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2016/05/10 第190回国会 参議院 参議院会議録情報 第190回国会 法務委員会 第12号
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2016/05/10 第190回国会 参議院

参議院会議録情報 第190回国会 法務委員会 第12号

#1
第190回国会 法務委員会 第12号
平成二十八年五月十日(火曜日)
   午前十時開会
    ─────────────
  出席者は左のとおり。
    委員長         魚住裕一郎君
    理 事
                西田 昌司君
                三宅 伸吾君
                有田 芳生君
                矢倉 克夫君
    委 員
                猪口 邦子君
                田中  茂君
                鶴保 庸介君
                牧野たかお君
                丸山 和也君
                溝手 顕正君
                柳本 卓治君
                江田 五月君
                小川 敏夫君
                加藤 敏幸君
                真山 勇一君
                仁比 聡平君
                谷  亮子君
   国務大臣
       法務大臣     岩城 光英君
       国務大臣
       (国家公安委員
       会委員長)    河野 太郎君
   副大臣
       法務副大臣    盛山 正仁君
   大臣政務官
       法務大臣政務官  田所 嘉徳君
   最高裁判所長官代理者
       最高裁判所事務
       総局刑事局長   平木 正洋君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        櫟原 利明君
   政府参考人
       警察庁長官官房
       審議官      斉藤  実君
       警察庁刑事局長  三浦 正充君
       法務省刑事局長  林  眞琴君
    ─────────────
  本日の会議に付した案件
○政府参考人の出席要求に関する件
○刑事訴訟法等の一部を改正する法律案(第百八
 十九回国会内閣提出、衆議院送付)(継続案件
 )
    ─────────────
#2
○委員長(魚住裕一郎君) ただいまから法務委員会を開会いたします。
 政府参考人の出席要求に関する件についてお諮りいたします。
 刑事訴訟法等の一部を改正する法律案の審査のため、本日の委員会に、理事会協議のとおり、法務省刑事局長林眞琴君外二名を政府参考人として出席を求め、その説明を聴取することに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#3
○委員長(魚住裕一郎君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
    ─────────────
#4
○委員長(魚住裕一郎君) 刑事訴訟法等の一部を改正する法律案を議題とし、質疑を行います。
 質疑のある方は順次御発言願います。
#5
○小川敏夫君 民進党・新緑風会の小川敏夫でございます。
 前回、通信傍受の特定機能電子計算機についてお尋ねしまして、私の方で、幾ら法律にそうした機能を書いてもプログラムが改変されれば意味がないじゃないかという意見を述べさせていただきましたところ、私の質問に対してではないんですけれども、その後の委員の質疑の際に、警察庁の方から、そもそも改変ができないプログラムを用いるんだというような答弁がございました。
 そこについて、どういうふうにして改変ができないプログラムになっているのか、御説明をお願いいたします。
#6
○政府参考人(三浦正充君) 御質問の改ざんができないような仕組みということも含めまして、今回の特定電子計算機の機能、仕組みにつきまして、一度、若干長くなりますけれども、御説明をさせていただきたいと思います。
 この度の特定電子計算機を用いる通信傍受のシステムは、これまでも法務省などから度々御説明がありましたとおり、通信事業者から通信が暗号送信され、特定電子計算機で受信し、傍受、再生した通信が漏れなく原記録に暗号記録され、改ざんのおそれのない原記録が裁判所に提出され、裁判官による検証可能性が確実に担保されるという、これまで立会人の存在により担保してきた機能を機械的に代替をするものでございます。
 これらの機能の前提となるのは、暗号技術等の情報セキュリティーの分野において既に確立し実用化に至っている信頼性の高い技術が複数存在し、それを組み合わせることによって新たなシステムが構築されるという点であります。
 すなわち、第一に、近年の電子計算機の演算能力の向上や電子的な解析、攻撃技術の向上を加味した上でもおよそ解読不可能な強固な暗号技術。第二に、暗号鍵などの情報を物理的、電子的なハッキングなどから保護し、電子的に認証を行った端末とのみ当該暗号鍵の受渡しを行うセキュリティー機器、例えばセキュリティートークン、ICカードなどであります。第三に、電子計算機内のプログラムをセキュリティーチップによって保護し、その改ざん、恣意的な改変などを防止することができる電子計算機端末。第四に、インターネットから隔離されたネットワークで通信を行うことにより、通信時の情報漏えいや不正アクセスなどを確実に遮断するいわゆる閉域網の構築技術。こうしたものは既に技術として確立されており、安全性において十分に信頼できるものが広く実用化されております。
 そして、今回の特定電子計算機を用いる新たな通信傍受のシステムにおきましては、これらの技術を組み合わせることによりまして、通信事業者から強固に暗号化された通信を安全性の高い閉域網を経由して特定電子計算機に伝送し、特定電子計算機においては、プログラムにより自動的に警察が傍受、再生した通信を漏れなく原記録に暗号記録し、原記録は強固な暗号により、その後の人為的な改変が不可能な状態で裁判所に提出されることとなります。
 また、特定電子計算機それ自体にもプログラムの恣意的な改変や改ざん、不正なデータ読み出しを防止するセキュリティーチップが埋め込まれ、これによりプログラムの改ざんや装置の改造などが不可能となることに加えまして、法第九条第二号ロの規定によりまして、詳細については裁判所の方で検討されるものと承知をいたしておりますけれども、裁判所から暗号鍵、復号鍵を受け取るに当たっては、特定電子計算機としての機能を有し、機器のすり替えなどが行われていないことについて電子的な認証が行われることなどが想定されているところであります。
 加えて、特定電子計算機などの機器の調達に当たっても、信頼できるメーカーに機器の製造を発注すること、当該メーカーから確実にこれらの機能を備えた機器であることの証明書の発行を受けることとしておりまして、さらに、通信傍受を実施する際には、裁判官に対して当該証明書などを示して新たな手法の通信傍受を行うことについての相当性の判断をいただくことによりまして、当該機器がこれまで申し上げてきた機能を確実に有することも担保できるものと考えております。
 他方で、近時、企業からの情報漏えいなどの事案が報道されることがございます。こういったセキュリティーリスクが発生するのは、一つには、そもそも用いている暗号や電子認証の技術に技術的なセキュリティーホールが露見し安全性に問題があったり、ウイルス感染対策が十分に講じられていないなどその技術自体に脆弱性を有している場合、二つには、情報の蓄積、保管、処理などの過程に例えば人がUSBメモリーなどを用いて人為的に暗号化されていない情報を取り出したりする余地が存在するなど、故意であれ過失であれ、そのような人為的なプロセスからのセキュリティーリスクが発生している場合、この二点が原因として考えられるところであります。
 この度の新たな通信傍受のシステムにおいては、まさにこれらの点に特に配意をいたしております。すなわち、安全性が確認され信頼性の高いものとして実用化された技術を選定すること、及びこれまで立会人の存在が担保してきた通信傍受のプロセスについて、新しいシステムでは、故意のもの過失のものを含めて人為的に恣意的な処理が行われる余地を排除することとしております。
 これらの点については、私どもとしても十分な検討、調査を実施してきたところでありますけれども、先般の御視察でも説明がございましたITコンサル企業デロイトトーマツ社でございますが、こちらに通信傍受全体のプロセスや新しいシステムの内容を特に念入りに検証していただき、確実な技術の選定、人為的なリスクの排除という点を含めた安全性を確認をしていただいたところであります。
 こういったことによりまして、暗号化しても破られてしまうのではないか、あるいは暗号送信、受信の過程での情報漏えいのリスクはないのか、原記録が改ざんされ正しい記録が裁判官に提出されないのではないかといった点や、特定電子計算機の改ざんが行われるのではないか、すり替えられた偽物の機器が用いられるのではないかといった御懸念の点につきましても技術的に解消されているということについて改めて申し上げたいと思います。
 こうした新しいシステムにつきましては、この法案が成立をいたした場合には、裁判所とも連携をしつつ、三年以内という施行期間を見据えまして予算要求などを行い、着実に整備を進めてまいりたいと考えているところでございます。
#7
○小川敏夫君 長々と全部についていろいろお話しいただきましたけど、私は、暗号が解読されないかとか、第三者があるいはハッキングするなりして盗み聞きしないかとか、そういうことを聞いているわけじゃないんで。まさに、これを運用するのは警察ですから、そのプログラムを操作するのも警察ですから、ですから、その操作する警察官がプログラムについてこれを変更するというようなことができたりはしないかという不安を言わば訴えたわけでありまして、それについて、それはできないというようなお話でありました。
 ですから、その特定機能電子計算機を操作する警察官がそのプログラムを変更しようとしてもできないというその一点に絞って、もう少し、どうしてできないのか、どうしてそういうことができ得ないと断定できるのか、そのことについてもう少しお話しいただけませんでしょうか。
#8
○政府参考人(三浦正充君) 今回の特定電子計算機に係る送信装置及び受信装置にはソフトウエアの改ざん等を防止するTPMと呼ばれるセキュリティーチップが搭載をされているものでありまして、装置の改造はできないというように理解をしております。
 また、裁判所の発行する鍵は定められた装置でのみ機能をいたしますため、当該装置と別な装置に仮にすり替えられていたとすれば、暗号化された通信を復元することができないこととなります。さらに、送信装置、これは事業者側が持つ送信装置でございますが、この送信装置には、警察施設にございます受信装置、この設定を確認する機能がございますので、受信装置の改造やすり替えといった不正がありますと通信は送信をされないということになります。
 こうしたもろもろの機能によりまして、装置の改造やすり替えによって不正な傍受をすることはできないと考えているところでありまして、先ほど申し上げた民間のコンサルティング会社からもこういった趣旨の報告をいただいているところでございます。
#9
○小川敏夫君 できないできない、技術的にできないできないと言うけれども、特定機能電子計算機といったって、特定機能電子計算機なる特殊な電子計算機があるんじゃなくて、電子計算機にそういうプログラムをまさに入れ込むからそういう機能ができるわけでして、プログラム次第であります。そのプログラムを作成するのも人間でありますし、そのプログラムに従ってそれを操作をするのも人間であります。その人間がプログラムについて改変できる、そうした余地が技術的に全くないというのがどうも私理解できないんですね。
 それじゃ、絶対改変できないプログラムというものが存在するという、そういうことなんでしょうか。それとも、技術的に絶対改変できないプログラムなんて私はないんじゃないかと思うんですが、むしろそれは、プログラム自体は改変できるかもしれないけれども、システムとしてそういうプログラムの改変ができないような仕組みになっているというのか、どちらなんでしょうか。もう絶対改変できないプログラムが開発できたと、こういう御趣旨なんでしょうか。そうじゃなくて、プログラムというものは元々改変できる余地があるんだけど、警察における運用なり管理の仕組みにおいてシステムにおいて改変はできない、そういう仕組みになっているんだと、こういうことなんでしょうか。どちらでしょうか。
#10
○政府参考人(三浦正充君) それは、プログラム自体が改ざんが全くできないということよりは、むしろ先ほど申し上げているように、受信装置は法で定められた方法によって傍受を自動的に行うようにそもそも製造されておりまして、またソフトウエアの改ざん等を防止するTPM、これはトラステッド・プラットフォーム・モジュールというんだそうでありますけれども、こうしたセキュリティーチップが搭載をされているものでありまして、そうしたことから受信装置を不正に操作をすることができない、外から手を加えることができない、このように理解をいたしております。
#11
○小川敏夫君 どうも質問と答えがかみ合っていないんですよね。
 外から手を加えることはできない。私は、中からまさにその特定機能電子計算機を操作する人が手を加えることができたりしないかと聞いておるわけであります。
 ですから、私が聞いているのは、もうこの電子計算機のプログラムを技術的に絶対改変できない、もう誰もが変更できないという、そういうプログラムを開発したのか。でも、それは私は考えられないと思うんですけどね。そうすると、そういうプログラムが改変できないようなシステムをきちんと構築したということなのか。ですから、これどちらなんですか。今の答弁はどちらにもなっていないと思うんですけど。
#12
○政府参考人(三浦正充君) 結局のところ、管理者の権限がないとその変更ができないと、そうしたプログラムでありまして、私どもは、そうした管理者たる権限を持っていないという、そういうシステムとして構築をしておりますので、そのソフトウエアの改ざんができない、それが先ほど申し上げたセキュリティーチップの機能であるというように理解をしております。
#13
○小川敏夫君 その管理者というのは誰なんですか。
#14
○政府参考人(三浦正充君) それは、結局そのプログラムを製造したメーカーでありますし、また、裁判所の鍵とも関連をするのでありますけれども、この裁判所の発行する鍵というのは定められた装置でのみ機能をするというものでありまして、仮にその装置が別な装置にすり替えられる、プログラムの改ざん等が行われていれば、その暗号化された通信を復元することができない、そもそも特定電子計算機が機能しないと、そういう仕組みでございます。
#15
○小川敏夫君 いや、暗号化を復号する鍵の問題にすり替えないでください。別に、問題は、暗号化されたものを復号化することだけを聞いているんじゃないんで。例えば、この特定電子計算機の機能として法律には、一度復号、再生したら直ちに消去されるというような機能が入っておるわけです。これ、暗号化とは関係ないですよね。ですから、そうした法律に定められた機能が必ず、変更されない、守られるというプログラムになっているんでしょうけれども、しかし、そのプログラムを改変する人がいたらどうするんだということで聞いておるわけでありまして、暗号化云々ということとは関係ないんです。
 もっと広くこの特定電子計算機の機能が法律に書いてありますけれども、この法律に書いてある機能が改変される可能性がないと。改変できないプログラムというのは私はないと思うんですけれども、局長の答弁でもそういうものはないという前提で、ただ、管理者が管理しているからそういう改変の可能性はないんだという御趣旨の答弁だとお伺いしたんですがね。それで私は聞いたわけです、その管理者とは誰ですかと聞いたわけです。
#16
○政府参考人(三浦正充君) そのプログラムを作成をしたメーカーということに究極的にはなるのだと思いますけれども、先ほど私が申し上げたのは、その裁判所が発行する鍵は、定められた機能を持った特定計算機、つまり正しいソフトウエアを保有をしている計算機でのみ機能をするということでありまして、仮に改ざんがもし行われていたとすれば、もはや特定電子計算機としての機能を果たせなくなるという、つまり、もうその機械が機能しなくなるという、そういうことを申し上げたわけでございまして、そういった点においても改ざんができない、改ざんをしても機能しないと。改ざんはできないわけでありますけれども、仮にそうした改ざんが行われたとしても機能をしないという、そういう仕組みに全体としてなっているという趣旨でございます。
#17
○小川敏夫君 私が聞いたのは、管理者は誰ですかとお尋ねしたわけでして、今の答弁ですと、そうすると、プログラムを製造した、作成したでしょうか、このプログラムを作成したメーカーだと、こういう御趣旨ですか。
#18
○政府参考人(三浦正充君) この特定電子計算機の仕組みというのは、単なる一つの機械というのではなくて一つのシステムでございまして、もとよりメーカーがその機器を製造するわけでございますけれども、先ほど来申し上げているとおり、裁判所が発行する鍵をもって初めて機能をする、そういうものでございますので、その内容がもし変更されていれば機能しなくなるという意味でありまして、その全体のシステムがこうした改ざん防止の機能を持っていると、そのように理解をしております。
#19
○小川敏夫君 いやいや、全体の機能がって、そういうんじゃ答弁になっていないと思うんですよね。
 要するに、じゃ、また同じことを聞きます。絶対改変できないプログラムがあるから、これは絶対改変できないプログラムを使っているから心配しないでくださいと、そういう趣旨ですか、違いますか。一言で答えてください。
#20
○政府参考人(三浦正充君) まず、プログラム自体も強固に保護されているわけでありまして、先ほど来申し上げているように、このソフトウエアの改ざん等を防止するセキュリティーチップが搭載をされておりますので、そうした装置の改造というものがそもそもできない、ほとんどもう不可能に近いというように考えています。よしんば、そうした改ざんが万が一行われたとした場合であっても、裁判所が発行する鍵をもって機能をするものでありますが、その装置のプログラムの改ざんが行われていればその鍵が機能しないと、言わば箱が開けられないというような状態になるわけでありますので、そうした意味においてもソフトウエアの改ざんができない、できないといいますか、ソフトウエアの改ざんが行われたとしても機能しないと、そういう仕組みになっているわけでございます。
#21
○小川敏夫君 そうすると、ソフトウエアの改ざんが行われたとしても機能できないというから、ソフトウエアの改ざんが行われることを前提とした答弁ですよね。
 私は、プログラムでもソフトウエアでもいいけれども、そういうものはいつでも技術的に改変できると、絶対に変更できないプログラムなんというのは存在しないと思っているんですよ。ただ、絶対に技術的に改変できない、変更できないプログラムなんというのは存在しないという前提で、そういうことが改変されたり変更されたりしないという、ではシステム的な保障はどういう仕組みを構築しているのかと聞いておるわけです。
 それについて先ほど局長は、いや、プログラムを製造したメーカーが管理者として管理しているから大丈夫だというようなお話をありましたから議論しているんですけれども、全く堂々巡りして、私の質問の趣旨には何も答えていないで時間を空費しているんですけれども。
 ですから、絶対に改変できないプログラムなんというのは私はないという前提で聞いているんです、技術的にね。技術的に変更できないプログラムなんというのはないと思っているわけですよ。その前提で聞いているんですけれども、私の前提が間違いだと、絶対に改変できないプログラムはこの世に存在するんだと言うんなら、そういうふうに言ってください。絶対改変できないプログラムというものがないんで、技術的に改変できるプログラムが存在すると。なら、そのプログラムを改変できないシステム、仕組みはどのようにして担保されているのかと聞いておるわけです。
#22
○政府参考人(三浦正充君) 今回のその送信装置、受信装置には、ソフトウエアの改ざん等を防止する高度なセキュリティーチップが搭載をされておりますので、基本的にはその改ざん、変更はできないものというように御理解をいただければと思います。
#23
○小川敏夫君 だから、高度なセキュリティーチェックがあるから、第三者が勝手にそのパソコンを使うとか、第三者が勝手に入り込もうというのはかなり不可能だと思いますよ。でも、そのコンピューターを運用する人は当然そのセキュリティーチェックを分かっているでしょうから、その分かっているセキュリティーチェックに乗っかって改変をする、あるいは一時的に改変する、そういうことができたりはしないかというふうに私は不安を持っているから、そのことは大丈夫かと聞いているわけです。
 セキュリティーチェックがあるから大丈夫だといっても、そのセキュリティーチェックそのものを擦り抜ける、まさに運用する当事者がセキュリティーチェックを擦り抜ければ幾らでも技術的にはできるんじゃないでしょうか。
#24
○政府参考人(三浦正充君) 専ら警察のみがその機械を始めから最後まで操作を、操作をするといいますか動かすということであればそういったことになるのかもしれませんけれども、先ほど来申し上げているとおり、裁判所の発行する鍵に対応する必要があるわけでありまして、この鍵は定められた装置でのみ機能するということでありますので、仮にそうした変更、改ざん等が行われれば通信の復元ということができないということになりますので、およそ、何といいますか、傍受の機能を果たさないということになりますので、そうしたことをやる意味がないということになるんだと思います。
#25
○小川敏夫君 だから、鍵の問題にすり替えてもらっては困るんですよ。だって、特定電子計算機のこの機能は鍵の問題だけじゃないでしょう。暗号化してそれを復号化するという、鍵の問題だけじゃないですよね。この特定電子計算機は、ですから、さっきも言ったように、復号、再生したら再生したと同時に消去するという機能がある。あるいは、この情報を他のコンピューターに転送することができないと、こんなような機能が定められているわけですよ。ですから、鍵の問題にすり替えないでください。
 まさにこの法律が求めているこの要件、この機能、この機能が一時的にセキュリティーチェックを擦り抜けられるようなそんな改変をできないのかと私は聞いているわけで、裁判所のそのキーがなければ復号ができないかと、その復号だけの問題を聞いているわけじゃないです。
#26
○政府参考人(三浦正充君) 若干繰り返しの答弁となってしまうかもしれませんけれども、まず、ソフトウエアの改ざん自体がこのセキュリティーチップの機能によってできないものというように理解をいたしているわけであります。
 それから、裁判所の鍵の関係でありますけれども、結局、送られてくる通信、事業者から送られてくる通信というのは全て暗号化をされているわけでありまして、その暗号を解かなければそもそも傍受ということはできないわけでございますので、それはやはり、決してすり替えて申し上げているわけではなくて、その裁判所の発行する鍵が使えなければ特定電子計算機のその再生、暗号化された通信を再生をするという機能がそもそも果たせないわけでございますので、何といいましょうか、改ざんをする意味がないといいますか、その傍受ということが、そもそもその再生をすること自体ができなくなるということでございますので、そうした改ざん等は行われることはないというふうに理解をしております。
#27
○小川敏夫君 だから、私の質問の趣旨を理解していないのか、あるいは意図的にそらしているのか、暗号を復号化する鍵、別に私は暗号自体が改変されるかどうかということを聞いているんじゃないですよ。暗号自体が改変されるかどうかを聞いているんじゃないんで、この通信傍受法に定める特定電子計算機の機能全般について聞いているんです。
 ですから、繰り返し言っているように、この特定電子計算機は一度復号して再生したら直ちに消去されるという機能が法律上要件とされているわけですよ。これは暗号化とは関係ないですよ、キーとは関係ないですよ。あるいは、この情報を他のコンピューターに転送しようと思ってもそれはできないような法律の規定になっているわけですよ、この機能が。暗号化とは関係ないです。
 だから、そういう機能あるから大丈夫だとおっしゃるけれども、そういう機能は持っているといっても、そういう持っているコンピューターのプログラムの仕組みを、一時的であっても、あるいは恒久的であってもいいし、どのような方法であってもいいけれども、第三者、赤の他人じゃなくて、そのコンピューターを操作する捜査官が一時的にそういうプログラムに改変することができる可能性はないのかと、こういうふうに聞いておるわけでありまして、ないないないない言うから、なぜないのかと聞いておるわけですよ。
#28
○政府参考人(三浦正充君) 先ほど来申し上げているこのTPMというセキュリティーチップの機能というのは、これはもう社会的にも容認をされている、そうしたソフトウエアの改ざんを防止する機能を持ったものでございまして、これを確実に搭載をすることによりまして、一捜査員がそのソフトウエアを改ざんをするというようなことはできない仕組みというふうに理解をしております。
#29
○小川敏夫君 そのセキュリティーチェックは一捜査員が変更できないというのであれば、じゃ、そのセキュリティーチェックを管理して、それを、セキュリティーチェックを操作できる人はどなたなんですか。
#30
○政府参考人(三浦正充君) 結局、それはやはり、ちょっと私の説明が十分ではないかもしれませんけれども、その機器を製造するメーカー、それから鍵を発行する裁判所、そうした全体のシステムの中においてそういった改ざん防止措置がとられているということでございまして、あくまで警察はその全体のシステムの中の一ユーザーというような立場でありますので、管理者権限のないままにそのプログラムを変更するといったことはできないものというように理解をしているところであります。
#31
○小川敏夫君 質問をちょっと変えますけれども、この特定機能電子計算機の法律に定められた要件を備えたプログラムはどこが、誰が開発するんですか。
#32
○政府参考人(三浦正充君) それは今後、警察庁とそれからメーカー等で開発を進めていく、それから鍵の関係につきましては裁判所も関わるわけでございますけれども、そうした当事者で今後開発をしていくということを想定をしております。
#33
○小川敏夫君 プログラムは警察が開発するわけでしょう。ですから、警察はそのプログラムに伴うセキュリティーチェックも全て分かっているわけですよ。そうじゃないですか。開発者なんだから、セキュリティーチェックのその詳細も全て把握しているわけですよね。そういうことになるんじゃないですか。
#34
○政府参考人(三浦正充君) あくまで警察の方ではこういった仕様の機械を製造してほしいということでメーカーに発注をするわけでございまして、そうした警察の要請を、要請といいますか、そうした仕様を踏まえて技術的な詳細の部分についてはメーカー等が開発をするものというように理解をしておりますし、開発をするということと、またその管理者、コンピューターシステムの管理者の権限というものとはまた別でございますので、仮に警察が開発を依頼をしメーカーが開発をしたとしましても、その後、警察が自由にその中身を改変をするといったことはできないというような仕組みになっているわけであります。
#35
○小川敏夫君 こういうことですか。プログラムは、では、警察は意見を言うだけで、メーカーなり業者の方が開発すると。セキュリティーチェックは、当然、業者の方が開発してセキュリティーチェックを設けると。そのセキュリティーチェックの仕組みについては警察は全く知らない、だから警察は何もできない、セキュリティーチェックは業者だけが持っていると、こういうことを言いたいわけですか。
#36
○政府参考人(三浦正充君) 基本的にはそのように理解をしております。
#37
○小川敏夫君 だから、初めからそういうふうに言ってくれれば、もう三十三分も使っちゃったんです。
 法律に、この通信傍受法に特定電子計算機の機能の要件が書いてあります。普通こういう要件なり基準というものを定めると、そういう要件、基準に合っているかどうか、合致しているかどうかということをチェックする、そういうシステムが必要だと思うんですよ。あるいは、そういうコンピューターが運用されているという状態のときに正しく運用されているかどうかということを検査する、そういう仕組みが必要だと思うんですよね。この法律見ますと、特定機能電子計算機のその機能についてはこうしなさいという機能は書いてある。でも、その特定電子計算機の法律に定められた機能がまさに正しくそういう機能が備えられているかどうかをそれを審査する、あるいは検査するということに関しては法律上何も書いていないわけであります。
 どうなんでしょう、これは法律ではこういう特定機能の要件を備えたコンピューターでしか使えないと書いてあるけれども、実際に使用するコンピューターが法律上の要件に適合しているかどうか、これは審査するという仕組みはないんでしょうか。あるいは、運用上それを正しく運用されているかということを検査する、そういう仕組みはこの法律に書いていないんですけれども、そういう仕組みは考えているんでしょうか。
#38
○政府参考人(三浦正充君) 改正傍受法の第二十三条第二項に特定電子計算機の機能としてもろもろの機能が列挙されておりますけれども、特定電子計算機がこれらの機能を確実に有するということは法的要件でありまして、仮に当該機器を改造したり不正なプログラムを組み込む余地があるのであれば、それは法定の機能を充足した特定電子計算機とは認められないわけでありまして、したがいまして、傍受について令状審査に当たる裁判官の許可も得られないというように考えているところでございます。
 また、仕様書には、当然、この法律で定められた要件を満たすものというものを記載をするわけでございまして、メーカーが納入するに当たりましてはそうした機能を確実に備えているといった証明書もいただくことを予定をしておりまして、そういったメーカー側からの確認なども取りながら、確実にこの計算機が法定で定められた機能を有しているということを確認をしてまいりたいというように考えております。
#39
○小川敏夫君 そうすると、一言で言えば、このプログラムを開発した業者が、こうした刑事訴訟法で定めた機能を有していますという証明書をいただくから大丈夫ですと、こういうことですか。
#40
○政府参考人(三浦正充君) やはり最終的には製造をするメーカーの証明といいますか、我々はそれを見て、中を見て本当にその機能があるかどうかということを目で確かめることはできませんので、製造したメーカーにそうした証明をきちんといただくということは一つの方法であるというふうに思っています。
#41
○小川敏夫君 それが一つの方法なら、ほかの方法は何ですか。
#42
○政府参考人(三浦正充君) 一つと申し上げたのは、ちょっとほかに具体的な方法が今あるということではないのでありますけれども、先ほど来申し上げたように、実際に裁判所の鍵をもって初めて機能するといったようなことも含めまして全体のシステムがそのように構築をされているということにつきまして、その点について確実に確認をしてまいりたいというふうに思っています。
#43
○小川敏夫君 飛行機でも自動車でも法律で定められた基準というのがあるわけで、製造した人間が大丈夫ですといって証明書を出しただけじゃなくて、やはり基準に適合しているかどうかということをチェックするという仕組みがありますよね。
 この法律の場合には、法律の、この機能が、こうでなければならないという機能が書いてあるだけでして、実際に運用される計算機がそういう機能に適合しているかどうかを審査する、検査するという仕組みが全く法律に入っていません。
 ですから、これは、もしこの法律が通れば、これを実際に運用する警察の方で、やはりこの法律どおりの、特定電子計算機の機能が法律の要件を満たしている、完全に満たしているということを自ら責任を持って審査する、そして正しく運用されているということをきちんと検査するというシステムをきちんと採用しなければいけないと思うんですが、どうでしょう。
#44
○政府参考人(三浦正充君) 先ほど申し上げたメーカーからの証明書という方法以外にどういったそういった機器の確認の方法があるのかにつきましては、また今後、私どもとしても検討してまいりたいと考えております。
#45
○小川敏夫君 今日は公安委員長にお越しいただきました。
 私が抱いている問題意識は、法律にこのような特定電子計算機の有する機能というものが明記されている、明記されているけれども、実際にその電子計算機がこの法律の要件を満たしているかどうかを審査するそうした規定が入っておりません。それから、正しく運用されているかどうかを検査するという仕組みもこの法律の中に入っていません。
 そうすると、この法律施行後は、実際にこの特定電子計算機を使用する警察の中において、この法律どおりの要件が満たされた特定機能電子計算機が使用されているということを間違いがないように審査するあるいは検査すると、そういう運用上の私は仕組みを構築する必要があると思うんです。そこら辺について公安委員長のお考えを、あるいは御方針をお伺いしたいんですが。
#46
○国務大臣(河野太郎君) これまでも警察は通信傍受の適切な運営に、実施に努めてきたところでございます。今回、新しい制度を導入していただいたとしても、これまでと同様に適切な通信傍受を行い、国民の信頼を積み重ねていくということが大事でございまして、それができるようしっかり指導してまいりたいというふうに思っております。
 改正法が施行されることになれば、その施行までの間に国家公安委員会規則などの内部ルールをしっかりと整備をして、適切な機械が厳格に運用されるよう、委員の御指摘踏まえてしっかりできるよう、内部の統制ルールをしっかりと国家公安委員会規則などの形で作ってまいりたいというふうに思います。
#47
○小川敏夫君 では、この関係の質問は終わって、別のことに移りたいと思います。時間がちょっと予定より過ぎちゃったんですけどね。
 今日お配りしました資料がございます。これは、これまで度々法務大臣との間に議論をさせていただきました、例の通知の実効性の問題であります。
 通信傍受が濫用された場合にそれを事後的にチェックする機能として、裁判所に原記録が保管されているから大丈夫だという御指摘に対して、私は常々、しかし傍受記録が作成されない場合に通知が行かないんだから、通知を受けない人間は傍受の事実を知らないんだから裁判所に原記録を確認しようがないと、こういう観点から議論をさせていただきました。その点について、これまで私としては、どうも私の指摘に対してしっかりと正面から答弁いただいていないように思うんですけれども。
 それで、今日は一つの例でございます。お配りした資料は、平成二十六年に法務省から公表された通信傍受に関する国会報告であります。その中の七番というものがございました。その例をこれ取り上げたものでございます。
 通信傍受を実施した期間が、三件で、一つが三十日、一つが八日間、一つが二十日間の通信傍受を行ったと。傍受した通話の回数、七百二十八回、二百六十五回、四百八十七回と、これだけの通話を傍受したわけであります。しかし、犯罪該当通信はゼロ、ですから傍受令状が作成されていません。この表の一番下ですね、第二十二条第二項第一号、第三号と。これは通信傍受の際の傍受令状の作成の数ですから、なし。なしですから傍受令状は一つも作成されていません。
 そうすると、こんなに、七百二十八回、二百六十五回、四百八十七回も傍受されたこの被疑者に対して、あるいは被疑者と会話をした人に対して傍受をした通知は行っていませんですね。この事実認識はよろしいですか。
#48
○国務大臣(岩城光英君) 小川委員おただしのとおり、通知は行われておりません。
#49
○小川敏夫君 もちろん、これは大臣が悪いんじゃなくて、法律がそうなっているから、通知しなくていいから通知しないわけです。
 で、私の疑問です。こんなに、七百回、二百回、四百回以上も傍受された人が実は傍受されたこと自体を知らないと。この中には濫用に及ぶ傍受があるかもしれない、でも、傍受した内容の全てが裁判所に原記録があるからチェックできるといいますけれども、この傍受された人は通知を受けていないのにどうして裁判所の原記録を確認できるんでしょうか。
#50
○国務大臣(岩城光英君) おただしのとおり、一般論としましては、傍受を実施している間に通知の対象となる通信が一度も行われないことは、これはあり得るものと思っております。
 ただ、傍受の実施期間中に一度も通知の対象となる通信が行われなかったというのはあくまでも結果論でありまして、捜査官は、いつでも犯罪に関連する通信が行われ得るとの前提の下で該当性判断のための傍受を行うことになります。当初は通知の対象とならない通信でありましても、その後、話題が変わって通知の対象となる通信が行われ、あるいはその後の行われる別の通話において通知の対象となる通信が行われ、通知を受けた当該通信の当事者等により傍受の原記録がチェックされることを前提に該当性判断のための傍受を行うのでありまして、そういった違法な傍受を行うことはできないものと考えております。
#51
○小川敏夫君 いや、私は、一つの被疑者から七百二十八回も通話を傍受したということがいかぬと言っているんじゃないんですよ。あるかもしれないということでスポットを繰り返したということは、もう法律はそれを許しているわけですから。
 私が聞いているのは、この傍受を受けた人が自分は濫用に及ぶ通信傍受を受けたんじゃないかといって確認するすべがありますかと聞いているわけです。
#52
○国務大臣(岩城光英君) 先ほど申し上げましたとおり、通知が知らされるというか、そういったことは行かないことは事実であります。
#53
○小川敏夫君 だから、通知が行かないわけです。だから、傍受を受けたことを多分知らないですね。だから、裁判所に原記録があるから違法な傍受をすれば直ちに露見するといっても、裁判所に原記録があること自体を知らないわけですよ。だから、違法な傍受が行われてもチェックできないじゃないですか。チェック機能を果たしていないと、だから私は指摘しているわけです。
 だから、捜査官がやっちゃいけないことはやらないんだから大丈夫だとおっしゃりたいんでしょうけれども、それは精神論であって、私は、システム的にできない仕組みは構築されているかということを聞いているわけです。
 私は、警察官が熱心に捜査して犯罪を傍受することをいかぬと言っているわけじゃないんで。ただ、間違って、あるいはよこしまな気持ちになって、本来は傍受してはいけない通信を、本来は許されていない違法な傍受をしてしまったということがあった場合に、これまで大臣は、事後的にチェックできる、裁判所に原記録があるから、それを見て直ちにそうした違法な傍受が露見するから、だから、事後的なチェックがあるから、捜査官は直ちに事後的にチェックされて露見するようなそうした不正はやらないと、事後的なチェック機能が働いているから大丈夫だとおっしゃったわけです。で、私は聞いているわけです。
 だって、違法な傍受を仮にしていたとしても、裁判所に原記録があるということを通知が行かないから知らないんですよ。機能はしていないじゃないですか。とりわけ、自ら違法な傍受をしているということが分かればますます通知しませんよね。すなわち、捜査官は、ここで傍受しているこの通話は通知しなくていいんだという前提でこれ聞くことができるわけです。通知するのは第三者が、通信事業者が通知するんじゃないですから、捜査官自身が通知するわけですから。通知する捜査官自身が犯罪関連通信がなければ通知しなくていいんだと思っているから、通知しないなら原記録で露見することなんかあり得ないと。よほど奇跡的なことが、出来事が起きない限りあり得ないとなれば、事後的チェックは利かないんだと、じゃ、やり放題という気になるんじゃないかと思うんです。
 ですから、捜査官が裁判所に、傍受の全部が記録されて裁判所に原記録があるから、原記録を確認すれば違法な傍受があれば直ちに露見するから、直ちに不正が露見するようなことは捜査官はやらないだろうという、だからチェック機能は働いているという法務大臣の御説明でした。
 私は、再三再三、いや、通知が行かないんだからチェック機能は働いていないという議論をこれまでも繰り返し繰り返ししてきたわけです。で、この例を出しました。大臣もお認めになりましたよね。通知を受けていない人間が裁判所の原記録を確認しようがないと。じゃ、チェック機能は働いていないんじゃないでしょうか。いかがですか。
#54
○国務大臣(岩城光英君) まず、あくまでも犯罪と無関係な通信、これにつきましてはスポット的な傍受に限られております。そして、傍受記録にはもちろんされません。
 その上で申し上げますけれども、傍受記録に記録されていない通信の内容は、ほかの人に知らせたり、また使用したりすることはできず、そのような通信の内容を使用して通信の秘密を侵したときは、懲戒処分の対象となり得るのみならず、刑事罰の対象ともなり得ます。
 仮に、傍受した通信を傍受記録には一切記録しないこととした場合、捜査官は、その通信の内容がいかに組織的な犯罪の真相解明に資するものであり捜査を進めていく上で必要であったといたしましても、傍受記録がない以上、通信の内容の使用が適法であるとの説明ができないから使用することはできなくなります。
 そして、傍受令状そのものが、限定された組織的な対象犯罪の高度の嫌疑があり、また、犯罪関連通信が行われる蓋然性が認められ、他の捜査手法を尽くし通信傍受以外の方法では犯人の特定等が著しく困難な状況にあるなどの通信傍受法が定める厳格な要件を満たしていると裁判官が認めた場合にのみ発付されるものであります。すなわち、傍受令状が発付される事件は、組織的に行われた重大な事件であり、事案の真相を解明して首謀者を含めた犯人を検挙し処罰する必要性が高く、他方で、通常の捜査手法では犯行状況や首謀者の特定等に資する証拠の収集が困難なものである、そういったものでございます。
 それにもかかわらず、捜査官が、傍受令状の発付を受けた事件、こうした通信傍受により証拠を収集して真相を解明し犯人を検挙する必要性が極めて高い事件について、その証拠となる通信を傍受しながらこれを傍受記録に記録せず、証拠として用いる道を放棄するといったことは、これは合理的な捜査官の行動としておよそ想定できないものと、そのように考えております。
#55
○小川敏夫君 大臣、最初に、この傍受を聞くのは捜査官である、捜査官が聞いた内容を他に漏らすとまたそれはそれで秘密の漏えいか何かで処罰されるから大丈夫だというふうにおっしゃいましたけど、私は、捜査官が聞いた内容を第三者に漏えいするかどうかということを聞いているのではありません。捜査官自身が傍受してはいけない通話を傍受してしまった場合にどうなるのかと聞いているわけでありまして、聞いた内容を第三者にということは全く議論の対象外のことであります。
 それから、通信傍受の必要性について大臣はるるお話しになりました。私は、通信傍受そのものをいかぬと言っているんじゃないので、今議論しているのは、通信傍受というものを認めたとしたその上で、しかし、通信傍受を認める以上それが濫用がないような仕組みを設けなければなりませんねという立場で議論しているわけで、濫用がなされた場合にそれが、これ通信傍受をしているときにはその場でチェックできないんですから、捜査官だけが聞いているわけですから、ですから、傍受をしているその場で、濫用に及ぶ傍受があった場合にその場でそれを制止することはできないと。
 じゃ、事後的にチェックできると、もう何回も議論させていただきました。事後的にチェックできる、その事後的なチェックは何だと、確実に事後的にチェックできるというそのチェックは何だと聞いたら、また、もう何回も何回も出てきたけれども、傍受した内容の全てが改ざんできない状態で裁判所に保管されている、原記録を見れば違法な傍受があれば直ちにそれが露見するから、そうすると、直ちに露見するというようなことがあるから捜査官は直ちに露見するようなそんな違法なことはしないと、だから事後的チェック機能が働いているから大丈夫だという御説明でした。
 私はさんざん聞いているわけで、裁判所の原記録に通知を受けない人間がアクセスできない、チェックもできない、それでなぜチェック機能が働いているのかというふうにお尋ねしているわけでありまして、まあ大臣からしますと随分しつこい質問を繰り返すやつだと思いますでしょうけれども、私からすれば大臣も随分同じことを言われて往生際が悪いと思うんですけれども。
 どうです。だって、通知を受けない人がチェックのしようがないじゃないですか。しかも、捜査官、まさに濫用に及ぶ捜査官ですよ、捜査官自身が、通知するかしないか、通知する当事者ですから。だから、濫用している捜査官は、これは通知は行かない、通知は行かないから結局事後的チェックはされないということが分かっているわけですよ。だから、濫用の防止機能はないなということを再三お尋ねしているわけであります。どうですか。
#56
○国務大臣(岩城光英君) 重ねてのお答えになってしまって恐縮でございますけれども、先ほども申し上げましたとおり、犯罪と無関係な通信につきましては、あくまでもスポット傍受であります。
 そこで、今、小川委員からお話がありましたとおり、この傍受の実施期間中に一度も通知の対象となる通信が行われなかったというのはあくまでも結果論でありまして、傍受令状等を厳格な要件の下踏まえて発出していただいてそこで傍受の対象にしているわけでありますので、いつでも犯罪に関連する通信が行われ得るというそういう前提の下で捜査官は該当性判断のための傍受を行っているわけでありますので、御理解いただければと存じます。
#57
○小川敏夫君 ですから、警察官が適正に職務をやっているから大丈夫だという説明に尽きますよね、そうすると、大臣の御説明は。だから私も、警察官がみんながみんな悪いことをする集団だとは思っていませんよ。警察官は日夜、それは犯罪をなくすために、犯罪者を検挙するために頑張っていることはよく分かっているわけでして、だけど、大変残念なことに濫用に及ぶケースもあるわけですよ。
 ですから、前も出しました、白紙の虚偽の調書を捏造して不正に令状請求を得た強制捜索ということもありました。あるいは、過去には共産党幹部の電話を盗聴したというような事件もありました。ですから、警察官がみんな悪いことをするとは思っていません。法律に定められた適正な傍受をする例がほとんど、多いでしょう。だけど、そうじゃない場合があったとしたら困るから、あったとしたら国民の憲法で保障された通信の権利が不法に侵害されることになるから、だから、そういうことができないような、濫用に及ぶようなことができないような仕組みをしっかりと構築していただきたいと言っているわけでありまして、私は提案しました。
 じゃ、裁判官が原記録をチェックするか、それが支障があるなら、では中立な第三者機関を設けて、その第三者が原記録をチェックして、違法な傍受があるかないかをチェックするようなそういった仕組みをつくってくれないかと。あるいは、もう一つとしては、じゃ、傍受をした以上、強制捜査をしたんだから、被疑者に対して事後的に必ず全部通知しなさいと、そういうふうにすれば事後的なチェックはかなり有効に機能するんじゃないかということで提案させていただいたわけです。だけど、その三つとも受け入れないという大臣のこれまでの答弁でありました。
 じゃ、今のままでは通知が行かない人間に対してはチェック機能が働かないということは、大臣、お認めいただいたと思うんですけれども、じゃ、その場合にどうしたらそういう濫用を防止する機能を持たせることができるのか。いや、もういいんだと、もう警察官は悪いことをしない、もう信頼しているから大丈夫だと、たまに間違いがあってもそれはしようがないや、どうせばれないんだからいいやと、こういうことなんでしょうか。
#58
○国務大臣(岩城光英君) 濫用についての御懸念でございますけれども、仮に小川委員が御指摘のような行為を警察官、捜査官が行った場合はこれは違法な行為となるわけでありますので、何度も申し上げてまいりましたとおり、懲戒処分の対象となり得ますし、また刑事罰の対象ともなると、こういうことでしっかりと対応していきたいと考えております。
#59
○小川敏夫君 だから、懲戒処分の対象になる、刑事罰の対象になる、それはなると思いますよ、でも、それはばれた場合ですよね。ばれない仕組みになっていたらばれないじゃないですか。
 前回お話ししました、白紙調書、供述調書を改ざんして違法な捜索を行った事件がありました、もう二十年ぐらい前かな、ありました。これだって、偽造した調書を捜索現場におっことしちゃったから発覚したんですよ。もしおっことしていなければ発覚しなかったんじゃないかと、こういうふうにも思うわけであります。
 私は、警察官を信頼しているかどうかという話じゃなくて、やはり制度の組立てとして、仕組みとして、そういう濫用の防止ができないような仕組みをしなくてはいけないのかと思うわけでありまして、もし万が一警察官がそういう悪いことをしたら、懲戒処分なりあるいは刑事罰を科せられるから大丈夫だと言うだけでは足らないと思うんですよ。人を殺したらいけないよ、人を殺せば懲役になるよ、死刑になるよと、だからそんなことをする人はいないからもう大丈夫だと言われても現に犯罪は起こるわけでありまして。まあ犯罪と、済みません、警察の捜査と一緒にしちゃ失礼かもしれないけれども、やはりこういうことが、何か間違いがあったときに懲戒になるよと言うだけじゃやっぱり足らないんで、きちんとした仕組みをつくっていただきたいんですがね。
 全然もうそういう考えはないですか。もうとにかく今のこの仕組みで大丈夫であって、これ以上、今の法律以上、この濫用防止に関して何らかの濫用防止策を更に実効性あらしめようということについて、これを前向きに検討するというようなことは考えていないんでしょうか。
#60
○国務大臣(岩城光英君) また同じような内容のお答えになってしまいますけれども、やはり傍受の実施期間中に一度も通知の対象となる通信が行われなかったという御指摘が小川委員からございました。たまたまそういったことは一つの結果論であろうと私は思っております。そういった対象とならない通信でありましても、その後話題が変わって犯罪に関連する通話が行われることがあり得ますし、またその通話が終わって、その後の通話の中でそういった犯罪に関連する通話が行われる可能性は十分にあり得る、そういうことで傍受令状をいただいて通信傍受を行っているわけであります。
 それで、何度も申し上げますけれども、この犯罪と無関係の通信については、断片的な傍受、スポット傍受と言われますけれども、それに限られているわけでありますので、またその後そういったものを外に出す、あるいは公にする、そういったことはこれは考えられないわけでありますので、現在のこのお願いしております法律、これによって対応できるものと、通信傍受の濫用ですね、それは対応できるものと考えております。
#61
○小川敏夫君 スポットを繰り返す必要性と、第三者に漏えいしないというから大丈夫だから、もうそれで濫用の防止についてはこれ以上考える必要はないという御答弁の趣旨とお伺いしましたけど、誠に遺憾な答弁だと思っております。
 具体的に、通知が行かない人について裁判所の原記録を確認しようがないということをお認めになりながら、しかし、これまで大臣答弁されていましたですよね、大臣がこういうふうに言っていました。傍受の中身の全てがありのまま裁判所に原記録として保管されているから、だから、違法な傍受を行えば、直ちに原記録を確認して違法な傍受があったことが露見すると、だから、そのことは捜査官は分かっているからそうした濫用には及ばないはずだと、こういうふうに大臣はおっしゃっておられました。この発言は維持されるわけですか。
#62
○国務大臣(岩城光英君) おただしのとおりであります。
#63
○小川敏夫君 だけど、通知が行かない場合には原記録を確認しようがないということもお認めになりましたよね。すると、大臣の論理は壊れているんじゃないですか。
#64
○国務大臣(岩城光英君) 何度もこれも重ねてのお答えになってしまいますけれども、傍受の原記録、これに証拠が残りますので、それが発覚し得る可能性があるという以上、違法行為はできない、そういったことを申し上げているつもりでございます。
#65
○小川敏夫君 発覚する可能性があるというお話でした。しかし、被疑者の方に、傍受された人間の方に通知が行かないと。じゃ、発覚する可能性というのはどういう場合に発覚するんでしょうか。具体例を少し挙げていただけませんか。
#66
○国務大臣(岩城光英君) 先ほども申し上げましたとおり、通常、傍受をいたしまして、その一つの通話に犯罪関連の通話がなかったとしても、それ以外のその後の、あるいはその通話の中の後の部分でそういった可能性があるわけであります。そうしますと、その通信手段の使用者、この使用者には傍受の、したという通知が行くわけでありますので、ですからそのことが犯罪と無関係の通信の対象者にも当然知られることになるものと思っております。
 ただ、小川委員がおっしゃっていますように、そういったことが結果論として一度もなかった場合にはこれは通知はされておりませんので、そのことについて、それはあくまでも結果論であると私は思っております。
#67
○小川敏夫君 大臣のお話のその発覚する可能性は、濫用に及ぶ違法な傍受をしてしまったと、しかし、その後の傍受の中で犯罪関連通信があるから、あった場合にはそこで傍受記録を作って通知するからという一つの例を挙げました。だけど、違法な傍受をしちゃったら、もう通知するのはまずいから、やらないんじゃないですか、もうこの通信傍受は終わろうと。だって、違法な傍受をしたという認識があれば、通知するようなことになる事態はこれはうまくないから、その後傍受しなきゃそれまでの話ですよね。
 それから、大臣がお話しした範囲でも、その後更に傍受を続けて、犯罪関連通信があって傍受記録を作成すれば通知することになるからという限られたケースの場合だけお話しになったわけで、じゃ、その限られたケースに該当しない場合には露見しないわけですよね。
 すると、大臣は、発覚する可能性があるからというのはその限られた例だけでありますか。ほかにありますか。
#68
○国務大臣(岩城光英君) 傍受したその原記録、これは裁判所に提出をするわけでありますので、そういった証拠が残るということで、発覚のおそれもあるということでこういった違法行為はできないと、そういうことを重ねて申し上げているつもりでございます。
#69
○小川敏夫君 発覚するおそれがある、でも通知が行かないから発覚のおそれがないからという議論をしているわけで、まあ同じ議論をしても、もうあと時間がなくなっちゃったんで、また機会があれば日を改めてまた聞き方を工夫したいと思いますけれども。
 通信傍受は、基本的には悪質な組織犯罪ということを対象にしているということだと思うんですが、どうも法律の要件見ますと、そうした組織的な犯罪集団だけが対象でなくて、ただ複数であれば組織犯罪とみなされるような、そんなふうな規定になっているんですけれども、組織犯罪集団を対象にしたということであれば、もう少しやはり組織犯罪集団を対象にしたということを法律上明確にする必要があると思うんですが、その点はいかがでしょうか。
#70
○政府参考人(林眞琴君) 今回追加する対象犯罪の拡大に当たりまして、追加される犯罪につきましては一定の組織要件というものを課しております。これが、あらかじめ分担された役割に基づいて行動する結合体と、こういった形での一定の制限を掛けておりますが、これ自体はやはり今回の通信傍受法の趣旨が組織犯罪に対応するということの趣旨を全うするためにここに掲げているわけでございます。
 その上で、それのみならず、元々この通信傍受の傍受令状発付を受けるためには補充性の要件等がございます。また、全体として共謀が存在するという要件もございます。こういった要件を全て満たすのは基本的にやはり組織犯罪、こういったものに限定されると、こういう理解の下におきまして今回の対象犯罪の拡大に対して要件を定めているわけでございます。
#71
○小川敏夫君 ですから、組織犯罪を対象にしているという趣旨分かりましたけど、その組織の要件が、ですから複数で役割分担ということですよね。そうすると、じゃ高校生が二人で万引きしようと、俺が店員に話しかけているからあんたその間に盗めなんということを言えば、複数で役割分担しているわけだから当たるわけですよ。当たりますよね、形式上は。どうです。
#72
○政府参考人(林眞琴君) 今回追加して求めました組織要件、これだけを取ってみれば、二人以上の人間があらかじめ役割を分担したという点の要件には当たりますけれども、傍受令状を発付されるためには他の要件がございますので、先ほど申し上げました補充性の要件でありますとか数人の共謀によるものであるということはもとよりでございますが、先ほど申し上げた補充性の要件、あるいは犯罪関連通信というものがある通信手段を特定して行われるに疑うに足りるものであると、こういった状況を全て満たすためにはやはり組織犯罪というものに限定されてくると、こういう趣旨で答えております。
#73
○小川敏夫君 その令状の発付の際の要件というのは、個別の判断で逃げないで、組織犯罪を対象にするなら、その組織性について、複数で役割分担というだけでなくて、もう少し組織犯罪集団ということの要件を厳しくすべきではなかったかというふうな観点から意見を述べさせていただいたわけであります。
 話は変わりますけれども、即決裁判について再び起訴できるよというような規定が新たに設けられました。大臣の趣旨説明では、これに対して余り詳しい説明はなく、その他所定の改正をするみたいな、そんな一言で済まされちゃっている部分ですけれども、この辺について、ちょっと短い時間で趣旨を御説明いただけませんでしょうか。どちらでもいいんですけど。
#74
○政府参考人(林眞琴君) 今回の法律案で導入することとしております自白事件の簡易迅速な処理のための措置でございますけれども、その概要は、簡易な自白事件につきまして、起訴時に即決裁判手続の申出がなされた後に被告人が否認に転じるなどしたために即決裁判手続によらないこととなった場合に、検察官が一旦その公訴を取り消しまして、再捜査を行った上で再起訴ができるようにすると、これが今回の措置の概要でございます。
 このような法改正を行うことの現状認識と趣旨でございますけれども、起訴後の被告人に対する捜査というものはもとより制限されております。そのために、現状では、即決裁判の対象となるような簡易な自白事件でありましても、検察官といたしましては、その後、公判段階で被告人が否認したような場合に備えて、起訴するまでの間にあり得る弁解を想定した、言わば念のための捜査というのを遂げるのが一般的ではございます。そして、このことが起訴に至るまでの捜査の合理化、迅速化を困難とする原因となっているとともに、現在あります即決裁判手続を活用する動機付けというものが働かず、この手続の活用が限定的なものにとどまっている原因となっていると考えられます。
 今回の制度は、検察官が一旦公訴を取り消して捜査に戻ることができる道を設けることによりまして、当初の、起訴前においては念のための捜査というようなものを遂げなくても早期に起訴できるような動機付けを検察官に与えるというものでございます。そのことによりまして、簡易な自白事件につきましては起訴前の捜査や公判手続を全体として合理化、迅速化しまして、翻って、重大、複雑な事件にその限られた資源を投入できるようにいたしまして、全体として公判審理の充実化に資するものと、このように考えて今回の改正をお願いしているものでございます。
#75
○小川敏夫君 そうすると、即決裁判申立てする自白事件だと、自白事件だから十分な捜査はしなくてもいいやと、裏付け捜査もしなくてもいいやと、だから、正式裁判に回されちゃったら立証できない可能性があるから起訴を取り下げちゃおうということですよね。ちょっといいかげんじゃないですかね、捜査が、いいかげんに及ぶんじゃないですか。
 つまり、刑事事件なんだから、即決裁判だって起訴ですよ。起訴する以上、それを有罪にするだけの根拠があって、証拠があって起訴するべきであって、その即決裁判が正式裁判に回ったって、それまでの捜査の経過から立証すればいいんで。だけれども、自白しているから即決裁判で、はい、申立てしたよと、だけれども、正式裁判に回ったら、ああ、これは有罪に持ち込むことができないから起訴を取り下げますなんという、そんな便宜な方法で、いいかげんな捜査で即決裁判の申立てがされてもいいということなんでしょうか。
#76
○政府参考人(林眞琴君) 例えば、アメリカにおきまして有罪答弁をした場合に、その有罪の裁判をするためには十分な、日本で言いますところの合理的な疑いを差し挟む余地のない程度の証明というものは必要ないとされていると承知しております。
 我が国で今回の法改正によって導入しようという制度はそれとは全く異なりまして、引き続き、このような制度におきましても、刑事裁判における有罪の認定に当たりましては、通常審判におけるのと同じく証拠調べを経まして、被告事件について犯罪の証明、すなわち合理的な疑いを差し挟む余地のない程度の証明が必要であると、この点については全く変わりございません。また、例えば自白が自己に不利益な唯一の証拠である場合には有罪とされないという、すなわち補強証拠というものが必要であるということにつきましても通常の審判と全く同様でございます。
 したがいまして、今回の起訴あるいは最後にこの即決裁判における裁判での有罪が認められるためには、通常の審判の同様の程度までの証明は必要でございますので、その捜査を十分に行わないで起訴できると、そういうものではございません。
#77
○小川敏夫君 だって、捜査を十分に行わないで起訴できるものではありませんということは、捜査を十分に行った上で起訴するということですよね。捜査を十分に行った上で起訴した即決裁判なら、即決裁判が正式裁判に回ったって、十分な捜査を行っているんだから、公訴を取り下げる必要はないじゃないですか。即決裁判で、はい、有罪で、はい、終わりよというんだから、捜査を手抜きしておいて、十分な証拠もなくても即決裁判で申立てしておいて、でも、正式裁判に回っちゃったらこれは立証できないな、無罪じゃやばいから、じゃ公訴を取り下げちゃおうと、こういう構造だと思うんですけれどもね。今度は、公訴を取り下げた後、再び捜査して、捜査を更に重ねて改めて起訴できると、こういう仕組みにしたわけですよね。そこで検察官が手が浮いた分ほかの方に戦力を投入できるから捜査の合理化に寄与すると。
 だから、まさにこの即決事件について、これは手抜き捜査をどんどん、奨励とまでは言わなくても、手抜きの捜査がどんどん増えて、お試しの即決裁判の起訴どんどんやったって構わないんだよ、それで、正式裁判に回ったら、まずいからといって取り下げちゃえばいいんだ、それで改めて捜査して証拠がなければ諦めよう、証拠が出たらまた起訴しようなんという、こんな仕組みになっているわけですよね。
 だから、即決裁判、自白裁判だからといって、手抜きの捜査による起訴というものをこれから更に、これまでもそういう仕組みになっていたけれども、むしろそれを推奨するような、お試し即決起訴を奨励するような、こんな制度だと思うので、私は、捜査の在り方として、即決裁判でもこれ起訴ですから、裁判所に有罪の処罰を求めるそうした申立てですから、この在り方として、検察の捜査の在り方、検察の起訴の在り方として大きな問題があると思うんですが、どうでしょう、そういうふうに感じていただけませんでしょうか。
#78
○政府参考人(林眞琴君) 即決裁判で申立てをして起訴する場合におきましても、有罪判決を得られる十分な捜査というものは当然求められておるわけでございます。
 その上で、先ほど申し上げました、現状といたしましては、その十分な捜査に加えて、自白事件でありながら、その全ての公判で否認に転じるということをあらかじめ想定した上で、その可能性としてあり得る弁解をも想定してあらかじめ証拠の収集をするとか、あるいは証拠能力とか信用性が争われる可能性も想定した上で詳細な内容の証拠書類を作成すると、こういったこと、これを私、先ほど念のための捜査と申し上げましたが、そういったものが行われている現状に鑑みまして、そのような念のための捜査というものについて、これをしないで即決裁判手続を利用できるようにするために今回の法改正をお願いしているものでございます。
#79
○小川敏夫君 同じ議論になりますけれども、即決裁判でも、十分な捜査を行った上で即決裁判の申立て、要するに起訴するんだというんであれば、即決裁判から正式裁判に回ったって、十分な捜査をしているんだから公訴を取り下げる必要ないじゃないですか。公訴を取り下げて、それでまた捜査をやり直す必要ないでしょう。十分な捜査を行わないで、ある程度の見切りで、これは自白しているから即決裁判でいいやということで十分な捜査が行われていないから正式裁判に堪えられない、正式裁判に堪えられないから公訴を取り下げると、こういう仕組みじゃないですか。
 だから、十分な捜査を行って即決裁判もやっているんだという説明と、この制度、正式裁判には堪えられないから公訴を取り下げて、改めてまた捜査をして、一旦公訴した事件でも再び公訴できるというこの仕組みは、当然、最初の即決申立てが十分な捜査を行っていないことを前提にした制度だと思うんですがね。それを、十分な捜査を行った上で即決裁判もやるんだというんだったら、別に正式裁判で、別に公訴を取り下げる必要ないんで、やればいいから。
 局長の答弁は、制度の在り方として的を射た答弁だというふうに思いませんけれども、ただ、改めて聞いても同じことを言うでしょうから、ほかの質問にしますけれども。
 今回の法律、もう様々な、多岐な問題がございます。まだまだ取調べの可視化について私は大変質問したいんですけれども、それも全く質問しておりませんし、司法取引も更にいろいろあります。今の問題もございましたこの即決裁判の問題。一つは、時間の関係で、証拠開示のところがございます。これも大変に重要なんですが、この証拠開示について、再審事件について今回は証拠開示が進められるような改正はなされているんでしょうか。
#80
○政府参考人(林眞琴君) 今回の法案、前提となる段階の法制審議会の議論の中でも、この再審手続の中での証拠開示制度を設けるべきであると、こういった議論がなされました。
 しかしながら、そこにおきましては、通常審と手続構造の異なる再審請求審におきまして、現在証拠開示手続というものが通常審ではあるわけでございますが、こういったものを転用するということは整合してこないという意見がありましたし、また、再審請求審自体におきましての証拠開示について一般的なルールを設けること、これ自体が困難であると、こういった問題点が指摘されまして、今回の刑事訴訟法等の一部を改正する法律案の中には再審請求審における証拠開示制度というものは盛り込んでいないところでございます。
#81
○小川敏夫君 だから、再審事件について証拠開示を盛り込んでいない、何にも変えていないわけですよね。
 ただ、再審事件でも、非常に重大事件が再審によって無罪になるということが幾つも出ているわけでありまして、冤罪を防止する、あるいはそうした冤罪を着せられた人の人権を回復する非常に重要な機能を持っておるわけであります。再審だから検察官手持ちの証拠は持ったままで見せなくてもいいんだという理屈はないと思うんですよね。法制審議会では、やるべきだという意見とそうすべきではないという意見があったというようなお話でありましたけどね。
 法制審議会でそういう意見がまとまらなかったからいいんだというような、そのような消極的なお考えではなくて、やはり再審裁判も証拠開示というものは非常に大きな問題であると。特に、再審裁判の構造自体から、検察官が手持ちの証拠をなかなか開示しないということで再審がうまく機能していないというようなケースもあり得るわけでありまして、そこら辺のところはやはり再審事件についてもこの証拠の開示の在り方というものをきちんと前向きに検討していただきたいと思うんですが、いかがでしょうか。
#82
○政府参考人(林眞琴君) 先ほども申し上げましたが、政府案におきましては、この法律案の立案過程で検討は行われましたけれども、結果として法律案には盛り込まれなかったわけでございます。
 他方で、衆議院による修正におきまして、この法律案の附則第九条三項に、政府は、この法律の公布後、必要に応じ速やかに再審請求審における証拠の開示等について検討を行うものとすると、こういったことが附則の規定の中で設けるとされたところでございまして、こういった制度につきましては、先ほど立案段階で様々な問題点は指摘されておりましたが、更に検討することが必要であると考えております。
#83
○小川敏夫君 じゃ、更に検討することが必要であるということですから、法務大臣、是非早急に検討していただきたいと思いますが、そのことをお尋ねして、今日の質問は終わります。
#84
○国務大臣(岩城光英君) 検討させていただきます。
#85
○小川敏夫君 終わります。
#86
○委員長(魚住裕一郎君) 午後一時に再開することとし、休憩いたします。
   午前十一時二十八分休憩
     ─────・─────
   午後一時開会
#87
○委員長(魚住裕一郎君) ただいまから法務委員会を再開いたします。
 休憩前に引き続き、刑事訴訟法等の一部を改正する法律案を議題とし、質疑を行います。
 質疑のある方は順次御発言願います。
#88
○仁比聡平君 日本共産党の仁比聡平でございます。
 今日は通信傍受の拡大の問題についてお伺いをしていきたいと思うんですが、ちょっと通告と順番違いますが、大臣に、まず対象犯罪の拡大、今回の法案でいいますと別表二の問題について、前回、四月二十八日の小川敏夫議員の質問に対して大臣がまとまった御答弁をされました。その部分について速記録から抜粋をして委員の皆さんにはお手元にお配りをしているところですけれども、この大臣の答弁の意味についてまず確認をしたいんです。
 大臣は、本法律案で追加する対象犯罪は、現に一般国民にとって重大な脅威となり社会問題化している犯罪であって、通信傍受の対象とすることが必要不可欠なものに限定をしておりますと答弁をされました。
 まずお尋ねしたいのは、この大臣の言う現に一般国民にとって重大な脅威となり社会問題化している犯罪とは何を指すのか。これを必要不可欠なものとして限定をしているとおっしゃっているわけですが、この対象となる犯罪というのは一体何なんでしょうか。
#89
○国務大臣(岩城光英君) お答えいたします。
 通信傍受は、憲法の保障する通信の秘密を制約するものである上、捜索、差押え等の従来の強制処分と異なり、継続的かつ密行的に行われるという性質を有するものであります。また、現行通信傍受法の制定時におきましても、通信傍受の対象犯罪は、捜査の実情も踏まえた上で、実際に組織的な犯罪等の捜査において通信傍受の必要性が高いと考えられるものに限定されたという経緯がございます。
 そこで、このような通信傍受の性質や現行通信傍受法制定時の経緯などに鑑み、今般の法整備で新たに対象犯罪に追加する罪を選択するに当たりましても、その犯罪が通信傍受に伴う通信の秘密への制約に見合うほど重大なものであるか、目下の犯罪情勢を踏まえ、その犯罪が組織的に行われることが現実的に想定されるものであり、かつ、その犯罪の捜査において通信傍受が必要かつ有用な手段と言えるかという二つの要素をこれを考慮しまして、現に一般国民にとって重大な脅威となり社会問題化している犯罪であって、通信傍受の対象とすることが必要不可欠なものに限定しているものであります。
#90
○仁比聡平君 私がお尋ねをしているのは、そうした大臣の認識の下で、あるいは政府の検討の上で限定している犯罪とは何かということなんです。
 別表二に付け加える例えば詐欺あるいは窃盗というのは、これ自体は今大臣がおっしゃったような意味での現に一般国民にとって重大な脅威となり社会問題化している犯罪とは思えないんですけれども、この犯罪というのは何なんですか。
#91
○国務大臣(岩城光英君) 新たに追加する対象犯罪でありますけれども、殺傷犯関係の罪、殺人、傷害、傷害致死、現住建造物等放火、爆発物使用などであります。それから、逮捕監禁、略取誘拐関係の罪、窃盗、強盗関係、詐欺、恐喝関係の罪、児童ポルノ関係の罪、これらを追加するものであります。
 また、これら新たに追加する対象犯罪につきましては、他の捜査方法では犯人を特定することが著しく困難であることなどの現行通信傍受法の厳格な要件に加えまして、組織的な犯罪に適切に対処するという通信傍受法の趣旨を全うするため、その犯罪があらかじめ定められた役割の分担に従い行動する人の結合体により行われたと疑うに足りる状況があることという要件を加え、それをも満たす場合でなければ傍受令状が発付されないこととしております。
 これによりまして、今回の改正により対象犯罪に追加することとなる罪につきましても、一定の組織性を有し、解明困難な事件に限定されることとなります。
#92
○仁比聡平君 大臣、私の問いにお答えにならないのか、あるいは問いがお分かりにならないのかのどちらかなんですけれども、今大臣が付け加えておっしゃった組織性の要件についてはこれ後ほど少し議論したいと思うんですけれども、大臣は前回の答弁で、追加する対象犯罪は現に一般国民にとって重大な脅威となり社会問題化している犯罪であると述べているわけですね。
 この答弁は、小川議員の質問を私が正確に理解しているとするならば、窃盗、万引きというような事案に対して、それはそうではない、当たらないという趣旨でなされたものと思うんですが、今の御答弁だと、例えば殺人あるいは窃盗という罪名に当たる行為が疑われる、捜査機関がその罪名に当たる被疑事実があるのではないかと容疑を持てば全て傍受令状の対象になるのだという答弁になってしまうんですけれども、大臣はそういうつもりでおっしゃっているんですか。
#93
○国務大臣(岩城光英君) より具体的にということでありますので、例えば殺傷犯関係の罪につきましては、暴力団等が、その意に沿わない、従わない一般市民を標的として組織的に敢行したと見られる事犯、それから窃盗等につきましては、組織的窃盗グループやいわゆる振り込め詐欺グループにより反復継続的に行われ、多くの被害者に多大な財産上の被害を及ぼしている、そういった事例を考えております。
#94
○仁比聡平君 今、二つおっしゃいました。暴力団が組織的に、例えば組織的な犯罪の一つの手段として殺人だとかあるいは放火だとかいうことを行うということは現にあります。あるいは組織窃盗というお話もありました。特殊詐欺ということもこれに含まれるのかと思うんですが。
 先ほど、児童ポルノの犯罪構成要件が別表二に挙げられていることをお述べになりましたけれども、今私が付け加えて申し上げた点も含めて、言わば四つの類型というふうに、警察庁そして法務省等、勉強レクで伺いますとおっしゃるわけですが、これは大臣もそういう御認識ですか。もしそうであれば、その四類型というのをもう一度大臣の認識としてお示ししていただきたいと思うんですが。
#95
○国務大臣(岩城光英君) それでは申し上げますけれども、まず、殺傷犯関係の罪は、いずれも人の生命、身体に関わる極めて重大な犯罪であって、近時、暴力団等がその意に沿わない事業者等に対して報復、見せしめ目的で敢行したと見られる襲撃事件が相次いでおり、例えば現住建造物等放火の罪に関し、暴力団組長等数名が金銭要求等に応じない店舗経営者の見せしめとして飲食店店舗内にガソリンをまいた上で放火し、同店従業員ら三名を死傷させた事案。二番目に、殺人の罪に関し、路上において暴力団との間でトラブルがあったとされる漁業協同組合長が暴力団関係者と思われる者に拳銃で撃たれて殺害される事案。それから、傷害、傷害致死の罪に関しては、暴力団員の立入りを禁止する標章を掲示した飲食店の経営者に対し、暴力団関係者と思われる者が刃物で切り付け傷害を負わせた事案等がこれまでも発生しておりますので、そういったことを対象といたします。
 それから、逮捕監禁関係、略取誘拐関係の罪は、人身の自由を保護法益とし、人の生命、身体にも関わる重大な犯罪であって、例えば逮捕監禁の罪については、検挙人員総数に占める暴力団構成員等の比率が約四八・四%を占める典型的な暴力団犯罪の一つであります。また、実際にも逮捕監禁の罪に関し、暴力団組員等数名と外国人数名が日本人女性三名及び外国人女性一名に対し、粘着テープ等で顔面及び両手足を縛って車両内に連れ込んで監禁するなどした上、現金等を強取した逮捕監禁、強盗の事案。略取の罪に関しましては、暴力団組員らが被害者に制裁を加えるとともに金品を得ようと企て、実行犯、見張り役、運転手役などの役割を分担した上で、被害者に対し多数回にわたって殴る、蹴るの暴行を加えた上で自動車内に押し込んで連れ去るなどした営利目的略取、監禁致傷の事案等が発生しておりますので、これらも対象になるものと思います。
 それから、窃盗、強盗関係、詐欺、恐喝関係の罪は、人の財産を侵害し、あるいは財産のみならず人の命、身体にも関わる重大な犯罪でありまして、例えば窃盗の罪に関し、密入国した外国人が日本国内に不法残留していた同国人から成る窃盗組織を構成した上で、複数の犯行グループを関東以西の西日本一帯に分散させ、三年以上もの間、被害総額約十億四千四百万円相当の侵入盗を敢行していた事案などが発生しております。詐欺の罪に関しましては、いわゆる振り込め詐欺等の特殊詐欺による被害はいまだ増加傾向にありまして、平成二十五年においては認知件数が一万一千九百九十八件、被害総額が約四百八十九億五千万円と極めて深刻な状況になっております。
 さらに、爆発物取締罰則違反につきましてですが、爆発物の使用罪は不特定多数の人の生命に関わる極めて重大な犯罪であって、近時、暴力団等がその意に沿わない事業者等に対して報復、見せしめ目的で敢行したと見られる襲撃事件が相次いでおります。例えば、暴力団組長等が共謀の上、産業廃棄物処理会社付近において手りゅう弾を爆発させ同社の外壁等を破壊し、さらに同日、京都府内の同社のビルに手りゅう弾を投擲し爆発させ、同社ビル外の階段等を破壊した事案が挙げられます。
 さらに、児童ポルノ関連の犯罪でありますけれども、法定刑の上限が懲役五年であって、その法定刑自体相当程度重いものであって、児童ポルノ等の不特定多数の者に対する提供等の事犯におきましてはインターネットが利用されるものが大多数を占めるところ、児童ポルノがインターネット上に流出すればその回収は事実上不可能となる上、被害者の約半数は低年齢の児童であるなど、その害悪は深刻であります。しかも、この種の事犯は、近年、検挙件数が増加の一途をたどっており、例えば暴力団構成員を含む犯行グループがホームページを移転しつつ児童ポルノDVD販売サイトを開設して組織的にDVDを販売し、約五千枚DVDが押収された事案などが発生しておりますが、こういった近年の犯罪行為の発生したことに伴いまして、今述べたような事例を対象にするということでございます。
#96
○仁比聡平君 詳しく述べていただきましたけれども、つまり、殺人、放火や人身の自由の侵害、あるいは爆発物、あるいは児童ポルノ事案、これは、例えばという枕言葉を付けながらではありますけれども、今、大臣、暴力団が組織的に行うという事例を挙げられました。殺人、放火などの事案については、私、地元北九州市ですが、北九州で現に起こった絶対に許してはならない犯罪だと私も思うんですね。
 この暴力団が行うそうした犯罪、それから組織窃盗と特殊詐欺というこの類型を挙げられたわけですが、これに限定されていると。大臣の前回の答弁はそういう意味ですか。
#97
○国務大臣(岩城光英君) 新たに追加する対象犯罪につきましては、現行法上の傍受の実施要件である数人共謀の要件のみならず加重要件をも満たすことを要するものとすることによりまして、例えば偶発的に発生した複数の者による傷害事件で、相手方に対して共同して暴行を加える意思があったため数人共謀の要件を満たすものの、役割の分担がなされないままに行われたと認められる場合、あるいは、役割の分担はなされたものの、それが犯行時に定められたものであった場合などについては通信傍受を実施することができないこととなります。
#98
○仁比聡平君 大臣、端的に私の問いに答えていただけませんか。
 大臣は長い時間を使って、先ほど私が指摘をした、つまり暴力団が行う先ほど述べられた罪、それから組織窃盗、特殊詐欺という類型を挙げられたんですよ。勉強で伺うと、警察庁、検察庁というか法務省は、その四類型というふうにおっしゃるわけですよ。大臣は、その上で、四月の二十八日に、追加対象犯罪は、現に一般国民にとって重大な脅威となり社会問題化している犯罪であって、通信傍受の対象とすることが必要不可欠なものに限定しておりますと言っているわけです。
 限定しているということは、それ以外にはないということなんですね。であれば、先ほど挙げられたような罪というのに限定をしていると、そういう御答弁ですか。
#99
○国務大臣(岩城光英君) 御指摘のとおり、四つの類型に限定しているということでございます。
#100
○仁比聡平君 警察庁、法務省、それぞれ、それでよろしいでしょうか。
#101
○政府参考人(林眞琴君) 今回の対象犯罪の決め方、いかなる犯罪をその対象とするかということを、犯罪類型を選ぶときに、先ほど大臣から申し上げました様々な立法事実、四つの類型のそれぞれの立法事実がございますが、そういった観点から、この四つの類型の犯罪を対象犯罪としてまず限定列挙として選び取ったということでございます。
#102
○政府参考人(三浦正充君) 警察といたしましても同じ考えでございまして、こうした犯罪はいずれも、現時点における犯罪情勢や捜査の実情等に照らしまして、通信傍受が必要かつ有用な捜査手法であるのみならず、通信傍受によってもたらされる権利制約を考慮してもなおこれを行って捜査する必要があるという意味での犯罪の重大性を満たしておりまして、悪質、凶悪化する組織犯罪に対処する上で通信傍受の対象とする必要性が特に高いものと考えております。
#103
○仁比聡平君 今確認をした立法事実についての是非についてはいろいろ議論もありますけれども、ちょっとこれは別の機会に譲るとして、大臣、その上でお尋ねしたいのは、今確認をされた四類型に法文上限定されているかというと、私にはそうは思えないわけです。何しろ別表二には詐欺罪、窃盗罪というふうに裸で書いてあるわけですね。組織窃盗とか特殊詐欺という構成要件を特別につくったわけじゃない、一般の刑法の窃盗罪や詐欺罪というのを持ってきているわけですから。だから、この対象犯罪が今確認をした四類型に限定されているというふうになぜ読めるのか、法案のどこにそれが書いてあるのか、何をもって大臣が限定していると言うのか、ここをお尋ねしたいんですが。
#104
○国務大臣(岩城光英君) お答え申し上げますが、これは補充性の要件や新たな加重要件などによりまして組織的な窃盗や振り込め詐欺などの組織的な犯罪に限定されることになるものでありまして、詳細につきましては刑事局長から答弁させたいと存じます。
#105
○仁比聡平君 刑事局長に後ほど伺いたいと思うんですが、今の御答弁だと、対象犯罪として追加をする別表二だけで四類型に限定されているのではないというような御答弁なんですね。これに付け加えて、組織性あるいは補充性を、令状を裁判官が審査をする、ここで限定されるという意味に聞こえるんですけれども、二十八日の御答弁はそうではありません。
 お手元にお読みいただくように、対象犯罪が、重大な脅威となり社会問題化している犯罪であって、通信傍受が必要不可欠なものに限定をしている、また、その罪について裁判官の令状審査が必要であって、その令状審査の中で先ほどの補充性の要件だとか組織性の要件が認定されるからという御答弁になっているわけですよ。この「また」という接続詞は、つまり令状審査の問題ではなく対象犯罪それ自体として限定されているという意味にも読めるんですが、これ、大臣、そういう理解ではないんですか。
#106
○国務大臣(岩城光英君) 先ほどもお答え申し上げましたとおり、補充性の要件や新たな加重要件などによりまして、組織的な犯罪、これに限定されるということでございます。
#107
○仁比聡平君 ということは、前回、川出参考人あるいは林刑事局長に確認をしましたけれども、法文としてはこれは限定はされていないということになるわけでしょうか。
 例えば、林局長が二十八日の私の質問に対してお答えになったのは、本法律案の明文上は、この通信傍受の対象犯罪を暴力団等の関係する組織的な犯罪に限定はしていないが、実際、運用上は、厳格な要件を満たし得るのは組織的な犯罪に限定されるという認識というふうに述べておられるんですが、これ、大臣がおっしゃっているのもそういうことなんですか。
#108
○国務大臣(岩城光英君) 仁比委員御指摘のとおりでございます。
#109
○政府参考人(林眞琴君) まず、今回のその通信傍受の対象とする犯罪、これを必要不可欠なものに限定しておりますと、この点でございますが、この犯罪というものについては、ある構成要件を持った罪名、こういう形で今回どの犯罪をまず対象犯罪とするかという観点からは、現に一般国民にとって重大な脅威となり社会問題化している犯罪、これを選び取ったということでございます。
 もとより、その犯罪というときに、例えば窃盗罪というのがございますけれども、あるいは詐欺罪というのがありますが、振り込め詐欺、特殊詐欺という罪名はございません。したがいまして、犯罪として選ぶときには、その詐欺罪というある構成要件が定められておる一定の犯罪を、先ほど申し上げました現に一般国民にとって重大な脅威となり社会問題化している犯罪、これについて選び取り、それに限定しているという趣旨でございます。その上で、個々の傍受令状が発付される厳格な要件がございますので、それぞれの要件によってこの傍受令状の発付要件を満たす犯罪というのは組織的な犯罪に限られるということになるということを申し上げているわけでございます。
#110
○仁比聡平君 いや、私はそこが分からないんですよ。令状請求がされたときに、法文上は対象犯罪に言わば限定はないとなると、その令状請求が違法であるとして裁判官が却下する法的根拠は何になるのかということなんですね。
 大臣、お読みだと思うんですが、現行通信傍受法の第一条にはこの法の目的について、「組織的な犯罪が平穏かつ健全な社会生活を著しく害していることにかんがみ、数人の共謀によって実行される組織的な殺人、薬物及び銃器の不正取引に係る犯罪等の重大犯罪において、」云々と、通信傍受を行う必要があるという規定になっているわけです。窃盗とか詐欺というのは、ここにはそもそも掲げられていないわけですね。
 ところが、別表第二はそうしたものを一般的に含むことになってしまう、けれども、対象犯罪は先ほど確認した四類型に限定していると言う。けれども、法文上そうなっていなければ限定されなくなるじゃないか、限定されない運用、限定されない令状発付というのが行い得ることに法律上なるではないかという、この指摘に大臣はどうお答えになるんですか。
#111
○政府参考人(林眞琴君) 今回、第一条の目的については改正を加えていないわけでございます。したがいまして、この目的の中で例示されている中の重大犯罪という中に今回の対象犯罪というものは入るわけでございます。そのことによって、この目的規定が、今回の追加される対象犯罪についてもこの目的規定が係ってくるという観点で、今回の対象犯罪の拡大があくまでも組織的な犯罪に対する対処ということの趣旨でこの追加がなされているということが解釈上明らかになるわけでございます。
 その上で、先ほどの令状発付段階でいかなるものを組織的なものではないとして排除するかというその根拠でございますが、これは先ほど来言っている通信傍受令状の発付要件に例えば補充性の要件というものが法律上明記されておりますので、その判断の中で組織的な犯罪でないものが外される、排除されるということがございましょうし、あるいは、ある特定の通信手段について犯罪関連通信が、犯人による犯罪関連通信が行われると認めるに足りる、疑う理由があると、こういったことが要件となっておりますので、そういったものを全部満たすものについては実際には組織的な犯罪に限定されてくると、こういうことでございます。
#112
○仁比聡平君 後段の方は後ほど議論しますが、まず冒頭におっしゃった一条の解釈なんですけれども、改正後の一条というのをどう読むのかと。元々、現行法というのは、暴力団が、暴力団と主体は限定はされていないけれども、暴力団が行うであろうという罪、配付資料の中で七枚目に現行の別表を示しておりますけれども、薬物、覚醒剤、武器、あへん、銃砲刀剣類など、こういう罪が現行法に限定されている別表一なわけですね、対象犯罪なわけです。その下で一条は、組織的な殺人、薬物、銃器の不正取引に係る犯罪等の重大犯罪と言っているわけです。
 窃盗あるいは詐欺、傷害もでしょうけれども、一般的にそうしたものには限定されないというのは局長も先ほどおっしゃったとおりで、法律解釈として、そうすると、先ほどの御答弁だと一条が働いてくるということなんですね。どこにどう読み込んで働いてくるということになるんでしょうか。
#113
○政府参考人(林眞琴君) この一条の中に「組織的な殺人、薬物及び銃器の不正取引に係る犯罪等」と書いてありますが、これらは例示でございます。例えば、現行法でも集団密航の罪というものも対象犯罪になっておりますけれども、この一条の中には明示的には出てきません。その意味でも、こういった重大な犯罪、数人の共謀によって実行される重大な犯罪、こういったものについては例示がなされております。この例示の中での重大犯罪というものについて、今回追加される対象犯罪もそこに含まれるということでございます。また、含まれるからこそ、この一条の目的というものが今回追加される対象犯罪に係ってくるということでございます。
#114
○仁比聡平君 今の局長の御答弁等を別の角度でおっしゃっているのかもしれないんですが、私、必ずしも認識は一致はしませんけれども、川出参考人がこの通信傍受の合憲性の問題として、現在の四種類の犯罪、つまり現行法の四種類の犯罪は、犯罪の重大性を満たすものだということで合憲性が認められる、そうだとすれば、少なくともこれらの罪に匹敵するような重大性を持った犯罪に対象を拡大したとしても合憲と。
 そうすると、匹敵しないものはこれを対象にすると違憲になるという認識だと思うのですが、これは局長、そういう理解でいいですか。
#115
○政府参考人(林眞琴君) 犯罪の重大性というものをどのような意味のものとして受け止めるかによっても異なるとは思いますけれども、少なくとも最高裁の判例におきまして、この通信傍受というものが検証許可状によって行われたときの判例におきましてはやはり犯罪の重大性というものは一つの要件となっておりましたので、その要件として、今回も立案に当たりましては、この犯罪の重大性というものについて、現に重大であり、かつ一般国民にとって現に重大な脅威となっているか重大な脅威となるもの、こういったものを今回立案に当たって選び取ったということでございます。
#116
○仁比聡平君 今の局長の答弁は、つまり、一条に言う「等の重大犯罪」ということが、これは川出参考人の言葉を借りてくれば、一条に例示されている罪に匹敵するような重大性を持った犯罪という意味として窃盗だとか詐欺だとかという構成要件に該当するという疑いがあるが、けれども組織的な犯罪ではないかもしれない、組織的な犯罪ではないという、ここを区分けする基準になるという、そういう意味ですか。
#117
○政府参考人(林眞琴君) 組織的な犯罪に対処するというこの一条の目的をどのように実現するかということにつきましては、一つには、対象犯罪の選び方がございます。もう一つには、令状発付要件の定め方によると。この全体で今回のその一条の目的というものは達成されるというふうに考えます。
 その意味におきまして、対象犯罪の選択、選び方ということに限って言えば、ここに例示されているものと同程度の意味でその重大性が認められる犯罪というものが今回選び取られているという理解でおります。
#118
○仁比聡平君 まだちょっとよくはっきりしないと思うんですけれども、これ以上御答弁前に進まないように思いますので、別の角度で今のお話を伺いますと、大臣、今の議論も踏まえて、前回の二十八日の御答弁の続きには、その令状発付の要件の問題として、現行法上、裁判官がその罪が犯されたと疑う十分な理由があることなどという要件を挙げられているわけです。
 裁判官が何らかの罪の疑いがあると認めなければそれはもちろん何の令状だって出ないわけですけれども、ここで通信傍受令状の要件としておっしゃっているその罪が犯されたと疑う十分な理由のその罪というのは何かと。これは一般的に例えば窃盗に当たるかもしれないという疑いという事実などではなく、組織窃盗という、そういう具体的な組織的な犯罪の事実というのが捜査機関から主張されて、それが証拠によって疎明をされなければ認められないと、構成要件が窃盗罪であるということじゃなくて、組織窃盗という犯罪の実態そのもの、そこへの疑いという意味なんでしょうか。
#119
○国務大臣(岩城光英君) 仁比委員御指摘のとおりです。
#120
○仁比聡平君 その下で、この令状発付の要件について少し、ちょっと細かいようにも思いますが、法文に沿ってお尋ねしたいと思うんです。
 お手元の二枚目以降、新旧対照表をちょっと私が手書きで傍線を入れてお配りをしております。
 傍受令状が出されるためには、法案三条において、当該各号に規定する犯罪の実行、準備又は証拠隠滅等の事後措置に関する謀議、指示その他の相互連絡その他当該犯罪の実行に関連する事項を内容とする通信が行われると疑うに足りる状況があり云々という定義にまずなっているわけですね。これが、つまりその対象犯罪が疑われるということになるんだと思うんですが。
 これ局長、実行、準備、事後措置というのはそれなりに犯罪の流れとしてそうだろうなというイメージがあるわけですが、その謀議、指示その他の相互連絡ぐらいにまでなってくると相当広いなと思うんですが、法案はさらに、その他当該犯罪の実行に関連する事項というふうに一般化しているわけですが、この謀議や指示、相互連絡にも当てはまらない関連する事項というのはどんなものなんですか。
#121
○政府参考人(林眞琴君) まず、ここで掲げております委員御指摘の犯罪の実行、準備又は事後措置、こういったものは、一つの通信の対象となる内容でございますが、それについて、謀議といいますのは、これは共犯者相互間による共犯者相互間の謀議でございます。指示といいますのは、例えば共犯者の一部の者から他の者に対する指示をいいます。その他の相互連絡というのは、それら以外の共犯者間の意思の連絡というものをいうものと考えております。これらが犯罪の実行、あるいはその準備、あるいは事後措置に関して行われる、これがまず一つの対象でございます。
 そして、委員御指摘の、それではその他当該犯罪の実行に関連する事項とは何かということでございますが、これは、そのほかの犯罪の実行に関連する事項、情報を内容とする通信というものでございまして、例えばでございますが、ここで犯罪の実行に関連するとなっておりますので、犯罪の実行した者が第三者に対してその犯行を告白する内容、これらがこの通信に当たるものと考えます。
 他方で、例えば、被疑者の一般的な交友関係でありますとか生活態度等の一般的な情状に関係する犯罪は、これは犯罪の実行に関するものではございませんのでこれには当たらないと考えられます。
#122
○仁比聡平君 情状に関するものは当たらない、犯行告白は当たるというお話のようなんですけれども、これで本当に限定されるのかと。ここに先ほど確認した四類型という意味での組織性というのは、この文言そのものの中では限定はされないわけですね、局長。
#123
○政府参考人(林眞琴君) 先ほど申し上げた四類型というのは、これは犯罪の類型、いわゆる罪名でございますので、この罪名は前提としてはその対象犯罪というところで最初の段階では関係しますが、その上で、今申し上げているところのこの犯罪関連通信が行われると疑うに足りる理由があるということについては、これは令状発付の要件でございます。
#124
○仁比聡平君 その上で、その対象犯罪が行われると疑うに足りる状況というのは、これはどのような状況を指し、何をもって疎明をされるんですか。
#125
○政府参考人(林眞琴君) この通信傍受法第三条第一項に規定します犯罪関連通信が行われると疑うに足りる状況といいますのは、犯罪関連通信が行われる蓋然性があることを認めることができる客観的、合理的な根拠があるということを意味しております。
 この場合、この根拠、客観的、合理的な根拠というものは疎明をしなくてはいけないわけですが、この要件に関する疎明の方法はもちろん事案ごとにございますので一概に申し上げることは困難でございますが、一般的には、この傍受令状の請求する事件の具体的事情に即しまして、その当該事件の被疑事実の内容や、それに関与していると疑われる被疑者、そしてその被疑者らの行動、またそれらの者の相互間、相互連絡の方法、状況、これらにつきまして、それらの事情を明らかにします別の者の供述調書、あるいはその通話状況、通話の発信履歴等の通話状況に関する捜査報告書、こういったことなどを裁判官に提出することによりまして、この犯罪関連通信が行われる蓋然性が合理的な根拠を持って認められることを疎明することになると考えられます。
#126
○仁比聡平君 いや、よく分からないですよね。そうした疎明によって、先ほど確認しているような組織犯罪というものを裁判所が審査をすると。その疑いを審査するというのはよく分からない。
 前提としての組織性の要件をちょっと先に聞いておこうと思いますけれども、資料に組織的犯罪処罰法の団体性、組織性の要件と呼ばれている規定の一部をちょっと抜粋して掲げました。六枚目なんですが、暴力団を典型とした組織犯罪を刑法上、法定刑を加重するという規定としてこの法律の三条一項あるいは二項があります。
 御覧いただきますように、ここに言う団体というのは、団体の意思決定に基づく行為であってその効果又はこれによる利益が当該団体に帰属するもの、そうした団体の活動として当該罪に当たる行為を実行するための組織により行われたときに刑を加重すると。これ、法律家ではなくても、この文言というのは暴力団を典型的なものとして規定をしているのであろうなと思われると思うんですよね。
 二項は、同じように加重する要件として、不正権益というのを挙げています。これは、いわゆる暴力団において言えば縄張やシマと言われるものですよね。団体の威力に基づく一定の地域又は分野における支配力であって、当該団体の構成員による犯罪その他の不正な行為により当該団体又はその構成員が継続的に利益を得ることを容易にすべきものというような不正権益を得させ、維持し、拡大する目的で罪を犯した者というふうになっているわけで、こうした団体の規定というのが組織的犯罪処罰法においてはあるわけです。
 こうした犯罪に限定をするんだと、先ほどの四類型に限定をするんだというその確認というのはそういうふうにも聞こえるんだけれども、実はこの組犯法に言うような要件というのはこの改定案には一切出てこないわけですよね。
 これ、局長、この組犯法の三条の一項だけでいいですが、この団体の意思決定に基づく行為とか、実行するための組織により行われる罪とか、これ、どういう意味なんですか。
#127
○政府参考人(林眞琴君) この組織的犯罪処罰法第三条、例えば第一項の団体の活動として、当該罪に当たる行為を実行するための組織により行われたとき、こういった要件がございます。これは、委員も御指摘にあったように、刑を加重するための要件でございます。そういった意味で、通信傍受の実施要件とは異なる趣旨で設けられたものでございます。
 その上で、例えばこの要件を満たすためには、団体となりますと、これが共同の目的を有する多数人の継続的結合体がまず存在すること、その内部に組織というものがある、そしてその組織が指揮命令に基づき、あらかじめ定められた任務の分担に従って構成員が一体として行動する人の結合体が存在すること、こういった要件がございます。さらに、その団体の目的又は意思を実現する行為の全部又は一部が組織によって反復して行われる、こういった要件が満たされなければ組織的犯罪処罰法第三条第一項の団体の活動として、当該罪に当たる行為を実行するための組織により行われたときということの要件は満たさないということになります。
 一方で言えば、ここまで様々証拠を収集して最終的にこの要件を満たすことができるならば、この組織的犯罪処罰法によって、ある一定の類型の犯罪の刑が加重されるという関係になるわけでございます。
#128
○仁比聡平君 今のような組犯法の団体についても、これが広域暴力団などに限られずに、つまり犯罪集団に限定されずに、労働組合や広く市民団体、あるいは政党も例外ではないのではないかということがずっと問題になり続けてきました。ところが、今度の改正案は、こうした組犯法の規定どころか、先ほど来言われている組織性の要件、これはその条文の三条の一項一号の最後の行からありますが、当該罪に当たる行為が、あらかじめ定められた役割の分担に従って行動する人の結合体により行われるものという要件で絞られるというふうに大臣も政府も言い続けてきて、ところが、この組織性の要件というのは、数人共謀で、現場での示し合わせる現場共謀は入らないけれども、あらかじめ役割を分担するものであれば二人でもそれは含まれると言っているわけですね。広域暴力団のような団体性あるいは継続性というのは必要ないというふうにおっしゃっているわけです。
 となると、ここに含まれるのは、つまり盗聴の対象とされるのは組織的犯罪集団に限られない。捜査機関が容疑があると判断すれば、そして裁判所が令状を出しさえすれば市民団体でも対象となるのではないかと、そうした指摘が出てくるのは、これ私当然だと思うんですね。これ、市民団体でも同じことになっちゃうんでしょうか。
#129
○政府参考人(林眞琴君) 先ほども申し上げましたこの組織的犯罪処罰法の定義というものは、ある犯罪事象につきまして刑を加重するための要件でございます。この要件として、この組織的犯罪処罰法におきましては、こういった要件を満たす場合には法定刑が加重されると、このような枠組みで組織犯罪に対処しようとしたものでございます。
 今回の通信傍受法の中でのこの対象犯罪の追加に当たって組織性の要件をどのように組み入れるかということについては、当然この組織的犯罪処罰法の規定も一方で頭に入れながら、最終的には、あらかじめ定められた役割の分担に従って行動する人の結合体により行われるものという要件を追加する組織性の要件として掲げたものでございます。この部分につきましては、組織的犯罪処罰法の規定と重なっている部分があるわけでございますが、他方で、継続的結合体であるという要件までは今回通信傍受の要件としては入れておりません。したがいまして、臨時的に形成されたものであっても足りるということになっております。
 また、組織によりというものが、指揮命令に基づきというものが組織的犯罪処罰法の要件でございましたが、これにつきましては、その役割を分担して行った行動が上意下達型の指揮命令に基づくものまでは要求しておりません。そういった意味で、この刑を加重する要件としての組織的犯罪処罰法の要件というものの中で、これをそのまま今回通信傍受の対象犯罪の拡大に当たっての組織性の要件に取り入れているのではなくて、今回は、あらかじめ定められた役割の分担に従って行動するという点の要件を今回取り入れたわけでございます。
 その上で、組織的な犯罪に限定する要素といたしましては、やはり令状発付要件、これが厳格であること、このことから、結果として、令状発付がされる犯罪につきましては組織犯罪に限定されるということになると考えております。
#130
○仁比聡平君 大臣、恐ろしい話だと思いませんか。
 大臣は先ほど、限定した対象犯罪というのは、つまりさっきの四類型だとおっしゃったでしょう。ところが、大臣がその根拠の一つとして挙げておられる組織性の要件というのは、今局長が答弁をされているような性格のものだというわけでしょう。つまり、臨時的に集まった複数の者であればいいと、暴力団のように組長なり黒幕が上意下達で命じ実行させるような組織じゃなくていいと。ということになると、平たいネットワークであっても、複数人が共謀したと疑われてしまったら盗聴の対象にされるということになるじゃありませんか。
 だから、二十六日の参考人質疑で渕野参考人は、この要件は、指揮命令系統の存在及び結合体の継続性を求めていないなどの点で、適用を限定する効果をほとんど持たないというふうに言わざるを得ません、詐欺や窃盗など必ずしも組織犯罪とは関わりのない、通常の市民が日常生活を送る中でうっかり関わってしまう可能性のある犯罪が含まれており、現行の通信傍受法と比べて飛躍的にプライバシー侵害の可能性が高まりますと、そう指摘をしているわけですが、大臣は先ほどの四類型に限定されているとおっしゃっている。けれども、要件はそうなっていないし、厳しいこうした指摘がある。これにどうお答えになるんですか。
#131
○国務大臣(岩城光英君) 本法律案の新たに対象犯罪に追加される罪につきましては、当該罪に当たる行為があらかじめ定められた役割の分担に従って行動する人の結合体により行われるものとの加重要件を設けていることは先ほども申し上げたとおりであります。
 これは、御指摘のとおり、指揮命令系統が存在することや継続的結合体であることを要件とするものではないものの、この加重要件によって、現行通信傍受法の数人共謀の要件を満たしたとしましても役割の分担がなされないままに行われたと認められる場合、役割の分担はなされたもののそれが犯行時に定められたものであった場合などについては通信傍受を実施することができないこととなります。
 したがいまして、新たに追加する対象犯罪について通信傍受を行うことができる事件の範囲は、他の要件とも相まって十分に限定されることになると考えております。
#132
○仁比聡平君 いや、甘いですよ、大臣。だって、何人かが集まって、こういう別表二に記載する犯罪が語られただろうというふうに捜査機関が、警察が疑えば、何らかの証拠で令状が出るかもしれない、出ちゃうかもしれない。それが限定されていると本当に言えるのか。
 しかも、補充性の要件については後で聞きますが、この組織性の要件を今のようなものにした理由について、昨年の三月二十六日のこの委員会で私の質問に林局長は、組織的な犯罪の形態は多様であって、組犯法のような要件を満たさないものも多くて、本来通信傍受によって事案の解明を図ってしかるべき対象が除外されてしまうことになって相当ではない、また、令状を請求したときに組犯法のような要件を疎明するということになると、これは構成員相互のやり取りを明らかにする必要性が極めて高いけれども、通信傍受を実施しようとする時点においてあらかじめ収集するということは実際上不可能に近いから、組織性の要件というのはそんなに厳しくできないという趣旨の答弁をされたと私は理解しているんですが、つまり捜査の必要を強調しているだけなんですよね。
 通信傍受の必要がある、これまでの現行法では使い勝手が悪い、だから組織性の要件はこういうようなものにするというだけでは、これは国民のプライバシーは本当に裸にされてしまうじゃありませんか。対象犯罪の要件として、一般の窃盗あるいは一般の詐欺というのも含まれ得る規定になってしまっている。これが、大臣が、いや、限定されている、四類型に限定されているとおっしゃるんだったらば、その限定されている法的な根拠をきちんと示すべきなんじゃありませんか。
#133
○国務大臣(岩城光英君) 新たに対象犯罪に追加される罪についても、捜査機関が通信傍受を行うためには裁判官が発付する傍受令状が必要であります。この傍受令状は、その罪が犯されたと疑う十分な理由があること、他の捜査方法では犯人を特定することが著しく困難であることなど、先ほど来述べてまいりました厳格な要件を満たしていると裁判官が認めた場合に発付されるものであります。
 また、新たに追加される罪につきましては、現行法の厳格な要件に加えまして一定の組織性の要件を課し、それをも満たす場合でなければ傍受令状が発付されないこととしております。その際、裁判官は、犯罪関連通信に用いられる疑いがある通信手段を電話番号等によって特定し、傍受令状を発付することとされております。
 そういったことから、御指摘のような犯罪に当たると疑われる行為が発生した場合であっても、罪が犯されたと疑う十分な理由があるか否かを含め、ただいま述べました厳しい要件につき裁判官による厳格な審査を受ける必要がありますので、これを満たすとして傍受令状が発付されることは通常考えられません。
 したがいまして、対象犯罪として追加されたとしましても、これによって市民団体等の適法な活動においてなされる通信、これが傍受されることは考えられないものと思っております。
#134
○仁比聡平君 私は、これまでの議論では、厳格な要件と、大臣がおっしゃるような厳格な要件には到底理解ができないんですよ。厳格な要件で縛っているんだと、捜査機関の通信傍受令状の請求は許されないし、裁判官はそれを却下しなきゃいけないんだとおっしゃるのであれば、その法的な根拠を明確にするべきですよ。
 その下で、これまで何度か出てきている補充性の要件についてお尋ねをします。
 補充性の要件というのは、三条の「かつ、」の後にある「他の方法によっては、犯人を特定し、又は犯行の状況若しくは内容を明らかにすることが著しく困難である」ことだと思うんですが、これは、林局長、この補充性が認められるかどうかというのは、どんなふうにしてこれ、つまりこの定義の意味ですよね、他の方法によっては著しく困難と。これ、捜査機関が例えば張り込みをしました、尾行をしました、参考人を調べました、けれども分かりません、だから著しく困難ですと捜査報告書を出して疎明すれば、主張すれば、そうしたら、一体どう裁判官は、いや、違うでしょうという議論をすることになるんですか。
 法案提案者として、どんな場合に限定されるというふうにおっしゃっているのか、どんな場合は否定されるということなのか、その状況はどう疎明されるというのか、どんなお考えなんでしょうか。
#135
○政府参考人(林眞琴君) この補充性の要件、他の方法によっては犯人を特定し又は犯行の状況若しくは内容を明らかにすることが著しく困難であると、このことを捜査機関、令状を請求する側としては疎明しなくてはならないわけでございます。したがいまして、まずは、一般的に言えば、これまでに行った捜査経過、こういったものを全て明らかにした上で、それでもなお犯人を特定し、又は犯行の状況若しくは内容を明らかにするには至っていないと、このように捜査機関が考えられる理由、また、通信傍受以外の捜査方法を今後捜査継続したとしても、犯人を特定したり、その犯行状況若しくは内容を明らかにするには至らないと考えられる理由、こういったことを具体的に事情に即して明らかにしていかなければ令状が出ないということになります。
 例えば、暴力団による組織的な拳銃の発砲事件におきまして、実行犯を逮捕して捜査を行う中で、防犯カメラ映像でありますとか実行犯の使用する携帯電話に関する捜査から、この組織の関与であるとか、また、現在もその使用した拳銃が組織において保管されていることがうかがわれるものの、実行犯を含めて本件に関わっていると考えられる人物が供述を拒否していたりあるいは曖昧な供述に終始するなどの状況があって、他の捜査を継続しても、首謀者等の共犯者、あるいは犯行の状況、あるいはその拳銃の保管状況、こういったものの特定に至る可能性が乏しい場合、こういったことについては、やはりそれまでに捜査によってどのような証拠物が得られているのか、また、どのようなものが供述調書として存在するのか、あるいは、これまでの捜査機関における捜査経過を全て明らかにする捜査報告書、こういったことを裁判官に提出することによって初めてこの補充性要件を疎明することができるということになると考えております。
#136
○仁比聡平君 今のようにおっしゃるけれども、それが本当に大臣のおっしゃるような限定の要件として、言ってみれば、対象犯罪は一般の犯罪が対象になっている。組織性の要件というのは数人が共謀すれば足ることになっているということになると補充性の要件しかないんだけれども、補充性の要件というのも今のようなお話だということになると、これ本当に大臣が言うような場合に限定してしか令状が出されないようになるんだというためには、私は、これはその対象とされる被疑者あるいはその関係者がこの令状そのものを争うということができなければ、その個別の事件についても、それからその後の令状発付についても適正たり得ないと思うんですね。
 ところが、小川議員が繰り返し議論をしてこられたとおり、盗聴というのは盗み聞きですから、相手に伝えたら、盗聴の対象者に伝えたら意味がないわけですから、捜査機関にとっては。だから密行するわけでしょう。令状請求はひそかに行われ、裁判官はひそかに令状を発付し、ひそかに通信が傍受をされ始めるわけですよ。それが終わっても、犯罪関連通信が傍受記録に記載をされるということがなければ、通知もされないわけですよ。という下で、誰も知らない間に膨大なプライバシー侵害が行われ得るという仕組みになっていて、現行法の二十六条に不服申立ての規定がありますが、それが働くことは、それは本当に、言ってみれば、逆にまれなケースかもしれない。
 これ一般的に、同僚議員の皆さんはお分かりだと思いますが、物を差し押さえるとき、これはガサを入れるわけですね。これは捜索差押許可状というものを裁判所が発付して行われますが、これ昼間にしかやっちゃいけない。で、立会人を求めなきゃいけない。もちろん令状は示さなければなりません。だから、少なくとも被疑者、関係者にとってみれば、その捜索差押えが行われたということは明々白々の事実であり、これが不当だと考えれば断固として争うことができるわけです。その権利があるわけです。
 ところが、通信傍受は元々本質上そうなっていない。その対象犯罪を、極めて緩やかな組織性という要件で一般の日常的と言われる犯罪に対象犯罪を広げてしまえば、これは関わる市民のプライバシー侵害というのは極めて膨大なものになる。ここで犯罪に関連のない情報もどんどんどんどん警察に蓄積されていくということになる。私は、そういう懸念が指摘されていると思うんですよ。
 大臣、仁比の言うようにはならない、私が言うようにはならないという根拠を是非示していただけませんか。
#137
○国務大臣(岩城光英君) 重ねてのお答えになりますけれども、新たに対象犯罪に追加される罪については、これまで同様に、捜査機関が通信傍受を行うためには裁判官が発付する傍受令状が必要でありまして、その傍受令状は、その罪が犯されたと疑う十分な理由があること、他の捜査方法では犯人を特定することが著しく困難であることなど厳格な要件を満たしていると裁判官が認めた場合にのみ発付されるものであります。
 そして、新たに追加される罪については、現行法の厳格な要件に加えて一定の組織性の要件を課し、それも満たす場合でなければ傍受令状が発付されないものとしております。ですから、そういったことで、委員のような御指摘は当たらないものと考えております。
#138
○仁比聡平君 大臣、繰り返しの御答弁しかお立場上できないのかもしれないんだけれども、本当にそれで限定されますか。
 今の補充性の要件の後のところに、第三条の一項に、どんな通信手段を傍受の対象とするのかという定義があります。ここには、被疑者が契約して使用している電話ではないものも対象になるんですね。犯人による犯罪関連通信に用いられると疑うに足りるものというものも傍受できるようになっています。
 例えば、ちょっと誰か、よその人を例に挙げると失礼に当たるので、例えば私がこの対象犯罪を犯していると警察が疑ったとします。私がその犯罪関連通信を自分の携帯電話ではなくて私の秘書の携帯電話で行うであろうというふうに警察が判断をし、裁判所にこの令状請求をして、私も私の秘書も知らない間に私の秘書の携帯電話が常時通信傍受をされると、これもあり得るわけですか、局長。
#139
○政府参考人(林眞琴君) この委員御指摘の事例というものが少し理解できておりませんが、いずれにしても、犯罪関連通信に用いられると疑うに足りるということにつきましては、犯罪関連通信がそこで行われる蓋然性があることを肯定できる客観的な、また合理的な根拠を裁判官に対して疎明しなくてはならない、そのように考えております。
#140
○仁比聡平君 否定されないですよね。
 つまり、私が契約している携帯電話あるいは固定電話だけではなくて、私と密接でもいいし社会的に一体でもいいけれども、そうした疑いを捜査機関が持てば、私にも、私の秘書にももちろん通知はなく、ひそかに私の秘書の電話を傍受するということがこれあり得るということか、あり得ない場合はどんな場合なのかということを聞いているんです。
#141
○政府参考人(林眞琴君) 一つは、まず犯人が、被疑者が通信事業者等の間で契約に基づいて使用しているもの、これについては通信手段としてまず特定が可能でございますが、そうでないものにつきましては、犯人による犯罪関連通信に用いられると疑うに足りるということを疎明しなくてはなりません。ここでは、ですから、当該通信手段が、まず犯罪関連通信が行われるということだけでは足りませんで、それが犯人による犯罪関連通信に用いられると、こういったことが、これに疑うに足りるということを疎明しなくてはならないわけでございます。
 そうしますと、一般的にはその疎明の方法といたしましては、その当該事件の被疑事実の内容やそれに関与していると疑われる被疑者らの行動あるいはそれらの者の間の相互連絡の方法、状況につきまして、それまでに既に捜査を遂げて、その中ででき上がりました供述調書でありますとかその通信手段についての通話状況、通信履歴、こういったものの状況を捜査を遂げた上で疎明資料を作ってから、それでなければ裁判官に対して、当該通信手段を用いてその犯人による犯罪関連通信が行われる蓋然性というものを合理的な根拠を持って疎明することはできないと考えております。
#142
○仁比聡平君 ということになると、今おっしゃっているようなことで厳格に行われるとおっしゃりたいんでしょうけれども、私に対象犯罪の疑いを掛ければ、私が例えば秘書の携帯電話を使っていないかどうか、そこで犯罪関連通信を行っているという疎明ができないかどうかを通信履歴などを不正に、不正にというかひそかに取得して、その令状請求の検討をするみたいな、そんな話にもなりかねない。
 これ、私がというふうに言っているから警察庁も含めて首かしげていますけど、だけど、捜査手法としてはそういう段取りですよ。恐ろしくありませんか。
 私は、そういう盗聴という捜査手法が日常的な犯罪に対する一般的な捜査手法になりかねない、さらには、国家が敵視する市民あるいは市民運動に対する監視手段に濫用されかねないという危険性というのは、これまでの議論の中でも私、払拭されないと思いますよ。
 そうした下で、蓄積されるプライバシー、情報がどのように利用されるのか、され得るのかということについて、これまでの質疑の中でも少し出ていますけれども、ちょっと確認をさせてもらいたいと思うんです。
 通信傍受を行って、この中で捜査機関が情報を得ますよね。この情報をこのように使わなければならないという利用の仕方についての法の規定というのは、林局長、あるんでしょうか。
#143
○政府参考人(林眞琴君) 通信傍受法につきましては、まず現行の二十二条第一項で傍受記録を作成すると。これは、傍受の実施を中断し又は終了したときは、その都度、傍受記録を作成するということになっております。その後の捜査や公判手続においては、この傍受記録が使用されることとなります。
 一方で、この傍受記録に載っていないものにつきましては、これを、傍受記録に記録されたもの以外のものにつきましては、現行の通信傍受法二十二条第五項におきまして、その内容を他人に知らせ、又は使用してはならない旨規定をしております。
 このような形で、通信傍受によって得た情報については通信傍受法により使用の規定が置かれております。
#144
○仁比聡平君 そのような使用の規定が置かれているというふうにおっしゃるけれども、実際に得た情報を警察の活動あるいは捜査活動に使うということは、いろんな場合が想定できるわけですね。つまり、裁判の有罪証拠に使う場合以外の場合。
 例えば、渕野参考人は、取調べにおいて通信傍受で傍受した内容を、こういうふうにおまえ、もうしゃべっているじゃないか、だからもうここで自白してしまえというふうに、取調べで当てて自白を迫るというような手法も生み出しかねないのではないかというふうに危惧を表明をされましたが、通信傍受で得た情報を取調べで、これ被疑者に対しても参考人に対してもあり得ると思いますが、司法取引の場合だってあると思いますが、これを当てて確認をする、聞くというのは、これ、あり得るでしょう。
#145
○政府参考人(林眞琴君) まず傍受記録、先ほど、法律が定め、作成すると決めております傍受記録につきましては、これ自体は傍受した通信の内容を刑事手続において使用するために作成される記録でございまして、令状に基づき適法な手続により得られた証拠でございます。したがいまして、この証拠につきまして、例えば捜査官が取調べ等において必要に応じて傍受記録の内容を被疑者等に告げるということは当然に許されるものと考えております。
 他方で、この傍受記録に記録されていない通信につきましては、これにつきましては、先ほども申し上げましたが、その内容を他人に知らせ、又は使用してはならないと規定しております。したがいまして、捜査官は、この傍受をした通信のうち傍受記録に記録されていない通信の内容を被疑者の取調べ等において告げて使用するというようなことは許されないものでございます。
#146
○仁比聡平君 では、後者の方をちょっと先に確認しますが、許されないとおっしゃるけれども、許されないことをしたら一体どんな制裁があるんですか。
#147
○政府参考人(林眞琴君) この点につきましては、現行の通信傍受法三十条におきましては、捜査官がその職務に関し通信の秘密を侵したとき、三年以下の懲役又は十万円以下の罰金に処する旨を規定しております。また、こういった罪について告訴、告発をした者が検察官の公訴を提起しない処分に不服があるときは、刑事訴訟法二百六十二条第一項の付審判請求をすることができる旨を定めております。
 先ほど罰金について十万円と言いましたが、百万円以下の罰金となっております。
 もとより、こういった通信傍受法に違反している行為は違法でございますので、当然懲戒処分の対象ともなるということでございます。
#148
○仁比聡平君 部分録画の問題で、あるいは違法な取調べを行った捜査官が懲戒された例が一体どれだけあるというのかと申し上げてきましたけれども、今の局長の答弁、もう本当に極めて空虚ですよ。そんなおっしゃるんだったら、実際に違法な捜査を行ってきた警察官を全て処分をしてからおっしゃいなさいと申し上げたいと思うんですが、そういう制裁しかない。
 実際、密室の取調べで、録音、録画も行わずに、そうやって通信傍受で得た情報を当てて自白を迫るということをされたときに心を折られてしまうという、そうした事例は数々あるということを浜田参考人もこの場でお話しになられました。そういう使われ方があるということなんですよ。加えて、通信傍受で得た情報を疎明資料にして、例えばその犯罪を立証するためのブツがあるのではないかというところのガサ入れをやる令状を取る、あるいは逮捕状を取る、こういう令状請求の資料に使うということも、これできるでしょう。
#149
○政府参考人(林眞琴君) 一般に正当な強制処分により適式に得られた証拠を他の事件において正当な捜査・公判活動に用いることは許されていると解されております。ゆえに、通信傍受法の傍受令状により傍受した通信の内容を記録した傍受記録につきましても同様でございまして、この通信の傍受記録に記録された通信の内容を傍受令状が発付された事件以外の事件の捜査における令状請求の際に用いることも許されることとなります。
 他方で、先ほども申し上げましたが、この傍受記録に記録されていないこと、これについて、その通信の内容については使用が禁止されておりますので、そのようなことで、傍受令状の請求に当たって記録されていないものを使うということは当然違法ということになります。
#150
○仁比聡平君 実際、これまでの現行法も根本的には同じ問題があるんだけれども、けれども、対象犯罪が限定され、立会いが行われる、必要とされるということで、警察にとって使い勝手が極めて悪かった。ところが、これを対象犯罪を窃盗や詐欺も含めた一般的なものにまで拡大すれば、ここに関わる犯罪と関係のない市民というのは莫大に増えるわけです。そこで取り交わされる通信というのは膨大な量になるわけです。しかも、スポット傍受だ、それから犯罪関連通信だと判断したといって行われて得られる傍受というのは、これは極めて膨大な情報量になるわけですよね。
 今度は、立会いをなくして伝送してもらって、警察署においていながらに、誰の目もない、第三者の目も一切ない、言わば第三者の目によって監視されることのない盗聴の実施、これが警察による秘密処分と言うべきそうした手法が日常化するのではないのかという、それが今度の大改悪の中身なのではないでしょうか。
 前回、四月の二十一日の質疑で、私の質問に警察庁三浦局長が、傍受をする場面において、犯罪関連通信等を傍受しそれを記録していくという、こういう作業を行いますので、当然その過程で様々なメモでありますとか、そういったものが作られるということはあるのだろうというふうに思いますというふうに御答弁になりました。これは捜査報告書などを作っていく上でも、傍受をして、その音が消えてしまった、聞きっ放しでしたというわけにいかないわけだから、警察官、取調べ官としてはちゃんとメモを作りますというふうにおっしゃっているわけですけれども、これ、メールを傍受するその該当性判断のときも同じようにやるわけですかね。
#151
○政府参考人(三浦正充君) 基本的には、通話を傍受する場合又はメールを傍受する場合、手続としては同様でございまして、例えば傍受日誌でありますとかあるいは通信傍受法の定める傍受実施状況書、こういったものについては作成をしていくということになります。また、傍受記録を作成するためのメモでありますとか、そういったものも作成をすることがあろうかと思いますけれども、傍受記録作成をした際には、その通信の内容に係る部分につきましては、その犯罪関連通信に該当しないようなものなどにつきましては全て消去をする、全て廃棄をすると、このような定めとなっております。
#152
○仁比聡平君 廃棄をするとか、それから新しい方式で消去をするとか言いますけど、スポット傍受も含めて、聞いたことを皆さん忘れますか。追いかけている重大な容疑者ですよ。それが、その関係者とこういう通話をしていた、こういう人間関係だったのかということを初めてそこで得たと、これは重要だと判断をしたことを、仮にそれ自体が犯罪関連通信でなかったとしても忘れますか、忘れませんよ。忘れるようなら捜査官として失格でしょう。
 実際、メモも含めてそうやって蓄積されていく情報がどんなふうに使われるか。お手元の資料の最後のページに、今や憲法の議論の中で極めて重要な判決として伝えられている堀越事件という事件の簡潔に分かる記事を付けました。
 最高裁判決で、国家公務員法違反だと疑われたこの堀越さんが無罪という判決を受けた事件ですが、私が今日、国家公安委員長にお尋ねをしたいのは、この堀越さんを長くにわたって尾行し、四六時中そのプライバシーを暴き続けた、それもひそかに、この警察の手法です。
 その記事にあるように、少なくとも二〇〇三年の十月から十一月にかけて、二十九日間で延べ百七十一人の警察が堀越さんを尾行し、ビデオ五台から六台、ワゴン車三台から四台、こういうものを使って、実に十か月にわたって尾行と張り込みを続けるわけですね。私の手元に、これ、裁判上明らかになった警察の行動確認記録がありますけれども、これを見ても、もう二十四時間、堀越さんの行動をずっと分刻みで書き込んでいるわけですよね。
 その雑誌にあるように、自宅から出勤する堀越さんを待ち伏せ、登庁から退庁までを確認し、そば屋で食事したこと、観劇したこと、東京駅で百三十円の切符を買ったこと、冷凍食品を買って自宅に戻ったこと、果ては女性と手をつないでいたことまで分刻みに克明に記録していた。監視されていなかったのは自宅内にいるときだけだった。国家公務員法違反だというなら、公務の中立性が害されたということを捜査するのならという意見もあるかもしれないが、警察はその部分には全く関心を示さずに、専ら私生活を追いかけている。ここまで市民のプライバシーを暴く必要はどこにあったのかと記事は書いていますけれども、そうした捜査の挙げ句、堀越さんは無罪なんですよ。
 ところが、この捜査手法、これはテレビの特集番組でもその盗撮ビデオが再現をされるなど、大きな大問題、社会問題になりましたが、なお何の反省もない、謝罪もない。これ、河野国家公安委員長、こういう捜査手法、これ大臣も何の反省もないんですか。
#153
○国務大臣(河野太郎君) 今御指摘のありました事件は、厚生労働事務次官が国家公務員に禁じられた政治的行為をしたとして、国家公務員法違反により逮捕、起訴されたものであります。平成二十四年十二月七日、最高裁判所において、被告人が管理職的地位になかったことなどから構成要件該当性が認められず、無罪判決が下されたものと承知をしております。本件の公判では、警察の捜査が違法と判断されたものではないというふうに承知をしております。
 捜査が適正に行われることは当然のことであり、警察がきちんと適正に捜査をするよう今後とも指導してまいりたいと思います。
#154
○仁比聡平君 最高裁判決が直接その捜査の違法を弾劾したものではないというのは、そのとおりかもしれません。大臣が私のこの趣旨の質問、つまり警察によるこんな卑劣な捜査が許されるのかと問うている質問に対して、違法と断罪されたものではありませんという御答弁をされるということは、つまり、このような捜査というのが行われる、こういうことは何の問題もないと、そうおっしゃりたいんですか。
#155
○国務大臣(河野太郎君) 済みません。先ほど厚生労働事務次官と言ったようですが、厚生労働事務官でございました。
 警察の捜査は法にのっとって適切に行われなければならないというのは言うまでもないことでございまして、今後ともそのように法にのっとって捜査が行われるように警察を指導してまいります。
#156
○仁比聡平君 先ほど小川議員も指摘をされました我が党当時国際部長の緒方靖夫さんのおうちの盗聴事件にしろ、せんだって国家公安委員長に尋ねた北海道警の平成の刀狩り事件に関しての大問題にしろ、どれだけ卑劣で違法なそういう捜査が暴露をされても、事実も認めない、反省もしない、謝罪もしないというのが権力犯罪を繰り返してきた日本の警察の現実じゃないですか。そうした警察に、先ほど確認をしてきたような極めて緩い要件でこんな盗聴の拡大というような手段を与えることが、大臣、どうして刑事司法改革なんですか。
 大臣に最後お尋ねしたいのは、この刑事司法改革の出発点、原点というのは何だったのかということです。村木事件を始めとして冤罪が繰り返されてきた、それも検察や警察のこの権力犯罪がそういう冤罪を生み出してきた、これをなくすんだというための出発点というのが今回の改正なんじゃないですか。その濫用が国民的に弾劾をされてきた捜査機関に、この通信傍受を始めとして、ひそかに、知らせずにプライバシーを根こそぎ持っていくような、そういう捜査手段を与えるということが何で刑事司法改革なのか。私はこの出発点をすり替えるものにほかならないと思うんですが、大臣はいかがですか。
#157
○国務大臣(河野太郎君) 冤罪はあってはならないことでございますし、警察を始めとする捜査が法にのっとって適正に行われなければならないというのは言うまでもないことでございます。
 通信傍受法は極めて厳格な要件、手続を定めているもので、平成十二年八月の施行以来、傍受令状の請求が認められなかった例はほとんどなく、裁判で違法な傍受が行われたと判断された事例もございません。
 警察は今後とも法にのっとり適切に捜査するようしっかりと指導してまいります。
#158
○仁比聡平君 今の河野国家公安委員長の答弁で令状が認められなかった例はほとんどないとおっしゃっているのは、つまり裁判官による令状審査は機能していないということです。被疑者、関係者の異議申立てを認め、徹底して争う中で、その令状発付が間違っていたではないかと弾劾が尽くされて初めてその運用というのが適正だったと大臣、河野さん、言えるんだと思いますよ。そういう仕組みじゃないんですから。
 最後に、岩城大臣に改めて伺いたい。刑事司法改革の原点というのは、捜査機関のそうした権力犯罪、濫用を警戒するために、冤罪をなくすために行うという出発点だったんじゃないのか。これ盗聴を、これ部分録画の対象犯罪とも全然関係ないですからね、一般的な手法にする、逆行じゃありませんか。
#159
○国務大臣(岩城光英君) 厚生労働省元局長無罪事件及びこれに関する一連の事態が発生したことを受けまして、法務大臣の下に設けられた検察の在り方検討会議の提言や法制審議会の諮問でも指摘されているとおり、現在の捜査、公判は取調べ及び供述調書に過度に依存した状況にあると考えられます。そして、このような状況は、取調べにおける手続の適正確保が不十分となったり事実認定を誤らせるおそれがあると考えられます。
 この法律案は、このような状況を改め、より適切な証拠によってより適正に事実認定がなされる刑事司法とするため、まず、捜査段階で、取調べのみに頼らずに、取調べを含む捜査の適正を確保しつつ、取調べ以外の適正な捜査手法を整備する、すなわち証拠収集手段を適正化、多様化するとともに、公判段階では、必要な証拠ができる限り直接的に顕出され、それについて当事者間で攻撃防御を十分に尽くすことができるようにする、すなわち公判審理を充実化するものであります。
 この法律案における通信傍受法の改正は、暴力団による殺傷事犯や特殊詐欺などの組織的な犯罪について、手続の適正を確保しつつ、犯罪の全容を解明するための直接的かつ客観的な証拠を機動的かつ効率的に収集することを可能とするものでありまして、取調べ以外の適正な捜査手法を整備するものであります。したがいまして、通信傍受法の改正等、本法律案における他の法整備と相まって誤判等の防止にかなうものであると、そのように考えております。
#160
○委員長(魚住裕一郎君) 仁比君、時間です。おまとめください。
#161
○仁比聡平君 公判を適正化するどころか、ひそかな盗み聞きあるいは司法取引による密告、部分録画とその実質証拠としての利用によって冤罪を逆に生み出すという大きな問題がこの審議を通じて私は浮き彫りになってきていると思います。それを防ぐ法律上の根拠というのも今日も明らかにされない。
 私は、徹底してこの法案の問題点について更に審議を尽くしていくべきだということを強く主張して、今日は質問を終わります。
#162
○委員長(魚住裕一郎君) 本日の審査はこの程度にとどめ、これにて散会いたします。
   午後二時三十二分散会
ソース: 国立国会図書館
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