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2016/04/28 第190回国会 参議院 参議院会議録情報 第190回国会 法務委員会 第11号
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2016/04/28 第190回国会 参議院

参議院会議録情報 第190回国会 法務委員会 第11号

#1
第190回国会 法務委員会 第11号
平成二十八年四月二十八日(木曜日)
   午前十時二分開会
    ─────────────
   委員の異動
 四月二十六日
    辞任         補欠選任
     三木  亨君     柳本 卓治君
    ─────────────
  出席者は左のとおり。
    委員長         魚住裕一郎君
    理 事
                西田 昌司君
                三宅 伸吾君
                有田 芳生君
                矢倉 克夫君
    委 員
                猪口 邦子君
                田中  茂君
                鶴保 庸介君
                牧野たかお君
                丸山 和也君
                溝手 顕正君
                柳本 卓治君
                江田 五月君
                小川 敏夫君
                加藤 敏幸君
                真山 勇一君
                仁比 聡平君
                谷  亮子君
   国務大臣
       法務大臣     岩城 光英君
       国務大臣
       (国家公安委員
       会委員長)    河野 太郎君
   副大臣
       法務副大臣    盛山 正仁君
   大臣政務官
       法務大臣政務官  田所 嘉徳君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        櫟原 利明君
   政府参考人
       警察庁刑事局長  三浦 正充君
       法務省刑事局長  林  眞琴君
   参考人
       中央大学法科大
       学院教授     小木曽 綾君
       元北海道警察釧
       路方面本部長   原田 宏二君
       九州大学大学院
       法学研究院教授  豊崎 七絵君
    ─────────────
  本日の会議に付した案件
○参考人の出席要求に関する件
○刑事訴訟法等の一部を改正する法律案(第百八
 十九回国会内閣提出、衆議院送付)(継続案件
 )
○政府参考人の出席要求に関する件
    ─────────────
#2
○委員長(魚住裕一郎君) ただいまから法務委員会を開会いたします。
 委員の異動について御報告いたします。
 去る二十六日、三木亨君が委員を辞任され、その補欠として柳本卓治君が選任されました。
    ─────────────
#3
○委員長(魚住裕一郎君) 参考人の出席要求に関する件についてお諮りいたします。
 刑事訴訟法等の一部を改正する法律案の審査のため、本日の委員会に中央大学法科大学院教授小木曽綾君、元北海道警察釧路方面本部長原田宏二君及び九州大学大学院法学研究院教授豊崎七絵さんを参考人として出席を求め、その意見を聴取することに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#4
○委員長(魚住裕一郎君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
    ─────────────
#5
○委員長(魚住裕一郎君) 刑事訴訟法等の一部を改正する法律案を議題とし、参考人から御意見を伺います。
 この際、参考人の方々に一言御挨拶申し上げます。
 本日は、御多用のところ本委員会に御出席いただきまして、誠にありがとうございます。
 参考人の皆様方から忌憚のない御意見を賜り、今後の審査の参考にいたしたいと存じますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。
 議事の進め方について申し上げます。
 まず、小木曽参考人、原田参考人、豊崎参考人の順に、お一人十五分程度で御意見をお述べいただきまして、その後、各委員からの質疑にお答えいただきたいと存じます。
 なお、意見の陳述、質疑及び答弁のいずれも着席のままで結構でございますが、御発言の際は、その都度、委員長の許可を得ることとなっております。また、各委員の質疑時間が限られておりますので、御答弁は簡潔にお願いをいたします。
 それでは、小木曽参考人からお願いいたします。小木曽参考人。
#6
○参考人(小木曽綾君) おはようございます。中央大学法科大学院で刑事訴訟法を担当しております小木曽と申します。
 本日は、当委員会ではこれまで取調べの録音、録画、それから合意制度、通信傍受等が議論されてきたと承知しておりますので、それ以外の弁護権の拡充、証拠開示、被害者、証人等の保護などについて賛成の立場から意見を申し上げたいと思っております。
 お手元にA4一枚で項目だけ挙げたものを御用意いたしました。その意味では、一番と六番、七番、時間の都合によって八番に触れるということにいたしたいと思います。
 法案が提案する項目は非常に多岐にわたっておりますけれども、それらは適正な捜査や正しい事実認定、国民の期待に応える刑事司法の実現という目的のためにそれぞれ果たす役割があるということ、この法案がそれら多岐にわたる項目をパッケージとして提案しているということの意義についてまず申し上げたいと思います。
 一番目のところであります。
 この法案は、いわゆる氷見事件や志布志事件、厚生労働省の事件などで浮かび上がった、とりわけ被疑者からの不利益供述採取に依存した捜査の在り方を見直すとともに、時代に即した刑事司法制度を構築するという目的で検討が続けられてきた結果まとめられたものであると理解しております。
 法案中、恐らく最も長きにわたって学界でも議論されまして、また社会的な関心も高かったのは、取調べの録音、録画であろうと思われます。しかし、今般の今市の事件以来、むしろ提案されているような録音、録画は正しい事実認定にとっては逆効果なのではないかという見方も増えてきているような印象を持っております。このような見方は以前からありましたけれども、増えてきているような印象を持っております。
 取調べの録音、録画がどのような効果を持つかについては様々な議論のあるところだと思いますけれども、言わば密室で行われる取調べ、その結果として得られる供述の任意性、信用性については、これを検証するすべがないことから、客観的な映像音声を残しておけばよいのではないかというのが元々の発想であったのだろうと思います。映像音声が残ることが分かっていれば、例えば法の禁ずる暴行、脅迫の有無が明らかになるわけですし、その程度に至らなくとも、供述の任意性に影響するのではないかと思われる取調べの様子が事後に検証可能になるからであります。しかし、他方で、事実認定者が被疑者、被告人の不利益供述の様子を見聞きいたしますと、それが供述の任意性に関する証拠であるとしても、被告人の有罪の直接証拠、実質証拠として受け取られるということはあり得るわけであります。
 したがって、その供述がどのようなコンテクストで出てきたのかを判断するには取調べの全過程が再生されなければならないという意見もあるわけですけれども、ある事件で何十時間にも及ぶその取調べの様子を全て公判期日で再生するということは恐らく現実的でないと思いますし、仮に全過程を見たとしても、それによって明らかになるのは取調べの様子や被疑者、被告人の供述態度でありまして、それによって被告人の有罪の証明が十分にされるというわけではありません。
 もし取調べの録音、録画が、任意性の証拠であれ、あるいは実質証拠としてであれ、それが有罪認定の決定的な証拠になるということであるとすれば、これは調書がビデオになっただけで、結局供述に依存した事実認定ということになるのではないかと思います。つまり、録音、録画には事後の検証効果は期待できますけれども、それだけで取調べの適正さが保障されたり、正しい事実認定が実現できるわけではないと考えます。被疑者、被告人の負罪供述以外の証拠を収集するということが大事であると思います。ここに、今回の法案がそれ以外の制度を言わばパッケージで提案している意味があると考えます。
 合意、免責制度、通信傍受の拡充は被疑者の不利益供述に頼らないで証拠を収集する方策でありますし、証人保護や証拠の真正さの確保は正しい事実認定を実現するための方策のそれぞれ言わばパーツとしてそれぞれに意味を持っているということを申し上げておきたいと思います。
 そこで、弁護権であります。六番目に記載している点であります。弁護人による援助の充実が今申し上げたことにどのような意味を持つのかということを申し上げたいと思います。
 憲法は、その三十四条と三十七条の二項で、弁護人による助力を受ける権利を保障しております。国選弁護権は長きにわたって被告人のみに保障されていたにすぎませんけれども、捜査段階の弁護権の重要性が認識されまして、平成十六年の法改正によって重大事件の被疑者にも保障されることになり、その後平成二十一年にその対象が拡大されて、さらに今般の法案という経緯をたどっております。
 被疑者段階の弁護人は、取調べを受ける被疑者への助言や身柄拘束下にある被疑者と外部との連絡といった被疑者の被る不利益を緩和する極めて重要な役割を担っております。この段階で接見を通じて適切な助力が得られれば、取調べの適正さの確保や正しい事実認定の実現に資するものと考えます。弁護権はぜいたく品ではないというのはアメリカ合衆国の判例の教えでありますが、本来被疑者が受けるべき弁護人による助力が被疑者の資力ゆえに左右されるとすれば、そのような刑事司法制度は公正なものとは言えません。取調べの録音、録画の範囲についての議論がありますけれども、本法案で国選弁護人の範囲が広がるということには重要な意義があると考えます。適正な取調べ、供述の任意性、信用性の確保のためにも、弁護人の役割に期待したいと思います。
 それから、七番目の証拠開示制度の拡充の点であります。
 日本の刑事裁判は当事者主義を採用しているというふうに理解されております。検察官が公訴事実を特定して起訴状に記載し、被告人には訴訟の当事者として検察官の主張に反論する機会、それから手段が保障されて裁判が行われるというのが当事者主義であります。検察官は主張事実の存否という意味での真実解明を当事者の主張、立証に委ねて、裁判所はその言わばレフェリーの役割を務めるという、このような裁判の在り方が取られるわけであります。
 そこで、とりわけ被告人には検察官の主張、立証に反論する機会が与えられなければならないわけですけれども、反論をするには、その主張の根拠を知って、これを吟味して自らの主張を準備することができなければなりません。国側と被告人側の情報収集能力の差は歴然としておりまして、この差を埋めて初めて被告人からの反論が可能になるわけであります。
 これを具体的に可能にするのが公判前整理手続で行われる争点整理とそれに伴う証拠開示でありまして、これは、弁護権や反対尋問権と並んで、公正な刑事裁判を実現する極めて重要な方策であると考えます。一覧表の交付や公判前整理手続の請求権、類型証拠開示の対象拡大によって被告人側の証拠へのアクセスが拡充され、公正な公判手続の実現、正しい事実認定に貢献するということが期待されると思います。
 残りました時間で、証人保護の点についても触れておきたいと思います。
 今回の法案の基本的な関心は、被害者や目撃証人等の不安や負担を軽減して、それらの者からの供述、捜査協力を得やすくするという点にあります。ビデオリンクによる証人尋問は既に用いられているところでありますけれども、これは証人が審理が行われている法廷と同一の裁判所構内にいる場合に限定されておりました。法案は、審理が行われている裁判所とは別の場所にいる証人についてもビデオリンクを用いるということを提案するもので、証人が被告人と同一構内に、例えば出廷するところを見られるということによって証言が困難になったり、あるいはその者の身体等の安全が危惧されるというような想定をされる場合に備えるものであります。
 また、証人の氏名、住居の開示に係る措置も提案されております。証人や被害者の保護につきましては、配慮の対象として、被害者、それから被害者以外の証人、この二者がおりまして、それから配慮の内容としては、それらの者に関する情報を公の法廷で明らかにしないということと、それから被告人に知られないという二つの側面があります。
 この関心から従来の制度を見てみますと、被害者特定事項の秘匿は、公開の法廷でこれを明らかにしないものであるとともに、被害者証人については、検察官がそれが被告人に知られないようにすることを弁護人に求めることができるという制度でありました。被害者以外の証人については、両当事者はその住居、氏名等が被告人を含む関係者に知られないような配慮を相手方に求めることができるけれども、証人特定事項、証人の住所、氏名等については、それを公開の法廷で秘匿する制度はありませんでした。法案はこの従来の配慮を条件とし、さらに、弁護人にも証人情報を知らせないことができる場合を設けた上で、そのような措置の適正さを裁判所が裁定するという仕組みを設けるとともに、公開の法廷での証人の氏名等の秘匿制度を新たに提案しております。
 法案についての一番の争点は、弁護人にも証人の氏名、住居を知らせず、その代わりとなる呼称や連絡先を知る機会を与える代替措置をとるという提案の是非であろうかと思います。これは、例えば組織的な犯罪について犯罪組織の元構成員が証人として出廷する場合に、その者が既に組織から脱退して、そして結婚等によって名字を変更しているというような場合、その現在の名字や住所を被告人側に必ず知らせなければならないとするとその者が加害を受けるおそれがあるということが想定されるわけですけれども、他方で、証人の氏名等が知らされないことによって、例えばその被告人その他の関係者との証人との利害関係を確かめることができなくなってしまうということも考えられるわけであります。
 このように、被告人との間に証言の信用性に影響を及ぼす利害関係が存在する可能性があるものの、証人の氏名等を知ることができないためにそのような利害関係の有無を確かめられないというような場合には、この措置をとることはできないと解されます。また、被告人側は、検察官の措置に不服があるときには裁判所に取消しを求めることができるということとされております。法案は、証人保護の要請と被告人の防御権のバランスを図る工夫をしていると評価できると思います。
 私からは以上でございます。
#7
○委員長(魚住裕一郎君) ありがとうございました。
 次に、原田参考人にお願いいたします。原田参考人。
#8
○参考人(原田宏二君) おはようございます。北海道から参りました原田といいます。
 私は三十八年ほど警察で仕事をしておりまして、その大半を刑事部門で過ごしました。北海道では殺人事件の捜査本部事件とか、他府県にも出向いたしまして、熊本、山梨県警の捜査二課長として選挙取締りとか役人の汚職事件の捜査をやっておりました。
 そういうことで、私は今日お話しいたしますけれども、決して私はアンチ警察の立場で皆さんにお話しするつもりは全くありません。長い間警察におりまして犯罪捜査という仕事をやっておりましたから、それなりの愛着は持っております。ただ、私が今考えておりますのは、警察に長くいて捜査をした人間として、警察の捜査はやっぱり堂々としてもらいたいと、つまり、法の手続に従って正々堂々とやってほしいと思うんですね。その上で国民の皆さんの信頼を得てほしいと、そういう願いで今日皆さんにお話をいたします。
 本題に入りますと、私は、取調べの問題について言うと、可視化だけで冤罪とか誤認逮捕がなくなるということは多分ないだろうというふうに実は思っております。といいますのは、警察の犯罪捜査には様々な問題がありますので、今日時間内で全てお話しすることはできません。ということで、一部だけお話しさせていただきます。
 北海道におりますと、国会で今何をやっているのかということが、私のようにある程度関心がある人間でも本当に分かりません。せいぜい私なんかはこの刑訴法の改正問題について知識としてあるのは、法務省のホームページを見たということぐらいです。
 そんなことで、実を言いますと、私はもう最初から、議論のスタート、この可視化の問題のスタートというのは、そもそも盛り上がってきたのは志布志事件とか富山の氷見事件とか、ああいう事件をきっかけにわっと盛り上がってきたんだと思っているんですけれども、あの議論辺りは、日弁連の話なんかを聞いていますとやっぱり全面可視化なんですよね。ですから、私はもう多分全面可視化でいくんだろうというふうに強い、何というか、ある程度の先入観みたいのを持っていたわけですね。
 実は私、今年の一月に、これ、本の宣伝じゃないんですけど、「警察捜査の正体」という本を講談社から出したんですよ。その中に、ちょうど原稿を書いた頃にこの問題がわっと盛り上がってきた頃で、いや、やっぱり書かないと駄目だと思って急いで実は書いたんですけど、ところが、間違って書いちゃったんですね。
 何を間違ったかというと、私はまさに、警察の取調べは裁判員裁判事件で逮捕、勾留されている被疑者については基本的に原則として、まあ例外は若干あるにしても、録音、録画すると、こういうことですよね、現在の政府提案の改正案というのは。私はそのほかに、全面可視化なんだからという頭があるので、当然裁判員裁判の対象外の事件の被疑者についても何らかの形、例えば申出があった場合は録音、録画するとか、そういう形。あるいは任意の被疑者、任意の被疑者の取調べで問題がないということは絶対あり得ない。それから、参考人の取調べについてもいろいろ問題があるわけですよ。例えば、目撃者の供述がどんどんどんどん変遷していって言ったことと供述調書の内容が全然違うと、こういうようなこともあり得るので、そういう意味では、私は参考人の取調べも当然録音、録画の対象にするべきだと。ですから、取調べ室以外でやることになるんでしょうから、その人が自前で録音することぐらいは認めたっていいんじゃないかということで、実はこの本に書いたんですよ。
 ところが、実は、よく調べてみるとそれは政府案には載っていなかったんです。ですから、私の本は間違っているんですよ。今日、ようやくそれ確認しました。それは民主党の案だったということですね。この法案が成立したら私は訂正文を書かないといけないというふうに思っていますけれども、それは半分冗談みたいな話で申し訳ないんですけど。
 実は、可視化の場合、いろいろ議論の中で出てくるのは、裁判員裁判が何%だと、こういう話の議論が出てくる。私はあれ絶対違うと。警察で毎年どのぐらいの人間を調べているのと、刑法犯あるいは特別法犯の被疑者として何人ぐらい調べているの、場合によっては任意も含めて、その中でどうなのという話になるべきだと思うんですけど、そうじゃない。それを私、この本の中にも書きましたけど、試算してみると、試算ですよ、〇・三六%ぐらいですよ、裁判員裁判の対象人員というのは。せいぜいそんなものですよ。これよりもっと低い数字を言っている弁護士さんいますよ。さっき言った氷見事件とか鹿児島の志布志事件は対象外ですからね、あれ、明らかに冤罪ですけど、外ですからね。ですから、そういうことで、部分可視化というのは余り意味がないというふうに思います。
 さらに、もうちょっと言うと、私たちの場合、意外に思われるかもしれないですけど、私は捜査幹部としては別件逮捕は基本的にやるべきじゃないと、非常に違法性が強いという意識がありましたよ、私自身。だから、そういう指揮をしていました。
 でも、最近見ていると、随分何か別件逮捕が多いんじゃないかなという気がして、新聞等の報道見ていると。例えば今市事件ですね、栃木の、この間有罪判決になった今市の事件。あれなんて商標法違反で入っていますでしょう、捜査に。そして、最終的には殺しで逮捕していると、こういうことですからね。別件逮捕も、したがって、商標法違反、今市の事件でいうと商標法違反は対象になりませんからね、これ。ですから、ここから外れますよね。
 それとか、もう一つは、いろんな冤罪事件見ていると、大体、私の言い方から言うと、全ての冤罪事件は任意同行から始まる。じゃ、皆さん、任意同行というのは一体全体何だと思われます。刑事訴訟法には書いていませんよ、任意同行なんて言葉。ですから、実際のやり方は、要するに朝早く容疑者の家へ行って、もしもし、ちょっと話聞きたいから来てくれませんかということで、数人の警察官が車に乗せて警察署へ連れてくるんです。行き先は取調べ室ですよ。もちろん逮捕状持っていませんよね、逮捕していません。じゃ、任意ですよね。録画できるんですか、この部分から、本当に。そういう部分あるじゃないですか。
 そうすると、その後そこで、私から言わせるとたたき割りというんですけど物すごい取調べが行われる、そこで自供する、逮捕状を取る、執行する、こういうことですね。その次の取調べ辺りからは、それは裁判員裁判であれば取調べ室の録画が始まると、こういうことになりませんかね。そういう事態をどうやって防ぎますかね、これはということですね。
 それで、警察には現在も、お読みになった方いらっしゃるかと思うんですけど、取調べの適正に関する規則というのがありますよ、国家公安委規則で。それは、要するに特定の取調べの行為、例えばちょっと読ませていただきますと、やむを得ない場合を除き、身体に接触すること、直接又は間接的に有形力を行使すること、殊更に不安を覚えさせ、又は困惑させるような言動をすること、これを取調べに、監督行為として取調べ官がやることを禁止しているんですよ。いいですか、禁止しているということは、こういうことがある意味では行われるんだということを警察が認めているということです。これ、生きていますからね、この規則は。
 要するに、警察内部でさえ信用していないということになりませんか。ある幹部が、取調べ監督官という役職をつくって、それが、取調べ官が取調べ室で取調べをしているのをのぞき窓から見て監視するというようなことでしょう。物理的にもできませんよ、そんなことは。取調べ監督官なんて数人しかいないでしょう。それを、毎日警察署でやっている取調べの内容をチェックできると思うこと自体がおかしいですよ、それは。こんなもの何の実効性もない、こんな規則は。ですから、そういうことが行われる、こういうことですね。
 それから、時間もありませんからあれですけれども、司法取引や刑事免責の問題ですね。これも私は非常に危ないなと思っています。
 過去にももう現にこれは取調べ官が取調べ室の中で司法取引やっているわけですから、便宜供与みたいなこととか、あるいはそのほかの利害誘導的な、取調べの中でそういう司法取引的な取調べをやっているわけですよ、これまでも。
 私の司法取引の典型的な問題の例を皆さんにお話ししたいと思っているんですけど、それは私が北海道警察の防犯部長のときに、平成の刀狩りと私は言っているんですけど、拳銃摘発キャンペーンがあったんですよ。全国の警察が一斉に拳銃摘発を始めました。国松長官が撃たれたのは平成七年ですから、そのちょっと前から始まっているんですね。そのときに、平成五年に銃刀法を改正しまして、やくざが拳銃と実包を持って出頭してきたときはその刑を免除するという規定を作ったんですよ、平成五年に。これを現場は悪用しました。
 どういうことを悪用したかというと、やくざと取引して、おまえ拳銃出せと、警察ではチャカと言います、チャカ出せと。それで、ふだんいろいろエスとして、スパイ、協力者として使っているやくざに働きかけて出させるわけですね。例えば、駅のコインロッカー入れておけと、それで電話せえと、入れたら。それで、電話が来たらそれでもってガサ状取ってコインロッカー、ガサして差し押さえると、こういうこと、これはね。それで、警察はこれ誰が入れたかというのは分かっているわけですから、はっきり。だから、不法所持の被疑者は分かっているわけですよ。だけれども、そこは検挙しない、それで拳銃だけを押収する。これを首なし拳銃というんです。
 首なし拳銃の押収が物すごい数になったんです、これ。これは結局、最近はそれほどでも、もう拳銃押収数というのは物すごく当時から、国松さんが撃たれたときの本当に何分の一かしか今はもう摘発できていませんでしょう。そういうことで、それはもうある意味での司法取引なんですよ。
 ですから、私は、確かに今度の刑訴法上の司法取引の中に直に警察は出てきませんよ、直にはね。検察がいろいろ証拠提出に、警察に協力される云々ということはあるので間接的なあれだと思うんですけれども、検事と弁護人との間でやられるというわけでしょう。
 でも、今の御説明した首なし拳銃と同じで、こういう規定ができたら警察の現場はどんどんこれを使いますよ、知らないところで。そうなります。それ、弁護士さんチェックできますか。検事チェックできますか。この首なしのときはできていないですよ、そんなことは。そういうふうになったらどうするんでしょうかね。そのことは何も書いていない。
 時間もありませんけれども、通信傍受についても、私はこれ、本気でこんなことをやる気になっているのと思いましたよ。
 それは、例えば何点か申しますと、警視以上が令状請求するとなっているでしょう。逮捕状の請求は警部以上なんですよ。この傍受令状は警視以上になっている。皆さん、覚えていますか。昭和二十八年に刑訴法改正があったんです。このときに、それは誤認逮捕とか違法逮捕がどんどんあったので国会で問題になった。そのときに出てきたのが何かというと、逮捕状の請求は警察にやらせない、検事の許可制にするという話が出てきたんですよ。それで、これは問題だということになって、最終的には結論は、法の方は警部以上の警察官が請求するという規定に変えたんです。昭和二十八年ですよ。
 でも、皆さん、誤認逮捕とか冤罪事件、その後幾つもあるじゃないですか。階級が上の者になったから公正な請求が行われるなんてこと、これ幻想ですよ、それは。そういう組織じゃないんです、警察というのは。だから、私は、傍受令状を警視以上に上げ、警部じゃなくて、本当にナンセンスなことだなということだと思います。
 そのほか、これ皆さん方から文章、よかったら教えてほしいぐらいですけど、何か今度、傍受を警察施設で、しかも立会人なしでオーケーだということになるんだそうですね。それで、新聞報道見ていたら、何か捜査に関係のない警察官が立ち会うというようなことで、話合いをしてそういうふうになったと。私はいろいろな条文チェックしてみたけど、そんなことどこにも出ていない。だから、単なる話合いだけなんでしょうかね、これ。
 それ、本当大丈夫ですか、そんなことで。警察の内部というのを知っていたら、警察官は組織の中で仕事をやっているわけですから、通信傍受の公正性を、ある警察官がほかの部署でやっている捜査についてチェックなんてできませんよ、それは。
#9
○委員長(魚住裕一郎君) 参考人に申し上げます。
 時間が超過しておりますので、手短に御発言をおまとめください。
#10
○参考人(原田宏二君) はい、分かりました。
 それじゃ、そういうことで、私はそのほかにもたくさん警察の捜査に問題があると思います。今日はもう時間がないのでお話しできませんけれども、そういうことです。その辺を十分御審議をいただいてお考えいただきたいと思います。
 どうも長い間ありがとうございました。
#11
○委員長(魚住裕一郎君) ありがとうございました。
 次に、豊崎参考人にお願いいたします。豊崎参考人。
#12
○参考人(豊崎七絵君) 九州大学の豊崎です。
 私は、刑事訴訟法を研究してきた者として、また、この度の法案に至る動きについて大きな関心を持ってきた者として、本法案について反対の意見であるということ並びにその理由につきまして率直に申し上げたいと存じます。
 結論から申し上げますと、私は、この法案によって取調べやその成果としての供述調書に依存した捜査、公判が改まるということはないし、人権侵害と冤罪の防止が図られるものでもない、その上、合意制度などによる冤罪の危険や盗聴拡大による人権侵害の危険が大きいと考えております。
 日本の刑事手続が取調べを中核的なものとして機能してきたということ、つまり取調べ中心主義だという現実についておよそ異論はないと存じます。この度の法改正は、この刑事手続の中核たる取調べ、そしてその成果としての供述調書に依存した捜査、公判の在り方を見直すということで行われるはずのものですから、まずはその前提作業として、このような取調べ中心主義をもたらしてきた原因は何か、究明しなければならないはずです。法制審議会特別部会の審議あるいはその後の国会の審議において、日本においてなぜこれほどまでに取調べが刑事手続において占めるウエートが大きいのかという立法事実に関する基本的な問題について十分な時間を掛け真摯に議論してきたのだろうか、私は大きな疑問を持っております。
 日本においてなぜ取調べ中心主義になっているかといえば、それは、取調べのやり方全般が捜査機関の裁量に大きく委ねられているのはもちろん、特に被疑者取調べについては、捜査機関は被疑者が身体拘束されている状態を流用して糾問的な取調べを行うことができるからであります。その根幹的な制度ないし捜査実務は、ほとんどの被疑者が警察の留置施設に収容されているという現状をもたらす代用監獄制度、代用刑事施設制度であり、取調べ受忍義務を前提とした取調べ実務であります。さらに、最大二十三日間にも及ぶ身体拘束期間が取調べを始め捜査のためにフル活用されていること、起訴前保釈制度が欠如していること、被疑者取調べへの弁護人の立会いが捜査実務上認められていないことなどなども取調べ中心主義を支えてきた構成要素です。
 このような取調べ中心主義は、被疑者を取調べの客体とし、黙秘権や弁護人の実効的な援助を受ける権利などを十分に保障されていない点でそれ自体問題があるばかりか、被疑者に大きな精神的、肉体的ダメージを与えることにより、虚偽の自白、ひいては冤罪を生み出します。
 ここで改めて御確認いただきたいと切実に思いますのは、取調べで明らかな暴行なり脅迫なりが行われたり冤罪であることが氷山の一角として辛うじて幸いにも発覚したりした、そういう事件の、かつ表面だけを見て、日本の刑事手続においてはごく一部の例外的な病理があって、それを解決すれば足りる、そのような考え方でこの法改正に臨むべきではないということであります。
 被疑者が最大二十三日間も警察の留置施設で処遇されていること自体、あるいは弁護人の立会いも取調べ拒否も許されず、取調べ官の見込みに合わない被疑者の言い分は全く取り合われず延々と取り調べられていること自体人権侵害であるということが改めて確認されるべきであるところ、法案がその問題にいささかも改革のメスを入れていないというのは、私にとっては本当に驚くべきことです。
 逮捕、勾留中の被疑者は、警察の留置施設においてはその日常生活を四六時中支配されることで心理的圧力を受けるのはもちろん、取調べ官によって随意の追及にさらされ続けることで更に心理的圧力を加えられているのです。そのような身体拘束や取調べの現状は、黙秘権、そしてその基礎にある人間の尊厳をないがしろにしているのではないでしょうか。
 取調べだけを可視化しても、このような人権侵害の構造や、この人権侵害の構造を発生源とする冤罪の防止を図ることはできません。そもそも、可視化というのは取り調べることを前提に行われるわけですから、これによって取調べ中心主義が直接的に改革されるという筋合いのものではありません。実際、法案の例外事由も、取調べによる供述獲得機能、より率直に言えば自白獲得機能は維持するという理由で設けられているわけです。ここには、取調べにおいてこそ真実を追求することができるという考え方があるように見えます。
 しかし、そもそも、近代刑事司法の原則である公判中心主義を前提としたとき、取調べの真相解明機能や刑事政策機能なるものを肯定的、積極的に評価し得るのでしょうか。また、真相解明機能といっても、実際には取調べ官の有罪仮説に沿った供述調書獲得機能と言わざるを得ず、真の意味での事実解明が果たされているとは言えないのではないでしょうか。そうであるからこそ、冤罪は生み出されてきたわけです。
 なるほど、それでも、可視化によって取調べの密室化が解消された分、誰が見てもひどい取調べは減り、取調べの適正化が進むように思われるかもしれません。しかし、被疑者が被っている精神的、肉体的ダメージが全て映像や音声として記録されたり簡単に見抜けたりするわけではありません。留置施設での身体拘束や弁護人の取調べでの不在などが被疑者に与えるダメージに思い至らないまま被疑者による自白場面の録音、録画を漫然と視聴し自白の任意性を判断することは、かえって誤りの危険があります。
 私は、いわゆる取調べの全面可視化が果たされたとしても、それだけでは今申し上げたような危険があると考えるものであります。つまり、およそ捜査機関は、捜査の秘密というものを重視する、そこでの裁量的なやり方というものを重視する、そういうカルチャーを持つ組織である限り、単に可視化が広がっていくだけではかえって問題は潜伏化すらしていく、そういう危険があるということです。
 先日の今市市事件の裁判員裁判との関係でも御指摘があったと思いますが、取調べの部分可視化が果たされれば、可視化がされていない取調べの問題が見えなくなり、そこでたとえ人権侵害や不当な扱いがあったとしても見過ごされがちです。そして、取調べの全過程の可視化が果たされたとしても、今度は取調べ以外のところの問題、例えば留置施設での人権侵害や不当な扱いが見過ごされることになります。いや、たとえ可視化がなされたところでも、被疑者の置かれた苦しい状況に対する洞察力が働かなければ問題は見過ごされることになります。
 例えば、取調べが弁護人に、立ち会っていないという事実は、現に見ているというのに、それが被疑者にどれほどのダメージを与えるかという問題は見過ごしているといった危険です。この点、先日の大澤裕参考人は、全てをカバーする録音、録画はあり得ないので、録音、録画というのは非常に有力な手段ではあるが、一つの手段である。つまり、私自身の言葉で言い換えれば、要は万能ではないという趣旨のことをおっしゃっておられました。
 しかし、これが、可視化に際限はないから一定のところで打ち切るほかなく、あとは刑事弁護などの運用に問題を投げようというのであれば賛同できません。必要なのは、可視化の範囲は広げつつも、しかし、根本的には、捜査機関の裁量的やり方そのものを直接抑制することによって究極的には可視化自体が不要になることを目指すというような、そういう抜本的な法改正であると考えます。
 例えば、留置施設での人権侵害や不当な扱いができない、およそそんなことは問題として発生しないよう代用監獄制度を廃止するということではないでしょうか。また、録音、録画を視聴するだけでは被疑者の被っている精神的、身体的ダメージが気付かれにくいという問題に対しては、そのようなダメージ自体を解消する法改正が必要であると思います。例えば、長期拘禁で被疑者が参ってしまうという問題がおよそ発生しないよう、起訴前保釈を導入すべきではないでしょうか。
 繰り返しますが、捜査機関は、捜査の秘密というものを重視する、そこでの裁量的なやり方というものを重視する、そういうカルチャーを持っておりますところ、これに対する不信というものが今回の法改正の動きに至る動機であったはずです。そうであるならば、なぜそのようなカルチャーがますます活用されてしまうような合意制度や通信傍受の拡大といったものが法案に入り込んでいるのか、私には理解できません。
 例えば、合意制度について言えば、それ自体引込みの冤罪の危険があるばかりか、日本の遅れた刑事手続の問題と結び付くことによって見えない圧力が被疑者に掛けられるという問題が懸念されます。可視化されていない取調べでの圧力の問題もさることながら、代用監獄に収容された被疑者の場合、警察は事実上の便宜を図ることもできます。
 また、証拠収集手段が多様化したからといって、捜査機関がその分取調べをあえて差し控えるようになるような誘因は何も用意されておりません。かえって、例えば傍受した会話を取調べで自白を取るために使うなど、取調べもほかの証拠収集手段も相乗的に活用するという問題も懸念されます。
 あるべき法改正は、公判中心主義にかなう刑事手続に向けた抜本的な改革であり、端的に捜査、取調べを抑制することであります。捜査、取調べの可視化は、この抜本的な改革と併せて行うべきであります。私は、法案の問題点をこの度検討することによって、かえって今までよりも一層このことに確信を持ち、それが道理であると考えるに至りましたので、御批判の向きがあるということも承知で、しかし研究者としての良心に懸けて本日の機会に申し上げることにいたしました。
 それでは刑事司法の機能を大きく損なうという御懸念に対しては、そういう機能の内容自体問題があるということ、少なくともアプリオリに前提とされるものでないということは既に申し上げました。
 以上、法案に反対であるということの理由について述べさせていただきました。
 御清聴ありがとうございました。
#13
○委員長(魚住裕一郎君) ありがとうございました。
 以上で参考人の意見陳述は終わりました。
 これより参考人に対する質疑を行います。
 質疑のある方は順次御発言願います。
#14
○三宅伸吾君 自由民主党の三宅伸吾でございます。
 本日は、三人の参考人の方、本当にすばらしいお話をいただきましてありがとうございました。
 まず、小木曽参考人にお聞きしたいと思います。
 二人の、豊崎様、原田様がお話しされているときにとても一生懸命メモを取られていらっしゃったんですけれども、お聞きになられて何か反論がおありになってメモを取られていたんですか。
#15
○参考人(小木曽綾君) ポイントポイント、どういう点についてこの法案に問題があるという御主張であるかという点についてメモを取っておりました。反論がというか、今多岐にわたっていろいろ出ましたので、それぞれについて何か意見があるかとおっしゃられれば、それなりに意見は持っております。
#16
○三宅伸吾君 是非、一番反論したいと思われてメモを取ったところをお知らせいただけますか。
#17
○参考人(小木曽綾君) まず、原田参考人がおっしゃったこと、警察が正々堂々とするべきである、全く同感でございます。
 ただ、個々の問題につきましては、例えば可視化とは何かという問題が恐らくありまして、例えば参考人であるとか任意取調べの段階も録画するべきであるということになりますと、これは捜査に携わったことのない私が警察官であった方に申し上げるのはなんですが、捜査、取調べの中には様々な人が関係し、様々な情報が寄せられるのだろうと思います。その中には、これはちょっと申し上げにくいんだけれども、しかし事件の解決のためであれば申し上げますというようなこともあるだろうと思うわけでありまして、そのような情報を、じゃ、録画するからというふうに言ったときにその情報の集め方がどうなるのであろうかということを思います。
 また、任意同行がなかなか危険であるというのは私もそう思います。任意同行と言いながら実は事実上の逮捕に至っているというような事案も確かに判例に挙がっているわけであります。裁判所は、例えば朝、任意同行を掛けて、取調べをずっと夜まで続けてというような事案で、任意同行であれば、普通は夕方七時頃になればうちに帰りたいはずであるのに、取り調べられている本人の意向を確認しないで取調べを継続したような場合には実質的な逮捕とみなすというような判断をしたものもありまして、それについては実務的にも厳しい目が向けられているのだろうと思います。
 それから、令状の審査がほとんど機能していないというような御指摘でありますけれども、元々、令状請求のための疎明資料の収集が既に相当な抑制効果を持っていると思います。逮捕を例に取って申しますと、確かに令状の発付率は高いと思いますけれども、日本の逮捕は十分な証拠が集まってからでないと逮捕に着手しないということがありますので、勢い令状の発付率は高くなるということであろうと思います。もちろん誤認逮捕のおそれがないということを言っているわけではありませんけれども、それは逮捕されるべきでない者が頻繁に逮捕されているということを示すものではないだろうと思います。
 あと、通信傍受などにつきましても、これは平成十一年でしたか、長い議論の末に制度化されたものであります。当時、一番初めにそのような法律ができるときにも、そのような法律ができると市民生活の自由が全て国家に知られてしまう、我々のプライバシーはなくなってしまうんだというような議論がありましたけれども、現在、少なくとも私が日常使っているメールとか携帯電話の通信が何の理由もなく聞かれているというような不安を持って生活してはおりませんので、要するに、警察には時代に応じて犯罪に対処するための手段が与えられなければならないと思いますけれども、もちろんそれが濫用されないという保証がないわけですから、それに備えるための仕組みを用意して法案にするということになるわけで、現在の法案が全くその機能を果たしていない、あるいはそれが期待できないというような内容になっているというふうに私は思いません。
 以上です。
#18
○三宅伸吾君 原田参考人にお聞きしたいと思います。
 先ほど、別件逮捕は良くないと警察の幹部のときに思っていらっしゃったという御発言がございました。御本を引用したところを読んでおりますと、警察が公表している検挙率は余罪で支えられている、つまり、逮捕した被疑者を勾留中に取り調べて余罪をたたき出すことで何とか三〇%前後の検挙率を維持していると、警察の検挙活動がいかに余罪のたたき出しに依存しているかが分かるという記述がございます。このところは間違っていないわけですね。
#19
○参考人(原田宏二君) 私は少なくとも体験上もそうですし、統計をチェックしてみるとそういうふうになっていますね。警察庁なんかもそういう考えで、余罪の割り出しがどんどん低下しているということに非常に苦慮しているようですね、白書なんか読みますとね。そういうことだと思います。
#20
○三宅伸吾君 他の県警に出向されたときに選挙違反事件の捜査も担当されたとおっしゃいました。
 有名な鹿児島の志布志市公職選挙法違反事件、冤罪だったわけでございますけれども、ああいう事件がなくなるようにするのが一つの刑事訴訟法の改革の狙いだと思うんですけれども、そもそも選挙違反事件は裁判員対象事件でもございませんし、可視化義務付けの対象ではありません、任意の録音というのはあるかもしれませんけれども。この鹿児島の志布志市事件と同じような事件が今後起こらないようにするためにはどういうふうに法律を変えればいいのか。今議論になっております刑事訴訟法だけでは多分、この改正案では不十分だという御主張かもしれませんけれども、ちょっとその辺りのところをお聞かせいただけますか。
#21
○参考人(原田宏二君) お答えになるかどうか分かりませんけど、私は二課長を二か所でやったわけですけど、今思うと、本当に思うのは、皆さん方、皆、選挙で国会へ当選されて来られているわけですけど、全国的な規模で行われる選挙のときに警察は何をやるかということです、まず。
 全国の警察は取締り本部というのをつくりますよね。それで、あの取締り本部は何かというと、例えば警察庁ですと、組織を挙げて選挙違反の情報を集めてやるんですよ。私も警察署長をやっていましたから分かりますけど、もうほかの業務を放り投げてやるんです、人を集めてですね。だから、全国でそういうことをやるんですよ。
 それで、そういうことが、本当に皆さん方は何も感じないでしょうか。要するに、そういうこと堂々と新聞に出ますよね、警察庁の指示で全国の警察が取締り本部をつくって選挙違反の取締りを始めたと。それで、私は、最近読んでいるとよくありますよね、何というか、紛争国に国連辺りが選挙監視団というのを派遣しますよね、あれとどこか似ていませんかと思うんです。基本的に、一次的には選挙というのは、選挙管理委員会が各地にありますよね、私は基本的にもっと選挙管理委員会が前面に出てやるべきだと、その中で警察がやるべきことというのをちゃんとすみ分けをして、余り最初から何かあたかも全国で選挙違反ががんがん行われているんだというような感じでやるのは、一つはいかがなものかというふうに思います。
 それと、もう一つは、私は捜査二課長をやっていたんですけど、一番分かりにくいのは公選法ですよ。本当分からない。本当に長い間取締りをやっていた警察官が、生き字引みたいな人がいると分かるんです。だけれども、一年や二年やったり、その選挙のときにやったって、もうしょっちゅう変わっているし、いろいろ、例えば皆さんだとお分かりだと思うけど、政治運動と選挙運動と後援会活動をなかなか区別できないですよ、これ、はっきり言って。それから戸別訪問は駄目でしょう。それから運動員の報酬についても何かいい人と悪い人がいたりして、もう非常に複雑だ。だから、私は公職選挙法というのは、悪いけど、ざる法だと思いますよ。やる方だって本当は迷惑ですよ、本当に正直言って。そういう感じは持っています。だから、公選法を変えないと駄目なんです。
#22
○三宅伸吾君 小木曽参考人にちょっともう一問だけお聞きしたいんですけれども、今回、協議・合意制度というのが制度化をされるわけでございます。
 それにつきまして二点お聞きしたいんですけれども、公然の秘密として事実上の司法取引がなされてきているというのがあるかと思います。これまでなされてきた事実上の司法取引の適法性についてどのように考えていらっしゃるのかというのが一点と、もう一点は、この刑事訴訟法等改正案が成立した場合に、この協議・合意制度外の事実上のいわゆる司法取引の適法性がどのように変わるのか、同じであれば同じというお答えで結構なんですけれども、その二点をお知らせいただけますか。
#23
○参考人(小木曽綾君) 若干長くなってもよろしいですか。
#24
○委員長(魚住裕一郎君) いや、時間も。簡潔に。
#25
○参考人(小木曽綾君) 短めですか、はい。
 従来の取引というのは、刑事訴訟法の二百四十八条に訴追裁量権が検察官に与えられているわけであります。取引というふうに言いますと、本来処罰されるべきものが処罰されなくなるのではないかといったような懸念があると思いますけれども、現行法自体がおよそあらゆる罪が訴追されなければならないという前提を取っておりませんで、情状や犯罪後の情況によって訴追をしない場合を認めているというわけですから、従前、事実上司法取引が行われていたとすればその条文が根拠になると思いますし、今回の合意制度も理論的にはこれが根拠になるということで、従前と理論的な変化はないというふうに考えます。
#26
○三宅伸吾君 ありがとうございます。
 最後、豊崎参考人にお聞きしたいと思います。
 るる現在の取調べの現場の弊害につきまして御説明がございました。私は人質司法という言葉をこの委員会で使ったことがあるんですけれども、豊崎参考人は人質司法という表現はお使いになりませんでした。アカデミズムの世界にいらっしゃるので使わなかったのかもしれませんけれども、何か特別のそういう言葉を使わなかった意味がもしあるのであれば教えていただきたいのが一点。
 もう一点は、公判中心主義に向けた抜本改革が必要だとおっしゃられて、代用監獄とか長期拘禁の起訴前保釈でございますか、そういうこともその抜本改革の一つなのかもしれませんけれども、言い足りなかったところがあれば、公判中心主義に向けた抜本改革をもう少し敷衍していただけますか。
#27
○委員長(魚住裕一郎君) 豊崎参考人、簡潔にお願いいたします。
#28
○参考人(豊崎七絵君) はい。
 まず、人質司法という言葉を使わなかったのは特に何か意味があるわけではなくて、しかし、その中身を具体的にお話をして問題意識の共有を図りたいという意味であえてその言葉を使わなかっただけで、その言葉に対しては、私は、特にそういう形で日本の刑事手続を批判していらっしゃる方々にむしろ近い見方を取っているのではないかと思います。
 それから、抜本的な改革の中身ですけれども、それは、先ほど申し上げたことの繰り返しで言えば、身体拘束に関わるような代用監獄の廃止とか起訴前保釈の導入とか、そういったものがあるわけですけれども、それに対して、では刑事手続における事実の解明というのは、まさにそこで捜査が抑制されることになればどうなるのかという恐らく御批判はあると思うわけですが、それはまさに公判中心主義、裁判で客観的な証拠を基礎に公判での証言、被告人の供述によって解明するということが基本となるべきで、そこには証拠法によって供述調書が公判に流れ込まないという仕組みを、裁判員裁判の下である程度事実上実現しているということもありますが、しかし、そういうものではなくて、やはりそれは法改正として制度的に確実なものにするべきではないか、そういう証拠法の改革ということも併せて申し上げたいと思います。
 以上です。
#29
○三宅伸吾君 終わります。
#30
○真山勇一君 民進党・新緑風会の真山勇一です。よろしくお願いいたします。
 三人の参考人の方、ありがとうございました。
 この刑事訴訟法改正案の抱える様々な問題点、広くいろいろ指摘をしていただいたわけですけれども、私は、今回のこの改正案というのは、やっぱり一歩前進であるという評価ももちろんあります。しかし、そうはいっても、これだけいろいろと審議をしてきてもまだまだ問題点は残されたままだというふうに思いますし、私自身納得がどうしてもできないことがあります。
 いっぱい問題点あるんですが、絞ってちょっと三人の方にそれぞれお伺いしていきたいというふうに思っております。二点伺いたいと思っているんです。一つは録音、録画のことについて、もう一点が通信傍受についてです。
 分かりやすく話をしたいと思うんですが、先ほどの中でもお話が出てきております今市の事件。私は本当に、この録音、録画、可視化でこれはいい例になったというふうに思っているんですね。やっぱり問題点、私は基本的に録音、録画を進めるべきだというふうな考え方なんですが、その逆に、小木曽参考人もおっしゃっていたように、逆効果の件も出てきたのじゃないかというふうにおっしゃっていました。ビデオが直接証拠として受け取られたり、それから、何時間録画したとしても、全過程撮ったんだからといったって、本当にそれが、じゃ、有罪の証拠になるのかどうかとか、それから今回の事件の場合は、初めて自供というか自白をしたのが別件逮捕のところで自供しているので、その肝腎な初めて自供したところがないということが私はこれは問題だというふうに思うんです。
 この点についてお伺いしたいんですけれども、実は私はメディアの仕事をしてテレビの世界にいましたから、インタビューということをたくさんやりました。もちろん、心理学の専門家でもないし、そういう面からでテレビのインタビューという形なんですが、インタビューを撮るときどういうことを考えるか。当然、VIPとか話題の人を呼んで聞くんですから、聞かなくちゃいけないことが決まっているわけです。これをどうしても聞きたいということがあるわけですね。聞きたくない人は呼びません。聞きたいことがあるから呼ぶんです。その聞きたいことをどうやって聞き出すかということが大事だと思うんですね。
 やり方が二つあります。一つは、事前に打合せをして、こちらが聞きたいことを相手に理解をしてもらってインタビューを始めるというやり方。効率がいいかもしれませんね、思ったとおりの答えが出るかもしれません。でも、何か生き生きとした新鮮さというか、臨場感がなくなってしまうということがあります。
 ですから、私は、できればインタビューというのをやるときはぶっつけ本番がいいと思います。なぜか。それは、初めてその人が焦点のことを、こんなことを聞かれるのかな、こんなことを聞かれると嫌だなと思っていることもあります、それを直接聞いたときにその人がどう答えるか。本当のことを答えるのか、あるいはいろいろと言い訳をしたり遠回しな言い方になるのか、やはりそのときが勝負だというふうに思っているんです。
 インタビューというのは、何回撮り直しても、結果的に見るとやっぱり、ううん、いろいろちょっと問題点はあるけど、でも一番最初に撮ったインタビュー、これが一番生き生きしていいなということで放送に使うことって多いんですね。これはもちろん例え話ですから、これがそのまま取調べに通用するとは私は思っていません。ですけれども、人から物を聞き出すということの一つのこれは大事な点じゃないかというふうに思っています。
 ですから、今回、別件逮捕で、しかもこの今市の事件は、問題は、検察自身が容疑認めてからは全て録音、録画されている、容疑認めてから。認めたところがなくては私はいけないと思っています。そして、判決では、恫喝とか暴行などなかったと認められる。そうですよ、だって自白した後しかないんだから。もう自白すれば、別に暴行とか恫喝する必要ないんじゃないかなという私は気がします。
 それからもう一つ大事なこと。裁判員、こうおっしゃっています。映像には文面だけでは伝わらない情報がたくさんあった。証拠よりも映像の方がインパクト強いんです。私は、ビデオの世界で、テレビの世界で、ニュースを作っていると、いろいろ書いた原稿よりも映像がどれだけ強いかということはよく知っています。それから別な裁判員。録音、録画がなければ今回の判決はなかった。録音、録画であった映像を基に裁判員がかなり心理的に影響されて判決を出したということがあるんですが。
 こういうことで、私がお三方にお伺いしたいのは、私はやっぱり、ですから初めて自白をしたところがなければ録音、録画の意味がないんではないかと思うんですが、そこの点をどういうふうにお考えか、お三方に順番に聞いていただきたいと思います。
#31
○委員長(魚住裕一郎君) じゃ、順次。
#32
○参考人(小木曽綾君) 初めの自白の場面が録音されていなければいけないのではないかということだと思いますが、供述というのは様々変遷するというふうに聞いておりまして、初めは曖昧な供述をしている、あるいは否認している、それがだんだん関与を認めるようになる、自白する、あるいはそれがまた逆に戻るというようなこともあるというふうに聞いておりまして、そういう場合は一番初めが大事なのだということが必ずしも当てはまらないということはあるのではないかと思います。
 また、供述の問題で一番重要なのは、おっしゃったように、供述する側が相手に合わせて相手の都合のいいようにしゃべってしまうような心理状態になるという、そこのところだと思いますので、そこをどう切り離して真摯な供述を得られるような環境をつくっていくのかということが大事だろうと思いまして、それは録音、録画だけではとても対処することができないと思いますので、そこで弁護人が重要だというふうに申し上げました。
#33
○参考人(原田宏二君) 非常に難しいお話だったと思うんですけれども、私の体験等からいうと、基本的に否認している被疑者から供述調書を取りませんので、したがって、その供述調書を取る段階は自供させているわけですけれども。ですから、録音、録画を否認の段階から撮るということは重要な問題だと思うんですけれども、果たしてどうでしょうかね。私の体験からいうと、本当に任意で、さっき言ったように任意同行の後、任意で、いわゆるたたき割りの調べみたいなものは本当に録音、録画に私はむしろなじまないので、とてもじゃないけれども駄目です、あれは、本当に。ですから、多分撮れないと思いますよ。
 で、ある程度自白させて、皆さん御存じだと思うんですけれども、供述調書には頭書きというふうに印刷されていて、あそこに供述拒否権告げたことになっているんですよね。不動文字で入っていますからね。それで、最後まで自供した、よし、調書に書くぞということで、があっと調書を作り、今はパソコンでやっていますけれども、やって、最後に署名押印させるわけですね。そこで、ああ分かりましたと言ってもし仮に被疑者が認めて署名押印するとしましたら、供述拒否権告げていなくても不動文字で入っていますから、署名押印した段階で、供述拒否権を告げて取り調べたところ、任意に以下のような供述をしたという文面になっちゃうんですよ、これが。そういうことなんですよ、取調べというのは。
 ですから、そういう取調べの本当の警察の供述調書の取り方、私は警察官の作った供述調書は基本的に作文だと思っていますけれども、そういうことなんですよ。ですから、そういうことを十分承知した上で今のお話というのは考えないと、私はなかなかはっきりとしたお話、しづらいなというふうに思いました。
 以上です。
#34
○参考人(豊崎七絵君) 私は、初めて自白をしたところでは遅いと思います。むしろ、その自白をするという被疑者の動機が形成されたのはなぜだろうかというところまで、録音、録画という制度を前提としたときのお話ですけれども、そこまでやっぱり守備対象としなければいけないと思います。
 否認している被疑者から何とかやっぱり自白を取ろうということで、先ほど留置場施設の話もさせていただきましたけれども、やはりそういった動機形成というところをそもそもなくしていくというか、見えないところでのそういう働きかけというものがそもそもできないシステムをつくることによって、私はむしろ、警察や捜査機関に権力、権限を与えて、だけれども可視化をするというのではなくて、やはり先ほど申し上げたように、そこの権限のところから抑制をしていかなければいけないというのが筋道ではないかと考えております。
#35
○真山勇一君 ありがとうございました。
 そしてもう一つ、やっぱり時間内にどうしてもお三方からお伺いしたいので、割と短めに多分いただかなくてはならないと思います。よろしくお願いします。
 もう一点は、通信傍受です。今回の改正で立会人がいなくなるということですね。確かに、いわゆる合理性ですとかそれから効率性とかそういうことから考えると、今の立会人がどのぐらい役割を果たしているのかということもあると思うんですが、私はやっぱり盗聴という、つまり、本来ならば触れてはいけないところのものをそっと玉手箱を開けるようなものなわけですから、やっぱり知らないところに知ってみたいとか接近してみたいという誘惑というのはあると思うんですね。
 これは、法律できちっと決められている、しかも今回は、特殊電子計算機というものを使って絶対そういう不正、つまりテープを、話の内容を改変したり、それから本来聞いちゃいけないところを聞けないようになっているというふうに言われています。それから、その内容も外へ漏れないように暗号化して送るから大丈夫だということを言っています。暗号というのは解くために作るものなのだから、私は、やっぱりこういうものがあれば、今のネット社会を見ていれば、御覧のように、やはり何か守るところをつくればそれを破ろうとすることというのは幾らでも出てくるという危険があると思うんです。しかも、この電子計算機はまだできていない、どういうものができるか分からないという、そういう中で、これ大丈夫です、この機械絶対大丈夫です、どこのメーカーがこのコンピューターをつくるのか分かりませんが、絶対大丈夫な機械ですというのが今回の答えですよね。
 それから、立会人がいても実際に何もしていないんだから、ぶらぶらしているのと同じような、私にはそういうふうに聞こえたんです、ぶらぶらしているのと同じようだから要らないよと。その負担の方が大変だよ、だからやめましょうというふうに言っているんですが、私は、やっぱり立会人がいる、しかも外部の人間がいる、内部の人間じゃありません、外部の人間がいて立ち会うことの心理的圧力、精神的圧力みたいなものをこういう捜査の、捜査というのはやっぱり人間がやることですから、この部分があるんじゃないかと思っています。
 立会人がいなくていいのかどうか、このところ、簡潔にひとつお三方からお伺いしたいと思います。
#36
○委員長(魚住裕一郎君) それでは、今度は逆順に豊崎参考人からお願いをしたいと思いますが、時間が制約ございますので、簡潔によろしくお願いいたします。
#37
○参考人(豊崎七絵君) 私は、今問題提起いただいたことに賛同いたします。やはり立会人というものの役割はそもそも現行法においても限定されているのはそのとおりで、私はそこから変えなければいけないと思っているものですけれども、しかし、やはり現在の立会人制度というのは意味がありますし、先日、渕野参考人が立会人がいることの具体的な意味について、メモを取ることの防止になるのじゃないかという御発言があったようですけれども、私もそういった具体例が考えられるのではないかと思います。
 以上です。
#38
○参考人(原田宏二君) もう私が言うことはさっき申し上げてありますので。本当に危ないですよ。それだけです。
#39
○参考人(小木曽綾君) 立会人の役割は法制定時にも議論されておりましたけれども、元々の法律ですね、結局その役割は外形的な手続の確認にとどまるということになっていたわけでありまして、その役割を機械的に代替することができるということですから、立会人を置かなければいけないということにはならないと思いますし、暗号というのはその場で、じゃ、解読しようと思ってもできないわけですから、解くためにあるという、それはそのとおりだと思いますが、じゃ、その場で解くかというと、それはできないだろうというふうに思います。
#40
○真山勇一君 私は、今回のこの刑事訴訟法の改正案というのは、やはり今の皆さんからもありましたように、冤罪というのを何とかなくす、冤罪を防止する、そして時代の要請に合ったものにしていくという考え方としては私はそう思っております。今日お三方からそれぞれ現場の御意見を伺って感じるのは、やはり改正するならしっかりと時代の要請に合った、新しい時代にふさわしい刑事訴訟法にしなければならないということであって、今の改正案というのはやはり私自身はまだまだ疑念の余地、ううん、どうなのかなというところがあると思うんですね。
 私は、聞いていても、賛成している方もやはりそういう疑念を持ちながら、でも少し前進なんだからいいんじゃないかというふうなことに伺えるんですけれども、やはりそういう疑念の余地がない、本当に信頼される改正案にしていかなければならないのかなというふうに感じております。
 少し時間が余りましたけれども、私の方の御意見を伺うのはこれで終わりにしたいと思います。
 参考人、ありがとうございました。
#41
○矢倉克夫君 公明党の矢倉克夫です。お三人の参考人の先生方、貴重な御意見、大変にありがとうございました。
 私、今回の法改正の趣旨は、もう既に御指摘もある取調べ中心主義、供述調書への過度な依存、これを脱却するというところが原点の一つであるというふうに思っています。
 そもそも、まずお三人に、豊崎参考人から順にお伺いしたいんですけど、なぜ供述調書に依存するかというところなんですね。これは、一つは、捜査機関その他が検挙率や有罪率を上げる、無実かもしれない人でも人権侵害をしてでも上げようというような、そういうような性質があるところからそういうふうになっているという意見もあり得るかもしれない。他方で、真実発見というものをこれしっかりと職務として行うと。ただ、その職務を行う上で、現実、なかなか証拠の収集という部分での制約が、これは評価あると思いますけれども、あったと、取調べに依存せざるを得ないような状況にあった、その結果依存していたという、この二つ、それ以外もあるかもしれないんですけれども、それの二つのうちどちらというふうにお考えであるのか、それ以外もあれば、豊崎参考人から順に御意見をいただければというふうに思います。
#42
○参考人(豊崎七絵君) 今の御質問ですけれども、先ほどの報告で申し上げたことの重複になるかと思いますけれども、なぜやっぱり供述調書に依存するのかといえば、そのような供述調書を作るに当たっての取調べが捜査機関の言わば自由裁量に委ねられているからだというふうに私は考えるものであります。でありますので、先ほど申し上げたように、そこを抑制していくということが今回の課題であると。
 確かに一線の警察の方々は個人的には一生懸命やられているかもしれませんけれども、しかし、原田参考人のお話にもあったかもしれません、私自身がそう考えるという意味で申し上げれば、やはり警察はそういうカルチャーを持っているということを前提にそこを抑制していくということしか私はないと考えております。
 以上です。
#43
○参考人(原田宏二君) 刑事司法全体、刑事訴訟法にずっと書いてあるわけですけど、警察の犯罪捜査というのはまさに刑事司法の入口にあるんですね。ですから、入口にあるので、刑事司法全体の何か仕組みというか裁判までに当然入口は左右されるということですよ。裁判で非常に自白が重視されるということになれば、当然のことながら警察もそう考える。
 それと、私の体験なんかからいうと、よくあるんですけれども、例えば汚職事件等、それとか重要な大きな事件の捜査をやっていると、例えば被疑者をどうしようかと、裏付けがちょっとかなりきついなというような事件は結構実務上あるわけですよ。必ずしも裏付けが、物的な証拠や何かが完璧だと、客観情勢としてこいつは被疑者だというふうにがつっとやれる事件もあれば、そうでない事件もあるわけですね。そうすると、そのときにどういうことが起きるかというと、検事と連絡するわけですよ、検事と。そのときに条件付けられることが結構あるんです、検事から、落としてくださいよと。落としてください、落とせなかったら起訴できませんよという話は私は度々検事から言われていますよ、実際に。
 ですから、警察としては、刑事司法の入口にある、重大な事件を逮捕して身柄を取って、取ってですよ、検事のところで、検事パイと我々は言うんですけれども、不起訴になったり処分保留で釈放になったら、私はもう完全に捜査失敗したというふうに思っていますからね。部内でもそういう評価を受けますから。そうすると、当然、捜査担当者、指揮している我々としては何とか落とせと、こういうことになるわけですね、それで自白をさせると。そういうシステムにあると思いますよ。
#44
○参考人(小木曽綾君) 一般論としてですけれども、自白というのは、本人が不利益供述をすれば処罰されることが分かっていながらしかし不利益供述をするということで、信用性が高いというふうに言われているということがあります。それから、動機から背景事情から犯行の態様に至るまで全てストーリーとして語ってくれるというような側面を持っているということでも、それをまずきっかけにしてほかの証拠を集めようという動機が働くというので自白が追求されやすいということがあると思います。
 また、これは臆測の範囲を出ませんけれども、真実を追求するとか、それから行為者の謝罪とか反省を求めるという、何といいますか、まさにカルチャーというか、国民感情というようなものが背景にあるように思っています。
#45
○矢倉克夫君 ありがとうございました。
 豊崎参考人の御意見は、捜査のカルチャーというふうにおっしゃっていた。そのカルチャーというのは、多分御趣旨は、さっき私二つ申し上げたうちの最初の方に、捜査が持っているというような御趣旨であったというふうに、要は人権侵害というものも起こり得るような、それでも検挙率を上げるとかそういうようなカルチャーだというふうに理解もしているんですが、原田参考人は、落としてくれというところ、それはある意味、私は、捜査機関が真実発見というところから、最終的にはこれはその真実発見のための供述というところを重視して、その上での落としてくれというような御趣旨であったかなと。
 全般に見て、小木曽参考人の御意見も含めて、私は、供述調書に依存する部分というものの捜査機関の性質というのは、やはり真実発見というところ、それに、職務に追求する余りに行き過ぎ、その行き過ぎの背景はいろいろあると思うんですが、証拠の収集に当たっての供述というものに依存せざるを得なかったというところがやはりあるのではないのかなというふうに私は理解もしております。
 その上で小木曽参考人にちょっとお伺いもしたいんですが、まず今のような前提で、他方で、供述に対する依存をやっぱりしっかりとなくしていくためには捜査の手法の在り方というものも考えなければいけないという御趣旨でパッケージというふうにおっしゃっていただいたというふうに理解をしていますけれども、そこの確認をまずさせていただきたいと思っております。
#46
○参考人(小木曽綾君) おっしゃるとおりです。
#47
○矢倉克夫君 その上で、じゃ、今回いろいろ問題になっているのは、捜査の手法を広げることがそのまま捜査機関の自浄作用になって依存しないような捜査機関になるかということだけではないんじゃないかというところであると思います。そのために重要な役割を持っているのがやはり弁護人であるかなと。捜査機関として、今まで依存していた体制を改めるためにいろんな手法を広げたわけでありますが、そこがまた更に行き過ぎにならないように弁護人の役回りというのもこれ重要になっているという理解の上で今回設計はされているというふうに理解もしています。
 一つ可視化の部分でやはりよく問題になっているのが、小木曽参考人にちょっとお伺いしたいと思うんですけれども、可視化の部分で問題になっているのは、今回、可視化も、供述調書の任意性を立証する部分で録音、録画が提出されるというところがよく言われております。それが、その部分だけを結局切り取った形で録音、録画になって、実際上、任意性が怪しまれるようなのは、その供述調書、供述をしたまさに供述調書以前の取調べの部分の録音、録画はされているんだけれども、そこの部分は排除して、余り問題ないような供述調書、まさにそのものの立証のためだけの録音、録画を出すというような話も批判としてはある。
 他方で、それに対しての対処としては、弁護人から、まさに取調べというか供述調書が作成される以前の部分での録音、録画もこれは提出するように証拠調べ請求をするという、弁護人の立証活動でしっかりとやらなければいけないというような御意見も前回参考人等で御意見があったところであります。
 そういう意味で、今回、検察が一覧表の交付などもこれ義務化いたしました、証拠の一覧表の交付なども。そして、公判前整理手続の請求権などもこれはしっかりと義務化した上で環境整備もしているというところはいろいろあるわけですけれども、その辺りを弁護人の可視化に関しての立証の点という関連でどういうふうに効果があるとお考えか、お答えをいただきたいというふうに思います。
#48
○参考人(小木曽綾君) 先ほど冒頭でも申しましたけれども、被疑者段階の弁護人の役割というのは非常に重要であると考えます。取調べに当たってまず被疑者に助言をするということもありますし、今委員御指摘のように、公判になって、どのような証拠があって、例えば録画されている部分がここだけだけれども、しかしそれより前の部分を本当は見なければいけないんだとすれば、そういう証拠調べの請求をする、当然それに向けて公判準備、整理手続に臨むというような役割が弁護人に期待されているところだと思います。
#49
○矢倉克夫君 後ほど、最後また小木曽参考人にもう一個、時間があればお伺いしたいんですけれども。
 豊崎参考人に、ちょっと抽象的な話になるんですけれども、やっぱり公判中心主義というところは重視すべきであると。そのとき、豊崎参考人のイメージをされている捜査権というのはどういうものであるのか、ちょっと抽象的なことですけれども、お答えをいただきたいなというふうに思います。
#50
○参考人(豊崎七絵君) 私自身は捜査権そのものがもちろんなくなるという話をしているわけではなくて、それは取調べ受忍義務を課さない形での、まさに真正な意味での任意の取調べというものが身体拘束をされている被疑者に対する取調べとしても行われるべきであるし、そういった捜査を前提として、しかし、そのような捜査であれば、正直申し上げて取調べはやりにくくなるでしょうし、そこでの供述は取りにくくなるかもしれませんが、それはいいことなのではないかということですね。やはりそこに依存せずに、公判で出てきた証拠できちんと勝負をするということが私は重要であると思います。
 ついでながら、一つだけ、先ほどのお話につながるかもしれないんですけれども、弁護人の役割が重要というのはこの公判中心主義の下でもそうなわけですけれども、しかし、弁護人の役割が重要と言うのであれば、やはり取調べでの弁護人の立会いというものを抜きにしては、私は、非常にその手足というか縛ったままでの弁護活動を、言わばある種自己責任のように、あなたたちの努力でやりなさいと。それは、実際に運用の場面ではもちろん弁護士さんは頑張らなければいけないというのは百も承知ですが、今は法改正の場面であります。そうであるならば、やはりここはひとつ取調べへの弁護人の立会いということも、弁護人の役割が重要ならば考えていただきたいと思う次第です。
#51
○矢倉克夫君 まさに私も、弁護人がやはり更に重要、その部分も運用も含めてしっかりと考えていくというところはまさにおっしゃるとおりであると思います。
 また小木曽参考人にちょっと、あとは裁量保釈ですね。これまで罪証、証拠隠滅とか逃亡のおそれがないとき、それに今回加えて、裁量保釈として被告人の防御の利益の関係からの部分等もあったわけですけれども、今、弁護人の活動という意味で、この趣旨についても一言だけ御教示いただければというふうに思います。
#52
○参考人(小木曽綾君) 捜査段階の身柄拘束というのは、まず理由があって、そして逃亡、罪証隠滅のおそれがあるということが要件とされているわけであります。ですから、それがまず必要であるということは絶対要求されることだろうと思うわけで、その身柄拘束が長引くということの理由に被疑者が自白しないからということがあるとすれば、専らその取調べを目的に身柄拘束が長引くというようなことがあるとすれば、これは法の定めに違反しているということになるだろうと思います。
#53
○矢倉克夫君 ありがとうございます。
#54
○仁比聡平君 日本共産党の仁比聡平でございます。
 三人の参考人の皆さん、本当にありがとうございます。
 まず、原田参考人にお尋ねをしたいと思うんです。
 一つは、先ほど任意同行下のたたき割りについて、とてもじゃないが録音、録画できないというお話がありましたが、どうして録音、録画できないのか、どんな状況なのか。
#55
○参考人(原田宏二君) ちょっと言葉が非常に良くなかったのかもしれませんけれども、要するに、どうしてもそこで自白をさせて逮捕状を取ろうとするわけですね、任同は、当然そこで。しかも、一日いっぱいやるわけにいきませんから、私も基本的には、もうせいぜい任同して取り調べる、例えば朝九時ぐらいに任同を掛けてきて落とすまでの時間というのは、やっぱり数時間ぐらいが限度だと思うんですよ。
 例えば、北海道でこういう例がありました。朝九時頃任同をしてきて、それで落とせなくて、夜中の二時半に逮捕したという事件、本当につい最近、数年前の事件ですよ。結局この事件、殺人の容疑です、女性を逮捕した。ところが、二十日、二勾留検事がやって、処分保留で釈放しちゃったんですよ。そして、最終的には嫌疑不十分で起訴できなかったという事件です。その逮捕したときに当然記者発表をやっていますよね、捜査本部で。そうすると、朝やったんです。例えばこの事件なんかは典型的だと僕は思ったんだけれども、要するにもう完全に任意の範囲を超えていると私は思ったんですよ。
 ですから、朝九時に任同してきたら、大体それを調べる時間というのは三時間ぐらい、そしてもうそれを落としてすぐ裏付け取って、そして令状請求の資料を集めて、それをまとめて書類を作って裁判官のところに請求書を持っていって審査してもらって発付して、それから執行すると、こういう手続要りますからね。自白させた後、数時間は掛かるんですよ、最低。ですから、そういう時間計算をやっていくと、やっぱりそれはもう本当に時間はないんです、本当は、まともにやろうとすると。だから、当然そこで無理なことを生じるわけですよ。
 だから、例えばどんどんどんどん机をたたいてみたり、よくあるんですけれども、書類をばんと相手方に、直接やると暴行だとか何かになるからあれだとか、それから姿勢を、何というんですか、ちょっと下を向くと顔を上げろというようなことを言って、拷問じゃないけど、相手方に一定の姿勢を取らせるとか、そういうようなことがもう当たり前のようにしてやられているんです。
 だから、さっき僕が言った、要するに禁止行為って僕言いましたよね、調べ官に今あるよということを。あれなんですよ。そういうことをやっちゃいかぬよということであの規則ができたんですよ。
 だから、要するにそういう状態がやられているところを録音できますかということを申し上げたかったんです。
#56
○仁比聡平君 ありがとうございます。是非、今の原田参考人の御発言というのは、会議録だけではなくてこの映像で御覧いただきたいなと改めて思うんですが。
 もう一点、原田参考人、先ほど平成の刀狩り、首なし拳銃のお話をされました。私、かつて原田参考人の部下であったんだと思うんですが、稲葉圭昭元警部が書かれている「恥さらし」という本を少し読ませていただきました。ここの中で、ちょっと絞って伺いたいんですが、捜査の協力者をつくって独自に情報を取る、これができなければ刑事としてはやっていけないという先輩の教えで、情報提供者、スパイの頭文字Sを取ってエスと呼ぶ、このエスをたくさんつくることが捜査の基本だと、それを信条としてきた。一方で、警察の仕事にはノルマが付いて回ると。このノルマに届かないと超過勤務手当が付かないといった罰則が、原田参考人の下ではこれはやめさせてきたというお話もありますが、けれども、実際には北海道警始め全国の警察署に、警察に、組織にこれはずっと蔓延しているということ。そうした下で平成の刀狩りが起こるわけですけれども、首なし拳銃の例として、稲葉元警部はこんなふうに書いています。
 やくざから私は拳銃を受け取って北見駅に戻り、指紋をきれいに拭き取ってタオルにくるんでから駅のコインロッカーに入れると、その場ですぐに北見署に電話をしました。私は暴力団員です。組を離脱するに当たり、拳銃を一丁、北見駅のロッカーに入れました。北見署から刑事や鑑識が飛んできて、ロッカーから拳銃を押収しました。その姿をいたたまれない気持ちで自分は見ていたと、そうしたくだりがあります。
 そうした警察活動の中で、虚偽の調書や捜査報告書を作成してきたということも告白をしておられるわけですけれども、つまり真実とは違う捜査を行うわけですね。当然、令状請求に必要な捜査報告書や録取書を実際の供述とは違うものを虚偽で書いて、それによって令状を取ってガサやあるいは捜査を進めてきたと。しかも、そうした令状の疎明資料というのはこれは公判に出ることはないので、無法が発覚することはなかったと。
 これが警察捜査の現実だということでしょうか。
#57
○参考人(原田宏二君) 稲葉は、彼を稲葉君と君付けで呼んだことはないので、ここでも稲葉と言わせてもらいますけれども、かつての部下です。私が機動捜査隊の隊長をやっているときに彼がおりました。その後も、警察署長をやったときも、彼、暴力団担当の係長でおりました。そういうことで、その本書くときも私がいろいろ関与しているんですけれども、彼は、刑務所にいるときもずっと私は文通を続けておりましたので、その当時からそこに書いてあるようなことを私に知らせてきておりました。そういうことで、彼の言っていることは多分本当だというふうに思います。
 先ほどノルマの話が出ましたけれども、おっしゃるとおりで、いろんな部分にそれがあります。交通の取締りから、職務質問の数から、盗犯の検挙件数から、それから、はたまた警察官の募集にまでノルマありましたからね。だから、もうあらゆる部門でそういうことがあって、警察は絶対内部ではノルマとは言いません、努力目標と言っています。
 そういう数字があるんですけど、私はある程度組織管理やるときに数字があっても、目標があっても、それはいいと思うんですよ。でも、問題は、その数字が合理的に根拠のあるものかということなんですよ。前年対比から何%増やすから前年対比プラス何%、それで、その署の規模に割り振りして数字を下ろす、そういうことですからね、警察の努力目標というのは。そうすると常に右肩上がりでいくじゃないですか、際限なく。そうすると現場は無理するわけですよ。だから、今言った稲葉の事件みたいのが、そういう業務管理の非常にお粗末な、何というのかな、形でやられている。そういう幹部が多過ぎる。
 だから、私なんかいたときに、そんなことはやめろよということで、まともな数字でやるぞとやりますね、署長になっていって。どういう結果が出ると思いますか。全道のあった警察署で実績がいつも最下位ですよ。それでもいいんだと。そうしないと現場の刑事の力が付かないんですよ。そんな数字でごまかしたような仕事でオーケーと言う署長がいたら、私はこれはもう大変な問題だと思っています。変な捜査員育てるばっかりじゃないですか、それでは。だから、いいから、数字はいいからと。刑事が働いているかどうかは数字なんて見なくたって分かりますよ、署長やっていると。何で分かると思いますか。毎日留置場を見ていれば分かるんですよ、ホテルのお客さん何人ぐらいいるかと。何もその作られた数字なんて見る必要ないんです。
 ですから、要するに数字管理というのはまずいと思いますよ。稲葉の言っているとおりで、おっしゃるとおりで、そういうことが続いているとだんだんだんだん警察もおかしくなるということだと思います。
#58
○仁比聡平君 もう一つ伺いたいんですよ。
 その首なし拳銃などの中で、おとり捜査が行われて、ロシア人の男性に対する有罪判決の再審開始決定が三月の三日、札幌地裁が決めたわけですけれども、この決定は、検察側証人がおとり捜査の存在自体を隠蔽するため公判で偽証をしたり内容虚偽の捜査書類を作成したことが明らかとなって、確定判決が有罪認定に用いた各種証拠の証拠能力に関する判断は文字どおり根本から覆ったというふうに言っているんですが、ところが、検察はこの再審開始決定に対して即時抗告しているわけですね。争っているわけです。
 何の反省もないと私は思うんですが、参考人はいかがですか。
#59
○参考人(原田宏二君) この事件も稲葉から詳しく私聞いていました。
 おっしゃるように、当時これ、事件、さすがに道警も困ってしまって、偽証で捜査員何人かを送致しているんですね。稲葉も送致されているんですけれども、結局起訴になっていないんですよ。もう事件はその偽証の部分もうやむやになったんですね。ですから、あれはまさに警察の捜査の、組織的に、上の方も知っているわけですよ、そういうことだと。
 稲葉から言わせると、あの事件は、着手するときにスパイの、外国人なんですけど、スパイ、協力者だった男が逮捕したロシア人船員の間に入って警察とやり取りしているわけです、その協力者が。そうすると、最初の段階で、当然このロシア人を逮捕するときに、そこにいた中古自動車の販売業者である外国人、これがスパイなんですけど、これがいたんですよ、すぐそばに。一緒にそこでやり取りしていたわけです。それをいないことにするという捜査方針を立てたんですよ、上の方で。稲葉は困っちゃったわけですね、どうするんだと。これは、逮捕したらそれは分かるだろうと、当然、スパイがそこにいたと。でも、決定して、それで捜査した。案の定裁判で、逮捕されたロシア人が、いやいや、そのときにこういう人がいたんだということを言い出したわけですけど、それを、いやいや、そんな者はいなかったと。もちろん、おっしゃったように記録は全部偽造ですよ。虚偽内容の報告書を作られているわけです、捜査協力者を消すために。それで、裁判始まったら当然証人に呼ばれますよね。それでみんなでいませんでしたと偽証して、それで有罪判決になっちゃったわけですね。
 だから、何というんでしょうかね、その辺の、誰が考えても、後、公判のことを考えたらそういうことできないだろうと。じゃ、どうするんだということを考えないといけないんですけれども、それはどうしても、どうしてもその名前を出せなかった、そういう捜査をしないといけないんですよね、と思いますよ。
#60
○仁比聡平君 私たちが国会議員として受け止めなきゃいけないのは、これは今現在進行形の警察や検察の実態だということなんですよ。
 そこで、豊崎参考人に。一昨日の夜にお願いして九州から無理を押して出てきていただいて、本当にありがとうございます。今お聞きいただいた原田参考人の語る警察の現実について、参考人のお考えを伺いたいと思います。
#61
○参考人(豊崎七絵君) 原田参考人のお話を伺って、私もう本当にますますもって、先ほど申し上げた、捜査機関に権限を与えてそれで何か可視化をするというような、中途半端な可視化をするというような、やはりそういう問題ではなくて、そこにメスを入れるにはどうしたらいいのかということをやはり真っ向勝負で考えなければいけないのではないかと思いました。
#62
○仁比聡平君 そうした中で、与党からは、このゴールデンウイーク明けにもこの法案の審議を打ち切って採決をすべきではないかといった発言が出ているんですが、先ほど意見陳述の中で、良心に懸けて、研究者としての良心に懸けてという御発言もありましたけれども、参議院の法務委員会、私ども国会議員に対する要求というものが豊崎参考人からありましたら伺いたいと思います。
#63
○参考人(豊崎七絵君) 私は、先ほども申し上げましたとおり、取調べ中心主義を改革するというのであれば、やはり基本的な立法事実というものを調査していただきたいと思います。今、原田参考人のお話もありましたけれども、私は研究者の立場として、これは私のオリジナルの考え方ではなくて一定の、今日、小木曽参考人という別の立場の研究者の方もいらっしゃいますが、しかし、私のような考え方は、一定の層の研究者として、まさに日本の刑事手続の現状あるいは歴史的な事実として認識してきたものであります。ですから、是非具体的な、先ほど何かパッケージなんというお話もありましたけれども、たくさんいろんなものを与えればそれだけ取調べの比重が減るというのは、私は、非常に端的に申し上げて、空論だというふうに思います。
 ですから、その辺りを必ずメスを入れていただいて、冤罪被害者の方々のお話もありましたけれども、是非冤罪の被害者の方々にも応え得るような、そして歴史の評価にも堪え得るような議論をしていただきたいというふうに痛切に思います。
#64
○仁比聡平君 小木曽参考人にお尋ねしたい点が今ちょうど豊崎参考人が指摘をされた部分なんですけれども、冒頭、裁判官や裁判員に録音、録画が実質証拠と受け取られることはあり得ると、そういう意味では部分録画の危険性という見方は増えている、強まっているという御趣旨の認識に立った上で、そうした自己負罪証拠以外の収集が必要と、そこにパッケージの意味があるというふうにおっしゃったんですが、この改定案で物的証拠が収集されるという保証がどこにあるのか。逆に、物的証拠が乏しい事件において一層危険な供述が司法取引や通信傍受によって獲得されることになるのではないか。
 このパッケージの意味について伺いたいと思います。
#65
○参考人(小木曽綾君) 警察の現実をどのように評価するのかというのは評価の問題ですので申し上げませんけれども、供述に依存しないというのは、およそあらゆる証拠として、捜査情報として供述を利用しないということではなかったはずだと思います。被疑者に捜査機関に迎合した供述をさせることの危険性が指摘されて今回の法案になっているのだろうと思います。
 例えば通信傍受ですけれども、今この瞬間にもというお話でしたけれども、例えばこの瞬間にも振り込め詐欺の被害に遭っている方々はいらっしゃるわけで、それは通信傍受の今対象にはなっていない、こういう部分にどうやって対処するのかということを考えなければいけないのだろうと思います。
 ですから、法案としては、個別事情、極端な事例にも対処できるようなことも視野に入れつつ、しかし全体としてどうであるのかということを考えて法案というのはできないといけないのではないかというふうに考えます。
#66
○委員長(魚住裕一郎君) 時間ですが。
#67
○仁比聡平君 捜査上の必要性を強調されただけで、なぜ物的証拠を集めること、収集することができるようになるとおっしゃるのかという私の問いに対してはお答えになれなかったと私は受け止めます。
 終わります。
#68
○谷亮子君 谷亮子です。引き続きよろしくお願いいたします。
 本日は、三名の参考人の皆様に大変貴重な御意見を拝聴させていただきました。
 まず初めに、お三方にお伺いしたいというふうに思います。
 先ほど原田参考人の方からお話がございましたけれども、部分可視化では意味がないということで、私もそうした意見には同じ思いをしているところがあるんですけれども、部分可視化では意味がないというお話から、さらには、まず初めの任意で取調べを行う場合、そうした場合からの録音・録画制度につきましてもお話を全体的にしてくださったんですけれども、その中で、任意で取調べの場合は録音、録画できるのか、するのかということは、これできないでしょうと。やらない、できないということになるわけですが、そこで警察官が、先ほどの原田参考人のお言葉をお借りさせていただきますとたたき割りをして、それで厳しくやるということで、そしてそれを認めたならば逮捕状を取って、さあ今から取調べを本格的にやりますよとなりまして、そこからの今回の録音・録画制度になっていくということでございまして、これを認めたら非常に適正化に欠けるのではないかという大変貴重なお話をいただいたというふうに思っています。
 そして、もちろん任意での取調べの場合からの話も続いてくると思うんですけれども、私が今回の改正法案で問題意識として思っていることがございまして取り上げさせていただきたいと思うんですが、今回の改正法案にあります取調べの録音、録画につきましては、現状では被疑者が取調べ室に入るときから録音、録画されているという状況になるわけでございますが、この状況で、取調べ官、実際に取調べをする側はその運用状況を、取調べ室に入るときから録音、録画されているということは把握されて取調べを行われるんですけれども、実際にその取調べを受ける被疑者の方は、録音、録画がこれからされますよということを取調べ室に入る前から知っているのか、周知されているのかということにつきまして先日の対政府質疑で尋ねたんですけれども、それは知らないと、被疑者には伝えられていないという現状でございました。
 そのときの政府答弁は、今回の改正法案には被疑者に対し取調べの録音、録画を行うことに際してその告知を義務付ける規定は設けられていないが、その理由については、被疑者取調べの録音、録画が被疑者の重要な権利利益の制約を伴うものではないことから被疑者の同意を得なければ実施できないものではなく、したがって、録音、録画に際して被疑者に録音、録画を行う旨を告知する必要まではないと考えられたことによるものであるという御答弁をいただいたんです。
 しかし、私は、やはり被疑者に対して今から録音、録画をやりますよと、取調べの中でやっていきますよということを伝えることによって、新たな冤罪ですとか、さらには虚偽の自白、そしてさらにはうその自白等々が減っていくことにつながるのではないかと。また、一方で、実際にその被疑者が犯罪を犯していたとしても、やはりそうした録音、録画がなされているということを認識していることによって本当のことを言っていくということにつながっていくのではないかと。両方の面から非常に、やはり被疑者に対して録音、録画を行うということを周知する、告知を徹底すべきだというふうに私の問題意識の中では思っているんですけれども、そのことによって犯罪の解決につながっていく、捜査で本当のことが解明されていくというふうにつながっていくと思うんですけれども、その点について、今回、録音、録画が被疑者に対して周知徹底されていないという件についてどのようにお考えになるか、それぞれお三方に御意見を伺いたいと思います。
#69
○参考人(小木曽綾君) 恐らくこれ、録音、録画をされる権利ではないというので周知する必要はないというようなことなのかもしれませんけれども、運用上はやはりこれは周知、周知というか、告知した方がいいと私は思います。
#70
○参考人(原田宏二君) 私もそのように思います。
 もう一点ちょっと追加させてお答えさせていただくと、今前提として、録音、録画が付いている、装置の、取調べ室で取調べが行われているという前提でお話しになっているんじゃないか。しかし、それはそうとは限りませんよと。つまり、取調べというのは取調べ室以外で幾らでもやりますからね。例えば少年補導室。例えば、布川事件の冤罪だった桜井さん、最初の調べというのは留置場の中ですからね、あれ。というように、取調べ官が取調べをする場所が取調べ室であるという前提で考えていると間違えますよということだけちょっと付け加えさせていただきます。
#71
○参考人(豊崎七絵君) 私も今、原田参考人と全く同様といいますか、御質問の限りでいえば、それは告知を徹底したにほかはないと思いますけれども、やはり取調べというものが全体としてどうなっているのかというところにまず御関心を向けていただきたいと思います。
#72
○谷亮子君 ありがとうございました。貴重な御意見をいただいたというふうに思っております。今後、これからも対政府質疑がありますので、そこで反映させていただきたいというふうに思っております。
 続きまして、原田参考人に伺わせていただきたいと思います。
 捜査機関の施設である警察署内で特定計算機を用いる通信傍受の実施に際しましては、立会人をなくし、捜査に従事していない警察官等による適正な捜査の指導体制を導入することについてお伺いしたいというふうに思います。
 特定電子計算機を用いて捜査機関の施設である警察署内で通信傍受を行う場合には、当該事件の捜査に従事していない警察官又は警察職員のうち、各都道府県においては適正捜査の指導を行う部署の警察官が、傍受又は再生の実施状況について、適正性を確保するため、現場において必要な指導をする体制を整える運用を行うなどの答弁が衆議院における質疑の中で警察側から行われたということでございます。
 そこで、お伺いさせていただきたいことは、先ほど原田参考人が意見陳述されていましたけれども、一番最後の方にお話しされていて時間となりましたので、途中までお話しいただいていたと思うんですけれども、ただいまお話しさせていただきました運用では、これまで第三者が立会いで果たしてきた外形的なチェック、これが行われていたんですけれども、今後は身内の警察官が監督になるということで、これまでの運用体制よりも非常に心配だと言われている声があるんですね。その点については、先ほどの続きだと思うんですけれども、御所見を伺いたいと思います。
#73
○参考人(原田宏二君) 私は、現職時代に通信傍受というシステムというかそういうものがなかったので、今おっしゃったように、いろいろパソコンや何か使ってというその辺の何かイメージがぱっと浮かばないんですよ。
 それで、立会人の関係だけ言いますと、このことだけじゃないんです。つまり、警察の仕事を内部でチェックするということは基本的に難しいですよということなんですよ、警察組織の特質から。警察は、これまでもいろんな場面で、本来であれば外部の目を入れなければならない部分に絶対に外部の目は入れないと、こういう姿勢で一貫していますよ。
 例えば、取調べの問題でさっき代用監獄のお話がちょっとあったと思うんですけれども、あのときもいろいろな問題があって、留置場、今、留置施設と言う、留置場の業務と捜査の業務を一緒であること、警察署に代用監獄みたいなものを置くことがおかしいという議論であったんですけれども、その後、法が改正になって留置場という名前を使わなくなりましたね、平成たしか十九年の法律改正だと思うんですよ。あのときに、私はてっきり逮捕した身柄を拘置所にやるという原則に戻すのかと思ったら、そうならなかった。やっぱり今と同じような警察の留置施設に代用刑事施設として使われる、全く代用監獄残ったわけですね。
 その議論のときに、結局、その議論の前からあったんですけれども、そんなに心配なら、警察が長期間にわたって身柄を拘束するの心配なら、警察の内部で留置業務と捜査業務を分けますからと、そういう議論で収めたんですよ、実は。だけれども、皆さん、よく考えてくださいよ。警察署にある留置場の責任者は警察署長ですよ。それで、捜査の責任者も警察署長ですよ。同じ人間がやっているんですよ。そんなもの分離できっこないじゃないですか。それをあたかもできるようなことで通してきた、例えばの例を言いますと。
 だから、今回の、内部でやれば公正を担保できますよというのは、私は無理でしょうと思いますよ。無理です、内部的に。だって、こういう方針で捜査するというのを、関係のない警察官が本当に、いえ、それは署長、おかしいじゃないですかと言えないでしょう。言えませんよ。言ったら、人事面であれですよ、処遇されますよ、きちっと。警察というのはそういう組織ですから。組織の方針に反することはやれないんですから。
#74
○谷亮子君 ありがとうございました。捜査の経緯についても、これまでのその内部体制等々につきましても大変詳しくお話をいただきましてありがとうございました。
 続きまして、小木曽参考人、原田参考人、豊崎参考人に、お三方に最後にお伺いさせていただきたいと思います。通信傍受の対象犯罪の拡大につきましてお伺いさせていただきたいというふうに思っております。
 今回の改正法案で対象犯罪に追加されようとしている窃盗、詐欺、恐喝等につきましては、当初国会に提出された通信傍受法案においては対象犯罪となっていなかった犯罪類型であると承知いたしておりますが、組織的な窃盗事件が依然として後を絶たない状況にございまして、これが強盗あるいは強盗致死傷罪に容易に発展し得るものであるということや、振り込め詐欺などのように、不特定の人に対して直接対面することなく電話やそしてメールなどを通じて金銭等をだまし取る詐欺である特殊詐欺による被害額が三年連続で四百億円を上回っている、非常に多額になっているという現状を踏まえた上で、今回新たに通信傍受の対象犯罪にしようということになっております。
 そこで、今回の改正法案で新たに窃盗、詐欺、恐喝等の犯罪を通信傍受の対象とすることによって、これは多くの国民の皆様がその通信傍受の対象になるということで国民のプライバシーが侵害されるのではないかという心配の声が多く聞かれるわけでございますけれども、国民の皆様はやはりその点もすごい心配していらっしゃると思うんですけれども、こうした心配される声があるということにつきましてはどのようにお考えでいらっしゃるのか、それぞれお伺いさせていただきたいと思います。
#75
○参考人(小木曽綾君) 現行の通信傍受法の要件は極めて厳格に定められておりまして、対象が広がるということでこの要件が変わるわけではありませんから、その点の懸念はないのではないかというふうに思います。広がる可能性はないと思います。
#76
○参考人(原田宏二君) 私もそうだと思うんですけど、先ほど委員から国民の個人情報の観点から問題じゃないかというお話があって、全く私もそのとおりだと思って、ついでにちょっと付け加えさせていただくと、言わば私は勝手にグレーゾーン捜査と言っているんですが、例えばNシステムとか監視カメラの捜査への利用とか、あるいはDNAのデータベースの構築とか、それから最近問題になっているGPSを使って尾行するというような捜査がもう頻繁に行われていますよね。これは、皆さん、本当によく考えてみてください、法的な根拠はないんですよ、何もこれ。
 要するに、私から言わせると、警察の捜査というのは、冒頭に申し上げましたように法律に従って法手続をきちっとやるということですから、それを全然法の根拠のない捜査手法が公然として行われている。それと同じことで、この通信傍受の問題も含めると、非常にそういう意味では事実上の権限を警察はどんどんどんどん広げようとしていますよ。だから、これはどこかで歯止めを掛けないといけません。それを是非皆さん方にも、確かに刑訴法の改正ももちろん重要な問題ですよ、でも、実際にもう現にどんどんどんどんそういうことが警察の現場で行われている事実、それをきちっとチェックしていただきたいと思います。
 ちょっと余計なことを申し上げましたけれども、よろしくお願いします。
#77
○参考人(豊崎七絵君) 私は、元々盗聴は憲法三十五条に反するものであり、しかし、現行の通信傍受法はそういった批判も受けて辛うじて成立してきたものであるというふうに思います。
 ですから、まして対象犯罪の拡大ということは論外と言わざるを得ないですし、更に付け加えれば、いわゆる結合体要件というものもありますけれども、あれでは、何らかの緩やかな人的つながりさえあれば要件が認められるような、そういう十分な歯止めになるかは甚だ疑わしいのではないかと考えております。
#78
○谷亮子君 ありがとうございました。
 やはり適正性の問題というのは非常に深いということで理解させていただきました。大変貴重な御意見をありがとうございました。
 終わらせていただきます。
#79
○委員長(魚住裕一郎君) 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。
 参考人の方々に一言御挨拶申し上げます。
 本日は、長時間にわたり御出席を賜り、貴重な御意見をお述べいただきまして、誠にありがとうございました。委員会を代表して厚く御礼申し上げます。ありがとうございました。(拍手)
 午後一時十五分に再開することとし、休憩いたします。
   午後零時十一分休憩
     ─────・─────
   午後一時十五分開会
#80
○委員長(魚住裕一郎君) ただいまから法務委員会を再開いたします。
 政府参考人の出席要求に関する件についてお諮りいたします。
 刑事訴訟法等の一部を改正する法律案の審査のため、本日の委員会に、理事会協議のとおり、法務省刑事局長林眞琴君外一名を政府参考人として出席を求め、その説明を聴取することに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#81
○委員長(魚住裕一郎君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
    ─────────────
#82
○委員長(魚住裕一郎君) 休憩前に引き続き、刑事訴訟法等の一部を改正する法律案を議題とし、質疑を行います。
 質疑のある方は順次御発言願います。
#83
○小川敏夫君 民進党・新緑風会の小川敏夫です。
 また引き続き通信傍受の濫用防止のことについて中心にお尋ねしたいと思いますが、今日は新しい方式の点について中心にお話しさせていただきます。
 まず、一時的保存方式ですけれども、これは、今までは捜査官がずっと通信傍受してずっと聞いていて、通話があったらそのときに傍受をするという構造ですから、漏れなく傍受するためには、それこそ二十四時間、長い間ずっと聞いていなくちゃいけなかったわけで、今度のこの一時的保存方式になると別に捜査官はずっと聞いている必要はないんで、通信事業者に命じて、この通信の通話があったら全部それを一時的に保存しておけ、まとめておけと、こういうことであります。
 捜査官は、朝定時に出勤して、まあ定時とは決まっていませんけど、適当な時間に行って、どれだけたまったとか、どれだけたまったのか、ああ、これだけあるなと、それを順次、順番に聞いていくと。その聞くときに、あらかじめ、これまでと同じようにスポット傍受をしなさい、犯罪関連通信については傍受記録を作成しなさいと、こんな仕組みだと思うんですよね。
 そうすると、これからはもう今までの現行方式じゃなくてこの一時的保存方式、ほとんどの捜査官はこの方式に、要領になってしまうと思うんですよね。何しろ、もう通話があるかないかにかかわらずずっと聞いていなくちゃいけないし、そうすれば、食事だの、いわゆるトイレだの、あるいは健康管理上交代する人もたくさん要っていたでしょうし、傍受そのものが大変だったと。しかし、今度は、何しろためておいていただければいいんだから、あった通話だけ聞けばいいんだから大変簡単になっちゃう。ですから、ほとんどこちらの方に移行すると思うんですね。
 まず一番基本的なところからちょっとお尋ねします。これは憲法上の問題なんですけれども、今まで傍受というものは、ある意味では、通信事業者は回線を取り出しただけで、傍受というものは全部捜査官が行ったわけであります。今度は、通信事業者は、回線を取り出すだけじゃなくて傍受をするために通話を全部保存しておくという新たな作業をすることになるわけでありますが、そもそも、通信の秘密をしっかりと守るべき、厳守するべき通信事業者が、そして通信傍受のためにそうした通信事業者そのものが通話を言わば全部保存しておくということは、これはどうなんでしょう、憲法上、通信の秘密を害するというような問題は生じないんでしょうか。いかがでしょうか。
#84
○国務大臣(岩城光英君) お答えをさせていただきます。
 通信を暗号化して一時的に保存しておき事後的にその内容を聴取する方法による通信傍受を行う場合、一時的保存をされる通信は通信事業者等により暗号化されております。捜査機関は、裁判所の職員が作成した復号のための鍵を用いて復号しない限りその内容を知ることは物理的に不可能であります上、復号をした通信は現行通信傍受法の下での傍受と同一の内容、範囲でしか再生をすることができず、再生されない通信は捜査機関がその内容を知ることがなく全て消去されることとなります。
 このように通信を一時的に保存する方法による通信傍受を行う場合でも、捜査機関がその内容を知り得る通信の範囲は現行通信傍受法の規定によります傍受の場合と異なるところはなく、通信の秘密に対する制約の程度に実質的な差異は生じないものであります。したがいまして、全ての通信を一時的に保存しておき事後的にその内容を聴取などすることも、現行通信傍受法の規定による傍受と同様に許容されるものと考えております。
#85
○小川敏夫君 ちょっと通信傍受のこの新しい方式、一般的な憲法論について今御説明いただきましたけど、私が聞いたのは、通信事業者が、捜査のためとはいえ、そういうふうに特定の回線の通話を自ら集積して一時保存するという行為自体が問題にならないのかというふうにお尋ねしたわけであります。
 じゃ、聞き方を変えますけど、通信事業者はそうした作業をしなければならないんですか、警察から言われたら。
#86
○国務大臣(岩城光英君) 通信事業者は、法律的には義務を負うことになります。
#87
○小川敏夫君 それは、この通信傍受法で見ますと、司法警察員は事業者に命ずると書いてありますね。それが根拠規定でありますか。
 これまでの通信傍受法では、捜査官は通信事業者に協力を求めることができる、回線のそれをより分けて傍受できるような状態に置くということなんでしょうけれども、これまでの法律の規定ですと、捜査官は協力を求めることができると。一方、通信事業者は正当な理由がなくこれを拒否してはならない、つまり、正当な拒否理由があればいいけれども、そうじゃない場合にはその要請に応じなければならないと、こういう構造だったと思うんですけれども、今度のこの一時保管の場合には要請ではなくて命ずるとなっているんですよね。そうすると、捜査官が通信事業者に対して命じたら、もうこれは通信事業者の方は拒否はできないと、こういうふうになるんでしょうか。
 これまで、ほかのところでも、捜査官が要請した場合に通信事業者は正当な拒否理由がなければ応じるという、そういう法律の記載の仕方だったんだけれども、今度のこの一時保存では、捜査官は通信事業者に命ずるとなっているわけです。この違いはどういうところからきているのか、御説明いただけますか。参考人でも結構ですけれども。
#88
○政府参考人(林眞琴君) 御指摘のとおり、今回の法案のこの一時的保存につきましては通信事業者に命ずるという形になっておりますので、通信事業者はそれに応じる義務がございます。
 その上で、今回、通信事業者に命じて一時保存ということにしておりますのは、通信事業者は通信の秘密等を守る立場にございますので、そして、また電気通信設備を設置してその事業を営んでいるということで非常に公共的性格が強いものでございます。そういったもので一時的保存を行う場合に、通信事業者において、令状の執行のうちの一部でありますところの通信の一時的保存という傍受の行為をしてもらう、通信事業者にその役割を担わせるということは、反面、捜査機関がそれをできないということを意味しておりまして、捜査機関が勝手に通信事業者の施設で、傍受令状があったとしても、この一時的保存というものをすることはできないという法律の構造となっております。
 そういったことで、その役割を担っていただくのに、通信事業者に必ずその一時的保存というものをしてもらわなくてはいけませんので、そこに今回、義務付けという形を取っておるわけでございます。
#89
○小川敏夫君 通信事業者の協力がなければできないという意味では今でも同じですよね。警察が行って回線を探し出して、その回線に傍受装置を結び付けるなんというのは、通信事業者の協力なしにはできないと思うんですよ。
 ですから、今でも同じなのに、何でこれまでは協力要請、それから正当な理由がある場合には拒否できる、正当な拒否理由がなければ応じなければならないという立て付けだったのが、今度は命ずるという、もう拒否もできないような強い規定になったのか、ちょっとそこのところを今私は聞いているわけですけれども。
#90
○政府参考人(林眞琴君) 現行法でも、通常、通信事業者の施設におきまして傍受を行う場合に、確かに通信事業者に様々な協力をいただきながら傍受を行うわけでございますが、捜査機関が直接傍受のための接続等を行うことは法律上許容されているわけでございます。ただ、実際上、様々な接続等につきましては、当然、通信事業者と折衝いたしまして、協力をしていただくということで行われておりますけれども、法律上は、捜査機関が直接接続するなどして傍受をすることはこれは許容されているわけでございます。
 今回の一時的保存の場合につきましては、捜査機関がいないところの通信事業者の施設で一時的保存を行うわけでございますので、ここについては、捜査機関が自分たちで直接できるという形にするよりも、通信事業者がその接続等のことを行いまして、それによって一時的保存という形での傍受を行う、こういったことをすることによって、捜査機関がそこをできないということについては通信事業者が行うことによってより適正を担保できる、このように考えているのでこのような法律の規定としたものでございます。
#91
○小川敏夫君 細かいところで余り時間を掛けてもしようがないんですけれども、今までの方式なら警察は通信事業者の協力なくても傍受ができると。であれば、この一時保存だって、傍受ができるんだったら傍受したものの一時保存だって警察はできますよね、自らね。だから、通信事業者の協力なくしてできるという意味では全く同じなので。ただ、今回は命じるという大変強い規定になっているので、そうすると通信事業者の方はどんな理由があってももう拒否できないと、こういうことになるわけですね。
#92
○政府参考人(林眞琴君) 通信事業者はこの義務があるわけでございますが、当然これについて、仮に例えば当該その日におけるそういった一時保存というのはできないというような場合に、その義務に対して強制的にそれを行わせることは今回の法律の中でもできません。
 そういった意味におきまして、通信事業者に命ずる場合でありましても、当然その通信事業者との間で捜査機関として折衝を行って、その協力をいただくという形で執行がなされていくものと考えております。
#93
○小川敏夫君 今の御説明ですと、じゃ、命ずるじゃなくて要請と、正当な理由がなければ拒否できないという、これまでの仕組みでも十分対応できるんだと思いますけれども、ここは問題点の指摘にとどめて、もう少し議論したい方に移らさせていただきますけれどもね。
 特定電子計算機を用いる方式が新たに導入されます。全ての人が、この電子計算機でもう不正、改ざんができないような、そうした仕組みになっている電子計算機なんだから不正なんか入りようがないということをおっしゃられるんですよね。ただ、よくこれ見ますと、この特定電子計算機を用いてできることは何かといったら、本来の通信を勝手に改ざんすること、改変すること、これができないということがこの計算機の一番の目的だと思うんですね。でも、逆に言えばそれだけにとどまるので、改変とかいうこととは別の形で捜査官が何らかの不正に走ってしまうとか濫用するとかいうことに関しては、これはそうしたコンピューターの改変防止機能ですか、これとは全く無関係の問題だと思うんですよね。
 そうした観点から、例えば、じゃ、こういう例はということでお尋ねさせていただきます。
 通信事業者から特定電子計算機に情報が送られてきた、暗号化されている情報が来た、それを裁判所からいただいた復号のキーを使って復号すると。これ、復号するという言葉を使っていますけれども、要するにこれは音声にしてそれを聞くということですよね、実際の作業は。そこで何をやるかというと、そこで初めて捜査官は通話の内容を聞くわけだけれども、全部聞いちゃいけないと。ですから、そこで犯罪通信があれば傍受してもいいよと、それから、犯罪通信かどうか分からなければスポット傍受をして、それで、スポット傍受をしても犯罪通信がなければやめなさいということはこれまでの通信傍受と同じこと。ただ、今までは通信事業者の現場でまさに通話がされているそのときにそういう作業を行っていたものを、今度はリアルタイム方式、特定電子計算機を用いるリアルタイム方式の場合には、通信事業者の場所じゃなくて警察施設でその通信事業者から特定電子計算機に送られてきた情報を聞きながらそういう傍受をしなさい、傍受の仕組みは変わらないと、こういうことですよね。
 そうしますと、今までは、立会人がどれだけ、立会人がいるかどうかの効果は薄かったと思うんですけれども、立会人がいた。今回は、この特定電子計算機を用いるリアルタイム方式では、ただ単にその場で会話を聞くのか、そうじゃなくて警察施設でただ伝送されてきたその会話を聞くのかという違いだけであって、傍受する作業そのものは全く同じだと。なのに、なぜ、今まで通信事業者の場所でやる今までの方式では立会人がいたのに、今度のこのリアルタイム方式では立会人が不要とされているのか、これはいかがでしょうか。
#94
○国務大臣(岩城光英君) 本法律案により導入いたします特定電子計算機を用いる通信傍受の実施の手続は、現行通信傍受法において手続の適正を担保するために必要とされている通信事業者による立会いや記録媒体の封印に代わり、暗号技術等の進歩に伴い、これを活用した技術的措置により通信傍受の適正な実施を確保することで立会い及び記録媒体の封印を不要として傍受を行うものでございます。
 すなわち、傍受の実施における立会人は、一つに、傍受のための機器に接続する通信手段が傍受令状により許可されたものに間違いがないか、二つ目に、許可された期間が守られているか、三つ目に、傍受をした通信等について全て録音等の記録がなされているかといった外形的な事項についてチェックすることのほか、傍受の中断又は終了の際に、四つ目になりますけれども、裁判官に提出される傍受をした通信を記録した記録媒体について改変を防止するための封印を行うことなどの役割を果たすものとされております。
 そこで、特定電子計算機を用いる通信傍受の実施の手続では、通信事業者が、傍受令状により許可された通信手段を用いた通信を許可された期間に即して特定電子計算機へ伝送することとされております。そのことから、これによりまして、傍受のための機器に接続する通信手段が傍受令状により許可されたものに間違いがないか、許可された期間が守られているかの点の適正は担保されるものと考えております。
 また、現行通信傍受法において、立会人が傍受をした通信等について全て録音等の記録がなされているかをチェックし、傍受の中断又は終了の際に裁判官に提出する記録媒体の封印を行うこととされているのは、傍受が適正に行われたかどうかを事後的に検証できるようにするためでありますが、この点は、特定電子計算機が傍受をした通信の全てと傍受の経過を自動的に、かつ改変ができないように暗号化して記録することによって担保されるものでございます。したがいまして、立会人を置かず記録媒体の封印を行わないことといたしましても手続の適正が確保されるものであります。
 現行通信傍受法の下で立会人が行う外形的事項のチェックの一つとして、捜査官が該当性判断のための傍受の際の機器のスイッチのオン、オフを行っているかどうかを外形的にチェックすることが含まれるとされております。
 もっとも、仮に捜査官が傍受機器のスイッチのオン、オフを行っていないことを立会人が認識し指摘し得ることがあるとしましても、捜査官が適正に該当性を判断して傍受を継続しているのかどうかは最終的には通信の内容を踏まえなければ判断することは困難でありまして、現行通信傍受法上、該当性判断のための傍受の適正は、基本的には傍受した通信が全て傍受の原記録に記録され事後検証が可能となることによって担保されております。
 この点、特定電子計算機を用いる通信傍受の実施の手続におきましては、該当性判断のために傍受をしたものを含め、傍受をした通信が全て改変できない形で自動的に記録媒体に記録され事後的に検証され得る以上、立会人がいる場合と同様に傍受の実施の適正が確保されます。
 したがいまして、立会人を置かないことといたしましても該当性判断のための傍受が適正に行われること、これを確保できるものと考えております。
#95
○小川敏夫君 今日、質問時間を九十分いただいているので多少長く答弁されても余り困らないんですけれども、余り長くしゃべられると議論が煮詰まっていかないんですよね。
 要するに、立会人がいる、その立会人の役割は幾つかあると。回線が適正に行われているか、あるいは原記録に封印するとか、そうしたものがあると。ただ、それは特定電子計算機の機能によってもう完遂されているからその部分についての立会人は不要であると。それから、スポット傍受が適正かどうか、これについても、立会人がしっかり立ち会って見るという役割は同じように今回のこの特定電子計算機を用いる方式でもあるんだと。あるんだけども、しかし、仮に立会人がそうしたことが不十分であっても、そもそもこの傍受の仕組みで、不正な傍受があれば事後的にチェックされることになっているんだからいいんだと、こんなお話でしたですよね。
 ただ、私は、今大臣も言われました立会人の機能の一つとして大事なところは、適正にスポット傍受の際の録音機器のスイッチのオン、オフが行われているかどうか、これを立会人がチェックするということでしたけれども、立会人の一番重要な目的はここにあるんじゃないんですか。
 つまり、まさに濫用に及ぶかどうか、それは、スポット傍受のはずがスポットじゃなくてずっと聞いている、この捜査官、全然、一度掛かってきたらずっとオンにしっ放しで、スポットなんかしていないねというようなことがあれば立会人はすぐ分かるわけで、その立会人がいる一番最も重要な濫用防止の任務と思われるスポット傍受が適正に行われているかどうか、傍受が適正に行われているかどうかを外形上見ているという部分は、今度のこの特定電子計算機を用いた仕組みではなくなってしまっておるわけです。
 ですから、立会人の封印とか通信回線の選別とか、そこら辺のところは特定電子計算機の仕組みでも足りているけれども、やはり立会人は必要だと思うんですけれども。ですから、スポット傍受が適正に行われているかどうかということを外形的にそれを立ち会って見るというこの要請は相当重要だと思うんですが、そのようにはお考えにならなかったんでしょうか。
#96
○国務大臣(岩城光英君) 先ほどもお答えいたしましたけれども、捜査官が傍受機器のスイッチのオン、オフを行っていないことを立会人が認識し指摘し得ることがあるといたしましても、捜査官が適正に該当性を判断して傍受を継続しているのかどうかは最終的には通信の内容を踏まえなければ判断することは困難であります。
 現行通信傍受法上、該当性の判断のための傍受の適正は、基本的には傍受した通信が全て傍受の原記録に記録され事後検証が可能となることによって担保されている、そのように考えております。
#97
○小川敏夫君 そういうお話ですと、現行のリアルタイム方式でも立会人はいなくてもいいんだみたいな話になっちゃいますよね、立会人がいなくたって、濫用が行われれば事後的にチェックされるんだからという、それで十分だというお話ですと。しかも、事後的にチェックできるかというと、これはもうこれまでの二回、大臣と長い時間を掛けてお話しさせていただいたところでありまして、濫用の場合には通知が行かないから分かりようがない、まさに事後的チェックなんかできないという議論をさせていただきました。またやっているうちにそういう議論になるから、またそこは改めて議論するかもしれませんけど。
 この特定電子計算機を用いる方式も、まさに通話が行われている、それをリアルタイムで伝送してそれを聞くと。だから、捜査官がずっとやっぱり待機していて、ただ待機する場所が警察で、これまでの方式は通信事業者の施設だったけど、今度のこの特定電子計算機を用いる場合には警察施設でずっと待機していると。それで伝送されてきた通話をリアルタイムで聞きながら傍受するという仕組みと、もう一つは、一時的保存方式というのがあって、警察施設に通信事業者から会話の通信が全部送られてきて、それが全部保存されていると。だから、捜査官は傍受の時間ずっとそこで通話があるかないかということは必要ないので、またさっきと同じように、出勤時間に来て、どれだけたまっているかなといってその時間に聞けばいい仕組みになるわけですよね。
 ですから、私は、この特定電子計算機を用いるリアルタイム方式というのは基本的には使われない、実際には一時的保存方式、つまり、ずっと待機していて時間を費やして傍受をするんじゃなくて、ある一定時間ずっとたまったものを、後から行ってたまったものだけ聞くという方式を大体取るに決まっていると思うんですよ。だから、この一時的保存方式というものがこれから主に使われるのかなと。本当にリアルタイム方式が必要だとすると、本当に緊急を要する、身の代金誘拐で人質がどこにいるか、もう即刻にもう寸秒を争って傍受しなくちゃいけないとか、そういう特殊事情があれば別ですよ。そうじゃなければ、何しろ、毎朝十時に行って、その前の日の一日分どれだけたまったのかなと、たまった通信だけ聞けばいいんだから、そういうふうになるに私は決まっていると思うんですよ。
 それで、いろんな観点から濫用の防止策が十分かどうか、一つ一つお尋ねしたいと思うんですが、この特定電子計算機のリアルタイム方式、一時的保存方式、どちらでもいいですけれども、一時的保存方式にでもしましょうかね、まあどちらでもいいですけれども、要するに送られてきた情報を復号すると。でも、復号するというのは、すなわち暗号化されたものを元の会話に戻してそれを聞くということですよね。そこで、そこに立会人がいないわけです。
 今のこの特定電子計算機は、一度復号して傍受という作業をすると自動的にこの電子計算機に入っていた信号は消去されてしまう、だからもう二度と聞けないよと、一回勝負になっているわけです。ですから、リアルタイム方式も一回勝負ですから同じ仕組みになっていると思うんですが、ただ、こういうような濫用をする人が出たらどうなんでしょう。
 コンピューターで、電子計算機だからもう不正は入らないよ、改ざん、改変はされないよ、だから大丈夫だと言うけれども、それは改変されないのは事実かもしれないけれども、復号して傍受する作業は音声で出てくるわけです。一回聞いたらコンピューターが自動的に消去しちゃうよ、だからもう大丈夫だよと言うんだけれども、でも立会人がいないんだから、その音声で出てくる情報を全部聞いちゃったらどうする。
 それから、一度再生したらコンピューターは自動的に消去しちゃうよと言うけれども、じゃ、コンピューターが消去する前に、聞いているときに、自分が小型の録音機持ってきて全部録音しちゃえば、幾らこの特定電子計算機が一度再生した後は、昔テレビでありましたよね、この音声は一度聞いたら自動的に消滅するとかと言って、ぱぱぱなんて消えちゃうようなテレビドラマがありましたけれども。この特定電子計算機も法律上は一度復号して再生したらもう消去しちゃうよと、だからコンピューターの中に集められた会話は残らないんだから安心してくださいみたいな仕組みになっているけれども、でもコンピューターの中に残らなくたって、まさに復号して再生するときに音声で出てくるんですから、その音声を自分の録音機で全部録音しちゃったら、もうそれで全部録音しっ放しですよね。
 それで、立会人いないんだから、まさに捜査機関の施設でやるわけですから、だからそんなことができる環境にあるから、そういうできる環境があればいずれそういうことをする人が出るんじゃないかと私は不安になるんですけれども、どうでしょう、そんなような濫用のおそれがあるかないか、お答えください。
#98
○国務大臣(岩城光英君) 現行の通信傍受法第二十二条の第四項は、傍受記録を作成した場合において、裁判官に提出した傍受の原記録以外の傍受をした通信の記録をした記録媒体又はその複製等があるときは、その記録の全部を消去しなければならないと規定しております。捜査官は、当然、法が定める手続を厳守した適正な運用を行うのでありまして、記録媒体を、傍受した通信全てを記録した媒体ですね、この記録媒体を手元に残しておくことはございません。また、そもそも傍受記録を作成する際に消去される通信は、傍受の実施中にたまたま行われ、該当性判断のために必要な最小限度の範囲で傍受した断片的なものに限られるのでありまして、通常は捜査官がそのような断片的な通信の記録を保管し続ける動機もないと言えます。
 さらに、現行通信傍受法第二十二条第五項は、傍受をした通信であって、傍受記録に記録されたもの以外のものについては、その内容を他人に知らせ、又は使用してはならないと規定しております。仮に捜査官がこれに違反し、傍受記録に記録されていない通信の内容を利用して通信の秘密を侵したときは、懲戒処分の対象となり得るのみならず、刑事罰の対象ともなり得ます。また、傍受記録に記録されていない通信の内容を使用しようとしても、傍受記録に記録されていない以上、その使用が適法であるとの説明ができませんことから、この点からも使用することはできません。すなわち、捜査官としては、御指摘のような記録媒体があったとしても利用等をすることができないので、やはりこれを手元に残しておくということは考え難いものだと思います。
 したがいまして、捜査官が御指摘のような記録媒体を手元に残しておくことは想定されないものと、このように考えております。
#99
○小川敏夫君 法律の建前は、警察官はそういうことをしちゃいけないというふうになっています。だから、警察官は法律でそういうことをしてはいけないとなっていた場合には絶対そういうことはしませんというのが大臣の答弁の御趣旨ですよね。
 だけど、残念ながら、私は警察はもちろん基本的には信頼していますよ、だけど一〇〇%は信頼していないんで。やはり、しちゃいけないんだということになっていたってしちゃう人がいる、あるいは間違ってしちゃう人がいる。そういうことが起きないようにこの法律の仕組みではきちんとできていますか、濫用防止策ができていますかという観点から聞いておるわけです。
 ですから、この法律では複製を作ってはいけないことになっているから警察官は作らないでしょうから大丈夫ですと言われても、これは私は納得できないわけです。で、一つの例として私は挙げたわけです。
 しちゃいけないことになっている、複製を取っちゃいけないことになっているけど複製を取っちゃった人間がどうなんですかと。そういうものは裁判に使われないからやらないでしょうと。裁判に使わないのは当たり前ですよ、不正に取ったんだから。でも、情報は不正に入手されちゃったままその捜査官に持たれちゃっているわけですよね。
 だから、私は、警察官が間違ってそういう道に、そういう手段を取ってはいけないし、そういうことが故意でも過失でもとにかく起きてはいけないから、そういうことが起きないような、この制度の仕組みとしてはどうなっているかとお尋ねしているわけで、警察官はやらないことになっているからやらないから大丈夫ですと言われても、これは議論にならないわけであります。
 この特定電子計算機の仕組みをお伺いするときには、常に、もう特定電子計算機は絶対に、暗号化されて復号化されて、もう改変できないような仕組みになっていますと、それで、傍受したものは適正で、裁判所に行きますから大丈夫です大丈夫ですと言うから私は聞いているわけで。
 でも、特定電子計算機から出た情報を復号して聞くのは音声ですねと。じゃ、音声だったら、変えることはできないかもしれないけど、改変することはできないけれども、それをコンピューターとは全く無関係に捜査官が自分で持っている携帯録音機で再生した音声を全部録音することは可能ですよね。
 だから、そうした濫用を防止するためにはどうしたらいいか。立会人がいれば少しは牽制が利くかもしれないけれども、いわゆる警察施設、捜査機関の施設の中で、捜査官だけがいる場所でその復号、すなわち再生をして作業をするわけですから、そうした捜査官が何らかの誤った方向をしてしまう、間違ったことをしてしまうということを防止する手だてがないんじゃないかと聞いているわけですけれども、改めて答弁いただけますか。
#100
○国務大臣(岩城光英君) また重ねてのお答えになってしまいますけれども、通信傍受法第二十二条第五項は、傍受をした通信であって、傍受記録に記録されたもの以外のものにつきましては、その内容を他人に知らせ、又は使用してはならないと、そのように規定しております。
 仮に捜査官が違反して傍受記録に記録されていない通信の内容を利用して通信の秘密を侵したときには、これは懲戒処分の対象となり得ます。また、刑事罰の対象ともなり得るわけであります。さらに、その傍受記録に記録されていない通信の内容を使用しようといたしましても、傍受記録に記録されていない以上、その使用が適法であるとの説明ができませんので、こういった点からもそれを使用することはできない、こういった点から御指摘のようなことが起こることはないと、そのように考えております。
#101
○小川敏夫君 同じ議論になっちゃうけれども、今日警察庁にお越しいただいて、少し事前にお話ししておきました、平成六年、福岡県の南警察署が違法捜索を行った件について状況をお話ししていただきたいということを口頭で申し入れてあったんですが、いかがでしょうか。
#102
○政府参考人(三浦正充君) お尋ねの件につきましては、平成六年の事件ということでございましてちょっと記録が残っておりませんで、詳細までは把握をしていないところでございますけれども、判決文につきましては入手できたところでございまして、これは、覚醒剤の事件の検挙のために、事前に用意をしてあった白紙の調書を用いて虚偽の供述調書を作成をし、これを証拠資料として裁判官から捜索令状の発付を受けて捜索を行った。
 これによって覚醒剤は発見をされたのでありますけれども、それが後々、違法収集証拠であるというようなことでその事件は無罪となりまして、また、この当該警察官についても有罪判決を受けたと、概要はそういった事案であるというように承知をしているところでございます。
#103
○小川敏夫君 警察官が全員こういう警察官だとは言いませんけど、大臣、やはりやっちゃいけないことだってやることがあるんですよ。つまり、今の中でも、白紙の調書に、あらかじめ署名か何かもらっておいたのに自分で勝手に何か書き込んで虚偽内容の供述調書を作っちゃって、その虚偽の供述調書を証拠資料にして捜索令状を取って、それで捜索に、差押えに行ったというわけですよね。
 これ、やっちゃいけないことは当然なんです。だけど、やっちゃいけないと言ったってやる場合があるわけですよ。しかも、なぜこれ、そういう虚偽の証拠を使って捜索差押令状の発付を受けたのがなぜ発覚したのかというと、たまたま捜査官がその虚偽の白紙調書をその現場に置いてきちゃったという、ちょっと私の記憶で言うので少し不正確な、ほかの事件と記憶違いがあるかもしれないけど、そういうどじをやったからばれちゃったわけですよ、不正な捜索が。そんなどじをしなければばれなかったんですよ、多分。違法な捜索であっても、覚醒剤があったから捕まっちゃったわけですけどね。そういう、犯人が捕まったんだから、警察官、違法なことをやってもそれは許されるんだという話じゃないと思いますのでね。
 話は戻りますけれども、要するに、大臣がおっしゃられるように、この法律では捜査官は複製を作っちゃいけないと書いてあります。スポット傍受をして犯罪に関係しない通信は聞いちゃいけないと書いてあります。でも、書いてあるから必ず警察官が一〇〇%それを常に守るという警察官に対する信頼だけじゃ足らないので、やっぱりそういうことが守られなかった場合にはそれが直ちに発覚するとか、あるいは、そもそも守るということをしないような、すなわち不正、違法なことをすればすぐにその場で露見するとか、やろうと思ってもできない仕組みとか、そういうようにして濫用の防止の手だてを法律の中にしっかりと規定しておかないといけないので。
 やはり何回質問してもまた同じ答弁が来るんじゃないかと思うんですけれども、要するに、警察官はやっちゃいけないことになっていますからやらないでしょうから大丈夫ですとか、やった後ばれたら懲戒処分受けるから大丈夫ですとかいうだけじゃ私は不十分だと思うんです。実際に立会人もいないんだし、捜査機関の施設で捜査官だけで、送られてきた、しかもコンピューターの中にため込んである、たくさんか少しかどうか知らないけれども、ため込んであるこの通信の情報を捜査官だけが聞くわけですから。
 もちろん、この法律の仕組みは、聞く際に本来の通信傍受のこの仕組みをちゃんと使って犯罪関連通信は聞きなさい、それ以外はスポット傍受をしなさいという規定になっています。そのことは分かっているけど、それを守らないで聞いちゃったらどうするんですかという話を言っただけで。それから、聞いちゃったらどうする、それから音声で出てくるやつを複製を作っちゃったらどうするんですかと。そうすると、私は、それをその場で防止する手だてはこの法律上できていないし、それから、それをチェックする機能もないんではないかと。
 ですから、この通信傍受の濫用を捜査官が行うことを防ぐ手だてが、この法律上、制度的な保障がされていないんじゃないかと私は常々言っておるわけであります。答弁はまた変わらない答弁が出てきますかね、どうですか。
#104
○国務大臣(岩城光英君) 何度も同じお答えになってしまいますけれども、現行の通信傍受法第二十二条第五項、これは、傍受をした通信であって、傍受記録に記録されたもの以外のものについては、その内容を他人に知らせ、又は使用してはならないと、このように規定しておりますし、また、そういった違法行為をしました場合には懲戒処分の対象、そしてまた刑事罰の対象となり得るわけであります。そういった違法行為がないように様々な対応を、それを万全に講じていく、そういったことが必要だと思います。
#105
○小川敏夫君 私の質問の趣旨については十分な回答をいただいていないと私は思っておりますけれども、もう三回も同じ答弁をいただきましたので、何回聞いても同じ答弁じゃないかと思いますので、また次の点に行きますけれども。
 そもそも、この法律上、特定電子計算機というものはこうあるべきだといって厳しく要件が書いてあります。これを見ると、改変したりあるいはこれをよそに転送したりとか、そういうことはできないような特定電子計算機の様式ですか、ものが書いてあるんですけれども、でも、そもそも、そういうふうに特定電子計算機というものがあって大丈夫だ大丈夫だということはどなたも言う、参考人の方でも大丈夫だと言うんだけれども、でも、そもそも特定電子計算機を使っているから大丈夫だという発想が私は根本から考え直してもいいと思うんですよ。
 フォルクスワーゲンという世界に有名な一流企業がありました。検査しているときだけ適正な数値が出る、実際に使っているときには適正から外れた不適正なものなのに、検査のときだけ適正な数値が出るというコンピューター操作をしていたわけです。
 大臣、どうです、ここに特定電子計算機というものはそういうように改変はできない、ほかに転送もできないということの要件が書いてありますけれども、この法律の要件を満たしたコンピューターが実際に設置されておるということを誰がチェックするんですか。
#106
○国務大臣(岩城光英君) 捜査機関は、特定電子計算機を用いて通信傍受を実施しようとするときは、傍受令状の請求の際に、裁判官に対し、実際に用いようとするその電子計算機の機能に関する資料を提供してその判断を受けることになります。仮にその電子計算機の実際の機能の点について疑義が生じた場合には、裁判官は実際に用いる予定の電子計算機等を持参させチェックすることも、そういったことも可能であります。
 また、本法律案では、特定電子計算機を用いた暗号化等に必要な鍵、この鍵には、実際に用いることとした特定電子計算機以外の機器では利用することができないよう、鍵を作成する裁判所の職員により技術的措置が講じられることとしております。通信事業者が暗号化した通信は裁判所の職員から提供された鍵を用いなければ復号できないものでありますから、この裁判所の職員が講じる措置により、実際に通信の復号や再生に特定電子計算機が用いられることが確保されることとなるものと考えております。
#107
○小川敏夫君 でも、本当にそのコンピューターが法律の様式に合って裁判所に説明した機能そのものの計算機であるということをどなたがチェックするんですか。
#108
○国務大臣(岩城光英君) 先ほど申し上げましたとおり、御説明させていただきましたとおり、裁判官がチェックすることになると思います。
#109
○小川敏夫君 いやいや、裁判官は、令状請求者が持ってきた資料の中にそういうコンピューターを使うという資料が入っているだけですよね。私が聞いているのは、実際に使われるコンピューターがそうした裁判官に説明した資料の中にある機能どおりのものなのかどうか、あるいは通信傍受法に定める機能を備えた電子計算機なのかどうかを、実際の電子計算機が裁判官に説明した内容のものなのかどうかを誰がチェックするんですか。もうそれは間違いがないはずだからチェックしないということになっているんですか。
#110
○国務大臣(岩城光英君) 先ほども御説明申し上げましたが、その特定電子計算機の機能で復号あるいは暗号化するためには鍵が、キーが必要ですよね。その鍵はその特定電子計算機にしか合わない鍵でありますので、それが裁判所の方から提供される鍵でありますので、その点で担保できるものと考えております。
#111
○小川敏夫君 鍵、鍵って言うけど、その鍵は暗号化された情報をまた元の日本語の内容の会話に戻すためのものですよね。コンピューター、要するに電子計算機ですから、このコンピューターが赤い色ですか、黒い色ですかといって見て分かるものじゃないわけで、そのコンピューターがどういうソフトによって動いているかということでありますよね。だから、これなかなか、そのコンピューターがこの法律に従ったものどおりなのか、裁判官に説明した資料どおりなものなのかというのは、見てすぐには分からないものですよ。
 だけど、見方を変えれば、コンピューターというのはソフト次第でいかようにもなるんですから。ですから、さっきフォルクスワーゲンの例を挙げました。検査のときのその状況では適正な数値が出る、だけど普通に使うときには不適正な数値になってしまうと。だから、このコンピューターだって、善人の社会で悪いことをする人がいない、不正をする人がいないんだ、だから心配するなと言うんだったら、私は心配しちゃいけないことになるのかもしれませんけれどもね。だって、コンピューターなんだから、ソフトを変えてしまえばいいんですよ、変えたって見えないもん。しかも、その特定電子計算機は捜査機関の中にあるわけですよね。
 だから、今の法律上、この特定電子計算機に入ってきた情報はほかのコンピューターに転送してはいけないとなっています、法律ではなっている。だけど、コンピューターのソフトを変えればそんなのは幾らだって転送できるんですよ。転送して、転送された情報は暗号のままだけど、その暗号を復号するキーは転送先であるコンピューターだって使われるわけですから。だから、電子計算機だから間違いがない間違いがないと言うけれども、電子計算機が正しく機能していればその範囲では間違いがないでしょうけれども、電子計算機のソフトを少しいじくっちゃえばいかようでもできる世界が私は電子計算機だと思うんですよね。
 そうした電子計算機がまさに法律に適合した機能であって、その機能が何の工作もされていない、される余地もないというその仕組みに関してはこの法律は何にも手当てしていないし、何かそういう機能の電子計算機なんだからもう不正は起きません、間違いは起きませんと言っているだけで、不正や間違いが起きないということを、それを監視する人も、監視する仕組みも、後からチェックする仕組みも何にもない、ただ電子計算機でこういう機能だから大丈夫ですよと言っているだけにしか思えないので、私は、ですからそういう電子計算機そのものが何らかの工作をされている場合、それを誰かチェックする人がいるんですかと聞いているわけです。この法律上は全く書いてありません。
 そうすると、考えられるのは、そのコンピューターを所有し、管理し、使用する警察ですよね、捜査機関。捜査機関が自分の職務として、それを適正に運用するという職務の範囲でやるんだろうということでありますけれども、しかし、やっちゃいけないことだってやる例があるわけですから、じゃ、やっちゃいけないことをやるようなケースが現れた場合に、それは何の防止の手だてもないし、防止することもできないですねという私は疑問を指摘させていただいているわけです。どうでしょうか。
#112
○国務大臣(岩城光英君) 特定電子計算機を用いて通信傍受を実施しようとするときには、先ほどもお答えいたしましたが、傍受令状の請求の際に、裁判官に対しまして実際に用いようとする電子計算機の機能に関する資料を提供し、その判断を受けることとなります。
 その際、裁判官は、当該電子計算機が特定電子計算機としての機能を有し、これを用いた傍受が法が定める手続に従って適正に行われることが確保されることを確認した上で特定電子計算機を用いる方法を許可をすることが相当か否かの判断をすることとなります。
 そして、当該電子計算機が許可後に改造され、あるいは不正なプログラムを組み込まれ、不適正な傍受に用いられる余地があるものであれば通信傍受が適正に行われることが確保されているとは言えませんので、相当性の判断に当たりましては、そのような不正を防止する措置が講じられているかどうか、こういったものも考慮されることになります。
 したがいまして、捜査官が許可後に特定電子計算機を改造するなどして不正な傍受を行うことはできないと考えております。
#113
○小川敏夫君 だから、裁判官が判断すると言っても、裁判官が、じゃ、捜査機関のところへ行って、機械を見て、そのソフトの仕組みを見て、これは絶対間違いがないということはやることにはなっていないし、できないと思いますよ。だから、裁判官の判断というのは全く関係ないと思うんですよね、裁判官は、捜査機関から出された資料で、ああ、そういう機能だから、それなら大丈夫だろうといって判断するわけですから。
 私が聞いているのは、実際に使用するコンピューターが何らかの不正なりがあった場合に、それをチェックできるか、あるいは事後的に発見できるかどうかという観点から聞いているわけです。
 そうすると、これ、できないと思いますよ。だけど、また大臣は、そういう不正があればそれは許されないことだから、警察官はそんなことするわけがないから大丈夫だというふうにおっしゃっていらっしゃるけれども、大丈夫じゃなかった場合はどうなるのかというところは、よほど偶然的な事情がないと私は発見できないと思うんですよね。だって、コンピューターですから、見えないソフトによっていかようでもできるんですよね。ですから、どう考えても、結局、そんなことは警察がやるはずがないしやらないだろう、大丈夫ですよというふうにおっしゃっているとしか私には聞こえないんです。
 ただ、私は、人間が疑り深いせいもあるけれども、それ以上に、やはり警察はそんなことをしないはずだから大丈夫だろうと言うだけではなくて、制度的にそういうことが行われないような仕組みを設けるのが、やはり憲法で保障された通信の秘密を制約する、あるいは捜査一般に関する話ですけれども、人権に関する規定の保障の部分としては、私は濫用防止の制度的保障がないような規定はやはり不十分ではないかと思っておるわけであります。
 どうです、実際に電子計算機に何らかの不正なソフトが組み込まれたという場合に、発見するという仕組みは何もないですよね。ですから、警察官がそういうことはしないだろう、正しく運用してくれるはずだ、万が一そういうことをやったら、ばれたら懲戒処分なり犯罪で処罰されるよと、だからそんなことは警察官がするはずないと言っているものと私は大臣の答弁の趣旨を理解しましたが、私のその理解で大臣の答弁はよろしいんでしょうか。
#114
○国務大臣(岩城光英君) 先ほど申し上げました、電子計算機が許可後に改造されあるいは不正なプログラムを組み込まれ不適正な傍受に用いられる余地があるものであれば、その通信傍受が適正に行われることが確保されるとは言えないので、相当性の判断に当たっては、そのような不正を防止する措置が講じられているかどうか、これも考慮されることになると。
 具体的に、そういった改造防止のための措置としては、例えばハードディスクを暗号化し記録されたソフトウエアの変更を防止する、また、当該電子計算機に搭載された正規のソフトウエアのハッシュ値を機器に内蔵の保護された記憶領域に格納し、これによりソフトウエアの改ざんを検知する、こういった確認等も行い得るわけでありますので、私は御指摘のようなことは当たらないと考えております。
#115
○小川敏夫君 でも、コンピューターってソフト次第でいかようにもなるということは、それは大臣、お認めいただけますよね。
#116
○委員長(魚住裕一郎君) 岩城法務大臣。よろしいですか。
#117
○小川敏夫君 じゃ、もう一回質問しましょうか。
 要するにコンピューターに関する基本的な理解ですけれども、要するにコンピューターというのはソフト次第でいかようにでもなるものですねと聞いたわけです。つまり、埋め込んだソフトで、そのソフト次第によって自由に組立てできるものですねと聞いているわけです。コンピューターに関する一般のお話です。
#118
○国務大臣(岩城光英君) 大変失礼しました。ちょっとよく聞こえなかったものですから、失礼いたしました。
 ソフトウエア等を変更いたしますと、先ほど申し上げました復号あるいは暗号化する鍵が合わなくなるので、それは使用できなくなるものと考えております。
#119
○小川敏夫君 じゃ、ここでいう暗号化、復号化ということですけど、いわゆる言葉の会話を複雑な暗号化してしまうわけですよね。全く、てんで分からない、何が何だかさっぱり分からないと。その複雑な暗号化されたものを、今度は元の会話に戻すための仕組みですよね。だから、その仕組みそのものを転送したコンピューターでも当然使えますよね。そのコンピューターでしか使えないというような絶対的なものじゃないですよね。
 だから、例えば特定電子計算機があると。その特定電子計算機は、この法律上、その情報をほかのコンピューターに転送することはできません、そういうことをしちゃいけないって書いてあるから。だけど、しちゃったらどうなのか。しちゃった先でも、その暗号を元の会話に戻すキーは同じキーが使えますよねと私は理解しているんですけれども、この暗号を元に戻す復号化のキーというのは。
#120
○国務大臣(岩城光英君) そういった御指摘のような改ざんを防止するためのプログラム、この作成も可能でありますので、そういったことで対応できるものと考えております。
#121
○小川敏夫君 そういったことを防止するプログラムも可能だと言うけれども、そのまた上を行くプログラムも可能ですよね。これがコンピューターというものじゃないですか。ですから、どこまで行っても果てしない議論になっちゃうけれども、結局、捜査機関の施設の中で捜査官だけが行うというのに伴うリスクじゃないかと私は思うんです。
 それから、特定電子計算機、計算機だから間違いがないんだよという発想が私は違うというふうに思います。私たちが使う小型計算機の、あの足し算、掛け算ぐらいなら何回使ったって間違いがないでしょうけれども、でもコンピューターというのはソフトを埋め込むことによっていかようでもできるものですから、それで私はフォルクスワーゲンの例を挙げていただいたわけで。
 だから、同じ議論になりますから、いずれにしろ、仮にそうしたことが生じた場合、すなわち、この法律の趣旨あるいは裁判官が令状を出したときの趣旨を損なうような電子計算機の使われ方、あるいはソフトが違法なソフト、組替えのソフトがあったという場合に何にも対応ができないんだなと私は思っております。そしてまた、この法律ではそうしたことをチェックするような仕組みも何もできていないなというのが私の言いたいことでございます。
 あと二十分ほどになっちゃいましたですね。
 この濫用防止ですけど、要するに、正しく傍受をしていればいいんだけれども、正しく傍受をしていない場合、つまり犯罪通信がない場合にも、しかし聞いてはいけない傍受をずうっと聞いてしまったという場合に、犯罪通信がないんだから、当然傍受した相手に通知が行かないということはさんざん議論させていただきました。
 これについて、大臣は、いや、事後的に発覚するような制度設計があるから、事後的に発覚することまでのリスクを考えれば捜査官はそういう不正なことをしないだろうというのが大臣の答弁でしたけれども、通知が行かないんだから分かりようがないわけでありますよね、違法な傍受をされた人は。
 例えば裁判所に原記録があると。でも、原記録の閲覧を求めるときには、やはり自分が閲覧を求めるべき立場にあるということ、そして、どこの回線を傍受されたものなのかというような具体的な事項を特定して裁判所に原記録の聴取をさせてくれという申出をしなくちゃいけないので。そういう具体的な事項が分からない、つまりどこの警察にいつ傍受されたか分からない、でも何かおかしいなと。
 じゃ、例えば僕がぶらっと東京地裁に行って、私、こういう小川という者ですけれども、何か傍受されたような気がするんですけれども、裁判所に私が傍受されたような原記録はありますかと言ったって相手にしてくれませんよね。やっぱり原記録の傍受を求めるという場合には、私はこれこれのこの回線を使っていますけれども、どうもこの回線がどこそこの警察で、つまりその回線を特定して、そして傍受のある程度の日時も特定して、そして自分がそういう原記録の聴取をできる立場の人間だということをきちんと整理して明らかにして裁判所に求めなければ全く原記録に触れることなんかできないわけです。
 だけど、何回もお話ししたように、とにかく傍受したよという通知が行かないんですから、傍受された人間からすれば、自分の電話回線が傍受されたけれども、あんたの電話回線が傍受されたという通知が来ないから傍受されたこと自体を知らないと。こういうことで、チェック機能が働いていないということはこれまでさんざん時間を掛けて議論させていただきました。
 前回、私は、そういう制度の欠陥を補う仕組みが何かないかということで三つの提案をさせていただきました。
 一つは、裁判所は原記録を保管するだけじゃなくて、その保管を受けた裁判所にチェック機能を持たせたらどうかと。それからもう一つは、裁判所が一々チェックするというのは大変でしょうから、じゃ、第三者機関を設けて、その原記録の中からそれを検証して、濫用に及ぶ傍受があるかないかということをチェックするような第三者機関を設けたらどうかと。それからもう一つは、そもそも強制捜査なんだから、逮捕や捜索、差押えのときのように、強制捜索をすれば当然強制捜査を受けた被疑者に分かるということが基本原則なんだから、少なくとも傍受をした回線のその当事者に対しては通知をしたらどうか、全員通知をしたらどうか、犯罪に関連する通話があったかどうかは別にして、とにかくあなたのこの電話を傍受しましたよということは全員に通知するという、この三つぐらいの案を提案させていただきました。
 大臣はそのうちの一つについて答弁されました。いや、事件の内容を知らない裁判所がそういうことを判断するのはふさわしくないというような趣旨の御答弁をいただきました。
 ほかの二つについては何か答弁をまだいただいていなかったようなので、どうでしょう、原記録を自主的に検証して、それでそうした通信傍受の濫用があったかなかったか、これをチェックする、そういう機関を設けたらどうかということと、それから、強制捜査として通信傍受をやったなら、その回線の使用者に対して全部、全員に通知するという仕組みを取ったらどうかというこの二点についてまだ回答をもらっていなかったように思うので、いただけますでしょうか。
#122
○国務大臣(岩城光英君) まず、第三者機関についてお答えをさせていただきます。
 御指摘のような捜査機関から独立した第三者によって構成される機関が傍受をした通信の記録等をチェックするような仕組みにつきましては、他の適正確保措置に加えてこのような仕組みを設ける必要性に疑問がある、また、令状に基づく捜査の適正確保は司法手続によって図られるべきでありまして、第三者機関を行政府に設けるとすると行政権と司法権の関係で問題を生じる、そういった異論がございます。
 捜査機関が通信傍受を行うためには裁判官が発付する傍受令状が必要となります上に、傍受をした通信は全て記録され、その記録は裁判官に提出され、傍受の適正が争われました場合にはその判断のための資料となります。また、通信の当事者に対する通知、通信傍受に関する処分に不服がある者による不服申立て、裁判所による通信傍受に関する処分の取消しなどの手続も設けられております。
 このように通信傍受を行うためには裁判官による厳格な審査を受ける必要があるとともに、事後的にも傍受が適正に行われたことを司法手続により確実に検証することができる仕組みが設けられておりまして、これにより捜査官による違法な傍受を抑止することができるため、更に第三者機関を設ける必要はないものと考えております。
 それから、通知すべき通信がなかったとしても通知をすべきではないかというおただしで、捜査官が傍受をした通信は全て傍受の原記録に記録されますから、違法な傍受を行えば傍受の原記録に動かぬ証拠が記録され、裁判官の下で保管されることとなります。
 また、捜査官が傍受の実施をする時点では、裁判官が保管する傍受の原記録の聴取等を行う者が現れないとの前提の下で行動することはできません。そのような状況の下で、捜査官が、後に容易に発覚し刑事罰に問われる危険を顧みずに違法な傍受を行うことは想定できません。
 このように現行通信傍受法が定める適正確保の方策により違法な傍受は十分に抑止されるのでありまして、御指摘のように傍受記録に記録されている通信の当事者以外の者に通知することとする必要はないものと考えております。
#123
○小川敏夫君 どうも、事後的チェックの件で前二回のこの委員会で質問した際の答弁よりも更に何か悪くなっちゃったようですね。確実にチェックされているようなお話、事後的にそのチェックが確実になされるような確固たる答弁の趣旨になっちゃったようですけれども。いやいや、だから事後的に確実にチェックできるから第三者機関は要らないという話でしょう。私は、事後的に確実にチェックどころかほとんどチェックできないから第三者機関を設けろと言っているわけで、だけど大臣は、第三者機関なんか設ける必要もない、事後的に確実にチェックできるから不要だと今答弁されたわけですよ。
 だから、そうするとまた話は戻っちゃうんですよね。傍受されたことを通知を受けない人がどうやって原記録を聴取できるのか。そこのところは前回大臣もお認めになりましたよね。通知を受けなければ原記録がどこにあるのか分かりようがないですねということはお認めいただいたわけです。
 だから、そうすると、傍受した直接の本人、それから会話をした相手方、両方とも傍受されたことを知らないんだから、知らない人が原記録の聴取を求めるということはあり得ない。あり得ないと、結局、捜査官が濫用したことがあってもそれが明らかになるということは、少なくとも裁判所にある原記録を当事者が見て発覚するということはないんですよ。さっきの、違法捜索で虚偽作成の調書をおっことしちゃったとか忘れてきちゃったとか、そんな捜査官側のどじとか、あるいは、捜査官側が後悔して、あのとき私はこういうことは悪うございました、申し訳ありませんでしたと申し出てくるようなごくごく例外的なケース以外には分からない。少なくとも傍受を受けた人間からはそれをチェックするということはあり得ないんですよ。にもかかわらず、いや、原記録が裁判所にあるから必ずそれは司法の判断によって明らかになる、明らかになるような状況だから、捜査官はばれて処分を受けるようなことをやらないだろうというのじゃ納得できないわけで。
 私は、だから事後的チェック、すなわち通知が行かないんだから、通知を受けない人が自らチェックすることはできないんだから、しかし、捜査側としては強制捜査をしたという事実を余り被疑者側に知られたくないという捜査側の都合があるんでしょう。であれば、第三者機関を設けて、その人が、全部じゃなくてもいいですよ、ピックアップでもいいから、適宜に、この傍受が正常に行われていたかどうかを判断するということがあれば、それこそ捜査官は、傍受した人間が気が付かなくたって、この第三者委員会がこうやって後からチェックするんだったら、悪いことをしたらばれちゃうなと、不正な傍受をしたらばれちゃうなということになって抑制が働くわけですよ。
 だから、私は、第三者委員会なら、捜査する側が捜査しているということを被疑者側に知られたくないという捜査側の事情もそれで満たされるし、それから、第三者委員会なんだから秘密も保たれるでしょうし、それでかなり有効的にそうした濫用の防止の機能があるんじゃないかなと思って第三者委員会の設置というものを提案させていただいているんですけれども、法律上、そういう濫用はありません、心配ありませんから要りませんと言われても、なかなか納得できないんですよ。
 どうでしょう、もう少し現実的に、やはり被疑者の側に通知が行かない、だから濫用に及んで傍受を受けた人にはそもそもそういう傍受をされたことが分からないから確認のしようもないという、そういう状況の中でこのチェック機能というものをどういうふうに果たすかということで私は非常に有効なんだと思っているんですが、もう一度、その第三者機関の案について御回答、答弁いただけませんでしょうか。
#124
○国務大臣(岩城光英君) 先ほどもちょっとお話をさせていただきましたけれども、捜査機関から独立した第三者によって構成される機関が傍受をした通信の記録等をチェックするような仕組みにつきましては、様々な御意見、異論もございます。
 一つには、他の適正確保措置に加えてこのような仕組みを設ける必要性に疑問がある、それから、令状に基づく捜査の適正確保は司法手続によって図られるべきでありまして、第三者機関を行政府に設けるとすると行政権と司法権の関係で問題を生じる、そして、通信傍受を行うためには裁判官による厳格な審査を受ける必要があるとともに、事後的にも傍受が適正に行われたことを司法手続により確実に検証することができる仕組みが設けられておりまして、これにより捜査官による違法な傍受を抑止することができるため、更に第三者機関を設ける必要はない、そのように考えております。
#125
○小川敏夫君 司法の判断というのは筋が違うと思いますよ。警察権の行使という行政が正しく適正に行われているかどうかを判断するのであるから、当然行政の第三者委員会がそれをチェックするのは何の問題もないと思いますよ。司法が判断することを、それを司法から取り上げて行政が判断するんじゃないんですから。
 もう時間が来ちゃいましたですね。
 じゃ、全く別のことを聞きますけれども、警察庁にお尋ねしますけれども、これまで通信傍受の実施例というものを毎年報告をいただいています。その中にメールを傍受したという件数がないように思うんですけど、法律上はできることになっているんですけれども、実際上、このメールを傍受した例というのはないんでしょうか。
#126
○政府参考人(三浦正充君) これまで警察が通信傍受を実施した事件につきましては、いずれも携帯電話による通話を傍受したものでございまして、それ以外の通信を傍受した事件はございません。
#127
○小川敏夫君 別にないからやれと言っているわけじゃないんですけど、ただ、法律上できるのに、ああ、ないんだなというふうに思ったわけであります。
 これ、電話だと通話しているのを聞くという傍受というのが何となく分かるんだけど、メールだと一時にばっと文字情報で情報が来ちゃうわけですよね。だから、傍受というのとちょっと感覚的に違うのかなと思うんですけれども。例えばメールの場合には、傍受しなくても、例えば被疑者のパソコンを押収してきちゃってパソコンを解析すれば、少なくとも履歴が全部復元できて分かりますよね。こういう被疑者のパソコンを回収して解析するのは傍受とは違うと思うんだけど、こういうのはよく行われているんですか。統計がなければいいですけれども。
#128
○政府参考人(三浦正充君) 既に行われてサーバー等に蓄積されたメールを令状で差し押さえるということは、それは捜査上あり得ることでございまして、どれぐらいやっているかというのはちょっと正確な把握はできておりませんけれども、それは捜査手法の一つとしてあり得ることだと考えております。
 傍受につきましては、現に行われている通信を捕捉するということですので、これとはまた違う、要するに差押えと傍受は違うものとして取り扱っております。
#129
○小川敏夫君 では、また別の件をちょっと質問させていただきます。
 今度、対象犯罪が増えました。窃盗とか詐欺とかいろいろ入っています。
 窃盗といいますと、非常な大掛かりな窃盗もあるでしょうけれども、万引きも入る。万引きが別に軽いからいいと言っているわけじゃないんですけれども、万引きも窃盗は窃盗なわけです。そうすると、この法律は、趣旨としては非常に組織的にかなり継続した悪質なものを想定しているという趣旨はお伺いしているんですけれども、ただ、法律の要件だけ見ますと、組織的といっても二人でいいんですよね、人数的には。それから、その複数の人間が役割分担する、こんなことが要件に書いてあります。
 でも、窃盗で要件がそれだけだと、よく参考人からも出ました、少年の万引きが入るというようなのは余りにも極端な意見だとかなんとかありました。でも、この法律で見ますと、高校生が二人いて、一人が、おまえ、ちょっと品物を買うふりして店員をそっちの方に注意を引き付けておけと言って残りの一人がさっさとどんどん万引きしちゃうというと、二人、複数が役割分担してやっているんですよね。そうすると、この法律の要件には当てはまるんです。
 そうすると、万引きなんて、そんな少年のそういうような事件はとても対象、想定していないよと言うんだけれども、想定していないんだったら、そういうものはこの要件の中には入らないような立法の仕組みをすればいいんで、そういうような想定はしていないよと言うけれども、法律上そういうのでも要件に入っちゃうようなこの法律の規定の仕方になっていると、いずれ法律が独り歩きしてそういうところまでやっちゃったってやれるわけですから。だから、そんな窃盗でももっと大掛かりな組織的な非常な悪質なものを想定しているんだよと言うのであれば、そんなちょっと少年の万引き団ぐらいのものは想定していませんと言うんだったら、そこら辺が入らないような、単に窃盗というだけでなくて、あるいは要件、組織的なというような犯罪の要件をもっと厳格化した方がよかったんじゃないかと思うんですが、いかがでしょうか。
#130
○国務大臣(岩城光英君) 具体的な例を挙げて御質問いただきました。
 本法律案における通信傍受法の改正によって追加する対象犯罪は、通信傍受の運用状況や現時点における犯罪情勢、捜査の実情等を踏まえ、現に一般国民にとって重大な脅威となり社会問題化している犯罪であって、通信傍受の対象とすることが必要不可欠なものに限定をしております。
 また、新たに対象犯罪に追加される罪につきましても、捜査機関が通信傍受を行うためには裁判官が発付する傍受令状が必要であります。この傍受令状は、現行法上、裁判官がその罪が犯されたと疑う十分な理由があること、他の捜査方法では犯人を特定することが著しく困難であることなど厳格な要件を満たしていると認めた場合に限って発付されますが、本法律案では、新たに追加される罪につきましては更に一定の組織性の要件を加え、それをも満たす場合でなければ傍受令状が発付されません。実際にこれらの厳格な要件を満たす事案は組織的な犯罪に限られることとなります。
 そこで、窃盗が数人の共謀によりあらかじめ定められた役割分担に従って行われた場合でありましても、他の捜査方法では犯人を特定することが著しく困難であることなど、通信傍受法に定められたその他の厳格な要件を満たす場合でなければ傍受令状は発付されず、通信傍受の対象となることはないものであります。
#131
○委員長(魚住裕一郎君) 時間ですが。
#132
○小川敏夫君 もう時間もないので終わりますけれども、組織性とかそういったものの要件をもう少し具体化した方がより良かったのではないかという意見を述べて、私の質問を終わります。
#133
○仁比聡平君 日本共産党の仁比聡平でございます。
 質問に入る前に、大臣並びに委員会同僚議員の皆さんに一言申し上げたいと思うんです。
 これまでの質疑、答弁で、この法案が新たに設けようとする部分録画、そしてその実質証拠としての利用も、あるいは司法取引や盗聴も、警察官、検察官の裁量的判断に任せるけれども、違法な濫用、運用は想定されないと、そうした趣旨の答弁を大臣は繰り返しておられまして、私はそれは安全神話にほかならないと思いますよ。
 そうした法案が新たな冤罪を生み出したときに一体どう責任を取られるというのか、そのことがこの委員会の全ての会派の議員に問われているのであって、この委員会の運営について、火曜日、二十六日の参考人の質疑に続いて、本来であれば対政府質疑を十分に行った上で次の参考人の質疑を行うということが当然であるにもかかわらず、午前中参考人質疑が続けて行われた上、与党はこの参考人の皆さんの意見を踏まえた質疑には今のところ立っておられないわけです。参考人の皆さんの御意見を与党は聞きっ放しにするおつもりか。
 そうした下で、ゴールデンウイーク明けの次の定例日の十日にこの質疑を終局し採決を提案するなどもってのほか、言語道断。私がその発言をするときに与党筆頭理事も座っていない。何でそんな無責任な態度でこの重大な憲法違反の治安立法、この審議の責任を持てるというのか。
 私は、この法案についての徹底した審議、これは立場が違っても十分な審議を、まだ会期末まで十分あるんですから、時間は。しっかりと審議を尽くすことを強くまず求めたいと思うんです。
 そこで、まず第一に、私が指摘をしてきた部分録画とその実質証拠としての利用、この危険性について林刑事局長にお尋ねをしますが、二十一日の私の質問の中で、最高検の通知でそうした利用を方針として持っているではないかという趣旨の私の質問に対して、局長、こう御答弁をされました。部分的な録画を行い、それを実質証拠として請求していこうと、このようなことを内容とするものでは全くございません。いや、これはおかしいでしょう。通知そのものが、実質証拠として請求することを検討する、当初からそれを目的として録音、録画を行っても差し支えないと明確に書いてあるわけですから。この御答弁、一体どういう意味なのか。御答弁どおりであれば、そもそもこの通知を撤回すべきだと。私の求めにお答えになったらいかがですか。
#134
○政府参考人(林眞琴君) この御指摘の次長検事依命通知の趣旨でございますけれども、検察当局によって例えば有利な供述部分のみを部分的に録音、録画した上でそれを実質証拠として今後の立証に用いていくと、こういった方針を示したものでは全くございません。この通知の中にもまず書かれておりますように、まずは、近時の裁判におきまして被告人質問を先行して証拠調べをすること、こういったこと、実務がそういう方向に流れていること、これについて、検察としても、裁判員裁判についてはやはり第一次的には被告人質問によって立証を行うことを宣明しているわけでございます。
 その上で、その場合に、捜査段階での供述による立証が必要になった場合には、これまで作成しております供述調書というものもございますが、さらに、現在、全過程の録画を含めて検察においては積極的に取調べの録音、録画をしておりますので、そこにおきます記録媒体、こういったものについてこれを第二次的な立証手段として請求することを検討していくと、こういうことをここで述べておりますものでございます。
 様々、これまでの立証の在り方等にとらわれずいろいろなことを試みるという観点からそのようなことに留意していくと、このようにこの通知はなっておりまして、先ほど冒頭に申し上げましたが、検察において部分的に録音、録画をしてその有利な部分について実質証拠として積極的にそれを活用していこうと、こういった趣旨の通知ではございません。
#135
○仁比聡平君 つまり、私が申し上げているような意味での方針ではないのだということがおっしゃりたいんだろうと思うんですね。
 私が指摘をしている点が、例えば今日の参考人質疑の中でも、刑事裁判の直接主義、公判中心主義が壊される、調書裁判を録画裁判にしかねないと、こうした警鐘として指摘をされているわけですけれども、つまり局長はそうした指摘は当たらない、つまりそういうものを壊すものではないと、そうおっしゃりたいのであれば、そうしたらどこにそういう危険がないというのか、そのことをはっきりさせるべきでしょう。積極的に活用しようという、そういう通知ではないというふうにおっしゃるんだったらば、どうやって警察、検察による部分録画と、私の申し上げている実質証拠としての証拠請求、これがどうやって阻まれるというのか、そのことをはっきりさせるべきでしょう。いかがですか。
#136
○政府参考人(林眞琴君) 近時の裁判実務において、先ほど申し上げましたが、裁判員裁判事件を始めといたしまして、公判における証人の尋問あるいは被告人質問、こういったものを中心とした審理が行われているという現状にございます。このことを踏まえて今回の通知が出ておるわけでございます。
 実際に、実質証拠による証拠を仮に請求したといたしましても、これにつきましては、裁判所において必要相当性を考慮してその上で採否が決定されるわけでございます。当然、実質証拠について請求した場合には弁護人がそれに対する証拠意見を述べます。そういったことも踏まえまして、裁判所がその必要性、相当性を考慮して採否を判断するわけでございます。
 そうしますと、検察において実質証拠で請求するという方針を立てたと仮にいたしましても、それ自体が必ず実質証拠という、その記録媒体が採用されるということにはなりません。むしろ、近時の状況を見ますと、例えば部分的な録画部分、これを実質証拠として請求したといたしましても、それが部分的でもし仮にあるならば、それを採用されるに当たり、なぜそれが部分的であるのかというようなことも当然吟味されるでございましょうし、また、実際に裁判所で実質証拠を採用したといたしましても、その信用性の判断においては、やはりその場合に検察官側がその有利な部分だけをつまみ食いしているような形で証拠請求を仮にしたといたしましても、それで信用性が認められるとは限りません。
 そういったことから、もとより、この通知については、そういった意味で部分的な録画をしてそれを実質証拠として用いる方針を定めたというものではございませんが、仮にこういった検察の方針、証拠に対する立証の在り方というものが必ず裁判所において採用されるというものではないわけでございまして、その点で検察としてはむしろそういった認識に立って、近時の裁判実務においては証人の尋問や被告人質問を中心とした審理が行われるのであると、これを踏まえた上でこういった通知を出しているわけでございます。
#137
○仁比聡平君 通告しておりませんが、盛山副大臣、お聞きしても構わないでしょうか。──今局長がお話しになっているのは、つまり、二次的ではあれ実質証拠として請求することはあり得るということを言っているんですね。部分録画というのがどれほど裁判の利用において危険か、このことは参考人がお話しにもなっているように、今市事件の経験を踏まえて一気にその危険性への認識が高まっているわけです。
 盛山副大臣が与党の筆頭理事として議論をされた衆議院の審議の段階で、そうした問題意識は私はさしてなかったのではないかと思うんですが、改めてこの参議院の法務委員会での議論を聞いておられて、こうした捜査機関の判断とその証拠としての利用、実質証拠としての利用、これ極めて危険だと思われませんか。
#138
○副大臣(盛山正仁君) どの程度いいお答えになるか分かりませんですけれども、まず、私、与党の筆頭理事ではございませんでした。議員修正の部分では、私、与党側、自民党側の中心ではございました。
 それで、今のお尋ねでございますけれども、裁判員裁判が最近行われるようになりまして、録音、録画の記録が大変これまでに比べて重要性を帯びてきているようになっている、それはおっしゃるとおりだろうとは思うんですけれども、ただ、何といいましても、証人の尋問、被告人質問、そういったものが行われた上でその録音、録画の記録についても判断されると、こういうことではないかと思います。
 裁判所がその必要性、相当性を十分判断した上での採否を判断することになると、そういうふうに思っておりますので、今、林刑事局長の方からお答えがございましたですけれど、我々、前会というんですかね、昨年の通常国会で衆議院側で我々も議論をいたしましたですけれども、その辺についても、先生とちょっと立場は違うかもしれませんが、我々としても十分認識をして審議をさせていただいたつもりでございます。
#139
○仁比聡平君 筆頭だったかどうかの点は誤解をしておりまして、失礼をいたしました。
 今のようにおっしゃるんだけれども、裁判所が適正な判断をしなきゃいけない、弁護側は徹底して争うであろうと、それはそれで当然のことなんですね。
 議員修正の部分に、私が指摘をしているような濫用をこれ防止するという、そういう部分というのはおありですか。
#140
○委員長(魚住裕一郎君) どなたに聞いていますか。
#141
○仁比聡平君 盛山副大臣。
#142
○副大臣(盛山正仁君) 今、仁比先生がおっしゃった、そういうところに特化した議員修正という内容のものではない。我々、関係の与野党がどこの部分をどのように、少しでもそもそもの内閣提出の原案を良くするために修正をすべきかという点では議論させていただいたつもりです。
#143
○仁比聡平君 今おっしゃるように、そうした問題点についての議員修正部分というのはございません。
 そうした下で、現在行われている録音、録画について、前回、障害のある方のコミュニケーション能力に問題があるか否か、取調べ官に対する迎合性や被誘導性が高いかどうか、あるいは被疑者や参考人の供述が立証上重要であるかどうか、こうした現行の録音、録画をするかしないかの判断の基準というのはこれは厳格な基準は定められていないということを、正確に御答弁で言いますと、厳密な基準は設けられないという、そうした御答弁を林局長されました。つまり、取調べに当たる警察官や検察官の判断によって録音、録画をするかそれともしないかということは区分をされているというその現実なんですね。
 その下で、資料として、今の取調べを報告するための文書、取調べ状況等報告書を、検察庁とそして警察のお使いになっておられるものをお手元にお配りをいたしました。
 御覧のとおり、この取調べ状況等報告書の中には録音、録画を行うこととしたか否かという記載部分はないわけです。記載項目はありません。したがって、録音、録画を行うという判断をしたときに、なぜそのような判断をしたか、その根拠というものが記載欄として必要事項にはなっていないわけですね。けれども、現在、取調べ官の判断によって録音、録画を行う場合、それから行わない場合がある。これが当然、裁判上もなぜ行わなかったのかということが争われることもある。
 これ、そうした私が申し上げているような根拠と判断を、これは何にどう記録をしているわけですか、警察庁。
#144
○政府参考人(三浦正充君) 確かに、現在警察が使用しております取調べ状況報告書には、録音、録画の実施の有無やその理由、根拠について記載するために特別に設けられた欄はございません。これは、現在警察で実施をしている取調べの録音、録画はあくまでも運用上の試行という形での取組でございますので、この状況報告書には録音、録画に関する特別の記載欄は設けていないものでございます。
 もっとも、警察庁としましては、都道府県警察に対して、取調べの録音、録画を実施した場合にはその旨をその他参考事項欄に記載するよう指導をしているところでございます。
 また、取調べの録音、録画を実施した場合、必ずその記録媒体を検察官に送致しているところでございまして、これは公判前整理手続などにおいて証拠開示の対象とされているため、個々の取調べにおける録音、録画の実施の有無につきましては被疑者、弁護人側から確認することは十分できるというものと承知をいたしております。
#145
○仁比聡平君 つまり、警察においては参考欄に記載を指導をしているけれども、だけれども、その指導の結果どうなっているかということはこれは保証の定かではないわけです。
 加えて、録音、録画をした記録媒体は検察官に送付をすると言うけれども、せんだって新聞報道もありましたけれども、四八%程度という録音、録画の実績、つまり半数以上は録音、録画をしないわけですね。今日午前中、原田参考人が指摘をしていたとおり、否認をしている限り調書は取らない、それが警察の取調べの現実であるという指摘もある中で、結局いいとこ取り、自供している、自供を固めた部分しか録音、録画をしないじゃないか、そうではないという根拠はどこにもないじゃないかという指摘から免れられないわけですよ。
 検察庁はこの判断の記録をどのようにして残すんですか。
#146
○政府参考人(林眞琴君) 被疑者の取調べの録音、録画を実施した場合には、録音、録画を行った検察官又はその当該録音、録画に立ち会った検察事務官におきまして、取調べ状況等報告書のその他参考欄に録音、録画を行った旨を記載しております。また、録音、録画を実施した場合の累計でありますとか、あるいは不実施の理由などについても別途記録しているものと承知しております。
#147
○仁比聡平君 検察の場合は録音、録画がほぼ一〇〇%と、対象事件についてはというふうにおっしゃっているわけですが、そうすると、局長、その累計とか不実施の理由とかというのはこれは一〇〇%記載をされているということなんですか。
#148
○政府参考人(林眞琴君) そのような録音、録画を実施した場合の累計あるいは不実施の理由等について別途記録しておりまして、それが蓄積されているということでございます。
#149
○仁比聡平君 いや、私が尋ねているのは、一〇〇%記録されているのかということなんですよ。つまり、証拠開示を例えば求めます、弁護側が。そうすれば、それは全て開示をされて、録音、録画をした理由、しなかった理由、これは明らかになるわけですか。
#150
○政府参考人(林眞琴君) これにつきましては、録音、録画の実施状況については、やはり検察としてこれまで累次にわたって対象を拡大して積極的に取り組んでいるわけでございまして、その過程におきまして、録音、録画を実施した場合の累計でありますとか不実施の理由等については検察庁の内部で報告をさせておりますので、そういった形で実際の現場においてもその報告のためにそういった理由等を記録しているということでございます。
#151
○仁比聡平君 いや、委員長、ちゃんと私の問いに答えさせてください。つまり全件について、つまり検察官が行う取調べの全件について、取調べ状況等報告書はこれは記載することになっている、これはそういうルールになっています。けれども、その取調べ状況等報告書の中に、録音、録画を行ったか、行った、行っていない、その理由、根拠については記載欄はない。これを参考欄に記載するとおっしゃるけれども、私がこれで三回目聞きますよ、その全てについてその根拠を記載をし、証拠開示を求められれば弁護側にそれを全て開示するのか、一件たりともないものはないのか、記載がないものはないのかというお尋ねです。
#152
○政府参考人(林眞琴君) 録音、録画を実施した場合の累計であるとか不実施の理由等については、取調べ状況等報告書のその他参考欄には記載はされませんが、別途、検察においては、そういった実施の累計、不実施の理由については別途記録しております。それにつきましては、最高検察庁において全て、対象になっている事件について報告を求めております。
#153
○仁比聡平君 つまり、部内の捜査報告書にそういうものを記載を求めると言っておるだけであって、その種の手持ち証拠については、全ての証拠開示を求めても実際には開示をされないという場合がほとんどじゃありませんか。
 私は、そうした下で、ちょっと法案に関して話を進めますけれども、この取調べの録音、録画の例外規定、特に問題が指摘をされている二号についてお尋ねをしますが、被疑者が記録を拒んだことその他の被疑者の言動により、記録をしたならば被疑者が十分な供述をすることができないと認めるときという、この十分な供述をすることができないと認めるのは一体誰で、その場合は録音、録画の対象にならないわけですから、そのことをどう刑事裁判上証明をするのかというこれ大問題があるわけですね。
 しかも、十分な供述をすることができないと認めるときというのみならず、法案三百一条の二の一項では、この同項各号のいずれかに該当することにより記録が行われなかったことその他やむを得ない事情という曖昧な例外要件さえあるわけです。これを検察は一体どのように明らかにするわけですか。
#154
○政府参考人(林眞琴君) 捜査機関が本法律案の録音、録画制度の例外事由に当たると判断いたしまして録音、録画をしなかった場合、これは、公判で例外事由の存否が問題になったときには裁判所による審査の対象となります。その場合には、捜査機関側の責任でその例外事由が存在したことを立証する必要があるわけでございます。そのために、捜査機関としては、この例外事由について十分に立証ができるように適切な形で証拠化することとなると考えられます。
 例えば、法律案の刑事訴訟法三百一条の二第四項第二号の、被疑者が記録を拒んだことその他の被疑者の言動により、記録をしたならば被疑者が十分な供述をすることができないと認めるときという例外事由につきましては、一つには、被疑者が録音、録画を拒否する旨あるいは録音、録画の下では十分な供述ができない旨、こういった発言をしている、そういった状況が記録された取調べの録音・録画記録、あるいは、そのような内容が記載された被疑者自らの上申書あるいは供述調書のほかに、この例外事由に該当すると捜査機関側において認めたこと及びその根拠、理由などを記載した捜査報告書、こういったことを適切に証拠化することによって立証していくものとなるものと考えられます。
#155
○仁比聡平君 そういうような御答弁は、私、今初めて聞いているんですけれども、というような立証をされるんだとなるならば、そこで、今お話のあった、例えば被疑者が拒否するあるいは発言できないといった上申書や調書がある、で、その下で取調べ官が十分な供述ができないなどと認めたという捜査報告書があると。これは、全て弁護側に、被疑者段階でも開示をされるということか。そして、この開示ができない、あるいはそうしたものが存在しないとなれば、これはその調書も含めてその供述者の捜査段階の供述というのは一切証拠能力はないという理解ですか。
#156
○政府参考人(林眞琴君) 先ほど申し上げました様々な証拠化、立証するための証拠化によってでき上がりました捜査報告書等については、その公判段階におきまして証拠開示の手続がございますので、そういった形の中で適切に開示がなされていくものと考えます。
#157
○仁比聡平君 公判段階の証拠開示の中で適切な開示がなされるものと言うけれども、それは、現実には捜査官側の膨大な手持ち証拠というのが開示をされないで冤罪をつくり出されてきたわけです。しかも、捜査、取調べのこの現実に、もうこれまでも参考人が重ねて繰り返して指摘をしてきたように、うその自白を始めとした供述というのは全体としてプロセスとして作られてくるわけでしょう。その捜査の段階で一体何が行われているのか。これは、取調べ室への弁護人の立会いはありません。まさに密室なんですね。そこで何が行われているのかということを弁護側がただしたときにそれを明らかにしないというのでは、これは違法な取調べというのは抑止できないのではありませんか。私が今指摘しているようなことは、これはやらないということですか。
#158
○政府参考人(林眞琴君) 証拠開示の手続におきましては、検察官が証拠調べ請求をする証拠についてはまず開示がなされます。
 例えば、今回、今の事例でいきますと、例えば例外事由であるということを積極的に検察官側が立証しなくてはいけないような事態にあれば、それは検察官側から証拠請求をいたしますので、そういった場合には開示がなされます。また、そういった場合でなくても、被告人、弁護側がこの取調べの状況についてを何らかの争点にする、特に、例えば任意性の問題とかそういったことで争点にされれば、その争点がその主張に関連する証拠という形でこの捜査報告書などが開示されることがあり得ると考えております。
#159
○仁比聡平君 実際に裁判がどのように行われるのかというのは、これいろんな議論をきちんとしなきゃいけないんですよ。今日、そこにまた更に踏み込んでいく時間はありませんから、大臣にお尋ねをしたいと思うんですけれども、つまり恣意的運用の余地はないと、私が申し上げているような危険はこれは裁判の中でただされるのである、そもそも捜査機関はそういうことはしないのであるとおっしゃるわけでしょう。それであれば、本当にそうなるように、おっしゃるようにしか使えないように法文で明確に縛るというのが、これは憲法とそれに基づく刑事訴訟法の本来の姿なんじゃないですか。こうして議論しても認識が必ずしも一致しないというような、つまり裁量的判断の余地がある、そうした規定で決定的な有罪証拠をつくらせるというようなことは私はすべきでないと思いますが、大臣いかがですか。
#160
○国務大臣(岩城光英君) 議論となっております本法律案の刑事訴訟法第三百一条の二第四項第二号及び第四号における、記録をしたならば被疑者が十分な供述をすることができないとは、ある特定の内容の供述を前提にしてそのような供述ができるかどうかを判断するものではなく、録音、録画をしなければ供述できるであろうことを、録音、録画をしたならば十分に供述することができないという意味でございます。その意味で予測的な判断にならざるを得ないものでありますが、その根拠、原因となるべき事情を限定し、明確なものとしております。
 まず、同条第二号におきましては、十分な供述をすることができないと判断、認定する根拠となる事情を外部的に表れた被疑者の言動に限定しております。そして、被疑者の言動につきましては、例示として被疑者が記録を拒んだことを掲げており、被疑者が録音、録画を明示的に拒否したときと同程度の根拠をもって十分な供述をすることができないと認定できるような被疑者の言動に限定されます。したがいまして、このような被疑者の言動があり、かつ、それによって記録をしたならば被疑者が十分な供述をすることができないと認定されるという要件を満たして初めて例外事由に該当することとなるものです。
 また、同条第四号におきましては、十分な供述ができないこととなる原因となる事情を加害行為等がなされるおそれがあることに限定しております。その上、加害行為等がなされるおそれがあるかどうかを判断、認定する際の考慮事情として、犯罪の性質、関係者の言動、被疑者がその構成員である団体の性格を例示しております。したがいまして、このような事情によって加害行為等がなされるおそれがあると認められ、かつ、それが原因となって十分な供述をすることができないと認定されるという要件を満たして初めて例外に該当することとなります。
 以上のとおり、いずれの例外事由につきましても限定的かつ明確なものであって、例外事由の存否が公判で問題となった場合には裁判所の審査の対象となり、捜査機関の責任で立証しなければならないことからいいましても、恣意的な運用が可能となるものではないものと考えております。
#161
○仁比聡平君 大臣がそういうふうにおっしゃることはその法案の説明としては大切なことだろうとは思いますが、けれども、その判断というのは、これは密室において取調べ官によって行われるわけです。
 一般に、大臣、取調べ官というのは何を調べるかは決めて臨むんですよ。たまたま、例えば別件逮捕中の被疑者に殺人の調べに及んでしまったなんというようなことはないんですよ、普通。つまり、例えば今市事件で、商標法等の事件で起訴をされている、その起訴後勾留というのが今日から始まっていると。その午前中に殺人での取調べをするのは、これは検察官が殺人で調べると決めて臨むんですよ。ところが、その場面は録音、録画をしていない。それが現実です。
 その根拠、あるいはそれが本当に適法か。私は、到底適法ではない、違法にほかならないと思うけれども、それを現実にやっているのが日本の捜査機関です。その手をきちんと縛るということができなければ法案には重大な問題があるということを重ねて指摘をしておきます。
 少し時間がたっていまして、質問の順番をちょっと変えまして、河野国家公安委員長においでいただきましたのでお尋ねをしたいと思うんですけれども、今朝の原田参考人の意見陳述と私の質疑の中で、北海道警が銃刀法違反事件を暴力団と言わば結託をして自らつくり出してきた、その中で違法なおとり捜査も行われてきた、そうした事件について詳細な参考人の言わば証言を私伺いました。ここに関与した元警部は克明な告白の本を出版をしているわけです。
 この事件について午前中も指摘をしましたが、せんだって、そうした違法なおとり捜査によって有罪が確定をしていた外国人に対して、札幌地方裁判所によって再審開始の決定がなされました。検察側証人の証言に基づいて有罪が確定していたんだけれども、裁判所はこう言っています。「今般請求人が新たに提出した証拠によって、確定審における前記証人らが、いずれもおとり捜査の存在自体を隠蔽するため、公判で偽証をしたり、あるいは内容虚偽の捜査書類を作成していたことが明らかとなり、確定判決が有罪認定に用いた各種証拠の証拠能力に関する判断は、文字通り根本から覆った。」と。
 つまり、北海道警が組織的にこうした違法な捜査を行い、人を捕まえて有罪を確定させた上、その証拠として偽証あるいは内容虚偽の捜査書類を作成をしてきた、組織的にそうやってきたということがこの三月に改めて断罪をされているわけです。何でこんなことが起こるのか、今なお続くのかと。
 しかも、検察はこの再審開始決定に対して、三月の七日、不服として即時抗告をしていますが、この検察の認識については大臣に後ほど伺うとして、国家公安委員長、警察のこのありようについて一体どう思われますか。
#162
○国務大臣(河野太郎君) お尋ねの事件につきましては、平成九年十一月、元被告人である外国人男性を銃刀法違反の被疑者として逮捕したものであり、その後、平成十七年七月、国賠訴訟が提起され、札幌地裁において、捜査員の偽証等により起訴猶予や他の判決の可能性が奪われたとして、平成二十五年四月、元被告人に対する五十万円の支払を被告北海道に命じる判決が確定をいたしました。また、平成二十五年九月には札幌地裁に再審請求がなされ、本年三月三日、おっしゃるように札幌地裁において再審開始決定がなされましたが、札幌地検が即時抗告をいたしました。
 現在この即時抗告審が係属中でございますから、この捜査その他の在り方について答えることは差し控えたいと思いますが、いわゆるおとり捜査と呼ばれる捜査手法を用いる場合には、判例等で示されている点を踏まえ、適正な捜査が行われなければならないのは当然のことでございまして、そうできるよう警察をしっかりと指導してまいりたいと思います。
#163
○仁比聡平君 いや、個別事件だから答えられないと言いますけれど、個別事件で確定をしていない係争中の事件にしているのは警察と検察じゃないですか。この再審開始決定までもずっと争い続けてきたわけでしょう。それは、つまり何の反省もしていないのかということじゃないですか。組織的な犯罪の実態があらわになれば、直ちにその事実を認めて、徹底した検証を行って再発防止策をきちんと取るというのがこれ当然でしょう。ところが、それを全くやらないのが警察組織なのかと、私はそこをただしているんです。
#164
○国務大臣(河野太郎君) 即時抗告審が行われておりますので、これ以上答えることは今の時点では控えたいと思います。
#165
○仁比聡平君 国家公安委員長としての河野大臣がそうした御答弁しかできないということ自体に私は極めて絶望的な気持ちになります。
 大臣に伺いますが、岩城大臣、なぜ即時抗告して争うんですか。
#166
○国務大臣(岩城光英君) ただいまの御指摘の事件でありますけれども、検察当局において原決定の内容を精査した結果、その判断内容に不服があるとして即時抗告を申し立てたものと、そのように承知をしておりますが、その具体的な理由、それにつきましては、即時抗告審が係属中でありますので、お答えを差し控えさせていただきます。
#167
○仁比聡平君 結局、警察も検察も何の反省もないのかと。そうした捜査機関に、違法な濫用はしないであろうと、想定はされないとかそんなことは念頭にないとか言って大きな権限をこの法案でこのまま与えることは、私は絶対に許されないと思うんですね。
 通信傍受についてあとの時間少し伺っておきたいと思いますけれども、前回の参考人質疑で、西村参考人が谷委員の質問にお答えになって、OECD主要国を念頭に置かれて、日本の現行法のように四種類に限定されているという国はない、立会いの要件もないと、だからということなんでしょうが、令状発付件数は、日本でいうと四十二件、イギリスで二千八百件、アメリカで三千六百件、ドイツで二万三千件、フランスで二万六千件、イタリアで十三万件、こういった具合でございますと、その通信傍受の規模、これについて認識を示されたわけです。
 警察庁、実際これまで極めて使い勝手が悪かったと、これが、対象犯罪が広がり特定電子計算機が各警察署に行き渡るような整備が整うなら、いながらにして傍受をすることができるようになると。そうするとこの規模で、つまり、例えばドイツで二万三千件、イタリアで十三万件、こういうふうに格段に通信傍受というのは広がるということなんじゃないんですか。
#168
○政府参考人(三浦正充君) 今回の対象犯罪の拡大等によりまして通信傍受の実施件数は一定程度増加をするということは予測をされるわけでありますけれども、どの程度増加するかにつきましては、各それぞれの罪名について組織的に行われる事案がどの程度発生するか、あるいは通信傍受の実施に必要な捜査機関の体制をどの程度取ることができるか、また、通信事業者において通信傍受に必要な体制をどの程度整えることができるかどうかといった様々な事情に左右されるものと考えられまして、具体的にどのぐらい増えるかということについて現時点でお答えをすることはちょっと難しいところでございます。
 ただ、諸外国の場合には、やはり我が国と比べまして傍受の実施要件が我が国ほど厳格ではないほか、対象犯罪につきましても我が国と比べて多岐にわたる犯罪が通信傍受の対象とされているものと承知をしておりまして、今委員がおっしゃられるような規模で直ちに増えるというような状況にはないのだろうというように考えております。
#169
○仁比聡平君 いや、これまで使い勝手が悪かった、これを今回の改正案で広げるとなれば、これは格段に増えるというのは当たり前なんですよ。それはこれからの犯罪情勢だとかによっていろいろ状況はあるだろうけれども、それは否定できない。
 そうした下で、林局長、二十六日の参考人質疑で、特別部会の幹事も務めておられた川出参考人が組織性の要件についてこのように意見を述べられました。典型的な暴力団とか本当のもっと大規模な組織犯罪だけにこれで、つまり法案でという意味だと思いますが、限定されるかと言われれば、それはそうではないので、そこはおっしゃるように、つまり私、仁比が言うように、実際の運用のところである程度限定されていくだろうという意見を述べられているんですが、これは法務当局の見解と同じですか。
#170
○政府参考人(林眞琴君) 本法律案による改正によって追加する対象犯罪でございますが、通信傍受の運用状況でありますとか現時点における犯罪情勢、捜査の実情等を踏まえて、現に一般国民にとって重大な脅威となり社会問題化している犯罪であって、通信傍受の対象とすることが必要不可欠なものに限定しているところでございます。
 また、その新たな追加される対象犯罪についても、捜査機関が通信傍受を行うためには裁判官が発付する傍受令状が必要となります。そして、この傍受令状は、現行法上、裁判官がその罪が犯されたと疑う十分な理由があること、他の捜査方法では犯人を特定することが著しく困難であること、こういった厳格な要件を満たしていると認めた場合に限って発付されるわけでございますが、本法律案では、新たに追加される罪については更に一定の組織性の要件も加えて、それをも満たす場合でなければ令状が発付されないこととしておるわけでございます。こうした実際にこれらの厳格な要件を満たす事案といいますと、組織的な犯罪に限られることとなると考えております。
 御指摘のその川出参考人の御意見は、これと同様の理解を前提に、本法律案の明文上は通信傍受の対象犯罪を暴力団等の関係する組織的な犯罪に限定はしていないが、実際、運用上は、厳格な要件を満たし得るのは組織的な犯罪に限定されるという認識を述べたものであろうと理解しているところでございます。
#171
○委員長(魚住裕一郎君) 時間ですが。
#172
○仁比聡平君 結局、川出参考人も局長も、実際の運用のところで実際には限られるというふうにおっしゃっているにすぎない、この法そのものが、言われているような限定を図っているものではないということが改めて明らかになったと思います。
 今日は終わります。
#173
○谷亮子君 谷亮子です。
 本日は、初めに、四月二十六日の本委員会で行われました参考人質疑でも取り上げさせていただきましたけれども、取調べの録音、録画を行うことに関しまして、録音、録画を行うことがその被疑者に告知されているのか、そして告知しているのかということについて、対政府、法務省に伺ってまいりたいと思います。
 先週、四月二十一日の本委員会における対政府質疑の際には、現状では被疑者が取調べ室に入るときから録音、録画がされているという状況になるわけでございますが、取調べ官はその運用状況等を、取調べ室に入るときから録音、録画されているということでこれは把握されていますけれども、取調べを受ける被疑者側は取調べ室に入るときからこの録音、録画がされているということを知っているのかということにつきまして私の方から述べさせていただきました。
 このことは、本法律案の刑事訴訟法三百一条の二第四項におきまして、逮捕、勾留中の被疑者を対象事件について取り調べる場合に捜査機関に取調べの録音、録画を義務付けていますが、録音、録画の際に被疑者に対する告知を義務付ける規定を設けるということはされておらず、このことは、被疑者にその運用等を周知せず、勝手に録音、録画を始めるということにつながりかねないわけでございますが、その運用状況は被疑者に対して周知徹底すべきと考えられるところであるというふうに思います。
 そこで、取調べの録音、録画を行うことを被疑者に告知して取調べが行われるとすると、録音、録画されていることを被疑者が認識をすることによって、新たな冤罪や虚偽の自白、そしてうその自白等、そうしたことが減るということも考えられるわけですが、今回の改正法案においては、取調べの録音、録画を行う際に被疑者に対しまして告知を義務付ける規定は設けられておりません。
 そこで、告知の義務付けに関する規定が盛り込まれなかった理由についてお聞かせいただきたいと思います。
#174
○政府参考人(林眞琴君) この取調べの録音、録画を行う場合に被疑者に告知するかどうか、こういったことについては、これを義務付けるのかどうかという点と実際に告知するのかどうかということは分けて考えなくてはいけないと思います。
 本法律案で、まず被疑者に告知することを義務付けていない理由、これについては次のような理由で義務の規定は設けていないわけでございます。その理由は、そもそも被疑者の取調べの録音、録画をすることは被疑者の重要な権利利益の制約を伴うものではなく、被疑者の同意を得なければできない、こういったものではないことから、被疑者の意思を確認する前提としての告知、こういったものを義務付ける法的必要性に欠けると考えられるからでございます。
 一方で、その義務を課さないといたしましても、まず、例えば本法律案の録音・録画制度においてはこの対象事件を明確に法律で定めておりますので、逮捕、勾留中の被疑者を対象事件について取り調べる場合は原則として録音、録画が義務付けられているわけでございますから、被疑者としても取調べが録音、録画されるということは十分想定されますし、また、この点について弁護人の助言というのを当然受けることができます。
 一方で、捜査機関の側におきましても、これは、実際の実務において、被疑者に対しては録音、録画を実施していることを告知しております。これは、やはり捜査機関におきましても、この録音、録画というのは将来のまた任意性等の立証に当たっても証拠となるものでございますので、当然、その被疑者側が録音、録画がされているということが認識された上でそのような供述をしているんだという、そういうことを立証することが必要となる場合もございますので、捜査機関の側としては適切にその録音、録画を告げるでありましょうし、また、被疑者の方からも尋ねられれば当然適切に対応することとなるものと考えられます。
 実際に、現在、検察庁におきましては取調べの録音、録画を実施する場合の要領というのを定めておりますが、これにおきましては、取調べの冒頭から録音、録画を行う場合には、その供述者が取調べ室に入室する時点から録音、録画を開始することとして、録音、録画した取調べの冒頭において供述者に対して適宜の方法で録音、録画を開始していることを告知することとすると、こういった形で実際に現在の検察庁の録音、録画は行われているわけでございます。
#175
○谷亮子君 御丁寧にありがとうございました。現状等も含めまして、ありがとうございました。
 ただいまは、その理由については、被疑者取調べの録音、録画が被疑者の重要な権利利益の制約を伴うものではないことからということであったというふうに思いますが、被疑者側も十分想定できている、想定できることだというようなことも御答弁いただきましたけれども、やはりその想定ができなかった場合はどうするのかというようなことも含んで今後考えていかなければならないと思いますし、告知するということも、ただいま御答弁の中にございましたけれども、これから検討されていく必要があるということも重ねて申し上げておきたいと思います。
   〔委員長退席、理事西田昌司君着席〕
 四月二十六日の本委員会での参考人質疑におきまして、立命館大学特別招聘教授の浜田参考人より、録音、録画をしているということを被疑者が十分承知した上で取調べを受けることが大原則であり、その上で全面可視化ではなく一部にとどまるということであれば、それ以前のところで既に犯人として振る舞わざるを得ないという状況に置かれている可能性があり、こうした中で録音、録画をするということは虚偽自白を防ぐという機能を果たさないことになるのではないかとの懸念する御意見をいただいたところでございまして、今回の改正法案に取調べの録音、録画の告知義務を盛り込まなかったことについては、ただいま御答弁いただきましたが、今後改めて検討すべきことであると参考人質疑をさせていただきまして感じたところであります。
 そして、浜田参考人からは、過去の事例について触れながら、被疑者が取調べの録音、録画について十分承知した上で取調べを受けるということと全面可視化がセットになることによって取調べの録音・録画制度が初めて機能するということになるとの御意見もいただきましたし、今後新たな冤罪を生まないようにするためにも被疑者に対する告知を義務付ける必要があるのではないかと考えますが、改めてこうした意見に対する法務省の御所見を是非伺いたいと思います。
#176
○国務大臣(岩城光英君) 取調べの録音、録画を行いますと、被疑者がそれを認識しているかどうかにかかわらず、被疑者の供述内容のみならず、その供述の状況、取調べ官の発問やその状況も含めて、取調べの状況がありのままに記録されます。したがいまして、仮に取調べ官が被疑者に虚偽の自白を誘発するような不適正な働きかけをし、被疑者がそれに応じて虚偽の自白をしたとすると、その状況も全て録音、録画されることになります。
 そして、先ほど刑事局長からお答えしたとおり、取調べの録音、録画は被疑者の同意を得なければ実施できないものではないため、被疑者の意思を確認する前提としての告知を行う法的必要性に欠けると考えられますことから、御指摘のような告知義務を設けるまでの必要はないと考えております。
 いずれにいたしましても、録音、録画には、被疑者の供述の任意性等の的確な立証に資する、取調べの適正な実施に資するという有用性があり、真犯人の適正、迅速な処罰とともに誤判の防止にも資するものと考えております。引き続き、これらの有用性を生かせるよう適切に運用していくことが重要であると考えております。
#177
○谷亮子君 大臣、ありがとうございました。
 やはりその適正性を担保された運用体制というものが非常に重要なことであると同時に、そうした今後被疑者に対しての取調べ段階での録音、録画の告知の在り方についても再度御検討いただきたいなというふうに思っております。
 また、通信傍受法の制定に際しましては、一九九八年の第百四十二回国会に提出されました法案を見てみますと、例えば、政府を転覆するなど日本国憲法に基づく基本秩序の破壊を目的として暴動を起こす罪である内乱罪や、外国から我が国に対する武力行使があった際にその国の軍に参加したり協力したりする罪である外患援助罪など、現行法よりはるかに多数の犯罪が対象とされておりました。
 また、通信傍受が新たに法制化される制度であったため、その活用に慎重を期して、特に当時、その捜査手法が必要不可欠と考えられた犯罪類型に限定するとの考え方や、通信傍受法の持つ強度の権利侵害性に対する強い批判を受け、一九九九年の第百四十五回国会の衆議院法務委員会において、通信の傍受を必要最小限度の範囲のものとするために、当時の世の中で一番心配の多い順ということで、薬物犯罪、銃器犯罪、組織的な殺人及び集団密航に絞り込む修正等が行われまして、一九九九年八月に成立をいたしまして、この通信傍受法は翌年、一年後の二〇〇〇年八月に施行されたというこれまでの状況でございます。
   〔理事西田昌司君退席、委員長着席〕
 そして、今回の改正案では、通信傍受の対象犯罪を、薬物犯罪、銃器犯罪、組織的な殺人及び集団密航という現行の通信傍受が規定する四つの犯罪類型から、あらかじめ定められた役割の分担に従って行動する人の結合体により行われるものに限るという要件を課した上で、殺傷犯関係、逮捕及び監禁、未成年者略取及び誘拐、窃盗、強盗、詐欺、恐喝、児童ポルノ関係の罪を追加することとされているわけでございます。
 そこで、まず、ただいま述べました経緯によりまして、現行の通信傍受法におきまして、政府原案に対しその対象となる犯罪を四つの犯罪類型に限定する修正が当時の与党、自民党、自由党、公明党によって行われた趣旨に関しまして政府としてはどのような御認識をお持ちでいらっしゃるのか、お聞かせいただきたいと思います。
#178
○政府参考人(林眞琴君) 現行の通信傍受法におきまして、政府原案に対しまして、当時の与党修正におきまして対象犯罪が四罪種に限定されたわけでございますけれども、その理由につきましては、この法律案が憲法の保障する通信の秘密を制約するものであるほか、我が国で初めて行われる通信傍受の法案であることに鑑み、対象犯罪については、平穏な社会生活を守るために通信傍受が捜査手法として必要不可欠と考えられる最小限度の組織的な犯罪に限定することとした、こういった形で当時の審議において説明されているものと承知しております。
#179
○谷亮子君 ありがとうございました。
 ただいま御答弁いただきましたように、通信傍受につきましては、当時我が国で初めて行われることであるということでございましたから、その対象犯罪につきましては、ただいま御答弁いただきました、平穏な社会生活を送るために通信傍受が捜査手法として必要不可欠と考えられたため、その中でも最小限度の組織犯罪に限定することとされたということであったということで理解をいたしました。
 今回の改正法案では、対象犯罪に追加されようとしている窃盗、詐欺、恐喝等につきましては、当初国会に提出された通信傍受法案においては対象犯罪とされていなかった犯罪類型であるということは承知いたしておりますが、こうした状況を踏まえまして、窃盗、詐欺、恐喝等の犯罪を今回の改正法案で新たに通信傍受の対象犯罪とすることとなっております。
 そして、対象犯罪の拡大につきましては、振り込め詐欺を始めとする特殊詐欺被害の増大や窃盗団の事件で検挙率が上がらないなどの事情がありまして、窃盗や詐欺事件は、軽微なものを含めると年間約百万件発生していると言われているわけでございます。
 このように、対象犯罪が拡大されることによりまして今後更に多くの国民の皆様が通信傍受の対象となることによって、捜査機関が犯罪捜査の手段として携帯電話ですとか固定電話を傍受して会話を聞いたり、また電子メールやファクスなどを傍受することが認められていることから、犯罪と関係のない情報についても傍受されてしまうという心配もあるため、国民のプライバシーが侵害されるのではないかという国民の皆様からの心配の声も聞かれているほか、特別部会におかれましても、犯罪と無関係の会話まで聞かれてプライバシーが侵されるといった意見も出ておりました。
 通信傍受の対象を拡大することとされた経緯につきまして、また、国民にプライバシーが侵害されるということをどのように理解してもらおうとお考えなのか、お聞かせいただきたいと思います。
#180
○国務大臣(岩城光英君) 通信傍受法の改正でありますが、取調べ及び供述調書への過度の依存から脱却を図るための証拠収集方法の適正化、多様化に資する方策の一つとして必要かつ有意義なものでございます。
 すなわち、組織的な犯罪等におきましては首謀者の関与状況等を含めた事案の解明が求められますが、現行法の下では客観的な証拠を収集する方法が十分ではありません。そこで、その解明を図るため末端の実行者など組織内部の者の取調べによって供述を得ようとすることとなり、そのことが取調べ及び供述調書に過度に依存せざるを得ない状況となっている要因の一つとなっております。
 他方、近時、一般国民を標的とした暴力団員によると見られる殺傷事案が相次いでおります。また、特殊詐欺のような通信傍受法の施行後に新たに発生した犯罪事象による被害が深刻になっております。このように一般国民にとって脅威となる事犯が社会問題化しており、このような事案の解明の要請はより一層強くなっております。また、組織的な犯罪等におきましては、組織防衛の一環として、末端の実行者等が警察に検挙された場合には徹底して供述を拒否するよう厳しく統制がなされるなど、事案の解明に資する供述を得ることが非常に困難になってきております。
 そこで、通信傍受法施行後の犯罪情勢の変化等を踏まえ、通信傍受の対象犯罪を拡大することにより、組織的な犯罪等において事案の解明に資する客観的な証拠をより広範に収集することが可能となり、証拠収集に占める取調べの比重を低下させるものでございます。
 もとより、新たに対象犯罪に追加される罪についても、捜査機関が通信傍受を行うためには、裁判官が、他の捜査方法では犯人を特定することが著しく困難であることなど、通信傍受法が定める厳格な要件を満たしていると認めた場合に発付される傍受令状が必要であります。さらに、新たに追加される罪につきましては一定の組織性の要件を加え、それをも満たす場合でなければ傍受令状が発付されないこととしております。
 したがいまして、実際にこれらの厳格な要件を満たす事案は組織的な犯罪に限られますことから、一般国民の通信の秘密やプライバシーが脅かされるおそれが高まるといった懸念は当たらないと、そのように考えております。
#181
○谷亮子君 ありがとうございました。
 首謀者のやはり背後関係等も含む捜査手法ということも含まれているのだというふうに思いますけれども、こういった事犯については誰もが被害を受ける可能性があるということも前回の対政府質疑で大臣から御答弁いただきましたが、やはりこういった事犯については誰もが犯罪を受ける可能性がある上にということで、これは考え方もう一つあると思うんですね。誰もがやはり通信傍受の対象となり得る可能性も含んでいるということも同時に考えなければならないと思っております。
 また、振り込め詐欺などのように、不特定の人に対して直接対面することなく電話、メールなどを通じて金銭等をだまし取る詐欺である特殊詐欺による被害の昨年の被害額は四百七十六億八千万円でございまして、前年の五百六十五億五千万よりも前年比八十八億七千万円減となりまして、被害額が六年ぶりに減少しましたけれども、三年連続で四百億円を突破しているという状況にまだございます。また、認知件数については一万三千八百二十八件と、前年比四百三十六件増となっておりまして、依然としてこれは高水準で推移をしておりました。
 そして、地域別を見てみますと、東京、神奈川、千葉、埼玉の一都三県は被害額が前年比で約二、三割減っておりましたけれども、岡山県につきましては前年比八八%増の十六億円、福岡は前年比五〇%増の十九億円、大阪は前年比一六%増の四十二億円と、これは西日本の被害拡大が非常に目立っていたという状況にございました。このことは、首都圏での取締りが強化をされまして、現金の受取役らが新幹線で移動しやすい地域に集中しているためと見られているということでございました。
 先ほども触れさせていただきましたとおり、警察の取締り強化によりまして特殊詐欺の被害額は減少傾向にございますけれども、被害者の年齢別では四分の三が六十五歳以上の高齢者であるなど、まさに悪質な犯罪であると考えられます。また、依然として事件の認知件数は増加しているという状況にありまして、これは事件の首謀者の摘発が進んでいないということも理由なのではないかなと考えられます。
 今回の改正法案によりまして窃盗や詐欺等が通信傍受の対象犯罪に追加されていますが、国民にとって極めて重大で脅威である振り込め詐欺等の特殊詐欺についても、首謀者等の背後関係を含む事案の解明が進むことによりまして、日々の生活、そして安全、安心を求める国民の皆様の声に是非応えていただきたいなと、また国民の皆様の心配等々も是非酌み取っていただきたいなというふうに思っております。
 それでは次に、新たな傍受の実施方法の使い分けについても伺っておきたいと思います。
 今回の改正案では、新たに、通信事業者が通信を暗号化した上で捜査機関の施設に設置された特定電子計算機に伝送し、それを直ちに復号した上で捜査官がその内容の聴取をリアルタイムで行う方法と、捜査機関の施設において傍受を実施する際にも、伝送された通信を暗号化し一時的に保存した上で事後的に復号し再生してその内容を聴取する方法、そして、通信事業者等の施設において傍受を実施する際に、捜査官が傍受の実施場所にいない間に行われる全ての通信を通信事業者が暗号化した上で一時的に保存をしておき、事後的に通信事業者が復号して、その上で通信事業者の立会いの下、再生してその内容を聴取することが可能とされているわけでございます。
 そこで、改正案に盛り込まれているこうした新たな三つの傍受の方法に関しまして今後どのような使い分けを考えておられるのか、お聞かせいただきたいと思います。
#182
○政府参考人(林眞琴君) 傍受の実施方法といたしまして、今回の新たな三つの手法、どういった場合にその一時的保存を命じて行う通信傍受の実施の手続あるいは特定電子計算機を用いる通信傍受の実施の手続によるか、こういったことにつきましては、個別具体的な事案ごとに、まず事件の内容であります、あるいは傍受の実施中に行われることが予想される犯罪に関連する通信の内容、また必要な電気通信回線の整備の状況、こういったことを考慮して個別に判断していくものとなると思います。
 例えば、まず一時的保存を命じて行う通信傍受の実施手続を例に取りますと、これにつきましてはリアルタイムではないということになりますので、こういった手続を行う場合には、例えば、既に行われた殺人事件であって、これから重要な物的な証拠が隠滅される余地は少なくて、傍受のむしろ主たる狙いは被疑者らの関与や共謀の立証に不可欠な口裏合わせのための通信、こういったものを捉える、こういうことにその主たる狙いがあるような場合には、被疑者らがその事件に関連する内容の通信を行う回数も多くないと予想されますので、被疑者らの通信をリアルタイムで傍受で行うのではなくて、通信を一時的に保存しておく方法により捜査の効率化を図ることが可能であろうかと思います。
 他方で、リアルタイムで行うべき事案といたしましては、薬物犯罪のように反復継続して行われているような事案でありますれば、やはりリアルタイムで傍受を行って、その傍受の結果を踏まえて更に必要な捜査をリアルタイムな形で行っていくというような必要性があるような事案もございますので、そういった場合については当然リアルタイムで、従前のようにリアルタイムの方式で行うということになろうかと思います。
 また、特定電子計算機方式と立会人を置く方式との例えば使い分けにつきましては、特定電子計算機を用いる通信傍受の実施の手続につきましては、これを使う前提といたしまして、やはり特定電子計算機の整備はもとよりでございますが、送信装置等の機器を整備するほかに、通信事業者等の施設から特定電子計算機に通信を伝送するための必要なセキュリティーが確保された電気通信回線というものを整備する必要がございます。そこで、この必要なこういった機器でありますとか電気通信回線が整備された場合には、この特定電子計算機を用いる通信傍受の実施の手続によることができることとなるものと考えられます。
#183
○谷亮子君 ありがとうございました。
 個別にそれぞれに判断されていくということで、通信を一時的に保存しておく方法を選択された場合はまたその効率化を図っていくということにつながるということで、ほかの捜査活動に人員と時間を振り向けていくということができれば捜査の効率化を図ることになりまして、証拠の収集手段が充実し、その成果を用いた取調べによって供述の獲得が容易になるということであれば、それはまさに取調べへの過度の依存の是正につながっていくと思いますので、新たな三つの傍受の方法を効果的に使い分けていただきたいというふうに思っています。
 また、適正性を担保するという意味では、先ほど小川先生の御質疑の中にもございましたけれども、やはりその始まりが、通信事業者が通信を暗号化するということや、捜査官が傍受の実施場所にいない間に行われる全ての通信を通信事業者が暗号化した上で一時的に保存しておくなど、その運用の始まりを通信事業者に委ねられているということで、その担保策としては暗号化されるから大丈夫というふうにされていますが、担保策というのは一つしかないというのも現状だというふうに思います。
 通信事業者には義務があるとされているとなっておりますけれども、確かに現在における暗号技術等は大変すばらしいものがあると思いますし、このことは次回の質疑で伺わせていただきたいというふうに思いました。
 続けて伺いたいと思いますが、今回の改正案によりまして、捜査機関の施設において特定電子計算機を用いる通信傍受の実施方法では、現行法の要求する通信事業者の立会いは不要となります。
 現行の通信傍受法の制定に際しまして、衆議院法務委員会におきましては、傍受の実施の適正を確保するため、傍受を実施するときには立会人を常時立ち会わせなければならないものとするとともに、立会人は検察官又は司法警察員に対し当該傍受の実施に関して意見を述べることができるものと修正が行われました。この修正によって、現行法の下で求められる立会人の役割は、傍受実施の際の常時立会い、実施終了後に裁判所へ提出される傍受の原記録への署名、封印手続は、令状記載のとおりに傍受が実施されているのか適正性をチェックするとともに、データの改ざん、複写等の防止機能を担うものとされております。
 そこで、このような立会人を不要とすることにより、特定電子計算機に不正を加えられるおそれや、リアルタイムで人が監視するということで生じていた捜査機関に対する緊張、牽制機能も機械の場合では相当程度減じられてしまうことになるのではないかという指摘もあるところでございますが、立会人をなくすことの妥当性について、法務省に伺いたいと思います。
#184
○政府参考人(林眞琴君) 現行通信傍受法で行いますこの傍受の適正というのは、基本的には、捜査機関が傍受した通信は全て漏らさずその傍受の原記録に記録されて、それが裁判官で保管されることによって事後検証が可能になる、こういうことによって担保されているわけでございます。
 それとの関連で現行傍受法におきまして立会人の役割というものがあるわけでございまして、その求められている役割といいますのは、一つには、傍受のための機器に接続する通信手段が傍受令状により許可されたものに間違いがないかどうか、あるいは許可されている期間が守られているかどうか、あるいは傍受をした通信等について全て録音等の記録がなされているかどうか、こういった外形的な事項についてチェックすることのほかに、傍受の中断、終了の際に、裁判官に提出される傍受をした通信を記録した記録媒体について改変を防止するための封印を行うこと、こういったことの役割を果たすものとされているわけでございます。
 今回の特定電子計算機方式によるものにおきましては、その手続では、まずは通信事業者が傍受令状により許可された通信手段を用いた通信を許可された期間に即して特定電子計算機へ伝送するというふうにされておりますので、このことから、先ほど立会人の役割として申し上げましたもののうちの傍受のために機器に接続する通信手段が傍受令状により許可されたものに間違いがないかどうか、あるいは許可された期間が守られているかどうか、こういったことの適正は担保されるものと考えられます。
 また、現行通信傍受法において、立会人が傍受をした通信等について全て録音、録画等の記録がなされているかどうかをチェックして、また、裁判官に提出する記録媒体の封印を行うということとされておりますが、この点につきましては、この特定電子計算機が傍受をした通信の全てと傍受の経過、これを自動的に、かつ改変できないように暗号化して記録すること、このことによって担保されると考えます。したがいまして、立会人を置かずに記録媒体の封印を行わないことといたしましても、こうした特定電子計算機の機能により手続の適正は確保されるものと考えます。
 また、現行法の中で立会人が行う外形的事項のチェックの一つといたしまして、捜査官が該当性判断のための傍受の際の機器のスイッチのオン、オフというものを行っているかどうか、これを外形的にチェックするということが含まれております。
 もっとも、仮に捜査官が傍受機器のスイッチのオン、オフを行っていないことを立会人が認識し指摘し得ることがあるといたしましても、捜査官が適正に該当性判断をして傍受を継続しているかどうかにつきましては最終的にはこの通信の内容というものを踏まえなければ判断することは困難でございまして、やはり現行通信傍受法の該当性判断のための傍受の適正は、基本的には傍受をした通信が全て傍受の原記録に記録されて事後検証が可能となることによって担保されているわけでございます。
 この点について、特定電子計算機を用いる手続におきましては、その該当性判断のために傍受したものも含めまして、傍受をした通信が全て改変できない形で自動的に記録媒体に記録され事後的に検証され得ることとなりますので、立会人がいる場合と同様に傍受の実施の適正が確保されるものと考えます。したがいまして、本法案におきまして特定電子計算機を用いる場合におきまして立会人を置かないことといたしましても、この該当性判断のための傍受等が適正に行われるということを十分に確保できるものと考えております。
#185
○谷亮子君 ありがとうございました。
 ただいまは、改正法により導入する新たな傍受の実施方法によって、立会人を置くことに代えて暗号技術等を活用することによって手続の適正を確保するといった目的があるということなのだというふうに思いました。
 現行の通信傍受法は、その手続の公正さを担保するために捜査機関以外の第三者を立会人とすることとしていますけれども、今回の改正案における新たな傍受の実施方法においては、暗号技術等の進歩に伴いまして、これを活用した技術的な措置を講じることによりまして立会人を立ち会わせた場合と同様の通信傍受の適正を確保することによってこうした立会いを不要とされたものであるというふうに理解をいたしました。
 現行の通信傍受法におきましては、通信傍受を実施する間、通信事業者が立会人として常時立ち会うこととされており、また傍受の実施の場所についても、傍受事業者の施設を利用するということであれば、通信事業者に多大な人的、物的負担を強いることにつながっていくわけであります。そこで、今回の改正案で技術的な措置を講じることによりまして立会人を立ち会わせた場合と同様の通信傍受の適正を確保することが今後可能となって、その負担が軽減されるということでございます。
 やはり立会人がいなくなるということによる心配を払拭するために、新しい傍受方法が適正に運用されるための措置ももう少し必要なのではないかなと考えております。このことにつきましては、河野国家公安委員長に本日御出席いただいておりますので、伺いたいと思います。
 衆議院における質疑におきましては、捜査機関の施設である警察署内で特定電子計算機を用いて通信傍受を行う際には、改正案では不要とされていた通信事業者の立会いについては、当該事件の捜査に従事していない警察官等が現場において必要な指導を行うことにより傍受又は再生の実施状況について適正を確保するなどと御答弁されたことについて、警察当局としてはどのように受け止められているのか、お聞かせいただきたいと思います。
#186
○国務大臣(河野太郎君) 今度の新しい方式では、全ての傍受した結果を機械的に暗号化して記録をすることになりますので、現行法で立会人が果たしている役割を漏れなく代替をすることができるということで、制度による適正化は担保されていると思います。
 しかし、今度は新しい高度な機械を使うことになりますから、この機械がきちんと使われなければいけないわけでございます。傍受をしている捜査員に対しまして、専門性を持った警察の人間が、傍受を始める前、あるいは傍受中、あるいはその後、きちんとそうした機器が適正に使われているということをやはり確認をし指導することは必要だというふうに思います。ですから、制度でまずきちんと担保をした上で、実務上もそうしたことが担保できるように、警察としてしっかりできるように指導してまいりたいと思います。
#187
○谷亮子君 御丁寧にありがとうございました。
 やはりその運用体制というものは非常に重要であるというふうに思います。特定電子計算機を用いて捜査機関の施設において通信傍受を行う場合には、当該事件の捜査に従事していない警察官又は警察職員のうち、各都道府県においては適正捜査の指導を行う部署の警察官が、傍受又は再生の実施状況について、適正を確保するため、現場において必要な指導をする体制を整えるという運用を行うなど、ただいま河野大臣からお話がございましたとおり、警察側からこうした体制をきちんと整えていくということが衆議院の方で御答弁されたところでございました。
 こうしたことを踏まえた上で、続けてお伺いいたしますけれども、この運用では、これまで第三者が立会いで果たしてきた外形的なチェックが身内の警察官による監督になるということで、これまでの運用体制よりも心配されるとの見方につきましてはどのようにお考えになりますでしょうか。
#188
○政府参考人(三浦正充君) これまで法務省や国家公安委員会委員長から答弁がございましたように、警察施設で通信傍受を行う場合には特定電子計算機というものを用いるわけでございますけれども、この機械は、全ての傍受結果を機械的かつ確実に暗号化処理をして記録する機能を有し、また当該機器自体にもセキュリティーチップが搭載をされ、プログラムは改ざん不可能なものとされているところであります。こうした特定電子計算機の機能によりまして、現行制度において立会人が果たす役割は漏れなく代替をされるというのがまず基本的な認識でございます。
 もっとも、新たな方式による通信傍受では、技術的に高度な機器を使用することなどから、その適正かつ効果的な実施を担保するため、専門的知見を有する警察官等が必要な指導を行う体制を整えることを検討しております。体制や指導方法を含むその具体的な運用の在り方につきましては今後検討することとなりますけれども、例えば警察本部の適正捜査の指導を担当する警察官等で通信傍受を実施する事件の捜査に従事していない者、また情報通信に関する専門的知見を有する警察庁の技官などを想定をしております。こうした者に、必要に応じ、傍受の実施の現場等において法令手続や技術面の指導を行わせることなどを想定をしております。
 また、こうした指導以前の問題として、警察としては、傍受令状の請求に際しては、逮捕状や捜索差押許可状の請求と比べましても非常に重い内部手続を設けております。例えば、請求権者を警視以上の者、逮捕状の場合には警部以上でございますけれども、これに比べ、警視以上とし、また、傍受令状の請求の際は警察本部長の事前の承認を受けるということにしているところでございます。
 このように、通信傍受を他の捜査手法にも増して厳格に行うべきものと位置付けまして組織的に慎重かつ適正な運用に努めているところでございまして、そのことは新しい制度の下でも全く変わるものではございません。
#189
○谷亮子君 ありがとうございました。適正性を担保した制度の体制構築が今後されていくものと期待しております。
 そして最後に、新たな通信手段と通信傍受法の傍受対象通信との関係についても伺っておきたいと思います。
 今般、多くの方々がLINEやスカイプなどの新たに出てきている通信手段によりまして会話やメールなどメッセージのやり取りをしていますけれども、このような特定の事業者が提供しているプログラムないしアプリケーションを使った通信などについても、今後、通信傍受による傍受の対象になるのかについて、法務省に伺います。
#190
○政府参考人(林眞琴君) これは現行通信傍受法の問題でございますが、通信傍受法は、傍受の対象となる通信の種類について通信というのみ規定していることから、例えばLINEのようないわゆるアプリを用いてインターネットを介するような方式による音声通信、こういったものでありましても、この通信傍受法が規定する通信に当たる限り、同法の規定による通信傍受を行うことは法的に可能である、対象となっているということでございます。
#191
○谷亮子君 分かりました。
 時間となりましたので、終わります。ありがとうございました。
#192
○委員長(魚住裕一郎君) 本日の審査はこの程度にとどめ、これにて散会いたします。
   午後四時十六分散会
ソース: 国立国会図書館
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