定の財政経済犯罪や、薬物・銃器犯罪などの特定犯罪に限定をされました。振り込め詐欺などの事件では、末端の被疑者を逮捕しても首謀者まで捜査がたどり着けないというケースも多くありまして、合意制度で首謀者を特定することができれば、犯罪の全容究明につながり得るものと思われます。
 そこで、お伺いしたいと思います。
 今回の法案で導入しようとしている合意制度は、被疑者や被告人が検察官に他人の犯罪情報を提供し、見返りに起訴の見送りや軽い求刑などを求める捜査・公判協力型のみ創設することとされています。法制審議会の特別部会においては捜査・公判協力型と自己負罪型の両方の検討が対象になっていたものと伺いましたけれども、最終的に捜査・公判協力型のみ創設することとなった経緯についてお聞かせいただきたいと思います。
#178
○政府参考人(林眞琴君) 御指摘の中にありましたように、この合意制度でございますけれども、大別すると二つの類型がございます。一つは、被疑者、被告人が他人の刑事事件についての協力行為を行うことに合意する捜査・公判協力型、もう一つが、被疑者、被告人が自分の犯罪を、自己の犯罪を認めることについて合意する自己負罪型、こういった二つの類型が世界的に見ましてもあると言われております。
 これにつきましては、まず前者の捜査・公判協力型というものは、主としては組織的な犯罪等の解明、これを目的とした制度でございます。他方で、自己負罪型につきましては、これは米国の例が顕著かと思いますけれども、主として事件処理の効率化というものを目的としていると考えられております。
 御指摘のとおり、法制審議会新時代の刑事司法制度特別部会におきましては、当初この二つの類型の合意制度を併せて検討していたわけでございますが、我が国の刑事司法制度にこういった協議、合意という要素を有する手法というものを取り入れるのは今回が初めてであったということに鑑みますと、まずは証拠収集方法として特に必要性が高いと考えられる捜査・公判協力型の制度を導入するのが相当であろうと考え、一方で自己負罪型の制度につきましては、この捜査・公判協力型の制度を導入した上で、その運用状況等も踏まえながら、必要に応じて、こうした自己負罪型の制度というものが我が国の刑事司法制度にどういった影響を与え得るのかということも見極めながら検討を行っていくのが適当であろうと、このように考えて、今回、捜査・公判協力型の制度をまず導入するということになった経緯でございます。
#179
○谷亮子君 ありがとうございました。
 仮に自己負罪型の合意制度が導入されたとしたならば、少なくとも弁護人が選任されている事件においては、弁護人が、被疑者、被告人が自白をすることを取引材料にして検察官から有利な条件を引き出すというやり方を行うのはあり得ることであるとの考え方もあると言われていますし、そのことを前提としても、供述の獲得という観点からは、このような制度が意味を持つのは、自白なしで有罪になるかどうかが微妙でございまして、かつ自白を得ることが難しい事件ということになるのではないかとも言われております。
 しかし、そのような事件が必ずしも多くない、ただいまお話ございましたが、そのような事件が必ずしも多くない我が国の現状を考えますと、この自己負罪型の導入については、果たして制度として定着するのかどうかという懸念もございましたし、今回自己負罪型が見送られたのはこれは理解できるところであるというふうに思います。
 私といたしましても、まずは捜査・公判協力型の制度を導入し、制度としてしっかりと定着した上で、この自己負罪型については、事件処理の効率化を図るものというふうにただいま御説明いただきましたけれども、必要であれば今後検討していくということが適切ではないかというふうに感じたところでございます。
 また、合意制度につきましては、協議、合意といった要素を有する証拠収集方法の導入という点で初めてのものでございまして、対象犯罪については、この制度の対象とすべき必要性が高く、その利用に適していまして、かつ被害者を始めとする国民の理解も得られるものと考えられる一定の類型の犯罪に限定することが相当のことから、今回の法案では財政経済犯罪や薬物・銃器犯罪が対象犯罪とされ、殺人罪などの人命に関わる犯罪については合意制度の対象にはなっておりません。
 財政経済犯罪や薬物・銃器犯罪などより殺人などの人命に関わる犯罪の方が真相解明の必要性はより高いという考え方もあると思いますが、改めまして対象犯罪を財政経済犯罪や薬物・銃器犯罪などの特定犯罪に限定した趣旨、そして殺人などの重大犯罪を合意制度の対象としなかった経緯についてお聞かせいただきたいと思います。
#180
○政府参考人(林眞琴君) 今回の対象事件、合意制度の対象犯罪というものにつきましては、これは一定の類型の犯罪に政策的に限定することといたしました。
 その際の限定の一つの考え方といたしましては、こういった合意制度を対象とすべき必要性が高く、その利用に適していて、かつ国民の理解も得られやすい、特に被害者を始めとする国民の理解も得られやすい、こういったことから一定の類型の犯罪に政策的に限定することが相当であろうと考えたわけでございます。
 それで、具体的にこういった観点から見た場合に、まず一定の財政経済犯罪につきましては、一つには、組織的な背景を伴って行うことが少なくない上に、その密行性やあるいは正当な経済活動との区別を含めた事案解明の困難性、こういったことからこの制度の対象とする必要性が高いこと、また、多数の者が関与し得るために、罪を犯した者から他の者についての証拠を得るという合意制度の仕組みになじみやすいと、このように考えられたのでこれを対象犯罪といたしたわけでございます。
 また、一定の薬物・銃器犯罪につきましては、通常、犯罪組織が関与する密行性の高い犯罪類型でございまして、その全容解明にはやはり困難を伴うためにこの制度の対象とする必要性が高いこと、また、多数の者が関与し得ることや複数の者の間における禁制品の流通を伴う、こういった性格を持っておりますので、やはりその罪を犯した者から他人の犯罪についての証拠を得るという合意制度の仕組みになじみやすいと考えられることから対象犯罪としたものでございます。
 加えまして、財政経済犯罪と薬物・銃器犯罪は、このいずれについても直接的な被害者がいないか、あるいはいたとしましてもこの被害が基本的に財産的、経済的なものにとどまる、こういった性格がございますので、こういった制度についてこの合意制度の対象とすることについては国民の理解が得られやすいと考えたものでございます。
 他方で、例えば殺人犯罪を始めとする人の生命、身体を保護法益とするような重大な犯罪につきましては、今申し上げました基本的な考え方に照らして、対象犯罪とすることは今回はしていないわけでございます。
 例えば、他人の刑事事件の捜査、公判に協力したことを、殺人罪等の人の生命、身体を保護法益とする重大な罪を犯した被疑者、被告人の処分等を軽減していくといったことの理由につきまして、国民の理解が得られるかどうかについてはなお慎重な検討が要すると考えたものですから、こういったものについては対象犯罪としていないわけでございます。
#181
○谷亮子君 ありがとうございました。
 この制度の対象犯罪は特定犯罪に限定されているとはいえ、対象事件の内容や証拠関係等はそれぞれの具体的な事案に応じて様々でございますので、仮に本改正案が成立して合意制度が導入されることとなった際には、この制度の利用に適した事件を適正に選別されるというふうに思います。
 ただいままた御答弁いただきましたけれども、死刑又は無期懲役、禁錮も入ると思いますけれども、につきましては、極めて犯情の重いものであることから、そのような罪に係る事件の被疑者、被告人が他人の刑事事件の捜査、公判に協力したからとしても、この制度によって処分の軽減等を行うことにつきましては、ただいま御答弁いただきました、現時点では被害者そして国民の皆さんの理解が得られにくいのではないかとお考えになられた上で、今回の法案における合意制度の対象犯罪としましては財政経済犯罪と薬物・銃器犯罪に限定することとされたものだというふうに理解をいたしました。
 そこで、今回の合意制度の対象犯罪として改正法案に挙げられている財政経済犯罪及び薬物・銃器犯罪に限定されたのは、そのいずれについても直接的な被害者がいないか、あるいはいたとしてもその被害が基本的には財政的、経済的なものにとどまることから、制度の対象とすることについての国民の理解を得られやすいとの考えからということでただいまございましたけれども、こうした特定犯罪を対象として合意制度の運用が開始された場合、その状況等を踏まえ、重大犯罪をも今後対象とするような制度拡充を行うということを視野に入れておられるのか、現時点での所見を伺いたいと思います。
#182
○国務大臣(岩城光英君) この合意制度につきまして、現時点では、殺人罪等の人の生命、身体を保護法益とする重大な犯罪、これを対象犯罪とすることを検討しているわけではございません。
 衆議院における修正により追加されました本法律案の附則第九条第二項におきましては、合意制度を含め、取調べの録音・録画制度以外の本法律案全体につきまして、この法律の施行後三年を経過した場合において、それらの施行状況について検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に基づいて所要の措置を講ずるものとされております。
 法律成立後の施行状況等によるところでありますが、合意制度の対象犯罪の在り方についても、必要に応じてその中で検討がなされることはあり得るものとは考えております。
#183
○谷亮子君 岩城大臣、御丁寧にありがとうございます。
 合意制度が実際に運用されるということに今後なれば、まさに我が国の刑事司法制度に大きな変化をもたらすものであることから、その対象犯罪については、制度の運用の状況を十分に勘案した上で、ただいま大臣からも御答弁いただきましたけれども、対象犯罪の拡充については検討をしていくようにするという方向性がよいのではないかと私も感じているところでございます。
 続きまして、求刑に関する合意についても伺っておきたいと思います。
 今回の法案による合意制度では、被疑者や被告人が検察官に他人の犯罪情報を提供し、その見返りに起訴の見送りや軽い求刑などを求めることとしていますが、検察官が合意し得る行為としては、起訴を見送る不起訴処分のほか、略式命令請求、即決裁判手続の申立てや求刑に関する合意など、こうしたことが挙げられているわけでございます。
 これらの類型の合意が裁判所を拘束するものではないといたしましても、略式命令請求や即決裁判手続は検察官の申立て等がなければ手続が取られることのないものでございまして、求刑も協力の動機付けになり得るものでありますので、これらの合意類型をも認めるべきである旨の意見が法制審議会新時代の刑事司法制度特別部会に設けられた作業分科会における検討の中で示されてありました。
 最終的に今回の法案において合意の対象に含めるとされたものと承知いたしておりますけれども、このうち、被疑者を起訴するかしないかの判断は検察官の判断により行うものであります。しかし、先ほども触れましたように、略式命令請求や即決裁判手続は検察官の申立て等がなければ手続が取られることがないものでございますが、これらの当否は最終的には裁判所による判断であり、求刑も裁判所を拘束するものではないと思われます。
 そこで、これらの合意を内容とすることについて問題はないのかについて伺いたいと思います。
#184
○政府参考人(林眞琴君) 確かに、即決裁判手続の申立てでありますとか略式命令請求というものにつきましては、裁判所の判断を拘束するものではございません。また、検察官の求刑につきましても、これは量刑についての意見でございますので、裁判所の量刑判断を拘束するものではないわけでございます。
 しかしながら、まず即決裁判手続と略式命令の手続につきましては、委員も御指摘のありましたように、検察官から申立てが、請求があって初めて利用することが可能になるものである上に、実際に検察官から申立て又は請求があった場合に裁判所がそれらの手続によることを不相当であると判断することはまれであります。また、求刑についても、実務上、裁判所の量刑判断におきまして検察官の求刑というものが重要な判断資料の一つとなっておりまして、実際にも例えば求刑よりも重い刑が言い渡されることというのはまれであるわけでございます。
 こういった実情がございますので、やはり裁判所を最終的に法的に拘束するものではないとはいいましても、いずれも、こういったことにつきましては、被疑者に他人の刑事事件の捜査、公判に協力することの動機付けを与えるものとしては十分に実効性を有するものと考えております。
 もとより、当事者においては、こういった裁判所の判断を最終的に法的に拘束しないということ、これについて、ここに重きを置いて、それではその合意はしないという判断に至る当事者も当然おられるかと思います。一方で、ですから被疑者としても、これで最終的に合意するかどうかというところについてはこの辺りの判断を拘束するものではないけれども、事実上はそのような効果を持っている、力を持っているということをどのように考慮して最終的に合意をするかどうかということを判断するわけでございまして、こういった不確実な合意を望まない者も存在するということをもちましてこの制度一般が機能しないということにはならないかと思いますので、こういった制度としては十分に実効的に機能するケースが出てこようかと思っております。
#185
○谷亮子君 ありがとうございました。
 今回の合意制度はこれまで我が国に存在しなかった新たな制度でありまして、新しくできた制度は、その施行開始後に適正な運用が行われれば制度に対する国民や関係者の信頼性が醸成されまして定着していくということになると思います。
 この制度の運用に関与する関係者の皆さん、そして特にイニシアティブを取る検察官におかれましては、制度の施行後の運用開始に当たりましては、制度が正しい方向で運用されまして関係者や国民の信頼を得て定着するように、これは最大限の努力をされるというふうに思います。
 そして次に、合意制度において虚偽の供述で無罪の第三者を引き込み冤罪を生む懸念についても伺いたいというふうに思います。
 合意制度はこれまで我が国の刑事司法制度では採用されてこなかったものでありまして、冒頭にも触れましたとおり、首謀者の関与を明らかにするなどして捜査に協力し、見返りに刑事処分を軽くしてもらうといった取引的な要素を伴う証拠収集手段であります。
 捜査・公判協力型の合意制度の創設について、捜査関係者からは供述を得る手段が多様化するとの声も出ているようでございますけれども、その一方で、自らに科せられる刑罰を軽くするためにうそをついて無関係の人を引き込み新たな冤罪の温床になりかねないとの指摘もあるということは承知しているところでございます。
 そこで、自らに科せられる刑罰を軽くするためにうそをついてまで無関係の人を引き込もうとすることが行われる可能性について、合意制度に係る制度設計の過程で、特に共犯者による供述等に代表されるように、これが他人を巻き込む危険性があるということを出発点といたしまして制度設計がなされてきたものと思いますけれども、今回の法案においてこうした危険性を除去するための制度上の措置はどのように講じられているのか、御説明いただきたいと思います。
#186
○国務大臣(岩城光英君) 合意制度につきましては、いわゆる巻き込み、これが生じないように、制度上、次のような手当てをしております。
 まず、協議の開始から合意の成立に至るまで常に弁護人が関与する仕組みである。次に、合意に基づく供述が他人の公判で使われるときは、合意内容が記載された書面が当該他人にも裁判所にもオープンにされ、供述の信用性が厳しく吟味される仕組み。そのため、合意に基づく供述については、裏付け証拠が十分に存在するなど積極的に信用性を認めるべき事情が十分にある場合でない限り、信用性は肯定されません。その結果、検察官としても、十分な裏付け証拠があるなど裁判でも十分に信用される場合でない限り、合意に基づく供述を証拠として使うことはできないこととなります。さらに、合意をした者が捜査機関に対して虚偽の供述等をした場合には、新設の罰則による処罰の対象となります。
 したがいまして、合意制度は虚偽の供述により第三者を巻き込むおそれに適切に対処できるものになっているものと考えております。
#187
○谷亮子君 ありがとうございました。
 ただいま三つあったというふうに思いますけれども、一つが、弁護人が協議に関与し、弁護人が同意しなければ合意ができないようにしたことですね。そしてもう一つが、捜査機関に対する虚偽供述について新設の罰則を設けること。そしてもう一つが、他人の刑事裁判において当該供述が合意に基づいてなされた供述であるということを明らかにする義務を課すということである。この三つが合わさって、今後、他人の巻き込みというものを防ぐということにつなげていかれるのだというふうに理解をいたしました。
 ただいまいただきました御答弁にありましたように、法案の政府原案においても所要の手続をしていたということでございますけれども、虚偽供述を防ぐため、衆議院の法務委員会におかれましては、与野党間の協議により、検察官が合意をするか否かを判断するに当たって考慮すべき事情として合意に関係する犯罪の関連性の程度を明記することとし、合意のための協議の過程に弁護人が常時関与することとする内容の法案修正が行われたと存じております。
 しかしながら、弁護人にとって依頼者である被疑者、被告人の供述が真実かどうかを確認する手段は乏しいのではないかとの御意見もございますし、その上、弁護人は依頼者の利益実現を目指さなければならない立場にありますので、自身の依頼者の虚偽供述を防止することは期待できないという意見もあるようでございます。
 そこで、これらの衆議院における修正点の実効性について法務省としてはどのように受け止められているのか、どのように感じておられるのか、所見を聞きたいと思います。
#188
○政府参考人(林眞琴君) まず、政府案におきましては、合意の対象となる事件に関しまして、被疑者、被告人の犯罪と他人の犯罪との間に共犯関係など何らかの関連性があることは法文上は必要としていなかったものでございます。これに対しましては、何ら関連性もない場合にも合意することができるとすると、例えば、検察官が勾留中の被疑者との間で合意をして留置場の同房者から犯行告白を聞いた旨の供述を得るといったようなことも可能となっていわゆる巻き込みの危険が高くなるのではないか、こういった懸念が示されていたところでございます。
 そして、そこで衆議院における修正でございますけれども、こういった巻き込みの危険に対する懸念も踏まえながら、被疑者、被告人の犯罪と他人の犯罪との間にどの程度の関連性があるかは信用性のある証拠が得られる見込みの程度と関連し得ることなどから、これを考慮事情として明記するものとなったと理解しております。これによりまして、合意制度が利用される場合として基本的に想定されるのは、共犯事件など両犯罪の間に関連性が認められる場合であるということが示されることになったものと理解しております。
 もう一つ、政府案においては、合意をするための必要な協議について、基本的には検察官、被疑者、被告人及び弁護人、この三者で行うこととしながらも、被疑者、被告人及び弁護人の双方に異議がない場合には、検察官はいずれか一方のみとの間で協議の一部を行うことができるとしていたものでございます。弁護人が協議に関与することとしている趣旨は、被疑者、被告人の利益を保護しようとするところにあるわけでございますが、弁護人が関与することはいわゆる巻き込みの危険の防止にも資するものと考えております。したがいまして、衆議院における修正は、いわゆる巻き込みの危険の防止についてより一層の確実を期するという観点から、協議には弁護人が常に関与しなければならないこととしたものと理解しているところでございます。
#189
○谷亮子君 ありがとうございました。
 ただいま、やはり合意制度については、これまではいわゆる巻き込みの危険に対する懸念が示されてきましたけれども、政府原案においても所要の制度的な手当てをしておりまして、この危険には適切に対処できるものとなっていると考えているところだというふうに思います。
 今般の刑事訴訟法第三百五十条の四のただし書の修正につきましては、こうした懸念も踏まえつつ、いわゆる巻き込みの危険の防止についてより一層確実を期する観点から、協議には弁護人が常に関与しなければならないこととしたものと理解をいたしました。
 まだ通告はたくさんしていたんですけれども、本日は時間となりましたので、次、また質問の機会がありましたら伺わせていただきたいと思います。
 ありがとうございました。
#190
○委員長(魚住裕一郎君) 本日の質疑はこの程度にとどめます。
    ─────────────
#191
○委員長(魚住裕一郎君) 参考人の出席要求に関する件についてお諮りいたします。
 刑事訴訟法等の一部を改正する法律案の審査のため、来る二十六日に参考人の出席を求め、その意見を聴取することに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#192
○委員長(魚住裕一郎君) 御異議ないと認めます。
 なお、その人選等につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#193
○委員長(魚住裕一郎君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後三時五十八分散会
ソース: 国立国会図書館
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